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28回国会衆議院1958/02/07

予算委員会 第2号

発言数
297
登壇者
12
会派数
2
開催日
1958/02/07

会議録

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を議題といたします。  質疑を続行いたします。西村榮一君。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私は、昨年の予算審議に当りまして、政府の一千億積極政策というものは、時の国際経済の趨勢に逆行する無謀な予算であるから反省するように警告申し上げたのであります。これは岸総理も臨時首相として御了承――当時の責任者でありましたが、私が警告を申し上げました第一の理由は国際経済は曲りかどに来ている。後進国はドル不足に悩んでおるし、先進国は生産過剰で、ともに購買力が不足している。第二に、日本の諸物価は、当時国際物価より著しく割高になってきた。従ってそのコストの点から、輸出能力に対しては限界が発生してきている。第三には、政府は、この国内物価高を抑制するためには、外国の原材料を多量に輸入して、物資の面から価格統制を行う。それがためには積極的輸入奨励策をとることが必要であると言われたのであります。それに対しまして私どもの見解は、それは国際市場が上昇期にあるときにはその積極政策はよろしい。しかし三十一年度秋ごろから国際経済は下降期に入っておるのだから、せっかく高い原材料を輸入して加工しても、輸出するときには市場が狭くなっているし、購買力が不足してくるから、それは今のところは積極政策は少し逆行している。同時にそのことは外貨が将来危機を告げるであろうという三点がら、昨年度の予算案に対しましては自重を要請しておったのであります。そこで本年度はしからばどういう政策が必要であるかと申しますと、昨年は民間の行き過ぎた生産拡張計画、あるいは思惑輸入に対して、政府はブレーキをかけるべきときであると警告申し上げたのでありますが、しからば本年はどうかと申しますと、昨年六月より方向転換せられました政府の財政政策によって生じた経済界の混乱と動揺、あるいは一時的な恐怖状態を生じたのでありますが、それを低い姿勢で安定の方向に持っていくことが本年度財政政策のとるべき方法ではないか、私はそう思っているのです。第二には、神武景気並びに昭和二十八、九年の苦しい生活から生まれてきた日本の経済の順調なる発展によって生じた剰余金あるいは自然増収等をむだ使いにしないで、将来の日本経済の再出発のために、再生産方面に重点的に使うのであって、ちょっと過去景気がよかったからというおかげで、そのもうけた金をなしくずしにぐずぐずに使ってはならぬ。第三には、この四、五年間あるいは神武景気が起き、あるいは神武不景気が起き、いろいろ経済の変動が生じました。その結果各産業間は申すに及ばず、国民生活の中にでこぼこが生じてきたのでありますが、そのでこぼこを調整するということ、私はその三点が本年度とるべき財政政策の大きな政治的目的ではないか、こう考えます。去年は私は無条件に積極政策に警告を申し上げました。ことしはあえて萎縮する必要はございませんが、経費はぐずぐずに使わずに、幸いにして政府は経企庁において新長期計画を立てられたのでありますから、この五カ年間の最終の目的を達成するために、重点的にその余剰財源を使って、将来の発展のために備えるべき時期が今ではないが、これが本年とらるべき財政政策の大きな政治的目的ではないか、こう私は考えるのでありますが、岸総理大臣はいががお考えになりますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 本年度の予算編成の根本的の考え方として、今西村委員のお考えを拝聴したのでありますが、政府におきましては、西村委員のお話しのように、第一点としてわれわれはあくまでも経済を、安定した基盤の上に、将来の経済の発展ということを目途として、安定した形に持っていくことが必要である。従って特に予算でもって景気を刺激するようなことのないように考えるというのが、第一の点であります。従って本年度の実質的の財政規模の予算のワクを一千億のワク内にとどめたということが一つ、それから第二にお話のように、この過去において生じた剰余金については、できるだけこれを将来の経済基盤の確立のためにとっておくという意味におきまして、特に資金の制度を設けて、四百三十六億というものをたな上げをしておるということも、その趣旨にいでたものであります。また中小企業やあるいは農山漁業等の経済力の弱い方面に、こういう場合にいろいろなしわ寄せが来るおそれもありますし、また来ておる部分もあるのでありまして、これに対してはすでに緊急対策においても、特に金融面等におきましてそれに対する措置をとっておりますが、今回の予算の編成に当っても、そういう点についても留意をいたしておるわけであります。要はやはりこの国際経済情勢と将来の日本の経済の伸び方というものをできるだけ見通しを正確にして、これを基礎として予算を編成するということでありまして、御指摘になりましたような長期経済計画も、われわれは新たにこれを樹立して、この方向においてわれわれは予算編成に当っておる。従いまして今西村委員の御指摘になりましたようなお考えと、われわれが、今回予算を編成している大体の根本の考え方は方向を同じくしておるものであると、かように考えております。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 今総理大臣の御答弁は、大体十二月二十日に閣議で決定せられました予算編成の基本方針並びに本予算審議において提出された予算説明書並びに経審が発表されました新経済政策の本年度の見通し、これについては今総理大臣がお述べになりましたことと一致しておるのでありまして、私は財政政策としてさようなければならぬと思うのであります。ところが実際は少し違っております。予算の編成の内容につきましては、私は架空な抽象論は今日避けまして、具体的数字に従って総理の御所見を伺いたいと思うのでありますが、今年は政府の発表されました数字によりますと、国民経済成長率は二・三%、物価下落を予想いたしまして実質三%の国民経済成長率。それに対しまして、予算規模は一五・六%に伸びておるのであります。昨年は未曽有の積極政策といわれておりますが、国民経済成長率は七・二%に対しまして、予算規模は一三・八%でありました。しからば積極政策をとって、しかも予算成立後急速に方向を転換してデフレ方向をとらざるを得なかった昨年度の予算におきましても、国民経済成長率七・二%に対しまして、予算規模は一三・八%でありました。本年は二・三%の成長率に対しまして、予算規模は一五・六%の伸びになっておるのでありますが、そうしますと、ただいま総理が御答弁になりました基本構想とこの予算案の実体とは数字的に見て違うように思うのでありますが、これはどうでしょうが。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 数字的の正確な説明に関しては、大蔵大臣及び企画庁の長官からお答えすることにいたしますが、方針といたしましては、先ほど私が述べたような基本方針に基いて予算を編成しているのである、こう御了承を願いたいと思うのであります。数字的な点については、両大臣よりお答えいたします。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 御答弁します。この財政の規模が経済の成長との関係において大き過ぎるということは、他面申し上げれば、国費というものは急激に非常な削減をしにくいということであります。同時に、しかし経済の成長率が低いから、そのパーセンテージはむろん高いものになる。これはお説の通りであります。しかし、こういうような経済の成長等が考えられます場合は、単に財政の規模だけで考え得るものではありませんで、昨年度におきましては、経済自体が非常に上昇傾向、いわゆる経済自体が拡大傾向をとり、それに対して財政がどういうふうな規模になったかということをかみ合せて考えないといがないのでありまして、今年におきましては、むろん経済の伸びがそれほどよくないから、財政規模は数字的にはパーセントは上っておりますが、しかし経済自体は下降になって、それを具体的に言えば、民間の投資というものが非常に減っておる。今想定されておるところで、おそらく三千億近いものが、昨年に比べて民間の投資が減る状況にある。こういうこと経済活動を見て、そうして経済の成長に対して財政がどういうふうなパーセンテージになるがということを考えていくべきだ。そういう見地からすると、決して私今回のが特に過大であると言うことはできないと思います。またそうしないために、特に予算編成に対して、そういう経済情勢に対応するように基本構想を立てて、この基本構想自体は、御知承のように十分確保されておる、かように私は考えております。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私は、失礼な話だけれども、一萬田大蔵大臣は本予算委員会において答弁なさる資格がありますか。あなたは最近答弁がお上手になられたし、ひそかに敬意を表しておるのですが、しかし政治家というものは、答弁上手だけではだめなんです。政治的信念と良心がなければならない。ところが今そういうことをおっしゃると、それは答弁上手であって、政治の誠実さに欠けると言われるのはどこにあるかというと、財政の規模だけで問題が判断できないと言うならば、予算編成の基本方針の中に何と書いてありますか。財政の規模は縮小して、内需を刺激しないようにして、三十一億五千万ドルの輸出目標を達成するためには、極力健全にして緊縮方針をとると書いてあるじゃありませんか。私はあなたに答弁を求めておるのではない。総理大臣は数字がわがらなかったら、数字は省略されてもよろしい。総理大臣がそうこまかいことを御存じなくてもいい。ただし私が大蔵大臣の答弁を求めないのは、あなたがこの予算委員会において答弁する資格があるがどうか、問題はそれなんです。  そこで今問題になっております――私はあなたがおっしゃったのは、総理大臣の前でおっしゃったんだから、これは内閣の共同の責任として総理大臣にお伺いをいたしたいのですが、国民経済と予算規模というものは、あなたが御存じの通り、実にその国の経済を左右するだけの重要性を持ってきている。私は抽象論はきょう避けまして、具体的にお伺いする。昭和二十九年度より予算面では経費を縮減いたしまして、三十年度、三十一年度と三カ年間緊縮政策をとったことが、幸いに国際経済というものが上向きになりまして、それに即応する態勢が国内に二十九年度、三十年度、三十一年度の予算案で作られておった。試みに数字を申し上げますと、三十年度は国民所得の九・六%の伸びに対しまして、予算の規模は二・一%しか伸びておりません。三十二年度は、今申し上げましたように、七・二%の国民所得に対しまして一三・八%です。本年はただいま申し上げた通り。二十九年度は前年度より縮減しております。この三カ年間の堅実なる財政政策があったからこそ、先ほど申しました通り、国際経済の好況の波に乗ることができた。今の大蔵大臣の征説明の、予算規模だけで考えられないということは、それはもう詭弁のはなはなしいことでございまして、議論の対象にはなりません。従ってこの数字からいえば、私はあなたと今議論をしようというのじゃない、この数字からいきますならば、本年度もやはり堅実なる財政政策をとることが、日本経済の将来のためにいいんじゃないが、こう思うのですが、あなたの御見解いががですが。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたように、われわれとしては、やはり安定した基礎の上に、経済基盤の上に将来の発展を考えるという考えの上に立っておりますから、特に財政規模の上において、支出において景気を不当に刺激するというようなことのないようにということに留意をいたしております。今西村委員の数字的な基礎においてのいろいろの御議論もありますが、私は全体として今度の予算は、そういう基本の、われわれがとっておる考え方に矛盾するものではない、こういうふうに考えて、実は編成をいたしておるわけであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 矛盾するものでなければ私は、矛盾しないということを具体的な数字と事実を示して、国民を納得させていただきたいと思うのです。ただ安心せよと言うて、ぽんと胸をたたかれましても、金のことですからあぶなくてしょうがない。もう一ぺん私は数字を申し上げますと、くどいようでありますが、昨年度は七・二%の成長率に対して一三・八%、今年は二・三%に対する一千億円で、従って予算規模は国民所得の成長率からいきまと、昨年よりもその膨張率が三・一倍であります。あなたが提出されたこの予算説明書の中に何て書いてあるかと申しますと、昨年は国際収支の急激なる悪化に直面して、三十二年六月にはこれが改善のため、緊急総合対策を決定した。その結果、外貨の危機は回避することができた。しかしなおアメリカ経済の動向、後進諸国のドル不足、西欧諸国における貿易の拡張等、世界経済の動向は楽観を許さない。かくのごときどきに、わが国は三十一億五千万ドルの輸出努力目標を策定した。この目的を達成するために健全なる財政政策をとり、国内需要のために輸出の伸張を阻害するようなことは厳に慎しまねばならない。あなたが提出された予算説明書の中に、こう書いてある。そう考えますると、アメリカ経済の動向といい、東南アジアのドル不足といい、西欧諸国の経済の状況からいきまして、日本経済の将来は楽観を許さない。その楽観を許さないときに、過去三十年度三十一年度において生じた自然増収剰余金というものを当てにして、三・一倍もふくれ上った予算案を組んで、一体これで健全財政とあなたが主張されるのが通るのか通らないのか。これを具体的な事実によって御説明を願いたいと私は思う。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 過去に生じた剰余金については、ごらんの通り、これを広い意味におけるたな上げといたしておりまして、これを将来の経済の安定のために使うという意味においてたな上げをいたしております。またいろいろな国際情勢等の見通しにつきましては、すでに書いてあるように、私は決して楽観を許さない状況にあると思います。従って来年度の三十一億五千万ドルという輸出目標を達することについては非常な努力を必要とし、またそのために、必要な経費等を予算に盛っておるわけでありますが、幸いに物価の傾向等を見ますると、かつて昨年の春等において想像されておった、また西村委員の御指摘になったような。国際物価の水準とのなにに対しましても、その後の物価の足取りは、私どもが憂慮しておったような物価が上昇するという傾向を示しておらない。幸いにそういう状況にありますので、昨年までに経済産業各方面における設備の改善であるとか、あるいは輸入原材料というようなものに加工して、この三十一億五千万ドルという本年度の輸出をあらゆる努力をして実現して、そうしてこの目的を達するというのが私どもの基本的考え方であります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 政府もお述べになっておるように、三十一億五千万ドルという輸出目標を達成するためには、国内の需要を刺激する行為は絶対に避けねばならぬ、これは政府が指摘されているところであります。そうすると国内需要を刺激する一つの大きな要因は財政膨張なのです。そうするとこれだけの膨張した予算を盛って国内需要を刺激しないで三十一億五千万ドルという努力目標を達成するためには、作、文は書いてありますけれども内容が伴わない。ところが幸か不幸が、戦後未曽有な膨張予算を、前途の暗い国際経済と日本経済の中に立って組み得た要因がどこにあるがというと、過去の剰余金がございましたからこそ無理な予算が組めた。そうするとここに問題になるのは――あなたと私は議論するわけではない、私が心配しているところは、ことしはそういう無理な予算が組めた、将来国際経済も楽観を許さないという中に立って三十四年度以後の予算をどうして組むか、こういうことです。そこには増税しなければならぬ、赤字公債あるいはそのときにおいて予算の大削減を行う。すなわち三十四年度以降の予算を健全化して組もうとするならば増税か赤字公債か経費の削減か、いずれかをとらざるを得ない。ことしは無理がきいたが、三十四年度以降は無理がきかない。幸いに国際景気でも好転するという見通しでもあれば別ですよ。そうでなければ無理がきかない。私は将来を心配するのですが、その点総理大臣はどういうふうにお考えですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 西村委員は過去における剰余金を使ってこういう予算を編成しているという前提にお立ちのようでありますが、私しばしば繰り返して申し上げておるように、過去の剰余金については、特に将来の経済の安定した場合において、これを経済基盤を確立するためにたな上げをいたしておりまして、これを使って予算の規模を拡大したわけではない。三十二年度の剰余金については、言うまでもなく三十四年度にどういうふうに出ますか。これはまたそのときに相当な剰余金が出る見込みでありますけれども、それは三十四年度の情勢に応じてこれを使っていくか、あるいはたな上げするということがまた考えられるだろうと思います。われわれが本年度一千億の範囲で予算規模をきめましたことは、過去の剰余金を目当てにしてこれを実は組んだわけではないのであります。もちろん経済の問題は将来長きにわたっての見通しを立てていかなければなりませんから、私どもそういうような過去の景気によって出たところの剰余金については、これをたな上げしておく方針で、本予算を組んでおるのであります。将来の問題につきましても、基本的な考え方については十分計画を立て、その計画に応じてやっていくというふうにいたしたい、かように考えております。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 過去の剰余金のたな上げの問題につきましては、いずれ財政投融資その他についてお尋ねいたしますが、そうすると三十四年度以後も現行の税収、あるいは増収が見込まれるから心配はない。私が案じた増税、赤字公債あるいは経費の削減を行わなくても増収によってやれるというお見通しですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 経済の長期計画におきましても、一定の率で日本の経済が拡大され、伸びていくことを予想し、またそうしていかなければならないことは言うを待ちません。その基礎の上に立ちますと、経済の見通しの問題につきましては申し上げるまでもなく、物事を非常に悲観的に考えるのと楽観的に考えるのとありますが、われわれ政府としてはできるだけ堅実な考え方に立たなければならないということは、言うを待ちません。しかし今の長期経済計画に従ってこの線で日本の経済を拡大していくという建前をとっております限りにおいて、それに応じた経済、産業基盤の拡大が実現され、従ってそれに伴う一定の増収があるものと考えることがきわめて堅実な考え方である。私はかように思っております。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私の質問に対して要点に対する御答弁がない。経済の成長率が神武景気というふうな異常な好運に恵まれたときは別でありますけれども、普通の成長率、経済企画庁が立案されるように、二・三%という国民経済の成長率に見合う予算の編成方針というものは、毎年義務的に増額を要請せられてくる三百億円程度の増額が関の山ではないか、こう思うのです。従って、あなたもおっしゃるように日本の経済、日本の財政についてあまり先走った悲観論もいけませんし、同時に楽観論もいけないのでありまして、正確な判断が要る。しかしながら、ものを控え目に堅実にあなたがとられるとするならば、幸運に恵まれたときはけっこうだが、最悪の事態を予想して財政政策を立てる、こういうことになりますと、今の日本の財政規模から申しますと、毎年ふえる率はどうしても避けられない三百億円程度の自然増加の限度が財政膨張の限度じゃないか、こう考えるのですが、いかがでしょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 三十三年度の経済の伸びにつきましては昨年来のわれわれのとった緊急対策によって特にこれを押えてきて、そういう数字になっておりますが、長期五カ年計画をずっと通じての数字としてはそういう低い数字ではございませんで、従って今西村委員の言われるように、年々三百億円程度の財政の伸なが何に当っているじゃないかと言われることは、私は適当でないのじゃないかと思う。全体のあれといたしましては数字的に申しましてももう少し大きくなっていることは御承知の通りであります。三十三年度だけ特別ないろいろな施策、昨年来の施策を踏襲し、特にその基礎の上に幾分控え目な経済、産業の伸びをそこに押えておる、こういう特殊な事例でありますから、これをもって五年間を通じての見方とはわれわれは考えておらないのであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 それは少し御答弁がおかしいですよ。将来は楽観できるが、ことしだけはつつましく二・三%の国民成長率を見積ったというならば、そのつつましい見込みに従う予算というものを編成してこそ三十四年度以降の前途が明るくなり準備ができるのじゃないですか。少しあなたの御答弁はおかしいと思う、いかがですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私は今経済の伸びについて、長期計画でわれわれが考えておるところの基本を申し上げたわけであります。三十三年度の伸びについては、特に今申したような特別の控え目の数字が出ておる。しかも非常に御懸念になっておる過去における特別の景気から生じたところの剰余金についてはたな上げをしておく、あるいは国際情勢であるとか、あるいは国内における諸情勢が、今日われわれが非常に警戒的に考えているような事情が幸いにして各種の政策でなくなってきて、将来に明るい見通しがつくということになれば、これを用いていくという意味においてこれはたな上げいたしておるのでありますから、御心配のような過去の一時的の景気から生じた剰余金を使って特に景気を刺激するような予算を編成しているのではないかという御懸念は、私は決してないものである、がように考えております。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 あなたのただいまの御答弁は少しふに落ちないところもありますが、そうしますと私はこう解釈しておきましょう。三十四年度以後の予算は増税も赤字公債も予算削減も心配は要らない、やはり本年通りの増収は見込める、過去の神武景気の問題と切り離してもそれだけの増収が見込める、こういうふうにあなたの御答弁があるんだと解釈してよろしいのですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 将来の正確な見通しにつきましてはいろいろな御意見もありましょうが、私はそう悲観的に考えておらないのであります。大体特に増税をしたり、経費を削減したり、赤字公債を出したりというような処置をとらなくとも、日本の経済の拡大に応じたような予算を編成するだけのことはできるだろう、こういう見通しに立っておるのであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 それならば、この予算の説明書と基本方針をお変えになったらどうですか。あなたがおっしゃるように、そう悲観する必要もないんだ――私は悲観もしていないし楽観もしていないんですよ。ただ財政を幾らかかじっておる者の常識からいって、こんなにふくれ上るのは将来危ないんじゃないかと言っているのです。そこで将来そう悲観する必要はない、大丈夫だとあなたが御安心なさるなら、私は予算の規模、国民経済のスケールを一〇%なら一〇%上げて、輸出努力目標も三十一億五千万ドルからもっとふやす、輸入もふやす、国民成長率もふやす、そしてこれでやるんだということで予算書を変、更されなければ、今のあなたの楽観論の根拠は成り立たないと思う。政府の提出された文書の中のどこを見ても楽観する根拠はないのです。アメリカ経済を見ても西ヨーロッパを見ても東南アジアのドル不足を見てもその他を見ても決して楽観を許さないからこれだ、しがしながら三十四年度以後はこうなるということはどこにも書いてないのです。だから、これから出発するのだというのですから、あなたが今楽観論であれば、その将来の明るい見通しのためにはこうしなければならないという積極的な政策と、それの裏づけになる予算案が伴ってこなければならない。そうするなら、一〇%なら一〇%スケールを大きくするということでなければ、あなたのお話のつじつまが合わなくなるのじゃないですが。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 西村委員のお話ですが、それはちょっと私の申し上げた時期ということに非常に誤解があるのじゃないか。私は三十三年度を決して非常に楽観しておるわけじゃございません。また将来に対しても野放しの楽観を考えておるわけじゃないのでありますが、三十三年度からさっき申し上げたような方針のもとに立てておる堅実な予算の上に立っていくならば、将来三十四年度以降をどう見るかということについては、極端な悲観論ではなしに、これでもって三十四年度以降には相当な伸びができるだろう、こういうことを私どもは予想しておるわけであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 来年のことをいうと鬼が笑うということですけれども、今三十三年度の予算案を審議しているのです。従って三十三年度の国民経済力と財政の規模とがつり合うかどうかということを今審議しているのです。従って、ことしそう過大なものを組めば三十四年度以降は困るのじゃないかという私の議論に対して、あなたは、そんなに心配しない、心配要らない、こうおっしゃる。それなら心配しなくてもいいという根拠を示してもらいたい、こう申しましたところが、あなたから財政については楽観も悲観もいかぬというお説教をいただいたわけです。それで私は、それはあとにいたしまして、そうすると三十二年度の予算が編成できました源泉、要因はどこにあるかと申しますと自然増収です。私はこの自然増収の見積りがとうのこうのというわけではないのです。一番収入の多いときに、景気の一番頂上において将来の計画を立てることは危ないのじゃないかと私は心配しているのですが、そうしますと、政府の予算を提出された主計局の統計によりますと、三十二年度の自然増収は一〇・八%、三十一年度は八%です。これだけ予定よりよけいに収入があります。ところが朝鮮戦争の後において日本が、非常にデフレとまでは――九二九年の恐慌とは違いますが、近来の経済におけるデフレ的様相を示しました。二十九、三十年度、これは二十八年、九年の所得ですが、それは自然増収はありません。かろうじて〇・六%ですが。それから見ると今十二倍ふえておる。そうすると、あなたの提出された予算書の中において見ると、楽観を許さぬ。今の状態はちょうど朝鮮戦争の後における経済の不況状態と同じ状態がきたから、残念ながらせっかく計画した財政投融資も一五%たな上げにしておかなければならぬというのが、昨年の六月の縮小された理由です。それが今まで続いている。予算の基本方針として続いている。そうしますと、今われわれが財政についてとらなければならぬと思うものは、万般の事態に用意をいたしまして、朝鮮戦争の後にできた国民の収入、所得、これは〇・大自然増収、これを基準として考えて一番間違いないのじゃないか。去年のちょうど今時分のように、楽観論でいって、どぎまぎして方向転換するよりも、万般の事態に備えて〇・六しかなかったということになれば、ちょうど三十四年、三十五年度の予算編成期においては、日本において二十九年、三十年度予算を編成したときのような自然増収の伸びといのものを基準にして考えられるのじゃなかろうと思うのですが、いかがでしょうか。それで本年の三十二年度の一〇・八%の自然増収、これはやはり将来も継続されるとあなたはお考えになっていますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 過去の二十九年、三十年のいわゆる朝鮮動乱後の一種の不況の時代と今の状況というものは、私は決して同様ではないと思います。現に昨年、私どもが緊急総合対策を立てましてから以後の実績を見ましても、各方面におけるところの、われわれが予期したような結果が相当出ております。輸出におきましても、むしろ目標であった二十八億ドルというものが下回るのではなくして、幾らかこれを上回るという状況でありますし、また物価の点も、先ほど申し上げましたような状況であります。それからまた財政投融資の点におきまして、一五%り延べをいたしましたのも、その後における安定状況から見まして、相当の点において繰り延べしたものを、また本年度内に使用できるというふうな回復、全体の経済基盤というものが非常に堅実にいっておりますので、従いまして過去の例のような悲観的に見る必要もないし、またそれとは事情が非常に違っておる。従いまして来年度の自然増収等につきましても、専門家があらゆる面から十分に検討して、堅実な見通しのもとにきめたわけでありまして、これは適当である、かように考えて提案しているわけであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 言葉じりをとらえるわけではありませんが、あなたが今、予期したような経済の結果が出ている、こうおっしゃった。それはどこをさすかということを私は不思議に思う。ということは、昨年の八月の内閣の発表によりますと、国際収支は危機に直面した、四億何千万ドルの赤が出るだろう、そして国民に警告された。続いて十月にはやや好転して大体三億五千万ドル、十二月の二十日に予算の基本方針を決定されたときには、大体一億五千万ドルくらいの赤字で済むだろう。この半年間、絶えずあなたの見解はよろめいているんですよ。だから予期した結果なんということは、国民にあまり信頼性がない。国際収支の見通しが絶えず誤まっておるという理由につきましては、別な角度から論じますけれども、予期した結果ということは、あなたが決してこれを予期していられない他の要因によって、自然発生的に、国際収支のアンバランスは一億三千万ドルないし一億五千万ドルで食いとめることができた。これはあなたの計画された、予期されたことではありません。他の要因です。しかしそれは、私は言葉じりをとらえて御答弁いただこうと思いませんが、あらゆる角度から見て、来年度自然増収も見込まれるであろう、こういうことでありましたらば、大体三十一年度は八%、三十二年度は一一%近くになっていますが、この自然増収は三十四年度後も見込まれるという見通しですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 三十四年度以後の自然増収の点につきましては、私まだ十分な検討を加えておりませんので、ここでお答えすることはできませんけれども、先ほども申し上げましたように、三十三年度のこれは、見方は違うようでありますけれども、私どもきわめて堅実な基礎の上に立てておる。この予算を施行することによって、昨年来の傾向を見ましても、日本の経済を安定し、将来の経済の伸びが考えられるという点から申しますと、三十四年度以降のなににつきましても、特に今非常に悲観しなければならぬような気持は私は持っておりません。しかし正確な見通しがどういうふうになるのだということにつきましては、まだ検討いたしておりませんから、正確に申し上げるわけには参りません。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私は深くその問題については質問を避けますが、この問題について結論だけお伺いいたします。三十四年度の予算も、八%ないし一〇%の自然増収がなければ、現在の予算は継続して組むわけにはいかないと思うんです。そうしますと、私はこれは一つの提案でありますが、連年にわたって一〇%近くの自然増収が発生してきているということは、それは税率が高いのか、税金の取り方に無理があるのが、私はいずれかでなければ、定期的に数年続いて予算よりも一割近くの自然増収というものはあり得ないと思う。あなたが御存じの通り、戦前においてはそんなになかった。そうすると、これは税率が高いのか、あるいは取り方に無理があるのか、どっちかだと思うんです。そうしますると、ここに税制の根本的改革というか、取り過ぎておるもの、無理に取られておるものを対象として、ここにやはり減税というものを行わねばならぬ。取り過ぎたから豊富にものを使うということよりも、これだけ自然増収が連年出るのですから、国民にまずお返しするということが堅実だと思うんですが、あなたの御所見はいががでしょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 自然増収ができる原因については、いろいろな面があるだろうと思います。私は、西村委員の言われるように、それは税率が高いから取り過ぎた、取り方にあるのだというだけではなしに、やはり基礎としては産業経済の伸びというものが非常に大きくなにすると思います。従いまして、すぐ今お話しのような結論にはなりませんが、しかし現在の税制そのものを国税、地方税を通じて相当根本的に検討をしてみる必要があるということは私考えておりますけれども、今の御質問に対しては、私は必ずしも御結論の通りには考えておらないのであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 もちろん自然増収の大きな原因は、あなたのおっしゃるように、経済の異常な成長率であります。しがし問題は、大きい方は租税特別免除法でいろいろな恩典がありまして、無理な取られ方はしないのですよ。ぴっしり取られるのは勤労所得税こと中小以下なんです。私はあなたと今論争しようと思いませんが、こう連年にわたって一〇%近くの自然増収があれば、当然それは一応国民にお返しするという方向をとってもらいたい、こう思うのです。税制の内容につきましてはいずれ御所見を承わります。  次に大きな問題になっておるのは財政投融資の著しい膨張率です。これは御承知の通り三千九百九十五億円を計上されまして、さらに前年度の繰り延べてある部分もこれに加算いたしますと、財政投融資は実に膨大になる。私はこの財政投融資があの積極政策の昨年よりもかくも多いということは、内閣が心配しておられる内需を刺激して、あらゆるものを三十一億五千万ドルの輸出目標達成に注がなければならぬという趣旨に、この財政投融資の膨張は一つの大きな阻害要因になるのではないか、こう思うのですが、いかがでしよう。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 財政投融資の問題については、私はこれは当然日本の経済界に及ぼす影響を論ずる場合におきましては、民間の一般金融のものと関連させて総合的に論じなければならぬと思うのです。財政投融資だけの額でもって直ちに結論を出すことは適当でないのではないか。従いまして、われわれとしては一般民間の金融と金融政策とにらみ合せて、大きな目的である不当に内需を刺激するということのないように全体の政策をとっていきたい、こういうふうに思っております。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 それならばお尋ねしますが、あなたの提出された予算書を見ますると、昨年度よりも生産は四・五%、半分以下に生産を抑制している。生産は抑制するが財政投融資だけは昨年より以上はるがにこえておるという意味は一体どうなんです。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 昨年よりもはるかにこえておるということは私はないと思います。三十三年度の総額を三千九百九十五億円に押えておりまして、あるいは昨年の四千億をこえておったのであるが、実際の繰り延べ等がありまして、一五%のなにを繰り延べておりますが、その後の先ほど申し上げたような経済事情から見まして、本年度の実際の財政投融資額は私の聞いておるところでは三千九百五十二億となっておるというので、それと大体一致しておる。特に今年が昨年より多くしておるという事態はないと思います。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 昨年の財政投融資の予算規模は四千九十一億円です。これを一五%途中削減したので三千五百億円弱です。本年の財政投融資計画は三千九百九十五億、数字は遺憾ながら膨張している。そこでまた繰り延べ解除額がこれ以上ある、そうすると昨年より膨張しているということになる。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは若干テクニックの問題になりますので、私から申し上げます。  昨年緊急対策を実施いたしましたにつきまして、財政投融資について一五%の繰り延べをやったのでありますが、しからば一五%繰り延べ後の事業について十分な資金手配があるかという点が非常に問題であったのであります。これは財政投融資全部ひっくるめてのことですが、そのときの資金困難を大体日本銀行から市中銀行にフアーナンスすることにいたしまして、日本銀行の貸出増という形で現われて参たのであります。これはむろんその一五%の繰り延べ後の事業を完全に遂行するために所要する資金を財政、民間適当な配合に考え直すことも一つの方法であったのでありますが……。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 適当な配合って何ですか。言葉を正確に使って下さい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 一五%を繰り延べたあとの八五%の事業をやるのに所要する資金が必ずしも十分でなかった。特に民間の資金量において非常に不足をいたしておりました。こういう場合には、他面において財政資金が相当引き揚げがあるのでありますから、この財政資金を民間に還元をして、そうしてその需給を円滑にするということが、金融的に当然とらるべきであったのであります。しかしながらさようすることよりも、むしろ民間の投資意欲を特に押えたいという政策をとっておりましたから、この際は日本銀行一本にして、所要する金を民間が日本銀行から借りて、日本銀行の貸し出しが非常にふえるという形において警告を与えて投資意欲を押えていこう、かようにいたしておいたわけであります。  従いまして、今日になってみますと、投資意欲も衰えまして、言いかえれば操短も行われ、物の生産についての需給がここで確立しようとしておる、こういう段階に経済が入りましたから、ここで先ほど西村さんのお話になりましたように、いわゆる金融面においてでこぼこを調整する段階に至ったんだと私は考えまして、それで財政資金をこの際は出して、そうして民間にそれを還元して、民間の方は日本銀行に返金する、こういうふうな循環をとっていこう。そこで今回三十三年度の財政投融資については、たとえば造船、石炭その他の基幹産業に対する財政資金の負担割合をふやしてやる、従いまして財政資金がふえる、こういうような形をとっておる。こういうふうな関係から来ておるのでありますから、今三十二年度についても、還元の措置をとっておるわけであります。繰り延べ分について若干返しております。従いましてそれを引きますと、実際の三十二年度の財政投融資の実績は、やはり三千九百五十億というところになる。ですから結果的に見た場合に、三千九百九十五億というのは、昨年度に比べて特にふくれておるというわけではありませんので、御了承を得たいと思います。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 そうするとあなたの御説明では、昨年度一五%繰り延べしたが、しかしそれは市中銀行を通じて日本銀行にしわ寄せされておるのであって、従ってそれは何とかせにゃならぬ。だから本年度は、昨年度の繰り延べというものは実質的には繰り延べられておらないのであって、日本銀行がしょい込んでいるのだ、それを解決しなければならぬ。だから本年度の財政投融資は三千九百九十五億円で、昨年度以上にふえていないのだ、こういう御答弁ですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 繰り延べていないというんじゃないのです。一五%は繰り延べたんでありますが、残りの仕事量をする場合において、民間資金が非常に不足しておる、こういうような形に相なっております。ところが他面において財政資金は当時やはり相当な蓄積を持っておったんでありますから、普通の場合におきましたなら、財政資金はそのときに若干出して、そうして民間資金の欠乏を補って、いわゆる蓄積資金でまかなっていくというのが私は適当であろう、かように考えておったのでありますが、投資意欲を特に押えるためには、資金面においてこういうふうな状況にあるということを、みなによく示すことが適当だ、こういうふうに私考えまして、当時財政資金を出すことは差し控えておったわけであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 そうすると、財政資金は一五%繰り延べたけれども、実際においてそれは民間の金融がまかなっておったので繰り延べておらなかったのだ、こういうことですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 一五%は繰り延べです。八五%の仕事量はやってよかろう、こういうことになる。ところが八五%の仕事量をするに所要の資金が民間において不足した、これは民間の蓄積が特に長期資金の蓄積が足らぬということから、それでその金を日本銀行から借りていっておる、こういうことを申しておる。そのときに日本銀行から借らずに財政資金を出すことも考えられることであるが、それは差し控えた、それを今日補正といいますか地ならしをしよう、そういうことであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 そうすると、財政資金はくどいようですが一五%繰り延べたが、しかしそれは民間の資金においてやはり事業が継続していった、だからその繰り延べを今日出すことにおいて問題が解決するんだということになる。あなたの説明を聞くとそうなるでしょう、私はどうも頭が悪いからわからないのだが……。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 それは誤解であります。一五%は繰り延べをした、これはおわかりになると思います。残りは八五%、ところがこの八五%の仕事をするのにつきまして、財政資金の割合が幾ら、それから民間資金の割合が幾ら、こう出るわけです。ところが民間の資金の蓄積が悪いから、特に長期資金の蓄積が悪いから足らなくなってきた、それを日本銀行の借り入れで補っておる、それを今度財政資金に長期資金があるからこれを補っていく、こういうことす。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 大体わかりました。そうすると民間資金でまかなっていたやつを、今度それを解除して問題を解決した、こういうことになる。そうしますと二つの問題が起きてくる。一五%の財政投融資を繰り延べしたということは予算できまっているんですから、何も金がほしくて、足らなくてやったわけじゃない、計画はちゃんとできておる。けれども国際収支の異常なアンバランスが生じて、内需を抑制して将来の日本の経済を地固めしなければならぬという政治的目的で一五%繰り延へたのです。いいですか。そうするとあなたの言われるように、その目的が一つ達していないということ。日本銀行にそれを肩がわりして、それを今度は解除するということになりますと、私はさらにこれは総理大臣にお尋ねしたいのですけれども、そうしますと三十一年度、三十二年度の上半期の異常な輸入、それから行き過ぎた生産拡張計画、この二つは、一つはスエズ動乱が長期化するであろう、一つは投機的な思惑輸入が多かった、そこでこれを締めなければならぬというので財政投融資の面から健全化していこうという目的で一五%の繰り延べになってきた。そこで今それを解除して、さらに言葉のあやですが、昨年は合計が四千一億円ですか、ことしは三千九百九十五億円で、予算面では少し足らないのですが、解除したらことしの方が多いのです。そうすると、ことしの財政投融資がかくも膨大になった生産を半分に押えるけれども、財政投融資は昨年より多くなったというのは、これは過去の跡始末だ。跡始末のために財政投融資はこれだけ出さなければならぬのだという説明なら、私は理解できる。そう解釈してよろしいですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 そうではない。これは二つに分けて、今戻しのことを申しましたけれども、三十二年度において、従来財政資金で繰り延べた部分のそれを戻してやろう、そして民間資金で足らなかった分をそれで補う、これは三十二年度の問題です。三十三年度の財政投融資は、そういう事情で、民間の長期資金の蓄積状態がおもしろくないから、それで、所要の生産をするためには、財政資金の方をふやして、言いかえれば、船を作るにしても、財政資金と民間資金の割合を財政資金の方をふやすとか、あるいは石炭についても同様、鉄鋼についても同様、こういうふうにして、財政資金の方をふやして民間資金のそれを軽くしていこう、こういう意味において、三十三年度の財政投融資は、結局昨年並みになるのでありますが、昨年並み程度に出ておる、こういうことを言っておるわけであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私のお尋ねしているのは、政府の経済企画庁でお出しなったこの長期計画によりますと本年の生産の伸びを四・五%と見込んでおられるのです。昨年の半分です。生産量を昨年の半分と見込みながら、財政投融資を昨年よりふやす理由はどこにあるのだということを聞いておるのですよ。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 それは民間の投資が減るからであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 民間資金はどうして減るのですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 長期資金の蓄積状況からして、おそらく三十二年度の民間からくる投資に比べて、どうしても三千億近いものは減るという実情にもありまして、同時にまたこの長期計画から見ましても、政策的にも、民間投資はそういうふうに減らしていくという必要があるわけであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私はあなたと理論の立て方が違うのです。ということは、予算編成の基本方針並びに新長期計画によりますと、国の施策の重点は、三十一億五千万ドルの輸出目標に置かなければならぬ。それがためには内需を抑制する。刺激することを避ける、こう書いてはあるが、抑制です。だから内需を刺激すれば当然輸出もふえるし、原材料も施設もふえ、金も出ていくからこれを抑制する。この抑制方針をとっておるにもかかわらず、財政投融資だけをどうしてふやすのかということなんです、わたし言うのは。それで民間資金が欠乏しておるというけれども――あなたと金融論をやるのは別の機会にやります。私は今財政投融資のことだけを聞いておるのであります。民間はこれでまかなってきたんです。まがなってきたが、そのまかない方が日銀からの借り入れが大きい、だからこれを解決しなければならぬためにこれがふえたというなら私はわかる。私が心配しておるのは、政府の立て方だ。三十一億五千万ドルの輸出目標が、これは過大であるが過小であるかということは別な議論といたしまして、これを努力目標として、これをてことして日本の産業の全般を考えるというのも、私は日本の経済の置かれた現状として、これは正しい見方じゃないか。そうするならば、行き過ぎた生産の拡張、原材料の輸入、これを押えて国際収支のバランスをとろう、この目的は私は正しいと思う。これが正しいとすれば、それと相反するところの財政投融資の過大な見積りは矛盾しておりはせぬかと私は言う、あなたの方の政策に矛盾しておりはせぬかと私は言うのです。総理大臣、経企長官から一つ承わりたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私は先ほども申し上げましたように、財政投融資の問題については、一般民間の金融と総合してこれを論ずる必要があるという考えを持っております。この程度の、一般民間金融市場を見ると、本年度われわれが定めておる財政投融資のワクが適当であるという見地に立ってきめたわけであります。数字的にいろいろの御議論もありますが、私はそう思っております。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私の与えられた時間も制約がありますので、これであまり深入りもできないのですが、私が財政投融資の問題について総理の御所見を承わったのは、昨年より生産を半分以下に見積りながら、国内需要を刺激する財政投融資をふやした理由はどこか。それからさらに第二点は、財政投融資をふやして――今橋本君が後からヤジを飛ばされたけれども、これは橋本君らしくない話だと思うのだが、生産施設を拡張しながら生産量を四・五%に押えるというこの計画は、私は資本主義経済の原則に反すると思うのです。少い施設と労働力をもって大いなる生産を上げるというなら目的はわかるか、財政規模、財政投融資をふやして生産施設を拡張しながら、生産はこれだけで押えておくというのは、あなたの予算書の説明と基本方針に反する。これは資本主義の原則に反する。保守党にとってはお家に対して相済まぬことになるのではないかと思う。

河野一郎自由民主党経済企画庁長官

○河野国務大臣 だんだんお尋ねでございますが、実は企画庁の案におきましても、民間の投資と政府の財政投融資と合せまして生産の規模を計算していることは、西村君御承知の通りであります。その場合に、先ほど大蔵大臣が申しました通りに、民間資金が非常に窮屈になっておりますから、そこで財政投融資の方は前年通りに近い数字になっておりますが、生産の伸びは今企画庁の計算したと同程度にとまるだろうということで計算しておりますので、ごくくだらぬお話でございますけれども、企画庁の計算はそういうふうになっております。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私はやはり是は是、非は非としてざっくばらんに御相談申し上げて、国民に迷惑をかけないように予算を編成した方がいいと思います。私がどうしてもふに落ちないことは、生産量は昨年の半分以下に見積りながら、財政投融資を昨年並みにふやしていく、単に問題はそれだけではないのです。私はこれが金融政策に大きな影響を持ってくると心配いたしますのはほかでもありません。四、五日前ですか、これは愛知さんが御存じの話なんだが、閣議で報告されたのは、今年世界銀行から三億二千八百万ドルの借款が成立した、近く電源開発、鉄鋼に対しては二億六千万ドル弱が調印の運びになるであろう、こういうことです。そうしますと私が心配するのは財政投融資は昨年よりふえておる、世界銀行の借款は成立した、そうすると、これも政府保障でありまして、これとは性質は違うけれども、大体金の入り方は、財政資金の散布超過になることは同じです。そうするとこれが日本の金融に対してどういう影響を与えるか。一方においては生産の伸びは昨年の半分しか見積っていないが、財政投融資は昨年並み以上に見積った、そこにもってきて、世界銀行から三億二千万ドル、まず二億六千万ドルですか、この借款が成立する。そこで本年度の三千九百億と繰り延べを活用することと世界銀行からの借款、この三つを総合いたしますと、財政資金の散布超過というものはきわめて莫大になる。これが日本の金融市場に与える影響はどうか、私の心配しているのはこういうことなんです。総理大臣から答えて下さい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 むろんこの借款による分並びに貿易の黒字の分、こういうものは国内金融をゆるめる作用を持つことは言うまでもありません、それだけ円資金がふえることでありますから。従いましてこれは日本銀行において回収をはかっていくわけでありまして、今日日本銀行の貸し出しは五千億になっております。これが減って金融の正常化が進んでいく、金利も低下する、こういうふうな傾向をとっておると思います。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 今のような答弁をされるから私は時間をとると思うのです。財政融資の分、繰り延べの分、それから世界銀行からの借款というものがあれば、非常に大きい財政資金の散布になるじゃないかという私の質問に対しまして、日本銀行は貸し出しが超過しておるからそれを解決できるんだというふうにあなたが答弁されると、ものが二つこんがらがってくる。一つは、何というても行き過ぎた生産拡張は思惑です。それから国際収支の見通しが、絶えず政府が動揺がちであるということは、思惑の原材料の輸入に対して的確な調査と把握がなかったからです。そうすると、その思惑のしりぬぐいを財政投融資で一つしなくちゃならぬ。もう一つ重要なことは、財政投融資の投資対象になるのは基幹産業です、大きい産業です。これは財政投融資は豊富に与えるが、一面日本銀行に吸い上げて金融はダブつかないようにするということになりますと、財政投融資の対象にならない小さい産業というものは金詰まりになる。この二つになる。そうすると、中小企業を育成しなければならぬという建前が狂ってくる、これを私はおそれておる。問題はあなたの答弁からいえばその二つに帰着するんです。総理大臣、どうです。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 日本銀行に吸い上げていくと言いますのは、すでに出ておる資金が、日本銀行の資金を使って出しておる、それをこの財政資金で出す場合に、日本銀行にこれを返してそこで地ならしをするという意味でありまして、この三十三年度の財政投融資については、なお生産の足らないような基幹産業に特に力を入れて、これを拡大合理化をするわけであります。これはなぜ財政投融資をふやしたかと言えば、すでに出しておる資金じゃないのでありまして、民間資金がこれだけある、民間資金が不足しておるから、負担割合を財政資金を多くした方がこの際は適当であるという意味においてふえるのでありまして、これは誤解のないようにお願いしたいと思います。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私は別に誤解していない。正確にものを判断していると思うのです。ということは、あなたの今の答弁からいきましても、市中銀行は金詰まりだからこれを解決しなければならぬというお言葉でありました。そうすると、財政資金が豊富に出て、市中銀行の金詰まりを解決するというのは財政資金は低利にして長期です。この肩がわり、市中銀行からこれに肩がわりするのは大産業です。そこで大産業の恩恵が一つ、同時に生産の量を半分以下に見積りつつも、同時に世界銀行の借款が成立しつつも、昨年度同様に財政投融資をふやしていくという理由は、今のような金融のからくりを通じて選挙費用の捻出の方法でないかと世間が誤解しているから、私はその誤解をお解きになった方がいいのじゃないか、こう言っているのですよ。しかしながら私は、それは時間の制約上、あまり深く追及いたしませんが、経企長官にお尋ねしたいと思いますことは、あるいは通産大臣でもけっこうですが、貿易の輸出伸長策です。これは政府の統計に見ますると、一〇・五%を見積っておられます。私はこの見積りは多いと思います。多いと思いますけれども、日本の経済の実態と雇用量を考えてみると、しゃにむにこれを実行しなければいけない。これは国際貿易の伸びの四・五%からいきますると倍以上ですから無理だと思いますけれども、これはしゃにむに、日本の宿命と申しますか、日本の経済の至上命令として遂行しなければならぬ。そこでこの遂行について単に希望を述べておくだけじゃなしに、これを遂行するために一体どういうふうな具体的な施策があるか、これを承わりたい。

前尾繁三郎自由民主党通商産業大臣

○前尾国務大臣 貿易の振興につきましては、長期的な考え方と速急にやらなければならぬ問題、また産業構造なりあるいは貿易構造というような問題、あるいは外交上の問題等もあります。われわれ通産省として所管しております問題といいますと、できるだけ速急にやらなければならぬという問題につきましては、政府としてまあ輸出金融の優先、これにつきましては従来からいろいろ苦心をいたしておりまして、問題はほとんど解決いたしております。次に税法上の特典、これにつきましては、先般の臨時国会におきまして、御承知のような措置をとりまして、百四億以上の減税になっておると思います。また今国会にもそれに関する補正を出して御審議願いたいと思っております。また輸出保険の改善をいたします。保険料引き下げ、あるいは輸出手続、貿易制度、そういうものにつきましても、ただいま懇談会を開いて検討中でありまして、速急に結論を出して簡素化をはかりたい、さように存じておるのであります。また経済協力の問題につきましては、輸出入銀行を通じましてその機能を活発化しますとともに、また円クレジットの設定あるいは今回は海外に技術センターを設ける、あるいはまたアジア開発基金というような構想によりまして、経済協力を進めていきたい、かように考えておるのであります。また政府がやるのは適当でありません広報宣伝の問題、貿易あっぜんの問題、あるいは見本市参加の問題、これらにつきましてはすでに御披露しておりますように、二十億の基金を投じまして、従来のジェトロがややもしますと、府県の寄付金等にたよっておりまして非常に貧弱な状態であります。これを輸出につきましては国家が本腰を入れるべきでありまするから、今後ただいま申し上げましたような基金も投じ、また補助金も大幅に回しまして、従来と違いまして、貿易あっせん所も四カ所を六カ所にする、あるいは市場調査員を大幅にふやす、あるいはまた見本市の参加につきましても、従来よりも倍額くらいの経費を投ずるという考えであります。中南米におきましては、巡航見本船を出す。これに一億以上の金を投じよう、また海外のいろいろ輸入制限等の問題に関しましても、それに対処するための経費を相当とっております。ただわれわれといたしましては、業者の人に大いにやってもらわなければならない、それにつきましては、従来最高輸出会議というものを設けまして、いわゆる責任体制で、輸出に対しましてまあ三十一億五千万ドル、ただいまお話しの通り、一割一分ふやす、仕向地のいかんにかかわりませず、また商品のいかんにかかわらず、一割以上ふやすのにはどうすればいいか。商品によりましては一割五分以上ふやしていくということによりまして、責任体制を確立するというように考えております。また御承知のように過当競争の問題が非常に貿易を阻害しております。これにつきましては輸出入取引法の改正をいたしまして、アウトサイダー等につきましても規制をするというような構想で、今国会に御審議を願うようなつもりにいたしております。また先ほど申しましたように外交上の問題その他につきましては強力に促進する、かようなことができましたら私は三十一億五千万ドルは十分達成するのではないか、かように考えております。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 関連して企画庁長官の答弁はいいですか。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 企画庁長官には私ちょっと質問しますから……。あなたお出かけだそうだから、先へあなたに……。  今の前尾さんの御説明で、こまかい事務はわかりました。しかし輸出振興の構想としては私は総理大臣なりあなたなりに承わりたい。先ほど申したように、私はやはりここに輸出振興に、てこを入れなければならぬ。これを中心に、重点的に見なければならぬ。そうすると首相もそのことについては感じられると見えて、過日東南アジアを歴訪されたときには、こういう提案をされているのです。回転基金五億ドル、資本財輸入のための再割引機構設置のための一億ドル、短期クレジット一億ドル計七億ドル、すなわち日本金で二千五百二十億円をもって東南アジア開発に対する協力をしようという構想を提示されたのです。私はこれは金額の問題はとにかくといたしまして、この構想は正しいと思うのです。そこでこれだけの大構想を持ちながら、今回の予算案を見ますると五十億円しか計上してない。私はまず第一に提案したいことは神武景気における剰余金、それから自然増収、これをぐずぐずに食ってしまわないで、重点的にそれを輸出入銀行の出投資をふやすとが何とかして、その資金をもって低利並びに長期の信用力をもって従来の日本の輸出市場の弱点としておりました限界輸出、安定市場を求めるため私はそれだけの構想が今度の神武景気で幸いに余った金を重点的に持っていったらどうかというのが一つの構想です。それについての御両氏の御所見を伺います。  それからいま一つ、私は時間の関係から申し上げるだけ申し上げて、御答弁を伺いたいのですが、東南アジア開発の問題につきましては、従来あまり積極的でなかったアメリカが、一月三日突如としてソ連圏の経済攻勢の実態と称する長文の報告書を発表いたしました。それによれば、ソ連は未開発諸国に対して十億ドル十カ国に援助を行う、その利率は二分五厘で八年間据え置いて、その後十二年間の年賦償還、遺憾ながらこれに対してアメリカは金額においても条件においても対抗できない、アジア・中近東の援助計画についてアメリカは再検討しなければならぬというのを一月三日発表いたしております。これと相前後いたしまして、国連事務総長ハマーショルド氏は、イギリスに渡りまして、総理大臣並びに大蔵大臣に対して、中近東に対してこういう提案をしております。中近東の援助計画にソ連がひもをつけたりアメリカがひもをつけたりすることをやめて、ソ連も英国もアメリカも国連を通してやってもらう、国連にそういう機関を作って、その国連の後進地開発計画に基金を出してもらうという構想を提案いたしまして、それが着々進展中だと私は聞いております。世界の情勢は申し上げるまでもなく中近東と東南アジアがかなり焦点になっておりますが、この際に、私は、中近東で行い得るこの構想は東南アジアにも行い得るのではないか、従って、今日までアメリカがそのことについては真剣でなかったけれども、もはや時期が来ている、日本の貧弱なる財政力で云々するよりも、日本もそれについて万幅の協力をしなければならぬのでありますが、私はハマーショルド氏の構想というものを日本も持って、東南アジアの援助計画を国連を中心として、ソ連のひもつき、アメリカのひもつきをやめてもらって、国連に出資してもらって、国連の後進地開発計画というものに対して日本が積極的な提案をし、努力をすることが、市場開拓にもなり、アジアの一員としての日本の責任も果されるゆえんではないか、こう思うのですが、この二点について承わりたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 東南アジアの経済開発に協力するという問題につきましては、ただ単に日本がここに安定した市場を持つということだけではなしに、大きな目的かあることは言うを待たないのであります。現在の状況を見ますると、従来アメリカも相当な援助をしておりますし、またソ連もやっておるし、あるいは中共の方面からもそういう働きかけがある。しかし、いずれにしましても、それが一つのひもつきであるというふうな懸念、特に民族独立の精神に燃え、反植民地主義という考えに徹しておるこれらの国々におきましては、そういうことに対して非常に鋭敏な疑念を持っておる。こういうことから、できるだけそういう性格のない中立的な意味の資金が必要であるということが、いわゆる私の提案しております東南アジア開発基金の構想の一つの要点になっております。今おあげになりました国連に出資して、国連を通じての一つのそういう未開発地域における経済協力という資金を作ることが、ハマーショルド氏も提案しているし、どうだというお考えに対しましては、むしろそういう考えは正しい考えであり、できるだけニュートラルな性格を持ったものにしたいというのが、実は私自身がああいう提案をいたしたゆえんでありますが、実行の面において、国連がさらにそういう方面に現実的に実現の可能性があるならば、これに協力をすることに私はやぶさかではないつもりでおります。  なお、今回われわれが基金として提案いたしておりますなには五十億であり、そういういろいろな意味における国際協力機関ができるならば、それに対する出資ということを第一の目標としてああいうものを基金として別途計上したわけであります。それは、趣旨から言えば、過去の剰余金の少くとも一部をそういうものに充てる。今西村委員は、そういうものを全部あげて――金額も小さいんだから全部あげてやったらどうだという御提案でありますが、そこまでは、ほかにいろいろな重点もありますので考えておりませんけれども、大体の気持から言うと、そういう意味において東南アジアに対する五十億というものを基金として計上したわけでございます。

河野一郎自由民主党経済企画庁長官

○河野国務大臣 お答えいたします。  大体総理大臣並びに通産大臣からお答え申し上げた通りでございますが、補足して申し上げますれば、たとえば国連関係の問題は、昨年十月私は、ニューヨークに参りました際に、松平国連大使等からもそういう話がありまして、日本としてはこの点については大いに協力するつもりであるという――現にわが政府におきましてもそういうような方向に行っているように考えております。これは今総理からもお話がありましたように、望ましいことと考えております。  通産大臣からお話がありましたが、私は、国内物価の安定ということが一番輸出を振興する基礎になるだろう。従来主要輸出物資の価格の変動ということが一番支障になっていると考えますので、その他の点は大体通産大臣からお答えになりましたが、一番重点的に考えなければなりませんことは国内物価の安定で、ここに政府としては重点を置いて特に配慮していきたいと考えております。その他は大体通産大臣のお答えした通りであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私は、経済問題につきましては、なお社会保障費が著しく減っておったり、たとえて申しますと、予算が一五・五%ふえているのにかかわらず、貧乏追放の予算的裏づけになる社会保障費が、失業対策費を除きますと四・五%、相対的に一一%減っております。同時に、予算編成の基本方針に反する予算案をここに提案されて、私をして一萬田さんの答弁を求める必要がないという心境に至らしめるほど、この予算案は長期計画と基本方針と予算案と別々です。ばらばらです。同時に、財政投融資も、あるときには一五%切り、あるときにはふやし、熱を与えたり氷嚢を与えたり、また熱を与えたり、これは失礼な話ですが、まるでやぶ医者の最たるものでありまして、こういう財政政策ははなはだ困ると思うのですか、しかし、詳細につきましては私の同志があとから登壇されて問題を明らかにされると思いますから、私は財政の問題を一応打ち切りまして、外交の問題について総理の所見を承わりたい。  第一に、日韓問題です。これは今日非常にデリケートですから、お答えか困難ならお答えしなくもいいです。私の希望だけ言っておきます。  まず第一に、釈放漁夫の条件として刑期満了者となっております。この刑期は李ラインを侵したということになるんだが、これが将来の禍根になりはせぬか。  それから、日本は財産請求権を無条件で放棄いたしましたが、韓国は留保している。これは本交渉において問題になりはせぬか。  さらに、問題になりますのは、一月八日の新聞の報道によりますと、韓国は竹島に永久的な灯台を構築いたしました。これは明らかに日本国領土権の侵害なりと私は確信しております。これに対して日本は国連に提訴して韓国の反省を促すとか何らかの処置をとるべきではないか、こう思うのです。  しかし、御答弁はいずれの日にか求めますが、今日は時期を留保したいということであったらそれで差しつかえありません。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 韓国との国交を正常化し、この間に将来の強固な友好関係を作るということは、歴史的に考えましても一時的に考えましても、あらゆる面から、私は、ぜひともこれを実現したいという考えのもとに、実ば、両国で抑留しております人々、日本の方は向うに抑留されておりますし、また大村収容所に収容されている韓国人に対しましては、それぞれ人道的な立場からこれを釈放し合って、両国とも冷静に、両国の間に横たわっおる従来の懸案を討議して、そうして公正な、また恒久的な友好関係の基礎として必要な交渉を進めたいというつもりで予備会談をいたして、幸いに昨年末両国の代表者の間に調印をみまして、その一部を今実行に移しております。私は、一日も早く、なお残っておる抑留者が帰還することを心から念願をいたしております。  なお、両国の間には三月一日以降に正式会談を開くことになっておりまして、その予備会談として行われた昨年末調印された事項の実行の細目についてなお打ち合せをする必要もあるので交渉が行われておるという段階でございます。従いまして、私としては、まず両国とも、人道的立場において、両国の国民感情に非常に強く刺激を与える抑留の問題を解決して、冷静にお互いに両国の間にある従来の懸案を公正な立場から論議し合って本会談を成立させたいというのが私の念願であります。従いまして、今いろいろおあげになりましたような問題は、同時にわれわれが冷静な立場において両国の恒久的な友好関係の基礎として公正な基礎で妥結されるような交渉をいたしたい、かように考えております。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 韓国の問題につきましては、今私が読み上げた三カ条の問題は藤山さんも一つ記憶していただいて、いずれの日か、具体的な御回答をいただきたいと思います。  次に私は総理大臣にお伺いしたいのですが、あなたは施政演説の中においてアジアの外交を強調された。そしてアジアの連帯の自覚を主張されたのでありますが、私はこれは正しいと思います。今日の国際情勢において、アジアの平和と繁栄というものは世界平和に対して重要欠くべからざる要素であります。そのアジアの中心は何と申しましても日本と中国とインドであります。そこで、私は、このアジアを強調された中に、現在日本国民の重要なる関心を持っておる中国問題の外交の調整について総理大臣が一言も触れておられないということは、かなり世人に疑惑を与える。これは日本国の自主的外交の見地に立って所信のほどをお示しを願いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 アジアの問題において中国の問題が非常な重大なことであることは私も同感でございます。しかし、現在の中国との状況は、過去において長い友好関係があり親善関係があったにかかわらず、不幸にして日支事変という事態のためにわれわれとの間に非常に嘆かわしい事態が起ったのであります。しこうして、それの結末が、中華民国政府との間に平和条約が締結され、ここに平和ができ上るという形になり、また中華民国の首班である蒋介石総統のその際における非常な寛大な処置も、当時われわれに相当な深い感銘を与えたのであります。そういう関係で、中国との平和条約が中華民国政府との間に行われ、われわれとの間に正常なる国交が樹立されるという事態は、これは一つの大きな国際的の問題であります。また、同時に、中華民国人民政府の関係におきましては、今日われわれがその一員として働いております国連自体の状況も、御承知のように過去における朝鮮事変に伴う中華民国人民政府の態度を非難する決議が行われたというような事態から、中華民国政府と中華民国人民政府との関係、また国際的な、今申しますような関係をわれわれは頭に置いて現実的にこれを処理していかなければならぬ事態にあります。しかし、今西村委員もお話しのように、この問題は日本にとって非常な重大な問題であり、同時にアジアの問題としても非常な重要性のある問題でありますから、われわれがあくまでも主導的な立場においてこの問題の処理について十分な方策を示すべきであるというお考えに対しましては、私は基本的なものにつきましては同感であります。従いまして、今申しましたような前提を十分に置いて、それをいかに処理するかという点を頭に置かなければ、ただ単に中華民国人民政府だけを見て、これを承認しようとか何とかいう簡単な問題でないということを十分一つお考え願いたいと思います。  従って、結論として申せば、現在のところにおいては承認をする段階ではない、まだ正常なる国交を回復する段階ではない、しかし貿易その他の点においてはわれわれはできるだけこれとの間に貿易、経済の関係を深めていくという従来の方針に出ているわけであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私は、総理大臣は中共問題については何か気がねをしておられるのではないかと思うのであります。大きな外交上の問題はさておきまして、具体的に申しましても、あなたがアメリカヘおいでになってから後においては、かなり日中間の貿易の額は減っております。しかるにイギリスと西ドイツは貿易は倍にふえている。私は、その論争はともかくといたしまして、今あなたは何ものにも気がねをしないで、アジアの一員として、アジアに位する日本国の総理大臣として、世界の和平のかぎを握る、国際緊張緩和のかぎを握る中共問題について主導権を握られるか、あっせんの労をとられるということが、現下のあなたに与えられた大きな責任ではないかと思う。そこで、私は、あなたに対して、何も気がねをする必要がなくなったのだという一例を申しますと、あなたは御存じの通り、マーシャル大使の国共調整の失敗から、朝鮮戦争が起きまして、アメリカがあつものにこりてなますを吹くと申しますが、率直に申しますとかなり感情的です。けれども、このアメリカの感情論も最近において重大なる方向転換をしておるというのは、私は三つの徴候を看取することができる。第一は、ジュネーヴにおきまして、一昨年八月以来ユーゴ駐在のジョンソンアメリカ大使と、当時のポーランド駐在大使王炳南中共大使との間に、百二十数回の会談を今日まで行なっておる。この会談の結果徐々に変化が現われてきた。私はその内容につきまして申し上げることを遠慮いたしましょう。第二に現われたことは、中共に抑留されておるアメリカ人に対して、面会のための家族の訪問を中共も許し、アメリカも許したことです。第三に現われた重大なことは、去る一月十六日ダレス長官は記者会談におきましてかように述べておられます。アメリカは中共政策において、中共を承認することがアメリカの利益になるかどうかを判断の基礎としている、アメリカの利益になれば承認問題こついて答「えはイエスである。この記者会談に対して、一月二十七日ニューズ・ウィークは解説を加えていわく。きわめて緩慢ではあるが、政府は中共承認拒否をし続ける態度を漸次変更しつつある。これは新聞の解説です。昨年六月サンフランシスコにおいてダレス長官が一言にしてこれを拒否した態度と、今回の記者会談における演説との問には、すでに巨大な相違が生じつつある。これを評して新聞論調は、このダレス氏の記者会談の後において、彼に対する批評はニュー・ダレスの出現なりと見ておるのであります。私は、このアメリカの変化に直面いたしまして、失礼な話でありますが、何か気がねして日本の態度を遠慮している必要はない。日本はアジアの一員であります。同時に、国際緊張の大きな要因が中共問題にあるといたしますならば、幸いにして米ソ間における文化交流協定も成立したのでありますから、これは、アメリカを説き中共を説いて、お互いにイデオロギーの問題の相違は別といたしまして、お互いに世界の平和という大目的を中心として、経済、政治、文化の問題においてまず積み重ね方式から交流を始める。中共問題について遠慮する時期ではない。アジアの一員として、日本国総理大臣はこれに対するあっせんの主導性をとって、米中間における握手提携の方向にあっせんの努力を傾注すべきである。それには、まず日本が、中共の承認の問題は別問題といたしまして――私は飛躍した外交論を、申しません。一つ一つ積み重ねていくといたしますならば、もはやできるでありましょう。漁業協定、郵便協定、気象協定、さらに第四次貿易協定までできるならば、一歩進んで両国の通商代表部の設置と、一歩々々積み重ねて、日中間の国交の回復をはかり、同時にアメリカを説得し、中国を説得して、米中両国の和解調停の主導権を日本が握るというのが、アジアの政治家としてあなたの任務ではないかと私は思うのですが、いかがでししう

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 いろいろな問題を積み、重ねて解決していかなければならないというお考えに対しまては、私も、その速度やそのやり方等につきましはあるいは意見の相違があるかもしれませんけれども、方向としてはさように考えております。なお、私がどっかに気がねをしておってこういう問題についてのなにだということのような御意見でありますけれども、そういう意味ではないのでありまして、先ほど来申しているような日本の国際的な関係というものをわれわれは無視することができないのだということは、日本の立場から私は当然責任ある考えとしては考えなければならぬということを申し上げておるだけであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私は気がねすることが悪いと言うているのではないのですよ、岸さん。日本は多くの友人もあり、あるいはイデオロギーは違っておっても、いずれの国とも親善関係を結ばにゃならぬのでありますから、これらの国際協調を破って日本は独走していいというわけではないのです。だから、私は気がねすることが悪いと言うのではない。けれども、あなたが気がねしていないということであれば、そこに一つ言葉じりをとらえられますよ。あなたの歴史観と政治家としての識見と外交的感覚を疑われる。これを無視しているかと突っ込まれたら、あなたはどうしますか。私は、そうじゃなく、やはりあなたはあなたの立場があって、この問題に施政演説で触れなかったと解釈している。けれども、私が今引例した三つのアメリカの中国政策の変換という大きな問題は、もはやあなたが触れても差しつかえないという時代が来ておるのであるがら、この問題と積極的に取り組みなさいということを御忠告申し上げている。しかし、これは御答弁は要りません。  私はそこであなたに次にお尋ねしたいのは、現在日米間の大きな問題になり、日本の民族にとりましてもきわめて憂慮にたえない問題は、沖縄の問題であります。これにつきまして、あなたは努力をしているという御答弁を、昨日川崎さんの御質問にもいただきました。また談話にもありました。そこで、私は、どういう御努力を願っておるのであるか、これを具体的に一つ国民が納得するように御説明をいただきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 この問題につきまして、私が昨年アメリカを訪問いたしました際に、アメリカの首脳部との会談において、日本国民のこの気持、またわれわれの強い要望というものについてはこれを具体的に示し、アメリカの反省を求め、アメリカがわれわれの要望を入れることを強くアメリカ側に提議したのでありますが当時の私どもの会談においては、残念ながらそのわれわれの要望するような、またわれわれの国民感情の率直な現われを十分にアメリカがくみとってこれに応ずるような回答を得ることができなかった。すなわち意見の一致を見ることができなかった。しかし、さらにその後、外務大臣が訪米の際には、この問題を取り上げて、具体的にこれが実現のなにとして、あるいは教育行政に関する施政権の返還や、あるいは戸籍等の問題からまず手をつけて、これを返すような方法を実現したらどうかということも申し入れをし、首脳部と話をいたしたのでございます。まだしかしながらこの問題についても十分にわれわれの要望が達せられているという域には達しておりません。しかし、その後における沖縄のあの瀬長市長問題等に関連しまして、さらに日本側からは、アメリカに対して、在米大使を通じ、こういう事態の起る原因というものについてアメリカが深い認識を持って、われわれが強く要望しておるところの施政権返還の方向にさらに一歩を進めるべきであるということの申し入れをいたしております。アメリカ側におきましても、最近いろいろ沖縄の問題等に関して、事態が最初考えておるよりも非常に重大なものであるということにつきましては、相当な認識を深めてきておるようであります。いまだわれわれの要望する目的を具体的に実現するまでいっておりませんけれども、しかし、今申したように、あらゆる機会を通じ、またわれわれの要望を実現するために、沖縄の実態というものに対する認識をさらに具体的に深めるようなあらゆる方法をとっておるわけであります。今後といえどもその努力は続けるつもりでおります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 それでは具体的にお尋ねいたしますが、あなたはアイゼンハワー大統領との共同声明において、沖縄の問題に関してこういうものを発表されました。沖縄に対する日本の潜在主権は認めるが、しかし緊張状態が極東に存在する限り、米国の現在の地位を継続する必要を認める。また大統領は、米国がこれらの諸島の住民の福祉を増進し、経済的及び文化的向上を促進する政策を継続する、こう共同声明を発しておられます。もちろん極東の諸条件とは、日本に行政権を返してもらう諸条件とは何かということは問題になりますけれども、私がここに問わんとするところは、日米共同声明において発せられた住民の福祉の増進という点は、その後具体的にどういうふうにして生かされていますかが。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 従来アメリカが沖縄にやっておる施政が、沖縄の住民の真の福祉の増進になり、社会的に見まして沖縄住民の満足のいくような方向に施政がいっておらないということが、いろいろな問題を起し、またわれわれがこの施政権返還の要望をする国民的な感情のうちの大きな部分を占めておるわけでございます。従いまして、現実のこの沖縄における施政が、沖縄の住民の福祉の向上に資するということに向けられなければならぬことは言うを待たないのであります。われわれは常に、それが福祉に向いておるがどうがという点を考えて、これに対処しております。従って最近の、先ほど申し上げた選挙等に現われておる沖縄住民の感情というものは、アメリカの施政がこれに合っておらないという点に私は大きな何があると思う。そういう点において全体的に反省を求めておるということを先ほど申し上げたわけであります。  なお土地の一括払いの問題や、その他土地問題に関する沖縄の住民の要望につきましては、これをアメリカ側が実現するように、われわれの方もこの沖縄住民の要望というものは向うに伝えて、反省を求めておるわけでありますが、具体的に申しますと、私は決して今の状態が満足な状態であるとは実は考えておりません。なお従って、そういう具体的な問題ついては、今後といえども努力をするということを先ほど申し上げたわけであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 以下私がお尋ねいたしますことは具体的にお答えを願いたいのですが、御承知の通り本問題につきましてニューヨーク・タイムスは、沖縄の潜在主権を認める以上はその行政権を日本に返還することを考慮せよ、こう社説でるる述べております。これはアメリカの一個の世論になっております。さらにこの問題につきましては、アメリカの人権擁護委員会の意思として公式に表示がありまして、政府から政府に向ってそれは申し出るべきであると言っております。私はそこであなたにお尋ねしたいのは、沖縄の行政権の返還について、一体アメリカに対しどういう交渉をいつなされたか、これを具体的に伺いたい。同時に、さらに一月十六日のワシントン・ポストは、沖縄の事態を憂慮いたしまして、こう社説で論評いたしております。これまでの沖縄島民が憤慨するのは無理のない話であって、それは軍人らしい無神経ぶりや、貴重の土地をつぶしてゴルフ場を三つも作るというやり口が、現在の紛糾の原因となっている、アメリカ軍部の猛反省を促すと、ワシントン・ポストは正論を吐いております。このアメリカの論調に相呼応して、日本政府としては一体どういう手をお打ちになったか、年月と交渉のいきさつをお示し願いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 先ほど申しましたように、私は昨年のアイゼンハワーとの会談におきましてもこの要望を伝え、またその際いろいろな有力な方面とも会談をいたしまして、この国民の考え方をわれわれは述べております。それからその後九月に藤山外相が参りました際にも、その問題を提示して向うに話をしております。その後朝海大使を通じて、やはり同様な問題に関して国務省などと話をしておるというような現状でございます。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 藤山外務大臣が関連答弁をしてもいいそうですが、どうですか。いいですか。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 お答えになりますか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 ただいまお話のありました交渉の点でありますけれども、御指摘のように、アメリカの世論が漸次従来と変りつつあることも事実であります。またこういう事態をとらえまして、今後強力に沖縄問題については話をしていかなければならぬのであります。すでに朝海大使は、今西村さんの御指摘になりましたような点をあげまして、ロバートン次官補と会談を続けております。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私はあなたが政界に入られて間がないから御質問しなかった。しかしながら、少くとも外交というものはもう少し腹でやってもらいたいと思います。ということは、あなたの管轄される在外公館の活動は、ことごとくこれは日本の観光誘致機関くらいのものであります。日本の真意を伝え、日本の意思が那辺にあり、日本国民の要求がどこにあるかということの努力をどこにもしておりません。失礼であるが、あなた自身に例をとりましょう。あなたがアメリカに行かれたのは、私はここに年月日が書いてあるが、たしか六月十二日、ここにおられる一万田さんより一日早く着いた。訪問されるところはダレス長官、商務長官、国防長官、みな一緒です。はなはだしきに至っては、商務長官の部屋を出られるときに、失礼だがお二人のうち一人が待ちぼうけを食っていた。それで二人打ちそろって、別々に次に入ったものであるから、アメリカ大使館員、通訳員が、きょうは日本デーですと冗談にまぎらわせた。私はこれは二つの要素があると思う。内閣として外交の統制がとれてないということです。少くとも外交というものは内閣がやるべきだ。個人がやってはいかぬ。一万田外交あり、藤山外交あり、はなはだしきに至っては河野外交がある。二重外交ときのう川崎さんがおっしゃられたが、三重、四重です。財政計画のみならず、外交はばらばらです。私があなたにお尋ねしたかったのはこの点なんだ。もう少し外交は統制をとってやんなさい。そして腹を作ってやんなさい。私は今総理大臣並びにあなたから、沖縄の問題について努力しているというお言葉をずいぶんお聞きいたしました。しかし私がお尋ねしておるのは、日々刻々不安の中にある沖縄七十万の島民に対して抽象論じゃなしに、どこに具体的に日本国政府は努力してくれたのだ、その具体的なものが報いられたのが報いられないのかということは、外交の機密もありましょうから全部さらけ出すことはできないけれども、その内容を明らかにして、島民に安心せしむることが政府の責任ではないか。私が最も憤懣にたえないのは――藤山さんのことは、あなたは、新米だからあとで申しますけれども、岸首相の問題につきましては。私はあなたに不満を持っている。あなたがアメリカに行かれたのは六月十六日、それに対してアメリカの有力紙が何といっておるのかというと、日本の岸首相はいんぎんな笑いと、はち切れるようなカバンを持ってくるであろう、このはち切れるカバンの中には沖縄問題の解決を当然持ってくるであろうと、アメリカの有力な新聞紙はあなたの渡米の内容についてかく書いている。ところがその新聞は、これについて何ら具体的なものを持ってこなかったと不思議に思っている。同時に私は、さらに岸首相に対してこの問題についての不満を具体的に申し上げれば、あなたがロスアンゼルスに滞在中、ムーア弁務官が二百六十八万坪の土地を強制収用した。これが六月二十六日、あなたがロスアンゼルスに滞在中です。これの解決を遷延してムーア弁務官は沖縄に帰った。私は、日米共同声明の趣旨からいき、今日直ちに沖縄全部を日本に返してくれということが、相手があることですから無理であったといたしましても、アメリカの新聞も論評しておるごとく、軍人の無神経をもって貴重な土地をつぶして、ゴルフ場を作るがごとき愚をなすことが紛争の原因だというておるのに、その愚をあなたが滞在中になしたのである。直ちにもってアイゼンハワー並びにダレスに対して抗議し、この問題を取り消すよう要請することこそが、具体的な外交交渉の歩みだと思うが、これをなされたのかどうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 この沖縄問題について何か新聞は、私が何らの案も持たずアメリカへ行ったというふうな論評をしておるということをおあげになりましたが、これは事実に全然反しております。私はアメリカを訪問するに際しまして、実はその事前に、これもすでに御承知だと思いますが、マッカーサー大使との間に数回会談をいたしまして、われわれの要望する点、それはあらかじめ国務省や何かに具体的に準備をいたして参ったわけであります。ただ不幸にして今の問題が意見が違ったということであります。なお今おあげになりましたムーアの事件に対しましては、私は当時これに抗議をするということをいたしておりません。それは当時私が承知いたしておらなかったためであります。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 これは承知をしなかったということであれば、あなたの責任よりもやはりアメリカ駐在外交機関の責任だと思う。あなたが旅行中で忙しくあっても、新聞にも出ているこれだけ大きな問題を、承知しなかったでは私は済むまいと思うのですけれども、しかしあなたが御存じなかったら別に深くは追及しませんが、それならこれはあなたが具体的に努力しているという看板をおろしなさい。  そこでこまかい問題、具体的な問題についての質問はあとにいたしまして、私は問題の核心に一つ触れてみたいと思います。アメリカの今日の沖縄統治形態が、あなたはこれが正しいとお考えになっているか、反省すべきだとお考えになっているか。私は政治論ではありません。沖縄を統治している政治機構が正しいと思うか、改革すべきだと思うか。どっちです。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 いろいろな点において現在の何が望ましい形だとは考えておりません。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 望ましい形態でないとすれば、望ましい形態でない要因は、急所はどこにありますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 これはアメリカが平和条約に基いて、とにかくあそこの統治権を一切行なっているのでありますが、アメリカのやっている施政というものがわれわれ日本国民としては望ましくないというのは、要するに沖縄の住民の要望や沖縄の実情に適合している望ましい形ではない、こういう意味で申し上げたわけであります。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 西村君、ちょっと申し上げますが、申し合せの時間をだいぶ過ぎておりますので、一つ結論にお入りいただきたいと思います。どうぞ。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私はそういう抽象論じゃなしに、それじゃ端的にお尋ねしましょう。沖縄は今日本に潜在主権があるが、その行政権の行使をアメリカに一時お譲りしておる、貸しておるといたしますならば、その主権が潜在的に存在している領土の土地、国民を委任しているアメリカの政治形態について、日本国総理大臣としては当然関心を払わなければならぬ。今言ったような好ましいとが好ましくないとかということは、具体的なことではありません。そこで私は、今沖縄軍司令官が極東軍司令官の任命によって、高等弁務官として統治していることは、アメリカ憲法の違反なりと考えるのですが、首相はどうお考えですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 はなはだ私、アメリカの憲法のことをよく承知いたしておりませんので、具体的なことはここで申し上げかねます。あしからず。……

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 それでは私はお尋ねしますが、平凡なお尋ねですが、沖縄は占領地域でありませんね。アメリカの占領地域ではありませんね。――どうなんです。その点をお尋ねしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 平和条約第三条でしたかに基いておるものであって、いわゆる占領、軍事占領というものではないと思います。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私も占領地域ではないと思います。サンフランシスコ条約によって行政権をお預けしておる。従って、一部は日本の領土である。一部はまたアメリカの領土と解釈する。けれども、ここに確定的に言い得ることは、占領地域ではありません。占地域でないのにかかわらず、軍人がその土地の施政権を握っておることはアメリカ憲法の違反です。私は二つの文献をここに持って参りました。アメリカ憲法第四条第三項の二、領土に関する問題です。「長官と裁判官が、合衆国の上院の同意に従い、大統領に依り任命される。」これがアメリカ憲法である。ところがムーア高等弁務官は、国防省の承認において、極東軍司令官が任命しておる。答弁上手なあなたは、これはアメリカのことだから、日本には関係ないと言いのがれるかもしれませんが、日本に関する重要な問題でありまして、領土権の返還を要求することは日本民族の悲願でありますけれども、外交は一歩々々積み重ねていかなければならない。そういたしまするならば、政治的に見ても不手ぎわをやっておる。同時にアメリカ憲法の建前からいっても憲法違反を犯しておる。この矛盾せるアメリカの政治機構の間隙を陳述して、アメリカ政府の反省を促して、まず第一に、軍人の統治から大統領任命の文官の統治に切りかえるということも私は問題解決の進展の一つではないかと思うのですが、あなたはいかがです。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 沖縄の実情からいうと、住民の気持は、確かにお話のように、軍人の弁務官よりも文官の弁務官を多数の人が望んでおる、私はこう思います。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 住民がそれを希望していることはもちろんです。住民のほんとうの念願は、先ほど申しましたように、端的に申しましたら日本へ早く帰りたいということです。けれどもその期間中、極東の緊張を緩和されて、返される条件が整えられるまで、力関係、いろいろの関係からいって返されないとすれば、これは軍人よりも文官の統治を好む。これは感情論です。同時にその感情論を満たす法制的根拠はアメリカ憲法です。私は、あなたなり藤山さんなりがしばしばアメリカに行かれるならば、失礼な話だが、漫然とお茶を飲みに行ったりゴルフをしに行ったりするようなことでなしに、こういう事実をひっさげて――アメリカの中にも正論があるのですから、この正論をして助長せしめ、頑強なる人々を説き伏せる根拠はアメリカの憲法に存在するということである。この憲法を根拠にしてなぜ交渉されない。住民がそのことを好むとか好まぬとかいうのではない。日本の外交として一つの根拠があるなら、これを根拠として、どうしてアメリカと交渉されない。私はその点をお伺いしたい。同時に、将来交渉される意思があるかどうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 先ほども申し上げましたように、はなはだ私アメリカ憲法の研究が足りておりませんから、従来もそういうことを申しておりませんが、今直ちにどうだ、憲法論でこれをどうするという問題は、憲法を勉強してみなければならぬと思いますが、それよりも私の考えでは、多数の住民の希望するということが民主政治の基本であり、またそういう政治をすることが日米の関係から申しましても、あるいは沖縄におけるアメリカの施政を成功せしめる上からいっても当然のことであるということは十分に論じ尽したい、かように考えております。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 西村君、どうですか、だいぶ経過しましたが、まだよほどありますか。一つ、至急結論にお入り願いたいのですが。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 なるべく委員長の議事進行に御協力申し上げますが、重要な点だけは……。やはり何と申しましても法治国は、憲法を基礎にして成立しておるのです。首相はアメリカ憲法について研究してなかったとおっしゃれば、私はそれで追究いたしませんが、少くともこれは外務省なり、大臣、総理大臣を補佐する官僚は、当然考えておかなければならぬ。この憲法の解釈とは別に、最近出ました新しいこの問題についての憲法の解釈は、アメリカの最高裁判所ダグラス判事が人民の権利という中でこれを明らかにしております。それは第二次大戦以後、米国において漸次軍部並びに軍人の発言力が浸透してきた、いろいろこう書いておりますが、これは明らかにアメリカの憲法の違反である。最高裁判所のダグラス判事がこれを明確に論断しております。従って、その論拠からいきまして、アメリカの世論はがぜんとしてこれに対する軍人の統治を反省してきておる。これは憲法論です。  同時にいま一つ、憲法の解釈は一時よそへおきまして、政治論として解釈をいたしまするならば、御存じの通りイギリスは、自分の統治領に対して軍人が統治すべきか、文官が統治すべきかということは憲法で明確にしておりません。しかしながら明確になっておるのは、キプロス島の紛争です。キプロス島が紛糾をいたしましてから、昨年秋、ハーディング元帥を総督としていた武断政治をやめまして、文官フットをもってこれにかえました。自来三カ月経過して、イギリスの世論は、キプロス島の統治を軍人の武断政治から文官にかえたことによって、キプロス島の事情は一変して安定するに至った、これは最近の報道だ。失礼だが、なぜこれだけの事実を外務省はお気っきにならぬのです。アメリカの憲法の研究が足らないと言えば、私はそれは追究いたしません。しかしキプロス島の紛争事件は、沖縄の問題とともに大きな政治的な紛争です。この事実を調査して、それから、一体イギリスなりアメリカの統治方針がどうあるべきが、同時にアメリカのこの問題についての反省を促す法律的根拠、政治的根拠はいずこにありやという、抽象論じゃない、問題は政治的に、法制的に根拠をとらえて交渉することが外務大臣の責任じゃないか。どうなんです。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 外国との交渉に当りましては、無論そのときどきの事情によりましていろいろ違うと思うのであります。沖縄住民の意思を十分に伝えて、そうして。アメリカの反省を促すことも私は非常に必要なことだと考えます。また同時に今お話がありましたようないろいろ各国の事情等も調べまして、そしてそれらの事情から推してアメリカに交渉することも必要だと思います。またあるいは、私もよく存じませんが、憲法論というようなものもその解釈等によって言うことは言って差しつかえないし、また言うべきだと思っております。

西村榮一日本社会党

○西村(榮)委員 私は、今の質疑応答によって抽象的にはいろいろお話になったけれども、岸さんの滞米中のできごとを考え、藤山外務大臣の交渉の具体的な経過にかんがみても、沖縄の問題ついては何ら具体的な均衡がなかったと残念ながら解釈せざるを得ません。しかし問題は、過去を責めても仕方がない、私は今申し上げた諸点をこれから御考慮いただきまして努力をしていただきたいと思う。  委員長から時間の問題を制約されて御注意を受けましたから私はこれで打ち切りますが、残っておるのがまだ二つある。二つあるけれどもそれはほかの同志によって究明していただきたいのですが、最後に私は岸首相並びに藤山外務大臣にお尋ねし、かつ申し上げておきたいことは、お二人とも口を開けば国連中心の外交をやるとおっしゃる。国連中心の外交というものは一体何なのでしょう。何をなすってきた。私は一外務省の官吏の能力を言うことは差し控えます。けれどもその官吏の能力と外交の基本策というものは、――少くとも今日、首相は日本はアジアの一員として世界平和に貢献するんだと言われるが、アジアの民衆が一体何を求めているか、繁栄と平和です。そしてアメリカとソ連のひもつきを拒否しています。今日世界の緊張を起しておる大きな原因はどこにあるかというと、ソ連の政治制度に欠陥があるがらです、アメリカの社会制度に欠陥があるからです。この欠陥を持っておる米ソ両国が軍事的にも経済的にも巨大なる実力を持って世界においてその覇を争っておるところに今日の世界の大きな不幸がある。しからばその他の八十有余国はこの大国のエゴイズムをどう制御して世界人類平等の立場から世界の平和と繁栄をはかるがということが国連の大きな使命です。この使命を自覚してあなたは国連外交をやっておられますか、そうじゃない。あるときは大国の鼻息をうかがい、あるときには発言すべきこともちゅうちよして取る。私はこの立場において、二十七ヵ国のアジア、アラブの小国を代表してその繁栄と平和に協力しながら、小国の持つ偏狭なる民族主義をよく克服し同時に大国のエゴイズムを克服して世界の平和を確立するところに協力邁進することが国連中心外交の要諦だと思う。ところがあなた方お二人の持っておる外交方針は、国連を云々される仕れども、それは外交の無能の逃げ口です。私は失礼ですが、国連外交を口にされる上からは、この歴史の変遷と進歩の中にわれわれはどうしなければならないか、深くお考えいただいて国庫外交を進めていただきたい。これをお願いして私の質問を終ります。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 午後二時より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後一時十五分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十七分開議

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。成田知巳君。

成田知巳日本社会党

○成田委員 私は日本社会党を代表いたしまして、昭和三十三年度予算案に関連しまして経済、政治、防衛、外交、これらの問題について、二、三重要な問題についてのみ御質問いたしたいと思いますが、質問はきわめて具体的にやりますから、答弁も一つ具体的にお願いしたいと思います。  まず総理にお尋ねいたしますが、今度の予算案編成に関連いたしまして、総理はその前に東南アジアの旅行にお出かけになりました。その旅行に出かけられるときに、予算案の重要政策については、自分が帰ってきてから決定する、こう言い残されて旅行にお立ちになった。これは、総理としては当然の言葉だと私たちは解釈しております。ところが帰国されましてから、予算案編成に関連しまして、たとえば軍人恩給の問題、あるいは余裕財源たな上げの問題、減税の問題、さらには総選挙を控えまして、与党の猛烈な予算のぶんどり合戦が行われて、予算編成は難航をきわめたのですが、その間総理は、終始沈黙を守っていらっしゃった。最後の時間切れまで沈黙を守っていらっしゃった。今度の予算案がその編成過程及びその内容におきまして世上から激しい非難を受けておることは、これは総理の何と申しますか、無責任な態度、政治的な統制力の欠除だ、ここにおもな原因があると私たちは考えております。これに対して、本会議その他でわが党の代表から質問があったのですが、総理の答弁は、みずから総理としての責任を果したとか、あるいは批判は勝手だ、批判は自由だ、こううそぶいていらっしゃるのです。しかしこの非難というものは、私たち野党だけが加えている非難ではありません。言論機関は、一齊にこの問題を取り上げて、総理の態度を非難しております。一体今度の予算編成で、総理はよくやったという新聞雑誌がございますか。総理は、今まで繰り返し戦時中の自分の行動に対して反省され、自分は、民主主義政治家としてこれから行動するのだ、こういうことを言っていらっしゃる。申すまでもなく、民主主義政治というものは、世論に耳を傾け、世論に従うということが民主主義政治なんです。あなたは、今度の予算問題に関連してごうごうと巻き起っている世論というものを、一体どのようにお考えになっているか。みずから責任を果したとお考えになっているのですが、それとも非難は勝手だ、こういうようにお考えになっているのですが、その点をまずお尋ねしたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 三十三年度の予算編成につきましては、すでに十二月に閣議決定をいたしまして、その三十三年度予算編成の基本方針というものをきめまして、いわゆる実質的の増加は一千億、三十一年度の分については、剰余金の四百三十六億はこれをたな上げにする、また二百億ないし二百五十億前後の減税をするという方針をきめ、また道路、科学技術振興、科学振興等、こういうものについて重点を置いて組むというこの基本方針を決定をいたしまして、そうして一月八日の第一次査定、十九日の最後の決定に至るまでの党、政府の折衝によりまして、これを編成をいたしたわけであります。政府といたしましては、また総理といたしましても、十二月にきめました基本方針の範囲内において、しかも重点を置くといった政策につきましては、それぞれ適当の方策を講じて編成したというのが、今回の予算であります。しこうしてこの間において、総理が何もしなかったじゃないか、あるいは総理が、これに対して発言を途中で何らしなかったというようなことに対する批判があることも、私はよく承知いたしております。しかし私は、こういう予算編成の問題は、もちろん党あるいは閲内におきまして意見が対立するということであれば、これは総理として、また総裁として、責任を持ってこれを断ぜなければならぬことは言うを待ちませんけれども、その道程においていろいろと論議を尽し、またその間において調整のとれていくということであるならば、これを一々総理が処断すべき性質のものでもないと思います。従いまして、私は世論のいろいろなきびしい批判に対しましても、あるいは将来の予算編成につきましても、いろいろ「考慮すべき点、反省すべき点はあると思いますけれども、全体として、総理としての責任について無責任じゃないかというふうな批判に対しましては、私は十分に責任は尽しておるものという信念を抱いております。

成田知巳日本社会党

○成田委員 今度の予算編成の不手ぎわに対する世間の批判というものは、承知しておる、それに対して反省すべきものは反省すると言っていらっしゃるのですが、しかし結論は、一向に反省されたように見えない。もしあなたが、今まで言われたように、大いに自己反省して、今後は民主主義政治家として立つのだということになれば、世論に謙虚に耳を傾けるべきだと思う。一向にその誠意がないということは、まだあなたの頭の中には、戦争中の軍閥官僚の亡霊が生き残っているかとしか私たちは考えられません。そこで、いかにそつのない答弁をされましても、予算案の具体的な内容について質問してみれば、その問題は明らかになると思うのですが、一萬田蔵相にお尋ねしたいと思います。  一萬田さんは、予算編成の基本構想、すなわち歳出増は昨年に比較いたしまして一千億増にとどめる、余裕肝源はこれを景気調節資金として一括たな上げする、財政投融資は昨年度、三十二年度の実行計画並みに押える、こう決定したときに、あなたはこういうことを言っていらっしゃる、自分は、この線は絶対にくずさない、私は政治的要求に左右されず、最もよい大臣でありたい、こう言っていらっしゃるですね。この大蔵大臣の言う最もよい大臣という意味を、どう考えるかという問題なんですが、経済白書にも指摘しておりますように、どの好況のときでも、例外なく景気の上昇が中小企業や雇用面など、いわゆる社会的に弱い面に浸透するには非常に時間を要する、ところが、この面に景気が侵透し始めたころには、必ず金融引き締めという方策をとらなければならないようになる、そうして引き締め政策をとると、これらの弱い面、中小企業あるいは労働面、この弱い面に最初のしわ寄せがいくというのが日本経済の構造的な欠陥である、こう政府の経済白書は書いているのです。すなわち、好況と不況を繰り返して、不況は中小企業、労働者に及び、好況は資本家に及ぶ、好況と不況を繰り返すことによって、資本家はますます太り、弱い者はますますやせていくというのが、日本経済の実情なのです。そうしますと、デフレ政策をとろうとした蔵相は、みずから最もよい大臣だと言われておりますが、これは、冷酷な資本の要求に従った政策なのです。金融資本、独占資本のための最もよい大臣だというのがよい大臣の意味だと私たちは解釈します。従って、この蔵相の考え方、やり方は、社会的な合理性の問題は別にいたしましたら、一応論理が一貫しております。その点は論罪が一貫しておる。この意味において、大蔵大臣がその責任において、あなたがお作りになったと思うのですが、三十三年度の予算に対するこの大蔵省原案は、最もよい予算として、蔵相は自信を持って、責任を持ってお出しになったものと私は理解しておった。ところが、二週間余り予算のぶんどり競争が行われますと、大蔵省原案というものの精神は、全く跡形もなくくずれ去っております。たとえば今岸総理は、その基本線は守ったといってらっしゃいますが、一千億の歳出増は、その一部を、近く出るでありましょう三十二年度の補正に回しております。また景気調節資金として、余裕財源四百三十六億の一括たな上げは、ひもつきの資金になっておる。この問題についても、後ほどお尋ねしたいと思っております。  それから財政投融資は三千九百九十五億で、大蔵省原案よりは三百十六億円ふえているんです。三十二年度の繰り延べの解除二百八十億円を入れたら、六百億円に達する膨張になっております。一萬田さん、あなたは、これでもあなたが責任を持って提出された大蔵省原案の基本線が守られた、守り抜いたとお考えになっておるがどうが。それとも、原案に間違いがあって、修正やむを得なかった、こうお考えになっておるか。そのいずれであるか、まずお伺いしたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 お答えいたします。私は、三十三年度の予算編成の基本構想、この線は、むろん百パーセントというわけにはいきません。しかしその基本構想は、一応私は貫いておると思います。それからもう一つの点は、大蔵省原案、あの通りじゃないじゃないか、数字が違うじゃないかという御質問であります。これは、もう私は率直に申し上げます。従来でもさようであるのでありまして、大蔵省原案が出て、それから何回もいわゆる予算折衝、復活要求というものが当然予定されておる。そういうわけで、大蔵省原案というものは、政府原案を作るまたその原案になるということで、復活を予想しております。渋いものが出る、これは、従来の慣習でもそういうことになっておりますから……。これを基礎にして、もちろん私は、大蔵省原案が悪いというのではありません。悪いというのではありませんが、一応大蔵省原案というものを基礎にして、これは絶対に移動さるべきものじゃないという立場を私はとっていないのであります。政府原案になるまでは、大蔵省原案をもとにして、政党内閣でありますから、党の方の意向も聞くべきものは聞く、聞がなければなりません、各省庁間における折衝もある。こういうことで、その数字が移動することは、これは従来の例ではあるわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 大蔵省原案が間違っていなかった、こういうようにお考えになるのですが。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 間違っておったとかながつたとかいう意味ではありませんで、これはあくまで原案でありまして、これをもとにして政府のいわゆる予算概算というものを作るわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 政党内閣であるから、原案のワク内で配分が変ってくるということはわかります。自民党の政策が入るということもわかります。しかしながら、それはあくまでも歳出の面においてしかるべきだと思う。今度一兆三千百二十一億円の線に押えられた、そのワク内で歳出の配分をやられまして、自民党の政策を盛り込まれるということは当然理解できます。しかしながら、問題は歳入なんですが、歳入は、大蔵省といたしましては、科学的な根拠に基いて、税法の変更がない限り、歳入は客観的に一定しておらなければならぬはずだ。ところが、今度はどうでしょう、例の予算ぶんどり作戦で最後までもめた。そうして減税をやらないと、総選挙の前で不利であるというので、例の自転車税と荷車税の減税をおやりになった。ところが、それに見合う財源が必要なものですから、たばこ消費税を二%引き上げられた。そのために、大蔵省原案から、専売納付金は約五十二億減収となっております。そうしますと、大蔵省としては責任をもってお出しになった、科学的な根拠に基く歳入見積り五十二億円の専売益金が、地方たばこ消費税の関係で減収するとすれば、当然歳入のワクがそれだけ減らなければならぬ、それが相変らず原案通りなんです。その秘密はどこにあるといったら、何でもない。たとえば租税、印紙税収入で十六億ふやしています。政府資産で八億ふやしておる、雑収入で二十八億ふやしておる。歳入というものは、これは国民の血税なんです。税法は変っていない。大蔵省が客観的な根拠に基いて科学的に取り上げられた歳入というものが、一晩のうちに五十億も変るということは、とうてい許されないと思う。大蔵省も、大蔵官僚の筆先一つ、さじがげん一つで、そんなに歳入が変るものですか、間違っていないとすれば、変ることはおかしい、変ったとすれば、何か間違いがあったはずなんです。その間の数字的な根拠、積算の根拠を明瞭に示していただきたい。これは、国民の血税なんですよ。そんなに大蔵省官僚の筆先一つで五十億、六十億変るということば許されない、しかも一晩のうちに変っております。その根拠を明確に示していただきたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは、合理的な根拠に基いておるのでありますが、数字的な点ですから、政府委員から……。

成田知巳日本社会党

○成田委員 合理的な根拠に基いておったということになりますと、最初の原案が間違っておったのですか。そんなに歳入が一晩で五十億も変るはずがない。間違っておったなら間違っておったと言って下さい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 間違いがありませんから、その根拠を今数字をもって申し上げます。

成田知巳日本社会党

○成田委員 間違いがないということはありませんよ。どちらかが間違いだ。最初の大蔵省原案が間違いであったというのですか。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 成田君。主計局長が答弁すると言っておりますから、主計局長に……。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 事務的な答弁をすると言っておりますがら……。今質問者と御相談をいたしました。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 お答えを申し上げます。日本銀行納付金及び政府資産の整理収入におきまして、前の見積りとその後の見積りとを照合いたしまして、従来のこういう場合における前例もあることでありますから、日本銀行の収入見込みをさらに精査いたしまして、若干の見積りがえをいたしたわけであります。その間の資産整理収入におきましても、もう一ぺん全体の国有財産の売り払い状況、こういうものの見込みを見直しまして、その結果、この方が確実であるという数字を見まして、見積りがえをいたしたのであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 全然答弁にならない。一晩で、しかも経過はわかっておるのです。自転車税、荷車税の減税をやった。そのための見合いの財源として、たばこ消費税の二%引き上げをやった。そうすると、専売納付金が五十億減るというので、一晩で数字を変えたのではないが。精査したとは何事ですが。しかも、政府資産雑収入だけではない、日本銀行の納付金だけではない、租税、印紙税収入で十六億もふえておる。国民の税金ですよ。こんなものを大蔵省の役人の筆先一つで変えることが、果して妥当ですか、総理は一体どう考えるが。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 この五十億については、今事務当局がら説明した通りであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 大蔵大臣、よく聞いていなさい。五十億の数字をはっきり言ってないですよ。政府資産収入で幾ら、雑収入で幾ら、租税及び印紙収入で幾ら、その積算の基礎、ここはこう間違っておったということを明確にしなければ、予算審議に応ずるわけにはいかない。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 事務的な御質問ですから……。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 見積りがえをいたしましたのは、租税収入においてはございません。もっぱら税外収入において見積りがえをいたしました。その見積りがえの主たる内容は、今申しました日本銀行納付金におきまして、大体の差額を出しております。あとは政府資産整理収入におきまして、少し計数を出しておりますが、それ以上こまかいことは、計数を見て申し上げます。

成田知巳日本社会党

○成田委員 日本銀行の納付金で幾らふえて、税外収入で幾らふえた、その間違いがどこに根拠があったか、明らかにして下さい。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 内訳は、今こまかい計数を見ましてから申し上げますが、見積りがえと申しましたのは、日本銀行の納付金につきまして、日本銀行の経理状況を見まして、そこのところでどの程度の余裕が見られるかということをもう一ぺん洗い直してみました上で、今申し上げたようなことになっております。

成田知巳日本社会党

○成田委員 その数字的な根拠を私は出していただきたいと思いますが、これは、だれがお聞きになってもわかる、一晩でそんな五十億の数字が変るはずはない。国民の税金を大蔵官僚が勝手にされるような、そんなことを国民は納得しない。その数字を出して下さい。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 すぐ数字をまとめて御返事をするそうですから、そのままの形でしばらくお待ちを願いたい。

成田知巳日本社会党

○成田委員 私、時間をとるのをあまり好みませんから、委員長、一つ注意していただきたい。その間違っている根拠を、その積算の基礎をはっきり出してもらわないと……。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 今、その根拠を出すと言っておりますから、もうしばらくお待ち下さい。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 もう一度繰り返して申し上げておきますが、租税収入におきましては、見積りがえをいたしていないということを申し上げておきます。それから税外収入におきましては、幾つかの見積りの仕方がございますが、最初におきましては、大体この程度の積りでという計算をいたしたわけでございますが、その後いろいろ計数が動いております間に、私どもといたしましては、さらに念査をいたしまして、――税外収入というものにつきましては、税と違いまして、またいろいろな別のファクターがあるものでありますから、それらを見込みまして、そこに数日間の折衝の時間もありましたので、その間さらに精査を重ねました上で、計数の見積りがえをいたしたわけであります。その結果、税外収入におきまして、先ほど申し上げましたような再計算の結果が出て参ったわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 その数字的な根拠を出して下さい。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 数字的な根拠を具体的に知りたいとい質問者の御意向ですが、主計局長、どうですか。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 繰り返して申し上げますが、税外収入の見積りで第一に変りました点は、国有財産の売り払い収入でございます。国有財産の売り払い収入におきまして、七億二千二百万円という金額を切り変えたのであります。これは、在日合衆国軍からの財産の返還の見込みにつきまして、さらに精査を重ねました結果、今申し上げた金額が出たのであります。それから病院収入におきまして、診療報酬が改訂をされることになりましたので、そのための増収分を見込みました分が四億七千万円、日本銀行の納付金につきましては、年末年始における日本銀行の運用資産というものが明らかになりましたので、さらにこれに基きました精査をいたしました結果、十三億二千七百万円という数字が日本銀行納付金、懲罰及び没収金におきまして、これは道路交通取締法、そういうものの違反の事件の最近の計数をつかまえてみまして、さらに計算を仕直しましたのが六億五百万円、中央競馬会の納付金が、同じように再検討いたしました結果、一億八百万円というようなことで、合計三十七億ほどが再計算をいたした結果出ております。

成田知巳日本社会党

○成田委員 今のお話ですと、大体三十七億ですね。主計局長は租税収入がないと言ったが、租税収入が十六億なければ数字が合わないじゃないですか。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 租税収入がないということを申し上げましたのは、ビールの関係が戻りました関係で十五億円、これは計算の間違いじゃなくて、減税の取りやめの問題でございます。ビールが戻ったという関係で十五億ございます。

成田知巳日本社会党

○成田委員 最初は、租税収入はないと言っていた。そうすると、数字が合わないものだから、また租税収入があると言う、それじゃ問題にならない。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 私の言葉のあれが足りなかったと思うのでありますが、見積りがえというお話でございましたので、私は、大体見積りがえのお話としてお答えを申し上げたのでありますが、税収におきましては、先ほど申し上げましたようなビールの関係が十五億円、これは、見積りがえという関係ではなくて出たわけであります。私がその関係を申し上げる言い方が、あるいは不正確であったかもしれませんが、これは見積りがえということではない、ビールの関係の十五億でございます。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 今成田君の質問中でありますから、御意向は理事の間で御相談願いたいと思います――柳田君より議事進行の発言を求められておりますので、これを許します。柳田秀一君。

柳田秀一日本社会党

○柳田委員 ただいまわが党の成田君が質問したのは、歳出の方は、これは政党内閣の予算編成の過程でありますから、あるいはその後の折衝によってふえることもあるでしょう。歳入は、大蔵省が科学的な積算の根拠によって、しかも歳入というものは、国民の血税でありますから、その血税を積算の根拠によってはっきり出されたものは、これは当然責任あるものを出さなければならぬ。ところが、自転車税、荷車税等において五十億ほど歳入の方に穴があきますので、それの操作をするために、それではどこどこから歳入を持ってこなければならぬということで、せっかく大蔵省が責任を持って科学的積算の根拠で出された歳入を、一晩のうちに操作して、それに見合うように五十億持ってくるところに問題があるということを成田君は指摘しておる。従って、大蔵大臣は、予算に臨む以上は、やはり責任を持って予算折衝をやっておられると思うが、成田君は歳出の方を問うておるのじゃない。それはあとから問います。今問うておるのは、歳入の方に五十億ほど穴があいたならば、おい、官僚、どこどこから出してこい、すぐ出してくる、そういう無責任なことであなたは大蔵大臣が勤まるかということを成田君は問うておる。だから、もう積算の根拠は、今主計局長からの説明で数字はわかりました。問題は、数字でわれわれは納得するのじゃない。あなたの責任はどうか。そういうような一晩のうちに変るようなことはどうか。ということは、結局まだ何ぼでも隠し財源はあるということです。それほど隠し財源があるならば、減税をやりなさい。そういうふうなちゃらんぽらんなあやふやな予算案をもって臨んでくることにおいては、われわれは審議に応じられないということを言っておるのです。問題はそこなんです。われわれはこれは納得できない。一晩のうちに五十億出るんだがら、これは予算案を出してから十日たっておるから、五百億くらい出てくるかもわからない。このようなものではわれわれは信用をして責任を持って審議ができないと言っておる。その点をあなたら、大蔵大臣として政治的に明確な答弁をされぬ限り、われわれは審議に応ずることはできない。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 ただいま五十億の財源についての説明が不十分でありましたので、いろいろと誤解もあったかと思いますが、そのことにつきましては説明の通りでありまして、これはまだ当時においては最終的に財源が確定したというわけではありませんので、そういう点において互いに精算を加えた結果、ああいうふうな四十億の財源を発見し得た、こういうことであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 今の主計局長の説明を聞きますと、国立病院の収入が四億七千万円ふえたというのですね。それは診療報酬の改訂だ、診療報酬の改訂は十月一日からやるということは政府の既定方針なんです。それは当然織り込んでいたはすです。結局これを上げるということは、被保険者に対する負担増になるということです。それから罰金が六億もふえておる。これは交通取締りを強化するということでしょう。それでは業者はたまりませんよ。何ということですか。大蔵官僚の小手先一つで国民がこれだけ迷惑する。これは一体どうお考えなんですか、大蔵大臣。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私は適切と考えます。

成田知巳日本社会党

○成田委員 国立病院の入院患者の負担料がふえ、タクシーその他の業者の罰金が強化されて、それが適切だというのが一萬田大蔵大臣なんです。それでいいですが、総理大臣。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 先ほど来事務当局からも数字についてお答えをしておりますし、大蔵大臣が全体的のお答えをしておるのでありますが、こういう見積りにつきましてはできるだけ正確なる資料に基いて決定をしなければならぬことは言うまでもありません。科学的根拠によってやるのは当然であります。しかし時目的に申しましてだんだん時期が過ぎますと、今まで一つの見込みであったものが現実の実績となって現われ、それを根拠として見積り変えすることも、私はあり得ると思います。先ほど日本銀行の納付金についてのなにといたしましては、最初の見積りは、年末年始の、まだ、実績が明らかになっておらないし、その後においてそれが明らかになったから、それだけ正確ななにに基いて見積りをしたというようなものであります。また今まで私の承知いたしております関係がか申しますと、いろいろな罰金その他の問題につきましては、これは昨年度ないし最近の実績を基礎に計算したので、特に罰金をとるためにこれを強化して、これだけ前よりもふやすというのではなく、実績に基いての見積りが、これが正確であるということで出したものであると思っております。

成田知巳日本社会党

○成田委員 岸さんが何と答弁されようと、一日でその数字が変るはずはないです。これは単なるつじつまを合せた数字にすぎない。しかもそのことが国民に非常な影響があるということです。罰金においても、健康保険の負担においても。こういう歳入の見積り方が果していいのかどうか。この問題は後ほども触れますが、たとえば食管特別会計ですね、これは補正を出しております。このうちの三十一年度の赤字百六十億、これはわかるでしょう。ところがその三十二年度の赤字見込みと三十三年度の赤字まで考慮して、百五十億というものを調整勘定に入れようとしているのであります。それからこれももてあました関係で、えたいのわからない経済基盤強化資金だとか何々基金というもの四百三十六億という金を持ってきている。これはけさほど西村委員からも指摘されましたが、何といってもこれは税金を取り過ぎているのです。総理も、三十四年度においても、正確な数字はわからないが、ある程度の自然増がある、ただ経済基盤が拡大した点もあると言われている。しかし、その経済基盤が拡大した、経済の成長率が高まったということは、だれのおかげだということです。国民なんです。勤労大衆なんです。勤労大衆から取り過ぎているのです。勤労大衆の力によって拡大された経済、これは勤労大衆に返すのが当然なんです。ところが政府としてはなかなか減税をおやりになろうとしない。私たち社会党は、国民から取り過ぎたものは国民に返せ、こういう基本的な立場に立っているわけでありますが、どうですか、岸さん、あなたは岸ブームを興すのに涙ぐましい努力をしていらっしゃる。ところが一向岸ブームは沸かない。そこで河野さんとも御相談になって、あの経済五カ年計画なんという、実行できないような長期計画をお立になるより、あと三年すれば、あと五年すれば、国民の税金をこれだけ安くしてやる、こういう減税の長期計画をお立てになれば、国民は希望を持ちます。岸ブームは一挙に沸くことは確実ですよ。それをおやりになる意思はありませんか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 税制の問題につきましては、先ほども私、西村委員の御質問にお答えしまして、私の考えの一端を申し述べたのでありますが、私はやはり国税、地方税を通じて全面的に一つ検討してみる必要があるのじゃないかという状態にあると思います。従いまして、今お話しのように、取り過ぎのものはこれは返すべきである。税制についてのいろいろな方面からの御意見もわれわれ承わります。地方財政の確立の上から考えましてもいろいろ問題がありますし、事業税等についてもいろいろな議論があるような事態でありますから、一つ全面的に検討して、将来の国民の負担を公平ならしめ、わが国の経済の発展に資するような意味において、全面的にこれは検討してみたいということは私考えておりますが、今すぐ具体的にそれではどうするのだというまでの具体的な結論は持っておりません。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そこで減税の長期計画をお立て下さい、こう私、御忠告申し上げたのですが、次に移りまして、今度の予算案を見ますと、経済基盤育成強化資金二百二十一億、中小企業信用保険公庫、保険準備基金その他の四つの基金、これは二百十五億ひもつきで大体使われるようですが、これを使用するときは、その基金と資金でありますが、補正予算をお組みになるのか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 この資金に属します経済基盤強化の資金、この二百二十一億につきましては補正予算を組みます。他の基金は民間団体に資金として出すわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そこで三木政調会長も言っていらっしゃいましたが、基金は一応基金として塩づけにするのだ、利子収入だけを経費として計上するのだ、こういうような御方針のようですが、その通りでございますか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 東南アジア開発基金について若干考えが違いますが、その他の基金については、元金はすべて預金部に預金をしまして、東南アジア開発基金、これは国際的な東南アジア開発基金ということを一応頭に入れておりまして、そういう国際的機構ができれば、それに投資するというかまえにしておるわけであります。それからもしもそれがあまり長くて、そういう国際機関ができないなら、その間は将来そういう機構ができた場合に振りかえられるであろうような投資をする、こういうふうに考えておりまして、これはどっちにいたしましても、国際関係において国際経済協力というような見地においてこの使用を考えております。

成田知巳日本社会党

○成田委員 その点については、藤山外相も基金は使える、こういうようなお考えを発表していらっしゃったのですが、そうしますと、これは補正も何もしないで基金は勝手に使えるということなんですね。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 今度のたな上げの構想は、今日の日本の経済に対してなるべく政治的影響を差し控えるという考慮から出されておる措置であります。従いまして、これを非常に厳格にやるということが考えられるのでありますが、しかしまた今申しましたたな上げの目的が達成せられるということであれば、これは特にこういうふうな東南アジア開発というような用途をきめて、特定しておいても差しつかえなだろう。しかしこれにしても実際において十分たな上げの放果を発揮するという想定のもとにやっておるわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そこで藤山外相にお尋ねしたいのですが、今度インドとの政府借款ができました。百八十億というもので、ことしはとりあえず五十億というのですが、その五十億の政府借款は一体どこからお出しになるおつもりですか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 百八十億の政府借款は、輸出入銀行とインドとの間に取りきめられたものであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そうしますと、輸出入銀行の運転資金を七百三十億のうちからお出しになる、こう考えてよろしゅうございますか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 そう考えていただいてけっこうでございます。

成田知巳日本社会党

○成田委員 もともとこの七百三十億の中には対印借款の五十億は入っていなかったはずです。従って七百三十億に五十億が食い込むことによって、輸出入銀行の他に振り当てるところの運転資金がそれだけ減ることになる。政府は貿易振興とか経済外交とか言っておる。ところが七百三十億のうち五十億が対印借款にとられますと、去年よりも輸出入銀行の運転資金は減ってしまう。これでほんとうに経済外交ができますか。あとから五十億食い込んだために、こういう結果になっておるのです。去年よりも輸出入銀行の運転資金は減りますよ。五十億食い込んでおる。それで経済外交がやれるとお考えになっておりますか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 経済外交をやります上において、資金は豊富であればあるほどいいことはむろんであります。現下の実情から見、かつまたインドの経済五カ年計画に協力するということは、日本としてやるべきことでありますので、私はけっこうなことだと思います。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そこで経済基盤育成強化資金の二百二十一億なんですが、大蔵大臣のお話では補正は必要だというのです。ことし大体そういう情勢が出ますか。お使いになる予定なんですか、どうですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私はこういう資金がなるべく早く使い得るような日本の経済を招来したい。日本の経済をなるべくこういう資金を使って健全化を早くしたいと思っておりますが、しかし今日の内外の諸情勢から見ると、三十三年度のうちに使い得るとは考えておりません。

成田知巳日本社会党

○成田委員 三十三年度の間には使い得ることはない、こういうお話なんですね。――そうしますと、使わない経費を三十三年度に計上するということなんですが、財政法の建前からいきまして、その年の歳出というものはその年の歳入で支弁するというのが財政法の単年度原則なんです。使わない経費を計上して何をするのですか。財政法違反になりませんか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは三十三年度に絶対に使わないとは言い切れません。先ほどそれらのためになるべく早く使うような計画が出てくればいい、そういう努力をするということを申しております。なお資金については、これは経済基盤の強化のために必要なる資金と思っておる、こういうのでありますから、その所要額は三十三年度の歳出予算に立ちまして、同時にこれが三十三年度の歳入予算でまかなっておるのでありまして、これは年度独立の財政法の十二条ですか、これに反することばないと私は思う、しかしこの資金は翌年度に繰り越されることは会計法の四十四条、年度独立の原則の規定で認めておる、かように考えております。

成田知巳日本社会党

○成田委員 会計法四十四条といわれましたが、財政法四十四条の間違いですね。この四十四条はお説のように「国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。」とある。これは確かにそうなんです。しかしながらその特別の資金とは文字通り特別の資金なんです。従って財政法十二条の単年度原則の例外なんです。特別の資金とば、これを設定する必要欠くことのできないやむを得ない十分な合理的な根拠がなければいけないそれを拡張解釈するということは、これは行き過ぎだと思う。やはり例外なんだから、例外規定というものは厳格に解釈しなければいけない。それを使うか使わないかわからない。来年度になるかもしれない。それを四十四条の特別資金という関係で財政法の十二条の原則を破るということは行き過ぎだと思う。やはりその例外の規定というものは厳格に解釈して、拡張解釈はやるべきでない、そうしないと財政は乱れますよ。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは私はこういうふうに考えたのです。三十三年度の日本の経済というもののあり方も非常に例外なんです。こういう状態がしょっちゅうあるわけではありません。従ってこの三十三年度に対応するために特に必要として三十三年度に限ってこういう資金を設けたわけでありますから、拡張したわけではないのでありまして、これも例外的に、しかも国の経済が特に必要とする、こういう見地に立っておるわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 三十三年度に限り作ったといたしましても、これは財政法の十二条の拡張解釈であることは間違いがないのです。こういう例はたくさんある。どうも政府は最近財政法違反を犯す傾向があるのですね。  そこで次の問題に移ってみたい思いますが、食管特別会計の調整勘定、これはことしお作りになりますか。――委員長、耳打ちはしないことになっておるのですが……。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 耳打ちじゃありません。今の質問の要旨がはっきりしませんでしたから……。

成田知巳日本社会党

○成田委員 質問なら何回もやりますよ。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 お尋ねは百五十億の食管に今度調整資金を入れる、このことでございますか。――これは先般消費者米価引き上げの際に食管について非常に議論がありまして、まず食管の勘定の区分をしたらどうかという意見が非常に強く出まして、同時に従来食管に赤が出るならば、その赤を糧券なんかで泳いでおるというのは不健全じゃないか、もう少し食管の内容を健全化しろ、こういう意見が非常に強かった。しかもなるべくこれを早急にやれ、こういう要請にこたえまして、ただその勘定の区分をするということは、今ちょうど年度途中でありますものですから、なかなかこれは容易にできません、少しおくれますが、しかし会計の赤を糧券で泳ぐということは不健全じゃないかという要望にはすみやかにこたえたいと思いまして、今回百五十億を調整資金に入れまして、そういう赤が出た場合に糧券なんかをやらないでいけるように、資金の円滑な運転といいますか、それを可能ならしめたわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 質問要旨がわからなかったら何回でも申し上げますから、私の方へお聞き願いたいと思います。  今の問題でございますが、百六十億の三十一年度の赤字、それから三十二年度、三十三年度の赤字見込み百五十億、この合計が三百十億になっておるのですが、三十一年度の百六十億の赤字、これはいいでしょう。しかしながら三十二年度の赤字、それから三十三年度の赤字、これは三十二年度の赤字見込みが九十六億、三十三年度の赤字見込みが五十四億だと考えるのですが、大体数字は合っておりますか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 どのくらいな資金を要するかという判定には、先ほど申しましたように会計の赤を糧券で泳ぐのは不健全ではないかという趣旨もありますので、大かたこういうところを見込めばよかろうという考えでおります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 大体私の申し上げた数字が合っておると思うのであります。そこでお尋ねしたいのでありますが、従来政府は、私たちが食管会計の赤字を補てんしろという要求をいたしましたら、決算の確定を見なければできないのだ、こういうことを強く言ってきた。ところが今年になりまして、三十二年度の決算はまだ出ていないのに、なぜ事前におやりになるのですか。府の今までの方針がくずれたのですか。私たちは要求した、これは当然だと思う。ところが今までそういうことはできない、決算が確定しなければできないということをあくまでも政府は主張されておやりにならなかった。この方針をお変えになったのですが。総理大臣にお聞きしたいのです。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 いずれあとから総理の答弁があるかもしれませんが、私は前ぶれとして……。この百五十億という調整資金で、三十二年度に赤字がたまった場合には、経理の関係でこの資金から落そうと考えております。おりますが、やはり三十二年度もこの決算がきまってから落すつもりであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 昨年米価問題に関連して、食管の赤字をどう補てんするかということがこの議場におきましても論議され、私もその際にはっきりと答弁をいたしております。御承知の通り、昨年度の米価問題をめぐって食管の制度につきましては、政府は臨時食管制度調査会を設けて、食管制度の全面を一つ検討したい、そして将来の健全化をはかりたい、その結論を待って、あらゆる問題を処理したい、こういう考えに立っております。その調査会の答申いかん、結論いかんによっては在庫米等の評価にも相当な影響もある。従って昨年度の状況においては、これは決算を見ないとはっきり額が出ない。前年はたしか決算前にこれに対してなにしたような例もあると思います。しかし政府としてはこういう措置については特に決算を待ってやるのだということを強く申し上げたわけであります。そして政府としてはやはり決算を待って、はっきり赤字が出るのでありますから、これを処理することが望ましいと思います。今度のこの調査資金の運用によりまして、ある場合においては利益があればこれに繰り入れるし、損があればこれを減額するということができるようになっておりますが、これも決算を待って、はっきりした損が出た場合にはこの処理、経理の方法が具体的にきまる、こういうことであろうと思います。

成田知巳日本社会党

○成田委員 落す時期のことは私たちは聞いていないのです。従来でも私たちは赤字が出る見込みがあるのだから、それをとりあえず一般会計から特別会計に繰り入れたらどうか、こういう主張をしたのですが、いや、決算が確定しなければ繰り入れるわけにいかないと言った。落す落さないの問題ではない。そういう点で政府の方針が大きく変っていると思う。しかも今度は三十三年度の赤字も五十四億まで計上していらっしゃった。そこでこの五十四億の問題なんですが、これは三十三年度の赤字見込みは先ほど私が申し上げた数字が正しいと言われたのですけれども、そう解釈してよろしゅうございますか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これはもう一言私繰り返して申し上げておきますが、この百五十億を調整資金に入れたのは、何も会計の赤字を補てんするために入れたのじゃないのであります。目的はあくまで運転資金をここに入れて、そうしてこの食管会計を強化しようというのにありまして、こういうふうな資金がある結果、益があればこれに繰り入れるし、損が出れば落す、これは経理の常道でありますから、そういう意味におきまして、将来赤が出ればこの会計がら落す。しかし三十三年度にいかほどの赤が出るか、あるいはまた果してこの資金より落し得るか、これはまた別個の問題でして、場合によってはまた法律をお願いしなくちゃならぬかもしれません。

成田知巳日本社会党

○成田委員 今のお話では五十四億は必ずしも赤字補てんを対象にしたのじゃないのだ、従ってこれは使うか使わないかもわからない、こう言われたのですが、それじゃなぜ補正予算でこういうものを計上しましたが。補正予算は財政法にも明記してありまするように、予算作成後に生じた事由に基いて必要避けることのできない経費に不足を生じた場合に補正予算を組むということなんです。予算作成後生じた事由、その事由にも当らないと思う。かりに一歩譲って、その事由に当るとしても、経費に不足が生ずることが補正予算の原則なんです。それを不足が生ずるか生じないかわからないのに計上するということは、これまた財政法違反の疑いがあるのじゃないか。明確に答弁してもらいたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは先ほど申しましたように、先般消費者米価を上げた場合に、これは、すみやかにやるがいいという意見が強うございましたから、私もなるべく早くやりたい。むろん三十三年度の予算成立後でありますが、これをやりたい、かように考えております。

成田知巳日本社会党

○成田委員 今の答弁は全然答弁にならない。今大蔵大臣は、赤字処理の目的じゃないんだ、こういうことを言っておられる。ところが予算の説明書には、ちゃんと赤字処理だと書いてある。これはお読みになりましたか。それじゃ答弁が食い違っているじゃないですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは先ほども繰り返し申しましたように、この会計を健全化するために運転資金を計上しよう、しかし同時に、経理として益が出ればこれに入れる、そうでなければ落すという関係から、会計に赤が出た場合には落すことを得る、こういうふうになっておるのでありまして、目的はあくまで食管の資金的な強化にあるのであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 今の点は二つの点で矛盾していると思う。一つは、赤字が出るか出ないかわからぬ、こういうふうに言われる。運転資金として計上したのだと言われる。ところが補正予算というものは、予算作成後に生じた事由に基いて必要避けることのできない経費に不足が生じたときに補正予算を組むのですよ。不足が生ずるが生じないかわからないのになぜ補正予算を組むのですか、これが一つの問題です。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは資金を置けば当然にその経費が要ります。その経費を計上したのであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 特別の資金ということですべて逃げている。これは財政法の基本原則ですよ。補正予算というものはどういう形でどういう時期に組むか。これは補正予算の基本原則なのです。それを特別資金ということで全部逃げて、これで財政法が生きますか。財政法の精神が守れますか。全部特別資金で逃げている。ちゃんと補正予算というものはこういうものだということが明確に書いてある。総理の御答弁を願いたい。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 法制局長官から事務的な御答弁をしたいと言っておりますので、これを許します。

林修三法制局長官

○林(修)政府委員 ただいまの御質問は財政法の解釈の問題になりますので、私からお答えいたします。財政法二十九条は、予算が成立したあとに経費の必要を生じた場合に補正予算を組むことを認めてあります。経費の不足といいますのは、既存の経費の不足分と新しい経費の需要、これは両方含まっておる。予算に計上してない費目についでも、新しい経費の需要が生じた場合はこれは経費の不足という考え方で当然入ると思います。それから今の資金でございますが、資金の設置という経費の需要でございまして、欠損処理ということはこの資金の設置の結果出てくる問題でございます。これは今御提案しております法律案にもその趣旨が出ておると思いますが、百五十億円の資金は、欠損の出た場合にはそれをもって補充する、益が出た場合はその益を繰り入れる。たまたま三十二年度は、予算説明書にもございますように、九十六億円の損失見込みがございますから、その法律に従ってそこから落ちるわけであります。三十二年度の経費の需要としては、百五十億円を資金に繰り入れるということが経資の需要として出ておるわけであります。これはあるいは御議論があるかもわかりませんが、昨年度の産業投資特別会計に対する資金の繰り入れも同じ形式でやっておるわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 不足というのは現実の不足のみならず将来の経費需要に対する不足なんだということは三百代言的な議論だ。しかも予算編成後生じた事というものは客観的な事実なのです。何も政府が法律を作るというようなことじゃない。客観的な事実に基いて現実に必要な経費が不足したというのが補正予算なのです。勝手に政府が補正予算を作るべきじゃない。こういう財政法を厳格に――政府の予算編成に一つの制限を加えようというのが財政法の精神なのです。それを、不足とは将来の需要に対する必要経費も不足なんだ、これは総理お聞きになりまして答弁になっているとお考えになりますか。  それからもう一つの問題は、予算説明書にちゃんと書いてあるじゃないですか。あなたは赤字のためにやったのじゃないと言われておりますが、政府の予算説明書の四十二ページには、「九十六億円は三十二年度欠損処理のため減額することを予定して」云々、欠損処理のためとなっている。欠損ですよ。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは先ほどがら繰り返し申し上げておるのですが、三十二年度に赤が出ますこの分は、この百五十億の資金のうちから落すということを考えておるわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 あとでこの問題については総理に総括的な御意見を承わりたいと思います。  次にお尋ねしたいのですが、問題になりました例のインドネシアの焦げつき債権六百三十億の処理の問題であります。これは予算関係書類に計上してなかった。こういう政府は大失態を演じた。このことは予算案がいかにずさんに作られておるかということを明らかに物語っておると思うのです。そこで政府は正誤表で済ませてもらいたい、こう言ってこられた。この問題は正誤表で済ますような筋合いのものじゃないのです。しかしながら私たちは国会運営の正常化という建前で、それから官房長官と国会対策委員長がわざわざ辞を低くして助けを求めに来られたものですから、窮鳥ふところに入れば狩人これを殺さず、こういう言葉がありますので、私たちは両大臣あるいは国会対策委員長の体面も考えまして、正誤表というこれで問題を片づけたわけです。  そこで、問題の点については後ほどお尋ねしたいと思いますが、今度提出されました正誤表によりますと、三十二年度末の予定貸借対照表及び三十三年度末の予定貸借対照表について、おのおの約六百三十億を落して訂正していらっしゃる。この六百三十億の取り消しなんですが、取りくずしというものは一体いつおやりになるのか。三十二年度におやりになるのですが、三十三年度におやりになるのですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは条約が発効しないと――発効したとき……。

成田知巳日本社会党

○成田委員 三十二年度におやりになるのですか、三十三年度におやりになるのですか、それを聞いているのです。一応法律でも、皆さん方政府は、予算案をお出しになるときに、大体予定を立てられて法律を出す。通るか通らないかわからぬのに予算案に計上する。従って、この条約はいつ批准されるかという方針は持っていらっしゃる。その方針に基いて予算案というものは編成されているわけです。大体いつ条約が批准される、こうお考えになってお出しになったのか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 条約に対する批准が済めば……。

成田知巳日本社会党

○成田委員 予算案をお出しになるとき、政府はそれに関連した法律案をお出しになる。その法律案がいつ実施されるかということを予定されて予算案をお組みになっておると思う。従って、この焦げつき債権の取りくずしも、いつ条約が批准されるという予定のもとにお出しになっておると思うのですが、いかがですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私はごく間違いのないように申したつもりでありますが、私としては見込みがある、三十二年度中に落す見込みになっております。

成田知巳日本社会党

○成田委員 三十二年度ですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 そうです。

成田知巳日本社会党

○成田委員 三十二年度ということになりますと――今度の正誤表は、これはわかります。今度の正誤表によりますと、三十二年度末すなわち三十三年三月三十一日現在の予定貸借対照表を落していらっしゃる。それから三十三年度末、三十四年三月三十一日現在の予定貸借対照表を落していらっしゃる。これはわかる。それならば、三十二年度の特別会計の予定貸借照対表というものは当然変えなければならぬ。これに対して正誤表をお出しになっておりますか。三十二年度の予定貸借対照表は当然変らなければならぬ。全然関連がないじゃないですか、大臣。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 お答えを申し上げます。三十二年度の予定貸借対照表の三十三年三月三十一日現在の分、それから三十三年度の予定貸借対照表、従って三十四年三月三十一日現在の分、両方あわせまして訂正をいたしておるわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 それはこの前お出しになった正誤表なんです。それくらいのことはわかっておる。だから今私もそれは言った。しかしながら、今度の三十二年度でおやりになるとすれば、三十二年度の補正に関連する問題です。そうすると、三十二年度の特別会計の補正というものは当然変ってこなければならぬ。それが変ってないじゃないですか。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 三十二年度につきましては、特別会計の補正予算は地方交付税の関係の分を出しておるだけでございますので、それは予定貸借対照表でございますから直していないわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 その三十二年度の補正をお出しになったことは事実なんですよ。国の予算というものは全然不可分の関係がある。地方交付税だけ出したからといって、それだけの特別会計では済まないのです。補正予算を出す、予算を出したときにはこれだけの書類を添付書類としてつけるということは、財政法に明確に書いてある。国の財政、予算の執行上必要なものは、最後の項目で出せということになっておる。その参照書として今までお出しになっていた。ところが今度は出してない、出してなかったら、この三十二年度の特別会計を見まして、この参照書を見て、全然関連がないじゃありませんか。三十三年にお出しになりました参照書では――三十二年度末の予定貸借対照表は六百三十億落ちている、そうすると、当然これは三十二年度の特別会計の参照書にも同じような数字が現われていなければならない。同じ三十三年三月三十一日でありながら、外為会計の数字が違うということはあり得ないじゃありませんか。当然訂正すべきじゃないですか。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 お答えを申し上げます。補正予算を組みます際には、歳入歳出、予算総則というような、本来の議決事項につきまして補正をお願いいたします分が主体として出るわけであります。従いまして、それと関連をいたしました付属書類は当然出るわけであります。しがしながら、今回の補正は、今申しましたように、特別会計に関連いたしましては、交付税の特別会計しかお願いをいたしておりませんので、従いまして補正予算としてお願いをいたしますことに関係のございません特別会計につきましては、付属書類を提出する運びになっていないわけであります。従いまして、今回外国為替の特別会計につきましては、三十三年度には当然予算が出て参ります、それには成田委員御指摘のような付属書類が出ますので、その付属書類のうちにおきましては、おっしゃいますような訂正をいたしておりますが、三十二年度の補正につきましては、補正予算プロパーに関係のございません付属書類は提出をいたさない、これは従来からもそういうお扱いで、前例としてやっていただいておるわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そういう便宜的な取扱いをやるから国の財政が乱れるのです。大体予算は一貫しているはずなんです。三十二年度の予算書を見た数字と、三十三年度の予算書と同じ時点における外為会計における色彩が変っているということはあり得ないじゃありませか。それでいいと思いますが、総理大臣。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 先ほど主計局長が説明申しましたように――私は実は規定というものの従来の取扱いの例やその他をよく承知いたしておりませんけれども、先ほど来の主計局長の説明はきわめて理論が通っておって、常識的に考えてみましてきわめて適当である、かように考えます。

成田知巳日本社会党

○成田委員 同じ時点における国の財産が、政府が責任を持ってお出しになった予算書の参照書で数字が大きく違っておるということは、だれが見ても納得できない、そういうものは弁解の余地がないと思います。  そこでさらに実質的な問題についてお尋ねをいたしたいと思います。インドネシア賠償の六百三十億の焦げつき債権の棒引きでございますが、これは本来をいえば国民の税金でありますね、一般会計から補てんすべき性質のものだと思う。貿易業者は何ら危険負担をしていない。国民全体の負担において六百三十億というものが取りくずされた、これは原資の取りくずしと同じなのです。本来は一般会計からやるべきなのだ。ところが政府は六百三十億が一般会計に入ったのでは予算の規模がふくれる、しかも税金であるということが国民にはっきりわかる、これではインドネシア賠償の協定が国民からいろいろ批判されるので、こういう窮余の策として原資の取りくずしという方途に出られた。それにしても国民の税金である、それをなぜそういうやり方をされたか、一般会計からどうして持っていかれたか、問題を明らかにした方がいいのです。その間の経緯を明らかにしていただきたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは仰せのような考えも、むろんこれは一つの考えだと思います。しかし今回はそうしなくて、外為会計のうちでこれを処理することにいたしたのであります。これはまた今回の通りで間違いない。しかしこの外為会計のうちでやっても、一般会計から入れてあるその金で落すのでありまして、従いまして国民負担に対する関係、あるいはまた政府の責任というような見地からすれば、十分私は軽重はないと思います。従って、扱いについて何も軽重を考えておりません。これはむろん重大なことと考えております。それでありますから、今度は、この棒引きは、棒引きの議定書、これはいわゆる条約でありますから、それは国会で承認されれば棒引きと同じ効果を持つ。これは国会の御審議を待って初めて処理するのであります。そうして、この外為会計から引き落す金については、また別途法律を作りまして、御審議を仰いで、その結果に基いて棒引きをする、かようになるのでありまして、国民負担という点も十分考えてやっておるわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そこで総理に予算編成の基本的なあり方についてお尋ねいたしたい。大体従来の政府のやり方を見ますと、当然一般会計に計上すべきものを特別会計に入れるという傾向が非常に多い。昨年までの計算によりますと、特別会計は四十なんですね。ことしはまた一つふえて四十一。大体国の財政というものは、国の収入支出、財産の増減というものを予算という形で国民に知らすわけですから、一本化が望ましいのですね。こう申しましても私は必ずしも特別会計は全然要らないとは申しません。しかしあまり特別会計に逃げるということは、予算の一体性というものを私は害すると思う。しかも特別会計に逃げまして、今申し上げました六百三十億の取りくずしにしろ、収支には関係がないというので予算書には出ないのです。これだけ大きな財産の増減が予算書に出ない、単なる参照書に出るだけで、これでほんとうに国民に対する予算だと言えますか。また食管会計では毎年八千億という莫大な資金を運転しておる、この食管会計の内容も明らかじゃない。あの膨大な食管会計で予算書に出るのはたった半ページですよ、そんなことで食管会計の内容が国民にはわかりますか。予算委員の諸君だつて残念ながらほとんどこの予算書を見て国の予算がどう動いているかということはわからないと思う、私にも実際わからない。これでほんとうの国の予算と言えますか。六百三十億という大きな国の財産に変動がある、これは株式会社なら大へんですよ、大きな原資なんです。株式会社では、たとえば御承知のように財産目録、貸借対照表、損益計算書というものは株主総会の決議なのです。ところが国の予算では特別会計にどんどん入れて、しかもその特別会計たるや内容が非常に簡単である。形式は複雑で内容の数字というものはまことに簡単なのである。これではほんとうの国の予算の審議はできないと思う。もう少し予算のあり方というものについて、政府も真剣にお考えになるべきだと思うのですが、いかがでございましょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 ただいま成田委員の予算に対する基本的なお考えにつきましては、私も大体同じような考えを持っております。特別会計というものが非常に多くなっていくのは望ましい傾向ではないと思います。しかし特別会計を設けますには、それぞれまた特別会計の利点があり、またその必要があるわけでありまして、それに基いてやっておりますけれども、今お話のようになるべく一つの予算で、すべての国の予算がはっきりするような形になることは望ましいことである、御趣旨としては成田委員のお考えと私は根本的には同一であります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 先ほども申し上げましたように、六百三十億というこげ付債権が予算に出ないのですね、単なる参照書に出ておる。今度の食管に対する三百十億の繰り入れも、予算には出ていない、これではほんとうの国の財産の動きというものがわからないと思う。株式会社では財産目録は株主総会の決議なのです。しかも特別会計の予算というものは、先ほど申し上げたように半ページである、こんなことでは結局官僚独善的になる。数字で政府のおえら方もみんなごまかされてしまう、議員もごまかされてしまう。こういう簡単な特別会計の予算のあり方でいいのかどうか。重要な財産の得損あるいは収支、こういうものは予算書に明確にするのがほんとうだと思いますが、いかがでございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 ただいまお答え申し上げましたように、私は趣旨において成田委員のお考えに賛成だということを申し上げております。ただ実際の必要と、またそれによって現実に効果を発揮するかどうかということを十分に考えて特別会計が設けられるわけです。ただ今インドネシアの焦げつき債権の棒引きの問題についてお話がありましたが、これはもちろん、ただ単に提出する予算書または予算の付属書類によってこの問題を取り上げるということではなしに、全体この問題自体として、大いに国会を通じて国民の前に、これを棒引きするという必要と、これによって将来インドネシアと日本との間に、ほんとうの友好関係や経済協力関係ができるという点から見て、国民の負担となる点は、結局は国民の各位の負担に帰するわけでありますから、こういう処置をとることがいいか悪いかということを十分に国民の前に明らかにして、この問題に対する国民の理解を得るということにいたして参りたい、かように思っております。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そこでその焦げつき債権六百三十億を落しましたら、あと焦つき債権は幾らありますか。その内訳、総額をお示し願いたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは数字でありますので、政府委員に答弁させます。

成田知巳日本社会党

○成田委員 総額はこちらから言いましょう。総額は正確に申しますと、三百三十六億四千四百六十万円ですね。三百三十六億四千四百万円だと思います。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 一口に焦げつき債権と申しましても、その流動性にいろいろ違いがございますので、その点はみな一律にそうだということでなくてお聞きを願いたいと思うのですが、韓国に対しまする分が一月下旬末をもちまして四千七百十九万六千ドル、それからアルゼンチンが四千九百八十五万千ドルであります。いずれも今申し上げましたような流動性の点につきましては、ニュアンスに違いがございますので、その点御了承願っておきたいと思います。

成田知巳日本社会党

○成田委員 韓国のやつが四千七百十九万ドル、アルゼンチンが四千九百八十五万ドル。ヴェトナムはありませんか。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 ございません。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そこで総理にお尋ねいたします。韓国の焦げつき債権が四千七百十九万ドルあるという御報告なんですが、近く、日韓正式会談が三月早々行われる。この前の話し合いでは、日本が韓国に持っておる財産請求権はこれを放棄する、この放棄した事実を考えながら、韓国は日本に対する財産請求権を行使する、こういうことになっておると思います。そこで正式交渉が始まりましたときに、このインドネシア賠償の焦げつき債権という前例がございますから、韓国の方から四千七百十九万ドルに達する焦げつき債権の棒引きを、日本にあるところの財産請求権とからまして棒引きしろという要求が出るかもわからない。出た場合に総理はどう御処理になりますか。この焦げつき債権というものは国民の税金です。もしインドネシアと同じように棒引きということになれば、国民の財産というものはそれだけ減ることになる。これに対してはどういう御方針を持っておりますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 三月一日以後に開かるべき正式会談において、従来の韓国と日本との間の諸懸案がいずれも討議されることになっております。私は午前中に申し上げたように、できるだけ公正なる基礎のもとに、両国の恒久的な友好関係を作り上げるという目的で、これを交渉したいと思います。ただ具体的の問題につきましては、これは一つ一つ今ここでどうするということを申し上げることは適当でないと思います。全体として今申すように、私はあくまでも公正なる基盤のもとに両国のほんとうの理解、将来の恒久的な何を作り上げるという善意のもとに両方が交渉していくのでなければ、非常にこの問題がそれぞれ関連を持っておりまして、ここで一つ一つその懸案問題についての意見を申し上げることは差し控えたいと思います。

成田知巳日本社会党

○成田委員 デリケートな関係にありますから、今ここで意見を言えないということはわかります。しかし当然要求すべきものは要求し、与えるものは与える、卑屈な態度を私はとるべきでないと思う。卑屈な態度をとれば、かえって相手方からさげすまれる。やはり同等の外交をやるべきだと思う、そこで国民が心配しておるのは――これは私が聞くのじゃないのです。インドネシアの賠償問題が起きたときに、焦げつき債権棒引きをやったときに、次は韓国に影響するのじゃないか、これを国民がみな心配しておる。これは各有力社みな一齊に書いてある。国民がみな心配しております。だから正当な要求は正当な要求として当然固持すべきだ、あくまでも守るべきなんです。従って当然の債権ならば、これは要求するというのが当然じゃないですか。インドネシア賠償で焦げつき債権を切り捨てたために、業者は助がつた、貿易業者は助かった、貿易業者は危険負担は全然負っていない。国民の税金でこれを解決しておる。従って韓国との財産請求権の問題でも、要求すべきものは要求し、与えるものは与える。しがし焦げつき債権をそれにからまして解決するということは私はあり得ないと思う。債権は当然債権として要求すべきだと思いますが、いかがですか。もしどうしてもデリケートで言えないというなら、これは重大な問題なんですから、秘密会ででも言っていただきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私が公正な態度で将来の恒久的な友好関係を作るということは、われわれが当然主張すべきものは主張し、与えなければならない、譲るべきものは譲る、あくまでも正々堂々と交渉しろと言われる成田委員のお考えに対しまして、私もそう思う。従ってわれわれの持っておる債権については、当然債権としてこれが返済を求めるということは、これは当然であろうと思います。ただ全体の問題を、私は今申したような基盤において解決したいから、今ここで個々の問題をどうするのだ、こうするのだということを、はっきり申し上げることは適当でない、こう答えておるわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 当然の要求として焦げつき債権の弁済を要求する、これは譲歩しない、こう解釈してよろしゅうございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 今申し上げておりますように、私の念願するところは、日韓の間におけるところの恒久的な平和を公正な基盤の上に作り上げるということでありますから、われわれの当然主張しなければならないものは主張するということを申し上げておきます。

成田知巳日本社会党

○成田委員 岸さんは幾ら主張されても、相手が聞かないといつもへなへなと折れられる。たとえば日米共同声明あるいは沖縄の問題でも、主張はされるが向うが聞かないとそのまま引き下られる。国民はそこに不安を持っておるのです。当然の要求として主張することはあくまで主張して、当然の権利である焦げつき債権の棒引きはしない、こう解釈してよろしゅうございましょうか。それとも場合によっては焦げつき債権の棒引きもあり得る、こういうように解釈してよろしいのですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 今いろいろな場合を考えてみて、いろいろな場合を想定して、いろいろなことの場合にどうするがということを一々お答えすることは先ほど来申し上げておるように適当でない。しがしあくまでも正々堂々として主張すべきものは主張し、譲るべきは譲るという公正な態度を持していきたい、こういうことで御了承願いたいと思います。

成田知巳日本社会党

○成田委員 問題はデリケートですからこれ以上申しません。  そこで藤山さんに同じ賠償問題でヴェトナム賠償についてお尋ねしたいと思いますが、現在までのヴェトナム賠償の交渉の経過を簡単に御報告願いたい。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 ヴェトナムとの賠償交渉は昨年来進行させておりまして、植村甲午郎君が二回にわたって同国に行かれました。ヴェトナム側としてはだんだん折れて参りましたけれども、一億六千万ドルを当初主張しておりました。現在ではそれよりずっと折れてきておるわけであります。今後妥結の見込みはだんだんはっきりししてくるのではないかと思いますが、まだ今日の段階で何とも申し上げがねます。

成田知巳日本社会党

○成田委員 植村特使が交渉されておる労は多とするのですが、新聞紙上その他で見ますと、大体日本が向うに提示しているのは三千六百万ドルですか、あるいは経済協力として千百五十万ドル、合計四千七百五十万ドル、こういう線で交渉しておる、こういうように聞いているのですが、大体の数字は間違いございませんか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 植村特使が植村私案としてある程度の数字を出して交渉をしておられます。私からそれを詳細に申し上げることはできません。

成田知巳日本社会党

○成田委員 その私案にしろ、大体の構想というものはお互いに一致しているのじゃないですか。たとえばこの三千万ドルが三億ドルになるとか、あるいは三百万ドルになるとか、こういうことはあり得ないと思うのです。大体賠償として三千六百万ドル、政府借款として千百五十万ドル、こういう数字についてはお互いに了解し合っているのじゃないですか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 大筋の数字については私どもも了解しておりますけれども、今日まだ交渉中でありますので、その数字がどう動くかということはこの席で申し上げかねます。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そこでお尋ねしたいのですが、大体南ヴェトナムを相手にして交渉をなさっている。ところが御承知のようにヴェトナムは南北ヴェトナムに分れております。もし損害を与えておったとすれば、北ヴェトナムにも相当あると思うのです。その北ヴェトナムはホー・チミンの政権です。このヴェトナムを相手にしていらっしゃる賠償というものは、対象は北ヴェトナムも入っているのでしょうが、それとも南ヴェトナムだけの問題でしょうか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 二年前のジュネーヴにおける四巨頭会談におきまして南北ヴェトナムは統合されることに話し合いがついております。まだその手続が進行しておりません。従いまして私どもは全ヴェトナム人に対して賠償を支払うという気持でおります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 全ヴェトナムを対象にして、しかもまだ統一していないときに、全ヴェトナムに対する賠償を支払う。現にホー・チミン政権は日本政府に対する賠償請求権ははっきり留保している。統一していないのに、統一していない一方を相手にして、全ヴェトナムを対象とした賠償を行うということは非常に危険じゃありませんか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 統一されれば、された政府が日本との関係を引き継いでいく、こう私どもは了承いたします。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そこでその賠償の根拠、これは平和条約十四条に基いておやりになっているのですが、その根拠をお尋ねしたい。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 平和条約十四条であります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 日本としてはインドネシアでは戦争は行なっていないはずです。従って人的、物的損害は与えていないはずです。にもかかわらず、十四条の賠償義務がどこから出ますか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 インドネシアが独立いたしましたときに、オランダとの関係において権利義務を継承して新独立をいたしておるわけでありますから……。

成田知巳日本社会党

○成田委員 いや、失礼しました。ヴェトナム賠償です。これは平和条約十四条によってやっているのがどうか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 これは平和条約第十四条によってやっているわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 ヴェトナムとは戦争は行なっていないはずです。従って、平和条約十四条の適用があるはずはない。人的、物的損害を戦争によって戦闘行為によって与えているはずはない。なぜ十四条でおやりになるのですか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 この点につきましては事務当局の方から……。

成田知巳日本社会党

○成田委員 こんな重要な問題を外務大臣が知らないとは何です。そんなことではだめです。賠償の根本問題じゃないですか。それを大臣が知らないとは何事です。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 事務的な問題ですから条約局長に発言を許しました。条約局長。

高橋通敏外務事務官(条約局長)

○高橋政府委員 戦争中に日本が損害を与えたものでありますから、平和条約十四条の趣旨に従って賠償するということを考えております。

成田知巳日本社会党

○成田委員 平和条約十四条は、日本国は戦争中に生じさせた損害及び苦痛に対して連合国に賠償を支払うということになっている。戦闘行為です。戦争はヴェトナムとの間ではなかった。こういう条約問題を趣旨に従うとは何ですか、外務大臣の答弁をお願いします。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 ヴェトナムに対して戦争中損害及び迷惑をかけたという趣旨に沿うてやっているわけであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 ヴェトナムと戦争をやりましたか。あそこで戦闘行為がありましたか。平和条約十四条というのは戦争で与えた損害だ。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 ただいまインドネシアとオランダの関係で申し上げたと同じような意味で、フランスと仏領インドシナにやったわけでありまして、その点で国としては義務があると思います。

成田知巳日本社会党

○成田委員 日本がヴェトナムに進駐したときは、ド・ゴールが中立を宣言している。ヴィシー政府は中立宣言をしている。従ってフランスと日本との間には戦争はない。従って平和条約十四条は適用される筋のものではない。これを明確にして下さい。その趣旨に従うとは何事ですか。平和条約十四条の趣旨とは何事ですか。それは平和進駐じゃないか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 当時の状況は、御承知の通りフランスのド・ゴール政権との間に戦争状態がありまして、日本軍が今のヴェトナムの地域を占領いたしており、その占領からいろいろな損害と苦痛を与えておるというわけでありまして、いわゆる戦闘行為というものが、何か鉄砲を撃ち合い、爆撃するということの損害だけでなくして、そういう占領しておったという事実から、私はやはりこの十四条の規定の適用はあるものと思います。

成田知巳日本社会党

○成田委員 総理はド・ゴール政権だけを取り上げて言われるのですか、当時のド・ゴールはどこにいましたか。英国に亡命していたのではないですか。英国だけが承認した亡命政権なんです。そのド・ゴールが日本に対して宣戦の布告をしたわけです。フランスを支配しておったヴィシー政府は中立宣言をやっておる。何のことですが、ヴィシー政府は中立宣言をやってるじゃないですが。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 林法制局長官に補足説明をいたさせます。

林修三法制局長官

○林(修)政府委員 今のフランスと日本との関係でございますが、第二次大戦中におきまして、ヴィシー政府は日本に対して中立であったと思います。しがし、ド・ゴール政府は、日本に対して宣戦の布告をしたわけであります。これは、占領後におきまして、結局ド・ゴール政権のあとを継いだフランス国がずっとあとを継いでおりまして、日本とのサンフランシスコ条約にも、フランスが戦勝国側として参加しております。フランスが日本との間において戦争状態にあったということは、この平和条約に参加したことによって、一応フランス側としてはそう考えておるということは当然出てくると思います。

成田知巳日本社会党

○成田委員 それは、フランス側がそう考えているだけで、日本人がそんな不利益な解釈をする必要はないじゃないですか。あなたは一体どこの法制局長官ですか。ド・ゴールというものは、英国に亡命した一亡命政権にすぎない。ヴィシー政府は、そのときは厳然たる政府であった。それを、そう考えますなんという日本に不利益なような解釈をする必要はないじゃないですか。総理は一体どうお考えになりますか。ヴィシー政府は中立宣言をやっておるのですよ。ヴィシー政府は、太平洋戦争が勃発したその年、十二月九日に中立宣言をやっておる。決して日本とフランスとの間に戦争状態はなかった。戦闘行為だって全然ありませんよ。なぜ一亡命政権にすぎないド・ゴールを正式の政府と認められるのですか、その当時の状態で。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 当時のフランス国内のいろいろな政治情勢はありましたろうけれども、このサンフランシスコ平和条約に戦勝国として署名したフランスというものを考えますと、われわれは、やはりこれは相手に戦争状態があったものと考えることが適当である、こう思っております。

成田知巳日本社会党

○成田委員 どうも岸さんは自分の肩の上に自分の頭を載せてものを考えていない。あなたの肩の上に載っているのはダレスの頭が載っておるような感じがします。そこでお尋ねいたしますが、ヴェトナムで戦闘行為はありましたか。戦争は行われましたか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 先ほどお答えをしましたように、この地域を日本軍が占領いたしておりまして、それに伴うところのいろいろな損害や苦痛を与えたと思います。今御質問の狭い意味の戦闘行為があったがどうかということは、私もはっきり知りませんけれども、しかし今の十四条にいっておる意味における損害、苦痛というものに対しては、私はやはり賠償することが適当である、かように考えております。

成田知巳日本社会党

○成田委員 戦闘行為、殺戮行為はながつたはずです。だからこそ、条約局長は十四条の趣旨に沿ってと、こういう解釈をしていらっしゃる。非常に苦しい解釈なんです。従って、直接戦行為による損害を与えていない。そういたしますと、その賠償というものは何ですか、経済上の損害ですか。藤山外務大臣、賠償の対象は何なんですか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 進駐をした結果生じました種々の損害……。

成田知巳日本社会党

○成田委員 種々な損害の内容を一つ言って下さい。殺戮したとか、空爆をやったとか。そういう損害はないと思う。種々な損害の内容を言っていただきたい。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 いろいろの損害のあったことは事実でありまして、今どこに爆撃があったとか、どこに何があったとかいうことを一々私ここでお答えできませんが、そういう意味で総括的に損害があったことは事実だと思います。

成田知巳日本社会党

○成田委員 その爆撃の損害があったとごらんになっておるのですか。戦闘行為による損害があったとお考えになっておるのですか。記憶はないのですか。あったはずはないじゃないですか、戦闘行為が行われていないのですから。経済上の損失が中心だと思いますが、どうですか。今まで政府はそういう交渉をしておられたはずです。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 経済上の損失もありましたろうし、平和にいた人民の生命の損失もあったと考えてもよいのじゃないかと思います。

成田知巳日本社会党

○成田委員 その生命の損失の内容を示していただきたい。そうでないと、賠償の問題を私たちは論議できない。何を根拠にして賠償問題を取り扱っておるのですか。その根拠がわからない。対象がわからないと私たちは審議できないのです。その賠償の対象を言って下さい。明確にして下さい。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 今申し上げたような理由で賠償を……。

成田知巳日本社会党

○成田委員 いやしくも国民の税金で賠償をやろうというのに、賠償の対象がわからないとは何事ですか。その賠償の対象を明らかにして下さい。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 しばらくそのままで……。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 初めから申し上げます。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 静粛に願います。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 ヴィシー政府が戦争の末期につぶれましてド・ゴール政権になりまして、フランスに新しい政治情勢が発生したわけです。それでサンフランシスコ条約はこの新しいフランスが主体となって締結をしておるわけです。それが対象であります。それから、現地に日本が進駐した結果起りました、経済的にも、あるいは精神的にも、あるいは人命的にもあったと思われるそれらの損害を含めまして、われわれは現在の交渉をいたしておるわけでありまして、まだ最終的に決定したわけではございません。

成田知巳日本社会党

○成田委員 政府の特使として植村さんが向うに行って交渉しておるのですよ。交渉するときには、何らかの一つの基礎を持って交渉されなければならぬ。戦闘行為があったかなかったか、当の大臣がわがらないで、それで植村さんが交渉できますが。もう少し賠償の対象を明確にしていただきたい。これは国際問題です。それでなければ審議に応じないです。対象を明らかにして下さい。そんなうやふやなことがあるものですが。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 ただいま答弁をするそうでありますから、しばらくこのままでお待ちを願います。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 南ヴェトナムの方で賠償を日本に要求いたしておるわけであります。それですから賠償交渉に入ったわけです。向うが賠償を要求する問題の基点としては、日本が進駐をしましたときに経済的ないろいろな損害を与えた。たとえば紙幣を発行した、それによる損害でありますとか、あるいは物資を徴発しましたとかというようなことによる損害です。物資の徴発等による損害人命あるいは精神的不安というような、そういうものを掲げてヴェトナム側は要求をいたしておるわけであります。われわれはそれを精査しながら交渉しています。

成田知巳日本社会党

○成田委員 ヴェトナムの要求が経済的な損害あるいは精神的な苦痛あるいは人命その他と言われましたね。これはヴェトナムの要求なんです。あなたの特使が行っているのでしょう。日本はどういう心がまえで賠償交渉をやっているのですか、その心がまえを聞きたいのです。賠償の対象を何に置いているか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 ヴェトナム側と日本側とがその損害に対する感覚が違うということは当然であります。従って交渉をしておるというのです。

成田知巳日本社会党

○成田委員 ヴェトナムと日本との損害の問題については感覚が違うというのは当然と言われた。そうすると、日本としては賠償の対象をどこに置いて交渉しているのか、そこを明らかにしていただきたい。それが大切なんだ。その対象を明確にして下さい。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 今申し上げましたようなものを対象にして、ただ、その損害に対する感覚が違うから交渉をしているということです。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そうしますと、対象は経済的な対象、経済的な損害、それから精神的な苦痛――戦闘行為があった損害というものをお考えになっていますが。戦闘行為によるところの損害、人命の損害というものをお考えになっていますか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 戦闘という激しい行動によってということはわかるですが、進駐に伴います生命の損害ということです。

成田知巳日本社会党

○成田委員 戦闘行為による損害というものを賠償の対象としてお考えになってやっていらっしゃるのかどうか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 一般に賠償を考えます場合に、戦闘行為というものも一つの大きな要因だと思います。

成田知巳日本社会党

○成田委員 もう一回……。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 もう一回御答弁願いたいそうでありますから、大きな声で御発言願います。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 ヴェトナムを除いても、賠償というものの交渉をいたします要因の一つに戦闘行為があることはむろんであります。しかし、戦闘行為で、いわゆる激しい戦闘行為がなくとも、進駐に伴います人命の損害というものはあったと考えます。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そういたしますと、賠償の主たる対象というものはどこにありますか。主たる対象はどこに置いて交渉しておりますか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 それらのものは総合されたものでありますけれども、相手と交渉していることでありますから……。

成田知巳日本社会党

○成田委員 交渉するときは心がまえがあるはずなんです。それなら損害というものはどこにあって、どういう形で損害を与えたか、その心がまえを持って交渉しなければならぬ。相手の言いなりで交渉できますか。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 大東亜戦争に際して、東南アジア国民に迷惑をかけたという点については、われわれ誠心誠意遺憾に思っておるわけでありまして、そういう意味において、賠償というものはできるだけ考えていかなければならぬ、こういうふうに考えます。

成田知巳日本社会党

○成田委員 迷惑をかけたことに対する損害賠償をやられることはわかるのです。どういう形で迷惑をかけたか、どこに迷惑をかけた重点があるか、どういう心がまえで、どこに重点を置いて賠償交渉をしているのでありますか。これを国民は聞きたい。単に抽象的に迷惑をかけたなんといっても、国民は納得しません。もう少し明確な答弁をして下さい。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 外務大臣から答弁がありますから――岸総理大臣から答弁があります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 賠償の問題につきましては、今平和条約の十四条でありますが、これに根拠しているわけであります。これは戦争中に、戦争によって与えた損害及び苦痛を戦勝国に対して日本が賠償するということになっていわけであります。戦争によって与えた損害、苦痛というものは、いわゆる戦闘行為で与えた場合は非常に明確であります。しかしながら、戦争による、これは軍事行動、戦争の行為の一つであろう。よその国の領土を占領して、そこに駐在しているということは、これは戦争によるのであります。これが一般的にその国の人々に精神的な、またいろいろ物質的な損害を与えるということは一応考えられる。しかし、そのものをどういうふうに評価するかということについては、その国の人々が評価するのと、われわれが考えるのとの間には相当の開きがあることも当然であります。われわれは、将来これらの国々との間に恒久的な友好関係を作り上げて、そして互いにその繁栄、また世界の繁栄のために手をつないで行こうというためには、この両方の非常な開きのあるものをできるだけ接近さして、われわれとしては、さっきからお話のある通り、結局は国民の負担でありますから、できるだけこれを少くしたいというのがわれわれの希望であります。また現地の方から言うと、いろいろわれわれから言うとほとんど想像もつかないようなことを精神的な苦痛とし、あるいはいろいろな日常の生活上に与えているものをことごとく頭に置いておくというと非常に大きくなるというのが、従来の各地における賠償問題の交渉の実例であります。ヴェトナムにつきましても、ヴェトナム側が申しておりますことには非常に大きな何があります。特に終戦に近いときに多くの食糧を徴発されて、それがために非常な人命が失われたというふうなことを非常に強く言って、最初の要求額というものは非常に大きかったのです。しかし、これらにつきましても、今日から言って、証拠であるとか、あるいはこういうものをはっきり損害をどういうふうに認めるか、どういうふうな事情であるかということを正確につかみ上げるということは実際上むずかしい事情にあります。しかし、われわれの軍隊が相当にたくさん駐屯してこれを占領しておる。従って、この間に与えた精神的また物質的な損害というものを、われわれは、いろいろな方面から、ある程度向うの要求に対して一部これを賠償していく、これが将来の日本とヴェトナムとの間の友好関係の協力の基礎になるとすれば、相当な国民の負担になってもやむを得ない、しかしそれはあくまでもできるだけ今申し上げたような趣旨においてわれわれとしては払わなければならない、また明確なものに限ろう、こういうことで実は交渉を続けておるわけであります。漸次両方の考え方も接近して参っておりますけれども、今のところまだ両方の意見が一致しないというのが今日の段階であります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 今の総理の御答弁を聞きますと、言葉が多いだけで何ら答弁になっていない。たとえば評価の問題、私は評価の問題を聞いているのではない。総理の御答弁は評価――向うはたくさんを要求する、こっちはできるだけ少くしたい、こういう評価の問題ばかりでやられておる。私たちは評価の前提になる基礎をどこに置くかということを聞いておる。経済的な損害が中心であるか、精神的な損害が中心であるか、あるいは戦闘行為による損害が中心であるか、その基礎を聞いておるのです。答弁にならない。閣議を開いて一つ決定して下さい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 今はっきりお答え申し上げましたように、私は戦闘行為によるところの事実はヴェトナムについてわれわれは大きく考えておらないので、従って、駐屯によって生じたところの経済的及び精神的の苦痛、損害というものを対象にして考えておるということを申し上げたのであります。

成田知巳日本社会党

○成田委員 さすがに総理大臣ですね。明快な御答弁をなさいました。経済的な損害、精神的な苦痛というものが中心だ、従って戦闘行為によるそういう損害というものは考えていない、こういう明快な御答弁だったのですが、そこでお尋ねいたしますが、経済上の損害とか精神的な苦痛――経済上の損害が中心だとすれば、これはもちろん特別円の問題ですね。この特別円の経済上の損害を意味するとすれば、五七年の三月に日本はインドシナ銀行にドルとポンドで合計十六億六千万円払っておる。これで問題は解決しているはずなんです。なぜまた賠償のことを考えていらっしゃいますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私が経済的のなにと申しておりますのは、進駐、占領によっていろいろな及ぼしておる影響、それは経済的の問題もあり、また精神的の苦痛の問題もあるということを申し上げている。これはわれわれが解決をいたしております。向うにおけるところの徴発その他による、経済的の行為による特別円の問題は別途解決をいたしております。従ってこれは含まないことは当然であります。しかし、今申すような経済、たとえばそういう方法によって徴発をした結果として、ヴェトナム人のいろいろな生活に及ぼしている無形有形の損害というものは、これは特別円の対象にならないものです。そういう問題を含んで賠償の対象にしたい、こう御了承願います。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そうしますと、経済的な損害に対する賠償は終ったというわけですね。あとはその精神的な問題。徴発その他と言われましたが、徴発をやったのは全部ピアストル貨を使ってやっているんですよ。インドシナ銀行からピアストル貨の発行を受けまして、それで徴発をやっているんですよ。それが経済的な損害でないということはないじゃないか。当然それは含まれている。それで、あなたの言われているのは精神的な漠とした損害だけですか。徴発はインドシナ銀行からピアストル貨を発行してもらった。それに見合った金額というものは正金銀行でちゃんと積み立てているのです。その帳簿残というものを五七年三月に十六億円として払っている。そうすると、あとは精神的な苦痛だけですが、賠償の対象は。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 この特別円で解決しているものは、明確にいわゆる経済行為の対象となるようなものに対する決済のしりを、あれで解決したということでございます。しかし、占領が与えているところの苦痛というものは、精神的なものはもちろん大きなものがあります。私が経済約なということを申しているのは、そういうことに関連して、彼らの生活がある地域から離れなければならなくなったとか、あるいはそれに伴いましていろいろな生活上の変化を来たしたというような問題は、やはり経済的の損害として考える。単純な精神的な問題としてだけ見るべきものじゃなかろうと思う。こういうものを含めてわれわれとしては将来の友好関係というものを考えてこの賠償問題を適当のところにおいて確定したい、こういう意味で交渉しております。

成田知巳日本社会党

○成田委員 そうしますと、十六億円というので大体ピアストル貨の発行に対する損害というものは帳消しになった、あとの精神的な苦痛あるいは準経済的な損害、こういうものに対しての損害を今お考えになっている、こういうわけですね。これは総理も御承知と思いますが、ヴィシー政府と日本とは支払い協定を結びましたね。そうして経済的な損害に対するそれに見合うもの――インドシナ銀行に対するピアストル貨の発行なんですが、それに見合うものを正金銀行に積み立てている。そうして終戦当時の帳簿残というものは四十八万ドル、十二億円だったはずですね。この四十八万ドル、十二億円を五七年三月に十六億円として払って、そのときに解決したはずなのです。まだ損害があるのですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 ちょっと私、法律的の構成については別に発言させますが、今お話しの点は、日本に持ってきた物資なり何なりに対する支払い代金の正金銀行に積み立てたところのものの解決の問題じゃないかと思います。従いまして、今われわれが考えている戦争による向うに与えた精神的経済的の苦痛、損害というものと別の問題じゃないかと思います。

成田知巳日本社会党

○成田委員 日本に持ってきたものじゃない。うしろの方でもそうじゃないと言っている。与党の諸君はよく知っている。これはインドシナ銀行をして――日本の進駐した軍隊がいろいろ物資を徴発した。そのとき、ただでは徴発できない、買えないものだから、インドシナ銀行にピアストル貨の発行を求めた。それに見合うやつ々正金銀行に積み立てた。従って、日本に持ってきた品物の代金でない。そうすると、あなたの前提はすでにつぶれてしまっている。それじゃだめだ。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 外務大臣が答弁すると言っておりまいす。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 先ほどからだんだん答弁が充実して参っておりますので、お聞き取り願います。

藤山愛一郎外務大臣

○藤山国務大臣 ……というようなこの事実から紀る経済的損害というものは相当にあるということは御承知の通りだと思います。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 このままの姿でしばらくお待ち下さい。  この際暫時休憩いたします。     午後五時六分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕

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