P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
28回国会衆議院1957/12/23

本会議 第2号

発言数
22
登壇者
13
会派数
2
開催日
1957/12/23

会議録

益谷秀次自由民主党議長

○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————  一 自衛隊に対する米国からの誘導弾供与に関する緊急質問

益谷秀次自由民主党議長

○議長(益谷秀次君) 本日の日程に掲げました緊急質問一及び二を逐次許可するに御異議ありませんか。

益谷秀次自由民主党議長

○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。  自衛隊に対する米国からの誘導弾供与に関する緊急質問を許可いたします。石橋政嗣君。

石橋政嗣日本社会党

○石橋政嗣君 私は、日本社会党を代表いたしまして、去る十二月十九日の安全保障に関する日米委員会において、アメリカが自衛隊に対し誘導弾を供与することを決定した問題について、総理並びに関係閣僚に対して質問を行わんとするものであります。  本問題に関して私がまず第一に指摘いたしたいことは、この重大な決定が全く突如として安保委員会において行われたという事実であります。この日の安保委員会において、自衛隊の装備の近代化の必要性が論議され、直ちに誘導弾の供与というような重大問題が決定されるなどということを予期した者は、果して何人いたでありましょうか。おそらくは閣僚の諸君すらも全部は知らなかったのではないかと思うのであります。その証拠に、二十日の閣議において初めて受け入れを承認いたしておるのであります。にもかかわらず、共同発表には、米国政府は日本政府の要請に応じ空対空誘導弾サイドワインダーを供与する旨を明らかにしたとありますが、これは明らかに国民を欺瞞するものであります。最大限度に譲歩して考えてみましても、日本政府の要請があればという言葉の間違いであろうと私は思います。なぜなれば、もしこの発表が事実であるとするならば、それは今までに総理及び防衛庁長官が国会において明らかにしてきた発言と全く相反するからであります。  御承知の通り、わが社会党は、最近の目ざましい科学の進歩、特にソ連における人工衛星の打ち上げ、大陸間弾道弾の完成という新事態に即応する防衛、外交方針の確立の必要性を早くから主張して参りました。そして、その方針こそ、平和憲法の擁護であり、戦争にいかに備えるかでなくして、戦争をいかにして阻止するかでなければならないと訴え続けてきたのであります。しかるに総理あるいは防衛庁長官は、再三にわたってこれを否定し、大陸間弾道弾や人工衛星の問題から直ちに情勢が変ったものと見るのは飛躍であると答え、さらに、本年六月に決定を見た国防方針あるいは防衛計画の変更の必要はない、通常兵器による防衛をわれわれは考えているのであって、各種新兵器については当面研究開発にとどめる旨の方針を述べてこられたのであります。これはつい先日までの事実であります。  さらに、付言いたしますと、去る十一月五日の予算委員会において、わが党の河野密議員の質問に答え、津島長官は明確に、ミサイルを買うという交渉をしたことも、先方から申し込まれたこともないと言明いたしておる事実があります。それからわずかに一カ月余、いかなる情勢の変化があったというのでありましょう。もし変化があったとすれば、アメリカの日本に対する態度に現われた変化であると私は思います。確かにアメリカがNATO首脳会議に臨んだと同じ態度で、アジアに対し、ひいては日本に対して臨んでくるであろうことは、つとに予想されたところでありました。すなわち、ソ連周辺基地に各種誘導弾、IRBMを配置して、核兵器の貯蔵を行うことによってソ連のICBMに対抗しようという考えがそれであり、かは、同盟各国に小型原子兵器、ミサイルを保持せしめて、局地戦に備えさせるという構想がそれであります。そして、この構想が、侵略に対しては核兵器をもって報復するという威嚇によってのみ戦争は阻止できるという、誤まった思想に基くものであることは言うまでもありません。かかる危険思想はさすがに西欧諸国も承認することができず、欧州大陸の各国がこぞって抵抗を示したのが、このたびのNATOの会議のありのままの姿であります。なぜに、政府は、国内において一回の論議を行うこともなく、このような構想を無批判に唯々諾々と受け入れられようとするのであるか、私は強く詰問をいたしたいのであります。おそらく、総理はNATOの会議とは関係がないと申すでありましょう。しからば、なぜに安保委員会は、供与が決定を見る前において、開会中のNATO会議に関する米側提供の材料に基いて、同会議の目的を検討する必要があったのでありましょう。また、ソ連が、今回のこの決定に対し、NATOにおける失敗を日本において取り戻そうとするものであると述べている事実を何ととるか、この点についても、あわせてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  また、さらに、核兵器とも関係はないと言うでありましょう。しかしながら、自衛隊が誘導弾を実際に保持するということは、在来兵器から新式兵器べの道を歩み始めたことを意味するのであります。サイドワインダーの性能のいかんを問わず、原子弾頭の有無にかかわらず、これはミサイル時代に対応しようという身がまえを示したことを意味するものであり、その限りにおいて一時期を画するものといわなければなりません。そして、このような質的な転化をあえて行わんとする以上、さらに強力なミサイルを、さらに有効なミサイルをと、果てしなく欲望は拡大され、やがて核兵器へという終着駅に行き着く以外に道はないことは、戦力を保持する場合の常識であり、さきの総理の答弁「自衛のためならば核兵器の保持も違憲ではない」に照らしても明らかであると思うのでありますが、いかがでありましょう。ましてや、アメリカが、自衛隊すらミサイルを持っているではないかとして、より完全なもの、そして核兵器を持ち込んでくるときに、どうしてこれを拒否することができるでありましょう。これらの持ち込みを認めなければ日本防衛の責任を負うことはできないと言い張ったときに、あるいは在日米軍が敵対行動に入って実際に使用したときに、しからば総理はいかなる措置をとるというのか、この点についても、とくとお伺いいたしたいと思うのであります。  なお、前にも述べたように、自衛隊が、研究開発用としてではなく、実戦用として誘導兵器を保持することは明らかに防衛計画の変更を必要とする重要事項であります。なぜに十分なる論議をしないまま安保委員会などで決定を見たものであるかをお尋ねいたしたいと思います。少くとも独立国としての自主性を絶えず口にする総理が、かかる問題を国防会議に諮ることもなく決定することは絶対に許されないと思いますが、いかがなものでありましょう。依然として計画が現実を追うというがごとき不始末を来たすことになると思うのでありますが、今後あらためて国防会議に諮る所存であるかどうかをお伺いするわけであります。  もし諮るとするならば、各種新式兵器は当面研究開発の面に力を注ぐという防衛計画と必然的に矛盾を来たすことになるのでありますが、この際、日本は独自のぺースを守っていくという建前から、あらためてこの受け入れを拒否する考えはないものか、お尋ねいたしたいと思います。あくまでも受け入れの方針を変更しないというのでありますならば、ここに新しく多額の経費を伴うことになるのであります。政府は依然として昭和三十五年までに陸上自衛隊をさらに二万人増員するというがごとき計画も並行して実施するつもりであるか。そうであるとするならば、膨脹する防衛予算と国家財政の関連は一体どういうことになるのか。この点についてもお触れを願いたいと思います。もし、在日米軍の大量撤退に伴って、従来の防衛分担金削減方式によって減らされる額以上に防衛分担金が減額される見通しがあるのだと、このようにお考えならば、この点のお答えも願っておきたいと思います。  なお、われわれが今回の供与決定に当って納得のいかない点を申し上げますならば、日本政府は一昨年から研究開発用として七種類の誘導弾の供与をアメリカに要請していたのでありますが、これが実現を見なかった理由、今回のサイドワィンダーの供与がこれに優先した理由は一体何かということであります。もしその理由が秘密保護の措置が不十分であるということにあるのであるとするならば、サイドワインダーの受け入れに当って新たな秘密保護法制定の必要はないという政府の説明と矛盾するように思われるのでありますが、いかがなものでありましょう。このサイドワインダーは研究開発の用には供しないという約束になっているものか、お伺いいたしたいと思います。それとも、秘密保護を必要としないほどすでに陳腐なものだというのでありましょうか。あるいはまた、秘密保持を云々しておられないほどアメリカのICBM等の劣勢からくるところの焦慮ははなはだしく大きなものとなったというのでありましょうか。この点、納得のいく御説明をいただきたいと思います。  サイドワインダーの性能、核装備の可能性、供与の方式、引き渡しの予定期日、数量、価格、自衛隊における装備の方法、受け入れに伴う本、明年度の予算措置等についても御説明がいただければ幸いであります。  最後に、私が総理にお尋ねいたしたいと思いますことは、安保委員会の使命、性格であります。総理渡米に当って国民が最も関心を払った問題がいわゆる不平等条約の改訂にあったことは、御承知の通りであります。ところが、この問題が諸種の都合により実現を見なかったことは、総理の説明を待つまでもなく明らかなところでありますが、総理は帰国後、機会あるごとに、安保委員会を設け、この中で両国政府が話し合うことによって実質的な条約改訂に匹敵する運用を行うことになったと言明して参りました。しかしながら、この言明も、さきの国会の審議の中で次第に真実性を欠いてきたことは、争うことのできない事実でありますが、今回の本委員会における誘導弾供与の決定は、さらに国民の不信と疑惑の感を深めたものと言えます。すなわち、今までに開かれた四回の会合において、在日米軍の具体的な撤退計画を含め、その配備及び使用について協議せられた形跡がないのはもちろんのこと、不平等条約改訂に関する熱烈な日本国民の願望が何ら取り上げられた跡を見ないにもかかわらず、日本の再軍備強化、そして、アメリカ原子戦略体制べの積極的参加と目される今回の決定のみが先んじて行われているという事実であります。  安保委員会の使命は、まず第一に不平等条約の不平等性の是正、ひいてはその改訂にあるというのは総理の一人合点ではないのかと言いたいのであります。アメリカとしては、今回の措置でも明らかなごとく、また、かつてのダレス言明にも明らかなごとく、あくまでも、本委員会の目的の第一は、安全保障の分野における日米協力体制の強化に資するためにありと考えているのではないのか。私は両国のこの食い違いについて十分なる説明を総理にお願いいたしたいと存じます。総理がこれ以上国民の不信感を深めることを避けるためにも、絶対にこの点は必要だと思いますので、安保委員会の真実の使命をこの席で明らかにすることを要請いたしまして、私の質問を終りたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  今回、安全保障に関する日米委員会におきまして、空対空の誘導弾を日本に供与することについて日米両国の委員の間に意見が一致したという問題に関連しまして、いろいろな疑問が提起をされております。第一に明確にしておかなければならぬことは、今回われわれが供与を受けようとしておるところのサイドワインダーなるものは、決して一部の人が誤解し懸念を持っておるような核兵器の一部をなすものでないということであり、また、同時に、最近NATO会議において論議されておるミサイルの一部をなすものでないということであります。言うまでもなく、われわれは、自衛隊の兵器の近代化につきましては、将来におきましても、いろいろな研究もし、また改善も加えて参っており、わが内閣としても、量よりも質に重きを置いて防衛力の漸増を企図しておることから申しましても、われわれのこの自衛隊がなるべく近代的装備を持つということは当然のことであります。ただ、私は、従来も明確にいたしておりますごとく、日本の自衛隊を核兵器をもって装備する考えもなければ、また、アメリカの原子力部隊の日本に駐留することを認める意思は全然持っておらないということであります。従いまして、これが受け入れの拒否の意思があるかということでありますが、そういう考えはございません。  さらに、最後に、安保条約に関する日米委員会のいわゆる安保委員会の使命についての御質問でありましたが、これは、すでに八月に設置せられるときに明確に示しておりますごとく、安保条約に関連し、これから起ってくるところの各種の問題を日米両国において協議する機関であります。私は、日本の安全を保障するために、この安保条約というものの運用もしくは将来に向ってのこれが検討につきましては十分両国の国民の意思であるとかあるいは国際情勢に適応して誤まりなからしめることが必要であります。こういう意味におきまして、各般の問題に関して協議することは当然であると考えております。

藤山愛一郎外務大臣

○国務大臣(藤山愛一郎君) 石橋議員の御質問に対してお答えを申し上げます。  安保委員会の運営につきましては、当時発表されておりますように、日米安全保障条約に基く諸般の問題につきまして、両国の国民の願望に沿うようにこれを検討いたしていくということでありまして、われわれは、今日までの運営において、それらのものを十分検討しながら、その基礎にあります諸般の問題についてお互いに話し合いをいたしておる段階でございます。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(津島壽一君) 石橋議員の御質問中、すでに総理大臣並びに外務大臣から答弁のありました点以外の点につきまして、私からお答えを申し上げます。  今回サイドワインダーの供与受け入れの問題が起りましたが、これは安保委員会において協議し、しかして実際の決定は政府においてなすべきものでございます。今後の政府交渉において、このサイドワインダーを、どの程度、いっこれを受け入れるかという問題は、全然、今後慎重に検討されるべき問題でございます。  なお、この場合、サイドワインダーの性格について一言申し添えておきます。これは今日まで私どもが考慮した自衛隊の質的増強ということの目的のためにあるのでございまして、いわゆる世上でいう原子爆弾はもちろん、誘導弾として考えられておるものとは根本的に性質の違うものでございます。従って、このサイドワインダーの受け入れということは、従来の方針を実行する一つにすぎないのでございます。  なお、受け入れに伴う予算関係のことについても御質疑があったように思います。この予算関係の問題は、まだ検討いたしておりません。  なお、秘密保護法との関係においては、これは装備品として、従来のMDAPの関係で、現行の秘密保護法によって十分であると思っておるのでございまして、何ら改正する必要はございません。  以上の問題について私よりお答えいたします。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) サイドワインダーと予算の関係については、ただいま申し上げるべき何ものもまだありません。この分担金の問題につきましては、ただいま検討中であります。大蔵大臣としては最善を尽すつもりでおります。      ————◇—————

益谷秀次自由民主党議長

○議長(益谷秀次君) 教職員の勤務評定に関する緊急質問を許可いたします野原覺君

野原覺日本社会党

○野原覺君 私は、日本社会党を代表いたしまして、教職員の勤務評定につき緊急質問をいたさんとするものであります。  教職員の勤務評定に関しましては、愛媛県におきまして過去一年有半にわたって紛糾を続け、本月二十日全国教育委員長協議会は試案を決定し、文部省はこの試案を参考として、全国的にすみやかに実施させようとしておるのであります。  申すまでもなく、教職員の勤務評定は、教職員の勤務とは教育でございますから、その教員の教育を評定することなのであります。もっと詳しく言えば、児童、生徒の教育を評定することでございまして、子供がどのような人間として成長しているかを評定することなのであります。従って、教職員の人格とか、教育技術ないしは教育愛、子供に対する影響感化等、目に見えない内面的なものの評定でなければ、教職員の正しい勤務の評定とは申せません。こうなって参りますと、教職員の勤務を評定することは実に容易ならぬことでございまして、このことは、地方公務員法制定以来八カ年の長きにわたって放置されてきたことから見ても、うなずかれようかと思うのであります。  もとより、私は、人事の科学的管理ということを否定するものではありません。しかしながら、人事の科学的管理のために勤務評定を行うということならば、その科学的管理のための勤務評定は、十分な研究を行うことなくしては不可能なのであります。今日政府が考えておりまするように、これを形式的に強行するというようなことになって参りますと、かえって教育を低下し、教師の人格を傷つけ、その自発的で創造的な教育意欲をそこない、一歩誤まれば、教育の破壊を招くであろうことは否定できないのであります。去る十八日、新聞でごらんのように、日本の教育学者で組織する日本教育学会は、教師の職務の特質を忘れた勤務評定の実施には反対であるとの声明書を発しておることも、これを裏書きしておると思うのであります。  なお、また、今日世界的に教職員の勤務評定について最も研究をしておるのはアメリカでございまするが、そのアメリカにおきましてすら、アメリカの教育関係者の職能団体でございまするアメリカ全国の教育協会が、一九五七年度、本年度の大会におきまして、次のように決議をしたのであります。勤務評定を強行することは、教師の職能的諸関係、職能的道徳を破壊し、教師と行政官の間に闘争を引き起し、学校をひっくり返すようなあつれきを作り出すと決議をしておるのであります。この決議は、今日の日本教育界の紛糾をアメリカの教育界が予見しておるように私は思えて、実に不思議に感じておるのであります。  そこで、私は文部大臣にお尋ねをいたしたいのでございまするが、その第一点は、学問的にも研究が浅く、実際的にも経験のない教職員の勤務評定を唐突に実施することは、教育的にも悪影響を与えるばかりか、これが実施に当っては、学者の意見を聞き、国民世論にも問い、十分な研究を遂げた上で、慎重になされなければならぬと私どもは考えまするが、文部大臣はどのような御意見を持っておるか、承わりたいのであります。  なお、さらにお尋ねしたいことの第二点は、勤務評定を強行したことの結果といたしまして、教育界に混乱と紛糾を巻き起した場合、一体その責任はだれがとるのかということでございます。私は、当然これを強行する側がその責任をとらなければならないと思うのである。しゃにむに強行しようという文部大臣ないしは政府がその責任を負うべきものと思いまするが、文部大臣はいかにお考えでございまするか、承わりたいのであります。  質問の第三点は、文部大臣は、さきの臨時国会におきまして、教職員の勤務評定基準案は文部省において目下検討中でありますと答弁をしたのであります。しかるにもかかわらず、一昨二十一日の新聞によりますると、全国教育委員長協議会試案をもって全国に実施させると、文部大臣談話が発表されておるのであります。せっかく文部省が慎重に検討していたというその基準案は、どこにどうなったのでございましょうか。文部省は、私の考えによりますると、この基準案をうっかり出すと国会において追及されるために、おのれの責任を回避するために、これを全国教育委員長協議会にすりかえて、全国教育委員長協議会試案の形で出てきておるというこのことは断じて許すことはできないのであります。  質問の第四点は、文部大臣は、これまた、さきの臨時国会におきまして、勤務評定は信賞のものであって、必罰のものであってはいけないということを申しておるのであります。また、勤務評定と定期昇給というものは直接関係があってはならない、同時に、勤務評定をやらないからという理由で昇給をさせないことは間違いであると断言をされたのであります。ところが、愛媛県の実情を私ども調査いたしてみますと、愛媛県におきましては、県の財政が赤字であるからという理由で、昭和三十一年度におきましては三割の昇給ストップを行うために、今年度、昭和三十二年度におきましては一割の昇給ストップを行うために、これを出さなければ昇給をさせないというような指令を出して、強行しておるのであります。なおまた、愛媛における問題が非常に紛糾いたしましたときに、愛媛県の教育委員会並びに教育長は〇・五の勤勉手当を支給しない、〇・五の勤勉手当を支給しないばかりか、愛媛における自民党の県連支部は決議をいたしまして、もし校長が勤務評定を出さないならば、厳重な処罰をするとともに、学校建築までも停止するというようなことを申しておるのであります。まことに正気のさたとも思えないのでございまするが、一体、文部大臣は、このような必罰の勤務評定は承知できないと言いながら、愛媛県においては必罰の勤務評定が出されておる。にもかかわらず、あなたはいかなる指導、助言を愛媛県教育委員会に対して行なったか、明確なる答弁を願いたいのであります。  私どもの知るところによりますると、愛媛県当局に対し、文部省は何らの注意をも喚起していないのであります。間違った勤務評定を強行する愛媛県の教育委員会を支持、鞭撻しておるのであります。これは松永文部大臣の良識がそうさせたのでございましょうか。それとも、松永文相は、自民党の圧力によって、心ならずも指導、助言をしなかったのか。新聞によりますと、あなたは自民党の総務会に呼びつけられて圧力をかけられたやに報道をされておるのでございまするが、事実であるか、承わりたいのであります。  質問の第五点、文部大臣は、教職員の勤務評定はきわめてむずかしいから、万人の納得するものを作り出した上で実施しなければならないと申しておるのであります。ところが、今回、二十日に発表せられました全国教育委員長協議会試案なるものは、果して万人の納得するものと考えるかどうか。文部大臣は、これを早急に実施するというのでございますから、二十日に突如として出されて参りました教育委員長協議会試案というものは万人の納得するものと考えておるのでございましょうかどうか。今日、日本の教育学者は、この試案に対して痛烈な批判をしておることを、文部大臣は御承知でないようであります。そこで、この際、この試案を中心に、われわれは真摯な検討を加えることによって、国民の世論に問うことによって、真に人事の科学的管理を来たすような教職員の勤務評定をすることが必要であると信じておるのでございますけれども、かすに時間をもってしないで、早急にこれを強行するというその意図は那辺にあるのか。私は、教員の勤務評定が非常に問題があるにもかかわらず、これを緊急に実施しなければならないというその緊急の必要性は那辺にあるのか、何らかの政治的意図があるのではないのか、この点を文部大臣に明確に御答弁願いたいのであります。  次に、総理大臣に対して質問をいたします。ただいま文部大臣にお尋ねいたしましたように、間違った勤務評定をしておる愛媛県教育委員会に対し、あなたの政府、あなた自身並びにあなたの率いる与党・自由民主党の諸君は総務会を開きまして、三浦組織委員長を先頭に、大挙愛媛に乗り込んだのであります。そうして、この教育委員会の問題に非常な関与したことは、総理大臣御承知の通りであります。私どもは、このことは、明らかに教育基本法第十条が規定しておりまする「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」という、教育基本法第十条の精神にそむいた行動であると考えまするが、あなたはいかにお考えになるか、承わりたいのであります。  次にお尋ねをいたしたいことの第二点は総理大臣にでございまするが、その第二点は、教員の勤務評定と教育本来のあり方についてのお考えであります。御承知のように、勤務評定におきましては、教員を校長が採点するのであります。学校の校長は教育委員会が採点をするのであります。教育委員会は——今日、都道府県の教育長は文部大臣が拒否権を持っておるのでございまするから、実質的には、教育委員会は文部大臣の掌握下に置かれておるのであります。しかも、その文部大臣は、政党内閣の文部大臣でございまするから、党の方針に絶対に拘束をされるのであります。そこで、私が疑問に思いますることは、校長を評定する教育委員会というものは、御承知のように任命制なのであります。選挙ではないのであります。去る第二十六国会におきまして、国民世論が強硬に反対するにかかわらず、任命制の教育委員会にしなければ、おのれの考えを実施することができないというので、多数の暴力をもって任命制教育委員会を実施したことは御承知の通りであります。そこで、教育に何らの定見もない、何らの見識もない——たとえば、言葉の例は、これは誤解を与えてはいけませんけれども、教育の「き」の字も知らないような、地方議会の議員の選挙に落選して、名誉職であるからそのポストがほしいといったような人間が、さらに今日教育委員に任命をされておるのであります。こういう諸君が、学校の校長さんの学校経営とか、そういったようなものの採点ができると、皆さんお考えでございまするか。これをやろうというのである。しかも、教員の点をつけた校長さんのその通信簿に、これまた教育委員会が調整をしようというのであります。しかも、文部大臣は、先ほど申し上げましたように、政党内閣の方針に従わなければなりません。特に、松永さんは、失礼でございまするが、たびたび自民党の総務会に呼びつけられては圧力をかけられておるのであります。こうなって参りますると、勤務評定というものは、下手をすると、政府とか政党という強大な政治権力が一人々々の教員を拘束してくる。文部大臣は政党から、教育委員会は文部大臣から、校長は教育委員会から、このように拘束をされてくることになるのでございまするが、こうなりますると、新しい教育が考えておりまする国民のための教育というものは台なしになってしまうのであります。このことに対して、総理大臣は、政府は、政党権力者のための教育にならないために、勤務評定についてはいかなる配慮をされておるのか、承わりたいのであります。  戦争前の教育というものは、だれもが御承知のように、命令統制の教育であったのであります。完全なる中央集権の教育であり、官僚統制の教育であったことは、申すまでもないのであります。教育というものが戦争中は久しい間軍閥、官僚の意のままに支配されてきたことは、国民すべてが知っておる通りであります。文部省の役人が原案を作って、その原案が国会にかからないで枢密院に持っていかれる、そうして、枢密院で勅令、省令、訓令という形になって都道府県の知事に流され、都道府県の知事は学校長に流す、学校長は教員に流す、教員はその勅令、訓令に基いて子供たちに号令をかけたというのが、戦争前の教育であったと思うのであります。その結果、御承知のように、悲惨なる戦争が始まり、敗戦のどん底に日本は追い込められておるのであります。そこで、私は総理にお尋ねをいたしまするが、あなたは長い間日本の官僚として国民に臨んでおったのであります。しかも、あなたは、戦時中軍閥と組んで国民を支配した、いわゆる指導者であったのであります。その国民に臨んでおった官僚岸信介、かつて指導者であった岸さんが、今日いかなる反省をこの命令統制の教育に対して持っていらっしゃるか、その反省を、とくと私どもは承わっておきたいのであります。  最後に、——私は、時間がございませんから、これをもって最後にいたしまするが、道義の高揚についてお尋ねをいたします。岸内閣は、組閣以来、文教政策に重点を置くことを声明されておるのであります。特に民族精神の涵養と道義の高揚につきましては声を大にして叫んでこられたのであります。自民党の政策を私ども拝見いたしましても、民族精神の涵養と道義の高揚、こういうことをうたっておるのであります。なるほど、道義の高揚はけっこうであります。道義国家を樹立することも、私ども、もとより賛成でございまするけれども、しかしながら、今日の政治の現実は売春汚職が続出をしておることを、あなたはどのようにお考えになっておるのか。道義高揚を説かれる岸総理の政治のもとで、道義高揚を特に掲げたあなたの率いる政党の中から、売春汚職は遺憾ながら続出しておるのであります。口では道義の高揚を言うけれども、政治の現実は売春汚職ではないかと、国民は非常な憤りを持っておるのであります。私どもは、この憤りに対して、何と国民に弁解をしたらよいのか。私は、今日政府の最高責任者であり、与党である自民党の最高の責任者である岸総理が、この際、この壇上から、売春汚職はきわめて遺憾なことであり、道義の高揚を口にしておるわれわれとしてはきわめて残念なことであると、謙虚に陳謝の意を表すべきではないかと思うのでありますが、いかがでございますか。私は、岸さんが率直に謙虚にこの壇上から陳謝の意を表することこそが、道義を確立することであり、おのれみずからの道義を正しくすることであり、政治道義を確立することであると思うのでございまするが、これに対する岸総理の御所見を承わりたいのであります。  以上で緊急質問を終ります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  第一の問題は、愛媛県における勤務評定の問題に関して、政府あるいは自民党においてこれに介入した云々、あるいは不当な圧力を加えておるというような意味の御質問でございましたが、これは全然そういうことはないのであります。ただ、私どもとしては、行政当局の職務遂行が、一部の人々によって、あるいは教職員組合の行動によって、当然職務を遂行しなければならぬということが阻止されるような事態は、これは民主主義の国において、法治国において、許すべからざることである。従いまして、政府及び公党たるわが与党がこれに対して意見を明らかにすることは当然であると思っております。決して不当な干渉ではないと思います。  次に、教育の中立性に関する問題、教育委員会の法律が改正をされて、文部大臣の権力が不当に教育に及ぶのじゃないかという懸念に関する御質問でございました。私は、教育はあくまでも中立的で、その中立性をあくまでも堅持しなければならぬことは、皆様とともに同じ考えであります。しかるに、過去におきましても、一部の思想的団体によってこれが偏向の教育が行われておるごとき事実は、われわれの最も遺憾とするところでありまして、あくまでもその中立性を堅持するという立場に立っておりますから、これがために権力を乱用して、その中立性を害するがごときことは、絶対にいたさないつもりであります。  最後に、道義の高揚に関しまして、最近いろいろと汚職に関する問題が出ておる、これは非常に遺憾ではないかという御質問であります。私は、教育そのものの内容において、道義の高揚について、われわれは大いに考慮しなければならぬが、その前に、政治を清潔にし、国民がこれに対して信頼を持つような姿にならなければならぬと思います。従いまして、私は、就任以来、私の全力をあげて三悪の追放のためには努力をいたしております。従いまして、この途上におけるいろいろな事態に関しましては、私はあくまでも政治の清潔を堅持するという見地において、われわれはこれについてはいかなる犠牲も払う覚悟でございます。

松永東自由民主党文部大臣

○国務大臣(松永東君) 野原議員の御質問に対して、私に対する分について御答弁をいたします。  その第一は、勤務評定は、わが国では学問的な研究もないのであるから、実施に当っては、学者の意見を聞いて、さらにまた世論にも問うて、十分研究の上、慎重を期すべきである、こういう問題であります。御承知の通り、勤務評定は、職員の研修、適正配置、昇給、昇進、褒賞等、人事管理をより適切に行うための基礎資料として必要なものでございます。これを実施して教職員の人事管理の適正を期そうとするところであります。申すまでもなく、精励恪勤の努力者と職務に不熱誠な者と同様の取扱いをするということは悪平等でございます。不平等でございます。勤務評定については、すでに各方面で実施せられ、研究せられておるところであります。国家公務員にありましては、人事院の規則に従って各所で実施せられており、地方公務員にあっても、多くの都道府県で実施せられておるところであります。また、民間にあっても、大会社等において種々実施を見ております。勤務評定を実施して人事管理の公平をはかることは、かくのごとく各方面で進められておるところでありますから、教職員だけが勤務評定のうち外にあるということは言えますまい。教職員だけが治外法権者ということは、私は言えないと思います。勤務評定の内容につきましては、教育長協議会でも十分各方面の意見、研究を参照して検討を尽したことと思うのでありますし、文部省といたしましても研究を遂げているのて、現在のところ、このために特別の機関を設けるという考えはございません。  さらに質問の第二は、評定実施の結果、教育界に紛糾と混乱の起った場合、一体その責任はだれが負うのか、こういう質問でございます。勤務評定は人事管理上必要なことでありまして、法律に基いて行わなければならぬことは、これはもう当然でございます。行政上の責任者でありまする私どもといたしまして、法治国の政治を取り扱うのには、やはり法律に従っていかなければなりません。政府がこれを推進することは当然でございます。教育委員会の適切な処置と、教職員諸君の良識によって、今後あまりごたごたもめないで、円滑にいけるということを、私どもは期待しております。  さらに御質問の第三点は、一体文相は検討中と答えていたが、今回教育委員会案で実施せられるのは、文部省の責任回避のためじゃないか、こういうような御質問でございます。ところが、御承知の通り、こうした勤務評定を実施するということ、さらに、教育問題について主導者は都道府県の委員会でございます。私どもは、あるいは援助、あるいは指導、助言をするという、いわばわき役ですな。でありますから、都道府県教育長協議会は、自主的に研究をして、そうして成案を得たのでございます。この試案は、教職員の勤務評定の実施または計画の直接の責任者である今申しました教育長各位が長い間慎重に審議を重ねた結果得た案でございますから、大体満足すべき、けっこうな案だと信じております。  その質問の四番目は、評定は信賞のつもりであり、必罰のためのものではない、そうしてまた昇給とは無関係、こういうことを私が言っておったが、愛媛の場合、赤字だから三割昇給停止をやったじゃないか、こういうことをお述べになっておる。質問せられておる。自民党県連支部の圧力によって処罰をした、あるいは校舎建篠を停止すると言っておった、あるいは、松永文相自身が自民党総務会に呼びつけられて圧力を加えられた、こういうことを質問せられております。これはみんな違っております。勤務評定は、人事管理上の参考資料として、職務能率の向上をはかるものであります。校長が組合その他の勢力に圧せられて勤務評定を提出しないということは、まことに遺憾千万と存ずるのでございます。愛媛の勤務評定は決して間違いを犯したものとは考えておりません。三割の昇給ストップという事実もございません。さらにまた、学校建築を勤務評定を出さないからさせないとか、許さないとか、そんなことを私どもは聞いておりません。なお、私が自民党の総務会て圧力をかけられたなんていうことは全然ございません。私どもは、この年まで長い間政党員をやっておりますけれども、こんな問題で圧力をかけられるとか何とかいうことは絶対にございません。しかし、政党員でございますから、総務会や幹部会あたりに出席をして報告することだけは当然のことであります。一つも圧力をかけられたなんていうことはございません。  さらにまた第五の質問であります。納得のいく案を作って実施したいと言っておったが、今回の案を納得のいく案と考えるか、教育界あげて反対している事実についてどう考えるか、こういう御質問です。大体、この試案の内容は満足すべきものと考えております。納得するものと考えております。良識を持たれた人ならば、なるほど適当な案だとお考えになっている。私どもは、こうした問題について、校長さんあるいは教員諸君もあげて賛成しておると思う。決して反対しているとは思わない。しかし、これはゆっくり実情を調査して、そして、いつも私が言っている通り、話せばわかる、了解さえすれば、きっとわかるのであって、了解しておらぬところが反対をしておる。どうぞ、一つ、議員諸君におかせられては、われわれの意のあるところを御了察賜わって、この案が、スムーズに、何らの混乱なく通過し、実施されるように、お骨折り下さらんことをお願いいたします。      ————◇—————

山中貞則自由民主党

○山中貞則君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、小澤佐重喜君外九十二名提出、九州地方開発に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。

益谷秀次自由民主党議長

○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

益谷秀次自由民主党議長

○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  九州地方開発に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。野田卯一君。

野田卯一自由民主党

○野田卯一君 ただいま提出せられました九州地方開発に関する決議案について、自由民主党並びに日本社会党を代表いたしまして、その提案の趣旨弁明をいたします。  まず、決議案を朗読いたします。   九州地方開発に関する決議案   九州地方は宿命的台風豪雨の常襲地帯として、るい年おびただしき惨禍を被り、終始これが復旧におわれて、建設的施策に乏しく、ために、民生は不安と貧苦にあえぎ、産業はいび停滞をきたし、地方財政また窮乏にひんして、旧態依然たる経済の悪循環を繰り返し、その後進性はますます顕著の度を加えている。   年々歳々襲来するこれら災禍の抜本そく源的防除と復旧の促進は、ひとり千五百万地方民積年の悲願たるのみならず、国土保全の大局的見地より、きわめて重大緊要な課題である。   さらに他面、本地方は、豊富な未利用資源を包蔵し、これが開発を促進するにおいては、わが国産業の振興と経済の発展に寄与するところ大なるのみならず、近年とみに強調せられている東南アジア、隣接大陸諸国との貿易交通上、好適な立地条件に恵まれ、将来におけるわが国経済再建の拠点として、きわめて重要な役割をになうものである。   よってこの際、まず、画期的防災対策を確立し、さらに進んで未利用資源の開発、交通、運輸等公共諸施設の整備を図り、産業基盤の培養強化に努め、もって民生の安定向上と産業経済の助長振興を期することこそ刻下の喫緊事であるといわねばならない。   叙上の趣旨をもって、政府はすみやかに本地方開発に関する基本方策を樹立し、昭和三十三年度を契機として、これが実施を推進するため、予算上、法制上所要の措置を講じ、もって施策の万全を期すべきである。   右決議する。  わが国は、狭隘な国土と過剰の人口をかかえて、原料資源の大半を国外に依存しなければならない実情に置かれておることは、御承知の通りでありまして、これらの隘路を打開、克服し、産業の振興と雇用の増大をはかり、経済の自立再建を達成することは、まことに重大緊要な当面の課題であります。これがためには、まず国土の開発保全に努め、資源を最高度に活用して、適正な産業立地計画のもとに、地域的均衡のとれた経済の発展をはからなければなりません。  われわれはこの国土総合開発の一環として、いち早く北海道、東北地方の重要性を取り上げ、さきに本院においてこれが開発促進に関する決議案を上程し、満場一致これを可決いたしまして、現に歩一歩開発の実を上げつつあることは、まことに御同慶にたえないところであります。  翻って、九州地方について見まするに、この地方はわが国の西南端に偏在して、広範な後進未開の地域と多数の離島をかかえ、あまつさえ、宿命的な台風豪雨の常襲地帯として累年おびただしい災害に悩まされ、民生、産業の上に致命的打撃をこうむっているのであります。由来、温暖多雨の気象条件と、豊富な埋蔵資源に恵まれるこの地方が、かくのごとき地位的制約のもとにおきまして、開発は遅々として進まず、民力は乏しく、住民の生活水準は著しい立ちおくれを余儀なくせられ、地方財政また窮乏に瀕して、旧態依然たる経済の悪循環を繰り返しながら今日に至っておりますことは、国土総合開発の大局的見地より、はなはだ遺憾とするところでございます。今にしてこれが禍根を芟除し、抜本塞源の建設的方途を講ずるにあらずんば、国土の保全はもとより、民生の安定、産業経済の振興のごとき、とうてい期すべくもございません。ことに、今夏西南九州地方に突発いたしました稀有の豪雨により、凄惨目をおおわしむる惨禍をもたらしましたことは、今なお記憶に新たなところでありますが、そのよって来たるところをせんさくいたしまするに、これは決して不可避の自然的宿命と申すべきではなくて、基本的防災対策の欠如と復旧事業の不備、遅滞に基因するものと称するも、あえて過言ではないのでございます。われわれは、この際、このなまなましい災厄を、災い転じて福となすの一契機といたしまして、旧来の災害対策に根本的再検討を加え、新たなる見地に立って画期的な恒久対策を確立しなければならないと思うのでございます。これひとり千五百万住民積年の悲願であるのみならず、国土保全のためきわめて喫緊の国家的要請であるといわなければなりません。  さらにまた、この地方に賦存する未利用資源の開発、活用、産業立地の確立につきましても、進んで積極的施策を講じ、事業の促進をはかるにおいては、わが国経済の伸張発展に寄与するところきわめて大なるものがあると思うのであります。ことに、近年来、東南アジア、隣接諸国との経済交流がとみに強調せられているやさき、この地方はあたかもこれらアジア地域との貿易交通上好適な立地条件のもとに置かれているのでありまして、将来におけるわが国経済再建の一拠点としてきわめて重要な役割を果し得るものと信ずるものであります。このような九州地方の特殊性と経済立地上の重要性にかんがみまして、特に画期的災害防除対策の確立、早期復旧の促進をはかるとともに、進んで道路、鉄道、港湾、通信等、公共諸施設を整備し、民生の安定と国土の保全、産業基盤の培養強化に特段の施策を講じ、もって本地方開発の画期的新生面を切り開かんとするものであります。  ここにおいて、政府は、すみやかに九州地方開発に関する長期かつ総合的基本計画を樹立し、昭和三十三年度を契機として、これを強力に実地推進するため、それぞれ予算上、法制上所要の措置を講ぜられるよう特に要請するものであります。  如上の趣旨をもちまして、ここに本決議案を上程することにいたしました。こいねがわくは満場の諸君の御賛同を切にお願い申し上げます。

杉山元治郎日本社会党副議長

○副議長(杉山元治郎君) 討論の通告があります。これを許します。小平忠君。

小平忠日本社会党

○小平忠君 ただいま議題となりました九州地方開発促進に関する決議案につきまして、自由民主党、日本社会党の両党を代表いたしまして、簡単に賛成の討論を行いたいと思います。  提案者の趣旨説明によって明らかなように、山口県を含む九州地方は、その資源と立地条件に恵まれながら、一部の鉱工業地帯を除いて、全般的に開発が著しくおくれ、産業の後進性と停滞性が著し、なりつつあるのでありますが、特に南九州の県民所得は全国平均の五割そこそこにすぎないのであります。そのよって来たるゆえんは、第一には、台風常襲地帯として毎年甚大なる災害をこうむり、これが復旧に追われて、地方公共団体の財政力も民間経済力もともに脆弱にして、いつまでも経済の悪循環を断ち得ないことであり、第二には、多くの未開発地域の開発計画が等閑視せられていることであります。すなわち、台風災害対策と未開発地域の総合開発は九州地方開発の二大支柱をなすものであります。  ここに具体的な二、三の実例を申し上げるならば、総合開発計画として南九州、阿蘇、北九州、錦川等の地域が特定せられているにもかかわらず、その開発は台風災害と財政貧困のために遅々として進捗せず、さらにまた、東九州、西九州、有明、球摩川等の調査地域も、開発計画の実施段階に入るには百年河清を待つ状況であります。  九州山脈の奥地中央部は、道路交通の未開発によって、天然の山林資源は斧鉞を入れぬまま眠っております。交通、運輸の不利不便によって、雑木林、はげ山が千古無計画のまま放任せられております。また、世界的に優秀なる観光資源も、その真価を発揮できない状態であります。九州山脈に縦貫道路を開通することだけでも、直ちに巨億の資源を活用することができるとともに、九州地方の資源開発計画を促進して莫大なる経済の原動力たらしめることができるのであります。  南九州地方の特殊土壌、すなわちシラス地帯対策が台風災害対策とあわせて完全に遂行せられるならば、南九州地方の農林経済が飛躍的発展を見ることは、これまた明々白々であります。  さらに、多年の懸案たる有明海の干拓事業もまた同様でありまして、事業の完遂によって十七万町歩の土地を造成することが可能でありますが、十七万町歩は優に一つの県に相当し、関係各県の農業の発展、特にその立地条件より見て、近代化学工業の新しい発展を期することができるのであります。  特に、西南九州地方には大小無数の離島が散在しておりますが、これら離島は、本土、本島に比べて、その開発と災害の防除復旧が一段と低位にあるため、経済的にも文化的にも著しい後進性を示しておるのでありますから、九州地方全体の総合開発計画と有機的関連のもとに開発計画が推進せられることが喫緊の要務であると存じます。  北九州は一大工業地帯として発展したのでありますが、近代工業の飛躍的発展に伴い、港湾施設、工業用水その他の隘路を打開して立地条件の整備をはかることが、行き詰まれる北九州地方の工業に対して活路を開く、ただ一つの道であります。  また、有明海などの海底炭田を初めとして、新鉱の開発をはかるとともに、筑豊炭田のごとく老朽化したる炭田地帯における今後の産業計画、失業対策等も、等閑視することのできない重要問題であります。  以上、私はきわめて卑近なる二、三の例をあげたにすぎないのでありますが、九州地方は古代神話の発祥地であり、また、近代西欧文化導入の関門でありました。今日においては、中国、東南アジア諸国との貿易上最もすぐれたる産業立地条件を有し、日本経済拡大のための拠点として、ますますその重要性を加えております。その豊富なる資源の開発と高度の利用によって新産業の育成拡大をはかることが真に刻下の急務であると思います。私は、九州地方の開発に本腰を入れて、九州地方を日本経済の平和的海外協力の一大拠点たらしむることが、最も肝要なことであると思うのであります。  九州地方の計画的開発が、日本経済発展の課題であるとともに、山口県を含む九州地方各県民多年の悲願であることを私は特に強調いたしまして、本決議案の趣旨がすみやかに実現せられるよう政府に強く要望いたしまして、私の賛成討論を終る次第であります。

杉山元治郎日本社会党副議長

○副議長(杉山元治郎君) ただいまの小平君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。  これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

杉山元治郎日本社会党副議長

○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。  この際河野国務大臣から発言を求められております。これを許します。国務大臣河野一郎君。

河野一郎自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(河野一郎君) ただいまの御決議につきまして、一言申し上げたいと思います。  何分、九州地方は御承知の通り、南と北との立地条件も非常に違っております。東北各県と違いまして、県自体が非常に経済的に地理的に複雑でございます。でございますから、政府といたしましては、慎重に検討いたしまして、なるべく御趣旨に沿うように努力したいと存じます。      ————◇—————

杉山元治郎日本社会党副議長

○副議長(杉山元治郎君) 次会の議事日程は公報をもって通知いたします。  本日はこれにて散会いたします     午後二時三十六分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗