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28回国会衆議院1958/04/01

法務委員会 第19号

発言数
81
登壇者
12
会派数
2
開催日
1958/04/01

会議録

町村金五自由民主党

○町村委員長 これより会議を開きます。  刑法の一部を改正する法律案の暴力犯罪に関する部分、刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び証人等の被害についての給付に関する法律案の三案を一括して審査を進めます。  発言の通告がありますので、順次これを許します。三田村武夫君。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 まず法務大臣から御所見を伺いたいと思いますが、今回の刑法の一部を改正する法律案は、御承知のいわゆる汚職の追放、暴力の追放、この二つの問題を対象にして立案され、提案されたものであります。世上、いわゆるあっせん収賄罪の問題は大きくクローズ・アップされておりますが、暴力関係の手当については比較的話題になっていないようでございます。両者いずれが重いかは、おのおの見る人によって違いますが、われわれは、この法案を審議するに当りましては、あっせん収賄罪ももとより重要でありますが、暴力関係の立法も現在の世相にかんがみてなかなか重要な問題だと思うのであります。この点は、むしろ大きく世論に訴えて、われわれの世の中から暴力をなくするということについて一般世論も協力してもらわなければならないであろうと私は考えるのであります。政界から汚職をなくする――政界を暗くするものは汚職であります。同時に社会を暗くするものは暴力であります。この二つはただ単に法律上の手当だけで解決されるような問題ではないとわれわれは信ずるものでありますが、同時にまた、その大きな二つの悪を除くための柱として今回の改正が企画されたものでありますから、この点は十分掘り下げて政府当局の意のあるところも一般世人に理解してもらい、また法案の内容についてもわれわれは十分審査をして、そのあやまちなきを期することが立法府としての責任であり、当委員会の責任であると考えるものであります。  そういう立場から、私は一、二点まず大臣に、これは法務当局としての政治的考慮と申しますか、そういうものも含まれた事務的な立場の御所見を伺っておきたいのでございますが、今回の暴力事犯対策としての新立法に関しましては、法務省においてもいろいろな御意見があったことを私も仄聞いたしておるのでございます。この問題が起って参りました当時に私は当委員会の委員長を仰せつかっておりましたので、岸総理のいわゆる三悪追放の中の二悪は当委員会の所管事項であるというような責任感から、当時からこの法務省事務当局の御意見を伺い、どのような手当をしていくかについてそれぞれ案を練っておったのであります。御承知のように、暴力犯罪に関する手当を、特別の単一法でいくか、刑法中の一部改正でいくか、まあ両方とも意見があったようでございます。前の検事総長の佐藤氏あたりは単一立法でやったらよかろうというような御意見であったように私は聞いておるのでありますが、これは、単一立法でいく場合の弊害と、また刑法改正でいく場合の不便と、両者おのおの長短相半ばするものがあると私も考えるのであります。  そこで大臣にまずお尋ねをいたしてみたいことは、現在暴力行為等処罰に関する法律が実は単独法であるのであります。この暴力行為等処罰に関する法律ができるころは、実は私もその当時衆議院の議席を持っておりまして、この単独法の審議には私も関与した一人でございます。これは今の暴力新立法とは立案当時立法の趣旨、目的が多少違っておったのでございます。それで、そういう関係もあって、今度は、暴力行為等処罰に関する法律のようなそういったような形でなくて、暴力犯罪はすなわち刑法犯だ、こういう立場から刑法の一部改正というむしろ常道的処置に出られたのじゃないかという判断を私はいたしておるのでございますが、その間のいきさつといいますか、法務当局の御見解をまず初めに伺っておきたいのでございます。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 この刑法並びに刑事訴訟法の改正法律案につきまして、世上ややもすれば、あっせん収賄罪に関する関心が深くて、一方の暴力追放に関する部分に対する関心が薄いのではないか、こういう御指摘でございまして、私も同様な感想を持って、おるものでございます。しかし、お言葉にもありましたように、暴力の追放ということは当面の急務であり、ことに暴力の追放にはただ単なる立法だけでは完全にその目的を達することはできません。どこまでも社会一般の人々の理解と協力に待たなければ完全にその目的を達することができませんから、その意味におきましても、この暴力取締りに関する部分につきまして、世上の関心を深くして参りたいと思いまするのみならず、十分御審議をいただきたいと思うのでございますが、その意味合いにおきましてお尋ねがございました。いかにもごもっともなお尋ねでございまして、当初、暴力追放に関する法律の立案に当りました際にも、ただいま御指摘の暴力行為等処罰に関する法律との関係について研究をいたしたのでございますが、ただいま御指摘のありましたように、まずこれは刑法犯である、刑法で堂々と処罰すべき犯罪であるというような意味合いをもって、刑法中の改正法律案をして規定する方が、世上の注意を喚起し、そうして犯罪性のいかなるものであるかということも明瞭にして、そうして堂々と刑法の改正でこれを処罰すべきものであるという方針で進んだ方がよかろう、こういう根本の考えと、また、立法技術的に申しますと、御承知のように、暴力行為等処罰に関する法律とこのたびの法律とのつなぎ合せが、どうも不自然な点もございますし、ことに、暴力行為等処罰に関する法律も、いずれ将来刑法について全般的の改正処置をいたします際には、この中にしかるべき部分は吸収して参りたい、かような考えから、このたびは暴力行為等処罰に関する法律の改正とせずして、刑法の改正として作ったわけでございます。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 大臣の御答弁で、刑法改正の処置に出られた意味はわかりましたが、これは私もう一度念を押してお尋ねいたしておきたいのでございますが、社会党の委員諸君からもおそらく強い発言があるだろうと私は考えるのでございます。私も、当時、暴力犯罪に対する手当を単独法でいくか刑法の改正でいくか、両者いずれがその妥当性を持つかということについて、多少過去の経験から頭をひねってみたのでございます。今回法務当局が刑法の一部改正でこの問題に臨まれたことは、私は非常に妥当な処置だと思うのでございます。と申し上げることは、世上、ともすると、今度の暴力犯罪に対する手当、いわゆるそのための新立法は、何か集団的な犯罪、本来刑法犯ならざる犯罪、あるいはこれを具体的に申しますと、労働運動あるいは争議手段にも適用されるのではないか、そういう内容的意図を含めた立法処置じゃないかというような誤解があるようであります。これは厳に慎しまなければならぬことでありまして、私自身も反対であります。もしそういう意図があるならば反対でありまして、そういう意味合いから、私は暴力犯罪に対する特別単一立法というものはむしろ好ましくない。今度刑法の一部改正としてこの問題を取り上げられた態度は、私は賢明であり妥当であると考えるのであります。すなわち、今度の新立法の対象になるものは、その罪質があくまで本質的に刑法犯罪である、こういう立場をあくまでも厳密に貫くことが、この法案の審査の上に、私は、第一義的な条件であり、また重要な事柄であろうと思うのであります。でありますから、その点を再応お尋ねするのでございますが、今度の刑法改正に含まれる暴力関係の新しい手当として、すなわち新立法はその対象になる犯罪はあくまでも本質的に刑法犯罪である、その刑法犯罪の手当に、従来の経験に徴し、現在の犯罪の態様にかんがみてどうも足りないところがあるから、足りないところを補っていく、こういう立場の改正であろうと考えるのでございますが、その点はいかがでございますか。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 お言葉の通りでございまして、このたびの暴力を対象としての法律案は、どこまでもその行為が本質的に刑法犯であるという立場からこれを処罰する規定として立案をいたしたものでございます。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 時間の関係もありますから問題を端折って具体的に行きますが、これは少しばかり刑事政策上の問題に触れるのでございますが、犯罪というものをなくしなければならないということは、われわれが平和な社会生活を営む上において何人も異論のない事柄でございます。しかしながら、犯罪をなくする手段として、われわれだれも使う言葉でございますが、現代の文明社会においてどのような手段を必要とするか、別の言い方をすれば、犯罪は法を厳にし検挙するだけでなくなるのではないということであります。犯罪は法を厳にし検挙することによってなくなるものではないのだ、――犯罪はそれぞれそのよって来たる遠因、原因があるのであります。その遠因、原因なるものは社会行動の中にあるのである、人間は知性によって生きるものであり、また倫理と正義というものを生活の信条とするものでありますが、しかしながら一面欲望の主体でありますから、そこに犯罪というものは生まれてくるという立場を考えますならば、今回の刑法改正もとよりわれわれは必要だと思うものでありますが、しかしながら、その刑法改正以上に、当然民主社会の政府として考えるものは別にあるのじゃないかと私は思う。これは法務大臣の御所管でないかもしれません。しかしながら、政府は一体の責任の立場から、法務大臣がただここでこの刑法改正を御提案になり、この法律ができて犯罪の検挙と捜査に一つの新しい筋道をあけるというだけでこの犯罪というものはなくなるものでないということは、これは法務大臣もとより深い御経験の上で御異論はないと思います。そこで、私は、法務当局、検察当局として、今度の立法とあわせて、どういうことを他の政府機関、他の政府関係に希望されるか、あるいは要求されるか、どういうことが望ましい施策であり、またやらなければならない方策であるかということについて、お考えがありましたら、法案審議の参考としてまず伺っておきたいのでございます。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 犯罪は法律の力によってこれを圧迫することだけでは追放することができないというお考えは全く同感でございます。法律以前に犯罪の生まれないような社会を作る、また、犯罪のきざしがありましても、法律以前にこれを押えていく力を養成する、それにもかかわらずついに犯罪ができたというときに、やむを得ず法律を適用して、そうしてこれに対する適当なる処置をするという三段のかまえであろうと私は考えるのでございます。法律以前に犯罪を押えて参ります力といたしましては、まず各個人の道徳的な目ざめ、それから社会道徳の涵養、さらに善良なる社会習慣・社会風俗の養成ということが、法律以前に犯罪の発生を押える力と思います。さらに根本にさかのぼりますれば、犯罪の生まれないような社会を作るということでございまして、これにはまたいろいろの施策があろうかと思いまするが、やはり経済環境の改善ということが一番大きな仕事の一つかと考えられるのでございます。そういう意味におきまして、われわれは最後の一線を守って法律でこれを阻止しようとするのであるけれども、それ以前において、経済問題におきましては、社会保障制度の完備、一例をあげればさような点を十分政府全体として考えて参りました。そして犯罪の発生原因を追放するということ、さらに、多少なりとも犯罪のきざしがあっても、やはり各人の自覚と社会道徳の力によってこれを押える、こういう意味から、文教の府に対しましては、やはり社会道徳、個人道徳の教養ということに力を注いでもらいたい、こういうようなことをも要望し、連絡をいたしておるのでございまして、私どもの担当いたしておりまする法律、検察ということは、これは最後の押えである、かように考えておる次第でございます。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 これは立法政策上の問題でありますが、あとから刑事局長、警察当局あるいはまた文部大臣にもお尋ねいたしてみたい問題でありますが、近ごろ青少年犯罪がうんとふえておるのであります。これは実におそるきべ、悲しむべき傾向であるのでありまして、警察庁にお願いして御提出願った資料によりましても、昭和二十八年、二十九年、三十年、三十一年、三十二年、この五カ年間に、十四才から二十才未満、いわゆる少年法の適用を受ける階層でありますが、それが五十万四千九百六十二人、二十才から二十五才未満が七十万四千四百十二人、合せて五カ年間で百二十万九千三百七十四人になっております。この問題についての対策、処置というものについては、あとからいろいろ立法上の処置と照らし合せてお尋ねいたしますが、法務大臣にこの際伺っておきたいことは、少年法の問題であります。この問題には私前々からいろいろ疑問を持っておるのでございますが、精神的、肉体的未成年と、いわゆる犯罪年令の関係です。法律では二十才未満を未成年としております。二十才以上を成年としておりますが、そういう法律上の従来の概念を離れて、犯罪能力を備えるといわゆる犯罪年令、この点を考えますと、私は二十才以下必ずしも未成年ではないと思うのです。統計によりましても、これは三十三年三月の警察庁の調査の資料でありますが、三十二年中の少年犯罪、これは十四才以上二十才未満の者でありますが、十八才未満の者の犯罪は非常に多いのですけれども、これは別にいたします。大体従来の経験から考えてみまして、十八才になると現在では完全に犯罪能力を持っておる、犯罪年令から言うともう完全に成年だという私たちは判断をせざるを得ないのでございます。もちろん精神的には未成熟であり、未成年に違いないのですが、その扱いとして非常に私は重要な問題だと思うのです。と申し上げることは、統計から見ましても、昭和三十二年だけの検挙数を見ても、殺人、強盗、放火、強姦、こういう事案が十八才から二十才未満で二千五百八十九、それに他の刑法犯を加えますと四万九千七百七十、約五万になっているのです。十八才以上二十才未満が少年法の適用を受けておりますが、これは単なる犯罪者として従来の少年法と同じ立場で考えるにはもう少し深い考慮が要るのではないかという気がするのでございます。実は、昨年私、前の法務大臣の中村梅吉君と二人で瀬戸の少年院の視察に行って参りました。どう考えてみても少し割り切れない問題が出てくる。法務当局においても少年法の改正は必要じゃないかという御意見がちらほらあるようでございます。こういう問題については何かすでにお考えになっておりますか、あるいは従来のままでよろしいという御見解か、この際伺っておきたいのでございます。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 御指摘のように、終戦後における青少年の犯罪はまことに憂うべき現象であります。ことに、その犯罪の種類におきまして、暴行、殺傷とか、性関係とかいう悪質の犯罪がふえている点にかんがみまして、実に寒心にたえないところでございます。  それに関連いたしまして、今少年法関係の年令についてのお尋ねでございます。いかにも統計を見ますと大いに考えさせられる点があるようでございます。御存じのように、従来十八才であったものが二十才まで引き上げられたのでございますが、その後の実績に徴して果してこれがよかったかどうかということにつきましては、今法務省におきましては真剣に検討を加えているわけでございます。ただいま御指摘の統計等を参考といたしまして、果して、年令の点は、従来の十八才がよかったんじゃないか、あるいは現行の二十才まで引き上げたことがやはりよかったかというようなことについて、真剣な検討を加えているところでございます。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 これは、法務大臣及び文部大臣、総理にも、私の犯罪に臨むといいますか従来の信念を申し上げて、簡潔に一つお答え願いたいのであります。  私、かつて権力政治というものに対して鋭い批判を持ってきた一員でございます。その際、私がよく使った言葉でございますが、これは孔子の言葉であったか、孟子の言葉であったか、あるいは孫子の言葉であったか忘れましたが、非常に味わいの深い言葉がある。堅甲利兵攻めるに足らず、つまり、かたいかぶと鋭い兵隊攻むるに足らず、高城深池守るに足らず、高いお城、深い池だけでは守るに足らない、厳法酷罰治むるに足らず、法律を厳にし罰を酷にしても治むるに足りない、道をもってすればすなわち通じ、徳をもってすればすなわち治まる、これは私は実に名言だと思う。これはまつりごとの衝にある者は常にけんけん服膺しなければならぬ言葉だと私は今でも頭の中を去りません。もとより今度の刑法改正――あっせん収賄罪もちろんでありますが、同時に、今度の暴力取締り立法も必要であると思います。しかしながら、厳法酷罰治むるに足らず、道をもってすればすなわち通じ、徳をもってすればすなわち治まる、ここに私は政治の要諦がなければいけないと思うのです。これは、現在の政府だけでなくて、いつの時代にも、いつの内閣にも私はこの言葉を申し上げたいのでございます。私は今度の立法についても必要性は認めます。しかしながら、法律を厳にし罰を酷にして問題の処理に当ろうという道を一たび開きますと、常にその間口が広がっていくということを私はおそれる一員でございます。もとより、今度の立法については、私は十分内容を検討し、その上に自分たちがどう処置するかということの態度をきめたいと思いますし、立法そのものについても方向には賛成する一員でございますが、少くとも、私は、こういう問題に対する際に、まつりごとの衝にある者、すなわち政治の衝にある者の心がまえとしては、今私が申し上げたことはぜひともお考えを願いたいのでございます。  世上よく言われております検察ファッショとか警察ファッショとかについてもあとから警察庁長官にお尋ねいたしたいのでありますが、犯罪の捜査や検挙に便利になりますと、これはまた別の批判が出てくるのであります。人権の面において、また民主的な秩序の面において、いろいろの面が出てくるのであります。でありますから、われわれはその点を真剣に慎重に検討していきたいと思っております。  今私が申し上げたことについて、これは御意見を伺うまでもなく法努大臣にはすでに十分の御所見がおありと思いますが、御参考までにお伺いいたしておきたいと思います。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 ただいま、政治の要諦につきまして、昔の言葉で言えば厳法酷罰治むるに足らずという、つまり基本観念の御意見がございました。私も全く同感でございます。その言葉を知っておったわけではございませんけれども、今度の立案に当りましても、あっせん収賄罪におきましても、暴力取締りの規定におきましても、全部の対象を網羅するという観念ではなくて、まず悪質な者を法律をもって処罰する、残余のものは社会の道徳観念にまかせて、そうしてまず第一線は社会の道徳観念で防いでもらいたい、かような考え方から立案をしておるのでございまして、ただいまの基本観念全く同感でございます。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 警察庁長官にまず一、二点お尋ねいたします。  率直に申しますが、法律はできてしまうとひとり歩きするのです。これは、ここで、そういうものは対象にしないとか、そういうものは立法者の意思にないという御説明を伺っても、できてしまうと法律はひとり歩きする。これは法律の本質であります。文理解釈上、条文の解釈上ひとり歩きする。そこに刑罰立法の危険性があると私は常々それを憂えておる一員でございますが、御承知のように、今度の立法は、いわゆる汚職の追放、すなわち法律的な処置としてはあっせん収賄罪の規定、暴力の追放、すなわちその処置としては諸般の五、六点の手当が加えられるのであります。ところで、現在の警察は独自の捜査権を持っております。よくここで、第一線の警察の捜査の行き過ぎ、そういうことについての責任が問題になりますが、考え方によっては、警察庁長官に対して責任を追及することは私は少しおかしいと思うのです。これは指揮命令の権限を持っておられない。そういう場合、警察庁長官にここでお尋ねすることも制度上おかしいかもしれませんが、法律はできてしまうとひとり歩きする。あっせん収賄罪は別な角度から考えますが、少くとも暴力関係の新立法で、第一線でこの法の運用に当られるのは警察です。警察庁は二次的な立場でありまして、第一線でこの法律の運用、適用をされるのは警察である。しかも警察は独自の捜査権を持っておる。具体的に申しますと、警部の主観的判断で捜査活動は開始されるのです。そういう場合に、行き過ぎもあり、行き足らぬ面も出てくるのです。でありますから、ここで長官に伺っておきたいことは、今後、世上論議の対象になるような警察ファッショだとか、そういう問題はもとより避けねばなりませんが、そういう意味合いから、どのようにして正しい警察活動を指導していかれるかという問題であります。問題はこの一点であります。もとより町の暴力はなくさなければなりませんが、新しい法律ができた、ああはこれは都合のいい法律ができた、あいつもやっつけてやれ、こいつもやっつけてやれ、これでは困るのであります。そうでなくて、どのようにこれを指導していかれるか、今の制度上責任が持てるかという問題であります。この点について一つ長官の御意見を伺っておきたい。

石井榮三警察庁長官

○石井(榮)政府委員 まことにごもっともな御懸念であります。私どもも第一線の捜査に当る警察官に対しまして常に申しておることでございます。取締り関係のいろいろの法令がございます。この法令の執行に当りましては、立法の精神を十分体して、行き過ぎのないように適正なる運営、執行をなすということを常に念頭に置いて、慎重な態度をもって事に当らねばならぬことは申すまでもないことであります。従いまして、これが法の運用に当ります警察官に対しましては、教養の面におきまして特に徹底を期しまして、十分立法の趣旨、精神を体しまして、法の運用を誤まらないようにしてもらいたいと考えておるのであります。ただいまお話のありました通り、現在の警察制度は都道府県警察の制度になっております。私ども中央におきまして個個の事件については一々指揮命令をする権限のないことは御承知の通りでございます。そこで、都道府県警察全般を管理する都道府県公安委員会の良識ある管理に待ちまして、その管理のもとに、日常執行に当る都道府県警察本部長その他上級幹部が、よくただいま私が申し上げたような精神を体して部下の指導、教養の徹底を期しまして、いわゆる行き過ぎの取締りのないように、今後とも十分指導、教養に努めさせるように、私ども中央といたしましては第一線の指導をいたしたいと思います。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 今、長官の御意見、その通りでございまして、私が心配することは、先ほど申し上げましたように、法律ができてしまうと一人歩きするということであります。より端的に申しますと、警察の職務執行に、犯罪捜査に便宜のために立法をやるんではないということを、お忘れにならないようにお願いしたい。警察が暴力犯罪に対する処置として便宜のために立法をするんじゃないんだ、つまり適正に、適法に――適正に、適法にということは、本来刑法的に悪というものはきまっているんです。刑法的に本来犯罪であるものが、従来、法の不備といいますか、欠陥といいますか、多少の不十分な点があったために十分警察官等の機能が発揮されなかったということは、われわれも認めるのであります。そのゆえの立法であります。こういう法律ができたら、便利になったんだ、警察の捜査活動のために便利になったから、大いにやろうという考え方は、いわゆる行き過ぎになるおそれがあるのであります。これは一つ厳に慎しんでいただきたい。同時に、今長官もおっしゃいましたが、都道府県の公安委員会の良識に待つといっても、これはほんとの言葉だけのものでありまして、なかなかむずかしい問題です。これはぜひ、新立法ができましたら、単なる形式的な会合だけでなくて、三日かかっても五日かかっても、その都道府県の責任者というものの会合を求めて、十分に一つ法の運営について遺憾のないように処置していただきたい。これを長官に申し上げておきます。  私は、法案の各条文についての、解釈上、運用上の問題については、またあすにでも、あくまでも疑念は疑念としてただしておきたい、運用のあやまちなきを期してもらいたいという立場から、質問を継続いたしたいと思いますが、きょうは、社会党の方から発言の通告もあるようでありますから、二、三の問題について、事務当局、法務省の刑事局長、それから警察庁の刑事部長にお尋ねしてみたいと思います。  まず警察庁の刑事部長に簡単なお尋ねをいたしたいのでありますが、最近の暴力犯罪の傾向です。統計はいただいて持っております。昭和二十八、二十九、三十、三十一、三十二年度、だんだん犯罪の検挙件数がふえております。三十一年度が一番多くて、八万二千七十四人であります。三十二年は少し減っております。特徴としてどんなこどが言えるかということです。これはこの法案の審議上非常に重要な点でありますから、第一線で具体的に暴力事犯を取り扱っておられる警察当局からまず伺っておきたいのでございます。特徴として言えることは、暴力犯罪の傾向として、個人の暴力犯罪がふえたか――これもあると思いますが、つまり集団暴力事件ですね。グレン隊とか、町のひもだとか、いろいろなものがありますね。この前売春法の完全施行について私どももこの問題をお尋ねしたのでありますが、つまり、暴力犯罪の傾向として、どんなことが言えるか。集団的暴力犯罪の方が多いか、個人の単純暴行はどういう格好にきているか。さらに、犯罪の傾向として、私たちが資料の上から見ますと、殺人、傷害、暴行、こういう粗暴犯罪が非常にふえているように思うのです。こういう問題の傾向を一つお尋ねいたしたい。それから、動機、原因、年令層、こういった問題について、どのようなズレが来ておるか、波が来ているかということ、これは詳しい統計上の御説明でなくてけっこうです。その傾向についてお尋ねいたしたいのでございます。

中川董治警視監(警察庁刑事局長)

○中川政府委員 統計の数字につきましては、さきに御要求がございまして差し上げてございますので、お尋ねの傾向につきまして、かいつまんで申し上げます。  日本の社会には、不幸にして、暴力ということによってめしを食う、ないしは利益を得よう、こういう組織がございます。これを排除することは警察の本質的任務であると心得まして、数年前から大へんな努力をいたしております。数年前の状況は、彼ら一派の連中は、そういう組織を中心にいたしまして、あるいは地域によってなわ張りを持っていて、善良な国民と申しますか、東京駅前とか上野駅前、そういったところにおる人聞に、暴行脅迫ということを一つの拠点にして物を売り込む、こういう犯罪が相当びまんしておりました。そういった点にかんがみまして、各方面で警察の努力もいたしましたし、いろいろな啓蒙活動も活発にいたしまして、そういう傾向は現在少くなっている、こういうふうに私どもは見ております。ところが、そういうふうにして警察取締りも厳重にやって参りますので、彼ら一派の連中はだんだん追い詰められてくる傾向を来たしております。追い詰められてしまって完全になくなってしまうことをこいねがうのでございますけれども、現在そこまでいっておりませんので、各派閥間においてなわ張り争いの状況がその後顕著に出て参りました。去年、ことしの現況は、大体なわ張り争いの現況である。善良な国民に対する被害は少くなったけれども、暴力団相互間のなわ張り争いの関係が熾烈になって参りましたので、これに対しましても、相当の工夫を加えてどしどし検挙しておりますけれども、現在完全になくなっているという状況でございません。相変らずそれを繰り返しておるというのが現状でなかろうかと思うのであります。  年令層の関係でございますが、年令層は、相当年輩の方の事犯も少くないのでございますが、だんだん暴力団関係者がグレン隊という形を多く持ちまして、グレン隊という形が比較的年令層が低い形に移りつつある、こういうふうに傾向がうかがわれるのであります。私どもの考えといたしましては、従来の国民の御批判と警察の取締りと相待ちまして、だんだん一般国民に対する被害は少くなったと認められるけれども、それがあとを断たないという状況に対しまして、相互間のなわ張り争い、暴力団同士の出入り、こういう状況に対しまして、啓蒙と取締りの両者によって解決して参りたい、こういうふうに考えておるのであります。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 もう一点、これは刑事部長でも長官でもけっこうですが、お尋ねいたしておきます。そのような暴力事犯に対する現在の警察の機能です。組織の点において、あるいは捜査活動の点において、何か不便を感じられる点がありますか、ありませんか。この点が一点と、それから、もう一つ、これは言うまでもないことで、先ほど法務大臣にもお尋ねしたのですが、民主社会における警察は、犯罪の検挙ももちろん心要でありますが、むしろ犯罪の予防という点も私は非常に重要であると思います。従来予防警察ということが非常に強く言われておりますが、最近は、犯罪の予防というよりも、むしろ検挙の方に重点が置かれているんじゃないかという気がいたします。何か検挙競争といったような気がするのであります。これは現在の警察の組織の上から当然かもしれません。警察の任務から当然かもしれません。同時に、それが警察の最も重要な任務であることは当然でありますが、しかしながら、これは、検挙して人間を傷つけるよりも、検挙せずして予防すること、つまり行政警察の本来の使命、任務というものはそこにあるんだと私は思うのです。こういう点について、現在の警察の機能、組織の点においてどのようにお考えになっておるか、この際長官からでもお答え願いたいと思います。

石井榮三警察庁長官

○石井(榮)政府委員 まことにごもっともでございます。同感でございます。犯罪の発生の以前においてこれを未然に防止するということが望ましいのであります。警察といたしましても、従いまして犯罪の予防という見地に立っての活動にかなり力をいたしていることは申すまでもないことであります。その予防の力及ばずして一たび発生しました犯罪に対しましては、これを早期に解決すべく努力する、これがわれわれ警察の現在とっている態度でございます。  そこで、今御指摘のいわゆる暴力事犯の取締りについて、従来の経験に徴して何か現在の警察機構なりあるいは取締り関係法規等について不十分、そのために困っておるというような点はないかというお尋ねでございますが、私はかねがね当委員会においても申し上げたと思うのでございますが、現行関係法令、いろいろあるのでございますが、これを私どもは先ほど御指摘もありましたように適正に運用いたしまして、警察の活動によって十分な成果をあげる責任を感じているのでございます。しかしながら、警察の力にもおのずから限界があるのであります。警察の活動に加うるに、国民の皆様の御協力ということがきわめて肝要であろうと思うのであります。大よそ民主社会においては暴力というものは絶対に排除すべきものであるという観念に国民各位が徹せられまして、みずからの権利はみずから守るというこの気持のもとに、ささいな危害であっても暴力を受けた場合にはこれらを排除して、場合によってはいち早くわれわれ警察側に連絡をしていただく、こういう機運の醸成を私どもは念願をいたしておるのであります。そうして国民各位の御協力に基いて私ども警察の活動を最善を尽したい、かように従来考えて参ったのでござまいす。その点におきまして、暴力事犯の一掃という点につきましては、漸次国民の皆様の御関心も深くなり、私どもへの協力も漸次高まって参っておることはまことに喜ばしいと思っておるのでございますが、遺憾ながら、いわゆるお礼参り等をおそれるの意をもって、警察に対して、被害を受けても、まあこの程度なら泣き寝入りしようという場合が、いまだ跡を断たないという状況にあるのであります。その点が、今回の刑法並びに刑事訴訟法の一部改正の立法によりまして、本問題の解決に非常に役立つということは、私ども非常にありがたく思っておるのでございまして、もしこの法律成立の暁におきましては、そういった面による今後のこの問題解決に有力なる一つのうしろだてをいただくという意味合いにつきまして、きわめて有利であろう、かように考えておるのであります。かねがね私は申し上げます通り、われわれは現行法令のもとにおいて最善を尽さなければならない、取締りができないからこの法律を改正する、あの法律を改正してもらいたいというようなこと、先ほど御指摘があったように、取締りの便宜のために法律を改正するということは極力慎しまなければならぬのであります。まずわれわれは、与えられたる法令に基いて、これを完全に適正に運用して取締りの実効をあげるということの努力をいたさなければならのぬであります。その努力、経験に徴して必要最小限度の法の改正ということを考えていくのが順序である、かような意味におきまして、今回、ただいま御審議をいただいております改正案は、私どもの今までの取締りの体験に徴しても、きわめて時宜に適しているものである、かように考えておるのでございます。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 法務省の刑事局長にお尋ねいたしますが、今度の刑法改正中の暴力犯罪に対する手当、これは逐条説明はもう伺いました。この各条文についての運用、それからその法の意図するものの内容については、いずれまた私別にお尋ねいたしたいと思います。ここでまず私は端的に刑事局長から御説明願っておきたいことがあるのです。これは逐条説明でわかっておりますが、この法律の対象が一般の暴力事犯ということになっておりますから、ごく常識的に、今度の刑法改正で暴力犯罪の手当としてどういうことをやるんだということですね。むずかしい法律上の解釈論、適用の問題は別です。そういうことは、これはわれわれがやらなければなりませんが、きわめて常識的に、国民にわかりやすいように一ぺん御説明願いたいのです。今警察庁長官が言われましたように、いろんな場合が盛り込まれておりますが、大体、一つはお礼参りの処罰規定、それから第二点は緊急逮捕の新しい規定、その次にいわゆる輪姦罪を親告罪からはずした、二人以上共同で婦女に暴行を加えるという輪姦罪を親告罪からはずした、これはなかなか議論のある問題であります。それから持凶器集合罪の規定、その次には私文書毀棄、器物損壊罪をこれまた親告罪から除外した、それから刑訴の関係では権利保釈に条件を加えた、大体この六点ですが、このくらいだと私は思いますが、この各ケースについて、これはむずかしい注文かもわかりませんが、きわめて常識的な御説明を一ぺん願いたいのです。法案の内容、条文の解釈、運用については、いずれ十分やらなければなりませんから、これはいたしますが、そうでない、きわめて常識的に、今度の刑法改正でどういうことが対象になるかということを御説明願っておきたいのです。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内政府委員 今回の暴力立法の大きな特徴といたしましては、過去数年間にわたりまして警察並びに検察庁において暴力の徹底的な取締り、検挙を遂行してきたのでございますが、この経験に徴しまして、法の不備、どういう部分が不備であるかという点を検討いたしまして、真に保護すべきものであって法の不備のために保護できないという面の改正に重点を置いた次第であります。  これをわかりやすく申しますと、二つになると思います。  その一つは、取締り上すこぶる困難であるという点の解決でございまして、これは、今御指摘の持凶器集合罪とも申すべき、いわゆる集合罪の規定であります。もう一つは緊急逮捕の問題でございます。集合罪を処罰しなければならぬ理由は、最近、組織的な親分子分の関係をもってつながっております暴力団とも称すべきものの組織上のなわ張り争い、出入り、そういったような傾向が顕著に現われてきております。かの別府事件のようなものを見ましても、あるいは最近の小松島事件等にいたしましても、その他こういう数十名が相対峠して武器を用意し、武器を持って集まる、こういう事態が、現在の治安状況のもとにおいて一般の人に想像もつかないような状態が現にあるわけでございます。こういう事犯につきましては、以前は行政執行法あるいは警察犯処罰令等によって、そういう事態に至らない前において検束処分あるいは勾留処分といったような手当ができたのでございます。また、その検束処分に対して反抗しまする者は、公務執行妨害罪というもので手当ができたのでございますが、そういうものがなくなりました今日におきましては、結局、別府事件で一般の人が知っておりますように、数十名が二つの宿舎に相分れて、刀を廊下に立てかけて、そうして今やまさに一触即発というような状態にまで参りませんと、解散に応じないというあの刑法の百七条の規定を適用することができないということなんでございまして、こういうことで、犯罪になるような情勢ができるまでの間は手をこまぬいて見ておって、そうしていよいよ血の雨が降るという瞬間に初めて警察権が発動するということでありましては、今の犯罪予防の観点から申しましても、とうてい目的に沿わないものでございます。そういう意味からいたしまして、この法の不備を補いますために持凶器集合罪のような規定を設けたのでございます。また、緊急逮捕の問題でございますが、これは、暴力団の最も特徴的なものは暴力脅迫という罪でございます。ところが、これは緊急逮捕の要件を備えておりませんために、グレン隊等が暴力脅迫を働きまして、警察の耳に入る、押しかけていったときにはすでに現行犯ではなくなっておる、そしてそれらは他の地へ移ってしまって、裁判官の令状を求めて逮捕するというときにはすでに時期を逸してしまうというようなことから、せっかく警察の耳に入りましても適当な手当をすることができなない。そこで、この緊急捕逮の要件に暴行脅迫の罪を加えることによって、そのような事態を防ごうとするものでございます。  第二の大きなねらいは、犯罪の被害者を保護するという点でございます。犯罪の被害者が他人の犯罪のために泣き寝入りしなければならないということは、この法治国家、民主国家においてとうていしんぼうのできるものではございませんが、現状は、遺憾ながら、先ほども犯罪情勢としてお述べになりましたが、相当善良なる市民が犯罪のために泣き寝りしておる状況が見られるのでございます。お礼参りの罪を罰しようとする趣旨も、犯罪の被害を受けて警察に救いを求める、裁判に救いを求める、こういうときにその救いを求めようとする人に対して、お前のおかげでおれは処罰されるのだというようなことを言っておどしあげる、結局適正な捜査、裁判をも免れてしまうというやからが横行しておるという現状にかんがみまして、そういう種類の、被害者に対してお礼参りのようなことを言っておどしあげる行為を処罰しよう、こういうのが一つの改正の重要な点でございます。  それから、輪姦的な形態で行われた性犯罪、数人が共同してこのような性犯罪を犯した場合に、現在の法制のもとにおきましては、被害者の名誉、感情、そういうものを尊重するために、処罰するかどうかは被害者の気持にまかせておるのでございます。ところが、このような犯罪は非常に暴力的な色彩の強いものでございまして、具体的な事例で申しますと、実に悲惨目をおおうものがあるのでございます。悲しいかな被害者は女子でありますし、そういう者に、もし告訴をするならばということでおどしあげる事例が多うございます。また、おどしあげないまでも、男の方は大っぴらに内情を話すぞというようなことが暗にほのめかされますために、被害を受けながらも泣き寝入りになるという事例がこれまた少くないのでございまして、そういうものに対しましては、被害者の感情も尊重しなければなりませんけれども、そのような大勢の者によって犯されるという暴力的な観点から、公けの秩序という点から、これを見のがすわけにはいかないということで、これを非親告罪といたしまして、そのような事犯が発生いたしました場合には機を逸せず捜査に着手いたしまして、罰すべきものは罰して、被害者の保護に遺憾なきを期したいというのがこの点の改正でございます。  なお、器物損壊あるいは私文書毀棄という罪も、同じように現在は親告罪になっておるのでありますが、このようなものも、グレン隊等が親告罪であるというところの盲点をつきまして横行闊歩しているこの状況を防ぎますための処置として、これを非親告罪といたしたものでございます。これはすべて被害者を保護してやるという趣旨にほかならないのであります。  なお、刑事訴訟法の関係におきましては、権利保釈という制度が御承知のようにございます。勾留をされております被告人はお金を積みあるいは保証書を入れることによって保釈を受ける権利を保障されておるのでございます。これらの権利は一定の罪一定の条件のもとにおいては制限をされるということは、これはまた訴訟法の定めるところでございますが、その中に、お礼参りをするようなおそれのある場合には権利保釈の除外事由として権利保釈をしなくてもいいということに相なっておるのでございますけれども、現行法はその条件がさびしゅうございまして、十分な理由を証明いたしませんと権利保釈から除外するわけにはいかないということになっておりますのを、相当な理由ということに緩和する、また、権利保釈のお礼参りをする対象を、被害者本人だけではなくして、その親族に対して、畏怖させるようなおそれのある場合には、これまた権利保釈から除外事由として制限することができるという処置をとることにいたしたのでございます。  さらにまた、それとうらはらをなすのでございますが、一たん保釈になりました者が、保釈中に、また裁判を経ていない段階で被害者のところに行って裁判を有利にしようと思っておどしあげる、こういうような例がこれまた少くないのでございます。そういう場合には取り消しすることができる、この条件を、被害者本人だけではなくして、その親族に加えた場合をも取り消しの事由にするということにいたしまして、被害者の保護の徹底を期したのでございます。  これが刑訴法の改正でございますが、さらにまた、本日御審議になっております証人の被害給付の法律も、これまた裁判の適正迅速な処理をねらっての証人保護のための立法でありまして、お礼参り、輪姦あるいは器物損壊、私文書毀棄の非親告化、権利保釈の制限、勾留取り消しの緩和、証人の被害給付、この一連のものはすべて、善良なる犯罪の被害者を泣き寝入りさせないように、そして権利を伸張してあげようというのがこの暴力立法のねらいでございます。  以上がこの暴力立法の改正の特徴でもありますし、趣旨でもございます。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 この各条文についての審議は午後もしくは明日に譲りまして、午前の私の質疑はその程度にとどめたいと思います。

町村金五自由民主党

○町村委員長 古屋貞雄君。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 御質問の御答弁を拝聴いたしておりまして大体よくわかりましたが、私は、本件の暴力行為に対するお取締りをいたしまして、われわれの平安な生活をさらに安定をするための改正でございまするから賛成でございますが、そこで、一つ承わりたいのは、暴力ということなんです。暴力という現象形態だけに重きを置かれて、その暴力のよってもって起って参りました原因と申しましょうか、そういうものにも考慮されてこの改正法が出たのであるかどうか、まずその点を承わりたいと思います。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内政府委員 暴力の現象をとらえて立法をしたか、その原因となっている温床についての配慮があるかということでございますが、暴力のよってきたる温床的な現象につきましては、先ほども大臣から答弁申し上げました通り、これはこの改正法案一本によって暴力を絶滅し得るものではございませんので、その立法の以前においてのいろいろな諸施策が合せて考慮されなければならないのでございます。罰しつつ指導し、指導しながらさらに善良なる市民の中に溶け込ませるということがこの立法の最終のねらいでございます。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 私がおそれるのは、本件の問題の中で、かつて当時非常な心配をされまして、やかましい立法者の趣旨がその中に盛り込まれておるといっておりまする暴力行為等処罰に関する法律の問題なんですが、その法案が成立いたしました当時には、明確に――立法者の趣旨は私どももよく存じておりますが、裁判所の法の秩序を乱して執行を妨害するという立場から、家屋の明け渡しを裁判所の手続によらずして暴力でこれを明け渡しする、あるいは貸金の取り立てについて法の秩序を乱して直接暴力で取り立てをする、こういうような、当時大正十五年ごろ行われましたそうした暴力そのものの取締りを目的といたしたのが、暴力等取締法案の成立を要求された経過だと思うのです。しかるに、最近におきまする該法案の適用の統計に現われておる結果から見ましても、当時、労働運動であるとか、小作争議であるとか、水平社運動、そういうものを目標としておるのじゃない、こういうことを明確に言われて、当時の審議に関係した方たちがさような方面に拡張解釈をされる弊害をるる述べて、そうして、さようなことはないということであの法案が通過いたした。このことは、今同僚の三田村君からも、立法者の趣旨が何ら顧みられずして社会の変遷に伴うという意味のことを言われましたが、社会事情の変化に伴うなら格別でありますけれども、同じような社会事情が継続されたにかかわらず、その他の方面にこれが適用されておる。こういう事実があることは、大体、現在の暴力等取締法によって処罰されておる判決の件数からいきましても、六割の労働運動が巻き込まれているわけです。従いまして、本件で私どもが一番問題にいたしておりまするのは、ゆすり、かたりをすることを職業とし、何らの生業を持たずにやっておる者に対する処罰という御意向のようなんですが、しからば、ゆすり、かたりをしておるという、そういう集合した団体そのものをずばり処罰する法を考えるべきだ、そのことが一番必要だと思うのですが、そういう点には何ら触れてないのですが、そういう点はどうなんですか。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内政府委員 この立法のねらいは、先ほど申しましたように、広く言われておりますグレン隊とか、あるいは親分子分の関係で結びついておる組織的な暴力、そういうようなものを取り締る、あるいはそういうものから生ずるところの害を防ぐということにねらいがあるのでございますけれども、今お話しのように、暴力行為等処罰に関する法律の適用が、その後政府がねらった立法当時の趣旨を離れて一人歩きをして、そして思わぬ方向に適用されたのではないかということでございます。その点は、速記録を調べてみますと、お話しのように、なるほど暴力行為等処罰に関する法律が労働運動その他に適用されないという趣旨の答弁があったことがうかがわれるのでございます。こういうように法律ができてしまいますと一人歩きをするということは、構成要件をはっきりと規定しております限り、その構成要件に該当するような事態が発生いたしますならば、その法律の適用を見ますことは、これはいかに政府側が強行いたしましても、法律の持っておりますところの性格から当然出てくることなのでございます。そこで、このような適用を防ぎますためには、特別立法という形をとるよりも、本来こういうものは刑法犯的な犯罪に根ざすところの犯罪というものであることを明確にいたします意味におきまして、冒頭にも大臣からお答え申し上げましたように、刑法の規定としてこれを理解いたしたのでございますし、刑法の規定として理解いたします以上は、各暴力立法ではございますけれども、各本条の各章に分れてそれぞれ立法趣旨がその章によって明らかになるのでございます。たとえば百五条の二を例にとって申しますれば、これはお礼参りを処罰する規定でございますけれども、百五条の関係は御承知のように証拠隠滅の罪でございます。従いまして、これは証拠隠滅、証憑を保存するという保護法益の範疇にこれを入れまして、そういう趣旨でこの規定は理解すべきものであるということを刑法の成文をもって宣言をするという態度をとったのでございまして、あるいは持凶器集合罪というようなものが広く労働運動あるいは大衆運動に適用されることはないか、私どもは、大衆運動や労働運動が凶器を準備したり、あるいは準備あることを知って集まるといったような形態のものではないと理解をいたしておりますので、労働運動がそういうふうに逸脱して、昭和二十七年の騒擾罪といったような形のものに転化をいたします場合には、これはこの法律の適用を免かれるわけにはいきませんけれども、健全なる労働運動がそのような形をとろうとは、とうてい私どもとしては想像もつかないのでございまして、そういうふうに私どもははっきりとこの章の中に入れまして、この章の意味するところの法律概念によって、解釈、運用もおのずからそこに出てくる。これが刑法の一般法典としての特徴を持った特性とも申すべきものでございます。そういう意味におきまして、刑法典にこれを規定することによって、その立法趣旨を明らかにいたした次第でございます。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 もう一つ私が憂えますのは、お答えを願いたいと思いますのは、問題は、結果は同じでございましても、今のようなゆすり、かたりをすることを職業とし、さようなことを生業を持たずにやっております人たちの暴行の問題と、それから、憲法に保障された団結権、罷業権を持った労働者諸君の、主たる目的が労働争議によって行われた問題、こういうような問題と、同じ暴力という形はありましても、これは根本的に区別すべきことが当然だと思うのです。従いまして、情状の問題にあらずして、根本的な成立要件の問題としてここに考えなくちゃならぬことは、そうした正当な集合体を持ったものたちの行動の行き過ぎのような場合に関する問題と、それから、ただいまお説のようなゆすり、かたりを問題にして、それを職業としてやっております人たちの問題と、同じ結果が現われたといたしましても、これを区別すべきじゃないか、区別しなければほんとうに御趣旨のような目的は達せられないのじゃないかということが一つ。それから、もう一つは、私どもがおそれますのは、今言ったように、立法者の意思から勝手に一人歩きをする、ややもすると取締官は拡張解釈をされるわけであります。このことは、取締りをする方と取締りをされる方との立場の相違によって、同じ事実でございましても考え方が違ってくるのであります。こういうことの人間の考え方の基本となるべき――もっと申しまするならば、社会思想上の立場からわれわれしさいに検討をして参りますと、やはりこの両者は画然と区別した立法をいたさなければ、将来非常なおそるべき結果になるのではないか。従って、こういう点を区別すべき意思があったかどうか、区別されるようなことがありましたけれども、それを同一に考えてこういうような改正法案を出したのであるか、こういうようなことを承わりたいと思います。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内政府委員 この刑法の規定は、自然犯と申しますか、何人が犯す場合におきましても、反道徳的な、反倫理的な要素を持っておる罪を刑法の中に書き込むのが通常の立法政策でございます。ここに掲げましたような暴力立法、たとえば集合罪の規定にいたしましても、あるいはお札参りの行為にいたしましても、この種の問題はいずれも自然犯的な犯罪であるというふうな考え方をいたしておるのでございます。従いまして、これはいかなる人が犯しましょうとも、このようなことは今の自然犯的な意味におきまして処罰に値するものであるという理解のいたし方をいたしておるのでございます。ただいま御疑問の点の、労働運動の場合は除外をする、特に職業的にゆすりその他をやっておる連中だけが犯罪の主体になる、つまり一種の身分犯的な考え方を入れるべきではないかということでございますが、そうなりますると特別法で考えるか何かしなければならないのでございますが、今回の立法の構成要件をしさいに御検討いただきたいと思いますが、これらの行為は、身分犯をもって律すべきものではなくして、自然犯として何人も処罰に値するものというふうに理解される犯罪形態のものでございますので、そのような身分犯的な考えを入れて立法を考えたことはないのでございます。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 私は努めて総論的なことをお尋ねをしておるわけですから、各条文に入っての問題は後日御質問申し上げたいのですが、このことをなぜ私がさようにしつこく御質問申すかと申しますと、あとの方に参りまして、器物毀棄罪を親告罪からはずした点、それから暴行脅迫が緊急逮捕の点、こういう点を並べて参りますと、私どものひがみかもしれませんけれども、本刑法の一部改正というものは、全部これは大衆運動、労働運動の取締りの意図のもとにやられておるんだというような見通しが私どもはつくわけです。なるほど被害者保護という立場でございますけれども、従来何ゆえに器物毀棄罪に対して親告罪というものを認めておったか。それから、緊急逮捕の問題につきましては、これは今でも憲法上相当疑義がある。なるほど最高裁判所の判例は憲法違反でないというような判決が下ってはおりますけれども、少くとも基本的人権を尊重する憲法の建前から言えば、これはやはり憲法違反ではないか、その憲法違反であるという疑いのある緊急逮捕をさらに拡張して暴行脅迫というような簡単なできごとに対してまでこれを実施する、こういうことに相なりますと、これは労働争議のすわり込みなんていうことはできなくなるのです。労働争議の一つの手段として、相手方を多少不利益な立場、相手方に対して多少の遠慮させるような態度をとらなければ、労働争議にならない。従って、労働争議と暴力行為との今回の限界について明確に御答弁願えればけっこうだと思いますが、いかがでございますか。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内政府委員 正当な争議権の発動としてなされます他の法令違反というものが犯罪の成立を阻却いたしますことは明確なことでございまして、法理論的に争いのないところでございますが、その争議行為が争議権として認められない場合におきましては、その行為が他の法令に触れる場合には、その法令によって処罰を免れない、これも法理論的に異論のないところでございます。従いまして、このような規定が争議行為の段階において適用を見るかどうかということは、その争議行為自身が正当な争議行為であるかどうかということにかかるのでございます。一般的に申しまして、正当な争議行為につきましては、これらの法令ばかりでなく、今回の改正暴力立法の部分だけでなくて、その他の刑罰法令につきましても同様な適用を見ないのでございます。その点は御懸念のようなことはなかろうというふうに考える次第でございます。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 刑事局長のような法律的なくろうとの人たちはそれでいいのですけれども、現在石田労働大臣は労働争議の範疇に入れるべき綱領みたいなものを下に流しておるようでありますが、行政的な解釈から考えたいろいろの解釈問題について、果してどの程度が労働争議の範疇に入り、どの程度は逸脱したものであるということを認定するのは、第一線の警察官あたりがやられると思うのです。そういう場合に、どこまでが労働争議であり、どこまでが暴力行為である、こういう認定をする場合に、私どもが非常に憂えますのは、立場が違いますと、同じ事実について考え方が違うのですよ。たとえば、端的に申し上げますと、取り締る立場に置かれる人、あるいは労働争議によって追い込まれる立場におる会社の人たち、あるいは内閣不信任案を出そうという社会党の立場と、出される方の政府与党の立場では、同じ事実に対しても考え方が違ってくると思う。これは人情のしからしめるところであります。そういう場合に、果してこの法案が悪用されるおそれがあるかないかということについては、労働組合の諸君から考えれば、これは労働組合の立場から、悪用されるおそれがある。一方立法者の立場から申しますと、なるほどこれははっきりと、阻却事項というものは労働争議になるやいなやによってきまるのだ。これを果してだれが検挙し、だれが認定するかということは、やはり第一線の警察官並びに検察官がやらなくちゃならぬということになります。かようになりますと、先ほど申し上げました人情の機微でありますから、守る方と守られる方と、いわゆる検挙するという立場に置かれる者と検挙される立場に置かれる者において、同じ事実に対しても考え方が違うし、認定が違う、こういうことが現実にあり得ると思うのです。そういう場合に、本法のような刑罰が押し出されて参りますと、このことについて相当心配をしまた懸念するのは当然だろうと思う。従って、これが納得のいけるような御説明と、納得のいける理由がなければならないと思う。その納得のいく御説明、納得のいける理由というものを明確にしていただきたいというのが私どもの考え方なんです。たとえて申し上げまするならば、この法律が制定されることによって、集団的なゆすり、かたりを職業とする、今当局がどこまでも取り締らなければならぬという対象となるべきそうしたばく徒の団体であるとか、特殊なグレン隊の団体というものがむしろこの法律からのがれることになって、罰せられる者は、ときに労働争議をやって少しぐらい行き過ぎをした者、その者が罰せられることになる、こういう結果になりはしないかということを私はおそれるわけです。というのは、この法律でこのくらいの処罰が規定されましても、ゆすり、たかりを職業としております連中は、必ずお礼参りをすると思う。それは十人の子分のうち一人か二人は犠牲にする。ばく徒の親分などははっきり犠牲者をきめておる。死刑以外にこわいことはない連中がおりますから、これは不問に付されるおそれがある。しかし、労働争議の諸君たちはあとでお礼参りするおそれはない。あるいはしつこく執念深く復讐するというような考えは労働組合の諸君には全然ございません。労働組合の諸君は、自己の主張するところの経済的安定、自己の主張するところのべース・アップの解決がつけばそれで足りる。従いまして、ゆすり、かたりをするというような人々とはその目的が違ってくる。新しい安定した職場につけばいいということが目的である。片方は、それを生業とし、生活の資料としている。自分の勢力を、拡張しようということでございますから、このくらいの刑罰をもっていってもお礼参りはなくなるこことはおそらくないだろう。むしろそちらの方のお礼参りの復讐がこわくて、この刑罰の適用の範疇からそれらの連中に逃げられてしまって、残る問題は、今申し上げたような、生活の保障を目的とし、職場を守りたいために、自分が与えられた職場を忠実に守りたいがために、生活安定の基礎を得たいという正しい要求から参りまして、たまには相対立してごたごたいたしますと行き過ぎがある、これが対象になるおそれがある。このことは、私どもが現実に目の前に体験するわけなんですが、衆議院の前でもデモがあるとけしからぬと言っておる。デモ隊はちゃんと規制をとってやっておるが、警察官の方はやられるというような意識で飛び出して、あっちこっちで引っぱっておるのがある。やられると思うから、これも人情だと思う。無理にジグザグを組んでわれわれ警察官をばかにしておる、しゃくにさわると怒るのは当然です。そして、二、三の人間を引っぱり出して、これはけしからぬということになってごたごたが起きる。警察官の方では、これは職務執行妨害だと言う。片方は、ある程度までは秩序整然としてジグザグコースをとったのだが、二、三人ぱくられたから、それはけしからぬといって抗議を申し込むということに現実はなりますけれども、結果はそうはならぬと思う。そういう意味におきまして、私が申し上げたいのは、労働組合運動からくるそういうような行き過ぎの問題について暴力と称せられる程度のものと、最初から計画的に、今申し上げたように、なりわいに、生活の資料にするためにやっている人の暴力というものの区別が非常につきにくいじゃないか。従って、なるほど理論では、労働争議の場合でも、行き過ぎて、しかも刑罰の範疇に属して自然犯であるから、その範疇に属する行為があれば処罰するのは当然だということは、理屈では言えると思うのですけれども、実際上の問題となると、認定をする人の立場で変ってくる。従って、私は、今回の問題について、一方で器物損壊罪が親告罪でなくなったために、すわり込みをやってごたごたして器物毀棄をやっても、今までは官庁でも会社にしても親告しないからこれを処罰しないものを、今度は勝手に警察がひっぱっていける、それから、これ自体、争議行為の少し行き過ぎた行為というものは暴行・脅迫の範疇に必ず入るから、これは緊急逮捕される、こういうことに相なるということに対して私どもは憂えるわけです。そういう一連の関係がなくやられたということでございましょうけれども、少くとも暴力犯処罰取締法違反の経過などから見ても心配になるわけです。そこで、そういう区別はつかぬものでしょうか。たとえば、労働争議における、あるいは陳情、請願に来たような場合の関係は、これは一時的のそこのできごとで、計画的、長期的にわたるものでない、そういう場合と、それをなりわいにしている場合と、区別はつけ得られると思うのですが、そういう点についての御考慮による刑法改正ということをお考えになられるかどうか、その点を伺いたい。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内政府委員 ただいま御懸念のような、暴行、暴力にある種の区別をつけるということは、立法技術上ほとんど不可能だと私は考えておりますが、今先生の御懸念になっているような点は、集合罪につきまして、一部の学者の中に先生と同じような御懸念の意思を表明した方があるわけでございます。法制審議会におきましては、ただいまの緊急逮捕の問題やあるいは器物損壊等の非親告化の問題につぎきして、今先生のおっしゃるような意味においての御懸念はほとんど見られなかったのでございます。器物損壊や文言毀棄のような罪は、これは明治四十年当時は親告罪として取り扱われることになっておったのでございますけれども、昭和十五年に改正刑法仮案が発表されましたときは、すでにそのようなものは親告罪としておく理由に乏しいということで、これを非親告罪とするという案ができておるのでございまして、法制審議会におきましては、学者、実務家、弁護士の方が入っての御審議でございましたが、その中における論議を見ましても、この点が労働争議に、あるいは大衆運動等に適用されるおそれがあるというような意味からして議論された方は一人もございませんでしたことを申し上げてはばからないのでございます。要するに、この規定だけを特に労働運動あるいは大衆運動と職業的な暴力団との間に区別をつけるということは、立法技術的に無理な話でございまして、むしろ、これが正当な争議行為であるかどうかというところの判定は、何も取締官が勝手にするのではございませんで、正当な争議行為であるかどうかは、労働三法をごらんになるとわかりますように、はっきりといたしておるのでありまして、はっきりしておりますことでありますならば、本法の適用を受けないことは、これまた法律的にはきわめて明白なことであるというふうに私ども理解いたしておるのでございます。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 この点についてはもう少し掘り下げていただきたいと思っておりますが、なわ張り争いであるとか、博徒の親分であるとかいうようなことはだんだん少くなって参りまして、そうしょっちゅうわれわれの生活を脅かしておるものではないように最近の状況ではなっておると私は思います。従いまして、そういう特殊な問題を処罰する目的のために――ことに、最近のような不景気になって参りますと、労働争議は日常社会に不安を与える非常に大きな原因をなす場合があるわけなんです。従いまして、そういう問題に関する、社会全般に対する影響力を持つような問題については、相当に慎重に考えていかなければならぬ、こう確信を持つわけなんですが、実はこの点につきましては時間がございませんから午後も継続して御質問申し上げたいと思うのですが、午前中は一応この程度にして、午後私各論に入らしていただくことにいたしまして、午前はこれで私の質問を一応打ち切っておきます。

町村金五自由民主党

○町村委員長 間もなく本会議が開かれるようでありますから、本会議散会後本委員会を再開することとし、これにて暫時休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ――――◇―――――     午後三時八分開議

町村金五自由民主党

○町村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。三田村武夫君。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 文部大臣に御出席願いまして、青年犯罪と文教政策について御所見をお尋ねいたしたいと思います。  大臣御承知と思いますが、青少年犯罪最近の傾向を見ますと、激増の一途をたどっております。これは大きな社会問題であると同時に、世論の関心を集めて参りまして、民族の将来、国家の現状にかんがみて非常に憂うべき傾向だと思います。しかもその実態は世間によく知られておりません。私は、当委員会を通過し、参議院も通過いしたまして成立、本日から完全施行になりました売春防止法の施行に伴い、去る三月四日に映画関係者の出席を求めまして、映画の青少年犯罪に及ぼす影響について、所見とその対策を伺ったことがあります。その際にも映画関係者が声を同じうして言われたことは、青少年犯罪がこのような傾向にあることは全然知らなかった、これは大へんな問題だ、われわれも大いに責任を感じ、かつ世論に訴えて、国民とともどもに良識のある処置をしなければならないということを言っておられました。でありますから、私は、この問題について、このよって来たる根本の問題とその対策に関しては、文部大臣は、長い政党政治家としての御経験と、さらに在野法曹としての深い御経験をお持ちでありますから、これが単なる立法的処置、刑罰的処置だけで解決し得ない重要な問題であることは万々御承知のことと思いますがゆえに、それらの問題について少しばかり最近の実情を申し上げて、この際御所見と対策についての御方針を伺いたいのでございます。  最近五カ年問の統計であります。これは警察庁にお願いして調べてもらいました資料でありますが、これによりますと、昭和二十八、二十九、三十、三十一、三十二年、この五カ年間に、十四才から二十才未満のいわゆる未成年、この階層の少年で、単なる行政犯ではありません、刑法犯として警察に検挙された者の数が五十万四千九百六十二人あります。さらに、二十才から二十五才未満の者で、これが同じ刑法犯で検挙された者が七十万四千四百十二人あります。合計いたしますと十四才から二十五才未満の者でこの五カ年間に刑法犯罪として警察に検挙された者の数が百二十万九千三百七十四人となっております。これは警察に検挙された者だけの数でございまして、大臣御承知の通り、警察に検挙されない者で同一傾向にある者がどのくらいあるか、これはなかなか想像にかたい問題でありますが、確かに検挙されない者の中にも同一傾向の者がなお多数あるということは想像にかたくないのであります。これは昭和三十年十月の国政調査、内閣統計局の資料でありますが、これに基いてこの五カ年間に成年に達した者、いわばこの五カ年間で同一年令層にある者の数を推定計算いたしますと男女合せて八百五十六万九千余人になっております。大体そこの中の半数は女子、半数は男子とします。しかも検挙者の大部分は男子であります。そういたしますと、男子四百二、三十万人のうち百二十万九千人が刑法上の罪を犯して警察に検挙された、こういう計算になるのであります。一体これは何を意味するか。この検挙された者だけの数から計算いたしましても、つまり、十四才から二十五才未満の階層の青少年層の中で、男四人のうちで一人が刑法上の罪に問われて警察に検挙された、こういう数字になってくるのであります。これはまことにゆゆしい注目すべき問題でありますが、さらに驚くべきことは、昭和三十一年と二年の両年度の少年犯罪であります。これは十四才から二十才未満の者を特に警察庁にお願いしてその資料を調製していただいたのでございますが、これによりますと十四才から十六才未満の者、これは三十一年が二万二千三百十四、三十二年が二万六千二百七十八、十六才から十八才未満の者が、三十一年が三万百四十一、三十二年が三万八千二百五十二、十八才から二十才未満が、三十一年が四万八千三百一、三十二年が四万九千七百七十、合計、三十一年が十万七百五十六、三十二年が十一万四千三百、歴年累増の傾向を示しております。しかも、三十二年度の犯罪内容を別な資料で計算いたしますと、二十五才以上の成人を含めた全刑法犯の中のパーセンテージを調べてみますと、十四才から二十才未満の者が犯した殺人の罪が一六%です。全犯罪者の中の強盗の罪が三九%、強姦の罪で検挙された者が何と驚くなかれ五三%です。十四才から二十才未満の者が犯した強姦の罪が全検挙者の五三%を示している。これは実に驚くべき傾向だと思います。しかも、御承知の通り、強姦罪のごとき犯罪が警察に検挙される場合は、その全被害者の一体何%であるかということも、これは想像されるのであります。御承知のように、強姦の罪のごときものは、なかなか被害者はすなおに警察に届けません。その被害者の将来を思って、あるいはいろいろな点を考慮して、午前の委員会でも問題になりましたが、そのあとのたたりなどということも考えまして届け出ない。従って、警察が検挙の手を伸べない場合もあり得るのであります。しかも全強姦罪の五三%は二十才未満の青年によって犯されておる。こういう統計が出ておる。これはきわめて重要な問題であることは、文部大臣御理解願えると思います。ここでさらに私はつけ加えたい問題は、これは最近の傾向である限り戦前の比較というものが必要になってくるのでありますが、戦前と申しましても、戦時中は比較対照の材料になりません。戦時中はうんと犯罪が減っております。戦前、すなわち支那事変の始まらない昭和十一年の統計を一〇〇といたしまして、青少年犯罪の計数をだしてみますと、戦後十年を経た昭和三十年が五〇〇になっております。すなわち五倍です。戦争のない平和な社会環境を比較してみて、戦後十年を経た三十年で五倍、一体これは何を意味するか。これで文化国家であるとか民主国家であるとか言えるかということに、われわれの重大にして深甚な反省が要るのだと私はしみじみ考えるのでございます。  ここでわれわれは、この立法の折、国政の最高機関としてこの法案の審議に当る際に深く考えなければならないことは、犯罪非者として検挙された青少年の将来であります。まだ精神的に肉体的に未成熟な青少年が刑法上の罪を犯し、しかも重罪として検挙された場合、将来どうなるか。これはその当事者の立場に立ってわれわれは考えなければならないと思うのであります。さらに、被害者の立場――殺された者、むざんにも生命を奪われた被害者、あるいはまた、強姦罪の対象になって、それこそ自己の責任でなく失われた貞操、そういう人々の、その子女、婦女子の将来がどうなるかということを考えた場合に、これは容易ならぬ問題であると言わざるを得ないのであります。今日四十才、五十才を過ぎたわれわれの年配の者は、一応歴史上の責任と申しますか、人間としての責任を終ってきたと言わざるを得ません。これから将来のわれわれ日本の民族の繁栄の推進力となるものは、言うまでもなくこの階層にある青年層であります。そういう青年層が、その犯罪の数が戦前の五倍であり、しかもその犯罪の内容が年々凶悪化していく、こういう事態を見た場合に、十年二十年、いな三十年、四十年後の日本はどうなるんだろうか。私は、一たび犯罪を犯して警察に検挙されたそのことによって人間の一生が失われるとは思いません。しかしながら、そういった環境にあった者がどんな心理的あるいはまた思想的攻勢に動かされていくかということも考えてみなければならぬと思うのであります。  どこか社会構造の中に欠陥があるんじゃないか。文部大臣に端的に申し上げて御所見を伺いたいのでありますが、文教政策の責任いかんという問題も出てくるのであります。十四才から二十才未満、いわゆる犯罪年令に達するまでの人間完成の道程と申しますか、先ほど申しましたように、この間、三月四日、映画関係者の意見を聞いた際に、(「簡単に」と呼ぶ者あり)――重要な問題ですよ、これは。映画関係者の意見を、聞いたときに、その瞬間の衝動といいますか。社会環境によって犯罪を犯す、その瞬間そのときに持っておる青少年の心理的条件といいますか、つまりその前の人間完成の道程が一体問題であるんじゃないかという意見も私は聞いたわけです。つまり、それは何をいうかというと、中小学校における教育であります。よくわれわれが言う言葉でありますが、がけっぶちに行って立ちどまる人間の自制心です。犯罪は瞬間的衝動で行われることもありますが、そのがけっぷちに行って立ちどまる人間の、自制心、自律心というものがどこかに欠けているんじゃないかということをわれわれは考えるのであります。私はそういう意味合いから文部大臣にその教育上の問題についての御所見を伺うのでありまして、簡単にと言われますが、私も当委員会において法案を審議する責任上、申し上げて御参考に供し、御所見を伺いたいのであります。  昨年の六月でありますか七月でありましたか、前法務大臣の中村梅吉氏と、私は所管事項の視察に行ったことがあります。大阪の刑務所に行って既決死刑囚の生活の状態を見ました。二十四、五才から三十才くらいの既決囚が実に静かな姿で独房に生活いたしておりました。あすかきょうか、ドアをあけられた瞬間に絞首台の露となる人々であります。静かな生活をしている。人間の性はもと善なりといわれますが、私はその通りだと思う。しかも、犯罪の記録を見ると、残虐目をおおうような犯罪を犯しておる。政治の衝にあるものは一人といえども人間の生命はとうとしとしなければならない。どこに欠陥があるか、重大な反省を必要とすると私は思うのであります。一つ文部大臣の御所見として伺いたいのでありますが、第一の点は、今申しました中にある、青少年が犯罪年令に達する以前の教育、つまり中小学校における教育の点です。これも私は何も今の教育制度が悪いと言うんじゃない。一人々々の学校の先生に会いますと、実に真摯にしてまじめなりっぱな先生がおります。自分の給料の中からわずかな小づかい銭をさいて自分の受持の子供を育てていくりっぱな先生がある。しかるに、一たびこういった青少年の階層をながめてみると、こういう実に憂うべき状態がある。法務大臣、文部大臣、長い経験をお持ちでありますから、こういう問題についてどういう御所見をお持ちでありますか、まずお伺いいたします。

松永東自由民主党文部大臣

○松永国務大臣 御指摘になりました青少年の犯罪、まことにこれは苦々しいことだと存じまして、私は、文教の府に職を奉ずる前から、これは何とかせぬければならぬ問題じゃないかということを明け暮れ頭を痛めておりました。それは、御承知かもしれませんが、私は弁護士を商売にしておりまして、ことに終戦後は政治家を追放されまして弁護士専門でやっておりました。しかも私はその弁護士の中で刑事専門でございます。これは、正直なことを申し上げますと、民事を引き受けますと、坊主が憎けりゃけさまで憎いで、相手方から憎まれるから、昔から刑事専門で来ておる。従って、今仰せになりましたような青少年の犯罪者の数の多いこと、終戦直後からまざまざと見せつけられております。まだまだ、あなたの御指摘になりました昭和二十八年ごろ以来じゃない。その前には、もう東京の法廷でも、私の住んでおりまする浦和の法廷でも、熊谷でも、横浜でも、ほとんどなわつきになって法廷に並んで来るのは青年層ばかりであります。思慮分別に富んだ四十代、五十代の人々はほとんどいない。もう青年層ばかり。これで一体次の時代をになう青少年がこのままの姿でいいのだろうかというので、まことに私は弁護するごとに目頭が熱くなるのを感じておりました。そうした青少年の犯罪、しかも、その法廷にさらされない、隠れたる犯罪者、それは仰せの通り相当の数に上るでありましょう。これを何とかせぬければならぬと考えますが、その前に、一体どうしてこう青少年の犯罪が増えたのであろうか。犯罪がふえるということは、犯罪にならない、いな免れておる青少年が相当おるということを考えますと、身ぶるいするような気持がするのであります。従って、以前から、どういう原因がこの結果を生んだのであるかということについて相当心配して研究もしておったのであります。私は率直に申し上げますが、この原因はやっぱり戦争です。三田村委員御承知の通り、五・一五事件、二・二六事件の発生の当時から、軍部が強い力を持ちまして政治をつかみました。私どもは、その時分の政治家としてははなはだいくじのない話ですけれども、これを阻止することができなかった。政治をつかみ、さらに教育をつかみました。その時分の文部大臣が陸軍大将であったことは御承知のことでありましょう。でございますから、その教育のあり方も、ほんとうに今から考えると驚いた教育に引きずられておる。敢闘精神の培養といいますか、撃て、踏め、けりつけというようなことを教えたり、八紘一宇とかいって、できもしないことを青年に教えておる。あたかも全世界の人類をわれわれの手で掌握するというようなことを教え込み、そうして、やれいまに全世界を日本が指導するのだ、というようなことをたたき込んだことも御承知だと思います。そうして青年層はかり立てられて戦争に行った。いな、戦争に行かない者は工場で兵器弾薬を作る。そうして、八紘一宇という考え方で、まあ間違った考え方でありますけれども、教え込まれたままに、将来の明るい希望、将来の望みをつないでやりました。それが、二十年の八月十五日にどかんと敗戦ということになってしまった。しかも、その当時の社会環境は、もう衣食住に事足りずして、どうにもこうにもならなかったことは御承知の通りであります。ですから、やはり虚脱状態、あるいは放心状態、やけくそになってしまったということも争いがたい事実でございます。しかも、右申し上げたように、戦争前には歪曲せられた教育が施され、戦争後には道徳教育というものをアメさんがまかりならぬというので教えることができなかった、仕込むことができなかった。いわんや、われわれの先祖がどんな道行きをしてきたかということを知るべき歴史、それすら教えることはできない。青年にプライドを持たせることができなくなった。この四つの鳥に九千万人の同胞が生存いたしておりますが、どんなふうに生存いたしておるかという地理も教えることができなかった。まことにこれは青少年がかわいそうです。そうした結果が、仰せになったような、犯罪者を生み、犯罪者に近い不良を生んでいるということの、それが全部じゃありますまいけれども、やはり大きな原因になっておると思う。従って、どうしてもこれは、仰せの通り、一番子供のときに、小さい小学校、中学校の時分に人格を陶冶せなければいかぬ、人間を作らなければいかぬという、その仕事が等閑に付せられておる。等閑に付せられたどころじゃない。やってなかったということなんです。従って、右申し上げるようないろいろな不良が累加して参るようになる。これを何とかせんけりゃならぬと思いまして、今御承知の通り道徳教育の強化を叫びまして、そうして曲りなりにもこの四月から小学校、中学校、高等学校等に手引きをして、そうして是非善悪の弁別心を培養しようということになっております。それは学童の問題だけでございますが、青少年の問題については、また御質問でもあれば私の考えておることも申し上げてみたいと思います。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 あと一点要約して御所見を伺っておきたいと思います。これは文部大臣もお述べになりました通り、私も戦争中から同じ政治の第一線におりました一人として、その責任を感じておる一人でございます。しかしながら、戦争中に原因があり、戦後の教育に原因があり、それだけが原因であることをわれわれが取り上げるだけで問題は片づかないと思うのでございます。問題は今日以後どうするかという重大な段階でありますがゆえに、せっかく文部大臣の冷静にして深き考慮のもとの、すなおにして厳粛な文教政策を期待してやまないのでございますが、これはひとり中小学校の教育だけでなくて、社会環境の是正という問題が大きく取り上げられなければいけないと思うのです。これは、別な言い方をいたしますと、大臣がお話しのように、一つは青少年に一番大切な希望とか目標というものがなくなったということなんです。同時に、青少年に希望や目標をなくしたことは、おとなの責任でもある。おやじがやっていること、母親がやっていること、兄貴がやっていること、おとなの社会の生活環境というものが純真な青少年の心理にどのような影響を及ぼすかということも、われわれは看過してはいけないと思うのです。そのおとなの社会の是正、すなわち社会環境の是正というものは、これは私は大きな文教政策の一つでなければいけないと思います。文教政策というものは、私は学校教育だけにあるのじゃないということを申し上げたい。これは別に制度とか機構とかいうものをどうするということじゃなくて、文部大臣も閣僚の一人として、政府全体で――政府は申し上げるまでもなく国民の意思によって構成されるものでありますから、国民の利益のために、民族将来のために、われわれの住む社会をよりよい社会となし、将来をになう青少年をどのような方向に持っていくか、そのために必要な社会環境の是正というものは、私はぜひともやらなければいけないと思う。青年学級の問題もありましょうし、また青年を中心にしたスポーツの政策もありましょうし、そういうことについて大臣は十分お考えと思いますが、ぜひとも研究は十分慎重にやっていただかなければなりませんけれども、十分に民主的に研さん研究をされて、一たびこれはやらなければならないという結論に達した場合には、勇気と決断をもってやっていただきたい。そうしませんと、どこかに一つの大きな――この問題は、申し上げるまでもなく、親も兄弟も、教育者も、世の識者といわれる人も、みな一緒になって心配をしませんと、片づかない。法律だけ作っても片づく問題でない。刑務所に入れることによって片づくものでない。そういう立場から、私は、大きな文教政策というものをぜひとも打ち立てていただきたい、これをお願いするのであります。  私たちはここで、刑法改正の重要な部分として、岸総理の言われる暴力の追放、そのための法案の審査をやっているのでございますが、文部大臣もおっしゃったように、われわれは戦時中の経験をなまなましく思い出すのであります。厳法酷罰もって治めるに足りない。法律だけ作っても世の中は明るくなりません。そういう立場からするならば、もっと大きく幅広く打ち出していく政治の何ものかが要るのだということをしみじみ感ずるがゆえに、経験の深い文部大臣の御所見を私は伺うのであります。長いことくだくだしく申し上げなくてもおわかりの大臣のことでございますから、今申しました社会環境の是正、それが大きな青少年教育、青年学級の問題もありましょうし――私は今日は予算上の問題をお尋ねいたしませんが、予算が足りなければ、われわれは当然国民の代表として手当をする責任がありますから、三十三年度は間に会わなくても、来年度はその手当をしなければならない責任を感じます。そういう観点から、今申し上げました社会環境の是正と、大きな青年教育、スポーツなんかも含めたそういう立場から、文部大臣の御所見を伺ってみたいと思います。

松永東自由民主党文部大臣

○松永国務大臣 きわめて簡潔にお答えいたします。仰せになりました通り、道徳教育を幾ら学校で強化いたしましても、それだけでは何にもなりません。やはりそれは、家庭において、しこうして社会においても協力をしていただいて、社会、家庭、学校、三位一体となって万全を期せんければならぬと存じております。しかも、学童ばかりではございません。学校以外の青少年、学校に入っておらない、義務教育を終えた青少年、この人々に対する教育方面はやはり私の所管であります。すなわち、学校に入っております子供たちは学校でやはり教育をいたしますが、入っておりません勤労青少年、これを何とか育て上げていかなければならぬ。特にそのために、私は、勤労青少年をどうするかということで、今の定時制教育、通信教育を受けている人、こういう人々には何とかして手厚い救援の手をやはり国家がなすべきではなかろうかというので、今日までも努力をやって参りました。勤労青少年に対しましては、若い思春期の時代ですから、これに対しては、やはり興味を持たせ、必要性を感じさせて、ほんとうに教育の場としてこういう階属の人々を導いていかなければならぬと思います。それには、いわゆる青年学級、こうした設備もありますので、この青年学級教育の振興をはかり、この青年学級あたりの指導者をやはり作っていく、こういうこともやっております。さらにこれから強化していくことになっております。ことに、今ちょうど幸いなことにはスポーツ熱が非常に盛んでありますので、明朗にして活力あるところの人間を作り上げなければならぬというので、スポーツやレクリエーション、そういうものも奨励いたしまして、そのための体育指導委員を設置いたしました。そうして、全国のすみずみまで、そうした委員の活躍によって、野外活動ですか、そういう方法も採用いたしまして充実させたい。さらにまた、みんなが協力し団結していくという気風を培養するために、おかげさまで予算をいただいたところの青年の家、こういうものもできるだけうまく運用いたしまして、こういう方法でも善導していきたいというふうに考えております。さらにまた、青年の情操陶冶をいたしますためにも、映画あるいは音楽、演芸、こういうものも相当善導する機関でございますので、これに対しても、各自治体の人々とも相談をいたしまして、善導に当っていきたいと思っております。  要するに、道義の高揚、道徳心の涵養、これを一生懸命にたたき込んでいって、それをやりますためにはやはり指導者を作らなければいかぬというので、文部当局といたしましてはその指導者の養成に骨を折ることになっております。なかなか簡単にすぐ一年というわけにはいきませんけれども、徐徐にりっぱな国民に作り上げていくというような道に邁進してみたいというふうに努力を重ねておる次第でございます。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 文部大臣のせっかくの深き御協力と御精励を切望しまして、大臣に対する私の質問を終ります。

町村金五自由民主党

○町村委員長 古屋貞雄君。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 午前中お尋ねいたしました暴力に関する関係、特に多数の人の集合罪に関する関係を御質問いたしますが、時間がないそうでございますから、郵政大臣にこれに関係した御質問をしておきたいと思うのです。なお、法務大臣も刑事局長も、いろいろと今審議中の集合罪の問題とも関連を持ちますから、お聞きを願いたいと思うのです。  そこで、郵政大臣にお尋ねしたいと思のですが、これは郵政大臣がしばしば御答弁なさっておりまするから、私はそのことを繰り返さずに、端的にお尋ね申し上げたいのですが、三月の二十日の中郵の問題なんです。そこで組合の諸君がかつて使った事務所に対しまして、しかもべースアップの団体交渉をしばしば当局に申し出て、それが行われずにおります関係上、労働組合の諸君が事務所を中心に今後の対策を講ずる、団体交渉に対するいろいろの準備をいたすというために事務所に集合をいたしまして、いろいろの指図をしたり仕事をするわけですが、その組合事務所を、夜の一時ごろになりましてから、わずかの時間にこれを撤去しなければ封鎖をする、しかもその通告に応じなければ他の力を借りて、端的に申し上げまするならば警察の力を借りてそこを明け渡させるような状況に置かれたという事実、大臣にさような事実をお認めになるかどうか、この点をまず一つ事実として承わりたい。

田中角榮自由民主党郵政大臣

○田中国務大臣 お答えいたします。ただいまのような事実はないようでございます。そのあった事実はこういうことであります。一時ないし一時半に、中央闘争委員一、二名を含むその他の諸君が――中央郵便局に所属をしない諸君が十五、六名組合事務室に参りまして、職場離脱の問題でありますか、放棄の問題でありますか、いろいろな問題に対して喧騒きわまるような態度で事務室を使っておったようであります。でありますので、管理者は中郵に所属する組合員以外は建物外に退去してもらいたいということを再三勧告をしたのでございます。しかし、そのあと、今度局長室に団体交渉の名をもってなだれ込もうとする気配がありましたので、局長室のとびらを締めておったそうであります。局長室のとびらを締めておったら、なだれ込まなかったわけでありますが、まわりが静かになったので局長室のとびらをあけてみたら、四百名の全員が職場放棄をして局外に退去してしまったというようなのが事実なのであります。ただいま捜査中でありますが、私もいろいろ事情を調査いたしておりますので、明確にお答えできかねますが、そういう事情が事実のようでありまして、ただいま古屋さんの言われたような事情はないようでございます。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 大臣から私は確答を得たいと思うのであります。これが事実問題として相当大きな問題となると思うのでありますが、私の方で調べた事実によりますと、三月二十日午前一時二十分ごろに、とにかく組合事務所は午前三時限り明け渡せ、こういう申し出が出たのであります。その通告者は渕上厚生課長で、しかもそのことはやはり上司からの命令であるらしいのですが、これは想像でございますが、渕上厚生課長からそういう通告があって、労働組合の諸君の方では、厚生課長が考えられているような事実はないか、両者話し合いをしてみたらどうか、そのことに対する話し合いをしよう、こういうことで組合の代表者と交渉をいたしましたけれども、とうとうその部屋に入れない、こういうことで物別れになりました。そこで、組合の方では、二十日の午前八時ごろから十時ごろにかけて職場大会をしなければならないという計画の指令を出しておりますので、その事務所の明け渡しの問題でごたごたすることは、しかも夜半ではあるし、お互いによくない、従って、避けようということで、その問題については指導者の立場からもいろいろ考慮をなされた、こういうような事実があり、しかも、さような場合のことを考慮して、たしか御存じになっていると思うのですが、そういう場合には、組合といたしましては、戦術的に、指令三十七号ですかによりまして、ごたごたをしたり警察とのトラブルを起すことを避けろ、しかも、問題が問題であるからなるべく避けるような処置をしろ、こういうようなことが指令によって明らかになっておりまして、その指令に基いて労働組合におきましては行動をした、こういうような事実になっておるのでありますが、ただいま大臣の御答弁では、事務所の撤去の問題を通告をし、他の二人の組合員以外の者がおられた、しかし交渉に来られたがドアを締めておったために引き揚げた、そのあとで四百名の職員がおらなくなったとおっしゃっておられますが、そう簡単に四百名の者が他に出かけられるというはずのものではないのですが、少くとも指令三十七号によって労働組合の幹部は争議行為としての指令を出して、その指令に基いて行動をさせたというこの事実はどうなんでございましょう。

田中角榮自由民主党郵政大臣

○田中国務大臣 お答えいたします。古屋さんただいま言われたことの中で、事実が判明しておりますものについて申し上げますと、組合事務所の貸与を取り消すということを通告したことは事実だそうでございます。これはなぜやったかというと、違法な目的のために使用させる必要はないということと、中央局に限らず闘争期日に策源地となりそうなところは貸与は取り消すということが従前の例になっておるそうでありまして、その例に従って取り消すぞということを通告したそうであります。それから、この職場放棄が中闘指令によってなされたものであるかどうかということは現在捜査中でございます。組合の幹部諸君とも何回か会見して、きのうもただしたのでありまして、私の方では非常に質の悪い職場放棄でございますので、こんなことを中闘が指令したのじゃなかろうということを考えておりましたが、きのう中闘との会見によって明らかにせられたことは、中闘が指令を、出し、現地に出張中の戦術委員会がその指令に基いて独自に局外退去の処置をとったということが明確になりました。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 ここで問題になりますのは、多少、郵便局の管理者の立場からながめたならば、組合員でない者がおるとかなんとかいうような事実によって、組合を夜中の短時間の間に閉鎖しよう、退去しろということ自体が少し私は無理があるのじゃないかと思うのですが、それはなるほど一人か二人局外の者がおられた。あるいは局の管理者から考えますならば、何かといろいろ御想像なさるでしょう。従って、いい想像はされないからそこを閉鎖する、こういうお考えになることも、これもごもっともだと思うのですが、だからといって、一時間くらいの間に全部閉鎖して、そしてそこを明け渡せということ自体少し無理な申し出じゃないか。たとえば、逮捕状を持って逮捕に出かけましても、御飯食べるくらい待つのだ。これは当然なことなんです。それから強制執行で執行吏が行きましても、自分の家で明け渡しの執行でも、品物をよそへ出すくらいはお待ちなさいということは当然なことなんで、待つべき筋合いだと思うのです。そんなにその晩は組合と管理者との間には感情的に対立状態に置かれたようではないようなんですが、こういう申し出をしている。これはもちろん大臣は当然だろうというお答えがあると思うのですが、社会通念からいけば、私は少しこの点は無理だと思うのです。これが一つ。  それから、指令によってという、その指令の内容は、なるべくトラブルを起さぬようにしろ、そうして迷惑のかからぬようにする、適当に現地において指揮をしたらいいだろう、こういうようなことで、その指揮はしたらしいのですが、ただ問題は、今警察や検察の方から、多数の組合員について、参考人という名目ではございますけれども、出頭を求めたり調書をとったりしておるということに相なっておる。これが問題なんです。私どもは郵便法の七十九条に当てはまるか当てはまらぬかという問題については、あとから竹内刑事局長に承わりたいと思うのですが、労働組合の諸君が労働指令に基いて行動した場合に、その労働指令に基いた行動そのものは、今規定されております郵便法なり、あるいは公労法なりに当てはまるというようなことに相なりましても、それにはその前提となるべき条件というものをしさいに公平に御判断をしていただかなければならない。この点について、一体、一方郵便局の管理者の方では、団体交渉を何回申し出ても拒否しておる。数回の申し出をしても拒否しておる。これではならないからどうしようかということで労働組合の諸君が協議をする。職場大会で皆さんが民主的に意見を聞こうとする。そのものも、その指令する場所も、数時間においてこれをやめさせる、こういうようなことに相なると、やはりそのよってもって起った結果に対しては、私は相当管理者は責任を負わなければならぬと考えるのですが、大臣いかがでしょうか。

田中角榮自由民主党郵政大臣

○田中国務大臣 私は、管理者側に悪いところがあれば、それをむやみに悪くないのだと強弁しようというような態度は絶対にとっておりません。事実はあくまでも事実として真相を究明しなければならないという考えを曲げるものではないのであります。組合事務所の閉鎖という問題は、先ほど申し上げましたが、これは、組合員以外すなわち部外者が来て指揮をとっておるという事実をもう一つ考えていただかなくちゃなりませんし、もう一つは、これは団体交渉ということでありますが、もうすでに、団体交渉というところの目標は二千四百円のベース・アップであって、これは第三者の裁定、調停に持ち込まれておるのであります。でありますので、この場合に限っては組合と中郵の管理者の間に団体交渉するというような問題はないようであります。これは一つ明らかにしておきたいと思います。先ほど古屋さんのおっしゃった通り組合事務所を三時までに明け渡さなければ閉鎖するぞということは、これは確かにある意味では非常識のようであります。まあこれは、普通の常識から申し上げますと、三時と限って、毎度の例から言うとすなおに出ていくほどの組合でもないのです。でありますから、管理者としても、せめて部外者は退去をしてくれ、そういう不穏な状態にあっては、また策源地となるような場所は提供できないから、三時までに退去して下さい、こういうことを言うことは、これは平たく考えても今までの例で十分納得できると思うのです。また、管理者側の意見を聞いてみますと、貸さなければ団体交渉という名目でもって局長室に入るぞ、――管理者は、占拠をせられる、こういうふうに思ったようでありまして、少数でありますが管理者は局長室へ入ってかぎをかけておったようであります。一部は、団体交渉をしたかったんだがみなかぎをかけておって会えなかったから退去したと言われては困るので、二、三人は表に出て待っておったそうでありますが、それに対しては話がなく、自然に退去してしまったということであります。でありますので、法律的に見ましても、退去を要求しても、これがすぐ全員が職場離脱をする、またしなければならない根拠にはならないというような状態で、今調査をしておるのでございます。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 やはりこの点は大臣も少し無理だったと率直にお認めになっている。そこに今回の原因があった。なるほど団体交渉は、もうすでに第三者の手に行っていますからあれでありますが、第三者の仲裁裁定なりに基く態度をきめるということが、これは労働組合員の意見に基いて民主的に職場大会できめる、こういうことに相なるわけなのです。従いまして、翌日の二十日の日の職場大会を開くためのいろいろの準備行為をしておった。従いまして、組合員でない者が二人、三人入っておるならば、その人間は出してくれないか、その人間をやはり組合の事務所に置くのは困るということで、私は足りておると思うのです。その点はやはりお認めになっておるようですから、少し無理だということについては、大臣が率直にそういうおつもりでいらっしゃいますので、これ以上私も御質問いたしませんが、そこで、ただ私どもから申し上げたいのは、三十七号のその指令の中には、なるべくトラブルを起さないように、ことに警察などのトラブルを起すことはよくない、中央郵便局でございますから、それはよくないから、それを避けろというような強い要望の指令書が出ているわけです。従って、職場大会をする者については、大臣の逓信委員会での御答弁によると、ちゃんと車も準備をしておった、それから宿屋も準備をしておった、そうして他の場所へ職場を放棄して行かれたのだ、こういうような言葉があるようですが、その点については、私の方から申し上げますと、朝の職場大会をするためのその準備行為に休んでおりまする人々を泊めるために宿を準備しておった、こういうことに相なっておるのですが、そのことは私はあまり本件では問題にならぬと思うのです。問題になりますのは、従って、この中央郵便局の中で職場大会をなし得ることのできない状況に、さような関係上置かれておるということが、これが前提条件になって、そうして夜中に三々五々別のところに行かれて集合をした、こういう問題があるわけなのですが、そこで、今お調べになっておりますのは、これは公労法十七条に基いて調べられているのか、郵便法の七十九条で調べられているのか、これは大臣おわかりになりますか。

田中角榮自由民主党郵政大臣

○田中国務大臣 公労法第十七条及び郵便法第七十九条、公務員法等を参照して調査を続けておるわけであります。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 この点が本件の集合罪との関係を持ってくるので、私は御審議を願いたいと思って御質問申し上げているのですが、やはり労働争議になりますと人数が多いのです。多いものですから、この多い者たちの行動をどう規制するかということが、これは労働組合の幹部諸君の非常に苦心するところなのです。幹部の方では正々堂々と姿勢正しく行動させたいと思いましても、やはり多数の人の行動でありますから、そこでいろいろトラブルが起きる。本件について、この点は竹内局長にお伺いしたいのですが、労働争議のときに労働組合員がその指導者の指導に基いて行動をした本件のごとき問題については、公労法の十七条並びに郵便法第七十九条に当てはまるかどうかという問題なのですが、争議行為のときに幹部の指令に基いて行動したその組合員は、幹部の指令を守ることが組合員の義務なりと確信を持ってこの行動に応じた、こういうような場合に、その心的状態においては、労働争議なんだ、労働争議の幹部の命令に従ったのだ、組合員としての義務で行動したのだといったような場合、そうしてその結果がいろいろな法律の処罰法規にひっかかるような場合に、やはりこれはそのまま犯意があるとかないとかいう問題、あるいは郵便法の問題にも「ことさらに」という前提条件がついておりますけれども、その他の場合に犯意があるかないかという場合は、阻却するかしないかという問題が出てくると思う。この点が本日御審議願っておる場合に関係を持つと思うのです。一方では、労働争議の争議行為であると信じ、しかも幹部の指令に基いて行動した。それが結果においては処罰法規にひっかかるというような形になる。こういう場合に一体どう処置していいかという問題です。私どもは、一方においては憲法で保障するところの労使対等の立場で生活の保障を確保するところの要求権、交渉権を持っておるから、これが優先するものであると考える。それを前提として、その結果そのものの判断をしていただくということが、日本の基本的人権を尊重する、労働組合法の基本的精神に合致するものだと私は考えるのですが、その点どうでございましょうか。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内政府委員 組合の幹部からの指導に基いて組合員がその指導を順奉して行動した場合に、本件争議行為が違法争議行為でありますために郵便法第七十九条の適用を見なければならないといった事態の場合に、そのような組合員が指導に基いたということによって犯意を阻却するかどうかという御質問のようでございますが、これは、一般的に申しまして、そのような場合には犯意を阻却することにはならないというふうに理解されるのでございます。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 郵便法の問題については「ことさらに」という条文がございますから、「ことさらに」の解釈問題で、これは犯意ではなくて、私どもは条件だと思うのです。たとえば、郵便法七十九条の「ことさらに」ということは、郵便袋を捨てたり、破いたり、どっかへ隠匿するというような積極的な特殊なことに「ことさらに」という言葉がついておるのですから、この点は僕は犯意の問題ではないと思う。そうでなく、公労法の第十七条の問題その他の犯罪のときの問題に、やはり今言ったような原則論として、抽象的に犯意を阻却するかしないか。しかし、先に争議行為の行き過ぎであって争議行為と認められないということをきめていけば、これはあなたのおっしゃる通りなんです。それのきめかねるような場合です。その場合どこを優先して考えるかということを私はお尋ねしておるのです。これが、今日の午前中お尋ねした、警察官などが一線で取り締まる場合に、労働争議に基くところの争議行為と信じてやったという場合に、その結果が処罰規定にひっかかる。しかし、それは処罰規定にひっかかる形にはなるけれども、争議行為として争議行為を逸脱した行為であるかどうかということは、私はそこできめなくてはならないと思います。ちゃんと先に逸脱行為があるときめてかかれば、あなたのおっしゃる通り。逸脱した行為であるかどうかということをきめる前提になるその場合の犯意の問題は、おそらく問題になるであろう。こういう点が問題になるのでお尋ねしておるのですが、そういう問題はどうです。

川井英良検事(刑事局公安課長)

○川井説明員 中郵の事件は、公労法第十七条に違反するということで、行政処分の問題で調査の対象になっておると思います。それから、刑事事件の関係におきましては、ただいま御指摘の郵便法第七十九条に違反するということで捜査の対象になっておる、かように考えております。そこで、ただいま御指摘の御質問でございますが、郵政職員は、公労法第十七条に基きまして争議行為等を禁止されておるわけでございます。従いまして、その勤務時間に食い込む何時間の職場大会に出ろというような趣旨の指令であるといたしまするならば、その指令は公労法第十七条に違反するような趣旨の指令だと私は考えるわけでございます。従いまして、そういうふうな違法な趣旨の指令、すなわち争議行為等を禁止されておる人たちが争議行為をやれというような趣旨の指令でございますので、それは憲法第二十八条が保護するような趣旨の命令なり指令なりではない、かように考えております。  それから、ただいま局長がお答え申しましたような、組合の指令に基きまして組合員が行動したというふうな場合に、いかなる場合に犯意を阻却するかという問題は、一般の労働運動の問題として論ぜられたところでありますけれども、正当防衛か、あるいは緊急避難かいうふうな要件に該当する場合はともかくといたしまして、さような要件に該当しないような状況のもとに行われた場合におきましては、労働運動に基きます行動であるといたしましても、やはり犯意を阻却しないのではないか、かように私は考えております。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 そうなると、これはおもしろいですね。そうすると、私の申し上げるのは、逸脱行為というこの前提になれば、それはそうなると思う。その場合でも私は疑問があるのは、その指令を信じて、しかもそれは労働争議行為なりと労働組合員が確信を持ってやった場合、その場合には阻却の問題が起きてくると思う。そこに、本件の問題になっております集合罪などの問題がそう簡単には通せない事件だ、こういうことに相なると思うのですね。このことをもっとはっきり申し上げますと、これはどういうことで申しましょうか、立場上、午前中も申し上げたのですが、非常に考え方が違ってくると私は思う。私は、法律の処罰するものは社会悪を処罰するので、しかも社会悪の根本となる問題は悪い考えがなくちゃならぬ、こう思うのです。もちろん、法律の錯誤の問題については、法律は当然国民が知るべきでありますから、これは考え違いだということでは免れないと思いますけれども、そこに至る前提が本件でやはり問題になるのは、労働組合の争議半ばにおいて、争議中において、幹部が指令を上から流された、そのこと自体は、これは正しいものと信じ、しかもある程度まで正しかった、ところが、いろいろ多数の行動をやっておる間に、何かしらんはずみで処罰にひっかかるような結果が出てきた、しかしながら、はずみでそれはできたのであって、最初から労働争議行為なりと確信を持ってやった行為が、はずみで現象的な結果が出たからそれを全部責任を負わせるぞということは、これは少し刑法の処罰の立場から言って行き過ぎじゃないかと思うのですが、この点はどうなんですか。

川井英良検事(刑事局公安課長)

○川井説明員 大体先ほどお答え申し上げた以上の範囲を出ないと思うのでございますが、一般に、争議権を認められております組合の労働運動と、それから、ただいま問題になっておりますような争議権を全面的に否定されておりますような組合の活動との間には、やはり基本的に違う場合が出てくるのじゃないか、かように考えております。本件の事案は、繰り返しくどいようでございますが、争議権、いわゆる労働争議等の争議行為等を一切禁止されております職員団体の組合の活動でありますので、私は、さような面におきまして、職場放棄を伴う同盟罷業が行われたということでありますれば、その行為がまた他の法律の構成要件を充足するというふうな場合、具体的にはその行為が郵便法七十九条に規定するような構成要件を充足するというふうな場合には、もちろんその責任性や違法性の問題はございますけれども、その限度におきましては、やはり七十九条の責任を負わなければならない場面が出てくるのじゃないか、かように理解しております。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 もちろん、お説の通り、争議行為を禁じられておる労働組合と、そうでない組合は区別されると思うのです。しかし、従来の労働慣行から言って、職場大会というもの自体は、これは行われてきたんです。だから、職場大会を行うということのいきさつの関係上、職場大会そのものを別の場所でやった、あるいはその働く場所のその席上でやられた、こういう点においての問題はここに起きてくると思うのです。しかしながら、職場大会をするのだということ自体が、労働組合の組合員にしてみれば、指導命令、幹部の指揮命令そのもの、指令が多少行き過ぎであったということがあっても、組合員はその指令を守らなくちゃならぬという一つの善意の解釈から、そういう問題について行動を起した、こういうことに相なりますと、私はやはり、十七条の問題についてはこれは論議の過程に置かれると思うのです。その点はあると思う。しかし、その職場大会に出かけて行って、職場大会の構成メンバーになったということ自体でやはり郵便法にひっかかるというようなこと自体は、ちょっと行き過ぎじゃないか。ということは、やはり、「ことさらに」という郵便法七十九条のあの解釈問題がひっかかってくることが一つと、もう一つは、立場において違うと申し上げておるのは、主観論をとるか客観論をとるかで変ってくるのじゃないでしょうか。私どもは主観論をとるべきだと思う。基本的人権を尊重する場合において、刑法の処罰規定はやはり主観論でいくべきであって、客観論というものは、社会情勢の変化によって基本的な処罰規定が採用されるおそれがあるので、どこまでもわれわれは基本的人権の尊重からいけば主観論でいくべきである、主観論からいけば悪意の犯意はなかったのだ、こういうふうにも考えられるのですが、どうでしょうか。

川井英良検事(刑事局公安課長)

○川井説明員 職場大会でございますが、一般の労働慣行といたしまして、いわゆる職場大会なるものが行われておることは事実でございまするし、そしてまた、その職場大会は、団体交渉ないしは交渉の前提となるべきいろいろな事項について組合の意思を統一するというふうな必要上から、その必要性もまた法律上理解できるのでございますが、御承知の通り、勤務時間に食い込む職場大会、すなわち職場大会を勤務時間中に行うために、勤務時間に職場で職務をとることができなくなるというふうな状態が出て参りますと、時間外の職場大会は別でございますけれども、勤務時間に食い込むような格好において職場大会をいたしまするということになりますと、これはやはり法律の規定しておる規制を受けまして、民事上の責任ないしは刑事上の責任を受けなければならない事態が出てくるのじゃなかろうかと、かように考えております。  それから、七十九条に規定しておりまする「ことさらに」という言葉の意味でございまするが、なるほど「ことさらに」というふうな表現を用いた刑罰法規はあまり他に例がないようでございまして、これも御承知の通り、旧郵便法並びにその前の郵便法なんか見ましても、やはり「正当の事由がなく」というふうな表現になっておったと思うのであります。それを特に「ことさらに」と書きかえた当時の事情につきまして、いろいろ私ども前に調査したことがございますが、結局、その当時の国会の問答なんかを参照いたしてみますると、故意あるいは犯意を持ってということを特に強調して、こういうふうに「ことさらに」という文字を使ったのだ、こういうふうな問答が行われておりまして、いわゆる刑法上言われておりまするところの故意とか犯意とかいう言葉であって、それ以上特に特別の故意とか犯意とかいうふうなことを持った言葉ではないように理解しているわけでございます。しからば、なぜこういうふうな言葉を使ったのだ、こういうことになりますと、私どもまだ郵政事務の実態について必ずしも十分な認識は持っておりませんけれども、かような仕事は、いろいろの仕事上の手違いというようなことでもって、過失に近いようなことが原因になって、職務を取り扱わなかったり、あるいは職務の取扱いを遅延させたというような事態が間々発生するのじゃなかろうか、そういうような場合に、個々のきわめてささいなその事態を、取り上げて七十九条違反に持っていくということは不都合な結果を生ずるのではないか、従って、このような不都合な結果を生ずるのを避けるために、特に故意が必要なんだ、犯意を持ってそのような行為をするということが特に必要なんだということを明らかにするために、この条文に「ことさらに」という特別な言葉を用いたのだ、かように解釈され、また論じられておりますし、私どもも、さように理解するのが適当だろう、かように考えておるわけであります。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 その「ことさらに」というのは、こういうことなんですね。郵便の事務に従事する人たちが、たとえば遠来の客が来た、従って、ちょっと一時間くらい頼むよと隣の人に頼んでいく場合、今のあなたの解釈では、故意に職場を離れるということでこれもひっかかるのですね。しかし、こういう問題はそういうことではないと思うのです。勤務時間の長い特殊勤務であるから、この問題については不法性というものの認識が得られるような積極的な行動が必要だ。たとえば、郵便物の袋を隠してしまうとか、捨てるとか、郵便をことさらに川に投げ込むというようなこと、それから、電報を受け付けておりながら、これを五時間も六時間もことさらに自分が打たなんだというような場合の取締りのために作ったものであって、従って、ほかの処罰規定の中には「ことさらに」というものはないのです。何もなければここに書く必要がない。ここに積極的に「ことさらに」と書くことは、特殊の事務を扱っておる――最近はそうでもありませんけれども、非常に時間の長い激務なんで、従って「ことさらに」という積極的な行動そのものを対象として処罰する、こういうふうに解釈することが正しい。これが郵便事務に関する真相であると考えるわけです。「ことさらに」という解釈についての判例もあまりないようです。それから、もう一つは、保安課長なり刑事局長なりがそういう解釈をすること自体は無理だとは言わぬ。それは、やられる方とやる方との立場から違うのです。ところをかえると、同じ事実でも、取り締る方はなるべく厳格にこれを解釈していこうとする、取り締られる方はなるべくルーズにしてもらいたい、これは人情です。そういった関係から、こういういろいろな問題についての認定が達ってくるのです。この問題は法規上現われた文字の問題ですから、これは事実行為の認定とは違って文字の問題ですから、文字通りの解釈をすべきだと思う。積極的な行動がなければいけないのだ、ことさらに、あるいは作為の行動がなければいけないのだ、こういうふうに解釈されるのが正しいと思うのですが、その点は十分御研究を願いたいと思う。今のような御解釈を願うと、もう郵便局に働いている従業員は、やみ米を持ち込むと同じように、順法精神というものはどこかに行ってしまうことになって、かえって逆効果が現われてくるのではないかと考えますので、その点は十分判例並びに郵便事務の現状に即する、御解釈を願いたい、かように考えるわけであります。

木原津與志日本社会党

○木原委員 関連……。  今「ことさらに」というのを故意または犯意というふうに見るのだとおっしゃいましたが、この故意または犯意というようなことは、刑罰規定ではこれがなければものにならないので、これを特に故意とか犯意とかというふうに解釈すべきものではないと思うのです。だから、「ことさらに」ということが特に入ったということは、「ことさらに」というのが構成要件の中に入るのじゃないでしょうか。そういうふうに解釈すべきものであって、「ことさらに」というのを故意とか犯意とかというふうに解釈するのだということは、刑罰法規の解釈を間違っていると私は思う。刑罰規定というのは、犯意のないもの、故意のないものを処罰できないのですから、これは特に法文上書く必要はないわけです。特にそれを「ことさらに」ということが書いてあるのは、「ことさらに」という状態が構成要件になっておるのだというふうに当然考えるべきだとわれわれは思うのですが、その点あなた方はどう考えられますか。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内政府委員 「ことさらに」の点について御疑念があるようであります。いかにもごもっともだと私も考えますが、仰せのように、犯罪が成立するためには犯意が必要でございます。「ことさらに」という文字を使っておらなくとも、仰せの通り犯罪の成立にはまず犯意があるということが前提でございます。過失であります場合は、特に過失を罰する場合のほかは罰せられないというのが原則であります。そこで、「ことさらに」というようなことを特につけないでもいいじゃないかということになるのであります。私どもこの立法のいきさつにはあずかっておりませんけれども、当時なぜこういう文字を使ったのだろうかということは、行政解釈を一応立てます上におきましては、当時の国会における審議の状況、委員の質疑、応答等を十分に参酌して決定するほかはないのでありまして、そのいきさつにつきましては先ほど川井さんから申し述べました通りで、私どもの行政解釈としてはそのような解釈態度をとっております。しかし、これは最終的には裁判例によってはっきりさせなければならない問題であると思います。

木原津與志日本社会党

○木原委員 もう一点聞きますが、当時立法に当った政府委員の説明を見ましても、そのときの小笠原光壽政府委員は、「故意に且つ犯意を以てという意味をことさらにという言葉で現わしたのでございまして」と言われておりますが、私はこれはナンセンスだと思うのです。少くとも刑罰法規がどんなものであるかということを知った者が、「ことさらに」というのは故意にかつ犯意をもってということを意味するのでありますと言うようなこと自体、私はナンセンスだと思う。法律を全然知らぬ者であると思う。何回も言いますように、「ことさらに」というのがそういう意味ならば、刑罰法規において故意と犯意のないものを処罰するはずはないわけですから、この言葉は要らない。あえて「ことさらに」という言葉を郵便法の中に入れてあるということは、ことさらに遅延させるという形態が構成要件として必要なんだということを端的に表わしておるのだと私らは思います。先ほど古屋委員がおっしゃったように、「ことさらに」というのは、たとえば郵便物を隠して持っていって捨てたとか、そういうような外部に現われた形で遅延というような事実のあることを客観的に構成要件の中で表わすという意味において「ことさらに」ということが書いてあるのだと思います。そうでなければ、この郵便法の「ことさらに」ということはナンセンスで意味がないと思います。あなた方のおっしゃるように、また政府委員の当時の説明のような趣旨では、これはもう法律を知らぬ人の説明と一つも変らない。そんなナンセンスなことをわれわれは要求しておるのじゃないので、「ことさらに」というのは、郵便法においては特にこれは構成要件になっておって、郵便の遅延という一つの形をタートベシュタントで現わしたものである、そういうふうにこれは厳格に解釈しなければならない。またそう要求しておるわけです。刑罰解釈は拡大して解釈すべきでないということは、これは私が申すまでもなくあなた方専門家だからよく知っておられる。そうすれば、今のような場合において争議行為であるかどうかということについても非常に問題がある。郵便法の解釈そのものにおいてもあなた方の間にも問題がある。おそらくこれを最終的に決定するのは最高裁判所で、決定するまではお互い労使双方とも議論になるところでありましょう。そういうようにいろいろな何があるところに、しかも集合罪を今こちらで真摯な審議をやかましくやっておるときに、それと関連するような事案を取り上げて、今度の中郵の問題で捜査当局が大胆に捜査に踏み込んでおられる趣旨が、何らか私どもから見ますと政治的な目的をもってやられておるような疑いがある、そう皆さん方に私どもは追及したいのです。その点どうなのですか。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内政府委員 その点は大へん思い過しと申しますか誤解に出た御議論だと考えておるのでございまして、この暴力立法は、午前の会議におきましてもるるその趣旨を申し上げましたように、今ちまたに散見されますところの、いわゆるヤシあるいはテキ屋といったような暴力団の組織的な相互の勢力争いに基く暴力犯罪であるとか、あるいはそういうもののくずれたいわゆるグレン隊といわれる人たちの暴力行為というものが、一般平穏な国民生活に不安を与えるという点を除去する、そういうものに対する法の不備を補うという立法でございまして、労働組合の労働運動であるとか、あるいは大衆運動とか、そういうものをねらった法律では全然ないことをはっきりと申し上げたいと思います。

木原津與志日本社会党

○木原委員 もう一つだけ。私が非常に不安に思うのは、今度の中郵のあの問題も、今申し上げるように、ことさらに郵便の遅延をした場合とか、あるいは争議行為であるかどうかということについて非常に疑問がありますね。今あなたと問答したように、法の解釈そのものからして、あなたの意見も私たちには納得できない。そういう関係の中で、あえて二十日の中郵の問題に、不確かな法律である郵便法七十九条を適用して現在捜査に入っておられる、そういう事態を見ますると、あなた方が今度のこういう暴力結集罪というようなものをこしらえられるという中で、先ほど三田村委員からも、法律は一たん成立してしまえば一人で歩く、危険性があるのだということを指摘されておりましたが、私も全くその通りだと思う。こういうような、あなた方が無理して、政治的に法の解釈そのものを確定できないようなあなた方の状態でありながら、郵便法を特にこの労働組合の運動の中へ適用されて無理な捜査をやっておられるという状態を見ますときに、私どもは、集団のこの法律についても、そういうような政治的な意図をもってやられるということになったら事は大きな問題を引き起す、将来おそらく労働組合運動の弾圧の名のもとに、もしその労働組合運動があなた方の目から見て適法じゃないといわれる場合において一切これを適用するというような不幸な事態が起って、その中から労使間並びに一般国民の間に大きな不安を惹起するのではないかということを私どもはおそれるわけなのです。そこのところをどういうふうな考えをあなた方は持っておられるか、これは大臣から一つお答え願いたい。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 郵政職員の行動に対する郵便法七十九条適用問題につきましては、だんだんと郵政大臣その他からお答えのあった通りの事態でございまして、法務省の立場を申し上げますると、この事案は目下警察で捜査中でございまするから、捜査そのものについては私ども何も指図などはいたしておりませんし、時に報告を受けるというだけで、第一線は警察が今捜査を担当いたしておるところであります。ただ、法律の解釈につきましていろいろの意見があるということで、事務当局といたしましては法律の解釈について意見を問われたようでございますが、だんだんとお答えいたした通りでございまして、この解釈について政治的の意図を持って解釈を曲げるというようなことはもとよりありません。きわめて厳正公平に法律の解釈をいたしておる次第でございます。御承知のように、七十九条制定当時の政府委員の答弁、その当時の速記録等によりまして、行政解釈といたしましては、過失で郵便を取り扱わなかったというような場合まで処罰してはいけないから、故意の場合だけを処罰するという言味でこの文字が入っておるようでございまして、われわれといたしましては、ことさらに郵便を取り扱わないということが、その間に郵便物を隠したとか捨てたという積極的な行為があった場合だけに郵便を扱わなかったというそれに当てはまるだけで、そのほかの場合は当てはまらないという解釈は狭ま過ぎるのではないか。もちろん、行政解釈でございますから、最後は判決によって一応きまるわけでございますが、法務省といたしましてはだんだんと政府委員が答えたような解釈をとっておるわけでございますけれども、法務省といたしまして、今の事態に対処するために政治的な考慮をめぐらして解釈を二、三にする、そういうようなことはもとよりあってはならぬことでございますし、さようなことはいたしておりません。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 今の問題はその程度にとどめまして本論に入りたいと思いますが、そこで、大臣にお尋ねしたいのは、私午前中しばしば立場によって考え方が違うというようなことを申し上げたのですけれども、問題は、最初政府がお考えになっていまするところの目的は、博徒であるとかあるいはグレン隊であるとか、特に今お話のございましたような特殊な暴力団体ということにお考えになっておりまするけれども、やはり午前中の竹内局長の御説明では、労働運動であろうが大衆運動であろうが何であろうが、そうした範疇が出てくればこれは処罰するんだ、こういうような御答弁がございましたが、この点が私は本件では非常に重大な問題だと思うのです。と申しますのは、これは例をとってみますると、メーデーのときに労働者の諸君がジグザグをやって道路を進んでくる、これを取り締ろうとする警察隊がこちらにかまえておる、こういうようになりますと、何かしらん向うから来る者は警察に対抗的な態度でやっているんだという意識をもうすでにこちらの警察の方はお持ちになる。それから、人の考え方によって、労働争議を見ておりましても、あるいはデモンストレーションを見ておりましても、ある場合にはいやな感じがするだろうし、ある場合にはなるほどあのくらいやらなければ彼らの生活の保障が行われぬだろうと同情的に見る場合もあるし、あるいはあのくらい組織立った運動をしなければ今の日本の現状では正しいベース・アップの要求も行われないんだというように考える方と、もうすでに労働争議の労働歌を聞いてもしゃくにさわるという考え方を持つ方とあるわけなんです。こういうようにいろいろありまするけれども、少くとも、私どもが一番考えるのは、一線に立って取締りをされる警察官の大衆心理に対する問題のこの弊害をどうわれわれは考えてこの規定を作るかということが重大な問題だろうと思うのです。と申しますのは、やはり警察官も人間でありまするから感情がありますし、何かしらん、労働歌でも歌って進んでくるというと、自分たちの方に暴力で襲いかかるというような感覚を持つことは当然なんです。そういうような感覚を持たれるところに問題がある。従って、私は、本件が、幸いにいたしまして、今法務省がお考えになっておりまするようなグレン隊であるとか、そういう暴力行為を生業としておる者だけにこれが適用されて参りまして、そういうものがなくなるということに相なりまするならば、これはけっこうだと思うのです。ところが、たまたま今三田村君からも申されたように、もうすでに法律ができ上ってしまえばどこへひとり歩きするかわからない。しかも世の中はいろいろと急テンポに変っていく。従って、取り締る方では、なるべく形がこれにひっかかればひっかけていこうという気持が人情から出てくるし、一方では、最初の立法趣旨と違った行動であるから、これは別の方面で取り締るべきものだ、こう考える。こういうところに非常な食い違いが出てきて、かえって事案を乱す場合が起きやしないかということをわれわれは心配をするわけです。どうでしょう。取り締られる方と取り締る方の考え方の違い、あるいは潜在的に、多数の人が出てくると、それはもうすでに多数の潜在的暴力意識が行われるというような考えを持つ警察官が取り締りに当るということになってくると、やはりここにはっきりけじめをつけて、労働組合運動であるとか、あるいは許可を受けた大衆集会の取締り、というような場合と、今の生業としてやっておる場合、あるいはそれを目的とする場合、それによって相当長期的に計画的にやられるような場合と区別して立法をされるということが、私は将来に悔いを残すことがない最も適切な刑法の改正だと思うのですが、法務大臣、この点はどうでございましょうか。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 このたびの暴力取締りに関する立案は、たびたび申し上げました通り、あるいはグレン隊あるいはちまたの暴力、これが目にあまる行動をいたしますので、それに対して現行法規をフルに活用して取り締っておりまするけれども、それでもなお足りないという点を補うための立案でございまして、これを立案するに至りました動機は、まさしくこのグレン隊とかちまたの暴力等町を相手としておるわけでございます。従いまして、この二百八条の二でございますか、いわゆる持凶器集合罪、この規定等も、この条文を書くにつきましては、非常に周到なる注意のもとにこの案を得たのでございまして、この二百八条の二その他の規定は、われわれは労働運動、大衆運動等とは全く無関係に考えて立案をいたした次第でございます。二百八条の二をとってみましても、他人の生命、身体または財産に対して害を加える目的、そういうようなことは労働組合の運動その他大衆運動にあるべきはずのことではございません。しかも凶器を準備する、こういうようなことでございますから、これは労働組合その他の大衆運動とは全く縁のない暴力だと、かように考えております。従いまして、私は、この法律案が成立いたしましても、労働組合運動に適用になるような、そんな不祥の場合は起きないと考えておるのでございますが、だんだんのお尋ねで、労働争議の過程においていろいろの法律違反の事象があった場合に、それは労働争議の過程において行われるのであるから特別に考えるべきではないかというような意味合いのお尋ねがあるのでございますが、一方におきまして、労働運動であるとか労働争議であるからこれは一つ何か法律の罰則を適用して弾圧してしまわなけれらばなぬというような先入観を持ってこれに臨むということはもとよりつつしまなければならぬことでございます。それと同時に、反面、労働運動の過程においては器物を棄損してもよろしいものだ、法に規定しておるところのいわゆる刑法犯のような犯罪を犯してもよろしいと考えるのも、これもまた間違いではないかと、かように考えるのでございます。ただ、だんだんお話のありまする通り、労働争議は大衆の運動でございますから、その間に指揮者もおる、大ぜいのことでございますから、そこに集団的の心持も動くということで、あやまちを起しやすい事情はあろうかと思うのでございます。でありまするから、これに対して取締りの任に当りまする警察官といたしましては、総明なる常識をもって、きわめて冷静にこれに対処しなければならぬ。これは取締りの実際の問題でございまするが、純法律論をもって申し上げますれば、労働争議の過程において行われたといたしましても、刑法その他で処罰の対象となっておるような器物棄損とか傷害とか暴行とか脅迫とかいうことがあれば、これはやはりその法条に該当するものと解釈せざるを得なのいでございます。結局、これは、労働争議をされる側の人の自粛と、またこれに対して取締りの任に当る警察官の慎重なる態度と、この二つに待つよりほかはないと、かように考えております。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 まあその点はだんだん押し詰めて参りますと考え方の違いになってくるのですが、しかし、将来、ただいま申し上げたような大衆運動そのもの、あるいは、もっとはっきり申しますと、政治闘争などの場合でも、ひっかけられるようなおそれがあるという点については、どうもこの点の納得のいく御答弁がないようでございますが、さらに私質問を変えまして、緊急逮捕の問題ですが、緊急逮捕の問題については、午前中、竹内刑事局長の御説明では、逮捕の方法について、今までのような既存の関係においてはどうも不十分である、従って、暴行脅迫もこれに加えるということでありますが、この点は大臣どうでしょう。私は、捜査や逮捕が少しくらいは遅延をいたしましても、やはり基本的人権はどこまでも尊重していくという態度で臨むべきことが一番望ましいことであると同時に、現在の重犯罪に対する緊急逮捕ですら、憲法違反であるという議論が出ておりまするので、この点は、取締りには非常に都合がいいけれども、国民には非常に迷惑な改正、基本的人権の尊重を無視した結果になる。と申しますのは、むしろ九十九人までの悪者をのがしても一人の冤罪者を作ってはならないというこの原則から考えましても、私は、暴行、脅迫くらいな簡単なことでやたらに緊急逮捕ができるというようなことは、これはやはり憲法の尊重する基本的人権そのものの精神に根本から相反する、かように考えるのです。従って、現在のような社会事情のもとにおいて、憲法の精神から、さような制約をしなければならぬ事情にあるかどうかという問題について、ここでお互いの見解が違ってくると思うのでございますが、私ども、自由をどこまでも尊重し、どこまでも平和にということからして逮捕・監禁の場合においては、相当尊重された手続によらずしていたずらに逮捕・監禁をされるというような不安定な状態に陥れられることは、今日より以上にわれわれは不安定な関係に立つという一つの懸念を持つわけです。今後文化が進み、科学が発達し、ますますわれわれの生活が科学的、文化的な生活になればなるだけ、自由を尊重し、逮捕・監禁のごとき問題は厳格にして納得のいくものでなければならぬというふうにいくべきでありますのに、逆に逮捕・監禁の制約がゆるめられてくるということになると、やはり社会事情に逆行するような感じを持つのです。国民が逮捕。監禁を簡単にやられて、あとでだんだん事実を調べてみたら、その人間は何でもなかった、こういうような事象がたくさん出てくることになりますと、かえって刑罰法に対する国民の不信任といいましょうか、反逆といいましょうか、その方がおそろしいと思うのでございますが、大臣はどうお考えでございましょうか。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 まず第一に、このたびの暴力取締りに関する法条は、どの一つをとってみましても、いわゆる労働組合運動その他の大衆運動等を対象として、そしてそれが動機となって立案されたものではないということだけは、一つ御了解を願いたいと思います。ただ、法律ができてしまった結果として、はからざる災いを受ける場合があるではないかという御心配かと思いますが、今の緊急逮捕の条文でございますけれども、人権を尊重すべきことは、これはもう当然のことでございます。従って、緊急逮捕も相当の範囲に制限されているわけでございますが、今日目に余る暴力団その他の暴力の取締りに当りまして、この緊急逮捕の規定がないために十分なる趣旨を徹底することができないので、その必要を認めて立案をいたしたのでございまして、人権の尊重すべきことは当然でございますが、また、一方においては、暴行、脅迫というようなものを犯罪として、そして守っておりますところの刑法上の法益、そして暴行、脅迫を受けた人の人権というものも尊重しなければならないのでございまして、今日いわゆるちまたの暴力を取り締ってみまして、立案をする必要を感じまして、提案をいたしたような次第でございます。事情は以上の通りでございます。

古屋貞雄日本社会党

○古屋委員 これで私は総論に対する質問を終り、あとは後日各論に入りたいと思いますが、やはり私どもの心配をするのは、かえって、現在のような科学的、文化的な生活の向上の上から考えて、逆効果のような気持がいたしますので、特にその点をつけ加えて申し上げたいと思うのです。  以上で私の本日の総論的な質問は終りたいと考えます。

町村金五自由民主党

○町村委員長 吉田賢一君。

吉田賢一日本社会党

○吉田(賢)委員 だんだん時間が経過しましたので、今古屋委員から質問がありました事項について、若干の続きの点を補足的に質問いたしたいと思います。  労働組合運動と国の取締り権力のあり方の問題でありますが、この問題はきわめて根本的な問題でありますので、相当な議論をしなければなるまいと思いますけれども、そこまで入らないで、端的にまず法務大臣の御意見を伺っておきたいと思います。  やはり、法務行政の見地から考えましても、労働者の地位の向上とか、労働条件の改善等については、組合運動をできるだけ助長するという面がだんだん進んでいかないと、逆転し、あるいは逆行するようなことになりましたならば、これはやはり司法行政、法務行政そのものが労働組合運動の健全な発達を阻害するという結果を来たすことを私は深く憂えるのであります。かかる観点からいたしまして、組合運動に対処せられる法務行政当局は、相当慎重に、もしくはできるだけこれを助長するという角度から臨んでいただかなければならないと思うのであります。ところが、労働組合運動を暴力取締りの対象にするような考え方が以前はございましたし、もしくは大衆運動を暴力取締りの対象にした事例もずいぶんございましたので、そういった傾向が再現するのでないかということが今日もはや課題になっておりますので、なるほど行き過ぎがあっても、やはり組合法もありますし、その他各般の争議に関する特別な法規もあることでありますから、刑事的感覚をもってこれに臨むようなことがもしありましたならば、これは牛の角をためようとして牛を殺す結果になると私は思います。よしんば善政をしこうという考えがあっても、結果的にはやはり労働運動を漸次不健全な方向へ追いやることになると思います。こういう意味におきまして、暴力行為の御判断が、刑事法的な角度から労働組合運動の妨害、弾圧、阻害にならぬというような考え方を今お持ちのようでありますけれども、しかし、現実には、警察官の末端に至るまでそういう周到な用意を持って臨んでいけるわけではございません。ここにやはり相当そういう過誤を防ぎ得る根本的な対策をあらかじめ講じておくのでないと、この法律は非常に危険視されるということは当然であろうと思います。そういうふうに思いますので、持凶器集合罪の取締り処罰と労働組合に対処する考え方とをここに混淆されてしまうということが、現場の末端においてはあるいは生ずる危険が多分にあると私は考えるのであります。重複するようでございますけれども、この点につきまして、法制審議会で議論がなかったとか、あるいは適用よろしきを得ればあやまちは犯さないであろうとか、刑法の範疇に属する事項を対象としているのであるから、従ってそのような過誤はないであろうというような御説明だけでは、私はとても納得しがたいと思いますので、これは重ねて伺って相済みませんけれども、やっぱりそこに明確な線を打ち出さないと、これは実は社会党の多くの諸君が根本的に非常な疑念を持っておるということをお考えになって答えてもらいませんと、これは意外な障害になるということも私どもは考えておりますので、この点につきまして、もう一ぺん、消極的な説明でないほんとうの所信を明らかにしておいてもらいたい。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 ただ今二百八条の二のいわゆる持凶器集合罪についてのお尋ねでございます。これはたびたび御了解を得ました通り、われわれこれを立案いたしました動機は全く労働組合の運動その他大衆運動とは縁のないことでございまして、具体的に申し上げますれば、かの別府事件、それに続いての小松島事件というような暴力団が凶器を持って相対峙して、今にも殺傷ざたが起きようとしているのに、これを事前に防ぐためには今の法制では足りないということから、かような立案を思いついたのでございまして、当初から労働組合その他の大衆運動のことなどは頭になかったのでございまして、あやまってさような運動に適用されてはならないという心持で、条文を作るにも慎重を期したのでございます。  なお政府委員から詳しく説明をいたすようにいたしますが、実はこの案は私ども法務省として法制審議会へ提案した案と文字が多少変って参っておるのでございます。私どもは当初から労働運動には適用するつもりはないということで慎重に立案いたしたのでございますが、法制審議会におけるいろいろな研究の結果、そういう意図であるならば、その条文をさらにこういうふうに書きかえたならばなおさらはっきりするではないか、こういうような修正の意見が出たわけでございまして、そうして私どもは初めから労働組合運動等に適用するという意図はないのでございますから、学者、専門家の考え方として、文字をさらに正確を期して、そういう運動には適用しないのだというために新しく修正の意見が出たものですから、私どもといたしましては、快くその案に従ったわけでございます。しかし、私どもの動機が労働組合運動等の大衆運動に適用しないということでこの法律ができても、できてしまえば、先ほど来のお話で、一人歩きをするから、結局法律の文面でこれをきめるより仕方がない、こういうことになるのでございますが、まずごらんの通りでございまして、他人の生命、身体または財産に対して共同して害を加える目的というようなことは、これは労働運動、大衆運動とは全く縁のないことでございます。ことに凶器を準備してかかるというようなことは全く縁のないことと思うのでございまして、法文の解釈といたしましても、これが労働運動等に適用される場合はもう万々ないと私は確信いたしております。

吉田賢一日本社会党

○吉田(賢)委員 凶器とは何ぞやということもございましょう。また、健全な労働組合運動というようなお言葉も竹内局長は使っておられたように思いますが、たとえば、公共企業体における争議実情について見ましても、これは公労法の第十七条に反するという理由によって解雇せられた事例もございますが、こういうような場合におきましても、やはり同条に違反する行為、こういうふうな考え方に立ちますならば、おそらくあなたのおっしゃる健全な労働組合運動でないという範疇にお入れになるのじゃないかと思います。そういうふうにいたしますと、そこで禁止規定に違反しない正当な行為のみが労働運動である、こういうふうにさらに狭められてくるのではないかと思います。凶器の所持、またはその範囲は具体的にいろいろあると思いますけれども、しかし、それとてもやはり、範囲を広げるということになりましたならば、これは許されていない争議行為であるから、従って、それはまず一つの暴力的な行為と見る、あるいはまた、具体的に他人の財物、職場、建物、その他器具、こういうものの保管、保護等についても、財物に対する権利侵害、こういうものも身体、生命、財物を対象にしました暴力行為の対象として考えようと思えば考えられるのではないか、こういうふうになって参りますと、やはり懸念することは、あなたがお考えになっておるように労働組合運動は対象として意図しなかったというものの、現実の意図としましては、客観的に暴力と見得るじゃないかというふうに追い込めていくことは、実際問題として従来の例がこれを示しております。この点に対する心配といいますか、この点に対する憂慮が、この法律を立法した暁における労働組合運動への弾圧となって現われてくるであろう、こういうことを考えるのであります。といいますのは、一つは、最近の日本の傾向について見ましても、権力的な国家観がだんだん台頭する傾向に一面ございます。このことは非常に行政が国会に優位するというような潜在的な考え方もあるいはあるかもしれません。こういうことと相伴いまして、私どもは将来の民主主義の発達というものに対する一つの圧迫がこういう方面からくるのではないかということを実はおそれる一人でございます。こういう意味においてあなたにお尋ねしておったのであります。これは少し議論になりますが、大体、古屋君の朝からの御質問に対しましては、暴力そのものに区別をつけるべき限界は何らはっきりしない、労働組合運動であろうが、あるいは今のグレン隊であろうが何であろうが、客観的に暴力があるならばそれは取締りの対象になる、こういうようなことにどうもお考えになっておるように思います。そこを截然と両者を区別する限界を持っておられないというところに、やはり法務省の立法作業途中におけるこの問題に対する割り切り方が徹底しておらぬ、従ってこれを実際に移すときには危険が伴う、こういうふうな判断に到達せざるを得ないようにわれわれは危惧の念を持って聞いておった次第であります。変った御説明がなければ、今これは重ねて答弁してもらわぬでもいいと思います。その点をやればやはり午前中のそれと同じことになりますから、私どもはそれはそれで政府の御見解として聞いておくにとどめて、次の質問に移りたいと思います。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内政府委員 午前の御説明だけじゃ不十分でもありましたので、重複いたします点はお許しを願いまして、重ねて私の意見を申し上げておきたいと思います。  暴力ということについて、労働組合で越軌的に付随して発生するような暴力と、グレン隊その他の暴力との間に考え方、見方において違いがあるではないかという点につきましては、私必ずしも反対をいたしておるのではないのでありまして、もしそういうふうに違うものであれば、その両者を区別して刑法の中に規定を置くべきであるという御質問でございましたので、その点は、刑法としては身分犯的な扱いに暴力をするということは立法技術的に困難であるということを申し上げたにすぎないのでございます。吉田委員が御心配なさいますように、暴力行為等処罰に関する法律が、そういう労働組合運動、大衆運動等に適用しないという趣旨の政府側の答弁があったにかかわらず、その後において適用を見たという実例がございますので、そのような御心配の生ずることは私どももよくわかるのでございます。今回の暴力立法が意図しておりますところは、先ほども申しましたように、グレン隊その他のいわゆる暴力団の暴力を意図しておるのでございますが、労働運動、あるいは大衆運動等に暴力行為処罰に関する法律と同じように適用を見るようなことがないかという点の御懸念に答えます意味におきまして、私どもの意図しておるところをいかにして立法の面において表わすかというところにこの暴力立法の苦心が存したことは先ほど大臣から申し上げた通りであります。  その点につきまして、午前の説明にちょっと補充いたしますると、まず二百八条の二の規定はさることながら、その前に、器物損壊あるいは文書毀棄等を非親告罪としたり、あるいは暴行・脅迫について緊急逮捕ができるようにしたことは労働運動などにも適用できることになるんじゃないかという御趣旨の点につきまして、若干補足的に申し上げてみたいと思うのでございます。  午前から午後にかけまして大急ぎで統計を調べてみたのでございますが、労働運動に随伴して発生した器物損壊また暴行・脅迫というようなものは、事柄の性質上集団的に敢行せられるものでありますから、そのほとんどが、刑法二百六十一条あるいは二百八条、脅迫の二百二十二条というようなものが適用せられませんで、暴力行為等処罰に関する法律第一条が適用せられておるのでございます。統計によりますと、昭和三十二年の統計を見ましても、受理されましたのが、暴行が三十二、脅迫が三、器物損壊が八十二、暴力行為等処罰に関する法律が二百二十九というような数字が出ておりますが、この暴行は、これは受理事件でごいざまして、実際に略式命令で処罰されたのは三人に過ぎません。それから、脅迫はだれも起訴されておりません。器物損壊八十二人の受理に対しまして、公判請求したのが一人ありました。略式命令の請求が一人、計起訴が二人というような形になっております。これに反しまして、暴力行為等処罰に関する法律違反の方は、三百二十九名のうちで、三十六が公判請求、略式命令請求が十四、起訴の合計が五十、こういう数字になっておりまして、これは事柄の性質上当然な結果を反映しているものと思うのでございますが、さらに、暴力行為等処罰に関する法律第一条は、その内容となる行為が器物損壊の場合にも非親告罪ともうすでに現在もなっておるのでありますし、また、その内容が暴行・脅迫の場合にも法定刑は三年でございますから、当然暴力行為等処罰に関する法律を適用すれば緊急逮捕ができるのでございます。そういう点からごらんいただいてもわかりますように、改正案の目的がそういう労働運動の取締りのために意図されたのではないかというふうなことは、この観点からもおわかりいただけることかと思うのでございます。つまり、労働運動に現に適用を見ておりますこの暴力行為等処罰に関する法律で、すでに現在、今申しました統計を見てもおわかりのように、まかなえておるのでございまして、そういう面においては特に法律の改正を必要とするものではないのでございます。そこで、個々の暴力の取締りをするためにこういうような改正に至ったということに相なるわけでございまして、そういう点も一つ私どもの意図の存しますところを御理解願いたいと思うのでございます。  なお、二百八条の二の点でございますが、この規定につきましても、先ほど大臣から申しましたように、別府事件等の状況に対処するための処置でございますが、当初政府案におきましては、二人以上共同して凶器を使用して他人の生命、身体または財産に対し害を加える目的で集合せしめたる者は、こういう書き方をいたしておりまして、つまり、集合した、行為は集合行為だけであって、すべてその他の害を加える目的、それから凶器を使用して害を加える目的というふうに、目的の中に入れておったのでございますが、この案といえども労働運動あるいは大衆運動をねらったものでは全然ないのでございますが、このような規定の形態にいたしておきますると、先ほどお話も出ましたように、この法律ができた暁において、われわれの意図に反してどのような適用が行われるかもしれぬというような考慮からいたしまして、ただいま御審議を仰いでおるような原案にいたしまして、要するに、二人以上の者が人の生命、身体または財産に対し共同して害を加える目的という、目的罪でしぼりましたことと、さらに、凶器を準備しまたは準備あることを知って集合するという、今度は客観的な要件として凶器の準備ということをしぼりにし、構成要件にいたしましたことによって、この二百八条の適用範囲が明確になってきたと思うのでございます。この凶器を、他人の生命、身体に害を加える目的と申しますのは、申すまでもなく、殺人とか傷害とかという罪を犯すことになるわけでございます。財産に対してということになりますと、これは広いのでありますが、そういう生命、身体あるいは財産に対して害を加えるような目的で、しかも凶器を備準しという客観的な条件を備えつけました点において、ほとんど一般のこういうような条件を備えた労働運動とか大衆運動というものは私どもの理解するところではとうてい思いもつかないことでありまして、もしもかりに凶器を準備したり、準備あることを知って人の生命、身体、財産に害を加える目的で大衆運動が行われるといたしましたならば、それは暴動か騒擾罪のような罪に当る場合以外にはあり得ないことでございまして、私どもが考えております労働運動とか大衆運動とか、または吉田先生のお考えになっておりますそういうものも、このようなものに該当するようなことは想像ができないのでございまして、この二百八条の二のこのような構成要件の規定の仕方によりまして、そのような不安はすでに一掃されたものと私は確信しておるのでございます。  さきに申しました器物毀棄の非親告罪とかあるいは緊急逮捕というような点がむしろ問題ではなかったかと思ったのでございましたが、今申しましたような資料をもちまして補足説明をいたしまして、私どもの意のあるところを明らかにいたしたいと思います。

吉田賢一日本社会党

○吉田(賢)委員 少し横へそれるのでありますが、午前から引き続いて質疑応答が行われておりまするので、便宜上、例の全逓の労働運動、争議行為に関する点を一、二この機会に伺わしていただきたいのであります。これは郵政当局と法務当局ともに伺わねば事の真相というよりも目的を達しないのでありますけれども、やむを得ませんので法務当局のみに伺います。  やはり法律を適正に解釈いたしまして、そうして一面人権の擁護、法の命ずるところによってそれぞれ国家行政が行われる筋でなければならぬにもかかわりませず、どうもこのたびの全逓の東京中央郵便局における職場大会をめぐる問題につきましてはとかく問題があるように思いますが、私も直接いろいろ聞いたところによりますると、この点午前の質問に出たかどうか存じませんけれども、何か令状によることなくして郵便局の職員のところへ警視庁の警察官が二人ずつ乗り込んでいって、数時間粘りに粘って何かと聞きただして、実にしつこくして回っているというのであります。もしこれを言わないとなるとやはり令状を請求するというようなことまで言っておるそうであります。これは末端の職員のやることでありまするので、私どもはそういうこともあり得ると思いますが、どうも現実に幾つかそういうことを聞きまするので、これは事の真相を明らかにする立場から見ましても、また、捜査の、つまり犯罪の端緒としての警視庁職員の捜査権の行使なんかといたしますると、全く東京都内でこういうことが行われるだろうかと私も驚いておるのでございますが、こういうことはお聞き及びでしょうか。もしお聞き及びとなれば、即刻そういう事実はあなたの方で調査なさって、そうして、人権擁護のために、ないしは捜査権乱用という点についても、これは厳重に直ちにそれを絶滅して、そうしてそれぞれ処置してもらわねばならぬと思うのですが、どうお考えになりますか。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内政府委員 ただいまのお尋ねのようなことはこの議場ではまだ御質問もなかったように記憶いたしますが、私の方といたしましては、この捜査はただいま警察あるいは郵政監察官のところで調査が進められておると思いますが、もちろん地方検察庁とも法律解釈その他につきまして密接な連絡のもとにその捜査が進められておるという程度のことしか私どもとしてはまだ存じておらないのでございます。今お尋ねのような点がございますならば、私どもの方も調査いたしたいと思います。

吉田賢一日本社会党

○吉田(賢)委員 私は土曜の夜聞いたのでございまして、幾つも例があるそうでございます。そういうような事実は、これはもう令状によらずして人間を拘束し、かつ取り調べ、尋問するのと同じ結果であります。あるいはそれ以上の恐怖感を相手に与えるということになって、これはもう憲法の基本的人権も何もあったものじゃない。刑事訴訟法も何もあったものじゃない。そんな乱暴なことをやるのかと実は驚いたのであります。これは警視庁の公安第二課とかいっておりましたから、その方について適当にすぐ調べてもらわなければならぬと思う。きょうは警視庁、検察庁はもういないのですか。――これは、まだ審議が続行されるはずでございますから、法務省において直ちにそれぞれお調べの上当委員会に報告をしていただきたいと思います。お約束できますね。――なお、そのような事実がありとすれば、はなはだしい人権のじゅうりんであるし、また捜査権の乱用であると思うのですが、それはいかがですか。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内政府委員 事実の調査をいたしました上でお答えを申し上げる筋だと思いますが、かりにただいまお話のような点がありますならば、人権の立場から、十分私どもとしては何らかの方法を講じなければなるまいと思っております。

吉田賢一日本社会党

○吉田(賢)委員 つまり、警察官が私服で二人職員の家庭をそれぞれ歴訪して、数時間粘りに粘って、当日、つまり三月二十日の夜中のできごとについて逐一いろいろ聞きただしてのかないというのです。そうして、それにはすっかり恐怖感におびえ切っておるということが言われておるのであります。これは私は労働組合のそれぞれの担当の人々から訴えられたので申し上げておるのです。きょうは一々名前を申し上げる準備は整っておりませんが、そういうことなんですから、ぜひともお願いしたいのであります。  それから、もう一つでありますが、そういうような乱暴なことになるゆえんのものは、やはり労働組合運動に対してこれは健全に助長するというような考え方が根本的にないことに起因するのではないか、こう思われます。そこで、やはり、先刻来問題になりました郵便法七十九条の「ことさらに」という字句を冠した趣旨なんかが、これまた非常に拡大解釈せられまして、そうして次々と法の解釈、運用を誤まっていく端緒を開くのではないかと私どもは実は憂慮しております。従来、この種の公共企業体における労働争議におきまして、しばしば公労法十八条によって解雇された実例があり、またこれが裁判所等におきまして訴訟の案件として係争した事実もずいぶんあるわけでありますが、しかしながら、労働争議そのものをやはり何か刑罰的な対象にしたいという傾向がもしありとするならば、できるだけあらゆる機会をつかんでこれを拡大解釈する危険があるのではないかというふうにも考えられます。そこで、これは先ほど来から木原君なども論じておりましたが、やはり私も念のために昭和二十二年の十一月の例の第一回の参議院の郵便法立案の際の速記録を一応読んでみました。しかし、政府委員は明らかに争議行為は除外しております。なお、その次の説明として、正当な争議行為とかいうふうに二段の説明をしております。要するに、根本的には労働組合の争議行為というものを除外しておるのであります。そこでまた、「ことさらに」という字句につきましても、これもやはり相当技術的にどうかと思われます節はありましても、私は故意とか犯意というものではなくして、これはやはり一つの犯罪の構成要件として「ことさらに」というものが出ておるというように、前後の文章並びに立法の趣旨、政府当局のそのときにおける説明等にかんがみまして、あるいはまだこれについての適切な裁判例がないのでありますが、どうもそう考えられるのです。もし構成要件であるとすれば、やはり、ただいま警視庁当局が、これはあるいは検察庁の指揮によってやっておるのかもしれませんけれども、要するに、法務行政の現場の者が犯罪の対象としてこれらの職員に対する捜査に当っておるということであるならば、これはとんでもないあやまちを犯すのじゃないかと実は心配しております。判例がないのならば、なおさら慎重にやらなければなりません。また、文字解釈的にいたしまして、「ことさらに」という特殊の文字が用いられておるゆえんも考えまするならば、一応やはり特別な犯罪構成要件としてこれを考えるべきが筋ではないかというふうにいたしましたならば、労働争議の一環として起ったできごとに直ちに一つの刑罰的な態度をもって捜査に当るということはとんでもないと思うのであります。でありますので、その点につきましても、これは繰り返していく必要がありませんから多く御答弁を求めませんが、大体そのときに行われました郵便職員、つまり中央郵便局における組合員の行動は、これは論議のうちに出たか存じませんけれども、指令百号というものによって行動しております。三十七号が基本的な中央の指令へであって、そして現場に臨んでおりまする中闘の一人は指令百号というものを携えてきまして、そして上部機関の指令を執行する任務を持って――その指令百号にはそれぞれ権限などが限定されておるようであります。これによって判断を加えて、そうしてあのときの職場大会についての行為を指導しておるようであります。指令百号によりますると、三十七号の指令に対する具体的な実践の要項が記載されておるのであります。そして、これを持った中闘の一人は、これによりまして一切の指導をし、さしずをいたしておるのであります。そういたしますると、中央郵便局のすべての職員が夜中に一定の旅館にそれぞれ移行いたしましたような事実、職場を離れましたような事実、あるいはまたそれによって具体的には郵便物を扱っておらぬという結果が生じ、あるいはまた郵便物が遅延したという結果が生じておるかもしれませんけれども、しかしながら、そこはやはり争議行為と郵便法の適用の問題とを厳格に区別していくべき重要なポイントでないかと思うのであります。すなわち、やむを得ずといいますか、労働組合が上下一貫しました争議に入ったような場合の一貫しました命令系統における労働組合員の受ける拘束もしくは行動の規制、こういうものが指令によって行われておるという場合には、これはいわゆる法律上やむを得ざるに出たる一切の行為に該当するのではないだろうか、こういうふうにも考えられます。この点につきましては若干の労働判例もあるようでございまするし、私はやはり、この場合郵便法をかつぎ出してくるというような、何かしらん伝家の宝刀を抜いてやるというような古い考え方、そういうふうな時代逆行の考え方で、労働組合の運動に郵便法をかぶせてくるというような態度で郵政当局が臨む、それに法務行政の警察あるいは検察庁などがそれに乗って同じく行動する、こういうことになりますると、これはやはり七十九条をことさらに当てはめていこう、七十九条の「ことさらに」という趣旨を単純な故意と解釈いたしまして、構成要件というふうな考え方をしないで、広く解釈して、労働運動の、正常な行動もつぶしてしまう、結局警察官が労働組合を監視し、労働運動を妨害するという結果を来たす、つまりいわゆる官憲の介入というふうなことになる、こういうふうなことになると思われるのであります。でありますので、この際はっきりしておきたいことは、これらの行為が上部の機関の正当な命令によって行われているといたしますならば、やはりこれは少くとも最小に見ましてもやむを得ざる行為といたしまして、これらの七十九条の「ことさらに」になる行為に二つの形態がありますが、そのいずれにも該当すべきものでないというふうに解釈するのがほんとうではないか、こういうふうに思われるのであります。これはあなたと郵便法の解釈について論議をするのは適当でないのでありますけれども、しかし、法務行政上、取締りあるいは捜査をしているのが、郵便法七十九条に違反しているということを前提にしておられるというふうに開き及んでおりまするので、この点はやはり法務当局としましてはっきりしておいてもらわねばならぬかと思うのであります。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内政府委員 私どもの立場といたしましては、法律の厳正公平な解釈適用という立場を一歩も出るものではない点をあらかじめ御了解願っておきたいのでございますが、いわゆる公労法の十七条第一項によりまして、職場を離脱するといったような同盟罷業、怠業のような行為は許されないことになっているのでございます。そういたしました場合に、この十七条第一項はそのまま刑罰法令に触れるのではないのでございますが、この十七条で禁止されたような行為が他の刑罰法令に触れるような場合においては、これは現在の解釈、法の適用といたしましては、その行為が他の犯罪に該当する構成要件を満たします場合には犯罪として取り扱うというのが解釈の基本的な態度でございます。時間外の職場大会でございますならばともかくも、正常な勤務時間内における職場大会によって何時間か職員全員が業務につかないということによって郵便法七十九条の構成要件を満たします場合におきましては、郵便法第七十九条違反として処理されますことは法の解釈適用上当然の帰結でございまして、そういう観点から作業を進めているものと私どもは理解いたしているのでございます。

吉田賢一日本社会党

○吉田(賢)委員 しかしながら、組合の指導とかあるいは決定に従うということは、組合員の許された行為であって、一々組合の指令もしくは決定に従っておっても、それは何々の法律に触れるから一々処分していくということであるならば、組合員の組合における拘束、つまり、組合員その者が労働組合に属しておって、一方においては指令に従わねばならぬ、その指令に従って行動をしなければならぬということはもう当然でございますから、それに従っておる場合には、大ていはやむを得ざるものとして責任が阻却されるのが当然の筋合いじゃないだろうか。いろんな例外の場合は別といたしまして、組合の統制に従っていくことが組合員としての義務でもあるし、また従わしむることは組合指導もしくは指令あるいは決定の当然の権利ではないだろうか。これが団結権でもあるし、組合ができておるゆえんでもある。その辺がこわれてしまったら労働組合の運動はあり得ないのであります。これは仮定的なことじゃなしに、組合の指令に従っておる限り、かかる場合にその行為がどういうことでございましょうとも、まず他の責任は一応阻却されるべきものである、一応はそう解釈するのが当然であろうと思うのであります。これはあなたと抽象的な議論をしても仕方がありませんから、郵政当局と質疑応答することにいたします。郵政当局とは具体的な事実によってできますけれども、あなたの方はそれができませんからやむを得ません。これはその程度にいたしておきましょう。  法務当局への質疑、それからあっせん収賄罪につきましての質疑は、別の機会をいただくことにして、本日は保留いたしたいと思います。

町村金五自由民主党

○町村委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十三分散会

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