社会労働委員会 第22号
- 発言数
- 110 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1958/03/14
会議録
○森山委員長 これより会議を開きます。 内閣提出の最低賃金法案を議題とし、審査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。中原健次君。
○中原委員 まず最初に、最低賃金法案の吟味に入る前に一応現下の経済情勢あるいは雇用、失業等の情勢について大ざっぱに主として大臣の見解を伺っておきたい。その点に関しましてはすでに労働省も企画庁あたりもいろいろ出しておるようですが、必ずしもわからぬ点ばかりではありませんが、それらの諸問題について一そう具体的に明確に大臣の見解を聞いておきたいと思いますから、そういう意味で話に入りたいと思います。 政府の方で出しておいでになる新しい五カ年計画は、いろいろ首肯される点もあるし、またどうであろうかというような疑問を持つような点もあるわけでありまして、そういう諸点についてまず最初に伺いたい。第一番に私が思いますのは、いわゆる経済の成長率というやつです。この経済成長率というのは、なるほどそろばんをはじくといろいろになるような気がします。そこで政府が今一応表面に出しておいでになる経済成長率六・五%ですか、この計数の基礎をどういうふうにお思いになるか。一応大臣のこれに対する見解を伺っておきたい。
○石田国務大臣 一番望ましい形は経済の成長率が国民の経済力を上昇させて、その中に労働力人口を全部旬含するような速度をもって成長していくことが一番望ましいのであります。しかしわが国の経済の貿易依存度の高いという特殊性にかんがみまして、おのずから国の経済に大きな摩擦や波紋を生ずることなく堅実に伸びていく限度というものがある思います。六・五%という成長率はそういう意味において適切な数字だろうと思うのでありますが、ただ新規労働力を吸収して、同時に日本の就業構造を非常にすみやかに近代化するという目標だけから考えますと、もっと多いものを期待することが望ましいと思います。 しかし先ほど申しましたように、日本経済の特殊性から見て、その面からのみ計画を立てることは困難でありますから、六・五%の成長率というものを土台といたしまして雇用の増大というものを考えたい、こう思っておるわけであります。
○中原委員 その意味で六・五%という成長率は今日の雇用情勢の中で大体それでよかろう、こういうふうに見ておいでになるようにうかがわれるわけです。もちろん各種のそれに対する付帯的な対策も必要であるということを言われたわけですが、それらのものはあくまで従たるものであって、主たるものはやはり経済の成長のために立てられる対策が、大体まあそれをもってよしとするということになるかのように伺ったわけです。そこで私はその次に思いますることは、平年度の吸収増加率八十万、それから三十三年度は六十万ですか、六十五万ですか、この点について聞いておきたい。
○石田国務大臣 六十五万です。
○中原委員 そこで、これも六十万説が非常に強かったのですね。それが計算上六十五万に直されたわけです。そこらの事情をどうお思いになりますか。
○石田国務大臣 私は六十万説があったことは承知いたしておりません。なお詳細な事情は事務当局から……。
○百田政府委員 今大臣からお答えになりましたように六十万説ということは過程において出て参っておりません。
○中原委員 労働省関係では六十万というのは聞いておらぬ、そういうふうなことでございますね。しかし実はこれはそうじゃないのですね。六十万説というのはかなり有力に流れたのです。ところが六十五万にはじき直されたということもあるわけです。そんなことを議論して甲乙を争わぬでもよろしいけれども、とにかくそういうふうに計数というものはかなり簡単に動いておるかのような印象を与えておるということだけ申し上げておきます。そこで考え方としましては六十万が六十五万でも、いずれでも同じでありますが、この六十万なり六十五万というのは、その吸収対象ですね。その対象はどういうところに置いてあるだろうかというにとなんです。
○石田国務大臣 経済五カ年計画におきまする雇用の問題、特に就業構造を変えるという問題は五カ年間に一次産業の就業率というものを押えて、そうして二次、三次の近代的な産業の方へ振りかえていく。そうして今の不完全な就業状態を近代的雇用関係の方向へ折りかえていくという方向で計画は立てられておるわけであります。従ってその六十五万というものは近代的な雇用へ吸収される、こう考えておるわけであります。
○中原委員 六十五万は近代的な産業に吸収されるわけなんですね。ところが毎年労働力人口は増加しておるわけです。増加雇用希望人口というんですか、そういうものはどういうふうに御計算になっているんですか。
○石田国務大臣 新規労働力人口というものは、現在年々増加する傾向にございます。この傾向はおそらく昭和四十五年程度まで続くだろうと思います。それから下降の線をたどって参るだろうと思うのでありますが、昭和二十三年、二十四年以降の出生児がその労働力人口になって参りまするころからは、だんだんと低下するだろうと思っております。こまかい数字は事務当局からお答えいたさせます。
○百田政府委員 労働力人口のふえ方について申し上げます。昭和二十九年におきまして四千八十六万、三十年において四千三百三十四万、三十一年において四千一言九万、三十二年において四千三百八十五万、これは実績見込みでございます。三十三年においては四千五百五万という見込みでございます。
○石田国務大臣 新規労働力の見込みを聞いておられるわけです。統計部長からお答えいたさせます。
○大島説明員 ただいま中原委員が御質問になっております五カ年計画によります新規労働可能人口の伸び、これは毎年新しく十五才に達しまする新規労働可能人口、これを三十七年まで累計いたしまして、一千百四十三万人と出しております。これに対して今先生のおっしゃいました雇用希望率を乗じまして、七百七十二万人、こういう数字になっております。
○中原委員 希望雇用人口が七百七十二万、こういうことですが、この計算の基礎はどういうところに置かれたんだろうか。
○大島説明員 ただいま申し上げましたように新規労働可能人口、これに対して雇用希望率を乗じて七百七十二万と、こうなったわけでございますが、新規労働可能人口につきましては、現実に社会へ出て参りますのは、新しく学校を卒業しまして社会に出てくる者の総計がほんとうは現実に労働可能人口になってくるわけなんです。すなわち十五才に達しまして新制中学を卒業いたしまして、その中から社会へ出て参ります者と、新制高校へ進学いたします者とございます。このうち進学者を除きました数字、さらに新制高校から大学へ進みます進学者を除きました数字、それから大学の卒業生、これを合せましたものが現実に社会に出て参ります数字なんであります。しかしこれを総計いたしました数字と、毎年新しく十五才人口になって参ります人口とほぼ一致いたすわけなんでありますが、若干多目の十五才人口の方を累計いたしまして、今申しました千百四十三万という数字をもとにおいておるわけであります。一方雇用希望率につきましては、毎年学校を卒業いたします見込みの者が大体秋ごろから就職が開始になるわけであります。この中で卒業見込み者と進学見込みの者、雇用希望の者の見込み数、これの比率が出るわけでございます。これによって雇用希望率を男女別に算定いたしまして、ただいま申しました基礎の人口にかけたものが七百七十二万人という数字になっております。
○中原委員 七百七十二万人は六カ年ですね。それで六カ年で七百七十二万人が卒業者の中からつかみ出した新規の雇用希望者ですね。それではこの七百七十二万人とただいまの六十五万の新規雇用人口、この両者の関係はどういうことになりますか。
○大島説明員 一方雇用者の方から申しますと、全般の雇用者の中で、死んで参ります者、それから他の就業形態に移ります者、すなわち業主になっていきます者、あるいは家族従業者になっていきます者、あるいは非労働力になっていきます者、また逆に雇用者の方になって参ります者、こういうようなものがあるわけでございます。これを今申します期間六カ年にわたって計算いたします。これがいわゆる交代補充分と申しておりますが、この交代補充分を差し引きましたものがすなわち新規雇用量として新しく吸収いたさねばならぬ数事になるわけであります。これが先ほど来おっしゃっております四百八十一万という数字になっているわけであります。
○中原委員 そうなりますと、その四百八十一万というのは六カ年間の雇用希望者ということになるわけですね。
○大島説明員 希望者の中で現実に新しく雇用の増加によってこれを吸収すべき人数、すなわち要吸収雇用希望者数と申しております。
○中原委員 それではこれは要雇用、つまり消化し得る人日ですね。そうなりますと不消化——消化し得ざる雇用希望者というのはどれくらいになっておりますか。
○大島説明員 これは先ほど申しました雇用希望者、これを全部吸収する計画になっているわけでありまして、その中で現実に現在の雇用者の中で交代補充していきます分、すなわち死んでいきます分とか、あるいは就業形態ないしは非労働力人口との関係において差引して滅って参ります分がございますので、それらへ一方補充いたす必要があります。それだけでは足りませんので、新しい産業活動によって雇用の需要数と申しますか、雇用数を増していく必要がある。その増していく分が今申しました四百八十一万という数字になっておるわけであります。従って履用希望者は全部雇用者として吸収いたします計画になっておるわけであります。
○中原委員 そうするといろいろな形で全部の雇用希望者を吸収していく、こういう計画だからまず滞りなし、こういうことなんですね。
○大島説明員 さようでございます。
○中原委員 そこでお尋ねしますが、いわゆる交代補充率ということを今おっしゃったわけですが、交代補充率というのは大体具体的にはどれくらいの、これはパーセンテージでもよろしいが、御計画なんですか。
○大島説明員 男の場合は一%、女の場合は五・五%になっております。
○中原委員 このパーセンテージなんですか、このパーセンテージはどこでいっおきめになったのですか。
○大島説明員 この点につきましては、経済企画庁で立案いたします場合に、御承知の通り経済計画委員会という、民間の有力な学識経験者を集めた委員会が設置されまして、ここにおいて種々検討されて決定になったものですが、その交代補充分のうち、死亡分につきましては大体厚生省の人口動態統計等によって死亡率の想定がつくわけであります。一方純粋の引退率と申しておりますが、雇用者の中から引退していきます者、この計算につきましては国勢調査の結果によりまして、年令別の人口を五才刻みにいたしまして、それが毎年移って参るわけでございますが、その差額から計算いたしまして、今申しましたような死亡率と合せまして勇子につきましては一%、女子につきましては五%、こういう計算になっております。
○中原委員 ちょっと私わかりにくいのですが、その計算を出す年度ですね。国勢調査とおっしゃったが、国勢調査はいつやられたのですか。
○大島説明員 二十五年から三十年に至る過去の実績によって推定しております。
○中原委員 三十五年から三十年というと五カ年間ですね。しかし出た計算というのは、国勢調査というのは三十年でしたね。そこでその国勢調査でそういう計算をお出しになられたが、それから以後の情勢というのは、たとえば引退率にしましても、死亡率にしましても変動がはなはだしくあるのです。それはどういうことかといえば、たとえばここで健康保険の問題が論議されたという場合によく気がつくことですが、いわゆる医療科学、医療技術の進歩、従って人間の定命の伸び、そういうふうなものから死亡率というものも変動してくる。それからもう一つは、引退しましても経済的な客観情勢によってやめたくてもやめられない、何とかしてかじりついて生活を営むために仕事をしなくち亀ならぬ、こういう悲しむべき現象が増加するわけです。そうなりますと、交代率というのはやはり変ってくるのじゃないか、私はそう思いますが、これはいかがですか。
○大島説明員 中原先生おっしゃいますような各年によっていろいろな変動があるわけです。ただこういうふうなかなり詳細な年令別統計の基礎となりますと、どうしても国勢調査の結果によらざるを得ないわけでありまして国勢調査の結果が二十五年、三十年と出ておりますので、この二十五年、三十年の間の推移についてこれを調査いたしたわけでございます。なお各年の変化につきまして先生のおっしゃいますような事情がいろいろございますと思いますが、この二十五年から三十年までの経過を見ることによって、大体の趨向と申しますか、そういう傾向線を伸ばすことが可能かと考えられたわけであります。
○中原委員 とにかくそういうような計画で——いろいろな議論があるのですよ。決して承認したわけじゃないのです。議論があるのです。新しい情勢がかなり加味されてくるわけですから、そういうふうに画一的に計算をしてそれでよしというようなのんきなことは許されない。かりに企画庁がそうやってきても、労働省としては、それは違うじゃないか、そうはいかぬぞという意見を出してもらいたいというのが、むしろ私の意見なんです。だからこの出ておる数字を責めるのじゃないのです。それを皆さんが承認されるのかどうかということを言っておるのです。いやしくも労働行政を担当する皆さんとしては、それはそうはいかぬぞ、こういう情勢があるじゃないか、この情勢をどうするのだというものを出してもらいたい。そして企画庁の計算に対して、あるいは計画に対して、意見をどんどん出してもらいたい。閣議の場合は大臣にうんとがんばってもらいたい。そうせぬと、こんななまやさしい計算で、まことにみごとな計画を立てられておるかのごとく吹聴されては困るのです。必ずそのあとでは誤差が出ます。この計画というものはうまく行ってとにかく無難というこつとになるのであって、一つ間違うたらその計画の中から新しい失業者が造出されてくる。その新しい造出失業者をも加えた失業対策を立てなければならぬ、こうなってくる。これは大臣の非常に重要な働き場なんですが、このことについて大臣はどうお思いになりますか。
○石田国務大臣 私は労働省に参りましたとき以来、長期経済計画は雇用希望者の伸びあるいは新規労働力人口の伸びというものをたてにして、それに合せるように計画を立ててもらうべきであって、今までのように財政経済の面だけに重点を置いて、それに無理に人口の伸びを合せていくということでは困るということを、かねがね経済企画庁長官に要望いたしておりました。この長期計画を立ってるに当りましては、御承知でございましょうが民間各方面の学者を集めまして、特に雇用部会という特別の部会を設けて、そしてこの計画が立案されたわけであります。算定の基礎はただいま説明員が申しましたように国勢調査と国勢調査の間の実績を基礎に置かざるを得ないのであります。それ以外のものは、いろいろの変化はございますけれども、それは推定であります。従って基礎に置くのは現われたはっきりした数字を基礎に置かざるを得ない。それを基礎に置いて、その上に現われてくる各種の現象を加味して立てられた計画でございます。また労働省の意見も十分この中に入れてもらうようにいたしておりますし、私は特にこの計画樹立の途中におきまして、雇用部会長に数度にわたってただいま申しましたような希望を申し述べまして、そして雇用に関する計画を立ててもらったのであります。決して労働省が沈黙を守っておったわけではないのでありまして、特に私は雇用部会長の有沢博士とは何度もお目にかかって、労働省側の雇用計画を立てるに当っての希望を申し述べておきました。従って、確かに三十年の国勢調査以後三十一年、三十二年の間に、たとえば死亡率の変化その他がごさいましたが、計画を立てられた人々はもちろんこの変化を中に入れておられる。このベースの数字は何に置くかというと、三十年と二十五年に行われた国勢調査の数字を置かざるを得ない。しかしそれだけではないということでございます。
○中原委員 三十年以後における死亡あるいは退職等を考慮に入れておるとおっしゃったのですが、ほんとうにそうでしょうか。これは答弁器用で言われては困るのです。実際そうでしょうか。どれだけのパーセンテージが入っておるか。
○石田国務大臣 この計画は私のところで実際立てたわけではありませんから、どれだけのパーセンテージということを私どもの方で申し上げているわけではないのです。ただ、長期経済計画を経済企画庁が立てるに当って、労働省は希望すべき点、要望すべき点は十分申し述べ、部会長の有沢博士も趣旨において賛成の上で立てられたわけであります。別に答弁器用で申し上げているわけではありません。
○中原委員 希望を述べておいでになる。それであるからには、その希望にこたえる加算のパーセンテージはどれだけか、これくらいの熱度を私は持ってもらいたいと思うのです。聞いていいと思うのです。聞く責任と権利がある。どうやったのかわからないけれども希望はしておいたというのでは、片手落ちです。現在の失業者の状態、あるいは全労働階級の生活の実態から考えると、よほど本気でやっていただかないと——そのパーセンテージの出た基礎まで突っ込んで、そう簡単には了承せぬぞというものを出してもらわぬことには信頼できません。私はそう思うのです。これほどうですか。
○大島説明員 先ほど来中原先生のおっしゃいます点は、計画と現実のずれがどういう関係になるかという点だろうと思うのです。その点につきましては、長期計画の基本といたしまして、従来五年ないし六年間の実績、各種の国民所得、雇用につきましてもその実績をとりまして、これを平行線に延ばして、たとえば三十一年の基準時の数字というものをこしらえておるわけでございます。従って成長率につきましても、六・五%と申しますのは、基準時の状態を基準といたしましてはじき出しているわけであります。それと同時に、今後の長期計画に伴っての現実の発展と申しますのも、今のいわば直線を若干ずつ上下しながら三十七年の目標に到達いたしたい、こういうふうな計画の基本的な考え方に立っておるわけなんです。従って従来の傾向につきましても、各年でいろいろな変動がある。それを大体の平行線に直しまして基準にし、かつ、今後も三十七年に至りますまでの計画の数字がありますが、その間者年におきましていろいろな変動はもちろんございますが、それが大体三十一年の基準時点から三十七年に至る直線の上下、若干のひずみをもって三十七年の計画に到達いたしたい。こういうようなことになっておりますので、今中原先生のおっしゃいます点はもちろん十分考慮いたさなければならぬ点でございますが、計画自体としてもそういう考え方に立っておるわけでございます。
○中原委員 その吟味はもとより議論の余地があるわけで、ここで結論を出さなくてもよろしいのですが、さらにほんとうに精魂を傾けて熱心にやってもらいたい。やっていらっしゃらないというのではないが、さらにやってもらいたいということで、私が了承できるということはやはり現実がそうでないとも言えないわけではないからです。やつはりそうなんです。 さらにこの計画の中で、最近失業がどんどん出ております。政府は失業が減るかのようにしきりに宣伝せられておりますけれども、実はふえつつあります。そうなって参りますと、現在の実際の失業者の増加数といいますか、こういうものが去年の暮れごろの様子とはもっと違うのです。もっときついのです。こういうものは不測のできごとと考えておいでになるか、それともただいまのような御見解のもとで、労働省としてはそれが考えのうちに入っておるかということなんです。これを一つ。
○石田国務大臣 昭和三十三年から三十三年にかけて、経済政策の転換と、駐留軍の引き揚げ等に伴いまして一時的に失業者が出ることは、この計画及び予算を編成するときに予測したところであります。三十二年度六十五万という数字は、従って計画の八十万に十五万下回ります。しかし、昭和三十二年度におきましては、一方において百十五万くらいの雇用の伸びがございました。従って、六カ年計画をずっとならしますと、晦年度合算しますと、全体としては、両方値引きするとバランスがとれる形になっておるわけであります。それから失業の一瞬的増加に対処する方法としましては、本年度は、予鈴の面におきまして、失業保険の支払い準備の対象人員を三十七万人、前年比六万八千人の増加を見込んでおります。それから失業対策事業は二十五万人を対象にいたして、これも前年比二万五千人の増加を見込んで、三十二年の終りから三十三年上半期に生ずべき雇用状態の変更に対処しておるわけであります。しかし、その後におきましては、経済の回復を待ち、計画通り六・五%の経済成長率を期待し得られると存じますし、従って、八十万人の新規雇用の増加を十分消化し得られるもの、とこう考えておるわけであります。
○中原委員 ただいまの対策の問題についてはあとでさらに質問したいと思います。 そこで、失業者がとにかくふえつつある、一時的にそういうことのあることも予想に入れているとおっしゃったが、一時的な現象と言い切れるでしょうか。これはもうちょっと違うではないか。果して一時的現象としての失業の状態であろうか。これはそうはいかないと私は思うのです。もう少し原因がほかにあるのではないですか。各種の産業の今の状態を見て、ああいうものも一時的の失業だと言い切れるかどうか。私はそう見ている。今はよろしい。けれども、簡単に片つけてもらっては困るということを申し上げている。そこで、雇用の吸収の中に現在の完全失業者、あるいはこれから増大しょうとしておる——労働大臣は一時的だと言われた。一時的だろうが恒常的だろうとそれは別として、そういう新規の失業者あるいはその他の関係におけつる不就労者、そういうふうなものが今のこの計算の中にきちんと入れられておるだろうか、入っておらぬのじゃないかと私は思うのです。それをももちろん計算に入れておるというのなら、この計算では少し違うことになる。新規の就業希望者、加えるに現在の完全失業者あるいは離職者その他を加えまして、その数がただいまの御計算のようなことで消化できにるのであろうか。わずかに二万五千をプラスしたくらいで、あるいは失業対策費まで加えて御説明になられたけれども、それでほんとうに消化しきれるのであろうか。これはもう一度、大臣から御説明願いたい。
○石田国務大臣 先はどから簡単に片づける、簡単に片づけるとおっしゃっていますが、それは答弁を要領よく簡単に申し上げておるのであって、その結論を出すまでの間には慎重に検討をいたしておるわけでございます。 それから、現在の景気現象が一時的か一時的でないか。私どもは上半期になれはその経済情勢が好転するという見解を持っておるわけでございます。しかしこれは先の話でありますからこれ以上は結局水かけ論になるので、来年の話をすれば鬼が笑うというような議論になりがちだと思いますから、これ以上は申しません。 それから、そういう一時的に出てくる失業者の数というものはこれらの計画に盛り込んであるか。それは盛り込んでございます。たとえば三十三年の完全失業者の推定及び失業対策事業の対象人員の数字を出す場合におきましても、この雇用情勢の変化というものを見込んで立ててあるわけでござざいます。なおその数字は、事務当局から申し上げます。
○中原委員 いわゆる吸取する雇用増というものが六十五万という話で出発をしたのですが、これはあくまで雇用増で、全雇用ではないのです。そこで今いう失業者、あるいはこれから離職しようとする離職者等々を包合しておるかという議論がどうしても成り立つことになるでしょう。
○石田国務大臣 納得のついくように数字をあげて説明いたします。
○百田政府委員 先ほど先生からお話のございました点でございますが、来年度の予算に失業者その他の増大を見込んであるかというお話でございますので、数字的に申し上げます。たとえば本年の今日までの完全失業者の月別推移を見ますと、四月以降十二月までは大体平均して四上八万程度、しかしながら昨年の下期からことしの一月以降の失業状態は、金融引き締めその他の影響によって一時的に悪化するであろうというようなことで、三十二年度の実績の見込みといたしましては、失業者数月平均五十五万として見込んでありますが、四月から十二月までの間は四十八万という実績を示しております。しかも来年はその五十五万を基礎として、やむを得ず十万はふえるであろうということで、六十五万という数字になっておるわけであります。さらに就業者の関係でございますけれども、来年度におきましては百三十万というものが労働力としてふえるわけであります。これが就業者として百十万、失業者が十万ふえるという姿になって参るわけであります。その百千力は、雇用者として六十五万、それ以外のものとして四十五万ということになっておりますが、六十一五万という雇用者は、三十二年の千九百一万に対しまして三十三年度が千九百六十六千万、純増として六十五万になっております。従いまして、三十三年度に失業者が新たに出ます場合には、それは千九百一万という雇用者の中に入っておるわけでありまして、それも含めまして純増が六十五万になるということでございます。
○中原委員 大切なことは、これで雇用希望者が離職者を含めてみごとに消えるという計算ですね。それはほんとうにそういうふうに簡単に片づけてしまえるんですか。これはもう少し明確な答弁を願いたい。
○石田国務大臣 三十二年度の完全失業者を五十五万と見、新たに三十二年度から三十三年にかけて、経済政策やその他によって生じますものを大ざっぱに二十万、これは少し多いんじゃないかと思いますが、二十万と見ます。その二十万のうちに、いわゆる四十八万から五十五万にふえるのは含まれておるわけであります。一方学校を卒業して新規雇用、あるいは新規就業人口として現われるのが百二十万、その中で六十五万は雇用の面で吸収する。四十五万は別の就業状態、農家へ行きますとか、自家営業しますとか、あるいは家庭に入るとか——家庭は就業じゃありませんが、そういうような数でいわゆる就業者、それが四十五万。そうすると残り十万くらいが来年は完全失業者の増加ということになる。そこで五十五万に十万を足しまして六十五万人というものを三十三年度の完全失業者、そういうふうに見込みまして、それに対する所要の対策を講じておるわけであります。
○中原委員 そこで四十五万、これは自家経営なり農業の方なり、いろいろな方面に転出する、そういう予測をお持ちになる、こう解してよろしいですな。
○石田国務大臣 そういうことであります。
○中原委員 それが大事なんです。そういうふうに今日の各種の産業、経済の状態にゆとりがあるのかどうか。それは皆さんが理念で判断されて、何とか説明をまとめようということは可能です。そのくらいの能力は諸君持っておいでになる。ところがそうじゃないのです。そうじゃなくて、その四十五万というものを、ほんとうに生きるに値するような経済事情の中に吸収することができるかということなんです。この見通しも、やはり労働省自身としてこれは特別の機関を創設してもいいと思うのです。そのためにはもっと力み返ってやってもらわないことにはこの四十五万が明らかに行き場を失うわけです。行き場を失うことがいわゆる社会の道徳の撹乱になるわけです、これはどうお思いになるのですか。
○石田国務大臣 これは計画でございますから、過去の実績を基礎にいたしました推算であります、従ってその推算を信用しないということになれば、これは未来のことに属することでありますから。しかし未来のことに属することでありますけれども、その計算の出る由来は、過去の実績から推算をするのであります。従ってこれはもう推算でありますから、それ以上の話になると水かけ論になります。 次に、四十五万というものの数の見方であります。四十五万が全部私は困窮者宥になるというようなのはちょっと行き過ぎの判断じゃないかと思うのです。逆に言いますと、雇用者になるよりは自家営業その他に吸収される人の方が恵まれた条件になっている者も相当ございます。しかし全体から見まして、わが国の就業構造というものは健全なものでない。その健全なものでないものを直さなければならない。これは長期経済計画の樹立の基本的な方向でございます。また今回最低賃金法を提出し御審議を願ったり、職業訓練法を御審議を願ったりしておりますことも、このわが国の不健全な就業構造を改めていきたいという目的に出発をいたしております。就業構造というものが健全だとは申しません。しかし事実、過去の実績からはそういう推算が生まれて参ります。その推算で出てきたものに対して所要の施策を講じておるわけでございます。
○中原委員 なかなかどうも、どう言っていいか、ちょっと言う言葉に苦しむのだが、なるほどそういうふうに言えば、はなはだきれいに聞えるのです。ところが、たとえば自家営業に進出する、農業に云々ということは具体的になると思うのですが、そういうゆとりがあるのですか。現在起っておる中小企業の困窮化あるいは倒壊、崩壊というような状況は、今言われるようなことに値するのであろうか。そういう弱体なものを対象として、そこで四十五万からの者の——もちろんこれは全部が全部というのではありません。何ぼかは別の対策もあるでしょう。しかしながらその大部分がそういうものを対象として考えられておるというような状況の中では、結局仕方がないから、麦飯を食えではなくて、自殺しろということになってしまう。これが大事なんです。そういう大切な点を少くともその労働担当の主務大臣としてそういうふうにあっさりと片づけるような弱さで考えられてよろしいのかどうか、これを申し上げておるのです。
○石田国務大臣 私はそういう状態がいいとか悪いとかいうことを申し上げておるのではないのです。過去の実績を基礎に置きました推算がこういう結論になる。そういう結論になおが、その結論になっておる状態は好ましいものではない。わが国の就業構造というものは近代的ではないし、不健全である。そこでそれを直していかなければならぬ。直していかなければならないから、所要の法律を提出し、所要の予算の御審議を願っておる、こういうわけでありまして、私はその状態のいい悪いを言っておるのではない。来年の見通しを申し上げておるだけであります。
○中原委員 そこで大臣は今過去の実績ということを非常に言われた。過去の実績の中でそういう推算が立てられた。だからいいとか悪いとかいうのじゃない、事実こうだからこうだと言ったのだ。まあなかなかすみに置けぬというとえらい失礼な言い分になるかもしれないが、あなたは若いからがまんなさい。そこでそんなら三千年、三十一年、三十二年、三十三年ですか、その当時の雇用増の実績をお尋ねします。
○三治説明員 御説明いたします。対前年比に対する雇用者の純増は、雇用者で、二十九年に対して三十年が百一万、三十一年が百四十万、三十三年は百十五万、これは今年度末までの予測も若干入っております。
○中原委員 そこで三十三年の雇用増というのは六十五万ですね。そうすると、見当はとんと落ちたわけですね。そこでこういう過去の実績にもかかわらず三十三年の六十五万と落さなければならぬような状況、それは考慮に入っていますか。
○石田国務大臣 考慮に人っているから減らしておるのであって、考慮に入らなければそのままずっと計数上上伸びていくだけであります。考慮に入っておるから経済情勢の変化や——駐留軍の引揚げ等は経済情勢とは申しませんけれども、そういうような諸情勢の変化が三十二年から一二十三年にかけて行われることが確実であります。従ってそれを考慮に入れて、前年百十五万の千雇用純増でございましたが、本年は六十五万程度しか見込まれないだろうということにいたしておるわけであります。
○中原委員 そこで四十五万というさきの問題が出てくるのです。そういうような窮屈な状況の中で四十五万は何とかなるであろうということになるでしょうか。
○石田国務大臣 何とかなるであろうとか、ならないであろうとかいうことを言っておるのではないのでありまして、これは景気変動で若干の計数上の違いがございますけれども、年々新しく学校を卒業する者が全部雇用を希望するのではないのでありまして、自家営業に入る者も相当あるわけであります。そういうものから出てくる推定の数字でございます。その人たちが雇用される人よりもいい条件にあるか、悪い条件にあるか、一般的にどうであるかということは一がいに申せませんけれども、しかし就業構造として現在のような形は全体として健全であるとは思っていないのであります。直さなければならない。その直すために所要の措置を講じておる。先ほどからもお話がありましたが、御指摘のような状態を改善するために最低賃金法を提出いたし、あるいは職業訓練法の御審議を願っておるということなのであります。わが国の中小企業以下の企業の数はおそらく三百五十万をこえるだろうと存じます。そういう数から推定いたしまして、あるいは農家人口その他から考えまして大体それくらいのものはいわゆる雇用を希望する数ではなかろう、こう思っておるわけであります。
○中原委員 そこでついでに非常に最悪の年といわれた二十九年は度はどうでしたか。
○三治説明員 二十九年は対前年、二十八年に対する雇用者の純増が五十万であります。
○中原委員 そこで考えられることは、デフレであれだけつやかましくいわれたその年と今年の差というのは、ほんとうはすれすれなんです。しかもそれは予想なんですから、もっときついんじゃないかということが言えないわけはない。そうすると、すれすれどころか、ほとんど同じくらいになるかもしれない。従って、そういうような実態の把握の中でたたえる労働政策というものが——今日の予算にもいろいろ言うことがありまするが、そこまで入ると長くなるからよしますが、とにかくそういう中で具体的に示しておいでになるわけです。その構造、言いかえれば二十五年くらいからきょうまでの間が最悪の年ということもことしは予想に入れなくちゃならぬ。そうじゃないと言い切れないのは、言い切れないような要素がある。そういうような中で、その最悪に対する対策として、特に大臣として、だからこうだということをもう一度聞かしてもらいたい。
○石田国務大臣 二十九年の一雇用の純増が五十万、それから三千三年の雇用の純増六十五万・二十九年より十五万も多く見ているのは見過ぎじゃないか、こういう御質問でございますね。つまり雇用の純増は結果として一十九年以下になることもあり得るじゃないか、こういう御質問ですね。これは大ざっぱな観測であって、結局水かけ論でありますが、しかし御不満といえば御不満かもしれませんけれども、二十九年に比べて二十二年、すなわち経済政策の転換が行われるときは非常に大きな経済の成長率を示しているのであります。おそらくこれも——大ざっぱな私の記憶だけでありますが、三十年から三十一年にかけての成長率は、おそらく一三%から一四%になっておったと思う。それから三十一年から三十二年もその程度のものでないかと思っております。従って先ほど示されたような両年度における雇用の伸びというものは非常に大きいものがあります。二十九年のデラレ政策を実施いたしましたときと、それから今回の政策の転換を実施したときとは日本の経済基盤の伸び方が違っておる。従ってそれの影響は同程度といたしましても、純増のふえ方がやはり二十九年より幾らか多く見られる、こういうことが一つであります。それからもう一つは、経済政策の転換に伴う各種の企業の対策は大よそもう一巡いたしまして、従って失業者の推定等ももう大体つくのであります。それから駐留軍等についてはこれも大体の見通しがつく、つまり政策の影響というものは一巡をいたしておるところでございますから、その見込みについては変化がない、最低の見込みである、こう考えておるわけであります。従ってそれに対する失業保険の支払い準備その他はいたしておるというわけであります。
○中原委員 経済の成長の度合いといいますか、成長の実態がその当時とは全く違う、非常に強化されてきたと、こういうことですね。確かに成長した経済の実態は二十九年当時とは違うんです。これは先日来ここでかなり議論が出ておりましたが、いわゆる生産性向上方式としての問題じゃなくて、機械化促進の問題ですね。このオートメーションによる効果という問題、いや、そうじゃないという問題が論議されておりましたが、それにも関連が出てくるわけです。労働力をかなり巨大に排除するということは、どのように説明してみてもこれはオートメーション化の実態なんです。それについてちょっと私は余分なことを申しますが、先般私はある工場地帯へ見学に行きました。非常にりっぱな施設がなされておりました。りっぱなものです。普通ならこの工場で、固い計算をいたしましても、われわれの目で見て六百五十人くらいの従業員を必要とする施設です。ベルトがぐうっと回っておりますが、回っているベルトの一番けりに行ってみると、ちゃんと製品がどんどんできてきている。まことにりっぱです。それが悪いと言うのじゃない。まことにりっぱだと言うんですが、ただ残念なことにはその大規模の設備の中に労働者の姿が見えないんです。これはいわゆるオートメーション化の必至の結論なんです。何もそれをとやかく言う必要はない、必至の姿なんですから、そういう実態の中で伸びた経済力というものを考慮に入れなければ、雇用問題は解決せぬのじゃないですか。雇用がおのずからふえるのだというふうには割り切れないのです。ふえる面もあるでしょうが、全般としてはやはり減退するのです。そういうような矛盾した関係がここに飛び出してきているわけです。それがいいとか悪いとかの議論をしているのではない、その議論は別にして、問題は雇用問題です。雇用問題を取り上げて考えますと、近代の経済の構造は、そういう結論を出すように必至の方向としてなっているわけです。これを考慮に入れずに経済の成長がはなはだしく違っているという言葉で片づけるのでは、ちょっと了承ができないわけです。やはりこのことを考慮に入れた中で、にもかかわらず増加するであろう失業、あるいは雇用を拒否する、就業を拒否する実態、そういうようなものの中で出てくる計算でなくては、過去の五カ年を経験に入れても、その経験の内容が違うわけです。それからそういう新構造の中での見通しをつけて雇用問題に対する対策を立てられていかなければいかぬのじゃないか、そう思いますが、この点いかがですか。
○石田国務大臣 生産性の向上に伴うオートメーション化の進行、そういうものは雇用の機会を減少する、それを土台においてこれからの新規労働力の吸収率を考えていかなければならぬのじゃないか、こういう御議論でありますが、私は全体として生産性の向上とオートメーション化の発展というものは、国民の経済力を豊かにしますから、大きな方向としてはやはり雇用の機会の増大をもはかり得るし、労働条件の向上をも当然期待し得られる。生産性の向上とかオートメーション化の進行というものは、今に始まったことでなく、ここ数年来ずっと続いております。それにもかかわらず、先ほど説明をせられたように、二十九年を除いては毎年百万を純増しているわけであります。また先般来鉄その他の基幹企業におきまする生産性の向上と雇用者数の増加という問題として取り上げられて提示された数字を見ましても、なるほど生産性の向上の率通りにはいっておりません。その率とは非常に違っておりますけれども、雇用はその企業の内部においてもふえておるわけであります。従って私は、そのことが直ちに雇用の機会、それは昔の、前時代的な企業形態の中で今の生産量を確保しようとするときに比べると、労働者の数を少くするでしょう。しかし文明の発展は、最小の労力をもって最大の経済効果を上げるのでありますから、それは直ちに労働者諸君の生活の向上にもなるのだ、こう考えております。しかし百歩を譲りまして、今度は経済政策転換に基きます失業者の数を考えると、もし中原さんの御議論のように、すでにオートメーション化が進んでおって、労働者の雇用数が少い状態において経済面策の転換が行われたとしても、これはそれだけ転換に伴う失業者の増加率というものは前年より減ってくるわけであります、御指摘の通りとするならば、もとが少いのでありますから。従って私はその転換の影響というものを二十九年より少く見ても間違いではない、五十万の純増を六十五万と見ても間違いではない、こう思っております。
○中原委員 百歩譲っていただかなくてもよろしい。 そこで私は、ここに朝日新聞の三月七日のこういう総理府の統計局の発表に基く記事を持ってきました。すなわち、「完全失業者の数は昨年の十一月から十二月にかけては四十三万人とかなり低い水準を保っていたが、今年の一月には前月より一挙に十万人もふえて五十三万人となり、前年同月に比べるとまだ四万人少くなってはいるが、」かなりこのことは深刻だという指摘をしているわけです。「これは新しい雇用が減っているだけでなく、不況が進むにつれて企業整備などによる人員整理がふえてきたためで、最近ではそれが繊維、化学などから鉄鋼や一般機械、輸送用機械というように各業種に拡大してくる傾向を見せている。」こういうことが書いてあるわけです。これは荒唐無稽のものじゃない、まさにそうなんです。だからあなたもことしは六十五万だ、こう言われるんでしょう。それで来年は八十万とぶり返すわけですね。その議論はよろしいが、そういうことなんです。そうするとこれは一時的の特殊現象ではない。そういうような恒常的な状態が令すでに出ておるわけです。出つつあるのじゃない、もう出ておるのです。しかもそれがさらに進度をどんどん深めておるわけです。こういうことが言えるわけなんです。こういうような諸問題を考慮に入れて対策が立てられておらぬことには、これは大へんなことになってしまう。二方五千の失業対策事業の構想がふえたということをもって足りるのじゃないのです。ですから私はこの点についてはもう少し具体的な、なるほどそうか、よく考えておいでになるわいと思わせるような御答弁がほしいわけなんです。
○石田国務大臣 完全失業者の数は、経済情勢によっても違いますけれども、季節によっても違います。しかしただいま総理府から出されたような情勢が起っておりますから、それを見込んで、本年度の完全失業者は、先ほど政府委員が説明したように五十五万と見ておるわけであります。実際四月から十二月までですと四十八万でございましたが、それを三十二年度末は五十五万と見ている。さらに三十二年度もそういう情勢が続くだろうと思いますから、完全失業者の数を六十五万、そこで失業対策事業は二万五千人の増、それから失業保険の支払い準備は七万八千人の増、それを対策としてやっておるわけであります。私がそういう状態が進みつつあると申し上げたことは、あなたのおっしゃる通り、すでに起り、またこれからも続いておるんだということで申し上げたのでありまして、決してまだ起っていないが、これから起るという意味の進行形ではございません。 それからもう一つは、それに対する政府側の施策、それからそういう状態にあるにかかわらずなお新規の雇用の増加六十五万というのは多過ぎるじゃないか、こういうさきの御議論にお帰りになるだろうと想像いたしますが、それは、たとえば昭和二十九年のようなときにおいてさえも五十万という雇用の純増があるのでありまして、景気が悪くなっても、毎年雇用の純増というものは実証上そういう数字を示しておるわけでございます。
○中原委員 ただいま完全失業を三十三年度六十五万とみなして云々ということを強調されたわけですが、六十五万というのは、そうでしたか、私はそうは思わぬのです。いわゆる六十五万は完全失業を六十五万とみなして計画を立てておいでになるというふうに理解をしていなかったのです。そうではなくて、六十五力というのは、雇用純増数ではなかったのですか。
○石田国務大臣 全く偶然に両方の数字が一致しているだけでありまして、雇用の純増も六十五万、完全失業者の見込みも六十五万でございます。これは偶然に数字が一致したのでございます。
○中原委員 六十五力という、いわゆる完全失業者をすでに想定に入れているのは、なかなか賢明です。ところが今までの発表によると六十五万という数字は意想外な感じを与えるのです。さすがに石田労働大臣は達観の士です。そこで聞かなければならぬことは、いわゆる投資の単位当りの雇用の吸収率というものをどう考えているか。 それからついでに申しますが、先ほど経済の伸びというものは、国民の生活をそれだけ豊かにするのだというふうに割り切られたようですが、経済カが伸び、産業が発達したというだけでは、そうはいかぬ。やはりそこに配分の問題、いわゆる最低賃金との問題の関連が出てくるわけですが、この地上にある経済物というものは全部国民の均等物ではない。これを混同せぬように、そこを明確に割り切って話をしていかぬと、そうはいかぬと思うのです。
○石田国務大臣 昭和二十三年の完全失業者の数が六十五万というのは、今初めて申し上げたわけではございません。これはたとえば失業保険特別会計の予算を提出しておりますが、その予算編成の基礎であります。それから失業対策事業の予算編成の基礎でございます。予算を作るときからのわれわれの計算の基礎として初めからお示ししてあります。 それから国民経済力の上昇は直ちに国民一人々々の生活向上にならない。そこに分配の問題を考慮されなければならぬ、これはもうおっしゃる通りであります。しかし国民経済力の上昇は前提であります。それなくして分配の問題を幾ら考えてみたって、分配の問題の解決はございません。そこで生産性の向上や、国民経済力の上昇と分配との関係をどうするか、今生産性本部におきましては労使協議制を研究されまして発表されておりまするし、労働者におきましても西ドイツ等におきまするそういう実情の調査をいたしております。また労働組合が経営者と交渉をされることも、これは分配の問題の解決の手段でございましょう。それからそういう組合がない、あるいはそういう力の弱いところに対しましては、最低賃金法を提出しているわけでございますから、御指摘のような分配の公平を期しますためにも、一日も早く最低賃金法を成立させていただくようにお願いをいたしておきます。
○中原委員 それがこの答えになるのですか。どうもそういうことを言われては……。
○石田国務大臣 その通りでございます。
○中原委員 そう簡単に言ってもらいたくないと思います。とにかくこれは議論がありますけれども、これをもってあなたの答えるような基礎になるということはとんでもない。だからわれわれがかねて主張しておる最低賃金の考え方というものが、この最低賃金法に盛り込まれなければ、実際はだめなんですよ。その議論については一応飛ばしまして、時間もだいぶたったようですから、その次にいきましょう。 三十三年度の雇用増加率の中に、何業に従事しておる者が何人と、少くとも重要なものを三つ、四つ分けてちょっと聞かしてもらいたい。これは大臣でなくてもけっこうです。
○三治説明員 先ほど大臣が申し上げましたように、来年度の予測でございまして、それは過去の産業活動指数と来年度の産業活動指数というものの対比で就業者、雇用者を出しているわけでございまして、推定数字としてはあまり誤差が出て参りますものですから、産業別にそうこまかくは政府としては出せないわけでございます。二次産業、これは製造業が主で、ガス、電気というものが入っておりますが、六十五万のうち約三十万。第三次産業は、主として金融、商業というものが入っておりますが、三十五万というふうに予測しております。
○中原委員 そこでもう一つ。非農林全般……。
○三治説明員 これは非農林だけでございます。
○中原委員 非農林全般のパーセンテージの増ですよ。
○三治説明員 農林は雇用者はほとんど計数に入れるほどの数字はございませんから、農林業に関してのやつは、前年に対して変化なしと見ております。
○中原委員 非農林全般の雇用増、前年に対するパーセンテージを聞いておるのです。
○三治説明員 非農林につきましての対前年の雇用者全体の伸びは三・四%でございます。
○中原委員 たとえば製造業が幾らということ……。
○三治説明員 あまりこまかい産業別には誤差が入って参りますものですから、われわれの方で見通しとしては大体一次産業、二次産業、三次産業というふうな格好で計数をはじいておりますので、その点御了承願いたいと思います。製造業とか商業とか金融業とか、そういうこまかい産業まで入りますと、誤差が三万、五万という数字が出て参りますものですから、見込みとしては、この長期計画におきましても、大体第一次産業、第三次産業、第三次産業という産業を大きく三つの分類で分けて推定をし、計画をしておるわけでございまして、年度の計画におきましても、大体五カ年計画のときと合せまして一次、二次、三次というふうな産業別で大まかな見通しを立てにて、あまり誤差と申しますか、こまかい数字を出しますと三万、四万という数字とか、小さい産業になりますと十万台の差でも誤差の中へ入って参りますので、そういうふうなこまかい計算までは差し控えているわけでございます。
○中原委員 非農林全般の雇用増率は三・四ということですが、そこでわれわれが気づかわれることは、先ほど石田労働大臣は楽観論ではないと言われたけれども、私は楽観論だと思うが、四十五万の行き場所まで、やはり展望を持っておいでになるようですが、そういう場合に考えられることは、第三次部門です。第二次部門に雇用はかなり蝟集するわけです。これは経験もそうであるし、見通しもそうなのです。そうなって参りますと、この蝟葉をさばくといいますか、処理するというか、これはこれからの労働政策の非常に重要な点なのです。そういう問題について具体的には何か考えておいでになるのかどうか。それを一つ大臣に伺っておきたい。
○石田国務大臣 第三次産業と申しましても、商店とかあるいは接客業とか、サービス業とかいう面もありますし、あるいは金融業とか、新聞社とか、放送局とかいうような大きな企業もございます。大きな企業におきましては、近代的な雇用関係が樹立されております。しかし、それ以外の部門につきましては、雇用条件その他について不十分なものがなお相当多いのであります。そういう部門に対する新規就業者の取扱いとしましては、労働省といたしましては、先年来集団就職制を勧奨いたして参りまして、集団的に職業安定所が中に立って雇用条件を取りまとめてお世話を申し上げているわけであり上ます。そういう第二次産業に雇用されるものが少くて、三次産業に吸収されるものが多いという経済現象、そのことについては、これは私の所管でございませんから批判は差し控えたいと思います。しかし、現実に行われまする雇用の状態を改善し安定せしめまする施策は講じております。
○中原委員 これはすでに経済企画庁なり政府自身の大きな責任問題なのです。第三次部門へ吸収されることをかなり大きく期待しなければ、いわゆる失業対策が立てられないという状態に近い込まれておるという労働省の立場は、それはあなたの責任だというのじゃないが、しかし、ただ単に労働者を消化しさえすればいい、集団就職をあっせんすればそれでいいというわけのものではないわけです。これは根本解決にならぬ。ただ一つの現象を一つ一つ何とかまとめたというにすぎないのでありまして、こういう問題に対しては、単に労働省自身が、就職、就業、失業対策等々の解決をつけただけで能事終れりというものじゃないと思うのです。特に最近の閣僚の一人としての石田さんはやはりそうでしょう。岸内閣が三悪追放を看板にしておいでになる今日なのです。三悪追放を看板とする、その三悪の一つの大きい部門に食乏があるわけです。結局このことは貧乏とつながることなのです。言葉きれいに説明はいたしましても、実は貧乏につながっておるわけです。国民のそういう極貧状況に対して、労働政策は今日のような状態でいいのかどうか。たとえばオートメーションが非常に躍進した、もちろんそれはけっこうです。そのことは、さっきも経済の伸びと労働階級の就職あるいは生活というものが関連があることをおっしゃったが、もちろん私もそうあらしめたいと思うのです。そうであるならば、なぜ労働階級の労働時間の問題、労働条件の問題、ことに憲法もすでにそのことを保障しておるのですから、これをもっと具体的に基準法なりその他の労働諸政策の中で裏づけていく、こういう方式を考える必要があるのじゃないか。労働者をこっぴどく使うというのじゃなくて、労働時間の短縮が労働貸金に影響を与えないということ、それが人間生活の発展なんです、人間生活の幸福なんです。奴隷のごとくにみんなが一生懸命で働き、働き、働き切って、仕事の分野を分け取りするという形でなくて、だから労働時間が軽減されていく、しかもそれは収入の面において軽減を見るのじゃなくて、むしろ経済が伸びていくならばそれだけ分配が伸びていく、こういう形に持っていくべきときなのじゃないか。だからその先としては、まず失業給付期間についても、これをもっと延ばすということがなぜ考えられないのだ。給付期間を延長するということももちろん考えなければならぬし、給付額の問題についても考えなくちゃならぬ。これは単なる施策にすぎませんが、基本的には、生活を高めるということのために、賃金を削減することなく、むしろ増強を伴うて時間の縮小をはかる、それが人間の文化なんですよ。それが人ごとのように考えられているところに問題がある。国民全般が何か人ごとのように考えていますけれども、そういうような常識を植えつけたところに今日の指導のあやまちがある、私はそう思うのです。 委員正長の御注意もありますし、時間がきましたから、きょうはやめますけれども、このあとは続けます。私は決してこの話を終るのじゃない。何ぼ退屈でも聞いて下さい。これは大事なことなんです。ほんとうは退屈なことじゃない。国民にとっては命がけのことです。今日の段階では一番重要な問題です。このことの解決をせずに最低賃金法の議論を幾らやってもだめです。それで伺っておるのですから、一応あなたのお考えを承わりたい。
○石田国務大臣 第二次産業に比べて第三次産業に多く吸収されるかどうかということは、私はそのこと自体が労働者の条件に影響してくるものとは思わない。第三次産業であろうと、第三次産業であろうと、正しい労働条件が確保されておれば、雇用の機会が多く与えられ、そして条件が向上しさえすれば、それでいいと思います。第三次産業だから第二次産業に比べて雇用の条件が悪いという結論は出てこないと私は思う。先ほども申しました通り、第三次産業と申しましても、いろいろある。金融、あるいは新聞社、放送というような大企業もある。金融ごときは、一般の製造業よりは賃金ベースが高いのであります。それから新聞社はその辺におられるから、差しさわりがあるかもしれませんが、決して一般の賃金水準に比べて低いとは言えない、安定していないとは言えない。私はその産業の種類によってどうこうということは言えないと思うのです。ただ第三次産業の中にはいわゆる中小企業あるいは消費部門というものが多い、しかしそれも第二次産業にないというわけではありません。第二次産業にも中小企業も多い。結局労働条件の悪いところをどうして直していくかというところに問題があるのであって、第二次産業に吸収する度合いが多いから労働政策として間違いだとは言えないと私は思う。ただ国の経済のあり方としてそういう状態が健全であるかどうかということになれば、別の議論であり、私の所管ではございません。そういうことを申し上げたのであります。これは国の経済のあり方の問題であります。 それからその次に生産性の向上や経済力の上昇が労働条件の向上を伴っていない、これは伴わすべきものだと私は思います。従って先ほど申しましたように、労使協議制の研究とか健全な労働組合の活動とかいうことに私どもは大きな期待をかけておるわけであります。しかしそれと同時に、やはり賃金の下からの支えとして最低賃金法を提出しておる次第であります。基準法あるいはその他の労働行政としての適切な運用は私は積極的にやっておるつもりでありまして、中小企業その他の労働条件の向上については一々申し上げると少し手前みそになりますから、申しませんが、積極的にやっておるつもりでございます。
○中原委員 ただいま御答弁の中で、第三次部門に労働力が集中する、雇用が集中するということはわしの責任じゃない、いいとか悪いとかいう筋のものではない、こういうふうに労働省の立場としては言われた。ところが、やはり労働省の立場はそれを考えなければいかぬ。金融、新聞は一流ですよ、ありがた過ぎるですよ。しかしそれはなかなか雇用されません。就職しようと思ってもなかなかできない。第三次部門で増強しておるのはそこではないのですよ。むしろなるべく大事だと思う部門の方へ何とか吸収の片がついておるということでなければならぬのに、それが第三部門の伸びになっておりますよ。これはもう少し具体的に事務当局から大臣に示して下さい。そんなばかなことはない、これは具体的に内容を分析したらわかるのです。冗談ではない、やはりそこに悲劇が伴っておるから言っておるのです。新聞や金融の方で採用してくれるなら私も推薦しますから、だれでもありがたがる、だれでも喜びますが、そうではないのですよ。しかもその業界の中においてさえまだ問題があるのですけれども、これは非常に歓迎すべきことです。同時に国の経済のあり方等についてはおれは知らないとおっしゃったけれども、それではいかぬ。あなたは閣僚なんですよ、閣議で発言してもらいたいのです。そういう耐えがたいような労働情勢の中でもう少し日本の経済の組み方について考えよという発言を堂々とすべきです。あなたの雄弁をもってしたらけっこうできますよ、何でもない。閣議の中の空気をしてなるほどそうだと思わせることは不可能ではない、可能なんです。そのやろうとする熱意のないことを私は問題にしておるのです。
○石田国務大臣 私が申し上げておるのは、第三次産業、第二次産業と分けて、第三次産業へ雇用がふえているということが労働政策の誤まりというのではなくて、問題は不健全な——第三次であろうと、第二次であろうと、どちらであろうと、労働条件の悪い企業に雇用がふえておるというところに問題がある、その実情を私は無視しておるわけではないのです。だからその改善については努力をいたしております。一々申し上げるのは手前みそになるから言いませんけれども、しかしその実績を上げつつあるわけであります。しかし、日本の産業構造は長い歴史を持って今日にきておるものを、あるいは就業構造はそういう形になっておるものを、一朝一夕に直せということは、私が就任して一年にならないうちに、目に見えて直せと言う方が無理ではありませんかということを私は言うわけです。 それからもう一つは、わが国の経済構造の中で第三次産業に雇用が吸収されがちだという状態、これは経済政策全般として考えるものでありまして、わが内閣にはそういう方面にはすぐれた専門家がおりますので、私はその専門家に信頼をいたしまして、専門家の活動に期待をしておるわけであります。
○森山委員長 暫時休憩いたします。 午後零時三十九分休憩 ————◇————— 午後三時五十四分間議
○森山委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。 小倉炭鉱の出水事故に関する件について調査を進めます。質疑を許します。滝井義高君。
○滝井委員 関係のある基準局長なり石炭局長、鉱山保安局長の三万においでいただきまして、実は小倉炭鉱の出水事故について二、三政府の見解を伺っておつきたいと思います。 御存じのように、二月二十一日午前四時十分ごろ、小倉炭鉱の第二坑で突如二百立方フィート程度の出水が起りまして、自乗二十日以上を経過いたしておりまするが、一体この状況はその後どういう状況になっておるのか。この炭鉱は政府の方も御承知だろうと思いますが、一カ月平均一万五千トンくらい出ておる炭鉱であります。しかも従業員は、臨時あるいは季節的な労務者を入れると多分千百五十名くらいおるのじゃないかと思われる。その家族を入れますと、約五千くらいの人数になるわけです。二十日以上もこの第二坑の出水がやまないということになりますと、この炭鉱の運命を一体どうするかという問題にも発展をし、重要な社会問題を形成してくる要素をはらんでおる問題であります。従って二月二十一日に出水して以来約二十日を経過いたしておりますので、政府の方においては大体、この炭鉱の状況が今どういう状況に進んでおるのか、果してこの出水がうまく防止ができて、この炭鉱が千五百名の坑員を今までと同じように生活の不安なくかかえて操業ができる状態にあるのかどうか、まずそういう出水の原因とともに状況について、石炭局長か保安局長の方から一つ御説明を願いたいと思います。
○小岩井政府委員 小倉炭鉱の出水の問題につきましては、起りましたのが先月の二十一日の四時十分ころ、こういうことになっておるわけであります。これは図面がありませんのでちょっとおわかりにくいかとも思いますが、第一幹線、第二幹線と斜坑が二つございまして、それから小倉の全炭層を縫っておる水平坑道がありまして、この水平坑道で切りました上三尺層という炭層に沿いまして卸をつけたわけであります。その卸の延先から水を出したわけであります。当初はわずかずつ水が出まして、退避する時間がございましたので、従って罹災者は一人もございません。しかしながらその後相当水量が増しまして、現在は第二幹線の一番下付近のところで食いとめておるというような状態でございます。日にちがかかりましたのは、途中の採掘跡の坑道に水がどんどん流れ込んでおりましたために、排水をいたしますとかえって危険を増すという観点から、一時八尺卸の水没するまで追い水をかけることを中止しておったわけであります。それが最近すっかり八尺卸も埋まりまして、現在ではもう追い水にかかれるような状態になっておるわけであります。しかしながらきょう参りましたテレタイプでは、会社側は全部の排水をやる作業を放棄したようでございます。これは排水に莫大な金がかかるのと、残されておりまする炭量が私どもの報告を受けておりますのでは三十万トンくらいと称されております。従って基盤付近の残炭を多額の排水費をかけて今後採炭をするということに対しましては会社側としては断念するという方針をとったようであります。それに伴ういろいろの問題につきまして組合側と交渉いたしておるようでありますが、会社側の要求に対しては保留をいたしておるようであります。会社の要求のごくあらましを申し上げますと、三萩野坑という坑口があります。ここの区域の採炭は月三千トンぐらいの予定で今後やる、これには労務者が約二百名余り、その他は全部解雇するというような方針でございます。それでは排水作業の方の人間はどうするかという点は別途に打ち合せをする、組合と交渉する、こういうような方向のようでございます。従ってこの会社側の要求に対しましては組合は一応保留して現在に及んでおります。大体私の方も当初は排水を必ず行うという報告を受けておりましたが、その後の情勢の変化によりまして、会社側では一部の排水を行いますけれども、災害の起りました個所まで排水を行うということにつきましては断念をしたようでございます。大体現在のごく概況は以上のようなものでございます。
○滝井委員 今の御報告で、私が見に行った情勢とはだいぶ情勢が変ってきたことを知らしてもらって驚いておるわけですが、そうしますと、二十一日に二坑でそういう出水があって、その出水がやまないような非常に重大な出水であった、その原因というものは一体どこにあるかということなんです。この原因が明白になっていかないと、今後における会社のいろいろな申し出で、三萩野坑の月額三千トン程度のものをやっていく、その他は全部解雇するといっても、そういう具体的な問題に入るためにはやはり原因をはっきりしておかなければならぬと思うのです。一体どういう原因によってそういう重大な事故になってきたのか、これはどういう工合にお考えになりますか。
○小岩井政府委員 出水の原因は、私の方ではやはり排水を完了いたしまして現場を見たいのでありますけれども、ただいま御説明いたしましたように経営者側は排水作業を断念しておる、こういうような状態でありますので、現場を見るということはできないというふうに考えております。従って出水の現場を見ませんと的確なことは申し上げられませんけれども、大体私の方で判定しておりますのは、小倉炭坑の場合は古生層の基盤から水が出ておるわけであります。おそらく古生層の基盤水による出水ではないかというふうには見ておりますが、監督官が現地に参りまして、出ました水のサンプリングをいたしまして分析をしました結果では非常に塩分が多い。この塩分の多い状況を九大の山崎助教授に御相談しましたところ、断層もあるし、あるいは海水ではないかというふうに考えることもできる——もちろん断定はできませんけれども、非常に海水に近いような数字が一応出ておりますので、海水ではないかということも考えられるということを承わっております。しかしこれはとても断言するわけには参りません。私の方の従来の経験では、沖ノ山炭坑が二百メートルばかりで海底に連絡をしてしまった、そして水が出たということもあるのであります。しかし小倉の場合には海面からは水平距離で一キロぐらい離れております。それから深さの方は三百三十メートルであります。従って沖ノ山がわが国では海底に続いた一番深い例なんでありますが、これよりもまだ海面から離れしかも深いということで、一応私の方では海水とほなかなか断定しにくい。前例もありませんからまず海水ではないのではないかということで、目下九大、直方の試験場、県の御生部、三菱化成、この四カ所に水を送りまして分析をしてもらうことにいたしておりまして、近いうちに結果が出るのではないか。しかしこの結果によります解析もなかなか困難で、果してどう断定づけるかは別として、今までの経験からは海水ということはなかなか断定しにくい状態にあるわけであります。 それから小倉炭坑で前に古生層を一度切ったことがあるのであります。大体基盤にぶっつかる場合には基盤水が出るかもしれないと考えるのが一応普通でありますけれども、小倉炭坑では前に別な個所でこの古生層を切っております。このときにはほとんどわずかな水で、水というほどの水ではない、五から六キューピックフィートのごくわずかな水が出たという記録があるのであります。古生層にぶっつけても水は出なかったという経験を持っておったために、今回もまず大丈夫ではないかという考えでやったようでありまして、施業案その他からも、別に監督部長の指中もいたしておりません。監督宮もたびたび行っておりますけれども、古洞に対しては十分な部長指定をやりまして、先進穿孔をやらしておりますけれども、基盤に対しましてはその必要を認めなかったというような状態でありまして、いろいろな点を総括いたしますと、大体古生層中の基盤水ではないか、しかもこれが十分に予知できなかった不慮の出水事故ではないかというふうに現在のところでは考えておるわけであります。その後資料が十分整いましたらまた別に詳しい検討をいたしてみたいと考えております。
○滝井委員 今の小岩井局長さんの御説明でもわかるように、過去において基盤水に打ち当って出水したことがある。過去において四回くらい出水の経験があるとかいうことをちょっと聞いたことがある。かって今言われたように古生層で基盤水らしいものに当った経験があり、しかも小倉は海岸線に非常に近いところです。従って事業主としては、鉱山保安法の第四条関係の落盤、崩壊、出水、ガスの突出、ガスまたは炭塵の爆発、自然発火、坑内火災というようなものには当然十分な注意をいたしておかなければならぬことだろうと思うのですが、そういう鉱山保安上の十分な注意が事業主によって行われておったかどうかということです。今の局長さんの御答弁のように、古生層の基盤水に打ち当った全く不慮の出水であるということになると、事業主には全く責任がないような工合にとれてくる。そこらあたりをやはりある程度はっきりしなければならぬのではないかという感じがするのです。いつかも私は盗掘の問題についてあなたとやったことがある。絶対炭坑は盗掘というものはない、われわれの方は人員を配置してやっていると言うけれども、私の近所では盗掘ばかりで困っておる。私の家の下なんかも盗掘をやられておる。ところが今度はそれがいよいよ臨鉱法にかけるかかけぬかということになると、鉱業権者は、いやあれは盗掘だとがんばってなかなかできぬという問題が起ってきた。至るところで盗掘が行われておる。従ってこの問題にしても、すでに過去において基盤水に打ち当って出水した。しかしそれは大事に至らなかった。こういう経験があり、しかも小倉は海岸線に近いところです。そうしますと、十分保安監督上の注意が、保安監督部によって事業主に対して行われておったかどうかということをまず第一に私は聞かしてもらいたいと思うのです。
○小岩井政府委員 小倉炭鉱の従来の監督といたしましては、かなりたびたび私の方から監督官が出向いております。一番新しいのは、三十三年の一月二十八、二十九、三十と津田野という監督官が監督に参っております。その前は、三十二年の十一月に二回、それから三十二年の十月、八月、五月とかなり回数をよけいに行っておるわけであります。これらの監督官が現地を見まして、悪いところを指摘するわけでありますが、この出水の関係につきましては、このたび出水しました個所については、一番新しい津田野監督官が参りましたときには、一時その掘進は中止しておったという状態ではありましたけれども、現状は水けもほとんどなく、層も決して乱れてない、非常にがっちりしたいい盤であるような報告が出ております。その前の監督官も、いずれも上三尺卸につきましては、出水の懸念はないというふうに見ております。そのほかの地域につきましては、もちろん指定をいたしたところもございますし、各監督官全部古洞に対しましては、先進穿孔を実施しておって、非常によくやっておるという報告が出ております。古洞に対しては非常によくやっておったんではないか。しかし基盤に対しましては前に経験があったので、幾らか結果から見れば甘く考えておったような気分は多少いたしますけれども、監督官が何人も見まして現状から先進穿孔の必要を認めてなかったという状態は、確かに私どもの報告では、はっきりうなずかれるのであります。ちょうど災害の前日も、この炭鉱の保安委員会の方々が坑内に下りまして、やはりこの現場を見ておるのであります。しかしどなたも出水の危険ありというような報告はもちろんありませんし、そういった感じを受けた方々も全然なかったということも事実のようでありまして、延先の現状からは、先進穿孔の必要性というものはそう強くは出てこなかったという状態であるように聞き及んでおります。数多くの監督官の報告からは、かように推定ができるわけであります。
○滝井委員 この小倉炭鉱は先進ボーリングをやる指定炭鉱になっておったんじゃないですか。
○小岩井政府委員 指定にはもちろんなっておりますけれども、これは区域を指定いたしまして、これこれこういう区域については先進穿孔をやりなさいということで、坑全部が指定になっておるわけではないのであります。従いまして、この二坑の場合は、出水をいたしました区域は指定にはなっておりませんで、ほかの個所には指定の個所があるわけであります。
○滝井委員 大体わかりましたが、そうしますと基準局長の方にお尋ねいたしますが、今の小岩井さんの御答弁では、労務者の方は、臨時や季節の労務者を入れると千百五十名くらいおるわけです。ほんとうの組合員は八百七十八名くらいおるようでございますが、さいぜんの御説明でも、本日のテレタイプでは、結局排水作業を放棄するということになれば、出水をした二坑に働いておった人は多分七百名くらいおったと思うのですが、そうすると、これらの人は一部を除いては三萩野の坑に配置転換される以外には、すぐに路頭に迷う形が出てくるわけですね。一体基準局当局はこの問題をどういう工合に見るのかということなのです。すなわち、基準法の二十六条に明記されておる休業補償との関係ですね。これを一つ御説明願いたいと思います。
○堀政府委員 労働基準法二十六条には、御承知のように、使用者の責めに帰すべき休業の場合は、六割の休業手当を支払わなければならないと規定してあるわけでございます。この場合の使用者の責めに帰すべき休業と申しますのは、今までの解釈では、使用者が不可抗力を主張し得ないすべての場合をいうものと解釈されております。使用者が不可抗力を主張し得る場合とは天災地変等使用者が最善の努力を尽しても避け得なかった事由によるものを意味しておるわけでございます。今回の出水は、経営者みずからの掘進によって生じた災害でございまするから、一般的な天災地変と同様に取り扱うことはできないと思いますが、その掘進をしていくにあたりまして、通常経営者として期待され得る最善の準備と対策を講じて、しかもその災害が起り、そうしてそのために必然的に休業が起きてきたという場合には、これは天災地変に準ずるものといわざるを得ないのでございます。しかしその場合において、果して使用者が最善の努力を尽しておったかどうかという点が問題の分れ目になるわけでございまするが、今も御答弁がありましたように、出水の原因も不明でありまするし、出水を生じた掘進にあたりまして十分の準備が行われたか、また出水後の措置に遺憾がなかったかどうかというようなことについて事実認定を要する点が多いのでございまして、その点、目下福岡の労働基準局におきまして、現地の鉱山保安監督部から資料を提出していただくようにお願いしておるわけでございます。鉱山保安監督部と連絡をとりまして、目下事実認定のための調査を行なっておるわけでございます。ただこの場合におきましては、ただいまも言われましたように、約手入の労働者と、それに伴う家族の生活問題が直接からむ重大な問題でございまするので、なるべくすみやかにこの認定を行いまして、二十六条に該当するかどうかをすみやかに判断したいと思っております。ただ先月の二十四日以前の労働に対する賃金は、先月の二十五日に支払おれております。従いまして、今回の休業手当に該当するものが払われるのは今月の二十五日が期日になるわけでございまするから、なるべくそれまでの間にすみやかに事実の認定をいたしまして、二十六条に該当するかどうかを判断をいたしたいと考えておる次第でございます。
○滝井委員 今の労働基準局長の見解で天災地変と同様に扱うためには最良の準備と対策とを官庁なり事業主がとったかどうかという点です。この点については今の小岩井さんの説明中には、相当言いわけめいたところがあったという感じを受けるのです。前に出水があった。なるほど坑内に入ったときには情勢はよかった、あとからそういうことになったのでしょうが、とにかく過去に地盤水の出水があったという事実は厳としてあるわけです。しかもそれが海岸線に近いところであり、炭鉱は先進ボーリングをやることに指定を受けておった。その場所は受けていなかったにしても、受けておったという事実がある。こういうことから考えると、まず二坑という坑口を放棄をするということになれば、今まで使っておった労務者に対して事業主なり国というものはある程度の責任を持つことが当然だと思うのです。従って、これはどうですか。小岩井局長さんの方で、今の基準局長のような非常に厳然たる解釈でいかれるのか、それともあなたの方は依然として言いわけ的なところでやっていかれて、不慮の災害として休業補償も払わぬことにするつもりなのか。塩分が多いということは、常識で考えて、これは海岸線の近く、あるいはむしろ海の底まで行っておるという判断は明らかにできるわけです。そうしますと、そういう海岸線の近くなり海底を掘るということになれば、先進ボーリングを指定しなくてもやるのが常識です。ところがたまたまこれは中小企業者だというような点もあるので、ある程度は了とするところがあるかもしれません。しかし、現実に職を失ってあすから路頭に迷う労働者のことを考えたら、そこらあたりは厳然として言ってもらわなければならぬ点があるのではないかと思うのです。その点私はくどくど申しませんが、問題はきわめて簡単なのでございます。出水があったために人命が損傷せられなかったという不幸中の幸いはあったわけですが、そこらはもう少し小君井さんの意見とともに、今後石炭行政を推進していく上で、鉱山監督局なり石炭局の方でもいろいろやっておられますけれども、わが筑豊炭田においては盗掘はざら、鉱害対策はうまく行われていない。田園まさに荒れなんとする姿なんです。これはこの前合理化法を審議するときも、私は前の讃岐さん——村田さんはかわられたのであれですが、今日讃岐さんがおられたらだいぶとっちめなければならぬところなんです。相当讃岐さんはたんかを切った答弁をされておるわけです。二人の御見解を承わって、できるだけ誠意ある原因の探求をしてもらい、労働者が路頭に迷わないような姿を作ってもらわなければいかぬと思うのです。そういう点、一つ御両所の御見解を述べていただきたいと思います。
○村田政府委員 本件の具体的な問題から若干それると思いますが、ただいま御指摘がございましたように、盗進掘が相当竹われておるので、それに対して今後どういうふうに考えていくかという点につつきましてお答え申し上げます。 まず盗掘、すなわち鉱業法第七条違反の行為でございますが、これは御承知のように昭和三十年ごろから急激にその数を増して参りまして、その後通産局におきまして、限られた予算の中でできるだけの取締りをやって参りましたが、それにもかかわらず、根絶できないという現状にありますことはまことに申しわけなく存じております。大体この盗掘ということはそれ自体法律秩序を破壊する行為であるばかりでなく、これに伴いましていろいろ副作用的な問題、すなわち暴力行為、強迫、火薬の不法所持といったような犯罪行為を惹起いたしますので、治安維持の上からも放置できない問題でございますとともに、鉱山保安上事故発生等いろいろな弊害が多いわけであります。ことに北九州と宇部地区における盗掘は最近非常に組織的つな暴力に類するものが多くなり、またその規模も相当大きくなっております。それでは一体この盗掘行為に対してどういう措置をとっておるかということでございますが、私どもといたしましては第一には警察の御協力を得て盗掘の現場を押えて盗掘者の検挙に努めておりますけれども、これも現在のところ徹底しておりません。しかしながら、最近、特に昨年国会におきましてこの問題についていろいろと御心配をいただいたわけでございますが、それの関係もございまして、特に強力な要請方を警察当局にお願いいたし、最近は非常に協力していただいております。今後もこういう盗掘あるいは進掘行為に対しましては現行法を最大限まで活用いたしまして、不法行為の摘発及び根絶に力を注ぎたい、こう決意いたしておる次第でございます。
○小岩井政府委員 先ほど私が説明申し上げました中で、ちょっと誤解されている点がございますので補足させていただきたいと思います。 最初古生層を掘ったチャンスがあった、こういうふうに申し上げまして、そのとき「しゅっすい」があったというふうに私申し上げましたが、これは「出みず」という意味で、災害の出水という意味ではなかったのでございます。これは一分間に六ないし七立方くらいのわずかなもので、そういう「出みず」という意味で申し上げたのであります。さらに原因につきましては、先ほど御説明いたしましたように、まだ現場が見られませんので私どもの方も的確な断定は下しにくいのであります。ただ、今までいろいろ報告を受けましたうちで、いろいろある事実から大体そういうふうに考えられるという帰納的な綿論を出したわけで、これは決してまたとまったものでもございません。なおこまかい点につきまして監督官が二名ばかり現地に調査に参っておりますのっで、これらの監督官の報告を受けまして最後の断を下したい、かように思っております。
○滝井委員 御承知の通り二十日以上経過いたしてさおります。いつまでも原因に対する断を下さずに不可抗力であるかのごとく、なきがごとく時日を経過することはいたずらに社会不安声作るばかりです。従って、基準局と石炭局なり鉱山監督局なりが十分御相談になって、すみやかに社会不安を起さないような善後措置だけをとっていただく、同時に、この炭坑の二坑が廃止された後における配置転換その他についても、摩擦が起らないよう最善の方法をとっていただくことを要望いたして、一応質問を終ります。
○多賀谷委員 関連して。実は基準局にお願いしたいのですが、こういう坑内災害による休業というような場合、これは鉱山保安局の方でもしもこれが過失であるという認定をしますと刑事罰にかかるわけです。それでなかなかそういう認定はされないのです。そうすると、それがすぐ二十六条にきまして、それでもえらない、賃金請求権がない。こういうことになると非常に労働者は困る。しかもこの二十六条というのはむしろ労働基準法でいいますと、御存じのように一般法よりも形式的には後退した法律でして、民法の五百三十六条の二項と比べて後退をして、むしろ労働者保護に欠けておるじゃないか、こういう立法論からも問題がある。ただあなたの方は、いやそれは訴訟をしなくてももらえるのだ、こういうことで逃げておられますが、これは立法がむしろ悪いのであって、解釈としてはなかなかむずかしい問題がある。そこで五百二十六条の二項の債権者の責めというのとこの使用者の責めというのは範囲が違うのだ、こういう議論もあったということは事実です。ましてや民法の関係でなくて今度は刑事罰の関係になりますとかなり問題があると思うのです。そこで鉱山保安局の方でいわゆる鉱業権者には過失がなかったのだということになりますと、それを即監督署の方ではこれはもう二十六条の休業補償の請求権はないのだ、こういうように解せられますと非常に困るのですが、その点はどういうようにお考えですか。
○堀政府委員 民法五百三十六条と二十六条との関連でございますが、民法五百三十六条にいう「債権者ノ責二帰スヘキ事由」と申しますのは、これは債権者の故意、過失または信義則上これと同一視すべき事由を意味するわけでございますが、二十六条の解釈につきましてはわれわれといたしましてはこれはそれと同じだということではなくて、使用者が最善の努力を尽しておるかどうか、要するに使用者が不可抗力を主張し得ない場合がこれに該当するのであるという工合に民法五百三十六条よりも広く解釈しているわけでございます。また同様に刑法上の問題との関連におきましても、これは鉱山保安法の違反にならないならば二十六条に該当しないということではなしに、われわれとしては鉱山保安法違反かどうかは別といたしましても、果して使用者が最善を尽したかどうかという点に基準を置きまして、事実認定をいたすつもりでございます。そのような考えでいるわけでございます。
○多賀谷委員 私は非常に私が期待する答弁を得たわけでありますが、実はこれはかつて岩屋炭鉱にやはり事件がありました。これは出水のために坑内の就労が不可能になったという事件がありました。そのときはやはり現地の監督署長はあくまで鉱山保安の故意、過失——もちろん故意はないでしょう、過失ということを非常に重点に置かれて、そうして私も現地に参りましたけれども、全然打つ手がなかったということではなかったけれども、むしろ九州の当時の福岡の鉱山保安部の認定書によって判断をされた、こういう非常に遺憾な点があったわけです。今局長から答弁をいただいて、その点は危惧が解消されたようでありますが、どうか一つその点を考慮して扱っていただくように、かようにお願いします。
○森山委員長 本日はこれにて散会いたします。 午後四時三十五分散会