外務委員会 第14号
- 発言数
- 165 件
- 登壇者
- 17 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1958/03/18
会議録
○床次委員長 これより会議を開きます。 本日はまず国連の信託統治に関する件について参考人より意見を聴取することといたします。 本日午前中に御出席下さる予定の参考人は、中央大学教授田村幸策君、愛知大学教授入江啓四郎君、早稲田大学教授一又正雄君、以上三名でございます。 議事に入るに当りまして参考各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は皆様御多忙のところ特に当委員会のために御出店下さいましてまことにありがとうございます。委員長より厚くお礼を申し上げます。 本日の議事の順序について申し上げますと、まず参考人各位からおのおの御意見を開陳していただき、その後に委員から質疑がある予定でありますが、田村参考人は時間の都合がありますので、開陳を済ました後直ちに質疑に入る予定であります。なお御意見の開陳は一人約二十分程度にとどめていただきたいと思います。 念のために申し上げますが、衆議院規則の定むるところによりまして、発言はそのつど委員長の許可を受けることになっておりますので御了承願います。また発言の内容は意見を聞こうとする案件の範囲を越えないようにしていただきたいと存じます。なお参考人は委員に対しましては質疑をすることができないことになっておりますので、その点も御了承願いたいと存じます。 それでは参考人の御意見を聴取することにいたします。田村幸策君。
○田村参考人 御下命になりました事柄が非常に簡単に書いてありますので、どういうことを用意してよろしいのか、実ははっきりしないのでありますが、平生この問題につきまして私がごくささやかな考えを持っておりますところだけを簡単に申し上げさせていただきたいのでございます。 沖縄を日本に返してもらいたいということは、条約を結びます前に日本政府から国民を代表いたしまして覚書の形でアメリカ政府に出してあるのでありまして、今日もなおその立場は一つも変らない、これがわれわれ日本民族の共通の念願であると考えます。またその問題は、条約を受諾するときに吉田首席全権から公式にこれを述べておるのであります。しかし、条約にそのことが書かれておりますので、たとえば奄美大島というような一部分だけを返してもらいましたが、それは条約の改正になるのであります。しかし、条約の改正だからといって四十八カ国全一部の調印国の同意を必要とはしないものと見えまして、奄美大島の場合は、ただアメリカが権利、利益を放棄するという形をとっておりますから、もしわれわれが沖縄に対して何らか、その施政権の一部分もしくはその地域的な一部分でも返してもらうようなことがありとすれば、われわれはそればアメリカのみの同意でできるものである、こう考えられるのであります。 しかし、条約が存立する限りは、条約順守ということは日本国憲法第九十八条に明記してある。これははなはだ名誉ある規定ではないのですが、また世界のどこの国の憲法にもない規定でありますが、日本国が結んだ条約は誠実に守る必要があるということが書いてあります。われわれはこの憲法のでき工合を考えても、条約というものは、結んだ以上は少くとも誠実にこれを守らねばならぬという当時の状況から考えましても、日本は条約を破って侵略戦争を行なったものであるというふうな前提のもとに、この憲法の規定はできておると私どもは解釈しております。そういう意味からいっても、条約がある以上は、それを誠実に守らねばならぬ、こういうふうにも考えておるのであります。 ただしかしこの対日平和条約のうちで、これはその唯一の例外でありますが、憲章の百三条によって、憲章の規定と両立しない加盟国の義務は、他のいかなる条約上の義務といえども、これは憲章の義務が優越するのでありますから、もし対日平和条約の中に、憲章の規定に抵触する、両立しないものがありとすれば、それはもう憲章の規定が優越する。従って今日の問題でございます条約三条の規定の中に、憲章の規定によってアメリカが負うておる義務もしくは日本が負っておる義務と両立しないものがあれば、これは憲章の規定が優越する。 そこで今まで一番大きく問題になりましたのは、われわれの知っておる限りでは憲章七十八条でありまして、例の主権平等の原則によって、独立国となった地域ははずすという規定でありますが、これも大体立法当時の議論が非常にはっきりしておることは記録で明らかになっておりますので、その後われわれの同志でこれをアメリカに訴えたら、アメリカの国務省の意見としてアメリカ政府の解釈が発表されておることも、諸公の御存じのことでありますから私は申しませんが、沖縄の問題は憲章の百七条で規定してあるのだから、この七十八条とは無関係である、ことに七十八条というものは、当時まだ国際的な地位の非常に不明瞭でありましたシリア、レバノンとかあるいはエチオピアとかいうものに関する規定だというようなことに相なっておりるような次第でございます。 それからこれも諸公御存じのことでございますけれども、御記憶を新たにするために申し上げさしていただけば、沖縄をどういうふうに処分するか、沖縄のみならず、旧委任統治地をどういうふうに処分するかという問題は、アメリカでどういう経路をとっておるかということを試みに私限りで調べたものがあるのでありますが、それによりますと、旧委任統治地は、軍部及び議会の非常に強い主張がありまして、これは併合してもらいたいということであったということであります。種本はダレスさんの「戦争と平和」という本であります。もしこれがどうもうまくいかないと、その当時この条約が上院で承認を受け得ないかもわからぬというような心配もあったということであります。ところがこれはそのずっと前に、第一回の国連総会のときに、信託統治理事会が――信託統治理事会の構成は、信託統治を受けた国の者が半数入ることになっておりますが、それがまだ信託統治にならなかったのであります。だれも委任統治地を一向信託統治にしようとしない。それがために非常におくれた。しかも第一回の国連総会のときに、ほかの国連機関は全部でき上ったのでありますが、信託統治理事会だけはでき上らなかったのであります。そこでどうしてもこれを作り上げなければならぬということになったのであります。そのときに、アメリカとしては隗より始めようということでありまして、アメリカ自身が旧南洋委任統治地をどういうようにするか、また第二次大戦の結果、日本から取るべき領土をどういうようにするかということの態度が不明瞭でありまして、それをしなければいけないということに追い詰められた結果、ついに一九四六年十一月六日、すなわちこれは第一回総会の最中でありますが、このときにトルーマン大統領の決裁を経ておるのであります。旧委任統治地は信託統治地にするということと、それから日本から取った――何かクオテーションがありますからそれがはっきりしておりませんが、アメリカが信託統治地にする場所及び旧委任統治地のほか、第二次大戦の結果としてアメリカが責任をとるべきいかなる日本の島々もこれを信託統治下に置く、こういうような決裁をされておるのであります。従っていわゆるエニー・ジャパニーズ・アイランズ、この中に沖縄はおそらく入れてあるものと解釈されるのでありますが、こういうのは信託統治地にするという考えであったということがわかるのであります。 これは四六年でございますが、それから五年たちまして平和条約ができるときには、時勢の変遷もありましたのか、ついに第三条の第二項が入ったのであります。従ってこれはどうもはっきりしていないということは、アメリカの上院のヒヤリングがあるのでありますが、その記録を見ますと、これも御記憶にあると存じますが、スミスという上院議員が、どうも日本が大へんあれをほしがっておるようであるが、一体最終的に条約三条できまったものかどうかということをしきりに心配をしておられるのであります。またあの規定が賢明な規定であったかどうかというようなことをしきりに質問をされておられます。これはもっぱら沖縄のことでありますが、もとより沖縄がアメリカにとって国防上非常に重大であるということはこれを認めるけれども、また一方日本国民全体の幸福、また特に沖縄の住民の幸福のためにもいろいろなことが考えられるのではないか、また考えるのが賢明ではないかというような質問をされておられます。これに対しましてダレスさんが答弁をされておられます。この問題は実はまだ非常に流動的な問題である、むろん国防の問題も非常に重大と考えなければならぬ、そのほかにヒューマン・エレメンツ、ヒューマン・ファクターズというものがあるので、これも考えなければならぬということを言うておられます。 ただこの答弁のうちで一番法律的に重大だと思われますものは、アメリカが信託統治地に持っていかなければならぬ条約上、法律上の義務のないことであるという点のようであります。そういうことをはっきり言っておられるのであります。そういった経過を経て、またそういう当事者の解釈によりますと、ダレスさんの言葉でいえば、三条の一項と二項はオプションでどちらでもいいんだ、信託統治にしようと思えばむろんできるし、また今のままでおろうと思えば今のままでおれるのだ、オプショナルなものである、こういうようなことを言っておられるのであります。そこで、これがあの三条のアメリカ側の解釈と見てよろしいのであろうと思います。 ただこの国連の第一回総会のときの記録を読みますと、南洋委任統治のときですらも、ソ連がいろいろな対価を持ってきて、それと交換に二つのことを要求しておるのであります。その一つは、もしアメリカが南洋の旧委任統治地を今度の信託統治地にしようとするならば、ソ連はそれも承知してやる、しかしながら、ソ連に地中海におけるベースを与えることを条件としてくれ、それさえしてくれれば、また沖縄の問題も認めてやる、こういうようなことを申し出ておるのであります。これは当時国務長官であったバーンズにさっそく相談してみましたら、バーンズは拒否しろということであったので、拒否されたということでありました。そうしてその後いよいよ旧南洋委任統治地を信託統治地にするということを言ったところ、意外にも――意外にもと書いてあります。驚いたことにソ連はこれをヴィトーしなかったということであります。しなかったわけは、もし自分がこれをヴィトーしたならば、おそらくアメリカはあれを直接全部併合してしまうだろう、そういうことをおそれた結果ではないかとダレスさんは想像しておられます。 こういうふうに旧南洋委任統治地を信託統治地にすることすらも、それくらいむずかしいいきさつがあったのですから、沖縄を信託統治にするということになりますと、ソ連がヴィトーをやるということは、当然のことであると考えざるを得ないのであります。従って今日容易にこれを信託統治にしないのは、果してそういうことが主たる原因であるかどうかということは、もとより私の想像する範囲外でありまして、それ以外の理由があるかもしれませんが、その理由のいかんにかかわらず、これからは私の意見でありますが、これは信託統治にしてもらわないで、しばらく今のままで置いておって、そうしてそのまま返してもらうというラインをとっていただきたいというのが、私の年来の主張なのであります。 と申しますのは、私が終戦のすぐその年にこのことを新聞に書きましたら、当時検閲がありましたので全部抹殺されたのであります。これを信託統治にいたしますならば、永遠に日本に返ってこないと思います。信託統治ということは、もし日本が受託するならば、信託者というのは国連になりますので、国連の信託を受けるということになりますと、理論上も日本には戻ってこれなくなる。それよりも今のようなフルーイッドな、流動的な状態にしておいて、そうしてやがて東洋の緊張が解けたときには日本に返してもらいたい、信託統治地にされないのがわれわれにとって非常に有利なことではないか、こういうふうな解釈をしておるのであります。 その他にも、たとえば例の残存主権というものの意義とか、いろいろなことがあるのでありますが、これにも私は意見を持っておりますが、これはあとの諸先生からお話があることと存じますので、私は今のようないきさつだけを申し上げて、私の年来の主張でありますそのままにしておいてあれを返してもらう方向に、一つ進んでいただきたいということを訴えて、私の意見を終らせていただきたいと思います。
○床次委員長 それでは都合によりまして直ちに田村参考人に対する質疑を許します。松本君。
○松本(七)委員 二、三点お伺いしておきたいと思います。質問の要点は、琉球、小笠原を信託統治にすることが、国連憲章の違反にならないかという観点から、次の数点の御見解をお伺いしたい。 その第一点は、憲章七十七条で信託統治制度下に置かれる地域として三つ規定してありますが、このabcの中のどれに該当するとお考えであるかということです。aの「現に委任統治の下にある地域」に該当しないことは明らかですが、bには「第二次世界戦争の結果として敵国から分離される地域」、cには「施政について責任を負う国によって自発的にこの制度の下におかれる地域」となっておりますが、琉球、小笠原は今までの国会における審議の際の外務省条約局の説明によりますと、bに入るという答弁をされております。この「分離」――「ディタッチド」ということに沖縄が該当するかどうかという点が一つの問題点なのであります。この点先生の御意見をお伺いしたい。
○田村参考人 旧国際連盟のときには、今度の戦争の結果として、「主権のもとになくなった地域」という字が使ってあります。「シーズド・ツー・ピー・アンダー・ザ・ソヴェレンティ」、これが今度は「ディタッチド」という字になっておるのであります。前のようなことでありますと、今の御質問の点からいうと大へんはっきりするのでありますが、少し正確に申しますと、連盟規約二十二条だったと思いますが、「シーズド・ツー・ビー・アンダー・ザ・ソヴェレンティ」とあって、地域についてもこれになりますと大へんはっきりいたしますが、今おっしゃったように今度は「デイタッチド」というようなことになると、何が物理的なもので、法律上の観念はどうも入っていないような感じがいたすのであります。それからもう一つは、先ほど読み上げましたトルーマン大統領の一九四六年十一月六日の決裁には「第二次大戦の結果としてアメリカが責任をとるに至った旧委任統治地及びいかなる日本の島々をも信託統治下におく」こういうふうに書いてありますので、これはまた別の言葉を使ってありますが、アメリカがこれを、初めの文句を書いたのはほかの考えは全然ない、やはり今のbという方でございますが、今度の戦争の結果というトルーマンの決裁でも非常にはっきりするのじゃないかというふうに解釈されるのであります。
○松本(七)委員 そうすると先生の御解釈ではbとcと両方というふうにあれでございますか。ディタッチドということから琉球、小笠原も当然このbの規定によって信託制度のもとに置かれても憲章違反ではない、そればかりではなしにCの「施政について責任を負う国によって」云々という、この方にも該当するというのですか。
○田村参考人 そうではございませんので、やはり第二次大戦の結果として敵国から分離されたという条件になっておりますが、トルーマンの決裁によりますと、第二次大戦の結果としてアメリカが責任を負うた日本の島々、こう書いておりますので、この表現はやはり言葉は違っておりますけれども、私はむろんbのみであるというふうに感じております。cは「自発的に」云云で、全然別個な問題でございます。b以外にないのです。これは今おっしゃったようなことでもありますし、以外には求められない、こういうふうにも考えられます。
○松本(七)委員 その点はわかりました。ただアメリカも以前はちょうど日本政府、外務省の解釈と同じように、今のbという説が強かったように私ども承知しておるのですが、最近になってどうも沖縄をbであれするということは無理だというような説が出て、これはやはりcの「施政について責任を負う国によって自発的にこの制度のもとにおかれる地域」ということで、アメリカがその責任を負う国というような解釈が出ておるように聞いておるのですが、アメリカの学者の間にそういう説が事実最近強くなっておるのでございましょうか。この点御存じでしたら一つ……。
○田村参考人 私は寡聞にして読んでいないのでございますが、「自発的」というのは、条約に判をついたのは自発的と見れば自発的とも言えないこともないかもわかりませんが、このできたときの考え方は、それとは全然別個なように理解しております、このcの考え方は……。
○松本(七)委員 次は七十八条の規定、国際連合加盟国となった地域、この「加盟国となった地域」の解釈ですが、この「地域」は、地域全体が一国として国連の加盟国となった場合に限定されるのか、それともその地域の一部が、沖縄なら沖縄が問題になっておるが、それが属する、つまり潜在主権を持っておる日本が国連加盟国になった場合にも、この七十八条に該当するものかどうか。これは私どもの承知しておるところでは、ケルゼンなんかもやはり一部が――つまり日本が国連に加盟すればやはりその一部である沖縄、小笠原も当然信託統治の対象からはずされるものだ、こういう解釈をしておるように聞いておるのですが、そういう意味からもこの点はきわめて明確にしておかなければならぬ規定ではなかろうかと思いますので、先生の御意見をお伺いしておきたいと思います。
○田村参考人 私どもは今の前の方のお考えのように解釈しております。国全体というふうに……。と申しますのは、先ほどちょっと触れました解釈の基礎は、この立法のときの状況なんでございます。必ずしも立法のときの状況が永久に解釈を決定するものとは考えられないのでありまして、むろんできた以上ば自由に客観的に解釈できるのでありますけれども、どうもできたときには何かレパノンとシリアを、フランスがまだあそこはおれの委任統治地だとがんばっておったために、しかも二つの国はサンフランシスコに呼ばれて判までつかされておる、そういうので非常にあいまいな点を排除するために、この七十八条が設けられたというふうに多くの学者も申しております。それだけの問題であって、今のようなある一部分をどうこう、こういうのにはこの七十八条は入らないのじゃないかと思うのであります。と申しますのは先刻御指摘になりましたcでございますね。これなんかも、たとえばある国が、自分の領土のうちの一部分をそこだけ引き離して信託統治にしようと、これからする国があったとすればそれは差しつかえない、こういうように考えられます。これは同じ「地域」という字を使っておりますが、そういうことが考えられるのじゃないかというふうに考えます。
○松本(七)委員 これは多少政治的考慮が入って参りますけれども、かりに日本としてこの七十八条を解釈して、そしてできるだけ有利に主張しようとする場合、当然日本の国の利益という立場から、できるだけ日本に有利なように解釈して当るのが当然だと思うのです。そういう場合にケルゼン流に解釈して、沖縄は、日本が国連に加盟したことによって、当然この七十八条をもって信託統治の対象から除外できるのだという主張をする場合、その根拠に使うのには非常に無理があるとお考えでしょうか。これは純粋な法律的な解釈論でなしに、多少政治的考慮が入りますから、はなはだ答弁が御無理かもしれませんけれども、そういうふうな日本の立場を有利に展開するための一つの論拠として使う場合にも今の解釈が無理だ、絶対にこれはそこまでの解釈はできないものだというふうに厳密に御理解されておるのでしょうか。
○田村参考人 できればそういうふうに一つ……。むろん立法の当時はそういう考えでありましても、そういうことができるように解釈されることが非常に望ましいのであります。また何もアメリカの解釈にわれわれがすぐそのまま支配されなければならぬということもあり得ないのでありますが、これは御記憶でもありましょうが、私どもの同志が質問したのに対して、答えは対日平和条約第三条は、国連憲章の百七条に該当するものであるから――百七条と申しますのは、「この憲章のいかなる規定も、第二次世界戦争中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行務について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない。」この規定に該当するので、沖縄の問題には適用されないというような解釈をしておるのでありますが、これをもし破るのならば、この主張から破って、この方面を攻撃することが必要な点ではないかとも考えます。今おっしゃったような点も攻めると同時に――どうも私どもは今まで書物にすっかりとらわれてしまっておりますので、七十八条というものは学生にも長い間そういうことを言って教えているものですから、自分がそれの捕虜になっておると思いますので、あるいは公正でないかもしれませんが、これを攻撃するのには、今御指摘になったような点も一つの武器に使い得るとしても、他に百七条でできたのだということをやはり破る必要があるのじゃないか、こういうふうに考えております。
○松本(七)委員 そこで結局日本にとって最大の問題は、今の百七条の問題になってくると思うのです。この百七条を破るのには、事情変更の原則を持っていく以外に方法はないのでございましょうか、またこれをもってこれを破る可能性があるとお考えでございましょうか。
○田村参考人 大へんむずかしい点を含んでおりますので事情変更でいけるかどうか、非常にむずかしいのでありますが、大体法と政治の接触点というものは、国内政治よりも国際政治と国際法との間では非常にむずかしいのでございまして、どこまでが法で、どこまでが政治でいけるか、非常に困難なのでありますが、これはむしろ法の問題よりも政治上の勢いでこれをこわしていく方がいいのじゃないかというような印象を持っておる次第でございます。
○床次委員長 並木君。あとまだ質疑がありますから、簡潔にお願いしたい。
○並木委員 先生のお考えで、現在における信託統治という観念でございますが、こういうものもだんだんに変遷はしてきておると思うのです。私お伺いしたいのは、いかなる国も領土的野心はないのだという宣言が行われている今日、信託統治というものは、やはり一種の共有権あるいは入会権というようなものに当るのじゃなかろうか。そうだとすれば名前を変えた体裁のいい、独占ではないけれども、各国がよその国の領土を利用する一種の領土権の取得になるのじゃないかというふうに考えられないこともないのでございます。それで先ほどのお言葉の中にも、アメリカが責任を負っておるがために、日本の島々を信託統治にするのだということがございましたが、ただそれだけでなく、実質的の理由というものは、果してアメリカがそういうものをしょい込んできてアメリカの荷厄介になるのか、それともアメリカの大きな利益になるのか、一体信託統治というものは、現代の解釈においては、統治をする者の利用することが目的なのか、あるいはほかに何らかの別の問題があるのか、先生は現代における意義においてどういうふうにこれを御解釈になりますか、先生の御意見をお伺いしておきたいと思います。
○田村参考人 大へんむずかしい問題でございますが、こういう制度の性格は、今まで戦勝の結果領土の処分について非常に困難な問題に逢着したときに案出した一つの方法でございまして、御記憶でもありましょうが、山東問題がヴェルサイユ会議で非常に紛糾した、そのときロイド・ジョージが山東を委任統治領にしようではないかということを言い出したのであります。これはいろいろな国の間で、日支の間、ことに日本とアメリカとの間に非常な意見の衝突があった。そのときに日本政府は委任統治という制度は、野蛮国あるいは半開の民族を自治に進め、もしくは独立せしめるための一つの過程にしておく、そして先進国が後見人になって育て上げる一つの制度であるので、こういう山東なんという四千年の文化を持ったところにしくのは筋違いだというので一蹴いたしまして、幸いにして引っ込めてくれたのでありますが、この問題はできた当時はそういう問題になっております。そのうちのABCとなっておりますが、Cのごときはほとんど自分の領土と同じようなものであります。Bでも非常に独占的なものでありまして、ことに通商なんというのは、門戸開放の規定がないほどで、今おっしゃったような性格のものでございましたが、今度のものは少くとも文字の上では、憲章の上では非常に進歩しておりまして、前とは違って、主たる目的は住民の幸福を増進するという点に置かれている。少くとも文字の上ではそういうふうになっておりますので、性格はむしろ先生の御解釈と逆に、前は植民地的な色が非常に濃かったのでありますが、今度は植民地の色を抹殺しようとかかっております。これはアメリカがかって自分が植民地で悩んだのでありますから、植民地に対する制度というものには非常に敏感でありまして、特に今度は憲章の中に二つの宣言が入ったのも、そういうわけであったというふうに私は理解しております。 〔委員長退席、山本(利)委員長代理着席〕
○並木委員 そういたしますと、最近の沖縄における選挙の結果などは、信託統治に対しては非常な反撃を示しております。現にアメリカの施政権に対しても反撃を加えていると思うのです。ですから住民の幸福のためであるというならば、沖縄の住民は日本の方へ復帰したいというのが大勢であるということがわかってきた。それで今の先生の信託統治に対する御解釈によれば、沖縄が日本に返還される日が近くなりつつあるのだ、一里塚であるということが断定できると思いますが、いかがでございましょうか。
○田村参考人 全く御同感でありまして、第一沖縄というような文化を持ったところに信託統治を置くということは、私は非常に適当でないと思います。ヴェルサイユ条約のときにはドイツ自体ですらも信託統治を一部分はしこうというような意見もあったくらいでありますけれども、それは全然意味が違うことになっておりまして、ただ領土処分に困ってしまったからで、山東と同じような思想であったのでありますが、それで信託統治、委任統治そのものの制度はあくまでも後進国でありまして、そういう意味から琉球そのものを信託統治にするということは、あれだけの文化を持っているところでは、そもそも私は非常に無理だと思います。それがアメリカが今までぐずぐずしている理由の一つであると思います。それでありますから、私どもはなるべく条約の範囲内において合法的な運動を続けまして、住民も大いに自治を主張されることも非常にけっこうでありますし、やがてわれわれのふところに帰ってくるためには、またしかしこれは政府もそういうことを考えてもらわなければいけないと思うのでありますが、しかし今の情勢では何分にも緊張が激しいので、特に台湾海峡なんというのは、ヨーロッパの東西ドイツの国境よりも緊張が激しいのでありまして、あの緊張が解けるまでは、まだなかなかそういう時期ではないのではないか、こういうふうに私は理解しておるのであります。
○並木委員 それではもう一点お伺いいたしますが、先ほど先生のお言葉の中に、このままにしておいて、そうして信託統治に持っていかない方がいい。やがて来たる日に返してもらうのが一番適策である、そういう御意見でしたが、私もほんとうにそう思います。ただ一日もそれが早からんことを望むわけでございますが、それなるがゆえに私ども国会で、例の日米安保条約の中に沖縄を含めて、そして行政協定によって、もしアメリカがまだあそこに基地などが必要であるとするならば、その中でできないことはないのでありますから、そうすれば現在の東洋の情勢が緩和してくればという先生のお言葉でございましたが、緩和しなくても現在でもすぐわれわれは返してもらえる余地があるのではないか、こういうふうに考えるのです。つまり返してもらって日米安保条約を適用させる。沖縄に行政協定によってアメリカが基地を設けて今のままでいけばいけないことはないと思いますが、それについてはどうお考えになりますか。
○田村参考人 ちょっと私は困難があるんじゃないかと思います。沖縄におきまするインポータンスというものは、われわれが考えている以上にストラテジエティカル・バリューというものを終戦になるずっと前から考えておるのでありまして、特に今日はそういうこともないのでありますが、初めは日本の軍国主義の復活をおそれまして、ひとりアメリカのみならず、あるいはフィリピンとか、豪州というようなものが、あそこに日本全体の火の見やぐらみたいなものを――日本が再び軍国主義になったら、あそこでばっさりいこうというようなやぐらにしておいてくれという要望が新聞などに現われたくらいでありまして、ある意味から言うと、あのときには今日のようなまだ東西の緊張がはっきりしないときでございましたから、むしろ日本に対する監視のために、あそこにアメリカがいすわってもらいたいというような要望が、他の同盟国からあったくらいでございます。今日はそういうことはアメリカは考えないので、全然百パーセント戦略の目的であるというふうに考えております。その考え方は、アメリカ本土に次ぐような重要性をここに持っておるのでございますから、またその軍事基地が自由世界を守る一つの大きなとりでと彼らは考えておるのを、それを傷つけられるような可能性があるような問題は、なかなか聞き入れないであろうというのが私の観測でございます。
○山本(利)委員長代理 大西正道君。
○大西委員 私は沖縄を早く返してもらいたい、そういう気持でこれまでいろいろこの委員会でしゃべってきたのですが、政府のそれに対する答えを聞きますと、私の希望がなかなか実現しそうもないので、それでこの間も、それじゃなぜ沖縄を信託統治にするのだ、国連憲章のどれに該当してそういうふうなことが成り立つのだろうか、こういう話をしたのです。そういたしましたら、今あなたもお答えになりましたように、七十七条のb項だ、こういうふうに条約局長は答えているわけです。それで今あなたのお話では、やはり自分もb項に該当しているものだと思う、こういうお答えでございました。その「分離」という言葉ですけれども、この言葉が、憲章を批准した場合のトルーマンの決裁が何だかというようなことのお話がございましたが、そういういきさつというものは私よくわかりましたが、しかし原語でいう「ディタッチ」、翻訳されております「分離」という言葉を、私どもは、そういうある国の一つの場合だけではなしに、国際的な通念、常識というような面から正直にこれを解釈して、そうして果してこの平和条約の第三条は国連憲章に違反していないか、こういう結論を実はしているのだという結論を出したいのです。そういう意味からもう一回伺いますけれども、沖縄のような潜在主権をなお日本が持っている、そういうところにこの分離という言葉が使われる、また使われたということが今日までどこかでございますか。
○田村参考人 私も志を全く同じゅうするものでございますが、むしろ先生、ディタッチという字を使った方が、この前の旧国際連盟規約の二十二条のように「シーズド・ツー・ピー・アンダー・ザ・ソヴェレンティ」というような、主権下にあることがなくなったというような字を使われておったら、これこそもう潜在主権も何もなくなってしまうのでありまして、非常な不利なんでございますが、幸いに今のディダッチというような字が、先ほども申し上げたようにリーガル・ターム、これはあとでまた御研究になっている方がございますが、私は今まであまり見つけないのであります。このディダツチというような字は、特にリーガル・タームではなくて、どうも物理的に着物を引きはがすようなことで、そういう字を特に使ったんじゃないかと考えられるのであります。その辺の記録は何も手に入っておりませんが、なるほど今の主権下にあることをやまったという字がないというので特にこういう字を使ったというところに、そういう意味の主権というものが非常にはっきり日本に残存しているというようなことに解釈されるということになりますれば、非常に仕合せでもありますが、今のそれとこれが有利に解釈され得るような条約上の先例というものは、恥かしいことでありますが、まだ発見しておりません。
○大西委員 そうしますと、先生の最終の結論は、沖縄のああいう潜在主権があるものでも、この分離という言葉で処理できるのだ、こういうふうにお考えなんですか。
○田村参考人 大へんむずかしい問題でありますが、今のようにもし先例がございますれば、そういうものを利用し得ると思いますが、そうでなければ、今私の申し上げました二十二条のように、主権を離れたと書かなかったからこれは違反だ、こういうふうになるのでありますが、主権を離れたと書かなかったから、それと三条が抵触するというのは、その関連が私にはちょっとむずかしいのでありますが……。
○大西委員 もう一つは、前に「第二次世界戦争の結果として、敵国から分離される地域。」その前の方の「第二次世界戦争の結果として」という言葉ですけれども、私は沖縄は、第二次世界戦争の結果としての処理は、大体平和条約で終っておると思うのです。その結果沖縄は分離されたのではないのです。そうしてこれが信託統治にもしされるという場合には、ここのところが平和条約では、米国が信託統治にするという提案をやる場合に日本はそれに同意をする、反対をしないというだけのことであって、第二次世界戦争の結果は分離されていないと私は思うのですが、どうもここに問題があるように思うのですが、いかがでしょうか。
○田村参考人 先ほども申し上げましたように、法と政治というものがなかなか国際間でははっきりしないので、ちょっと先生の第二次大戦の結果――時間的には少しありますけれども、やはり結果であるのじゃないかと私は見ております。この分離されたということは、戦争がなかったら分離されないのじゃないか。時間はなるほど平和条約ができた間には六年ほどありますが、戦争の結果と見るよりほかないと思います。
○大西委員 それじゃこれはまたほかの先生にお伺いします。今あなたの言われました、今のままで信託統治にしないで返してもらいたい、こういうことですけれども、私どもは、そういう国際情勢の緊張が緩和されれば返す、こう言ってもいいのですけれども、政治的にはそういうことの見通しが非常に困難だから、それなればこういう法的な根拠でもって一つ話を進めていきたい、こういうふうに考えておるのです。そこでこの信託統治の提案をするまで今のような暫定的な過渡的な措置をする、こう言っておるのですが、これがあまりにも長過ぎます。しかも今後何年間これを続けていったところで、それを拘束するものは何もないのです。私はそういうところから考えまして、今先生の言うようなお考えということも、けっこうなことではあるけれども、なかなかその実現というものはむずかしいと思うのです。こういう場合にやはり法の解釈の上からどうもそれは納得ができないというところから話を進めなければならぬ。こういうように思うのですけれども、先生のお考えでは、この過渡的な暫定的な措置に期限がついてないのに、どうしてもこれを言われるように返してもらうという何かの一つの手段、名案というものをお持ちですか。
○田村参考人 大へんポリティックスに関する問題ですが、条約上の義務としては、アメリカは沖縄を信託統治に付する義務はない。そして現状のままでいくか、信託統治に付するか、どちらを選択するかはアメリカの自由であると、そうダレスさんは答弁しております。それからいつまでやっておいていいか、ここでもって信託統治という場合には、戦略的な信託統治にしなければ向うは意味がないのでありますから、戦略的な信託統治にすればソ連がヴィトーをやることは明らかでありまして、それは実現できない。それを一つ見越してこっちでうんと押してみるかどうか、そうすれば向うはどっちかに決定せなければならぬだろう。これはアメリカでも十分承知しておることだろうと思いますが、またこれは政府がおきめになることでありましょうが、全般の情報を持っていないわれわれには何とも申し上げられません。しかしばっさり信託統治にでもされたら困ります。これはたびたび申し上げますように、日本にとって最も不利益で、永世に日本に返って参りませんので、今の段階でどうしても食いとめて、その範囲内で日本に返る工作をする方が私は有利であって、われわれよりもより世界の情勢に通じた者が、これを一つ今のような方針でアメリカを追い詰めてみるかという策を政府がとれば、これはまた別でございますが、そうでない限り、合法的な条約の許す範囲内でいろいろな工作を施してみてもらう。これはむろん条約の修正になることでありますから、もし私の今の考えで、あの第二項の条項のもとで返してもらうというなら条約の修正になるのでありますが、今の大西先生のようなお考えであれば、むしろ条約の修正ではなくて、条約そのものが無効だということになるのでございまして、それが争われる上におきましても、いろいろな手続が要るだろうと思います。どちらが利益でありますかは、むしろ諸先生の御決定に待つことでありますが、私としてはどうしても信託統治にこれをしたらいけない。今の状況ではソ連が必ずヴィトーをやることはかなり明らかでありますが、それがせめてもの一つの利益であるというふうな印象を持っておる次第でございます。
○大西委員 私は沖縄のああいう問題を考えますと、信託統治になれば、国連のいろいろな監督、管理というようなこともありますし、あながちそれが悪いとも言えないと思うし、あるいは信託統治にしても、それは無期限とは限ってないのでありましょう。期限を切って信託統治にするということも、これは可能なことでありますね。そうじゃないのでしょうか。
○田村参考人 今まではそういう例はないのではございませんですか。
○大西委員 外国には例がありますね。イタリアのような場合には……。
○田村参考人 あれは特殊の場合でございまして、独立の期限がきまっておるものでございますから……。
○大西委員 そういうことはあると思うのですが、いかがでしょう。
○田村参考人 いや、あそこに入れたら、われわれは全然発言権がなくなり、信託統治になれば自由というものは全然なくなる。いわんや戦略的でなくても、日本がそのときに口をきくのは、エチオピアとかコロンビアとかサルバドルが口をきくと同じようにしかきけなくなるのでありますから、それは非常な不利益であります。全く第三者になってしまう、他人になってしまう。それよりはあくまで日本の残存主権を残しておかなければならぬと思う。そしてふところに呼び返すというのでないと、あれを離してしまったら、それきりであります。
○大西委員 あなたのお話にもありましたように、これは国連に提案しますと、当然安保理事会でソ連が拒否権を発動するだろうということをおっしゃいましたね。そういたしますと、第三条によりまして国連の信託統治にすることができないということになりますと、当然今のような形で米国が統治をしているということは許されなくなると私は思うのです。ですからむしろ戦略統治だということであれば、安保理事会にかかる。安保理事会でソ連が拒否権を使うということが明らかになれば、むしろそういう方向に促進していって、それが国連の信託統治にならぬということになれば、それまでの今日の段階というものは、これはすみやかに解消していくべきだ、こういう論法の方が、手順の方が、私は沖縄を返すのには、最も合理的な手早い方法だと思いますが、いかがでしょう。
○田村参考人 あの条約の三条には、アメリカがやればというのでございますね、アメリカが……。
○大西委員 学者の考えとして、そういうこともこの前言われたし、今のままで信託統治にしないで、返してもらうようにした方がいいという意見だと言われたから、それについての見解を聞いておるわけです。
○田村参考人 アメリカのダレスさんの言うように、三条にありますように、アメリカが国連に持っていったら日本は同意する、こういうことになっておりますから、持っていくか持っていかぬかの権利は、向うにあります。それが、なぜ持っていかぬかという理由は、ちょっと外からは問えないのじゃないでしょうか。われわれ条約上の権利がないのじゃないでしりょうか。なぜお前は持っていかないのか、持っていかなければ、うしろの方で、前の方は無効になるんだ、そう言う権利はこっちにはないのじゃないでしょうか。そういうような感じを持っております。
○並木委員 関連して。これはほんとうの法律上の問題なんですが、先ほど大西さんからお尋ねの、例の第七十七条b項でございます。「第二次世界戦争の結果として、敵国から分離される地域。」こういうことが、平和条約の結果として、分離され、信託統治に持っていかれるような形になったのじゃないかという大西さんの御質問だったのですが、これは先生の言葉をちょっと聞き漏らしたのですが、私はそれを聞いていまして、法律上ではやはりそうじゃないのでしょうか。つまりこの条文にも、分離されたとも書いてございません。文章からいって、分離される地域というふうに、過去形でなく、現在または未来形で書いてある点から申しまして、当然分離される地域にのみ信託統治というものは行われるのだというのが、法律上のb項の解釈ではなかろうかと思うのです。 〔山本(利)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、明らかに沖縄の場合には、平和条約第三条によって、敗戦の結果、平和条約によって信託統治に持っていかれる道が開けたんだということになりますと、分離という事実がある上に信託統治の議論が出てきたわけじゃなくて、平和条約によって一挙に信託統治の道が開けた、こう解釈をせざるを得ないのです。これはほんとうの法律上――また今後いろいろの平和条約の解釈については、国連等の関係で同じようなケースが起ると思いますので、この際はっきりそれを答弁していただきたいと思います。
○田村参考人 これができた当時は、まだどこの平和条約もできておりません。第二次大戦の結果分離されたという地域がないのでありまして、これからされるのであります。これができたときにどこも――そういう関係でこれはされると書いたのだろうと思います。
○並木委員 あと、後段の点です。
○田村参考人 後段はどういうことでございましたか。
○並木委員 後段は、つまりほかのところでは主権を、権利を放棄したとかなんとかいう条文がございます、台湾とかそういうようなところでは。沖縄に関しては、権利とか請求権とかなんとかを放棄したということがないわけなんです。だから、どこで分離が行われるか。分離という現象が平和条約にないのじゃないか。そういうことがなくて、いきなり信託統治に持っていったのじゃないかというのが、この平和条約第三条の解釈なのです。そうだとすると、分離という事実なくして、基礎なくして信託統治へ持っていったのじゃないか。それならば、沖縄について先生がb項が適用するのだという、そのb項が適用しないのじゃないかという疑問なんです。いかがでしょうか。
○田村参考人 なるほど三条には、分離とか権利を譲渡するとか、何にも書いてございませんから、分離じゃないのだろう、こういうことなんでございましょう。どうも分離ということが今のような主権の移動でありますとか、主権の譲渡、そういうことを意味するならば、それはそういうことも言えましょうが、そうでなくて、分離というような法律的にも非常にばく然たる言葉でございます。内容の全然わからない言葉でありますが、そういう言葉が使ってあるのが、またこの起草者の非常な手腕でありますし、また三条でそれをはっきりしなかったというのが、われわれにとって非常に利益でもあります。ところが、はっきり三条が今の台湾とかのようにやられたらそれっきりでございますけれども、幸いにあそこで、今ダレスさんの言葉でいわゆるフルーイッドな、流動的な言葉になっているのが、むしろわれわれには有利じゃないか、こういうふうにも考えられるのであります。だから的確にでございますね、あるいは譲渡とか放棄とかいうような文字がないのが非常に正しいのであって、あれがあったら、どっちかあったら、それはもうどうすることもできない。むしろこの信託統治にすることに同意するということは、ある意味から言えば、法律上のステータスがはっきりしております。信託統治になれば地位が明らかなんでありますから、大体今日の学説では、たとえば国籍の問題でありますとか、主権の問題とか――ほかにも例があるのですが、明らかになっております。それに右ならえでありますから、明らかなんですね。それでありますから、第二次大戦の結果として引き離されるべきものが非常に不明瞭であるということは、言えないのでございますね。
○床次委員長 それでは、あと参考人の方も残っておりますし、質疑もありますから、並木君の御質問はこれで打ち切っていただいて、田村参考人に対してはこれで終りたいと思います。どうも田村さん、ありがとうございました。
○穗積委員 議事進行について。私、あとの先生に質問が二、三点あって、通告しておきましたが、それとは別に、議事進行について発言しておきたい。というのは、この重要な沖縄の信託統治問題を、学者と議員だけがディスカッションして勉強すること自身、意味がありますけれども、今日の情勢並びに世論から見て、沖縄問題に対して一番怯懦であり、不勉強であり、認識不足なのが政府ですから、政府がここに出席しておらぬということは、きょうのディスカッションの効果を半減するものだと私は思う。従って、外務大臣、何しているか知らぬ、おそらく公務で来ておらぬのだと思うが、そうであるならば政務次官、どちらか、それから担当局長、これはぜひ出席するように、委員長から御手配を願いたいと思うのです。いかがでしょうか。
○床次委員長 政府の方には、先ほど連絡してあるのでございますが、参議院の方で外務委員会があるもので、そのため差しつかえがあるので来られないようです。
○穗積委員 分れたらいいじゃないですか。
○床次委員長 その点、できるだけ……。
○穗積委員 できるだけじゃない。即刻出席するようにしてもらいたい。先ほどの委員の質問の中には、単なる法律論でなくして、政治的判断を求める議論もあるわけです。そういうのは、特に外務省の見解――外務省の見解は求めなくても、学者または議員の政治的判断を、外務省に聞かしておく必要がある。そういう意味で、委員長の責任においてぜひお呼び下さい。委員会の意味がなくなりますよ、そういうことをしたら……。
○大西委員 今のちょっと不明確な点が一点あるので……。
○床次委員長 田村さんにですか。――だいぶ時間が……。
○大西委員 簡単ですから――前の続きの不明確な点を……。
○床次委員長 許しますか――田村さん、大へん恐縮ですが、もう一度……。ほかの参考人の方もずっとお待ちになっておりますから、その点、一つ簡潔に……。
○大西委員 この第二次世界戦争の結果敵国から分離される地域という、この第二次世界大戦の結果として、沖縄が分離されるのじゃないのです。あの平和条約では、そういう信託統治にする提案をしたときに、日本はそれに対して賛成をすると言っているだけであって、これは分離されるのじゃないのです。
○床次委員長 御意見ですか。
○大西委員 ですから、先生のおっしゃることは、どうも私にはわからぬのです。
○床次委員長 御質疑をお願いしたい。
○大西委員 ですから、私は第二次世界戦争の結果として分離をされるものではない、こういうように思いますが、いかがですか。
○田村参考人 答弁ということはできませんですが、非常なアンアリスティックですね。ツー・マッチ、あまりに法律的で非現実的であるように考えます。非常に法律的であるかもわかりませんが、非常に非現実的である、こういうふうに思います。
○大西委員 私はそういうことは予想ないし予定されておると思うのです。しかしこれを分離されるという表現から見ますと、それは予想されますけれども、分離ではないと思うのですが……。
○田村参考人 分離されるという文字は、しかし今申し上げましたようにまだできておりませんでしたから、これから分離されるのですね。戦争が済んで、まだ平和条約が一つもできておりませんでしたから、これは法律的には分離されるかされないかまだ全然わからない。これから先なんですから、むろんそのときに書いた憲章というものは、そう書かれざるを得ないだろうと思うのです。
○床次委員長 その点はもう御意見のようですからこれで打ち切っていただきたいと思います。 それでは大へん恐縮でございますが、愛知大学の入江啓四郎参考人にお願いいたします。入江君。
○入江参考人 問題点を法的の立場から提起しまして私の見解を述べさせていただきます。 第一点は信託統治制度を実施する義務がアメリカにあるかどうかということであります。それを講和条約と国連憲章の規定に照らしまして解釈しますと、まず講和条約の規定でありますが、現在アメリカが行使しております施政権は、過渡的、暫定的なものでありまして、信託統治に付することを予想しているのでありますけれども、しかし、かといって信託統治に付さなければならぬという絶対的な義務を課したものではないと考えます。従って施政権の部分的または全面的な解消は条約の規定の違反ではない、必ずしも条約を改正しなくてもアメリカは権利を放棄することができる。しかしながら信託統治に付するというのが終局の落ちつき先として掲げられておるのでありますから、暫定的な形のものを永久化することはできないと解釈します。信託統治に付しない以上は、暫定施政権をも終了しなければならぬ、こう考えます。 次に国連憲章でありますが、憲章には一方では信託統治に置かなければならぬとしておりますと同時に、他方ではそのために協定を結ぶ規定をしてあり、それが義務的かそれとも自発的かの解釈問題があります。特に憲章第八十条、第二項は、列挙された三つの種類の地域について、遅滞なく信託統治協定を結ばなければならぬと規定しております。ところが国際司法裁判所は、かつて憲章第七十五条、第七十七条、第七十九条を通じて、信託統治協定を結ぶとある以上、すべて自発的なものであって、義務的ではないと判定しました。しかしこの判定は全裁判官の一致によったものではなくて、八対六、辛うじての多数意見でありますが、そこには異論もあったことがわかるのであります。全然施政権者の自由意思ということでは第八十条第二項の規定は無意味となると思います。かつ憲章は直接関係国間の協定といっておりますけれども、実際には施政権者が協定案を作成しまして、利害関係国に情報として送付する程度でありまして、それを安全保障理事会なり総会なりが承認したのが今までの取扱いであります。従って本来の意味での関係国間の協定というものはないのであります。厳格な意味での協定上の合意というようなことは問題にならないのでありますから、ますます施政権者は合意不成立の理由によって協定案を国連に提出することを怠ることはできないと考えます。 ここから憲章第八十条第二項と講和条約の第三条を関連させて解釈してますと、日本はあらかじめアメリカの提出すべき信託統治協定案に同意を与えたのでありますから、アメリカの一存によって協定案は提出され得るわけであります。アメリカは国連加盟国として第八十条第二項の規定により、すみやかに協定案を提出すべきであったと考えます。しかしそのことは信託統治に付する以上は、すみやかに協定案を提出しなければならないということでございまして、信託統治に付することなく、過渡的な施政権を解消して、沖縄その他の地域を日本の統治に復帰させることは、講和条約も憲章の規定も禁じてはいないと考えます。むしろ信託統治制度の本旨に見て、沖縄などにこれを適用するのは妥当ではありませんから、これを断念する方が一そう憲章の規定の信託統治の本旨に合致するかと思います。いずれにしましても信託統治に付することなく、現在過渡的な施政方式を継続することは、講和条約の規定にも反し、憲章第八十条第二項の規定に照らしても妥当ではないと考えます。これが信託統治に付する義務があるかどうかの観点からの私の考えであります。 第二点としまして信託統治に付する権利があるかどうか、アメリカにはその権利が現在もあるかどうか、講和条約は過渡的施政方式なりあるいは信託統治に付するなりについて、別段期間を定めておりません。そこからして現在アメリカが信託統治にこれらの地域を付する権利がすでに消滅したと解釈する法的根拠はないように思われます。しかし他方過渡的方式を長期化することも許されないのでありますから、そこで日本としては条約規定の実施もしくは解釈上アメリカ政府に対して、過渡的方式をいつまで続けるのか、信託統治に付する意思があるのかないのかということを正式に照会することができるかと思います。アメリカのそれに対する回答がないか、もしくは回答について日本として異議がある場合は、終局的には条約の解釈問題としまして、条約の規定する紛争解決手段、すなわち国際司法裁判所に付託することもできるかと思います。ただし、このようにアメリカの意向を正式に照会するとか国際司法裁判所に付託するとかいうことは、法理論として言っておるのでありまして、それが政治的に妥当であるかどうかは別問題であります。 第三点としまして、信託統治に付する場合に日本の発言権はどうかということであります。あるいは信託統治に付した後に日本の発言権はどうかということであります。まず沖縄などは第七十七条の規定する三種類の地域のうち、第一段階として敵国から離れた分離地域であり、第二段階として講和条約発効後はアメリカがその施政について責任を負う地域であると私は解釈します。分離の問題については先ほど来いろいろ御意見を伺っておりますけれども、私の調べましたところによれば、分離という意味は従来の条約の用例といたしまして、その地域が領土権が離れる、割譲される場合に分離という言葉を使っております。一八七八年のロシヤ・トルコ戦争後の事実上の講和処理であるベルリン条約の規定に、分離ということを領土権を離れた、これは条約の規定の内容からしまして、領土の割譲を意味することは一点の疑いもありません。その次に第一次世界戦争後のトルコとの講和条約であるローザンヌ条約でも、三、四カ所やはり領土割譲の意味で分離という言葉を使っております。日本のサンフランシスコ講和条約第四条Cでもやはり分離という言葉を使っております。しかしながらこの第四条の分離というのはいささか混乱がありまして、日本の管理統制もしくは支配から除かれる領域と分離される領域というものを同意語に置いておるように思われるのであります。そうしますと、沖縄のように管理しているところも、単に施政権を行なっておるところも分離するかという問題になりますけれども、サンフランシスコ講和条約のテキストは英語だけではなしにフランス語もその一つであります。フランス語ではきわめて明瞭にしておりまして、管理とか支配とかいうそういうあいまいな表現を避けて、すべて領土分離に該当する場合は全部分離という言葉を使っております。すなわち日本の主権に属してはいたけれども、条約によりその主権から分離された地域という表現を使っております。海底電線を日本領域と日本から離れる地域とにあるものは折半してそれぞれ分けるという場合に、その海底電線は領土的に日本から分離される場合の海底電線をさすのでありまして、小笠原のように、軍に施政権をアメリカが行使するにつきまして広い意味の行政分離という場合には、領土的な分離を意味しない。そうしますと、講和条約第四条C項は英語や日本語によれば若干の混乱がありますけれども、他のテキストによって見るというと、ここに使われている分離はやはり領土的分離の意味に解釈しております。それともう一つは、国連憲章の第七十七条に列挙された三つの種類の地域について、サンフランシスコ憲章制定会議当時の委員の報告によりましても、やはり分離というのが領土的分離をさしていると解釈されます。新たに征服し、現存国家から取得した領域というのは、やはり領土的分離をさすものと見なければなりません。 そこで、それならば講和条約第三条にいう地域は、国連憲章にいう第二次世界戦争の結果として敵国から分離した地域には当らないではないかという先ほどの御意見ももっともと思います。けれども、これは講和条約は憲章第百七条にいう特別な措置でありまして、憲章の規定を若干変更して別な分離の意味を打ち立てたと解釈しても無理ではないと思います。すなわち、一応第二次世界戦争中の敵国から分離する地域でありますけれども、講和条約の特殊の規定の解釈からしまして、それは領土的分離ではなくして、領土権を含むところの残留主権は日本にある、アメリカはただ施設権を取得したものにすぎない、それでもなおかつ第七十七条の第二のカテゴリーの分離地域と解釈する本来の憲章の規定とは違った広い意味での行政分離、そういうものとして認めていいかと思うのであります。でありますからして私たちとしましては、第一段階としてやはり沖縄などの地域は日本から、そういう意味で修正を施した意味での分離された地域でありますが、さて第二段階として、講和条約が発効して後は、アメリカがその施政について責任を負うている地域であります。従って日本は憲章第七十九条にいう直接関係国ではないと思います。しかし同時に、日本は残留主権国としての地位を保有しておるのでありますからして、つまり憲章の規定する本来の意味の完全なる領土的分離ではないのでありますからして、日本は残留主権国として信託統治協定案が提起された場合に、それが講和条約の規定と合致するかどうかについて発言することができるわけであります。講和条約の主要な当事国であるイギリス、アメリカ、日本、その間には完全に一致して、日本が残留主権を保有しておるということでありまし、また特に重要なアメリカでは、上院の見解としましてもあるいは政府の見解としましてもあるいは裁判所の判決でも、日本が残留主権を保持する、あるいは法的主権を保持する、アメリカは事実上の主権を行使するにすぎないということは明確にされておるのであります。そうしますと、信託統治協定案をアメリカが国連に提出することについて、日本はあらかじめ同意を与えておりますけれども、それはあくまでもそういう日本の残留主権国の地位をそこなわないという範囲のことでありますから、たとえば領土、地位の変更とか――といいますのは、信託統治の終局の目的は、自治から独立ということが考えられておりますけれども、この地域を日本から離れて独立に持っていくというようなことは、講和条約の規定に反することでありますし、また住民は日本の国民である、その国籍を変更するような措置は認められないのでございます。これに対してはそういう領土的な変更とか、国民の地位の変更とかいうことまでも含めての白紙委任状ではないのでありますから、日本はその場合に残留主権国としての発言権があると思います。協定が実施された後も、日本は残留主権国として、あるいは国連加盟国として、信託統治の実施について発言ができると思います。そして日本としては終局的には、よし信託統治に付されたとしても、それが日本の統治権に復帰するように主張することができるわけであります。アメリカの上院の議事録を見ましても、沖縄などの地位に触れて、日本は海外帝国――この場合には植民地とか、あるいは本来の日本の領土でなかった地域――日本は海外帝国を失う。しかし琉球諸島は日本の残留主権のもとに残されたが、アメリカを施政権者とする国際連合の信託統治のもとに置かれるというのでありまして、信託統治に付しても日本の残留主権は影響を受けない、こう解釈されるのであります。 最後に、信託統治に付されない場合であります。付されない場合は、一つは国際連合で否決された場合、その否決の意味が、戦略地域としても、非戦略地域としても、いずれにしても信託統治制度を置かないという最終的な否決の意味であるならば、もはや信託統治に付されないのでありますし、講和条約の規定の解釈上、これはアメリカはそれまでの施政権を解消して、その地域に対する日本の統治権を回復しなければならぬ、こう考えます。そういうのでなくして、その次には、信託統治協定に付する意思がない、現在のところはそのように解釈されるのでありますけれども、信託統治に付さないというアメリカの意思をはっきりさせるならば、やはり講和条約の規定上、これまた暫定施政権をも撤消して、日本の統治権下に服させなければならぬ。最後の点は大へん省略いたしましたが、少し急ぐようにという通告がありましたので、これで一応私の意見を申し上げるのをやめます。
○床次委員長 それでは引き続いて次の参考人の一又正雄君にお願いいたします。早大教授の一文正雄君。
○一又参考人 前の二人の先生方からいろいろお話がありましたので、重複するところは避けまして、私の考えていることを一、二述べさせていただきたいと思います。 第一点は、現在のアメリカの沖縄施政の暫定性という問題でありますが、私はただいま入江教授のお説に大体において同説なんでございます。今の分離の問題が非常に出ておったようでございますが、私は若干その点につきましては、非常に意見の相違というのじゃございませんが、私なりの解釈といたしましては、この七十七条の規定が出たときには、政策上、反枢軸国の方には、こうせい、ああせいというような考えはあったかもしれませんが、具体的に沖縄をb項の中に入れるものだというふうに、文書その他において確たる表示はなかったと思うのでございます。従ってこれが実際上分離される地域としてb項の中に含まれるという解釈をされる場合もありますが、沖縄に関する限りは、この憲章ができた当初においては、一つの予想といいましょうか、あったとしても、これは予想でございまして、沖縄をこの中に入れるのだという、そういう解釈は、少くとも表面上は私は出てこないと思うのでございます。従ってこれは一応の予定された意思である。そこで入江教授が言われましたように、平和条約三条でもって、ここではっきりと沖縄という文句があとにも先にも初めて現われたわけでございます。御承知の通りに、カイロ宣言においても、あるいはポツダム宣言におきましても、なるほど、日本国が奪取し、または占領した云々とございますが、ここにも沖縄という言葉は書いてないわけです。ポツダム宣言の例の八項には「カイロ宣言の条項は、履行せらるべく、又日本国の主権は、本州、北海道、九州及び四国並びに吾等の決定する諸小島に局限せらるべし。」ここらに消極的には沖縄が含まれるがごとく解釈される余地もあるようでございますが、はっきりと、ただいま申しましたように、沖縄ということにつきましてクオリフアイされたと申しますか、特質づけられたのは、この平和条約第三条だと思うのであります。そこで、b項に入るかc項に入るかということでいろいろ御議論もあるようでございますが、私の解釈は、ただいま申したように、若干の政策的な点においてb項ということがいわゆる相手国の念頭にあったかもわかりませんが、はっきりと平和条約三条に現われたからには、私としてはどうもc項に入る公算が非常に大きい。この平和条約三条という規定が、とにかくアメリカとしてもこういうような形で信託統治に付するように提案しょうという意思表示が出てきております。また日本自身もこの平和条約の相手国としてこういうようなアメリカが提案することに同意しておるわけでございます。従ってこの施政について責任を負うものは直接にはアメリカでありましょうけれども、ただいま入江教授も言われたように残存主権というものが認められている限りにおいて、平和条約三条の当事国として、日本も非常に局限された小さい役割かもわかりませんけれども、残存主権国としてやはり自発的にこの制度の中に入れた役割をわずかながらでも負うているものだ、こう考えるのでございます。 そこでこのbとcといずれかというような議論も先ほどからいろいろ戦わされているようでございますが、私自身は田村教授のbに考えて、信託統治に付したならばもう返ってこないと言われるのは、私とは少し意見が違うのでございます。私はbかcかといったときに、bに違いないとか。に違いないというはっきりとしたけじめよりも、bかもわからない、cかもわからないというふうに、あいまいのようでございますけれども、私は解釈のしようでいろいろな解釈の結論が出てくると思いますが、私がcというものについて何かしら重点を置くゆえんは、かりに将来信託統治協定が結ばれるといたしまして、そこにおいて日本の主権が潜在主権すらも完全になくなってしまうかどうかという心配があるという点から見ますと、むしろ私は日本が平和条約三条によって自発的にこの制度のもとに置くアメリカの提案に賛成した、それはあくまで残存主権が残されているからだという、そこに一つの留保条件がついているわけでございますから、その留保条件をそのままいわゆる信託統治協定に持ち込む可能性が出てくるという一つの法律解釈から、私はbに違いないという解釈をとらないで、プラスcというふうな――bかcかといういろいろな言葉の表現もありましょうが、私はそういう解釈を持っておるのでございます。 しかし、いずれにせよ、ただいまの入江教授のお話のように、八十条の二項というのは国際連盟の委任統治、これが今度の信託統治になって、また田村教授も言われましたけれども、住民の人権保護、幸福、そういうことを非常に念願しておるために、あいまいにしておいてはいけない、信託統治協定を結ぶならば早くしろ、こういうことが八十条二項の趣旨だと思うのでございます。従ってアメリカがとにもかくにも平和条約三条で信託統治協定を結ぶ提案をする、この意思表示があるとなれば、これはやはりアメリカの信託統治協定を結ぶであろうという一つの意思表示でございますから、その結果として信託統治に置かれる可能性がある。そういうふうな地域についていつまでも不明瞭な、不安定な状態を続けておくべきではない。ましてや施政について戦争中の占領状態が続いているというようなことは一刻も避けなければならぬ。これが民政に切りかえられようが、とにかく確固たる住民の福祉の保障というものが、何らかの形において客観的に確立する、そういう事態を早く招来せしめようというのが、この八十条二項だと考えるわけでございます。 そういうことから考えまして、暫定的な措置というもの、三条の後段があくまで暫定的なものとしていつまでもいつまでも不安定な状態を続けるべきではない、いろいろな外交上の交渉によってこれを解決することもできましょう。しかしとにかく暫定性ということは、私としては四、五年前にも書きました私の論文においても強調している次第でございます。この平和条約三条の解釈につきまして、起草事情その他についてはいろいろな議論もありましょうけれども、私は暫定性というものはあくまで暫定性である、これはなるべく早く解消しなければならないその解消というものは信託統治にしなければならない、そういうものでもないだろう、しかしとにかく住民の福祉というものを最大限に考えなければならない、そういうところから暫定性にはおのずから限度があるというふうに考ているのでございます。 第二点といたしまして、私は論文にもちょっと強調したのでございますが、初めは非常に残存主権ということに力点が置かれまして、領土主権、残存主権が許されるかどうかというような問題に集中いたしました。沖縄の住民の地位につきましては、領土権というものの議論からあとに置かれたというと語弊があるかもわかりませんけれども、その点がややはっきりしなかったようでございます。 ところでその後残存主権が残されているということと加えて沖縄の住民の地位をはっきりしなければならない、そこから国籍がいずれにあるかという問題が起ってきたわけでございます。これにつきまして、ここに条約局長もおられますが、私は現在の役職についておられる方々の弁解でも何でもないのでございますが、平和条約の交渉のあとぐらいからどうも私たち学者が文書その他におきまして一生懸命で日本の立場を強調したいと思う場合もあるのでございますが、非常にその点で不便を感じたところもあるのでございます。その一つが沖縄の国籍の問題に出てくるのでございますが、日本政府は沖縄に残存主権があると同時に、沖縄住民は日本の国籍を有するというようなことが強調されており、政府の首脳者からもそういうふうな答弁がなされており、意思表示があったと思うのであります。 それならばこの国籍を有しておるということのいわゆる証明はどこにあるか、一体何によって証明されるのか、そのことにはアメリカとの間に交換公文でもあったのか、あるいはそんな約定があったのか、これは従来いわれているところはダレス国務長官がそういう意向だった、そういうように意思表示した、ダレス声明によるのだ、そういうふうなことが唯一の法律根拠のようにいわれておったようでございます。ところがこれまでも学者がたびたび引用しておりますハワイのシロマ事件で、琉球出身のアメリカ在住のシロマという人が、自分はもう日本の国籍がないんだからアメリカの国籍があるんだ。従って外国人扱いするのは不届きだというあの事件でございますが、これは御承知の通りであります。ここでハワイの裁判所が引用しておる文書は、日本の政府から照会されました残存主権があるということと、沖縄住民が日本の国籍を有するというこの二点について照会した、いわゆる確認したものに対して、アメリカの政府の方が国務省の法律顧問の回答を付してこの裁判所にいわゆる証拠書類として国務省の見解を表示した文書を送っておるわけであります。これによって見ますと、明らかに沖縄の住民の国籍というものは、少くともアメリカの裁判所においてはそういうふうに確認されておるというわけでございます。しかしその根拠というものは、今申したように私は単なるダレスの一方的な声明とかダレスの意向とか、それは平和条約の重要な起草者でございますけれども、やはり法律解釈からいきますれば、どうしても両国間の意思の交換、文書交換、そういうふうなものが何としても有力なる証拠でございます。そういう少しでも強い証拠を私たちは求めなければならないわけでございまして、間接的でございますが、ハワイ裁判所に提出された証拠物件というものをわれわれは間接的に引用しておるわけでございます。ところがある学者――どうもこれは自分としては引用するのがはなはだあれなのでございますが、ハワイの住民の国籍についてはまだ不明瞭である、日本の国籍を持っておるということについて疑問があるというふうなことを言われておる。外務省の非常に関係のある学者がこの二月か三月に出された論文の中にそういうふうなことを言われておる。しかしそういうところの見解で沖縄の住民の国籍というものがまだあやふやであるというふうな考え方に立脚していろいろなことが論ぜられるということは、非常に私としては好ましくないといいましょうか、法律的にも私は疑問をはさまざるを得ないのでございますが、とにかく私は沖縄におけるアメリカの施政に対して日本の国民においても非常な批判もある。何としてもわれわれの念願することは施政権をできる限りすみやかに返還せしめたい。これにはもちろんいろいろなアメリカとの親善関係においてあまりにも平和を妨げるような、両国の親善関係をほごにするような方法はとるべきでないとか、いろいろなとるべき外交交渉のあり方というものはあるでございましょうけれども、とにかくはっきりさせておかなければならぬのは、今申したような現に一体日本の国籍を有するものであるかいなか、これはもうはっきりとしておかなければならぬ。 これにつきましては直ちに出てくる問題は、例の外交保護権があるかどうかという問題が非常に議論されております。これまた外交保護権というものは行政権の一部である。立法、司法、行政についてはすべてこの沖縄に関する限りはアメリカにまかしておるのだから、あそこにおる日本人であろうと、とにかくそれに対する保護権はないのだ、それまで主張することはできないのだというような議論もあるわけです。そうして片方においては潜在主権というものは全く立法、行政、司法の全部また一部というのも日本人としては適当な訳でないくらいほとんどすべてをあげてアメリカに移譲しておるのだから、この点については残存主権というものは全くかすである。最終処分権があるにすぎないのだ、こうなれば逆に私といたしましては、それほどまでに外国の領土と――実際においては残存主権を持つ施政権を日本に早く返したいというそれとは別に、現実において外国の領土とほとんど相違のないくらいな、その九十七万人は日本の国籍を持っておると私は確信するのですが、その日本人、これが基本的人権その他においていろいろな問題がある場合において、これに対して保護権を行使することはできない。外交保護権というものはとにかく日本が持っておる権利なんであります。それは少くとも私は放棄しておるものでないと思うのであります。それやこれや、とにかく暫定性というものはあくまで暫定性として、われわれははっきりとこれを認めさせなければならない。 それから第二は、日本の九十七万人の沖縄の住民の権利を擁護するためにはどうしたらいいのか、その最も根底として沖縄の住民が日本の国籍を有するものである。なるほど外国においてアメリカもその施政の責任者として外国を旅行する沖縄島民についてある程度外交保護権を行使する場合もあるかもしれませんが、とにかく根本問題として、われわれは沖縄の住民が日本の国籍を持っておるということを、はっきり確認しておかなければならない。それが何かしら沖縄住民という一つの法律的な地位が、日本の国籍を持っておるということのほかに次第々々にそういうようなものが固まりつつある。何かしら沖縄住民という国籍ではないが一つの特別籍というものがある。それが次第々々に日本人である、日本の国籍を持っておるという議論に次第に勝つようにアメリカがしつつあるのではないかと疑われる節もあるのですが、そういうふうにしていくと、何のために日本の国籍がある、こうアメリカが認めたか意味がなくなってしまうわけです。この点も私ははっきりやっていくべきではなかろうか、こう考えるわけであります。 まだいろいろありますけれども時間がないようでありますから、一応私の意見は簡単でありますけれどもこれだけにさせていただきます。
○床次委員長 両参考人に対する質疑を許します。穗積七郎君。
○穗積委員 時間がありませんから入江先生にちょっと簡単にお伺いします。私はやはり先生が言われたように信託統治に付することをアメリカが提案するのをアメリカの一方的事情によって自由になし得るということは、信託統治の精神または平和条約から照らして違法性があるとわれわれは解釈しておったのですが、その点についてはすなわち提案の義務があるというふうな御解釈で、われわれ同感にたえません。そこでお尋ねいたしたいのは、そうは言いながら事実行われていないで暫定的な施政権が今行使されておるわけです。そのときがあまりにも長いものですから、しかもその統治の内容があまりに国連憲章または国際条約の基本的精神から見まして非常に不当であり、場合によれば違法性すら持っておると思われるような統治のしぶりをしているものですから、そこで私がお尋ねしたいのは、今の暫定期間における施政権者の権利義務、これは一体何によって規定すべきであるか。私は質問を明確にするために申し上げると、この場合においても、まだ信託統治には付されていない、付す意思もまだアメリカは表明していないけれども、その暫定期間における沖縄領土人民に対する統治権の行使は、信託統治の国連憲章の条項に従って行うべき権利と義務を持っている、こういうふうに解釈すべきだと私は思いますが、それについてまず最初に伺っておきたい。 それから、これは国連憲章をすべて含んで私は質問しておるわけですが、特に注意してお答えをいただきたいと思いますことは、その場合における施政権者並びにその被統治者である沖縄人民と、国連の機関としての信託統治理事会との関係、これは信託統治条項を準用されるべきであると解釈されるならば、当然信託統治理事会が責任を持たなければならないし、それに対して信託委任国であります日本または沖縄住民から、信託統治理事会に対するいろいろな請願または視察の要求、こういうこともできるし、また理事会としては沖縄に関する質問書等を作成する義務もあるのではないか、こういうふうに援用して考えられるわけですが、その限界について少しく立ち入って具体的にお答えいただければありがたいと思います。
○入江参考人 現在の暫定的過渡的な施政権をどこで期間を区切るかということについては規定がありませんので、そこが非常に困難な規定上の盲点であります。すでに講和条約が、発効してから六カ年、期間が長過ぎると私も思いますが、その期間をどこで区切るか、二年、三年という小刻みでもございますまいが、ともかく六年以上過ぎておる。十年ということになるならば、大体の常識といたしまして、これ以上現在の形を続けるということはやはり規定上趣旨に反する、このように考えます。 御質問の中心点であります、この過渡的な施政を続ける間に、国連憲章の準用はないかということでありますが、これにも憲章には矛盾した規定がありまして、先ほど第八十条第二項を強調いたしましたけれども、第一項では、すみやかに処理するとはいっても、現在施政権国の関係ある国際文書の条項は、直接にも間接にも変えるものではないという、この規定のために、講和条約第三条の規定で過渡的な立法、司法、行政の全権力を行使している間、言いかえるならば国連信託統治についての協定ができない間は、やはり直接には信託統治の規定の拘束は受けないのではないか、遺憾ではありますけれども憲章の解釈上そのように解釈されるのであります。しかしながら他方また信託統治制度の規定を見ますと、なるほど第二次世界戦争後の結果として、敵国から分離した地域に対して、信託統治制度をとっておりますけれども、あるいはまた施政権国が自発的にその地域を信託統治にすることができるといっておりますけれども、実際の憲章の理論解釈及び従来の措置から見ますと、決してどういうところでも信託統治を行なっておるというのではなくして、第二次世界戦争後、敵国から分離した地域、もしくは争いはありますけれども分離したといって取り扱っておる地域、たとえばもとドイツのケーニヒスベルク、今はロシアのカリニングラードと称しておりますが、ロシアはこれを分離したと言い、他の国は承知しておりませんが、いずれにしましても第二次世界戦争後の敵国から分離したと解釈される地域は、多くは国境の改定であります。従って分離される地域が全部信託統治に付されるということではなくて、やはりそれは信託統治にして適当な地域、海外植民地その他であります。自国の地域ならばどこでも信託統治に対するかといいましても、完全な一領域を構成する部分まで、信託統治に付することはございませんし、実例がないのであります。今まであるものは、やはり文化水準のおくれたところというところであります。そうしますと、本来沖縄のような地域を信託統治にするということ自体が、何らかの邪道でありまして、便宜手段でありまして、本来信託統治をしいてはならぬところである。信託統治制度そのものは、第七十六条も規定しております通り、できるだけ住民の福祉をかるということになっておりますが、それは文化の高い国が低い国を保護する信託統治ということでございまして、沖縄などはそのカテゴリーに入らない、それ以上の水準にあるのでありますから。それから言いますならば、もしアメリカが現在行なっておる施政に問題ありとするならば、本来信託統治をしいてならない地域に対して、無理にこのカテゴリーにはめようとしたことでありますから、その角度からはあるいは主張できましようが、直接信託統治条項そのものを協定もできないのに準用するという、そういう法的な解釈は、無理かと私は思います。
○穗積委員 ちょっと質問の要旨がずれておったのですが、つまり七十六条に基本的目的が明確にされておることは、おっしゃる通りブリンギングアップするということが目的になっておるのです。施政権者の一方的理由によってではなくて、独立または自治能力を育成する、つまり信託統治自身がすでに文化の低い地域の、能力の低い地域の住民を育てる。それが主目的になって、施政権者の自由にならないようになっておるわけです。ところが私の言いましたのはそういうことではなくて、おっしゃる通り現在沖縄というものは、こういう立法のときの概念の中に入りがたい高い地域なんですが、それが実はこれ以下に支配されておるわけです。基本的人権が無視されておるような事実が、すでに枚挙にいとまあらず摘出されておるのです。そういう場合にアメリカは、一体だれからも文句を言われる筋合いはないという解釈をとるのか、直接個々の条文を、一々適用するしないは別といたしまして、少くともこの信託の基本的精神または目的に違反するような統治を、暫定期間においても許さるべきではない、そう私は解釈する。その場合に信託統治条項の精神や規定というものは、これは援用する有力なる規定である、こういう意味なんです。すなわち信託統治協定ができる前に、信託統治の国連条項をすべて準用するということは、無理だという法律的な機構はよくわかりますよ。ところがそうじゃなくて、今の施政権の実施そのものが、非常に七十六条以下の基本的目的や性格を無視した、むしろ基本的人権すら無視したような統治が行われておる。それに対してアメリカはどこからも批判されず、どこに対しても責任を持たなくていいのか、そんなことはあり得ない。そういう意味で、すでにこの精神から照らしても、この条項を援用しても、アメリカの不当性が、場合によれば違法性が指摘できるじゃないか。アメリカは国連加盟国で、しかも理事国です。そういう国がそういうことをすること自身に、私はこの条項の精神から見て、不当性または違法性を主張できるのではないか、そういうことを私は質問の要旨にしておったわけなんです。それを実際に行うものとすれば、この場合においては信託統治理事会が何らかもう少し責任を持つべきではないか。暫定期間が期限を置かずにどんどん延長されるということに対し、信託統治理事会というものは、信託統治協定ができないという理由によってそういう事実を見のがしておる。これはいささか職務怠慢のそしりを受けはしないかという意味で質問したのでございます。その点を明らかにしていただきたいと思います。
○入江参考人 信託統治理事会は、総会の下部機関でありますが、信託統治協定というものが有効に成立し、協定を通じて沖縄の施政が国際連合の管轄下に入るまではと言われました趣旨はまことにもっともでありますけれども、法的な問題として、総会なりその下部機関である信託統治理事会にこれを処理する権限があるかということになると、残念ながら消極的に考えなければならぬかと思います。法的に問題を取り上げるとしますならば、やはり講和条約第三条に直接の基礎を置きまして、暫定というものは長期化することはできないのだ。アメリカに対しても信託統治に付するのか付しないのか、はっきりと回答を要求することはできるかと思うのであります。その上でアメリカが信託統治に付するか付しないか知りませんけれども、信託統治に付するような手続をとって、それが日本の残留主権国としての地位とも両立する場合は、日本は国連機関を通じ、また残留主権国としての主張を行う。またアメリカが今言われますように不当な過渡的な措置、不当な施政を行なっておるというのであるならば、第三条の規定には立法、司法、行政の全権能、権力とはありますけれども、この場合通常いうところの主権の全部ではなくして、第一には主権のうちの領土主権は日本に完全に保有されておる。従って領土の処理はできない。第二点は、領土主権だけでなくて、先ほど一又教授が強調されましたように、対人主権も日本はある場合によっては保有する。何となれば沖縄の住民は日本の国籍を持っておる。ただその対人主権は、アメリカが施政を行なっている限りは、地域的に直接日本がその沖縄の中に入り込んで対人主権を行使することはできませんけれども、それにしても極端な場合を想定いたしますと、日本人である国籍を変更するような措置をとるということは、やはり日本の残留主権に対する侵害ということであります。そうしますと、その角度から一つの外交保護権も持っておるのであります。第三条に基いて、アメリカに対して発言することは可能でありましょうが、その信託統治条項により信託統治理事会の機能の中でこれを問題にするということは、法的には無理かと思います。
○穗積委員 高橋条約局長に政府の立場を二点お尋ねいたします。 第一は、さっきから問題になりましたダレスの個人的な解釈によると、信託統治の提案というものが、アメリカの全く一方的な自由であるということは誤まりだということですね。これは条約の基本的精神や解釈からいたしましても、そういうことは許さるべきことではない。国連憲章の今の八十条その他の精神から申しましても同様である。その多くの議論はいたしませんが、政府はそれに対する解釈としてこの所論を承認されることと思いますが、念のために伺っておきます。 第二点は、もしアメリカが客観的な妥当な理由なくして、一方的にしかも軍事的な理由によって――軍事的理由ということは、信託統治の基本精神に反するものであり、逸脱するものであると思いますが、それによって信託統治に付する提案もしなければ、また逆に権利放棄をして奄美大島でとったような解消もしない、こういうことをいつまでも続けておる場合に、日本のこれに対する発言権の問題でございます。先ほどから、信託統治が提案されてそれが審議される場合、または信託統治に決定した後における日本からの発言権についての所論があって、これは部分的ではありますが、発言権があるという解釈であったわけです。これもわれわれ同感ですが、そこでこの際特に政府に明らかにしていただきたいと思いますのは、今申しましたように、アメリカがやらない場合に、アメリカに対して今の国連憲章または条約の精神を援用いたしまして、信託統治に付する提案を早くすべきである、または逆に情勢が変化しておるから、理由が変っておるから、これを解消すべきであるという提案をする権利が日本側にあると私は思うのですが、これについての政府の考え方をお伺いしたい。これはいささか政治問題になりますが、それをやる意思があるかないかの御答弁がもし局長としははばかりがおありになるならば留保されるとしても、条約解釈上当然その発言権があると思いますが、条約局長はその点どういうふうにお考えになっておるか、明確にしていただきたいと思います。
○高橋政府委員 政策の問題は度外視いたしまして、純法理論と申しますか、条約解釈としてのお答えをいたしたいと思いますけれども、非常に問題が複雑しておりますし、非常にむずかしい問題でございますので、よく頭を整理させていただきましてこの点をお答えしたいと思います。と申しますのは、いろいろな解釈の幅がありまして、全くあの文字通り解釈するという一つの解釈の仕方もありますし、それからあの経緯、今まで六年もたっておるものをどういうふうに評価するかということもありますので、決して私この問題を逃げるわけではありませんが、もう少し研究させていただきたいと思います。
○床次委員長 大西君。
○大西委員 まず入江先生にお伺いいたしますが、今の分離の問題でありますが、これまでもいろいろな歴史的な事例を引用されまして、分離というのは領土の処分権も含めたのが通例であるというお話でありました。ところがこのb項に限ってはやや特例のように思う、こういうふうに言われたように私は思うのでありますけれども、なぜこれを特例と解釈されますか。私どもは特別にb項の根拠を求めようとしているのではなくて、むしろその反対が私どもの立場なのです。その根拠を得たいのです。そういう意味で、どうもb項というのは特例のように考えられると言うのですが、あえて先生がその説をとられるという立場はどういうものでしょうか。
○入江参考人 私はb項は特例だと申したのではございません。b項もやはり領土的分離を意味したものである。それは、条約例からしましても、それから憲章を制定されましたときの当該条項に関する委員会の報告によりましても、やはりこの分離という意味は領土的分離をさす、こう先ほど申しました。けれども、この憲章の規定に対して、講和条約第三条の規定の解釈上、これは領土的分離を意味するものではない。ということは、サンフランシスコ講和条約の締結当時、もしくはそれに先だって、インド政府からアメリカ政府に照会を発しました、それに対するアメリカ政府の回答を見ましても、それから条約の重要な締結当事者であるイギリス全権の発言にしましても、また日本吉田全権の陳述からしましても、一致して、領土権だけではありませんけれども、残留主権の主要なものとして領土権は日本に保有されておる、こういうことです。それにもかかわらず、これを信託統治にするといった以上はそしてまたアメリカの立場としまして琉球などに対する信託統治をしく暁には、それは七十七条b項の規定による、こういっておりますので、それを調整してみますと、本来b項にいう分離というのは、領土的分離であるけれども、この憲章の規定とは違った施政権移譲という、限られた範囲での分離ということを講和条約を通じて修正してb項を適用する、こう解釈しているわけであります。
○大西委員 そういういきさつはよくわかりましたが、われわれが今これを法文通りに見ますと、それの常識的な一つの解釈に立って、当時そういういきさつで平和条約の第三条を取りきめたということは、やはり日本が国連に加盟したという現段階においては、もう一回国連憲章優先の原則に従って一つ三条の問題を検討すべきではといか、こういう考えが実は私にあるわけなんであります。ですから、そういう意味から申しますと、そういういきさつ、いろいろのことはよくわかりませんけれども、正当な意味でやはり分離という意味を解釈をするという立場をとって、そうして第三条を一つ修正ないしそっちの解消をしていくという立場をとりたいと私は思うのですが、そういうことについてのもう少し積極的な御意見その可能性ということについてのお考えを聞かせていただきたい。
○入江参考人 国連憲章優先の原則は、なるほど憲章第百三条に規定しておりますけれども、講和条約の規定が国連憲章と矛盾するときには、国連憲章の規定が優先するかといいますと、それに対して第二次世界戦争中の敵国については第百七条の規定がさらに上につくということでありますからして、第百七条の規定から、講和条約第三条で、憲章の規定するよりか違った意味での、施政権移譲という意味で分離を変えて使うという講和条約第三条に対する解釈は、百三条によるよりか、百七条によって依然として有効であるし、拘束力がある、こう解釈いたします。
○大西委員 それから今のお話で、もし国連に対して信託統治の提案を米国がいたした、その場合に、協定を結ぶというときにも、やはり日本の残存主権というものがその中で認められている、こういうような御説明であったように思いました。その場合に、関係国の中に日本ももちろん入るというような御説明でありまたでしょうか。私、聞き漏らしましたので……。
○入江参考人 直接関係国につきましてはいろいろ解釈が分れておりますが、具体的な日本の問題になりますと、私は今御質問の御意見とは違いまして、第一段として、施政権移譲という意味で日本から分離された。しかし、講和条約の第三条の規定の結果として、アメリカが単独の施政上の責任者となっている。そのアメリカが信託統治協定案を提出する場合に、日本はあらかじめこれに同意を与えておった。従ってアメリカの一存ではありますけれども、その一存という意味は、あくまでも講和条約第三条の規定、第二条の領土の処理の規定とは違って、第三条に限って特別な規定を設け、そしてそれについて条約当事国の間に意見が一致しておる通り、日本は残留主権を保持しておるのでありますからして、そしてその残留主権を保持するということはアメリカが信託統治に付するときまでということではなくして、信託統治をした後までも日本は残留主権を保持しておるということでありますから、少くともそう解釈さおるのでありますから、そういう意味で、直接関係国ではなくても残留主権国として、憲章の規定とは違った特殊な規定によって保障されている日本の発言権は行使できる、信託統治に付された後でも日本の残留主権国としての立場に影響はない、こう考えております。
○床次委員長 あとの質疑がまたありますから、なるべく簡潔にお願いいたします。
○大西委員 そういう筋道はよくわかりましたが、信託統治のもとに置かれる地域に対して潜在主権があって、しかもそれが信託統治されているというようなことは――信託統治の本来の趣旨からいえば、非自治地域だとか、非常に文化の低いところというように考ております。これは第七十六条のあれにも明らかなことです。それだのに一方では潜在主権というものがあって、それを信託統治にするというようなことは、やってやれないことはないという見通しではありましょうが、非常にこれは複雑なものというか、納得のいかない、信託統治制度本来のなにからちょっと類例のないものになりはしないかと思うのですが、この辺の見解はいかがでしょうか。
○入江参考人 それは先ほどもちょっと申し上げました通り、沖縄というような地域は信託統治に付すべき妥当な地域ではない、私どもの見解だけではなく、インドあたりもそういう見解をとっておりますし、ソ連邦なども、信託統治にすべきではない、こう言っておりましたが、こういう国々の解釈を別といたしまして、七十六条の規定から、直接、沖縄などはこれから自治を達成させてもらったり独立したりする国ではない、信託統治には初めから妥当しない。ただし妥当しないにかかわらず講和条約締結当時の事情から日本は、これを信託統治の形でアメリカに施政権を移譲したのでありますから、本来の趣旨は反しますが、反しながらなおかつああいう講和条約の規定となり、日本その他四十八カ国と条約を結んだ。その結んだ事実及びその条約による拘束は消すことができない、こう考えております。
○大西委員 この七十七条でどうも平和条約の三条の信託統治はちょっと無理だというような結論を得たいと思って何しておるのですか、七十六条の基本目的ですね。これから見ましても、どうも信託統治にするということの根拠が非常に薄弱なように思うのです。b項。項以下はもちろんですが、そういう場合に、a項ですね、「国際の平和及び安全を増進すること。」こいうところに沖縄の場合の一つの根拠を求めようとしているのかと思うのでありますけれども、私はこのa項だけですと、これだけ抽象的な広い意味のものだったら、どれだって少しこじつければ信託統治にできないことはないと思うのです。そこで私はある学者の意見をずっと聞いたのですが、この七十六条の基本目的のa項というのは、これはどういうのか、一般的な、まあまくら言葉みたいなものであって、やはり信託統治の基本目的というのはこのb項にあるんだ、こういうことを言っておるのでありますが、これは総合的に複合的に考えるべきものである、こう言っているのですが、そういうふうなことからいいますと、この七十六条の趣旨からいいましても、沖縄のあの土地を信託統治にするということは無理であり、あの三条は憲章の違反とは言えなくても、それと果して十分調和を保てるものかどうかどうかというようなことを考えるのですが、この辺はいかがですか。
○入江参考人 国際的平和に寄与するということは、それだけが独立して信託統治の目的になるのではなくして、単に国際的平和に寄与するということなら、ほかにもいろいろ、非自治地域に関するところにもその規定がありますし、本信託統治に関する限りは、あくまでも第七十六条で信託統治に付する必要がある、そういう地域住民に対して制度化を行う。ただしその場合に、かつての日本の南洋委任統治地域のように、その国がその国の防衛目的にだけ、排他的目的にだけ使うのではなくして、信託統治には付しても、それは国際的な平和安全を増進するような、一般のためにもこれを寄与させなければならぬ、そういうのが趣旨でありますから、あくまでも主体はむしろb以下にあると私も考えております。
○大西委員 もう一つだけちょっと一又先生にお伺いします。第七十七条のb項、c項、これは両方というようなことでありましたが、このc項というのは、「施政について責任を負う国によって自発的に」とこういうふうに書かれておるので、普通植民地の場合を対象にしているんだ、こういうふうにほとんどの人が解釈しておりまして、どうもこれに該当させるのは経過から申しまして無理があるように聞いておるのでありますが、どんなものでしょう。
○一又参考人 いろいろ解釈もございますけれども、私自身は、先ほど申しました通りの議論をしております。それから同時に、憲章の解釈ということは、御存じの通り、単に七十七条以外にも、憲章制定後ずいぶん解釈の変化もございますので、まあ憲章当時のそういう解釈と現在の解釈というものは相当違いが出てくる余地もなきにしもあらずだと思うのであります。決して私自身の説が正しいのだとか、これは私の主観でございますから、それはあれでありますが、決して非常に厳格なリジッドな解釈ばかりではないというふうに私は考えております。
○床次委員長 松本君。
○松本(七)委員 時間がありませんから、三点まとめて御質問したいと思います。 最初の第一問は、今大西さんから言われたことに関連するのですが、これは一又先生に、あとの二問は両先生に、御意見を伺いたいと思います。この七十七条のb項とc項両方にまたがるものだという解釈に立ちますと、この施政について責任を負う国は、当然アメリカということになりますが、そうするとその責任を負っておるアメリカの立場からすれば、この両諸島を信託統治にすることについての何か積極的な意義がなければならぬ。われわれからすれば、先ほどから論議されておるように、むしろ七十六条の信託統治の基本目的達成に違反しやしないかという考えがあるわけですけれども、その責任を負うアメリカ側からすれば、自分が責任を負う国として信託統治にする以上は、何か積極的な意義がなければならぬ。それは一体何だろうかということでございます。 それから次の問題は、外交保護権と関連して、沖縄の住民の権利義務に関係する国際条約の締結は一体潜在主権国にありやいなやの問題、これは両先生に一つ御意見を伺いたい。 それから最後の点は、さっき田村先生にもお伺いしました、七十八条の「加盟国となった地域」、これをどのように解釈されるか、これだけでございます。
○一又参考人 では私から先にお答え申し上げます。第一点のc項にした場合という点でございますが、アメリカが施政について責任を負う、そのためにはアメリカが何か意義がなければならないではないかというわけでございますが、これはアメリカがどういうふうな意義を感じておったかどうかはわかりません。これは私の推定でございますが、とにかく領土の取得はしないというカイロ宣言以来の約束、意思表示もございますし、自分の完全な主権下に置きたかったんでしょうけれども、そういうことができない。そこで結局平和条約第二条のような一つの――ある学者は、これは非常に奇々怪々なるものであるというようなことを言っておりますが、窮余の一策といいますか、そのときアメリカとして、自分の沖縄をある程度まで支配する形、そうしてしかも日本の国民をもある程度まで納得せしめる、そのいわゆる妥協策としてこういうものができ上ったのだ、こう解釈せざるを得ないのでございまして、果して戦略的にこれを確保するとか、アメリカ側にはいろいろな意義が認められるでございましょうけれども、私はこの平和条約三条によって、アメリカがそういうふうな形でもって沖縄に施政権を、一応暫定的とはいいながら、持ったということが、アメリカのやり方だったと、そういうふうに感ずるので、どういうふうな意義があったかどうか、そこからc項との関連性いかんということは、私は考えておらないのであります。 それから第二点の、国際条約の締結権、これはこの残存主権の解釈にもなりますが、その限りにおいて、日本に残されている部分について、当然日本の権限下に入ってくる。従って先ほど申しましたように、国籍とかそういう点が非常に重要な要素になってくると思いますが、そういうふうに消極的に残されている限りにおいてというふうに考えざるを得ないと思うのです。 第三点は、「加盟国となった地域には適用しない。」という点は、先ほど他の先生方からお話があったように、やはり植民地か何かの場合に、それがそっくり独立をかち得たといったようなときに、適用しないということを、私は意味するのだと思うのでございます。
○入江参考人 第一点の国際条約でございますが、外交保護権というのは、自国民が他国の領域内、あるいは沖縄のような特別の地域内で、他国の政権下に置かれているときに、それが特に権利利益を侵害されたということが、自国の国民に対する損害である、従ってその国自体の権利の侵害であるという場合に、保護を行うという一般的な意味でありまして、保護権があるからといって、何でもかんでも自国の国民に属する問題について、条約を締結するというわけにはいかないと思います。ただ日本国民の一般の地位について、ある外国と条約を結ぶ。たとえばフランスと仮定します。そのフランスに日本国民である沖縄の住民が行った場合に、日仏間の条約の適用を受けるということは言われますけれども、他国の政権下にあるものを、その地位を法的に左右するような国際条約――アメリカに居住する日本人が、居住している間にどういう地位を享有するかということを、他の第三国と協定する、そういうところまでは外交保護権は及ばないと思います。ただもう一つは、それはそういう意味で外交保護権はあるといっても、アメリカの施政権が現実的に行われているという限り、非常に限定的であるということであります。他の一つは、それにしましても、沖縄にある沖縄の住民の国籍を奪うというようなことに対しては、日本が反対する、それは条約を締結することではなくして、アメリカの施政権行使の一つの行き過ぎに対して、これは第三条違反として日本が抗議ができるという、そういう消極的なものであると解釈しております。 第二点の「加盟国となった地域」ということでありますが、これは先ほど田村教授が言われた点で、ただ一つだけ私が加えたいと思いますのは、講和条約では日本が国際連合の加盟国になるということを予想して規定しております。それから同時にそれと並行して、第三条の規定を設けておるということは、沖縄が第三条の終局的な処理として信託統治に付される、それと日本が国際連合の加盟国となるということは、講和条約の規定としては矛盾しないのだという立場をとっておるのでありますから、田村教授の言われましたように、憲章の規定自体からして、当該地域が独立した場合には、主権平等国家として、信託統治制度は行われないというのは、実例からしますならば、ガーナの地域の一部を構成しましたトーゴー・ランド、これはなったでなくして、なる前にすでに信託統治協定に中止する措置をとっている。そしてガーナの一部に入って独立したのであります。それからまた旧イタリア・アフリカ植民地のあるものは、やはり何年か後に独立を予定しておるのであります。独立したならば信託統治には付されない、こういうことであります。それからまた田村教授も指摘されましたけれども、加盟国が自国の海外植民地を信託統治に付することを自発的に提議するならば、それは国連憲章は認めておる。第三点は、一番最初に申しましたように、繰り返しますと、講和条約は日本が加盟するということを予定し、加盟した後も、第三条規定の終局のたどる場所として信託統治を付することはあり得る、こういうかまえになっておりますから、御指摘の、ある地域に属する国が加盟国となったときには信託統治に付されないのだということは、沖縄については言われないのではないかと思います。
○床次委員長 岡田君。
○岡田委員 あとから参りましてはなはだ申しわけないのですが、ちょっと一言だけ伺っておきたいのです。入江先生にむしろ伺いたいと思いますが、私は考え方としては、七十六条としても、これは沖縄は信託統治の適用を受けないという解釈をするのですが、そればかりでなくて、七十七条のb項、この点についての解釈を伺いたいのですけれども、私自身はこの適用も受けないのではないかという解釈を実は持っておるわけです。というのは、これは先ほど一又先生も、国連憲章ができてからいろいろそのあとに解釈も変ってきておるというお話がありましたが、われわれは基本点が変るような解釈ではやはりその制定の趣旨に反することになりますので、基本点においては制定当時における趣旨に基いて規定を解釈しなければならないのじゃないか。とするならば、私ちょっと調べたものによると、国連憲章制定会議の当時に、この信託統治の問題は第二委員会に付託されて、南阿連邦の首相であったスマックという人が委員長になって、これを報告しております。英文で申しますと六百八十ページのものですが、この報告書の中でこういうように七十七条のa、b、cを規定しておるわけです。それを読んでみますと、「その規定は、すなわち、独立していない地域、旧委任統治地域、現存している国家から新たに征服し、取得した地域、及び施政国が自発的に信託統治制度の下に置く用意のある植民地といった種類の地域について規定しているのであります。」このように明快に規定をしておるので、この制定当時の趣旨をとるならば、このbの解釈は、第二次戦争の結果としてここから分離された地域というのは、現存する国家、たとえばソビエトにおける南樺太というように、現存する国家において第二次戦争以前において、帝国主義的戦争によって日本の国が新たに征服し取得した地域、これはカイロ宣言その他において規定されておることなんですけれども、こういう地域を規定するのであるということを書いてあるのです。従って沖縄のごとき本来固有の領土といわれるべき地域は、b項は規定すべきものではないと解釈すべきではないか。というのは、これは制定の趣旨からいって私はそう思うのです。とするならば、入江先生の先ほどのお話のように、ダレスは確かにサンフランシスコのときにb項を規定しておるけれども、しかしこの規定自体は、b項を拡張解釈したということにならないで、この趣旨からいくと、むしろ拡張解釈という名目によって事実上本質的に変えてしまったというようにむしろ解釈すべきではないかというように、私は実は今まで解釈をして参りましたが、この点について一点だけ伺っておきたい。
○入江参考人 私も先ほどスマッツ将軍という名は引用しませんでしたけれども、全く同じ材料について同じことを申し上げたのであります。ただしかしながら、それにもかかわらず信託統治に付するという第三条ができた以上は、国連憲章の規定でそれに近い準用できるものがあればそれを適用するより仕方がない。そうしますと、少くとも委任統治ではない。そうしますと、bかcかということになりますが、本来のb規定とは違ったものを沖縄について適用するアメリカの意向であるが、そのアメリカの意向を特に排除しなければならないということはない。しかしながら現に日本が第三条でアメリカに信託統治協定案を出すことを一任した以上は、アメリカが施政について責任を負う国としてcのカテゴリーに入った、歴史的にはb、cという段階を経て今日に至ったということを申し上げたのであります。
○床次委員長 これにて国連の信託統治に関する件についての質疑は終了いたしました。 参考人の方には、長時間にわたり有益な御意見を開陳していただき、さらにまた詳細にわたって質疑に応答していただきまして、委員長から厚くお礼を申し上げます。 午後一時四十五分まで休憩いたします。 午後一時二十二分休憩 ――――◇――――― 午後二時九分開議
○床次委員長 これより再開いたします。 在日朝鮮人に関する件について参考人より意見を聴取することといたします。ただいま御出席の参考人は在日朝鮮人総連合会事務局長尹鳳求君、在日朝鮮人総連合会常任委員朴在魯君、在日朝鮮人体育協会事務局長李栄吉君、以上三君でございます。それでは尹鳳求君。
○尹参考人 私は在日朝鮮人総連合会の事務局長といたしまして、日本国国会の外務委員会が、われわれに関する諸問題について深い関心を持ってこのような御審議をなさっていられることに対し、委員長初め諸先生に心からの敬意を表する次第であります。つきましては朝鮮人の諸問題を申し述べるためには、どうしてもまずわれわれの立場というものをごく簡単にでも申し触れておく必要があろうかと存じます。 すでに御承知かとも存じますが、現在約六十万の在日朝鮮人の大多数は朝鮮総連に結集されまして、その指導を影響下にあるのであります。つまり朝鮮総連と申しますのは、日本全国の都道府県にあります四十六の県本部――もちろんその下には支部、分会、班があるのでありますが、この地方組織と、一方ではまた階層別にも組織されております女性同盟、青年同盟、教育会、商工団体、その他各文化団体等が集まって、今から三年前の一九五五年五月に結成されましたのが、つまり朝鮮人総連合会なのであります。従いまして私たちの申し述べますことは、ほとんどの在日朝鮮人の考え方や要望を代表しているということができるのであります。 このことをまず御念頭に入れていただいた上で、では朝鮮総連の基本的な指導方針は何であるかと申しますと、われわれは朝鮮民主主義人民共祖国の公民、つまり外国の国民として自分の祖国を愛し、その平和的な統一を念願してはいろいろな政治的活動をいたしますが、事日本政府に対しましては、どこまでも内政不干渉の態度を堅持していくものであります。このことは、言葉をかえて申しますと、われわれは日本国の法律と社会制度を尊重し、また日本の風俗習慣を尊重しながら、日本国民との友好と親善のために努力していくということであります。このことは言うまでもなく、わが祖国の一貫した対外政策でもあり、従ってわれわれは共和国公民として、このような自国の平和共存の対外政策を忠実に守るということは、当然の義務でもあると信じているのであります。 このように在日朝鮮人は、過去にはいろいろな歴史的な事情――つまり多くの朝鮮人が日本に来たのは自分の意思ではなく、強制徴用や徴兵等によって連れてこられたというような諸事情があるにもかかわらず、今日ではいつまでもそれのみにこだわるのではなく、新しい事態や条件に即応して、外国公民としての自分の立場を守っていこうと努力していることは、広く日本国民もまた日本政府当局の方たちも十分御承知かと存じます。もちろん部分的にはまだ十分この方針が徹底しないきらいもありましょう。しかし今日の朝鮮総連の綱領や総連の運動で示されている事実に照らしてみても、大筋においてははっきりとこの方向に向っているということは、だれでも否定し得ないと信ずるのであります。しかるにわれわれから見ますと、日本国の政府は、われわれの祖国である朝鮮民主主義人民共和国とその在日公民たちの自主的な組織である朝鮮総連に対しまして、始終非友好的な態度をとっているように見受けられるので、はなはだ遺憾に思っているのであります。 その一例をあげますと、去る二月二十二日に衆議院予算委員会において藤井公安調査庁長官は、朝鮮総連をば日本の破壊活動防止法の容疑団体だという重大な言明をなし、唐澤法相もこの発言を肯定しているのであります。しかも日本の公安調査庁では朝鮮総連をスパイするために、最高十万円の報償費を出していることさえ公言しているのであります。このようなことはさきに申し述べました朝鮮総連の運動方針に照らしてみても、また事実に照らしてみても、誤まった理解と根拠の上に立っているばかりでなく、日本国民に誤まった朝鮮人観を与える結果にもなりますので、はなはだ遺憾に思っているのであります。 このような日本政府のわれわれに対する非友好的な態度は、大別いたしますと、一面では朝日両国間の関係を改善する上において、また一面ではこのこととも関連いたしますが、在日朝鮮人に対する処遇の問題において、多々遺憾な点があるように思のであります。 今日朝鮮民主主義人民共和国が厳然として存在していることは、何ものも否定し得ないのであります。この朝鮮民主主義人民共和国からは朝日両国の関係を改善していくためにも、文化、スポーツの交換や経済の交流、または両国間において解決すべき人道上の諸問題のためにも、すでに数回にわたって日本国に共和国代表の入国を申し入れているのでありますが、日本の政府はこれを聞き入れていないばかりか、一方的にいわゆる韓国の李承晩と接近することによって、朝鮮人民の意思とは反対に、朝鮮の分裂を固定化させる方向に進んでいるように見受けられるのであります。 今日、日韓会談の問題についても、いわゆる韓国が決して全朝鮮を代表するものではないということは、だれの目にも明らかであります。それをあたかも李承晩政権が全朝鮮を代表する政権であるかのごとくにして、これと全朝鮮の問題、ひいては在日全朝鮮人の身分上の諸問題にまで何らかの取りきめをなすということは、共和国に対する非友好的態度であるばかりでなく、在日朝鮮人の生活と基本的な人権に重大な政治的圧迫を加える結果になるのであります。従ってわれわれは日本と韓国との当面の懸案については、それとして話し合うべきであって、事国交上の問題については、それが私たちの祖国で朝鮮の統一を遅延させるような、また日本におる全朝鮮人の自由意志に何らかの強制的な変化を強制するようなことにはならないように希望するものであります。 以上申し述べましたような観点から見ますと、在日朝鮮人の生活上の諸問題や教育上の問題、または人権上の問題あるいは祖国との往来の自由の問題、つまり大村収容所におります共和国への希望者の問題等、無数に解決されるべき諸懸案が未解決のまま残されているのでありますから、その個々の問題点については、すべて朝鮮の現実と在日朝鮮人の歴史的な諸事情を十分御考慮の上、早急に解決されねばならないと思うのであります。 なお、具体的な諸問題点については、次の参考人から申し述べさせていただきたいと思います。
○床次委員長 次は朴在魯君。
○朴参考人 委員長並びに委員の皆さんに心から敬意を表します。 ただいま尹参考人から、在日朝鮮人の歴史的条件という問題と、また朝鮮民主主義人民共和国が厳存しているという問題とを含めまして、在日朝鮮人の諸問題は、国際公法、国際判例並びに人道主義的な立場に立って、無理のないように、だれでも納得できる方法でもって解決されなければならないことを申し上げました。重ねて申し上げますが、たとえば中日戦争以前は、在日朝鮮人の数は、当時の日本の内務省の調べでも約五十万前後にすぎなかったのでありますが、これが戦争が終る当時は二百四十万以上にふえているわけであります。つまりこのことは、在日朝鮮人の大部分がやはり過去の戦争の犠牲者として強制徴用や徴兵その他で連れられてきた、こういうことが言えるのではないかと思うのであります。 こういうような条件から申しまして、私は幾つかの問題を申し上げたいと思いますが、まず最初に在日朝鮮人の国籍に関する問題について申し上げたいと思います。 すでに国会議員の皆さんがよく御存じでいらっしゃると思いますが、世界人権宣言の第三条においては、人はすべて生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する、こういうふうに規定されております。これは基本的人権は不可侵であるということを厳格に示していると思います。それで世界人権宣言の第十三条の二項において、人はすべて自国を含むいずれの国をも立ち去る権利及び自国に帰る権利を有する、こういうふうにはっきりと規定しております。そして第十五条の第一項においては、人はすべて国籍を持つ権利を有する、このように規定し、第二項においては、何人も専断的にその国籍を奪われたり、その国籍を変更する権利を否認されたりすることはない、こういうふうにきめられているわけであります。だから、在日朝鮮人がどの国籍を取得しようと、どの国籍を希望しようと、これは基本的な権利であり、いかなる人間もこのようなことに対しては妨げてはいけない、このように規定しているものと思います。なお、この問題については、たとえば日本国の憲法におきましても、第二十二条の第二項において、「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。」こういうふうに規定しておりますし、日本の国籍法においても、たとえば日本国民でも日本の国籍を離脱する問題については、届出をすればよいし、なお日本に帰任するというような問題についても、法務大臣の許可を要する、大体こういう趣旨になっていると思います。すなわち日本政府は、日本国民にさえ、日本国民がどのような外国の国籍を取得する問題についてはそれをとめることはできないといったふうな趣旨だと思います。そうすると、ましてや日本の政府が、外国人である在日朝鮮人に対して、在日朝鮮人の国籍を、その籍はいいとか、あるいはその国籍は悪いとか、あるいはそのような国籍を取得するのはいけない、そういうふうなことは制限してはいけないというふうなことになるのではないか、このように思います。 ところが、こういうような問題についてきわめて明白であるにもかかわらず、今日まで、私たちの体験からしますと、こういうふうな問題が非常に不徹底であったり、あるいはときには日本の政府によって、われわれの意思に反して希望しない国籍を強要しようとするきらいというような問題も起っているわけであります。 例をあげれば、最近大きく問題になりました大村収容所の問題でありますけれども、これは従前から朝鮮民主主義人民共和国に帰国を希望している人人に対しては、最近日本の新聞その他で見ますと、個人の希望を尊重するというふうな外務大臣の談話も若干見えているようでありますけれども、たとえば昨年の十二月三十一日以後、すなわち日韓相互釈放の調印が行われ、その以後、大村収容所においてはなお多くの人々が相次いで朝鮮民主主義人民共和国に帰国することを希望しているのでありますけれども、いまだかつてこれらの人々に対してはその意思が受け入れられていないのであります。 なおこの間釈放されました刑余者に対しては、収容所当局が協力までして韓国の国籍を強要させようとすらした、そういうふうな事例もあるのであります。そればかりでなく、在日朝鮮人は個々のいろいろな生活上その他の問題において、例をあげれば今まで朝鮮というふうな国籍になっていたものを、韓国というふうに直そうと思えば、それはきょうでも行けばすぐ直してくれる。しかしその反対に、従来韓国の国籍を持っていた人が朝鮮と直そうと思っても、これはなかなかいろいろな理由をつけるなり因縁をつけて、直してくれない。こういうふうな事例は数限りなくあるのであります。 なおその他商売上の問題あるいはいろいろ多くの問題についても、日本の司法当局、官憲その他においては、意識的に韓国国籍を強要しようという、こういうふうなことが現在行われておるわけであります。 このような問題に対しましては、われわれとしては非常に遺憾にたえないのみならず、これは世界人権宣言の趣旨にも反しますし、また主権を持つ民主主義の国家としての日本の政府の決して名誉なことにはならないのではないか、このように考える次第であります。在日朝鮮人の処遇上の問題として、まずこのような国籍に伴う問題については、本人の意思また世界人権宣言その他の国際公法に基いて解決しなければならない、このように私たちは思うものであります。 第二番目に、在日朝鮮人の生活上の問題について若干申し上げたいと思います。まず生活の問題を申し上げるにつきまして、私たちは在日朝鮮人の生活という問題に対する考え方を基本的に説明したいと思います。私たちの第三回全国大会におきましてはこのように決定されているのであります。それは、日本政府に対するわれわれの基本的態度は要求のための要求ではなく、共和国の平和的対外政策にかたく依拠し、相互に主権を尊重する基礎の上に立って、当面の問題を話し合いによって解決することにある、このように私たちは日本政府に対する基本的な態度を示しております。そしてまずわれわれが第一義的に努力しなければならないのは、生活問題に対して自分自身がもっとよく努力しなければならない、こういうふうにわれわれは考えているわけであります。つまり第三回の大会におきましてはこのように書いているわけであります。失業、半失業状態にいる同胞たちは、不安定な収入を当てにするよりは、できるだけ堅実な職場を探し、二年、三年かかっても技術を身につけるようにしなければならない、こういうように書いてあります。そして、たとえば若干の資金がある同胞たちでも、不安定な、金もうけになればすぐ商売をしようというふうなことをやめて、収入は少くてもできるだけ長期性があるし、堅実性があるし、日本国民とも十分友好関係を深めるような仕事をしなければならない、こういうふうな趣旨のことをきめているわけであります。そしてこのことはさらに昨年十一月に開かれた第十一回の中央委員会におきましても、われわれの生活方針の態度として、まず何よりも自分自身がよく努力しなければならない、こういうふうに決定されております。朝鮮総連のこのような公式で基本的な決定は、日本の公安調査庁が十万円の報償費を出さなくても、すぐにでもこれはわかる明確な事柄になっているわけであります。 このような基礎の上に立って私たちは生活問題を解決しようとしておりますけれども、御承知のように在日朝鮮人の八割は失業状態に置かれているわけであります。たとえば日本赤十字の統計によっても、在日朝鮮人は無職が三十八万くらいいる、こういうように書いてありますし、その失業の率から見ても、日本人の失業率の八倍に達するというように書いてあります。われわれは実際はこれよりももっと多いのではないか、このように考えるわけであります。今日日本の国民の中においても、多くの失業者がいる中におきまして、どこにも在日朝鮮人を使ってくれるようなところはありません。中には使ってくれるといっても、翌日に履歴書を書いていったら、本籍が朝鮮と書かれていれば、これはだめになる、あるいは正式採用ではなくて臨時工として日本人に化けて入ったけれども、あとで朝鮮人とわかったのですぐ首になった、こういうふうな状況が数限りなく行われているわけであります。 そこで問題になるのは、やはりわれわれは自分でもっと努力をしますけれども、これは生きる問題であるし、生命の問題であるわけであります。だから日本政府としましては、このような問題に対しまして、俗な言葉で言えば、犬を追うにも逃げ道を置いて追わなければならないということでありますのに、このようにあしたの職がなく、食べることができない人が八割もいるのに、日本政府はほとんど何らの実際的な処置を立てていないというのが実情であります。こういう問題に対しては、われわれといたしましては、自分たちの体験からすれば、ちょっと表現が酷になるかもわかりませんが、ほとんどまあ弾圧一辺倒といっても過言ではないのじゃないかというふうに考えるときもあるわけであります。 この中で、たとえば一つの例をあげますと、商売をやるための中小企業とかその他の問題につきましても、在日朝鮮人の場合においては、金融とか融資とかその他の問題につきまして、ほとんど差別待遇がされ、融資を受けることができない、こういうふうな状態におるわけであります。また日本の零細な人々を助けるために、国民金融公庫というふうなものもあるわであります。われわれは日本国民じゃないから、日本国民と同等ということではありませんけれども、このような国民金融公庫に適用してもらうか、そうでなければ、日本国民においてさえもこういうことがあるので、在日朝鮮人に対する場合、歴史的条件その他を考慮しても、何かの方法でこういうような処置が講ぜられなければならないのに、そういうことは全くないのであります。そういうことじゃなくして、たとえば信用保証の問題その他の問題についても、朝鮮人であるからといってこれは全然受けられないという問題もありますし、また片一方においては、鉱山、船舶その他については、従前から持っておりました既得権すら奪われるというふうな状態もこの中にはあるわけであります。日本の皆さんの中におきましては、在日朝鮮人が日本にいながら日本の生活保護を受けたりして、よけい日本の米が損になるからというふうな非難あるいは誹謗を私たちは聞くのでありますけれども、朝鮮総連の方針としましては、私たちはできるだけ日本の生活保護なんか受けないで生活するようにというふうにわれわれ努力はもちろんしているわけであります。しかし失業し、あるいは病気で倒れ、あるいは未亡人等、どうにも生活の方法がない人が、堅実な職業が安定するまで、やむなく生活保護をもらうなり、その他の方法を講じらければならないのであります。むしろこういう時期におきましては、朝鮮総連が一生懸命に生活保護をもらわないように努力しているのだが、日本政府としましては、できるだけそういう方向に援助といいますか理解を持たなければなりませんのに、あべこべに、ただ在日朝鮮人の場合においては、日本国民よりも生活保護をもらう率が多いということのみでもって、一方的に打ち切ったりというふうな状況も現在たくさんあるわけであります。 例をあげますと、一九五五年十二月当時におきましては、在日朝鮮人の生活保護を受ける人員は、十三万八千九百七十二名もおりました。金額にすれば、月に約二億四千万と伺ったのでありますけれども、昨年一九五七年の六月においては、これが約八万一千名に減っておりますし、その金額も月にして一億四千万程度に減っているわけであります。このような数字上から見ましても、その一部分は、在日朝鮮人ができるだけ自分の堅実な生活の方途を考える、その過程の中において若干減るということもありますけれども、われわれのこのような努力にも反して、そのほとんどは生活の方途のない人に対して一方的に打ち切るとか、そういう方法でもって現在行われておる、こういう問題があるわけであります。これらの問題に対しても、やはり日本政府としましては、このような実情に即して、在日朝鮮人ができるだけ自分の生活を自分で生活できる、そういう方向を見ながら、こういう問題に対して無理な打ち切り、その他のことがないようにしなければならないのではないかというふうに考えるわけであります。 次に、在日朝鮮人の教育の問題について申し上げたいと思いますが、現在、在日朝鮮人の場合におきましては、民族、教育、そして全国に二万三千名以上の児童を持っているわけでありますが、これらの問題につきましても、今まで日本政府におきましては、朝鮮人の初級学校あるいは中、高級学校に対しましては、学校法人、あるいは各種学校としての学校の認可、このようなものをいまだかつて十分行なっていないのであります。同時にまた朝鮮の中、高等学校を卒業した学生に対しましても、日本の大学その他に進学する資格を認めていないわけであります。われわれは、実力のない生徒を何か特別な待遇でもって大学に入れてくれ、こういうことではなく、実際問題として、在日朝鮮人が自分の民族教育をし、日本の中、高等学校を出たと同程度の実力を持っているにもかかわらず、ただ朝鮮人学校は各種学校だとかあるいは正式な認可が下りていないのだ、そういうような形でもって、日本の大学に入るというふうな道もはばまれているわけであります。こういうような問題に対しても、私たちとしましては、朝鮮人の学校の認可あるいは日本の大学への進学その他の問題について、さっき申し上げましたいろいろな条件に照らして、実情に即するような措置あるいは考慮が払われなければならないのではないか、このように考えるわけであります。 そのほかに、たとえば在日朝鮮人は基本的な人権の面から見ましても、外国人登録法その他の問題が、朝鮮人、外国人を適正に保護するというふうな目的とは全く相反して、いろいろな人権の弾圧、じゅうりん等が行われており、はなはだしきは床屋に登録証を持たずに行ってつかまったとか、あるいはふろ屋に登録証を持たずに行ってつかまったとか、こういうふうな極端な事例が出ております。また出かせぎに行けば、登録証の住所の変更をしなかったということですぐ検挙するとが、こういうふうなことも行われているわけであります。うちにいれば食うものがないし、出かせぎに行っても職場が一定しないので、あっちこっち働いて歩けば、それは登録法違反だ、こういうふうな事態も起っているわけであります。 〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕 そのほかにいろいろ個々の問題がありますけれども、こういうふうな問題を通じて、私たちが特に申し述べなければならないのは、例を学生なんかにとりましても、日本で学資がないとか、あるいはその他で勉学のできない人が、自分の祖国、朝鮮民主主義人民共和国に帰って勉強したい、こういうふうな希望を申し出ても、これに対しては、また日本政府としましては、本人の帰国その他の問題について、何らの適正な措置がないわけであります。つまり日本の大学にも十分入る保障もできなければ、本国に行って勉強することもできない、こういうふうな状態、また技術者が十分な腕前を持っているので――日本にいてもパチンコ屋の裏回りしかできないから、祖国に帰ってもっと有意義な祖国の建設に参加したいと思っても、そのような技術者が帰るという問題に対しても、日本の政府は適切な措置を講じていない。こういうふうな問題もあるわけであります。 こういうふうな在日朝鮮人の差し迫った問題と関連いたしまして、御承知のように朝鮮民主主義人民共和国の赤十字会では、このような問題を解決するためにその代表を日本に派遣したいというふうなことを、もうすでに何回にもわたって提案いたしているわけであります。日本の赤十字代表は、朝鮮民主主義人民共和国に来て、いろいろな問題について相談をいたしておりますが、赤十字会というものは、戦時中の交戦国の間におきましても、行ったり来たりできるものであります。日本の赤十字会代表も朝鮮に来ました。まして朝鮮の赤十字会代表が日本に来るということの問題に対して、なぜこれをこばんでいるのか。しかも、それらの人の問題は、今申し上げました在月朝鮮人の差し迫った諸問題について協議し、できるなら話し合いによって、朝鮮赤十字会がそれらの問題の解決を助け、また現実に即して解決するように努力したい、このように述べているにもかかわらず、これらの問題が今日まで実現されていないのであります。また在日朝鮮人の祖国との往来の問題につきましても、御承知のようにもう戦争が終って十三年にもなるわけであります。しかるにこれらの人々は、今日まで捕虜の状態に置いているといっても過言ではないわけであります。これらの人々の海外旅行あるいは祖国との往来の問題、このような問題についても今日までまだ少しも解決されていないわけであります。 私たちとしましては、先ほども申し上げましたように、このような在日朝鮮人の諸問題につきまして、在日朝鮮人の歴史的な条件というふうな問題と、また朝鮮民主主義人民共和国の現に存在している問題、また在日朝鮮人の大部分はこの共和国の国民として正しく生活していきたいという、こういうふうな事実、こういうふうな条件を日本政府が十分考慮に入れまして、そうしてもっと合理的で、しかも現実に即するような解決をしなければならないのではないか、このように考える次第でございます。
○櫻内委員長代理 次は李栄吉君。
○李参考人 忙しい中に時間をさいてわれわれの意見を聞いて下さる委員長並びに議員先生方に、衷心から敬意を表します。 私は、スポーツ関係について、若干参考にお話を申し上げたいと思います。御承知の通り、五月二十四日より六月一日まで、東京において第三回アジア競技大会が開かれます。この大会について、朝鮮民主主義人民共和国は正式に大会参加を大会事務局あて、すなわち東竜太郎氏あてに参加するという正式申請をなされてきました。そればかりでなくして、日本にいるわれわれ、すなわち在日朝鮮人体育連合会に対して、朝鮮民主主義人民共和国がこの大会に参加する諸準備に対して、大会事務局と一切の折衝をやれ、こういう委任をわれわれはもらっています。それに従って、われわれは過去三回にわたりまして、大会事務局関係者、すなわち東竜太郎さんとそれから事務総長の田畑政治さんを中心に会いました。 この大会に参加するのに、構成する要因となるのに、大きく分けて二つの手続が求められます。第一は、参加する各国の国内オリンピック委員会があって、その国内オリンピック委員会が、国際オリンピック委員会から承認されなくてはならない、これが第一。第二は、参加する各種目が、その種目別世界機構に参加しなくてはならない、こういう手続上の問題があります。もちろんわが朝鮮民主主義人民共和国はこの二つとも手続がされております。 ここで問題になるのは、わが朝鮮民主主義人民共和国は、去年九月ブルガリアのソフィアで第五十二回IOC総会、すなわち国際オリンピック委員会が開かれたときに初めて加盟することが決定されましたが、そのときに条件というものがついています。すなわち次期オリンピック大会に出場するときは、南北統一代表を構成して、そうして参加すること、こういう条件でわが祖国のIOC加盟が承認されたわけです。それに従って人民共和国は南朝鮮に向って次期オリンピックに一緒に統一代表を作って出ようという書簡を二回にわたって送りました。そればかりでなくて、現在もラジオ、新聞等を通じまして、ぜひ早い日にちのうちに統一体を作ろうということを呼びかけりています。これに対して南朝鮮では今なお何ら返答することなく、ひどいことをいえば黙殺するような態度に出ています。過去に三回にわたって大会の事務局の責任者の方々と会いましたときに、東竜太郎さんがいわく、ソラィアで人民共和国の参加が認められたときに、オリンピックに出場するときは統一体を作ろうという条件のもとで承認されたから、これは自分の権限としてはできないと難色を示しているわけです。これはアジア競技大会といっても、国際オリンピックの地域大会だというわけです。そういうわけで国際オリンピック委員会の決定に拘束される、こうい解釈になっております。 ところがわれわれはこれに対して解釈を異にします。なるほど国際IOCの地域大会、アジア競技大会である。ところが実際は拘束されずにアジア競技大会が着々組織りされております。その一つの例をあげますと、この大会に参加するために要求される第一の手続、NOCがあるということは、先ほど申し上げましたように、IOCに認められておる。それから種目別の世界機構に加盟することです。実際にすでにこの大会参加が予定されているし、準備が進められている国々の中にはNOCがない国があります。それから種目別世界機構に加盟されていないのに、この大会に呼ばれておる国々もたくさんあります。その中で二、三例をあげますと、ネパールとかカンボジアとか、こういった国々はそういう基本的手続を踏んでいないのです。しかもそういう国々に対しては何ら難色を示すことなく、むしろ大会事務局側から進んで出かけていって、ぜひこの大会に参加してくれ、こういうふうに勧めていながら、そういった手続を完全に持っているわが祖国朝鮮民主主義人民共和国に対しては難色を示しておる、これが今日までの進行状態です。 それからもう一つ大会事務局で難色を示す理由としまして、わが朝鮮民主主義人民共和国はアジア競技連盟に加盟される手続がまだとられていないのです。先ほど申しましたように大会に参加するという申請はきましたが、競技連盟に加盟するという手続がまだなされていない。もちろんこれも遠からずくると思います。それは問題でなくて、私がここで申し上げたいことは、競技連盟に加盟する手続がなされていないとか、こういうことは――わが祖国をこの大会に参加させることは、東竜太郎、すなわち責任者であります東会長がやろうとすれば、その便法は、規約上からして十分にその道はあるということなんです。 これをもう少し詳しく申しますと、加盟申請がきますと、すでに連盟を構成しておる各関係国に対して賛否を問うわけです。その結果によって参加するしないを決定するわけですが、時間的に各国の代表を全部一堂に集めることが困難な場合、すでに五月十四日の大会を控えました現在においては、こういう問題は非常に困難だと思います。そういう場合に対処すべく規約はちゃんとその道も講じております。郵便投票で各国に対してその賛否の意見を問うことになっております。さらにまた郵便投票が時間的にできない場合は、その申請に対して是かいなかを調べた上では会長の単独の意見でそれを決することができるとなっております。ただし事後の評議員会なり実行委員会なりに承認を求めればよし、こういうふうになっております。これはアジア競技大会の憲章ですが、十六条にこういうことが書いてある。「評議員がある行動または決定を行うことができない事情にあるときには、実行委員会または会長単独で右の行動または決定を行うことができる。ただし、これらの行動または決定は、直次の評議員会に提出してその承認を受けなければならない。」こういうふうになっております。こういうことを考えますと、今わが祖国が手続一つとられていない、いわゆる先ほども申し上げましたように、競技連盟に加盟する手続がなされていないということは、この一条でも十分に処理することができます。こういうように見ていきますと、現在大会責任者が朝鮮民主主義人民共和国参加に対して難色を示す理由が、ここでもまた一つ消えていくと思います。 以上の理由で、われわれはわが祖国朝鮮民主主義人民共和国は、第三回アジア大会に参加するのを何ら妨げる条件を持ってないと確信します。しかるに大会の関係者は、われわれが理解できない条件を出して、現在なお確答を避けております。そこでわれわれとしては、正当な理由なくして当然参加すべきわれわれの祖国がこの大会に参加されないことに対しては、非常に遺憾に思うと同時に、当然参加すべきこれを最後まで主張し続けるつもりでおります。五月十四日から十七日までは東京においてIOC総会が開かれます。また五月二十三日にはアジア競技連盟の評議委員会が東京で同じく開かれます。五月十四日から十七日まで開かれるIOC総会の中では、これはわれわれの見通しで、正確なあれではないのですけれども、おそらくローマのオリンピック大会の次のオリンピック開催地の問題が議題に上るだろうということが想像できます。先ほど申しましたように、これという理由なくして、当然参加すべき国が、日本国の事情かあるいは日本国と直接利害関係を持つある国々との関係の都合によって参加できないとすれば、これは非常に、ただ何と申しますか、そのままではわれわれは満足できないのであります。こういうように解釈されます。現在日本の国会の中でもいろいろその準備を進めているという話を聞いております。日本の政府で直接相当な責任者がこの運動に対してやっておる運動というのは、ローマの次のオリンピック大会を東京に招致しようということです。それと関連しまして、われわれのこの正しい主張が最後まで受け入れられないとすれば――われわれの意見に対して賛成する国々もたくさんあると思います。その一つの例としまして、すでに今度の第三回アジア競技大会に対しても朝鮮民主主義人民共和国参加を熱烈に支持して、必ず参加すべきだということで大会の事務局に書簡がきております。バレー部門においてこれは本部がパリにありますが、大会事務局あてに朝鮮民主主義人民共和国は今度の第三回アジア大会には当然参加すべきだという意見書が、書簡が参っております。またボクシングにおいても、もちろんこれは国際機構ですが、本部はロンドンにあります。ここからでも同じ内容の書簡が大会事務局に、東竜太郎さんあてにきております。こういうことを思いあわせるときにわれわれの主張がそれほどわれわれの主観だけではないということが立証されると思います。そういうことと関連しまして先ほど申しました五月十四日から十七日まで東京で開かれますIOC総会並びに二十三日から開かれるアジア競技連盟の評議員会には、われわれの意見に賛成する国々の代表と相談しまして、この問題をも両総会にも反映させることをわれわれ努力するつもりでおります。 もちろんわれわれはローマの次のオリンピック大会が日本の東京で開かれることをだれよりも熱望するものであります。その第一理由は、戦前に東京で開かれることを決定されましたけれども、第二次大戦のためにこれがお流れになりまして、それからまたアジアにおいてオリンピックがまだかって招致されたことはないのです。同じアジアにいるわれわれとしては、何としても早いうちにアジアのどこの国でもよろしいかと思います。アジアの一角にローマの次の大会を招致したいということについて、日本の皆々様に劣らない気持で望んでおります。そういう意味を考慮しまして、神聖にして公正に公平に取り扱わるべきこのスポーツの間において、政治的の考慮が払われたりあるいは一方的な解釈がなされて取り扱われるならば、非常に遺憾と思います。そういうことのないように文部省、外務省並びにその他関係諸機関並びに大会事務局で円満な解決が得られるよう、御努力下さることを切望します。
○櫻内委員長代理 質疑の通告がありますので、これを許します。松本七郎君。
○松本(七)委員 ただいまいろいろ広範にわたる御意見を伺ったのでございますが、ずいぶん問題がいろいろ山積しておる中にあって、最も親密にやっていかなければならない両国民の間を、今後いかに円満に対処していくかということは、非常に大事な問題だと思うのです。私どもとしても、今までもいろいろな問題について、それぞれの観察なり意見を持っておったのですが、今日わざわざ出てきていただいて、御意見を述べていただいたので、今まで考えておったより以上に、事情にも通ずることができたことを非常にうれしく思いますけれども、二、三の点について、なおもう少しはっきりした御説明をお願いしてみたい点がございます。 第一は、先ほど最初に尹さんがちょっと触れられたのですが、在日朝鮮人の身分上の問題が、日韓会談に相当重要な要素を占めておるような御発言があった。これについても、私どもは今までいわゆる日韓会談というものが円満に進めば、相互釈放の約束もできておりますし、何しろわれわれの同胞が抑留されておる者が帰ってくる、それからその他の問題も会談が円満に進むことによって、だんだん解決を見るという点から、非常に日本国民はこれを熱望しておったわけです。今までわれわれが聞いておったところでは、在日朝鮮人総連合としては、日韓会談は反対だ、こういう御意思の表明があったように思うのですが、その反対の理由というものは、私は必ずしも日本国民の間には徹底していないと思う。今尹さんがちょっと触れられた身分上の問題も、重要な問題としておそらく考えておられるのだろうと思うけれども、何となくただ韓国と日本との間の話し合いだから反対だというふうに、単純に日本国民の間に受け取られると、これはお互いの間に理解を深めるというところから、はなはだ遺憾なことじゃないか。やはり朝鮮人総連合として、なぜこの日韓会談に反対されるのか、もしこの会談を進めることによって、何らか在日朝鮮人の身分上の大きな被害でも来るおそれがあるというようなことが、日本国民の間にもう少し実情がわかれば、この日韓会談の含む危険性というものについても、日本国民はもっと理解できると思うのです。ですから反対されたことの事実をまず確かめたいのと、反対される理由と、もし身分上の問題について非常な危惧があるとすれば、何らか具体的なそういう心配される理由がはっきりしたものを、皆さん方が総連合として得られた情報なりそういうものによって、たとえば韓国側が在日朝鮮人の身分上のことを条件にこの会談を開くとか、あるいは会談を開かれればそういうことを必ず持ち出す傾向が具体的に現われてきておるとか、何かそういうことについての御説明が、もう少し詳しくお願いできればけっこうだと思います。一つずつ答えていただきたいと思います。
○尹参考人 お答えいたします。日韓会談そのものについて、在日朝鮮人のとっている態度と申しますのは、先ほどもちょっと触れましたが、日本と韓国、いわゆる李承晩の問題について緊急に解決しなければならない懸案の問題があれば、たとえば李ラインの問題とか漁民の問題とか、こういうことはそれとして解決するのは、われわれも、大いに賛成であるし、それに対してとやかく言うのではないのであります。ただ私たちの場合、常に朝鮮の平和的統一を念願しているものでありますが、現実に朝鮮が南北に分れているそのときに、この間日本の国会の方でも日本の政府当局の答弁によりますと、はっきりそういうことを言っておりますが、あたかも韓国を全朝鮮を代表するような行き方で問題を進めているということが、まずわれわれの絶対承知できない点なのであります。こういうことは、それはひいては朝鮮の平和的統一に対しても――御承知かとも思いますが、現在朝鮮の統一問題については二つの行き方がある、こう言われています。一つは平和的に話し合って統一しようじゃないか、一つは李承晩さんのやっているように、北の方に武力で侵攻して統一するのだ、こういうような二つの行き方があるわけです。その武力で統一するのだという李承晩さんと、日本の政府が接近していくということは、結局は朝鮮の平和を再びかき乱すし、また朝鮮の平和的統一を遅延させて、今日の分裂状態を固定化させるような結果になる。こういうことになりますと、われわれの朝鮮人民の念願とは反してきますので、その点を考えまして、決して李承晩政権は全朝鮮を代表するものではないのだという、その点を一つ明らかにしたいわけであります。 その次に身分上の問題と申しますのは、これは現に大村収容所の問題でもさきにありましたが、今でも李承晩側の方では御承知のように、日本におる朝鮮人は全部韓国のいわゆる国民だという建前をとっておるわけです。だから百何人かの北の方への帰国希望者の問題も、それを反対しておるわけです。こうなりますと、さっき申しました日韓会談の場合に、日本政府が李承晩を全朝鮮を代表する政権のように取り扱うということと、その結果は、当然日本における在日六十万の全朝鮮人は韓国の国民だ、こういう建前でいくわけなのであります。そうしますと、さっき朴参考人からもるる国籍上の問題やらありましたが、いわゆる国籍を選択する個人の自由な意思の問題とか、あるいは帰国において北へ帰りたい者の希望とか、こういう一切のことが、一方的に日本と韓国との取りきめによって韓国側の思うままの結果になってしまうわけであります。ですからこれはもっと大きくはやはり平和の問題にも通ずるし、そういうことをすることによって、今いろいろ心配しておりますが、御承知かと思いますが、南朝鮮にはいろいろな核兵器が運び入れられたり、軍事力が増強されたりしております。そうすると、日本におる青少年の問題は、向うでは人的資源として徴兵の問題として取り上げようとしておる。あるいは商工人が日本において孜々営々として築いた財産上の問題も、いろいろ韓国側の方で利用しようとしておる。こういうことは、李承晩のそういう侵略的なやり方、これは大きくはさらに南朝鮮をアメリカが占領しておるという事情もあると思いますが、このようなアメリカやあるいは李承晩の侵略的な力量に、日本における朝鮮人が利用されることをわれわれは望まない、こういうことになるのであります。従いましてこの身分上の問題というのは、日韓会談の問題と密接に結びついて、それを全朝鮮の代表として見るか見ないかということによって、日本における六十万の朝鮮人の問題というのは、そういう身分上に、大きな外部からの圧力による、政治的な圧迫による変化を強制されるということが、われわれには危惧されますし、その前ぶれとして、今大村収容所の北朝鮮に帰りたいという希望者たちに対する問題がなぜすなおに、ありのままに認められないのか、自由意思を表示する機会も与えられない、そして表示されたものに対しての帰国の実現を保証することもはっきりしていない、こういう点が具体的にはそういう方向へいこうとするのじゃないか、その点をわれわれは心配するし、そうでないように要望しているわけであります。
○松本(七)委員 それからさっき御説明がありました生活上の問題、その他非常に困難な条件のもとにあるので、いろいろな犯罪も多く出るだろうと思うのですけれども、これらについてもやはり日本国民からすると、そういう政府がもっとなすべきことを十分やらないで、非常に朝鮮人の生活条件というものが悪いということをとかく見落して、朝鮮人なるがゆえに釈放されればまたすぐ犯罪を犯すというふうに表面だけを見やすいのです。そういう意味からも、これはもちろん日本政府としてもっともっと私は対策を充実しなければならぬことだと思いますけれども、朝鮮人総連合としても、これまた困難な条件下にありながら、やはり犯罪防止についてはいろいろ努力されておるのじゃないかと思いますけれども、特に最近の、釈放後朝鮮人は帰国しないですぐ犯罪を犯すというような日本国民から起っておる声に対処して、総連合としても御苦労なさっておることだろうとは思いますが、何らか特にこれらに対する対策はお持ち合せなのでしょうか。もちろん日本政府としてこれはやらなければならぬ問題は当然あるので、われわれとしても大いにこういう点はただし、また積極的にするように努力しなければならぬのですけれども、いわゆる朝鮮人の犯罪の実情ですね。皆さん方がつかんでおられる実情と、それに対してどういう対策を持って臨んでおられるか、少し御説明願いたいと思います。
○尹参考人 まず具体的に今の大村収容所から釈放されました刑余者の生活の問題についてちょっと申しますが、日本において釈放された大村収容所におった刑余者のうちで、私たち朝鮮総連が身元を引き受けた人たちがおりますが、この場合何でも日本の政府といたしましては、社会の更生団体とかこういうところで引き受けられるときには、初めの約三カ月に限って日に八十一円かの、――長い間の抑留から出てきてすぐに職もないし、困っているだろうからということでそれを支給するのだそうであります。その場合に、私たちの場合には、これは何かそういう救済団体じゃないというので、朝鮮人総連が引き受けた人たちにはそれももらえないのであります。従ってこれは現在われわれの組織が、各下部の組織、支部とか分会とかあるいは県本部その他の組織が今引き取っているわけであります。そうして長い間の抑留でふとんもない、おるところもない、もちろん職場もないという人たちに対して、今みな力を合せて出し合って、臨時的には、この人たちが再び――何かこういう社会で、暗い過去を持っている人たちの場合ですから、そういう人たちが再びそういう道を踏まないようにということで、同胞愛でもって今一生懸命に生活の道やめんどうを見ているわけであります。そういうことで現在までのところ私たちが引き受けた刑余者のうちからは、一人もまだ再び暗い道に入ったという人はおらないのであります。これは新聞紙上に盛んに、刑余者が出てきてすぐに何か悪いことをやったということが報道されるたびに、実は朝鮮人はだれかれなしに胸を痛めるわけでありますが、これを悪く解釈すると、何がこう朝鮮人は出てきてすぐ悪いことをした、あれだけ騒がせて刑をさせておいたのにまた悪いことをしたというふうに、一方では何か報道機関あたりで事以上に騒いでいるのじゃないか、日本人によくない印象を与えるのではないかという心配もありますが、その点がわれわれの場合にはやはり心配なので、その点は一生懸命ないように努力して、現在のところわれわれが引き受けた中には一人もいないのであります。あれは、私たちと立場を異にする人たちが引き取った人たちなのであります。このことをまず明らかにしておきたいことと、その点と関連しましてぜひとも申し述べたいことは、その人たちが今切実に何を望んでおるかといいますと、過去にいろいろな誤まった道を歩いた。ところが三年あるいは四年間中に収容されておった。あの中には朝鮮民主主義人民共和国帰国者たちが公民自治会というものを自主的に組織しまして、長い間非常にまじめに学習をやったり、自分たちの過去をいろいろ顧みたりして非常によい教養をあの中で受けているのであります。ですから、今度出てきたどうしても新しい人生をスタートしたい、もう一回社会に出たら今度は間違いのない道をいきたいということで、どこへ希望を置いているかというと、自分の祖国である北朝鮮――社会制度も違いますが、あそこへ帰って新しい人生を踏み直したいということを切実にあの人たちは訴えてきておるわけであります。日本でこういうことがあったという刑余がついただけでも、おそらく職場は与えられないだろうし、また朝鮮人同士が保護し合うといっても、時間的にも物質的にも制限があることですから、いつまでも世話になるわけにはいかない、職場は見つからない、だから早く何とかして帰って新しい生活を出発したい、こういう希望を私たちのところに言ってきているわけなのであります。だけれども御承知のように今のところ帰るということもできない、こういう結果になっておるのであります。このように生活上の問題、その他いろいろな、犯罪と申しましてもそのことは日本の法律を守らないという問題などもある思いますが、そういう場合に、われわれがいつも一番考えますのは、日本の国内法はどうしても守るべきものなのだから、さっきも話が出ましたが、登録の問題なんかもそうです。その中に指紋登録をやる、日本の国に住んでおって、どうしても指紋をとらなければいけない、こういう場合に、普通の外国人だったら、これは自分はいやだから、そういうことは朝鮮人の習慣や伝統からいうと犯罪人扱いでいやだから、その場合日本に暮すのがいやだから、私は帰っちゃう、こういう自由があるならばああいう場合でもわかるわけです。ところが御承知のように帰る自由はない。そして日本国内にちゃんとおりの中に入れられたような状態で――これは歴史的な事情による。そのままの状態において朝鮮人に指紋をとれ、こうなるので、それじゃいやなものは帰れるようにでもしてくれ、こういうことになるのであります。 〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 この点はどうしてもわれわれ朝鮮人の場合にはほかの外国人と違って、何かそこには特殊な便宜といいますか、歴史的事情によって例外が設けられてしかるべきじゃないか、こういう点をわれわれ主張するわけです。そうしますと、これは日本の法律を守らないのだ、すぐこういうふうになってしまう、それも不法だ、こういうふうになってしまう。そういう点が、今日本におる朝鮮人の解決されない自分の祖国との往来の自由とか、技術を持っていても職場がないから帰りたいといっておる、ところがそれが帰されない、こういう問題と関連しまして、社会上のいろいろな犯罪とかあるいはその他の法律を守らないとかいうことが、朝鮮人の場合には、今申しましたような立場、現在の条件、置かれている状態、これが一歩前進しないと、どうしてもこのことはわれわれの希望、一生懸命一方的に努力しましても、なかなかうまくいっていないというのが実情なのであります。そうして生活指導上のわれわれの方針というものは、先ほども参考人からも申しましたように、まず第一には自分の勤労によって生活をする。それから一つでも、日本の社会で進んだいろいろな技術とかこういうことを身につける。第二点はそれなんです。身につけて、自分の祖国の建設に少しでも役立つような人間に自分がなるように準備する。第三点は、日本国民と近所隣合わすから、いかにして仲よくしていくか、このことがわれわれの生活を守ることなんだ。そのためには朝鮮人同士で、いわゆる力を出し合って、相互扶助によってわれわれはやっていくのだ。こういうのがわれわれの生活指導の基本方針なんです。ところがさっき申しましたように、それはやはり限界があって、幾ら働こうと思っても職場がないとか、朝鮮の業者がおりますが、そこへ行こうとすると融資その他の問題について事業が拡張されないとか、こういうところはどうしても限界があるので、この問題についても、われわれ方針は正しく打ち出していますが、まだ十分な成果が上げ得られていないというのが現状なのであります。
○松本(七)委員 それから、これもさっきちょっと触れられましたが、公安調査庁の藤井長官の国会における答弁、朝鮮人総連合が破防法の対象になると言われた。さっきちょっと触れらたのですが、何か具体的に公安調査庁なりあるいは警察なりが、在日朝鮮人に対して、そういう特別の調査をしているというような事例がありましたら、御遠慮なく少し知らしていただきたいと思います。
○朴参考人 この問題につきましては、非常にいろいろな例がたくさんあるので、無数といってもいいくらいでありますけれども、一つ、二つ例を申し上げましても、たとえば昨年の八月と九月に分けて、静岡地方の公安調査局の人は、柴田という名前ですが、この人は静岡県の清水の朝鮮人学校の教員である朴吉南という人に物品を贈ったり、あるいは呼び出しをしたり、あるいはジープに無理やり乗せて連行したり、あるいはスパイを強要した、こういうような具体的な事実がこのように行われているわけであります。また福島県なんかにおいては、公安調査庁において、朝鮮人関係に対して特別にスパイし、あるいはその中において幹部を堕落させたり情報を集めたり、朝鮮人の中においていろいろ混乱を起したり、デマを飛ばしたり、そういう特別な作業班というものを作って活動しております。そのように公安調査庁と警察当局から、具体的な秘密文書というものも出ているわけであります。これらの問題について、必要であれば私たちは委員の皆さんに見せることもできるわけでありますが、こういうふうなこともあるわけであります。そのほかに弱点といいますか、何が商売の許可をするときに、その交換条件にスパイになれといったようなこと、あるいは何かの刑事問題あるいはその他の問題で検挙されたりして出てくるときには、必ずスパイを約束されたり、あるいは密入国なんかで入って仮釈放の放免のときには、必ずスパイをするように、そのような交換条件をつけたり、これらの問題、あるいはその他のいろいろな、朝鮮総連なら朝鮮総連の幹部に対して、いろいろな物品の供与とが、あるいはいろいろ電話をかけたりしてきて会ってくれとかその他の問題、こういうことは全国においても数限りなくこのように続けられているわけであります。このような問題を、この間の法務委員会で藤井公安調査庁長官もみずから認められておると思うわけであります。私たちとしましては、平和共存の原則というものは、やはりお互いに主権を尊重し、お互いに内政に干渉しないし、お互いに侵さないで、平等互恵で生きていくというふうな問題だと思うわけであります。東洋人の道徳からすれば、自分が尊敬されようと思えば、まず相手を尊敬しろということになると思います。在日朝鮮人としては、一生懸命に日本の法律、あるいは日本国民の風俗、美しい伝統をとうとび、そして仲よくしていこうとしているにもかかわらず、日本の公安調査庁当局がこのようなことを続けており、しかも国会においても問題になった報償費を出しておるのだということを聞かされては、われわれとしては非常に残念であるし、これは道徳的から見ても、あるいは朝日両国民の親善関係から見ても、非常に遺憾なことではないか、このように考えておる次第であります。
○松本(七)委員 ちょっと政府に聞きたいことがあるのですが、時間の関係で政府の答弁は別の機会に譲ることにいたしましょう。スポーツ関係は、いずれ同僚委員から詳しく御質問があると思いますが、経過で一つだけお聞きしておきたいのは、在日朝鮮人体育連盟ですか、それとしては今までアジア競技会参加の問題については、大会事務局とだけ話されたのか。あるいは日本政府関係者とある程度この問題について話をされたのかどうか。もしされたとすれば、だれと話をされて、政府側はどういう意向を表明されたか、ちょっともう少しお話を願いたいと思います。
○李参考人 先ほど申し上げましたように、大会関係者とは三回にわたってお話しました。そのほかに文部政務次官臼井さんに会って、それから同じ場所で社会教育局長福田さんにも会って、同じ場所で同じ時間に要請しました。そのときわれわれは、先ほど申しましたその中の一端を出しまして要請しましたのに対して臼井さん並びに福田さんは、直接自分がこうしろ、ああしろと言う、そういう組織ではないし、これは体育協会並びにアジア競技大会事務局でやることであります、こういう答弁がありました。このほかに、われわれまだいろいろな角度から要請しましたのに対して臼井さんは、もちろんあなた方のことはよくわかります。しかしあなた方の満足するように取り計らえば、韓国ではむしろまたそれに反対する強硬な意見がくるだろう、こういうことを申されました。われわれの立場としては、どちらにもいいようにしなくてはならないから非常にむずかしい問題だ、こういうことを申されました。そこで時間がないからお話はそれ以上進めることができずにお別れしまして、別れるときに臼井さんと福田さん二人とも大会の関係者ともう一度――福田さんがその前に一回会ったそうですが、あなた方の主張と若干違いますから、もう一度会って詳しくお話しした上で、またお会いしてもいいでしょう、そういうことでお別れしました。
○松本(七)委員 もう一つだけ伺っておきたい。先ほど朝鮮人総連合の綱領及び運動方針にちょっと触れられたのですが、内容までは言われませんでしたけれども、過去の在日朝鮮統一民主戦線ですか、これと今の総連合の違いですね。詳しいことは必要ないのですけれども、最も大きな違いはどこにあるのか、その綱領、運動方針などから重点的なものだけでも御説明願えると大へん参考になると思います。
○尹参考人 綱領とか規約を対照させて見ますと、よく違いの点が出てくるのでありますが、過去の民戦のとき朝鮮人運動の指導方針というのは、当時一番重要であったことは、日本における朝鮮人の生活を守ること、あるいはあの当時は特に朝鮮戦争中ですから、日本からどんどん飛行機が飛んで行く、こういう点にみんなの頭がしぼられていって、日本から朝鮮侵略の飛行機が飛んで行くことは、どうしてもとめなければいけないということでした。生活の問題は、歴史的な条件から見ても、当然日本政府が何とか対策を講じてもらわなければならぬ問題じゃないか、自主的な努力も大事だけれども、重点は日本政府の方の対策にあるんだ、こういうふうな考え方が主になって運動が進められておったということが言えるのじゃないかと思うのです。ただ、そういうことが発展して参りますと、ややもすると日本政府に対する内政干渉になるような誤解を受けるような行き過ぎが出てきたりしたのじゃないか、そういうことがいけない、われわれは外国人として日本におって、社会制度の違いなどいろいろなことがあっても、外国の公民としていくのにはそれではいけないんじゃないかということで、朝鮮民戦というものを解散いたしまして、三年前に先ほど私が申しました生活の問題、その他すべての問題について日本におる外国人としてのあり方、自分の立場というものを明らかにした方針をはっきりさせた上で朝鮮総連ができたわけなのであります。大体そういうことが言えるのじゃないかと思います。
○床次委員長 戸叶君。
○戸叶委員 まず第一に尹さんにお伺いしたいのですが、在日朝鮮人の方が大体六十万人くらいいると言われておりますけれども、その中で日本人と結婚していられる人が大体どのくらいおられるか、おわかりでしたらおっしゃっていただきたいと思います。
○尹参考人 正確な数字を今申し述べることがちょっとできないのですが、地方によりまして、たとえば北海道には約一万一千おりますが、あそこの場合は八割以上が日本の婦人と一緒になっている方たちなんです。北海道は特殊な例で、戦時中のいろいろなことからそういうことになっております。そのほかそうでない地域もありますし、そういうことがいろいろありましはっきりしたことは言えないのですが、全国的に見ましておそらく三割ないし四割くらいは、日本の御婦人と国際結婚をしておられる方たちじゃなかろうかと考えるわけです。
○戸叶委員 そういう方々が今度朝鮮に帰る場合には、当然日本の女性を連れて行くわけでございましょうが、そうした場合には日本で手続をして国籍を朝鮮に変えて連れて行かれるわけなんでしょうか。
○尹参考人 朝鮮人の場合、現在外国人登録によって朝鮮とか韓国とか国籍が示されているわけです。それによって朝鮮人と一緒に暮しておられる日本の御婦人が主人と同じようなものになっている人たちは――今のところ籍の問題とか、さっき身分上の問題と言いましたが、結婚の場合のいろいろな問題とか子供の籍の問題がまだ全部未解決のまま残っていますので、これを一方的に韓国の代表部の方に持っていくということになりますと、われわれのとっている立場から、韓国の方でお前が大韓民国の国民にならなかったら出してやらない、こういうことになりますので、そういうことも工合が悪いということで、おやじの財産の相続の問題とか子供の籍の問題とか未解決の問題もたくさんありますが、そういう意味で、今御質問の日本の御婦人の場合には、朝鮮人と一緒になったことがはっきりしている人たちは一緒に帰れるわけです。すでに一緒に帰った人もたくさんあります。その例はあります。それから、そうでない未解決のままになっている人たちの場合は、それはまだそれとして未解決のままに残っておる、こういう現状です。
○戸叶委員 未解決のまま残っているというのは、内縁関係とかそういった形ということですね。 それから先ほど国籍の問題で、朝鮮から韓国の籍に希望した場合には大へんやさしい、しかし韓国の籍のある人が朝鮮の籍を望んだときには非常にむずかしいというふうにお話しになったわけなんですけれども、朝鮮から韓国の籍に変えた方がどのくらいあるか、それからまた韓国の人で朝鮮の籍を望んでおる人が大体どのくらいあるか、おわかりになったら示していただきたい。
○朴参考人 この問題については、外国人登録法には国籍の欄に朝鮮、韓国と記入することになっているわけであります。日本政府の統計では、正確な数字はわかりませんが、十四、五万が韓国で残り四十六、七万は朝鮮というふうに国籍欄にはなっているのじゃないかと思います。これは、出生の問題その他もありまして全体的に両方の数字ともふえていると思います。しかし、そのふえた率からすると、ここ何年かの間において、韓国という国籍が一、二万ふえているのじゃないかと思います。その理由は、さっきも申し上げましたように、内心では韓国の国籍に反対し李承晩政府に反対して、どうしてもそのような屈辱的なことを取得するわけにはいかないのだけれども、商売の何かの許可のときにどうしてもそれでなくちゃいけないというのでそういうふうにしたものもありますし、あるいは日本の在留許可なんかを受けるときに、朝鮮人ではいけないというのでやむなく韓国の国籍にした、こういう問題もあります。また、南朝鮮に親兄弟等がいるので南朝鮮に行こうと思えば、現在は駐日代表部に行って国籍を直し、多くのわいろもやらなければ行かれない。しかしやはり親兄弟に会うためには行かなければならない。そういう意味において、ほんとうの気持はそうじゃないのだけれども、国籍を韓国にしている、こういう実情であると思います。だから、これらの人々が完全な形で自由意思が表明されるならば、韓国の国籍が十何万というのも、もっと少い数字になるのじゃないかと考えるわけであります。先ほども申しましたように、これを直すためには区役所あたりに行って申請をするわけなんですけれども、大ていの場合には今まで朝鮮だったものを韓国に直すのならばすぐ受け付ける、けれども韓国を朝鮮に直そうとすればいろいろ理由をつけて、まあ直さない方がいいじゃないかとか、そういうことはなかなかできないのだとか言って、ほとんど絶対にと言ってもいいくらい直してくれない、こういう状態にいるわけであります。
○戸叶委員 この問題はあとからまた政府の方に聞くことにしたいと思います。 先ほど日本の大学なんかを希望している人たちが多い、それから朝鮮に帰って大学に入りたいというような希望者が多いということでございましたけれども、さしあたって今日本の大学に入りたいのだけれどもというふうな希望者が大体どのくらいおられるか、おわかりだったらお示し願いたいと思います。
○朴参考人 大体ことし全国において朝鮮人の高等学校が九校あるわけですが、ここの卒業生が約八百人に達するのであります。これらの卒業生はその大部分がやはり日本の大学なんかに進学したいし、またその中の一部分は祖国に帰って勉学したい、こういうふうに願っているわけであります。民族教育については先ほども申しましたように、ちょうど日本の国民もブラジルあたりに行って何十年住んでいても、子供の教育のためには日本に帰ってくるのと同じであって、朝鮮人の中にも日本においてどうしても民族教育をしたい、そうして日本でできない場合には祖国に帰っても勉強したい、こういうふうな状態にいるわけでありますけれども、先ほど申しましたようにいろいろないわゆる形式上の制限といいますか、実際実力もあるし日本の高校以上の勉強をしているにもかかわらず、ただ形式的な資格というようなことで日本の大学に入れてくれない、過去の日韓の問題とからんで認められない、こういうことが現在あるわけであります。
○戸叶委員 そのことはおそらく去年もあったろうと思うのですけれども、そういうふうな高等学校を出られた方が大学へ行きたくても資格の問題で受験させてもらえないということになると、進学の道がふさがれているわけです。そうした場合に勉強したくてもできないし、国へ帰って勉強もできないということで、高校を卒業してその後は大体どういうふうな道を歩んでおられるのですか。
○朴参考人 こういうふうにして大部分の卒業生は、先ほども申しましたように朝鮮人の八割が失業しているということと関連しまして、ほとんど職場を得ることもできないでいるわけです。だからまあきわめてまじめな生徒は、うちで一生懸命独学するでありましょうけれども、その多くはうちでぶらぶらしているとか、あるいはどうにもならないから結局は不良化といいますか、やはりそういうふうな問題も、朝鮮人の場合においても日本の高校生とか青少年と同じく全然ないとは言えないので、そういう面にも流れる。そういう点で非常にわれわれとしましても困難な立場というか、そういう立場にいるわけであります。
○戸叶委員 もう一点伺いたいのは、未亡人家庭はどのくらいあるか、おわかりでございますか。
○朴参考人 この問題については正確な統計というものはよくつかんでいないのでありますけれども、先ほども申しましたように大部分の人々が強制徴用で連れて来られた、そういうような関係もありまして、相当南方あたりでも犠牲になった人もあるわけです。現に私もただ一人の兄さんが南方の軍属に行って帰って来ないわけですが、そういうような関係で割合朝鮮人の場合においては未亡人が多いわけであります。そうしてまた長年日本に住んでおるという関係で、日本で主人がなくなる、そういう関係もありまして、一般の日本国民の未亡人の統計がどの程度かわかりませんけれども、おそらくその率よりは多いのではないか、決して多くこそあれ、少いということはないのではないかというふうに考えるわけであります。
○戸叶委員 次にスポーツ関係のことを伺いたいと思いますけれども、スポーツはやはり何といっても政治的なことでいろいろ支配さるべき問題ではないのですが、先ほどいろいろお話を伺っておりますと、何か政治的な圧力がそこにあるのではないかと思われるような節も見られたわけですが、この点、何か具体的に政治的圧力があるのではないかと感じられるような点がおありになりましたら、おっしゃっていただきたいと思います。
○李参考人 具体的に先ほど文部政務次官のお話の中には、あなた方の話はよくわかりましたけれども、あなた方の要請をそのまま聞くとすれば、おそらく韓国では猛烈な反対意見が出てくるだろう、こういうことで非常にむずかしいということを言われました。その中にはわれわれ政治にうといしろうとでも、何かそういうものを強く感ずるわけです。 それからもう一つは、大会の会長である東竜太郎さんが現在朝鮮民主主義人民共和国の参加に対して難色を示す。先ほども長く申しました通り、そういう条件の上で難色を示すということは、幾ら頭をめぐらしてもほかには理由があまり見出せないのであります。そういうところでわれわれなりに解釈するとすれば、やはり対韓国関係あるいはそのほかに朝鮮民主義人民共和国が日本で開催される第三回アジア大会に参加することに反対する国々の反対意見があるのではないかということは、これは直接関係者からそういうふうな具体的な言明を聞いたことではないのですけれども、そういうことは相当事実に近い想像で言えるのではないかと思います。
○戸叶委員 先ほどのお話の中で去年の九月のソフィアでのIOCの総会で、次期オリンピックの大会に出席のときは、南北統一した代表で出るようにというふうな条件がつけられておるわけでございますが、それに対して今のお話を承わっておりますと、何とかして統一した代表を出そうとして手を尽しておるけれども、なかなか統一代表が出せない、というよりもむしろ朝鮮の方からの呼びかけに対して韓国の方から返事が来ない、こういうふうなお話でございましたけれども、今後統一代表というものが努力によって出し得るような可能性があるとお考えになりますか、とてもこれはだめだろうというふうにお考えになるでしょうか。
○李参考人 それは先ほども申しました通り、朝鮮民主主義人民共和国では、ソフィアの決定に従ってそれを忠実に守ろうとする努力をこの瞬間も続けておるわけです。それに対して南朝鮮が一向に応ずる態度を示さない、こういうことなんですが、朝鮮民主主義人民共和国の立場としては、今後も可能な限り時間とかそういう日にちが許される限り、南北統一代表を構成することについて最善の努力を尽すだろうということです。 それからもう一つ、可能性ということですが、今申し上げた通りに南の方では一方的に返事がない、こういうのが現在の実情ですが、これに対してわれわれ前々から大会の関係者にも要請しております。臼井さんにも要請しましたが、韓国がそういうソフィアの決定精神を踏みにじって勝手なことをするのに対して、日本政府あるいは大会を開催する関係者は――今度日本で開催しますから、そういう日本政府並びに大会関係者が南朝鮮代表と北朝鮮代表を日本に呼んで、統一代表を作るかどうかということはそのときからの話で、ともかく話し合いをさせるということ、ソフィアの決定精神を守るためにもそういうことはなされてしかるべきだとわれわれは解釈しております。そのことは東竜太郎さんにもたび重ねて要請しております。その理由として、特にそういう要請を重ねていることは、東さんが現在朝鮮民主主義人民共和国参加に対する難色を示す理由の一つとして、ソフィアの決定を終始出しているわけです。そのソフィアの決定精神をもっと積極的に分析すればそういうことに帰着するのだということで、われわれは南北代表を日本に呼んで、日本の主催者あるいは日本政府のあっせんによってでも、この話し合いをさせるべきだということを要請しております。
○床次委員長 なるべく簡潔に願います。
○戸叶委員 簡単にいたします。そこで今望んでいられることは、何とかしてこのソフィアの決定通り、統一代表が出せるように日本の会長が骨を折ってほしいというような、こういうふうなことだろうと思います。そこで先ほどのお話を聞いておりますと、アジア競技大会に出席するためには二つの手続があるが、その二つの手続は朝鮮としてはやっているわけなんです。しかし問題にされている点は、アジア競技連盟の方に加盟していないから、そこでいろいろ言われている。しかしアジア競技連盟に加盟しておらなくても、こうこうこういうふうなことでもってやれるのじゃないかということを先ほどおっしゃったわけですね。そうするとほかの国で、アジア競技連盟に入っておらなくても、アジア競技大会に出られる。その手続をしていれば別に差しつかえないわけなんですね。その点を伺いたい。
○李参考人 その通りでありますが、先ほども申しました通り、そういう二つの種目別世界機構に入ること、それから国内オリンピック委員会が、IOC、国際オリンピック委員会から認められること、この二つのことがこの大会に参加する手続上の大きなことですが、この二つがなされなくてもできる方法もあります。先ほどそれを申し上げましたが、会長の職権によって十分処理できますし、またそれ以上にわれわれが、わが祖国に対する扱いに対して遺憾に思うことは、そういう規約にのっとってやることそれ以上に、現在組織委員会なりあるいは大会事務当局では、そういう手続がなされていないのにもかかわらず、積極的に大会参加を勧誘しているということです。こういうことも見合せますと、われわれの祖国朝鮮民主主義人民共和国は当然参加さるべきじゃないか、こういうことを主張するし、要請を重ねているわけです。
○戸叶委員 私この間非公式ですけれども、藤山外務大臣にこのことを廊下でちょっと聞いてみました。そのときに外務大臣は、評議員会が近いうちに開かれるかもしれないが、そこで問題に出してみたらいいというふうなことをおっしゃったのですけれども、今のお話を伺っておりまして、評議員会というのは大へんアジア競技大会に近づいて開かれることで、時期的に間に合わないということになりはしないかと思いますけれども、その点だけ念のために伺っておきたいと思います。
○李参考人 その通りです。評議員会は五月二十三日に開かれます。東さんは、われわれの加盟申請なりそういうものがくればそこにかけると言ってもいます。そこにかけて、その結果によって取り扱おうとすれば、そこでかりに満場一致で参加するのが決定されても、実際にはこのたびの第三回アジア競技大会には、朝鮮民主主義人民共和国は参加できないのであります。先ほども申しました通り、その以外の方法がなければ別ですけれども、それ以前に、そういうような評議員会あるいは実行委員会にかけなくても、時間とか場所とか、そういう諸条件で不可能な場合は、そういうことは次の評議員会あるいは実行委員会で事後承諾――会長の職権でそういうものは全部処理して、そういった手続上のことは事後承諾で可能になります。われわれはこれを適用させて、よろしく処理して下さいということを東さんに続けているわけです。
○戸叶委員 この問題は予算委員会でちょっと出まして、文部大臣もなるべく早く考慮するというふうな答弁をしておられます。そこで、もうそのときから半月以上たっておりますから、文部大臣のお考えも何とかまとまっておることと思いますので、明日文部大臣にここへ来ていただいて、そうして私は質疑を続行したいと思います。
○床次委員長 並木君。
○並木委員 私はいろいろお聞きしたかったのですけれども、時間がないようですから一つだけ尹さんにお聞きしておきます。それは大学でございますが、今も教育の問題が出たようですけれども、大学まで行きたい人がずいぶんいるということで、あなた方の方で何か大学を設立するというような計画があるやに聞いているのですが、あればその計画の内容、当局との交渉の経過、これなどおありならば承わりたいと思います。
○尹参考人 先ほどお話がありましたように、私たちが経営している学校は小学校から中学校、それから高等学校というふうに、いわゆる教育の体系というものが立って、そこから卒業する人が年々、今ですと高等学校を卒業した人が約八百人おります。それから日本の全国にある各高等学校を出る朝鮮の人というのも、約二千人近く毎年卒業してくるわけであります。これがもちろん生活上の問題やあれですぐに社会に出る人たちもいますが、上級学校へ進学する道というのは、一つは朝鮮へ帰って朝鮮の大学へ入る道、一つは日本の大学へ入る道、この二つしかないわけです。ところがそのいずれも狭き門で、なかなか入れない。学力の問題とか、そういうことのときは言うことはないのでありますが、資格の問題とか、こういうことで、われわれの場合は何とか準外国人として、留学生のようにでも扱っていただけないかということを、関係当局の方たちにお願いしているのですが、どうも日本におる朝鮮人は留学生扱いにするわけにいかない、こういうことになって隘路があるわけであります。そこでどうしてもわれわれが高等学校を出た次の学校体系をやらないことには、これは方法がないのであります。そこで朝鮮人の中から、数年前から、どうしても大学を設立して、自主的にでも大学教育をやろうじゃないか、しかも非常によいことには、日本は技術その他産業上の問題でも非常に進んでいますから、その点をわれわれ学んでもよいし、また日本には進んだ学者、先生たちがたくさんおりますから、その先生たちにも御援助いただいて、朝鮮の建設のためにも有用の人材をわれわれの力で作って、いずれ朝鮮との間に道が開けたときは、そういう青年たちを送ってあげようじゃないか、こういう趣旨で大学設立のことはだいぶ前から問題になったわけであります。そして一番最初に私たちがやって、ことしでもう二年、二回目の事業生を出しているのです。これは大学といっても規模は非常に小さいのですけれども、昨年約三十名、ことし約四十名くらいの卒業生を出しているわけです。この大学を、希望著も多いししますので、大きな規模でやろうじゃないかということで、いろいろ財を集めたりなんかしますけれども、それは御承知のように知れたものです。大学というのは規模が大きいし、お金はたくさんかかりますし、しますので、昨年の四月ですが、朝鮮から、御承知だと思いますが、日本におる朝鮮人たちの苦しい生活の中から、教育のことが心配になって、私たちの祖国から第一次に日本のお金にして一億二千万円くらいの教育補助費が日本へ来たわけです。これは一般の教育費で、その次に日本のお金にして約一億円のお金をまた送ってきたわけです。日本の今までのいろいろな事情で、日本の政府から援助していただけないならば、朝鮮からでもそうしてやらなければならないということで来たわけです。この一億円をもとにしまして、日本におる朝鮮人の力を出し合って、そうして大きな大学を作ろう、こういうことで、今敷地を物色したりやっているわけです。そうしますと、いろいろまた今度このことが何か悪いことのように新聞に宣伝されたり、それから敷地の問題一つにしましても、いろいろ政治的なといいますか、圧力といいますか、こういうものが感じられて、なかなか農地を宅地に切りかえるにしても、そういうことで朝鮮人の大学だということでできないとか、いろいろなそういう障害に今ぶつかっているわけです。そういうことです。
○床次委員長 それでは三人の参考人の各位に対する質問は終ります。 参考時間にわたりまして有益な御意見を開陳していただきまして、さらに詳細にわたって質疑に応答していただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。 それでは引き続き、次の参考人の意見の開陳を求めます。弁護士の權逸君お願いします。大体二、三十分程度で、あとは質疑に……。
○權参考人 御承知のように、日本には約六十万ばかりの朝鮮出身者がおるのです。その中で本籍別にまず申し上げれば、南韓国出身が九七%、それから北鮮に本籍を持つ人が約三%、それからその実態は、団体別にして大体二つあるのです。一つは大韓民国を支持する居留民団、一つは北鮮共和国を支持する朝鮮人総連合会、この二つがあります。そしてその支持率は、これはお互いに言っているので、正確な数字はなかなかつかみがたいが、大体の標準からいえば、三分の一が北鮮支持、それからあとの三分の一が韓国支持、そのあとの三分の一は浮動的でありまして、これは別にはっきりした態度をとっておりません。ただ従来のつながりで、総連に味方したり、南に味方したりしております。それからその前に一つ申し上げたいことは、私、きよう突然参考人に呼ばれまして、必ず韓国支持側の居留民団側から、どなたかお見えになると思って来たところが、実は居留民団の現幹部がだれ一人も見えておりません。私は大韓民国を支持するものでございますが、現幹部ではございません。と同時に現政権に対しても、私どもは是々非々の立場をとっているのです。こういう意味で、こういうものを中立というなら中立でしょうが、私は大韓民国の国民として、現政府に対しては是々非々的であるが、決して反韓国ではない。こういう立場で、大きく言えば、大韓民国のいわゆる居留民団の立場におりますが、最も批判的、公正な意見が吐けると思う。この意味において、私の主張こそ在日同胞の最も良識ある正しい主張だとお聞き願いたい。 それで現在まで、御存じのように解放以後、この両極、いわゆる左翼と右翼との闘争が、約三年ほど前まで非常に熾烈に展開されて、ほんとうに火炎びん以来若干それがやみまして、朝鮮人総連合ができて以来、運動方針が平和的な内政不干渉の線を強く打ち出して、それで若干表面的には今なんですが、従来の態度においては、きわめて闘争的だったし、日本の一方的な左派の運動を展開しておったことは事実であります。しかし現在においては、確かに総連の運動方針としては、内政不干渉、それから平和政策をとっていることも事実です。しかしこれが必ず将来保障できるかというと、その点は私としては明言しがたい。それから韓国側の大韓民国居留民団においては、常に韓国政府の現在の政策の遂行に全力を注いできているようであります。しかしその内部においては韓国を支持しながらも、相当批判的な、正しい韓国と日本との関係の提携に努力しているまじめな勢力があることを見のがしてはならぬ。 一般的な問題はそれくらいにしまして、その次に具体的な問題は、まず一般の生活状況、これは日を追うて非常に貧窮の度合いを加えていっております。現在、私らは正確な数字は知りませんが、少くとも完全失業者が十五万は数えるであろう。そして生活保護を受けているのが約一五%に達しております。これは失業者とこの比率はやや適合しているのじゃないが。過去において、朝鮮人は非常に無謀な生活保護を受けているのだというような非難がずいぶんありましたが、一昨年完全にこれが是正されまして、今は私は、この程度の保護を受けるのは、現在の状況からして当然じゃないかというような考えを持っております。 それから教育面におきましては、全体の児童の約九〇%以上は就学しておりますが、そのうちでわが朝鮮人関係の学校で教育を受けているのが約二〇%未満で、ほかはほとんどが日本の学校に教育を受けております。それでこの二〇%の中には、大部分が従来のいわゆる左翼系総連の学校に属しておって、韓国系の学校はわずか数校、十校に足らないという状況であります。それから中学校、高等学校に通っている学生は大部分日本の学校に、大学生はもちろん全部日本の学校に行っております。その児童と大学生との比率、順を追った比率は非常に激減しておりまして、中学校まではほとんど行っておりますが、大学生は人口の比率から見て非常に少いという状況にあります。 それから金融問題、これは非常に問題になっておりますが、あらゆる方面において、法的には特別な措置はありませんが、実際上非常な差別を受けまして、朝鮮人全体が金融的に非常に困っておる。ようやく朝鮮人間の信用組合、この零細な金融機関によってようやくやっている状況であって、この点に対する何らかの処置がなければ、今後非常な困窮をしていくのではなかろうか、こう考えられます。 それから、日本に在住する朝鮮の二世、こういう人は今後どうなるか。この点はもちろん北鮮側もあるいは韓国側もできるだけ朝鮮人として育成して、そうして朝鮮の国民として育成するためにいろいろ努力をしておりますが、これはわれわれもその指導を今後やるつもりでおりますが、実際上今後二世というものは、やはり日本化していく傾向は見のがし得ない事実じゃなかろうか。これは現在においても年に約五千組近くが帰化申請をしておって、それが許可になっております。この情勢から見て、今後この対策をおろそかにすれば、国内少数民族問題として非常なむずかしい問題を残しはしないかと私はおそれるのであります。今後この点は韓国あるいは北鮮側も考えなければならぬが、日本当局が真剣にこの問題を考えなければならぬ問題ではなかろうか、こう考えるわけであります。 それから次に最近非常に問題になっている日韓会談、韓国と日本との会談問題に触れてみたいと思います。われわれは先ほども申し上げたように、九七%が韓国の政権下におるのでありまして、この人たちは終戦後十三年間自分の家にも帰れないという状況にあります。一部の人は国に昨年約千五百名ばかり行ったという話もありますが、これはほんの一部の特権的な人物が行っているのであって、一般庶民は十三年間自分の郷里にも帰れない。だから解放のときにわずか五十であった人間は、もう六十四をこえておるという状況で、これはどういう関係でこうなっているかというと、韓国と日本との間に正式の国交状態がないからであります。この一点から見ましても、まだそのほかに在日同胞は、皆さんよく御存じだと思いますが、解放後はただ第三国人だ、法律的にきわめて不明瞭な法的字句を与え、そうして放置をし、講和条約が成立と同時に一晩のうちに韓国人に取り扱って、全然それに対する日本側の施策がなく、そうかといって外交権のない本国においてそういうこともすることもできないという状況で、ますます貧困化していく傾向があるのであります。この問題もやはり可能性のある韓国とまず国交を結んで、それで在日朝鮮人の問題をやらなければ、ここにおる六十万人はどうにも方法がないと思うのであります。 それからもう一点大きく見て、韓国が要するに全朝鮮の代表政権であるかの問題であります。この点につきましては、韓国は一九四八年の国連の決議によって合法性が支持された政権である。日本は国連のワク内の外交政策をとっているわけであります。これはあくまで一つの形式論になり、あるいは法律論になると思いますが、全朝鮮における唯一の合法政権というのは大韓民国である。こういう立場から見るならば、やはりその大韓民国が外国に対して代表権を主張するのは当然で、この点は北鮮がソビエト並びに中共に対して協約を結んだときに、決して半分の北政権の意見として彼らは取り扱っておりません。だから共産圏の法律、法理論、政治論から立てば、これは北が全朝鮮の代表政権でありましょう。だからそういう意味で彼らはソビエトなり中共との協約においては、全朝鮮を代表した政権と言っていいはずであります。この意味において韓国は、いわゆる国連中心の自由陣営の立場からすれば、当然代表政権と言わざるを得ぬ、こう思うのであります。しかしそうかといって、私はこれは法律論を言うのであって、実際上北の半分があるのにこれを無視していいかどうか、この問題はおのずから別個の問題だと思う。私らも朝鮮の平和統一を主張し、あくまで韓国の一部にあるような武力統一には絶対反対する立場であります。南に合法的な実際統一政権があるから、それと統一をしようと思えば話し合わなくてはならぬ。それよりほか平和的にいく方法はないという立場で平和統一論を論じておるのであります。この点はおそらく北の政権を持っておる人たちもそう思っているだろう。全朝鮮を代表するのは人民共和国だが、南の国があるからしょうがない。話し合いという立場に立つのは当然だと思うのです。 それで現在日本において、御存じのように日韓会談を反対する、北を支持する方がおりますが、私は非常に了解に苦しむところであります。それはただ政治的にひっかけて、政治問題化せんがためにやるならばこれはわかりませんが、少くとも政治団体でなくて、ここにおる六十万を実際上指導していこうという団体であるならば、可能な時期において早く国交を調整して、それによってここにおる六十万を何とか救っていかなければならぬ、こういう立場から、ある主義を持っておる政党ならこれは言えませんが、少くとも大衆団体としては日韓会談に反対するのはおかしいと思う。ただそこに議論としては、平和統一に反するから、将来平和統一の妨害になるから韓国ではやってはいかぬ、こういう議論をなすわけであります。私はそういう人たちにこう言いたい。それならあなた方はソビエト、中共との間の協約を破棄しろ、あなた方は国全体の代表者としてやっておるんじゃないか。これは現実の政治問題であるから、日本においては――ちょっと話がよけいになりましたが、私はその理由がない。少くともここで日韓会談を反対する理由がない。 ただそこで非常に心配されるのは国籍選択の問題がございます。日韓会談ができれば、日本におる朝鮮人が全部韓国籍に強制されるのじゃないかというので、いろいろおそれている向きもあるらしいのですが、私は当然韓国人だと思います。だが韓国人があくまで拒否するのに強制する必要がどこにあるか。外国に帰化することでも自由であるのに、何のために拒否する者までも強制するか、これは現在の韓国政府が果して国民的なものであるかどうかわかりませんが、せっかく良識のある人間を強制してはいかぬという気持は持っております。しかし強制しちゃいけないことはいいが、強制しないがゆえに無国籍的な外交保護権のない国民ができることを私はむしろおそれる。それがしかもみんな韓国に本籍を持って、韓国と行き来しなければならぬ連中です。私はかえってその点が心配なんです。そういう拒否することも、思想が徹底して拒否してもいいのですが、わからない大衆をそこまで持っていって、とうとう国にも帰れない状況を作ることを私はかえっておそれる。こういうように今考えまして、私は韓国政府に対しても、韓国全体に対しても、国籍選択の自由は自由と言われるが、強制はしてはいかぬ。同時に日本は韓国なりあるいは北鮮と違って、思想自由な社会であります。共産主義でも合法的に活動できるのが、日本です。だから合法的にできる日本においては、共産主義運動をやろうと何をやろうと、そこは自由に認めるべきであるということを、私は韓国政府に強く主張したいのです。韓国は、御存じのように国家保安法がございまして、共産主義運動は、昔の治安維持と同様に取り締っております。また北鮮全く御存じのように、反共の人は政治活動ができないのが、北鮮であります。それと違った日本の社会、そういう立場で日本におる朝鮮人を考えるべきだ。こういうことは今後われわれが強く主張して、日本の在留同胞を保護していかなければならぬ、こう思うので、今そういうことでいろいろ心配なさることは、私から見れば杞憂でなかろうかと考えるのであります。 それから、今後日韓会談が締結できた場合に、在日同胞の対策問題、この点について私は皆さんにぜひお願いしたいことは、韓国政府も、今まで何ら在日同胞に対しては対策はありません。しかし、今度は日韓の正式会談ができて、基本条約ができたあとは、少くとも自国民の保護対策が樹立されなければならぬと思います。と同時に、日本側も今までのような放置した、こういう状態にせぬで、在日同胞に対しては根本的な対策を樹立しない限り、国内におけるいろいろな問題において、皆さんに御迷惑もかけるでありましょうし、また先ほど申し上げたような今後大きな禍根を残しはせぬか、これを私はおそれるのであります。 それからもう一点、最近問題になっている一点を申し上げましょう。大村収容所におる北鮮帰国者の問題、これについて、社会に誤解も若干あるようです。私も実は大村収容所に行って、その実態を見ましたが、北鮮から入国している人間は六、七名、その残りはほとんどが韓国――南の方から入ってきております。そのうちに、ほんとうの政治的な亡命といわれる人は、私はそう数ないと思います。それでこれに対して、韓国側が、北鮮に行かしちゃ会談をやらぬぞとか、いろいろなこと言っておりますが、そこにも若干無理もあるようですが、少くとも私は、日本が南から北に行く中継基地になってもらいたくない。もし北鮮に行きたい人間が日本に密航して、私は韓国に行きたくない、北鮮に行くんだということで、北朝に行く道を日本が作っちゃいかぬじゃないか。同時に、そのうち犯罪、逃亡だとか、いろいろな意味において、もし日本がどうしてもそういう気持があるなら、ああいう人たちは特別在留権を与えて、日本の居住権を与えて自由にまかした方がいいじゃないか。私は韓国側の一方的な、どうしてもそれは困るという意見は賛成しままん。私は人道的立場において、どうしても韓国に行かしたら困る人間には、日本の永住権を与えて――永住権ではなく、いわゆる特別在留権を与えて、その後、本国あるいはインドに行くとか、フランスに行くとか、どこか自分の自由に行けるところに行かしたらいい。自分の目的のところに行かしたらいい。すぐ北に帰すということは、私、常識的に申して、韓国の政権をずっと見て、反対するのは当然だ。そこで悪いことをして日本に来て、それで北鮮に行くということになれば、これは非常な問題だ。そういう問題は全部だとは言いません。そういうものもある。だからそれは具体的によく検討して、人道的立場で取り扱うべきであって、ただ北に行く者は北に行かし、南に行く者は南に行かす、これはあまりにも機械的な考え方でなかろうか。これを極力主張する人間には、思想的な政治的な意図がその中にひそんでいるものと私は見るものであります。 それからもう一つ、この機会に国会の皆さんに申し上げたいことは、先ほどもちょっと触れましたが、国会において朝鮮人問題を見る場合には、常に両方があるということ、この点を見のがしてはいけません。居留民団に行けば、全部六十万を代表すると言い、総連に行けば、全部六十万を代表すると言う。そうすると、ここに百二十万いなければならないはずです。どうか、今後あらゆる問題を検討する場合には、公平に両者の意見を聞き、それから最も正しい良識を持った、北政権にも南政権にも属しない議論をじっくり聞いていただきたい、こう思うのであります。
○床次委員長 それでは、權参考人に対して質疑を許します。松本君。
○松本(七)委員 参考人の御意見では、今日の在日朝鮮人の実情というよりも、いろいろな政治的判断に及んだ、非常に参考になる御意見を伺うことができたのですが、先ほど冒頭に、必ずしも現在の韓国の政権を全面的に支持されるわけではない、是々非々で行かれる立場をお述べになったのですけれども、御指摘になりましたように、現在韓国では、ちょうど日本の戦前の治安維持法のようなものがあって、政治的自由が非常に制限されておる。こういった事情にあるときに、犯罪者だけが日本に密航して、そうして北に逃げるということでなしに、やはりそういう民主主義の今日の世界における発展段階において、治外法権的なもので非常に弾圧をやっておるこの事情は、日本がこれに対処する場合には、十分考慮しなければならない非常に大きな要素になってくると思う。そういうふうな事情を考えますと、現在の在日朝鮮人の、何割になるか知らないけれども、相当多数の方が、やはり国籍の問題については、自分の死活の問題としてそれを考え、心配されるのは、私どもにもよくわかるわけです。ですから、そうなりますと、結局これは韓国の現在の政情そのものが、在日朝鮮人としては大きな問題になってくるだろう。そういう面からいたしましても、在日朝鮮人としては、自分の祖国の政治状態なり社会状態に対して、何らかこれを改革する運動をやりたい気持に燃えるのは、これまた当然だ。ところが、今それをやれる立場におらない、帰りたいところにも帰れない状態に陥って、しかも生活条件はきわめて苦しいということになれば、自分のいるところの日本の政治そのものに関心を持ち、その政治を通じて自分たちの立場を生かしていきたいという、残された道はこれ以外にないわけですね。そういう状態にあるときに、日本におられる朝鮮人が両陣営に、団体的にも分れている。そうして相対立するというようなことになったのでは、これは朝鮮人としても非常に不幸なことです。何とか大局的な立場から、そういう苦しい環境の中にあるのですから、やはり政治的にもう少し理解を持った態度でもって、お互いの今の困難な事態を打開する方法はないものか、そういう点については、御自分で、中立的な立場また李承晩に対しても是是非々の立場を貫きたいといわれる参考人の御意見など、もう少し――これは政治的な問題になり過ぎますけれども、先ほどの陳述そのものが、だいぶ政治的な問題でございましたし、そのついでに、そういった問題についてどういう考えを持ってながめておられるか、少し聞かしていただければありがたいと思います。
○權参考人 その答えになりますかどうか知りませんが、だから私は、日本というのは朝鮮全体の統一にとっては非常に大事なところだと思うのです。朝鮮では両方とも統一を言っておりますが、ともに自己本位の統一であって、客観的に正しい統一を言っておりません。これは南でも統一を言っており、北も統一を言っております。しかしその中に隠れておるものは、自己の政権による統一以外には考えておりません。私らの考える統一は、朝鮮はやはり中立化し、そして中道政治を指向する、そういう統一でなければ朝鮮の統一はあり得ない、こう確信を持っております。在日同胞が今日まで九年間相争った醜い態度を清算して、ほんとうに冷静になって祖国がどうあるべきか。李政権がどうあろう、金政権がどうあろう、そういうことじゃなしに、われわれ民族の将来がどうあるべきか、こういう方向に向って統一していく以外に道はないでしょう。過去において朝鮮の独立運動が上海を中心として起りました。しかし今後の朝鮮の統一運動は少くとも日本においてじゃないか、私はこういう信念を持っております。だから今まで両方が言っている一方的な統一じゃない、正しい統一運動、これに指向することによって両団体も徐々に感情を緩和し、そして正しい方向に持っていけるのじゃないか。私はきょうずいぶん左翼の皆さんには気にさわるような発言をしました。しかし私はまた南の居留民団の人たちの金政権に対するあの姿に対しても極端に痛烈に批判するものであります。だが幸いに南の韓国は、今共産主義には弾圧がありますが、それ以外の思想に対しては多少の自由があります。韓国はフランコ政権のような極権政治じゃない。少くとも野党があり、野党が与党を批判しておる。それに対して金政権は弾圧を加えるとかあらゆることをやっております。しかし韓国は本質的には民主憲法を持っているのであります。日本の憲法と大差ありません。ただ両陣営が分れて血なまぐさい闘争をやったので、いわゆる国家保安法という共産主義非合法化の方向に行っただけであって本質的には決して独裁国家じゃない。私は民主主義的立場で韓国を支持するのであって、李承晩政権の韓国を支持するわけではありません。手前みそになりますが、私の考え方のように、ある政権にくっついてやるということをせぬでもう少し客観的に物事を見る良識層が在日同胞の中からたくさん生まれて出れば徐々に緩和され、理論的にも現実的にも無理な――ちょうど今李承晩が言っているように北鮮へ行く者を全部完全に帰せとか、あるいは片っ端から韓国人登録をやってやるという考え方は、非常な無理な考え方であります。その無理な考え方はなくなります。しかし本質的にはどうなるかと申しますと、先ほど申したようにはっきりと民主主義と共産主義の分れ目なんです。私がこう申し上げると政治的だと言われるかもしれないが、私は政治的じゃありません。私は一番客観的で冷静にものを見よう、こういうことでいかない限り、在日同胞は今後も末長く闘争が絶えないだろう。だから日本の政治家の皆さんも現実的なそういうことをいかに緩和していくか、ある団体を一方が支持し、一方はある団体を支持するような、朝鮮問題に対するそういう雰囲気を助長しないような方向に今後持っていっていただきたい。そうすれば多少こっちでも良識層がふえていき、だんだん本国に対する正しい見方もふえていくのですから、今後よくなりはせぬかというばく然たる気持でおります。
○松本(七)委員 相当李承晩政権が無理な政策をやっておることは、参考人もお認めのような状態なので、その無理をすみやかに食いとめなければならぬという緊急の事態に今来ているわけです。そういうときですから、なおさら朝鮮人自身としては、何とかこの被害から免れようというあせった気持になるのは当然だろうと思うのです。そういう現実の事態にどう対処するかということが、非常に現実の差し迫った問題になっておるのであって、その現実の事態に立って朝鮮の平和的統一がどうなされるか、また可能性も考えていかなければならぬと思うのですが、今の御意見で朝鮮統一についてのお考えは具体的にいうと、李政権、それから金政権、両方をたな上げするというか排除して、そしてまん中に別な新たな中立的な政権を作るということが今後の朝鮮統一の構想なんですか。
○權参考人 それは違うのです。この政権は民主政権じゃない、少くとも現在のやり方は独裁政権に近い形態を持っておりますから、韓国をほんとうの民主国家にすると同時に、北も民主国家にしなければならぬと思います。共産主義が民主主義というなら話は別ですが、少くとも永久政権と、野党を認めないようなああいう共産主義政権は民主政権じゃない。だから同じルールのないものがとても統一選挙などできやしません。私らの主張するのは、北も最大多数の国民の意思を反映した民主的選挙、これは共産主義国家としてはできないかもしれませんが、これができないとすれば統一は不可能です。こういう民主化されることです。これはハンガリーのジラスあたりの議論になるかもしれませんが、こういうふうな方向にいく。南も完全に民主化されて、そしてお互いが自由な雰囲気において選挙もでき言論も自由になる、こういう社会にならない限り統一はむずかしい。だから金政権とか李政権とか、北の民族はどう、南の民族はこういう方向にいく、これは国内的条件、国際的には米ソの妥協がなければできないでしょう。この二つがあって初めて朝鮮の統一は可能であって、ただ口先で平和を議論しながら一ぺん政権をとれば自分が永遠に政権を持つという魂胆の持ち主では永遠に統一はできないだろう、かように考えます。
○床次委員長 大西君。
○大西委員 一つ二つお伺いいたします。今あなたのお話の中に、韓国から日本に来てそれが朝鮮へ帰る抜け道になっては困るというようなお話もあり、またその前に、私はよく聞き取れなかったのですけれども、国籍の問題で何か朝鮮の国籍を持つように強要するようなことがあるとかあるのはよろしくないとかいうような御発言があったように思うのですが、そういうふうな事実があるのでありますか。
○權参考人 もし日韓会談ができて、韓国で在外人登録法というのがございます、それを無理に強制してやらせるようなことはできないと思いますけれども、そういうことをやるようなことはいけない、私はこういうことです。少くとも国籍は韓国にありますから、私が基本の立場に立てば、韓国に行けば韓国民としてすべてやられるだろうが、日本にいるんだからこれはできないはずですが、万が一そういうことをたくらむということがあればこれはよろしくない、こういう意味のことを申し上げました。
○大西委員 現実にそういうことがあってどうこうということじゃなしに、万が一そういうことがあってはよろしくない、こういうお話であったのですか。
○權参考人 そうです。
○大西委員 それからあなたは居留民団の方の代表者であられないので、そういう方面の総合的な立場というようなことの質問もちょっとできかねるのでありますが、この間の抑留者の相互送還の問題で北鮮の方に帰りたい人はこれは本人の意思に従って帰すべきだ、こういうことを唐澤法務大臣にも申しましたし、外務大臣に対しましても私どもはその後確認を求めたのでありますけれども、私はやはりあなたが言われるような密航してきてこっちにいるというような、そういうこともありますし、もちろん犯罪を犯してどうこうということもあろうが、やはり原則的にはそれが韓国の出身者であろうが朝鮮に帰りたいというのは帰すべきだ、こういう建前を私どもの方の党はとっておるのですが、これについてあなたはどういうふうにお考えになりますか。
○權参考人 その点は先ほど申し上げたように、犯罪人引き渡し条約がある場合でも政治犯は引き渡さないのですね。だから厳密な意味の政治犯は決して帰してはいかぬと私は思います。少くとも韓国に行って多少なりとも危い人は帰してはいけない。だからその場合にこれをすぐ北鮮に帰すということは、私の調べでは密入国者を帰す場合には、一応来たところに帰すのが世界の原則なんです。だから一応そういうふうにして日本でそういう人には在留許可を与えてその後の処置にすべきじゃないかと思います。あの人たちは日本におりたいという気持もあるのですし、その点は日本の自由なんですから、一応ここに法的に在留許可を与えて日本に在留させて、それから北鮮に帰すなら帰す道を開けばいいじゃないか。なぜ私がこれを申し上げるかというと、これにひっかけて韓国との間の会談を破壊しようとする策動があるからです。皆さんはそんなことはないと思いますが、この根底はほんとうに人道的な問題でなくて、日韓関係を破壊させようとする動機が含まれていることが私は残念です。
○大西委員 それから、これは在日朝鮮人の問題とは若干食い違いますが、日韓会談を私どもは早くまとめたいと思っております。これは与党、野党を問わずそういう気持でおりますが、私どもいつも問題にしておるのは李ラインの問題です。これも大きな政治問題で、あなたにお聞きするのはあるいはどうかと思いますが、一民間人として、あなたは弁護士をやっておられるまことにインテリでありますし、現李承晩政権に対しても痛烈な御批判があったので、ちょっと私どもの参考意見に聞かしていただきたいのですが、あの李承晩ラインというものに対しての主張は、やはり合法だとお認めになりましょうか、またこういうことが真の日韓会談の問題に対して何かの障害になりはしないかと思うのです。実は私も終戦後朝鮮の方はおじやまをしたことがありまして、金首相ともひざをつき合わして話をしましたが、非常に人格の高潔な方であり、国内の再建はまだ十分ではございませんけれども、国民も非常に一致しておる。その点では私はこの国の将来に対して希望を持っております。そういうふうなところと対比いたしまして、韓国の国内の事情はつまびらかにいたしませんけれども、この李ラインの問題についてはまことに遺憾なところがある。日韓会談のこれまでのいろいろな過程を見ますと、日本政府の発言あるいは態度等につきましては、私どもまた独自な批判を持っておりますが、この李ラインの問題について民間人としてどういうふうにお考えになりますか、一つお聞かせ願いたい。
○權参考人 この問題は非常に大きな問題で、私の主観はあとで言いますが、韓国人一般がこのラインに対してどういう考えを持っているか、これを申し上げたいと思います。 李承晩現政権が幾多の失政をやって非常に人心を失っております。しかし李ラインの問題に対しては国民一般からかっさいを受けているのが現状であります。というのは、韓国の漁業技術と日本の漁業技術との相違、それから李ライン設定に前後して、西日本の漁業者の韓国沿岸においてなされた漁獲の仕方、こういうことが非常に刺激を与えて、もしこの技術の発達した日本の船団に全部取られれば、韓国はサバ一匹も食えないのだ、こういう国民感情があることを皆さん御存じ願いたい。 それからもう一つは、李政権自体の日本に対する認識不足か、あるいは李承晩なんかから言わせれば日本が非常に反省が足らぬのだとこう言いますが、こういうことに対する行きがかり、それから最近のいわゆるソビエトにおけるオホーツク海の問題、ピョートル湾問題、それからトルーマンの大陸だなの問題、こういういろいろな点からして、従来の国際法観から相当新しい動きがありはしないか。これは私は新しい国際海洋法会議の決定に待つのが正しいと思う。ただ私をして言わしむれば、一日も早く漁業協定を作って、そして両国の共同の利益の追求に向っていくべきである、こうは考えますが、今の李ライン自体が非常に不法だと皆さんがおっしゃる。それはただ六海里説だとか領海説でもって言うこの主張だけでは、韓国の一般の識者も今のところは決して承服しないだろう。 それから今北は非常にりっぱである。それから金さんからいろいろそういうことはやる必要はないのではないかというようなことを言ったようにおっしゃいましたが、これは私は政治的な発言が相当あるんじゃないかと思います。もし金さんが南を統治しても、すぐ目の前に日本の船団が来て、魚をみんなとっているのを黙って見ていないはずです。これは中共がすでにこれを実証しております。こういうことを皆さんが、これがほんとうに政治家として自分の信念から出た言葉と考えることはどうかと私は思います。
○床次委員長 岡田君。
○岡田委員 權参考人に一、二伺いたいのですが、私あとから参りましたのであるいはお話になったかもしれませんが、後段の点で、南朝鮮が憲法としては民主主義的である。現在フアッショ的なのは、李承晩がいるからその政権のもとにおいてはフアッショ的であるというようなお話に伺ったのですが、ということになりますと、あなたの思想的立場は、李承晩がいなくなって、そうして現在の南朝鮮の政治制度の中に北朝鮮も統一される、そういうことならばあなたの場合は思想的な立場として統一が実現できるのだ、大体こういう御意見になるのかと思うのですが、その点はいかがでございますか。 それからもう一つは、朝鮮人民民主主義共和国の方は民主主義でない、こういうようにお話しになったんですが、私たちの知っている限りでは、あそこはほかの政党もあって、ほかの政党との連合政府になっているのであって、朝鮮労働党だけの単一政府ではないわけであります。とするとあなたのお話のように、南鮮は反対党もあるし国会もあからというお話ですが、朝鮮人民民主主義共和国の場合は反対党はないけれども、共産党ではない政党も併立してある。またそれに基く議会もあるわけなんで、そういう限りにおいては独裁政治という形が現在においてもとられているのではない。現在の段階においては、李承晩政府の場合においてはそういう憲法があるにもかかわらず、反対党はあるのかもしれないが、事実上李承晩の言うなりの独裁政府ができているということになれば、あなたのお話の民主主義というものをあなた自身がお認めになり、求めておられるとするならば、むしろ李承晩の手にある今日の南よりも、北の方に民主主義的自由があるのではないか、こういうようにも考えられるのですが、この二つの点を伺いたいと思います。
○權参考人 南の方が本質的に民主国家であることは私は確信します。これは李政権自体のなにもありましょうが、この六・二五動乱の影響だとか国内建設のなにだとか、これは自由主義の弊害でございます。今李政権が立っておりますが、現在の状況では今度の総選挙でもおそらく現在の自由党が絶対実数を獲得して、李政権は安泰を続けるでありましょう。しかし南のほとんどの人心はそう長く続かない。しかも国際情勢、いわゆる対共恐怖感、こういうものが徐々に緩和をされる。それから国内建設が進めば、日本までにはいかないにしても、日本に近い民主国家に私は必ずなると思う。 それから統一問題についてですが、その点は非常に重大な問題だから、もしぜひお求めを願うなら私は答えをしますが、それは、抜きにして、北の民主化の問題です。確かにあなたがおっしゃるように、ほかに政党があります。青友党もありますが、これは共産主義の形態の一つであって、まず第一に選挙の自由がないのです。単一候補に対する白箱、黒箱の投票。それから政治批判の自由がありません。それから政権が選挙によって交代することもございません。それから共産主義に反対する政党は一つもありません。こういうことから見て、あなたがそれを民主主義とおっしゃるならいいが、私の考えでは少くとも日本みたいに社会党が自由党を攻撃し、自由党が社会党を攻撃して覇を争うような民主主義は全然ないと私は思います。こういう意味において、私の民主主義観からして、北は民主主義国家ではない、こう断定するのです。
○岡田委員 この点は多分に私の考え方と違う点なんで、あなたの民主主義と規定される問題についてはちょっと意見がありますけれども、これは参考人の方と論争することは考えておりませんので、きょうはあれしますが、ただ一つだけ、李承晩が現在続いているのは、アメリカの軍隊がいることが李承晩を守っているのだと思いますが、大体朝鮮の国民として外国の軍隊であるアメリカは早く帰した方がいいんだというふうに――日本の国民もアメリカ人に早く帰ってもらいたいと思っているのが最近は非常に強いのです。それだけに朝鮮の人々も良心のある人々は、早く朝鮮からアメリカに帰ってもらいたいと考えていると思うのですが、この点については權先生はどういうようにお考えになりますか。
○權参考人 その点は全く御同感です。御同感ですが、真室状態がいかにおそろしいものであるか、われわれは六・二五動乱で身にしみてわかりました。われわれは二つの国に分れて相争うこと自体がいかに醜いものであるかを痛切に感じます。だから外国軍隊の駐屯問題ではないのです。あの当時韓国ができて国民感情をあおってアメリカ軍をみんな撤退させて、そのあとの結果は結局何になりました。六・二五動乱になりました。あの当時の北朝鮮と今の北朝鮮は若干の相違はあると思うが、私は本質的にそう変っていない、こう思うのです。 それからもう一つ、南のいわゆる国連軍の駐屯を単に李承晩政権の安泰のためと錯覚なさっちゃいけません。李承晩政権の牽制のために必要なことを皆さんが見のがしてはいかぬ。これは真空状態は単に北から南に押し寄せるばかりではなく、南から北に行かないとも限らない、ここに国連軍の駐屯の新しい意義があります。
○松本(七)委員 いろいろまだお伺いしたいことがあるのですけれども、もう時間もありませんから、もう一つだけ……。先ほどあなたは日韓会談をぶちこわそうとしておる策動がある、こういうふうに言われたのですが、それはもちろん日韓会談の内容が、純然たる経済問題だとか、今までの懸案についてだけの話し合いがなされるという保障があった上でこの会談をぶちこわそうとするならば、これははなだおもしろくないことです。けれどもこれはやはり日韓会談の内容によると思うのです。その内容がぶちこわさざるを得ないような重要な内容をもし含んでくるおそれがあるとすれば、やはりこれに対しては警戒もするし、ぶちこわしたいという気持が起るのは当然のことです。 そこで一つお伺いしておきたいのは、日韓会談の中に、たとえばアメリカの今の極東政策からいえば、韓国、台湾、日本というものを――韓国にはすでに御承知のようにミサイル等が持ち込まれておるが、そういう体制、日本は御承知のように岸政権はこれを拒否するという方針を出しているわけです。やはり核兵器を持ち込んでおる李承晩政権としては、その李承晩の立場からいえば、やはり日本にもそういうものをちゃんと持ってきて、そうして防衛体制というものをきちんと作りたいというのは当然だと思う。それからアメリカとしてもそういう極東政策をとっている以上は、韓国ばかりではなく、日本にもそういう体制のできることを望むと思うのです。そうすると、全体の空気として、日韓会談においてそういう話も出る可能性なしとしない空気にあるわけです。そういう問題を持ち込むごとを妥当だと考えられるかどうかが一つと、それからそういう問題が持ち込まれるおそれはないかどうか、見通しの問題ですね。この点。それからさらに進んで言えば、李承晩政権は御承知のように共産党も認めないし、非常な弾圧政策をやっておる。それと同じ反共政策を日本政府に要求することもあり得ることなんですが、そういうことが出る可能性はないだろうか、これに対してこういう環境の中であなたが公平な立場から見られて、日本がそれにどう対処したら朝鮮の統一のためにも、朝鮮人民のためにもいい方向だとあなたは考えられるか、これらの点について概略のお考えをお伺いいたしたい。
○權参考人 私は核兵器持ち込みには絶対反対です。しかし韓国がいかに共産党におびえておるかり、弱い者が常に自分を防衛しようとするか、この気持はおそらく自由陣営――これはアメリカが戦争挑発者だと一方は言うでしょうが、少くとも韓国においてはあるいはまたやられるのじゃないかということで、日本でいえば社会党右派的な性格を持った政党でさえ、核兵器による新軍備の増強を要求しているくらいです。しかし私はこの点については絶対反対でございます。これがあなたの最初の質問です。 それから軍事同盟の問題、いわゆる東北アジア同盟の問題、これは極力避けるべきでしょう。避けなければならぬと思います。少くともこれがある限り朝鮮の統一は不可能です。あるいは韓国側においてそういう要求が出るかもしれませんが、それは主権のある日本ですから、少くともわれわれとしてはこの日本の全体の空気から見て、今反共同盟を結ぶような考えを持った人は少いと思う。だからそういう心配は御無用です。それよりも会談に反対するというのは、そういう世界平和とか朝鮮の統一とか、そういう大きな観点じゃないのです。いかにして事実上北政権を認めさせようかというのにあるので、それを韓国とやったあとでけっこうじゃないかというのだ、今からそうあせる必要はないのではないかと私は思う。現実的にそういう観点に立てば無理に反対をして、平和問題と結びつけ、東北アジアの軍事同盟を結んだりするような議論はすべきではない、そういうことはあるいは韓国としてはあるかもしれませんが、それは韓国の有識者も決して賛成しないでしょう。
○床次委員長 これで参考人に対する質疑を終ります。 權参考人には長時間にわたりまして有益な御意見を開陳していただき、また御質疑に御回答していただいてありがとうございました。委員長より厚く御礼を申し上げます。 それでは本日はこれで散会いたします。明日は定刻より開会いたします。 午後五時十一分散会