外務委員会 第6号
- 発言数
- 160 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1958/02/22
会議録
○床次委員長 これより会議を開きます。 日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の通商に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題とし質疑を許しますが、外務大臣の都合によりまして二十分以内に質疑を終っていただきたい。恐縮ですが、一つよろしく御協力をいただきたいと思います。それでは質疑の通告がありますから、松本君。
○松本(七)委員 さっそく外務大臣に御答弁をお願いしたいと思いますが、通商条約の交渉のときに問題になりました、対ソ貿易のいわゆる窓口一本化の問題ですが、この点はどうなったのでしょうか。日本としても、諸外国の例を見ても、かりに窓口一本化ができなくとも、やはり各貿易商社がお互いにある程度の話し合いをして、あまり不当な競争に陥らないように、自粛的なやり方をやっている。スエーデンなどを見てもそうです。今後対ソ貿易については何らかの規制の方法を政府として考えておられるか、その点をまず最初にお伺いしたい。
○藤山国務大臣 貿易一元化の問題につきましては、御承知のように日本の商社が過当な競争をするというような状態で、一般的な貿易の面においても、単にソ連と限らずいろいろ問題はあるように思います。従って国内においても、貿易をできるだけ話し合いで円満にいくように、そうして一本的な筋で過当な競争が起らないようにということは、どなたも考えることだと思うのであります。ソ連に対しても特に公社等の特殊の機関を作らない場合がありましても、他の国々に対する今申し上げましたような過当の競争を抑制していくという立場から、何らかの形でもって通産行政の上でそういうことが反映されるようになることは、望ましいことだと思うのであります。しかしながらこの条約においては、特段にそういう関係が規制されておらぬということを申し上げておきます。
○松本(七)委員 その一本化をしなくても、何らかの形で規制するということについては、ソ連側の了解はすでに得ておられるのですか。
○藤山国務大臣 これは通産行政の上で今後特にどういうふうに対外貿易の問題を扱っていかれるかという点にかかると思います。従って、他の諸国と同じような関係において扱っていく分には、ソ連は何のことも言わないんじゃないか、ただソ連にだけ特別の方式を採用するということについてはソ連側に異論がある、こう考えております。
○松本(七)委員 それからせっかくのこういう条約、協定ができましても、約束だけでなしに、実際の貿易がどれだけ伸びるか、また日本政府としてどれだけ積極的にこれに取り組むかということにまだ一まつの不安がある。と申しますのは、一例を石油にとってみますと、これは通産大臣も来ておられますし、後に通産省の方にゆっくり質問するつもりでありますが、私どもが去年ソ連に行きましたときも、カバーノフ貿易大臣とずいぶん話した。日本でも、鉄道のほかに自動車交通というものが非常にこれからの運輸に大きなウエートを占めるのですから、どうしても石油の問題は今後考えなければならない。そうすると、今日のようにほとんど米英のカルテルに独占されておるというようなことは、これは日本の国としてもおもしろくないだろう、そういう面からもソ連の石油の輸入についてはいろいろ話し合ったのでございます。その場合の話でも、相当向うは出せるというのです。きのう事務当局からの御説明もありましたが、私どもの話し合ったところでは、日本の需要さえコンスタントに年間幾らということがはっきりすれば相当量出せる、こう言っておるわけであります。ところが、日本でも商社側は相当に熱意を持って割当をほしいと言っておるのですが、政府としては今のところ需要者にごくわずかしか割り当てない、こういう建前をとっておるために、新しくソ連の石油のワクを広げるという積極的な対策というものが見られない。これは石油に限らず、いろいろなところにそれは考えられると思うのですが、全般的に今後の日ソ貿易を実質的に進展させるには、どういうふうな対策をもって外務大臣としては臨まれるおつもりか、お伺いしたい。
○藤山国務大臣 外務大臣といたしまして、通商協定を作りました以上はどの国ともその通商協定の精神に沿って、円満に、しかも貿易量が増大していくことを希望いたしておるわけであります。ただその内容その他につきまして、お話のように石油をとり、あるいは米をとり、いろいろな品物をとって参りますと、各国との貿易バランスの関係もありましょうし、あるいはそのものの品質の関係もありましょうし、それらについて適当に配合されることは、通産行政の立場から御検討いただくことになると思うのでありますが、われわれとしては、通商条約を作りました以上、それがスムーズに拡大していくことを願ってやまないのであります。
○松本(七)委員 ここで通産大臣の御答弁もお願いしたいのですが、あと同僚議員の外務大臣に対する質問があるそうですから、通産大臣はあとに回っていただくことにして、この機会に私一つ藤山外務大臣にぜひ伺っておきたいと思いますことは、外務大臣が就任される当時、経済界の実力者であり、経験者として、世間でも経済外交の推進ということはもちろん期待もしておったと思う。けれども、私どもの承わるところでは、同僚の方々は、やはり経済界に専心しておった方がいいんじゃないか、外務大臣として果して経済外交というものが所期通りやれるだろうか、こういう不安もあり、藤山さんのためを思う者は相当引きとめたということを仄聞しているのでございますけれども、すでに大臣に就任されてから相当月日もたちました今日、そうして国会の論議などを通じて実際の外交面にもタッチされた今日、どういう心境にあられるか、これでやはり自分の乗り出した目的、経済外交が十分所期通り果せると自信をお持ちか、それとも、どうもこれは乗り出したが失敗だったというふうに考えておられるんじゃないかと、外側から見ているとそういう不安を感ずるのです。その心境をここで御披露願いたい。
○藤山国務大臣 長い間経済界におりまして、政治の方を側面から、あるいは外部からと申しますか、ながめておったわけであります。そうしてそれに対していろいろな経済人としての立場からの批評も非難もいたしたわけであります。外務大臣に就任いたしまして、私といたしましては、むろん私の過去の経歴からいいまして、経済問題については若干の知識を持っていると思っております。従ってそういう意味で、経済外交を十分推進していく必要があるということは申すまでもないし、また私もそれが過去の経歴からいえば若干得手ではないかと思うのでありますが、しかしながら外交と申すものは、単に経済外交ばかりでなく、大きく政治的な外交の動きというものが、これまた今日の時代では非常に重大な問題であります。そういう面については必ずしも得手でないのでありますから、経済外交を推進すると同時に、政治的な大きな外交も一つできるだけ勉強してみよう、むしろ勉強の時間からいえば、そういう方面に時間をかけてもみなければならぬというくらいなつもりで今日までいるわけであります。そうしてちょうど両々相並行してやって参りますれば、今後の日本の政治、経済、外交をあわせて推進していけるのではないかというつもりでいるわけであります。私としては就任以来できるだけ懸案の問題も片づけ、そうして新しい立場に立ちまして、今後の動いていく国際政治の中で、日本が政治経済の担当をどうしていくかということを、むしろ積極的に——懸案の解決を終ったと申してはおかしいのですが、始終懸案がありますけれども、累積したものを片づけたら、今後はそういう方面にいかなければならぬ。今日のような、世界の刻々に移っております情勢、ことに核問題の発達以来、世界というものは急速にいろいろな意味で変っております。これが人心に与える思想的な影響もありますし、経済的な変化もあります。それらに対応して参りますことは非常に困難だと思っております。予想以上に困難であって、重責だとは思っております。しかしながら私も一たん任につきました以上は、ただ単に困難だから回避していくというわけにいかぬのでありまして、できるだけこれに取り組みましてやって参りたいと思うのであります。しかも私ども財界におりましてやっておりましたのは、大きな意味に考えましても、株主なりあるいは従業員の明日、明後日の幸福を考えて参るわけであります。外務大臣の職というものは、八千五百万同胞の明日の生活に大きくつながる仕事でありますので、非常に重大だと思って、できるだけ渾身の力をふるって、及ばずながら努力してみたい、こう思うのが今日の心境であります。従いまして、どうか時間をかげながら皆さん方の十分な御援助をお願いしたい、こう思っております。
○松本(七)委員 大へん率直な心境を御披露いただきまして、ありがとうございました。なかなか事態はそう簡単なものでないと思います。どうぞしっかり御健闘をお願いしたいと思います。 そこで日ソの関係について最後に具体的な問題について一つだけ関連して伺っておきたいのは、この前から問題になりました安全操業、平和条約の問題で、今日の新聞でも、ソビエト側は、やはり私どもの予想しておったように、相当きつい態度で臨んでくることが予想されるのであります。この前の御答弁で、政府のほとんど最後的といっていい方針のように、領土問題について先方が再検討する気持が全然なければ、もう平和条約の交渉にすら応じないという態度を伺ったのですが、まだ現実の問題に差し迫っておりませんけれども、これはあり得ることですから、一つそれにどう対処されるかをこの機会に伺っておかなければなりませんが、それは万一ソ連側が条件付ならば領土問題についても再検討しましょう、だから一つそのことについて話し合いをやってみましょう、こういうことを言ってきた場合には、一体政府はどういう態度で臨まれるおつもりか。
○藤山国務大臣 ただいま御指摘のような平和条約の問題に関連して、こちらの意向を十分組み入れてソ連が考えない以上、岸内閣といたしましても、あるいは自民党といたしましても、平和条約の交渉には現在の段階において応じられないと思います。そういたしますれば、われわれとしては今日までの方針のように、両国の理解と友情を高める意味において、いろいろな通商協定もやりましたし、あるいは将来文化協定、その他のいろいろな友好関係を深める措置をとりながら、相互理解が十分に達成するように、そうして終局的には領土問題も円満に片づき得るような状態で進めて参りたい、こう考えております。
○松本(七)委員 端的に答弁していただきたいのでありますが、ソ連側が領土について条件付の話し合いをやりたいから、一つ平和条約の話をやろうじゃないか、こう言ってきた場合に、いやその条件の内容をはっきりしてくれなければ交渉に応じないという態度に出るのか、ただばく然と条件付ならばやろうじゃないかと言ってきた場合には、そんならとにかく話だけでもやってみよう、こういう態度で臨まれるか、その二つのどちらをとられるかを端的にお伺いいたします。
○藤山国務大臣 何らかの形で条件という問題が出て参りました場合に、われわれとしては仮定の問題でありますが、その条件がどういう条件であるのか、またどういう気持でそういうものを出してこられているのかということを、十分にソ連側の真意を探ってみた上でないと、いたずらに交渉を開始して、すぐ決裂というような段階に参りますと、かえって日ソの関係を害することになろうと思います。従って十分ソ連側の真意、あるいは今お話のような条件と申しますか、そういうものがどういうものであるかということを考えてみませんと、内容を知らず、あるいはその真意を知らずしてすぐに交渉に応ずるというわけにばいかぬかと思っております。
○松本(七)委員 大臣に予定しておった質問はまだあるのですが、あとは事務当局に譲ります。それを御了承願います。 あと通産大臣の分は留保しておきます。
○床次委員長 大西正道君。
○大西委員 通商条約の内容のことについてはもう触れません。通商条約は、両国の通商に対する基礎的な条件をここで取りきめたということになっております。従いまして、この取りきめの目的を十分発揮せしめるためには、私は今、日ソ間で問題になっておりますところの平和条約の問題に当然考えを発展させなければならぬと思います。これも詳しいことはここで聞きませんけれども、この取りきめられた通商条約の所期する目的を最高度に発揮するためには、やはり共同宣言のときにお互いに確認し合ったように、すみやかに平和条約を締結する努力をすべきであろう、こういうことを思うのでありますが、この点に対する見解はいかがでしょうか。
○藤山国務大臣 ソ連とはすでに共同宣言によりまして、平和友好状態に入っております。ただ平和条約が締結されておりませんので、今日まででも政府はあらゆる意味において平和条約の締結については努力をしております。それは両国ができるだけ友好親善の関係を打ち立てながら、その雰囲気の中で問題の解決をはかるという状態に達するように努力してきているわけであります。日ソ通商交渉が円満に妥結しました。しかもこの交渉は、私担当しておりまして、実に円満にいったと思うのでありますが、そういう状況が積み重なって参りますれば、おのずからそういう域に達するのではないかと思うのでありまして、そういう意味において最大の努力を払いたい、こう思っております。
○大西委員 そういう積み重ね式のなにはけっこうでありますが、あなたの各委員会における答弁を見ておりますと、この平和条約を締結させるための障害は、わが方の領土に対する正当な要求をソ連側がいれないからだ、こういうことを言っておられるのでありますが、その通りでありますか。
○藤山国務大臣 領土に関しては、われわれの要求は正当なものだと思っております。ソ連側がそれをいれることを強く要望いたします。
○大西委員 そうしますと、この領土問題の解決のためには最善の努力を払わなければならぬのでありますけれども、ただこの領土問題の解決は、わが方の正しい主張を相手側に認めさせるということを座して待っておっても、その機会は到来しないと思うのです。これに対しましてどういうふうな手を打ってわが方の主張を相手に納得せしめるか、この点についての方策はいかがでしょうか。
○藤山国務大臣 ただいま申し上げておりますように両国の関係を友好親善のうちに進めて参りますことが、お互いの立場の理解を早からしめるゆえんではないかと思います。そういうことを一方で進めながら、日本の固有の領土であるそういう点につきまして、十分ソ連側にも説明を加えて参りたい、こう考えております。
○大西委員 しかしソ連の千島領有の意図はもう非常にかたいのでありまして、ただわれわれの主張をここに繰り返しただけでは、その目的は達成できぬと思う。それをどういう方法で解決していくか、こういう問題であります。この問題に関して、この前の日ソ共同宣言の際に鳩山総理大臣が、この問題が非常にむずかしい問題であるという質問に対しまして、こういうことを言っておられる。「その平和条約の締結の時期をして択捉、国後の日本の帰属がきまるような状況の到来というものは、どうしても国際情勢の変化に伴う以外にはソ連の意思の変更はないものと私は思っております。」こういうふうに言っておられる。国際情勢の変化がない以上はなかなかソ連の千島領有の意図に変更はない、こういうふうに見ておられる。言いかえてみれば、だから国際情勢の変化ということ、それが最大の頼みであるというふうに鳩山総理大臣は当時の状況から判断されているのであります。これに対しましての外務大臣の見解はいかがでありますか。
○藤山国務大臣 お説の通り日ソ間のただいま申し上げたように友好関係を深め、相互の理解をあれし、日本の主張を理解してもらうということは、両国間の問題として努力をいたしているわけでありますが、同時に今お話のように日本の置かれている位置からいいまして、大きな国際情勢の中における問題は世界の情勢が逐次変ってくることによって、単にソ連ばかりでなく、日本と各国との関係がおのずから変化をしていくことになるんじゃないかと思っております。従って世界の緊張を緩和し、世界の平和が達成されるように努力いたしますことは、日本の政府として当然なすべきことであろうかと考えております。
○大西委員 それでは千島領土の返還、すなわち平和条約締結のための一番の努力目標というものは、国際情勢の変化をもたらす、さらに鳩山さんの言葉でいえば、米ソ間の国際緊張の緩和を招来する、この一点が一番の大事な眼目であろう、こう思うのであります。この点についてはあなたのお考えも同じでしょうね。そういたしますと、平和条約を早く結ぶ、領土問題を解決する、わが方の主張をいれさせる、こういうために政府のとるべき手段は、国際緊張の緩和、すなわち米ソ間の緊張の緩和をやるために日本が最大の努力を払うということが一番の大事ななすべき仕事であろうと思うのでありますが、いかがでしょう。
○藤山国務大臣 日本の外交方針として当然そうあるべきことだと思います。
○大西委員 すでに平和宣言がなされてから一年有半、しかもその間にこの問題にからんでたくさんの漁業問題が山積しておる。今やわが国は領土問題を解決して平和条約を結ぶ一番大事な時期に到達しておるときに、それでは果して今日まで日本政府はこの米ソ間の緊張緩和のためにどのような努力をしたか、こういうことについて私は質問せざるを得ないのです。私から申し上げますれば、この点についてはまことに努力が足りなかったと思うのでありますが、何かあなた方といたしまして努力をされたということがございましたら、一つここで披瀝願いたい。たとえば国連における努力というようなそういう抽象的なことでは満足いたしません。私どもとしましては非常に努力が足りなかったと思いますから、この点について努力されたならばどういう努力をされたかということをお聞かせ願いたいと思います。
○藤山国務大臣 共同宣言以来政府はできるだけの努力を、ことに鳩山総理はそういう声明をしておられますが、できるだけの努力をされたことは当然だと思います。私も就任以来そういう意味においてできるだけ努力をして参りたい、こう考えておるのでありまして、結局世界がほんとうにいい平和になっていくということを庶幾することは日本国民の願望であり、おそらく世界国民も同じだろうと思うのであります。ただ日本としてむろん国際社会に、一昨年国連に復帰したような状態でありますので、われわれがそうあせってもなかなかいかないのでありまして、これは私も申し上げているように忍耐強くわれわれの努力を重ね、またわれわれの英知を尽して、いろいろな場合にいろいろな角度からわれわれの努力を展開していかなければならぬ。それにいたしましても、日本としての国際社会における実力等もありますので、所期の目的を達成するということがそうわれわれ一人力みましてもいかぬ点もありますので、国民の各位とともにできるだけ忍耐強く、そういう問題については最大の努力をして参りたい、こう考えております。
○床次委員長 大西君に申し上げますが、申し合せの時間が来ておりますから……。
○大西委員 私が言っていることは、そういう答弁があろうと思うから、何か具体的なことをなさったかということを聞いておるのです。あまりあせっても、国連に加盟してまだ日も浅い、そういうことはわかります。日本ひとりでどうこうということはできないと思いますけれども、しかしながら日本の置かれた立場というものは、米ソの勢力緊張のただ中にある。ですから、私どもからいわせれば、この間の岸さん並びにあなたがアメリカに行っていろいろの取りきめをなさったようなこと、こういうことはむしろ米国との関係をかえって緊密にして、ソ連と米国との間の対立をかえって激化させるような方向に日本が進んでおる、こういうように思わざるを得ない。やはり米ソの中に立ってその緊張を緩和させ、和解をさせるささやかな努力であろうが、やれると思います。日本の従来の対米従属関係をさらに推し進めるような今の政府のとっておる方式は、今あなたが言われた緊張緩和とは逆な方向をとっておると私は思うのです。 一つ具体的な例をとりましても、私どもがアジアにおける緊張緩和方策というものは、米ソ、日中との間に不可侵条約を結ぶとか、英国の保守党のマクミラン首相が提案したような非核武装地帯を設けるとか、そういうような努力がされてこそ、初めて緊張緩和のために努力をしておる、またそういう意思があるということが言えると思うのでありますが、今とっている万般の政策というものは、みんな緊張緩和じゃない、促進の方向に進んでいると私は断言せざるを得ない。この点についてはここで具体的なことをこれ以上申し上げましてもあなたは答弁に窮されるだろうから、この次の一般情勢のときにお伺いいたしますが、私どもはどうしても平和条約を結ぶための領土問題解決のためには、この緊張緩和ということが至上命令だ。そのための政府の努力というものは至ってこれは微々たるものである。今後一つ大きく外交の路線を切りかえて、そしてこの緊張緩和のために具体的に行動されることを私は望んでやまない。
○床次委員長 それでは次に通産大臣に対する御質疑を願います。松本七郎君。
○松本(七)委員 最初は支払い方式の問題です。ソ連側が清算勘定を望んでいることは周知のことでありますが、私どもこの点はずいぶん政府の考え方を弁護するような説明を向うでしたのです。日本の今の政府の基本的な方針として、なるべく清算勘定は整理していく、そして現金支払いに切りかえつつある。今まで清算勘定であったところも、むしろ切りかえるようなことをやっておるのだからということが実情として一つと、もう一つは相手は社会主義計画経済、計画貿易、日本は資本主義経済、資本主義経済の建前から言うと、なかなか清算勘定で長期契約ということはむずかしい実情にある、こういうことさえ私どもは説明をしたのであります。そのときの向うの説明を非常に私どもも興味と関心を持って聞いたことは、いろいろ各国との実例をたくさん出している。たとえばフランスとの関係、それからスエーデンとの関係、その他資本主義国との交易がどのようになされているか、今までのいろいろな例を聞いてみますと、共通しているのは、それらの資本主義国の中でも貿易業者、事業家、そういったいわゆる資本家がむしろ長期契約を望んでいる。こういう事実をわれわれは知ることができた。ですからこれは私ども非常に不明をむしろ恥じたのですが、資本主義諸国だから長期の契約はやりにくいのだ、いろいろな国際的な経済変動その他の影響を受ける。それからまた国内的にも変化が非常に激しい。従って社会主義諸国のように安定した計画経済をやっている国と、必ずしも長期の契約はできないのだというこの論拠が事実をもってくつがえされる最近の事例というものは、たくさん見たわけです。 こういう点から考えると、いろいろ話し合ってみればみるほど、向うさんの言い分を、われわれはもう少し世界的な規模に立って、ただ日本という立場からだけでなしに、十分検討する必要があるのではないかということを感じたのでございますけれども、政府としてもああいう交渉を長くやられた以上は、相当豊富な材料を持って、また日本の特殊な事情に立脚して、あの清算勘定ではいけない、ポンド決済ということになったのだろうと思います。その考え方、及び今までの経過と結論に至ったまでの事情をごく概略でよろしゅうございますから、ポイントをはずさないようなお答え願いたい。
○前尾国務大臣 ただいま御質問のある通りであります。われわれとしては、清算勘定はできるだけ整理していこう、こういう気持を持っていることは事実です。と申しまして、実際申しますと、お互いに貿易をやるのには清算勘定が非常に工合がいい。もう一つ率直に言いますならば、貿易だけで考えていきますと、通産省の立場から言うと、清算勘定の方が工合がいいというくらいな気持を持っておるわけです。しかし一面から言いますと、御承知のように今度は決済の関係で焦げつき債権ができるとか、収支の面から見ますと非常に困り、また現に各地でそういうような困った問題が起っておるのです。これはできるだけ整理していこうということになっておるのであります。実は詳しい点は事務当局からお話さしてさしつかえないと思いますが、結局ただいまのところ、中共にしましてもソ連にしましても、長期的にそういうような取引をやるということについては、まだその時期でないという考えを持っておるのではないかと思います。詳しい点は事務当局の方からお答えいたさせます。
○中山説明員 御指摘のように、ソ連はたとえばフランスとの間にはオープン勘定を持っておりますし、あるいはその他の国とも清算勘定を持っておる国がかなりあるということは承知しております。他方、たとえばイギリスとはポンドの決済をしておるという実情にございまして、この協定の交渉に入ります前に、政府からまたわれわれの通産省からも人をやりまして、向うの制度等もかなり調査いたしました。そして従来からのソ連の支払い方式等をも勘案いたしました結果、現状においてはやはり日本としてはポンド・キャッシュ片道払いを申し出ることの方が好都合である。といいますのは一面におきましては従来のバーター制度を廃止するということもございますし、それからオープン・アカウント制度につきましてはいろいろ政府部内にも問題がございまして、そしてソ連の外貨の手持ち状況その他から見て、清算勘定を使わなくてもポンド・キャッシュの取引でわれわれの貿易は十分拡大できるという確信ができましたので、それを提案してソ連の同意を得た次第であります。
○松本(七)委員 今さしあたりポンド決済でいくということを言われましたが、それでやってみて、そして日ソの貿易が相当長期にわたって発展の見込みがついた場合には、それでは清算勘定に切りかえるという含みがあるのですか。
○中山説明員 さしあたりと申しましたのは失言でございます。条約にきめられました通り、この条約のある限り英ポンド勘定で行うということでございます。
○松本(七)委員 この現状だけに目を向けて考えると、そういうふうな非常に消極的な考え方に結論はなると私は思うのですが、今後の中国なりソ連の経済がどのように発展するだろうか、こういう将来性にわたった見通し、そういうことをもう少し考慮に入れるならば、私はもっと別な結論が出るのじゃないかと思うのです。この点がこれからの非常に大事なわかれ目になってくると思うのですが、外務省ではすでに昨年に中共白書——これは公表されなかったけれでも、準備されておる。通産省と外務省の見方はやはりそういうところに違いが出てくると思うのです。通産省としてはやはり現状に立脚して、さてこれからの商売をどうやるかということに重きを置かざるを得ない。ところが外務省としてはそれではいけないんだ、やはり先々の見通し、まだ国交回復ができておらないけれども、正常化はされておらないけれども、中国市場が今後どうなるか。日本はどうしても今後の市場拡大ということを伴わなければ、絶対にソ連との貿易も伸びないのです。また日本の国民の生活を向上させるためにも外国貿易をやると同時に、すなわちこれが市場拡大ということに結びつかなければ貿易は伸びるわけはないのですから、この点を考えれば、外務省が去年からすでに中共に対するところの検討を進めてきておるということは当然なことだと思う。現在外務省当局としてはこの点についてはどういう考え方を持っておられるか、何らかの結論があの当時からすでに発展して出ておるなら外務当局からこれを一つ御説明願いたい。
○牛場政府委員 私どもはオープン・アカウントないしは清算勘定というものを根本的に廃止すべきものだというようには考えておりません。従いまして日ソの協定につきましても将来合理的に両国の貿易がバランスできるという見込みがつき、かつ相手方の支払い能力につきまして確信を得た場合におきましては、もちろんきわめてフリーな立場で再検討するということはあり得ると思います。ただ現状はただいま通産当局から御説明がありましたように、向うから何か買う物があるかということがよくわからないわけでありまして、ここ二、三年はキャッシュにしておいて向うの状況をその間によく勉強いたしまして、そういう将来の可能性を発見していくということが一番得策ではないかと考えておる次第であります。 それからもう一つの問題は、ソビエトとたとえば清算勘定を結びますと、あとまた共産圏の国から、いずれそういう種類の方式の決済方式を要求されることがあるわけでありまして、その場合には非常に向うから買うものがないという観点から困ることになりますので、そういう考慮も幾らかあった次第でございます。
○松本(七)委員 これはあとで伺おうと思っておったことなんですが、ちょうど牛場さんが、向うから買う物がはっきりしないということを言われたので、ちょっと申し上げなければならなくなったのですけれども、買う物があるかないか。これは実際の交渉に入ってみなければわからないのです。向うもそう言っておるのです。われわれもずいぶんこれは——社会党の立場としてもそうですよ。これから社会党はいろいろ日本の経済をどうやるかという検討もし、計画も立てなければならない。それには中国なりソ連の経済の状況、特にソ連がシベリア開発でこれから急激な発展を遂げようとしておるのですから、日本の業界でもその点は非常に注目しておる。特に鉄鋼界あたりでは中国にああいう使節団を出しましたけれども、その前からシベリアの開発状況を何とかはっきりつかみたいという声が起っておるわけです。そこで私どもはそういう話を去年やった。そうするとまだ条約もできておらない、今通商条約の交渉中だ。そういうものができていざこれからどうするか、具体的な段階になってから、自分たちは日本がどういう物を買いたいか、売りたいか。こっちはソ連側がどういう物を売りたいか、買いたいかということが初めて出てくるので、通商協定もできない、具体的な話にならないのに、おれの方はこういう計画がありますと全部さらけ出すわけにはいかない。これはごもっともな話であります。われわれは政府でないわけでありますから、なおさらそういうことにならざるを得ないわけです。 ところで今通商協定ができた。石油は十万トンとここの別表にちゃんと掲げてありますが、この十万トンについては問題があって、ずいぶん少い話だと思います。私どもが話したところでは、向うは幾らでも出せる。幾らでも出せるでは見当がつかないからどのくらいかと言うと、向うさんはどのくらいほしいかはっきり出してほしい。われわれは政府でないということは十分向うさんに伝えた上で、日本の業界その他が話し合った結果、一応現在の千五百万トンないし千八百万トンの一割、百五十万トンないし百八十万トンくらい入れればいろいろな面に好都合ではないか。また日本で希望しておる向きの希望を伝えて話しましたところが、そんなものは何でもない。きのうの牛場さんの御答弁にも、樺太の石油が入らない、だから黒海の方の石油でなければならないから、輸送の問題があるというようなお話がありました。この点もわれわれはむしろやったのです。ソ連としては今樺太石油しか日本にはなかなか持ってこれまい。しかしこれはソ連の需要で一ぱいだということだから、石油を日本に送ってもらうことはなかなかむずかしいのではないかという話をしましたところが、冗談言うな。あなたが樺太の石油でなくちゃなるまいとかそんな心配をする必要はない。ソ連にはどんどん新しい開発もできておるし、どこの石油を送ろうがこっちが適当にやります。輸送のことも心配ありません。とにかくどれだけ要るかというから、さっき言った数字を披露した。ところが絶対にそれは保証します、それくらいのものなら原油であろうが製品としてであろうが、絶対に保証するという説明を権威ある責任者が向うでは言っておるわけです。ところが政府の今回のこれらのやり方を見れば、原油の割当はしないという建前をとっておる。しかもその理由に、ほかにいろいろ事情はあるようですけれども、価格が適当でないというようなことを日本側としては一つあげられておるわけです。ところが価格は、割当があって、そうして実際の折衝に入ってみなければわからないのです。日本の業者は、必ずしもソ連の石油の価格がそんなに高くない、折衝してみればこれははっきりしてくる、こういうことを言っているのです。そういうふうに具体的に、積極的に政府がこれから日ソの貿易をうんと伸ばそうという気があるなら、新しくどんどんワクを与えて、そうしてその折衝を始めて、その段階で初めて、価格なり何なりがここに出てくると私は思うのですが、そういう積極さというものが、今までの御答弁を聞いても、どうもくみ取れないのです。こういう点について、一つ通産大臣の御意見を伺いたいと思います。
○前尾国務大臣 ただいまお話の通りに、量としては幾らでも出ると思います。ただお話にもありました通りに価格の問題であります。ただいまのところ黒海の石油原油でありますと、価格がずっと工合が悪い。従って同じ価格でありましたらこれは相当買えると思います。しかし輸送の関係を考えますと、何か特別なインセンティブを与えないと出ない、買わない、こういうような状態にあります。これが一番の障害でございまして、それについてはわれわれも極力協定の線に沿って努力はいたしておりますけれども、これは限度があることであります。高い物を押しつけて買わせるというわけには参りません。それらの状況をにらみ合せながら、今後のことを考えていかなければならぬ、これが真相であります。
○松本(七)委員 石油の話になってしまいましたが、それじゃこの協定にある十万トンは、必ず割当許可を出す方針ですか。
○前尾国務大臣 十万トンは何とか入れたいというので、今せっかくいろいろ検討いたしております。
○松本(七)委員 そうすると今後この割当量を拡大する場合は、どういうふうな形で拡大されるのですか。
○前尾国務大臣 結局価格の問題に帰着すると思うのです。御承知のように石油にしましても、あらゆる物資について外貨の割当をやっております。外貨の制限といいますか、極力外貨を節約しなければなりません。その外貨の範囲内において買いますことは自由なんです。しかしただ自由にしておいたのでは買わないのです。これは価格の点でどうにもならない。そこで何かもっと積極的に有利にして買い入れたいというのでやっておるのであります。しかしこれも限度がありますから、もしそういうような障害がなければ、これはもっともっと買っていいと思います。
○松本(七)委員 今まで実際に扱っておる業者は、大体が米英系統の石油を扱っておるわけですから、その連中は幾ら石油全体のワクがかりに広がったとしても、やはり今までの取引で米英の系統の石油を入れることになる。新たにこれからソビエトの石油の販売貿易をやりたいという者には、新しいワクを与えなければ、今言う価格の問題も具体的な折衝ができないのです。ソ連側がそう言うのですから、価格の問題に入ろうとしても、あなた割当をもらったか、割当をもらってからでなければ価格の交渉に応じられない、こう言うのですから、やはり日本としてはこの貿易をほんとうに伸ばす気持があるなら、ワクをある程度広げつつ、新しい人でなければ、ソビエトと交渉して石油の商売をやろうという熱意を持った人でなければこれはやれません。そういう人々にワクを与えて、そうして実際の価格の折衝をやってみる。そして価格が今大臣の言われるように十分引き合うものであるという見きわめがついたら、だんだんにワクを広げる、こういう方針で臨まれることを期待できるでしょうか。
○前尾国務大臣 十万トンにつきましては、これは何かインセンティヴを与えて、そうして実行したい、こういうふうに考えておるのです。それで価格が引き合うということになりましたら、これは将来どんどん伸ばしていっていいのでありまして、必ずしも米英で、ひもつきだというふうにはわれわれ考えておりません。
○松本(七)委員 政府がひもをつけるのではなしに、業者自身が、新しいワクができなければ、今までの慣例に従って——取引というものは相手国をそう簡単に変えられるものではないのだから、やはりなれた商売の方がいいのだし、今までのワクの中だったら新しい分野はそう広がらない。新しい分野をほんとうに広げるつもりなら、やはり政府が積極的にワクを、そっちの方の貿易ができるように広げていく努力をしなければ、ただ、今までの業者まかせではむずかしい。新しくソビエトとそういう石油の貿易をやりたいという商社に対しては、特別にそういうふうな積極的政策をもって対処するお気持があるか、この点なのです。
○前尾国務大臣 これは個々の割当になりますと、いろいろ基準なり問題があります。しかしわれわれ先ほど来申し上げておりますように、十万トンについては何かインセンティヴを与えて、そうしてやろうというところまでやっておるのです。その結果がよければ、これはもう幾らでも今後の行政指導で積極的にやっていける、こう思います。
○松本(七)委員 その次は、さっき外務大臣からちょっと御答弁がありましたけれども、窓口一本化はやらない。しかし何か適正な規制措置というか、あまり不当な競争にならないように、この点については通産省としては何か具体的な構想をお持ちでしょうか。
○前尾国務大臣 ソ連に対して特別の措置をやっていくことができないことは御承知の通りであります。それから窓口の一本化という言葉はあまり適当でございませんので、また従来言われておったような公団方式、こういうようなことはわれわれ全然考えておらぬわけであります。要するに問題は取引秩序の確立といいますか、過当競争の防止、こういうことであります。過当競争の防止につきましては、せっかく今折衝中でありますが、取引法の改正をやるというので、政府がもう少し勧告権なり何なりを持って、そうして相当強硬といいますか、積極的に乗り出し得るような法制にしたい、こう考えております。そしてまた業種別取引秩序の確立をやっていけば、まあソ連貿易におきましても心配するようなことはないというふうに考えております。
○松本(七)委員 この貿易及び支払協定を見ますと、わが国がソビエトから買い付ける品目というものは、ほとんどが原料なんですね。今後はだんだんわが方としても、ソビエトから機械だとか施設等も輸入する必要が出てくるのではないのか。特に最近のソ連の科学の進歩というような点から考えてみると、その技術水準というものは非常に高いものがある。全般的に全部が高いとは言えませんですけれども、部門によっては非常に高いものがある。日本の技術を今後世界的にどんどん高めていくためには、やはり貿易の面においてもある程度進んだ向うの機械だとか施設等も輸入する必要が出てくるのではないかと思いますが、そういうお見通しはどうですか。
○前尾国務大臣 現在でも機械及び設備というのを入れておりますが、実際のことを申しますと、まだどういういいものがあるかよくわからぬというので、われわれも業者の行かれる場合に、何かいい物を探したらどうかというようなことまで言っておるのであります。また日本の商品につきましても、雑貨品等でも従来世界的に十分出ておるのですから、そういうものも買ってもらいたいというふうに考えておるのでありまして、ただいまの商品に限定して考える考えは全然持っておりません。
○松本(七)委員 これは近くは商品見本市その他でだんだん認識も深まってくるだろうと思います。それから工業施設だとかいろいろなものの交流もこれから盛んになるでしょうから、今後そういう面に通産省としての格段の努力をしていただきたいと思います。 それから、あと外務省に対する質問がありますが、大臣を先に片づけたいと思いますが、一般炭の輸入はどうなるんですか。今のところ許可してないということで、商社あたりとしては輸出超過の穴埋めをするのには一般炭の輸入がぜひ必要だ、こういう意見を持っておるようですが、またそういうものを輸入すれば、今日滞貨になっておる繊維品とか相当はける見通しもできてこようかと思いますが、この点はどうでございますか。
○前尾国務大臣 御承知のように、石炭につきましては三十五万トンでありますか、一応の見積りをしております。これは昨年は割合に出たのであります。ところが国内事情が非常に変りまして、去年からことしにかけましては一般炭の滞貨といいますか、貯炭量が多くなりました。今以上に入れるというようなことになりますと、国内に非常に貯炭がふえまして、価格その他の問題につきましても非常な影響を与えるということで、そういう事情だけによって今のところ一般炭を入れるというわけにいきません。できるだけ粘結炭を入れて、そしてまたこういう事情が緩和しましたら、これも極力入れたい、こういうふうに思います。
○松本(七)委員 それから正常な貿易を発展させるためには工業所有権——特許及び商標登録の問題を解決することが必要だと思います。ソ連はパリの万国特許同盟には参加しておりませんけれども、相互主義による外国特許と商標登録を認めているわけですね。いよいよこの通商条約ができるということになりますと、どうしてもこれらの問題についても何らかの協定ができなければならないのじゃないか。ほんとうにこの通商を円滑にするためにはこれが必要になってくると思います。政府はソ連と特許及び商標登録協定をどうして結ぼうとしないのか。これがないと今後非常な不便が出てくると思うのです。話し合いをされたとも私どもは聞いておらないのですが、何らかこの通商交渉の際にこれらの特許及び商標登録について話し合いをされたか、お伺いしたいと思います。
○前尾国務大臣 ただいままでのところ、その話し合いはしておらぬようであります。ただ、条約に加盟していないために法律的な保障というものは得られない。しかし何か不便は除いていかなければなりませんから、それらについての話し合いはやっていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
○松本(七)委員 これは早くやらないと、特許庁の一月末の通達文書を見ますと、現在特許を認められない国としてソ連をあげておるわけです。こういう話し合いを早く進めて、ここのところをきちっと協定でも結ばなければ、日ソ間の貿易発展を阻害すると思いますが、外務省としてはこういう問題を検討されたでしょうか。全般的な通商の発展という観点から、どういうところに今後解決しなければならない問題があるかというようなことをいろいろ当然検討されたでしょうか。外務省自体はこれにお気づきになっていらっしゃいますか。
○牛場政府委員 今回の交渉におきましては話し合いはなかったことは、ただいま通産大臣から御説明があった通りでございます。今後の問題につきましては、確かにそういう問題も起ってくると思いますので、検討いたして、ソビエト側とできるだけ早く折衝して参りたいと思います。
○松本(七)委員 この問題はすぐ具体的に話し合いを始めるなり、この解決方に通産大臣として努力していただけますか。
○前尾国務大臣 私の方としてはそうしてもらいたいと思います。
○松本(七)委員 外務省はそれは差しつかえないんですね、別に何か障害があるというわけじゃないんですね、ただおくれておるだけだというふうに理解してよろしゅうございますか。
○牛場政府委員 その通りでよろしゅうございます。努力いたしたいと思います。
○松本(七)委員 通産大臣はけっこうです。 今後いろいろ通商が活発になるということになれば、当然通商を促進するためにも、またその結果としても両国国民の行き来というものもひんぱんにならざるを得ないと思うのですが、かねてからの問題である交通公社、インツリーストの出張所あるいは営業所を相互に設けて、旅行のあっせんをやるというふうなことを具体的に考えられるお気持は外務省にありませんか。
○松本政府委員 技術的にいろいろ支障がない限りにおきましては差しつかえないと思うのですが、おそらく指紋の問題がまた起るのではないかと思いますので、一応そういう話が出ましたときに考えてみたい、こう思っております。
○松本(七)委員 これはことごとに指紋の問題が出たんじゃ困ったもんです。そうすると外務省としても指紋の問題は、今は暫定的にああいうふうな解決——解決とは言えないかもしれませんが、便法を講じてやられるようなことになっておりますが、ああいう一時しのぎではこれからはどうしてもだめなんです。そこで指紋ということはアメリカしかやっていないんですから、一つ日本も抜本的にああいうつまらないものは廃止するように、外務省あたりで率先して法務省とも積極的な話し合いをするという機会を作っていただく必要がある。政務次官の御意見を伺います。
○松本政府委員 アメリカだけではなく、他にもまだ数カ国ありますが、指紋制度というものは私は、やはり東洋人のサイコロジーからいたしますと、あまり歓迎すべきものではないと思うのですが、諸般の政治情勢あたりからいたしまして、これがやむを得ず設けられたことは松本委員も御承知の通りであります。なるべくそういう方向に一つ進めていきたい、こう考えます。
○松本(七)委員 それから航空協定、これはいつも問題にするんだけれども、大臣もやる気持はあるらしいけれども、一つ具体的に話を日本側からソ連の方に持ち出すという方針はまだきめられないのですか。
○松本政府委員 正式にはまだございませんが、先般鳩山総理がモスクワに行かれましたときにもこの問題は非公式に出ております。決して悪いことではないと思いますので、何かの機会に検討してみたい、こう考えます。
○床次委員長 ほかに御質疑ございませんか。——それでは本件に関する質疑は終了いたしました。 続いて討論に入ります。討論の通告がありますので、これを許します。松本七郎君。
○松本(七)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の通商に関する条約について賛成の意見をごく簡単に述べたいと思います。 私どもは、日ソの間に、鳩山内閣によって共同宣言という変則的な形ではありましたけれども、国交回復ができたことに大きな喜びを感じておる次第でございますが、これを土台に一刻も早く平和条約も締結され、そして両国が新しい出発点に立って大いに友好親善を深めていくことを期待しておるわけでございます。しかし何といってもまだ平和条約の問題では、領土の問題にからんで両者の意見が一致しない点があり、行き悩みの状態でありますので、これを促進する意味からも、また変則的な状態にありながらも、両国民の友好親善をあらゆる方向で増進していくという観点からも、最も期待されたこの通商協定が一日も早くできることを望んで、私どもも及ばずながら努力をしてきておったのであります。今回、いろいろ難航はありましたけれども、自民党内閣によってこの交渉が成立して、こういう通商協定ができたことについては、私どもも絶大な賛意と敬意を払うのでございます。ただ、せっかく協定ができましても、それが単なる協定に終って、実際の貿易が予期通りの進展が見られないということであっては何にもなりませんので、どうかこれを協定倒れにしないように、積極的な政策をもって日ソ間の貿易を今後進展さしていただきますよう一段の努力を期待いたしまして、私の賛成討論とする次第でございます。
○床次委員長 これにて討論は終局いたしました。 採決いたします。日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の通商に関する条約の締結について承認を求めるの件を承認すべきものと議決するに御異議ございませんか。
○床次委員長 御異議なしと認めます。よって、本件は承認するに決しました。 なお、本件に関する報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。
○床次委員長 御異議がないようでありますので、さよう決定いたします。 —————————————
○床次委員長 これより一般国際情勢に関して質疑を許します。並木芳雄君。
○並木委員 ただいま日ソ通商条約が成立いたしまして、これはやがて来たるべき平和条約への一里塚でございますので、私どもはもろ手をあげて歓迎するものでございますが、その平和条約もなかなか難航を示しております。そこで政府は、積み上げ方式によって平和条約へ持っていきたい、こういう意向を明らかにしておりますが、本日承認されましたこの通商条約のほかにどういう協定を予定されておりますか。たとえば航空に関する協定のごときものはいかがでしょうか。あるいはまた文化についての条約のごときものはいかがでしょうか。今後どういうものが両者の間で協定されるか、明らかにしていただきたいと存じます。
○松本政府委員 航空協定に関しましては、先ほど松本委員に答弁した通りでありまして、何かその機運が導かれるような事態になりますれば十分研究する余地がある、こう思います。文化協定の問題に関しましては、今とりあえずこれを結ぼうというような機運が、まだ双方にございませんが、実際におきまして、スポーツの交換であるとか、あるいは芸術家の交換等あたり、相当今日まで数多く行われてきております。こういったことが積み重なりまして、将来、たとえば今審議を願っておりますパキスタンとの文化協定みたようなものが締結される機運になれば、これももちろん考えて、先ほど申されましたごとく、積み重ねていろいろ事態を緩和していく必要があるのではないか、こう考えます。
○並木委員 しかし何と申しましても平和条約の締結に持っていくことが正攻法でございますので、私どもはやはりそれを念願してやみません。しかし領土の問題でデッド・ロックにぶつかっておりますが、最近のモスクワの放送によりますと、領土の問題で障害を来たしているのは、例のサンフランシスコ平和条約の第二条で日本が千島列島云々その権利と請求権を放棄しているじゃないか、放棄しているのであるから、千島について、たとえば択捉、国後について領土権を主張することは当を得ないのだということでございます。この点は政府としては、サンフランシスコ平和条約第二条の(C)の千島列島というものの中から国後、択捉は除かれるのだ、こういう解釈をとっておると思うのです。また列国もこれを認めておると私はかたく信じておるのでございますが、それはどうなっておりますか。
○松本政府委員 千島列島の定義、範囲の問題に関しましては、いろいろと論議がかわされております。しかし政府のとっております態度は、歯舞並びに色丹は北海道の一部分である、国後、択捉両島は昔から日本の固有の領土であるので、従って千島列島の中には、サンフランシスコ講和条約のあの精神にのっとって締結されました文章には該当しないという考えで参りました。もちろんこの解釈につきましては、いろいろと調印国の間にも中途半端な議論、あるいははっきりしない議論等があったのでありますが、何と申しましても、一番発言権を持つと考えられますアメリカとかあるいは英国であるとかフランスであるとかいうような国が、態度をはっきりしてくれることをわれわれ希望しておるのでありますが、特にこれらの国にどういう交渉をしているということは、これは外交の機密になりますのでここに公表するわけにはいきませんが、中には日本とひとしい解釈をしてきている国もあるのであります。こういう工合に、国際世論も一つできるだけ日本の解釈と同じように導くように努力いたしまして、固有の領土であるところの択捉、国後はもちろん日本にこれを返してもらうような講和会議に持っていきたい、こう考えます。
○並木委員 そういたしますと、まことに遺憾ながら、平和条約にいわゆる千島列島の中から国後、択捉は除くということは、列国の間でははっきりしておらないということでございますか。
○松本政府委員 それは連合国側ですか。
○並木委員 サンフランシスコ平和条約を締結した相手の連合国内であります。
○松本政府委員 ただいま申し上げましたように、まだ全部一致してこの領土の範囲を決定したものはございませんけれども、徐々にそういう方向に持っていく努力をしておりますが、少くとも先ほど申し上げました三ヵ国のうちで、あれは千島列島の中に属しないのだというような解釈をしている国も出てきておることは事実でございます。
○並木委員 それでは私どももやはり強硬論一点張りでも行き得ないという節もあるわけなんです。ソ連の方では、日本はサンフランシスコ平和条約で請求権を放棄しているじゃないか——ソ連はこれに参加していないのですから、そういう当然の主張は出てこない。ただ第三者としてのコメンテーターの域を出ないわけでありますけれども、それを今度のソ連との平和条約締結の一つの言いがかりに使っているわけです。ですから日本として、国後、択捉はわが方の固有の領土であるということを主張している。その言はいいのです。けれどもこれをやはりサンフランシスコ平和条約に調印をした連合国の再確認を得る、何らかの形で的確な証文を取りつけることが必要な段階に立ち至ってきたのではないでしょうか。私はそういう意味におきまして、政府が連合国の間で何らかのいい結論を出してほしいというその意思を率直に具体化して、進んで日本の政府の方から連合国に呼びかけて、このサンフランシスコ平和条約の第二条に「千島列島」これへたとえばカッコして(国後、択捉を除く)こういうふうに、これは技術上の問題ですが、条約の改訂と申しますか、補足といいますか、交換公文、何らかの形でいいのですが、そういうふうな現実の証拠を出してもらって、ソ連の言い分は違うのだ、連合国の間でもはっきりこういうふうに確認をしていてくれるのだというところに持っていきたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
○松本政府委員 国会の内部の一部にもありますように、南樺太、千島の帰属の問題に関しましても、ソ連が今これを領有していることは不当である、おそらくこの意見は一致していると思うのであります。これは一応サンフランシスコ講和会議で日本があの文書へ調印いたしました建前上、一応放棄はいたしましたけれども、しかしながら放棄をしたその領土が右から左にソ連の領有になる。ソ連に帰属するということは明確になっていないのです。調印しておればもちろん議論はなかったでありましょうが、あの条約に調印しなかったソ連があの領土を占有するということは少しおかしいのだというのが、これが一致した意見なんです。しかし択捉、国後の問題に関しましては、これは千島列島の中に入っているかどうかという問題は解釈の問題であって、新たに条文改訂とかいうようなことはないと思いますが、南樺太あるいは千島をソ連には与えない、宙ぶらりんになっているから、また日本にこれを与えるのだというようなことにしようと思えば、これはあるいは条約の改訂が必要であるかと、こう考えます。
○並木委員 まことに明快な答弁でございます。そこで解釈の問題、これは私も全くそう思います。解釈において千島列島の中に国後、択捉が入っていないのだ、それを何らか文書で、たとえば日本でそういう文書を作ってサインしてもらうというような方法を取りつけたらどうですか。これは各国別にそういうものを出して、署名して下さいといってもとれるんじゃないでしょうか。
○松本政府委員 各国、別個にいろいろな努力をしていることは先ほど申しましたように、これは外交の機密になりますので、はっきりしたことを申し上げられないことをはなはだ残念に思うのです。各国別にいろいろとやるということよりも、やはり何かの機会にそういう機運になりましたならば、これらのおもな国でもけっこうだと思うのですが、あるいは間違っておるかもしれませんが、これが会合いたしまして、この解釈を明確にしてくれれば日本の立場は一そう有利になるのではないか。その意味におきまして、徐々にその方向に持っていくべく努力は続けてきておりますが、意のままにならないことは諸般の情勢から御承知の通りだと思います。
○並木委員 ただいま次官の答弁の中に、何らかの機会ということがございましたが、その何らかの機会というものの中に想定されますことは、たとえばどういうことでしょうか。国連関係ですか、それともアメリカとか、英国がイニシアチブをとって何かの会議を招集するとか、そういうことですか。
○松本政府委員 御承知のごとく国連に加盟いたしました日本、また安全保障理事国の一つに選挙されました日本の地位というものは非常に高まりまして、いろいろな国際会議にずいぶん顔を出し、しかも発言が相当重視されるようになって参りました。こういった場合に、日本の地位も高まって参ったのでありますので、いろいろな会議のいろいろな機会にいろいろな話を、特にこの話等あたりを持ち出しますれば、何かの機運で、それでは一つおも立った国だけでも集まってこの問題を討議してみようじゃないかというようなことが起るのではないか、こう考えましたのであらゆる機会をとらえてということを申し上げたのであります。
○並木委員 その点については、連合国に対して今までも日本としては申し入れをしたこともあると思いますが、今後といえどもこの申し入れを絶えず続けてもらいたいと思うのですが、いかがでございますか。
○松本政府委員 努力を続けます。
○並木委員 先ほどの次官のお話の中に、国後、択捉は千島列島に含まれるかどうかということは解釈の問題である、それと同時にさらに一歩進んで南樺太、千島それ自体の帰属についていうならば、これはサンフランシスコの平和条約ではきまっておらないのだ、今後連合国の間であらためてきめらるべき問題であるということになりますと、日本としてもできれば南樺太、千島全体というものに対して、将来返還してもらいたいという要望も、新しい要望として、サンフランシスコ平和条約と離れて新しい要望として出てくる余地があるのでございますが、その通り了解してよろしゅうございますか。
○松本政府委員 国会内におきましても一部においてはそういう意見が非常に強いことは事実でございます。こういったことを参酌いたしまして将来さらに考えさせていただきたいと思います。
○並木委員 それでは伺いますが、ただいま日本の政府としては、日ソ平和条約締結の条件としての最小限度の領土の要求はどことどことどことでございますか、この際明らかにしていただきたい。
○松本政府委員 対象となりますのは、日本が独自の立場で主張し得るのは択捉、国後、歯舞、色丹だと思います。
○並木委員 日ソの平和条約について、同じくモスクワ放送によりますと、漁業条約あるいは安全保障条約について触れておりますが、その中で先日来問題になっておりました安全操業の点でございますけれども、これについてはまだ先方から何らかの意思表示はしておりませんでしょうか。わが方の口上書、申し入れに対して回答が来ておりませんでしょうか。
○松本政府委員 その後まだ何ら正式の回答が来ておりません。
○並木委員 あの中で、先方のフェドレンコ次官が門脇大使に対して口頭で発言をした報道がされておりますけれども、これによるとやはり平和条約と安全操業とは切り離せないのだ、初めからそういうつもりでやっておったのだと言っております。日本の側としては、そうじゃない。昨年の八月に、はっきり切り離して交渉するのだ、ソ連の方としても切り離して回答してきたという意思表示をして巻き返しておりますけれども、この点についてはそれほど言葉じりにとらわれずに、安全操業をほんとうに日本に有利に展開しようとする先方の好意があるならば、向うとしては平和条約をそれにからみつけて、日本に不利なように導いて無理に成立させようという魂胆でなくて、ほんとうに平和条約の交渉と並行してやりたいという意思があるのではなかろうかどうか。ことに最近ソ連のモスクワの放送でしたか、河野元農林大臣のことに触れまして、安全操業は全くソ連の好意によるものであるということは、河野さんも率直に認めておったではないかということを言っておるのです。そうなりますと、これまたわが方としてあまりけんか腰でなく、かたき討ちといったような態度でなく、もし安全操業を平和条約とともに話し合って日本に有利にしてやろうという気持があるならば、それは応じてもいいと思うのですが、その点はあくまでも政府としては、先方が安全操業については認めにくい、日本に対してその好意を示しにくい、そういう態度から出ていると理解しておるのでしょうか、どちらでしょうか。
○松本政府委員 今問題になっております領域をソ連が占領しておりますので、そこに、十二海里以内に入っていかぬということを言っておるわけです。そうしますと、もし今問題になっておりますカレーであるとか、タラであるとか、あるいはサメであるとか、あるいは帆立貝であるとか、コンブ、こういったものをとりますのには、もっと接近しなければ十分とれないのです。そこで一つもう少し接近できるようにしてもらいたい。これは日本領土だからいいじゃないかと言えば、それは議論はそのままでありますが、先ほど申し上げましたごとく、占領されて、向うが十二海里という線を引いております。そこで講和会議におきまして、領土権がはっきりきまるまで、暫定措置として、お互いが腹を割って話し合って、実際におきましては今ソ連が占領しておりますから、一つソ連の好意によって安全操業ができるようにしたいという建前で、昨年の六月三日に口頭でこれを申し入れたわけです。そうして一週間後の六月十日に文書をもってそのことを向うに申し伝えましたところが、八月になりまして、初めて向うから友好関係を展開するのに非常に利益であるから、一つそれじゃ話そうという文書が来たわけです。そこで日本側といたしましては、講和会議で領土問題がもちろん問題になりますから、解決されるまで暫定措置として、一つこれこれの条件で何とかしてもらえないだろうかということを、向うに申し入れたわけです。自来九回にわたりまして、正式にこの問題は取り上げております。そのうちにとか、近日中にとか、あるいは今検討中である——さらにこの九回の正式の申し入れのほかに、ただいま採決をお願いいたしました通商協定の交渉のさなかにおきまして、東京で二カ月間にわたりまして、絶えずこの問題に関して善処してもらいたいということを、先方の代表に言ってきているわけなんです。そのときも、一度も講和条約と不可分であるというような意思表示はなかったのでございますが、二月五日になりまして、突如としてこういう線が出てきたわけなのです。ですから、もし講和条約と不可分であるということになれば、安全操業はそれまでできないということなのです。領土問題がすぐ解決できる見通しであれば、もちろんこれはあわせて、一本にしていろいろ交渉もできるでしょうが、領土問題の解決の見通しがまだつかない今日、一緒にしてやろうということは、現実問題といたしまして、安全操業はできないということになるわけです。ですから、やはりわれわれはソ連の好意に訴えまして、善隣友好関係に訴えまして、一つ話し合いの上で、零細な北海道の漁民がもう少し海岸近く寄って操業できるようにしてもらいたいという精神で進めておるわけでございます。ですから、このまま対立とかなんとかいうのではなくて、できればさらに安全操業という問題を切り離して一つ交渉を進める努力をわれわれは続けなくちゃいかぬ、こう考えます。
○並木委員 安全操業の日本の政府の申し入れば、ソ連の言うように、ソ連の好意に訴えるというのでしょうか。それとも公海の原則に基いて、日本としては権利として申し入れているのですか。これはそうじゃないですか、領海内の漁業だと思います。従って、河野さんがソ連の好意によってなされるのだということには間違いないと思いますが、念のためにお伺いしておきます。
○松本政府委員 公海における漁業は当然の権利でありますが、向うが一応十二海里というものを引いておるわけなんです。そこで領海の問題に関しましても、今いろいろまちまちで、これも何かの国際会議におきましてまとめてもらわなければ、ピョートル大帝湾みたいなものが飛び出すんですね。一応理屈としては権利を主張する部面もあるでしょうが、やはり友好関係でお互いがお互いを助けようという気持でないといけませんので、ただ一方的にお願いします、お願いしますというだけではもちろんなくて、日本側の言い分は言い分として述べて、そうして好意的善処を待つ以外にない、こう思います。
○並木委員 その場合に日本としては、沿岸三海里説を根拠としてやっているわけですか。
○松本政府委員 根拠としているというのでなくして、もし日本が拿捕されることなく三海里近くまで操業ができれば、非常に零細な漁民が助かるから、一つこの安全操業の話し合いをしたいということで、二海里とか十二海里のいわゆる法律論を戦っておるわけではないのです。
○並木委員 そうすると、もしソ連がどうしても聞き入れなかった場合に、日本の政府として、ソ連に損害の補償を求めるというようなことは、考えておらないわけですか。
○松本政府委員 まとめたいということが本心でございますので、われわれはもちろん、そこまで腹をきめて、先のことを考えて交渉には当っておりません。
○並木委員 平和条約の申し入れについて、先ほど松本さんからも御質問がありましたが、松本さんは、向うで条件付で言ってきたら云々ということを大臣にお尋ねになったのですが、私はこういうふうに尋ねてみたいのです。条件付でなく話し合おうじゃないか、話をまた始めようじゃないかと言ってきたときに——これは今一番問題になっているわけですけれども、先方の腹を探って、領土問題解決の曙光があるかどうかによってきめるんだという日本の政府の気持はわかるのですが、実際世の中の交渉というものはそういうものでしょうか。私は多少それに疑問を持つのです。向うの腹がどうであるかということは、とにかくテーブルを囲んで話し合ってみてから出すべきものであって、ちょうど安全操業の問題もあるじゃないか、ここらで平和条約の話をもう一度始めようじゃないかと、もし言ってきたときには、一応日本の政府はそれを率直に受けて立ったらどうでしょう。(「それが甘いんだよ」と呼ぶ者あり)甘いという声もありますが、全くむずかしいんで、だからこそ質問しているのですが、それで行ってみて、ひっからませるかどうか——こちらでほんとうに正しい主張を通して先方に訴えれば、平和条約の話し合いの席上をかりて、安全操業の問題をそこで切り離して話し合うことができるんじゃないか、それが世界の世論に一つのPRにもなるんじゃないかと考えるのですが、こういう考え方は甘いんですかな。
○松本政府委員 この問題は先ほど大臣からも答弁がありましたごとく、向うの大体の、どういう気持でこれをやろうというきざしくらいはわかると思うのです。それも全然わからないでまつ暗の中に飛び込むということは、これは決裂することによって、かえって結果が悪くなる事態があると思います。ですから向らがどういう気持で会議をやろうとしておるかという、大体のきざしぐらいはわれわれつかめない限りにおきまして、ただ無鉄砲に会談を開くということは困難かとも思います。
○床次委員長 並木君に申し上げますが、先ほどから重複した御質疑のように思いますので、適当にお願いします。
○並木委員 それではもう一点だけにいたしましょう。最近、南北朝鮮をめぐっての中共並びにソ連の見解が発表されております。それについてお伺いしたいと思うのです。中共では、周恩来が北鮮への視察旅行をして、金日成との間で共同声明を発表しております。それによりますと、本年内でございますか、中共軍——中共義勇軍と向うでは言っておりますが、中共軍を北鮮から撤退するんだということを言っております。そうして南北朝鮮、自由なる統一選挙をやる、その場合に第三者の中立国を立ち会わせるんだというような声明をしております。それに対してソ連が追っかけて、バック・アップをして、南北両朝鮮の和解の会談を提唱したいというようなことで、これまた非常に重要な問題であるとともに、今や国連に加盟をした日本としても、この問題に無関心ではあり得ない。あり得ないどころか、国連というものは、日本を足場としてこの動乱に巻き込まれております。そこでこの際政府のはっきりした見解をお伺いしておきたいと思うのでございます。
○松本政府委員 二月十九日のあの共同声明によりまして、中共のいわゆる志願軍を北鮮から撤退する、従って国連軍も南から撤退すべきではないか、そこに駐留している理由がなくなるじゃないかというような意味のことだと思うのでありますが、これに関しましては、御承知のごとく、一九五一年の二月一日の第五回総会におきまして、国連の決議によりまして、中共は侵略国としての刻印を押されたわけなんです。さらに一九五四年のジュネーヴにおきまして国連軍に加わりまして朝鮮に進駐いたしましたところの十六ヵ国のうちの南阿はちょっと都合があって参加しなかったのですが、十五ヵ国が集まりまして朝鮮におけるところの平和と安全を確保し、南と北の統一がはかられたときに初めてこの軍隊は撤退すべきであるという決議をしたわけです。この決議はその年の第九回の総会以来毎年繰り返されて確認されているわけなんです。ですからその意味におきまして、ただ一方的に中共の方で軍隊を撤退するんだからといって、国連軍が南から撤退する義務を課せられるということはない、こう考えるのです。さらに私どもは、そういう事態ではありますけれども、南から国連軍が撤退することによってかえって安全と平和を確保し、そして南北両朝鮮の統一が平和裏にはかられるという事態であれば、これまた国連軍のなには別といたしまして、もちろん国民感情としてこれを歓迎するでありましょうが、その確証のない限りにおきまして、やはり国連の加盟国の一つといたしまして、国連決議の線に沿ってものを考える以外に私はないと考えます。
○並木委員 この点についてはまことに重要でございますから、私きょうは政府の見解を承わるだけにしておきたいと思います。 最後に、来月一日から予定されております日韓会談についてその後の経過並びに見通しについてお伺いしておきたい。
○松本政府委員 たびたび他の委員会におきましても申し上げていることでございますが、日韓会談というものは非常に微妙な段階に来ておりますので、いろいろとまた表現がまずいために誤解を招いたりいたしまして、この会談がうまく進捗しないようなことがあっては困ると思いますのと、釜山におきまするところのわが同胞をいっときも早く日本に帰したいという気持からいたしまして、この問題に関しましてはこの段階においては今口べたの私からは一つ批判を差し控えきせていただきたいと考えます。
○並木委員 来月一日からのその見通しについては……。
○松本政府委員 一日から開催する建前で今すべて準備を進めております。
○床次委員長 大西君。
○大西委員 ソ連との間の漁業の問題、それから周恩来の問題、大陸だなのアラフラ海、ああいう問題がありまして、日本の漁業の問題は、これはもうあっちを向いてもこっちを向いても壁にぶち当っております。そういう中で今度国際海洋法というものが制定されるために、日本の代表も近く出発するとかいうことを聞いておりますが、この海洋法の原案は今公表されますか。
○松本政府委員 政府委員に答弁いたさせます。
○高橋政府委員 ただいまの海洋法でございますが、これは国際連合の国際法委員会でございますが、それが過去八年にわたりましていろいろ審議を重ねましてでき上った案がございます。その案を今度の海洋法の国際会議の原案として審議することになっております。その案は七十三ヵ条からなっている非常な広範囲な案でございます。
○大西委員 私はまだその正確なものを見ていないのでありますが、これは至急この委員会に配付していただきたいと思うが、よろしいですか。
○高橋政府委員 承知いたしました。
○大西委員 それを見ましてから詳しい質問をしたいと思うのですが、この審議はいつから始まるのですか。
○高橋政府委員 二月二十四日からでございます。
○大西委員 わが国からも代表はどなたか派遣されますか。どなたが出られますか。
○高橋政府委員 オランダの大江大使を首席代表といたしまして、ヴヵチカンの鶴岡公使及びジュネーヴの河崎公使を代表といたしまして、その他随員を派遣いたします。
○大西委員 この内容はもう十分検討されたことだろうと思うのですが、立案過程におきましてかなり日本の意思はこの中に反映され、織り込まれておるのですか。
○高橋政府委員 御承知の通り、これは非常な重大な法案でございますが、実は、立案過程におきましてはわが方は国際連合の加盟国ではなかった次第でございます。また国際法委員会、国際連合の下部と申しますか、設立した委員会である国際法委員会の委員でもなかったわけでございますので、実はわが方の主張を具体的に反映するという機会は実は少かった次第でございます。しかしこの内容はわが方としても主張すべき重要な点が相当あると考えております。
○大西委員 今当面しておるこの問題が、今の原案の中で、かなりわが方の主張が有利に展開される根拠が織り込まれておるかどうか。概略的でよろしいのですが、いかがでしょう。
○高橋政府委員 この案は相当広範囲でございますので、たとえば大陸だなの問題も扱っておりますし、それから領海の範囲の問題も扱っております。それから漁業の保存措置、規制措置という点も扱っております。そこで非常にいろいろな点を扱っておりますので、実はこの条約がどういうふうにできるか、成立するかどうかということによって、今までのわが方のいろいろな海洋問題の懸案が、この条約の部面からいわば自動的にと申しますか、解決する部面が非常に多いと考えております。解決と申しますか、要するに問題が決定される点が非常に多いと思っております。ただこれが日本にどの程度有利であり、どの程度不満な点があり、どこをどういうふうに主張するかということは、われわれ事務当局としても非常に検討し、一つの成案は得ておりますけれども、実は会議の開催も間近でございますから、その点の具体的内容の点についてはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
○大西委員 それでは私の方から具体的に聞きますが、あまり差し控える問題ではないと思うのです。これは日ソ交渉のような問題、日韓問題と違って、一つの法律を作るということですから、あまり差し控えなくてもいいと思うのです。たとえば今、日ソ間の安全操業の問題で、ソ連の十二海里説に対してわが方は三海里説を主張しておる。こういう問題でわが方の主張が有利に展開できるような根拠は、この法案の中にどのように規定されておりますか。
○高橋政府委員 実は法案中一番問題なのは、御承知の通り領海の問題でございます。そこで八年間にわたりまして国際法委員会で非常に審議し、議論を戦わしたのでございますが、実は領海を何海里にするかということは決定に至っていないのでございます。そこで領海の点につきましては、たとえばその決定に至っていないという事実を大体書いているようなものでございます。そこで、この領海の幅は、このたび開かれる国際会議で決定さるべきだ。たとえば領海の幅員は、第三条に、「委員会は、領海の限界の画定に関し、国際慣行が一定していないことを認める。」というふうな書き出しでありまして、「委員会は、領海を十二マイルをこえて拡張することを国際法が認めていないと考える。」しからば十二マイル以内ならいいかと申しますと、その点では、「領海の幅員を前記の限界までとすることに関してはいかなる決定も行うことなく、」というふうに、少くともこの条文で言いますところは、十二マイルをこえるものは違法である、しかし十二マイル以下ではまだ何にもきまっていない、ただ相当多数の国が三海里を主張しているというふうに、現在の事態を表現しているにすぎないと思っておりますが、わが方としましてはもちろん三海里を主張していきたいと思っております。
○大西委員 その十二海里、三海里の問題はそれでよろしいですが、李承晩ラインの問題はいかがでしょうか。これはかなり乱暴な話でありますから、そういう議論の余地はなかろうと思うのですが、それはこの法案の中ではどういうふうな規制の仕方をしておりますか。
○高橋政府委員 実はその点は非常に複雑いたしておりまして、ちょっと今かいつまんで申し上げますと、沿岸国は漁業の規制をすることができるという規定がございます。それから沿岸国でなくても一つの魚種を漁業している国がその国だけだったならばその国がやることができる。ところがここにほかの国が漁業に来るわけでございます。そこで規制措置の問題が起りまして、原則として合意によって規制措置はやらなければならない。ところが両者の合意がならないときには、仲裁裁判所を作りまして、その裁判所の決定的な意見に拘束されるというふうな規定になっております。従いまして、漁業の紛争が起りましても、いかなる場合においても最後的には裁判所の拘束力あるまた客観的な決定によって解決が行われるというふうな規定がある次第でございます。
○大西委員 これは案が出ましてからまたまとめていただいて、質問して、そして今の当面している外交問題を有利に展開する根拠にしたいと思うのですが、話し合いをして合意が成立しないときには、その沿岸の国が一方的な措置をとることができる、これがまず第一でしょう。しかる後に今あなたが言われたようなことになっておると私は理解しております。その場合に、たとえば李承晩ラインというものをあそこに引いた場合には、その一方的な措置も、ここに緊急な必要があることとか、科学的、合理的な事実の上に立つととか、あるいはまたそれが差別的であってはならぬというようなことが原則として規定されていると思うのです。そういう意味から申しますと、当然李承晩ラインのような問題は、今まで何ら根拠になるような取りきめがなかったのですが、これは成立するまでではありますけれども、原案としてもかなりの力を持つと思うのであります。私はそういうところを主張して、あなたから、そういう態度で臨むんだし希望が持てるんだという答弁をいただきたかった。しかしそれはそれでいいことにいたしましょう。大体けっこうなものだが、しかしなおあなたが原案をごらんになって、特に強くこの際日本から、原案にないもので主張すべきものがある、こういう点はございませんか。
○高橋政府委員 原案はむしろ海洋関係につきましてほとんどすべて——領海の範囲から、艦船の通航から、その他相当広範囲にわたっておりますので、この原案の個々の個条につきまして、われわれとしては非常に強く主張したい、こういうふうに改めたいという点はございますけれども、原案以外につけ加えたいという点はちょっとないようでございます。
○大西委員 それでは危険水域の問題はどうですか。今原水爆の実験禁止の問題で、大洋のどまん中でどかどかやっているじゃないですか。この問題に対して日本国民あげてその禁止を要請しておる。こういうことこそこの海洋法の中に当然明確に規定さるべきものだ。こういうことは日本政府としては当然考慮に置かなければならぬ問題だ。ところがこの問題について、私の理解する範囲では何ら明確な規定もないように思うのでありますが、ありますか、どうですか。ないとすれば、この問題について政府の主張がないということは、私はどうも解せぬのであります。
○高橋政府委員 その点は、第二十七条でございますが、「公海の自由」という規定がございまして、そこで「いかなる国も、公海のいずれの部分をもその主権の下におくことを有効に主張することができない。公海の自由には、なかんずく、次のものが含まれる。」とありまして、航行の自由、漁業の自由、海底電線及び管線の敷設の自由、公海上空の飛行の自由ということがはっきりここにうたってございます。従いまして、この点を中心としてわれわれの主張を展開していけると思っております。
○大西委員 公海の自由がそこで拘束されるというような主張のもとにアメリカにはこれまでたびたび申し入れてきた。ところが何ら有効な結果に到達しなかった。そうでしょう。ですからさらに海水が汚染されるというようなこと、そういう面からの強力な主張をする根拠が、私はやはり海洋法の中に必要だと思う。そういうことを政府としてはこの中に織り込むという必要性を痛感いたしませんか。
○松本政府委員 当然この問題につきましては討議すべきだと思います。
○大西委員 討議というのではなしに、討議ということもけっこうですが、その政府の腹がまえ——今の答弁を聞きますと、条約局長はことにはあまり考えを及ぼしていないようだし、政務次官もそれでは討議すべきだと言う。討議すべきだということではなしに、この機会にこそもっとこの問題を強く日本政府の態度として打ち出す準備が必要ではなかろうかと私は思うのです。いかがでしょう。
○高橋政府委員 どうも広い範囲の条文になりますと、ちょっと私からまとめて申し上げることができなくて恐縮でございますが、「公海の汚濁」という四十八条の規定もございます。でございますから、こういう規定を中心としてよくわれわれの主張を主張していきたいと思っております。先ほど私が申し上げましたのは、これ以外に新しく何かないかとおっしゃったものですから、それはもうない、関係するやつはあるわけでございますけれども……。
○大西委員 それではこの資料を十分整えて、そうしてもう代表が出たのか出るのか知りませんが、十分この問題をこの法案の中に織り込むような努力を一つお願いいたしておきます。 それからもう一つだけ、これは実は大臣に聞きたかったのでありますが、日米安保条約の改廃の問題と関連いたしまして、日米安保委員会です。この安保委員会の性格の問題はたびたび論議されておるのです。岸・アイク共同宣言の中には、あの委員会において、国民の願望に従って安保条約の不合理なところを改めてもよろしい、そういうことも話し合いをするということも言っておる。私どもはその点に希望をつないでおるのであります。しかしながら、今日までの安保委員会の経過を見、かつまた米国の責任者の言明を見ますと、この安保条約そのものに対しての検討を加えるということは正式に否定され、かつまたこの委員会においては何らその点に触れられていないのであります。 あらためて私はあなたにお伺いいたしますが、なるほど岸・アイクの共同宣言の中にはそういう条項も入っておりますが、その後何かの事情でこの安保委員会というものは、安保条約そのものの改廃の問題についてもう論議しないというような態度にきまったんですか。
○松本政府委員 改廃の問題に直接間接触れるようなことは一切しないというような申し合せはございませんが、だんだんと討議しているうちに、将来におきまして改廃すべきはっきりした線が出てくる、これを期待いたしまして友好裏にこの会談を進めております。 〔委員長退席、菊池委員長代理着席〕
○大西委員 二月十三日の新聞の記事によると、この委員会の委員であるスタンプ大将がこういうことを言っております。「安保委員会の目的は、条約や条約を改訂するためではなく、現在のもとでいかに実際的な運営をうまくやっていくかということをどう討議するためだと思っている。」こう言っておるのです。これに類したことはたびたびこの責任者から言われておるのです。このスタンプ大将の言明は、報道機関を通じて政務次官も御存じでしょうね。
○松本政府委員 記事は読みました。
○大西委員 記事を読んで、これでありますというと、完全に今あなたの言われたところの改訂の問題を否定しておるのです。これが正しいとお思いになりますか。
○松本政府委員 質問に対してどういう工合にこれは回答されたか知りませんけれども、今お述べになりましたようなスタンプ大将の考えだけがこの日米委員会の任務ではないということだけは、たびたび申し上げている通りでございます。
○大西委員 スタンプの意見だけが日米委員会の問題ではない……。
○松本政府委員 私の申し上げましたのは、今お読みになりました記事ですね、スタンプがこう言ったということを御説明になりましたが、そういう範囲内だけではないということを申し上げておるのでございます。
○大西委員 これはこういうことをやると書いているんじゃないのです。それならそれ以外のことをやることも否定していないということになります。ところが明らかに改訂の問題はやらないんだということを言っておる。それをまっこうから否定しているのです。こっちがやるんだということに対して、それはやらないんだと否定しておるのです。これはもう岸さんがサンフランシスコへ着いたときに、米国の国務省のある責任者は公然と——国内対策のためかもしれぬけれども、それは何も安保条約について触れるものではないということも言っておる。その後たびたびこういうことが言われておる。これは単なる言葉の言い回しだとか、報道関係のニュアンスのとらえ方の違いだとかいうものではないのであって、一貫したこういう方針があるから、こういうふうに随所に出てくるのだと私は思う。この点はいかがでしょうか。
○松本政府委員 その記事を断片的に批判すれば、先ほど申しましたがごとく、その範囲でないということを申し上げるのでありますが、さらにスタンプ大将がどういう気持を持っておるかということにつきましては、この記事だけでは私はわからないと思うのです。少くとも日本側といたしましては、またわれわれのたびたび折衝して参りました空気から察しましても、こういう工合にいろいろと論議しているうちに、将来何かはっきりした線が出てくれば、一つ改訂しようという方向に持っていく一つの委員会であるという工合に考えます。
○大西委員 これはあなたがそういうふうに理解される。いつでもそういうことでもって話が途中で流れてしまう。しかしこういうことを言ったということは、これが全部ではなくても、これは否定されぬと思うのです。しかもこれが委員会のわずか四人の構成の中の一人である。こういう責任ある人の言明なんです。しからばそうじゃないというのなれば、この問題がこういうふうに新聞の中にも発表されたら、それは重大な影響を及ぼすから、その真偽はどうか、間違いないかというようなことを、あなたは相手までただされましたか。こういうことを読んだ一般の国民は非常な疑念を持つということは当りまえです。そうじゃないというのなれば、そうでないというように、はっきりとこれに対する訂正とか、あるいは真意はこうであるというような処置をとられてこそ、それでとこはっきりと私は言えると思うのです。その点はいかがでしょう。
○松本政府委員 あなたがという言葉でありましたが、私はこの問題をただしに行ったことはございません。また頼まれたこともございませんが、外務大臣は委員会におきまして、この問題につきましてすでに触れているととは事実でございます。
○大西委員 外務大臣が委員会と言うのは、この安保委員会ですか。
○松本政府委員 予算委員会におきまして触れていることは事実でございます。
○大西委員 それは私は不幸にして見ないけれども、どういう触れ方をしているのですか。
○松本政府委員 私その場にいませんのと、速記録を読んでおりませんが、大体大臣の気持からいたしまして、今私が申し上げたような説明をしていると私は思います。
○大西委員 私が言っているのは、あなたがかくかくとそんたくしたとか、大臣がこう言ったということじゃないのです。大臣は相手に対して、こういうことは間違いである、そうではないということを確かめたのかどうかということなんです。そうしなければ、あなたに言われても藤山さんに言われても大同小異ですよ。私はあなたの方がまだ練達の士だと思っているくらいだから、それは同じですよ。そうでなしに、こういうことが頻発して言明されるという場合に、米国政府なりあるいはこの委員会なりにおいて、これはその真意じゃないということをはっきり確かめられましたかということを言っている。それはやるべき義務があると私は思うんだ。まっこうから主張が対立しているんだもの。
○松本政府委員 いろいろな機会に先方とも、大使あたりと話しておりますが、私は御承知のように非常に忙しいので、一々これを確かめておりませんので、ここにはっきりしたことを申し上げることはできませんが、この問題に触れていることは事実だと思います。私もある会場で非公式にはこの話をしたこともございますが、頼まれてではないのですが、さらに新聞に出ましたことを、これは重大なことではありますが、委員会で一応大臣がその気持を表わしておりますので、あらためて向うに問い合せたり、記事が出ていることは事実であるが、そういうことを言ったのか、どういうきっかけで言ったのかということを、もちろん向うに問い合せはしませんけれども、こういう記事は困るということは、もちろん向うのチャンネルを通じまして、私も非公式で言ったことはありますので、おそらく大臣も何かの会でこのことは申しておるだろうと思います。
○大西委員 これはこれでよろしい。そういうことを言っちゃ困るといったって、言っちゃ困るなら言わないでおきましょう、腹はこうだというのではしようがないので、そうではなしに、やはりそういう疑惑を持ち、争点になっている問題で反対のことを相手が言っている場合は、そうではないということを相手の責任のある人からはっきりと言質をとって、そしてそれはかくかくであるということを、藤山さんなりあなたなりが委員会やその他において表明されることこそ必要であると思う。こんな基本的な問題に対して、あっちとこっちと機会あるごとに違った見解が出る。しかも具体的にその委員会ではわれわれの言ったこと、またこの安保条約の改廃の問題が何ら議題に供されないで、そうしてとんでもないサイドワインダーというようなものがどんどん持ち込まれているというときに、これは疑惑に思うのは当りまえです。手続上そういうようにおやりになることが必要なんです。私はそういう意味で、スタンプ大将でもよろしい、あるいはまたしかるべき安保委員会でもよろしい、もう一回この疑惑にこたえるために、はっきりした一つの言明を要求したいと思います。
○松本政府委員 承知いたしました。
○大西委員 それじゃまあ、きょうはこのくらいにいたします。
○菊池委員長代理 本日はこれをもって散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。 午後零時三十分散会 ————◇—————