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27回国会参議院1957/11/11

予算委員会 第4号

発言数
276
登壇者
23
会派数
4
開催日
1957/11/11

会議録

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) これより委員会を開きます。  まず、委員の異動について申し上げます。  ただいま青柳秀夫君、高橋衛君が辞任せられ、その補欠として塩見俊二君、勝俣稔君がそれぞれ選任せられました。   —————————————

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) 前回に引き続き、補正予算三案に対する質疑を続行いたします。  質疑に入ります前に、去る九日開かれました理事会の決定事項の大要について御報告いたします。  一、九日の午後及び十日の日曜日は休み、十一日中に残余の質疑を全部終了する。これがため、時間の関係上、関連質問等はなるべく遠慮すること。  また要求大臣が他の委員会に出席中の場合は、その大臣に対する質疑はあと回しにするかまたは保留する等、つとめて審査の促進をはかること。  一、十二日午前中に討論採決を行う。その際、総理大臣が出席できない場合は石井副総理が代理として出席する。  以上でございますが、質疑通告の時間は約三百分を残しておりまするので、右の申し合せ通り、本日中質疑終了のためには政府並びに委員各位一段の御協力をお顧いいたします。

市川房枝第十七控室

○市川房枝君 まず、総理及び法相に対して眞鍋氏の事件に関してお伺いしたいと思います。  売春汚職容疑で逮捕されていた眞鍋儀十氏に対しまして検察当局はまだ捜査すべきことが残っているので、勾留延長を主張しておりましたが、九日それを撤回して起訴いたしました。それで同氏は一両日中に釈放されて出所されるようでありますが、この決定に対し各新聞は、政界の圧力が加わった結果で売春汚職捜査は壁にぶつかり、うやむやに終るのではないかと申しております。また戒能通孝教授は十日の毎日新聞の紙上で、法務大臣が指揮権を発動する以前に、検察首脳部がなんかして第一線の捜査を押えたことになり、汚職捜査打ち切りとしてはきわめて露骨なやり方だ、これで売春汚職による自民党の危機は一時去ったわけだが、いわゆる保守永久政権に不潔な影が伴うことになるであろうとまで語っております。これでうやむやになりましたのでは国民は承知しないと思います。政治への不信をますます深めていくことになると思いますが、これらのことについての総理の御感想及び御決意を伺いたい。  なお、法務大臣からは今度の決定までの経過と将来の捜査の見込みについてお伺いしたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 売春汚職という問題はきわめて忌まわしい問題でございまして、私はこの問題に関しては最初から言明いたしております通り、司法当局におきまして検察当局においてあくまでも厳正な態度をもって事実を鮮明する、これによって生ずるいろいろな犠牲であるとかあるいは事態というものについては、私は自民党の総裁とし総理大臣としてあくまでも民主政治の信頼を確保するために、私はこのことに対してはごく厳格な態度をもって臨むということを申しております。従いましてこの問題に関して捜査上もしくは司法当局なり検察当局なりの行動につきまして政府としまた党として何ら政治的圧迫を加えたとかあるいは影響力によってこれをうやむやにするという考えは毛頭ございません。この起訴されるに至りました動機につきましては、法務大臣より申し上げると思いますが、あくまでも今申しました所信でもって進んでおりますし、将来もこれで処するつもりでおります。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○国務大臣(唐澤俊樹君) 売春汚職の検察捜査につきましては、ただいま総理大臣からお答えのあった通りでございまして、総理大臣は従来から汚職の追放ということを非常に強く御主張になっております。私ども当然のことでありますが、またその意を体しまして、この捜査の当初より厳重に証拠のあるものは追及いたしまして、その結果がどういう政治的な波紋を描くかというようなことには顧慮することなく、証拠によって追及するように指示をいたしておったのでございます。  ただいまのお尋ねにお答えいたしまする順序といたしまして、眞鍋議員逮捕のことにつきまして一言申し上げたいと思いますが、この眞鍋議員逮捕の端緒は、業者の団体でありまする全性連の幹部数名に贈賄の容疑がありましてこれを逮捕いたしまして取り調べて参りましたところ、眞鍋議員に収賄の容疑が濃厚になって参りました。ただ、たまたまそれが今度の臨時国会の直前でございまして、検察当局におきましても、議員逮捕ということの重大性につきましては非常に慎重に考えたわけでございます。ことにこのたびの逮捕は、この会期中に踏み込むわけでございますから、その意味から申しましても、非常に重大なことでございます。これらを非常に慎重に考えたのでございまするけれども、一面売春汚職は今日世間の疑惑の焦点になっておりますから、その重大性にかんがみまして、非常に遺憾な事態ではございましたけれども、国会開会の一両日前に逮捕いたしたわけでございます。その際にも、この汚職は今世間の疑惑の中心になっておるからして、政界浄化の意味から申しましても、徹底的にこれを追及してもらいたい、そうして事の黒白を明らかにしてもらいたいということと、一方において国会開会中であり、国会議員の逮捕ということは非常に重大な意味を持っているから、なるべく敏速に捜査を進めてもらいたいということを指図をいたしているわけでございます。そうして捜査を検察当局において続けておったのでございますが、一昨日の夕方私のところへ検察当局から報告がございまして、大体眞鍋議員の容疑についての捜査は一応完了したから、起訴処分にするということを決定したという通知を受けました。それがこの売春汚職の捜査についてどういう影響を持つかということを懸念いたしまして、眞鍋議員の容疑の事犯、それ以外に一般の売春汚職について捜査に支障がないかということを尋ねましたところ、その点は支障がないということをはっきり検察当局が言うておるのでございます。新聞の記事にはいろいろと出ておりまするが、また検察当局が捜査には支障がないということも出ておることはごらん下さったことと思います。  で、新聞でいろいろと心配であるというような記事が出ております。また学者等も一応の意見を発表しておりますが、その点について申し上げますと、政治的な圧力が加わったのではないか、こういうような疑念を持ちましたその原因となったことは、おそらく衆議院における議運の会議が検察当局に精神的に響いたのではないかということかと思うのでございます。議運の理事会は秘密会でございましたから、この席上では申し上げることを差し控えたいと思いますけれども、申し上げてよろしい限度は、この議運理事会の中心問題となりましたのは、今度眞鍋議員を勾留しておるその勾留期間を延長する際に、国会、院の許諾を必要とするかどうかという法律解釈の問題であったのでございます。すなわち眞鍋議員は国会開会前に逮捕されたものである、これを逮捕するということについて院は何も意思表示をしておらない。その期間が十日の期間が去る九日で満期になる。さらにその期間を延長するということは憲法五十条、あるいは国会法三十三条、三十四条等の精神から見て、一応院に請求をして、そうして院の許諾を得る必要がある、こういう意見があるのでございまして、この意見はその理事会において発言されました両党の方々の大部分の一致した御意見でございました。これはすなわち国会尊重という憲法の精神から出てきた御意見でございまして、まことにもっともな御意見とは思っておりまするけれども、これに対しまして、私ども法務当局のとっておりまする法解釈は全然反対でございまして、これは憲法の精神はどこまでも国会中における国会議員の身柄の拘束ということは重大事ではあるけれども、しかししからばいかにしてこれを裁くかということは憲法以下の法律にしっかり書いてある。そこで刑事訴訟法を見ますると、その二百八条に、十日の期間をさらに延長すると書いてあるのであるからして、これは再逮捕ではない、従って院の許諾を要しないと、こういうふうに私どもは解しておったのでございます。これは重大な問題であるから、しからばまたさらに機会をあらためて公開の席で審議研究をしようということで物別れとなったのでございます。でありまするから、この議運における論議が検察当局に圧力を加えたということはどうしても想像できないのでございます。もし院の許諾を要するというような議論が有力になって、私どももそれに従うようになりますれば、今度拘留の期間を延長するというときには、その問題があるということであるいは心配したかもしれませんけれども、私どもは終始一貫、院の許諾を要しないのだ、今度期間を延長するときには、それを裁判所へ申し出せばよろしいのだ、こういう解釈をとって進んで参りましたから、私はこれが検察当局の今度の起訴、不起訴の処分決定に影響をしておるとは思っておりません。  また新聞には出ておりませんけれども、私どもそういうようなことについて絶対指示はいたしません。私もこれが拘留期間の延長になるか、あるいは起訴になるか、あるいは不起訴になるかというようなことは、全部検察当局を信頼してその報告を待っておったのでございまするから、さようなことはお言葉にはございませんけれども、念のために申し添えますが、絶対にさようなことはございません。冒頭にも申し上げました通り、岸総理は三悪追放を強く主張しておられまするから、その精神を体しまして、私どもは徹底的にこれを追及したいと考えております。この事件につきまして申し上げましても、盾鍋代議士に対しては、すでに起訴処令にしております。それから余罪もあるようでございますから、拘留してさらにこれを取り調べたいと考えております。裁判所があるいは保釈決定ということになりましても、検察当局といやしましては、これを捜査いたしていくのに支障がないということでございまするし、広く売春汚職につきましては、徹底的に捜査を遂行させるようにいたしております。もちろん法の博査でございまするから、確固たる証拠によりまして、証拠をたどって捜査することは、これは当然でございますが、証拠のあらん限り、徹底的に捜査をいたしまするから、その点は御了承を願います。

市川房枝第十七控室

○市川房枝君 次に総理に対し、二日の本会議で私の質問にお答えいただけませんでした点、すなわち一九五〇年の国連総会で採択されました人身売買及び売淫強要の禁止に関する条約を排准ずるために次の通常国会で承認をお求めになるかどうかという点でございます。  この条約については国連事務総長から日本へも参加を要請してきておりますし、国会でも論議されたはずでございます。もっとも今までは国内法がございませんでしたので、参加したくもできませんでしたけれども、今や売春防止法が成立し、いよいよ実施されることになりましたので、批准する資格はできたわけと思われます。これを批准しますれば、実施を延期したり、あるいは法律を緩和したりすることはできなくなると思われます。従って来年四月からの売春防止法の厳正実施の保障となるのではないか、こう考えますので、私どもはぜひこの批准を早くしていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 次の国会に批准を求めるつもりでございます。あらゆる準備を進めております。次の国会に提出いたします。

市川房枝第十七控室

○市川房枝君 それでは次には、やはり二日の本会議で私お伺いするつもりでございましたが、時間がなくて省きました、その点についてお伺いをしたいと思います。  二十八年の三月であったと思いますが、ローマからの帰りにSASの飛行機の中で総理と御一緒をいたしました。そのときに総理から、政治をよくするためには金の要らない選挙にしなければならぬ、そういう御熱心なお話を伺いまして、私は大へん感銘を受けたわけでございます。それで総理の今度の汚職追放の御声明は私はうそではない、口先ばかりではないと私信じております。現職の総理として敢然としてこれを御声明なさいましたその御勇気に私は敬意を表して、実行を待望しているものでございます。ところが去る九月の総理の日比谷公会堂での演説会で、汚職の問題に言及なさいましたときに、聴衆の間から失笑が起った、こう新聞が報じておりましたし、ラジオの録音を伺いますと、やはりそんな気配があったようであります。それからなお今度の国会での総理の施政方針演説を衆議院で聞かれました慶応大学の池田潔氏は「「汚職の追放は私のかねて悲願とするところ」と首相はいう。首相や副総裁がどう考えようと勝手だが、これはそのまま国民の悲願であり、悲願なんていう言葉がすでに生温るく感じられるまでに、われわれは思いつめているのだ。そのために実際にはなにをどうやるのか、そんな言葉をきかされてから半年以上も経った今日、聞くのはもう十分、見せてくれ——われわれはそう言い返したい。」東京新聞に書いておられました。これはおそらく国民全体の声だろうと思います。総理としてはこういう声は心外にお思いになると思いますけれども、こういうのに対してどういうふうなお感じを持っておいでになりますか、お伺いしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私はこの問題は真剣にこれを実現しなければならぬ、強い決意をいたしております。  第一は法律制度の上において不完全なものはこれを完全にして、そうして国民の疑惑をなくするように第一に考えたい。たとえばあっせん収賄罪に関する規定のごときも、次の国会までに私は成案を得て、これを次の国会に提案する考えのもとにあらゆる準備を進めております。また一般公務員の問題につきましても、あるいは公務員制度の問題に関しましても検討を加えております。さらに今お話しになりました政治そのもの、すなわち選挙に関連しての政党の資金やあるいは選挙そのものが金を要せない公明選挙が実現できる方法についても、いろいろと考究をいたしております。  第二は、いうまでもなく、これははなはだ遺憾なことでございますけれども、すでにそういう忌まわしい事態がありとするならば、これに対して徹底的にこれを糾明して、将来を戒めてそういう事態をなからしめるということ。さらに根本的に申しますならば、いうまでもなく、政治道義の問題なりあるいは一般国民道義の問題にも関連をいたしており、一般の綱紀の問題につきましてもこれは根本問題として考えなければならなぬ問題でありますが、そういうあらゆる面からこれが実現を期して参りたい、かように考えております。

市川房枝第十七控室

○市川房枝君 総理がそういうふうににいろいろお考えになっておりますとすれば、と申しますか、私やはり国民と一緒に総理がお考えになっている、それこそこの問題は政治家を入れないで、あるいは役人を入れないで、総理が直接に国民の各層を代表する人たち、たとえば池田さんその他のような人たちを委員として、何らか具体的に研究する、原因を調査する、実行に移すというようなことをお考えになり、第一歩をお踏み出しになるような御意思はございませんか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 各方面の良識ある人々の御意見を率直に聞いて、これの実現を考えるということは、私は望ましいことだと思います。ただ言うまでもなく、法律制度の問題だとか、あるいは公務員に関するような問題になりますというと、これはいろいろな法制上の技術もございますし、またその方面の専門的の知識も要ると思います。だから委員会を今作ってどうするというような考えは、今日のところ持っておりませんけれども、広くこういう人々の忌憚のないこの問題に関する意見を率直に聞くということは私としては努めていきたいと考えております。

市川房枝第十七控室

○市川房枝君 次に、総理は一日の施政方針の演説の中で、「自由民主党の総裁として」、汚職追放のために「党風の刷新をはかって、清潔な政治を行うようにいたしたのであります」。こうおっしゃっておりますので、総裁としての総理に対しまして汚職追放、清潔な政治に関して幾つかの問題についてお尋ねをしたいと思います。  第一に、自由民主党内に清潔公明な政治を行い、国民の信を政治につなぐことはわが党に課せられた重大使命であるとして、去る十月十七日に党紀確立に関する内規を御制定になりましたことはまことにけっこうだと存じます。党紀委員会の活溌なる活動を期待するものでございますが、現在までにどんな活動をされておりますか。また内規の処罰を適用された方がおありになりますかどうかお伺いしたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) まずこの党紀委員会におきまして私どもは一つの基準を定めて、これに該当するところの者については、それぞれ党紀委員会の定めました準則に従ってこれを処置するという方針をきめまして、党一致してこれをきめました。遺憾ではありますが、数人の起訴をみておる、起訴中のものもございます。それに該当しておる者もございます。これらにつきましては、それぞれ定めました役員の地位についておった人もありますけれども、それもやめてもらい、将来もそういう意味において処していくということをいたしております。従ってあの内規は内規通りすでに実施をみております。

市川房枝第十七控室

○市川房枝君 総理が汚職追放をお取り上げになりましたのは四月ごろだったと思いますけれども、その後全購連の汚職が明るみに出て、社会党は党内に調査委員会を設けて調査し、七月末に和田氏以下の処分を発表されました。御本人たちにはお気の毒でありましたが、国民は社会党のその厳正な態度に好感を示しました。ところが自民党は一切知らぬ顔をして何らの対策もとられませんでしたのでありますが、汚職追放を御主張なさっております総理として、これは一体どういうわけかと国民は自民党に対して不信の感を抱いております。これに対して総理のお答えを伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 全購連事件という問題は、実はいろいろ当時これに関連したとして名前の上った人々もございますし、また捜査の途上におきまして意見を聴取された人もございます。ただこの事件は御承知の通り相当広範囲でございますが、同時に従来からみて農業関係について相当に努力をされている議員諸君に向って、盆暮れ等において従来いろいろな贈答が行われておったことも、一つの慣行としてあったわけであります。非常に巨額か金をなにするとか、あるいはそれに関連して、他の法令の違反の問題等も派生的に起った事件もございますが、私ども自民党に関する限りにおきまして、私はいろいろその間の事情を調べましたけれども、特にわれわれとして処分の形において処置するという事態は、私はこれにおいては認めなかったのであります。ただ党としましてはすでに内閣改造やあるいは政務官等の選考につきましては、こういう問題につきましてもある程度の頭をおいて選考をいたしましたけれども、特に外に現われる処分としてこれをする必要がないと認めて処置いたしたわけであります。

市川房枝第十七控室

○市川房枝君 汚職を追放し、清潔な政治を打ち立てますためには、公職選挙法では買収を悪質犯として厳罰に処罰することになっており、総括主宰者や会計責任者がその罪で処罰された場合には、当然無効となる連座制が規定されております。従ってこの規定によって失格された方はその直後においては一応立候補を遠慮されることが私は常識だと思いますが、去る八月の福島県の衆議院議員の補欠選挙の際に、自民党の公認候補として立候補され、総理初め各閣僚、党幹部の方々が応援をされたようでありますが、一体そういうことでいいものでありましょうかどうか。  それから選挙の結果は、その公認の方が落選され、社会党推薦の方が当選されたようでありますが、その理由の一つとして新聞は自民党がそういう方を公認されたことに対する有権者の批判が上げられておりました。清潔な政治を唱えておられます岸総理はこういう方を公認をする党の態度をどういうふうにお考えになっておりますか。伺わせていただきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) この連座制その他選挙違反に問われました場合において、言うまでもなく公明選挙、また粛正された選挙という意味から申しますというと、もちろん自粛の意味においていろいろこれは考えなければならぬことがあることは言うを待ちません。私は過去のいろいろな選挙におきまして、その選挙の経過並びに結果等については、政党としては常に十分な反省をして将来に対処すべきものであるという考えを従来とも持っておるわけであります。同時に選挙の問題につきましては、これは自粛の一面を持つと同時に、これは国民の参政の重大なる権利に関する問題でありますから、個人の人権というものももちろん尊重していかなければならん。法律上許されていることに対して法律的にどうするという問題は私考えなきゃならんと思います。しかし要は党としてもしくは選挙に関する一般の自粛の問題に関連をしておると思います。従って従来のこの選挙等につきましては十分に一つ反省をいたしまして将来に処したい、かように思っております。

市川房枝第十七控室

○市川房枝君 ついでに公認の問題についていま一つお伺いしたいと思います。私は参議院は無所属がよいが、衆議院は政党でなければならない。だから衆議院の選挙ではまず政党を選ぶ、その党の公認候補者の名を書くのだ。もし公認候補者が二人以上あったら、人物を選ぶべきだということを主張して参っております。ところがその際どうも候補者が気に入らないということをよく言われますが、有権者にそういうことを言わせるのは私は政党の責任だと思います。どうかよい候補者を公認をしていただきたい。その候補者として、特に婦人有権者は、その資格の一つといたしまして、家庭においてもよき夫であり、よき父である人、言いかえますならば、二号なんか持っていない品行方正な人を望む。選挙の際、婦人団体ではそれをスローガンに出してきておるところもございます。婦人の議員の場合は、もちろん家庭においてはよき妻であり、よき母であるということは当然のことでございます。これが一つには家庭生活が清潔でありませんと、結局金が要り、汚職に陥りやすいということと、いま一つは自分の家庭内においてさえ奥さんや子供を泣かせておいて、そして国民を仕合せにするなどと言われても信用ができないというところにあるようであります。総理はこの点についてどうお考えになっておられますか。なお将来、公認の場合に、総裁としてそういう点も御考慮いただけるかどうか伺いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 公認の場合に、政党が、特に二大政党になりますと、今市川委員のお話の通り、私は公認ということは政党として全責任をもって国民に推薦するということでありますから、従ってこれの公認問題につきましては、政党として非常な責任があるわけであります。あらゆる点から、国民に推薦し党として責任の持てるという人をこれを選んで、そうして公認をしなければならぬと思います。従来の選挙に関しましても、過去の例を見まするというと、公認という問題は各政党とも非常に重大な問題であり、また一面において困難を伴うところの問題でありますが、あくまでも公認の基準というものは国民に対して党として責任をもって推薦できるというりっぱな人を推薦すべきである。もちろん人間がりっぱであるかどうかということにつきましては、公的なその人の活動や従来の政治行動等が非常に大きな問題になります。同時に、言うまでもなく全体的に国民としては、やはり家庭生活におきましても、その他個人の生活におきましても清潔でりっぱであるという人を選ぶようにしなければならぬことは、これは私は異論はなかろうと、かように思うわけであります。

市川房枝第十七控室

○市川房枝君 自民党の中に設けられておりまする風紀衛生対策特別委員会についてちょっと伺いたいと思います。  この委員会が検討されようとしておられます題目はまことにけっこうでございます。しかしこの委員会の発足の経過、あるいは中心となっておいでになる方々のお名前を拝見しますと、売春防止法の実施の延期、あるいは業者への補償、あるいは特別融資が目的ではなかろうかと、こう思われます。この委員会の設置は昨年の九月十二日に楢橋、眞鍋、椎名三氏が世話人となられまして、自民党の有志の議員と、今検挙されておりまする全国性病予防自治会の幹部の人たちとの懇談会で特別委員会を作るということが話題に出ておりました。そういう点から業者もこの委員会に対して非常な期待を持っておいででした。はたせるかな、去る七月二十三日の委員会で、実施延期ないし法の罰則の削除を決定し、党三役に提出されました。これはごく秘密で自民党の方々さえ御存じなかった人もあったようでしたが、それが外部に漏れ、各方面で延期反対の運動となったわけであります。この委員会には婦人議員の方々が三名参加されておりましたが、自民党の婦人局の勧告でこの委員会を脱退され、また婦人局は党の幹部に対して、一般から疑いを持たれておるこういう特別委員会は解消してほしいということを申し入れられたのでありますが、自民党の名誉のためにこうした委員会は解散すべきだと思いますが、あるいは再検討されるべきだと思いますが、総裁としてのお考えはいかがでしょう。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 売春禁止の問題は、私は特に真剣にこれが実現を念願をいたしております。ただ、実際にこれを実現する上におきましては、御承知の通り、いろいろな困難があるのであります。この困難をわれわれは克服して、そうして実現をしなければいけない。ただ、法を、法律としてできておりますから、これを施行し、これを実施することは当然でございますが、それだけでもって事足れりとすべき問題じゃないと思います。いろいろな方面の協力を求め、また業者を忌まわしい業態から一日も早く他の業務に変るようにこれを推進するとか、あるいは従業婦の人々の更生に関する処置を遺憾なからしめる等、いろいろな面において私は各方面の協力を得ていかないというと、ただ法律を四月一日から施行するのだから、これを完全実施し、あとはもう法の取締りだけで事足れりとするような簡単な問題ではないと考えております。従って、これを円満に、円滑に実施し、その目的を十分に達成せしめるためには、私は各般のそういうような行政措置なり、あるいは予算措置、もしくは実際そういう制度が円満に行われ、目的を達しているかどうかというものを常に検討し、指導し等、いろいろな面において万全を尽さなければならぬと思います。こういう意味においてわが党におけるこの特別対策委員会というものがあるのでありまして、いろいろ今おあげになりましたように、この委員会が何だかこの法律の実施を延期せしめるために、あるいは業者の請託をいれて何か業者の利益をはかるために作っておる委員会のごとく誤解されることは私ははなはだ遺憾でありまして、あるいはその途上におきまして、そういう言動なりあるいは議論が私は皆無であったとは申しませんけれども、いまや委員会としては、今私が申し上げますような趣旨において、十分に一つ有効な方法を研究し、これが実現を期して行くという意味で働いておるのでありまして、今やめるつもりはございません。

市川房枝第十七控室

○市川房枝君 なお、党紀確立の内規には、公けの場所で党の方針並びに政策を公然と非難する行為等、品位をけがす行為に対しての処罰の規定もございますが、有力な党員の方が売春問題について党の立場と異なる意見を発表になっております。たとえば、九月八日のNHKの売春問題の討論会での世耕弘一氏の御意見は全く業者の代弁のようでありまして、自民党の婦人議員の人たちも非常に今困って、党幹部に抗議をされたような事実がございます。NHKについて聞きますというと、世耕氏は自民党を代表して御出席になっておるそうでありますが、そういう点をどうお考えになりましょうか。  それから総理は私が持っておりますこのパンフレットをごらんになったごとがありますか。これは世耕氏がお作りになりましたパンフレットでありまして、見たところどうもエロ本のように思われるのですが、身はちょっと違いますけれども、これは私が亀戸の特飲街から婦人相談員が実はもらって来まして私にくれたものでありますが、こういうふうなこと、これは世耕さんだけ取り上げて大へん申しわけありませんけれども、総理はどういうふうにお考えになりますか。売春汚職をほんとうに御心配になっておりまするならば、先ほどから伺いますように、検察当局の結果を待ち、厳重に捜査されるとこうおっしゃっておりますが、私は一歩を進めて、むしろ自民党内で、この国民の疑いをお解きになるというような何らかの方策をお講じになることの方がいいのではないか、こういうようにも考えますけれども、御意見をちょっと伺わせていただきたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 売春問題に関して、いろいろな公開の席上等において、党員の発言が穏当を欠いている事態につきましては、私もすでに一、二そのことを耳にいたしましたので、これに対しては党としては本人の十分な反省を促し、それぞれ警告をいたして、党議の線に従って言動するようにいたしております。お話の通り私は売春問題に関しては一面においては検察当局の十分厳正な活動に待つと同時に、ややもするというと、今市川委員のいろいろとおあげになりましたようなことから、わが党がこの問題に関して不明朗な立場をとっているやに印象づけられるような事態につきましては、これを一掃することにこの上とも努力したいと思います。

市川房枝第十七控室

○市川房枝君 時間が参りましたので、あと一つだけ簡単に総理にお伺いして私の質問を終りたいと思いますが、婦人問題についてちょっと伺いたいと思います。  婦人たちの間には、憲法改正と関連しまして家族制度が復活されるのではないかと心配し、三、四年前から婦人団体等で家族制度復活反対協議会というのを組織しております。去る七日の午後この団体が新橋野外ステージで、逆コースにもの申す婦人大会を開きました。出演者の中には自民党の婦人の都会議員の方もおられました。ところが終りごろに、私はそのときにはおりませんでしたが、壇上に暴漢が現われまして、マイクを取り上げようとした。共産党の回し者だ、女のくせになまいきだと言ってマイクを取り上げようとし、壇上で格闘があったそうであります。その暴漢は愛国党の赤尾敏氏でありまして、ほかに数名現われたそうであります。ちょうど昭和五年に赤坂の三会堂で私が婦人参政権要求大会を開きましたときに、婦人参政権反対のビラをまいて、壇上にかけ上って私を引きずりおろした暴漢がありましたが、あとでそれは建国会の赤尾敏氏だと聞きました。約三〇年前と同じことが今日繰り返されておるわけであります。総理は昨年婦人団体の人たちとお目にかかりましたときに、私はフェミニストだから岸内閣には婦人の閣僚を入れますと、こうおつしやいました。(笑声)施政方針その他で青少年の問題については総理は熱心にいろいろ御意見をおっしゃっておりまするが、婦人に対しては公けの席で御意見を伺っていないのでありまするが、この機会に婦人に対して、あるいは婦人問題に対しての総理のお考えを承わらしていただきたい。先ほどの婦人たちの心配といいますか、あるいはその婦人たちのそういう行動に対するいわゆる妨害といいますか、そういうものに対するお考えを承わらしていただきたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 今おあげになりました新橋ステージにおける暴漢云云のお話は実は初めてここで承わるわけでありまして、事情を承知いたしておりませんが、しかし私は憲法改正論者でございますが、しかし憲法の問題につきましては、いろいろ御承知の通り議論もあることでございます。調査会におきまして、いろいろな議論が検討されております。ただ私は、これは私自身の意見を申し上げては恐縮でありますが、憲法改正論者ではありますけれども、旧家族制度そのままに復活しようという考えは私は持っておりません。あるいは改正論者のうちにはそういう考えを持っておる人があるかもしれませんが、私は持っておりません。私は新憲法下において男子と女子が同じ権利を持って、政治的にも社会的にも活動されておることは非常に私はいいことであるし、従って特に私が念願している平和運動であるとか、あるいは社会福祉の問題に関しましては、婦人は男子よりもさらに経験からいい、さらにその婦人の教養やあるいは感情の上からいって、男子以上のものも持っておられるのでありますから、従ってそういう面において政治におきましても婦人の参政を認め協力を求めるということは、これは非常に政治をそういう意味において明るくし、理想を達成させる上において望ましいことと思っております。従いましてそういう意味において、もしも旧家族制度を復活して婦人をただ家庭内に追い込んで、そうして社会的、政治的な行動を制限しようというような考えは、私としては全然持っておらないということを申し上げておきます。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 私は主として産業経済の問題につきまして一、二お尋ねをいたしたいと思いますが、その前に岸総理大臣の政治に取り組まれるところの心がまえと申しますか、政治信念につきまして、まず冒頭にお尋ねをいたしたいと思うのであります。  首相の政治信念につきましては、すでに衆参両院の本会議、あるいは衆議院における予算委員会におきましてわが党の河野密代議士の質問等にも答えられておりまして、一応のお考えは私は了承をいたしております。ただ問題はその首相の言われるところの政治信念というものが、伺っておりまするというと、どうも言葉のあやでありまして、ほんとうの意味の裏づけがないのではないかということについて非常な疑問を持たなければならぬ節々があるからであります。たとえばあなたは大体戦争前からいろいろ命令的なあるいは訓辞的なことが大へんお好きなようでありますが、今度の本会議における施政方針演説の中におきましても、最後には青年諸君を含めまして、国民の奮起を要望せられているのであります。ただ私はそのこと自体は決して悪いとは申しませんけれども、少くとも国民の奮起を要求される以上は、国民が奮起の情熱を沸かし得るようなやはり政治というものがなければならぬと思うのであります。それには政治の信用の回復がまつ先でありまして、失墜いたしておりますところの政治の信用を回復いたしますためには、何と申しましても、与野党ともに国民に公約しておりますところの政策というものに誠実でなければならぬ、これが信用回復の土台であると思うのであります。特に与党であり、与党の内閣でありますところの岸内閣におきましては、国民に公約せられているところの政策というものを誠実に実行して、もし実行をすることにおきまして、事、志と違って相反するような結果が出ましたときには、率直に自己批判をいたしまして、国民にその不明をわびる、それだけの謙虚な気持がなければ政治の信用の回復というものは望めない、そういう態度がなければ国民をしてこの日本の再建のために奮起を要求しましても、ほんとうの情熱というものは出て参らない、こういう工合に私は固く信ずるのであります。が首相の御信念を伺いたいと思うのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) お話の通り国民が政治に対して信頼を持ち、これに対して国の再建について奮起する情熱を沸かすような政治をやっていかなければならぬことは、栗山委員のお話の通りであります。その一つとして公党が公約をし、特にそれが政局を担当しております以上は、そのことについて十分な責任を明らかにすべきものである、こういうお考えに対しては、私も全然同意見でございます。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 そこでたとえば国会に表明せられました岸首相の政治信念の二、三を申し上げますならば、私はいろいろここで意見を述べてこまかく入ることは時間の関係で差し控えたいと思いますが、まず第一に、絶対に戦争に参加するようなそういう機会というものは避けて行きたい。第二には、民主政治の確立のために全精力を傾けたいということが中心であると申されました。三悪追放もその方針の一つであると申されました。しかし現実にすでに今国会におきましても衆参両院で明らかになりましたように、事、戦争反対という問題だけについても、その言葉は大へんよろしいのでありますが、あなたのお考えになっておるところの実際の構想というものについては、多くの国民が理解し得ない状態が出ておるのであります。米ソ両国の両陣営の対立の中にありまして、わが国を戦争から回避させるそういう道は、中立へ中立べという道を歩まなければならぬという国民の多くの希望があるにかかわらず、自由陣営に属し、ますます深入りをいたしまして、自由陣営の主宰である米国に従属の度を深めて行く、こういう態度をおとりになっておりますことについては、多くの疑問を持たざるを得ないのであります。また第二に、民主政治の確立とおっしゃいましたけれども、今日の日本におきまして、民主政治を確立して行きます基本は、何と言いましても日本における民主主義勢力の養成でなければなりません。民主主義の思想の養成でなければなりません。この民主主義の思想の一番基盤をなしておりますものは、要するに労働組合を中心とするところの、戦争前にはなかった権力に常にレジスタンスを行い得るところの勢力であります。この勢力を正常な形で育てて行くということが日本の民主主義を守って行く一番大きな基盤でなければならぬと思うのであります。ところが最近政府のおやりになるところを見ますというと、一番この重要な民主主義勢力の母体でありますところの労働組合におきましても、相ついでその組合活動が制約をされるような方向に陰に陽に施策をせられておるのであります。最近におきましても、国会のまわりにはすでに組合のデモの姿を見ることができなくなっております。これは警官の警戒、さらにこれに対する政府の取り締りの方針がかくあらしめておるのであります。私はこういうことではほんとうの意味の政治に対する信用というものを固持するゆえんではないと思うのであります。またそのほかに、先ほども市川委員がおっしゃいましたが、暴力の追放であるとか、汚職の追放であるとかいうことを言われます。しかしながら現実の姿は、国民が納得し得るような形における真の意味の暴力の追放なり、汚職の追放というものは一向に芽が育っていないのであります。言葉だけに終っておるのであります。さらにもっと極端に申しまするならば、あなたは貧乏の追放を盛んに唱えられておりまするが、さらに福祉国家の建設への大きな構想も持っておいでになりますけれども、現実の日本の姿は、所得の分配はますます不均衡の度を深めておるのであります。貧乏と富める者との差は拡大しつつあるのであります。あなたのおっしゃるところの貧乏の追放とは異った道を歩みつつあるのであります。こういうことは国民がみずからの生活を通じまして、あなたのお話と現実に起きておる事態とがいかに隔たっておるかということをよく知り抜いておるのであります。こういうことで真に政治の信用を回復することができるかどうか、非常な疑問を持つのでありますが、あなたはこういうことにつきまして、率直にいま一歩、起きております事態につきまして深く反省をせられる予地をお持ちになっておらないか、この点を伺いたいと思うのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) いろいろと私の施政に対する御批判がございましたが、私はかねてあらゆる機会に申し上げておるように、日本が再び戦争に巻き込まれるということを絶対に避けるということは、私の施政の一つの大きな信念であります。ただその方法として、中立的な立場をとればそれで日本が巻き込まれないという見解には私は賛同しないのであります。やはりわれわれみずからが自衛のこのなにを持って、そうして今日世界の大きな勢力の対立しておる、この二つの相反する立場をとっておるもののこの立場において、世界がその均衡において——私決して理想的に力の対立によるところが将来永久の、平和をもたらすとは考えておりませんけれども、しかし現実の国際情勢が、力の対立によってそのバランスの上に平和が保たれておるという現実に即して、私は再び日本が巻き込まれないというなんに対しましては、日本みずからが必要な防衛の措置を講ずることにあるという考え方に立っておるわけであります。決して私は自由主義国の陣営において従属関係を深めて戦争にかり立てるような方向に進んでおるという考え方では絶対にないわけであります。また民主主義を、これを実現することが私の信念であるということを申し上げておるので、今労働運動に対する栗山委員のお話でありますが、私はもちろん正常なる労働運動、また労働者の福祉が増進され、その生活が安定されているとき、労働冬件が改善されていって、生産意欲が高揚されるということに対しましては、あらゆる面から私はこれに協力するに決してやぶさかではございません。しかし、私は民主勢力の正常なる育成、発展ということは、決して法制を無損したり、あるいは実力行使を繰り返すことによってこれが実現するということではないと私は考えております。今おあげになりましたが、ただ国会のまわりにあらゆる機会においてたくさんの人がデモンストレーションをする乙とが民主政治のあり方として望ましいということでは私は決してないと思う。もう少し根本的なことを私どもは考えておるわけでありまして、決してこの意味において民主勢力を抑圧するとか、弾圧するとかいうような、一部の人がそういう批判をしておりますが、そういう考えではないのであります。また三悪の追放にいたしましても、これは実はどの一つをとって考えてみましても、またどの政治家も、こういうことを言うか言わないかは別として、こういう三悪を是認し、これを認めた人はないのであって、これをなくしようということは、言うと言わざるとにかかわらず、私は従来の政治家が努めてきたことだろうと思う。それにもかかわらず、それがあとを断たないというところに、これらの問題については非常な私は困難がある。しかし私は私自信の全力をあげて不退転の決意をもってこれが実現に向ってあらゆる面から——先ほど申し上げております。そして市川委員の御質問に答えたわけでありますが、あらゆる面から一つこれの努力をいたしたい。貧乏の追放の問題は、これは三悪のうちにおきましても最も広範な問題でございます。国民全体の問題でございます。それについては、一面において経済を繁栄せしめ、その規模を拡大していって、そうして国民所得を上げていくという方策と、社会保障制度によるところの福祉国家、この二本建でもって進んで参りたい、かように念顧しておるわけであります。いろいろまだそう言っている念顧だけであって、実際的にしていないじやないかというようなお話しにつきましては、私はあらゆる機会に着々としてこれを実現する、次の国会におきましても、相当これに対しては予算その他の面において実現努力をする考えであります。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 ただいま民主主義は国会のまわりにデモを寄せつけることでなくて、さらに根本的な問題があるとおっしやいましたが、私も根本的な問題を解決しなければデモもなくならないと思うのでありまして、その根本的な問題の一つとして、今首相もお取り上げになりました貧乏の問題があります。三悪の追放のうちで暴力と汚職という言葉につきましては、国民も大体よくわかると思うのであります。それぞれの立場で若干のニュアンスの相違はありましょうが、暴力とはいかなるものであるか、汚職とはいかなるものであるということは理解し得ると思うのであります。ただ問題は、あまりにも漠然たる言葉でありますところの貧乏ということが、少くともあなたは追放するとおっしゃったのでありますから、貧乏とは一体どういうものであるかという、おのずから構想をさだめておっしゃっておると思うのでありますが、貧乏とは一体どういうものであるか、御説明をいただきたいと思うのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 今、私がこの貧乏追放のために、経済繁営政策と、そして社会保障制度二本立てでいきたいということを申しておる、私は、経済を繁栄させ拡大することによって、それだけ失業者の数をなくし、また経済が繁栄するならばこれに関与しておるところの国民所得を上げていくということが実現できると思います。また一面において、いろいろな社会的不幸——病気であるとか、あるいは老齢のゆえをもってするとか、あるいは一家におけるいろいろな不幸等によって生活が困難をきわめるような人に対しましては、社会保障制度を拡充して、少くともその生活を保障していくということを考えていかなければなりません。もちろん私、貧乏というような問題は、社会の発達もしくは経済の発展に伴いまして、私はそう限度のある問題じゃないと思う。比較の問題だと思います。従いまして、この二つの点で少くとも国民生活が安定して行くという方向に進めて行くことが、私の貧乏追放の願いでございます。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 貧乏ということをお聞きいたしましたが、きわめて常識的な、失業者をなくして、しかも困窮の度の激しい者には社会保障を行う、そして国民の所得を上げていくことが貧乏の追放だと、まあこういう工合におっしゃったわけでありますが、それでは国民が伺いまして何のことだかわからないのであります。果して自分が貧乏であるのかないのか、さっぱり政治的には見当がつかないと思う。それではほんとうに政治というものに対して国民をよらしめる道にはならぬと思うのでありますので、さらに突っ込んで二、三の点を伺いたいと思います。  要するに、国の総国民所得が今後も上っていくでありましょう。今まで上って参ったわけでありますから、上っていくでありましょうが、この国民所得をなるべく公平に分配していく、国民所得の公平な分配ということが考えられなければ、ほんとうの意味の貧乏の追放ということにはならないのではないか。あなたは、その点には全然お触れにならなかったのでありますが、これについてどういうお考えをお持ちになっておるか。またこの問題は財政金融の実権をお持ちになっております大蔵大臣にもお尋ねいたしておきたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 社会的の正義といいますか、なるべく非常な分配の不公平をなくしていくということがこれは望ましいことと思います。しかし私の今特に考えなければならぬと思いますことは、全体が少くては、いかに分配は公平にいたしましても、全体が生活が決して向上しておるというわけではない。やはり国民全体の経済を繁栄せしめ、その国民所得というものをふやしていくということに特に重点を置いて考えないと、ただ公平な分配ということで、貧しくとも、全体がいかに貧弱であっても、公平であればそれでいい、という性質のものではないと、かように考えておるわけであります。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) 分配をできるだけ公平にして、国民生活を向上させることは、もう考え方として何人も私は異論がないところと思います。ただ問題は、どういうふうにあるのが公平かということをまず考えなくちゃならないのではないかと私は思っておるのですが、今の段階では、先ほど総理もお話がありましたように、みんなが協力体制をもってそうして生産を増大するという、この線を私はあくまで労使とも協力していかなくちやならぬと思っております。それで、その結果これをどういうふうに公平にするかということになるのでありますが、これもやはり社会の進み方にもこれは関連してくると思う。今の私たちの立場からすれば、たとえば税において考えてみる。あるいはまた今問題になっている最低賃金というようなことも考えてみる。あるいはまた今後におきまして、もう少し進んで、社会のあり方について、あるいはまた経済を計画化せられ、完全雇用を実現するような方法、こういうような形で、だんだんと分配を公平にしつつ、そのうちそれがずっと集積してくると一つの新しいこの社会の構成と……先ほどちょっと申しましたが、社会の構成というものがスムーズに実現する。こういう段階に達することと思います。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 私がお伺いしたいのは、貧乏というものは国民各層のどの点にあるのかということがはっきりしませんというと、これを施策することができないのではないか、ということを申し上げておるのでありまして、たとえば、これは私どもが勝手な数字を並べますと御信用になりませんから、経済企画庁がお出しになっております年次報告を根拠にいたしますが、この三十二年七月に発行されました年次報告の三十三頁のところには、雇用構造の特殊性というのが書かれております。二してこの特殊性の中を要約いたしますと、わが国の産業経済の中で、これは農業就労も含めてありますが、全曲労人口四千三百万人の中で、ほんとうの意味の雇用者、要するに、与えられた労働時間でその収入によって家族をまかない得る近代産業的な雇用者というものは四六%しかないのだ、こういうことが言われておるのであります。そうしますと、半数以上の人は非近代的な雇用関係、要するに潜在失業的な形で日本の社会を構成している、ということがはっきり書かれておるのであります。従って、その賃金の格差なんかを見ましても、大企業に対しまして中小企業は五〇%である。零細企業は四〇%である。ところが外国の例を見ますというと、外国は大企業と中小企業の賃金格差はそれほど大ではありません。九〇%程度であります。こういうことがはっきり書いてあるのであります、また非近代的な雇用関係にあります中小企業だとか、農業の関係、そういうものの数というものは、英国においてはほとんど一〇%しかない。またアメリカにおきましても二〇%しかない。八〇%は完全な雇用者として生活をしておる。こうことが書かれておるのであります。従って私は、岸総理なり大蔵大臣に伺いたいのは、貧乏を追放するというお考えをお持ちでありまするならば、少くとも日本の就労人口四千三百万人の中で、アメリカなりイギリス程度まで、この完全雇用者の率、要するに九〇%なり八〇%なり、そこまで上げていく努力をしておる。これが貧乏の追放である。こういうふうに具体的に物事をお考えになって、そして施策をせられることでなければ、国民は、自由党内閣は一体何を貧乏追放に考えておるのか、こういうことがわからないのではないか、こういうことをお尋ねしておるのであります。この点について重ねて総理の御所見を伺いたいと思うのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 日本の中小企業の状況、まあ特に労働者の収入につきまして、大企業との間に非常な格差のあることは御指摘の通りであろうと思います。従いまして、この労働条件を改善して、向上せしめていくということは、これはわれわれとして当然努めなければならぬことだと思います。ただ御承知の通り、諸外国の中小企業と日本の中小企業というものの産業界全体に占めておる重要性というものは、その国々によって相当違っておりまして、日本におきましては、これは非常に、産業界の全体から申しまして、生産額においても、あるいはまたわれわれが輸出を増進しようとしておりますが、輸出の面におきましても、これは非常に大きな部分を占めておる。その企業の経営が近代的でないために、労働条件等におきましても、今悪い状態にある。その他の点におきましても、私は改善を要する点が非常に多いと思います。しかしながら、これをあまり急激にやりますというと、いわゆる角をためて牛を殺してしまって、中小企業が全然成り立っていかないということにすることは、これまた日本の状況からいうと非常に考えてみなければならぬ重要問題である。その間をわれわれは十分調整しつつ、この中小企業が持っておりまする非近代的な部分をなくして、そうして十分に中小企業が成り立っていくように、またこれに従事しておるところの労働者等の賃金はもちろんのこと、その他の労働条件等も改善されていくというふうに努力しなければならぬことであると考えております。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 政治的な意味における、すなわち岸総理が国会において表明せられました貧乏追放という意味は、少くとも今述べられたような非近代的な経済組織これを近代的な組織に改め、その改める中において国民所得を上げていく、こういうところをねらっておると理解してよろしゅうございますか。どうもはっきりいたさないのでありますが、それでよろしゅうございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 大体そうお考えになって差しつかえないと思います。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 そこで私は、さらに問題がしぼられて参りましたから、中小企業の育成策について、きょうは農業政策のことは省きたいと思いますが、中小企業の対策について、二、三お尋ねをいたしたいと思います。  総理の国会における施政方針におきましては、中小企業を大いに育成する、そのために中小企業団体を組織しなければならない、また若干の金融措置、税の軽減措置をはからなければならぬ——輸出金融等でありまするが——そういうことを述べられて、しかもこの臨時国会にも若干の法案が提出をせられておりますことは私は承知いたしております。しかしその程度のことで物事が前進するかどうかということには非常な疑問を持っております。ただいまあなたは、中小企業の近代化はやらなければならぬが、急激にやればかえって中小企業に大きな、いろいろの好ましくない影響を与える、という意味のことをおっしゃいましたけれども、急激にやらなくとも、現実に今やり得ることがたくさんあると思います。そういうことについて私どもは大へんに不可思議に思っておることがたくさんございますので、その二、三をまずお尋ねをいたしたいと思います。  まず第一に、中小企業の生産の向上、いわゆる近代化ということをやらなければならぬということは、おそらく御否定にはならないと思います。現に投資ブームによりまして、大へんな日本の近代化が行われておると思いますが、その中心は大企業であるでありましょう。中小企業は依然として遅れておるはずであります。そこで、中小企業の近代化を行うのに一体どういう考えをお持ちになっておるかということが、お尋ねをいたしたいところであります。私はその一つの例として申し上げますが、最近通商産業省におきまして、機械類の外貨の割当につきまして、金融引き締め等のことがありますので、新しい方式を考慮せられておるということを伺っております。その新方式によりますと、下期から、外貨の予算の削減と投資抑制の二つの狙いを持ちまして、AグループとBグループに分けまして、Aグループは約一億ドル、そしてこれはAA制でやっておる。Bグループはチェック制にいたしまして、約三千万ドルを予定する。若干残りました金はA、Bグループの協定でこれを割り当てよう、こういうお考えであるということを聞きました。ところがAグループの一億ドルという金は相当な金でありますが、このAグループのAA制を利用し得るものは、鉄鋼、電力、石炭、あるいは機械工業振興法、電子工業振興法等の特定の法律で守られておる業種だけであります。要するに大企業であります。その他の大勢の中小企業は全部Bグループに入るわけであります。そうすると、すでに大蔵大臣、首相も宣明せられておりまするように、投資ブームによって日本の企業は一応近代化の域に達しておると、こうおつしゃいましたが、これからAグループがこのAA制を利用いたしまして、どんどん機械類を輸入いたしますならば、ただいまの日本の経済規模、若干チェックしようという経済規模には不適であるかもしらん。大企業間において過当競争を誘致するような意味の機械の輸入がどんどんと業者の自由意思によって行われるかもしれません。その反面、Bグループの方は、中小企業の近代化のために何とかしてこの機械を入れたいと考えておりましても、チェックされて入らないということになる。従ってこの外貨の割当方式というものは、今総理が言われたこと、中小企業の近代化を一刻も早く推進したいという思想とは縁遠いのではないか。もう少し、外貨の割当をやるならば、厳正にやる必要がある。真に中小企業の近代化に役立つようにやる必要がある、このように考えておりますが、この点につきまして関係大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。

前尾繁三郎自由民主党通商産業大臣

○国務大臣(前尾繁三郎君) AA制につきましては、これは自動的に承認いたしますので、これで別にAグループ、Bグループに分けておりません。それからほかの承認する機械につきましても、緊要度については考えておりますが、大企業と別に分けて考えることは今までもいたしておりませんし、将来もするつもりはありません。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 AグループとしてAA制ができますのは、私が申しましやのは機械工業振興法、電子工業振興法、これはもちろん業種に入っております。それから鉄鋼、電力、石炭、こういう工合に大体業種がきめられておるはずであります。そして、そのほかのものはBグループになっておると私は理解しております。若干の入れ違いはあるかもしれませんが、そういう考えで新しい外貨の割当方式の変更をやると、ごうお考えになっておるように聞いておるのであります。

前尾繁三郎自由民主党通商産業大臣

○国務大臣(前尾繁三郎君) 先ほど申し、上げておりますように、事業の緊要度ということは考えます。しかし、大企業、中小企業に分けて考える考え方はいたしておりません。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 ですから緊要度ということは、先国会以来隘路産業といたしまして、私の言葉が足りなかったかもしれませんが、隘路産業が中心になっておるのではないか。隘路産業というのが鉄鋼なり、電力なり、石炭ということになりまして、隘路産業というものは、要するに大企業にどうしても宙点が置かれるわけであります。私の申し上げておるのは、輸出貿易も含めまして、中小企業を主体にして、設備の近代化のために新しい構想で外貨の割当が行えないか、ということを申し院げておるのであります。緊要度を無視をして、そういうことをおやり下さいということは一言も申し上げておりません。輸出貿易の振興なり国民生活の向上のために緊要の度合いの高いもの、もちろんそれでありますが、そのうち中小企業を中心にして行う方式ではないではないか、こういうことを申し上げておるのであります。

前尾繁三郎自由民主党通商産業大臣

○国務大臣(前尾繁三郎君) 緊要度から申しますと、基幹産業が緊要度が高いということは自然の成り行きでありまして、そういう意味からして、隘路産業等の打開のための機械というようなものは優先的に取り上げるわけでありますが、それは結果でありまして、それは大企業がやっておるか中小企業がやっておるかということは考えずに、また中小企業でも重要な事業をやっておりましたら、その機械は十分輸入していくつもりであります。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 まだ不十分でありますが、それではこの程度にいたしまして、その次に移りたいと思います。  先ほど、中小企業の振興の一つといたしまして、いろいろ御意見を拝聴いたしましたが、私は、本委員会において、大へん説明的に不十分で残念だと思いますことは、大蔵大臣は、明年度の予算案の具体的な構想について何一つお話をいただけなかったことであります。これは基本構想の範囲を出ないわけであります。大蔵大臣が明年度の予算につきまして、過日発表せられました基本構想というものを、あくまでもあの全条項にわたって厳守して行かれるおつもりであるか、あるいは、そこにはおのずから重点度がありまして、若干チェックの余地があるものか、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) 先般発表しました基本構想は、これは、党及び政府と相談いたしまして、閣議できめて発表したものでありまして、これは今のところ厳守して参るつもりでおります。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 厳守をして参るということでありますと、あそこには、税の軽減は行わないということが書いてあります。そういたしますと、過日もこの委員会でどなたか質問なさいましたが、中小企業で今一番困っておりますのは、また、大企業の間でも困っておりますのは、法人税なり事業税であります。こういうものについて、相当膨大な国家の余裕金が出るにかかわらず、全然手を触れない、こういうことをおっしゃっておるのと同じことであります。これでありますれば、先ほど総理は、あまり急激にやるというと中小企業に悪い影響を及ぼす、こういうことでお逃げになりましたが、国家に余裕金がある、しかも、中小企業を育成したいという御情熱がおありになれば、この際、法人税なり事業税を大いに軽減されるということはまつ先に行い得ることであるし、また、中小企業に対して、決して悪い影響を与える問題ではないのであります。そこにやはりお考えと、実際に行われようとするごとに非常に大きな食い違いがありはしませんか。この点について総理の御所信を伺いたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) 私からまずちょっと申し上げておきます。景気調整資金という点について問題にされたと思うのですが、これは何も使わないというわけじゃない。来年度の予算の編成が、今日の経済を安定さして、経済をよくする、それを妨げるようなことは差し控えなければならないということで、景気調整ということを言っているのであります。何も使わずにたなに上げておくというわけじゃない、景気の動向が許せば使っていきたい、こう御了解願いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 事業税及び法人税につきましては、いろいろ議論のあることは私も承知いたしております。中小企業対策の一つとして税制の問題も、従来からもいろいろと要望されておることでありまして、十分にそういう意見に対しましても、これを尊重して、検討しなければならないと思います。ただ、来年度の予算編成の問題につきましては、かねて政府として、また党として決定いたしまして、発表しておる基本方策というものがございまするから、この線に沿うてあらゆる面から検討をいたしております。今日のところ、私は、特に事業税、法人税について全面の改正をするという結論は持っておりません。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 結論はお持ちになっていないことは、大蔵大臣から先ほど伺った通りでありますが、今お互いに話し合いをして参りました中で、中小企業は助けなければならない、おくれた企業の近代化をやって、そこから所得の増進を上げていかなければならぬという基本原則は御賛成になりました。しかも、これを緊急にやり得る方法というものは、今、大蔵大臣は、景気準備資金として決して使わないのじゃないとおっしゃいましたが、それは何にお使いになるか、明白に聞いておりません。私は、現実に中小企業を育成するためには、余裕金があるから、これをお使いになったらどうですか、これでけっこうだれにも影響は及ぼさないじやないか、すぐやって中小企業が困るわけじゃない、日本経済も困るわけじゃないから、おやりになったらどうかということを申し上げておるのであります。それについて結論は出したわけじゃないとおっしゃいましたが、それは、決して軽減を全然やらないという意味ではないのだ、これから考慮の余地があるのだという含みがありまするかどうか、この点を重ねて一つ伺っておきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 来年度予算編成の全体の問題としていろいろな、今申しますような減税の問題もございますし、景気調整資金の問題もございますし、いろいろ緊急に実行しなければならない重要なる問題もございますから、これらを、全体を十分に検討して、私どもは、今日及び来年度の日本の経済全体から見て、最も適当なものを作ろうということで、せっかく全体として検討いたしておるのでありまして、今日絶対にしないとか、あるいは絶対にするとかいうようなことを申し上げる段階ではないということを御了承願いたいと思います。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 次に、やはりこれは一番中心課題でありますところの中小企業の賃金問題につきまして、河野企画庁長官と労働大臣にちょっとお尋ねをいたしたいと思います。  実は、中小企業に対して最低賃金制を設けたいというのが熱心な国民の要望であることは、あなたも御存じだと思います。これにつきましては、労働省からいち早く最低賃金法案なるものを出して、そうして協定賃金を実施する、こういうようなお考えもあるようでありまするが、協定賃金というのは、まあ一番わかりやすく申しますれば、現行の中小企業が持っておる賃金制度を、一応あれでくぎづけにしておこう、安い賃金をくぎづけにしておこう、協定によってくぎづけしておこう、こういうことなんであります。ところが、そういう構想について私は、経済企画庁の経済報告に対して非常に敬意を払っておりまするが、こういうことを四十二ページで申されております。「おくれた部門の対策には二つのかたがある。一つは保護策である。しかし、これは往々にして劣った条件をそのままに固定化してしまう惧れがある。もう一つは多少摩擦はあっても劣った条件をむき出しにしこれを改善しようという心構えを内側から盛りあげる方策だ。」この二つがあるということであります。そうして、「目下問題になっている最低賃金制などは一見中小企業に不利にみえるかもしれないが、賃金の上昇を何とか生産性の上昇で補おうという気持を奮い起きせるという点において第二の部類に属するであろう。」、こういう工合に述べて、そうして、ほんとうに中小企業を近代化し、そうして中小企業の所得をふやすためには、これでなければいかぬということを書いてある。これは、一番最初のところの序文を河野国務大臣がお書きになっておりますから、河野国務大臣は御異存ないと思うのです。労働大臣いかがでありますか。

石田博英自由民主党労働大臣

○国務大臣(石田博英君) 大へん私の気持の通り書いて下さっているものと思います。  それからもう一つは、今御指摘の業者間協定による最低賃金制を別に法律でやっているわけでございませんが、今、督励して実行しておりますが、それは、低い賃金をくぎづけにするのではなくして、すでに今実施されましたものの平均では、約一〇%程度の賃上げになっております。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 一〇%ということをおっしゃいましたが、ほんとうの意味の最低賃金の理論とは若干あれは違うのでありまして、あなたにお聞きしたいのは、一〇%というのは、これはもうほんの数字のちょっとのあやだけでありますから、本質の意味の、理論的な最低賃金制というものを設けて、中小企業に奮起を促す、そうして生産性の向上に邁進させる、そのために国家はあらゆる力を傾注して、そうしてほんとうの意味の潜在失業者をなくして、完全雇用への達成をはかって、貧乏の追放をする。こういう決意を労働大臣はお持ちになっておるかどうか、これを伺いたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○国務大臣(石田博英君) それは、さきに申しました通り、経済企画庁の白書、今お読みいただきました通りの気持を持っておりますということでございます。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 いろいろお尋ねしたいことがありますが、だいぶ時間が迫ってきたようでありますから、最後に私は、総理、大蔵大臣、河野企画庁長官に、ものの考え方について伺いたいと思います。  貿易政策その他については、またいずれほかの委員会でお尋ねをするといたしまして、実は、今年の春の国会から今度の国会に通じまして、金融の引き締めによって非常に大きな経済の転換が行われ、そして多くの国民は思わざる迷惑をしたのであります。繊維界における倒産の悲惨な実例等は、皆さんが御承知の通りであります。これについてこの国会で相当激しくいろいろと議論をいたしまするというと、大蔵大臣が、いや、大体輸出は予定通りに行っているのだ、輸入が多過ぎただけなのだ、それで輸入をこのままにして置けば、外貨が赤字になってしまうので手を打ったのである、こういう工合にしごく淡々たる態度でおいでになっておりますが、そういうものの考え方でよろしいかどうかということに、私は非常に疑問を持っております。なぜもう少し、こういう投資ブームでもって外貨が底をついてしまって、急激な手を打たなければならぬ前に、事態を注意信号によって予知してもっと緩漫な手をお打ちにならなかったか、こういことを私どもは切実に痛感するのであります。これについては、そういうことはあるいは予見できなかったというようなことをすでにおっしゃった点もありますが、この経済報告書によりますと、正直に、それが全部政府の見通しの誤まりであった——時間がありませんから個々に御披露はできませんけれども、お読みになれば、第一部のところほとんど全部が、見通しの誤まりに対する自己反省の意見であります。こういうことを述べておいでになりますが、序文を書かれた河野企画庁長官ですら、非常に人ごとのように、偉大なる教訓を受けた、教訓を受けたと書いてあります。そうして、しかも、こういう教訓を受けたが、銀行家や企業家が将来大いに協力してくれなければだめなのだと、まるで政府に責任がないかのような序文の書き方であります。あなたがそういうふうでありますから、従って大蔵大臣も岸総理大臣も、そういうお考えになられたのは無理ないと思うのであります。大体、この経済報告書というのは、だれに向って書かれたのですか。内閣のこの経済政策の失政に対する自己反省書です。自己反省書であるならば、内閣が連帯責任において、石橋内閣以来の連帯責任において、この経済報告書をもって国民にあやまらなければならぬ重要なレポートである。しかも、あやまるようにできております、この本は。それなのに国会における発言というものは、一向そういう工合になっていないということは、一体どういうことでしょうか。もしそれを否定なさるならば、これを一々読み上げて、反省の事実を一つ一つ私は活字になっておりますから逃げ隠ればいたしません。これを指摘してゆかなければならぬ、こういうことになるのであります。前もってこの点はお話を申し上げてありますから、十分お読みになって、そうしておいでをいただいておると思いますので、明快に御答弁を願いたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) 輸入の点についてまず申し上げます。輸出は、大体見通し、あるいはそれ以上達成しておるのに、輸入が非常にふえた。そして国際収支が悪化して、緊急政策をとらなくてはならなくなった。なぜ輸入がふえたか、これは私は特に考えてみる必要があると思います。むろんその前の景気の段階が、輸出が旺盛であった、輸出が盛んであった輸出が盛んであれば、生産の増大が当然起るのであります。これは景気循環からいって設備の拡大が起る。日本の場合においては、その結果輸入がふえる、こういうことが考えられます。同時に、この日本の場合においてさらに考えなければならぬのは、特に日本の経済の構造からいたしまして、エネルギーとか、あるいは輸送部門とか、あるいは鉄鋼とか、こういうふうなところが隘路になっております。自然、産業の近代化の見地からいたしましても、こういう部面は、産業構造の変化、特にそういうふうな要請からまた設備投資というものがどうしても拡大する傾向をとります。これがまたさらに輸入をふやしていく、こういうふうな状況。さらにこういう場合に、そういうことはわかるが、なぜそういう場合に早く手を打たなかったか、これは私はやはり今後考えてみなければならぬと思う。むろん政府の見通しがすべて十分であったとは申し上げません。が、しかしながら、こういうふうな景気現象は、自由経済におきましては、どうしても経済自体の自動調節作用というものがうまくいかないと、これはなかなか結果がよくないのであります。その点について、終戦後における日本経済がよほどうまく回復してきたのでありますが、しかし基礎的なそういうふうないろいろな機能がまだでこぼこであります。たとえば金利一つとりましても、まだ金利体系というものが整っていない。従って、有価証券においても非常に利廻り等において不均衡である。そういうふうないろいろなことがあります結果、どうも景気について自動的に調整していくという作用が非常に鈍かった、こういうふうに思っております。さらにこの景気自体を把握する、そういうことで……、私は何も逃げ口上を言うのじゃありませんが、統計類も不備であった、景気の把握も不十分であった、こういうふうないろいろな問題がありますが、それで、先ほど申しましたように、政府においても必ずしも十分でなかった点も私は今後反省をしたい。たとえば、もう少し早くこういうふうな場合に、景気抑制の施策もとることがよかったろうということは、今日やはり考えられますから、これは私はやはり考えていいと思う。が、しかしながら、同時に経済の内部のいろいろな機能の総合的な働き、こういうものに不完全な点が非常にある点も今後整備いたしまして、たとえば景気循環についても把握を十分にする。いろいろ内外の経済の動きに関連しますが、それらを十分把握する、統計類も今後十分整備する、さらに経済に対上て計画性を与えて、長期のやはり経済の見通しというものをなるべく正確に把握する、そうして同時に、資金についても計画性を与えていく、こういうような施策も今後とっていく、こういうふうに相なろうかと思うのであります。こういうふうにいきますれば、私は、日本の経済も、今回のようなことが比較的に起らずにいくのではなかろうか、かように考えております。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 総理と河野企画庁長官の所信を一ぺん述べて下さい。

河野一郎自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(河野一郎君) 大体は大蔵大臣からお答えいたした通りでございますが、ただ一、二つけ加えさせていただきたいと思いますことは、われれれといたしましては、別の理由から、計画経済は避けていくべきであるということにいたしておるわけであります。ところが、日本の経済のいわゆる底が浅いと申しますか、実力の低い国におきまして、経済状態におきましては、すぐにその弱い面が出て参るのであります。先ほど御指摘になりましたように、民間の協力云々と言って、みずから反省をせずして、民間に責任を転嫁しておるのじゃないかということでございますが、私は政府自身としても、今後この事態を再び繰り返さないようにいたさなければなりません点は十分考えて、目下着々準備をいたしておりますが、他面、何と申しましても御承知の通り、経済界自身がちょっとしたことに非常に先を争うて、たとえば株式を見ましても、非常に暴落すると思うと、またすぐに暴騰してくるというようなことで、経済界の状態が非常に不安定でございます。で、これらの点が、設備投資にいたしましても、この投資を先を争うて皆一時にやるというようなことになりましたために、思わざる輸入の増大、もしくは原材料の輸入の手持ちというようなことになりましたので、これが、すべてが円滑に順序よくいけば、こういう事態にならなかっただろうと思うのでございますが、そういうことのために、こういう事態を引き起しましたので、なるべく長期にわたっての景気の動向等につきましては、今後十分、政府も民間の協力を得て調査をいたします。そして、こういう事態のないようにしていきたいということも、実は深く準備はいたしておるわけであります。

栗山良夫日本社会党

○栗山良夫君 総理に伺う前に、ちょっと一言。大体今までの発言とだいぶ違いまして、見通しの間違っていた点もお認めいただいたのでありますが、私は、総理に締めくくりをしていただく前に一言だけ申し上げます。  それは、この報告書の中でも、世界各国は、一九五五年以来、こういった投資ブームの危険に悩み始めたと、しかしながら、あらゆる努力をして、事前措置を講じて、急激な変化をしないで事態の収拾をしたということが書いてあります。それから、その次には、「つぎつぎに現われた注意信号」というところに、「三〇年の輸出景気から三一年の投資景気への転換は景気循環論の定石どおりの諸現象を経済諸部面に現出させた。」と書いてあります。これは、碁ではありませんが、定石通り打ってきたものに対して、応戦ができないはずはないのであります。定石をはずれて打つから、しろうとのわれわれはつい負けてしまう。定石通りに打っていれば、少しぐらい覚えておって、これに応戦できるのでありますが、定石通りに簡単に出ておるにもかかわらず、注意信号が出たにもかかわらず、手を打たなかったということは、政府の失態であります。しかもこれについて、前国会におきましては、わが党はしばしばあらゆる機会において、この点について政府に指摘したのであります。ところが、当時の宇田国務大臣のぐときは、神武景気を謳歌することにのみ専念されたのであります。大蔵大臣もそうでありましたが、一向に当時のわれわれの言葉に耳をかさなかったのであります。これは、石橋内閣を承継されました岸内閣の一大責任であると、私は極言してはばからないのであります。この点につきまして、先ほど、政治責任の回復は、政治に一つの間違いがあったときは、謙虚な気持で反省をいたしまして、国民の前に当るべきであるということを私は申し上げた。そして、それはその通りであるという答弁をいただきましたが、この問題につきましても、今まで衆参両院を通じまして、どうも経済政策の転換については、はっきりした政府の所信が出ておりませんので、明確に一つお述べを願いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 経済界のことは、私ここで申し上げるまでもなく、いろいろ景気観測なり、あるいは情勢の判断を各方面からしなけりゃならぬことは言うを待ちません。しかし経済が、いわば生き物と申しますか、であって、必ずしもいろいろなデータからは、推論された通りに常に動いておるということも言えないのであります。要は、できるだけ激変を来たさないように、安定した基礎の上に、ことに日本の場合におきましては、常に絶えずこれを拡大し発展せしめていくということを、われわれは念願をしていかなけりゃならぬと思います。過去におきましても、いろいろなあるいは国際的な景気の上から、あるいは国内的な特殊の事情から、経済界には波のありますことは、これは言うを待たないのであります。できるだけその間に立って、長い見通しを正確に立ててゆくというために必要ないろろいろな制度を考えることは、これはもちろん考えてゆくべきです。この一両年の間に、そういういろいろな景気の観測なり、あるいは経済界の動向等についての正確なる判断をするに必要な資料なり、あるいはそういう事実を把握することが十分であったかというと、今度のことにおきまして、私は相当に政府としても、将来の問題を考えまして、そういう点において足らざるものを、将来のために考えてゆくということの必要をも、十分私は考えているわけであります。また同時に、この経済界のことは、私ども政府が大いに努力すべきことはもちろん、また、施策すべきことについては政府が考えていかなければなりませんが、日本の、われわれがとっている自由経済の立場から申しますというと、民間のいろいろな諸機構というものも、これに対して協力が十分できるということを頭に置かなければならない。あるいは金融の組織であるとか運営であるとか、あるいはまた、外貨の使用に関する制度の問題であるとか、こういうことが、いわゆる自由経済における自然的な調節力、自動調節力として、従来理論的にはいわれておりますけれども、しかし、それには相当な時日を要する問題であり、事態に対処して十分な効果を上げるというためには、これらの制度の機能を相当に改善する必要があるということも、私ども今回の事態におきましては、十分反省をしなければならぬと思います。ただ幸いに、この日本の経済、産業の実態といいますか、基礎自体が、非常に不健全な状態である、あるいは非常に破綻的な傾向を持っているとかいうふうなことでは今回の場合はございませんので、十分に、私自身として反省すべきものは反省すると同時に、また経済界各方面とも十分に協力をして、将来は安定した基礎の上に、この継続的な拡大というものの基礎を作ってゆきますに必要な、いろいろなことを考える上において十分に今回の事態そのものについて、政府として反省して、対処してゆきたい、かように考えます。

奥むめお緑風会

○奥むめお君 時間がございませんから、私は中小企業団体法につきまして、総理大臣と通商産業大臣に質問を若干したいと思うのであります。しかし中小企業庁長官にはぜひ聞いてもらいたい。また経済企画庁長官も、非常に国民生活に関係が深いのですから、ぜひ聞いていただきたいと思うのでございます。  で、零細な国民の貯蓄、郵便貯金の六三%も含んでいるこの資金運用部資金が、この年末の臨時国会によりまして、中小企業の救済に役立つということは、これは非常にうれしいことでございます。で、しかし、中小企業は、日本の人口過剰のプールという役目をしている宿命的な悲しい存在でございますので、本来ならば、もっと根本的な対策が立てられなければならないのであります。それがまた今度、政府の見通しが誤まられたばかりに、急に強行された金融引き締めの政策のしわ寄せを受けまして、さらに新たな苦悩に押しつぶされている。こういう状態でありますから、私どもは、もっと熱意をもって中小企業のために、この政策を具体化して、どんどん救済の道を、またこれがほんとうに安定する道をとってもらわなければならぬとお願いしたいと思うのです。しかしながら、この商業者、工業者といいましても、自分が売る物、あるいは売るべき物を作りますものは、一つないし二つか三つの品にすぎません。あと生活必需品は全部買わなきゃならない立場でございますから、物価が上るということは、中小企業者にとっても一般消費者の立場で非常につらいことでございます。減税も非常にうれしかった。また、金利を上げて下さることもいい、金融の道をつけてくれることもうれしいけれども、それよりも、金を出さねばならぬ方の税金が高いことや、物価の高いことを一番おそれているのでございます。この点で、中小企業団体法が物価値上げになる。ならないと政府は言いますけれども、なると見るよりほかにない。また、この点の国民生活の実態に理解を欠いているのが、中小企業団体法の一番中心問題だと私は考えるのでございます。つきましては、岸総理は、前々から今度の臨時国会で中小企業団体法はどうしても通すのだと、なかなか熱心で、陰の促進役もなかなか熱意のあるやり方をしていらっしゃると聞いているのでございますが、この法律は、非常に読めば読むほど疑義の点が多い。また解釈をなさる答弁を聞いていましてもあいまいで、どっちにでもとれることもある。人によって食い違うことがある。これはまだまだ明らかにしなければ、このままで実施されましたならば、大へんなことになるぞとおそれるのでありますが、なぜこのままで通そうとしていらっしゃるのか、また、私はその御意見を、お気持を聞きたい。そんなに急いでなぜ通きければならぬか。また、この二院制度で、参議院というものの審議権が厳として存しておりますにもかかわらず、とにかく、わずかに十日ぐらいしか、動かないこの臨時国会で、これをこのまま、衆議院は通ったのだから、原案修正でやりたいのだ、ぜひ通すのだと、こういうことは、何としても私は間違っていると思いますが、首相の御見解を伺いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 中小企業の問題につきましては、御承知の通り中小企業と申しましても、いろいろ複雑多岐でございまして、従いまして、対策といたしましても、いろいろ考えなければならぬ問題がたくさんあると思う。しかし、私自身過去の経験から申しまして、日本の中小企業問題というものを、あるいは工業者の面、あるいは商業者の面、失業者の面等につきまして、自分もこれに関係をいたしております。実態につきましても、いささか自分としても従来研究もいたして参っております。これの通幣として一つ考えなければならぬことは、業者の間におけるところの過当競争のために、業界全体が不安定である。従って金融の問題を一つ考えましても、業界が安定し、将来の見通しが十分つくというふうなことであれば、かりに担保力が十分でなくとも金融の道を考える余地も出ますけれども、しかし、業界自身が非常に不安定で、あすの状態がどうなるかわからぬという事態でありますというと、いかに国家がこれに金融をしようとしましても、なかなか最後のところまでいかない。やはり一番大事なことは、一つ業界を安定せしめて、その上に各種の施策を講ずることが、一番有効適切であるということをかねて考えておりました。また、その後におけるいろいろな事態、中小企業の研究におきましても、同じような結論になりますし、また業界自体におきましても、そのことを感じまして、この過当競争というものをなくして安定せしめるにはどうしたらいいかということを考えてみますると、やはりそれは業者の一つの団体を作って、その団体によって、業者の自治的な力によってまず業界を安定せしめるという努力をし、これに対して足らざるものを国家から、国から援助するというような方式が最も望ましい、こう私としては結論をつけておるわけであります。  団体法につきましていろいろな御議論もある。またいろいろな御懸念もこの問題に関してあるようであります。私はもちろん、参議院において十分に御審議をいただくことは、これは二院制度の性質からいって当然のことでございます。すでに休会中におきましても、数回商工委員会においては御調査があり、あるいは御研究を願っております。また私自身も、この問題に関して商工委員会にもできるだけ御要求があったならばこれに出かけていって政府の所信も明らかにいたしてその御審議を進めることに御協力申し上げておるわけであります。十分に御検討を願うことは当然でありますが、しかし、先ほど申しましたような根本に立って、この法制そのものが一日も早く実現されて、そうして業界が、そういう自治的な協力により過当の競争というものが調整されまして業界が安定する。中小企業の業界に対する金融が、その他の措置と相並んで、この業界が育成していくということが、日本としては非常に望ましい、かように考えて、本案の成立を強く要望しておる次第であります。

奥むめお緑風会

○奥むめお君 違憲論に対しましても、公共の福祉のためと、常に答弁されておるのでありますが、国民経済におきまして、公共の福祉というのは、ほかならぬ消費者全体の利益を守るということに私はなければならぬと思っております。今、この法律によって非常に社会が憂えておりますことはこの点でございます。一方的に特定組合の成立を急いでいられる。その影響するところも国民生活の全般に及ぶ。これは非常に重大な問題だと思うのです。ことに中小企業庁長官がさきの商工委員会で、まだそういう営業関係の実態に詳しい役人が中央にも地方庁にも少いということを言っていられます。また、来年の一月から十六万枚ですか、十六万枚の調査用紙を全国へ配って、今度は中小企業の性格を調べるのだ。それはいつごろまとまるかと聞けば、一年ぐらいはかかる、こう言っていられる。そうしますというと、中小企業の実態も十分調べる資料もなしに、またそれを扱う人も不足のままで、こういう法律を実現させようとしていらっしゃる。せめてこれがまとまって、実態がつかまれるまで一生懸命啓蒙に努力して周知徹底さして、そうして人も養成する。こういうふうにできないものでしょうか、いかがでしょうか。

前尾繁三郎自由民主党通商産業大臣

○国務大臣(前尾繁三郎君) 確かにいろいろ中小企業に関しまして、従来統計が不備でありますことは、これはわれわれも承知いたしておりまして、現在やっております。しかし御承知のように、この団体法の考え方であります調整事業につきましては、すでに中小企業安定法という法律でやって参りました。そうして、いわゆるその効果が必ずしも十分でない。また各般の事業につきましても、こういう法律が必要だということを認識していたしまして、そうして従来の実験に徴して事業の範囲を広げ、またいろいろ制度も改正しておるのであります。全くの未経験のものではないのであります。また、その必要性が強く叫ばれておる。その点は、この際にわれわれといたしまして、中小企業の安定のために、できるだけ早く成立させるというのが本来のゆえんだというふうに存じております。

奥むめお緑風会

○奥むめお君 総理に。消費者大衆の利益は、それじゃどうして守られるか、こういう中小企業団体法を通して、国民生活にいろいろな影響を及ぼす。これには、やはり一方にはその対応策というものがなければならぬと思うのですが、いかがでございましょうか。  少し説明申し上げすと、商工組合が総会でいろいろなことを、調整の規定をきめます。これを受ける方のものは、それについて不服の申し立てばできるけれども、それを申し立てして、あとどうなるかということもわからない。また、それがどういうことをきめられたかということは、行われて初めてびっくりする。また、それを非常に困るといって申し出る有効な門も開かれていないままになっている。それから物価が上げられる。そういうときに、そんなに物価を上げなくてもいいのだというような場合も、こういう事情があるじゃないかということも言いいたいことがずいぶんあると思うのですけれども、そういう点で、消費者を守るという党で一つお伺いしたいと黒います。

前尾繁三郎自由民主党通商産業大臣

○国務大臣(前尾繁三郎君) 価格の制限につきましては、これも非常にむずかしい条件でやり得るのでありまして、ほかのあらゆる調整事業をやりまして、そしてどうしても効果が上らぬという場合に、初めてこれを発動するのであります。また、この法律全体の建前といたしまして、いかなる場合にも、一般消費者に不当な不利益を与えぬという建前になっておりまして、認可をいたしますにつきましても、一般消費者に迷惑をかけないようにということが条件であります。従って、価格の制限をいたしますのも、永久にという長い期間ではなしに、その不況を、ほんとうに半数以上もう倒産に瀕しておるというその期間だけ臨時的にやろうということでありまして、これは多少その短期間におきましては、また、ある特定のものにつきましては、しかも不当に値下りしておるものを安定した線まで持ってこようということでありますので、これは一般の物価が上るというようなことには相ならぬのであります。また、消費者の面につきましては、加入命令等のときにつきましては、公聴会等をやりますが、それ以外の場合におきましても、常に安定審議会にいろいろ諮問いたしまするし、また、その場合におきまして、消費者のいろいろ意見も徴しまして主務大臣が認可する、こういうふうに考えております。

奥むめお緑風会

○奥むめお君 環境衛生法制定当時にも、実は必要やむを得ないときに、環境衛生を守るために料金が上ることがある、今度また同じようなことをおっしゃっていらっしゃる。先ほど厚生省から、環境衛生法によって物価の動きがどうなったかということを資料で出していらっしゃいますが、これはほんの数県にすぎないのであって、東京だけ見ましても、実態がこの数字と違います。現にそばなんかは五円上っておる。上っているのに、これは上っていないようになっている。私ども消費者団体が、全国に向って往復はがきで調べましたものが、今どんどんきつつありますが、これのまとまったものと、厚生省のあれと数字を調べてみると、非常な開きがあるのでございます。今度中小企業団体法は必ず環境衛生法と同じように物価の値上げの方が先になる。環境衛生法ができる前から、できてからも、また法規による組合ができもせぬうちから、審議会も発動せぬうちから、実績を作るためにすでに値を上げつつある、これが日本の業界の実情であります。私どもはそれをおそれるのでございます。こういう意味におきまして、私は通商産業大臣に、じゃ、適正価格というのは何だ、上げる上げないというよりも、適正価格というものをはっきりつかんでいてもらわないと非常に困ると思うのです。安いほどいいというわけのものじゃない。お互いに助かって、お互いに生きていかなければならぬのが、われわれの国民生活でありますから、それじゃどうするか。こういう意味で、時間もないから詳しい数字は申し上げられませんけれども、現実確かに物価は上りつつある。それから上げられるのだというて組合員を勧誘しつつある。今の現状は、新規の店はもうこの法律ができればできなくなるのだから、競争はできなくなりますよ、料金も上げられますよ、税金も負けてもらえるのですよ、金融もつけてくれるのですよ、まるで手放しで、打ち出の小づちが出てくるように、今の社会では勧誘最中でございます。こういう無責任な形で進められる。私どもは、その点について適正な価格の問題を伺うのでありますが、たとえば、零細な企業者を助けるために、先ほども問題になりましたが、低賃金、中小企業の低賃金を人並みのところべ上げてから出されるのが、価格をきめられるのか、あるいは不況だ不況だといいますけれども、大きな業界にまとめて官用品なんかは注文されている。これを末端の零細な中小企業者に分けて下されば、それだけでも、物価を上げるよりも、注文がふえる方がどんなに喜ぶか知れないものを、リベートがあるのか、あるいは多くまとめた方が便利なのか、注文は大きな会社にどっと役所の方は出してしまう、こういうことも非常に私は不可解だと思います。また、あるいは牛を飼って乳をしぼる、豚を養う、畜産奨励幾らしましても、流通過程の不合理というものは、今は、数えたら切りがないほどあるのですが、適正価格をきめる場合に、生産者はこれだけ、中間業者はこれだけ、小売業者はこれだけと、おのおのの取り分、つまり利益分をはっきり示して下さるのかどうか、これも伺いたい。で、私は、そのお答えによってまた申し上げたいと思います。

前尾繁三郎自由民主党通商産業大臣

○国務大臣(前尾繁三郎君) 適正価格の問題につきましては、御承知のように、従来から中小企業安定法でいろいろやっております。従来の価格の推移、あるいはコストがどういうふうになっているか、それに適正利潤を加えて、中小企業が最低限度安定していくというふうな価格にしていかなければならぬわけでありまして、これは、まあもちろん業種によって異なります。また、先ほどのお話のように、中小企業の労賃の問題があります。しかし私は、中小企業自体が安定する方途を講じてからでないと、最低賃金をまたきめていくというわけにもいかぬ。むしろ中小企業の企業者の経営の安定ということからやっていかなければなりません。そして、いろいろ世評で、ただいまお話しのようなことが伝えられているとすれば、これは遺憾なことでありまして、この団体法自身は、よくごらん願いますと、何も長期にわたって、不況でない場合にも、いろいろ利潤を引き上げるのだというような法律の建前ではありません。その点は誤解のないように、われわれも指導して参りたいと、かように考えております。

奥むめお緑風会

○奥むめお君 私は、価格の算定というところで、はっきりそろばんのはじき方に非常に不安を持つのです。それは、例をふろ代にとってみます。ふろ代は、厚生省がこの間十七円を最高価格としてお出しになりましたが、その資料の説明会で聞いたところによりますと、二十七年に現行ふろ代の十五円をきめてから今日までに、物価が一八%上っているから、当時の必要経費十一円十七銭に一一八%を掛けて十三円十三銭を出し、利益分二割五分の四円二十五銭を加えて十七円三十八銭。だから、改訂後の最高料金は、年間を通じて十七円、というのでありました。では、収入の面はどうかというと、これの算出には、東京都を例にとって、ふろ屋を利用する全世帯が、年間に幾回入るかを家計調査から引いて数字を出し、これをふろ屋の数で割っています。一浴場当りの一日の入浴者数は六百二十五人だといいます。使用水量から割り出した私たちの科学的算出によると八百四十五人になります。従って収入も大へんな違いで、一日に四千円余りの狂いが出てきて、厚生省は実に甘いと言わざるを得ませんが、世は日進月歩の企業努力の時代でございます。私は総理にも、値を上げるよりも、企業努力を奨励する、これを援助する、この方が大事だと思います。現に東京のふろ屋では、十二円、十三円で頑張っているふろ屋が数軒ございます。これはどこのふろ屋にもついている温水器と、そして水道メーターの二つを備えておりますが、この温水器を活用しまして、そうして上手に使い、きれいに掃除を一日二、三回は必ずする、これによって、一人当り二円から三円のふろ銭を安くしても十分もうかる。これはふろ屋が、あんな法律で政府が、十七円までいいんだというよりも、この温水器の使い方を奨励して、温水器をうまく使って、燃料を節約上ている人には税金でも負けてくれる方がよっぽどいいですよと、業者みずからも言っている。私は、燃料の非常に枯渇しているといわれている日本の場合に、特にこういう企業努力を一方で少しも指導しない、その研究をしない、それでいて、業者からあおられれば、いたずらにかけ出して値を上げる。これはあらゆる産業の場合に言える実例を私はたくさん持っているのであります。この点につきまして一つ伺いたい、

前尾繁三郎自由民主党通商産業大臣

○国務大臣(前尾繁三郎君) 環境衛生法の問題は所管でございませんので、私から申し上げる資料がないのでございますが、この団体法の建前は、あらゆる他の方法をとりまして、そうしてなおかつ、どうしても不況で半数以上も倒れる心配があるという場合に限って、初めて価格の制限ということができるのであります。従いまして、私は、むしろ合理的な競争というものは促進すべきだ、ただいまお話のような点は十分やって、なおかつできないという場合に、初めてこれが発動され、安定し、そうして合理的な競争に持っていく。そうしてあくまで、不況を打開すれば、これは取消しになるのであります。ただいま、御心配のないようにわわれれは考えております。

奥むめお緑風会

○奥むめお君 最後に総理に伺いたいのでありますが、日本で消費者の代弁機関というものがもしあるとしたら、たった一つ、厚生省に監督権が持たれている生活協同組合でございましょうか、この生活協同組合は、私どもは、監督規定ばかりやかましくて、これを助長なり指導するための予算というものは、ほとんどないのにひとしい。しかし、これは、目ざめたる消費者が、もうやむを得ず、とにかく生活を安定するためには、賃金が上っても、実質賃金拡充のためにはまだまだ足りないのだからというので一生懸命やっている。この消費者組織としての生活協同組合を育成、あるいはそのために予算をとって、そして仕入れもしやすいように、あるいは教育活動もしやすいようにというふうなことは、ヨーロッパ各国を見て参りましても、これは独占企業に対応するものとして、非常にこのために便宜をはかっている。日本はまるでそのあべこべである。私はこの点で次の国会に、生活協同組合を規制するために小売商業特別措置法を作ったり、あるいは独占法を改悪するということを聞いているのでありますが、生活協同組合に対する首相のお考え、それから、この二つの法案は、生活協同組合を規制し、動きがとれないようにするものであるのかどうかという心配に対して御答弁を願いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 生活協同組合の健全な発達については、政府としてももちろん、これを助長することを努めていかなければならぬと思います。独禁法の改正の問題につきましては、今、審議会を作りまして、各方面の権威者を集めて、独禁法の検討をいたしております。私は、初めから改正ということを前提としておるわけではもちろんございません。十年間のこの実績と、また日本経済のその後におけるところのいろいろな事態をあわせて検討しまして、この独禁法の全体を検討しているのが、その審議会の使命でございます。いかなる場合におきましても、もちろん消費者の立場というもの、つまりこれを擁護していくことは、これは国民の大多数というもの、大多数というか、あるいは全部といっていいものでしょう、一面においては皆消費者なんですから。この消費生活を合理化し安定することは必要だと言えます。  小売商の安定のための法制の問題につきましては、実は中小企業団体法でもそうでありますが、要するに、大企業といわれ、また中小企業といわれ、それも生産者と販売業者、配給業者との関係、さらにこれを消費する消費者との関係を、どういうふうに公正な形に置くかということは、これは大きな経済上の一つの課題であろうと思います。消費者というものは非常に数が多いにかかわらず、従来組織がないために、その消費者の声というものが消費者の立場というものが十分に伸張できなかったという情勢も日本においては私はあると思います。が、同時に、この問題は、そういう消費者の健全な組織とか、あるいはそういう団体というものが健全に伸びていくということは望ましいわけでありますが、同時に一般世論というものも、これはどちらかといえば、消費者の立場から世論が作られることは、消費者というものが国民の、そういう組織がなくとも、全部が消費者の立場でありますから、その声が世論の形において出てくる。それを政府としては、あるいは公聴会であるとか、あるいはいろいろな委員会の組織等におきまして十分に取り入れていくというようにして、これらの間の利害を調整するということを努めていかなければならぬ、かように思っております。決して二法案の改正なり制定というものが、消費者自身の利益を害するというような意味において、これが改正なりあるいは制定されていくというものではないと、かように考えております。

奥むめお緑風会

○奥むめお君 ちょっと一つ。独禁法の改正審議会に消費者代表は一人も入っていない。今度団体法ができましても、そういうふうなことになりますと、非常に発言の機会がはばまれますので、この点十分お考えをいただきたと思います。   —————————————

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) ただいま、市川房枝君が委員を辞任されて、その補欠として八木幸吉君が選任されましたので御報告申し上げます。   —————————————

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) 質疑を続行いたします。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 まず、総理に中小企業問題について三点伺います。  第一は、中小企業者の要望は、金融ワクの拡大、法人税、事業税の軽減等、多岐にわたっておりますが、余裕財源一千億円以上といわれる来年度にこれら減税を断行されまするか。  第二、第二十六国会で印紙税改正の基礎になった大蔵省の調査では、二百万円以上一千万円以下の会社は九倍六分、二百万円以下の会社は五倍の増税となっており、政府の中小企業育成強化の旗じるしに矛盾しておりますが、来国会でこれを是正されますか。  第三、中小企業団体法は、官僚統制、憲法違反の疑い、組合ボス、零細企業との関係、消費者利益の侵害等、幾多の問題をはらみ、しかも、これは中小企業育成の手段であって、目的ではございません。にもかかわらず、通常国会を間近に控えて、中間報告や会期延長等の無理をしてまで本案の成立を強行するお考えであるかどうか。以上三点であります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 中小企業に対する税金の軽減の問題に関しては、先ほどお答え申し上げましたように、来年度の予算編成の場合において、財政余裕金をどういうふうに用いることが国家的に、また日本の経済の将来の見通しのために最も適当であるかという点を、あらゆる点から検計いたしまして決定をいたしたいと考えております。  中小企業団体法の問題につきましては、御承知の通り、先国会におきまして衆議院を通過いたしまして、そして参議院の審議に回付され、前国会におきましても相当の論議が、検討がされまして、継続審議になっておるわけでありますが、その後、休会中におきましても、各委員の非常な御勉強によりまして、これが審議、検討を続けてきておられます。また、本臨時国会におきましても、今期の臨時国会は、いろいろな意味において、中小企業対策に対する臨時国会とすら一部においては言われておるほど、中小企業の問題が重要な問題として取り上げられて、それは、御審議を願っております財政輪措置の問題とあわせて、中小企業団体法の問題であると思います。そういう意味におきまして、商工委員会におきましても連日非常な審議がなされております。私も時間の許します限り出席して御答弁申し上げ、その審議の促進に対して協力いたしておるようなわけであります。従いまして、もちろん私は、この法案は非常な重大な法案でございますから、各方面におきまして十分な検討、審議が加えられるべきであると思います。しかし、その審議がどういうふうになり、これをどういうふうに扱うかということにつきましては、十分参議院の国会対策なり、あるいは議運なり、あらゆる面において検討されまして、この法案の最後の取扱いはきめていただくようにすることが適当であろう、こう考えております。私としては、従来の何から見まして、一日も早くこれが成立することを望んでおる。しかし国会の審議の何につきましては、これは国会審議のそれぞれの機関において取り扱いをきめていただく、かように考えております。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 会期延長をしても成立を望まれますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 会期延長するかいなか、あるいはこれをどういうふうに扱っていくかということは、私は今申し上げる通り、政府ではなしに、結局、国会の問題として、参議院において決定をしていただきたい、こういうわけであります。私としては、何とかして成立を強く要望しておる、希望しておる、こういうことでございます。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 ICBMの出現で自衛隊は要らないのではないかという議論が出ております。ところが、核兵器で装備しなくても、自衛隊はやはり必要だという理由を承わりたいと思います。原爆も困るが、無防備も不安だというのが、国民の偽わらない気持であると思いますので、国際軍事情勢分析をもととした納得のいく率直な御見解を承わりたと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は、核兵器の問題に関しましては、強くこれが持ち込みや、あるいはこれによって装備することを拒否いたす考えを申し述べております。一部におきましては、そういうようなことは無力じゃないか、そんな自衛隊というものは意味をなさないじゃないかというお説もあります。また、最近の大陸間の誘導弾等の発達によって、日本の自衛隊というものは意味をなさないのじゃないかという御議論もあることは、よく承知いたしておりますが、しかし私は、現在の世界の国際情勢を観察いたしますというと、やはりいかなる場合においても日本が他から侵略されない、われわれは不当な侵略を受けないという安心感を国民に与えていくということは、政治の要諦であると思います。そのためには、ただ単に自衛隊を持つということだけじゃなしに、外交の政策の問題もありましょう。あらゆる問題、国際協力の問題もありますし、国連におけるところの世界、平和に関するいろいろな努力ということも、もちろん必要でありますが、しかし同時に、日本自体において、われわれは、他から不当な侵略を受けたような場合においては、われわれの力でもってこれを排除して、そして国及び民族の安全をはかっていくという、この信頼に立つためには、やはりみずからの手において祖国を防衛するところの体制と、その実力を持つ必要があると思います。そこにおいて、今日におきましても、いろいろな兵器は発達しておりますけれども、これに対する科学的のいろいろの研究も開発していかなければならぬことは、また研究をしていくことも、自衛隊におきましても当然しなければならぬことでありますが、同時に国際の何が、そういう発展があるにかかわらず、普通兵器によるところの防衛力というものを、決して各国自身がこれを捨てて、全部がそういうものに変っていることでない実態もよく国民として頭に置かなければならぬと思います。私は、そういう意味において、普通兵器によるところのこの自衛隊の防衛力というものも、できるだけ科学の発達なり、あるいは進歩なりというものにおくれないだけの研究も続けていく。そういうふうな質的な改善を加えることは当然でありますけれども、核兵器なり、あるいはそういう最近の大量殺戮の兵器を持たずしても、祖国が安全であり、他から侵略されないという国民的自信を持つための防衛力というものは持っていく、かように考えております。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 今のは、防衛の国際分業の御議論のように思うのですが、自衛隊で防ぎ切れない侵略があった場合には米軍の援助を求める、こういうことになっておりますが、そういうときに、アメリカが戦術核兵器を使うと考えなければなりません。そうすると、日本が核兵器を持っても持たなくても結果は同じである。こう私は思うのですが、いかがでしょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は、もしも日本が日本の自衛隊や、あるいは日本自身が持っている自衛力及びこれに協力すべき日米安保条約のアメリカの軍隊によって、日本がもしも安全が守れないというほどの強力なる侵略が行われるということは、同時にこれは世界的な非常な動乱の事態であろうと思います。従ってそういう場合においては、ただ単に一国や二国でもって私はこれが防衛できるということじゃなしに、やはりこれに対するほんとうの安全保障の道というものは、遺憾ながら現在において、世界的にこれで大丈夫なんだということはまだないと思うのです。それはほんとうに国際連合というものが集団して、あらゆる勢力というものが協力して、そういう一国なり、ある国が他の国に対してそういう不当な力を用いた場合においては、国際的のほんとうの協力ができておって、それを実力をもって押え得るという組織なり、信頼すべき実態ができておるならば相当な安心ができますけれども、現在のところにおいてはそれがないという事態から申しますと、それは非常な危険が包蔵されていると思います。従ってわれわれは、そういうことがないようにする努力をするとともに、国際連合におけるそういう有力な組織を作り上げていくことに、日本としても今後さらに一段と努力をすべきものである。そういうことをなくするため、軍縮の問題に関して、やはり安保理事会の理事国の一つとして、今後われわれの使命の非常に大きなものが加わっている。あらゆる面から努力をしていかなければならぬ、かように思っております。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 昨年アメリカに申し込んだ六種の誘導弾の供与は、秘密保護の関係でそのままになっておりますが、ダレスの論文でも、アイクの演説でも、情勢は非常に変化しておると見ねばなりません。そこで、あらためてこの際、その供与を申し込む積極的のお考えはありますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 防衛庁の方におきまして、また、今私がお答え申し上げましたように、科学の発達に対しては、日本としてできるだけ研究もし、また研究の開発に努力をしなければならぬということを申しておりまして、その意味において、現在日本になくて、研究の対象となる兵器等につきまして、アメリカに貸与を申し入れていることも防衛庁としてはあると思います。具体的のことは私承知いたしておりませんけれども、しかしこれは言うまでもなく、一面においては、核兵器は持ち込まないけれども、原子兵器ではなくして、他の誘導兵器等についてはそういう貸与の問題が起ってくると思います。これはあくまでも日本においてそういう研究を進め、また研究を開発していくという頭に立っておるわけであります。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 自衛隊の質的強化といえば、その最たるものは誘導弾であると思います。ところが現在エリコンはスイスから来ることになっておりますが、アメリカの現物をもらった方が経済的であり、効果的であると思うのですが、いかがでしょう。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 技術的の専門的なことになりますと、私よく承知いたしておりませんが、この誘導弾の問題につきましては、アメリカも非常に進んでおることは言うを待ちませんが、スイスにおきましても相当な技術的な研究が行われており、また進んでおると聞いておりますが、その辺のことは、十分技術的に専門的に検討した上において最も有効なる方法をとりたいと、かように思っております。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 最後に三点ばかり取りまとめて伺いますから、御返事いただきたい。  第一は、原爆禁止の問題でありますが、米ソが核兵器で激しく戦っている現在、わが国としては、あくまでも原爆禁止に進まなければならぬと思います。ところが、国際世論を動かすためには、どうしても十分な科学的資料が必要でありますが、現在、政府の放射能の調査実施の来年度の概算要求は七千万円であります。ところが、これも主としてカウント測定分析の費用でありまして、このほかに文部省の研究費が三千万円、厚生省に至ってはわずかに三十五万円であります。放射能の検出よりも、人体への影響の正確な資料がなければ、ほとんど無価値にひとしいということは、国連に出席されました田島、檜山両博士のお話でありますが、わが国としては、国連にすでに科学委員会の拡大強化も主張しておりますし、また最近では太平洋学術会議も開かれようとする今日に、これではあまりに予算及び規模が少いと思いますので、総理は、機構、人員を整備して、予算を増額をして、人体及び遺伝べの影響の基礎的な系統的な、かつ組織的な研究を強く推進されるべきであると思いますが、どうであるか、これが第一点。  第二点は、赤十字国際会議のことでありますが、第十九赤十字国際会議は「原子戦下の市民保護」と「帰国自由」との、日本として最も望ましい二つの決議案が採択されております。ところが、この重要な国際会議に各国の政府代表が出席しておるのに、表決権のあるわが国だけが政府代表を送らずに、単にオブザーバーを出しておるということは、これはどういう理由か、全然私は納得がいかないのであります。かような会議には、原爆の問題、あるいは抑留者の問題、こういったような最もわが国に切実なことが議題になり、決議案になっておるのに、八十数カ国に及ぶ参加国間のうちで日本だけが、表決権があるのに、一体政府はなぜオブザーバーだけで、代表をお出しにならぬのか。これはどうも外交としては消極的で、こんな機会をなぜおとらえにならないのか、これが第二点であります。  最後の一点は、ビルマの医療視察団の招聘に関してでありますが、これは東南アジア各国と医療を通じて親善友好関係を結ぶということで、これは非常にけっこうな私は政府のお考えであると思いますが、その具体的の構想と、それから医学の留学生もお呼びになるかどうか。それからこっちに来ておる留学生の健康診断、保健衛生の問題について、政府は特に配慮をされておるかどうか。民間でこの方面を熱心に研究しておるものもあるのでありますが、大体の構想だけを総理に伺いまして、詳細な構想は、この予算委員会の機会のあるときに、厚生大臣御出席のときにお答えいただくということをお願いしておきます。  以上、三点について御答弁をいただきまして、私の質問を終ります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  第一は、原爆の実験禁止を主張するためには、その科学的根拠を示すような十分な資料を持つ必要があるのじゃないか、これに対する日本の研究機関の何については十分でないが、これを強化する意思はないかというお話でありますが、原爆の実験禁止に対して、これの実験をやっておる方では、人体に影響がないのだというような議論や、あるいはきれいな原爆というような議論が近ごろ出ておりまして、われわれは原爆の実験を、とにかく根本的に言えば、人道的な立場から、また国民感情に基いて、被爆を受けておる、被害を受けておる日本としは、これを強く主張をいたしておるのでありますが、さらにこれを有力ならしめるためには、この科学的な基礎資料を持つことは、最も有力なことであって、必要であると思います。特に原爆自体ではなく、一面から申しますと、原子力の平和的利用というものを促進することは、これは大いに必要であります。われわれは、破壊的ではなしに、これが平和的に利用されなければならぬということを強く言うておるわけでありますが、平和的の利用をいたしましても、それが人体に、それをいろいろ扱う上においてどういう影響を持つかということも、これまた重大なことであります。ことにそれが遺伝の上においてどういうふうな影響を持つかということも、これは非常に大事なことであると思う。一方、今の原水爆の実験をされた場合において、それが大気をどれだけ汚濁しておるかというそれの検出の問題も、これは研究しなければならぬと思いますが、それがひいて人体及び遺伝の上にどういうふうな影響を持つかということにつきましても、お説のように、われわれとしては十分に一つ研究をしなければならぬと思います。私かねて注意を受けておるのでありますが、参議院の石黒委員から、日本においては遺伝の関係を研究するのに蚕で研究するということが、非常に他の資料よりも、短かい期間でゼネレーションを重ねたものができるのだというお話を聞きまして、石黒委員の御協力も願って、実はその方の試験所等におきましてその研究をある程度進めております。こういうことを見まするというと、一番問題なのは、いろいろな機関がこういうことに関連を持っておるわけであります。それを統一するということは、これは必ずしも、ほかにも目的を持っているわけですから、なかなかできないのですが、この研究だけについて協力するということについては少し考えてみたいと思います。たとえば、蚕糸試験場自体は蚕の資料はたくさん持っているけれども、本来言うと、そういうことを研究すべき目的のものではないのだ。ところが、ほかのその方を研究する機関においては予算を持っているけれども、蚕を飼うという、そのためにやるということになると非常にダブったことになる。この場合に蚕糸試験場と協力できるようなことについても実は考えていく必要がある。できるだけそういうことで、こういう科学的な資料を得るように、今後といえども努力していきたいと思います。  それから、赤十字会議に日本が政府代表を出さなかったのはどういうわけかというお話であります。これはいろいろな見方があると思いますが、本来、赤十字会議そのものから申しますと、人道的といいますか、あるいは博愛的な見地から、政治的の立場を離れて、純粋の人道的なそういうような立場からこういうことをやられる会議、そにに対して政府としては直接介入するより、側面的にこれに協力して、赤十字活動を活発ならしめることの方が望ましいじやないかという考えのもとに、実は代表を出さず、オブザーバーを出したわけでございます。  それから最後に、ビルマの医療の問題でありますが、これは私、この前ビルマを訪問いたしましたときに、そういう話が現地において取りかわされ、自来、日本に持ち帰りまして、厚生省を中心に置いて、これが実現のためにいろいろと検討を加えてきておりまして、せんだって厚生大臣の話に聞きますというと、これが実現の緒についておるように聞いておりました。これは非常にけっこうなことだと思っております。なお、ビルマその他からの医学の学生がこちらにおいていろいろ勉強され、医学を修められるというようなことについて便宜を供与するというようなことにつきましても、できるだけ考えてゆきたいと、こう思っております。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 この原水爆の問題で、総合医学研究所と日本学術会議との間の連絡が不十分であるというので、学者の方では相当不平があるそうでありますから、その点は一つ国家的大問題でありますから、なるだけ学者の方の意見を取り入れるようにということの希望を申しておきます。  それから、赤十字の問題は、これ仕規約で各国の政府代表が議決権を持っておるのであります。でありますから、各国は政府代表を出しておるのに、人道上の会議でありましても、これほどいいチャンスはないのでありますから、私はやはり政府がこれに代表を当然出して、この国際会議で活躍をすべきであると、こう考えますので、今後のこともありまするから、今後はぜひこういうチャンスをおとらえ下さるようにということを重ねて要望をしておきまして、私の質問を終ります。

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) 午後は正二時に委員会を再会することにいたしまして、それまで暫時休憩をいたします。    午後一時十四分休憩    ————・————    午後二時十九分開会

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) これより委員会を再開いたします。  午前の八木委員の質疑中、印紙税に関して政府の答弁漏れと相なっておりますので、この際、これを許します。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) 現行の印紙税が、中小企業に負担が多過ぎや上ないかという御趣旨の質問でございますが、印紙税を増徴いたしました場合に、負担の均衡ということは十分考慮いたしていく考えでおるのでありますが、なおしかし、税の公平、均衡というようなことにつきまして、あるいはまた中小企業の特質にかんがみまして、なお検討を怠らないことにいたしたいと思います。

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) それでは質疑を続行いたします。  湯山君に申し上げますが、外務大臣に対する出席要求がございますが、外務大臣は病気で登院いたしておりませんので、代理として岸総理大臣から答弁をいたします。御了承を願います。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 私は文教政策についての岸総理のお考えになっておる考え方、そういうものを中心に、若干お尋ね申し上げたいと思います。  その前に、岸総理はアメリカからお帰りになるときに、文教、労働政策に重点を置くということを申しておられます。これは従来からも言っておられましたが、そのときにもそういうことをおっしゃっておられる。それから藤山外務大臣がダレス国務長官に会ったときに、沖縄の教育権の返還の問題でいろいろ話し合いをなさった、そのときに、ダレス長官から、日本の教育制度あるいは日本の教員組合の活動、そういうものについてはいろいろ問題があるようだ、でこれについて日本政府の決意が聞きたい、こういう話があったということを藤山外務大臣御自身が、自民党の外交部会、総務会の合同会議でお話しになっております。さらにそれと符合するように、十月の二十二日には松永文部大臣がアメリカのマッカアーサー大使にお会いになって、一時間余にわたって文教問題について話し合いをしておられる。こういう一連の事実と、それから昭和二十八年にMSAの予備交渉で池田特使が参りましてロバートソン国務次官補と話し合いをしたときに、その議事録が新聞に発表になりました。その中に、日本の青少年に愛国心を養成する教育をしなければならないということが双方の合意に達したというような内容のことも、その中に含まれておりまして、それは当委員会でもいろい問題になったことは、総理もあるいは御記憶でないかと存じます。こういう一連の動きを見てみますと、何かこの日本の教育に対して、アメリカが非常に関心を持っておるし、ある意味ではある種の要請を持っているのではないか、こういうことがいろいろ懸念されておる、あるいはまたうわさされております。そこでお尋ねいたしたいことは、総理がアメリカに行かれたときに、日本の教育について何か話し合いがなされたかどうか、それから外務大臣とダレス国務長官との話し合いの内容というものはどういうものであったか、また、文部大臣がマッカーサー大使とお会いになったときの話し合いの内容はどういうものであったか、それらを通じてアメリカが日本の教育について何らかの期待を持っておる要請を持っておるのかどうか、あるいは日本の教育について、アメリカがどういう観察をしておるか、そういう点について、総理及び外務大臣としてのお答えと、それから文部大臣のお答えを願いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私がアメリカに行きましたときに、私とダレス国務長官、あるいははアイゼンハワー大統領との間におきまして、別に日本の文教政策について何ら話し合いがあったわけではございません。また外務大臣が過般渡米いたしました際に、ダレス国務長官との間に、沖縄の教育権の返還の問題について話し合いをいたしました。その際、日本の要望はまだアメリカ側の納得するところに至らなかったのでありますが、さらにその問題について、教科書の内容等について、沖縄で日本の国情から見て適当でない教科書等について、これを改めるというようなことについても話をしたことに対しては、向う側においても十分調査をし、また日本側の方においても調査をされて、どういうふうに改正をするかというような、具体的な話を持ってこられたならば、その際にもう少し考慮してみようということであったということであります。さらに、これは正式の会談という意味ではなかったでしょう、私の聞いておるところによるというと、いろいろな問題が話されたときに、日本の教員組合のあり方等について話が出たことは、私も聞いておりますが、別にそれについてどうしろというような要望があったとかいうようには聞いておりません。それからなお、湯山委員の今のお話でいきますというと、何か一連のアメリカとの間に関係があるのではないか、アメリカにおいて日本の教育内容なりあるいは教育について、文教政策について、何らかの要望といいますかが出て、それに基いて私が文教政策の問題を考えておるというふうな、もしも多少でもお疑いがあるといかぬと思いますので、私ははっきり申し上げておきますが、私自身が内閣を組織するようになりましてから、私はずっと一貫して文教政策と労働政策の問題に重点を置いて考えたいということを申しておりますのは、労働政策は、言うまでもなく私どもが経済政策を行い、また国民の福祉を願う上において、これは保守党といえども積極的に大いに施策すべきことは施策しなければならぬし、行き過ぎがあるという点については、われわれの立場から是正し、健全な発達を考えるという意味において、私はもう少し保守党たるわが党において、積極的に労働政策について建設的な考えを持って進めていかなければいけないということを考えており、それから文教政策については、私は青少年諸君に非常に大きな期待を持ち、将来の民族の運命を担い、日本の国運をますます盛んにしていく重大な使命を持っておる青少年諸君の教育問題というものは、実に重大な問題であって、しかも私は決して占領下において日本の教育制度なり教育内容がきめられたから、これをただ形式論的に改めようというのではなくして、やはり将来の日本の民族の運命を考えてよほど教育内容につきましても、教育制度につきましても、あるいは教育組合のあり方につきましても、いろいろな点から私は検討を加え、りっぱな文教政策によって、将来の民族がますます健全に発展するように念願いたしておりまして、その意味において、特に文教政策には重きを置くということを申しておるわけであります。アメリカが労働問題につきましても、あるいは文教政策の問題につきましても、その他の問題についても、日本のことについては内政上のことについても私は相当な関心を持っているということは、これは事実だろうと思います。しかし、われわれはあくまでも自主独立の立場から、われわれの内政の問題は、これを決定し、われわれとして処理していかなければならぬことは言うを待ちませんが、そういうことについて、アメリカ側からの指示であるとか、あるいは要請に応じてどうするという問題では絶対にない、こう考えております。

松永東自由民主党文部大臣

○国務大臣(松永東君) 湯山委員の仰せになりました沖縄問題について、これはもうかねてから私ばかりじゃございません、国民の全部が何とかせめて教育権だけでも返還してもらいたいという気持に燃えておることだけは、申すまでもございません。そこで先般藤山外務大臣が先方に行かれるときに、特に私はお目にかかって、そのお願いをいたしましたところが、もちろんその問題についても談判するのだというようなお話でございました。なおお忘れになることもなかろうけれども、一つ確かめる意味で、書面に基いて私の方からお願いをいたしておきました。ところが帰ってこられてからのお話は、今総理がおっしゃられた通りであります。さらに先ほど御質問のうちにありました私がマッカーサー大使と会ったということでございますが、それは全くプライベートの面会でございます。私が何も代表者として会ったのでもなければ何でもございません。ただ何らかの機会に——機会があることに私はこの念願を達成したと存じております。ちょうどその折柄、私の友人が大使館に出入りいたしておりまして、マッカーサー大使ともしょっちゅう会っていると、その話のうちに道徳教育を松永文部大臣はやっておられるそうだが、その道徳教育については、自分も研究しておるし、ことにアメリカでも道徳教育の強化をわれわれは痛感しておる。ぜひ一つ会いたい、こういう話であったということでありました。ちょうどこれはまあ渡りに舟だと思いまして、それで実は東京会館で昼飯を食べながらお目にかかりました。そのときの話が、これはプライベートなことでございますから申し上げるまでもございませんが、しかし、道徳教育ということがアメリカでも非常にこれは強化せぬきやならぬということを申しておられました。そのときに、今の沖縄の教育権問題、何とか、大体これは全国民の要望であるが、一つお考えを顧いたいということを話しましたところが、まあそれはノーともイエスとも言いませんが、お含みおきを顧いたい、まあよろしい、含んでおきますというくらいな程度でございました。これはもうしかしプライベートな問題でございます。しかしながら、私はプライベートであろうと何であろうと、面会する機会があれば事ごとにわれわれの要望を訴え、耳に入れておく必要があると思いまして、右のようなことが行われたわけなんです。御了承顧います。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 沖縄の教育権の問題に総理も文部大臣もお触れになりましたが、沖縄を信託統治にしておくかどうかという問題については、いろいろ議論があると思います。しかし、このことは国連憲章の条文とは違った状態であるということは明瞭だと思います。それはそれとして、極東の安全保障と関係のない沖縄の教育権を向うはなぜ返さないのか。向うが返さないという理由に対して、わが方の主張は一体どうなのか、こういう点が今日まで一向明らかにされておりませんために、ただ、日本の方で返して下さいというお顧いだけで、向うが聞き入れなければ、そのままになるのじゃないかというような心配もありますから、向うの主張はどうなのか。こちらはそれに対してどう考え、どうやっておるのか、そういう点について重ねてお尋ね申し上げたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私アメリカに参りました当時、一番の私の主張は、今直ちに沖縄の状態を根本的に変えるということはむずかしいであろうと、すなわち、あの地をアメリカの一つの前進基地として使用するということについては、これは今すぐやめるということもできないかもしれぬが、しかしさればというて、施政権まで全部軍政でこれを施行するということは、沖縄の住民も納得しないし、日本国民も納得しない。この問題は、日本に施政権を返す、日本をして施政に当らせる。そして住民に完全な自治の立場から、いろいろ民主的な行政、司法、その他の三法が行われるようにしたいというのが日本の念顧であるということを、私は基礎に話したわけでありまして、一時にもしも返すことはあまりにも急激な現状の変更であるというなら、一部分ずつでも返していってそういうふうに返していくという方針を立てる意味において、まず一番に考えられるのは教育権の問題じゃないか。別にこれを日本に返したからといって、アメリカのあすこにおける条約上の権利を行使するということは差しつかえないのじお、ないか。また日米間の将来の関係を考えるというと、そういう方向に持っていくまず第一段として、教育権の問題を考えるということは、現地の人もそれを希望しておるし、日本国民も全体希望しておるのであるから、これくらいは実現したらどうかというふうな話を、私どもはしておるわけであります。これに対してアメリカとしては、とにかく共同声明にもありましたように、なかなかアメリカ側の主張は、まだわれわれの言う言い分に対して耳を傾けようとしておらないのでありまして、彼らの言っていることは、極東におけるところの緊張やあるいは脅威が現在ある、まああるかないかという問題になればこれは水かけ論になるわけですが、あると、その限りにおいては、これは現状を変えるということはわれわれは考えない、潜在主権の点については再確認するけれども、少しでも現状を変えるということは、たとえそれが教育権の問題にあっても、われわれは今の状態においてはこれはわれわれとしては考えないということでありまして、両方の言い分といいますかは、全然平行線的にこれを両方で繰り返しておるというのが現状であったのであります。しかし私どもは、さらに今文部大臣も申しておりますように、あらゆる機会に、いわゆる施政権を日本に返還するその第一段として、教育権の返還というこの目的を達成せしむるように、またアメリカ側に十分そういう事情を了解せしめ、これを実現するという意味におきまして、あらゆる機会にこれに努力するという考えでおります。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 次にお尋ねいたしたいことは、岸総理が青少年に対して愛国心を持て、それから民族の誇りを失ってはならない、あるいはそのために道義心をつちかっていかなくちゃならない、こういうことを強く御要請になっておられます。ところがその愛国心というものがどういうものか、民族の誇りというのは一体何か、いかなる道義心を養っていくのか、こういう内容については、残念ながら今日までのところ、明らかにされていないようでございます。私はずっと以前にも、吉田総理に愛国心というのはどういうことかということをお尋ねしたときに、それは愛国心というのは国を愛する心だというような御答弁があって、失望したこともございました。で、あれだけ青少年に御要請になっておられる愛国心とは何か、民族の誇りとは何か、道義心とはいかなるものか、これについて総理のお考えを承わっておきたいと思います。それはただいま私がお尋ね申し上げました先般の池田、ロバートソン会談における愛国心というものと、総理の言われるものとに、何かつながりがあるのじゃないかというようなこともうわさされておりまするし、また、愛国心の内容が何かということは、だれもが知りたいことでございます。そこで、その内容がどういうものかを、一つここではっきりさしていただきたい、こう存じます。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 自分の祖国を愛する、祖国をよりりつばなものにし、これに対して愛情をもって祖国というものをりっぱにしていこうという考えは、私はこれはまあ日本人のほとんど共通の考え方であると思うのです。何か愛国心というと特別なものがあり、かつて戦前に愛国心ということを強くいわれたのは、何か自分の身を犠牲にし、もしくは一たん緩急ある場合に、国のために死ぬるということが愛国心の本体であるというふうに、一つの形を、形式を作られたような感じがありますけれども、私の考えておるなには、やはりわれわれがその国の文化を高め、それからその国を繁栄に動かしめるということについては、国民が一人々々その国を愛して、自分の祖国をりっぱなものにしよう、盛んなものにしよう、文化を上げていこうという私は気持が必要であると思う。やはり戦後に何か国とか祖国というような考え方が非常に薄くなっておる、これは一種の戦前の強い、国というものが個人にあらゆる犠牲を要望しておったというようなことに対する反動として、国を愛するということが個人の自由であるとか、個人の権利であるとか、あるいは個人の地位というものを無視するのではないか、国のために犠牲にするということが愛国心の本体であるかのごとく感ぜられて、そういう意味において反動的に、私は祖国を愛するという人間本来の気持というものが非常に薄くなっているように思うのであります。この意味において、やはり祖国をりっぱなものにし、また文化を高め、経済を繁栄せしめる。ここにおいて平和の生活ができるようにするためには、国をりっぱなものにしていこうという意欲が、愛国心の本体でなければならぬと思うのであります。さらにこの道義の問題につきましても、道徳というものにつきましては、私は今後抽象的、具体的にこの道徳の基準をどういうふうにやっていくかというようなことについては、いろいろな学者やあるいは教育者等の意見も十分に聞いて審議されなければならぬということであることは言うを待ちませんけれども、しかし、われわれ自身のこの属しておる社会というものを、将来自分が成人した場合において、りっぱな社会人とし、一つの国民としてそうして行動できるような心がまえやまたは行いの習性というものを教育内容として身につけていくということが必要であろうと思う。従って、それの項目をどういうふうなものを取り上げて、どういうふうに教育していくかというようなことになりますれば、これは私は今言っているように、十分学者や教育者その他の人々の意見を聞いて、そうしてきめるべき問題である。しかし、根本にやはり青少年が成人した後において、りっぱな社会人として成人なすって活動できるというような心がまえや行いの習性をつけるということが、教育の内容の上において非常に必要であるというのが、私が特に徳育の点に重きを置いて考えたいと思うゆえんであります。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 私は今の総理の御答弁のように、普遍的な愛国心というものについては別な意見を持っているわけではありません。しかし、愛国心も持ち方によっては国を誤まることがある。あるいは民族の誇りも持ち方によっては、あるいはその誇りの使い方によっては、国を誤まることがある。これは今総理も一部御指摘になりましたけれども、戦前においては親に孝行する、夫婦仲よくすると言いながら、一たん緩急という場合には親を捨て、家庭を捨てて、やはり銃を持って飛び出していく、これが愛国心の持ち方である。確かにそう教えて参りました。その愛国心の持ち方なり、民族の誇りの持ち方、何を誇りとするかということがはっきりしなければ、ただ私は今のような抽象的な愛国心ということだけでは、青少年は理解できないと思います。そして、いかなる愛国心が、あるいは愛国心のどういう持ち方が、八紘一宇あるいは大東亜共栄圏、アジアの盟主、そういった民族の誇りの持ち方が、国を誤まったということも、これは総理が一番よく御存じだと思います。従って、今の日本でこういう愛国心の持ち方は誤まりなのだ、こういう民族の誇りはいけないのだ、今日の民族の誇り、愛国心の持ち方はこうでなければならない、こういうことがほんとうに言える人は、私は今の日本では岸総理をおいてはほかにないと思います。そういうことがほんとうに岸総理から聞きたいのが国民全般、青少年の気持じゃないか。そのことが、ただ誇りを持つということ以上に、青少年に訴えるのじゃないかということを感じます。  そこで重ねてお尋ね申し上げますけれども、一体戦前の愛国心なり民族の誇りが、なぜああいうことに日本をしたのか、そうしてそういうことにならないためには、どういうふうな愛国心の持ち方、どういう民族の誇りを持つということを青少年に要請すべきか、これについて総理の御所見を伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 戦争前の日本の立場、日本内部の情勢を言いますというと、御承知の通り当時の状況は、日本において軍というものがある意味においては非常に大きな権力や影響力を持っておった。そうして軍の行動に対して一切批判を禁止するというふうな情勢がだんだんと戦争が近づくにつれまして濃厚になり、戦争中におきましてはその目的を最高のものとして、すべてをそれのために犠牲にするというふうな状態がきたことは御承知の通りであります。そうしてそういうことが愛国心の本体であり、また、今おあげになりました八紘一宇であるとか、あるいは東亜の盟主というようなことが民族の誇りであり、愛国心と結ばれて、これが非常な大きな力として国民全体にかぶさってきたというのが戦前の状況であります。私は先ほど愛国心の私の考えておる考え方、またその際に、民族の誇りのことを申し落しましたが、私はやはり民族の誇りとしては、日本民族が世界の平和の上に、世界の文化の上に貢献し得る能力、力というものを十分に自覚して、この上に立ってわれわれは十分な働きをしようという一つの意欲と申しますか、考え方に立つということが根本であろうと思います。日本の民族が今までなしてきました文化上あるいは経済上その他あらゆる面におけるところの貢献というものも、私は過去においてそういうふうな誤まった愛国心や、誤まった民族の誇りというようなことによって国民が指導せられたにもかかわらず、私は相当な貢献をしてきた、力を示したことと思うのであります。   〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕  戦後、戦いに破れましたため、戦いに勝つということが何か一番の民族の力であり、またそれが唯一のものであるかのごとく戦時中において指導された結果、戦いに破れたために、あらゆる国民、ことに若い層において自信を失い、一番大事なものであると教えられ、指導されたところのものにおいて破れたということで、日本民族の力というものについて自信を失なったところも戦後あったと思います。しかし、日本民族が、今言っておるように、文化の、特に科学技術の面において、あるいは芸術その他の面において、あるいは経済、産業の面において、世界の文化の向上や福祉の増進の上に、過去においてなしてきたところの事績も決してこれをネグレクトすることはできないのみならず、われわれが今後努力をするならば、そういう方面においてわれわれの達成し得る分野は非常に多いし、また、国際的に見ても日本民族のそういう方面における能力なり、そういう方面における将来の活動というものに対して、非常な期待がかけられておるということをよく体するならば、私は一つの民族の誇り、将来の使命として十分な自信をもってそういう方面に一つわれわれは十分な働きをしようという心がまえが生まれる、こう考えて、愛国心やあるいは民族の誇りということを申しておるわけであります。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 総理のお考えはよくわかりましたが、ただ、現実の問題として、民族の誇りを、今これが誇りだという具体的なものを、残念ながら持っていないのじゃないか。日本の国民は、ただその過程において湯川博士のノーベル賞のときには確かに国民全体が感激もし、そうしてある種のプライドは持ったと思います。しかし、現実の状態では、まだこれが誇りだという自覚、認識を持つ段階までいっていない。むしろその誇りというものは、これから青少年が作り上げていくのだ。民族の誇りを青少年が作り上げていく、こういうことが大事じゃないかと思いますが、総理の御所見を伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 全く湯山委員のお話のように、私は、青少年諸君のこれからの努力と勉強によってりっぱな業績を各方面に示されて、そうして民族の誇りを十分に達成されるということを望んでおります。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 そこで、重ねてお尋ねいたしたいのは、愛国心の養成ということが、ともすれば総理の憲法改正のお考えあるいは池田・ロバートソン会談のつながり、そういうことと結びつき、それから、戦前の教育を受けた人たちにとっては、やはり愛国心というのは銃につながるんじゃないか、そういう懸念が多分にあると思います。今のような情勢の中で愛国心を持てということは、言いかえれば銃を持てということになるんじやないか、このことは、池田・ロバートソン会談の議事録にも日本の青少年は、戦後銃を持たないように教育をされているということがちゃんと字句としてございました。そういうことから、愛国心は銃につながるということをいろいろ心配している人が多々あると思いますが、それはそういうことではないということ、一つ総理から明瞭にしていただけるかどうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 先ほど来お答え申し上げたことで、ある程度明らかになっていると思いますが、私は、愛国心というものは、銃につながるというような偏狭なものでは絶対ないと、こう思っております。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 次にお尋ねいたしたいのは、総理は、遊説の途中におきまして、労働者であるという先生に子供の教育はまかせられないという演説をなさいました。私も、これは大阪でなさったのでしたかをラジオの放送で聞きました。この言葉は、やはり相当大きな反響を起しております。本会議でも質問がありましたけれども、これについて総理の御答弁はございませんでしたが、一体教師が労働者だということはいけないことかどうなのか、法律の上でも、労働基準法では、明らかに労働者という定義の中に教員が入っております。それから労働組合法でも、公務員としての教員は除外されておりますけれども、教育文化研究に従事しておるものはやはり労働者であるということになっておりますから、私立学校の先生たちは全部今でもやはり労働者という法律の定義の中にございます。で、労働者であるという先生に子供の教育がまかせられないということは、そういう教師に対する一つの影響と同時に、日本全国の労働者に対しても、これは大きな侮辱じゃないかというような意見も相当強いし、ほんとうの労働者諸君は、こういう言葉を決して喜んでいないと思います。これは、総理としてはどういうお考えでお使いになった言葉か、伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は、労働組合法や、あるいは労働基準法その他労働法制におきまして、教育に従事しておる教員をどういうふうに扱っているかという問題について、これをかれごれ言おうという意味じゃございません。私は、やはり先生と生徒、教え子との間における関係というものは、決して他の一般の生産やあるいはサービスに従事しておるところの労働者と違いまして、その先生の全人格というものが子供に影響力を非常に与えると思うのでありまして、従って私は、これはわれわれの子供のときの記憶から申しましても、あるいはまた、現在のわれわれの身内の子供が学校に行きまして、影響力を持つ上から言いましても、やはり教員の諸君は今の労働法制上どういう扱いを受けておるか、あるいは私は、労働を決して労働としてこれを侮辱する意思も全然ないのでありまして、そんなことは思っておるわけじゃございませんけれども、教員の地位というものは、ただ一定の労務を供給するとか、あるいは一定の事項について知識を与えるというだけじゃなしに、全人格をもって子供に対して影響力を与え、子供というものを教育するという立場にある大事な、私は、いわゆる言葉としては先生という気持、これが現実だと思います。だから、それを十分教員諸君においても考えて行動してもらうという、心がまえを持ってもらうということが必要であるという意味において申し上げているわけであります。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 総理のお考えは、私は必ずしも全部否定するわけではありませんけれども、そういうお考えだとすれば、さっき申しましたように、表現は一体どうだろうか。それから、逆にこういうふうな考え方はできないか、お伺いしたいと思いますのは、新しいこの憲法下における新しい教育基本法下における教員は全体の奉仕者です。それから、公務員としては公僕です。総理がまあ小さいときのことを思い出されたということですけれども、従来の教育というものは、教育者という職の持つオーソリティによって教育をやってきたと思います。ところがそうじやなくて、公僕である全体の奉仕者だという観点から、民主的な教師のあり方、そういうものから、われわれも働く人たちと同じだ、決して教師という職にオーソリティ、があるのじゃなくて、その職をする人間自身、教師自身の、総理の言われた言葉でいえば、全人格で当るので、職の権威によって教育をするのではないという自覚を教師は労働者だという言葉で言ったとすれば、私は決して悪くないと思うのですが、重ねて総理の御所見を伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 労働法制上は、あるいは公務員として扱われる場合と、私学等において単純な公務員でなしに扱われる場合と、いろいろな法制上の扱いは違っていると思います。しかし、現実に教師として、教員として青少年を教える立場においては、私は、それが公務員であろうが、あるいは私学で公務員でなかろうが、これは本質的には同じであると思うのであります。そうして決して私は、一つの何か教員というものが権威を持ち、教職というものに一つの神聖さを与えて、それによって云々ということじゃございませんで、これは、おそらくみんな、長い学校教育の問いろいろな先生に接し、われわれが忘れ得ない先生というものを考えてみるというと、それが何か非常に権威を持ってわれわれに臨んでおったがゆえにわれわれはそれを忘れないのじゃなしに、その人の全人格というものが当時の子供というものに非常に大きな影響を与えた人が、たとえその人は非常に貧乏な形において、きたない服装をしておられた人であるとも、われわれはこの人を一生涯忘れないし、その人から受けたところの教育というものが、しばらくたって、その人が成人した後においていろいろな行動の基準になっているという例もあります。だからといって、この教員諸君の生活の条件であるとか、あるいは勤務の各種の条件というものを私は悪くしてもいいと言うのじゃありません。もちろん、これは改善していかなければならぬし、改善する意味において、これが労働法規上いろいろな組合やその他の方法によってやられるということも、これは私は、民主的に考えてよろしいと思います。しかし、先生そのものと生徒との関係は、あくまでも今申したように、全人格をもって、そうしてこのごろの若い世代の人々にりっぱな影響を与え、その方が成人した後において、社会人としてりっぱな行動ができるような基礎がこれに与えられるということが教員の使命であり、教職というものの性質はそういうものだと、こう考えているわけでございまして、広い意味において、それも一つの労働者じゃないか、勤労をしているんだから、労働者じゃないかと言われればその意味において私は決して異存はあるわけではありませんけれども、ただ、他の生産事業や、他の一般の労務その他のなにと違って、非常に教員諸君の人格上の影響というものが及ぶというところに非常な無形な、しかも尊いものがあるということを十分に自覚していただきたいというのが私の念顧であります。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 総理のお考え、よくわかりましたが、それにしては、とにかくお使いになった言葉が若干穏当を欠くのじゃないかというような感じを持ちます。ひょっと今思い出しましたことは、先ほど栗山委員との間に、三悪追放についてお話がありましたが、きょうあの応答を聞いておって、ひょっと気がつきましたのですけれども、やはり総理のお使いになる言葉というものは、その受け取り方によっては、非常に大きな影響を与えると思います。それは、貧乏が悪かどうかという問題です。三悪——汚職、暴力、貧乏と並べて、確かに汚職をやった者は悪人です。それから、暴力をふるった者は悪人です。しかし、貧乏しておる者が果して悪人かどうか。三悪追放の悪の中で、私は貧乏追放は賛成です。これは大いにやっていただきたい。しかし、簡単に三悪の中に貧乏を入れると、一体貧乏な人はどうしたらいいのでしょう。今、総理も言われたように、貧乏な先生でも、きたない服を着ている先生でも、非常に大きな教育をしている。それから、貧乏な人の中にも、清貧に甘んじて、汚職をした金持よりもよっぽどりっぱな人がたくさんあります。にもかかわらず、総理が、言葉のごろは別とし、て今の労働者である先生に子供をまかせられない、あるいは三悪として貧乏を追放する、こういう総理のお言葉の響きは、気持はわかるにしても、なかなかどうも問題があるのじやないか。総理は、一体どうして貧乏を悪だと言われるのか、これを一つ伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は、ある所で、それの説明をした記憶を持っておるのであります。今、湯山委員のお話の通り、私も三悪ということを言いますけれども、暴力は、暴力を行うやつが悪人であって、暴力そのものがそういう意味において悪である。汚職は、汚職をする人がいかぬ。しかし、貧乏な人が、今おっしやる通り、悪人であるとか、あるいは社会上悪ということじやない。私は、この貧乏ということは、今の社会における社会悪の一つだと思います。悪ということを言うならば、ただああいう言葉は、実は一つのごろとか、いろいろな点から用いたわけでありまして、性格は、この三者は違うということにつきましては、私はある所では説明をしたことがございますが、決して貧乏人を悪人だと、こう規定したわけではないのであります。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 その三悪の中の貧乏というのは、政治の悪、つまり総理自身の悪の中から出てきておる、こういうことになるのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は、今社会悪という言葉を用いたわけでありますが、そういう社会を直していくことが政治の目標でありましょう。従って、そういう社会悪が存しておるとすれば、まだ政治に欠陥があると言わざるを得ないと思います。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 ただいまの御答弁で了解いたしました。  次に、総理が文教労働政策に重点を置くということを御発表になったのと同時に、社会党と対決するということをおっしゃっておられます。対決ということは、政策を通じてやることだということを衆議院の方で御答弁になっておられます。そういたしますと、政策を通じて対決するということであれば、当然重点政策である文教政策を通じて対決すると、こういう筋道が一応描かれると思うのです。私は、さっき総理自身がおっしゃったように、文教政策というのは、次代をになう青少年のものであるし、このことに関する限りは、多数でどうだとか、対決するとかいう問題ではなくて、全国民納得のもとに、文教政策は、対決の場を作るのではなくて、一致してやっていく、皆が心を合せてやっていく、そういうことが文教政策としてはとるべき態度ではないか、対決を文教政策に求めるという考え方はとるべきではないのではないか、こういうふうな考えを持っておりますが、総理の御所見を伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) もちろん、私が対決という言葉を使ったかどうか、今は使ったことになっておりますから、別にそれを否定もいたしませんけれども、これは、あくまでもこの両党——二大政党である以上、政策の違いなり、重要政策について、おのおのが考えておる考え方を十分に国民の前に明瞭にして、そうして国民の批判を受けるということが、私は二大政党のあり方であると考えております。政策以外のことでありますれば、できるだけいろいろなことを協調すべきことは言うを待ちませんし、また、重要政策についても、いろいろな話し合いをし、両方からずいぶん自分の立場でこういうことを主張するけれども、よく両方で話してみるというと、さらに両方の意見が近づいてくるものも、外交政策、文教政策、労働政策その他について、私はもちろんあると思います。こういうことについて、十分にその手段を尽すべきことは、これは言うを待ちませんけれども、しかしながら、根本的に二大政党がある以上は、二大政党としてよって立つところの基本、これは動かすべからざるものが社会党にもありましょうし、わが党にもあると思うのです。そういう事柄について、われわれはやはり国民の前にその所信を明らかにして、そうして、これは民主政治でありますから、それに対する最後の審判は国民から受けるという意味におきまして、そういうものをあいまいにし、そういうことが理由で国民が判断に迷うようなことは、決して民主政治の発達のために、また二大政党の発達のために、私はとらないところで、あくまでもその点は国民に明らかにしていく。一つの例を申しますというと、現行憲法に対する考え方というものは、社会党とわれわれとの間に、不幸にして意見が根本的に食い違っております。このことは、できるだけあらゆる機会において国民にその理由を明瞭にし、そうして国民がこれに対する正当な判断ができるようにすることが望ましい。この意味において、実は私は、憲法調査会にもぜひ社会党が入っていただきたいということを念願しておったわけでありまして、今も念願しておるのでありますが、そういうふうに、あらゆる機会に、あらゆる場合におきまして、われわれの主張がどうしても相いれないことについては、その理由を国民の前に明からにして、そうして国民の判断に待つということが望ましいと、かように考えております。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 文教政策についてはいかがですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 文教政策につきましても、私は、決して意見が根本的に食い違っておるとも実は思っておりません。いろいろな具体的な話を進めてみるならば、一致するところのものが大部分であろうと思います。そういう点につきましては、十分に話し合いをしていきたいと思いますが、たとえば、この前教育委員の制度の問題なんかにつきましては、不幸にして社会党とわれわれとの間に意見が非常に食い違ったのであります。こういう場合におきましては、やはり国会を通じて、両方の主張というものを十分に国民に理解してもらうような処置を講じなければならぬと、かように思っておりますが、文教政策自体において何か社会党と対決し、大いに両方で力み合おうというような考えを持っておるわけではありません。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 私も、特に文教政策においてはそうでなければならないと思いますことは、従来も、ほかの省の大臣は別として、文部大臣だけは、党人でもない、それからまた、国会議員でもない人がなった例もたくさんございます。おそらく一番多いのではないかと思います。そういうところに文教政策の特異性があるのではないかというように思っておりますが、そういう点で一つお尋ねいたしたいのは、義務教育国家保障法というようなのを文部大臣が御計画になって、発表になりまして、私ども、若干の意見はありますけれども、これはよいことだというように考えておりましたが、せっかく文部大臣がああいうふうにおっしゃったものが、いつの間にかこう、消えかかっておるのではないかというような心配を持ちますが、これは、今後どういうふうにしていかれるおつもりなのか、将来どうなるのか、伺いたいと思います。

松永東自由民主党文部大臣

○国務大臣(松永東君) 今の国家保障法の問題は、それは、かつて自民党の特別委員会で成案をしておったものであります。私も、これはけっこうだと思いまして、それに基いて、いろいろの案を立てたのであります。しこうして今も、御説の通り、消えかかっても何もしていないのです。これに基いて、強く主張をいたしております。でありますから、まだこれが消えちまったとか、実行不可能になったとかいう問題でございません。これに基いて予算も要求いたし、そうしてこの問題を達成したいというふうに考えております。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 次の国会に、国家保障法をお出しになるという御予定でございますか。

松永東自由民主党文部大臣

○国務大臣(松永東君) 国家保障法の問題よりも、私の方は、要するに義務教育費の国庫負担を要求いたしまして、そうして要するに、いろいろ言われておりまするところのすし詰め教育の是正とか、あるいは都道府県の教員の定足数を確保するとか、父兄の負担を軽減するとか、そういう問題を全部とらえて出しております。そうしてその金を大蔵大臣がどの方面から出して下さるかということは、これは私は、まだ聞いておりませんけれども、いずれにしても、出して下さらんければ、われわれの計画を実行するわけにはいかぬのですから、その点は強く主張いたしておる次第でございます。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 大蔵大臣の御意見を伺いたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) 義務教育が大事であり、ここに力を注がなくてはならぬことは、これはもう私、異論ありません。ぜひともそうしたいと思いますが、ただ、全額国庫負担と、こういうふうなことにつきましては、財政の負担もさることでありますが、なおこれについては、たとえば教職員の身分をどうするとか、あるいはまた、今日のこの人事給与、非常にでこぼこもありますが、こういうようなものを一体どういうふうにするのか、たとえば定員定額制というようなものも考えてみなくちゃならぬ。いろいろ解決しなくちやならぬ問題があると思いますので、慎重に検討を加えたい。かように考えております。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 総理は、この文教政策で、あまり対決というようなことはないだろうというような意味のお考えもおありになりましたが、今、非常に大きい問題で、勤務評定の問題がございます。これは、わざわざ政府が九月の三日に閣議決定までして、勤務評定を実施する。こういうことをなさっております。ところが、教職員の勤務評定というのは、過去、法律ができて八年間、実際に行われないで来たものです。それにはそれだけの理由があると思います。にもかかわらず、それを特に閣議決定をもってやろうというのは、一体どういう理由に基くものか、これを伺いたいと思います。  時間がありませんから、もう少しまとめて申し上げますと、一体教育の効果というものは、なかなかその場ではかり切れるものではありません。そのことは、たとえば総理のよく御存じの吉田松陰だって、あの当時は、これは、教師としてはいい教師だというようにには言われなかったのじゃないか。ペスタロッチだって、いろいろ宗教界、政界から迫害を受けて、決していい先生だということは言われておりません。それから、これは近い話ですけれども、「二十四の瞳」に出てくる女の先生にしても、あの当時の村の人たちや校長さんや、あるいは監督官庁からは、決してよく思われていなかった、しかし、そういう人の教育が大きな実を結んでいることは、総理自身よく御存じの通りです。そうやって参りますと、その教育の効果、そういうものを単に機械的に評定するというようなことには非常に危険があるというように思います。八年間こういうものを放っておったということには、私はそれだけの理由があると思うのですが、にもかかわらず、特に閣議決定をもって強硬におやりになるというのは、一体どういうわけでしょうか、お伺いしたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 今の問題は、別に閣議で決定してどうという問題は、手続上の問題からいうと、そういうことではございませんが、しかし私は、一般にこの公務員の綱紀粛正は汚職にも関係しますし、全体の公僕としての十分な使命を達成する上からいきましても、綱紀の粛正ということは非常に大事だと思います。その一つとしては、法律で定められておることは、これを励行するということでなければ、もしも法律に規定されておったことを実行することが社会的によくないことである、あるいはとうてい実行することの不可能なことを命じておるというのであれば、これはよろしく法律を改正すべきである。法律がある以上は、これを、法律を私は励行するということは、これは実は、公務員の基本的な問題として、綱紀の問題として考えなきゃならぬ問題であると思います。ところが、戦後いろんな意味において、これは実行するのに少し困難があるというと、これを実行せずに、それが一つの慣行となって、法律はあれどもなきがごとく、結局これに順法しなければ、法律があるといっても従わなくてもいいのだというような風習を、公務員全体に、心がまえの上に作るということは、これは大変なことだ。勤務評定につきましても、大部分の県においてはできておりませんが、これを実行しておる県もあるのであります。また、実行するのについて、ただ一片の通牒でできるというふうな簡単な問題でもありますまい。いろいろそれについての処置なり準備も、必要な準備も進めていかなきゃならぬと思いますが、そうしてどうしてもこれが実行することが社会悪であり、これがよくないことであるならば、よろしく法律を改正すべし。そうでない限りにおいては、法律で明らかにしておることは、これを実行するというのが私の施政の、行政上の一つの基準であります。その意味において、勤務評定というものについては、法律が明らかに規定しておる以上は、これを実行するということは私は当然であると、こういう見地に基いて、この問題を進めておるわけであります。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 特に教員の場合のこと、教育の場合ですね。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 今お話がありましたが、教育というものの効果というものについては、お話の通り、大教育者といわれておる人の問題等をおあげになりましたが、そういうことは、非常な大教育家については私は言えると思うのです。しかし、一般的に申しまして、たくさんの教員というものがやはりその勤務について十分に勤め、そうして努力するという人がやはりそれだけのいろんな点において、人事その他の点において認められていく、またなまけたり、あるいは十分ななにをしないというような人が、努力しようがすまいが同じにいくということよりは、やはりそこに勤務状況というものを、ある立場にある人がこれを評定するということは、これがもう万全であり、あらゆる場合において例外なしにこれがいいとか、あるいはその今のような例外的な大教育家のものを普通の人が評定ができないじやないか、それを評定するのには、あるいは百年後にこれが初めてわかるじやないかというようなこともありましょうけれども、しかし、現在の社会通念として、一般的な教員諸君の問題については、やはり私は、勤務評定によって、そうして信賞が行われるということが適当であると、かように考えます。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 私は、例をあげましたのは、よくわかるからそういうことを申し上げたので、大なり小なりこういうことはどこにもあると思います。程度の差だけの問題じやないかと思います。そこで、もしおやりになるとしても、それはやはり教育者も納得するし、それから一般の人もなるほどと思われるようなやり方をやらなければいけないのじやないか。文部大臣のお言葉をもってすれば、万人の納得するような方法でやるということでなければ、今言われたような目的さえも達しない、こうなると思いますが、その点についてはどうお考えでしょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) もちろん、これを実行するという見地に立ちまして、それを実施する上における方法としましては、できるだけこういう問題は、やはり教員諸君の協力がなければ実効をあげられないことでありますから、納得され、協力される方法を講じてやるべきことは、これは当然であると思います。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 この問題は、ここで取り上げるとなると、これ以上こまかく入らなければなりませんし、岸総理御自身も、勤務の成績を見るということと、法律にきめられた勤務評定というものとを若干混同してお答えになっておるようでございますけれども、その問題には触れないことにいたしまして、今ともかくもやっておる県も、非常に混乱を起しております。そして、総理は御存じないかもしれませんけれども、自民党の総務会へ文部大臣を呼んで、そこでやるという約束をさせ以れたとかさせられないとか、あるいけ総務会から、やっておる県に激励の電報を打ったとか打たないとか、こういうことになって参りますと、純粋な勤務評定というものを離れて、何か教育の場へ政治の力が押し寄せてきている、教育の中立性が侵されている、こういう印象を強く受けますし、またそれは、ある程度事実のように感じられます。そこで、万人の納得するような方法でやる、広く意見を聞いてやっていく、無理をしないでやる、こういうことであれば、私は、今申しましたような事態は起らないと思いますので、そういうふうな運びをとっていただきたいと思いますが、総理の御所見を重ねて伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 教育の中立性ということは、これは非常に大事なことだと思うのです。しかし同時に、こういうことがあるいはいろいろな背後におけるところのプレッシャー・パワーによって反対をするとか、あるいはこれを推進するとかいうような状態が動いておるということは、本来望ましくないことでありまして、あくまでも純粋な立場から、行政上の立場として考えて参らなければならぬということは、言うを待たないと思うのであります。いろいろこれに反対する方も、政治的なバックをもって反対するというような傾向が出てき、あるいはこれを推進する上においても、また政治的な力を何するということが自然に起るということは、非常に望ましくないことであります。両方とも、施行するにしましても、またこれに反対する方面におきましても、十分に冷静に、そのおのおのの主張をもって話し合っていくべきであるということは当然であると、しかし、先ほども申し上げましたように、このものは法律にはっきり書いてあることでありますから、一つ実行するという見地に立って、それにはこうこうこうしなければならぬとか、それにはこうする方法をとることが望ましいというふうに、建設的な考えでもって、進んで教員諸君の方も言っていただきたい。また、それがもっともであるようなことであるならば、文部省の方においても、地方の教育委員会においても、十分にそれを取り入れて、これが実行の円滑を期するというふうにいきたいと思っております。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 ただいまの総理の御意見については、文部大臣も同じような御意見だと思います。ただ、うわさに聞きますと、どうしてももう強行するのだというような御決意を文部大臣は述べられたというようなことを承わりますが、そういうことがあってはならないと思いますが、文部大臣の御所見を伺いたいと思います。

松永東自由民主党文部大臣

○国務大臣(松永東君) この問題は、当院の文教委員会でも繰り返して申し上げておる。要するに、今総理が申し上げた通り、法律が厳として存しておりまする以上、これを実行きせなければならぬ責任を負うておるわけであります。でありますけれども、われわれの方で要するに基準案を作るときには、できるだけ万全な案を一つ作りたい。そうして練りに練った上で、納得できるような案を作りたい。こういうふうに考えて、現に研究中であるということを繰り返し申し上げたんですが、やはり今もその通り考えております。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 もう時間がありませんから、あと数点、簡単にお尋ねいたしたいと思います。  それは、一つは部落問題、同和事業の問題ですが、現在全国に、六千の部落と三百万の解放されない部落民がある。私は、この新憲法になって、こういう問題は、もうだんだんなくなっていっただろうと思っておりましたところが、先般、新聞にも出ますし、週刊誌などではずいぶん大きくこの問題を取り上げて、現在も厳然としてそういう身分的な差別が残っているということが出ておりました。その中には、自民党の有力な方々も、それについて、お前のむすこがもし部落の人と結婚するときにはどうするかというようなことに対するアンケートにも応じておりました。この部落問題というのは、これはいろいろなことに関係を持っておって、経済、社会、教育、あるいは生活環境、いろいろなものと関係を持って参っておりますけれども、しかしこれは、一般的な社会改良というものとは若干異質のものではないか、こういうふうに考えます。   〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕  それであればこそ、明治初年に身分制度の解体ということがいわれたにもかかわらず、今日の憲法下において、なお私ども意外なほどそういうふうなものが現存しておる。そういうことだとすれば、これはまことに遺憾なことで、この対策は、単に厚生省だけでやるとか、教育について、同和教育について文部省がやるだけというような問題ではなくて、総合対策が必要ではないかと存じます。それで、その総合対策を立てるために、何か内閣全体としてこの問題を御検討になり、対策をお立てになる、そういう機関を設けるべきじゃないかというような考えを持っておりますが、総理の御所見を伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) この問題は、日本の社会として相当古い問題であり、そうして解決に従来といえどもずいぶん努力をされ、それから憲法、法律その他におきましては、言うまでもなく、これは平等であり、そういう区別的なものがあり得るということは、これはある意味からいったら、日本文化の上からいっても、はなはだ悲しむべきことである。しかし、長い目で見て、そういうものが漸次解消されていっているという方向に行っていることは、これはまたいなむことができない。私の郷里等においての事実は、これらの非常にいい方の解決が進んでいる事例も見ます。しかし、全国的に見まして、なおそういう問題があることにつきましては、これは非常に遺憾でありまして、そういうことに対する処置というものを考えなければならない。これはまあ、いろいろな総合的な、今お話もあり、根本的には、ものの考え方についての一般の国民の問題だと思いますけれども、さらに衛生上の施設であるとか、あるいは社会教育上の施設であるとか、いろいろなものを総合的に行なって、これらの事態をなくし、同時にこれらの部落に属しておる人々の生活を改善し、向上せしむるやうな手段も講じなければならぬと思います。かつて私も役人をしていました当時、そういう各省の関係の調査会か委員会がございまして、私もそれに出たことがあるのでありますが、今聞いてみますと、その後そういうものはなくなってきておるわけです。これはまあ、考えようによると、なくなったということは、それだけ考え方がよくなったということも言えるのじゃないかと思います。しかし、現実の問題として処置しなければならないような——抽象論的に、そんなものはないのだと言って否認するだけじゃなしに、具体的な問題があれば、必要があれば、さらに総合的なものを考えていく必要があると思いますが、今のところは、私はごく具体的の事例をたくさん知っておるわけでもありませんし、関係省においてそれぞれ処置しておると思いますので、必要があれば、そういう総合的な機関を設けて、これらの解決をはかる、ただ、そういうものを作るというと、何か区別的な何があるというふうなまた印象を与えるということも、この問題については特に考えなければならぬ点であろうと思います。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 時間が参りましたので、最後に一点だけお尋ねいたしたいと思います。  今の問題は私どもも総理と同じように、かえって取り上げないことがいいのじゃないかという印象を持っておりましたけれども、実際に当事者に会って聞いてみますと、そうでないというのです。ぜひお考え願いたいと思います。  それから最後に科学技術教育、これはもう時間がありませんが、来年度予算においては相当科学研究、技術教育に重点を置くというお話でございました。しかし私が考えますのに、その科学技術に当る学者と一番タッチするのは文部省です。ところが文部省の予算というのは全体の総研究費のわずかに十九分の一、二十分の一ぐらいしかありません。これはほかのところでやるのはほかで見るのだとおっしゃいましても、何としても、最も大切な文部省が全体の一割にも足りない研究費でやるということは、これはどうしても私には了解できません。これらの点についてはさらに御検討願いたいこと、それからこういう形で出された研究費がかえって研究を阻害している、そういう事実がございます。それは増額はし予算は配置したけれども、それが中途半端なやり方であるために、実際に研究できないという事例を私は幾つも聞いております。たとえて申しますならばあのシンクロトロンにいたしましても、これは実際は購入すればその三倍も五倍もかかるのを、予算はつけてやったというけれども、額が少い。そこでそれを研究する学者がみずからの労力で作っています。それは自分でやるのがためになるところもありますけれども、そうでない。たとえば当事者の言葉をそのまま言えばハンダ直し、配線、運搬そういう雑用で六〇%のエネルギーを使われてしまう、こういうことを申しております。それから数学の研究班の班長になったある人は、事務とか報告書を作ることで結局自分の研究は少しもできない。せっかく金をもらったことが逆に研究できないことになってしまった。これは湯川博士が原子力委員を辞任されるときにもちょっと同じような意味のことを言っておられました。そこでどうせ研究を進めるのならば、そういう中途半端な金じゃなくて、事務その他今のような雑用で学者の労力を使わないように、やはりある程度徹底した予算の出し方をしなければ、せっかくの学者をこういうふうにむだなことに使う、まあ一般の労務者のかわりに使う、そういうことになったのでは、一体何のことかわからないことになります。文部省の研究費の問題も、ほんとうに研究のできるような中途半端なやり方でない予算を組まなくちゃならない。こういうことを痛切に感じますが、これは総理及び大蔵大臣、文部大臣、各大臣の御所見を伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私日本の教育として科学研究、技術教育を大いに盛んにしたいということ、科学技術のことにつきましては教育の問題と、今お話の学者、技術者の研究を進めるという研究の問題と二つあると思いますが、この研究機関の日本の実情から申しまして研究費が十分でない、従って十分に効果が上らぬじゃないかというお話に対しましては、われわれもそういうことも、一般の国力の問題にも関係しますけれども、とにかく十分でない事実はこれを認めざるを得ないだろうと思います。従いまして、これができるだけ財政の許す限りこれを拡充していくことは、当然研究を有効ならしめるためにも考えなければならぬと思います。また、かつていろいろ研究機関をできるだけ統合して強力なものにしたらどうだというような意見から、一部科学技術庁というようなものもできまして考えられているわけでありますが、その必要もありますし、また研究の意味からいうと別々であってもある程度効果等について協力する、というようなことも考えていかなければならぬと思います。できるだけ財政の都合をみまして研究費の増額も考えなればなりませんが、同時にその研究費が有効に使われ、その効果を上げるような組織なり仕組みも考えていかなければならぬ、かように考えております。

松永東自由民主党文部大臣

○国務大臣(松永東君) 湯山委員の御質問になりましたことは、先般もそれぞれ文教委員会でも申し上げた通りであります。これはもう実際私どももこうした今日の国際情勢からみまして、オートメーション時代とかあるいは人工衛星が宇宙圏をぐるぐる回っている、こういう画期的な世の中になって参っております。日本の科学技術の教育ももっと踏み込んでいかなければいかぬと存じまして、三十三年度予算にはその量の問題と質の問題、両面にかけて相当数を要求いたしております。しかし今仰せの通り、まことに今日まで研究費とか何とか非常に僅少でありますために、これはもう世界各国に比較して一番劣っているというような感を深うするのであります。来年度からはぜひ一つ何とかしてそれをふやして予算に計上してもらいたいと、せっかくその予算を獲得するように努力を続けているところでございます。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) 科学技術の振興につきましては、来年度の予算につきましても特に私考慮を加えるつもりをいたしております。ただ研究の本体といいますか、何を一体研究するのが一番いいのか、あるいはまた研究機関のあり方等につきましては、特に検討を要請したい、かように考えております。

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) 山田君に申し上げます。外務大臣の出席を要求せられておりまするが、先刻湯山君に申し上げましたと同様の意味におきまして、岸総理大臣から代理として答弁をいたしますから御了承願います。  なおまた吉田法晴君に申し上げます。同様の意味をもちまして外務大臣については御了承願います。

山田節男日本社会党

○山田節男君 今日政府が速急解決しなくちゃならない当面の労働問題たくさんございまするけれども、私はその一部と申しまするか、駐留軍関係の労務対策について若干御質問を申し上げたいと存じます。この駐留軍の労務者の対策につきましては、一昨年英連邦軍を主体としまする国連軍が撤退をいたしまして、それがために一万数千名の離職者、失業者が出ました。当時鳩山内閣でございましたが、内閣に駐留軍労務者特需等の連絡協議会というものを作られまして、関係各省の責任者をもってこれを組織いたしまして、具体的な対策ができたわけでございます。それから自乗すでに二年有半たっているわけでございますが、この連絡協議会、連絡会議の性格から申しまして、どうも駐留軍の労務対策としての実績がなかなか上らないという実は経過でございましたが、岸総理がことしの六月でございますかワシントンにいらっしゃいまして、例のアイク・岸共同声明というものを発表されました。米軍はその大部分と申しまするか、少くとも陸上勢力軍の大部分のものが速急撤退をするとこういうことになったのであります。でこの六月に岸・アイクの共同声明がありまして以来、非常に急速度に駐留軍の労務者の解雇はふえておるのであります。調査によりますると、今年の一月から十二月までわかっておる解雇予告者を含めまして約二万三千名ございます。その中でも六月から十二月までこれによってすでに解雇され、また解雇されようとする者が二万名、こういうような状況なんでございまして、私はこの際岸総理に特にお伺い申し上げたいと思いまするが、私は終戦直後約七年間全国約四十万の駐留軍の労働者保護のために組合の責任者としまして、当時駐留軍あるいは軍の基地、司令部等に、私は全国ほとんど自分の足を踏まない所がないくらいに参っておるのでありますが、その当時から私痛切に感じますることは、駐留軍の労務者は、すなわち敗戦の結果、われわれは敗戦国としてその占領軍のため労務を提供する、政府が責任をもって提供する、こういう立場で働いておる労務者でございまして、言語あるいは習慣その他労働条件きわめて特殊性を持っておるのでありまして、私は当時問題が起るたびに全国各地に参ってみますると、これは当時御承知のように政府もこれはGHQに対しましては、なかなか言葉をはっきりと労働者保護ということに対しまして勇前に申し得なかった。当時特別調達庁もございましたけれども、これもまた政府の一つのエイジェントとしてなかなか強いことを言わなかった。私は甚だ僣越でありますけれども、当時国会穴議員として、また組合の責任者という立場からその苦情処理といいますか、その苦情処理たるや、まことに敗戦国民を代表するきわめて気の毒な立場にあったということを今さら私は想起するのであります。そういうことから考えまするならば、これは一般の産業労働者の離職者とは区別して考えなければならない、かように当時から私は主張しておるのであります。もちろん、昭和二十七年でございますか安保条約に基く行政協定が作られまして、形は安保条約並びに行政協定による日本の労務を供出するのでありますけれども、従業員にとりましてはこれは占領軍政下におけるのと全く同じなのであります。でありますから今日これほど多量な失業者で、三十年でございまするから、国連軍の撤退いたしましてから今日まで約六万というものが失業しておる。その中で四万五千名というものは完全失業いたしておるわけであります。この対策をいかにするかという、実はこれは問題でございますが、まず第一に実は総理が今申しましたように、敗戦の結果アメリカの駐留軍並びに国連軍に使用されておる労務者というものの対策を作る上において、一般の公務員あるいは一般産業労働者と同じような建前でこの対策をお考えになっておるのか。あるいは今申し上げましたような敗戦国民を代表したきわめて特殊な労働をしておった者であるから、これは一つ別個といえば語弊、があると思うのですが、多少のその点は考慮してやらなくちゃならぬと、こういうふうにお考えかどうか、まずこの点をお伺いしておきたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) お話のように駐留軍労務者というものは日本の一般産業労働者とは違った立場において、違った条件のもとにおいて労務を提供しておる。これは勤務地における勤務状況や条件というものにつきましても、これが改善を考えられて、初めはお話の通り向う側の一方的であったのに対して、ある程度の改善をみておりますけれども、しかし特殊の事情のもとに勤務させられておるということを、これを認めなければならぬのであります。  それからまたアメリカの駐留軍が撤退することによって、大量に比較的短い期間に失業者が出るというこの事態も、日本としてはきわめて重大な問題でありますから、これに対する措置としても総合的にいろいろ考えなければならぬト考えております。今山田委員の御質問の要点である何か一般の失業者と違って、国として特別な対策、処置といいますか、給与というか待遇といか何かしなければならぬじゃないかというようなお話につきましては、私はよく内容を検討した上で、これに対する適切な方策をきめるべきものだ、お話のように特殊の事情にあることは十分私も頭において考えていきたい。しかし具体的にどうするかという問題につきましては、十分に各般の事情を検討して最後の結論を出すべきものだとかように考えております。

山田節男日本社会党

○山田節男君 先ほど申し上げましたように鳩山内閣のときに、国連軍の撤退に伴いこれら駐留軍労務者の失業対策、これは当時閣議におきまして決定された通牒を各省へ出しておられます。そういたしまして先ほど申し上げましたように、今年の六月以来急激にこの離職者がふえて失業者がふえて来ておるわけであります。政府も九月二十四日にいわゆる閣議におきまして通牒を各関係省に出しておるのでございまして、また承わりますると、自民党の中でも駐留軍引揚対策要綱というものをお作りになっておりまして、その要綱を見ましても、これは自民党といたしましても、政府にこの駐留軍の引き揚げに伴い、まことに離職対策について緊急にやるべきものを列挙しておられるのでありまして、その結果おそらく私は閣議決定となり各省にこれが通達されておるものと思うのでございますが、鳩山内閣の当時の閣議決定、これは各関係省にこういうことをせられたい、その結果先ほど申し上げたようにどうも実績が上らない。この閣議決定に基きます通牒が各省に対して十月の二十日以降に出されておるのでありますが、自来もうすでに一ヵ月に達せんとしておるけれども、この閣議決定の通牒を見ますと、内容はほとんど鳩山内閣の当時と異ならないのであります。こういうことでは先ほど申し上げましたように、相当な数の多い失業者、しかもこの失業者たるや、過去長い間、十二年少くとも六、七年勤めておったのでありますから、年令から申しまても平均四十才という高令な失業者が多いのでございます。また事務系統、技術系統もまことに内容が多種多様でございまするから、その対策についても、特にこれは労働省あたりに、あるいは企業誘致あるいは企業組合を作って、それによって失業者の就職をさせよう、あるいは自立営業をさせようと、労働省、大蔵省あるいは調達庁その他各省に命令されておられますけれども、どうしてもこれは私は今のような連絡協議会というようなものでは、どこにその責任者があるやらわからないのでございます。ですから口頭禅と申しますか、りっぱなプランを立ててはございまするけれども実績が上らない、というのは少くとも一昨年来この問題に対する対策が、きわめて非効果的であるというところにあるのでございまするが、こういう点につきましては、この閣議決定すなわち換言いたせば、行政措置で何とかしょうというようなことですが、これはもうすでに過去の実績から見ても限界に達していると申しますか、予期の効果というものは実現できないというように、私は断言してはばからないように思うのでございますが、総理は行政措置でこの連絡協議会というものをより以上強化していくためにはどうしたらいいかということについて、何か御腹案があれば承わりたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 内閣に連絡協議会を作っておりますが、この問題の推進につきましては特に私としては労働大臣にお願いをして進めておりますので、詳しいことにつきましては労働大臣よりお答えすることにいたします。

石田博英自由民主党労働大臣

○国務大臣(石田博英君) 今お話のように九月二十四日に閣議の決定をいたしまして、それを関係各省に通達はいたしたのでありますが、なかなかその具体的な実施という面になりますと、実は正直なところはかどらないのでございます。そこでこのたび内閣の協議会が中心になりまして、関係各府県に数班に分れた、まあ促進団とでも申しますか、そういうものを編成をいたしまして、それぞれ当該地へ派遣をいたしまして、各省間の調整及び中央と地方との間のあっせん等をやって、この施策の具体化に資したいと思って、今その実行の準備をいたさせておるところでございます。  それから行政措置だけで不十分であるから、何かその他のたとえば立法措置なりなんかをする必要がないか。また前年の国連軍引き揚げのときの閣議決定がその効果が思うように上らなかったのじゃないかと、こういうお話でございますが、私も実は鳩山内閣のときの国連軍引き揚げの対策については幾らか関係をいたしたものでございますけれども、実際その施策が推進をいたしません大きな原因は、現行法規上に障害があると言いますよりは、この関係各省間あるいは中央地方との関係、また具体的に離職していかれる人人の教育と申しますか、指導と申しますか、そういう点が現実的にうまくいかないところに非常に大きな原因がございます。たとえて申しますと企業組合と申しましても、企業組合を作ればそれでもうその仕事は完全に将来にわたってうまくいくというものではないのでございまして、なかなか、どういう企業組合を作らせれば仕事が長く続いていくかという具体的な指導、それを成功させるために融資あるいは要すれば国有財産の利用というようなことにつきましても、具体的な個々一つ一つの指導がほしいように思われますので、政府といたしましては行政措置の大綱を決定いたしますると同時に、今申しましたようなあっせん及び促進の処置を急速にとりまして、それによって効果を上げて参りたい。こう考えておる次第で、現在のところ立法措置その他は考えていないのでございます。もっとも行政措置を推進して参りまする過程におきまして、現行の法体系でいろいろ障害が生ずるようなことがございましたら、その解決のために別途研究をしなきゃならぬと思っておりまするけれども、前回の処置の経験では、具体的な個個々々のあっせんで効果をあげた場合が非常に多いので、またそれでむしろその現実的な啓蒙や指導をやっていく方がより多くの効果をあげられると考えておる次第でございます。

山田節男日本社会党

○山田節男君 なるほど石田労相は鳩山内閣の当時に、この国連軍の撤退に伴う駐留軍の労務者の対策、並びに特需の対策のために設けられた特別委員会の委員長をしておられました。非常な御努力を払われたということはもちろん私も承知いたしております。ただいま労相が何も立法化しなくても行政措置で、あっせんでいくのだということをおっしやいますけれども、そこで私は申し上げたい、たとえばあの鳩山内閣のとき、あなたが特別委員長をしておられたときの閣議決定に基きまして、その関係省に通牒をお出しになった。で、今お述べになった企業組合の問題に対しましても、その自分の働いておった基地の軍が撤退をして、残っておるたとえば洗たくの機械であるとか、あるいは自動車の修理工場というようなものを一つ利用して、何とか食っていこうということになりまして企業組合を作りましても、問題は資金の問題、たとえばこれは石田労相もよく御存じでありますが、呉の例を引いてみますと、せっかく企業組合を作りましてそれから通産省なり大蔵省のお世話によって、その物は何とか獲得したけれども、その運営は資金の問題。これは今回の閣議の決定に基く通牒を見ましても大蔵省から、銀行局長から、国民金融公庫あるいは中小企業金融金庫等に、何とか一つ担保条件の緩和とか、あるいは支払期日の延長というようなことによって便宜をはかってやるということになっておりますけれども、そういうような行政措置で何とかまかなっていくのだということを石田労相はおっしゃいますが、やはり企業組合を作ってみまして、最後にたとえば国民金融公庫なり中小企業金融公庫に行って金を貸してくれといっても、まず誰が保証するのだ。そこでみな行き詰っているわけです。その保証というものがそれじゃ県がやる、あるいは市町村がやるか、市町村にいたしましても県にいたしましても、何か政府はたとえば大蔵省なら大蔵省が、この者についてはたとえば一千万なら一千万円のものを保証してやるからこれを保証してやれ。こういうことになりませんと、今おっしゃったような工合にはこれはいかない、現実にいっていないのです。ですからそういうことをほんとうに徹底してやるのには立法化しなくてはいけない。これがために今回日本社会党が駐留軍関係者の離職者等臨時措置法案というものを出したのです。これはどうも当面の責任者であり、またあの鳩山内閣のときの特別委員会の委員長をして、もう経験を持っていらっしゃるその石田労相から、今のような行政措置でいくのだということは、どうも私腑に落ちないのですが、その点についてのほんとうに忌憚のない、実績をあなたは御存じですか。その実績から一つ可否を述べていただきたい。

石田博英自由民主党労働大臣

○国務大臣(石田博英君) まあ呉というところに限定されたお話でございますからお答えをいたしますのですが、今の企業組合、実は御指摘の洗たく工場、それから自動車工場、これは問題は融資の問題より、融資以前のたとえばその洗たく工場が一体呉とか広島とかいうような立地条件のもとで、重要な顧客であるべき国連軍が引き揚げたあとで、それが将来にわたって成り立つだろうか。あるいは他の業者を圧迫しないで成り立つだろうかというところに、大きな原因があったように私は思うわけでございます。  それから自動車修理工場の利用につきましても、いろいろの案がございました。私の承知しておりまする案の中には、アメリカあたりから古い自動車を買って参りまして、向うでその工場を利用いたしまして加工いたしまして、そうして東南アジアの方へでも輸出しようという案もございましたけれども、それがやはり経済ベースに乗らないというようなところに非常に大きな原因がございました。ただいま政府といたしましても大蔵省その他と連絡をいたしまして、国民金融公庫その他、そういう場合に資金を必要とせられる向きに対しましては、金がないという理由をもってお断わりをするということのないように、それからもちろん離職者が企業組合を作られて仕事を始められるのでございますから、他の信用条件と同じようなものを要求せられても無理でございますので、そういう点について特段の配慮をするように通達をいたしておるのでございますが、それよりやはり私が実際について指導が必要だと申し上げますことは、企業組合を作られるのに際しまして、企業組合を作ればいいというものではないのでございまして、やはりその企業組合のやろうとする仕事がその場所においてどれだけの将来性を持つのであるかというところから指導していかなければならないように思うわけでございまして、今必要なことはやはりそういう現実に即した指導をどうしてやるか。それを今度実行に移します場合においていろいろ各省との間において、あるいはそのほか関係者の間に意思の疎通が十分見られないときには、そのあっせんをして進んで幹事役になって前に進めてやるという現実的な推進体になるものが、今のところ一番必要ではないかと思っておる次第であります。  立法を必要とするということの一つの理由のうちでは、国有財産の払い下げ、貸与に関しまして、現行法規ではなかなか面倒な点もあるのでありますが、私は、法律の名前はちょっと忘れたのでありますが、先般の閣議で、今まで五十万円以下のものでなければ随意契約で払い下げのできなかったものを、二百万円までできるように改めました。予算、決算及び会計令臨時特例というのを改正いたしまして、ただいま申しましたような処置をとりました。そういう処置をとってできるだけ推進して参りたいと思っておるわけでございます。  それからさらにより以上大きなものの国有財産の処分利用ということにつきましても、いろいろ問題が起ったことは呉の場合も御承知の通りでございます。そういう場合も、法令上の問題というより、やはり法令を取り扱う一線官庁と政府の意思とうまく結びつけていく方が先であるように思われますので、そういうことをさせるために推進団というようなものを各地に出したい。そうして現実の一つ一つのケースに当ってお世話を申し上げて、それでなお進まない場合において、法令の改正というものが必要でございましたら、そのときに検討すべきものだ、こう考えておる次第でございます。

山田節男日本社会党

○山田節男君 実は私いろいろこの問題について御質問申し上げる準備をいたしておりました。約十五分ほど前に衆議院の内閣委員会の委員が参りまして、ただいま日本社会党が議員立法として提案しておりまする、駐留軍関係離職者等臨時措置法案、これを一つ与党と社会党とで通常国会に共同提案にしたい、一つ継続審議にしたいということが理事会で話が出ておる。私に意見を聞いて参りましたので、私は、これは石田労相、あなたが鳩山内閣時代にこの特別委員会の委員長をしていらっしゃるときにたびたび申し上げて、この問題は、敗戦国の結果として起きた一つの社会問題であり労働問題であるから、超党派で一つこの問題は処理していきたい。石田労相もそういう態度を今日まで、官房長官の時代もそうであります、労相としてもおそらくそういう態度でお臨みになっていると思います。そこでこの新しい政府の態度を私はまことに喜びに感じておる次第であります。ただ問題は、自民党が駐留軍引揚対策要綱というものをちゃんと作っておられます。九月二十四日にはあなたも参画されて、この問題に対する閣議決定に基く通諜が各関係省に出されております。もし石田労相がそのことをご存じなくて御答弁になっておるのじゃないかと思いましたから、私は十五分前に聞いた情報を申し上げて、その上で質問申し上げるのでありますが、この衆議院の内閣委員会でこの法案を一つ自由民主党と共同提案にしたいという、こういう御提案があったということは先ほど来私最初に総理に申し上げましように、この問題は一般の産業労働者、公務員とは特殊な問題である。こういうようなことからあなたの属している自民党と共同提案にしだいという申し入れがあったものと私は解釈する。そうでありますれば、私は非常にこれについて政府与党側のその誠意を信じまして、行政措置でなくて立法措置でやる、法制化してやる、このことは自民党においても決定されたものと私は了承いたしますので、これは岸総理もまだその点についての情報をお聞きにならぬかも存じません。共同提案でこれを立法化して、法制化によってこの措置を断行しようということでございますならば、私は非常に満足するのでありますが、先ほど来この行政措置でやるということを石田労相は重ねておっしやいますけれども、たとえば今申し上げている企業組合を作っても資金で非常に困る。自由党の駐留軍引揚対策要綱を見ましても、少くとも七億円ぐらいのワクは作って、そうしてその金を一つ融通するような方法を作ったらどうだということがあるのでございますから、どうもその点から見ますると、石田労相の今おっしゃる、これは金融というよりも運用の問題と申しますか、その立地条件なり仕事の性質、従ってその将来の見込みということに重点を置いて申されまするけれども、問題はやはり資金の問題である、こういうことに私はあると思うのであります。それは法制化以外には現行法としては、たとえば大蔵省にいたしましても、こういう立派な通牒を銀行局長の名前で出しております。しかしその事例をあげた国民金融公庫にいたしましても、中小企業中央金庫にいたしましても、今の最後の保証ということになってくれば金が出せない。保証するものがない、担保がない。こういうことになるのでありますから、どうしても私はこれは法制化以外に、今政府の行政措置でやってやろうとおっしゃることは、これは実現できない、過去が私は十分証明していると思います。この点私重ねて御質問申し上げますが、どうしてもこれを共同提案によってこの対策を法制化しよう、という情報を先ほど聞きましたのですが、従って私も総理、石田労相の御答弁も違うのではないかと思いますが、いかがですか。

石田博英自由民主党労働大臣

○国務大臣(石田博英君) 私は今お話のことは聞いておりません。私の申し上げておりますことは、これはどうも鶏が先か卵が先かというような話になるわけでありますが、今おあげになりました金融の問題にいたしましてもやはり具体的な合理性のある計画と、そうしてそれを実行できるスタッフの編成が先ではないか。それが所要の金融を要求いたして参りまして、そこから現在の措置でどうしても足りないということになりますならば、それは別ワクなり何なり必要だと思うのでありますが、今のところ私も現実に呉の場合などは一つ一つ企業組合に当って、いろいろ話を聞きまた私どもの意見も申し上げ、あっせんをいたしたのでございますが、どうも事業の経営というものに無経験の方がおやりになるのでございますから、底の非常に浅い、そうしてまた現実離れをした計画を立てる場合が非常に多いのであります。そこで私は立法化というようなことを考えます前に、立法化と申しましても社会党の法案を拝見しましても、一部分が違うだけでありまして、あとは政府の行政措置を法律によって規定しようとする、内容についてはそう大した違いはございません。そうなりますと、この内容をどうして現実的に実行に移させるかということに私はあると思います。その現実的に移させますのは、やはりこうなりますると現地へ出て参りまして、その現地の特殊事情に基き、また一人々々の御意見や御意向を伺ってあっせんし促進していくことが、ものを具体的に進めるゆえんであって、そこでその障害にぶつかったときに、立法措置を考えるべきだと私はこう考えておる次第でございます。

山田節男日本社会党

○山田節男君 時間がございませんが、先ほど申し上げましたように、法制化について与党もこれに協力するということがきまったのでございますから、法制化は通常国会で審議されると思いますが、それが成立するまで、やはり三月か四月あるわけであります。時間が制約されている関係上、私詳しく申しませんけれども、繰り返して申し上げまするけれども、今までの次官通牒と、あるいは閣議決定による各関係省べの通牒でありましては、なかなか所期の目的は達せられないことは、労相もいろいろおっしゃいますけれども、この事実は否定できないと思います。この行政措置を一つ強化していただいて法制化、立法措置が講ぜられるまで、一つ善処していただきたいということを強く要望いたします。  この問題につきまして、最後に私むしろ岸総理にお伺いしたいのでありますが、少くとも来年の四月までは四万五千名ないし五万名くらい離職するであろう。ことに人工衛星問題以来、アメリカの北大西洋並びに極東、東洋のアジアにおけるいわゆる戦略体制というものも非常に変更するであろうということは、最近のアメリカのいろいろニュースを読んだり見たりいたしましても、もしこれで非常な日本に駐留しておりまする米軍が、もっとよけい大量に撤退するかもしれない。こういうことになりますれば、残っておる十二万余の駐留軍の労務者というものは、やはりこれと同じような問題にぶつかるのであります。そういう面から申しましても、全部で十七、八万の者を単なる行政措置でやるということば無理でございます。でありまするからこの点私は強くお願いを申し上げておくのでありますが、もう一つ先ほど申しましたように、すでに駐留軍に終戦以来長い者は十数年、短くとも五、六年という者が多数あるのでございます。ああいったような特殊の労働条件下で働いておるのでありますから、これがいよいよもう撤退して離職するようになれば、少くとも六月の岸、アイクの声明以来失職する者で、それ以前から雇われておる者については、一種の立ち上り資金と申しますか、何か特別の資金というものを出してしかるべきものではないか。これは私がちょうどロスアンゼルスに十月の初めにおりまして、たまたま新聞を見ておりますと、米軍の撤退に伴い、日本の労働慣行と申しますか、特殊な習慣がある。それは、種の涙金と申しますかベネヴォレンス・アロワンスという言葉を使っております、アメリカにはこういう慣行はないけれども、日本にはそういう自分らが使っておった者がやめるという場合には、慰労金というものをやる習慣があるため、それに従って一割の退職手当を増額した。こういうことが出ておったのであります。アメリカすらそういうような自分のところで働いておった者について一種の涙金として、いわゆるベネヴォレンス・アロワンスというものを出しておる。ましてや日本の敗戦下並びに行政協定によりまして、一面からいえば国の代表的な格好で勤めておったのでありますから、何かの立ち上り資金と申しますか、見舞金と申しますか、涙金と申しますか、そういうものが若干、たくさんということを言いたいのでありますが、そのくらいの処置は私はしてしかるべきだと思うのでありますが、総理のお考えはどういうものであるか、これを一つお伺いしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 先ほどもお答え申し上げましたように、駐留軍労務者の特別な事情というものも十分頭において、解雇された場合の処置を講じなければならぬと考えております。また立ち上り資金の問題につきましても、駐留軍労務者からの陳情も受けております。私今の状態におきまして、これに対してはっきりしたまだお答をするだけ研究をいたしておりませんが、各般の事情を考えましてこの問題を円滑に処理するという点から、十令その陳情につきましても誠意をもって一つ検討してみたい、かように考えております。

山田節男日本社会党

○山田節男君 時間がありませんがもう一問だけ御質問したい。これに関連しておりますが、敗戦国として起きた別の問題でありますが、例の特需の問題であります。これも与党が非常に心配していただいておるのであります。石田労相もよく御存じでありますが、先月の上旬、相模原においてまことに忌まわしい労働紛争と申しますか、それは主としてアメリカ軍が相模工業の従業員を入れないためにバリケードを築き、あるいはブルトーザーを持ってきて、これは内容を述べると長くなるから、労相はよく御存じなので申しませんが、かような一つの特需工業は、会社と労働組合の団体交渉によっていろいろ労働条件をきめるのであります。あの当時神奈川の地労委がこれがあっせんをされておったということでありますけれども、その結果がどうあろうとも、これはやはり団体交渉をするのが今日の労働慣行であります。そこに事業主の一種の策謀と申しますか、労働者の当然の権利を阻害するような、ああいったような、この問題について中立であるべき軍がかように武装したりあるいはブルトーザーを持ってきたり、バリケードを築いて不当労働行為をあえてするということは、まことにけしからぬ話だと思うのでありますが、労働大臣としてこの問題に一ついろいろ御心配になっておると思いますので、こういうことは将来絶対に避くべきだということは労相自身も私変りないと思いますが、これについてどういうような御処置をとっておるか、どういう補償をするかということをお伺いしたい。

石田博英自由民主党労働大臣

○国務大臣(石田博英君) 軍が特需等の労働関係につきまして刺激的な行動をされることは、私どもの最も好まないところでございます。ただ事件の内容について、こういうことの具体的な事例が起ったことは報告を受けておりますが、それが今御説のように不当であるかどうか、言いかえますると、基地管理権と日本の国内労働法との関係、あるいは行政協定の解釈等につきましては、今それを法律上不当であるという断定を下す段階ではないのでございまして、今それらの関係について検討いたしておるわけでありますが、行政協定は御承知のように所管が外務省であります。しかし、労働問題はでき一得る限り当事者間の平和な交渉によって解決するように希望いたすところでありまして、そういうわれわれの考え方は十分伝わるように努力いたしておるつもりでございます。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 関連して。

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) 簡単にお願いいたします。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 簡単に一点だけ総理大臣と労働大臣にお伺いいたします。総理大臣は今、山田委員の御質問に対してすなわち駐留軍労働者の立ち上り資金の問題については、よく研究の上善処するというお答えをなすっておるわけでありますが、これは当然に予算を伴う問題だと思うのであります。従いまして好意的にお考えになって善処される上は、これは予算化についても来年度の予算においてお考えになるという御意向であるか、これをはっきり伺いたいと思います。  それから労働大臣については、まだ山田委員の御質問の途中だったかと思いますが、私の承知している限りは、これは確かに不当介入の結果を来たしている。軍の方に必ずしも悪意であったかどうかは、問題はあろうと思いますが、しかし、労使の紛争がまだ続いておりまして、まだ解雇の通告が労働関係法規から見て不当なるさなかにおいては、別に労働者は基地内に流れ込んで騒擾を起すという意味ではなくて、まだ就労権があるという建前で入ろうとした。そういう場合に、軍が経営者側だけの意見を聞いて、へんてこりんな、正規のパスでないものを、会社側で出したパスだけを認めて、正式に軍が発行したパスを持って入って平穏に就労の形をとって、そうして労働問題の、いわゆる法律上のやりとりについて、ある種の地歩を作ろうとしたこの労働組合のやり方を、事実上実力行使をして、経営者側にだまされたと申しますか、なれ合いと申しますか、そういうことをやっている。ここに紛争の大きな原因があった。従って、これは事情ももちろん調査していただけばわかることですが、もしそうだとするならば、やはり軍と労働組合との間にも、通常からそういう誤解のないように、軍が労働組合の代表と会わないというようなことのないように、そして結果においてそういう不当労働行為を起さないように、ぜひはっきりとした労働大臣の見解を、行政委員会等を通じて、日米合同委員会等を通じて明らかにしていただきたい。これがお願いできるかどうか。  それから第二点は、これに関連いたしまして、経営側がいわゆるさらにこれをあと追いをいたしまして、当該労働組合の関係役員を首切るというようなことをやっているようでありますが、これも私は行き過ぎだと思う。そういう行為は、やはり労使双方法律の建前のうちで堂々とやるべきであって、軍の力をかりて追い打ちをするということはよろしくないと、こう思いまするが、いかがですか。  第三点、これに関連いたしまして、ただいまのいろいろな点がございますが、特に特需労働者の方はこれは率直にいって、駐留軍労働者よりも退職条件が悪い。これはもう石田労相もよく御承知の通り。しかも、それはどこからくるかというならば、いわゆる出血受注であって、契約単価を、向うの公開入札と出血受注のために非常に押えられて、理屈からいえば、それは組合は組合の力で経営者にいってくればいいので、そのおしりをアメリカの方に持っていく必要はないというのはこれは理屈であって、事実上は多くの経営者はやはりアメリカ側に契約単価において多少かぶってもらわなきゃ困るというのは、これは私は当然だと思うのです。経営者側からいいというわけじゃないけれども、そういうところにアメリカの発注方式と内容に無理があると思うのですが、これを改善されるお考えがあるかどうか、その三点について労働大臣からお答えをいただきたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 第一点については、私に対する御質問でございましたからお答え申し上げます。  この点は十分に一つ検討をいたしまして、その結論として予算的措置を必要とする場合におきましては、予算的措置を講ずることは当然であります。

石田博英自由民主党労働大臣

○国務大臣(石田博英君) 私の申し上げておりますることは、その事実の調査、これは事実の報告は大体承わっております。その事実の法律的解釈について議論がまだ残っておるということを申し上げておるのでございますが、私どもはやはり日本の労働者の立場を守るという建前から、その法律的解釈についてもできるだけすみやかに結論を得たい、こう考えております。ただ方向といたしましては、軍は無用に刺激的なことを労使の関係について行なってもらいたくないということはあらゆる機会を通じて明らかにいたして参りたいと思います。  受注関係については、私はよく承知いたしておりませんので、その方の関係閣僚から御答弁を願うのが順当ではないかと思います。

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) どなたかいらっしゃいますか。——それでは次の機会にお願いいたします。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 通産大臣と、それから防衛庁長官からあとで御答弁願います。

山田節男日本社会党

○山田節男君 今、曾祢君に関連質問でとられたから、ちょっと……。

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) 簡単にお願いします。

山田節男日本社会党

○山田節男君 続いて私御質問申し上げることを曾祢君から関連質問としていたしましたので、これ以上私申し上げません。ただこの特需問題についてもう一つ、私これははなはだ政府に対して遺憾に思いますることは、この特需契約者はもちろんこれは私契約でございまするから、曾祢君も言ったように、いわゆる出血した、きわめて向うも値切るものであります。これが労働条件に非常に響いてくる。そこで、これは一昨年の一月でございましたけれども、日米合同委員会において特需の労務者に対しては解雇手当、いつもこれは問題になるわけであります。そこで日米合同委員会で、米軍と契約を結ぶ場合に、その原価計算の中に労務者の解雇手当というものを、これを算入すべし、このことはすでに合同委員会でも、アメリカ側もこれは承認しておるわけです。承認しておるにかかわらず、これが依然として実行されていない。これは石田労働大臣の所管ばかりではないかもしれぬ。これはむしろ外務大臣がしっかりしなくちやいかぬと思いますけれども、しかしこれは労働問題として当然石田労相として、先ほど御質問申し上げた不当介入と申しますか、これの是正と、それから向うがもう認めておることを実行するということについては、これは私は当然政府が責任をもって私は向うに迫るべきものだと思うのです。この点は一つ質問と申しますよりも、むしろ石田労働大臣として一つ強く向うにその実施方を要求し、また実現をするように最善の努力を払っていただきたいということを特にお願い申し上げて私の質問を終ります。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 先般地方制度調査会から、いわゆる地方制案なるものが答申されたわけでございますが、このお土取扱いにつきまして総理はどのようにお考えになっておられますか。まず伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 地方制度調査会の答申につきましては、目下いろいろな点からこれに検討を加えておりまして、まだ結論的には結論は得ておりません。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 御存知のように、現憲法におきましては、第八章に地方自治の一章を設けまして、地方自治の権利といいましょうか、規定いたしておるわけでございますが、総理はこの地方自治の権利と申しますか、住民の権利と申しますか、憲法に規定されておりますこの第八章はお認めになりますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 民主政治の上から申しまして、地方制度の問題はきわめて重要な問題でありまして、地方自治ということがその根底をなしておることは憲法が命じておることでありまして、これは十分にその本旨は尊重していかければならないと考えます。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 そういたしますと、憲法九十三条の二項の住民の直接選挙の権利、あるいは九十五条の住民投票の権利、こういうものも原則としてはお認めになると解してよろしゅうございますか。

郡祐一自由民主党自治庁長官

○国務大臣(郡祐一君) 憲法は地方自治の本旨に従って、国と地方との調和を保ちますることを現行憲法の一つの特徴としております。従いまして、憲法のそれらの条文並びにこれらと関連のある地方自治法の条文、それぞれその渕源から申しまして尊重すべきものであります。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 先ほどの御説明にもありましたが、総理は憲法の改正論者だとおっしゃられましたが、将来憲法が改正されるいうときになりましても、この地方自治の権利というものはお認めになっていかれるお考えでございますか。これは総理に伺います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 憲法の問題につきましては、私は改正論者だと申しておりますがいろいろな点において、なお考究すべき幾多の問題があると思います。私は地方制度、地方のなににつきましてももちろん現在の憲法の根本の精神というものは、これは尊重すべきものであると考えておりますが、しかし、それの運営等につきまして改善を要する点があるならば、これも合せてそういう際には十分検討を加えなければならぬ、かように考えます。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 第八章地方自治の権利で中核をなすものは、首長に対する直接選挙の権利、それから自治体の変更をなす場合の住民投票による決定権、こういうものであろうと思います。これは先ほど自治庁長官がお答えになりましたが、総理も当然そういう基本原則は、地方自治の権利として将来改正の場合も原則として押していくのだと、こういうふうに了承してよろしゅうございますか。総理大臣に伺います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 憲法がいっております地方公共団体というものをどういうふうに規定していくかということについては、私はまだいろいろな地方制度の変更とともに考究しなければならぬ点があるように思いますが、もちろん憲法の基本的な地方自治に対する原則についてこれは尊重すべきものである。かように見ておるわけであります。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 第二点の質問は、教育及び警察行政に関係する今度の地方制案の内容でございますが、御存知のように、教育基本法の第十条では、教育の不当なる支配というものを排除しておるわけであります。これは、当時制定のときの文部大臣が、不当なる支配というものは従来におきましては官僚並びに一部の政党の支配、将来については文部官僚の支配、あるいは一部地方の一般行政から起るところの危険、こういうふうに説明をされておるわけでございますが、この教育基本法第十条というものを将来御変更なさいますお考えでございますか。

郡祐一自由民主党自治庁長官

○国務大臣(郡祐一君) ただいまのお尋ねが地方制度調査会の答申に関連しておりまするから、私からその点を申し上げます。  地方制度調査会が答申しております、御引用になりましたのは、多分府県を改革して地方というものにしようかということについての答申につきまして、その場合に教育委員会、公安委員会の扱いをいうておる点だと思います。私は地方制度調査会が答申されましたのも教育なり公安なりについての考え方は十分それの中立的な立場、独立的な立場を尊重はいたしておりまするけれども、それが行政の機構といたしましては必ずしも現在の形を維持する必要はない。従いまして地方制度調査会の答申に基きますると、これらのものを廃止する考え方になっております。調査会はそこまで言うておりませんけれども、あるいは廃止して諮問委員会的なものにするというような考え方も一部の人にはあるかと思います。しかし、私はいずれにいたしましても行政機構を実情に合うように動かすということは必ずしもそれの立っておりまする原則を危険にするものでなければ、中立性を危うくするものでもない。従って、そのような意味合いでの地方制度調査会の答申、これは調査会の答申でございまするから、私が的確な説明をいたすのに適当かどうか存じませんけれども、とにかくそのようにして地方制度調査会の答申は理解することができると思います。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 教育基本法の第十条には、後段に、教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標とすると書かれてあります。今、自治庁長官が御説明になりましたから質問よりも御説明が先になったわけでございますが、公安委員会の点に触れますと、警察法三十六条では都道府県警察というものを認めておりますし、さらにその他三十八条には都道府県知事の官轄のもとに公安委員会というのが認められておるわけであります。地方制度調査会の答申は、この公安委員会、あるいは教育基本法第十条による教育委員会というものを明らかに廃止をしておる。こういう公安委員会を廃止をする。あるいはまた教育委員会を廃止をする。これは地方制度というものが教育、警察の権限というものを国に吸収することでありますから、こういういき方というものに御賛成になられるかという点が一つと、こういういき方に御賛成なされるならば、教育基本法なり警察法なりというのを当然変えなければならない。お変えになる御意思があるか。こういう点を、これは非常に重要な問題でありますから総理の御見解として承わりたいのであります。

郡祐一自由民主党自治庁長官

○国務大臣(郡祐一君) 総理の御返答をいただく前に、やはり地方制度調査会の関連でありますから私が申します。  これは加瀬さんも御承知のように、地方制案というものが現在の地方の行政が非常に広域になっておる、これを何とか国の行政と調和をいたそうという要求が一つと、それから何らかの形において、地方にいたしてもやはり自治というものは残しておきたい、これは自治の観念というものは非常に大事なものであるから、加瀬君が冒頭に御引用になったように、憲法でも地方自治ということを言うておるのでありますから、その自治の本質に合った形で残しておきたい、そういう両方の調和を満たしながら、地方案というものができております。これについて、直ちにいかようにいたすかということは、なかなか大問題でありまして、根本に触れる問題でありますけれども、地方制度調査会の地方案そのものを考えてみますならば、これで、委員会という形を、行政委員会を廃止いたすといたしましても、それによって、自治体の、あるいは自治の要請というもの、従来の都道府県警察というような考え方というものが直ちに抹殺されるものではない、どういう形かにおいて、地方というものが、両方の要請が調和されまするならば、ここに今までの考え方とさして変らない結果というものを生み出すことができるのじゃないか、そういう形で制度ができるんではないか、そういうことで地方制度調査会の答申は理解することが適当だと考えております。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 総理にお伺いするのは、的確に具体的な問題で伺った方がいいと思いますので、質問を改めます。今、郡長官はそう御説明なさいますが、地方制なる答申案というものは、郡さんのような御解釈には、一般的に解釈すればならないと思います。地方公共団体でない、国家機関の性格を持った中間の団体を作るのだ、これは憲法による地方公共団体じゃないと提案者は説明をいたしておるわけであります。そこで、教育委員会なり、公安委員会なりというものは廃止をされるわけであります、地方制案によれば。そこで、総理に伺いたいのは、こういった教育や警察というものの国家への吸収といいますか、教育、警察権の国家権力による統括といいますか、こういう方法をおとりになるお考えがあるかどうか、もう一つは、公安委員会なり、地方教育委員会なりというものは廃止をするという形をお進めになるかどうか、同じことでございますが、二つの面についてお答えをいただきます。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 先ほども申し上げました通り、地方制度調査会の答申については、各般の事項について、政府としては十分一つ検討をいたしたいと思っております。検討中でございますので、結論はまだ出してないのであります。ただ、今御質問になりました、教育とか、あるいは警察というものは、法においてその中立性をあくまでも保持するということは、これは非常に大事なことであることは言うを待ちません。しかし、教育委員会や、あるいは公安委員会というものは、その意味においてどうしても県に残しておかなければならぬものであるかどうかということとは、おのずから私は別に考えてみたらいいのじゃないかと思うのでありまして、そういうことが、将来の教育、あるいは警察というものの運営の上から見まして、いずれがいいのか、各般の利害得失を十分に研究した上で結論を出すのがしかるべきものである。しかし、その基礎におけるところの、両方とも中立性は持たせなければならぬ。一つの政党であるとか、あるいは特別の官僚等のなにをもってこれに介入し、その中立性を害するということは望ましくないということは言うを待たないのであります。しかし、機構としてどういうふうに運営していくかという問題については別個に考えていいのじゃないか、そういう点で十分に検討してみたいと思います。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 ただいまの御答弁は、地方制案というものには相当問題点がある、そこで、これを実施するというまでには十二分に検討をなさる、このように了解をいたします。  そこで、同じく地方制についての質問の第三点でございますが、この小委員会といいますか、起草委員会の方々の御意見を承わっておりますと、この委員会というものは、憲法に違反するとか、違反しないとか、そういうものを論ずる委員会じゃない、地方制度そのものを、憲法をたな上げにしてきめて行けばいいのだ、こういう御意見の方もありまして、極端な方は、現憲法などというものは当然改めるべきものだ、そんなものにかかずらってはおられない、こういう御意見もございます。こういう、初めから憲法をたな上げをするような立場に立たれて出発をされるということは、私は非常に問題があると思いますが、総理は、もう一度申しますと、憲法をたな上げして、当然改正せらるべきものだから、そんなものは問題にしなくてもいいの、だというお立場をどのようにお考えになられますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 現在憲法が効力を持っておる限りにおきまして、国の根本法として、すべての法制がこれに違反し、もしくはこれを無視することのできないことは、私ここで言うまでもないことであります。よく議論がされますが、私は、憲法を順守すということにつきましては、誠意をもってこれを順守するものである。たとえ改正論を持っておるからといって、憲法が施行されており、効力を持っておる間、これを無視したり、あるいは軽んずるというようなことは、これは絶対に許せないものだ、それと改正論とはおのずから別に考えなければならぬと考えておりますから、今のような議論でもっていろいろな問題を論議することは適当でないと、こう思っております。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 しかし、一般の風潮といたしましては、非常にこのように内閣の諮問機関でありまする調査会においてすら憲法軽視の議論が堂々と展開せられるわけでありまするので、憲法軽視の風潮というものは相当びまんしておると私どもは解しておるのであります。総理は、ただいま憲法九十九条は当然そのまま認めて尊重して行くということでありますから安心するわけでございまするが、一般の公務員関係におきましても、こういった憲法軽視の風潮というのは相当根強く広がっておるというふうに思うわけでございまするが、この点総理はどのようにお考えになられておられるか。それから、憲法軽視の行為というものが、総理の御見解とは別に一般の公務員の間に行われるといたしましたら、そういう君たちに対しましてどういう御処置にお出になられるか、この二つの点について伺います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は、公務員について特に綱紀の粛正という、従って、それは法規を厳守することにあるということすら申しておるのであります。いわんや、国の大本である憲法を尊重し、これを順守すべきことは、それはすべての公務員が課せられておる神聖な義務であると私は考えるのであります。従いまして、そういう意味において、決して軽視するという風潮が公務員の中にびまんしておるとは私は見ておりませんけれども、いやしくも、これを軽視し、これを順守しないということがありますならば、これは当然改めさせることについて適当な措置を講じなければならぬことは言うを待ちません。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 次の質問に移ります。  次は、総理のおっしゃる暴力追放の問題について伺いたいと思います。総理は、三悪追放ということをうたいまして、特に、去る施政の演説におきましても、その中でも暴力の追放というものを力強く説かれたわけでありますが、この暴力の追放のワクの中には、基本的人権に対する侵害ということも当然大きい暴力としてお考えになられておられると了解するのでありますが、その通り考えましてよろしゅうございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は、暴力につきましては、あらゆる暴力を否定して、そして真の平和な民主政治の確立を念願をいたしております。今おあげになりました基本的人権に対する暴力というものはいかなることを具体的に意味するのか、私ちょっと了解に苦しみますが、基本的人権に対して暴力が加えられるということであるならば、もちろん、それは断じて許してはならぬはずであることは言うを待たないことであります。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 基本的人権に対する暴力ということよりも、基本的人権の侵害というものを暴力と見るかどうかということでありまして、特に私は最も悪質なるものは国家権力を背景にいたしまして、官憲が一般の国民の人権侵害という行為に出ることは最大の暴力と考えてよろしいと思うのでありますが、総理の御所見はいかがでございましょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 官憲が権力を乱用して、そうして基本的人権を侵害するようなことは、これは暴力であろうがなかろうが、断じてこれを看過することは私はできない、こう思っております。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 それでは、政府はいかなる理由にせよ、人権を侵害するような方法、たとえば警察が秘密警察、特高警察というような組織で国民の生活を脅かす、こういうような方法をとってはおらない、こう考えてよろしゅうございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は現行の警察制度のもとにおいて、かつてありました特高であるとか、秘密警察というがごときものが存在しておるとは考えておりません。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 総理も新聞で御承知だと思いますが、福島大学におけるスパイ強要問題というのは、今私があげました例に当てはまると思うのであります。若干時間をかりましてその内容をここに申し上げますと、森川武二君という者が三十二年二月福島県警備係の巡査根岸弘康氏なる者にスパイを強要されました。そのときに金銭の授受がありました。三月十五日ごろ森川武二君の家庭の事情等を詳細に根岸巡査が説明をされまして、森川君の父が無免許で医師を開業しておることを暗にほのめかして、もしも、警察に協力しなければ父の身の上にもいろいろの問題が起る、こういうことで森川君の警察についての作業というものと結びつけをいたしました。あとは五月中旬に自治委員になることを勧め、さらに自治委員会に出席するために旅費を何度か支給をいたしております。六月三日から七日にかけて、東京の全学連の大会がありまして、これに出席を強要いたしまして、その資料、報告メモ、組織、こういったようなものを根岸巡査によりまして全部根岸宅において写真撮影をいたしております。このときには新川三男なる巡査部長も同席いたしておるそうであります。その後六月十六日には共産党に入党することを指示いたしましたが、これは入党することが不可能であったそうです。さらに、九月一日には二千円を支給されまして、全学連の中央委員会に出席することを指示されました。それから九月二十二日、二十三日、全学連の拡大執行委員会に出席する意思はありませんでしたけれども、根岸から無理に出席しろという強要を受けました。その際根岸巡査の指示は、あまりあばれるな、もし逮捕されるような事情、ができたら、なるべく偉い人に会って、福島の根岸に連絡してくれ、ということを依頼しろという指示があったそうであります。その後、自分自身で非常に矛盾を感じまして、この点を他の自治委員の者に報告されましたことからこの問題が明らかになって参りました。これは森川君たけではございませんで、同学における橋本君なんかも同じような立場に置かれておりますし、さらに神戸大学におきましても、外語大におきましても、京都同志社大におきましても、こういうふうな問題が、いわゆるスパイ強要事件というものが行われております。  これらの事実を見ますときに、私どもは、一般の国民が非常に秘密警察組織による生活に対する圧迫といいますか、不安というものを感ぜるを得ないという立場に追い込まれつつあるという事象が行われておるということを認識せざるを得ません。この点、どういうふうな総理は御所見をお持ちでございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) おあげになりました事実につきましては、私詳しい報告を受けておりませんので、事実を承知いたしておりません。先ほど申し上げましたように、今日の警察として、新憲法下における新しい警察制度において、昔の制度とは違った公明な明るい警察にならなければならぬことは根本の精神であると思います。従いまして具体的の今の事例につきましては、私、事実を明らかにいたしませんけれども、趣旨としては、あくまでも昔の特高やあるいは秘密警察を現在において作り上げるというような考えは、政府としては全然持っておらないということだけ申し上げておきます。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 これが警察とのつながりにおいて行われておるのではないというふうにお考えになりますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) ただいまもお答え申し上げましたように、事実そのものについて私は正確な報告を受けておりませんので、今何とも御返事が、その事態をどう考えるかとか、あるいはどうだというようなことにつきましては、お答えができないことを大へん遺憾と思います。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 私どもはここに福島県警察の警備計画なるものを持っております。この警備計画によりますと、昭和三十二年度班活動運営要領というものが託されております。こういうスパイ組織は、班というもので運営されておるというふうに思われるわけであります。この中で、第一点に、A、B作業の基本方針の反省というものが書かれまして、活動の中心人物をマークし、これが人的、物的観念と、K、Lまたは監視協力者によってこれに対し可能な作業またはA作業を進めると決定されておるが、A、B作業の推進に当っては一般協力者の配置はむしろ対象の人間的面の把握(生活面、心理面からくる弱点、動揺、親和性の発見等)に連なる協力者の獲得という着意を欠いたため、多角的な作業をなし得なかったので、この点を留意するとあります。  それで第二点には、班体制の強化という項がございまして、それには警察組織の特別な別動部隊ではなくて、一般の形態のもとにおいては不可能な仕事と対決するため、必要やむを得ない特殊事情から設置した特殊な形態の部隊であるから、班の最高原則は秘匿性の無条件的確保にあることを、班員はもちろん警察部内各署の幹部の理解を高揚するため、警備課長が積極的に諸般の施策を推挙することとするとあります。  第三点といたしましては、新体制組織といたしまして、B班は日共の県連委員会の実態究明、班員六名、A班は日教組G、県労Gに対する究明、班員五名、〇セ班は朝鮮総連本部の究明、人員五名、こういうこと、が書かれてあります。さらに班指導といたしまして「班所在警察署警備係長を交えた作業指導委員会の恒常化」二点といたしまして、「班検討会の強化のため警備課長は指導係とともに毎月一回以上出張参加し、班作業の総合検討と事後の作業計画を策定する」こう書かれております。そして、さらに注といたしまして、「着眼」ということを記してあります。「着眼」によりますと、「特に人的結びつきの強いものを選定し、弱点を抽出し、または取り組み得る条件があれば最大限に活用して条件を作為する等多角的なAB活動を推進し、〇協体制の確立をはかる。」こういうことが出ております。これが真実警察から出ておるかどうかということは私どもも保証をいたしませんが、少くとも警察から出ておるのではないかと思われるこういうふうな一連の動きが、それから班活動というスパイの強要の現われ、こういうものを見ますときに、総理がどのようにお考えになっておりましても、少くも警察機構の一部におきましては、かつての特高みたいなものがまた復活しつつあるという不安を持つのが当然であると思います。この点について総理のお答えをいただきたいと思います。

石井榮三警察庁長官

○政府委員(石井榮三君) ただいまお尋ねの点につきましては、実は本年本月二十一日付のアカハタに福島県の昭和三十二年度班活動運営要領及び班作業計画の問題についての記事が載っておりまして、私どもそれを見まして、果してそういう文書を福島県警察において作成したことがあるのかどうか、その状況を調査いたしたのでございます。その結果、報告をここで御報告申し上げたいと思うのでございますが、そのような文書を警察の公文書として作ったことはないという報告に接しておるのでございます。しかし、それにしても、全然火のないところに煙が立つわけはないので、何か類似のものはなかったかということを重ねて調査をいたしたのでございますが、その結果判明いたしましたことは、県警備課の係の者が本年初めころ警備情報の収集の万策についていろいろと研究をし、自分の私案というものを一度作ったことがある。それをお互い同僚と研究討議をいたしたのでございますが、それは適当でないということで廃案にいたしたことがある。従ってその当時、係の者に若干部数作ったものを研究資料として渡したのでありますが、そういうふうに廃案にいたしました関係上、それは即時廃棄処分にいたすようにしてあったのでございますが何かの拍子にその一部が外部の方に漏れて手に渡ったのではなかろうか。それがアカハタの記事の出所ではながろうかと、こういうふうな報告に接しておるのでございます。  警備情報の収集につきまして、もとより警察の仕事ではございますけれども、どこまでも個人の権利、自由を侵害することのないように、慎重なる配慮のもとに合法的に許されたる手段、方法によらなければならないことは申すまでもないことでございまして、福島県警察のみならず全国各都道府県の警察ともそういう点につきましては、十分細心の注意を払ってやらせるようにいたしておるのでございます。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 今、長官の御説明によりますと、一つの私的なプランが流れただろうということでございますが、この警備計画の中には、昨年から引き続いて行われておったということがはっきりしておるのです。三十二年度の警備計画が三十一年度に行われておったとは言えませんけれども、A、B作業と基本方針の反省という中には、去年までやってきたことの組織についての反省というものが書かれております。それからこの森川武二なるものがスパイ活動をしておったということを自白いたします前に警備計画が漏れました。そのときに警察の一係長は、警備計画が漏れてもお前らの前名は出ておらないから心配することはないということを話しておるわけです。  それから、森川武二君そのものと警察官とのつながりでありますが、これは私どもも調査の関係上何人も聞いてみました結果、根岸君とどこで会ってどういう証人があるかということは私どもも確保をいたしております。従いまして、また根岸君なるものも根岸君個人がそういったような資料を収集するために森川君を使ったということには考えられないわけであります。同じような警備計画が新潟県にも現われておる。これは長官が責任をもってそういうことがないということをおっしゃるのでございましたならば、私はそれを信じたいと思います。少くもこういったような就職でさそったり、家庭の事情というもので脅迫をしたりするような形であれ、なかれ、いずれの方法にいたしましてもスパイ組織というものが厳然としてどこかにあるということでは、われわれは不安でたまりません。この点をもう一度明確にお答えをいただきたい。

石井榮三警察庁長官

○政府委員(石井榮三君) スパイ組織というようなものは持っておらないのでございます。そういう指導を私ども第一線警察に対してはやっておらないのでございます。  今御指摘になりました森川君というのは先般新聞等で報道せられました福島大学の学生のことであろうと思うのでございますが、この森川君と福島県警察の警備係の根岸巡査との関係でございますが、根岸巡査が決して森川君に対してスパイを強要したというようなことは私どもの報告では全然ないのでございまして、森川君と根岸巡査とが知り合いになりましたいきさつは私の報告に基いてのお答えでございますが、本年の春ごろ、たしか三月であったかと思いますが、根岸巡査の友人である元福島大学の学生、すでにおそらくこの三月に卒業された方だろうと思いますが、その人と森川君と同道で根岸巡査の下宿にたずねてこられた。それが面識の最初であるというふうに聞いております。森川君はいなかから大学に入っておられまして、福島市内に親戚身寄り等もないために孤独感を持っておられた。たまたま根岸君という警察官と知り合いになったので、今後いろいろと交際をしたいというお話でありまして、根岸巡査は森川君に対して、そういう事情であるならば、いつでも遠慮なく遊びにいらっしゃいと、こういうことで森川君は自後しばしば根岸巡査を下宿にみずから進んでたずねていくと、いろいろ世間話をしたり、あるいは学生生活のことなどについて語り合う仲になったと、こういう関係にあるのでありまして、決して根岸巡査が森川君にに対してスパイを強要したというようなことは絶対にないと、こういう現地からの報告でございます。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 この問題は担当の委員会でまたさらに質問をいたしたいと思いますので、保留をいたします。  あと二点質問を総理にいたしたいと思います。その一点は、参議院の全国区制を廃止するという御見解をお漏らしになったようでありますが、参議院の全国区制を御廃止なされるのか。  もう一つは、総理の言う汚職追放というようなことからいうならば、もしも汚職追放の問題に触れるならば公職選挙法なり政治資金規正法なるものにまずその改正のほこ先を向くべきであるのに、これらをたな上げをして全国区制の廃止ばかりをうたっておるのは、これは一体どういうわけなのか、この点について承わります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 選挙制度調査会に諮問をいたしまして、衆議院の選挙法につきましては御承知の通り、選挙制度調査会からの答申が出ております。参議院の選挙法また地方の公職選挙法につきましてもいろんな実績や、あるいは事情の変化等に基いて検討を加えるべきものがあるということで選挙制度調査会に諮問をいたしております。諮問の答申を待って政府としては善処したいと考えておるのでございまして、今参議院の制度だけをやっているのはどうだというふうな御質問でありますけれども、そういう意味において、参議院選挙制度と地方の選挙に関する問題を諮問いたして、選挙制度調査会の答申を待っておるわけでございます。  また、汚職追放について、政党の政治資金規正法や、あるいは公職選挙法そのものについて改正を加える必要はないか、というお話でありましたが、私は、やはり汚職をなくするためには、一つの選挙をきれいにし、選挙を公明にするということ、また政党の政治資金というものを公明にするという必要は、私は従来からも痛感をいたしております。いろいろ法制的な研究もいたしておりますが、まだ結論を得ておらないであります。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 最後に、地方交付税について伺います。地方交付税は、森委員の質問に対しまして、首相お答えになっておりますので、衆参両院の決議の線を尊重されるものだというふうに了解をいたします。そこで、引き上げの根拠でございますが、三十一年度末に地方財政健全化の措置が講ぜられまして、このときは、地方財政上最も大きな問題でありましたいわゆる公債費の問題は、昭和三十二年度において解決するべきものとしてあとに残されました。そこで、このたびの昭和三十二年度では、この問題がしかし完全には解決しておりませんでしたので、今度の交付税率の二七・五%というものがかりに実現するものといたしますれば、これは当然今までの懸案でありました三十一年度以来の地方財政の問題を処理するのであると、こう解釈してよろしいか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 地方交付税の引き上げの問題につきましては、先日森委員にお答えをいたしました通りで、もちろん政府としては、充分に両院の御決議の趣旨はこれを尊重すべきが当然でございます。その最後の決定は、三十三年度の予算全体を総合的に決定するときに決定するつもりでおります。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 大蔵大臣に。地方交付税法の建前を変更するお考えがありますかどうか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) 地方交付税の増額に関する提議につきましては、私も詳しく承知いたしておりす。たた、これと三十三年度予算との関連におきましては、ただいま ほかのことと同様に申し上げる段階に今ありません。

加瀬完日本社会党

○加瀬完君 ちょっと質問のお答えが違うのです。交付税法の建前というものを変えるような交付税法の改正をお考えになるかどうか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) 私、今考えておりません。

北村暢日本社会党

○北村暢君 私は、山田委員に続きまして労働問題について二、三質問をいたします。時間が制約されておりまするので、具体的な問題について簡明に質問をいたしたいと思います。  まず第一に、本年の六月、ILOの第四十回総会において、労働者側代表から出されました一九四八年の結社の自由及び団結権の擁護に関する条約の未批准国による批准の促進に関する決議案、並びに一九二八年の最低賃金決定制度条約の未批准国による批准の促進に関する決議案が提出され、六月の二十五日の本会議においてこれが承認を受けたのは御存じの通りでございますが、この二つの決議案を出すに至りましたことは、私は最近の労働問題の中で非常に重要な意義がある。そしてこの二つの条約に対して、日本政府は、まだ国会に対して批准の手続をとっておらないということについてお伺いするのでございますが、まず最低賃金制の条約についてでありますが、これの重要性については先ほど栗山委員から触れておりまするので、内容的なこまかいことは私は申し上げません。ただ現在の日本の経済が過大成長の危機に見舞われている、あるいは国内の経済が不均衡の発展をしている、この問題が非常に大きな問題である、こういうふうに言われております。そのくらい日本の経済も非常に発展してきたのでございますけれども、ここでやはり考えなければならないことは、経済自体の大企業と中小企業、あるいは近代化学工業と農業といったようないろいろな産業自体の中の不均衡もあるのでありますけれども、今申したように非常な大企業と中小企業との均衡ということが、賃金較差ということに非常に大きく表われて参っております。この点については、政府の統計資料によりましてもはっきり現われておるのでありまして、一九五五年における一千四百七十三万人の調査の中で、月額平均が一万二千七百円にすぎない。その月額においても八千円未満の労働者は五百二十七万人に及んでおる。このことからいたしましても、非常に低賃金にあえいでいる労働者が非常にたくさんおる。そこで今日の経済の中で、これだけ発展した経済の中で考えられることは、経済の拡大というよりも、むしろ均衡、あるいは安定というものが望まれる。こういうことでございますから、戦後の労働者が資本蓄積に非常な協力をして、今日非常な不均衡にあえいでいる、しかも低所得としてあえいでいる者が非常な数に上っている。さらに政府のいろいろな宣伝で、生産性向上、完全雇用ということに向っておるにもかかわらず、現実には非常に膨大な失業者をかかえている。本年の二月の統計によりましても完全失業者が六十一万人おる。こういうふうに出ておりますし、さらに不完全失業者は一千万人に上ると言われておるのであります。そういうような点からして、最低賃金制に関する必要性というものは、今日非常な労働者の要求となって現われていることは事実であります。従ってわが党からもこの問題に対して非常にへり下った最低賃金法なるものを提案し、そして現在継続審議になっておる、こういう事態にあるわけでございます。  そこで、一体政府はこの最低賃金制の基本的な考え方において、いわゆる条約第二十六号の最低賃金制の条約について、この精神に基くところの最低賃金制、いわゆる今政府の考えられているような最低賃金協議会的な、いわゆる経営者だけが一方的にきめる最低賃金でなくして、労働者側、あるいは使用者側並びに政府が三者対等の立場で最低賃金を決定する、この方法についてはいろいろあるようでございますけれども、とにかくそういう原則に従ったところの最低賃金制というものについてどのように考え、この条約に対していまだに批准しないでいるということについて私は非常な疑問を持っておりますし、また政府としては非常に怠慢でないかというふうに考えまするので、まずこの点についてお伺いいたしたいと思います。  それからもう一つは、結社の自由及び団結権の擁護に関する条約の件でありますが、これは最近問題になっております公労法の第四条の三項にある組合員の範囲の問題で、これが憲法の二十八条の労働者の団結権に抵触するんでないかという疑いのあることで、最近国鉄当局と国鉄労働組合、あるいは機関車労組等において問題の起っている、しかも敗訴になっているのでありますが、この点についてもいらざる紛争が起きている。公労法そのものが非常に難解であり、わかりにくい法律、しかも憲法に違反する疑いのある法律であるというふうに言われておる。今度社会党も公労法の改正案を提案するというふうにいたしておりますが、この問題を起している結社の自由、団結権の擁護の点について、この条約についてもすでに十年経過しておって、なおかつ今日批准されてないという点について、この二条約が今日まで批准されてないのはいかなる理由によるのか、まずこの点についてお伺いいたしたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○国務大臣(石田博英君) お答えをいたします。  最低賃金制につきましては、御指摘のように大企業、公企業の賃金と中小企業の賃金との較差が漸次拡大しつつありまする現状に対しまして、恵まれない中小企業の労働者諸君の賃金の下からのささえをいたしたいという目的が第一点、第二点は、これによりまして中小企業の経営形態の近代化をはかり、その生産性を高めて参りたいと思いますることが第二点、第三点は、経済上の国際信用を維持いたしたいと考えますることが第三点でありまして、以上三点の目的をもって、来たるべき通常国会には法律案を提出いたすべく、目下準備中でございます。その内容はただいま中央賃金審議会において御検討を願っておりまして、中央賃金審議会は十二月上旬までに大よその構想を立てて私どもの方に御報告をいただけることになっておりまするので、御検討を願っておる途中において、私どもの方からとやかく案の内容について一方的な、あるいは一定の方向を持った意見の発表は差し控えたいと存じておりまするが、ILOの決議せられました最低賃金に関する決議を尊重いたして参りたいと思っておる次第でございます。  第二点は、結社の自由に関するILOの決議をなぜ批准しないか、こういうお話でございますが、この決議は、ただいま御指摘のように公労法四条三項、地公労法の五条三項と抵触をいたす疑いがございます。それからいま一点は、適用除外例の中に消防夫、あるいは海上保安庁の職員、あるいは監獄の職員等が除外されておりませんので、それは日本の現状にそぐわない点があるという点が第二点でございます。  この二つの理由から、目下その批准を検討しつつある状態でございますが、しかし二つの決議とも九月の下旬であったと思うのでありますが、労働問題懇談会にお諮りをいたしまして、今労働問題懇談会におきまして、この二つの条約の批准についての御意見の取りまとめを願っておる過程でございます。

北村暢日本社会党

○北村暢君 大体事情はわかりましたが、この条約は最低賃金の方はもう三十年前から決定された条約であります。それから団結権の問題も十年であります。この間検討されてきたというのでありますが、今言われます中央賃金審議会で、あるいは労働問題の懇談会等において諮問する、こういうことのようでございますが、これは非常におそきに失するんではないか、それは故意に私はおくらしてきたというふうにしか受け取れない。それが国際的な問題となって今回のILOの総会において取り上げられ、しかもこの決議案の決定によりまして、来年早々に調査団がくるというようなことをも伺っているんです。そういうような点において政府は非常に窮地に追い込まれた、こういうような感がするんです。そういう点からして、今労働大臣も指摘されておりますように、条約に違反すると思われる節があるということをお認めのようでございますから、根本的に公労法というものを改正する意思があるかどうか。今わが党の出しておる公労法に対して賛成する意思があるのかどうか、この点についてお伺いいたしたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○国務大臣(石田博英君) ILOの決議は尊重いたします。しかし、ILOの決議に日本の法律が支配されるという立場ではないと思います。私はたとえば他の決議にいたしましても、日本のたとえば労働基準法、あるいは労働法規の法の建前、立て方とILOの決議と、立て方において違っておる場合もあるのでありまして、従って国内法との関連、あるいは国内事情との関連において、日本が批准すべきか批准すべからざるかを決定すべきものであると思うのでございます。日本が今までILOの決議を批准いたしましたものは二十四ございます。数がございますから、ついでに申し上げておきますが、ILOの加盟主要国のうちで決議を採択した数はフランスが七十三、イギリスが五十七、イタリアが五十七、ドイツが三十三、日本が二十四、インドが二十三、ソ連十八、カナダ十八、中国十四、アメリカ七と、こうなっております。いずれもILOの決議あるいは勧告をされました百七の数を下回っております。これはそれぞれの国の国内事情があってこういう事情になっておるのでありまして、私どもは冒頭に申しました通り、ILOの決議は尊重いたしますけれども、それに支配されるという関係ではなく、日本はやはり日本の必要な情勢、日本の状態のもとにおいてILOの決議を尊重してゆくという建前でゆきたいと思っておりますから、別に調査団が来られても窮地に立つような気持は全然ございません。しかし、私どもはこの決議をなるべく尊重し、それに対する態度をすみやかにきめたいという趣旨で現在もうすでに中央賃金審議会、あるいは労働問題懇談会に、すでに三ヵ月ほど前からお諮りをいたしております。先ほども申しました通り、中央賃金審議会の方は十二月中には結論をちょうだいすることになっているようなわけでございます。

北村暢日本社会党

○北村暢君 その点については、もう見解の相違になって参りますから、これ以上申し上げませんが、もう持ち時間が少いようでございますから、簡単に大蔵大臣にお伺いしたいのですが、このたびの年末手当の件について給与法の改正がなされておりますが、これについて予算的な措置が講ぜられておらないで、人件費等の節約等により、まかない得る範囲内で定める割合により支給することといたしました。こういうふうに補正予算を組んでおりません。これについては、わが党が一般会計の補正予算を組めということで相当強く要求したのでありますけれども、ついにこういう結果になったのでありますが、実際にこのことは人件費の節約等だけでやれるのかどうか。また給与総額をオーバーした場合においては、これは年度末補正をするのかどうか、この点についてお伺いしておきたい。  もう一つは、こういう予算を伴う法律が、しかも国会が開かれているにかかわらず、補正予算を組まないで出すということは非常に悪例を残すのではないか、こういうふうに考えるのですが、この点についての見解を承わりたい。  もう一つは地方公務員のことでございますが、先ほどの地方交付税の点も関連するわけでありますが、従来いつもこの年末手当の問題になりますと、地方公務員の問題が問題になるのであります。現在再建団体である県が十八県もある状態の中で、実際に全部で大体三十九億幾らかと思いますが、地方公共団体がこれをこなせるのかどうか、また特別な交付税というようなものを大蔵当局が見てやる意思があるのかないのか、この点についてお伺いいたしたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) 年末手当の〇・一五、これは人事院の勧告にこたえまして増額するわけであります。その財源をどうするかというお話でありますが、これは今お話がありましたように、人件費等を節約いたしまして、既定の予算の範囲内でできます。それで予算の補正をいたさなかったわけであります。  それからそういうふうなことが起るのはどういうわけか、できるのはどういうわけかという意味もあったわけでありますが、これは予算の編成当時は相当推定の計数に基いております。またその後において人件費については、いろいろと異動もありますので、これは実際上従来ともできておるわけであります。なお地方の公務員についての問題ですが、これもやはり同様にやっていけると私は考えておるわけであります。なお詳しくは自治庁長官からお話がございます。

郡祐一自由民主党自治庁長官

○国務大臣(郡祐一君) 地方公務員につきましても、節約または自然増、その他一時資金繰りのために融資をいたす場合はありましても、支給できないという心配はございません。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 ちょっと関連して……。

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) 簡単にお願いいたします。

湯山勇日本社会党

○湯山勇君 郡長官にお尋ねいたしますが、そういう操作が他の公共事業、その他のものに影響なくやれるかどうか、その点を一つ明確にしておいていただきたい。

郡祐一自由民主党自治庁長官

○国務大臣(郡祐一君) 地方財政の現状から見まして、本年は可能だと考えております。

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) 午前中に八木委員の質疑中、東南アジアに対する医療団派遣の問題に関する政府の答弁が保留と相なっておりますので、この際これを許します。

堀木鎌三自由民主党厚生大臣

○国務大臣(堀木鎌三君) 午前中ちょうど衆議院の社労委員会に行っておりましたので、御答弁がおくれまして申しわけございません。  今朝の新聞紙も報じておりますように、ビルマから派遣団員が十五日の日にこちらにおいでになって、約二週間こちらの医療関係の各種の問題を視察されることに相なっております。これは基くところは、御承知の通り総理大臣から御答弁がありましたように、総理大臣が過般の東南アジアを訪問されましたときに、話が起った問題でございます。これについていろいろな将来の構想を練りますためにも、また向うの保険大臣が日本の医療の事情を視察したい、という御内意をわれわれの方に漏らされておりましたので、外務省を通じて打診いたしましたところ、快く政府の招聘に応ぜられるというふなう事態に相なったわけでございます。日本の医学及び医術あるいは薬学の方におきましても、最近の進歩につきまして、各方面に、相当な信用を博しておるという観点から見ますと、東南アジア諸国と医事問題を通じまして親善を深めますことは、最も時宜に適したことではなかろうかと、私どもは考えておる次第でございます。従いまして、ビルマ以外にも各国の事情によりましてはこれに応じたい。ただこれらの要請に応じます私のためには、むしろ先方の意向にミートしたと申しますか、先方の意向に応じて協力態勢を作りますことが一番いいのじゃなかろうか。こちらからいろいろ考えて押しつけがましく考える必要はないので、先方の意向に応じて今後の問題を処理して参りたい、こういうふうに考えておるような次第でございます。もしもこれが発展すれば、私は非常に両国間の親善関係を増進いたします上に寄与するのではなかろうか、また寄与するように今後の行政を持って参りたい、こう考えておりますような次第でございます。

中田吉雄日本社会党

○中田吉雄君 大へんおそくなって恐縮ですが、私は地方自治並びに総理が政治と取り組まれる心がまえの問題、外交、防衛、その他について、御質問申し上げたいと思うわけであります。  まず第一に、地方自治と政党との関係に関してお伺いいたしたいと思うものであります。御案内のように、明後十三日は、岸総理御主催のもとに、東京都の体育館におきまして、天皇陛下の御来臨を得まして、地方自治施行十周年記念の祝典が盛大に行われるわけであります。私たちは、新自治法が施行されましてから、過去十ヵ年を回顧いたしまして、そのすこやかな将来の発展を所期しますためには、いろいろなされねばならぬ多くのことがあると思うわけでありますが、私は、乏しい体験でございますが、一番大事な問題は、憲法第九十三条の規定に従いまして、地方住民が選びました知事や県会議員、市町村長、市町村会議員というものは、それが、よし社会党であろうが自由民主党系であろうが、住民の意思としてこれを尊重いたしまして、そして地方自治に対して、中央政党が不当な圧力や干渉を加えずに、その自主性を守ってやるということが大切ではないかと思うわけであります。あちこち選挙に参ってみますると、自由民主党の大幹部の方ですら、今は自由民主党の内閣だ、自由民主党に連ならなくては、地方交付税や起債、補助金はもらえないという演説を随所でやられるわけであります。このことはよく考えてみますると、反対党を認めない、憲法九十三条の基本的な精神を私はじゅうりんするものではないかと思うわけであります。私は、このことが地方自治をになう者に与えます最も大きな悪い影響は、長いものに巻かれねば損だ、平衡交付金も地方交付税も、起債も補助金ももらえぬというようなことになって、地方自治の基盤である、民主主義の基盤である地方自治において最も必要なところの健全なる批判精神、自治精神の発達を、これほど阻害するものはないんじゃないかというふうに考えるわけであります。これは自由民主党とされてだけでなしに、わが党も、もちろんそういう考えを持って、節度のある態度をもって地方自治に不当な圧力や干渉や党勢拡張に使わないようにすることが必要ではないかと思うのですが、岸総理の御所見をお伺いしたいと思うわけであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 地方自治に対して、政党のあり方としまして、今中田委員のお考えは、私も全然同感でございます。

中田吉雄日本社会党

○中田吉雄君 そこで第二に、私は地方自治の正常な発展を、特に中央官庁がどういう態度をもって臨むべきかという点についてお尋ねいたしたいと思うわけであります。幸い岸総理に同感の意を表していただいたのですが、実際中央官庁と自治体との関係をみますと、そういうふうになっていませんので、ぜひとも御一考を願わなければならぬわけであります。といいますのは、私が全国地方公共団体を調査いたしますると、自由民主党の有力な幹部の出ておられます地方公共団体は、その多くが大体けたはずれに多い赤字を抱えまして、財政運用も大体よろしくないわけであります。この点私は問題が非常に重要ではないかと思うわけであります。たとえば今をときめく自由民主党の政務調査会長であります三木さんの出身地の徳島は、十二億の赤字をかかえています。また元幹事長かと思いますが、保利さんの佐賀県は十一億の膨大な赤字をかかえまして、ともにこの両者は再建法の指定を受けまして、準禁治産者のような状態であります。大へん恐縮ですが岸総理の御出身の山口県も、山口県は全国の四十六の都道府県を見ても、上から数えて十指を屈する中にある富裕団体であります。この団体が六億の赤字をかかえて、自治再建の指定を受けているということは、なかなか意味深長だと思うわけであります。さらにまた佐藤栄作さんの地元である山口市はどうでしょう。これは人口がたった八万にすぎませんが、二億六千の膨大な赤字をかかえまして、全国五百の都市のうちでは、最も悪い財政運用のテイピカルな市であります。このことは私はもちろん財政構造上の理由もあると思います。しかしその大きな理由は、まず各省が地元出身の有力な国会議員に頼まれましてか、あるいは頼まれぬでもその意をそんたくして、財政規模の限度をこした補助金や起債の割当をするか、あるいは有力な国会議員が出ておられるのだから、単県事業をやったって何とかしてもらえるとか、あるいはそういうことをサゼスチョンしたりしてやった場合が私は多いのではないかと思うわけであります。そういう線で私はやはり中央政党の責任が非常に重いと思うわけであります。私は総理や三木会長が国政を論ぜられる前に、まず県の状態はどうでしょうと申し上げたいわけであります。従って、私は封建的なこの事大思想を払拭しまして、正常なる自治の発展をはかりますためには、補助金や交付金、起債等が公平に、必要に応じて正しく配分されるためには、何より中央官庁というものが政党から中立性を守っていかなくてはならぬと思うわけであります。大へん総理のところのことを申しまして恐縮ですが、私は少くとも山口等の事情を見ても、総理大臣や有力な代表がいるのだからということが、少からず影響していると思うわけであります。こういう具体的な実例からいたしまして、地方自治のすこやかな発展、十周年記念を迎えた現在、私は大へん恐縮ですが、お考えをいただくことも必要だと思うわけですが、いかがですか。

郡祐一自由民主党自治庁長官

○国務大臣(郡祐一君) 具体的な県市をおあげになりましたから、私から申し上げます。今おあげになりました県市は、お話の中にもありましたが、財政構造上の理由、税収入が少い、あるいは比較的、たとえば佐賀にいたしましても徳島にいたしましても、山口市にいたしましても、——山口県は財政的には比較的いい、しかしながら同時に御承知のように累次の災害を受けている、こうした点を考えまして、かつ現在の、中田君よく御存じの交付税の制度にいたしましても、全く合理的な配分をいたして、恣意を差しはさむ余地がございません。そうした制度で、これは古くさかのぼりますならば、私ども反省すべきものがあるかもしれません。しかし現在の状態においては、地方財政についてはごく合理的な基準で、そしてむしろただいま起っておりますそれらの赤字団体の解消の方に努力を進めて参りたいと思っております。

中田吉雄日本社会党

○中田吉雄君 いろいろその赤字のよってきたる理由については申し上げませんが、そこで私は、それでは郡大臣に、一体徳島や佐賀の財政再建はどうされるか、私が今両県のことについていろいろ批判いたしましたが、しかしこれは過去のことです。私たちが現地に参りまして実情調査をいたしましたところ、もはやこれ以上遷延することを許さぬと思います。しかも政府が許されたところの徳島のごときは十五年であります。知事選挙を四回もやらぬと再建できぬという状態であります。佐賀県のごときも十年で、二回半も知事選挙をやらぬと再建できぬというようなことじや、全く私は机上のプランにすぎないではないかと思うわけであります。従って私はこの両県を初め十数個の地方公共団体は、再建法の現在のワクでもっては再建の限界の外にある。何らか別途の措置を講ずる必要があるじゃないかというふうに考えているわけですが、一体大蔵省と自治庁はどういうふうに考えておられるでしょうか。地方交付税の測定単位や、単位費用を改めることによってこの問題が解決できるというふうに考えておられるでしょうか、あるいは再建法の手直しが必要だと考えておられるでしょうか。私の見るところによりますると、大蔵大臣が何と言われようと、おそらく通常国会にも一ぺん補正予算を出されると思います。剰余金、いろんな関係で来年の財政規模等の関係で出されると思う。それが必ず交付税として私ははね返ることが予想されますので、それを地方交付税の測定単位、費用を改めて、一挙にこの問題を解決すべきじやないかというふうに考えるのですが、いかがでしょう。

郡祐一自由民主党自治庁長官

○国務大臣(郡祐一君) 佐賀県にいたしましても徳島県にいたしましても、今日非常に窮迫しておりますのは、歳出を見ますると、公債費が大部分であります。それ以外は著しく圧縮されております。従いまして、お話のように久しきにわたる赤字が出るわけであります。これらに対して交付税率の引き上げ等、公債費対策が講ぜられますると同時に、財政力を測定をいたしまして、そうしてそれによって補正をいたす、あるいは府県間の格差等をあらためる、こうしたような各般の方途を講じまして、将来にわたる赤字の抜本的な対策に当りたいと思っております。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) 三十二年度に予算の補正をするかと、こういうふうな御質問ですが、まだ年度の半ばを過ぎた程度でありまして、今後の事態の推移を見ないと、今のところ何とも申し上げかねます。

中田吉雄日本社会党

○中田吉雄君 次に岸総理に財界人の登用についてお伺いしてみたいと思うわけであります。岸総理は藤山外相を初めとしまして、小林開銀元総裁、缶藤大阪商船社長、堀田住友銀行頭取、植村経団連理事長ですか、渋沢さん、その他財界人を好んで政界並びに官界の重要な政務に委嘱されておりますが、これは私は政務と実業との職分の差を混同されるものとして、日本政界のために決して喜ぶべきことではないと思うのですが、総理の御所見をお伺いしたいと思うわけであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私が昨年の暮に外務大臣に就任いたしましてから、特に経済外交の推進を重視いたしまして、この方面に力を用いてきておるのであります。経済外交の推進につきましては、これまたいろいろな点において考慮しなければならぬこと言うを待たないのであります。その一つとして、従来いわゆる財界において働いておる外務省のプロパーの外交官につきましては、従来経済的な素養といいますか、これは一般の役人としてそういう点において十分でないというような批判もいろいろ出てきております。また今の経済外交を推進する上におきまして現地についていろいろの経済事情を十分に観察して、これに関する知識経験に基く意見を徴して、これを外交の上に取り入れていくということは、経済外交推進の一つの策としては必要であると、こう考えまして、今おあげになりました人は、ことごとく私の申します経済外交推進の意味において協力を願い、働いてもらった人々でございまして、いわゆる広い意味において、もちろん外務大臣は政治家として、ただ外交だけじゃなしにいろんな点もございましょう、国務大臣としてはありましょうが、その他の人々は移動大使として最近世界の各地における経済事情を調査してもらい、これに関する報告を聞いて経済外交の推進に資したいという見地から、これらの人々の協力を求めたわけでありまして、決して今中田委員のおあげになりますような、何か政治と経済と混同するというような考えでは毛頭ございませんから、どうかその点は十分に御理解をいただきたいと、かように思います。

中田吉雄日本社会党

○中田吉雄君 御趣旨はよくわかりますし、私藤山さんやその他あげました方々に何の恩怨もありません。また藤山さんは、岸総理が不幸中、巣鴨におられます際、いつ再起できるかわからなというような岸さんに対して、あたたかい友情を捧げられたというようなことは、心のあたたまる思いがするわけであります。しかし、どうしても見のがしてはならぬことは、たとえば最近の評論雑誌等におきましても、藤山さんは岸さんのあとがまとして副総裁、やがて総裁、そういうこともあって、東京の第一区からぜひとも立候補するんだというようなことが言われ、必ずしもこれが巷間の浮説ではないと思われる節がないでもないわけであります。私はここで大へん恐縮ですが、ラスキーはデモクラシー・イン・フライシス、——危険に立つデモクラシーという本の中に、実業家と政治家というもののカテゴリーが根本から違う、歴史的に見ても、広く世界的に見ても、大実業家で大政治家として成功した者は世界にほとんど例がないと、たとえばフランスのル・シュール、イギリスのボナ・ローというような大実業家がしばしば政界の要路に立ったが、全部失敗であったということを言っているわけであります。そして彼は、本来実業家というものは金もうけの専門家である、そうして彼らは自分自身の狭隘な階級以外に責任を持たないものである。政治家は国民を構成する全体の配慮の上に立たねばならぬ。物の考え方が根本的に違うのだというようなことを言っているんな点から論証しているわけであります。私は財界人を賠償の使節団として送られることについても、御趣旨もわからぬではありませんが、しかし、財界人は、ともすれば、たとえば不況時代においてはプラント輸出ができる、貿易が盛んになるからいいんだというように、業界の利益が先に立って、賠償問題の基本的な立場からの解決でなしに、そうしてあとあと後代の国民が負わねばならぬ重い賠償を負わせる。ある人は、鳩山さんがフィリピンに行かれたときには、あっちの言う通りで、子供が使いに行ったと同じじゃないかというようなことも言っておるわけであります。さらにまた一万田蔵相が言われましたように、日本の手持外貨は二億数千万ドルしかない、こういうことも、これは決して政府だけの責任ではなしに、その相当部分というものは財界が負わねばならぬわけであります。当然預けられた資本に対して最大の利潤を追及するという、そのことが国家的な利害と必ずしも一致しないというような点から、私はわが日本社会党が総評との関係をもっと自主的にすることが必要なと同様に、 (笑声)私は保守政党におかれても財界からもっと自主性を保たねばならぬときに、財界人との結びつきを必要以上に多くすることは、決して好ましいことではないと思うわけであります。  いろいろな例をあげて申し上げたいと思いますが、私は藤山さんは個人としてはりっぱだと思いますが、このことは政務と実業とを混同し、財界の人を必要以上に政治にプレッシャーをかけ、そして好ましくない結果が出るのではないかと思って憂慮するものであります。大へん恐縮ですが、そういう点についてもう一ぺんお答えをいただきたいと思うわけであります。  さらについでですから総理は来国会にあっせん収賄罪の立法措置をとると言っておられますが、私はその前にあるいはそれとともに政治資金規正法を改正いたしまして、政府から補助金や租税特別措置法で減税の恩典を受けている法人、国の工事を請負っている土建会社、国有林の払い下げを受ける法人等は、政治献金を禁ずべきではないか、私はこれこそ、今のような状態は合法的な最大のあっせん収賄ではないかということを考えまして、この措置を伴わないあっせん収賄罪は、立法されましても呑舟の魚を逸するということになって、画竜点睛を欠くことになるのではないかと考えるのですが、いかがですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 実業といいますか、経済なり産業を運営することと政治とにおいての相違は、今中田委員のお話の通りであります。あるいは私のごとく過去において役人をしておった官僚といいますか、行政官としてのことと政治とまた違うと思います。あるいは言論人でありましても、あるいは組合活動をされておる、組合の運動をやられておる人も、それと政治というものとの間についてはやはり区分しなければならぬ問題は皆あると思います。しかし、民主政治というものは、私から申し上げるまでもなく、そういういろいろな経歴を持った人がやはり政治に志し、政治にねいて自分の貢献をしたいということから、いろいろな過去の経歴を持った人が、やはり国民の間から選ばれて政治家となってくるというとろにあるのではないかと思うのです。初かから政治家として養成するという特殊のコースがあって、それだけが政治家としてというような考え方には私は同意しないわけであります。従いまして、財界人からも、あるいは言論界の人も、あるいはいろいろな社会運動をやった人も、いろいろな方からりっぱな政治家が生まれ、そしてわが民主政治を完遂することは望ましいと思います。ただいまさっきおあげになりました人々につきましては、私は先ほど申し上げましたように特に経済外交を推進するという意味において、これらの人々の従来の経験なり、知識なり、あるいはそれらの人々が経済人としていろいろな事態を見ての意見というものを、一つ私としては十分聞いて、そうしてその上に立って経済外交を推進したいという意味で、これらの人々の協力を求めたわけであります。もちろん今お話になりましたように、保守党も、あるいは革新政党である社会党も、背後にいろいろなプレッシャーのグループを持って、それに動かされていくということは、これは政党として、公党として望ましいことじゃございませんのでわれわとしてももちろん財界からそういうことをしましても、財界に従属するとか、財界に対上てわが党の独自性を失うというようなことは毛頭考えておらないわけであります。  次にあっせん収賄罪の問題でありますが、これは私は通常国会に提案する意思を持って成案を得るように検討をいたしておるということを答弁いたしました通りでございます。なおそれよりもむしろ進んで、あるいはそれと並行して政治資金規正法の改正をする意図はないかというお話でございます。これもすでに社会党からたしか提案された改正案が継続審議になっておると思います。なおいろいろな点において、さらに広い見地においてこれが改正の必要があるという議論もございまして、私は趣旨としては政党の資金というものを公明正大なものにすることが汚職をなくし、政治を明朗化するゆえんにおきまして、そういう趣旨に沿うた改正につきましては、十分に一つ考慮いたして参りたい、こう考えております。

中田吉雄日本社会党

○中田吉雄君 次に、この点は同僚の岡田、曽称両委員から質問があった点ですが、ソ連のミサイル兵器と人工衛星打ち上げの国際政局に対する影響をどう判断されるかという点をお伺いしたいと思うわけであります。御案内のように、戦後アメリカがとって参りました外交は、原水爆と戦略爆撃機の圧倒的な優位、それと対ソ包囲基地の三位一体からなる原爆外交であります。NATO、バクダッド機構、SEATO日米安全保障条約というようなものは、その具体的な実践であります。すなわち、米ソの間にはさまれました諸国は、核兵器の優位にたよりまして、自国の安全をアメリカにリンクしたわけであります。しかるに人工衛星の打ち上げでソ連が成功したということは、中距離弾道弾、長距離弾道弾兵器は、決してソ連のから宣伝でないということを実証したわけであります。すなわちこのことは、アメリカの外交、防衛のバック・ボーンでありましたところの基地と戦略爆撃機の価値に対して、著しくその価値を減殺してきたものであります。この連鎖反応はやがてNATO、SEATO、バクダッド、日米安全保障条約に対しまして、時の経過とともに解体的な影響を及ぼすかもしれません。外電は国際政局の地すべりだとまで言っているのであります。すなわち、ミサイル兵器の出現は、アメリカのアイク・ダレス外交、これと一体の関係におられますところの岸外交に対して、私は少からぬ影響を及ぼすものと思いますが、これに対する評価はいかがでありましょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 最近、ソ連の人工衛星の打ち上げの問題、また大陸間の弾道兵器の出現というようなことが、非常な社会的に大きなショックを与えておるということは、これは事実でございます。これが将来人類の生活の全面に非常な影響を持つべき、もたらすべき大きな一つの問題であることを、私はこれを承認します。それが果して、私が念願しているような人類の幸福のために、世界平和のための方向に、大きな役割をするものであるか、あるいは反対の方向をとるものであるかということは、私は、いろいろなこれに対する意見等につきましても二つの見解があるようでありますが、私としては、あくまでもこれは世界人類の平和と福祉に大きな貢献をするような、そしてそれに基いての新しい文化なりあるいは経済なりが開けてくることを、心から望んでおるものであります。しかし、現実の防衛の上に、あるいは現実の外交の上に、しからばどういう影響を及ぼしているかという問題につきましては、私は、現在のところにおいては、特にアメリカ側に対する心理的な非常な影響というものは、これは見のがすことはできませんけれども、現実のこの防衛やあるいは外交政策について、どういうふうに具体的に変更を生ずるかというような問題につきましては、いろいろ意見としては私も承知いたしておりますが、十分にこれは検討していかなければならない。いたずらにこれが飛躍して、わが国の防衛やあるいは外交の基礎というものをぐらつかせるようなことがあっては、私はならぬ。十分にこれらに関する動向というものは慎重に検討してこれに対処していかなければならぬけれども、今日のところ、私は、非常に早急にこれが変更を及ぼすものとして、日本の外交や防衛の根本方針を変えるというような意思は持っておりません。

中田吉雄日本社会党

○中田吉雄君 ミサイル兵器の出現が平和になるか戦争になるかという問題ですが、私は、外交と国の政治のいかんで、どちらにもなると思うのですが、この際私は、ミサイル兵器、ロケット外交の時代においては、岸総理が対決されると申されている中立外交、自主独立外交を、もう一ぺん謙虚に検討されることが必要ではないか。岸総理はワシントンで、中立政策をとらぬと言われただけでなしに、たとえば先般の八月二十五日のアメリカン・ウィークリーに中立政策をとらぬということをわざわざ寄稿されていますが、ほんとにミサイル時代においても、その岸総理の持っておられる外交政策に一点の憂慮も持たれずに、全幅の信頼をお寄せでございましょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は、しばしば申していますように、ほんとうに心の底から平和、日本が戦争に引き込まれないということを念願して、あらゆる外交政策や防衛問題、すべてをきめていかなければならぬと考えております。非常に何か中立の政策をとれば日本は絶対安全であるかのごとき言論が行われておることは、私は非常に遺憾だと思います。これは国際の情勢というものを正確に判断したら、そういうものではないと私は思います。私が中立政策をとらないということが平和主義を捨てた議論であるようにとられることは、私は非常に遺憾でございます。決してそういう意味でないということを御了承願いたいと思います。

中田吉雄日本社会党

○中田吉雄君 私も絶対的な安全保障というものはないので、どっちをとった方がより比較的安全であるかという立場に立つものであります。しかし、私は、アメリカの対ソ優位というものが飛行兵器の出現によってぐらついておる際に、その優位を前提として打ち立てられた外交方針というものに、日本は何のためらいもなしに従ってもいいでしょうか。たとえばアメリカの海軍のミサイル専門家であるミュラー大佐は、先般大統領に報告いたしまして、ソビエトの中距離弾道弾の発射基地から二千四百キロの射程内にある日本、沖縄、フィリピン等は軍事基地としての価値が危ぶまれるということを言い、オルソップ兄弟、ピアソン、あるいはリップマンというような人は、こういう米ソの原水爆の独占にアメリカが敗れた際には、その間にはさまれた国というものはだんだんと中立政策をとっていくだろう。特にリップマンのごときは、実際日本はその政策をとる方が一番安全なんだ。日本の中立政策を嫌うアメリカ自身すら、強国として台頭するまでは、アメリカ・モンロー主義という中立政策をとってきたのだ。そうしてまた、このことは必ずしもアメリカの外交と国防政策と矛盾するものではないと、こういうふうにまで言っておるわけですが、私は、ソビエトの中距離弾道弾、そうして長距離弾道弾等が出現しておる際に、アメリカに基地を貸して、そうして自国の安全が保障されるというのは、愚者の楽園にもたとえるべきことであって、ミサイルの出現については、大東亜戦争のあやまちを再び犯さぬために、私は謙虚に考えてみるべきだと思うわけであります。何も私は、岸総理のとられる外交が直ちに戦争に結びつくとは申しません。このミサイル兵器の出現、原水爆の大量にできたことは、だんだんと社会党と自由民主党との外交、国防政策とを近寄らせていく契機にも私はなるわけで、私たちもあらゆる角度から自由民主党のとっておられる外交政策を謙虚に反省いたしますが、総理としてもその点お考えいただきたいと思うわけであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) もちろん、われわれは常に日本の安全ということを頭に置いて、また平和ということを頭に置いて、外交その他の政策の根本をきめていかなければならぬと思います。ただ、われわれが自由主義の立場を堅持し、これらの国々との協調に重さを置いて考えておりますことは、アメリカが優位であるからこれに従っておって、今度はソ連が優位になったからまた優位の方に回っていくというような考え方ではないのでありまして、やっぱり根本的にわれわれの理想としておる平和の状態を頭に描いて考えておるわけであります。しかしながら、もちろんこの平和を維持し、また日本の安全を保障する上におきまして、いろいろな意見に対しましては謙虚な心をもって十分これを検討して、日本の安全をはからなければならぬ、また世界の平和を作り上げることに協力をしなければならぬことは、言うを待たぬと思います。  ただ、よく私は国際的な情勢を考えてみまするというと、その国の地理的な立場であるとか、あるいはその国が持っておるいろいろな工業力であるとか、あるいは技術力というようなものを、やっぱり頭に置いて考えないというと、ほんとうの中立であるから中立政策をとれば安全である、より安全であるというふうに、簡単には私は結論ができないと思うのであります。日本の立場を十分考え、また将来われわれがこの世界に現出し、作り出そうとしておる平和、それはあくまでもやっぱり人間の自由とわれわれの人格の尊厳が確立された上の平和ということを頭に置いてわれわれは進めていきたいと、かように考えておるわけでございます。

中田吉雄日本社会党

○中田吉雄君 津島防衛庁長官にお尋ねいたしますが、ソ連の弾道兵器における優位というものは、米国のわが国に対する基地政策にどういう影響を及ぼすか。米国のミサイル兵器における対ソ劣勢を——私の考えでは、アメリカはソ連に対してミサイル兵器は劣勢である。この劣勢を補うための戦略爆撃機の基地として、沖縄だけでなしに、日本の基地というものは一そうその評価が、ミサイル兵器の劣勢を補うために高まってくるのではないか。さらにまた、将来は長距離弾道弾の基地として見直されて、米国の対日基地政策というものが永久化してしまうのではないかというようなことを考えるのですが、この見通しはどうですか。  それから、もう一点だけお願いします。核兵器の通常兵器化という観点から、わが国の防衛計画をどう考えられるか。アメリカの報告によりますと、現在米英ソが五万発の核兵器を持っておって、核兵器というものは今や特殊な兵器でなしに、通常兵器となってしまったということを言っておりますし、先般もダレスが九月十八日号のフォーリン・アフェアーズに新戦略論というものを発表いたしまして、日本は核兵器を装備する有資格国だという指摘をいたしまして、日本はきわめて近いうちに核兵器を持つかどうかを決定せねばならぬ、もし持たぬのならば、日本の自衛隊というものは単に機動力ある国内治安用の部隊にすぎない、だから持てと、こういうことを迫っておるわけであります。ほんとうに国民をごまかさずに、軍備で平和を保つという考えからいかれるならば、ダレス理論の指摘しておるようにおそらくならなければならないと思うわけですが、いかがですか。  いろいろ局地戦争、その他財政問題にも言及したいのですが、時間も過ぎましたので、質問はこれだけにいたします。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。  第一点は、最近の新兵器においてアメリカがソビエトに先を許しておるという点でございます。その点は、ICBMの実験に関する限りは、明らかにソ連が一歩先んじたということを認めます。しかし、当面の事態と、ここしばらくの間においてこれらの状態がどう調整されるかという問題が残っているわけでございます。結局においては、この新科学兵器の進歩は非常に飛躍的な発展段階でございまして、科学技術においても、将来両陣営がおのおのその研究を重ねた結果において、適当なバランスを保つようになるものと期待されておるのが、全体の観測でございます。  第二の点でございますが、米駐留軍の基地がどういった変化を起すかという問題かと承知するのでございますが、今日米軍の駐留軍は漸次撤退の態勢をとっており、現に陸上部隊はすみやかな撤退を開始したわけでございます。海、空についても、わが自衛隊の増強に応じて漸次撤退する計画を持っておるということが、岸総理及びアイゼンハワー大統領の共同声明においてうたわれており、また現に海、空部面においても漸次縮減の態勢をとりつつある現状でございます。なお、基地においての装備がICBM等の新兵器によって、これが装備されるかという問題でございます。これは、岸総理もたびたび本件について意見を申し述べられ、私も同様の見解を、いわば政府の方針でございまするが、わが国はこの核兵器の持ち込みは認めないという方針で一貫しているわけでございます。  なおまた第三に、日本の自衛隊の今後の装備の問題。世界全体に諸核兵器が非常に発展しているという事実もございましょう、これを日本の自衛隊に装備さすかどうかという問題についての御質問があったようでございます。これは、今日までそういったような話を持ちかけられたこともございません。また在来兵器の科学的研究、装備の増強ということについては、自衛隊としては極力その研究もし、開発も進めているわけでございまして、目下のところそういった話を受けたこともなく、またそういったような考慮をいたしておらないと、こういう状態でございます。  そこで問題は、わが防衛はそれで不安なしやということでございます。今日の事態において、なかなか一国の手で一国の防衛を担当し得るということは、これはいずれの国も困難だと思います。そこに一つは、いわゆる国連の集団安全保障の体制、また日米安全保障の体制といったものと相待って、国の防衛を全ういたしたい、こういうような考えをいたしているわけでございます。

山田節男日本社会党

○山田節男君 関連して……。

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) ごく簡単に、簡略にお願いします。

山田節男日本社会党

○山田節男君 先ほど中田君の総理に対する質問の中に、総理は、あくまで二大陣営の対立の中において自由国家群の一員としての立場を堅持すると、こう申されておりましたが、御承知のように、ソ連の人工衛星の打ち上げが成功したということになりまして、たちまちイギリスのマクミラン首相がワシントンに参りまして、アイクと会談をしたのであります。それはとりもなおさず、NATO防衛体制というものが根本的に再検討されなければならない。それと同時に、従来のアメリカのヨーロッパ、これはアジアもそうでありますけれども、アイゼンハワー、ダレスのいわゆる共産主義諸国に対しましてのロール・バック・ポリシー、巻き返し政策、これが、人工衛星が成功したということによって、ヨーロッパの、西欧諸国におきましても、NATOのメンバー諸国におきましては、それは非常なショックを受けて、再検討しなくちゃならぬということになっております。おそらく、来月NATOのメンバー諸国の会合があることになっておりますが、マクミランがアメリカに行った主要な会談の一つであったところの、すなわちこの人工衛星をソ連並みに追いつく、そのためにはNATO加盟諸国並びにその他自由国家群におけるところの知能を動員してプールを作って、そうしてこの事態に対処する、こういうことになるように新聞も報じておる。一昨日のジャパン・タイムスを見まするというと、明らかにアメリカはそういう、この人工衛星をソ連に追いつくのではなくて、それ以上のものを作るために、緊急に、何と申しますか、知能を動員する。そのときに、これはアイゼンハワーが、先週のたしか六日だったと思いますが、放送をやったときにも、そういうことを言っております。そうして一昨日のジャパン・タイムスを見まするというと、日本に対しても、人工衛星を成功せしむるためには、日本のそういった科学者をも動員とは——援助を受けるというようなことを申しておるのであります。この今の総理の中田委員に対する御答弁を聞けば、アメリカから、もし人工衛星の速急の成功を期するためにも、日本の科学者も手伝ってくれ、こういう申し入れがあった場合には、日本としては欣然としてそれに参加する、こういうおつもりなのかどうか、この点を一つお伺いしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 科学の発達につきまして、実は科学というものは私は本来国境を超越しておるものであり、また世界の平和及び人類の幸福のためにこれが利用せられるという意味から申しますというと、そういう国境を超越して協力できるものは、あるいは国の主義主張は違っておりましても、協力をして、そうして世界人類の幸福に寄与すべきものである。ちょうど地球のいろいろな何を測定する観測につきまして、共産国も、あるいは自由主義国も協力して、南極の基地においていろいろな観測をしておることも、御承知の通りであります。こういうことが一番望ましいと思います。そうしてわれわれはあくまでも平和のために、また人類の幸福のために、こういう科学の技術が利用されるということを念願をいたしておるわけでありまして、そういう意味における協力なり、あるいはお互いがお互いの成果を交換し合うという事柄は、私はできるだけ協力していくことがいいと思います。  ただ、今おあげになりました、また私も新聞等において見ておりますが、NATOのこれは、言うまでもなく、一つの軍事的目的を持っておる集団安全保障の体制であります。これにわれわれは参加する意思もございませんし、そういう軍事的意思をもって協力するということは、われわれは考えておらないということでございます。

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) 吉田君に申し上げます。理事会の申し合せによりますと、社会党の持ち時間は約十分を残すのみとなりましたが、吉田君の当初の申し出が二十五分でございましたので、委員長は、特にこの際、若干の延長については十分考慮をいたしますが、右お含みの上御発言を願います。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 最後のわずかな時間、質問をお許しいただきまして、恐縮です。総理初めもうしばらくお付き合いを願いたいと思います。  この十三日、あさってでありますが、沖縄を中心にしまして、米軍の演習が相当大規模に行われるということでありますが、この規模、もちろん極東軍司令官が総括をされるのだと思うのでありますが、昨年のドラゴンフライ同様、日本からも参加せられることが予想せをられますが、その十三日からの演習について御存じなのか、それから日本からも参加するかどうか、それらの点について御存じならば、防衛庁長官に承わりたい。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。過日駐留米軍から連絡がございまして、近く米軍の演習が主として空軍でございますが、行われるということでございます。これは恒例の演習であるということも示されておりました。自衛隊はこれには全然参加いたしません。右御答弁申し上げます。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 昨年のいわゆるドラゴンフライというものに、日本の航空自衛隊が参加したということは、御存じでございますね。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。昨年はどういういきさつでありましたか、自衛隊が参加したことがあるというようなことは承わっております。正確なことは今政府委員がおりますから、私在任中でございませんから、確かめた上でお答えいたします。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 そういうことをここで詳しく政府委員からお話を承わろうとは思いませんが、問題は、日本の自衛隊が日本の防衛庁長官あるいは総理大臣も知らない間に、演習と申しますけれども、これは何と申しますか、戦時装備をいたしました演習に参加をした、こういう事実であります。先般来この委員会でも、あるいは防衛庁長官の口から不用意に、戦争という言葉が漏れて参ります。それから防衛庁あるいは自衛隊の防衛計画、あるいは装備の基本になりますいわゆる情勢見積りという中には、局地戦に対応するという考えがございます。ここでも局地戦云々という点が出たかと思うのでありますが、そこで問題は、これらの局地戦において、最近におきましては、日本においては局地戦というものを考えておられる。アメリカにおいては、局地戦において細分化いたしました原子兵器を使うということが決定されている。言いかえますと、限定原子戦争あるいは局地原子戦争というものが考えられている。そうして、すでに日本の国内にもでありますが、日本及び日本の周辺ということで、沖縄あるいは朝鮮に原子兵器がすでに持ち込まれております。質問をしていると、一問一答しておりますと時間がかかりますから、ついでに自分で申し上げますけれども、安保委員会においてもアメリカ軍が日本の国内における行動については、移動については相談をするけれども、日本の国外に出ていくことについて、これは相談すべき限りではない、あるいは装備についてもそうだということで、これは総理から衆議院の外務委員会等で御答弁になっております。そうすると、日本の国会、国民が知らぬ間に、日本の基地から飛び立った飛行機なり、あるいは沖縄等からの誘導弾をもって、原子戦争が、限定されたものであろうとも、これは始まる危険性が現在あるわけであります。それについて何ら日本から、あるいは日本の国民から、ストップすべき手だてがない。  こういう事実にかんがみ、しかも戦争、あるいは局地戦というようなことが言われている今日、私ども非常な不安を持つ。これはひとりわれわれだけでなく、国民全部が不安を感じていることだと思うのでありますが、そこで、日本と日本の国民がいかなる原子戦争にも巻き込まれないために、日本及び日本の周辺から原子兵器の撤去を求める決意が総理にあるかどうかということを、はっきり一つ承わりたいのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は、原子兵器が日本に持ち込まれ、またはこれでもって日本の自衛隊を装備するところのことに対しましては、反対の意見を従来主張して参ったのであります。またそういう意味において、日本が原子戦争に巻き込まれるということはもちろん、いやしくも戦争そのものに引き込まれることすら、あらゆる方途を講じてこれをなくすというのが、私の念願でございます。ただ、アメリカが条約上、あるいはアメリカが当然の権利として持っておるいろいろな、日本内地の問題でなくして、周辺の問題につきまして、われわれの方からアメリカに、今お話しのような撤去を命ずるとか、あるいは撤退を求めるというような考えは、私としては現在持っておりません。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 日本に原子兵器を持ち込むことについては、これは断るつもりだ、しかし日本の周辺、これは日本の一部でありますけれども、沖縄あるいは私は朝鮮もあげましたけれども、その日本の周辺、日本及び日本の周辺から原子兵器の撤去を求め、そして日本と日本の国民が原子戦争に巻き込まれないための保障をはっきり取りつけるという御意思はないというわけですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 今お答え申し上げましたように、日本周辺においてアメリカが条約上もしくは当然の権利としていろいろ施行していることに対して、これを撤去を求めるというような意思は持っておらないわけであります。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 大へんなことを承わりますが、先ほど例を引きましたけれども、安保委員会の議題、それから昨年のドラゴンフライ、あるいはこの十三日からの演習についても、そういうことが起るのじゃないかということを心配いたしますが、日本の国会あるいは日本国民の意思に関係なしに、政府についてもそうでありますが、関係なしに、原子兵器を日本と日本の周辺に持ち込み、あるいは自衛隊を指揮し、よって原子戦争を日本及び日本の周辺で起し得る可能性が現在あるわけです。その起ってくる原因は、これは安保条約あるいは行政協定にあるわけでありますが、そういう危険性のあります日米安保条約及び行政協定について、これを廃棄あるいは解消すべきだと私どもは感じますが、その点について首相の所見を求めます。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は、この安保条約というような形において日本の安全保障がされておるという姿が、決して最も望ましい姿として考えておるわけではございません。私はやはり一番念願する形は、一つは日本の自衛力によって独立国として防衛の実をあげるということ、しかして世界の大勢から申しますというと、そんなことで一国の安全が絶対に保障されるものでないという現実にかんがみまして、国連においてさらに集団安全保障に関する適当な有力な方途が講ぜられるということが、一番望ましいと思います。それまでの間におきましては、やはり安保条約によって日本の安全を保障し、またその運営につきましては、日米合同委員会において、日本国民の感情にも合致するように、十分に私はこの委員会を活用していくべきである、かように考えております。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 時間がないのにたいへん恐縮ですが、国連の集団安全保障方式にたよりたいという点はわかります。私がお尋ねしているのは、今の条約あるいは協定によると、日本の国にアメリカの兵隊がどういう行動をするかについては全然相談をする必要がない。あるいはどういう装備をするかということについては、これは安保委員会を通じてでもありますが、相談をする限りでない、こういうことになりますと、どういう事態が起っても、これはそれをチェックすべき手段がない。そういうのを改めるについては、どういうお考えがありますか。あるいは昨年なり、あるいは今年も危険性がありますけれども、日本の自衛隊については、これは総理は責任は負われましょうが、昨年のように、総理なりあるいは防衛庁長官は知っておられたかどうか知りませんけれども、その承諾あるいは許しなしに行動をする、アメリカ軍の指揮のもとに行動をする、こういうことはこれは許さるべきではないと思うのでありますが、それを改めるにはどうしたらいいか。それについては、おそらくお考えがおありになるだろうと思います。最低その点について御所見が私はなければならぬと思うのでありますが、重ねてお尋ねをいたします。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 今度設置されました安保条約に関する日米両国政府の合同委員会は、一応第一段としては、現在のこの安保条約の施行に関して話し合いをするということであり、また国連との関係を十分調整するということであり、第三はこれが両国の国民感情に合うようにこれを運営していくという問題を含んでおります。どうしてもこれがわれわれが納得できないような事項があり、あるいはそれの改正というようなことにつきましても、そういう問題があれば、これは将来やはり討議、研究せられるべき問題であると思っております。現在のところにおきましては私はいろいろな将来の事態を考えますというといろいろなこともあると思いますが、現実の問題として考えてみて、日本国民が心配するような事態が今日において——それはいろいな場合を考えてどうだこうだというふうに申せば、数限りなき事態というものを想定して議論をするということも可能でありますけれども、現在のところにおいて日本国民が心配になるような事態は、この問題からは起ってこない、かように考えております。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 想定ではございませんで、あなたの答弁による現在の建前、それから昨年からございます事実に基いて、日本と日本の国民が原子戦争に巻き込まれない、具体的な施策をお考え願いたいということを、申し上げているわけであります。時間がございませんから、この問題は要望にとどめます。  先ほど同僚中田委員等も指摘いたしました、あるいし岡田君等も関連でお話を申し上げて参りましたが、宇宙時代あるいはミサイル時代に、日本の自衛隊はこのミサイルに対抗できないということを、防衛庁長官は認められた。そうすると、結局日本の国内治安維持以外には役に立たぬ。はっきり申し上げますと、日本での革命あるいは大衆行動鎮圧以外には役に立たぬ自衛隊になってしまった、あるいはしまいつつあると思うのであります。そういう自衛隊はむしろやめて、その予算を国民生活なりあるいは平和目的のために使うべきだと思うのでありますが、そういう点について検討をせられる意思がおありになるかどうか、承わりたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 一方宇宙兵器が発達をする傾向にあるとともに、また従来の普通兵器において装備されている軍縮というものも、まだ、これに対する見通しのつかぬ状態が、現実の国際情勢であります。従いまして、日本に対する、私どもはいろいろな場合を考えまして、侵略というものが必ずミサイル兵器だけで侵略されるのだということを考えるということは、これは私はまだ現状から言って行き過ぎであり、またわれわれはあらゆる点から日本の安全保障を考えていく意味から申しまして、今言っているような国際情勢に対処しては自衛隊というものが全然意味をなさぬ、こう論断することは私は飛躍のように思います。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 その点は意見が違うし、国民の気持として検討を要求しておると考えますが、時間がございませんから他日に譲ります。  総理の言われる経済外交に関連をしてでありますが、ソ連が最近シベリアの開発を含んで経済第二次五カ年計画を進めようとしている。それから中国を初めいわゆる岸総理等が言われます共産主義圏——われわれは正確に申しますと人民民主主義国——との貿易の問題、私は先般中国と、短期間でありましうが朝鮮を見ることができたのであります。平壌と板門店との間、五、六百キロの間でありますが、その間に見るものは、平壌の工場等を含めて、日本の機械というものはほとんど見ることができない、鉄道以外には。鉄道あるいは汽車はその当時のものが残っておるかもしれぬと思うのです。そしてあるいはソ連製のもの、ポーランド製のものである。要するに日本のものは昔のものが残っておるだけで、最近入ったものは全然ない。この事態は多少の差はありますけれども、中国を初め、あるいは外蒙人民共和国であっても同じことが言えると思う。植民地を失うということは、現在の国際情勢から申して当然だと思いますけれども、みずから進んで経済的な市場、あるいは経済交流の範囲というものを狭めるということは、これはみずから鎖国をやるにひとしいと思う。それで外に対して大きな壁をしながら経済発展をはかろうといってもこれは無理だと思うのです。木によって魚を求めるもだのと思うのでありますが、日本の経済自立の点からいっても、あるいはこの外交に自主性を取り戻す点からいっても、従来の反共的な態度、あるいは台湾に固執せられる態度をやめて、通商代表部設置についての障害を取り除き、あるいはココムについての態度も変えて、何と申しますか、その打破に努力をして、中国を初め、アジア諸国との貿易あるいは経済提携を強化拡大すべきだと考えますが、首相の御所見を承わりたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 日本の経済外交推進の上から申しまして、共産主義国との間においても、経済関係、貿易関係はこれは増進すべきであるというお考えにつきましては、私は原則としてそれに異論ないのであります。ソ連との間におきましても、貿易協定についていろいろな話し合いも進行しておることは御承知の通りであります。中華人民共和国との間のいわゆる中国大陸との間の貿易につきまして、いわゆる第四次協定が行き詰りになりましたことは、はなはだ遺憾でありますが、これが障害となっておる事項を是正、調整して、そうして積極的に貿易が増進せられるように処置するべきものである、かように考えておりまして、第四次協定の経過等につきましても、十分これが具体的に検討して、対策については十分に考えて参りたい、かように考えております。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 こまかい点についても質問をいたしたいと思いますけれども、他日に譲ります。  二十六国会で三十二年度予算を審議いたします際に、すでに貿易が輸入超過で外貨がだんだん減って参っておる実情は何人からも指摘をして、大文夫かと申しますか、政府に警告をいたしましたけれども、いや、上半期はとにかく、下半期になれば取り戻してとんとんになるのだと、こういうことで、当時は何らの反省もなされず今日に至っておるのでありますが、ところが、為替の管理を政府がやり、それから金融の規制のかぎを握っておられ、しかも長期経済計画というものを立てておって、そうしてその結果、警告にもかかわらず、今日の状態になった、あるいは外貨危機を来たしたということは、これは一応前の内閣と変っておりますけれども、その当時の首相代理をせられました岸代理首相、あるいは、続いております現在の自民党政府の責任だと考えるのでありますが、かぎを握っておられました自民党内閣として、今日の外貨危機をもたらしました責任について、明確な一つ態度をお示し願いたいと思うのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 一時非常に外貨事情も悪くなり、このまま放置するというと日本の外貨に危機を生ずるおそれがあると考えまして、いわゆる総合緊急対策を施行し、いろいろとこの国際収支の改善に努めて参りまして、現在の状況におきましては、御承知のように相当な程度に改善を見ております。経済の全体の動きに対する問題につきましては、この委員会におきましても、各委員からの質問に対して政府の所信も明らかにいたしておりますので、繰返しては申しませんが、今日のところにおきましては、外貨事情につきまして特に危機を生ずるがごとき悪化状態は考えなくてもよろしいという状態になっておると思います。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 それでは二十六国会の当時言ってきた政府の方針、あるいはは見通しというものは間違っていなかったと、こういうことですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 今朝来もそういうことに対して御質問がありまして、われわれは完全なる見通しを持っておった、全然間違っておらなかったというようなことを申しておるわけではございませんで、不十分であった点につきましては十分に反省をして、将来に対して、景気の動向であるとか、経済界の動向についても正確にこれを把握して、これに対して対処していく、またいろいろな金融機関その他のものも計画性を持っていくこと、すなわち、いわゆる自動的に調節されるというような事柄について、不十分な点のわが経済機構上あることも十分にわれわれは反省をしまして、将来に対しては、そういう点についても十分な考慮をしていくということを申しておるわけであります。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 外貨危機を来たしたわけでないということでありますけれども、現在の手持ち外貨と称せられるものの中で、このこげつきその他を加えますと、実際に動かし得るものは二億そこそこ、こういうことで危機に間違いないのでありますが、緊急総合対策で投融資を押え、あるいは生産を調整すると、こういう方法をとられておるわけでありますが、実際に下半期に入って生産がそれほど落ちているわけではありません。計画通りに収縮をしているわけではありません。月々指数にして五、来年の三月のごときは、パーセンテージにしましても、対前年一〇%の低下を実現をしなければならぬということでありますが、なかなかそういう工合には参らぬようでございます。そうなりますというと、今立てておられる外貨予算に無理が来る。そのある在庫を食いつぶして生産を続けていくとするならば、明年早々において、あるいは輸入増あるいは外貨予算の一そうの危機を来たすのではないかと考えられますが、これらの点について、大蔵大臣あるいは企画庁長官はどういう工合に考えておられるか、お伺いします。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) 金融施策といたしまして、この金融の引き締めを中心としてやっておることは御承知の通りでありますが、これによりまして生産設備等の繰り延べがよくいっていないのじゃないかという点が一点あったわけでありますが、これはむろんだんだんと軌道に乗りまして、繰り延べが行われつつありますが、しかし必ずしも十分であるという段階に行っておりません。従いまして生産についても、今お説のようにやはりどうも意欲が強くて落ちがたい事情もございますが、しかし今の生産状況は、大体原料の在庫がだんだん減って参りまして、そして製品在庫がふえるという段階に来ております。そうしますと、製品在庫がふえるということから、当然にこの生産が押えられていく、こういう過程をとるわけでありまして、今後だんだんと生産も調整されていく、こういうことに相なるように考えておるわけであります。従いましてこういう状況でありますから、今までの総合施策、特に金融引き締めによってくる施策の手直しというようなことがやり得ないのであります。こういうふうにこれを続けていきますれば、物価におきましても、本年四月に比べまして八月ぐらいまでずっと下りまして、企画庁あたりの指数によりますと、おそらく一〇%程度下っておると私は思っておりますが、その後今言うたような状況から下りがとまっておりまして、横ばいと言った方が適当と思いますが、十一月に入りまして若干また下げが現われて、だんだんと先ほど言うたような経済の運行になりますれば、物価も今後下っていくと、そして国内の消費を押えることによりまして輸出が増大していく、こういうふうになると考えております。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 物価は下ると言われますけれども、実際にはむしろ上りつつある。これはまた外貨事情の窮迫、あるいは輸入制限の一つの結果でもございましようが、それから物価政策で河野企画庁長官は一割下げるのだというお話でございますけれども、実際にやられておる施策は、鉄鋼等の建値の引き上げもそうでありますが、政府として消費者米価の引き上げを行われた、あるいは運賃の値上げをされた、こうして政策コストの中における物価上昇の原因もみずから作っておられる、これは事実であります。それで果して輸入増進になるのか。輸入増進のための施策として、どういうものを実際に持っておられるのか、関係大臣に承わりたい。

河野一郎自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(河野一郎君) お答えいたしますが、今お話しになりましたようなこともありますけれども、これを総じて、先ほど大蔵大臣から申し上げました通りに物価の面で見ますれば、大体本年の四月に比べて現在おおむね六%程度下っておるわけであります。これはいつも議論になるのでありますが、物価は上っているじゃないかとよく社会党の方からお小言を受けますが、私の申しますのは、おおむね生産資材の卸売物価を目標といたしておるのでございまして、小売物価につきましては、確かに一部上っておるものもございます。しかしこれは卸売物価と小売物価がなかなか一緒に参りませんけれども、輸出振興、輸出奨励、この施策を完遂いたしますためには、生産資材の卸売物価が目標でございまして、これはすでに昭和三十年の当時に見ましても、その現象で輸出は非常に順調に伸びるような結果を見ておりますので、われわれといたしましては、この点に深く留意をいたしまして施策に十分注意をいたしておるわけでござい達して、最初に大体考えました、今年内には大体その見当まで何とか行きたいものだというように、成るべく早くこういう事態を通り抜けまして、早く正常な状態に戻って、そうして経済が円満に発展して参るようにいたしたいと考えましたけれども、一方において非常に仕合せなことに、米の豊作がありましたし、いろいろまた要因が生まれてきまして、複雑な経済の動きをいたすということになりますために、簡単に割り切った方向には行きませんけれども、いずれにいたしましても、現在の政府がとっておりまする緊急施策をこのまま続けて堅持して参りますれば、おおむね明年の三、四月、いわゆる今年度末ぐらいまでにはその見当に行き得るだろうということで、せっかく、これも先ほどもこの席上で申し上げました通りに、決して今年上期の問題にいたしましても、どれが悪かった、どれが非常によろしくなかったということではないのでございまして、設備投資が急激に一ぺんに集まってきたとか、それから原材料の輸入が一時に殺到したとかいうことのために、輸出入のバランスが合いかねたのでございまして、これらはいずれもむだな設備をいたしたとか、むだなものを買ったとかいうことではないのでありますから、いずれもこれらは当然生産の重要な施設になり、また原材料になって参るわけでありますから、これらは十分活用せられまして、一方政府の輸出振興の施策と相待って、わが国の輸出産業が相当に伸びていくことができるのじゃなかろうか、こう期待といたしておるわけであります。せっかくこれに対して一般産業界、金融界の御協力をお願いいたしておる、こういう次第でございます。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 通産大臣に伺いますが、卸売物価は下りつつある、あるいは来年度——本年度の終りには一割近く下るだろう、そこで輸出は伸びるだろう、こういうきわめて楽観論は現実には私は反すると思うのです。実際には鋼材その他にしても値上りをしているし、出血輸出だと思うのでありますが、こういう状態の中で輸出増進のどういう具体策を持っておられるか承わりたい。

前尾繁三郎自由民主党通商産業大臣

○国務大臣(前尾繁三郎君) 現在価格が上っておるようにおっしゃるのでありますが、これは急に繊維とか鉄鋼等につきましては下り過ぎました。それが多少回復し、安定し、輸出を阻害しないようにいたしたわけでありまして、全体の含みといたしましては弱含みで、物価は下って参る、かように考えております。輸出振興策につきましては、緊急にやっておりますものと、将来にわたって長期にわたってやらなければならぬ問題とがあると思います。すでに金融につきましては、輸出優先主義をとりまして輸出金融の金利を下げましたり、あるいは特別ワクというワクは設けておりませんが、実質上輸出優先の特別ワクと同様な効果の上るようにいたしております。また輸出につきまして、税法上の特典を御承知のように今国会にも出しております。所得の控除につきまして特別の措置をとりました。さらにまた輸出損失準備金という制度も、これは期限がありますが、延ばしていきたい、また市場開拓の準備金というような問題につきましても、今後税法上の特典を与えたい、かように考えております。また輸出保険につきましては、すでに保険料率を下げたものもあります。また今後いろいろ輸出保険の改善をやっていかなければならぬ、かように考えております。また輸出のいろいろ手続が煩環だというような声もあります。この手続の簡素化をやりまして、あるいは仕向地別によりまして規制を簡単にする、あるいは標準決済制度についてもいろいろ検討して参りたい、かように考えておるのであります。また輸出入銀行等におきましても、すでにいろいろその担保の緩和をやりましたり、あるいは協調比率を上げましたり、あるいはいろいろ活用していくというような措置もいたしております。また市場の開拓の問題でありますが、これはまあ来年度の予算になるわけでありますが、市場の調査あるいは見本市の参加とか、その他の宣伝方法あるいは貿易のあっせんというようなことにも力を入れていきたい、かように考えておるのであります。しかし長期にわたりましては、これはやはりできるだけよい商品を廉価に作り上げるということでありまするから、産業構造全体にわたって考えていかなければならぬ、またできるだけ物価の引き下げをやりまして、国内の消費をできるだけ少くして外国に出していく、それには国民運動も展開し、輸出優先主義を徹底させるというような方途を講じまして、今後も、来年度われわれ三十一億五千万ドルの輸出を予定いたしておりまするが、十分達成するような方向に持っていきたい、かように考えております。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 生産財の価格が下りつつあるということでありますが、なるほど去年の暮れからことしの初めに比べてみると若干下っておりますけれども、昨年の初めに比べますというと上っていることは明白であります。これは数字の争いをしても仕方がないのでありますが、しかしその点はどこを標準にしてとるかということによって争いができぬこともありませんが、生計費の値上りがあったという点については、これはもうはっきりしている。あるいは消費財あるいは消費者物価指数については、これは明らかに上って、いるのであります。一世帯についてどれくらい上ったか、あるいは消費者団体の言うように二千五百円近く、あるいは別に千幾らという数字もございますけれども、上っていることはこれは間違いないのです。こうした生計費の高騰に対してどういう政策をとろうと考えておられるか、これは企画庁長官か総理か知りませんが、御答弁願いたい。

河野一郎自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(河野一郎君) 今のお話ですが、物価の指数は今年の四月に比べておおむね一割程度の引き下げをいたしたいということに努力いたしておるわけでありますから、基準は大体四月を見当にいたしております。それからいろいろ消費価格について一部のものが、たとえば米価の一部値上げをいたしたわけでございます。その他のものにしましても、入浴料等がごくわずか上ったとかという多少のものがございますが、これらにつきましては、またこれらの業界に特別な事情がございまして、非常に長期にわたってこれが抑圧されておったとか、ないしは、またそれの基礎計算の上においてどうしてもそういう事情に立ち至らなければならなかったとか、地方鉄道の場合においてもそういう事情が見受けられるようであります。これらは、しかし、私といたしましてはいずれも今の経済政策を遂行する上においてはあまり好ましくないことでありますが、今申し上げますように、一方において事情やむを得ざるものがあったと思うのでございます。がしかし、これはまあこれといたしまして、一般の物価の傾向といたしましては、ただいまも申し上げました通りに、輸出を振興いたしますにはどうしても国内の全体の物価をある程度下げまして、国内消費よりも輸出精興をいたすようにいたさなければならぬ、まあしいて申せば、大局的に絶対にそうしなければならぬものでございますから、いずれにいたしましても、わが国内の物価全体の傾向といたしましては、その施策はこれを物価を上げないという方向にもっていくということにいたしまするし、従って生計費等につきましても、これ以上加重して参らぬようにあらゆる努力を払って参るというつもりであります。

吉田法晴日本社会党

○吉田法晴君 これは、それでは時間がありませんから首相に申し上げるだけにとどめますが、たとえば運賃あるいは輸送費にいたしましても、たと勇ば私鉄なら私鉄の要望にこたえて運賃を値上げする、こういう実態、物価政策というものは大資本の利益のためにはこれに追随するといいますか、要望を聞くということでございますけれども、米価あるいはその他の消費者物価の値上りにいたしましても、大衆あるいは税の軽減の恩恵に浴さなかったものについては、物価値上りあるいは生計費の高騰の被害を現実に受けている、そうしてたとえば生産性が向上をしておるにもかかわらず、賃金水準は押えられている、こういう実態がございますので、この生計費の値上りに対しては、あるいは公務員については人事院の勧告等が今後考えられますけれども、民間産業においての生計費の値上り、あるいは値上りに対して生活を守るために賃上げ要求をいたします場合に、これを押えるというふうな政策をとるべきではない、こういうことを申し上げておきたいと思うのであります。  最後に、来年度の予算編成については、先般来基本方針が示されましたが、三十一年度のこの繰り越し、それから来年度の税収増等考えますと、一千億近い余裕と申しますか、税収が考えられますが、黒字安定予算とか、あるいは余裕財源を景気調整にリザーブしたい、こういう方針も打ち出されているようでありますが、来年度において減税、特に所得税あるいは間接税と申しますか、消費税の減免、それから社会保障の拡充に来年度予算の余裕を使うという方針が立てられているかどうか。先ほど来社会保障については力を尽したいというお話もございましたが、減税についてはどう来年度予算において考慮せられるかと思うのでありますが、大蔵大臣の御所見を伺いたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(一萬田尚登君) 三十三年度の予算編成につきましては、ただいまのところ、先般発表しました基本構想というのが一応きまっておりまして、これに基きまして今後総合的に各般のことについて考えていかなければならぬと考えておるのでありまするが、今は具体的に何をどうするということをお答えする段階に達しておりません。しかし御指摘のような点は、いずれにしてもやはり予算を編成するときには最も重要なる事項として考えていかなくてはならぬことを考えております。

泉山三六自由民主党

○委員長(泉山三六君) これにて質疑通告者の発言は全部修了いたしました。今般の予算補正三案に対する質疑は終局したものと認めます。明日は午前十時委員会を開き、直ちに討論採決を行います。本日は、これにて散会いたします。   午後七時二十一分散会    ————・————

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