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27回国会衆議院1957/11/06

予算委員会 第3号

発言数
291
登壇者
12
会派数
2
開催日
1957/11/06

会議録

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十二年度一般会計予算補正(第1号)、同特別会計予算補正(特第3号)及び同政府関係機関予算補正(機第2号)、以上三案を一括議題といたします。質疑を続行いたします。石村英雄君。

石村英雄日本社会党

○石村委員 まず岸総理大臣にお尋ねいたします。昨日の御答弁の中に民主政治の確立という御趣旨のお話があったわけですが、あの中に私は一つ欠けていることがあるのじゃないかと考えるのです。それは、民主政治の確立という場合に、必ず政治家がその政治的責任を負う、これをはっきりするということが民主政治の確立には必要ではないかと思うのでありますが、岸総理はいかようにお考えでありますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 もちろん政府として政局を担当しております以上、その行う政治について全責任を持つことは当然であります。

石村英雄日本社会党

○石村委員 岸総理大臣からただいまのような御答弁を聞きまして私も大へん心強く感じております。そこで私はきょうはおもに財政金融についてお尋ねしたいと思います。  それで大蔵大臣にまずお尋ねします。きわめて素朴な質問ですが、今日の経済情勢はいつまで続くか、いつになったら景気が好転するとお考えになっていらっしゃるか。これはもちろん前途のことですから正確に何月何日というわけにも行かぬでしょうし、大体のお見通しはどのようであるか、お示しを願いたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 経済がよくなる時期の見通しですが、これは結局日本の輸出がどういうふうに増大していくか、輸出超過になる、しかもそれは建設的に行くということになると、そのときに日本の経済がよくなってくると考えてよろしい。大体私の考えでは、もう少し具体的に申し上げると、この下期におきまして貿易関係が大体均衡を得ていく。しかし昨日も申し上げましたように、この内外の諸情勢は日本の輸出に必ずしも有利でない。ここで国民みんなが一緒になって国内消費を押えて輸出に振り向けていく、そうして政策的には輸出奨励政策——物価を安定させて国際競争力が充実しなくちゃならないのはむろんである。いわゆる物価が安定することはむろんでありますが、そのほかに政策的に輸出の奨励をする。一方貯蓄が増大する政策、こういうようなことを強く官民一致してやれば、私は来年に行って均衡から徐々に輸出超過を得るようにだんだんなっていく。従ってここ当分横ばい、目先はやや悪いんじゃないか、そうしてだんだんとよくなっていく、こういうふうな大体の見通しです。しかしそこまで持っていくのには非常な努力——大体うまく行くだろうというような考え方ではとてもこれはうまく行きません。努力すれば……。

石村英雄日本社会党

○石村委員 ただいま来年あたりには努力すればよくなるだろう、こういうお話ですが、来年という意味は明年度四月以降という意味なんでしょうね。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 会計年度で来年の四月以降……。

石村英雄日本社会党

○石村委員 そういうお見通しの点は承わっておくといたしまして、あなたの財政演説を見ますと、ただいまのような話があって、中に、むしろ問題は今後にある——ただいまもそういう趣旨の御答弁であったのですが、むしろ問題は今後にある、こうおっしゃって、過去のことはあまり問題にしない、するな、昨日の河野さんに対する御答弁でも責任問題なんということはあまり問題にしたくないというようなお考えですが、しかし私たちが将来の問題を考えるにいたしましても、やはり過去の経験を生かさなければならぬと思います。従って過去の問題を、責任がどこにあるかないかという追及は別問題として、やはり過去に起ったことに対する十分な反省をし、その経験を生かさなければ今後の方針も立たないのではないかと思います。その点大蔵大臣は、一口に言えば今まで神武景気だと言っておったことがひっくり返って、神武以来の不景気だということになった、これはなぜそういうことが起ったのかということに対する十分な反省がなければならぬと思うのです。この点についていろいろの意見もあるし、また経済企画庁は例の白書も出していらっしゃるのですが、中には日本のこういう経済の急変転というものは日本経済の持つ本質的なものである、いわば宿命であるというような意見もあるわけなのですね。経済企画庁の発表を見ましても、産業構造がどうだとかあるいは社会構造がどうだとかいうことがあるわけなのですが、過去を反省した場合に、われわれは単に産業構造とかあるいは社会構造ということだけで判断していいものかどうか。もしそうだとすると、二十八年の終りから二十九年にかけてああいう不況時代が来たわけですが、それが今度もし出てきたら、こういうことを一、二年置きに必ず繰り返すということになるのではないかと思うのです。この点いかがでございますか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 一口に言えば、最近までの経済のいろいろな変動、この点は私はやはり有機的に総合的に均衡を得た経済の運行に十分でなかった点がある、こういうように考えておる。たとえば設備投資といって投資が盛んでありましたが、これ自体は日本の経済から見れば、今お話しのように産業構造の当然要請する変化と認める。これは特に合理化という点あるいはまたエネルギーのような点、それから科学振興というようなことが日本の経済の従来の産業構造のあり方に変化を要請しておる。そういう点からどうしてもやらなければ、今後の国際競争に負けるということもあるが、そのこと自体は私はいいと思うのです。それはだれでもそうだと思う。ただそういうものがバランスをとって、行き過ぎない、そういう点について私は今後反省する必要があると考える。

石村英雄日本社会党

○石村委員 もちろんこうした本質的なものを含んでおると思うのです。また今後そうした産業構造なり社会構造なりの改善に努めなければならないと思うのですが、それにいたしましても、あの神武以来の好景気であると政府もうたったことが、一朝にして神武以来の不景気になる、これほどの急激な変転は何らかの措置によって防ぎ得たのではないか、ある程度の循環はやむを得ないとしても、政府の施策なり何なりが適切であったならば、このようなひどい急激な変化は引き起さなくてもよかったのではないかと思うのですが、大蔵大臣はその点いかがお考えですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 まず第一に問題の出発点を一応私ははっきりしておきたいと思う。今のお話はいかにも今の日本の経済が神武以来の不景気であるかのようなことを前提にして立論をされているが、それ自体が非常な間違いだ。神武以来の不景気どころではない、むしろこのままいけばインフレになりはせぬかということをおそれる状況です。それが日本の経済の本体なのです。ただ今幾らか不景気といいますか、困難なところにあるけれども、それはインフレにせぬために今特別緊急施策をしておるから、そこの部分が影響を受けて悪いので、日本経済全体というものはむしろ伸びよう伸びようとしている。現に生産を落そうとしても、生産意欲がなかなか落ちない。言いかえれば輸入を減らしたいのですが、輸入意欲が多くて、輸入信用状は特に多い。こういう点の認識は誤まらぬようにして、一つその上で数字をもっていろいろと御質疑になるなら、私はいかようでもお答えします。それだけははっきり改めてどうぞ。そこの見解が違うというならここで証拠を出して下さい。私お答えします。ほんとうに私は真剣に——要するに日本の経済の今日の認識と将来の見通しか正しいか正しくないかは、ひとりわれわれと皆様方の問題でなく、日本国民全体の運命に関することです。ですから私は皆さんとともにほんとうに真剣にここでそういう点を論議してみたい。だから何か特別な目的を持って論議することは私はここでは好まない。ほんとうに真実をもって真実と真実で一つぶつかっていきたい、こういうようにしたい。その点を私はこの際に申し上げておきます。  そうしてそういうふうな点から神武以来の不景気だと言われる、こういうことなんですが、日本の輸出が非常にうまく伸びていった。うまく伸びると取引もふえましょうし、生産はどうしても増加しなければならない。そうすると当然設備をふやすということになりましょう。そこで投資景気というものに移行する。これは自由経済、経済循環の当然の推移で、悪いことでも何でもない。ただそれが行き過ぎるか行き過ぎないかという点について総合的に施策を考えなければならない。それが私は今度反省が若干足らなかった点だと思う。こういうふうに率直に認めている。ただしそれが非常に悪いかというとそうではない。幸いにして日本は十四億の外貨を持っておる。現在ないといっても八億はまだあるのですよ。十四億は持っておる。それを入れて、この世界経済のいいときに日本の経済の構造転換をなるべく急いでしたらよかろうという考え方は十分政策として成り立ってくる。ただそういう自由経済では自然調整力というものがともすると行き過ぎる。これは社会主義の計画経済と違う。いわゆる加速度というものがかかってくる。そうすると行き過ぎる。その行き過ぎた点が私あったと思う。それで外貨がずっと減っていく。それでこれ以上やればインフレになる。そこで政府としては緊急政策をとって、ここで今行き過ぎたところを平常に戻す。ここまでくればよかったのが、ここまで来たからここまで返そうというだけなんです。不景気というのはここまでくるのです。そんなんじゃない。ここまで来て、言いかえれば輸出の二十八億ドルは確保しよう、そういう経済です。ここまで出過ぎておるのを返すからそこに摩擦がある。そこにいろいろな問題が生ずる。それだけの問題でありますから、さように御了承願います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 念のために一萬田さんに申し上げておきますが、私は社会党ではありますが、きょうここで聞く場合には、むしろあなたのベースに立ってお伺いしたい。社会党の立場なんとかというもので議論すると全然世界観が違うということになってお話にならないと思いますから、なるべくあなたと同じような立場に立って判断し、また国民の間でも、何も社会主義が何だ、資本主義が何だということは知らずに、ただ現実の問題に対してひしひしと考えておるところ、それをあなたにお伺いしたい、こう考えておるわけなんです。ただいまの、神武以来の不景気ではないというお話です。これは全く客観的に見れば神武以来のような不景気に、また神武時代に日本が戻ったわけでもないと思う。しかしあれほど好景気だ好景気だと、こうはやし立ててやっていた。それがにわかに引き締めを食って、不渡りも出さなければならぬ、倒産もしなければならぬという国民の多くの者の考えは、今までの状況から見ると全く正反対な不景気になった、こう考えると思うのです。証拠をあげろということですが、不渡り手形も戦後最高の不渡り手形を出しておるではありませんか。あるいは一萬田さんは、それは取引が多くなったんだから不渡り手形が出てくるのも当然だ、こういうお話かもしれません。しかし不渡り手形をどんどん出さなければならなくなった人たちはどのように考えておるか。もっと政府の施策がよろしきを得たならば、急激な上昇ではないかもしれないが、われわれは生き長らえていけたのではないか、こうおそらくは考えておると思う。何も客観的には神武時代に戻ったわけではない。日本経済全体はあなたのおっしゃるように、あるいは前途洋々たるものかもしれませんが、現実に店を閉めていかなければならぬ、工場を閉鎖していかなければならぬ。今まで臨時工にしろ——本工採用でなしに、臨時工という立場にしろ、雇われてその日の飯を食っておった者が、工場閉鎖なり整理なりによって失業者として街頭に投げ出される。こういう者の考えは、理屈は神武以来の不景気でないかもしれないが、とうてい耐えられない問題であると思います。この人の考えることは、もっとなだらかな上昇ということができたのではないだろうか、おそらくこう考えておると思うのです。毎日大へん好景気でぜいたくをして、あくる日はもうすかんぴんになる、そういうことを国民は期待してはおりません。つつましやかではあるが、ずっと長らく平和な生活ができるようにということを国民は念願しておるわけです。それがにわかにできなくなった。これはなぜだろう、政府の施策がよろしきを得なかったのではないかという疑問が生まれてくるのは私は当然だと思う。大蔵大臣は、ただいまの御答弁はそれを否定していらっしゃるように思うのですが、いかがですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 お答えします。今の答弁でおそらくおわかり下さったと思うのですけれども、重ねて一つごかんべんを願ってつけ加えさせていただきますが、それはこういうことなのです。むろんお話のように、経済が均衡をずっと維持するような形で総合的な施策がうまくいけばよかったであろうということは私先ほども申し上げました。その点については反省しなければならぬだろう、こう申しておるのですが、今の点については、なるほど最近は不渡りも出ております。それは私否定しません。否定しませんが、それは、経済がよかったものですから、そこに押し込めようとするから、その過程において出るのはやむを得ない。たとえば雇用にしても、ああいうふうに経済がよくないと、もうその前に雇用が悪くなる。雇用関係は今のようによくはない。経済が伸びてきたものですから、雇用もよくなる、経済もよくなる、不渡りが出ないようになっておった。あれをああいうふうに伸ばさなくて徐々にいけば、経済は安定の上に徐々な発展を遂げて、それは私はいいと思う。いいと思うが、そのためにはやはり雇用というものが常にたくさんあって、それがずっといく。それから不渡り手形にしてもやはり漸増というような形で多くなっていく。従来のあの行き方はずっといった。これは私もいろいろ批判されてもいいと思う。ずっといったために雇用もうんと非常によくなった。それから不渡りも、いわゆる経済も膨張して、その割には多くない。それが行き過ぎたものを押し戻すものですから、その過程において、ここでいろいろと困難な問題が生ずる。これを押し戻して何でもないのならこのままずっといくのがいい、間違いない。ここで反省するのは、行き過ぎではいかぬから押し戻す、その過程において不渡りもふえる、あるいは雇用についても私はこれは今後考えなければならぬだろうと思います。それは私は率直に認めます。

石村英雄日本社会党

○石村委員 不渡り手形も、その出る比率は大体二号をこえておるということもお考え願いたいと思うのですが、そうすると一萬田さんは、お前たちは今まで就職があったのがありがたいことであって、今失業するといったって、それは当然のことだ、今まで三カ月でも六カ月でも就職しておったのがありがたいことだ、感謝しろ、こういうのですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 決してそういうふうには申しておりません。それですよ、私も反省をしなければならぬということは何回も申し上げておる。

石村英雄日本社会党

○石村委員 その反省の内容をもう少し具体的にお伺いしたい。この前やったことで政府の施策の至らざるところ、もちろんこれが責任があるかないかは別問題として、とにかくこうすればよかったああすればよかったということをお考えであったならば、それをはっきりとあげていただきたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 その点につきましては、すでに政府としては経済企画庁から白書を出しまして、こういうふうな事態を繰り返さないようにするのにはどういうふうにすればいいかということがこまごまと出ていると思います。これで御了承願うのが私は一番よかろうと思うのですが、ここで私は重ねて申し上げてよろしゅうございますか。

石村英雄日本社会党

○石村委員 国民はあのむずかしい経済白書を読むわけにいきません。読んでもわかりません。やれ限界何とか性とか、資本係数とか何とかむずかしい言葉があって、あんなものを読んでわかる国民はそう多くはいないわけです。ですから、かいつまんで一つ一萬田さんから御説明願いたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私は時間の関係からさよう申し上げたのでありますが、ごくかいつまんで申し上げますと、やはり日本の経済のそれぞれの機構といいますか、あるいは機構の持っておる機能というものが、有機的に、いわゆる自由経済の自動的な調整作用というものが何といっても不十分であった。これは一つには、日本の経済が特に国際経済、国際的な事情に大きな影響を受けるという点においてむずかしい点もあるのでありまするが、しかし世界の景気、同時に日本の景気がどういう動向をとりつつあるかということを常に把握する機構といいますか、それが不十分だった。そして同時にその把握した場合に、それに応じていろいろな機能が即応的にフアンクションを始めていく、そういうようなことが今まで実に不十分だったというふうに私は思うのであります。今後どうしていくか、もう少し具体的に申しますと、一方で外貨をただ積み上げて持っていればいいという説には私は賛成しない。日本の経済から見て、ある一定量の外貨を持っておって、これはあるいは通貨の価値の裏づけにもしなければならぬし、または食糧の緊急輸入用にも持っていなければならぬ。こういうようにある程度の外貨は持っていなければならないが、それ以上外貨を持っておってもそう日本経済には役に立たない。そうして日本の経済を近代化するとか、いろいろな面においてさらにより飛躍するための材料に使うのが当然で、私はそういうことで外貨が減ったことは少しも心配ない。ただ今度は少し減り方が激しかったということについては反省をしなければならぬが、あの減ったことはそう悪いことじゃない。問題は、あれをどういうふうにとめて、それほど大きな混乱を経済に与えずしておさめていくか。それをおさめ切れないとすれば、そうしてインフレにしてしまったとすれば、私は責任を負わなければならぬ。私はほんとうに責任をとります。しかしそれで日本の国が救われるわけではない。責任をとるかとらないかということよりも、日本の経済をよくしなければならぬということで一生懸命になっているのです。そういうつもりで私は言っておる。たとえば外貨が減る一方において、緊縮政策とか、みんなの資金の動きというものが調和していくようにしていかなければならぬ、こういうふうな形が望ましいのじゃないか。そういう点において欠けていた点に反省を加えなければならぬだろう、かように思うわけです。外貨を使ったことについて異存はないが、もう少しうまくなだらかに使って、経済情勢を安定させて、その基盤の上に拡張させていかなければならぬ、そういう点についてはやはり反省をするということはいいことだと思います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 私のお尋ねするのは、その外貨の急激な減少をなだらかな減少、またあまりひどく外貨がなくなるということのないような方策はなかったものかということを聞いておるわけです。あなたは外貨を使ったって決して悪いことはないとおっしゃる。なるほど悪くないかもしれませんが、そんならなぜ今日外貨をふやすために努力しておるか。やはりあのような急激な減少を政府の施策によって食いとめ得たのではないか。これからもふやさなくてもいいというならばそれでいいのですが、これからふやさなければならぬとしてあなた方は努力していらっしゃるわけです。そうすると、ああいう急激な減少をさせない方がよかったのではないか。外貨は昨日の発表では八億何ぼ、純粋な外貨といえば二億何ぼ、こういうわけです。それで今これでは困るといってふやすために、いろいろあなた方は考えていらっしゃるわけです。これはふやさなければならぬものなら、最初からそんな手持ち外貨が正味二億しかないというようなことにならないような方針がとり得たのではないかということを聞いておるわけ  です。方策はどこかあるのではないか、そのことを聞いておるわけなんです。過去のことはともかくこれから大いに努力しなければならぬというお説教なら、私はきょう聞く必要はないと思う。とかく大蔵委員会においても、また一鶴田さんに限らず、池田さんでも、何かというと説教ばかりなさるわけです。説教では経済は動きません。実際の方策を出さなければ経済は動かないわけです。大蔵大臣の説教でそれですべて経済がうまくいくなら、非常に世の中は楽だと思います。その通りにはいかないのです。今度のこういう事態を招いた場合にも、池田さんは説教いたしておりました。今年の二月の初めに大蔵委員会で、私が、金融はすでに梗塞状態ではないか、これをどう考えるか、こういうことでいろいろ質問したとき、池田さんは非常に楽観的なことをおっしゃるから、あなたの御意見は楽観に過ぎはしないか、こう言ったところが、池田さんは何と答弁されたかというと、いや決して私は楽観しておりません、銀行が貯蓄に応じた貸し出しさえすればいいと考えておる、それをやりさえすればいいのだ、こういうお話だった。そのとき私は、貯蓄に応じた貸し出しをさえすればいい、こう言っても、実際現実の経済はあなたの説教通りにいきませんぞ、こういう警告を出した。そして、むしろ具体的な方策をあなた方はお示しにならなければならないのではないか、こういうことを言ったのですが、一向何もなさらず、そして五月になってあわてていろいろなことをされた。このことを私は聞いているわけです。説教でなしに、過去を反省せられたならば、こういうことが間違っておった、このことを今後改めなければならぬということを積極的にお話願いたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 そこでむろん先ほどから申し上げますように、なだらかに徐々にやる、これは私は可能であったと思います。政策的にやることは可能であったと思います。しかし問題は私はああいうふうに急激にいったからそれが悪いというふうな観点には立ち得ないだろうと思います。これは当然やらなければならぬことで、程度の問題である。これは非常に徐々にいくこともいいのです。それから急にずっといくこともこれもまた考えられる。問題は、あとの始末において、急にいくとずっと経済が早くいくが、今度それを押える場合にやはり急激な手段を必要とする。なだらかにいけばずっといける。これはどっちがどっちというふうに必ずしも私は言えないのじゃないかと思います。これをそういうふうな抽象的なことでなくて、もう少し具体的に言いますと、三十二年度の問題の輸入は、三十五億六千万ドル、約三十六億ドル、輸出は二十八億ドル、そしてあとはやはりおそらく四億六千万ドルくらい、四億台の赤が出る。これだけ使い過ぎた。外貨の使い過ぎだ。これは一体四億ドルが何になっておるかという問題です。そうすると、この中の投資になっておるものは、これは何だか町人して四億ドルむだに使ったかのように一般が思いがちであるが、それはそうではない。これは主としていい機械をたくさん入れたという点にもある。これは今後日本の経済の基盤を強化して、今後の輸出力を増す要素になる。それからもう一つは原料である。これは金が物にかわる。これはどうしても輸入せんならぬものである。金が物にかわる、こういう形である。ただ問題は、そこまではいろいろな意見があっても、それほど大きな問題じゃないのだが、それがそこまでいくと、これを直すのに若干急激な手段も要るから、そこに国難かあるとそういう点はなるべく今後起さないようにしたらいいじゃないかという反省はすべきである。こういうふうな二つの点があるわけであります。だから問題は、ここまで来たのはいろいろ意見もあるが、これは相対的なことである。これ以上もしも時の政府が放っておいて、ずっと客観的経済情勢を見ずして、インフレに落ち込んでしまったとすれば、これは私は当然責任をとるべきだと思う。しかしもうすでに五月において政府においても、これは客観的な情勢が少し行き過ぎつつあるというので、ここで緊急政策をとり、その結果は比較的順調に推移している。経済のことですから、いろいろな原因からいろいろな困難な問題が起っておるのです。これはこういうことがなくても起るかもしれぬ。ほかの事情で起ったかもしれぬ。そういうようなことが起りがちである。大体において、私はうまく始末をされつつある。それをして今度は安定して、さらに拡大する。これがいかなかったら、私も長いので、私も責任をとります。

石村英雄日本社会党

○石村委員 どうも大蔵大臣と私の考えは、なるべく同じ立場でと思ったのだが、ずいぶん考えが違うわけなんですね。あなたは、今度のこういう急激な転換政策をとったことを、むしろあのときとったことが誇りである、功績である、手柄である、こうお考えなんです。私の方は、あのような急激な政策の転換をなさないようにする方法があったのではないか。ああいう急激な転換をした結果、多くの犠牲者が出た。そういうことにならないように方法を考えなきゃならぬのじゃないか。過去の事態においての体験によって、今後再び急激なこういう政策転換を行わざるを得ないということの起らないようにする方法は、過去の経験から得られるのではないかという点に重点を置いてお尋ねしている。あなたはそうじゃない。あのとき急激な転換したのがいいことだ。もしこれからうまくいかなければ、そのときは責任を負う、こうおっしゃるのですが、どうか責任問題なんというものは一応のけにして考えていただきたいと思います。あなたもなだらかな減少の方がよかったかもしれない。なだらかな減少といっても、これが最後にはゼロになるような減少では困るわけなんですが、あまり急激な変化のないような方法がいい、こう私も考えるわけです。その点について、あなたに何か反省する点があるかと思えば、具体的に何もおっしゃらない。つまり、その反省が大してないということだと思うんです。どうも観点が違うということになるかもしれませんが、今までのあのことに対しての経験で、なだらかな方法はとれなかったものかどうか。とれるとすれば、どういう方法があったかどうかという点を、あなたのお考えといささか違いますが、経済専門家であるあなたの御判断をお尋ねしたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 先ほどからいろいろ申し上げたと思うんです。いわゆるなだらかな行き方も可能であったろうということは私も申し上げた。それはいかなかったのはどこかという御質問の模様であったが、それは経済のいろいろな機能が有機的に自動調節作用を十分に果さなかったところに不充分な点があったろうということも、私ははっきり申し上げておる。それから今の御質問で、緊急総合政策をとったのをお前誇りにしておる、そういうふうに取り違えておっしゃらぬように。誇りじゃないのだが、経済の客観的情勢において当然打つべき手を打ったから、経済が悪くならずに、またよくなりつつあるということを申し上げたので、どうも意味慎重のようなお言葉ですけれども、そういうふうになると、客観的に数字を皆さんと御相談をして、いいお考えを聞きたいと思っているのですから、またこの議会を通じて国民のみんなにもわかってもらって、官民協力一致してうまくやっていきたい、こういうように考えているのですから、私も少しあるいは申し過ぎたかもしれませんが、私の意のあるところを一つ御了承願いたいと思います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 申し過ぎたかもしれぬとおっしゃるが、全然申されていないわけです。過去の問題について、何か方法があったかもしれない。その点反省することもあるだろうという、ごく抽象的な御答口弁です。過去のことに対して、こういう方針をとったならばあるいはこれは防がれたかもしれぬということを一々具体的にあげていただきたいわけなんです。それが政府の責任であるかないかということは別問題です。一内閣の責任だとか何とかいうことでなしに、日本経済全体の問題ですから、国民の問題なんです。何か反省することがあったかもしれぬというようなばく然とした過去の問題に対する御答弁では困るわけなんです。大いに語っていただきたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 ただ反省としては、先ほど言うたように、経済の諸機能が有機的に自動調節する作用がうまく発揮されていればよかったろうが、その点について不十分な点があると申し上げたので、自由経済においてどういうふうな機能があって、それがどういうふうに自動調節されるか、それはあまり言わなくてもおわかり下さるだろう、かように思っているわけであります。

石村英雄日本社会党

○石村委員 それではただ経済の自然の流れだけを問題にしていらっしゃる。政府の政策というものは何ら関係がないという御意見のようである。自動調節力だ、自動調節力だ、これに万事責任を転嫁させていらっしゃる。やはり政治は行われているわけなんです。経済といっても政治が大いに関係するわけなんです。何も政府と関係なしに経済は動いているわけじゃありません。ただ経済の自動調節力だけの問題ではないと思う。自動調節力がもし不十分なら、そういう経済の動きをにらんで政府は適当な手を打つのが、私は政府としての義務だと思う。それをただ自動調節力が不十分だったからそうなった、こういうようなお話では、あなたが政治家としていらっしゃる必要はないわけだ。大体今度の問題の起りは、一萬田さんが大蔵大臣のときに発生していると思う。そういうお考えが今日の事態を招いた、私はこう言わざるを得ないことになる。あなたの責任だ何だというようなことは言いたくなかったのですが、ただ自動調節力、自動調節力一本やりでごまかされては——政府は必要のないようなことをおっしやられれば、むしろあなたの存在理由があったことをこっちは言わなければならなくなる。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私何も責任を回避するものじゃありませんが、むろん経済の流れでありますから、経済に関係しているものが責任があるとすれば、これは責任があると言ってもいいと私は思います。そういうことを私は決していとうものじゃない。しかし悪いとかいいとかいうものじゃないと私は思う。また自動調節力だけに帰しているわけじゃない。一番テピカルな、一番そこにあっただろうと思うところを申し上げたので、政府においても全然というわけでもないでしょう。それは考えなくちゃならぬ点はあったろうと私は思います。しかし政治というものはすべて神様がやるのではない。万全とはいきませんから——特に経済のことは内外の諸情勢の変化というものが刻々起るんですから、そう初め思うた通りに——これは計画経済をやっても、やはり計画の変更というものは過程にあるでしょう。これをやらずに一ぺんきめたことはやらなければならぬということになれば、これは生きた政治にならぬと思うのです。そういう意味において今申し上げたのです。特にこの際に委員会において申し上げたいのは、いろいろ申し分があると思うが、今後において要するに問題はインフレになりはせぬかというのが中心課題なんです。日本の経済はああいうような行き方にすればインフレにするのじゃないかということが中心課題だ。インフレにならぬという方法をとるということがやはり論議の中心になるのではないか。今政府がとっておることもインフレになる、あれはこうしたらどうだというような御意見だったら私は十分お聞きする、そういうふうに私は考えております。私はほんとうを言いますが、何だか人に責任を塗りつけて自分が責任を回避する、そんなことはありません。ありましたらどうぞ言っていただきたい。私は当然服すべきことであったら服します。

石村英雄日本社会党

○石村委員 どうもこっちの考えと全然違うわけなんで話になりませんが、やはり私は過去の問題を十分検討して今後の施策の参考にするというか、材料にする、そういうことをしなければならぬと思うのです。インフレにならないようにしなければならぬということはわかり切ったことでございます。それから、こういう急激な転換策をとらないで済んだらその方がよかったということも一萬田さんもおそらく御反対ではないと思うのです。そのことはやはり過去の経済を掘り下げてみなければ新しい施策というものは生まれてこないと思うのです。あなたは経済の自動調節力ということを大きく問題にしていらっしゃいますが、このことについて言えば、昭和三十年のこの予算委員会で、最後に当時の自由党と民主党が予算の修正をなさいました。そのとき私はここであなたに質問をした。そのときに、自動調節力に関係のある問題として、現在の管理通貨制度というものは非常に危険性のあるものである、従って日本銀行に外国為替を集中して、これを一つのよりどころにして、管理通貨制度をやめないにしても何らかの自動調節力的なものを持たせることが必要ではないかということを申し上げたところが、あなたは暗にそれに賛成のような御答弁をなさったわけなんです。自動調節力といってもやはり政府の施策というものが関係してきます。この問題を十分に過去の問題として考え、そして今後の施策を生み出していかなければならない。あなたはただ今後インフレにならぬようにすることが大事だ、大事だとおっしゃるが、そのインフレにならないようにし、経済の急激な変動のないようにするためには、やはり今後の問題を十分反省し、検討してみなければならないと思うのです。あなたはその点に対するはっきりしたことをさっぱりおっしゃらないわけなんですが、そこで私なりの一つの今度の問題に対する反省というか、そうしたことを考えてみたいと思います。  これは単に私だけの意見ではございませんが、池田さんにしてもあなたにしても、貯蓄を盛んにしろ、こういうことを言っていらっしゃるわけなんです。今後の問題におきましても、今度の財政演説でも、国民は消費を節約しろ、企業家は投資を押えろ、政府もまた今後は投資を押える、こういうことを言っていらっしゃるのですが、国民の貯蓄心というものは今まで決してそう鈍いものではなかったはずであります。せんだっての本会議で勝間田君が申しましたように、むずかしい言葉ですが、限界貯蓄性向は四二%、平均貯蓄性向は一六%ないし一九%だ、決して国民の貯蓄心は悪くないということは経済企画庁の白書の中にも書いてあるわけなんです。国民は貯蓄にいそしんできておったわけなんです。政府は、貯蓄しろ、こうおっしゃるが、そのお言葉通りに国民は貯蓄してきたわけなんです。決して国民が貯蓄しなかったからこういう問題が起ったのではないと私は思うのです。また、企業家も投資を押えろ、こういう話ですが、大体企業家というものは、今日の技術革新と申しますが、昨年の経済白書ではイノヴェーションとかむづかしい言葉が使ってありましたが、こういう経済革新時代に企業家が漫然と指をくわえて投資せずにながめておることができましょうか。経済革新の波におくれないことが企業家の本旨とするところではないかと思うのです。自分だけが、国際収支はこんなことだったら悪くなるだろうから、私は技術の革新はいたしませんなんということを考えて済むわけではありません。やはり個々の企業家としては、経済革新時代にはその波におくれないように率先してやっていかざるを得ないと思う。また、池田さんは銀行家に、貯蓄に応じた貸し出しをしろ、こうおっしゃるのです。銀行といえどもなるべく貯蓄に応じた貸し出しはしたいと思います。しかし、銀行という企業を維持する上において、自分の投資先を確保する意味においては、やはり相当な無理をして、融資をしなければならないと思うのです。このことに対する規制と申しますか、そういうことはやはり政治においてしなければならない。現在では、銀行が貸し出しをする、オーバー・ローンになる、それをしりぬぐいして日本銀行が追加信用で幾らでもけりがつくようになっておるではありませんか。このことに対する政府としての適切なそういうものを制限する道を早くお示しになれば、こうした急激な好景気、一時的な好景気というものは起らなかったのではないか、こう考えるわけなんです。管理通貨制度でそんなことはできない、こう申しましても、必ずしもそうではございません。これは専門家のあなたがよく御承知でございましょうが、日銀が追加信用を出すといっても、これを制限する方法は大蔵大臣の手の中にちゃんとあるはずなんです。この日銀券の発行保証充当限度という問題がありまして、これを大蔵大臣が直接に運用すれば、銀行は担保さえ持っていけば日銀が幾らでも貸してくれるとは考えないことになるのではないかと思うのです。そこで、これに関連して、大蔵大臣がきめます日銀の保証充当限度に対する運用の方針はどこにあったのか、お尋ねいたします。二十六年以降ことしの五月二十八日までに、最初の回数を入れて六回変更されておりますが、これはどういう方針で限度額をそれぞれおきめになったのか、お示しを願いたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは、一口に申し上げますれば、その当時における日本経済の運営を資金面から適切ならしめるように考えておるのであります。同時にまた、今後の日本経済の持っていき方を資金面からどういうふうに助長するといいますか、やっていくかというふうな考え方、それは一つの政策的ですが、同時に、一番本質的な点は通貨価値の維持ということでございますから、この価値の流動性というものも十分考慮してこれをきめていく、こういうことになっておるのであります。

石村英雄日本社会党

○石村委員 私も、その限度の推移を見て、どういう方針で大蔵大臣はこれをきめたものかと考えてみたのですが、これは結局そのときの貸し出しが十分できるようにきめておるとしか言えないわけなんです。たとえば昭和三十一年の十二月二十六日に変更いたしておりますが、このときには、大きな変更は、国債に対する限度額を五千六百億と、前回三十年の十二月十二日のときから五百億ふやしておる。これだけでございます。つまり総額が七千五百億だったわけですが、これが三十一年の十二月には八千億として五百億上げた。その五百億は国債をもって充当させるという方針なんです。ところが、ことしの五月二十八日には何を変更しておるかというと、総額は依然として八千億に押えられておりますが、貸付金を担保にする日銀券を発行の分を、今までの八百億を三千三百億に大幅に引き上げておるわけなんです。日本銀行は、つまるところが、こういう状態で銀行が自分のオーバー・ローンをその始末を日本銀行に仰いでくる、それをしりぬぐいが十分にできるように、今までは八百億しか貸付金を担保にして日本銀行は日本銀行券の発行ができなかったのを、三千三百億に引き上げておるわけなんです。そうして当然国債が減るということから五千六百億の限度額を二千九百億に下げた。このことが私は問題だと思う。もし急激なオーバー・ローンを防がなければならぬというお考えが政府にあったならば、昨年の十二月に変えるときに八百億という貸付金を担保とするものをそのまま八百億にすえ置くぞということを、この八百億は動かさないぞということを大蔵大臣が表明せられていたならば、普通一般銀行も貸し出しを無制限にはしなかったと思う。日本銀行にかけつけてしりぬぐいはしてもらえない、貸付金を担保にして日本銀行から金を借りるということはできないのだから、一つ投資家の方もこういう金融情勢、政府の方針がここにあるから少し今のうちに投資を制限してくれということができたはずなんです。それを反対に、五月になったらもうそうせざるを得なかったのだと私は思いますが、政府が何らそれに対する方針を早く明示しない結果こういう事態になったのだと思う。このことは政府が通貨の発行について質的な規制ができるにもかかわらずそれをしなかったからこういう事態を招いたと私は言えると思う。あなたはその点どうお考えになりますか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 それは、日本銀行からできるだけ金を出さないようにするという、いわゆる程度を考えずにそういうことを前提とすれば、それは何でも押えておくでありましょう。しかし、むろん、日本銀行から金を出すことのいい悪い、非常にたくさん出るか出ないか、その程度の問題があるが、日本銀行としては、一応そのときの日本の経済の所要する資金量を調整して過不足ないように、むろんそのときの経済が伸び過ぎるとなれば日本銀行としてはこれを押えるようにしなくちやならぬが、しかし、全然出さないように、どんなに経済が伸びてもこれは別だということは、私は日本銀行としてやり得ないと思う。その経過的の間はどうしても日本銀行としても経済がそれほど伸びておるならばそれを一〇〇%することはいかぬが、たとえばその伸びに対して七〇%なら七〇%という程度で資金の需要は応じてやらなければ経済の混乱が起きてしまう。それこそ資金難々々々といって大へんだと思う。経済に激変を生ずる、こういうことになるだろうと私は思います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 私も、日本銀行が日銀券を全然出すな、そういう方針をとるなと言っておるわけではありません。もし去年の十二月に、景気が行き過ぎた、設備投資が行き過ぎた、こう判断しておったならば、この点に対する八百億をどうするかということも考えられたのではないか、こう思うのです。何も八百億をゼロにしろと言っておるわけではありません。八百億を千億にしてもいいかもしれない。しかし、少くとも政府の判断として、現在の景気はすでに行き過ぎである、これをこのまま放置したならば必ず国際収支の逆調を招いてどうにもならなくなるから、今のうちから銀行はオーバー・ローンをしないようにやらなければならない、政府としてはそれを阻止するためには貸付金を担保にする日銀の発行券の発行額は八百億を動かせないぞということを天下に表明せられれば、銀行は考えたと思うのです。日本銀行にかけつけたって日本銀行は始末ができないわけです。そういうことをなぜおやりにならなかったのか、考えられなかったのか。結局やらなかったのは当時の政府が——そのころ一萬田さんはもう大蔵大臣だったと思うのですが、そのときに日本の経済はすでに行き過ぎの徴候を現わしておると御判断にならなかったのではないかと思うのです。ここに判断の間違いがあったのではないか。判断の間違いをさらに言えば、今度の三十二年度の予算について、政府は一千億の減税、一千億の積極施策といって積極政策を誇っていらっしゃった。それが今度の大蔵大臣の財政演説ではどう言っていらっしゃるか。国民も消費を押えろ、投資家も企業家も投資を押えろ、政府もまたみずからの投資と消費を控えるとおっしゃっておられる。今は昭和三十三年度ではありません。まだ昭和三十二年度の途中でございます。今年度の冒頭には積極施策、積極財政と言っておいて、同じ年のこの十一月六日には、政府みずから消費を押える、こう言っていらっしゃる。矛盾でなくて何でしょう。見通しの誤りでなくて何でしょう。どうお考えになるのでしょうか。それとも、政府みずからの消費と投資を押えるということは三十四年か五年か先のことを言っていらっしゃるのですか。今年度は依然として積極財政を展開するというお考えでしょうか。そうではないでしょう。今のうちに政府みずからの消費と投資を押えられるわけなんでしょう。これが見通しの誤りでないと言って済みますか。御返事を願います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私は先ほどから申しておりますように、政府においては——私、当時職にあったかどうかしりませんが、政府においては何も落ちどころがなかった、そういうことを私は必ずしも言っておるのではないのですが、今度のいわゆる投資が行き過ぎである、その投資を見ますと、民間の投資の伸びが前年に比べて八割に及んでおる。これは非常に大きな投資である。それで、これはやはり民間の投資にブレーキをかける、そういう自動調整作用——これは自由経済ですから自動調整作用の不十分なところがある。何も私は民間だけに責任を負わせるのではありません。むろん、今から考えると、いろいろの点において、いろいろな方面において考えなくてはならないことがあったと思います。私は率直に認めていいと思います。いいと思うのですが、そういうことになっていきますから、それを今度は十分反省をしてうまくいくようにやらなければならないと思います。たとえて言うと、これは少しよけいになるかもしれませんが、日本銀行が金融市場を調節していくには、どうしても今の過程では、今度の支払い準備制度まで御承認を受けてこれを実施すればいいのだが、この支払い準備制度、公定歩合、マーケット・オペレーシヨン、これを三位一体にやらないとうまくいかない。ところが、日本の経済は敗戦後ああいう経済情勢で推移していきましたから、そういう機能が非常にスムーズにやるだけまだ成熟してないのです。ほんとう言いますと金利にしても、なるべく日本の輸出力を増すためには、国際水準に比べて日本の金利は高いじゃないか、これを安くしよう、——安くしようというのはおそらく世論的な要請でもあったわけです。それで、日本銀行としては、金利を上げた方がよいときでも、自分の金利が低過ぎるんじゃないかと思っても、市場金利が高過ぎるんだから、自分の金利は据え置いておいて市場金利を下げるようにせざるを得ない。ところが、一方の証券の金利にしてもまだ十分これが秩序ある段階に来ていない。たとえば短期の証券は金利が高くてオペレーションに必ずしも適応しない。しかしそれを高くすると財政にいろいろと不都合を生じてくる。いろいろな関係がありまして、言うべくしてなかなか実際にはうまくできない。これはやはり時間をかけて地ならしをしつつ、今度は機能が働いていく、こういう過程になった点を私は一つ御理解を得たいと思う。何も、そういうて、そういうことがいいとか言うんじゃありません。ありませんが、そういうこともあったということを一つ御理解を得たいと思います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 大蔵大臣はこっちの聞いていることに直接答えずに、ほかのことでごまかしていらっしゃる。私の言ったのは、去年の十二月ごろの政府の景気の判断が間違っていたのではないか、また二月、三月にも間違っていたのではないか、こう言っているのです。積極財政だ、こう言いながら、今になって消費を押えるというのはなぜか、間違っていたんじゃないか、このことを言っているわけです。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 前の大蔵大臣にいたしましても、私が聞いておるところでは、また新聞などの報ずるところによっても、投資を貯蓄の範囲内でやってほしいということはしばしば申されております。民間にもそういうことを言っておる。貯蓄の範囲内でやるということは、やはり経済についてあまり投資が行き過ぎてはいかぬぞという警告と私はとっておるわけであります。ただそれがうまくいかなかったのは、やはり自動調整——これはだれが悪い彼が悪いということよりも、日本の経済自体。あるいは考えの及ばざる点もあったでしょう。そういうところからそれがうまくいかず、それから、自由経済というようなところから、ずっと加速度的な、いわゆる競争が激しくなると自然そういうふうになる。だから、そういう点について、私は、今後資金についてはもちろん、経済についても計画性を持たしていく、こういうふうにやっていかなければならぬだろうと、今反省いたしておるわけであります。

石村英雄日本社会党

○石村委員 大蔵大臣のお話を聞いておると、何か子供がいたずらをして、幼稚園の先生にしかられたり親にしかられて、今までは悪うございました、今度はりっぱにやりますぞと、こうおっしゃるような御答弁に聞えるわけです。あなたが子供ならそう文句を言ったってしようがありません。幼稚園の子供なら、今後は気をつけろというよりほかしようがないのですが、決して幼稚園の子供でもなし、金融経済の専門家であり、いろいろよく御存じで非常に手腕のある方だと思うから、あえてこう申し上げておるわけです。  ところで、そういうことになればもっと言わなければならなくなったのですが、大体今度の金融の変調というものは昨年の五月、六月にすでに変化を来たしてきたわけなんです。はっきり言えば大体六月末、少し早く言えば五月、当時金融緩慢と言われたのが、この五月、六月ごろに金融は引き締まりの方向に転じた。基調は変化したわけなんです。このとき、当時の大蔵大臣は一萬田さんですが、あなたは依然として金利の引き下げを強行なさった。日本の金利が高いからこれを下げるということはもとより私はけっこうだと思う。しかし、あなたも金融専門家であるから御承知でしょうが、金利というものはそう政治的に無理に下げるということはできないと思うのです。また、当時の金利があまりに高過ぎた、銀行がもうけ過ぎて高過ぎたという点も言われるかもしれません。しかし、このとき無理にこれをまた下げる——五月に下げさせられたんですが、このときはいいとしても、その後に秋になっても依然として金利を下げる金利を下げるということを強調せられ、強制せられた。このことがやはり投資の行き過ぎを引き起したのではないかと思う。もう日本銀行は六月、七月ごろから金融の前途に対しては非常に警戒的でございました。これは私が言わなくてもあなたがよく御承知でしょう。また、たまりかねて関根報告というものが出たのは、十月ですか、十一月かでございました。ところが、大蔵大臣は、六月に金融の基調は変化にもかかわらず、依然として従来同様の方針を金融界に強行せられた。そうして当時の行き過ぎをいわば政府がみずから助長した、こう言わなければならないと思うのです。去年の国会の済んだあと、私が地方に出ましたら、地方の銀行家が私に聞くのに、日本銀行の判断と大蔵省の判断は全く正反対だが一体どっちがほんとうだろうか、こういうようなことを言っておった。もう一般の者にも、銀行家の間にも、このことははっきりわかっていることなんです。ところが、政府は依然として緩慢策をとって、金利の引き下げ策をとって、そうして景気を助長した。これが今日の事態を招いた根本の原因ではないか。つまり、政府が誤まった政策、誤まった観測に立って金融界を引き回した。このことが大きな反省として考えられなければならないのではないかと私は考えるのであります。  そこで、お尋ねしますが、日本銀行の例の政策委員会、これを大蔵大臣は今後どうされる考えですか。今まで大蔵委員会等の答弁では、一萬田さんはどちらかといえばこの政策委員会に対して否定的な御答弁をなさっていらっしゃいますが、金融の中立化というようなことがいわれておりますが、大蔵大臣としては日銀の政策委員会を今後どうせられるお考えですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 政策委員会につきましては、ただいま金融制度調査会に諮問をいたしておりまして、日本銀行法全般について検討を頼んでおります。その一環としてこれが取り上げられているわけでありますので、その答申を待ちたいと思います。私がいかにも政策委員会があることに反対であるかのようにおっしゃいますが、そういうことではありません。私もこれには若干迷惑をいたしておりますので申し上げておきたいと思いますが、私はそういうんじゃないのです。ただ、こういうふうなことは——これは私が日銀の総裁時代にGHQと折衝してできた制度でもありますので、私は参考的にある機会に話したことがありますが、それは、やはりほかの諸制度と同じように、特に私はこのときの折衝を直接責任を持ってしておるから、その経過から見ると、やはり今日日本でもう一ぺんこれは見直したらいいじゃないか、そうして従来の経験から見てよりよくすることがあればしたらいいんじゃないか。そういうことになっておるのは、アメリカに連邦準備局があることは御承知の通りですが、これは、いわゆる発券銀行が十幾つある。また各州の独立的な立場も非常に強い。そういう国において、それを総合する一つの機関がある。地方銀行を総合する一つの機関があることは当然であると思います。日本はアメリカで言えば州一つに——カリフォルニアの州よりも小さい。そこに日本銀行は一つしかない。そうすると、この中央銀行の意思決定機関をどういうふうにするかは、やはり日本独自の見地で考える。要するに、中央銀行の意思決定機関はどうあればいいかということに帰するのではないか、そういう見地からも再検討することはいいんじゃないか。ただそのままにうのみにせずに、検討を加える、いいところは伸ばし、悪いところは直す、そうしたらいいじゃないかというのが私の見解であるのでありまして、何も私は、自分自身が政策委員会を廃止すべしとか、それには反対をする、そういうことは全然ありませんことを、この機会にあらためて明らかにいたしたい。今のところは、金融制度調査会の答申を待って、さらにどうするかということを私としてきめたい、かように考えております。

石村英雄日本社会党

○石村委員 政策委員会存置自体の問題はその程度でけっこうですが、今日いわれている金融の中立化という問題、今日だけでなしに昔からいわれておるのですが、金融政策の中立化という問題はいかにお考えですか。もちろん、金融政策の中立といっても、金融政策に対する最後の責任は政府が負うわけですから、政府に全然金融政策に対して発言権なしというわけにはいかないと思う。しかし、さっき申しましたように、現在の日本銀行法でも、政府として保証発行限度充当額というようなものを操作することによって、金融政策はかなり政府自体の手でいじれるわけなんです。政府のすることはこれにとどめて、あとは日銀に金融政策の適当な判断による行動の自由を与えるというお考えがあるのかどうか、この点お伺いいたします。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私は、今後、金融の性格、特に金融調整の弾力性から考えまして、金融になるべく自主性を持たしたいというのが私の考えであります。しかしながら、原則的にはそうでありますが、実際の状況を見ますと、もう少し金融とか資金とかいうものについて計画性を与えるがいいという考え方を私はいたしております。それで、金融の自主性を確保しつつ、しかも資金が計画性を持つのには一体どうすればいいのか、また、そういうことが自主性のもとに可能であるとしても、その限界は一体どうであるのか、こういうことにつきまして、実は今資金審議会、それから全国銀行協会、日本銀行その他の関係者に詰問をいたしておりまして、その答申を待っております。これらをよく見ました上で、またさらにいろいろの人の御意見も聞きまして、その上で一つどうすればいいかということも考えてみたい、かように存じております。

石村英雄日本社会党

○石村委員 次に、今度のこういう事態に対する反省として、金融制度のことで考えられることは、現在の普通銀行があのような系列金融をやっておる、このこと自体に問題があるのではないか。従って、この際金融制度を改めて、普通の商業銀行なら短期金融を専門にさせる、それから長期金融は興業銀行だとか日本長期信用銀行だとか、こういう銀行を昔のような特殊銀行にして、そうして長期金融はこれに専門的に当らせて、普通銀行は短期金融に限って、余裕金は金融債の引き受け等によって処理させるというように、現在の系列金融を断ち切るための手段が必要ではないかと考えられるわけです。これは現在の金融制度をかなり根本的に改めることですから、問題は多いと思うのですが、大蔵大臣として今度のことの経験からこの点についてどうお考えであるか、お示しを願いたいと思います。もちろん金融制度調査会の答申を待つとかなんとかいうこともありましょうが、大蔵大臣としてのお考えはどうであるか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私は、ずっと前から、日本銀行総裁時代からでありますが、そのときから今一に至るまで考えておりますことは、むろん商業銀行と長期信用銀行の区別の存在する必要のあることは当然であります。資金の流れとして、言いかえれば余裕金の関係ですが、この資金の流れとしては、大衆、国民が金利の高いことを欲する。なるべくうまく金を回したい、同時にそのかわり長く使ってもらってもよろしい、こういう金はなるべく私は証券市場の方に入るようにしたい。そうして、金利は安くてもいいが、しかしなるべく出し入れが自由であってほしい、あまり長いのは困る、こういう資金を商業銀行の方に流していく。こういうふうにすれば、自然商業銀行の貸し出しというものは中、短期の貸し出しとなり、同時に金利も安くなる。そうして長期かつ利回りのいいことを望む金は株式なり社債市場に行く。そこで初めて日本の広い意味の金融市場というものがいい方向をとってくるだろう。特に今後国債というものは発行をしないという計画になっております。そうしますと、日本の経済の発展という上から見ても、株式、社債というものはやはり従来とはまた違った見地からも見なければならぬ。こういうことから、そういう方針を私はとっていきたい。そうして、従来からいわゆる有価証券市場の発達、株式市場の健全、こういうことに努力をいたしたい。こういう方向が私はいいと思う。またお説にも大体基本的に合致するのではないか、かように考えております。

石村英雄日本社会党

○石村委員 初めて一萬田さんと意見が大体一致したお返事をいただいのでありますが、まだ一致したかどうかはもっと検討してみなければわからないのでありますが、それはそれとして、次にお尋ねしたいことは、今度の国際収支の急激な悪化ということに対して、為替関係、輸入銀行のことについて見ますと、実態を調べてみると、為替専門銀行である東京銀行は昨年の十二月ごろから輸入金融を非常に押えております。ところが、他の財閥銀行は一月になっても二月になっても三月になっても依然として盛んに輸入金融をしておる。このことから判断すると、東京銀行と日本銀行との間にどのような話し合いがあって東京銀行が早くから引き締めたか、それは存じません。また、一応考えられることは、東京銀行は預金が少いという点もあったであろうと思いますが、少くとも、昔のように為替銀行は東京銀行なら東京銀行というふうにして——現在も法律では為替専門銀行というものもあるわけなんですが、もっと為替専門銀行を育成、強化して、そうして時の日本銀行なり政府なりの方針に即応できる体制を作る必要があるのではないか。外国為替銀行法を通過させるときに、衆議院では大蔵委員会で、低利の金を出すとか円資金を出すとかその他外貨を預託するとか、この育成をはかれという決議をいたしております。ところが、低利の円資金を出すという方法は全然実行されておりません。これに対する大蔵大臣のお考えを伺いたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 東京銀行が専門為替銀行、ほかの為替銀行が公認為替銀行、こういう区別があります。従って、東京銀行が専門為替銀行であるから、それにふさわしい扱いをしなくちゃならぬということについては、私も今日において別に依存はありません。ただ、御承知のように、東京銀行には外貨の預託をたくさんいたしまして従来仕事をさせておる。外貨事情がああいうふうに変化をいたしましたから、自然東京銀行の輸入の扱いが窮屈になってくるということは、これは当時としてやむを得ない。それなら東京銀行もほかの公認銀行と同じように円資金をもって外為から外貨を買ってやればいいじゃないかというが、東京銀行は、御承知のように専門為替銀行である関係上、店舗が少くて預貯金はそれほど吸収しませんから、円資金が足りない。ほかの大銀行の為替銀行は円を持っております。それで、円でもって外為から外貨を買って輸入をする。輸入の量をそう落さずに済む。こういうことが実際上はありましたものですから、そういうふうに御理解を願いたい。それがいいとか悪いとかは別として、そういうふうな経緯からなっております。むろん今後この専門銀行としての取引銀行をどういうふうにして育成するか。これは他の為替銀行、同時に専門銀行法を作ったときの精神もありまして、当時の委員会等のいろいろの質疑応答を見ますと、すっきりしないところがあるのであります。これにフェーバーを与えるというようなことにもなっておらぬのであります。しかし専門銀行がある以上、私どもは従来は外貨があったから外貨を預託してやらせる、こういう方法をとったのですが、外貨が乏しいとなれば、しかも店舗は少くて円資金が乏しいとすれば、御承知のような安い金利でなければ為替はできませんから、やはり低利の円資金を供給することを十分に考えなくちゃならぬだろう、こういうふうに私は今考えておるわけであります。従来は正金銀行時代におきましては、ほとんど営業資金の全部をコールからとっておった。当時は七厘というようなレートでございますから、コールからとっておった。今日はコール市場は停止してできておりませんからそれもできませんので、金融上の問題として、為替銀行が低利の金をある銀行に出すということについては、これはいろいろ問題があると思います。十分日本銀行とも相談をしなければ、また金融の中立性というものを侵すことにもなりますので、十分相談した上でありますが、私はそういう考えも決して悪いというわけではない、そうしなければならぬではなかろうかと考えております。御了承を願います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 そうしますとただいまの問題は、大蔵大臣のお考えはほぼ衆議院の附帯決議の方向に向っておる、低利の円資金を専門銀行に対して供給しろというあの決議の方向に向っておる、こう了解いたしましてこの問題は打ち切ります。  次に財政のことでお尋ねしますが、先ほどもちょっと触れましたが、ことしの予算について政府は投資及び消費を控える、こういうことをせんだっての本会議で、財政演説でおっしゃっていらっしゃるのですが、ことしの予算についてどのような方法をおとりになるか。もしこれを実行予算として変えられる、繰り延べられるというのならば、私は国会に諮られるのが当然である、むしろ予算補正という形でお出しになるのが当然ではないかと思うのですが、これはどういうような措置を——投資を控える、政府みずからの消費を押えるというのならば、三十二年度予算にどのような措置を現在講じていらっしゃるか、今後講じようとしていらっしゃるか、これをはっきりお示しを願いたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 考え方はお説の通りでありますが、三十二年度の予算について、実際上特別の措置を私は何も指示しておりません。ただ事務当局の任務の範囲内において、この方針にいわゆるなるべく消費を——不当に押えるのではありませんが控えて、繰り延べられるようなものは時期的調整というような意味合いで、事務当局で従来もあったのですが、いつどうするかということを、事務当局でやり得る範囲内においてはあるいは考えておる、それもまたよかろう、こういうふうな程度の趣旨であろうと思います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 どうもおかしいのです。国会ではっきりと政府みずからの消費及び投資を押えると言っていらっしゃる。何らそれに対して指示はしていない、事務当局で何かやっているだろうが、それはよいことだということでは、国会の財政演説はただ国会向きであって、実際は何でもないものだということになるのですか。国会においてはっきりと政府の投資を押え消費を押えるとおっしゃるならば、それによって予算の執行方針というものがはっきり指示されなければならぬ。こう思う。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 今回の緊急対策の中心は財政投融資約六百億、この繰り延べのことであります。その他のことは、私の書店が悪かったかもしれませんけれども、従来でも実施において時期のきまってないものもありますし、それらについて事務当局の間において決定のできるようなもので、そしてなるべく早くしないでも別にこういう事柄に関係ないというようなものは、ある程度あるかもしれないと思います。これはほんとうを言うと、別に言わなくてもいいことで、それは従来でもそういうことはあっただろうと思うのですが、そういう気持は実際のところあるように思っております。そういうことで別にここで予算をどうするこうするとか、金融のそういうふうな考え方までは行っておりません。御了承願います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 予算というものは大体その年に使うということが前提になっておると思う。使おうと思ってやってみたが使えなかったということはあるかもしれぬが、しかしこれを使わぬという方針を出すならば、予算変更をしなければならぬと思う。財政演説でそのようにおっしゃっておるのですから、何らかの方針があると思う。これをはっきり国会に明示していただきたい。ただ従来通りの使ったり使わなかったりすることがあるだろうから、まあそれでよろしいなら、国会でこんなことをおっしゃらなくてもよい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 ただいま事務当局からいただきましたからはっきり申します。歳出予算の中で繰り延べをいたしましたのは、官用営繕費でありますが、今繰り延べておるのは産投会計で二億少し、営繕関係で七億、こういうものが繰り延べになっておるということがあります。その程度で御了承願います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 産投会計は幾らですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 二億五千万円であります。

石村英雄日本社会党

○石村委員 そこでことしの自然増収は一千億か一千数一億かということですが、この一千四、五百億を本年度はそのままにしておおきになる御方針ですか、それとも何か適切な方法にお使いになる御方針ですか。もちろんこの点についてはある程度昨日河野君が御質問いたしたわけですが、もっと具体的にお示しを願いたいと思う。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 ちょっとうっかりしておりましたが、今の千五百億というのは、三十三年度のですか。

石村英雄日本社会党

○石村委員 三十二年度です。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 三十二年度には主税局長等の計算では今のところまあ千億だろう。三十二年度の予算に比べての増でありますから、まあ千億くらい。これは今のところ来年の三月まで時間がありますので、ある程度時間的に言うと、今ここで言い切ることも神ならぬ身のどうもできないことであります。来年の会計年度中にはどうするかということをはっきりいたしたいと思います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 神ならぬ大蔵大臣ですからそれはわからぬかもしれませんが、政府みずからの消費と投資を押える、こういう御方針だけはあるわけなんですね。そうすると、この自然増収で今年度にどうするというような予算補正はしない、こう理解しなければならない。しかし絶対必要な、たとえば災害が起ってそれに対する処置を講じなければならぬとか、あるいは失業がどんどん発生してこれに対する処置を講じなければ社会不安が起るとか、そういうことがあってやるということはあるでしょうが、原則としてはこの一千億は使わない、年度内に予算補正をして使わない御方針なんですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 それはまあ歳入の自然増でもありますので、これを使うのには急いでは悪い。慎重に考えて使うか使わぬかをきめたいと思います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 もちろん使う、使わぬということは、今申しましたような具体的なことが起れば使わなければならぬということもありましょう。ありましょうが、根本方針は、みずからの消費を押える、投資を押えるという趣旨からいうと、これを使うということにはならないのではないか、こう聞いているわけです。根本方針を聞いておる。具体的問題にぶつかってそのときどうするかというようなことを聞いておるわけではございません。もっとはっきり言えば、昨年はやはり自然増収を予算補正をして、例の地方財政関係の金と、それからかりにわれわれが認めるとすれば財政法を改正した上でなければいかぬ、こう申し上げたのですが、産投に三百億の金をお入れになった。そうして三十二年度に百五十億便い、三十三年度に百五十億を使う、こういうことをなさったわけなんです。今年の千億も原則としてはそのままにして、翌々年度の繰越金になさる方針であるか。これはこの三十二年度中に処理せられなければ、そういうことに必ずなるわけなんです。来年もし使いたいと考えれば、財政法に違反する、せぬという論議は別として、産投会計の中にこの千億を入れるか、あるいは他の別個の処置を講ずるかしなければどうにもならないと思う。その点をお伺いするわけです。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 今申し上げましたように、これは私もとくと考えてみたい、こう思っております。今のところしいて、申せばなるべく使わぬ方がいいと思っておりますが、慎重に一つ考慮していきたいと思います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 政府の八月三十日ですかの閣議了解事項として発表せられたところを見ますと、昭和三十二年度は、製造工業の水準を例にとっていらっしゃるわけですが、昨年に比較して製造工業水準の伸びを八%に押える、従って経済成長率は五%になるだろう、こう言っていらっしゃるわけなんですね。今年の分を去年に比べて八%の伸びにするということになると、十月以降製造工業の水準を五%ずつ三月までに下げていかなければ八%にはなりません。大体二三一くらいの指数にしなければならないと思う。つまりこれから五%ずつ月々平均して下げていくということになれば、私は相当な恐慌状態を起すのではないか、かなりな不景気になっていくのではないか、こう考えますが、そういう方針を発表していらっしゃるわけなんです。そうして来年は今年に比較して四%の伸び、経済成長率は三%の伸びにする、こういう御計画なんです。そうすると三月に二三一に落ちに製造工業の水準を、四月からは月々五・六%ずつ上げていかなければ、政府のいわれるような経済成長率、あるいは製造工業の成長率にはならないと思う。まるでアメ細工のように伸ばしたり縮めたりということを大へん簡単に考えているようですが、かりにこういう措置を講じ得るとすれば相当な資金を用意しておかなければ無理ではないかと思う。明年度公債でも発行して、日銀に引き受けさせてというようなことは、財成法関係の問題もあるでしょうが、何らかの方法で公債発行でもしてやっていくというなら別ですが、やはり今年の一千億を来年に使うということを前提にしないと、こういう成長卒、一たん二三一まで下げたやつを、今度は毎月五・一八%ずつ上げていくということは相当困難だと思う。一口に言えば景気調節資金と申しますか、これは一萬田さんの構想のようですが、現在では世界各国でこういう景気調節資金というものを、どっちかといえばやっているところが多いわけなんですね。スエーデンなんかは古くからこういう方針をとっておる。これは私の個人的な見解を持ってすれば、必ずしも悪い方法ではないと思う。もちろんこの場合には財政法を改正しなければなりません。財政法を改正してちゃんと明確な方針を出して、こういう景気調節資金を置くということは必ずしも悪いとは言えないけれども、政府のいわれるように来年度は五・六ずつ上げていくというなら、何らかの積極的な方策を出さなければ無理だと思う。そこで景気調節資金というのは大蔵大臣の腹案にもあるようですが、今までの答弁だとやるともやらぬともはっきりしないわけなんですけれども、こういう情勢を考えると、大蔵大臣的な考え方からいえば、やはり景気調節資金を置かざるを得ないのじゃないか、こう判断するわけなんです。一萬田さんの腹の中を一つ遠慮なしに、与党の方の反対が多いかもしれませんが、昨日河野君もこんこんとあなたにお話ししましたように、率直にお示し願いたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 仰せのようにことしの製造工業の伸びを八%に持っていきたい、こういうような計画になっております、先ほど申しますように、生産欲といいますか、拡張意欲がやはり強うございまして、従来のところ思うようにこのパーセンテージが落ちません。それを私は心配しております。これをこの十二月、一月、二月、三月の間で八%の伸びに持っていくのは非常に困難を感じておるところであります。そこでいろいろ意見もあるが、やはりここで従来の引き締め政策を持続しないと経済施策というものが適正にならない、こういう心配を持っております。  それから来年度が六・五%ですか、これは五カ年計画の、五カ年を通じて平均すれば年度はそうなるということなんで、来年度を五%とか六%とかに持っていくというわけではありません。来年度は今一応の考えとしては製造工業の生産は四%、国民所得は三%、こういうふうな伸びを一応予定いたしておるわけでありますが、しかしやはりこういう計画は、なるべくそれが実現するような実現性を持つ、そしてそれを中心にしていろいろな経済政策をとれば間違いがないという、そういう計画がほしいのですが、何さま今日人工衛星が飛ぶというような時代で、何とも内外の変化が激しいですから、そこの把握が非常にむずかしいと思う。そこでそういう計画を持つとともに、刻々の情勢の変化に応じて計画を早目に修正をしていって、目的を達していくというふうな格好に持っていかなければならぬ。それを見るめどはいろいろパーセント、パーセントもありますが、それはなかなか私は十分なものが出ぬと思いますから、主として日本としては輸出がどう伸びるかということによっていろいろな政策を調整していく。私は輸出が伸びていけば、日本の経済が国際経済に十分打ち勝ちつつあるのだから、そんなにこれをまだまだ締めろ締めろなんという必要もないだろう。この輸出が一時じゃなくて、経常的に持続的にどう伸びていくかということを指針の大きな柱にして、今後政策の運用をはかっていきたい、かように考えております。

石村英雄日本社会党

○石村委員 そうすると一千億の景気調節資金も置くのやら置かぬのやらさっぱりわけがわからぬ、これから先の動きでその日その日で考えていく、こういう御方針のように承わってよろしゅうございますか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 決してそういうわけではありませんで、すべてそういうふうにおとりにならないように、可能な限りに計画は立てるのだが、そればかりにまたこだわることもどうかと思うから、その辺をうまく調整していこう、こういう考え方でありますから、どうぞ御了承願います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 そのようにとるなということになると、ことしの予算をどうするか、消費を押える、投資を押えるというのはどの程度削減するならする、また一千億はすっかり使わないで、そうして翌々年度の剰余金に、現在の財政法の命ずる通りに処理するのだ、こう考えていいわけなんですか、根本方針は。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 今の経済の動きから見ると、三十二年度の予算についてはこのままでいい、従来の政策をただ持続すればいい、かように考えております。

石村英雄日本社会党

○石村委員 従来の政策というのがそこで問題なんですが、ことしは積極財政の政策だったわけですね。これを継続する、こういうことなんですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 その点の問題は、財政投融資で、すでに六百億繰り延べまして、それでできると思います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 そうしますと、一般会計なんかの予算はあの通りに執行される、こう受け取っていいわけなんですね。ことしはどうもこういうことだから、さっき官庁需要費ですか、何か少し撮り延べたということですが、公共事業費とかなんとかいうものは予算通りに、執行される御方針だと承わっていいわけなんですね。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 例年並みに、さようになろうと思います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 例年並みということは、やろうと思ったができなかったというだけであって、政府の方針として操り延べるということはやらない、こういうことなんですね。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 特にさようには考えておりません。

石村英雄日本社会党

○石村委員 政府は輸出を振興しなければならぬ、こういうように言っていらっしやるわけですが、通産大臣がおいでにならぬから総理大臣にお尋ねしたいと思うのですが、輸出振興のために今度は税制上の特別措置とかなんとかおやりになっていらっしゃるわけですが、輸出振興と申しましても、ことしの予算を見ると、たしか貿易振興費として十二億でしたか何ぼですか、その程度しかありません。これをこの際、輸出を大いにやらなければならぬという考えがあるなら、わずか十二億というような少額のものでなしに、これを五十億、百億というように今のうちにふやして、輸出貿易の振興のために施策を講じなければならぬというような意見も出てくるかと思うのですが、一萬田さんはことしは変えないという御方針なんですが、これほど輸出を大いにしなければならぬ、こう主張していらっしゃるとすると、総理大臣の御判断では、貿易振興のためにことしの十二億というこんなちっぽけなものにしないで、うんと大きく今年度の予算補正をやって貿易振興を今のうちからはかる、来年度ではかるというのでなしに、今のうちに手を打たなければ、貿易振興というものは容易にできないと思います。わずか十二億では満足すべき数字だと思わないわけですが、総理大臣として貿易振興についてどういうお考えを予算的に持っていらっしゃるか、お示しを願いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 輸出振興は先ほど来大蔵大臣の答弁にも現われているように、日本の経済としてきわめて重要な根幹であることは言うをまちません。ただ予算においていわゆる輸出振興費として計上されているものばかりでなく、要は日本の産業全体にわたる産業政策というものがこれに関連を持っておるわけでありますし、また将来輸出振興を行う上におきまして、ただ予算をふやすだけが私は能でないと思います。ただしかしながら必要な経費、必要な施策につきましては、来年度におきましてわれわれとしてこれについては考えていきたい。今年度におきましては大体われわれの計画しておるところの輸出の目標に対しましては、輸出の振興に関する経費と一般の産業振興に関する各種の経費、免税の措置等によってこの目標を達する。将来の問題につきましてはなお新年度の予算において有効なる施策を考えていきたい、かように存じております。

石村英雄日本社会党

○石村委員 もう一つ総理大臣にお考えを聞きますが、今年の予算が組まれたときには今年度の経済成長率を約七%半ですか、そのくらい見ておきめになっておる。ところが今度はせんだっての閣議の了解事項によると、さっき申し上げましたようにこれを五%になさっておられる。というと、それだけ経済成長率を押えるということになるわけです。そうすると経済成長率が下るということは、必然的に就職者が減ってくるということを考えなければならぬ、失業者が増大するということを考えなければならぬ。そうすると今まで七%半の成長率で計算せられた失業対策費というものは、今年度中においてさらにこの十二月からふやしていかなければならぬ、こう理屈の上ではなっていくと思う。これに対する措置は、これは大蔵大臣よりも総理大臣のお考えが聞きたいわけなんですが、これに対する措置をなさるお考えであるか。理屈では確かにそうなんです。七%半の成長率を考えておったものを五%に引き下げ、しかも今度は急激に引き下げなければならぬということなんですから、失業者が一時的にしろ膨大なものが出てくるということを予想しなければならぬ。また一応これによって年々ふえていく生産人口百三十万というもの、実質的に吸収するのは六十七万と、こう計算せられていらっしゃるが、この六十七万の吸収も、まあ四月以降相当吸収していると思うのですが、それが失業の形かあるいは未就職の形かでやはり問題が起っている。いずれにしてもこのことは経済成長率を下げるということによって当然生まれてくると思う。大蔵大臣は今の予算は変えないという御方針ですが、しかしこの問題については、やはり政府としては少くとも考えなければならぬと思いますので、総理大臣としてのお考えをお聞きしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 経済の見通しや、あるいはさっき言われた成長率等の目標というものと、現実に実際にそれが情勢としてどう動いているかということは必ずしも一致しないのでありまして、理屈からいって、今の成長率を押えるならそれだけ失業が出るのじゃないかという御議論が出ますが、実際の今の失業の状態を見るというと、石村君も御承知と思いますが、決してそういうふうに失業者が非常にふえていっておらない、むしろ減少の傾向も現われておる。従いまして、もちろんこの失業が現実にふえてくれば、これに対する予算的措置をしなければならぬことは言うをまちません。私どもその現実の実情に基いて、今日の状態においてこれを補正する必要を認めないというのが、現実の状況であります。

石村英雄日本社会党

○石村委員 失業者はむしろ減っているという話ですが、これは私は反対の意見を持っておる。しかしそれはそれとして、これは論理的に非常に頭の働かれる総理大臣にお尋ねするのですが、政府が七%半を五%に押えるのだという方針を出されたわけなんですね。そうするともちろん現実はその通りに行くか行かぬかわかりません、実際はそれに応じた施策をまた講じなければならぬと思いますが、しかし一たん政府として引き下げるという方針を打ち立てたならば、引き下げることによって当然発生すると予想せられる失業者に対する対策というものは、当然一方において立てておかなければ理屈が合わぬと思うのです。下げる方は下げる方針だ、失業者はそのときのことだというのでは、どうも政府の政策というものは一貫しておるとは言えない。引き下げるという方針を打ち立てた以上は、引き下げた結果起ると予想せられることに対して、一応の予算内措置を講じておくという必要がある。もちろんその予算を組んでも、必要がなければ使わないということがありましょうが、引き下げるという方針を出した以上、それに応じた施策を講じなければどうもつじつまが合わないと思う。総理大臣のお考えを聞たい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 今お答え申し上げましたように、経済は実際は生きているものでありまして、なかなか計画経済を行なっても計画通りにはいかない。われわれが一つの目標を定めて、七%半を五%に押えるということを目標に進んでおりますが、経済の成長率はその後におきましてもなかなかそういう結果になっておらないのであります。それが失業がうんと指しておらない、いう現実の事実として現われておることであります。もちろん政府として、こういうことに伴って失業者がふえるような状況であるならば、これに対して善処すべきことは言うを待ちません。現在のところはそういう事情にない、従って、今度の臨時国会において補正予算は組んでおらない、こういうことに御了承願います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 ただいまの総理大臣の御答弁で十分であると思いますが、補完いたします。もちろんいろいろ政策をやる場合において、失業状況ということについては政府も十分な関心を持っております。しかし今のところ、ちょっと御参考に申し上げておきますが、完全失業者が、予算ベースのときには六十万を考えておったのですが、今は八月で四十九万です。それから日雇い登録者の数が予算ベースは四十七万四千、現在は四十六万、こういうようなことでありますが、なお今後こういうような状況については十分注意はいたします。今こういう状況でありますことを補完しておきます。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 石村君、一つ切り詰めて御質疑を願います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 時間をなるべく切り詰めろということですから、簡単に伺いたいと思います。  結局今のお話だと、政府が計画を立てたといっても、そういうものはちっとも当てになりはしないぞという御答弁なんですから、もうこの点については、わけのわからぬ、ただ答えただけだというような御答弁なら、質問したってしようがありませんから、お尋ねいたしません。  それでは一、二点最後にお尋ねしますが、まず食管会計についてお尋ねいたします。食管会計の赤字問題は従来から非常に問題になっておったことしの通常国会でも、私の所属しておりました大蔵委員会でも、やはり赤字が問題になっております。そのとき池田大蔵大臣は、ことしは約百五十億の赤字だが、それは一方に産投に百五十億を置いておるのだから、予算全体としては収支のつじつまが合っておるのだという御説明だったのですが、食管会計はしかし依然として赤字が問題だと思います。最初の予定では、ことしは百四十二億という赤字を予定されておったわけですが、その後米の生産者価格をこの予算価格とは違えて引き上げるとか、あるいは十月から消費者米価を引き上げるということで、相当な変化を来たしておるかと思うのです。ことしの食管会計の赤字を一応どのように見ていらっしゃるか、また十月以降の米価の引き上げによってどれだけの赤字の穴埋めができたか、御説明願いたい。

赤城宗徳自由民主党農林大臣

○赤城国務大臣 三十一年度の食管会計の赤字は、決算が大体まとまりましたが、百六十億です。三十二年度の赤字は、御承知のようにまだ内地米の買い入れが進行中でありますし、輸入食糧の買入価格も先行き不確定でありまして、少し変動すると思いますが、今のところ百十五億円前後になるものと見込んでおります。それから消費者米価引き上げによって補われるものが百四十億、こういうことになっております。

石村英雄日本社会党

○石村委員 そうしますと、消費者米価の十月以降の引き上げで百四十億も補われるということになると、食管会計の中の内地米による赤字、これは今後米の価格の引き上げがないという前提に、かりに立てば、まず赤字は大した問題でないということになったわけなんですか。

赤城宗徳自由民主党農林大臣

○赤城国務大臣 内地米の赤字は、消費者米価の引き上げをしない前には、二百八十億になっているわけです。でありますから、内地米だけを見ますと、消費者米価の値上げをいたしましてもなお百四十億は出る、こういうことになっております。全体としての赤字でなく、内地米だけについて申し上げればそういうことになります。

石村英雄日本社会党

○石村委員 しかし米は十月からの引き上げなんです。三月末までに百四十億の穴埋めができたということになると、これは明年度の会計のことですが、一年間を通ずると相当な赤字補てんになっていくのじゃないか。もちろん繰越米の評価額とかなんとかいうこともあるかもしれませんが、内地米については、現在の情勢そのものを前提にすれば、米の赤字というものは来年度においてはまずあまりないということになるのじゃないかと思うのです。十月一日以降の引き上げで百四十億も穴埋めができたとすると、相当な穴埋めだと思うのですが、いかがですか。

赤城宗徳自由民主党農林大臣

○赤城国務大臣 先ほど御指摘のように、ことしの予算での内地米の赤字は百七十三億であります。その後生産者米価が上っておりますので八十七億、それから予約買付の数量がふえておりますので二十億、それを入れまして約二百八十億が赤字になる予定でありますから、先ほど申し上げましたように、内地米としては消費者米価の値上げによってこれを償い得ることにはなっておりません。

石村英雄日本社会党

○石村委員 米の方は一応大蔵省が食管の赤字を非常に問題にしておったわけですが、米だけについては大した問題ではないということになった、こう理解いたしますと、残るところは内地産の麦だと思います。内地産の麦については、ことしの当初予定は七十五億の赤字ということになっておりますが、これについて大蔵大臣のお考えもありましょうが、農林大臣はこれを今後どういうように整理していかれる御方針であるか、お示し願いたいと思います。

赤城宗徳自由民主党農林大臣

○赤城国務大臣 この点につきましては、農業生産の点も考慮に入れなければならないと思いますので、実は目下検討中でございます。

石村英雄日本社会党

○石村委員 御検討は必要だと思うのですが、農家はこれからそろそろ麦まきが始まるわけなんです。これがどうなるかわからぬということになると、農家は麦をまいていいかどうかわからぬということになります。今のうちに、農家に麦をまいてせっせと麦を作りなさいという御趣旨ならば、方針ををはっきりさせなければならぬ。もし麦なんかもうやめちまえというなら、やはりその方針をはっきりさしてもらわぬと農民は困るわけなんです。検討々々で日が暮れて、あとになって麦を植えずにほかのものを植えればよかったなんというような、そういう罪なことは、人情の深い赤城農林大臣はなさらないと思うのですから、大体の根本方針くらいは今ここでお示しになる方が御親切だと思うのです。いかがですか。

赤城宗徳自由民主党農林大臣

○赤城国務大臣 検討中と申し上げますのは、かりにこれを下げるといたしますならば、生産を阻害しないように、補給金といいますか、そういうものを出すかどうか、あるいはまたその他に方法もありますので、そういう三、四の方策について今研究中なんでありますが、今下げようとかどうということまでは、いっていないわけであります。近く検討の結果を申し上げる機会があると思います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 今申し上げましたように、農家としてはきわめて重大な問題なんです。大蔵大臣は、赤字がなくなりさえすればそれでいいというようなお考えかもしれませんが、麦を作る農家としては、これは切実な問題なんです。今補給金を出すとかいうようなことも一つの考えだとかおっしやいましたが、補給金といったら、麦を作って、それに対して価格が下れば差額を補給するという意味の補給金なんですか、どうなんですか。いずれにしてもそういう根本方針だけは打ち立てて御発表願いたい、こう思うのです。

赤城宗徳自由民主党農林大臣

○赤城国務大臣 畑作振興との関係もありますので、その面とにらみ合して、畑作振興の対策が先行できるようならば、これは価格の点も考える必要があります。それが先行できないというような情勢ならば、価格をいじるということはできぬわけであります。その点について今検討中だ、こう申し上げたのであります。

石村英雄日本社会党

○石村委員 畑作を振興する、こうおっしゃるのですが、農村はもう麦をまかなければならぬですよ。先で畑作振興の金を出すから今損をしようがすまいが麦をまけといっても、ちょっと農民は困ると思う。一応麦をまかして、今年度の麦作については手取りが減らないようにするんだ、一方先で、来年度予算で畑作振興をやるんだ、こういうようなことなら農民は納得すると思う。それでなしに、ただ言われたんじゃ困ると思うのですが、はっきり、これからまく友については農民の手取りは減らないんだ、そうして将来の恒久対策として畑作の振興をはかるんだというなら、そのように御発表願いたい。農民は安心してたんぼに出かけると思う。

赤城宗徳自由民主党農林大臣

○赤城国務大臣 麦作農家に損害を与えるような措置はとらないつもりであります。価格の決定につきましても近く申し上げる機会があると思います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 政府は、損害を与えないとかなんとか、農村全体は損害はないんだ、よくそんなことをおっしゃるわけなんです。大蔵大臣のお考えはとかくそういうことなんです。さっきの経済情勢の変化でも、経済全体は前途洋々たるものだということをおっしゃって、現実につぶれていく業者のことは全然お考えにならぬ。国全体を平均すると、経済は盛んで、隆々たるものかもしれぬが、個々のものは大へん困る。農家経済について、全体的にはいいことをするんだ、こういうことでは受け取りかねるわけなんです。現実に個々の農家が、それぞれ今度の麦を作ることによって、手取りが減らないかどうかもっと明確に——あまりくどいようですが、大事な点ですから、こまかく、個々の農家は絶対に損はさせないんだ、手取りは減らないんだというように御答弁願いたいと思います。

赤城宗徳自由民主党農林大臣

○赤城国務大臣 農家全体に損害を与えないと申し上げたのはありませんで、今麦をまきつけ、麦を作ろうという者に対しまして、損害を与えるような措置はとらない、こういう意味であります。(「どういう方法」と呼ぶ者あり)その方法について今研究中でありますが、その研究が近く発表される段階となると思います。でありますから、一つ麦作農家に損害を与えないようなことで考案にしますが、研究はしておりますが、その研究が適当でない場合には価格の点には触れない、こう御了解を願います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 農林大臣から大へん御親切な答弁をいただいて満足いたしましたし大蔵大臣はこういう方針を——これでは、食管会計の赤字は一般会計に振りかえることになるのか何かわかりませんが、赤字自体は消えないと思うのです。大蔵大としてそういうことに御賛成ですか、大へん渋い大蔵大臣ですが……。農林大臣のお話はよくわかりました。もちろん大蔵大臣もその御方針だとは思うのですが、一つこれにはっきりとした裏づけを与えていただきたい。農民は大いに喜ぶと思うのです。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 まだ農林大臣の方とも十分打ち合せてありませんが、今御注意もありましたので、農民が種まきに困らないようになるべく早くやりたいと思っております。

石村英雄日本社会党

○石村委員 大蔵大臣も今農林大臣のおっしゃっておることをお聞きになったでしょう。だったら返事は簡単なはずなんです。それは具体的な個々の操作とかなんとかいう点にはいろいろ御相談があるかもしれません。根本方針として、農家に損害を与えない、個々の麦作農家には絶対に損害を与えない、もし与えるようなら、それはやめにして価格はいじらない、こういうはっきりした御答弁である。それに対してあなたがいやどうもよう相談してというようなことを言うと、せっかくの農林大臣の御答弁が帳消しにされて何の役にも立たない、何にもおっしゃらなかったと同じことになる。一つ明確に率直大胆にお返事願いたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 今の答弁で麦をまくのには支障ない、なるべく麦をまくのに困らぬようには決定をするのですから、農林大臣とも今後よく相談して——御承知のように内麦の価格にはいろいろ不合理もありまして、それを必ずしも今すぐ見当をつけなければならぬ、どうするということも考えておりませんけれども、いろいろとまた考えなければならぬ点があります。今のお話は麦をまくのに困らぬようにしたいということでありますので、大蔵大臣も麦をまくのに困らぬようにすぐ早くやるということでありますから、それで私はいいと思うのです。一方大蔵大臣は税金をいただいて、タックスペイヤーの立場も考えなければなりませんので、なかなかそういうところを割り切れないのです。両方よく考えて国民全体がいいように、こういうふうに考えております。

石村英雄日本社会党

○石村委員 それでは困るのです。大蔵大臣はやはり農家に迷惑を与えない、こうおっしゃるのです。ところが大蔵大臣の迷惑を与えないと言われることは具体的にどうなるかというと大へん不安なんです。さっき申しましたように、さっき冒頭から非常に長くやったように、あなたは経済は隆々たるものだ、こうおっしゃるのですが、現実には非常に困っておるその人たちのことはあまりお考えにならぬようです。経済全体がいいからいいのだという御主張のようであります。そういう式に農家が困らないようにすると言われたのでは、農家はやはり安心できない。ただいまの農林大臣の答弁のようにいたします。こうはっきりおっしゃればわかるわけなんです。大蔵大臣のお考えのようにやるというのではわかりません。農家は信用できませんよ。一つはっきりと、答えは簡単だと思うのです。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 どうぞ今答弁したところで……。何べんも何べんも大蔵大臣がここに出て答弁をしておると、いかにも何かわかりが悪いような印象を与えるようでありますが、私は農家がお困りにならぬようになるべく早くおきめしよう、先ほど農林大臣も今検討なさっておるとおっしゃっておるのですから、私もよく農林大臣のお話を聞かなくては今ここでどうという、そういうわけにもいきませんので、どうぞあしからず。

石村英雄日本社会党

○石村委員 それではわからぬです。大蔵大臣は農林大臣のおっしゃるように、麦を作る人が絶対に損のないようにする、もしほかのことでうまくいかぬようなら価格はいじらぬというはっきりしたお返事をなさっていらっしゃいますね、それをあなたはただ抽象的に困らぬようにする、こうぼやかされておる。大蔵大臣のおっしゃることと農林大臣のおっしゃることは一致しておるか一致しておらぬかわからぬわけです、この答弁だけでは。もし大蔵大臣が農林大臣のおっしゃる通りですと、こうおつしゃれば大へん簡単なんです。あなたが何とかかんとか言われるからわからなくなる。一つそんなむずかしいことを言わずに、われわれのわかるように、農林大臣のおっしゃる通りでございますと、こうおっしゃればいいのです。御答弁願います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 農林大臣のおっしゃることをちょっと考えさせてくれ。何でも人の言うことをオーライ、オーライというお答えばかり私できないので、大蔵大臣は大蔵大臣の立場から検討を加えるということだけはお許し願いたい。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 石村さんどうですか、だんだん時間があれしましたので…。(「ああいう答弁だからだよ」「ここが一番大事なことだ」と呼ぶ者あり)

石村英雄日本社会党

○石村委員 大事なことだと思うのですが、私も根が尽きたわけなのです。結局農林大臣の御答弁はあなたの答弁を聞くと帳消しされることもあり得る、こう判断しなければならぬ。それでいいですか、その点を大蔵大臣に聞きたい。絶対に帳消しされぬというならわかります。それは言葉をかえて言えば、農林大臣のおっしゃる通りです、こういうことなんですから絶対に帳消しにはならないのだ、あの通りとは言わないが帳消しは絶対にしない、こういうことなんですか。ただ私がうまくやりますでは、どうもわからぬわけです。私はもうやめたいのですが、もう一つ地方財政のこともやはりこれと似たようなことだと思うので聞きたいのですが、はっきり帳消しされたようにされる可能性がある、こう受け取るわけですが、帳消しされないという積極的な答弁をお願いする。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは農林大臣のお考えは否定したわけではない、農林大臣のお考えをお聞きしまして、そうして大蔵大臣として考えてみよう、こういうことなんでありますから、否定したわけでもなんでもありません。

石村英雄日本社会党

○石村委員 それでは結局、せっかく農林大臣がおっしゃったのですが、どうやらわけがわからぬということになるでしょう、農林大臣それでよろしゅうございますか。農家は大へん心配しておるわけなんです。大蔵大臣とりっぱに話をつけられるだけの確信を持っていらっしゃるか、そうでないとこの委員会はやめたいんだがやめるわけにはいかない。一つその程度こっちも譲歩しましたから、農林大臣のお考えをもう一度承わりたい。

赤城宗徳自由民主党農林大臣

○赤城国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、いろいろ畑作振興麦作農家に損害を与えないような方法も研究しておりますが、その研究が思わしくないというようなときには価格はいじらない、こういうことにつきまして大成当局とも折衝していきたいと考えております。

石村英雄日本社会党

○石村委員 それは結局念を押したら前よりは悪くなったようなんで、(笑声)お話になりませんが、これは他の委員がまたお尋ねになると思うので、時間がありませんからもう一点だけ、次の問題に移ります。  これは郡自治庁長官に地方財政の問題について簡単にお尋ねいたします。大体地方財政計画というものをわれわれが見て実に不思議な計だだと思うのは、公債費というものがあるのですね。これは国の財政では赤字公債は発行いたしません。ところが地方財政だけは赤字公債を出させることがちゃんと国の地方財政計画に載っているというのは実に不思議なことだと思うのです。郡長官はどういうお考えなのですか。こんな赤字公債を発行しなくてもいいように地方財政を建て直される方針であるか。これは建て直すといっても国から金を出す以外には道はないと思うのです。何か独立財源のしっかりしたものをやるか、また独立財源だけでも貧乏県ではやれませんから、地方交付税をうんとふやすとかなんとかいうことをしなければできないと思うのですが、この赤字公債をちゃんと計画に織り込んでやっていくというのは不思議に思うのですが、どういうわけなのですか。

郡祐一自由民主党自治庁長官

○郡国務大臣 地方団体というものを国と合せて考えてみますと、学校を建てますとか、災害とかいう際の公債というのは、これは地方団体の性格に合っている公債だ、しかしながら赤字団体の再建債等を発行いたしまして一時たな上げをいたす、しかしこのたな上げをいたした赤字債券がやはりその地方団体の一つの重圧になっております。こうしたものについては今後地方財政を健全にいたして参りますために、でき得る限りそのようなことの再びないようにいたしたいと思っております。

石村英雄日本社会党

○石村委員 時間がありませんから一一お聞きしませんが、そうすると本年度の暫定措置とした公債費の問題は、あるいは恒久的になさる御方針なのですか。

郡祐一自由民主党自治庁長官

○郡国務大臣 本年暫定措置をとりましたのは、御承知のように失業対策であるとか公共事業であるとか、極端なものは給与に当るべきものを公債でまかなわしております。これはそのまま放置することができませんので、それについての特例的な措置をいたしまして、公債費対策というものは今後講じてやりまして、地方の財政の国としてめんどうを見るべきものはりっぱに果さなければいかぬと思っております。

石村英雄日本社会党

○石村委員 それから例の問題になっておる地方交付税率か一・五%上げるという問題ですね、これは衆議院、参議院の地方行政委員会の附帯決議もありますし、新聞を見ますと自民党でも党議決定しておるということですが、これもただいまの麦の値段のように、大蔵大臣のところでもやもやしてわけがわからぬというのが現状なのですが、自治庁長官はこれははっきり明年度から一・五%引き上げることを通常国会でお出しになる御方針で、もう閣議もその通り決定しておると理解してよろしゅうございますか。

郡祐一自由民主党自治庁長官

○郡国務大臣 交付税兆の引き上げの問題は、先ほどお話の公債費対策とも直接からんでくる問題だと思います。そのような趣旨で、すでに前国会で両院の御決議の次第もありますので、その御決議の趣旨に従って実施いたすべきものと考えております。なお与党たる自由民主党におきましても、通常国会において所要の立法措置を講ずるということを党議をもってきめておりますので御了承願います。

石村英雄日本社会党

○石村委員 よくわかりましたが、大蔵大臣はこれははっきり党議を御了承なさるんでしょうね、大蔵大臣の御答弁を求めます。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 三十三年度の予算の編成については、きのうもたびたび御答弁申した通りでありまして、具体的なことについては今後考えていく、これが大蔵大臣のただいまの考えであります。

石村英雄日本社会党

○石村委員 一・五%引き上げるという党議決定は実に具体的な問題なんです。これを大蔵大臣はただいまの御答弁だと、それはわからぬという御答弁です。それでいいですか。大蔵大臣はやはり自民党の党員だと思うのですが、脱党せられれば別ですが、はっきりしたことを御説明願いたい。党議もはっきり決定している。衆参両院の地方行政委員会もそのような決議をしておる。郡長官もただいまそのような御答弁をなさっておる。ほかの予算についてはまだわからぬということは言われるかもしれませんが、これだけくらいははっきりその通りでございますと答弁できると思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 これは先ほどから言うように、小出しに今大蔵大臣はこの分はこう、この分はこうというふうに申し上げる段階にまだ来ていないのです。三十三年度の予算の編成については……。しかし今いろいろお話があったそういう経路はそれは十分承知しております。これ以上私は今申し上げることはありません。

石村英雄日本社会党

○石村委員 大蔵大臣は頑強でなかなかお話になりませんが、そうだとすると、これはどうもわけがわからぬですが、これは与党もあまりつき詰めるなということかもしれませんからいいかげんにやめますが、ただ一つ考えられる心配があるのでお伺いしますが、大蔵大臣は一・五%はいやいやながら引き上げる。そのかわり補助金をやめるとか、プラス、マイナス、ゼロのような方法を考えていらっしゃるのじゃないかというような不安があるのですが、そういう点はいかがなんですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私はものの考え方が、江戸のかたきを長崎で討つようなことはやらない。このことがいいか、このことが悪いか、一つ一つの善悪、合理性に基いて判断する。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 午後一時三十分より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     午後一時四十七分開議

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井堀繁雄君。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 岸内閣の労働政策について、特に緊急を要すべき問題を中心にいたしまして、所見をお尋ねいたしたいと思います。  大体九項目ばかり明らかにいたしまして、順次お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、一つは国際労働関係、すなわちILOに対する政府の基本方針を、また二つには駐留軍労務者及び特需労働者の問題三つには官公労の罷業権について、四つには最近労働争議に官憲の介入しております問題について、五つには中小企業の労働問題、六つには最低賃金の制度とその立法的な構想について、七つには日雇い労働者の保護諸対策について、八つには教職員組合の労働組合運動と教育行政について、九つには労働金庫の育成並びに労働者の福利行政の全般について、時間のあるだけお尋ねをいたして参りたいと思っております。いずれも喫緊な問題であると思うのでありますが、ことに日本の置かれております現状は、国内の労働問題に限定することが、いろいろな事情から許されないと思うのであります。特に岸総理が、わかりやすい政策を項目内によく説明されていると思うのは、三悪追放だと思うのであります。適切な表現だと思うのでありますが、適切なたけに、一般の国民の期待もまた大きいと思う。私は、三悪追放は、たとえば貧乏追放にいたしましても、暴力追放にいたしましても、汚職の問題は多少異なるといたしましても、労働問題の解決に誠意のない政策でありましては、とうてい不可能なことである、こう思うのであります。こういう点からいきましても、岸内閣の労働政策は具体的でなければならぬ、実施能力が裏打ちされなければならぬと思うのであります。この問題を解決することは、先ほど来の討議の中にもありましたように、日本経済の立ち直りを貿易に依存しておることは、争いのないところだと思うのであります。日本の経済復興の基本的な条件になりまする貿易の問題をまじめに検討いたしますると、日本の労働問題に対する基本的な政策というものが明らかでない限りにおきましては、私は口頭禅に終ると思う。こういう関係から、少しく具体的にお尋ねをいたしたいと思うのであります。われわれは、もちろん社会党としての立場もあり、政策も独自のものを持っておるのでありますが、その以前の問題として論議を進めるべき必要に私は迫られていると思う。その一つはILOの問題でありますが、このことについては、質問以前にあらかじめ御検討願うことを希望しておきまして、私も十分な知識があるわけではございませんが、ILO憲章によりますると、ILOの性格というものがきわめて明確に表明されておるのであります。ことに日本政府といたしましては、国連に加盟する以前にすでにILOに加盟をし、今日では理事国の地位を確保しておるわけでありますから、ILOの性格などについてとやかく申すことは、時期おくれであるかもしれませんが、質疑を進める順序といたしまして、一応ILOの正確について、またこれに対する岸内閣の基本的な考え方をお尋ねする必要があると思うのであります。  申すまでもなく、ILOの憲章の冒頭にも掲げておりまするように、ILOの性格というものは、労働条件の改善によって社会主義を実現し、ひいては世界の恒久平和を確保せんとする目的であることが大胆に、しかも明確に宣言されておるのであります。これは、まことに重要な宣言であると私は思うのであります。御存じのように、第一次世界戦争後における問題として、世界平和を国際連盟に求めてまんまと失敗をし、その後国際連合に性格を切りかえるときに、ILOの問題が強く、取上げられたことは、世界の平和主義者、ことに政治家、国際的な地位においてものを判断する考にとっては、これを重視したことは申すまでもないのであります。これは今次の国連の性格を裏打ちしたと言っても私はいいと思うのであります。もっと学問内に言えば、新しき民主主義の原理というものは、私はこのILO精神から引き出されてきていると言ってもいいと思うのであります。こういう重要な性格を持つ国際連合に日本が加盟し、理事国として活動しておるのでありますから、そのILOに対する日本政府の責任もまた重大であると言わなければならぬのであります。そこで、岸総理に一つぜひ明確な御答弁をいただいておきたい。それは、このILO憲章の精神に従って、日本国が世界の各国と共同の歩調をとる義務はもちろんでありますが、その際における当然義務づけられたものが、今日履行されていない幾つかの事実がある。この事実について岸内閣はどのようにお考えになり、またそれをどう処理しようとするかについて、岸総理の所見をまず伺っておきたい。それから順次二、三の問題についてお尋ねをいたします。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 ILOにつきましては、今井堀委員の御質問にもありましたごとく、これはきわめて重要な意義を持つものでありまして、国際的協力によって労働条件を改善する、そして正義と世界の平和とを確立するというこの憲章の趣旨を、私どもとしては正しい考え方であるとして、これに加盟をいたして、今お話のように理事国になっているわけであります。われわれとしてはあくまでもこのILOの精神を尊重して、これに積極的に協力していくということが基本の考え方でございます。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 ILOに積極的な御協力をなさるという方針が明確になった。そこで一、二具体的な点をお尋ねいたしたいと思いますが、このILOの憲章によりますると、加盟国の義務がそれぞれ規定されております。まず第一に、ILOに加盟した国々が百二十幾つかと思いまするが、条約をすでに決定をし、またそれと大体同じ程度の勧告がなされておるのであります。日本は一時国連脱退に伴いまして、ILOからも中退をいたして、その間にも重要な条約や勧告案件というものが採択され、また勧告をしてきておるわけであります。その真空状態にあった間の、ILOの議決しもしくは勧告をしておりまする条約、勧告案に対して、日本政府としては、当然新しい憲法によりますならば、主権が国民にあるわけでありますから、国会に意思を問わなければならぬ問題ではないかと思う。その点をお問いになっておりません。加盟して以後に条約として成立したものについて、あるいは勧告については手続をとっておるようでありますが、その間の問題についてはその手続をおとりになっていないということはどういうお考えであるかを、この際明らかにしていただきたい。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 お答えを申します。ILOの勧告及び決議につきましては、昭和二十八年の十二月の閣議の決定に基きまして、国会に対して、和文のテキストを添えて御報告を申し上げております。それから、それに伴って政府としてとった処置も、それぞれ所要の手続でILOの方に報告をいたしております。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 労働大臣は、私の質問をよくのみ込んでおいでにならぬようであります。日本がILOから自然脱退の形で脱退をして、さらに再加入をいたしました。その間における条約の扱い方に対して、一向何らの手続をしていないことは、私どもの調査によって間違いないと思うのであります。この手続を必要とするか必要としないかということについてお尋ねをしておるのでありまして、必要でないと思うからしてないのか、あるいは必要であるけれどもその手続がおくれておるのであるか、この点は、一つ総理大臣から伺っておきたい。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 ILOの総会の決議は、一年以内にそれぞれの国に報告をし勧告をすることになっておるのでありますが、今御指摘の、日本が加盟する前の決議、勧告については、日本が加盟したときは一年をすでに経過いたしておりまするので、これは、今度は日本側といたしましては、それを批准するか批准しないかという問題に帰ってくると思います。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 どうも私の質問しておることをのみ込んでおいでにならぬ。というのは、日本国が加盟してから以後の総会で採択された条約、勧告についてお尋ねしておるのではありません。私のお尋ねしておるのは、日本がILOから離れていた時代における総会で取り扱った条約や勧告については、無関心でいいかどうか、どういう関心を持って、どういう手続をしておるかということを聞いておるのです。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 今御指摘の問題は、一番大きな具体的な例は、団結の自由に関する問題だと思うのでありますが、これは、今、日本が批准するかしないかという問題の取扱いを検討するという段階にきておりまして、労働省といたしましては、労働問題懇談会等にその取扱いについての御意見を求め、研究中でございます。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 労働大臣は、私の質問に正確な答弁を故意になさろうとしないのかどうか知りませんが、誤解があるなら、もう一ぺん申し上げます。私の言っておることは、ILOというのは、連綿として続いておるわけです。日本が加盟したり脱退したり、また加盟したりしただけのことであります。その間におけるILOの意思というものは、各国によって一つの結論が条約や勧告になって出ておることは説明を要しない。ところがILOの憲章の手続の段階では、あなたがさっきことずけられたように、条約が採択され、あるいは勧告が採択された以後において、期間を定め、その間において手続きをせいということは、これは言うまでもないことだ。これは当然怠ることができないのであります。しかし国際正義に日本国がこたえるとなるならば、脱退しておった時代のILOにおける一つの性格を裏づける具体的な事実が現われたものに対して、日本国としては何らの意思表示をせぬでいいかどうかと、そのことを伺っておる。私はこまかい手続を聞いておるのではなくて、これは、私は岸内閣の性格を物語る一つの事実だと思いまするから、実は総理からお答えをいただきたい。何も条文上のことではありません。日本が世界の労働行政の中にどのような地位をとるかという大きな一つの意思表示になると思いますから、お尋ねをしておるのです。これは、一労働大臣が勝手にどうこうできぬ問題であると思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 私からお答え申し上げます。基本的には尊重しなければならない、尊重をするという建前で進むつもりでございます。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 それは、もう総理大臣から一番最初お答えいただいたのであります。尊重するなら、その尊重の方法について、日本国としては、要するに意思を必要とするわけでありますから、あなたが私に答弁したり、あるいは政府が国会に答弁するということは国内問題で、しかしILOは、国際的な公然たる機関であります。これに対する意思の表示が必要であるということは、それは事務的な問題を聞くのではありません。政府の基本的な性格をお尋ねしておるのでありますから、これは総理大臣が進んで答弁をされる事柄の一つだと思って伺っておるのです。いかがでございますか。総理大臣、御答弁なさいますか、なさいませんか、どちらでもけっこうです。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 精神としては、私はあくまでも尊重すべきものである。従ってその御指摘のように、ILOというものは、日本が出ておろうが入っておろうが、一貫しての一つの何があるものですから、これは一貫した問題として、この憲章の趣旨を尊重していく以上はやらなければならぬと思います。ただ手続の問題として、従来どういうふうに扱ってきておるか、それから手続上どういうふうなことをすべきかという点に関しましては、労働大臣からお答えいたしたいと思います。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 その尊重する意思が明確であれば、手続の問題は憲章に従えばいいのでありますから、そう格別に問題にしなくてもいいと思います。当然に手続がその次に検討されてなさるべきものと私ども期待いたしております。  次に、先ほど労働大臣が、私がお尋ねしないのに御答弁なさいましたが、ILOの憲章第十九条による勧告、あるいは条約に対する批准やその処置についてであります。これは、具体的にお尋ねした方がいいと思いますが、時間があれば全般にわたっていろいろ意見を聞くことが国内労働問題解決の上に重大な事項だと思いますが、時間を節約する意味で、ごく簡単にお尋ねいたしますから、要領だけお答えいただきたいと思います。それは、日本国として当然このILOの条約だけを取り上げてみても、労働時間の問題については、全然批准もしていなければ触れてもいないのであります。しかし、日本の憲法を受けて立つ基準法には、労働時間の問題は明文化されておるのでありますから、日本の国内法については何ら差しつかえがないと思います。労働時間制の問題に対する批准が全然行われていないのであります。こういうものにすぐ手続をなさることが、先ほどの総理の御答弁に沿う実行の道だと思うのであります。これは、労働大臣の主管であるかと思いますが、一体労働時間に関する条約が五つ決定されておる、日本国が加盟していない間に二つ、その前のものとがあります。一々けっこうです。それからもっと重要な点だけを取り上げてみますが、賃金の問題についてであります。前置きをするとすぐおわかりだろうと思いますが、私の聞こうとすることは、これは日本が貿易に当面して非常に大きなファクターになると思うから伺っておるのです。労働時間の問題についても、当然日本が批准することが好ましいと思う。好ましくないというなら御意見を伺いたい。それから、特に日本のように雇用条件の悪いところにおいては、雇用及び失業問題に対する条約というものが適切だと思われるものがあるのであります。こういうものの批准手続をなさらないのはどういう事情に基くのであるか。詳しいことはとにかくとして、大まかなことでいいですからお答えを願いたい。全体にわたりますと、かなり長いものでありますので、あと国内問題でまた関連があるときにお尋ねいたします。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 お答えを申しあげます。ILOの勧告や決議は、もとより先ほど総理の御答弁にありましたように、これを尊重する建前をとっておるわけでございますが、その中の今御指摘のような具体的な問題、そのほかにもございますけれども、それにつきましては、国内法あるいは国内事情との関連におきまして、鋭意検討中でございます。批准をしないという建前をとっておるわけではございません。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 奇怪な御答弁だと思う。これは、あなたが労働大臣になって日が浅いのでありますから、あなたに求めることは無理ですけれども、やはり日本の政府としては、継続的な作業を続けておるわけでありますから、あなたが十分その点をお調べになっていないと言えばそれだけであります。国内法や日本のいろいろな慣行その他の事情について、ILOでは決して免責規定を設けておりません。私も多少調べておる。私が今労働時間の問題と賃金の問題をあげましたのは、日本の国内法に明文化されておるからであります。何らの故障がないと私は考える。だから、そういうものを選んで今お尋ねをしたわけであります。まだたくさんあなたのおっしやるようにあるのであります。そういうわかりやすいところをあげて、一つ説明していただきたい。先ほどの総理大臣のお言葉が果して真実であるか、ただ私の質問に歩調を合せるために申したのであるかを確かめたいために、聞いておるのであります。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 ILOの決議、勧告についての未批准のものがまだ相当ございますが、それがそのままになっておる事情その他につきましては、前々から取調べも命じてありますし、先ほど総理の御発言のように、あとう限りすみやかに結論を得て、できる限り批准を早く行うように努力をいたしたいと思います。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 これは、残念ながら私は労働大臣の答弁では了解することができません。ただ了解できる点は、まだ調べを命じてあるからということでありますから、まさか労働省がこういう問題について一課を設けて——私が行って調べればすぐわかる。ただ政府がそれを問題にしていないだけであります。いつでもできます。今呼んで聞いてもわかります。やれるものをきめるのは政府なんです。閣議にかけなければいかぬじゃないですか。閣議に取り上げていないことは事実なんです。なぜ取り上げぬかということを聞いておる。調べてないのならそれでけっこうです。これは不謹慎な態度だ。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 ILOの決議についてのわれわれの考え方は先ほど申した通りでありますが、それについてさしあたって大きな問題になっておりますものは、御承知でございましょうが、労働問題懇談会において取り上げて議論をしていただいておりますが、その以前のただいま御指摘のような問題につきましても、すみやかに結論を具体的に一々あげて指示したわけではございませんけれども、たくさん数が残っておりますからそれはどうなっておるのか、至急に調べるようにと命じておるわけであります。従って、できるだけすみやかにそれぞれの決議、勧告についての政府の考え方をとりまとめて処置いたしたいと存じます。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 もうこの問題は、深入りはやめたいと思います。きわめて明確であります。ただ一言総理に言っておきたいと思うことは、ILOの精神を理解し、ILOの決定について忠実にこれを履行するということは、答弁を求めるまでもないことなんです。憲章が義務づけておる。加盟する限りにおいては当然である。ただ大事なことは、日本が国際正義をいかに重んずるか。特にあなたが絶えず口にされる平和と民主主義というものは、私はILO精神を実践していく以外に、民主主義実践の道はないとすら考えている。これに対する熱意と行動とが伴わなければ、それは口頭禅、もっと悪く言いますと、私はあと具体的な事例で一、二お尋ねしていきますから明確になると思う。私が判断するのじゃなくて、国民全体の正しい世論の判断を待とうためにここに質問をしようとするものであります。私見は全然用いません。  そこでお尋ねをいたしたいのは、以上申し上げたように、ILOの条約というものについて、当然批准を求むるべきものをしていないということについては、私はこれ以上は追及しようとは思いませんが、その実行についてどれだけ日本が誠意を示すかということ。ここに私の調査もありますが、時間の関係で省きますけれども、民主主義国になればなるほど批准の率は高くなっている。全体主義的な傾向が残滓しているところほど批准の率が悪くなる。あるいはひどいところになると、未加入のところもある。それは後進国であるか、あるいは世界的に地位を認められていない国か、あるいは近代工業になっていない国でありますから比較にはならぬと思う。日本のように、やはり近代国家として、しかも世界の貿易市場に日本経済の再建を求めようとする国が、このような事態で誠意あるILOの精神を理解したとは言えぬと思う。労働大臣は、鋭意検討してこれから出すというのですから、通常国会にうんと出してこられると思う。ここまで待ったのですから、出てきてからでもおそくはないと思う。ただ私の懸念いたしますことは、どうも岸内閣の労働行政全体を見てみますと、IL O精神に反するのみではなくて、それは理解しないものだと、そう私は善意に解釈したいと思う。今の質問で明らかになった。  そこで岸総理に申し上げておきたい。あなたのことを申し上げると失礼でありますけれども、どうも私ども労働運動に身を投じてきたものから感覚的に受ける傾向でありますが、昭和十六年から二十年の間、東條、小磯、鈴木内閣に至るあの間の労働行政に近いものが、新しい衣を着て出直してくるような傾向を感ずるのであります。これは私の感じであります。そういう感じは、国際的には大写しには出ているということを、わずかな旅行でありますが、世界を旅行して私は強く感じました。これは、私の感じが誤まっておれば日本国のため幸いだと思います。それが的中するということになるならば、よほど考え直す必要があると思う。こういう点でILOの問題を出したのですが、岸総理として、この機会に何かこれに対する所見をお述べになる必要はございませんか。それを伺って次の問題に移ります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 いかなる点で井堀委員がそういう感じを持たれたかは私の承知しないところであります。私自身は、しばしば国会におきましてもその所信を明らかにしておるように、私自身の労働問題に対する考え方、また一般民主政治に対する考え方につきましては、決して戦時中のような考えに立っておるものでは絶対にありません。従って今これから御質問があると思いますが、労働問題に関するそれぞれの施策を具体的な問題について明らかにすることによって、そういう疑惑を解くことにいたしたいと思います。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 総理の率直な態度には敬意を表したいと思います。  そこで具体的なものをお尋ねいたしていきたいと思いますが、これは、そのことを多少離れると思いますけれども、当面した一つの緊急な課題として、駐留軍労務者と特需関係労務者の大量解雇が、目前に、いな現実になっております。これは、一つには、岸・アイク声明の中で国民も十分理解しております日本国とアメリカ国との国交調整の一つの現われとして起った労働問題であるというところに特徴があると思います。いま一つの問題は、日米安保条約に基く行政協定の中で明文化されておりますように、占領軍——今は駐留軍になっておりますが、占領軍から駐留軍にかけて、出先における役務、労務の調達を日本国は約束しております。その約束に基いてその調達に応じ、日本国の政府が役務を軍に提供したのが、今日の駐留軍労務者、あるいは間接の形をとっておりますけれども、その本質は全く同様である特需関係の労務者であります。これは基地内において、日本の労働者と異なって自由が大幅に制限を受けておる。具体的に申しますならば、基地の中に入って仕事をするのでありますから、基地の中は、行政協定にありますように、全く管理権は軍にある。でありますから、軍の規律と統制と基地管理の条件の中で日本の労務は提供され、労務を果すということは行政協定で明らかであります。入門するときには、ゲート・パスと称して、写真入りの——日本のかって昔ありました人頭番号、これは人格をはなはだしく汚損するというので、戦前の日本の労働行政の中でも取りやめたくらいであります。刑務所も、囚人以外にはこういうものをつけません。その囚人も外に出るときには、人目をはばかって、新しい憲法ではそれを避けることになっております。日本の労働者が公然と囚人以上の扱いを受けておる。言語、風俗、いろいろな習慣の違った、しかも相手は軍隊です。それに雇用されておる労働者であります。このことを明らかにしたいと思います。いま一つの問題は労働条件であります。労働条件が著しく悪い。私はあえて悪いと言うことは、二つの理由をあげたい。一つは、国内的な一つの労働慣行に従って悪い。いま一つは、以上のような理由に基く労働者に対する待遇としては不適当である。その不適当なものについては、アメリカ軍が軍の作戦及び軍の必要上からくるところの労務の調達でありますから、本来でありますならば、アメリカの労働者を連れてきてやるべきであります。あの行政協定は、私はそこに国辱的なものを感ずるのです。特に日本が独立を宣言してから依然としてこの状態が続いているということは、私は日本国の労働者を奴隷の状態に置いて雇用に甘んじておるといっても返す言葉はないと思います。(「ノーノー」)ノーノーというのは、労働者の人格を否定する一つの声であるなら別です。(「違う違う」と呼ぶ者あり)私は、ここに民主・妻、我を貫く精神が具現されるかいなかの問題を表明される一つの問題だと思う。しかし岸総理が行政協定の衝に当ったのではありますまい。これをとがめることは時間的に一つのズレがあるので、政府としての責任は別として、個人的にとがめようとするものではありません。えらい割の悪いところを引き受けたということになるかもしれません。しかしその事実は依然として動いておらないのでありますから、この問題の解決については私は有終の美を飾ってほしい。日本国のために、日本国の人民のために名誉ある解決を希望したい。要するに、岸・アイクの共同声明にありまするように、陸上部隊の撤退に伴ってこの問題は起ってくるのでありますから、この関係は私は日本国とアメリカ国の間の話し合いの中においてある程度の血路を発見できる性格のものであると思いますからお尋ねをしておるのであります。過去をとがめ、過去を糾問しておるのではありません。われわれももちろん、行政協定並びに安保条約については反対したから責任がないなどとは言いません。われわれの微力はまた責任の一つであります。責任を感ずるがゆえに、ともにこの問題の解決をいたしたいという立場で岸総理のこの問題に対する明確な所見を伺って、具体的なことは労働大臣にお尋ねいたしたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 駐留軍労務者の問題に関する御質問でありますが、第一の、米軍の撤退に伴うところの失業者、これに対する対策の問題につきましては、政府としては、すでにその方針をきめまして、それに対する努力をいたしておりますが、具体的のことは労働大臣よりお答えをいたします。  それから、駐留軍労務者の労働状態、労働条件、労働の立場等につきまして井堀君の御指摘のあった点等につきましては、われわれも遺憾の点が少くないと思います。近時多少改善を見ておりますが、なお改善を要するものが私はあると思います。根本は、駐留軍そのものが日本から撤退するということになりますればこういう状態はなくなりますけれども、陸上部隊の方は比較的早く撤退することになっておりますが、その他のものは今後漸次兵力を減すということでありまして、従って、その間におけるこれら労働者の労働条件等についての改善についてはまた別にわれわれとしては十分努力をしていかなきゃならぬ、かように考えております。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 具体的なことについては、まだ関係ありますから、あとでゆっくり労働大臣にお尋ねいたします。総理は何か所用がおありのようでありますから、新たにもう一つだけ問題をお尋ねいたしたいと思います。  駐留軍労務の問題につきましてももう一つあなたにお答えいただきたいと思うのは、これは生きた最も具体的な近い事実を御紹介申し上げたい。これは私の方の党の書記長も同道いたしまして現場で目撃したことであります。それは相模原にあります米軍基地内で働いている特需関係の労働者のストライキの問題であります。ここで労務の契約を一年間に限ってするということになっておるにもかかわらず、その一年間の期間内に相手方が変更する自由も契約の中に一部あるようでありますが、基本的には一年。その基本を破って絶えず中途で契約を変更する。すなわち、三千余名おりまする中で、その約半数をこの際やめてもらいたいということで、九月の五日に通達をして、十月の十五日にその実施を迫っておる。このことの手続は私は順当だと思います。私がここであなたに申し上げたいことは、手続の問題はあとでそれぞれ専門の関係掛当大臣に伺いますが、一番大切な問題は、日本の労働法によって当然労働者を保護するということが行政協定の中に明文化されておることは言うまでもない。この点については私は疑問がありましたから、第十六国会か十七か八かよく覚えませんが、重光外務大臣に日本政府の所見を国会でただして、明らかになっております。基地内における管理権と労働三法が適用されるということは何らの疑義のないところである。この精神からいきますと、当然この解雇問題については1中に会社が入っておりますから、形式的にも会社と軍との間の契約、会社と労働者の間の雇用契約を結ぶという形をとっておる。こういう場合には、日本の労働法なり労働慣行からいきますと、雇い主との間に解雇問題の解決ができるまでは、軍は最初の契約に基いて三千人の人の出入りについて、すでにさっき申し上げたゲート・パスが出ておるわけでありますから、それを容認するのが普通なのです。ところが、今回に限って、十五日の期限以後は三千人のうち半数、約千五百人くらいの人しか入れないといってこれを拒んだわけであります。ところが、そこで実際問題になるのは、一体三千人のうち千五百人が必要であるという契約ができておるかどうかを私はただしに行った。そうしたら、軍の方から明らかに答弁されたのでありますが、その契約は人定契約をしておらぬのであります。どの業種について何名ほしいということは言っているけれども、何の太郎兵衛ということは契約の中に入っていないのであります。それを定めるのは日本の労働法に従って雇主と労働者の間で協定する労働協約に基いて解決する。その解決がつかない間に、基地内における管理権をたてにとって、しかも日本の労働者が入ろうとするのに対して、入るなと言っただけならまだいい。そこに銃をとった軍隊が着剣をして威嚇をしてこれを拒否しておる。これは冒頭に申し上げたように、日本の労働者の人格などはみじんも軍の前にはありません。日本にそういう労働がありますか。戦争中の東条内閣のもとにあってさえ、軍隊が着剣つきで労働者を監視して働かしたことはありません。私どもは義憤を感じまして、可令部に会見を申し込んで、その事実をただしたところが、以上申し上げたようにきわめて明白なのです。こういう事実について疑いがあれば、聞いていただけばわかります。そういう事実がある。その問題の解決を当然日本政府はそれぞれの手続を経てやらなければならぬのに、やらないのみならず、ついにこの争議は経営者側を利するところになって、労働者は惨敗をいたしております。こういう状態を軽視するようなことで独自の外交ができるなどといったって、私はこういう事実こそは厳粛に解決をはかるべきだと思う。元来から言いますならば、アメリカの労働者を連れてきて修理をやったらいい。日本としてはなるほど労働者が多いのですから、雇用の関係を増大するという問題を別にいたしますならば、アメリカの労働者を連れてくれば、全米自動車労働組合の最低賃金は一時間二ドル五十セント、八時間労働です。ノルマルな労働をするならば月額十万か十四、五万払わなければ、あるいは出張手当を含めたら三十万円くらい払わなければ雇えないものを、一万四千円か二万五千円で使っている。そうしてその上に人格をじゅうりんするような処置がとられている。日本政府は指をくわえて見ている。指をくわえて見ているどころではない。神奈川県の警察は、あべこべに向うにお手伝いして、日本人の人権を守ってやるべき警察官が間違って反対を向いている。あとでこれは警察庁長官に私はお尋ねする予定であります。そういう事実について、あなたが間違っていると思えばあとで私の言ったことを訂正してもいい。私が以上申し上げた点は間違いない。こういう事態が起っておるのであります。こういう問題に対して総理としてはどうすればいいかというこまかいことを聞こうとしません。基本的な方針、日本政府としてはこういうものに対してはどう考えるべきかという見解を一つお尋ねしておきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私、今おあげになりました具体的事実は、はなはだ何でありますが承知いたしておりません。ただ、言うまでもなく、行政協定そのものにつきましては、これが協定をされました当時の事情から申しまして、われわれ日本の自主独立の立場から言って遺憾な点も少くないのであります。しかし、その運営につきましては、両国の間の委員会もございますので、また両国の関係もこの行政協定ができました当時とは非常に変ってきておりますので、あくまでも両国は自主独立の立場で、対等の立場で物事をこれから処理しようということが、私とアイゼンハワー大統領との過般の会談の根本の趣旨でございますから、そういう問題に関して、私まやはり、日本政府としては、今の協定そのものを変えるわけにはいきますまいが、協定その他の条項の実際の実施面については、できるだけ日本の立場というものを、先ほど申しました日米間の新しい立場に即応せしめるように、委員会等においてこれを処理していくというように取り扱って参りたい、かように考えます。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 ちょっと井堀さん御相談ですが、かねて御了解を得てありますように、総理が所要で席をはずす時間が来ておりますので、よろしゅうございますか。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 もうちょっと。お時間で大へん恐縮ですが、もう一点だけお尋ねしたい。  今あなたは契約の問題のことを言っておられました。この問題もあるのでありますが、それはまた後ほどの機会にお尋ねするといたしまして、簡単にあなたのお耳に入れておけばいいと思います。契約については、異議あるときは日米合同委員会の制度がある。ところが、この合同委員会でかけられたもの、ここで採択をして通告を受けておる、すなわち日本の労働慣行に従えば、三十日以前に予告するかもしくはそれに相当する予告手当を出す、その予告手当は、基準法にもありますように、手当を出さないときには監督署に行政的手続をして許可をとらなければならぬということになっておる。この精神を今まではじゅうりんしてきた。それをたびたび労働者側から陳情や運動をして、合同委員会がようやく取り入れて、合同委員会でそれを採択して軍の方に通知をしたのであります。外務省にはその通知の写しを出せと言っておるのですが、まだ出しておりません。時間的なズレがある。それをここで御紹介すればよくわかると思うのでありますが、それは当然日本の労働慣行に従って出すべきだという通知をしておる。ところが、アメリカ側は日本の労働者との契約においてそれを入れない。私は権力の乱用だと思う。権力でも要する国内権力とは違うのです。それから、もう一つは、手当を出さぬからということで労使関係というものが必要以上に争いが起きておる。また雇い主は日本の国民としての常識をどうかと疑うのでありますが、それであっても力の前には労働者をどのように酷使してもいいという考え方が契約の実態に現われておるという点を、私は日本国としては考えなければいかぬと思う。これはよけいなことでありますが、直接そういう点を十分おただしになっていただかないと、私は日本の独自の独立国の名誉というものはこんなところからくずれていくと思う。これは厳粛な事実でありますから、十分御検討をいただきたい。  それから、もう一つだけお尋ねしたいと思いますが、あなたの三悪追放には全く賛成であります。ことに貧乏追放については一日も早からぬことを念願しております。貧乏追放については私はいろいろ議論がありますが、これはあとで労働大臣と論議をいたしたいと思います。根本の問題はやはり低賃金、テープ・レーバーにあるのです。もちろん低賃金をどうすれば破ることができるかということは、ただ労働者の要求だけではできぬかもしれません。これは政治家の責任だと思います。これはあとで中小企業問題でお尋ねすればよくわかると思います。しかしながら、このテープ・レーバーの問題を解決しない限りにおいては、日本の産業の労使関係の平和というものは望めない。これはILO精神に徹するならばきわめて明確であります。ILO憲章の中には随所にそのことが書いてある。労働条件改善の中においても賃金問題はきわめて重要な地位を占めておる。生産性の問題を理解できる者であるならば、低賃金政策を強行して、もしそれをやろうとすればそれは逆のことになる。最低賃金法をどういう工合にするかというような具体的な問題で岸内閣の性格は出てくると思いますが、こういう点について、私は、ただ関係閣僚にまかせることなくして、総理としてはこういう問題に対して正確な判断をしていただかないといけないと思います。意見を求めたいと思うのでありますが、時間の関係でもう一つだけつけ加えます。  汚職追放の問題について、私は公務員の労働組合の動きについてお尋ねしたいと思ったのでありますが、残念ながら時間がありません。多少説明を要しますので、労働大臣なりその他の関係閣僚に伺おうと思いますが、一つには、私は汚職の追放は公務員の生活の荒廃にあると思う。それは文部大臣に言わすと修身教育ということになりますけれども、衣食足りて礼節を知るで、この生活の実態について私はここに統計を用意しておりますから、労働大臣との質疑の間に正確に統計の結論を出したいと思いますが、低いのです。それは、あなたに説明するまでもなく、国際的な基準と比べていけばよくわかる。統計が乏しいのでありますから、正確を期するわけに参りませんけれども、名目賃金についてはある程度できても、実質賃金についてはまだILOも出しておりません。IMF、すなわち国際的な労働機関が金属労働者について出したのが唯一のものであります。そういうものから比較いたしまして、このチープ・レーバーの問題を解決しないで国際舞台に日本が雄飛しようなどということは、非常に危険があっても、成功の望みはないと思います。こういう点についてよくお考えをいただきたい。  いま一つ、汚職の問題については、古い日本流の考え方からすれば、上行うて下ならう。私は問題の根源は国会にあると思います。選挙法にあると思います。選挙法の改正を必要とするのはそういう点にあると思います。私は、今の選挙法の中のたしか第六条だと思いますが、常時啓蒙をやる。選挙は選挙をやる者が勝負を争うのでありますから、鹿を追う者は山を見ずという例があるように、勝とうとするためには無理をする。しかし、それを要するに牽制してよく公明選挙をなし得るものは、私は第六条の精神にあると思う。それは選挙民すなわち有権者各位の政治良識のいかんにかかってくる。買収をやったり供応をやったりする者には一票でも入れないという鉄則が守られればいけない。それが第六条なのです。常時啓蒙、啓発のために、やかましく国会が言いまして、昨年一億の予算を組んだ。珍しいことだ。しかし、これを思い切って増額するような措置をとらないで、汚職追放ということを言ったところで、もとを断たないことになる。私はこれは大事だと思います。汚職の問題にちょっと関係がありますから、前の問題はまたあとでお伺いするとして、あとの問題はお答えできると思いますから、こういう問題について総理としてお考えがあるならば、お聞きしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 汚職追放の問題に関連をして、その源を清くする意味において公明選挙、選挙の腐敗をなくす、また選挙に非常にたくさんの金を要するというようなことをなくすということが非常に重要なことであるという御意見に対しましては、私も全然同感であります。それについては、ただ公明選挙公明選挙といいましても、実際にこれが公明選挙が唱えられてからずいぶん長いことでありますが、なかなか実現がむずかしい。そこで、今御指摘になりました啓蒙、一般の選挙民の自覚によってこれが実現するようにという意味において、本年度一億の予算を計上しました。各地における状況を見ますと、相当に婦人、青年層、また一般有権者等も入れて話し合いの機会を作り、いろいろな講演会等をやりまして啓蒙が行われたのであります。私は相当の成績が上りつつあると思いますが、もう少しそれに力を入れるべきであるということを考えまして、今後こういう問題に力を入れて、まず選挙から正しくこれを清めていくということが、汚職をなくする上に非常に重要に考えて、私は努力したいと考えております。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 それでは駐留軍労務についてその後の政府のとった処置なり今後の緊急を要する処置についてお尋ねをいたして参りたいと思います。  先ほどの討議で明らかになりましたように、駐留軍労務者の問題の解決は、これは直接的には軍が使用者で、政府が雇い主となっております。雇い主である政府がしかるべき方針を立てなければならぬ義務があるわけであります。特需は多少違いますが、本質は同様だと思います。これについては国会でたびたび与野党とも特別委員会を持って国会でも鋭意努力してきたことは事実であります。ところが一向実効が上っていない。去る九月の二十四日の閣議決定を見ますると、一応これこれのことをしたいという意思表示は出ておるが、しかしこの閣議決定を実行一に移すについては、こういう行政的な措置でこれができるというお考えであるとするならば、かなり矛盾が出てくると思う。やはり法治国であり、また国権の最高が国会にあるという、この厳粛なる事実に基いて政府はやはり国会の協力を求め、国民の協力を求めて、やはり法律のもとにこういう国際的な関係あるいは国民の人権に関する労働問題の処理というものは私は法律に求めて行なっていくというのが、法治国の秩序を維持する基本的な考え方でなければならぬと思うのであります。政府は一体こういう行政的な方針については閣議決定で一応わかるが、その実施について立法の用意があるかを伺いたい。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 お答えをします。九月の閣議決定に基く行政的措置につきまして、なかなか思うように実績が上らないということは御指摘の通りでございます。実は駐留軍の離職者あるいは特需関係の離職者の散布状況、あるいはそのいろいろな地域ごとに生じて参りますいろいろな実情に非常に大きな相違がございまして、結局それを具体的に進めて参るためには地方と中央の関係、あるいは地方、あるいは中央、それぞれの役所間の関係において調整の非常にはかどらないということは御指摘の通りでございます。そこで先般の閣議におきまして、私から特に要望をいたしまして、この間のあっせんと申しますか、促進と申しますか、こういう措置をとらしめますために、至急各省代表者に、要すれば国会の代表者の方々を加えた数班の督促班のようなものを編成をいたしまして、各地域に出向いて参りまして、この行政措置の促進方あるいは各省間の調整その他の措置をやっていただくことに決定をいたしました。  次に立法措置を必要としないか、その用意がないかということでございますが、先般、二、三年前に国連軍の引き上げに伴いまして生じました呉市その他の集団離職者の対策につきましても同様の御議論がございましたが、ただいま申しましたような具体的な促進措置をとることによりまして漸次解決をいたしておるのでございます。そこでただいまのところはこの行政措置をでき得る限り促進実施をいたして参りたいという方針でございまして、立法措置は考えていないのでございますが、しかしその過程を通じまして、どうしても必要となりました場合におきましては、さらに検討を加えてみたいと思っておる次第でございます。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 困難であるかないかはここで議論すればすぐ出ると思いますけれども、時間の都合もありますから一々は困難であると思いますが、一例をとってみると閣議決定の中で、たとえば大量失業してくる人の中には、駐留軍労務者の未熟練者転換のためには職業の再訓練をしなければならぬということがあるわけです。その点を政府では職業補導を拡充したいと言っております。従来の職業補導所は私もずっと実態を調査して、大体五、六カ府県の総合職業補導及び地方でやっておる補導所の実態を調べてみました。いずれに行きましても大歓迎、満員で、いつも希望者の三分の一、多いところは五分の一しか収容ができない実情であります。そこへかてて加えて多数の集団離職者を、しかも優先的に採用することが前提になるわけです。そうすると他の人がはみ出される。従ってこれはやはり特別の職業補導の機関を急速に設置しなければならないという必要があるわけです。しかしこれはすぐお隣りの大蔵大臣に関係することであります。労働省の既存の予算の中では、こんなものはさか立ちしても出やしない。一例をあげてもこんなことです。  次に企業の誘致その他対策をずっと並べておりますが、結局就職をあっせんする機関といたしましては、既存の機関でやっていただくということになりますと、他の失業者がそのために災いを受ける結果になるのですから、多くの失業者を犠牲にして特需の、あるいは駐留軍関係の労務者だけを優先させるということであっては、これは対策にならないと思う。この点に対して  一体どういう予算をお使いになりますか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 地方の職業あっせん機関あるいは訓練機関の拡充につきましては、先般ちょっと日にちは忘れましたが、とりあえず予備費の支出を求めまして、全額はわずかでありますが、予備費で支出をいたしました。これは要すればさらに増額を希望していきたいと思っております。それからたしかに御指摘の通り現在私の方の役所でやっております職業訓練所は非常に大入り満員、しかも比較的若い人が先に採用されるということになりまして、駐留軍の離職者のように比較的年齢の高い人はどうも利用しにくい実情にもございます。そこでそういうことにつきましては、明年度予算におきまして適切な処置を講ずることは当然でありますが、しかし現在におきましても、たとえば雇用者側と了解を求めて、働きながらも夜間に訓練を受けるとか、そういうような処置を講ずるようにいたしております。必要予算は現在請求した予備費の中にさらに要すれば同様方法によってまかなって参りたい。予算的措置その他につきまして、できる限りの努力をしたいと思いますが、立法措置は現在の段階ではまだ考えておりません。それより先に行政措置をいかにして促進するかというところに重点を置いて参りたいと思っております。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 どうも行政措置は限界にきておるということをあなたみずからがお答えになっておると同じだと思う。もし行政措置をやられるとするならば、財政法の違反を犯すか、あるいはどういう非合法で金を持ってくるかです。職業補導の関係だけでもあなた自身お認めのように、他の労働者を犠牲にしてやるというならば別だ、それは労働行政のとらぬところです。あなた、今までの労働行政をさかなでするようなことはまさかやりはしない。さっきの総理の答弁からいってもそうです。ですから、これは特別の施設を必要とするのですから、特別経費は前国会ではわれわれは承認を認めておらない。国会の了解を得ない金が出てくるはずはありません。予備費でやられる程度なら、これは労働省全体の予算の中のやりくりということでありますから幅が少い。こんな大きな仕事をやるようなことは国会は了解をしておりません。だから予算を組むなり、特別立法の措置を講じてやる以外にはない問題だと私は思うのです。しかしだんだんそういうふうになってくればやるというお答えでありますから、時間の問題で、私は今が適当な時期だと思う、多少時間のずれはやむを得ないと思いますが。  そこで大蔵大臣にお尋ねをいたしたい。今の論議でおわかりのように事態は非常に緊迫した、新しい社会事実が生れてきておるわけです。これを法律で出さないのでありますから、予備費の流用その他で大蔵省として容認できるものは、当初予算の中できびしい取引が行われてきまったようであります。私は多少心得ております。それからここに閣議決定の中であなたは十分お読みになっていると思う。閣議へ参加しているから、聞く方がやぼかと思いますが、離職者のために公共施設を活用するということがかなり詳細に決定されておる。そうすると、国有財産に対する既存の法律の中でやれる範囲内というものは、私どもの知る範囲内においては、この離職者対策としてはかなり幅の狭いものである。ここに閣議で取り上げておる精神は、先ほど私どものお尋ねに対する総理及び労働大臣の答弁にあるように、そういう対策をまかなうのには非常に困難があると思うのです。それは私の考えが間違っておりましょうか。困難がないというなら、こういう方法があるという国有財産の管理に対する大蔵大臣の所見を一つお伺いしたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 国有財産のうちで、離職者の活用に適するようなものもあると思います。そういうものはできるだけ活用していきたい、かように考えておるわけであります。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 御指摘のように、金額の相当大きいものについては、随意契約で利用させるか、あるいは競争入札にさせなければならぬか、あるいは借り入れの場合の指定とか、そういうことは私は存じておりませんが、なかなかやっかいな問題がございます。そこでこれも、政令の名前は忘れましたが、この間の閣議で政令を変えまして、今まで五十万円未満のものでなければ随意契約ができなかったのでありますが、今度は二百万円までは随意契約ができるようにいたしました。それから実際問題として、国有財産等を利用する場合におきましても、その地方の管理をいたしておりまする財務局との話し合いあるいはその他で、現地へ参りまして適当な人が——やはりセクショナリズムがございましてなかなかむずかしいのでありますが、先ほどお答え申しましたような、あっせんだ、促進だというようなものでありましょうが、そういうような者が参りまして、具体的にそういう方針であっせんをして参りますと、解決をするものも多いのでありまして、呉市の場合などはほとんど全部そういう工合にして調整をとって国有財産の利用を解決して参りました。ただそれはそういう便法であっせんでやるわけでございますから、それをやって参ります途中でどうしてもむずかしいという事態にぶつかりましたときには、それは考えなければならぬと思っておりますが、今までの経験その他から、国有財産の処理、利用についてはそういう方法でやって参っておりますし、これからもそれについてさらに一般の努力をしたいと思っております。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 この問題は、まだ具体的なことをあげていけばすぐお答えが出ると思うのですが、私は時期は早い方がいいと思う。そうしないと、こんな約束をして駐留軍労務者をじらすだけだと思います。これはさっき言ったような精神にも沿わぬことですから、なるべく早い機会に政府も立法措置を講じたらどうか。幸いにして社会党が鋭意努力いたしまして、この臨時国会に法案を提案いたしました。もっとも至れり尽せりというほどのものでもないようでありますが、一応こういう問題を解決するに足る法案を出しておりますから、一つ政府も大いに同意をされまして、与野党一緒になりまして、間に合わぬところはそこら辺で間に合わしたらどうかと思います。これは国会のことでございますから……。  次にお尋ねをいたしたいと思いますことは、総務長官にちょっと伺っておきたいのです。このお仕事は、従来国会でも、政府のそれぞれの窓口でも、何回となく行きつ戻りつした問題で、結局行政的な窓口を統一して、効率的に問題を処理する必要があるというので、総理府の中に臨時に一つの連絡機関が設けられて、今度あなたがその長になられておるようでありますが、実施機関としてこの閣議決定を最大限に実施するためには、あなたのお考え一つでかなり大きな開きができると私は理解しております。この点に対してこの際あなたから実施責任者として見解をお述べいただきたいと思います。

今松治郎自由民主党総理府総務長官

○今松政府委員 お答えをいたします。特需対策の機構といたしましては、総理府に特需等対策連絡会議というものを作りまして、私が議長という名前になっております。そういたしまして、その推進機関として推進本部というものを作りまして、これは総務副長官がその部長になっております。関係各官庁の係官が参加しまして、先ごろ閣議できまりました諸種の方策を実施に移す、こういうことがわれわれの対策機関の仕事でございます。先ほどからいろいろお話がございましたが、一番大切なことは、やはり職業補導の拡充ということと就職のあっせんであります。就職のあっせんは自衛隊等でもできるだけの好意を持ってやってくれておりますし、また職業のあっせんにつきましても広域のあっせんをいたしまして、これも計数はまだ出ておりませんが、ある程度の効果を上げておると思います。それから自立更生の問題でございますが、これはたとえばハイヤーの認可でありますとかその他、こういう問題に対する優先の処置、こういうことがありまして、関係各庁に、たとえて申しますと仙台とか京都とか、そういうようなところではタクシーの申請があります。当局によく話してみますと、実際タクシーの場合を例にとりますと、二台、三台、五台、一番多いのが五台くらいの申請でございまして、そういうようなものを許した場合に、果してうまくやっていくかどうかということについて、運輸省でも懸念がありますので、ただいまのところ、こういう問題はあっせんをして一つにして許可したらどうであろうか、こういうような話し合いをいたしております。ただいまのところでは、先ほど労働大臣から述べられましたように、国有財産の払い下げでありますとか、また撤退に伴う返還財産のうちで住居に使えるようなものを転用する、こういうような問題もある程度話し合いがついております。私どもといたしましても、来年の六月ごろまでに出るであろうと予想されております解雇者が、大体四万ないし五万、これは直接に雇用をしているものも含みますが、そういうような人数がありますので、広くそういう方面のあっせんその他に努めるつもりでございまして、私どもはできるだけの努力をいたしております。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 今の総務長官の御答弁は閣議決定の内容を説明しておるようでありますが、もう私はそれはとっくに承知している。それを実施していかれるためにどうすればいいかということをあなたに聞きたいのでありますが、あなたはあまりこれには熱心じゃないようです。私は二、三回駐留軍労務者や特需労務者の案内を請われてあなたに面会に行きましたけれども、どうもそういう実際問題に取り組もうという熱意がなくて、いつも次長が会ってお茶をにごすというような態度であります。陣頭に立って、しかもこういう実際問題に足を踏み込んでいくというのがあなたの立場だと思う。今ごろ閣議決定の内容、中身を説明するなんてずさんきわまる。推進本部をやる人は、実施計画に具体性を持たせた答弁をしなければ、あなたの存在が危なくなります。私の言おうとするところはあなたを責めるのじゃなくて、こういう機構を作ったら、この機構がやはり働きをしてくれなければいかぬということを言いたいのです。もっと真剣にこの問題と取っ組んでいただかなければ、総理大臣がここで、から約束をしたことになる、労働大臣が言いたいことを言ったごとになってしまう。私は国民の間に岸内閣の実態を非難される結果になると思います。とにかくそれは—大蔵大臣はさっきからにやにやしておりますけれども、あなたが今一番心配しておられるインフレを切っていく、そのためには多少の出血は仕方がないという、勇気ある金融引き締め、デフレ政策をとろうとする立場であります。それだけに理解が早いと思いますが、駐留軍労務者と特需労務者が日本経済の危機を救ったということを忘れてはいけません。日本が収支の赤字というものを収拾できない事態に当面しておるときに、これで破綻するのではないかという悲観的な一般の批判がくろうとの間に行われておったのであります。それが今日の状態に切り戻すことのできた直接の大きな発端になったのは、当時二十数万の労務者がドルを、要するに外貨を確保したということを、のど元過ぎれば熱さ忘れるで、もうけろりとしている。恩返しにここのところはうんと金を出して解決するということが、あなたの言うデフレを切りかえ、インフレを切るという勇気と同じ意味において、そういう点をはっきりしなければいかぬと思う。これに対して思い切って予算の方でお考えになるということがなければいかぬ。この答弁を、あなたは求めてするだろうと思ったら、あんないいかげんなことを言った。一つ真剣な答弁をして下さい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私は前から、日本の経済は勤労大衆とともにいかなければならぬということ、勤労大衆によって日本の生産性を高めていくということ、これは変らぬ信条です。これはあらゆる機会に私は表明した。従いまして今日のような経済情勢においての雇用という点については、やはり非常な心配を持ち関心を持っております。従いましてそういう点については、予算編成についても十分考慮するようにいたすつもりであります

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 私は今の言葉を信用いたしたい。あとで駐留軍労務者の問題、特需労務者の問題で陳情に行きましょう。きっとあなたの部下がいろいろあなたと違った、親の心子知らずの取扱い方をするかもしれない。そのときは私は今の言辞を追及いたします。いいかげんなことでまなしに、さっき私があなたに言ったのは、ここに統計がありますけれども、数字をあげればすぐわかる。要するに日本のほんとうの経済危機、すなわち財政の危機というものを救った恩人なんですよ。あんなにみじめな、自由拘束、奴隷的な労働の中でドルをかせいでくれたのではありませんか。大蔵省が一番先に熱心でなければいかぬはずなのに、一番横着です。こういうことは私が労働者諸君の運動を通じて受けた私の印象です。私もお供したことが何回かあるが、今度行ったら大蔵省は、万難を排してこういう問題を解決するように、あなたは忙しいでしょうから、あなたがお帰りになって適当なときに、あなたの意思が伝えられるような方法で駐留軍労務者の諸君との間で折衝して解決されるように希望しておきます。これを解決してくれなければ、今言ったことは必ず決済をつけます。そこでこの問題を長くお尋ねいたしますことは時間の関係でできませんので、ぜひ一つこの点は総理府の総務長官、労働大臣、大蔵大臣がお歩きになって処理されんことを要望しておきます。あとに続く問題でありまして現実の今の問題でありますから、今後の事実を通じて今まで御答弁なさいましたことの結果を求めます。  次に労働大臣に一つ率直に伺いたい。あなたは公務員それから公共企業体に対してたびたび公けの機会に発言をなさっておる。例はここに引きません。私の考えを先に言ってお尋ねをいたしましょう。私は公務員や公共企業体に対しては罷業権を与うるべきだ。それは先ほど議論いたしましたILOの精神に沿うものであるという考え方、この点に対して一つあなたの所見を正式にこの機会に伺いたいと思います。多くを言っていただかなくてもいいと思いますが、なぜ一体公務員に罷業権を与えることがいけないのか、公共企業体の労働者の罷業権を今日奪っておりますが、これをもとに復する意思がなぜないのか、することがどうしていけないのかということをはっきり一言っていただきたい。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 お答えを申し上げます。公共企業体の職員に対する罷業権はかつてあったのでありまして、それが公労法の制定によって制限を受け奪われるに至りましたのは、それだけの原因がございました。その原因が除去されるということが私は前提であろうと思っておる次第であります。すなわち労使双方とも現行法規——これは労働法規に限りません、すべての現行法規を守るという建前に立ってよき労使の慣行を作り上げていくことが先であると私は思っております。法律を改正いたしましても、法律そのものを初めから否定する者が相当な影響力を持っている限りにおいては、私は法律の改正より法の尊重という慣行を作り上げることが先であると考えておる次第であります。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 きわめてインチキに満ちた御答弁であることを指摘しておきたいと思います。ILO精神を理解していない一つの証拠なんです。あなたは労使慣行ということを方々で使っておられる。労使慣行なんていうものは権力が介在したら生まれない。慣行というものは、労働者と雇い主の間に幾つかの苦い経験を重ねて生まれてくるものなんです。それを賢そうに右向け、左向けなどということは、その慣行を妨害する行為の最たるものです。一体どこにそういう労使慣行がありますか。政治権力が介在していて、一体労使の間の自由な働きがどこから生まれてくるでありましょう。今日の労働組合ももちろん行き過ぎや失敗はあったでありましょう。もう少し時日をあなたは要するに過去のそういう事態がこういうものを生んだということを言おうとしておるようであります。私もそれは認めますが、ここにわれわれが十分考えなければなりませんことは、少くとも平和主義、民主主義を守ろうとする良心のある限りにおいては、私はもう議論の余地はない。それは労働者は世の中に孤立しておるものではありません。要するに世論の外にあっては日本の労働運動、世界の労働運動は立つ瀬があるはずはないのであります。きびしい世論の中に鍛えられていくのであります。労働組合が失敗をすれば、それは労働組合にはね返ってくる。それを、日本の労働運動は不幸にして占領下に生まれた。いい場合もありますが、悪い場合をあげれば、占領政策に日本の労働運動というものが使われたことは事実なんです。このことは私は日本の労働運動にとって非常な不幸なことだ、日本の民主主義運動のために不幸なことだと考えておる。それを要するに独立後日本が改めていくということが必要なことであって、それは言うまでもない。労使の慣行というのものは自由の中にある、そうしてその失敗は世論の制肘を受けていくのであります。みずからの責任はみずからに戻るところにあるわけであります。そのしんぼうができないようなことで、民主主義を説く資格はありません。民主主義は経験主義でありませんか。経験のないところに民主主義が成長するはずがないのであります。日本の労働運動は不幸にして十分自由な呼吸の中において経験することができなかったという事実を認めてこそ、私は民主主義の立場に立つ労働運動の育成があると思う。口に民主主義を言いながら、事実は民主主義を圧殺する行為ではありませんか。そういう議論をもてあそぶことを私は危険だと思う。問題は私は、官公庁の労働者に罷業権が与えられたからといって、公務員として公けに奉仕しなければならぬ者がストライキをやったら、すべての国民の反感を受けるでありましょう。反撃を受けるでありましょう。私はその反撃は、政府の権力が干渉すべきではなくして、そのしんぼうができないで——しかもあなたの政党は自民党じゃありませんか。自民党の労働政策に、どこに民主的な労働政策が見られますか。私は具体的にここにちょうだいいたしておりますが、よいものが出ております。非常に工夫されたものであることに対して敬意は表しておりますが、今までの政策の中においてそれが見られないから、私はここで抽象論を繰り返していても仕方がありませんから、具体的なことについてあなたの所見を伺っていけば、直ちにこのことは明瞭になると思います。  そこでお尋ねをいたしたいと思いまするのは、あなたは官公庁の労働者については、特に公務員については、雇い主の性格も一部持つでありましょう。また国民を代表する公けの立場も持つでありましょう。二つの責任において、私はよき労使慣行を作っていかなければならぬ当事者であると思う。そこで一番問題になるのが、私は公務員の待遇の問題だと思う。公務員が団体交渉、団体行動権に訴えて待遇を改善してこなければならないようなことは、私は雇い主の責任がこの際許されるものではないと思う。元来労使関係の紛糾というものは、たびたび私は引例いたすのでありまするが、鐘と撞木のようなものであって、雇い主側だけの責任ではない、もちろん労働者側だけの責任ではない。その意見の衝突の際に生まれてくる紛糾であります。責任の折半は当然であります。特に昔からいっているように、上下の争いという言葉が適当であるかどうか知りませんが、雇い主と雇われる公務員の間には、服務規程のようなきびしい規程があるのでありますから、上と下という言葉がそういう点においては、ある程度今日においても生きておるが、上下の争いはおよそその責め、上にありということは、日本の古い政治家が言っておることであります。聖徳太子の言葉にある。こういう点からいっても、問題はやはり政府自身が公務員の待遇について考えていかなければならぬことでありまするが、一体公務員の待遇について今日の状態で、あなたはいいと思うか。たとえば具体的にいうと、給与その他の待遇について、これでいいとあなたはお思いになりますか。また改善するためにはどうしたらいいと思いますか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 私の申し上げておりますよき労使の慣行は、労働者と使用者との経験を通じて生まれてくるものだという井堀さんの御意見、私はこれは一面の理として反対はいたしません。     〔委員長退席、川崎(秀)委員長代理着席〕 しかしそれと同時に、使用者と労働者だけが他の一般公衆と遊離してあるのではありませんから、その使用者と労働者との争いが他の一般公衆に迷惑をかける限りにおきましては、その迷惑のないようにしていくことが私は政治の責任であると思っております。それからもう一つは、それは確かに自由な境地の中に行われなければならぬでありましょうし、それが育つためには忍耐をもって、寛容をもって見守っていかなければならないでありましょう。しかしその忍耐と寛容も、やはり他の大勢の国民の生活を脅かしたり、人権を侵したりしない範囲においてやっていかなければならぬ、その調和をはかっていくのが私は政治の責任であると考えておる次第であります。  それから公務員の問題でありますが、私は公務員に対して雇い主の立場にはございません。雇い主の立場にあるものは政府、内閣であります。私は、その労働条件についての御意見でございますが、その労働条件の改善は、やはり第三者機関でありまする、政府の機関である人事院の勧告を政府が尊重するということによって貫いていくべきものである、こう考えておる次第であります。それが高過ぎるか安過ぎるかという御意見でございますが、それは要は比較の問題でございます。従って日本経済の全体のワクの中で、どの程度のものが公務員の給与として正しいかということは、やはり人事院がこれを判断をし、それに従って政府はその勧告を尊重していくというところで公務員の給与制度を立てていきたいと存じております。先進国、たとえばアメリカやイギリスという国民経済力の非常に高いところに比べた場合、あるいはそうでない場合、やはり私は公務員に限らず給与制度全体は、国民経済のワクの中で考えていくべきものと考えておる次第でございます。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 今の労働大臣の所見を伺ってますます私は疑いを深くした。非常に能弁でありまするが、大事な点は、労使関係のよき慣行を作るということについては、経験主義であるという点はあなたはお認めになった。その経験は自由の中においてある。あなたはそれを政治の責任に求めておるようでありますが、一体政治というものを、あなたのお考えはどこから出発するかということに問題があると思う。政治を民主的に理解できるならば、政府が独善にいいとか悪いとかいうことをきめること自身が、私は全体主義の思想であると思う。民主主義の思想というものは、人民の上に権力などというものがあるはずはないのであります。何か要するに、今日政府というものが人民の上にあるという、明治憲法もしくはそれ以前の封建的思想から割り出してくる政治責任ならあります。しかし今日の責任は人民にあるんじやありませんか。汽車がとまって迷惑するのは人民じゃありませんか。いずれもストライキをやって困るのは人民なんです。元来ストライキというものは賢明なものではないのです。今日の資本主義のもとにあっては、やむを得ない事柄だというのは共通した思想であるからして、その問題の解決は民主的に処理さるべきことであって、権力が横から出てくるというようなことをみずから答弁するということは、私はもっと考えるべきではないかと思う。労働問題と言う前に、民主主義において私はあなたの考え方は否定きるべきことだと思う。しかし議論にわたることは好みません。  そこで次に問題になるのは条件の問題でありまするが、労働条件、賃金の問題についてあなたは比較を持ってこられた。この問題を議論しますと大へん長くなりまするから、割愛いたしたいと思いまするが、簡単に、もう一度お答えをいただこうと思うのは、人事院の勧告に対してこれは当然従わなければならぬのでありますが、今日人事院の制度というものが、これは御案内のように占領政策の遺物なんです。その遺物をだんだん悪く引用するように切りかえてきて、反民主的な機構に追い込まれてきている。もし人事院を政府から独立した形に置こうとするならば、機構の改革をすべきものだと思う。もっと人事院というものは政府の干渉の外に置くべきである。ところが人事院総裁以下これは時の政府の任免するところであるし、その予算権は大蔵大臣が握っているではありませんか。私はこういう意味において、民主主義国におけるところの公務員の給与制度をきめる制度について、もっと検討していただきたいと思う。この点は私は今の人君院がふさわしい制度だと考えておりません。しかしこういう機構について、人事院をもっと内容を改善していいものにしようということについては同感であります。  それから賃金が安いか高いかは比較によらなければわからぬ。その通りです。元来給与というものは三つの要素によってきめておるということは、ILOのすでに決定した精神であると思う。それは、公務員の奉仕している人の、すでに奉仕した労働力もしくはその奉仕した質と量に見合うものでなければならぬ。いま一つの問題は、今あなたの言われるように比較の問題でありますが、比較は国内的な、国際的な比較もありましょう。最も重要なことはその生計費であります。労働の再生産費であります。この問題は、要するに正当に判断し、その判断から生まれてくる合理的な結論でなければならぬのであります。私はこの問題に対していろいろ事実をあげて検討していくことによって明確になってくると思いまするが、この機会にそのことをやる時間が与えられておりませんことを残念に思います。  そこで他の問題でお尋ねすることによってだんだん出てくると思いまするが、次に私の予定しておりまする中小企業の労働問題の中で例をとってみましょう。中小企業の労働者と公務員を比較する場合には、これは問題があると思う。そうでなく、一般の労務者ということの中で、人事院の持っておりまする統計を私は見ております。人事院が民間給与に均衡して勧告の基礎数字を求めておるという行き方は御存じの通りである。要するにその統計が誤まっておる。目標が誤まっておる。ここに問題になるのは、絶えず中小企業、零細企業の労働条件というものがあまりに低いものであまり荒廃しておるものである。特に地方などにおいてはそうゆう傾向があるのであります。労働条件を引き上げるということが民主主義の要諦であるし、世界平和勢力に貢献するというILO精神に対して疑いを持たないものでありますならば、中小企業の今の労働条件というものはあまりにも深刻じゃありませんか。これはILOの中でいっておりますように、危険な状態にさらされている労働条件、これはあなたの方の統計を持っておいでになればわかると思います。あなたの方の統計の資料というものは、私は全部いただいて見さしてもらっておりますが、その資料だけから見ても、きわめて部分的な調査、限られた範囲内の調査だけで見ても、生計費を割っておるのです。最低の生活ということをだれでも言いますけれども、憲法では健康にして文化的な生活という理想を掲げておる。もちろん理想に到達するためには、まだわれわれはいろいろな努力をしていかなければならぬと思いますけれども、あまりにも現実は人間性のかくも低いものであるという統計が、ここにたくさん出ておる。要するにこの事実に目をおおうて、公務員の給与の問題々放任していこうとする人事院の態度は、どうしても解しかねるのであります。これは別として、とにかく中小企業の今の労働条件、あなたは賃金格差でどなたかの質問にお答えしておりましたが、賃金格差がだんだん激しくなってきている。それは大手筋の労働者の労働条件が引き上げられてくるということによって、その現象を見て、あなたは大企業の労働者だけが不当に賃上げに成功しているというような印象を与える御答弁がありました。これはもちろん労働大臣でありますから、そういうおつもりでないと思いますが、一番大事なことは、今日の賃金の指数の問題をあなたも言われておりましたが、今日の中小企業、零細企業の賃金指数というものは、理論生計費や実態生計費を求めるまでもありません、常識で判断して、食っていけない賃金であります。一万円以下の者がどのパーセントを占めておるとお思いですか。こういう状態で一体いいのかどうかということが問題であって、むしろあなたと私の間では、統計を通じて論議し合うことが一番適当だと思う。またあなたは一体どの程度が——今日の生計費の基準を標準家族にとってみましょう。筋肉労働者と軽労働者の二つに分けてけっこうだと思いますが、標準家族で一体幾らくらいの賃金が妥当なものだと労働大臣は判断されて見ておいでになるか。比較という以上は、その基準を内閣としてはお持ちのはずであります。一体どの程度が今日の最低生計費だとお考えになりますか。これを一つ伺いたい。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 今の問題にお答えいたします前に、非常に基本的な原則でありますから、私はさっき、言いっぱなしにされたことについて、私の意見をもう一ぺん申し上げておきたいと存じます。  政府が何か国民の上に立って一方的に正しいとか正しくないとかいうことを判断し、それを押しつけているようなお話でありますが、政府は無基準にそういう判断をしておるのではございません。民主的に選ばれた国会の議決によって成立をいたしました法律に基いて、その法律解釈を明らかにいたしておる次第であります。政府が法律解釈を明らかにいたしますことは、政府が法の執行機関であります以上は、その法律解釈を統一いたしておかなければならぬことは言うまでもない。私どもの責任でもあり、義務でもあると考えておる次第であります。これが議会政治下における民主主義に最も忠実なるゆえんであると私は信じております。  それから人事院が第三者機関でなく、政府がこれに対して干渉をしておる事実があるかのごときお話しでございましたが、そういう事実はございません。人事院の任免権はなるほど政府にございますけれども、国会の承認を要するばかりでなく、勝手に任期中に任免ができないのであります。  また予算を大蔵省が握っておるということ、これは当然のことでありまして、まきか大蔵省が予算をもって人事院の議決に干渉しているというようなことはございませんし、私はそういうことは信じません。  それから標準家族においていかなるものが基準生計費と考えるかということは、それは地域にもよりまするし、いろいろの条件の相違もございますから、ただいま私はそれについてお答えをいたすことは避けたいと存じます。ただ賃金制度それ自身は、比較的経済が安定いたしました今日におきましても、なお生活給的あるいは画一的な様相を帯びておりまして、そうして労働の量、質あるいは職種、職能による正しい賃金のあり方というものが正確に現われておりませんので、私は就任以来統計調査部に命じまして、そういう賃金のあり方というものについて検討をさせておる次第でございます。  私が各種の方々にお答えいたしました答弁が、大企業の賃金が取り過ぎておるというような考えを裏に、あるいはそれを抑制しておるというような考えを裏に持っておるというような御発言でございますが、そういうつもりではございません。ただ格差が非常に開きつつありますので、賃金政策としてあるいは労働政策として考えなければならぬ問題は、格差の非常に開いておる低い層の賃金問題の解決に尽す方が、総理の言われる貧乏追放の第一歩だと私は考えておる次第でございます。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 まるで討論会みたいになりますが、あまり議論を好みませんが、あなたのおっしゃられている人事院の独立の性格というものは、私はあなたが言うようにそう狭く考えていないのであります。もっと民主的なものにしてほしいということを言わんがために欠点を申し上げたのであります。  それから労働組合の非合法をあなたは言おうとしておるようであります。あるいは一方には法律をもってと言っておりますが、言うまでもなく法治国でありますから、政府というものは法律を越えた行為は許されません。そんなことを私は言っておるのではありません。根本的な問題は、要するに民主主義の政治というものは人民の上に権力というものが許されないということを言っておるのであります。その考え方が問題になるということであって、その点をあなたがこれは議論をすれば切りがありませんが、そこに政党の性格も出るでありましょうし、その問題はイデオロギーにも関連をしてくるでありましょうから、この問題をどうこう言おうとは思いません。あなたの主張はわかったし、あなたの思想もわかりましたから、それでいいのであります。  そこであなたは合法的とか法律を守るとかいうことについて非常に忠実のようにおっしゃられる。ぜひ忠実であってほしい。そこであなたの所管で、あなたが一番忠実でなければならぬ問題について二つあげます。その点に明確な御答弁をいただきたい。  一つは統計の問題であります。あなたの方の統計としては、ちゃんと労働省設置法に規定しておりますが、時間がありませんから、読まぬでもわかると思います。あなたの義務になっておる。今日潜在失業者が何人おるかと聞いたら答弁できますまい。賃金の標準はと聞いたら、あなたはあいまいに逃げておるが、統計がないからです。私は先進国の例を持ってくれば、統計がたくさんあるから、その統計でいいか悪いか議論がある。今の統計の上から政府はこれが正しいと言ってくるでありましょう。たとえば日雇い労働者の問題で聞けば、すぐPWというものを、一応今日予算単価をきめる場合にあれを法律的に使うということについて認められております。こういうものを持ってこなければいけない。このPWを持ってくればまた問題が出てくる、また論議しなければならぬ。労働省設置法も法律です。これからいきますと、当然あなた方の責任が追及されてくる問題があるわけなんです。要するに順法精神の中にはそういうものもあります。  一つの変った例は未払い賃金の問題であります。労働賃金の未払いは重大問題です。すでに労働を提供して、それによって生活を予定する。その予定した生活、最低のぎりぎりの生活ができない。一番近いところの統計を見ればわかるでしょう。これはあなたの方から発行されたものですが、昭和三十二年八月分の未払い賃金が、まだ依然としてその件数において四千八十八件、その金額において四億六千三百万に近いものが残っておる。そうしてその内容を見ていきますと零細企業に多い。低い賃金のところに多いということです。働いた賃金がもらえない、労働基準法の——あなたこの法律を読みなさい。労働基準法の第二十四条には、賃金は通貨をもって定めた期日に支払え、しかも賃金は毎月一回以上一定の期日を定めて支払わなかった場合には処罰をすることになっておる。ところが私はこれを調査してもらっております。この統計の出どころを聞いてびっくりするでしょう。この統計はわずか限られたる監督官が届出その他の書類の中からたまたま出てくるものを統計にとったものであって、工場統計をやったのじゃありません。私の住まっている小さな町ですけれども、小さな工場はたくさんあります。私のところへ訴えてきた問題だけを基準監督署に持っていっても知らない。それでこれに出ている統計をどういうところから出ているか調べた。私は近いものであるからほとんど毎月行っていろいろ聞いております。未払い賃金の実態というものはこんなちゃちなものではないということが明白になった。労働者が働いた賃金がもらえない。その賃金を守るために労働省があって、監督官を置いておって、そうして毎月々々解決のつかない事件を送り込んでいっている。前の国会のときに私は今日の法律では不十分だから未払い賃金に対する債権確保のための特別立法が必要ではないかということを法務大臣に、牧野さんだったかにお尋ねしたところが、なるほど基準法だけでは不十分だ、特別立法の必要があるということを言明されております。まだその立法をなされておりません。     〔川崎(秀)委員長代理退席、委員長着席〕 労働者の保護のための役所です。しかも働いた労働者が賃金がもらえない、それをあなたの方へ訴えてもとってやらないじゃないか、法律で守る守るとぬかしゃがって実際守りはしないじゃないか、労働者はこう言って私どものところに訴えてきております。私どもとしては答える言葉がないのです。そうしゃくし定木に法律々々というが、こういう点に問題があるのであって、この未払い賃金の解決の問題について、労働省の責任の問題をはっきりして下さい。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 未払い賃金の問題は、今御指摘のように非常に数の多い件数が残っておることは甘美のようであります。これはおっしゃる通り労働省としては重大関心事でありますから、この上とも各基準監督署及び監督官を督励をいたしまして、問題の解決に鋭意努力をいたすつもりであります。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 井堀君、だんだん時間ですが……。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 もうすぐです。  未払い賃金問題に対しては督励しておやりになっていただかなければならぬことですが、これは毎回私は労働委員会で言っております。一向らちがあいておりません。ずっと毎月これを私はちょうだいして見ておりますけれども、上り下りはございますけれども、一向にこのカーブが、特別の御努力の払われたというものは現われておりません。それは一つには私は監督制度の欠点もあると思いますけれども、監督だけによってなし得ないことがあるということを、この際にお考えおきいただきたい。でありますから法律というものは一番弱いところにきびしく保護を加えていくことが保護立法の基本的なものである、労働省の私は非常な責任だと思うのであります。こういう点についてはもっとその方面に熱心にやっていただきたい。あまり横道に進まないように希望しておきたいと思っております。  そこで次に最低賃金の制度の問題について労働省にいろいろ御配慮いただいておるということを感謝いたしております。ことにこの最低賃金法のないことは、これはまことに不名誉なことであると思いますので、早くできることを願ってやみません。われわれが微力のために国会では良識ある与党の諸君の協力を得られないで、まだ議員立法はそのままになっております。労働省が最低賃金法を用意されておるということをたびたび言っておりますが、一体最低賃金法の問題について、内容を全部聞こうとは思いません、準備中だとお答えになるでありましょうから聞こうとは思いませんが、しかし構想だけはお述べになる義務があると思います。一方には議員立法が社会党から出ております。そこで二つの点についてちょっと伺っておきたい。  一つは行政的措置によって、すなわち労働基準法の中において最低賃金法と全く同一の効果を発揮できる措置がとれるわけです。この措置をどうしておとりにならぬか。その点が一つ。  それから、それをおとりにならぬとするならば、ここで労働省が立法措置を講ずるというならば、その構想についてはこれと変わった構想があるはずでありますが、その点をできるだけ一つ公表していただきたい。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 御指摘の通り、基準法の中にそういう条章がございますが、これは四条でございまして、非常に不十分でございます。そこで別に最低賃金制を実施したいと考えておる次第でございます。この最低賃金制の内容につきましては、御承知のように今中央賃金審議会に諮問をいたしておりまして、十二月早々までに御返事をいただくようなお約束になっておるわけであります。従ってどういうものがいいとお考えになるかということを、りっぱな機関に格間をしておるときに私の方からその内容を差し出て申し上げることは、これはやはり避けなければならぬと思いますけれども、それでは基本的にどういう目的で出すかと申しますと、たびたび申しております通り、大企業と中小企業との賃金格差縮小のための下からのささえ、いま一つはこれによりまして生産性の向上を期待し、かつ能率の上昇を期待いたしまして、中小企業の極度に低い生産性の向上に資したい、こういうことが第二点であります。それから第三点はこれによりまして国際信用維持に努めたいということであります。そうして内容についての根本的な考え方はILOの議決を尊重いたしたいと思っておる次第であります。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 ILOの精神を尊重されてお作りになるということでけっこうです。どうぞそのILOの精神を十分に内容に盛り込むように期待をいたしておきたいと思います。  そこで法務大臣にちょっとお尋ねをいたしたいと思います。警察庁長官と両方にお答えをいただきたいと思います。最近警察官がストライキに介入してくる事件が非常に多く、一体どうした傾向であるかということについて、私なりにもいろいろ判断をしております。具体的な事例が二、三ございます。民間と公企体と、それからその間をいく、先ほどちょっと総理にお尋ねをいたしたいと申し上げた特需労働、いずれもケースは違いますが、よく三つを代表したもの、それがいずれも暴力行為等処罰に関する法律を適用してきておる。大体警察官憲が労働争議に介入するということは、これは先ほど来言っておりますように、新しい憲法のもとにおいて、またILOの精神を貫く労働行政の中においてはあり得べからざることなんです。しかし労働運動といえども合法的でなければならぬことは言うまでもありませんが、その合法的な線というものはどこにあるかということを明確にいたします前段のことは申し上げませんから、具体的な点を——暴力行為等処罰に関する法律、大正十五年四月の立法であります。この法律で戦前においてはわれわれはいろいろ痛めつけられました。刑法だけでは思うようにいかぬというので、この法律で二重の罰と思われるような罰を加えられてきた経験を私自身は持っております。しかし新しい憲法のもとにおける労働三法のある時代において、労働争議にこの法律を適用するということについてはどうしても納得ができませんが、法務大臣としては労働争議とこの法律との関係について、専門的な御見解があればこの際承わりたいと思います。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 お話の通り、労働争議に官憲が不当に介入することは絶対にいけません。それと同時に、労働争議でありましても、法で定めたらちを逸脱いたしましてここに不法行為がございますれば、やはり警察当局、検察当局といたしましては、法の命ずるところによって検束する等の適当な措置を考えなければならぬ、これも全く同感でございます。さてそこで先ほどお尋ねのありました暴力行為等処罰に関する法律でございますが、これはお言葉にもございました通り、大正十五年の制定にかかる法律でございまして、今日まで三十年余り適用になっておるのでございます。これが労働争議の際に偶発した暴行あるいは脅迫というような犯罪につきましても適用になっておることは、御指摘の通りでございます。これは裁判勘におきましてもこの法律を適用して処断をしております。およそ法律の適用をいたします際には、私が申し上げるまでもなく、条文の文面に基いて運用をしなければならぬ。この法律を見ますると、集団して暴行、脅迫を働きました場合には一般刑法の罰則より重く処罰することになっております。その間に労働組合に、所属する人々のやった行為、あるいは労働争議に際してやった行為は特別に扱うというような条文になっておりません。御承知のように、一切の集団的共同の暴行、脅迫に適用するようになっておりまして、それは三十年の間裁判所においても区別なしに適用しておるのでございます。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 そこで明確になりましたが、この法律が労働争議に適用されるという解釈であります。これが重大なのであります。私は多少この問題について戦前いじめられておりましたので、この法律の立法当時の記録を調べております。江木司法大臣が提案理由を述べて、それに対する議員の質問がそれぞれありましたが、その中で、当時は労働組合の合法性をはっきりと認めていない時代でありますけれども、労働争議とか小作争議とか水平社運動などについてこの法律が適用されるのじゃないかという懸念を抱いて、議員が質問しております。司法大臣はそういう目的で作ったものではなく、目的は他にあるということを明らかにしております。しかし委員会においては、目的はそうであるけれども、それに類似したものは処罰するという政府委員の答弁があります。その後昭和六年にこの法律でわれわれの同志が三人体刑処分を受けた。しかもそれは今でいうとピケライン、裏切りご阻止するための行為であった。その時の判決文がここにあるから、読んでもいいのですが、おれたちがとか、支部に来いとか、それから争議団という言葉を使っているのです。刑法でいうと脅迫の罪でありまするから、そういうのは微罪で問題にならない。ところがそこに争議団とか支部とかおれたちとかいう言葉を使っているということは、多数を要するに仮装したものであって、そういう言葉を使って人を威嚇したのであるから、この法律が適用されるということで、六カ月の懲役や三カ月の懲役を三人が食らっておる。その一人はなくなられ、二人は存命中のものであります。私はこんなに恨み骨髄に徹したことはなかった。この点についてよく調べておる。最近この法律が出だした。これは岸内閣になってからです。特に暴力追放からどうもこういう法律が取り上げられる。そのたびに私は関心を持っておりますから、その起訴をした警察官あるいは検察官に会って、いろいろ所見をただしてみた。そうするとどうやらそういう方針が中央にあるようです。そうはっきりはもちろん言いません。これは私は、今あなたのお言葉が明確になった。この法律をストライキとか労働運動に適用するという考え方は、労働組合法による救済の問題に関連かあると思うのでありますが、これは議論をしようとは思いません。あなたはこれを適用されるとお答えになったのであります。ちょうど今総理大臣もおいでになったから伺いたいのですが、岸内閣は暴力行為を取り締るのに、暴力行為等処罰に関する法律を労働争議に適用するということを、法務大臣は是認されておりますが、今後こういう法律をお使いになるということになりますと、私はここから混乱が拡大されてくるだろうと思います。これは戦後における新しい傾向の一つである。法務大臣は今そうお答えになった。法務大臣訂正されますか、それにしよってまた伺います。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 何か岸内閣になりましてから、特に労働組合の運動あるいは労働争議に対してこの法律を適用するような指示をしたかのようなお言葉でございましたが、さようなことを申したのではございません。ただ事実といたしまして、すでに三十年余りの歴史を持っておる法律でございます。その文面から申しますと、労働争議の場合であろうとなかろうと、集団して、あるいは共同して暴行脅迫を働いた者は罪が重くなるというだけの規定でございますから、検察当局あるいは警察当局、さらに裁判所におきましても、その条文に照らして処断をいたしておるという今日までの事実を私は申し上げただけでございます。私どもが特に労働争議にはこの法律を適用しろというようなことは申したことは絶対にございません。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 井堀君、だいぶ時間が経過しましたが、まだありますか、結論をお急ぎ願います。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 もうおしまいにいたします。非常に大事な点でありますし、せっかく総理もおいででございますから……。  政府の労働問題に対する取締りのやり方というものは、これは、これは基本的な考え方によって変ってくる。御存じのように、労働運動というものは、正当な労働運動に対しては刑法の適用をしないことにしてあるくらいです。でありますからそれを裏返して暴力行為等処罰に関する法律が適用になるということになりますと、これはえらいことになると思ってお尋ねしたら、そうでないような御答弁でもあります。これは非常に重要だと思いますが、戦後の新しい労働三法が施行されて以後において、この暴力行為等処罰に関する法律が適用されるということになりますと、——今まで適用された例を私さっきあなたに申し上げた。これは川口の労働争議のときの昭和五年の不例をあげた。新しい労働三法の生まれる前は、これは公然と労働運動を弾圧したものなんです。非常に取締り方法として効果があった。これが最近出てきておる。だからこれを要するに、今あなたの御答弁によりますと、だんだんあいまいになってきたようでありますが、ストライキのときに使うということになると、この法律はどんどん労働争議をやっつけることになる。多数を仮装して脅迫を受ける観念は、刑法の観念として出てくるわけです。その上に上乗りしておる法律です。威嚇し得ないストライキなんてものはあるものではありません。だからさっき言ったように、おれたちという言葉がこの法律でぴしゃっと来るのです。たちというのは複数です。それで裁判所はこの新しい憲法の生まれる前はぴしゃっと割り切っておる。それで唐沢さんに聞いているのですが、当時浜口内閣で、それから立法当時はあなたは内務省の書記官をなされているから、これにも多少参加されているようであります。その考えが今日そのままずるずる延長されたのでは、当然そのまま適用されるという考え方になる。それで実はあなたをわずらわしたわけです。潜在意識というものはそう急には変りません。時代が大きく変っておるのでありますが、その点に対する御答弁。そして岸総理のこれに対する御見解を一つ聞いておきたい。こういう法律をこの際適用することになりますと、いたずらに混乱すると思うのですが、こういうものに対して、もっと慎重でなければならぬ。そういう点に御注意を与える御意思があるか。現実に三つばかり例がある。法務大臣は知っております。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 私が内務省におりました当時、この法律の立案等に参加したではないかというお話でございましたけれども、私は関係をいたしておりません。この法律につきましては、あるいは私以上に井堀委員の方が御承知のことと思いますが、詳しく申し上げる必要もございませんけれども、ただ大勢が必要がないのに集まりまして、そして暴行脅迫をした場合に、明らかに集団をしておどかそうという、威を張ったということになります。ところが組合とか労働争議というものは、本質的に大勢が集まっておるのですから、それで話をしたからと言うて、すぐ普通の場合のように多衆を頼んで威迫した、こういうことには法の適用の上、また裁判所においてもならなかろうと思うのであります。しかしながら、それが高じまして、器物を毀棄したり、あるいは暴行を働くということになりますれば、この法の表から自然集団的の暴行脅迫という罪に問われて、罪が重くなるわけであります。これは法律の適用として当然のことと考えておる次第でございます。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 今の答弁で、あいまいな点が多少明らかになった。二つの説をとっておられる。一つは私のお尋ねした当然法律によって集団行動が許されている。その集団した行為が直ちに刑法の裏を返して、刑法で罰せられるものをこの法律に持ってこよう、こういうことは私は許されぬ行為だと思ってお尋ねしたのですが、それは許されるだろうという最初の答弁だった。今の場合はそうではないという御答弁でありましたから、明らかであるようでありますが、なお労働争議の場合に、それが高じたとか高じないというのはどういう意味か知りませんが、少くとも労働争議というものは多衆行為です。集団行為です。集団行為それ自身は一方の法律では合法性を今度は明白にされておる。ところがそれがなければこの法律へ持ってくる理由はない。それをひっかけてくるということは、これは裁判所にいきますから、裁判所はこれは無罪にするだろうと私は確信しておりますが、そうなってからでは、被害をもうすでに労働者は受け、団結権はこわされるわけです。それが非常に重要で、今後の問題もあるからと思ってお尋ねをしておるわけです。今あなたの御答弁によりますと、どっちでもいいような御答弁であります。そういうあいまいな政府の性格でありますと、私は成績をかせごうとする出先の官憲というものは、これを使いたくなる。一番つかみいい。他の問題では起訴したって微罪処分になりますが、これがあれば微罪処分にならない。この点あなたのお考えはどうでしょう。またそういうお考えに対して岸総理の内閣としてのお考えを聞いておきたい。合法々々と言いますけれども、法律の自由裁量というものはかなり幅がある。その自由裁量は行政の場においてある。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 だんだんお答えいたしたことで御了解願えると思うのでございますが、検察当局、あるいはことに出先の警察などがこの法律で特に労働争議を取り締るというような不当介入をしてはならないと考えております。しかしここに一たん暴行があり、脅迫がありますれば、それが個人で行われたか、集団で行われたかということで、やはりこの法律の適用があるかないかが決するわけでございますから、特にこの法律を乱用して労働争議に不当に介入する、こういうことは慎しむべきでございますが、一たん暴行なり脅迫なりがございますれば、かりにそれが労働争議の最中でありましても、条文の適用上、どうしてもこの法律によって処断される、かように信じておるわけでございます。

井堀繁雄日本社会党

○井堀委員 今の御答弁であいまいなようでありますけれども、大事な点をもう一ぺん私ははっきり言っておきたい。あなたは何が労働運動なら何でもかんでもいいと私が考えて尋ねているようですが、私は多少運動には良識を持っているつもりであります。労働運動の合法性の限界は、あなたもおわかりだし、私もわかって聞いている。労働運動は要するに労働三法によって規定された合法性以外のものはありっこない。この運動の中にこの法律が入り込んできたら混乱するということを聞いている。現在入り込んでいる事実を——それは入り込んだけれども、最後は裁判所にいくわけでありますから、それを待って聞けば問題は明確である。しかし裁判所に持ち込む行為は行政ですから。私は事実三つばかり例があるから、あなたに一つはこの間資料を提供しておいた。だからあれを容認されるかされないかということを聞いている。何だがあなたは容認されるような、されぬようなことになってしまいそうだ。それじゃ僕は出先は困るだろうと思う。

唐澤俊樹自由民主党法務大臣

○唐澤国務大臣 私ははっきりお答えいたしているつもりでございますが、なおちょっと繰り返して申しますと、労働争議は本質的に大ぜいがやるものでございますから、他の場合と違いまして、大ぜいでやったからというてすぐそれが集団して暴行脅迫をやるという初めからの意図である、そうはとれないのでございます。しかしながらその争議の過程におきまして暴行脅迫が行われますれば、やはり集団でありますから、この法律の適用があるのでございます。ことに検察当局だけがこの法律の適用をして裁判所へ持ち込むというのではございません。三十年間裁判所においてもやはり検察当局の解釈を認めまして、これによって裁判をいたしているわけでございます。私はその事実を申し上げているのでございます。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 岡田春夫君。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 私の受け持っておりますのは、外交問題を主として、防衛問題と関連さして御質問することになっておりますので、総理大臣に主として伺って参ります。  昨日河野委員から外交問題につきましても質問があったのでありますが、まず第一にお伺いしたい点は、ソビエトの人工衛星第一号、第二号が現在飛んでおります、こういうように人工衛星が飛んでいるという現実と、また大陸用弾道弾の問題がある、こういう問題で新しい時代が出てきた。宇宙時代と言われるものであります。こういうような問題について総理大臣の答弁を伺っておりますと、御答弁はきわめて慎重なんであります。大陸間弾道弾の問題は、いわゆる戦争に関連する問題であろうと思いますが、人工衛星の問題は、戦争に関係があるというよりも、むしろ平和に具体的に結びついている明るい問題であると私は考えるのであります。こういう明るい問題について、慎重な御答弁でなかなか核心に触れられないのでありますが、重ねてお聞きをするようでありますけれども、人工衛星の問題については総理大臣はどういうようなお考をお持ちになっておるか。それから、国民が人工衛星についてはずいぶん大きな関心や期待を持っているわけであります。こういう国民の考え方について総理大臣はどのようにお考えになっておられるか、こうい点をまずお伺いしたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 ソ連において最近二回人工衛星が打ち上げられたということは、世界の人々に一つの驚異を与えております。これは近時における科学の非常な発達を如実に示すものであります。従いましてこの科学の発達が将来人類の福祉のために応用され、利用されることによって、世界の平和とわれわれ人類の幸福がもたらされることを心から願うものであります。と同時にまた、これがどういうふうに応用されるかという問題につきましては、今後のいろいろな動きを慎重に検討する要があると思います。もしもこれが破壊的兵器と結びついて世界の平和の脅威になるというふうなことが万一にもありとするならば、これは人類のために非常な悲しむべきことであり、われわれはそういうことのないようにあらゆる努力を続けていかなければならないことは言うを待たないのであります。  また一つの新しい、今お話しになりました宇宙時代というものに対しては、一つの黎明と申しますか、それのさきがけの一つの実証でありまして、これが今後の発展並びにこれに対する実際上の利用面の問題に対しては、われわれとしては強い関心を持ってこれが検討をいたしたい、かように考えております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 今、軍事的な面に使わないで明るい面に使うことを希望するという御意見のように伺いましたが、ともかく人工衛星の問題についてはアメリカは完全にソビエトに破れたわけであります。これは現実の事実であります。それではアメリカはなぜこういう点についておくれをとったかということは、総理大臣としてはどのようにお考えになっておりますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 この人工衛星の問題、ロケットの問題に関しまして、ソ連のみならず米国等においてもこれが研究されておるということは、従来からも伝えられておったのであります。実際の事実として現われたところがアメリカがソ連に一籌を輸しておるということは、お話の通り事実であります。その原因が一体どこにあるかということでありますが、これはいろいろな見方があると思いますが、要するに結論すればソ連の科学の研究がアメリカのそれよりも進んでおるということだろうと思います。(笑声)

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 いや、これは笑うべきことではないので、岸さんにとっては最も深刻な問題だろうと思うから私は聞いている。というのは、アメリカとの協力関係を特に基調にされることを岸さんの外交政策の原則の一つとして考えておられるならば、この問題は笑いごとでは済まされない問題であろうと思いまして、あえて私はお伺いをしたのであります。そこで米英の陣営としてはこういう人工衛星の問題について非常なあわて方をしておる。そこで御存じのように米英会談が行われて、近くNATOの会議も行われるというようなことになってきておるわけであります。日本としてはこういう新しい平和への宇宙時代というものが生まれつつあるのに対して現在どういうことが急務であるとお考えになっておるか、こういう点を伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 日本としてはこういう方面の科学の研究というものがこれらの国々に対して非常に立ちおくれているということは、残念ながらこれは一つの事実であります。われわれとしてはあらゆる面から日本の科学技術の発達進歩並びにあらゆる面の研究に対して一そうの努力をしていくという従来の方針というものをさらに強化する必要がある、かように考えております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 科学研究の強化という点はよくわかりますけれども、それでは今までの岸さんのやり方から言うならば、科学研究を進める意味において、自由諸国家といろいろ提携をしてやるという形で科学研究を進めるというようなお話があるかと思うのでありますが、しかしすでに先ほどあなたがはっきり御答弁になったように、アメリカはすでに科学の点においてソビエトに敗れたわけであります。アメリカとこういう点を打ち合せて科学研究をお進めになるという考え方では新しい時代に即応できないと思うのですが、こういう点に関連してどのようにお考えになりますか。  それから時間がありませんから、もう一つ結びつけて参りますが、米英会談において、近くNATOの会議で科学技術の問題についていろいろ研究のための組織を作る、これについては日本の参加することも拒まないということが伝えられているわけでありますが、こういうようなNATOに日本が参加したところで、すでに敗れた科学を中心にして研究をしてみても進まないだろうと思うのですが、この点はいかがでしょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 科学の研究は今までの過去の歴史を見ましても、それぞれの国において非常な力を入れている。ある時期において一つの国が非常にまさっておりましても、次の時期において他の国がさらに努力をしてそれ以上のなにをすることもあると思います。私は本来、科学とか、学問とか、技術とかいうものは、国境とか思想とかいうものを超越しているものであって、これ自身を純粋に研究していく、またそれを発達せしめていくということを私は念願しておるのであります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 科学というものは国境を越えているという点は私も同感なんです。そこで具体的にお伺いしますが、今月の十九日に、モスクワ放送で人工衛星の問題について、この成果や研究については日本に対してもそういう問題に対する資料を提供したり、いろいろな援助をするところの用意があると、実ははっきり言っているのであります。こういう点は岸さんの今お話のように、科学については国境はないというお考えであるならば、当然これを受け入れると同時に、NATOの科学研究に参加するというのではなくて、むしろ全世界的に、ソビエトも含めてこういう問題について研究をするような方向に岸総理大臣が努力をされるお考えがあるかどうか、モスクワのそういう点と二つの点についてお伺いをしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 モスクワのその報道については、私は具体的に日本にどういうなにがあったかは承知いたしておりません。しかしソ連の打ち上げました人工衛星につきましては、日本のいろいろな機関もできるだけの研究はいたしておりますし、いろいろな資料も集めております。またこういう学問的なもしくは技術的な、特に人類の福祉に貢献するということについては国際的にこれが協力をすべきものであるということは、ちょうど今年行われる地球観測年に対してあらゆる国がこれに参加して協力をしておるということからも私は明らかだと思います。われわれも将来そういう心組みで進んで参りたい、こう思っております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 NATOで科学者を動員するという組織を準備しようとしておるのですが、これに対しては、それでは日本政府は参加する考えがあるのですかどうですか。今の御答弁からいうと、そういうのではなくて、むしろ全世界的に科学の知識を進めることが必要であるというように私は解釈したいと思うのであります。この点はいかがですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 NATOにおいて科学者を集めて科学研究の協力関係を強めていくという考えは、おそらくはNATOの持っている目的を強化するためにこれが行われるのじゃないかと思います。私は日本の立場から言うと、そういう限られた目的じゃなくて、こういう科学の発達というものはほんとうに人類全体の福祉と平和に貢献するという見地から、われわれはあくまでも科学技術の問題の研究を進めていきたいと考えておりますので、NATO云々の話は私まだ具体的に承知いたしておりませんが、一体私が考えているような趣旨であるかどうか、私一応は疑いを持っておりますから、今それにすぐ参加するという意図は持っておりません。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 それじゃNATOの科学者の動員については現在は参加する意思を持っておられないと私は解釈をして話を進めて参りたいと思いますが、次は大陸間弾道弾の問題、いわゆる宇宙時代における暗い面、戦争面の問題なんです。こういう問題につきましては、実は大陸間弾道弾ができたり人工衛星の問題か出てきてから、ソビエトとしては軍縮問題と切り離して大陸間弾道弾の問題を国際管理にしてもいい、あるいはミサイルを国際管理にしてもいいという意見をフルシチョフが正式に言っているわけです。それからそれにこたえてダレス国務長官も、軍縮問題とは切り離して宇宙兵器の問題については国際管理にする用意はある、このように答弁しているわけであります。そこでこういう点から考えて、従来の軍縮問題あるいは原子兵器の問題は常に——これはあとでいろいろ御質問して参りますが、アメリカの場合においては軍縮問題と関連をさせなければならないという考え方から一歩出て、これは切り離して国際管理にするという方向にきているわけです。ここの点は私きわめて重要な点であると思うのでありますが、両陣営の米ソの間において、その問題は切り離して国際管理にしようという話が進みつつあるときにおいて、こういう点はぜひとも国際管理にしていくことが宇宙の時代において明るい面をもっと発展させていき、暗い面を押えていくという意味において最も重要な問題であると思うのです。この点について総理大臣はどのようにお考えになりますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 両大国の間においてこういうものが国際管理に移されそうして世界の人類に対する平和への脅威を去ることができることは非常に望ましいと思っております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 その次がやはり人工衛星の問題に関連してでありますが、ちょうどネール首相が日本に着きました直後に人工衛星が発表になった。これについてネール首相の意見が実はいろいろ出ておるわけであります。おそらく岸・ネール会談においても人工衛星の問題の話がいろいろ出たのじゃないかと思うのです。たとえばネールの談話を読んでみましても、この科学の時代には軍事同盟や軍備競争のようなものはすでに時代おくれである。われわれはわれわれの住んでいる世界に適応するように努めなければならない、こういうように軍事同盟という力の政策あるいは軍備競争というような問題はもはや時代おくれである、こういう形で力の政策を進めて平和を守るという政策ではなくて、平和共存の方向に進まなければならないということを、これはネール首相が言っているんだと思うのであります。こういう点について何か岸・ネール会談においてお話しがあったのかどうか、そしてこういうネールの意見について総理大臣はどのような御感想をお持ちになっておるか、この点を伺っておきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私とネール首相との会談におきまして、特に人工衛星の問題が取り上げられたことはございません。しかし私はしばしば正式の会談以外にも会っておりまして、そういうことについて二人の間で雑談的に意見の交換をしたことはございます。ネール首相も私もともに世界の平和を願い、これの実現に真剣な努力をしようという全然同じ考えを持っておるわけでありまして、あらゆる点において協力できることはわれわれお互いに協力しようということをいろんな点について話し合いをしたわけであります。  ただネール首相があるところで話されたように、今お話しになりました要するに力と力の対立によって平和を守るということは、私は決して理想の状態ではないと思います。この点においてはネール首相と考えは同じでありますが、現実はまだそういう状況であって、もしも人工衛星その他のものが出たから、そのことで直ちに世界のすべての人が頭を変えて、そういう力対力の平和の維持という態勢がその瞬間に全然なくなるというふうなことは、私はネール首相の意図でもなかろうと思いますし、私も現実の問題としては考えておらないのでありまして、やはりわれわれの理想は、そういう力と力との対立によってあるバランスの上に平和が保たれているというような非常なはかないものではいけない。究極のわれわれの平和というものは、そういうものであってはならないと思います。しかし現在しばらくの間そういう情勢によって世界の平和が維持されるだろうということも、これまた現実でありまして、これを無視することはできないと思っております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 理想であってなかなか現実にはそういくまいというお話ですが、その理想といわれることを少くともネールは進めつつあると思う。岸さんの場合は理想であってなかなか簡単にいかないように言われておりますその基礎は、どちらかの陣営に足を突っ込んでいるからそういうことになるのではないかと思うのですが、そういう努力をネールと同じようにやっていかれるお気持があるのだろうと思うのですけれども、しかし少くともやり方については相当違うように私は感じるわけです。こういう点についていろいろ申し上げたいのでありますが、あまりこの問題だけに時間を取っておられませんので、次に進めて参りたいと思うのであります。  この間の岸総理の本会議における演説を見ておりますと、非常に盛りだくさんのことをいろいろ言っておられますが、この中で蒋介石政府の張群氏も来た、ネール首相も来た、こういう点で意見が全部一致した点が非常に多かったというような演説をしておられるのですが、私はこういう点についてちょっと解せないところがある。ネールの考え方と張群の考え方についてはずいぶん違いがあると思う。そういう点であなたが橋渡しをきれたのかどうか知らないけれども、ともかく一致をしておったという点は一体どういう点で一致をしておったのか、少くとも中国問題などについては全く正反対の場合が現われているのではないかと思うのですが、中国問題を中心にしてでもけっこうでありますが、御意見をお伺いしたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 御質問の通り中国問題に関して張群特使とネール首相の考えは異なっております、一致しておりません。しかし私が多くの点において一致することを見出したということは、要するにアジアが互いに協力してアジアの繁栄と進歩を通じて世界の平和を作り上げることに努力しようという根本の考えにおいては、インドのネール首相もまた台湾政府の特使である張群も同じような考えを持っております。また私がさらに国連憲章を順奉して、そして世界の平和に努力しなければならぬという考えにおきましてもこれまた同じような考えを持っております。またネール首相も張群特使もわれわれの自由民主主義の立場に立って、そうして世界の平和を考えるということにおきましても全然一致しております。すなわち私が特に日本の外交の根本と考えておる三つの原則については意見が一致しておる、こういうことを私の演説のうちに述べたわけであります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 張群の意見についてはあとで国交回復の問題でもう一度伺いたいと思いますが、今御答弁のあった中で外交三原則の話が出て参りました。この外交三原則の点で意見が一致したのだという点については、私はそのまま受け取れないのであります。ということは、外交三原則と言っておる場合に、アジアにおける善隣友好、それから自由諸国との協調、国連中心主義という三原則というように私は解釈しているのでありますけれども、こういう点では少くともネールとあなたの間においても意見の食い違いがあったのではないか、自由諸国との協調という面において食い違いがあったのではないか。もともとこの三原則が統一して外交政策の基本として進められるというところに総理大臣として矛盾をお感じにならないかどうか、こういう点をこのあとで聞いて参りたいと思うのです。そういう矛盾が随所に、今度の国連総会その他に現われているという点についてはあとで具体的にお伺いをして参りますが、矛盾が起った場合にはどういうように処理するのか、こういう点からまず伺って参りたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私は何らの矛盾を感じておりません。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 それじゃ国連中心主義というお話は、国連憲章を具体的に守る、国連憲章に基いたいろいろな国連においてきめられました諸決定、こういうことを守るというように、国連中心主義はそういう意味だと解釈してもよろしゅうございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 国連憲章に示されておるあの目的を私は達成するために、国連の一員として忠実に行なっていくというのが私の国連中心主義という基本的な考え方であります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 それならば具体的にお伺いしますが、国連憲章の二十三条に基いて、御存じのように安保理事会の非常任理事国の選出規定というものがロンドン協定であるわけであります。国連中心主義でいくならば、そういうロンドン協定を守るというのが建前でなければならないと思いますが、その点はいかがでございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 御趣旨の通りだと思います。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 しかしロンドン協定は守られなかったのではございませんか、安保理事会に日本の国が立候補したということを通じて。その点はいかがでございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 ロンドン協定の趣旨は、その後において一つの幅をもって解釈されるような解釈の何ができております。従って私どもが理事国に立ったことは、決してそのロンドン協定の趣旨に反しておるものではない、こう思う。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 幅をもってとお話しになりますが、しかしあれでございましょう、御存じのようにロンドン協定では割当の票があって、中南米二カ国、イギリス連邦一カ国、中近東一カ国、それから東欧一カ国、西欧一カ国、こういうような規定になっているわけです。そうすると東欧からチェコスロバキアが当選するというのはロンドン協定がきまっている限りにおいてこれは当然なことになってくるのであって、日本の国がこれに立候補するという問題については、これはまた現在出た今日においてこれをどうするかという問題はともかくとして、ロンドン協定と国連中心主義との関係で今の御答弁から言うならばちょっと矛盾がありはしないかと思うのですが、いかがですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 御承知のように日本がこれに当選した事実から見ましても、加盟国の々多数のものはそういうものに反しておらないというふうに解釈しておることは言うを待たないのであります。私は今の何は相当な幅をもって考えてよろしい、こういうふうに考えておるわけであります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 しかしそれによって事実上ロンドン協定がこわれてしまったわけですね。東欧が出ないということになったことによってこわれてしまった。その点を実は、伺っているわけです。日本が出るということについては、私はそれ自体に反対しているわけではありません。ロンドン協定それ自体に不十分な点があるならばそれ全体を直すことが問題なのであって、東欧を除外するために日本の国が立候補する、そうしてチェッコと争うというようなことになっては国連中心主義にならないのじゃないか、こういう点を伺っている。ですからもしロンドン協定が現実の情勢に合わないならば、その点全体を直すことを考えなければならないと思うのであります。ことに国連が世界の平和の話し合いの場とするならば、東欧諸国を入れておくということが必要だと思う。もし日本が出る必要があるとするならば、中南米が二つの割当があったわけですから、中南米の方から出るべきであったと思う。そういう点について何ら事前に話し合いが行われないで、そうして日本が出たことはそのロンドン協定が広く解釈されたことになるのだという御答弁では御答弁にならないと思いますが、この点はいかがですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 今申し上げておりますように、従来の例から見ましても、要するに選挙においてそれぞれ立候補して、これに対して多数の国の判断によって国連の実際の運営がされている実情から見まして、私は日本が立候補し当選したということに対しまして、国連憲章の精神を無視しているというふうには考えておりません。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 この点はあとでもう一度繰り返して伺いますが、それでは安保理再会の非常任理事国として日本が当選した、そうすれば今後日本の安保理事会における行動というものは非常に重要になって参ります。そこでその場合における日本のとるべき態度というものがどういうことであるかということは一々世界にわかってくるわけでありますが、そこで心配になることはアジア諸国の善隣友好という関係と、それから自由諸国との協調という関係において、具体的に矛盾が起った場合にどちらの立場をおとりになるか。こういう点が非常に重要な問題になってくると私は思う。現実にアジア諸国から要求するいろいろな問題が出てきているわけです。これを米英の陣容の側から処理するか、あくまでもAA諸国の陣容に立って処理するか、これは大きな違いが生れてくる。そこで外交三原則の中で、アジアの善隣友好ということと、それから自由諸国との協調ということとに矛盾が起る場合がありはしないか、このように私は先ほどお伺いしたわけです。第二点は、その場合にどうも岸総理大臣のお考え方は、そういう矛盾が起るならばあくまで自由主義陣営の方に立って処理をしていこうというお考えではないだろうか、少くともAA諸国と別な立場に立って処理をしていこうという考えではないだろうか。ということは六月二十二日の例のワシントンのプレス・クラブの記者会見においても、岸総理は日本は絶対に共産主義や中立諸国に走らない、われわれは常に自由世界の側に立っている、ということを通じてそんたくいたしましても、そういう二者択一の場合におきまして岸総理のとられる態度は自由主義陣営の立場として、場合によってはアジア・アフリカ諸国全体と対決してもやるというのが安全保障理事会における日本政府の態度としてとられるのではないかと考えられるわけです。こういう点について一つ御意見を伺いたいと思う。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 アジア、アフリカにおける諸国からいろいろな提案や要望等もございます。またこれに対して西欧自由主義国の意見というものが一致しない場合も従来においても現実に個々の問題においては起っております。私どもはあくまでもこういうような事態に処してはこれをいかに調整するかということに従来も実は努力をして参っております。われわれの大きな究極の目的は世界の平和であり繁栄であり、それは私はやはり民主主義の立場に立ってのわれわれの平和と自由が確保されるところの繁栄というものが、われわれの望んでいる究極の平和であり、念願であると考えておる。従いましてこの見地からこれらの個々具体的の問題に処してのわれわれの歩みというものはおのずから出てくる。必ずしも今お話のように私が常に西欧側とかあるいは自由主義国家の立場に立って、アジアの要望なり、アジアの要求を押えるというような考えを持っておりませんし、しからばまたアジア・アフリカの主張であり要望であるというものも、ただ抽象的にアジア・アフリカの要望であるがゆえにわれわれは無条件でこれを支持するというような無批判な態度をとりたくない。十分その間におけるところの各種の具体的の問題に処して、今言った大きな理想からこれを調整して考えていくというのが私の考えであります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 そういう大きな立場というのもわかりますけれども、事実問題として、そういう問題でぶつかってくるいわゆる三原則の中で、アジアの善隣友好とそれから自由諸国との協調という点が、そういう面で事実矛盾する面が現われてきているわけだと思う。必ずしもAA諸国と同調するわけではないというような御意見はそういう面からも私は現われてきていると思うのですが、実例として伺いますが、この間中華人民共和国の国連加盟についてインドの提案が行われました。これに対してアメリカが反対をしたわけであります。日本はこの場合にどういう態度をとったかというと、自由主義陣営に属して、アメリカの態度に賛成をしたのであります。ところが採決の結果は御存じの通り、これは九月の二十五日でありますが、賛成が四十七票、反対が二十七票棄権が七票であります。棄権の七票を調べてみると、ポルトガル以外は残りの六万国はすべてアジア諸国であります。私はもし岸総理が外交三原則という方針をあくまでも貫き通すというお考えであるならば、便宜主義で、適当なときに適当にやるというのではなくて、三原則を守り通そうとするならば、少くとも棄権という態度が出されるのではないかと心ひそかに想像しておったのたが、インドの提案にすら反対をしたということを通じて、これは自由主義陣営に協調する面というのが最も第一の基本であるというふうに、こういう政策を見ても感じられるわけであります。この点はいかがでありますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私はその問題はやはり日本の立場から判断してこれに処すべきであると思います。今日の中国の問題を解決するのには、やはり私は台湾の問題と中国大陸の問題が前提として処理せられることが、日本の置かれておる立場としてはこれは絶対に必要であります。それのない時代においては、私は日本としては反対せざるを得ない立場にある、こう思っております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 しかし台湾と北京との関係を処理するのが日本の重大問題であります。その場合にも岸総理の外交方針としては三原則をおとりにならなければならないでしょう。その場合どういう形で三原則を適用なさるのですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 今、申しましたように、また御承知のように、日本と台湾政府との間には、日支事変を処理するに当っての条約及び両国の間の正常なる国交関係というものがございます。しかして台湾の政府も、また中共の政府も、ともに全中国に対する主権を主張しておって、この意見が一致しておりません。こういう中において、われわれが従来置かれておる歴史的な立場というものを考えてみると、とにかくわれわれとしては台湾政府というものを正式に承認し、これとの間に和平の関係を結び、そうしてそれが中国の代表として国連に代表権を持っておるというこの現実の立場に置かれた、そうして日本との間にそういう外交関係が厳然として起っておる事態を私どもは処理せずして、直ちにそういう案に賛成することはできないというのが日本の立場であると思っております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 しかしそれは外交三原則との関係はどうですかという点を伺ったのですが、その点が明確になっておらないわけです。三原則の立場から見たならば、たとえば三原則のアジアの善隣友好という建前からいうならば、インドの提案のように中華人民共和国というものは認めなければならない。しかし自由主義陣営との協調ということであるならば、台湾政府との関係を認めていかなければならない。ですからこの二つの矛盾をどのように三原則では解決するのでしょうかということを伺ったのです。しかしそれによると、何か台湾政府の方を認めていくのが今までの慣例だからそうなるのだというように言われた。そうするとアジアの善隣友好という点は死んでしまう。中国問題に関してはアジアの善隣友好という外交の原則の一つは適用されない。適宜、便宜主義に、このときはこれを使う、このときはこれを使うというところに、岸外交の本質があるのかと思うのですけれども、とにかくそういう形になってくるのではありませんかということを聞いておるのです。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 アジアの善隣友好を進める上におきまして、中国の現在置かれておるこういう状況というものが何とか解決されて、ほんとうに善隣友好ができ得るような事態ができなければならないと思います。これは中国問題だけでなしに、あるいは朝鮮半島の問題もありましょうし、こういう問題が処理せられることが、やはりほんとうにわれわれの目的を達成する一つの目標であると思う。しかし現在まだそれが解決されておらないし、またわれわれがそれを国連において今のインドの提案に賛成するということは、それを直ちに解決する一のではないというのが実情だと思う。そういう時期において、ただ善隣友好というだけの意味で中国大陸また向うにおけるところの中国人民というものを考えてみると、これとの間に友好関係ができないという現実は、それはアジアの善隣友好という方針の実現になっておらないではないかという議論が出ると思う。私はその前提としての事実そのものをわれわれとして将来これが調整されていくことを考えていくことはもちろん必要でありますけれども、現在の実情においてわれわれがいかなる態度をとるべきかということは、決してアジア善隣の方針よりも自由主義陣営とか、自由主義国との協調の方が大事だからその方をとったという考えでなしにこの前提となっておる事態が解決されない以上は、日本として進むべき道はどこであろうか、善隣友好の道はどこだろうか、われわれが国交の回復していない中国大陸との善隣を考えるか、国交がちゃんとできておるところの台湾政府との善隣友好を、考えるかといえば、それはわれわれはそれが自由主義国であるかどうということでなしに、国交の回復しておる国との善隣友好ということが当然の日本の立場である、かように考えております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 しかし、この問題はあとでやろうと思ったのですが、この機会にやってしまいますが、今の話はきわめて重要だと思うのです。現実に日本と中華人民共和国との間に国交回復ができていない、蒋介石政権との間には国交回復がきれてあるから蒋介石政権との善隣友好を主としてやるのだ、こういうお話です。そこで伺いますが、そうすると中華人民共和国との間に善隣友好関係を進めるための努力をしておらないではありませんか。台湾政府との関係についてはいわゆる日台条約において国交の関係がある、だからこれはやむを得ないのだというけれども、世界の常識から見て、イギリスも中華人民共和国を承認しておる。インドあるいはエジプトその他の国々もたくさんの国が最近どんどん中国の承認というのはふえているわけです。こういうときに日本の政府はどういう態度をとるのですか。現実にそうだからといってできないのだということなら、いつまでたってもやらないのだということと同じことなんです。事実、今実際論をお話しになったのですが、実際論からお話しになれば、実際に二つの中国がある。しかし法律論で言うならば、これは岸総理も前に外務大臣をおやりになっておられるからおわかりになるように、日本と台湾との国交回復が行われて、台湾が正統政府という形になる。ところが現実の実情論としては、あなたの今御答弁になったように二つの中国がある、こういう矛盾があるわけです。それでは正統政府として、果して蒋介石政府というものが妥当な正統政府であるかどうかということをお考えになったかどうか。こういう点についてお考えになっておられないのじゃないか。現実にこういうものがあるのだから、あとは政治的な協調にまかして、今はほおかむりしていこうというのが岸内閣のやり方になるのじゃないか。実際に中国大陸全体を見たら、御承知の通りに人口は六億だ、こっちは八百万です。この六億の人民と八百万の人口という点において、それから領土の面において、それから正統政府のもう一つの原則である安定性のある政権という意味において、中華人民共和政権が当然正統政府になるのが当りまえだと私は思う。これは常識です。現実にこうだからやむを得ないのだ、真実はそうであってもこれはほおかむりをしていくというやり方では、これは外交三原則の適用をしていく場合に非常に危険なものを含んでいくことになりはしないか。こういうように思うのですが、この点はいかがですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 中国問題は、日本にとってもアジアにとってもまた世界にとっても、実際これが解決は非常に重要な問題であろうと思います。しかし同時にわれわれは、全然現実というものを無視するわけにはいきませんし、同時にその国が置かれておる、歴史的の関係というものも、外交の現実の責任を持っての政策としては無視することができなことであります。しかしお話の通り、中国大陸における六億の人民に対してわれわれのとっている何は、今直ちにこれを承認するという段階ではないけれども、しかしこれとの間にあるいは経済関係を保つとか、あるいは文化関係その他の関係を重ねていくということは、現実にわれわれもあらゆる努力をしておるわけなんです。現在の状況のもとにおいて、まだその根本を解決するという事態にはなっておりませんが、しかしこの京までいつまでも放置してほおかむりをしていくという考えではございませんで、この問題は日本にとってもきわめて重大な問題でありますから、あらゆる点から慎重に検討して、日本の立場というものも考えていきたい。しかしとにかくわれわれは現在の段階においては、まだ中共政府というものを正式に承認するというわけにはいかない。しかしこれとの間に、今申しましたような関係を積み重ねていくということについては努力していきたい、こういうつもりでおります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 そういう貿易その他の具体的な問題を積み上げた上において国交回復をする、こういうのが基本方針であると解釈してもよろしゅうございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 そういうことを積み重ねつつ今の国際的の関係を調整していかなければならぬ、私はこう思っております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 そこで伺いますが、それではそういう積み重ねの上の国際情勢を考慮して、いずれは国交回復をしなければならぬという、そういうお考えである、その点は間違いございませんか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私は長い目で見て、中国との間のこういう今の状態はこれは一つの変態であって、日本の何千年かの中国大陸との関係を考えてみても、こういう関係を永久に続けていくというのではなく、これとの間に正式な関係が結ばれることを願っております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 そういう問題について、それでは今のようなお考えですね。中国大陸の方の政権が承認されるというような方向にいくべきであるとお考えになっておる、事実問題を積み上げた上において、そういうように今御答弁になったわけですね。そういう点について、それでは蒋介石とお話しになりましたか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私は、そういう点について何も蒋介石総統と直接には話しておりません。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 それじゃ、蒋介石とお話しになったときは、現在の台湾政権の安定という上に立ってお話しになった、そうしてあなたの御理想としては、中国の大陸の中華人民共和国との貿易を積み上げた上で国交を回復する、二つの腹が中にあるわけですね。これが岸外交ですか。二つの手がある、こういう形でやっていくわけなんでありますか、どうなんですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 この点に関しては、私は蒋介石総統の言い分を率直に聞き取ったわけでありますが、蒋介石総統は、中国の人民は自由を欲しているがゆえに、今の状態は必ず解消されて、そうして自由中国というものがいつのまにかできることであろう、また私はできるという確信をちっともゆるがしておらないということを申しておったわけであります。私自身中国の現状というものを見て、台湾政府が主権を主張しておりますけれども、これが中国大陸を、さっきからお話のように現実に支配していると考えることは行き過ぎであると思う。しかしまた同時に、中国大陸の方において台湾そのものを現実に支配しているということも、現在の状況においては現実に反している。しかし、二つの中国ということに対しては、これは両政府ともがんとして反対をしている。こういう状況において、そういう現実を何らかの形において調整しない限りこの問題は解決しないのである。これが前提として解決されるということが一つ、そこに実際の問題として、両方の主張なりあるいは現実の事態というものの間に調整をされない限り、日本としての立場というものをはっきりきめるわけにはいかないというのが現状であろうと私は思います。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 今までの御答弁を私は整理をしておきたいと思うのですが、今御答弁のありましたように、中華人民共和国の側としても、台湾政府側としても、お互いに分離することに対しては反対である。この点がはっきり出てきた。それからもう一つは、蒋介石としては、全体を一つにして自分が主人公になろうと考えている。もう一つは、中華人民共和国は、これを二つにして自分が主人公であると現実に主張しているが、私もそれは最も正しいと思うのです。こういう三つの意見が今御答弁として出てきているわけですね。そこで、その場合に、岸総理大臣は、蒋介石がそのように言っても、貿易の面を先ほどいろいろ御答弁になったように、積み上げていった中で中華人民共和国政府というものが正式に国交回復をして承認されるようになることを自分は考える、その時期は言えないけれども、そういう方向に行くであろうと考えるし、自分はそれが正しいと思っている——先ほどの、いろいろの貿易やその他の積み重ねの上においてそういう時期が来ることを期待しているという御答弁を通じて、そのようにお考えになっていると解釈してもよろしゅうございますか、どうですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 先ほど申し上げましたように、一方においては日本と中華人民共和国ですか、要するに、中国大陸との間の関係というものは、貿易やその他を通じて親善の関係を積み重ねていくということと、それからもう一つは、国際的の諸種の条件というものを調整することによって、全中国と日本との間に、正常なる友好関係が結ばれることを私は望んでいる、こういう意味であります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 それば非常にあいまいですが、ほかの面から伺って参りましょう。今の御答弁非常にあいまいだと思うのです。今、日中貿易協定がついに暗礁に乗り上げて、池田団長が帰ってきたわけです。このあとどういうようになさるおつもりですか、対策を伺いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私まだ、池田団長以下帰って参りまして、詳しいことを聞いておりません。その交渉の経緯その他あらゆる点から十分慎重に検討いたしまして、両国の間の貿易関係を増進するように結末を持っていきたい、こう思っております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 増進するために具体的な問題があるわけですね。指紋制度の問題が解決しない限りは、貿易協定の問題は解決できないです。この指紋制度の問題はどうなさるおつもりなんですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 指紋制度の問題につきましては、現行法の許す範囲内において、両方の難点になっていることをある程度解決するように運営をしたいというのが従来の考えでございました。しかし別に指紋に関する現行法制そのものを実は私検討を命じておるのであります。まだ結論が出ておりませんけれども、もしもこれの検討の結果、さらに今の日中間の交渉を有利に円滑に妥結するような結論を得るならば仕合せだと思っておりますが、まだ結論は出ておりません。検討を命じておるのであります。現行法の間におきましても、ある程度の緩和措置によって妥結をしたいという意思は持っておったのです。まだ中国側の意見をはっきり聞いておりますが、私の考えておる程度のことで、緩和した態度で妥結ができるものかどうであるかというようなことにつきましては、交渉の経緯を二つ詳細に検討いたしまして対処したい。今指紋法については、別の見地から、いろいろな点からの検討を命じておる、こういうことであります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 これは総理大臣ちょっと伺いたいのですが、指紋の別な見地とお話しになるけれども、指紋を取るか取らないかという問題なんです。法律を直すかどうかは一応別の問題として、要するに指紋の問題は、指紋を取らないということになれば解決するわけです。そういう点について、指紋を取らないでやれる道について自分は考えているんだ、こういうように今の答弁は解釈してもよろしいわけですか。指紋を取らなくても、よろしいわけですね。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 先ほど来お話しがありましたように、われわれ正式に中華人民共和国というものを承認をいたしておりませんから、それの正式機関として認めるわけにいかないという立場をとっているわけであります。しかし実際貿易事務に当る、また貿易事務を処理する事務所をこちらに作るということは、貿易を促進する上からも便利でありますし、いいことでありますからそれは認めよう。そうすればその任務所の貿易事務の仕事を鞅掌するという身分がはっきりする人だけは、ある程度の限定した形において認めていってもいいじゃないかというのが、私の従来の考え方であります。しかしそれでまとまらなかったところを見ますと、どういう主張をしておるのかわかりませんけれども、全部一切指紋というものをすべての国の人にやめるというようなことが、今の日本の、態としては私は可能ではなかろうと思います。しかし今規定されておる厳格な規定をある程度緩和するような意味における修正点については、相当検討を加えていいのではないか、私はこう思っております。かりにそういうことが非常に緩和されたような改正案ができるということになると、私が考えておるような一種の便宜の扱いの問題でありますけれども、そういうことが法律上もう少し容易にできる、こういうことになるのではないか、こういうふうに思っております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 しかしアメリカ本国でもマッカラン法を今度やめたわけですね。日本だって外人登録法をやめたらいいじゃありませんか。大体今まではいろいろ事務当局と話をしておる場合において、今アメリカ追随というお話がありますが、アメリカの関係はこうなんだから困るのだということをしょっちゅう言っておる。アメリカもやめたのだから日本だってやめたらいいじゃありませんか。どんどん減ってきておるじゃありませんか。改正を一つおえになったらどうです。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私はアメリカがやっておるからやるという考えではございませんで、日本の置かれておる立場から見て、この指紋法の効果並びにその必要を再検討しろということを言っておるわけであります。今直ちにやめるということを明言するわけにはいきません。どういう修正なりあるいは改正の結論が出ますか、とにかく検討を命じておりますが、私自身はアメリカがやめたからどうするとか、アメリカがやっておるからどうするとかいうことでなしに、この法律を設けた趣旨、日本の置かれておる立場というものを、さらに情勢の変わった今日において再検討してみろというのが私の趣旨でございます。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 こればかりやっておってもなんですが、次に、こういう説が実は伝わっておりますし、ある程度事実なんでありますが、足立正さんが団長になって行かれた訪台使節団に、蒋介石が藤山外務大臣に書簡をよこしておる。その書簡の中では、日中貿易協定について事実上これはきわめて好ましくない、そういう意味の書簡をよこしておると伝えられておりますが、この点はいかがでございますか。これは新聞にも出ておりますが、この詳細をお聞かせ願いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私は全然その事実を承知いたしておりません。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 これは一部の新聞には出ております。これは早急にお調べを願いまして、適当な早い機会において御答弁を願いたいと思います。  続いて次に進んで参りますが、原水爆の問題に入りたいと思います。原水爆の実験禁止提案ですね、これはきょう国連総会で夜おそくに採択が行われるだろうと予測されておりますが、日本案については大体採決の見通しその他——新聞その他あるいは私たちの聞いておる限りによっては、日本提案というものは、おそらく八十二カ国の中で八票か九票、せいぜい一割以下であろうと言われておるのでありますが、こういうあわれな状態になってきておるように聞いております。日本提案についてその後の経過をこの機会に詳しくお話を願いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私詳しくは実は報告を受けておりませんが、日本案に対してはこれが趣旨を十分に各国に説明する意味におきまして、藤山外務大臣を再度国連総会に送っておる。大体各国に対して、日本案の趣旨については十分な説明をいたしておるわけであります。ただ岡田委員も御承知の通り、この原水爆禁止の問題に関しては、西欧諸国の案とソ連の案とインドの案と日本の案が出ておるわけであります。西欧の案に対しましては、二十数カ国がたしか提案国となっております。この西欧の案とソ連の案は平行線的に相いれない、両方理論的に対立している案であります。私ども日本の案は、両者を何とかして現実的に妥協させて、そして原水爆の実験禁止の実を上げたいという念願から、われわれとしていろいろな点を検討して最も実効的であり、このくらいなら両方とも譲って、現実的に原水爆の実験禁止をとにかく早急に実現することが最も望ましいという見地に立って、われわれは提案をいたしておるのであって、日本案が通過するように、成立するようにあらゆる努力はいたしております。しかし遺憾ながら私は、結果的に申して多数の国の賛成を得るまでに至っておらない現状であることは非常に遺憾であります。遺憾でありますが、そういう実情であります。今問題は、西欧案を先議すべきか日本案を先議すべきかということについて、いろいろ論議がかわされておる、私はまだ結論がどっちになったということをはっきり聞いておりませんが、論議されておるような状況であります。われわれの提案がかりに少数で否決されるということがありましても、われわれが提案をしておる真の精神というものが、国連加盟の各国の人々に与えるところの反省と将来の実現の問題に関しては、相当な効果があったろうと思いますし、またその効果をさらに実現するように今後とも努力を続けていきたい、こういう考えでおります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 しかし、少数で破れそうだという総理大臣の御答弁なんですが、今総理大臣のお話のように、西欧案、ソビエト案、インド案、日本案、そのほか二つ案があって、全部で案だけでいうなら十二出ているわけですが、こういう中で各国別の提案からいうと、日本の案が一番少いわけですね。おそらく少数といえば確かに少数だけれども、およそ問題にならない最低数であろうと思う。こういう最低数であるというような見通し。  ところが日本の国が原水爆の被災国である、被災国であるのにこういう実態になったということは、日本政府の提案の内容に問題があると思うのですが、この点はどうでしょうか。そしてネール・岸共同声明によると、インド提案と共同させるという努力をされる方向にいたったはずなんだけれども、結局においてインドと日本案との間の協調はできなかったというんだが、どういう点で協調ができなかったのか、そういう具体的な御答弁を一つ願いたいのであります。藤山外務大臣はおられなくとも、私は質問をしておるのでありますから、かつては外務大臣をやられておった岸総理として、もう少し詳細にこのような重大な問題は御答弁を願いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 ネール首相と私との話し合いは、要するにソ連と西欧の二つの大きな提案というものを見ると、おのおの原水爆を持っており、これに関する提案の採決によって、自分たちの優位を失うまいとしておる意図がその背後に隠されておることは、これはいなむことのできたいことであります。そこで、われわれインドも日本も原水爆を持たないし、将来持とうという意図も持っていない、純粹にこれをやめることが世界の喜平和のために、また人類の福祉のために必要であるという見地に立っておるのだから、自分たちは必ずしも、今提案しておるこの字句にはとらわれる必要はない、両国の置かれておる立場は、またねらっておるところは一致しておるのだから、できるだけ一つ協力しようじゃないかというのが、私どもの話し合いの中心であったわけであります。具体的のその雰囲気なりそういうことは、藤山外務大臣もよく承知いたしておりますから、従って藤山外務大臣に、できるだけ日本案の趣旨を説明するとともに、インドの代表との間においても協力できるだけ協力するようにという意図のもとに、藤山外務大臣を再度国連に送ったわけであります。藤山外務大臣も十分な努力をいたしたことと思いますし、また私自身この問題に関しては、そういう場における処置の問題については全権を藤山外務大臣にまかしておりまして、藤山外務大臣は不幸にして帰りますとすぐ——これは帰る途中からだと思いますが、不時着のためから病気で寝ておりますので、種々具体的のいきさつなりあるいは交渉の具体的内容というものはここで申し上げることはできませんけれども、趣旨はそういう趣旨であり、またそういうことにおいて真剣に努力をしたということだけはおくみ取り願いたいと思います。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 しかし、総理に伺いたいのですが、真剣に努力してもまとまらなかったのですね。まとまらなかった点はどの点であったかというのは、これは国民の関心の的であり、政府の最も大きな問題だと思うのですが、藤山さんが帰って病気で寝ているからまだ話し合いをやっておらないのでわからないという意味なんですか、それはどういう点がまとまらなかったのですか、その点を伺いたいと言っているのです。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 岡田君にちょっと申し上げますが、今の外務政務次官の松本君も御出席でございますし、すでに総理大臣に対する質疑がもう一時間以上にわたって集中しておりますので、よろしく一つ論旨を進めていただきたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 これは御承知の通り、インドの提案と日本の提案の内容について両方の違いがございます。われわれの考え方によれば、今の両方をどういうふうに近寄らしていくかという一つの考え方として、とにかく監視査察等の機構ができることについての原則について話し合いができるなら直ちにその実験をやめる、そうして続いて軍縮の会議についても、引き続いてやって早く結論を得るようにという考え方、理論的にこれがいわゆる核実験禁止の問題と一般軍縮とを切り離すか切り離さないかという点に関しては、これはいろいろな議論がありましょう、ありましょうが、われわれはそういう理論的に切り離すか切り離さないかということよりも、とにかくできるだけ早くやめなければならない、やめるについて、また一般軍縮問題に一歩関連させて強く言っているのだ、しかしそれと同時でなければできないということになると、これはロンドンの会議から見てもなかなか成立しない、そこでそういう提案をしているわけであります。さらに、インドの提案の即時無条件に停止するという点において、われわれはとにかく西欧側をある程度まで納得せしめるのには、やはり管理に関する機構についての話し合いが前提として考えられなければならない、それが具体的のこまかいことまで話し合いができなければならぬということになれば、これはなかなかできない、しかしそういう機構を作ることについての原則的な話し合いができればと、このくらいの話し合いはもうソ連及び英米の間にできる可能性もあると思うし、また努力をすればできるはずじゃないか、そうすればわれわれの案は実現できる。インド案で見るとその点に関してあまりに西欧案と遠ざかっておると私は思う。そういう点に関していろいろと話したのでしょうが、結論としてインドの案とわれわれの方とがその点において一致することができなかったというのが、私は実情だろうと思います。しかし立場そのものが先ほど言ったように、インドと日本との置かれておる立場というものが英米やソ連とは違った立場であるということ、それは共通であるという考えからできるだけ協力するし、これの実現に努力しようといったことは私はむだではなかったと思いますし、不幸にして現実の問題として今言ったような主張が十分に調整できなかったということが実際の結果である、こう思っております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 これは委員長に御了解をいただかなければならないと思いますが、私は外交と防衛の問題でありますから、ほんとうは総理大臣と藤山外務大臣の二人が主になるのであって、藤山外務大臣がおられないから総理大臣に伺わざるを得ないのですが、松本政務次官からも御答弁願ってけっこうなんです。しかし今のお話を伺っていると、インドの場合には即時無条件の禁止案、日本の場合にはそうではなくて、幾らか両方をつき合せたような案だ、こういうお話ですね。そうすると日本の案は即時禁止案ではない、そういうことになりましょう。これはあとでもし必要があれば全部言ってもいいんですが、即時禁止案ではないでしょう。

松本瀧藏自由民主党外務政務次官

○松本政府委員 お答えいたします。日本は御承知の通りバンドン会議におきまして共同コミュニケを発表いたしましたから、その精神にのっとっていたしました。これは即時停止ではないではないかというお話でありますが、査察制度の合意のあった場合には、直ちにこれを実施するという精神が盛ってあります。インドでは永久にという精神が込もっておるのでありますが、日本は一年に区切ったところに問題が起ったのでありますが、御承知の通り一年間停止いたしまして、さらに必要があれば総会においてこれを延期することができるというところで、結果においては同じでありますが、私どもの観測では国連におきまするインド首席代表の性格、雰囲気等からいたしまして、ちょっとはずみでああいう工合になっていると思うのでありますが、実質においては目的は私は変りない、こう考えております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 それでは松本政務次官に続いて伺いますが、西欧案は即時無条件禁止案ですか。

松本瀧藏自由民主党外務政務次官

○松本政府委員 お答えいたします。西欧案は御承知の通り、ただ原爆禁止だけを切り離してやったのでは、生産並びに使用の問題が禁止されない限りにおいては意味をなさない。ただ実験禁止だけで軍縮問題も同時に討議されなかったならば意味がないというので、両方ひっくるめて考えておる案でございます。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 ですから原爆の問題に関連しては即時禁止案ではないんでしょう、条件がついているんでしょう。

松本瀧藏自由民主党外務政務次官

○松本政府委員 両方を兼ね合せますれば即時禁止にむろんなるわけであります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 私のお伺いしているのは両方のことを聞いているのではない。原爆の禁止案についてはこれは即時禁止ですかと言っているのです。それは条件がついておって、その条件ができなければ禁止できなくてもやむを得ないという案でしょう。

松本瀧藏自由民主党外務政務次官

○松本政府委員 その通りであります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 そこで伺いますが、国民の求めているもの、それから岸総理のこの間の演説を見ても、人道的見地に基いて直ちに禁止する、すみやかに禁止するというのが国民の要求だと思う。こういう点については岸総理大臣はどう思われますか。日本の要求としては即時禁止するというのが考え方であろうと思うのですが、どうですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 その通りであります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 そこで即時禁止案と即時禁止反対案と原爆に関する限りは、この二つの案の中間の案を作るというのはどういう案なんですか。西欧案というのは原爆に関する限りは即時禁止案ではないんですよ。ところが即時禁止の案と即時禁止案でないものとの中間の案という、そういう案のできょうがないじやありませんか。ここに日本の案が支持されない根本の原因があるんです。

松本瀧藏自由民主党外務政務次官

○松本政府委員 そこに思想の相違があるのでありますが、ただ即時禁止ということを宣言しても、それを実施さすところの機関が整備していなかったならば意味をなさないという意味におきまして、ここで査察制度等を完備した上で禁止する、そこにギャップがあるのであります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 査察制度の問題だけではないのです。これは松本政務次官おわかりの通りですが、日本の案というのは原爆禁止案じゃないのですよ。原爆禁止並びに軍縮案なのです。軍縮案というところでアメリカにひっかかっているのです。原爆禁止の即時案じゃないのです。だから通らないのです。国民の要求と違うのです。岸総理大臣は九月二十四日に米英ソの三国総理に対して書簡を出されている。その書簡を見ると核爆発実験と離してやるか離してやらないかという、御存じのものです。読んでもいいのですが読むと時間がかかりますから省略しますが、これによると直ちに禁止せいと言っているのです。ところが日本の国連提案というのは禁止案に軍縮案を結びつけてある。本質は即時禁止案にはなっていないのです。そこに矛盾があるのです。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 それはごらんになるとわかるのですが、われわれは軍縮の問題は引き続いてこれをやれということを言っているだけでありまして、軍縮についての協定ができることを条件とはしておらないのです。その意味において、西欧案のいわゆる軍縮案とくっついておるとおっしゃいますけれども、われわれは査察制度というものは一つの条件にしておりますが、それができればすぐやめろ、そして軍縮の問題については引き続いてやるという結論を出せ、こういうことになっておりまして、軍縮ができることを条件としての案とは違っておる。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 総理大臣よく見ていただかなければならない。決議案をここに私持っていますが、この案というのは名前を見てもはっきりしている名前は「軍縮交渉促進並びに核爆発実験停止に関する日本決議案」です。そうしてこの中に前文があって、その次に一と二がある。一の方は軍縮提案なのです。二の方は原爆実験停止案なのです。これを一緒にしているから問題なのです。軍縮の促進ということはわれわれも賛成なのです、日本の国民だって全部賛成ですよ。あなただって賛成だろうと思う。軍縮の実現をするためになぜこれを一緒にしたのですか、別別に提案したらいいじゃないですか。別々にしたならば第二の原爆禁止案というのは現在よりも通る可能性があったのです。現在のような八票とか九票とか情ない状態になっていくことはなかったはずなのです。ここに軍縮案と一括案としての、言葉をかえていえば即時禁止案でないという本質がある。こういうごまかしをやっておったら、これはもう国際的にはだれにも相手にされないから八票か九票しかとれないのです。国民だって今はあまりよく知らないから黙っているけれども、だんだん岸内閣の本質はこれかとはっきりわかってきますよ。軍縮案を出されるならばなぜ別個に提案されなかったか。インドは四つも出しているじゃないですか。別個の提案です。日本の場合はひっつけているところに問題があるんです。軍縮をやるということはわれわれはあなたの言われている通り賛成なんです。別個にお出しなさい。一緒にしているところに西欧からも相手にされない、ソビエトからも相手にされない、インドからも相手にされないという、これは外交三原則から見ればどういう原則か私はわからないが、三原則でいうならば、少くも岸外交の現われとしてこれをやらなければならない。三原則のどれにも当らないじゃないですか。(「両岸原則だ」と呼ぶ者あり)両岸原則よりこれは岸孤立原則ですよ。世界孤立原則であり、よろめき外交ですよ。よろめき外交は美徳じゃない。こんなことは岸さんの美徳にならぬですよ。こういうだらしないことをやっているから世界で笑われるのであります。こういう点について、これが通る時期を待つなんといったって何年たっても通りません。そういう通らなかったという上に立って、あなた自身が十分なる反省が必要ではないかという点です。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 初めから申し上げているように、われわれはこれの実行可能の線がどこにあるか、相反しておる両陣営の平行線的な主張に対して、これを両方歩み寄らせることがわれわれのねらいであります。それが一番現実において実現性のある問題であるというのが私どもの見方であります。従って今のお話のように、これを全部切り離して考えろということであれば、あるいはそれはソ連案そのものに非常に近くなることでありましょうし、また同時にこの両方を全然二つからませて考えれば、これは西欧案そのものになるでしょう。私どもはこれをあわせておりますけれども、両方の間には必然的の関係として、条件的な関係にこれをしておらないというところに、われわれの両方の妥協といいますか、歩み寄りというものをねらった現実の実行性を考えたわけであります。決してよろめきでもなければ、そういうことは御心配要らない。私はやはりこれを実現する。われわれ真剣にこういう問題を、軍縮の問題にしましても、またそれよりも進んで緊急性のある核爆発実験禁止の問題をいかにして実現するか、おのおのがおのおのの立場においてその主張なり、あるいはその理論的根拠において何かを主張して、そしてそれが相対立して実現ができないという現実を、どうして一日も早く実現するかという立場をわれわれとしては考えて出しておるわけであります。決して無方針でもなければ、あるいはよろめきというようなことでないことを十分に御了承願いたいと思います。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 岡田君に申し上げますが、だいぶん時間も経過しておりまするので、結論をお急ぎ願いたいと思います。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 総理大臣、これはもう一度はっきり申し上げておかなければならないのですが、あなたは実現の可能性がある、あるというけれども、ない証拠に八票しかとれないのです。なぜないかというのは、さっきから私が申し上げておるように、即時禁止案と即時禁止反対案の間の中間案なんて、どんな案かというのです。そんな案なんてありっこない。即時禁止案と即時禁止反対案との間にどんな中間案がありますか。日本案はそれなんです。中間案なんて、そんな案なんか作れっこない。結局西欧案になっているわけです。そういうことを一つ考えていただかなければ、これで実現できるというのは大間違いです。  それともう一つは、先ほどもちょっと申し上げたが、岸書簡によると、「核爆発実験を継続しながらも軍縮交渉を継続するか、あるいは核爆発実験を停止しておいて軍縮交渉を継続するかを考慮するならば人道的見地から後者の方が望ましいことは明らかであり、広く世界の世論も歓迎するであろう。」これだけ聞けばこれは切り離した案ということしか理解ができない。この言葉と日本の国連提出案とは違うじゃありませんか。こういう点について岸総理大臣がブルガーニン書簡においてこの岸書簡に対して賛成だといったときに、曲解だと言ったがこれはどういう意味ですか。切り離してやるということについてそれに賛成だと言ったら、ソビエトの言っていることは曲解だと言ったのは、これはどういう意味ですか。こういう点についてわれわれ今度の原爆禁止提案については不明確であり、不十分であり、そして先ほどから再三言っておるように、よろめきだと思うのですが、この点はいかがですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 岡田委員はこの案は西欧案だと、こう先ほど結論をされた。ブルガーニン首相はソ連の案だということを言っております。(岡田委員「書簡は」と呼ぶ)書簡は、私は書簡の趣旨で提案いたしておるわけなんです。従って私は初めから申しておるように、両方の相反しておる主張を調和し、妥協せしめる意味において出しておるわけでありますから、両方からそういう見方をされることも、これは当然であろうと思います。しかし私自身の主張は先ほど来申しておるように、いかにしてこの相反しておるその相反した主張が国連の総会においてただうずを巻いてみたって、われわれの望むところの原爆の禁止というものは実現しない。これを実現きせるにはどうするかという点でいろいろの条件がつけられておる。その条件を条件としてはこれは認めない。しかし同時にわれわれはやはり軍縮の問題も重要な問題として考えなければならぬ。しかし軍縮の問題が話ができて原爆を禁止するというのではなしに、提案もはっきりと、私どもは原爆の実験禁止はこれを実現する、と同時に軍縮の問題についても引き続いてこれを早く実現する、こういう二つを並べて提案しているだけであって、その間に関連性のないということが、われわれのねらいであるわけであります。私はわれわれの主張が今言うように両方から非難もされるだろうし、両方から自分のものを支持しておるというふうに見られることは、これは一般の妥協案の性格というものは、そういうものだと私は考えております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 岸妥協構想の本質というのが暴露されたと思うのですが、これは実現するならそれでもいいと思うのですよ。実現できないところに問題があるのですよ。しかも今あなたのお話になっている点で大きな違いがある。三国に出した岸書簡と日本提案に違いがあるのです。そこに問題があるのです。あなたはブルガーニンは、日本提案に対して賛成したといっているが、そんなこと言っていないじゃないですか。曲解だと言って盛んに違う、違うと言ったじゃないですか。違う、違うと言っているのが本音なんですよ。書簡はブルガーニンと同一のようなことを言ったんですよ。ところが提案は違うのです。ここに問題がある。ここにいわゆるさっきから出ている両岸外交の本質があるということにもなるわけだ。今晩圧倒的多数のおいて、残念ながら日本の案が否決になってしまうのだけれども、こういう点は今後において一つ十分御反省を願わなければならないと思うのたが、こういう点について最後に一言だけ、こういう否決になった責任をどういうふうにお感じになるか、この点を伺っておきたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私は先ほど来申し上げておるように、あくまでもわれわれはこの原爆の実験禁止をできるだけ早く実現したいという一念に燃えておるわけでありまして、しこうして今度の提案いたしましたことが、不幸にして少数にして否決されましても、私はわれわれの主張というものはやはりこれを実現に向って今後ますます努力をすべきものである、こう思っておるわけであります。(「その通り、その通り」)

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 岡田君、まだだいぶありますか。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 まだあります。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 結論をお急ぎ願います。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 そこで岸総理が外務大臣のころにもあった問題ですが、これは一つ重大な問題です。松本政務次官もおられますが、さっきバンドン会議の精神を守ってということを言われましたね。そこでバンドン会議の決定を、岸内閣というものは、あくまでも守っていかれるのですか、どうなんでしょう。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 バンドン会議においてわれわれが参加し、われわれが賛成をしておるところのこの精神というものは尊重していかなければならぬと思っております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 バンドン会議の決定にこういう点があるのですが、この点はいかがでございますか。バンドン会議の決議の中に、統一されたヴェトナムは国連に加盟する資格がある、これは当然お守りになるのでしょうね。——これは岸さんが外務大臣のころにも問題になったことでありますし、岸さんは答弁をされておりますからこの点ははっきり岸さんから御答弁願いたい。バンドン会議の決定で国連加盟に対する希望なり資格を有するという問題について、バンドン会議の決定では、読んでみますとカンボジア、セイロン、日本、ヨルダンリビア、ネパール及び統一されたヴェトナムはその資格を有する。統一されたヴェトナム、これは当然お守りになるでしょう。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 ヴェトナムが統一せられることは、われわれアジアの何としても喜ばしいことであることは、言うを待たないのであります。統一された場合において、それが国連加盟の資格を持つということは、これは言うを待たないと思います。ただあれは御承知の通り国連において、南ヴェトナムに対して国連加盟の資格があるという決議がたしか行われておるわけですね。そういう事態もありますから、私は統一されたヴェトナムができることを非常に望むことは人後に落ちないのでありますけれども、やはり国連のそういう決議があるということを前提として、この問題に対する日本の態度をきめなければならぬと思います。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 そういう国連の決議はないのですね。南ヴェトナムだけが入るというような、そんなのはないのです。あるのは、日本がアメリカと一緒に今度また提案国になったのです。こういう提案国になったのがバンドン会議違反ではないかということを私は伺いたいのです。ことしの春も問題になったでしょう。ことしの、春岸外務大臣が出した訓令に反して、日本の国連代表がアメリカに言われて提案国になったのです。これで、あのとき岸さん困ったんじゃありませんか。またそのときと同じことが今やられているのですよ。  しかももう一つ伺っておきますが、藤山外務大臣が国連に対する訓令を出している。この場合にも、統一以前においては提案国になっていいなんていうことは全然書いてありませんよ。それなのになぜそういう国連の大使が提案国になる署名をしたか。そういう点が誤りならば、岸総理大臣は誤りとして直させるように、提案国になったあれを撤回させるようにおやりになる決意がおありですか、どうですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 ヴェトナムについて国連の総会の決議があったんじゃありませんか。一九五二年か五七年……。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 ジュネーヴ会議ですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 いや国連の総会の何で、加盟の資格ありとして決議があったように私は承知しておりますが……。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 岡田君、きょうは外務大臣も欠席ですから、そういう問題は、どうですか、あらためて外務委員会でお取り上げになっては。ただいま理事の諸君からも、すみやかに結論に入られたいという強い要求がありまするので、結論をお願いします。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 私の言っておるのは、こういう個別の問題というのは、いわゆる岸外交の三原則といっておるのがいかによろめいているかということを、一つ一つわかってもらおうと思っておるから言っておるので、提案国になったというようなことで醜態が出ている、こういう点からもアジア諸国からは岸外交というものは信用されないんだということを私は言いたいわけなんです。こういう点は、一々個別の問題について私はきょう言うのはよしましょう、よしますが、一つ岸さん十分御反省の上でやっていただきたいと思います。  それでは最後に結論に入ります。沖縄問題なんですが、沖縄の問題について、岸さんきのう河野密さんに対する御答弁で、アメリカは緊張と脅威があるということを非常に強調したけれども、日本はそうじゃなかったんだ、別な観点で返してくれと言ったんだという話でしたね。しかしついに実現ができなかったのです。どういう形で返してくれということをお話になったんですか。それに関連して、時間がありませんから集約をして参りますが、私この前岸さんに外務委員会のときに詳しくお話はしたのです。国際法上、国連憲章に基いて沖縄が国連の信託統治制度には絶対になれないということをこの前御説明をして、なるほどそういう点についてはあれは同感の点もある、が、あれは研究するからちょっと待ってくれと言ってそのままになっているんですね。その点どうなんですか。もう半年以上たっておりますから、研究の結論が出ていると思うのですが、そういう点について、信託統治制度の問題についてアメリカと交渉されましたか、どうですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 アメリカとの沖縄の問題に関する交渉につきましては、われわれは沖縄の問題はただ単に沖縄の住民の問題だけじゃなしに、全日本の九千万の問題である。われわれは歴史的に見ても、これが日本の完全なる領地であるという点においては、国民は強く確信を持っている。従ってこれが日本に返還されるということは、日本とアメリカとが対等の関係において真の協力関係を今後重ねていく上からいって最も望ましいことであるというのが、私の主張の根幹をなしているわけであります。それに対してアメリカの大統領の何は出ております。あの共同声明に出ておるような主張をしたわけでありますが、われわれは東亜における緊張の度がどういうものであるか、それはいろいろな見方があるだろう。すべての何が平和で、いわゆる何らの危険、その他の将来に対する不安がないということは言えないだろう。しかしそれに対しては、アメリカがあそこに軍の基地を持つということだけで十分じゃないか、われわれに施政権を返すということと、緊張があるとかないとかいうことは、ちっとも関連ないじゃないかというのが、私どもの主張の本体であります。しかしこの問題に関してのアメリカ大統領との会談は、ついに私と大統領との意見が一致することができなかった。しかしわれわれは将来においても同じ主張を続け、またわれわれはわれわれの一部であるところのこれらの返還をアメリカに対して将来においても主張し続けるということを言って別れたわけであります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 しかしそういう努力をしてみたって、これは実現しませんですね。共同声明に書いてある通りですからできませんよ。だから、じゃこれ以外どういう形で沖縄の返還を努力されるのですか。アメリカに何ぼ話したってだめですよ。どういう形でやられるのですか。一つ具体的な沖縄返還についての方針を伺いたいのです。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 何も共同声明ということが未来永劫拘束するものではありませんし、この前の会談における両者の意見が一致したこと、一致しなかったことを共同声明に表わしているわけでありますから、私はあらゆる上から日本の国民的核心であるこれの返還ということについては、あらゆる努力をいたしたい。今具体的にどういうことをやるかというお話につきましては、何といってもアメリカを相手にこれを十分理解、納得せしめるということでありますが、ただアメリカの大統領とばかり話すということじゃなしに、あらゆる方向に努力していきたい、こう思っております。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 あらゆる努力というお話でありますから、最後に伺っておきますが——委員長、これは重要ですからぜひ言っておきます。総理大臣お聞き下さい。あらゆる方法というのは、アイゼンハワー大統領以外と話す方法というのですから言いますけれども、なぜこれを国連に提案しないのですか。国連の安保理事会の非常任理事国にもなったこのときにおいて、信託統治の問題というのは、これは国連憲章の問題なんです。国連憲章の問題なら、なぜ国連に提案されないのですか。国連に提案して信託統治制度にこれが適用ができないということになるならば、日本の平和条約の第三条の前段は無効になるのです。そうすれば後段の、施政権の一時的な管理、アメリカが管理して日本が潜在主権を持つというこれは、あなたが苦労なさっている施政権は当然日本の国に返るのです。なぜ国連にこの点をことさら提案をされないのか。これからでも提案されるお考えがあるのか、この点について一言だけ伺っておきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 今すぐこれを国連に提案する考えは、私は持っておりませんけれども、しかし将来提案することが適当であると認めたときには提案をする考えであります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 これで終ります。これで終りますが、今すぐ提案をしないといっているけれども、そういうことで沖縄の返還がおくれているということは、これは岸さんがそういう提案をされないと、それだけ返還がおくれるのですから、責任は感じて十分努力をしていただかなければならないと思いますが、この点だけを私強く要請して、まだ実はたくさんあるのですが、きょうはこの程度にいたします。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 委員会散会後理事会を開きますから、理事の諸君は第一委員室にお集まり下さい。  明日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十一分散会

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