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27回国会衆議院1957/11/05

予算委員会 第2号

発言数
155
登壇者
12
会派数
2
開催日
1957/11/05

会議録

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十二年度一般会計予算補正(第1号)、同特別会計予算補正(特第3号)、同政府関係機関予算補正(機第2号)、以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。小坂善太郎君。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 岸内閣成立最初の国会におきまして、私は自由民主党を代表して岸内閣総理大臣初め各大臣に対して若干の質疑を行い、その所信を伺いたいと思います。  岸総理にはみずから言われる若さと健康にものを言わせて、東南アジア諸国を訪れ、またアメリカに飛んでアイゼンハワー大統領とひざつき合せて会談し、その後もネール・インド首相の来訪を迎えて懇談するなど、国際社会にわが国を大きく浮び上らせる努力を続けておられることは、まずもって敬意を表する次第であります。五月二十四日のクリスチャン・サイエンス・モニターの紙上にも、日本の岸信介はついに遍歴の特級政治家になったということが書いてあるのであります。すなわち、アメリカのジョン・フォスター・ダレス、インドのジャワハルラル・ネール、ソ連のニキタ・フルシチョフなどの仲間入りをしたと論じておるのでありまして、首相はこう持ち上げられておるのであります。この国会は首相外遊後初めて開かれまする正式の国会であります。従って首相としてもこの国会を通じてその間の事情を明らかにせらるる要があると考えるのであります。  まず、東南アジア旅行に触れていきたいと思うのでありますが、岸首相のアジア旅行の目的は、クリスャン・サイエンス・モニター紙によれば、日本がおそろしい帝国主義国でもなく、また米国の衛星国でもないことをアジアの隣邦諸国に示すことにあると書いてあるのであります。岸首相の訪問に際して各国首相に強調された点は、一、日本がアジアの一国としてアジア諸国との友好増進を重視していること、一、アジアに平和をもたらすためには各国の経済を発展させ、繁栄と進歩を通じてこれを実行すべきであること、一、このためには技術と資金面の協力が最も必要であることから、アジア開発基金の設置を考えていること、一、核実験の禁止については、一昨年のバンドン会議の趣旨に従ってすみやかなる実験禁止を考えていること、この四つの点であったというふうに聞いておるのであります。この際アジア諸国との友好関係の共調についてどういうふうに考えておられるか、また会談の成果について伺いたいと思うのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 東南アジア諸国を訪問するに当りましては、この前の国会におきましても、その訪問の意図につきましては御質問に答えたのでございますが、第一は、言うまでもなく、日本がアジアの一国としてアジア全体の協力、繁栄、進歩のためにあらゆる努力をするというこの考えのもとに、各国の首脳部と忌憚なく話し合ってきたのであります。御承知の通り、アジア諸国においては長い植民地から解放されて、民族国家の独立を得たのであります。従って植民地主義に対する強い反感と、その独立を完成しようという熱意、新たな意味における民族主義が非常に強く勃興しております。しかしながらその半面経済的に見ますると、これらの民族の熱望を裏づけ、熱望を実現する上において必要な基盤というものが、いずれも微弱であるということは争えないのであります。従って日本がこの国民感情を率直に謙虚に受け入れて、しかもこれらの国の願望を達するために必要な経済的基盤の確立に対して特にこれに協力する意味から申しますと、これらの経済開発に必要な資金及び技術、この二つが非常に必要であって、その資金についてはできるだけこれらの国々が受け入れやすい、また望んでおる、すなわち資金の中立性、一国が特殊の政治的意図を持ってなす資金援助でなくして、中立的な性格を持っておる資金ということの必要を考え、いわゆる東南アジア開発基金という構想を提案をいたしたわけであります。また技術の面においては技術センターを作る、そうしてこれに対しては、従来コロンボ・プラン等の形においてわれわれは技術的な協力をしておりますが、さらにこれらの国々の経済開発に必要な多量の技術力を作り上げるための技術センターを作るという、この二つの考えを提案したのであります。最も実現しやすい技術のセンターの問題については、すでに具体的に数カ国においてその案が提示されております。また東南アジア開発基金の構想の問題につきましては、趣旨について十分理解を深め、その具体的方法については、それぞれの国において、また日本においても研究を進め、これが将来実現をはかりたい、かように考えているわけであります。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 具体的な点は東南アジア開発基金と技術センターの問題であろうと思うのでありますが、技術センターについては今のお話中で、二、三の国から具体的な案がそろそろ出かけてきたということで、大へんけっこうでありますが、問題は、コロンボ・プランにもさようなものがあるのでありますから、これとの関係であろうと思います。まあこの際これについて特に詳しく伺うことは避けまして、東南アジア開発基金の問題でありますが、これは今お話のように、できるだけこの資金の中立性を確保したいというお話でございます。岸総理が先般、これはあとでまた伺いますが、アメリカへ行かれたときにもさようなお話があったと思いますが、その後十月二十四日の新聞紙によりますると、河野経済企画庁長官がアメリカへ行かれまして、東南アジアの円借款の新構想として説明せられておるという記事があるのであります。これは私ども考えますと、総理がアメリカへ行ってお話しになったこと、ここに書いておるように新構想でありますから少し趣きを異にしておると思うのであります。この間について、同一の政府でありますからもちろん十分お話し合いがあったことと考えますが、この点についてはどういうふうな成り行きになりますのでありましょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 東南アジア開発基金の構想につきましては、その実現に至る上におきまして相当な時日も要するし、なお研究の余地もある問題である。しかし何時に、東南アジア自体が経済開発を必要とするその緊急性にかんがみまして、この構想が実現するまで置いておくという性質のものでもなかろうと思うのであります。従って個個具体的に、あるいは二国間において特定のプロジェクトを中心にして借款の問題等が起こってくることも予想しなければならぬ。現にネール首相と私との会談のうちにおきましても、インドの開発についてある程度の円借款をある形式において与える用意がわれわれはある、インドの方においてもそれをぜひ実現してもらいたいという希望をいれてそういう共同声明になっておりますように、従って東南アジアの開発を進めていく上において、河野君のアメリカにおいて提案をいたしましたような、二国間の円借款の方法によって緊急の要求に応じていくということも、私は東南アジア開発基金の構想が実現する途上においてそういうやり方も適当である、こう考えるのでありまして、別に私が提案しておるものと両立しないという性質のものではない、かように思っております。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 両立しない問題でないことは、私もその通りに思います。ただ、こういう筋は、やはり借款という話は実はなかったので、借款をしてみたらどうかということですが、これは借款ができるかどうかという問題であろうと思うのです。相手がそれを承知しなければ、こちらから幾ら進行しようと思ってもしようがない。そこでやはり総理大臣なり外務大臣が行っておられるのでありますから、あまりいろいろな線からそういう新構想を持ち込まないように、総理大臣として一つ十分御注意を願っておきたいと思うのであります。  それから次にアメリカ訪問について伺いたいと思うのでありますが、アメリカの訪問の成果として伝えられておりますのは、日米の共同声明であります。日米共同声明におきましては、その第一部において協力五原則というものがあるのであります。この協力五原則の第三項において、軍縮が達成されるまで自衛のための措置を怠らないということを述べております。かつまた自由諸国、ことにアジア諸国の経済安定が、世界平和確立のために必要であるということが述べられております。また第五項には、実行性ある軍縮について、国際協定締結の必要性を強調されておりまして、両国がこの問題について緊密に協議し、その実現を期待することを宣言しておるのであります。さらにこの日米共同宣言の第二部におきまして、安保条約の運営と国連憲章との関係について協議すること、また安保条約に関して生ずる諸問題の検討のために、両国政府間に委員会を設けて、これを検討して改善をはかるという趣旨が述べられておるのであります。これはいろいろあとで伺いたいと思うことと関連いたすのでありますが、こういうことを含めて、総理大臣が日米会談の結果、あなたが具体的にこれが成果だということを国民に示されたい点をお述べを願いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 安保条約、防御に関連しての問題は、日米間におきましても最も重要なアイテムの一つであることは言うを待たないのであります。特に日本が独立国として、将来その自衛を全うする上におきまして、安保条約の問題は、安保条約制定当時の事情にも顧みてみて、国民的にいろいろ冷蔵も起ってくることは当然であると思います。私は今回の日米の交渉においては、あくまでも日本国としての独立の立場から、自主的な、平等な立場に立って将来の日米問題を処理するという基本観応、基本原則を樹立することが一番大きな目的であったわけであります。従いまして、当然防衛の問題に関しましても、そういう立場で話し合いを進めていたわけであります。もちろん日本の防衛の問題は、自衛隊の整備の問題と関連して、アメリカの駐留軍の撤退の問題を含め、そうして現実に即してわれわれの防御を全うするという立場をわれわれは堅持しておるわけであります。従いまして、安保条約の将来の問題は、これが改訂されて消えてなくなるということが国民の願望であることは言うを待たないと思います。その現実、同国の国民の感情も頭に入れて、円滑に運用し、十分防衛の体制を自主独立の立場から達成するという趣旨において、両国間における委員会を作って、そうして安保条約の運営を、国民の感情に合い、また国連との関係等を調整するように現実に即した解決をするというのが趣旨でありますが、私はこれによって、さらに今申しました根本の立場というものを明瞭にすることができた、こういうふうに考えております。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 核実験の禁止につきまして、藤山外務大臣がその後国連に提案をしておられるのでありますが、この提案の仕方について、共同声明との関連でアメリカ首脳において不快感を持っておるという報道が伝えられておるのであります。それは今も述べましたように、実行性ある軍縮協定を締結することについて、日米両国が緊密に協議してこの実現を期するという申し合せにもかかわらず、提案に対してとった措置が、その共同声明に盛られている内容と若干迷いはしないかということであるようであります。言うまでもなく、アメリカ、イギリス等における考え方というものは、現在世界平和が力関係によって維持されておるというのは、核爆発においてその均衡が保たれておるのだ、こういう観点に立っておる以上、この実験さらにそのものの禁止についての提案の仕方というものが、今の共同声明に盛られている将来の軍縮を共同で考えていこうじゃないかということと背馳する、こういうことであるようであります。その点について総理大臣としてどうお考えでございましょうか。この機会に中外に宣明せられたらと考えます。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 核実験禁止の問題は、私ども日本国民の一致した国民的強い要望であるのと、さらにわれわれはこの原子力というものが平和利用にのみ用いらるべきものであって、これが破壊に用いられてはならぬという人道的主張と、この二つの立場から強く核実験の禁止の問題について、われわれは従来も努力をして参っておるわけであります。従いましてこの考え方というものは日本国民の強い一つの主張であり、政府がこれを代表してやるということは、いかなる場合におきましても終始一貫しておることであります。アメリカとの私のこの話におきましても、その問題にはやはり触れてきたのでありしまして、ただ世界のほんとうの平和を作り上げるために、現在の力関係の対立によって、バランスによって平和が保てるというこの状態を、さらに将来軍縮その他の何によって改善して、いかなければならない、結局は思い切った軍縮協定を成立せしめて、そして世界に、平和をもたらさなければならないという考え方につきまして、私どもの日米の話し合いにおいては根本に合致しておるわけであります。しこうして核兵器の問題と一般軍縮の問題をいかに関連さすかという問題につきましては、理論的にアメリカ及び西欧の考え方はこれを不可分のものとして関連せしめており、またソ連の提案は全然これを分けるという立場においてやっておる。私どもは先ほど申したように、核実験の禁止というものを強く従来もまた将来も主張していくという立場から、これを禁止するということを実現するとともに、さらに軍縮の問題も一そう促進するというこの原則をとったわけであります。もちろん両陣営の巨頭の意見が全然対立し、平行線的な主張でありますから、これをわが国において歩み寄らしてそうして実現する。それは核実験をやめて、同時に軍縮の問題もこれを促進するという問題――見ようによりましては関連せしめておると言えますし、また見ようによってはとにかくやめるということを強く出しておるという点において独立であるという見方もあるでしょうが、いずれにしてもわれわれとしては、相反しておるところの二つの主張を現実に歩み寄らせるという提案、それによって目的を達するというのが日本の提案でございます。その趣旨において、あるいは西欧側におきましても、またソ連側においても、その主張通りをわれわれは提案しておらないのでありますから、これに対して反対の立場をとるでしょうけれども、しかし両方がとにかくある程度歩み寄らない限りにおいては、実視ができないという立場をとっておるわけであります。アメリカに対しましても、われわれの趣旨を藤山外務大臣は二回にわたって国連総会に行っておりまして、アメリカ及びソ連に対しましても日本の趣旨を十分に説明し、了解せしむる努力をいたしまして、その点においては両陣営の人々も相当に日本の趣旨というものに対しては理解を深めたことである、その点についての誤解とか、あるいはその点から生ずる日米間の特別な不快の問題というものは、私は一掃することができた、かように考えるわけであります。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 この問題は非常に重要でありまして、一般兵器と核兵器というものを分けて考えるか、あるいは同一のも一のと考えるか、たとえばICBMの問題などは、すべて核爆発に究極にはつながっておるわけでありますから、非常にむずかしい問題でありますが、総理大臣は十一時からここにいらっしゃらないそうで、ほかにたくさん伺いたいこともあるので、先を急ぐことにいたします。  次に、わが国が国連の非常任理事国になりましたことは、非常に喜ばしいことでありますが、われわれが直面します諸種の問題、たとえば公海漁業における漁業の制限という問題は、非常に大きな問題でありますし、また大陸だなの主張等にいかに対処するかというような問題は、現実問題として非常な大きい問題と考えるのであります。そこで国連の非常任理事国になりましたことでもありますし、世界各国がわが国の主張に対して大いに耳を傾けようとする際でありますから、核実験禁止もさることながら、こうした具体的な問題について、今後大いに国連において議題にしていただくということを私ども望みたいと思います。この点について総理大臣のお考えを承わりたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 最近いろいろな国々におきまして、公海の自由を一方的に制限するがごとき宣言や、あるいは動きというものが見られるのであります。特に漁業及び航海に関して非常な利害関係の大きな日本といたしましては、理論的のみならず、実際問題としてもこの問題はきわめて重要なものである。従いまして具体的にこれらの問題に関しては、それぞれの国々に対して抗議もしくは交渉等によってこれを解決する努力をしていきますとともに、これが一つ国際的の大きな問題であり、将来もやはり真の世界平和を作り上げる上からいきましても重要な意議を持っておるのでありまして、これを国連において解決するようなことにつきましても、私どもとしては真剣に検討いたしまして、適当な方途をとってこれらの公海の自由というものの原則を、あくまでも確立していくように努力をいたしたい、かように考えるのであります。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 最近の大きな時の問題といたしまして、ソ連における第二号の人工衛星の打ち上げと、ジューコフ・ソ連元帥の解任の問題があるのであります。今後の運転の実際を見てみなければ、にわかに結論を出すことはできませんけれども、この第二の人工衛星というものは非常なことでありまして、犬が乗っておる、そしてなおロケットがさらに発射される場合があるようでありまして、その犬がそれに乗ってまた地上に帰ってくる。すなわちこのコントロールすることができるようになった人工衛星が打ち出されたということは、これは非常な大へんな革命でありまして、これを兵器的な観点から見ますならば、ICBMが完全ならば正確に目標に到達する、こういうことになる可能性を持っておると聞いておるのであります。でありますから、そういう観点に立ちますと、ソ連において精鋭の赤軍三百万人を持つということは、むしろ意味がなくなってくる。その三百万の精鋭の赤軍がいつ、ほこをさかしまにしてくるかわからないという状態でこれを温存するよりも、そこに勢力を持った者は解任してしまい、満場一致で、ジューコフはいろいろ功労があっただろうけれども、解任する、そういう挙にも出てくるのじゃないか。私はこのジューコフの解任というものと人工衛星の成功というもの、これをやはり関連して見たいと思うのであります。そういうようになって参りますと、地上軍の重要性というものは著しく変貌してくる。いわゆる兵器のあり方、戦争に対する作戦用兵の考え方というものが基本的に変ってくると思うのであります。わが国においても、この防衛に関しては国力に応じて防衛力を漸増するという方針をとっておるのでありますが、この新しい科学の画期的な発明に関して何らかの新構想をやはり持つ必要があるのじゃないかというように思うのであります。もう資本主義とか共産主義とかいうことを越えて、自然科学というものは非常に発達をしておる。フルシチョフがニューヨーク・タイムスのレストンという記者に語ったという言葉を紹介しておる記事がきょうの新聞などにも出ておりますが、究極兵器ができて、今度の世界戦争は人類が破滅するかもしれないが、共産主義が最後に残るというようなことを言っておるそうであります。これはまたずいぶんおかしな話で、そういうことをしてまでも、共産主義を残すというような、そうした人間関係の存在というものは、今日の人間性からすれば、まことに首肯することのできない議論だと思うのであります。しかし、ここに日米共同声明の第九項におきまして、将来実行性のある軍縮について国際協定締結の必要性を強調しておりますから、やはりこうした非常な科学の進歩で、防衛力というものについて考える時期がきている。このときに政府としてもできるだけ早期に各種の情報を集めまして、核実験のみならず、ICBMというものを含めた大きな軍縮に関するところの考え方をきめる必要がありはしないかというふうに思うのであります。この人工衛星第二号の出現、こういう問題と関連いたしまして、今私の申し上げましたようなことについて総理大臣のお考えを承わりたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 人工衛星の実験の問題やICBMの問題等、最近における科学の発達というものは非常に目ざましいものがある。これが将来の世界の防衛、あるいは政治、経済、文化のあらゆる面に非常な革命的な一つの影響を及ぼすだろうという見方につきましては、私、最近のすばらしい、将来どういうふうに科学が発達するかということをほとんど予測のできないような、また非常なスピードでもってそういう科学が進歩しておるということが、人間の社会に非常に大きな影響を持つことは当然であります。ただ現実の問題として、私はこういうものができ上ったから、すぐ日本の防衛、自衛体制というものを、根本的に今までのものを捨てて新たなものを考えるというふうなことは、現実の問題としてなかなかそうはいかない。やはりまだそういうものがありながら、ソ連も御承知の通り、今おあげになりましたような普通兵器によるところの軍隊というものを、やはり非常に巨大なものを持っておる。世界各国またそういう状態であります。従いましてわれわれはやはり日本の国情及び国力に応じて防衛力を増強するという根本を、私は今すぐ変えるという事態ではないと思います。しかしながら科学のこれらの発達に対して常に十分な研究と、またその科学の研究の開発というようなことに対してわれわれが大いに努力をしていく、研究を進めていくという必要は、もちろん大いにある、かように考えておるわけであります。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 次に国会に関する総理大臣の考え方を伺いたいと思います。わが自民党が結成されましてから、すでに二回にわたって予算を編成しております。その間において立党当時に言う諸種の公約は実現しつつあるのでありますが、外にも内にもいろいろ治績の見るべきものがあるのでありますが、国会運営上二大政党というものが出現した、このことがこうした政策実現をかなりスピード・アップしておるように思うのであります。しかし実際私どもこの二大政党対立下にあって、政党の運営される実情の中に身を置いております者の感ずることは、イギリスなどのような二大政党運営のベテランの国に対しまして、まだ相当の距離があるというような感じがいたすのであります。根本的には世界観において自民党、社会党間に相当の距離がある、そうして資本主義か社会主義かといったような非常な観念論がいまだに戦わされておるということが私は残念なことのように思っておるのであります。資本主義というものももちろん流動し発展し進歩するものでありますし、社会主義もまた公式的な観念論から現実論に移行しているのが世界の大勢だと思うのであります。ことに自然科学の方では、今お話がありましたような人工衛星も飛ぶというような非常な革命が行われている。ところが自然科学はそういうように発達しても、社会科学の方はまだある一部には半世紀前にマルクスが言ったというような資本主義の公式的な否定論というものが牢固として抜けない。ことに日本ではイズムというものに対して、何々主義というものに対して、非常な抜くべからざる愛着を持ち、現実を離れてそのイズムが議論される、こういうようなことがわれわれは非常に目につくのです。これはわれわれ自身も反省しなければならぬことだと思いますが、またこれは国会全体としてこの問題を考える必要があるのではないか、これはわれわれが好むと好まざるとにかかわらず、世界的な一つの流れとして、そうした要求があるのではないかと思うのであります。こういう点につきまして総理大臣から伺いたいと思いますが、時間がありませんからまとめて、なおそういう中で、外交関係についてもそうした世界観というものが一つの幅を狭めていくということによって、超党派外交というものも可能になると思うのでありますが、こういう二点についてお考えをお述べ願いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私も議会政治の達成のために二大政党でやるべきだという考え方を、従来もそういう信念のもとに二大政党が健全に発展する、発達していくことを心から望んでおるものでありますが、言うまでもなくこれは二大政党、特に保守党たるわれわれと、社会主義政党たる社会党とのこの二大政党が、日本においても国会の現状として対立しておる。しかし現実の政治の運用から申しますと、私は必ずしもわれわれ保守党が資本主義政党であり、社会党が社会主義政党であるという立場から、ただいわゆる主義、公式的な理論の対立だけじゃなしに、やはりわれわれのお互いの主張というものに対して、謙虚な形でわれわれが反省しながらそうして現実の政治を運営していくというのが、二大政党の真のあり方であるべきだと思います。その意味において資本主義を基調としておる保守党も、必ずしもその資本主義というものはアダム・スミスが述べたような古い意味の資本主義でもありませんし、ずっと世界の進歩とともに内容も変ってきておることは言うまでもない。と同時に社会主義というものも一つのただ公式的な理論としての社会主義じゃなしに、現実の責任ある政党として、現実に日本の運命をにのうて立つ一つの気魄を持ち、それだけの上に立ったところの社会党としての現実の政策問題になってくれば、私は両方の主張というものの間には、あるいは基礎の考え方の上においては違っておるかもしらぬが、現実においては、十分な話し合いなり、あるいは論議を尽すことによって、両方の主張というものに協力ができると思う。これがあってこそ、初めて議会政治というものができ上るものだと私はかように考えております。  外交の問題について、いわゆる超党派の外交というような議論がございます。もちろん私は、すべての問題が超党派的に、常に一致して解決されるとは思いませんけれども、しかし外交の問題は、国の進んで行く道として最も重要な問題でありますから、もちろん立場が違い、主張が迷いましても、協力できる問題も多々あると思うのです。現に、過般インドネシアの賠償問題について鈴木委員長と会いまして、いろいろその問題について、社会党の考えも聞きました。私はそういうような機会を今後も持っていって、そうして協力できる事柄については十分な協力をしていく、主張の違うことについては、この国会のあらゆる機会を通じて国民の前にその主張の違うゆえんを、またわれわれが主張する根拠というものを十分に明らかにして、国民の批判に待つということが、民主政治の完成の上から必要である、かように考えております。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 大へんけっこうでございますが、どうも政党を動かすものにプレッシャー・グループというものがあると思うのであります。そこで今のお話では若干不十分と思うのは、このプレッシャー・グループというものに対するところの問題でありまして、私ども、社会党の諸君などとともにイギリスへ参りましたときに、先方で聞きましたのですが、イギリスの政党では、労働組合の決議というものは、その選ばれておる議員を拘束しない。これは非常に明らかなのです。なお保守党でも、地方支部のいわゆるコーカスでやったところの決議というものは、選ばれた議員の地位を拘束しない。すなわち国会に選ばれたことによって、そのことで全権を代表する、こういう考え方が基調になっておるのです。これができないと、なかなか、結局プレッシャー・グループの言う通りに、票を目当てに動くようになってしまう。総理大臣は、当分選挙をやらぬとおっしゃっておるのでございますから、やらぬならやらない間に、何かもう少しそういう良識を育てる考えはないか。これは急に伺っても名案はないでありましょうが、御研究を願いたい。  なお総理大臣は、今回の演説で、党風の刷新という言葉を使っておるのであります。自民党の党風というものをどういうふうにもっていらっしゃるのか、これを一つお考えをはっきり言っていただきたい。  なおあっせん収賄罪について、世上いろいろと議がありまして、もちろん人権に慎重でなければならぬのでありますが、このあっせん収賄罪について、総理がほんとうにやるつもりなのかどうかということを疑っておる議論もあるので、これらの点について一つお考えをお述べ願いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 わが自由民主党は、御承知のように現在国民の大多数の支持のもとに、衆議院及び参議院における過半数を占めて政治を行なっております。その上に、われわれは政局を担当しております。私どもはこの立場を考えてみると、ほんとうに民主政治としての国民の信頼を得るかいないかということは、わが党のあり方というものに、私は非常に重大な関係を持っておるということを思って、非常な責任を、その総裁として感じておるわけであります。しかしてこの国民の信頼をいかにしてわれわれがつなぎとめるかという意味におきましては、第一は言うまでもなく政治の清潔さということに対する信頼であります。私は特にこの点は、われわれ政局を担当しておる、そうして圧倒的多数という大きな勢力を持っておるということである場合におきましては、私は清潔さをわれわれが持つということについて特に重大に考えなければならぬということは、それを妨げる誘惑がわれわれに対して一番大きいということを思うときに、私はわれわれ自身がまず自戒自粛して、その点を明確ならしめるということが根本であると思うのであります。私どもが党の党紀委員会を中心として党紀に関するこの点においての具体的の問題を決定し、天下に公表しておりますことも、その趣旨の表われでございます。私はさらにこの立場を今後といえども貫いて、そうして国民に十分な信頼感を持ってもらうようにしなければならぬと思っております。その点に関連して、あっせん収賄罪の点であります。これは法制的に見まして法学者の間におきましても非常に議論がある。法制技術的に困難な問題を含んでおることは、私もよく承知しております。しかしながら、現在のような党風の刷新を心がけ、またわが党みずからが自戒、自粛して天下に信頼を得るためには、私は法制的の困難を克復して、必ず次の国会にこれを提案して成立せしめるという意図のもとに、あらゆる研究を進めております。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 次に経済の問題に入って参りますが、総理大臣が大体十一時にというお話ですから、あと労働、文教があり、それからことに原子力平和利用、コールダーホール型を中心にした原子力発電の開発計画というものについて、私は非常に問題を持っておるのであります。これは総理大臣がおいでにならぬときにいたしますが、あとでよくお聞き取りを願っておきたいと思います。  最後に一問だけ経済につきまして申し上げますが、わが国経済政策の眼目は、経済の拡大を無理に急ぐということより、たとい速度はおそくても、安定と均衡を確保して、永続した拡大均衡をはかるということが必要な時代に入ってきておるのじゃないかと思うのであります。今までは多少無理しても経済成長、拡大に向ってひたむきに進んできたのでありますが、一応国民生活も戦前以上になりまして、今日の焦点は、むしろ中小企業とか農村、漁民層、そうしたいわゆる広般な中間層を育てる。そうして中間層といいます。非常に堅実な思想を持ち、ある程度の恒産を持ち、良識を持った国民層を広般に培養する。これが私は日本の国力の基盤をなすものでありまして、こういう観点が非常に重要になってきているのじゃないかと思っておるのであります。この意味におきまして、この国会は中小企業国会とも言われておるので、この国会の目的というものは、とかく今までこうやくばりで破綻を張り合せてきた中小企業対策について、政府は思い切った企図に出るのだ、こういうことを中外に示す国会であると言っても私はいいのじゃないかと思います。この意味で、この次の問題として口火を切っておきまするが、技術の合理化、あるいは設備の近代化、経済の能率化ということのために、いわゆる中小企業の体質を改善するための思い切った措置を講ずるということを、今総理が企図しておられる中小企業団体の組織に関する法律の通過に際して、今後の措置もお考えになっておいていただきたいと思うのであります。今まで中小企業に対していろいろな法律がありますけれども、各種各様で、私どもにもにわかに名前が出ないような状況であるので、中小企業関係の各種の法案をまとめて、団体法は別でよろしいのですが、他の各種の法案をまとめて中小企業振興法というようなものを作られてはどうかと考えるわけであります。この点につきましてお考えがあれば伺っておきたいと思います。まず第一点は、この国会は中小企業団体法を必ず通すという御決意であると聞いておるが、その通りであるか。  第二点は、今の中小企業振興法というようなものを作られるかどうか。  さらに中小企業の問題は、ほとんど金融問題である。ところが中小企業のための三行、国民金融公庫、中小企業金融公庫、あるいは商工中金、この三つ合せて二千億足らずであります。預金残高が千九百六、七十億であると思うのであります。ところが一般の金融を見ますと、五兆四千億ばかりの預金残高があるのであります。このうち中小企業にどれくらいいっているかというと、大体二兆四、五千億じゃなかろうか。中小企業に対して二兆四、五千億の金融が行われているのに、専門の金融機関はわずかに二千億足らずである。ですから大部分は市中銀行が金融事業のささえをなしているわけでありますから、この金融を円滑にするために、それに対して保証を与える措置が非常に必要であると思う。そのために政府の企図されている中小企業金融事業団、これに対して二百億の財政資金をつけるという御構想があるように聞いておりますが、この点も最後に御言明を願っておきたいと思うのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 わが国の中小企業はきわめて複雑な、また多種多様の形態を持っておりますが、しかしこれがわが国の経済産業構成の上からきわめて重要なものである。また社会的にも今小坂君の質問されたよう、日本の人口、また広く社会状況から、これが健全な育成をするということはきわめて大事なことであります。私はこれを単に困っているから救済するという意味に考えるべきではなくして、やはりその特徴を生かし、日本の産業、また社会構造上非常に重要な地位にある中小企業者というものが、将来その特徴を発揮して、経済的に産業的に十分その機能を果し得るために、今小坂君の言葉をかりて言えば体質を変えるという点に大いに力を入れるべきものである、かように考えております。そうしてその第一の出発は、やはりこれを組織化するという、その組織を中心にして体質を改善するということが一番望ましいと考えておりまして、この意味において中小企業団体法をぜひこの国会で成立をさしたいというのが、私の念願であります。  さらに金融の問題に対しましても、御指摘のように特殊の機関が設けられておりますけれども、中小企業に対する全体の金融量から言えば、普通の市中銀行の行なっているものが非常に多いのであります。しかしてこれらのものが金融をする場合において、普通銀行の考えているように担保その他のことを考えてみますと、大事業のごとく、中小企業におきましては、銀行の望むような担保力というものが欠けている。これをどうして、補うかということを考えることが、やはり金融問題を解決する非常な要点だと思います。いわゆる信用保証制度というものが従来ありますが、これをもう少し強化拡大する必要があるのではないかということが私どもの考えでございまして、それの構想に基いてどれだけの規模でどういうふうにするかということはなお検討を加えていきたいと思いますが、この信用保証制度の考え方を拡大して、そうして中小企業に適切な担保力を与えて金融を円滑ならしめる、こういうふうに考えております。  それから今も中小企業に対していろいろな立法があることはお話の通りであります。これをまとめて中小企業振興法というような法律にしたらどうかというお考えであります。なるべく中小企業というものを一つにまとめていろいろな方策を網羅するという総合的の政策を盛った一つの振興法というようなものができることは望ましいと思います。もっともこれにつきましては、法制上のいろいろななにもありましょうから、研究を要すると思いますが、できるだけ中小企業に対する政策は総合的に行うという意味において、そういう振興法というものができれば望ましいと考えております。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 それでは社会保障について堀木厚生大臣に伺っておきたいと思いますが、社会保障の二大支柱は、言うまでもなく医療保険と国民年金であると思うのです。医療につきましてわが党は昭和三十五年を目途として国民皆保険ということを申しておりますし、今年度にも厚生大臣は無医村を解消する、結核は十年を目途としてこれを撲滅するのだということを言っておられるようで、非常にけっこうだと想うのでありますが、こういう対象が大きくなればなるほど、健康保険の問題は困難性あるいは複雑性を加えるのではないかと思う。現在までのところ、毎年一点単価の問題は問題になっておるのであります。点数と単価は常に問題になっておる。ことに最近においては特にその傾向が顕著であるように私どもの耳に入るのです。そこでどうも医療ということの社会性からいいますと、できるだけ安い医療ということを考えざるを得ません。それから医師も職業であるという観点からいいますれば、やはり――ズナブルといいますか、潤沢なといいますか、そういう報酬を医師会が要求するのはこれまた無理からぬことだと思うのです。そうするとそういう二律背反する要求の間に入って厚生大臣は非常な名案を二つお出しになりましたけれども、どうも最近私ども心配申し上げておる――このごろの言葉で言うと厚生大臣のよろめきということを若干感ずるのであります。そういうことにならないように、こういう状況については、もう少し抜本塞源的な方法を考える必要があるのではないかというふうに思うのであります。諸外国ではこうした困難な実に複雑な制度をとっておる国はむしろ少いようであります。もっとすっきりしたそういう方針がとれぬものかどうか伺いたい。

堀木鎌三自由民主党厚生大臣

○堀木国務大臣 今お話のように、一方において社会保障制度を促進する、しかもその社会保障制度の中核であります医療保障を推進しようとすれば、これは一つの統制的なねらいでもって推進して参るわけでございます。しかるに実際に医療を担当いたしますお医者さんは、自由に、研究を絶えずしていなければ医学は進歩いたさない。最近の医学の進歩も、確かにお医者に対する自由と研究が与えられた結果である、こう思うのであります。従いまして現在の単価が御承知の通りに二十六年にきまっておる。それ以後諸般の情勢を考えますと、何らかの解決をしなければならないのですが、と同時に今おっしゃいましたように、何らかもう少し複雑でない、常に問題を提起するような方式でなしに考えるというふうな方式がないかというお話でございますが、この二つの、一方においては統制的な方式と、一方において自由を最大限度に持たなければ進歩しない医学、あるいは医術の向上とを結び合せるためには、何らかの方式が必要であろう。今問題になっておりますのは、差額徴収制度というものでこれらの調和をはかったらどうであろう、あるいは療養費払い方式について考えを新たにして、そうしてこれをその制度に新しく導入したらどうであろうかというふうな問題がございます。これらの二つの方式につきましては、いかにも支払い方式のように見られますと同時に、根本的に現在の制度に相当の大きな変革を及ぼすことでございますので、慎重に今研究をさしておりますような次第でございます。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 今言われなければならない時期でもないのでありますから、どうか慎重に御研究を願いたいと思うのでありますが、どうも現在の方法では先が見えておると私はかたく信ずるのであります。どうか一つ抜本塞源的ないい案をお考え願いたいと思います。  次に国民年金でありますが、老齢者、未亡人あるいは不具廃疾者に対して、働く条件が悪くて不幸にして経済の谷間に落ちたという人たちに対しては、特段の構想がなければならぬと思うのであります。ことに医療保険の方は非常に進んでおりますが、老齢者に対する保障制度はおくれておるといわざるを得ないと思うのであります。党でもこの国民年金ということを取り上げておりますし、厚生大臣はこれはいつごろからやってみようというようなお考えになられておるのか、何分にも原資を大きく要するということで、これまたよろめいておられるのじゃないかと思うのでありますが、そういう点について一つ何かお考えがございましたら、伺いたいと思います。

堀木鎌三自由民主党厚生大臣

○堀木国務大臣 今社会保障の二大支柱として国民皆保険と国民年金制度、なかんずくそのうちの老齢あるいは廃疾、母子というようなものに対して、どっちかと申しますれば、醵出制の原則をとりましても、なおかつこれらの人には無醵出の考え方を加味して参らなければならないというふうな制度を考えてみますときに、実は現在のところ年金制度として、まずこれらの人に月三千円ないし四千円の生活を保障する所得保障を考えますと、約二千億近い金を考えなければなりません。年金制度が御承知の通りに国民の経済の発展と照応して進示して参ることは申し上げるまでもないことでございます。しがしながらこれらは何と申しましても今申し上げましたように国民経済の成長と一般財政との両方の均衡の上に立っておる問題でありますが、しかし私といたしましては、この問題につきまして三十三年度を準備期間といたしまして、三十四年度からぜひ実現したい。現に社会保障制度審議会に諮問いたしておりますし、厚生省内に国民年金委員会を設けて目下鋭意研究いたしておるような次第で、すでにある程度の基本的な構想に入っておりますので、これに照応いたしまして、事務的にも調査を進めておりますような次第でございます。ともに厚生大臣としてはあまりよろめきませんで、十分に考えて参りたい、何とか実現の方向に向いたい、こういうふうにせっかく努力中でございます。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 三十四年度まで一萬田大蔵大臣が、たぶんやっておられるだろうと思いますけれども、大蔵大臣としてこの年金の原資などについて何か御構想がありましたら伺いたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 すぐそのお答えになりませんが、社会保障がそれほど進んでいないときにいろいろ社会保障に類する給与関係がたくさんできておる。そういうものを私は一ぺんずっと見直して、そして社会保障制度一本というようなものにまとめ、そしてほんとうに社会的条件で生活が非常に苦しいとか、そういうものに対して国家が手を差し伸べる以外にはありません。それはむろん国家財政や国力に相応しなければなりません。同時にそれなら一方で、まあそういうところはがまんして、やらなくてもいいというところがありますれば、それはやめてもらいたい。そういうことがはっきりすれば大蔵大臣も考えるつもりであります。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 次に労働問題に移ります。労働大臣は石田労政というものを非常にみごとに打ち出されておられて敬意を表しますが、現内閣の労働対策は、まず現行法規の法律解釈を明瞭にして、違法な争議行為に対しては特権を与えない、民事、刑事上の違法性を阻却しない、こういうことを明らかにしてこれを実行していかれる半面、諸種の福祉対策を行われて、またわが国の国情にも適するような、企業の実態にも通するような、またILOの国際条約にもかなうような最低賃金制を立法すると言われておるので、なかなかいいと思いますけれども、一般の大企業の労働者と中小企業の労働者との間に存在する賃金較差というものは年々開いていく傾向にあるのであります。これが解決されないままに進んで参りますと、将来非常な大問題になると私は思いますので、この点について少し伺ってみたいと思うのであります。  経済白書にもいっておりますように、日本には非常な近代的な企業と前近代的な企業が並存している。そこでたとえば最近見られますように、年間に二千円のベース・アップということがしきりに言われる。場所によっては四千円のところもありますが、二千円ずつ五年上っていけば二万円になってしまう。ともかく頼むから形だけでも入れてくれといって入った人が、五年たてば一万円上るのであります。自分から中小企業に入っても、なかなか一万円の給与を獲得することば困難である。とすればどうしても社会的な公平を欠く。こういう実情を一方に見ながら、どうしたら賃金較差というものを縮めていくことができるかという点について、御所見を伺いたいと思うのであります。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 御指摘のように大企業と中小企業との賃金格差は年々開きつつあるようでありますが、この基本的な原因は、やはり中小企業の生産性の低さというところにあるのではないかと存じます。従ってこれを根本的に解決いたしますためには、総合的な中小企業対策を樹立推進をいたして参ることが大切だと考えておるわけでございますが、労働行政といたしましては、先ほど御質問にございましたように、下からの支えといたしまして最低賃金制をできるだけすみやかに実施いたしたいと存じております。このことはもとより中小企業の経営者が支払い得る立法的な措置を伴わなければならぬことは言うまでもないのでありますけれども、しかしおよそ企業を興し人を使う者は、その使っている人に対して相応する賃金を保障し、支払わなければならないという経営者の道徳というものを、まず基本的に確立していく必要があるのではないかと存じております。その内容は今中央賃金審議会で御検討を願っておりますし、さらに労働省といたしましても、わが固の経済の実情に沿ったものを作り上げるように努力いたしておるわけであります。  一方大企業の賃金の上昇が激し過ぎるという国議論でありますが、やはり労働賃金は生産性の向上に伴って当然これが上ってこなければ、基本的には労働意欲というものを振起させるわけには参りません。しかし生産性向上に伴いまする利益の分配は、ただ勤労者に対してだけ重点を置かれるべきものではなくて、やはり資本の蓄積その他によりまする経営の強化あるいは製品の値下げその他によります国民への還元、こういう三つの観点からこれを取り扱っていかなければならぬと思いますと同時に、いま一つは大企業におきましても、やはり国民経済的な立場から労使の良識をもって話し合われることを期待いたします。特に大企業と系列関係にありまする中小企業との関係につきましては、大企業はその生産性向上に伴いまする分配を自分の下請の中小企業に対しても行うような思いやりを期待いたしたいと存じている次第でございます。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 労働問題は今おっしゃるように感情に訴えては解決しないと思う。やはり客観的な基盤、ことに生産性の問題と関連して考えていかなければならぬと思いますが、その中で最も重要な賃金の問題でありますが、私は今お話がありましたように、やはり賃金の問題というものも国民経済的な観点から考えなければいかぬというふうに思っております。国民経済の分析の中に賃金のあり方というものを見出していかなければ、やはり労使の間の話し合いの客観的な土俵ができないというように思うのであります。国民経済がある限度でありますのに、賃金だけが飛び離れ、高い賃金に対する考え方だけが、国民全般の考え方から飛び抜けていわゆる進歩的であるということは私はあり得ないことであると思っているのであります。  わが国の雇用の実情を見てみますと、これは大臣には釈迦に説法でありますが、労働人口をかりに四千二百万人にいたしてみますと、その中で自営業者というものが千八十七万人、約一千万人でありまして、これが二五・七%であります。そのほかに特徴的な家族従事者というものがあるのでありますが、これが千三百八十九万人すなわち三二・九%を占めている。いわゆる賃金俸給をもらっている被雇用者が千七百五十一万人で四一・四%であります。  これをアメリカやイギリス等と比べてみますと、アメリカにおいてはサラリーをもらっている人は全体の八二・二%である。イギリスにおいてはもっと多くて全体の九二・六%あるのであります。第一次産業が日本においては圧倒的に多く、サラリーをもらっているいわゆる労働者と一般的にいわれる人たちは比較的少数である。ここに私はわが国の賃金の問題の特殊性があると思っておるのであります。  ことに産業の規模を分析してみますと、三十人未満の人を使っている事業所を事業種別に分けてみますと、九八%は三十人未満の人を使っている事業所なんです。三十人以上の人を使っているものは全体の三%しかない。ただ人間の関係でみますと、三十人米満のものが六〇%、三十人以上の人を使っている事業所で働いている労働者が四〇%、こういうことになっておるのであります。  それをさらに数字にわたりまして恐縮でありますが考えてみますと、第一次産業、第二次産業、第三次産業と比べてみますと、日本では第一次産業が四三・八%であって、アメリカでは一二・二%、イギリスではわずかに四・九%しか第一次産業はないのです。第二次産業は日本が三二・九%、アメリカが三四・七%、イギリスでは四七・四%。第三次産業を見ますと、日本が三三・二%、アメリカでは五二・八%、イギリスでは四七・二%となっておるのであります。  そこでこの労働賃金の取り分というものが問題になります。こうした産業構造の中で賃金は一体どのくらいの割合を占めたら、国民経済の上から見て正常な状態であろうかという問題でありますが、国民所得は言うまでもなく俸給によるところの所得、あるいは個人業種所得あるいは法人所得あるいは個人賃貸料、利子所得というようなもので構成されているのであります。  最近アメリカその他においてはコスト・インフレという議論が出ている。これは日本では今申し上げましたように、アメリカと事情が違います、違いますからアメリカのコスト・インフレ論というものは日本では別の角度から見なければならぬと思いますが、わが国の勤労所得は一九五三年で見ますと、国民所得のうち四九%を勤労所得は占めているわけです。賃金俸給は四九%国民所得の中で占めている。これはアメリカやイギリスと比べてどうかと言うと、アメリカは六八・五%、イギリスが六四・四%、日本は四九だから低いじゃないかと言えるかもしれませんが、先ほど申し上げたようにアメリカではこの対象が多いわけです。アメリカでは全体の八二・二%で六八・五を取っておる。イギリスでは九二・八で六四・四を取っておる。日本は四〇%前後のものが四九%を取っておるということでありますから、決してその比率から言うと少いとは言えない。一体勤労所得というものが国民所得の中の何%を占めるということが日本では可能なのか。現在でもベース・アップをしろ、生産性が上っておるのだから、もっと上げろという議論があります。しかしこれを上げて五〇%をこえた場合に一体どうなるのか。まず中小企業の方で問題が起きてくる。それは今おっしゃったように資本の蓄積というものに食い込んでくる。これが経済全体のアンバランスを生ずるということになるのであります。ことに歴史的に見てみると、日本ではサラリーの占める割合というのは、いわゆる基準年次、昭和九年から十一年までは三八・九%であった。これが昭和二十年で三〇・八%になり、昭和二十三年は四二・二%、昭和二十七年で四六・一%、昭和二十九年で四九%、こういうふうに上ってきておる。いわゆる基準年次に対して賃金俸給の比率は現在では一〇%ふえておる。それだけ勤労所得というものの比重は大きくなってきておるのが実態なんであります。しかも何とかかんとかいいますけれども、保守党というものが相当に勤労者に理解があったということは、これは手前みそになりますけれども、この表からいえば言えると思うのであります。そこでむしろそれを経済学的に見るとどういうことになるか、こういう分析を一つしていただきたいと思うのであります。いろいろ学者の方もおられますから、よくこういう実情を検討して、賃金俸給というものがどのくらいのパーセントを占めれば経済が破綻されないか、この検討をしていただきたいと思います。前に申し上げたように雇用者というものは日本では少数であるわけです。そこで大企業の賃金というものが、ただ力関係でもって何かストライキをやる、そこで仲裁者が出てきてあっせんだか調停だか仲裁だかをやるということになって、中をとってだんだん上っていって、それで先ほど申したように中小企業者との間の較差がだんだん開いていく、こういう状態で参りますと、結局私は産業構造間のアンバランスができると思う。そうしてそのことが結局日本の産業機構というものを成り立たなくしてしまう、こういうふうに思うのであります。この点について一つ労働大臣としてどういうふうにお考えでありますか伺いたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 国民所得や経済力の中で賃金がどの程度の割合を占めれば健全だと言えるかどうかという点については、私も労働省に対しまして今検討を命じておるところでございます。それについての一定のめどをつけていかなければならぬことは、その必要性は十分感じておる次第でございます。ただ日本の賃金構造の中で問題になりますことは、今確かにおっしゃいましたように、基準年度と今日とを比べて賃金の割合が上ったというその上り方そのものよりは、やはりこれは日本は比較的基準年度においては、むしろ賃金というものが不当に低過ぎたのではないか。従って一〇%上ったからそれだけ賃金の方が力強くよけい取り過ぎているんだという、そのパーセントそのままの議論には私はならないのではないかと考えておる次第でございます。ただ問題は大企業の賃金の上昇率と中小企業の上昇率との間に大きなアンバランスが生じておる。特に大企業は主として基幹産業に多い。従ってそれだけが独走いたしますと、そこからいわゆるコスト・インフレというものが起ってくることになりかねないのじゃないかと心配をいたすわけでございまして、結局そこには大企業の労使関係が、先ほど申しましたように国民経済的な立場に立ちまして、生産性向上に伴いまする利益の分配は、労使が分ち合うとともに国民にもこれを分ける、ひいては系列産業にも均霑せしめるというような考え方でやっていかなければならないと思っているわけでございます。それからもう一つは、中小企業の場合におきましては最低賃金制によって下からの支えをいたしますとともに、それによって中小企業の生産性の向上ということについて、経営者がより以上積極的な意欲を燃やしてもらう。むしろ最低賃金制を実施し賃金水準を上げることによって、労働の生産性を高め、経済の安定向上を期待するという方向に経営者自身が心がまえを変えてもらいたいということも、あわせて期待をいたしたいと存じております。それから日本の賃金問題は、現在相当経済も安定いたしましたし一般的に賃金水準も向上しているにかかわりませず、依然として画一的な生活給的な賃金制度が実施せられております。私は今労働省の所要の機関に命じまして労働の量及び質に伴う賃金較差のあり方というものについての統計を作らせるようにいたさせているわけでございますが、これは主として日本の例を歴史的に検討いたすということよりは、私は国際的な視野に立って広く資料を集めて、労働の質及び量に伴う賃金のあり方というものについての正しい結論を生み出してみたいと思っているわけであります。と申しますのは、日本の場合は常に労働力過剰に悩まされておりましたために、不親則的にあるいは恒常的に労働力のダンピングが行われておりましたから、労働の質及び量に伴います正しい賃金較差のあり方が過去においてもあまり正確に見られなかったのじゃないかと思います。従ってそういう状態でない国の例を広く調べて、そういう賃金の正しいあり方というものも作り上げたいと考えている次第でございます。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 基準年次に比べて賃金の取り分が一〇%上ったということは取り過ぎているということを、私は決して言っているのじゃない。ただ日本の全体の国民所得から見て、どこまでが一体妥当かということを研究なさる必要があるのじゃないか。と申します意味は、アメリカが六四%取っているといっても結局それは八二%の全体の国民層を占めるものが六四を取っているのですから、日本で四〇%のものが四九取ったらそれ以上どこまで行けるのか。もちろん働く者の賃金を上げるということは私は賛成なんですが、私は全体の客観的な可能なる限界があるということを言っている。こういう意味で特に労働大臣として一つ統計を調べていただきたい。闘争に対する反対闘争、あるいは人は闘争のやり過ぎだという。片っ方の人は弾圧だという。こういうやり方でとめどなく産業平和を得んとして得られざる状態を続けていったのでは、これは日本の根本的な問題だと思いままから、どうか客観的な経済的な指標というものを出して、労使がそれぞれそれをほんとうに信じて共通の土俵を見て、その上にほんとうの産業平和を作るというような気がまえを一つ作り出して、石田労政の花を添えていただきたい。私は大いに応援するつもりで言っているんです。大いにお願いしたいと思う。  そこで労働者の団体行動権というものがあります。これについて少しあなたの御見解を伺いたいと思うのでありますが、御承知のように憲法二十八条に労働者は団結権、団体交渉権また団体行動をする権利を保障されているわけです。そこで憲法二十八条にあるのだから労働者であれば、労働争議であるならば何をやってもいいんだという天賦人権説があるわけです。ところが御承知のように十二条、十三条には公共の福祉というものの制限があって、それを越える団体行動権というものは許されないのだということを、私どもスト規制法などで説明してきているのであります。そこで政府として最近公企体に対するところの行動権の限界などを示されておりますので、これについて一般の団体行動権というものについて、何かお考えを示されるお考えがあるのじゃないかとも思う。なければないでいい、あればお示しを願いたい。ことにピケなどというものは、私ども外国の事例を少し見て回ったのですが、非常に平和説得の範囲というものはわれわれの考える以上に平和的であるべきなんですね。日本の場合では、ピケ・ラインはラインではありますが、そうでなくしてピケ・マス、バリケート、はち巻的、肉弾的ピケというものが、あたかも当然の団体行動権のごとくに考えられている向きが一部にある。こういうことに対してどういうふうにお考えになるか、見解を示されたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 憲法の解釈は先日も本会議でお答えを申し上げましたように、一条だけを抜き取って、それだけで主張したり解釈したりすべきものではなくて、やはり全条章にわたっての関連性の上に立って解釈すべきものだと考えております。従って、憲法二十八条の規定も、やはり公共の利益と、あるいは国民個人々々の基本的人権というものとの調和を求めていくことが必要なのであって、それだけを独立して他の条項に優先するという考えは誤まりであると思っておる次第でございます。  それから、将来あるいは近い将来に他の労働法規その他についての解釈の統一を行うかというような御質問でございますが、今鋭意関係各省と検討を加えつつあるのでありまして、やはり公共企業体の団体行動権だけではなくして一般的な労働関係法規の解釈の統一を行いたいと思います。しかし、これは、あくまで労働組合の行動を制限し制約するというところに重点があるのではなくて、やはり経営者側の不当労働行為ということについての法的見解の明確化をはかって参りまして、労使の間の共通の土俵の清掃作業をやろう、こう考えておる次第でございます。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 次に生産性の問題であります。生産性向上本部というものがありますが、これはやはり役所も関係はしておる。ところが、非常に微々たると言っちゃ語弊があるかもしれませんが、あんまり権威のないもののように言われておるのです。そこで、非常に大切な運動でありますし、政府としてもっと大きく旗を振ったらいいという意味で、政府がもっと本腰を入れてやるという意味で、通産省も関係がありましょうし、労働省もとより関係があり、総理府とかあるいは企画庁あたりに一部局を設けることはどうかと思っておりますが、その点に対して、簡単でけっこうです。

前尾繁三郎自由民主党通商産業大臣

○前尾国務大臣 御承知のように、生産性本部の活動は、今まで海外の視察というようなことが中心になっておりまして、さらにまた予算上の金額も少いというようなことで、実はお話のようにあまり世間に知られておりません。しかし、今までは準備時代で、今後われわれとしましては、余剰辰産物の円資金での輸入というようなことも考えて、大いにこの点は強調していきたいというふうに考えておるわけであります。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 次に原子力について伺いたい。政府は原子力の平和利用について非常に熱心でありまして、積極的であるのはけっこうだと思っておりますが、しかし、原子力の平和利用といっても、もとはやはり原子力でありますから、この運営の過程においてはフィッション・プロダクトもできる。これは御承知のように死の灰と同じ成分であるわけでありますで。ありますから、この原子力の平和利用、開発を進めるについて、企業的な採算ということは、これは企業家にまかせればいいという考え方でいいと思いますが、安全性、セキュリティの関係については政府の責任であると思うのであります。こういう意味において、原子力委員会においてはコールダーホール型の十五万キロというものを買うというふうに大体の目標をきめられて、さらに先般コールダーホール型を中心とした原子力発電の長期開発計画というものを立てられておるように伺っておりますが、これはほんとうにそうでございますか。

藤岡由夫原子力委員

○藤岡説明員 先ごろ長期計画の草案を作りまして、目下各方面の意見を聞いております。その各方面の意見によりまして、十分に検討を加えました上で、ほんとうの計画を立てたいと思っています。この場合に、先ごろ発表いたしました計画におきましては、イギリスにおいて開発されております天然ウランを使います型を一応の試算の基礎に採用しておりますと申しますのは、これが現在すでに実用段階になっております唯一の型と考えられますのと、昨年の訪英調査団の報告によりまして、日本に最も適するものの一つであるという報告を得ておりますので、これを現在、将来計画の一つの基礎として考えております。しかし、何分原子力に関します研究は国際的におきまして各国とも日進月歩の状態でございますので、近き将来におきましてまた別の型が出てくる、非常にすぐれたものが出てくるということも当然考えられるわけでございます。しかし、これはまだいつごろどういうふうな型がよくなるということについてのはっきりした目標が立てられる状態になっておりませんので、これは計算にも入っておりませんけれども、将来は、たとえば一応の目標として昭和四十五年度に三百万キロの発電をするということになっておりますが、これが全部天然ウラン型でできるというふうには考えておりません。おそらく相当の部分がまたほかの型で置きかえられる、あるいは追加されることになると思っております。現在のところ、一応の試算といたしましてああいう計画になっておりますけれども、将来は十分変更されることがあるかと予期しております。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 私、この夏アメリカとカナダへ参りましたが、アメリカでもらった資料に、セオリティカル・ポシビリティーズ・アンド・コンセクェンス・オブ・メージャー・アクシデンツ・イン・ラージ・ニュークリア・パワー・プランツというのがあるのであります。これはことしの五月の出版でございますが、これに五百メガ、すなわち五十万キロの熱出力の場合に、もし大きな事故があった場合にどのくらいの規模の災害があるかというのが出ておりました。これはもちろんお読みでございましょうが、安全性の問題が非常に重要だという感じがいたしております。ところで、このコールダーホール型というのは黒鉛を積み重ねてある。それで、十五万キロというと、大体黒鉛のブロックが十数万個積み重ねられるというふうに聞いておりますが、十数万個積み重なった黒鉛のブロックが、もし地震等何かの支障がありましたときには、これは非常な問題になると思います。イギリスは全然地震がございませんから、ああいう形の黒鉛の積み重ねでいいと思いますが、日本の場合は非常に慎重を要する問題じゃなかろうかと思う。黒鉛ももちろんそうでございますし、それからダクトの問題があります。あるいはプレッシャー・ヴェセルがいたむという問題がある。ゆれがくる場合、継ぎ目がやはりみなひずむわけでございます。そういう場合にはフィッション・プロダクトが出て、それが風に乗ってくるというようなことになりますと、今申し上げた大規模災害の場合のアメリカの報告によりますと、大体百六十キロはその災害の中に入るということでありますので、かりに東海村に例をとってみますと、東海村と東京は百キロでございますから、非常な問題になると思う。私はこの点非常に心配しておるのでありますが、十月十日の朝日新聞に、コールダーホール型は地震に弱いんだ、――これは常識的にそうだと思います。関東大震災の半分で倒壊する、こういう記事が出ております。こういう点についてはいかがなものでございましょうか。私ども原子力開発は非常に早めねばならぬと思いますが、もしかのことがあった場合、現在の政治家として、コールダーホール型を入れた責任、後世に対する責任というものは、われわれ十分考えておかねばならぬと思いますので、こういう点に対して一つ、藤岡先生の技術的な見解もあろうかと思いますから、伺いたいと思います。

藤岡由夫原子力委員

○藤岡説明員 ただいまの御意見の通り、事故に対します心配ということは十分に注意しなければならないものだと考えます。そして、御意見の通り、コールダーホール型は特に石墨のれんがをたくさん積んでおりますので、地震に対して弱いのではないかということは、昨年の報告書にも指摘されておる点でございます。そこで、これに関しまして、地震対策小委員会と申しますか、各方面の専門家にお隻まりを願いまして、どういうふうに対策を考えたらいいかということを検討して参りました。大学でありますとか研究所等にお願いしまして、いろいろの実験もしておるのでございますが、その一つといたしまして、模型的に一メートル立方くらいに黒鉛のれんがを積みまして、そしてこれを人工的に振ってみる、そういう研究をいたしております。その場合に、これをぎっしりと締めておりますればもちろん動きませんけれども、その間にある程度のすき間を持たし、そしてこれをゆすりましたならば、あるところでくずれるのは当然なのであります。それが関東震災の半分くらいのゆれ方でくずれたということは、私はまだその正確な報告を聞いておりませんけれども、これはくずれるまで振ってみるのでございますから、くずれるのが当然なのであります。しかし、これはあくまで全然模型で、ございまして、一メートル立方のものと非常に大きなものとをいつも同じように論ずることはできないのであります。ただその場合に一つの基礎的なデータをとったものでございます。従って、そういうデータを参考にいたしまして、いろいろほんとうの場合について理論的に論ずるわけでございますが、これにつきましては、模型がくずれたからといって、これが全体として危ないということは絶対に言えないので、むしろくずしてみたり、すべらせてみたりして、そしてその場合のデータをとっていくわけでございます。これが対策ということもいろいろ考えられておりまして、たとえばイギリスでは地震の心配はございませんので大体積みっぱなしのような形になっておりますけれども、これが日本では、まわりから、また特に上から非常に強く締めつける必要がある、また、大きな圧力容器の中に、かごのようなもの、あるいはシリンダーのようなものを入れましてこれにとりつけるようにすることがいいのではないか、あるいは半地下式にいたしまして地面の下に入れれば地震の震動がよほど小さくなるというようなこと、その他いろいろ対策が考えられております。訪英調査団が参りましたならば、こちらの専門家と向うの専門家と一緒に、十分にお互いの研究の結果を検討し合い、そしておそらくは共同の設計を考えるというようなことで、必ず心配のないような設計ができることを期待いたしております。原子力委員会の立場といたしましては、いよいよそういうものが設置されます場合に、その認可について意見を申すことになっておりますので、その場合に、十分の上にも十分に検討をいたしまして、そしていささかも国民に心配を与えないように努めたいと考えております。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 減速材として黒鉛を使っていく、冷却材として炭酸ガスを使うのでございますから、これは、今お話のように完全にこわれなくても、ひずむ場合には、もう制御棒が入らなくなるわけです。そういう場合にどうやって暴走状態になるものをとめるかという問題があると思う。私は昔電気化学をかじっただけでありますから、私にはわかりませんが、私どもの常識ではそういうふうな気がするのです。そこで、今のお話は、いろいろ御苦心はわかるのでありますが、根本的な問題は、イギリスには地震がないし、日本では地震が非常に危険性を持っておるという点でございまして、イギリスと共同研究とおっしゃいますが、地震のないイギリスではそういうことに対する知識は非常に乏しいのではないかと私は思うのです。ですから、問題はこっちにあるのじゃないか。今お話しのように、一メートル立方の模型を作ってゆすってみるのも手でありましょうけれども、やはり原子炉は熱を持っているのですから、締めつけるといっても、熱いものを締めつけるわけにはいかないのじゃないか。そこで、相当がさがさする範囲でしか締めつけられないのではないかと思いますから、こういう点は、向うへ行って共同研究もさることながら、やはりこちらで御決定なされる場合に十分な研さんを積まれる方がいいのじゃないかと考える。向うに行ったら買うのだという話だったら、共同研究というのはいいかげんなものになってしまう。あとは日本政府の責任だということになると、国会におる私どもの責任になる。だから、これは何でもかんでもコールダーホールを買うのだという政治的意図が先になりませんで、あなた方のような純粋な科学者の立場が基礎になりますように、この開発については慎重にお願いしたいと思います。  もう一つは、アメリカではコンティナーをつけております。イギリスではコンティナーがない。ですから、日本でコールダーホールを買った場合にコンティナーをつけるのかっけないのかということが問題になると思います。これはイギリスではつけていないのだからコンティナーは要らない、アメリカではつけているからアメリカ型を買う場合にはコンティナーが要るということになると、これは自主性がないのみならず、やはり危険になるわけでありますから、日本の場合にはコンティナーというものがコールダーホールで考えられるのですかどうですか、その点ちょっとお教えいただきたいと思います。

藤岡由夫原子力委員

○藤岡説明員 イギリス型を買いますかどうかということは、これから調査団が参りまして、最後的には十分な検討をいたしましてその上で決定されることであると思います。ただいまお話しの通りイギリスには地震がないのでございますが、日本では地震の方は十分研究し得ますけれども、今お話しのように、温度が上りました場合に、温度が上るのでぐらぐらになるかというような、原子力に特殊の問題がございます。そういう問題については日本では十分な知識が得られませんので、イギリスの原子炉に関します知識と、日本の地震に関します知識と、それを突き合せて何とか解決方法を考え得ることだと存じます。そういう意味のことを私は共同研究をすると申したのでございまして、十分に知識の足りないところは補い合って、そして共同研究をし設計をするということになるかと存じます。  ただいまお話しのコンティナーをつけるがいいか、つけないがいいかということは、これは全体としてのコストに非常に大なる影響があり、もしもどうしてもコストその他でこれが成り立たないということになれば、やはり導入が不可能という事態も生じ得るのではないか。その点は十分に科学的な良心的な調査をされることを期待いたします。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 これは九月十一日のわが党の基礎産業対策特別委員会というものの報告書でございますが、「原子力発電原価の現状と原子炉の輸入について」という報告が出ております。これによりますと、原子力局の案というものはキロ当り四円四十六銭でできるということが書いてある。しかし、これは今のコンティナーがつくかつかないかということで大へんな雇いになってくると思う。これはグラファイトだけで二千トンある上に、鋼鉄のコンティナーをつけるということになると大へんな費用がかかってくる。それから強震対策費七億円というのが書いてありますが、これはやはり公益事業局案ですと十三億円と書いてあるので、強震対策をどうやればいいかということによって非常に違ってくると思う。正力大臣がおられませんから政務次官にこれをちょっと伺っておきたいと思いますが、こういうふうになれば、今のコンティナーをつけるかつけないかという問題でも、発電原価四円四十六銭と非常に違うということをお認めになりますね。そこで、これをお認めになると、朝日新聞の十月三十一日に、補強すれば使えるコールダーホール型というのを原子力委員会で発表されておる。これを補強すれば使えるという言い方は実はおかしいので、補強すれば使えるというのは、雨が降れば天気が悪いというのと同じ言い方なんです。問題は、どういう補強をすればどう使えるということでないと、いやしくも役所の委員会の答えにならないのです。私どもは原子力発電ができることはけっこうだと思うのですが、作ったはいいけれども、ほかのことと違うので、一たび間違ったら大へんなことになるのだから、これは十分あなた方で慎重にお考えになっていただかないといけないと思う。この報告書の末尾にも、さっき藤岡先生が言われたように、各種の炉についても研究するということが書いてありますが、そういう気組みでやっていただきませんと――何か新聞を見ていると、コールダーホール型を買うのだ、もう予算要求もやっているのだという形で進んでいますが、こういう重大な問題があるということを国会議員の責任としてこの際明らかにしておかなければならぬと思う。この点について何かもう少しお話があれば伺っておきたい。

藤岡由夫原子力委員

○藤岡説明員 御意見の通り、この安全性につきましては十分の検討をいたし、またその補強その他についても十分の研究をいたしまして、その上で、絶対に安全という確信を持った上でなければ買わないものと思います。  それから、いろいろな型のありますことは事実でございます。アメリカにおきましても、濃縮ウランと軽い水、普通の水を使いました型がいろいろできておりまして、それでもまたすぐれたものができると思います。それから、カナダにおきましては、重水と天然ウラン、またプルトニウムなどを燃料に使うものまですでに研究されておりまして、近き将来においては、これなども、理論的に申せば、おそらく一番すぐれた型になるのではないかと考えられます。目下カナダのグレイ氏が来朝中でありまして、その意見によりましても、カナダの考え方は非常にすぐれたものであるということは十分うかがえます。ただ、現在日本では、将来のエネルギー事情を考えましたときに、なるべく早く原子力発電をやりたい。現在いま一つ炉を注文いたしましても、それができますのにまず四年はかかり、実験に動き出すには五年以上もかかるわけでございますので、十年後に相当の発電をいたそうと思えばなるべく早く入れなければならない。その意味におきまして、現在まずでき上った形と考えられますのはコールダホール型でございますので、一応これにかかってみるということでございます。もしこれが将来どうしても日本にはだめであるという結論になれば、中止しなければならないということも考えられるわけであります。なお、将来は、アメリカの型、それからカナダの型、その他いろいろのものが考えられるわけで、それも十分検討の上、日本独特のものを進めていきたいと考えております。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 これ一問でやめますが、危険の点と、もう一つはコストの点がございます。四円四十六銭だから、われわれもけっこうだろうと言ったわけでありますが、コストが非常に高いものになれば、それはやはり慎重に考えていただかなければならぬ問題だと思います。そういう点を留保いたしまして、これはほかにもまだ質問がありますのでこの程度にしておきます。  次に大蔵大臣にお伺いしたい。  まず、ここに提案せられております補正予算の三案ですが、これはもうすでに党側とも連絡をとっておることですから、問題がないということで、これについては御質問はいたしませんが、大蔵大臣は明年度の予算についていろいろと構想を練っておられると思います。今その具体的なものについて伺うことは無理だろうと思いますが、基本的な構想について伺いたいと思うのです。  財政というものは、経済が活況を呈しておりますときにはむしろ控え目な立場にいる方がいいし、不況の場合には活を入れる呼び水になるような立場をとる方がいい、こういうふうにいわれておりますが、明年度の景気は下降の傾向ないしリセッションの傾向になるのではないかと思いますが、大蔵大臣は、その基本的構想を立てるに当って、予算の性格、たとえば中立的な性格であるとか、どういうふうな性格のものをお考えでいらっしゃいますか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 御承知のように、日本の経済の現状は、投資が行き過ぎたといいますか、投資景気が高まって、その結果、これは大体輸入によってまかなってきておるのでありますが、国際収支が悪化した、こういうような状況であります。日本の経済の伸びといいますか経済活動は、どうしてもある程度繰り延べといいますかスロー・ダウンする。そうしないと、一向輸入力はないが、物資の需要は非常に多い、そうすれば物価騰貴というような傾向をたどることは当然考えられます。ですから、来年度におきましては、私の予算編成の一番基本的な点は、経済に安定を与えて、その安定の基礎の上に今後日本の経済がさらに拡大をしていくという条件を整備するというところに大きな考えを置きたい、かように考えます。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 もちろん、明年度予算をお立てになるに当っては、今年度の反省の上に立たれるのが私はいいと思います。統計整備がどうしても必要だと思います。実際に外貨がどのくらい使えるのかということが、いよいよ危なくなってからでなければわからぬというようなことでは困るのでありまして、これはぜひやっていただきたいと思いますが、現在外貨の保有高というのはどれくらいでございますか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私ここで大まかなことを申し上げますが、なお御不満でありますれば事務当局からお答えいたします。本年の九月末の現在で八億七千五百万ドルであります。この中で約二億七千百万ドルというものは早急に回収が困難なものであります。それから、外銀ユーザンスその他の短期の借り入れ、いわゆる債務、これが四億七千四百万ドル、それから、九月末で一応輸出手形の買い持ちになっておるのが一億四千八百万ドル、これを差し引いてみますと、九月末で実質的に保有しておるというのは二億七千万ドル、大体かような数字になっております。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 次に、景気観測の機構を作りたいということを本会議で言われました。これはどうも役人だけでは多少無理があるのじゃないかと私思うのでありますが、何か民間人も入れた構想というふうなものでもお持ちでしたら伺っておきたいと思います。  それから、次に財政、金融一体化の問題でありますが、現在国、地方、それから産投会計などを合せると二兆五千億くらいだと思いますが、国民総生産という観点から見ますと十兆近いものがあるわけです。ですから、七兆以上の大きなものは政府のコントロールのほかに置かれておるということが私は気になるのであります。財政、金融一体化ということは、党でもそういう方針をきめておるのでありますから、やはり金融について何か方向づけをしないと、ことしの愚を繰り返すことになるのじゃないかという気がいたすのです。私ども実は自由党におりましたときにこの問題を提起して、両党の政策協定できめたことがありまして、資金委員会というものを作ることにした。ところが、金融はまかしておいてくれればいいのだという大蔵省などの強いお話で、現在のような格好になっておるのでありますが、結局今の国民総生産の大部分が金融で行きますから、料理屋はできる、ビルは不必要なものができるじゃないか、あるいは工場の拡張競争がどんどん行われて、あげくの果ては外貨不足になってしまった。政府は何をしておるかと言われるが、大本が抜けておって、政府が一指も触れられないということがあまりにも多過ぎるのじゃないか、こういう気がするので、そういう意味から、金融の方向づけについて何かお考えがありますれば伺いたいと思います。今の景気観測と両方お答え願いたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 資金、特に民間資金を計画化しろという考え方に私異論ありません。これはぜひともそういうふうにしたいと思います。ただ金融の性格からいきまして、金融は計画化するにしても自主的な形においてするのが適当であるということも今なお私の信念であります。ただ従来の例に徴しまして、その自主的が必ずしもうまくいかなかったということも事実であります。従いましてこの点について適切な施策と反省を加える必要があるということも、私は異論はないのであります。なぜそれなら従来自然調節作用がいかなかったかといえば、やはり敗戦後における日本経済のすべての面における非常な不均衡あるいは秩序が回復していなかったという点に多くあると思う。今日におきましてはそれが相当回復したと私も思いますので、ここで自由経済のもとにおきましても金融等についての自然調節作用を発揮させる基盤が相当できたと思います。たとえば中央銀行の操作にしても、先般国会を通りました支払い準備制度というものも導入する、だんだん金利の体系も確立しつつありますから公定歩合、それに公開市場操作、いわゆるマーケット・オペレーション、こういうものを一連としてやり、同時にもう少し統計を整備して景気現象をよく把握し、それに応じて今申しましたその他のいろいろな調節作用が機敏に動いていく、こういうふうにしていったらよほどよくなるのではないか、かように考えておるのであります。そこでただいま私は、資金調整審議会、それに民間の自主融資規制委員会、それから日本銀行あるいは大蔵省の事務当局、すべてに指示しまして、自主的に資金を計画化するにはどうすればいいか、どういう具体的方法をとるか、そしてまたとり得る限界は一体どうなのかということを今つぶさに検討を加えさせております。その結果をもちまして私は所要の考えを実行に移したい、こう考えております。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 今のお考え、大体それでいいのじゃないかと思いますが、やはり大体の流れをどの程度にきめるかということを、大蔵大臣はそういう制度ができて事後に報告を受けるだけではだめじゃないかと思うのです。やはり事前にある程度相談に乗って、方向づけについても政府が一定の方向を示すという権限がなければいかぬのじゃないか。そういう意味から言うと、やはりこれは立法を必要とするのじゃなかろうかと思うのでありますが、立法化についてはどうお考えでございますか。  もう一つ、時間がないのでまとめて伺っておきますが、金融制度について、現在の日銀制度とかあるいはその他特殊金融機関の制度、あるいは金利問題、いろいろ問題になっておりますが、これはみな占領下できめられた制度でございまして、その後の運営の実際から見ても変えた方がいいと思われる点がたくさんあると思うのであります。こういう点について具体的にお考えでありましたらこの際お示しを願いたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 ただいまの資金の規制について立法化する考えがあるかどうかという点でありますが、これはそういうふうにして法律できめると資金調整の弾力性を失うというおそれが多分にあります。また従来の統制の点からいきまして必ずしもいい結果が出ていない、いろいろ考慮する点が多いのであります。そういう点について私はなお踏み切っておりません。おりませんが、先ほど申しましたような、民間においてみんなが知恵を出し合って考えた結果の資金規制の限界というものがどういうものであるかを明らかにしてからさらに検討をしてみたい、かように考えております。  それから金融制度につきましてはただいま金融制度調査会に、日本の金融制度というものは占領治下でできたのであるから、これは一つ再検討すべき時期がきたという意味で、検討さしております。これらの答申の結果を待ちまして、さらに手を尽して考えをまとめたい、かように考えております。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 次に明年度予算についてその財源の点で伺っておきたいと思いますが、自然増収は若干本年度においてあるようであります。明年度も大体横ばいであるからというようなお話もあるようであります。そこで一般的に考えますと、財源はあるというような考え方が出るのでありますが、この財源を大蔵大臣は先般、何か政府のへそくりを作るんだというようなお話がありまして、この議論はだいぶ反撃を食っておるようであります。現在違ったお考えがあれば承わりたいし、われわれといたしましては、この変動に備えて何かするということはけっこうでありますが、やはり国民のある機関にものをそれぞれ持たせるというような構想もあっていいのじゃないかと思うのであります。たとえば国民からとったものだから返せという議論もあります。返すなら、一体どういうふうにして税収があったかといえばこれは大体法人税と申告所得税が多いのでありまして、これは結局金融だということになるのでありますから、そういうものを輸銀なり開銀なりに若干持たせるという考え方と、それから法人に返すという場合には、法人の新しい技術開発のための準備に持たせるとか、そうした準備金の免税をするとか、あるいは事業税について考慮する、あるいはまた道路とか河川というものの基金にそれをしておく、いろいろな構想が考えられると思うのでありますが、こういう点についてお考えがまとまっておりましたら、若干でいいですからお述べを願いたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 明年度の予算につきましては、具体的なことは今何も申し上げる段階に達しておりませんが、基本的な考えとしては、先ほども申しましたように、来年の経済の安定を回復するということが一番中心になっておりますので、かりに歳入がありましても、日本経済の安定に阻害を与える、特に刺激的になるというふうなことがあればこれは差し控えなくてはならぬという点、これを最もポイントに考えておるわけであります。また、そうするとたとえば場合によっては、歳入は相当ある、それだけ歳出が考えられる、そういうときは一体どうするか、これにつきましては、今後それを具体的に経済に刺激を与えないような形においていかに扱うかということは、なお考えてみたい、こう考えております。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 次に国際収支について若干伺っておきたいと思いますが、日本の国際収支というのは非常に変動が激しいのでありまして、昭和二十六年には五億六千四百万ドルの黒字が出ておりますが、昭和二十八年には逆に三億一千三百万ドルの赤字が出ておる。三十年度には五億三千五百万ドルの黒字に転じておるかと思うと、今度はまた赤字、こういうことで非常に黒くなったり赤くなったり七面鳥のように変っておる。こういう点はどういうことになるかというと、結局そうしたことから金融が常に経済界に君臨するということになっておると思うのであります。幸い政府の緊急総合対策の効果が現われまして、国際収支が正常化したということはけっこうでございますが、これは今後の見通しはどんなふうに考えておられますか、その点を伺っておきたいことが一つと、それから為替管理制度というものがありながらどうして国際収支のしりが変動するんだろうかということが問題になっておるのであります。何か為替管理についてやっておるという以上、もう少し変動を少くする方法があるのではないかという点が言われておりまするが、この点についてもお考えがあれば、以上の二点についてお答えを願いたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 今年の上期の国際収支は約四億九千万ドルちょっと赤字になるものと思います。下期は、その外貨予算編成の基本方針自体がバランスをとる、収支とんとんにする、こういうふうな考え方でありましたので、私は下期はバランスがとれる、かように考えております。そうしますと、本年の国際収支は概して六億数千万ドルの赤字というふうに一応考えていいんじゃないか、あるいは今後の輸出増強によって若干赤字が減少するのじゃないか、四億ドルそこそこというところに持っていければけっこうだ、かように考えておる次第でございます。  それから、そういうふうだからこの際前途を楽観していいかといえば、決してさようでありません。今国際収支がいいのは輸入を押えている。同時に従来輸入が多かったので、原料等のストックが今調整されている、こういう状況でありますから、経済活動を押えることがよほど効果を奏しないと、今後さらにまた輸入がふえるという予想もあります。そうして国際状況を見ますると、御承知のように、どこの国もインフレ傾向で緊縮政策をとっております。あるいはまたそれがドルの不足にもなっております。あるいはまた東南アジア等においては購買力が少い、こういうふうな情勢はよほど日本の輸出に対して不利である。こういうことを考えてみますと、今後よほど国内需要を押えて、輸出増大に経済政策を集中する必要があるということを固く信じているものであります。

小坂善太郎自由民主党

○小坂委員 最後に赤城農林大臣にお伺いしたいと思います。近年におけるわが国の経済発展は非常に著しいものがありまして、自民所得を見ましても、昭和三十年の六兆七千億円から、三十一年には七兆六千億円と一四%も上っておるのであります。ところがこの内訳を見ますると、第一次産業の所律というものは、わずかに二・四%しか上っておらない。鉱工業生産等の第二次産業が二〇・五%、第三次産業が一六・一%と大きく伸びておる。国民の四割を占めておる農村漁村の所得が、これほど伸びが少いということは、やはり農林行政を担当しておられるあなたとして、非常な重大関心事じゃないかと思うのであります。承わりますと、今までの食料自給度高揚のための農政から、個々の農家経済安定のための農政をやるんだということでありますが、どういう具体的なお考えを持っておられるか、この際お示しを願いたいと思います。

赤城宗徳自由民主党農林大臣

○赤城国務大臣 お話しの通り農林水産の所得、消費水準なども戦前から比べれば上っておりますけれども、最近四、五年間には鉱工業の所得と比較してみまして非常に伸びが縮んでおるという状況でありますので、お話しの通り食糧増産といいますか、自給度をやはり高めていかなければならない。というのは、御承知の通り国内の食糧自給ができておりませんので、外貨によって輸入する面も相当あるわけであります。そういう点で自給度をやめるわけには参りませんけれども、農家の所得の面から見まして非常に他の産業に比較して低い。これはよほど考えなくちゃならない。そこで私ども考えておりますのは、農業でありますから、急速にこれの伸びを進めていくというわけには参りませんが、大体三つの考え方を持っています。  第一は、やはり農山、漁村の生産の基盤である土地とか漁港とか林野、こういう基盤をさらに整えていこうじゃないか、土地改良等は相当進めてあるのでありますが、まだまだ足らないようであります。そういう点で土地改良等にもっと力を入れたい。その土地改良も国営とか県営とか団体営とか、これらがそろって行われておらぬような状態でありますから、一貫してこれが行い得るように政策を進めていく。  それから営農作付方面が第二に考えられるのでありますが、やはり農家の安定ということを考えますれば、それからまた日本の農業において畑作農業が非常におくれておりますので、畑作農業に力を加えていきたい。同時に酪農、畜産に力を入れて、作付形態とかあるいは常農形態とかを変えていきたい。たとえば開拓の入植につきましても、従来は米麦が主でありましたけれども、酪農とか果樹類、こういうものを入れて努力をしていきたい、こういうふうに考えております。  第三には、やはり生産されたものの価格の指示といいますか、流通面に力を入れなければならぬ。こういうことを考えまして流通についてなお研究を進めておるわけであります。一、二の例を申し上げますならば、酪農を振興したとか、牛乳がふえたとか、消費がふえたけれども、さりとて生産者にとっても消費者にとっても十分でないというようなことがありますので、牛乳対策を一つとって申し上げますれば、学童に牛乳を給食する方法をきめる、あるいは酪農振興基金制度を設けるとか、あるいはまた外産加糖練乳の保管に対して補助を出すというような方法をとる、あるいはまた砂糖の国内自給度を高めていきたい、こういうふうに考えておりますので、そういう点につきましてはテンサイの作付が非常に進んでおりますが、なおこれを進めると同時にテンサイ糖としての砂糖をもろとできるようにいたしたい。あるいはまたイモ作農家に対しましても、イモの結晶ブドウ糖の工業化というようなことや、飢料化に持っていきたい。こういうふうに総合的にいろいろ考えていかなければならないということで目下政策を進めておるような状態であります。

川俣清音日本社会党

○川俣委員 各委員よりの資料要求については、時間を節約するために文書をもって委員長の手元に提出し請求いたしたいと思いますから、委員長においてしかるべくお取り計らい願いたいと思います。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 資料要求の件につきましては、川俣若御発言の通り委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らうことといたします。  本日委員会は午後一時から再開の予定をいたしておりましたが、定刻から本会議が開かれて、物故同僚三議員に対する弔辞があるそうでございます。  そこで本委員会は午後一時五十分より再開することといたしまして、暫時休憩をいたします。     午後零時二十九分休憩      ――――◇―――――     午後二時一分開議

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河野密君。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、前国会以来の山岸内閣の施政、並びに先般国会を通じて表明せられました所信表明等を中心といたしまして、内治、外交の基本的な問題について、お尋ねをしたいと思います。主として総理大臣並びに大蔵大臣に、労働大臣等に集中して御質問を申し上げるつもりでありますが、関係の問題につきましては、そのときどきに関係閣僚にお尋ねするつもりでございます。  私は第一番にお尋ねしたいのは、岸総理の政治を行なっていくについての政治的信条という問題でございます。岸総理は先日の本会議における所信表明において、前国会以来の動勢を述べられ、積極外交に自信を深めたと述べておられます。また内外情勢のきわめて重大な時期に当って、政権を担当することのいかに責任が重いかを痛感したとも述べておられます。私は総理が各国を歴訪し、要路の政治家と胸襟を開いて語ったことの労を多とするにやぶさかではございません。しかし訪問旅行が単なる親善旅行であっては意味がはなはだ薄いと思うのであります。また岸首相は、国内において全国各地を遊説されて、東奔西走文字通り席のあたたまるいとまもないほどの活躍をされました。一国の総理が、単に党勢拡張と思われるために全国の行脚をすることの可否という問題を別といたしますならば、非常な努力であるということを認めるにこれまたやぶさかではございません。この外見だけを拝見いたしますと、実に活動的な総理であり、如才のない、まめな総理であると申さなければなりませんが、これで岸ブームが出ないとすれば、出ない方が悪いのだ、こう言えそうであります。しかし岸総理もみずから感じておられるでありましょうように、総理と国民との間には何かしら血の通わぬものがあるのであります。これはなぜでありましょう。岸首相の演説を聞いて、かりに論旨に共鳴を感じたといたしましても、どこかにもの足らないものを感ずるのはまぬがれないと思うのであります。これまた何でありましょう。私をして率直に言わしめますならば、言論にも行動にもバック・ボーンがないからだと思うのであります。国民が知りたいのは、岸総理がどういう政治的信条で日本の政治を行おうとしておるのか。岸首相は何を考えているのだろう。どういう基本的な考えを持って日本の政治を指導しているのであろうか、これが私は国民の心から知りたいと願っておるところだと思うのであります。  先般インドのネール首相が日本に参られましたが、私はネール首相と比較をしようとは考えません。昨年私がネール首相にお会いしたときにネール首相から彼の政治的目的については聞くことはできませんでしたが、彼の代弁者ともいうべき外務大臣代理のピライ氏は、ネール首相の政治的目的は諸君と同じように、民主的社会主義、デモクラティック・ソーシャリズムを実現するのにあるのだ、こういうことをはっきりと言っておりました。ネール首相ほどでないにしても、たとえばドイツのアデナウァー首相にいたしましても、自由選挙によるドイツの統一ということをまっこうから掲げております。鳩山前首相は、日ソの国交回復が少くとも自分の政治的な使命である、こういうことを言っておられたのであります。この程度のものすらも岸首相には感ずることができない、ここに私は国民の物足らなさの根本があるのではないかと思うのであります。失礼でありまするが、きわめて低俗な、卑俗な三悪追放といっても、だれも本気にするものはないのでありまするし、岸首相が平和と百万べん言われても、いたずらに空疎に聞えるのであります。これは岸首相の経歴から申しましても、もっと岸首相の本音から出た、本質から出た政治をやってもらいたいのだ、こういうことが私はおそらく日本国民の心からなる念願ではないかと思うのであります。こういう思味におきまして、岸総理がどういうように政治を行おうとしておるのか、その根本を尋ねたいのであります。私が申すまでもなく、日本の憲法におきましては総理の地位というものは広大無辺であります。絶対過単数のバックを持っておりまする総理大臣というものは、思うがままの政治ができるのであります。それだけに、面から申せばはなはだ危険でもあると同時に、日本の政治自体が、総理の思想、総理の考え方から一歩も出ることができないのだということを考えていただきたいと思うのであります。この際において岸総理は一体どういう基本的な考え方をもって日本の政治を現に行い、これから行わんとしておるのか、この点を率直に御表明願いたいと思うので、あります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私はこの前の国会において、私が石橋首相病気のあとを受けまして内閣の首班として指名され、その際に私の所信を表明いたしたのであります。私自身、過去の一切の私の政治生活を通じての全反省の上に立って、真に民主政治家として自分が全身をあげて努力したいということを申し上げたのであります。  私は御承知の通り東条内閣の一員でありました理由をもって、戦後三年余にわたって戦犯容疑者として拘置されたのであります。私が再び釈放せられ、政治家として復活するに当りまして、私の信条は、この私の経歴を通じて二つのことを強く私の頭に印したのであります。それは、一つは日本をして再び絶対に戦争に巻き入れしめないということ、一つは日本の今後の繁栄と日本の発展を考える上において民主政治を完成する、個人の自由と人格の尊厳の基礎に立つ民主政治というものを完成する。戦後において反民主主義的な傾向もいろいろな方向において見受けられるけれども、日本をして真に平和な、しかも自由な国として繁栄するためには一切の反民主的な勢力を排罪して正しい民主政治を作り上げる、これが私が政治家として再び一そうの努力をしようと決意するに至った動機であります。自来この考えに私は徹しておるわけであります。私が三悪の追放を強く唱えておりますことも、これらのものがいずれも民主政治に、私の願っておる世界平和の上から見まして非常な害悪を与えるものである。ただ一片のこういうことを唱えるだけでもってこれが実現できないことは言うを待たないのであります。また過去においていろいろな政治家の人々がこれらをなくしようとして努力されたにもかかわらず、なお依然としてそれが存在しておることを考えてみましても、これをなくするということのためには実に一身をあげ、不退転な努力をしましてもなお困難があるということもよく承知いたしておりますが、私としてはあらゆる努力を傾倒してこういう民主政治の、民主主義の敵である、これを阻害するようなものはどんな困難があってもこれを排撃して、そして真の民主政治、また世界に平和をもたらすためには未だいろいろな困難はありますけれども、原水爆の禁止初め、私が強く唱えておる事柄も、これも私の念願しておる日本をして再び戦争に巻き入れしめないという見地から考えておるわけであります。  以上の信念の上に立ってあらゆる努力をしており、またそれを今後も続けていく考えでおります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 岸総理の平和並びに民主主義を自分の信念としてこれからの政治をやっていきたいという趣旨はきわめてよくわかりました。  そこで私は次にお尋ねをしたいのでありますが、岸総理は七月十日に内閣の政造を行われました。全閣僚を入れかえられまして、新しい岸内閣を作ったのであります。内閣の改造は今日までしばしば行われておりまするが、全閣僚の入れかえを行なった例はおそらく今度が初めてではないかと思います。石橋首相が病気で辞職し、岸総理がその後継に指名されましたときには、国会開会中であるという理由によって全閣僚をそのまま留任せしめたのであります。しかるに国会が終り、予定の対米旅行が済みますると、今度は全閣僚の入れかえを行なって内閣の改造をしたのであります。何ゆえでありましょうか。憲法によりますると、内閣は行政権の行使については国会に対して連帯して責任を負うということになっておりまするが、その国会開会中の重要なる役割を果すべきときには全閣僚をそのまま存続せしめ、その決定したところのことを実行すべき責任を負う段階になりまして、すべての閣僚を入れかえられた。この責任の継続性、責任の連帯性、この点についてどういうふうにお考えになっておるのでありましょうか。もし、二十六国会においてとった政府の態度というものが総理の意に満たないものであるから閣僚を入れかえるとおっしゃるならば、おそらく憲法の命ずるところによって内閣は連帯責任であるから、岸総理自身もその責任を免れ得ないものと思うのでありますが、きわめて不明朗だと思うのであります。この憲法によって閣僚の任免は総身の任意に行うことができるのだということによってだけ、このことを是認するわけには私は参らぬと思うのでありますが、岸総理のこの間における――何ゆえに全閣僚を入れかえ、内閣の改造をやったのであるか、その責任の一貫性は一体どうするのであろうか、こういう点を一つ明確に御答弁願いたいと思うのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 内閣の改造をいたしましたのは、全閣僚の入れかえということは、私諸般の事情を考えて、人心を一新するという見地からこれをやったわけであります。責任の一貫性につきましては、もちろん内閣総理大臣が一貫して責任を負うべきものであることは言うを待たないのであります。また党内閣の本旨から申しましても、閣僚がかわることによって責任が二、三になるという性質のものではなくして、政党を基礎としている内閣総理大臣が全責任を一貫して負う、こういう考えでおります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 岸総理の御答弁によりますと、政党を基礎にする内閣であるから、総理大臣三人が残っておるならば、憲法の命ずるところによって全閣僚を入れかえても差しつかえない、総理大臣が全責任を負うのだ、こういうことだと思うのでありますが、もしそうであるといたしますならば憲法において何ゆえに内閣は連帯して責任を負うということをきめておるのであるか。連帯して責任を負うといたしまするならば、その事柄について連帯して責任を負うべき閣僚は一体だれであるのか、新しい閣僚が前の閣僚のやったことについても連帯して責任を負うべき立場にあるのかどうか、この点を明確にしていただきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 抽象的の議論でなしに、事の性質にもよると思いますが、私は政党内閣の本質から申しまして、一つの政策もしくは国会におけるあらゆるわれわれの大きな問題における責任というものは、一貫してそれを代表しておる総理大臣が負っておる。従ってこの意味においてあらゆる大臣も、総理大臣の任命し得る大臣も同様に連帯して責任を負う、こういうことになると考えております。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 もし総理大臣一人が責任を負うという建前であるといたしますれば、それはほかの閣僚のことを、内閣は連帯して責任を負うということはないはずだ。総理大臣自身の思うままに閣僚を入れかえることができるのだから、総理大臣自身が国会に対して責任を負えばいいわけなので、所管の大臣が連帯して責任を負う、内閣は一体のものとして連帯して責任を負うということであるならば、その連帯して責任を食うべき所管の大臣は一体だれであるか。具体的に申しますならば、今日の経済政策に対する誤まりの責任はだれが負うのであるか、岸総理大臣だけが負うのであるか、あるいは辞職した池田前大蔵大臣が負うのであるか、あるいは岸総理と一萬田大蔵大臣と連帯して全閣僚の責任を負うべきものであるか、この点を明確にしていただきたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 その問題について御質問の点に関しまして、現在これに対して責任を負わなければならぬとするならば、総理大臣初め全閣僚が連帯して責任を負うべきである、かように考えております。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 そういたしますと、総理大臣が継続しておる限りにおいては、その総理大臣のもとに新たに任命された大臣はすべて一体の建前において全責任を負うのだ、こういうことに理解してよろしゅうございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 そう御理解になっていいと思います。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 この問題についてはあとで経済政策をお尋ねするときにもう一ぺん触れたいと思います。  次に総理大臣にお尋ねいたしたいのは、最近の世界情勢を総理大臣はどう判断しておられるかということであります。またこれに対していかなる方針を持っておられるかということでございます。こまかい点はあとからお尋ねいたしますが、総括的な問題として一つお聞きしたいと思うのでありますが、前国会以来の国際情勢はきわめて目まぐるしい変転をいたしております。まず共産主義諸国の情勢からいたしますると、七月にソ連において御承知の巨頭の追放がありました。マレンコフ、カガノヴィッチ、モロトフ、シェピーロフ等の追放が行われました。最近になりますと、またジューコフ元帥の追放が世界的に宣伝されております。これによって見ると、ソ連の国内における政情には幾多の不安の要因があるようでありますが、それにもかかわらず、さきには大陸間弾道兵器の成功が報ぜられ、引き続いて人工衛星の第一号、第二号の打ち上げに成功して、世界の科学界を驚倒せしめておるのであります。一方中近東におきまする情勢は、昨年のスエズ事件以来険悪の度を加えて参りました。その中心もエジプトからシリアに移りまして、シリア、トルコの国境の紛争、イスラエル、ヨルダンの紛争、エジプトを中心とするアラブ諸国の動静など、きわめてあわただしいものがございます。これに関連いたしまして、いわゆるアイゼンハワー・ドクトリン並びにソ連の行動等がからみまして、きわめて憂慮すべき事態が今日あると思うのであります。世界は昨年の東欧問題、スエズ問題以来の新しい危機に当面しておると言っても過言でないと思うのであります。これらの世界情勢の中にあって、政府はこの世界情勢をいかに判断し、いかなる外交方針をもってこの変転きわまりなき世界情勢に対処しようとしておるのか、これを伺いたいと思うのであります。  われわれの見るところによりますと、中近東には御承知のように十数カ国があそこにメジロ押しをいたしております。これらの諸国は国情も異なっておるし、政治体制も違っておりますが、これらの諸国に対する米ソ両陣営の働きかけによってすべての問題が起っておるように思われるのであります。しかもその基調をなすものは民族独立運動であり、アジア、アフリカの新しい結束を求める運動であるとわれわれは判断するのでありますが、これらの中にあって日本の処すべき外交方針、これを一体どういうふうに岸内閣はお考えになっておるのであるか、これを承わりたいと思うのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 ご指摘のごとく最近の国際情勢はいろいろな点において目まぐるしい情勢が展開されておる。特に中近東の問題に対する御質疑でございますが、中近東におけるところのいろいろな紛争、これらを通じて一貫しておるものは、御指摘のように各民族の独立に対する非常な熱望がその根底をなしております。しこうして事態を紛糾せしめておる一つの大きな原因も、米ソのこれらの国々に対するいろいろな働きかけというものがその重要な原因をなしておるということに対しましても、河野君と私は全然見解を同じくするものであります。私はこれらの中近東あるいは東欧諸国等においても見たことでありますが、これの平和という上から見て、いろいろな国々がこれに干渉するということが平和の非常な禍根をなしておる。また、干渉するにつきましては、最近の事例はやはり大きな世界情勢、みな二大勢力の対立しておるこの勢力間のいろいろな問題に関連をしております。私が先ほど申し上げましたように、平和を願い、またその具体的な方法としてアジアの諸民族がおのおの独立に対して非常な熱望を持っておる。われわれもまたアジアの一員としてこれらの国々の民族が独立を願うその気持には心から共鳴するものであり、これが完成に対しては、われわれとしてもあらゆる面において協力をしようということを明らかに申しておるのも、そういうわれわれの心からなる共鳴の現われであります。従って一面においてわれわれがそういう共鳴を具体的に行動の上において実現するために、アジア、中近東の帝国と協力を進めるということをいたすとともに、やはり東西の両陣営の対立、その間の緊張というものを緩和する方向に向ってあらゆる努力をしていくことが、今申すような干渉なり、働きかけをなくする根元をつくわけであります。こういう東西の緊張の緩和に向ってわれわれが努力する、またわれわれはアジアの一員としてこれらの国々の民族主義に対して心から共鳴して、これに対して協力を進めていくという方向にわれわれの努力を進めていくべきである、かように考えております。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 ただいまでのあれは、実は私の質問を申し上げる伏線としてお尋ねしたのでありますが、総理のお答えになったところは、今までに関する限りは総理とわれわれと考え方が特に隔たっておるとは思いません。しかしこれから具体的にお尋ねをして私たちと総理の考え方が果して一致するか、食い違うかを明らかにしたいと思うのであります。  最初にお導ねしたいのは、総理は本年六月アメリカ訪問をされる際にこういうことを述べておられます。これは新聞に寄稿された文章の中にある言葉でありますが、「私の訪米によって日米関係は新しい時代に入り、これが世界平和の確立にも大きな役割をはたすものと確信している。」こう言っております。また訪米旅行から帰られましたときの新聞記者会見において、私は会談を終えて、日米関係の新時代が到来したと述べました。こう言っております。さらに会談を通じて明らかになったことは、米国が対日政策に新たに修正を加える用意がある点だと言っておられるのであります。この言葉は、きわめて重大な言葉であると思うのであります。私は総理が訪米をされるに当りまして、自分のアメリカ訪問によって日米関係が新しい時代に入るのだという抱負とか、そういうことを考えて行かれたことを決して悪いとは申しません。しかしこれが単なる形容詞であるのか、実際に何かの具体的な事実があったのか、問題はここにあると思うのであります。一体総理は、日米関係の新しい時代と言うのはどういうことを意味しておるのであるか。私は会談を終えて日米関係の新時代が到来したと述べました、こう言っておりますが、日米関係の新時代があの会談のどこから生まれてきたのであるか、一体その内容は何をなすものであるか、その点を明確にしていただきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私は日米の問の関係はきわめて緊密な協力関係に従来とも立っておると思っておりますが、しかしわれわれはこの戦後の日米関係というものを見てみると、まず長い間の占領政策を通じて日米の協力が行われた。さらにサンフランシスコ条約の後において、いわゆるサンフランシスコ体制をとって、日本が政治的その他あらゆる独立を獲得いたしたのでありますけれども、われわれが長い占領時代を通じてのものの考え方や、あるいはいろいろな体制というものが、ほんとうに日米対等の地位に立って、日本が真に自立独立の立場から、アメリカとの協力関係というものを樹立するということにあらゆる点が十分なっておらなかったと思うのであります。私は今後の日米関係は、あくまでも日本が自主独立の立場に立って、日米間の問題を日米対等の立場でものを考え、ものを処理するという関係を作り上げることが必要であるという見地に基いていろいろな話し合いをいたしました。その点において両方の首脳部の問において完全に意見が一致して、今後の日米問題を処理し、ものを考えていくための基礎がそこに確立されたという意味において、新時代に入ったという確信を得たわけでございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 日米両国が平等の立場に立って云々、また自主独立の立場に立って云々と、こういうことがその日米関係が新しい時代に入ったという理由だ、こう言われまするが、私はそういう抽象的なものが日米の新時代とよもや岸総理はその当時においてはお考えになっておらないと思うのであります。私は日米共同声明をここに持っておりまするが、一つ一つ申し上げることは差し控えますが、日米共同声明によりますると、全面戦争の危険はある程度減退してきたが、国際共産主義は依然として大きな脅威であることについて意見が一致した、こういうことを言い、それから両国は国際連合の諸原則に従って自由と正義に基く平和の実現のためにみずからささげるものである、こういう言葉を使っております。さらに両国は平和と自由が支配的となり得る状態を確立するため努力することを決意するものである、こういう言葉を使っております。この言葉は表面から見るならばきわめて平凡な言葉であります。自由とかあるいは国際連合の諸原則に従って自由と正義に基く平和の実現とか、しかしそのあとにみずからをささげるものである、こう言い、両国は平和と自由が支配的となり得る状態を確立するため努力することを決意するものであるという言葉を使っております。これを率直に申しますと、平和とか自由とかあるいは民主主義とかいう言葉を使っておりまするが、言外にわれわれが看取せられますることは、日米間の特別に深い関係が樹立されたのではないかということであります。一種の日米同盟、あるいは言い得るならば、日米神聖同盟が成立したのではないか、そういう感じが受けられるのであります。私は岸総理が新しい時代と言う、その新しい時代というのは、その内容にこれを持っておるのではないか、こういう日米間の、言葉はきわめて抽象的であるけれども、一種の日米の神聖同盟というものが確立されたのではないかという印象を免れることができないのでありまするが、この間の真相はどうでありましょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 共同宣言に示されておる字句はそのままに御解釈下さっていいのであります。私どもその背後に何らかの意図が隠されておるというような事実は絶対にございません。この日米共同宣言の全文を、日米の間に新しい同盟か何かが結ばれたのではないかというような意図に御解釈のようでありますが、私どもは絶対にそういう隠れた意思はないのであります。ただ両国が完全にその目的に向って、今までよりも一そう協力関係を深めていこうということは、申し合せたことの全体のあのままの文句であります。それ以外の何ものも隠されておらない、かように御解釈願います。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 もし岸総理の言うがごとく、日米共同声明は文字通りに解釈すべきものであるとするならば、きわめて抽象的なものであります。その抽象的そのままであるとするならば、岸総理がみずからアメリカに乗り込む際に、新しい時代が始まるのだ、こう言い、帰ってきても私の会談によって新しい時代が到来したと、こう言って自負されるのにはあまりにこれは誇張に過ぎると思うのであります。この岸総理の考え方によりますならば、新しい時代とおっしゃったあなたの言葉が単なる形容詞にすぎないのであるという趣旨でありましょうか、それともこの日米共同声明に盛られた内容にはもっと深い意味があるのだという意味でありましょうか。私はこの関係はきわめて矛盾しておると思うのであります。もし岸総理が言うがごとく新しい時代であるとするならば、新しい時代にふさわしい内容があるはずであります。その新しい時代にふさわしい内容がないとするならば、新しい時代に入るのだ、おれはこれだけのことをやってきたというのは、単なるこれは国民に対する一つの形容詞、こういうふうに解釈すればそれでよろしいでしょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 御解釈はいろいろな人人によっていろいろな解釈がされますが、私自身は先ほど来申し上げておりまするように、日米の間において真に自主独立の立場で、対等の地位に立って物事を処理する、協力関係を深めていく、これに徹した意味において、今までの占領時代からのあのいろいろな問題、考え方というものを払拭して新しい関係の基礎を作っていくという意味において申し上げておるわけでございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 岸総理は自主独立の立場、自主独立の立場で、平等の立場でと言うのでありますが、その日米の会談に報道陣として加わった人たちの話を聞くと、岸総理が平等であったのは、アイゼンハワーとのゴルフだけであったという話があるくらいで(笑声)、どうも私は平等であったということも形容詞としてしか受け取れないのであります。  その次にお尋ねしたいと思いますのは、日米間で話し合いたいと岸総理も言い、また現実に共同声明にも載っておりまするものは、安保条約の改訂の問題、沖縄、小笠原の返還問題、東南アジア経済開発の問題、中共貿易の問題、日本の防衛問題、原水爆禁止の問題、大体この六つであると思うのであります。これに対して、どういう跡始末ができたかということになりますると、この共同声明によりますると、安保条約につきましては、いわゆる日米の合同委員会、沖縄、小笠原の返還問題につきましては、これは向うの拒否するところとなり、東南アジアの経済開発に対しては岸総理が大いに説いたけれども、これは総理大臣の見解は米国において研究されるであろうと軽くあしらわれておるのであります。中共貿易につきましては同国の立場をおのおの主張をしたということ以外に、何ら直接の問題には触れておらないのであります。  日本の防衛問題については、米国は日本の防衛計画に歓迎の意を表した、こういうことが述べてあります。  原水爆禁止については、「両国は兵器および通常兵器の双方における軍備の縮小のため、有効な国際協定が世界の将来にとって至大の重要性を有することについて完全に見解を同じくする」と言っておりますが、結論としては、「両国はこの重要問題について今後とも緊密な協議を行うものとする。」こういっておるにすぎないのであります。これによりますと、岸総理が意気込んで行かれました六つの問題も、いずれも軽くあしらわれた程度にしかすぎないと思うのであります。これが違うならば違うように御説明願いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 日米共同宣言に出ております通りの話し合いであり、結末である、こういうことであります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 総理がそういう御答弁をなさるならば、こちらも少し突っ込んでお尋ねしますが、日米共同声明における重大なる課題の一つは、沖縄、小笠原の返還問題であります。これに対してアメリカ側は、日本の立場を認めておらないのであります。共同声明においては、沖縄、小笠原を返還しない理由として、「大統領は日本がこれらの諸島に対する潜在的主権を有するという米国の立場を再確認した。」日本の潜在主権は認めるという米国の立場であるということを、再確認した、こう述べておりますが、「しかしながら大統領は脅威と緊張の状態が極東に存在する限り米国がその現在の地位を継続する必要を認めるであろうことを指摘した。」こう書いてあります。問題はここにあると思うのです。「しかしながら大統領は脅威と緊張の状態が極東に存在する限り米国がその現在の地位を継続する必要を認めるであろうことを指摘した。」沖繩、小笠原が国民の希望するように返ってこないのは脅威と緊張の状態が極東に存在するからなのか。一体岸総理はアイゼンハワー大統領との話し合いにおいて、脅威と緊張が極東に存在するということを認めてこられたわけでありますか。極東に存在する脅威と緊張というのは具体的に何をさすのか。この具体的な問題が解決しない限り国民の念願するところの沖繩、小笠原は永久に返ってこないのでありますが、あなたがお認めになった極東における脅威と緊張というのは何でありますか。何をさしてあなたはアイゼンハワー大統領に極東に脅威と緊張が存在するということをお認めになって帰ってこられたのでありますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 この沖繩問題に関する限りにおいて、私の見解と大統領の見解は一致しなかった、そのことが共同声明に明らかにされておるのでありまして、私は極東における脅威が存在する限りアメリカが今の状態を当然続けるということを承認したわけではございません。その点は強く私の意見と大統領の意見が違っており、大統領はそういうことを強く言っておるということが共同声明に明かにされておるだけであります。私はやはり国民の念願でありますから、今後の努力によりまして沖繩の返還に向ってあらゆる努力を続けていくという考えでおります。極東における脅威ということは私がそれを承認したということではございませんで、大統領、アメリカの言い方であります。そしてその脅威の内容としては、大統領からアメリカの見ておる極東における情勢について話はありましたけれども、共同声明をごらんいただいても私が承認をしたということにはなっておりません。向う側の主張と私の主張が違っておるということであります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 そうすると共同声明にありまする沖繩、小笠原に関する問題、極東に脅威と緊張の状態が存在するというそのことはあなたはお認めにならない、これは共同声明にあるにかかわらず、自分としては極東には脅威と緊張はないという考え方でありますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 共同声明において沖繩問題に関して、アメリカが潜在主権を再確認するという言葉に続いてこれこれを大統領として意見を述べ、アメリカ側として主張したということになっておりまして、両方がそうことについて意見が一致したということになっておりません。事実一致しなかったわけであります。ただ、その共同声明に従ってあげてありますところの極東における脅威云々は、アメリカ側の見るところの見解でございます。私自身が極東において脅威があると思っているか、または全然そうでないかということはこれはおのずから別の問題であります。この点において私の主張が認められなかったということであります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 重要な問題ですから重ねてお尋ねしますが、そうすると総理大臣は極東に脅威と緊張が存在するものとは考えない、日本の立場からは脅威と緊張は存在するものとは考えない、だからこれからも日本としては、存在しないものとしてあくまでも沖繩、小笠原の返還をアメリカに交渉し続ける決意である、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私どもの考えから言うと、極東に緊張や脅威が存在しておろうがおるまいが、これらのものの返還を要求するのは別の根拠から来ているわけでありまして、従って脅威がなくなったから返せというようなつもりではございませんで、われわれはあくまで終始一貫した主張を続けるつもりでおります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 私はアメリカ側が脅威と緊張が存在する限り沖繩、小笠原を返還しない、こういうことを明確に言っている限りにおいては、これと別な問題を持ち出しても交渉の軌道に乗らないと思うのであります。実際問題として日本側は脅威と緊張はないのだという事実を主張することでなければ、アメリカ側を納得せしむるわけにはいかない。平等の立場に立つと言うのはそれを言うだろうと思います。向うの言うところは一応認めておいて、別なことをこっそりわきから言うというならばこれは平等でも何でもない。そこのところをもう一ぺん総理大臣の決意のほどを私は承わりたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 もちろん外交交渉におきまして向う側の主張を打ち破り、もしくはこれを緩和するためには向う側の主張をくつがえすような事実を作っていくことがもちろん必要であります。私はそれを全然否認するわけではございません。しかしわれわれが沖繩に対する主張――すなわちわれわれとしては一応アメリカがこれをサンフランシスコ条約によってある程度軍事基地として用いているということ自体をすぐ否認しようというわけではありませんで、第一の問題としては施政権を返す、施政権を返すにつきましてもあるいは段階的な問題もございましょう、そういうことを頭に置いて交渉をあらゆる面からして、そして究極の目的を実現するというのが外交交渉のわれわれの努力をしていかなければならぬことである、こういう意味においてあらゆる点において努力をいたしますけれども、今直ちに脅威があるかないかということを真正面から論議したってこれは始まらぬ問題である。従って私自身としては、究極の目標に向ってあらゆる努力をするということを申し上げるほかない、かように思います。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 石田労働大臣が三時から用があるから先に質問してくれと言われたのですが……。それでは労働大臣に対する質問は保留いたしまして、総理に対する質問を続けます。  領土の問題はきわめて重要な問題でありますが、これは同時に、日本の外交政策にも関係がある問題であります。そこで岸総理が先般対米交渉をされましたときに、沖繩、小笠原の問題につきましては今言われましたが、これと関係する歯舞、色丹の問題があるとわれわれは思うのでありますが、当然歯舞、色丹を返還してもらうためには日ソ平和条約の締結ということが前提となっているわけでありますが、日ソ平和条約の締結については、これはもし岸総理の考え方をもってするならば、何らの支障がないはずであります。極東において緊張あるいは脅威というものが考えられない、あるいは日本は全く自主独立の立場から問題を処理するのであるとするならば、何もこれに支障はないはずだと思う。しかるにこの日ソ平和条約の締結の問題は、今日長い間高閣につかねられておるのでありますが、日米間の問題として当然これも話題になったはずだと思うのですが、訪米の際にこれはどういう御論蔵をなさったのであるか、日ソ平和条約の問題に対してアメリカ訪問の際にどういう論議をされたか、私は承わりたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 アメリカ訪問の際に、日ソ平和条約の問題につきましては、何らの論議も行われておりません。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 私はこれは非常に意外なことを聞くと思うのであります。沖繩、小笠原の問題を持ち出すならば、当然アメリカ側から歯舞、色丹あるいは千島の問題が出るはずでありまして、出ないはずはないと思うのであります。しかるにこの問題については何も論議したことはないというのでありますが、何ゆえにこれを論議しなかったのでありますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私自身は、ソ連との平和条約の問題、またソ連に対する日本との領土問題につきましては、これは日ソ問においてまず解決すべき問題でありまして、沖繩、小笠原の問題と不可分の関係に立っている問題でもございませんから、私の方から持ち出す考えは初めから持っておりませんし、アメリカ側もその点について何ら言及しなかったがゆえに、その問題についての論議が行われなかった、これが事実でございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 私は当然この問題は持ち出すべきはずであるし、持ち出さなければ怠慢であるという問題であろうと思うのであります。この日米共同声明によりますと、国際共産主義の脅威云々という言葉がありますように、この問題は当然日米両国間において話題になったはずであります。話題にならなければ不思議であります。もし、それをことさらに回避したとするならば、私は岸総理がどんなに自主独立あるいは平等の立場と言っても、ことさらに卑屈な態度でもって日米交渉に臨んだとしか考えられないのでありまして、この当然の問題を何ゆえに特ち出さなかったのであるかという点を重ねて私はお尋ねいたします。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 この点に関しましては、河野君と私はむしろ見解を異にする問題であります。日本が自主独立の立場であればこそ、この日ソ間において解決すべき問題を何もアメリカに持ち出すとか、あるいはけんかをさして、北の方の領土問題と南の問題を関連せしめるというふうな性質のものではない、かように考え、今もそう思っております。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 私は岸総理のその考え方には納得することができない。なぜ納得することができないかと申しますと、先ほど岸総理は、私が冒頭に質問した質問にお答えになって、日本としては東西両陣営が対立しておることはきわめて遺憾なことであるから、その間にいてこれを歩み寄らせるよう調整するように努力するのだ、これが日本の外交方針だ、こういうことをお述べになったばかりなのであります。そのときに、アメリカと交渉する際において、この問題に触れないとするならば、岸総理の言われたさっきの言葉は本心ではないということにならざるを得ないと私は思のであります。  そこで私は、もう一つ岸総理にお尋ねしたいのでありますが、あるいはこれは、岸総理は否定なさると思いますが、否定なさるならばなさるでけっこうでありまして、事の真相を国会を通して明らかにしていただきたいと思います。  七月三十日の中国の「人民日報」においては、こういうことが書いてあるのであります。岸総理が台湾を訪問されたとき述べられた言葉として書いてあります。ある意味では、共産主義が日本に浸透するには、ソ連からするよりも中国からの方がおそろしいとも言える、従ってこの意味では大陸を回復するとすれば私としては非常にけっこうである、こういう意味であります。台湾政権が大陸を回復するとすればけっこうである、こういうことを述べられたのを「人民日報」は取り上げておるのであります。これは岸総理としては言われたのか言われないのか、言われないとすれば、これを適当な機会において打ち消されるべきはずであると私は思うのであります。日本の保守党は決して容共でも中立的な立場でもない、こういうことも言ったと書いてあります。私は何も「人民日報」をそのまま信用しようというのでもないのでありますが、しかし、これをもって中国人民は、日本が中国の内政に干渉するものであって大陸反攻をけしかけるような挑発的なものである、こういうことを述べておるのでありまして、私は、日本を代表する総理大臣としては、この問題について明確な態度を表明せられるのが適当であろうと存ずるのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私が台湾を訪問した際の蒋総統との会談内容として伝えられ、それに対して周総理からも相当な非難が当時与えられたということは、私も新聞等によって伝えられたのであります。私はその当時、その真相につきましても委員会等において率直に申し述べたのでありますが、第一に蒋総統との会談において蒋総統から大陸反攻という言葉が出たことは一ぺんもございません。ただ蒋総統の言った言葉は、中国の人民は、歴史的にいって世界のどの民族よりも自由を愛し、自由のために戦ってきておる民族である、長い中国の歴史を見ても、一時その自由が他民族によって支配されておるという場合においても、それは必ず中国人民の自由を求める熱望によってやはり自由化されておる。従って、現在中国大陸が共産主義のもとにおいて、中国の多数の人民がその自由を失っておっても、必ず中国人は、自由の回復をいつの日にか実現するのだ、私はそのことを願っており、必ずそれができるという信念を持っておるということを、この蒋介石総統は強く言っておったのであります。自分の方で反攻して中国大陸を回復するとかいうような話は、その当時出なかったのであります。私は、その蒋総統の強い信念と、そういう政治的の決意、必ずそういうことになるというこの信念を聞いたことに対して、ただ敬意を表しただけであります。私自身が、人民日報等に話しているように、これを扇動するとか、あるいはこれを表明するというようなことを言りたわけではございません。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 この点は、総理としても、私は国際的に打ち消すならば打ち消すとはっきりした態度をおとりになる方がいいと思う。最近の日中貿易協定でも、こういう問題が私は相当の支障を来たしておると思うのであります。  その次にお尋ねしたいのは、最近の問題でありまするソ連の大陸間弾道兵器の成功、人工衛星の打ち上げの成功等々によって、世界の物情が騒然としておりまするが、この問題についてであります。この問題に関しまして特に注目されまするのは、アメリカがどういうふうな出方をするかという問題であろうと思います。すでにアメリカにおいては、ことしの夏ごろからいわゆる大量報復というものについて反省をしなければならないのだという所論が現われておることは、岸総理も御存じだと思うのでありますが、最近アメリカのダレス国務長官はフォーリン・アフェアーズの十月号に、これは三十五周年記念号でありますが、「アメリカの政策における挑戦と報復」という題で、アメリカの新戦術についての見解を発表しております。この一文は、アメリカの防衛及び外交政策について重大なる転回を示唆するものであるとして、いろいろなところで論評されております。私もその論評を読んでおりますし、いろいろ見ております。わが党のアメリカ訪問をしてこられました河上顧問以下の方々からも、この問題はアメリカにおいて相当論議をされておるという報告を受けておるのであります。そこで私は、この問題についてお尋ねをしたいのでありますが、このフォーリン・アフェアーズに載りましたダレスの論文を読んでみますと、大体こういうような点に要約されると思います。  過去十年間自由世界の自衛戦略は、侵略国に大量報復をなし得るという米国の能力を主としてたよってきた。しかし人類の多数を破滅させ得る能力によってのみ維持されるような、そういう平和にたよることは満足すべきものではない、科学における最近の進歩は、核兵器の性能を一変させた。今までの核兵器は、使用する者も使用される者も同様に被害をこうむるという危険性を持ったものであるが、今やその被害を目的物にのみ局限し得る核兵器を作ることができるようになった。核兵器は、今や局部戦争に使用するようになったので、侵略国はみずから侵略に失敗するか、それとも大量報復の危険を侵すか、どちらかでなければ侵略ばできないようになった。従って、各国は小型核兵器と通常兵器と両方持って防衛すべきである。その上に立って、米国の援助計画を長期的に、かつ能率的に受け入れることを考えるべきである。今や原子力の世界における科学の知識のすみやかなる発達に伴う政治、軍事的の変化を考うべき段階に達しておる。政治思想がこれと歩調を合せることができない、むずかしいということだけが問題なわけだ。こういう意味のことを述べておるのであります。  この論文は、今申し上げましたように、アメリカにおいて非常に問題になっておるばかりでなく、いろいろなところでこれが取り上げられてアメリカの新しい外交及び防衛の政策として取り扱われておるのであります。  これによりますと、一方においては、各国をしてみずからを守り得るように義務づけるとともに、大戦争と小戦争とを区別して、小戦争に用いる小型核兵器を、その当事国の責任において保有利用せしめるとともに、他方においては、大量報復による危険性を米国の方から取りはずそうとするものであると私には思われるのであります。このダレスの論文に現われた新政策は、防衛及び外交におけるアメリカの新しい重大な転換として論議されておるが、これに対して政府はどういうお考えを持っておるのであるか、これを承わりたいのであります。  私が第一にお尋ねしたいのは、アメリカは日米共同声明以後、その防衛並びに外交方針に、今申し上げたように非常に大きな修正を加えておるのであります。わが国はこれに対して再検討を加える必要はないかどうか。  第二番目に、日米共同声明の当時においては、大量報復をなし得る、またなすことを誇っておった米国の軍事力に信頼するということが、自由主義諸国の安全であり、従って日本の安全もそこにあると考えていた。岸総理もそうお考えになってきたと思うのでありますが、アメリカが小型核兵器の理論を持ち出してきた以上は、岸首相の立場からいっても、日本の防御及び外交の方針を再検討すべきではないだろうか。  第三番目に、ダレスの方針からすればすでに陸上軍の撤退は当然のことであって、また日本が原子力部隊の基地化するというようなこともあるいはないかもしれないが、しかしそれだからといって、われわれは安心するわけにいかないのであって、小型核兵器の貸与あるいは局部戦争用の原子兵器の持ち込みという問題が、これにかわってくる可能性があると思うのであるが、これらの点について、一体岸総理はどう考えておるのか、重ねて防衛庁長官は、これらの問題についてどういう考えを持っておるのであるか。日本の防衛計画は、岸総理がアメリカ訪問をされたときにこれを示されて、そしてアメリカはこれを多としたといっておるのでありますが、そのアメリカの多とした防衛計画というものは、一体どういうものであるか、これをお示し願いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 近時の科学の発達、これが兵器として将来現実に利用されるということを考えまして、いろいろな意味においてのものの考え方に大きな変更を生じていくような傾向があることは、これは私は認めます。しかし現実の問題として、私はこれらがすべて――大陸間弾道弾の問題やあるいは人工衛星の打ち上げの問題から、すぐ世界の大勢が、現実が変った、こう見ることは飛躍であって、やはり現実の問題としては、われわれの従来考えておるところの考え方を進めていくと同時に、これらの情勢に対しては、常にあらゆる面から検討を加えていくということが必要だろうと思います。  核兵器の問題に関しましては、いろいろな発達、変化をいたしておりますが、私は従来国会におきましても明らかにいたしておるように日本に原子力部隊はこれを駐留せしめない、また日本の自衛隊をこれらの兵器でもって武装する意思はないということを申し上げましたが、今もなお同じような考えを持っております。そうして、やはり通常兵器によるところの防御をわれわれが考えておる日本の国情と国力に応じた程度においてこれを樹立する。むしろいろいろな科学的な進歩については、これが研究の開発ということに力を入れていくという方針につきましては、今これをにわかに変更する意思は持っておりません。アメリカに示しましたといわれる国防計画は、すでに当時すぐ発表されておりますように、日本の国防会議において決定を見ましたところのものでありまして、それ以上には何ものも出ておりません。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○津島国務大臣 お答えいたします。ただいま岸総理からのお答えによって一応御質問の点についてのお答えをした、こう思うのでございますが、御引用になりましたダレス長官の意見、これは今回のICBM、人工衛星というような実験が行われた前の意見であったと思います。すなわち従来の大量報復から小型の核兵器にかえて各国共同で防衛の体制をとろうといったような意見は確かに示しておりますが、しかしながらこれはそれだけに転換して防衛の体制が成り立つかという問題全部ではない。従って御承知のように今日アメリカにおいてもIRBM、ICBMその他の研究というものは、あらゆる事態に処して必要な戦略体制を確するという方向に向っておるように思います。最近には御承知のように英米の首脳会談からさらに発展してNATO、その他の防衛体制においても共同的の科学研究を進めよう、こういった傾向でございます。これらの新事態に処して今後の防衛戦略その他兵器等がどうなるかということは、非常な重大な問題であろうと思うのでございます。  それはそれといたしまして、ただいま御質問のうちにあり、また総理からお答えになったと思いますが、わが国の防衛体制がどうなるかという問題が重大な関心半であろうと思います。私どもはこういった新事態に処して、わが国としても国力、国情に応じて自衛の体制を固めていくということは、これはもう変らない点であります。ただ従来十分でなかった誘導ミサイル兵器というものの研究には今後最も重点を置いてやっていきたい、また装備の関係においても、質的の改善を加えたい、こういう方向に持って、きたいと思います。でありまするけれども、御承知のように、まだ自衛隊が発足してわずかの期間でございまして、研究機関その他においても十分であるとは申し上げかねる次第でございます。でありまするから、これは国防基本方針にすでに掲げてあるように、国連の憲章によるいわゆる集団安全保障、また日米安全保障条約に基く保障というものによってこの防御を全からしめていく、こういうことは免れないのみならず、またそうあるべきで、ほかにない、こう考えておる次第でございまして、新事態に処して適用すべき施策については十分に研究をいたしたい、こう存念しておる次第でございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 総理大臣並びに防衛庁長官の御答弁は、私がお尋ねした点と少しく的がはずれておると思うのであります。私はその大量報復、小型核兵器という問題について、それがいつ始まったかというようなことをお尋ねしているわけではございませんし、また岸総理が核兵器の持ち込みはあくまでも拒否するのだ、原子力部隊は国内には置かないという信念には変りはないのだ、という抽象的な言葉でもってお答えして済む問題だとも考えておらないのであります。今、私が申し上げましたようにフォーリン・アフェアーズに述べておるダレス国務長官のこの考え方というものは、アメリカにおいてもいろいろ問題にされておるように、これは国際的に重要なアメリカの外交及び防衛の方針における新しい転換である、こういわれておる。その転換に応じて今度は小型核兵器を各国に持ち込む、とこういう問題になってきておるわけです。だから、原子力部隊が日本に駐留しないから、そういうことは大丈夫なのだというようなことでは解決ができない問題になってきておる。今、防衛庁長官はミサイルの問題を言われましたが、このミサイルと核兵器というものは、区別されるかと申しましたら、私は防衛庁長官もそれをはっきりと区別されることはできないと思う。そこに新しい角度からの問題が起ってきておる。小型核兵器を押しつけられてくる、持ち込まれてくる。これに対して日本はどう考えなければならぬか。われわれは原子力部隊は受け付けないのだ、平和を愛するのだというような抽象的な言葉では、もう解決できない問題だ。そこの点を一体どう対処されるのであるか。これを私は承わっておるのであります。御両所からもう一度御答弁願いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 兵器の発達は、いろいろの点においてわれわれは科学的な研究を進めていかなければならぬことは言うを待ちませんけれども、現在までいわれておるところの、私は核兵器で日本の自衛隊を武装する意思はないということを申し上げておるのであります。従いまして今御質問になっておる、アメリカの原子力部隊が日本に駐留するということではなしに、日本の自衛隊そのものを小型核兵器でもって武装するということを押しつけてくるだろうというお話に対しましては、われわれはそういう意思はない、原子力部隊の駐留と同様にこれを拒否するという考えについて、少しも変りがないということを申し上げておきます。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○津島国務大臣 ただいまの総理の御答弁の通りでございまして、今、私が申しましたミサイルというのは、核兵器弾頭をつけたミサイルの研究をするという趣旨ではございません。核兵器と誘導ミサイルということは、誘導ミサイルは単純に輸送の問題でございます。でありますから今研究、開発しておるのは、核兵器を使用するものとして研究しようという意図ではございません。また、ただいま総理からの御答弁にありましたように、防衛長官としては、小型であるかどうか、その問題は別として、外部から核兵器を日本で持つべしというような話し合いをしたこともなく、要求されたこともないのであります。また、そういうことがあった場合は、ただいまの総理の答弁によって御了承願います。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 防衛庁長官にお尋ねしますが、もし核兵器の弾頭をつけるというならば拒否するとおっしゃるのだが、それではミサイルの研究は何のために御研究になるのでしょう。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○津島国務大臣 普通兵器の一つの種類として、有人機によらないでもある楠の爆弾を誘導飛翔体にしてやるということは、核兵器の問題ではないのでござまいす。これはもしそういったことをやろうと思えばやれる。これはオネスト・ジョンのごときもそうです。そういうものでございまして、これは技術面のことでありまするけれども、今の方針とは何ら矛盾しない、こう私は思っておるわけであります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 私はその言葉は単なる言いのがれとしか考えられない。それなら何のためにミサイルを研究するのか。伺いますが、そういったオネスト・ジョンとかそういうものをアメリカから購入するために円資金をもって購入するという交渉を現在なさっておるばずだと思うのでありますが、これはなさっておりますか、おりませんか。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○津島国務大臣 この種の兵器を円資金をもって購入する交渉をしておるかどうか、こういう御質問だと思うのでありますが、それはいたしておりません。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 そうすると、防衛庁長官に重ねてお尋ねしますが、外国電報は、しばしば日本はアメリカに向って円資金をもって新型兵器の購入を交渉しておる、このように東京電報として伝えておりまするが、これはうそですか。もしあった場合には防衛庁長官はどうなさいますか。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○津島国務大臣 今の御質問に対してお答えいたします。核兵器の新兵器を円で日本が買うというような記事が電報にあったが、これは事実かどうか、そういう交渉があったかどうか、こういうことでございますが……。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 核兵器じゃないです。ミサイルです。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○津島国務大臣 ミサイルの問題についても、円資金でこれを買うという交渉をいたしたことはございません。また先方は正式に何らそういう申し込みをわれわれに持ち出したこともございません。これは事実でございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 重ねてお尋ねしますが、アメリカの電報によりますると、すでに岸総理が行かれた当時においてもこの問題についての交渉を進めてこられた、そうして日本はドルが下定しておるからドルによってアメリカの新型兵器を自うわけにはいかないが、円資金でもって買うならばこれは日本でも買い得る、その日本の立場をアメリカ側においては好意的に考えておる、こういう一電報がはっきりありまするが、これはうそでありますか。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○津島国務大臣 お答えいたします。ただいまの電報はどういう新聞なり通信社の通信に現われておったか、それをまず承知したいと思います。しかし、あるいはこういう意味のことをそういう新兵器というかミサイル兵器という意味に受け、取られたのではないかと私は推測いたします。岸総理が渡米中に、それに随伴したある人と先方の防衛の一部を担当しておる人との間に話が起ったという問題がございます。この要領を私は長官として非公式に聞きました。正式に米国政府なり事務当局から言われたものではございません。それは日本の自衛隊の現在やっておる装備の関係、これは多分に装備の中にアメリカの供与というものが入っておるわけですが、全然ミサイル兵器は入っておりません。たとえば砲であるとかあるいはいろいろな飛行機といったようなものがあるのです。これを日本が単純な供与でなくて買付の方法に切りかえる、その財政上の負担は、日本が今までの供与であったものを買いつけ、現金で支払う資金は円でもいい、ドルが非常に不足しておる時代でもあり、その円資金をどう運用するかという問題は第三段に起る問題でありますが、現在のアメリカの兵器等の供与にかえるのにこういったような買付、しかもその代金を円でもって支払ってこれを積み立てて利用するといったような構想が話されたということでございます。その構想は私はそれらの会談というか話し合った人から聞きました。しかも今の電報においてミサイル兵器をするのについて円で買ってもいいというような具体的な話は全然私は承知しておりません。そういったようなことがあるいは誤まり伝えられた、こういうことがあるかも一わかりませんが、これはよくその当時のそういった話し合いをした方にもお聞き下すった方がはっきりわかる点であろう、私は、今までのところその通りでありますから、さよう御承知願います。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 だんだん語るに落ちたような格好ですが、証拠を出せというならばお出ししますけれども、それほどのこともないでしょうからあれですが、そういう日本で円資金で買おうというものの中に、オネスト・ジョンとかそういうものも含まれておるというのです。それは何も防衛庁長官をここでいじめるのは私の本意ではありませんから、私も特にそれは申しませんけれども、とにかく私たちの主として憂慮する点は、そういうような形において、小型核兵器という名のもとに日本の自衛隊がだんだん知らず知らずの間に核武装をされてくる。この問題をわれわれは簡単に考えるわけにはいかない。ただダレス国務長官のあのフォーリー・アフェアーズに載った論文に徴してみても、これは相当に憂慮すべき根拠があると思うのです。そこのところを一体政府としてはどう考えておるか、このことを明確に答えていただきたい。科学が進歩するとかというようなことをわれわれは聞いているのではなくて、ほんとうにこういう小型核兵器をばらまいて、今度はアメリカの戦術が、そういうことによって、お前のところはお前まずやれ、局地戦争、小戦争にはお前たちだけでやれるのだ、こういう考え方に変ってきておるのです。その行き方に対して一体政府はどう考えておるのだ、どういう反応を示しておるのだ、これが私が聞きたいところの焦点なんであります。ですから、その点について、もっと丁寧に親切に答えていただきたいと私は思うのです。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○津島国務大臣 お答えいたします。ただいままでお答えしたところで大体御了承願えると思うのでございます。そういったような事態に対しては十分善処していきたいということで、ただいままでの答弁によって御了承願いたいと思います。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 それは私は善処とかそういう言葉をお聞きしようというのではなくて、そういう小型核兵器にかかわらず、そういうものによって日本の自衛隊を武装するというようなことは現在考えておらぬのならおらぬと明確に、それはやりません、将来もやるつもりは持っていない、アメリカがそういうことにかりに戦術の転換をしてきても、日本としてはそういうことは考えておりませんと明確にお答えしていただきたいと思います。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○津島国務大臣 ただいまの点は、総理からお答えした通り、そういうものを使用する、持ち込むということはいたさない、こういう方針でございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 一応その点はその程度にしておきましょう。  私は大体総理並びに防衛庁長官に伺ったのでありますが、防衛庁長官についでにお尋ねしたいのは、日本の自衛隊において飛行機事故というものがひんぴんとして起るわけでありますが、このひんぴんとして起る飛行機事故というものはどういうところに原因があるのであるか、そして現在までに起った飛行機事故の件数並びにその犠牲者はどのくらいのものであるか、その原因はどういうところにあると自衛隊においては判断しておられるのですか、これらの問題についてお尋ねしたい。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○津島国務大臣 お答えいたします。航空自衛隊その他飛行機の事故が多数起ったということは、まことに遺憾だと存じております。ただいまのお問いは事故件数はどのくらいあるかという計数の問題であると思いまするから、調べてあるものをここで申し上げます。十月末現在で、航空自衛隊の飛行機事故の統計は、きわめて軽微なるものはこれは事故といたさない勘定にいたしまして、三十年では九の事故があり、十二人死亡いたしました。三十一年では四十五の事故があり二十五人の死亡者が出ました。三十二年は十月末まででありまするが二十三の事故で死亡は九人でございます。昨年よりは本年はその件数並びに死亡者は減少しておるというのが現在までの状態でございます。これを総じて統計を合計いたしますると、七十七の事故に対して四十六人の犠牲者を出しておるというのが事実でございます。なおこれがどういう原因で起ったかということにつきましては、去る七月、八月にかけて綿密に検討し、特に現場において四十日以上にわたりまして検閲を行いまして、十分詳細なる原因を探究することができました。そのおもなるものは、航空路の狭いあるいは誘導路の狭いといったような飛行場自体にある故障も若干あるのでございます。また整備員の不足といったようなこともございますが、これらを通じて、あるいは操縦士の環境衛生というか、そういった点においても不完全なものがある。これらの原因を全部調べまして、これに対抗する措置といたしまして、その原因に適応すべく現在の予算の範囲内において約六億円ばかりを振りかえて、その防止対策に充てておるという状況でございます。なおこの問題は航空力の実態に関する問題でございまするから、来年においてはこれに重点を置いて適当の施策を要求いたしたい、こう考えておる次第であります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 飛行機の事故が起りましたのは、貸与を受けた飛行機でありますか、それとも購入した飛行機でありますか。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○津島国務大臣 機種によって多少の相違がございます。しかし米国製の飛行機の事故――調べたところによりまして、微細なものを入れて大体事故全体の一四%ばかりは米国の飛行機のものでございます。それから国産による飛行機は大体事故全体で――操縦のへたとかそういうものはやめて飛行機のためによる事故でございますが、二・四%、大体こういうような計数でございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 飛行機の機種の問題について、F86Fという飛行機はもう日本では作らないことにするので新しい機種に変えるのだということが最近の新聞に報道されておりますが、日本で作る機種――設計はもちろんアメリカだろうと思うのでありますが、この機種そのものに関係があるのですかないのですか。一体その責任は操縦者が負うべきものか、飛行機自体が負うべきものか、その責任の所在は一体どういうところにあるのですか。

津島壽一自由民主党防衛庁長官

○津島国務大臣 お答えいたします。F86Fは米国で作ったものが大体百七十一機ばかり供与を受けております。わが国の国産のものは、三百五十機ばかりを国産しようという計画で、すでに約五、十二機くらいはできたかと思います。従って二百二十三機くらいになると思います。両方にまたがっておるわけでございます。この飛行機がそれ自体において非常な故障があるかどうかという問題については、これは十分検討を要するものでありまするけれども、最近ある一部のものに胴体の中の油を入れるところに多少締めつけの不完全であったものが三十二機ばかり発見されたわけです。これは故障によってではなくて点検の上で発見したわけでございます。それは今修理中でございますが、この飛行機自身が、機種として非常に操縦上の欠陥があるという機種のものではございません。そういう状態でございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 次に私は経済問題について、大成大臣に主としてお伺いをしたいと思うのでありますが、大蔵大臣は現在の経済状態を就任早々の言葉として、日本の経済は現在病気なんだ、病気なんだからしてこの病気の経済を医者にまかせてくれ、こういう言葉を言われております。これは比喩としてはまことにその通りだと思うのでありますが、この病気は一体日本の経済自体から発した病気であるのか、政府の施策のよろしきを得ない結果として起った病気であるのか、この点は大蔵大臣はどういうふうにお考えになっておるのか。日本経済が勝手に起した病気とお考えになっておるのか、それとも政府の施策よろしきを得ないために悪化したところの病気であるのか、この点は、病気と御判断なさる以上は、病気の原因はどこにあるのか当然診断されておるはずだと思うのでありますが、それを承わりたいと思うのであります。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 今の御質問に端的にお答えいたします。それは非常に私はむずかしいと思います。たとえば人間が病気になりますのに、今かぜが流行しておる、かぜの流行が悪いのか、本人の不養生が悪いのか、なかなか判断つきません。(笑声)

河野密日本社会党

○河野(密)委員 全くそれはその通りであると思いますが、しかしそのかぜが流行するときに、お前、オーバーを着ないで外を歩けと言って指示した医者があるとすれば、その医者も責任を負わなければならぬ。あるいは下痢をしておるときに、もっと食えと言う医者者があったとするならば、その医者の責任はきわめて重大だと思うのであります。その点は大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私は今ここでそういうふうな行き力で――御質問でありますから、お答えもしなくちゃならぬのですが、そういうことでいろいろと論議を進めるのは、どうも私自身としてはあまり感心といいますか、はなはだ悪いのですけれども、どうもお答えできにくい。私はそうでなくて、日本の経済は病気々々と言われるのですけれども、その病気がどうなのか、申し開きした方がいいと思う。そうすると、その病気がはっきりする、こういうふうに考えるのであります。私は日本の経済が健全性を失なっていないと思う。大体世間では見通しということをよく言われるのです。見通しについても三十二年度に輸出は二十八億ドル、これを達成するということがむずかしいと言うが、これは日本の経済の一番大きな根幹だと思うのです。これは誤まっていない。これは二十八億ドル若干上回っている、三十二年度は込成するだろう。そうするとお前輸出ばかり言うが、輸入はどうか、こう言われる。輸入を考えるとむろん輸入は多い、多かったに間違いありません。赤がある。おそらく三十二年度に四億ドルくらいのものは出るだろう。問題はそれならこの赤、輸入は一体どうなっているか。これを世間では往々にしてただむちゃに使ったかのような錯覚をするのです。これはそうじゃない。これは分析してみると輸出原料になるか、あるいはまた日本の経済を近代化するためにいい機械が外国から入ってくる、将来の輸出力を強大ならしめる意味にこれは使われておるのですから、価値判断としましてはそのこと自体をそうあしざまに言うことは何もない。問題はこういう経済のあり方を続けていったなら、日本は今度は輸出力がないから物価は騰貴してインフレになる。もしも日本の経済をインフレに陥れたら私は堂々と責められてもいいと思う。これは悪い。しかしインフレにならぬのだ。日本の経済がずっと伸びてきて若干伸び過ぎた。その伸び過ぎたところをちょうどいいところに置こうじゃないかという意見はもちろん賛成です。そこのところで若干やはり何か足らぬところがあったということは私も反省いたします。それは間違いない。それを足りないところがあったから、それだからといってあれは政府に責任があるとかないとか、そんなことを言う問題じゃない、絶対にないと私は思います。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 大蔵大臣は、私が病気だということから話を始めたことに非常に不服を言われたのでありますが、病気だということをおっしゃられたのは大蔵大臣自身なんです。国民は一萬田さんが大蔵大臣になられたときに、もっと日本の経済の実態について的確なことを言われるだろうと思っておった。ところが、病気だから医者にまかしておいてくれ、こういうことしか言われなかった。そこで私はそこのところから出発をしたのでありますが、しかしお望みでありますから、これから数字をあげて一つお尋ねを申し上げます。  今お話のありましたように、この日本の経済の現在の状況を導いてきたのは、いいことをやったんたけれども、それをやり過ぎたのだ、こういういうお話であります。これはもう大蔵大臣からおっしゃられなくても、経済企画庁からお出しになりましたこの経済白書にちゃんと書いてある。早過ぎた拡大ということちゃんと書いてあるのです。そういうことを前提において質問しておるのですから、そのつもりでお答え願いたいと思います。  そこで、今大蔵大臣がしきりに日本をインフレにしてはいけない、こういうことをおっしゃいますが、私は日本の経済にはインフレにも向い得る要因と、それからデフレにも向い得る要因と、二つの要素が含まれておると思うのであります。これを現在日本の経済は岐路に立って迷っておる。政府自身がどういう出方をするかということがこの問題を決定するかぎなのであります。政府自身がどうするかということは、要するにこれは昭和三十三年度の予算に対して政府がどういう態度をおとりなるかということによってこれが決定されるのであります。  そこで先般政府は基本構想なるものを発表されましたが、その基本構想によりますと、昭和三十二年度の予算に比して実質的に増加を厳に抑制する、こういう態度をとっております。昭和三十一年度の剰余金、それから昭和三十三年度の自然増収も、これを財源として使用することなく、たな上げする、こういうことをいっておられる。それから財政投融資の規模を昭和三十二年度の実行額の限度に押える。地方財政の規模も国の財政の規模に準ずるものとする。これが大体政府の御発表になった三十三年度の予算に対する基本構想であります。この基本構想はこのまま政府は貫いていかれますか。これを動かすことはないのであるかどうか、この点をお尋ねしたいのであります。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 先般発表しました基本構想は、これは基本構想としてあれを守っていくつもりであります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 私は基本構想を守っていく、ただそれだけをお尋ねしておるのではないのでありまして、政府としては基本構想として発表されたが、その発表されたあとにおいて、各省から出てきておる予算の要求は二兆になんなんとするといわれておる。これを先般発表になった基本構想で押え切るかどうか、その決意のところを承わりたい、こういうことを聞いておるわけで、その点を政府としては明確に、この基本構想は動かさないなら動かさないと国会で明言してもらいたいと思うのです。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 今後あの基本構想のもとにおきまして、具体的に予算を編成するのでありまして、この予算を編成する場合におきましては、あの基本構想を守っていく決意を私は持っております。こういうことであります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 だんだん言葉が小さくなりますが、決意ならば大きい声で言っていただきたい。  そこで一つ具体的にお尋ねしますが、昭和三十三年度の予算の基本構想を土台として尋ねますのに、政府の逃げ道があるのであります。それは実質的に増加をしないようにする、こういっておる。実質的に増加しないようにするということはどういうことか。昭和三十三年度の予算を見ますと、自然に、必然的に増大する要因がございます。それは先ほどから問題になっております日米共同声明に従って起ってくる防衛費の問題。これは政府がどんなにお考えになってもどうしても大きくなってくる。教育費、これは子供がふえるのでありますから、全国的に学校児童がふえますから大きくなる。地方交付税交付金。これは一万田大蔵大臣はどうお考えになるか知りませんが、ふえるのであります。賠償費も当然、ふえると思うのであります。われわれの計算によりますると、もちろんこれからの折衝もありましょうけれども、大体自然的に増大するものが四百億から六百億は免れないと思うのであります。これだけ見ましても、その昭和三十三年度の予算は、昭和三十二年度に比べて相当程度に自然に増大する要因を含んでおる。  さらに先般自民党においては新しい政策というものを御発表になりました。これは予算の裏づけも何もない、一種の放言でございますけれども、これを予算に盛るとするならば一体昭和三十三年度の予算はどれだけふえるのであるか、こういう点を勘案して、昭和三十三年度の予算は、昭和三十二年度の予算の規模よりも実質的にふくらませるのではないのだ、こういうことは大蔵大臣としてはどういうところからおっしゃっておるのか、一体その構想の基本はどういう数字が頭の中に入っておるのか、あなたの好きな数字を一つ示していただきたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 たびたび御答弁申し上げましたように、具体的の三十三年度の予算の編成については今後にあるのでありまして、今ここで予算の規模とかどうとかいうことを申し上げるのは、今の段階では時期でない。ただ歳出の自然増等いろいろとお話がありましたが、私どもは、基本構想だけについては発表してありますので、疑問があればお答えしますが、そういうふうな自然増その他の増がやはり考えられる。ところが一方経済――あの前文をお読みになられれば、経済を安定させて、その安定の基盤の上において今後の日本の経済を拡大していく、その基礎的な条件をここで整備すると、こういうふうにうたってあるのですから、それだからなかなかそういう歳入があってもできぬ、それで極力最初は押えるということを言うておる。それ以上ではありません。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 私は、予算編成が始まろうとする前に臨時国会が開かれて予算の論議ができるということは、こんなに仕合せなことはないと思うのであります。大蔵大臣としては感謝すべきものだと思う。こういうときこそ、私は大蔵大臣が自分の考えているところの構想を堂々と国会に発表して、そうしてもし党内に異論があるならば、党内の異論を世論の力で抑えたらよろしい、そのくらいの覚悟をお持ちになったらよろしいと思うのであります。そういう絶好の機会であるにかかわらず、言を左右にしてあいまいなことを言われるというのは、私ははなはだ心外だと思う。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 大蔵大臣がそんなに早くあれこれ言うべきでないことは、もう河野さんは百も御承知。むしろ私は、河野さんあたりのりっぱな御意見を私の方が早く聞きたい。そうしていいところを受け入れたい。(笑声、拍手)

河野密日本社会党

○河野(密)委員 それでは、一つりっぱな御意見を申し上げますが、(笑声)一番最初に問題になりますのは、財政余裕金の問題だと思いますが、この財政余裕金について、基本構想においてはたな上げにすると発表されております。そこで大蔵大臣にまずお尋ねしたいのは、この財政余裕金をどういうふうに計算しておられるのか。昭和三十一年度のいわゆる剰余金でありますが、剰余金は何ほどでありますか。巷間一千億といわれておりますが、それは一体幾らであるか。これを三十三年度の財源として使用し得るものは幾ばくであるか。それからことしでありますが、昭和三十二年度の自然増収は、どのくらいに見積っておられるのであるか。上半期において八百四十億円の増収があったといわれておりますが、下半期はもちろんこれが下って参りまして、年間約一千億を下らないものがあるであろうといわれておりますが、これに対して大蔵大臣の見解はどうでありますか。第三番目に、昭和三十三年度の自然収増、もちろんこれは予算規模とも関係をする問題でありますが、大体三十二年度の予算の規模が踏襲されるものとして、三十三年度における自然増収を大蔵省としてはどのくらいに見積っておられてたな上げ論等等をお出しになっておるのでありますか、これを承わりたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 数字でありますので、私の知っておるごく大略を申します。三十一年度の剰余金は、これはもう決算が済んで、御承知のように千一億、この中から地方交付税に三税の関係で百十八億、それから譲与税、この方に十一億、そうすると残りが八百七十二億、これの半分の四百三十六億が国債償還、四百三十六億が一応三十三年度の予算に実質的にくるであろう、さように考えてよろしいと考えております。それから三十二年度の税収入というか、まあ歳入ですが、これが三十二年度の予算当時の歳入に比べて幾らふえるか、自然増収ということでありますが、これは私まだ詳しく報告を受けておりません。今までの経過から見てこんなものかなという程度ですから、これはどれほどの確実性があるか、まだよく保証はできませんが、主税局長等の話では、まあ大よそといって千億だ。それから三十三年では、これはどうなりますか、今後の日本経済の推移によることで、特に最近の税収入の多いのは法人税でありますから、特に景気の影響を受けることが大きい。そこで三十三年度の税収入を今云云することはいかがと思いますが、私はこの三十二年度の税収よりはかなり少いのじゃないかというふうに見えるのがほんとうじゃないかと思っておりますので、どうなりますか。あるいは千億と言ってもいいかもしれませんが、まあ九百億と言ってもいいかもしれないというところであります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 三十三年度においてその予算の規模を大体本年度並みというふうに一応推測しますと、昭和三十一年度の決算上の剰余金で財源として使い得るものが四百数十億、五百億足らず。それからかりに来年度における情勢が、これはあとでお尋ねしますが、来年度における情勢というものは的確にはわからないけれども約千億。そうすると大体千五百億程度のいわゆる財政余裕金と称せられるものが一応ことしの予算編成に当って見込まれる、こういうわけであります。この千五百億のものを、これは大蔵大臣の考えではすべてたな上げにする、使わずにおくんだ。どういう形でたな上げにされるか私は存じません、あるいは特別会計を作って、そこに置かれるのであるかどうか存じませんが、とにかくこれはたな上げにする。本年度の自然増収はかりに一千億といたしますと、これは時期のずれがありますが、やはりここでことしと来年にかけて二千五百億程度の国庫の余裕金が生ずる、こういう結果になると思うのでありますが、これに対して大蔵大臣は、これをすべてたな上げにするという構想でいかれるのかどうか。何かそこに新しい構想を考えられる必要があるのじゃないかと思うが、その点はどうでありましょう。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 今その点について、お答えが何もできないのを遺憾に思います。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 今話をしていて、私聞きそこなったのですが、どういう御答弁ですか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 先ほどからしばしば申し上げましたように、来年三十三年度の予算編成の具体的なことにつきましては、まだ検討を加えている最中でございまして、しかも今やっとスタートしようかと考えているので、今まだ大蔵大臣としては申し上げられません。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 これは、先ほどから申しますように、大へん残念なことでありますが、私は大蔵大臣と少し考えが違うのであって、先ほどから申しますように、現在日本の経済は、大蔵大臣の言う病気なんでありますが、これに対して国民全体は、どういう処方せんを政府は書くだろうか、こういうことを待っているわけであります。その処方せんは、昭和三十三年度の予算によって一応政府の態度がわかるわけなんで、これを待望しているわけであります。それについて、大蔵大臣として今まだ言えないということは、いたずらに日本の経済を混迷ならしめることだと思うのでありますが、これは責任なしとはいえないと思う。大蔵大臣、どうでしょう。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私がいつのときになってもそういうことを発表せぬということなら、それはお責め下さってもたし方ありません。今私が申しますのは、皆様方の、いろいろな方々のほんとうのいい――来年度予算の編成がそんなに容易なものではない、この予算の出来いかんによって、日本の今後の経済に大きな影響を与える、かようにも考えますから、いろいろのいいお考えを取り入れなくちゃなりません。自分一人で独断に陥ってもいけません。それで、そういういろいろな準備をしている最中でありますから、しばらくお待ち下さいということです。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 明年度の国民所得を一体どの程度に推定されておるのでありますか。経済の成長率を三%として、八兆四千億程度だというあれもありますのですが、大蔵省としては、明年度の国民所得の推定をどういうふうに考えておりますか。さらに明年度の予算を編成するに当って、貿易の予想、国際収支の予想ということについてどういうふうに考えておられるか、これを承わりたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 明年度は、経済の成長といいますか、あるいは製造工業の伸びといいますか、一般には鉱工業と言うておりますが、この生産増四%、そうして国民所得の増三%、大体こういうことでございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 貿易の予想を、巷間伝えるところによれば、政府は三十一億五千万ドル、こういう予想を立てて国際収支を考えておられる。国際収支の見通し、それから貿易の予測等を伺いたい。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 この際私は御質問に関連もいたしまして、若干私の考えを申し述べさせていただきたいと思います。  御承知のように、国際収支が悪化いたしまして、政府が総合施策をとりまして、その結果割合に成果が順調にいきまして、そして九月以降国際収支は黒字に転じておることは、御承知の通りであります。ただ私はここで一つ申し上げておきたいのは、それならそれで安心ができるかということであります。私どもとしては、そうはいかないのでありまして、今日この国際収支がよくなった点も、率直に申しまして輸入を抑制しております。それから将来の輸入の在庫を吐き出しておる。一方信用状の設定状況を見ると、輸入信用状の設定はあまり減りません。言いかえれば、輸入の意欲はやはり強いのであります。ですから、日本経済自体が均衡を得て、その均衡を得た日本経済から逆に国際収支が割合に自然の形で均衡を得る、あるいはまた黒字に転ずるには、まだまだ非常な余地がある。そこへもってきて、国際情勢を見ますと、これは私が申すまでもないのでありますが、今世界各国がインフレ的な様相を呈しておりまして、どこの国も緊縮政策をとっておることは、ご承知の通りでございます。従いまして、貿易競争が非常に激しくなっていくことを覚悟しなければならない。そこへもってきて、そういう結果からドルの偏在これは今回の国際通貨基金のときでも大いに議論されて、その是正を強く発育をしたのでありますが、アメリカや西ドイツが国際収支において非常に順調で、受取りが多い。こういうふうな情勢では、自余の自由国家の経済は今後ますます困難になる。それから、東南アジア、東南アジアと日本は言うが、東南アジアの購買力はあまり大きくない。こういうふうに考えてみますと、日本の輸出の増大ということは、よほどの覚悟をして、国内の消費をできるだけ抑えて、そうして輸出へ輸出へともっていく、同時に輸出奨励策をとる。貯蓄奨励策はもちろんであります。こういうことなほんとうに真剣に、朝野をあげてやらないと、私は、日本の今後の経済の健全性を取り返すことは非常に困難ではないかということを、この機会にこの席をかりて、多くの方々に御理解願いたいと思うのであります。  そういうふうにいたしていきますが、来年度の国際収支は、今言うたように楽ではありませんが、三十一億五千万ドルの輸出をすることによって日本の経済が縮小に陥らぬで済むということも――もしも三十一億五千万ドル輸出ができないとすれば、どうも経済の縮小均衡をするおそれがある。それでも鉱工業生産の伸びが四%にすぎません。それで輸入は三十二億ドル。今年は、輸出が二十八億ドルを若干オーバーする場合の輸入は約三十六億ドル。こういうのですから、来年度は三十一億五千万ドルでいけるかといえば、三十二年度のように、機械類とか、そういういわゆる投資に関係する、設備に関係するものを入れぬで済みます、主としてこれは原料。それで、三十二年度にはすでに原料が入っておりますから、それもある程度は残っていきますので、調整ができます。こういうことで、三十二億ドルの輸入ではあるが、三十一億五千ドルは、従来の大体の貿易の伸び、それからその伸びのときにおける内外経済の情勢というものをいろいろ検討分析してみると、まあいける、こういうことであります。しかし非常な努力が要るということを申し上げます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 貿易の問題が出ましたので、この機会をかりて、大へん恐縮ですが、通産大臣に一点お尋ねをしたいと思います。それは前国会で制定されました輸出品の検査法でありますが、その検査法の施行が来年の二月になるわけでありますが、現在これについていろいろな問題が起りつつあるのであります。ことに一番われわれの関心を持っておりますのは、労使ともに考えております自動車工業の検査の問題について、これをどういうふうに取り扱われるつもりであるか。またその自動車工業のごとき大きなメーカーが責任を持つ輸出の検査については、特別な考え方が可能であると思うのでありますが、この点についてはどういうふうにお考えになるか、お尋ねしておきたい。

前尾繁三郎自由民主党通商産業大臣

○前尾国務大臣 検査法の施行に伴いまして、今いろいろ準備を進めておりますが、実は自動車の検査について具体的にまだ承知いたしておりません。おそらくまだ準備中で、特別な問題はないというふうに承知いたしております。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 この問題は、私が申し上げましたように、自動車工業に従事する労働組合自身が非常な関心を寄せておる問題でありますので、この点、特段の御考慮が願いたいと思います。  それから、大蔵大臣は、現在昭和三十三年度の予算は具体的には申したくない、こういう御意向のようでありますから、大蔵大臣の御趣意に従いまして、私どもこれ以上は追及いたしません。しかし私は、大蔵大臣は、こういう際にもっと率直に自分の考えを披瀝なすって、党内にそういう異論があるならば、自分の信念によって異論を克服していくぐらいの元気をお出しになる方が当然だと思うのであります。私はむしろ大蔵大臣の考え方に対して、大いに敬意を表します。その点について、先般のような、ああいう自民党の党利党略的な新政策なんというようなものを出して国民を惑わすようなことに対しては、大蔵大臣みずから大いに頂門の一針を加えていただきたいと私は思うのであります。  最後に、私は石田労働大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。世間では石田労政、石田労政と言っておりますが、一番これにじくじたる感じを持っておるのは石田君自身だろうと私は思うのでありまして、石田労政という名に値する労政ではもちろんございません。また一番石田君が強調されておりますものは何であるかと申しますと、政府も法律を守るが、事業主も法律を守れ、労働組合も法律を守れ、これはいかにももっともに聞えるようでありますが、これは労働組合の性格あるいは労働運動というものの実態をこ存じない言い分であります。労働法規というものは私が申し上げるまでもなく、これは一番動く法律であります。常に労働法規の制限をこえていくというのが労働組合運動の今までの歴史の示すところであります。もし労働法規をそのまま守っていくならば、労働組合というものは現在生まれてこないわけであります。     〔「おかしいじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 静粛に願います。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 法律を守らせるというが、その法律自身が一体どういう立場で作られておるかということが問題なんであります。私が歴史を申し上げるまでもなく、労働組合の運動が起ったのは十八世紀でありますが、一番最初の労働法規というものは団結禁止法、その団結禁止法の上にだんだんと積み重ねて、それを突き破って労働組合法ができ、労働先議法ができるというふうにできてきた。あるいは労働組合の賠償問題だって現に今世紀の初めにおいては、たとえばタフベール事件であるとかあるいは労働組合の政治行動の問題においてはオスボン判決であるとか、こういう世界的に名高いものをみな突き破ってきておるのであります。ところが日本の法律というものは、憲法においてすでに労働三権は基本的人権として保障するとなっている。これは私は世界で最も進歩した規定だと思うのでありますが、そういうものが前提としてすでに示されておるのであります。労働法規というものは、それからみんな後退して、それを制限するためにできている特別規定なんであります。その特別規定を守らせようという場合においては、その特別規定というものは最も狭く解釈すべきだというのが、私が申し上げるまでもなく、これは法律のABCであります、イロハであります。それにもかかわらず石田労働大臣の、公労法の解釈はかくかくたるべし、同情ストライキの問題はかくかくたるべしというふうに、この制限ということを広く解釈して、これを守ることが法を守ることである、こういう態度は私は労働組合の本質をわきまえないものであると思うのであります。この点について労働大臣の見解を承わりたい。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 初めに申し上げておきますが、私は私のやっておりますことについて、みずからじくじたる感じを持っておりません。正しいことをやっておるつもりであります。  それから憲法の中における二十八条の規定を引用されました。これは先ほども小坂君の御質問にお答え申し上げましたように、憲法は全条項にわたって理解すべきものでありますから、二十八条の規定も各個人のそれぞれの財産権その他の基本的人権あるいは公共の利益というものと調和を保って解釈していかなければならないものだと考えております。  それから労働法規というもののでき上りを歴史的に御指摘なさいましたが、西欧の十八世紀より二百年にわたっての労働法焼改廃の歴史また労働法規というものが最初にでき上ったときは、それは一種の禁止立法、制限立法という形ででき上ってきたでありましょう。そうして長い上歴史と経験を通してそれを突き破って新しい法規を作り上げてきたのでありますが、しかし日本の現行法は先ほど御指摘の通り、憲法二十八条の規定に従ってでき上ったものが多いのでありまして、それを制限する立法というものは、それを実施いたしました後におきまして、世論の声やその他必要性から生まれて実施せられたものであると私は考えております。従って日本の労働法規がむしろ歴史的な経験や努力の上に積み重ねられたものではなくて、戦争に負けたという事実の上に立って、上から先走って与えられた――先走ってという言葉は行き過ぎでありますが、事実を先行して法律が先に与えられたという実情も諸外国の例と違うと私は考えております。しかし労働法規に限らず法律が制定せられまするのは、やはり成規の正しい方法によって選ばれた立法府によって、その世論を背景としてでき上りました以上は、法規を広くも狭くもなく正しくそのまま解釈をして実施をしていくべきが、私は正しい方針であると思っております。もしそれが実情に沿わない場合におきましては、法律の改正を行なって、そうしてその実情に即していくのが私は法治国の建前ではないかと思っている次第であります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 石田君の言い分は狭い日本の国内では通用するでありましょう。しかし国際舞台に出したならば通用いたしません。第一に、石田君の注意を喚起しておきたいと思いますことは、国際舞台においてはひとり労働問題としての問題でなく、これは通商の問題にも関係するし、すべてに関係する日本の一つの顔に当る問題であると思うのであります。私は古いことを申して恐縮ですが、労働代表でILOに行ったときには、日本がソーシャル・ダンピングの問題で世界的に痛めつけられておった、袋だたきにあっていた最中でありまして、その日本がなぜソーシャ・ダンピングと言われたか、労働組合法も団体交渉権も団結権も何も日本の労働者には認められていないじゃありませんか。百万べん日本の政府、日本の使用者が国際舞台に立って説明をしても、ただこの一点において、もうソーシャル・ダンピングであるというらく印をどうしてもはねのけることができなかった。それと同じ事態が今日起らないとだれが保証することができましょう。その石田君も御存じのように、昭和二十四年、一九四九年にILOで採択されました団結の自由及び団結権の保障に関する条約というのがございます。これは政府は団結の自由を妨げるようなことをしてはいけない、団結の自由を確保するためにとるところの一切の行動、方法というものに対して制限を加えてはならない、もしこれに違反するところの国内法律があるならば、この条約に照して廃棄せらるべきものだ、こういう条約が採択されております。これは御存じの通りであります。この条約を日本は今日なお批准しておりません。批准しておらないのであります。この問題が最近ILOにおいてあるいは国際労働組合の団体、これは何もソ連に関係のあるものではない、ICFTU、国際自由労連においてあるいはITEによって取り上げられて、近く日本に調査団が来るはずであります。国際労働機関においてもこれは取り上げられて、調査の問題が論議されて、日本とアルゼンチンとこの二カ国を対象として調査団が派遣されることになっております。もしこの調査団が日本に来て、こういう日本を対象として果して団結権が保障されておるか、団結の自由が確保されているかという問題を論議されたならば、国本の不面目これに越したるものはないと私は思う。そのときになったらば、石田君が鬼の首でもとったように言っているところの、たとえば公労法の第四条の第三項、首切られたものは労働組合の役員となることができないのだ、その役員になっているものは団体交渉を認めないのだ、こういうものは一たまりもなく私はやり玉に上るだろうと思うのであります。そのときになって、どれだけわれわれは弁解しても、国際舞台においては通じないと私は思う。そういうことを考えると、石田労政は日本の国内においては通用するかもしれない、自民党の中では通用するかもしれないけれども、国際舞台では私は断じて通用しない。そういうことが、ひいては貿易を伸ばそうとする日本の商品に対して、再びソーシャル・ダンピングじゃないか、お前たちの作った商品には、団結の自由が確保されておらないじゃないか、こういうことを言われる危険性が私は多分にあると思うのであります。こういう問題はもっと真剣に、慎重に考えるべき問題だ、こう思うのであります。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 私は、先ほどからいろいろな問題について、日本の経済の特殊性ということについて御議論がございましたのでありまするし、何よりも日本の実情に照らして、実情に即した労政を行なっていくべきであると考えております。しかしそれはもちろん国際的水準に著しくおくれたり、あるいは著しく相達したりすることを避けて参らなければならぬことはお説の通りでありますが、やはり基準は日本の実情に沿った漸進的なものであるべきであると考えております。  それから第二は、日本の現行法規というもの、労働法規というものは諸外国の例と比較をいたしてみまして、今御指摘のような非難を受けるようなおくれたものではないと私は思っております。  それから三番目のILOの団結の自由に関する条約批准の問題でございますが、この条約が議決せられました昭和二十四年でありますが、そのときは日本はまだ再加入をしていないときでありまして、その長命について、さらに検討をすべき余地も残っておるのであります。さらにそのままを推し進めて参りますと、御指摘の通り国内法の公労法第四条第三項、地公労法の第五条第三項との関係についてもさらに検討を加えていかなければならないと思っておりますし、また通用除外例の中に消防とかあるいは海上保安職員あるいは監獄の職員というものが除外されていないとするならば、これは日本の実情といささか遊離いたすことになると思います。そこでこの問題は今、私どもの方の役所に設けております労働問題懇談会におきまして御研究を願っておりまするし、政府といたしましても諸般の情勢等も勘案いたしまして検討中でございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 私は石田君がその点について検討中であるというならば、それ以上のことは申しませんけれども、この問題は石田君が考えるように国内的に通用する議論だろうというふうなそういう甘い考えでは通らない問題であります。もっとこれは国際的の視野に立った場合においては影響するところが重大であるということを考えて、石田労政の進め方について一つ御反省が願いたいということを申し上げまして私の質問を終ります。(拍手)  なお河野経済企画庁長官と藤山外務大臣がきょうはかぜのためにお見えにならないそうでありますから、このお二方に対する質問は留保いたしまして、適当の機会にやることをお許し願いたいと思います。

江崎真澄自由民主党

○江崎委員長 了承いたしました。  明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十五分散会

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