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27回国会衆議院1957/11/07

大蔵委員会 第5号

発言数
104
登壇者
12
会派数
2
開催日
1957/11/07

会議録

山本幸一日本社会党

○山本委員長 これより会議を開きます。  本日は、まず昨六日本委員会に付託に相なりました昭和三十二年の年末の賞与等に対する所得税の臨時特例に関する法律案につきまして、提出者より提案理由の説明を聴取することにいたします。提出者春日一幸君。

春日一幸日本社会党

○春日委員 昭和三十二年の年末の賞与等に対する所得税の臨時特例に関する法律案の提案理由の説明をいたします。  わが国の家庭生活の習慣は、冬季におきましては各種経費のかさむ事情にあり、特に年末、年始にはこの点著しいのでありまして、これを考慮され年末手当が支給されておりますが、いろいろの事情から十分な金額が支給されておりません。他方、従来、勤労者の税負担率が重いという声はちまたに満ちあふれ、その軽減の必要あることは今さら申すまでもないことと存じます。  そのため、全日本の給与所得者は声を大にしまして、年末手当の実質的向上を叫び続けて参りました。すでに今日まで数回にわたってこの種法案が提案されて参りましたが、種々の事情によりまして今日まで保留されて参りました。従って今回は、各方面の期待はきわめて強いものでございまして、各位にこの点について深甚なる御考慮をわずらわしたく提案をするものでございます。  この法律の目的は、年末賞与ないし賃金等の給与所得のうち、せめて五千円までは免税にして、これらの人々の生活を幾らかでも潤したいというものでございます。この法律案により推算される減収額は、おおむね六十億円程度と存じます。この程度の措置は、政府において何らかの措置を講じ得られるものと存じます。  以上がこの法律案を提出いたしました理由でございます。何とぞ御審議の上、御賛成あらんことをお願い申し上げます。  以上であります。

山本幸一日本社会党

○山本委員長 以上をもちまして提案理由の説明は終りました。本案に対する質疑は後刻に譲ることといたします。     —————————————

山本幸一日本社会党

○山本委員長 この際年末徴税に関する件につきまして、平岡忠次郎君より発言を求められておりますので、これを許します。平岡忠次郎君。

平岡忠次郎日本社会党

○平岡委員 私は、この際中小企業に対する年末徴税に関する件について、本委員会において決議をされんことを提案するものであります。    中小企業に対する年末徴税に関する決議案   本委員会は、政府に対し次の事項ついて善処されることを要望する。   最近の中小企業の経営の実情にかんがみ、年末に際し、徴税が強行されるときは、中小企業に対する諸般の施策の効果を損い、不測の混乱を起すおそれがある。   よって、年末徴税に当っては、苛酷に亘らぬよう財産の差押、競売並びに物件の引揚等については、税務当局は特に慎重を期せられたい。   右決議する。  以上であります。何とぞ御賛成あらんことを望みます。

山本幸一日本社会党

○山本委員長 お諮りを申し上げます。ただいま平岡忠次郎君より提案されました中小企業に対する年末徴税に関する決議案を本委員会の決議として決定するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本幸一日本社会党

○山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  なおただいま議決いしました決議についての議長に対する報告及び政府に対する参考送付等の手続等については、委員長に御一任願っておきたいと存じます。御了承願います。     —————————————

山本幸一日本社会党

○山本委員長 次に、小委員会設置の件についてお諮りを申し上げます。  税務における査察行政等の実情を調査するために、この際税の執行調査に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本幸一日本社会党

○山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  なおまた、ただいま設置するに決しました小委員会の小委員の人数は十名とし、小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本幸一日本社会党

○山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。では、後刻委員長において公報をもって御指名いたします。     —————————————

山本幸一日本社会党

○山本委員長 なおこの際、小委員及び小委員長の辞任並びに補欠選任等につきましては、あらかじめ委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本幸一日本社会党

○山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。     —————————————

山本幸一日本社会党

○山本委員長 次に、参考人招致の件についてお諮りいたします。  春日委員 より、過日設立されました不動産銀行につきまして、その後の運営の経過等について説明を聴取するため、同銀行の責任者を参考人として本委員会に出席を求めたい旨の申し出がございました。さよう取り計らうことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本幸一日本社会党

○山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  なお参考人の人選並びに出席を求める日時等につきましては、委員長に御一任願っておきたいと存じます。     —————————————

山本幸一日本社会党

○山本委員長 次に、国税庁における査察行政の問題につきまして質疑の通告がございますので、これを許します。横山利秋君。

横山利秋日本社会党

○横山委員 ただいま設置することに決定をいたしました小委員会に関連して、今日の税の執行の面について、二、三長官及び大蔵省に質問をいたします。  先般大臣に質問をいたした点でありますが、要するに、戦後税制の変遷がいろいろあると同様に、税務執行における行政面、あるいはその機構面の変遷もいろいろ重なってきておるわけであります。その変遷を私ども解釈いたしますと、国民の生活の水準、それから経済情勢の安定等と相待った機構並びに執行になっておると思うのであります。これを一言でいえば、ある時期においては権力的なやり方、あるいは大衆的な、早く言えば反税運動というようなものに相対立する税務執行のあり方というものも、ある程度恕すべき点もあったであろうと思うのであります。しかし、ここにようやく経済も、不安定は続けておりましても、戦後の混乱のときから考えますと安定の度合いを増しております。かてて加えて税務機構も、ほぼ整備されて参りまして、戦後の状況に比べると格段の相違があろうかと思います。かつて第三者通報制度、つまり密告制度が現実に必要視され、それによってやはり相当の成績を上げたことも事実であります。これによる非常な不工合な点、人権の無視等もあるいはありましたが、しかしそれなりの効果は評価してしかるべきだと思います。けれども、その第三者通報制度も、それに対する賞金の制度もなくなりました。なくなったにはなくなった理由が、そこにあると思うのであります。今日残っておりますのには、査察の制度あるいは税務署における特調班等の制度などがあります。これが国税犯則とか何とかという法律があって、それをかさにきてと申しては語弊があるかもしれませんが、少くとも権力的な行使をして、数十人ないしは数人が、間髪を入れずそこの企業を包囲し、数日間にわたって事実上業務の進行を阻害し、そして犯則の摘発をする、こういう制度がその後の経済情勢に相反して強化され、そして的確に実行されておるということは考うべきことではなかろうか、こういう点が、私が指摘したい第一点であります。きょうは長官と議論をするつもりで質問をするのではございませんから、そのつもりで実情を御説明願いたいと思いますが、私がまずお伺いをしたいのは、最近の査察についてどういう傾向があるか、たとえば昨年度は、この査察はどういうふうな件数と、どういうふうにそれを処理したかという点が第一点であります。  第二点は、最近の査察による事例等にもどういう特徴があるかという点が第二点であります。まずこれから御質問をいたしたいと思います。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 お答えいたします。最近の数字としましては、年度として一応まとまっておりますのが、昭和三十一年度でございます。これは査察として着手いたしました件数が百七十八件、内容は法人税と所得税に分れておりますが、合計だけ申します。それからそのほかに前年度から処理未済もあったこともありますので、処理が済みましたのが二百十四件、うち告発という形で検察庁へ問題を移しましたのが三十件あります。それからこの処理によりまして税額でどれだけ出てきたかというと、基本の税金で十五億九千万円、約十六億。それから過少申告、加算税申告、重加算税申告といった加算税等の関係がそのほかに六億二千万円、合計二十二億という数字が出ております。いろいろ御意見があるようでございますが、確かに、終戦の直後数年間は、かなり税務行政自身から見ましても、いろいろな混乱があった、税金が税法の上におきまして重かったせいもありましょう。またやみ取引が横行していたということもありましょう。いわば税金が正確に申告されないという事実がきわめて各所にあった。従って、いわばその査察といったようなことを実行して参りますと、どこにか何らかしらのきずが出てきたというのが、ある時期における一つの傾向だったように思います。しかしお話しのように、最近経済がだんだん安定してくるにつれまして、かなり正確な申告が出てきておるというのが、一般的な傾向になってきております。しかし、それにもかかわらず、その納税者自身にとりましては、いろいろなエキスキューズがあるのかもしれませんが、なお正確な申告でない、しかもそういう不正確な申告をするために、あるいは売上げを脱漏させてみましたり、架空な仕入れを作ってみましたり、そうしたような事例が間々現在もあります。むしろこういうような姿になってきたのにかかわらず、なおかつそうした詐偽不正の行為によりまして脱税する、こういった人がまだある限りにおきまして、やはり査察ということが残されているのはやむを得ないと思いますし、同時にそういうような姿になって、むしろ査察というものの本来の意味がはっきり現事態において出てきたのではなかろうか、と申しますのは、いわば犬も歩けば棒に当るといった調子で、至るところに税金の正しくない申告が出ていたという時期が過ぎまして、そして大部分の場合におきましては、正しい申告が出されている、しかもその間にあって詐偽その他不正の行為によって税金を免れよう、こういうような場合におきまして、そういう人たちに対しまして、やむを得ざる手段として査察という制度があるのは、私はむしろ現状においてはやむを得ざる必要じゃないか、かように考えております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 そうすると、あなたの私の第二の質問こ対する答えは、特徴的な例というものはない。要すれば、経済が正常化し、申告が正確になってきておる中で存在しておるものは、比較論としてより悪質である。だから、査察の存在がよりあり得るものだ、こういうことでございますか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 比較論として悪質だというのが、私にはお話の趣旨がよくわかりませんが、いわば世間一般、至るところで税金がごまかされていたというような時期は、もう去りまして、そうして、むしろ大部分の人がまじめな申告をして下すっている。そういう時期にもかかわらず、詐偽その他不正な行為によって相当の税額を脱漏している、こういったような場合におきまして、やはりそれなりに、税法に一応それぞれの罰則があるわけでありまして、従って、この脱税犯の規定ですね、横山委員の御趣旨は、脱税犯の規定をないものにするのがいいという御議論までいくのかどうか、私よく知りませんが、しかし脱税犯の規定がまずあるわけであります。これは昔からあったわけです。この脱税犯の規定を、それじゃだれがこれを執行していくか、この次にそこの問題があるわけであります。そうすると、普通に検察庁の場合におきましては、とにかく税というものが、一つの特殊な技能を必要としておりますだけに、普通の検察官の方では、少くとも従来におきましてはなかなかやり切れなかった。そこで、やはり検察官の方にも脱税犯というものに対処できるような会計に対する知識、あるいは税に対する知識、そうしたものを順次検察官の方も大いに勉強して下すっていらっしゃいます。しかしその手先として、あるいは準備段階として、これまた普通の犯罪だったら、司法検察官が働く場面だと思いますが、しかし検察官の方々では、ちょっと税金に手がつかない。そこに税務官吏が、そうした脱税犯の問題を、検察官の準備段階として一応調査するという問題があるわけでして、そこに現在の査察官の制度があるというわけだと思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 私の言わんとするところは、経済が安定してきた、で、私なりに推量をいたしますと、その脱税もおそらく知脳的になっておるであろう。こういう情勢のもとにおける税務の執行のあり方としては、権力的な力を常に用うるのでなくして、合理主義と科学主義、その中における納得と説得というものが働かなければいかないのではないか。それが中心となって税務の執行が行われなければならないのではなかろうか、こういうふうに考えるわけです。それは、議論になるかもしれませんから、次の質問をいたします。  査察を実行するに当っての前提条件はどういうものであるか、抽象的な言い方でありますが、査察というものが、先ほど申しましたように、その企業なりその商社の業務の執行を結果において停止し、甚大な損害を与える。それがかりに白であっても黒であっても、それによって受ける被害というものはかりしれがたいものがあるではないか。そういう中でなおかつ査察を実行するに当って、あなたの方としてどういう条件を具備したものを査察をするかという点をお伺いしたい。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 私の方で査察に着手するにつきましては、お話しのように一応査察に着手しますと、そり業者の方には相当な影響が出てくるわけです。従いまして、われわれの方といたしましても、査察の場合におきましては、特に着手については慎重を期しております。従いまして、それではどういう糸口から出発するか、こういうような御質問のように思いますが、大体税務署、あるいは調査課、あるいはそういった局の法人税課、所得税課等で仕事を見ていますが、それらのところで一般の調査をやってみまして、そしてどうも一般の調査では納得できないような数字が出てきている、こういったような場合、あるいは投書その他のことでいろいろなきっかけが出ることがありますが、調査課あるいは税務署の方の調査でどうも納得できないといったようなものが出てくる場合があります。と申しますのは、調査課にしましてもそうですが、特に税務署等におきましては、仕事のボリューウムとそれから人員との関係がありまして、一つの納税者について、そう長い時間をかけてとことんまで調査し得るだけのゆとりがございません。従って、ある程度まで調査を進めました場合において、どうもこれはちょっと納得できないけれども、しかし税務署の手ではもうちょっとおえぬこういったような問題があります。これを要するに局の調査査察部の方へもってくるわけです。一応どうもいろいろな疑わしい点が出てくるという場合におきまして、まずもって相当内偵という段階をやります。これは、監察資料を集めますとか、いろいろなところでもって数字をずっと詰めています。そうしますと、どうも向うの方の帳簿その他の記載されている事項とつきあわぬ点が出てきている。しかし、単純な調査ではこれはどうも突き破れそうもないという場合に、裁判所の方に令状をいただきまして、一応強制調査に入る、こういうことをやってきております。われわれの方といたしましては、先ほどもお話しのように、理解と納得によって税務行政を執行していくべきだ、あるいは合理的な方式によって執行していくべきだ、これは私も全然あなたと同じような意見を持っております。しかし、それは大部分の納税者については、それで問題はいいのです。原則的にはそれでけっこうなんです。しかし、先ほど数字でちょっと出て参りましたように、一応それだけでまかないきれないある特殊な納税者が相当数あるわけであります。この方々につきましては、遺憾ながらやはり査察といったようなことによって、こういった将来そうした詐偽不正で脱税するようなことのないようにという反省をも求める意味におきましても、やはり査察というやり方をとるべきじゃないか、こう思っております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 非常に抽象的なお話で、私の聞いているところと、どうも回りくどい話でありますが、疑わしい、手にあまる、だから考えなければならぬという言い方、それはきわめて常識的過ぎるのであります。私の聞いているのは、大体査察に着手するにしても、一つの基準があるだろう、なくてはおかしいじゃないか。ある国税局とある国税局とでは非常に査察をする、罰則の法律を発動するに当って、何でもないことにやったり、大きなことは捨てておくという場合があるではないか。国税局として査察をするに当っての前提条件というもの、基準というものはないのか、こういう意味で聞いているのです。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 査察の着手の段階ですか。

横山利秋日本社会党

○横山委員 着手もあり、それから罰則、法律を適用する、権力を発動するというときに……。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 われわれの方で査察の着手と申し上げておりますのは、結局裁判所から令状をいただきまして、強制調査に入る、これが査察の着手の段階だと思っております。これにつきましては、先ほど申したようないろんな方面からの材料が出て、内偵の過程において、どうも相当嫌疑が濃厚だ、こういう場合に着手するわけです。国税局によってその程度がどういうふうに変ってくるかという点になりますと、これは、それぞれの国税局における査察官の人員なり、あるいはそのときにたまっていた、あるいはでき上っていた件数なり、事件の問題なりというようなこともございまして、それで各国税局の間に多少の開きができることは、これは具体的にどうだとは言えませんが、抽象論として考えれば、私はあり得ることだと思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 それでは、これは基準がないと申しますか、国税局において多少の違いがあるかもしれないという点については、別の問題にして、一つの問題として残しておきます。  それからもう一つは、先ほど昨年の例をお伺いしましたが、告発をしたものと告発をしないことにしたものと、それから不問になったものといろいろある。告発をしたものは、査察着手から比べると格段の違いで、少数であります。不問にした場合といえども、増差額はあるかもしれませんが、これはほんの少しですから、事実上は査察権を発動する必要がなかったのだということもあると思うのですが、そういう場合のことを今度質問いたします。国税反則取締法を発動をして、その企業に対して甚大なる物心両面の被害を与えた場合、今日の法律では、それに対してあなたのところは白でした、さようならということになっておる、これを長官としてどういうふうにお考えでありましょうか。私の聞きたい第一点は、それに対して、そういう場合が事前に想定することができないにしても、そこで先ほどに帰って、査察を着手するのに一つの基準があってしかるべきではないかということが第一点。それから二番目の問題は、事実上物心両面の大きな被害を与えたにもかかわらず、納税者側は、それに対して何らの損害賠償を要求する権利がない。それは一体不必要なのか、どうお考えになるか、お伺いいたします。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 私の先ほどのお話で、着手した件数の中で、ある一少部分だけが告発されて、他の部分は不告発、あるいは不問といった処分がなされておる、不必要な査察の着手ではないだろうか、こういうような御趣旨もあったように思いますが、しかし、それが脱税犯というものの一つの特色じゃないかというふうに私は思っております。他の犯罪でございますれば、たとえば窃盗なら窃盗にしましても、それが一応窃盗ということをやったということがわかれば、そこで起訴、不起訴という問題は出てくると思いますが、脱税犯というものは、これは何と申しましても、まず第一は、外形的に正当な申告がなされていない、実際はその会社はもっと大きな収益を出しているのに、その申告は非常に少い。そこで売り上げを脱漏するなり、あるいは架空の仕入れをつけるなりということで、税金をごまかしているんじゃないか。そこでその内偵の過程におきまして、いろいろ売り上げの脱漏なり、あるいは架空の仕入れなりの事実が出て参りましても、あるいは財産の方でふつき合いが出てくる、しかし脱税犯としてこれが告発され、起訴されるにつきましては、そこにやはり犯意の立証の問題が出てくるわけだと思います。そこで脱税犯の問題は、やはりまずもって外形的に正確な申告がなされていないというところから一応問題に取りつくのですが、しかし犯意を立証していくということになりますと、さらに突っ込んだ証拠が必要になってくるわけであります。同時に、われわれの方としましては、金額がそれほど大きくないとか、あるいは所得の申告に当って脱漏なんかがそれほど大きくないという場合におきましては、これも検察庁と話し合って不告発にする、大きな目立ったものだけを特に告発する。金額が大きければ、これはもう申告割合など問題にしておりません。そういったようなやり方をやってきておりますので、告発の件数が査察着手の件数に比べて比較的少いじゃないかというのは、これは、私はやはり査察事件というものの一つの特徴から出ているものじゃないだろうか。初めから犯意をつかんで、それから問題へ入っていくということは、私この査察の事件をずっとここ何年か見ておりますが、それはちょっと困難なように思います。お話の点では、不問に付されたというところのものなどは、何も査察しなくてもよかったんじゃないかというふうな御意見、これはまあ考えようによって、そういう御意見が出るのかもしれませんが、しかしそこで脱漏額——決して脱税額とは言いません。犯意の問題が入りませんから、脱漏額ですね。当然申告さるべきものの額がなかったかというと、大体われわれの方は内偵を済まして、その上で着手しておりますから、脱漏額はほとんど全部の案件において出てくるのです。ただ、しかしその場合において犯意と結びつき、証拠がそれの裏づけになりまして、これは脱漏犯だ、起訴できるというものになりますと、そこに相当なやはり間引きがされざるを得ないわけでして、一応お話しの統計でもって不問というふうになっておりますのは、やはり脱漏額はあったのだけれども、しかし規模がそれほど大きくない、あるいはどうもこれは犯意の点で立証がとてもむずかしいというようなところから、調査課の方に問題を回す、税務署の方に問題を回すというのが、不問として整理されている数字であります。それからさらにもう少し時間をかけまして、そして問題を詰めて参りまして、一応立証ができる場合もありますし、必ずしも立証が十分でない場合もある。あるいは立証ができても、金額が小さい、こういったような場合におきまして、これは不告発の処理にする。だから、不問と不告発とは本質的にそう大して違わない、いわば程度の違い、こういうふうにお考え願ってもいいと思います。そういった場合におきまして、納税者に損害を与えている、一体賠償の必要を感じないか、これは、ほんとうにそういった白い方がとんでもない迷惑をこうむっている、これは確かに問題があると思います。結局全体として、現在におきましては、国家賠償法の問題が、やはりこういった問題にも適用される問題じゃないかと思いますが、しかし現在われわれの方で査察事件として扱っておりますのは、犯意はわれわれの方が積極的に立証できないにしても、少くともある程度の脱漏額は、大体みな出ているというようなわけでございまして、査察をやって初めてそれが表に出てくるといったような状態でございますので、われわれの方としても、不必要な迷惑を納税者にかけないということにつきましては、この上とも留意いたしますが、現在程度の場合におきまして、現在程度のことはどうもやむを得ないのではないだろうか、かように考えております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 渡邊さんにお願いしますが、時間があまりありませんから、そのものずばりで、なるべく簡潔に答弁していただきたい。  今の最後のところですが、現在の自分たちの実績においては、大体においては多少の脱漏額があるから、完全な白であったものはないようだから、損害賠償の必要はない、こういう議論のように思うのです。これは、われわれは今税法関係諸法を改正する必要がないかどうかという議論をすることになりますれば、今ないから必要がないという議論は納得ができぬと思うのです。今あなたが引用されました国家賠償法についても、この国家賠償法が、かりに白だった場合において適用をされ得るか、疑問かあります。一方憲法四十条に「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。」こういうふうに規定され、また裁判所では、被疑者補償規程を設けて、そうして、疑いがあったけれどもこれは免罪だという場合には、補償をしておるわけです。ひとり税法の部面においてのみ事実問題として争いのあるところでありますが、万が一事件にしても白だった場合において、賠償を要求する権利がないということはいかがなものであろうか。私は、国税庁にこの権力を使用し得る権限が付与されておる、これが伝家の宝刀になっておる。そういう伝家の宝刀というものを持っておる人々の、査察を実施するに当っての心理状態、それから実際の運用状態というものは、何といってもやっぱり問答無用という形において行われておることは事実であります。今まで私は、査察を中心にして言っておりますけれども、この中には、特調班の行動についても、多くその心理状態というのはうかがわれておるわけです。今日の納税者の立場というものは、大体あなたも正確な申告をされるようになってきたという判断をしておられるのでありますが、かりに納税が税法通り行われておるかどうかということになりますと、御存じのように、完全に行われておるのは源泉徴収のものが大多数ではないかというふうな感じがするわけです。そこで、この賠償規定というものの必要がほんとうにないものであろうかどうか、これは査察を担当しておられる長官にお伺いするよりも、大蔵省の立場、あるいは政府の立場から一回お伺いをした方がいいと思いますが、ただいま私と渡邊長官との論議をお聞きになって、きわめて常識的な性格を持っておられる次官が、この問題をどういうふうにお考えでありましょうか、お伺いをいたしたいと思います。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 一言、誤解なすっていらっしゃるのじゃないかとは思いますが、念のために申し上げておきますが、刑事補償法は、脱税事件の場合におきましても、これは当然適用があるわけです。もちろん査察官には、勾留とか逮捕とかいう権限はありません。しかし査察官の方からいろいろ得た材料で国税局長が告発して、そうしてそれが、検察官の方でもって逮捕勾留というようなことが必要であるということになり、逮捕勾留した、しかしそれが無罪だった、こういう場合におきましては、当然刑事補償法の規定の適用があるわけでして、脱税犯におきましても、それらの点は普通の刑事犯罪と何ら違うことはない。従って脱税犯だけにそうした関係が特殊なものになっているわけじゃない。普通の刑事犯罪の場合の捜査とか、あるいは逮捕勾留、こういったようなものが、脱税犯の場合においても同じように、やはり刑事補償法、あるいは国家賠償法、こういった問題で適用されているわけでして、別に脱税犯について特にそこが欠けているわけでもないし、それ以上のものでもない、これだけをとりあえず申し上げておきます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 いや私の言うのは、誤解があったかもしれませんが、長官も御存じのように、たしかあれは、日数において、一日二百円以上四百円以下であるということで、あなたもお話しなさっていらっしゃると思います。私の聞いておる問題は、査察を受けあるいは特調班の取調べを受けた場合においては、数日間数人ないしは数十人の包囲攻撃の中で、それこそ問答無用というふうに行われ、それによって信用を失墜し、業務がストップし、そういう物心両面の損害は、とうてい今の状況においては救われないという立場に立っておるのでありますが、それを含めて、次官から御答弁をいただきたいと思います。

坊秀男自由民主党大蔵政務次官

○坊政府委員 ただいま国税庁長官からお答え申したことで、大体の筋は御了承願えたことと思いますが、横山委員から査察の制度につきまして、非常に含蓄ある御質問を承わっておったのでありますが、大体私は、この査察の制度というようなものはないような世の中が非常に望ましいと思う。だけれども、今の徴税制度というものは申告納税ということになっておりますから、そのうらはらといたしまして、もう査察することは全然いらぬ、脱税、遁税といったようなものは全然ないというような世の中は、非常にけっこうなのでございますけれども、申告納税ということになっておりますので、そういうユートピアみたいな徴税の社会というものは期しがたい。そういうような場合に、うらはらとしてこの査察の制度、正宗の刀を抜くということは、これは抜かぬ方がいいにきまっておるのでございますが、やはり抜かなければならぬということが、きわめてまれなケースとしても絶無を期しがたいというので、査察の制度というものも、いやいやながらなければならぬということであろうと思うのです。そこで、だんだんと査察を実施せられて、そうしてあるいは告発をされるとか、そういったようなことがだんだん少くなってきておることは、大へんけっこうなんでございますが、それじゃ今この査察の制度といったようなものをやめてしまいますと、これはまた人間のあさましさと申しますか、あさはかさと申しますか、またそういった場合がふえてくるというような意味におきまして、査察の制度というものは、脱税に対するその特定の場合を、これを処分するとか、処罰するとか、あるいは税金をとるとかということもむろん査察の目的でありましょうけれども、そういったようなことの起ってくる一般的の予防を査察の制度がやっておるということも、相当これはウエートを大きく考えなければならない、かように思うのです。ところが今横山委員からおっしゃられました、この査察制度運用をするに当りまして、いろいろ御指摘のような、無辜の納税者にいろいろな損害を与えるといったようなことは、これはできるだけないように、その運用を慎しんでやっていかなければならない。制度のことにつきましては、これはまた慎重に考えまして、制度等の欠陥があります場合には、これは改善していくのが当然のことだろうと思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 おっしゃる点はわかるのであります。ただ次官のお話を伺いまして、あなたの思想をそのままの形で現わすならば、また長官も言うておられたのでありますが、将来これがユートピア的な状況になるならばなくしたいという思想でいくならば、今日まで続いておりました査察のあり方について、若干のやはり変更なり、制度の変更なり、運用の是正なり、そういうものがなされてしかるべき段階ではないか。一ぺんにユートピアになるわけではありません。また戦後の混乱からも今は冷静になってきたはずでありますから、査察をより一そう強化するという方向から、査察のあり方、特調班の運用のあり方については合理主義、科学主義の方向へ一歩を踏み出す段階ではないか。そうなると、査察という言葉自体にも改正をする必要がありはしないか。また査察に優秀な人を集めて、そうして第一線部隊は若い人にという傾向があるように見えるのでありますが、これまた第一線がしっかりしておれば、実は査察は不必要ではないかということも、原則的に言える点であろうかと思います。  次にお伺いをしたいのは、協議団の制度の問題であります。私も地元で協議団の運用について、いろいろと意見を各方面から聞いたのでありますが、納税者側からいいますと、協議団へ申請をする、あるいは苦情処理をする、特に協議団では、大体こういうことだというふうに協議団の態度がある程度きまるとすると、国税局なり、何の人でもこういっているのだから、もうそれに非常な期待を持つと思う。ところが協議団長の決定というものは、結局国税局長が最終的決定をするのであります。国税局長の気持としては、やはり主骨部の気持を尊重する、そういう気持はどうしてもやむを得ない雰囲気だと思います。そのために、国税局の協議団に対する信頼感というものが、ある時期においては非常に伸びていきましたけれども、最近においては、やや停滞をしておるような雰囲気があるのであります。これは、私は一つには制度の問題、一つには人の問題、二つあると思うのであります。協議団の制度というものが、シャウプ勧告以来一つの民主的な税制として出てきたものであるにかかわらず、中途半端なものにそれをしてしまったために、かえって税務に対する迷いが双方の中にも生まれているのではないかと思うのです。結論的に申しますと、私の考えとしては、協議団には老練な人、あるいはある時期に言われた民間人としての気持を持った人、そういう人たちが出てきて、情理に徹した判定をするということが持ち味、そういうところをねらったのではないかと思うのでありますが、現在行われております雰囲気というものは、何といいますか、法律を運用するに当って、いい意味の落ちこぼれがないかどうかという点を調べて、そうして法律通りこれを実行する、こういうことに堕してしまっているのではないか、それだったら、第一線部隊の方がよほど話がわかる、こういう結果になっているのではないかと思うのであります。私は協議団の存在を否定するものではありません。協議団の存在というものが、いわれておるように 民間人も一つ含めたらどうか、そうして情理に徹した税制の運用をはかるというのであれば、これは現在の運用と違うのではないか、現在はそうなっていないのではないか、こういう感じがしてならないのであります。ですから、協議団のあり方について制度的に、法制的な立場について改善を加える必要があるのではないか、また協議団におられる人が、何か正統な系統からはずれた、うば捨て山みたいな、そう言っては語弊があるかもしれませんが、そういう人たちが入ってやっておる協議団から、早く直税へ帰りたいとか、本筋のところへ帰りたいという心理があっては、これはもう運用ができないのではないか。この両方面から、協議団の運用について改善を加える必要があるのではないかと思われるのでありますが、いかがでありますか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 前段は御質問ではございませんでしたが、一言申し上げたいと思いますが、私は、査察、特調というものだけを特にクローズ・アップして、そこに納得とか理解とかといったような焦点を合わされ、従って査察も名前を変えていいのではないかという点については、多少違った意見を持っております。そうした意味で、税務行政全体において理解と納得を得るような税務行政を行い、そしてできるだけそれも科学的、合理的にやっていく、これはもう私は当然そうあるべきだと思いますが、査察の問題として出て参りますのは、その中のきわめて特殊なケースが、やはり片方でそうした努力をしておりましてもなおかつ出てくる問題なんですから、従ってこの場合におきましても、やはり、やむを得ず強制調査ということにならざるを得ないんじゃないか、こういうふうに思っております。ただ税務行政全体を、できるだけそうした強制調査とか、そういうものを必要としないような方向に全体を持っていけ、こういう御意見でございますれば、われわれもそれを理想にして、今後とも努力して参りたい、かように考えております。  それから御質問の協議団のことであります。これは、御指摘のような意味の感覚を実は率直に申しまして私も持っております。今後協議団をどう持っていくべきかという点について、われわれの方の内部でも実は検討を重ねております。制度の問題としましてどうするかという問題になりますと、結局現在は、御承知のように、制度としては、国税局長の一つの諮問的な機関になっている。従って、協議団が結論を出しましたときに、その協議団の結論をそのまま採用するかどうかという点につきまして、国税局長が判断をしますときに、主務部課の意見を聞きます。主務部課の意見と協議団の意見が必ずしも一致しない場合もあります。これはできるだけ調整して一致させるように、国税局長としては努力することになっております。しかし、一致しなかったら一致しなかったなりに、国税局長自身がやはり判断すべき問題であります。必ずしも主務部課に軍配を上げるのが、当然とも思っておりませんし、協議団の意見を十分聞いてやっていく。協議団を国税局長のそうした判断から離しまして、協議団の結論がそのまま当然の結論だ、それでおしまいだということになれば、いわば一つのタックス・コートのようなことになるんじゃないかと思いますが、そういう制度に持っていくのは、現在の段階においてはまだ適当ではない。ただ協議団が一応あるのですから、その意見をできるだけ尊重させると同時に、国税局長として、協議団の意見と主務部課の意見が一致しなかったときは、できるだけ早い時期にその結論を国税局長の責任において出す、こういう方向に進んでいく、こういう点は、現在まだ多少もやもやしておる点がありますので、これはぜひそういう方向に進んでいきたいということで、極力指導しております。  それから同時に、一番やはり大事なのは、協議団の人間の問題であります。実質的なスタッフの問題です。この点につきましては、いろいろ出発の当初においては、必ずしも充実しておるものとは認められなかったのでありますが、最近においては、相当これを充実する方向へ努力してきております。まだ必ずしも万全とは言えませんが、協議団というものの重要性をやはり十分理解し、認識して協議団そのものを充実していくという方向に、今後とも私は人事もやっていきたい、かように考えております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 要すれば、協議団のベースと主管部のベースと局長のべース、判断のそれぞれのべースが同じベースに立っておるのでは意味がないということを、私は考えなければならぬと思うのであります。変ったべースとは何ぞやということであります。通俗的に言うならば、協議団は情理に徹したといいますか、その実情を勘案をして、特殊な権限を持たせるようにしないと、もう少し変ったベースでやってよろしいという立場を与えなければ、これは屋上に屋を重ねるのみではないか。法規で漏れているところはないかという立場であるならば、何も主管部だって、取るだけ取った方がいいという考えの人もないと思うのでありますから、変ったべース、すなわち特殊な権限というものを与えなければいかぬ。これは局長に特殊な権限を与え、協議団を通過した問題に対しては、特殊な判断をしてよろしいという権限を与える。もしもそうでないならば、あなたは今直ちに判定はしかねるとおっしゃったのですけれども、協議団の決定を最終決定とするというような方法を選ばなければ、今日の協議団のそのままの状況においては、かえって弊害の方が出てくるのではないか。協議団の設置というものは、相当の期待を待って生まれた以上、この際長官も言っておられるように、格段の是正がさるべき段階であると思うのであります。最近日本橋で特調を受けられたお茶屋の御主人が、自殺をなさったそうであります。私は、この事件を例に引いて全斑を律することには間違いがあるとは思いますが、また実情を聞いてみますと、必ずしも税務職員の強制的な脅迫とか、そういう事実はなかったように思います。けれども、この調査なり、あるいは特調なり、あるいは査察が国民に与える影響というものは、心理的にきわめて大きなものがあります。だからこそ権力的行使、権力的心理、そういうものを税務行政の中から払拭をすることが必要ではないか。とことんまでいって、それでは、この特別に調査するという制度を撤廃するかどうかという点については、まだ議論のあるところではありましょう。けれども、お茶屋の御主人が税務署の調査を受けたのが直接導火線となって自殺をしたというそのこと自身が、今日の納税者の気持を端的に物語っておると私は思うのであります。もちろん青天白日なものならば、そういう心配をする必要はないではないかという議論もあるでありましょう。しかし一般的に、いやな言葉でありますが、国民が税務署と警察署というものにはあまり気持のいい感じを持っておらないのであります。そこを納得と説明と合理主義、科学主義を徹底して、この際税務の行政について格段の工夫をなさるべき段階であると思います。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 私は、主管部課、国税局長、あるいは協議団が準拠すべきよりどころが別々なものがあるべきだという御意見には、遺憾ながら賛成いたしかねます。私は、やはり結局税法の適正な執行ということが、国税庁の仕事の全部であるべきですから、従って……(「法律は一つでもベースは違うのだ」と呼び、その他発言する者あり)べースというのは、結局準拠すべき法律は一緒なんですから、ベースとなるべきものは準拠すべき法律しかないのです。

山本幸一日本社会党

○山本委員長 答弁をして下さい。答弁中に雑音を入れないように……。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 準拠すべきものは法律の適正な執行しかないのです。ただ、要するに協議団が主管部課と違った役割をしているのは、協議団としてもう少し広い観点に立って、あるいは納税者の方の言い分を十分その気持になって聞いていける、やはり自分が調査しておりますと、多少それに一つに思い込んだようなことになりかねないものでありますから、従って別の新しい観点でもって納税者の言い分を聞く、こういうような意味において、だからこれは、あるいは言葉の端の問題になるかもしれませんが、ほんとうに準拠すべきものは一つだ。ただ、しかし協議団として存在する限りにおいて、協議団としての機能としては、主管部課とは違った観点で、その話を聞き調査をする、こういうものがあっていいんじゃないか、これは私は同感であります。従って、そういった意味において、協議団というものがやはり十分の機能を果すようにやっていくべきじゃないか、こういうふうに思っております。それから、あとの税務署の調査の結果、自殺をなすった方があったとか、私今初めて伺いましたことで、存じませんでしたが、しかしわれわれの方としましては、特別調査ということをときどきお話しになりましたが、特別調査というのは、これは査察と全然違っております。結局普通の税務署の調査の場合、先ほどもちょっと触れましたが、人員の関係、それから件数の関係から、そう長く時間をかけられないけれども、ある特殊なものにおきましては、これはそう簡単な調査ではだめだからというので、特別調査という制度ができているわけです。これは、別に普通の調査と何ら制度的には変っているものではございません。全体としまして、査察の場合におきましても、調査の場合におきましても、必要以上に納税者の方に強制する、御迷惑をかけるというようなことのないようにということは、もう重々やかましく言っておりまして、いろいろお話がありまして、一体査察官なり調査官の態度はどうだったというような点をよく伺うのですが、最近におきましては、全体としてその辺はかなり改善されてきているのではないか、そういうふうに私は思っております。

神田大作日本社会党

○神田(大)委員 先ほど来横山委員から査察の問題等について御質疑がありましたが、私は、査察をして白となった場合において、国税庁がそれをそのままにして、納税者に多大の損害をかけっぱなしにしておくというようなことは、何らかの方法でこれを是正しなくちゃならぬと思う。脱税の場合もそうであると思うのでございますが、酒類に類似しておるということで、三年前に査察をして、何百万という類似品を差し押えをしました。それが白とも黒ともつかないで、三年間もおっぽり出されておる。業者の方は、早く告訴して黒白をつけてもらいたいということを、何回となく国税庁に申し入れておるにもかかわらず、これに対しまして、白とも黒とも判断をつけないで、しかも何百万という品物をそのまま差し押えをしておる、そのために、商売をすることができず、やめてしまった、こういうようなケースがあるわけです。その人は、非常に温厚といいますか何といいますか、何回か足を運んだけれども、法的手続はその後もとられていない。税務署の方で告発するなら告発してもらいたいということを、今もって嘆願しておるわけです。差し押えをされた膨大な在庫品は、もう使いものにならなくなってしまった、商売もできなくなってしまった、しかもこれに対しまして、違反であるとか違反でないとかいう判断を下さない、そういうことをやっていても、査察という一つの税務署の権限でそれをやっておって、それで済むというようなことであったなら、これは非常な迷惑を納税者や業者にかけることだろうと思う。こういうことに対しまして、どういうふうにお考えになっておりますか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 今のお話は、査察とわれわれが呼んでおりますのは、通常直接税関係の脱税犯の問題です。今の神田さんのお話を伺いますと、おそらく酒税法違反か何かの嫌疑の問題じゃないかと思います。私、これも正直に言いまして、今初めて伺ったので、そういうことがもしあったとすれば、私は非常に遺憾だと思います。これは至急具体的に調べてみますが、とにかくそういったような事例は、お話の点から推測していきますと、ある品物が酒類に属するか属せないかというような判断、酒類に属するものなら酒税法違反の問題だ、これは間接税の方の管理の問題だと思います。私今の事例のように、長引いて問題を処理しないままで放擲しておくということは、われわれの方から見ますとちょっとあり得ないのですが、しかしあなたはあると言うのですから、これは一ぺん調べてみましょう。

横山利秋日本社会党

○横山委員 どうも神田君からの質問も出ましたけれども、先ほど私が申し上げた調査を受けて、それが直接な原因として自殺をされた納税者のお話は、とっくにあなたは御存じのはずだと思って、そういうことを前提にして話をしておったのでありますけれども、御存じないとすれば、あれの与えておる影響というものは相当大きいのでありますから、一つ一回実情を十分に御調査なさることを私はお勧めしたいのであります。これが結局先ほど言いましたように、税務署の調査——特調あるいは査察等を受ける側の心理というものが端的に表現されておる。極限的にそれが表現されたのが、今度の自殺だと思っております。その人は、青色申告会の副会長をなさっておる人です。副会長をなさっておる立場というものが、税務署のそういう調査を受けたということと、責任感もあり、まあ割合に私の聞いたところでは、おとなしい人だそうでありますが、自分がそういうことをやっておって、調査を受けたというところに直接の導火線があるようであります。その家における納税がどういうふうになっておるか、私は全然知りませんけれども、しかしいずれにしても、その経緯というものは、今日の税務行政において考えるべき義務があると思いますから、調査をして善処されんことを要望するものであります。  最後の質問は、あなたと原さんにあわせてお伺いしたいのでありますが、この間私が質問をいたしました際に、刑務所の囚人の行なっております仕事、それによる収益、それから刑務所の外郭団体の行なっております仕事、その収益、それから刑務所の職員が法規に基いて行なっております仕事ないしは法規に基かずして行なっております刑務所内における事業、それによる収益、そういうのは税制の部面からどういうことになっておるかということを、御調査を依頼しておきましたが、まずその報告を承わります。

原純夫大蔵事務官(主税局長)

○原政府委員 一昨日承わりましたので、十分な調べはまだできておりませんが、ただいまわかっておる限りのことを申し上げます。囚人自体が作業をやっております関係は、これは、作業の収支は国の一般会計でやっておるはずでございます。従いまして、事業の所得の関係は課税の問題とはなりません。囚人がその中からある程度の褒賞金と申しますか、名前は私はっきり知りませんが、それをもらうわけでありますが、これには課税の対象になるほどのものはないようでございます。それから外郭団体の中では、差し入れ関係の仕事をしておる団体があるようでございます。これは、矯正協会とかいうような名前で、財団法人になっておるそうです。それが差し入れの品物を扱う。これは、もちろん物品販売業になるわけでありますから、すでに課税関係があるものとして申告が出ておるようであります。ただし繰り越し欠損をだいぶ持っておるというようなことでありますが、とにかく税の面にはつながりがついておるようでございます。なおそのほかに、おそらく人格なき社団というものになるだろうと思いますが、実際上刑務所内で残りの食糧を飼料にしまして、豚を飼うというようなことによって若干の収益を上げるというような関係があるようでございます。この辺は、先般制定していただきました人格なき社団の収益行為として、課税の対象になるかどうかという問題があろうと思います。卒然と聞きましたところでは、かなりそのにおいが濃いように思いますが、その点は、もう少しよく調べましてお答えするように——これは私がお答えするよりも、国税庁長官の方でおやりいただくわけですけれども、そういうような運びにいくかどうか調べていただくということになろうと思っております。概略申し上げると、さようなことになります。

横山利秋日本社会党

○横山委員 先般人格なき社団について通達が出たようでありますが、これをちょっと拝見したところでは、たとえば国ないしはその職員がやった事業で収益が上った場合に、全部それを国の施設等に収益を回した場合においては、人格なき社団として法人税を課するようなことはしないというような通達が出たように記憶しておりますが、その件はどういうことになっておるのですか、ちょっとそこを中間的に説明を承わりたい。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 私どもの通達に今言ったような条項が入っていたという記憶はございません。ただ事実問題として、よしそれが課税団体ということになりましても、収益全体を国へ帰属さしてしまえば、国に対する寄付金は全部損金でありますから、それは課税団体といいますか、一応課税の対象になる団体であっても、実際上納税に至るということは、出てこないということになると思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 そこで、囚人の行なった仕事については了といたしますが、第二番目の差し入れをする人々の何々協会でありますか、その協会の今日のあり方というものは、まさにこれ独占事業でありまして、ことにこういう仕事をするについては、厳重な制限があるわけであります。しかもその物品というものは、非常に高いのであります。まさに大衆収奪といいますか、囚人収奪が行われておるということは、今日の定評であります。これが一般的に繰り越し欠損になっておって、そうして具体的には徴税の対象になっていないという点については、いささか私は今日の常識からはずれておるのではないかと思いますが、その点、いかがなものでありましょうか。  それから第二番目に、刑務所の職員がその業務に従事していますかたわら、囚人が食べた残飯、それらを利用して豚を飼育しておる、その豚の飼育に囚人を手伝わせておる、豚がどんどんふえるばかりで、それをどんどん売っておるということは、一体どういうことになるであろうか、私は、この刑務所の実情を調べてみたのでありますが、年間莫大な利益であります。これがどういうふうに使われておるのか、職員に聞いたけれども、さっぱりわからないのであります。どういうふうに使われたか、さっぱりわからないのであります。私は、それじゃというので、規程を取り寄せて見ましたけれども、決算の報告その他の義務が、互助会なり何なりの会計にはないのであります。これは一体国に、その収益を刑務所の予算の中に繰り入れたものであるかどうか、あるいは所長さんの適当な裁量にゆだねられたものであるかどうか、それらによって、これが税の対象になるかどうかということは判断が違ってくるのではないかと思うのです。どういう場合ならばどうなるかということを、一つお聞かせ願いたい。

原純夫大蔵事務官(主税局長)

○原政府委員 それは、実際上調べてみませんと、どういう場合にどうなるかということは、所得があるかないか、所得が幾らかという計算は、税法の中でも一番中心的な部面で、それを申し上げることになると相当時間の関係で——収入は何を収入として、経費は何を落すというようなことになりますから、これはやはり調べさしていただいてから申し上げるということにいたしたいと思います。なおお話の中で、矯正協会が独占的であるとか、あるいは豚の飼育に囚人を使っておるというような関係につきましては、いささか、われわれ税の担当者にお聞きになる事柄じゃなく、刑務行政担当者にお聞きになるような事柄もあるかと思いますので、特に御関心でありましたら、そういう向きにお聞きいただきたい。私どもは私どもの関係のことを調べまして、しかるべき者から申し上げるようにいたします。

横山利秋日本社会党

○横山委員 それは話としてわからぬではないですけれども、この場におけるあなたの回答としては、まさに無責任きわまる答弁ですよ。いつも、収入のあるところには課税ありと言っておって、あそこはどうなっておるかわかりません、調べてみなければわかりませんというのじゃなく、そういう職員の収入があって、もしそれがこうなっておるならば当然課税される、こうなっておれば課税されないという判断はできるはずであります。だからこそ、私は先般お願いしておいたのであります。しかし、そう言っておっては仕方がありませんから、委員長にお願いいたしますが、次会に一つ法務省なり、本問題について答弁のできる人を召喚をしていただきまして、税務当局と相並んで回答するようにお取り計らいをお願いいたしたい、こう思います。

山本幸一日本社会党

○山本委員長 委員長の手元で善処いたします。

井上良二日本社会党

○井上委員 関連して、二つほど質問をいたしたいと思います。一つは、本年の酒税の増徴の傾向はどうなっておりますか、酒の税金の入り工合はどういう工合になっておりますか、大体の今日までの状況を簡単に御説明願いたい。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 ちょっと今資料を探しておりますが、大体各酒について申し上げますと、清酒につきましては——最初こういう数字からお答えしておきます。酒税は、三十二年度におきましては予算が千八百十億、九月末でもって九百三十五億入っております。収入歩合五一・六%、前年との比較をちょっと申し上げてみますと、前年度の予算が千六百八十九億、九月末までに入りました金が七百六十七億、収入歩合四五・四%、従って前年は、予算に対して九月までに四割五分四厘入ったわけですが、ことしは五割一部六厘入っておる、従って予算額自体が、前年の千六百八十九億に対しまして千八百十億と、相当ふえておりますが、しかし実収はさらにそれよりも多い割合で入ってきておるというのが現状であります。

井上良二日本社会党

○井上委員 そうすると、年末から春にかけて相当酒が売れるという予想も立ちますし、大体予算を上回る状態になりはせぬかと思う。そうしますと、酒全体の需要というものは、全体的に高まっておるという趨勢が、徴税の実績から推定されると思いますが、そうなりますと、来年度の酒米の増石は一体どういう検討を始めておりますか、増石をいたしますか、増石はいたしませんか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 まあ酒というふうに申しましても、酒税の中に入って参りますものの中には、清酒、しょうちゅう、合成酒、ビール、雑酒と、それぞれ各種類によって傾向が違ってきております。一番大きく伸びておりますのがビールであります。それで、これは予算が二百七十五万石で組んでありますが、二百七十五万石より本年の実績自体が、かなり上回るのであります。それから合成酒の方、しょうちゅうの方。合成酒は多少ふえておりますが、しょうちゅうは足踏み状態。それから雑酒は、これは二級ウイスキーを中心にして相当伸びております。雑酒のもう一つの方の大株主である甘味ブドウ酒、これは赤玉ポートワイン的なもの、これはちょっと頭打ち。井上さんの一番の問題とされる清酒でありますが、清酒は、やはりある程度需要も増加の姿にあります。ただいろいろ問題があるのですが、市場は非常に軟弱であります。かなり買手市場になっております。来年の消費はどの程度のテンポがあるかという点は、まだ議論がありますが、ある程度ふえるのじゃないか。国民所得もふえ、国民消費もふえるのですし、ふえるのじゃないかと思っていますが、市場が非常に軟弱のために手持ちが相当ありますので、それらを考慮しながら、来年の生産をどの程度に考えたらいいのだろうか、こういうことになりまして、今われわれの方でも検討しておりますし、業界の方でもいろいろ議論しております。少くともわれわれの方として、この程度が適当であろうという結論はまだ出しておりませんが、去年は三百三十万石作った、これより少いのはおかしいじゃないかとは思っておりますが、どの程度ふやすかという問題になると、業界の方でも、減石論からかなり大幅の増石論まで非常に議論のあるところでありまして、もう少し慎重に検討してみるべき問題だというふうに考えております。

井上良二日本社会党

○井上委員 酒を中心にして、間接税の減税の問題が相当やかましい問題として昨年来擡頭してきておりまして、問題は、相当売れ行きが伸びておりますから、当然一部減税をしてもいいではないかという意見も起っておるわけであります。今御説明によりますと、ビール、雑酒を中心として相当伸びておるし、かつ清酒におきましても、いろいろ取引関係においては、なかなか地域的に問題があるようであります。ただ関西から以西九州の方は、どうも取引関係がおもしろくない、反対に関東、東北の方は、大体においていいという情勢でないかということがいわれております。そういう情勢で、業界の方でもいろいろ来年度の増石割当について議論をいたしておることは、今御説明の通りでありますが、いずれにいたしましても、結論的には、そう上回る大幅な増石はなにしても、二万石、三万石の増石は大体予想されるのじゃないかということが見通されるのであります。  そこで、この増石を一体どう割当てるかという問題になると思うのでありますが、この際特にお願いをしておきたいのは、戦前酒類の統制が非常に強化され、企業整備されましたときに振り落されたものが、終戦十年にしてやっと復元化し、復活酒造者ができた。この復活酒造者の復元にあたりまして、前半田国税庁長官は、できるだけ公平な方法で復元の割当をきめてやりたい、こういう御同情ある御発言をされて、業界の方々も非常に安心をしておった。ところが、いろいろ業界の内部も千差万別でありまして、蔵元の非常に大きいところ、また非常に小さいところ、いわゆる整備統合いたしましたときに、非常に大きな石数を持っているところと小さいところとが分れておりまして、いろいろあっせんを願ったけれども、なかなか問題があって、一様に公平なことにいかなかった。さて、実際本日あなたの方から復元に関する資料をいただいたのですが、この資料によりますと、全体で復元の解決割合は六五%の平均にしかなっていない。特に関東信越地帯、これはわずかに五二%、それからいま一つ広島国税局管内は五二%、この二地方が非常に少い。このために、せっかく復元復活をいたして戦前の業界に立ち返ることができましたけれども、割当造石数が非常に少いがために、業体自身が成り立たないということで、先般来それぞれ当局の方へもいろいろ陳情を申し上げておるようであります。もしそれ来年度、ただいま申し上げます酒造米の増石が相当予想されるということになりますならば、この増石の一部をこれら復元をいたしました零細酒造者に何ぼかの割当をいたしまして、何とか成り立っていく酒造ができますような処置を講じられぬものかどうか、この点に対する長官の御意見を伺いたい。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 復活復元の問題は、お話しのように業界でも非常に問題のあった点でございまして、平田前長官、それから私なども、一応何とかこれを円満に解決していくようにということで努力して参りまして、現在に至って、まあ一応ある程度問題は片づいてきたのですが、ただ今関東信越の例などをおあげになりましたが、どうもこの辺になりますと、分れる方の母体と申しますか、その方がやはり相当小さいものですから、これが問題をむずかしくしている。それからもう一つ、これも戦争中に行われたことだったんですが、一時関西の方でもって作った酒を関東の方へ持ってくるというのが、交通輸送の関係でできなかった。従って関西の方で作る分を関東で作れということでもって、造石の割当の振りかえをやったやつを、復元復活の機会に、それは元へ戻そうという話があった、これは業界の方々の了解を得てまとまったわけです。関西の方は、ちょうど復元復活とそれとがぶつかったものですから、割合に地域的に返ってきたものを復元復活に割り当てるということで、既存業者が割合に話が進めやすかったのですが、関東の方になりますと、いわば二つだまで、地域的な関係で復元復活と両方出てきた。既存業者もなかなかやりきれぬというようなことで、現在のような状況になっていると思います。ただ、しかし復元復活の場合におきまして、最低造石数が三百石ですか、三百石以上ということを一つの基準にしておりますから、現在の普通の酒屋の状態から見ますと、それで企業が小さ過ぎてやりきれぬ——これは欲をかけばきりがありませんが、私は一応企業として存在し得る単位として、三百石程度といえばまあまあじゃないかというふうに思っております。ただそういった小さな企業にもっと米を割り当てたらどうかということになりますと、ひとり復元復活の問題だけに限定できるかどうかという点に問題があるわけでございまして、なかなか酒の業界は最近苦しがっておりますので、大きいものは大きいもの、小さいものは小さいものなりに苦しがっておりますので、相当議論のあるところではないか。御趣旨は一応伺いますが、われわれの方といたしましても、とっくり検討さしていただきたいと思っております。

井上良二日本社会党

○井上委員 これは、既存石数を横取りするということをいろいろ折衝するということは、なかなか困難でありますので、やはり全体の酒造者が多くなれば多くなるほど、業界全体の秩序が乱れてくるし、徴税その他の面において、やはりいろいろ問題があろうと思いますから、せっかく増石されるのでありますから、増石した分をできるだけ成り立たぬ方に順次あんばいしていくという行政的指導措置はとり得ると思います。これは、いろいろ後ほど実際について御懇談を申し上げたいと考えますが、ぜひ一つ国税庁の方でも具体的に御検討願いたい。  それからその次に伺いたいのは、税務署の調査員の実費弁償についての問題であります。全国各税務署に税務職員の税務調査活動のために、交通費の実費弁償の費用が交付されて、各署ごとにこれが職員に支給されていることになっている。ところがこの費用が、非要員の調査活動、すなわち署長の対外的な交際費、あるいは上級機関の幹部との懇談交際費、こういうものに使用しているところがありますが、国税庁としては、この交通費等の実費弁償がかような交際費等に目的外支出をされても差しつかえがない、こういう指導をされておりましょうか、その点を伺いたい。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 税務職員が調査のために出張いたしますと、出張旅費をもらうことになっております。それから出張旅費をもらわない場合で、たとえば車を雇い上げるといったような場合もございます。今のお話、まあ私もそういうような事例も、うわさ程度ですが、話を全然耳にしないでもございませんが、これはもうはっきり目的外使用でありまして、それがほんとうに確認されるなら、会計法違反として会計検査院でも当然指摘さるべき問題でございますが、そういったようなことのないように、私の方としては現にやかましく言っております。そういうことは、われわれの方としてはあってはならないという意味の指導をしております。ただ、いろいろ事情を聞きますと、いわば会議費とか交際費とかいうところで、われわれの方で配賦してある予算が少いというので、ずいぶん苦しいやりくりといいますか、苦しがってやりくりしているところがかなりあるようでありまして、これは、主計局にいろいろ要求しているのでございますが、費目が費目だけに、なかなか主計局に納得してもらえないというところで、かなり無理な状況になっている面もあろうと思いますが、私どもといたしましては、そうした交通費とか、そういったものをそんなものに使うのは、これは完全に会計法違反ですから、そういうことはやめる。同時に、非常に現在要る経費が予算が少いためにずいぶん苦しく、あるいは身銭を切っているといったようなことのないように、何とか処理して参る、かように努力して参りたいと思っております。

井上良二日本社会党

○井上委員 そうしますと、現在そういうことに支出をいたしているものは、全部これは違法だから元へもどす、こういうことにできますか。たとえば最近この実費弁償の問題がやかましくなって参りまして、金沢の国税局管内では、署長、課長等に支給される管理職手当の不足が多いということから、実費弁償の予算の中から一定額を、署長や課長が実際は出張してないけれども出張したことにしておいて、それを保留しておいて、それをまた交際費に充当しておる、あるいはまた職員の調査活動費が不足するからということで、これを天引きカットしておく、こういうことが徴税行政の上に非常に大きな支障になるというので、金沢国税局管内の特に金沢税務署では、組合からやかましくこれを追及されて、署長がこれは悪い習慣であったことを認めて、未使用の保管金の返還を始めた、こういうことを言うております。これは、全国各税務署にもさような実例があると思いますが、そういうことをしておることは全部あとで返させますか、どうですか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 今の金沢の話は、非常に具体的に聞きましたが、そういうことはあってはならないわけでして、従ってよく調べてみたいと思っております。しかし、それが全国的に行われているとは私は思っておりません。

井上良二日本社会党

○井上委員 全国的に行われているとはあなたは思っていないだろうが、実際は今申しましたように、いろいろな交際費が足らぬために、出張したことに表向きだけしておいて、実際はそれを交際費に流用する、こういうことが行われておる。そこで、そういう場合には、今後やることはならぬという通達も出し、またさようなことで保留しておる金があるならば、それは正規な目的に使ってもらいたい、こういう通達をお出しになる意思がありますか、どうですか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 その点につきましては、厳重に注意したいと思います。

山本幸一日本社会党

○山本委員長 関連して、横錢君。

横錢重吉日本社会党

○横錢委員 さっきの横山委員の御質問の中で、青色申告の問題が出たのですが、国税庁長官に一点だけ伺っておきたいと思うのです。農家経営の者に対しては、青色申告を認めていないのかどうか。この前の青色申告の問題で、できるだけこれはいいものにしぼって整理をしていく、そういうような話を聞いておったのですが、現実に下の方ではそれが行われておらない、こう思うのです。そこで農家経営をしておる者に対して、従来、青色申告をやっておったが、あなたのところは適当でないからやめなさいということで勧告した例があるのですが、この点、どう考えておられるか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 青色申告につきましては、結局農業経営であるから、青色申告はいかぬというような考え方はいたしておりません。従いまして、農業経営の青色申告はある程度あります。ただ農業経営の場合におきまして、現在の農家の状態でありますと、北海道のような大農形態でございますと、かなり企業としての実態が備わっておりますが、そうでない場合でございますと、なかなか企業としての実態が備わっていないという場合が多うございます。従いまして、農家の場合は、記帳などもかなり簡単にはしてございますが、なおかつその記帳も十分にできない、こういう場合におきましては、これは非常に具体的な例になりますから、私は一般論としてしかお答えできませんが、青色申告の申請はして一応承認はされていながら、しかも非常に簡単化されておりながらも、なおかつあの記帳が十分できてないという場合は、これは取り消すということができるわけですが、取り消すというのも荒立つから、その前に、取り下げしたらどうかというふうな勧奨をすることも、これは具体的な問題としてはあり得るのじゃないかと思いますが、それは農家なるがゆえにという問題よりも、個々の納税者としての青色申告である限りにおいては、一応定められた記帳をしなければならぬ、そういうものができてないという場合において、そういう問題が起り得るのじゃないかというふうに思います。

横錢重吉日本社会党

○横錢委員 これは、記帳能力においては十分にある、しかも二年間これを行なってきたのに、ことしになって、農家はあなたのところ一軒きりしかない、従って適当でないから取り下げの願いを書いてくれということで、取り下げ願いを書かせた。今まで青色申告でやっているとほとんど税金がかからなかったのに、取り下げ願いを書いたところが、とたんに税金が来て本人が面くらった。これは初めから作為をもって青色申告を取り下げさせて、そうして課税をさせてやろうと、こういう考え方から出てきたのではないか、こういうように本人は疑っているわけです。従って、どうもその間に、税務署のやり方として割り切れない、この損失補償は一体どこに求めたらいいか、完全に青色申告をしていくならば税金がかからないのに、向うの見込み課税だとかかってしまう、この補償をどうしてくれるかということなんですが、こういう問題に対してどうお考えになりますか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 私がお答えするのに、補償という点がよくわかりませんが、結局青色申告の取り下げを慫慂するとか、あるいは取り消しの問題が出るとかいう意味は、どこまでも青色申告に定められている記帳が十分なされているかどうかということにかかっていると思います。同時に、それが十分なされていなければ、青色申告を取り消し、あるいはその前段階では取り下げを慫慂する、こういう問題はあり得ると思います。それから青色申告は、御承知のように、専従者控除その他いろいろの白色の場合に認められない制度がありますから、従って青色申告の場合におきましては課税にならなかったものが、白色になったために課税になる、こういうことはあり得ると思います。しかし補償という問題になりますと、私は何の補償か、結局さっき言ったような関係で、青色申告の取り消し、取り下げというものの要件はそこにあるのですから、そこから全部あとは出発して出てくる問題じゃないか、こういうように考えております。

横錢重吉日本社会党

○横錢委員 損失補償というのは、その損失をこうむった方本人から言うならば、その損害補償をどうするかということなんです。なかなかその方法はないだろう。これもわかる。しかし、現実には本人とするならば、青色申告を続けて、その後もそれに従って大体記帳をやった。その例から見て、われわれが見ても、これなら大体税金がかからないだろう、こういうように見ておるのが、今度青色申告でない白色になると、見込み課税でかかってきた、こういうような税務署の指導のあり方というものは、決して納税者を納得させておらない。あるいは青色申告制度を続ける趣旨にも合っていない。しかも本人が申告をしたにもかかわらず、それを無理に期日には受け付けない。期日がしばらくたってから、あなたのところは受け付けるわけにはいかないから、取り下げの願いを書きなさいということで書かして処置をした。こういうような行政のあり方は非常に不適当なものではないか、こういうように考えるわけです。あなたの部下の中にこういう税務署がある、これは千葉県の中の一例である。従って、こういうような問題についてさらに御研究願って、こういう例に対するところの善処方をお願いいたしたい、こう考えております。

山本幸一日本社会党

○山本委員長 それでは御相談申し上げますが、昨日皆さんに御了解願ったように、原主税局長は一時二十分ないし半ごろから参議院へ行くことになっております。そこで、租税特別措置法の問題で、特に図解による説明をしっかりしろ、こういう強い御要望がございましたので、準備をしてただいまそこに張り出しましたので、この際局長から、この図解の説明を受けて、なお皆さんと御相談の上質疑を続行いたしたいと思います。さよう御了承願います。

春日一幸日本社会党

○春日委員 ちょっとその前に、長官に伺いますが、現在の酒の販売価格が形成される場合のよって立つ法律の根拠は何でありますか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 現在酒につきましては、雑酒以外は、公定価格をきめておりますが、これは、根拠法令としては物価統制令によっております。

春日一幸日本社会党

○春日委員 物価統制令は、最高価格を規定するのでありますから、従いまして、以上高く売る場合は違反でありましょうが、安く売る場合は差しつかえありませんか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 公定価格より安く売る場合は、物価統制令違反にはなりません。

春日一幸日本社会党

○春日委員 現実の問題として、酒屋さんが、製造、卸、小売の段階を通じて、すなわち独禁法の精神による自由にして公正なる競争の原則で、安く勉強して売っても差しつかえはございませんか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 物価統制令違反にはなりません。

春日一幸日本社会党

○春日委員 そうすると、他の何らかの法令、政令、行政措置等、何らかの制限に抵触いたしますか、あるいは全然抵触いたしませんか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 その裏に脱税があるとか、そういう場合は全然別問題でして、単純に値段を安く売るということだけは、何ら法令には抵触いたしません。

春日一幸日本社会党

○春日委員 そういたしますと、たとえば小売屋さんが、みずからの小売マージンを少くとどめて、そうしてさらに他の小売屋へ売るという場合、マージンの点からは、営業として採算ベースに乗るわけなんです。そういう場合は差しつかえありませんか、ありますか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 小売屋が小売屋へ売ることは、小売でなくて、卸売だと思っております。現在の酒の免許は、卸売免許と小売免許と分けておりますから、従って卸売免許を持たない者が卸売をすれば、その方の面において免許違反という問題はあります。

春日一幸日本社会党

○春日委員 そういたしますと、免許を与えられる場合は、卸売と小売と両方の免許を与えられる場合があるかどうか、この点をちょっと伺います。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 戦前のものは、卸売と小売と両方の免許を持っておる場合があります。戦後は卸売と小売とは分けて、兼業はさせないという方向で免許を与えております。

山本幸一日本社会党

○山本委員長 いなかでは、戦後でも卸売と小売とを与えたのがございましょう。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 御注意がありましたので、訂正させていただきます。いなかの方では、戦後の免許の場合におきましても、卸売と小売の免許を両方持っておる場合もありますが、大都市におきましては、卸売と小売とは別業ということで、一応原則として免許を出すことにいたしております。

春日一幸日本社会党

○春日委員 これは、日本国内全般を承わっておるのであって、いなかも町も分けて承わっておるのではないから、全部の答弁をまとめてやっていただかないと困ります。これは厳重に注意をお願いいたします。  そこで、小売屋へ小売屋が継続して販売行為を業となす場合は、この免許条項に抵触してくるかと思います。けれども、ときたま同業者間の品不足だとか、あるいは特殊の銘柄のものであるとか、間に合わすというような意味合いにおいて、常時継続的というのではなくて、必要に応じてまれに、あるいはときに断続的にそういう小売屋へ品物を間に合せてやるということは、私はこの免許条項の精神には抵触しないと思うが、この点、いかがでありますか。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 具体的に、まあそれはいいだろうと言い出して、それが継続的なものになっていってしまうと、そこで境目が非常にむずかしいわけでありますけれども、きわめて常識的に、たまたまそういうことがあった、いわば荷を回してやったという程度のものがすぐ卸売だというふうには、私は思いません。

春日一幸日本社会党

○春日委員 ひんぱんに継続的に業とする場合は、免許が段階性をとっております限り、いけないことはわかると思うのですが、しかしながら、ただいま長官が御答弁になりましたように、荷をちょいちょい回すという程度のことは差しつかえない、こういう工合に了解をいたしまして、これで質問は終ります。

渡邊喜久造国税庁長官

○渡邊政府委員 ちょっと一言申し上げておきますが、ちょいちょい回すというものが、継続的なものと紙一重になりますから、従って、あまりちょいちょい回さないようにしていただきたいということを……。

山本幸一日本社会党

○山本委員長 それでは、速記をとめていただきまして説明に移ります。     〔速記中止〕

山本幸一日本社会党

○山本委員長 では速記を始めて下さい。  午前はこの程度にとどめて、午後は一時半から再開することにして、暫時休憩いたします。     午後零時五十七分休憩     ━━━━━━━━━━━━━     午後二時十二分開議

山本幸一日本社会党

○山本委員長 休憩前に引き続いて会議を開きます。  租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び設備等輸出為替損失補償法の一部を改正する法律案の両案を議題として審議を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。平岡忠次郎君。

平岡忠次郎日本社会党

○平岡委員 今回の租税特別措置法一部改正案を拝見いたしまして、「国際収支改善のための総合対策の一環として、」という提案理由のうたい文句に多大な疑問があるので、私はこれからその疑点をただしたいと思うのであります。  まず第一に、この租税特別措置法一部改正案をこの臨時国会に出さなければならなかった理由、この点をお伺いします。

原純夫大蔵事務官(主税局長)

○原政府委員 国際収収が逆調になりまして、緊急に何とかしなければいけないという事態に立ち至りました。これを何とかするという必要は、きわめて緊急であったことは御存じの通りであります。従いまして、政府といたしまして、速急に打ち得る手につきましては、すべてときを移さず打って参るという考え方で対処したわけであります。本件の輸出所得控除の割増しでありますが、これにつきましても、極力そういう意味で、速急に効果を表わしたいというところから、この根本的な方針を政府部内で腹をきめました時分に、その時期以後の輸出については、割増しを与えるようにして持って参りたいというふうに考えたわけであります。もちろん、これは国会においてそのように法律をお定めいただくということを前提とするものでありますが、事態が緊急であり、かつ必要もきわめて強く認められましたので、後刻八月一日からの輸出について優遇を与え得るような法律案をお願いするということを決心してきたわけであります。従いまして、今回出しております法律案にも、八月一日からの輸出についてこれを適用するということにお願いいたしておるわけであります。そういうものとしては、やはり通常国会を待って出すというのでなくて、機会あり次第なるべく早い機会におきめ願うという必要があろうと思いまして、今回の臨時国会に提案いたした次第でございます。

平岡忠次郎日本社会党

○平岡委員 まあ輸出を増進させるための刺激になるようにという法律案でございましょうが、しかしよく検討しますと、この会期にぜひ出さなければならぬということはないと思うのです。それよりも、この議会に提案される前に、租税特別措置法改正案の骨子といいましょうか、大体の事柄が、すでに先月新聞に発表されています。私どもは、これは非常にふに落ちないのです。新聞に発表されて、それをジャスティファイするためにここに出してきた、そうして強引に何とか通してくれ、こういうような気配がないとも言えぬと思うのです。この点を、どういう事情であるか、もっと率直にお答え願いたい。

原純夫大蔵事務官(主税局長)

○原政府委員 その点は、私どもも非常に苦慮いたしたところであります。決して既成事実を作って押しつけるというようなつもりは毛頭持っておらなかったわけであります。ただ事態が非常に緊急であって、なるべく早くこの輸出増進の効果を現わしたい、それには輸出が事態を救うのに一番大事なポイントでありますので、そういうふうに考えたわけであります。で、この法律案を出しまして、過去にある程度さかのぼった時期から優遇を与えるということにすることについては、通常の場合でしたら、そういうことはすべきでないというふうに重々思ったわけでございますが、事態が緊急であり、かつ困った情勢を打開するというのに一番大事なところであると考えて、あえてこういうふうな行き方をとり、そのためには、やはり世間にもそういうふうに知らさなければなりませんので、閣議等で決定いたしましたことを発表したというようなこともございます。  なお、これはもしいけなかったら、後ほど議事録を訂正していただきたいと思いますが、私どもも国会との関係を非常に気にいたしまして、休会中でありますし、どうしたらいいかということを考えまして、当時衆参両院の大蔵委員長には私ら上りまして、こういう事情で、こういうふうに措置をいたしたいということを、後刻法律案の形でお願いすることになるので、大へん通常のやり方と違うので心苦しいけれども、御了承いただきたいということを——御了承といいましても、大蔵委員長が正式な意味で御了承なされたわけではないわけでありますが、当時休会中でありましたので、まあそれ以上のことができなかったのは残念でございますけれども、決して国会の審議を既成事実で押し通そうという気持でやったのではないことは、そういうようなことからも一つおくみ取りいただきたいと思う次第であります。

平岡忠次郎日本社会党

○平岡委員 私のファイトを鈍らせないために、後段のあなたのお話は聞かないことにして、これから質問をいたします。  この法律案は、輸出の振興を一そう促進することを理由としているにもかかわりませず、前年度より輸出が減っても控除の恩典がふえるということは、どういうわけですか。

原純夫大蔵事務官(主税局長)

○原政府委員 そこが実は非常に苦しいところでありますが、それについては、こういうふうに考えたわけであります。まあ輸出をふやす、ふやした分だけ割増しをするというのは一応考えられる一つの大きな考え方で、私どももこの案を固めます段階には、そういうことを考えた段階もあるのでありますが、その際いろいろ出ました意見を御紹介申し上げますと、一つには、輸出がふえたといっても、去年なりあるいは過去の何年間の平均に比べてふえたという、そのふえた額というのは、過去のその時期に非常に努力をして、もうからないけれども日本の商権を維持し拡張するために必要だからといって、ほんとうに血の出るような思いでやった会社と、それからいやもうそんなもうからないところはやる必要はないよ、国内に売れば、もう神武景気で幾らでも需要がある、そっちの方がはるかにもうかるということで輸出市場など見向きもしなかったというような会社がある。そうしますと、前者は実績が張りに張って汗水たらして実績をよけい上げておるわけであります。後者は実績が非常に少い。そうしますと、その実績に比較しての超過額は、一番努力したところは超過額は少い。努力しなかったところが多いというようなことが出て参ります。そういうようなことから実績を見るにしても、実績の中に努力がどの程度あるかというようなことを考えなければいけないのじゃないかというような議論、これは一つの大きな議論であります。もう一つの議論は、やはり輸出が大事だという場合であるから、ふえたのに割増しをするという気持もけっこうだけれども、同時に本体自体についてもある程度甘味をつけるといいますか、つけていいじゃないかという議論が相当強く出て参ります。その一番強い意見は、もう所得制限もなし、所得の一〇〇%までいったらいいじゃないか。それから取引基準も割増しをしたらいいじゃないかというような意見が相当強く出てきております。私ども究極において前一年の半分ということにいたしましたのは、その両方の考え方を取り入れて、こういう結論にいたしたわけであります。ですから輸出のふえた分の割増しという意味において、あまりかっきりと過去の一定期間の輸出額を超えるというようなことをやりますと、そこに実質上不公平が起るから、その不公平を緩和する。努力、それから努力しなかったというずばりそのものの判定はつきかねるから、やはりその場合には、ある程度内輪に見るということが必要ではないか。つまり基準額を内輪に見るということが必要ではないか。その際に、その内輪の見方を非常に潔癖に見るという見方もありましょうが、やはり国際収支が危ない、とにかくそれを直すには輸入を押えるか、輸出をふやすか、輸入を押えるというだけでは、もう縮少均衡でじり貧であるというのはわかり切ったことですから、何としても輸出を伸ばさなければならぬというのが最大の必要なポイントでありますので、その内輪に見ます基準額の内輪の見方については、あまりに狭い気持でいくよりも、やはりある程度思い切ったところまでいかなければいけないというふうに考えたわけであります。その結果、前一年の半分というようなことになりましたわけで、いろいろ御意見はあると思いますが、決して減っても与えるというようなセンスというのじゃなくて、やはり気持としては輸出を伸ばしたい、伸ばしたものにやる、しかしそれをやる場合に、あまりぎりぎりとした目で見ないで、基準は非常にゆるやかな見方をするという考え方でありますので、どうかそういう意味で御了解いただきたいと思います。

平岡忠次郎日本社会党

○平岡委員 結果におきましては百億円の大減税をなさった。こういう大きな減税をもっても、なおこれをやろうとするほど動機が明確でないのです。それから輸出標準額のことですが、こういうことについての普通の概念は、大体一年なんです。それをことさらに五〇%にして、輸出標準額を半年分というふうに何か常識を離れて規定したりして、そのあげく法律の案文を読むとわけのわからないようなことで、こういうことを考えますと、どうもあまりフランクな気持で聞けないような、立案者のほんとうのねらいどころがどこにあるかということにちょっと疑問を持たれてもしょうがないような法律案だと思うのです。私どもとしますれば、日本の貿易を振興させるということは、もとより念願しておるところでありまして、あなた方とちっとも違いません。しかし、従来は、ともすれば輸出振興の美名のもとに、どうも不当な施策が行われた節がないでもないのです。私どもは、今度機会を得ましてヨーロッパ方面を見てきました。そこで各国の輸出振興策というものを見ましても、そうしたどてらだけを着せて、これをかわいがってばかりはいません。近ごろ東京でかぜがずいぶんはやっておる。ワクチンが足らないから、これはみんな養生をして、大いに日ごろ頑健であってほしいというようなことが、東京都の衛生局長かだれかのラジオ放送にありましたが、これは、やはり日本の貿易を振興させる上においても参考になる意見なんですよ。ワクチンだけではいかぬと思うのです。どてらを一枚々々脱ぎ捨てさせて、体力自体を寒さにも耐えるように鍛える、こういうことが必要だと思います。そういうことこそオーソドックスの輸出振興策であって、これを何かつじつまを合せるために、結局大衆一般の租税の犠牲において商社の勘定じりだけを合せておくことが輸出振興だといったら、それはまるで本末転倒です。こういう点で、あなた方の今回出された法律案に対しては、私どもはそう心から賛成だというわけにはいかないのです。特に八月一日までさかのぼってまでやらなければならないということは、私はまだ納得できません。あなたの説明でも納得できないのですが、なお補足的に御説明いただければ幸いです。

原純夫大蔵事務官(主税局長)

○原政府委員 基本的に、こういうワクチンでじかに対処するのではなくて、からだでいけという考えは、私どもも全然同感であります。常々税制上の特別措置につきましては、そういう税の優遇によって刺激を与えるということよりも、やはり経済政策全般を大きく援用して強い経済——これはこの場合に限りませんけれども、そういうことが眼目であろう。政府としても、基本的に国民の税に対する体質を直していく、やはり一般的に公平に税負担を減らしていく、特に全体が重い現在でありますから、そういう考えでおります。輸出奨励につきましても、やはり経済がうわつかないように、そして企業もうわつかないように、商社もうわつかないように、そういう方向で強い態度でいかなければならぬというような意味でわれわれは考えておりますので、平岡委員の言われる点は全然同感であります。従いまして、特別措置の一環としての本制度についても、私どもとして、問題なく、たとえばよくいわれますように、恒久的にやれというような気持は持っておりません。しかしながら、先日も申し上げましたように、特別措置の系列の中では、やはり日本の現在のいろいろな条件から考えますと、輸出所得の控除には相当優先順位を与えていいのじゃないかという考えでおりましたところへ、事態がとにかくあすにも国際収支の面で行き詰まるというようなところに来たものでありますから、そこであらゆる手を打つ、実際において税の方も一つやれということになりますれば、私ども、やはり一般論は別として、そういうときはそういうときとして、必要なときにはかぜの注射も要るだろう、カンフルも要るだろうというふうな考え方、それでこういうことをいたした。従いまして、そういう時期でありますから、一刻も早くそれをきかせたい、きかせるには、から念払ではだめで、やはりいついつからということを言いたいというようなことで考えましたのが八月一日からということであります。大体緊急総合対策が閣議決定になりましたのは六月十九日、それから税制につきましては、それと並行して、かつそれを受けて鋭意作業を進めて、七月末に関係閣僚の間で話が実質的にきまったわけでありますので、日本の国際収支が、極端にいいますと、もう支払い不能の状態になるというようなことを何としても避けなければならぬというような事態でありましたので、そういう気持からこういうことに持って参ったということでありまして、その辺は、常道からいいますと、まことにはずれておりますけれども、そういう事情に免じてお許し願いたい、御了解願いたいと思うわけであります。  なお減収計算についてちょっと申し上げ方が足りなかったかもしれませんが、今回の改正による減収の増は、昭和三十二年度で約三億円、三十三年度で二十四億円と見ております。その基本に、すでに成立しております法律によります減収額が、今年度七十六億、来年度八十億円ということであります。ですから八十億円の上に二十四億円加わる、当初いろいろおっしゃるような気持もあって、私どもまあ実は税をあずかっている身として、かなり渋い見方もいろいろ出たわけです。しかしこういう緊急の際であり、何とか思い切ってなにしてくれということを要望されて、私どもとしてはここまで踏み切ったというところで、そういっては何ですが、甘過ぎるとお考えいただく反面、またよく踏み切ったといっていただけると非常にありがたいという気持もあるのであります。もう日本が不幸になってはいかぬという気持、これは国民一般もそうであったと思いますし、私どももそういう気持に非常に強く押されたということが、当時は特に強かったわけなんです。その後だんだん若干落ちつきを見せてきておりますが、そういう経緯でありますので、一つその辺よろしくお許しを願いたいと思う次第であります。

平岡忠次郎日本社会党

○平岡委員 法案の内容をせんじ詰めれば、どろぼうは表彰せぬけれども、白痴は別に悪いことをしたわけじゃないから表彰する、こんなことは奨励にならぬです。ですから、考えてみますと、輸出振興を焦眉の急とする日本経済の弱点に食い下った、業界の利己主義に発した、せびられた措置法と考えざるを得ない。こういう点からは、むしろ堕落法案ですよ。こんなもので輸出振興なんてできるはずはないと思う。去年より下回っても国民経済が拡大される、そんなあほなことがありますか。しかも八月一日の点は、こういういろいろな法律として出てくるまでの時間的な経過があなたの説明でわかったので、これはやむを得なかったかもしれぬけれども、前年の五〇%を輸出標準額とした点は、何人が見てもこれは納得できません。特別な免税措置までやって、なおかつこれを施行してみたいといったほど輸出に寄与する法律内容とは思えないですが、これはむしろ通産当局からお伺いいたしましょう、一つ御見解をお示し願いたい。

杉村正一郎通商産業事務官(通商局長事務代理)

○杉村政府委員 ただいまお話がございましたように、輸出を振興するための措置として、確かに税制上の優遇だけということでは足りないかと思います。やはり日本の持つ産業が、世界各国に比べまして十分輸出力を持っておるということが、基本的には一番必要なことだと考えます。その上に、海外の市場についてつまびらかに状況を把握して、上手な輸出をしていくというやり方で臨むのがほんとうの行き方だと思います。ただこういうことにつきましては、たゆまず努力を続けることが必要でございますが、急にこういう施策を講じて急にどうなるというようなものは、なかなかとりがたい事情にありますので、さしあたり輸出に関連する業者が一番刺激を受けて輸出意欲を増すというような措置もとらなければなりません。こういう意味で、今回の輸出所得の大幅な控除ということも、輸出振興のためには、こういう時期には特別の措置として非常に効果があるのではないかと考えて、大蔵省にもお願いした次第であります。

平岡忠次郎日本社会党

○平岡委員 日本の貿易の特徴に、何といっても現在輸入した方が得だという観念がある。輸入業者はまるまるもうけておるのに、輸出業者が汗だくだぐでやる必要はない。これを汗だくだくでやれというのには、相当恩恵を与えてもいいだろうという、基準の置き方の違う議論とか気配があると思うのです。こういう点は、業界自体としても大いに反省してもらわなければならぬ問題であるで思うのです。たとえば、私どもがこの夏行きましたイギリスでの印象、これは日本とまるで著しいコントラストをなしております。イギリスのいろいろな貿易政策からわれわれが教えられた点がございますが、そのまず第一は、ポンドの国際収支の安定という基本的な経済政策についての国内の認識、あるいは協力というものが実に徹底しておるということ。わが国の産業界の言い分などを聞いてみますと、国際収支の逆超であるとか、これの改善ということは政府のやることで、私企業の関知することでないといった考え方がないでもないのですが、イギリスの場合におきましては、銀行にしましても事業会社にしましても、国民経済的利益についての配慮というか関心というものが、はるかに深いと思います。そうした英国民の全般的な健全な一つの常識に比べまして、日本の業界は甘え過ぎていやせぬかと思う。それにつけ入られるあなた方にも、やはり欠陥があると思う。こういうことを根本的に反省しなければ、輸出の改善はおろか、日本経済はまさに危機の前夜に立っておる、こう言わざるを得ない。ですから、今回ぽっと出されてきた法律案ですが、これをきっかけに、やはりえりを正して、日本の経済の事態が危機にあるということを直視して、一生懸命業界にもさとすべきものはさとして、わがままを言わせないという強い態度をとるべきであると思う。私どもに課せられた、あるいは政府に課せられたことは、そういうことを反省することから始めねばならぬと思うのです。膏薬みたいなものをぽかっと出し、しかも大してききもしない膏薬のために数十億を投ずるというようなことは、国民に対する不信行為です。日本の経済自身が貿易に依存しておる程度が高いだけに、かかる行き方に対しては反省しなければならぬと思うのです。説教みたいなことになりますが、こういう点はみんなが心してやらなければ、日本経済は立ち直らない。私の危惧から申しておることなので、こういう点は、やはり立法する上におきましても深甚の考慮を払われたい、かように思います。  それから為替局関係でございましょうか、ちょっとお伺いします。七月かあるいは八月にかけまして、在外公館に向けまして、日の貿易振興のためのアンケートをとった、こういうふうに開いておりますが、その通りでございますか。

石田正大蔵事務官(為替局長)

○石田政府委員 これは、外務省の方から在外公館に向けまして、そういう電報が出まして、返事をとったということを聞いております。

平岡忠次郎日本社会党

○平岡委員 この法律案とは直接関係がありませんが、そのことに関しまして、在欧公館におる経済スタッフ、通産省、あるいは大蔵省から派遣された方々、この人たちの要望事項がございましたので、申し上げて御参考にし、適当な御配慮を願いたい。それは、現在、ヨーロッパの各国一つ一つでは、アメリカとか、あるいはソ連に対抗できない、そこでヨーロッパの国々が一つになって、全人口と全資源をあげましてヨーロッパ共同体とか、あるいは共同経済圏というものを作り上げて、そして次の世界経済に臨んでいく、こういう傾向は顕著な事実であります。従いまして、すでにそういうふうな行き方の具体的な表われとして、EPU決済の問題、あるいは石炭鉄鋼共同体、あいは今度フランスの議会の批准を得まして来年度から発効されるヨーロッパ共同市場条約、こういう一連の動きと申しましょうか、施策と申しましょうか、これが現実に踏み出している。こういう事態に対処しまして、経済スタッフが少しづつドイツならドイツだけに駐在している、イギリスならイギリスだけに駐在している、これでも効果はありますが、ヨーロッパ全体をつかむために、この人事の配置方式を変えることの要請です。経済スタッフを集中的に在欧駐屯として、イギリスならイギリスに駐屯せしめ、そこから各国を定期的にしょっちゅう回って情報をつかむ仕組みにしたい。それが予算的にできなければ、経済関係の各国駐在員が一カ月なら一カ月に一ぺんどこかの場所に集まって話をする、こういうふうにやっていかぬと、ちょっと工合が悪いように思うのです。そういう希望も聞かされ、私どもはそれは必要だというふうに思ったのですが、そのことにつきまして、外務省関係者がおりませんが、何か為替局等におきましてお考えがあるかどうか、お伺いします。

石田正大蔵事務官(為替局長)

○石田政府委員 お話しのような点につきましては、これは外務省の予算の問題になりますので、実際の動かし方について詳しく知っておるわけではございませんけれども、御承知の通りに、ときどき中南米は中南米、欧州は欧州という工合に集まりまして、会同いたしておることがございます。それからまた御承知の通りに、移動大使が最近出かけられました機会において、各地のそれぞれの経済担当者が集まりまして、いろいろ御相談をしておる、こういうふうな工合で、だんだん御趣旨のような線に進んでいくのだろうと思います。それはけっこうなことだとわれわれ思っております。ただ、それでもって予算が足りるか足りぬかという問題になりますと、為替局からお答え申し上げるのはいかがかと思うのでございまして、政務次官からお答え願ったらどうかと思います。

坊秀男自由民主党大蔵政務次官

○坊政府委員 事実は、ただいま為替局長から申し上げた通りであります。いずれにいたしましても、為替局長が申し上げました通り予算の問題でございますので、三十三年度の予算編成に当りましてどういうことに相なりますか、慎重に研究していかなければならない、かように考えております。

平岡忠次郎日本社会党

○平岡委員 きょう大蔵大臣等もおりますれば、一番いいと思うのですけれども、ドイツの輸出がものすごく伸びた。具体的には、五十億ドルを国際収支の黒において保有している。ところが日本では、保有五億ドルか六億ドルに転落しております。そういう違いがどこから出てくるかという原因をたどりますと、いろいろあると思うのです。ただ私どもがドイツに行きましてヴイルヘルム・ホッケに会いまして、ほんとうに印象づけられた一点があります。ドイツの輸出伸張には、理由はいろいろありましょうが、ヴイルヘルム・ホッケとの会見でわれわれがくみ取ったことは、マルクの価値維持に対して精魂を打ちこんできた、この点に心を打たれました。日本におきましては、財政金融一体論ということでやっています。ところがドイツの場合は、これと対蹠的に、財政と金融は別だという建前に立っております。両者はチェック・アンド・バランスに立つべきだといっております。私どもがヴイルヘルム・ホッケに会いましたときに質問を呈しました、この事情を一つ御披露したいと思うのです。私どもがフランクフルトのバンク・ドイッチェレンダーに彼を訪れました七月四日の日であります。そのときに私どもは、四つの質問を用意したのです。これは、めったに応諾を示さない会見を、われわれが日本の国会議員であり、大蔵委員であるという理由のために、まれなる応諾として示してきたのですから、私どもとしましても、これはわれわれ自身もためされる、こういうふうに思いましたので、ホテルに着きましたのが夜ずいぶんおそくだったんですが、一時ごろまで話をしまして、この質問事項を練ったのです。そこで呈しましたヴイルムヘルム・ホッケヘの質問の第一は、貴下は財政と金融は全然別個の性格と使命を持つものとして、かつその方針を堅持されている様子だが、日本では、財政金融一体論の財政を行なっているが、これの講評をしてくれ、これが第一点でした。そうすると彼が言うのに、一九四八年、通貨改革が行われ——この内容は、マルクを十分の一に切り下げたことです。その際ドイツ連邦銀行ができ、十二州の州中央銀行を統轄する現ドイツ連邦銀行制度ができ上った。自分が総裁になったが、就任以来自分の考えは一貫している。それは、第一次世界大戦後のインフレの災禍の経験に徴して、マルクの価値維持はドイツにとって至上命令であるという立場である。財政は選挙民に迎合する予算作成を反映し、時の政治によって浮動し、大体において拡大していく。ところが政治、財政等は時の政府の方針ゆえ一時的なものだが、マルク価値維持は永久的な大切な国家の事柄である。私は、価値維持のためには、金融は独自の立場を貫くべしとして、ドイツの金融施策の衝に当ってきた。断片、現象的なものの恣意にドイツ・マルクの永遠的価値をまかせてしまうわけにはいかない、少くともドイツにおいては、今なおこの方針を私は堅持しておる、こういうことです。これは非常に示唆の多いことなんです。日本の場合でも、租税特別措置法とか、そういうことでいろいろやりますが、根本的には、日本のバック・ドア・マーケットの為替レートが示すように、対米費比価は三百六十円ではなしに、四百二十円くらいです。二割の格差がございます。こういうことがすべて現在の日本の国の輸出振興をはばんでいる大元であろうと思う。だから輸出振興を真にやるのなら、やはりこの価値維持の問題、日本の円貨の価値維持の問題、こういう点が根本的に顧みられなければならぬと思うのです。貿易施策というものは、麦の穂を引っこ抜いて成長の度合いをはかるというような短兵急な施策ではなしに、やはり時はかかっても、こういう基本的な立場というものを貫いていく、こういうことでなければならぬと思います。ですから、そういう基本尺度から、われわれはここへ出てきた法律案というものも吟味していかなければならぬと思うのです。日本で、五月に初めてとられた政策金利、公定歩合の引き上げ、これは日本では初めてなんですが、イギリスにしても、ドイツにしても、四年来、数えてみましても、おのおのの国で七回以上とられています。こういう点を顧みまして、日本の貿易振興のための総合施策が一日も早く完成されることを心から希望するわけなんです、たまたまここに出てきた租税特別措置法があまりにもお粗末なんで、われわれは日本のためにほんとうに憂えざるを得ない感じを抱くわけなんです。  それからついでですから、ヴイルヘルム・ホッケに対しましての他の質問の経過をちょっと申してみたいと思うのです。第二問といたしましては、ドイツの近来のすばらしい輸出増高はヨーロッパを席巻し、ためにEPUの存在に危機を招来しているといわれているが、御所見いかが、こういう質問をしたのです。そうしたら、彼が言うには、ヨーロッパのEPUの危機がドイツの輸出増高のために起っておるというならば、これは当らない。道を譲るべきはドイツの側ではない。フランスの悪口を言いたくはないが、フランスこそフランを切り下げればよろしい、そうすればこのEPUの危機の問題ばかりでなしに、すべてのヨーロッパの経済の暗雲が取り除かれる、こういうように答えていました。参考までに申し上げますが、その後、八月の十日ですか、フランスはフランを切り下げました。  それから第三番目に呈した質問は、これは、日本はぴいぴい言っておるのですから参考にはなりませんが、シャハトの、ドイツの保有外貨五十億ドルを、またはその多くの部分を、在外投資すべしとの所論があるが、あなたはこれをどう思われるか、もしいなとするならば、あなた自身ならば、この運用をどういうふうにやっていくか、こういう質問をしました。そうしたら、彼はきわめて、にべもなく言いました、シャハトは現在政府の責任の衝にない人なんだ、だから、こういう思いつきのことにはわれわれは関心を持っておらない。責任の衝にないシャハトの所論は、一つも興味を持っておらぬ、こう答えました。彼には、国会答弁の技術のごときものはみじんもありません。非常にまともに答えてきます。後段の、もしあなたがいなとされるなら、あなたはどういうように運用されるかということについては、三十五分の会見時間ではとても間に合わぬから、後刻私の独文でのパンフレットを差し上げますといって、これをよこしました。これは全部翻訳して御紹介すればいいのですが、結局大要は、五十億ばかりのものをわいわい言うことはない、こんな額は大したことはないというのが結論のようです。  それから第四問として、ドイツの対米ガリオア借款が、調べてみますと十四億一千六百万ドルあるわけです。日本でも大体同じケースがあるわけなんで、これをちょっと聞いてみたんです。十四億一千万ドルのガリオア借款は返済の義務ありと考えるか、なしと考えるか、御所見を承わりたい、こういうことを聞いてみたんです。これは、社会党には少し都合が悪いけれども、彼の答えはこういうことでした。自分は、自分の所管事項ではないから、ドイツの公的表明は差し控えます。しかしあえて私見を申せというならば、次のように考えておる、大戦の残滓、これは一切きれいにすべきものと考えておる、あたかも対英借款十億ドルを直ちに返した方がよいのと同様だ、こういう答えをしました。以上われわれの四つの質問に対しまして、彼は右の通り、まともに答えてきています。しかも回答は、いずれも筋が通っておりまして、明快であります。西ドイツの戦後の経済、産業を指導して誤またざりし金融操作によって空前の繁栄をドイツにもたらした、金融政策の大元締めとしての風格と達識がうかがわれました、わずか三十五分の会見でしたが。  そこで特に第四に関しまして補足の要がございます。彼が潔癖である、ドイツのガリオアの借款というものはすぐ返した方がいいということに聞き間違って、それ見ろ、社会党と違って、自民党はそれを言っているからといって、自民党の方が即断されたら、これはまた間違いなんです。彼が言っているのは、大戦の決済というものは敵国にも求めているのです。要するに、米国だけにあるドイツのたな上げされ、凍結された現金預金だけでも三億ドルでしょうか、他の資産とか、そういうものを合せれば莫大なものになります。いわんや他のヨーロッパにおける敵国によって凍結されたドイツの資産は、ものすごくたくさんありますから、大戦の残滓は一切きれいにすべしというのは、どうもそろばんをとってみると、ドイツの方の取り分が多いということを計算しているのです。ドイツの金融の焦点に立つ人ですから、達識であることは、これは当りまえといえば当りまえでしょうが、この問答を通じても、ドイツ人の、バック・ボーンというものはしっかりしているということがわかります。だから、私どもの貿易施策の論議と立法におきましても、やはり根本的なものをもう一回よく見きわめるということ、いたずらに枝葉末節において、時とすれば業界に迎合しておるとすら疑われるような法律案を出し回っても、貿易の振興にはならぬということを申し上げたかったのであります。いささかこの法案とは直接関係なかったかもしれませんが、この際こういう事例を申し上げまして、大蔵省当局の各位の一そうの御奮起を願うわけです。そこで、大蔵大臣等にはまた質問の機会があろうと思うので、きょう私自身としましては、この程度で終ります。

山本幸一日本社会党

○山本委員長 まだ井上委員から質疑の通告がございますが、先ほどお約束申し上げましたように、三時から与野党並びに政府の三者の懇談会を開きたいと思います。そこで、本日はこの程度にとどめまして、明日は午前十時半から開会することにします。  これをもって散会いたします。     午後三時一分散会

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