社会労働委員会 第6号
- 発言数
- 83 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1957/11/13
会議録
○植村委員長代理 これより会議を開きます。 都合により委員長が不在のため、私が委員長の職を勤めます。 労使関係、労働基準及び失業対策に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許可いたします。八木一男君。
○八木(一男)委員 石田労働大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。 まず労働行政の中で一番根本的なものであると思われる完全雇用対策についてお伺いをいたしたいと思うわけでございます。石橋内閣が完全雇用という政策を打ち出されまして、その当時は石田さんは官房長官をやっておられました。岸内閣も当然石橋内閣の政策を成立以来継いでおられるわけでございますが、完全雇用対策を出されたけれども、何も裏づけがないように私どもは思います。完全雇用政策を出されたけれども、それをするために、何らか具体的な措置なり、準備なりしておられるかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
○石田国務大臣 基本的には長期経済計画の柱に、増大して参ります新規労働者の吸収、あるいは現在ございます失業者の吸収というものを柱として、長期経済計画を立てていくということが基本的な方向でございまして、日本のような労働人口が非常に過剰なところにおきましては、特にやはり一般的な国民経済の拡大を通じなければ、この目的は達成できないのでありますから、そのためにはただいま申したような方針を石橋内閣ができましたときはとったのであります。その計画、それを柱として進めておったのでございますが、御承知のごとく、その後国際収支改善のために、緊急措置をとらなければならなくなりました結果、その経済の成長率というものを、本年及び明年度は、三%ないし五%という線に押えなければならないという事態になりました。しかしこれは長いこれから先の経済の安定した発展を求めるためのやむを得ない処置でありまして、基本的にはやはりこれからの経済の成長率は、労働人口の増加に見合うように立てていくということが基本的な方針でございまして、それを目下経済企画庁が中心となってやっておる次第であります。具体的な措置といたしましては、現在の雇用の状況を見てみますと、相当数の失業者があるにかかわらず、その一面においては、未就職求人の数も非常に多く、それが主として技術、技能の不足から参っております現状にかんがみまして、明年度の予算におきましては、総合職業訓練制度を拡充いたしまして、この未就職求人をなくするようにいたしたいと思っております。事実、失業者の数は昨年の平均六十万に比べまして、本年の初めになりましては、五十万を下回る四十七、八万台というところまで参りました。四月及び八月までの平均は五十万を下回っておる数でございまして、その施策の効果は漸次現われておったのでありますけれども、先ほど申しましたような、国際収支改善の緊急措置、あるいは岸・アイク声明による駐留軍の引き揚げというようなことによりまして、今また若干の増加を示しつつありますが、これに対する施策としましては、先ほど申しましたように、基本的には長期経済計画を通じまして、経済の健全な発展を行い、具体的な現在の措置といたしましては、ただいま申したような方法をとっていくつもりでございます。
○八木(一男)委員 これは労働政策に重大な関係のあるものでありますが、特にまた経済計画とも関係がありますので、石田さんだけに責任を持たせることは無理かと思いますけれども、しかし完全雇用を達成するには、石田さんが一番中心になっていただかなければならない。そのために経済計画をそれに合せるように持っていっていただかなければならないと思うわけでございます。ところが内閣のお考えになっている経済計画は、ただ目標だけであって、どのくらいで、どういうふうに成長するであろうという想像を掲げただけであって、そういうことをどうしてやるかという具体性に欠けている。それからもう一つ経済が成長するということだけしか考えておられないで、今の計画性がないために、成長しても、そこに好景気があったり、不景気があったりして、そこで雇用の問題がいろいろと、失業者がふえたり、あるいはまた雇用がふえたりというような波を打つという問題を解決しようという努力が一つも見えないように思う。完全雇用をやるためには、完全な計画経済でなければできないと思う。私どもはそういう意味で、社会主義の世の中にならなければできないと思いますけれども、少くとも資本主義の世の中でも、経済が計画的に行われなければ、それができないと思いますが、そういうようなやり方が、今の政府でやられておりません。ですから経済がふわっと膨張して、ふえるだろうということだけじゃなしに、もっと計画的に雇用が安定するように考えていかなければならないと思います。これをぜひ石田労働大臣から内閣全体に反映をしていただきたいと思うわけでございますが、その問題以外に、少くとも完全雇用に一ぺんにいかないにしろ、雇用を増大すべき具体的な施策がずいぶんとあるはずです。非常にその点も手ぬるい、その点もほうってあるということがいえると思う。たとえば経済を拡大さすということを考えておられるようでございますが、拡大さすには何がいいか。これは聰明な石田労働大臣には申し上げるまでもなく、たとえば日中貿易を促進することが大きな経済の拡大の要因になるということは明らかでございます。ところがこの点についての政府の態度が実に間違っているということが言い切れると思う。そういうような拡大論がある。そうでなしに、また経済が拡大しても、雇用量がふえるようないろいろの産業が興らなければ、雇用の点についての効果が少いわけです。雇用量の多い、たとえば精密機械工業というようなものを興すような措置そういうものをやはり経済計画の中に入れていかなければならないと思う。それからさらにまたもう一つの方法もある。たとえば労働力率の低下という問題があります。御承知の通り今賃金が少い。賃金が少いからだんなさんが働いて、奥さんが働かなければなりません。社会保障が充実しておらないために、未亡人が働かなければならないというために、その人たちが低賃金で働きに出る。これがほかの人たちと競合するという問題がございます。ですからほんとうに最低賃金をりっぱなものに仕立て上げていく。さらにそれだけでなしに、最低保障賃金というような、途中から入った人も年令なり、そういうものに応じただけの賃金ができ上るという体制になりましたならば、奥さんがしぶしぶ働くということなしに済む。また社会保障が完全にできておりましたならば、年金制度が完全にできておりましたならば、未亡人として、子供を心配しながら家に置いて働くということなしに済む。そういうことも考えなければならないと思うわけでございますが、そういう点においても現内閣の政策は、実になっておらないと私は思います。それで、労働大臣は進歩的な、非常に聰明な方でございますから、現内閣の政策をそういうふうに変えるように、国務大臣として強力に推進していただかなければならないと思うわけでございますが、今までのところ、残念ながらその御努力の跡は見えておらない。これから、そういう今までの足らないところをさらに御研究願いまして推進願えるかどうか、一つおっしゃっていただきたいと思います。
○石田国務大臣 私は雇用の増大のための積極的施策として経済の拡大をはかっていくということには積極的な努力をするつもりでございます。ただその経済の拡大を目ざす方法といたしましては、ただいまの御議論には必ずしも賛成いたすわけには参りません。
○八木(一男)委員 雇用の増大ということは非常に大事なことでございます。ただいま私の申し上げました社会主義経済でなければ完全雇用ができないということは、私は確信しております。世の中の学者もそれを主張しているわけでございますが、自民党内閣の閣僚としての石田さんがそれを是認なさらない立場はわかります。しかし少くとも資本主義下のこの内閣において、計画経済をやっていかなければならないとか、日中貿易を、従来の変な行きがかりを捨てて、そうして変な態度を捨てて、促進しなければいけないというようなことは、当然御賛成になってしかるべきだと思います。いろいろの事情があっても、その事情は克服してやっていく、そして完全雇用の方に近づけていくという努力をするということをおっしゃっていただきたいと思うわけです。
○石田国務大臣 経済に計画性を持たせるために長期経済計画というものを立てているのでありまして、計画性が必要でないという立場を私どもはとっているわけではございません。それから日中貿易が再開されて、それが促進されることは、日本の経済力の拡大に役立つことは、これはもう議論を待たないところでありまして、私どもは日中貿易が再開されていくことに対して協力するのにやぶさかではございません。しかしそれが直ちに非常に大きな経済的効果を生むというふうな期待をお持ちになることは、私は現状と反するのではないかと思う。それはなるほど日本と大陸との通商関係というものは、戦前におきましては、日本の貿易の大宗の一つで、米大陸に匹敵するくらいのものがあった。ところが、それにはやはりいろんな条件がございました。たとえば日本の投資がシナに行われた。あるいはその投資を基盤といたしまして、いろんな地盤ができておる。そういうものが背景となっておりましたし、またシナの経済事情が、まだ非常に原始的な産業が中心であって、日本の文化物資というものを必要とした。こういうことが背景になっておったのでありますが、そういう条件は今日両方とも非常に変ってきておる。たとえば日本の投資はもうすでに全くない。それから日本の地盤というものもない。同時にシナ自身が、日本が残して参りました諸施設を利用し、あるいは日本だけでなく、各国の技術を導入して、すでに相当の文化物資をみずから生産するようになっていることは、御承知の通りであります。さらに加えて、中国の外貨事情というものを考えまするならば、それに経済の拡大の過大な期待を持つことは、私は行き過ぎだと思います。しかしともあれかくあれ、新しい市場を求めていくことについて異存はございません。しかし国の建前というものがあり、法律というものがあります以上は、その建前との調和ということをやはりはかって参らなければなりませんし、日中貿易だけが国政ではなく、それだけが経済の規模を拡大する唯一の方法でもないわけでありまして、他との関連を考えなければなりませんが、しかし原則として日中貿易再開のために、努力を惜しむものではございません。
○八木(一男)委員 ただいまの労働大臣の御意見は、はなはだ承服しかねるわけでございまして、今中国は非常に建設が行われている。もちろん建設中でございまするから、生産資材の生産を非常に一生懸命やっているということになりまするけれども、同時に消費資材をどんどん使うような状態になろうとしていることは、これは当然石田さんもおわかりだと思う。また生産資材についても、日本から買うものがたくさんある。ところが今しなければ、いろいろの生産資材を売り込む場合に、同時に西ドイツその他の国が売り込んでしまったならば、西ドイツの市場として確保されてしまって、日本の市場としては手おくれになる、そういう状態でございます。そういうときには急いでやらなければならない。消費資材でも同じでございます。そういう点で、法律の建前があるからとおっしゃっても、法律は当然そのときの事情によって改正はできるわけでございます。また日本国民の生活のために外交方針も当然変えてよいことでございますから、そういう点で御推進願いたいわけでございますが、労働大臣の時間の御都合がございますから、貿易問題の討論はこれでやめます。 次に、先ほど言った賃金の問題で、最低賃金制をぜひ急速にやっていただかなければならないと思います。さらに最低保障賃金といいますか、十八才じゃなしに二十五才なり三十五才で新しい就職先に行った場合に、そういう人たちが十八才並みの月給ではなしに済むというような状態を作っていただきませんと、先ほど申しました労働力率の低下ということができない。さらにまた、これはおもに厚生省に関係がございますが、労働省も御推進願って、労働省の失業保険その他も関係がございますので、社会保障を完備していただかなければこの労働力率の低下による雇用問題の解決の一助とすることができないと思うわけでございますが、これは非常に御熱心な石田さんでございますから御賛成だろうと思います。ただ最低賃金についての政府の構想は、私どもは最低賃金制のほんとうの効果を上げるような御構想でないと確信をしておりまするが、本日はその問題は時間がございませんから他日に譲りまして、今度、実はそういう雇用情勢にありますために、臨時工や社外工の首切りが出ておる。今石田さんのおっしゃったように、完全失業者は減りかかっていたけれども、またふえてきたというお話の通り、ふえております。それで、完全失業者の問題だけでなしに、日本に非常に多くの潜在失業者がありますことは石田さんに申し上げるまでもございません。この問題を解決するために、完全雇用の根本的政策を推進していただくと同時に、当面の失業問題について石田労政が非常に積極的にやっていただくことをお願いしたいわけでございますが、現実にあまりその御努力の跡が見えておりませんので、その点についてどのような御決心があるか。一つ伺わせていただきたいと思います。
○石田国務大臣 社外工及び臨時工の問題につきましては、一つはその雇用が不安定であるという点と、いま一つは賃金が常用工に比べて非常に差がある、この二点が非常に大きな特質的な問題でございますが、これにつきましては、先般の本委員会でもお答え申し上げましたように、臨時工、社外工に対しまして、たとえば労働基準法の適用を正確に実施するとか、あるいは最低賃金制を行うとかいうような方法によって、その二つの問題の解決に努めたいと思っておりまするし、さらに要すれば、その制度自体についての処理に具体的な検討を、今私どもの方の役所としてやっておるわけでございます。 それから雇用を増大し、完全失業者をなくするということと、潜在失業者という問題を解決する。潜在失業者の問題を解決するためには、やはり私は最低賃金制を実施いたしまして、低賃金の状態を緩和していくことが私は必要であると思っております。最低賃金制は熱意をもってその実現をはかりたいと思っておりますが、しかしそれにはおのずから段階がありまして、経済の実態あるいは経営のもとをこわすようなことではなりませんから、漸進的かつ現実的な処置を講じて参るつもりであります。 それから潜在失業者に対する雇用の問題につきましては、先ほどお答えいたしましたように、総合職業訓練制度を拡充いたしまして、技術を付与することによって就職の機会を与えたいと思っておりますが、なお内閣の雇用審議会等におきまして、今対策を御検討願っておりまして、その答申が近く出るはずでございますから、その答申を尊重いたしまして、具体的な一処置をとって参りたいと思っているわけでございます。
○八木(一男)委員 時間の関係上、具体的質問に入ります。 この前、七月の末に開かれました社会労働委員会で、石田労働大臣は、五人未満の事業所に失業保険を適用するということを明言をされました。それについてどういうふうに具体化されておりますか。一つ伺いたいと思います。
○石田国務大臣 そういう希望を持ちまして、労働省に対策の検討を命じております。その検討の経過その他につきましては、職安局長より答えます。
○百田説明員 五人未満の事業所に対する失業保険の適用につきましては、七月の二十九日の当委員会においてお話がございました。その後の状況について、簡単に申し上げます。五人未満の事業所の昭和二十九年のセンサスによりまして、全部の事業所について現在調査を進めまして、大体九十万の事業所、百七十万の従業員ということが出ております。それをもとにいたしまして、現在五人未満の事業所で任意加入をいたしておりますのは、事業所で四万、被保険者数にして約十万、九万八千でございます。これは現在適用事業所が二十七万、被保険者が九百七十万、これに対しますと九十万という数字はこの三倍以上になっております。従いまして、従来五人未満の事業所に、非常にこれは困難であった。困難であったというのが、前から指摘されながらできなかったという問題点は、事業所の把握自体が困難である。事業所の中における雇用の実態が不明確である。第三点におきましては、賃金その他の関係においても不明確である。同時に五人未満の事業所の事務能力、いろいろな点があげられたわけです。従いまして、われわれはこれを五人未満の事業所に全部適用するということを目途といたしまして、いかにしてこの五人未満の事業所に第一段階として拡充していくかということを現在検討中でございます。それの第一段階といたしまして、先般来、実は五人未満の事業所の方々との懇談会等も持ちまして、どうしたらあなた方が入れるのかというような問題いろんな隘路につきまして討議いたしたわけでございますが、結局第一段階といたしましては、任意包括加入をできるだけ促進するというような形にいたしまして、次の国会を目途といたしまして法律の改正を行いたいというようなことで第一段階は進んでおります。
○八木(一男)委員 大臣、非常に恐縮でございますが、時間の関係で簡単に申し上げますから、簡潔に御答弁願います。 五人未満の事業所の失業保険を作るというのは、この前明言されたわけですが、今度の通常国会に、一人以上全部のものをつくっていただかなければ、これは石田労働大臣の公約にたがってくると思うのです。任意包括くらいでぐずぐずしておったのでは困る。任意包括というのは、厚生省では五人未満の健康保険でやっておりますけれども、そんなものは言いのがれです。事務的にできないとかなんとかいうことは断じて言いのがれです。というのは、労働者に有利なことであれば、労働者の方から、法律ができたのに、なぜおれは適用にならないかと言ってきます。ほかの税金の取り立てだったら、逃げようとする人があって、つかまらないかもしれないけれども、有利なことなら向うから言ってきますから、事務なんか心配しないでも、どんどんやったらできるものを、事務々々と言っておる。労働省は今度初めてですけれども、厚生省の五人未満なんか、何年間も事務上困難だということで流しておる。石田さんは僕はりっぱな政治家だと思うが、この前公約された以上は、そんな事務々々という、いつまでたっても果てしのないような、杞憂にすぎないようなことで大事なことを推進しないというような間違ったやり方を突破して、断じて今度の通常国会へ法案を出してやってもらいたいと思います。ところが、非常に期待をかけた石田さんが、今政府委員の方の御答弁によると、包括何とかということをすぐそばで黙って聞いておられる。そうじゃないかと石田さんがおっしゃられるだろうと思って期待しておったが、そんなことはおっしゃらないということでは、石田さんとしては期待にはずれる。だから、今度もし通常国会に、失業保険法の一人以上五人未満全部入れるような法案をほんとうにやる気だったら、それだけ膨大な、精通した人がいるんですから――われわれでも法律を作ろうと思ったら、根限りやったら四、五日で作って見せます。皆さん方がほんとうにかかれば、そんなものは半月くらいでできる。予算や何か事務的に作るということもできる。本腰に取りかかったらできるのです。石田さんとしては断じて通常国会に五人未満の改正法案を出してやるということをしていただかなければ、七月の公約違反ですが、その点についてはっきりお答えを願いたい。
○石田国務大臣 七月の本委員会に出席いたしましたときに、私は就任早々でありまして、まだ具体的なことをどうすると申し上げる段階でないということを繰り返し申し上げました。ところが、現在考えていることだけでも来て言ったらよかろうということで、私に無理にしゃべらせた。従って私は、就任早々、私が労働省へ参りましてやりたいと思っていることを申し上げたのでございまして、それは必ずやりますという建前では申し上げません。就任早々でございまして、こういう方向でやりたいということを言ったのでありまして、その方向に向って今やっているのでございまして、何も通常国会でやるということをお約束をした覚えはありません。
○五島委員 関連して。 大臣はこの前、何も考えていないのに無理にしゃべらされたと言われるのですけれども、われわれは期待しておった。しかし今百田局長の答弁によれば、次期の国会にはこれを法律化したいと言われるのですけれども、何か三十二年度は千六百万円程度準備調査のために費用を取られた。ところが、来年度もやはり千百万円程度、何か予算を申請しておられるじゃないですか。今査定中にある。そうすると、法律案を作りたいといわれるのに準備金が用意されているということは、法律案が作成できなかった場合、準備にこれを移行されるつもりなのかということを今八木さんがはっきり聞いておられるのだが、それはどうですか。
○石田国務大臣 私は、何も考えていないからしゃべりたくないと言ったのではないのです。就任早々でありますから、公約をする以上は、その可能性について十分検討した上で世の中に申し上げるのが順序なんです。しかし早く来い、来いとおっしゃるものでありますから、私はその状態を申し上げたところが、今考えておることを言えというわけですから、あのとき考えておることを申し上げましたので、通常国会でそれを提出するということを言ったわけじゃございません。しかしほかの、それ以外の大部分はあのとき申し上げたことを、お気に要らぬ面もございましょうけれども、実行に移しておるわけでございます。 それから、法律案を提出するように準備して、できるだけ方向については前へ進むように最大限の努力をさせておるのでありまして、よそからごらんになれば、いとも簡単にできるようにお思いかもしれませんけれども、それはなかなかそうは簡単に参らぬ面もございますので、おか目八目と申しましょうか、そういうことは御意見としてはよくわかりますけれども、実際碁をやっておる者の立場も御了解いただきたいと思います。
○八木(一男)委員 石田さんは、それはまだ就任早々だとおっしゃいました。だけれども、これは閣議で了解は得ていないけれども、私は断じてやりたいということをあのときはっきり申されたわけです。会議録を調べて、もう一回両方調べてみたいと思いますけれども、そんなあげ足取りじゃなしに、石田さんにやってもらうことが必要なんです。あなたはすぐできないとおっしゃるけれども、石田さんは自分はやるとおっしゃった。ところが、石田さんがいつまで労働大臣になっておるかわからない。岸内閣は崩壊するかもしれない。石田さんが総理大臣になって、労働大臣をほかの人にゆだねるかもしれない。だから、そういうことで、石田さんがいつまで在任されるかわからないから、確実に在任されていると思われる来年度の予算に頭を出し、来年度の提出の法律案に頭を出していただかなければ、石田さん個人として、政治家としての公約上、それでは、それは大政治家たる石田さんとして非常にいけないと思う。ですから、断じて法律案を出す、それから予算案を出すということを、これからまだ時間は間に合いますから、一つがんばっていただきたいと思う。それで、包括なんとかというような糊塗したものでなしに、一人以上五人未満の間を三人で区切るというような卑怯なことではなしにやってもらいたいと思う。厚生省は一人以上三人というような立場をとって労働省を牽制しているらしい。けれども、労働省は断じて厚生省を引きつけて、健康保険と一緒に一人以上五人未満を全部やるというようにやっていただきたいと思います。 それから時間がありませんので……。失業対策事業が非常に少いのでして、失業対策費だけが、あんなに予算がふえたのに減っています。あのときは、雇用がふえるからというような説明でやっている。これは石田さんの前の労働大臣がいけなかったわけですが、石田さんもやっぱり保守党の幹部として、それから内閣の領袖として、官房長官として責任があると思う。そういう間違いは今度断じてしないように、失業対策費をふやしてもらわなければなりません。この前、雇用が増大するから失業対策費を減らした、対象人数を減らしたということを言われたけれども、そういうことは大体考え方が間違いだと思う。潜在失業者が何百万といるのに、それから完全失業者がまだ消えていないのに、雇用が増大するからといって失業対策事業のワクが少くなって、平均二十一日、三百六円をかけてごらんなさい。家族持ちの人間が食えるものじゃない。そういうようなことで失業者を押えられている。そういうことは、サービス官庁たる労働省としての態度としては非常に不完全である。そういう態度を脱却して、そういう人たちが助かるようにしていただきたい。特に労働行政上、今の失業対策事業で締めつけられて、適格条件とかなんとかいうことで、一軒に一つしか手帳を渡さないというようなことをやる。そういうことのために、子供が大ぜいで、親が両方とも失業者であるために、夫婦別れをして、二つの手帳をとらなければできないというような事情がある。非常な人道主義者であられる石田さんは、仲のいい夫婦が夫婦別れをするようなことはいけないことだ、そういうことを行政上させることはいけないことだということは十分おわかりだと思いますから、そういうふうに、ただ今までより多くなるから減らしていいんじゃなくて、今までが不十分なんですから、たとい雇用が多くなる予想に立っても、失業対策費は十分になるように、二十一日が二十五日になるように、三百六円が四百五十円くらいになるように、費用をふやす努力をしていただかなければいけないと思う。労働省は大蔵省なんかに断じて負けてもらっては困る。 それから、そこの問題で、実は内閣できのう十二日に、同和対策事業の推進の閣議決定をされた。これは非常にいいことだと思います。いいことですけれども、ほんとうに腹をかまえてやってもらわなければいけないと思う。石田さんは残念ながら秋田県――残念なんて失礼ですけれども、同和問題は関西以西の人じゃないとぴんとこない。さっぱりわからぬのです。北海道の人なんか何のことかさっぱりわからぬ。東北の人も九割方わからない。幾ら聰明な石田労働大臣でもわからぬと思いますが、わかってもらわなければ困る。同和問題というのは、普通に、たとえば共同浴場をちょっと建てたらいいとか、あるいはトラホーム政策をちょっとしたらいいという問題ではなくて、各面にわたる。労働政策にもわたるし厚生政策にもわたる。それから農林、商工、地方自治、法務、文部、それから、もちろん大蔵当局は関係があります。そういうこと全部にわたるわけです。そういうことを強力に推進していただかなければならないと思います。有力な閣僚として、西のことはわからないので、そういうことはまだそんなに大事じゃないのじゃないかという御意見をなさらないで一つ推進していただくように、非常に失礼な言い分を言っているわけでございますが、ほんとうに東の方はぴんとこなくて、西の人はぴんとくるのです。それで、ぜひわかる御努力をしていただきたいと思う。 この問題は、歴史的にはいろいろの学説がございますけれども、特にひどくなったのは徳川時代の本多佐渡守からでございます。本多佐渡守は、百姓は食わしむべからず飢えしむべからずという農民の収奪政策をとって、そのかわり名誉を与えた。つまり、士農工商の中で、さむらいを除いてトップの階級に置いた。そうやって百姓に名誉心を与えて、そこからしぼったのですが、そのとき部落民は士農工商のさらに下の階級に置かれたわけです。その政策のあふりがずっと続いている。明治以後に太政官布告で改正されたけれども、その後、公、侯、伯、子、男を置いたり士族を置いたりして、封建的な体制はくずれなかった。武士はなくなったけれども、士族には秩禄公債を与えて、農地を買ったり、商売として成り立つ資金を与えている。ところが部落民は、昔からある斃獣処理権という特権を奪ってしまって、これを貧乏にする。身分的な差別のあるものをほうり出してしまった。だから貧乏が、徳川時代より明治、大正にかけてひどくなった。おまけに資本主義が発達してくると、失業者があった方が低賃金に押えられるということで、この問題が放置されてきた。それから起ったのです。 それから後に終戦後の解放がございました。土地解放のときには小作農に土地を与えたものですから、小作農になれなかった部落民には土地が与えられておらない。そのために農民としても立てない。所によって違いますが、関西以西では、一生懸命努力して持った二、三反のたんぼに住んでいる部落民がある。しかもそれは、たとえば川があふれれば流れてしまうような、一番悪い所です。ものができない。ですから、農民としては食えない。零細企業者として食おうと思えば、昔からの伝統産業のくつは大資本に押えられる。げたと鼻緒は生活様式が変るから需要がなくなるということで、それでも食えない。おまけにほかに転業するだけの資金を持っておりません。今度は労働者として立とうとすれば、大企業では差別をしてなるべく採らないようにする。大体に金がないから大学に行く人が少い。高等学校に行く人が少い。新中を出るとしても、家が貧しいために子守に使われて未就学児童になる。従って能力があっても成績が悪くなるということで、大体に就職戦線では不利になる。がんばって成績がよくても、人種的な差別があって、因縁をつけて、同じ新中の卒業生でも、部落外の人を採り、部落民は採らないという現状があるものですから、やっとすがりついて働くところは零細企業です。それがつぶれるために失業者になる。またそこにも就職できないために初めから失業者になる。そのために非常に若い有能な人がやけになって、ちょっとのことをしても怒る。乱暴になる。そういうことで、あの人たちは乱暴なことをするからいやだという空気を生む。未就学児童が多いから、教育について無関心なところだということになる。また貧乏だから生活環境が悪く、きたない。きれいな服装ができないということで差別感情を生む。それからまた衛生状態が悪いからトラホーム患者が多い、そういうことで差別感情を生む。貧乏が多いために、表面の差別現象は少くなっても、それが直らない。それがために結婚のときに重大な障害が起って、心中したり、自殺したりしている事件が方々にあります。そういう根源をなくすには貧乏を断ち切らなればならない。それがためには、ほんとうの完全雇用をやり、ほんとうの賃金政策をやらなければならぬわけですけれども、少くともそれが不十分なときでも、方々の面でこれを助けていかなければならない。たとえば厚生面、労働面で、そのことが失業対策に大きな関係があるわけです。関西以西の失対事業に働いている人の相当部分が部落出身の人です。ですから、その人たちの中から永久的な失業者が出るから、一般の失業対策の概念で考えて、これぐらいでよかろう、雇用がふえるからそういうものは要らないだろうということを考えてもらったら、ほんとうにただ一つの生活のもとが圧縮されることになる。その意味で失業対策事業というものを考えていただいて、削減なんということは、どんなに雇用がふえても断じてしない、その人たちが食えるまで失業対策事業をふやしていただかなければならないと思う。失業対策事業で高能率、高賃金のことを考えるのもいいでしょう。しかしその中には、からだの弱い人も、年寄りも、女も働かなければならない。だから一般の失対事業もこれは減らしてもらっては困る。そういうことでぜひ考えていただきたいと思います。 聰明で熱心な石田労働大臣に、大きな声で、なまいきに申し上げましたが、これはほんとうに短時間では申し上げきれません。後に労働省に伺って申し上げますが、内閣の中で部落問題を解決するように、きのうの閣議決定ぐらいのちゃらんぽらんなものでは、ちゃらんぽらんというのは失言ですが、予算も今までの予算よりも三十倍、五十倍というふうな観点に立たないと、三割増し五割増しということでは問題は解決できない。一つその点を御研究になって、ぜひ労働行政の面において、そうして内閣全体の面において、それを推進していただくことをお願いしたいわけであります。それについての御熱心な、明確な、親切な御答弁を聞かしていただきたいと思います。
○石田国務大臣 失業対策事業費をできるだけ多く獲得することには、熱意を持って努力いたします。 それから今部落民の問題について御意見をいただいたのでありますが、実は私も小学校、中学校時代は京都で育ちましたから、問題はよく承知しております。従ってこの問題については、文字通り同和策の推進のために努力をいたすつもりでございますが、私はあんまり問題を取り上げていくことは、現実的にようやく忘れかかってきたものをまた呼びさますような感じがないでもございません。最大の同和策というものは、私はやはりそういうことを意識の中に置かないということだろうと思います。しかし現実にまだ相当そういう実情が残っていることも承知しておりますので、この解決については努力するつもりでございます。
○八木(一男)委員 今おっしゃった石田さんの御説で非常にけっこうだと思いますけれども、一生懸命やっていただきたいと思います。 今の掘り起すという考え方が、この問題に関心のある人にありますが、これは、私ども一生懸命考えましたけれども、誤まりであると思う。掘り起すと困るというのは、部落の人の中で非常に金持ちになって、社会的に進出した人に言う人が多い。その人は、その人個人としてはもう解放されている。ところがそこの中で成功した以外の人は取り残されている。普通の政策で解決のつく問題だったら掘り起さなくてもいいのですけれども、その貧困の程度は、普通の今の政府のやり方とか――今の内閣だけではない、歴代の内閣が全部いけないが、そのくらいでは解決がつかない問題だ。そのために現在ほんとうに差別を受けて、ほんとうに貧乏に苦しんでいる。何もその人に責任がないのに、偶然その場所に生まれたがために、日本国民の中で三百万の人が非常に圧迫された状態の中にある。そういうことを考えると、掘り起すと心配があるということはなまぬるい考え方です。そこで掘り起して根源を断ち切るという考え方に立たないと、三百万のうちの五万か六万の人はいいかもしれませんが、あとの二百九十万か九十五万くらいの人はどうにもならない、そういう観点でぜひ考えていただきたいと思います。
○五島委員 それでは大臣に項目だけ伺いたいのですが、すでに労働基準法施行以来、これが完全に実施されてない、いろいろの種類があるのですが、この労働基準法完全施行のために努力しようとお思いになりますか。簡単でいいです。
○石田国務大臣 簡単に申します。労働基準法につきましては、これが日本経済の実情から見て進み過ぎているというような意見から、これの改正をしろというような考え方もございます。しかし私は、現在の基準法が日本の経済の実情から進み過ぎている、進み過ぎている部分があるという事実はこれを認めます。認めますけれども、これは法律を改正するということよりは、むしろ啓蒙と指導とによりまして、その法律の持っている建前をできるだけ早い機会に生かしていくという目標で進むべきものだと考えている次第であります。法の完全実施と申しますが、ただいま申しましたように、経済の実情との間にある程度のギヤップがございますから、そのギャップは、やはり基本的には啓蒙あるいは指導によって埋めていく。事実、たとえば非常に困難だといわれておりました商店、問屋街等におきます週休制の実施につきましても、私は就任早々のことでありましたが、基準局長にお願いしまして、これの解決に努力してもらいました結果、東京におきましては九月、十月のうちに、おもなところはほとんど週休制が実施されるようになりました。これは一例でありますが、こういう考え方で、一つ一つ具体的な事例をとらえまして、罪人を作るのが目的ではございません、現実に、すみやかに効果を上げるように指導をいたしているつもりでございます。
○五島委員 次に、この臨時国会でも、さきの国会でも、ずっと毎国会、臨時工の問題あるいは労働雇用の問題で論じられたわけですが、臨時工という中にも政府雇用の臨時職員が大体六、七万あるのじゃないかと思います。特に労働省内においても臨時職員がおります。ところが新聞発表等々を見ますと、政府は定員法の改正を行なってこれを繰り入れていくというようなことですが、労働省の臨時職を定員に完全に繰り込んでいく、その努力をされますか。
○石田国務大臣 労働省だけやるわけには参りません。これはやはり各省との関連におきまして、全体にそういうものがなくなるようにしていかなければなりませんが、それは目下その建前で努力をいたしておるつもりでございますが、さらに一そうの努力をするつもりでございます。
○五島委員 次に予算委員会において、われわれの同僚が大臣に、駐留軍労務者の離職後の行政的措置、そうしてこれら重大なる問題に対しては、やはり最高の機能を持つ国会等々の協力を得る必要があるんじゃなかろうか、それを法制化する考えはないかというように質問されて、それに大臣は、このために万全の措置を講じつつある、特にこれらの行政的措置が完全に進行しているかどうかということは、国会議員の代表者も加えて、ある種の機関を作って、これを監督していきたいんだということを言われたわけです。その考え方やまさによしといわなければなりませんけれども、しかしながら、この国会議員などを入れてこれをやるつもりだと言われることの具体的な考え方を、ここにはっきりしませんと、あの予算委員会ではただその方向だけを示されたのですから、それをちょっと聞いておきたい。
○石田国務大臣 政府のきめました行政措置を実施いたして参りまする場合に、中央と地方、それから関係各省の間の調整ということが、非常に大切になって参ります。それからもう一つは、やはり促進していかなければなりません。特に非常に方々の地域に分れておりますので、その地域によって事情も違う。一例を申し上げますと、他の地域においては、自動車の運転技術を持っておる人が非常に多くて、全体で一万七、八千人に及ぶのでありますが、九州へ参りますと、むしろ自動車の技術者を逆に養成する方法もとっておるというような、地方によって非常に違うのであります。そういう実情を合せて、地方、中央の結びつきをよくいたしますために、名前はまだ正確にきまったわけではございませんが、促進団というようなものを作りまして、関係各省に、国会議員、与野党の人々を加えたもので、これを各地方に派遣いたしまして、調整促進に当っていただく、こういう考え方でありまして、すでに構想もまとまって――与野党の議員を入れるとか、入れないとかいう問題は、まだはっきりきまっておりませんが、とにかく関係各省のものを出すということと、それから来週からそれを出させるように決定をいたしたのであります。私は閣議では、これにやはり与野党の議員を一人ずつくらい参加していただいた方がいいのじゃないかという発言をいたしましたが、実際の計画は内閣でやっております。
○五島委員 次に、この前の七月の当委員会において、石田労働大臣の労働行政についてという質問に対して、大臣は、民間の労働教育機関を作っていきたい、こういうように言われたわけですが、その民間の教育機関というようなものはどういうように構想されておるのですか。
○石田国務大臣 労働問題につきまして、まだ日本は未熟な点が非常に多い。労使双方に正しい理解がないために、大きな摩擦が起っておる点が非常に多いと思いますので、これを啓蒙、啓発をいたしますとともに、一般国民に対しましてもやはり労働問題というものについての理解を深めて参らなければなりません。それはしかし役所仕事ではなかなかうまく参りませんので、政府はファンドを作りして、そのファンドによって得られる収益をもって運営する民間団体をこしらえて、それによって労働問題についての啓蒙、宣伝、指導あるいは教育等に当って参りたいということであります。具体的な構想につきましては、労政局長からお答えをいたします。 私はこれにて一つ退場をお許しを願いたい。
○五島委員 いや、もうちょっと。項目だけですから……。 今度は駐留軍問題にもう一度返りまして、日米行政協定に基くところの新労務協定というのが九月二十八日かに調印されたわけですが、この新労務協定によれば、労務関係はすべて国内法にまかせて尊重するというようなことになっているわけですが、駐留軍労務者がいろいろな問題、紛議を駐留軍とかもします。たとえば駐留軍が国内法を知らずして、自分の独善的な考え方によって駐留軍労務者に対して不当労働行為等々をしたおそれがあり、あるいはするという場合には、いかなる態度をもってこれを解決していきますか。
○石田国務大臣 不当労働行為が行われる場合におきましては、労働省は労働者保護の建前から、所要の措置を積極的にとるということは当然でございます。
○五島委員 大臣にもっと聞きたかったのですが、いたし方がありません。 それでは今大臣に聞いたことについて、政府関係の方々にそれぞれ具体的に聞いていきたいと思います。この民間の労働機関を持って、そうして今後業者あるいは民間の労働者の教育に当りたいといわれることは、従来労働法施行以来、労働省の労政局が担当しておられにと思います。それをわざわざ今後民間に移すということは、はなはだ民主的のような気がするのです。しかし民間に移さざるを得ないということは、労働行政として、労政局自身がこの教育等に不十分であったがゆえに民間に移される気持があるように思われるのですけれども、その点はいかがですか。
○亀井政府委員 ただいまお話の通り、従来は労政局の労働教育課が所管いたしましてこの仕事をもっぱらやっておったのでございます。先ほど大臣からも御説明がございましたように、この労働教育という問題は単に労使だけではなくて、国民にも健全な良識を植えつけるという意味において手広くやらなければならぬ問題でございますし、従来やっておりましたものも質的に、さらにまた量的にも拡大をしていく必要があるという点から考えますと、従来の労働教育課でやっておりました限界をさらに乗り越えていかなければならぬ面がたくさんあろうかと思います。従いまして、労働省独自の行政の機構として持っております労働教育の行政はそのまま置いておくわけでございまして、そのほかに役所でできないような仕事、こういうふうなものをもっぱら民間団体でやらせようという考え方でございます。
○五島委員 これをどういうような組織をもってやるかということがつまびらかでないし、今後これらの教育機関を民間にゆだねるというふうなことは、しょせんは労働省と民間の教育機関と密接な関連を持たせなければならないと思います。あなた方が構想される民間の教育機関が、あなた方の企図せられるところと歩調が合わない、政府の教育と民間の教育がてんでんばらばらになると、国民はせっかく教育を受ける自由がありながら、何か国民自身がどこにたよっていいのかわからないということになります。そうするとその機関そのものをだれが一体指導していくか。労働者の面も業者の面も、あるいはあらゆる面が納得した人物が必要になってくるのではないか。そういうような人物が一体おりますか。労働関係ではいけないし、政党に関するものではいけないというようなことでそういうような人が見つかりますか。
○亀井政府委員 この仕事は、お説の通りにその中核になります人に人材を得ませんければ効果は上らないと思います。従いまして、われわれといたしましても視野を広げまして、今どういう人を選ぶかということの検討をいたしておるところであります。まだ結論に到達しておりませんが、その基本的な考え方は、あくまでも公正にして中立的な人をわれわれとしては選びたいという考え方であります。
○五島委員 これを端的に考えたとき、日本の組合が機関紙等をもって労働者を教育しておる。それに対抗しなければならぬというような考え方が見えるが、あなたたちはどう考えられるか。
○亀井政府委員 この団体のやります仕事は、主として調査研究と教育活動でございます。従来の労働教育の実績から見ましても、かつて滝井先生から御質問がございましたように、労働学校なり夏孝大学等がだんだん減ってきておるのではないかというような御質問もございました。こういう面は従来の労働省の予算ではなかなかまかない切れない面が多々あるわけでございます。従いまして、この民間団体の自由な活動の分野におきまして、そういう面の是正をはかっていきたいという趣旨がねらいでございます。組合等が出しております機関紙に対抗する意味でこの団体が機関紙を出していくということだけを主体とする役目ではないと考えております。
○五島委員 その点については、また他日いろいろの面から質問していきたいと思います。 次に駐留軍の問題に関して、緊急に起きた事件について質問したいと思います。というのは、今月の四日、九州福岡の板付基地において、駐留軍の労務者が今後の離職の問題、それから身分の問題等々によってストをやりました。そうしてスト直後に、零下十一度もあろうというような奥行き五十メートル、幅三十五メートルという冷蔵庫に労働させられた。何かミルクを整理するのだということで、二十数名の労務者をアメリカ軍の大尉がそこに連れていって、これを整理させた。ところがその服装たるや、ストに参加したところの、下はアンダーシャツ一枚で、上は作業服一枚であった。零下十一度といいますと、九州あたりでは体験しないような寒さなんです。そこで無理やりに労働せしめた。従って労働者は防寒具をつけさせてくれと言ったけれども、それを聞き入れなかったというような事件があって、労働者自身がかぜを引いて、こじらせて寝込んでしまったというような事件が起きたわけであります。従ってこれはストライキをしたがために、その直後のことですから、これは米軍の報復的な手段だ、頼んでも頼んでも、零下十一度の中で作業させられたというように判断しておるわけです。私はこの新聞を送って参りましたので、それを読んで第一に感ずることは、その通りだと思います。従来の慣習はどうかというと、冷蔵庫に働く場合は、防寒具の用意をして、防寒具をつけたあとでなければ、作業していない。ところがその監督をしておるところの指揮者が、頼んでも頼んでもそれを着けさせないでやったということは、労働争議に対するところのアメリカ軍の指揮者の報復的なる手段なりと判断されるわけです。そうすると労組法七条、不当労働行為の第一号に該当すると思います。労政局長もこの事件についてお調べになったり、あるいは連絡があっただろうと思いますけれども、こういうような問題について、日米行政協定新労務協定に基くところの国内法の尊重に対して、それらに関連してどういうように解釈せられ、どういうように処置されるつもりでありますか。
○亀井政府委員 その基地内におきまする労働法の適用の問題につきましては、先ほど大臣から御答弁があった通りでありまして、私としましては、今お話の事件につきまして御答弁申し上げたいと思います。 お話の事実につきまして、さっそく福岡の方に連絡をいたしましたが、軍側の言い分としましては、冷蔵庫の清掃作業をしたのは、軍司令官の視察があるためにその仕事をやらしたのであって、それがたまたまストライキをやりました直後にそういう作業を行わざるを得なかったのであって、ストライキとは因果関係はない、またこれらの冷蔵庫で働く場合におきましては冷所手当――冷たい所で働くという、冷所手当を本俸の二〇%増額支給しておる、また今お話のありました防寒服につきましては、仕事につきましてから三十分後くらいで労働者から防寒服の要求があったのであるが、実は十七着しか用意がなかった、実際に働いた人は二十一人のようでございます。従ってその他の者につきましては、米軍の作業衣を貸与して作業さしたというふうな米軍側の言い分があるようでございます。そのほか、はだしで作業さしたという事実もございましたので、その問題につきましては、なお今県の渉外課の方が軍の方と連絡して、その調査をいたしておるようであります。軍側としましても、現地の事情を今調査いたしておるようであります。もしそれがお話のように、ストライキをやった、すなわち組合運動として正当な行為として行なったことに対する報復手段として行なったものとすれば、明らかに労組法七条の一号に該当する不当労働行為になろうと私は思います。ただ事実関係が今申し上げますように、組合側の言われているところと軍側の言っておるところと差異がございまして、その事実関係がお話の通りであれば、そういう場合もあり得るのじゃないかという解釈をわれわれはとっております。
○五島委員 今のことについては今後よく調査されて、そして今後円滑にいくように努力されたいと思います。これは不当労働行為として訴えるとかなんとかいうような、労働委員会の問題等々もありましょうから、お願いしておきます。 それから次に労働基準法の完全施行の問題について聞きたいと思います。特に私が大臣に冒頭に投げかけたように、現在では労働基準法の行き過ぎであるとかなんとかいうことも一部では言われているようでありますけれども、労働基準法は完全に実施されなければならないと思います。法を無視するものはなはだしいと思います。これがあなたたちの責任であると私は言いません。しかし各種にわたって労働法の不完全適用ということが国民の階層の中で多く叫ばれておるわけです。その監督行政は堀局長の方で行われるだろうと思います。特に私がここにこれを全面的に言うならば、労働基準法を完全に適用せいということになるわけですけれども、これを重点的に例をあげて質問していきたいと思います。 この前の国会において旅館業法の一部改正が行われました。それからまた環境衛生法が前国会において通過したわけです。それで旅館業の問題について質問いたしますが、旅館業は労働基準法の適用事業になっておるわけです。ところがこれを実態的に調べ、あるいはそれら関係者の方たちから聞き合わせたところによりましても、あるいはわれわれが一端を知るところによりましても労働基準法は完全には施行されていない。完全には施行されていないと言うと、一部完全に施行されているような印象を受けるのですが、決してそうじゃなくて、ほとんど施行されていないというようなことであります。ところが旅館業法の一部改正のときも、これは厚生省関係ですけれども、旅館業の営業のことばかり完全になり、あるいは国民の衛生向上のために旅館業者は組合を作って何か料金の規制等々ができるというような、それらの面から、法によってこれを向上せしめ、縛りつけていくというふうな中に忘れられておるのが、労働者の福利厚生やら、あるいは賃金体系の問題であるとか、あるいは安全衛生の問題であるとかです。従って前国会の参議院におきましては、いろいろ参考人も呼ばれまして、その中に業者の代表も出てきまして、いろいろ労働者の内容、実態を訴えられて説明をされておりました。そのとき厚生省の山口公衆衛生局長は、従業員の労働、生活の維持向上のためには、労働省とよく関連をとって万遺憾のないように、今後従業員の賃金向上及び衛生の向上のために努力していかなければならないというようなことを、この議事録にとどめられておるわけです。ところが従業員は、厚生省からあるいは労働省からも何らかの指示があり、何らかの通牒があって、いろいろ自分たちの従業の立場の上において何か少しでもよくなるだろうというような期待を持っていたにもかかわらず、何らの処置もされていないという事実があるわけです。従って厚生省から、この問題について何か相談を受けられたことがあるかどうか。そうしてこのことについて、去る十月の三十日に労働基準局の局長会議が行われたそうですが、そのとき、いろいろの論議の中の一部にでも、こういう問題が出たかどうかということをお聞きしたいと思います。
○堀説明員 旅館従業員の労働条件につきましては、基準法実施以来逐次改善はされてはおりますけれども、率直に申し上げまして労働基準法にきめる労働条件はまだ完全に実施されておるとは申せない実情があると考えております。この実情は旅館の特殊性に基く面もあるのでありまして、たとえば最近労働省に設置されております労働基準法の改正及び運営の方針につきまして審議をいたしまして、労働大臣に答申をされた臨時労働基準法調査会の答申の中にも、旅館とか商店とか、こういうような特殊な業態については、労働基準法の規定についてもさらに今後検討をする必要があるのではないかというようなことをいっております。しかし一般的には労働基準法というものは現在改正すべきではない、こういう方針をとっておるわけでありまして、このような特殊性はございますけれども、しかし旅館の従業員も労働基準法の保護を受けております以上、労働基準法に定める労働条件の最低基準を要求する基本的権利が当然あるわけであります。労働基準局といたしましても、最近監督の方針を工場等の中心的な事業場だけでなしに、旅館、商店等につきましても、特に人道的見地から見のがすことのできないようなものについては重点的に、段階的に是正さしていく、こういう方針をとっておるわけでございます。厚生省からも、旅館業法の施行に伴いまして、その従業員の労働条件についての連絡はございました。私どもそれを受けまして、いろいろ研究をしておるのでありますが、とりあえず最近におきまして、先ほどお話のありました十月三十日の全国労働基準局長会議の席上におきましても、旅館の従業員の労働条件を明確化し、労働基準法の中心的な規定の施行については遺憾なきを期するようにという特別の指示をいたした次第でございます。いろいろな問題はあると思いますけれども、今後におきましても旅館従業員の労働条件の改善につきまして、われわれとしても十分に努力をする所存でございます。
○五島委員 旅館従業員がやめた場合、その同一地域においては、たとえば三カ月間とかあるいは五カ年間とかいうような年数を区切って、再雇用しないという業者間の申し合せ等をした場合、そういうことについては大体適法であるかどうか。またそういうようなことがある場合はどういうように考えられますか。
○堀説明員 ただいまお話の点は私まだ承知をいたしておりませんけれども、基準法の中に、たとえば従業員がやめたときに、この者はこういうようなことがあるというようなブラック・リストをつくって同業者に回覧するというようなことは禁止せられておりますので、お話のような点がありましたならば、十分調査いたしまして善処いたしたいと思います。
○五島委員 大体サービス業ですから、お客が泊って、そしてお客がサービス料をやる、あるいはチップをやる、そういう旅館従業員のサービス料によるところの収入は賃金といえますか。
○堀説明員 サービス料につきましても、基準法は、労働の対価として報酬を得るものはこれは賃金であると規定しております。従ってチップ等につきましても、成規の手続を経て従業員に渡されているというものにつきましては賃金であるという工合に考えております。ただし、やみと申しますか、やみと言っては何ですが、ごくプライベートに従業員に心づけとして渡されるというようなものは把握もなかなか困難でございますので、こういうものについては問題がありますが、たとえばサービス料として一五%とる、そのうち一定部分が従業員に回される、これはまさしく賃金であると思います。
○五島委員 そのサービス料が、常識からすれば大体宿泊料の一割にきまっている。ところが、それがどういうように従業員に配分されるかというような協定とか雇用の条件とかいうのは、さっぱり全国的にない、私たちはこういうように了解しておるわけです。ところがこの事実からすれば、何かお客に対して歯みがきあるいは歯ブラシ、石けん、タオル、そういうものを出す場合も、その女中さんのサービス料から差し引かれておるとか、あるいは旅館の紹介業者、全国に二、三千軒あるそうですが、その紹介業者に対するリベートがサービス料から行われておるとか、あるいはお客さんの故意あるいは重大なる過失によって、その旅館の備品なり消耗品がこわされたというようなのがあれば、その従業員のサービス料から支払われるとかいうようなことが平気で行われておる。事実を申し上げようと思えば、私ここで言うことができますけれども、それはまた他日の機会にしましても、そういうようなことが行われているのは、直接の雇用関係を結ぶとき、こういう場合はこうだの、ああいう場合はああだの、あなたに渡す給料はこうだのというようなことがない限りにおいて、それは正しいとお思いになりますか。
○堀説明員 雇用いたします場合には労働条件を明示する必要がございまするので、その示された労働条件と異なっていろいろな制裁的な処分があるということは合法的でないと考えておりまするが、実は旅館の従業員の実態につきましては今お話のようないろいろな話を聞いておりますので、ただいまこの席で、これは違反である、あるいは違反でないということを具体的に申し上げるのは、もう少し調べてみませんと、ちょっと申しかねますが、実は関東周辺におきましてこの一月ばかり前から、旅館の従業員の条件等につきまして労働基準局が中心になりまして調査をやっております。その調査が、あとしばらくいたしますと出て参ると思いますので、そういう点も十分その資料をとりまして、よく調査検討してみたいと考えております。
○五島委員 また翻って、今度は労働時間の問題ですが、女中さんたちの労働時間は、全くこれは基準外ですね。深夜作業といっても交代制はなし、そうして二時までも三時までも働いて、朝は一番汽車の出る前に起きてお客さんにサービスしなければならぬというようなことで、この労働基準法の時間の問題については、全然これは実施されてない。特殊的であるという立場の中に解決してしまおうとすれば、そういうことになるかもしれませんけれども、労働時間の三十二条の問題とか、あるいは女子深夜作業の規定とか、あるいは休日が施行せられていない、あるいは女子の時間外、休日の問題とかいうものは全然もうなっていないというように思う。そうすると、女子年少者に関するところの衛生規定とか何とかいうようなのは全然無視されて、平気で実施をされていないことが社会の通念になっているようですが、これらの問題についてどういうように考えられますか。
○堀説明員 旅館の従業員につきましては、一般の工場等と違う特殊性がございまするので、基準法の中でも、たとえば旅館の従業員につきましては女子の深夜業の禁止の特例を認めるというようないろいろな特例があるわけでございます。最近労働省の婦人少年局で旅館従業員の実態を調査した結果によりますと、旅館における女子従業員の一日平均実働時間が九時間半、休日を毎週一日あるいは一カ月四日以上を与えておる事業場が全体の四〇・八%、一カ月二日ないし三日の事業場が四一・八%、こういうような結果が出ております。しかし中には例外的に、非常に悪条件のものもあると考えますが、やはり旅館といえども基準法の適用があるという基本的見地からいたしますと、これはお客に対するサービス、公衆への福祉、こういうような特殊な業態の特殊性は考えて、監督も摘発主義に堕することは避けなければなりませんけれども、やはり基準法の基本的精神に沿って、適正な労働条件が守られることが必要であると考えます。
○五島委員 業者は女中さんのひまのときに、お客が使用したところの寝具や寝巻、ああいうものを洗たくさせるというようなことも、労働条件の中に入るかもしれませんけれども、そういう営業用物品に関するあれを、女中さんにやらせるというようなことについては、どう考えられますか。
○堀説明員 お話の点、よく調べませんと、ちょっとこの場でお答えもしがたいわけでございまするが、やはりそういうようなことをさせる場合には、それが一つの労働条件として雇い入れの際に示されておることが必要ではないかと思います。
○五島委員 ところが、ほとんど労働条件を示して、何か条文にしてやっているところには全国どこにもないと思うでのす。そういうようなことであれば、何か就業規則という、しかつめらしいことを言いますけれども、こういうことはよく指導してもらわぬといかぬと思う。それから住み込み従業員ですね。女中さんがその旅館に住み込んでいるというような場合、従業員が住み込んでいるというような場合は、どうしても業者はもうからなければいけませんから、そうすると、お客さんの部屋に重点をかけるということは、大体推定できるわけです。しかし彼らを雇用して日常仕事をさせ、元気で仕事をさせ、衛生的でなければ、家庭の延長であるところの旅館には快的な寝泊りはお客さんはできない、こういうように思うのですが、大体実態のところでは、従業員の寝泊りが非常に狭い。そして日光も当らないというような、概してそういうところが全国にある。そうすると、事業附属寄宿舎規程の第十九条ですか、労働安全衛生規則の中のあれを読めば、一人に二・五畳が大体の基準であるようです。ところが非常にこういうところが悪い。こういうところに対し寄宿舎規程は、とにかく寄宿舎を作ろうとする場合は、基準監督局の許可を受けなければならないという規定があるようでございますが、旅館で住み込みというようなところで、届出を出してやっているところはない。しかしこういうようなことを改正してかからなければ、とうてい家庭の延長であるとかなんとかいうことは、ただ単に言葉の上になってしまうおそれがあるわけですけれども、この点についてどう考えますか。
○堀説明員 旅館につきましても、設置いたしますときは、監督署に設置届を出すわけであります。従ってその際に、その内容もわかるわけでございます。なおこまかいことは、現在調査をいたしておりますから、調査の結果を待って善処いたしたいと思います。
○五島委員 小中学生の修学旅行は、小学校六年を終って、そして修学旅行をやるということは、子供の喜びです。そして親は、かわいい子には旅をさせる。中学生は知識がだんだん発達して、これからだんだん社会人になろうとするところの大きな勉学上の基礎になる。従って親は彼らにほんとに期待をして、喜んで旅行させる。ところがこれは全国的にまとまって、大体遊覧地、見学地というのはきまっておるわけですね。大体全国各学校によってきまっていると思う。そうすると、それを受け入れる側の旅館も、大体それぞれきまるわけですね。そうすると、子供たちは非常に喜び、期待し、トンネルがあればトンネルを喜ぶ。ところがその旅行の一泊々々の実態はどうかということになると、これは参議院でも論議されましたけれども、身の毛のよだつという表現をした議員がおります。その話を聞いてみると、なるほど僕も身の毛がよだつような思いをするわけです。なぜかならば、あの簡易旅館は、一人のあれが一・二平方メートルだそうです。七平方メートルが四畳半だそうです。ところが学生、生徒をここに受け入れる場合は、四畳半に九人も、あるいは十六畳に三十人ばかり寝かせる、こういうようなことです。従ってふとんをずっと敷きっぱなし、そしてまくらは一つ一つのまくらを与えないで、丸太を持ってきて、まくらの代用にする、こういうような事実が至るところにあるということを聞いたんです。それで旅館の設備であるところの浴場は、もうごった返して、気の弱い子供はお湯にもはいれない。疲れているのにお湯にもはいれないで、くたくたになって家に帰る。何を見てきたかと聞いたら、疲れてしまって眠くてしょうがなかったと答える。こういうようなことになるならば、せっかく小学校、中学校あるいは高等学校の、人生の一歩々々の段階において、大へんなことになる。そのうちに伝染病等を持って帰ってしまって、あとで苦しむ、こういうことになりがちなものですね。それで基準というようなものがある。ところが業者に言わせれば、この基準を守っていた日には非常に宿泊料金が安いから、それでその基準に違反してでも、たくさん受け入れなければやれないんだというようなことで、まくらが丸太に変っていく、こういうようなことになるらしいんです。これが事実であるならば、これは問題だろうと思います。そうしてこの中でも業者はもうかっていると私が断言することは弊害があるかもしれませんけれども、十分やっていけるのじゃないか。なぜかならば、全国のあっせん業者にリベートが行われる。そうして生徒が負担している中から、それが業者にそのお礼として出ておるならば、親がささいな金を積み立てたり、あるいは無理をして子供には旅行させますね。そういうのが大体ピンはねされるということになる。ピンはねというような言葉になると、業者もあるいはあっせん業者も怒るかもしれませんが、事実それがあるというようなことで、あるところでは六百円の約束をした、従って食事やあるいは寝具のサービスの問題等も、まあまあこのくらいというように思っていたら、それが実際は三百五十円程度の旅館費だった、そしてあとの二、三百円はどうなったかというと、けっこうどこかで消えているというようになったならば、これは大へんなことであろうと思います。こういうようなことについては、文部省あたりも非常に注目し、これを何とか合理化するように努力してもらわなければならぬのですけれども、私が言いたいのは、これが事実なんですから、そこに勤めているところの従業員そのものは大へんなものです。 〔植村委員長代理退席、委員長着席〕 もう休みはない。休み時間はない。戦争みたいにやっている。それが労働条件の過重というような面にしわ寄せられてくる。従って私が今まで言ったところの労働条件、労働基準法というようなものは完全につぶれてしまって、眠ることもできないし、休息することもできないというような状況にあるのが、大体観光地の旅館従業員の実態であると考えるわけです。従ってその学生、生徒の問題については文部省関係で、このためにしわ寄せされるところの従業員の問題については、交代制もない、休息もない、休日もない、こういうような状態では、果して彼らの健康を保持するに足るかどうかというようなことについて、どう考えられますか。
○堀説明員 修学旅行は本来楽しかるべきものでありまして、学生、生徒がその修学旅行をやりまして、かえってそれが将来苦しい思い出になるというようなことは、まことに好ましくないことであります。私も一個の社会人といたしまして、また一男二女の父といたしまして全く御趣旨には同感でございます。この点につきましては業者の自粛自戒と厚生省、文部省、運輸省等の健全な指導方針を期待すると同時に、旅館従業員の労働条件の改善につきましては、先ほどから申し上げております基本的な精神によりまして、その改善について労働省として十分努力いたす考えでございます。
○五島委員 次に、さっき大臣に聞いた労働省の臨時職員の問題ですが、労働省の臨時職員は何人おられますか。
○有馬説明員 約三千六百名おります。
○五島委員 三千六百人の臨時職の人たちの勤務年数は、平均してどのぐらいですか。
○有馬説明員 長いのは大体四年になっております。平均すると二年ちょっとぐらいじゃないかと思います。
○五島委員 そうすると、この人たちの給料はどこから出るのですか。物件費として出ておるわけですか。
○有馬説明員 臨時職員の給与というのが科目の中にございます。物件費から出ておるわけじゃございません。
○五島委員 これについて定員制の改正が問題になるわけですが、民間の臨時工の場合でも、ある一定の年数同一作業場に従業した場合は、その当該事業場に職員としてあるいは工員として、身分の相違とか何とかのないように引き直さなければならぬと私たちはかねて考えておるわけですが、定員法の改正に伴いまして、三千六百人程度受け入れられると思いますか。
○有馬説明員 これは量的にはなかなかむずかしい問題だと思います。すなわち私の省におきましても、正規の職員の定数は二万一千名、それに三千六百名の臨時職員をかかえておりますが、私の省などの臨時職員のふえた経過を見ますと、労災保険と失業保険それから安定所の業務というふうに、本来正規職員でふやすべきところを、定員が押えられておるために臨時という形でふえてきたものでございまして、性質的にいって正規職員でまかなうべき性質のものでございますし、本来事業官庁における事業の波動性に伴うような臨時的なものじゃない。そういうことは政府内で再三にわたって強調しておるのでございますが、何せ政府全体としましては数万おるという現状でございますので、今政府部内で統一した方針のもとに、この臨時職員の問題を定員法上も解決していくというふうに考えておるのでございます。 なお、ついでですから申し上げますが、処遇の問題になりますと、共済組合の関係もその他の問題も、大体正規職員と同じ処遇になっておりますので、この点から、定員内に振りかえたがために人件費が即座に著しくふえるというようなことはないと思います。
○五島委員 予算の措置としては即座に予算の増大は伴わないということですが、けりこうです。一つ努力して下さい。これで私は終ります。
○藤本委員長 滝井君。
○滝井委員 労働大臣のおられるうちに一、二点聞きたいと思っておりましたが大臣お帰りになりましたので、労働災害と賃金水準の動向について一、二点お聞かせを願いたいと思います。 最近製造業における労働災害の動向を見てみますと、特に三十年に比べて三十一年が、たとえば休業八日以上くらいの私傷災害をとってみますと、相当増加をしてきておるわけです。特に昭和三十一年を見ますと、八日以上では多分三万六千件くらいであったと思いますが、これはおそらく戦後最高じゃなかったかと思うのです。一体こういう状態はどうして出てきたのかという点を一つ御説明願いたい。
○堀説明員 最近の産業災害の状況を見てみますと、ただいまお話のように災害の件数は逐次増加する傾向にございます。これについて見ますと、いろいろな原因はあると思うのでありますが、一つはやはり経済が拡大いたしましたことに伴って雇用が増加したということが大きな原因であると思います。その証拠といたしまして、全産業につきましての災害件数は増加しておりますけれども、百万労働時間中に発生するところの災害の発生率、すなわち災害の度数率等をとってみますと、これは全体としてはやはり減少しておる傾向にあります。たとえば昭和三十二年、本年の一月から八月までのごく最近の数字をとってみますと、全産業の度数率は二一・六でございます。これを昨年の同期、すなわち三十一年一月-八月の平均の二二・四九に比べますと若干の減少を示しておるわけでございます。従いまして発生率としては、これはもちろん産業によっては逆にふえておるところもございますが、全体としては率は減っておる、しかし件数はふえておる、こういうことになるわけでございます。それからもう少し調べてみますと、今のほかに、百人未満の統計にあまり出ておりませんところの中小企業の災害がやはり増加する傾向にある。これがやはり災害発生の一つの大きな原因であろうと思います。それから、たとえば建設事業関係におきまして特に災害の発生の大きいところの水力電源開発工事というようなものの工事量が最近増加しておる、これも一つの原因になっておる。それからまたさらに最近交通量がひんぱんになりまして交通災害関係がふえておる。このようなことがからみ合いまして、これらが一環となって産業災害の発生件数が多くなっておる原因であると考えております。
○滝井委員 今基準局長さんの方から災害発生の原因をお示しいただいたのですが、少し私が納得のいかない点は、特に製造業においてふえてきておるということなんです。これはごらんになるとわかると思いますが、製造業が特に多くなっておる。そうしますと、今年あなたの方から出ました昭和三十一年の労働情勢の分析ですか、これを見ますと、特に製造業において雇用の増加の二分の一が臨時工である、こういう点が災害の発生と関係があるかないかという点が一つ。いま一つは中小企業、特に百人未満の中小企業において増加の傾向があるということは、中小企業が、災害の予防措置として、不変資本が相当導入されなければならないのに、その不変資本の導入をやらないということもあるだろうが、もっと根本的な原因として、大企業が危険な生産工程というものを中小企業に全部追いやってしまっているからではないかという疑いも持たれるのですが、そこらの点はどうなんですか。
○堀説明員 製造業につきましても、やはり度数率そのものとしては、昨年の一-八月平均と本年の一-八月平均とを比べてみると減少しております。昨年の一四・六八に対しまして、本年は二二・六九という数字になっておるわけであります。しかし件数はやはりふえておるわけでございまして、その原因は、先ほどから申し上げたこともございますが、それと同時に、今御指摘の、未熟練労働者並びに臨時工的な者の存在が災害発生の一つの原因になっておることは認めていいのじゃないかと思っております。 それからいま一つ中小企業において災害が増加しておるということは、今お話のように、その予防のためのいろいろな施設、機械等の導入に不十分な点があるということ、それから中小企業の経営者は大企業に比べて安全の意識についてはまだまだ相当欠ける点が多いということ、それからやはり今の点に関連して、たとえば下請等の形態におきまして、大企業の下請になった場合に、その関係で災害が発生するという事例も相当あるわけで、これらについては、私もお話の点と大体同じような考えを持っております。
○滝井委員 従って、一体労働省は、今のような状態で中小企業に圧倒的に災害発生率が多くなってきているということに対して、どうしてこれを防止していかれるのか。それから特に三十一年度に限って見てみますと、大規模産業においても三十一年度は増加しているのですね。大臣がおったらよくわかると思うのですが、生産性の向上ということが非常に言われており、生産性向上に労働者も協力せよと大臣は言われるわけなんですが、生産性が向上していく過程で災害発生が多くなる。しかもそれがことに大企業に多くなっているというような事態は、労働省も少し考えてみる必要があるのじゃないかと思うのです。私も専門的に災害発生についていろいろ学生のときから調査したことがあるのですが、やはり仕事場で資本家の側から、あるいは経営者の側から、監督者の側から無理な要請があるときに非常に増加してくるのです。炭鉱で言えば強行出炭、どうしてもこれだけのトン数は出さなければならぬというようなとき起ってくるわけなんです。そういう点、三十一年度において大企業にも増加をしているということ。それから中小企業には圧倒的に多いが、今後これを減少せしめていくためにはどういう方策をとるのか、その具体的なものをお考えになっていればお示し願いたい。
○堀説明員 中小企業の災害の発生の増加につきましては、これは何と申しましても中小企業の責任者が安全に対して責任と熱意を持つことがまず前提条件であると考えております。従いまして、中小企業につきましては、地方基準局あるいは監督署単位に、あるいは地域別あるいは業種別に、災害対策協議会のようなものを現在設置させまして、これを通じて強力な啓蒙と教育を行なっていく、このように考えております。それからごく最近中小企業に対しまして安全推進員という制度を設けることを勧奨いたしたいと思いまして、先般の広島における産業安全大会においてもその点を提唱し、また基準局長からも全国の基準局長にその点を通達いたした次第でありますが、その安全推進制度等を中核にいたしまして、中小企業における災害発生の予防に当らせたいと考えているわけでございます。なお、大企業について生産性が増加したので災害が多くなっておるのではないかという御指摘でございますが、これは私はやや違った考えを持っております。その点は、先ほどから申し上げておりますように、災害の発生件数は増加しておりますけれども、災害発生率というものは減少しておるのでございます。これは製造業についても、ただいま申し上げた通りであります。そういう点から申しますと、生産性向上のために災害発生が増加したのだというお説は直ちに承服はしかねるのでございます。もう一つは、大企業におきましても特に業種別に、たとえば建設業等におきまして災害の発生が非常にふえているのが実情でございまして、これは何と申しましても経営の最高責任者に、やはり安全に関する熱意と理解とを持ってもらうことが第一の要件であると思います。これにつきまして一つの方法といたしましては、災害発生率の多かった事業場を特別安全管理事業場に指定いたしまして、重点的に災害の防止に当らせる、基準局としても重点的にこれに対して指導を行なっていくような方針をとっております。それから建設業等には最近いろいろな対策協議会等を作りまして、あるいはなだれ災害の防止あるいはそのほか発電関係の災害の防止というようなものにつきまして個々別々に協議会組織を作りまして、これを通じまして災害の発生予防に資せしめたいと考えております。
○滝井委員 労働者災害は、生産性が向上をしておって、一応度数率は少し減少しておるかもしれぬけれども、たとえば一日以上の休業をとってみても、昭和三十年と三十一年とを比べてみると、三十一年の方が九千件も増加している。とにかく数がどんどんふえてきているということはどうも事実のようです。従って、大企業ではどんどん生産が上る。その割合に労働者がふえているかもしれないが、その災害の数もふえているということは事実のようです。そうしますと、災害が多く発生しているということは、ある程度労働強化が行われているということが直観されるわけです。そういう点で、私ももう少し労働災害について分析してみたいと思いますが、一応きょうはそれくらいにしておきます。 次に、賃金問題ですが、昭和二十六年以来の賃金の動向を見てみますと、基本給はあまりふえていないのです。そして臨時的な給与が非常に上昇してき始めたということです。一体これに対して労働省はどういう見解をお持ちになっているかということです。
○大島説明員 仰せの通り、最近の賃金の動向を見ますと、定期給与の伸びよりも臨時給与の伸びの方が大きいということは統計の示すところでございます。ただ全般として、給与総額としては大体経済の伸び等とマッチしてきておるように思うのでありますが、その中の割合が違う。これは御承知の通り戦後非常に生産全般に比べて給与の点も悪かったわけでありますが、それが次第に回復いたしまして、二十六、七年あたりから大体正常に復したように思うのであります。ただその後におきまして賃金の伸びが生産の増大とか業績に応じまして、それによって給与の増額が行われたということが比較的多かった。そういう関係で臨時給与が伸びて参ったのでありますが、ごく最近に至っては再び、たとえば定期昇給による給与の伸び、そういうものが多くなって参るような様子も見られるのであります。これは大体給与の変動が上下三%以上になったような場合に、その変動の理由をとってみますと、定期昇給による給与の変動というのが、かなり率としては大きくなってくるような状況にあるわけであります。これは現在の状況でございますが、大体そういうふうに考えております。
○滝井委員 どうも今の御説明では、あまりぴんとこなかったのですが、基本給が上らないということは、その雇用されておる労働者の立場からいうと非常に不安感があるわけです。たとえば一昨年と昨年とを比べてみても、月平均、三十年度は二千六百八十四円、全給与の一四・四%を臨時的な給与が占めておりますね。そうすると、今度は昨年の三十一年度になりますと、三千三百三十九円と全給与の一六・六%を占めてきている。だんだん比重が上っていっている。私はこれは最低賃金制度をお作りになろうという労働省の考えからいうと、こういう賃金政策というものは許さるべきではないと思うのです。もし毎年臨時的な給与を上げていくならば、それは基本給で上げていく形で指導すべきじゃないかと思うのです。そして経済が、デフレの傾向が非常に濃厚になれば、それはまた納得ずくで、話し合いで何とか下げていくという形をとればいいのであって、それを臨時給的なもので絶えず調節をされていくという形は、何か資本家のずるいものの考え方が賃金政策に現われてくるような感じがするのです。従って最低賃金制度というものを作らなければならぬというのは、むしろこういうところからも出てくるのではないかという感じがするのです。これは政策論になるわけですが、一体労働省というのは、こういう賃金の動向に対して臨時的なものを依然としてどんどんふやしていく方向にいくのか、それとも基本給というものをきちっと上げさせる、方向にいくのか、この基本的なものの考え方をお聞きしたい。
○大島説明員 給与総額の中で定期給与の占める割合ないしは臨時給与の占める割合、これが大体どの程度になればいいのかという問題は、賃金水準とも関連して非常にむずかしい問題で、一がいに申し上げるわけにもいかないと思うのであります。たとえば生活給の比率の問題等も同じでございます。ただお話のような点もございますが、同時に定期給与としても相当な増額は年々見て参っておるわけであります。その点、定期給与と臨時給与の割合が大体どういうふうであるべきかという点については、ちょっと一がいに申し上げられぬと思います。
○滝井委員 どうも明白な御答弁が得られぬようでありますが、あなたの方の毎月勤労統計によっても全産業の平均賃金というものは二十九年以来ずっと上ってきているわけです。しかしその中で特にわれわれが目につくのは、臨時的な給与の山というものが、カーブを描いてみると、非常に上り方が激しいのです。こういう点が、今後労働政策をやられる上にへ一つの注目をしておかなければならぬ点じゃないかという感じがするのです。その問題はいずれまた大臣がおられるときにもう少し論議をしてみたいと思うのです。 それから井堀委員もよくここで指摘をされたのですが、日本の賃金の格差というのは業種別や地域別にあるんじゃない、規模別の賃金格差がはなはだしいことは定説になっているわけですね。ところが産業別に平均賃金を見ても格差があるわけです。たとえば特に高いものを見ると、金融とか保険とか貿易事業、紙、輸送、そういうところが非常に高いですね。同時に紡績とか衣服関係、木工、家具なんか見ると非常に低い。これは金融なんかを一〇〇とすると、七〇くらいにしかすぎない。特に衣服なんかは、わずか五〇%なんです。こういうように産業別に平均賃金が――規模別に賃金が違うということは、資本金なんかの関係がありますからわかりますが、一体産業別に平均賃金に非常に大きな格差があるということはどういう原因なのか。そしてその原因をどうして直すことができないのか。この点、何かあなたの方で、こういう隘路があるんだということがわかっておればお示し願いたいと思う。
○大島説明員 お話のように、産業別の賃金格差は、産業によって大きな差があるわけですが、ただ一応出て参る統計の数字は、御承知の通り、その産業における各種の規模も一緒になっておりますし、男女性別の構成も一緒になっております。それから年令、動続年数あるいは職種、こういうものがすべて込みになって平均に出てくるわけです。従って産業別の平均賃金を比べて、たとえば紡績よりも金属が高過ぎるとか低過ぎるとか、この議論は直ちには出てこないことは御承の通りだろうと思います。そういう意味から申しますと、職種別、性別、年令別あるいは勤続年数別、そういう一切の条件を同じようにして、職種も同じようなものをとって比較いたしますと、割合正確な産業別の格差が出てくるわけです。またそれに関連して産業別の労働時間の差も出て参りますし、同じ労働時間にしても、昼やっているか、あるいは夜業で割増がつぐかということで非常に違って参ります。そういう関係で、産業別の賃金格差そのものも統計的には正確には把握しがたい。そういう点はもちろん御承知のはずのただいまのお話でございましょうが、そういう点で、産業別の賃金格差を私どもいろいろ研究はいたしておるのでございますが、一がいにどちらが高い、どちらが低いと申し切ることは困難と思っております。
○滝井委員 産業別の平均賃金の格差の問題は、今伺ったようにいろいろの要素がからみ合って、結果的にそういうことになっておるのだろうとは考えられます。しかしとにかく現実の問題としては、非常な格差があるということは間違いないわけであります。そうしますと、金融や保険に比べて五割程度しか平均賃金がないというような企業というものの姿から見ると、やはりこれは同じ程度にいかなくても、少くとも七割か八割程度に底上げをしてやらなければならぬことは言えるだろうと思うのです。それはどうしてできないのかということをいろいろ考えているのですが、それを考えたときに、やはりわれわれがたどりつくことは、労働組合の組織の問題にも関連してくるような感じがするのです。こう見ると、木工とか衣類とか――紡績はある程度例外ですが、家具なんというものは労働組合がないのです。日本の五百人以上の企業では、ほとんど百%労働組合が組織されている。ところが三十人から百人くらいになると、二割四分です。それ以下になって、いわゆる三十人以下になると四%そこそこしか組織されていないのです。こういう実態というものは、今後労働省が労働行政をやる上において、五人未満の事業所に失業保険をやるのだとか、いろいろ言われておるけれども、やはり事業主というものは金を出すことがいやなのですから、実際に今のような労働組合の組織の状態では、そういうことをやろうとしてもなかなかできないのです。しかし労働組合が組織されておると、労働者の側からされてくる。やはりさいぜんも言われておりましたが、今から五、六年ぐらい前までは、労政事務所というものは相当積極的に労働組合の組織について、熱意を持って労働行政をやっておったのです。ところが最近はばったりやらない。私は石田労働大臣がおれば、ここに石田労政の特性をあげて少し言いたいところですが、やらないのです。労働組合には法規を守れ、政府も守るから、これだけでは労働省はだめなんです。もっと説得の労働行政というものがあるとともに、やはり説得ということは消極的ですよ、もっと積極的にいく面がなければいかぬと思うのです。そういう面において、今地方をお回りになっても、労政事務所がどんどん出て、百人未満の事業所に労働組合を組織することをやっているところなんかない。非常に労働運動が盛んな労働県、福岡県なんかぴたっととまってしまっているのです。だから結局こういう中小企業に労働災害が多くなってくる。それから賃金なんかでも、結局資本家の思う通りの臨時的な給与がだんだん出てくるといういびつな労働の姿が現われてくるのじゃないかという感じがするのです。こういう点については、これは統計調査部の仕事ではないと思うのですが、労働教育をやるということをいわれておる以上、労働教育をやられるということは、結局労働者に自主的にみずからの労働条件を維持改善する意識を起させ、みずからの経済的地位を人にたよらずに、労働者の団結によって起させる方向にいくことが、私は今の段階では労働教育だと思うのです。とすれば、その大前提である労働組合をやはり彼らに組織させなければならぬ。それについて労働省は労働教育とともに、労働組合組織の問題を一体どう考えているのかということになるのです。
○亀井政府委員 労働者が団結しましてそういう経済的地位の向上をはかりますことは労働法の規定するところであり、また目的とするところでありますが、ただ単に労働組合を作ったから労働条件の維持、改善、向上がはかられるかというと、私は必ずしもそうは思わないのであります。その労働組合は民主的にして、しかも健全な発達を遂げ得る素地を持たなければ、決していい労働組合ということにはならぬと思います。そのためには組合員個々がみずからの結成をいたします労働組合について、責任とそれからそれに対する十分な認識と、またそれに対する十分な自覚、こういうふうなものをまず植えつけておいて、そしてその中において組合というものができて参りますればりっぱな組合に発展して参る。そこで労働教育の目的は、もちろん現在ありまする個々の組合に対しましてそういう民主的にして健全な労働組合の発展のための基礎的な教育をいたしまするが、それよりも中小企業を主体といたしますならば、そういう個々の労働者の自覚を促して、そしてそれがさらに発展して参りまして組織というふうに進んで参るのが、私はよき労働慣行の確立のためのいしずえになるのではないかという気がいたします。
○滝井委員 抽象論的に言えばその通りです。私がいう労働条件の維持、改善をやり、経済的に賃金の向上をはかっていくということは、当然その民主的な労働組合を前提にしておるわけであります。それで地方の中小企業には未組織のものが多い、それにその中小企業では労働災害が多く、しかも低賃金であるということは――私は産業別の平均賃金が非常に格差が大きいということは、労働運動が発達しておるかいなかということも一つの大きな要素になると思います。そういう意味で御注意を願いたいと思います。 そこで私はもう一つ、一番大きな問題について労働省の見通しをお聞きしたいのですが、一体日本の資本主義がだんだん発展をして、最近、昔のようなファミリーが支配するような財閥はできないにしても、だんだん独占化の傾向が強くなってきておる。そうしますと、日本で資本主義が発展して、そういう独占化の形態がだんだん出てくる段階では、今度中小企業というものは量的に多くなるのか少くなるのかということです。これは今後の労働行政をやる上に非常に重要なところだと思うのです。われわれが日本の労働行政をやる場合に、一番ガンは何といっても中小企業であります。そうしますと、今後中小企業というものは質的にどんな展開をやるのかということ、この見通しをどういう工合に労働省はお持ちになっておるか、これを一つ教えていただきたい。
○大島説明員 今後の中小企業がどうなっていくかということの見通しはなかなか困難でありますが、ただ先ほども規模別の賃金格差のお話が出ましたが、日本の場合、たとえば五百人以上程度の規模の事業所の賃金を一〇〇といたしますと、大体五十人程度になりますと五、六〇%に落ちて参る。非常に大きな規模別格差であると同時に、中小企業の生産性を調べてみますと、やはり大体それと同じくらいの差が出て参るわけであります。これをたとえばイギリスとかアメリカに比べてみますと、賃金の面では中小企業も大した差はない。大体八〇%、ものによると、小さなところでも九〇%程度のものもある。同時にそれらの国における中小企業の生産性というものの比率をとってみますと、やはり大企業とあまり開きがないというわけであります。従って申せることは、結局その規模別の賃金格差というものも、生産性の差異に基くということが言えるわけなのです。従って、何といっても中小企業の生産性を高めるということが何よりも基本的な政策であるべきだと思うのです。と同時に、中小企業の存続の理由と申しますか、根拠も、やはり大企業でやりにくいような業種、産業、そういうものについて存続してこそ、初めてそこに中小企業の生産性というものも高まってくるわけなのです。そういう関係からいたしまして、中小企業の生産性を高めるという観点において、やはり総合的な中小企業対策というものが推進されねばならぬと思うのです。これによりまして、あるいは産業、生産全般の趨向からいたしまして、中小企業が大企業との対比におきまして数字的にふえるかどうか、この点はちょっと軽々に予測はいたしかねるのでありますが、ただ今後五カ年計画等におきましても、膨大な新規労働力の消化という点におきましては、この中小企業における雇用増というものに、やはりかなりの期待をかけざるを得ないと思うわけであります。
○滝井委員 実は先般石田さんが、七月三十日の当委員会で、今までの歴代の内閣の経済五カ年計画というか、経済政策というものは物と金を中心にしてやった、自分は今後それに雇用計画というものを入れるのだということをおっしゃったわけなのです。そうしますと経済計画の中に雇用計画というものを力強く織り込んでくるためには、やはり日本の資本主義というものがこの五カ年間に一体いかなる発展の形態をとるのか、その発展の形態の中で一体中小企業というのはふえるのか減るのか。これはある程度見通しをつけないといかぬのじゃないかと思うのです。と申しますのは、日本の雇用量の増加のほとんど大部分といっていいものは、中小企業にふえてきているのです。そうしますと、五カ年計画の中に雇用を入れるというからには、それをある程度見通さなければいかぬのです。今のあなたの御答弁では、どうも自信のない、ふえるか減るかわからぬというようなことなのですが、実は私きょうお尋ねしたのは、最近公正取引委員会が、日本産業集中の実態というのを発表しておるのです。それによりますと、実は私も常識では、だんだん資本の独占化が行われてくると中小企業、特に零細中小企業はうたかたのごとく消えていく、こういう認識を持っておった。ところがそうじゃない。日本においてはますます中小企業、特に零細なものが拡大再生産をされていくという結論になっておるようにあるのです。そうしますと、こういう状態になってくると日本の労働政策というものも、よほどこれは日本の経済構造から考えて、考え直さなければならない面があるのじゃないかという感じがするのです。そういう点、今のような御答弁じゃなくて、これは私非常に大事なところだと思うのです。今後雇用計画――完全雇用という政策をお打ち出しになっておる。言葉の上で完全雇用というのはだれでも言えます。しかしその完全雇用というものは一体どこで行われるのか、中小企業で行われるとするならば、中小企業の遺命というものは拡大するのか減るのか、この見通しを立てなければいかぬと思うのです。どうも今のあなたの方の御答弁では、それがはっきりしないのです。 そういう点はまた次会に譲るとして、もう一つ、次に御研究を願いたい点は、結局、従って日本においてはそういう独占的な資本の形態をとるものと、中小企業とがからみ合って、日本の資本主義というものは発展するのだ、こういう形が出てきている。ところがその発展の過程の中でよく見ると、独占資本と中小企業の結合の仕方が、だんだん質的に変ってきている点があるのではないかという感じがするのです。これは同時に、雇用形態というものを非常に規制するのではないかという感じがする。たとえばずっと前だったら、われわれが学生のときには紡績業があると、そこに問屋というものがある。そこには問屋資本という商業資本が入っておったのです。ところが最近のものを見ると、あのテレビでも見るように、すでにわれわれの衣服の一番最終段階、商品になった段階まで、メーカーの、いわば独占資本の名前がついてきているのです。結局メーカーというものが商社まで一貫して指導する形をとってきているということなんです。こういう形はやはり日本の労働政策をやる上に、今までと違った形があるのではないかと私は思う。中に商業資本というものが入って、そこに問屋というものがある場合と、全く一貫した、いわゆる系列化が行われる場合とでは、労働政策、そこにおける雇用の――雇用という形は違わないかもしれないが、雇用の質というものがどうも違ってきているような感じがするのです。今までと雇用の質が違っておるということになると、それに盛っていく政策というものも、今まで通りの、昔ながらのものであってはいかぬという感じがしてくるのです。従って日本の労働政策というものが、大企業ばかりでなく中小企業というものが労働政策の中で相当大きな比重を占めるとすれば、そういう点の日本における中小企業の量的、質的な展開の見通しと申しますか、そういうものをある程度労働省は経済企画庁と連絡しながら立てる必要があるのではないかということをしみじみ感ずるのですが、その点も今の御答弁では満足しないところがあるのです。
○大島説明員 日本の労働の質的、量的な今後の展開がどうあるかという問題について、一つは産業構造の問題が重要な観点であろうと思います。今後五カ年計画を立てるにいたしましても、やはり相なるべくは生産性の高い産業に雇用を吸収して参るという観点、それからもう一つは雇用の形態、すなわち雇用者としてこれをできるだけ吸収していくという形、こういうふうな産業構造ないしは就業構造をできるだけ近代化しながら、雇用というものを拡大成長する経済の中へ吸収いたしまして、同時に一般的な消費水準をも上げていく、これがほんとうの意味の安定する、成長する経済であろうかと思うのであります。従って今後の雇用の問題につきましても、そういうふうな形において持っていくように全般を運んでいかなければならないのではないか、かように考えておるわけであります。
○滝井委員 雇用というものは生産性の高いところに持っていかれなければならないし、雇用の形態というものが雇用者、これは常用者としてという意味だろうと思うのですが、就職されなければならぬ、私もその通りだと思うのです。ただ惜しむらくは、日本においては生産性の高いところには雇用がふえないということなんです。従って、むしろ生産性の低いところ、あるいは商業とか、サービス業というものにふえていく、こういう日本経済が、機構的に見れば非常に脆弱化される形で雇用が増大しているということなのです。そういう点をもう少し御研究になっていただいて、いつか適当な機会に、今私が御質問いたしたような点について、労働省の見解がわかればお教えを願いたいと思います。 それからいま一つ、経済企画庁から出た経済白書を見ると、あれの中に中小企業を論じている一章があるのですが、あの経済白書の日本経済のとらえ方を見ると、日本経済が二重の構造になっていることを平面的に見て言っておる。ところが資本という名に値しないような零細な企業というものが日本にあるのです。経済白書を論議する場合に、あなた方にもお願いしたいのですが、そういう零細企業というものには、相当多くの雇用があるわけです。たとえば家内労働なんかを見ても、一時間七円の賃金なのです。そして臨時的な給与も含めて、一日百二十円というのはざらです。そうしますと、そういう零細なものがオミットされておるのです。いわばそういう独占的な、近代的な企業と、中小的な企業と、そういう零細的な企業と、むしろ構造としては三重構造くらいになっていると思う。ところがあの経済白書を見ると、きわめて平面的に、二重構造で見て言っておる。ああいう見方が企画庁から出て、そうしてそれを労働省に持っていかれるということになると、これは雇用のほんとうの実態というようなものは把握できないと思う。そういう点、今後労働省の側から、経済計画の中に雇用の問題を入れられるとおっしゃるのだから、一つそういう面から推進して、もう少し日本の雇用の実態というものを、経済計画の中にはっきり浮き彫りをしてもらいたいと思うのです。 きょうは非常にむずかしいところをお聞きしたのですが、これはやはりまことに大事なところだと思うのです。一つもう少し御研究になっていただいて、いい知恵があったらお示し願いたいと思います。きょうはこれでやめておきます。
○藤本委員長 本日はこれにて散会いたします。 午後五時十三分散会