P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
26回国会参議院1957/03/12

予算委員会 第8号

発言数
144
登壇者
19
会派数
4
開催日
1957/03/12

会議録

苫米地義三自由民主党

○委員長(苫米地義三君) ただいまから委員会を開きます。

小林武治自由民主党

○小林武治君 議事進行について。  私どもは、予算の早期成立を期待しておる国民の要望にこたえるために、予算の審議にはきわめて精励をいたしておるつもりであります。今朝も昨日の委員長の宣言通り、われわれは十時からここに質問者とともに一時間すでに待機しておるのでありまして、予算の審議が政府の出席のないためにおくれるということはまことに遺憾であります。政府でもいろいろの御都合はあろうと思いますが、予算審議の重要性にかんがみまして、われわれの出席要求については特にこれを尊重してもらいたいと思います。その向きにつきまして本日はまことに遺憾にたえません。どうぞ委員長より政府に、出席方について特に注意を促してもらいたいと思います。

苫米地義三自由民主党

○委員長(苫米地義三君) ただいま小林君のお話があったように、各党とも時間の励行をしようという申し合せをしておる次第でございますから、政府側におきましてもこの点をお含みの上御協力をお願いいたします。   —————————————

苫米地義三自由民主党

○委員長(苫米地義三君) 昭和三十二年度一般会計予算  昭和三十二年度特別会計予算  昭和三十二年度政府関係機関予算を議題といたします。  昨日に引き続きまして、総括質疑を続行いたします。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 総理は二月二十七日の所信表明演説で、総裁が選任せられるまでは総裁の事務を代行するとおっしゃいましたが、これは党の正式機関できまったことでございますか、また常識的なお話でございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 議員総会におきまして首班指名の候補を定めますとともに、議員総会の承認を得ておる事項であります。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 次は、岸内閣の性格と内閣改造問題についてお伺いをいたします。  岸内閣は石橋内閣の施政方針、予算、法律案をそのまま踏襲されまして、閣僚も石井さんが新しくお入りになっただけで、全部居すわりでございます。しかし総理としての独自の、最善の顔ぶれで国政に当るということが当然であると思いますので、いずれ内閣の改造ということになると思いますが、改造されますかどうか。またするとすれば、いつごろの御予定でございますか、伺います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 内閣の改造につきましては、これはいろんな政治情勢や、また内閣としての政策の立案、執行等の必要上、過去におきましてもいろいろに行われておるのであります。私自身は今日、いつ改造を行うか、改造の意思あるかどうかというお尋ねでありますが、明確に今のところお答えをするように腹をきめてはおりません。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 次は、石橋前首相が病気回復後の進退問題について伺います。総理は石橋内閣の臨時首相代理であったが、同時に石橋さんが病気のために辞職されまして、国会の指名を受けて内閣首班におなりになりました。ところがその政策も人事も受け継いでおられますが、そこで私が伺いたいのは、もし石橋さんが回復されて、首相の激職にたえ得るというような状態になりましたときには、総理は一体どうなさいますか。身がわりであるという点でいえば、一ぺん辞職をして、あらためて国会の指名を受けて、第二次岸内閣をお作りになるなり、あるいは再生石橋内閣をお作りになりますか、もしくはそのまま、回復されましても依然として首相の職におとどまりになりますか、この三点、いずれを選ばれますか、承わっておきたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は国会の指名を受けて総理大臣になったわけでございます。従いまして、総理大臣として私が国政の首班にあって、その責任を遂行することは、私の義務であると考えております。もちろん、石橋前首相が、病気が一日も早く回復されて、健康なからだで政治に携わっていただくことを私は念願いたしておりますが、今日、石橋さんが本復された場合において直ちにやめるとか、あるいは国会の指名を受けかえるというような考えは持っておりません。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 石橋さんがおやめになりましたときに、社会党の方からは、もう一ぺん予算案の再提出をしろ、それから施政方針演説もやってもらいたい、こういう要求がありましたのは、総理御承知の通りであります。その社会党の要求というのは、要するに、岸内閣というものが完全な新しい一つの内閣として、完全な政権の移動として臨んでもらいたい、こういう観点であったと思います。しかし私どもは、これは石橋さんのおやめになったのは、政策の行き詰りではなくて、病気というほんの個人的な一身上のことから進退を決せられたのでありますから、政局の転換と申しましても、解散に訴えなければならぬような政局の変化ではないと考えておりました。岸さんにおきましても同様のお考えであったと思うのでありますが、予算もそのままでありましたし、法律案もそのままでありましたし、施政方針演説もおやりにならずに、単に所信の表明で、前の内閣のすべての方針を踏襲するのだ、いわば身がわりでやっていくのだというような態度の表明がありましたので、そこでまあ閣僚もそのままで、おやりになった。ところがその本尊の石橋さんがかりに早く回復されましたら、身がわりのかわりに本尊が出てくるのでありますから、もう一ぺんこれは国会の指名を求める——何も岸さんがぜひやめなきゃならぬというのではありませんが、しかしもう一ぺん国会の指名を求めて、そうして本格的な岸内閣で乗り出すということが、これは国政に対する筋道として私は当然じゃないかと、こう思って実は伺っておるわけであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 今申し上げましたように、私の考えは、やはり国会の指名を受けた以上は、私の全力を尽して、私に課せられておる使命を果すということが、政治家としての当然の責務だと思います。従いまして、石橋さんが本復されました場合に、すぐ辞職して、国会の指名を新たにするというふう考えは、自分としては持っておらないのであります。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 次は解散の問題について伺います。  石橋さんは解散の用意はできておるが、国民に十分批判の材料を与えることが必要だと、解散を決意しておられたように拝察をいたしております。岸総理は、予算実行の責任があるから解散はしない、政治の空白もできるからやらないのだ、こういうふうに昨日も御答弁があったわけです。石橋さんは、民主主義のルールの上に立った解散論であったと思いますが、総理の解散無用論は、このルールから逸脱しておるかの感を受けるわけであります。石橋氏の進退が非常に国民の賞賛を博したのは、ルールに忠実であったからだと私は思っておるのでありますが、一昨年の保守合同のときに一体解散すべきであったのが、今日まで延び延びになっておるのでありますが、私はどうしてもやはり予算が成立したら解散するのが本筋じゃないか。最も解散を回避すべき立場にある財界人ですら、予算成立の後には解散して一ぺんやり直すがいいという議論が相当あるわけであります。そこで私はこの点で、もう一ぺん解散論に対する総理の御意見を伺ってみたいと、こう思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 解散につきましては、しばしば私の所信を明らかにいたしておるのでありますが、私は解散ということは、申すまでもなく、政治上きわめて重大な意義を持っておる。またそれが国民経済及び国民生活に及ぼす影響、国際的な関係に及ぼす影響等を考えてみまするというと、よほど解散をすべき事由がはっきりしており、また相当な犠牲を払っても解散をすることが、国の進展のために必要であるという事態を見て決意をすべきものであるという考えに立っておるわけであります。今お話がありましたように、今度のいわゆる政変なるものは、私は石橋前総理の病気ということであり、私自体も石橋内閣におりまして、そうして予算案も、その他重要案件というものも閣議においてきめて参った責任もございますし、この際に解散をすることは適当でない、こう考えておるわけであります。一体、原則としては衆議院が四年の任期をもって選挙をされておるのでありますから、よほど重大な意義のあるときに途中で解散をすべきであって、今日のような情勢のもとにおいては解散をすることは適当でないという見地から、解散をしないという意思を私は表明しておるわけであります。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 解散の重大性は、首相お話の通りでありますが、保守合同のときに、鳩山内閣が国会の指名を受けて、しかも本筋である解散を回避したというのは、国会の指名乱用であって、実に邪道であったと、こう考えるのでありますので、あのときの借金を返す意味で一つ解散をやってもらいたい。むろん衆議院の議員諸君の中にも、あるいは政党の中では解散に対して反対論はありましょう。ありましようけれども、総理は日々の新聞の論説をごらんになればすぐわかるように、国民の声としては、やはり解散を要求しているのでありまして、現に院内でも緑風会ですら解散を言っておられます。解散の問題はこれ以上私は触れませんが、どうか一つ世論の動向をこの上とも十分御洞察願うことをお願いいたしておきます。  次の問題に移ります。石橋さんは民間人であり、自由人であり、アメリカにも、軍部にも反対しておったという経歴をお持ちになって、そこが石橋ブームというような人気を博した一つのゆえんであったと思いますが、総理は戦事中に統制経済を推進され、満州国でも相当重要な地位におられた。また、東条内閣の閣僚で、財政金融の方面は賀屋さんが御担当になっておったようでありますが、産業経済の方面は総理が推進されておった。そこで、現在国民の間には、岸さんが総理になれば、またその官僚統制をやられるのではないかという相当の不安があるわけであります。そこで私はかようなことを申すのもいかがと思いますが、やはりこの際には戦争時代のことを厳粛に反省をされて、民主主義に徹するということを常にお話になっておりますが、よほどこの点はやはり具体的に強調されまして、国民の何と申しますか、不安を解消するに一段の御努力が必要であると思います。われわれは、開戦のあとは戦争の遂行に協力したわけでありますが、さて、戦時を振り返ってみて、産業経済の最高指導者の一人として何が一番今から考えて悪かったか、この点だけは今から考えても悪いとは思わないという、もし幸いに具体的に何か事例をここでつかまえて、その点を御解明いただければ、国民の不安を解く上において有効ではないかと考えますので、この点を伺ってみたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 私はこの戦時中のことを、また戦争に日本が突入した前後におきまして、御指摘のように、産業行政上重要な地位にもおりましたし、また開戦の当時の閣僚でもあったわけです。一番私自身が反省して、今日もなお私の遺憾なことと考えますのは、今日から考えてみるというと、あらゆる国民の悲惨、国の困った事情というのは、戦争ということに日本が入っていったということであると思います。そのときの私は閣僚の一人であって、身をもって私自身がこの戦争に日本が入っていくということをとめることができなかったこと自体が、一番私の大きな責任であろうと思います。さらに当時のことを反省してみまして、要するに戦時統制経済というものの指導の中心におりまして、これがわが国の産業及び社会各方面に非常な犠牲を与えたということでありますが、これは私は戦争当時の事情を考えてみまして、やはり戦争時代になるというと、この統制ということ、経済そのものが自由経済から違った、国の非常に強い権力のもとにいろいろの自由が制限されるということは、これは各国ともそういう程度とかあるいは様式は違いますけれども、そういう傾向になる。戦争そのものを私どもはいかなる場合においても防がなければならない、日本が将来戦争に巻き込まれることのないように処していくということを、私ども根本の政治の要諦として考えなければならない。それには民主政治を徹底し、完成するのであるというのが、私の考えでありますから、私は平時における経済の原則としては自由経済主義を堅持するものであります。私はこの点においては社会党の諸君の考えられておる経済政策と根本において立場を異にするのでありますが、自由経済主義をとるのであります。しかし戦時にああいうことをやりましたことは、今申したように、戦争というところに何があると思うのであります。従って、そういうことを防いでいく意味の政治を完成していかなければならない。私の今日抱いておる考えは、経済産業政策では、各人の創意、自由なる創意によって、そうして産業経済を発展、繁栄せしめるというのが基本観念であります。  ただ申し上げるまでもないことでありますが、経済上の自由というのにもおのずから一種の限度があって、自分の自由は同時に他人の自由を妨げない程度のことを考えなければならぬ。経済力の非常に強力なものが、その強力なものを勝手に使うということは、社会にいろいろな影響を及ぼしますから、その調整ということは考えなければならない。これは戦時の統制とは全然違っている。自由経済をむしろ円滑にやらせるための調整という意味のことは、私は考えなければならぬと思います。こういうような点も考えまして、将来民主政治に徹底して、民主政治の完成に努めたい、こういうことを申し上げたいのであります。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 経済の考え方について大へん懇切な御答弁で感謝いたします。  なお、くどいようでありますが、反省の問題について若干の資料を提供したいと思うのですが、総理が巣鴨においでになりましたときに、高等学校時代の恩師の方からこういう歌が贈られたということが出ておりました。「二つなきいのちにかえて惜しきものはちとせに朽ちぬ名にこそありけれ」、この恩師の歌に対して返歌として総理が「名にかえて聖戦の正しさをよろづ世までも語り残さん」、こういう御返歌が出ておるということが最近の週刊紙に出ておるのであります。この歌は相当、これは週刊紙でありますから、将来論議の的になろうと思いますが、むろんその当時と今とではお考えもいろいろ変っていらっしゃるでありましょうけれども、やはりこういう機会に、その当時はこれはこういう気持だった、今はしかしこうだということを、一言御解明をいただく方が、万事今後都合がいいのじゃないかと思いますので、伺っておきます。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) どういう雑誌にどういうふうに出ておるか知りませんが、私はちょうど終戦当時、八月の十五日には、私の郷里におきまして、私は当時猩紅熱にかかって伏しておったわけであります。それが九月十二日に私の逮捕令がラジオで放送をされました。私は病床でそれを聞いたのでありますが、その当時、一高の私の先生である恩師から私にその歌を贈られたのであります。私はその歌の意味を、お前は逮捕令を受けてのめのめと引っ張られて行って、そうしてはずかしめを受けるというよりも、むしろ名を惜しんでりっぱに処決したらいいじゃないかという意味に私はその歌をとったのであります。私の気持は、終戦後逮捕令が出ますまでに、私がいかに自分のからだを処置することが正しいかということでずいぶん私自身としては悩んだのであります。しかし私は当時閣僚として、私の信念は、明治憲法のもとにおいては、戦争の開戦というようなことは、重大なる輔弼の責務の一つであって、いかなる場合においてもこの責任は当時の閣僚にある、陛下にはない。従って、自分はどんなはずかしめを受けても、むしろこの戦争をなぜやらなければならなかったかというわれわれの所信を、軍事法廷に出てそうして自分が述べて、そうして自分の処断を待つのが正しいという考えに達しまして、私としてはどういう、はずかしめも、どういう何を受けても、自分たちが閣僚としてこの戦争に入らざるを得なかった事情を後世に語り残すために、自分自身としては生きながらえて、そうして出るべきところに出て、自分の所信を明らかにしようという気持であったのであります。その何でありまして、その後、私自身は十五日に横浜監獄に拘置せられましてから三年有余、大森及び巣鴨の三カ所におきまして考えて到達したところの所信は、先ほど申し上げましたように、日本自体を戦争に巻き込むということは、どういうことであってもいけない、これを再び巻き込まないようにするためには、民主政治を完成するにあるという信念に達したわけであります。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 今の週間誌はサンデー毎日であります。もう一点、反省の意味で伺いますか、最近の事例ですけれども、小選挙区制の問題と恩赦の問題、冷静に振り返ってみてどうお考えになりますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 小選挙区制の問題につきましては、私は二大政党になりました以上、小選挙区、一人一区の小選挙区が理論上正しいという考えを持っております。ただ、これは申すまでもなく、非常にむずかしいことは、区制をどういうふうに分けるかということであります。どう何しましても、なかなか神様が作ったような区制というものは、なかなか別表はできにくいのであります。理屈は私はやはり、国民が各選挙区において保守党を支持するか、社会党——革新党を支持するかという一人一区の小選挙区を作ることが正しい、こういうふうに考えております。ただ別表の作成については、あくまでもこれを公正なものにしなければならないというふうに考えております。それからそれが理論上その方向にいかなければならぬけれども、いろいろな現状とのある程度の調整上、それの例外も作っていかなければならない、そういうものをどういうふうに調整するかというのが、現実の選挙法の問題としては考えられると思います。こういうふうに考えております。  もう一つのことは恩赦……。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 恩赦、政略恩赦といわれておる去年のあの国連加盟恩赦、非常に世論の反撃のあったものですよ。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 恩赦につきましては、これは過去の例を見ましても、何か国において非常に重大なお祝いがある、あるいは非常に画期的な意味を持っておる場合に恩赦が行われております。私どもは日ソ国交か調整され、同時に国連に加盟したということ、特に国連加盟ということに重大な意義を置いて、日本の将来の、こういう国際の一員として新しい何を踏み出すという時期に、従来の例を参酌して恩赦をしたと、こういうのでありまして、いろいろな批評はございまするけれども、私は従来の例から見て、こういう場合において恩赦が行われるということは、従来の例からそう珍しいことではない、かように考えておりましす。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 私自身は日ソ交渉に反対でありますから、従って国連加盟の恩赦そのものにも反対でありますけれども、当時の議論で恩赦が問題になったのは、御承知の通り、選挙違反の事件と、それから政治資金規正法の違反者だけを恩赦の範囲に入れたという点に非常に世論の反撃を受けたのでありまして、あのやり方は、私はもちろん妥当でなかったと思いますし、国民の九割までは妥当でなかった、こう思っておると思いますが、総理はあれはやはりその範囲も妥当であると、今もってお考えになっているかという点が、私の伺いたい点であります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 私どももあの当時どういう範囲にするかということは、従来の先例等も調べまして処したのでありまして、もちろん、いろいろな意味の批判は、私どもその後聞いておりますけれども、従来の先例を踏襲したという意味におきまして一応その妥当性を認めていいのじゃないか、こう思っております。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 今の恩赦の点で法務大臣の現在の心境を伺っておきます。

中村梅吉自由民主党法務大臣

○国務大臣(中村梅吉君) お答えいたします。  先般の恩赦の範囲でございますが、選挙違反等の事案につきましては、その事案の内容の是非について区分することはなかなか困難であろうと思います。さような関係で、これらの事件につきましては、一般的な恩赦が行われたのでありますが、その他の犯罪につきましては、特赦令を出しまして、現に犯罪事実、情状をそれぞれ個別に審査をいたしまして、個別審査によって、できるだけやはり恩赦の恩典に浴するようにいたしたい、かようなことで常時努力をいたして、最近の閣議等におきましても、大てい特別恩赦にかかる者が二、三名ずつは決裁をいたしておる、こういうような状態でございますから、今の恩赦及び特赦は広範囲にその恩典を与えておる、こういうように考えております。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 私は恩赦に対する総理の御答弁は不満足でありますけれども、次に移りたいと思います。  次は、綱紀粛正の問題を伺いたいのでありますが、施政方針の演説でも、まず改むべきは政府であるというふうな表現がとられております。そこで端的に私が申し上げたいのは、大臣が会社の役員を兼務する、いわゆる国務大臣の兼職禁止、こういう法律案がすでに参議院を三回通過して、現在衆議院で継続審議中になっております。民間の石坂泰三さんなんかは、会社の重役どころじゃない、大臣には命がけでその職務に専任してもらわなければならぬというくらいな強い意見を表明しておられるのでありますが、閣議の申し合わせで、国務大臣は今後一切会社の役員等を兼務しないということをまずみずから始めていただきたい思いますが、いかがでありましょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) この問題は、今御指摘になりましたように、衆議院において従来継続審議されておる問題であります。従来の取扱いは、官吏服務紀律の制約を受けるものとして、直属長官の許可を受ければいいということになっております。従って、各省大臣は総理大臣の許可を受けております。ただ、この問題については、今、綱紀粛正の問題等とも関係がありまして、なるべく私は兼ねないことが望ましいと思います。ただ今日の民主政治、政党政治ということから申しますというと、いろいろな関係で、やはり事業にも関係を持っておるという事自体が、民主政治、もしくは政党政治の現状から申しますというと、ことごとくいかなる理由があってもそれを認めないというところまでいくことは、やや実情に即しないものが……、事例があるようにも思えるのです。従いまして、趣旨としましては、私はなるべくよほど限定した理由以外の場合でなければ、各省大臣は会社の重役等の役員は兼ねないということにしたい、従って、そういう許可を受ける場合において、総理大臣としては、なるべくそれはやめてもらって、ごくやむを得ない、一時的なものであるとか何とかという例外以外はやめてもらうようにしたい、かように思っております。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 石井さんが運輸大臣になられたときに、九州の鉄道会社を辞任されたことがあります。苫米地委員長も前に国務大臣におなりになったときに、やはり会社の役員をおやめになりました。私この法律案のことで松村謙三さんにお目にかかったときにも、まだ今ごろそんなことが行われているのですかというので、非常に以外な顔をされたことがあります。弊害の事例から申しますと、前に岡崎さんが、日米富士自動車会社の社長をしておられた。別に外務大臣と関係ないと私は思っていたのですが、後にその会社が不渡り手形を出して、自転車業界の過半数が破産にひんし非常な混乱を起しました。そのときの債権者の話が新聞に出ておったのを私は見たのですが、とにかく、岡崎さんは大臣なんだから、政府でも放っておきはすまい、もしこれを放っておくようなことがあったら、今度は社会党か共産党に票を入れなければならない、こういうことが書いてありましたので、私はどうも民間人は、大臣というもののありがたさを、会社とこんがらかって、考えている。こんなところまで影響があるのかと思って、実は言い出した私が驚いたくらいなんです。この問題を十六国会で提起しましたときには、大蔵大臣の小笠原さんが海運会社の社長をしておられて、造船利子補給の問題があるからおやめになったらいいだろうということを私は吉田さんに本会議で言ったことがあります。吉田さんは、それは弊害がないからやめさせる必要はない、こういう御答弁があったのでありますが、夏の国会でそれを言って、九月に小笠原さんは社長をおやめになって、その暮に、さらに取締役をおやめになって、結局一応その会社と絶縁されたというような状態がありました。外国でも、アメリカでもイギリスでもドイツでもフランスでも、多少程度と範囲の差はありますけれども、みな大臣は民間と関係を断つという法制があるわけでありまして、これは単に私一個人の考えだけではなしに、すでに参議院では三回も法律が通過して、最近の二回は満場一致で通過しております。衆議院の内閣委員会でも、社会党の諸君はむろんのこと、自民党でも積極的に反対される方はだれもないのです。だれもないのですけれども、国務大臣自身のやはり身分に関係するものですから、なかなか実行がむずかしい。  この非常な官紀紊乱のときに、それくらいのことができなければ、石坂さんの言い分じゃないが、大臣は命を的にしてやってもらわなければならぬのに、会社の重役を兼ねてやるようなことではなっちゃおらぬというような意見が新聞に出ていることでありますから、これはきめればすぐできることでありますから、一つ民主政治をやかましく言われる総理としては、これは総理の決意で即座に断行してもらいたい。重役でなくちゃならぬ人は、何も大臣になってもらわなくたって、人材は多々あるのですから、役員の方がいいという人なら、大臣をやめればいいのですから、これは何でもない話です。重ねて一つ御考慮をわずらわしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 御趣旨はごもっともと思いますから、善処いたしたいと思っております。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 次に、国家公務員法上の官吏の懲戒処分の実態が非常にゆるやかである、こういうことを一つ申し上げたいと思うのです。前に人事院が、全省庁懲戒処分理由別件数表というものを出したのでありますが、そのうちで、公務員法上の懲戒処分を受けた数が一年に二千七百件ある。ところが、この懲戒処分は御承知の通り、免職、停職、減給、戒告の四段階になっているのですが、この二千七百件のうちで、一番軽い戒告になっている者は一千三百十三件ある。約半分です。ところが、この軽い戒告になっている内容がどうかということになりますと、文書偽造、公金横領、収賄、詐欺、強喝、窃盗、強盗、暴行、傷害、あらゆる破廉恥罪が単に戒告だけで済んでいるのです。私はこれはずいぶんひどいと思いますが、昭和二十九年に参議院でも、懲戒処分の適応励行に関する決議というものが通過いたしているのであります。どうか一つ一般国民が納得できる、厳重な官吏の懲戒処分をやってもらいたい。暴行、強喝、詐欺、強盗をやっても、戒告だけで済むというようなことは、内容を見れば国民は私は驚くと思います。この点一つどういうふうにお考えになるか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 私、その事実はよく承知いたしませんけれども、しかし、今御指摘になるような、破廉恥罪やあるいは暴行、強迫等のことに関しましては、これは官吏としては、公務員としては厳罰に処すべき私は問題と思います。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 次に、同じ問題で、依願免職が非常に悪用されているということを私は申し上げたい。前に印刷局長の官舎払い下げの問題がありましたときに、ずいぶんこれは悪質な、総理のお住居の南平台のところであった事件ですが、これが依願免職になって、退職金も恩給ももらっております。それから最近問題になった国鉄のガード下の用地払い下げにからんで、もう近日起訴されるだろうと思う、前の東鉄監理局の事業課長、二月二十三日に依願免職になっております。こういう者を一体簡単に依願免職にするということ自体が、私は非常に間違っていると思う。最近でも新聞に、高級官吏の休職中の依願免職の事例が出ておりますが、参議院の決算委員会が昨年、二年間調べましたところが、暴行で懲役その他になった者が、百三十九件の中で、依願免職になった数を調べましたところが、農林省、海上保安庁、自治庁、宮内庁、人事院、通産、外務、これらの省を除いて、問題になって依願免職でやめた人が、百三十九件やめた中で、暴行等の懲役になった人が四十名、起訴された人が十六人、起訴猶予が七人、不起訴が二人、つまり四割以上が起訴かあるいは有罪になっているのに、依願免職でやめて、退職金も恩給ももらっている。でありますから、今後私お願いしたいのは、依願免職を任命権者である大臣が判を押すときに、問題はどういうふうになっているかということを一つ十分お調べになって、行政罰としても厳重にやってもらいたいし、少くとも休職してから後に刑事処分の結果を待つ、官吏は法律だけのがれればいいのだということじゃ、とうてい綱紀の粛正はできませんから、その点に対しても十分な処置をおとり下さらんことをお願いいたしておきます。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は古い時代の官吏でありましたので、私の当時の懲戒令等は、今の、起訴されますというと当然休職になって、判決がありますまで休職で、依願免官ということはできない建前になっておったのです。そして処罰を受けますというと、もちろん懲戒免官ということになるような制度であったのです。今聞いてみますというと、新しい規定は少し違うそうであります。休職中においても、直属上官の認定で辞表を出せば依願免官の扱いもできるというふうになっているそうです。ただし、刑罰を受けました後において、一定の程度以上の刑罰を受ければ、恩給等の支給は受けない、こういうことになっているそうでありますが、何からいえば、私はもちろん現行の規定がそういうふうに改正されておるのでありますから、古い規定でもっていくわけにはもちろんいきますまいけれども、趣旨からいうと、やはり信賞必罰の意味並びに綱紀粛正ということを考えるというと、その点においては新しい規定ではありますけれども、扱い上は少し考えてみなければいけないと、こういうふうに考えます。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 官吏の背任罪にもう一言触れておきますが、御承知のように、一般の背任は五年以下の懲役、会社の特別背任は七年以下の懲役なんですが、官吏はやはり一般の五年の方が適用される。ところが最近三カ年間の法務当局に報告された国家並びに地方公務員の背任容疑事件は三十七件あったのですが、それが起訴されたのはわずかにその中で五件いずれも地方で中央の官吏で背任罪で起訴されたものは一人もないのです、最近三カ年間。ところが会計検査院は年々二千数百件に及ぶ不正不当事件を指摘してある。国に何百億円という損害をかけておるのに、中央官吏叫の任罪の事例が三年の間に一つもない。たとえば監督不行届で国に一億円損をかけたというようなことでも、これは背任だけでは問題にならぬのです。こういうことではどうも幾ら綱紀粛正を叫ばれても、私は何らの効果は上らぬ、こう思いますので、官吏に対する特別背任罪の規定を設ける必要があると、こう私は考えるのですが、その点が一点と、もう一点は、政界粛正のためにあっせん収賄罪を作るという議論がいろいろありますが、この二点について総理に何か具体的なお考えがあるかどうか、もし総理に別段のお考えがなければ、法務大臣はいかにお考えになっておるか、この二点をお伺いいたしたいと思います。

中村梅吉自由民主党法務大臣

○国務大臣(中村梅吉君) ではとりあえず私からお答えいたします。御指摘の通り公務員の横領背任等の事件につきましては、一般の民間のもののこの種の事件よりは加重しで取扱うという考え方については私ども全く同感であります。従いまして現在法務省の特別顧問室を中心に刑法の改正を検討いたしておりますが、この検討の中にもこういうことは実は織り込んでおる次第で、現にございます刑法改正仮案の百九十五条には、一般の横領あるいは背任は五年以下でありますが、公務員の場合には十年以下にしようという規定が仮案の中にございます。こういうような次第でありますので、直ちに特別の規定を設けるかどうかについては、実は日本の実体法はかなりこの刑罰に幅を持たしてありますから、検察あるいは裁判をする立場の者が御趣旨のような精神でやれば、民間の者に対するよりはその刑罰の範囲内において相当加重した処置も運用できると思いますので、とにかくそういう方向を研究してあるということを明らかにするだけでも、実際にその職に当る人たちがその気持で現行法を運用するということになっていこうかと思うのであります。従いまして今刑法の改正を具体的に検討中でございますので、その過程においてこれだけを取り上げて特別立法するということについては、実はまだそこまで考えませんが、近く行わんとする刑法の改正に当りましては、ぜひ御趣旨の点を私どもとしては取り上げたいとかように考えておる次第でございます。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 あっせん収賄……。

中村梅吉自由民主党法務大臣

○国務大臣(中村梅吉君) あっせん収賄の問題は、実は刑法の改正研究の中にもちろんこめて目下慎重に研究をいたしておるような次第であります。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 総理に簡単に。行政改革について何か積極的にお考えであるかどうか伺っておきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 行政改革の問題につきましては、鳩山内閣におきまして、この改革についての特別な委員会を置きまして、一応中間的な成案を得て、それが国会に提案されて審議未了になったのでありまして、その後継続審議になっておりまして、今衆議院で継続審議中でございます。この問題は行政機構をできるだけ簡素化して能率を上げ、同時に綱紀粛正というようなことにも役立たしむる意味から行政機構の改革ということはいろいろな点から議論されるところであります。きわめて今日行政機構が複雑になっておりまして、事務能率の上から申しましても、私どもから考えてみて綱紀粛正上の問題等を考えますというと、従来の私どもが役人をしておったときと違って、二十代の人が何千万とかあるいは億とかいうような金を横領するとか、いろいろなことに使うとかいうような事態が起っているというところにも、私はよほど考えなければならぬ問題がある。また補助金等のなにも非常に複雑になっておるということから、そういう弊害が起っておるということを考えますと、やはり行政機構を簡素化し、かつ能率的ならしめ、責任の所在を明確ならしめるというふうな見地から、やはりこれは十分検討して適切な改革をやっていくということにしたい、かように考えております。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 一点だけ簡単に。米の統制撤廃の問題でありますが、昭和二十六年に、吉田内閣の根本農相のときに、すでに米の統制撤廃の閣議決定がされましたが、そのときから今年の米の需給状態をみれば、非常に好転しておって、すでに昨年の十月末の繰り越し高は外米を含めて九百二十一万石になっております。でありますから、需給の問題からいっても、当然米の統制撤廃問題は取り上げらるべき時期に私はきておると思いますが、そのほかに私が特にこの問題を強調したいのは、総理府の調べでもわかっておりますように、都市の各家庭ではやみ米の依存高が約四〇・七%という数字が出ております。政府の方の御発表でも、やみに流れる米が八百万石から一千万石だというふうな、日本国中全部やみをやっているというのが現在の実情であり、またやみをやらなければ食べられないという実情でもあります。そうして生産地のやみ米の値段というものは、これもやはり農林省の発表では百八円、ちょうど基本配給の値段と同じであり、消費地のやみ価格の平均が百十八円七十銭で、希望配給の値と同じなんです。そこで私は申し上げたいのは、国民の大部分が法律に反した生活をしておるのを黙って見ておるようじゃ、法治国家の実体はない。今習慣になっておるから何とも思いませんが、法律に反するという生活が習慣になっているということは、私はこれほどおそろしい実情はないと思うのです。もう国民全体が法律を守らぬということになれば、これは革命の第一歩と申さなければならぬ。幸いに今は、今申し上げました通り、九百万石以上の繰り越し米があるし、農薬の進歩で天候ばかりでなく豊作は相当これは続くものと見なければなりませんので、これはどうしても私はその意味から、順法精神の意味から、米の統制撤廃というものは、一刻も早く断行しなければならぬ。これを断行しなければ、法律の面で国を危うきに導く、こういうことを非常に確信をいたしまして、どうしてもこれは法律の上から撤廃してもらいたいというのが私の考えでありますが、どうか総理は法律の順法精神の建前から、これを一体どういうふうにお考えになっているか。また法務大臣は司法行政の最高責任者として、この事態をどうお考えになるか。また、道義の点から教育行政の最高責任者である文部大臣はこれをどうお考えになるか。これを私は深刻に憂いまするがゆえに、この点に対する総理並びに関係閣僚の率直な御答弁を伺いまして、私は質問を終りたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 米の統制撤廃の問題は相当古くから、今御指摘になりましたように相当前から、そういう議論がございました。しかし最近は当時そのことを考えられたときとはまた事情も相当変ってきております。今御指摘のありましたように、いわゆるやみ米としての値段もまあ一時のような非常な高い値段ではなくなっておりますし、米の生産事情も変ってきております。ただ日本のこの大正年間から今日までのなにを見まするというと、米の問題というものは、いろいろな変革を経てきておることは御承知の通りであります。特に一面においては、国民の主要食糧であるということと、また一面においては農村の、農民の最も大きな生産物である、農村経済上きわめて重大なものであるということで、一方においては農村の生産者価格というものが非常に変動するということは、生産意欲にも関係を持つ問題である、これがある程度安定をしておって、しかも再生産の意欲が増すような状況であることが必要である。また国民多数の消費者から言えば、消費者米価というものが統制であって一般の生活の基準が維持される、こういう必要がある。従って他の物資のように全然自由経済にまかして需要供給の関係からその価格が変動するにまかすという性質には、ちょっと日本の特殊事情から言ってできないのじゃないか。それにまた日本国民が、日本人が日本米というものに対する一種の愛着、執着というものは特別である、日本米というものの国際性というものがほとんどない、現に台湾等に作られておるあの蓬莱米につきましても、これはほかの方へは出ていかない、日本が買わないというと非常に困るというような一例もありますように、日本米というものが特殊の性質を持っておるというようなことを考えまして、私は実は今ただちにこの米の統制を撤廃するという考えは持っておらないのでありまして、ただしかし、今御指摘のありましたような順法精神等の点も十分考えなきゃならぬ、また米穀管理制度が果して合理的であるかどうかということも、ずいぶんいろいろな点から私は検討しなければならない、政府は政府部内にこういう意味において特別の調査機関を設けて、米価の問題初め、需給の問題、その他米穀管理制度の合理化というような全部にわたっての検討、審議をする委員会を作りまして、今後審議をしていきたいとかように思っております。従いまして今おあげになりましたような順法精神を国民をして失わしめるような事態というものは、これはなくしなくちゃならぬけれども、同時に管理制度というものを合理化することよってどこまでそういうことができるかということを検討いたしまして、適切な結論を得たい、今直ちに先ほど来申し上げましたような理由で米穀管理制度をやめちゃって、統制というものを撤廃して自由経済にするということにつきましては、私はよほど考えなくちゃならぬというふうに思っております。

中村梅吉自由民主党法務大臣

○国務大臣(中村梅吉君) 御指摘の通り順法精神を徹底させるということは法治国家としての秩序保持上最も大事なことでございます。米の問題につきましては、目下法務当局といたしましては、大口あるいは常習的な悪質の者をもっぱら検挙することに努めておるのでございますが、ただいま総理大臣からお答えいたされましたように、米の問題はなるほど需給関係から申しますと、撤廃してもいいような状況にあると思うのですが、農村の安定、生産者米価というものとの関係等がございして、なかなかその段階と言いますか、そういう結論を政府としては得がたいようでございます。まあこれにつきましては、もちろん順法精神との関係もございまして、農林当局としては御承知の通りいろいろ苦心をしておるようでありまして、たとえば予約買付、あるいはまた臨時匿名売り渡し制度というようなものもやりまして、そして予約の供出が完了した者については、農協あるいは指定商に対して匿名売り渡しの方法等も道を開き、あるいはその他の処置を講じられましていろいろ苦心をされておるようでありますが、私どもといたしましては、順法精神の上から、できるだけ政府全体として米の運用については順法精神との行き違いのだんだんとなくなるような方向に努力をいたしまして、御指摘のような方向に、統制の撤廃はできませんにいたしましても、そういう食い違いの起らないような方向に今後とも全力を尽して参りたいと、かように存じております。

灘尾弘吉自由民主党文部大臣

○国務大臣(灘尾弘吉君) 一般的に申しまして、順法精神を高揚しなければならぬということは、これは申すまでもないことでございます。学校教育、社会教育の面を通じまして常に努めて参っておるところであります。ただ問題によりますというと、あるいは表現はまずいかもしれませんけれども、法律について行きたくてもなかなかついていけないというような場合もなきにしもあらずと考えるのであります。米の問題につきましてはその要素が相当あるのではないかというふうに私は考えております。従いまして、一方におきましては順法精神の高揚に極力努力することは当然でございますけれども、制度の内容ないし行政上の運用の問題につきましては、やはり国民大多数がついていけるようにしなければならぬと、かように考えるのであります。総理大臣並びに法務大臣からお話しがございましたが、私といたしましては教育の面を通じまして順法精神の高揚に努めますると同時に、制度につきましても、これが改善、合理化を期待しておる次第でございます。

苫米地義三自由民主党

○委員長(苫米地義三君) これにて休憩いたします。午後は正一時から再開いたします。    午後、零時八分休憩    —————・—————    午後一時十二分開会

苫米地義三自由民主党

○委員長(苫米地義三君) ただいまから委員会を再会いたします。午前に引き続き、総括質問を続行いたします。(「委員長少いよ」「こんな状況なら退席しますよ」と呼ぶ者あり)……ちょっと待ちます。……それでは曾祢君。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 私は岸総理大臣並びに関係閣僚に対しまして、主として外交問題及び外交と防衛との関連について御質問いたしたいと存じます。  最初に、総理大臣に伺いたいのは、石橋内閣から岸内閣に変ったのでございまするが、重要なる新内閣の外交方針というものについては、実はわれわれは承わっておらないのでございます。総理の所信の披瀝がありましたけれども、外交問題についても、果して石橋内閣の外交方針をそのまま踏襲されるのか。あるいは新たな構想を持っておられるのか、この点を伺わないと、実は私どもが新内閣の発足に当っての外交方針に関する質問ができない。かような関係になるので、まず、石橋内閣の際に外務大臣として御発表になりました外交方針あのままを踏襲されるのか、それとも別のお考えがあるかについて、一応あらためて伺っておきたいと存じます。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) お答えいたします。  石橋内閣時代に、私が外務大臣として外交方針を国会において述べました。それと同じ方針でいくつもりであります。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 同じ方針を踏襲されると伺ったのであります。そこで、御質問申し上げたいのでありまするが、実は先般津外相に対しまして、外務委員会で私から御質問申し上げました点にも触れると思います。しかし、事総理兼外務大臣となられた岸さんに対しまして、重要点については、あえて重複いたしましても、基本的な問題については伺っておく必要があると思うので、総理としては、外務大臣のときに聞いたじゃないかというお考えもあるかもしれませんが、あらためて明確なる御御答弁を願いたいと存じます。  そこで、私は主として岸外務大臣としての施政方針といいますか、外交方針に示された外交の基本について伺いたいのであります。先般も外務委員会で申し上げましたように、この岸外相として示された外交方針が岸内閣の方針であるとするならば、この基本的な問題について、われわれといたしましてもなるほどごもっともだというような点も確かにあるように存じます。たとえば政治と外交が一体でなければならない。そうしてそういう意味において内外に対して率直な所信を訴える、こういうことを言っておられます。また、国連を尊重して、民主主義国家と協調を保っていきたい、あるいはアジア隣邦諸国との友好協力関係を強化していきたい、これらのことを言っておられるのであります。私はこれらの点については、多くの国民といえども、そのことそれ自体に何らの異存がない当然のところとは存じます。  ただ、この際念のために伺いたいのは、岸総理大臣は、ただいま外相を兼摂されておるのであります。これはあるいは内政上の草創の際であるからというお考えに出るのか、それともいわゆる岸さんが外務大臣のときから強く言っておられた外交と政治との一体化、これをやるために、総理が外相を兼摂していくのがいいのだ、こういう基本的な考えの現われであるのか、この点については、別の表現をもって衆議院等においても質問があったやに存じておりますし、総理は外相兼摂は、臨時的なものであるというようにお答えになったかと思うのでありますが、これは非常に重要な総理大臣の外交基本方針の一環といたしまして明確な御答弁を願いたいと存じます。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 首相と外務大臣を兼任いたしております今の私の立場は、これは私は臨時的なものであって、原則としては専任の外務大臣を置くのがいいと考えております。ただ、いろいろな事情で、しばらく私が兼任をしておることが適当であるという意味において臨時的に考えております。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 それはそれとして承わっておきまするが、外務大臣を設けられる場合においても、総理大臣としては政治と外交の一元化という点については、その信念は変らずにあくまで総理大臣の完全なる掌握のもとに、かつて鳩山内閣にみられたような、再びあの外交の二元化というようなことがない、そういうことはしないという御信念があるかどうかを、あらためて御披瀝願いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) いわゆる二元外交とか、あるいは外交が二途に出ているというような印象をかつて与えたことは、私はわが国の政治上、外交上非常に好ましくない事態であると思います。従いまして、専任外相をおきました後におきましても、私はその点に関しては、内閣総理大臣の内閣統率の責任上、そういうことは絶対ないようにしていく意向であります。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 次に、ただいま私から申し上げたといいますか、私が言及いたしました岸外交の方針の中で、私は非常に重要な点が欠けておるんではないかという気がしてならないのであります。外交のいわゆる各論的部分でなく、総論的な部分において、一つ大きな点に欠けてやしないかという感じがするのであります。それはほかでもございませんが、この施政方針の中には、わが国の独立の完成という項目が抜けておったように考えるのであります。これは事新しくあらためて申し上げるまでもなく、鳩山内閣の外交方針の中には、独立の完成ということを大きな一つの柱としてうたっておられたと思うのであります。ところが、今回の岸内閣あるいは石橋内閣の外相の外交方針の中に、独立の完成という項目が抜けておる。これは一体どういう理由であるか、この点について何ゆえに独立の完成ということが外交の一つの柱としてあなたの施政方針の中から抜けておるかについての御所見を伺いたいと存じます。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 独立の完成ということは、もちろん当然政治上、外交上考えていかなきゃならぬ問題であることは言うを待ちません。私は石橋内閣当時、臨時代理として述べました施政方針のうちにも、あるいは外交方針を外務大臣として述べた場合におきましても、両方を通じて独立の完成ということは、基本観念として私の頭にははっきりあるのであります。あるいは言葉の上において、それを強調しておらないという御批判はあるかもしれませんが、私はこのことは最も日本にとりまして必要なことである、かように考えております。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 私は、ただいまの総理大臣のお話を承わりまして、まことに意を強うするものであります。これは、何人といえども日本の独立を完成していく、不十分、不完全な独立から完全なる独立に持っていくということは、これは国民の総意であるとともに、また外交の基本でなければならないと思うのでございまするが、その点について総理のお考えはその通りであると、これを承わったのは、非常に意を強うするものであります。ただ、それだけ重要な問題が、なぜ外交方針の一項に出てこなかったか。これは決して言葉じりをとらえるような問題ではございませんし、気持ではございません。ただ、岸さんは、言うまでもなく鳩山内閣の幹事長として大黒柱であったわけであります。自民党の幹事長であられて、従って自民党の政策の中にも、確かに独立の完成ということはうたわれておった。なぜ、鳩山内閣から石橋内閣にかわったとたんに、独立の完成ということに、何となしにウエイトが薄らいだということは、どういう原因であろうか。これは私は一つの想像をたくましゅうするならば、鳩山内閣当時に、日ソの国交調整ができた。さらに日本の国連加盟ができた。これは確かに画期的なことでございます。しかし、考えますると、日本が国連に加盟したから、それじゃ、その独立の内容が完全になったものとは、当然な結論としては出てこない。それから日ソの国交が回復したことは、これは人の見るところによっては違うかもしれませんが、私は独立の完成というよりも、日本の平和安全のために、さらには、外交の自立性をより大きく持つために、非常に重要なことであると思うけれども、日本の形式上の独立は、これはサンフランシスコ平和条約でできている。従ってもし、石橋内閣なり岸内閣が、日ソ国交調整ができた、国連の加盟ができたんだから、心には反対ではないのだが、この外交の大きな柱として、独立の完成というものは要らなくなったのだという、少くともウエイトが少くなったという考えを持っておられるのではないか、この点をわれわれは心配する。すなわち日本の独立の完成ということは、もとよりいろいろな要素があるでしょうけれども、これは何人も知っておりますように、サンフランシスコ体制と申しまするか、主として日米の関係ということにある。これはもう言うまでもないことである。従ってこの問題は、日米関係の調整ということは、総理がはっきり言っておられる。ただ、日米関係の調整を行う観点が、単に率直に語るとか、あるいは協力するのだという意味でなくて、やはりその基本は、日米関係の調整は、日本の完全な独立、その上に立ってアメリカと協調してゆく、こういうような基本的な考えが、どうも私たちと違うのじゃないか。そこにわれわれが、率直に言うならば、鳩山内閣の外交よりも岸外交の後退した線があるのじゃないかということを心配する。ただ単にこれは形式的に外交方針の中に、独立の完成という項目がなかったことをあげつらいをするのではなくて、基本的な外交の目標は、やはり岸内閣になっても、日本の独立の完成にある。そのことはそういう意味における対米関係の調整ということが、非常にウエイトがあるということを、われわれは信ずるがゆえに、こういう点を申し上げているのです。まあ、非常に総括的な問題ですが、基本的な問題ですから、御答弁を願いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は独立の完成ということは、内にあっては自主経済といいますか、経済自立をいいますか、要するに経済力の基盤を作り上げる、そうして国民生活を安定するという実質を持つことである。外におきましては、対外的には、いずれの国に対しましても、自主的な立場から、それぞれの関係を律してゆくということだろうと思うのです。特に御指摘のように、アメリカの関係におきまして、従来サンフランシスコ条約、あるいはこれに関連してのいろいろな諸条約等の関係から、日本がアメリカにあるいは従属しているというふうな、極端な言葉で批判をしている人もありますし、何かそこの間に特殊の関係があって、日本の完全独立がないというような批評なり、考え方もあると思います。私はその意味において、日米関係の調整ということをあげておりますが、具体的に申しますというと、特に現在あるところの状態をそのままに持続する意味では、もちろんないのでありまして、自主的立場から日米関係について従来あった関係というものを是正し、また、これを進めていかなきゃならない部分についての調整を、私は具体的に考えていきたいということを考えておるのでありまして、その意味において、むしろ独立の完成ということをより、一歩実質的に施政方針なり、あるいは外交方針で述べておるつもりであります。根底には独立の完成ということを私ははっきり持っている。決して外交においても鳩山内閣時代よりも後退して、アメリカ依存の関係を深めていこうというふうな考え方を持っておるものではないのであります。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 原則論としては、ただいまの御答弁で、われわれと見解が基本的に相違ないように思います。そこで、具体的に、しからば対米関係の問題でございまするが、総理の方針の中に、先ほども私みずから申し上げましたように、民主主義自由国家群と協調していきたい、これは私ども一つも反対ではございません。ただ、その総論から、今度は対米関係に移ると、あなたの方針は、アメリカとの協力をわが国外交の基調とする、こういうことを言っておられる。つまり民主主義自由国家群というものが、これがいつの間にかアメリカという国にすりかえられたと言うと、言葉は悪いかもしれませんが、集約されたといいまするか、自由国家群との協調、それ以上に進んでアメリカとの協力をわが国外交の基調とする。私はアメリカとの外交が非常な重点であるということを否定するものでもありませんし、また、先ほどもちょっと申し上げましたように、完全なる独立、その関係からの調整、そういうことができるならば、われわれは平等な立場で協力することを歓迎するものでございまするけれども、頭からアメリカとの協力を、わが国外交の基調とする、こういうふうに言っておられる。そしてその理由として「けだし、日米両国間には、政治、経済、防衛等の各面において、利害と目標とが大きく一致しているからであります。」この最後のセンテンス、説明については、あとでも議論を展開していきたいのでありますが、果してこういうことが言えますか。ことに、防衛問題については果して大きく一致しているのか、むしろ食い違いが起りつつあるのが、現状ではないかというふうに私は考えるのでございますが、しかし、いずれにいたしましても、総理大臣が言われるように、内に、内に少くとも独立完成ということの熱意を秘められて、そして永続的な平和関係を打ち立てるために、日米関係の調整をはかる、これがあなたの方針であるわけであります。  そこで、この対米関係の調整の具体的な問題になるわけでありまするが、昨日同僚岡田委員から御質問がございましたので重複いたしまするけれども、あなたは臨時総理大臣代理の時代には、むしろ外務大臣として、議会が終ったならば東南アジアの方に行きたい、こういうふうな気持を持っておられた。総理大臣になられてから、アメリカを議会が終ったならば訪問するということが、大体既定的な方針のように承わっておるのであります。そこで、首相が渡米されまして、一体どういう観点からアメリカの指導者とひざ詰めのほんとうの隔意のない懇談をされるのか、これはあまり事務的にこの項目、この項目というふうに、たとえば防衛分担金の問題だとか、あるいはガリオア、イロアの問題だとか、そういうことを私は項目別にあげつらいしておるのではございません。しかし、いやしくもアメリカに行かれる以上は、先ほどの原則論にも触れまするけれども、アメリカの当局の人から言えば、これは少くとも当局は、今外務大臣が言われたような、日米間には政治、経済、防衛等の各般において利害が大きく一致しておるのだ、従って日本がもう完全にもちろん名実ともに独立国であって、そうしてただ日本の防衛力さえ増強していけば、経済はよくなったし、それで日米関係はうまくゆくのではないかというような考えを持っておると私は思う。この点については、あとでも申し上げたいと思っておりまするけれども、アメリカの識者の中に反省が起っておる。しかし少くとも当局者はそういう考え、そこで日米関係の調整といっても、いわゆる何といいますか、次元が違うといいますか、日本から見れば、それは日本のむしろ完全独立をどうするかという問題、つまり安全保障条約、行政協定、あるいは防衛関係ということ、これが非常に重要な問題である。ところが、アメリカの方から見れば、いわゆるただ防衛力を増強すればいいのじゃないか。日本の完全独立なんかということは今さら問題じゃない。日米安全保障条約はもう当然にいいことなんだ。最近総理が向うに参られまして、多分安全保障条約の改訂等の問題に触れるのではなかろうかという、これは新聞報道がある。また、こをれ打ち返すように、最近……私は実はけさ見たのでありますが、UP電報では、安全保障条約の改訂といったって、それは問題にならない、日本が自衛力を増強してゆけばそれでいいじゃないか、こういうような、考え方にズレが非常にあると思う。このズレをどうして直すか。そういう意味で会談の主要点についての基本的な方向だけは、ぜひお示しを願いたいと思う。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 私はアメリカの当局者なり、あるいは国会の有力なる人々と、渡米した機会には十分率直に成見の交換をしようと思っておりますが、特にアメリカ当局との間におきましては、日米関係の、私が外交方針でも述べておるような関係を再調整するという見地に立ちまして、日米関係、この根底をなすところの国際情勢に対する判断等についても、われわれは率直に話し合って、この国際情勢の判断についての一致したところに基いて、新しい日米関係というものを作り上げていくのにはどうしたらいいか、こういう根本に触れた話をいたしまして、今御指摘になりました防衛問題等も、もちろん重要な題目の一つとなるのでありましょう。私は日米関係、占領下からさらにサンフランシスコ条約、さらにそれに基くところの安保条約や行政協定を作った体制というものが、最近の国際情勢、また今後の国際情勢の見通し等から、私は新たな各般の日米関係の基礎になるところの関係を作り上げていかなければならぬ。これについて根本的な話をしたいというのが、私の最も重要に考えておることであります。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 私は非常に、何といいますか、つぼにはまったといいますか、お答えで、方向としてははっきりして満足です。つまり問題は、何といいましても、安全保障条約、行政協定、このあれができた経緯も、それから条件、これらを考えてみますると、それと国際情勢の推移というものを考えてみて、確かにそこに非常にズレがあるのではないか。これは私は日米の間に、はっきりと腹から話し合いをしていく必要があると思うのであります。最近総理も御承知のように日本の文化人の方々、中野好夫さんとか上原専禄さんとか、また多くの方々が、いろいろ思想的の立場も非常に広い諸君だと、われわれは承知しておるのでございますが、少くとも安全保障条約、行政協定は当時の制定の経緯から考えて、それと国際情勢とのズレとから考えて、さらには、これが与える国内におけるいろいろな問題、砂川の問題等等から考えましても、これは根本的に再検討をする時期が来たのではないかという、署名運動と申しまするか、これを展開されたやに聞いておるのであります。さらに、先ほどちょっと私が申し上げたいと思いましたのは、これまた総理がとくと御承知の、やや事旧聞に属しますけれども、昨年の六月ごろの話でございましたと思いまするが、アメリカの国務省の、かつての最もすぐれた外交政策の立案者であったジョージ・ケナンか去る外交協会——ピッツバーグだったと思いますが、外交協会において講演をいたしまして、世界情勢の変化を論じ、特に当時特に問題であった二月のソ連共産党第二十回大会以来のいわゆるモスクワ雪解け、これに関連してのいわゆる自由世界の外交政策、アメリカの外交政策にどういう変化を与えるかというのが、講演の主題でございましたが、その最後のところであったけれども、事日米関係に言及して、彼は、あの日本の周辺の領土を最終的に解決しない、そうして同時に、日本に無期限に駐兵を求めるような平和条約プラス安保条約を作らなければならなかったことは、非常に遺憾である。当時の状況としてはケナンは、作る必要があった、がしかし遺憾ながら作ったというニュアンスが出ておると思う。それはそれとして日米間の永続的な平和友好関係から考えて、無期限の駐兵というようなことが決してアメリカのためにならない、こういうことを言っておる。そうしてアメリカの今後の日本に対する外交政策というものは、日本という列島が、米ソの間にはさまって、その両大国の争いの種になるような方向に日本を持っていくことが、アメリカの外交政策ではなくて、むしろ逆に、この日本列島が米ソの和解のエリア、地域といいますか、あるいはそのかけ橋というような方向に向いていくのが正しいという彼の意見を述べておる。これはジョージ・ケナンの少くとも、何といいますか、内在的な価値とでも申しますかからいって、きわめて私は注目すべき発言ではないか。もとよりこのケナンの意見は、ケナンは今や御承知のふうにむしろ歴史家であり民間人にすぎません。ケナンの意見がもとより国務省の政策であろうはずもない、しかし、そのケナンの世論に対するウエイトというものは、これは相当なものである。しかもなお当時のアメリカの雑誌等を見れば、このケナンの意見は、決して多数意見ではございません、少数意見であります、すぐれた少数意見だと私は考えております。今日アイゼンハワー政権が、第二回の政権がどう考えていることか私も知りませんが、知らないからこそ、総理が行かれたならば、むしろそういう点についてアメリカにもこういう考え方がある、日本の文化人もこう考えておる、こういうような見地から、はっきりとこの安全保障条約の問題を取り上げて、そうして日米関係にこれが大きな災いをなしておる、このままではいけないのだ、再検討していかなければならぬのだという、この大きな見地から日米会談を持たれるならば、非常に意味があるのではないか、私はかように考えるのであります。従いまして、非常に長く申し上げて恐縮でありますが、この日本の文化人の起しておる安保条約再検討論及びケナンの意見に現われたような、アメリカの一部の少数の意見であっても傾聴に値するこの意見に対して、総理大臣はいかにお考えであるか、伺いたいと存じます。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 日本の文化人のグループにおきまして、安保条約の改訂に関する署名運動といいますか、そういう意見が持ち上っておるということも聞いております。私は文化人がそう言うから、すぐそれを方針として取り上げるという考えはございませんけれども、むしろ、これらの人々によって健全な世論が建設されていくということは、そういう世論に対して、われわれがまた尊重していくということは、外交の根本方針を述べる場合に、私は世論ということを非常に高調しておりますが、そういう意味からいって適当なことであると、かように考えております。また、ケナンの考えというものも、今お話がありましたように、アメリカの一部の意見ではあるけれども、多数の意見ではないけれども、非常にすぐれた意見であるという曾祢君のお考えでありますが、私ども日本が国際連合に加盟して、今後国際連合を中心にして日本の国際的地位を固めていこうという考え方には——東西の対立を緩和していくと、あるいは緊張を緩和しようという考えをやはり持って、世界の平和の増進に努めていかなければならぬと思います。もちろん、日本自身が直ちに米ソの対立の中間に入ってかけ橋の役を果すということが、現実にどれだけの力があるかというようなことを考えまして、直ちにそれが実現されるとも言えませんけれども、方向としては、もちろんわれわれとしては世界の平和を願い、国際連合の一員として国連憲章の精神に従っていくということから申しますというと、この対立緊張の現状というものを緩和の方向にいくよう、あらゆる努力を尽していくべきであるという考えを持っております。  いろいろな点におきまして、国際情勢等も先ほど来申すように変化しておりまして、これについての見方というものもいろいろあると思うのです。しかし、それについて根本的に日米の恒久的な友好関係を作り上げるためには、やはりどうしてもこの国際情勢に関する所見というものを十分に話し合って、その方向についての意見を一致せしめる必要が私はあると思う。それに基いてすべての関係を作り上げていくということを願いたいと、かように思っております。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 まあ以上、主として総論的なところにおいては、非常な意見の相違が現われてきておらないのですが、これから各論に入りますと、どうも意見が合わないような感じがするのですが、まあ、意見の合うことを期待しながら、質問を続けさしていただきます。  そこで、安全保障条約のことについて、もうすでに総理になられてから、あるいはその前からも、しばしば本院並びに衆議院において質疑応答があったのですが、これを要約いたしまして、どうも今の総論のところでは、割合と意見の間隔がないように思われるけれども、安全保障条約をどうするかということになりますると、まあ総理の御意見は、安全保障条約、行政協定の中で、日本の事情に適してないものは、個々の問題を考え、さらに自力防衛の完備の上これの改正を考えたい。あるいは別の言葉で、改正あるいは改廃の方向を考えるけれども、まず環境を作っていく、こういうような点に集約されるのではないかと思うのです。しかし、私が考えるのは、そういう個々の不都合な点を改めていくというのではなくて、この改正のそれ自身が歴史的にも、また、日本の国際情勢からいっても、また日本の独立という観点からいっても、また永続的な日米関係からいっても、体制自身に、個々の問題はこれはもういろいろあるだろうけれども、根本はここなんだ。ただ、軍事基地の問題を一つ々々取り上げても、結局出発点はここにある。だから問題は体制そのものにある、というふうにお考えではないかというふうに、この点をもう一ぺんお考えを願いたいと思うのです。その点について御意見を伺うとともに、続けまして私どもは、そういう意味で、この安全保障条約は非常に不幸な条約であったと思います。これは言うまでもなくサンフランシスコ平和条約を作り、これは少くとも日本が連合国の軍政から一応独立の第一歩を踏み出す条約であったけれども、それと引きかえ的に、まだ平和条約が効力を発生して九十日間、少くとも余裕があった効力を発生して一応独立国になってから結んだという形すらとらなかった。同時に作られた。内容すら国会も知らなかった。与党も知らないで、吉田さんが行ったら、いきなりこれだと言って、サインしたのが安全保障条約だ。しかも、その安全保障条約の重要部分、駐留の条件は、これは全部国会から審議権を奪って、そうしていわゆる行政協定にしてしまった。こういう非常な不幸なる条約であった。だから私が今申し上げましたように、根本的に体制そのものが、当時の非常に異常な状況における産物であった。日本が完全な占領下にあったときの所産である。朝鮮戦争のさなかに作ったものである。こういうような状況からいって、このものそれ自身を直していくという、そこに根本的な欠陥というものがあるのだというふうにお考えではないのか。この二点について御質問申し上げます。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) お話しの通り、この安保条約その他安全保障に関する諸条約の協定等ができました経緯なり、あの当時の状況というものは、今日から考えてみまするというと、ずいぶん違った環境の中にでき上ったものであるということは、言うを待たないのであります。ただ、日本が根本的に申しまして、われわれは祖国の安全、民族の安全を保障して、平和に生活できるような状態を維持していかなければならぬ。政治の本然はそこにあることは言うを待たない。しかし、今日の日本の防衛力の実情やあるいは国際情勢、特に今日までの情勢、また、今日の情勢というものも含めて、直ちに日本が独力で日本の安全保障なり、あるいは国際連合の力に頼って安全保障ができるか。こういうことを考えてみまするというと、私は望ましい状態ではないけれども、やはり日米共同防衛の、この根本の体制というものは、やはりまだ維持しなければならぬ実情に、現情にあると思う。従いましてこの体制自体を変える必要があるじゃないかという曾祢君のお考えでありますけれども、私は日本の安全保障を考えたときにおいて、やはり日米共同防衛の方法によって日本の安全を保障していくという根本の建前は、まだこれを根本的に変えるというわけにはいかない。しかし、いろいろな点において望ましくない点もありますし、いろんな過去の経験にかんがみてみても、情勢に合わぬ点があります。また大きく言って、先ほど申すように、国際情勢等の変化から見まして、適当でないというような点等について、われわれは十分検討していくべき時代である。今直ちにこの体制の根本を変えるという考えには、私はなれないのであります。また、これを変えるということは、日本の安全保障の上から申しまして、国民も決して安心できないと、こう思いますがゆえに、体制そのものを変えるという考え方は、私としては現在持っておりません。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 ただいまの御答弁の中で、日本の防衛上安全をはかる上にどうしても日米共同防衛が必要である、当面必要である、こういうお話しでありますが、この点については、あとでさらに質問を展開したいと思いますが、しかし、理屈から言っては、少くともかりに共同防衛が絶対に必要であるという観点に立っても、果して安全保障条約というああいうような不平等な形がいいのか、これは私は議論は二つに分けて考えなければいかぬと思います。そこで、条約論の方からだけ進めていくならば、少くとも安全保障条約の最も気になる点は、これはもう総理も御承知のように、第四条に一定の条件が整ったならば、つまり国際連合による安全の措置、あるいは日本の独力による安全の措置、いろいろありましょうけれども、そういったような安全の措置がとられて、日本付近の平和と安全が十分であるということを両国が認めたときに、この条約が終了するというような規定になっている。これは理屈はいろいろありましょうが、条件つきではあるけれども、期限つきではないわけです。これは非常に異例な私は条約ではないか。そこで、これはわが党の政審会長の和田博雄君が、衆議院の予算委員会ですでに質問された点だと思いますけれども、特にものを現実的に考えて、少くともこの安全保障条約というものにまず一応期限をつけて、第四条の実質的な変更のようなまず形を作る、こういう一つの過渡的な便法も、これは、終局的にわれわれはもちろん安全保障条約解消論であるけれども、また、総理は少くとも日米共同防衛は暫定的には必要だという議論に立っておるけれども、しかし、少くとも第四条の無期限駐屯という点を直して期限をつける、いろいろ条約の形においては、期限をつけた場合はどういうふうに更新されるとか、協議が整わなければ自動更新とか、いろいろなことがありましょうけれども、とにかく期限をつける、こういうようなお考えがないのか、これが第一点であります。これは形式です、期限をつける……。  第二点は、特に私どもが心配するのは、今度の日米ワシントン会談、つまり総理大臣がアメリカに行かれた会談の結果、安全保障の条約が問題になったときに、かつてあなたもワシントンで交渉に立ち会われたと申しまするか、幹事長としてお立ち会いになったあの重光・ダレス会談が、やはりあれはあれとして一つの鳩山内閣としての安全保障条約改訂の試みであったと思う。しかし、その改訂の試みの方向が私をして言わしめるならば、かえって深みにはまったというような方向に進んでいやしないか。つまり安全保障条約の不平等性というところを掘り下げていったので、それじゃ平等にしてやろう、いわゆる双務的なものにしてやろう、双務的なものにしてやるためには、日本がまず日本本土の防衛力を充実するのが当り前だけれども、さらに進んでいわゆる西太平洋の方面までアメリカと共同防衛するという、そういうところにいったならば、より対等的な形になるから、そういう形ではどうだというような結果ではなかったかと思うのです。少くとも共同コミュニケがそういう方向を出したので、これは海外派兵の約束がある、ないというような議論を起したことは御承知の通り。従って、私の言いたい点は、改訂論をやる場合に、下手をすれば、俗にいう相手のペースに巻き込まれて、われわれからいけば、むしろ邪道であると思われる。今まではやむを得なかったんだ、はだかだったんだからという議論から、日米共同の地域を西太平洋まで広げて、そこまで対等になった、対等だからいいじゃないかという議論にいけば、日本の自衛力の増強というものは、日本本土防衛の消極的な意味から積極的な意味になるということが一つと、第二には、これはあくまで西太平洋の——たとえばこの前もある新聞の特電が言っておりましたように、これは想像記事だと思うけれども、アメリカの方では、まあ安全保障条約改訂論が起れば、むしろ韓国と台湾政府と日本とアメリカとの、そういったような一種の太平洋地域のアメリカを主軸とする相互的な、双務的な軍事同盟方式の方に引っぱっていくとか、そういう考えならいいんだというんです。そういうところにいくようなお考えはないんだろう、ないと思うのであります。どうなのか、この二点を伺いたいと思います。もう一ぺん申し上げるならば、安保条約第四条のあれを改める、とりあえず期限をつける点、お考えにならないのか。第二は、逆に安全保障条約改訂の方向についてアメリカとの平等なという形にとらわれて、広地域における相互軍事同盟的な方式に一ということはいけないとわれわれは考えるが、そういうお考えはないだろうか、この点についての御答弁を願いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 御質問の第一点、すなわち、安保条約の第四条を改めて、ある期限をつける意思はないか、こういうお話でありますが、私は現在のところ、そういう意思は持っておりません。と申しますのは、日本自体における長期防衛計画もまだ実はできておらないところでありますし、そういう状態において、どういう期限をつけるかというような点につきまして、標準もなしにただ期限をつけるということは意味をなさないことでありまして、従って、そういう考えは持っておりません。  御質問の第二の点につきましては、私も御趣旨と同じように、そういうふうに地域的に広げた防衛、双務的な立場においてもそういうふうな協定や、条約を結ぶというふうな考えは持っておりません。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 次に、私は、安全保障条約下における防衛問題について根本的な点をお伺いしたいと思うのです。安全保障条約が、現内閣のもとにおいてまだ続くという前提の上に立って考えましたときに、先般来の質疑応答の際に、総理は、日米共同防衛の建前を基礎としながら、防衛は量から質へ転換していく、あるいは日本の自力防衛の完備の上に安保条約の改正を考えていきたい、あるいはまた、アメリカの原子力部隊の進駐に対しては、そういう申し出があっても承諾を与える意思はない、こういうようなことを言っておられるのでありますが、私は大体この岸内閣の長期防衛計画の構想いかんということを伺いたいのでありまするけれども、とにもかくにも、より重要な点は自力防衛ということを言っておられるのですが、その自力防衛というものはどういう意味なのか、つまり一国防衛の方式をあくまでとっていかれるのか、それとも何らかのやはり集団安全保障の形式をとった防衛論なのか、この点は基本的な問題でありまするから総理から伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 私が申し上げるまでもなく、御承知の通り、今日の国際情勢から見まして、一国が一国の力だけで完全に自国を防衛し得るものは、私は、考えられるのはアメリカとソ連の二国を除いては、どの国もそういう状態にはないと思います。従いまして、私が自国を自力で防衛をするということを申しておるのは、決してわれわれの力だけで日本を完全に安全保障するような防衛力を作ろうというような考えでないことは論を待たないのであります。やはり集団的な力によって安全保障が確保されなければならない、安全が保障されなければならない、かように考えておりまして、私は、それを国際連合のこの集団的な力によって安全保障されることを一番望んでおるのであります。ただ先ほども申し上げておるように、今は日米共同防衛の立場において日本の安全保障をやっておるのでありますが、少くとも日本の力で一応の祖国の安全保障ということが可能、すなわち、アメリカと共同しての祖国の防衛ということはなくしてもいけるという状態まで、日本は日本の自力防衛をして、そうしてさらに、集団的には、国際連合の集団安全保障の力によって究極の日本の安全保障が確保されるという状況に持っていきたいというのが念願であります。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 その基本的な考え方を伺って安心したのですが、自力防衛、自力防衛と言われると、ほんとうに一国だけで防衛をする、それじゃ外交も要らぬ、国際連合も要らないということになりはせぬかと思って実は伺ったのでありますが、その基本構想はわかるようでありますが、しかし、それにもかかわらず、今、総理が言われた、それじゃアメリカの助けなくしていきたい、アメリカの助けがなくしてやれる限度の防衛というものはどういう構想であるのか、その点について防衛庁長官から構想を、いわゆる自力防衛の構想ですね、限界——アメリカとの関係がなくしてこれなら守っていけるというのは、どういう戦略構想であるかについて伺いたい。

小滝彬自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(小滝彬君) 先ほど総理が申されましたように、集団安全保障と申しますか、現在においては日米間の同共防衛ということが最終的にはくるわけです。一時的には最小限度の防衛ということを私どもは考えておるわけであります。これだけでは曾祢君は満足されないでありましょうから、もう少し敷衍して申しまするならば、陸については、かりに上陸する部隊があるというような際において、一応ささえ得る。また、海上について申しますならば、これは商船の護衛というものは、どこまでの距離を日本が受け持つかということによって違います。しかし、とにかく、日本のように、外国からの原料の供給に依存しなければならぬ国として船体の防衛というものは必要だ。それと、もう一つは、掃海の業務というものはやらなければならぬ。しかし、この護衛ないし掃海というものは、なかなか日本だけでは十分にできませんけれども、少くとも最小限度の一部は、日本の自力で何か事ある際にも今までにおいてもやっておりましたが、それと、海上について申しますならば、やはり港湾とかあるいは海峡というものに対する防衛というものは必要だろう。それと、もう一つは、今度は空について申し上げますならば、日本がもちろん自力で制空権を持つというようなことはできないけれども、少くとも日本としては、レーダー施設のようなものは日本で管理するということにして、そうして一時的に空に対する防衛というものを……この限度についてはもちろん日本の経済力あるいは国民所得も考えなければならないし、国民感情というものももちろん計算しておかなければならないのですが、そうしたきわめて限度せられたる限度においては、少くとも自主的に日本で防衛力を持っておらなければならぬ、こういう考え方で進んでおるのでございます。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 そこで伺いますが、今お言葉で言われると、いかにも自力防衛についての、要するに日本に対する直接的な武力攻撃があった場合に、空も海も——海の場合にはある程度のこの護送、食糧その他の輸送等にも考えておられるようですが、それから陸、これについてある程度、一時的にもこの直接的に武力攻撃を押え、そのあとで少くとも国際連合の応援とか何とかいうことを待ち得る程度の自力の軍備ということをお考えだろうけれども、また、そういう場合には、アメリカの応援は今の形では要らないという考え、そこでそういう場合に、一体日本の最初の防衛というような問題を考えても、果して米ソの最近における戦略構想の革命的な変化、または武器、すなわち原水爆の核兵器の発達と、これを運ぶところの航空機、誘導弾その他の発達から見て、一体最初の攻撃というものは今お考えになっているような形で、通常の陸あるいは海あるいは空から来るこの攻撃とは様相が非常に変っていくのではないか。日本地域のことはよくわからないけれども、世界的に米ソは、いわゆるボタンを押す戦争というような構想、しかも核兵器を運ぶ誘導弾の時代、しかも実際はもはや大陸誘導弾の競争というような時代に入っておるというこの観点から見て、一体そういう戦略的の変化というものが日本の安全保障に非常な大きな変化を与えておらないのかどうか。今、防衛長官が述べられたような考え方とはまるきり次元を異にしたようなこの戦略構想というものが生まれておる。それがまた、日本の同盟国であるアメリカの構想であり、これと鋭く対決するところのソ連の構想であるとするならば、ただいまの自衛方式というものは根本的に根底がくずれていくのではないかというふうに考えるのですが、この点について、総理並びに防衛庁長官から伺いたいのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) もちろん米ソの戦略なりあるいは兵器の発達というものは非常な高度のものであることはお説の通りでございます。私はしかし、米ソがそういう兵器をほんとうに用いて、われわれが予想もしていないような戦争が起るということを考えますというと、これはおそらく全世界をあげてのほとんど最後的な戦争ともいうべき状態になるのじゃないかと思いますが、しかし、それはもちろんそれに対抗するような日本自体に自衛力なり、防衛力を持つということは、これは不可能のことであり、また、われわれもそういうことを望んでおるわけではないのであります。しかし、今日の国際情勢を考えますというと、そういう日米が必ず戦うということを、そういう最高度の何でやる戦略にいつも巻き込まれるという前提のもとに祖国の安全保障を考えるというのは、私は非常に一面的じゃないかと思います。従いまして、先ほど防衛庁長官の申したように、やはり日本としては、一応のこの安全保障を自力でやるということは、言うまでもなく、日本に対して不正な緊迫した侵略があった場合において、一応これをわれわれの力でもって防衛していくという意味における防衛を自力で完成しようというのが一応の目標である、かように考えます。    〔委員長退席、理事左藤義詮君着席〕

小滝彬自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(小滝彬君) 大綱はもうすでに総理が申された通りでございます。われわれはもちろんそういうグローバル・ウオーというのがすべての場合でなくして、かりにそういうことがありましても、主人公がどこであるかということによっても変りますし、局地的な紛争というものはこれまでの情勢から見ましてもあり得ることでありますので、それに対処する措置を考えておるわけであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 私、今答弁した中に、日米が戦えばと言いましたのは、米ソの意味でございますから。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 そこで伺いたいのでありまするけれども、総理は先般来本国会におきまして、まあちょうど新聞種にもなっておりましたアメリカの原子力部隊の日本に駐留の問題については、いろいろないきさつはございましたけれども、最終的には、そういう相談は今ないけれども、あった場合にはこれを断わる、こういうふうに言われたのであります。これはわれわれとして当然のことであるけれども、その態度をわれわれとしては大いにそれ々多とするものでございます。ただ私が非常に心配するところは、一方においては、ただいまの日本の自力防衛論もきわめて小規模な、全くグローバルでない局地侵略ということに際する自衛だということを言っておられるのですが、そういう局地侵略と世界戦争との分け方ができなくなったのが原子力兵器時代じゃないかと私は考えている。  まあそれはそれといたしまして、この日米共同防衛という建前をとっておられる。従って、この自衛力がそこまで伸びて、アメリカのいわゆる共同防衛が要らなくなったということは、もうその時代の話は一ぺんやめて、現状に振りかえって考えてみる。そうすると、共同防衛は必要だ。従って、アメリカに基地を貸して、しかもアメリカの戦略については、これはやはりアメリカの本土を防衛するためで、これが基本であるがら、日本の基地に対しても、あるいは日本の基地ということを離れても、世界的に、アメリカの第六艦隊本第七艦隊も含めて、アメリカは戦略構想として原子力兵器に変えている。従って私が心配することは、アメリカとの共同防衛に立つ限り、アメリカが日本を守るためにどうしても戦略構想が変ってきたのだから、原子部隊を使う、こう言ってきたときに、総理の正しい国民感情にのっとって、かえって危険だから御免だということに、ここに一つの矛盾が出るのではないか。このことは単なる抽象論で申し上げているのではない。少くとも西ヨーロッパのNATO関係諸国は、イギリスはもちろん、イギリスのごときはみずから進んでもう原爆、水爆の実験までやろうというのですから、誘導弾も自分でやりたい、フランス、西ドイツ、イタリアもアメリカの原子砲を許容し、むしろ西ドイツの再軍備の過程を見るならば、自分の部隊も、これはNATOに入った以上は、西ドイツ部隊も原子力兵器を持たしてくれ、こういう方向に切りかえようという——してみると、同じアメリカとの共同防衛の建前に立たないと安全が保てないからという日本のこの保守党の立場からいって、一体この原子兵器の持ち込み、あるいは原子部隊の駐留というものをはっきり断わり切る、ここに国内感情からみればまさにそうだ、しかし、アメリカとの話し合いにおいてそれが突っぱり切れるか切れないかということを、これは国民が心配するのは無理もない。総理の言明に対して暗い影をかけるようにおとり下さっては恐縮でありますが、これはやはり戦略構想が、外国との関係からいって、この点については国民はやはり不安な感じを持っている。西ドイツその他の、同じアメリカとの共同防衛をとっている立場からいうと、原子部隊OKという立場をお考えになって、果してアメリカとの関係において、原子部隊なり原子兵器をはっきり断わるという確固たる信念と自信をお持ちであるかどうか伺いたいのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は、これは政治にいたしましても、外交にいたしましても、国民の世論あるいは国民の一致した気持というものは、これはあくまでも政治、外交の根底をなすものでありまして、国民感情なり国民の意欲というものが、この原爆や水爆に対しての考え方は、これは世界各国のどこの国民よりも違った私は一つの感情を持っていると思う。これは話が多少横道になりますが、クリスマスのあの実験、その他ソ連に対しても私どもこれを反省を求めております。あらゆる機会にこれを使用することをさせないようにするという、この国民の気持は、まあ日本が再びそういうものの洗礼を受けるような事態を生ぜしめないということは、われわれの強い一つの念願であり、信念でありますから、それを代表しての私の過日来の答弁は、私はそれをくんでお答えをしておるのであります。従いまして、かねてお答え申し上げているように、そういうものの相談を受けるならば、私は断固としてお断わりするという信念においては終始変らざるものがあります。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 お言葉を返すようで恐縮でありまするけれども、これをもしアメリカ側の立場に立っていうならば、これは西ドイツでもやっておられます。日本の保守党の総理大臣は勇気がないから、世論をはばかってやらないのではないか、これは原爆戦争から守ってやるために、いわゆる戦争を制御するために必要なんだから、自分としては絶対必要だ、こういう論法を繰り返してくるにきまってるわけです。それに対して、あくまで日本の国民の立場から、そういうものはお断わりするということで、果して総理としてはワシントン会談その他の、ほんとうに指導者と指導者の腹をつき合した話の際に、それを貫徹される自信をお持ちであるかどうか、この点を伺いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) これは、私としては今申し上げましたように、十分一つ覚悟をきめまして、その問題については話し合いをするつもりであります。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 それでは私はその点は申し上げませんけれども、しかし総理大臣は、事沖縄の問題になるとはっきりした答弁をされておらない。沖縄の場合には、相談があったら断わる、しかし施政権が向うにあるのであるから相談がないかもしれない、そういうときにはしょうがないではないか、こういうようなお答えであったと思うのですが、沖縄の場合についても、相談があったからというんじゃなくて、もしそれが国民感情——それは日本の同胞であることはきまっておるんですから、国民感情からいうならば、沖縄にも置いてくれるな、こういうことをはっきり断言されるお覚悟であるかどうか、この点を伺いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は気持としては沖縄についても同様な気持を持っておりますけれども、しかし同時に、沖縄が条約上日本の他の領土なり、本来の領土なり、本来の領土との関係が違っておることは、私ここで御説明申し上げるまでもなく御承知の通りであります。従いまして今日といえども、沖縄における兵力のいろんな移動等については、われわれは相談を受けておりません。内容もわかりません。従いまして、これは遺憾ながら、今の状態においては私どもどうもすることができないのであります。たとえばアメリカ領のグアムにいろんなことをされましても、これは何らののなにを言えないし、あるいは中間的なものであろうと本思いますが、完全なる日本の領土と同様にこれを扱い得ない状態にあります。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 そこで原子力部隊等についてはお断わりになるということ、これは非常にけっこうなことですが、ただ問題は、これは防衛庁長官に伺いたいのですが、一体、原子力部隊とは何なのか、それから第二には、原子兵器とは何なのか、原子力部隊というのは、原子砲を持った、あるいは原子誘導兵器を持った主として陸上の部隊であるのか、あるいは海上の部隊が、やはり海上における原子弾頭を使った誘導弾を使う場合もあるのでしょう。一体、日本において原子兵器はお断わり申し上げる、原子力部隊は断わると言っているけれども、一体、どこからどこまでが原子兵器なのか、どこから先までが原子力部隊なのか、その点は私決して——われわれしろうとですけれども、残念ながら明確になってないと思う。たとえば、言うまでもなくオネストジョンだって、あれは原子弾頭をつければ原子兵器になる。今多くのジェット戦闘機でも、進んだ戦闘機は小型原爆は持てるわけです。多くの新しい軍艦は原子弾頭をつけられる誘導兵器を持っておる。そうしたらそういうもの全部断わるということが、われわれのこういう大ざっぱな話だったらそれで趣旨はわかるけれども、これを具体的、現実的に、少し専門的に見たならば、その話はどこか私は雲散霧消するのではないかと思うから、はっきりと今総理の断わられると言った原子兵器、原子力部隊の内容を具体的に御説明願いたい。

小滝彬自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(小滝彬君) 原子兵器は私どもの解釈しておる限り、また、これは大体どこでもの通念でありますけれども、これは原水爆あるいは原子弾頭、これが原子兵器であります。これをトランスポート、デリバリーするものは、その手段というものは、これは原子兵器ではない、原子力部隊とか原子力支援部隊というのは、最近のアメリカのフォートボード、ブラックト、フォードフッドに設けたというあれは、アトミックサポート・コンマンドのことだろうと思いますが、これは現に、いつでも原子弾頭をつけて戦い得るように仕込んだところの部隊であります。日本の今の誘導弾のことをおっしゃいましたが、これは原子弾頭なんがを使うということのためではなくして、その誘導兵器そのものを普通の薬莢によってこれを利用する、こういう考え方でわれわれもこれを研究しようとしているのでありまして、先ほどから総理が説明しておられます原子力部隊等とは全然違ったものであります。ただ軍艦の上に原子弾頭をつけたら、それは原子力部隊となるかというような御質問がありましたけれども、それはその原子弾頭を使って大いに作戦にそれを専念するということになれば、あるいは原子力部隊の一部というように解釈もできるかもしれませんが、分け方といたしましては、先ほど申し上げたように、原子弾頭を使うために持つというようなものは、これは原子兵器とは言わない、ただそれを利用する、実際に使用するための一つの運搬の器具であって、これは飛行機の中でも大きは飛行機は、F100というようなものはそういうものに使えるでしょうが、しかし、それは私は原子兵器ではない、こういう解釈でございます。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 原子兵器ということを勝手にというか、非常に——そういう言葉が悪ければ、非常に狭く解釈すればそうなんでしょうが、私が問題にしているのは、現在日本に配備されておる、日本本土内における空軍、陸軍並びに日本に基地を持つ海軍とか、今言われた原子爆弾、もしくは原子弾頭を使い得る発射機、運搬機を持ったものが来ているというこの事実は、これはいなめないことだと思うのです。従って、そういうことは総理が断わると言ったって、原子力部隊とは別なんではないか、私はこの点を申し上げたんです。従って、私の申し上げたいことは、そういう、結局アメリカと軍事同盟方式でいく限りにおいては、この矛盾は断ち切れないのではないか、原子部険という特定な部隊いか、原子兵器といって本弾頭を持っていないものならいいというけれども、オネスト・ジョンの使い道は、まさしく原子弾頭を使うときに初めて使い道のおもな効用がある。従って、アメリカ部隊がやはり原子兵器化することは自然である。境界線を引いて、ここから先はいけないということは言えないような戦略構成と部隊構成になっている。私はこの点を指摘したい。従って、ここに問題が二つあるのは、一つは、一方においてはアメリカがそういうものをだんだん原子兵器化していくことは、日本としても拒み切れなくなってきておる。第二の問題は、先般来防衛庁で研究に着手されようとしている、今度はアメリカが持ってくるんでなくて、日本が誘導弾を研究しよう、持っていこう、このことになって、その方面からもすでに、あるいは私は武器のことはよく知りませんが、オネスト・ジョンはもちろんそうで、ナイキというグランド・ツー・エアの兵器も、やはり原子弾頭を使ったことによって、より効果的に対空防衛をする、その研究をすでに始めようとしている。であるから、アメリカの方が持ってくるか、結局は日本が自力防衛といってそこまで入っていくか、どっちかに行かざるを得ない、これが第一点。その点については、防衛庁長官からお答え願いたい。  第二点は、従って私たちはこれは自分の方の立場の主張になるかもしれませんけれども——だからここで悪循環を断ち切るのには、総理も言っておられるように、終局的には完全な自力防衛ではない。これはや、はり国際連合その他の外交等において、国際関係をよくしていく、あるいは国連等の集団安全保障を強化して、それに依存するという格好でいくならば、結局アメリカとの防衛方式ということをやめて、いわゆる日本が自主独立の外交的、戦略的立場に立ったときに、そのときの安全保障の方式あるいは防衛の方式、内容というものは、そのとき初めてこの原子兵器から解放された一つの新しい方式になれるんではないか。従って、外交の構想もやはり軍事同盟方式からやめていくということが、ここから本生まれてこなければいかぬと思うのですが、その点に関する総理の御意見を伺いたい。

小滝彬自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(小滝彬君) 最初の部分について、私からお答えいたします。なるほど、このオネスト・ジョンは、最近原子弾頭が小さくなりました関係で原子兵器として本使えないことはない、私はこれは否定するものではございません。しかし、これは地対空のものでありまして、この日本の限られた限度における防衛のためには、そういうものを使う必要はない。曾祢君の想像しておりまするような、世界的な戦争においてはどうかしりませんが、日本の防衛においては、われわれはそういう原子弾頭をつけてやろうというようなことで研究しようとしているのではなくて、普通のウオー・ヘッズを用いることによっても、エクスマ・ヘッズで十分活用できるわけでありますから、その目的のためにやっておるわけであります。なお、曾祢君の議論では、アメリカとの共同作戦をする限りは、日本へ必ず向うの方が持ってくるようになるだろうとおっしゃいますけれども、(「持ってきてるじゃないか」と呼ぶ者あり)私は原子弾頭を持ってくる——(「部隊は来ていないけれども、そう言わざるを得ない原子兵器を持ち込んでいる」と呼ぶ者あり)そういう実質を備えたものを日本へ持ってくると即断されるのは多少即決的な考え方じゃないか。日本のように小さな島でエアー・ベースも少いところへ、報復力の少いところへ持ってくることは、アメリカの戦略からいっても不利なことであります。(「岸総理がアメリカへ来れば、原子力からのがれることはできないと言っている」と呼ぶ者あり)それはアメリカには、そういうベースはハワイも周囲にあることだし、日本の利用価値ということを考えましても、そういうことは決して必要な条件ではないと私どもは考えております。(「岸さんは原子力からのがれることはできぬと言っているじゃないか」と呼ぶ者あり)

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君)私は、先ほどらい申し上げておる通りに、この原子兵器に対する日本国民の考え方は、私は日本において特に強いものがある、こういう立場に立って、またこの強い考え方を持っておるということは、同時に世界の人類の平和及びその悲惨な、破滅的な悲惨から救おうという高い念願と結び合せておるものでありまして、この考え方は国民の私は一つの信念だと言っていいと思うのです。これを私は政治家として、代表して、あらゆる場合においてこの主張を貫くように努力する考えでおることは、かねてお答えしておる通りであります。従いまして、そうは言っても(「そこまではいい」と呼ぶ者あり)結局日米安全——共同防衛をしておる限りにおいては、アメリカの原子力部隊が日本に配置されることは必然の関係じゃないか、それを断ち切るためにはこの共同防衛の関係を断ち切る以外にはないじゃないかという曾祢君のお話でありますが、私は、今日までのアメリカのなにを見ましても、ずいぶん、日本の議論は少しアメリカの現実に考えていることよりも一飛躍しておるのじゃないかと私は考える。というのは、現にああいうことが新聞に載りましたときに、責任ある国務省や国防省はこれを否定しております。また、それを持ち込むような情勢もわれわれは何らの形においても見受けられません。そうしてあくまでもこれは日本に相談せずに持ち込むことはないということを公表しておりますし、私どもはそういう意味においてこれを断わるということは当然できることであり、また断わる考えでおります。従いまして、日米共同防衛の体制を続ける限りは必然にくると、こう論断される曾祢君の御意見には、私は賛成できないのでありまして、あくまでも日本の立場から、そういう相談なり、そういう話し合いがある場合においては、固くこれをお断わりして、日本のこのさっき申しました国民の信念を貫くことが、私は日本の政治として最も大事なことである、かように考えております。(「あなたがアメリカへ行かれたら、原子力からのがれることができないと言っている、ワシントンで」と呼ぶ者あり)

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 私は、総理の非常にりっぱな国民の信念と平和への熱望に裏づけられた御発言を了とします。私自身は、しかしやや専門的見地から、すでに原子力部隊、そういう名前のついたのは断わることにしておっても、現実には原子部隊化だんだんしていっている、その事実は否定できないので、これを断ち切るためには、やはり自主独立の外交に別の安全保障方式、中ソ友好同盟条約もこれはやめてもらう、日米安全保障条約もやめる、こういう方向に頭を切りかえていく必要があるという、これは私自身の考えは持っておりまするが、その点は時間がないので、残念でありまするけれども、その程度にいたしまして、次に、先般の外務委員会でもちょっと私は伺って途中でやめたのですが、実は、独立の完成はもとより、日米関係の根本的再検討、調整が最大の問題であります。けれども、領土問題もあるわけでありまして、そこで日ソ関係においても、この間問題にいたしました北千島などの帰属について、私の質問は、北千島等の帰属についてどうお考えであるか、ただ、私の質問が——主として東光前外務大臣のお答えは、これは日ソ間で話し合いしてもいいのだ、必ずしもサンフランシスコ条約の調印国に——その問題はあとで何とかすればいい……、こういうようなことも含めて申し上げたので、総理の御答弁もむしろそういう何といいますか、形式論といいますか、日ソ間で話すよりも、これはサンフランシスコ平和条約の署名国、連合国のもとにまかすべき問題だというふうに答えられたのです。私の伺いたかったことは、条約論ばかりでなく、その条約論についても二つの意見があると思いますけれども、総理としては、やはり日本の独立の達成のためには沖縄、小笠原の問題と同様に北千島、南樺太の問題もある。日ソ間の話し合いにおいても、これらの領土についての日本の帰属を主張されるお考えであるか、あるいは日ソ間の直接の交渉の題目になくても、現内閣の方針としては、これらの領土についても日本の帰属の努力をするという考えであるかどうか、この方針を伺いたかったわけであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 条約の解釈問題にも議論があるという、この条約の解釈を聞いているのじゃないというお話でありますが、私はやはりこの北千島、南樺太については、日本としてはサンフランシスコ条約をどう解釈するかということによって、日本の主張におのずから差異が出てくると思います。国民感情としてわれわれの気持から言うならば、これらの領土を私はサンフランシスコ条約で放棄したこと自体については非常に遺憾であると思います。しかし、戦争に負けてああいう条約を作る場合において、これはやむを得なかったことであると考えておるわけでありまして、従いまして、私はサンフランシスコ条約において、日本が署名国に対してこの領土権を放棄しておるという事実の上に立ってものを考えていきたい。気持からいえば、これをあらゆる面から日本に再び帰属するようにしてもらいたいことは言うを待ちませんけれども、サンフランシスコ条約のあります限り、それの解釈としては私はそういう立場をとっておりますので、過般外務委員会におきましても、南千島の問題は日本の固有の領土として、あくまでも日ソの間の平和条約においてこれを解決していきたい。北千島、南樺太の問題は、サンフランシスコ条約の署名国の間において、国際会議においてその帰属をきめてもらいたいと、こういうことを申したわけでありまして、今もそう考えております。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 時間がありませんから、私の意見だけを申し上げておきたいののですが、これはやはり日本の領土としてサンフランシスコ条約国にもこれを主張するのが正しい。権利は放棄した、しかし、放棄したのはだれのために放棄したのかといえば、これはソ連に対する放棄である。してみれば日ソ間の話し合いいかんによっては、これは形式的にはサンフランシスコ条約国であるけれども、目的はソ連に与えるか与えないかという意味なのであるから、おもなる受益者であるソ連がこれをいいということになれば、これはサンフランシスコ条約国も処理はまかされておるけれども、日本に返しても文句はないと、こういう関係になろうと思うので、少くとも国民感情からいえば、それを目途としての努力がなされなければならないと考えます。  第二に、日ソ関係について、これは農林大臣に伺いたいのですが、昨日、千田委員からも御質問があって私も拝聴しておったのですが、両専門家のお話で私自身にもわからない点があるので伺いたいのですが、とにかく、今度の漁業委員会において初めから科学的な検討を十分にされておらないでいきなりこの八万トン、十万トン、こういったような線で、あるいは日本としては十六万トンという線を出されておったようでありますが、現実に科学的な検討がなされておらない。これでは何のためか漁業委員会であるかと疑わざるを得ないような感じがしてならないのであります。そこで一体この八万トン、十万トンというようなものがなぜ起ったかという、これは言うまでもなく、去年の五月の河野全権の会談におけることなんであります。しかも、その当時はこの八万トン、十万トンの線が出たときには、いわゆる去年じゅうの暫定的な取りきめ、あるいは永久的な取りきめというようなこととは無関係にこの線が出て、従って、日本としては去年は八万トンくれと言ったんだろうと思う。そこで、いわば八万トン——不漁のときは八万トン、豊漁のときは十万トンというような大まかなバナナのたたき売りのような線を出してしまって、そしてあとで漁業条約を作って、いよいよ本格的に科学的な検討をする段階になって、このかつてのバナナのたたき売りが非常な大きなマイナスをしているではないか、だから一向に、こっちが底を見せちゃった交渉なんですから、いつまでたってもその科学的な話し合いができておらない、こういう感じが私はしてならない。これは前内閣の業績ではあるけれども、やはり前内閣と実質的に同じな現内閣としてはそこに大きなハンディキャップを背負って交渉されていると思うのですが、その点いかがお考えでしょうか。

井出一太郎自由民主党農林大臣

○国務大臣(井出一太郎君) 日ソ漁業委員会は先週までに本会議を九回、小委員会を六回開きまして、一九五七年の漁獲量に関しまして、主として両国側からデータを出し合いまして、いわば科学的、技術的な検討を続けて参ったわけでございます。そこで、今御指摘になりました八万、十万という線は、昨年の外務委員会でございましたが、曾祢さんも河野前大臣にお尋ねになっていらっしゃったように私記憶をいたすんでございますが、当時の事情としましては、いわば暫定的と申しましょうか、一応の目安ないしは基準、こういうことで安全操業を急ぎますままにああいう約束があったのだと、しかし、これは漁業委員会という正式な場を通して、さらに再検討をすることに相なる、そしてソ連側の計画量というものが出る場合には、それと見合ったものを主張し得る、こういうふうな理解の上に立ちまして、ただいま私ども鋭意その衝に当っておるわけでございます。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 どうも私のわからないのは、こういういわゆる最低線を放しちゃってそのあとで、当時河野全権からも聞いたんですが、たとえばソ連の国内における漁獲についても、実はその点を勘案するという協定文まで、まあ協定といいまするか、約束といいますか、そこまで作ろうと言ったのを、最後にそれが抜けちまって、しかも当時河野農林大臣としては、それは漁業交渉といいますか、この漁業委員会の前に、ソ連の国内の河川における漁獲あるいは領海における漁獲等についても、調査団でも派遣して両々相待ってやるんだから、この八万、十万というものは、そのほかのファクターもあるんですから、ソ連国内のそういうものをにらみ合せてやるのだし、これは一応の目安なんだから、こんなものは決して——科学的な根拠による資料を両方から突き合せる段階、今の漁業委員会の段階になったときは、そういうことは災いしないんだということが河野農林大臣の答弁であった。ところか現実にはそうじゃないですね、私はそうじゃないと思う。八万トン、十万トン、それからどういう進展がしておるのか。昨日ちょっと千田委員のお話しになったところによると、ソ連が示したのは八万二千七百トン、これはソ連側のとるやつでございますか、それからソ連の今年の数字十四万トンというのは、これは日本がとる方ですか、どうなんですか。ちょっとそれに関連してもう一ぺん。前の交渉が非常に今度の交渉にマイナスであったかどうか、そうお考えであるかどうか、それから今出ている数字でここにお示しになって差しつかえない、きのう千田委員に示された数字の御説明がちょっと僕らしろうとにわからなかったので、御説明願いたい。

井出一太郎自由民主党農林大臣

○国務大臣(井出一太郎君) 数字の点から申し上げますると、八万二千七百トンというのが、昨年の河野さんの行かれた当時向うの示した計画量でございます。それから十四万トンというのは、本年の向うの計画と、こう御承知を願いたいと思います。それからこの八万、十万という線が非常に交渉を妨げておるのではないか、こういう御指摘でございますが、まあ向うの委員の諸君は一応それを主張いたしまして、非常に固執をしておる状況ではございますが、問題はやっぱり共同調査というようなことにでもいたしませんと、なかなか向うの示すデータとこちらのデータとを現実に突き合わして審判をつけるということがなかなか困難でございます。そういうことはございまするが、しかし北洋漁業の問題は、事、国益に関しまするところきわめて大きいのでありまして、私どもといたしましては、少くとも日ソの国交が平常化いたしました今日、第一回のこれが試金石のようなものでございますので、わが方の主張の合理性を極力主張をいたしまして、ただいましんぼう強く交渉をしておるさなかでございまして、あるいは詳しい数字等はまだ申し上げる段階でないと思いますが、御了承をいただきたいと思います。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 最後に、ただいまの農林大臣の御答弁、交渉中でありまするからこれ以上申しませんけれども、私はソ連の態度もはなはだよろしくないと思っております。ただ残念ながらその前に、日本の前にあったこの河野全権の交渉が、やはり非常な災いをなしておる、今日の段階においてそれを言ってもしようがありませんけれども、どうかほんとうに科学的な検討を加えた科学的根拠に基いて、両国ともに最大限度の合理的な漁獲が上がるような線で、いわゆるバナナのたたき売りでないような形で話をきめていただきたい、この点を強く希望いたします。  時間がなくなりましたので、実は日中国交等について伺いたかったのですが、これは同僚他の委員諸君にお譲りいたしまして、最後に、原水爆の禁止問題について、イギリスのクリスマス島実験について、非常に現内閣が努力されておる。かつて私たちが非常に不愉快、不可解に思った岡崎外務大臣がアメリカのビキニ水爆には協力するのが当りまえだというような建前から考えるならば、日本の世論の熟成の結果といたしましても、現内閣が非常に熱心にこの世論を代表して、根強い交渉をされておることは、これを多とします。今日なお完全なる実験中止の決定に至らない、イギリスもやるつもりでおるようであります。ソ連も無警告でやっております。はなはだ遺憾千万に存じまするが、さて当面の問題として、やはりこのクリスマス島の問題について、外務大臣、総理大臣としていろいろな手をお考えになっておるようであります。宗教家を動員する点、われわれけっこうでありまするが、根強く交渉されて、あわせて特にお願いしたいことは、宗教家の問題が、私は少くとも聖公会の偉い方が最終的にどうなったか知りませんけれども、あまり政治家からの話で、国会等を通じてああいう宗教家を政府の代表で出すのだというふうになると、これは私は宗教界の性格上は引き受けるのはかえって困難になりはしないかという心配がある。ですから、そういう点はきまるまで水鳥外交でもけっこうですから、実をあげるように、そうして国民の代表が最後の最後までこの阻止のためにあらゆる手段を尽し、デスペレートの手段の前に合理的な必要な効果的な手段をとるように特に総理にお願いいたしておきます。この点について承わるものがあれば承わっておきたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) この問題につきましては、私先ほど来申し上げている原水爆に対する日本国民の心からなる一つの信念、念願というものを達成するように、あらゆる方法をもって世界の世論を盛り上げ、同時に水爆原爆の実験をしようとする国々の反省を求めて、これを中止の方向にもっていきたいと思っております。今いろいろな手段を考えておりますが、まだその途中でありますので、こうするのだということは申し上げられませんけれども、できるだけの手段を講じて根強く私はこの問題について努力をいたしたいと、かように考えております。

小林孝平日本社会党

○小林孝平君 議事進行。ただいま曾祢委員から日ソ漁業交渉について御質問があったのでありますが、この問題は、農林大臣から御答弁があったように、しんぼう強く交渉をやっているというお話でありますが、このしんぼう強くというのは、ソビエト側に押されてさっぱり進展しないということなんです。その原因はどこにあるかといえば、これは河野全権がこの前の交渉において向うに言質を与えたのじゃないかということが一般に考えられているのです。われわれは河野全権がお帰りになりましたとき、この点を心配いたしまして、農林、外務連合委員会においてこれをただしたのでありますけれども、さようなことは絶対にない、将来の交渉にそういう憂いはないということを一言明されたのでありますけれども、現実に交渉が停頓して、そうしてすでに漁獲量の交渉を進めることができないで、その漁獲方法というような問題に今入っているわけです。これは先ほど申し上げたように、河野全権の当時の交渉の内容にわれわれに知らされない問題があるのじゃないか、こう考えますので、日ソ漁業交渉を円滑に進める上からも、この阿野前全権を当委員会にお呼び願いまして、私は総括質問の際に、河野さんにお尋ねをいたしたいから、理事会においてぜひ河野さんを本委員会にお呼びになるようにお取り計らい願います。(「賛成」と呼ぶあり)

左藤義詮自由民主党

○理事(左藤義詮君) ただいま小林君から御提議の件は、理事会に諮りまして後刻決定をいたします。

森八三一緑風会

○森八三一君 時間がたくさんありませんので簡潔に二、三の点についてお伺いをいたしたいと思います。  最初に総理にお尋ねをいたしますのは、しばしば総理もおっしゃっておりますように、石橋前内閣の一切の方針を受け継いでいくのだ、そういたしますると前総理が就任早々の際に全国各地におきまして所信を表明されました、世の中に言っております五つの誓いというものだろうと思いますが、その第一に、国会の運営を正常化するという一点がありますることは御承知の通りであります。そこで一体国会の運営を正常化するということにつきまして、これは当然なことではありまするが、政府側においても反省し考えなければならぬ点がある。われわれ国会側においても十分反省して考えなければならぬ。三つの点から国会の運営を正常化していくということも私は考慮せられるであろうと思うのであります。そこで当局とし、政府として一体、政府の立場から国会の運営を正常化していく場合に、具体的にどういうことをお考えになっておるか。方針を受け継いでいくと、そして国会の運営を正常化していくということが御構想であるとすれば、そこには何らかの具体的なものがなければならぬと考えるのでありますが、どういうことをお考えになっておるか。たとえて申しますれば、従来の例に徹しますと、予算案はそうでもございませんが、いろいろな法律案なんかが、国会に定められておるその会期の二日前か三日前、ほとんど終末に近づいたときにぽいと出てくるといったこともあったかと思うのでありますが、また政府が提案すると非常に格好がとれないということで、ことさらに議員提案の形でそういうような手続を進められるというような例もあると思うのです。こういうようなこともやはり国会の運営を軌道に乗せていくという点から考えますれば、大いに反省すべき点であろうと思うし、当然政府が考えなければならんことであろうと思うのでありますが、こういったようなことを含めて、一体どういうことを具体的にお考えになっておるかということをまず最初にお伺いいたしたいと思うのでございます。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 国会の運営を正常化するという点につきまして、政府一側からやるべきこと敵どうかという御質問でありまするが、私は今おあげになりましたように、この国会で審議をお願いする議案の提出をできるだけ早く提案いたしまして、十分の審議の期間を持てるようにすることは重要な一の大事なことだと思います。またこれらの議案を御審議願うに際して、政府側におきましてやらなければならないあらゆる点を、政府側として勉強することは当然でありますが、特に質疑応答等に対しましてもできるだけわれわれの考えを率直にかつ明確に答弁をいたしまして、そうして疑点を明らかにするということに全力を尽すべきが当然であると思っております。あらゆる面から政府が要するに議事の進行を円滑に進行せしむるように御協力といいますか、われわれ自身が努力すべきことが政府側としてやらなければならない事柄であると、こういうふうに思っております。

森八三一緑風会

○森八三一君 今申し上げましたような、審議を十分尽していくために政府側におきましても誠意をもって質問の答えの衝に当ると、さらに審議期間等につきましても十分考慮するということでありますが、そういうようなことにつきまして、ただ考えておるというだけでは、ときによって間違いが起きるということもないわけではないと思うのです。でありまするので、そういうことをはっきり規定していくというような、法律中に加えるというようなことまでお考えになっておるのかどうか。そういうことは今まで考えておらんということでございますか。私どもとしては少くとも会期五日前まで一切の審議を求むべき法律案なり予算案というものは、出さなければならないということは規定した方がいいという考えを持っておるのでありますが、そういうことに対する御見解を承わりたい。  さらに続いてお伺いをいたしたいのは、どうも最近、あるいはこれは私のひが目かもしれませんが、国会の運営の正常化ということから、何とはなしに事なかれ主義というような方向が、一つ浮んできておるのではないかというふうに思うのであります。その法律の内容がいいか悪いかということは別問題といたしまして、前々国会におきましては、当時の自由民主党の非常な大きな政策として教科書法案を提案されました。これがいろいろな国会の都合によって審議未了になったわけでありますが、今国会にはこういうものが提案されてきておりません。党として決定なさいまして、それが他の法案を犠牲にしてでも成立せしめなければならぬと、非常に努力された法律案がこの国会には出てきておらぬと、こういったようなことが、今申し上げまするように、国会の運営を正常化するというようなことから、なるべく問題を起さないようにしていく。そうなりますると、国会の審議というものを通して政治の進歩というものがなくなっていくんじゃないかという気持を持つのでありますが、こういったことについて、これは政府という立場でなくて、党の総裁という立場から、一体どうお考えになるのか。現在どういう心境で処しておられるのか、ということをあわせてお伺いいたします。私は教科書法案の内容がいいとか悪いとかという問題を言っているものではございません。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 国会の運営を正常化するということは、事なかれ主義で重要法案をある程度提案をしないのじゃないか、という趣旨の御質疑でありますが、私はもちろん国会の運営の正常化は先ほど申したような心持でやっていきたいと思います。議案の提出の促進につきましても、極力これに努力をいたしておりますが、今御提案になりましたように、これを法制化してどういうものは何日までに出さなければいかぬ、あるいはすべての議案は会期末何日までの間に出さなければいかぬというふうに、法制化するというような問題については、これはいろいろな点を検討してでないと、今ここでお答えをいたしかねますけれども、御趣旨は十分尊重して、御審議の期間の十分ある間に出すように、極力政府としては努むべきものである、かように考えております。  また教科書法案についての御質問でございますが、この点につきましてはいろいろ内容的にも検討をいたしておりますし、またいたしたのであります。またあれを提案しました当時の事情と、その後における検定制度の変更等から見まして、よほど事情も変ってるところがございますので、今議会には提案をいたさないということに決定をいたした次第であります。

森八三一緑風会

○森八三一君 さらにこの点でもう一つお伺いいたしたいのは、二院制度の運営の問題であります。これは本会議でも同僚の常岡議員から御質問が出たかと思うのでありますが、衆議院、参議院という二院制度をとっている、その二院制度の立場に立って、現実が一体どうなっているか考えてみまするのに、与党の自由民主党が衆議院におきましても絶対多数の地位を占められております。参議院においても同様の地位を占められている。国民がそういうふうに信頼をしたという表われであると見れば、それで問題はないということでありましょうけれども、二院制度の運営の妙を発揮して参りますためには、大いに考えなければならぬことではないか。もしこういうことになりますれば、党の政策なり主張というものは一本でなければならぬはずでありますので、その党に属している立場が衆議院議員であるか、参議院議員であるかということによって、一つの問題に対する答えが二つになろうはずはございませんので、といたしますれば、二院制度はもう不用な存在ではないかという議論が、国民の一部にはないわけではないと思うのであります。そこでこれは党の総裁というような立場から、こういう現実をどうお考えになるのか、これでいいということでございますのか、あるいはどうやっていったらいい、また現実にそうであっても、運営上どうしていきたい、どうしていくべきであるというようなお考えはございますのか。これまた国会の運営の正常化ということについての根本的な問題であろうと思うのでございますが、御見解を承わりたいと思うのでございます。    〔理事左藤義詮君退席、理事堀木鎌三君着席〕

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 御指摘のごとく二大政党、私は従来の二大政党論者でありまして、二大政党によって国会の運営をする、これはつまり衆議院における姿を頭においてそういう考え方をしたのでありますが、衆議院がそういうふうに二大政党になりまして、さらにこの参議院が選挙制度で議員が出てくるということになりますと、やはり選挙というものの組織等から見まして、参議院が一種の政党化してくるということも必然の勢であろうと思います。しかし、全然衆議院と同じような構成になりますと、今森君の御指摘のような点について二院制度というものの意義が非常に疑わしいという事態も考えられるのでございます。私ども自由民主党におきましては、今、党の大きな組織の問題であるとか、党自体の運営というような問題につきましては、やはり一つの政党として有機的な関係を持っておりますが、両院制度の意義を考えまして、国会内におけるいわゆる議会活動といいますか、国会活動といいますかについては、相当衆議院とは独自の立場を持たしております。国会対策その他の役員も別々に考えております。あるいは政策審議といいますか、議案等の審査につきましても、やはり参議院は参議院の独自の立場から一応何する。もちろん、同じ政党でありますから、非常に大きな根本的な政策の基礎はこれは同一でありますけれども、国会審議の上から見るとできるだけ独立性をもって、そうして両院制度の機能を十分に発揮するように努めていっておるというのが私の考えであり、またわが党の方針であります。

森八三一緑風会

○森八三一君 その次にお伺いいたしたいことは、これは大蔵大臣に主としてお伺いしたいのでございますが、予算の本質的な考え方は一体どう規定をすべきかという問題であります。何年度予算ということである限りにおいては、その年度内において政策を遂行するために、あるいは行政を執行するために予見される必要な経費が計上されるということが私は予算本来の建前でなければならぬ、こう考えます。ところが、今回提案されておりまする補正予算では、昭和三十一年度に使われるのではなくて、翌年度、三十二年度に使われる予算が出ている。こういうことになりますと、年度の予算という感覚がずれてしまって、予算は本質をはずれていくのではないかという気がするのですが、一体、予算はこういう姿であってよろしいのかという基本的な問題をまずお伺いをいたしたいと思います。

池田勇人自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(池田勇人君) 財政法の原則は、その年度の歳入でその年度の歳出をまかなうというのが原則でございます。財政法第十二条はその意味において規定をいたしておるのであります。しかし、別の意味におきまして、予算の年別といいますか、長い間の弾力性を持たす意味におきまして、その年度の歳入から資金という特別の制度を設けまして、後年度にわたって資金を使い得るという規定も例外的に置いておるのであります。これが財政法の四十四条でございます。従いまして、今年は御承知の通り、経済界の好況によりまして千億前後の自然増収が出て参ります。この自然増収をそのまま原則的に決算確定を待って、翌々年度の歳出と国債償還に充てるということがいいか、あるいは翌年度におきまして、財政法四十四条の規定において資金会計を作り、翌年度以降において使う道を取ったがいいか、これは一つの考え方の問題と思います。私は今当面した日本の財政経済の状態から見まして、昭和三十二年度におきましては、相当の歳出を見込まなければなりません。しかるところ今年度におきまして千億前後の自然増収が出ましたときに、三十一年度の歳入から歳出として資金を取り上げまして、そうして三十二年度にその一部を使うという考え方が、当面の財政経済政策としては適当であると考えまして、財政法第四十四条の規定におきまして、三十一年度の歳入から資金に持っていきまして、そうして三十二年度の歳出に一部充てることといたしたのでございます。    〔理事堀木鎌三君退席、理事左藤義詮君着席〕

森八三一緑風会

○森八三一君 私は、翌年度に繰り越して四十四条の規定によって使われまする、その内容の可否は論じているのじゃございません。ございませんが、こういうように四十四条の規定があるから後年度に繰り越して資金を留保するということが、法律さえ作れば法律的には何らの支障がないのだという感覚で参りますと、今後私どもは何年度の予算は幾ばくであったか、何年度の予算はどうだということを比較検討いたします場合にも、これは非常に問題が巻き起ると思う。さらに今お話になった四十四条は、後年度に資金として使う場合を例示されたのでありますが、今回の補正予算には、来年度の資金ではなくて、来年度交付すべき地方財政の関係の経費も含まれておるこれは予算だと思うのであります。そういう関係はどういうように整理されておるのか、その考え方の基礎を承わりたいと思います。

池田勇人自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(池田勇人君) 資金を設けまするときに、三十一年度の自然増収のうち所得税と法人税とを歳出に充てます。そういたしますると国税の所得税、法人税、酒税というものにつきましての税収につきましては、交付税法によりまして二五%の交付をするということに所定の法律できまっておりますので、四百億円のうち百億円を交付税法によりまして地方財政の方に回したわけでございます。これは今までの法律の当然の結果としてそう相なるのであります。

森八三一緑風会

○森八三一君 さらに大蔵大臣にお伺いいたしますが、今回の一千億円の減税、これが七百二十億であるか、額の問題は別にいたしまして、とにかく国民の負担が軽減されるという方向に向っておりますことにつきましては、私は非常に喜ばしく思うわけでありますが、しかししばしば論議されておりまするし、新聞等にもそういう議論が出ておったと思いますが、そうしてまた大蔵大臣もそういうことについては十分お気づきになっておるはずであります、今回の減税措置によって恩典を受け得るのは、大体年所得が二十五万円以上というクラスになろうと思うのであります。現に非課税の対象である二十五万円以下の年所得者には、今回の減税の恩典というものは及ばない。しかしその階層でありましても、別途の国家保障と申しまするか社会施策によって、それぞれ恩恵を受くべき立場の者もあるわけであります。    〔理事左藤義詮君退席、委員長着席〕 といたしますると、減税の恩典には何らの関係がない、社会保障施策によつが恵みを受けることもできないというようなその中間に位する階層は、今回の減税の恩典がないだけではなくて、別途行われる鉄道運賃の改訂等によってかえって生活は困難に追いやられ、支出は増大するということになろうかと思うのであります。こういうような階層を一体どうするかという問題が、ここに重要な問題になると思うのであります。かつて池田大蔵大臣が前に大蔵大臣のころにもこういうような措置がとられた場合がありまして、その場合に私は大蔵委員会で御質問申し上げた記憶をはっきり持っております。そのときに大蔵大臣として池田さんは非常に重要な問題だ、はっきり記憶をいたしておりまするが、世界の政治家が税の問題を取扱うときに一番悩みとしておる問題でありまして、その質問に答える名案はなかなかありません、今後鋭意研究いたしまして、そういうような階層に対処すべき具体的なものを十分考えていきたい、こういう御答弁があったはずであります。おそらく頭がいい大臣は御記憶であろうと思うのでありますが、そういうような御答弁をなすった大臣として、今回のこの減税措置に際しまして、そういう階層に取り組んでいく対策はどうお考えになりましたのか、その点お伺いいたしたいと思います。

池田勇人自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(池田勇人君) 減税措置をいたします場合に、納税者以外の人に恩典をお与えするような方法がないことは、これはもう自明の理でございます。従いまして、今回の税制改正に当りまして、臨時税制調査会の方におきましては、原糸課税というものを考えられておったのであります。すなわち、織物消費税と申しまするか、こういうものも考えられておりました。しかし、私は今、森さんのお話のように所得税の千億円減税をやりまして原糸課税をやり、あるいは羊毛課税をやりますときに、やはり二十四万円以下の方々に新たに間接税がかかるということは、この際国としては賛成できない、こういうので臨時税制調査会の強い希望を私は排除したわけでございます。消極的に減税にならない人に新たに負担をかけるということはやめたわけでございます。しかし、この自由主義経済のもとにおきましては社会各層、これは一環をなしておるのでございまして、減税が国民経済にいいとした場合におきましては、それが回り回って、減税の直接恩典を受けないような人にもよくなるような減税でなければならないのでございます。私は、今回の措置が日本経済の発展をうながす道である、そして間接的にそういう方々にも恩典のいくように、こういうことを念願してやったわけでございます。減税が納税者以外の人に好影響を与えるという理論としては、それよりほかにない。また増税をしないということだと思うのであります。しこうして最近の情勢を見ますと、賃金その他も上って参りまして、物価、ことに消費物価が安定したときに国民所得がずっと上って参りますると、納税者以外の方々にも恩典のいっておることは統計の示すところでございます。従いまして、私は間接的な減税の効果が全般的に現われることを念願し、期待いたしておるのでございます。その際に鉄道運賃等を上げて非常に家計に影響を及ぼすのじゃないか、物価に悪影響があるのではないかというお話でございまするが、運賃の家計において占める割合は、統計上大体一%程度に相なっております。従いまして、それを一三%上げましても家計には大した影響はない。ことにそれよりも運賃を上げまして鉄道輸送を迅速に、また円滑にするとが全体としてとるべき策だと考えまして、運賃値上げに賛成いたした次第でございます。

森八三一緑風会

○森八三一君 私は池田さんがこの前大蔵大臣の時におやりになった減税のことを思い起しまして、今質問をいたしたのでありますが、そのときに私が申し上げましたように、納税しておらぬ者に減税の恩典を及ぼすことは、これは平面的に見ますればお話の通りでできない、これはよくわかります。わかりますが、そういう階層が存在しておることも事実であるということからいたしまして、その全部が全部というわけではありませんけれども、そういうような恵まれざる階級の人が大多数組織員となっております各種協同組合であるとか、労働金庫のような営利法人でない特別法人が事業を行い。その事業の結果年末に生ずる剰余金に対して、法人格を持っておりまするために、一般営利法人と同じような税を課しておる。これを全免するということが間接的ではありまするけれども、せめてもの対策ではあるまいかということを申し上げ、大臣もその当時それは一つの対策であることは間違いない、十分研究してみようということで、その翌年の国会におきましては、当時四二であった法人税を、ただいま指摘したような労働者や中小企業者、農民等が組織しておる協同組合の年末における剰余金に対する法人税は三五%に下げたということで、その当時池田さんは積極的に大蔵委員会で御発言になりまして、昨年、君の言ったことをことしは実現したのだ、こういう経過があったはずであります。本年この減税という措置が行われるときに、そういうかつてのことを思い起していただきますならば、申し上げましたような階層が組織しておる各種の協同組合に対しては、当然さらに一屡の免税あるいは免税までいきませんでも、減税の措置が講ぜられるのが当然ではあるまいか。でなければ二、三年前に大蔵大臣として御発言になったことは、ここでは忘れられておるということになりまして、非常に遺憾に思うのでありますが、そういうことを今後実行願えるかどうか、またそういうことはいかんというお考えなのかどうか、この点をはっきりお伺いいたしたいと思います。

池田勇人自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(池田勇人君) 一般の中小法人あるいは公益法人にいたしましても、それが経済活動をしている場合におきましては、低率の課税をすることにいたしておることは、森さん御承知の通りであります。しこうして今回の税制改正におきましても、中小法人のほうにおきましては、低い税率の三五を適用する部分を多くいたしました。それからまた法人事業税のほうにつきましても、地方税において減税いたしております。しかし先だっても本委員会でお話がありました通りに、個人の所得税は相当減額せられたが、法人はどうかという御議論があるのであります。私も将来の問題といたしましては、法人税の税率につきまして考慮いたしたいと考えております。特別法人につきましても、私は今まで一般法人よりも格差をつけておった関係上、将来の問題として考慮いたしたいと思います。

森八三一緑風会

○森八三一君 私は、昨日当委員会で論議をしました一般法人税全部について軽減すべし、という主張をいたしておるものではありません。あくまでも限定をして論議を進めておるのであります。減税の恩典に浴し得ざる階層が存在しておることは事実である、そういう階層に対して何らかの施策をとるべきではないか。そうしてかつての委員会におきましては、考えなければならぬことで、世界の政治家が非常に悩みとしている問題であり、十分研究しようということで、その翌年には積極的に、今取り上げましたような恵まれざる階級の人々が、主として組織しておる特殊法人に対しましては、七%の法人税を軽減されたという実績をお持ちになっておる大臣であり、そういうことについては将来も十分研究していこうという建前に立っていらっしゃる大臣として、今回の減税にそういう措置がとられておらぬことを非常に私は遺憾に考える。心境が変ったのじゃないかといたしますれば、一体どこに根拠があるのかということをお伺いしたかったのですが、ただいまは別に心境が変ったわけでもない、今後十分研究して善処をするということでありますので、少くとも早い機会にそういうようなことの具体的な措置をとられますことを強く要望申し上げるのであります。  その次に私が今ちょっと申し上げましたように、運賃値上げということが家計に及ぼす影響は、大蔵大臣の御説明では一%くらいで、大したことはない。こうおっしゃるのでありますが、直接に国鉄運賃の値上げというものはそういうことであるかもわかりませんが、しかしこのことが全般的な経済活動には非常に影響して参るということになろうかと思うのであります。これはどういう結果が現われまするか、進行してみなければ具体的に論議をするわけには参りませんが、私は、かなり今回の一兆一千数百億という予算を通しましてもインフレ問題が懸念されておる。そこへもってきて運賃が値上りになるということになりますれば、そういう心配はそれとはなしに国民の相当の階層が持っておるであろうと思うのです。そういうことを考えますると、今回の鉄道運賃の値上げは極力私は避けていきたいと思うのであります。もちろん政府当局もそういう方向で御研究になったことであろうと思いますが、結論としてやむを得ずまあ値上げという措置を講じたということであろうと思いまするし、過日の本会議における運輸大臣の御説明もそういうような趣旨を述べて具体的に説明せられております。  ここで私は運輸大臣にお伺いいたしたいのでございますが、ほんとうにあらゆる角度から研究してどうしてもこの一三%の値上げをしなければ腐朽、老朽しておる現在の国鉄というものを立て直し、あるいは経済活動が非常に伸びてきておるそれに対応していくということが、不可能だという結論に達したのかどうか。私の考えから申しますれば、ただ非常に安易な道を求められたのではないかという気がしてかなわぬのです。今運輸省なり鉄道公社の方から私どもの方に渡されておりまする資料から考えますると、三十二年度の損益計算で三十一年度に対比いたしまして、運賃収入が六百四十九億増加するんだという数字を示されておる。が、しかしこの六百四十九億という数字の中には、一三%の予定された運賃の値上げ収入見込額というものを含まれておりますので、その見込額三百六十五億を引いてみますると、二百八十億というものが昭和三十二年度と昭和三十一年度の対比において増収が計算をされておるのであります。この二百八十億というものは一体内容がどうかということを伺ってみますると、大体貨物、旅客あわせて五%程度の伸びを見ておるということであります。さらにだんだんお伺いをして参りますると、今回の五カ年計画が完了した暁には、どれくらい国鉄の輸送力というものは増強されるかという点に触れますると、おおむね三〇%くらいは輸送力が増強になる、これは大臣も御説明になった数字でありますが、しかしその三〇%というものは全部量的な、私は、増加になるのではなくて、質的な増加が相当部分含まれると思うのであります。具体的に申し上げますれば、立ちん坊で旅行した人が今回全部すわれるようになるとか、質的な増強ということも相当あろうと思うのです。しかし全部が質的な増加ではなくて、当然量的な増加というものも期待されなければならぬ。そこで三〇%の輸送力の増強が考えられる。これをかりに半分は質的な増加であって半分は量的な増加になる、こう仮定いたしますると、五カ年たちますれば五カ年目における鉄道運賃収入の増加は、三十一年から三十二年のこの予算の数字に表われておる五%の増加を見込んだという伸びから計算いたしますると、大体八百四十億くらいが考えられる。こう思うのでありますが、しかしそういう伸びが出てくる陰には、当然運営費の増加というものもなければならぬと思います。現在の人員でそれをやれということは、これは無理でございますから、そういう運営費、経営費の伸びというものも当然あろうと思います。それから年々腐朽していくものを更新しなければならぬから、維持費というものをある程度見込まなければならぬということは、私は当局ではございませんからこまかい数字は持っておりませんけれども、昭和三十一年度、二年度の予算の面からだんだん考究して想像してみますれば、五カ年後における運営費の増加は大体二百億程度が見込まれるのではないか。それから維持費はこれもわかりませんけれども、昭和三十一年度の維持費と昭和三十二年度の維持費と、これはまあ折半程度のものが後においてもかかる。私は、こういう点は近代化、合理化されることでありますので、相当維持費というものは少くなってきていいとは思いまするが腐朽している現状における一年度の維持費の二カ年分を平均した一カ年分をとってみるといたしますと、大体三百三十億くらいを年々維持費につぎ込まなければならないと、こうなると思うのであります。そういうような計算からずっとやって参りますと、結論的に五百九十三億くらいの五カ年後における年間収入のプラスといいますか、剰余金といいますかが一応出てくると思うのであります。もちろん今申し上げましたように、維持費を三百三十億くらい年間今日よりも増加していく、それから二百億程度の運営費の増加を見る。そうしてこれは五百九十億くらいのプラスが残るのではないかという計算を私はもっている。そこで現在の国鉄の借金が大体二千億だ、そうして今後投資するのが六千億だ、その六千億のうちには年々三百億程度の維持費が含まれておりますので、それを五カ年間引いてしまえば四千五百億円くらいが新しい投下資本になる。残りは六千五百億というものが純粋のものになってくる。そうなりますと、結局これを何年の償却に見ますか、十五カ年間の耐用年数があると考えますれば、一カ年六百億程度の剰余があれば運賃の値上げをせぬでもやっていけるのではないかという、これは私のしろうとの計算から出てくるのであります。これは専門家の皆さんが御計算になったのでありますから、私の計算があるいは間違っているかもしりませんが、私のちょうだいした資料から考えてみますと、今申し上げましたように、昭和三十一年度と昭和三十二年度のこの動きと、それから五カ年後における輸送力の増強の結論というものと、そうして年々の維持費を想定し、運営費の増加を見込んでもなをかつ六百億近い剰余というものが五カ年後には数字の上から生まれてくるように思うのでありますが、こういうにかかわらず二二%の値上げをしなければならぬということは、私は、国民がみなインフレ気がまえの危険があると心配しているときに、これを断行するのは非常に危険であるし、とるべき策ではないと思うのでありますが、運輸大臣はどうお考えになりますのか。

宮澤胤勇自由民主党運輸大臣

○国務大臣(宮澤胤勇君) お答えいたします、このたびの運賃その他旅客料金の値上げにつきましては、ただいまお話のような伸びがずっと出ていくとしても、今の数字は現在の値上げによる増収というものを大体基礎としてお考えになってそう出ていくのではないかと思います。また毎年々々五%づつ伸びるというようなことは、ありませんけれども、出ていくのではないかと思うのであります。現状におきまして、御承知の通り約二百億近い赤字が出まして、そうして老朽施設その他減価償却ができない、こういう事情にあります。その上に、昨年来の輸送量の増加というものは、このままにしておいては、国鉄自体としては、今日まで約五百億近い金をかけておったのですが、それではとても一両年後における輸送量の増加に対してまかない得ない、こういうような考えからいたしまして、ここに五カ年間、ただいまお話の六千億という増強計画を立てたわけであります。この六千億のうちにただいまの自己資金による運賃値上げをみましたものと、それか借入金によるものと、経営の合理化によるものとを見合って大体五カ年間において六千億につじつまが合うような計算、それによってただいまの三〇%のこの輸送量の増加、それが大体経済の伸びに見合っていくのではないか、こういうような考え方で、これは一割三分というものを立てたわけであります。一割三分という点がどういう根拠から出てきたかと申しますと、初め国鉄の計算は一割八分にいたしまして、そうしてそれを五カ年間五千億という一応の計画を立ててこの産業拡大のワクに合せていこうというのでありましたが、これはお話のようにできるだけ物価その他生活に対する影響を少くするために、一割三分にいたしたわけでありまして、一割三分にいたしましたけれども、御承知の通り、三分に当るものは納付金として市町村に納める、まるまる国鉄の中に入るものは大体一割、こういうことでありまして、その一割をもってこの物価に対する、これも一割三分値上げは物価に対する影響がありますけれども、物価に対する影響本数字の上からいえば資材関係に対しては、なるほど具体的に現われてきますけれども、その他これがいわゆる生活用品つまり消費物資その他に対しましては、この運賃の値上げの結果、かえって経済流通の上から安くなる面も出てくる、こういうようなわけで、私は、物価に対する影響は全然ないということは申し上げられませんけれども、インフレの要因をなすというような、直接の段階において、これがインフレの要因をなすというようなことには立ち至らないという程度において、この問題を取り扱ったわけであります。

森八三一緑風会

○森八三一君 今の御説明では、ちょうだいした資料が間違っておるとおっしゃれば了解しますけれども、ちょうだいした資料では、昭和三十二年度と三十一年度を比較して、六百四十九億の増収を見ておるのです。そのうちには、一割三分の値上げ三百六十五億というものを含んでおりますから、私は、その三百六十五億を引いてしまった二百八十四億が残る。この伸びを見ておらぬとおっしゃるが、この資料では、輸送力の伸びを見ておる、これは、質的な伸びではなく、量的な伸びを見ておる、だから、現在においても、三十二年度と三十一年度を比較すれば伸びておるのです。改良すれば、この伸びというものは当然もっと出てこなければならぬ。それが三〇%だとおっしゃる。けれども、私は、三〇%全部が量的に伸びていくとは思いません。だから私は、半分は量的の伸びになる、半分は質的な伸びがあると見たのです。そこに誤まりがあるなら、その誤りを指摘していただきたい。そう考えますれば、私の申し上げますような数字になるのじゃないかと思うのです。だから、もし六千億投じましても、質的な伸びというものは考えられるが、量的な伸びはちっともないとおっしゃれば、これは別の話になりますが、そうだとすれば、三十一年度と三十二年度の比較においても、はっきり二百八十億という伸びは出ておるのですから、現状においてもそれだけの増収が期せられるというのだから、こういうふうにおっしゃるのですから、伸びていく、しかも、人間の方は、立っていくやつがすわっていくのだから、量的な伸びが一応ないとおっしゃるかもしれないが、貨物の方は、全部一応すわっているから、滞貨貨物がそれだけ動けば、それだけ運賃収入が当然ふえると考える。考えなければならないはずでありますが、そう考えると、貨客を合せて伸びは、三〇%の一五%だけは量的な伸びになる。こう見ますと、今おっしゃいましたように、五%相当額が二百八十億なら、一五%相当額は三倍になるから八百四十億になる。これは平面計算ですからそうなる。その上に、この予算で見ましても、八百二十八億というものは資本勘定へ繰り入れがある。資本勘定繰り入れといううちから三百六十五億を引いて考えるということからいきましても、五カ年後には、相当私は年間の剰余というものが出てくる、出てくるが、しかし、その出てくるうちから運営費、職員もふえるでしょうし、俸給も上るでしょうし、そういう伸びも考えなければならない、維持も考えなければならぬから、維持費も考えなければならぬ。しかし、綱持費は近代化されるから、今までのような老朽とは違って、相当減るとは思いますけれども、今までのような三百三十億——これは昭和三十二年度に取りかえ及び改良工事として上っておりますのは、三百八十四億、三十一年度が二百八十億ですから、平均すると三百三十億になるのです。それを一応考え、五百三十億というものは引いてしまって、それでもなおかつ六百億残ると、残れば、六千五百億を十五年間の償還でいけば見合うのじゃないかというのが私の平面計算です。(「自分の方の出した資料と違うような答弁をしちゃだめだよ」と呼ぶ者あり)

宮澤胤勇自由民主党運輸大臣

○国務大臣(宮澤胤勇君) 大体、今度の計画は、経済企画庁の産業の拡大の伸びに合せていますが、数字の点につきましては政府委員から……。

細田吉藏運輸省鉄道監督局国有鉄道部長

○政府委員(細田吉藏君) ただいまの点、補足的にお答え申し上げたいと思います。  三十二年度の数字の伸びにつきましては、ただいま申されました通りでございます。ただ、五カ年間をどう考えるかということは、この伸び方でずっと伸びるという考えをわれわれとしてはしておらないのであります。大体は昭和三十六年度の運輸数量を経済企画庁の方とも御相談をいたしまして、昭和三十年度をベースにしまして、年々四・五%ずつ上っていくのだ、こういうことで一応カーブを引きます。ところが、そのカーブを引きますと、昭和三十二年度は、そのカーブよりははるかに三十一年度も上りますし、三十二年度も上回るわけでございます。そこで、三十六年度のそのカーブで出ました最終の数字と、三十二年度の今立てましたかなり大きな伸びのものとを結びました数字で、五カ年間の収入を一応立てたわけでございます。従いまして、ただいま先生がおっしゃいましたような伸び方で伸びますれば、相当余るということになるわけでございますが、具体的な数字で申しますと、昭和三十六年度には三十二年度の三千三百億ばかりのものが三千八百億程度になる、こういう見通しを立てまして、それから経費の方は、いろいろ、たとえば電化ができて節約はできるというようなものについても、それを全部織り込みまして、具体的な数字を五カ年別に織り込んでおります。そういう形で織り込んでおりまするので、大体各年別に一三%程度が必要である、こういう数字になっております。

森八三一緑風会

○森八三一君 ただいまの説明では、私は了解いたしませんが、私の持ち時間が来ましたので、いずれこれは、分科会なりあるいは一般質疑で、もう少し数字を具体的に掘り上げて、十分検討さしていただきたいと思います。私の計算は、詳細申し上げましたように、一応の仮定はあります。三〇%伸びるということは、これは御説明にあったわけでありまして、おそらく速記にも残っておるだろうと思います。この委員会で聞いたときの御説明であったわけでありますので、そういうようなことから、その一五%ずつに区分をしたということは私の仮定でありますが、その仮定に狂いがあるならば、その狂いを詳細に、また明確にしていただきたい、いずれこの問題は、私はどうしても、運賃の値上げということは、いろいろ国民の心配しているインフレということに拍車をかけていく危険があるということがありますので、できるだけ避けていきたいという観点から申し上げておるのであります。どうしても老朽を直すということは、これは必至の問題でありまして、それをほうっておいていいということじゃありません。老朽を近代化するということは、どうしてもやっていただきたい。けれども、避け得られるならば、運賃の値上げということは避けたい、こういう一念から申し上げておるので、いずれ詳細に、他の機会に質疑をいたしたい。そういうことにいたしまして、本日は、この問題は留保しておきます。

吉田萬次自由民主党

○吉田萬次君 本日の質問者のしんがりを承わりましたによって、お答えになる方もゆったりとした気分で、しかしながら真剣にお願いいたします。  初めに、総理大臣兼外務大臣としての岸首相にお尋ねいたします。東南亜要人をいかにして招致するかという問題についてであります。それは東南亜におけるところの新興国の要人というものは、非常に高いプライドを持っております。しかしながら、すべての国が貧困である関係上、その旅費とか、あるいは宿泊費というものに困っておる。従って、日本へ来るということは熱望しておりまするけれども、しかしながら、その費用というものに困惑しておるというのが現状であると思うのであります。そこで、こちらへ参りましての待遇ということについて彼らの意を満たしてやり、そうして大ぜい来ることのできるようにするということにつきましては、外務大臣の公邸のようなもの、あるいは別館のようなものについて、それで宿泊するところの宿舎のようなものを作る。そして安く、しかも安易に、数日あるには数カ月逗留のできるようにしてやるということをいたしましたなら、私は、非常に東南アの要人が日本へ来訪するということにおいての便宜な問題であると、かように考える次第であります。これにつきましては、私は、実際問題として、この問題を痛切に感じじ帰ったのでありまするが、首相はいかにこの問題についての御感想を持っておいでになるか、お承わりしたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 東南アジア諸国から、いろいろ日本に来訪される人が多くなっております。ある場合においては、われわれは、国賓もしくは政府の賓客としてこれらの国の首脳者を呼ぶ場合もあろうかと思います。また、そうでない国、一般的な立場から来られる方もありましょうし、さらに、いろいろな技術者等を日本に迎えて、日本の国情を明らかにするような場合もありましょう。いろいろな場合があるわけであります。そうしてそれらに対しては、それぞれの待遇もしなければなりませんし、また、宿舎その他のことにつきましても、それぞれに応じて、日本側においてお世話するということが必要になると思います。ただ、そういう人々のために、特別の国として何か施設、宿泊の施設等を特に考えたらどうだというお考えのようでありますが、そういう問題につきましても、いろいろな来られる方の地位であるとか、あるいはこれを呼ぶ場合における日本の側においてもてなすのに、今申したようないろいろな程度と申しますか、なにもあることでありますから、それに応じた適当な方法をとるのがいいだろうと、こう考えております。今、特に学生とか技術者とかいうふうなものが日本に来て勉強するとか、あるいは日本に来て技術を修得するというような場合については、宿舎の設計はありますが、その他のなににつきましては、特別なものはございませんけれども、十分お世話をするつもりでおります。

吉田萬次自由民主党

○吉田萬次君 総理大臣は、経済外交ということを主張しておられまするが、この問題について、セイロンの片貿易について、希望かつ御方針を承わりたいと思いますが、セイロンの大使が、現在のセイロンの貿易が片貿易であって、十分の一の日本に対しての輸出よりしておらないというようなことから、その将来を危惧して、大へん心配しておるような状態であります。従って、この問題は、今はきわめて順調にいっておりまするけれども、将来に対する考え方をここで定めておきませんと、非常に私は憂うべき現象が起るのではないかと思うのであります。この問題について、首相は、外相はどんな考えを持っておいでになるかということと、それからもう一つ、インドのボンベイでありまするが、ボンベイがいわゆる商業の中心地になっております。従って、わが国の業者も、二十四社あそこへ出張しております。ところが、総領事館との間の融和というものが欠けておるように思うのであります。要するに、業者の方の言い分を聞いてみますると、もっともだと考えられまするし、また、総領事の考え方というものも当然なことと思うのであります。ひっきょうこれは、その意思の疎通を欠いておるということにあるのではなくして、むしろ私は、あの土地におけるところの商務官であるとか、あるいは技官であるとかいうものの不足から来ておるところの現象ではないかと思うのであります。かような問題につきまして、インド人は非常にうそを言うということを私は聞きました。華華さえ、インドの商人に対しては相当な手をやくというような場合において、インドとの貿易というものに対しては、やはり邦人としても相当考えなければならぬ。しかも、それに対する協力者としての総領事館というものも、また、それに対する方策を考えてなければならぬというような点から考えまして、対印貿易におけるところの将来というものから、私は、この融和をはかり、しかも発展をさせるという意味において、商務官あるいは技官の増派というようなことを考えておりまするが、また、その実際を見て参りましたが、外相はいかにお考えになるか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) セイロンとの片貿易の調整の問題につきましては、いろいろ私どもも苦心をいたしております。あるいは三角貿易の方法によってこれを是正するというようなことを考えて、いろいろ向う側と話し合いをいたしておりますが、なかなかこれの調整という具体的な問題になりますと、困難でございますが、いろいろな方法で、この片貿易を是正したいと考えております。  また、ボンベイの総領事館と業者等との関係が円滑にいっておらないというふうな実情について、さらに実情に適する商務官等の派遣の御意見がございましたが、東南アジア諸国に、経済的に日本が将来発展していくためには、この在外公館の人々が一面においては経済貿易等、産業等について、十分の理解と密接な関係を持つというような心がまえが必要でありますし、また同時に、その土地々々における商人、また、あるいは一般住民との間におきましても、十分に理解と融和をするような方法を考えていかなければならぬと思います。今日のこれらの国における在外公館等の組織なり人事なり、あるいは機構というようなものにつきましても、私としては、いろいろと実情に即してこれを強化し、実情に合うように持っていきたいということで、研究をいたしております。

吉田萬次自由民主党

○吉田萬次君 それから次にソ連の未帰還者の問題についてであります。この問題は、昨日千田君から質問もありましたが、私は、きわめて重要な問題であり、また、考えを多少異にしておる点から、お承わりしたいと思うのであります。それは、いわゆるソ連の交渉の任に当っておるところの、諸君が、疑心暗鬼を生ずるという意味から、この未帰還者に対する実際の数とか生死とかいうものを十分に打ちあけぬのではないかということを考えるのであります。要するに、いつ、どこそこで死んだというようなことに対して、ある程度まで明らかになっておっても、しかし、その日本人の考えというものが、家族の考え方というものが、どの土地において死んだということになれば、どういう事件の虐殺に連座しておりはしないかとか、あるいはいつ死んだということについてはやはりどういう……処刑を受けたのではないかというようなことを想像をたくましうする。もちろんソ連といたしましては、尼港事件以来しばしばわが国の邦人、いわゆるわが国の軍隊あるいは一般民に対しての残虐な行為をしておるという歴史的の考察から考えましても、やはり疑心暗鬼を生ずるのかもしれませんけれども、とにかくそういう考えから、実際に判明しておる部分まで隠されておるようにも聞き及ぶのでありまするが、かような点から考えますると、交渉はただ正面から普通の交渉をしておっても駄目だ、いわゆる胸襟を開き、そして前のことを帳消しにして、そして新しい立場において、納得のいく交渉によって、生死の不明を明らかにし、未帰還者の存在というものを個々に調べてもらうということが必要なことであるという点において、今度かような問題について新しくその議員を派遣せられるということでありまするが、この問題について、十分の御考慮が願えるかどうかということを承わりたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) ソ連における未帰還の人々や、あるいは消息不明の人々の実態を明らかにするということは、私はきわめて重要な問題だと考えております。すでに日ソ国交正常化の場合におきましても、ソ連側においても、十分誠意をもってそれに協力するということを明言をいたしております。また最近、最近ではありませんが、日ソ交渉が成立して、国交正常化すとともに、抑留されておった相当数の人が帰ってこられまして、従来消息不明であった人々のうち消息の明らかになった人々もありますし、いずれにしても、この問題をできるだけ早い機会に、実情を明確にすることは必要であると考えております。大使を向うに赴任せしめます場合におきましても、門脇大使に特にその点を私はあげまして、至急にソ連側と十分話し合って、この実態を明らかにするように努めてもらいたいということを申しておりますし、なお、大使館員の一人には、従来そういうことを扱ってきております厚生省の役人を館員の一人に任命して、向うに駐在せしめてこの問題を明らかにしたいと、かように考えておりまして、あらゆる面から十分、ソ連側に私は誠意をもって協力してもらえるものだと信じておりますし、また、両国の友好関係を進める上についても、ぜひともこの問題に関して誠意をもって進んでもらいたい、日本側からも十分あらゆる資料やその他を整え、これを明らかにしたい、かように考えております。(佐多忠隆君「関連」と述ぶ)

佐多忠隆日本社会党

○佐多忠隆君 今の行方不明者の調査の問題で、今の御答弁でも、それから昨日の御答弁でも、これは人道上の問題として善処したいというお話。そこで一点、今のに関連してお伺いしたいのですが、中国におけるそれらの調査に対して、中国政府は、これに積極的な協力をしたい、こういうふうに申し入れておる。そこで、もし中国政府がそれを受け入れるならば、日本政府としては、人道上の問題として、国交は未回復であるにかかわらず、日本の政府からしかるべき専門家を向うに派遣をし、あるいは駐在をせしめて、この調査に当らせるという御用意があるか、その点をお伺いしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) その問題につきましては、私はやはり必要に応じて、これは国交を回復しておるかどうかという問題とは別に、人道的見地から、必要な措置をとりたいと思います。  まず第一には、われわれのある資料をジュネーブの総領事を通じて向うの総領事に提供して、そうして明らかにしてもらうという方法をとりたいと思います。  次には、まず、これは、衆議院の特別委員会にもそういう意向があるようですが、議員の人々を派遣して、ずっとそういう引き揚げの問題を扱ってきておられる従来の議員に行ってもらって、そして明らかにする。また、必要がそれでもさらにあるということであるならば、私は、日本政府の役人のしかるべき者表向うの政府が受け入れるならば、向うに駐在せしめても、これは明らかにして差しつかえない、かように考えております。

吉田萬次自由民主党

○吉田萬次君 次に、国民政府と中共との問題についてお尋ねしておきたいと思います。  先日ラジオで、久しぶりに国民政府の蒋総統が記者団との会見で、現在は、大陸反抗の頂点に達しているということを言ったのを聞いたのでありますが、また張群が密使として派遣されて行ったというようなことも新聞で見たのでありますが、いずれにいたしましても、国民政府というものの今日の状態というものによって、私は、果して反抗ができるかできぬかということについて、すこぶる疑問を持つものであります。年令的からいいましても、蒋介石は七十一才であり、張群は六十九才であり、何応欽は六十七才であり、あの憂国の士の干右仁などは、もう七十八才になっております。そうしてそれらの諸君がきわめて実直に、政府を強固にまた維持しているというように考えられますけれども、しかしながら、その政治のあり方におきましても、数百人の議員のうちで、台湾本省の代表者というものはわずか五人にすぎないというような点、もちろん、これは、支那全体を一つの団体として、一つの国として考えてくれば、そういう数字が現われてくるということは当然だとは思いますけれども、しかしながら、今日の台湾人の意思というものは、台湾人の台湾というようなことを考えている、一般の状況あるいは二・二八事件のあり方から考えましても、私は、国民政府の将来というものに対して、すこぶる同情をしながらも、悲観的に考えるわけであります。そこで現在の状態を見ますると、なるほど日本の属領であったときには、治安が非常に保たれておった。しかし、現在はそう保たれておらない。その反面において、道路が非常に発達してきたというような点も見て参りました。なるほど道路は発達し、日本の国がよう着手せなかったところの、あの南北にわたるところの大山脈を東西にあける道路なんというものも、もうあくということも聞いております。鋭意アメリカがその力をもって援助をいたしているということをまのあたり見て参りました。その反面において、私は、個人的の考えかもしれませんけれども、台湾はアメリカの基地であり、沖縄はその橋頭堡でありはしないかというような感じまで受けたのであります。かような点から考えまして、国民政府の将来というものは、私は、あまりいい、そう楽観的にその将来を考えるということはできないように思うのであります。また、翻って私は、中共の窓といわれる香港で、中共の諸君にも単独で会って参りましたが、だいぶ向うも変っているように聞いて、いわゆる振り出しの中共ではないように聞いて参りました。シナは元来革命の国でありますによって、私は、その点から考えて、独特のやはり共産主義の国になってきはしないかということを考えまする場合において、やはり善隣という立場から、中共というものをよく認識しなければならぬということを考えます。従って、総理は、この間に処して、いわゆる国民政府に対し、中共に対する観念というものを、国際連合というものを主体にして行動をとられるのか、あるいは日本独自の立場においてすべての問題を解決し、将来に対してあやまちのないよう、悔いを残さないような方針で進まれるというのであるか、その点の御所見を承わりたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 中華民国及び中国大陸に対する考えにつきましては、しばしばいろいろな機会において私の所信を明らかにしておるのでありますが、申すまでもなく今、日本は、中華民国との間に、いわゆる台湾政府との間に日華条約を結んでおりまして、互いに友好関係を続けている国であります。しこうして国際連合におきましても、この政府が重要なメンバーの一人として、代表権を持って活躍をしておるという状態でございます。しかも台湾並びに中国大陸というものは、日本とはきわめて地理的にも近い、また、歴史的にも深い関係を持っておりますので、これに対する日本の態度というものをきめていく上におきましてはきわめて重要な問題でございます。ただ私は、ここで、いろいろな台湾政府の将来に関しての吉田さんの御議論もありましたけれども、今申しましたように、日本としては、これとの間に条約を結び、友好関係をなにしておるわけでありまして、今直ちにその将来等に対して、責任ある者がいろいろな観測を、意見を発表することは、私は差し控えたいと存じます。従いまして、いずれにしましてもこの問題は、中国大陸の問題とあわせて、日本としては真剣に各般の情勢を判断をいたして、善処していかなければならぬ問題でありまして、私としては、やはり国連中心に国際的には行動するということが適当であり、また、中国大陸との間に貿易関係やあるいは文化の交流等の問題につきましては、これを増進していくように考えて行きたいと、かように考えております。

吉田萬次自由民主党

○吉田萬次君 それから次は、日教組の一団がフランスへ行くという旅券を持って、そうして方向転換をして中共へ行ったという問題について、文部大臣にお尋ねしたいと思いますが、一問一答で簡単に伺いたいと思いますから、お願いいたします。この事実があったかどうかということをまずお伺いいたします。

灘尾弘吉自由民主党文部大臣

○国務大臣(灘尾弘吉君) お答えいたします。本年の一月中旬に、日教組関係者がフランスに向って、二班に分れて出発いたしまして、途中ビルマ及び香港から中共に入り、とうとうフランスには行かずに、三月上旬に帰ったように承知いたしております。

吉田萬次自由民主党

○吉田萬次君 その一団の人員はどれだけであって、いかなる種類の人が行ったか、伺いたい。

灘尾弘吉自由民主党文部大臣

○国務大臣(灘尾弘吉君) そのメンバーは、日教組の中央執行委員五名、県教組代表二十七名、法律顧問一名、新聞記者五名、それに国会議員が三名同行しております。

吉田萬次自由民主党

○吉田萬次君 フランスへ行くと言いながら中共へ行ったという、その間の事情というものについて、文部大臣に承わりたいと思います。独自の意思で行ったのか、あるいは指令なんかを受けて行ったのか。

灘尾弘吉自由民主党文部大臣

○国務大臣(灘尾弘吉君) その間の事情は、私どもにもつまびらかでございません。ただ、日教組側の説明によりますれば、途中で中共側からの招待があったので、途中で変更して中共に行ったと、かように説明しております。

吉田萬次自由民主党

○吉田萬次君 コースの変更と旅券法の関係について承わりたいと思います。これは、外務大臣ですね。

岸信介自由民主党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(岸信介君) 今の事件は、フランスに行くということで、ギャランティー・レターその他の条件も整えて申請がありましたので、フランス行きの旅券を発給したのであります。そうして、もしもこの渡航先をフランス以外に加えるという場合におきましては、旅券法第八条に基いて、その追加の手続をしなくちゃならぬことになっておりますが、その手続をとらずに、中共に行ったということなんであります。ただこのような場合、旅券法にはしからば罰則としてどういうふうにあるかというと、罰則は、現在は何もないのでありまして、ただ規定には、その場合には、追加の手続をしなくちゃならないということになっておりますけれども、それをせずに、罰則もないというのが今の旅券法であります。

吉田萬次自由民主党

○吉田萬次君 教員が外国へ行く場合には、身分の属する地方の教育委員会との関係というものがあるはずだと思いまするが、その関係は、どんなふうになっておりますか。

灘尾弘吉自由民主党文部大臣

○国務大臣(灘尾弘吉君) 今回行かれましたところの教職員の大部分は、教職員組合の専従者でございます。それでない一部の諸君は、あるいは休暇をとり、あるいは職務専念義務の免除を受けて参っております。

吉田萬次自由民主党

○吉田萬次君 順法の教育をするところの教員、道徳の実践の範を示すべきところの教員というものが、かような行動をとったということについては、すこぶる遺憾に思いまするが、文相はどんなお考えをお持ちになるか。

灘尾弘吉自由民主党文部大臣

○国務大臣(灘尾弘吉君) これは、私どもは、実は後に聞いた問題でございますが、今回出国するに当りましては、フランスに行くのであると、中共には行かないという誓約書を出した人が多数おるように聞いておるのであります。私は、いろいろ議論もございましょうけれども、公務員、特に教職員の諸君が一たん出した誓約書と違った行動をとるというようなことは、これは、教職員の信用にも関する問題でございますので、まことに遺憾なことと存じております。

吉田萬次自由民主党

○吉田萬次君 そこで、この問題をどう解決せられるかということでありまするが、地方公務員法の第三十二条には「職員は、その職務を遂行するに当って、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」、第三十三条には「職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」というような、はっきりした明文がありまするが、こういう明文というものを考察して文相はこの問題に対してどういう処置をとろうとせられるか。

灘尾弘吉自由民主党文部大臣

○国務大臣(灘尾弘吉君) この問題の性質はただいま、私が申しました通りでございます。これを公務員法によって処置するという問題につきましては、それぞれのケースによっていろいろ検討を要するものもございましょう。また従来の取扱いとの振り合いということもございましょうけれども、私どもといたしましてはかくのごとき事実につきましては、少くとも教職員はよほど規律を重んじてもらわなくちゃなりません。地方の関係当局に対しましても注意を喚起いたします。それぞれの監督者あるいは任命者の手元におきまして実情をよく調べました上で適切な処置をとるものと期待をいたしておる次第でございます。

吉田萬次自由民主党

○吉田萬次君 次に、売春の防止法につきましてその業者の転廃業の問題についてお尋ねしてみたいと思います。  この問題を質問するということにつきましては、ただ一業者というふうの考えでなくして、いわゆる弱い者に対するさらに追い打ちをかけるというようなことがありますによって、私はあえて質問をするのであります。大体売春防止法は法律第百十八号をもって公布され、昭和三十二年四月一日から施行され、三十三年四月以降は刑罰が課せられるというようになっております。大体この業というものは数百年の歴史をもっておるものでありまするによって、一朝にしてこれをつぶすということは一つの革命的行為のように考えられるのであります。従ってこれに対する準備というものも相当必要であると思うのでありまするが、しかしながら今までにこれに対する準備というものはあまりしてなかった。また将来もう一年のこの間にも、この問題についての考えというものがはっきりしておらない。要するに更生施設は何十分の一である、あるいは業者の転廃業は何パーセントに過ぎない、しかもどうかというと、今日これに対する全体の費用というもの、経費というものが、四億足らずで、この問題が解決されるということは、いわゆる二階から目薬をさすようなものだと思うのであります。そこで外国にはいわゆる売春の企業体というものがありませんによって、この企業体というふうのものを破壊するということにおいて、いわゆる外国なんかに対する面子の関係から破壊するということにおいて満足をせられるのか。またこのまま放任しておいたならば、鳩森小学校のようなふうのことができやしないかというようなことも考慮せられまするか。その間のお考えを大久保国務相並びに厚生大臣から承わりたいと思います。

大久保留次郎自由民主党国家公安委員会委員長・行政管理庁長官

○国務大臣(大久保留次郎君) ただいま吉田さんのお話がありました通り、売春防止法案は、つい先だって長い間の懸案として可決して成立しました。三十二年度におきましては、とりあえず売春関係者の婦人について、いかに身分を処理するかということについての相談所を作るという順序になっておりまして、来年度つまり三十三年度からは新らしい規則に従って売春の取締りをする、こういう準備をしておるのであります。ただいま申されました通り長い間のむずかしい問題であります。とにもかくにも慎重審議の結果、案ができましたが、私どもといたしましては、この案の精神にのっとって、今年度はもっぱらこの婦人の相談所の設立及びこの適用に力を注ぎ、来年度におきましては法の示した方向に向って取締りをいたしたいと存じておる次第でございます。しかし先に申しました通り歴史がありますから、歴史はある程度尊重いたしまして、無理なことはいたさないように……。(「おかしい」「売春の歴史尊重はおかしい」と呼ぶ者あり)

神田博自由民主党厚生大臣

○国務大臣(神田博君) ただいまの大久保国務大臣からのお答えの大体通りでございますが、(「ますますおかしいぞ」と呼ぶ者あり)この業者の転廃業の指導につきましては、これはなかなか、今吉田委員のおっしゃられるように非常にむずかしいケースだと考えております。しかし厚生省といたしましては、個々の業者につきまして、あるいは旅館を希望されたり、あるいはまた飲食店を希望するとか、適当な転廃業につきまして御相談に応じて、できるだけその要望に沿うような措置を講じたいと、こういうような考えでございます。

吉田萬次自由民主党

○吉田萬次君 この問題は人の忌む問題でありまするし、またかようなことを口にするというふうなことはいろいろと想像せらるるのでありまするけれども、しかしながら私は従業婦と対座した経験もありませんし、また業者の大ぜいと懇談したこともありませんし、また私は食を共にしたこともありませんが、どうして私がこの問題をかような席へ持ち出してお伺いするかということは、これを作るときに当って、当時の事情をいわゆる今日爼上にのぼして、そうしてこのあり方について御考慮をわずらわしたいがために立ったのであります。戦時中あるいはその終戦直前におけるところの社会情勢というものはどうであったかということを考えますると、当時私は愛知県の県会議長を勤めたり、一宮の市長を勤めておりましたが、挺身隊というものがありまして、各地方から工場へ、いわゆる国策遂行に対して、あるいは国家の隆昌というようなことを夢みて集ってきた純真なる青年あるいは壮年があったのであります。そうして、一番私に対して訴えたのは山梨県の諸君でありましたが、まあすべての諸君がこの性の問題について切々たる訴えをしておりました。また終戦のときに当っては、外国の、いわゆるアメリカの駐留軍が来るというようなことから非常に周章ろうばいして、そうしていかにしてこの駐留軍に対する性の問題を解決したらいいかという問題に対して苦慮したのであります。今日は笑われるでありましょうけれども、しかしながら当時この問題は真剣に考えられたのでありまして、  岐阜市などでは山間へ避難するような命令を出したというようなこともあるのであります。その後だんだん変って参りまして今日の状態でありますが、この問題によっていわゆる国の治安が保たれたというふうのことも考えなければなりません。当時の状況を考えてみますると、連合軍の最高司令官から公娼の廃止というものの覚書が出て、そうして公娼は廃止せられましたが、そのかわり特殊飲食店というものを許容せられ、そうして私娼行為というものが認められたのであります。その後政府の指示、指導のもとに結成せられまして、そうして非常な助長をはかられたという、その一例といたしまして、当時政府はR・Aという、いわゆる組合組織にして、業者五千万円の出資と、政府は五千万円の補助をして、そうしてその組合を作ったのであります。またその当時において最も大切とせられてあったところの米の配給におきましても一合ずつの配合をし、さらに寝具に至るまで世話をしたのであります。またかような状態でありまするし、売春の収入などというものに対しても非常に重税を課し、しかし今日でもなお重税、税収というものが一億九千六百八十万円あるのであります。この点から考えましても、ここに業者が転業をするというふうのことに対して、ただむざんに切り捨てごめんの態度をとって、そうして彼らに対する同情、いわゆる国民の一員としての同情というものがないということに対して、私は方法を講じてもらいたいと思うのであります。ただ私はその当時におけるところの状況を見ましても、今そういっていろいろ言われまするけれども、当時の久邇宮内閣のときに、どんな状態であったかということをみますると、いずれにいたしましても、私はこの過去というものを考えてみるならば、これは相当考慮せねばならぬし、弱いものに対するものに対し、あるいは世間がいろいろいうことに対して、極力反対するというようなことについては考慮しなければならぬかと思いまするによって、この点を、業者をいかにしてなくするかということについての質問をするのでありまして、これに対する国務相及び厚生大臣の答弁を承わりたいと思います。

大久保留次郎自由民主党国家公安委員会委員長・行政管理庁長官

○国務大臣(大久保留次郎君) ただいまお話を承わりました通り、この制度につきましては非常に古い歴史がありまして、多々、いろいろの経過も今お話になりましたような次第であります。しかしながら長い間かかりまして、この売春法案が生まれました以上は、この法案の精神に則って進むのが、私ども進むべき途であると信じております。今日話しを聞いてみますと、売春関係者の婦人が二十万人おる、これに関係する諸君が十万人、合計三十万人、この三十万人の人を二カ年間の間にこれを善導して指導するということはえらい仕事になると思いますが、しかしいやしくも法として生まれました以上は、適切妥当なる方法を考えて、法の精神に則って進みたいと考えます。(「議事進行」と呼ぶ者あり)

神田博自由民主党厚生大臣

○国務大臣(神田博君) ただいま吉田議員のお尋ねにつきましては、大久保国務相からお答えの通りでございまして、政府といたしましては、この売春法案が成立した以上は、この法案の実施に万全を期したい、先ほどもお答え申し上げましたように転廃業をなさるというようなことにつきまして、個々のケースにつきましては、できるだけ一つそういう希望をかなえるようなふうにいたしまして、(「何をかなえるのか」と呼ぶ者あり)旅館あるいは飲食店等の転廃業等につきまして、その希望をかなえるような措置をとりたいという考えでございます。(「議事進行」と呼ぶ者あり)

苫米地義三自由民主党

○委員長(苫米地義三君) 本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十四分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗