法務委員会 第4号
- 発言数
- 34 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1957/02/19
会議録
○委員長(山本米治君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 本日は、前回に続きまして法務行政の基本方針、昭和三十二年度法務省関係予算、同じく裁判所関係予算につきまして、御質疑のおありの方は御発言を願います。念のため申し上げますが、ただいま政府側からは中村法務大臣、井本刑事局長、福原保護局長、鈴木人権擁護局長が出席しておられます。
○宮城タマヨ君 前回の委員会で法務大臣に対しまして伺いたいことを、時間の都合で残しておきましたから、その点について少しお伺いしたいと思っております。内閣におきましても、ことにその当の責任者でいらっしゃいます担当大臣といたしまして、このごろの毎日の新聞に出ております年少少年のこの非行状態につきまして、さぞ御心痛であろうと思っております。私どももまた非常に心痛しておりますが、これにつきまして、一体内閣はどういう手を打とうとしているか、この大事な青少年問題、ことに犯罪上の問題について、何か討つ手が考えられておるか、ことに担当大臣でございます法務大臣の、腹蔵のない御意見をまず伺いたいと思います。
○国務大臣(中村梅吉君) 少年犯罪で初犯の場合等は、少年院の感化等によりまして、大体改過遷善をせしむることが可能であると思いますが、問題は、凶悪犯罪を犯したりあるいはしばしば少年院等に入りながら、なお犯罪行為を重ねるというような者の補導、改善が最も困難と考えられるところでございますが、現在法務省といたしましては、少年院等でできるだけこれらの少年に生業を与えるという意味におきまして、各少年院でできるだけいろんな部類の何種類もの仕事を計画いたしまして、それぞれそれに適応する作業につけてせて、職を覚えさせる、一面におきましては、また世の中に出て簡単に働ける前提として、そろばんなんぞを一生懸命に教えまして、少年院におります間にそろばんの二級とか三級ぐらいは少くとも取らせるようにするとかいうような方法を講じまして、体に職をつけるということが、一番釈放後の安定を期する上に必要であると思いまして、その方向に目下努力をいたしておる次第でございます。非常に宮城先生は少年院問題につきましては深い御関心を持って、いろいろ御研究をいただいておりますことを承わっておりまして、私ども非常に感謝をいたしておるのでございますが、われわれといたしましても、少年の犯罪につきましては特段の意を用いて少年犯罪を減少せしめ、また再犯の起らないように一そう力を尽して参りたいと考えております。
○宮城タマヨ君 今、大臣が仰せになっております少年院のことでございますけれども、この前の委員会でもちょっと申しましたのでございますが、実は榛名少年院の最近に起りました事件のために、当委員会から調査視察にいらしった方の報告の会議録を見ましたところが、群馬県榛名女子学園におきましては、現在収容者八十八名中、十九才以上の者が五十六名ありました、そのうちで、教化することが全く望みがない者が約半数以上いるとのことでございました。全く望みがない者というので、私は群集は違いましたけれども、矯正教育の対象にならない者が半数以上いるということはゆゆしい大事だということを申したのでございますが、その際、矯正局長から全国的な統計によっての御答弁がございましたのも。矯正教育の対象にならないという言葉ではございませんでしたけれども、非常に矯正教育をほどこすことがむずかしいものがやはり半数ぐらいいるという数をもってお示し下さったのでございます。それで、今、大臣が仰せになりました職業教育の点なんかも非常に大事だと思っていますけれども、私はここに責任ある答弁がいただきたいということは、一体全国五十八カ所ございます少年院におきまして、その半数以上がほんとうに矯正教育の対象にならぬということが、ここにこれは事実として出ておるのでございます。その事実を一体どうしたらいいか。それならば、その矯正教育の対象にならない者を刑務所の中へぶち込めば、それで目的は達しられるかということなんでございますか。いかにお考えでございますか。
○国務大臣(中村梅吉君) ただいまの半数以上というお言葉は、十九才以上の半数以上かと思いますが、全体の半数以上じゃないと思うのですが、私どももいろいろ庁内で聞いておりますと、年少少年の方は、大体改過遷善をせしむることが可能であるが、どうも年長少年の方は非常にむずかしさが多いというように聞いております。その結果、見方によりましては十九才以上の年長少年のうちの半数ぐらいが非常に困難である、こういう判断をされたものと思いますが、しかしこれは望みを捨ててはなりませんので、あくまでこれらの人たちも一人残らず改過遷善せしめて、そうして善良な市民になり得るように最善を尽すのが、われわれ法務行政を担当する者の責任であると思います。従いまして一そうこれらの点については実態も、私国会等一段落がつきましたら、調査をして、自分自身も見たいと思いますし、検討をいたしまして、遺憾な点のないように進めていきたいと考えております。
○宮城タマヨ君 今の法務大臣のお言葉でございますが、十九才、二十才のみの統計ではございません。これはこの前も申しましたけれども、刑事処分を相当として検察官に逆送された事件はどうなったかという東京家庭裁判所から提出されたこの一年間の統計を見ますというと、十六才も入っております。十七才の十人、それから十八才四十人、十九才が九十七人、女は十八才が一人で、十九才が三人で、どういうわけでございますか、この統計の中には二十才が出ておりませんけれども、年長少年だけに対してのこれはパーセンテージではございません。年長ということになると、ごく最近にも、大臣も御存じだと思いますが、実際の少年どろぼう二人組がお金を三万九千円も盗みまして、これはガラスを破って家に入って、たんすの錠をこじあけて、現金三万九千円を取ったという、そうしてそれが熱海に行ってまごついているうちにつかまったのでございますが、これは法務省の刑事局長をわずらわして私調べていただきました。それによりますというと、小学校の尋常四年生でございます。この尋常四年生が、しかも保護されて、親が責任を持ち、小学校の先生が責任を持って今家庭で保護されているようでございすが、一回ならず二回も同じ家に入ろうとしかけたのでございます。これは小学校の四年生が二人組になって、一々詳しいことを見てみますと、そらおそろしい犯罪行為をやっているのでございます。しかもいろいろ警察の目をごまかす意味でございましょうか、指紋なんか一つもないようにとっておりますし、ことに盗んだ家に置き手紙をして、そうしてどろぼうが荷物を背負って行く漫画なんか書いて、置き手紙をしてゆうゆうとその四万円近い金を持って行ったらしいのでございます。まあこれは普通のどろぼうでございますけれども、もう十六、七才で殺人それから強盗といったような問題もこのごろ毎日のように新聞に出ているのでございます。これは年長ということでなくて、年少者にも大きい問題がございます今日でございます。むしろ私はこの間は、十九、二十というような者を、つまり年令引き下げが問題になっているけれども、ある意味で言いましたら、もっと年少の非行少年について、私は法務省に責任を持っていただきたい。一体十ぐらいの子供をどうすればいいと法務省はお考えになりますか。犯罪少年についてはこれは少年法にもございますが、児童福祉法等によりまして、やっぱり地方長官からの通告によりまして、これは家庭裁判所の事件になるのでございますけれども、事件になりましたところで、今入れる所がないというようなわけでございまして、実に年少少年に対する手当という一番大事なところが、私この少年法にもまだ研究の余地がある点じゃないかというように考えるのでございます。この年少少年について、大臣のお考えいかがでございましょうか。
○国務大臣(中村梅吉君) この点、まことに近来少年の犯罪がなかなか減少いたしません状態にありますことを、われわれ非常に遺憾に存じておりますし、これに対する対処策については、ひとりこれは法務省だけでなしに、いろいろな角度から検討すべき点が多いと思うのであります。まあ映画の影響を受ける者がありますとか、その他社会情勢等に関係する面が非常に多いと思います。今御指摘になりました十一才の少年二人が窃盗をやって、その金で熱海に行ったというような出来事なども、まあ常識では考えられないようなことでありますが、これらも私ども考えますのに、映画とか探偵とかいうものも若干影響があるのじゃないだろうか、ただその子供の質が悪いというだけじゃないのではないかということも考えられます。さような次第でございますので、これは政府全体として今後こういうように世の中も安定して、経済状態も安定して参りました今日におきましては、国全体の施策を総合いたしまして、犯罪を犯す少年のなくなるように、あらゆる角度から進めて参る必要があろうと思います。なお、こういうような非行を犯しました少年につきましては、御承知の通り検察当局といたしましては、法務省関係の所管としては、一応事実を捜査いたしまして、家庭裁判所に送るわけでありますが、家庭裁判所には御承知の通りこういう少年を扱うための調査官の人たちがだいぶおられ、御婦人の調査官などちょうどお母さんぐらいに当る御婦人の調査官などもおりまして、ほんとうに親、兄弟の身になったようなつもりで調査官の人たちが実態を調査いたしまして、そして親戚、身内、縁者等を調べ、これらの人たちも呼び出して相談いたしまた上で、さてやったことは悪いけれども、この少年をどういうふうにして善導したらよろしいかと、こういうことを家庭裁判所としては審判官が中心になりましてそれぞれ判断をして、現在は処置をいたしておるのでございますが、なお、これはそういうような家庭裁判所の処置のみにたよるということではとうてい少年の非行問題をなくしていくという、いい世の中を築いていくということはできないんじゃないかと思いますが、さらに今後こういう経済、社会情勢に即応いたしまして、政府全体としていろいろな一つ施策を総合的に検証してやってみたい、かように考えております。
○宮城タマヨ君 大へん心強いお話を伺ったんでございますが、実はどうしても法務省だけでなくて、文部省、労働省、厚生省といったような関係各省が連絡を取って、もう少し根本問題に触れ、しかもそれは急を要することでございますが、つまりこの問題は捨て置きがたい迫った問題でございますので、一体ただそういうお言葉だけでなくて、こういう施策を立てようと思うという政府に何か具体的なお考えでもございませんでしょうか。私の願うところは、子供に関係をして責任を持っておりまする四つの省から、それこそつまり関係当局の方に民間の方でも加えて、内閣の審議会ができませんなら協議会でもよろしゅうございますから、至急にいろいろな問題をまじめに親切に討議をしていただいて、そうしてできればこの少年法に触れる問題なんでございますけれども、私はこの間大臣が東北で新聞社にお話しになった少年法を廃止するという記事、あるいは少年法の一部改正を考えているという記事を私拝見しましたきに、ほんとうは私はうれしかったんです、それは廃止するとか一部改正をするとおっしゃるほど今度の大臣は非常にこの少年法に御造詣が深いのだと。私も一体大事なこの少年法でございまするこれを一ぺん御破算にして、もう一ぺんやり直して研究してみなければならない点がたくさんあるというように考えておりますのでございますが、何か内閣直属の審議会とか協議会とかいうものについて御案でもございませんでしょうか、伺いたい。
○国務大臣(中村梅吉君) 実は内閣には、従来から青少年問題協議会という組織が作られておるのでありますが、どうも見受けますところ、関係各省を動員して活発な動きをしていないように見受けられますので、私といたしましてはとりあえずせっかく設けられておりまする青少年問題協議会を——先ほど申し上げましたように法務省はできた結果についての取り締り並びに改過遷善せしめる矯正の面、これだけが大体法務省の所管でありますが、よって起るいろいろな社会の環境等ありますので、お話のように厚生省、労働省、ことに労働省には婦人少年局というような部局もありまして、ここで婦人少年問題をやはり労働関係を通して研究されておりますから、そういうところとか、内閣の調査室とか、これら関係の役所がこの青少年問題協議会を中心に、一つ総合的な検討をしてみたい、かように考えておる次第でございます。実は私といたしましては青少年問題については、就任も浅いことでございますし、これという造詣を何ら持っておりませんが、就任以来役所の人たちに話しておりますことは、まあ所管の業務の中にも視察をすべきものがたくさんあると思うけれども、ひまができたならば、ひまのできるつど、少しずつでも少年院それから少年鑑別所、少年刑務所、まあこういうものを一つ優先的に見たいと思っておるということを実は申しておるような次第で、知識はありませんが、できるだけ関心を持ってこれらの問題に対処して参りたい、かように考えておりますから、どうぞ御了解下さい。
○宮城タマヨ君 今お話しになりました中央青少年門だし協議会の私は協議案員でもあって、二年ばかり出てみましたのでございますが、これはあんなおざなりのものをもってこの重大な問題を解決しようとお思いなりましたら大へんだと私は思っております。会長は官房長官でございますけれども、もちろん官房長官は見えません。それで私の先ほど内閣直属の審議会か協議会をお作り願いたいということは、この少年法を中心にしてという一つそこにしぼりを入れて目的を明らかにしてやってみたらどうかという考えでございます。これにはもちろん裁判官にも出席していただきまして、十分に裁判官、つまり家庭裁判所の裁判官をも交えて、調査官もちろんでございますが、もうほんとうにあすの日本を背負ってくれる子供をどういうふうにしたらいいかというあの真実心の固まりをみんな集めて、一つ少年法を検討してみたらどうか、先ほどもちょっと話が出ましたけれども、家庭裁判所の方から、これは家庭裁判所で取り扱わないで検察官に返せといって逆訴されましたものは、ほとんど百パーセントに近く検事が起訴しております。その起訴しております少年たちが、先の委員会にも申しましたように五五%が野放しになっている、この野放しになるのは一体どういうわけですかと判事に聞きましたら、これは刑務所へ入れる資格がないんだという話なんです。もっと悪いことをすれば刑務所へ入れられるけれども、刑務所にも送れない、事案が軽いからということなんです。だけれどもその子供は一体少年院に送るよりももっときつい処分をしなければなぬという家庭裁判所の認定によって逆訴されてれている者なんです。だが私はそこにおかしいと思うのは、少年法の五十五条は家庭裁判所への移送の条文でございますが、「裁判所は、事実審理の結果、少年の被告人を保護処分に付するのが相当であると認めるときは、決定をもって、事件を家庭裁判所に移送しなければならない。」と書いてあります。私この少年法の五十五条がとても妙味のある非常なありがたい条文だと思います。せっかく裁判所に送られて公判には回されましたけれども、公判廷にいってみたら、やはり刑務所へ突っ込むのには少し事実が足りない、だからもう一ぺん保護せいというので、家庭裁判所へ送ってもらえばもともとになるんですけれども、これが全国的に実行されておらない、あまりこの条文というものが生かされていない、非常にこの妙味のあるけっこうな条文というものが、死文にひとしい結果になって、おります。全国的に一体この五十五条がどのくらい生きておるかということを、どうぞ一つ大臣の方から調査をおさせ下さいまして、御検討願いたいと思っております。こういうような問題もございまするので、あらゆる子供に関係しております人たちを網羅して、ことに民間の青少年問題に興味を持っていらっしゃる方々をも加えて、審議会なり協議会なりをお作り願いたいということを大臣にお願いいたしまして、この問題はこれでおきます。 それから先ほど少年院をよくする一つのこととして、大臣は作業のことをおっしゃった、私はこの作業のことは非常に大事に思っております。ほんとうに作業を身につけて、子供を外に出していただくということはいいことでございますが、実際問題としましたら、あすこでわずかな町に作業を身につけても、それが社会に出てあまり役に立たないのです。ことに問題の子供ですから、なかなか人が採用してくれないのでございます、まあその点にも非常に問題がございますが、きょうはその点は深く掘り下げません。ただ、私はこの少年院が現存のところで役に立っておらない。ついこの間も申しましたけれども、今まで長く管区長として少年院をつまり指揮していらしった方が、最近弁護士におなりになりまして、ある子供の弁護にお立ちになりましたときに、少年院に送っても子供はよくならないから、どうか家庭に帰してくれといって、その子供をもらい下げたいう、現にこの近間にそういうもとの管区長があります。このことは、ちょっと聞きますと憤慨に値することでありますけれども、私はこの方は非常に正直な方で、ようこそ正直に言って、少年院に子供を入れたら悪くなるぞということを率直におっしったのだというように思っております。だが、私はこれは許されない、というのは、その責任にあるときにそうお思いになったら、なぜ少年院をもっとよくするという、子供をみんなあそこに入れても、よくなりますよとおっしゃるだけの誠意をもって一体少年院を監督して下さらなかったかという点について、私遺憾でございまあす。けれども、しかしそう言う私も、子供を少年院に送るということは、あまり好きではございません。刑務所に送ることは絶対にきらいだという心の延長で、私も少年院に子供を送りたくない。それは今の少年院は残念なことには、実に刑務所のにおいが強くて、あんな所へ子供を入れたら悪くなるのは当り前だ、だから集団逃走するということは私はあり得ることだと、私も子供の身になったら、ほんとうにそうだろうなと思います。だから私はどうしてもこの少年院というものは社会や家庭とあまり違うようなことをしないで、やはり第一番には食べものなんかも、一日にたった二十何円で食べていけというあの少年院の食事を見たら、私はこれは問題だと思う。食べものにしても、また着るものにしましても、みんな刑務所みたいな同じ色の青い着物を着せておったら、ことに女の子に青い着物を着せて冷飯ぞうりをはかせておったら、絶対によくならないと思います。衣類のことだってそうですが、ことに作業のことでございますが少年院や刑務所で、刑務所もことに少年は不定期刑でございますから、正直な者はすぐ出されるのでございますから、少年院や刑務所はほんとうにうそを言うことを覚える、つまり先生の前を、教官の前をうまくやっていけば早く出されるよということで、つまり表裏の生活をさせるということに私はなると思っております。ことに、少年刑務所と今日は申しませんが、少年院ではどうかしてほんとうに刑を受けているのでなくて、ここでりっぱな教育を受けていて、ここは一つの学校だよということを、為政者が子供の心理を思って、ここはいわゆる学問所だ、だから私は錠をかけるなんということはとんでもないことだと思っております。だが悲しいことには、ちょうど法務省の機構は、保護局に少年院が属さないで、矯正局の管轄、管掌になるのであります。これがもう教育から行刑にだんだん色が濃くなっていくという一つの大きい原因じゃないかと思います。この点は私は大臣に一つお願いして検討してもらいたいと思うのです。もちろんこれが、少年院が矯正局の管轄下になるという事情は、私も知らないわけでもございません。だけれども、もう占領下でなくなった今日、これはもう一ぺん検討してみていただきたいと思います。どうしても職員の交流が刑務所とあり、少年院の職員が刑務所出の方でありますから、どうしても刑務所のにおいが強くなります。いい方でもそういうふうな点があると思っておりますが、実は私はこの間の奄美大島に私が希望して行ったということは、あそこは全部の生活が貧乏でございますので、子供たちの人身売買が非常にある。十二、三から子供たちは売られております。女の子は売春婦として売られております。それからいま一つは非常に多産で、平均十二人くらい子供を生んでいる。そのために非常に犯罪少年が多いということを聞いておりましたので、あの島の子供の状態を見たいと思って私行って参りましたのでございますが、行ったらまた驚きました。名瀬に少年院があります、鑑別所もありますよと申しますから、それではそれを見に行こうとしましたら、相ならぬ、あなたは女だから刑務所の中に入れることはできない。どういうわけだ、刑務所に女を入れることはできないと言う。いや、私は刑務所じゃない、少年院を見に行くんです。刑務所の中にあるとは聞いておりましたけれども、場所は別にちゃんと区切られておって、刑務所の囚人の生活とは別だと思って参りましたところが、一緒でございますから、女は刑務所に入れないぞと言われました。そうしてだんだん交渉してみましたら、まあ法務委員というので入れて上げますということで、私は刑務所の中に入れてもらったのです。そうして私は入りまして、少年院の教官に会いたい、教官のお話を聞きたいと言ったら、いや、少年院には教官というものはおりません。だれが教育しているのですかと言ったら、みな刑務所の職員がやっている、看守がみな子供を扱っているんです。まあそのとき現在は、少年院の子供は八人、それから鑑別所に五人くらいおりました。それがみな囚人と同じような独房の中にぶち込まれております。そうして私は子供たちに会いたいと言って会いましたときに、まずおわびいたしました。ほんとうに国家が貧乏だから、あなた方にりっぱな学校を建てて、少年院という学校を建てて上げなければならないのに、それができないから刑務所の中にあなた方はぶち込まれているけれども、違うのよ、あなた方は学校に入っているのよと言いましたら、子供たちはきょとんとしている。そんなことを言っても、事実は刑務所の囚人と同じように、食べものも、日曜の教会のこともみな一緒にしている、それからだんだん話しておりましたら、その少年が一人泣き、二人泣き、そうしてほんとうにあなた方学校にいるんだから、ここでいい人になるんですよという話をしているうちに泣き出しました。だが私は大へん憤慨して家に帰りまして、矯正局長にその話をしましたが、もちろん私予算のないことはよく知っておりますから、もっとも局長を責めて済むことじゃない。だけれども、とにかく事実は事実として申しまして、だいぶ局長にきつく申しましたら、最近お話を伺ったら、少年院が別に建つことになったということでございます。だからない袖は振れないというけれども、実際できるのでございます。私そこが非常にありがたいところだけれども、行って見れば、やはりこれは私のようなものでもわんわん誓わなくちゃ子供のためにならぬのだなあとそのきも思っているのでございますけれども、何もかもそれは予算につながることとはいいながら、実に現在は、あの名瀬のような所はこれは特別でございますから、これをもって一般の標準、一般の話にすることはできませんけれども、しかし、それは日本の一隅にあるのでございますから、またそれに類似したような所も日本中には一ぱいあります。そこで、私はどうしても矯正教育が行刑の方に移っていっちゃいけない、教育をもっと向上してもらわなくちゃこの仕事はできない、そういうことが私は第一条件じゃないかと思っております。そこで、ことに作業のことでございますけれども、この娑婆でもよくかせげば金がもうかる、そうして金がもうかったらそれでいい生活ができる、買いたいものが買える、そうして今日の刑務所においてもそうでございますけれども、ことに子供らが一生懸命に働きたいという意欲を起して一生懸命に働いたら、子供らにりっぱな賃金を払うようにどうして政府は考えて下さらぬかと、長い間私は思っております。その賃金をもらって、もうここだけの生活で、先生方にだけよく見られれば早く退院ができるよ、仮出所ができるよというような根性でなしに、表裏なく労働意欲を彼らに起させるようにしまして、一生懸命に働いたらお菓子も買える、ネクタイも買える、とうとうしまいにはりっぱな洋服まで買えるんだというようなことであったら、子供らにも非常に労働意欲が自然に起ってくるのじゃないかと思います。 実は私は一昨年ジュネーヴに開かれました犯罪防止の世界会議に出ましたあとで、最後にイタリアに行ってみまして、イタリアで驚いたことに、ローマからやっと日帰りのできるくらいの所を非常に自動車を飛ばせていきましたが、そのくらい遠方でございますが、子供の共和国というものができております。これは国立でございますが、その共和国というのは十才から二十才くらいまで、これは犯罪少年だけじゃなくて、親のない者だとかあるいは虐待された子供だとか、それから捨て子だとか、とにかく問題少年が十才以上みんなそこへ、多くは希望して行くのでございますが、その中には犯罪少年が一ぱい入っております。そうしてそれが共和国で、子供たちが十才から大てい十八才くらいまでの者が三班になって、ちょうどそのとき百六十人子供がおりました。そうして市長を作って、市長を中心に自治制で、何でも説明する人は裁判と言いましたが、裁判というのはおかしいことですけれども、裁判も経済も、それから病気の看護もとか、いろいろ申しましたが、そういうことを全部子供が自治によってやっているのでございます。しかも午前中はおもに学科で、午後働くのでございますが、場所が山あり、畑あり、しかも一面は海でございまして、魚がとれる。そうして百姓をし、豚を飼い、鶏を飼い、それからある者は焼きものを焼いておりまして、それでちゃんと毎日お給金をもらっている。それで物を買い、お菓子を買いたければ買うし、また日曜日には映画にもいくし、何にも拘束されておりません。社会生活とちっとも違っておりませんから、子供たちは大へん弄んで労働しております。そうして銀行が出張って貯金を奨励しておりますから、余った金を子供たちはみな銀行に預けております。大へんおもしろい生活を私は子供の共和国で学んできたのでございます。それと反対に、手錠をはめたり、それから部屋にも錠をかけたりして、そうして働くことがで罪ない、働きたくても何も仕事がないということだったら、彼らは何を一体しているか。イタリアのそういう施設を見惑う必要はないと申しましても、これは考慮するのに参考にもなると思っております。一つ子供らの生活を、これは少年院だから特別で、これは一種の刑務所だというふうに思わせないようなやり方はたくさんあると思っております。 一つ法務大臣の御就任中に、少年法を中心として一段と飛躍していただきたいということを、私お願い申し上げまして、まだまだいろいろな点がございますけれども、あとにもっと問題がございますから、このくらいにして、本日私は法務大臣に質問やらお願いやら申し上げておりますのでございますが、これらのことについてもし大臣の御答弁が願えたら幸いと思っております。
○国務大臣(中村梅吉君) 非常に御熱心なお言葉をいろいろと拝聴いたしまして、私どもといたしましても少年の問題は最も意を用いなければならない点と考えておりますので、現在の少年院のあり方は、私まだ少年院は幾つかしか見ておりませんが、現在も一応部屋に一人ずつ入れまして、そしてその少年の性行、性格等判断して、鑑別が済み、そうして一定の時期が過ぎますと、今度はちょうど寄宿舎のようになって、何人かづつ同じ部屋に入って、その部屋一のドアをあけて自由にほかの部屋に遊びに行けるし、読書もできるというような工合に、今施設が変つつあるようでございますが、なおこれでは宮城さんの御熱心なお立場からごらんになっても御不満でございましょうし、国全体として考えましても、こういう点はさらに一そう改善をいたしまして、少年をほんとうに心からなおるように指導していかなければならない、保護、補導のために全力を尽さなければならぬ、かように考えます。 それから先ほどの少年問題についての何か今内閣に、先ほどの協議会だけでなしに、ああいう手ぬるいものでなしに、もっとしっかりした機構を作って、政府全体として研究されたらどうかというお言葉につきましても、一つよく検討をいたしまして、私どもの知っている人にも家庭裁判所の少年係の判事をやっていらっしゃる方あるいは調査官をやっていらっしゃる方等もございますが、この人たちはこの人たちでやはり相当苦労をして、その少年のやった非行に対するいきさつ、それから動機、家庭の事情、何のためにこの子はこうなってきたかということまで、やはり苦労して調べておるようでありますから、これらの実際そういうことで心労をして、犯罪の動機等については多くの事件を扱って、経験豊富な人たちにも参加してもらえるような、何か検討の上、機構を考えまして、そして御趣意に沿うような一つ方向へ、私どもとしても当然これは努力して行きたい、かように考えております。
○宮城タマヨ君 ありがとうございました。 それから委員長にお願いでございますけれども、何のかんのと申しましても、やはりこの予算措置をしていただかなければならない点がたくさんございますので、いっかい機会に大蔵省の当局を一ぺん呼び出していただくことをお許し願いたいと思っております。
○委員長(山本米治君) はい、了承いたしました。
○一松定吉君 ただいま宮城委員から少年犯罪に対する取扱い等について、非常に微に入り細にわたり、しかも同情ある御質問があったのでありますが、要するに犯罪少年に対する待遇だとか教育だとかいうようなことが、現行制度で不完全であるのだから、それを完全にして、これらのものの教化、改善の資に供するようにしなければならぬということが要点であったようであるが、私は一つきょうは最高裁判所の裁判官の待遇問題について、少し聞いてみたいのであります。これはわれわれ国民の行いということが、年々歳々改善されて、りっぱな国民の素質を備えるようになるについては、いわゆる教育ということが最も必要であると同時に、反社会性の行動をとる者に対して、何人が見ても実にりっぱな裁判である、こういうような裁判であることによって、国民の行動というものが教育とともに是正されて、犯罪というものが少くなるのだというような結果を招来するのには、まず裁判官というものの素養、人格、学歴というものが最も必要でなければならない。そのうちでも最高裁判所の裁判官に最もそういうことを、われわれの間において望まなければならぬものである。そこで今の最高裁判所の裁判官は、法の定むるところによると、十五名ということになっている。それで、そのうちの五名は、いわゆる裁判官であった者、あと五名は学識経験のある者、あと五名は弁護士という方面から、五人つつの割合で採用するというようなことになっているようであります。 そこで私が伺いたいことは、裁判官——最高裁判所の裁判官である以上は、世間から非常な尊敬を受け、待遇も非常にりっぱである、一度最高裁判所の裁判官になったならば、どこまでも職責を守って、終生自分は国家のために尽したいというような考えを持ってもらわなければならぬと思うのです。ところが、近ごろの最高裁判所の裁判官は、弁護士からなったような人がどんどんやめる。いわゆる法定年令の七十才に達したがためにやめるのは、これは法律の定めるところによってやめるわけでありますが、まだ法律に定める七十才にならずしてやめて、弁護士になる人がある、これは一体どういうわけか。それから弁護十一の中から最高裁判所の判事をとろうとしても、なかなかおいそれと返事をする人が少い。ちょっと例を言いますると、私の知っているところでは島田武夫君や小林一郎君、伊勢勝藏君は、ぜひ最高裁判所の裁判官になってくれと言うて丁寧親切に、いわゆる三顧の礼をもってしたかどうか知りませんが、非常に懇請したけれども、断じてならない、一面にはまた弁護士をしておった人が最高裁判所の判事になって、まだ七十才の法定年令にも達しないでやめた者——長谷川君とか、あるいは庄野君、谷村君とか木村君というのがそれ。こういうのは一体なぜ量高裁判所の裁判官になることをいやがるか、あるいは最高裁判所の裁判官になっても定年のこない前にやめるというような実情を探ってみると、どうも最高裁判所の裁判官になっても食えない、こういうようなことであると自分らは厄年になるまで勤めても、結局生活が豊かにならぬから、老後を楽しむことができないから、それよりも早くやめて弁護士になった方がいいということでやめた方々が、私が今名前をあげたところで数氏ある、また最高裁判所裁判官になれということを慫慂しても、おれはならぬと言って断わったり、さっき例をあげた人は皆そういった意味でありまして、ことに先般欠員のあったとき、弁護士の中からとろうとしてしきりに交渉したが、だれ一人自分がなろうと進んでなったものはなくて、ようやく高橋潔君が、それじゃなろうかといって、多く勧められてなった。しかもなってみると、高橋君はびっくりしている。これは私がうわさに聞いたのであって、高橋君から直接聞いたのじゃないが、こういうような待遇です、最高裁判所の裁判官には、いわゆる税金はかかるけれども勤務手当もない、あるいは家族手当もない、そしてスライドもしない。今八万八千円という月給であって、そうしていわゆる地域手当というものが二万二千円あって合計十一万円あるが、そのうちから税金や都民税等を差し引かれると、一ヵ月でわずか六万二千円、この六万二千円以外には何も収入はない普通の行政官だとかというような人には、いわゆる勤務手当があり、家族手当があり、そうしてスライドする。その上に職務に関係あるないは別として、いろいろな贈りものがある。ずいぶん生活が豊かである。しかるに最もこの人権擁護の立場において最高の地位におらなければならぬ裁判官になり手がない、あるいはなっても早くやめるというようなことについては、そこに今私が申し上げたような幾多の欠陥があると思う。この欠陥については、ちょうど片山内閣時代であったと思いまするが、どうもこういうようなことでは最高裁判所の裁判官になり手がない、最高裁判所の裁判官というのは人格が高潔であり、そうして学力は非常に高く、そうして経験を持ち、そうしてほんとうに国家のために熱を入れて職務のできるような人でなければならぬ。要するに人格の高潔で、人から尊敬される人でなければならぬのだ、そういう人に対する国家の待遇が普通の文官並みではいけないから、これは少くも国務大臣より以上の地位を与えなければならぬというのが私どもの主張でありました。現にその当時の最高裁判官であった塚崎直義君が最高裁判所の次席裁判官として、私はちょうど厚生大臣であったと思うが、そういうようなことの話だし、片山内閣でも、もっともだ、鈴木法務大臣も力を入れて、一つ国務大臣と同一待遇にしようということで、ずっと地位を上げたことが、最高裁判所の事務に携わっている方はよく御存じだと思うところが今私が申し上げるように、いわゆるきまったところの月俸八万八千円で、そして地域手当が二万二千円で十一万で、そのうちから税金や都民税等を引かれると残りは六万六千よりほかない。何もほかに収入はありません。これでは生活ができないから、一つ最高裁判所の判事になってくれといっても、弁護士の有力な人はならない。またなってみても、これではどうも最後が思われるからといって早くやめて弁護士になって、最後の老年、老後を楽しもうというようなことで、定年にならぬうちにやめるというような現状です。これはどうも私どもは最高裁判所の判事を待遇する道でないと思う。でありますから、あるいは最高裁判所の判事になる人はどんな人かというと、非常に財産ができて、もうおれはこれで収入は一つもなくても老後の生活は十分に楽しめる、そういう人か、しからざれば弁護士だけでははやらぬ、これじゃ食えないから、六万六千なら食えるからなろうかという人間か、あるいはもう年をとって、ほんとうに依頼者も何もないというような人以外にならない。これでは最高裁判所の裁判官というものに対する国民の信頼というものはなくなるわけであるのだが、一向この点について政府当局が最高裁判所の判事の地位を高め、待遇をよくし、喜んでその地位につくことを望む人が多いように、あるいは一たん地位についたら定年までやめないようにというようなことを考えていないように私は思うておりますが、いかがですか、それを一つ十分に答えていただきたい。
○説明員(鈴木忠一君) 大へん最高裁判所の裁判官に御理解のある御質問をいただきまして、事務当局といたしましては大いに感謝いたすわけでございます。お説の通り、最高裁判所の判事になられてから、定年を待たないで退官をなさった例が最近にございます。それから最高裁判所の裁判官に定年その他の理由で欠員が生じた場合に、その補充の判事を在野より求めようとする場合に、補充難とまでは申されなくとも、相当最高裁判所に入られることを、在野の弁護士しかも有力な弁護士等で、ちゅうちょをなさる傾向のあることは、これはただいま御指摘になったような幾つかの例がございます。その理由は、各個人々々によって異なりましょうけれども、共通した理由といたしましては、今、一松委員から御指摘になりましたように、最高裁判所の判事としての待遇が、必ずしも最高裁判所の判事としての社会上の地位を保っていくほど十分な待遇をされておらないということであろうかと存じます。当初、昭和二十三年当時に裁判官の俸給というものが国会でも問題にされ、社会でも問題にされまして、戦後の新憲法のもとの裁判官というものは、一般公務員に比して、より十分に好遇をしなければならないものだというようなことで出発いたしまして、そのときの標準といたしましては、ただいまも御指摘になりましたが、最高裁判所の長官は内閣総理大臣と同じに待遇をし、最高裁判所の判事は国務大臣と同様に待遇をするという、そういう標準のもとに出発いたしたのであります。しかしその後国務大臣等は、多くの国務大臣が国会議員をかねております関係から、国会議員としてのいろいろな手当等も加わりましたために——もちろんそれは国会議員としての経費も必要でありますけれども、実収入の点のみを最高裁判所の裁判官と比較いたしますと、平均の月額において相当な隔たりがありますのみならず、一般の公務員に比べましても、最初各省の次官は判事の一番下の五号と同じ待遇でありましたものが、その後判事の一号までと同様に待遇ができる十五級職というのができました。その上、一般公務員の十五級職等に対しましては、二三%の管理者手当というのがつきます。従って各省次官の俸給というものは判事の一号の俸給をはるかに上回るということになりましたので、その各省の次官との俸給の手取額の総計を比べましても、最高裁判所の裁判官というものはわずかに高い、九百何がしか。九百円ばかりしか実額において手取額が上回っておるにすぎないというような状態になっております。そういう状態のもとでありますから、毎月の手取り額というものは、金のことで非常に恐縮でございますが、ただいま御指摘になりましたように、六万円ちょっと、六万二千円、三千円を欠けるだろうと思います。そういうような実情にありますので、在野から相当な年令をもって最高裁判所に入られて、在野とは異なった神経を使い、山積しておる事件と取っ組み、しかも在野時代の報酬に比べますと、はるかに低額な報酬をもって生活しなければならない、それに対して最高裁判所の裁判官たるがゆえに、社会的に非常な尊敬が得られるとか、その他の面で特段の代償が得られるかとかいうことを考えますと、必ずしもそういう方面においては十分とは言えない。もちろん法のために、あるいは国家のためにというような意気込みで、経済的なマイナスという点を顧慮しないでおいでになっていただき、そして現に大いに活躍しておられる在野出身の裁判官がございますけれども、それを多くの人に期待するということは、現在の最高裁判所の裁判官の待遇をもってしては、どうしても困難だろうと存じます。共通した原因というのは、やはり結局経済的な待遇という面においてその理由があるのではないかと存じます。そしてふだんの待遇がそのようにおとっておるだけでなくて、学識経験者ないしは在野法曹からということで最高裁判所の裁判官を求めようとすれば、どうしても六十才前後の経験者ということになりがちだと存じます。最近入られた河村裁判官、高橋裁判官、いずれも六十三才、六十二才というような年令の人たちであります。こういう人たちが、最も円熟して働き盛りのところを、最高裁判所に来られて、そしてその全精力を裁判事務に傾倒されて、さて七十才の停年になって再び在野に帰られるというような場合にも、何のその労に報ゆべき制度というものがないわけでございます。恩給と申しましても、普通の恩給は十七年でございますから、最高裁判所の裁判官として在野から来られて、十七年ないしはそれ以上裁判官としてお勤めになって定年になるということは、これはほとんど期待し得ない状態だろうと存じます。そういう点でも、退職後の優遇という点においても、最高裁判所の、ことに在野から来られた裁判官に対する待遇という点では、非常に不完全きわまるものと申し上げていいのではなかろうかと存じます。私ども事務局としましては、そういう点で最高裁判所の裁判官に対するふだんの待遇はもちろんのこと、それから定年でやめられたときの退職後の恩給のことにつきましても、従来ずっと事務局として、は努力して参ったわけで、関係の方面にいろいろ交渉をいたしましたのですけれども、現在までついぞその実現の運びに至っておらないような実情でございます。
○一松定吉君 ただいまの御説明に上りましても明らかでありまするように、ほんとうに私は日本の人権擁護の最高峰である最高裁判所の裁判官の待遇というものが、今、説明員の御説明のようなことであれば、ほんとうに日本の法律の尊厳を保つという上において、はなはだ心毛となく感ぜざるを得ないのであります。そこで、どうしても私どもは最高裁判所の判事だけは、国務大臣同一待遇じゃない、国務大臣より以上の待遇を与える。そうしてりっぱな人々を招致して、人権の擁護に当り、国民が最高裁判所の裁判ならばというて、まるで神様の御宣告を受けるような考えをもってこれを迎えるような考えを持たせなければ、法の威厳というものは保てません。この点は最高裁判所の方に直接御関係はないけれども、法務大臣としてのお考えもそういうようにあることによって、法の威厳が保てるものであると私も考えております。その点について、一つ中村法相はどういうようなお考えを持って——直接裁判官に対して指揮監督権はないけれども、法の威厳を保ち、法の尊厳を維持する上においては、そういうことが必要であるというこの私の考えについての御意見を、一つ述べていただきたい。
○国務大臣(中村梅吉君) いろいろ御指摘をいただきまして、最高裁判所の裁判官の待遇等、いろいろ検討すべき点はお説の通り私ども同感に考えております。ただしかし、これは国務大臣との関係、いろいろほかとの関係もございましょうから、私がここで明確に賛成をしてしまうということがいいか惑いかについて、私ちゅうちょいたしておりますので、十分に御意見の点を体しまして検討いたしたいと思います。
○一松定吉君 御新任当初の法務大臣でありまするから、御検討のこともたくさんございましょうから、大いに一つ御検討して、今私が申し上げたことがもっともだということであれば、閣議において十分にそういう意見を述べて、内閣の方針をそういうふうに進めてもらいたいということを特に私はお願いしておきますが、私はこの点につきまして、イギリスの一九五四年にいわゆるチャーチルが最高裁判所の待遇を改善をしなければならぬ、物価がこういうようにだんだん上って貨幣価値というものが下った今日、今までのような待遇ではよくないということで、最高裁判所の長官並び最高裁判所の判事の待遇を改善するということで、改正案を上下両院に提出して、そうしてそれに対してアトリー前首相も賛成演説をして、上下両院が一人の異論なく最高裁判所の判事の待遇を上げ、月給を上げたという記事を見まして、ほんとうに感心しておるのです。その一節に、チャーチルが言うておるところによりますると、裁判官の待遇を上げて、そうしてその地位の向上をはかるということは最も大切であって、これはイギリスのすべての政治の上において先んじなければならぬことである。こういうような意味において自分は今度この裁判官の地位を上げるということについて努力するのだか、一つ皆さんもそういうようにして、法の威厳を保ち、ほんとうに国民が法を尊敬し、法に従い、そうして裁判官というものの地位の非常に占いということを認識し得るようにしなければならぬのじゃないか。これについて一つこういうようにしてあげようというので、にわかに非常な高い待遇にかえて、今ではわが日本の最高裁判所の裁判官のとる月給の六倍の高さをもって待遇せられておるということは、これはこういう方面に御研究のある法相においてもおそらく御承知のことであると思います。最高裁判所の事務当局においても御承知のことであろうと思うが、こういうようにほんとうに最高裁判所の裁判官の地位を高め、待遇をよくするということになると、いい裁判官が出てきて、国民から最高裁判所の裁判だからということで信頼を受けるというようになり、法の威信というものが非常に高まる、こういうことについては一つぜひ最高裁判所の方面からも内閣に十分働きかけて、そうしてこれが早く実現するように私は希望したい。それと同時に、今事務当局のお話にあったように、この最高裁判所の裁判官の恩給というようなもの、最高裁判所の裁判官が七十年の定年に達してやめるときに、弁護士から採用された人は何らの報いられるところがないということは、ほんとうにこれはお気の毒だ、イギリスのように、裁判官は定年もない、いつまでもやれる、そうして、しかも十年以上勤めて年令が七十才になってやめたときには、死ぬまでその俸給が給与されるというような待遇は、今、日本の財政上望めますまいけれども、せめて恩給ぐらいは、これは国務大臣と同じような方法によって支給する必要があると私は確信しておる。御承知の通り、国務大臣の恩給は、国務大臣を七年やれば当然恩給がつく。国務大臣以外の公務員は十七年。そうすると、最高裁判所の判事は、いわゆる国務大臣と同じような恩給というようなことの制度がない。ほかのことは国務大臣と同一待遇ということになっておりますが、実は、このことは片山内閣のときに、恩給のことについて、ほんとうの打ちあけ話をするわけですが、気がつかなかった。悪い話ですが。裁判官には官舎を与え、秘書官をつけ、そうして地位を向上せしめるということはやった。警察官を護衛につけるといったが、それは必要がなかろうということでやめたが、恩給は考えつかなかったためにそのままになっておる。そこで、普通の裁判官や検事から最高裁判所の判事になった者、その地役人からなった者は、もう最高裁判所の判事を二年しても三年しても、前の官吏の年数と通算すれば、大がいの者は十七年以上になるから皆恩給がつく。ところが弁護士からなって、官歴のない人は、今当局のお話のように、大がい六十才以上でないと最高裁判所の判事になる信用もなければ価値もなければ経験もないということで、候補者に入らない。六十才で最高裁判所の判事になるとすると、定年の七十才まで仕えても、いわゆる十年間だから恩給年限になりません。だから、だれ一人恩給をもらっていない。塚崎、長谷川、庄野、谷村、木村君だれ二人恩給がつかない。そうしてやめているが、今の眞野、小谷、小林、河村、高橋君、こういう五人の人も、これは十七年たたぬうちにみな七十才になってしまう。そうして恩給も何もない。これははなはだ私はよくないと思うから、やはりこういうふうな人々に対しては、国務大臣と同じように七年たてば恩給がつくという制度を早く設ける必要がある。それを設けたからといって、すぐに予算に大影響を及ぼすということにはなりません。イギリスのチャーチルやアトリーなどが賛成演説をしてイギリスの大法官やこれらの判事の待遇をよくしたということに比ぶれば、日本政府ももう少し目ざめて、こういうことをやるということが、人心の頽廃を防ぐ上において、裁判の威信を高める上においても、またこういう方面に人材を集める上においても、非常に必要であることを私は痛感しておるのでありますが、この恩給についてのお考えは、最高裁の方はどうお考えになっておりますか。これを一つ腹蔵なく。
○説明員(鈴木忠一君) 最高裁判所の事務当局といたしましては、最高裁判所が発足いたしました当時、ただいま御指摘になったように、待遇は、内閣総理大臣または国務大臣と同一待避ということで発足したのでありますけれども、恩給のについてだけ、国務大臣と同一に、最高裁判所の裁判官を七年したならば普通恩給がつくということの改正は実は最高裁判所事務当局も気がつかなかったらしいのでございます。私はそのときおりませんでしたけれども、しかしすぐにその点に気がつきまして、昭和二十三年の八月以来、昨年の一月に至るまで、前後五回、内閣恩給局等に、事務系統から、ぜひ最高裁判所の裁判官をも恩給について国務大臣と同一待遇に恩給法の改正をしてくれ、文句はきわめて簡単にできる改正であるし、予算といっても、すぐに多額の予算を必要とするものではないからということで、繰り返し繰り返し実は交渉をいたしておるわけです。あるときは、内閣の官房長官等にも事務総長がお目にかかって、最高裁判所の意向を伝えました。これは、今も御指摘にたりましたように、決して従来裁判官をやっておった者の待遇をよくしようという意味でなくして、在野から人材を得るための措置として、いわば裁判所の制度の一環としての意味でありまして、在来判事をしておる者は、こういう規定を設けなくとも、かりに最高裁判所に入っても入らなくても、十七年やっておれば恩給がつくわけでございますから、私どもが事務当局としてそれを要望したのは、このように在野から来られる人を優遇する道を講じておいて、在野から人材をたくさん最高裁判所に吸収するための方法として主張して参っておりたのであります。しかし、政府の方は、——私はきょうは政府委員という資格でここで立っておるわけですけれども、こういう問題に関しては実は政府でなくて、政府に対する力であります。政府の方は、最高裁判所の裁判官を国務大臣と同一に待遇をすると、ほかの認証官にも影響をする、ほかの認証官をもやはり同一に待遇をしなければならない、しかも、恩給法の六十条でございましたか、国務大臣七年という条文は、実は恩給局の方の技術的な考えからすれば、あまり好ましい規定ではない、早晩これは改正をしたいと自分の方では思っておる、そういうところに、最高裁判所の裁判官も国務大臣と同一待遇をするという改正をすることは、技術的に困る、それに、六十条の四項によって、国務大臣七年で恩給をもらったという例は従来ないのだ、そういうような理由を言って頑強に私どもの要求に応じないわけであります。私どもはこれに対して、とにかく発足当時のプリンシプルとして、最高裁判所の裁判官は国務大臣及び総理大臣と同一に待遇をするということで出発したのであるし、現に国務大臣の恩給についての特別な規定がある以上は、かりに近い将来改正するにしても、とにかく自分たちは、この法律を改正して最高裁判所の裁判官をも同一にしてもらいたい、従来七年で恩給のついたという例はないかもしれないけれども、それは、従来の国務大臣が多くは前歴が官吏出身者であった関係でなおいのであって、新たに最高裁判所の制度として、従来官吏として経歴のない在野から優秀な人を迎えるという新しい制度のもとにおいては、必ずこの七年で恩給がつくことにしておけば、その恩給の恩典に浴すべき人が出てくるに相違ない、だから前に例がないということは、われわれの要求を拒絶する理由にはならないと言って、いろいろ理論的には闘争して参ったのでありますけれども、現托に至るまでなかなか最高裁判所の主張は好転をいたさないわけであります。この恩給については、日本については国務大臣と同様に、在職七年をもって普通恩給をつけるということが当然のことだというような決議をして、内閣の方にもそういう上申をしておる例もございます。最高裁判所の裁判官会議としても、今申し上げましたような趣旨で、在野から来られる人に対する特別な措置として、この改正は当然すべきだということを繰り返して決議をしておる次第ですけれども、現在に至るまでこの改正というものが実現しない状態にあるわけでございます。
○一松定吉君 だいぶ事情がわかって参りましたけれども、一体今まで七年で恩給をとった者がいないから、最高裁判所の判事に七年たって恩給をやるという措置はできぬというようなことはだれが言うのです。その人の名前かもしくはその役柄をあげて下さい。私は大いに……
○説明員(鈴木忠一君) これはもうやめられましたけれども、前の恩給局長はそういうことを強く主張しておりました。
○一松定吉君 まあやめたからしていいですけれども、そういう全く法の威信だとか法の尊厳だとかいうようなことを理解していない、裁判というものを普通の仕事と考えておるような人のことであるから、それは論ずるに足らぬので、現在おる人なら私は大いに国会で追及しようと思ったのですが、それはやめたなら今さら追及しても仕方ないが、中村法務大臣も、国務大臣というお立場において、内閣で一つ十分こういうことで意見を述べていただきたいということを私は特にお願いしておきます。いずれ私は法務委員会においても予算委員会においても、そういうことの反省を求めるつもりでありますが、もちろん、御承知の通り私どもは国務大臣と同一待遇じゃない。私は、最高裁判研の長官は総理大臣以上、こういうようにまで待避することによって法の威厳が保たれ、国民の信頼感が深まり、そうしてそれが思想にも影響する。一番これが大事なことで、現にイギリスなどは、御承知の通り席次は総理大臣以上です、最高裁判所の長官は。従ってまた、最高裁判所の判事をしておった連中は、やめてそれが国務長官になる、あるいは大統領をしておった人がやめて参考裁判所の判事になるとかいうようなことは、イギリスの実例がこれを明らかに証明しておる。で、御承知の、この間アイゼンハワーが大統領に就任したときも、いわゆるアメリカの大法官の前に行って宣誓をして、そうしてその前列はことごとく最高裁判所の裁判官、その最高裁判所の後列が国務大臣、こういうことで、アメリカなどは非常にことによって、国民もこの最高裁判所の判決には非常に心服しておる。こういうようにすることについて、私は国務大臣と同一待遇だとかいうようなことは、これはほんとうはよくないと思うのです。もう少し頭を切りかえて、ほんとうに正義というものを守るについてはこういうような機関が要るんだということを政府当局がよく認識されれば、今私の申し上げたことは決していいかげんなことを言っておるんじゃないということは十分おわかりになることと思うのですが、この点は、一つあまり今日は追及いたしますまいが、どうか一つ法相は弁護士出でもありますし、また法律のことは十分御理解のおありになる方でありますから、内閣の今の閣僚諸君でもおそらく法相くらいに弁護士の実情や法曹界の実情をよく御了解しておる人は少いと思うから、特に一つあなたから発言を求めて、そういう方針に将来着々お進め下さることを特に私はお願いしておきまして、あまり時間がないですから、この程度にとどめておきます。
○小酒井義男君 ちょっと人権擁護局長がが御主席のようですので、一、二お尋ねしたいのです。それから法務大臣にも人権擁護局のあり方について、続いてお尋ねしたいと思いますから、もう少し御出席を願います。最近の人権侵犯事件というものはどういう傾向をたどっておりますか、概略ででもけっこうですから、そういう御説明を願いたい。
○政府委員(鈴木才藏君) 私、まだこの二月に就任いたしましたばかりで、あまり詳しく申し上げることは、まことにおそれ入りますができないのでありますが、人権侵犯事件の統計と申しますか、その数字の上から申しますと、一時よりは公務員によります侵犯事件がやや減少の傾向にあるようでございます。大体それが三十一年度で八百二十二件ほどございます。それから私人によりますいわゆる人権侵犯事件というものが昨年度はほぼ一昨年度と同じような数字になっておると思います。
○小酒井義男君 あまりこまかいことをきょうは時間の関係がありますからお尋ねしませんが、法務大臣にお答えを願いたいと思うのですが、以前にこれは吉田内閣の当時ですが、たびたび人権擁護局を部内の一つの課に格下げしようという考え方が強かったわけです。私どももこの行政機構改革の問題でも、現在の日本の実情において人権尊重というのはむしろこれから啓蒙しなければならぬというくらいの時期にあるのに、逆にそれを格下げするというようなことはけしからぬということをたびたび言ったことがあるのですが、石橋内閣では人権擁護局というものに対してそういう考えはむろんないと思いますが、さらに積極的にこの問題について力を入れてやっていくというふうな御方針があるのかどうか、大臣から承わりたい。
○国務大臣(中村梅吉君) 御承知の通り現在の時勢にかんがみまして、人権擁護に大いに意を用いなければならないことに全く同感でございまして、御熱心にその必要をお説き下されますことに、私どもは感謝をいたしておるものでございます。実は、現在の法務省の人権擁護局と申しますのは、確かに局ではありますけれども、課にもひとしいほどの人員でございます。しかし私は、ただこの本省の人員が少いということだけで、それで人権擁護局の使命を判断することは、正しい見方ではないので、全国に多数の人権擁護委員というものを委嘱しておりまして、御承知の通りこの人権擁護委員の方々は、ほんとうに人権擁護のために熱意を持った方々で、奉仕をしていただいておるわけで、それぞれの地方にいろいろな事件が赴きますと、直ちに御連絡をいただきますしいたしますから、この人権擁護委員の活動の総元締めというのが、まあ一応法務省の人権擁護局でありますから、本局の人員は少くとも、全国に張っておりますこの網の動きを上手にやっていけば、相当効果があげられるものである、また使命を果し得るものである、かように考えておるのであります。ただ、それにはいかにも予算が非常にしぼられておりまして、残念なことには、こういう仕事でありますから、派手に目立つ生産関係とか、産業関係の業務と違いまして非常にじみな仕事でありますので、どうも予算の獲得上、歴代の法務大臣が苦労しておるようであります。私といたしましても、今回は、ちょうど予算編成途上に就任をいたしたのでありますが、今後この人権擁護局の活動が、ほんとうに使命を達するに足る活発な動きのできるように、またお話の啓蒙運動も全国的に網羅されております人権擁護委員の御活躍と相待って、中央としても人権擁護の重要性を説いて、そして啓蒙運動をしなければならぬ、かように考えますので、今後これらの点につきましては、一そう人権擁護局の動きが活発にできるような方向に、私としては努力をしていきたいと思います。
○小酒井義男君 予算が総額でどのくらいになりましょうか。ちょっと、予算書をいただいたのだが、今記憶にないのでお尋ねしたいのですが、去年よりどのくらいふえておりますか。
○政府委員(鈴木才藏君) 昨年度よりは本年度の予算が、百九十六万五千円ほど増額になった程度でございます。
○小酒井義男君 総額で……。
○政府委員(鈴木才藏君) 総額で前年度が千八百八十八万六千円でございます。本年度は二千八十五万一千円という程度でございます。
○小酒井義男君 たしか、非常に大勢の地方に擁護委員を委属しておいて、その人たちに対する扱いというものが、これは事業の性質上、そういうことを目的として委員をされている人は少いと思うのですが、それにしてはあまり一人当りの手当といいますか、これが少なかったような記憶があるのですが、こういうことで、十分人権擁護というようなこと尊重して、重要視しておるんだという答弁と実情とに非常に食い迷いがある。こういう気がするのですが、どうですか。
○国務大臣(中村梅吉君) お答えをいたします。これは私どもも実は苦労しているところなんですが、ちょうど人の保護司の人たちと、同じような関係に実はございまして、非常に手当が少いものですから、みんな地方の篤志家にこれらの仕事に当っていただいております。まあ保護の関係にいたしましても、自弁で熱心な人は釈放前に刑務所に行って、自分の担当する、受持つ人間に面会をしてくるとか、自費で活躍をして下さるし、人権擁護委員も同じような関係に置かれているわけでございます。そこで、手当が非常に少いものですから、大蔵省にその増額要求を今年も熱心にいたしたのでありますが、実情を調べてみるというと、この人たちは手当をもらっていないのじゃないかと、こう向うは言うのですね。それがもらわないというのは、非常に少額で受け取る人からみますというと——先ほど手当と申上げましたが、これは間違いでございまして、要するに活動の実費弁償という意味でございますが、この実費弁償金が非常に少いわけであります。少いものですから、これらの人たちが自分で一人々々がもらっても大したその生計の足しになるほどの金額でありませんので、判だけ押して、事務局で一切集めて、そうして事務的に集めまして、これを人権擁護委員全体の連絡の会議費に使うとか、あるいはその他そういう集会費に使う、こういうことが往々各地であり得るわけなんであります。そうすると大蔵省ではそういう実態を調べまして、あの実費弁償金というのは、ふやせと言うけれども、実際は実費弁償に使っていないので、本人たちは受け取らないで、奉仕でやっているのじゃないか、だからふやす必要はないと、こういう議論がどうも今年あたりも花が咲きまして、なかなかその増額を承認されない、こういう段階にありますので、今後われわれとしましては、いかにもこの一人当りの実費弁償金が子供の小づかいにも当るか当らないかというような金額でやっていただいている方々には、これはほんとうに実費弁償金として予算に計上すること自体がもう失礼なくらいで、申しわけないのですが、ただ実際問題としては、この人たちはほんとうの奉仕の観念で、そういう問題に関心を持って下さいまして、実費弁償の多寡にかかわらず熱心にやって下さっておりますから、幸いそれによって運行いたしているわけでございますが、これらの点はなかなかその予算を多く得るということの点からいいますと、私もちょうど今年は就任早々でございまするし、いろいろわれわれはわれわれの立場から理屈を主張いたしたのでありますが、いれられなかった点が非常に多く、残念でございましたが、今後ともわれわれとしては、人権擁護とかあるいは保護とか、こういう関係には、同じ法務行政のうちでも特に意を用いてやって参りたい、かように考えているわけであります。
○小酒井義男君 大体そういう実情を法務大臣が十分御認識の上で、せっかく対処せられると言っておられるのでは、これは生まれてから死ぬまでの全人口だと思うのですね。そうすると二千万円の金が、一人当りにすると二十銭あまりなんですね。これはとても——日本人の人権がそれほど安いものでもないでしょうし、もう少し人権擁護をするというなら、やはり予算をこれっぽっちじゃ、実際幾ら熱を入れてやっておられると言っても、やっておられることにならぬと思うのです。ほんとうに十分とはいわぬでしょうが、もう少し活動のできるだけの予算は今後確保するように、一つ御努力が願いたいと思います。
○委員長(山本米治君) ほかに御発言もなければ、本日は、これにて散会をいたします。 午後三時四十一分散会