社会労働委員会 第8号
- 発言数
- 144 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1957/03/12
会議録
○委員長(千葉信君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。 労働情勢に関する調査の一環として、日本国有鉄道、日本電信電話公社、日本専売公社、郵政事業等における紛争に対する調停に関する件を議題といたします。ただいま松浦労働大臣、伊能労働政務次官、中西労政局長が出席中でございます。 本件について、労働省当局から説明を願います。
○政府委員(中西實君) お手元にお配りいたしました三公社五現業関係の賃金紛争の経過概要を大体ごらんいただければわかると思いまするが、三公社五現業それぞれ要求といたしまして、大体平均二千円程度のいわゆるベース・アップになっております。そうしてこの中で、機労を除きまして、すべて公共企業体等労働委員会に調停申請を組合側からいたしました。一番早くには、国労が昨年の暮れ、十二月二十七日に調停申請をいたしました。一番おそいのが林野で、今月の四日調停申請をいたしました。機労を除きまして、時期の早いおそいはございまするけれども、調停申請をいたしました。 それに対しまして、まず九日に、国鉄、電電、郵政、専売、この四つにつきまして調停案が提示されました。続いて、十一日に、印刷、アルコール、造幣、この三つに対して調停案が提示されました。林野だけは、調停申請が出ましたのが今月の四日でございますので、まだ調停案が提示されておりません。 この調停案の内容は、このお手元の表の下の欄に概略出ております。 なお、この調停案に対しまして、国労並びに全電通から回答が出ております。要旨を申し上げますと、国労からの回答は、この調停案は自分らの要求からきわめてほど遠い低いものである、で、非常に不満ではあるけれども、もしもこれを当局なり、政府がこれをのむということで臨むならば、さらに話し合って受諾してもいいのだ、こういう趣旨でございますし、なお、電通の方の回答は、これは調停案については、自分らの要求しておるものから内容が非常に低い、かつ配分問題や、年令別最低保障制度というような問題についても触れていないので、今直ちに受諾することはできない、しかし、公社が調停案を受諾して、予算措置を講じて、直ちに組合と具体的な協議に入って解決するという用意があるならば、われわれの方としてもこれに応ずることは考えておる、こういう趣旨の回答が出ております。で、公社側、並びにこの現業庁の長からは、いまだ明確な回答が出ておりません。で、聞くところによりますと、これは新聞にも官房長官談で出ておりますのですが、国鉄におきましては、一応拒否せざるを得ない、そして仲裁に持っていかざるを得ないというような動きになっておるように聞いております。 以上大体この調停に関しまする経緯でございます。
○委員長(千葉信君) 御質疑願います。
○片岡文重君 質疑に先だって、この問題について、けさ重要な閣議が持たれたそうですから、その閣議の内容について、大臣から一つお知らせいただきたいと思います。
○国務大臣(松浦周太郎君) 閣議の詳細については申し上げることはできないのでありますが、大体の方向は、まあ仲裁裁定を要求する側の方は、政府というよりも、むしろ経営者、使用者、公企体が要求するものでありますから、それの自発的な考え方に待たなきやなりませんけれども、政府の五大臣は、五つの大臣は、やはり一つの企業を持っておるものでありますから、一人二役の関係があります。そこで一応調停案があまりばく然としておるものだから、理由を、判決文だけなんです、ここにきているのは。これは千二百円にしたい。一律全部千二百円だ。その理由を少し検討する必要があるのではないか。理由を検討しまして、それによって仲裁裁定を要求しなければならぬのではないかというような方向の議論がございました。それ以外これというようなものはなかったのでありますが、大体この調停案というものの基礎的理論をもう少し検討する必要がある、それをきょうやろうじゃないかということを申し合わせたというようなわけであります。
○片岡文重君 質疑があとさきになると思うのですが、閣議で仲裁申請をするのは経営者の側からなされるのだからということで、その仲裁申請の出るのを待っておるということと、いま一つは、調停の案の内容が詳細にわからないから、検討後に諾否を決定するというお話であったのですが、そのように理解してよろしいですか。
○国務大臣(松浦周太郎君) もう少し内容のこういう主文ができましたものの基礎的な資料を、おのおの調停案をその委員長に尋ねるということに、具体的にいえばそういうことになと思います。
○片岡文重君 新聞等によりますと、政府は調停案が提示されない前から調停は受諾しないという態度を明らかにして、各経営者に圧力を加えておるように見受けられますが、今のお話とはその点少し食い違いがあるようですけれども、政府としてはほんとうのところは、調停の出る前にこの調停については受諾しないという腹がはっきりきまっておったのではないですか。
○国務大臣(松浦周太郎君) われわれはそういうことを全然考えておりません。また、調停そのものは当時者間の問題でありますから、政府は仲裁でも出るのならばいろいろ関与しなければなりませんけれども、やはり調停の場合は、これは使用者、勤労者の相互間の問題であって、政府が直接関与すべきものではないと思っております。また、出ない前から、出たってそんなものはいかぬぞと言ったことは一ぺんもありませんから、どうかそれは……。
○片岡文重君 新聞等に伝えられるところでは、誤まりであるということになるのでしょうが、調停の出る前に明らかに拒否をする態度に立っておられたということは一般に周知されておる事柄だと思うのであります。今の閣議の内容を伺っておっても、理由の検討の後に諾否を決定するかのごときお話でしたが、一応受諾するという立場に立って、不明な点は詳細委員会に照会して、どうしてもその点が納得できぬというのならば、やむを得ずこれを拒否するということなら、組合側の諸君も了解できると思うのですけれども、そうではなくて、承諾しないという立場に立って、その承諾しないという理由にこの調停案の内容が不明であるということにしているのではないか、こういう印象を私ども受けますが、この点はどうですか。
○国務大臣(松浦周太郎君) その点はきのうの予算委員会で岡田さんとずいぶん何回もやり合ったのですが、その内容と全然私は変っておりません。この調停の場合ですね、政府はのむとか、のまぬとかいうことはできないわけでありますから、これはやはり当事者間、いわゆる労使間において御決定を願う以外に道はない。それがどうしてもきまらなければ、これは結局仲裁裁定に申請されるでありましょうから、仲裁裁定ができましたならば、政府はやはり仲裁裁定というものは公労法の精神にのっとりましてそれを尊重していくということになるのであります。その点は調停の場合において、政府がのむとかのまぬとかいうことを言うべき筋ではないと思います。
○片岡文重君 仲裁裁定が出なければ政府は拘束されないというようなお話ですけれども、仲裁裁定が出なくても、調停案が提示されて、その調停案に基いて労使双方が受諾できるような場合には、政府がこれにとやかく干渉がましいことはすべきではあるまいと思うのですけれども、都合の悪いときには政府は、この点は労使の間で話し合うべきことだから、こういうことで逃げておる。しかもそれが仲裁裁定に持ち込まれたならば、何とか考えましょう、調停の内容と仲裁裁定の内容とが同一の場合は一体政府はどうするつもりですか。
○国務大臣(松浦周太郎君) 同一の場合においても、政府が調停のときに、のむとかのまぬとかいう態度を決定すべきものではないと思います。それは当事者間において話し合いがつくのならば、それはそれでいいのですよ。けれども政府から調停の場合においてのむとかのまぬとかいうことを言うべきではない。同一の金額であってもそれは仲裁になければいけない、私は公労法の精神をそう思っております。
○片岡文重君 仲裁に持ち込むということは、調停の方の話がつかないから初めてやむを得ず仲裁に持ち込まれるのであって、調停でもって話がつけば、仲裁裁定の手数をわずらわす必要がないのです。従って、調停を組合側では受諾したというのであるし、経営者側では、政府の圧力さえなければこれを受諾するという意向にあると私は思われるのだが、政府の圧力によって、やむを得ず経営者もこれはのめないという事態に立ち至っておる。これが今日のこの実力行使にいやおうなしに追い込んだ真因だと思うのですけれども、政府はただその法律上の形式に籍口してこれを回避しているのじゃないかと思うのですが、大臣はこの点についてどういうふうに弁解されますか。
○国務大臣(松浦周太郎君) これは、仲裁裁定が出ないのに、政府がそれをのむとかのめぬとかということを言うことは、それはいけないと思うのです。やはり両者間において御相談願うということが一番いいと思うのです。それは当然のことだと思うのです。
○片岡文重君 大体今度の春闘の経過を見てみますと、たとえば国鉄などの場合には、明らかに仲裁委員会に持ち込まれる前に労使双方で話し合いがついておる。それを政府が、時の運輸大臣が十河総裁を呼びつけて、こういう協定はけしからぬということで、労使がせっかく協定したものを破棄せしめておる。これが今回国鉄労働組合がいやおうなしに強硬な態度に出ざるを得なくなった理由であると考えられますが、表面に出なくとも裏工作としていろいろな手段を用い、そうした不当干渉を熾烈に行っておる形跡はあまりにも顕著であるし、その点について、私どもはどうしても政府の今回の態度はい事態を急速に、円満に解決しようとする熱意があるものとは考えられません。先ほども言う通り、仲裁に持ち込まなければ政府は手が出ないというような一点張りですけれども、仲裁に出なくても、調停でもって話がつくならば、それによって話し合いを妥結せしむべきであるし、政府としては、経営者側の態度についてそういう熱意がない、もしくは政府の態度に気がねをしておるというのならば、これに対して政府は積極的にその受諾を勧めてもいいわけです。しかし、逆に経営者側に対して受諾しないような方向にいってると思われるのですけれども、大臣はどうしてもそういう点はないとこの際はっきり言い切りますか。
○国務大臣(松浦周太郎君) 国鉄と運輸省との間にどういう話し合いがあったかよく私はわかりません。けれども私も、少くとも私の関知しておるのには、政府はそういう弾圧的な態度をとったことはないと思います。 それから調停の問題については、これはいろいろな皆さん御議論がありますけれども、私はこういう重大な問題になりてしまった以上は、やはり公労法のおきてに従って政府はやるべきである、こういうふうに率直に考えております。
○片岡文重君 今回のこの労働組合の実力行使は、決して労働者側の好んで起した事態ではなくして、きわめて当然なというか、やむを得ない成り行きからここに追い込まれたものだと思われるのです。たとえばその要求の内容等にしても、おおむね平均賃金二千円の賃金値上げを要求しているようですが、調停委員会でも指摘しておるように、この三公社五現業いずれも民間産業に比べて非常に賃金が安い。一割近くも低いという状態に置かれておる。で、先日労働大臣は、この委員会の席上で、景気は偏在しておる、ある所には非常にあるけれども、一般に神武景気は潤うているものではないといみじくも喝破せられました。この大臣みずから指摘せられたように、神武以来の景気はなるほど一部の給与体系には大きく舞い込んでおるでしょうけれども、一般の労働大衆には、むしろ運賃の値上りと、その他またこれによる物価のはね返り等にあって一そう苦しい状態に置かれておる。こういう状態の中で、この賃金要求というものが、私どもから見ればそう不当な要求でもない、むしろ謙虚な要求であるとさえ思われるのですけれども、大臣はこの点どうお考えでありますか。
○国務大臣(松浦周太郎君) 神武景気という、この間も申し上げましたんですが、やっぱりこれは、景気は偏在していると私は思うのです。それの地ならし工作をやることが私は今の政治だと思っております。それで、その一端といたしまして、減税をやり、あるいは財政の投融資をやり、あるいは一千億施策をやるということになっておるんでありまして、これだけでまだ十分ではないということはよくわかっております。また、賃金の御要求があることも、私はやっぱり当然だと思うのです。でありますから、労働省といたしましては、その賃金要求に対して受けられる方の企業体というものとの間に平和裏に話をまとめてもらうことを一番祈っておるのです。それができなくて実力行使に入ったんでありますが、この実力行使といえども、やっぱり法を犯しておやりになるということは、私はおもしろくないと思うのです。やっぱり一つの法の範囲内においてお互いに平和裏に解決つけていくことがいいのではないか、かように思っております。
○片岡文重君 法を犯すという言葉じりをとらえるわけではありませんけれども、先ほどから私が指摘しておるように、大臣は、政府がこの労使の紛争にタッチしない、あまり介入しないで双方の話し合いにまかせるということを幾たびも繰り返しておられますけれども、実際に考えておられるところ、行なっておられるところは、やはり組合側に対する弾圧をというか、圧迫を常に念頭に置いておられるのではないかと思われるのです。というのは、組合側が今日の事態にやむを得ず追い込まれたということは、大臣が認められるように、要求の内容も不当ではない。しかも、その不当でない要求をもって経営者側と話し合って、直接これに終始接しておる経営者側としては認めざるを得ないからこれを認める。そこで話し合いがつく。すると、政府からそういう話し合いではいかぬということでこれを破棄せしめる。こうして追い込めるだけ追い込んでおいて、さて職場大会をやった、あるいは法に基いて、また、規則に基いて休暇をとる、これが違法だときめつける。つまり、一方では不当に介入しておいて、言うことをきかないからといって権力の段平を振り上げる。これが今日の政府の態度ではないかと私たちには思われるのですけれども、法に従って、法に従ってと言うからには、政府もまた当然その法に政府みずから従わなければ私はならぬと思うのです。つまり、ここで法に従うということは、調停案の申請を受諾せんとする経営者側の意図に対しては、不当にこれに干渉するようなことのないように、また、もしかりにここでもってやむを得ず経営者側が仲裁委員会にその裁定を出した場合、その仲裁委員会がこの調停案の内容と同じものをもって仲裁した場合に、果して政府はこれを受諾できるというお考えを持っておるのか。いなできるじゃなくして受諾するという考えを持っておるのかどうか。もし、私の言うことに対してあくまでも納得できぬとおっしゃられるなら、最後の結論として一つ仲裁裁定に持ち込まれた場合に、その内容が調停案と同じであった場合に、政府はこの仲裁を受諾する用意があるかどうか。
○国務大臣(松浦周太郎君) これはですね、まあいろいろ社会党さん側の方とも話し合いをいたしております。けれども、まあ内々御存じであろうと思うのでありますが、きのうも三回ばかり会いました。何とか平和裡に解決つけたいという意図のもとにいろいろ心配いたしております。けれども、法規の面から見れば、これは仲裁裁定ができて、私どもは今の場合誠意をもってこれを尊重するという考えには変りはありません。しかしながら、この仲裁裁定ができた場合、政府としてもその権限の行使があるのです。また、国会も一つの権利を持っておられる。つまり第一裁判が調停であるならば、第二裁判は仲裁である、第三裁判は国会であるというようなことになっているものですから、その辺が朝野の気持がほんとうに一致していくようにお互いに努力するのでなければ、私だけがここでやりますといっても、これは国会議員の中の朝野を問わず反対意見が現われてくるようなことになったならば通りませんから、ここらはやはり協力をしてやっていかなければならないのじゃないかと、こういうふうに思っております。
○片岡文重君 大臣に向って法規を解釈するのは少し僭越だと思いますが、この公労法の三十五条には仲裁委員会のこれは裁定です。「委員会の裁定に対しては、当事者は、双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならず、」といっております。尊重するという態度ではないのです。これは服従しなければならないというのが、この法の精神でしょう。しかし、今までいまだかつてこの保守政党の組織の内閣で、仲裁裁定に服従したものはもちろんありません。尊重した内閣もないわけです。そうしてこの調停に対してはいつも内面的に不当干渉を続けておる。今、大臣の御答弁では、服従ではなくて尊重する意思がある、尊重をしたいと言っておる、しかも国会の云々と、こう言っておられますけれども、国会に持ち出されるのは政府がこれに対して服従することができなかった場合に、しかもなおできる限りの努力をしなければならないという義務もついておる。政府が万やむを得ずして予算措置を講ずるときに、もしくは予算の補正なり、適宜の措置をするために国会に提出されるのがこの法文の趣旨であろうと思うのですが、いまだかつて政府がそういう措置をとったことはないのです。拒否をするために、破棄せしめるために国会に出しておられる。今の大臣の答弁を伺っておると、この紛争の結果、仲裁に持ち込まれて、そうして仲裁が出る、裁定が出る。そうすると待っていましたとばかりこれを国会に持ち込む、そうして国会の名をかりてこれを破棄しようとする意図がすでに明白に現われておると私どもには推察できますが、この点は大臣としてはどう弁解されますか。
○国務大臣(松浦周太郎君) どうかその悪い方ばかり解釈しないで、私どもは誠意を持って解決つけるといっておりますから、悪い方ばかりに解釈しないで……、私どもは服従しなければならぬというお言葉でありますが、それは労使の間において服従しなければならぬけれども、政府はまた別個の考えはあると思うのです。ざっくばらんにいえば私はそういうことをする考えはないのですよ、けれども、財政、経済上これは全部はいけない、仲裁裁定の三分の一ぐらいしかいけないというような場合がある場合もあるわけですね。そういう場合に、そういう仲裁裁定ができたが、かりに五のものを裁定されたとするならば二しか認められない。それを国会に提出するというようなことが条文の生きているところであると思うのですよ。でありますから、お互いに朝野がこの重大な問題を片づけるという場合に、これはほんとうに協力し合って、これこそ共通の広場において相談し合ってやるということまでいかぬと、反対者があったらできなくなるのですよ。これはほんとうの打ちあけた話なんです。私はきのう三回もあなた方の方の首脳部と会いまして、誠意をもって解決すると、誠意をもって尊重すると申し上げました。私は受諾するという言葉は使いません。国会を無視したことになるのです。でありますから、その辺のことはおわかり願っていただきたいと思います。われわれはあくまでも誠意をもって尊重するという態度を持っていきたいと思っております。
○片岡文重君 別に私はなますをふいているつもりはないのです。いまだかつて政府がほんとうに善意ある熱情をもってこの仲裁裁定に対したことは一ぺんもない。これは大臣もよく御承知になっておられるのです。そこで加えて、最近における政府の態度は、公労協関係の労働者ばかりでなく、炭労その他の民間争議に対してもますます弾圧的な態度をもって臨んでこられる。で、一方にはこの要求を拒否するような合法的な面に隠れて要求拒否の道を講じながら、一方には常にきびしく処分をする、あるいは取締りをする、こういう威嚇をもって臨んできておる、こういう態度に今までの経過を見て参りますと、これからの政府の措置というものはよほどはっきりした言明を伺わない限り、私どもとしては納得ができないのです。そこで、今いろいろとお伺いしているのですが、どうも今までの御答弁では私の満足するようなお答えがいただけない。今のお話の中にも、反対者があってはできないと言っておられますけれども、国会内における反対者というものは政府与党以外にはおそらくないでしょう。しかもこれは政府が拒否をするという態度に立ってかもし出される反対者である。保守党の議員諸君といえども、労働組合の諸君から陳情を受けた場合には、ほとんどこの要求が不当である、組合が無理であるというような御答弁をなさる議員はおられないようであります。これがしかし、党議となってくると弾圧に変っていく。さらに政府に持ち込まれるとこれが拒否になってくる。で、ついにはこの実力行使に突入される。実力行使になれば今度は解雇、懲戒だといっておどかしておる。これはきのうの官房長官の言明ですかには、非常にきびしい発言をされておられるようです。この点について、では大臣はどういう考えを持って今おられるのか。この実力行使に対しての責任追及とでもいうことを考えておられるのか。その責任追及ということになれば、この事態に追い込んだ経営者側の責任はどうなるのか。組合側だけがこの責任を負わなければならないのか、こういう点について、一つお考えを伺っておきたいと思います。
○国務大臣(松浦周太郎君) まあきのうも予算委員会でその議論になったのですが、どうも何か政府に責任があって、政府が悪いというようにおっしやるのですけれども、少しは悪いところもあるだろう思うが、今度の争議は政府が始めたものじゃないですよ。これはスケジュール闘争なんです。そこでそれは一体どっちから起ったのですか、私はほんとうによくしようと思って、そういう争議が起ったのだけれどもこの事態になればこれはよく直していかなければならぬという非常な熱意を持って解決しようと思っているのです。けれども、何かこの争議を政府が起したように思われるのですが、むしろ去年の六月ごろからの一つの計画的なものじゃないですか。でありますから私はこのスケジュール闘争というものは全国民はあまり喜んでいないと思うのです。けれども、今日この事態になっておるものを政治はそこを処理しなければならぬものでありますから、そこで誠意をもって尊重するという言葉を申し上げておるのです。これは私一人で考えたものではありません。うちの総理を初め幹部と、あなた方の幹部と会ってそこで話し合ったことでありますが、これ以上の答弁を私は申し上げることできないのです。いろいろきのうも予算委員会で岡田さんと話し合ったのですけれども、私の方は何か勤労者を圧迫するようなことを考えてはおりません。何とかお互いに手を握り合っていきたい、私は闘争じゃない、やはり一つの信頼をし合わなければいけない、相互信頼でなければいけない、やはり共同友愛でなければいけないという考えを持っているのです。だから早くは解決つきませんですけれども、夜も寝ないで飛び回ってきのうのところまでいったのです。けれども、これをさらにこれから仕上げてしまうには相当の時間がかかります。私はやはり朝野が協力してやっていただかなければ、この問題は解決つかないと、こう言っているわけです。
○山本經勝君 関連して……、先ほどの片岡委員の質問に対して大臣の方からの御答弁を静かにここで伺っておったわけです。さかのぼってみますと、いわゆる政府が争議をやっておるのではない、それはなるほど争議行為という規定に基く争議行為をストライキその他の方法によって政府がやるわけはない、そんなことは十分わかっておる。ところが、問題はこういうことじゃないかと思うのです。大臣のお話のように、政府としては三公社五現業これらの労使間の話し合いというものは、もっぱら自主的な使用している者と労働者との話し合いである、政府はいわゆるこれを高みの見物じゃないでしょうが、一応経過を見ている。不介入の態度である。これはしばしば言明されたこと、ところが問題は、国鉄あるいは電電公社その他五現業にいたしましても、いずれも国の資本でもって経営をしていることは言うまでもないのです。そこでこれらの予算は特別会計ではありましても、やはり国会の承認を得なければならないということ、これまた明白な事実です。そうなって参りますというと、その予算が国会の承認を経て、そうしてその予算を実施する責任は政府当局にあるのだと思う。監督指導に任じなければならない。そうやって考えてみますというと、国鉄の場合には運輸省というものがある、運輸大臣が見ている。あるいは電信電話公社の場合には郵政大臣がついている。それからさらに専売関係には農林大臣がというふうに、いわゆる岸内閣の閣僚、これは歴代そうなんですが、そのいわゆる閣僚が監督指導をしておる、こういうことなんです。言葉をかえて言いますというと、この姿はもう少し私は松浦労働大臣が親切にお考えになる必要があると思うのです。というのは、いわゆる資本は国が出し、国民が出したものであります。それを管理する責任は政府に負託されている、その運用の面で基本的な必要な額の要求その他は国会で審議をして決定する、こういうことになっておると私は思う。そうしますと、政府がこの使用する者と使われておる労働者との間の話し合いであるというけれども、直接やはりこれは政府の責任に属する。そこで私はあの片岡委員からの質問の中で大臣の御答弁になったように、その間でつまり使用する者と使用される労働者との間で賃金その他の労働条件について意見の一致を見ず紛争が起っておる姿が今日の姿だと思う。しかし、それは非常な困難な状態の中で実力行使という段階に入っておる。この姿はもっとすなおに見ていかなければならないのじゃないかと思う。民間における労使の紛争といえども同様なんです。ところで、そのようなことを筋道を立てて整理して参りますというと、今日までの経過は先ほどから片岡委員が申しておりますように、いわゆる違法な者について処分をすることは私は当然だと思う。一般的な公式論を振り回して、何ら解決に努力しておらぬというところに争議が混乱し、困難化し、長期化しておる実情があると思う。そこで、使用者と称するつまり三公社五現業の直接その衝に当っておる人はむろんでありますが、それもやはり政府の一環をなす。そうして閣僚の皆さん、五大臣と言われたが労働、運輸、通産、農林その他これらのいわゆる政府機関がこれを指導監督しておるのだから、勢いその争議の解決について非常に重大な責任がある。しかもその争議そのものをやっておるものはなるほど政府ではない。労働大臣がサボタージュをやっておるわけではない。一生懸命やっておることは認めます。しかし、労働組合は労働者が団結して自分の労働条件あるいは賃金その他の向上を目指して努力をしてその意見の、一致を見ないところに争議が起っておるのだから、そこで、その問題はよその対岸の火事でなければ直接労働大臣みずからあなたの責任に属する仕事の一つである。ですから、むしろここで私ども言いたいことは、いわゆる公共企業体労働関係法に基く調停という機関があるのですから、そこで出された調停案については組合の同意をしておるものだから、少くともそれが実施できればあすからでも争議はやむと思う。国鉄の混乱も起らなければあるいはその他専売公社等における業務の停滞も起らずに済む。むしろその点を私はもっと懇切にお考えにならなければいかぬのじゃないかと思いますが、大臣はどうお考えになるか。
○国務大臣(松浦周太郎君) 私は直接管理者というか、経営者に責任があると思うのですよ。それは国の財産ですから、回り回っては政府の責任に帰するでありましょうけれども、労使の問題の公労法の中にあるのは、やはり公企体の企業体と勤労者との間に話をつけてもらうということであって、それを先ほどから片岡さんのお話は、何か政府がそれを干渉しておるから、両者で話はきまっておるけれどもいかぬというようにおっしやるけれども、私はそういうことはないと言っておるわけです。それで、両方で話がつかなければ仲裁裁定になる。仲裁裁定になればこれを誠意をもって尊重するというように申し上げておるわけです。
○山本經勝君 もう一つ関連して、私は調停案の内容をいただいておるので見ましたが、そこでこの中でこういうことが書いてある。一人平均千二百円の増額をすること、なお本年度については、この給与改訂の趣旨を勘案し、適宜の措置を講ずること、これは非常に含みのある言葉だと私は思う。ところがここなんです、私ども問題にしたいのは。つまり必要な給与改訂の趣旨を勘案し適宜の措置を講ずること、これは先ほど申し上げましたように、なるほど国有鉄道とかあるいは電電公社といったような公共企業体の管理者あるいはまた、経営者といいますか、そうした人々が直接は責任を帯びているけれども、国の予算につながる重大な財政的な問題であるから、そのことについてはそれぞれ所管の大臣が最高責任者として指導監督をする任務を帯びている。そうなりますと、これは私はむしろ政府もまた当事者であるといって過言でない。そこで片岡さんの先ほど言われたその議論が生まれてくる。政府みずからの責任において処理をせなければならぬ課題であるにもかかわらず、紛争であるにもかかわらず、しかもこの調停案そのものについて閣議でもってすでに扱いつつあるのだ。仲裁の申し立てをする、これはそういうことになっている。この公共企業体等労働関係法の中でもそういうことがはっきりしている。ですからそこで問題は、今後の解決でありますけれども、調停案が受諾されなければ、私はあすからでも今の争議はやむと思います。そうすれば国民多数に迷惑をかけなくて済むのだ。ところが、そのことをむしろ労働大臣が労働組合に対して、社会党の代表に云々するのじやなくて、あなたの管理しておられる、あなたの所管の中にある、あるいは運輸大臣の所管の中にある、郵政大臣の所管の中にある、企業体の管理者にこうしたらどうですかという方法が私は当然な方法ではないかというのです。私はこの点を、やはり大臣からはっきりと承わっておかなければならない点だと思っている、どうでしょう。
○国務大臣(松浦周太郎君) 「なお、」云々というのはそれは業績手当の問題を指摘したものじゃないかと思うのですが、その点は別途にやはり考慮すべきであろうと思うのです。今の何べんもお答えいたしますが、やはり調停の間は、政府が中へ関与していくというのは公労法によってきめられているのですから、きのうもあなた方の方の幹部といろいろ話し合ったのですが、やはりそれしか道はないだろうということなんです。それは受けられる方はその方がいいかもしれませんけれども、また、逆の面からいっても、法規に従わずにやった場合に、また、逆の面もあるものですから、そこでやはり道、おきてに従った方がいい、こういう考えなんです。
○藤田藤太郎君 ちょっと関連して……。労働大臣は先ほどから仲裁裁定は尊重すということを言っておられる。 私はまず第一に聞きたいことは、仲裁という概念ですね、仲裁という概念は、私はこれは国際共通だと思うのです。仲裁裁定に従うというのは、これは国際概念において両方が、この法律の三十五条にも原文に書いてあるように、これは、その概念は生かされていることだと私は思う。当然それは尊重するせぬ、それはともかくとして、これに従うというのがこれが仲裁の概念だと思う。労働大臣は尊重すると言われますけれども、その点はどういう工合にお考えですか。私はその中であとに資金上云々ということが書いてありますが、このことの理屈を聞いておるのと、また、反対に国の財産であるけれども、当局にまかしてある。当局が勝手に自分の労使問題、その他の問題は決定する権限があるのだ、こういうことも言われている。そこで尊重するとかということが出てくるわけですけれども、私はちょっとわからぬ。今の政府も、国際的な立場に立ってこの概念というものを貫く考えがあるのかどうか、私は労働大臣にお伺いしたい。
○国務大臣(松浦周太郎君) 国際的にですか。
○藤田藤太郎君 ええ、仲裁という概念です。
○国務大臣(松浦周太郎君) やはりそれは仲裁は仲裁で私は一つの裁定されたものであると思うのです。だから裁定されたものを尊重するということであります。
○藤田藤太郎君 裁定に従うという……。
○国務大臣(松浦周太郎君) 従うのじゃない、政府は。それは当事者は従うべきです。政府は尊重すべきです。
○藤田藤太郎君 労働大臣の先ほどのお話を聞いていると、このような問題は要するに、国鉄だとか電電公社その他にまかしてある、法律で。法律の一条、公共企業体の第一条を見てみますと、そのような問題を平和的に調整し、労働者を擁護する建前に立ってこの法律ができたのだと書いてある。そういうのがあるのに、片方では資金上云々というようなことが出てくる。政府のさっきのあなたの答弁を聞いていると、実際はそれは当事者の責任だ、こういうのです。そうすると、仲裁という概念が、われわれの認識する仲裁というものは尊重するのじやなしに、出たものに従うという、そこに法律上云々ということを裏づけているわけなんです。そこのところあたりが私にはてんとわからぬ、これがまず第一です。 それからもう一つの問題は、おのおの政府は、いつも労使問題はまず自主的に解決するということを言われて、これが一番好ましい姿だという。しかし、その好ましい姿であるけれども、おのおの産業の区画に応じてあっせん調停というような格好の労使調整機関というものが労調法である。これも公共企業体労働法という格好でできている。だから一番最大なものは自主的解決。ちょっと突つかい棒して、より円満に行なって、やはり平和的に解決するという一つの段階において調停というものがある。先ほどの話を聞いていると、また、労働大臣はそうお考えになっているのだと私は思うのだが、調停が出て、調停に従いなさいということを、また、平和的にやりなさいということをいつも、民間でも、あらゆるところに言っておられる。そういう形の今度のこの賃金をめぐる進行の状態なのだと私は思うのです。この進行しておる状態を当局は、私の聞いている範囲では、調停案に従おうという意識を持って労使の間で全然話が進んでいるという工合に聞いている。ところが、もう一つそのわれわれの理解のできないことは、先ほど片岡委員が言われたように、政府がこれに介在して、当局が自主的に解決しようとするものをじやまをしているという工合に、私はそういう工合に感じられる。だから前段に言われている労使の自主的解決、その次には調整の段階、やむを得ずそれが解決しなかったからそういう段階になる。ところが、今日の三公社五現業の状態を見ていると、調停というものに従おうということで労働者は受諾しているのです。企業調停委員会を認めて調停を受諾しているのに、当局はその内輪において、当局と組合とは、当局もこの案をのんで解決したい、そういうのに、政府が介在しておるというような格好になってくると、この紛争というものはなかなかこれは解決しない、そういう工合に僕は感ずるのです。そこのところあたり政府のいつも言われていることと現実のこの問題に対する問題はどうなんですか。
○国務大臣(松浦周太郎君) いろいろ御心配ですけれども、われわれはあくまでも解決するという方向に向って熱意を持って当っておりまして、それで何べんも繰り返しますが、私どもはやはり経営者と勤労者が相談することが一番いいと思うのです。それをじゃましているというのではないのですよ。けれども、それはまあ運輸大臣がどう言われたかということについては、それは運輸大臣に聞いてもらわねばわからぬので、私はそういうことを運輸大臣から報告を受けておりません。それで自主的にやっぱり御相談願う、それができなかったら仲裁裁定でいく、仲裁裁定が下ったらば、これは当事者間はもうそれに従わなければならないのであって、政府はこれを誠意をもって尊重する、こういう態度をとっています。
○藤田藤太郎君 そこのところがすぐあいまいになるわけです。仲裁の概念というのは、裁定に従うという概念、この法律にはいろいろ資金上云々ということが書いてあるが、その法律のけつにつけたものをたてにとって、二十三年の十二月にこの法律が制定されてから、仲裁裁定を政府は実施したことはない、そこにやはり問題が起きてくる。しかし、労働者も国民の一人だ、政府の担当者も国民の一人だ、平和的に問題を解決する情熱というものは同じように持っているのだ、同じように持っているからこそ、このようにして交渉、調停、あっせんという段階を経て、今日調停が出て、これによって解決しようとしている。片方、政府は仲裁、仲裁と言われますけれども、今も仲裁を尊重するというお言葉がありました。これは今度の内閣は、それはほんとうに名実ともに仲裁が出たら尊重するというようなことじやなしに、その裁定に従いましょうということだと私は思うのです。そういうふうに確認していいわけですね。
○国務大臣(松浦周太郎君) 御解釈は御自由でございますが、私はきのうもみんなして相談いたしましたし、私の表現といたしましては、誠意をもって尊重するという以外に申し上げようはないのであります。
○藤田藤太郎君 だから、そこのところが僕はあいまいだと思う。それから歴史的に見て仲裁裁定というものが実施されていないというところに、労使平和的にやれ、話し合いでやれと言ったって疑念を持たざるを得ぬ、故意に疑念を持つわけじゃない、もし直ちに改めるというならそれはいいことだと私は思う。単に仲裁という格好に追い込んで、それでまたこの前の問題、今までの歴史的な問題の中に追い込まれようという懸念が労働者に生まれてくるのを、私はやむを得ないことだと思う。 それから私の一番ここで問題にしているのは、労働省がいつも言われる、大臣もよく言われることだ、問題の解決は自主的に解決するということが建前なんだ、それであっせん、調整事項というものが労調法や公企労法にあって、そしてその中でそれに一つの結論が出て従おうというのに、片方では当事者にまかしておると言いながら、これを実施していかない、こういうあいまいなことでは納得はできない、労働関係というものは生きたものなんだ、そこのところを労働大臣は明確にこの問題を解決するために努力をすると言う。それからまた、早くこの調停の段階においてこの問題を解決するという熱意のほどを披瀝してもらいたい。
○国務大臣(松浦周太郎君) さっきも私は自分の考えを申し上げたのですが、こういう事態になりました以上は、勤労者の方々も非常な御迷惑をしておられるでありましょうし、これによって国民の生活上、経済上に及ぼす影響は甚大なものがあります。でありますから、こういう事態になった以上は、これは政府は責任をもって解決しなければならないということで、私はほとんど日夜、心労いたしております。それでまあきのうも朝から池田君が来まして、いろいろ相談した結果、そこまではまだこういう席で速記録の上にあまり言えないことですけれども、内容は申し上げられませんが、あそこまで努力いたしております。そこで今まで御指摘のように、歴代の内閣が仲裁というものは拒否する手段であったというふうにおっしやるのは、あるいはそういうことがあったかもしれませんが、しかし、現内閣が、仲裁のまだきまらない調停の間に、この仲裁になったならば誠意を持って処理する、尊重するということは、これは今までない言葉なのです。仲裁の下らない前に約束しておるのですから、ここのところは御信用願いたいと思うのです。それで皆さんは仲裁が出たら受諾すると言ってくれとおっしやるでありましょうが、受諾するということは言えないのです。でありますから、誠意を持って尊重する。こう言っておるのです。これは政府としては、仲裁が出ない前の最大の約束だと思っております。
○藤田藤太郎君 最後に聞いておきたい。ほかにまだ片岡委員の質問がありますから、これで打ち切っておきますが、政府は先ほどからこの事業の労使関係、その他のことは当局にまかせてあるのであるから、自由に裁量するのだと言っておられる。それでいって公企労法の三十五条に、仲裁に従えということがある。ところが、国際共通の概念からはみ出て、それに何か理屈をつけて、制限をつけられるような、因縁をつけられるような、法律上の字句を見ると、多少なりともそういうことがある。労働大臣の見解を承わっておきたいのだが、当局に一切をまかせてある、まかせてあると言っていながら、こういう問題が法律的の問題としてここにあるのだが、こういう制限をとってしまって、当局にまかすというお考えならば、この法律からくる仲裁ということについて、制限をとって、法文上においても名実そろった仲裁というものを作り上げるお考えはどうですか。
○国務大臣(松浦周太郎君) 政府委員から答弁させます。
○政府委員(中西實君) 仲裁の観念でございますけれども、これは各国の立法例にもございますように、御指摘のごとく、仲裁というのは、原則としての解釈は最終的に拘束するというのが、大体、各国の立法例を見ましても、そうなっております。しかし、それは立法によってどうでもきめ得るわけであります。たとえばインドの立法あたりは、これはやはり予算に関係のある問題につきましては、告示をして、そして国会においてこれが承認された場合に初めてやはり実行できるという例もあるわけです。今のお尋ねが、三公社五現業の関係が、国の予算の一部として国会においてこれがきめられるという建前をとっておる限りは、国会の予算審議権を奪うわけにはいかない。従って、仲裁が出れば、これは最終的なものだとして、あらゆるそういった審議権まで無視するということは、それは建前からいってもできないのではなかろうか。従って、予算によってやっておるという建前を根本から改めますれば、これはできますけれども、今これが国の予算の一部として、特別会計ではございますけれども、これが国会で審議されるということになっておる限り、国会の権限というものは尊重しなければならないというふうに考えます。
○藤田藤太郎君 今の発言は大臣いいですね。よろしいですね。
○国務大臣(松浦周太郎君) はい。
○藤田藤太郎君 それでは私は大臣にお尋ねしたい。インドに一つの例があるそうだが、仲裁という概念をここに掲げて裁定に従うというのは国際共通なんです。日本においてはそういう一つのインドの例を取って国会の審議権云々と言われた。それならまかしているというふうなことをお言いにならない方がいい。大臣はむしろわしのところに責任がないというようなものの言い方をせられぬ方がいい。むしろ誠意をもって解決するというのなら、労働省が一般的に言われている自主交渉、調整という建前に立って、早急に紛争を解決するという建前の中で、政府が最大の当事者でないようなものの言い方をされないで、一つの当事者として誠意をもって交渉から調停、あらゆる段階に努力されるというところの建前を私はとられた方がいい。それが先ほどから聞いていると、まるでよそのことのように聞えるからだんだん問題がややこしくなってくる。だから、先ほど労働大臣は、この問題解決のためにいろいろ努力をするとおっしやいましたけれども、私はほかの委員に質問を譲りますが、今日の今の事態において最大の努力をしてこの問題の解決、片一方は調停を受けて問題を解決しようとしているのだから、その努力をするということをお約束願いたい。
○国務大臣(松浦周太郎君) 今の仲裁の問題についての理論的な問題は、それは一応そうでありましょうけれども、現在の公労法による公共企業体と勤労者、政府、この三つの関係においては、それは私は経営及びすべての運営については政府の財産であってもそれは公共企業体にまかしていると思います。経営は全部まかしておると思う。従って、これらの紛争も彼らが解決すべきだと思います。しかしながら、予算上において政府が責任を持たなければならぬ場合が生じてくる場合においては、これは財政経済上においていろいろ考慮しなければならぬ問題が起ってくると思うのです。同時にその場合は、国会の承認を得なければならないと思うのです。でありますから、この場合における仲裁裁定は、ただ単に国際的な概念における仲裁の問題とは、三者にまたがっている問題ですから、そこに私はやはり考え方が、二者だけなら問題はないです。三者にまたがっているからそこでそういう解釈をしているのであります。でありますから、私は先ほどから申し上げておりますように、両者間の調停というふうに話がつけばよろしい、もし両者間に話がつかなければやはり仲裁裁定を求める。そして仲裁裁定を政府は尊重して、これを誠意をもって解決していく、こういう行き方しかないと思います。
○藤田藤太郎君 でありますから、私はインドの例を今局長から言われたけれども、日本も今のように経営権から紛争から一切をそこにまかしている、今、大臣も重ねて言われたのだから、仲裁という言葉をここで使うなら、名実ともに仲裁の裁定に従うということを、やはり明確にその企業体にまかしていくというような考えはないかということを言ったのです。
○国務大臣(松浦周太郎君) それは公労法にちゃんときめてあるものですから、誠意をもって解決つけるのですよ。しかし、規定してあるといっても財政経済上に対する問題は規制してあるのです。また、国会に承認を求めなければならぬという場合もあるのです。でありますから、そういうものを無視して、事がまだきまらないうちから無視して受諾するということは言えないのです。でありますから、誠意をもって尊重するとこう言っている。
○藤田藤太郎君 いやその点はわかる。その点はわかっているのだが、むろん私の言う概念を貫こうとしたら法律改正の問題も出てくるでしょう。そういう工合にして名実ともにやるお考えはありませんかということを聞いておる。
○国務大臣(松浦周太郎君) 今まで申し上げた通りであります。
○片岡文重君 先ほどの私の質問の最後に、これ以上答弁ができないという労働大臣のお話でしたが、これはどういう意味でおっしやられたのですか。労働大臣は先ほどの私の質問に対して、これ以上答弁できないというお話が、御答弁があった。それは重複して同じことを繰り返すことができないという意味なのか、質問の内容について答弁ができないという意味なのか。私は了解に苦しんだので、この点を確かめたのです。
○国務大臣(松浦周太郎君) それは多分こういうときに言ったと思うのです。誠意をもって尊重するという以上の答弁はできないということを言ったと思います。
○片岡文重君 そういう御答弁でしたならば、その点については了承いたしました。 そこであまり時間をかけてもなんですから、以後簡単に結論的に質問を進めていきたいと思いますが、労働大臣は、先日もこの委員会で、当然従来の保守党内閣の責任であるべき経済状態において景気の偏在していること、大衆の生活がきわめて苦しいということを率直に認めておられる。こういう率直な態度でおられるのですから、誠意をもって今起っているところの争議、実力行使に対して解決の方向へいきたい。この言葉も私は率直にそのまま拝承して参りたいと思う。しかし、衆議院における、予算委員会でありましたか、大臣は、たしか、総評は赤であるときめつけられておられる。労働組合というものはすべて赤という言葉をもって規制されておられるようであるが、こういう概念をもって今日の労働運動を見ておられる限りは、どの程度の誠意をもって解決しようとなさるのか。むしろそういう概念でこの争議を解決しようとされるならば、その意図するところはあまりにも明らかでありませんか。組合の諸君の要求が妥当なものであって、少くとも不当なものではないと認めるようなお言葉も、その総評が指導する争議云々、あるいは先ほどのお話では、国鉄の実力行使は昨年の六月からだと、こういう計画的な争議については云々というお話である。こういう大臣の一連の御説明を伺っていると、組合に対する正当な認識というものはわれわれとははなはだしくかけ離れているものではないかということが一つ考えられるのですが、まずこの点について、大臣は今もなお、この国鉄その他の争議が明らかに階級闘争の一環として政治的な色彩の、もとに行われているものと考えられるのか。この点を伺っておきたい。
○国務大臣(松浦周太郎君) その前に赤の話をちょっと申し上げておきます。赤の話の起りましたのは速記をごらんになるとわかりますが、上林山君がそういう質問をされたのです。けれども私はそうは思わない。三百万の総評の人がそれは多少共産系の人があるかもしれないが、それは日本民族のために勤勉に働いてくれる三百万の人を私はそうは思わない。しかし、少数の方々が誤まった考え方を持っている人がいるかもしれない。それはなぜそう指摘するかというと、総評ができた時分は共産党の指導による労働運動というものは成功しない、また、日本の国のためにならないということで、共産党の指導下から離れて、日本の健全な労働運動をやろうとするのが総評の考え方であったんです。従って、共産党との間に共闘主義を排した、ところがここ近年において、去年ですか、今年ですか、去年の夏ですね、それを削除したんです。それで、共産党と一緒にやろうとこういうことなんです。それは思想的に憲法は自由なんだからかまわないということであるが、私はその点についてはおもしろくないと言ったんです。これは私ははっきり言いました。それで私は階級闘争というものは、私はあまりおもしろくないのです。私の考え方はそうです。それはいけないと言われればそれまでなんです、なぜならば、階級闘争というものはですね、その結論はどこへいくかと言えば革命にいきますよ、ためしに人を憎しむということはいけないのです。憎しむ、憎しむということは人殺しになるのです。だから、私はそういう考えからこの革命にいく、暴力にいく階級闘争はおもしろくないということを言った。けれども赤の問答はそのときは上林山君が言った。そこで次の委員会で五島君が、赤と言ったそうだがどうだと言ったから、赤は赤だと言っただけの話なんです。そのあとにまた問答を繰返しました。その問題は一応そういうことです。その次は何でした、おそれ入りますが。
○片岡文重君 労働大臣の階級闘争の講義を承わろうというのじゃないのです。階級闘争として、今争議を行なっておると考えておるかどうかということを伺っておるのですが、その点イエスかノーかはっきり伺っておけばいいんです。
○国務大臣(松浦周太郎君) 私は階級闘争のみではないと思う。しかし、階級闘争的な気分の人もないとは言えないと思う。
○片岡文重君 けしからぬですね。どうもそういう概念でもってこの解決に当ろうと思われることははなはだ遺憾です。今の組合はこれは大臣もさっき言われたように、終戦直後の共産党支配下に行われた労働組合とは根本から違っておるのです。国の経済を一日も早く、立て直して国民生活——しかしこれは少数の資本家階級だけの生活安定を願っておるのではありません、国民大衆の生活の向上を念願しておる諸君が指導してやっておるのです。ですからそういう考え方にぜひ改めてほしいと思う、正しく認識してほしいと思うのですよ。そこで質問を進めていきたいと思うのですが、そういう今日の労働組合ですから、今日起っておる事態というものは、組合が決して望んで起しておるわけでもなければ、波のないところへあえて石を投げ込んでいるわけでもないのです。昨年六月からの計画的行動だと言われますけれども、吉野運輸大臣が十河総裁を呼んで、労使双方の話し合いを破棄せしめたのはいつだと思うのですか、そこからそもそもこの問題は起っておるのです。三十年末に妥結された話し合いの結果というものが、今日なお実施されていないのじゃないですか。こういう事態の中で約束したことだけは守ってくれという組合側の要求がどうして不当だと言えるのですか。私はやはりこういうこの争いの起ってきたところ、紛争の生じた原因にまでさかのぼって、しかも今日の組合諸君の窮状というものをつぶさに善意にごらんになっていただけるならば、政府としての措置はおのずから出てくると思うのです。で先ほど仲裁は尊重していきたいということでありましたが、この尊重するというのは法律上受諾すると言えないから、言葉の持つ内容としては受諾するということも同じなんだが、あえて法律用語としてそういう言葉が言えぬから尊重すると、こういう意味にわれわれは解してよろしいかどうか、その点一つ。
○国務大臣(松浦周太郎君) 何べんも繰り返すように、誠意をもって尊重するのですから、その点は事態の起った原因についてはいろいろの考え方がありますけれども、こういう状況になつた以上は、政府としてはやはり全国民の前に一日も早く平和裏に正常化しなければなりませんから、それのできる方法にしなければならないのですよ。それはやっぱりそこには平和的な話し合いがつかなければ応じてくれないのですから、そこのところをよくかみしめていただきたいと思うのです。これ以上の言葉は申し上げられないと私は言っているのです。私個人としてはこれ以上のことは申し上げられない。それなら答弁ができないと言ったのはそこなんです。それを御了承願いたい。
○片岡文重君 了承はその程度ではできないのですよ、残念ながら……。なぜできないかというと、今まで尊重する、尊重するという言葉でもって拒否されてきておるのです。 第一に、もしほんとうに政府が尊重するというお考えならば、これに要する予算措置をして、法案を出すと同時に予算措置をしておくべきだ。そしてその法案が否決されればこれはやむを得ないでしょう。しかし、いまだかつて予算措置をして国会にこれを問うたことは一ぺんもありません。しかし、それは法案がまだ可決されないから、予算措置はできなかったともし答弁されるなら、たとえば健康保険の改悪にしても、あるいはその他の法案にしても、予算措置を同時に行なっておる、あるいは事前に行なっておるということは今までもたくさんな例がある。にもかかわらず、この仲裁裁定の問題についてはいまだかつて予算措置をして法案を提出した例は一ぺんもありません。これはいわば口頭禅であって、少しも誠意をもっておらなかったという明らかなこれは証拠だと思うのです。今度はこれで近日のうちに仲裁申請がなされて、それによる裁定が出た場合、政府はこれに対して果して予算上の措置をして法案の上程を、国会の承認を求める措置をとるかどうか。もしそういう措置がとられるとおっしやるならば、私たちは尊重するという大臣のお言葉をそのまま了承いたしたいと思います。
○国務大臣(松浦周太郎君) そこで申し上げたいことは、現在三十二年度の予算の審議中であります。審議中に出すとするならば、組みかえしなければならないのですね。そこがわれわれの一番悩みとするところなんですよ。でありますから、私どもは尊重すると言った以上、補正予算によって解決をつけたいと思っておるのです。けれども、今補正予算を出せない悩みがある。ここは一つどうか御信用願いたいと思います。
○片岡文重君 どうもあまり突き詰めた話をして恐縮ですが、しからば予算措置をするという御約束はここでいただけるのですか。
○国務大臣(松浦周太郎君) これは三公社五現業とも今の裁定が幾らになるか、千百円になるか、千二百円になるか、あるいは千三百円になるかわかりません。けれども、幾らになっても現員現給でやってありますから余裕がないのです。全部補正しなければならないのです。だからわれわれはこれを尊重すると言った以上は、今の三十二年度の予算が通ってから、新しく補正予算を出すつもりです。それは約束します。
○片岡文重君 了承しました。とにかくこの仲裁裁定が出たならば、それを政府としては尊重し、それに基いて補正予算を提出する、こういうことの約束でありますから、その点については了承いたしました。 次に、きのうから行われておるいわゆる組合側の実力行使についてでありますが、この事態の起ったのは、先ほども大臣はこれを認められたようですけれども、ひとり労働組合側の責任のみではない、経営者側にも今日に追い込んだ責任があり、政府としてもまた責任なしとはいわれない。こういうお考えの上に立っておられまするならば、当然経営者が組合側の責任者のみを処罰せんとするこの態度に対しては、労働大臣として納得できないと思うのですが、どうですか。
○国務大臣(松浦周太郎君) お問いになる気持はよくわかります。われわれもこの事態になった以上は、補正予算までやって救わなければならぬということを考えている以上、それは全責任は政府が持たなければならぬということであります。けれども、違法であった場合、これはやはりしょうがないじゃないでしょうか。法治国ですから。それは私の権限じゃないのです。司法大臣の権限です。
○山本經勝君 先ほど私質問中であったのですが、実はもう少し掘り下げて検討をしておきたいと思う。その点は、今の三公社五現業の場合には、同じそれぞれ所管の大臣がおいでになりますが、その中で、労働大臣の立場は、やや違っていると思う。ただいまも片岡委員からの質問に対するお答えで、予算は現在審議中である。それでその予算の審議中である一方、最終的な労働委員会の裁定という、規定に基く決定がなされておらないから、予算を組もうにも組めぬのだ、あるいは審議中であるからできない。従って、補正予算を組んで、その決定があったならば善処するというお答えで、私も満足なんです。ところが、問題はこういうことが私は心配される。直接関係のありますのは、運輸省なりあるいは通産省、農林省、こういったようなところであろうかと思う。そうしますと、労働大臣の立場は、この公共企業体等労働関係法の施行並びに指導が私は直接担当だと思う。そこで、関係閣僚の間でいろいろと予算等について話し合われなければならぬでしょうが、その間の関係は、直接関係のある所管大臣とは違って、労働関係として管理をなさる責任があると思う。しかも起っておる事態は、先ほどのお話にもあるように、国民全体に非常に影響のある重要な事態である。だから、その調整に当って労働大臣立場から、具体的には委員会が裁定をして、それを基礎にした予算の補正をするということですからわかりますが、ところが、それがなかなか今まで閣議でとかく通った例は私どもも知らない。労働大臣はそうであったかもしれない。今までもそうであったかもしれない。しかし、実際はそういうふうな形になっておらぬというところに不安と心配があるのです。が、そこら辺は十分責任を持っていただけるかどうか、伺っておきたい。
○国務大臣(松浦周太郎君) 今の三十二年度の予算が通過しなければ、その間に出すということは組みかえになるのですよ。
○山本經勝君 それはわかっている。
○国務大臣(松浦周太郎君) だから、裁定をわれわれは尊重するという以上は、それが金額が幾らになるかわからないですよ、まだ裁定が出ないから。ところが、今の現員現給で組んであるから、余裕がない、どの特別会計においても。これは財源を借り入れるなり、あるいはもっと利潤が上ってできるなり、これは計画をし直して補正予算をやらなければ、とてもやれるものじゃない。少しぐらいの、予備金くらいのものじゃやれない仕事なんです。大体百五十億くらい要るという話です。でありますから、百五十億になるか、百二十億になるか、それは最後のことはわかりませんけれども、これは三十二年度の予算が済んだならば補正予算を組むべきである、こういうふうに思っております。
○山本經勝君 大臣が労働関係について再三この委員会でお話をいただいて、私どもも非常に意を強くしているのですが、つまり争議に不介入という基本的な態度は、まことにこれはけっこうなことだと思うのです。しかし、それだけに問題の自主的解決が必要になってくる。そこで現在行われている多くの争議があるわけですが、その中で、何といっても今の三公社五現業の争議というものは大きい問題だと思う。そこで、先ほどの片岡委員の御質問にもありましたが、何といいますか、違法なものについては、争議行為といえども、取締りもすれば処分もする、こういう御説、これはわかる。これはもう大臣からお伺いせぬでも、違法なものについては取締らなければならぬということは常識でわかる。ところが、法を守るということは、法治国の国民だからすべて必要である、政府当局もまた必要なんです。あるいは三公社五現業等の経営者にしても、法を守るということは必要なんです。そこで順法という問題がやはり浮び上ってくる。そのこと等については、やはり労働大臣の立場から申しますというと、何でも紛争、争議、つまり労働条件の維持向上のために労働者が経営者に対して要求をし、入れられぬがゆえに、不満で争議行為に移るという場合を一般的に想定いたしますという、これが単に争議という形でなくても、紛争になり、あるいは職場における不満になってやはり盛り上ってくるのが実態だと思う。これは私は大臣ほどの御見識を持っていただけば、非常によくわかっておいでになると思う。そうしますと、そういう事態に対する取締りなり、あるいはまた、処分というものが、これは片手落ちであってはならぬと思う。先ほども大臣は、争議をやっているのは政府じゃありませんというお話でありましたが、大臣の皆さんや、あるいはその他幹部の人々が争議をやっておられるんでないことはだれも知っている。争議というのは、紛争というのは、いわゆる労働条件の維持向上の要求に対して、入れられぬがゆえの不満から起る。職場や、ありとあらゆる所でいろいろなトラブルとなっている。ですから、そういう問題を個個に取り上げて処分をするということになますと、ややともすると、当局の側にある政府の皆さん、特に労働大臣に対してもそうだと思いますが、もっぱら争議という、目の前の事象だけをとらえて、そうしてその責任を労働者になすりつけようと試みる傾向がどうもあるような印象を強く持っている。そこら辺が一つ明白になっておらないと、たとえば問題の処理ができて、応状態が平静になったといたしましても、多数のまた責任の追及があって、さらにそれが新しい次の紛争になるということは、これまた好ましいことではないし、労働大臣の所管のうちにあるこの労働問題としては、これは労働大臣のはっきりした見解を明らかにしておいていただかないと困る点だと思う。
○国務大臣(松浦周太郎君) まあ実際今お話になったように、法はあくまでも厳正公平でなければならぬのでありますから、使用者側の方でも、法を曲げた者があれば、やはりこれは厳罰にしなければならぬと思います。同時に、勤労者の方も、まあ自分の自発的でなくても、まあ一つの群衆心理のもとに、誤まってそういう立場に立たされておっても、やはり一応法を犯したということであるならば、一応それに照らさなければならない。しかし、それの処置については、情状酌量することはいろいろあると思いますが、これは司法関係の、法務大臣の関係の範囲でありますから、皆様の気持は十分司法大臣にもよく伝えて、善処したいと思います。
○山本經勝君 ちょっと話が今度は変りますが、問題は、調停案のちょっと内容に触れておきたいと思います。そこで先ほどちょっと御質問申し上げたんですが、はっきりしたお答えをいただいておりません。そこで調停案については、先ほどからお話がありましたように、組合側は条件付といいますか、予算の裏づけをして実施をするという政府の態度を条件にしてこの受諾の態度をとっている。ところが三公社五現業等の関係経営者側といいますか、使用者側といいますか、当局ではこれを拒否している。ところが調停をする、あるいは仲裁をさらにするのでしょうが、その仲裁をするに当ってはだれがやるかといったら、同じ委員会の公益委員会がやるのですね、これは……。そうしますと、この内容から非常に変ったものが新しく呈示されてくるとは考えがたいのですが、それでもう一度大臣に確かめておきたいのは、一人平均千二百円増額すること、「なお、本年度については、この給与改正の主旨を勘案し、適宜の措置を講ずること。」となっている、これは千二百円という増額分に対する予算の裏づけ、先ほど大臣のお話になった点だと私どもは受け取っている。ここの点を一応大臣の見解を明らかにしておきたいと思うのです。
○国務大臣(松浦周太郎君) これは立案した人にこういうような主文になりました内容を今検討してもらってそれを書いてもらっておりますから、二、三日うちにでき上ると思うのですが、その正確な文章をもらわなければどういう意味でこうお書きになったかわからぬのですけれども、推測するならば、これはやはり業績手当のことをいっているのじゃないかと思うのですけれども、私どもはこれは推測するだけであって、そういう文章が書いてないものですから、この「なお、」以下の言葉はどういう意味のものか私はよくわからないものでありますから、これを調停せられました方々にこのおのおの団体の、この調停のそれぞれのこの判決に至つた内容を一つ呈示してもらおう、こう思っております。その上で御答弁したいと思います。
○山本經勝君 この点は、無論労働大臣の方もそうでございましょうが、この委員会といいしましても、少くとも適当な機会にあるいは次回あたりにこの一つ調停なさっていただいた公共企業体等労働委員会の調停委員長に一つ御足労を願って詳細に説明をいただきたいと思うのです。 それから次に御質問を申し上げたいのは仲裁の問題です。概念その他仲裁の決定に対する順法という基準的な態度についてはよく了承をいたしました。ところが問題は、この国会が実は予算の審議を現在やっておりますが、予算審議をやってそのあとさらにいろいろな法案を審議して、会期が五月の十八日ですか、までなんです。ところが、今までの例はとかく仲裁というのに時日が非常にかかってしまう。さっぱり、つまりどろ沼にものをほうり込んだような格好になって、時間がたつに従って下に沈んでいってついにその姿を現わさぬというようなことがしばしばあって、公共企業体等関係労働法にもこの仲裁には期間の定めがない。緊急調整その他の問題と違ってこれには仲裁に対する期間の定めがない。これはぐうたらべつたらに引っぱろうとすれば引っぱれる。これは底抜けなんです。この底抜けの仲裁にほうり込んでおくなれば、この国会の会期も終り、結論が出なかったというようなことで、すったりもんだりのような形で、なしくずしに流されていくという心配を私は考える。そこでこの仲裁に対しておよそ政府側としては、つまり関係省でそれぞれ御協議の上仲裁申請の手続をとられるのでしょうが、その場合におよそいつごろには仲裁の裁定が出る見込みがたつかどうか。
○委員長(千葉信君) ただいま山本君の提起された、調停に当られた労働委員会の何人かを参考人としておいで願うという問題については、理事会等で御相談願うことにいたしたいと思います。
○国務大臣(松浦周太郎君) それは御心配ごもっともなんですよ。そんな長引かせたくない。それでは事態の解決にならない。楽しみを持たして働かせるということでなければ、能率が上らないと思うのですよ。せっかく公共企業体の意見を出すのならそれを生かして使う考え方の方がいいと思うのです。私は自分も企業を長くやっておりますから、出す金なら生かして使うように早くしたい。そこで、これは公労法施行令を見ると、一カ月以内になっているそうでありますが、そんなに長くかかってはいけないと思う。それは第四波の問題もありますから、実際はわれわれはもっと早くと変えておるのですが、しかし、政府とは違う機関なんです。私どもが、やれと言って命令することのできない機関なんです。あの人たちは自発的な機関のものですから、各企業体から仲裁を申請せられましたら、それはこの事態をよく見ておりますから、あの人たちも最高の一カ月まで引っぱってやるなんということはないと思うのです。それはある期間に必ず仲裁の裁定が下るものと思っております。
○山本經勝君 大臣はあたかも公共企業体労働委員会をあの人たちという表現で、よその人のように思われておるのかしれぬけれども、どうもこれは心配だ、労働大臣の所管に属する一部局だと思う。いわゆる外局だと思う。
○国務大臣(松浦周太郎君) しかし独立しています。
○山本經勝君 一応は独立はしておりますけれども、労働行政の中の一環ではないでしょうか。その点まじめに。
○国務大臣(松浦周太郎君) その通りでございますけれども、独立しております。
○山本經勝君 独立しておるといいましても、いわゆる所管に属する問題であるなれば、その最高責任者はやはり労働大臣といって私は過言ではないと思うのですが、この点再度確認しておきたい。
○国務大臣(松浦周太郎君) それは私は法律をよく調べておりませんから、今局長に答弁させますが、私の常識を申し上げます。 私はなるほど労働省全部の責任者であります。けれども、仲裁裁定の場合における権限は、裁定そのものについては私の持っている権限以上のものを持っておると思うのです。ですからあの人たち、と言って悪かったのですが、その委員会というものは私の権限以上のものである、こういうふうに思っております。
○政府委員(中西實君) 行政組織法上から言いますると、公共企業体等労働委員会は、労働省外局となっております。しかしながら、やります職務は、これは独立性を持っておるということでございます。
○山本經勝君 それでよくわかりましたが、そこで最終最高責任者である大臣であるということに変りはないわけですね。そこであまりよそごとのように思わぬで下さい。最近ある労働問題等に対する不満も私どもは持っておる。ですから、当然この点で、およそ仲裁裁定が開始されて一カ月間の期間前にある結論を出せということにきまっていますか。
○政府委員(中西實君) 公労法施行令の十三条で、仲裁裁定開始後三十日以内に裁定するようにしなければならない、とございます。これはもちろん訓示規定ですが、それがもちろん以内なら問題はありませんが、それがおくれたからといって無効ではございません。一応それを目安にしてやるべきだ、こういう趣旨の規定でございます。 なお、外局であるが仕事はこれは独立性です。従って、労働大臣の所管にあるといいますけれども、それは任命手続その他についてでございます。その内容について審議するということはもちろんできないことでございます。
○山本經勝君 そこでいわゆる一カ月というのは訓示規定であるから、拘束をせぬということになりますと、それでもってまたますます私は危険性を持ってくると思う。結局労働大臣の考え方から申しますと、事態の安定といいますか、その紛争の、争議解決によって国民に安定感を与えたい、これは行政担当者として当然のことだと思うのです。これは全く同感なんです。そうしますと、この原因となっている紛争の問題点すなわちベース・アップ等を中心にした交渉なり、あるいは解決への促進がなされなければならない。そのかぎが、今仲裁裁定にもっぱら期待をかけられているいわゆる労働委員会の調停に対して、調停案を経営者側がのまないというのですから、そうなりますと、次にくるものはどうしても仲裁、その仲裁がさてまた実は一カという期間は切ってあっても、実はこれは訓示規定であって、拘束も持たないということになりますと、これはいつになるかわからぬということなんですが、そういう場合には争議がずっと長引くこともあり得るのですよ。その場合に労働大臣としてはどうお考えになるでしょうか。
○国務大臣(松浦周太郎君) まあ私は早期解決ということでなければいけないと最初から言っておるのでありまして、三十日がまた国会過ぎるまで延ばすというようなことは、これはあるべきことじゃないと思うのです。また、この委員会の方々が昨今の新聞を読み、この紛争の状況をごらんになれば、政府がそこまで決意をしたということになれば、そう長くは引っぱられないのじゃないかと、こう思います。
○山本經勝君 そう長くは引っぱれないというのは、この仲裁委員会の独立した一つの権限に属するから、勢いその大臣の気持とは別個に動くかもわかりませんが、大臣の方からこの間にやってくれと言うわけにもいかぬでしょう。まあそういう点から言って非常に困難性が私どももわかる。わかりますが、長引けば争議が長引くと考えなければならぬ。その紛争が長引けば国民大衆に迷惑をかけるということは事実です。そうすると、その国民大衆に迷惑をかけないようにする大臣の努力としては、どのようなことが予定され、考えられますか。
○国務大臣(松浦周太郎君) 行政の妙を発揮します。
○山本經勝君 行政の妙といいますと、行政の妙というやつはまことに奇妙な妙になると困るので、その行政の妙なるものを、これはやはりこの委員会で聞かしておいていただきますと非常に皆安心してくると思うのですよ。これはここで話しておることは、伺っていることは、大臣のお話も、われわれの質問も、全国に流れていくのです。で、これはやはりそのいわゆる行政の妙なるものをどういう形で発揮なさるか、そこら辺を一つ聞かして、国民に安心をさせていただきたい。
○国務大臣(松浦周太郎君) 社会通念によるものであります。
○山本經勝君 社会通念なんということになりますと、これまたさっぱり見当のつかぬものになってしまうと思うのです。まるで煙のような、おばけのようなものになってくると思う。社会通念にはみんなそれぞれ人の持っている考え方、あるいはその人の経験、そういったものが基礎になって判断をすることになってきますから、そういうようななまやさしい事態では私はないと思う。先ほど大臣がみずから言われたように、十すでに第四波というものが計画されて、そうすればどういう事態が起るかということは非常に顕著な事実なんです。そこで大臣は行政の妙を発揮すると、これは全く期待に値する言葉でしょうが、私どもにはわからぬ。どういう行政の妙が受理されるかといふことがわからない。その点を一つ何とかもう少し具体的におよそ……。
○国務大臣(松浦周太郎君) お問いになる方が無理なんですよ。それは私の権限外なんです。それは裁定なんですよ。裁判なんです。私は大臣である。けれども、その委員会は裁判するものなんです。その裁判を左右するということを僕にやれということは無理なんです。こういうところで速記録に残せというのが無理なんです。だから行政の妙ということを言ったのですから、どうかこの問答はこの程度でお願いします。
○山本經勝君 ただいまのお話はいわゆる行政の妙ということでそれ以上言わしてくれるなという、私はその言葉に一応御期待申し上げまして、一応その点は預けますが、しかし、私はこう思う。聞いておいていただきたい。なるほど裁定は裁判と同じように、局長から先ほど言われた、概念でも言われたように、しかるべき責任を生じてくる。そこでそういう意味において尊重される考え方があり、そうして事態収拾のための善処をやる、こういうことになってくると思うのです。ところが、この仲裁裁定の促進をすることは私はできると思うのですよ。この事態を大臣から訴えられて、なるべく早くやってくれることが解決への道であるということであるなれば、さっそくその手続をなされ、そうしてそれがいわゆるこの仲裁委員会の活動となってくる。で、こういうような事柄については、私は大臣から早くやってくれという要請はできると思うのですが、どうでしょうが。
○国務大臣(松浦周太郎君) でありますから、私はさっきの、行政の妙を発揮すると申し上げました。あの具体的に私の方からの命令権のないところですから、申し上げたのですから、どうか一つ……。
○山本經勝君 それで一応その点私もそれ以上ここで追及してもいたし方ないと思いますが、ただ希望を申し上げておくことは、仲裁委員会が長引いてぐたぐたになりそうだから、なった場合には非常に重大な事態が起る。従って、そういう事態がないように、大臣は仲裁委員会のすみやかなる結論を求めるような行政の妙を発揮していただく、こう確認してよろしいですか。
○国務大臣(松浦周太郎君) はあ。
○委員長(千葉信君) ちょっと速記とめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(千葉信君) 速記始めて。
○山本經勝君 関連しておるわけですが、実は炭労争議について中央労働委員会の中山会長が労使双方の意見を聞くということが新聞に出た。これは労働大臣の方の関係は直接ないかもしれません。しかし、炭労争議に関する事情聴取は組合法にもあることだし、また、中央労働委員会規則の中にも関連したようなことが書いてあるようですから、そのこと自体はどうとも思わぬのですが、これに対して特殊な労働大臣から要請なり、中労委に対する介入要請なり、その他のことはなさっておるのかおらないのか。
○国務大臣(松浦周太郎君) まだなしておりません。
○山本經勝君 ただなしておられぬというのは、今からやるお考えですか。
○国務大臣(松浦周太郎君) 事態が、会長に会わなければならぬような事態になれば特別ですが、私どもの方は労使双方において平和的に早期解決を望んでおるのでありますから、その点は何か情勢を聞きますと、国鉄の方が片づけば片づくようなふうなんです。で、われわれが介入しないで、労使双方の平和的な自主的な面において解決を望んでおります。非常に進捗しておるようであります。でありますから、けさ新聞に出ておったような事態にはならぬで済むのじゃないか、かように考えております。
○山本經勝君 今の点、大臣の方から仲労委の中山会長に要請なりその他なさった問題じゃないわけですね。
○国務大臣(松浦周太郎君) そうです。
○山本經勝君 はい、了解。
○片岡文重君 先ほどの責任者に対する問題ですが、大臣は司法大臣の所管だからというお話ですけれども、しかし、この司法処分を必要とするような違法者に対してまで私はとやかく言っておるのではない。問題は停職あるいは減俸あるいは解雇、戒告等、いろいろと行政的な処分が行われる。特に私どもの最もおそれるのは、こういう機会を利用して当局にとって煙たい人物、あるいは当局用語で言えば好ましからざる人物の処分が行われる危険性があるのです。で、こういう点になりますと、その違法行為に対するといわゆる違法性というものの解釈がどうしても権力のあるものに正当づけられていく。これをだれが一体救うのか、ここに私どものその心配するところがあるわけです。そこで労働大臣としてはこういう点については、やはり組合側にのみ責任追及をすることなしに、しかも起った事態の正確な把握と同等にそれに対するこの情状酌量といいますか、事態に対する措置については十分勘案すべき事態がこの種の事件には多いのですから、そういう点を十分勘案されて、経営者側に対してもこの機会に便乗することのないように、やはり十分な要望なりあるいは希望なりを労働大臣としてしていただいたらどうかと、こう思うのですけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(松浦周太郎君) さっきから申し上げておるんですが、行政処分を受ける人の中にもいろいろありまして、まあ何にも計画的じゃなかったけれども、群集心理のもとに誤まってついに行政処分を受けなきゃならぬような立場に立った純真な青年もないことはないと思うんですよ。そういう人の方が多いんじゃないかと思うんですよ。そういう場合は、私は十分に経営の方にも話していわゆる情状酌量の線を満たしてもらうように努力いたしたいと思うのですが、国民大衆から見ると、何といいますか、指導的な立場に立ってそこまできた人に対しの考え方というものは、非常な、何といいますか、遺憾な考えを持っておると思うんです。これはいろいろ聞くんです。でありますから、その点は一つ公正にやらせるように当局に話したいと思うんです。しかし、ただ私の念願とするところは、純真な青年が一つの群集心理というか、職場の義理合いというか、そのためにかり出されてついにあやまちをした。その人が減俸されたり首を切られたりすることは私非常に気の毒だと思いますから、そういう点は愛情をもって臨むように、一つ当局にもよく話したいと思います。
○片岡文重君 言葉の上では大体尽きておると思うのです。しかし、いわゆる公正なる措置ということは、政府の公正なる措置というのは、きょうの新聞にも出ておるように、これはきわめて何といいますか、冷たい感じを持っておりますから、そういうことを私たちは望んでおるのではなくて、とにかく経営者が処分を受けることなくして、組合側のみが処分を受けるというこういう事態にならないように、大臣としては善処されることを要望しておきます。時間がありませんから……。
○委員長(千葉信君) 本件に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。 午後二時から再開することとし、休憩いたします。 午後零時五十三分休憩 —————・————— 午後二時三十三分開会
○委員長(千葉信君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。 社会保障制度に関する調査の一環として、昭和三十二年度厚生省関係予算に関する件を議題といたします。御質疑をお願いいたし。
○竹中恒夫君 この際、厚生大臣に予算に関連いたしましてお尋ね申し上げたいと思います。 実は、この二月の六日の本会議で私御質問申し上げまして、その際、まことに御懇切な御答弁をいただいたわけでございまするが、一応本会議というような席上でございまするので、自然御答弁も、御懇切ではございましたが、抽象的なうらみがございまして、重ねて再質問する機会がございませんでした。また、いわゆる議会答弁のような節もございまするので、本日は、大臣の時間のお許しになる範囲内において少しくお尋ねいたしたいと、かように存ずるわけであります。従いまして、本会議の私の質問の項目をとらえまして、先般の昭和三十二年度の一般会計、特別会計予算案についての御説明という、これの順序を追うて御質問をやっていきたいと思います。当時、私が最初に御質問申し上げましたのは、昭和三十二年度は、いわゆる財政規模が非常に拡大された年でありまして、ことしこそ全く社会保障制度を、躍進的に制度の拡充と確立をはかるべき絶好の年であると思う。従って私からすれば、今回の施策は足らないところがあるような感じがして、率直に申せば、社会保障拡充の機会を逸したんではないかという意味の御質問を申し上げたわけです。その際の大臣の御答弁によりまするというと、いや、そうでないのであって、厚生省の一般会計も、本年度は一千百十四億円ということで、前年度に比べて百十一億円からの増加を来たしておる。まあ一一%ばかりの増加を来たしておるのであって、金額的にも相当積極的にワクを広げておる。また、施策の面においても、国民皆保険の上からいって、国保の問題、あるいは結核の抜本対策、ないしは低額所得者、特に生活保護についての基準の改訂、母子加算、あるいは世帯更生資金の貸付、医療貸付等々、相当の低額所得者、生活保護に対しても施策を施しておるのであって、全くその施策は積極的に展開したつもりである。あわせて社会保障制度全般を通じても、画期的な充実を企図しておるという御答弁をいただいたわけであります。なるほど仰せのように、国民保険では三十三億の増額があり、日雇いで四億、あるいは結核で十四億、遺家族援護その他で二十一億と、相当、金額が増額された面がございまして、その御当局の考え方と方針そのものについては、私も賛意を表し、また、敬意を表しておるわけでございまするが、問題は、こうした施策の費目がふえたとか、あるいは費目は問題でなくして、費目に盛り込まれる予算金額が私は問題になると思う。百十一億円の増額の内容というよりは、増額はもっと飛躍すべきものであって、少くとも国家総予算の上から言うて、千百十四億という厚生省の本年度の一般会計予算は、一〇%前後にしかすぎない。しいて言えば一一%未満である。これがやはり防衛その他の面から考え合せて見ても、石橋内閣の主要な政策である福祉国家の予算案の上からいうては、はなはだ欠くる点があるように実は私は考えておるわけであります。もちろんこれは見解の相違といえばそれまでのものでありますが、そこで私がお尋ね申し上げたいのは、そういうような感じをわれわれは持つわけなんですが、予算の配分については、もちろん議員としての共同の責任がございまするが、同時に、主管大臣としての政治力なり、あるいは政治的な手腕、特に新大臣の政治的な経歴から勘案いたしまして、私は閣議におきましても相当な発言力をお持ちになっていることから考えまして、御答弁によりまするというと、社会保障関係費も、画期的な充実をはかっておるということで、一応御満足な気持で答弁をいただいたように思うのでありますが、私としては、必ずしも満足すべき予算の配分でないと思いまするので、果して大臣は本会議で御答弁通り、しんから満足した本年度の予算であるというようなお気持を持っておられるのか、あるいはわれわれと同様に、不満であるが、実情からしてやむを得ないという意味においてやっているんだというのか、そうした点について、総括的に、最初本年度予算配分についてのお考え、あるいはまた、もし不満とするならば、大臣の政治力なり政治生命をかけてでも、適当な時期に補正予算その他の点で措置ができる範囲内においては、今後はこれ以上のことをするんだという積極的な御意思があるかどうかということを最初にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(神田博君) ただいま竹中委員より、昭和三十二年度の厚生省所管の予算につきまして、非常なまあ景気を背景として組まれた予算でございますので、もっと各費目にわたって増額すべきではなかったか、まあこういうような御意見のように拝聴いたしたのでございますが、これはもう政府といたしましては、たびたび機会を得まして御説明申し上げているのでございまするが、何といたしましても、わが国のこの社会状態を勘案いたしまして、ぜひとも福祉国家を建設いたしたい、そのために社会保障を一つ充実して参りたいと、こういうようなまあ方針を石橋内閣以来立てまして、所要の経費の一端を、財政とにらみ合せまして計上したわけでございます。 そこで、満足したかどうかということになりますと、これはわが国が非常なまあ厚生関係においては先進国より立ちおくれていることは、これは私が申し上げるまでもないのでございまして、早く先進国並みに持っていくということは、これはもう相当の距離があるだろう、時間もかかり、また、財政負担も相当なこれは努力をしなければならないことは御承知の通りだと思います。ただ、申し上げたいことは、今までそういうおくれておったにもかかわらず、他にやるべきものが、急ぐものがあった。そこで、頭に置きながらも厚生行政が推進できなかった。しかし、この三十二年度から一つ急速に厚生行政の推進をいたしたいと、こういう意図を持って予算を組んだ。一千億減税、一千億施設と、こう言っておりますが、その一千億の中にも、事務費、あるいは約束された関係の費用がだいぶあるのでございまして、そういう環境から考えますると、国の予算の膨張額から考えまして、厚生予算の方が相当額計上された、こういうふうに私ども考えております。そこでこれで、じゃ満足しているか。将来どうするかという御意見でございまするが、もちろん満足したわけではございませんが、しかし、国の全体から見まして、国家財政の全体から見た場合に、今日の段階においては、この程度でしんぼうするよりやむを得ないのだ。そこでことしからと申しますと、この三十二年度から厚生関係は一つうんと力を入れようと、こういうことでございますから、三十二年度に計上した以上に、三十三年度以降は一つやって参りたいと、まあそういうような考え方、方針でございまして、すでに三十三年度の新規事業等につきましても、三十二年度の予算編成の際に、約束済みと申しましょうか、これは三十二年度はちょっとできないが、三十三年度では一つ優先的に扱おうじゃないかというような約束をみているものもございまするし、今後漸を追ってできるだけ一つ先進国に追いつきたい、こういう考えで予算を組んで参りたい、施設を進めて参りたいと、かように考えております。
○竹中恒夫君 続いて、第一に、医療保障制度の確立に必要な経費についても御説明をいただいておりまするが、医療制度のうちの、まず第一に取り上げるべき国民健康保険、いわゆる国民皆保険の問題でございまするが、私本会議におきまして、国民皆保険の拙速主義に対しては反対の意思を表示いたしました。その理由もごく簡単に当時申し上げたわけでございまするが、時間の関係上、その意を尽し得なかったわけでございまするが、要するに、医療保障制度というものを完全にやっていくのには、喜ばれる内容のもとでなければならない。国民が喜ぶものであり、満足するものである、同時に医療保障は、医者が、医療担当者が心から協力でき得る条件がなければならぬということは、これは大臣御承知の通りなんであります。 そこで、私一番初めに腹案に持ちますることは、地方団体の受け入れ態勢の問題なんです。で、非常に地方財政が枯渇し、赤字に悩んでおる県が多数ございます。これが短時日の昭和三十五年までに厚生省の建前から申しますると、皆保険ということで、もとより完全実施をしたいということはよくわかるわけでございますが、実は先日石川県の方に、私、千葉委員長並びに勝俣委員のお供をして視察に参ったわけでありますが、石川県におきまして、この地方団体受け入れ態勢についての一つの顕著な事実を私見て参ったのであります。と申しますることは、石川県では、三十二年度におきまして、国民皆保険の建前で、十万人の人員が増加する、被保険者になるわけですが、それに対しまして、国保連合会の方からは、医療給付費の補助として八百万円の補助を、県庁や、知事に要求したわけなんです。ところが、とうてい石川県の今の財政からいうてはできないということで、前年通り二百五十万円の県費の補助をしよう。で、十万人の被保険者がふえましても、前年通りまだ二百五十万でも出せる石川県の場合はいいのですが、お隣りの長野県におきましては、財政の赤字の累積のために、三十二年度は国民保険の補助金を打ち切りにすることを知事が言明いたしました。そのために、県会で今問題になっているというようなことであるわけであります。あるいはまた、近い、千葉県の問題でございまするが、千葉県におきましては、八日市場市、また、あるいは松尾町、丸山町というような町村におきましては、従来七十万円から二百四、五十万円程度の補助を国保がしておったのであります。で、その補助の内容を見ますと、主として保険料の未徴収のための穴埋めというようなことがあったのでありますが、それに対しまして、自治庁が財政再建団体に指定した——そういう八日市場市、あるいは松尾町、丸山町というような、自治庁から財政再建団体に指定されたのに、国民保険にそういう補助をしてはいかぬという命令が自治庁から出ましたので、これができなくなった。そういたしますると、三十一年度の報酬費支払等も、これは支障を来たして参るわけなんでありますが、こういうように二、三の例をとりましても、相当各府県で、国保受け入れ態勢どころではない、現在やっておるものについてもなかなかこれがうまくいっておらないのですが、そういう点について地方団体の受け入れの状態を御調査になり、あるいは受け入れられないところには、別途な何か助成方法を考えておられるかということが、国民保険に対する私の質問の第一点。 それから第二点は、低額所得者が主として今度はこれに該当するわけであります。で当然医療保障のらち内にある者は三千万人ございますが、その中で毎々言われる九百五十万人前後の者はボーダー・ラインだ、かようになりますというと、三千万人のうちの三分の一は低額所得者でございますが、そういたしますると、保険料の算定は、その所得、あるいは戸数割り、いろいろなことが標準になって保険料を算定するわけでございますが、三分の一がもうきわめて低額な所得者を含む皆保険を実施するという場合においては、従来の国民健康保険の財政のあり方と同じような考えで厚相がおられましたならば、これは大きな見込み違いを私は招来していく、また、いろいろと支払い等に支障を来たすのじゃないか。つまり残りの三千万人の対象が、非常に所得が低いことによって、何か厚生省は財政的な考慮をしておられるかどうかということが、私の質問の第二点であります。 それから第三点は、現在の実施組合の中でおよそ半数、四〇何%は赤字で現在悩んでおるわけです。それで合計四十億ばかりの、全国的な合計の赤字が今出ておりまするが、この四十億円の赤字に対しましては、大臣は先般の御答弁では、国庫補助の清算を督励するというようなことでもって御答弁になられたわけなんですが、果して清算の督励を命じられてから一カ月ばかりになるわけなんですが、この結果この四十億の赤字がどういうようになってきておるかという点に私は疑問を持っておるわけであります。また、四十億円の赤字は国庫負担の清算だけで、バランスがとれるものかどうか、こうした点も国庫補助金の療養費のいわゆる二割を払っておるだけで、その、バランスがとれるのかどうかという点につきましても、私はお聞きしたいと思うのであります。 なお、私の第四点の質問といたしましては、特別国民健康保険というものが従来からございます。普通この国民健康保険に対しましては、将来皆保険になった場合に、既設のものは従来通り一般国民保険と同様に取り扱いになってやはり同様の国庫負担、あるいはまた、その他の面で同様な条件下に国民保険のお取扱いになされるのかどうか、新たに特別国民健康保険の申請があったというような場合に、どういう方針で臨まれるかということ、これが質問の第四点。 それからもう一つお尋ねしたいことは、五人未満の事業所の方々を国民保険に吸収なさるのか、あるいは第二種保険としてなされるのか、いろいろお迷いになっておられるようでありますが、明らかにこれは勤労者として、労働者として同じ建前にあるのございまするからして、たまたま自分の勤めておる事業所が小さいということのために五人未満になっておるのであって、やはり一般労働者と同様な立場において健保にこれを入れなければ、御承知の通り、国民保険と健保とは勤務条件なり、年令なり、内容が違っておるわけでございますからして、これは公平に扱うという意味からいって健保に入れるべきだと思うのございますが、国民皆保険に対する五人未満のこういう方々に対してのお考え、この五点について、一応お聞きしたいと思います。
○国務大臣(神田博君) ただいまの国民保険が市町村が赤字である、あるいは都道府県も赤字であって、都道府県の補助がなかなか容易でない、市町村もその通りである、皆保険というているが、なかなかそう簡単にいかぬじゃないかという御心配、例をあげての御質問でございまして、私この地方団体が非常に財政難であるということはよく了承いたしておりますが、今例をあげました市町村が事実どうなっておるかはつまびらかにしないのでございますが、竹中さんのおあげになった例は多分その通りであろうと想像いたします。そこで問題は、今現にやっているところもそういうような状態なんだから、新しくやるところはなお大へんだということも想像にかたくないのでございますが、そこで私どもといたしましては、事務費の単価を上げるというような措置をとり、あるいはまた、一方、今お尋ねのございましたように、二割に相当する医療給付費の清算を急いでおりまして、今度の第二次補正に三十年度の足らない分をここ一両日のうちに補正予算として十億七千万円でございますか、三十年度分はすぐ国会に一つお願いするというようなことも、きょうの実は定例閣議できめたようなわけでございまして、三十一年度につきましても医療給付費の不足分がございますれば、これは無論追加補正でやって参りたい、こう考えております。 そこでこれはもともと相当な困難を予想しておりまので、普及促進費の補助金も二千三百万円、これは少額であるという非難もございまするが、しかし、ないよりはましでございまして、こういった新しい予算も計上いたしまして、一所要の国民健康保険を実施いたしたい、こういう熱意で実は予算を組んだわけでございます。 なお、この国民皆保険を進めて参ります際に、考えなければならない点が相当あろうかと思われます。事務費の単価の引き上げとか、あるいは医療給付費の三割を一つ政府が負担するようにというような声も相当強いのでございまして、こういうことは相当耳を傾ける私は必要があると思いますが、事務費等につきましては、これはどの程度がいいのか、一つ夏に、厚生省と大蔵省で両方で共同調査いたしまして、そこで一つ基準をことし新しくきめようじゃないかという話し合いになっております。実際のところ、一体どれがいいのかということが、まだ両方納得する線が出ておりませんので、ことしは一つそれを、この三十一年度の決算の数字に基いて考えようじゃないか、こういうような打ち合せになっておるわけでございまして、いずれにいたしましても、医療保障制度の確立がわが国現下の情勢では重大だと考えておりますので、全力をあげて一つ進めて参りたい、こういう所存でございます。 それからこの特別健保を、今のやっているのをどういうふうにするかとか、あるいは将来これを奨励するかというお尋ねでございましたが、厚生省といたしましては、現在の特別健保につきましては、これは今後も一つ育成していこう。なお、事情によってはこれは認める。しかし、もう皆保険を打ち出しておりまするからして、事情といいましても、たとえば関係市町村の同意を得るとか、そこは一つ幅を持ちまして、やめろとは言いませんが、やる場合にそういった幅を持って、事情がその方がいいという場合には、これは許していきたい。しかし市町村の同意を得られない、あるいはまた、のせたことによって非常に国民保険の方がうまくないというような場合においては、これは許可をしない、こういったような弾力性のある考え方でいきたい、こういう今の段階でございます。 それから、五人未満の事業所の第二種保険と申しましょうか、この問題でございますが、これはこの国民保険を進めて参ります際に、全く重大な問題でございまして、これらの零細企業が対象になりますので、今の国民保険の中で育成するということもなかなか容易じゃないと考えております。しかしそれならば第二種保険として育成するか、あるいは思い切って零細企業は全国に散在しているというよりも、むしろ当該市町村と申しましょうか、大体集団しているような、これは産業の分布がそういうことになっておりますので、そういう事情も市町村に対しては特別な見方をするかというようなこともこれは考えられるのではないかと思います。 いずれにいたしましても、もう少し五人未満の事業を保険対象とする場合に、国民健保に入れてしまって、そこの国民保険がうまくいくような方法を考えていくか、あるいは今の特別立法するかということについては、まだ実は調査中でございまして、そう長い時間はかかるとは思いませんが、もう少し踏み切るまでに調査研究いたしたい、検討いたしたい、こういうような今段階でございまして、はっきりしたお答えを申し上げかねるのでございますが、とにかくいろいろの方途を講じまして、三千万に近い保険の対象となっている国民を全部四年間に入れたい。それには今申し上げましたような、解決すべきものは解決いたして参りたい、こういう所存でございます。
○竹中恒夫君 質問をいたしますので討論は差し据えますが、なかなか限られた予算で御苦心の点はよくわかるのですがそこで皆保険を実施なさる前提としての地ならしの点についてお聞きしたいと思うのです。 国民皆保険という建築物をお建てになるには、やはり相当な地ならしが必要だと思うのです。そこで先ほどお聞きいたしました五点の事柄が不安でございまするが、これは将来の不安に対する質問だったんですが、実は過去の問題については、私はこの機会にお耳に入れておき、またこれに対する対策についてお考え願いたいと思うのですが、国民保険が実施されましてから、十七、八年、昭和十三年以来実施されておるわけでございまするが、この長い歴史の過程におきまして、設立早々にすぐに財政破綻を来たして解散したところもございまするし、四五年たってから解散し、あるいは最近のごとく、市町村の合併等によって組合が合併したところもございまするが、そういうことのつど、医療費というものが未払いになったままで、今日まで十数年放置されたのもございます。で、むしろ今日請求しようと思っても組合がなくなってしまっておりまして、もう請求対象がないというようなこともあるわけなんです。多くの場合は、請求未払いの医療費は、医者に懇談をして寄付をしてもらうとか、その市町村に、あるいは組合に、あるいはまあ半分だけ払わしてくれ、三分の一でしんぼうしてくれというような、いろんな方法がございます。あるいは当分市町村税は一つ免除しようとか、というような、過去の私実績から見ますというと、非常に医者の犠牲で今日まで国民保険というものが成り立ってきたように思う。こういうことでは、とうてい今後皆保険になった場合に、医者は生活をするわけに参りません。従来自由患者がございましたから、市町村の財政に対して理解を持って、犠牲を払い得たのでございまするが、今日の段階においては、そういうようなことはとうてい私望み得ないと思うのですが、相当この額は、私数字を持っておりませんが、国民保険実施以来の総額——未徴収、未払いの額というものは、相当額に達しておると思う。これは結局今のところでは、医者の泣き寝入りになっております。こういう点をどういうようにお考えになっておられるのか、いや、もう得心して一応寄付したのだから、半額であきらめたのだからいいのだと言えばそれだけの問題でありますが、今後皆保険で心から医者の協力を得ようと思えば、こういうような過去の不始末に対しましても、何らかの監督の立場の厚生当局としては、両医師会あたりにでも事情を御説明になって、そうして今後の協力を求められませんというと、犠牲のしっぱなしでいいのだというような態度で、過去を問わずに先を進むということは、私はどうかと思うのです。 そこでいま一つ私が問題にし、非常に不安に思い、地ならしとして必要であると思いますることは、現在の条件下においての国民皆保険は、私ははっきり申し上げて、医学の進歩を阻害するという私は信念を持っております。で、大臣の、次の条項の、結核の御説明のところにもございまするが、非常に結核による死亡率が減ったというようなことを言うておられます。全くその通りでございまするが、今日、国民があの結核の死亡率を考えましたときに、これは医学の進歩であり、二十世紀における医学の私は凱歌であろうと思います。医学の進歩というものを——医学を臨床に行うのは医者でございまするが、結局、国民の平均寿命が伸びて参ったというようなことも、全く医学の貢献であろうと思うのです。と同時に、私は医療保険の貢献だろうと思う。早期発見、早期治療ということによって、結核というのもあそこまでうまくいって参ったのだろうと思うのですが、そういうように考えてみますというと、今の条件下におきましては、どうも今後、医学の進歩を阻害するような私心配を持つわけなんです。これはまあ討論になりまするから、差し控えまするが、大臣は一定の基準というものは健康保険の治療にあるんだと、その基準でやっておるんだということでございまするが、その基準なるものが医学の進歩を阻害する。私は今日あえて制限診療とは申しませんが、どうしても今の状態でございますると、従来は自由患者というものがあって、大学で十二分に履修したものを行えたわけです。皆保険になりますと、そういう技術を修得いたしましても、ワーク内治療でございますから行えない。そういう点について、何らかの御配慮をして皆保険をなさるつもりなのかどうか。もしこのままでやることでありまするならば、私は人類の大不幸だろうと思う。皆保険という一つのものをとるために医学の進歩を阻害されたり、あるいは最高の医療ができないというような条件下に皆保険をしてしまうということでは、これは非常に私厚生行政の上からいっても問題があると思う。そうした点についての御配慮があるかないか、いろいろな方法が私はあると思う。あると思うんですが、そういう点について一応私はお聞き申し上げたい。率直に申しまして現在の医療保険というものは、よく言われるように、自由患者の治療が一等の治療であるならば、自由患者にもうんとお金持ちの人もありますが、それが一等、普通の人が二等ならば医療保険は三等だと、必ずしもその例は当らぬかもしれませんが、あるいは医療保険は貨物だ、貨車だと言われております。どうか、三等治療をもつ、国民のすべての治療というような結果にならないような配慮を私はいただきたい、こういうことをお願いするわけです。まずそれに対するお考えをお聞きしたいわけです。 それからもう一つ、最初に戻るようですが、医療報酬費の支払責任の問題で、最初に申しましたように、過去の清算というものはそのままでございまするが、今後の問題としてもそうなんですが、やはり支払いを求めるより、国民保険では保険者が支払い、あるいは半額は被保険者が支払うということになっておるのはよく承知しておりまするが、今後三千万人の未加入の方々の中には先ほど申しましたように、低額の所得者がきわめて多いわけです。この低額の所得者が半額を負担して、そうして治療に来た場合、出せる人はいいわけなんですが、出せない人がある場合に、これは相当大きな、従来の健康保険の一部負担程度ではないと思う、半額でございまするから。こういう低額所得者の治療してもらいたいが金がないという階層、あるいは一回、二回の金はあるが、あとは払えないというときに、医者はずいぶん困ると思うんですが、皆保険になりますと、そういうような例外と申しまするか、むしろ例外ではないんですが、そういうケースがだんだんと私はふえて参ると思う。そういうような点につきましても、ただ単に事務費の単価を上げるとか、あるいはまた、療養費の二割を三割にするという程度では解決しない問題である。そういう低額所得者を含めた場合に、特別な助成の私は考え方がなければ皆保険というものは実施できないと思う。そういうようなことをいろいろ考え合せまして、私は拙速主義と称するわけです。はなはなだ失礼ですけれども、私は拙速主義だと、こういうふうに思うわけなんですが、そういう点からいたしましても、どうしても被保険者が全国民であるということも考えますると、相当の配慮をしてもらわないといかぬ、かように考えるのでございます。 そこで、国民皆保険というものは全く仰せのように、画期的な英断的なものである、その通り。と同時に、半面医療革命と私は考えておるわけです。ですからこの医療革命というものが、やはり下手な革命をいたしますると、いわゆる流血革命になるわけです。やはり医療担当者も生活環境の激変によるところのまごつきもないように、それから被保険者の立場も考えまして、スムースな医療革命を私はしなければ、これはいけないと思う。そういう点についての御配慮を私はしていただかなければ、絵にかいた餅になり、あるいは善政を予想しても結果的には悪政になるという心配を持つわけですが、そういう点についてその御所見を承わりたいと思います。
○国務大臣(神田博君) 竹中委員より、国民健康保険の——国民保険のいろいろの例をお引きになられてのお尋ねでございましたが、この何といいますか、市町村合併等によって保険組合がなくなって医者の未払いがそのままになっておる、これは一体困るじゃないかということで、一つ例を引かれての御質問でございましたが、これは全国的に相当合併を奨励いたしまして参ったのでございますので、この合併の方法が、吸収合併でなくて、解散合併したような場合には、そういった問題が今お話の例で伺いまするとあったのじゃないかということを今承知いたしたのでございますが、これは実際困ったものでございまして、どの程度でありまするか、どういうことになっておりまするか、一つ調査いたしまして、これは何かもし相当額あるといたしますならば、これは考えてやらなければならないのじゃないかというような、私今ここで伺いながら、気をいたしたのでございますが、だいぶ専門的なことになりますので、政府委員の方であるいはよく承知しておるかもしれませんので、そちらから答えさしたいと思います。 いずれにいたしましても、そのあとの問題の、今日の医療の方法が、医師の何といいますか、犠牲においてやっておるというような意味の御意見というかお尋ねでございましたが、どうもこの健康保険の場合、そういう例が実は出てきたのじゃないかと、私もこれは十分まだ研究した結果の結論でございませんが、そういう感じを持っているのでございます。先般来の健康保険法の一部改正につきましても、いろいろ陳情その他質疑応答等からかんがみまして、どうもそういう点があるのじゃないかという実は感じを強く持ちましたので、一点単価等の問題につきましては、十分一つ調査いたしまして、そういう医師の犠牲によって国民保険を向上させようというようなことは、これは一時的にはそういう効果を上げても持続するわけにも参りませんし、むしろこれは逆効果を招くことは私が申し上げるまでもないと思います。さらにまた、健康保険制度の実施が労務管理から出発しておりますので、三十年前の歴史を持っておるわけでございまするから、おそらくこの治療等も今お述べになられましたような、最低といいますか、まあ今日のような均分化されてきた時代と違っておりますので、また、スピードもおそい時代でございますから、病気をゆっくりなおそうというような考えで、できるだけ一つ安い経費でというような考え、あるいはあったかどうかしりませんが、そういうことで出発しておるとすれば、今日の時勢にこれは適応しないわけでございますから、十分その辺は検討いたしまして、実はこの一点単価等の問題につきまして十分調査をして、改める点は一つ思い切って改めよう、こういう考えを持ちまして、これは閣議でも、しばしば私発言をいたしておりまして、閣僚の了解を得ております。非常に不適当だということを言われておる。二十四年にも改正し、二十六年に改正し、その後いろいろ税制制度で補ったりあるいは多少の改訂を加えて参っておるようでありまするが、とにかく診療機関があげて反対しておるわけで、公立も私立も反対しているところを見ると、これは皆反対だというような、いろいろ伺いますと、不合理な点も出てきておるようでありますから、これは極力あるべき姿に直そう。お医者さんの、診療機関の犠牲において国民保険を、あるいは健康保険を一つ進めていくというような感じを持っていることは、きわめて当を得ないことでございますので、資料を集めてその判断を一つ新しく考えてみようじゃないか。現行制度を改正したらいいのか、あるいはもう根本的にもっとまさった制度があるならそれを取り入れてもいいじゃないか。いずれにいたしましても、今竹中委員がお述べになられましたように、病気というものはやっぱり早くなおそう、よくなおすということが私はこれは医療制度の確立に必要だと思うのであります。病気の苦痛から早く脱却して健康体になって、そうしてみんな長生きするということが、これはもり最良の治療だと思う。できるだけやはり最良の治療をするということが当を得ていることでございますので、そういう観点に立って今の単価制度も一つ再検討してみたい、こういう考えを持っておりますので、今いろいろ予算あるいはその他法律案で追われておりますので、これらの仕事が一段落いたしましたら、その方に一つ十分努力を傾注してみたい。とにかく調査は命じございますが、本格的には今申し上げたような一つ措置をしたい。成案を得たら閣議にも一つはかり、あるいはまた、官僚独善だといわれるような声のないように、民間その他達識者の意見を聞くべきものはお聞きいたして、そうしてあるべき姿にして、診療機関にも喜んで御協力願う、また、被保険者の方々も御納得いく、また、政府が出すべきものがあるならば、政府の一つ財布のひももゆるめてもらうというような、これはもう何と言いますか、さっぱりした気持で一つわれわれ国民の病気というものと取っ組んで、完全治療するんだ、健康体にするんだ、そのことがこれは一番大事なことでございますから、その目的を十分果すために三者御納得いく線を一つ早く見つけて、そうして実施したい、こういう考えでおります。 それから、今あとでもう一つお尋ねございましたが、国民皆保険をやっても半額の負担であるから、半額を負担しなければならないから、金のない者はやっぱり究極において救われないのしやないかという御心配でございますが、これは全くごもっともなお話でございまして、そこで実はこの三十二年度の予算の中にも医療費の貸付制度というようなものも新しく実は設けまして、最高五万円という考えでございますが、治療中また償還できるまで無利子というようなことにして、相当期間で分割支払いをしてもらう、これは払えるような能力のときにはこれは若干の利息をその時期からつける、こういうような考えのもとで貸付制度を新しく開いたわけでございます。なお、それでもあるいは十分でないということでございますれば、むろんこれは医療貸付制度をもっと拡充、充実して参らなければならないわけでございまするが、もし生活自体がお困りになっておるということであれば、これは生活保護でやっていくということになろうかと思いますが、いずれにいたしましても、必要になりましたら早く一つ治療できる、その治療もできるだけ一つ合理的な治療であってほしい、心配なしに健康のときにはうんと働いて、病気になってもあんまり心配しないで、そして安んじて一つなおせる、こういうようなことが医療保障のねらいじゃないか、こう考えておりまして、そういう面に向って十分一つ努力を続けていきたい、こういう所存でございます。
○竹中恒夫君 今私が医療担当者の犠牲において過去にやってきたと申し上げましたのは、単価問題を意味したのじやなかったのでございます。期せずして、大臣からわれわれの最大関心事である単価問題に対する御所見をいただいたわけでございまするが、私が申し上げましたのは、未払いのようなことが過去においてずいぶんあったじゃないか、結局単価が、十二円の単価が六円になるというような結果になる、このことを申し上げたのであります。適正単価という問題は、また後日、私の意見を申し上げたいと思いまするが、今単価に対する大臣の所信を伺いまして、非常に心強く思いましたが、どうか医者の犠牲でやってきたということは、必ずしも低単価だけじゃない。これは低単価の報酬分が、国民健康保険では先ほど申し上げましたように、昭和十三年以来、できたとたんにつぶれたところから始めまして計算すると、相当大きな未払いを医者は寄付金とか何とかということでもらっておらないというのは、半分以下の単価になっておるという意味合いで私は犠牲を払っておるということを申し上げた。そういう意味で今後対策をお考え願いたいということを申し上げたのであります。 いま一つ国民保険でお伺いしたいのは、大臣の御説明によりますると、「特に大都市を含む市部に重点を置き」という言葉がございます。で、新聞等の報道によっては、三十二年度が名古屋、広島、川崎云々、あるいは三十三年度、三十四年度と新聞で思い思いの実施の予定の府県のことを書いてございますが、大都市を含む市部に重点を置かれました意味ですね、これを得心のいくように御説明を賜わりたいと思います。
○国務大臣(神田博君) 大都市に重点を置いてということは、実は農山漁村の方ではだいぶ実現を見ておりますので、私が先般ここで申し上げましたように、大都市を含む市部の方が実はおくれておるのでございます。おくれておる理由は、いろいろ医療の、まあ何といいますか、医療費が高いと申しましょうか、そういう関係もこれはあろうかと思います。農山漁村で残っておりますのは、九州、四国等にまあ多少あるくらいで、東北、北陸方面はずっと、ほとんどみんな皆保険ができておるので、むしろ東京都とか、あるいは神戸、大阪、名古屋というふうな大都市、あるいは東海道からずっと近畿、中国にかけた中都市が残っておるのであります。そこで大都市あるいは市部に重点を置くと、こういうようなことを申し上げておるのでございまして、残っております農山漁村等につきましても、決して顧みないというわけではございませんので、人口の三千万の残っておりますところに皆保険をやりますと、大都市にたくさんありますので、特にそういう言葉を用いたわけでございます。
○竹中恒夫君 大都市に重点を置かれるという意味はよく了承しましたが、その御説明以外に、大都市であれば、ボーダー・ラインの方々も多いわけです。そうすると、財政的な配慮というのも相当なされなければならぬと私は心配をいたすわけであります。また、大都市というものと——なるほど大体、岩手だとかあるいは福島、あるいは新潟というような府県は八〇%、九〇%実施されておりますが、まだ小さな府県ではそう普及されておらないところがあるわけです。危険を冒してと申しますか、相当財政的な配慮を持っておらなければならない、大都市をおやりになるからには、格別の手当をなさると同時に、やはりそういう恵まれない小府県に対しても受け入れ態勢の面から言うて困難な事情があるということも考えられますが、私は考慮する必要があろうと思うわけなのです。これは一応その御説明でけっこうでございますが、なお、今事務費の単価につきましても御説明いただきましたので、あえてそれ以上のことは申し上げません。六十八円六十銭が八十五円になったという、その八十五円というものが果して妥当であるどうかということは、今後の問題として大蔵当局との折衝に待つのだとおっしやるのですから、一つその点は格段の御努力をお願い申し上げたいと思うわけでございます。 そこで、その次のページ、(二)として健康保険の御説明をなさっておりますが、その中に、最近財政に若干好転のきざしがうかがえるという御説明がございますが、最近とは一体いつごろからのことなんでしょうか。二回、三回と健保改正案というものが国会に上程されておることから考えあわせまして、この時期というのは相当重要だと思うのです。最近というのはいつごろなのか。そうして好転した原因をどうお考えになっておるか。あるいは好転することによって減少した額がどの程度で、どういう傾向をたどっておるかということ、これは大臣ではあるいはお答えしにくいかもしれないと思うのですが、たまたま大臣の説明書に書いてありますので、一応お尋ねするわけです。
○国務大臣(神田博君) 最近財政に若干好転のきざしがうかがえると申し上げましたのは、これは経済白書にも使われておる言葉でございますが、昨年の下期から特に日本経済の著しい好転を見ておるという言葉を引いたわけでございまして、事実昨年の下期から健康保険財政も若干好転のきざしが現われているようでございます。これはまあ何といいますか、神武以来の景気といわれるものがだんだん浸透してきた。そこで中小企業の雇用の増大とか、あるいは賃金水準も若干ではございますが上ってきている、こういうようなことを受けまして、何といいますか、大体健康保険の被保険者の収入も月一%ぐらいの割合ずつふえてきているようでございます。そういうことを受け継ぎまして、もっとよくなって参りますれば、これは相当好転というようなふうに申し上げるわけなんですが、そこまでいかぬものですから、まあ、若干好転をしてきた、最近ということは下期ごろからという意味で、そうはっきりしたことではございませんが、そんな気持でこれは文章で表わしたのでございますが、なおこの点、詳細必要でございますれば、政府委員から具体的に説明させることにいたします。
○竹中恒夫君 時間がないと思いまするから、その御説明なりはまたあらためてお伺いしたいと思います。 それで大臣にお伺いしたいのは、国庫負担の基本方針と申しますか、考え方なんですが、健康保険では三十二年度も三十億円の医療費の補助をする、こういうようなことになっている。予算を請求なさるときには一割の五十億円を最初、昨年十月の。パンフレットによりますると、厚生当局がしておられるわけです。ですから、昨年の十月ごろにはやはり定率で、健康保険あるいは医療保険の国庫負担というものは定率であるべきだという考えで、厚生当局は大蔵省に予算の請求をなさったと思う。今度定率でなしに、三十億円という額に急に変って参りましたにつきまして、私はやはり少くとも医療保険の補助は定率でなければいけない、被保険者の増減あるいは受診率、あるいはその年によるところの流行病の関係だとか、いろいろなことがございまするので、当然これは定率でなければならぬ、特に今年度のように結核の三剤併用とか、輸血あるいは麻酔というようなものが、治療指針の改正ということになって参りますると、医療費は当然ふえてくる。三十一年度は三十億円、三十二年度も三十億円ということは理屈に合わない。今後の補助なり、国庫負担というものの基本的な考え方を一つ承わりたい。 特に御説明によりますと、健保の三十億円は「保険財政の再建整備」と言うておられる、日雇い労働者の方の国庫負担六億五千万円というものは赤字を予想したから出すのだということだそうであります。国庫負担というものは前々国会あたりから決して赤字のために出すのじゃないのだ、やはり国の責任を明らかにする意味において国庫負担にするのだ、こういう答弁が前々大臣からなされている。国庫負担というものは国の責任を明らかにするという意味で出すのであるか、あるいはこれにございますように、日雇いにありまするように赤字が予想されるからということで出されまするとすれば、赤字がなくなればこれは出さないということでございますか。そうした点で国庫負担の基本的方針というか、考え方を重ねて伺っておきたいと思います。一つその点についてのお考えを伺いたいと思います。
○国務大臣(神田博君) 健康保険会計に一般会計から三十一年度も三十億円、三十二年度も三十億円を繰り入れよう、これは実は三十一年度のことはすでに御了承と思いますが、三十二年度の三十億円につきましては、いろいろ大蔵大臣とこれは折衝いたしたのでございます。一面において健康保険法の改正案が出ておりますので、この改正案の成立後に一つ根本的なことを相談しようじゃないか、たとえば六十億円の借りた金をどういうふうに返済するかという問題もございます。それから補助金でいくか、今竹中委員の言われましたような、何かこの定率補助でいくか、決算補助にするような工合にいくかというような、これはいろいろのことを実は御相談したのです。協議をいたしたのでございますが、三十一年度の三十億円が一応計上されて、そうしてその点に対するこの健康保険法の一部改正法律案が国会継続審査中であるから、三十二年度も一応一つ三十億円を計上して、そこで根本的なことは一つ三十三年度の際に相談しようじゃないかと、こういうようなことでございまして、前年通り一応計上したわけでございまして、われわれの考え方といいましょうか、政府の側におきましても、もう三十億円あればいいのだというような気持で表わしたのではないのでございます。石橋内閣成立の早々でございまして、予算に対するほんとうの議論も十分尽す時間的余裕がなかった。そこでどうするかという、まあ最後になりまして、一応とにかく三十億円ということに、前年通りしておこうじゃないかと、根本的なことは健康保険法の改正案が通ったあとで、まあこの財政も最近若干好転もしておるようだから、どうするかということをゆっくり一つ相談し合おうじゃないか、こういうようなことでございまして、そう深い意味もなかったのでございます。まあわれわれの考え方とすれば、これは定率にもっていきたいという考え方でございますが、そこまでの話をつける時間的余裕がなかった、まあこういうことでございます。
○竹中恒夫君 次に結核の対策についてお聞き申し上げたいと思うのですが、いろいろと結核につきましては施策がやはり新しくも考えられておる。喜ぶべき傾向でございます。ございまするが、要求予算と今日の予算とは相当大幅に変ってきておる。で、こうした点は非常に私残念に思うわけでありますが、たとえば今回は公費負担で、全額公費負担でもって健康診断、予防接種を徹底的に行うのだ、こういうお考えなんです。で、同じ予防接種、健康診断をなされる要求予算が十九億五千万円でございましたのが六億八千万円に減ったと、もう半額以下に減っておるのでございまするが、これは対象人員等、いろいろな関係で減ったというよりは、結局国の財政の面から減らされたということであろうと私率直に言って思うのです。何かもしそういう実施率が六〇%で五千八百四十二万人というものを一応対象にしてなさっておられたようですが、十一億五千万円というものは、そうすると今度六億八千百余万円になりましたときに、この対象人員が一体どれくらいなのか、あるいはその階層がどういうところを目当てにしておられるかということもお聞き申し上げたいと思うのです。 それからもう一つこれに関係いたしまして、非常に重大なことを私大臣にお聞き申し上げたいと思うのですが、集団の注射、集団接種をするということについては相当な配慮がなければいけないと思う。いろいろと集団治療をする場合、注射や接種する場合に不測な事件が起きまして、民衆が非常に恐怖心を起すということが考えられるわけです。先年兵庫県の有馬郡の道場村に起きましたあの問題なども、今御当局ではどうお考になっておられるか知りませんが、今日なおあのために発病して苦しんでおる人々があられるわけなんです。あるいはあの当時の進駐軍などが中へ入っていろいろと話をつけたわけでございまするが、こういう集団の予防接種というようなものは注意をしていただきませんというと、かえって逆効果になる憂いがございまして、せっかく結核の予防、撲滅のために逆に民衆に不安を与えることがあるわけです。そういう点につきまして、道場事件について何か最近御当局の方へ兵庫県庁なりあるいは神戸市から何か言うて来ておるのでしょうか、そういう点もあわせて、これは大臣でなしに事務局に伺いたいと思います。
○国務大臣(神田博君) 今の宮城県、兵庫県の大へん不祥事件でございまして、まことにこれは恐縮しておるわけでございますが、先般話がついたようでございまして、これの詳細のことは政府委員から述べさせることにいたしたいと思います。 ちょっと速記をとめて下さい。
○委員長(千葉信君) 速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(千葉信君) 速記を始めて下さい。
○政府委員(山口正義君) ただいま竹中先生からお尋ねの健康診断、予防接種の費用につきましての要求予算、それから現在御審議願っております予算との差額の問題でございます。これは対象人員は大体同じ数字でございますが、ただ健康診断、予防接種に要します単価の問題、それから国庫補助率の問題が当初私どもの考えておりました、国がもっと大幅に補助をしたいという、たとえば地方の負担に対しまして国が十分の八くらいでいきたいというような考えでいろいろ計算を出されましたのでございますが、諸般の情勢から現行通り国と地方が二分の一ずつというような補助率に変りましたために、金額の差が出てきておるわけでございまして、対象人員は、これは対象人員全部実施いたすのが当然ではございまするが、現在の実施能力、あるいは過去の成績から考えまして、一挙になかなか百パーセントまでもって参りますのは困難でございます。大体六〇%程度のところを見込んで計上しておるわけでございます。 それから第二の点、予防接種に際しまして起きました事故の問題でございますが、これはただいま大臣からも非常に遺憾の意を表されたのでございまして、私ども事務当局といたしましても、こういう事件が起りましたことを非常に申しわけなく思っております。宮城県の問題にいたしましても、兵庫県の問題にいたしましても、長い間いろいろ原因を探究いたしましたが、なかなか的確につかむということができません。特にこういうふうに集団的に予防接種をいたします際の技術的な注意というような、そのほかのいろいろな注意ということについては、たびたび関係の府県あるいは町村にも注意を与えておるわけでございまして、最近では幸い同様の事故はあまり起っておりません。先ほど御指摘の道場——当時の道場村、現在の道場町につきましては地元からいろいろお話が出ております。国として、これに対しましてお見舞金を出す。国と地方、県が一緒になって、現在神戸市が一緒になってお見舞をいたすというふうに決定をいたしました。地元の方も納得をしていただいているというような状況になっております。
○委員長(千葉信君) 速記とめて。 〔速記中止〕
○委員長(千葉信君) 速記始めて。
○竹中恒夫君 実は結核問題には勝俣委員のような権威者がおられるのに、私が質問するのはどうかと思いますが、わからないから質問するのだというふうにお考え願いたいと思います。 次に次官にお尋ね申し上げまするが、今回結核の治療指針の改正というものが実はできました。三剤の併用や輸血が認められたわけですが、そういたしまして私が一番不安に思いまするのは、公費負担によってこうしたものに対する費用を六億八千万円計上しておられるわけです。大いにこれは歓迎すべき考え方でございまするが、この三剤の併用を健保でとり得た場合において、公費負担との関係で健康保険財政のはね返りですね、これは私は非常におそれるわけです。御承知のように、健康保険と医療扶助との関係がなかなか簡単にここで御説明なさるように割り切ったものではございません。切りかえやいろいろの操作の面におきまして、結局こうした面で三剤併用についての予測以上のはね返りが健保経済を脅かすということになるのではないかという、私心配を持っているわけですが、そうした点については心配ないのだ、あるいは心配があるが、この程度の配慮を考えてしておるのだというような点について、一つ御説明を願いたいと思うわけなんです。
○政府委員(中垣國男君) 健康保険法におきましては、それをやるということにおきまして、三十二年度から予算が計上されておるのであります。それからあとは主管局長から答弁をさせます。
○政府委員(高田正巳君) ただいま政務次官が仰せになりましたように、結核治療指針につきましては、先般学界の方から答申をいただきまして、これらを採用いたすべくいろいろと省内におきましても、それから関係省におきまして相談いたしたのです。その結果、これは健康保険だけの問題ではございませんで、結核予防法にも影響ございますし、生活保護法の医療扶助にも影響があるわけです。その結果、本年の四月からこれを実施するという大体の予定で諸般のことを進めておるわけでございます。それで、健康保険の問題につきましては、それらのことを実施いたすということを予定いたしまして、来年度の医療費の見積りをいたしたわけです。
○竹中恒夫君 もとより三剤併用について、きょう健康保険に触れたくないのですが、予算の面だけお聞きしますが、今健康保険で実施するについて予算のことも配慮するとおっしゃったわけですが、健康保険の収入はもう保険料と国庫補助によってワクはきまっているわけですね。ここに新しく三剤を併用なさったりする場合に、その財源をどこに求められるかというと、風船玉のこちらを押せばあっちが引っ込むというような工合に、操作をする以外に私はできないと思う。そこへ持ってきて、結核の公費負担や医療扶助の問題があり、そこらの境にある人が、被保険者であったり、なかったりする人があるので、これらが入り込んでくると、そのために財政を圧迫するのではないかということを聞いておるのです。
○政府委員(高田正巳君) 健康保険の方の財政の問題としましては、今先生御指摘のように、保険料、それから国庫補助というようなものを財源にいたしてやるわけです。その見通しを立てます際に、今度は支出の方の見通しをどう立てるのかという問題でございますが、それでその支出の方の見通しを立てます際に、今先生の御指摘のようなことが実施されて、こういうような問題が起ってくるというふうなことを計算に入れて来年度の支出の方の見通しを立てておる。それでそういう収入と支出の見通しを立てまして、そしてこのアンバランスがございますので、そのアンバランスをどう措置するかというようなことを考えて、来年度の予算ができておるわけであります。従いまして、健康保険の政府管掌の問題としましては、そういうことを実施し、それによって医療費がふくれあがるということを前提にして来年度の見積りをしておる。こういうことでございますので、織り込み済みであるというふうに申し上げて差しつかえないと思います。ただ、政府管掌以外の組合の健康保険等におきましては、国の財政でございませんで、それぞれの組合の財政でございますので、それだけ組合財政というものが、負担がふえてくるということになるわけでございます。
○竹中恒夫君 収入は限定しておる、支出の方でもって手当をしておるというようなことをおっしゃったわけですが、よく巷間言われるような医療費の面について、行政措置をなさるとか、そういうことがなければ支出というものは減ずるわけがないと思う。そうすると、今おっしゃった三剤を併用することによって、財源は、支出を考えてやるのだという意味でしょうか、そういう行政的措置を考えておるのか、こういうことなのです。支出をどういうふうに、他の面を押えるのですか、押えなければ私はアンバランスになると思うが。
○政府委員(高田正巳君) こういうことでございます。来年度の政府管掌の健康保険の医療費支出をどういうふうに見積るかということは、これはいろいろ議論のあるところでございます。その見積りが最終的にきまりましたのは、予算がきまったときに最終的なものがきまったわけでございます。その際にいまのようなこともやはりあるから、その面の医療費の膨張というものも見込んでおかなければならない。そういう観点から来年度の医療費の見積りをいたしたわけでございます。具体的に申しますと三十一年度のまだ最終的なものはできておりませんが、三十一年度の見込みから、一人当りにおきまして約七分増という見込みを来年度ではいたしております。その中でこれらの措置というものはまかなわられるというわれわれは見通しを持っておるわけでございます。従って、今の先生の御心配のように、行政措置をやって、そして何か減らして、その方に向けようというふうなことではないのでございます。
○竹中恒夫君 医療費七%増支出を見込んでおる。行政措置をやらないのだというと、保険収入のほかの面ですね、現金給付か療養費払いか、あるいはその他のほかの資金面を少く見積っておられるわけですか。
○政府委員(高田正巳君) そうではございません。歳入の方も、だからその財源が国庫から出てくるかというお説だろうと思うのですが、歳入の方も前年よりはうんとふえる見通しでございます。従って、その歳入と歳出とをどう見積るかということで、歳入は歳入として見積り、歳出は歳出として見積って、その歳出の見積りの中に今のような要素を織り込んで見積った場合は、これをつき合せてみてアンバランスになっております。そのアンバランスの部分は法律改正、国の三十億と、それからその他のいろいろな標準報酬の等級改訂とか何とかいうことで埋まるという見通しの予算を組んでおるわけであります。
○竹中恒夫君 なお次の問題について御質疑申し上げたいのですが、大臣もおられませんので、一応結核に対しまするところまでで私質問を打ち切りまして、あとは次回に保留さしていただきます。
○委員長(千葉信君) 本問題に対する本日の質疑はこの程度にしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時五十二分散会