法務委員会 第21号
- 発言数
- 186 件
- 登壇者
- 15 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1957/03/29
会議録
○三田村委員長 これより法務委員会を開会いたします。 法務行政及び人権擁護に関して調査を進めます。 まず、売春防止法の実施に関し神近委員より発言の申し出がありますので、これを許します。神近市子君。
○神近委員 法務大臣に、四月一日から実施されます売春防止法について、御要請をかねてちょっとお伺いいたしたいことがございます。 この間から毎日婦人たちの会合が三日にわたって続けられたのでございます。そして問題がいろいろ出て参りましたけれども、何を言っても、何をするにしても、予算のことが問題になっているのございます。これは、前に吉田賢一委員から法務大臣に対して、予算のことをもう少し何とか考えていただけないかというふうに、そして閣議でも御相談をいただけないかというようなことのお申し出があったはずでございます。それで、その点について、何かきょうは総理大臣がお出になるということをちょっと伺いましたので、総理大臣にもその点お願いしたり、また御見解を伺ったりしようと思っていたのですけれども、そのときちょっとお耳に入れましたか、どうか、ともかく、大臣も予備費の中でこれを考えようじゃないかとおっしゃったし、それから、大蔵大臣も、主計局長も、必要があったら予備費の中からというようなことを大蔵委員会でおっしゃったのです。それでも私ども信用できないのです。そういうふうな一時のがれの御返答をいただきましても。というのは、これを実施するのは下級官吏の方々でございますから、ワクというようなものがなければ、必要なときもこれをがまんして見過ごしにするということが起る。ですから、何としても、この予算に請求が出ました十一億八千万円かそこらまではワクを作っていただかなければ、当事者はやりにくいということを私どもしきりに感じるのです。それで、閣議で御発言になって、この間、吉田員の質問のあとで、そういうふうなお手続をとっていただいたでしょうか。それとも、まだそれはやってない、けれどもこれからやってみようというようなお考えがあるかどうか。実際に衝に当っている婦人相談員たちが口をひとしくして、施設がない、金がない、まあ自分たちの交通費が千円そこそこでして、それも……というようなことを、言うのですけれども、その点、今のままでやれというお考えなのかどうか。ちょっと御所見を伺っておきたい。
○中村国務大臣 御承知の通り、売春防止関係の経費が十分でないという御指摘の点は、私どもも十分でないことを認めざるを得ないのであります。ただ、昭和三十二年四月からの施行と、それから、法務省の所管をいたします刑罰関係の実施は昭和三十三年の四月ということになっておりますので、法務省といたしましては、この刑罰関係を実施いたしまするに必要な研究及び打ち合せの会議をいたしまする等の経費を昭和三十二年度の予算案に計上いたしておる次第でございます。 法務省の関係から先に申しますと、法務省といたしましては、三十三年四月から刑罰関係の部分が施行になりますので、これに備える諸般の準備を目下いたしておるのでございます。なお、これにつきましては、保安処分に関する売春防止法の改正等につきましても、鋭意目下研究をいたして、成案を急いでおるのでございまして、先般も売春防止対策審議会の幹事会のお開きを願いまして、一応の構想等についてお打ち合せをいただき、御研究を願っておる次第で、これはすみやかに成案を得まして、審議会に諮問をいたし、ぜひとも一つ今国会に提案の運びにいたしたい。かりに議了ができないまでも、今国会に提案をいたしまして、せめて、万一の場合は継続審議になりましても、今国会中に提案するようにいたしたいということで、鋭意努力をいたしておる次第でございます。 そこで、三十二年度としての問題は、主として厚生省及び労働省の所管に属する事項でございますが、厚生省におきましては、これらの転落女性に対する授産の関係、あるいは婦人相談所設置等の問題、これらをいろいろ企画して進めておるようでございます。従いまして、三十二年度の予算の不足を感ずる部分というのは、主として、厚生省、労働省の所管に属する事項に相なりますので、われわれとしても、実は、神田厚生大臣等と、もう少し一般の要望にこたえるだけの施設の充実をはかるべきではないかということで、相談をいたしておるのでございます。すでに三十二年度予算は国会に提案をいたしまして御審議を願っておる段階でございまして、厚生省、労働省等でこれら関係の実施計画を今いろいろ立てておる段階でございますから、それらの実施計画に伴いまして、これはどうしても予算が足らないという見通しが確実になって参りますれば、所要の予算の予備消費からの支出等については、お互いに研究して、ぜひ大蔵省と打ち合せの上実施するようにしようではないかということで話し合っておる段階でございます。 御承知の通り、売春防止ということは一応法律は成立いたしましたけれども、この実施段階になりまして、効果の上るような方法を講じますことについては、いろいろな困難が伴いますので、それぞれ関係省といたしましては、いろいろな方面からこれを検討して、できるだけ防止法の実施によりまして効果の上るようにいたしたい、同時に、これは政府の力及び法律の力のみで売春防止の目的を果すことは困難でございますから、これは一般の啓蒙運動と申しますか、そういうようなことも非常に大切でございますので、その方面にも力を注いで参りたい、かように考えておる次第でございます。
○神近委員 その所管がお違いになるということはよく存じております。これは厚生大臣とか総理大臣にもちょっとお尋ねしたいと思っているわけなんですけれど、法務省は、ともかく大任者として立法の、ごあっせんもあって、そして連絡協議会の中心になっておいでになる。それで私はウエートを法務省に置いたという形でございまして、今の御説明は、私どももそういうことだろうとは考えておりました。それで、ぜひ厚生大臣あるいは労働大臣その他と御相談いただいて、そして手をつないで予備費の中のワクをきめて取っていただきたいということが一点。 それから、そういうようにいろいろ全国の婦人たちが集まりまして、いろいろ情勢を聞いてみますと、全体としては政府ですが、厚生省、法務省あたりが、下部に対して趣旨徹底の努力が足りないということが非常にはっきりしていて、何をしていいかわからぬ、一体これをほんとうにやる気でいらっしゃるのかどうか、そういうふうな疑いがある。これは一般の人あるいは地方の自治体の公務員が同じことを考えるのはもっともだと思うんです。というのは、昨今新聞でやかましく言われているように、国会議員でさえこの法を一体やる気があるのかという、絶望感というか、たとえば、名前を出してお気の毒だと思うんですけれど、世耕さんの本が最近新聞なんかでいろいろ批評されている。私は、ちょっとああいうことは困るんじゃないか。私は、世耕さんの立場を善意に解釈すれば、ともかくそれは、国会の内状を知り、また政府当局者の熱意を考えれば、これはやれないんじゃないかというような考え方から、ああいう絶望的な、法律なんか作るべきじゃなかったとか、あるいは売春制度は残しておくべきだったとかいう、ちょっと私どもには何とも想像つかないような御所見が出ているんだと思うんです。それはそれといたしまして、ここでは、あれをお書きになった心情というものはそういうふうに好意的に考えられることもあるんですけれど、あれが業者側に逆に利用されているんです。これは最近のことでございますけれど、東京都内のある地区で、婦人団体を集めまして、業者があれを全部無償でばらまいてるんです。結局巻き返し運動の一つとしてあれを利用している。そういうような事態まで生まれてきてる。あの本には私まだいろいろ研究しなくちゃならないことがあると思うんです。法務委員会の記録をああいうふうな商品として発売することが正しいかどうかということ、これは議員の一つのモラルとして考えてどうかということ。それから、あれには翻訳がついているはずです。私はちょっと拝見しただけですけれど、アメリカの現在まだ版権の所在がはっきりしてるところでは、タトル商会というのがありまして、非常にやかましいんです。ちょっとしたようなものでも、タトル商会を通さなければ翻訳を許さない。私どもはこれにずいぶん悩まされたことがございますが、あれはそういう手続をとられたかどうか、これはやはり調査してみなくちゃならないと考えていますけれど、私が今ここで考えるのは、あれを業者が利用して、業者がこれをばらまいて、そうして東京であったことは全国でもあるというように考えなければならない。そういうことについても、皆さんの熱意が不足して、これをやるんだという、予算面でもあるいは実施面でも十分な御監督がなかったということが原因ではないかと思うんです。多少これは法務大臣にも責任がありはしないかということで、御所見を承わりたいと思うんです。
○中村国務大臣 いろいろお話のようなこともあるかと思いますが、問題は、一体政府としては売春防止法の施行を本気でやるのかどうかという点がポイントのように考えましたが、私どもとしては、せっかくいろいろ論議を尽しまして成立をいたしました売春防止法は、ほんとうにまじめに、その成果の上るように努めて参りたいと思っております。ただ、問題は、すでに御承知の通り、この売春関係のことは、ただ刑罰を十分にやるとか、あるいは保護施設を十分に作るとかいうことだけでこの目的の完成を期するということは、実際問題としてなかなか至難だと思うのであります。どうしても、やはり一般社会全体の強い支持、御理解があって、そうしてなお関係の人たちが時勢の潮流というものに十分目ざめてもらわなければならないと思うのであります。従いまして、人権擁護の面から見まして、先般新聞にも出ましたような水上の婦人の事件等にいたしましても、できるだけそういうような泣き込みなり何なりがありましたならば、人権擁護の面からも法務省としてはいろいろ力を入れて参りたい、これが一つの啓蒙運動になり、また業者の反省にもなる、こういうように考えておる次第でございます。すでに四月一日になりますと義務的に各地方に婦人相談所ができるわけでありますが、その以前にすでに相当地域には婦人相談所が設けられております。これらにできるだけ転落女性等が泣き込みをしてもらうとか訴えをしてもらうということによって、これが適切に取り上げられて運ばれて参りますと、こういうことも一般社会全体の一つの大きな啓蒙になるのじゃないかと考えております。同時に、三十一年度の予算にも、わずかではございますが、売春防止対策審議会の方々にあれだけ売春防止対策について御苦労願っておりますので、ほんとうに十分な見識を持たれた方々に班組織になっていただいて各地方の啓蒙運動も一つ巻き起していただくというようなことも実は考慮して予算に計上いたしてありまするような次第で、われわれといたしましては、世論を十分に喚起して啓蒙運動を活発にするということと、法の施行及び三十三年四月から施行されます刑罰の適用と、いろろろにらみ合って目的を果すような方向にいかなければならないと考えておりますので、総合的にそういうような施策を今後進めて参りたい、かように考えておる次第であります。
○神近委員 法務大臣のお覚悟はよくわかりまして、大臣なら私どももやっていただけるだろうと信じます。 今、もう一つ非常に大半なことがあるのです。これは、最近やはり問題になっていますのは、あの法律ができそうなときに、赤線と青線というものの対立があったわけです。赤線の方は、自分たちが先につぶされれば青線にみな吸い取られるだろうし、それから青線の方は、自分たちが先にやられれば赤線の方が繁盛するというふうなことで、業者が対立したことがあった。私どもは今度の法律は平等にこれをやる建前だというふうに拝見しているのですけれど、その赤線が、事実上勧誘あるいは立ちどまりあるいは呼び込みというようなことも取り締られるようになると、その被害を受けるところは一番赤線が強いわけなんです。それで、女の人たちも、あるいは業者も、業態を変えて、赤線は転向して青線的なものにする、あるいは白線にする。白線という言葉がこのごろ出ておりますそうなんですけれど、くわえ込み、こういうことになりそうなので、その役割をだれが果すのかということになると、これはぐれん隊と暴力団ということになりそうなんで、そしてこれがひもになりますし、あるいは傀儡師になる。そして女をいろんな方法で使う。こういうようなことになりそうなんです。これは、どこの事例でも同じなんですけれど、売春防止法を実施する一つの道としまして、何としても今お始めになっている暴力団狩り、あるいはぐれん塚狩り、あれを一つ徹底的にやっておいていただかないと日本のように長い因習がくずれていくときにはあの人たちの跳梁が何としてもじゃまになるのですけれど、その方はどういうふうに今進行して、あるいは暴力団狩りあるにはぐれん隊狩りというものは多少の効果を上げてきているか、それをちょっと御報告いただいて、同時にこれからあれを徹底的に続けてやるお考えがあるかどうかちょっと伺いたい。
○中村国務大臣 先年来暴力取締りを強化いたしましてその検挙を行なって参りました結果、最近相当に粛清されてきておることは事実だと思います。なお、現在事件は減ってきておりますが、決して暴力取締りをゆるめたのではありませんので、今後一そう強化すればといってゆるめるようなことのないようにいたしまして、ちまたから暴力を排除することに法務当局といたしましては全力を尽して参りたいと考えます。
○神近委員 何としても、この法律は、旅館法の改正とか、あるいは今大臣の仰せになった保安処分をつけ加える防止法の上部改正が出そうなのですけれど、この当座、法の不足を補うには、取締りが大へん大事のようでございます。八幡だとか調布だとかの集団廃業したところの例を聞きまして、そうして、どういう動機でやめる気になったのかを聞きますと、一律に言ういますことは、警察の手入れでもう閉口いたしました、これなのです。そうすると、警察は今まで防止法が発効しない前でもやられればやれたんだということが、言えると思うのです。警察が今ある法律によってもやればそれだけの効果はある。ちょっとこれは業者に対して不親切というか、あるいは残酷というか、そういう言葉になるかもしれませんが、その方をやっていただけば、法の欠陥は半分以上補うことができるんじゃないかというように私どもしろうとでは考えるのです。それを今までやらなかったのが最近までのあの状態を誘致してきた常でございます。なかなか警察行政というものもむずかしいそうでございますけれども、一つその方にも御鞭撻あるいは御指示をいただけないか。この間から三日間婦人たちが集まって、全国の、あるいは東京都内のいろいろのケースの報告があったのですけれど、どうも、それを総合して考えまして、警察にやられたらもうやることができないというような感じが多い。最近私が聞き込みましたのは神奈川県の事件なのですけれど、大都会の周辺、たとえば大阪と神戸の間にある尼崎、それから東京と横浜との間にある川崎、こういうところはどこかに盲点があって非常に悪い状態に陥っています。尼崎は、私ども、二十九年でございましたか視察いたしまして、これは日本一悪いところだと考え、ある調査員の方は、これは法務委員会で調査して警告をしたらばどうかというほどひどかったのですけれど、これはやや婦人会が騒いで改善されたと聞いております。で、問題は川崎なんかなのですけれど、これは、神奈川県の警察があまり関心がないというようなこと、そして古くからある業者とのなれ合いが非常に強いというようなこと、そういうようなことで手が及ばない、そういうようなことがやっぱしあるらしいのですけれど、その点、警察が、この問題に関する限り――ほかの方面でも問題はあるとしても、この問題に関する限り、業者と非常な親類づき合いをしている。それをどういうふうに断ち切ることができるか。いつか、「赤線地帯」という映画でも、警察官が見回りに――パトロールでありますか、あるいは調査かに行って、そこに、腰かけてお酒を飲んでいるところが出ておりました。あれが常態かしらんというふうに考えたことがあるのですけれど、その点一つ、どういうふうにお考えになりますか。これは、全面的に、アメリカなんかでしておりますように特別の警察官というものを新しく任命することができればいいと思うのですけれど、それは今日の予算上から見て不可能だと思わなければならない。これは、同じ人を、あるいは考え方を入れかえるということはなかなかむずかしいと思うのですけれど、それをどういうふうにやったら目的が達せられるか、ちょっと伺いたい。
○中村国務大臣 御指摘の点は、一つ警察担当大臣とも私ども十分協議をいたします。また、事務当局関係といたしましても、法務当局と警察当局で、いよいよもう四月一日から刑罰を除く部分の法律の実施が行われますので、それらの実施に伴う十分の打ち合せをいたしまして、できるだけ期待に沿うように万全を期するようにいたしたいと思います。
○三田村委員長 神近さんに申し上げますが、厚生大臣が今予算関係でちょっと出席困難だと言っておられましたが、安田社会局長が来ておりますし、警察庁から石井長官が来ておりますから、御質疑がありましたならばこの際一つお願いいたします。
○神近委員 あとは比較的事務上のことでございまして、大臣をおわずらわししないでも御返事が承われると思うのです。 この間の婦人たちの会合で、やはりわれわれがいろいろ聞かれることがあるのです。一つは、たとえば東京都のような売春行為を規制するところの条例を持っているものと、それから今度の法律であります。これは全面実施は明年でございますけれど、これはしばしば問題点になりまして、審議会でも、あるいは局長をたびたびおわずらわししたことがあると思うのです。その条例と今度の法律との関係ですね。それで、あのときの御審議に、法の方が強くて、条例はこれが実施されればなくならなければならないという考え方を、たぶん法令で御説明いただいていたと思うのですけれど、この前の売春対策協議会の立案にお当りになった正木先生が、もし新しい法律、国法ができることによって条例の中の事項が後退するという場合には、法の欠除――何かラック・イン・ローという言葉をお使いになっておりましたけれど、ラック・イン・ロー、法の欠除、その部分だけが欠除している場合は残していいということなんです。それで、今度の防止法附則第五を見ますと、こういうことが書いてあるのです。これは条例は消えるという意味のことは書いてないのです。「当該地方公共団体が条例で別段の定をしないときは、その失効前にした違反行為の処罰については、その失効後も、なお従前の例による。」、こう書いてあるのです。失効前に犯した犯罪は失効後もこれと同じ取扱いでやることができる、これはどの法律にもある条項ですから、特に意味はないと思うのです。そして、この法律を実施したとき、実施以前の事犯は起こらなかったものとするというようなばかな規定はどこの自治体でも定めないと思うのです。ただ、国法と条例とのちちょっと足りない部分ですね。それは、一体、正木先年が言われる法の欠除であるから、条例のその部分は生かしておけるのかどうかということ。そうして、もし生かさないとすれば、今まで罰をくった者は、ばかを見るというような不公平が起りはしないかどうか。それから、これを生かしておくためには、もう一度都会なら都会あるいは県会なら県会の議決がいるのかどうか。その三点を事務当局の方から承わりたいと思います。
○井本政府委員 地方自治法第十四条の条文がございまして、御承知の通り、「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。」という一連のこの条文の趣旨によりまして、売春防止法に伴う地方条例は、罰則などの点につきましても、来年の四月一日から効力がなくなるというように私は解釈いたしております。従って、正木さんの説のような考え方は私どもはとっておりません。もし、さらに単純売春などを処罰するのであれば、別の処置が必要ではないかと考えております。なお、売春防止法の附則の五項につきましては、これは、従来もあります通り、すでに事件になっておるものにつきまして昭和三十三年四月以降になりますとそれが罰せられないというのでは、ほかの法令の均衡上も不都合だと考えますので、かような条文を作る場合に、大体、罰則につきましてはなお従前の例によるというような附則を書きまして、すでに事件になっておるものはやはり相かわらず罰せられるのであるという趣旨を書いたもので、多少、お話のような、なくなった条例によって罰せられるのが不都合ではないかという考え方も確かにございますけれども、すでに犯罪として扱われているものはそのままわれわれとしては犯罪として扱いたいという考えで、かような条文ができておると考えております。
○神近委員 そうすると、私どもが前にしばしば審議会でも憂慮いたしましたように、結局条例というものは全面的になくなる、効力を失うということになりますね。そうですね。今あなたのおっしゃったのは、正木先生の法の欠除という条項はとらない、それで、それに対する手当を、たとえば新しく条例で作ることも許さない、あるいは一部を議決して自治体がこれを残すということもできないということになるのですね。そのときに、私どもが非常に憂えましたのは、国法と今まで扱われていたところの条例との食い違いかできるじゃないか、そうして一体国論の統一ができないのではないかということなのですけれど、それは、たとえばその部分を新しく今度立案してくるということも統一のためにできなくなるということなんですか。それが今お尋ねしたものの続きです。 それから、もう一つ。そこで、私ども伺いたいのは、最近、世評では、私どもまだ拝見いたしておりませんけれど、保安処分、矯正処分に関する案を御立案になっておるようでございます。これは新聞なんかで拝見したので、試案のようなものもまだ拝見していないのですけれど、そうなると、この保安処分にどの条項でおかけになるのですか。たとえば前に問題になりました犯罪者予防更正法のあれは四条でございますか、あれの条項におよりになるのか、あるいは別の条項をお作りになるつもりなのか、この点をお伺いしたい。
○井本政府委員 地方自治体の、法令に違反しない限りという趣旨でございますが、これは、第一に、条例と法律の関係で、同じ規定であれば法律が優先するというのが第一、その次に、異なった規定なれば、それは条例の方が失効するというように考えております。それから、異なっておらなくても、趣旨において違反しておるというように認められます場合には、条例の方が失効するというように考えるわけでございます。個々の条例につきまして一々検討いたしませんと、最終的にはどの条項が失効するかということは一がいにはちょっと申し上げかねると思うのでございます。なお、売春防止法が施行された後におきましては、新しく法律が出まして、その法律によって単純売春が罰せられるというようなことにならなければ、条例では一応単純売春は罰することができないというように私は考えております。 それから、保安処分の件でございますが、保安処分は、御承知の通り、いろいろむずかしい問題があるわけでございますけれども、私どもは、今、保護観察処分とか、矯正処分といいますか、二段に分けまして、家に帰った者でいろいろ保護観察をするというものと、それから、施設に収容いたしまして強制的にいろいろ職業などを教えて矯正していくというようなふうに対象者を扱っていく考え方と、二本建でただいま考えておりますが、まだ明確な成案を得ていないわけでございます。しかし、先ほど大臣のおっしゃいました通り、できるだけ早く成案を得たいというように考えている次第でございます。
○神近委員 今おっしゃったその処分決定をどの条文によってなさるおつもりかということを私さっきお尋ねしたのです。
○井本政府委員 単純売春を処分する規定がなくても、新しい売春防止法の第五条に違反する者につきまして保安処分ができるというように考えております。
○神近委員 わかりました。これはまたあとで、私もまだ研究していない点がございますから、これによっておやりになるということを考えなかったものですから、この点でまだ十分研究していませんから、この次にいたします。 それから、この第五条の第三項に、 「公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、又は広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。」という条文がございます。この広告という点でございますけれど、この前、これは、局長が御旅行中で、長戸検事であったと思うのですけれど、さかさクラゲはどうだということを申し上げたのです。さかさクラゲは、あれは広告と違うのか、――広告であるのではないかというのが私の考え方。井本局長は御不在だったから、この点はどういうふうにお考えになるか。そのときの長戸検事の御返事は、必ずしも広告とは存じませんというふうにおっしゃったので、私が、売春宿の広告でないと思うのはあなた一人くらいでしょうと申し上げたことがあると思う。それで、ただいま学校環境の浄化に関する問題がしきりに出て、そうして、学校環境をどうして浄化するというときには、あのさかさクラゲは一番問題になっているのですね。それで、私どもは、これはあるところでやはり犬養前法務大臣も同じお考えだということを聞いたことがあったのですけれど、そのさかさクラゲが、一つの商標で、温泉あるいは温泉市、温泉場のマークであったのが、どこにもべったり、温泉があたかも出そうにあれを使う。そうして、それが売春宿の標識になっている。床屋の標識というのもありますけれど、床屋くらい的確に、あれが売春宿だ、あるいは連れ込み宿というふうなことはもうだれでも知っている。子供でも知っているのですね。それを、役人だけが、あれは違いますとか、あれはそういうことを、意味するものとは思いませんとか言うのは、私はおかしいと思うのですよ。井木さんはどういうふうにお考えになっていますか。
○井本政府委員 何といいますか、さかさクラゲ、もともとこれは地図などに表示された温泉のマークだったと私は考えるのでございまするが、確かに怪しげなうちでさようなマークをつけておるということも見聞きしております。ただ、どうも、温泉マークをつけたうちが、全部あれは売春宿の表示なんだというふうにおっしゃられますと、どうも全面的にはちょっと神近先生の御説には賛成いたしかねるので、やはり、その環境その他によりまして、かような温泉マークが場合によっては売春宿であるということの表示にもなることもありまするが、ならぬ場合もあるというような抽象的なお答えしか、ちょっとできないというふうに考えるのでございます。
○神近委員 これは私は取りはずしを決定してもいいと思うのです。というのは、それは、あの中の善良な、あるいは純旅館というのがこのごろ言葉になっているそうですけれど、私ども、地方に行きまして、ここは連れ込みはございませんからというところに泊らせてもらうのです。それは、一つの市に二つか三つか、個人のしろうと宿のようにひっそりとやっているところは、これは絶対についていないのです。ですから、あなたが、これは混乱を起す、そうして何か責任を負わされやしないかというので、そういうふうなことをおっしゃるのは、私はごもっともだと思うのですけれど、ごらんなさい。渋谷で同業者が話し合って、あれを自発的に消しているじゃありませんか。消したところが、ちっとも商売にはさしつかえはない。私は、ある意味でこれは広告に当るのじゃないか。広告に当るのか当らないのか、これを承わりたい。あれはこの場合の広告に当らないのですか。あなたは当らないとお考えになるのか。第五条の誘引するための広告……。
○井本政府委員 この環境その他の雰囲気で、温泉マークを掲げたものが、自分のうちは売春宿であるぞよという表示に受け取れる場合もないとは言えないと思いますけれども、一般的には、さかさクラゲを掲げればそれが直ちに売春防止法の五条の一項の違反に必ずなるというようには、ちょっとただいまのところでは申しかねると考える次第でございます。
○神近委員 それでは、これはどうでしょう。私、これは知らない人からいただいたもので、はがきですけれども、引きビラと言いますか、それの少し念入りなものです。これはやはり川崎市らしいのですけれども、ちゃんとお調べいただければわかります。「麦」という小料理尾かカフェーか、そういうところが相当広範囲にまいたそうです。駅等でまくし、それから、あの辺のサラリーマンとかそういうような人たちの家庭に全部これをまいたそうです。これは一体処罰することはできないかどうか。委員長のお許しを得て、ちょっと長いけれども、一枚しかございませんから、読んでみます。「麦」というのが店の名前です。「みなさまの「麦」は川崎駅から、すぐのところ。かをり高い珈琲と、安くてうまい酒るいとが、みなさまを御待ちしているところ。そしてホールで気易く踊れるところ」、――ここに消してあるのですけれども、この中を消さないのをまいたことがあるそうです。これはだれかに注意されて消したらしいのですが、「匂いよき風呂と静かな寝室、洋室あり、和室もあるところ。謂うなれば、喫茶店であり、バーであり、ダンスホールであり、簡易で上品優雅な憩いの場所、あなた様のおちついた御くつろぎの場所でございます。」、こう読みますと、さしあたりこの中の何人かはちょっと行ってみようじゃないかという気を起す。(笑声)ですから、これはどうも皆さんのためにあまりよくないと思ったのですけれども、これは一つの証拠でございますから。一体、こういうものをほうっておいて――これは第五条なりあるいは勅令第九号の規定があります。そこらで取り締ることはできないものでございましょうか。これをなぜここで問題にしなければならないかといいますと、これは投書でございます。だけれども、実情としまして、婦人たちが非常に困っているのです。だんな様がこのはがきを見れば、ちょっと行ってみたい気持を起させる。非常に卑俗な遊蕩的な気分をそそるような、だれが書いたか知りませんが、そういうような、ちょっと帰りにのぞいてみようかなということになると思います。それと、もう一つは、たとえば非常に太陽族的な表現の仕方でありますから、青少年たちが非常に興味を持つんだそうです。「小殿堂」というようなことで、ちょっとどういうところかとのぞく。そこでクラス会をやったり、あるいは何かの打ち合せをやったりということが今起っているのです。今まで何もああいうところには行く用事はない、ああいうところはああいうところだといって見過ごしにした人たちが、そこで同窓会をやったりする。おふろもあって、集会の部屋もあって、そして御飯が食べられるし、あとではダンスもできるじゃないかというので、若い人たちがそこで続々集会をする。そういうようなことは、どう考えたらいいものか。どういう取り締り――これは新手の売春防止法の施行に伴う逃げ道を一生懸命こういうふうなことで手探りに当っているのではないかと考えられるのですけれども、これは一体どうしたらいいか、ちょっと御所見を承わっておきます。法務大臣でもけっこうでございますし、事務的なことはわからぬと仰せになれば、刑事局長にお願いいたします。
○中村国務大臣 私は、あまり粋なことを知らないものですから、非常に判断が鈍いかもしれませんが、問題はやはり実態にあるのじゃないかと思うのです。かりにそのような広告が出ておりましても、実態が、単に飲むとかあるいはダンスをするとか、あるいはさらに深入りをしましても、売春の媒介であるか、あるいは単なる恋愛のいこいの場所というような意味であるか、そういうような点を、実態を把握しなければ、それが果して売春防止法の刑罰に処すべきものに該当するかどうかということは、どうも簡単に言えないと思うのです。今お話しの点が、今まで赤線なら赤線、青線なら青線、事実売春の業者であった人たちが、そういうような看板を塗りかえて、実際は従来と変らぬということであれば、やはりこれは当然処罰の対象になる、こう私は判断をいたしますが、そうでない場合であるというと、なかなか判断がむずかしくなってくる、こういうように考えますので、そういう点はやはり警察なり検察の力によって実態をきわめていくということが肝要だと思います。
○神近委員 今法務大臣の御返事を伺いましたけれども、その通りなのです。これはどういうふうにしてやっていますか。私は前に中川部長にお願いしてちょっと調査をしていただいたことがございます。親戚が五、六軒そこに固まって同一の業種をやっているのです。それで、ダンスホールだとか、あるいは赤線の特飲店だとか、それから小料理屋だとか、あるいはその他の飲食店とかが固まってやっていて、どういうふうにやればこの法律にかからないかということを今模索中らしいのです。その、明るいにおいよきおふろ、静かな寝室を消しましたところが、私どもにはぴんとくるのです。それはだれかに注意されて消した。ダンスをして、おふろへ入って、そうして寝室へ行く、こういうことが不問のうちにちゃんとわかる人にはわかるようになっているのじゃないかと思うのですが、その点、これを一体どういうふうに取り締ることができるか。国警長官でもけっこうでございます。そうして、どういう報告を受けていられるか、伺わせていただきます。
○中川(董)政府委員 ただいまの点、こういった関係は、ただいま法務大臣からお話がありましたように、実態によるものと思うのでございます。売春防止法の第二章刑罰規定が施行後は、お読みになりました条文その他を、いろいろ実情に照らして、それに当てはまるかどうかを検討して、売春防止法第二章の刑事処分の規定に該当するかどうか、これを見きわめて参るということになろうと思うのであります。その売春防止法刑罰規定施行以前の問題は現行法の問題になる。現行法の問題になると、いろいろ問題がございまして、たとえば勅令九号の事件に当てはまるかどうかというような問題も実際にあろうかと思うのでありますが、この問題は御案内のように売春防止法制定の経過がなるべく本年度は保護更生その他の対策等によってああいった実態をなくする方向に持っていく、こういう関係等もございますので、本年度はできるだけ行政措置によってああいったものがないような状態になるやうにやっていき、その反面に、現行法の刑罰規定がございますので、お話のありましたように、刑罰規定をできるだけ活用するという点は同様に考えておりますが、そういうふうにできるだけ活用する点においてやっていくより手はないのじゃないか。本年度の取締りとしては、新法施行以前と若干違いますので、相半弾力的にやらざるを得ない点もありますので、事案その他によっても大へん問題のケースが違うと思いますが、そういう意味合いにおきまして公平にやって参りたいと考えまして、関係機関等に措置を徹底して参る、これが重要なことだと思っております。今これをやっておる次第でございます。
○神近委員 ただ、この問題は、勅令第九号の第二条の前借はみんなあるように報告してきておりますから、もしその方面でお取締りができれば、御調査を願いたいと思います。 法務省関係はこのくらいにして、あと厚生省関係に入りたいと思います。 今日は実は、今度の売春防止法第一章で、御存じのように保護更生の面での施策が一番大きいのですから、厚生大臣の御出席をいただいていろいろ伺っておきたいと思ったのですけれども、今ほかの委員会で御出席ができないということでございますから、安田局長その他に少し伺っておきたいと思います。 婦人保護施設費に必要な経費として二億七千五百万円ですか御要求になっていたのが、それが一億足らずで決定しております。半分どころでない、三分の一くらいの予算で、どこを手抜きをなさるつもりなのか、あるいは、これをどういうふうにしたらば十分活用でき、所期の目的を辛うじてつなぐというようなことができるのか、その御構想を一つお伺いしたい。
○安田(巖)政府委員 婦人保護の予算につきまして、今お話しのように、六億ばかりの要求をしまして、約半分の三億幾らの予算が計上してあるわけでございます。おもに減りましたのは、婦人相談所につきましては、いろいろ規模等につきまして私どもが考えていたものよりか若干小さいものになったような点もございますし、もう一つは、婦人の保護収容施設の方を六十ヵ所ばかり要求いたしておりましたのが三十九ヵ所に減ったという状況が、おもな予算の減りました原因でございます。ただ、婦人相談所は明年度から各府県に全部置かれますので、今地方庁の財政難なんかの理由によりまして、私どもの方に言って参ります場合も、わざわざ新しい建物を作らなくても既存の建物を利用しようとか、いろいろ工夫をいたしております。そういう点で、相談所が一通りできますれば、それで相当効果を上げ得るのではないかというふうな考え方をいたしております。それから、保護施設の方も、これは、三十九ヵ所でありますというと、現在すでにあります十六ヵ所を加えまして、大体各府県に一つはできるということでございますので、これは、三十二年度実施の成績によりまして、できるだけこれをうまく回転させるような方法も講じ、なおまた、どうしてもということでございましたならば、その他いろいろなことを考えなければならぬというふうに実は思っておる次第でございます。
○神近委員 東京都にも新設なさいますか。
○安田(巖)政府委員 私どもいたすつもりでおります。
○神近委員 それで、ただいま全国の婦人相談員を任命していない県が四つか五つあるわけなのです。それはどこどこか。それから、その任命していないところにこれを任命するように勧奨することが必要ではないかと思うのですけれども、それは任意で、自治体がやらないのをやらせるということはできないものかどうか。それを一つ……。
○安田(巖)政府委員 これは三月の初めの調べでございますけれども、婦人相談員を全然置いていないのは、山形と奈良と島根、三県でございます。これは、御承知のように、予算は三十一年度で半年分組んであったのでありますから、置くつもりになれば当然置くわけでありますけれども、私どもたびたび実は府県に対しては勧奨いたしておりますが、明年度に入りまして置かなければ、この法律に違反しておるということでございます。年度内でございますと、これは地方自治団体の考え方もございまして、どうしても置かないというところを私どもの方で置けと申しましても、これはいろいろな関係でむずかしい場合もあり得るかと思いますが、できるだけそういうことのないように、実は、先般来たびたび御注意もございましたので、府県の方には通じておるわけでございます。
○神近委員 この間自治庁の人が全国婦人会議に御出席になってこういうことを言っておられました。交付金の中にこの二分の一の自治体負担の金額も含めてあるということをおっしゃった。それは、ひもをつけなければこういう不熱心なところではやらないと思うのです。これは、このうちのこの部分は売春防止に関する費用だということを明示することはできないのですか。
○安田(巖)政府委員 ひもをつけると申しましても、そのひもをつけるのが実は半額の国庫補助になっておるわけであります。さらに、今度は、府県の負担分の二分の一については、今自治庁からお話があったという交付税交付金に入れてあるということでございます。これは、交付税交付金の性質上、ひもをつけるわけにいきませんから、どうしても、全部ひもをつけるということになれば、十割の国庫補助をやるということしかないわけでございます。明年からはぜひ置くだろうと思いますので、私どもの方も、一応、今の五割補助で明年度の予算には計上いたしてあるわけでございます。
○神近委員 今度の懇談会でいろいろ実情を承わったのですけれど、たとえば、特にこれは地方なんかが多いようで、東京にだってあるようですけれど、さしあたりこれを救いたいと思うときに、生活保護法の第六条ですか、現物給与ができるという見込みで手続をしても、最低三日なり四日なりあるいは一週間かかる。その間の食いつなぎがどうしてもできないのだそうです。それで、私は、婦人団体がこれほど熱心に要求をお出しになってできた法律ですから、婦人団体の協力の意味からも、その立てかえ金というものをプールしておおきになることができないかということをお勧めしたのですけれど、これは臨時のことでございまして、民生委員の手元に委託金というものがいつも預けてあるわけでしょう。一番初めは、これが必要であるとかないとか、いろいろ論議があったのですけれど、きょうのお米代に困るというような場合に、いつでも民生委員が支出できるという方法ができれば大へん助かる、やりよいという話があったのです。今年度婦人団体がそういうことを考えているところもあったようですが、来年度はそういう委託金制度というようなものをお作りになることを構想の中にお持ちになっているかどうか。そして、これをやった方がいいというようにお考えになるか。大した金は、私、要らないと思うのです。それは、民生保護の場合は、先ほど一億でございましたか、私、一億も要らないと思うのです。そして、それは、今度手続が完了して、そして遡源して、それを申し出た日からこれを与えるというような訂正をすれば、その委託金はまた返ってくるんじゃないか。婦人団体にはそういうふうに私お勧めしておいたのですけれど、その構想はお考えいただけるでしょうか。
○安田(巖)政府委員 売春婦が更生いたしますために、翌日からすぐに困るというふうなお話でございますが、そういうようなことを考えまして実は婦人相談所を作りますわけでございます。東京都も、少しおくれましたけれども、明年早々これかでき上るはずでございまして、婦人相談所へ行けば、もし今晩から寝るところがないと言えば、もうそこに一時宿泊所が付設してありますので、そこで身の振り方をつけるまでとめてくれるわけでございます。そういう点を考えた場合の相談所でございます。 それから、一般的に申しまして、民生委員が金を預かっているというようなお話でございましたが、今のところそういうふうな取扱いにはなっておりませんから、結局、福祉事務所でそういう措置をするわけでございます。しかし、もうあすから食うのに困るというようなことでございますれば、それはもちろん福祉事務所で――本人の収入その他いろいろな状況を調べるということは必要でございますけれども、臨機の措置はできるというふうに私は考えております。なお、家その他がないという場合に、いろんな社会施設、福祉事務所等に連絡するということも考えられるわけです。福祉事務所ではこれはむずかしいじゃないかというようなことも、実は施設の関係等でありましたので、婦人相談所という特別なものを作って、福祉事務所でそういう者を見つけました場合に、困ればすぐ婦人相談所の方に送って、そこで一時のしのぎをつけて、さらに将来の更生策を立てていく、こういうような構想でやっておるわけでございます。
○神近委員 これは厚生省の御指示でめったそうですけれど、婦人相談員の任命なんです。任命のときに、長野県なんかは、婦人を一人も入れないで、男子だけが相談員に任命されている。これは私は厚生省の手落ちだと思うのです。私ども、今さら、女だ男だということは、婦人の問題も第一期は過ぎているから、そういうことを言いたくないのですけれど、この問題に限っては、男子は加害者の側の性なんですよ。(笑声)それは、男の方にもりっぱな方々が大ぜいおいでになるし、大部分はりっぱな方々だろうと思うんですけれど、男子という点では、婦人は今までさんざん男に荒されてきている。(笑声)それで、その同じ男子に相談に行くというときに、私は二通り出てくると思うんです。一つは、加害者いう観点から警戒をして、よう行かぬ、腹の中を割って相談がかけられないという点と、もう一つは、今までの習性がありますから、これはいいカモが来たと思うような心理が動く。私は、どう考えても――これは、男とか女とか、フェミニズムの問題じゃないのです。婦人の救護という場合、厚生省は男子でもいいという指令をなさったそうじゃないですか。これはどこから来た考えなのか、私どもには納得いかない。何も婦人を使えというんじゃないんですよ。ただ婦人が適任であろうと思うのです。今まで、あの人たちが問題になったのはその性的な関係であり、異性をつき合わしてうまくいくかどうかということが私どもの憂慮で、これは、暴力団かあるいはひもがあったときに、その方が楽だというようなこともお考えになったようですが、それには、協力するところの警官というものもあるし、民生委員だって、どちらかというと男の人が多い。そういうふうなことを考えれば、私はこれは厚生省の大へんな手落ちだったと思うのです。四人たしか任命されたと聞いておるんですけど、全部が男子で、そうして、福島県のようなところでは、非常に若い、二十代の青年が任命されている。そういうことについて、なるほどそうだとお考えになって、これを取りやめさせることができるものかどうか。それは、私、確かに厚生省の手落ちで、非常にあまい考え方から、こういう指示をなすったんだと思うのです。取りかえることは不可能なのか、あるいは勧めることができるのか、それのお返答を承わります。
○安田(巖)政府委員 結論から申しますと、任命権者はそれぞれの知事であり、それから大きな市の一市長でございますので、今さら、取り消せというわけにいかぬと思います。長野の場合は、お話のように、実は五人婦人相談員を置いておりまして、五人全部男でございます。全体の婦人相談員の性別を申しますと、大体女が五の割合に対しまして男が三ぐらいの割合になっておりますから、女の方が断然多いわけであります。それで、私ども、別に長野県に男を置けと言ったのではなくて、私どもの申しましたのは、年令が三十才以上の者がよかろうということが一つ、それから、社会的の信望があって、婦人保護事業について熱意と識見を有しておる者ということ、この二つだけの条件をつけてやったわけであります。実は、婦人団体からよく女だけにしろというお話がございましたが、こういうむずかしい仕事であり、また、いろいろ世の中のことがよくわかっておる人がいいという場合もございますし、今お話の長野県の場合のことを聞きましても、実は、婦人の保護更生につきまして、なかなかめんどうな問題が起きて持て余したようなことばあったそうでございます。そういうような経験から、長野では男にいたしたと思うのでございますが、男にもいろいろございますし、別に全部が加害者でもありませんでしょうが、要は人柄なり能力によると思うのであります。そういう点で、特に女でなければいかぬというふうにはいたさなかったわけであります。しかし、はなはだしく不都合な相談員がおりますならば、私どもの方から当該の府県なり市に注意いたしたいと思います。
○神近委員 それでは、もう一つ伺います。鳩森小学校事件が契機となりまして、さっきから繰り返して申し上げておるように、学校環境浄化に関する法律案――名前はちょっと違いますけれども、そういうものが準備され、あるいは参議院で審議されていたようです。そうしたら、この法案がどういうわけか中止になりまして、そのかわり旅館業法の改正と引きかえになったということは、これは、私も、新聞記事で読んで、そういうふうになるのじゃないかということを考えているわけですけれども、旅館業法の御準備はできましたかどうか。これは今までいろんな問題が起っているのです。たとえば、私はここで一ぺん法務大臣であったかにお尋ねしたことがあったのですけれども、川治温泉ですか、あそこでは、学校が赤線とかそういうものに包囲されてしまった。そして、とうとう中学校を山の上に移転させた、逃げ出したという例、それから小学校は予算がなくてそのまま赤線の中にはまってしまっているということ。ほかにもたくさんございますよ。横須賀に行ってごらんなさい。学校の門の下のところにやはり赤線だか連れ込み宿だかがある。それから病院も同じような状態で、右も左も、連れ込み宿だか旅館だか、そういうふうなものになっている。これは兵庫が一番ひどいと言ったのはそういう意味で申し上げたのですけれども、大体外国の例を見ますと、学校あるいは病院、公開の集会所、こういうものは小学校だけじゃないのです。特に大学なんかも同じなんです。百メートルという制限がしてあるようですけれども、それで一体効果が上げられると考えておいでになるのか。それから、それはどの程度までの違反があった場合に営業停止なりあるいは許可取り消しということができるように考えていらっしゃるのか、それを承わっておきたい。
○安田(巖)政府委員 実は、私、主管の局長でないものでございますから、よくわからないのでございますけれども、学校の環境浄化の法案の中に盛られておりました百メートルの距離制限というものは、旅館業法の改正案の方に入れるというふうなことで準備をいたしておるというふうに聞いておるわけでございますが、その他いろいろ公共の建物等に対しまして同じように必要であるという今のお話は、よく私伝えておきたいと思います。
○神近委員 今までこの問題は、私たちが、たとえば本八幡だとか池上だとか、全部婦人がやってきたのです。私はこういう機会がこなければならないと考えていたのですけれども、一つぜひ効果あるような立法をしていただいて、教育を救い、あるいは道義を救っていただきたいと思います。
○椎名(隆)委員 関連して厚生当局にお伺いいたしますが、日本に結核患者が約三百万あり、そして国費として百三十数億費されておるが、一体日本に性病患者はどれくらいありましょうか。
○安田(巖)政府委員 実は、私の所管でないものですから、はっきり今数字も持っておりませんですが、また関係の局長を出席させましてお答えいたしたいと思います。
○椎名(隆)委員 来年から売春防止法の第二章が実施せられることになると、大体業者はなくなってしまいます。そうすると、今までは赤線だ青線だと地域を区切ってやっておったのだが、今度赤線、青線の区域がなくなってくると、大体日本全土が赤線、青線になると考えられる。そうすると、今まで業者のうちにいた従業婦は全部街娼あるいは散娼になる。そうすると、ここで考えなければならないことは性病の問題なんです。ところが、昨年度は厚生省に対する性病予防費補助として六千九万四千円という金が出ておるのですが、三十二年度にはこれが減っているのです。本年度から売春防止法の一部が実施せられることになってきて、赤線、青線にいる従業婦はある程度まで減ってきておる。ところが、それらが大体街娼になって、街娼がふえておるということがはっきりわかっておる。そうすると、性病というものはますます蔓延していくというにもかかわらず、それに対する性病予防費というものが昨年度から見て減ってくるというのはおかしいように私は思うのですが、どんなものですか。
○安田(巖)政府委員 確かに、三十一年度が六千九万円ですか、三十二年度か五千九百五十六万円ですから、減っておるのですけれども、そのほかに本省費として一億四千五百万円のものが別に組んであるようでございまして、そういう点を考えまして、昨年より約一億二、三千万円は増加になっておるように記憶しております。
○椎名(隆)委員 結核患者三百万人に対して百三十数億の国費が出されている。おそらく性病患者は私はもっと多いだろうと思う。たとえば、立川とかいうような基地周辺の公衆浴場で、今まで浴場がなかったので、浴場ができたからといって喜んで入りに行った、ところが、六つか七つのいたいけな子供がたまたまお湯の中で顔を洗ったがために一夜のうちに目がつぶれたというような事実も各地にたくさんあるのです。これに対して厚生省はどういうふうに考えていますか。
○安田(巖)政府委員 結核と御比較になったようですけれども、しかし、性病の方は、患者をつかまえることが御承知のようになかなかむずかしいのであります。たとえば、現在性病予防法では医師は患者を届け出る義務があるわけであります。そして、さらに、接触調査と申しまして、どこからもらったかということを順々に調べていくような方法があるわけであります。それで、なかなかできないという事情もありまして、必ずしも結核と同じような方法で、あるいは同じような程度でやるかどうかということは疑問だろうと思うのです。しかし、それにいたしましても、今申しましたような補助の増加によりまして、強制健康診断でありますとか、あるいは性病の診療所、あるいは委託入院治療であるとか、その他、こういったようなことがあぶない病気であるということの思想の普及ということにつきまして費用を組んだのであります。
○椎名(隆)委員 いずれあとでまた詳細にお伺いしたいと思います。 ―――――――――――――
○三田村委員長 それでは、志賀義雄君。
○志賀(義)委員 この前法務大臣と大久保国務大臣が私の質問に答弁されることになっておりながら、まだ来ておられませんので、その前にちょっと確かめたいことがあるのですが、先日石井警察庁長官は御家庭に御不幸があったそうでお気の毒でしたが、ちょっと山口警備部長にお尋ねいたします。 去る三月二十二日、参議院地方行政委員会において、あなたは矢嶋委員に対する答弁でこういうことを言っておられますね。「当時、それじゃ交番の巡査に戸高君が連絡をしたかという御質問ですが、おそらくこれはしていなかった、というのは、戸高君は警備部長から命令を受けて潜入しておるわけですけれども、これは駐在の巡査も知りません、もちろん。知っておれば、もうそれは当時の党内に入って活動するなんということはとうてい不可能です。これは身分を隠して入っておりますから、駐在の巡査に連絡するというようなことは、とうてい私としちゃ考えられない。」、こう山口警備部長は答えておりますが、これに間違いありませんね。
○山口(喜)政府委員 私はそう思います。
○志賀(義)委員 すべて、警察官というものも、いかなる場合も法律に基いてやらなければならない。交番爆破事件というのもそうだ。あなたはこれで法律を無視した重大な答弁をした。それを今確認しておられるということになりますね。 石井警察庁長官に伺います。爆発物取締罰則第八条によりますと、爆発物によって犯罪が起る場合、これに関連して第八条に犯罪告知義務があります。「第一条乃至第五条ノ犯罪アルコトヲ認知シタル時ハ直ニ警察官吏若クハ危害ヲ被ムラントスル人二告知ス可シ違フ者ハ五年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」、こうなっております。今の山口警備部長の答弁によりますと、相手の戸高君が知らせることを必要としなかったという。大戸三郎は駐在所の巡査であり、また、そこへ爆発物を投げ込まれるから、被害をこうむらんとする者になっておる。二重にここはなっておる。どうしてこれを告知しないのか。告知しなければ、明らかに戸高は五年以下の懲役または禁固に処せらるべきものでしょう。こういうことを一体、石井長官、法律を無視してできますか。
○山口(喜)政府委員 ……。
○志賀(義)委員 あなたはもう答弁必要なし。石井長官に聞いているのだ。
○山口(喜)政府委員 長官もお答えいたすと思いますが、私からその前に一応お答えを申し上げたいと思います。この事件につきましては、御承知のように……。
○志賀(義)委員 ちょっと委員長、坂本泰良君は所用があって早く出なければならないのですから、私は長官に聞いている。もう山口君からはこの前からちゃんとのっぴきならないことを聞いて、弁明がましいことは必要としない。法務委員会の運営のことについてもう少しあなた方政府委員も協力しなければならぬ。
○石井(榮)政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、戸高君が当時交番爆破の計画があるやの情報を入手して、警察官の職分から申して、そうした事故防止のために駐在の巡査に連絡をとるべきじゃないか、こういうお尋ねのように拝聴いたしました。(志賀(義)委員「いや告知すべき義務です」と呼ぶ)本人が告知する気持を持っておりましても、それをいついかなる方法でやるのか適当であり、また可能であるかという問題は、そのときの状況にもよろうかとも思うのでありまして、その当時どういう状況であったかということを私詳細承知をいたしておりませんので、どういう事情であったために本人が駐在の巡査に告知しなかったか、その辺はもう少し研究させていただきたいと思います。
○志賀(義)委員 もう一問だけで、あと坂本君に譲ります。今重大な発言があったのです。法務大臣、去る三月二十二日の参議院地方行政委員会において、駐在所の巡査大戸三郎には戸高は全然連絡しなかった、こういうのです。ところが、あそこでダイナマイトがほうり込まれております。ダイナマイト事件があることを予知したから手配をしたと言っておる。ところが、あなたは法務大臣であると同時に弁護士であられるからよく御存じでしょう。爆発物取締罰則第八条には犯罪告知義務の規定があります。「第一条乃至第五条ノ犯罪アルコトヲ認知シタル時ハ直二警察官吏若クハ危害ヲ被ムラントスル人ニ告知ス可シ違フ者ハ五年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」とはっきりあります。大戸三郎は、駐在所の巡査であるとともに、その居住の勤務するところへ爆発物をほうり込まれんとした者であります。ところが、参議院で山口警備部長は、それを知らせなかったと言っており、ここでも確認しております。警察といえども法律に基いて行動すべきです。石井長官に伺ったら、当時どういう事情かわからなかったと逃げられた。法務大臣の立場として、こういうものが許されるものかどうか、これを一言はっきり伺っておきたい。これは重大問題でございます。
○中村国務大臣 まだ事実の真相が的確にわれわれにわかっておりませんので、戸高があらかじめそういうできごとのあることを認識しておったのかどうかということは、われわれとしてもまだ確認し得ないのでありますが、ただいまの、御指摘になりました爆発物取締罰則第八条、これは法律に明記せられた通り正しく運用すべきものである、かように考えます。
○志賀(義)委員 これはあなたの方で検察庁を指揮されておりますが、直ちに告知すべき義務があるものを告知しないでいた、それは当然のことだと言われた。あなた自身も、この前、あの状況のもとではやむを得ないものであったと言われしまたね。今あなたは事情を知らないと言われた。事情を知らないのに、あの当時の事情ではやむを得なかったという答弁をなされた。あなた自身の答弁も矛盾がありますよ。きょうは坂本委員が質問されますから、私はこれだけにとどめておきます。なお、そのほか、前回の委員会のことで、あなたと大久保国務大臣に根本問題でお聞きしなければならぬ幾多の点がありますが、これは保留しておきます。これは重大問題ですよ。あなたも直ちにこれを調査して下さい。これだけをくぎをさしておきます。
○中村国務大臣 先般の御質疑に対する私のお答えしました大体の要点は、戸高という者が警察官の身分のままでそういう変名をいたして、いわゆるおとり捜査のようなことをやったことが一体いいと思うか悪いと思うか、こういう趣旨の御質問であったと思うのであります。そこで、おとり捜査にはおのずから限界はあるべきでございますが、その限界の明細な点は別問題として、昭和二十六、七年の火炎びん事件等が各地に起りました状態から見て、これはそういうような捜査もやむを得ない事情もあったのではないか、こういう趣旨を申し述べたつもりでございまして、ただいまの御質問の要点とはそっくり同じことであったのではないということだけを御了承願っておきたいと思います。
○三田村委員長 坂本泰良君。
○坂本委員 私は、先般来からの問題になっておりまする、ただいま志賀委員も質問されました菅生事件について、大きく三点について御質問したいと思います。 その質問に入る前に、ちょっと一分間申し上げたいのは、われわれが、どうしてこの菅生事件を大きく問題にしておるかという点は、本件は、懲役十年の判決を受けました後藤被告外四名の被告人が、果してこの犯罪を犯した者であるかどうか、逆に警察官戸高がこれを起したのではないか、こういう大きい疑惑を持っておるわけであります。それも、一審の裁判の過程を顧みますと、警察並びに検察官の訴訟進行の工合を見ますと、重要な書類を隠蔽しておる点がありますから、われわれは、真実発見の裁判の問題は別にいたしまして、この警察行政、検察行政について、その見地に立ってこれをたださんとするわけであります。さらにまた、われわれは、現在の平和憲法並びに民主主義の政治下において、時の政治権力に反対する思想を抱懐し、反対する政策を持っておる者に対し、このような、警察が裁判において証拠を出さないとか、検察官が重要な証人を出さないというようなことを権力を行使してやられまするときに、初めてここに戦前のような人権じゅうりん、暗黒警察ができるわけでありまして、かようなことが断じてないように、これを粛正する上においてわれわれは安心して正しいこと、正義に基く主張ができるわけでございまして、その立場からいたしまして、この問題について非常な努力をしなければならぬ、こういう見地に立っておるわけであります。このような考え方の上に立ちますと、私は、今国会におけるところの警察並びに検察当局の、ことに警察当局の御答弁は、昭和二十五年当時の社会情勢ということを盛んに吹聴するわけであります。もう一つはおとり捜査、この点を非常に主張するわけであります。そして、めずらしいおとり捜査ということを宣伝し、さらに、二十五年当時の社会情勢を宣伝しまして、そして国民の日をそちらにそらしておいて、そして、ほんとうの真実をそらしたもとにおいて、そっと出して、これをごまかそうとするのではないか、警察行政の不始末をごまかそうとするのではないか、こういう懸念が国民の間において大いにあるのでありますから、一つ、そういうような社会情勢などは、われわれ国会議員たる者は存じておりますから、そういう講釈を聞かせずに、率直な御答弁をいただきたいと思うのであります。 そこで、第一にお聞きいたしたいのは、前々回以来、古屋委員その他から申されております脅迫文書の点であります。この脅迫文書が紛失をしておる。あるかもしれぬけれども見つからないというのが一年以上になっておるわけであります。そこで、私は、三月二十五日の裁判に弁護人として立ち会いまして、その際に検察側から弁護人の要求に応じてようやく提出されました書類が領置調書であります。この領置調書によりますと、被疑者不明に対する窃盗並びに恐喝被疑事件につき本職は昭和二十七年五月二日菅生村巡査駐在所において差出人が任意に提出した左記目録の物件を領置した、昭和二十七年五月二日、竹田地区警察署司法警察員警部補岡本鶴一、符号、番号、品目、品数、差出人の氏名住居、所有者の氏名住居、備考、こうなっておりまして、番号の一に、品目は小石、品数一、差出人の氏名住居、直入郡菅生村大戸ミチ子、――これは大戸駐在巡査の妻であります。所有者の氏名住居不明、備考欄に、恐喝文に包んであった、とこうあります。二に、品目、脅迫文書、品数一、差出人の氏名住居、右同じ、所有者の氏名住居不明、以下余白として、岡本の判を押してあります。この領置調書がありますのに、領置されましたところの脅迫文書がまだわからないというわけはないと思うのであります。井本刑事局長は、照会をしておるけれども、まだわからないとおっしゃるが、照会しておるかどうか。向うにあるのを隠しておるのではないかどうか。少くともこの領置調書がある以上は、この恐喝文書は領置物としてなければならぬと思う。その点についてお聞きをしたい。
○井本政府委員 脅迫文書のことについて申し上げます。その脅迫文書は、私の方で昨年の暮れ以来福岡の高等検察庁並びに大分の地方検察庁に命じまして鋭意捜査を続けておるのでありますが、現在までまだ発見に至っていないのでございます。ただ、この脅迫文書が問題になりましたのは、昭和三十一年の秋、ちょっと今日を忘れましたが、法廷に出すようにという裁判所の方からの要請があってから問題になってきたものと私は考えております。一審の時代におきましては、この脅迫文書は全然問題になっていなかったように聞いております。なお、この領置文書が調書の中に出ておるのでありますが、その調書は関係者の菅忠愛の昭和二十七年六月八日付の聞き取り書きの中に出ておるのでありまして、この脅迫文の内容はよくわかりませんか、検察官の方で供述者に、領置にかかわる、証マル号と号数が打ってありませんが、証号脅迫文書一通を示したと、こうなっておるのであります。なお、この脅迫文書の取調べにつきましては、そのときの管忠愛の調書の写しを見ますると、これは、後藤秀生ともう一人の見知らぬ者が、相談があったかどうかわかりませんが、後藤秀生が口で言うのをその見知らぬ男が万年筆で書いていましたと、こういうふうなことが書いてあります。従って、この調書から見ますると、後藤秀生の申したことをこの見知らぬ男が書いたということがこの調書に出ておるのであります。従って、脅迫文の関係者は後藤とこの見知らぬ男の二人ということになるのであります。これがその後に問題の市木春秋というのではないかということになってきたような事情と考えるのでありますが、私どもの方といたしましては、かような文書があれば、その当時の事情もさらによくわかるので、私の方の必要から言いましても、この脅迫文を見たいということで、一生懸命に今書類を調べているのでありますが、昭和二十七年六月、この事件当時の混乱時に多数の検事が関係いたしまして、この脅迫文をいろいろな関係者に見せて調べておったのではないかということがうかがわれるのでありますが、何せ昭和二十七年から昭和三十一年まで、脅迫事件といたしましてはすでに三十年時効にかかっておりますような時日を経て問題になってきておりますので、現在いろいろと手を尽して探しておりますが、いまだにこの現物が手に入らぬというような実情でございます。しかし、なお、私の方といたしましては、その望みを捨てずに、この文書の行方を探しておるわけでありまして、現在では引き続き捜査中であるというように申し上げる次第でございます。
○坂本委員 二十五日の裁判に、立ち会いの安田検事に、この領置調書はどこから取り寄せたかと申しますと、大分地検にあった書類である、こういう答弁であります。そういたしますと、この領置調書は大分地検の方に来ておりますから、その脅迫文書もこの調書とともに地検に来ておると思うのであります。もう一つは、これが地検に参りましたならば、被疑者不明に対する窃盗並びに恐喝被疑事件について領置いたしておりますから、警察には、この領置調書を、取るに当っては、被疑者不明に対する窃盗並びに恐喝被疑事件の書類ができておるはずだと思います。 従って、検察庁にお聞きしたいのは、この書類はどうしてないか。それから、刑事局長にお聞きしたいのは、大分県の警察庁からこの領置調書が出た以上は、この文書はこれと一緒に来ておるはずです。それを捜査中だとか、一年以上もたってまだないとかいうことは、これは詭弁だと思うのです。なければならぬはずです。あなた方が聞いておられない、聞いたけれども向うが出さないのかもわかりません。この点は、権威ある刑事局として、一年もたって文書がまだ捜査中だ、廃棄されておるということで済むと思うのですか。その責任の上に立って御答弁をお願いしたいと思うのです。
○古屋委員 関連して……。 今当局の御答弁を聞いていると、しばしば印藤事件や白鳥事件の引例が行われていますが、一体、白鳥事件の捜査はどこから始めたか、皆さん御存じだと思うのです。白鳥事件も、捜査はどこから端緒が出たかというと、やはり脅迫状なんです。両方とも脅迫状なんです。従って、本件の脅迫状は、それ自身捜査に一番重要なものです。そうでしょう。これを証拠でないということはどうしても考えられない。本件はこの脅迫状に基いて捜査すべきじゃないか。 それから、もう一つ私が承わりたいのは、証拠でないと言いますけれども、領置して証拠として送ったということを石井さんがこの前私に答弁しています。警察の方を調べてみると領置調書を証拠として検察庁に送りましたということをこの前に答弁されておる。十五日の日に、脅迫文は証拠物件として検察庁の方に送った、こういうことを答弁しておるわけです。従いまして、今の局長の答弁は、証拠じゃないのだ、証拠として扱ってなかった、こういう答弁なんだけれども、この点を私はどうしても承わりたいと思うのです。 要するに、脅迫状を基本にして捜査を進めなければならぬ。ところが、菅生事件では、その脅迫状の捜査をしていないという事実があるわけです。ここに疑問がある。脅迫状は捜査する必要がないのだ、――ちゃんと打ち合してやったのだからという疑惑を第三者の私どもは持つわけなんです。従って、この点も重ねて御答弁を願えば、明白になると思うのです。
○井本政府委員 当時の起訴事実も非常にたくさんありますし、この脅迫事件につきましては、氏名不詳者の事件として、立件をしていなかったように私は聞いております。ただ、この事件の関係事件といたしまして、かような脅迫文が来ておるので、これは何らか関係があろうということで、当時の係検事の広石検事が菅忠愛の関係者に見せて調べたのが、先ほど申し上げました昭和二十七年六月八日の調書に出ておるのでございます。従って、脅迫事件として一件を立てて検察庁で正式に取り上げていたのでないのありまして、警察から領置調書とともにこういう小石、脅迫文などが送られてきたということは確かであって、私は、さような小石や領置調書があれば、脅迫文もどこか探せば見つかるのじゃないかということで、現在もなお引き続き調べさしておりますが、その当時の係検事に聞きましても、あるいは事務官の方に聞きましても、どこかへ紛失してしまったか、わからないというので、そんなことはないからもっと調べなさいということで調べさしておるというような状況でございますが、いまだに手にできないわけでございます。従って、引き続きこれは調べをしておりますが、現在は問題になっておるので大事な文書になっておりますけれども、少くも昭和三十一年の秋ごろまで、二十七年から約四年余りの間は、この文書は別に問題になっていなかったというように聞いております。
○古屋委員 今の答弁を聞きましても、脅迫状が来ておりますから、脅迫状を中心に本件の真相を捜査するという捜査方針をお立てにならぬというところに、私は疑問があると思うのです。その点は刑事局長のお考えはどうでしょう。少くも、印藤事件についても、白鳥事件についても、全部脅迫状を基礎にして捜査を進めたのは明らかな事実です。こういう脅迫状は、被疑者を捜査する場合には生きた証拠物件ですから、当然私は捜査すべきだと思う。これは重点を置いて捜査をやるべきだと思う。私どもはその捜査方針に疑問を持つわけですが、局長はそうお考えになりますか。
○井本政府委員 いわゆる菅生事件は、交番爆破の直後に現行犯で逮捕しておりますので、ほかの現行犯の事件の捜査とおのずから違っておると私は考えております。この脅迫文の捜査もある程度これによって目的などが明らかになるという点は確かにございますが、この事件では脅迫文の存在が立証上それほど私の方では必要であるというようには考えておりません。
○坂本委員 この点についてもう一点聞きたいのは、この事件の被告が十年の重刑になりました。これはこの重要な証拠の一つであります。というのは、この脅迫文君によって捜査を始めた。そしてそれは被疑者不明である。今刑事局長は、現行犯で逮捕しているけれども、名前がわからなかったという。これが市木だとわれわれはにらんでおるわけですよ。それと、市木その者が逃げて、いなかったでしょう。新聞社の報道機関の網にかかって、三月十三日に出たわけでしょう。この二つの重要な書類を隠蔽して一審に出さずに、一審の判決を進める。そして、犯してもいない被告人を十年の重刑に処せられておる。ここですよ、問題は。われわれも二十年余り弁護士をしておりますが、有罪になるか無罪になるかの中心の証拠はそうたくさんないです。一つか二つくらいしかありません。この脅迫文書というのは、あの交番に投げ込んだ。だれが投げ込んだか、われわれは市木が投げ込だと思っている。それを隠蔽するために、その前に脅迫文を送っておる。こういうふうに考えると、いろいろと警察、検察の事務について不利益と考えられるから出さぬのでしょう。だから、一年以上たって出さないならば、ここでお聞きしたいのは、あと三日たてば出るか、あと一週間たてば出るか、責任ある御答弁をお願いしたい。
○井本政府委員 菅忠愛の先ほどの調書を読んでみますと、この調書の第四項か第五項には、後藤秀生と氏名不詳者とが菅忠愛の目の前で脅迫文を作っておるというのでありまして、むしろ、私どもとしては、これが現在問題になっておる後藤被告の有罪処分の一つになるわけでございます。しかしながら、当時といたしましては、脅迫文がさように問題になっていなかったので、一審が済んで二審まで何も問題になってなかったのであります。その後に問題になってきたので、すでに四年余りたちまして、当時の脅迫文がどこにあるかということが、現在探させましても、記憶が簿らいでおって、わからない。従って、ただいま坂本さんから仰せになったように、三日たてば出るか四日たてば出るかというようなお話でありますが、そのようなことであれば私どもの手元にあるはずでありますが、現在ないのですから、それがあればさらにいろいろな事情がはっきりすると思いますので、鋭意調べておりますが、見つからないので困っております。実情はさようで、初めはこの脅迫文がそう問題になっていなかった文書であるということは申されると思います。
○坂本委員 われわれは、この文事が出さえすれば問題がないわけです。しかし、それを出さないところに非常に大きい疑問があるわけです。と申しますのは、今刑事局長が言われたように、後藤と氏名不詳の者と二人で書いていたのを菅が見たという調書がある。そこで、この事件をでっち上げるについて、後藤だけの名前を明らかにして、市木の名前を明らかにしなかったという、これが警察当局がこの事件をでっち上げる基礎になっておるのではないか、こういう大きな疑念があるわけです。だから、あなたの方で文書で問い合せるくらいでは、向うは出さないでしょう。しかしながら、懲役十年も受けておるところの重大なる刑事事件だから、これはやはりあなたの方から直接行って、そうして十日か二十日間のうちにこれを究明して出さないことには、私はできないだろうと思う。さらに、そうしてもないというならば、この領置調書の事務処理の点についてはいろいろあると思います。この点は、大分の地検にあったのを福岡の高検が公判廷に出しておる。脅迫文書、これは領置物ですから、領置物を処分したならば、処分した書類はまだ廃棄はできないと思う。さらに、この領置調書をとると、やはり被疑事件でありますから、被疑事件に対する領置についての書類があるはずです。この事件については警察、検察庁は殺人でやっていたのですよ。この事件は、殺人と傷害の点は無罪になりまして、爆発物取締違反で十年の重刑に処せられておるのですが、検察庁で裁判所に請求したのは殺人罪、傷害罪も加えておる。裁判所はその点は罪にしております。爆発物取締則違反で十年の刑に処しておるわけですけれども、そういう重大な事件もやっておる関係書類を、時効になったからといって廃棄するようなものでないと思う。そういう詭弁をやらせずに、直接調査をしてこの点を明らかにしなければ、これはできないと思うのです。今大臣がおられぬが、大臣にも私はこれを要求しますけれども、そうしないことには、向うから来た報告書を見て言われると、疑惑がますます深くなってくるわけです。弁解すればするほど、品物があって出さない、こうなるし、基本的には、弁護団側から言えば、ああいう事件のでっち上げの端緒になった重要な文書だ。あなた方の方でそうでないと言うならば、やはりこの文書を出して、そうして真実の上に立つところの公明な裁判を受けなければならない。これが、われわれの憲法上保障されておる権利でありまた義務であると私は思うのですよ。私は二十五日の裁判に立ち会いましたが、この問題については、まだ捜査する余地があると言ってごまかさずに、少くとも十日なり二十日以内にはっきりしたことをぜひやってもらいたい。そうして、もしなかったならば、ないことについての行政上の責任、あるいは刑事上の責任を負うべきものがここに出ても、やはりあなた方はこれを捜査してはっきりすべきものである、こう思うのですが、いかがですか。
○古屋委員 関連して……。 それにつけ加えて御答弁願いたいのでありますが、今坂本委員から質問されておりますのは、検察庁で隠しておるのではないかという疑いですね。この疑いを持つもう一つの理由があるのですが、もう一つは、今公判廷で問題になっておる坂本久夫の自供書なるもの中に、三人でやったということが書いてある。氏名不詳の人があると書いてある。それから、もう一つ問題なのは、本件が行われた二十七年の六月から三年たった三十年になってから、突如として今の坂本の自供書というものを検事が出しておることです。いいですか、検事が証拠に出しておるのは三年後ですよ。この調書を坂本は否認して、今鑑定か何かにかかっておりますが、そこで、今の脅迫文と、坂本久夫の自供書なるものを三年後に検事が出したその証拠と、双方をにらみ合せてみますと、何としても検察庁で操作して隠しておるという疑いを持つわけでありますが、あなた自身の立場としてどうですか。その点も加えて……。私どもがしつこく申し上げておるのは、その経過において検察庁において隠しておるという疑いを持っておるからです。警察で送ったと言う。領置調書もある。その当時の被疑者である菅忠愛に示して調べておる。しかもその脅迫状は本件の真相を明らかにするのに重要なものである。これは検事さんの立場から見ても当然のことです。それがどこかへなくなってしまっておる。今度は被告人が否認して今鑑定に回されておるのです。名前が違う、「久男」というのは音は同じですが字が違っておるということで、坂本が拒否して、自分は知らぬと言っておる。それを三年後の三十年になって証拠物件に出してきておるということは、この双方をにらみ合せてみると、どうも検察庁で証拠に対していろいろなことをやって操作をやっておるのじゃないかというような疑いを持つのでありますが、それを持つことが無理か、それとも持つべきであるか。今坂本委員が申されたように、これが紛失したということになれば、故意でやったかどうか知りませんが、重大な責任だと思います。これに対する責任について、あなたのお考えを一つ重ねてお聞きいたします。
○坂本委員 ちょっと答弁を聞く前に……。 ただいま坂本久夫の調書の問題が出たわけでありますが、これはあとで聞こうと思ったのでありますが、時間がないので一緒にお聞きいたします。 昭和二十七年六月二日の夜――いわゆる二日の未明に事件があったのですが、二日の夜に警察官が坂本久夫の調書なるものを作っておるわけであります。そうして、結審のまぎわの日に、今まで書類を出さずに隠しておいて、すぽっと出した。そして、これは拇印が違う、こんなことを言ったことはない、名前の「男」の字が違うということで、偽造問題が起きておるわけであります。この偽造問題については、私はまた別に聞こうと思っておるのでが、そういうことで、この事件については疑惑が非常に多いのです。六月二日に作ったその自白調書、こういう自白調書というものは訴訟の進行上においてはまっ先に出すべきです。それを、隠しておいて、結審のときにぽんと出した。こういうようなからくりをやっておりますから、あなたのおっしゃったように時効になったとかあるいは処分をしたとかいうようなことは絶対に考えられないのですから、そういう点も考慮して、一つあなたの御答弁を願いたいと思います。
○井本政府委員 一審の裁判の際に何がゆえに脅迫文が問題になってこなかったかという点につきましては、実は私、結論を得ていないのであります。少くとも、かような菅忠愛の調書を法廷に出す以上は、証何号というマル番が書いてあるようなことで、証拠番号のないようなことでは、調書上も完璧なものであるとは言いがたいのであります。ただ、坂本さんのお話のように、確かに昭和二十七年の五月当時に氏名不詳者の事件として警察の方からこういう人の脅迫文が検察庁に送られてきたことは明らかと私は考えまするが、当時これは脅迫事件として事件を立件していないので、ただ調べの関係上、事実上検察庁が預かっておったということになっているのであります。しかしながら、この問題につきまして、私の方も後藤がどういうことを口授したのか、その関係から言っても、その脅迫文があればさらに事情がはっきりするということで、私の方といたしましても、この文書を発見したいという気持に燃えておるわけでございますので、引き続き調べをしておるというわけでございます。何せ、問題になったのは、当時領置してから四年もたってから後のことでありますので、関係者もちりぢりばらばらになっておりまするし、当時のことを聞きましても容易にわからない。なくしたのか破棄したのか、これもまだ結論が出ておらないので、さような、なくしたこともなし、破棄したこともなければ、どこかにあるんだろうということで、調べろということで調べておるのでございますが、御要望がありますので、さらに一段と努力いたしまして、その結論を得たいというふうに考えております。
○坂本委員 これは今のような言いのがれでは済まぬと思うのです。というのは、先ほども申しましたように、大分検察にこの領置調書があって、この領置調書がこの間ようやく弁護人の催促によって裁判所に出ているわけなんです。だから、検察庁にこの領置調書と同時に脅迫文書が送られてきておる。ですから、当時だれが調べた、あっちへ持っていったこっちへ持っていったというのでは、これは検察庁は済まないと思います。ですから、そういう点も考えて、さらに四月二十二日には次の裁判があるのですから、やはりその裁判の前にこういう文書は出して堂々とやるべきものだと思うのです。検察庁は何も犯罪人を作るのが的じゃない。誤まっていたら、それに関係した検事は多少の黒星はあるでしょう。しかし、人命にはかえられませんよ。こういう大事な書面を出さないことによって間違った裁判を起されるということになったら、日本の司法権は支離滅裂になるわけですから、そういう意味において、ぜひ一つやってもらいたい。この点はあとで大臣にも要望いたします。 第二の点は、市木春秋、これは戸高公徳であって、元大分県警察の巡査部長であったということがはっきりしました。さらに、当時この菅生村に共産党に近づくために行っていたという点が明らかになり、さらに、六月二日の事件以後行方不明になっていて、本年の三月十三日になって初めて出てきて、同一人であるということがここに確定し、二十二日には裁判所に証人として出ることになっているわけです。 そこで、私たちが一番疑問に思いますのは、おとり捜査ということを言われて、あの当時の社会情勢としてはそれもやむを得なかった、爆薬を持つこともやむを得なかったろう、こういうことも警察庁は答弁されておるのであります。そこで、私たち考えるのに、このおとり捜査は、田中正義君が中央大学でこのおとり捜査の論文で博士になったわけですが、田中君のは独自の見解ではなくて、日本の実例と外国の実例をたくさん集めてあるわけです。そして、おとり捜査が有効か無効か、有罪か無罪かという結論は出していないのでありますが、このおとり捜査を使われる場合は、おとり捜査によって犯人を逮捕したならば、第一番に、お前はヒロポンを持っていたじゃないか、おれと一緒に持っていたぞ、と言って証人に出るのが、このおとり捜査であります。ところが、この事件においては、事件があった六月二日から、逐電して、いなかった。隠していた。そして三月十三日にわかった。こういうような関係がある。だから、このおとり捜査の本質、またおとり捜査を運用する面から考えても、これを隠しておくという点にいったならば、断じて警察庁当局は何はあれはおとり捜査だなんということは言えないと思うのですが、その点はどうですか。これは石井長官に聞きましょう。
○石井(榮)政府委員 主管部長の警備部長からお答えさせます。
○坂本委員 あなたもおとり捜査ということを……。
○石井(榮)政府委員 おとり捜査ということにつきましては、私、学問的に知識を持っておりませんので、間違いますと申しわけございませんので、主管部長の警備部長からお答えさせることを御了承願いたいと思います。
○坂本委員 それでは困りますよ。石井長官はおとり捜査のことはよくわからぬとおっしゃるが、この委員会において、あれはおとり捜査に使ったということを発言しておられますな。おとり捜査に使ったということを発言しておられると私は思うのです。しかし、前回の場合は私は出ておらぬからわからぬのですが、おとり捜査に市木は使ったんだ、おとり捜査の意味だという発言はあったと思うのです。それならばやはり、おとり捜査ということを使われる以上、そのおとり捜査についての確信ある上に立たなければその答弁はできぬと思うのです。
○石井(榮)政府委員 私がたしか三月十五日の当委員会に出席をいたしましてお答えをしましたときには、おとり捜査という言葉は使っておる記憶はございません。前回の三月二十二日の当委員会には、私、私事の都合で出席できませんで御迷惑をかけたのでございます。従いまして、私はおとり捜査という言葉を使った記憶はございません。
○山口(喜)政府委員 今回の事案をおとり捜査であるというふうに新聞記事に出たことはございましょう。あるいは当委員会で委員の方々の御発言中にもそういうことがあったことは私たちも記憶しておりますが、私どもといたしましては、これをおとり捜査であるというように申したことはないと信じます。われわれとしましては、当時の情勢からやむを得ず情報を収集するために党に接近をして参りましたということは申しました。ただし、これはきわめて広い意味においておとり捜査という概念の中に入れる入れないは人によって意見が違うと思いますが、われわれとしましてはそういういわゆるおとり捜査であるということを申し上げたことはないと思っております。 なお、いわゆるおとり捜査の場合には、その中に入っておったといいますか、あるいは麻薬等について買い受けた者を出すのが常道であるというようにおっしゃいましたが、なるほどそういう場合もございましょうが、本件の場合は、第一に、これは現行犯で、現場で事件直後に逮捕いたしておるのでありまして何もそういう関係の情報活動をしたというようなことは申し上げなくても、これは公判において事態がはっきりして参ると思うのであります。もちろん、公判を維持する必要があるというような場合には、それはお出しになる場合が多々あると思いますが、われわれとしましては、今申し上げましたように、これは現行犯で、事態がきわめてはっきりしておるのであります。そういうようにお答えを申し上げます。
○坂本委員 きわめて現行犯逮捕がはっきりしていない。これは判決を見てもわかりますが、一審の判事も非常に疑問に思っているようですね。あなたがここではっきり言われるようにあの逮捕がはっきりしていないのです。そういうことを言うと、――時間がないから、私また次の機会に申しますが、一言いますと、高等裁判所が事実審理を開くその動機になったのは、あの現行犯逮捕は、雨の降るときに交番よりはるか離れたところで待ち受けた刑事数十名に逮捕されているわけです。交番より一キロ反対の方向に行ったその足取りがはっきりしておるから後藤被告は保釈にもなっておるというようなこともありますから、あまりあなたがそういうはっきりしたことを言うと、これは困ることになると思うのです。しかし、これはまた、裁判にも関係しますから、あとに譲ります。 そうしますと、この市木春秋はおとり捜査というようなことに使ったのではない、ただ共産党の活動に接近してその内部を探らせる、こういうような意味で使ったとおっしゃるのですね。
○山口(喜)政府委員 党の関係についての情報を収集して、事態を警察側でしっかりつかむというために入ったのであります。いわゆるおとり捜査というのは、ちょっと概念は違うと私は思います。ただし、これは、きわめて広い意味においてそれもおとり捜査だとおっしゃれば、それはおっしゃる方の御意見だろうと思います。
○坂本委員 この問題についてもう一点お聞きしたいのは、先ほどの領置調書の問題とも関連しますが、当時六月の一日か二日に市本春秋が逮捕されて、そうして調書ができたというようなことを聞いておりますが、その点について知っておられるかどうか、その点をお聞きしたい。
○山口(喜)政府委員 当日市木を逮捕した事実はありません。私はそういうふうに報告を受けております。
○古屋委員 ちょっと関連して……。 ただいまの、逮捕された事実はありませんという答弁ですが、そういうふうにはっきり答弁ができますか。そういうことでいいのですか。この前あなたは、今どこかわからぬところに逃げておる、戸高の相談を受けた人間も言えぬと言っておる。それから、戸高がさっそく証人として出頭しようという上司に相談したが、そういう事実はあるけれども、その人間を言えない――、それで今のような答弁をされて、実際いいのですか。あなたはその後の事情を知っているのですか。全然事情を知らないと言っておったあなたが、縛られたという事実はありませんということを言って、はっきりあなたは責任を持ちますか。その点を、当委員会において、山口君は、答弁をいたしますと言って勝手にでたらめなことばかりを言っているから、私は聞いているのです。なぜかと申しますと、前にもあなたに答弁を求めたわけですが、ダイナマイトの問題でも、あなたは仮定論をここに持ってきて、――ダイナマイトを当時のいわゆる市木、今の戸高その者が持っておった事実は明らかになっておりますか、それが犯意が阻却するとか、そういう仮定論をあなたはここで答弁しているのです。そうなると、いかにもあなたが戸高を隠しておるという疑いがだんだん濃くなってくる。もう少し良心的な答弁をしてもらいたいと思う。当委員会は神聖ですよ。ダイナマイトを持っておっても、それは犯意が阻却するだろう――、なぜあなた方はそういうことを言っているのですか。戸高がダイナマイトを所持していたことは明らかになっておる。あなたもそのくらいの報告は受けておるでしょう。当委員会の審査の過程においてわかってはっきりしているでしょう。村田克巳が、二十本渡したが、二本はどこか途中まで来たらなくなったといって、探しに行かせておいて自分は逃げてしまった、こう言っているでしょう。それから、毎日新聞の写真班か、しからざれば当時の警察の写真班は、当時の市木が縛られているところを写真にとっているということも調書に出ているのです。また、そういうことを証言している者があるわけです。もう少し良心的に、この委員会をあまり侮辱しないように一つ答弁してもらいたいですが、はっきりそういう答弁ができますか。
○山口(喜)政府委員 私の先ほどの答弁は、速記録をごらん願いたいと思いますが、逮捕した事実はありませんというように報告を受けておりますと申し上げているのであって、私は逮捕した現場を実は見ておりませんから、これは報告を受けるよりしようがないのであります。私はそういうように報告を受けております。また、私はそうであろうと思います。 それから、でたらめを言うということをおっしゃいましたが、私はでたらめは一切申しておりません。事実に基いて、あるいは私が報告を受けたところに基いて申し上げているのであります。ダイナマイトを百取りに行った云々の問題は、この前も申し上げましたように、これは本人が公判廷に出て明らかにすると思いますから私がここでとやかく印すのは差し控えますと申し上げたのに対してさらにいろいろと御追及になりましたので、仮定の問題としてこういう場合があるということを想定した上でならば私はお答えいたしましょうということでお答えしたのであります。でたらめでも何でもありませんし、そういう仮定の場合の判断としましては、私どもは正当な職務の行為による違法性を阻却するものと思いますということを申し上げたのであります。でたらめでも何でもありません。
○古屋委員 それならば承わりましょう。そういうことをおっしゃるならば承わりますが、昨年の十二月十三日には、戸高は全然知らない、二十七年の六月三十日に大分県の巡査をやめたあとのことはわかりませんという答弁をあなたはここでしておったが、この前十五日の私の質問に対しては、あなたの方で使っておったということを答弁している。しかも、その答弁の過程において、たとい雇でも、戸高を採用いたしまするときには身元調べ、経歴の調べをいたしましたという答弁をしている。ところが、小林さんから聞いたのは、あなたにしても石井長官にしても、ことしの一月だと言っているけれども、私どもの調査したところによりますと、最初から知っておって戸高をあなた方の方で使っているという疑いがある。いいですか、採用する場合に身元を調べたりその前歴を調べたりしたということをあなたが答弁していることと、前に全然知りませんと言った答弁と、この二つを突き合せて言えば、あなたの答弁がでたらめな答弁だということは当然じゃありませんか。いやしくも警察が大事なあなた方の書類の整備をさせるのに、たとい雇であろうとも、小林末喜さんから頼まれて使ったのでしょう。小林末喜さんが頼むときに、常識的に考えても、大分県の巡査であった人で、共産党に近づけてそうして仕事をやらした事実があるということは、あなた方に報告しなければならぬ事項でしょう。かりにそれがないとしても、どういう経歴のためにここに来ているか、どういう前歴を持った者であるかということは、あなた方は証明されたり聞いたりしているわけでしょう。これはどんなばかでもそういう判断をしますよ。いやしくも警察が重大な書類を整備させるのでしょう。ただ単にかつて警察官であったということだけで、何も調べずに、何も事情を聞かずに簡単にあなた方が採用するということは、その年の九月ですから、私はあり得ないと思うのです。私はこの点については石井長官の答弁は納得がいかない。その後国警で巡査部長に採用している事実がある。採用するには、前の経歴を全部お調べになってから採用するのが当然です。そうでしょう。どういうわけで一体大分県でやめたのか、どういう経歴を持ってきているか、小林さんに聞かなかったはずはない。私どもは常識的にそう考えるが、あなたは最初知らなかったという答弁をされておった。それでは、今の報告をいつ受けたのですか、何と受けたのですか、御答弁願います。
○山口(喜)政府委員 一月の上旬ですか、小林君が来て事情を述べております。これは、当委員会で当時の実情を明らかにせよという御要望に従いまして、私どもが本人に上京を求めて事情を聞いたのであります。従って、それまでに知らなかったことははなはだけしからぬというおしかりでございますれば、これはわれわれとしては甘受しなければならぬと思う。まことに遺憾なことであったと思っております。ただ、身元調べをしたならば当時わかったであろうというようにお考えになることはごもっともだと思いますが、御承知のように、当時の警備部長が自分の考えで党に接近させまして、これはほかの者に言うべき筋合いのものではありませんし、もちろん本人の経歴書等にも載る問題でもありません。また、身元照会が参りますのは人事の担当警務課におそらく参ると思いますが、そういう人事の担当の者もおそらく知らなかった事柄であろうと私は思うのです。従って、そのときに身元照会をしたから全部がわかって、お前らは知っておったであろうとお考えになりますことは、ごもっともな点もありますが、事実は、事情がそういうようなわけでありまして、その点は御了承をお願いいたしたいと思います。
○古屋委員 それでは、ことしの正月になってあなた方は知ったと、お二人がそう言っておりますけれども、それで一体国民が納得いきますか。菅生事件が昨年どのくらい九州で新聞に出ていますか。新聞を見せましょうか。去年から五段抜きで全部出ていますよ。それを石井さんと二人が知らぬなどとは済まされない。それを言っているのです。あなたの方は大分の警察本部に電話一本かければ今でもやれるでしょう。あれだけ九州を騒がせ、あれだけの人権問題、あれだけ警察官に疑いを持った事件、これはことしの一月知ったと、あなた方二人でそういうようなことを言うこと自体が白ばくれている。私どもはみんなそう思います。国民もおそらくそう思いますよ。九州であんなに騒いだのでしょう。今ごろになって初めて、小林君を一月に呼んで聞いた、こういうことを言ったのでは、日本の治安を預かっておるあなた方、人をふん縛るあなた方、捜査をするあなた方を、国民のだれが信用しますか。もっとすなおに言われたらいいじゃないか。昨年の六月以降十月ごろには、毎日、新聞にじゃんじゃん出ておる。それを、今年になって初めて知りました、そんなことを法務委員会で言う。だからでたらめだと言っておるのです。去年の六月から十月ですよ。新聞は毎日ですよ。もし何なら新聞をお見せしますよ。堂々と……。しかもこれは昨年も一昨年から法務委員会で質問しておる事件ではありませんか。今年の正月知りましたとは何事です。良心のある答弁をして下さい。
○山口(喜)政府委員 この問題の市木春秋という者が戸高ではないかというようなことで公判廷や何かで問題になり始めましたのは、九月の終りか十月ごろからの公判廷であったように私は記憶いたしております。そうして、十二月の十三日ごろのこの委員会で御質問がありました。それで、われわれは調べようとしたのでありますが、この前申し上げましたように、いろいろ年末の闘争もあり、年末の警戒もありまして、当時の小林君は新潟の警備部長で、そういう方面の所管部長でありまして、上京を求めましたけれども、上京がむずかしいということでありましたので、やむを得ず一月の上旬に来てもらって話を聞いたということは、お話し申し上げた通りであります。当時の情勢は、小林君が自分でそういう判断のもとに行なったことであります。小林君に聞かなければ、大分県に行きましても、現在人のかわっておる所管の者が存じておることもないであろうと私は思うのであります。従って、一月上旬に初めて知ったということはまことにけしからぬ話だといっておしかりを受けますのは当然お受けいたしますが、それをもって直ちにでたらめであるとかなんとかいうことは、やはりお控え願いたいと思います。
○古屋委員 三十年の十二月にこれだけの上申書に詳細に書いてありますよ。これは世間に発表されたのです。この上申書、本人の控訴理由等、これを読んでごらんなさい、みんな出ております。ところが、今年になって知ったということでは、人をふん縛る捜査資格はないじゃありませんか。それだから、もっとすなおに、知ったなら知ったと言って下さい。知っておったけれども十分捜査ができなかったということなら話はわかる。三十年の十二月ですよ。これはみな新聞に発表されていますよ。去年の九月に知ったという。あなたのおっしゃる通り九月でもいい。九月に問題になって、なぜ調べていないのか。あなた方の部下の警察官が重大な犯罪を犯した、爆発物を投げたという警察官、これを事実あなたが調べてこういう報告をするのは当りまえですよ。これも今年の正月まで放っておいてよろしいという答弁をあなたの立場としてされるのでありますか。あまりくだらぬことを言ってもらっては困ると言って反撃する前に、去年の九月に問題が起きた――私は去年の九月でもけっこうだが、あなたの部下があなた方の屯所である駐在所を爆破したという事実、そして法務委員会で二度も三度も質問を受けておったものを、これは電話一本かければわかるのですから、大要知っておかなければなりません。それを今年の一月になって初めて知りましたと、石井長官とお二人が口をそろえて言っております。そんなことでは納得いきません。あなた方は前に知っておった。私はでたらめだと言っておる。断じて取り下げません。 それでは法務大臣に聞きますよ。いやしくも捜査権を持った人間が、昨年の九月わかったと言っておる。昨年の九月わかったものを、われわれが質問したのに、去年の十二月は忙しかったからだめだ、今年になって初めて一月に小林君を呼んで知りました、こういうようなでたらめを、またそういうやり方でいいのかどうか。少くとも人をふん縛ったり、警察官としてあくまでわれわれ人民の保護をすべき、治安を守るべき人が、駐在所に爆発物をぶち込んだということか新聞で宣伝せられ、公判廷で公けにこれが発表せられ、相当新聞に発表した、そういう事案が、去年の九月に、山口警備部長が言われる通りわかったとして、それを今年の一月までほうっておいて、小林部長を呼んで初めてわかりましたというようなことで、そういう取扱いでいいのかどうか、法務大臣に伺いたい。
○中村国務大臣 途中から参りましたので前段の方をよく承知いたしませんが、この問題が法務委員会等で論議されるようになりました以上は、関係当局といたしましては、少くとも自分の所管に属する事項についてはできるだけ誠実に調査をするのが当然であるとは思います。しかし、警察の方の関係のことがどうなっておりますか、私、所管でございません関係上、つまびらかにいたしておりませんので、むしろ、今お尋ねの要点と思われるような点につきましては、所管大臣からお答えを願うのが適当かと考えます。
○坂本委員 大臣にお聞きする前にもう一点だけ山口さんにお聞きしたいのですが、三月二十五日の裁判に新潟の小林警備部長が証人として出廷しまして、当日忙しいからぜひ、証人調べをしてくれ、こう申しますから、何で忙しいのか、あなたは二日前から九州に来ていろいろあっちこっち打ち合せをして、そうして来ておるのではないか、そういう人が、きょう証人調べをしてもらわなければ、忙しいから来られないというような、そういうことはないじゃないかと弁護団から反撃を受けたわけでありますが、この小林氏が二日前九州に行ったことを御存じかどうか。 それから、これはうわさでありますが、山口さん、あなたは小倉か久留米に妹さんがおられて、その結婚式に参列するというので、二十五日前後九州に来ておられる、こういうような話を聞きましたが、その点は事実であるかどうか、承わっておきたい。
○山口(喜)政府委員 小林君が福岡にいつ行きましたか、私は新聞の夕刊で拝見いたしました。小林君の談話がたしか出ておったと思います。 私の方は、これは全く私用でございまして、休暇をいただきまして、飛行機で福岡に参りました。そして自分の郷里に帰ったのであります。妹の結婚につきまして親のかわりとしていろいろいたすために帰ったのであります。で、昨日の朝帰って参りました。
○坂本委員 行かれたのはいつでしたか。
○山口(喜)政府委員 二十三日土曜日の朝でありますから、土曜日を休んで、日曜日は日曜日、そして月、火といて、帰って参りました。
○坂本委員 小林が二十三日に九州に来ておるということは聞いたのでありますが、山口さんの点はあるいはデマかと思ったわけでありますが、いろいろ話を聞きますと、あなたは私用ということですでに二十三日に来ておられる。小林証人は、二十五日の尋問に先だって、二日前の二十三日に来て、証人としての万全の打ち合せをした、こういうような風説があるわけであります。また、われわれもいろいろ、私が最初に申しましたように、率直に言われないで、あなたたちが非常にむきになってこの管生事件についての警察の行動について弁解し、かばわれるという点から推測をいたしまして、まことに、あなたは私用ではあったのだろうけれども、やはり二十三日、二十四日には大分の警察あるいは福岡の警察あるいは検察庁と打ち合せをされたのじゃないだろうかと、私も弁護人の一員ですが、推測をするわけであります。しかし、この問題は事実がわかりましたから別といたしまして、そこで、私が大臣にお伺いしたいのは、先ほど来井本局長に脅迫文書の紛失の問題でお聞きしたわけでありますが、そこに写しを差し上げましたような領置調書、これに対して、もし記載してあります脅迫文書というものが――これの提出者はあの爆破された交番の大戸巡査の細君であります大戸ミチ子さん。これから脅迫文書が提出されて、弁護側でこの脅迫文書の提出を裁判所に要望しましたけれども、ついに出なかったのであります。ところが、二十五日の公判に初めて安田係検事から領置調書だけ提出をされまして、これは大分の地検にある文書だということでありました。これを見ますると、脅迫文書は必ず領置調書についていて存在しなければならぬと思うわけです。ところが、刑事局長の御答弁は、昨年の暮れから志賀委員の質問以後これを調べて、おるけれども、現在に至ってもまだわからないから、捜査はするというような話ですが、あまりそういうふうになると、われわれとしては、あの文書を出さないのじゃないか。これは一般にもだんだんそう考えてくる。もうきているのじゃないかと思うわけですが、この脅迫文書は必ずなければならぬはずだと思います。従って、十日か二十日間くらいの間にこの重要な文書によって後藤被告は十年の刑を受けておる。殺人傷害の点は無罪になりましたが、爆発物取締罰則の第一条によって十年の判決を受けておる。この犯罪の端緒になる重要な文書ですから、これを出さないと、これはやはり警察からでっち上げてきて、そうして共産党の後藤その他を犯罪人としてやるというふうに言われてもやむを得ない立場にもなるのでありまして、検察行政、警察行政の立場から、こういう書類をなくしたということでは相済まぬと思いますが、大臣の責任において、どれくらいの期間にこの文書が出されるか、その点を承わっておきたいと思います。
○中村国務大臣 どのくらいの期間に出されるかというお話でございましたが、あるものならば急速に出すようにいたしますが、事実、検察庁といたしましては、この文書が今まで調べたところではないということであります。領置調書がここにございますのですから、脅迫文書は大戸ミチ子という者の提出にかかっているようでありますので、この者にもしかりに還付をしておれば、還付の受取書なり手続がやはりとられていなければならぬと私どもも思うのであります。ところが、そういう事実もはっきりしないようでございますから、本来から申しますればなければならない筋の文書であることは御指摘の通りであると思います。従いまして、そこにいろいろ疑惑を持たれることもやむを得ないと思いますが、事実、検察庁の引き出しの中から出ましたのは、この領置調書と、領置いたしました石などがあっただけで、肝心の脅迫文書だけは見当らないということで、その後も、実は、法務省の刑事局といたしましては、現地に、厳重に捜索をして努めて発見をするようにという指示をいたしております。いまだそれが発見をいたしませんので、期限をいつまでということも事実上不可能でございますが、極力、われわれといたしましては、先日も申し上げましたように、こういう被告からの抗弁がありますし、いろいろこの事件をめぐっての疑義があるようでございますから、公判の審理におきましても、検察当局としてはできるだけ事実の真相を明らかにすることに努めておる次第でありますが、誠意を持ってさらに捜索を続けるように事務当局に指示いたしたいと思います。
○坂本委員 ただ、われわれが心配しますのは、もう一年以上もたってまだ捜査々々と、これでは済まされない。しかも裁判はどんどん進んでおりますし、まあ時間がないから申し上げませんが、被告側から言わせれば、でっち上げをした端緒、捜査の端緒にしておるものはこの怪文書と牛なんです。私は証拠の掘り出した牛の骨なんか見てきました。その牛の肉も警察官がみな食って、そうしていけてそれを後藤なんかの窃盗の関係だと言っているというようなうわさも飛んでおるわけです。しかし、この牛は、右の角と左の角が間違っておりますから、非常な疑問にかかっておるわけですが、こうして領置調書もありながら、その恐喝文書を出さないというのは、疑惑を非常に大きくする点でありますから、ぜひ一つ、あるかないかを――なければやむを得ません。しかし、ないについては、ない相当の理由がなければならぬはずなんです。また、その相当の理由によって、その証拠の点についても――大臣は弁護士であられるから御存じと思うのですが、一つそれは十日か二十日くらいのうちにはっきりして、あれば出してもらうし、なければ、どういう理由でないか、いつごろからないかというような点についても御捜査願って、できるかどうか、その点をくどいようですがお伺いいたします。
○中村国務大臣 御意見の通り、われわれとしては、一つ最善を尽して、結論を得るように努力いたしたいと思います。
○坂本委員 第三の点に移りまして、簡単にお聞きしたい。 第三の点の一つは、三月の十三日の夜に、報道機関の捜査によって、春風荘に問題の市木春秋がおるということがわかり、同一人であるということもはっきりいたしたわけです。その際にいろいろの面会をさせずに、三月十四日に国際観光ホテルで記者団と市木との会見が行われた。そうして、そこに第一警備課長が立ち会っておられるわけなんですが、どうしてこういう記者会見に警備課長が立ち会ったか、その点を警察庁当局からまずお聞きをいたしたい。
○山口(喜)政府委員 今御指摘の点についてお答え申し上げます。 その前の事情からちょっと申します。十三日の夜でしたか、一つ本人と話させてもらいたいという交渉が行われたわけでありますが、そのときに新聞社側で出しました条件は二つあった。一つは、ほかの新聞社に絶対に漏らさない、これは新聞社側もいろいろ申しておりますが、私の方もわかっておることは全部申し上げます。絶対にこれをほかの新聞社に漏らさないようにしてもらいたい、これが一つ。それから、戸高というか、そのつかまっている人に会って話を聞かしてもらいたい。本人は何も言わなかったらしいです。これは、話をするしないということは本人の考え方でありますが、それならば、きょうは夜もおそいから、時刻を改めてお会いしたらいいでしょう、そういう点について私の方としても尽力というか努力をいたしましょうということは、確かにそのとき言ったわけなんです。で、もちろん本人が一人で会うつもりでおったのであります。これはたしか新聞社側の御希望もあったかと思いますが、前日そういうことがあったものですから、本人がやはり非常に心配をしておったわけですね。そこで、それでは一緒に行こう、来てもらいたいというような、万事両方の話し合いでこれは会ったように、私あとで聞いたのであります。従って、おそらくその直前に場所をお互いに定めましてそこに一定の時間に三者が集まっていったという関係だろうと思います。その点は私ちょっとはっきりいたしません。そういうような次第でございます。
○坂本委員 この会見後、戸高はまた行方がわからなくなったわけですが、警察庁の方ではそれはわかっているかどうか、わかっておるならば、どこにおるか、それをお聞きしたい。
○山口(喜)政府委員 戸高の証人申請しましたときの住所は春風荘でございます。現在どこにおるかということでございますが、現在彼がどこにおるかということは、私は存じません。しかし、これは前申し上げましたように、三月の初めに証人に出てくると本人が言いましたときに、警察庁の警備部のある者に連絡があったということは申し上げております。従って、現在彼がどこにおるかということは私どもの警備部のある者は知っておるかもわかりませんが、私はあえてそれを聞いておりません。本人は、おそらく、所在がはっきりすれば、ほかの各社とも非常に関心を持っておられますし、また、本人の側から見れば、いろいろめんどうなことになってもという心配からか、あるいはどういう理由か存じませんが、本人がなにしておるのでありますから、 私の方からしいて聞いておりませんが、しかし、証人として出ることにつきましては、私の方では間違いがないものと考えております。
○坂本委員 そこで、警察庁の方にもう一点お聞きしたいのは、この市木春秋、戸高は、村田克巳からダイナマイト二十本をもらって、そうしてそれを受け取って、二本足らぬ、十八本しかないから、二本をお前道で失ってきたんだろうというので、取らせにやって、そのままそのダイナマイトを持ってずらかった点は、これは警察の調書、それから検察庁の調書、裁判所の調書でも明らかなんです。そこで、この戸高を警察庁が発見されたならば、これは、 先ほどのお話がありました爆発物取締罰則によって、捜査をし、逮捕なければならぬと思うのですが、その点の処置をされたかどうか、処置をされたならば、どのような処置をされたか、その点を承わりたいと思います。
○山口(喜)政府委員 その爆発物を取りに行ったかどうかというような点につきましては、この前の委員会から私申し上げておりますように、これは本人が公判廷で真相を明らかにすると言っておりますし、私がここでそれがどうであったこうであったということは申し上げる立場にない。この点は一つ御了承を願いたいと思います。(志賀(義)委員「法律的な理由があるか」と呼ぶ)それは、要するに、当日の本人の行動がどうであったこうであったというようなことは、私が間接の間接のまた間接で聞き出してお答えするよりも、これは公判廷に本人が証人として出ると言っておるのでありますから、それに従って事実が明らかにされるだろう、私はそう思うのです。 それから、捜査の点につきましては、この前から申し上げましたように、そういう特殊の事情のもとに党に入っていって、そうして、これから先仮定の問題としていろいろ申し上げておったのでありますが、その場合には、私は違法性を阻却するものと思いますということをはっきり申しております。爆発物取締罰則のこの罰則は、御承知のように、一条から十二条までありまして、「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ」という、これは目的罪でございます。ただ、目的罪でないのは、第七条の告知の義務違反だけであります。(「捜査したかしないかを聞いている」と呼ぶ者あり)従って、本人のしておる行為が、一方において違法性を阻却するし、犯罪とならないとわれわれは思いますので、捜査をいたしておりませんということはこの前から申し上げたわけであります。ただし、検察庁がお取調べになるということであれば、本人は喜んでそれにお答え申すでありましょうということを申し上げたのであります。
○坂本委員 私は非常に遺憾に思いますが、われわれは、何もあなたの話を聞かぬでも、もちろん目的罪なんということは知っておるのです。いいですか。ただ、すでに五年前にそういうような犯罪を犯しておるし、そうして五ヵ年間も行方不明になっていたのがわかった。しかもそれは爆発物違反の嫌疑のある人物である。だから、これがわかったならば、警察庁の良心において、それが違法阻却になろうかどうかという点は第二にいたしまして、これは調査を作り、捜査を開始しなければならぬ。それが当然だと思うのですが、石井長官、その点いかがです。
○石井(榮)政府委員 先ほど警備部長がお答えしました点に私も同感に存じておるのでございますが、ただいま重ねてお尋ねのありました点につきましては、私どももさらに十分慎重に研究していきたいと思います。
○坂本委員 これは、警察がこの犯人を仕立てて、そうして、のがして隠していて、それがわかったという大きい疑惑をかけられておる。ことほどさように、私は、やはり捜査をして、そうして、その後の足取りとか、当時所持したかどうか、所持していたけれども、それは刑法第三十五条の職務行為であるからこれは違法性を阻却するとかいうことを、警察庁としては、また警察行政の上からしまして、この点をよく取り調べをして、そうしてその真相を発表されるのが警察行政の最も妥当なものであり、これだけはしなければならぬ義務だと私は思うのですが、その点いかがですか。
○石井(榮)政府委員 戸高君が近く証人として公判に出るということを本人は決意し、またそういう手続もとっておるということになっておりますので、そういう正式の手続によりまして事案の真相が明らかになるということを私どもは期待をいたしておるのであります。同時に、今御指摘の、今からでもおそくない、本人の所在がわかっておるのであるから、これについて問題の点を警察の立場において捜査を開始したらいいじゃないかという点もございますが、確かにそういうことも当然と考えられるわけでございますが、とかく、そうでなくてもこの事案につきましては全般的に大きく疑惑も受けております今日でございますので、警察がみずから直接捜査をいたしますよりも、むしろ検察庁の手にゆだねて捜査をしていただく方が公正を欠かない、疑惑を受けないということになるのではないかとも考えられますので、検察当局において捜査すべしという連絡がありますならこれは別でございますが、そうでない限り、一応、警察としましては、そういう点につきましても慎重な態度に出るのがむしろ適当ではなかろうか、かように考えております。
○坂本委員 裁判に出て明らかになる、これは裁判の、取扱いの問題でしょう。しかし、警察行政は裁判とはまた違うでしょう。だから、あなた方はそういうことを言うから、この間の証人のときも、山口さんも小林も二日前から行って打ち合せをして、でっち上げらしくするために警察は全力を上げて狂奔努力しておる、そう言われておるわけです。そうして、それに符牒を合せて、戸高と証言を合せてやろう。-だから、われわれは、それじゃいかぬ、やはり戸高を先にして、そうして小林はあとだということを主張したのです。この立会の安田検事は、そうではない、きょうは小林はどうしてもやれ……。こういういろいろな疑惑があるわけです。私は、発見したならば、直ちに、相当の係の警備部長でも課長でもいいから、やはりこれは当時の調書をとって、そうして真相を明らかにする。検察当局で調べられるならば、検察当局の調べとそごしないような真実を調べて、そうしてやるというのが警察行政の行き方だと思うのです。くどいようですが、この点について、長官、いかがですか。
○石井(榮)政府委員 通常の犯罪の場合には、犯罪の、容疑があると思量いたしました場合には、警察は直ちに捜査に着手すべきものであると考えるのでございますが、事警察官自体に関する場合には、従来の例におきましても、たとえば、警察官が何か人に傷害を与えた、あるいは警官が殺人罪を犯したというような場合、警察はもちろん捜査をすべきでありますが、時と場合によっては、公正な立場でこれを判断するのが適当であるということから、検察当局に捜査をお願いするという事例も幾多あるのでございます。そういう意味合いにおきまして、先ほどもお答えを申しました通り、今回の戸高君をめぐる事件は、さなきだに非常な疑惑を持たれておりますだけに、それだけに、警察が今直ちに御指摘のような点について本人について捜査するということは、やはり何か警察はいいかげんな捜査をしておるのではないかという誤解をかえって受けることにもなろうかと思いますので、公正な立場に立たれて検察当局の捜査にまかすということがむしろ適当ではなかろうか、かように考えておるような次第でございます。
○坂本委員 ただいまの問題に対する大臣の答弁は、もう一つこれから御質問しまして、一緒に願います。 お聞きしたいのは、三月二十五日の公判で、三月十四日付の証人申請によって、戸高を検察官が証人に申請したわけであります。さらに、一月二十五日に弁護人側からこの戸高を証人に申請いたしました。そうして、当日の裁判におきまして、懲役十年になっておりまするこの公訴事実の第一の、村田克巳より、氏名不詳の二十五才くらいの男を通じダイナマイトを十八本、雷管十五個、導火線十メートル等の爆発物を譲り受けた、これは被告後藤が譲り受けたというわけなんですが、この譲り受けた氏名不詳の二十五才くらいの男というのはこの市木春秋である、戸高である、こういうことがここに裁判においてはっきりいたしましたから、そういたしますと、この市木春秋は爆発物を所持して、そうして後藤に渡したということにもなるわけでありますが、爆発物を所持したということは当然うかがえるし、さらに交番が爆破されておるわけであります。従いまして、この事実について、刑事訴訟法の二百三十九条の二項に、官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」、これで裁判所はやはり公務員であるから告発されるか、どうか、裁判所が告発されなければ弁護人が告発をする、口頭でこの事実をもって戸高公徳を爆発物の罰則違反で告発をする――立会の安田検事に告発をいたしたわけであります。それで、第八条によりますると、やはり、先ほど来話がありましたように直ちに警察官吏に告知しなければならぬ、告知義務違反は五年以下の徴役になる。こういう関係もありまして、 二十五日の法廷で戸高を告発いたしたわけであります。 そこで、この点について検察庁は捜査をされたかどうか。これはぜひ捜査をしてそれを明らかにすべきだろうと思う。その点を、先ほど警察庁は、戸高は警官であるから、警察内でやると誤解を招くから、検察庁が調べるのが公平だ、こういうようことも言っておられるようですがこれは捜査をされたかどうか。さらに、今後どういう処置をとられるかということについて、お伺いしたいと思います。
○中村国務大臣 二十五日の法廷で告発したという今坂本委員のお話でございましたが、私の方で今報告を受けているところによりますと、弁護人の方で告発するという発言をされたというだけであって、従って、あとから正式の告発はなさるのではないかと思っておるようでございます。 それから、もう一つ、私ども検察当局といたしましては、できるだけ本件の事案は、いろいろ被告も抗弁、主張をいたしておりとますし、また、こうして国会においても論議のされております問題でございますから、できるだけ事件の真相を明かにいたしたいということは先般来申し上げておる通りでございます。そこで、検察当局といたしましても、小林警備部長及び戸高を証人に申請をいたしておる次第でございますが、そこで、二十五日の小林証人の取調べは延期になったようでございますが、次回には、これら関係者はことごとく、また弁護人側の申請証人も一緒に調べがあると思いますので、必要に応じて裁判所はおそらく対質尋問等を行うのではないか、こういうように考えます。従いまして、次回の公判で、事態が、今まで疑われており、あるいは被告が主張しておるというような事実が真相なりやいなやという大体の見当は出てくるだろうと思うのであります。従いまして、われわれ検察当局といたしては、そういうような機会がすでに目前にございますので、いろいろ疑惑などの風説も流れておりまする事件について事前に取調べをしたり何かすることによって、それがかりに適正な取調べをいたしましても、ややもすればその間適正でないとかあるいはその他のかえって疑惑を増すようなおそれもないとは限りませんから、今日の段階におきましては、公判廷におけるこれらの証人調べを通して現われました事実を基本として所要の検察不活動というものは行う方が妥当であろう、かような見解に立っておる次第でございます。
○坂本委員 それはもってのほかだと思うのですよ。裁判所の証言を聞いた上で真相を明らかにしてやるなんといったら、捜査機関として何の能がありますか。これは、片一方の後藤がもし冤罪であったならば、その晩雨の降るところに十数人から逮捕されて、そのまま五年数ヵ月の間ぶち込まれていたわけなんです。それの反対の人物だといわれる市木を、警察官が自分たちの仲間だから調べられぬというなら――やはり爆発物取締罰則違反の容疑は十分でしょう。これは当然別個にすみやかに取調べをし、捜査を進めるべきものだと私は思うのです。 さらに、先ほど申しましたように、二十五日の証人のときは、小林証人も二日も前から行っております。山口さんも二日も前から行っておりますよ。弁解はいろいろしておりますけれども、報道機関その他は確かに打ち合せをやっておるのだということを言っておりますよ。そういうような事案に対して、検察庁は独百の見解に立たれて、この爆発物取締罰則第一条の違反は無期まである重大犯人であるから、それが行方不明になっておったのが三月十三日に出てきましたから、これは、証言その他にかかわらず、これを逮捕して、そうして調べて、その真相を明らかにし、起訴なら起訴、不起訴なら不起訴、あるいは身柄は釈放するなら釈放する。しかしながら、一応は、裁判所の証人に申請しても、五ヵ年間も行方不明になっておるような人は、逮捕して、重大事実があるかどうか、爆発物取締罰則違反の容疑があるかどうかという点について、直ちにきょうでもすみやかに――あれは東京におりますから、地検の検事に逮捕させて調べるのが、私は検察行政上当然の措置だと思うのですが、大臣はいかがですか。
○中村国務大臣 先ほどもお話がありましたように、後藤が爆発物を譲り受けた氏名不詳の男というのは、後藤の主張によればこの戸高であると言われており、また、そう思っておる人もあるようでございますが、実際にはまだ――これが公判廷で証言を通しあるいは写真その他の証拠書類を通して明確になれば別でありますが、まだそういう段階でございますから、むしろここで手をつけまするよりは、そういうような公判の調べが目前に迫っておりまする以上は、それによって事態が究明され、そうして明確になりまして、その上で妥当な措置を講ずることが最も適当ではないか、現段階ではわれわれもさように考えておる次第でございます。
○坂本委員 これは、検察行政の警察に対する、警察官であるという身分に対するあまりな遠慮であると思う。ことに、二十五日の告発の問題について云々されましたけれども、あれは刑事訴訟法の二百四十一条ですか、それによっても、口頭でやれば検察庁は調書を作らればならぬ。いつでも弁護人は行きます。清源弁護人はいつでも出るような準備をしておるのです。だから、告発は成立しておるのです。やはり弁護人数人が全部こぞって、容疑ありとして告発している以上は、何の証言を待つまでもなく、私はこれを逮捕して調べるべきが当然だと思う。また、そうでなくても、こういう疑惑をまいているのが、報道機関の手によって三月十三日に現われましたから、――これは出てきたのではないんですよ。現われたんです。現われて、会見するのにも警察庁が関与しているじゃありませんか。こういう人間を、検察庁はやはり独自の見解で検挙して調べるべきではありませんか。労働組合なんかの場合には、何でもないことだってひっぱってぶち込むじゃありませんか。こういう重大犯人こそ、疑惑があるからこそ、検察庁はその独立の権限に立ってやるべきである。私は、やらなかったら、法務大臣は検事総長を通じて命令を下してでもこれは調べるべきが当然である、こう考えますが、御意見いかがですか。
○古屋委員 関連して……。 これは、法務大臣、村田克巳が氏名不詳の人に渡しておるのです。村田は四十八日拘留を受けて罰せられております。今度はその氏名不詳の人から預かったという菅忠愛も縛られて罰せられておるのですよ。その中間の人間なんです、これは。中間の人間なりと後藤か主張しておるのです。われわれも今そういう主張をしておるのです。渡した人間、氏名不詳の男から渡されたというまたその次の男、今までにもう二人が罰せられている。爆発物違反で縛られて、罰せられているのです。そのまん中の人間を、まだこれから証言してからというのは、法務大臣も弁護士だからわかると思うけれども、それでは納得いかぬ。これは中間の人間なんですよ。村田克巳が、写真を見て、この人間に渡したとはっきり言っているのです。ですから、それだけ疑いがあるから一応捜査をすべきじゃないか。身柄をとめるとめないは捜査官の頭の問題であります。それはどうでもかまわぬです。しかし、証言してからでなければ捜査できぬというならば、捜査機関に対して非常に疑惑を持つ。こういうことが今の御質問の要旨なんです。
○中村国務大臣 法務省といたしましては、このような問題の取扱いは刑事局でいたしておるのでありますが、刑事局の意見を聞きますと、ただ、問題は、氏名不詳の男が戸高本人なりやいなやということは、なるほど事件に関係のあります弁護人の方々や何かは、いろいろの角度から事件の真相を調査いたされておりますから、いろいろな知識をお持ちであるかもしれませんが、現段階におきましては、その氏名不詳の男が戸高であるかどうかということは、別段明確な証拠の裏づけがあるわけではありませんので、いずれ公判の取調べがあれば、そういうような事案はそうであるとするならば裏づけも出てくるだろう、こういうような見解を持っておるようでございます。従いまして、問題はこの氏名不詳の男というのが戸高であるかどうかという点にかかっておると私は考えております。
○坂本委員 市木を戸高が同一人かどうかというのも、あなた、高等裁判所の証人に出てそれで確かめるなんて不見識な検察庁ってありますか。これだけ疑惑を持っておるから、村田とか、それからこうして隠しておる写真もありますし、いろいろ主任弁護人なんかに聞きますと、重大犯人じゃないかという疑惑があるし、弁護団側から口頭で告発しておりますから、それらすべてを、公判前に検察庁は独自の見解でやはりその告発の調書を作って、そうしていろいろな証拠その他を収集して、独自の見解で調べて、そうして検察官において初めて同一人であったかなかったかということを明らかにすることこそが、私は、日本の検察権が信頼があり、権威のあるものだ、こう思うわけなんです。ですから、単にあそこの高等裁判所の検察官と弁護人との交互尋問によっても、これは警察にいたんだからうそ言うにきまっておる。ただ、うそを言っても、小林と対決させれば何かそこに心証も得られるというので、同時尋問を請求しまして、裁判長はそれを許容しておるわけなんです。しかし、その証言をとって捜査の端緒にするとか、その上に立って捜査をするとかいうことでは、これは日本の検察権の権威に関すると思うのですよ。そうして、そうでないかもわからない。しかし、嫌疑は十分ありますから、これは、福岡なり、大分なり、あるいは東京におるから東京で、即時に捜査を進めてもらいたい。私は、弁護団の一員として、告発者の一員として、これはぜひやってもらいたいと思うのですが、その点どうですか。
○中村国務大臣 そうであるかないかを調べたらどうか、こういうお話でございます。また、坂本委員も、そうでないかもわからぬ、しかし調べろ、こういうお話でございますが、そうであるということになれば、おそらく今の事件の関係者、ことに弁護団の人たちなどは御満足がいくと思うのでありますが、万一そうでないということになった場合に検察当局がよけいな疑惑を受けますよりは、目前に公判の時日も控えておりますから、その他の証拠と照らし合せて疑いなき段階に、大体そうだというようなことになってから着手する方が、むしろ公正を期するゆえんではないか、こういうような考えに立っておると思うのであります。 それから、告発をされたかされないかということにつきましては、今坂本委員のお話によりますと、もう告発はすでにしてあるのだ、こういうお話でございます。私どもそういうように聞いておりませんけれども、至急その点は刑事局を通しまして事実を調べて、告発が出ているならば、告発に対する処置は進めるようにすべきだと考えております。
○坂本委員 この告発は、権威のある公判廷で告発したのだから、安田検事ともう一名立ち会っておりました。これは直ちに口頭による告発によって調書を作ってやるべきだと思う。それを書類で出してもいいのです。手続上は出してもいいけれども、権威のある公判廷で口頭によって告発したのだから、弁護団は待っております。 そこで、これは、今おっしゃったように、もしも弁護人側の不利だ、同一人でない、また爆発物を持ってやったのではないというようなことが、あらゆる証拠によってはっきりしたならば、弁護人は何もそれを全部黒にしなければならぬという考えはない。あくまでも事件の実態、事実発見によって正しい裁判が行われる、これを期待しておるわけだから、そういう意味において、何も弁護人はけちなことを言うわけではありません。証人調べする前に調べておくことが、不覊独立である検察行政の行き方であると思うのですから、これはぜひ直ちに捜査を進めてもらいたい、私はこう思います。大臣どうです。
○中村国務大臣 私ども、かような具体的な事件につきましては、直接の担当者のような知識も持ちませんから、御意見の点につきましては、省内の担当部局と十分協議をいたしまして、研究をいたしたいと思います。
○三田村委員長 池田清志君。
○池田(清)委員 去る二十五日福岡高裁の第一号法廷におきまして、柳田裁判官が裁判長として、後藤君等に対する公判が開かれましたわけでありますが、当日の公判の日程といたしましては、証人小林君についての証言を求めるということになっておったのであります。小林証人の申請は、一月の末期に検察官側から要請せられ、弁護団側もこれを了承せられ、裁判所が決定をしまして、この日を指定して証言を求めることになり、小林君は同法廷に出廷しておったのであります。ところが、小林証人についての尋問が始まります前に、検察側の釈明を求むるという問題につきましていろいろと問答があり、とうとう小林証人の尋問をする機会なくして当日は閉廷されたのであります。このことを考えますると、検察官の権威というものがじゅうりんせられたように考えます。さらにまた、先ほど来の応答におきまして、捜査機関、検察機関におきまして不十分なる捜査があるやの問答が数時間にわたって行われておるのでありますが、もしさようでありまするならば、捜査機関、検察機関といたしましては、その職務を忠実に行うことができなかったのであるか、それともまたやらなかったのであるか等につきまして、国民は疑惑を持つものであります。こういうようなことが重なりますと、検察官の威信はいよいよ地に落ちる、こういうことを憂うるものでありますが、この点につきやして中村法務大臣はいかに所見されますか、お尋ねいたします。
○坂本委員 関連……。 われわれは三つの点で裁判の証人調べについて前に言ったわけなんです。その第一は、氏名不詳の二十四、五才くらいの人物、これは戸高が出てきたから、戸高であるかどうかという点について安田検察官に釈明を求めたわけです。釈明要求権の行使をしたわけです。それに対して検察官の釈明がだらだらしてわからぬものですから、とうとう午前中かかりました。それで、午後の第一回には、小林証人本人はきょうは取り調べるべきじゃない、という主張をした。その理由としては、小林証人に対する証人申請は一月二十九日の申請なんです。それで、調べをせぬ前に戸高というのが出て参ったから、もう小林証人の証書価値はほとんどないじゃないか、本人の戸高が出てきたからこれを先に調べる。そして、戸高の証人申請が三月十四日付になっておる。しかし、これの証人申請はいつ書かれたかというと、三、四日前に書かれたと、こうなっておる。どうしてこの申請を書かれたかというと、戸高が出そうだから書いた、こういうふうな釈明がありました。そうしますと、三月の十四日の三日前ですと三月十一日なんです。そうすると、戸高が出ているのは三月の十三日だから、もう検察庁の方には戸高がどこにおって大体証人に出そうだということがわかっておったというような想像もつくわけであります。従って、さらにこの小林氏は二日前に出てきていろいろの打ち合せもやっておるし、やはりこれは戸高を先にすべきであるが、事件の本質上、やはり小林氏は一緒にして、そうして同時尋問ということに願いたい、こういう要求を弁護人がしたわけなんです。そうして第三に告発をやったわけなんです。それで時間が三時過ぎになったわけでありまして、その告発の前に、裁判長は、同時尋問をするというのを合議のため退席しまして、二十分ぐらい合議をいたしまして、小林証人はきょうは調べない、次の機会に戸高と同日に調べる、こういう決定をいたしたわけですから、これはもう、池田さんも弁護士ですし、そういう法廷上の関係でやっているわけですから、ちっともそれによって――それは小林氏は忙しいからと言いましたよ。忙しいといって、二日前に来ておるじゃないか、そうしてまた、来なければならない、また来るのは当りまえじゃないか、あなたたちの行為によって後藤なんかは五年何ヵ月もぶち込まれておるじゃないか、そういうことを言わずに堂々と証人に出てきなさい、私はそう言ったわけです。これが私が弁護人として立ち会った当日の裁判の進行の事実なんです。
○三田村委員長 法務大臣に申し上げますが、答弁される前に委員長からも申し上げたいことがあります。ただいま池田委員の発言にありましたように、当委員会において本案件の調査を進めました際、去る二十五日に福岡高裁で本件に関する公判が開かれることは了承しておりましたので、従って、委員会の発言中あるいは答弁の中で、二十五日の公判においてある程度事態の真相が明らかになることを期待してきたのであります。ところが、どのような事情で証人尋問が行われなかったか、この点は当委員会としては関与するところではありませんが、新聞の報道によりますと、何か本委員会の調査と関連して、衆議院の法務委員会でも本事件は調査が進められておる、かくかくの答弁もある、かくかくの発言もある、そういう当委員会の審査と関連して、あの公判廷における発言ですか、あるいは論議でありますか、弁論でありますか、申請でありますか、行われたように新聞は報道しておるのであります。これは、国会の権威として、また委員会の調査の進行にかんがみまして、相当重要な事態じゃないかということが考えられますので、ただいまの池田委員の御発言に関連し、法務省当局におかれましては、十分その点の事情を御調査の上、次回の委員会で明らかに御報告を願いたいと思います。 本会議の関係上暫時休憩いたします。 午後二時五十五分休憩 ――――◇――――― 午後四時四十三分開議
○三田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 法務行政及び人権擁護に関し調査を続けます。 発言の通告がありますので、これを許します。山田長司君。
○山田委員 私がこれから伺おうとしておりますヤマイモ事件というのは、栃木県の塩谷郡氏家警察署に起った、どういう角度から見ても人権じゅうりんとしか思われないような事件でありますが、この事件について伺いたいと思うのです。 かりに加藤泰一なる者がヤマイモを盗んだとしても、その金額は三十四、五円の金額に上るほどの事件で、これが嫌疑の金額です。それから、苛酷な取調べを受けて一度はこれを容認したものの、ついにはネコいらずを飲んで、加藤及び土田という両刑事がそのそばで最期を見届けたという、実にけしからぬ事件なんでありますが、この事件の裏には、明らかに警察の検挙の点数かせぎというようなものが伺われる節がたくさんあるわけです。こういう点について伺いたいわけなんです。 まず第一に伺いたい点は、加藤泰一がヤマイモを取ったという根拠はどこにあったのか、これを伺いたいと思うのです。
○中川(董)政府委員 ただいま御指摘の栃木県氏家警察署におきます事件につきましては、当方に報告がありますので、報告ばかりでなしに、本件問題につきましては、新聞紙等にも掲載されましたので、栃木県警察本部をして厳重に調査せしめておりますので、その状況に基きましてお答えいたしたいと思います。 確かに被害者の方から被害届があったことも事実でございます。氏家警察署におきましては被害届に基きまして捜査を遂げておったのでございますが、初めはいろいろ聞き込み等もありまして、聞き込み等に基きまして本人を任意に――これは強制処分は一切やっておりません。すべて任意事件でやっておるわけでありますが、軽微な関係、その他証拠隠滅等の関係が考えられなかった関係だろうと思うのでありますが、任意の供述が最初にありましたことと、それに関連して、一応あの段階におきましては、目撃者その証言も証拠になる、こう考えられた点もあろうかと思います。目撃者の証言そのものにつきましては、私どもの調査の結果においては、本人が窃盗したということの直接の証拠ということは言いがたい、こうわれわれ思うのでございますが、本人の供述があったことと、ヤマイモを買い受けた方の供述があることと、それから、その供述の間に若干そういうことが疑われるような節があったこと等に基きまして、任意捜査を遂げまして、検察庁に送致いたしたのでございますが、大体、この種の事件でございますので、被害者の届出等もありましたので、捜査に着手することは相当と思うのでありますが、大体、われわれ通常の常識によりますと、起訴猶予になるであろう事件と思われるのであります。そういった関係等もありまして、ずっと厳重な証拠調べ等をきちっとやっていなかったこと等は、確かに事実であります。そういった点、及び捜査をいたしました検察庁との連絡状況からいたしましても、大体そう重大な犯罪というふうに考えていなかったような点等もございまして、証拠の点等につきましては、本人の供述が中心でございまして、それ以外に若干犯罪を疑うに足る資料が――直接的であるかどうかという点においては、本件被疑者が死亡しておりますので、また捜査しても意味がないかと思いますが、そういった点につきましてはさらに捜査しなければわからぬ点もあろうかと思いますけれども、本人の自由な供述及び関係者の供述等から見ても、大体こうじゃなかろうかという推測を当時しておったことは事実でございます。
○山田委員 刑事部長は被害者の届が出たと言っておるが、実は私は現地に調べに行って被害者の永井金六という人にも会っております。永井金六氏の言によりますと、全然自分は届などする意思はなかった、それを、警察の人に被害届を出してくれと言われたので、自分は被害届を出した、こう本人ははっきり言ってるんです。第一、当局は目撃したと言っておるが、目撃者は一体、だれが目撃したのか。おそらくその報告も来てると思いますが、目撃者はだれだったですか。
○中川(董)政府委員 最初の被害届の点でございますが、所轄の駐在の巡査が、巡回連絡と申しまして、各戸にいろいろの事情を聞いて、犯罪の予防を含めて、回るのでございますが、その機会に、被害者の方から、その当時は口頭をもちまして、自分は二貫目ばかり盗まれた、こういう意味の申し出がありましたので、それで、その翌日、そういう申し出は文書にしていただいた方がはっきりするから、こういう点は申したようでございます。その点はそういうふうな格好になっておるのであります。 それから、目撃者の点でございますが、先ほども触れたのでございますが、福田さんからの目撃の話がありまして、その関係等について目撃者の調書をとったのでございます。福田ツネさんでございますが、福田ツネさんの供述書をとったのでございますが、その福田ツネさんの供述に基く事項は、今日の調査では、被害者の自分が耕している畑から取ったということの直接の証拠ではない、こう考えられるのであります。別言すれば、被害者の所有にかかる土地ではございますが、自己の栽培しないイモでございますので、これが窃盗非の成否に直接的な関係はない、こういう結論が出てる調書でございますけれども、その意味の調書が福田ツネさんの供述調書でございます。
○山田委員 お話をする都合がありますので、略図を書いて参ったのですが、ただいまの刑事部長のお話よりますと、福田ツネさんが目撃者だと言っておりますが、略図によって御説明申し上げますと、今言われる福田ツネさんはここにおるんです。それで、ヤマイモを盗まれたというのは、東南方約二百メートルのところのものが盗まれたと言っているのです。それで、福田ツネさんはサツマ畑でサツマのつるを返しておった。それで、西の方に、ここに松の木があり、ここに竹のササがあるのですが、ここのところに、二十間くらい離れたところに加藤泰一なる者がヤマイモを掘っておった。私の国ではヤマイモとジネンジョと区別をつけているのですが、ジネンジョとは、大体自然に野原に生育したものをジネンジョといい、同じ種であっても人工を加えたものである場合にはこれをヤマイモと称しております。大体ヤマイモなるものを今度の事件で盗まれたと言っておられるようでありますけれども、盗まれたと言われるヤマイモは、このかきねの――しかもこの面積全体は国有地ですよ。河川敷地です。その河川敷地のここに永井という人が早く占有をいたしまして、ここの写真にありますように、非常に簡単なかきねがあるわけですが、このかきねの中に自然発生したものです。手を加えられたヤマイモじゃありません。われわれはこれをジネンジョと称しているのです。もう一つは、この南方に、桃畑を隔てて十五間くらいの間があるのですが、ヒノキの木のそばにあったのと、それから、看視員のうちの前の小さな松の木のそばに二本あったのです。一体、被害届に二貫目とは、どうしてそんな目方が警察当局に出たのです。野生にはえていて、それの目方が二貫目なんということが数字的に出るのはおかしいじゃないですか。警察当局はこの根拠をどこから出して二貫目と言っているのですか。
○中川(董)政府委員 山田委員の御指摘のように、私どももいろいろ、こういった問題等も起りまして、栃木県警察本部をして厳重に調べさせた結果、福田ツネさんの供述があったことは半文でございましたが、ただいま御説明のありましたごとく、自己の栽培するイモでなくして、野生といいますか、窃盗罪の対象になることができないであろうと思われるイモが供述調査の内容である、こういうふうに考えられる点は、私の方の調書と同様であります。その点は山田委員の御指摘の点と私の調査とは結果が一致いたします。 それから、最初の被害届の点につきまして、私が受けております報告によりますと、被害者の方が、最初巡回連絡に行ったときに、自分はイモを盗まれた、こういうようなお話であります。その分量は大体二貫目であったというふうに聞いておる、こういう報告を受けたのでございますが、この点、今お話もございますので、さらに調査いたしたいと思います。
○山田委員 第一、地中にあったものを最初から二貫目盗んだ盗んだといって本人を調べているというのです。今の報告書も二貫目々々々と言っている。一体地中にあったものが二貫目であるのか、かりに盗まれたにしても、二貫目であるかあるいは一貫目であるか、百匁であったのか、わからぬはずです。第一、私は現場に行ってみて驚いたのですが、人にはなくて七癖という癖のたとえがありますが、加藤泰一なる者にはヤマイモを掘った穴に癖があるというのです。これは実は妙なことだと思ったのですが、やはりこういうことはあり得ることだ。たとえば、和裁で針の運び方によって、この人の縫ったのはどこだとか、あるいは、タイプライターの打ち方で、活字のどこに力を入れているとか、あるいは、ミシンの縫い方によって、どこをこの人は縫ったのか知らぬが、やはり見る人が見れば、だれが縫ったかということはミシンの先生によってはわかる。それと同じように、加藤泰一が掘ったヤマイモの穴には一つの癖があるというのです。子供のときからこの人と親しかった人に私は会ってきたのですが、広井正というやはり五十三歳の同じ年の人ですが、泰ちゃんが掘った穴は私が見ればわかると言うのです。妙なことだと思って、私は一緒についていって、どうしてわかるのかと、言ったら、あの人は貧乏しているのでヤマイモを掘る道具を持っていないと言うのです。それで、ヤマイモを掘る場合は、立っているヤマイモの周囲を掘る道具で掘り下げていって、きれいに抜くそうです。ところが、この人はそのすきを持っていないわけです。それがために、ずっと掘り下げていくのに、こっちの距離を長く掘っていって、そうしてヤマイモを抜くそうですが、その人と一緒に私たちがついていって見たところによりますと、この三カ所は間違いなく加藤泰一さんが掘っているけれども、向うの四カ所は、これは太鼓判を押してもいいほど加藤泰一が掘っていないと、言うのです。このことについて民家警察に抗議を申し込んだのですが、氏家警察はこの現場を見ておりません。それから、栃木県警察本部もこの現場を見ていないのです。ヤマイモの取られた場所を見ておらない。どんなつるであったのか、つるは枯れていたにしても、何かの枯茎は残っております。私は現場へ行ってみて、なるほど、十一月らしい、フジのつるの粘れたところも、あるいは雑木の枯れたところも見てきておりますけれども、片方の場合はその片鱗がない。ヤマイモを盗まれたといっても、大体ヤマイモの目方自体がどれくらいの小さなものであったのか、穴の状態から見たって、二貫目なんということは想像もつかないことですよ。それを、警察は、二貫目盗んだ、二貫目盗んだ……。それで、加藤泰一という人が死にぎわに、ずいぶん警察というところはひどいところだ―私は、警察の威信のためにも、ただ弁護するだけではなくて、もっと真剣に取り調べていただきたいということを申し上げるわけなのですが、現場を全然見ていないということ、そういうことでこの犯人をほんとうにでっち上げているということ、それから、その取調べの衝に当った刑事は、お前盗んだと言わなければ帰さないぞ、家族が七人、奥さんで八人が干ぼしになってしまうぞ、だから、盗んだと言いなさい、盗んだと言ったらすぐ帰す、こう言ったので、本人は、では取ったということにしてすぐ帰してくれと言って、取ったということにして、それで指紋を取られた。指紋を取るときでも、この貧乏やろう、ずいぶんお前の手は太いな、貧乏やろうと言いながら手をはたいた、実に警察というところはひどいところだと彼は嘆いているのですけれども、とにかく、そういうわけで、本人は取ったということを自白した。しかし、それから検察庁へ呼ばれて行ったわけですが、帰ってきてから言うのに、さすがに検事はいい人だ、検事は、取らないなら取らないと言いなさいと言って、検事は全くよく調べてくれたと言って、本人は区検の検事の取調べについては帰ってきてもほんとうに快く了解している形なのです。一体、どんな事件にしても、やはり、犯人として取り扱う以上は、警察当局でも、現場の状態くらい見ずにこれを犯人にてしまうということについては、これは許せないことだと私は思うのです。そういう点で、警察で取り調べている最中でも、本人は、目撃者がいるのですからそれを調べて下さいと何べんも言っているのです。本人がそれだけ言っているのにかかわらず――目撃者のうちへ行って、ヤマイモを掘っているのを見しまたかということを聞いたらば、この福田さんは、持っていくのを見ました、こう言っただけだというじゃありませんか。私は福田さんにも会ってきていますよ。福田さんにも会ってきていますけれども、ヤマイモを持っていくのを見たかと言ったら、見たと言うただけです。それで、掘って帰るコースをここへちょっと書いておきましたけれども、ここで本人は掘って、こういうコースで歩いて、ここでイモのつるを返している本人の横を通って、こう帰っているのです。本人は、ここをこういうふうに通っていくのを見ましたと言っている。一体、どうして警察当局は、福田さんの見たと言ったということくらいの単純なことでこれを目撃者にしたのですか。
○中川(董)政府委員 ただいま申しましたように、福田ツネさんの供述に基く調書が本件窃盗犯事件の直接の証拠でないというのがわれわれの調査の結果でございます。それで、確かに、おっしゃる通り、福田さんから被疑者がヤマイモを麻袋に入れて持って帰ったという供述があったことは事実ですけれども、福田さんが言われたのは、天然栽培と申しますか、人工を加えない、被害者の畑のイモでなしに、別の土地のイモであるということは、私の方の調査で判明いたしておるのであります。それで、仰せのように、私ども全国の警察をいろいろ教養するに当りましては、被疑事件をやるについてはいろいろな角度から調査しなければならぬ、ことに現場の実況を見聞することは重要なことである、それで、被疑事件が起りました場合におきましては、現場の実況見聞を十分にしろ、こういう点は常に教養の重要科目に入れておるわけであります。私が本件の調査を通じまして感じたことは、現場の実況見聞がまことにずさんであった、福田ツネさんの供述と本件被疑事件とは直接の関係はない、こう思われる点については、調査の結果そういうふうに理解いたしておるのであります。 それから、第二点の、本件被疑事件について、取調べ官が被疑者の方を脅迫して供述させたかどうかという点につきましても、厳重取り調べさせたわけであります。と申しますのは、私の部内に監察官という組織がございまして、栃木県の監察官によりまして現場の関係者についてよく事情を調査させた。当時、取調べに当りましたのは巡査部長でありますが、午前中に取調べが行われておりまして、午前九時二十分にお呼びいたしまして、十一時三十分に加藤さんはそこから帰られておるわけであります。午前中は任意で調べておる。それから、正直に申しまして、重大な犯罪でないものですから、特別の調べ室でなしに、事務室の一角で事情を聞いているという実情であったわけです。そうして、本人の取調べに当りました巡査部長は、自分がだんだん調べているうちに、十分間ほどしたら、被疑者の方が、畑から――これは二貫目と言っておりませんで、ごく少量でございますが、言葉で申しますと、一握りほどの太さの長さ一尺くらいのものを五、六本自分は取った、こういうことを取調べを開始いたしましてから十分前後において供述した、こういうことを言っておるわけであります。ただし、われわれが監察官をして調査せしめるにつきましては、取調べ警察官本人が言うことだけをもっては当初の目的は達成できませんし、また、別室の調べ室でなくて普通の事務室の一角で調べられたことでありますので、そこに事務を整理する職員が二人ほどおったわけです。その取調べを目撃しておったと認められる人間について監察官が取り調べたのでありますが、その職員の供述によりますと、大きい声は全然しなかった、小さい声だからほとんど聞えなかったが、取調べについて困難を来たしておるような状態でなかった、比較的小さい声で調べが行われておったけれども、割にするすると事が運んでおったようである、こういう状況が監察官の調べでわかったわけであります。他面、本件のような事件につきましては、強制処分すべき性質のものではありませんから、強制処分もしておりませんし、検察官の方に確かに送致しておるのでありますが、この送致事件も、厳重処分相なりたしということは書いてなくて、これは相当処分相なりたしということでありますし、その後の検察官との連絡におきましても、大体検察官の御意向等もそうであったと思いますが、いろいろ話し合いをして、起訴猶予になるというような話し合いもしておるような、状況でございます。その後、被疑者に対する検察官の調べに際して、最初の警察官の調べは否認せられておりますので、検察官から、本人は否認しておるようであるからもう一回警察の方で当ってくれという話がありまして、最初調べた警察官と違う、――最初は巡査部長がやりましたが、今度は警部補が当りまして、本人が検察官に否認したのは、こういう本件で刑務所に行ったり罰金などを食うと村じゅうに顔向けならぬ、まことに困ったことだ、そういう意味合いで否認したのだということを警部補に供述しておるのでございます。それで、警部補は、そのときに、こういう事件だから刑務所に行くこともなし、検察官のところで真実をお話しになったらいいのじゃないか、そう心配しなくてもいいという趣きを話しておりますので、そういうような全体の情勢から見まして、本事件について、拷問と申しますか、取調べに当りまして強制的なことはなかったと認められるのでございますが、先ほども申しましたごとく、現場の実況見聞が行われておらないし、行われたとしてもたいへん、ずざんな行われ方であったということは、確かに捜査の方式としては適当でなかったと私は思っておるのでございます。
○山田委員 警察当局がとった処置について、調べでは、本人が取ったと言っているけれども、本人の言う取ったというのは、全く自然のジネンジョを取ったという意味です。あくまで永井何がしの畑の一角にあったものを取ったという意味では本人は言っていないのです。調書にどういうふうに出ておるかわからぬけれども、そうは言っていないのです。 それから、もう一つ問題なのは、被害届が永井金六から出ているというけれども、被害届が出たのは一月の十五、六日です。ところが、本人を引っぱっているのは一月の十日です。被害届が出る前に引っぱっている。何で、被害届を出してないものを、一般の国民を無理に警察に呼び出したのか。それで、調べているうちに被害届をあとで出しておる。これはどういうわけでそんな間違いがあるのですか。
○中川(董)政府委員 被害届が出ましたのと取調べの関係が前後しておるようなお話でございますが、私どもの調査によりますと、任意に事情を聞きましたのは、本年の一月十日に被疑者加藤泰一の任意出頭を求め、当時は鈴木という巡査部長が取り調べた、こういうことに相なっております。それから被害の関係は、本人にあらずして、昨年の十一月二十日に駐在の巡査が巡回連絡で部内を回っておりましたみぎり、口頭をもってありまして、その翌日その巡査が被害届を受理しておる、こういう状況になっておるのであります。
○山田委員 私は永井金六という人に会っておるのですよ。それで、届を出したのが、日がはっきりしていないが一月の十六、七日であるということを本人は言っておるんですよ。それを出す意思はなかったけれども、警察で出せ出せと言うので出したと言っておるんですよ。ですから、あなたがどういうふうに言っても、被害届と本人を呼んだのとでは、その間に私は違いがあると思います。
○中川(董)政府委員 よく山田委員の御調査の結果を尊重して、さらにその点はよく調べたいと思います。
○山田委員 そこで、ちょっと大臣に伺うのですが、かりに加藤泰一なる者がヤマイモを盗んだとしても、これは一応国の河川敷地の中にそれだけの面積を持って耕しておるのです。これは税金を納めておる場所ではありません。ただ、まん中に桃の木が幾らか植えてありまして、桃の栽培をこの永井という人がやっておるわけでありますが、こんな僅少なもののために取ったという証拠は今のところないんですよ。かりに取ったとしても、そういう僅少なもののために警察で呼び出し、それからさらに区検で呼び出し、区検で呼び出しただけでなく、また警察に書類が戻ってきて、警察でまた調べて、お前検察庁で取らないと言ったけれども、あくまで取らないのかと言ったら、また取ったと言った。今度はほんとうに帰さぬぞと言ったら、また取ったと言った。それで、二月二十五日に同じように呼び出された時刻に、本人は自分の菩提寺に行って、こんな嫌疑を受けて、自分は子供七人持って、家族九人で生活していたが、自分がどろぼうの嫌疑でもし引っぱられるようなことになって公けになった場合には、そうでなくても今生活に困っておるのに、自分がこれでもしつかまりでもしてぶち込まれるようなことになったら、一体子供はどうなるのだろうと考えたときに、本人としては、いても立ってもいられなくなってしまった。結局、寺の庭でネコいらずを入れた青まんじゅうを食べて、それで、道々、知己その他に、自分は決してものを取らなかったのだ、しかし警察でとうとう自分は黒だと言われちゃった、しかし、長いつき合いなのだから、おれは取らなかったのだということだけは知ってくれと言って、幾人かの友だちに話して、そうして、自分の家に行って死ぬときに、そのときは警察もわかったのでしょう、警察官二名立ち会って、医者も立ち会って死んでいったわけです。この死ぬまぎわも、おれはほんとうに取らなかったぞと、警察の人の顔をにらみながら、今おれはどろぼうにされて死んでいくのだけれども、死に切れないと言って、絶叫して倒れていったという。一体、調べている期間中に、取ったのか取らないのかくらいはわからないのですか。五十三才の生涯、その人は、その部落の六十四軒の部落の人からものを取ったといううわさ一つ立ったこともなかったという。それなのに、とうとうヤマイモを盗んだことにされて倒れていった。一体、その調べている人たちにもこれがわからなかったのかと私は思うのですが、一体、こういう事件でも、こんな微罪な事件でも警察は書類を検察庁に回し、検察庁はさらに本人を引っぱり、しかもこれが証拠がはっきりしておるのならいいですけれども、はっきりもしていないのに引っぱりて、本人を死に至らしめたということについては、私は警察当局に重大な責任があると思うのです。かりに取ったとした場合におけるこういう微罪な問題について、大臣はどう考えるか。こういうことについて、何か聞くところによると次官通牒というのが出ているという話を聞いているが、次官通牒の内容等がもし言えるなら、明らかにしてほしいのです。
○中村国務大臣 事件の取扱いに関する次官通牒は、あるいは従来もいろいろなケースについて出ておるかもしれませんが、本件に直接該当するような次官通牒というものが出ておるか、まだ調査しませんとわかりませんが、今のお話のようだとしますと、何か検察庁に書類送検をします前の警察の調べとしてはどうも粗漏の点が多かったように私どもも感ずるのであります。微罪であっても、犯罪はいろいろな手段によって予防をしていくのが必要でございますから、たとい微罪不検挙にする場合でございましても、起訴猶予にする場合でありましても、一応犯罪があればそれを捜査して書類送検するということは警察の任務かと思いますが、少くとも第一線の捜査機関である警察として、書類送検をいたしますのには、今日の訴訟法の建前から言いましても、本人の自白だけで作ったという点は、どうも手抜かりがあったと思うのです。やはり現地の調査をいたしまして、本人の供述があったにしても、供述と符号するかどうかというような点を十分に確かめてから検察庁に書類送検をするのが妥当ではなかったかと思います。 いずれにいたしましても、かようなことのために一命を失われたことは、まことにお気の毒でございまして、こういう事案については、今後、検察当局、警察当局といたしましても、十分深く注意を払わなければならない事柄である、かように存じます。
○細田委員 関連……。 今山田委員の御調査の発表を聞きますと、本件被疑者の加藤泰一が掘ったと称するところは国有地、川床になっております。賃貸契約もきめないでその土地を作っておる。しかもそこへはえたのは自然にはえたもの、国有地に自然にはえてしまった。また事実上の占有は永井某がしておるかもしれません。が、こういう場合に被害者はだれになるのでしょうか。永井某が被害届を出しておるというんだが、果して被害者でありましょうか。この点、私はこういうことがわからないので、一つお教えを願いたいのです。刑事部長でも刑事局長でもいいのですが、やはり被害者があって、そして取調べの対象になる事案でしょうが、その点、根本的な問題ですから、伺いたい。
○中川(董)政府委員 本件事件について申せば、そういった敷地に天然自然にはえたヤマイモと、被害者永井さんの栽培していた山イモと、両方あるわけです。私の考え方としては、天然自然にはえておるヤマイモについては窃盗罪の対象になるものではない、こう解釈いたしたいと思うのですが、永井さんが自分の耕作に基いて栽培なさっておるヤマイモにつきましては、ヤマイモの性質が違いますので、その際には窃盗罪の成立ありと解釈するのが正しいと考えます。
○細田委員 そこで、永井某は、このジネンジョは、いわゆるヤマイモは、自分で栽培したものなりという被害届になっておりますか。 〔三田村委員長退席、池田(清)委員長代理着席〕
○中川(董)政府委員 被害の理解は、自己が畑で栽培したものを、取られた、こういうふうに警察では聞いておるわけです。先ほども申したのですが、目撃者の供述になったのは、その栽培したイモにあらずして天然自然のイモであった、この点については証拠として的確な証拠ではない、こういう点は私どもの調査では明らかになっております。
○山田委員 先ほど申し上げたように、このヤマイモは、警察でも作ったヤマイモのように調書ができて区検に送られている。ところが、永井さんの畑にあるというヤマイモ自体が、畑にあるイモじゃないのです。現場の掘った穴を私は見てきておりますが、全然人工を加えて作ったイモではありません。それを、社会通念上、畑のイモというから、作ったイモのような印象を受けているのです。永井さんの場合は、それは畑に近いところにありますよ。しかし、全然畑に農民が栽培したイモじゃない。ここにやはり調書上における非常な相違があると思う。それで、加藤泰一という人は、畑のイモを盗んだのじゃないかと言われたけれども、そんなことは覚えがないから、断じて盗んだと言わぬわけだ。ところが、盗んだと言わなければお前は帰さないぞと言うのですから、家族八人のことを考えますと、取ったと言わざるを得ないわけですよ。ですから、警察で本人は、イモ畑におられた福田さんに見てもらえばわかると何べんも言っておるにもかかわらず、福田さんのところに行きもしなければ、よく調べもしない。そのイモを、取った人を見たかといえば、福田さんは、イモを掘って袋に入れてしょって行ったのを見たと、いうだけだ。しかも、ちゃんと見通しがきく。しかも、ここには町立の住宅がありまして、巡査が三人いる。しかも、留守居のうちから離れている距離はこのくらいの距離ですし、松の木はこのくらいのところの松の木ですから、そのそばで掘っているならば注意をしなければならぬ。ですから、警察がもし現場へ行って見たらば、畑のイモなんかと書くはずがない。全然見てないのですから、畑のイモと書いてある。畑のイモと書いているから、それでは窃盗が成り立つというような印象を受けている。本人は全然畑のイモといわれる場所すらも掘ってない。本人が掘っているのはこっちですから、全然違うところです。それを警察は、行って見ないで、畑のイモを盗んだと書類に作っているから、本人として納得をしていないが、しかも、県警察部も現場に行っていない。鑑識の係官も警察までは行っておりますが、警察の机のわきで書いているという情報が入っておる。これは新聞記者が一緒について行っているからわかる。現場には県の方も行っていない。あなたは、先ほど、手落ちであると言っておるけれども、こんな手落ちの事件のために区検に書類を送っておるということは、私は日本の警察の調べの威信にかかわると思う。一体刑事部長はこのままこんな報告で、一人の人を犯罪に陥れてしまうことをほうっておいていいのですか。どうお考えですか。
○中川(董)政府委員 確かに現場関係について精密な調査をすべきであるということは先生御指摘の通りであります。われわれといたしましても、教養については根本的にはそういうように重点的にかねがねやっておるつもりでありますが、今後も大いに努めたいと思います。 それから、事件の内容につきましては、天然のイモがあった土地と、耕した場所との問題でございます。耕した場所につきましては、天然自然の場所とは百メートルばかり違いがあるそうでございます。その関係でございますが、耕した場所について、永井さんが耕した部分があることも事実のようであります。その隣に天然自然のヤマイモがあることも事実のようでございます。それから、天然自然のものを掘ったこともあるようでございますが、畑の中のものを盗まれたかどうかということについては、そのときの理解では、また買い主がございまして、買い主については、天然自然のところではとれない性質のヤマイモを買ったというような状況等もありますので、分量等については確かにそごがあると思いますけれども、畑の中からものが盗まれておるということはあり得る状態であるのであります。ただ、お説にもありましたように、山と畑に分けた場合におきまして、畑の性格等については、ただいま山田委員から御指摘がございましたので、さらに調査を進めたいと思っております。
○山田委員 刑事部長は、ヤマイモを加藤さんから買ったという話の報告を受けたことを不審に思っておるようですが、このことについてやはり一言言っておかなければならぬと思うのです。加藤さんがヤマイモを買った個所があるのです。それは氏家の栗橋某からヤマイモを買っております。それで、そのヤマイモを買いまして、加藤さんが売っておる個所がある。それは同じ町中のとうふ屋の小田林さんという人のところへ持っていって、ほかに一名にヤマイモを売っております。これは売った個所もはっきりしておりますし、売った人の目方とこれはほとんど同じです。そういう符合する一つの事件があるために、本人がいかにも取ってきて売ったような印象を与えておるのですが、警察では、加藤さんが盗んだというきめ手となるところは一体どこにあるのですか。
○中川(董)政府委員 ただいま御指摘の買い主があったことも聞いておるのでございますか、被疑者の方がさらに他人から買い受けたという点については、さらに調査を進めたいと思います。 それから、しばしば申し上げておるのですけれども、本件事件につきましては、実況見聞の関係、それから関係人の供述の関係等について検討が足りなかったことはきわめて適当でないと思いますので、こういった点については深く反省しなければならぬと思います。 それから、本件事件については、本人の自供があったということと、その他周辺に正確にきちっと本人が被疑者でないと、たとえば裁判になった場合に言い切るような資料という点については、まだ相当整備されていない、こういう状況であったことも事実のようでございますが、そういった点等も、言いわけになって恐縮でございますが、すべて正確に固めるという点について、そういう角度の認識が足りなかったということが根本的な欠陥でございますけれども、供述に基く検討がされないままに送致されたというところに根本的な欠陥があろうと思いますので、この点については十分反省を加えなければならぬ、こう思っております。
○細田委員 関連……。 刑事局長に伺いますが、区検で書類を差し戻しておるのです。お聞きの通りきわめて簡単である。かりにあっても微細な事件だが、書類を警察に差し戻しておる。これは、一里銭事件を申し上げるまでもなく、区検で不起訴にしても適当だと思われる事件を、ことさらに警察署に差し戻しておる。警察署に差し戻せば、前は有罪の意見をつけて書類を送検しておるのだから、今度は何とか面子を立てるために若干取調べの無理も起きる余地がある。現在の区検の副検事というものはその程度のものなのですか。それを一つ伺っておきたい。
○井本政府委員 私どもの方へ来た報告では、書類を差し戻したというようなことは書いてないのです。とにかく、一応検察庁に出頭いたしまして、検事が調べて、そのときには否認したので、否認の調書を作成した。その後に警察の方からさらに自白調書を追送してきたという事実はあるようでございますが、初めに来た書類を警察の方に差し戻したということはないのではないかというように考えております。 なお、この事件は非常に軽微な事件でありまして、かりに嫌疑十分であるといたしましても、おそらくまあ起訴猶予ぐらいになる事件じゃないかと考えるのでございますが、本人か否認をしておりますれば、あるいは嫌疑がないという処分をしなければいけない事件であるかもしれませんので、さような点で多少検事が熱心に調べようとしたという形跡はあるように見えております。
○山田委員 この調べの衝に当った鈴木岩吉という巡査部長についてはとかくいろいろ問題があると見えて、加藤という同じ名字の刑事が実は草川部落で本人の加藤泰一と会っているのです。それで、あなたは取るはずはない、あくまで取ってないならば、取ってないということを言い切りなさいとよく教えたのです。教えているにもかかわらず本人がやはり鈴木岩吉という人にでっち上げられちゃっておるということをはっきり言っているのですよ。問題は私はここだと思うのです。国民を調べる衝に当っている人たちが、取ったと言わなければ帰さぬと言えば、これは何としても、家族を八人も持っていれば、取ったと言って早く帰りたくなるのが人情だと思うのです。ですから、あくまで私は鈴木という人の調べに問題があると思うのです。この点については、全然あなた方は落度がないという見解を、県警察本部もとっているし、それから氏家署の署長たちもとっているようですけれども、ここに問題があるのです。ですから、全然現場も調べないで取ったことにしちゃっているという、その点は一体どうなんですか。
○中川(董)政府委員 鈴木という巡査部長が最初に午前九時二十分に出頭を求めまして午前中に調べたという状況が、脅迫的な言辞を弄して調べたということになれば、重大な問題だと思うのですが、そうい点につきまして、われわれといたしましても、厳重に――その調べの状況に無理があったかどうかということが何というても調べの中心になりますので、その点は監察官等の調べの最も中心にいたしたところでございます。その調べの方法は、鈴木という巡査部長を直接監察官が調べましたが、調べましたところ、本人の供述によれば、十分間ぐらいしてから本人が自供した無理なことは言っていない、ことに、しゃべらなければ帰さないなんということは全然言ってない、こう鈴木巡査部長は言うのでございます。ただし、われわれは、その言い分だけをうのみにするわけにも参りませんので、その状況はその通りであったかどうかということをさらに調べる必要等もございますので、そこに居合せた関係職員等についていろいろ調べましたところ、関係職員は二人ほどおったわけでございますが、その職員の供述によれば、大きな声は全然出なかった、それから、そこにもんちゃく的なことが起らなかった、こういうような供述があるのでございます。さらに、強制処分等も行なっておりませんし、後ほど土田という警部補が当った場合においても、重大なことにならぬのじゃないか、こういうようなことを言っている関係等もございまして、そういう状況等から勘案いたしまして、取調べの過程そのものに脅迫的なことは認められない、こう考えざるを得ないのでございますが、さらに今後いろいろ調査を続けまして、そういう脅迫的なことが発見できまするならば厳重に処置をいたしたいと思うのでございますが、現在、何と申しましてもその点が最もキイ・ポイントでございますので、厳重に調べた結果が、以上申した通りでございます。
○山田委員 法務大臣がほかに所要があるようですから、一応法務大臣に先に伺います。 警察に、警察後援会とかあるいは防犯協会とか警察協会とかいういろいろな自治体等から寄付を集める団体がありますが、私は、この家族の緊急の事態を一応大臣に御考慮願いたいと思って申し上げるわけですが、今働き手がいたってなかなか困っておるときに、この地図の片すみに写真を張ってありますけれども、家族が八人いるわけです。おやじがいたときでも、貧乏しておるために、一日のうち二食くらいしか食事をしなかったというのです。貧乏しておるからこそものを取ったと人に言われたんだろうけれども、食わずにいても人のものを取らぬぞと言ったというのです。だから、その家族たちが、今非常に困っている状態に置かれているので、実は、警察の司法主任及び次席に会ったときにも、何かこの家族について考慮を払ってもらえないか、たとえば警察から町の方面委員に話し、あるいは町かのら保護方法でもないのか、こういうことの話も実はしてきておるのですが、それも今日に至って講じていないそうです。こういう点、緊急に警察後援会並びに防犯協会とかあるいは人権擁護委員というふうな形のところへ何らかの手を講じて、この家族の救済はできないものかと思うのですが、大臣、どうですか。
○中村国務大臣 もちろん、お話の通りであるといたしますれば、生活保護に該当する家庭のように考えるのであります。そうであるとするならば、警察としても、困窮者に対してできるだけ生活の安定を得るような協力をすることは道義上責任があると思いますので、警察が世話をするか、あるいは他の有力者が口をきくか、あるいは民生委員等が自発的にお骨折りをいただくかいたしまして、そういう困窮しておる家庭の状況が事実であるとするならば、生活保護法に基く生活保護の処置をすみやかにとるように周囲が努力をいたすべきである、かように考えます。
○山田委員 これは一つすみやかに当局からも助言を願いたいと思います。もう一つ伺いたいことは、人権擁護委員というものが、これだけの事件のときに一つも動いている形跡がありません。一体、人権擁護の委員というものは各地方の裁判所から任命されておるようですけれども、どんな規則に従って裁判所から任命を受けておるものですか。
○中村国務大臣 各地方裁判所及び地方検察庁の管内ごとに、御承知の通り法務局という地方庁の組織が法務省関係としてございます。この法務局の中に人権擁護課という課がございまして、これに関連をして人権擁護委員というものが設けられておるわけでございます。従いまして、現地の人権擁護委員会といたしましては、そういうような事件を聞き込み、あるいは訴えがあれば、直ちに人権擁護のための活動をすべきであると思います。が、この事件につきまして、私ども昨日承わりましたが、そういうような人権擁護関係の動きがどうなっておるかについては、十分調弁いたしまして、適当な機会にお答えするようにいたしたいと思います。
○細田委員 大臣が御退席になるそうですから、伺って、またあとに刑事部長にも伺いたいのだが、途中の捜査には遺憾の点があったとおっしゃるのだが、遺憾の点がある点は御反省になっているからこれはいいとして、スタートそれ自身が、さっきも言ったように、ジネンジョであるというので、被害者と称するものはないのです。だからスタートそれ自身が間違っておる。従って、副検事というものがしっかりしておれば、これはそれで簡単に不起訴処分にして、何も自白調書の追送なんか受けなくて片づいておった。問題は副検事制度です。このごろ、あなたの方の管轄と言っては失礼ですが、法務省、検察庁では簡易裁判所とか副検をたくさんこしらえて、そして簡判の判事及び副検事を乱造しておるのですね。これに私は問題があると思う。従来の検事なんかであったならば、おそらくこういう間違いは起きなくて済んだのじゃないか。要するに、警察の意見を聞かなくちゃ、不起訴なんかできないような副検事であるとするならば、――そうでなかったかもしれないけれども、これは検事制度なんかやめた方がいい。警察に起訴はまかしておいた方がいい。さらに、警察は、シカを追う猟師山を見ざるたとえもあり、もっと冷静に第三者的観点に立って処理してこそ検察官の役目も勤まる。ところが、この事件を見ると、先ほど刑事局長は、書類は差し戻ししないというような――これは証拠不十分だからもう一度調べてくれくらいの電話があったとわれわれは想像するような事件なのだ。これは副検事がだらしがないからだ。ということは、副検事制度が、本検事がちゃんとおって補助者に副検事がおるならいいけれども、こういう独立した一つの官庁の長として副検事を置くということ自身が、非常に将来の検察行政の権威のために私は悲しむべきことじゃないかと思うが、大臣はこれをどういうふうにお考えになるか。
○中村国務大臣 副検事の制度が法律で設けられまして以来、副検事の事件取扱いについていろいろ十分でない点のあったことも過去にあるようでございます。法務当局といたしましては、従いまして、副検事の教養を高めるための研修等につきましてはできるだけ努力をいたして、逐次整備をはかっておる次第でございます。副検事制度が法律で設けられておりまするこの制度自体も、私どもそう悪いとは考えませんが、問題は、副検事の職務を遂行する人間の教養並びに研修の問題であると思いますので、今後そういう点については一そう努力をいたしたいと思います。 ただ、本件の場合について考えますと、副検事がこの事件の書類の送検を受けまして取調べをいたした結果、本人は事件を否認しておる。任意の供述をさせた結果否認をしておる。そこで、否認調書を、そのまま、本人の言うままの調書を作成いたしまして、私の方で調べたところによりますと、副検事は警察の方に対して、どうも君の方で送ってきた取調べの調書と自分が調べたところとは違う、事情は一体どうなっているのかということを問い合した程度のようでございます。 なお、よけいなことであるかもしれませんか、先ほど来いろいろ警察が無理な調べをしたのではないかという言葉もございました。そういうことも想像できないことはありませんが、また、一面から考えますと、加藤という人が自分のものを取ってきたのでないことは間違いないので、しろうとの場合には、よく、自分のものでないものを取ってくれば、取ったという感じを受ける場合があると私は想像できると思うのであります。そういうことから、簡単に、事実よその畑のものを取ったのでなくても、そういうような供述をあるいは警察官に対してした結果、警察官もそれを早のみ込みいたしまして、その書類を送検するようなことになったのではないかというようなことも、これは想像でございますが、でき得るのであります。いずれにいたしましても、警察官が書類を送検いたしますについては、もう少し現地の調査等をいたしまして、現在の刑事訴訟法の精神から言いましても、証拠の裏づけを十分にして送るならば送るべきものではないだろうか。そういう点については確かに疎漏が、お話のようであるとするならば考えられますが、さように私としては考えるのであります。 それから、実は所用がございまして時間をいただかなければなりませんので……。(「もう一つある」と呼ぶ者あり)先ほど、どうしてこんな事件について書類を送ったかということでございますが、これは警察の関係がお答えすべきことで、われわれの方が答えるべきではないかもしれませんが、刑事訴訟法の二百四十六条によりますと、御承知の通り、警察官が事件があるとして調査をして調書を作成した場合には、それは検察官に対して書類を送検しなければならない規定等があって、おそらく警察としてはこの書類を送検してきたものだと思うのであります。 結果が、被疑者にされました本人が自殺という実に重大な、また一族にとりましてもお気の毒なできごとになったわけでありますが、さようなことで副検事の制度がいいか悪いかの根本論については、なるほど制度はそうなっておりますから、われわれはそれを実施しておるのでありますが、御議論の余地はあるかもしれませんが、当該取扱い検事としては、格別行き過ぎや手落ちがあったものとは、目下のところわれわれには考えられない次第であります。
○山田委員 行き過ぎがあったのはわからぬというふうに言うけれども、こんな疎漏の報告というものは、やはりこれは行き過ぎがあったとしかわれわれは理解できないわけです。そういう点で、さらに私が大臣にお願いしておきたいことは、擁護局に一応さらに調査を私は要請したいのです。どうかそういう点についてはっきりお答え願いたいと思います。
○中村国務大臣 果して警察に人権侵害があったかどうかについては、御希望に従いまして、私どもとしては、法務局を通して調査をさせるようにいたしたいと思います。
○山田委員 大臣はもういいです。 刑事部長に伺いますが、二月二十七日葬式の終ったその次ぐ日、草川部落の有志を二、三人警察へ呼んでいるのです。加藤泰一がなくなった部落の人たちを二、三人呼んだのです。ところが、部落の人たちは、 二、三人なんて、それはお気の毒なことだから大勢行こうじゃないかといって、十二人警察へ行っているのです。そうしたら、警察の署長は、この事件は検察庁に移っているのだから、そう恨まないでくれ、警察を恨まないでほしい、ぜひ一つ御了解願いたいというので、厳粛なるあいさつを署長がしたそうです。何のために部落の有志を警察へ呼んで、次ぐ日から警察の不当を部落民が難詰するような気勢のあがりそうな気勢をそぐために、こんなことをしたのですか。
○中川(董)政府委員 さっき申しましたように、私は本件窃盗被疑事件取扱いの実情、検挙の関係、被疑者取調べの状況、そこを中心に一生懸命調べておりましたので、今の問題はそのものずばりでございませんので、正確に調べておりませんから、ちょっと記憶に基いて申し上げるのですけれども、私の記憶では、地元の県会議員の方々が、よく事情を村の人たちに話したらよかろう、こういうアドヴァイスもありましたし、それから、いつも警察と管内の住民の関係がなるべくお互いにわかっていることは、捜査の意味のことは別といたしまして、なるべく事情を話すことが適当だということで、そういうことを話したということを聞いたのでありますが、事の中心は事件の内容を一生懸命やっておったものですから、その点は、正確に、いつ何時やったということははっきりできないのですけれども、そういう事情があったように聞いております。
○山田委員 そうしますと、矢板の署長が部落の人たちに話した話は、全然知らぬというわけですね。
○中川(董)政府委員 もっと申しますと、県会議員の方々がおいでになりまして、村の人も十分心配しておるからよく話をしたらよかろうということでありましたので、その当時の資料に基きまして、警察署長が、部落の人たちに話をした、こういうことは聞いておりますが、それ以上の詳しい事柄は深く調べておりません。
○坂本委員 今の問題は非常に重要だと思うのです。第一は、県会議員のアドヴァイスがあったかどうかわからぬですが、十二名も呼んで了解を求める。了解を求める以上は、相当やはり警察に痛いところがあったと思う。第二の点は、矢板検察庁に事件が移っておるから署は恨まんでくれ、これが非常に問題だと思うのです。これは、見方によりましては、警察と検察庁の責任のなすり合いみたいになる。だから、この点について調べるについては、はっきりしたものを調べなければならぬのですが、もしも署長が、矢板検察庁に移っているのだから署を恨まぬでくれと言って了解を求めたとしたら、重大な問題だと思うのですが、その点どうお考えですか。
○中川(董)政府委員 ただいま申し上げましたように、関係住民の方々が大へん心配をしておられるので、よく事情を話したいからというので話したということを承知しておりますが、事の内等等については詳細承知しておりませんが、私ども考えておりますのは、警察にいたしましても検察庁にいたしましても、相互理解と協力によりまして非常に連絡を密にしておりますので、いわゆる責任のなすり合いなどはすべきものでないと思いますが、果してそういうことを言ったか、もし言ったとすればどういう趣旨で言ったかということをよく調べてみたいと思います。
○坂本委員 この署長の言葉は、これは十二人の人が行って聞いたのであるから、その通りじゃないかと思うのです。こういう軽微な事件で被疑者が自殺をするという重大な事件が起きていることに、その毒を飲んで死ぬまぎわに警察からもかけつけてきたら、おれは絶対取っていない、警察はひどいということで、悶死しておるわけです。こういうような事件が起きたのについて、もしも署長が、こういうふうに矢板検察庁に移っておるのだから署を恨まぬでくれなんて言ったら、所長は検察庁に責任をおっかぶせるということになるのですが、刑事局長は、どうお考えですか。
○井本政府委員 実は、さようなやりとりが村の方々と警察署長との間に行われたということは、きょう初めて承わりますので、私の力でも、どういう事情でそういうことを警察署長が言ったか、調べまして、その結論を出したいというふうに考えております。
○坂本委員 これは、先ほど申しましたように、十二名の部落の有志が警察に行かれて、そして聞いた言葉なんです。矢板の検察庁に移っているのだから署を恨まずにほしい、こんなことを聞いて、刑事局長は責任上どう考えるのですか。調べるのは調べていいだろうが、この言葉が出ておるのは、十二名の人の聞いた言葉ですから間違いないのです。こういうことを警察署長が言ったのに対して検察庁はどう考えるか、刑事局長はどういうお考えを持っておるか。あとで調べるで済みません。こういう事実がはっきりとここに出ておるのですから、それについての御答弁を願いたいと思います。
○井本政府委員 言葉のやりとりがいかような形でなされておるか、その間の雰囲気、前後の事情などをよく聞きませんと、署長がそう言ったということがかりにあったといたしましても、その場のいろいろな言葉のやりとりによって、いろいろな意味があると思いますので、その事情を調べませんと、ただいま明確なお答えはいたしかねます。
○坂本委員 明確な答えはいたしかねますといって、それは調べなければできぬとおっしゃって逃げればそれまでですが、すでに事実が、十二名に対して署長が言っておるのですよ。言っておるこの言葉に対して、これは検察庁が自白を強要したから自殺したのだという意味にも考えられるのですが、それでも検察庁はいいのですか。
○井本政府委員 ただいま申し上げましたように、その場の事情がどういういきさつでさような言説になったのか、その事情を聞きませんと、ただ坂本さんのお話のような、その言葉だけを取り上げて、それがいいの悪いのと言っても、結論が非常にあいまいになるかと思いますので、いかような考えを持つかという点につきましては、その当時の事情をもう一度私の方で検討いたしまして、その上でお答えいたしたいと存じます。
○坂本委員 事情を調べるというのですが、それじゃもし署長が、ここに言った通りのことを言った、これは間違いないのですが、こういうようなことがあったら、どういうふうにして刑事局長は取扱いを善処されますか。
○井本政府委員 私は、現地の警察と検察庁との間が、お話のごとくではなくて、もっと連絡協調がうまく行っていると思いますので、警察署長がさような言葉を言うはずはないというように考えておるのであります。しかしながら、お話によりますと、十二人の方方がさようなことを聞いたというのでございますから、その当時の事情を、どういうような言葉のやりとりでさような言説があったのだか、それを確かめませんと、その場のいろいろな、言葉のやりとりでいろいろな意味があると思いますので、それを確かめた上で、かくかくの結論であるということを申し上げたいと考えております。
○山田委員 大体、今までの私の質問で結論になるわけなんですが、私が当局にお願いしたいことは、一体、こういう疎漏な調査のために、日本の警察の威信というものが、これでおそらくほかの警察でもこんな調査の仕方をやっているのではないかという点が考えられてくるので、非常に威信にかかわると思うのです。そういう点で、この疎漏の調査をした当局者に対して何らかの処置が講ぜられなければ、私は日本の警察の取締りにもならぬと思うのです。そういう点で、このことが明確になってきている以上、やはり何らかの御処置を私はとらなければいかぬと思う。そういう点について、一体、こういう疎漏な調査をして書類を区検に送ったこの当の責任者に対して、当局はどうお考えになっていますか。今までの調査の中でその結論がわかると思うのですが、一体どうです。
○石井(榮)政府委員 ただいま栃木県のいわゆるヤマイモ事件につきまして山田委員より詳細実情をお聞かせいただきまして、私ども、この問題の起りましたことにつきまして、事情のいかんにかかわらず、とにかく、被疑者とせられた加藤さんの死ということに至ったことは、まことに申しわけないことで、深く責任を感じておるのでございます。 ただいまいろいろ御意見を拝聴いたしたのでございます。私どもの方におきましても、今日まで現地県警察本部から報告を徴したところは、先ほど来中川刑事部長から答弁した通りでございますが、決してこれで調査が十分徹底したものとは思っておりません。ただいまいろいろ御指摘いただきました点を十分に尊重いたしまして、さらに詳細かつ正確に続けて参りたいと思っております。従いまして、またその結果に基きまして、ただいま御指摘のように捜査の上に大きな欠陥、疎漏があったということでありますならば、それぞれの関係者の責任追及という点も考えなければならぬことは当然でありますし、同時に、警察全般の捜査のあり方ということについて、これを貴重な体験としまして、十分に反省をさせたいと思うのでございます。 私は、かねがね、捜査のあり方ということにつきまして、特にやかましく全国の都道府県本部長を通じて末端まで十分に浸透させるように及ばずながら努力を払っておるのであります。私は、昭和三十一年の一月、お互いの努力目標の最も重点的なものとして、いわゆる捜査の合理化、適正化というものを理想的な姿に持っていこうじゃないか、これを一つ何ものにも優先して大事なお互いの努力目標として今年一年やってもらいたいということを強調いたしまして、また、機会あるごとに、あらゆる機会を通じ、あるいは一通牒その他によりまして、第一線の末端に至るまで、捜査に当る省に十分反省を促し、また必要なる教養を加えるように努めて参ったのでございます。その結果は、我田引水ではございませんが、それ以前に比べますならば漸次改善向上の方向に向っておると思うのでございます。しかしながら、まだ決して理想の域に到達しておるとは申しかねるのでございまして、ただいま御指摘いただきましたような捜査不徹底、拙劣なる捜査ということによって、貴重なる人命を失うというような結果を招来する事故がいまだに起るというようなことは、まことに嘆かわしいことでございますので、そうしたことの絶無になるように、さらに今後一そう捜査の適正化、合理化ということにつきまして、私は十分第一線の末端に至るまでこれが徹底をはかりまして、警察官の一人々々がほんとうに人権の尊重を基本的理念として、科学的、合理的な適正なる捜査を遂行するよう、今後も十分に教養指導を加えて参りたい、かように存じておりますので、御了承をいただきたいと思います。
○山田委員 警察長官の懇篤なお考えを披瀝されまして、これが末端に浸透することを切に要呈してやまないのですが、最後にもう一言申し上げておきたい。 大体、この事件は、貧しい人たちを少しばかにし過ぎている傾向が、私が調査に当った最初から強く印象づけられた事件です。加齢泰一が調べを受けて帰ってきて、草川部落の岡村善四郎、亀和田安その他の諸氏に会って話していることですが、警察は私が貧乏しているために私をあくまで犯人に仕上げてしまおうとしている、私は五十三年の生涯を通してこんなにばかにされたことはいまだかつてない-、この岡村善四郎、亀和田安という二人に話をしながら、ぽろぽろ泣いたそうです。私はこの二人の人に会ったのですが、私の部落は全体が貧しいので、私の部落を称して警察では貧乏部落と言っておる、貧しいがゆえにそういう代名詞をつけられて、いつも巡視を受けておる、しかし、貧乏部落がほんとうに間違った生活をしているのか、富める者がほんとうに正しい生活をしているのか、私はあなたにこういうことを言う機会を得てほんとうにきょうは物語りができると言って、この人たち。が私たちに話してくれたのです。私は、この純朴な百姓の言葉を聞いたとき、この部落へ来て、あるときは桃を盗まれ、あるときはカキを盗まれ、ヤマイモを盗まれた話を聞いても、その部落の人から受ける印象は、決してこの部落には悪人はないという印象を強く受けて帰ってきた一人です。それで、警察の方々は、こういう封建的な地方においては、ややもしますと、しかも加藤泰一なる者は古物商であり、家族を八人かかえている非常に貧しい人なるがゆえに、そういう印象を受けたと思うのです。これから取り調べの衝に当る末端の警察官に対しても、決して、貧しい人たちが悪いことをするというような印象、それから、貧乏部落を巡視するというようなものの考え方、それから、さらに、はっきりした犯罪の根拠もないのにどろぼうやろうと言ったり、大ばかやろうと言ったり、――そういうことがあったのかと私は質問したのですが、ほんとうに言われたというのです。この部落の人たちに、帰ってきて加藤が涙ながらに言っている言葉を聞いてみると、ほんとうに言っていると思うのです。でなければ、そんなことを部落の農民が言うはずがないのです。これは、封建的な農村の場合においては、おそらく地方の警察官がそういう侮辱した言葉をはいたものと思うのです。そういう点で、日々訓育に当る皆さん方においては、どうか、末端の警察官が、いかに貧しくとも、尋問に当っては、犯人としての扱いなどは絶対にしていただきたくない、こういうことを私は最後に申し上げたいわけなんです。 この事件は、死に直面してまでも、本人は盗まなかったと言っているのです。いかなる悪人といえども、死の最後になって言う言葉は――ほんとうに取ったとすれば、毒を飲んでしかも最後までおれは白であったということを言い尽して倒れるはずはないと思うのです。そばに立ち会った刑事が二人おりましたが、この刑事の人たちはどういう印象を持って署に帰られたかわかりませんが、最後に立ち会った刑事は、本人が血をはいている前にいたのですから、この二人の報告もまんざらそうでたらめな報告はしていないと思うのです。なお、そのそばには医者も立ち会っております。しかも、本人が、口をあけて胃を洗浄しようとするときに、生きておってもどろぼう扱いをされるのだから、もし命が助かれば私は鉄道で自殺をすると言って意識を混迷にしていったそうです。私は、そういう点で、この事件を簡単な事件として見たくないのです。貧しい農村の人たちが、もし警察官が点数を上げるためにこういう犠牲にでもなったとすれば、これこそ私は取り返しのつかないことになると思うのです。どうか、そういう点で、これから先多くの貧しい人たちに会うであろう警察官の取調べに当っては、決して犯人扱いをしていただきたくないということを申し上げたいわけです。この問題については、なくなった後といえども、十分黒白をおつけ下さることを要望してやみません。
○石井(榮)政府委員 ただいまの山田委員の御意見、私は全く感銘深く拝聴いたしました。私ども、日ごろ、警察官の国民に接する態度、特に言語、動作につきましては、十分教養に努めて参っておるのでございまして、従来、とかく警察官は言語、動作が粗野である、非常識な言動があるというような非難をまま受けたことがあるのでありまして、そうしたことのなくなるようにということは、警察官のそうした面の教育、いわゆる訓育によって、警察官である前にりっぱな社会人を養成するということにつきまして、いわゆる警察教養につきましてはかなり力を入れて参っておるつもりでございますが、何分、全国数多い警察官の中には、十分にこの教養の効果が徹底してりっぱな警察官になり切るのにはまだ時間がかかるように思われるのでございます。今日まで教養には私どもかなり力を尽くして参っておりますが、今後ともさらにそうした点に力をいたしまして、ただいま御意見をいただきましたような方向に持っていきたい、かように考えております。 なお、先ほど申しました通り、本日御指摘いただきました事件の真相、またその善後措置ということにつきましては、もとより十分調査を加えまして、とるべき措置をとりたいと考えておりますので、御了承願いたいと思います。
○細田委員 ただいま石井長官から懇切な御答弁があり、また、刑事局長からも、さらに坂本君の質問に対しては調査してお答えするという点もございましたので、その点は別といたしまして、先ほど中川刑事部長の御答弁は、なお取調べが途中だというのですから、これもまたその過程かもしれませんが、先ほど山田委員でしたか坂本委員でしたか、警察官の責任をどうするかという点について、あなたは、立場上そういうふうになるかもしれませんが、警察官を何だかいやにかばって、今までの調査では捜査には疎漏はなかった、そういう御答弁でありました。疎漏はなかったんですか。疎漏がなければいいんですが、先ほども申し上げたように、被害者のない窃盗なんてありっこないんです。それをよく見ないで、自白調書をとり、検察官の連絡によってさらにまた再び自白調書をとって追送するというようなことで、スタート自身がきわめて軽率なんですね。途中強制収容なんかしなかったところで、私の聞き違いかもしれませんが、あなたは捜査に手落ちはなかったとおっしゃったが、スタート自身がいかにも軽率きわまる。純朴な農家で警察に二度も三度も呼ばれたら、その部落ではどろぼう扱いされちまいます。死をもって抗議したくやしい気持はわかるが、そこまで自白調査をとって検察庁へ追加しなければならぬというまでにするには、われわれが見てもスタートが非常に軽率きわまる。まず第一歩を調べなければならぬものを、調べなくて、私の印象では、過程に無理はなかったと言っても、スタートにきわめて無理、軽率なものがあったので、その点、私は、警察官を首にしろということを申し上げるわけではないが、どうしたってこの責任は免れないと思います。この点の御意見を一つ伺いたいと思います。
○中川(董)政府委員 調査継続中であること並びに今日までにわかっている事柄を申した点は同様でございますが、私が申しましたのは、最初被害届のありましたときは、被害者の方がみずから栽培しておられるイモが窃取された、こういう趣旨の状況から始まって捜査を開始しておりますということが一つ。捜査の途中の段階におきまして、今から考えれば、今申した窃盗被疑事件に直接証拠と認めがたいヤマイモならざる天然自然のイモの目撃者の調書等が証拠書類に加わっていること、その他証拠収集が法等について遺憾な点が多かった、こういうことを申し上げたことが一つ。ただし、この取調べの過程において被疑者を脅迫して供述さしたとか、そういう点は今のところ認められない、こういう趣旨で申したのでございますが、さらに、いろいろ本日出ました御意見ないし資料等に基きまして調査を続行いたしたいと思います。
○山田委員 私は大体もう言い尽しているのですが、まだ一つ落ちていたので、つけ加えて申し上げますが、もう一人の目撃者秋沢いちさんという人がここにいるのです。この人は、目撃したといっても、これは事件のあった当時ではなくて、一月の半ば過ぎに見ているのです。話を聞きますと、どうも様子が、加藤泰一さんは、あまり騒ぎが大きいので、本人がここへ行って見てきているらしいのです。そうして、見てきて、こう帰っていくのを、この秋沢いちさんという人が見ておるのです。これは時期的に一月の半ばごろなんです。一月半ばごろなんですけれども、そのときにやはり麻の袋を背中にかついでおったそうです。それには、この秋沢いちさんの証言によりますと、イモのようなものが入っていたけれども、音がしておったから、あるいは枯枝でも入れてかついでいったんだろう、こう言うのです。しかし、これは、イモの事件のときとは時間的に一ヵ月も後のことですから、期日は違います。しかし、このいちさんのことも目撃者のうちに氏家警察では入れております。そこにも間違いが一つあるのです。根本の間違いは、このイモは作ったイモじゃないのです。ここも、ここも、これはほんとうに自然にはえているイモです。せめて言えば、ここはこれくらいの松の木のそばにあるんですが、つるのあったあとがあるのです。これははえたものをそのまま育てたものでしょう。しかし、肥料をやっておるようなあとはありません。ここは行って見ないとわかりませんけれども、ここ自体は、全部川原のまん中ですから、砂地です。これは全部国有地ですから、早く行ってどろぼうしたやつがここを取ったんです。早く言えばどろぼうです。早く行ってなわ張り、かきねを作ったやつが国有地を占有しただけの話です。ですから、このかきねのそばにあるイモを取ったからといって、もしこの実態を知っておれば、そんなふうに問われる筋のものじゃないのです。ところが、畑に作ったヤマイモとして問題にしなければならないから、おそらく畑にしたのでしょう。書類上畑になっておりますが、畑の中じゃないのです。畑の中じゃないものが畑の中になっておるのです。しかも、本人はあくまでここで掘っておる。それも警察では全然見ていないのです。こっちの場所も見ていなければ、こっちの場所も見ていないのです。しかも、この桃林のここにある警察の建物は、ここから裏門のそばまで離れていない。そのくらいのところに警察官が二人もいながらこの現場を見ていないのですから、こんな疎漏な調査はないですよ。こんなことのために一人の人が生命を失っておるのです。私は、日本の警察の威信のためにも、こんなでたらめな書類の作り方について何らかの処置が講ぜられなければならないと思う。そうでないと、警察の威信にかかわると思うのです。そういう点で、先ほど警察庁長官は何とか方法を考えるような意味のことを言われておるから、私はこのあとの処置の仕方は見ていますよ。そういう実情なんです。ですから、ここら辺のイモを取ってきたのは、それは本人にしてみれば確かに取ってきたことは問題でしょうけれども、しかし、この加藤なる者は、こういうところのイモは、さっき申し上げましたように、この人の幼な友達の広井正という人に聞いてみれば、加藤さんは十ヵ所も二十ヵ所も掘っているんじゃないかと思う、だから、私には加藤さんの掘った穴の癖はよくわかっていると言うのです。そういう点で、警察当局に調査に疎漏がないなんということは私は言わせないつもりです。この点が、あなた方は書類に間違いがないというならば、やはりこれは現場に行って立ち会った形においてこの問題の黒白をつけなければいかぬと思うのです。一緒に行って黒白を明らかにすべきだ、威信のためにもそうすべきものだと思うのです。
○中川(董)政府委員 先ほど申しましたように、今まで調査した結果については本日はっきり申し上げておりますけれども、その後いろいろ皆さんの方からお話しいただきました事情等を総合いたしまして、さらに調査を続行いたしたいと思います。
○坂本委員 今調査をしてやるということで、結論はそれでけっこうですが、ただ、しかし、この委員会でそう答弁されて、あとがうやむやにならぬように。これはとにかく軽微な不起訴になるような犯罪で自殺をしておるという大きい人権問題ですから、ぜひ一つ慎重に正確に調べなければならぬと思うのです。この事件を見まするに捜査の開始について私は疑問があると思うのです。こういう窃盗事件なんかは、確実な被害届が出て、そうして被告調書を作ってから、相当内偵をして、そうしてこれは確かだというところになって、初めて被疑者の取調べその他をやらなければならぬ。さっきの菅生事件と逆の問題なんです。菅生事件なんかは、すぐ調べなければならぬのをなかなか調べなかったのですが、こういうのは、純真な貧乏な農民を調べるのだから、慎重にやらなければならぬ。そこで、その開始に疑問がある。これは考えようによっては警察官の点数かせぎじゃないかというふうにも考えられる。われわれが、長年弁護士をしておりまして、賭博事件なんかの事件をやるのを見ておりますと、やはり警察官ににらまれたやつがあがって、大きい賭博を毎々やっているやつはあがってこない。賭博係の警察官は、やはり幾らかあげなければならぬ。こういうことを悪く言っちゃ悪いのですが、常習をやるやつにはほどよい工合にしてやって、そして、外から入ってきたなわ張り荒らしに来たようなやつをあげて手数はある程度にかせいで、そして大きいのを見のがすというようなことも、小さい賭博事件を取り扱う上においてそういうようなこともうかがわれるということがあるのです。そういうようなふうで、これは点数かせぎにやったのじゃないかという疑問があるわけです。そうして、さっきから質問がありましたように、被害届出のないものを警官が積極的に調べ始めている。これはやはり、貧乏な村であって、警察がばかにしておるから、何か一つあれから事件をあげてやってやれというふうなことでやる。これがこの人権じゅうりんの、この貧乏農村に対する大きい問題になっているわけなんです。そういう点で、捜査の端緒の点についてもよく調査をしてもらいたい。 もう一つは、鈴木岩吉巡査部長が、取調べに当っては、このどろぼうやろう、貧乏やろうとののしって、どろぼうしたのだろう、どろぼうしたら何日でも、取ったと言うまではここへとめておくぞ、そうなったら家族の者が干ぼしになるじゃないか、これは言いかねまい。われわれ長年弁護士なんかしておりますと、大がいこういうようなことは言いよるですよ。こういうのにびっくりもしないのもおりますけれども、純真な農民はこう言われるとびっくりするわけですよ。これがやはり毒を飲むという大きい人権侵害の基本になっているわけです。こういう点があったかないかという点について十分調査をしてもらいたい。 それから、もう一つは、光明寺の境内にある加藤家の墓で、まんじゅうに毒を入れて食べて、そうして、服毒後、親しかった知人の家を一時間にわたって回って、おれは絶対にヤマイモなんか盗まぬ-、そうして、いよいよ毒を飲んでおることがわかってかけつけた警察官、医者の手当は受けぬと言ってこれを拒んで、私は絶対にどろぼうしておらぬ、死んでも警察を恨んでやる、幽霊になって出てやる、こういうふうに絶叫して死んでおる、最初は、何だ、お前はどろぼうじゃないか、言わなければお前はいつまでも帰さぬぞ、それじゃ家族が困るだろう、こう言われてぬれぎぬを着せられたというので、毒を飲んで死ぬときに、こういう悲痛な絶叫をして死んでおる。その葬式の翌日草川部落の有志十二名を集めて、署長が、加藤氏の事件は矢板区検察庁に移っているのだから、署を恨まぬようにしてほしい――、署長も気味が悪かったのでしょう。化けて出ると言われたって、科学的に考えればそんなことは何でもないことでしょうが、気持も悪かったのでしょうか、警察もこれには弱って、そうして検察庁にその責任をおっかぶせる、こういうことに筋書きがなっておるのではないか、私はこう思うのです。 こういうようなことで、この事件、この警察の取調べがうやむやになってしまうというようなことになるならば、これはとんでもない。新憲法下におけるところの人権の擁護というのは絶対になっているわけでありますから、こういう事件については、私は、ぜひ一つ、確実な公平な調査によって――、決して部下の間違った警官をかばう必要はない。一人の警官を殺しても、やはり大きい人権を守り抜くというのが警察のほんとうの任務じゃないか、私はこう思うのです。こういう見地に立たれまして、悪いものは悪い、取調べに行かなかったのは行かなかった、その他死んでいるから相当の責任も負わなければならぬでしょう。そういうのにちゅうちょすることなくこの取調べを進めていただきたい、かように私は要望いたしておきます。
○池田(清)委員 ・長代理 ほかに発言はありませんか。 それでは、本日はこの程度で散会いたします。次会は公報をもって御通知いたします。 午後六時二十八分散会