法務委員会 第11号
- 発言数
- 25 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1957/03/05
会議録
○三田村委員長 これより法務委員会を開会いたします。 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律案を議題とし、審査を進めます。 質疑を許します。坂本泰良君。
○坂本委員 先般来各方面から御質問いたしたと思いますけれども、第九条の「相当と認めるときは」の「相当」の積極的、具体的な問題ですが、この点がまだ積極的にどういう場合を相当とするのか具体的になっていないようですから、この点についてさらに御質問を申し上げたいと思います。
○村上(朝)政府委員 どういう場合に裁判所が相当と認めるかということにつきまして御説明申し上げます。前回申し上げましたように、強制執行の方を進行いたしましても、その売得金は租税の方に持っていかれてしまって、執行債権者は売得金から弁済を受けることができないような、要するに続行いたしましてもその実益がない場合は除きまして、実益がある場合におきましても、強制執行を続行することによって債権者の受ける利益と債務者の受ける不利益とを、具体的事情に照らして比較考量いたしまして、滞納処分を先行させたままでおくことが妥当でないと認められる場合をいうわけであります。具体的事情の異なる場合が非常に多いと思いますので、勢いかような抽象的な表現になっておるわけであります。よく言われます、債務者が滞納にかかる税金を納める能力があるにかかわらず債権者の債権の執行を免れるために税金を納めないで滞納処分をそのままの状態にしておくというような場合は、相当と認められる最も適切な例であろうかと思いますが、そのほかにも、債権者は早く債権の回収をしないと著しい損害を受けるに反しまして、債務者は強制執行による換価を受けましてもその損害はさほど重大でないというような場合も、相当と認められる一つの例ではないかと思うのであります。反対に、強制執行を続行いたしまして、早く換価いたしましても、債権者の受ける利益はさほど大きなものではなく、かえってそれによって債務者が企業の継続が困難になるというような著しい損害を受けるような場合は、相当とは認められないと思うのであります。
○坂本委員 ただいま御答弁がありましたように、この相当についてはいろいろな場合が考えられるわけでありますが、結局は、債権者の利益だけでもなくて債務者の利益も考慮しなければならない、従って、そういたしますと、裁判所の相当と認めるについての判断が非常に重要になる、そうして、裁判所が強制執行を続行する決定をいたしました場合には、その決定に対しては不服の申し立ても許されないわけでありますから、債権者よりも債務者の利益に影響する場合が非常に多いと思われるわけであります。この第九条によりますと、第二項に、「強制執行続行の決定をするには、あらかじめ収税官吏等の意見をきかなければならない。」、こういう規定がありますが、債務者に対しては意見を聞かねばならないというようなことの規定は何らないわけなんです。そこで、債務者が知らない間にこういう決定をされて、債務者に不測の損害をこうむらせるというようなことも想像できるわけでありますが、そういうような場合について、債務者を審訊してその事情を裁判所が聞くというような方法について、何らかの考慮を払われているかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
○村上(朝)政府委員 第九条第二項の規定による決定をいたします場合には、民事訴訟法の百二十五条の規定により、裁判所は債権者、債務者を審訊することができることになっておるわけであります。裁判所が強制執行を続行することを相当と認めるかどうかについて債務者を審訊する必要がある場合には、この規定によりまして審訊が行われるものという建前でこの第九条の規定はできておるのでございます。 なお、債務者審訊の必要があるにかかわらず、これを審訊せずにかような決定が行われるという場合についての御懸念もごもっともだと存じますので、この法律案の三十七条で、「強制執行、仮差押の執行及び競売に関する事項は、最高裁判所が定める。」ということになっておりますが、この規則の制定については、ただいまの御趣旨を最高裁判所当局に伝えまして、適当な規定を設けてもらうよう努力いたすつもりでございます。
○坂本委員 大臣にお聞きする前に、最高裁判所の強制執行による売得金の一年間の金額がどうなっているか、件数の点はわかっておりますが、その点がわからないものですから、資料をお願いしておいたのですが、この資料によりますると、これは三十二年一月分だけでございますか。
○関根最高裁判所説明員 坂本委員のお話の点でございますが、実は、この金額のことにつきましては、昨年度まで詳細なのを調査しておりません関係で、本年度から実は調査いたそうと思っておりました。それで、至急に今年度の一月分だけは全国的の調べができまして、おそらくこの一月分を十二倍、あるいは十三、四倍していただければ、一年間の統計が出てくるかと思います。それで、非常に最近のことでございますので、事実に近いかと思いまして、一年分のが出ておりませんのではなはだ恐縮でございますが、一カ月分だけので一つ御了承いただきたいと思います。
○坂本委員 そうしますと、これによりますと、競落価額が、強制競売百千八十万百千円、任意競売が一億九千四百十七万八千円と、こうなっておりまして、この公租公課の債権額が百十八万百千円、償還額が百十万七千円、これは、強制競売をこれだけやった中に公租公課が強制競売百十八万二千円、任意競売千三百八十七万五千円ある、こういうふうに考えられますが、その通りでしょうか。
○関根最高裁判所説明員 その通りでございます。
○坂本委員 そういたしますと、強制競売、任意競売を合せまして、やはり公租公課の債権額は約千五百万円くらいになるわけでありまして、それに対する競売による償還額が約八百万円以上になるようですが、そこで、税金額によるところの滞納処分による場合は、先般質問いたしましたように、千五百六十四万という税額がありまして、それから差押えが行われ、そして途中納税なんかをしたのがありまして、最後の落札価額というのは十一億という僅少の額になるわけであります。しかしながら、その過程において相当の納税もあるという点で、相当の件数並びに金額があるわけであります。さらに、今強制競売、任意競売の関係にいたしましても、一カ月で八百万と申しますと、年に一億円ですか、一億円に達する相当の額に上るわけでありますが、そこで、お尋ねいたしたいのは、こういう相当の金額、相当の件数に上っておりまするから、この法律が適用を見る暁においては、第九条の裁判所が相当と認めて強制執行を続行するかいなかを決定することも相当多数に上るじゃないかということも想像されるわけであります。この点については、先般の御答弁では、実際にはわからぬということですが、相当額に上るわけですから、裁判所といたしましては、相当事務の繁忙その他の点も想像されるわけであります。それに対して予算措置が少しもできていないわけでありますが、この点について大臣の御所見を承わりたい。
○中村国務大臣 ここに表に現われております一般強制競売の件数等から見まして、租税の滞納処分と競合いたしまするような、ちょうど本件の法律の適用を受けまするような事案というのは、明確な比率を出すことは困難でありますが、全体の強制執行に関する手続全体から見ましたら、ごくわずかなものだと考えられますので、現在各地方裁判所に強制執行に関する手続について配置されております裁判所の人員をもってして処理し得るであろうと考えておるのでございます。かような見解に立っておりますが、将来実施した暁におきまして、もしそれがために手続の事務分量が増加等を来たしましたために万一裁判事務に支障がありまする場合には、直ちに考慮するようにいたしたいと思いますが、目下のところでは、全体の強制執行に関する裁判手続の中に加わる本法律の関係部分というのはごく僅少であろうと、かように考えておるような次第でございます。
○坂本委員 これがそういう表面に現われるときは、相当無理を生じた場合なんですから、それで、その措置が、裁判官をふやすとか、その事務の事務官をふやすとかいうようなことがなければ、やはり本件についても二カ月以内とかいろいろの制限がありますから、それによって債権者並びに債務者が、事務の渋滞のために損害を受けることは非常に多いのじゃないかと思うのです。そういうような点を考えると、まず法律を作るときは、その法律の施行に当って必要な予算措置と、予算措置を考える以上は、その前にどれだけの法律の執行についての事務その他の点があるかという見通しがなければ、私はできないと思うのですが、この点については、もちろん法律の施行の点にもありますが、普通の法律の施行みたようにしておいたのでは、これはやはり国民の直接の権利、義務の関係に影響するわけですから、現在のような状態でやったのでは、私は、これだけの件数、金額を取り扱う上においては支障を来たすんじやないかと、こういうふうに考えるのですが、その点重ねてお尋ねしたい。
○中村国務大臣 これは、その点につきましては、十分実際の裁判事務を取り扱います裁判所側とも協議をいたしまして、大体本法が施行された場合における裁判所関係機関の打ち合せをいたしまして、順調に進み得るという見通しに立っておりますので、この点は、一つ裁判所の関係からなお詳細お答えをしていただきます。
○関根最高裁判所説明員 坂本委員のお話はまことにごもっともだと思いますが、ただ、この事件の見通しでございます。これは、滞納処分と強制執行の二つの手続が重なり合った場合に、片方先着手の方の手続が非常におくれている場合にあとの方の手続に移らせるという、手続促進に関する規定でございまして、この規定ができますれば、おそらくおくれることはなくなるのであろうということも考えられます。従って、見通しといたしましては、その割に続行決定の申請事件というものは多いのではないということも考えられるわけでございます。ただいま大臣からもお話がございましたように、全体の強制執行の事件から見ますると、たといこの申請事件がございましても、数の上から申しますると、その割に多いものじゃない。それで、実は、先般も申し上げました予算の点でございまするが、われわれの方といたしましても、この法律が出ますると、何とか予算措置を考えていただきたいというので、この裁判官増員のことも一応考えましたけれども、何と申しましても裁判官の養成には相当時間もかかりますし、現在の人員で何とかまかなっていったらどうか、——御承知のように、大都会の裁判所におきましては執行担当の専門の部を設けております。そういう関係から、人員増員はひとまずしなくてもいいんじゃないか、それから、さらに、人員の要求はいたしませんけれども、現在執行担当の裁判官、それから執行吏等に十分この法律の趣旨を心得ておいていただいて、その上で法律の施行という段階に入らなくちゃならぬというところから、できる限り会同その他会議、協議会等におきまして十分に法律の趣旨を徹底させる、そういった趣旨で会議費というものを考えたらどうかということを大蔵省とも折衝いたしたのでありますが、これも、ほかの問題につきましての会議費がございますので、その方の運用であわせて協議してもらったらどうかというので、一応大蔵省、それからわれわれの方といたしましてまとまったわけでございます。それで、なお事件が非常にふえてどうにもならぬという事態が来ますれば、これはまたその上であるいは裁判官の増員ということもお願いしなくちゃならぬかと思いますが、ただいまのところはそういった話し合いで進んでいるわけでございます。
○坂本委員 大体了解しましたが、そこで、裁判所の方にお聞きしておきたいのは、先ほど、九条の「相当」の判断について、裁判所が慎重にやらなくちゃならぬ、やるについては民訴百二十五条の運用によって当事者の審訊、債務者の審訊も考慮する、その点で三十七条を運用して最高裁判所のルールをきめる際にその債務者審訊の点も考慮する、こういうお話でありましたが、その点は最高裁判所の方でも同じような御趣旨に承わっておいていいかどうか、伺いたい。
○関根最高裁判所説明員 実は、打ち明けて申し上げますと、この法律の三十七条に基きまして最高裁判所で定めます規則の案もただいま考えておりますが、その案の中にはこの債務者審訊の規定を入れておりません。しかし、坂本委員のお話をいろいろ伺っておりまして、今法務省の民事局長のお答えにもありましたことを考えますと、やはり何らかの規定を——この続行決定の裁判官といたしまして、その決定をいたします前に、やはり徴税官吏のみならず当事者の意見も聞いた方がいいのではないかと思いますので、できる限りこの規則立案に際しましてはその方向に努力いたしたいと思います。
○坂本委員 今度は大蔵省の方にお聞きしたいのですが、この租税に対する形式的の優先権は多少この法律で緩和されると思うのですが、やはり実質上の優先権の点を考えますると、「国税徴収法規準用法令調」によっても、七十七のいろいろな法令があるわけでありまして、この中には実質上優先すべき性質のものでない、普通の債権と同質のものだと考えられる点が多数あるわけですが、この点を早急に整備して、そうして国税、地方税を分ちまして、この優先順位を定めるとか、あるいはいかがわしいのは優先権でない普通の債権に切りかえるとか、そういう整備等を早急にするお考えがあるかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
○吉国説明員 ただいまのお尋ねの点、私の所管でない部分もございますが、一応お答え申し上げます。ただいまの公課が国税徴収法の規定を準用している、あるいは地方税法の規定を準用している点でございますが、御指摘のように、この準用がかなり広範にわたっている点は事実でございますし、また準用の手続のみならず優先権の規定まで準用いたしておるというような点から、かなり大きな問題が含まれているように存ぜられます。先日もちょっとお話し申し上げましたが、大蔵省に設置されております租税徴収制度調査会におきましては、国税徴収法の改正を主眼として審議を行なっておりますけれども、この国税徴収法を準用する諸法令につきましても、当然優先権というような問題を解決するためには審議をしなければならないという建前から、あわせて審議をいたしておるわけでございます。ことに、公課につきましては、単に準用の範囲が広過ぎるという問題ではなくて、公課相互間の順位もかなり錯雑しているようでございます。新しい公課ほどその法例で順位を高くきめてしまうというようなことで、公課相互間の順位自体にもかなり筋の通っていないところもあるようでございます。これにつきましては、一応租税徴収制度調査会としても検討をして意見を出していただく予定になっております。国税、地方税自体の優先権の問題も、むしろこれが中心で現在審議中でございます。それと関連をいたしまして本年末までには一応の御答申はいただけるものと思っております。この答申を拝見した上で、各省とも打ち合せて、より合理的な解決をはかることができることを期待しているわけでございます。
○坂本委員 自治庁の方はこの点について何か考えておられるかどうか、自治庁の御意見を承わりたいと思います。
○細郷説明員 ただいま大蔵省の税制第二課長からお答えになりましたように、地方税は現在国税と同順位で徴収できることになっております。その点は国税と同じ考え方によって将来の動きも変って参ると思います。地方の中の公課につきましては、今お説のありましたようにその順位につきましても、また準用の範囲につきましても、検討を要すべき点があろうかと存じます。自治庁の方も、租税徴収制度調査会にその一員として参画いたしまして、同じようにその結果を待って決定をいたしたいというふうに考えております。
○坂本委員 自治庁の方では、地方自治に関する公課といいますか、それが非常に多くて、これの徴収不可能な場合に滞納処分をやる場合は、どこか集約してやっていると思うのですが、その点どういうふうになっているのですか。
○細郷説明員 地方の一般の公課の場合、それぞれその賦課につきましては主務の部局がこれを行うわけであります。しかしながら、現実に国税徴収の例によりまして徴収を執行いたします場合は、便宜、その関係、特に税務関係に熟達した者を補助者に使う等の方法によりまして、法の適正な運用に誤りなきを期しておるわけであります。
○坂本委員 その点に非常に疑問、があって、公売についていわゆる競売屋、落し屋というのですか、そういうのがやはり関係をして、その徴税吏員の質の問題にもよるのですが、徴税についての訓練の不足と、それから待遇なんかの非常に悪いような点で、適正な公売が行われないという点が新聞なんかでも見ることがあるわけですが、そういう点について、徴税について、ことに滞納処分の執行について、ただ補助者として使って適正を期するというだけでなくて、何かもっと公正妥当な方法を考えておられるかどうか、考えていなかったら、今後どうしようと思っておられるか、その点をお聞きいたしたいと思います。
○細郷説明員 地方税並びに地方公共団体の公課等の徴収につきましては、漸次成績は向上しておることは前段にお話し申し上げた通りであります。税務の行政につきましては、御承知のように、大きく分けて賦課の事務と徴収の事務とに分れるわけでありますが、徴収の事務の方に現在でも徴税職員の半数近くというものを回して使っておるわけであります。従いまして、そういう多数の者が徴収に参画いたします関係上、中にはその事務にふなれなために不始末を起すこともあるわけでございますが、私どもの税務行政の運営の面におきましても、最近は賦課の面は税制の合理化、負担の合理化、税制の改正等によりましてかなり改善されて参りましたので、最近は徴収の面に重点を置くようにいたしておるのでございます。従いまして、徴収関係は、御承知のように個々の委任を受けました職員が現地に行って法を適正に運営するかいなかにその功否がかかっておりますだけに、法の理解とその実例等についての知識を十分に得さしめるように私どもとしてもいろんな機会にその訓練を行なっているわけであります。つい昨年秋も、地方団体の徴収の関係者を東京に集めまして、国税徴収法、犯則取締法等を初めといたしまして、関係法令の講習会をかなり長期にわたっていたしたわけであります。また、将来につきましては、目下検討中でありますが、自治庁の関係で自治大学校というのがございます。そういった学校の特殊な専科課程のようなものでこれを取り入れていくことはできないだろうかというようなことも実は今検討いたしておるわけでございます。
○三田村委員長 他に御質疑がありませんでしたら、本案についての質疑は一応これにて終了いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時四十二分散会