法務委員会 第5号
- 発言数
- 43 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1957/02/19
会議録
○三田村委員長 これより法務委員会を開会いたします。 本日は法務行政に関して調査を進めます。 質疑の通告がありますので、 順次これを許します。花村四郎君。
○花村委員 私は抵当証券法について若干政府に質問をいたしたいと思うのであります。 抵当証券法が昭和六年八月一日に施行せられまして、今日まで二十六年の長きにわたってこれが実施をせられてきておるのでありまするが、その実績の認むるもののありませんことは、まことに遺憾に存じている次第であります。しかるに、この法律がドイツにおきましては不動産金融化の面に大きな寄与をいたしておりますることは御承知のとおりであります。今日、わが国においても、まず中小商工業者の育成助長をせなければならない、ことにその金融面において相当に考慮を払わなければならないということで、政府もまたその他のこれに関心を持つ人々も期せずしてこの金融面に力を注いでおるような次第でありまするが、このときに当って、この不動産の金融化、資金化を目ざして金融の面で考えられなければならないところのこの抵当証券法が活用せられないということは、まことに私どもは心もとなく思いまするが、ドイツで今日不動産資金化の面において大きな役割を演じておるこの抵当証券法を活用することこそ、まことに必要であろうと思うのでありまするが、かような点に関して政府はいかように考えておられるか、その御意見を承わりたいと思います。
○中村国務大臣 御指摘のように、抵当証券法が昭和六年施行されまして以来、あまり活用を見ておらないのが現状でございます。私も、お話がございましたので、その施行以来の活用状況等を調べてみますと、昭和六年の八十三件、七年の四十三件、昭和二十九年の七十五件、ここらが大体最高でございまして、年によりまして全然この抵当証券法が活用されていない、ゼロの年も二、三ございます。これはどういうことから来ておるかということをいろいろ検討してみますと、土地にせよ建物にせよ、不動産が証券の面だけで価値を十分に判断することができないのが日本の社会情勢になっておる結果ではないかと思うのであります。また、この土地、建物等の不動産を所有しておる人間が事業が不振で租税をたくさん滞納しておるという場合には、租税の優先権との関係もございましょうし、また、同じ土地でございましても、その土地の上にはどういうものがあるか、どういう人が使用しておるかによって非常に土地の価値が異なってくると思います。建物にいたしましても、使用状況によって、同じ建設年度の建物でございましても、大ぜいの人が何世帯も入って生活をした家と、小じんまりと一世帯が手入れをしながら使用してきた建物とは、坪数あるいはかわらぶきであるとか何ぶきであるとかいう構造の登記面、証券面に表上されたものだけでは、その判断がつきにくいということが、抵当証券法というものがせっかくできましたが活用されない根本ではないかと思うのであります。 ドイツの状態につきましては、いろいろ御指摘もございましたが、まだ私もそれらの点を十分に調査をいたしておりませんが、事務当局は従来も諸外国の資料等も調査をいたしておるようでありますから、それらの点につきましては政府委員から答弁をすることにいたしたいと思います。
○村上(朝)政府委員 抵当証券の制度がドイツ、スイス等に古くからございますることは御指摘の通りでございまするが、ことにドイツ、スイスは、不動産登録に公信力を認めておりますので、その点から申しましても、わが国の制度よりは抵当権の証券化ということに適しておるわけであります。ところが、ドイツにおきましても抵当証券はあまり利用されていない実情のようでございます。なぜ抵当証券が利用されないかという点につきまして、学者の指摘するところによりますると、抵当証券による抵当権の譲渡は、譲渡手続が簡単であるという長所はあるけれども、他面、譲受人は証券だけを見て抵当権を安心して譲り受けるというわけにはいかない、不動産の性質上、他の有価証券のように証券だけ見て譲り受けるということはドイツでも行われていないわけでありまして、譲受人はまず現地を調査する煩をあえてしなければ安心して譲り受けるわけにいかないということから、あまり利用されるに至っていないというふうに説明されておるのであります。ドイツで非常に発達しまして広く利用されておりますもう一つの制度がございますが、これは抵当債券の制度と申しますか、いわゆるヒポテケンバンク、抵当銀行というものが各都市にございまして、抵当銀行の債権が広く流通いたしまして、それによって集められた資金を不動産を抵当にして貸しつけるということが行われまして、戦後の住宅建設等にも大いに貢献しておるということを言われておるのであります。抵当銀行は、不動産を抵当にとって金融をいたしまして、その抵当権を売り出すのではなく、抵当権つきの債権を持っておるという信用を背景といたしまして、抵当銀行の債権証書を発行するわけであります。ちょうど昔の勧業債券のようなものを抵当銀行が発行いたしまして、これが非常によく流通いたしまして、多額の資金が集まっておるというような実情でございます。日本の抵当証券に当ります抵当証券に上る金融、抵当証券の流通ということは、ドイツでもあまり盛んには行われていないというように承知をいたしております。
○花村委員 今の法務大臣の御答弁に対しては、私もまた異議がありますが、一つこういうことをお尋ねしたいと思うのです。戦前における不動産の金融化の事情、それから終戦後における不動産に対するこれまた金融化の状況等の資料の御提出をお願い申し上げまするとともに、もしただいまでもその状況がわかっておりましたならば、御説明を願いたいと思います。戦前と申しましても、十一、二年ごろの不動産金融化に関する件数並びに額等の総計でよろしゅうございます。それから、終戦後今日に至る数字がわかっておりましたならば、それもあわせてお示しを願いたいと思います。
○村上(朝)政府委員 ただいまお尋ねの点は、金額の点につきましては、ただいま資料がございませんので、お答えいたしかねますが、抵当権取得の登記件数として現われました不動産金融の状況を、数字をもってお答え申し上げます。 昭和十一年におきましては、土地を抵当とするものが五十四万三千二百十件で、建物を目的とする抵当権が八万五千四百一件になっております。次に、昭和十二年でありますが、土地を抵当とするものが四十九万八百二十五件、建物を抵当とするものが八万八百六十九件。 戦後の状況を申し上げますと、昭和二十一年には、土地を抵当とするものが三万三千五百十九件、建物を抵当とするものが一万二千八百三十二件。その後土地、建物とも逐年ふえて参りまして、昭和三十年一年間の登記件数を申し上げますと、土地を抵当とするものが三十六万三千件、建物を抵当とするものが十八万八千七百十五件。 戦前と戦後を比較いたしまして著しく違いますのは、戦後は土地を抵当とする場合が非常に少くなっております反面、建物を抵当とするものが非常にふえておるのであります。これは、土地につきましては、農地の処分が非常に厳格に制限されておりますことが主たる原因ではないかと思います。建物につきましては、戦後住宅金融公庫等の融資による住宅の建設ということがだんだんふえて参りましたので、それらの点が建物に対する抵当権の件数の増加となって現われているのではないか、かように考えております。
○花村委員 抵当証券法の利用率が非常に低いという理由は、ただいま法務大臣からお話があったところでありまするが、ただいまおっしゃられたような理由もありましょうけれども、この抵当証券が流通性を持っておるという意味において、証券だけでは結局信用ができないという意味において活用されないのではなかろうかというお話もありました。しかし、私はそうではないと思う。たとい証券自体によって不動産の所在並びに不動産の現実の状況等がわからないといたしましても、とにもかくにも、抵当権が設定されておって、しかもその抵当権と債権と、ともに一体となって証券化されて融通されるということに相なって参りまするのみならず、その証券に対しては裏書人がともに責任を負うという意味において、ただに抵当物件に対する担保ばかりでなくして、人的の保証も伴うという意味において、私はそう証券のみをもって信用がないように考えられるとは思わない。要するに、第一次に抵当権を設定する場合においては、先ほど法務大臣の言われたように、その不動産の所在あるいは不動産の状況等がつぶさにわかりませんと抵当債権者が不安でありますることは当然であって、従って、抵当権を設定する場合においては、多くの債権者は、その所在あるいはその不動産の状況等をつぶさに調査をするということは、これは背も今も変りなく行われておることであろうし、また行われておる。われわれの体験をもってしても行われております。やはり一応その所在、場所——あるいは家屋でありまするならば居住者の関係、そして土地の賃貸借の状況等を調査する、あるいは土地にいたしましてもその上に存在する建物の状況、賃貸借契約ありやいなや、その地代は何ほどであるか、しかもその賃貸借期限はどのくらいであるか、果してその対象の不動産があるかないかというような点をつぶさに調査をして抵当権を設定することは常に行われておることなんです。しかも、その抵当権設定当時における不動産の価格等に関しましては、これまた深い関心を持って抵当権者は調査をいたしておりますることは申し上げるまでもないのであります。でありまするから、そういう調査のもとに抵当権を設定し、その設定した抵当権に対してこの種抵当証券を発行するということに相なって参るのでありまして、しかもそれが、抵当証券の裏書人が責任を負うという人的保証も加わるということに相なって参りまするから、その信用状態においては私はさほど心配する必要はないように思うのであります。しかし、戦前よりも戦後は不動産の資金化という面が非常におろそかに相なっておる。りっぱな土地、建物があっても、なかなかそれに対して金融をしてくれない。こういう、不動産による資金化ということが戦後においてはどうもあまり活用されておらない。まあこういうところから、抵当権設定等も戦前より少く相なっておると思うのであります。現に、銀行等においても、いかにりっぱな土地、家屋をもって金融を求めても、金融してくれない。こういうことで、やはり抵当権の設定、すなわち不動産の金融化という面があまり活用されておらないという意味において、この抵当証券法も利用されないのではなかろうかと思うのですが、これは、政府としてももう少し活用できるように一般に知らしめてやることと、そうして金融機関を通じて金融面において資金化に協力するように政府としても指導していくという面が欠けておるのではなかろうか、こう私は思うのです。でありまするから、こういう面をもう少しお考えになられて、せっかくできておる抵当証券法であり、しかもこれが制定当時においては議会においても不動産金融化の必要性を強調して相当に論議もかわされておる、そうしてこういうりっぱな法律もできておるわけでありまするから、法務当局においてもこの法律をもう少し活用をする方向に向って考えられたらどうか、こう私は思うのでありまするが、その点はいかがでしょう。
○中村国務大臣 不動産金融を活発化するということについては私どもも同感でございまして、かねてから、政界におきましても、不動産金融の特殊銀行といいますか、昔の勧業銀行のような、不動産を対象とした、それを主とする銀行を作ってはどうかという説が相当強く盛り上りつつあることも承知いたしておりますので、金融の面からそういうような構想を検討することも、中小企業者等の金融を円滑にするために大いに考究すべきことであろうかと考えます。ただ、ただいま御指摘になりました抵当証券法の運用でございまするが、これが法律としてできて、昭和六年以来長年にわたってこういうものがあまり実際に活用されておりません。そこで、現在実は法務当局といたしましては法制審議会で抵当制度についての民事部会で検討をいたしておりますので、近く、御指摘になりました抵当証券法というものをどうするか、これを今後も続けていくならばもっと何か改善をして活用の道があるかどうか、こういうような点を法制審議会を通して十分一つ検討するようにしてみたい、かように考えております。ただ、先ほども申し上げましたような事情で、抵当権の対象になっております不動産に対して評価額というものを証券に入れるわけにはなかなか参りません。評価額を入れれば、これは評価額が公的なもので評価されておる価額である、それを表示しておる証券であるということになれば、流通性の上においてかなり信用価値ができるかと思うのでありますが、その評価額は一体どうすれば出てくるか、またどうすれば適切か、こういうような諸問題がございます。また、お話のように、抵当権を設定する債権者としては、十分抵当物件である対象物を現状を調査し、そうして安心感を持った上で抵当権を設定していくことになろうかと思うのでありまして、それが現実であろうと思うのでありますが、抵当証券として一般に流通する場合には、あるいはややともすれば債権者と債務者がぐるになって、一定の抵当権を作って抵当証券を発行して、そうしてそれの流通をはかって裏書きで転々させる、こういうことも起り得るのでありますから、抵当証券を取得する方から見ますると、なかなかその証券だけを見ても安心ができない、こういうのがおそらく現在の状況で、取得の不安というものから、法律までできましても、あまり適用を見ていないのではないか、かように考えますので、このようにあまり運用されていない、活用されていない法律をこのまま置くことがよろしいか、あるいは存置するとするならばどういうふうに改善をしたならば活用の価値が出てくるか、こういうようなことにつきましては、一つとくと法務当局としては検討してみたい、かように考えております。
○花村委員 ただいまこの問題に対する検討を法制審議会を通じてやっておるという御答弁でありますが、まことにこれはけっこうな答弁であります。が、しかし、こういう抵当証券法がありまする以上は、やはりこれを活用させるということを関係当局としては考えなければならぬことは当然だと思う。それは、議会で立法をいたしました法律を、その所管当局がその実施に当って万全の方途を講じていかなければならない責任のありますことは当然であると思う。しかるに、これがほとんど実施されないような状態にありますることは、まことに私は遺憾であり、しかも立法府の意思を尊重せざるもはなはだしいとまで私は申し上げていいと思う。しかし、惜しむらくは抵当証券法というものを知らない人が多い。法律家にして知らない。これは申しちゃ失礼でありますが、法律家で知っておる人がきわめて少い。でありまするから、法律家ならざる社会の多くの人が知りようはずがない。この法律を知らないという意味において活用されておらないという面も相当あることをわれわれは見のがしてはならないと思う。こういう意味において、もう少しこの抵当証券法の何ものであるかを世に知らしめて、そうして、せっかく作った法律でありまするから、その法律の活用に向って万全の処置を講じていくということが望ましいと思う。もちろん、こういう長年にわたってほとんど適用されておらぬということは、確かに欠陥のあることは認めざるを得ない。その欠陥は一つ直ちに是正して、もって、そうしてこの法律を活用する方面に私はもう少し力を注いでもらいたいと思う。大体において抵当債権の証券化によってこれが円滑に流通をいたしていくということに相なりますれば、もちろんこの不動産の金融化というものも私は非常に勃興してくるのじゃなかろうかと思う。そうして、こういう不動産の金融資金化の面でもっとこの不動産を持っておられる人々に金融面における便宜をはかってやるということが、行き詰まっておる中小商工業者を救い、あるいはその他の資金を求めておる人々を救うゆえんであろう、こう私は思うのであります。こういう点において法務当局はどうお考えになっておられますか。
○中村国務大臣 先ほども申し上げましたように、この法律を活用していく道について十分一つ検討をして参りたいと思います。幸い法制審議会の民事部会で抵当問題を今取り上げておる最中でありますので、あわせてこれを研究をさせまして、適切な結論を得たい、さように考えております。
○花村委員 先ほども申しましたが、ドイツとスイスの資料を一つ書面をもって配付してくれませんか。それをお願いしておきます。
○三田村委員長 次は吉田賢一君。
○吉田(賢)委員 売春防止法につきまして若干政府当局に伺いたいのですが、田中官房副長官にお尋ねします。 本年四月一日から実施せられるべき売春防止法の第三章の関係についてであります。申し上げるまでもなく、この画期的な文化的な法律は、昨年当委員会で全会一致可決し、本会議並びに参議院におきましても全会一致可決いたしまして、世界の賞賛を博した法律であることは御承知の通りであります。もっとも、いわゆる「ざる法案」と言われて、幾多の欠陥を包蔵しておりまするけれども、いずれにしても、八十年来の売春問題について一つの解決へのめどが立法的に進められたということは、ともかくも慶賀すべきことであったのでございます。そこで、間近に迫った売春婦並びに転落せんとする者、要保護女子等に対する保護更生の施策を中心にして、政府当局の注意を喚起しつつ、ぜひ伺っておかなければならぬ数個の点があるわけであります。 官房副長官はこれの企画立案等につきましても非常に重要な業務に参加せられた一人でございますので、あなたに伺うことが便利と思うのだが、この法律が施行されます暁に、政府として業務担当はどことどこになるのであるか、まず一つ御説明を願いたい。
○田中(榮)政府委員 本法が現実に施行されました暁におきまして、政府部内の主管官庁と申しますか、それにつきましては、御承知のように、売春問題は、売春業者の転廃並びにこれに対する取締り、それからまた、ここに掲げられております従業婦の保護更生の関係とか、そうした問題が非常に広範にわたっておりますので、これを一がいに、法務省でやるとか、警察庁でやるとか、あるいは労働省、厚生省というような一つのところにそれを取りまとめるということが非常に困難でございます。従いまして、本問題が完全に解決するまではやはり各省の協力態勢が必要であろうと考えておりますので、もし事情が許すならば、今後も内閣が中心になりまして、各省と密接な連絡をとりまして、実際の実施は各省においてこれを行うものと考えておりまするが、これらの各省の間の連絡提携というものはやはり中央官庁たる内閣が一応連絡調整の衝に当るのが一番妥当ではないか、かように私といたしましては考えるのであります。
○吉田(賢)委員 各省の協力態勢を整備して、実施に遺憾なきを期するような態勢を整えるということはごもっともなことであります。私の知りたい点は、あなたによって御答弁願いたい点は、具体的に、この法第三章の実施に当りまして、その各省というのは一体どこをさすのであるかということです。これを御説明願いたい。
○田中(榮)政府委員 これは、ただいま私が申し述べましたように、保護更生に関しましては厚生省と労働省が当ります。それから、売春事犯の取締りに関しましては警察庁が当り、また保護観察あるいはこれに関しましてもしかりにいろいろな人権問題等が起った場合におきましては法務省が当る。いろいろ警察庁との関連性もございますので、法務省もこれに当るわけであります。そのほか最高裁判所系統の裁判所関係もこれに当るわけでありまして、以上申し上げましたような各省庁の協力によってこの問題を取り扱っていきたい、かように考えておるわけであります。
○吉田(賢)委員 最後にお述べになりました最高裁の関係はどういう点でありましょうか。
○田中(榮)政府委員 法務省の関係といたしましては売春事犯が家庭裁判所の関係において取り扱われるというような関係から、最高裁判所もこれに協力していただく、こういうことになります。
○吉田(賢)委員 そこで、法務大臣がおられるので、あなたに伺うのでありますが、今の内閣の官房を代表され、常に売春防止法の成立に中心的に参画せられた田中副長官のただいまのような御説明であります。これによりますと、保護更生については厚生省と労働省、あるいは人権その他の関係については法務省関係、あるいは取締りの警察庁、家庭裁判所、最高裁等々、広範な行政ないしは司法上これに協力態勢を整えていくことによって、法第三章の実施が全うし得られるというのですが、われわれもそう考えております。これは同感でございます。そこで、法務当局においては、おそらく同じようなお考えのもとに相当額の予算の要求をされたことと思うのであります。あなたも閣僚の一人でおありでありますが、この重大な法律を実施するときにおいて、売春対策に対する法務省の予算がむざんにも至るところでほとんど食いつぶされておるような感がするのであります。先般の事務当局の御説明によっても明らかでありましたが、売春対策費としてあげられておるもののうちには、刑事局、検察庁関係といたしまして、検察庁内においても身上調査室の設置の要求として千四百八十余万円を要求しておれられたのがゼロになっておるのであります。さらにまた、 私どもが得に重視すべきことは、少年矯正関係における収容施設の予算九千五百余万円がなくなってしまっておるということであります。これは、すでに予算案が国会に提出された後でありますので、ある段階が済んでおるものの、やはり法務省の主管大臣としてのあなたのお立場、閣僚の一人として予算を決定、国会に提出する権限をお持ちになっておるお立場、こういうようなお立場から考えられて、一体これでいいのだろうかというふうに私も思い、あなたもおそらくその感をお持ちになっておられるだろうと思うのであります。これは釈迦に説法でありますけれども、本気でやるのでないと、これはただに世界で物笑いになるだけでなしに、国民に与える影響なり、また法律が今後実施されていく過程における社会的混乱なり、またこういうことによって生ずる反動的な悪い影響なり等々を想像をたくましゅうすると、これは大へんなことになります。申すまでもなく、来年の四月になりましたならば、これは全面実施です。全面実施になれば、刑事的処分も伴うところの第二章が全部実施されるわけであります。来年の四月といえども、もうそのうちに到来するのであります。こういう法律の実施でありますので、卒然と法律だけ実施することによって所期の効果を上げることができないことは申すまでもございません。各般のあらゆる施設、あるいはこれを取り扱う人の訓練、あるいはいろいろな動向等によって、さらに次の完全に実施する準備といたしましても、準備の段階もあろう。こういうことを考えますと、間近に迫っておる第三章の実施——来年四月には全面実施、しこうして今は保護更生のみであるが、来年四月には全国の赤線地域を縛ってしまわなければならぬということに当然なるわけであります。こういうようなことを目の前に見ておりまして、予算をほとんど少くしておるというのが現状であります。今官房副長官お述べのごとくに、各省の協力態勢が必要であるというようなこと、これはまことにごもっともな御意見である。法務省は一見保護更生に関係はないような、しろうとの観察もあるかもわかりませんけれども、これはあなたの方が相当重要な役割をなすことはもちろんでありますし、ことに、更生関係等におきましては、現実、具体的に即刻ほんとうの準備をもって臨まなければならぬことは当然なんです。ところが、これができておらぬというのが現状でありますので、法務当局は予算がこういうふうになったことは遺憾だということだけでは済まされぬと私は思う。閣僚として、予算を国会に提出した責任者の一人といたしまして、相当な決意をもってこの法律に対処して、一つ確信のほどをお示し願わなければならぬと思うのでありますが、一体どういうふうにお考えになっておりますか。
○中村国務大臣 吉田さんのお話の通り、売春関係はせっかく前の国会で防止法もできましたので、これに対して政府として万全の処置をとっていかなければならない、かように考えます。そこで、問題は、それらの処置でありますが、主として厚生省、労働省関係を中心に、これらの人たちの転向をする更生の道に努力をしてもらう。法務省といたしましては、明年から実施になります刑事処分及び刑事処分をした者の後の善後処置、これらについてその任務を担当する、こういうことになるわけでございますが、今御指摘がございましたように、案は来年度から刑事処分の問題は実施されることになりますが、それには本年のうちからそれに備える諸般の準備を必要と考えまして、所要の予算要求もいたしておったのでありますが、刑事関係、刑罰関係の条項が明年の実施であるということから、結局、最後の予算査定におきましては、本年度は諸般の準備の会合をするとか研究をするとかいう経費の範囲に切り詰められまして、そういう査定に相なったのでございます。われわれとしましては、内心非常に遺憾に思うのでございますが、一応他の経費との関係もございましてこういう結末になりましたので、与えられました三百余万円の経費をもちまして来年度に備える十分の研究と準備を整えて参りたい、かように考えます。 なお、保護更生に関する組織は、一応、法務省といたしましては、御承知の通り、一般刑事事件に関する保護更生に関する組織がございますし、施設及び部局等もございます。各地方におけるその所管の役所もできておりますので、これらを通して、一体どこまで可能であり、どこまでやれるかというような検討を本年中に十分いたしまして、もしどうしてもさらに施設を要する、どうしても新しい施設を加えなけれこの売春関係の善後処理ができないということになりますならば、これは場合によって予備費から要求をいたしましても、来年の刑罰法規実施に支障がありませんように万全の備えをいたしたい、かように考えております。
○吉田(賢)委員 これはあなたの熱意を疑うわけではありませんけれども、やはり予算査定で結局打ち切られたのでやむを得ないというようなお考え方だけでは、まことに憂慮すべきものではないかと思うのです。ことに、少年関係等におきまして、今から売春経歴のある者と普通の非行少年との区制を十分にいたしまして、そして次の完備したものへと移行する準備がなされるということだけでも、これは非常に重大なことではないかと思うのでございます。われわれ自身もしろうとでありますけれども、やはりその道の人に聞きますと、法務省側の受け入れ態勢にいたしましても、この二点だけをとらえてみましても、このままじんぜん来年を待つというようなことでは、売春防止法実施の熱意がないというふうな観察さえされるわけであります。あるいは、反面から見ますと、今日は反対運動があって、そして来年四月の全面実施は回避して、さらに数年間延ばすという運動を行なっているということさえ世上喧伝されておるのであります。そういうような折柄でありますので、法務省は、厚生省は厚生省、労働省は労働省なんですから、もっと熱意を持ってもらいたい。元来この法律の政府提案の主管大臣は法務大臣であったのであります。前法務大臣は非常な熱意を持ってこの法律の実現に向って努力をせられたのでありますから、前大臣に劣らない施策への熱意を持っておらるべきあなたが、そういうなまぬるい態度では、これは失礼ですけれども、東京都の婦人はみな失望してしまいますよ。ほんとうにこれは大へんでございます。御承知と思いますけれども、現に都では二千七百万円でしたか予算を組んで待っておるのです。この保護施設等につきましての予算を準備して待っているような状態であるのに、国の方は熱意がないということでありますので、あちらこちら、一体どこに原因があるのか、業者の運動がそういうふうにさせたのであろうかとまで想像をたくましゅうするのであります。ここはやはり、ほんとうに良心的に全責任を持って、法務省関係における分野のあらゆる施設なり、あらゆる準備なり、一切の売春対策の行政的措置は是が非でもこれは完全にやりとげなければならぬという熱意を示してもらわねば、これは大へんなことだと私は思います。ことに東京と大阪とが一番関心が大きいことは御承知の通りであります。大臣は東京選出の国会議員でもおありになりますので、私よりもその間の消息はよく御承知であると思います。こういうわけでありますので、法務省は一見、厚生、労働省に保護更生の面はまかしておいたらいいという態度じゃないかと疑いを受けられるような現状では、ほんとうに食い足りないだけじゃなしに、あなたの真意を疑うということになるわけであります。これは予備費で使うというのはどうかと思います。やはり次の補正予算ででも取って補充していくというような強い態勢を持続してやられなければならぬと思います。そうしなければ、国民の大きな要望に法務大臣がこたえたことにならぬと思うのですが、重ねて一つあなたの御所見を伺っておきます。
○中村国務大臣 吉田さんの御熱意のあるお言葉には敬意を表します。私どもも同様に考えておるわけでございますけれども、ただ、問題は、刑罰に付するということが主たる目的ではありませんので、刑事事件として刑罰規定の罰則に来る前に事前の処置が十分にとられることが最も適当だと思うのです。この点から考えまして、本年度の予算全体から見ますと、売春関係の経費は四億二千数百万円になっておりますが、これらも主として売春関係者の転向を導く厚生、労働関係の方面に予算が取られたわけでございまして、われわれとしては、できるだけ刑罰関係のところに来ることのないように食いとめるのがわれわれの任務である、かように考えております。ただ、売春防止法提案のときには法務省が主管の省でございましたが、この実施の段階になりますと、むしろ厚生省、労働省が事前の施策に万全を期することが一つの前提になりまして、法務省といたしましては、それに努力したけれどもなお従わない者があって違反した者が出た場合にこれをどうするか、また処罰した者に対して処罰のしっぱなしで、更生、改誤遷善の道を講じなければ何にもなりませんので、その際には十分改誤遷善の道がとれるようにやっていくというのが法務省の任務であると思います。法務省としては、一般にたくさんの事件を取り扱います検察及び保護更生、矯正関係の施設もございますから、本年度におきましては、今計上されております予算の範囲内におきまして、十分それらの施設及び組織を活用して、これに備える研究を具体的に進めて参りたい、かように考えておるわけであります。
○吉田(賢)委員 もう一つ法務大臣に伺いまするが、昨年の十二月十七日に次官会議で申し合せました売春防止法の円滑な施行を期するための行政措置の件でございます。これは売春審議会において決定いたしました趣旨が具体化したものであることは申すまでもないのでございます。ところで、この次官会議の申し合せの趣旨が、保護更正につきましてのおもな業務をやりまする地方の都道府県庁、そういう各方面、業務の現場の各方面へ徹底していないということが今日伝えられておるのでございますが、果してそうでありますか、どうでありますか。もしそういうことでありましたならば、これは売春審議会の趣旨を第一無視することになります。次官会議の申し合せというものが空文に帰します。ただ簡単なそういう趣旨の伝達があったといたしましても、実情としては、地方の都道府県の行政関係の者に聞いてみますると、どうも中央からのいろいろな行政各般の準備についての指示がない、こういうことが至るところで訴えられておるのが実情であります。これは重大なことであります。でありまするので、内閣といたしまして、そういうことがもしありとするならば、即刻調査して、具体的に周知徹底せしむるように、つまり売春防止法の円滑な施行を期する目的のために即刻やはり相当な手を打たなければならぬと思うのであります。この点について御承知の範囲を一つ御説明願いたい。
○田中(榮)政府委員 私からお答えするのが便宜だと思いますので、私からお答えいたします。昨年の十二月十七日に次官会議の申し合せをいたしまして、その旨を直ちに都道府県知事には一応通告してございます。ただ、具体的に地方庁と連絡会議を開くとか、あるいは知事会議においてこれを指示するとか、そうした措置はまだ具体化しておりませんので、この点は、地方庁からのそういう要望もございますし、また業者からもできれば一つすみやかに連絡をしてほしいという要望もあります。この点につきましては、関係各庁ともよく協議いたしまして、急速に一つ御趣旨に沿うようなことで計画を立てたいと考えております。御了承のほどを願います。
○吉田(賢)委員 それから、厚生省にお伺いしたいと思いますが、厚生省はどなたが出ておりますか。
○三田村委員長 厚生省は安田社会局長、労働省は谷野婦人少年局長が来ております。
○吉田(賢)委員 それでは、まず厚生省当局にお伺いいたします。厚生省は法三章の実施につきましては中心的な省であることは私が申し上げるまでもないのであります。このたびの予算を切られてしまいましたことにつきまして、これは非常にあなたの方としても仕事もやりにくいことになっただろうと思います。申すまでもなく、厚生省だけで一切をできないことは、これは田中副長官お述べの通りでありまして、労働省とも協力し、警察庁とも協力し、法務省とも協力し、最高裁判所とも協力しなければならぬ。厚生省のなさろうとする婦人相談所の設置に関する案件であるとか、あるいは各般の保護施設であるとか等々、性病予防等に関する問題であるとか、幾多の行政事務を完全実施する土におきましては、あなたの方だけではできないことであることは申すまでもないのであります。あなたの方の予算は他に比較して非常に不十分でありますけれども、それでも比較的に残されておるものかあります。ゼロになったのはただ一つだけということでありますが、予算を見ますると、六億九千九百余万円が三億六千六百余円に切られておりまして、約半額になっております。各省及び最高裁を通計すると、要求が十一億八千三百余万円が、四億二千百余万円でありますから、三分の一であります。比率はややよい。けれども、これでは仕事ができないであろうというのがわれわれの観測であります。やむを得ないのでこの範囲内でやっていこうということになりましたならば、これはほんとうに効果を上げられないのじゃないであろうか、こういう声もあるのであります。これはまた超党派的に見解が一致しておりますが、私は当日出られませんでしたが、売春審議会の委員会の議事録を読んでみますと、自民党におきましても社会党におきましても、それぞれ超党派的に、やはり保護更生に対する予算が少な過ぎる、とてもこれだけでは実施が至難ではないか、こういうような意見が非常に強く、ついに昨年の十二月十七日対策審議会の名によって内閣総理大臣に対して、三十二年度の売春防止対策の予算要求については売春防止法の受け入れ態勢としてこの要求の額をもってしで、なお不十分である、とうてい所期の目的を達することは至難であると思量せられるから、政府は再考してもらいたい、こういう決議ができて、その趣旨が総理大臣に向って意見善として伝達されておる。こういう経過にかんがみてみましても、どうしてこの問題についての予算がこんなにも虐待せられたのであるかということをわれわれは不思議にたえぬのであります。厚生省当局は保護更生業務の一番中心的な省でありますので、一体これでよいのであるか、この予算の範囲で仕事をするのが役人の任務であるというような消極的なお考えでなしに、積極的に良心的に、この売春防止法のほんとうの実施、所期する目的の達成、そういうことのためにこれでよいのか、こういう観点に立ちまして、あなたのお考えはどうなんです。一つ次官なり局長なりから省の御意向を明確に出してもらいたい。
○安田(巌)政府委員 売春防止法の保護更生に関する部分が本年四月一日から施行されますことはお話の通りでございます。また、この保護更生の仕事が大へんむずかしい仕事であるということも十分私ども考えておる次第であります。お話のように、関係の各庁と十分連絡協調いたしまして所期の目的を達成いたすようにいたしたいと考えております。昨年この法律がでました直後の七月に、実は保護更生の部分だけでもというので、労働省と私の方の次官の共同通牒で相当詳細に通牒を出しまして、そのあとでまた社会局通牒を出しまして、これらのことについての準備時期についていろいろと指示をいたしたわけであります。なおまた、会議等も開きまして、十分第一線の方と打ち合わせをいたしたのでありますが、予算の点につきましては、お話のように、今年の四月から保護更生の部分が全面実施になりますので、その予備といいますか、それに先立ちまして、三十一年度に御承知のように八大都道府県に婦人相談所を設置いたしまして、なおまた全都道府県に婦人相談員を配置をいたしたわけでございます。明年度の予算は、売春防止法の規定に従いまして全部の都道府県に婦人相談所を設置いたします。それから、全部の都道府県に小くとも一個所は婦人保護更生施設を整備させるに必要な予算、これを全部合計いたしまして三億円を計上いたしたようなわけでございます。この程度の行政機関なり保護更生の施設をもっていたしまして、転落婦人の保護更生に万全を期し得るかどうかということは、確かにいろいろ問題があると思うのでありますが、取締りの方の規定が明年の四月一日から実施になるということ、つまり猶余期間がありますということ、それから、その間の警察の取締りの状況、検挙機能の整備の状況でありますとか、業者の転廃業の進捗状況、それから、こういった婦人を保護更生いたしますのに強制力を持っていないというようなことを、いろいろ判断しなければならぬと思うのであります。それらのことをいろいろと総合いたしまして、来年度はこの程度でやってみたい、こういうような考えでございます。
○吉田(賢)委員 あなたは局長だから、大臣のように総合してどうこうというようなこともできない立場にあろうかと思いますが、厚生省が熱意がなかったら、この保護更生の仕事は進まぬのです。どうしてもあらゆる手を打って補正予算にも組むというぐらいな意欲を示しておいきにならねばいけないと思います。婦人保護施設についての補助金のごときは、二億七千五百万円を要求して九千八百万円に削られちまっておるのであります。実にみじめな状態になっておるのであります。三億査定されたのだから、この範囲内でやっていくというようなことでは、まことにおざなりなことであります。もっとも、ここで予算をあなたに責めるということは多少見当違いにもなりまするので、むしろ半分激励、半分はお互いに事を憂える、こういう角度において御質問申し上げておるのであります。ただ、この法律が、扱いようによりましては、また考えようによりましては、重大な法律であり、また考えようによりましては、政治的にも社会的にも非常に悪い大きな影響を与えるべき可能性のある問題を持っておりまするし、せっかく保護更生の実施だけでもやろうという段階になっておりまするので、もうほんとうに猪突的に要求実現に向って邁進されるというくらいな勇気をお示しになりませんと、各都道府県なんか乗ってこぬだろうと心配しております。都道府県の方にも、二、三伺ってみたのでありますが、本省関係の方にどれだけの熱意があるのだろうかということを懸念されておるのが一般じゃないかというふうにも私は推察いたしております。これはまことに憂慮すべきことであり、また、そういうことから逆にいろいろと税法的な新しい現象が業者の間に生ずるということになりますと、混乱状態に陥りまするし、被害者である少女がさらにたくさんに出るということになりましたならば、そういう不幸がさらに大きくなっていきますので、こういう角度から見ましても、非常に重要な婦人相談所の設置の点について、あるいは各般の婦人保護に関する施設につきまして、これはあなたの方の大きな仕事でございますから、ほんとに奮起して予算も取り、あるいは民間の協力も受け、世論も喚起するというくらいなところまで熱意を注ぎますことを御希望申し上げておきます。 谷野婦人少年局長が見えておりますので伺います。谷野さん、今だんだんお聞き及びの通りでございまして、われわれは、このような法律の保護厚生実施の段階に直面いたしまして、第一予算が少いこと、その裏は、この実施について熱意を国民が疑っているという事実、これはまことに憂慮すべき事態であるという角度からあなたに伺うのであります。労働省関係は、三十二年度の要求は九千八百余万円、査定が六百八十余万円、こういうことになっております。前年度は千万円である。そうすると、前年度より減ったことになりますね。
○谷野政府委員 お答え申し上げます。要求予算は九千八百六十三万八千円でございまして、査定のありました予算が七百一万五千円でございます。前年度は九百七十三万四千円でございます。
○吉田(賢)委員 わかりました。そうしますと、これは要求に対して査定は一割にも満たない、前年よりも二百七十万円減、こういうのであります。果して労働省の業務は売春防止法の保護厚生の業務実施の上で価値なきものであるか、それともあるいは別の事由に基くのであるか、他の省へ事務が移管されたのであるか、こういうことを一応考えてもみるのでありますが、しかし、あなたの方のたとえば特別広報活動というものが去年よりも五十万円減額されている。これは法務大臣に閣僚の一人として伺いますが、一体、去年の次官会議によれば、今官房副長官のお述べになったところによりましても、この周知徹底をさすためには内閣は即刻適切な措置を講ずるというようなお話であります。そうして、行政措置の一つとしまして、第一に掲げておるのは、売春防止に関する広報活動を広く社会一般に積極的に行い、特に売春を行う者、転落のおそれある者、関係業者にこの法律の趣旨を徹底せしむるとともに、健全な正業につくように各方面のあたたかい協力を必要とするので、国民一般の理解と協力を求めるということが劈頭に書かれておるのであります。これはまことに重要なんです。ただこの法律を実施するというて法律を突き出すだけでは法律がうまく実施されないということは申し上げるまでもありません。広報活動というものは、この法律を実施する上におきまして前提にもなるし、また推進力にもなるし、社会の協力を求める手でもあるし、広報活動のきわめて重要なことは、これは自他ともに認めておる。ところが、労働省は広報活動をしてはいかぬというのであろうか、前年に比べてなお広報活動費を五十万円減らしておるのですよ。一体何ということであろうかと思うのです。予算は財政法で大蔵大臣が査定するということになっておるといえども、これは、閣僚の一人として、懇談会ぐらいでお話なさいよ。こういうように広報活動を無視するということでいいんですか。労働省は広報活動をしなくともいいのであろうか。前年より何ゆえに減額さすのであろうか。こういう点は、一大蔵省の問題でなしに、本法実施の上において内閣の根本的なこの法律に対する考え方をはっきりさしておかなければならぬと思うのです。広報活動がすでに次官会議においてその重要性を取り上げられておるということとも大きな矛盾を来たすものと私は思うのです。これは突然のあなたへの御質問で御迷惑かもしれません。御迷惑かもしれませんが、一般的な考え方として、大臣の常識的な御答弁もあっていいと私は思うのです。
○田中(榮)政府委員 私からお答えいたします。労働省の広報活動費が四十数万減っておりまするが、今回、内閣におきまして、政府のいわゆる行政施策に関する広報活動費といたしまして、相当な費用を一活して計上してございます。もちろん、各省のいろいろな施策に関する広報活動は、内閣の広報活動費を十分に一つ御利用願ってやったらどうか。従いまして、売春対策の広報活動も、内閣におきまして今度とりました広報活動費の、いわゆる政府の施策に対する広報活動として利用したらどうか、かように考えておるわけでありまして、労働省で削られました点につましては、内閣がこれをすくい上げまして、広報活動を十分にいたしたい、かように考えております。
○吉田(賢)委員 それならば、あなたに伺いますが、内閣の所管業務として広報活動をやると言うが、売春対策の具体的な予算は、一体どこで何をどういう費目でお取りになっておるのですか。
○田中(榮)政府委員 内閣でとりました広報活動は、各省の、いわゆる政府の重要施策と認められるようなものにつきましては、内閣としてこれを取り上げまして、いわゆる行政施策の広報活動として、たとえばラジオであるとかテレビであるとか、そういう方面に十分一つ活用いたしたいと思います。
○吉田(賢)委員 内閣において重要な施策の広報活動をやるのであるから、その中へ含まれると言うが、売春対策はわれわれは重大施策であると考えております。重要な施策でないというんなら、これは別です。それなるがゆえに、労働省においても特に広報活動費を要求しているように思う。それならば、あなたの言う内閣において、特に売春対策の広報活動として相当計画がなければならぬ思う。ほかのものと一緒にやるというのは、それは無理ですよ。ラジオでやるとか、テレビでやるとか、そういうものじゃございません。私らのしろうとが言うんでなしに、あなた御自身よく御理解になっておる。そんなことでこの種の広報活動というものができましょうか。広報活動というものは、業者とひざを交える機会を作り上げるということもございましょうし、あるいは、それによっていろいろな知識も与えようし、外国の事例も知らせ、いわゆる売春対策を具体的に取り上げて広報活動をするというのが、私はこの業務であろうと思う。それを一般的なそれの中に織り込んでいくということでは、これはほんとうにやるのかどうかわからぬと言われてもしようがない。それならば、これは積算の根拠まで一つ示してもらわなければならぬが、内閣の何かの予算の中に広報活動費というものを盛った事項があるのですか、これを聞くのです。
○田中(榮)政府委員 内閣といたしましては、具体的に売春対策であるとか、これこれの問題であるとかいうことでやっておりませんが、やはり時々起り来たるような問題につきまして広報活動をやりたい……。
○吉田(賢)委員 わかりました。それはそうです。だから、売春対策の広報活動の重要性を次官会議では申し合せておるにかかわらず、事実においてはあまりやる気がないといわねばならぬ。なるがゆえに、労働省のこの種の予算は前年よりも減らしてしまった。実にこの点について国民の不信を買いますよ、こんなやり方をいたしましたら。 そこで、谷野さんに伺いますが、あなたは職安関係ではありませんが、職安関係の予算が、これまた大きく減らされてしまった。職業補導の実施、これが去年よりも減っておるどころか、ゼロになってるんです。これはむちゃくちゃです。こんなことで一体本法の実施がほんとうにできるとお考えになっておるのでしょうか。職業補導は売春婦が更生する唯一の希望ですよ。そうして正業につくということ、明るい人生を約束さすということ、そうしてあたたかい手で職業補導をすることによって、売春婦が泥沼から抜け切る道が開けるんじゃないか。そんなことは申すまでもありませんが、これを一文も与えないということは、全く熱意がない。これは大蔵大臣をつかまえて問答しなければならぬので、少しく見当違いかもわかりませんが、大臣は御答弁なさりにくいようですが、ほんとうに閣僚として仲間でお話しなさい。お勧め申し上げます。こういうような認識の足りない予算査定というもので売春防止法の完全実施ということは、木によって、魚を求めることになります。国民は失望します。ほんとうに良心と良識を持った国民は失望しますよ。これを私はおそれます。どうぞこの点は一つよく聞いておいてもらいたい。どうしてこういうことになるんでしょうか。そもそも、労働省の谷野さん、あなたの所管事務ではないかもしれませんけれども、一体、あなたの方で、これは非常に重要であるというふうにお考えなのかどうか。所管局の仕事だかどうか存じませんけれども、どうお考えになりますか。一連の関係のある重用施策であるに違いない。あなたも重大な関心を持っておられるに違いない。どういうふうにお考えになりますか。
○谷野政府委員 売春婦の転落防止、それから保護更生につきまして、私どもの扱っております問題の中で一番大事だと思いますのは、一つには職業によって更生をしたいという人たちに仕事を与えていくことでございます。従いまして、私どもは、職業においてできるだけ更生の道を開くように、婦人少年室の相談業務を通しましてお手伝いいたしておりますが、同時にまた、労働省の職業補導所におきまして、昨年は二百四十万円の予算をちょうだいいたしましたので、この予算で婦人に特殊な職業補導施設を付設実施いたしました。さらに、本年度の予算におきましては、私の所管ではございませんが、職業補導施設といたしまして、一応売春対策経費から落してございますが、労働省全体の予算としては一千万円を上回るものを職業補導施設分として計上しているようでございます。売春婦の更生につきましては、婦人少年局としては、できるだけ職業安定局と話し合いまして、さらにこの補導施設が婦人向きのように実施されますように、お話し合いを進めて参りたいと思います。
○吉田(賢)委員 これは私が申し上げるまでもありませんが、売春の習性のある婦人あるいは転落を防止するために婦人に職業補導をするということは、これらの婦人は特殊な環境にある方でありますので、これは特殊な思いやりと、施設と、補導の能力者、そういうものが完備しておらなければだめなんです。普通のそこいらの職業補導と一緒くたに指導するようなことがあっては大へんであります。そんなことでは目的を達しないことは申すまでもありません。もし予算の流用を許すなら、あなたの方は内部的にいろいろ御相談になって、あなたの所管局は全体の職業補導の予算のうちからお使いになることは絶対に必要でしょう。私も先般売春婦の方々ともいろいろ御相談もし、御意見を聞いてみたのだが、その人たちの心配しておることは、この仕事をやめたら自分たちのあしたはどうなるかということです。自分自身のこともあるが、夫が死んで、残している二人、三人の子供の養育をどうするかということですよ。だから、それに向って与える希望は、生活の能力、経済的な何らかの裏づけ、社会的な保障といったような、生きていくという自信を与えなくちゃならぬと思うのです。生きていく自信はみずからの力ですよ。何か金をやるからというのは人だよりですよ。自分に仕事のできる能力を持っている、それほど強いものはありませんよ。男なら天びん棒をかついでも男一匹生きていきますよ。それと同じことです。かよわい婦人が特殊な環境に一つの習性を作ってしまって、そうしてひしゃっと法律でやられたときに、一体あしたはどうなるか。これに対して希望を与える道は職業ですよ。職業的ないろいろの能力ですよ。その能力を与えるということが私はこの仕事だろうと思う。これを政府は一つもやらない。ほかの方から流用でもしなさいと言っても、本気に考えておらない。これは厚生大臣に聞かなければならない案件でありますので、あなたにお尋ね申すのはどうかと思いますけれども、かかる観点から、この重要性を認識することが政府全体の責任であります。だから私は申し上げておるのです。副長官もこの点はしっかりと推進してもらいたいと思います。あなたは各省のまとめ役になっておられるのだから、大蔵省をひっぱってきて、ちっとおやりなさい。大蔵省を抜きにして、各省の者が協力態勢を整えるといったところが、大蔵大臣、主計局長、主計官というものは、まるで自分は予算を食っても何をしてもいいような錯覚を持っている。これは日本の政府の大きな欠陥であります。だから、権威のある次官会議等によってまとまった意見は、政府の他の者はそれぞれ尊重しなければならぬ。そして、何万ものかよわい婦人が救いの手を待っておるのだから、あたたかい手を差し伸べるという態勢を整えるという道が職業補導の実施であろうと思うのでありますが、実に遺憾です。何かあなたとしてお考えはありませんか。協力態勢を整えるということをおっしゃるだけでは、どうもわからぬ。これをお問い申すのはどうかと思うけれども、もしお答えできたらやって下さい。
○田中(榮)政府委員 私どもの考え方としましては、ただいま仰せのようにできるだけ予算を獲得いたしまして、保護更生の事業を実施するということが建前でございます。しかしながら、必ずしも予算だけでなくて、やはり運営によってこの欠点を救うという手もございますので、すでに予算がかような額しか認められない以上は、これをどのように——さらにわれわれの努力によりまして補てんをしていったならば、ある程度の目的は達成できるであろうと考えておりまするが、なお、本問題の重要性にかんがみまして、さらに今後は仰せのように予算獲得にも関係省と十分協議をいたしまして、所期の目的を達成できますように努力をいたしたいと考えております。
○三田村委員長 神近君。
○神近委員 私は、時間があまりございませんので、質問は申し上げませんで、要望だけを申し上げます。 婦人問題を専念に扱うのは、政府機構の中で婦人少年局だけなんです。しかも、三代にわたる局長が、どうも婦人たちの状態が見ていられないというので、熱心に御活躍になって、いろいろの資料をいただいて、今日ようやく世論の盛り上りにおいてこの法律ができたのでございます。ですから、婦人少年局は婦人たちの更生と事後の措置については一番よく知っていらっしゃるし、一番熱心に今まで調査もし、立案もしていらっしゃるのでございます。その結果として生まれたこの予算が一割に切られたということは、婦人たちが一生懸命騒いでいるのは当り前でございます。各省連絡の衝に当られる田中さんが婦人少年局を中心にして、この施策を遂行していただきたいというくらいに私ども考えているのでございます。特に、この費目の中の(4)(5)(6)(7)というのは、現場で扱っている結果として生まれた立案でありまして、これをほとんどゼロにしてあるというようなことは、私は何としても納得できないことで、これは、行政措置要綱と予算を審議いたしましたときに、売春対策審議会で十一億何がしの予算では足りないということを言い出した人は、今日の政府与党の方々だったのです。それも御承知のはずだと思います。私どもは野党ですから、その点強い発言ができなかったのですけれども、与党の人がこの十一億何がしでは足りないじゃないかということを言って、返上をした予算だったのです。それが今日のこの低額に切られて、田中さんがそれをぼんやりと見ていらしたかと思うと、私は納得ができない。婦人の問題は婦人が最もよく知っているということを御勘案になり、何のために婦人少年局を日本の政府機構の中に置いているのかということをお考えになって、この施策に関する限りは、婦人少年局をもっと重要視して、その発言をお用いになることをお願いしたいと思います。法務大臣はこの立法の衝に当った責任者でいらっしゃいますから、そのことをよく御理解下さいまして、御協力いただくようにお願いいたします。
○三田村委員長 本日はこれにて散会いたします。 次会は公報をもってお知らせいたします。 午後一時十分散会