農林水産委員会 第28号
- 発言数
- 8 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1957/04/16
会議録
○小枝委員長 これより会議を開きます。 新潟県における豪雪による農作物及び農業用施設の災害状況について調査を進めます。この際まず派遣委員より調査報告を求めることにいたします。吉川久衛君、
○吉川(久)委員 私は、新潟県下の豪雪による農林業の被害調査のため派遣せられました委員を代表して、現地の実情並びに調査の結果を御報告いたします。 本調査に派遣された委員は、伊瀬幸太郎委員と私の二人でありますが、地元から大野市郎委員と稻村隆一代議士が参加せられ、四月十一日より十三日までの三日間にわたり、新潟県中央部の山岳地帯を占める南魚沼郡、北魚沼郡及び中魚沼郡下並びに長岡市に参りまして、農林業に対する豪雪被害の実情につき、つぶさに実地調査いたしたのであります。時間の関係と積雪多く通行不可能のために調査できなかった地域で、最も激甚な被害が予想せられる山岳部奥地の事情につきましては、この豪雪の中を危険を冒しておいでいただいた町村の代表の方々多数にお会いいたし、身を切られるような悲痛な実情の説明を承わりましたので、実地調査同様の理解ができたのであります。 新潟県における雪の多い地方は、中部山岳地帯で、われわれ調査班の参りました三郡のようであります。この地方の雪の状態を、海抜二百メートル弱の地点にある農林省林業試験場十日町試験地の統計に見ますと、過去十五年間の平均は、初雪が十一月十九日で終雪は四月十日、降雪日数は八十九日間となっており、根雪は十二月十一日から始まり四月二十一日までの百三十一日間で、雪の中に生活する期間は百六十三日と、半年近い間を過ごすことになるわけであります。降雪量を累計いたしますと、過去十年平均は十メートル十九センチ、最高積雪日は二月二十九日で積雪量は一メートル八十八センチであります。この試験地における豪雪といわれる三メートル以上の積雪を記録した年は大正六年から昭和三十二年までの四十年間に十回を数えることができるのでありますが、そのうち最も大きい被害をもたらした年は昭和十九年から二十年に降った雪による被害であります。この年の降雪量はまことにはなはだしく、累計は実に二十一メートル三センチに達し、平年の二倍をこえ、積雪量も十二月において二メートル三十五センチ、一月は三メートル八十五センチ、二月においては四メートル二十五センチと最高を示し、三月は三メートル八十七センチ、四月は二メートル八十センチ、五月に入ってもなお九十五センチという新潟県積雪史上の新記録を残し、最高積雪量は、平年の二・二六倍に当るほどの豪雪であり、消雪の時期も五月十二日であって、平年より二十二日もおくれたのであります。海抜五百メートル以上の山間地方においては、降雪時期は十日から二週間も早く始まり、消雪時期は反対に十日から二週間おくれることとなり、積雪量も海抜二百メートル地点に比し二倍近い量とされているようであります。この十九年豪雪の年は、政府におきましても、これが対策に非常に熱意を持ち、二百七十万円に上る補助金を支出し、農林被害の防止に努めたのであります。 以上は過去における最大の豪雪被害の大要でありますが、今年の豪雪はその特徴から見て、この十九年豪雪被害を上回ることが予想せられるのであります。すなわち、今年の降雪は十一月下旬から始まり、十二月において十九年の豪雪量より六センチ多い積雪量となり、最も降雪量の多い一月においては中だるみといった降雪量で二メートル二十二センチに減りましたが、二月に入り降雪を増し、三月下旬までに二メートルをこえる積雪となったのであります。三月下旬における三メートル以上の積雪量の年は過去においても五回見られますが、今年の最も特徴とする現象は、消雪速度が非常におそいことでありまして、十九年の豪雪時においては五月一日にいまだ九十五センチの積雪があり、それが消雪したのは五月十二日となっております。今年の積雪を四月十一日現在において十九年の積雪と比較して見ますれば五十センチも多いとのことであります。従って、消雪速度は最も早い年で五二二センチ、最もおそい年で一・七センチとなり、平均三・六センチとなっておるのでありまして、豪雪年の平均融雪量の四・五センチから計算しても五月十五日以後になるのではないかと憂慮されている現状であります。このように、消雪時期がおくれるということは、積雪地帯、特に深雪のこの地方におきましては、消雪を待って行うまきの伐採、桑畑の耕起、蚕の掃き立て、田畑の諸作業等、いわゆる労働のピークが短期間に集中し、またはその消雪の時期によっては同時に重複してくることとなり、従ってすべての作業を完全に行うことは至難で、適期を逸することにより農業生産は著しく減産することが明らかに予想されるわけで、これを防ぐには一にも二にも耕地上の積雪を一日も早く消すことにかかっているわけで、すべての生産量を左右する基本的条件となっているのであります。この消雪の時期により生産を左右される危険下に置かれた積雪耕地面積は、水田十七万七千町歩のうち五万二千町歩、普通畑六万町歩のうち二万九千町歩に及んでいるのであります。 消雪の方法は種々研究が行われたようでありますが、土を雪上に散布するという一見非常に原始的に思われる方法が現在までに考えられた最もよい方法のようで、今なお採用されておるのであります。この効果は、御存じのように、雪の光線反射率は六〇%で四〇%を吸収しますが、一反百貫から百五十貫の黒土をまいた場合、その反射率は二〇%に減じ、八〇%は吸収されることになり、雪をそのまま放置した場合の二倍に相当する融雪効果があるわけでありまして、これにより一週間から十日間は短縮されるので、ほとんどがこの方法を用い、効果も現実には顕著に現われているのが随所に見受られたのであります。積雪地帯は、前にも述べましたように、半年近くを冬眠的な生活に入るわけでありますが、家屋の除雪に必要な者を残して若い者は都会に現金収入を求めて出かせぎに出ているのでありまして、この散土作業を行うとしても人手はなく、出かせぎに行った者を呼び戻すとすれば現金収入の道はとだえ、生活苦に追われる結果となり、国において援助の手を差し伸べない限り実行のできない状態にある農家も多数あるのであります。また、この散土作業は時期を失してはその効果は激減するものでありますし、食糧確保の必要上からしても、政府において緊急に適切なる手を打って万遺憾なきを期すべきであると存ずるのであります。 以上が今年の豪雪の概要と最初に講ずべき措置であります。 次に調査に参りました地域を順を追って簡単に申し上げます。 最初は県境近くに位する湯沢町に参ったのであります。ここは山岳地帯であるだけに、周囲にそびえる連山は白一色でおおわれ、不毛の急傾斜面のみが地はだを見せ、不気味に黒ずんでいたのであります。この山々のふもとの農村は積雪いまだ四メートル以上もあり、部落の中においても二階と同じ高さに雪が積み上げられ、その上を二階を見おろしながら歩行するほどの積雪であって、東京における桜の花の散るような気候の中においては全然想像しつかない深雪に埋もれたままの地方であります。湯沢町の公民館において、この周辺の農村代表の多数の方々とお会いいたし、事情説明と陳情を受けたのであります。そのおもなるものは、積雪期間が百五十日にも達すると、農作物は雪の下で枯れるおそれがあるから、消雪作業を促進するため、国から特段の援助を要望するとともに、土地改良事業の実施も消雪の時期の遅い関係上十一月一カ月のみである、従って残余の分については施越工事を認める等緩和措置を講ぜられたい旨の陳情があったのであります。 次に小出町の県立蚕糸試験場小出支場におもむき、北魚沼郡及び南魚沼郡東部の町村の代表者に事情説明と陳情を受けたのであります。まず場長より養蚕においては、消雪時期のズレのため桑は胴枯れ病の被害三割、枝の折損一割、野ネズミ等の被害一割、計五割が予想せられ、少く見積っても三割は下らないとの観点のもとに三齢期まで掃き立てを延ばすことを指導しているとの説明を聞き、農村の代表よりは、この豪雪を天災と認めて天災融資法を適用し、諸金融等による資金援助を要望され、また農家の建物につきましても、二階建と坪数の多いことを理由に固定資産税が過大に課税されている点を指摘し、積雪地の農家は暖地と異なり、各種物置、仕事場から畜舎までも備えなければならず、また採光の関係で二階建は絶対要件である点をよく理解し、これが減税を行うべきことを強く主張していたのであります。また市町村の道路除雪等公共的な費用については、特別交付金で見るべし等の意見が述べられたのであります。 この小出町は、山奥に只見川の電源開発事業場に通ずる道路が町の中央を通っている関係上、道路は除雪されておりましたが、それは町中だけであって、一歩町を出れば丈余の積雪が万物をおおい消雪日の予想だにできない現状であります。 明十二日は十日町にある農林省林業試験場十日町試験地に歩を伸ばしたのであります。この試験地は十日町の郊外にある海抜二百メートルほどの高地上に建てられておりますので、われわれ一行は雪の行軍の身支度をして、相当の傾斜と二メートル近い積雪道を登っていったのであります。歩き固められた雪の上を歩けば足をすべらし、それからはずれれば足一ぱい雪にめり込んでしまう、心身ともに疲れる道を三十分近く歩き、やっとの思いで試験地にたどりついたのであります。技官の説明によれば、いまだ積雪が多いため雪の中に埋もれていて、その被害は大して判明していないが、消雪するに従ってこの辺一帯の森林は幼齢樹において三割以上は倒伏か折損の被害を受け、五十年から六十年にも達する杉においても二割近くは枝折れとか幹の先折れがあり、この辺はたんす用のキリ林の多いところであるが、キリ、桑は野ネズミのため表皮をかじられて、ほとんど傷ついているとのことであったのであります。雪が樹木に与えた被害を雪に足を奪われながら見て回りましたが、杉は直径十センチ程度の幹がむざんにも折れてしまっているものや、幼齢樹が雪の中で倒伏しているのがよくわかったのであります。このように倒伏、折損等の損害を受けた樹木のうち、幼齢樹の三割程度は成長不良ながら回復の見通しはあるが、残りの七割程度は手の施しようもないとのことであります。 次に十日町市役所において十日町地区雪害対策協議会の方々及び付近の部落代表五十名ほどの方々と懇談いたしたのであります。この地区は耕作平均面積は五反余であるが、集約酪農地帯の指定により酪農民が多く、この農民は酪農事業を本格的な軌道に乗せるために牛乳の処理場の建設と、冬季間は肉牛の搬出も不可能であるため、搬出までに飼育する共同畜舎の設置のための国からの援助を、また課税問題についても、乳牛一頭につき乳二十五石分の課税をすることになっているがこれを免除されたい等が述べられたのであります。 最後に長岡市に参りましたが、ここはほとんど市街は除雪せられ、市外においてもせいぜい尺余の雪を見る程度の平坦地であります。まず雪の博物館を尋ね、雪の伸縮、毛細管作用による吸心力等の働きによって、直径五センチもある六尺くらいの長さの鉄の棒があめのように曲ること、その他の数々の研究資料を見、雪についての統計を説明願い、雪の力の大きいのに驚いたのであります。 次に農業試験場に行き、保温折衷苗代による健苗育成とこの地方における方法について現地調査を行い、またこの試験場で寒冷地に適する稲の品種、農林一号を作り出したこと及びその後の適応種子の研究について説明を聞いたのであります。 市役所において長岡市、栃尾市、見附市及びその周辺の方々と懇談し要望等を聞いたのであります。この辺の山岳地帯は、山古志村長の説明によれば、冬季間は積雪のため家屋に閉じ込められた生活で、屋根の除雪作業を仕事としているような状態ではあるが、融雪時においては非常に忙しくなってくる。しかし積雪が多いためになだれ等の危険が頻発する、この危険を防ぐため、部落民は独力でトンネルを六本も掘った、長いものは五百メートルもある、いまだ部落と部落を結ぶ道路の中に危険でトンネルを必要とする個所が相当残っている。このような僻遠の地の道路は、経済効果が低いから補助の対象とならないように聞いているが、何とか援助の道を開いてほしいと、道も満足に整備されていない山間の農山村、そして非生産的な半年にわたる雪の中の生活、その上豪雪等による農作物の減収、施設等の被害、常にこれらの悪条件と戦いながら増産に努めている農民に対し、心から同情すべきものを感じたのであります。 以上をもちまして一応現地調査の報告を終ります。 最後に、この豪雪により受けるであろう生産の減少と被害の防除についての措置及び要望を総括的に申し上げます。一、散土し、耕地上の消雪を促進することは、適期作業確保上の根本的施策であるので、この消雪促進経費の二分の一補助として四千九十一万一円、二、水稲の育苗並びに移植の遅延による減産を防止するために保温折衷苗代の普及をはかる、その経費の三分の一補助として一千七百六十万円、三、山岳地帯は保温折衷苗代をもってもなお四割程度の苗不足を生ずる、これに対処するため委託苗しろを含めて予備苗しろを設ける、その経費の二分の一補助として四百八十五万円、四、雪解け水による灌漑水温の低下のため、稲の成長不良を防ぐに必要な水温上昇に使用するビニール分散板を設置する、その経費の二分の一補助として三千四十五万円、五、消雪とともに諸作業が集積、競合して農作業の遅延を来たすおそれがあり、水稲は特に田植の時期が生産を支配する要件である点等からして、整地作業には動力耕転機を活用する、その経費の二分の一補助として一千五百七十五万円、六、豪雪の年における消雪後の急激なる気温の上昇は水稲の軟弱徒長を助長するとともに稲熱病の多発が考えられるので、これが防除のために器具、薬剤等を購入する、その経費の二分の一補助として九千五百六十五万円、そのほか桑園樹勢回復用肥料代二分の一補助として一千五百九十二万円、豪雪から起きた胴枯れ病、鼠害、折損等の被害のうち改植を要するための経費の二分の一補助として九百六十四万円、県及び市町村指導費の二分の一補助として二百五十万円以上が県当局の要望事項であります。 繰り返して申しますが、これが対策は一刻を争う問題であります。せっかくの措置も時期を失してはその効果は激減するのであるから、予備金等により必要経費に対する補助金を早急に支出し、それぞれ適切な豪雪対策を講ずべきことを調査班の結論として申し上げ、報告を終ります。 報告を終りまして、一言私としてつけ加えておきたいことは、私は長野県の出身でございまして、長野県にも相当の雪害はございますけれども、今回一行の委員諸君と現地をつぶさに踏査いたしまして、早くより本委員会において、山形県出身の松岡先生が、この雪害対策について心血を注いでこの問題の解決に努力をされ、またこの対策を確立するために非常な努力を傾けられ、もうこの委員会で声涙ともに下るような御熱意を傾けられたのでございますが、はなはだ私が申しわけないと思っておりますのは、その松岡先生の御主張に対して、それほどの認識を持たず、すでに故人になられた松岡先生に対して、非常に相すまなかったと今深く後悔をしているような次第でございます。この文字通りの積雪寒冷単作地帯に対して、政府はもっと現地の実情を認識され、思いを新たにしてこれが対策を確立されることを要望いたしておきたいと思います。 以上をもちまして私の報告を終ります。(拍手)
○小枝委員長 この際官房長にお尋ねいたしたいと思いますが、さきに農林省といたしましても係官を派遣されて、この現地の豪雪状況を視察になっておるはずでございますが、幸い対策が立てられておるとすれば、この際質疑を続行いたしたいと思います。もしこれができておらぬといたしますと、一つすみやかに対策を立てられまして、審議の促進をはかられるようにいたしたいと思います。一つ官房長の御所見を伺います。
○永野政府委員 本年の新潟県方面におきます雪の問題は、ただいま現地の御報告がございましたように、近年にない非常な豪雪がございました。当然これに対しまして適切な処置をいたさなければ、今後の農作に対して相当な被害を及ぼすことに相なると思うのでございます。農林省といたしましては、現地の情勢が入りましてその直後に、一たん調査員を派遣いたしまして現地の状況を調べて参ったのでございますが、なお重ねまして、今回当委員会の御調査と並行いたしまして関係官を現地に派遣いたしたのでございます。ただいまお述べになりましたように、対策といたしましては非常に急を要するものがございまするので、特に財政当局にもこの実情を十分認識してもらいたいということで、その方面の手も打っておるわけでございます。調査班が帰りまして現地の実情並びにただいまお述べになりましたような各方面の御意見を十分参酌をいたしまして、至急に対策を立てたいと思っておるのでございます。財政当局の方にも現地の実情を十分認識してもらったと思っておりますので、この線に沿いまして具体的な対策を至急にきめまして、当委員会にも御報告いたしたいと存じます。 —————————————
○小枝委員長 それでは次に農業災害補償法の一部を改正する法律案、農業災害補償法臨時特例法を廃止する法律案、農業災害補償法第百七条第四項の共済掛金標準率の改訂の臨時特例に関する法律案、以上三案を一括議題といたし審査を進めます。 この際農業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、さらに詳細な補足説明を求めることにいたします。丹羽農林保険課長。
○丹羽説明員 農業災害補償法の一部を改正する法律案の提案理由につきましては、さきに政務次官より御説明があった通りでございますが、本法案の趣旨並びにその概要につきまして、補足的に御説明申し上げます。 申すまでもなく農業災害補償制度は、現在の農業災害補償法第一条に明記されております通り、農業者の不慮の事故による損失を補てんして、農業経営の安定をはかることを目的といたす制度であり最近におきましては、年年百億以上の国費の支出を行なって参っているのでございますが、必ずしもすべての農家によってこの制度が歓迎せられているわけではないことにつきましては、いろいろ各方面の御指摘もある通りでございますし、また会計検査院等の指摘によりますれば、運営の実態は必ずしも法律の規定通りに運用せられていないという、まことに遺憾な事態となっているのであります。このような事態がよって来たりますところはきわめて深く、その改正の方策につきましても、複雑かつ困難な諸問題がございまして、この制度の改正は慎重な検討を要することはもちろんでございますが、事業運営の現状から考えまして、制度の改正の日時をこれ以上遷延いたしますことは、事態をいよいよ悪化させるゆえんと考えた次第でございます。幸いにこの問題につきましては、昭和二十八年以来各方面におかれまして論議せられまして、ことに衆参両院の小委員会及びこれに基きますところの農業災害補償制度協議会等の御結論もあり、これらの御趣旨並びにその後におきます関係各方面の御意見も努めて尊重いたしまして、さらにまた最近におきます事態の推移をも考えあわせまして、本改正案を立案した次第でございます。 次に法案の内容について御説明を申し上げます。改正案の骨子の第一は、制度内容の合理化でございます。さきに申しました通り、現在の事業運営の実態が、法律の規定とかなり遊離いたしておりますことは、一方には行政庁の指導監督及び事業を行いますところの事業の主体の側に不十分、不徹底な点が多かったことはもちろんでございますが、他面大部分の農家及びその他の関係者の納得と協力を得られまするように、法律制度自体も、農業の現実、農家の実態に即応いたしましたものに改める必要を痛感いたした次第でございます。その趣旨におきまして、従来農家から要望のありました諸点をできるだけ今回の改正に織り込むことといたしたのでございます。 まず引き受け方法及び共済金の支払いにつきましては、従来は一筆反建制でございまして、組合ごとに反当りの共済金額を定める建前になっておりましたために、一つの組合の中では二石とれますたんぼでも、三石とれますたんぼでも、被害の程度が、たとえば五〇%被害というように程度が同じでございますれば、一律に同じ金が支払われるという不合理があったのでございますが今回は百六条及び百九条を改正いたしまして、一筆石建制を採用し、各筆の生産力に応じてそれぞれ異なる量を引き受ける、正確に申しますれば、そのたんぼの平年作におきます収穫量の百分の七十に相当する石数を引き受けることといたしました。これに、組合の定款で定めますところの一定の行当り共済金額を乗じましたものをその筆の共済金額とすることといたしまして、各たんぼの生産力に共済金額を応ぜしめるようにいたしたのであります。さらに実際の被害発生後に支払います支払い共済金につきましては、実際のとれ高が、さきに申しました引き受け石数を下回りました場合に、その下回った石数に石当りの共済金順を乗じた額を支払うというふうにいたして、補償が実際の損害に応じて行われるように改正をいたしました。また、右に申しました石当り共済金額の選択の範囲につきましても、従来は収量区分と申しまして、その村の平均実収による区分、それから危険階級区分と申しまして、その村が属します危険階級に応じて村が選びます反当り共済金額は必ずしも自由でなく、一定の制限があったわけでございます。今回はその収量区分並びに危険階級から課せられました制限のいずれをも撤廃いたしまして、石当り共済金額の七割、五割、三割、二割というもの——米価一万円と仮定いたしますれば、七千円、五千円、三千円、二千円の四者のうちいずれか一つを定款で定めて選ぶことができるというふうにいたしたのでございます。これが百六条でございます。 次に料率の設定についてでございます。従来、同一市町村内では同一の料率を適用して参ったのでありますが、申すまでもなく、市町村の区域の中でも山場地帯と平場地帯とはその被害の態様が著るしく異なる事例も少くないのでございます。いかに共済精神と申しましてもそこにはおのずから限度があるのでございまして、年々かかる状況では低被害の地帯の農家の自発的な協力を期待することが困難なのでございます。今回百七条を改正し、過去の被害実績をもとにいたしまして組合等の区域をさらに幾つかに区分し、それぞれに料率を定め得ることとしたのでございます。なお、在来、都道府県別に農林大臣が示します共済掛金標準率を、都道府県知事の手を経まして十二の段階に分解配分し、県内の市町村はこの十二の危険階級区分のいずれかに属せしめることとしておったのでございますが、改正後におきましてはこの数を増加して十八段階に拡大をいたし、掛金率をなるべく被害率の実態に近づける方法をとる考えでございます。 制度内容の改正点の第三は、組合への当然加入の問題でございます。この制度が農業災害という特殊な災害に対します農家相互の共済制度でございます限り、当然加入の原則がくずし得ないことは申すまでもございません。しかし、その耕作の規模のいかんにかかわらず、いやしくも米麦を耕作する農家はすべて当然加入でなければならないときめますことには弊害が考えられないわけでございませんので、今回は、一定の規模以下の零細な農家につきましては加入、脱退の自由の道を開いたのでございます。従いまして、現行法では、組合員の資格を有しますものは当然組合員となりますと同時に、組合と組合員との間には当然に農作物共済及び蚕繭共済の共済関係が成立するという建前に相なっておったのでございますが、今回はこれを改めまして、組合員の資格のあるものでも、定款で定めます規模以下のものは加入、脱退の自由を認めることにいたしまして、その者の申し込みがなければ共済関係は発生しないことといたしたのでございます。このような諸点に関します改正条文は法の十五条、十六条、百四条、百四条の二、百四条の四、五でございます。同様な趣旨からいたしまして、百四条の五におきまして、当然加入の組合員でありますといなとにかかわらず、共済目的の種類別に見ましてきわめて僅少なものは、その僅少なものについての共済関係を停止することができることにいたしました。たとえば、水稲につきましては、一町歩以上という大規模の農家でありましても、裏作麦の耕作が一反歩以下というような農家には、その麦につきまして共済関係を停止することができるわけでございます。市町村が行います共済事業の場合も組合の場合に準ずるわけでございます。 次に損害評価についてでございます。これがこの制度のかなめをなす重要な問題であり、それだけにその改善策もきわめて困難であることは申すまでもございませんが、この法律改正案におきましては百四十三条を新設いたしまして、損害評価会及び損害評価委員を法定の機関といたしまして、損害評価の衝に当りますこれらの人々の職務内容を明らかにいたし、もってその責任の自覚を促しますとともに、九十八条の三におきまして、損害評価の時期、方法等につきまして、主務大臣が定めます準則に従わなければならないことを定めまして、損害評価の厳正な実行を期することといたした次第でございます。そして、その運用に当りましては、従来農家側から非常に強い要望のございましたいわゆる一律削減の制度を認めることといたしまして、当初組合が共済金を受領する適格者と認めました組合員に対しましては、必ず共済金が渡るというように措置することといたしますとともに、損害評価の事務の迅速化をはかりまして、たとえば、水稲等につきましては、遅くも旧正月までには共済金の支払いを実現し得るように努める所存でございます。 改正案の骨子の制度内容に次ぎます第二の点は、農家負担の軽減でございます。現行法の掛金の国庫負担の方式によりますと、農家と国の負担の割合は、低被害県ほど農家の負担割合が大となっておるのでございます。そこで、今回これらの問題を解決いたしますために法第十二条を改正いたしまして、通常共済掛金標準率に対応します共済掛金につきましても、国の負担割合を在来の三分の一から二分の一に引き上げたのでございます。その結果国は、超異常共済掛金標準率に対応いたしますものにつきましては全額を、通常及び異常共済掛金標準率に対応するものにつきましては二分の一を全都道府県一律に負担することとなったのでございます。この改正によりまして国の負担すべき金額の増加分は年間約四億七千万円程度を予定いたしておるのでございます。 改正案の骨子の第三点は、事業主体の特例でございます。農業災害補償制度の実施主体は、現行法では市町村段階におきましては農業共済組合、県段階におきましては農業共済組合連合会、それから政府の段階におきます特別会計、この三段階になっておりますことは御承知の通りでございますが、この制度が農家のための相互共済の制度であるという趣旨から、現行法では農家の自主的団体でありますところの共済団体がこれらを行うという建前に相なっておるのでございます。しかしながら現在の共済組合運営の実態を見まするに、事業運営の面からいたしましても、また農家の立場からいたしましても、事業主体を変更することがより適切である場合がなしとしないのでございます。たとえば共済の対象となります田畑の面積がきわめて少い組合にありましても、独立の法人であります以上、総会なり理事者を必要とするわけでございます。また専従職員も置かざるを得ないのでございますが、その所要経費を負担する組合員数はきわめて少く、組合員一人当り、あるいは単位面積当りの負担額は過重となりまして、この負担の過重が掛金なり賦課金の徴収困難の原因となりまして、ひいては事業運営の渋滞を来たす結果に相なっている場合もあるのでございます。このような事例は山間地帯の組合ばかりでなく、全国にその例は必ずしも少くないのでございます。このような場合に現実に行われております方法は、役職員の兼任、事務所の併置でございます。現に三十年度末現在で市町村長と共済組合の組合長の兼任しておりますものは約一〇%になります。それから市町村の役場とその事務所とが併置されておりますものは全組合中約二〇%に達する状況でございます。このような実態のもとにおきましては、共済事業の適正な執行と農家負担の軽減がはかられます限りにおきましては、農家から自発的な要望があります場合、共済事業を市町村が行うことはしいてこれを拒むべき理由はないかと考えるのでございます。従いまして共済組合の行う共済事業の規模が一定の基準に達しない場合、その他政令で定めます特別な理由がある場合におきましては、事業主体の変更を認めることといたした次第でございます。その他政令で定める理由につきましては、各方面の御意見を十分承わって検討いたしたいと考えておるのでございますが、以上述べましたところからいたしまして、事業主体の変更によって事業の運営が適正化かつ効率化せられ、しかも農家負担が軽減されるということが事業計画なり共済事業の実施に関します市町村の条例等から十分明らかにすることができることがこういう政令の内容の不可欠な条件ではなかろうかと考えておる次第でございます。事業主体の変更に関します手続につきましても、さきに述べました趣旨から慎重な取り扱いをいたしておるのでございまして、組合の申し出と市町村の合意によりまして初めて都道府県知事に許可の申請をなし得ることとなっております。また組合が申し出の意思決定をなすに当りましては、個々の組合員の意見を十分反映せしめる意味におきまして総会の特別議決を要することといたしまして、総代会の議決でもって総会の議決にかえることはできないことにいたしております。この関係は法の八十五条の二及び三でございます。市町村が行います共済事業の種類につきましては、地方公共団体の性格その他から考えまして、公共的な事業に限る趣旨で、農作物共済、蚕繭共済及び、家畜共済の三者に限定をいたしまして、いわゆる任意共済事業はこれを行わないことといたしました。なおこれに伴いましてこれらの地域の農家の建物共済その他の任意共済の取り扱いにつきましては、法百三十二条の二を改正いたしまして、連合会が共済事業が市町村によって行われております地域の農民と任意共済関係を結ぶことができるようにいたしましたし市町村が共済事業を行う場合におきまして、当然に共済組合連合会の会員になること、それから掛金及び賦課金を徴収し得ること、その他事業運営につきましては組合の場合に準じた取扱いをいたしておるわけでございます。 それから改正案の骨子の第四は指導監督の強化でございます。共済事業の運営が必ずしも適正に行われておりませんことは会計検査院、行政管理庁の指摘にもある通りであり、まことに遺憾であると存じており、また監督の衝にあるわれわれの責任を痛感いたしておる次第でございます。このような事態を生じました原因を深く反省してみますに、一つには戦後の混乱時代に準備の不十分のまま発足いたしました当時の混乱が、今なお惰性として残存して順法意識に欠けておること、それから役職員その他に対する訓練が足りなかったこと、それから行政庁の監督権限が不十分であったこと等があげられると存ずるのであります。従いまして今次改正法案が幸いに成立いたしますならば、拙速をたっとばず、行政庁、共済団体の役職員はもちろん、個々の農家に至りますまで改正の趣旨を徹底的に認識させまして、この法律の施行に対処する観念を根本的に改めたいと一存じておる次第でございます。この法律の施行期日を昭和三十三年一月一日にいたしました理由は、技術的ないろいろの事情のほかに、十分なる準備と啓蒙を行いまして制度の適正な実施をすることといたしたい所存から出たものでございます。 次に監督権限の強化でございますが、もちろんいたずらに権限の強化のみを考えることは厳に慎しむべきだと考えるのでございます。この際必要最小限度の規定を整備することは必要であると考えまして、九十九条の二におきまして、組合段階の会計経理を法律上明確にいたしますとともに、百四十二条の五におきまして報告に基きまして必要措置命令が出せるという規定と、それから事業の適正かつ効率化のために監督命令が出せる規定を整備いたした次第でございます。現行法では必要措置命令につきましては共済団体の業務または会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分または定款に違反すると認められた場合におきましても、検査を行なったあとでなければ発動することができないことになっておったのでございます。今回は報告を徴しました結果、右の事実が明らかでございますれば、あらためて特に検査の終了まで待つ必要もなく、またそれでは時期を失することも考えられますので、以上のごとく改めた次第でございます。 次に監督命令でございますが、現在必要措置命令は、さきに述べましたごとく法令または定款違反等の場合にのみ発動できるのでありまして、その必要を認めましても不適当な行為につきましては発動できないわけでございます。たとえば当然免責すべき事由があるにかかわらず、組合の理事者が免責を行わないというような場合その他につきましては、在来は方法がなかったのでございますが、今回は監督命令を発し得ることとなるのでございます。従来の必要措置命令と異なりまして、あらかじめ検査手続を要しないで不当な共済金支払いの一時停止、もしくは支払い方法の変更、その他緊急措置をとることも可能となるわけでございます。なおこの監督命令に共済団体が違反いたしました場合には、行政庁は当該団体の役員の一部または全部の改選を命じ、またはそれに従わない場合は役、職員を解任することができることといたした次第でございます。 以上で本法案の概要と趣旨の補足説明を終ります。 次に、農業災害補償法第百七条第四項の共済掛金標準率の改訂の臨時特例に関する法律案につきまして、その概要を御説明申し上げたいと存じます。農業災害補法第百七条第四項の共済掛金標準率につきましては、五年ごとに改訂することとなっておりまして、水稲と麦につきましては、ちょうど本年が改訂期に当っておるわけでございます。そこで本来ならば本年度におきまして共済掛金標準率の改訂を行わなければならないのでございますが、先ほど御説明申し上げました通り、農業災害補償法の一部を改正する法律案によりまして、昭和三十三年度から引き受けの方式の変更、すなわち一筆反建から一筆石建に改めますことと相待ちまして、従来同一市町村には同一の共済掛金標準率を適用しておりましたものをより個別化いたしまして、市町村の区域をさらに幾つかの区域に区分いたしまして、その実態に応じた共済掛金率の設定を行うことといたしましたので、この制度の改正が実現いたしますれば、新しく共済掛金率を設定いたさなければならないのでございます。 そこで本年度改訂を行いましても、また来年度において新しい共済掛金率を設定いたさなければならないことになります上に、料率の個別化の準備作業は、できますことならこの五月、六月ごろから着手いたしたい所存でございますので、末端での混乱を避ける必要もございますので、この際は料率改訂を一年延長することといたした次第でございます。 最後に、農業災害補償法臨時特例法を廃止する法律案につきまして、その概要を御説明申し上げます。 農業災害補償法臨時特例法は、昭和二十七年の六月に制定されまして、これに基きまして、五カ年間を試験期間としまして、水稲と麦につきまして全国から五%程度の組合を選定いたしまして、農家単位の共済事業を行なって参ったのでございます。この農家単位共済につきまして、事業発足当時は全面的にこの方式に移行するという考えも相当あったのでございますが、現在までの結果によりますと、これを実行いたしますと、共済金支払い対象農家が、現状に比しまして著しく減少いたして参ることと相なるわけであります。また経営規模の大きな農家に対しましては、当然共済金を受け取る機会が減じますので、料率の面でか、あるいは払い戻しの面でか、何らかの特別の工夫研究を要しますことが明らかになって参りました。農単方式の料率の算定そのものにつきましても、なお検討を要しますことが多々あることが明らかになりました等の理由によりまして、この制度はいろいろの利点は確かにあることはあるのでございますが、今直ちにこの方式に移行することは無理かと存じましたので、予定されました試験期間の満了に伴いまして、同法の附則二項及び三項によりまして、この法律を廃止し、必要な経過措置を定めることとした次第でございます。 以上が三案につきましての概要でございます。
○芳賀委員 ただいま補足説明のありました農災法関係三案につきまして、資料の要求をします。今保険課長から説明されたその内容は、審議上非常に参考になると思いますので、その説明の要旨を資料にしてすぐ配付していただきたい。もう一つは、農災法の臨時特例法を廃止する法案が出ておりますが、五カ年間にわたる農単方式をとった経緯、運営の内容とか、いろいろの長所あるいは欠点等があると思うのであります。その五カ年問の業績の内容を、できるだけ数字等に基いた資料を整えて提出してもらいたいと思います。
○小枝委員長 それではただいま御要求の資料について、すみやかに御提出あらんことを要求しておきます。 それでは暫時休憩いたしまして、午後は一時から審議を続行いたします。 午後零時八分休憩 ————◇————— 〔休憩後は開会に至らなかった〕