社会労働委員会 第46号
- 発言数
- 89 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1957/04/26
会議録
○野澤委員長代理 これより会議を開きます。 都合により委長長が不在でありますので、私が委員長の職を勤めます。 労働福祉事業団法案を議題とし、審査を進めます。質疑を続行いたします。井堀繁雄君。
○井堀委員 ただいま議題に供されております事業団法について二、三お尋ねをいたしたいと思います。この法案の内容についてまずお尋ねいたしたいと思いますが、説明の際第一にあげられました、この団の基礎構成をなす資本内容が、説明によりますと、現在労災関係、失業保険関係の国ないし地方団体の保有しておる現物を出資して一応の基礎をお作りになるという考えのようでありますが、この種の事業の見通しの上にこの問題がわれわれにとりましては重要な判断の資料になるわけでありますが、労災関係よりはむしろ失業保険関係の事業、職業補導のごとき、あるいは簡易宿泊所ということにはなっておりますけれども、この種の事業というものが将来もっと徹底的な拡大強化が迫られてくる客観的な諸情勢をいろいろな理由によってわれわれは把握することができると思うのであります。でありますから、その発生当時に手持ち財産を基礎資本として発足するということについてはわれわれ事情はよくわかるのでありますが、将来そういう資本がだんだん増大されてくるということは以上の理由から十分考えておかなければならぬ問題だと思うのであります。その際に問題になることが二つ、私がはっきりただしておきたいと思うのは、一つはどういうわけで労災関係と失業保険の二つの中業を一つの団体の中にまとめようとしたのかということ。これは考え方においては全く異質なものであります。異質のものを一つの事業にまとめるということは、今後この種の事業発展の上に問題が起ってくる。それを資本の上で考えてみますとすぐおわかりのように、医療施設と職業補填のようなものを同一のもとに運営させるということは問題があると思う、それからもう一つ別な角度から言うことができますものは、もっと大きな構想で考えることができるということであります。それは言うまでもなく被用者、雇用関係のもとにある労働者のこういう類似の施設がかなり現存しておるわけであります。また将来ますますふえてくると思うのであります。そういう全体を網羅して、労働者の福祉のために適切でしかも合理的な経営のできるようなこういう事業団を作ることがあるわけなのです。でありますから、そのいずれかにはっきりしていくべきだと思う。同質のものを統括していくという考え方、もっと大きな見地から勤労者の福祉全体を、類似性のあるものを少し幅広く集めてやっていくという考え方がある。これはどちらにも属しない、まことに小規模で異質なものだけを拾い集めたという感じがいたすのであります。最初にこういう二つの事業に投資してあるものだけを出資金にして出発しようということだが、それからだんだんに拡大していくというのであれば、どの方向に拡大していくのか。やや専門的なものに深く掘り下げていいものにしていくという行き方でなく、間口をうんと広げて大規模のものを将来育成していく、そういう考え方がこの資本の一番最初のここで考えてこられるべきものだと思うのです。この点については、どういう構想のもとにいくか、またこういう現物だけを出資して最初いく場合にはどういう関係になるのかということが、法案を読んでも説明を聞いてもはっきりわかりません。この点に対する見解を伺いたい。
○伊能政府委員 まことにごもっともな御意見だと思います。そこで第一の問題ですが、御意見の通り労災と失業対策と全然違う異質なものを集めた事業団であるということについては、私どもも認めておる次第であります。ところがたまたまこれが労働大臣の管理下にあるわずか二つしかない特別会計のその一つ一つであり、労働省に両方ともある。また労災病院と総合職業補遺所、これが両方とも特別会計のものでありながら、その運営の責任があまり適切になっておらないというような問題がありますので、これを両方ともおのおの別な事業団にすべきであるという考えも当然あったのであります。しかし事業運営という観点から見て、同じ労働大臣の管理下にあるものであり、労使関係ことに労働者と非常に関係の潔い施設であるというような共通点も多分にありますので、これを適切かつ能率的に運営していくためには、一つの事業団で経営はやっていけるという結論のもとに、こういうような案になった次第であります。 なお今後の発展の問題につきましては、労災病院は、この前滝井委員にお答えをいたしたのでありますが、その設置の基準は、工場労働者の密度の関係、他の公的医療機関との配置の関係等も勘案して行いますので、おのずとそういう面から制約されますから、今後数を多くふやすというようなことはあまり望んでおりません。むしろ今後は今まである二十四のものを充実させるという方向に向くであろうと考えております。総合職業補導所の方は、今二十三カ所ばかり開いておりますが、非常にこれを希望する面もありますので、特別会計の経済の状況によりまして、それらの希望を見合い、また必要性をにらみ合せまして、数もふやすとともに、当初希望しております多角的な高い見地に立った失業救済、失業防止という上から見ての職業訓練、職業補導、さらにこれを完全雇用に結びつけまして、非常に高い立場の総合的な職業補導をやっていきたい。従ってこの方面におきましては、質においても量においても、今後特別会計が許せば、増加していくというふうに考えております。 そこで労働者福祉全体の問題として、もっと大きな構想ではどう考えるかという御意見のようでありましたが、この問題につきましては、別に研究をいたしたいと考えているので、一応とにかく現在行なっており、さらにこれが発展すべき傾向にある労災病院及び総合職業補導所、この現在特別会計で、行なっているものを一応ここにまとめて発足したいという考え方であります
○井堀委員 そういたしますと、二つの理由が明らかになったのであります。一つば労働省の所管というワクの中でお考えになっている、次は労働者の福祉増進という上からいけば共通性あるという、広い意味の基調の上からものをお考えになっているようであります。そこでこれは国会の立場から、国民の立場からまた労働者の立場から判断しますと、一応内閣としてこういう法案をお出しになっているのでありますから、労働大臣の行政上の狭いワクにこだわるべき事柄以外の事柄ではないかと私は思う。このことを誤まると、法案全体が、たとえば角をためて牛を殺す結果になる。よい目標を選びながら、結果は逆なものになる危険性があると思う。労働者なんという行政的なわずかなワクにこだわったたために、終生ぬぐうことのできない大きな欠陥を露呈してくるおそれがこういうところにあるのではないかという心配があるわけであります。それで今のあなたの御説明によりますと、所管の関係であるようでありますが、この点については、私は大臣でも次官でも、その点でもう少しはっきりお考え方を伺っておきたいと思うのは、これは全く異質のものなんです。労働行政という専門的な行政面から見ましても、しかも施設、資本の内容から見ていきましても、またこの団の主たる業務内容からみえていきましても、遠い将来はわからぬとしても、当分の間、現在においては医療施設の管理と運営、他方は職業補導のようなもの、そういうものを一つにして団を作るなんということは、よほどこれは労働行政の専門的な立場からお考えになっても大きな矛盾をお感じになるのではないかと思うのであります。この点について私はいろいろ士伺いをいたしたいと思うのです、第二の問題は行政庁の何といいますか、ワクの中でもしこの問題が懸念されるのでありますならば、私はこれはもう少し閣議で御検討願いたい。また御検討されたとするならその経過について伺ってみたいと思うのであります。一応医療設備のようなものを、不十分な点をもっと充実していこうというお考えであるならば、そういうお考え方をもう少し伸ばす必要があるのではないか。この点に対する一つ御意見を伺ってみたいと思います。これは滝井さんがお触れになったかもしれませんが、所管が厚生省になったり、他の省に来たがるというようなこと等は、一応政府として考える場合には、処理の仕方はいろいろあると思うのです。こういう団を作るのでありますから、団を労働大臣と厚生大臣――大蔵大臣と協議をするような事項もあるくらいでありますから、厚生大臣と協議をされてもいいでしょうし、あるいはこれを総理庁に移したっていいじゃありませんか。そういうことはそうこだわるべきものじゃないという前提でお尋ねするのであります、たとえば健康保険、日雇い健康保険、厚生年金保険、船員保険、それから同じ仕事をやっております国家公務員の共済会あるいは公企業体関係の職員の共済会、市町村職員共済会、それから私立学校職員共済会、町村職員の恩給組合、それにここにあげております労災保険の関係のほかに、またたとえばけい肺法に関係するようなこともこの中で考慮さるべきものかもしれないが、こういったものを網羅して、そして一つのこういう機構をお考えになるというのであれば、これは一つの考え方だと思うのであります。それから他方非常に今後重要な役割を待つと思いますのは職業補導であります。これはもう私は日本経済の一番切実な要請の一つになってきておると思うのであります。労働者の資質を急速に引き上げていく、それを計画的に実施していこうとすれば、もっと国がここに力を集中しなければならぬと思うのであります。そういう仕事の中で、たとえば同じ労働省の所管の中で技能者養成、これが基準監督署の所管。それからこの国会でも衆議院でせんだって議決が満場一致で行われておりますが、文部省所管になっております職業教育の問題あるいは社会教育の問題、特に新しい教育基末法の精神というのは、形式的な学問、公式的な学術を教えるというよりは、国民の福祉、国民経済に直ちに役立つような教育を実施するということはあまりにも明瞭であります。こういう点からいてっも、私は職業補導というようなものは単なる失業保険の補助的な機能としてやるのではなくて、もっと日本の産業政策、経済政策、労働政策の総合的な基盤の上にこういう問題を取り上げなければならぬ時期が来ていると思う。これはかって予算委員会で企画庁の長官に対して、あるいは総理に対して質問したのですが、この私の質問に対して全く同感の意を表された。そういう際に、こういうものに小さくこじんまり固めてしまうということは、私は非常な障害になると思うのであります。これに対して十分考慮が払われていると思うのでありますが、この辺に対して一体閣議ではどのように御検討なさったのか。労働省の立案を事務的に閣議にかけて出されたというのであるかもしれません。そうだとすれば、これはなかなか問題が多いと思う。この点に対する詳しい経過を一つ伺っておきたいと思います。
○伊能政府委員 先ほど申し上げましたように、労災並びに失業保険と、この二つだけ取り上げてやったということは、どこまでもただいま現に行なっていることをもう少し計画的に、しかも能率的に、責任を明確にしてやっていきたいという一応の考え方から出発した当面の便宜的な手段としての問題であったのであります。ただいま他のいろいろな病院、社会保険のあるいは共済保険関係のいろいろな病院があるではないか、そういう問題もあわせて考えたかという御質問でありましたが、それらの問題はこれを各省と打ち合せる段階において、あるいは最終的に閣議においても、それぞれ町題にもなって参ったのでありますが、とにかく今やっていることはあまり責任が明確でないし、労災協会というものに一方はやらせ、一方は特別会計の政府の事業をそれぞれの具にやらせる、あるいは県でない財団法人にやらしているというようなやり方は適当ではないから、これを合理化し、能率化し、責任を明確にするというだけなんだから、これはまあよかろうというような結果になったのでありまして、今お話しになりましたような総合的な、あるいは大きな立場からは今後十分研究しなければならないことであると考えております。またそういうことで、これが各方面の了解もついたわけであります。なお職業補導所の運営につきまして、文部省あるいは同じ労働省の中においても安定局と基準局との関係等、そうした問題が多々あります。一応は今までやっておった総合職業補導所、この事業を一応引き継ぐ。しかし総合職業補導所の機能というものは、これはどこまでも衆のやっている職業安定所に付属する補導所とか、補助事業である職業補導所とか、それ以上に非常に高い立場から、ただいま御意見のありましたようなことを総合職業補導所でやっていきたい、なお基準局関係の技能者養成の問題は当然一緒に考えたのでありますが、これは主として、補助事業として、民間の業者がやっていることでありますので、これの場所として、また同町に講師というようなものについて、この総合職業補導所が場所、講師を提供して委託的な訓練を行うということが総合職業補導所の大きな使命である、かように考えて運営していきたい、こう思っております。従って御意見にありましたようなことがこの総合職業補導所の中心として発展していく、また発展さしていきたい、かように考えておる次第であります、
○井堀委員 これはよほど考えなければならぬ問題だと思うのであります。そこで、これはちょっと私の邪推になるのではないかと思いますが、そうでなければ非常に仕合せだと思います。とかく労働省という役所は仕事柄からいってこういうお仕事にタッチしている方には非常にお気の毒なことが多いと思います。ことに資本主義経済の旺盛な時代こおける労働省の役割というものはなかなかむずかしいと思うのです。それだけにそういうところでお仕事なさっておる方の立場というものに対して国会は十分行き届いた判断とそれに見合うようないろいろな処置を講じなければならぬ立場にあることはよく承知しておるのであります。しかし結果は政治力によって左右されるわけで、二大政党の場においては政党の持つ性格なり政策によってあらかじめ明らかな事柄であります。しかし今日二大政党の形を一応整えておる現段階において政策上共通性のある点で問題をさばいていくという一つの限界がやはりあるわけです。その限界の中で私は議論をいたしたいと思うのであります。そこで、それが自民党であろうと社会党であろうと必ず問題に当面し、その処置を労働省のような行政機関に強く要請してくる問題は、先ほどもお尋ねをいたしましたように、職業補導という一つの表明をされておりますけれども、この問題については労働省全体の問題として取り上げなければならぬ、いや国全体の問題として取り上げなければならぬ。この次の国会あたりにはこれは大きな政治問題になって出てくると私は思うのです。またそうしなければならぬと思うのです。というのは、一応日本の経済が小康を保つことができて、これからはその状態の中から飛躍をし、発展をしていかなければならぬことは、日本の民族のすべてが希求しているところだと思うのであります。イデオロギーや政策の立て方の違いは両政党にあったにしても、この大眼目については共通性があると思うのです、その場合に、どちらの立場から判断しても、労働省の一番大きな役割はやはり労働資質の向上と労働力の保護ということに帰すると思うのであります。私は、これは非常に急速に成長し、要請されてくると見るべきだと思うのです。それはどなたでもおわかりになるように、日本経済を急速に発展させ、あるいは飛躍的に成長させようとすれば、貿易に依存する以外にない、現状を維持する上にあってすらもそうであるのでありますが、飛躍的に発展をさせ、国民の福祉をできるだけ早く増進していくという必要性からくると、やはり世界の公正な競争の中で日本の経済の繁栄をはかる以外はない、この点は一致すると思うのです。その場合に、いろいろな論議がそこから起ってくるのであります。基本的なものとしては、実例を見ればわかるのでありますが、アメリカのように物量とあれだけの大きな領土と資源、いろいろな好条件を背景にしても決して量産では勝てないということを考えておる。やはり国内消費の問題については量産でいい、当分の間は国内消費の増大によってアメリカの経済というものはある程度繁栄を維持することはできるでしょう。しかし遠い将来になると問題になるということはアメリカでさえ考えておる。日本の立地条件というものやあらゆる点から総合してみて、問題はここに集約されてくる。そうすれば、あらゆる悪条件を克服して前進できる道は、日本の労働者の資質、しかもそれはただ個人々々の資質を引き上げるということでなくて、組織的な人格を認めて、その組織的な生産力――近代生産は、今後の競争の点で出てくるのは、言うまでもなく労働者個人の資質を引き上げることとその人格を尊重することも大切でありますが、さらにこれが組織的な人格として、組織的な労働として活用されなければ、今後の激しい世界の競争に役立たなくなるということはあまりにも明瞭な事実であります。しかし残念ながらこれに対する政策というものが生まれていないということは、われわれみずからも責任を感ずるわけであります。この要請が急速に出てくるのでありますが、その際にこの法案というものが非常にじゃまになると私は思う。ここをよくお考えいただいておらないといけないと思うのであります、以上のような点は私がくどくど申し上げなくてもおわかりでしょうけれども、こういう状態の中で、今可能なる行政機能、また既存のあらゆる制度を清川するということになりますと、労働省の中の技能養成の問題と職業補導の問題とは歴史的な事情は違いましょう、その目的も異なっておりましょうけれども、今言ったような客観的な諸情勢から要請してくる労働の資質を向上するとか、あるいは労働者の人格を尊重し、かつ組織的な労働力を経済の中に生かしていこうという政策を必要とする場合においては、私は失業保険のわき役として成長しております職業補導では役立たない。あまりにも問題が極限されておる、それから基準監督署が徒弟制度の廃止に伴う養成に何とか糊塗的な手段として今やっておるが、これはもうほかの方からも要請が出ておる。技能養成の問題ついてはもっと総合的なものにしなければならぬということは、これはそう大局的な見地じゃなくても、実際上の問題として強く要請されてきておるのであります。だから、そういったような問題があるときに、これをこう事業団の中に隔離してしまうようなことになりますと、これは非常に重大な事柄に逢着せざるを得なくなると思うのであります。この辺に対して労働省はどうお考えになりますか。そういう心配がないというなら、われわれの納得できるような説明をここに求めなければならぬと思うのでありますが、この点いかがですか。
○伊能政府委員 労働の資質の向上を期さなければ、日本の今後立つべき経済の拡大に応じられない、そして技術をもって立っていかなければならないという御見解、これらの高い立場からの御見解に対しては全く同感であります。しかしこの法案がこういう大きい立場から行う職業補導、労働者の資質向上ということについてマイナスになるのじゃないかという御見解に対しては、私どもこの法案がそういうじゃまになるとは毛頭考えておらないので、少くとも数歩進み得るものであるという考えでこういう法案を出した次第でありまして、なるほど出発としましては失業保険の特別会計から出発した総合職業補導所ではありますけれども、その総合職業補導所の構想は、当然今井堀委員がお述べになりましたような事柄をねらってやったことでありまして、さればこそ一般会計からも相当補助のある特別会計の付帯事業として行なってきたわけでありまして、その出発についてもっと高い立場から出発すべきでなかったかという御意見は確かにごもっともではありますけれども、今日実行してきておる、また今後実行しようとするところの総合職業補導所の考え方というものは、井堀委員のお考えになっておるようなことをねらってやっておるのでありまして、これをこの事業団に行わせることについて適当でないということは私ども考えておらない次第でありますが、なおこれらの点につきましては十分御意見を拝聴いたしまして、私どもとしては今お考えになっておるような方向にこの総合職業補導所を運営していきたいと考えておる次第であります。
○井堀委員 これは非常に基本的な問題でありますだけに十分説明を願いたいと思うのでありますが、時間の都合もございますので、具体的なものをお尋ねしながらこういうものに対する御答弁を伺います、この団がそういう客観的な諸条件に見合うようないいものになるか、あるいはこれが障害になるかということは次のことで明らかになるのじゃないかと思います。この団の資本の構成は先ほどお尋ねいたしたように労災関係約五十億くらいですか、それから失業保険関係のものが十五億くらい、それに地方自治体がどれくらい出しておるか知りませんが、大したものではありません。そういうものを寄せ集めて資本金を見積るわけであります。それだけのもので合理的な運営をはかろうというのでありますが、問題はあるようであります。役員の構成を見ましても、理事長一人、理事四名監事二人、これが労働大臣の指揮命令で監督を受けながらやっていくということでありますから、一応特殊法人にはなっておりますけれども、実際上は労働大臣の手足として使われるべき形になっておる。今の労働省の機構を見ても、幾つか局があり、それぞれ手分けして専門的に仕事をなさっておいでになる、どういう有能の士が理事長に迎えられるか、どれだけ手腕のある理事が選ばれてくるかわかりませんけれども、そういう人々は、この法律でいう範囲内で労働大臣を助けあるいは指揮監督のもとにこの事業を運営するというのでありますから、幅はきまっておる。現状よりこの点は後退です。労働者災害補償関係の療養施設の問題などについても、従来より別に内容を変えるわけでも何でもありませんから、その上に四人の理事と理事長が乗っかっていくというだけの話だ。極端な言い方かもしれませんけれども、四人の理事と二人の監事と一人の理事長が新しく浮び上ってくるだけです。こういうものをむやみに作ってこげつかせるということではいけない。一方では行政機構の整理をやっているときでありますから、そういうポストを作ることは問題でしょう。失業対策事業としては確かに意味があるが、しかしそれも四人か五人の職員が採用されたというだけでそれを失業対策とはお考えになっておらないと思います。職員構成ですぐわかるように、理事長は労働大臣の任命した者でありますが、四人の理事については、理事長が選考されて大臣の許可を得るということでありますから、ここら辺に問題が出てくると思います。労災関係については言うまでもなく工場法からずっと尾をひいてきており、労働者の保護立法の一番古い歴史を持っておりまして、労働力の保全という点からいって、国が国民に対する最も重い義務の一つであります。工場法の中に公傷といって職業病や業務のために傷ついた者に対して保護を与える特殊の施設がありますが、こういうものに対しては、一般の医療機関と同一に扱うことがいいか悪いかという問題もありましょうけれども、こういったものと、それから滝井さんのような立場から御質問がありましたように、そういう特殊性はあるけれども医療それ自体は科学性を持つものではっきりしたものでありますから、まさかけがしたところにヨードチンキを塗りこうやくを張るのと違いがあるはずで、やはり必要な治療が行われるでありましょうけれども、大事なことは公傷病によって生ずるものでありますから、この点について一番大事なのは、先ほど私は組織的人格ということを申し上げた。傷ついた個々の労働者の人格に対しては、その個々の労働者の主張はなかなか困難なんです。そこに近代社会における組織労働が非常に強調されておるのです。言いかえますと、民主的運営を高度につり上げなければならぬ一番大切なことなんです。この機構を見ますと、どこにも組織的な労働者の人格が反映するところはありません、その発育の機会さえありません、この点に対する何か適切な方法があるなら、一つ御説明を伺っておきたいと思います。
○伊能政府委員 この構想をもちまして、当時これを三つの審議会に諮問しておるのであります。それは労働者災害補償保険審議会、それから中央職業安定審議会、それからもう一つは社会保障制度審議会、この三つの審議会にこの案を御相談いたしまして、いずれも適切であるという御回答を得たのでありますが、そのうち前二者である労働者災害補償保険審議会及び職業安定審議会、この両審議会は、適当であるけれども、その企画並びに運営の基本の問題については当審議会に相談しろ、こういうことを言っておりますので、この問題については十分今後この両審議会つまりいずれも三者構成の審議会でありますが、それに御相談をするつもりでおりますし、職業安定法並びに労働者災害補償保険法、この中の条文にもあります重要事項というふうに考えまして、この三者構成の二つの審議会には必ず御相談を申し上げる、こういう考えでおります、法文の上ではこの問題は出ておりませんが、運営の面では必ずこれは実行するつもりでおります。
○井堀委員 運営の上でどんなにりっぱにおやりになろうとしても、この法律の小に明確に出さないということは、それは国会の答弁にならない。特に先ほど冒頭に申し上げたように、行政措置というのは内閣の性格によってずっと幅を見せてくるものです。法律はそれで設けてある。社会党が政権をとっても、何でもかんでも資本主義を捨てて社会主義でやることは許されない。法律の限界がある。こういうものはそれをはずしては法律になりませんし、そこに大事なところがあるのであって、私が伺いましたことは、四人の理事さんのうちに一人は先ほど言った組織的労働者の人格を反映するようなものを選ぶ。あるいは労災保険は雇い主が一部経済的負担と義務を負うのでございますから、その発言も認められるということもあるかもしれません、あるいはこういう病院については、科学的な知識を持った者が要るかもしれません。職業補導なんか最も広いと思いますがね。こういったようなことを考慮して四人一人々々お選びになりますおつもりですか。それともそういうことは何か政令でもお出しになるとかいうお考えで省いたのですか。むしろそうなら、はっきりここに書かれることが非常に大切なことです。そういうところに対する一つお考えを承わりたい。
○伊能政府委員 理事長、理事四人、これらにつきましては、まだ何ら突き詰めた人選のことは考えておりませんが、将来の問題として、こういう事業団を経営する上において最も適切な人を得たいと念願しておる次第でございまして、御意見のようなこともこの人選に当りましては十分考えたい、かように考えますが、理事長を任命しますと、一応は理事長が理一半の四人の候補者をもって大臣に相談することになっておりますから、その際には御意見のようなことを十分頭に履いて労働省は理事長と相談し、また理市長の人選につきましても、そういうような考え方のもとに選考したいと考えます。
○井堀委員 これは非常に大事なところで、私は総理に伺おうと思っておる。二大政党を指向しているときの政治に対する民生的な意思表示というものはこういうところに出てくるりです。社会党が政権を取り、社会党が立案して出すような法案については、こういうところが多少欠けていても、保守党の方ではむしろブレーキをかけるような法律改正をいたすかもしれません、政策上の均斉というのはこういうところに出てくるのです。もっとも事務当局が立案されたのだろうから、大かたこの内閣の性格を読んでお作りになったのかもしれませんが、そうだとすると、これは非常な見当違いである、あなたは先ほど審議会の性格を引例されましたが、それぞれそういう三者構成の審議会を設けておるということは、民主主義の基本を制度の上に確立しておるので、こういう団体を作ろうとするときには、こういうものを大写しに出してこなければならぬ。今の内閣は出し過ぎても決して行き過ぎにはなりはしません。ですから四人、理事長を入れて五人でしょうけれども、これを見ると、どういう運営規程が政令その他で定められるか知りませんけれども、この運営に対しては、この団の一切の権限は、労働大臣の監督指揮を受ける以外は理事長の専権に属するのです。株式会社だって、今日の営利社団でも、それぞれ株主を代表する重役会が構成されて、社長専権などの専断を許さないというものなんです。事業団などというものはある程度専制をやらないと、うまくいかぬものもありましょう。にもかかわらずそうされているのです、先ほど来言っているように、これは労働者の福利行政の中で国が大きな義務を一番積極的に負っている仕事の一つなんです。だからほんとうは理事長はそういう国によって一番保障さるべき人々の代表だというべき者が理事長になっていいのです。しかしこれはそういう特定の人を選ぶことは困難でしょうから、結局今の場合においては、各国の例を見ればわかるように、労働者の合理的な組織といえば、労働法による法人格を持った労働団体の選ぶべき者をそれに充てるというやり方が近代国家のやり方なんです。だからこれはもう今日の時代に出してくる法律構成ではありませんよ。これは戦争前の法律です。憲法をもう少し翫味されたら、すぐ出てくるじゃありませんか。こういう法律が出てくるときには、憲法の精神の中で労働者の労働権と生活権、しかもこれは生存権に近いものですから、基本的人権の小でも一番高く買われなければならない。それを公けのために傷害を受け、あるいは死亡したり、これは一番大事なものです。それをこれくらいのものを打ってきて、労働大臣が自分の好きな者を理事長に任命し、またその好きな者を理事に連れてきて、そういうことを法案の中に持ってきて、あと運営はよろしくやりますとかいったところで、それはうまくいくものではありませんよ。この点私は非常に大事なことだと思うのでありますけれども、きっとこの理事長というものを十分お考えになっておいでになると思ってお尋ねしてみたのです。まだ何にも理事については考えておりません、それは人は考えておらぬだろうけれども、理事長とはかかる条件の者をというくらいはお考えになっているでしょうから、その条件について伺ってみたいと思います。理事長の選考の基準はどこにあるのですか。四人置く理事は同一のケースから選ぶのか、あるいはいろいろなケースから選ぼうとするのか。それから二人おる監事はどういう者か、同じような系統のものを三人置いたってしようがないでしょうが、その構想はおありになるでしょうから、伺います。
○伊能政府委員 この事業が労働者と非常に関係のある事業だということはお言葉の通りでございます。だからといって労働組合の代表というような人がこれに適当であるとは私どもは考えておりませんので、こういう立場に立つ人はむしろ非常に公益的な、労使に片寄らない中正な人で、こういう事業についての理解、経験を備え、手腕、力量のある人、こういうような考え方の上に選考を進めたい、こんなふうに考えております。
○井堀委員 理事はどうですか。
○伊能政府委員 理事も概していえば、あまり労使の対立を激化するような立場に立つ人ではなく、むしろ中正的な人で、こういう事業の経営に手腕、力量、識見を持っておる人、こういうようなことが適切ではないかと考えております。
○井堀委員 手腕、力量ということを抽象的におっしゃっておりますが、事業の目的がはっきりしています。一つは労災でしょう、一つは失業保険そして職業補導です。職業補導の一番大切なことは――私が説明することは釈迦に説法になるでしょうが、日本が戦争に負けた大きな原因は、職場に労働者を大きな権力で練りつけていた。憲兵隊や特高が来て、労働者を職場につなぎ、機械の前に集めることはできますよ。しかし近代科学の粋を誇る生産性の向上というものは、労働者の自発創意に訴えなければ、何もできるものじゃないんですよ。数はできても、不発の爆弾を作っておるのと同じですよ。これはあまりにも幼稚な議論ですが、労働者の職業補導のようなものは、自分は次のいい仕事につきたいという意欲があるから、一生懸命やるのです。お前は旋盤を使うことを覚えないと法律に反するからということだけではやりゃしませんよ。むしろ反感を持つんですよ。動物でさえ馬に水を飲ませようといったって川へ引っぱっていくことは三歳の童子だってできますが、馬の意思に従わなければ飲ませることはできない、おぼれさせれば飲むでしょうけれども……。失業保険の補足事業というものはそういうことにあることは私が説明するまでもありません。それをあなたは何か専門的技能かそういうものに対する特殊の経験があるとかいうが、そういうのは、これはいろいろあるかもしれません。しかし一番大事なのは主体は失業保険でしょう。失業保険は雇用関係のもとにおける労働者だというワクがあるんです。そして資本主義のもとにおいては雇用の安定はありません、失業の危険があるから、要するにそれを保険によってやっているんじゃないですか。従来からそういう人々のために設けられた保険であって、その保険を補強していくための補足機関として置かれた、またそういうことで運営されているのが今日の職業補導じゃありませんか。そうだとするなら、その関係者の息の通わないような機関などというものは、これは民主的だなんていったっていえるものじゃありません。これは大事なことですから、大臣とまだ御相談ができていないことなら、きょう私は保留して、後刻伺ってもけっこうです。多少のところはいいですよ。形式は大臣が任免するという形式をとってもいいかもしれぬ。しかしどういう人、どういう条件を備えたものが選ばれるということを書いてなかったら、専制ですよ。今日の大臣はそんなえらいものじゃないですよ。明治憲法のように天皇の名において行われる行政ではない、人民の名において行われる行政なんです。そうして事柄は労働者の責めに帰さない、本人の責めに帰さない理由によって失業するんです。ですから国がその労働者から責めを負わされておる。その負わされたものがその人のために行う事業に対して自分の都合のいい者を勝手に任命する。あなたの説明によれば、遠回りするという。今までは近かった、審議会がありますからね。か細いですけれども、審議会で声が出る、行政庁へ行って、行政庁から労働大臣に行って、労働大臣からここへ行くんです。これが大事なところです。もしあなたがどうしてもこういう仕事をしたいという最初の説明通り行くなら、この辺ははっきり打ち出しておかなければならない。大事なところですから、はっきり御答弁をいただきたい。ほかはどんなにうまく作っても、ここがくずれたら何にもなりません。事務当局でもけっこうですから、答弁して下さい。
○村上(茂)政府委員 役員の人選の問題でございますが、ただいま政務次官からお答え申し上げましたように、公益的な立場に立たれる力で知識経験を持っておられる方、こういうことを一応申し上げたのでございますが、法律の建前から見て役員の欠格条項、というものが第十二条にございます。そこに国務大臣、司会議員、政府職員、地方公共団体の長もしくは常勤の職員、政党の役員、それから物品の製造、販売等を業とする者云々ということで欠格条項が書いてございますが、その趣旨は、要するに、特別な立場に立つ方々で社会的にはっきりした地位を持っておられる方は役員は御遠慮願う、こういう建前をとっておるわけでございます。これを裏を返して申しますならば、公益的な立場に立つ方を理事長、理事に選任する、こういう考え方が出てくるかと存じます。従って井堀先生の御指摘になる点は、心持としてはまことによくわかるのでございますが、法律の建前として申し上げますならば、公益的な立場に立つ方、こういう考え方であろうと思うのであります。
○井堀委員 これは裏を返してとおっしゃいましたが、どういうふうに裏返るか読んで見ましょう。「第十二条次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。一 国務大臣、国会議員、政府職員、地方共団体の議会の議員又は地方公共団体の長若しくは常勤の職員」これはよくわかります。「二 政党の役員」これは問題です。「三 物品の製造若しくは販売若しくは工事の請負を業とする行であって事業団と取引上密接な利害関係を有するもの又はこれらの者が法人であるときはその役員」こういうことでありますから、利害関係を持っておる。これはわかる。四はこの団体。これを裏返したらどういうものになりますか。それ以外のものは何でもいいということになるでしょう。それを裏返しても特定のものは出てきませんよ。どういう工合になるか、そこをあぶり出して下さい。
○村上(茂)政府委員 形式論理的に申しますと、これ以外のものは何でもいいということになるのでございます。ただこういう条項を掲げた立法の趣旨は、要するに事業団と利害関係があったり、あるいは特定の立場に立たれる方は役員を御遠慮願いたい、こういうふうな考え方に立って第十二条の規定はできておると思うのでございます。従いまして一言にしてこれを申せば、公益的な立場に立つ方を役員として選ぶ、こういう考え方が出るのではなかろうかということを申し上げておるわけでございます。
○井堀委員 労働大臣、さっきあなたがおいでになる前に次官からお答えいただいたのですが、次官がお答えになってもあなたがお答えになっても同じことだと思います。そこで次官は閣議においでになってないだろうと思うのですが、閣議でこういうことは当然討議されてしかるべき事柄だと思ったのをさっきお尋ねして、それはまだお答えをいただいていない。それから今の問題でありますが、この団体の目的が何であるかはよくわかる。しかしこの団にやらせようという仕事が二つの種類に分れておる。一つは労災関係、一つは失業保険関係、これは全く異質的なものなのです。労働行政の中でもはっきり別個に扱う性質のものだと思う、労働行政全体という広い意味ならば、これは何でもありません。もしそういうものを一緒にするならば、もっと近似性のあるものがある。それをなぜつけぬかということを聞いた。そうすると、労働省という行政のワクに一つ御配慮があるようであります。これはわかります。しかしこういう法律を作るときには、そういうワクにこだわることは大きな障害になるぞという心配を私はしている。だからそれを今初めて聞いたのです。あなたは労働大臣であると同時に国務大臣です。そしてこの法案は閣議決定の上に内閣が出してきている法案ですから、われわれ国会が受け取っている形式は内閣提出なのです。ですからそういう条件はいわば提案者側の内々の事情なのであって、法律の本質を論議するときには、そういう条件は弱いものになるのです。そこでこういう類似の特殊法人はいろいろあるだろうと思いますが、格別私どもの方が問題にいたしますのは、今ちょっとお尋ねしているように、労災保険関係と共通性があるということは、抽象的には労働行政の中でも政府が国民に対して最も積極的な義務を負わされる事損であるという点です。労災関係も失業保険の職業補導にいたしましてもそうである。一応質問を繰り返しますけれども、これはあなたは御案内の通りであります。これは工場法などで資本主義以前の封建的な雇用関係の強い時代にもあった。労働の摩滅を防ぐという消極的な意味ではありますけれども、公傷病の場合ということを使っておる今の労災関係です。公傷の場合には、雇い主が経費の全額を負担すると同時にその生活の保障をすることを義務づけていた。今度は政府が雇い主の義務を完全に履行せしめるためにこの保険ができたということになっている。でありますから、この場合は労働者の責めに帰せない災害なのです。しかもそういう作業上けがをしたり死亡したりしたものなのですから、これは国が国民に対して負う義務のうちでは一番強い義務なのです。それから失業者の場合におきましては、完全雇用ということを言っておられますが、この完全雇用ができれば別です。今日の日本の経済のもとにおいては、本人の意思でなくて――本人は働きたい、働く能力を持っていても、その事業が破産したり、倒産したりあるいは循環損気のために整理を受けたりして、その結果、全く本人の責めに帰せない理由によって職を失う。またそういうことが数多くあるということが前提になって失業保険が生まれたことは言うまでもない。だから国が助成金を出している。ですからこのことも国が国民に対する積極的な義務を負っている問題の中では一番顕著なものです。そういう点では二つとも共通性がある。それを除いては全く別個な性格を持っている。あなたがしきりに御主張なさっておいでになるように、職業補導所の問題は、ただ単に今言う失業保険の補充的な任務ではなくて、新しい性格と客観的な諸条件を要請してきているということを今私は申し上げたのですが、この次あたりには非常に積極的に与野党問わずこの問題を取り上げるだろうと思うのです。そういうときに、これを労災保険と一緒に一つの団を作って管理させておくというようなことは、軽々に行うべきではないじゃないかという心配を私どもはしている。そこでその問題から発展して、それに対して閣議としては、そういう問題までには言及されていないのじゃないか、ここで説明されていることがすべてではないかと私は思う。あなたの説明によりますと、労災病院の数がふえたら、今までの財団法人では手狭であるから、もう少し機構をふやして、もっとよく補強しようという御説明だけだ、それはわかります。しかしそういうことでこの問題をそこなうようなことになっては不都合ではないかということをどうお考えになっているかとさつきお尋ねした。それからやや具体的になりまして、それの運営をやっていくため一番先に出てくるのは、トップ指導者が問題になる。理事長、四人の理事と、二人の監事、四人にきめたのはどういう意味があるか、二人にきめたのはどういう関係かということを今お聞きしておった。そういう以上の性格からいいますと、これは諸外国の例を見てもわかりますが、多くの国では失業保険は労働組合にやらして成功した例はたくさんあります。失敗した例はありません。そのことは保険それ自身がうまくいっているということと、そのことが労働組合の民主化に大きな拍車をかけている、労働組合の健全化のために重大な役割を果しているという例は、ヨーロッパにはたくさんあります。失業保険を自主的にやらせることがいかに大事なことであるかということは、もう幾多の先例を見ることができるわけです。しかし日本の場合には労働組合の歴史が浅かった、それでお役所がめんどうを見て下さるならけっこうなことであります。それまで急に切りかえろうということを私は害うのではない。せめてこういう団体を作るときには、政府の方で完全にやれぬということで、それに近いものを作っていくというならば、民主的な前進の姿が少しでも出てくる。ところでこれは大臣がいらっしゃらなかったので次官に伺っておったのですが、そういう意味で、理事長を今度労働大臣が御決定なさるわけでありますが、どの人なんというようなことは聞こうとは思いませんが、どういう条件の者を選考の対象にするかということはおありになるだろうと思う。それはほんとうは法律に書くのが一番妥当な道だと思う。それはめんどうだから書いてない、しかし都合によれば書こうというのなら、修正の形によって、与党の諸君とも話し合ってみたいと思いますが、それは政令に譲るというなら、具体的にどういうことをお書きになるのか、そういうことを聞いておきたい。とりあえず理事長はどういう条件の者をお考えになっておるか。理事は四人というのですから同じケースの者を四人選ぶのか。三者構成の前例もあるような、ああいう性格のものを入れようとするのか。四人ですから三者でなくもう一つ何か入れるのか。監理同一の者を置いたのでは、二人というのは、意味がないでしょうから、やはりその目的を達成するにはそういうものが考えられているに違いない。ほかの団体と異なって、こういうものに対しては、そういうところに重要な意義があるのではないかと思って伺っているのです。
○松浦国務大臣 前段の、閣議でどういう相談をしたかという問題でありますが、それは予算編成のときに問題になりまして、今度は公社とか公団とかいうようなものは作らないという方針でありましたが、今御指摘になりましたような関係において私はそれを主張した。そのときに厚生大臣の神田君からも意見がありまして、御指摘のような議論がずいぶんあったけれども、どうも厚生省の方で離さぬものですから、こっちの方だけでやるということでありますが、御指摘になりましたような点は非常に筋の通ったことでございますから、これが出発いたしましても、将来相談して、同種のものをまとめていくということは非常にいいことだと思いますから、その方に努力したいと思います。 二番目の問題は、理事長及び理事はどういう線から選ぶかというものさしを示せということのようでありますが、広く公益的な立場に立った人でありまして、知識、経験を有し、しかも人格は高潔であって、経営の才腕のある人の範囲から選びたい、そしてこの仕事が社会保障の中の最も有力な範囲を占めておるものでありますから、そういう面において、十分体験のある方向から選びたい、かように思っております。
○井堀委員 第一のお答えは私はあなたが来る前にお開きしておったのですけれども、同種のものの中に健康保険、日雇い健康保険、厚生年金保険――この中でちょっと興味深く感じておるのは国家公務員の共済組合、また地方公務員その他の共済組合、私はこの制度は非常によいと思う。しかしこういうものはやはり一つの系統を踏むものだと思うのです。たとえば医療保険のような場合には共通性をみな持っておる。だからこれをもし一つにするとすれば、こういうものをみな入れていくべきだと思う。そうすると、共済会のいいところは、運営が自治的に行われていくところにある。非常に自主性が横構の中で活発に働いておるわけです。そのことがよい結果をあげていると私は見ていいと思う。またそうあるべきものだと思う。また保険にいたしましても、保険というものは、これはもう言うまでもなくて、政府はそういう国民の利害関係を調和をとったところでお仕事をなさるのですから、今二つの問題の共通点を申し上げたが、その異質な点は、御案内のように失業保険の場合は、保険ですから雇い主と労働者、そうしてその目的は、言うまでもなく、本人の責めに帰すべきでない理由で生活を奪うような基本的な労働権が脅やかされる――これは職業安定法にもうたってあるように、国が責任を持たなければならぬ事柄です。それを保険の形式をとっているわけであります。だからこれをやらせる場合には特殊法人という別のものを作らないで、共済会の例に見るように、そう持っていくのが民主的な一番平凡なやり方なんです。それよりもすぐれたものであれば、これは問題は別ですよ。今すぐれたものでなくても、だんだんよくなるというのがあるのです。ここに問題がこの法案にあると思う。ところが同一のものを将来一緒にしていきたいというのであれば、なおさら問題がある。そのときにこれが障害になってくる。第一、もう共済会はこれに入ってきませんよ。こんな自分の後退するようなところへは絶対に入ってこないと思う。だからそういうものを迎え入れられるような内容のものでなくてはならぬ。だからそれよりもおくれたところはいけない、同程度のものもしくはそれより進んだ形のものでなければならぬ。その点が一つ欠点があると思う。これに対するお考えを一つ付いたい。 それから人事の問題ですが、人格高潔な者、これは当然なことでしょう。それから公益的なというけれども、仕事自身そうですから、公けにつくという考え方でなければやれっこないのですから、公益的でないものがあるはずはない。そこで、私はそういうことはもうわかっているので、そのほかに条件があるでございましょうということを聞いているわけです。政府が政策を立てたり企画する場合、三者構成の審議会がございましょう。社会保障関係については社会保障制度審議会をお設けになり、選挙法については選挙制度調査会を作られる、あるいは税制については税制調査会を作られるということで、そういう一般政策を立案しあるいは企画する際にでもそういう民主的な機関をお設けになるのに、一番民主的でなければならぬこういうものに対してそれがない。しかも役員がどういうものであるかという、この点が盛り込まれていなければいかぬと思う。この点について大臣の、これを法律に書くか書かぬかは別として、あなたのお考えでも一つ伺っておきたい。
○松浦国務大臣 前段のお話は、労働省所管の保険事業でもあり、その一環たる保険施設を代行するという考えでありますが、御指摘の点は、別途に考え、また別にしなければいけないのではないかというようなことであります。私どもはこれは一つに経営しましても部を分けていけば、決して運営上差しつかえないと思います。 それからあとの人事の問題に対しましては、先ほど申しました内容のものであって、かなり労使の中からとるというような場合がありましても、申しました条件に合っておれば、それはやはり選考の対象になると思うのであって、労働者からとか経営者からということをしなくても、今申しましたようなものさしにかなう者であったならば、私は選考に差しつかえないと思うわけであります。
○井堀委員 これはこう伺ったらよくわかりましょう。人事の問題と今の問題、関係が深いから、からんでお尋ねしているのですけれども、その異質のものを二つにやって、それぞれ専門家を置いて――理事長は一人なんです。理事長というのは両方わからなければいけない。そんな人が一体――労働大臣は全体を見ておりますね。そういう意味でのポストならこれは屋上屋を架することになって、非常に危険だと思うのです。それから理事四人おりますから、四人の二人のうち一人は労災、一人は失業といったようなふうに選任させるというお考えもあるかもしれません。それならそのように法律で明確に書いておかなければなりません。しかしこれでいくと、理事は月給は十分払われるだろうと思うのですけれども、何だか理事長の補佐機関みたようなものです。この問題はこの法案の性格を物語る一番具体性を持っておる条項なんです。ここはやはりいいかげんに答弁されちゃいけません。何もお考えになっていないようですから、ないやつをなぜないかと聞くのはおかしな話ですが、非常に大切なところだと思います。あなたそう思いませんか。先ほど言っているように、あなたの構想を聞きますと、閣議では厚生大臣と大いになわ張りで論戦をおやりになったように伺いましたが、それはあるだろうと思う。そうでなくても労働省と厚生省と一緒にしようかしまいかという議論もある、この委員会一つだけでなくても。そういうことは実際になるとなかなかめんどうでしょう。一応この法律を考える場合にはそこへこだわったら、よけいなことのようですけれども、私は角をためて牛を殺す結果になると思う。こういう似たような団をこの間専門委員室の人に調べてもらったのですが、かなりあります。公社、公団で労働省の方から直接息をかけるような公団は一つもない。一つぐらいほしいものだという考えもわからぬわけではありませんけれども、こういう公団のようなものの人手については、労働省のような日ごろ経営者側に気に入らぬような仕事をしている人たちがそういうところへ入るということはむずかしいかもしれませんけれども、そうでないものもたくさんあります。住宅公団のようなもの、あるいは金融公庫なんというのは金融業務の経験が必要かもしれませんが、器用な人なら楽に何でもやれると思います。いろいろな公団、公庫、そういうものがたくさんございまして、こういうものは減らしていく方針が行政整理としては当然とられていかなければならぬ。ここの説明は矛盾すると思うのですが、あなたの御説明の中でそう言っておられるのです。民主政治ですから、当然表に出してガラス張りが一番いい。あなたの言葉を借りるとガラス張りです。ガラス張りといったら、予算の上に出てきて、国民の代表である国会議員が大っぴらに予算の上、法律の上で審議できるような、あるいは決算委員会で審議のできるようなことがガラス張りです。それをすりガラスを通して向うに持っていって機構を作るようなことは避けたがいいという意味で、公団というものは減らしていくということはいい。だから、その点ではこれは逆なんです。それとさっき言うように、本質的にいろいろ問題があるのでございましょう。これは労働大臣が指揮監督するというけれども――岸さんの内閣はこれから長く続くかもしれませんが、労働大臣がいつまでもおられるかどうかわからぬ、近く内閣更迭があるようです。あなたはお残りになるかもしれませんが、どちらにしてもようやく様子がわかったころになるとかわる。形式上労働大臣の指揮監督というけれども、これはこの団に限ったことではありません、非常に悪い傾向があるのです。先ほど言うように、ほかの事柄と違って労働行政の中の一番積極的に義務を負わされている二つの仕事をこういうものにやるといういとはひけ目をお感じになるだろうと思うのです。しかしそれだけに、この法案の中にそういう弱点、欠陥というものを打ち消していくだけの強い線が出てくるべきじゃないか。この点で今人事の問題について伺ったのでありますが、そういう、点を補強していくために一番いいのは、労災関係においては、これは死んだ者は口がないから家族が異議を唱えたところでそれは間接的なものだ、これは私は実際問題を扱ってきていろいろな訴えを聞いておるのであります。今までは地力の基準監督署でありますとか、それから地方にも中央にも審議会がありますから、そういう機関を通じて発言する機会は遠道ながらあるわけです。今度団ができますと、この窓口で一応処理される。これは実際問題として弊害が多く起ってくるのです。だから、さっき私が例をあげたように、失業保険をうまくやっていくためには、今比較的完全雇用なんといっておられるほど少し好況を呈しておりますけれども、そう楽観を許しませんからね。そういう場合において一指摩擦の出てくるところです。こういうものを平和的に合理的に運営していくためには、利害関係の一番強い人々が責任を持ち、またその責任が運営執行の上に合理的に反映するということが、抽象的ですけれども、一番大切なことです。今度別になりますからここが全面的に責任を持ちます。それはその事業の方だけだ、こっちの方は知らないと逃げられると、こんな悪いものはありません。ですから、今いう失業保険行政というものは二つに分裂されてしまう。これは非常に弊害が起ってくると思うのでありますが、こういうものを解決するためには、よほど機構の中で積極的にものが考えられてなければならぬと思いますが、この点に対する配慮はどうでしょうか。
○松浦国務大臣 先ほど御指摘になりました選考の基準となる資格を法文の中に規定せよということでありますが、従来の公団やその他の事業団にはそういう例はあまりございません。ただ労働保険の審査会のように司法的な事務を執行するものは資格が規定されておりますが、その他の場合にはあまりないのであります。始終大臣がかわるじゃないか、次の大臣がどんなことをするかわからぬじゃないか、約束したことが約束にならないじゃないか、現在の内閣の性格がいろいろ人事の異動をやるので不安だ、こういう御議論のようでありますが、労働大臣がみずから行うべき施設の運営を行わせるものでありますから、大臣の監督するのはきわめて当然のことでございますから、これは今ではわれわれの責任にかかっておるのであります。でありますから、ああいう二十万円くらいの財団法人では心配だ、もう少し合理的な機構において相当な人材をそこに入れなければならない。そこで一応入れれば、そう簡単に内閣の閣僚がかわってもかわらないものであると私は確信しておりますので、御意見のあるところは一つよく言って聞かせまして行わせるようにいたしたいと思いますから、御了承願いたいと思います。
○井堀委員 時間の都合があるようですから、午前中はこの程度にしておきたいと思いますが、午後は大臣どうですか。
○松浦国務大臣 午後は予算で横山君の質問があるので、総理大臣は出ませんから、私が行かなければ……。
○野澤委員長代理 午後二時まで休憩いたします。 午後零時三十九分休憩 ――――◇――――― 午後二時二十七分開議
○大坪委員長代理 休憩前に引き続き会議を再開いたします。 休憩前の質疑を続行いたします。井堀繁雄君。
○井堀委員 この事業団の事業計画並びに予算資金計画、財務諸表ですか、借入金などについては労働大臣の認可または承認を受けることによって制約をするが、あとは一句理事会あるいは理事長がこれをなし得るようになっておると思いますが、その通りでよろしゅうございましょうか。
○伊能政府委員 御質問の通りであります。
○井堀委員 そういたしますと、この理事長の権限というものは非常に範囲が広く、しかもこの団の性格を変えるほどの大きな権限にもなり得るのではないかと思うのでありますが、いかがでございましょうか。たとえば事業計画と一口に言っておりますけれども、その事業は何回もお尋ねしておりますように、全く異なった二つの性格のものを同時に行うのでありますが、計画書も二通り作るようになるのか、あるいは同一の計画の中でそういうものを遂行していくのか。今後に属することでありますが、この法律全体の構成なり、提案理由の説明、今までの質疑応答の中で明らかになっておりまするところからわれわれ想像いたしますと、たとえばここにありまする労災病院、あるいは傷痍者訓練所、職業補導所、簡易宿泊所といったような事業が現存しておるわけであります。この事業は先ほど来御答弁の中にもありましたように将来相当拡大充実されていくもののみであります。その計画が大きければそれに必要とする資金並びに経費などについて、もちろん労働大臣の認可承認を受けられる範囲内で作るということにはなると思いますが、こういう計画をこの団に作らせるということになりますと、先ほど来お尋ねをいたしておりまするように、理事長ないしは理事というものが非常に重大な地位につくことになるわけであります。実際上の問題として大臣が認可許可をするというけれども、いつの場合でも、原案というやつは実行の場合においては非常に優先的な力を持つものであります。それだけに役員というものは、その選択についてはきわめて重要であるとともに、やはり法律に対する具体的な性格を裏づけするような明らかな規定がなければならぬと思うのです。こういう点に対して政府はどういうようにお考えになりますか。
○伊能政府委員 第二十条及び第二十二条によりまして、それぞれ相当しぼった範囲の仕事に限定されておりまして、そのしぼった範囲でまた業務方法書を作成するとか、あるいは予算、事業計画及び資金計画を作成するとか、そういうようになっております。この指示する方針というのは、結局特別会計によって御審議を願ったその範囲において、労働大臣から指示されるわけであります。そういうふうに非常にしぼって参っておりますから、総合補導所の運営あるいは、労災病院の運営、こういうことが主体になって参りますので、他の公団などから比較いたしますと裁量の範囲はむしろ狭い、こういうふうに考えておるのであります。理事長、理事の人選につきましては、午前中大臣及び私から御答弁申し上げた範囲で、これ以上のワクと言いましょうか、具体的に人選の範囲を申し上げるということはなかなか申し上げにくい点になってくる、かように考えております。
○井堀委員 午前中あなたからも、大臣からも同様の御答弁をいただいたわけでありますが、この種の事業団は、特に大臣の御答弁によりますと、将来は類似の労働保険あるいはこれと同じような性格一を持つものに、実は最初から入れていきたいという考えだったけれども、厚生省との話し合いがつかなかったという御克明であります。しかし将来入れていきたいということで、また私もそうすべきであると思う。そういう将来を期待するような事業計画というものは、僕はこれは事業団がやるべきでなくて、労働大臣でも困難だ、国務大臣を兼ねる労働大臣だからできるのであって、ましてや事務当局はその意図を受けて計画すべき事柄に属する、もっと言いかえるなら、これは政策に類する大きな範疇のものだ。特に二大政党を中心にする国会運営、その上に行政機関の能率化をはかろうというのが日本の民主政治のあり方であるとすれば、特段とこういう点は問題になると思う。ですからこういう計画をこういう団に特たせるということは、私はある意味においては行き過ぎであるし、また危険なことであるし、それからできないことだ、非常に大事なことじゃないか。これは政党内閣の閣僚としては、そういうものに対しては十分な御検討がなされたものかどうかこれに対して御所見を承わりたい。
○伊能政府委員 問題の性質が大きな政策の問題として決定しなければならないという点については、まことに御同感に存ずるのでございます。そこでこういう問題を取り上げるときに閣議で相当やったかということでありますが、この点につきましては、午前に大臣から御発言のありましたような厚生省所管に属する各種の病院というようなものを一応考えて折衝してみたが、今日こういう悪く言えばなわ張り的な気持もあるときであって、容易にはこの実現はできないというところから、テスト・ケースとしてこの問題を労働省所管のものだけをまとめてやってみたというのがこの案であります。従ってこれがうまくいくようであれば、今後こういうものをそれではどういうふうに改善しながら拡大するかというような問題が、今後の政策問題として当然取り上げられるであろう、かように存じておる次第であります。
○井堀委員 今お答えのように現在の国務大臣が各省の長官を兼務するような、その中においてすら大臣と大臣の間のセクト的な傾向というものが簡単に是正できない、そういう現状の際にさらにその企画、しかもここに言っておりますように事業の予算、それから計画、さらに資金計画、借入金までその職務権限にゆだねておるのでありますが、そうするとこれがどういう程度になるかということになると、結局事なかれ主義という考え方をとれば別です、それをやると、こういうせっかく今後飛躍発展、できないまでもここに言っているように運営を合理化し、徹底的な法の目的に沿うような事業活動をやろう、そういう限界までが圧縮されてきはせぬか、特に今日の資本主義経済のもとにおける労働省の所管している事項というものは、よほど積極的な意図が加えられてこなければ、もう政策はとかくそういうところから跛行的なものになりがちになる。現にそういう傾向が非常に強い。それは結局、いわばなまぬるいおふろのようなところへ入っているような感じを与える機構で、活気のあるものが生まれるはずはない。そういうものはチェックしても育てる力にはなってこない、こういう傾向をチェックする何かの処置をこの法律の中でお考えになっておるかどうか、ないとするならば運営の面の中で一体どうすればそういうものが出てくるか、それを伺っておきます。
○村上(茂)政府委員 御指摘の点でございますが、この事業団の性格なり、あるいは今後の運営のあり方の問題と関連する御質問でございますが、実はこれはしばしば申し上げておりますように、事業団というのは政府の行う保険事業のうち保険施設に関する事項を代行しよう、こういう考えであります。従って事業団の性格がいわゆる代行機関的なものとして非常に明確になっておりますので、先ほど政務次官から御答弁申し上げましたように、たとえば業務方法書を作成するにいたしましても労働大臣の指示する方針に従って業務方法書を作成して、さらに労働大臣の認可を受ける。それから予算等の認可についても同様であります。これは実はほかの公団、事業団にはない、非常に監督の徹底した形態をとっておるのでございまして、そういった形からしますと、今後事業団が事業運営をいたしますについても、労働大臣の指示する方針に従って行われるということになりますので、井堀先生御指摘のような、事業団に対する活発なる活動を期待するという場合には、労働大臣が業務方法書なりあるいは予算、事業計画、資金計画等の作成に当って、事業団が活発なる活動をなすような方針を示す、それによって初めて事業団の活発なる活動が展開される、かような仕組みになって参るかと存じます。従いまして中業団を作って、事業団が自前でどんどこどんどこ仕事をやるというような形ではございませんので、一にかかって労働大臣の指示する方針に従いまして、活動的に運営を行うとか、あるいは控え目に運営を行うとか、というような点も規制されて参るかと存ずるのでございます。
○井堀委員 おっしゃる通りだと思うのであります。それは労働大臣の指揮、監督のもとにあると同時に、あらかじめ労働大臣の考えておることをおもんぱかって計画されることであろうと思うのです。そのことを私は言っているのではない、今の日本の政治のあり方というものは、出会を中心にして一切の行政が動いておる。日本の最高機関は国会なんです。その国会は二大政党によって運営されることが望ましいというのが一応今の常識となっておる、今その傾向にお互いに努力しておる。二大政党がなぜ望ましいかということは今さら言うまでもない。政策を中心にして激しい国民の批判と世論の中にお互いが句碑琢磨して、その批判がたえず選挙によってその地位を与えたり奪ったりするという、民意の反映がきわめて直接的であるし、そういうところにあるのです。そのよさというものは、世論の刺激の中に、政策を絶えず国民の意に沿うように、正しくあるように、お互いの努力が行われていくところに特徴があるわけです。そういう立場からいたしますと、そこのところに国務大臣と行政庁の長官の兼務しておる持ち味があると思うのです。このことが是認されていかなければ、これは逆コースなんです。すぐわかると思います。この点に対する配慮をなされるとするならば、この行き方は、さっきの説明の中にもありましたように、明らかに四人の理事と理事長が協議をされることは事実でしょう。しかし協議をせぬでもいいかもしれません。この仕組みは理事長が自分の考えに理事を引っぱっていくこともできるかもしれません。しかし一応合議するといたしましても、ここで出てきたものを受けて立つという、流れが逆になるのです。これは何も理屈を述べぬでもおわかりのように、民主政治の法則からいくとコースが逆なんです。逆なのもいいけれども、その逆のところから民意が――たとえば最初にお尋ねいたしましたように、この扱う事業が失業保険の被保険者あいるは労災保険の被保険者、こういう人々のはつらつたる意思が反映するような機構であれば、そっちの方から働きかけが起ってくるかもしれない。それはさっき言うようにチェックされる機構はどこにもない。そっちの方は閉ざしてしまう。それでは政党内閣の民意を受けて立つ、政策を批判するところをこっちに持っていかれてしまって、あるいは命ずることはできるかもしれないが、命じて作るという行き方は、今日の政策本意の政党政治からいったら、どこの国だってそういうことをやめてしまうでしょう。だから冒頭に言ったように、この案の考えの中には、明治憲法の時代に育った思想がこういうところに頭をもたげているのではないかということを私は心配している。これは時代が変ったからといって手のひらを返すように何もかも変えることはできますまい。今専門家としてお仕事をなさっている人の受けた教育というものは、そういう新しい時代にすぐ塗り変えてしまうことは、なんぼ器用でもできぬかもしれませんから、多少はやむを得ませんけれども、こういう民主主義の時代において、一番気を配らなければならぬ、一番的進的な役目を展開していかなければならぬ性質のものに対する法律としては、非常に大きな矛盾ではないかと思う。これは政策上の問題でありますが、そういう点が論議されて住まれた法案であれば、これはいい悪いは別として、与野党の間において論議をし、政府対野党の間においても私は大きく論議する価値があると思う。どうも先ほどから伺っておると、事務当局がいろいろなことをお考えになって作られたものでありましょうから、そり事のいい悪いは私は言いません。しかしこの法律の目的とするところの意図は、私は逆ではないかと考えるのですが、この点どうですか、政府のお考えを伺います。
○伊能政府委員 この運営につきましてもっと国会の意思がしょっちゅう通ずるようにしろというような御意見のように拝聴しましたが、この問題は特別会計の、労働大臣が執行すべき行政の部面の末端の方を、この団体に代行させようというのがこの法律の目的でありますから、どういう点まで国会がこれに介入する――介入という言葉は失礼ですが、どういう点まで国会がこれの監督に入るか、この点から下は行政の範囲にまかせていいか、こういう問題のように私は考えるのでありますが、従来これは特別会計の執行の面として労働大臣にまかせておった、この範囲のことを労働大臣はこの事業団に代行させようというのがこの法案でありますから、これ以上もっと国会やあるいはその他の民主的な運営に資するような団体の意見を開けということであれば、これはまた新しい問題だと私は考えるのでありまして、今まで労働大臣にまかされた範囲の仕事のほんの一部をこの団体に代行させよう、こういうことだと思うので、先ほど来井堀委員からしばしば戦前の形に返ったというようなお話もありましたが、戦前であればこんな団体をこしらえるのは勅令でどんどんやってしまっておりますから、国会の審議など経ないでやれる範囲のものです、今日国会の性格も戦前とは違っておりますから、こういう末端の行政の大臣にまかせておったことであるけれども、この団体に代行させるのだということを国会に今日かけて御審議を願うというのが、戦前の形とはずっと進んだ形だと思います。これ以上さらにこういう事業の経営のような、行政の末端のことまで果して国会で審議を必要とするかどうかということについては、私はこのくらいの程度で行政にまかせていいんじゃないか、行政の良識に信頼していいんじゃないかと考える次第であります、
○井堀委員 これはもう行政専務の中でも代行機関にまかせてしかるべき軽微なものだというお考えのようであります、そうだとすれば、また問題は別であって、この点では午前中の御答弁の中にもあり、私の質問に対する同感の意を大臣も表されておる。私は決して軽微なものじゃない、非常に重要な政策に関連のある事業だと思うのです。その点は意見は一致しておったもののように考えておったのでございますが、今の御答弁ではそうでないようでございます。その点はあなたはそういうお考えでおありのようですが、この法律の持つ本質というものはどう考えたって変るものじゃない。これは議論をする必要はございませんが、あなたは特別会計でやるから審議を要せぬようなことをおっしゃられるが、そうではございませんよ。失業保険の料率を変更するときにも国会の同意を得る、失業保険の場合でも、三者の、国と被保険者と雇い主の負担するものが保険経済の基礎をなす財源なんです。その財源の中においてこれが取り行われている事業なんです、その事業は、先ほども何回も繰り返しておるように、もはや労働者にとりましては本人の意思でもなければ責任でもないのだ、働きたい意思を持ち、能力を持ってその職業についていきたいといっても、本人の責めに帰せない他の理由によって就職の機会を奪われたときにこの保険が生きてくるのです。要するに付帯事業として、あるいはその付帯事業という言葉は従来はそうだったけれども、もっと意義を持つようにということを午前中論議をしたわけです。ただ単に就職の機会を与える便宜をはかるために職業補導をやるというものよりももっと積極的な意義を持たしてくる。私はそういうものがあるだろうと思う。それでそれはお尋ねをしなかったけれども、その点については異議を差しはさまなかった。それは課長にお尋ねすればきっとそういう御答弁されると私は思いますが、ただ単に、今失業をしている人に次の就職の機会を与えるために従来の職業と異なった職場につけるための再訓練というだけではなしに、もう就職の機会を得ておる労働者についても、そのときの経済の新しい方向に沿うように職業教育の町訓練を各国やっております。そうしてこれを早くやったところが世界の市場の競争で勝っておるという一笑があるのです。要するに、そういう方向に成長さしていかせる足がかりにするという、これこそ労働行政の大切なところである。この点私は議論がないと思っていた。労働大臣もその点お認めのようでございました。そういう考え方とこの法律の考え方の間に矛盾がありはせぬかということをお尋ねしたわけです。矛盾がないというのならないように御説明願わなければならぬのですが、今の御答弁では、矛盾というよりは、お前の前提が間違っているというようなお考えのようですが、これは大事な点だと思います。私はここで考えておるものの中には非常に大事なものもあって、ぜひそういうものには積極的な政府の努力及び法律を作ってわれわれも協力しなければならぬという点も感ずるのであります。非常に卑近な例で恐縮でありますけれども、角をためて牛を殺すんだ、その危険があるぞというところの一つの例としてお尋ねしておるわけなんです。大切なところでありますから、これは何も議論にわたる必要はない。そういう事実に対する見解が、そういう点で白いものが黒く見えたり、黒いものが赤く見えるようになってはいけませんが、そこだけは明らかにして歩調を合せてお尋ねをしていきたいと思います。あなたの御答弁は間違っているのではないか、間違っていないとすれば、私の議論は変えなければならない、
○伊能政府委員 総合補導所の例をお出しになりましたが、この問題は午前中もお答えしましたように、この出発は確かに失業保険の特別会計から出発しておりますが、これをできるだけ育てて、そうして今御質問の中にありましたような大きな職業補遺、職業訓練の機関に持っていきたい、こういうねらいは持っておりますが、出発が失業保険の特別会計で出発しておりますものですから、今のところはやはりこの特別会計の事業として育てていきたい、こういうつもりでおるわけであります。そこで、今までは労働大臣にまかされたこの三つの両会計の執行ということで、予算はもちろん御審議を得ておりますが、この執行面については労働大臣におまかせをいただいておったわけであります。これをもっと責任明確にしておきたい、そうして同時に合理化していこうというためにこの法案を提案しておるのでありまして、確かにこの補導所のねらいというものは井堀夫各県のお考えになるような方向に向くと思いますけれども、さればといって、これをもしこのまま出さずにおけば、労働大臣が特別会計の中で自由にまかされた仕事になるということは依然としてあることなんで、それを特別会計の予算の御審議のときに御審議を願う、執行面においては労働大臣が行政の問題として執行していく、この範囲のことをこの法律によって国会の御意思を十分尊重しながらこの行政の一部を執行させようという事業団である、こういうふうに理解しておるわけであります。
○井堀委員 あなたと私と労災保険に対する考え方の違いが多少出てきたように思われますが、そうでないかもしれませんから一応念のために――労働大臣におまかせしておる基本的な考え方は第一条に明示されておる。それぞれ各法律の規定の中で労働大臣にはおまかせしておるけれども、大幅の自由裁量というもの、法律を越えて許される限界というものは非常に少い。しかも今ここに別に盛られておりますものも法律によって規定されておる。第一条にはこう書いてあります。「労働者災害補償保険は、業務上の事由による労働者の負傷、疾病、廃疾又は死亡に対して迅速且つ公正な保護をするため、災害補償を行い、併せて、労働者の福祉に必要な施設をなすことを目的とする。」これで明らかなように、それに必要な、そして労働者の福祉をつちかうような目的の施設を行わせようというのであります。その公団の施設なり病院を作るとか――これは病院の運営については議論が専門的にあるといたしましても、この目的をはずしてはいけないのです。それは労働大臣がこの法律で規定された重要なことを四人か五人の人にまかしてしまうということは、ある意味においては法の精神を冒涜する行為とも言えぬことはない。しかしそういう悪意がおありになるとは私も思いません、それを離してしまいますと、この事業に関することはただ報告事項としてはあると、質問すれば答弁するかもしれません、審議の対象からはずれると私は言っておるのではありません。だから、この法律で命ぜられておる大臣の積極的な意志というものがはかへ移っていくということは間迷いないでしょう。これは大事なことでございます。ですから、住宅公団や中小企業金融公庫などとはわけが違うんですよ、繰り返し申し上げておりますように、逃げようとしても逃げることはできない。憲法でいう国民の基本権に対する国の義務です。この国の義務の一番大事な部分を労働大臣が分割管掌しておるだけだ。その仕事をもぎってほかにまかせてしまう。そうしてこれは私がさっきからお尋ねいたしておりますように、あなた方簡単なことを言っておられますけれども、これは事業の予算ですよ。事業計画、資金計画までやる、そういう権限を代行させる、そう簡単に片づけられては私どもはたまらぬ。これは大事な点でございますからもう一ぺん所信を承わりたい。これは大臣に来てもらって、ほんとは国務大臣として御答弁を願わなければならない。あなたは閣議にはお出になっておられないから、あなたばかりに責任を負わしても悪いから……。
○村上(茂)政府委員 法律的な面からお答えさせていただきますが、この事業団が行います保険施設が労働者の福祉のために行われる、この点につきましては全く御指摘の通りでございまして、問題はその目的達成のための手段としていかなる組織においてこれを行わしめるが適当かという目的論よりも、むしろ組織論になるかと思うのであります、そこで現状のように、法律の建前としては政府が保険施設を行う、政府が直接やるような条文になっております。これは労災保険法の二十三条をそのまま文字解釈をいたしますと、政府が保険施設を行う、こういう形になっておりますが、現実に病院とか職業訓練施設の運営を政府が行なって、国家公務員がこれを行うのが適当かどうかという点については現実的にいろいろ問題があり、便宜上の措置として労災協会に民法上の委託契約に基いて経営さしておった国立病院でありますが、民法上の委託契約で行わしめておったそういう形態がいいかどうか、それが悪い場合にはしからば国で直接やったらいいじゃないか、こういう考えも出てくるわけでありますが、そうした場合には行政組織の拡大、あるいは定員の増加といったような問題が起きてきますが、これはやろうと思えばやれないことではありません、しかし政府が直接施設の運営を行う、公務員をもって当らしめるということが果して妥当がどうかという点についても問題があります。そういった角度から問題を考えました場合に、公共性の非常に強い特殊な公法人を設立いたしまして、現在行なっております委託契約によるところのこういった保険施設の運営よりも、一そう責任の明確なる形で保険施設を運営させる方が妥当ではないか、こういう結論に達したわけでございます。従いまして組織論としては大別して現状のような形、あるいは国直営で公務員が運営する形、今回の事業団のように特殊な公法人に行わしめる、こういう方法が考えられると思うのでありますが、政府といたしましては事業団という特殊な公法人に行わしめるのが適当である、こういう考え方に立ったわけであります。 しこうして労災保険法第一条の目的から言うと、労働大臣から別な事業団を作って、そうして理事長や理事まかせにするのはどうも法律の目的違反じゃないか、かように仰せられたのでありますが、少くともこの労災保険法第一条の労働者の福祉という目的は、この事業団法第一条の目的にも全く同様に「労働者の福祉の増進に寄与することを目的する。」かような大眼目を掲げておるのでありまして、この目的を達成するように事業団が運営される、そのように理事長及び理事が業務を執行しなければならぬということは当然なことであろうと思うのであります。特に現状にいろいろ問題があるので責任制を明確にしたい、こういう趣旨からこの事業団法案を提出したという点を特に御了承いただきたいと思うのでございます。
○井堀委員 あなたの御説明の中で非常に重大だと思いますのは、委託経営をやらせようというのですが、これは委託してはならない事項ではないか。あなたの言うのは、聞き方が悪かったのかもしれないが、何か公務員がやるのも中業団がやるのも同じようなものだというようにとれましたが、公務員がやっている場合は、言うまでもなく、大臣が法律の命令を受けて執行させているだけの話でありますから、悪ければ責任は大臣がとればよい。間違っていれば公務員が責任をとらされることになるだけだ。ところがここにあるのは、この事業これだけだけれども、これを切り離すというんでしょう。そちらへまかす、まかせるだけでなくて計画から予算まで――一条、これはあなたの方はさっきも差しつかえないと簡単に言ってのけましたけれども、そうじゃありませんよ。これはこういう労災保険のほかに労働者の福祉に必要なる施設をなすことを目的とする法律なんですよ。その目的の部分を結局こっちへ全部とってしまうわけではないが、大部分重要なものはこっちへとってしまうのです。この法律はそれを代行せしめるということは明らかだ。この代行の内容はということになると、説明の第四のところで大臣はこう説明された。私はその法律解釈が間違っているとか、間違っていないとかという法律的な専門的な技術論をやろうとするのではありません。労災保険の持つ本質というものがありましょう。何回も繰り返すようですけれども、他の事柄と違うのですよ。工場法では雇い主に全部の責任を持たしておった。経済的な負担においても生活的な面においても道義的な面においても、公傷――公けの、作業上、事業上でけがしたり、疾病にかかったり、廃疾になったり、死亡した場合は雇い主が埋葬料から病院の費用から一切がっさい持って、家族の生活までめんどうを見るということを法律は規定しただけなんです。それを今度は保険の制度にして、その保険は国がやる、その第一条にこう書いてある、だからこれは健康保険や国民保険とちょっと違うのです。二つともその点共通点があるのです。労働省が所管している失業保険と労災保険は本人の責めに帰せられないことでしょう、こういう大事なものを、法律できめられているものを、これはどんなりっぱな人をお選びになるか知りませんけれども、これはどんな人を得るとか得ないとかいうことじゃなく、そういうことはまかしてはならぬことではないか。国が責任をとっていかなければならぬものを、一部を代行させて責任のがれをする。いやもっとよくするのだとおっしゃるが、ここには一番利害関係の深い被保険者の発言権はありやしないじゃないか。だから私が言うように、そうならその被保険者の団体がこれを運営するのが一番いいのです。自主的にやってもらう、そして政府は監督する、これが民主的なんです。だからコースはあべこべじゃございませんかといりことを実は聞いているのであって、法律違反になるとかならぬとかいうことよりも、もっとこれは本質的には大切なことではないか、それを私どもに納得させないで、これはいいのでございますといったって、そうはいかぬでしょう。これはむしろ事務当局の答弁に属することよりは、国務大臣として、はたまた国民を代表して、代理して政府はこういうものに対して厳重な監督の地位についているのですから、だから政府がこういうものを出してくるということの考え方について徹頭徹尾怒らなければならぬ。怒る義務がある。あとで事務当局には具体的の点についてお尋ねをいたします、時間があれば。この労災保険についても失業保険についても被保険者の声がまだ上へ通らぬ、上へ、という言葉は語弊があるかもしれませんが、執行機関に疏通しない、あるいは保険の運用の中にどうも被保険者の声がはっきり表明されないという声をたびたび聞くのです。具体的事例をわれわれはよく知っておる。そういうことをこれから御紹介しながらお尋ねをしていくつもりでおります。しかし、その前に問題がある。もっと本質的な問題があるでしょう。これは大臣が見えませんから、あとに保留しておきましょう。 次に、少し具体的なことをお尋ねいたします。労災保険の中で、これは昔の工場法のあとを継いでいるのですが、たとえばけがをしますね、そうすると打切り扶助料という問題が出た、指の一節とか二節とか、こういうこまかいものをずっと書いてみたのです。それでもなかなかうまくいかない。それは実際はどうするかといったら、われわれが大体むずかしいものを判断してみますと、これはいずれも健康保険とよく似たようなところがあるのです。科学者と法律家となわ張り争いをして、そのために迷惑をするのは被保険者です。だから一番大事なのは、被保険者の声が一群正直に通らなければならぬ。指の一節と二節のどっちかということよりも、仕事によって指の一節、指のつめの先がなくなってもその仕事につけぬことになる。そうすると今までの収入、今までの地位を維持しようとするためにはどれだけの犠牲を払わなければならぬかということもあるのです。ほんとうはやはりそこまでいかなければ、私は労災保険に対する補償の等級などというものはつけられるものではないと思うのです。そういう改正が今必要になってきている時期ですよ。 それで、そういう被害を受けた人たちが理事長になるならいい。私はそういうことをやるかと思ったら――理事長というものは大体被保険者を代表する人がなるだろう、理事の中には雇い主もお医者さんも入れ、学識経験者も入れる、そういう専門的な技術者を入れて四人とかそういうことを考えているのじゃないかと考えてお尋ねしたら、さっぱりお答えがない。あるいはそうかもしれませんけれども、それならそれとそのように明らかにしておきませんと、論議は行きつ戻りつするのです。何だかこれは人格高潔だとか、公益性を理解しているとか、そういうことはもう議論の余地のないところなんで、当りまえのことなんですしそんなところに非常識の者を持ってきたり、公益性を理解しない者を持ってきたり、そんなことはない。それはわかり切っておる。だから、労働行政に詳しいということも一つの条件になるでしょう、長い間労働者のために一生懸命公務員としてお働きになったということも一つの条件に入るでしょう、それはいいです。だけれども、それだけでは不十分だということは、審議会の設置の理由が明らかに説明しておるではありませんか。その上に国会があるでしょう。政党があるでしょう。政党政治の妙味というものはそこじゃありませんか。だから、存外エキスパートを要求するのではなくて、平凡な民意が大切なんですよ、民主主義の政治というものは、存外それが真髄をついておる。だから被保険者の声がこの保険に反映しないようなものは、それはもう一番悪質な邪道なのです、そういうところを向いていはしませんかと言いたら……。それなら、それはそんなふうに改めるべきとか、何とかあるべきものだ、これはどうでございましょうか、専門家もおるのだから、等級をきめるなら、その場合どこがきめるのですか。
○三治説明員 労災の仕事の傷害等級をきめるとか、それからそれが業務傷害であるか、業務上負傷をしてもそれがほんとうの業務上の負傷であるか、あるいは健康保険の対象になる私傷病であるかというような境、それから疾病がいつまでたっても治らない、治らないについてはいつを基準とするか、またどうしても治り切らなかった場合には打ち切り補償をいつするか、打ち切り補償の場合にはどういうふうになるというような法律に基く給付のきめ方、これは全部労働保護官署の監督署長がきめるような法の体制になっておりまして、これは今後も変らないのでございます。先生が、事業団の理事長の方でそういうふうな病院で扱う労災患者の給付とか打ち切り補償とかいうものを一部労災病院に入った患者についてはきめるのじゃないかという疑いをお持ちになっておるように私拝聴いたしておったのでありますが、あるいはこれは間違っておるかもしれませんが、そうではないのでありまして、患者が労災病院に入ろうが大学の付属病院に入ろうが、あるいは私立の病院に入ろうが、そういうことについての給付の差等はないわけでございまして、それは今後も、事業団ができても、労災保険の医療の法律で定められている医療の給付とか打ち切り補償とかまたは傷害等級の認定とかいうものは全部監督署長がきめることになっております。いわゆる行政上の医療上の身分というものは、事業団ができても、何も一部が事業団の方に移るわけではないのでございまして、この労災病院の設置と経営だけが移る、いわゆる物的施設の設置経営だけが移るのでありまして、労働者の補償法にきめてあります業務上の事由による労働者の疾病、負傷、廃疾、死亡というものに対する迅速公平なる保護のための補償事務は、具体的には監督署長が全部決定するようになっておるわけでございます。
○井堀委員 それはおっしゃる通りで、私もそれは理解しておる。その通りだと思います。ただ、実際上の問題を引例したのは、私は、労災保険というものは今後全国にもつと拡張して徹底せねばいかぬ、またするようにできて、だんだん伸びていくと思う。というのは、さっきからいっているように一般の疾病と違うのです。私はさっき極端な一例をとったんですが、傷害を残した、その補償をどうするかというような場合、あるいはその治療を打ち切るときにはどうするかというような場合、大学病院でも民間の病院でも加入者からいえば全く共通した結論になると思う、しかしそれでは不徹底なんですよ、そこに労災保険の任務が止まれてきたのです。今さらそんなことを蒸し返す必要もない。私は、労災保険、労災病院というものは特殊な任務があると思う。それが不十分だ、もっと徹底していかなければいかぬ、こういうためにこの事業団ができるというふうに説明していたと思う。私はそういうふうに聞いていた。ところが、そういうことはどういうことか。今あなたは一例を出したけれども、それは、ほかの病院でもいい、民間でもいいし大学病院でもいい、あるいはここでいっております労災保険病院でも、科学には二通りの結論はないはずです。一つであるべきです。そういう議論からすれば、こういう特別な医療施設を設けぬでいいはずです。それはもう今私の議論する前の問題です。必要があるから作っている。それを充実しようということに対しては何ら議論のないことです。そういう要請があるのですから、その要請をここで生かしていこうとするためにはどうすればいいかということは、この前の説明でさんざん苦労したじゃないですか。この場合、そこに限定してきていますから、もう議論を広げないで下さい。その場合に、紛糾しているのは、たまたま法律家と科学者の議論が対立しているわけじゃないですか。医者が診断をよくせぬとか患者が悪いことをするだろうとか、それも一つの見方かもしれません、人を見たらどろぼうと思えだから、人さえみれば取締りでやるということも一つの考え方かもしれません。また悪いのもいるのだから、医者にも被保険者にも悪いのがおるだろうが、そういう例外をつかまえて議論をするのではありません。被保険者本位にものを考えていくためにこの病院がいいのですよ。たとえば基準監督署関係者が相談をするにいたしましても、今の場合は労働大臣の直轄監督下にある同じ公務員なんです。今度それを隔離してしもうたらおのずから答えが違って出てくるのです。それをあなたは机上の計画やあるいは公式の中からくる結論だけをたよりにしておるようですが、よしんばそうであったとしても発展がありませんよ。今のように労災病院というものが保険の直轄機関として運営されておってこそいろいろ改善の機会もひんぱんに出てくるだろうと思う。そういうことを言っておるわけです。一緒にするのだったらこんな病院はやめたらいい。画一的な病院を作ったらいいのです。労働省と厚生省が医療保険を二つに分けることはありはしない。国民保険でも健康保険でも一本にしたらいい。そうはいかぬでしょう。片一方は労務関係が伴うのですよ。健康保険と国民保険でさえ一本にできないのです。ましてやこれはさっき言うように、全く雇い主の責めに帰する、社会の責めに帰する労働者に対する保護の積極的な義務を果そうとする機関なんです。そのために付設された病院を、別な団体を作って、それが今までの財団法人に委託しておるならいいのですが特殊法人ですから始末が悪いのです。これを作ったことによって被保険者のためにこういう利益がある、こういう発展性があるという何か御説明があるなら伺いたい。
○三治説明員 今まで御承知のように労災協会に経営を委託しておったわけですが、経営の委託だけでございますと、やはり職員の身分でもまた給与その他労働条件につきましてもこちらの方の委託条項と労災協会の経営というものがほんとうに密接不離になっていかなければならないわけでございますけれども、やはり労災協会の方は委託事業という性格でどうしても労働省の指示事項というものについて拘束され、また理事者側の方もやはりその上に活動力の鈍ることがあるわけですが、今度の法律で事業団というものでしっかり権限を与えられれば、そういうふうな個々の問題について、また日常監督官庁から委託の契約というようなことから縛られぬで、自分の一定の権限と見通しを持って事業を機動的に運営できるというふうに考えます。病院長はやはり今までで参りますと重要なことや設備のことに関しますと労働省まで行かなくちゃならぬ。人事の問題、給与の問題になると労災協会へ行かなければならぬというふうで、労働本省の方と協会の方と二つを見ながら自分のところが経営していかなければならなかったが、今度の事業団になりさえすれば、自分のところの病院の運営、施設の改善、患者に対するサービスの度合いというものがすべて解決するようになるわけです。地方の病院では、病院長や病院を経営する者すべてが、やはり本省、労災協会と連絡していたのが、今度は事業団本部とだけ交渉すれば平は足りていくわけなんですから非常に経営が機動的にいって、しかも責任態勢をとったいわゆる事業性を持った経営になっていく。しかも保険施設として委託経営というよりも、やはり政府代行というふうに責任を上げてきたわけですから、その方がより合理的に運営がされるようになるのではないかというふうに考えております。
○井堀委員 今伺っておると大へんよくなるようなお話でございますが、もう一つ前に戻って聞いておきたいのです。この理事機関である理事長なり理事あるいは監事もそうですが、任期は四年ということになっておる。この四年というのはどういうことですか。こういう仕事に没頭してずっとやったならば重任、三選ということになるのか、この四年ときめたことには理由があるのですか。四年もやればボロを出す者はボロが出るだろうし、伸びるやつは伸びるようになるだろうからこの辺で切ろうというわけですか。ほかの場合は任期というものに理由があるのですが、この場合はどういう根拠から四年ということが出たのですか。
○村上(茂)政府委員 四年という任期でありますが、ほかの事業団、公団等の例も参酌いたしまして、三年がいいか四年がいいかという議論もあろうかと存じますが、病院、補導所一等の施設を設置いたしまして、それが建設に着手してから完成するまでずっと一貫して責任を持つというような点もございますし、少くとも社会通念上四年ぐらいが妥当ではなかろうか、こういうことで四年にいたしたわけでございます。要するにある程度の期間責任を持ってその事業遂行に当らしめる、こういう趣旨から出たものでございます。
○井堀委員 社会通念で四年と言うが、社会通念というのは別に三年とか四年とかいうようなものはないでしょう。一年のものもあるし六カ月のものもある。だから私はそういうことを聞いておるのじゃありません。私の聞いておるのは事業団の性格の一つを形作っておる大事な要素だと思うから聞いておる。御案内のような公務員もしくはこれに準ずるものならいいが、今度新しくなる。今までは財団法人に委託経営をやらしておるのですから、まあ下請をやらせておるんだから、下請のやることが悪ければ自分でやればいい。建前は自分がやることになっておる。今度の機関は代行機関でしょう。代行機関についてはこれこれだ、しかもその中心をなす機関は四人の理事と理事長です。それを四年間というのは一体何か根拠があるのですか。あなたは社会通念だと簡単におっしゃったけれども、こういう仕事をやるのに四年門というのはどういうことなのか。私はさっきから全体でお尋ねしておりますが、この種の二つの事業、たとえば失業保険というものについてもどこからも四年間というのは出てこない。失業保険は大体四年間ぐらいで保険の料率を変えてみなければならぬとかいうような根拠でもあれば別ですが、失業保険関係から考えてみても出てこないし、労災保険に至ってはなおさらじゃないか。この四年というのはこの機関の中心をなす役員構成の重要な一つの要素だと思う。これを聞いていくとほかのところがわかってくるだろうと思うのです。これは政府としてはほかの公団を見ると四年ぐらいになっており、国会議員も四年ぐらいだからということでやったのじゃないかという意味の答弁のようにも聞えましたが、私はこれにはもりと重要な意味があると思う。というのはこれは選挙じゃないのです。国会議員なら選挙ですから、大体四年間もすると民意もあらたまるだろうということです。ほんとうからいうと、今のように大臣が半年でかわるくらいだったら、六カ月くらいでかわるたびに取りかえなければならぬ。代行ですからね。なぜかというと、二大政党の場合は基本的な政策が変ってくるのですよ。代行ということは、言うまでもなく大臣の意思が伝わっていくということで、単に機械的に使うなら、何もそんなことをしなくてもいいですよ。公務員がやったらいいんですよ。あるいは財団法人にまかしておけば、悪ければ取りかえればいいんですよ。こういうことはどうですか。社会通念ということじゃなく、もっとあるでしょう。
○村上(茂)政府委員 四年という任期をどういう根拠できめたのか、こういうことでございますが、私どもは事業運営という観点からこの理事長、理事の任期というものを考えなければならぬと思うのですが、指揮監督の系統は労働大臣から受ける、労働大臣はときどきおかわりになることがある。そういう系統から見れば、長いという議論も出るかもしれませんが、私どもは事業の運営の実態から考える場合に、物的施設の設置運営でございますので、病院の建設にしても、建設に着手する前にすでに一年も要する、あるいは着手してから数年を要するということで、一つの病院なりあるいは補導所の建設の実態を見ても数カ年にわたる歳月を要するわけでございます。そういった単なる行政機能とかそういう面からでなくて、物的施設の設置及び運営をまとまった期間責任をもって行わしめるためには、四年間ぐらいが適当ではなかろうか、こういうふうに考えた次第でございます。これは一応の参考ではございますが、他の公団の例などを見ても、五年のところもあり、四年のところもあり、短かいところでは三年のものがあるのでございますが、労働省関係の保険施設については、施設建設、完成、運営という点から見て四年くらいが適当ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
○井堀委員 これはもっと聞けばよくわかると思うのですが、それではもう一つ角度を変えて質問します。理事長、理事、監事にはどのくらいの給料をお払いになりますか。それから七人でやるわけにはいきませんから、それぞれスタッフがつくでしょう。そういうような予算をつけて出してもらわなければいかぬのですが、そういう計画書のできたものがございますか。あったらそれを配付してもらいたい。
○村上(茂)政府委員 理事長、理事の俸給等の関係でございますが、これはまだ確定いたしておりません。しかしながら一応他の公団の中で理事長、理事制をしいておるものもありますし、そういった他の事業団、公団等の例から見て、大体の俸給額というのは出てくるわけでございまして、今のところ抽象的に申しますと、ほかの公団の理事長程度の俸給を理事長、理事も同様ほかの公団における理事程度のものを払ったらどうであろうか、かように考えております。それから職員の俸給については、これもまだ最終的に決定いたしておりませんが、これは別に法律の規定に基いて、労働大臣の認可を受けて、そういった職員の給与規程もきめることになっておりますが、労災病院の関係においては、特に医師という特別な職務から考えて、別途考慮しなければならぬと思いますし、また職業補導所においてはいわゆる指導員というものが中核になりますので、そういった者についてもその職務の特殊性に応じた俸給というものを考えなければならぬと思っておりますが、まだ最終的に確定はいたしておりません。
○井堀委員 これはささいなことのようにとればとれぬことはありませんけれども、給料ということで大体人間の大きさがわかるんです。だから、他の公団、営団とおっしゃいましたが、大きなものもあれば小さいものもある、それで相場が出てくる。まさかそういうそろばんを置かぬで国会の審議を求めるわけにいかぬじゃないか。そういうことでなく、もっと引き合いに出せるところを出しなさい。ものさしはメートル法で行きましょう。それから職員の方は公務員のどのくらいのクラスか、人数はどのくらいか。そうして今までの例をとるならば、財団法人に委託している経費と今回の場合の経費とではどのくらい違っておるか。それだけいえば大体わかってくる。小さな株式会社や合資会社や合名会社を作るんでも、ちゃんと事業計画書を出しますよ。
○村上(茂)政府委員 確定いたしておりませんので、一応抽象的に申し上げたのでございますが、公団の中で理事長、理事の制度をとっておりますところでは、理事長が十三万円くらい、理事が十万円くらいが相場だそうでございます。それに準じて扱わしていただきたいと思っておりますが、確定はいたしておりません。監事も理事クラスの俸給になると思います。 職員は、現在すでに労災病院については、病院長以下医師がたくさんおりますし、それから事務局長以下の職員もおるわけでございます。そういった現行の給与制度を一応基礎にして、国家公務員あるいは民間の同種の人々の俸給を参考にして考えていきたいと思っております。一例としてこれは一つの目安になる金額を申し上げますと、病院長、事務局長は国家公務員の一般職の俸給表で申します十三級か十四級に相当する俸給を支払っておるのが現状でございます。大体現状に若干の他の要素を加味して、妥当な俸給をきめて参りたいと思っております。 それから職員の数でございますが、最終的に確定いたしておりませんし、現に建設途上の施設もかなりございますので、絶えず流動しておりますが、本部、病院、補導所関係を入れて初年度は大体三千五百名程度にはなるかと予定いたしております。
○井堀委員 理事長十三万円といったら、どの辺の公団ですか、具体的に一、二示して下さい。 それから職員は一般職の十三級、十四級くらいといいますが、これは二つのことをちょっとお尋ねしておきましょうか。すでにそれぞれの施設に雇用されている公務員、地方公務員もおりましょうし、病院の職員もおりましょうが、その中で身分の変るものと変らないものができる。たとえば地方には職業補導所の関係では総合補導所と一般補導所と分けられますが、個々の場合問題がいろいろあるようでありますが、給与の問題をもう少し詳しく聞いておきましょう。まず理事長十三万円といったらどこか二つ三つ代表的なもの、理事、監事もあげて下さい。それから職員の中では既存のものは待遇が変るか変らないか。もちろん変らないと思う。身分が多少変ってくると思うのですが、この点についてお答え願いたい。
○村上(茂)政府委員 公団の中で理事長制度をとっておる例としましては、農地開発機械公団、森林開発公団等がございます。それから職員の身分関係でございますが、労災病院の病院長以下職員の身分は労災協会の職員でございまして、純然たる民間人でございますが、それを今度事業団発足に伴って事業団の職員にする、こういうことになるわけでございます。それから府県の総合職業補導所の職員は大部分府県の職員、つまり地方公務員でございますが、事業団に移りましても円滑に業務が遂行されますようにこの地方公務員を引き続き事業団の職員として継続勤務させるように期待しておる次第でございます。
○井堀委員 公団のところで今引例された農地開発機械公団、森林開発公団の二つですか。
○村上(茂)政府委員 公団の中で理事長の制度をとっておりますところ、つまり総裁でなく理事長という制度をとっておりますところは農地開発機械公団、森林開発公団でございます。住宅公団、道路公団は総裁という名称を用いておりまして、若干俸給が違っております。
○井堀委員 総裁になると幾らくらいですか。
○村上(茂)政府委員 総裁は十五万円と承知いたしております。
○井堀委員 大体これで少し出てきたようです。そうするとここに考えられている事業団は既存の類似した団体に比べると理事長ということで総裁よりも低いところをねらっておるようであります。農地開発機械公団、森林開発公団、こういう種のものと給料が同じだからとか名称が同じだからそういうものと匹敵するというように考えるのは早計かもしれません。しかし一応こういうものと見合ってくるということになると、この公団の構想がわかるような気がする。そういう意味でお尋ねしたのですが、ほんとうはこういうものを審議するときには、最小限度の資料をわれわれに提出してもらわなければならぬので、従来やっておる、財団法人に委託しておるものはこういうことで経費はこのくらい、これはわかっている。今度作るものはこれだけのスタッフを入れて経費はこれだけかかるというものはつけて出してもらわなければいけないのです。しかし与野党の間でこの法案の密蔵の日程をおきめになっておるようです。資料も出ないまま審議することは不可能のことです。審議権をみずから軽視することになるのですから、あとで与野党で話し合いをすればきっと変更になると思いますが、きょうの質問には間に合いそうもありません。後日詳細な計画吉を一つ出してもらいたい。そうしませんと、今までの財団法人におまかせしていた方が経理上からいえば有利である。あるいはあとの理事長をお願いするにしても、このくらいの財布でこういう人を見つけるということになれば、大体今二つの公団の理事長に選ばれておるくらいのケースの人だということになりますと、これは小さく固まってしまうおそれが多分にあると思う。これは政策論でございますが、ひとり二つの保険に関する論議ではなくて、この社会保障制度審議会の答申の中で言っておりますけれども、社会保険に対する類似の保険の統合をはかれるものは統合するし、あるいは窓口を整理するものは窓口を整理する。社会保障をこの内閣は大きく看板にあげたのですからね。下の方にくるとこういうことをやっておるからどだい当てになるものではないです。やはり政府の打ち出しておる大方針と歩調を合せてこういう法案が出てくるものだと思う。そういう関係からいきましても、最初の答弁とこの計画との違いがはっきりするような気がいたします。ことにこれは次官にちょっとお答えを願いたいと思いますが、あなたは農地開発機械公団、森林開発公団のことについて御検討なさっておられるかどうか。そして理事長制と総裁制で相場が三万円ばかり違うわけでございますので、総裁がいいか理事長がいいか私は知りませんが、そういう点に対する御検討は政府としてはいかがなものでございますか。こういうところへ持ってこないと抽象論になりますから、具体的に質疑を続ける意味で一つ政府の方針を伺っておきたい。
○伊能政府委員 農地開発機械公団、森林開発公団、これらの問題は性格が違う公団でありますので、これらの公団についての研究は特にしてはおりません。理事長にすべきか総裁にすべきかという問題については、かなり問題もありましたが、実質的な名をとって理事長でいいではないか、こういうような結論になりました。その理由というのは、大した理由もないのですが、総裁というこけおどしのようなものを使わなくても、実質的にじみな団体であるからそういう名でよろしいではないか、こういう結論になったわけであります。
○井堀委員 これは私もよくわからぬのですが、専門員の人に調べていただいて、類似のものがどれだけあるか見ていただき、参考のためにあとで検討して、どれが一番近いかということを先に聞きたかったのですが、あとでもよいのですが、公社関係で日本国有鉄道、これは三公社五現業の関係で全然違うでしょうが、そういうものもある。それから事業団という名前のものがありますね。鉱害復旧公団、石炭鉱業整備事業団、そのほかに開発会社、政府の代行機関、外局といったようなものがかなりありますね。公庫などもかなりあります。その他の団体の中でもいろいろあげてこられると思うのです。こういった問題を検討されたと思うのでありますが、というのは、冒頭に申し上げたように、こういう特殊法人を作ってこの種政府の仕事を代行させるということは、ほかの公団事業団と同じようにそう簡単に考えられぬのじゃないか。私も研究は不十分でありますけれども、今あげたようにいろいろなものがありますが、こういうものの中で見てもどれが一番よく似ているか、といっても名前が事業団というところが似ているくらいで、あるいは総裁か理事長かといったようなところで、似ているようなものが出てくるかもしれない。しかし仕事の性質からいうとそういうものはありませんよ。これは日本にないだけではありませんよ。(滝井委員「世界中にない」と呼ぶ)それが民主的な機関として事業をやっているところはたくさんある。しかし私寡聞にして知らないのかもしれませんが、外国にこういう、国が労働者に対する義務を負うべき重要な仕事を代行機関を作ってやらしているところがございましょうか。あったら参考のためにお聞かせ願いたい。
○村上(茂)政府委員 私どももぴったりこの事業団方式と同じというものは承知いたしておりませんが、問題は失業保険制度などにつきましても国が失業保険を管掌しているところもございますれば、一種の共済組合的なもので運営しているところもあります。そういうように失業保険制度あるいは労災保険自体が保険制度として成り立つ制度が各国によって多少ニュアンスを異にいたしておりますので、日本の場合にぴったりしたような例は私どもも寡聞にして知らないのでありますが、ただ他の公社、公団、事業団の従来のそういった団体と比較いたします場合に、いろいろ見解はあろうかと思いますが、一定の行政目的を能率的に行うために設けた特殊な公法人という点においては、性格は公団に似ておるかと思うのでございます。ただ御指摘のように政府が管掌すべき保険施設の設置運営を行う事業団でありますから、他の公団よりもはるかに自由裁量の余地を少くいたしておりまして、先ほども政務次官からお話がありましたように、業務方法書、予算事業計画、資金計画等につきましても前もって労働大臣の方針に従ってそういうものを作成し、そして作ったあとで労働大臣の認可を受ける、こういうような非常に厳格なるシステムを採用いたしております。特に他の公団と違います点は財源調達の点でございます。すなわち他の公団でございますとみずから公団債を発行するとか、あるいは長期借入金をいたしまして、自己の判断に基きまして事業運営を相当弾力的に行う、こういう例が多いのでありますが、この労働福祉事業団におきましてはそういった事業団債の発行を行なったり、あるいは長期借入金を行う、こういう制度をとっておりませんで、もっぱら労災保険及び失業保険両特別会計からの出資金及び交付金によって事業団の財源をまかなう、こういう建前をとっておるのでございます。そういった非常に制限された形をとっておりますのも、井堀先生御指摘のように政府管掌の保険施設の設置運営であり、非常に責任が重大でありますためにそういった点につきまして非常に厳格な制約を加えておる、こういうことでございます。なお念のために申し加えますと他にも事業団という名称のものが二つございます。鉱害復旧事業団と石炭鉱業整備事業団と二つの事業団がありますが、これは御承知のように石炭合理化あるいは鉱害復旧という特定目的のために設けられた事業団でございまして、また財源調達方法などを見ましても鉱業権者等民間会社から必要な資金を調達するという方法をとっておりまして、そういった面におきまして今回の労働福祉事業団とはかなりの相違がございます。
○井堀委員 世界のことは私はよくわかりませんので、国会図書館の方に調査をしてもらったわけですが、ここでも見つからないそうです。そうでしょう。こういうことはえらいことですよ。あなたも知っているように共済組合の制度とかあるいは労働組合にまかせるということはこれはわかる。これはかなり大胆な法案だと、そういう意味で思っておりました。 そこで時間の関係もありますから、もう一度伺って他の諸君にお願いすることにいたしたいと思いますが、これはこの二つの保険に限っておるのじゃないかもしれませんが、こういうものを政府が、さきに私第一条の規定で申し上げましたように、法律もそういうことをきめておるし、それから失業保険の場合においては一番利害関係の直接にくるのは被保険者、それから共同の協力をしておる雇い主、こういうものの了解なしにこういうものを出すということは道義的に許されるものではありません。保険の性質からいったらできるものじゃないのです。政府はきっと労災保険審議会あるいは職業安定審議会、そういうものに諮問をして了解を得たような顔をして御答弁なさるかもしれませんが、あれは性質が違う。そういうことをあの審議会にまかしたのじゃありません。その答弁はもう意味はございません。被保険者の人々は金を積んできておるのです。そうしてそれはこの法律によって、もうこれは約束ですからね、われわれはこれに同意を与えるか反対をするかということは、もし良心的な代議士であるならば――被保険者の意見を聞かないでけしからぬ問題なのです。われわれは白紙委任状をもらって出てきておるのじゃありません。しかもそれが保険の業務の重要な部分を占めている。結果が悪かったらあやまればいいものではありません。国家が何がしかの補助金をくれておるから補助金の部分だけを動かすというなら別だ、それだって約束ごとで繰り込んだ経費である。だから税法を変えるとか他の法律をいじくるのとわけが違うのです。そういうことが簡単に政府と限られた国会議員の間でやられたのじゃありません。この点はどうでしょうか。あなた方はもうその必要はないとお考えでしょうか、一つ伺っておきます。
○伊能政府委員 先ほどもこの問題は申し上げましたが、この二つの労働災害補償保険法、並びに失業保険法、そういうような法律の範囲、そしてまた特別会計の範囲において労働大臣にまかされている行政の一部をこの団体をして代行せしめようということでありまして、被保険者やあるいは出資者である事業者は今まで直接にはほとんど関係のないというふうに考えまして、この法案はそういう方面には別に相談は申し上げませんでしたが、これを一そう民主的にやるためには法律にして御審議を得なければならない、こういうつもりで法案に出した次第であります。
○井堀委員 これは他の条文の変更とは違うのです。代行機関とはいいますけれども、さっき来審議の過程で明らかにされたように理事長に対して十三万円払うい理事に十二万円払う、監事に何万円払う、職員をそこへ入れる。もちろん大臣が監督するのです。しかし監督するのですけれども、独立した法人になることは間違いない。そういうことがやれるようになったら、それを法律の改正だから国会の同意を得られればできるということになったら、被保険者はどうなるか。いや善意に基いてやるのだからいいということでは、これは専制政治じゃないですか。法律の範囲内じゃありませんよ。法律にはこういう公団を作れと書いてありませんよ。大臣の権限でやるのなら、法律にしなくていい。行政的にやれる範囲なら、何も法律にしなくても今までのように財団法人に事業を委託して、その法律の権限、範囲内でやるなら委託でいい。そんなものを作れと、両方の保険のどこにそういうことが書いてありますか。政府がやれとは書いてあるけれども……。ここを一つ説明して下さい。法律のどこにそういうことをやってもいいということが書いてあるか。
○村上(茂)政府委員 現在の労災保険法や失業保険法には事業団にやらしていいという規定がございませんから、今回事業団法案を出しまして、これが成立いたしましたならばこの法律に基いて事業団が行う、かようになるわけでございます。なお被保険者なりあるいは関係者の意見を聞いたかということでございますが、私どもは一応法律上の手続といたしまして、労災保険法やあるいは失業保険法の改正をいたします場合にはそれぞれ関係の審議会、つまり労災保険につきましては労働者災害補償保険審議会、失業保険につきましては職業安定審議会にかける、こういうことが法律に定められた手続でございますので、その審議会に諮って意見をいただいておるわけでございます。もちろん被保険者の代表という点からいたしますと、労働者の代表が両審議会の委員になっておりますので、そういった点で御意見が伺えたものと考えておるわけでございます。なお労働省所管の審議会以外にも、社会保障制度審議会にもこの事業団法案は諮問いたしまして御意見を聴取する、こういうことにいたしたわけであります。何と申しますか、被保険者全部に意見を聞くというのも一つの考えかと存じますが、私ども法律の定める手続に従いまして、そういった関係の御意見はできるだけ拝聴いたしたような次第でございます。
○井堀委員 重大な発言です。だからこの法律を作る前に失業保険法の改正並びに労災保険法の改正を出してくれ、そしてこういうものをやるときには公聴会に諮らなければいかぬのです。それは被保険者全部に問う方法は、今の組織では困難でありましょう。だから公聴会の制度があるのです。全国にまたがる多数の被保険者の重大な権利に関する事柄です。それが審議会の中で諮れる範囲内のものならその審議会に御相談なさることはけっこうです。審議会に諮ることはちゃんと法律できめられている。しかしこういう団を作るということは書いてありますか。ありませんよ。だからこういうものは、あなたがおっしゃられるように失業保険の改正、労災保険の改正に属するものです。ですからそういうものの諮り方をし、さらにこれを公聴会に諮って、広く被保険者の了解と支持を得て立案をされ、あるいは国会に提出されてくるというのが順序だと私は思う。これをあなたはほかの公団を作るとか何とかいうように簡単におっしゃいますけれども、そうじゃないことは今あなたのお認めの通りに、この二つの法律の改正を行わなければできない。それを公団法を作っておいて、それに関連するから法律をちょこちょこと直す。それは法律の技術として許されるかもしれないが、そういうことが慣例になったら、一体労働者は何をたよりにして政府にまかして、事業を信頼してやっていくことができるか。何でもできるではありませんか。これに何か御答弁がありますか。あまり白いものを黒いように言わぬ方がいいですよ。
○村上(茂)政府委員 失業保険法なり労働者災害補償保険法の改正という手をまず打って、しかる後に専業団を作るべきかいなかをきめるのが建前ではなかろうか、こういう御意見のように拝聴いたしたのであります。そういった方法もあるかと存じますが、問題は失業保険法なりあるいは労災補償保険法の中で政府が保険施設を行わせる、こういう建前をとっておりますので、そういった建前を一部については事業団に行わせる、こういった点の改正をすれば、法技術上はそれで足るのではなかろうか、かように私ども解釈するのでございます。従いまして先にもちょっと御指摘がございましたが、事業団法の附則第十一条におきまして労働者災害補償保険法の関係条項を改正し、附則の第十二条におきまして失業保険法の改正条項の一部改正をした、こういうような方法をとっておるわけでございます。そういった附則で改正するのはけしかぬ、こういうおしかりのようでございますが、法律的に見ますると附則の重要性は、附則も本則もともに法律の一部でございまして、重要性においては変らないのではなかろうか、かよう存じておるわけであります。
○井堀委員 そういう三百代言の言うような議論をしてはいけませんよ。最初から、それだからこそ私は本質論を言ってきておるわけです。そういうまるで、ますのすみをようじでつついて話をまとめるような事柄と――もっぱら政策上の大きな問題だということを大前提にして長い時間をかけてお尋ねをし、御意見を拝聴したわけなんです。その点では意見が一致しているではありませんか。そういう社会保険の中でもきわめて政府の責任の重大であって、そうして被保険者にとっては、基本権の中でも最も大切な人権なのです。そういう法律を変えようとするときには、憲法が国民投票を必要とするという意味は基本権に関係するからです。そういう法案を、何だかこういうえたいの知れない名前を出してきて、名前の通りに言うならこれは労働者の福祉事業団ですから、労働者の福祉に関することは全部何でもやれるようにしなさい。妙な名前をつけたものだ。そうして中身は何かといったら、あなたがおっしゃる――私が聞いたのではない、語るに落ちた労災保険の改正、しかも重大なる改正、失業保険の改正、根本的な問題を動かすような改正です。それを労働者福祉事業団というようなことを言う。これは政党としても、内閣としても最もよくない。こういう問題については、今後の国会のあり方にも重大な関係を持つと思うのであります。ですからシカを追うもの山を見ずで、別な目的があることはいいです。しかしこれは別な方法でまた御協力申し上げますが、いろいろな外郭団体がたくさんあるけれども労働省には一つもない。だからそれこそ国務大臣をいただいておるのですから、その国務大臣が自分の職責にかんがみて全体の配分をやったらいい。人事の交流をやったらいい。こんな大きな問題に手をつけられては、労働者はたまったものではない。こういうとぎに憲法は厳然と光を持ってくる。これは憲法のなしくずしです。憲法改正のはしりだ。そういう性格を持つものであることを十分認識しなければならぬ。いろいろ聞きたいことはありますが応間の都合もあるし、労働大臣の答弁を願わなければならぬことについては留保いたしまして、私の質問は一応これで終りたいと思います。大へんありがとうございました。
○大坪委員長代理 八田貞義君。
○八田委員 時間がないようですから要点だけ二、三点質問してみたいと思います。 業務災害の認定という問題でございますが、業務災害認定の理論的根拠として最も重要な意義を持つ災害概念あるいは原因概念については、わが国においては必ずしもはっきりしていないわけです。法律上の条文には労働基準法に「業務上負傷し、又は疾病にかかった」者及び国家公務員災害補償法第一条のカッコ内です。「(負傷、疾病、廃疾又は死亡)」以外に災害の説明も定義も見られないわけです。この災害とは一体どういうことをいうのかということについて、今までのわが日本の既存の法律中に災害の説明とか定義とかいうものが書かれておるかどうか、次官からお知らせ願いたいと思います。
○三治説明員 今までの法令なんかで、業務上の災害というものがどういうものであるかというはっきりしん定義を書いた法令はございません。やはり業務上の災害というのは、その中身としては負傷または疾病というだけでございます。
○八田委員 災害の概念というものがはっきりと明文化されていないわけですね。そうしますと、今後こういうようなあやふやな状態において進んでいく場合に、すでに皆さんも御承知と思いますが、ヨーロッパ等においては紛糾を起しておるのです。ヨーロッパでは、イギリスにしてもドイツにしてもフランスにしましても、災害の概念をはっきりつかまえてこれを法文化しておる。わが日本の法律には、ただいまお答えがありましたように全然ないですね。そこでわが国においてこういった災害概念の解釈について、ヨーロッパ諸国におけるような裁判判決の一例があったかどうかお知らせ願いたいと思います。
○三治説明員 災害概念についての判決はないようでございます。ヨーロッパでは御案内のように災害の概念として判例でこういうものの概念ということになっておって、十九世紀から二十世紀にかけて災害の概念も広くしてきているのが事実であります。わが国においてもこの業務上の災害であるとか業務上の災害でないとか、または補償等の責任がどの程度あるとかないとかいうような相当具体的なことについての判例は若干ありますが、そういうものの概念規定を規定したような判例はまだございません。
○八田委員 そこで具体的な問題に入りますが、業務中あるいは業務遂行中の障害を公務上の災害と見るかどうかということです。
○三治説明員 業務上の災害は業務上の負傷あるいは疾病として見ております。
○八田委員 業務遂行中の障害です。
○三治説明員 業務遂行中の災害は、業務上の負傷または疾病として業務上の災害としております。
○八田委員 これは私は重大な問題であると思います。というのは、日本語でいう業務上とかあるいは業務中というのでは、因果関係とのつながりから言うならば、はっきり違う。区分して考えなければならぬ問題です。業務中――業務をやっておった間の身体障害、これを業務上の障害と見るかということになりますと、因果関係と見なければならぬ業務とのつながり、ところが業務中ということになりますと、これを日本語の解釈から言うならば、業務中の災害と業務との因果関係をどういうふうに結びつけていくか、業務上と業務中ではだいぶ違いますよ。これは国家公務員の災害補償法に関する解説を読んでも、ただいまのような解説が書かれておるのです。業務遂行中の障害もやはり公務上の障害になるんだと書いてあります。これは非常に重大な問題です。それで私が先ほども申しましたように、災害の概念に対してはっきりつかまえておきませんと、今後この業務上の災害をはさんで法廷闘争にまで追い込まれてくる。私は業務小というのと業務上というのでは非常に違うと思う。業務上というのは、日本語でいうならば、業務との因果関係があるという意味を示す慣用語になっております、ところが業務中ということになりますと因果関係があるという意味は出ないのです。この点どうですか、今のあなたの御答弁に、業務中も公務上の障害と見るんだということは重大な発言です。
○三治説明員 お尋ねの趣旨を私ちょっと誤解しておりましたので申し上げますが、業務小の災害もそれはやはり業務に起因したものである。業務遂行中でしかも業務に起因した負傷というものを業務上の災害とし、また業務に起因してなった疾病も業務上の災害というふうにしておりまして、お説の通り全部が全部業務中に起きた事故というものが業務上の災害というふうになるわけではございません。
○八田委員 この業務中、業務上というのは非常に大切なことですからはっきりお願いしたいのであります。ただいまのように業務中という概念でいきますと、さらに説明しなければならぬのですが、たとえば国家公務員の災害補償法の解説の中には、この法律で災害というのは負傷、疾病、廃疾または死亡という事実をいうのであって、これらの生じた原因である事故をさしていうのではない、従って公務上の災害というのは公務に起因して、受けた負傷、疾病、廃疾または死亡をいうのである、というふうに書かれておるのです。こうしますと、イギリスとかフランスとかドイツで言われておるところの災害の概念とは全く違うのです。というのは、日本で言う災害という言葉が単に負傷、疾病、廃疾または死亡という言葉に置きかえられておるのです。原因というものは全然度外視しておる。ところがヨーロッパあたりで言っておる災害という言葉は正しくこの身体障害を起す原因となるできごとをさしているか、あるいはこの身体障害を起す原因となるできごととそれの結果の身体障害とを合せて災害と名づけておるわけです。この点が非常に重要なのです。ですから、わが国のように、災害というのは負傷、疾病、死亡等の身体障害それ自体だけを意味する、こういうふうにとられてしまうのです。単に災害という言葉を負傷とか疾病とか死亡とかによって置きかえられているにすぎない。日本の言うこの災害というものは、負傷、疾病、死亡などの身体障害それ自体だけを意味するものと解釈すれば、わが国の法律は、名称は災害補償法ではありまするが、実際には世界の一般災害補償制度に通用する意味での災害が除外された災害なき災害補償法、こういうややっこしい表現になりますけれども、こういうふうになってくるわけです。こうしたあいまいな解釈でやっていきますと、私はこれは非常に将来ともに問題になってくると思わざるを得ないのです。身体障害が起ったとき、まず災害、できごとの有無を問題として、しかる後それと業務との関係を見るということをしていないわけです。原因の実体をつかまないで、そうして出てきた病気、障害そのもの自体を災害と言っていることは、非常に概念の把握の仕方としてあいまいなことではないか、労働者の福祉をほんとうに考えるなら、災害概念の規定ということは法文上にはっきりと明示しておく必要があると思うのです。この点いかがでしょうか。
○三治説明員 法律にはっきり規定すべきであるという御意見については同感ですが、今までの法技術上でその表現がむずかしいためにこういうふうになったのだろうと思います。その解説は労働省で書いたわけじゃないので、私何とも申し上げられないわけなんですけれども、私の方といたしましては、先生のお説の通りのような解釈でやっておりますし、また法文の根拠といたしましては、具体的な負傷とか疾病とかいうことの上に業務上の事由というその事由をそういうふうに解しているわけなんで、ただ先ほど私ちょっと間違いました業務中の疾病とか負傷とかいうことでなくして、業務上に基因する疾病、それから負傷というふうなこの法律の一条に基く解釈の中の表現上の事由について、基準法におきましては単に業務上というふうになっておりますが、労災補償保険法によりますと業務上の事由による、こういうふうになっております。事由ということを保険法の方でははっきりうたっておりまして、労災におきましてはそういう業務上の事由によるものとしての負傷、疾病というふうに考えております。
○八田委員 今の説明では私ども納得できないですよ。時間がないからこれくらいにしますが、あとでまたゆっくり互いに問題点に触れて災害の概念規定というものをしなければならぬと私は思う。そうしませんと、この因果関係、たとえば業務があってそれで身体障害が起る、その間に因果関係というものがなければならぬ。因果関係を結びつけていく場合には、原因となるできごと、災害というものをはっきり規定しておかなくては、これは解釈によっていろいろあいまいなことが起ってくるわけです。ですから、ヨーロッパあたりの災害補償に関する法廷の判決などを見ますと、わが日本でも将来このようなあいまいなことでは、そういうことが起ってきやせぬか、そのとき一体労働者のほんとうの意味の福祉が守られるか、こういう気持がいたしておるわけであります。 さらにまたもう一つお伺いしたいのは、原因の概念規定ということについてもわが法律にははっきりしたものがないですね。ただ国家公務員の災害補償法の解説には、公務上の災害というものは、原因から見て職務に基因する災害、それから職務と因果関係をもって発生した災害、こう二つに分けて解説いたしております、ところが基因するといっても、因果関係を持つといってみても、日本語の概念としては何ら特別の相違は認められない。これは私はどうも法律上の用語の遊戯じゃないかというような気持がするのです。労働者の福祉ということを考えるならば、もっと理論的根拠をはっきりした言葉でもって表わさぬと、因果関係を持つとか基因するとかいってみても、日本語の概念としては何ら特別の相違が認められないわけです。さらにまたこういうふうに非常にあやふやな原因概念になっておるのですから、一つの結果に関連して無数の因果系列下のいかなる要素を災害補償法の意味におけるところの原因と解すべきか、法的の権威ある解説はわが国においてはまだないのです。これも一つの問題点なんです。それからさらにまたもう一つ問題点は、職業病と災害疾病の概念的な区別というものがわが日本でははっきりしていないのです。ですから、私どもこういった問題を考えますと、災害というものについてはっきり考えていかなければならぬと思うのです。 そこで時間が二、三分あるようですからさらにお尋ねしたいのは、職業病とそれから災害疾病ですね。これの概念的な区別がはっきりしないということを申し上げました。これは一方わが国では災害概念というものがはっきりしておらぬのですから当然そういうふうになってくるわけなんでありますけれども、わが国では国家公務員の災害補償法では職業病という名称はありません。ただそれの関係規則の第十条に職業病として特定の疾病名があげられておるわけです。これに反しまして、労働基準法には法律にも規則にも職業病という名称はないのです。しかし施行規則の第三十五条の業務上の疾病の一、二、三、五、六の各号を除くものはおおむね職業病の範疇に入るものと考えられます、ところが労働基準法施行規則の第三十五条の三十七号には、「前各号の外中央労働基準審議会の議を経て労働大臣の指定する疾病」という概括条項があげられております。これは職業病の列挙体系をとっていく場合には当然の処置でありますが、たとえば新たに補償しなければならない職業病が生じたときには、この手続を経て職業病表につけ加えるということで、三十五条の三十七号については異議のないところでございます。ところが最後の三十八号に「その他業務に起因することの明かな疾病」という概括条項があるでしょう、ずっとこういうふうに列挙していって、三十八号において「その他業務に起因することの明かな疾病」というものは一体どれをさしておるのでしょう。外国ではこんなことはないですよ。外国では災害疾病と職業病と二つに分けておるところがわが日本ではさらに三十八号において「その他業務に起因することの明かな疾病」という、何をさしておるのかはっきりしないようなものが載っておるのです。私はこういった問題についていろいろとお尋ねをしていきたいと思うのでありまするが、時間もありませんからこの程度にしますが、こういった問題点を一つ十分に御検討願いたいと思うのです、この事業団の発足に当って、日本の災害補償制度というものが外国の災害補償制度とは全く違った形において認定方式がとられておる、これは今後の非常な重大問題です。この点について十分に御検討されたいと思います、もしもそうでなかったら、健康保険法がそのまま災害保険法になってしまわなければならぬように拡大解釈ができてくるのです。ですからどうか今私が申し上げました点につきまして一つ十分御検討願いたいと思います。きょうは時間がございませんから、法の盲点と申しまするか、疑義の点について申し述べまして質問を終ります。次官、その点について今後労働省としてお考えになる点をお答え願いたいと思います。
○伊能政府委員 御趣旨の点はよくわかりましたから、十分研究していきたいと思います。
○滝井委員 最後にちょっと資料を要求したいと思います。 さいぜん井堀さんの方からこの事業団の役員構成みたいなものについていろいろ質問がございましたが、そういう役員構成みたいなものは業務方法書の中に出てくるのかどうか知りませんが、何かそういう事業団の全貌をやはり明白にしていただかなければいかぬと思うのです。そこで理事長や理事の俸給とか、職員の俸給、そういうような一覧表をあす出していただきたいと思います、一応予想されるところでけっこうですが。これはあなたの方で、当然この事務方法書に記載すべき事項は労働省令で定めることになっているのですが、その中にそういうことを書くのかどうか知らぬけれども、やはり労働大臣としては具体的に予算やら事業計画やら資金計画等を指示する方針を作るわけですから、従って当然そういう事業団の役員なり職員の給料というようなものも考えておいて支出しなければいかぬのじゃないかと思うのです、何もかもみんな事業団にまかせるというわけにはいかないと思う。発足の当初ですから、そういう全貌をあすできれば出してもらいたいと思います。
○大坪委員長代理 次会は明二十七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後四時三十六分散会