社会労働委員会 第22号
- 発言数
- 403 件
- 登壇者
- 22 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1957/03/11
会議録
○藤本委員長 これより会議を開きます。 内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案、厚生年金保険法の一部を改正する法律案、滝井義高君外十二名提出の健康保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の五法律案を一括議題とし審査を進めます。質疑を続行いたします。滝井義高君。
○滝井委員 この前の一部負担の続きを少しくやらしてもらいたいと思います。それは四十三条ノ八に、「保険医療機関毎二一日ニ付三十円」の一部負担をやることになっております。その「保険医療機関毎ニ」というこの「毎ニ」の解釈というものは、一体どういうことになるのかということです。たとえば内科へ入院をいたしております。そして同じ総合病院の耳鼻科で見てもらいます。その場合には内科にも三十円、耳鼻科にも三十円払うという意味なのかどうか。
○高田(正)政府委員 入院の三十円の御質問だと存じますが、一つの医療機関でございまする場合には、今御指摘のようなことではございません。三十円だけ払えばいいわけでございます。
○滝井委員 いやそれは「保険医療機関毎ニ」というのがついているのです。保険医療機関に一日三十円じゃない、毎日の毎の字がついておるのです。
○高田(正)政府委員 保険医療機関は一つでございますから、内科の病棟に入院をしておりまして、病状の都合によりまして耳鼻科等で見てもらいましても、それは三十円は三十円でいいわけでございます。その際は保険医療機関は一つでございます。
○滝井委員 初診の際は内科で見てもらって、今度は耳鼻科で見てもらえば、内科と耳鼻科は同じ病院の中にあってもこれは保険医療機関として取り扱っておる。入院の場合だけそれが保険医療機関でないという、法文のどこにそういう条文がありますか、ありはしない。四十三条ノ八の二を見てごらんなさい。みな保険医療機関になっておる。科が違えばそれは保険医療機関です。従って入院の場合も明らかにこれは保険医療機関になる。だから「毎ニ」というのがついておる。どうもこれは私の方が法制局のようなことになるような感じがするけれども、「毎ニ」というのがついておる。
○高田(正)政府委員 四十三条ノ八の四でございますか、これはそこに明らかでございますように、歯科がある病院のことをさしておるわけでございます。その場合には「歯科診療及歯科診療以外ノ診療ヲ併セ行フ保険医療機関」は、第一項第二号と申しますので、三十円の場合でございますが、及び「前項ノ規定ノ適用ニ付テハ」歯科診療だけをそれぞれ別個に取り扱う、歯科を別個に取り扱うという意味の規定であります。
○滝井委員 そのもう少し先を読んでごらんなさい。「歯科診療及歯科診療以外ノ診療又ハ診療科名ヲ異ニスル診療ニ付」ですよ。全部含まれておる。この間私が保険医療機関とは何ぞやと言ったら、あなたの御答弁では、それは知事の指定するものだ、ところが同じ病院の中で科が違っても保険医療機関じゃないかと言ったら、あなたは、いやそれは診療の場合だけについて例外的に保険医療機関というものを、内科のほかにたとえば耳鼻科とか外科があればそれを言いますという御答弁だった。今の御答弁だと、あなたの答弁は矛盾してくるじゃないか。歯科だけじゃない。これは歯科だけとは書いていない。
○高田(正)政府委員 これは現行におきましては百ベットで限っておりまして、百ベット以上と百ベット以下と別の取扱いにいたしております。従いまして、百ベット以上の場合におきましては初診料を二回取れるという取扱いにいたしておりますので、それと同じ取扱いに相なるわけでございます。
○滝井委員 どうも意味がわからぬですね。どこの法律に百ベット以上と以下ということの区別がありますか。みんな保険医療機関ですよ。保険医療機関というものはベットで区別していない。どうもとんちんかんなことを言っては困るのです。現行ということでなくて、法律が変れば建前が変ってくる。従って、現行のいろいろの規則というものは、あるいは命令というようなものは、法律が変れば当然変らなければならぬ。まずわれわれが論議をするときには現行のいろいろなものは論議の対象の外に置かれておる。まずこの法律案を基礎にして論議していかなければならぬ。百ベッドとか百ベッド以下の取扱いを別にするということは四十三条ノ八にはどこにも書いていない。
○高田(正)政府委員 四項をごらんいただきますと、「命令ヲ以テ定ムルモノハ」こういうことになっております。それで初診の際におきましても「命令ヲ以テ定ムル初診ヲ除ク」こういうことになっておりまして、これによりまして現行の取扱いと同じように百ベッド以上の場合におきましては別途の医療機関として取り扱う、こういうことに相なっておるわけでございます。
○滝井委員 「命令ヲ以テ定ムル」ということは今後定めることであって、もうすでに定めておるものを命令をもって定むるとは言わない、今から法律を作るのですから。現行のものは現健康保険法で命令をもって定めておる。この健康保険法は今から、ことしの何月か知らないけれども、五月か六月か七月か八月か、そのころから行われる法律です。そうするとこの法律ができてから初めてこの法律に適用した命令ができてくる。今までの命令をもって、そうなっておるからそうだという解釈は私たちはいただきかねる。そういうことですから、これはあなた方が今後命令をもって定めるものは百ベッドに限る予定でございますなら予定でございますという、こういう答弁なら話はわかってくるのです。
○高田(正)政府委員 私のお答えの仕方が悪うございました。「命令ヲ以テ定ムルモノハ」ということが第四項にもございまするし、この一項にも「命令ヲ以テ定ムル初診ヲ除ク」こういうふうになっております。従いまして、私どもこの命令の内容を定めまするにつきましては、現行でやっておりまするように命令をもって定めたい、こういうつもりでございます、ということをお答えをいたすつもりであったわけでございます。言葉が足りませんでまことに申しわけございませんでした。
○滝井委員 そうしますと百ベッドなんという限界をなぜ設けなければならぬかということです。たとえば三十ベッドの病院であってもこれは医療法ではっきり病院となっておる。だからそれを百ベッドに区切らなければならぬということになれば、そういう大医療機関というものについては初診の際に何回も金が取れる。入院料も二度——二つの科で取れていく。小さい医療機関はなぜ取れないかということなんです。
○高田(正)政府委員 入院の際におきましては二つの科に入院するということはないわけであります。従いまして今御質問の、入院の際に、私が最初答弁をいたしましたように、入院に伴う一部負担の三十円は一つでいいわけでございます。初診の場合におきましてはこれはあり得るわけでございますけれども、その場合には、ただいまお答えをいたしましたように「命令ヲ以テ定ムル初診ヲ除ク」というこの命令によって、現行と同じような取扱いにいたしたい、こういう予定であるということでございます。
○滝井委員 いや、私がわからないのは、四十三条ノ八の第一項の入院のところに「保険医療機関毎ニ」とこう書いておるのです。これは、すべての医療機関に平等に適用するという条文ですよ、原則は。ところが、あなたの方は、今度は、四項でそれは命令でもって定める百ベッド以上のものだ、こう言われるわけなんです。百ベッド以上という区切りをどうしてつけるのか、なぜつけなければならぬかということです。耳鼻科、眼科、婦人科、外科と持っている病院であろうと千ベッド持っている病院であろうと、三十ベッドであろうと、それに百ベッドという区切りを持って金を取る取らぬの区別をしなければならぬ理論的根拠はどこにもない。どこに理論的根拠を置いてそういうことにするのか、ということです。
○高田(正)政府委員 百ベッドで区切るということにつきましては、先生御指摘のように若干の問題があり得るわけでございますが、現行の取扱いがそういうことになっておりまするので、一応現行通りの取扱いをいたしたいというのがわれわれの考え方でございます。
○滝井委員 こういうところにもすでに大病院に特権的な一つの権利を与える形ができておるのです。私はこれは了承いたしません。 次に、外来の患者が即日入院する場合が多いのですね。その場合に、まず初診をする、そしてこれは明らかに百円を越えれば請求書は出すことになりますが、百円以下であって入院した、こういうときには、御存じのように入院と外来とは請求書が違うのです。二枚出さなければならぬ。その場合に、初診のときに百円以下の入院患者の場合には外来の請求書を出さなくていいという理論になります、この前のあなた方の御説明によれば。出さなくていいかどうか。
○高田(正)政府委員 ここで先般私と医療課長の答弁が食い違ったような印象を与えまして、これについては別にまた後日お答えを申し上げる、こういうふうに申し上げておりました、それをあわせてお答えを申し上げたいと思います。すなわち、初診の際に百円以下であった場合に、しかもそれきりでもうあとに続かなかった、こういう場合につきましては私は請求をしていただかなくてもいいということを申し上げたのです。この答弁が正しいのでございまして、医療課長は若干先生の御質問を思い違いをしておったようでございまして、そのあとに再診以後いろいろと続く場合にはその請求書の中に最初の百円以下の初診の医療費についてもあわせて記載をしていただきたい、こういうことを申し上げた趣旨であったそうでございます。従いまして、私がお答えをいたしましたように、一回こっきりであってそれが百円以下であったというような場合におきましては、それは請求の問題が起って参りませんので、請求書は御提出いただく必要はございません。 それからただいまの御質問でございますが、初診の日に直ちに入院をする場合は——御質問の趣旨は初診は百円以下であってそうして入院ということだろうと思いますが、その場合には入院を御請求いただけばいいわけでございます。
○滝井委員 わかりました。とにかく百円以下の初診は全部請求書を出さなくていい入院、外来を通じて出さなくていいということを確認いたしました。 次にお尋ねしたいのは、同じ四十三条ノ八の二のところです。この入院の、「給付が行ハレタル日ヨリ起算シ三月ヲ経過シタル後ノ給付ニ付テハ之ヲ支払フコトヲ要セズ」という、その三カ月の計算の仕方です。二月は二十八日、三月は三十一日、四月は三十日と、こうなる。そうすると私たちは、一カ月といえば常識で三十日と計算するわけですね。これは患者にとっては、三カ月の計算の仕方というもので大へんな違いになってくるわけです。また保険診療の上においても、請求書を書く上においても、患者から三十円を取った、取らぬという監査の対象なる。これは今後問題になる一番の要点です。従って私たちが普通こういう問題を書くときには、一日に三十日と書いておるのですけれども、たとえば九十日間とか九十二日間とかいうふうな書き方にしないで、ただ三カ月という書き方にすると、たとえば月の中ごろから始まった場合は、二月、三月をそれぞれ三十日と計算するのか、それとも二月は二十八日、三月は三十一日と計算するのか、実際の金のやり繰りで問題になってくるのですが、どの計算の仕方をするのですか。
○高田(正)政府委員 計算の仕方は、民法に期間の計算の仕方が書いてございますが、それに従いまして、初日を入れまして暦月で計算をいたすわけでございます。
○滝井委員 この速記録は、いずれ療養担当者あるいは患者等も読むのですから、もう少し具体的に——民法の計算で期日は暦月というようなむずかしい言葉じゃなくて、具体的に一つ……。たとえば二月は二十八日です。三月は三十一日、四月は三十日ですが、そういう場合にはどういう計算をするか。月の中ごろから入院するときはどうやる、月初めからのときはどうだ、ということをきちっと具体的に説明をしておく必要があります。
○高田(正)政府委員 現行の健康保険法の第一章総則の第五条に、期間の計算につきましては、「本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ規定スル期間ノ計算ニ付テハ民法ノ期間ノ計算ニ関スル規定ヲ準用ス」ということで一応明らかにしておるわけでございます。従いまして三月の五日に入院したといたしますれば、それから三カ月目の四日までがその期間に相なるわけでございます。
○滝井委員 二月の場合をお教えいただいておきたいと思います。
○高田(正)政府委員 二月が途中にあって二月を含めましても、暦月でございますから、二月が二十八日であろうと二十九日でございましょうと、それは一カ月として計算をいたすわけでございます。
○滝井委員 大体了承いたしました。そういたしますと次に問題にいたしたい点は、先般私が御指摘をいたした四十三条ノ九の、保険薬局に一部負担を払う場合があるかということは、これは好みでこういうことになっておるのだそうでございますが、まあないわけでありますね。そうしますと、医薬分業が行われた現段階においては、この四十三条ノ八によって「初診ヲ受クル際」と、こうなっておりますね。そうするとわれわれの初診を受くる際という概念は、医薬分業の現実においては、医者の診断を受けて薬剤師に薬をもらう、これが初診を受くる際になってしまう。それはどうしてかと申しますと、分業が行われるならば、医者の役割は診察、薬剤師は薬を調剤して患者に渡すのが薬剤師の役割と、こうなっております。そうしますと、この法律の立て方でいきますと、医者のうちに行って診察をいたしてもらいまして、そして医者のうちで薬をもらうと、百円までは薬代を払わなければならない。ところが処方せんだけをもらって薬剤師に行けば、薬は無料でもらえる。ここがおかしくなる。薬剤師には薬剤師の役割があり、医者には医者の役割があるのだから、薬剤師に行った場合にも一部負担を払う法律の立て方にしないと、これは間違ってくる。医薬分業の今日、ただ言葉が保険薬局とこう変っているだけであって、広義の保険医療機関というものには薬剤師も含まれるわけです。従って、保険医療機関に一部負担を払うという建前なら、保険薬局にも払うという建前でなくちゃならない。ところがこれは保険薬局だけ抜かれている。従って医者に行って治療をしてもらって処方せんをもらえば、これは初診が四点で処方せん料が一点、そうすると五点ですから五十七円五十銭で済むわけです。あとは薬剤師に行けば薬は無料でもらえることになる。医者に薬をもらうと薬代を払わなければならない。五十七円五十銭に、二日分をもらえばプラス二・二点分を患者は負担しなければならない。だから患者にとっては、医者に行くか薬剤師に行くかによって損得が出てくる。初診という場合の概念というものは、あなた方は初診料を取るときだけが初診だと、こうおっしゃる。しかしわれわれは初診料を取るときの初診というものは、医療機関においては、薬をやるときまでを、あるいは注射を受けるときまでを、あるいは処置をするときまでを、全部初診に含めている。ところがそれが今度は、同じ広義の医療機関である薬剤師に行って薬をもらうことは、初診でなくなってしまう。この概念を、一体どういう工合に明確にしていくか。当然薬剤師にも一部負担というものをもらってもらう建前をとらなければおかしくなってくる。この法律の立て方はおかしい。従って私は、四十三条ノ九にこういう形が出てきているというのは、むしろこれはこうしなければならぬという建前なんです。従ってその前の四十三条ノ八にも、当然保険医療機関のあとに保険薬局というものを入れなければいかぬ。法律の立て方が、全部保険医療機関、保険薬局、こういう立て方になっているけれども、一部負担のところになりますと、薬局ということがぼっと消えてなくなっている。この点は筋が通っていない。
○高田(正)政府委員 一部負担のやり方につきましてはいろいろあるわけでありまして、たとえば薬をもらうときだけ、薬を交付する者に対して払う、今先生が御指摘のように、医師で投薬を受ければ医師に払う、薬局で投薬を受ければ薬局に払うというふうなやり方もあるわけであります。従いまして、今の先生の御議論も、立法論としましてはもちろん確かに一つの御議論でございます。ただ私どもの今回の一部負担の考え方といたしましては、法文にも明らかなように、「初診ヲ受クル際」とこうなっておりまして、この初診を受くる際というのは、あくまでも初診というものは医師がいたすのでございます。初診に関連をいたしまして、後ほどその初診の際に交付された処方せんによって、薬局に参って投薬を受けるという場合もあり得るわけでございます。分業の建前でありますから、そういうことはあるわけでございますけれども、今回の一部負担のやり方といたしましては、あくまでも初診を受くる際ということでございまして、この初診を受くる際という言葉から、法文として出て参りますものは、私どもがお答えをいたしておりまするように、医者の医療機関の窓口だけである、私どもはかようにこの言葉を解しておるのでございます。従って今先生の御指摘は、立法論といたしましてはそういうやり方もある。しかしながらわれわれが今回考えました一部負担というものは、あくまでも医療機関にしか起り得ない一部負担というものを法律に規定をいたしまして、御審議を願っておるわけでございます。
○滝井委員 医薬分業が行われた、現段階においては、立て方というものは、あなた方は分業以前の思想を基礎にしておる。私は、分業が行われたらやはりそういう立て方をすべきものだ、こう思うのです。そして、薬剤師の諸君がほんとうの保険医療機関として明確な態度をとれる姿を立法的にもとる必要があると思います。ちょっと今のあなたの答弁では納得いたしかねます。 次に、大臣がお見えになりましたので、ここでちょっと私大事な問題を質問したいと思います。こまかい技術上の問題は大臣がいなくてもできますが、せっかく大臣がおいでになりましたから今から質問いたします。それは継続給付に関連してでございます。今度の継続給付が、六カ月の被保険者の期間を持っておればずっと継続給付ができたわけですが、今度は一年になったわけです。継続給付の問題で一番大きな影響を受けるのはだれかというと、現在においては駐留軍労務者です。大臣も御存じのように、昭和二十六年の六月には駐留軍労務者は二十九万人おったのです。これがピークでありました。ところが最近になりましてから急激に減りまして、去年の十一月では十三万人になった。半分以下になっちゃった。しかもこの駐留軍労務者が急激に減るというのは、アメリカやイギリスの国内情勢あるいは日本自体の自衛力の漸増状況、こういうものが関連をして、全く労働者とは無関係にぐんぐん減っていっておるわけです。最近特にそれが顕著に出てきたのは呉等の英連邦軍の引き揚げです。英連邦軍が全部引き揚げちゃった。その結果八千四百人の駐留軍の労務者が首になった。ところが大臣あるいはお知りにならないかもしれませんが、駐留軍労務者というのは継続給付が非常に多いのです。いわゆるこの法五十五条の継続給付の適用が非常に多いのです。この駐留年労務者の健康保険の、こういうイギリス、アメリカの駐留する軍隊が引き揚げた後において、この保険経済というものを一体政府はどうしていくつもりかということです。まず概括的にそれにどういう工合に対処するか、政府の所見をお伺いしたいと思うのです。
○高田(正)政府委員 具体的な駐留軍労務者の健康保険組合という一つの組合の保険経済をどういうふうにしていくかという御質問でございましようか。——これは非常に具体的なある一組合の経済財政問題でございまして、これはまず一時的にはその組合自体が考えていくべきものと私は考えております。ただいま滝井先生御指摘のように、駐留軍の健康保険組合は非常に五十五条の継続給付に要する費用がかさんでおります。これは今御指摘のような特殊な事情からでございます。従って財政的に非常に困難な組合でございますが、その事業の一つは継続給付にあるわけであります。かりに今回の一部改正案が通過いたしまして、これが施行いたされました場合においては、その意味におきましては駐留軍の健康保険組合は従来よりは財政的には楽になると思っております。(滝井委員「ちょっと聞えない、もう一回言って下さい、財政的にどうして楽になるのですか」と呼ぶ)従来五十五条の継続給付に要しております金が、非常に他の場合と比べましてかさんでおりますので、この五十五条の改正がございますれば、それに要する経費というものが軽減されていくはずでございます。その意味では駐留軍労務者の健康保険組合は、改正法の実施によりまして、財政的には従来よりは楽になる理屈に相なるわけであります。
○滝井委員 まず局長は、一健康保険組合の財政経済の問題である、だから政府はそう大してかまわぬでもいいというような答弁のニュアンスが裏には見えます。いま一つは、五十五条が改正されて、そして資格の期間が六カ月が一年と延びていくので、なるほどそれだけ哀れな労働者が出るということなんですね。あなたは保険経済はそれで楽になりますと言う。しかしそれだけ哀れな労働者、今まで社会保障の恩典に浴しておった者が、一年に延びたためにほうり出されて、哀れな労働者が出るという事態になる。しかもそれは他の健康保険組合と違って、全く国の一つの自衛力の増強という政策の進展によって、そこに駐留軍の労務者というものが首を切られて、ちまたにほうり出されて、ほんとうは結核ならば三カ年間受けられる給付というものが受けられなくなる人がちまたにあふれるということを意味する。これは福祉国家を建設する岸内閣としては何らかの責任を持たなければならぬ。多分昭和三十年の十月であったと私は記憶いたしております。あのとき高田さんは保険局長だったですかね。当時厚生大臣は川崎さんですね。実は千分の五十の保険料を五十八に上げることを、健康保険組合の会の会議は労働者側も資本家側も全部納得した。そして政府ものんだ。ところがこの健康保険組合のいわば保険者と申しますか事業主と申しますか、それに当るものは駐留軍なんです。従ってこの五十から五十八に上げれば、八だけ上った千分の四を駐留軍が負担しなければならない。これは防衛分担金で支出いたしておりますが、それを向うは負担しないと言った。そうして川崎厚生大臣は駐留軍にお百度を踏んで、どうにか解決したということがある。それも私はこの国会で川崎さんを三度、四度にわたってしりをたたいて、やかましく言った結果、やっと川崎さんがここで大みえを切って、それも大みえを切ったあとできなくて、それから二、三カ月かかってようやく妥結したという故事来歴のある問題なんです。そうしますと現在英連邦が引き揚げて、八千四百人も首になった。そしてそこに継続給付を受ける人がぱっと出た。この継続給付を受ける人は他の組合と全く違います。たくさん出てきておる。従って現在この英連邦関係だけが帰ることによって受ける打撃は一年間に五千五百万円の多きに達するのです。そうしますと一体これは、政府というものが全然責任を持たぬ、一組合の財政経済の問題だから一組合にまかせようということは大へんなんです。大臣、継続給付と関連して今局長は、継続給付をやれば経済は楽になりますと言うけれども、そこにほうり出されて、国策によって失業者になった労働者は大へんです。この駐留軍労務者をどうするかということです。一体これを大臣としてはどうするのか。これは継続給付の重大な問題です。
○高田(正)政府委員 駐留軍の健康保険組合につきましては、今滝井先生仰せのように、三十年に大へんいろいろないききつがございまして、結局時期はおくれましたけれども、料率の引き上げを米軍ものんでくれまして、引き上げの措置が講ぜられたわけでございます。その後組合におきましても非常に努力をいたしまして、財政状態は保険料率の引き上げと、その後のいろいろな努力によってただいまでは小康を得ておると私は聞いております。 それで五十五条との関係でございますが、駐留軍の労務者が英豪軍等の引き揚げによってだんだん首を切られるようになったということは私どもとしても重大な問題だと思います。しかし、これはこれとして労働政策というような面で十分に配慮して参らなければならないことは私もよくわかるのでありますが、継続給付の問題は、御存じのように、過去において被保険者であった者は、やめて保険料を納めなくなってからも長いものは三年間だけ保険給付を続けていこうといういわば一種の恩典的な制度でございます。従いまして、その費用というものは現在の被保険者並びに事業主が背負っていくわけでございます。そういう観点から、保険の立て方といたしまして、楽なときはよろしゅうございますけれども、苦しいときにまでめんどうを見ていくということは問題だ、現在の被保険者のめんどうさえも財政的に見きれないという場合に、被保険者たりし者、すなわちすでに保険料を納めないような状態にある者まで救っていくということはなかなか問題があるのではないか。こういうわけで、資格期間を少くとも一年というふうに延ばすのが趣旨でございます。従いまして、駐留軍労務者の首切りというのは確かに一つの問題ではございまするけれども、保険がこれをどうこうして、いくということはちょっとまた別問題である。保険は保険として何が妥当であるかという立て方をいたし、その問題はその問題として別個に考えていくべきであろうと考えておるわけでございます。
○滝井委員 保険は保険として別個に立てていくという事務当局の答弁はそれでよろしいと思います。しかし、私が大臣にお尋ねしたい点は——なるほど継続給付というものをあなた方は恩典的な政策だとおっしゃる。けれども、とにかく六カ月被保険者であったならば、結核になっても三カ年間は見てもらうべきだということは、恩典的にしろ何にしろ法律に書いてあるわけなんです。これは、七十条ノ三の補助をするというような項目、あるいは三親等内に家族を限るというような条文と何ら変るところはない。恩典的であるかどうかということは——あなた方がそうお考えになることはけっこうです。しかしそれらの者が現実にたくさん出て、保険経済というものが危機に直面しており、しかも事業主がアメリカという労働者の力の及ばないものであるとするならば、当然政府が何らかの形でアメリカに交渉をするなり、あるいは政府がみずからその責任を負うなりしなければ——現実に駐留軍労務者で保険料を納める者は年々歳々減っていっている。事業種のアメリカ軍も金を出したがらない。そうしてそのしわは結局継続給付を受ける労働者に及んでくる。しからばその労働者に国が何か恩典的な政策を別に与えてくれているかというと、何も与えていない。いよいよ食えなくなれば首をくくる以外にない。あるいはその前に生活保護でやるといわれるかもしれませんけれども、その生活保護だって無制限にふやすわけにはいかない。今まで二十九万もあったものが十三万になり、しかもこれは健康保険よりもずっとパーセンテージが多いのです。だから五千五百万円も一年に赤字が出ようとしている。この事態は、事務当局の御答弁はわかる。ところが大臣、これは政治的に問題を解決しなければならぬときにきている。川崎厚生大臣のときにずいぶん苦労して、ようやく五十八に上げてもらった。政治的に一体これをどうするのだ、厚生当局は責任者として責任を持つかどうかということなんです。
○神田国務大臣 滝井委員の先ほどからのお尋ねは私もよく了承できます。しかし、今の段階ですぐ、では健康保険をどうするかということになりますと、これはなかなか容易じゃないと思うのです。政府におきましても、駐留軍ができるだけ早く婦って——日本の防衛というものは日本がやるという建前である以上、駐留軍は逐次帰るということが建前でございますから、今滝井委員の御指摘になったようなことは当然予想されるわけです。そこで問題は、駐留軍のそうした関係を担当しておりますのは、政府部内においては調達庁があるわけでございます。よく一つ検討いたしたいと考えます。
○滝井委員 よく検討したいとおっしゃいますが、実はこれは他のものと全く違うのです。私は昭和三十年にこの法律が改正されるときにも指摘した。現在駐留軍労務者の年間の保険給付の三割五分を占めている継続給付が六億です。こういう保険が他にあるかというと、絶対にない。しかし国家公務員その他は——駐留軍労務者も国家公務員にならうようなものなんです、実際は調達庁が中に入っておるわけですから。国家公務員なんか一年間は全部給料を見る。あとの二年は八〇%国が見るという形になっている。従って継続給付がうんとあっても共済組合には大して影響が及んでこない。ところか駐留軍労務者というものはそうはいかない。同じ国家公務員みたような性格ではあるのだが、首を切られたらもうだめです。こういう点川崎さんのときは責任を持つと言ったのです。大臣、これは検討するのではなくして——これは私三十年から問題にしてきているのです。検訂する、検討するではなくして、もっとはっきりした態度で、ある程度責任を持って一つ当ってみようというくらいの答弁がなければいけないと思うのです。
○神田国務大臣 滝井委員の御趣旨はよく了承できますので、十分一つそういうような努力をいたしたいと思います。
○滝井委員 駐留軍の問題は一組合の問題でありますけれども、やはり船員保険と同じくらいの人をかかえておったものなんですから、これは一つ今のように十分御検討をお願いいたします。次に少し逐条に入っていきます。まず疑問点だけ時間がありませんから急いでやっていきます。九条に、事業主に対していろいろの監督と申しますか検査と申しますか、そういう規定があるのです。この中に「保険料ニ関シ必要アリト認ムルトキハ事業主ニ対シ文書其ノ他ノ物件ノ提出若ハ提示ヲ命シ又ハ当該職員ヲシテ関係者ニ対シ」と「関係者」というのがあります。これは常識的に言えば、おそらくその事業主に関係のあるそこの従業員を関係者と言うのだろうと思うのです。この関係者の中にいわゆる医療機関に勤務をしている者も入るか入らぬかということです。
○高田(正)政府委員 御質問の通り、医療機関の関係者というものはここの関係者には入りません。
○滝井委員 なぜそういうわかり切った質問をするかと申しますと、病院の中にはいわゆる一号、二号、三号とありましたね。二号、三号があるからなんです。そうすると事業主病院というものは、保険医療機関でないのですね。しかしその事業主病院に適用する条項というものは九条と九条ノ二しかないわけです。従って事業主病院というものは、事業主の直轄下にあるものであるから、その医療機関に勤務をしておる者も関係者に入るか入らぬかという問題が出てくるのです。
○高田(正)政府委員 事業主病院というものは、これは事業主の経営にはなっておりまするけれども、立場としては医療機関でございまして、それはこの九条の関係の中には入りません。事業主病院との関係はあくまでも契約で参るわけでございます。
○滝井委員 了承いたしました。この「関係者」は、診療担当関係は一号、二号、三号の病院、診療所、薬局すべて入らない、こう了承いたしておきます。 次には、今までの九条ノ二には「必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ」という工合に、必要ありと認むることを命令でぴしっときめておった。今度の九条ノ二は命令を書いていない。「必要アリト認ムルトキ」と、一方的にあなたの方で必要あれば自由にいろいろの質問なり検査をすることができるのです。どうしてこれはずばりと「必要アリ」と一方的専断的な方法をとったのですか。
○高田(正)政府委員 この命令というのは証票を携えていかなければならぬというふうな手続規定をきめた命令でございまして、今回はその命令を全部法律の中に書き込んだわけでございますので、「命令ノ定ムル所ニ依リ」というふうに行政権に対して委任をするというようなことをしないで、法律に書き込んでいったわけでございまするので、いってみればより民主的な立法技術を盛っておるわけでございます。
○滝井委員 民主的になったそうでございますから、了承いたしておきます。 次には四十九ページですが、今までは生命保険の勧誘員を健康保険の被保険者より除外しておったわけですね。これはどうして除外をしておったかというと、おそらくこういうものの俸給その他を把握しにくいから除外をしておった。ところが今度これは健康保険の被保険者の対象にすることになっている。一体どういう理由でそういうことになったのか。生命保険の勧誘員というのはわれわれもつかみにくい職業だと心得ておるのですが、特にこれを被保険者の対象にすることにしたのはどういうことですか。
○高田(正)政府委員 生命保険の勧誘員というものは請負みたいなもので、使用関係にないものでございます。従ってこういう実体がございませんので、削除をいたしたわけでございます。もしかりに名称は生命保険の勧誘員であっても、現実に雇用関係にあればこれは被保険者として扱われることになります。
○滝井委員 今の御説明ちょっとはっきりしないんですが、今までは被保険者にはしなかった、今度は被保険者にすることにしている。なぜすることにしたのか。
○高田(正)政府委員 使用関係のないものをわざわざ適用除外の規定を設ける必要がないということでございます。条文の整理でございます。旧法は、入念的と申しますか、そういうふうな意味で十三条ノ二の適用除外の規定の中にそれを書いておったわけでございます。ところがよく検討してみますと、そういう使用関係のないものは何もここで適用除外にしなくとも、実体関係がないわけでございますから、書く必要がない、こういうことでございます。従って厚生年金保険法ではこういう適用除外の規定をすでに削除しております。健康保険法はそのままになっておったのでございます。
○滝井委員 今までが間違っておった、こういうことなんですね。今までの条文整理ということに了解しておきます。 次は四十三条。これでたびたび問題になるのは「前項第四号乃至六号ノ給付ハ保険者ガ必要アリト認ムル場合ニ於テ為スモノニ限ル」こうなっておるわけです。これがいつも問題を起す個所なんです。具体的に例をあげますと、その患者は入院しなければならぬかどうかということは保険者が決定できるものではない。臨床上の病気の経過状態というものは療養担当者が一番知っている。ところがここにこういう書き方をするところに、保険というものが制限診療であり、しろうとの保険者の介入するところが出てくる。こういう条項というものは、民主的に健康保険の健全な発展をはかろうとするならば、これは削らなければならぬ。一体保険者は何をもって必要ありと認むる基準を作るか、この基準をここでお示し願いたい。
○高田(正)政府委員 これは現行法もそうなっておりまして、特に改正を加えようとする意図はないのでございます。それからこの法律では、こういうふうに保険者が事前承認制度をとり得ることに法の建前はなっておりますが、実際問題といたしましては、入院の際には、現在の運用におきましては、保険者の承認を必要としない。ただ医療機関からの入院させたという届出を励行していただいておる、こういう運用をいたしておりますることもつけ加えておきます。 それで保険者が認定をする基準を示せということでございますが、それは医療機関の御意見を十分拝承して、ケース、ケースでものをきめるということになると存じます。
○滝井委員 医療機関の意見を聞いてケース・バイ・ケースでいくと答弁されるだろうと、聞く前からそう思っていました。ところがそうはいかない。今具体的にいえば、去年の十一月二十七日に、これはどこでやったことかというと、足立社会保険出張所です。ここに、健康保険の看護婦手当を申請したわけです。これは入院の場合ですね。それで、医者は約五十日ぐらいを認めたらしい。ところが、一方的に社会保険出張所で十日に削ってしまった。そこで、「あすのために」という投書が出ている。そして、その最後に、川島という所長さんがどう言ったかというと、「看護承認申請は、事故発生の数日は事後承認でも仕方ないが、その後は原則として事前承認となっている。できるだけ事前承認をするよう保険医や事業主や事業所内の健康保険医員には講習会を開いてよく教育してあったはずだ。保険医たちもよく勉強してもらいたいものだ」こうなっております。保険医が四十五日とか五十日必要だといっても、社会保険出張所は十日とか五日に削ってしまう。従ってこの労働者は四十五日ぐらい入院をして二万四千円の入院料が要ることになっている。それがもらえるものだと思っておったところが、削られてしまってもらえないものだから、これは借金になったということで、その被保険者のお父さんの一老人が投書している。こういうことは現実に多いのですよ。従って、入院したが医者から出す申請がくるのがおそいのです。従ってそのうち入院という事実はどんどん進んでしまう。従って、こういうものは一方的に保険者がやるのだという建前ではいけない。必要があるかないか、入院するかしないかということは、療養担当者が決定すべきものだ。それから先は療養担当者の良識に待つ以外にない。ところが一方的に社会保険出張所や保険者というものが切っていく形をとると、こういうことになる。こういうことをやられるから、今度はその取り返しに悪いことをしなければならぬという気持がわいてくる。やはり人間は貧すれば鈍するのです。これには、査定は正しいというが、親切味がほしいということをちゃんと書いてある。こういうことが平然と行われている。従って、あなたが、今までの条項が、保険者が必要ありと認める場合となっておりますから今度もそうしましたと言うなら、これは撤回して、今まで通りでよろしいのです。あなた方の都合のいいところは今まで通りにしておいて、今まで労働者や療養担当者の都合がよかったところは、都合の悪いように変えてしまって、自分たちの行政の方で権利としてたくわえておかなければならぬものは一切権利としてたくわえる、こういう態度はいけないです。従って、こういうことは、あなた方が検査権や何かでやるのならば、こういうことは、もっと民主的に、ほんとうに療養担当者を信頼するという形で療養担当者がこれをきめなければならぬ。入院する必要があるかどうかということは、保険者がきめるものじゃない。もし保険者がきめるとするならば、保険者のところに審議会を置いて、そこでおやりなさい。一出張所長や保険者が独断でやることは許されぬと思う。大臣はこの点どうお考えになりますか。——これは局長じゃありません。局長が答弁するなら、大臣はもう帰ってもらっていい。局長の答弁時間はなくなっている。政治的答弁ですから、大臣にお願いしたい。
○高田(正)政府委員 先ほどの答弁を補足いたしたいと思います。
○滝井委員 だめですよ。あなたの答弁は認めていないのだから。——それでは答弁は拒否しないから、あなたはあとから答弁して下さい。
○高田(正)政府委員 今の御引例の点は、看護のことのように考えます。入院につきましては先ほど申し上げましたような運用をいたしております。それから看護につきましては原則として事前承認の建前をとっております。これはどういう場合に認めるかどうかという一応の基準を持って運用をいたしておるはずでございます。従いまして、この基準は一応調べておるわけでありますが、入院につきましては、先ほど申し上げましたように、法律はこうなっておりますけれども、現実の運用といたしましては事前の承認ということをいたしておりません。
○神田国務大臣 今の保険局長の答弁で御了承を願えたと思います。
○滝井委員 四号から六号までの間は、患者を運搬する場合は、これはいいでしょう。しかし看護が必要であるかないか、あるいは病院とか診療所に入院をせしめることが必要であるかどうかということを、保険者が決定するなんというばかなことはないですよ。今までが間違っているのです。今までがそれでよろしいからというわけにはいかない。大臣、これは修正してもらわなければならぬ点だと私は思うのですが、これは療養担当者の意見を聞いて保険者が決定するという書き方ならよろしい。ところが一方的に保険者が決定するということは許されぬと思う。だから、大臣は、もし条文が直せないとするならば、これは看護あるいは入院というような場合は必ず療養担当者の意見を聞いて保険者が決定をするように運営をしていく、こういう御言明を一ついただきたいと思う。
○神田国務大臣 滝井君の今の御要望は、実際の運用の面に当ってはそのように取り計らう、こういう考えでございます。
○滝井委員 ぜひ一つそうしていただきたいと思います。 次には四十三条ノ五を見て下さい。医師または薬剤師は本法の規定により保険医または保険薬剤師の登録を取り消され、二年を経過せざるものなるときは、都道府県知事同項の登録を拒むことができる、こうなっているのです。ところがこれは、多分八田君も問題にしておったと思うのですが、これを拒むことができる条件をなぜ明示しないかということです。
○高田(正)政府委員 この登録というのは、たびたび御説明を申し上げておりますように、原則としてだれでも登録をいたすわけでございます。それでここの四十三条ノ一の第二項に規定されておりますような場合以外はだれでも登録をする、こういう趣旨でございます。それで別に登録条件等は必要はないわけでございます。
○滝井委員 だれでもそれは申し出ればするというけれども、私が今問題にしているのは取り消された場合ですよ。何でもなければだれでもやるでしょう。ところが、だれでも登録をして、今度一回取り消されたならば、二年たたなければだめだということになっているわけなんです。だから逆に言えば二年以内でもできることにはなるのです。ところが二年たたなければ登録をいたしませんという場合が出てくるわけです。どういう場合は知事に白紙委任をしないで、こういう場合は知事というものが二年を経過していないものは登録を拒むことができるのだという、その条件を示してくれと言うのです。
○高田(正)政府委員 これは二年を経過していないものだけについては登録を拒むことができるというふうに、知事の登録拒否の権限というものをむしろ逆にしぼっているわけですね。二年以内のものは拒むことができるということです。
○滝井委員 だから拒むことのできる条件を示してくれということです。
○高田(正)政府委員 それはその人、人によって異なるわけでございまして、二年たっていなければ登録をしてはならぬというわけじゃないのでございますから、二年たっていなくても登録をしてもいいわけでございます。従ってこれの条件という、先生の御質問の御趣旨が、私には十分了解できないのでございますが、もう一度一つ……。
○滝井委員 具体的にもう一応説明いたします。高田さんと私とが二人とも保険医を取り消されました。高田さんは一年たったら再登録できて保険医になることができました。しかし滝井義高はだめだといって二年まで待て、こういうことになったわけです。そうすると私を二年まで待たせなければならない理由は知事は明示しないわけです。二人一緒に取り消された。ところが高田さんは三カ月でよろしいと認めてくれた。ところが滝井義高は二年まで待てといって二年ぎりぎりまでいってしまった。その二年ぎりぎりまでいくについて、何かそこにこういう場合は二年間は取り消されてもいいのだというものさしがなければ、知事の一方的な裁量になってしまう。それをあなたの方で取り消しについては微に入り細をうかがって四十三条ノ十二で規定しているわけです。あるいは四十三条ノ十三で登録の、取り消しを書いておるわけです。ところが拒否する場合のことを、二年以内の場合は何も書いてない。そこを教えてもらいたいというわけです。
○高田(正)政府委員 登録を取り消したり何かします場合には、できるだけ詳しく書いておきせんと、それを知事の自由裁量等にまかせましては、いろいろ弊害がございまするので、できるだけ詳しく書いて民主的な規定にいたしたわけでございます。登録するということにつきましては、原則として医師であればだれでも登録するというのが建前なのです。ただだれでも登録をするといっても、たったこの間悪いことをして登録を取消されたものが直ちにまた再登録をするということであるならば、それが知事として拒めないということであるならば、これは登録取り消しの意味がないじゃないか。せめて登録を取り消されたようなものについては、二年たっていないものには登録を拒否することができるという知事のあれを与えたわけです。従ってそういうふうな非常に例外的なものでございまして、しかも個々の人々について知事が判断をいたすべき筋合いのものでございますから、これは法律で基準を示すとかあるいは何かその他の省令等で基準を示すとかいうことでなくして、むしろこの辺こそ知事の自由裁量の範囲にまかせておくべきものと私どもは考えておるのでございます。しかしながらそれでかりに弊害が将来出てくるような事態がございましたならば、実際の運用の実績等をよく勘案いたしまして、一定のものさしというふうなものを将来作ることも考慮してみたいと思います。ただいまのところでは、それは知事の自由裁量にまかせていくことの方がむしろ行政として妥当である、かような考え方をしておるわけでございます。
○滝井委員 それならばもうちょっと問題を拡大して、医療機関が指定の取り消しを受けた場合にはどうなるのですか。いつになったら復活することができるのですか。保険医の登録については二年と限ってくれました。それよりさらに重大な保険医療機関の指定を取り消されたときにはやはり知事の自由裁量でしょう。その期間というものは限っていないでしょう。
○高田(正)政府委員 医療機関が取り消された場合の今度の再指定の問題につきましては、先生御指摘の通り別に期間を定めておりません。と申しますのは、機関の指定と登録との法律上の相違、性格の相違がそこに出て参るわけでございます。機関の指定というものは、法律上いかなる機関でも指定するのだという建前には相なっておりません。登録の方は逆にただいま御指摘の第二項がありますることによって、医師であればだれでも登録をするのだという原則がむしろ表明されておるわけでございます。機関の指定につきましては、さようにいかなる医療機関であっても願い出があったら必ず指定するのだという建前に法の建前がなっておらない。それは指定というものと登録との法律上の性格の相違でございます。ただし御承知のように機関の指定を拒む際におきましては、指定については機関の条件等はつけておりませんけれども、これを拒否する際におきましては医療協議会の議によるというふうに、知事の独裁と申しますか、専権では何ごともできないような法律上の保障をいたしておるわけでございます。
○滝井委員 どうもわかりかねる。保険医療機関を取り消したときにどうして期間をつけないかという理由としては、今の説明では納得できない。どうしてかと申しますと、あなたは今保険医療機関というものはだれでも簡単に申請してもなれないという御答弁をしましたが、保険医療機関は申請さえすれば、だれでも一号にはなれるのです。それは組合だって事業主の病院だってみななれるのですから、だれでもなれる。本質的に保険医の登録とちっとも違ったところがない。一方登録した保険医というものは、登録を取り消されたら二年間したら必ずなれる。ところが一番大事な保険医療機関についてはそれがない。それは公的な医療機関あるいは大病院と、一人でやっている個人の開業医とは本質的に違う。その違うものが一本の第一号に規定をされて、知事の指定をするものにみななってきておるわけです。そうしますと、四十三条ノ十二と四十三条ノ十三をごらんになると、個人開業医の場合登録を取り消されたことは、即それはそのまま医療機関の指定を取り消されたと同じ結果になって出てくる。大病院にはそういうことがありません。従って、法律は当然個人の場合を考えておかなければいけない。医療機関を取り消された場合についても、そこにやはり期限を限って、一年たったならば必ずこれを指定してもらえるのだという規定がなければおかしい。無期限です。この前私が申し上げたように、開業医がちょっと悪いことをしたら、この法律だけで開業医をつぶすことができる。ここに開業医撲滅法案であるといわれるゆえんがある。あなた方は首をひねっているけれども、これでできるのです。医者はやってもよろしい、しかし、機関の指定をどんどん取り消されてごらんなさい。保険医は保険で飯が食えなくなる。身分が一体ですから。そうすると、登録だけはいかにあなた方が二年間で助けてあげますよといっても、医療機関を取り消されたら何にもならない。しかも四十三条ノ十三と四十三条ノ十二をごらんになると、個人の開業医にとっては、登録の取り消しは同時に機関の指定の取り消しと同じ条項になっておるのです。全部重なっております。三つは重なっておる。四十三条ノ十三に、登録の取り消される場合は、診療担当規程に違反した場合、質問、出頭等に対して拒否した場合、社会保険各法によるものに関して違反した場合、三つです。ところが、この三つは即そのまま指定の取り消しにも入っている。だから開業医が指定を取り消される条件は、そのまま医療機関を取り消されることになってしまう。ところが、登録だけは二年間で息を吹き返してくるけれども、医療機関の方は息を吹き返さない。医療機関が息を吹き返さなければ、医者は仕事をする場所がないから同じです。だから片手で頭をなでてくれても——労働大臣の言葉ではないけれども、左手にはコーランを握っているが、右手にはちゃんと剣を握っている。こういう形の立法というものはありはせぬ。これが一つ。この前四十三条関係の一号、二号、三号が開業医撲滅法案であるということを具体的に指摘しましたが、ここにも明らかにそれが出てきている。これは重大な欠陥です。従ってあなた方は法案修正をやられるならば、当然保険医療機関については、もっと軽くして一年ぐらいで復活できるようにしなければいかぬ。それは、文部大臣の所管する大学病院、厚生大臣の所管する国立病院というものは、そう長く無期限にやっておったら大へんですよ。文部大臣が厚生大臣から首を切られ、保険局長から厚生大臣が首を切られるような形はできないわけなのですから、やはりできるだけそこの期間というものはつけなければいかぬということになる。それをあなた方つけなくてもよろしいとおっしゃるなら、つけなくてもよろしい理由を一つ述べて下さい。
○高田(正)政府委員 どうも滝井先生はこの法文について私どもから申せば非常に誤解をしていらっしゃるように私は考えるのでございます。現行からまず考えてみたいと思います。現行は保険医の指定という制度でございまして、それは別に保険医の指定を取り消されて今度再指定を受ける場合にどうのこうのというようなことは書いてございません。今度の改正法では、現行の保険医の指定にかわるに機関の指定ということになったわけでございます。すなわち個人を相手に契約関係を結んでおりたものを、医療機関を相手に保険との契約関係を結ぼう、こういうことになったわけでございます。その際に、現行では何らの条件をつけておりませんのに、改正法におきましては、拒む場合には医療協議会の議によるというふうに行政官庁側の権限をしぼったわけでございます。こういうわけでございます。それで現行の保険医の指定制度とそれから改正法の医療機関の指定制度とは、その意味におきまして非常に改正法の方が民主的になっておる、まずこれが一つ申せると思います。 しからば登録というものが新たに出ておりますが、これは機関指定というものをもって保険医の指定に取りかえたわけでございますが、それではまだ不十分な点がいろいろある、運用上でかえって医療機関の非常な御迷惑になるような場合も起り得るというふうな観点から、個人というものについての関連づけを考えたわけでございます。その個人との関連づけというのがいわゆる登録でございます。登録というのは平たい言葉で申せば記章をつけているみたいなものでございまして、登録をすることによって保険との契約関係が生ずるとかなんとかいうわけのものではございません。従ってそういうものでございますので、これには医師であればどなたでも願い出があれば登録をするという建前をとったわけでございます。ところが機関の方ではそういう建前をとっておりません。医療機関はどれでも必ず願い出があれば指定をするのだという建前にはなっておりません。私が申し上げているのは法律上の建前でございますが、それだけ法律上の性格が違うわけでございます。もう少し突っ込んで申しますと、機関の指定を取り消されて二年たったあとにおいても法律上はその再指定をやらなければならぬという行政官庁側に対する制約が機関指定の方はございません。ところが登録の方は、今御指摘のように取り消されて二年たった以後のものは必ず行政官庁は登録しなければならぬという制約を受けておるわけでございます。これは機関の指定という法律上の行為と、登録という法律上の行為との性格の相違から来るものだと私は考えるのであります。それかと申して機関の指定ということが行政官庁の乱に流れてはいけない、こういう観点から、前に申し上げましたように、それを拒否する際には医療協議会の議によれ、こういうしぼりをかけておる、こういうようなことでございまして、決して現行法よりは開業医をいじめる法律改正だというようなことは、どこからも出てこないわけでございます。
○滝井委員 今の説明ではなかなか納得はいたしかねます。とにかくそういう工合にるる説明をして、こうして一問一答をやらなければわからぬような二重指定というものは必要がない。現在の日本の医療は順調に何のトラブルもなく行われておる。それを少数の何か医者でない人が病院を経営しておるから、それを監督しなければならぬといって、こんな二重指定をやる必要は一つもない。しかもこういうことになっておる。いわゆる保険医療機関というものの指定の期間は今度は三カ年になっておる、今度は期間をつけた。そして登録の方は無期限なんです、期間がない。こういうように期限をつけてみたりなくしてみたりめんどうくさいことをしておるわけであります。これは何もそういう必要はない、今までやってきて日本の医療に支障がないのだから。何か支障があればこんなめんどうくさいことをやってもよろしい。そうでなくてさえ複雑怪奇になっておるこの世の中で、わざわざ人間の生命を預かる人間にこんなことを作ってどんな利益があるのです。これを作ることによって日本の医療が発展し、日本の医療内容が向上するのならばよろしい、するものは一つもないのです。そうしてお互いに国会で二年も三年もかかって論議をして、通すの通さぬのとやらなければならぬという愚を繰り返しておって何の利益がありますか。だから私は、医療機関というものと登録というものを分っても実益がない、ただいたずらに法律関係を複雑にして、零細な開業医を戦々きょうきょうたる薄氷を踏む思いに陥れるだけで、日本の医療の進展のため、保険医療の内容の向上のためには一つだって役立つところはない、従ってこういうものは全部削除すべきだという意見です。私はこれ以上答弁を求めません。一応ここでやめます。
○藤本委員長 午後一時半まで休憩いたします。 午後零時三十八分休憩 ————◇————— 午後一時五十四分開議
○藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。 休憩前の質疑を続行いたします。滝井義高君。
○滝井委員 午前中の質問に引き続いて、時間の関係がありますから、フル・スピードで質問いたします。 保険局長四十三条ノ七を見て下さい。これを見ますと療養の給付というものは保険医療機関及び保険薬局が療養の給付をやることになっておるのです。それから保険医及び保険薬剤師は健康保険の診療または調剤をやることになっております。一体療養の給付と健康保険の診療ということとどう違うかということです。
○高田(正)政府委員 療養の給付と診療とはどう違うかという仰せでございますが、療養の給付というものは範囲が広いわけでございます。そのことは四十三条をごらんいただきますと明らかでございます。「左ニ掲グル療養ノ給付ヲ為ス」というふうに一号から六号までを療養の給付と定義づけております。従ってこれらのものが療養の給付ということになるわけでございます。診療と申しますものはそれより範囲が狭いわけでございます。 〔八木(一男)委員「休憩して下さい、定数がそろっていないのに、委員長、強行する権限はないでしょう、休憩して下さい、休憩して下さい」と呼ぶ〕 〔「強行していないじゃないか、君の方の了解を得て滝井君が質問しているじゃないか」と呼ぶ者あり〕
○藤本委員長 保険局長。
○高田(正)政府委員 先ほどの答弁を若干補足さしていただきます。療養の給付というのは四十三条に書いてある通りであります。それから四十三条ノ七の診療及び調剤というのはその事実行為をさしておるわけでございます。
○滝井委員 療養の給付というのは簡単に言うと範囲が広い、診療というのは事実行為で非常に範囲が狭い、こういうことなんですね。ところが四十三条ノ一項の一号から六号までのうちの少くとも一、二、三号というものは、これは療養の給付であるが、一つ一つとるとこれは診療なんです。今までの四十三条ノ三をごらんになって下さいよ。これは保険医、保険薬剤師は健康保険の診療、薬剤の支給に関し指導を受くることになっていたのです。今まではこれで療養の給付だったのでしょう。ところが今度は、一晩寝たところが、療養の給付と診療とが違って、療養の給付と健康保険の診療を二つとも今度は厚生大臣なり知事の指導を受けることに変ってしまったのでしょう。こういう概念の転換というものは、日々行われておる診療でそう変るわけにはいかないでしょう。だから法律の上で療養の給付とはこれこれだということは四十三条でわかります。ところが診療とは一体何だということは書いてないでしょう。法律の上にはないのです。あなたの方は療養の給付ということについては定義らしいものを書いておる。ところが保険の診療というものについてはどこにも書いてない。そして診療について受けるわれわれの今までの概念は、保険の診療と給付とは同じものだということが、概念の中にあるわけです。それは四十三条ノ三をごらんになるとわかるように、健康保険の診療に関して指導を受けるということになっている。やはり保険の診療とは一体何だということを法律に定義をはっきりしなければいかぬ。
○高田(正)政府委員 従来の規定だと医師または薬剤師が診療または調剤について指導を受けるというふうになっておりましたのを、四十三条ノ七で改正法の方にはそのまま持ってきておるわけでございます。それで診療ということについて、診療と療養の給付とは同じ範囲だという概念になっておるという仰せでございますが、それは現行法の上でもそうではございません。たとえば具体的な例をあげてみますと、移送というようなことはこれは診療の範囲に属するかどうか非常に疑義があると存じます。それで改正法の四十三条ノ七で療養の給付とそれから診療または調剤というふうにも書き分けましたゆえんのものは、保険医及び保険薬剤師、これが従事いたしまする診療なり調剤なりという事実行為は、これは御存じのように医療法の規定等におきましても独立性を持っておるわけでございます。医療機関の管理者はその勤務医師の診療の内容について、個々については指示権はないというふうな解釈になっておりまするし、機関と別個に診療または調剤というようなことは医師または薬剤師の個人的な責任の上に行われる一つの事実行為でございまして、さような意味合いにおきまして、機関の場合と個人の場合をここに法律上明確にいたした次第でございます。診療、調剤というふうなことにつきまして、法律に定義をいたしてないじゃないかという御質問でございますが、これは特別に定義をいたすほどの必要がなく現行法上も使っておる言葉でございます。事実行為の問題でございまするので、従来と同じような表現をいたしたわけでございます。
○滝井委員 そうしましたならば、療養の担当は一体だれがやるのですか。
○高田(正)政府委員 療養の給付を担当いたしまするのは保険医療機関でございます。
○滝井委員 療養の給付が保険医療機関ということはわかるが、療養の担当はだれがやるかということです。
○高田(正)政府委員 療養の担当という御質問の趣旨が受け取りかねておるわけでございますが、もう少し……。
○滝井委員 私も受け取りかねておる、というのは四十三条ノ十二と十三の取り消しの一の規定を見て下さい。これは重複しておる、そうすると、療養担当の規定を保険医が違反をしたら登録の指定を取り消されますよ。同時に医療機関がやることということは療養を担当するその医師がやることを意味するのです。これもやはり指定の取り消しになるのですよ。だから私は療養の担当というのは、給付はわかります。給付はわかるが担当と給付は違うのです。だからこの二つが重なっているのです。 〔委員長退席、大橋(武)委員長代理着席〕
○高田(正)政府委員 四十三条ノ十二のところに一号、二号とございますが、一号は「当該保険医療機関ニ於テ診療ニ従事スル保険医又ハ当該保険薬局ニ於テ調剤ニ従事スル保険薬剤師」というふうに書き分けてあります。だからここにも個人の場合には診療または調剤というふうに事案行為をさして規定をいたしておるわけでございます。この規定を見ますと、四十三条ノ四におきまして、「保険医療機関又ハ保険薬局ハ当該保険医療機関ニ於テ診療ニ従事スル保険医又ハ当該保険薬局ニ於テ調剤ニ従事スル保険薬剤師ヲシテ第四十三条ノ六第一項ノ規定ニ依ル命令」、これが担当規定でございます。この個人の担当規程によって「診療又ハ調剤ニ当ラシムルノ外命令ノ定ムル所ニ依リ療養ノ給付ヲ担当スベシ」、こう書いてございまして、医師または薬剤師の場合には診療または調剤に従事するとかいうふうに表現をいたしており、医療機関の場合におきましては療養の給付を担当ずべし、こういうことになっております。従って私が先ほど御説明をいたしましたように、診療なり調剤なりという事実行為に当るのは医師または薬剤師という自然人である、療養の給付を担当するのは医療機関である、こういう観念で改正規定の全部が割り切って書かれてあるはずでございます。
○滝井委員 四十三条ノ十二の一項の一号ですかをごらんになると、これは機関指定の取り消しの場合は保険医の個々の行為によって違反が起れば取り消すことになっておるのですよ。そうしますと、結局だんだんそれを煮詰めていけば、保険医の個々の行為そのものが結局療養担当者である医療機関の指定を取り消されるということになれば、担当という字と診療に従事することとはイコールになってしまう。煮詰めていけばイコールになる。そこを私は言っておるわけです。
○高田(正)政府委員 それは四十三条ノ十二の一号の規定をよく読んでいただきますれば御了解が参りまするように、法律上は別の概念でございます。個人が個人の担当規程に違反をいたしました場合と、機関が違反をいたしたという場合とは法律上は別の概念でございます。しかしその個人の違反というものにつきまして、機関が責任を負わなければならない場合においては機関も責任を負うということが四十三条ノ十二の一項一号のただし書きで表現をいたしておるわけでございます。従いまして、その間何らの法律上の矛盾というものは私はここにない、かように考えております。
○滝井委員 そうしますと、いいですか、これはあとの問題が関連しますからはっきり復習しておきます。一切の療養の担当というものは保険医療機関がやるのだ、従って診療報酬の請求についても保険医療機関がやるのであって、保険医がやるのではない、こういう断定ができてくるわけですね。それを了承するわけですね。
○高田(正)政府委員 診療報酬の請求は医療機関がいたすわけでございます。
○滝井委員 私の言った通りですね。——そうしますと、中央社会保険医療協議会に今後出ていく代表というものは医師や歯科医師の代表ではいけないことになるわけです。中央社会保険医療協議会は保険医の指定取り消しとともに診療報酬の支払いの問題を取り扱っておる。そうしますと、診療報酬の支払いを受ける方というものは保険医が受けるのではない、機関が受ける。従って今後いわゆる保険者の代表あるいは公益の代表、今の保険医それから保険歯科医師、薬剤師、こういううように出てきておるわけです。従ってもはや保険診療についての発言権というものは保険医にはなくなってきておるわけです。診療報酬に関する限り、保険の療養の給付に関する限り一切は保険医療機関からの代表が出ることにならなければならないという論理的な帰結になるが、そういうことになるかどうか。
○高田(正)政府委員 それはさようにいたすことももちろん十分考えられるところでございます。この中央社会保険医療協議会等に代表を送っていただく場合には、御存じのように、法律上にもそれらの団体の推薦によるということになっておるわけでございます。それで、今日医療機関全部一丸といたしたような団体は事実上存存をいたしておりませんので、従って今日ありまするのは医師会とか歯科医師会とか薬剤師協会とか、そういうふうな個人の団体でございまするので、それらの実際上の問題からこの中央社会保険医療協議会の法律の条文を改正するかどうかというふうなことにつきましては、今後検討を加えて参りたいと存じます。 なおつけ加えておきますが、中央社会保険医療協議会におきましては、いわゆる個人の医師、歯科医師の診療または調剤のやり方についての一つのルールをきめまする担当規程というふうなものもあわせて審議いたす機関でございます。それらのことをも考え合せまして、直ちにさようなことに改正をいたすかどうかということにつきましてはいま少し検討を要することかと存じます。
○滝井委員 いいですか、この法律というものは新しい医療機関なりあるいは保険医、保険薬剤師に対する概念規定をやっておるのです。ところがこの協議会法というものをあなた方ごらんになったらわかるように、これは中央社会保険医療協議会というものの任務というもので保険診療のいろいろなことを規定しております。しかし大きく分ければ、何といっても保険医の指定と指定の取り消しと、そして療養担当者に対する保険診療の指導監督なんです。そうすると、保険診療を担当するということは、保険医が担当者じゃないということを今はっきり私は言質をいただいた。保険診療に従事はするけれども、療養の担当者というものは保険医じゃない、保険診療機関です。そうしますと、診療報酬の支払いが第二に重要なことになってくるわけです。そうすると、一番重要な保険診療の担当と診療報酬の支払いという問題が一保険医の問題でなくて機関の問題になってきたときには、当然出ていくものは機関の代表でなくてはならぬわけです。だから今、それがそうでございますならば検討いたしましょうということはおかしいのであって、この法律が出て——あなたの方は基金法のことまで改正案を出しておられる。当然この改正も何かそこに新しい法概念に基いたものが出てこなければならぬ。もしこの法概念で今度はこれを運営するということになったら大へんなことになる。これは運営はうまくいかない。それはどうしてかと言いますと、まず第一に、保険医療機関というものだけしかいわゆる健康保険というものの療養の給付はできない、保険医にはない。それはこの法律のもとにおける保険診療というものは健康保険組合とか事業主の病院ではない、またそこに働いている医師は保険医ではない。この法律概念では保険医療機関じゃない、しかもそこで保険医はやっていないから、この法律の建前からそうなってくる。そうしますと、ここに出てくるものは単なる医師、歯科医師、薬剤師ということでは困る。保険医療に関係のない医師、薬剤師が出てきたら大へんです。保険診療に全然縁もゆかりもない赤の他人の医師、歯科医師、薬剤師が出てきたら大へんです。当然これは指定や取り消しや療養担当者に関する規程とか診療報酬の問題を議論するならば、その直接任務に当っている機関の代表がここに出てこなければならぬ。これは法律の概念からいけばそうならざるを得ない。それはあなたがお認めにならぬというならそれでもけっこうですが、そういうことを認めなければ、これは少くとも社会保険審議会及び社会保険医療協議会法という法律の中に大きな支障ができてくるわけです。
○高田(正)政府委員 私が申し上げたことを滝井先生ちょっと——もう一度申し上げさせていただきます。診療と調剤に従事する者はと申してもいいですし、担当する者はと申してもいいのですが、診療調剤というふうな技術行為を担当する者は医師、薬剤師であり、それから療養の給付を担当する者は保険医療機関である、こういうことでございますから、どうぞその点は一つ誤解のないように……。 それから中央医療協議会なり地方医療協議会なりの構成メンバーの点でございますが、請求というふうなことを考えました場合には、確かに先生が仰せのように医療機関が請求をいたすのでございます。従ってその際には、観念的には個人とは別な医療機関というものが請求をいたすわけでございます。ところが中央医療協議会なり地方医療協議会なりというのは、機関の療養担当規程も、個人のいわゆる診療並びに調剤の担当規程も両方とも審議をいたしまするし、それから機関の指定とか機関に関連したことも審議をいたしまするし、個人の審議というふうなことにつきましても審議をいたすわけでございます。だから医療協議会は、機関の問題と個人の問題との両方にがたがって審議をいたす格好に相なるわけでございます。従ってその際に、委員を構成いたします医師、歯科医師及び薬剤師の利益を代表する委員六人、これらを任命する際には関係団体の推薦によるものとする、こういう現行法の規定がその実態に妥当であるかどうかということが、今先生の御指摘になっておるところでございます。それでこれらの協議会が機関の問題だけをやるのであれば、この規定はおよそ直ちに改正を加えなければならぬでありましょう。しかしながら今申し上げたように、機関の問題も個人の問題も、両刀に関連をした問題を取り扱う協議会でございます。しかもこれらの委員を任命する際に関係団体の推薦を得るということになりますると、今日では、個人の団体は医師会というふうなものがございますけれども、機関の団体は今日実在をいたしておりません。さような実情をも考え合せまして、これは将来の検討問題ではございまするけれども、今直ちにこれを改正しなければ全然つじつまが合わぬではないかというふうなことには相ならない、かように私どもは考えておるわけでございます。
○滝井委員 私はいろいろ言ったけれども、いろいろ申します前に一つだけ指摘しましょう。十四条をお読み下さい。十四条の一項の一号は、「保険医及び保険薬剤師の指定及び指定の取消」——こういうことはないのです、この法律が通ったあとには。ない法律を生かす法はない。あなた方はこの法律の中で、中央社会保険医療協議会がいろいろ審議をするとか諮問を受けなければならなぬと書いておる。これだけのことを書くのになぜこの法律の改正をやらないかということなんです。私は遠回しに言ったのですよ。遠回しに言ったことを気づかぬで勝手に説明しているけれども、この法律は生きている。しかもこの法律によって活殺自在の権を握られておるじゃないですか。その大事な中央社会保険医療協議会の法律を改正せずにほったらかして、これだけ膨大な法律改正をやるのに、なぜやらないかということなんです。一つも改正しておらぬ。この法律はどこか改正しましたか。健康保険法の改正に関連をして、この法律の改正案を今度の国会にどこか出しておりますか。
○高田(正)政府委員 関係法律の今のような技術的に変るところは附則で整備をしてあるつもりごでざいます。ただ最初に御指摘になりました今の委員の構成問題につきましては、さっき私が申し上げましたように、直ちに機関の代表というようなことにいたしますと、ことによると医師でない者が出てくるような場合も実際問題としては考えられますので、そういうことであるよりはむしろ現行法のように医師または歯科医師の利害を代表する者というふうにいたしておいた方が、現状の実際を考えてみました場合には妥当であろう、しかしこれは先生御指摘のように確かに将来の研究問題である、こういうふうに申し上げておる次第でございます。
○滝井委員 この社会保険審議会及び社会保険医療協議会法は健康保険法の中で重要な役割を演ずる法律なんですよ。それをあなた方は今言ったように、この法律の中で医療機関というものを非常に大きくクローズ・アップして、保険医、保険薬剤師というものをその中における一歯車にすぎない状態にあるものと考えているのですよ。しかもそういう大きな法律にしておきながら一番大事なこのポイントを当っていないということなんですよ。そうしてしかも自分たちが権限を強めなければならないような、基金法というようなやらなくてもいいようなものは、常任の——あとから質問しますが、審査委員を置くような形にぴしゃっとやってくる、こういう態度は私はいけないと思うのです。やはり法概念からいって、保険医療機関というものを大きくクローズ・アップしたら、当然この関連の法律の一番大事な——しかも中央社会保険医療協議会というのは一番重要な役割を演ずるのであるから、そこによってきまってくる。しかも医師、歯科医師、薬剤師の利益を代表するものである、こういう広い範囲のものにしてしまって、これは保険医療機関の代表でないということになれば、大へんなことになる。これはあなた方がこういうところに気づいていないところにもあなた方自身の勉強不足があると思うのですよ。もう少しこれは研究してもらわなければならぬと思います。 時間がないので先に進みますけれども、十二時までかかりますよ。四十三条ノ九を見て下さい。四十三条ノ九によりますと、今までもそうですが、「保険者ハ保険医療機関又ハ保険薬局ヨリ療養ノ給付ニ関スル費用ノ請求アリタルトキハ」云々と書いて「前二項ノ規定ニ依ル定ニ照シ之ヲ審査シタル上支払フモノトス」こうなっているわけですね。いわゆる保険者が診療報酬の請求の審査をやる建前になっているわけです。そうして次の項を見ますと、「保険者ハ前項ノ規定ニ依ル審査及支払ニ関スル事務ヲ社会保険診療報酬支払基金ニ委託スルコトヲ得」こうなっております。従ってこの法律からいくと、委託しなくてもいいのです。するしないは勝手なんです。全部保険者が勝手にやることができる、こういう形なんですよ。こういう法律の建て方というものはないですよ。民主的になったからにはね。私がいわゆる審査というものは保険医に自主的にやらせなさいと言ったら、それはやった人が自分でやることはけしからぬとあなた方はこうおっしゃる。これと同じで支払う方が審査をすると、支払いを少くするように勝手に削ってしまう。だから第三者の公正な機関にこの審査を委託し、委託したもの、受けたものの間に争いの起らないようにやらせる必要があると思うのです。私はこういうふうに保険者がまずやるのだ、そうして保険者が好むならば審査会に審査を委託することができる、こういう書き方ではなくて、審査というものは第三者の機関がやるのだという、こういう形を作るべきだと思うのですよ。この私の主張は間違っていないと思う。あなた方が療養担当者にやらしてはいかぬということで審査機構を作ってきたと同じ理論です。支払う方が審査すればこれは勝手に切れますよ。この考えは私は間違っていないと思うが、あなたの方はどう考えるか。
○高田(正)政府委員 確かに傾聴に値する御意見だと思います。また現行法におきましても、四十三条ノ六で「保険者之ヲ算定ス」、こうなっておるわけです。それでこの規定の解釈上、保険者にその審査の権限があるという解釈が従来の一貫した解釈でございます。それで改正法におきましては、その関係を明らかにいたしまして、しかも基金というものとの関係を明確にいたしたわけでございます。そうしておいて保険者でなく、支払い者でも受取人でもない、すなわち支払い基金というものにその審査の事務をやらせようというのが審査機構の改正でございます。われわれとしてはまずそういうことを考えて御審議を願っておるわけでございます。しかし審査ということを全然別個の機関でやる、たとえば都道府県知事の設置する独立の一つの審査機構というふうなものを考えるべきであるという意見、今先生から仰せになりましたような意見も十分に検討し、傾聴に値すべき意見と私どもも考えております。ただ今日の改正法におきましてはそこまでいくということは、また新たなる機関を全然別個に新設するということになりますので、支払いを受くる者でもなく、またいたす者でもない支払い基金という中立的な者に対して従来やっております審査の事務をさらに入念にやらせる、そういう意味の改正を御提案申し上げておるようなわけでございます。
○滝井委員 逐条審議ですから、派生的な問題を局長論議せぬで下さい。これは明らかに保険者がやるということになっておるわけです。今伝えられるところによると、自民党では社会保険診療報酬支払基金法のこの改正を削ってしまうのだ、こう言っておる。これは削ったって何にも役に立たない。保険者がやることなのですから、保険者が出しませんと言えばそれまでです。この法律の立て方からいえば、基金なんか私は通しませんと言えばそれまでです。あなたの方で審査機関を作ってやると言えばそれまでです。削るといううわさがちらちら出ておりますが、削られたって何の役にも立たない。これはつけたりです。「スルコトヲ得」であって、一昨日の大蔵省の答弁と同じだ。十億というものは出さなければならぬとわれわれが言っても、いやあれは出すことを得ると書いてあるから、出さないでもよろしいと言って出さなかった、それと同じだ。削っても保険者が私がやると言えばそれまでです。こういうごまかしを法文の中に作っておる。いかにも審査機構というものは基金でやるような工合に見せかけておるが、実際は保険者がやる。やるならば審査機構でやらなければならない、おやりなさい。そうすれば変える必要も何もない。はっきりそういうことになっておる。そういうごまかしにはわれわれは乗らないということです。 その次は四十三条ノ十です。これは実に複雑怪奇な状態になってきております。まず第一にこの四十三条ノ十をお読みになると、知事あるいは厚生大臣がやることは、いろいろの書類を提出させたり出頭を求めるところまではやります。ところが当然出頭したり提出した書類は当該職員が調べなければわからないものなのですが、命令だけは大臣と知事がやります。ところが今度質問と立ち入り検査の具体的なところになると当該職員がやることになっておる。一体こういう書き方というものはどういうことになるのかということです。当然当該職員が知事や厚生大臣の命令を受けて提出したものを調べたり、出頭した者に質問するのでしょう。ところが提出、出頭を命ずるのは大臣や知事がやる。ところが今度その次の方にいくと、当該職員をして大臣は立ち入り検査をなさしめ得るとなっている。これはすらすらと読めば疑問は起りません。しかし実際に、では出頭したり提出された書類は当該職員がやらないかといえばやるのです。それならば初めから知事は当該職員に出頭した者を調べさすことをやるというようにした方がいい。これは二段がまえになっている。すらすら読むと意味はわかりますが、そういう二段がまえになっている関係は一体どうなのか。
○高田(正)政府委員 提出を命じましたり、報告を求めたりいたすのは、厚生大臣または知事でございます。その際にそれを補助する手足という意味におきまして当該職員がこれを補助することは、先生御指摘の通り幾らもあるわけであります。従ってそれらの場合におきましては、知事と書いておきましても、出頭を命じたりあるいは報告を求めたり、そういうようなことでございますので、知事自身の名において出頭命令書等を出すことは幾らもできるわけであります。ところがあとの方の問題になりますと、質問をしたりその他の物件の検査をいたさすことは、知事と書いておいても、もちろんその補助者としてなし得るという解釈も成り立たぬこともありませんけれども、これらは事実の行為でございます。従ってそれらにつきましては、当該職員をしてこれこれさせることができるといって実際にできるものをはっきりとここに条文の上に表現をしておいた方がより妥当である。そういたしませんといろいろ問題が起り得るから、かような事柄によりまして分けて明確にいたしているわけであります。
○滝井委員 そうしますと提出と提示という関係です。提出というのは郵便で送っても提出です。ところが提示ということになると持って行かなければならぬ。郵便で送ることも広義の提示になるかもしれませんけれども、提示というからには持って行って示すという形だ。ぽっとほうり込むということにはならない。提示されたものには当然質問が伴う。提示したものを黙って見て帰ってよろしいとは言わない。そうしますとその場合の提示したものに対する質問とあとの質問とはどう違うか。結局みな同じです。みな知事がやらせることなんだ。そういう疑問が起ってくるわけです。それはそういう疑問が起ってくるということだけ言っておきましょう。そこで「保険薬局ニ就キ設備若ハ診療録」となっている。前の九条をごらんになると、「就キ」というのがありますが、先般の二十四国会においては、自民党さんは、いわゆる立ち入り検査を削除してくれた。私前の法律を持ってきてないが、前の法律はくどくどと立ち入り検査ということを書いておった。ところがあの二行にも三行にもわたって書いておった立ち入り検査を「就キ」という二字で削ってしまった。この頭脳の明断さと巧妙さには敬服しているが、今度九条と四十三条ノ十は立ち入り検査ができるようにしてしまった。これはなぜですか。
○高田(正)政府委員 前段の御質問の提出または提示を命ずるというのは知事でございます。出てきた提示を見ていろいろ質問したりすることは当該職員でやればいいわけであります。それから立ち入りの問題でございますが、保険医療機関もしくは保険薬局につき設備もしくはこれこれの調べをなさしむることを得ということにただいまの提案はなっております。御指摘のように物件の検査をいたすためのことであるならば、そのものが置いてあるところにも検査のためには立ち入れるわけでございます。これは御指摘の通りでございます。これは現行法にも同じようなことに相なっておりまして、現行法でも、その目的のためには前提行為として立ち入りは認められておるということに相なっております。ただ、前回の二十四国会の提案の際には、別個に立入権というものを明らかに規定をいたしたわけでございます。それでこの立入権というのは、そういう検査をいたすためにその前提行為として立ち入るという場合には、立入権がはっきり別個の権限として規定をされておらぬ形でございますが、かように立入権を別個の権限として明確にいたしますると、その立入権自体が行政官庁の権限として明確に法律上認められる、こういうことに相なる相違があるのでございます。 さらにそれに関連をいたしまして、そういたしますと、前国会のような場合におきましては、立ち入りを拒んだということで罰則なりいろいろ法律効果を伴って参ります。しかしながら今回のような書き方でございますると、検査を拒めば同様な法律効果が出て参りますけれども、立入権というものが独立に認められておりませんので、それだけを抜き出してどうのこうのという論議は、罰則をかけるとかなんとかという論議はなくなって参る、罰則の点で若干相違が出て参るわけでございます。
○滝井委員 立ち入りするということについては変りはないのです。そういう法律の微妙な解釈というものは、第一線の社会保険出張所の職員諸君はわからない。だからこれは明らかに「保険薬局ニ就キ設備若ハ診療録、帳簿書類其ノ他ノ物件ノ検査ヲ為サシムルコトヲ得」と書いてある。「其ノ他ノ物件」ですから何でもいいのです。そしてそれは同時に、犯罪捜査の目的にあらずと、語るに落ちた、犯罪捜査と同じようなことをやってもいいことになっておる。これはあとを見てごらんなさい。「同条第三項ノ規定ハ前二項ノ規定ニ依ル権限ニ付之ヲ準用ス」ということは犯罪捜査にあらずということです。 そこで、佐藤達夫さんの法令用語辞典というのがあるのですが、立ち入り検査というものは、最近の民主主義の法治国家の傾向としては、やむを得ないとき以外はやってはいけない。しかもその立ち入り検査はやむを得ない場合にやるのであって、絶対に私権を犯してはならない。必要最小限度にやむことができないというときにやることが望ましいのだ。そして近代的な傾向としては時間と場所、対象等の制限規定をつけることが普通である、こう書いてある。そして犯罪捜査とみなさずということも同時に付するということを佐藤さん——法律の相当の大家で、人口に檜炙している方が書いておる。ところがこの規定によると、この前もだれかが言っておりましたが、夜間だって、朝早くだっていつでも行けます。しかも診察中で患者がどんなに詰めかけておっても行くことができる。はなはだしいときには、患者をまっ裸で診察しているところへでも入って行けるのですよ。ところが、憲法の三十五条をあなた読んでごらんなさい。三十五条には「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」こういう侵入、捜索、押収に対する保障が憲法にあるのですよ。人間の生命を扱う医療担当者が、こういう犯罪捜査にあらずということの一項だけで自由に入られたら大へんです。だから少くともこういう診療所につき入るという規定を入れるためには、日没後であってはならぬ、あるいは診療の忙しいときであってはならぬということを入れるくらいの親切さがこの条文になければならぬ。それがないでしょう。だから朝の忙しくててんてこ舞いしているときに呼び出されることが最近でも多い。これはあるのです。だからこれは全くノー・ズロースです。いつも夜中であろうが診察中であろうがおかまいなく入ってくるのです。だから私は一つ大臣の御答弁をいただきたいと思う。
○神田国務大臣 滝井委員の御質問は、当該職員が関係者に対して調査をする、この調査は、日の出前とかあるいは日没後においてもやるのではないかというようなお尋ねのように私お聞きしたのでございますが、そういう立ち入り調査等は、相手の基本的人権を尊重することが当然でございまして、日没後とかあるいは日の出前、こういう時間はもう当然解釈上できない、こういうふうに私考えております。
○滝井委員 いや実は大臣がそうお考えになっても、法律からそういう解釈が出てこないでしょう。
○高田(正)政府委員 先ほど御引例になりました憲法の条文は、刑事手続上のものに関することと私は了解をいたしております。それで「犯罪捜査ノ為認メラレタルモノト解スルコトヲ得ズ」と書いてございますことは、すなわちこう書いてあっても、刑事手続上入る、すなわち令状を持って入るというふうに、相手が拒否した場合にも実力をもって押し入るということはできないのだぞ、いわゆる直接強制はできないのだぞということを明示したものでございます。 それから日出前、日没後の問題でございますが、こういう行政上の一般的な検査権というふうなものにつきましては、日出前、日没後はそういうことをやってはいかぬ、入ってきたり何かしてはならぬということが、行政上の検査権の通念でございまして、これは解釈上明らかな点でございます。従いまして、これは他の立法例等も調べていただけばわかると思いますが、そういう際に一々そういうふうな注釈を書かない立法例も幾らもあるわけでございます。私も寡聞にしてあまり存じませんけれども、行政上の検査権でそういうふうなことを書いたものの方がむしろ少いのではないかというふうに考えております。これがもう行政上の検査権の通念でございまして、解釈上何ら疑義のないところでございますから、その点は特にそういうことの明示をいたさなかったのでございます。
○滝井委員 医療機関の家宅捜査と同じようなことをしなければならぬようなことはほとんどないのです。それをこういうものまで作られると、いよいよもってこれはファッション的な法律だといわれるのです。だからこれは今の御説明では私は納得できません。 そこで次に進みます。今まであなた方は、今の監査要綱でいろいろと保険の監査をやるのだ、こうおっしゃいました。一体今度の法律で、監査要綱というものはどの法律上の根拠で生きることになるのか。今までは四十三条ノ五の指定の取り消しの大綱で監査要綱というものは生きておったと思うのです。四十三条ノ五だと私は記憶しておるのですが、今度は、私の探したところでは、寡聞にして監査要綱の基礎になるものは見つけることができません。ほとんど監査要綱と同じことが—同じことというか、それよりももっと厳重にこの法律でも監査要綱が貫かれてしまっておると思う。あなたは監査要綱は現在のものが生きておるからと答弁されておったように記憶しますが、どの条項で生きておるか。
○高田(正)政府委員 監査要綱の根拠規定は現行法にもございません。改正法にもございません。しかし検査権の運用につきましてそういう要綱を定めて、それに従ってやって参るということが従来の慣例にもなっておりまするし、また私どもも今後もそれを動かす意思は全然ない、こういうことを申し上げたわけでございます。
○滝井委員 それは信用することができない。私はもうこの法律に盛られておると思う。あなたは今までないというけれども、今までは四十三条ノ五でできるのです。これは大綱と書いているのですよ。四十四条ノ五は「保険医及保険薬剤師ノ指定、指定ノ取消及保険診療ノ指導ニ関スル大綱」とある。だから大綱ということは指定の取消しになるわけです。これは監査要綱になるのです。ところが今度はこういうものは全条文を読んでもない。従ってあなたの言われる通り今までもなかったならなかったでもよろしいですが、全然ない。そして今度の法律は全部できるのです。あの監査要綱に書いてあるようなあれなら、不正の疑いがあった場合とかいうことになる。今度は不正の疑いがあるなしにかかわらず必要があるときにどんどんやれる。これで大体監査要綱の基礎がないということがわかればけっこうであります。時間がないからもう二つ三つですぐ終ります。 次は五十九条ノ六です。五十九条ノ六の、国民健康保険を行う社団法人が家族療養費を支払う場合というのは一体どういう場合かということです。—これは大して重要なものでないから、わからなければあとでお調べになって御答弁願いたいと思います。時間がないから先に進みます。 次に六十七条ノ二を見て下さい。六十七条ノ二の中ごろに「保険者ニ提出セラルベキ診断書ニ虚偽ノ記載ヲ為シタル」云々とあるわけです。こういうときは罰せられることになる。そうしますと傷病手当金の請求の中に医師が書く意見書はこれは診断書になるかどうかということです。
○高田(正)政府委員 診断書の中に入ると解釈いたします。
○滝井委員 そうしますとこれは無料ですよ。健康保険の保険医の療養担当規程の十六条を見て下さい。無料です。そうしますと、実は意見であるから診断書でないと言われるかと思ったけれども、診断書だという。無料のものを書いてこれは罰を食らうことになる。この無料のものというのがまた実に複雑怪奇だ。結核なんかの患者は毎月実に膨大なものを書かなければ返ってくる。詳細明瞭に書かなければ返ってくる。簡単な請求書でない、生命保険の請求書と同じなんだ。そんなに詳しく書かなければならぬものを、保険医は無料でやれというので療養担当規程は無料にしておる。しかも診断書という名目でないので医者は金が取れない。これは一体どういうことです。
○高田(正)政府委員 六十七条ノ二の規定の働きますのは、滝井先生も御存じのようにある人間が傷病手当金の支給を受けた、それは詐欺その他不正の行為によりやった、だましとった場合、こういうわけです。それで二項の働きますのは、そのだます方について医師が共謀をしておった場合、いわゆる共犯の場合についてその金を返すことについて連帯責任ノ負わせるということです。今罰則を受けるとか何とかいうようなお話がございましたが、別にこれは罰則の問題は考えておりません。ただだましとった場合に、それに共謀しておった場合にその弁償をしていただくのに連帯責任を負っていただく、こういう規定でございますので、ごく社会通念上当りまえの規定でございます。別にそれが料金を取ってものを書いたから、あるいはただで書いたからということはその場合には問題にはあまりならないのじゃないか、かように考えるわけでございます。なお、これと同様な規定は、すでに日雇い健保にも失業保険等にも入っておるわけです。むしろ社会の一般的な考え方から健保にも設けるべきであったものが健保改正の時期がございませんでしたので今日まで放置されておった、こういうことでございます。
○滝井委員 まだ共犯とか何とかいろいろ言っておりますけれども、とにかくこれは無料であることは事実なんです。しかも労働者は、たとえば待機三日ありますよ。病気になって医者にすぐに来てもらっても三日傷病手当金はもらえない。そうして最後になってから、いよいよ診察に来なくても薬だけで今度打ち切ってしまう場合があるのです。健康保険は二日分ずつですから、二日分ずつ薬をやって打ち切ってしまう。そうすると、最後のころになって薬をやったときには、仕事に行く場合と行かない場合が出てくる。医者の方としてはお休みなさいといっておっても、仕事の関係や労務係の力によって行かされてしまうことがある。そうすると、医者が書く傷病手当金の請求書というものは、仕事に行かないものと思って書いてしまう。そうすると今度は労務係の方の休業と医者の方の休業とが違ってくるのですよ。そういう場合には、医者の方は休みなさいといっておるのに休んでいない、それを休んでいるものと思って出してしまう。そうすると、あとで診療所に調べに来る、カルテを突き合せる。そうするとこっぴどくやられる。これは、お金でも取っておる診断書ならばそれでいい、ところが、無料で保険に協力しておる者が、そういうようにお休みなさいと言ったのに労働者が休まなかったのに、出した者がこれは虚偽だということでやられては大へんですよ。こういうように、あなた方はこの法律を作るのに実に保険医の一挙手一投足すべてに至るまで罰金だ、共犯だといって片づけられてしまっておるのでしょう。だから、初めから見れば見るほどいい法律ならいいが、見れば見るほど手も足もがんじがらめに縛り上げられておる法律だといって寒心せざるを得ない法律なんです。かんしんといっても寒い心です。寒い心で、これは鳥肌を生ずるという状態なんです、ということです。 次に八十七条の公務員の秘密の規定を削除しておる。今までは健康保険法に秘密を守らなければならぬというのがあった。それは、憲法十七条、それから国家公務員法百条に秘密を守る義務があるから削除したのか、私そうだろうと善意に解釈しておるのですが、役人の方のものはうまく削除してしまう、手抜かりのないところをお示しいただいておるが、多分憲法第十七条と国家公務員法百条にあるから削除されたのでしょうな。
○高田(正)政府委員 御質問の通りでございます。
○滝井委員 事業主がこの法律に違反した場合についてはその事業場に保険をやめさせるということはないのですね。
○高田(正)政府委員 保険をやめさせるという趣旨は保険の網の外にほうり出してしまう、こういうことでございますね。そういう規定はございません。
○滝井委員 労働者の場合も、労働者がたとえば傷病手当金の不正請求をやったときも、ございませんね。
○高田(正)政府委員 給付は、全部または一部の給付をしないことができるという規定はどこかにあったはずでございますが、その被保険者を全部保険からほうり出してしまうということはございません。
○滝井委員 保険医並びに保険医療機関が、この法律に違反すると保険から締め出されてしまいますね。
○高田(正)政府委員 強制保険でございまして、被保険者なり事業主なりという者は強制をされておるわけでございます。従ってこれをほうり出してしまうというのは、その建前からは矛盾するわけでございます。保険医療機関の場合には、何も保険医療機関になっていただくことを強制はしてございません。従って医療を担当していただくという関係を解除するに妥当な理由がある場合には、保険の機構の中から外へ出ていただく、契約の関係を解除する、こういう規定があるわけでございます。
○滝井委員 国民皆保険を唱える政府が、もうすでに国民健康保険と健康保険の普及をしておる地区で、保険の外へ出て医者が食えるかということです。これは死ねということですよ。保険というものは、これは安田さんなり日経連の皆さんも、三者泣き、五者泣きと言っております。保険者と療養担当者と、そして被保険者と三者が一つ泣いてもらわなければならぬと、こういう対等の立場でやっておるのです。ところが三者が対等でなければならぬのに、前の二人というものは、すなわち事業主と被保険者というものは、これはどんなに悪いことをしても保険の外にはおっぽり出されないけれども、療養担当者なり保険医というものは、いわば筆の先でちょこっと悪いことをしただけで保険の外に出てしまう。あなたはなるほど言葉の上では、自由契約でございます。志望者だけが保険医なり保険医療機関でやるからやむを得ませんと、こうおっしゃるけれども、現実の社会生活の面において、そういうことができるかということです。これは大へんな組み方なんです。この法律は……。少くともあなた方は皆保険をやろうとするならば、やはり三者を平等のまないたの上に乗せなければならぬのです。大臣もすでに就任以来国民皆保険をお唱えになっておりますが、一体これはどういうことかということなのです。こういうところにやはり保険医というものの不平が出てくるのです。皆保険を唱えておりながら、一方ちょっと質問に答えなくても保険の網から外にほうり出されるのですよ。そういうことがこの法治国家で許されるかということです。しかも何で自由業である医師とか歯科医師とか薬剤師とかに、そういう峻烈な法律を適用しなければならないか。今言ったように、これは自由に契約するものでございますからと言う。自由に契約するものならいつでも出せるのだから、そう峻厳にやらなくてもいいはずだ。ところが、これは片一方は強制だ、片一方は自由だと言うが、大体保険医は何の権利を持っておるか。この法律で保険医は何の権利を与えられているか、何かあればあとで言って下さい。その前に、今の皆保険の立場で、こういう取扱いが許されるかということなのです。
○神田国務大臣 今の滝井委員のお尋ねの趣旨は、これはまことにごもっともでございまして、国民皆保険というものを完全実施の暁には、私はそれはやはり相当考える要があると思っております。しかし今の段階では、この法律の建前はやむを得なかろう、こう考えております。
○滝井委員 そういう心がまえでは、国民皆保険はできませんよ。それは私は太鼓判を押してもいいです。まず第一に、そういう立場の考え方では、全国の医療担当者が協力しない。大臣がそういうお考えならば、それ以上の御答弁は要求いたしません。 そこで最後に、この九十一条を見ると、「第八十七条ノ違反行為ヲ為シタルトキハ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ同条ノ罰金刑ヲ科ス」とあるわけなんです。その行為者を罰すると書いてあるが、どういう場合に罰するのですか。それは三万円以下の罰金、六カ月以下の懲役にするという意味ですか。しからばその場合に、一体罰する基準というものは、どういう基準で三万円以下の罰金、六カ月以下の懲役になるのですか。
○高田(正)政府委員 これはこういう罰則に、法人の場合の両罰規定と申しまして、両方によくついております規定でございますが、今の行為者を罰するというのは、その前の罰則でいくわけであります。医療機関、被保険者の罰則は八十八条ノ二であったと思いますが、事業主及びその他の者の罰則は八十八条ノ三でございます。なお事業主の義務違反は八十七条でございまして、関係者の罰則は八十八条でございます。今逆に申し上げましたが、八十七条から八十八条ノ三まで罰則が書いてあるわけでございます。その中の八十七条の違反行為につきましては今の両罰規定がかかる、こういうわけでございます。御質問の基準は、それぞれ各罰則の条文に書いてあるわけでございます。
○滝井委員 大体逐条の大きいところを終りました。あと附則の力の審査機構の点と、それから健康保険の財政の問題と、それから船員保険と厚生年金について用意してきておりますが、他に質問者があるそうですから、あと時間が余ったら質問させていただきます。
○大橋(武)委員長代理 中原健次君。
○中原委員 私はいろいろ御質疑を申したいことが山積しておりますが、しかし委員長からの御指示もありますので、予定の時間だけ一部の質問をいたします。ただいままで滝井委員の方から、特に医療者の立場に立たれてかなり専門的な、非常に参考になる御質疑がありまして、ありがたく拝聴しました。私は一応問題をほかの方に転じまして、被保険者、国民の立場、現在の国の経済の姿、国民の生活の状態、そういうような観点から少しばかりお尋ねをしてみたい、こう思うわけであります。 申し上げるまでもございませんが、疾病というものの原因といいますか、それはもちろん数々あると思います。その数々ある原因の中で、貧困というものが相当大きな地位を占めているということは、政府がお出しになられた厚生白書ですか、それなどから見ても、これはすでに政府が承認しておいでになると思います。そこで世間一般の言葉をもってしますと、何でも現実は神武景気などとかいって、非常に経済の状態が上昇に向っておるというようなことを印象づけておる。それだけに私は今日の段階の貧困の実態というものを、もっとまじめにお互いが検索してみる必要があるのじゃないか。ただぽかぽかと神武景気などという言葉にあおられたままで国民生活を油断しておったのでは、これは重大なことになる。しかもそのことといわゆる社会保険の問題というのは、これは切り離しは絶対につきません。きわめて重大であると思います。それだけにこの問題についてしばらく当局の御見解を承わってみたい、こう考えるわけであります。 そこで私は、せっかく大臣が御列席でありますから、まず一番最初に、厚生省がかって出された通達といいますか指令といいますか、時は昭和二十三年の健康保険制度というものが表に出て参りましたときの一つの方針、続いて昭和二十九年に保険局が出されたのであろうと思うのでありますが、そういうそれぞれの政府の通達事項、これは今日の厚生省の立場でやはりそれをお認めになっておいでになるのかどうか。その通達事項は消えておるのか消えておらぬのか、こういうことなんです。そのことについてお伺いしたい。
○高田(正)政府委員 二十三年、二十九年の通牒のことを御質問でございますが、その当時の通牒で消えておるものもございますし、それからそのまま生きておるものもあると存じます。通達でございますから、あとの通達で廃止をいたしまして無効だということを言いましたり、それぞれ消しておるものもございます。それからあとの通達と矛盾しないものはそのまま生きておるものもございます。
○中原委員 そのことごとくを今取り上げようと思うわけではないのです。そこでまずたとえば昭和二十三年の通達です。私がお尋ねしたいと思うのは、こういう名文句が書いてあるから、これはどうかということです。医療保険の本質は、労働者及び国民大衆が、その傷病の事故に際して、経済的負担を考慮することなく、早期に徹底せる医療を受け、すみやかに労働力の回復をすることを目的とする、これなんです。この項はどうでしょうか。
○高田(正)政府委員 一年間には通達等はたくさん出ておりますので、その具体的な通達が生きておるか死んでおるか、それは一応調べてみないとわかりませんが、今お読みになりましたような趣旨は生きておるものと考えます。
○中原委員 もちろんこのような内容の通達が、どのような情勢になりましても、これは消えようはずもないと私も思います。また消えてはなりません。そうして二十九年の通達ですが、私のここに抜摘しておりますものを見ると、六カ条にわたっておるわけです。第一は使用関係の不明確なもの、賃金の支払いが不明確なもの、公課の納入状況が明確かどうか、標準報酬は他と比較して低過ぎはせないかどうか、保険の恩恵を受けるためのものではないか、従業員の異動率が高いかどうか、これなんです。この六つの項目です。これはいかがですか。
○高田(正)政府委員 それは的確なことは、その通達自身を見ないとわかりませんが、おそらく任意包括の——強制適用でない、法律上当然適用される事業場でない、それ以外の事業場につきまして、任意包括という制度があるわけでありまして、その任意包括を認めるかどうかということに関連しての通達だと存じます。それはただいまおあげになりました各条項を伺いました私の想像でございます。——ああ、やはり二十九年の十一月二十六日に、任意包括加入の認可基準について、という通達が出ております。その中に今仰せになりましたようなことも書いてあると存じます。この通達は今日も生きております。
○中原委員 そこで問題になりますのは、なるほどこの個々の通達をそのままに説明しますと、まあそうであろう、こういうことになると思います。ところがこの通達事項を具体的にずっと推し進めて参りますると、特に現在の段階で、わが日本の国内の事業場、工場等々の中に五人未満という非常に零細な経営があるわけです。その五人未満の零細経営の中の被保険者を獲得するといいますか確保するといいますか、そういう操作とこれと関係しまして、おのずからの結果として、五人未満の小規模経営の従業員はこれをのける、包括せないということになるおそれはないかどうか、この点一つ……。
○高田(正)政府委員 この通達は、従来任意包括制度につきまして各府県でまちまちな取扱いを当時までいたしておったきらいがありまするので、これに対して、まちまちでありますると不公平という事態も起りますから、一つのものさしを与えたい、こういうことが一つの趣旨でございます。それからもう一つは、今先生の御質問の主点でございますが、こういうふうに任意包括をある程度制限をいたすと、この基準に触れて制限をするようなことになると、五人未満の零細事業場の被保険者というものが保険の中に入ってこれなくなります。その点はどうだというふうな趣旨の御質問かと拝承いたしますが、その点につきましては、任意包括制度というのは、現在の建前から参りますと第二義的なもので、第一義的には五人以上の、本人が好むと好まざるとにかかわらず強制的に法の適用を受ける人たちの問題が第一義でございます。従って任意包括をあまり野放図にやりまして、そのために強制をされておる被保険者に非常な不利益等をもたらすようなことがあってはならぬ、こういうふうな趣旨から若干制限的な意味にとれるような基準にも相なっておるわけでございます。かようにいたしませんと、これらの任意包括の、標準報酬も非常に広いし、それから雇用関係も安定していないというものが非常に多くなりまして、元来の強制の被保険者に対する保険料も非常に高くなってくるというような影響がありましたならば、これは制度本来の趣旨を滅却するものであるというわけで、簡単に申せば逆選択を防止するという意味のねらいを持った通達でございます。しかし、そうは申しましても、それらの零細企業の従業者の保険をどうするかという問題はまたそれ自体として重要でございまするので、これらについては先般来たびたび大臣なり私の方からお答え申し上げておりますように、できるだけ近い将来においてその実態を十分に把握した上で一つの方針を立て、これらを保険の網の中に取り込んでいくことについて施策をいたしたいと考えておる次第でございます。
○中原委員 私は今ここに便宜上、健保の任意加入の事業所の統計を書いてきました。これは多分あなたの方の統計だと思いますが、この統計によると、昭和二十九年の達しの出たあとで、任意加入事業所の数字がちょっと移動してきておるわけです。その辺からぱっと変ってきておるわけですが、そういうことから何が想像されるかというと、五人未満の零細経営の従業員がだんだん入りにくくなったということ、また末端の具体的な扱い方を見ると、むしろこれを拒んで入れないようにする操作が行われておるという疑うことのできない事実があるわけです。もし政府の意図するものがそうでないならば逆の結果が出つつあるのではないかという思いが非常に深いわけです。そうなってくると、さなきだに非常に広い範囲に設けられておる零細経営の従業員は健康保険の恩恵を受けることがむずかしくなってくる。そこで、もし国が幸いに昭和二十三年度の達しのような願いを持っておいでになるとするならば、その達しと逆な結果になるのではないかと思うのですが、この点はいかがでしょう。
○高田(正)政府委員 この通達が出る前とあととで任包がどの程度制限されたかという詳しい資料をただいま持っておりませんけれども、先生は、二十三年にこういうことを言っているじゃないか、そういう結果がかりにあったとすればそれに背馳しやしないかという点が御主点のように拝聴いたしました。二十三年の通達は、あくまでもそのときに施行されている健康保険制度そのものをさしておると思うのであります。健康保険制度の趣旨の説明的なもので、健康保険を考え、健康保険を運用するについてはそういう趣旨でやるべきであるという精神のものであろうかと思います。健康保険の本来のねらいというものは強制被保険者でございます。さような点からいたしまして、二十九年の通達が二十三年の達しの根本精神に特に矛盾するものではないと考えております。
○中原委員 そこで、妙なことになるのです。昭和二十三年に強制被保険者を対象としてこの通達がなされた。私のただいま提議しました問題は、御答弁からすると、任意だ、従って必ずしも関連がない、こういうように受け取れるわけです。そうしますと、私がもう一つ言わなければならぬのは、強制被保険者に対する妙な措置が今度改正案に出ておるわけです。その心の底に何が流れているか、これからそのことは指摘いたしますが、そのことと、それから任意加入の場合に対する考え方とが残念ながらやはり一貫しているのです。ということは、昭和二十三年の通達のような早期に回復させて労働力がどんどん行使できるようにしなければならぬという意味と逆のコースが出つつある。言葉をかえて申しますと、健康保険制度自身本来当然委託すべきはずの目的、理想をむしろどんどんはねのけていきつつある、こういう結果が出ていると気づくから私はお尋ねしているわけです。そうじゃない、昭和二十三年の通達の精神をあくまで成果あらしめるために努力しているというのなら、今度の改正案はとんでもないことになるし、ただいま申します昭和二十九年の達し以後における任意加入の事業所の移動の問題等がそこでどうもおかしいことになってくる。つまり了解できないということになってくる。ことに現地の実態を見ますと、五人未満は一時割合に入りよかったわけです。ところが今度この通達によって入りがたくなっている。言いかえれば、保険の恩恵に浴することができなくなってくる、こういう結果が出ているわけです。これは詳細に数字を申し上げることができるのですが、めんどうですから申し上げません。けれども、数字から言えばそういうことになる。そういうとんでもないうらはらが出てくるとすれば、昭和二十三年の精神を続けておいでになることがあやまちなき事実なら、これはちょっと考え方を改めて二十九年の通達をやり直さなければ妙なことになってしまう。つまり、事志と違ったことになる。こういう点についていかがでしょうか。ただここで言葉巧みに問題を扱うというのではだめなんです。国民の病気の実態、保険者、被保険者の健康に対する要望、期待、そういうものが裏切られつつある現実から言えば、やはりこの問題についてもう少し親切な、まじめな——もちろんまじめでないと申すのではありませんが、出ている結果から見ればまじめであろうかという疑問を持つ。とにかく健康保険制度がかくかくございますという言いわけのため、ただ自分の政府の立場を弁解するためにいろいろな制度を複雑に設けているだけにすぎぬのではないか、むしろ国民の期待をはねのけつつあるではないか、こういう憂いが多分にあるわけです。その点について御答弁願いたい。
○高田(正)政府委員 二十九年の通達が二十三年の通達の中にうたっております健康保険の精神とずれたようなことにはなっておらないか、なお今回の健康保険法の改正は二十三年の通達にうたってある健康保険の精神と背反した思想を根底に持っておるのではないか、こういうふうな趣旨の御質問であると拝承いたしたわけであります。逆になりますが、今回の改正案につきましては、私どもは健康保険の健全な発達をはかるために企図しておる改正でございまして、二十三年の通達の中にうたっておるような趣旨に沿ったものであるというふうに理解をいたしておるわけでございます。 それから二十九年の通達をもう一度再検討してみる必要はないかという御趣旨の御質問に対しましては、今私ここで読んで見たわけでございますが、使用関係が明らかであること、これはいつの場合においても要求される一つの要件である。それから保険料の納付が確実に行われる見込みが明らかであること、これは保険料がなかなか納付されないというふうな、滞納が当然予想されるような事業場を無制限にどんどん任意包括をしていくというわけにも参りませんので、これについても当然なことをいっておるわけでございます。その他六番までございますけれども、例をあげてみればそういうふうなわけで、これはあくまでも健康保険制度の中では従たる一つの分野でございまして、この二十九年の通達は当面の健康保険の制度の健全な発達を所期いたしまするためには、今日においてもなお妥当な通達ではあるまいか、これを直ちに改廃をいたすような必要はないのではあるまいか、一応私はこの席でこれを読み直しまして、さように感じておるような次第でございます。
○中原委員 局長の御答弁のままに現実がなっておらぬわけなんです。さきにも私が申しますように、その達しの一項々々を見ると、そういうことも言わなければならぬと思います。ところがその結果から見ると、逆に、ただいま申しますように、零細企業の従業者が列からはみ出されていく、こういう事実が出ておるわけなんです。そうなってくると、事実は健康保険の目的とするところとは逆になっておるという結果が出るわけなんです。ことに今日の段階では、政府がしきりに説明しておいでになるように、国民健康保険を全国民に及ぼす、こういう思想があるだけに、なおさら私はこのことが問題になるのではないか、こう思うのでお尋ねしておるわけなんです。一応御答弁を願います。
○高田(正)政府委員 ただいま任意包括で健康保険の中に入っておる被保険者の数を応急に調べたものが出て参りました。二十九年の十一月にこの通達が出ておるわけでございますが、二十九年の三月の被保険者の数を調べてみますと、九万九千九百三十二という数字が出ております。それから通達後の三十年の三月は十万三千五百六十七、三十一年の三月は十一万百二十二、三十一年の十月は十二万一千三百十四という数が出ております。それで、なお通達が施行される前に若干さかのぼって調べてみますと、二十八年の三月には十一万七千九百八十四という数字があるのであります。それでこの通達が出る以前の二十九年の三月と比べてみますと、むしろ二十九年の三月の方が二十八年の三月よりは減っておるという数字が実は出ております。通達が出ましたあとは、徐々にではございますが、増加をいたしておるのでございます。この通達が現実の任意包括制度の運用についてどういうふうな影響を与えたか、非常に制限的な影響を与えたかどうかという点については、いま少しこれらのことを検討してみませんと、結論を出すのは早計かと存じます。 しかし先生の御質問は、五人未満の零細事業場の従業員を保険に加入せしめるということが今日の大問題になっておる、そういう国民皆保険ということを考えた段階において二十九年の通達をもう一度再検討をする必要はないか、こういう趣旨かと拝承いたしますが、その点につきましては、私どもは零細事業場の従業員をどういうふうにするかという方針が立ちましてから、一例をあげて申しますれば、政府管掌の中にそのまま入れていくんだということになるか、あるいは第二種健康保険というふうなものを作るという方向に参るか、あるいはまた国民健康保険でもってこれを全部包括していくんだということになるか、その他いろいろ考え方があるかと存じますが、それらの結論が出ましたならば、その際に任意包括制度については根本的に一度検討してみる必要は確かにあると存じます。かりに第二種健保というようなものを考えるといたしますると、現在の健康保険制度の任意包括制度をそのまま置いておくことがいいことか悪いことかということについて検討を加える必要があろうかと存じます。現在の健康保険に全部包括していくんだということになれば、強制適用していくんだということになれば、任意包括というような問題は消えてしまいます。そういうふうな五人未満の被用者の取扱いについて一つの線が打ち出されました際には、関連的にこの二十九年の通達という問題でなく、任意包括制度そのもの自体について一度新しい考え方とそれとをどうかみ合せていくかということについての検討は必要だ、かように考えておるわけでございます。
○中原委員 そこが重大なところです。任意保険者の場合、その被任意保険者の立場に立つ零細企業の労働者あるいは従業員、こういう人々を、前申しますように、統計から考えても、あなたもその点は必ずしも否定しておいでにならぬと思うが、やはりはばむという効果が出ているわけです。五人以下の零細企業の従業者が保険に加入することをはばみつつあるわけです。これは現在事実がある。これは現実に実地調査してみれば、全国にある。これをはみ出してしまうという効果が出る。その出ることがよろしいということになれば、話はそれでよろしい。その点で議論は別にすればいい。そうではなかったというならば、この通達に矛盾している。実は事実がそうなっておるんです。そこで私がすぐ考えることは、国民皆保険制度を設けようという心がまえを持つ立場からいえば、国民保険の方へそういう零細企業のものを追い込んでしまう、こういうことにもなりかねない。そうなってくると、これは御存じのように、取扱いが違います。取扱いが悪くなるわけです。取扱いが低下する方向へ零細企業の従業者を追い込んでしまえばよろしい、こういう言い方をしても必ずしも独断じゃないということが出てくるわけです。そうすると昭和二十三年のこの達しの精神というものは、もう少し考えてもらわぬと、生きてこないことになる。やっぱりそれでは死んでしまう。労働力の回復がそれではむずかしくなるのです。そこに現在の労働問題の一つの根本になる課題が出てくるわけです。それを申し上げておるわけです。従ってこの際一つ大臣、御迷惑でしょうけれども、いかがですか、その問題について、今ようお聞きにならなかったかもしれぬが、これは重大なことなんです。その考え方が底にあれば、現われてくるものはみな矛盾してくるわけです。そこで先ほどずいぶん議論が出ておりましたが、そうなると思うのです。好むと好まざるとにかかわらず、非常に極端な、そういう対立的な意見が出てくる。出てこざるを得ないのです。それでは、せっかく設けられた社会保障制度というものが、その社会保障制度の持つ、あるいは保険の持つ精神と食い違うという現実が出てくるわけです。これはいかがですか。この点はやはりこの社会保障、社会保険の大精神に沿うように、これからの政策を取り上げていかなければならぬのかどうか、こういうことをお尋ねしたいのです。これは基本問題です。
○神田国務大臣 ただいま中原君のお述べになりました御意見と同感でございます。
○中原委員 それでは、一応同感をいただきましたので、その問題はまたあらためて別の機会にもう少し掘り下げていきたいと思うし、また政府の各種の御答弁の中からも当然問題が出ると思いますから、一応そのままにいたしまして、話を次に転換いたします。 先ほどちょっと申し上げたことでありますが、貧困が病気の大きな原因をなすということなんです。 〔大橋(武)委員長代理退席、中川委 員長代理着席〕 そこで現在の生活の状態、いわゆる神武景気というやつです。この神武景気というやつが、ほんとうに国民の生活を安定し、向上させ、よりよき方向におもむかしめているならば、まずその点については、国民が金を持って生活が豊かになるから、病気は少しでも減っていくであろう、こういうことになりますけれども、実態は必ずしもそうじゃない。今すでに春季闘争というものが巻き起っております。この議論は今しませんが、決して偶然に起っておるのじゃないわけです。春季闘争をあれだけ労働者が必死になって戦おうとする気がまえの底には、やはり不可避的に貧困を背負い込まされつつあるから、これじゃ大へんだというので、避けることのできない実態が、あの春闘を巻き起しておるわけなんですが、そういうようなことをかれこれ思って参りますと、やはり現在の国民の各種階層の状態は、お互いが厳重に親切に熱心に調べてみる必要があると私は思うわけです。このような意味から、貧困階層の実態調査といいますか、それについていろいろとこの中にも書いてある。この二十四ページをあけますと、低所得階層が九百万ないし一千万に及んだと、こう書いてある。これははなはだ重大なことなんで、低所得階層が一千万からある。政府もこのことをちゃんと明記しておいでになるし、いやむしろ実態はもっと数が多いかもしれません。しかし一応政府の統計を基礎にして御相談をするといたしまして、そうなって参りますと低所得階層が今日の段階で一千万といえば、これは容易ならぬ多数です。八千何百万、あるいは九千万といっておりますが、その中でここへ表示されなければならぬような人々の数が一千万に及んでおる。そういう実態は、実はもっと多いわけなんですが、そういうことを思いますと、やっぱり神武景気だなどとのんきなことを言ってはおれぬということになると私は思うわけです。その低所得階層の外に、いわゆる被保護者人員、これもお宅の方の数字に出ておりますから申し上げぬでもいいと思いますが、百九十二万人と書いておる。そうすると、加えるに百九十二万こういうことになるのでしょうと私は理解します。これらの人々の生活の実態です。これは、だんだん国民の生活がよくなりつつあるなどといろいろ言う人がありますけれども、やはりそれはそうじゃないじゃないか。だんだん低所得階層がふえてくるし、あるいは被保護者の数も百九十二万からある。こうなって参りますと、とんでもないところに到達しておると私は思います。私は今ここにこういうものを持っておる、統計月報です。これは東洋経済が出しております。これを見ても、国民の生活の実態はどんどん悪くなっておるのですよ。どんなに神武景気、神武景気と国会の中で大きな声をして言いましても、実はそれはよその話です。それは何ぼかの階級の人が非常に所得を拡大し、非常に利潤をあげておるという事実があることは、先般も衆議院の予算委員会で木村禧八郎君が指摘しておりました。あれは皆さん多分御存じだと思うのです。そういう人は確かにそうなんです。これはまことにすばらしい利潤をあげております。けれども国民の絶対多数の階層の姿を見ますと、それとは逆に出てきておる。そこでそういうような実態を認めるのか認めぬのかということなんです。これは一つ大臣の御答弁を願いたい。
○神田国務大臣 いわゆる一昨年からの景気の到来、それから昨年の景気の上昇を、よく通称神武景気というような言葉を使って言っておるわけでございますが、この言葉の当否は別といたしまして、わが国が全体として未曽有の好景気に恵まれておるということは、これはもうどなたも否定をなさらぬだろうと思います。しかしその反面、今中原委員が述べられたように、ボーダー・ラインを浮きつ沈みつと言いましょうか、こういう階層が非常に数がある。さらに要保護者の数もあることも事実でございます。ただ、しかし、厚生省の出しております白書よりも、今だいぶ減っておることも事実でございます。ようやく景気が下の方に浸透しつつあるということも言われておるようでありますが、しかし全体の景気から考えますと、今中原委員が御心配になったような、なかなか容易でないという事実は、私も率直に認めます。そこでこれらをどうするかということが、大きな対策の要あることと考えます。御承知のように、先般来予算総会その他等において、石橋内閣以来、また岸内閣に至りまして、完全雇用を一つ政府といたしましてできるだけ早く達成いたしたい。そこで、国民の各階各層があまねく労働の機会に恵まれて、そうして所得が増すような状態に持っていきたいということを目途として、諸般の施策をやっておるようなわけでございます。それならば一体いつになって今述べられたような膨大な方々まで所得の普遍化ができるかというと、これはなかなか容易じゃないと思います。しかし一つできるだけそういうときが到来するように、諸般の経済政策を打ち立てていく。やはり経済政策が充実して参りませんと、完全雇用が進んで参らない限りは、今のような低所得者階層というものが、病気その他で悩みが続くわけでございまして、そういう面をできるだけ早く除去いたしたい。貧乏と病気との関係、それで社会保険として医療保障を充実いたしたい、こういうことを中心とした施策をとっているようなわけでございます。
○中原委員 そこで統計を見ますと、完全失業者の数が必ずしも整理され、減りつつあるという状況では実際はないわけなんです。むしろ完全失業はふえようとしておる。上へ上ろうとしている。これは大へんなことなんです。それから物価の状態を見ますと、これも下回りじゃないんです。わずかずつ上へ上ろうとしているんです。これは物価は高まるんです。物価は高くなろうとしているんです。失業者はふえようとしておる、仕事はしにくくなろうとしておる。特に最近やかましい問題は、一律二千円アップ等々の問題に関連いたしまして、がたがた問題が起きておりますが、なるべく上げまいとする圧力がかかっておるわけです。そうするといや応なしに——この議論は労働大臣が来たらしますが、そういうような実態の中に政府の意図するものは一体何だということなんです。いよいよますます国民生活を低劣な生活に、苦しい状況へ追い込むことの方へ急いでおるんじゃないか、こういう感じを持っておるわけなんです。ここで議論しようとしておるわけではないが、一応例として……。最近、仕事についた者の状態を見ますると、どうやら第三次産業といいますかサービス業、商業、そしてまた婦人の数がふえつつある。こういうことも、一面国民生活の窮乏を物語っておるわけなんです。いわば仕方がないから何かしようというので、いろいろな商業に転換し、サービス業に転換しておるわけなんです。これは経済の実情からいいますと好ましいことではないんです。国民生活がどんどん追い込まれるという姿の裏書きなんです。第一次や第二次の産業の方へどんどん人が採用されていくというのと違うんですよ。それを漠然と就業率がふえましたなどと言うけれども、この就業率のふえた内容を調べてみたら、これは国民の窮乏がますます加えられていく、こういう状態なんです。そこでそういう実体をつかめばなおさらのこと、だから社会保障制度というものが非常にやかましくいわれるわけなんです。その社会保障制度をはばみ、弱めていくような政策を国がとるなら、ただいま申しましたような実情と正面衝突するんです。そういう措置をとっちゃならぬと、お互いまじめに考えるわけですよ。そうなるならばまじめな答えを出さなければいかぬ、まじめな答えを出そうとすれば、今度の改正関係法律のごときはまことに妙なことになるんです。ますます負担をかけていくことになる。医療は十分やりませんぞ、あるいは医療の基準は下げましょう、こういうことに実情がなろうとしております。いやすでに、現実になりつつあるわけです。そうなってきますと、近い将来におそるべき状態が出てくる。国民は健康を守ることを許されない。せっかく国家がありましても、国家がそれを保障をようしない、いやむしろその意思さえない、こういうことに不可避的に陥らなければならないのではないか、こう私は思うのです。せっかく政府の当局には頭のいい人がそろうておるのですから、一つまじめに、大臣を中心に次官、局長、課長、係長その他の職員諸君は、私はこのことを本気で考えてもらいたいと思う。でないと、せっかくいろいろな統計も出ておりますが、私はずいぶん読ましてもらいましたが、この統計を書きながら、あるいは報告書を書きながら、その筆者である政府のお役人諸君みずからが、妙な自己矛盾を感じながら書いていかなければならぬのじゃないか、もし矛盾を感じずに平気で書いたとすれば良心があるのかどうか、秀才は良心はないのか、私はそう聞きたくなるのです。秀才であればあるほどに、私は矛盾が非常にきつく自分の心にかかってこなければならぬ。ほんとうに極端なことを言いますれば、あまりの良心の強きのゆえに、現実のような矛盾したものを出そうとすれば、自殺したくなると私は思います。自殺は私は反対です。反対ですが、しかししたくなると思う。耐えられない。間違ったこと、国民を痛めつけることに上手な方式を出せば出世するというのでは、これは困るわけです。私はこのことを非常に思うのです。そこで私は憲法のことを言いますけれども、実際憲法を作った当座、この中にもだいぶその当時のお歴々もいると思いますが、また皆さんもそうだと思うが、どうですか。その当時どう思ったか。ほんとうに今度こそは日本国民の、健康で文化的な生活の保障ができるようにしたい、これは単なる指標ではないのですね。ほんとうにそう願ったことなのです。そのために労働組合を結成することについてもいろいろな問題が出て参りまして、どんどん促進されたと思うし、あるいは社会保障制度等についても熱心な討議がなされたと私は思います。そうであれば、せっかく憲法で規定した、あるいは憲法の精神でお互いが承認したものを生かすためにその後の取扱いがどんどん成長しなければならぬ、こう私は思うてやまぬのです。従ってそう思えば思うだけに、今度の健康保険の一部改正の問題等々に関連しまして、どうしても矛盾がある。これをこのままで、そうじゃないかとどうも言い切れない。こういう疑問点に私はぶつかるのです。クエスチョン・マークです。政府の出された政策は、みな国民をいじめるような政策になったのでは、これはとんでもないというのが私の切実に感ずる思いなのです。 ちょっとしゃべり過ぎましたが、そこでお尋ねするわけなのですが、そういう意味で、ただいま申しました低所得階層の実態あるいは保護をされておる被保護者の実態、こういうものについて実情をどうお考えになるか。いや、そうお前は言うけれども、もう一月もしたらよろしい方へくるっと変るのだ、こう言い切れるのか、いや一月はむずかしいが半年すればいいのだと言い切れるのか、お尋ねをしたい。 〔中川委員長代理退席、委員長着席〕
○神田国務大臣 中原委員より低所得階層あるいは要保護者等に関する問題につきまして、非常な御心配の点を明らかにされたわけでございますが、先ほども私お答え申し上げましたように、今回の景気がようやく下の方に均霑するような状態になってきているということは、昨年の要保護者の計算の基礎でありましたのよりも、今年の要保護者の基礎数字におきましても相当の減少を見ております。それからまた低所得者に対しても景気が回ってきたということも、いろいろな報告でこれは明らかにされつつあるわけでございます。ただ、今お述べになられました、どうも就職率がふえたが、全体としてはまだ失業者の数が減っておらぬ、あるいは基幹産業その他生産的な方面でなく、流通部門だとかあるいは第三種的な方面にふえていくのではないかというお尋ねでございまして、私もその点はどうも中原委員の述べられたことにつきましてやはり心配を持っている一人でございます。ということは、就業率が増加して参りましても、何といってもこれは人口が非常にふえておりますから、そこでそういう計数が出てくるという問題、それからこうした景気にはとかくサービス業とかあるいは第三種的な状態がふえまして、そこに浮動労働力といいましょうか、そういうものが流れやすいという問題、それから今の景気が産業の合理化を伴っている関係上、基幹産業の方面に労働力が流れていない。どうしてもやはりそういった方面に、あまり歓迎しない方面に流れている。こういう事実はこれは認めざるを得ないと思うのです。しかし全体としては、私はやはり景気が浸透してきて、国民の所得の再分配が行われつつあるのじゃないか、しかしそれはそうだとしても、今の段階では大きな所得の再分配ではない、富の再分配ではない。そこでやはり今後産業水準を高めるといいましょうか、拡大均衡生産というものをやって、国民の雇用率を高めていく、こういう政治をとっていく、産業政策をとっていくということが必要なんだ。それを岸内閣においては今後十分努力してやっていこうということをお約束しておることは御承知の通りだと思うのであります。 それからもう一つお尋ねになりました低額所得者や要保護者の生活の現状をどう思うかという、国民の最低生活の琴線に触れた問題でございますが、これは今もお答え申し上げた通り、だんだん景気の浸透によってよくなって参っておりますが、しかし何といってもこの景気に全然恵まれない方々が相当あることは事実の通りでございまして、今回政府といたしましても要保護の生活基準の改訂をやって、六・五%上げるとかあるいは特殊な生活環境であって特に擁護しなければならぬというような母子家庭等について母子加算を増額していく、あるいはまた病気が非常に生活を脅かしている点が多いのでございまして、医療貸付あるいは生活世帯資金等についても額をふやしていこうというようないろいろな施策を講じまして、防貧、救貧というような面を努力しておるわけでございます。しかしこれは今日の段階では財政の関係もあって、今年度はやむを得なかったのでありますが、来年度においてはさらにこれを高めていきたい、こういう考えでございます。 それからなおこういう際に患者負担を増しているじゃないか、こういう御議論でございましたが、これは保険財政の確立の問題もございまするが、被保険者同士の負担の均衡もはかりたい、そして保険財政が充実することによってなお一そう医療水準を高めていきたい。患者負担をさして医療水準を低くしようというようなねらいでは決してないのでございまして、医療水準を高めていく、新薬も使えるように、また病気の治癒を早くしようというような意図から割り出したわけでございまして、中原委員の御心配されたような、逆効果になるということをねらったわけではないのでございます。その逆の前進する方向として考えたわけでございまして、この点は特に御了承願いたいと思います。
○中原委員 話は主観的にはいろいろいいことが実は言えるわけでありますが、客観的に見ますと先ほどから同僚委員諸君からいろいろ具体的に御追及がありましたが、その中だけで考えてみましても、どうも診療の効果を上げるような方向へ保険法が改正されておらぬということが出てきておるわけなんです。そうなるとやはり貧困階層がきわめて膨大であるし、神武景気をうたいながらも実は逆コースが出てきておるという現実の中で、一体政府の改正案というものは何をねらっておるのかわけがわからぬ、こういうことになってしまうのです。これは大臣の主観はけっこうに思います。私も賛成しますが、主観と客観的に見た現実は違うわけなんです。そこに私は問題があるということを申し上げておるわけなんです。たとえば医療扶助がだんだん急増しつつあるようですが、その急増しておる医療扶助の面はやはり貧困の裏づけになっているわけです。貧困が増大するから医療保護を受ける人がふえてくる、こういうことになるでしょう。これは矛盾せぬと思うのです。そうするとやはりどんどん落ちていく人があるということです。ですからこれを救う対策を講ぜぬことには、どのようなよき主観がありましても主観の裏づけが出てこない、こういうふうに思うのです。だから今度の改正案というのは、世間では改悪案と申しておる。まさに改悪になると思うのです。従ってそういうことをどうお考えになっておりますか、改悪じゃない改善である、こうおっしゃるのかどうか、これを一つ大臣にお聞きしたい。
○神田国務大臣 これはどうも意見の相違のようにもなるのでありますが、私はそうは思っておらないのでございます。先ほども申し上げましたように、患者負担の増加をさせたということは、被保険者相互の負担の均衡もはかりたい、それから医療水準を高めたいんだ、政府も一つ補助金を出そう、そして医療水準を高めていきたい、こういうことがねらいなんです。それから今医療扶助が増加しておる、そこで医療扶助が増加しておるということは病気による貧乏がふえているんじゃないかというお尋ねでございますが、これはお説の通り私も考えております。そこで病気の原因は一体何かというと、もちろんこれは貧困でもございましょう。それから病気の内容の最も大なるものは何かというと、これは結核なんです。そこで結核の撲滅をはかりたい。三十二年度の予算におきましても結核対策として、国民の健康診断を一つ国費をもって思い切ってやろう、早期診断、早期治療ということを一つ主眼としてやりたい。それからまた何といっても国民生活に大きな割合を占めておるのは医療費でありますから、この四カ年計画をもって国民皆保険にしよう、国民皆保険として医療費の負担を軽くしよう、医療の合理化をはかろう、こういうことがねらいなんでございまして、このままほっておっては医療扶助がどのくらい増加するかわからない。そこで三十二年度の予算の措置、こうした対策といたしまして、先ほど申しましたように医療費の貸付というものを新規にはからっていく、あるいはまた生活の保護関係においても基準の改訂をやるというようないろいろな措置を講じておるわけでございます。今までのままでこの健康保険法の一部改正をやるということになりますれば、これはなかなか御議論が多い。また今日これを改正するにしても、それだからいいということを申し上げておるのではないのでありまして、今後政府といたしまして、国民の医療を保障するという考え方を十分出していきたい。その出していく前提措置として健康保険法の改正を試みて御審議願っておるわけでありまして、決してこれを、悪い案を押しつけてやっていこうという考えは毛頭ないのでありまして、最善とは申しかねますが、今私が申しましたような方向をきめておいて、そうしてその方向へ持っていきたいという一つの施策だ、こういうふうにお考え願いたいのでございます。
○藤本委員長 中原君に申しますが、お約束の時間が来ましたから……。
○中原委員 わかっています。そこでただいま医療の基準を上げるというふうにおっしゃったが、その上げることを拒む事実があるわけです。今度それを制度化そうとしておるのでありますが、支払基金の問題が出てくると思うのであります。先般もある病院で肺を切除したわけです。ところが切除して肺が膨脹するまでの間、時間がかかるわけですが、その期間中の医療費はお出しになったかというと出さぬのですよ。支払基金はこれをけるわけです。それでは医療機関は困るから出してくれということになる。それをけっちゃうわけです。診療、療養の基準を上げるどころか逆に下げるわけです。そこで主観と客観とが違うのです。主観ではあなたはいいことを思っておるようであるけれども、実はそうではないのではないですか。それはそれでよろしい、こういうことではわれわれはこの改正案でよろしいというわけにはいかない。支払基金ではけってしまう。そうしてしゃくにさわるなら裁判だ、支払基金の方から言えばそうです。しゃくにさわれば裁判だ、結論が出てくるまで払わぬということになる。払わぬということになると治療ができない。そういう制度が織り込まれておることを御認識願いたいのです。委員長からお話がありましたから私はここで一応途中で、また継続して発言の用意を持っておりますから、まだまだ時間があればどこまでも質問しますが、そういうことなんです。そこでそういう矛盾点をほおかむりをして、そのままで医療の基準を上げるのだ、あるいは被保険者の立場をますますいろいろな制度をもって擁護するのだということを言われてみたところで、具体的に実際的にはその逆に出ている。これは私はおそらく与党の各位といえどもそうじゃないとは言えないと思う。そこで私は今度の改正案というのは改悪だと申し上げる。だから国民も聞かない。国民も被保険者も医療機関も、今国論は沸騰しておりますよ。何というばかなことをするかと大騒動になっております。時間がないようでありますから私はきょうはこれで打ち切りますけれども、まだ質問は済んでおらないのですから、それだけはっきりお考えおき願いたい。また具体的にあなたの方でお出しになったこれでよろしい。私はほかのことを言おうとはしません。ということはこの計数というのは全部私は信用しておりません。なかなか計算がお上手ですから、うまいことを書いておいでになる。けれどもそれを基準にしても、今私が申し上げましたようなことを具体的に裏づけすることができる論理が出てくる。これははなはだ残念ですが、そういう意味なんです。そこで今度の保険法の改正その他の関係改正法案というものが、見解の相違だというようなことで逃げるわけにいかぬことなんです。そうじゃない、かくのごとくにして罹病率を減す、治療はこうして増進させるのだ、こういうことが具体的に御説明ができないからには、やはり政府の御判断というのはとんでもないことだと思う。国民を上から圧迫して、どんどん失業者を作って、どんどん病人ができても、その方に金をやらないでというような算段なんです。私は残念ながらそういうことの裏づけがあの改正案の中で盛られておることを指摘いたしておきます。それについて一応大臣の答弁を求めて質問を終りましょう。
○神田国務大臣 どうも中原委員の御意見をお聞きいたしますと、非常に飛躍があるのではないかと思うのであります。では逆に、一体健康保険法の一部改正をやらないで、今のままにやっておったらそれじゃどうなるかということを一ぺんお考え願うと、これはこのままに放置できないということは中原委員も十分御認識をお持ちだろうと思う。政府も国民の税金の中から特に三十億円を負担しよう、そこで健康保険の財政を健全にして、医療水準を上げていこうということで患者負担もやろう、それがすなわち被保険者同士の負担の合理化になり、正義の原則にもかなうわけでございます。ただ政府が勝手な金を出してやればいいということであるとするならば、それはやることが私は独断じゃないかと思う。政府の金はやはり国民の金で、国民の税金からなっておるのでございますから、これはともどもに持っていくということが私はしかるべきものじゃないか。そういう意味から考えれば、この健康保険法の一部改正というものは非常に大きな改正すべき——この法案の今出して御審議願っているような方向というものは重大なことであり、これはやはり御了承願えるのだ、こういうように私考えるわけでございます。その他は政府委員から答弁させることといたしたいと思います。
○中原委員 もう一点だけ……。私の話に飛躍があるとおっしゃったが、これは許せぬのです。どこに飛躍がありますか。私は現実に統計で話をしている。飛躍はありません。そういうことは言わぬ方がよろしい。あなたの出されたこれを見ても、医療扶助の急増という数字が出ております。そういう急増の実態が出ているのにもかかわらず、ますます扶助を受けなければならぬ状態に追い込むということは、これは健康保険法の改正で救えませんよ。しかもその国民負担は税金とおっしゃる。その通りです。しからば国民の、九千万から上る税金をどうなさるのです、どう使おうとするのですか。これは予算の議論になるのですけれども、一体政府はどう使うか。国民が了承できない方にどんどん使おうとして、わずか五十億か三十億のことでやあやあ言っておることに問題がある。ほんとうに国民の健康を守り、社会保障を充実して国民に安定した生活を与えようという底意があるならば、私は予算の問題だって大きな問題がある。多数決で通過はしましたけれども、国民は了承しておりません。だからそういう飛躍だとか何とかというとんでもない言葉はやめてもらいたい。私は絶対そういうことは言うておりません。私は時間がないと思うから相当飛ばしてものを言っている。詳しく申し上げぬでもあんたにはわかると思うから飛ばしているが、詳しく言えというなら三時間でも五時間でも十時間でも、幾らでも言えます。飛躍はいたしません。政府管掌の病人がふえたりいろいろしているというのはどういうことです。政府管掌というのは大企業じゃないのです。大体が中小企業の被保険者の罹病率がふえているのです。これはどういうことです。ここまで国民生活が安定とは逆なコースになっているということを私は言うているのです。だから政府は心を用いて、それの対策を講ずるために、こういうとんでもない改正案を出すのではなくて、ほんとうに国民の期待するような改正案に持っていかれるべきだ、その責任をあんたが負わなければならぬ。時間がないそうですから話はあとにします。
○藤本委員長 八木一男君。
○八木(一男)委員 現在案件になっております問題の中で、船員保険の問題が今まで質問をされておりませんでしたので、この問題を基点といたしまして質問をいたしたいと思うわけであります。 まず政府にお伺いいたしたいのは、船員保険は御承知の通り健康保険と違いまして全部政府管掌でございます。健康保険では非常に標準報酬の多い人が組合管掌になり、少い人が政府管掌になるということで、それが政府管掌の赤字が多くなる理由であります。船員保険では全部が政府管掌ですから、非常に赤字が出ている。それはどういうところから来ているとお考えになりますか、これは厚生大臣からお伺いしたい。
○神田国務大臣 政府委員より答弁させます。
○高田(正)政府委員 少し分析してお答えしていきますと、支出面の原因といたしましては保険給付が他の保険、すなわち健保等に比べまして厚いことが支出のかさむ一つの原因でございます。たとえば傷病手当金支給期間が健保では結核一年半、その他の疾病は半年ということになっておりますが、船員保険におきましては一率に三年ということになっております。またその額も職務上の疾病でございますと四カ月間は標準報酬の十割でございまして、健保の六割というものより船員保険の方が高いという状況であります。また資格喪失後の継続給付について、資格期間の制限が現行法ではございません。また傷病手当金の支給に関しまして健保のような待機の期間がございません。そういうようなことが船員保険の支出面におきまする費用がかさんでいる原因でございます。次に、収入面の原因といたしましては、主としてこれは漁船でございますが、漁船等に関する保険料収納率が低いことが大きな原因をなしております。すなわち昭和三十年度におきましては、過年度の滞納分をも含めまして、健保は九一・何%という収納率が出ておりますが、船員保険では八六・三%という収納率しか上げ得ておりません。この関係は主として漁船関係に原因があるかと存じます。今御説明を申し上げましたように、収入面、支出面で陸上の関係とは船員保険がだいぶ異なっておりますので、それらの関係からいたしまして、世帯が小そうございますけれども、財政上の傷は深いというふうな格好に相なっておるかと存じます。
○八木(一男)委員 今お話の収納率が少いという点につきまして、漁船の船主の方にそういう点の問題がございましたならば、これは厚生省としていろいろな処置をおとりになる必要があると思うわけでございますが、その問題を別にいたしまして、結核が多いということも赤字の原因でないかと私ども考えるわけでございますが、それについてはいかがでありましょうか。
○高田(正)政府委員 海上労働者の場合と陸上労働者の場合と、結核につきましてどちらが多いかという正確な統計は、私ただいま持ち合せておりませんが、あるいはそういうふうな事情もあるのじゃないかというふうに私どもも想像をいたします。
○八木(一男)委員 今、保険局長が御想像されましたように、実は船員には非常に結核が多い状態にございます。海員組合の方で調べました、一昨年の数字でございますが、下船療養中の船員の病気の五七%は結核というような数字が現われております。そうなりますと、非常に結核患者が多いということになるわけです。この船員保険の赤字の問題を解消するためには、いろいろの方法が必要だと思いますけれども、結核を少くするということが一番大きな要因ではないかと思うのです。ところがこの船員に関しましては、結核について非常に政府の施策が不十分である、また怠慢であるという状況がございます。結核予防法で、いろいろと船員の方につきましても予防についての検診、その他予防接種等の措置がとられなければならない状態にございますのに、それが実際上船員に関してはやられておらないというような状況にあるわけです。そういうことはどういうふうなことでやられておるのか。それとも政府が全く船員の結核予防について怠慢なためにこういう状態になっているのか、その点につきまして、厚生大臣と運輸大臣と両方から御答弁を願いたいと思います。
○神田国務大臣 船員の被保険者が、陸上の一般被保険者に比べて、結核のパーセンテージが非常に多いのじゃないかということを今政府委員は述べておりましたが、八木委員がそれを明らかにされたわけでございまして、それはどういう資料か存じませんが、海員組合が調べたというなら相当の資料だと存じますけれども、実は私も今驚いたようなわけでございます。どうして一体船員、ことに漁船乗組員にそういう結核が多いかということにつきましては、これはその原因を調べない限りはにわかに予断を許しませんが、あるいは作業の仕組みが、漁群にぶつかれば昼夜兼行で労働をやるとか、あるいは長期航海で、新鮮な食糧といいましょうか、何かそういうカロリーのとり方が片寄っておるというような、いろいろな事情が山積されてそういうようなことになるのじゃないか。漁船乗組員は、御承知のように、どちらかといえば漁村から出ているわけですから、普通人よりはおおむね体格がいい。生活環境もどちらかといえば結核患者が少いというところが母体になっているわけです。しかるにその乗組員に結核が多いということは、今私が述べたこと、あるいはそれ以上のいろいろなことが重なって、そういうような割合を占めているのではないか、こう考えまして、実はこれは憂慮にたえないわけでございます。それが直ちに政府の責任であるかどうかということについては、今私もここでお答えしかねますが、一つ十分調査いたしましてその原因をきわめ、そうしてその対策を同時に私練って、他日適当な機会に御報告申し上げたい、かように今考えた次第でございますから、さよう御了承願いたいと思います。
○宮澤国務大臣 ただいまの問題は船員局長からお答えさせます。
○森(巖)政府委員 船員の結核問題が非常に多いということは事実でございまして、私どもも憂慮いたしておるところでございます。これに関しまして、船員法及びその関係の法令におきましてどう言っておるかということにつきまして、いきさか御説明申し上げたいと思います。 まず船員法には八十一条に健康証明を持った者でなければ船に乗せてはいけないという趣旨の規定を設けまして、さらに施行規則の五十四条におきましてその詳細を規定しておるのでございますが、その趣旨とするところは、広く船員の健康を保護いたすとともに、ことに結核予防法を適用するために配意せられているのでございます。ただその施行規則の五十四条の規定の二項におきまして、検査の一部を、医師においてその必要がないと認めるものについては、これを省略することができるという規定があるのでございます。この規定は、これらの検査、たとえばX線の検査であるとか、ツベルクリンの検査であるとかいうものを軽視しておるという趣旨ではございませんでして、いろいろの事例がございますから、その具体的の場合に、医師の判断にゆだねまして実情に沿うようにいたしたいという考え方でございまして、その実施要領におきましても、結核の診断の技術基準は結核予防法施行規則第二条ないし第四条によるということをはっきりいたしまして、そういう工合になるように指導しておるのでございます。ただ、医師の判断にまかされておる部分が、あるいは実際におきまして十分でないという場合もあろうかと思います。この辺につきましては、今後できるだけ改善していきたいというように考える次第です。
○八木(一男)委員 厚生大臣はさっき漁船のことを申されましたけれども、漁船だけではございません。また漁船につきましても、体格がいいといいましても、これは厚生大臣も十分御承知の通りでございまして、結核というものは、前に丈夫でも急に悪くなることがあるので、ほかの問題とちょっと違いますから、その点を御認識いただきたいと思うのですけれども、一般の漁船におきましても、一般の船舶におきましても、このごろ非常に労働強化がされております。そういうことで睡眠が不足をいたします。結核に一番悪いのは睡眠の不足ですが、特に当直に当ったりなんかして、夜も当直をやらなければならぬというようなことが一番結核に悪い。おまけに狭い船室に入って共同生活をしますから、濃厚感染の危険性があるという点で、船員の場合には結核に感染する危険、また悪化する危険が非常に大きい。従って赤字の問題はさておきまして、日本の国民であり、そうして日本の労働者である船員の健康を保持するために、この結核の問題はほんとうに真剣に取っ組んでいただかなければならぬと思う。ところで、さっき船員局長から言われましたように、結核予防法の規定がありながらいろいろの条文で逃げ道ができている。それで船員法の方の健康診断でやっていいというようになっているのが根本の間違いで、そこでは医者の判断でレントゲン検査もしなくていいということになっております。昔の結核では聴診器でとんとんやって、ラッセルが鳴るとかなんとかいうことで診断いたしましたけれども、現在の結核治療はレントゲン写真とか透視とか、そういうことをしなければ診断がつかないことは常識になっておる。ところが昔の聴診器判断で、これはいいというので船の中にほうり込むということが残されていることが一番の根本の悪い点なんです。その点について即刻に船員法の施行規則の第五十四条ですか、これを変えて、予防法第十二条の規定に基く省令で定める技術水準に適合する検査というふうにやっていただく必要があるわけです。そういう点につきまして、これは当然いいことでございますから、船員局長の調べますとかなんとかいうことではなしに、そのことを実行するというお考え方を、これは船員法関係でございますから、運輸大臣からはっきり御答弁をいただきたいと思います。
○宮澤国務大臣 どうもまだよく実情を知っておりませんで、はなはだなんですが、これは御趣旨はその通りでありますから、その手続として何か船員労働委員会に諮問をしてやらなければならぬので、そういう手続をとってやることにしたいと思います。
○八木(一男)委員 運輸大臣ははっきり手続がおわかりにならないなら、そういう手続を踏んで至急にそのことを実行されるという御意思であると考えてよろしゅうございますか。
○宮澤国務大臣 御趣旨に沿うように進めます。
○八木(一男)委員 それでは次の問題に移りまして、これは厚生大臣に聞くのですが、今度船員保険の方の保険料を変えようとしておられる。その点につきまして、失業保険のあるなしによりまして、千分の五、それから千分の七というふうに変えておられるわけでありますが、その千分の七の方になった部分は、御承知の通り非常に零細な事業でございます。零細な漁船でございます。そういうところの人たちの収入も非常に少いということで、千分の七にしたということは非常に零細な船員を圧迫することになると思うのでございますが、この点につきまして厚生大臣の御答弁を願いたいと思います。
○神田国務大臣 政府委員から答弁させます。
○高田(正)政府委員 ただいま御指摘の点は、今回疾病部門におきましては、両方とも千分の七上げるのであります。内訳を申しますと、過去の赤字償還分として、これは結局年限があるわけでありますが、赤字償還分として千分の二、それから今後の問題として、本来の財政対策という意味で千分の五、これは両方とも、いわゆる失業保険の適用のある者もない者も七ずつ上げるのでございます。ところが別に、総合保険でございますので、失業保険も船員保険の中でやっておりますので、失業保険の方の部門におきましては、財政にむしろ余裕がございまして、これは料率を下げてもいいというふうな状態でございます。従って疾病部門におきましては七上げて、そうして失業部門におきましては二下げるという措置をいたしたいのでございます。そういたしますと、失業保険の適用を受けている者につきましては、七上って二下りますので、差引五だけが上る。それから失業保険の適用を受けていない者は、これはマイナス二がございませんので、七上るということでございます。それで疾病部門の問題につきましては、どちらも平等に千分の七上る。内訳は、先ほど申し上げましたように、本来の分が五で、過去の赤字償還分が二、こういうことになっております。
○八木(一男)委員 今までの船員保険と一般の健康保険ではいろいろの差がございました。たとえば一部負担がなかった点、あるいは継続診療に期間の条件をつけていなかった点、または、独身の入院患者について、四千円じゃなしに六千円の傷病手当金の支給をしたというようないろいろな点があるわけでございますが、そういう状態に今までございましたことについては、それはそれだけの理由があるはずでございます。それを今回健康保険と並べようとしたことは、非常に特殊性を無視することになるのでいけないことであると思いますが、それにつきまして厚生省関係の方の御答弁を願います。
○高田(正)政府委員 確かに船員保険の方はいろいろ国際間の関係等もあるやに承知をいたしておりますが、陸上よりは給付が厚うございます。先ほど私が先生の第一問にお答えをしたように、陸上よりは給付が厚くなっております。それで、それらはもちろん船員の特殊事情というものに基いてさような取扱いになってきておったわけでございますが、今回はそれらの全部を改正しよう、陸上に右をならえをしようということではございませんで、改正案が通過いたしましても、もちろんやはり船員の方が陸上よりは給付が厚いという結果になっております。しかしながら、それぞれの個々の項目につきましてそれぞれ検討いたしまして、たとえば継続給付の資格期間というような問題につきましては、むしろこういうものがあることの方が保険としてはその姿がいい、しかしながら資格期間を陸上と同じようなことにすると、これは船員労働の特殊性から不適当である、従って船員労働の特殊性に即しましたような資格期間を設けるとか、あるいは入院独身者の傷病手当金の額にいたしましても、陸上ではまず十分の四ということになっておりますが、船員では、家を離れて遠くの港の病院へ入院をしているというような場合が相当あるわけでございますから、それらの船員の特殊事情を考慮いたしまして十分の五ということにして、陸上よりは厚いというふうなことにいたしたわけでございます。ただ単に陸上と肩を並べるという趣旨で改正をいたしたわけではございません。船員保険は、八木先生御指摘のように、健康保険よりはむしろ世帯は小そうございましても、財政的な困難性というものは非常に深いわけでございますので、それらの事情に即応いたしまして、それぞれの項目についてそれぞれ検討いたしまして、船員労働の特殊性に基いた程度の改正を試みたいというのが改正の趣旨でございます。
○八木(一男)委員 今、いろいろの特殊性は維持しつつそういうふうに財政状態から制限を加えたという御答弁でございました。一応表向きに聞きますと非常に筋が通ったように聞えるのでございますが、その前に、先ほどの結核問題といい、運輸大臣はなりたてのほやほやでございますけれどもその問題は全然御承知ない。厚生大臣もあまり詳しくは御承知ない。大臣は二人ともなられたばかりでございますが、事務当局がすぐに大臣にそういう重大な問題があるということを進言しておられないというようなところから、非常にこの問題は軽視されておったということであると思うのです。そういうような結核の問題のようなものを軽視しておいて、赤字を作らして、そうして赤字ができたからといってそういう特殊性を減らして、船員の恩典を減らすということでは労働者もたまったものじゃない。そういう政府みずからの責任を果して、どうしてもできないときにいろいろなことを考えるというのが筋道であるのが、それが逆転をしているわけです。その意味で、今度、こういう改正、われわれに言わせれば改悪をなさったということは、とんでもない、けしからぬことだと思うわけでありますが、それについては、逐次また伺って参ります。 今の独身者の点、これは保険局長が言われましたけれども、特に船員の場合は、入院する場合に家族も親戚もないところへぽつりとほうり出されて入院しなければならない、小づかい銭も一つもないので払えないということでありますから、ほかの健康保険の独身者の場合には四千円であっても、この場合には六千円であって当然の問題であります。四千円まで下げないで、五千円まで下げたと言われますけれども、政府みずからが赤字を作らないという努力をしないで、そういう結果になるからといって船員にしわ寄せをするというのは本末転倒であります。そういうことを考えて、この点を考え直していただきたい。 その次に、継続給付の資格要件の問題でありますが、これはさらに重大でございます。継続給付の資格要件というものは何からきているかと申しますと、逆選択を防ぐということからきていると思うわけでありますが、保険局長もその通り考えておられる。ところが、逆選択という場合の問題は、船員の場合にはないのです。船に乗る前には健康診断をやる、その健康診断が不十分であるということは政府の責任です。とにかく健康診断をやるということになりますから、大体において、病気の者が無理に被保険者の資格をとって何とかかんとかという問題はそれで排除される。その次に、今度は、三月くらいですぐ下船しますと、雇用条件が切れますので、失業の状態になる人が非常に多い。そのときに継続の給付の資格要件がこういうふうに強ければ、その間実際にそういう資格を持っていながらも、病気になったときに保険の給付が受けられないということになる。この要件を強めることによって、実際上、船員の諸君は、そういうような要件を受けられないで非常な打撃をこうむるわけです。この点で、この継続給付の資格要件をつけ加えたということは実に重大なことだと思う。しかも、今までなかったのに——健康保険では六カ月という要件があったのを今度は一年というこれもけしからぬ改悪をしておるわけです。ところが、船員保険はゼロです。さっきのような逆選択もないし、雇用条件が切れるから給付も受けられないというような非常に重大な条件にあるのに、それを無視してゼロから一ぺんに飛びはねて一足飛びにやるというようなことは、船員の立場を全然考えていないからです。厚生省の人や運輸省の人は、ただ法律の条文を合せて、それでいい気持になっている。そういうことで船員の権利が非常に侵害されるということは実に重大だと思う。その点について運輸大臣に先に御答弁を願って、それから厚生大臣に御答弁を願いたい。
○宮澤国務大臣 これはやはり厚生省の所管だそうですから、その方から先に御答弁願った方がよいと思います。
○神田国務大臣 これは少し技術的にわたりますので、政府委員から答弁させることにいたします。
○高田(正)政府委員 八木先生の御質問のお気持は十分わかりますけれども、ただいま法律の条文をそろえていい気持になっているという仰せでございますが、条文は全然違うのでございます。内容も非常に違うのであります。それは、結局船員の労働の特殊性というものを私ども十分に勘案いたしまして、社会保険審議会の船員保険部門でその実情の明らかな方によく御検討いただきました。実はこれらの点は、私どもが最初に考えておりましたところを、たしか審議会の一致の御意見で修正をいたした部分であったように私は記憶をいたしておるわけであります。そういうわけで、決してそろえたという趣旨ではないのでございます。
○八木(一男)委員 政府の方は健康保険の改正案を出されることにきゅうきゅうとしておるわけでありまして、一連の法律であるからということで、船員の保険の特殊性について十分に検討したり、十分に考えないで、どうもそろえて出したような気がする。船員保険というのは大きな特殊条件にありますので、健康保険と並べて今度お出しになったということが非常に間違いである。それは間違いであっても、お出しになったし、また両大臣もこのことはあまりお詳しくないので、すぐ勉強していただかなければならない。ほかの事務局の方から、この船員保険がかかっているのに、主管大臣にその内容を教えておかない、内容の意味を教えておかない、そういうことはとんでもないことです。途中で内閣がかわったとしても、そういうことではいけない。そういう問題は両大臣は聞いておられないのですから、聞いていてわれわれの言うことが正しいと思ったら、この問題だけ保留する、あとに残すというふうなお考えに立っていただきたいと思うわけであります。 その問題と関連して、一部負担の問題がありますが、これは一番重大な問題でありますから、あと回しにいたしまして、ほかの問題について御質問申し上げます。 船員保険の被保険者の中で収入の三万六千円以上あるものは何%ありますか。これは船員局長からでけっこうでありますから……。
○高田(正)政府委員 これの標準報酬の問題でございますので、私どもの方の所管になるわけでございますが、収入の三万六千円以上の者と総数とのパーセンテージが四・三四%でございます。
○八木(一男)委員 では高田さんからでけっこうですけれども、健康保険の方はどのくらいの率になりますか。
○高田(正)政府委員 三・一%になっておると思います。
○八木(一男)委員 そうすると、健康保険と船員保険が非常に矛盾いたしております。三万六千円以上の人は船員保険の被保険者の方に多い、健康保険の方は少い。ところが標準報酬の改訂の内容を見ますと、健康保険の方は最高五万二千円になろうとしておる、船員保険の方は三万六千円にとどめておる、そんな矛盾した話はないじゃないか、どういうわけでそういうふうになったか、これは厚生大臣から伺いたいと思います。
○神田国務大臣 この標準報酬の方も政府委員から答弁させることにいたします。
○高田(正)政府委員 船員保険の標準報酬と申しますのは、八木先生もよく御存じの通り、船員保険は総合保険でございまして、この標準報酬は疾病部門の標準報酬にもなりますし、それから失業部門、それから長期の年金部門の標準報酬にも全部適用されるわけであります。それで疾病部門の問題だけを考えました場合におきましては、一応先生のようなことを申し得るのでございますが、全般の標準報酬ということになりますので、これらの年金等の額に影響を及ぼして参ります。そのため他の保険における年金給付、たとえば陸上の労働者でありますれば、厚生年金保険の年金給付というふうなものとのバランスをも失して参りますので、この点につきまして社会保険審議会の方でも相当御論議を重ねられまして、最高を引き上ぐべしという御論議もございましたけれども、やはり船員保険の総合性から最高は現状のままにとめ置くべしという方が多数意見で、私どもはその多数意見によりまして、最高はこのままにいたしたような次第でございます。
○八木(一男)委員 厚生大臣は保険局長の御説明をよく聞いておいでになったと思いますが、これは非常に矛盾であるということは保険局長も認めておる。厚生大臣もお認めになると思う。矛盾であるのに矛盾をそのままにしてほうっておくということは政府のやり方として非常に不十分である。矛盾を何とかして解決するという努力がなされなければならない。さっき保険局長は並べて喜んでおるということで、少し失礼な言葉を吐いたかもしれないけれども、ここでも言えるのです。ただ通り一ぺんで、厚生年金にも関係があると言われるけれども、ほんとうに船員の方に収入の高い者があって、標準報酬を三万六千円以上にしなければならないものがある、ところが厚生年金の関係で工合が悪いというのなら、厚生年金の関係をはずしたところだけ上げるという処置を考えればできる。船員保険では失業保険のあるものとないものがある、そういう区別がちゃんと中にあるのです。いろいろと保険料も違う。ですからそれと同じように、この部門について三万六千円を上げるのが至当であると思えば、そういう方法をとればできる。それをしていない、そういう点についてはちっとも考えない。ただいろいろな法律を並べるということで体裁をかまう。三万六千円以上の人がほんとうに健康保険よりも多いのですから、その意味でほんとうは健康保険と並べるなら並べなければいけないけれども、そっちのめんどうくさいことはやらない、工合がいいものはやるということでは首尾一貫しない。三万六千円以上にするためには保険料の中を分ければできる。それを変えていただく意思があるかどうか、今お答え願いたい。
○神田国務大臣 私もただいま保険局長の答弁また説明等によりますと、八木さんの今おあげになった例を一見するとそういうふうに見えるけれども、社会保険審議会に御審議を願って、そこで多数の御意見がこの法でいいということできめた、いわゆる良識をもってきめたというような報告を聞いております。今もそういう趣旨で保険局長が答弁している、こういうふうに私は考えております。しかし今八木委員が、どうもそれは納得いかないんだ、将来この問題について調査する機会に、さらによく研究せよ、こういうことでありますならばこの問題に限らず——いろいろここで論議された点等については、船員保険に限らず十分調査いたしまして、議論のあるところは尊重していきたい、こういう考えでございます。
○八木(一男)委員 大体社会保険審議会にかける案は、当然実質に合ったものを技術的に研究して出せばいい。ところがそういう矛盾を知りながら、そこだけほおかぶりをして出すということはいけない。それを出して、社会保険審議会で反対論があったときに、厚生年金との関係があるからということで了承を得るということで、私もそれはそうだということを言う人もあったと思います。それはそうだけれども、厚生年金に関係なしにして、この三万六千円の標準報酬が、それ以上の人があるんだから、疾病部門についてはそういうふうにしようじゃないかという積極的提案を政府がなさったならば、社会保険審議会でそんなことはいけないなんという人があるはずはない。そういうことをなさらないで、そうして審議会で多数だ小数だということは、審議会に諮ることはしなければならないし、審議会の意思を重んじなければならないけれども、その前に政府自体として、原案を、粗雑なものではいけない——おそらくこれは想像して失礼なことを申し上げるようだけれども、できてしまった原案だから、その点について矛盾はあるけれども、厚生年金の関係があるからこっちも矛盾がある、御勘弁願いたいということで、ごちゃごちゃとなった。両方にいいものがあって、両方に差しつかえないものがあったら社会保険審議会で反対する人なんかないでしょう。ですから今からでもいい、その点がいけないと思ったら、あらためて社会保険審議会にそのいい案を出してごらんなさい、おそらく満場一致あるいはそれに近いところできまると思う。そういう御意思があるかどうか。
○神田国務大臣 政府といたしましては、ただいまの原案を出しておりますので、提案しておるのでございますから、議会側で一つ適当にお考え願えば私の方では御異議申しません。
○高田(正)政府委員 補足させていただきます。私は三万六千円に据え置いたことについて、船員保険として矛盾があるというふうにお答えをしたつもりではないのであります。八木先生からただいま失業保険の適用を受ける者と失業保険の適用を受けない者について保険料率の区別があるじゃないかという仰せがありましたが、これは当りまえのことであります。失業保険の適用を受けないのですから給付もないわけであります。そういうものが失業保険に要するものに当る保険料を納めるということは考えられないことであります。これは当りまえなことであります。標準報酬というものは、それが疾病部門の保険料の基準にもなるし、それから長期年金部門の保険料の基準にもなる。しかも年金の場合にはそれが保険給付の基準になる、こういう建前になっております。こういうことと今の失業問題のこととは私はおのずから性格は違うと思う。部門々々によって標準報酬を別個に区別してものを考えたらいいじゃないかという先生のような御議論も、確かに社会保険審議会でございました。しかしそれはやはり現在の船員保険の総合性を考えた場合には、その総合性は保っていきたい。そういう考え方もできはするけれども、やはりそれはそういくべきではないだろうということから、先生の御提案のようなことも検討済みで御答申をいただき、われわれも実は案を出しておるわけであります。しかしそういうことで最高は据え置いたわけでありますが、将来厚生年金保険の最高標準報酬につきまして検討をいたすべき時期がくると思います。その際にはこれと同時に船員保険の最高標準報酬につきましても十分彼此関連をいたしまして検討を加えたい、かように考えておる次第であります。
○八木(一男)委員 今の御答弁に対してなお不満でございます。今の失業保険料率の問題で言われましたけれども、保険料率と違って標準報酬でありましても、そういうことをやろうと思ったらできる。名前を変えてもいい、特例を設けてもいい、やろうと思えばできる。ただ総合的だからそういうふうにしておきたいという、法律学者としての、あるいはいろいろな厚生行政上、標準報酬というものを一つにした方が計算がしやすいとか、ものわかりがいいとかいうことで、ほんとうの労働者の希望が入れられない、当然の希望が踏みにじられるということがあっては、法律技術のために国民が圧迫されるということになるわけです。特例をすればいいです。やりにくかったら疾病部門については、それだけは五万二千円にするという条文を作れば、法律学者は気持が悪いといっても国民が助かれば、学者の考えみたいなものはほったらかしておいて、法律を作ればできるのですから、法律学者の中に字句を重んずる人もおりますけれども、そういう事実と国民の生活問題とは重大性において比重が非常に違う。そういうことについて、所管官庁においてはしきたりを重んずるということを考え過ぎて、そうして国民のいろいろな要望をそういう点であと回しにするという風習が幾分あるのではないか、これは非常に重大な問題だと思う。でありますので、この問題については私どもは反対です。しかし政府自体としても至急に考えられるという立場をとらるべきであると思いますが、その点について御決意だけ承わっておきたいと思います。
○神田国務大臣 ただいまの八木委員のお述べになられたことは、われわれ政治家として国民に対する心がまえということになると全然同感です。私もさような考え方をもって行政指導をして参りたい、責任をとって参りたい、こう考えております。 それから具体的な問題になりますと、今の船員保険法の標準報酬の問題等につきましては、また他日研究の結果成案を得る機会もあろうかと存じておりますので、これは先の問題といたしまして、八木委員の御意見を承わっておくことにいたします。
○八木(一男)委員 それでは次に一部負担の問題について伺いたいと思います。御承知の通り船員法の第八十九条に、船舶所有者の災害補償の規定がございます。船舶所有者は、船員の職務上の傷病の場合はもちろんでございまするが、「船員が雇入契約存続中職務外で負傷し、又は疾病にかかったときは、船舶所有者は、三箇月の範囲内において、その費用で療養を施し、又は療養に必要な費用を負担しなければならない。」と定められておるわけでございます。これは非常に大事なんでございます。そうしてここでいう雇い入れ契約存続中ということは、言いかえれば船に乗っている間というようなことになるわけです。というのは、大部分の場合船からおりた場合に雇用契約が切れます。予備員制度があるところもありますが、今のところ予備員制度がありますのは、船員全体で十八万といわれておりますが、その中で四万しかございません。大部分はおりると雇用契約が切れるというような状態にございます。そういうことで三カ月間は全部船舶の所有者の責任で療養を行わなければならないわけでございます。ところが今度一部負担をやるということによりまして、この船員法の精神が大きくねじ曲げられる、精神がじゅうりんされるということになるわけでございますが、どうしてそういうとんでもないことを、一部負担を考えられたかということをお伺いしたい。
○高田(正)政府委員 これはなかなか御議論のあるところであろうと思います。私ども現在の船員保険の実情を見まして——先ほど保険料の収納率の問題でちょっとそれに似かよった問題に触れたわけでございますが、現在の船員保険というのは、いわゆる汽船関係、大型船でございますね、汽船関係の標準報酬に比べまして漁船、機帆船関係の標準報酬は非常に低額となっております。非常に安いのでございます。それがしかも疾病の発生率はむしろ漁船関係の方が多くても少くはない。こういうふうな格好になっておりまして、非常に標準報酬が大型船と漁船、機帆船等に比べますと隔たりがあるというような現状におきまして、しかも保険料の収納率も汽船関係では確か九八%くらいまでいっている。片方は非常に低い七〇%台、そういうような現状の船員保険におきまして、料率の引上げでカバーをいたします際には、負担の不均衡といいますか、負担の重心があまりにも大型船の方にかかり過ぎる、こういうふうな点が一部負担でいきますればそういう問題は起ってこないわけであります。その点がまず第一点。 それから、一部負担の制度の実施によって保険事故の頻度に比例して船主の負担が伴うという効果があるわけでございます。そういう効果がありますので、従って船員の健康に対する船主の関心も深まってくる。船員の健康管理の向上にも資することがあるだろう。ことに漁船関係等でそういう問題があるであろうというふうなことを考えまして、メリット的効果といいますか、そういうふうな保険の関係でメリット・システムというものがあるわけでございますが、そういうふうな効果をも考えて一部負担の範囲においてこの問題を解決していったら、その方がむしろ料率を引き上げていくよりは実情に即するというふうな私どもの考え方なのでございます。
○八木(一男)委員 とんでもないことでございまして、大きな方に負担をかけないようにするということが今の内閣の精神であるのか何か知りませんが、ほんとうの社会保障とか社会保険という立場に立ちましたならば、そういうような考え方でやることは大間違いでございます。それで保険料の方でこれをカバーしていかなければいけないと思う。特にさっき申しました漁船関係で、メリット制にすれば非常にその問題について関心が高まってよいであろうというようなことでありますが、これはとんでもないことで、船員にとっては実に重大な問題でございます。一部負担というような問題をメリット制に関連して持ってこられることは、船員にとっては特に重大な問題でございまして、今健康上の管理を気をつけるだろうということを裏返せば、そういう一部負担を被保険者が払って船主に要求するようなときには、そういう要求があった船員は、そういうやつは金がかかるから今度は雇わないということになるでしょう。またその場合に金を渡さない。漁船はいろいろ荒っぽい気質があります。金を取るなんてとんでもない、お前は何をぬかすかということで、船員は泣き寝入りをしなければならない。それを申し出たら首になるという問題でございまして、そういうことがある。今の健康上の管理をするだろうということは、その裏返しに、管理をして、そういう人たちを雇用条件からはね出す効果があるということを保険局長は言っておられる。実にゆゆしき問題である。こういう問題は保険料でやるのが当然であって、そういう船主の健康管理という問題で、船員が首を切られることをおそれて、病気になりながら病気の診断を受けない。自分で乏しいふところから百円負担しながら、その当然な権利を船主に要求できないということになる。その意味で一部負担をやるということはとんでもないことである。どういう意味でこういうことになったのか、厚生大臣からはっきり御答弁願いたいと思う。
○神田国務大臣 今いろいろ八木委員の御心配の点でございますが、これは心配すれば切りのないことでございまして、そういう御心配とこの問題とそうあまり関係はないのではないかと私は思う。先ほど政府委員も答えておりますように、この改正案で十分実施できる、今御心配のような点は監督によって避けられる、こういうふうに考えております。
○八木(一男)委員 監督によって避けられるとはどういう意味か、もう一回一言っていただきたい。
○高田(正)政府委員 大臣の御答弁を補足いたしますが、大臣が仰せになりましたように、そういう場合の用意も実は法律案の中にいたしておるわけでございます。船員の支払う一部負担金に対する船主の負担義務を船員法による災害補償義務とみなしまして、船員法の諸規定を適用することにいたしておるわけでございます。言葉をかえて申しますと、船員法の一般的な監督を受けることになっておりまして、もし船主がその一部負担金を支払わないというふうな場合には、船員法による災害補償義務違反に対する罰則もございますので、この罰則を船主に対して適用するというふうな法的措置を講じておるわけでございます。これらのことは法律的な用意でございますが、また同時に私どもといたしましては運輸省と十分御協力を申し上げまして、かようなことについての船主の啓蒙というふうなものは、それぞれの団体がございまするので、これらを通じまして行政上の啓蒙指導ということにも十分力をいたしていく、法の運用につきましてはかような配慮をいたすつもりでございます。
○八木(一男)委員 運輸大臣、また船員局長、今保険局長がああいうふうに言っておられますけれども、そういうことで十分にやる自信がおありでございましょうか。その点について一つ。
○森(巖)政府委員 運輸省といたしましては、この実施につきましては、全国に置いておりまする海運局あるいは支局、出張所というようなものにつきまして、船員法の九十六条の審査及び仲裁その他の規定を活用いたしまして十分船員の保護をはかるとともに、また周知宣伝というようなことをやりたいと思っております。それからなお御承知の通り船員法の励行につきましては船員労務官というものを置いております。これは八十数名の専任と大体同じくらいの兼務のものを持っておりますが、こういうものを機動的に活用することによりまして違反がないように極力やっていきたいと思っております。なお先ほど御心配がございましたけれども、そういう違反のありました場合は、船員に安心して申告をしていただく、それによって何らの心配のないように私どもといたしましては船員を保護したい、こう考えております。
○八木(一男)委員 船員局長に申し上げたいのですけれども、今船員法の九十一条で健康診断の費用は船主が持たなければならないということになっている。ところが実際上その健康診断の費用ですら船主が持たないで船員にかぶってきている。そういう現状があるのです。それを御存じですか。
○森(巖)政府委員 この問題に関しましては、最近までその検診の費用を保険会の方で持っておりましたので比較的問題は少かったのでございます。しかしことしになりましてからこういう制度がなくなりましたので、これは船員の負担にならないように、船主が持つように指導いたしております。今お話のような具体的な事例は私はまだ承知いたしておりませんけれども、そういうものがもしございますれば、そういうことのないようにやっていきたいと思っております。
○八木(一男)委員 そんなことじゃ困るのです。そういうことは当然調査していなければいけない。これから聞いたらやるというようなことでは怠慢なのです。こういう健康診断の費用くらいでもそうなのです。一部負担という問題になったらそんなことができますか。今のような状態で保険局長はできる、やると言うが、絶対にできない。どうするのです。運輸大臣と保険局長に申しますけれども、健康診断の費用ですらそういうことで船員の負担にかかってしまっているという状態なのです。今度一部負担になったらまたいろいろな問題が出る。労務官なんとか言いますけれども、労務官の人数なんか少いし、そんなに一生懸命にやってはいない。そんな問題で片づく問題ではない。何にもできていない。それに大きな仕事を課してそれができなかったらどうするか。船員の方は、一部負担の当然船主が負担しなければならないものを自分でしょわなければならぬ。それを交渉したら首切られる。健康保険の問題よりもずっと重大である。健康保険の一部負担も重大だけれども、ここでは首の問題がかかっている。どうするか。
○宮澤国務大臣 ただいまの問題は、お話のように船主に負担させなければならぬので、事実上そういう余裕があれば船主から健康診断の金をもらっていって払う。もし余裕のない場合には自分が払っておいて、あとで船主からもらうというわけです。それがなかなかうまくいかないだろうと思って、私も関係当局者にそのことを聞いてみました。ところがどうも実際問題として一々船主から先に百円の金をもらって行くことはできない。その場合に、先に自分が払っておいて、あとから船主に請求する。その百円の金で首にするようなこともなかろうと思いますが、そういう手続で、これは船主が負担すべきものですから、船主に全部負担させる。ただいま各出先の機関と厚生省その他と連絡をして、できるだけ本人の負担になりっぱなしにならないように船主から取れるようにする。これは初めから船主から話がなくても金をもらっていって必ずやるということですが、なかなか実際問題としては行きにくいので、百円という金ですから、立てかえておいてあとから船主からもらうという場合もなければ不便でしょうがないというようなことから、こういうように運ぶよりほかないのではないか、こういうように私は了承しておる。
○八木(一男)委員 百円の問題だとおっしゃいますけれども、宮澤さんは百円の問題は大したことではないかもしれませんけれども、非常に零細な非常に乏しい給料で働いている労働者にとっては、百円という問題は実に重大な問題なんだ。しかもこれは船員は払わなくていいという権利を持っている。船主が負担しなければならないということになっておる。船主が負担しなければならないことになっているのに船員に払わせるということは実にけしからぬ問題だ。運輸省は船員の問題を管理しておられて、船員労働者の当然のそういう権利を守られる責任がある。 そこで宮澤さんは厚生省にちょろまかされてそういうことに賛成なさった。そういうことではいけない。そのときの閣議、鳩山内閣のときには大臣でなくても、今度のときにはそういうことでは困るのだ。船員行政の立場から困るのだ。これは変えてもらいたい。健康保険全部変えたらいいと主張なさっていただきたいけれども、それができなかったら、少くとも船員保険だけについてでも、そういうことは断じて運輸大臣として承知できないと言うべきなんだ。どうしてそういうことをなさらなかったのですか。
○宮澤国務大臣 この問題を聞きましたときに、私もあなたと同じような考えで何とか初めから船主に負担させたらいいのではないかと思った。ところが実際問題となると、船主のところに行って健康診断をするのに一々金をもらってきてやれない。出先その他で健康診断がすぐしたいというときには、自分が払っておいてあとでもらう。船主が負担するという建前はくずしてない。ただその間において実際問題として船員の負担のしっぱなしになるおそれがある。そのおそれについては、どこまでもいろいろな方法によって返させていく。今の百円の問題は、なるほど百円も時によればお医者様に借りておいてあとから持っていって払う場合もありましょう。そういうことでどうも実情やむを得ないと聞きましたので、私もそういうように了承したわけであります。
○八木(一男)委員 運輸大臣に申し上げますが、こういうことをしないで済む方法があるのです。一部負担制なんかしないで船主が負担する保険料をそれだけ上げればいいのです。そうすればそんなめんどうなことをしなくても、おっしゃる通り船主が負担するのですから、船主の払う保険料の中にそれをちゃんと書いて船主が払う。そうしたら船員は船主のところに言いにいったり、お医者さんに立てかえてくれなんていう必要もないし、お医者さんも断りもできずに迷惑をこうむることもなくて済む。一部負担をしないで、そのお金を船主の保険料の負担にすれば何の苦労もない。今までそうだったのです。なぜそれをそういうふうに変えたか、実におかしい話だ。
○宮澤国務大臣 これは今度の赤字の問題をそういうふうに処理するようになったので、これは一つ厚生省の方から……。
○八木(一男)委員 運輸大臣は御存じないようですが、赤字問題というのは、船主が負担する保険料を上げれば、それだけの財政効果があるのです。赤字と関係ないのです。取り方の問題です。船員に一部負担金を払わして、お医者さんにごちゃごちゃ交渉さして、そうして船員が船主のところに、これだけかかりましたから百円下さいといってめんどくさいことをぐるぐるやるというが、結局船主が負担するのですから、これは保険料でぴたっと取ってしまえば船主だって便利ですから、保険料を上げればいい。それだけ財政効果があるのだから。赤字の問題と別です。
○滝井委員 議事進行。実は、この一部負担は赤字のためのものではないのです。今運輸大臣は赤字のための一部負担をやるというが、われわれが政府当局に今までるる赤字対策だろうといったら、赤字対策じゃありません、健康保険財政再建のためにこういうことをやるのであって、断じて赤字対策ではないと言明してきた。ところが同じ船員法を主管しておるところの運輸大臣が赤字のための一部負担をやるというのは、結局閣内不統一じゃありませんか。しかも小さな漁船の保険料の収納率は大臣は一体幾らと思っていますか。
○宮澤国務大臣 私は赤字の問題もあることと思っておったのですが、船員局長から答弁いたさせます。
○高田(正)政府委員 ……
○滝井委員 あなたじゃない。あなたの方は赤字ということは言っていない。今運輸大臣が船員局長からやらせると言っておるのだから、あなたじゃない。——どういう了解のもとに百円の一部負担をやることになったのか。大臣は赤字だと言った。自分は赤字だと聞いておったから詳しいことは船員局長からやらせると言った。保険局長にやらせるとは大臣は言っていない。
○森(巖)政府委員 私が運輸大臣に報告いたしましたのは、船員保険の全体の今度の改正は、赤字問題とそれから全体の構成の問題であるということを申し上げたのでございますが、ただ私が赤字問題を強く申したためにそういうことになったのだと思います。ただこの問題につきましては、厚生省の言う通り両方の目的から出ておるものと考えております。
○滝井委員 厚生省は初めは赤字問題を強く言っておったが、最近は赤字とは全然言わないのです。一部負担というものは恒久的に制度としてなくてはならぬものだ、こういう立場できているのです。全く今の運輸当局と厚生当局の答弁は違います。委員長しばらく休憩。——われわれは党に帰って相談してこなければだめです、こういう問題は重大な問題です。
○高田(正)政府委員 一部負担は私の方の所管でございますので私からお答えをいたします。一部負担にはもちろん財政効果も伴いますが、私どもといたしましては一部負担というものの制度的な意味を認めて一部負担をやろうといたしておるのでございます。その制度的な意味と申しますのは、先ほど私が申し上げましたように船員保険の場合におきましては負担の実体的な公平という観点と、いま一つは船主負担というものが保険事故に比例して起ってくる、そういうような意味合いで非常に妙味がある、この二点から一部負担は船員保険におきましても採用すべきものというふうな観点から私どもは御提案を申し上げておるのであります。もちろん一部負担でございますから、財政効果を伴うことは当然でございます。
○滝井委員 これは事務当局の答弁を聞くためにやっておるのじゃない。少くとも大臣が赤字補てんのためにこれをやるのでございますという答弁をして、再建のためとか何とか全然言っていない。赤字のために百円をやることになっているからという了解をしておる。われわれは一事務当局の意見を聞くためにきょう大臣をこの委員会にわざわざお忙しいときにおいでいただいているのじゃない。いわゆる閣内の代表的な意見である運輸大臣と厚生大臣の意見を聞くために来ていただいておる。事務当局はそういう考えであっても、大臣が赤字のためのものだ、しかも船員局長も自分がそれを強調して言った、こう言っておる。どっちに比重があるかといえば赤字に重点があるわけなのです。だから問題ははっきりしてきておるわけなのです。明らかにこれは閣内の不統一なのです。しかも神田厚生大臣にしても、これは赤字のために一部負担をやりますとは断じて言っていない。これは神田さんがそういうことを言えば話はわかりますけれども、そういうことは断じて言っていないのです。これは閣内不統一である。われわれも健康保険に対する考え方をるる今まで突いてきておる。そういう点でこれは重大な問題でございますので、私たちも一応うちに帰って、やはりいろいろ相談をしてこなければなりません。従ってしばらく休憩を願いたい。
○宮澤国務大臣 私は赤字もその一つであるということを聞いておったということで御答弁申し上げたのであります。
○滝井委員 それならば一体漁船の保険料の徴収率は、大臣幾らですか。(「そういうことは大臣は知らぬ」と呼ぶ者あり)これは一番大事な点ですよ。
○宮澤国務大臣 政府委員から答弁させます。
○高田(正)政府委員 保険料の収納率の問題でありますから、私からお答えいたします。三十年度の実績は、大型漁船におきましては八八%、小型漁船におきましては七〇・五%という実績が出ております。 〔「議事進行じゃないじゃないか」と呼ぶ者あり〕
○滝井委員 大臣御承知のように、小型漁船は七〇・五%、七割しかきていない。この漁船の事業主から百円ずつもらっていくのです。ところが船員の初診というものは普通の陸上における労働者の初診とは違うのです。港々に行って下りていくのです。どうしてかというと大型漁船には船の中に医者が乗っているのですが、普通の漁船には中に医者がいないのです。港に着くたびことに初診料がとられるのです。一航法における患者の負担する初診料というものは三百円、五百円、六百円となっていくのです。それを今度はたった七割しか保険料を納めていない事業主からもらうのですから、これは大へんなことなんですよ。そういう無理なことをやらしていわゆる大臣のいうように赤字をカバーしようというのですから、これは労働行政からいってもむちゃくちゃなんです。一体大臣は、この後労働者が払うところの初診料がとれないときは運輸当局は責任を持って労働者に支払いますという言明ができますか。できさえすれば私たちは黙って引っ込んでもよろしい。
○宮澤国務大臣 政府委員から答弁さます。
○森(巖)政府委員 漁船の収納率が悪いということは御説の通りでありますが、ただ漁船の多くは大体港から出まして自分の港に帰るのにそう日にちはかからない例が多いのでございまして、その点につきましては、われわれの勉強によりまして、これを相当やっていくことができると確信いたしております。
○滝井委員 あなたはそうおっしゃるけれども……。 〔「議事進行が長過ぎるぞ」と呼び、その他発言する者あり〕
○藤本委員長 静粛に願います。
○滝井委員 最近の状態を見ますと、そういう状態じゃないのです。小さな漁船でもが、年間稼動ができるような状態になっておるのです。最近の状態は違ってきておる。最近の状態は、失業保険ができて以来いわゆる九十日の失業保険で切られてしまう。従ってだんだん長く健康保険の被保険者を続けていく形ができてきておるのです。同時に出ていった船が、やはり長期の漁業をやる形が出てくる、そういう形が出てきている。従ってあなたの言うように、一回出たらもう絶対ほかのところへ寄らぬということはない、やはり寄るのです。そういう点があると思う。これは私はまことに重大だと思う。だからこれは明らかに制度としてでなくして、実際に事業主が払わなければならぬものを労働者がそこで一応肩がわりする、労働者の役割はトンネルなのです。だから赤字対策以外の何物でもない。あなた方が言うのはほんとうなのです、赤字対策以外の何物でもない。だからそれを、今厚生当局がこの段階に立って、いかにも赤字対策でないようなことをおっしゃっているだけです。ではお尋ねしますが、責任を持ちますね。支払わない場合には船主か事業主から取って、厚生当局なり運輸当局がその一部負担については責任を持つという御言明がいただけるなら、わしらはここで下りましょう。
○宮澤国務大臣 それは極力そうするようにいたします。
○八木(一男)委員 今滝井委員からの御質問で、宮澤運輸大臣から御答弁がありましたけれども、極力なんということは、断じてわれわれは承服はできない。そんなものは取れるはずはないのです。これから逐次その点について、取れない状態を質問して参りまするけれども、その前にさっきの問題であるが、保険料で取ればいいのです。しかも保険料で取れば大きな企業者も小さな企業者もごったになって、そうして小さな企業者だけにかかるということが少くなる。保険料で取ればいい。それを無理にねじ曲げて一部負担で取ろうとするから、ほんとうは船主が負担しなければならぬものを船員が自分でかぶらなければならないことになる。けれどもそういうことを自分で言い出せば首になるから、金がない場合には、盲腸炎が悪化して死んでしまう。これは人道問題です。とんでもないことになる。船員の健康上からも、船員の雇用条件を保持する上からも、非常に重大なことがこの一部負担から起る。しかも宮津さんが言われたように、赤字対策と言って困られたようであるけれども、赤字が大きくなることは確かであるが、赤字の問題であれば保険料で取れば取れる。現在その方法で保険料の収入で財政をまかなっている。その点で赤字が多い分だけ、船主の負担分を保険料で取ればいい。それを大型船舶の持主の大実業家がいやがって、そういうことをやっているところに厚生省の人が意図を含んで、船員がどうなってもいいから、零細企業者がどうなってもいいから一部負担をやろうという、そういうことでこの法案はできておる。大きな汽船会社の実業家のことを考えて、十八万船員のことを考えない。健康のこと、雇用条件を考えたら、当然船主負担の保険料でこの金の問題はまかなうべきである。そんなものはあとで払うようにするということで済む問題ではありません。保険料に切りかえるように即時態度を決定して下さい。
○宮澤国務大臣 御趣旨のことはよくわかっていますが、関係官庁その他いずれも努力して、この建前でやっていけるということでこれはできておりますので、それでやっていくつもりであります。
○八木(一男)委員 宮澤運輸大臣は、この法案のできたときは鳩山内閣の運輸大臣ではございませんのでその点は御同情いたしますけれども、既成事実でできておっても、船員の権利を守らなければならない立場におられる運輸大臣は、次の閣議でこれはかかったに違いないのだから、そこでいけないということを断固として主張しなければならなかったはずだ。この問題はむずかしい問題で、厚生省関係が多いから宮澤さんはおわかりにならなかったのかもしれないけれども、それではいけない。ですから今おわかりになったわけですから、そういうことはいけないから健康保険の問題はきておき、船員保険の問題は考え直そうということを閣議で即時主張していただきたい。重大問題だ。閣議で厚生省がどう言ったって、運輸省としては承知できないのだということを言っていただきたいと思う。
○宮澤国務大臣 私どもの運輸省の立場として、お話の通り船員の健康のみならず、船員の立場というものをどこまでも守っていかなければならぬ。今日の海運の現状から見てそうでありますから、全体としてその気持には満ちておるわけであります。また今の当面のこの問題はこれで進めていただきまして、今後そのような問題に関しては、お話の趣旨を体してさらにいろいろ研究していきたいと思います。
○八木(一男)委員 運輸大臣は研究された結果、この悪法が残念ながら通った場合に、悪いと気がつかれたら来年度にもとへ戻されますか。それで保険料でカバーする方法をとるという決心をお持ちですか。
○宮澤国務大臣 それは十分に検討いたしまして、どうしてもいけないというものであればそういう方向に向うよりほかないと思いますが、十分研究の余地を与えていただきたいと思います。
○藤本委員長 多賀谷真稔君。
○多賀谷委員 運輸省並びに厚生省にお尋ねいたしたいのですが、二十二国会においてけい肺及び外傷性脊髄に関する特別保護法案が出ましたときに、実は船員法及び船員保険法との関連が非常に矛盾をしている、これについては当時の各局長は一斉に口をそろえて、今後調整をいたします、そして法律の改正をいたしますと約束しております。ですからこれについてその後どういう措置をとられたか、今度船員保険法の一部改正の法案が出ておりますが、それについてはどういうように盛られておるか、これをだれでもよろしゅうございますから、おわかりの方からお聞かせを願いたい。
○森(巖)政府委員 お話の外傷性脊髄障害に関する問題につきましては、この前でございますか前々でございますか、国会におきましていろいろ御議論があったことを存じております。それによりまして直ちにこれの保護対策について、関係省の間で検討を始めたわけでございます。それからいろいろの案を検討いたしました。わずらわしいからくどくは申し上げませんけれども、そういうようにいたしまして、結論といたしましては船員法の八十九条による船員の保護の規定の趣旨からいきまして、船員法あるいはそれの特別法で規定することはいろいろ差しさわりがあるということになりまして、船員保険の系統でこれを保護いたすというような案ができ上ったわけでございます。さらにそれについて検討いたされたわけでございまするが、なお意見の一致を見ない点がありまして、まだ提案の運びになっていないことは残念でございます。
○多賀谷委員 国会に提出され、通過を見たのは三十年の六月であります。そしてここに御列席の高瀬君は政務次官である、そうして当時の関係の委員はほとんど理事である。中川君も大橋君もそうである。そして国会の意思によって、当時の局長は善処しますと言っておるのですよ。善処するから了解をしてくれ。ことに船員局長は、船員法を改正する、今船員の中央審議会にかけているから、次期国会までには船員法を改正するから一つ了承を願いたい、基準局長は、今船員局長がそういう答弁をしておるから一つ御了承を願いたい、全部そうなんです。しかるに法案が通過をして今日まで、しかも今日船員保険法の一部改正が提案されておるのに、それにつけ加えて出さぬというのは、私は国会を愚弄するもはなはだしいと思う。要はこのけい肺並びに外傷性脊髄、ことにけい肺の場合はほとんどないのですから、外傷性脊髄の問題ですけれども、大臣も初めてかと思いますが、外傷性脊髄は普通の労働基準法その他では三年間保険で見る、あとは見ないという建前になっておる。ところがけい肺と外傷性脊髄はあと二年政府が見てやろうという特別立法ができたわけです。ところがその特別立法は労働基準法の適用を受ける者だけでありますから、船員法の適用を受ける者はその適用がないのです。そこで普通の労働者は五年間見てもらえるのに船員は三年間で打ち切られるじゃないか、これは非常に不公平だ、いやしくもけい肺並びに外傷性脊髄の法案を出すならば、船員にも外傷性脊髄はあるのだから、一つ船員も保護できるような法律に改正すべきだ、こういうことが論議になった。そこで当時、まあ非常にうかつな話でしたけれども、労働省から運輸省あるいは厚生省にいろいろ問い合せしたが、当時の局長は間違って解釈をした。そして間違ってやって、これでも大丈夫だと思っておった。ところが事実その後いろいろ協議検討してみますと、結局船員保険法の関係がありまして三年で打ち切られるということになった。あと二年船員はどうするか、こういうことになります。ところが今もお話をいたしましたように、今後法律を改正しますから、ことに次期通常国会において法律の改正を出しますからということで、この論議は一応打ち切られたという状態である。このことは運輸省が今話されたようによく御存じです。しかも今度は船員保険法の改正が出るのですから、当然これは何らか触れておかなければならないが、国会の審議も二十二国会から今日まで放置されておる、これは一体どういうことですか。
○鈴村説明員 私から御説明申し上げます。実はこの問題に関しまして、われわれの方と運輸省並びに内閣法政局と三者で、約半年にわたりまして慎重に審議を重ねたのでありますが、いろいろ法律上の問題点が多いために、なかなか結論を得ることができなかったわけであります。しかしながら一応現在の船員保険法を改正してやれば、どの程度までできるか、なるべく陸上の措置に近づけたいということでいろいろ研究いたしました結果、陸上の措置と完全に同じではありませんが、ある程度近い線にまで船員保険法の一部改正によって実現できるような案を作ったのであります。ところがこれを関係の船主並びに船員の団体に諮りましたところ、どうもそういう改正案では納得できない、満足できないという御意見の開陳がありました。たしかことしの一月ごろだったかと思いますが、そういう状況になりましたので、われわれとしては最後の一応の結論であったわけでありますが、それが御納得いかないものですから、ついに今国会に提案の運びに至らなかったわけであります。
○多賀谷委員 この件につきましては、これは私はきわめて怠慢といわざるを得ないのですが、法律解釈が非常に困難であることは当時でもわかっておった。解釈が困難であったから、ほとんどの局長が間違って解釈をしておった。大体この船員法、船員保険法がきわめていびつに扱われておるのです。なぜかといいますと、船員法においては八十九条において、業務上の疾病の場合にはなおるまでその費用を負担すると書いてある。ところが九十五条において、他の給付との関連ということにおいて船員保険法によって給付を受けた場合はその限りでないと書いてある。ところが船員保険法はどうかというと、船員保険法の規定がまた奇妙な規定で、三十一条に「療養ノ給付及傷病手当金ノ支給ハ同一ノ疾病又ハ負傷及之ニ因リ発シタル疾病ニ関シ左ニ掲グル事由ニ該当スルニ至リタルトキハ之ヲ為サズ」「障害年金又ハ障害手当金ヲ受クルコトヲ得ルニ至リタルトキ」「二前号以外ノ場合ニ於テ療養ノ給付開始後三年ヲ経過スルモ疾病又ハ負傷治癒セザルトキ但シ職務上ノ事由ニ因ル疾病又ハ負傷及之ニ因リ発シタル疾病ニ関シテハ此ノ限ニ在ラズ」、業務上は何かずっともらえるように書いてある。ところが、この解釈を内閣法制局において昭和二十七年に勝手に解釈しておる。そうしてこれは当時の厚生省の保険局長の久下さん、あなたの前任者が言っておるのですが、昭和二十七年において私どもが内閣法制局に問い合せをいたしました結果、そういうようには解釈してはならぬ、すなわち三年で打ち切りだ、こう解釈をするのです。ですから、厚生省の保険局長並びに労働省の基準局長などが、法制局と比べて間違って解釈をするような状態になっておる。法文上で解釈してないのです。法文上で解釈してないところに大きな問題がある。法文通り解釈していればこういう結果にはならぬ、法文通り解釈しないように内閣法制局が解釈した。ですから現局長が五年でも十年でもなおるまで船員の場合はやってもらえるんだ、こう解釈しておるから法律を出しませんでした、こういう。では一体どうするんだと言いましたら、今船員法を審議して改正をいろいろ準備しておるから、次の通常国会に出します、こういうことで国会は了承を与えたのです。三十年から今日までけい肺法についてはいろいろ研究が進みまして、また別に改正をしなければならぬというくらいまでに段階がきておる。しかも船員には外傷性脊髄を、これだけ論議されておるのにいまだに全然改正の運びになっていない。しかも今度は好都合にも船員保険法の一部改正があるのですから、当然それに乗っけるべき義務があるにもかかわらずやってないということはどういうことですか。一つ大臣から御答弁願いたい。
○宮澤国務大臣 これは先ほど厚生省から申しました通りの事情で、その上に船主並びに船員団体においてもこれはもう少し考えてくれというような話があってまとまらないので、やむを得ず延ばしておる、こういうことであります。
○多賀谷委員 船員の団体もですか、船主団体だけでしょう。
○高田(正)政府委員 これは両方の団体でございます。船主も船員も、双方でございます。
○多賀谷委員 しかし私は実に扱いが不穏当だと思うのです。この経緯については高田局長はよく御存じであろうと思うのです。ですから私はこの船員法、船員保険法の関係は、今申しましたように、いやしくも役所の局長が間違って解釈するようにゆがめられて解釈しているのですよ。そして船員法においては業務上の疾病についてはなおるまで全部見てやるぞ、こういいながら、船員保険法では実質的に見ない。もっとも条文によると見てやるようになっておるが、内閣法制局の解釈においては見てやらぬということになった。ですから私はこの解釈並びに運用について非常に不明朗なものを感ずるわけです。一体、どういうことですか。これは保険局長から御答弁を願いたい。
○高田(正)政府委員 陸上の法案が出まして、その当時海上の問題について国会で御論議がございましたことは、私が保険局に参ります前のことでございましたので、そういう問題があったということで、その後その問題についていろいろ聞きまして承知はいたしておりますが、あまり詳細ないきさつについては承知をいたしておりません。しかしながら、この問題は何とかして法律の改正をいたす必要があるということで、先ほど船員保険課長からお答えを申し上げましたように、実は運輸省と私どもの方とで相当長期にわたっていろいろな案を検討いたしたのでございます。この相談の中には、実は内閣の法制局も参加いたしておるわけであります。さような経緯がございまして、物事の筋からいけばあるいは船員法自体の問題になるかもしれないけれども、いろいろ研究の結果、船員保険法の方でこの問題を扱って処理したらいいじゃないか、大体そういうふうな方針に相なりましてその案を検討いたし、立案をいたしまして、できるならばこの国会で御審議をお願いしたい、こういう意図で実は努力をしたわけであります。ところが、先ほど申し上げましたように、まだ正式に社会保険審議会に対する諮問という段階に至る前に、これらの案を実際的に船主並びに船員の両方の団体に提示をいたしまして、いろいろ御懇談を申し上げたのでございますが、両方から、もう少し検討をしてもらいたいというふうな意向がありましたので、御審議をいただくに至らなかった次第でございます。これははなはだ残念でございますけれども、私どもといたしましては、さらに双方の団体の御意見も十分に伺いまして、近い機会において法律の改正案を御審議をいただくような運びにいたすべく努力をいたす所存でございます。
○多賀谷委員 時間的に申しますと、もう足かけ三年かかっておるわけです。ですから、実際に恩恵を受ける人間はもう三年間出てきておる、こういう関係になると思います。けい肺はほとんどないと思いますけれども、外傷性脊髄については事実問題としてかなりある。これは個人の基本権に関する問題です。陸上の労働者は保護されておるけれども、海上の労働者は保護されていないという問題です。ですから私は、次期国会に出すということを約束しておるのですから、次期通常国会に出すということを約束しておる以上は、当然次期国会には何らかの意思表示があるものと期待しておった。ところが今日船員保険法の改正をするに当って、われわれが質問をしなければ何らその発言を得られないということは、非常に残念です。では一体どういう案をあなた方はお示しになったのか、その案の概要並びに現在の患者はどうして扱っておるか、これをお聞かせ願いたい。
○鈴村説明員 われわれが作りました案は、一応現在の船員保険法の理論的な体系をくずさないという線でできるだけのことをしたいというふうに考えまして、一応の結論を得ましたのは、三年たちまして、大体こういう傷病の人は障害年金に切りかわる場合が大部分だと思いますが、切りかわった後さらに二年間だけ療養給付をやろうというような一応の案を得たわけです。それから、われわれの調査によりますと、本年十一月ごろに、予想されるこの法律の該当者は一人出るという見込みであります。
○多賀谷委員 船員法の立て方が、職務上の疾病については全面的に見てやるんだ、こういう立て方をしておる。だから、なかなかこれは困難であるということは考えられるわけです。船員法の立て方が死ぬまで見てやるというのですからね。それを保険において、いやそうはいかない、三年間で打ち切る、ここにやはり問題があると思うのです。これを解決しなければ私はできないと思う。船員組合も反対をするのは、基本線がくずれるからです。その臨時処置によって全部見てやるという原則がくずれるから、労働者は反対するのです。そうでしょう。だからこの点をやはり何らかどっちかの方向に明確に規定をしなければ、くずれるような改正案はそれは反対しますよ。小の虫を殺して大の虫を生かそうとするから、そういう糊塗的なものをすれば反対しますよ。とにかく船員法で大原則を打ち立てて、ずっと見てやると言いながら、船員保険法で見てやらないないということ、しかもその責任はだれにもないのですからね。残った分は、では船主が負うかというと、法律の立て方はそうじゃない。だから、非常な曲った法律を作っておりますから、ここに非常に問題があると思う。労働省の労働基準局長が、実は私は法律を間違って解釈しておったから出さなかったのだ、こういうくらいこの法律はインチキきわまるのです。ですから、やはりこの点を根本的に改正しなければだめだと思う。ことに船員法に船員保険法を合わしていかなければ、この問題は解決しないと思うのです。これに対して私は厚生大臣から責任ある答弁を聞きたい。
○高田(正)政府委員 今の船員法のなおるまでという規定と、船員法中の船員保険法の給付を受けたならば免責するという規定との関連、それから現在船員保険法で三年いたしまして障害手当金の支給に該当する者については療養の給付の方を打ち切るという規定になっておるそれらの関係は、今の脊髄障害の問題と申しまするよりは、現在の船員法と船員保険法との根本的な問題でございます。それでそれらにつきまして、私どもといたしましては、職務上の疾病が問題であるわけでございますので、職務上の疾病については被保険者が療養の給付を受け始めてから三年を経過してなお治癒しない場合には、その症状がおおむね固定化するものとも考えられますので、その際特定の状態に該当する者については、以後障害年金または障害手当金を支給することとして、療養の給付等を打ち切ることがむしろ実情に即し、また被保険者の保護に資することになると私どもは思っておるのでございます。もちろん右のような障害年金または障害手当金受給者に該当しない者につきましては、引き続き療養の給付及び傷病手当金の支給を行うことができるのでございまするので、船員保険の現行制度は船員法第八十九条の実行趣旨と背馳するものではない、一応かように考えておる次第でございます。
○多賀谷委員 この前社会労働委員会でけい肺法をやる場合に、それは保険理論として保険経済上やむを得ないのだ、こういうことを言われて、背馳してもやむを得ない、これは理論じゃない、現実問題として金の問題であるから背馳してもやむを得ないのだ、こういう答弁をされたのですよ。保険理論として保険経済上やむを得ない、従来理論が通るという説明をされていない、ただ保険経済としてどうもならないのです、こういうことで——読んでもいいですが、そういう答弁をされておるのです。それをまたここに違う答弁をされて、結論は変りませんけれども、私はこういう解釈をされて、これは解釈でごまかしているのです。ですからこういうことをされると、今申しましたように私が間違ったのじゃない、労働省の基準局長がこの法文を読んで間違えて、そうしていやこれは船員の場合は脊髄の場合でも大丈夫だ、こう判断したくらいですから、これはいかにあなた方の解釈がごまかしかということです。これはまあいいですが、とにかく次の国会までどうするのかという問題について、私はわずかでけっこうですから厚生大臣が来られてから答弁をお願いしたい。留保します。
○八木(一男)委員 質問を続けます。一部負担につきまして、さっき宮澤大臣は船員の負担にさせないようにすると言われましたけれども、そんなことは今の政府のやり方ではとんでもないことであって、できない。さっき滝井委員が言われたように各寄港地ごとにとられる、三百円、五百円、七百円とかいう条件がある。それでこれを取り返すにはどうするかというと、ただ船主の方に下さいと言って持っていっても、船主の方ではどうして、証拠があるかと言います、その証拠はどうするのか。受領書を医師に求めようとしても、医師の方ではその一部負担の受領書を出す義務がないのです。義務がないのに船員が持っていって、これだけかかったからと船主に要求しても、船主の方は受領書がないからといって払わなかったらどうなるのですか。
○高田(正)政府委員 保険の方の手続の問題でございますので私からお答えをさせていただきます。この受領書を出していただく義務は医療機関には今日のところないわけでございます。これは御協力いただければ問題がないことははっきりいたします。しかし受領書をお出し願えないような場合におきましては、被保険者証の該当欄に認めでも医療機関の方で押していただくというふうな取扱いに、私ども変更をいたしたいと考えております。それを打って参ればそれが証拠になりまして、船主の方で容認をするというふうな取扱いにいたしたいと思います。ただいまのところそういう考えでおります。
○八木(一男)委員 今言われましたけれども、受領書を出す義務はないのです。そして被保険考証に判を押させる義務もないのです。ですから船員が一部負担を払ったときにお医者さんにそういう証明になるものをよこせと言う権利はない、お医者さんは出す義務はない、そうすれば証拠はないので船主は払わない、そうすると一部負担金は全部船員の方に負担させられることになる。また証明がついて船主に要求しても、船主が払わない場合はどうするか、労務管理官に申し込めと言うでしょう。労務管理官は非常に少くて、さっきの例もあるように、今実際にほかのこともできていない。そういうものに申し込んだって片がつくものではありません。罰則規定があるとおっしゃるが、そんなものを罰則で争ったって解決をするのに長時間を要するし、百円ぐらいのことで船主ににらまれて首になるのは当りまえだ、そうしたら船員は泣き寝入りして、百円を自分の乏しい財布の中から出す、金がなければ腹が痛くても胸が苦しくても診断を受けなくて、自分のからだをつぶしてしまうなり、そういうことになる。だからこの一部負担の問題はほんとうは船主が全部負担しなければならないのに、こういうふうに一部負担に切りかえるために、船員の権利が全部圧迫されて、医療保障のほんとうの目的がつぶれてしまう。そういうふうな重大な欠点を持っている。そういうことを考えたならば厚生省も運輸省もこの問題については撤回して、もう一回考え直す必要があると思うのです。御答弁は要りません。そういうことで運輸大臣にはどうか、船員保険は船員の立場を全然無視しているということを御認識になって閣議で撤回を迫って下さい。その御答弁をただ一言伺って質問を打ち切ります。一言でよろしい。
○宮澤国務大臣 船主と船員の関係はそんなかたき同士のような関係じゃありませんので、船員のからだの悪いということは船主にも重大なことですから、この百円の問題でそのような首にするとか、払うとか払わないとかいうことは現実今日……、ただ手続を簡単にしていくということでそんなことが起るということは——極端に言えばそういうことも言われますけれども、そうでなくこの間をいずれも関係当局が円滑に行なっていくということでありますから、これを実施してみてどうしてもあなたのおっしゃるような弊害があるとすればまた改めていく、今日の段階においてはこうするよりないかと思います。
○八木(一男)委員 運輸大臣は労働者の立場を全然理解しておらない。実施してみて改めるとおっしゃるけれども、その実施期間中にそういうことで早く病気を見てもらえないで死んだ場合があったら運輸大臣にその責任がかかりますよ。そういうことでこの問題はすぐ撤回するようにお考えいただきたい、これを要望して私の質問は打ち切ります。 〔「休憩々々」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
○藤本委員長 午後七時まで休憩いたします。 午後六時九分休憩 ————◇————— 午後七時十四分開議
○藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。 休憩前の質疑を続行いたします。岡本隆一君。
○岡本委員 大蔵大臣に、二、三の健保財政の問題について質問いたしたいと思います。 今度の健康保険の改正は、国民皆保険に進むための制度の根本的な改革である、こういうふうに厚生大臣から説明を受けております。これはおそらく政府の今度の方針であろうと思います。そこでその根本的な改革をやるために、被保険者の一部負担はやむを得ない、こういうふうな御意向のようであります。しかしながら被保険者の一部負担を強化するということは、これは給付内容が少くも幾分かは低下するものであるというふうに考えるのでありますが、大蔵大臣はどのようにお思いになりますか。
○池田国務大臣 今回の改正は、健康保険を合理化、健全化するために考えておるのであります。従いまして、政府の方といたしましても財政の許す限りお金を出します。それからまた被保険者の方につきましてもできるだけの負担をしていただきまして、相ともにこの保険行政の健全化をはかっていこう、こういう趣旨から出ておるのであります。
○岡本委員 持ち寄りでやっていくのだから、一部負担は給付内容の低下になるが、それもやむを得ない、こういうふうなお考えのように思うのであります。 そこで伺いたいのでありますが、そういうことになりますと、国民皆保険をやるということは、現行の保険制度をいい方へ右へならえをさせるのではなくて、ある程度悪い方へ左へならえをやらせることになる、こういうふうなことになると思うのですが、いかがですか。
○池田国務大臣 お答え申し上げますが、右へならうとか、左へならうというのじゃなしに、健全化の方向、合理化の方向へまっすぐ進んでいこう、そうしてお互いに出し合っていこうという考え方でございます。 そうして国民皆保険の問題は、御承知の通り、これは政府管掌の健康保険でいくか、国民健康保険でいくか、いろいろ問題がございますが、いずれにしても国民全部が健康保険に入っていただくということを進めていこう、こういうことであります。
○岡本委員 健全化に名をかりておられますが、そういうようなお言葉でありますと、みんなが持ち寄りでもって健全化にやっていこうというふうなことになってくると、これは結局赤字対策ということになると思うのでありますが、そういうふうにお考えになりませんか。
○池田国務大臣 そういう消極的な考え方でなしに、積極的に医療全体をよくしよう、こういうような気持でおるわけであります。
○岡本委員 そこで、それでは一つお伺いをしたいのでありますが、健康保険の財政の窮乏化と非常に密接な関係のあるのは、結核の医療費の問題であると思います。政府はことし結核の医療費としてどれだけのものを見積っておられますか、数字をもう一度ここで繰り返していただきたいと思います。
○池田国務大臣 結核に対しましては、昨年度百三十億程度で、本年度十四億足しまして百四十数億円と心得ております。しこうして従来のごとくベッドをふやすということよりも、予防の万全を期するというところに主眼を置きまして、しかしベッドの問題も地方によりまして過不足がございますので、不足の方につきましてはある程度ふやしておりますが、重点は予防に置きまして、国及び地方団体でこれを全部見ていこうということにいたしておるのであります。
○岡本委員 予防に重点を置いておられると言われますが、それでは百四十数億の結核医療費の中で、結核の療養所の運営費を幾ら組んでおられますか。
○池田国務大臣 政府委員よりお答えさせます。
○森永政府委員 結核療養所の経費といたしましては、施設整備費と直営費と両方ございますが、ただいまのお尋ねは運営費の方でございますか。
○岡本委員 そうです。
○森永政府委員 三十二年度の経営費は百十五億一千七百万円です。
○岡本委員 百四十数億から百十五億引きますと、残りは三十億になる。結核療養所の運営費というものは、これはある意味においては——もちろん隔離収容するという意味において、これは予防的措置であるかもしれませんけれども、しかしながら狭義にはこれは治療費であって予防費ではありません。それを予防費の中にどういう理由をもって繰り入れられたのですか。
○森永政府委員 お説のごとく結核療養所の経営費を引きますと、金額はずっと減って参りますが、その中で結核予防費補助が幾らかということを申し上げますと、前年が二十億でございましたが、三十二年度は二十四億二千三百万、四億二千二百万円の増加ということに相なっております。
○岡本委員 結核予防法が施行されたのは昭和二十六年、その当時池田さんはやはり大蔵大臣でおられたと思うのです。そして吉田内閣は結核を数年にして日本から撲滅するんだ、日本の保険行政の一大目標として打ち出された結核予防法なんです。とにかく日本の保険行政の一番大きな重点をここに置くんだ、こういって結核予防法を打ち出された。ところがその打ち出された結核予防法に対して、予防部面がわずかに三十億であって、そしてそれでもって結核予防法がうまく運営されていく、こういうふうにお思いになるんでしょうか。
○池田国務大臣 国民病であります結核は、今なお跡を断つところまでいっていないのでございますが、数年前に比べますると死亡率も非常に減って参りまして、目的を完全に果したとは言えませんが、着々としてわれわれの理想に向って進んでおると言えると思うのであります。
○岡本委員 なるほど死亡率は減って参りました。しかしながら患者はどんどんふえているのです。だからそういう意味においては、結核予防法に対して政府のわずか三十億というふうな何は、これは決して十分ということは言えないと思う。百十五億の結核療養所の運営費、これは全部が政府支出でないです。これはその大部分は入院料としてはね返ってきている。だから百四十五億を結核予防費として組んでおっても、そのうち百十数億は結核療養所の運営費である。その運営費は入院料としていろいろな方面から、被保険者、入院している患者から収入として入ってきている。だから現実には政府は出していない。そういう大部分出していない金を結核予防費として大きく打ち出して、政府は百五十億を結核予防費として出しております、こう言っている。しかしながらそれは全くインチキじゃありませんか。
○森永政府委員 結核予防費は特別会計ではございませんので、一般会計であります以上その歳入歳出が一般会計に上ってくるのはむしろ当然でございますが、結核療養所関係の収支を見ますと、収入が約八十億、支出が百二十億余りということでございまして、その間におきましてもネット四十億くらいは歳出の方が多いということに相なっております。全額収入でまかなっておるということではないのでございまして、ただいま申し上げました差額はやはり国民の税負担でまかなっておる、さような計算に相なっております。 なお、この療養所の経費は結核対策費という締めくくりをいたしておるわけでございまして、狭義の意味の予防費は別に、先ほど申し上げましたように二十億が二十四億というふうに一応区分して考えておりますので御了承をいただきたいと思います。
○岡本委員 数字のことは私も一応知っておりますので、お伺いしておるのは、政府が国策として結核の撲滅というものを大きく打ち出しておりながら、従って結核対策費というものが、国の大きな方針として結核撲滅というものが打ち出されている以上、結核対策費の中で予防費として組まれておるものが実質的には非常に僅少である、そしてその大部分を占めておるところの運営費ですら、その内は収入があってほとんど実質的な支出ではない、こういうふうな形で、今日の結核予防法の運営が完全に行われておるというふうなお考え方は全くインチキではないか、国民を欺くものではないか、私はこういうことを聞いておるのです。一つ総理大臣、今の説明でわかっていただけると思いますが、どう思いますか。そのような国策のあり方というものはそれでいいのですか。あなたのお考えを承わりたい。
○岸国務大臣 結核対策についてはもちろん政府として非常に重要に考えなければならぬと思います。予算の金額だけで論ずるということも私はどうかと思いますが、もちろん今の状態で私は完璧であるとは思っておりません。これだけお答えを申し上げておきます。
○岡本委員 何としてもこれが不完全なものであるということは、今のをもって認識していただけたと思うのです。ですから私は今後もっと結核予防法に対する財政的な裏づけというものを完全にしてもらいたい、これを聞いていただくために今あなたに御質問申し上げたわけであります。 そこで、健康保険の財政の問題でありますけれども、健康保険の医療費の中で結核の医療費が大体何パーセントを占めているか、これを伺いたい。
○高田(正)政府委員 大体三割程度から三割五分程度と押えております。これはたしか昭和二十八年でございましたか、そのときの一時期を画して調査をいたしたものであります。年々そういう調査はいたしてはおります。
○岡本委員 結核予防法が昭和二十六年に施行されました。従って二十八年という時期はまだ結核予防法がその端緒についた当時であります。そして年年検診をやりまして、一見健康に見えるけれども、実際は病気であるところの結核患者をどんどん健康診断によって掘り出してきております。従ってそういうふうにして掘り出されてきたところの患者というものは、だんだんたまってくるのです。だから結核患者というものは非常にふえてきているのです。そこで最近では、昭和三十年度では、これは調査なさっておらないにしても、ある程度の目安は持っておられると思うのでありますが、健康保険財政の中で結核患者に必要なところの治療費というものは、おおむね何割くらいになっているか、どういうふうな目安を持っておられますか。
○高田(正)政府委員 これはいろいろ結核の状態によりまして事情が異なってくるわけでございまして、健康保険の財政の中で何割くらいが結核に費されることが妥当であるかというふうなものの考え方はいたしておりません。大体過去の実績によりますれば、今申し上げましたようなパーセンテージを占めておるであろう、こういうことでございます。
○岡本委員 そこで結核予防法の運営の方針について大蔵大臣にお伺いしようと思うのであります。現在のはっきりした何はおわかりにならないようでありますが、少くも健康保険の医療費のうち昭和二十八年は三三%、従ってそれから後ずっと増大しているということは現実に認められると思うのです。二十六年に法が施行され、どんどん患者を掘り出して、そして今日になれば健康保険の総医療費の中の半ばを占めているのが結核治療費であるということは、およそ想像にかたくない。そこで大蔵大臣の御意見を承わりたいのですが、そういたしますと、結核予防法を国がその施策として、結核撲滅対策として打ち出した。従ってその打ち出した方針に対してどういうふうな範囲において財政負担を行うべきであるか、これは私は大きな問題であると思うのです。現在では結核予防法に従ってどんどん検診をやります。そして患者を収容するために、ずいぶんベッドもふやしました。伝染のおそれがある患者をどんどん収容いたします。そして収容したところの患者の入院料その他について治療費というものは、ほとんど結核予防法は見ておらないのです。ただ見ておるのは、パスであるとか、ストレプトマイシンであるとか、特別の薬品あるいは胸郭の手術というふうな特別の治療、そういうようなものについて見ておられるだけであって——本年からは手術に伴うところの入院のめんどうを見られるようになりました。しかしながらそれはほんの一部であって、結核予防法の精神に従ってどんどん掘り出してきた患者というものは、結核予防法は何もめんどうを見ていないのです。従ってそういうふうな、発見された患者は全部健康保険の保険財政にまかされているのです。そういうことでは保険財政が赤字になるのは当りまえなんです。だから国策として結核撲滅を大きく打ち出している以上、結核予防法によって掘り出してきた患者の治療というものについては、ほうりっぱなしにしないで、国がある程度のめんどうを見ることは当然だろうと思う。それについて大蔵大臣は、どの範囲の責任を国が持つべきかということについて、どういうふうにお考えになりますか。
○池田国務大臣 結核対策を国が重点的に施策していこうという場合に、健康保険との関係いかんという問題でございます。なかなか厄介な問題でございまして、将来の問題として考究しなければならぬと思いますが、今直ちにこれをどうということは、ちょっとお答えしにくいと思います。
○岡本委員 直ちにどうするというふうなことは答えられないという御答弁でありますけれども、それは一国の大蔵大臣としてきわめて無定見であると思うのです。少くとも結核予防法というものを施行するというときには、どういう結果が招来されてくるか、それについて国はどの程度の責任を持つべきかというふうなことは当然考えていただかなければならない。その無責任が今日の健保の大きな赤字として出てきているのです。だから、それについて国は結核予防法の施行に対してどれだけの責任を持つかという財政的な責任の持ち方というものの無責任さが赤字の一番大きな原因になっているということは、前の川崎さんのときにできました七人委員会がはっきり結論を出しているのです。そういうようなことは、あなたも聞いていられると思うのです。従って健保の赤字の大きな部分は、結核医療費である。結核医療費の問題が健保財政のガンであるということは、はっきりわかっているのです。二年も前にそういうことがはっきりわかっているのに、いまだにどうしていいかわからぬ、こういうふうなことでは、あなたは非常に無責任だと思うのです。もう一度御答弁願いたい。
○池田国務大臣 結核患者が多いために健康保険の方で非常に迷惑をしておられるということも存じております。しからば今ここでその点をどういうふうにするかという問題は重大問題でございますが、われわれといたしましては、御承知の通り三十一年度に三十億円、三十二年度に三十億円をお出しして、そうして今後の健康保険の推移を見ていこうといたしておるのであります。従いまして、この状況を見まして結核患者についてどれだけ健康保険の方が迷惑をしておるかどうかということも、今後において検討しなければならぬ問題だと思います。
○岡本委員 それでは今度の三十億の国庫負担のお金は、結核医療費の足らざるところについての政府の負担だ、こういうふうな意味になるのですか。
○池田国務大臣 これは保険会計全体を見ての話でございます。結核だけの足らずまいという意味ではございません。
○岡本委員 時間に制限がありますので、これ以上の問答をやめますけれども、しかしこの論議をもって大蔵大臣には、結核予防法についての財政的な裏づけが非常に欠除しているということだけは認識していただけたと思うのです。従って今後この方面について大きな関心を持っていただきたいと思います。 なお、もう一点お伺いしたいと思うのでありますが、先般来この委員会で神田厚生大臣が、健保の運営における医療費の単価が非常に低いのは、それは確かにそうだ。これは何とかしなければならない。今度の法案が通ったら、この一点単価の引き上げというものを十分考えていきたい。こういうふうな御意見を何べんもお述べになりました。それは食い逃げじゃないか。これが通ったら、あと知らぬ顔の半兵衛さんをきめ込むのじゃありませんか、こういって質問をしたところが、いや、決して食い逃げはいたしません。必ず単価の引き上げというものはやります。これはすでに閣内でも了解を得ております、こういうふうなお話です。そこで大蔵大臣にはっきりお伺いしておきたいのですが、そういうふうなことを大蔵大臣ははっきり聞いて、了解を与えておられるのかどうかということをお伺いしたいと思います。
○池田国務大臣 一点単価の問題は、厚生省において御研究になっておられるということは聞いております。
○岡本委員 御検討になっておることは聞いておりますが、御検討の結果は、どうしてもこれは上げなければならないということだけはわかっているのですね。だから、そういうふうな上げなければならないということをお聞きになり、それじゃその単価引き上げに応じましょうというようなお考えをあなたは持っておられるのか、またそういうようなことを神田厚生大臣にお約束されたのかどうかということを承わりたいのです。
○池田国務大臣 今の一点単価は、昭和二十六年、私が前に大蔵大臣をしておるときにきめたのではないかと思います。なかなかの問題でございまして、一点単価のきめ方によりまして、所得の標準率とかあるいは税法上の問題にまで発展いたします。非常なやっかいな、むずかしい問題でございます。従いまして、神田厚生大臣から、その点を研究しているということは聞いております。しかし、結果についても、もちろん出ていないから聞こうはずはないのでございますが、どういう方針だということも聞いておりません。とにかく検討を加えておるということを聞いておるだけでございます。
○岡本委員 これは話が違うのです。あなたの言われることがほんとうだとしたら、厚生大臣は、この間から僕らにまっかなうそをついてきたことになるのです。一点単価が妥当でないということを、はっきり言っておられる。妥当でないということを何べんも言っておられて、その引き上げを考慮したいということを言っておられる。それは食い逃げにならないかといったら、食い逃げはいたしませんと言っておるのです。このことは、一点単価は幾らか引き上げるということをはっきり意味するわけです。そういうようなことを言っておられるのに、検討中だということは聞いておるというのでは、これは全く両者の店が一致しないのです。一ぺんそこでよく相談して下さい。
○池田国務大臣 神田さんは上げるというお気持であるようでございまするが、私は大蔵大臣として、上げるのだという結論をまだ聞いておるわけではないのであります。検討中だ——これは御承知の通りに被保険者にも、国の方にも、そしてまたお医者さんの方にもいろいろな点があるのでございまして、薬品あるいは医薬の進歩によりまして、不適当な点は私も想像し得るのであります。しからばどうするか。全部を上げるか、あるいは一部を上げるか、あるいは一部を下げるか、やはりお医者さんの稼働率の状況もございますので、十分検討しなければならぬと思います。今の制度が万全なものかといえば、それは万全なものじゃございますまい。従って、厚生大臣が御検討なさっておることは私は聞いておるのであります。どういう範囲まで今いっておるのか、そして結論がどうなろうかということは、まだ厚生大臣と私とではきめておりません。これは一大蔵大臣だけの問題でないのでございまして、私は内閣全体の大きい問題だと思っておるのであります。
○岡本委員 一厚生省の問題ではない。内閣全体の問題である。なるほど私もそう思うのです。だから厚生大臣の言明だけでは頼りないから、あなたにもお伺いする。大体今日の一点単価というものは、昭和二十三年に十円たったのです。(「そんなことは知っておる」と呼ぶ者あり)あなたは知っていても、この人は知らぬ。そこで二十四年に十円であったものが、二十八年十二円五十銭に上りましたね。
○池田国務大臣 二十六年。
○岡本委員 ですか。(笑声)その十二円五十銭については、点数の組みかえが行われておるのですね。だからその昭和二十四年に十円だったものが、今日十二円五十銭であるということは、見かけは二五%増になるわけですね。ところがそれが点数の組みかえとかいろいろなもので、実質的にはもう少し増になっておる。私はおよそ十五円くらいであろうという見当を得ているのです。昭和二十四年に十円であったものが、今日十五円である。五〇%より上っておらないというふうな物価というものはありません。その中に材料費が入っています。材料費は水道、ガス、電気、あるいは電話ですね。あるいは交通費、みな上っておる。結局実質的にはこれはぺ−ス・ダウンになっておるのです。五〇%増ぐらいでは、ベース・ダウンになっておる。そういうふうな形に日本の医療費というものが置かれて、それでいいとお思いになって、そのまま単価の問題にほおかぶりしておられるのか。あるいは、そんなことは不合理だというふうにお考えになりながら、しかも手元不如意だからどうにもならぬというので、しょうことなしに目をふさいでおられるのか、その辺の御心境のほどを一つ池田さんから承わりたい。
○池田国務大臣 昭和二十六年に六大都市十二円五十銭その他十一円五十銭ときめまして、お医者さんの所得状況をずっと見ております。そうしてお話の通りに点数の移動もございましたし、入院料の点数も変ったと記憶いたしておるのであります。しかしいずれにいたしましても、物価の動きと同時に、やはりお医者さんのいわゆる健康保険の稼働率等もございまして、収入あるいは支出、所得状態がどうなっておりまするか、いろいろ検討しなければならぬ点が多々あると思うのであります。そうしてまた今の医療制度自体も画一的でございまして、なかなか実際に沿わぬ場合もあるやに聞いております。従いましてそういう点を総合的にお考えになって、厚生大臣が今検討されておることと考えておるのであります。
○岡本委員 私は厚生大臣が検討されておるかどうかというようなことをあなたに聞いておるのじゃない。あなたがそれを合理的であると思っておられるのか、不合理であると思っておられるのか、それをはっきり承わりたいと思います。
○池田国務大臣 私は専門でございませんので、これが合理的か不合理的かということは、今ここではっきり申し上げるわけにいきませんが、いずれにいたしましても、二十六年にきめたもので、その後移動がございまするから、点数の問題、単価の問題等につきまして検討を加える必要は、私はあると思うのでございます。従いまして、今結論がどう出るかという見通しにつきましては、私は専門家ではないので、厚生大臣がお調べになったあと、みんなで相談し、そうして相談がきまりましたら、大蔵大臣として善処すればいいのであって、今大蔵大臣が先ばしって、とやかく申し上げるわけにいかないと考えます。
○岡本委員 専門でないからあなたは今答えられないと言う。そういうことになりますと、それでは専門家の厚生大臣が検討して結論をお出しになったら、あなたはその専門家の意見に従われますか。
○池田国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、医療について非常に重要な問題でございますし、財政上からも問題がございますから、閣議で全体できめるべき問題だと思います。
○岡本委員 そういうことになると、これはもう厚生大臣の先般来のお話は、きわめて雲をかすみと消えちゃったということになるのですが、厚生大臣、どうですか。
○神田国務大臣 私がこの委員会でしばしば申し上げましたことは、今大蔵大臣が述べておることと違っておらぬと思います。ということは、今の単価なり点数の基礎となっておるものが昭和二十四年にできて、そして二十六年に今岡本さんが言われるような改正をした。その後多少の修正は見ておるけれども、ほとんど動いておらないのが実情なんです。そこでその当時から今日までの物価の指数から考えても、これは相当改正の要があるのじゃないか。もちろん稼働率というような、今大蔵大臣が言われたような問題は考慮に入れるべきでございますが、そこで改正してくれということは、医師会側からの非常な要望なんです。当委員会でもその要望が出ております。そこで私は閣議において、しばしばそういう要望があるので、そういう方向に向って調査をしてみたい、そこでもっと根本的に今の案と別の案を考えてみたい、幾つかの案を成案を得たい、そこで相談をいたしたい、こういうことを閣議でしばしば、総理、大蔵大臣等おられる席で御了解を得ておるので、早く成案を得たいが、いずれにしてもこの法案が通りませんと手があきませんので、調査は命じておりまするが、本格的な調査はこの法案の通過後に行われる、こういうことを申し上げておるのでございまして、これは私の申し上げておることと大蔵大臣が今言われることとは食い違いがないと思います。
○滝井委員 関連。池田大蔵大臣、あなたはこの単価問題の経過を御存じないから、今そういう発言をされておる。おれは大蔵大臣だ、だから関係のある厚生省でやれ、やった結論はあとで聞かしてもらおう、こういう立場をあなたおとりになるが、そうじゃないのです。これは昭和二十六年にこの単価がきまって以来、その主導的な立場に立っておるのは大蔵省なんです。まず昭和二十六年の十二月七日、これを根本的に検討しなければならないということを閣議決定をしているのです。そして二十八年の二月十三日に時の向井大蔵大臣が、あなたの一番尊敬されておる吉田茂さんに閣議了解事項として、文書で、これはきわめて重大な問題だ、だからすみやかに関係各省でやらなければならぬ、こういう提案をされたのです。その提案をされたのはだれかというと、大蔵大臣なんです。厚生省は主導権はないのです。なぜならば、この問題というものは、単に政府管掌の健康保険だけの問題ではない。これは同時に生活保護にも関係し、地方自治体が背負っておる国民健康保険にも関係をしてくるのです。同時にこれは政府みずからが事業主となって金を出しておる共済組合にも関係してくる。いわゆる一点単価を一円上げれば、百四十億ないし百五十億の財政負担を必要とすることなんです。だからこれは一厚生省だけではどうにもならぬという状態になってきて、そこで当時の向井大蔵大臣は賢明にも、関係各省がすみやかに寄ってしなければならないということで、大蔵省がイニシアチブをとって提案をした。そして同時に、しからば暫定的に税の問題でいこうというので、そのときには二八%の税の問題を法律できめずに行政措置でやったのです。ところがこれは行政措置ではいかぬというので、後にいわゆる二八%が租税特別措置法できめられたのです。そういう経過があるもので、今の大蔵大臣のようにそれは厚生省がやれということでは、とても厚生省一省だけでやれるものではございません。そこで私はここでお願いをしたいのは、さいぜん閣議で検討するとおっしゃいましたが、まず関係各省で事務当局がやはりじっくりこの問題と取り組む姿を、この際大蔵大臣に、向井さんの関係もありますので、積極的に推進をしていただくことを要望したいのです。その御答弁を一つ……。
○池田国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、非常に重大な問題でございます。そうして二十八年のときは、一点単価の問題が所得の標準率によりまして、その標準率では恒久的に安心ができないというので、法律になったわけです。あのときの問題は、一点単価の問題自体よりも、税金の問題が主となったようでございます。しかしいずれにいたしましても、先ほど来申し上げておりますように、これは重大な問題だ。私はこれが法律によらずに、単に厚生省専管の事柄になっておるということにつきまして、非常に不本意に思ったことがあるのでございます。草葉厚生大臣のときでありましたが、それでこういう大事な問題はお話の通りに、厚生省で十分調査されまして、内閣全体としてきめなくてはならぬ問題だということは、先ほど来申し上げておる通りでございます。今十二円五十銭、十一円五十銭を一円上げますと、大蔵省の調査では百七十七億円要ることになるのであります。非常に重大問題でございますから、こういう点をお考えになりまして、厚生大臣がまず基礎調査をされて、しかる後にやはり閣議全体としてきめるべき問題だと思います。
○滝井委員 今すでに大臣が御存じのように、大蔵省自体においても、一点単価を一円上げれば百七十七億要るということを調査されておる。従って私の見るところでは、大蔵省も非常な熱意を持っておるということがわかってきた。そこで一応は、厚生省におまかせにならずに、大蔵省やそのほかに関係のあるところがあるわけですから、それらの関係各省が寄って、これは単価が妥当であるか、それとも妥当でないかということの結論を出していただいて、急速にこの問題を解決していただきたいと思います。大蔵大臣は厚生大臣だけに片棒をかつがせずに、自分もその片棒をかつぐのだという熱意をもう一回ここで明白にして、大蔵省も積極的にやるという言明ができれば、御答弁願いたい
○池田国務大臣 先ほど来お答え申し上げておるところで尽きておると思いますが、重大な問題でございますから、所管の厚生省で十分調査をなさって、——そうしてこのことは単に大蔵省ばかりではございません、労働省その他各般にわたり、国民生活の最も重要な問題であるのであります。せっかく厚生大臣が非常に御熱心で御検討なさっておるようでございますから、その調査を待ちまして、鳩首協議して善処いたしたいと思います。
○岡本委員 よその火事を見ておるみたいに、厚生大臣がそのうちに結論を出すだろうから、それを見た上でというふうなことをあなたは言うておられますけれども、しかしながらその結論を出すについては、やはり大蔵省の同意が得られなければそれは実現できないのです。従ってきょう私が特にあなたに来ていただいたというのは、少くも先般来たびたび厚生大臣は、はっきりもうこれは不合理なものである、これは会議録をいまさら引っぱり出してくるまでもないことです。はっきり厚生大臣は言うておられる。従ってそういうふうな事態に対して、しかもあなたは稼働率の問題がどうだとかこうだとかいうふうなことを、なににはさんでぼやかそうとされますけれども、しかしながら今日の医療担当者の不満というものは、これは不当に低く置かれたところの一点単価の問題にあると思う。この解決なくしては、日本の国民皆保険というものをこれから持っていかれぬ。すでに神奈川で国民皆保険をやっても医療担当者は引き受けないといって拒否運動が始まっておる。国民皆保険を推し進めようとされても、そのような低い単価をもってすべての国民が医療を受けられるようになったのでは、医療機関は成り立たない、こういうようなことで、国民皆保険に対する拒否運動が実質的に始まっておる。さらにまた民間のみならず、公的医療機関も、すべての医療機関が赤字に悩んでおるのが、今日の状態なんです。一点単価の引き上げがなかったならば、医療従業員の待遇改善というものが行われない。だから日赤にいたしましても、国立病院にいたしましても、すべての医療機関の従業員というものは、単価の問題に非常に大きな関心を持っておる。こういうふうな段階になって、大蔵大臣が今もって、自分はそれが合理的なのか、あるいは不合理なのか、まだわからぬ、これから研究いたします、こういうふうなことでは、あまりゆうちょうだと思う、どうですか。
○池田国務大臣 二十六年の十二月に改正いたしまして、その後の異同がございますので、厚生省で十分検討せられておると思います、こういうことでございます。何もこれを捨てておるわけではないのであります。
○岡本委員 これ以上議論いたしましても、これは結局けんか棒ちぎれのようなお答えでありますので、非常に不満ではございますが、しかしながら大きな責任のある立場におられるあなたとしても、内心はどう思っていても、そうはっきり言いにくいところもあるだろう。だからそういうふうに善意に解釈いたしまして、一つ今後ともこの問題に対しても厚生省まかせにしないで真剣に取り組んでいただくことを要望いたしまして、私の質問を終ります。
○藤本委員長 これにて大蔵大臣に対する質疑は終りました。 次は吉川兼光君。
○吉川(兼)委員 総理大臣が大へんお時間がないそうでありますから、私はきわめて制限された時間で一、二御質問を試みたいと思います。従ってごく大まかなことを伺いますから、ぜひはっきりとお答えいただきたいと思います。 石橋内閣を継承した岸内閣の大きな政策の中に、国民皆保険というアドバルーンが上っておるのでございますが、この国民皆保険に対して三十二年度の予算には、すでに一つの計画の端緒が具体化しておるようでありますが、総理大臣はこの国民皆保険を必ず責任を持って達成するという御熱意と御計画をお持ちかどうかを伺います。
○岸国務大臣 この社会保障制度のうち、特に保守政党として一番初めに最も力を入れたいのは国民医療の問題でございまして、この意味において国民皆保険の制度はぜひ万難を排してもやっていきたい、かように考えております。
○吉川(兼)委員 おそらくそういうふうにお答えになるだろうと私は思ったのですが、そのお答えを裏書きするような計画がこの三十二年度の予算の中で具体化しておるかどうかということを聞かなければならぬ。と申しますのは、ただいま未加入の国民が三千万おる。それを昭和三十五年までの四カ年間に全部加入せしめ、初年度において五百万人を加入対象とするその予算が三十三億円盛られておるのでございますが、三十三億の予算で五百万人が加入する可能性がそこにあるかどうかということを伺いたい。
○岸国務大臣 数字のことは私はっきり存じておりませんが、三十三億は従来よりもふえた額のように聞いております。
○吉川(兼)委員 三十三億のほかには、昨年の予算で確保しております三十億もありますから、結局六十三億がこれに充当されるわけでございますが、六十三億くらいな金で四カ年に未加入の三千万の者を加入させるという初年度の計画としては、はなはだ心もとないように私は思うのです。そこで私は総理大臣に一言お話申し上げたいのですが、昨年の十一月でございましたか、例の社会保障制度審議会が医療保障制度について勧告を行なっておる。その勧告によりますと、いわゆる政府管掌の健康保険に五十億円を投ずべし、さらに五人未満のものを対象とする第二種健康保険制度をしいて、これの対象を三百万と見てたしか七十五億円をかけなければならぬ、さらにまた農漁民、中小企業者等のいわゆる市町村負担になりますところの国民健康保険、これは三カ年であれば一年八十億でしたか、五カ年計画であれば一年六十億ずつかけなければならぬということを答申しておる。私はかの社会保障制度審議会の勧告はきわめて公平な、今日の情勢下においては最も妥当性のある数字であると考えるのであります。今申し上げましたような三つのものに投ずる金、さらに一方には赤字も累積いたしておるのでございますが、そういうようなことがわかっておりますにもかかわらず、できもしないと私は言いたいのでありますが、そうは申しません。できそうもないというような程度で妥協しておきますが、できそうにもない三十五年までの皆保険を国民に約束することは、あなたのかねて言っておる精神なんとかという政治力を唱えておりますあなたといたしましては、従来の内閣ではとにかく、あなたといたしましてはこういうおそらく財政的に見てできそうにもないことをもっともらしく予算に出して、それを大きな政策にしておるということは、私はこういうことは言いたくないけれども、何か人気取り的にやっておるようであって、はなはだ残念に思うのですが、あなたはこれを必ず完遂することができると思っておるかどうかをもう一ぺんお聞きします。
○岸国務大臣 実は国民皆保険の問題は、私の属しておりまする自民党としては、党の政策の大きなものとしてこれを打ち出しておるわけであります。自民党の政調会におきましても十分に各般のことを検討して、必ずこれは実施する、五カ年の計画をもって実施するという結論を得て、その第一年度を踏み出しておるわけであります。数字的にはいろいろな専門家の御意見もあろうと思いますが、また政府の方にもそれぞれの何でもってそれを検討して決して実現できそうもないと吉川君お話ですけれども、私どもはそうじゃなしに、これは必ず実行するという見地に立ってやっておるわけです。
○吉川(兼)委員 自由民主党の政策は私はあまり信用しないのですから、それよりは総理大臣としてのあなたの発言を非常に尊重してここでお伺いしておるのであります。私が申し上げたいことはこういうことなのです。たとえば今私が申し上げました社会保障制度審議会の三つの勧告の最後の国民健康保険の問題といたしましても、二百四十億円要る、三カ年であったら一年八十億、五カ年であれば一年六十億、これは二百四十億以上要る、こういうことを言っております。これは御存じのように市町村の負担になるのです。今日の日本の地方財政の困窮状況におきまして、これが果して可能かどうかということは、おそらく議員とか大臣とかいうものを待つまでもなく、国民の常識として不可能だということは明瞭なことなのです。できもしないと私が申し上げますのは、国民健康保険一つ取り上げましても地方財政はこれを許さない。許さないと言いますことは、結局財政基礎というものがないわけでありますから、財政基礎がなくてどうしてこれが実行できますか。だからこれは全く絵に描いたもちといいますか、から念仏といいますか、口頭禅というか、そういうことをやっておるのです。これは結局地方財政にしわ寄せすればよろしいという、いわゆる官僚一流のデスク・プランなのです。あなたも官僚出身だけれども、私は、あなたは今日の官僚のデスク・プランほどまずいことはやられぬのじゃないかと思うのです。従ってあなたの言質を得るという意味ではありませんが、この際私が御答弁をわずらわしたいことは、もう少し実情に即した、地方財政はこうこうこういう状況だけれども、これくらいはやるとか、これはやれそうもないということをはっきり伺っておきませんと——おそらくもうあと一、二年もしますとこれは不可能なことがわかって参ります。それは社会保障制度審議会の勧告通りにやらないと言われるかもしれませんけれども、いずれにいたしましても国民皆保険と申します以上は、国民健康保険の分野の占めるウエートは相当重いのですから、地方財政ではとうてい負担し切れないと私は思うのです。それをしもあなたは押し切って国民皆保険は可能であるとおっしゃるのかどうか、念のためにもう一度伺っておきたいと思います。
○岸国務大臣 内閣の方針というお話がありましたが、言うまでもなく私どもは政党内閣でありまして、政党のこういう問題は、特に国民の生活に非常に深い関係がある問題であり、同時に今吉川君の御指摘のごとく国家財政、地方財政にも関係のある問題であります。私どもは政権を担当しておる与党といたしまして、こういう問題に関しましては最もまじめに考えて、責任を持って結論を出しておるわけでありまして、私は責任内閣、政党内閣の性質上、この問題に対しては責任を持って社会福利制度を必ず実現することをここに明言いたします。数字的なことはいろいろな点があろうかと思いますが、それははっきりここで申し上げておきます。
○吉川(兼)委員 私はここであなたから政党政治とか責任政治の講義を聞こうとは思わない。それは私も十分心得ているつもりです。ところがしからば政党でやっていること、自民党の政務調査会で作っております政策を全部あなたの内閣の手でやられるとは限らない。財政その他の関係もありますからそう簡単にはやれない。政党と責任内閣ということはもちろんでありますけれども、政党と内閣はあくまで違うんですから、私は岸内閣の首班としてのあなたに話を聞いておるのでございます。 最後に私があなたに要望というか、御忠告申し上げたいことは、この国民皆保険を計画いたしておりますものをわれわれが見ますと、多分に官僚のデスク・プランが多いと思うのです。立案をした方がここにいられるかもしれぬから耳が痛いかもしれませんが、私の目にはそういうように映るのです。それでたとえば一部負担とかいろんなことはこまかいことですから申し上げませんが、この委員会でわれわれの同僚委員と厚生省の大臣以下政府委員の諸君との間に長いことやりとりがありました、その内容のごときは、一言にして申しますと、まさにその裏面において官僚独善の傾向が多分に動いておる。これは官僚が一つのデスク・プランを立てた場合、それがどういうふうに国民大衆に響くかどうかということなどには一切おかまいなしと言っていいくらいに、非常に独裁的、ファッショ的なところもちらほら見えるものが裏面にあるということです。これを官僚の言うままにあなたが強行されようとすることは、僕はあなたのためにとらない。 それから政党の話が出ておりましたが、もっと率直に申し上げますと、今回の健保法の改正その他の問題には、あなたの党にも反対者がたくさんいるのです。これは厚生省の役人ほど熱心じゃないのです。私が政党と内閣は違うと申し上げたことはそういうことでありまして、これを強行されますと、要するにこれから先の医療保障制度というものに非常なそごを来たすと私は思っております。今の国民皆保険計画を強行されますと、要するに地方財政なんかの赤字でできないのです。できないことを強行されますと、一方においてはいわゆる医療保障という社会保障の最も大きな綱というものがこの根底をなしておりますから、従って私は医療保障制度の将来、あるいはもっと大きく申しますと、日本の社会保障制度の前途はこれではばまれるおそれがあるというふうに私はあえて申し上げたい。これはむしろ私の一つの御忠告としてあなたに申し上げまして、いわゆるアドバルーンに左右されるような国民皆保険を安易にお考えにならぬように要望しまして私の質問を終ります。
○藤本委員長 八木一男君。
○八木(一男)委員 岸内閣総理大臣にお伺いをいたしたいのでございますが、一昨日の九日に社会保障制度審議会設置法第二条第二項並びに健康保険法第二十四条の二の違法問題につきまして御質問をしておりました。その途中で総理大臣は所用のためにお帰りになったわけでございます。その後法制局長官から答弁を求めましたところが、その答弁は全くなってない答弁でございまして、全然根底がございません。この前の質問のときに最初に申し上げましたように、官僚の人たちが——官僚にも優秀な人がありますけれども、その権力を生かし勢力を生かして、法治国である日本の法律を曲解するようなことをしてはならないということを申し上げ、総理大臣はそういうことをさせないと明確に御答弁になったわけでございます。ところがこの法律の、法制局長官の解釈あるいは保険局長の解釈あるいは保険局長の解釈に同調した厚生大臣の解釈、これは全く実にけしからぬ答弁でございます。でございますから、今日の質問にはこのような人は相手にいたしません。従って総理大臣の御答弁をいただきたいのでございます。 この条文は二つございますが、時間の関係上簡単に一つだけ読みます。同じような条文でございます。健康保険法の中で第二十四条の二は「厚生大臣ハ政府ノ管掌スル健康保険事業ノ運営ニ関スル事項ニシテ、企画、立法又ハ実施ノ大綱ニ関スルモノハ予メ社会保険審議会ニ諮問スルモノトス」とございます。社会保障制度審議会設置法第二条は「厚生大臣」が「内閣総理大臣」に変っておる。そしてあとの文言が少し変って内容は同じでございます。ここにあらかじめ諮問するものとすということでありまして、あらかじめ諮問しなければ違法でございます。この政府提出の法律はみな違法の手続によって衆議院に持ってこられておる。こういうことは間違いであって、与党が間違いであるということがわかれば、与党が今まで出してこられて今まさに通さんという態勢にあっても、また野党がそれまでに気がつかないで十分に追及しなかったことを間違いであるといわれてもよい、とにかく今間違いであるということがわかりかけてきて、それがはっきりしたならば、内閣総理大臣としては法律を守る立場からこの法律を撤回して、正式な手続によって再度出してこられるか、内容の悪い法律であるからもう提出をあきらめられるか、それをとらなければ日本の法治国としての基盤がくずれるわけでございます。ですから自民党は三回出したところで、いかに意地を張っても通したいという人があるかもしれないが、それは小さな考え方です。日本の将来の政治を確立するためには、法治国の体面を保つためには、秩序を確立するためには、どうしてもここで内閣総理大臣が大局的な立場に立ちまして、はっきりと結末をつけていただかなければならないのでございます。その意味で法制局長官がどんな入れ知恵をしようとしても、そのような曲解をとらずに、総理大臣としての責任ある公明なるはっきりとした御答弁を承わりたいと思うわけであります。
○岸国務大臣 私は、過日あなたの御質問にだったと思いますが、官僚といえども政府といえども法律を正確に解釈して、これを正当に施行する義務があるということを申しました。この問題になっております、今提案して御審議を願っております法律は、その内容においていろいろな御議論がありましょうが、私はこれは十分御審議を願いたいと思います。しからば、これを提出したことが、今おあげになりました法条に照して間違っているじゃないかというあなたの見解でありますが、私はその条文に明示されておりますように、政府には立法の大綱をそこに諮問すべき義務があって、それを諮問いたして答申を得ておりますので、その大綱に基いて法文化したものが今御審議を願っている案でありまして、私はこれは何ら曲解でもなければ、あるいは間違った解釈ではないと思います。もちろん法律の解釈でございますから、いろいろな解釈がありますことは——どんな精巧た法律におきましても、裁判所がありますように、いろんな学説もありまして、あなたの御解釈もありましょうが、私はそういう見地に立って、それは正当な解釈であるという立場に立っておりますから、これを撤回する意思はございません。
○八木(一男)委員 今の総理大臣の御答弁で、総理大臣が法制局長官とか厚生省関係の見解に左右されていると私は考えるのです。いやしくも一国の内閣総理大臣がこの法律を見られたならば、そのやったことが違法であるということがわかるはずなんです。それはさっき内閣総理大臣が明確に言われた約束と反して、厚生省なり法制局長官の見解に踊らされている、だからそういうふうになる。この条文をみずから読んで下さい。差し上げます。これを読んで答弁して下さい。(「失敬だ」と呼び、その他発言する者あり)失敬じゃない。そこで……。 〔発言する者多し〕
○藤本委員長 静粛に願います。質疑を続行して下さい。
○八木(一男)委員 そこで、あらかじめ諮問するものとすということは、前もって諮問しなければならないという法律解釈であります。ここには二回したらいけませんとか、同じような内容であったら一回でいいとかいうことは、一つも書いてございません。法律というものは文字通り解釈しなければならないわけでございます。そこで、立法とは法律を立案することをいうわけなんです。この前の臨時国会にかかったこの継続審議案件は、この前の二十四国会の法律とは違う法律です。違う法律については、その大綱を聞くというのが、その法律の精神です。それをこの前と同じような内容だからと、すりかえて、その立法ごとに諮問しないということは、明らかに違法行為でございます。どうですか。
○岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、二十四条の二は、厚生大臣に立法の大綱に関するものはあらかじめ社会保険審議会に諮問するものとす、こうあります。私はこの案を立案されるに先立ちまして、その大綱がこの審議会に諮問されて、その答申を得たものに基いて立法されて、法律として御審議願っておる、かように解釈しておりますから、ちっとも違法じゃない、こういうのが私の解釈であります。もちろんこういう規定でありますから、専門の役所の意見も聞かなければなりません、あるいは政府には法制を特に研究する法制局長官もおります、これらの意見も聞かなければなりません。しかし私自身も大学におきましては法律を専攻したものであります。解釈するにつきまして、ただ役人が言うたから、それをうのみに、蓄音機みたように繰り返しているわけではありませんで、これが正当な解釈だと思っております。
○八木(一男)委員 ですからすっかり事情をのみ込んでおられない。今度の法律については諮問をしていない。この間の答弁でわかるように懇談しかしていない。諮問をしていないのを諮問していると思っておられる。そこに総理大臣の間違いがある。厚生省の連中が総理大臣をごまかしている。ですから総理大臣が今そういう解釈をお持ちになるのは仕方がないけれども、ごまかされて間違っている。諮問してない懇談しかしなかったということを明らかにしている。諮問したときのう厚生大臣が言っている。厚生大臣すらごまかされている。総理大臣もこの問題についてはごまかされている。そういうことで官僚機構が日本の政治をひん曲げる。諮問していない。だから諮問して下さい。それについてはいかがですか。
○岸国務大臣 今もお答え申し上げましたように、この立法の大綱については諮問している。(「大綱が違うんです」と呼ぶ者あり)今度の立案の大綱は、私は変っておらないと思います。それであるから、懇談をしたというのは、他の解釈上大綱ということはできない多少の変更をしているから、懇談の形成をした。しかし大綱については、あらかじめすでに諮問が済んでおり、諮問をしているという事実ははっきりしていると思います。
○八木(一男)委員 それではためておいたものを一ぺんにさらけ出します。いろいろな点がある。大体この法律では、完全で条文が一緒でも、法律が違うんですから、法律ごとに諮問しなければならない。それが第一点。それをしなくてもいいということはどこにも出ていない。法律の内容が同じでも、この法律案でなければ、それは大綱でいいですから、諮問しなければならない。その次に、法制局長官は、内容が違ったら諮問しなければならないときのう答弁している。これは非常に曲解である。同じでもやらなければいけないというのがわれわれの観点であるけれども、とにかく違ったら諮問しなければならないということを明確に答弁している。ところが内容が違うんです。大綱の内容が違うということに対して、厚生省の保険局長は抗弁できなかった。明かに証拠が日本中に残っている。内容が違うということと、内容だけでなくて背景が違う。審議会に諮問したときには、六十七億という赤字のもとに、そういうことで仕方がないからというので諮問をした。審議会の委員は、そういう条件だったらということで、この前はやや認めるようなことを多数決で押し切って出してきた。制度審議会の方は、そういうことは困るというような、多少ばく然とした答申をしたという状態なんです。内容が違う。その次に委員の構成が違う。委員がそれからずいぶんかわっている。しかも法律の提案理由が違っている。五つも違うんだ。内容がずいぶん違っている。それだけ違っているのに、聰明な岸総理大臣を法制局長官や保険局長がごまかして、違っていないと言う。そういうことが日本の政治を根底からくつがえす。だから政府も今の健康保険法を通そうというような小さな意地を捨てて、ほんとうに違法のものだったら、どんなに政府の政策が狂っても、もう一回出直して、諮問してやり直すという方策をとれば、日本がここで法を曲げるという禍根を断ち切ることができる。自民党の方をほめ上げると、一つの総裁の公選をやった、石橋さんの出処進退がりっぱだった、この二つだけは感心します。そこで岸さんも、どんなに既定方針がきまっておっても、間違いを発見したならば、そこで間違いを是正するという態度を示さるべきだと思う。そうでなければ、日本の将来の政治は誤まってくる。その決心がなければ、岸総理大臣は総理大臣としてのほんとうの重責をになうことはできないと思う。だからそのような、いろいろ厚生省や法制局が何と言っても、今私の言ったように、違うことが幾つかある。また違うということを納得できないというなら、総理大臣が残って下さるんなら、一時間でも二時間でも説明してみせる。それだけ違っている。だからその点をよく考えて、撤回していただきたいのです。
○岸国務大臣 これは一つの解釈の問題でございます。私はもしも違っており、違法であるならば、それは今までの行きがかりや何かにとらわれる考えはございません。違法であるという確信に達するならば、さらに国会の議に諮って、これを政府は撤回すべきものである。しかしこの解釈につきましては、八木君の御解釈と私の解釈は、いつまで議論いたしましても、違うのでありまして、私はこれが違法にあらずという解釈に立っておりますから、せっかく撤回しろというお話でございますが、撤回する意思はないのであります。
○藤本委員長 八木さん、お約束の時間が済んだのですが……。
○八木(一男)委員 総理大臣にお伺いします。その態度は非常に遺憾でございます。私は誠意を尽して、日本の政治を総理大臣が常道に戻してもらいたいために言った。ところが総理大臣は、いろいろ政府内や与党の事情に制約されてそれが言えない。言えないような勇気のない総理大臣は、総理大臣としての資格がない。また戦争中に——(「失敬だ」と呼ぶ者あり)戦争中に軍隊の勢力に押されてうやむやになったり、そういう過去の過誤に対して十分反省をしておられるはずだ。(「何を言うんだ」と呼ぶ者あり)だから、それならば……。
○藤本委員長 八木さんに申し上げます……。
○八木(一男)委員 ここ一両日をかして、その問題について、向うからそういう確信を持たれるならば、それだけの疑義があるなら、その問題について話し合おうというくらいのことがなければ、全然総理大臣としての誠意が認められないわけでございます。撤回についてそのような話があって、それだけ重要な疑問があるんなら、その審議を二、三日延ばして話し合おうということを言われるのが至当だ。日本の総理大臣がいろいろなものに制約さたて、ほんとうの総理大臣としての任務を遂行してない事案があるわけでございます。そういうことを考えていただきたい。この辺で何かがやがや言っておるが、総理大臣はほんとうに日本の政治を常道に戻すためにはっきりした決心をしていただきたい。二、三日の話し合いでいいのです。
○岸国務大臣 問題は、最初から論議されておるところの法律解釈の問題であります。法律解釈は、私が間違っておるという立場に立っておれば、これは撤回するにやぶさかでない。しかし正しいという見地に立っておる以上は、あくまでも正しいという信念に立ってこれの御審議を願うことが、私は総理大臣としての責任だと思います。そういう意味におきまして、あなたと私とは、この法律の解釈を異にしておるという事実は明瞭になりましたけれども、私はあくまでも私の解釈が正しい、こう考えております。
○八木(一男)委員 今の総理大臣の答弁では平行線ですから、質問はこの一問でやめます。しかし申し上げておきたいことは、それであれば、今後この法律の問題について、岸さんがいかに聰明であっても、また林さんがいかに法制局長官の任にあっても、日本の法律を二人だけで解釈するというわけにはいかない。だからいろいろな学者その他から見て、これが違法であるということになったら、たとい参議院に回ってあす上るという日であっても、これは態度を改めていただかなければならないと思う。今言った言に従って。それが一つ。それからそのようなことについて今話し合いの二、三日を持てと言ったことについても、それを聞かないという態度は、総理大臣として実に遺憾であると思う。そういうことは十分に考えていただかなければならない。この法律自体の内容について触れる時間はないけれども、この法律は健康保険法案あるいは船員保険法案あるいは厚生年金、すべてが反動的で、被保険者やあるいは医療担当者を圧迫する法律であります。これは日本の社会保障の後退であります。社会保障の方は国民皆保険をやるといって、さっき吉川君の質問でいろいろ御答弁になりましたけれども、国民健康保険をほんとうにやるためには、その財政難あるいは給付水準が少いという、それを解決しなければ、国民皆保険はできない。国庫負担の三割実現をやらないで、前の法律と同じでやれやれということは大うそです。そんなことはできない。そういうから宣伝をやる自民党であってはならない。言ったことはやるんだという自民党にならなければいけない。われわれ社会党もそのような態度になりますが、そうでなければ日本の政治は平等にならない。一つのものを百に宣伝したり、やると言ってやらなかったり、そういう政治はいけない。そういう意味で健康保険法は自民党の社会保障制度の推進という公約の裏返しである。ストップするものである。だからこれをまた今改心しないで押し通そうとするならば、自民党は社会保障制度を推進するという金看板をおろして、さらに逆行する態度であるということを天下に公表したことになるということを御覚悟いただきたいということを申し上げまして、質問を一応打ち切ります。
○藤本委員長 ただいまの八木君の御発言中、もし不穏当な点がありましたならば、速記録を取り調べまして適当に処置いたします。井堀繁雄君。
○井堀委員 時間の都合で、四点同時に質問いたしたいと思います。 一つは、先ほど吉川君からお尋ねになりました国民皆保険についてでありますが、国民皆保険の問題はいつ、どういう方法で実行されるということがまだあいまいでございますし、厚生大臣からは一応承わっておりますが、重要なことでございますから、確認する意味でお尋ねしておきたい。厚生大臣が去る予算分科会で、私の質問に対して明確にお答えになっております点は、三十五年度すなわち四年間を限度にして皆保険を実行いたし、その方法としてはまだ明らかにされておりませんけれども、この点は非常に重要な点だと思いますので、総理がそういう皆保険に対する具体的な問題について何か御決意があるなら、この際伺っておきたい。 次は老齢年金、母子年金の問題についても、これは総理みずから施政方針の演説の際にお述べになっておることでありますが、一体総理は老齢年金、母子年金制度というものをどのようにして実行に移されようとするものであるか。年金制度の問題はきわめて重要であるのみでなく、非常に問題の多いことでもございますので、ぜひ内閣の責任のある立場から、この点に対して明らかにしてもらう必要があると思います。 第三の問題は、今討議の中心をなしております健康保険の健全な発達を促進するために、政府はこの法律の改正を提案したと一面で述べ、また半面では、赤字の解消を計画するかのごとき矛盾した提案をなされておるのであります。これが矛盾であるかないかについても、われわれはもっと明確にいたしたいと思うのでありますが、まだ今のところでは明らかになっておりません。この点は前の国会におきまして、鳩山内閣の提案理由の中では赤字解消の問題を中心にして提案理由の説明がされ、あるいは質疑の中心もここに集約されておったのであります。今度は国民皆保険といい、あるいは社会保障制度の中核をなす医療保険制度の確立という、この内閣の重要政策とからんでこの問題が今論議されておるところであります。この点については時間がありますなら、またあとで一、二お尋ねいたしたいと思いますが、これはぜひこの機会に明らかにしてもらいたい。赤字の原因は、政府の提案理由の説明の中で明らかになっておりますように、政府管掌の健康保険組合は、おおむね中小企業の事業場に雇用されております労働者が被保険者であるという点に説明がしぼられておる。すなわち中小企業のもとにおける被保険者の報酬実額が低い。従って標準報酬が低い。このことは統計の上にも現われております。たとえば健康保険組合と政府管掌のものと比較いたしますと、格段の相違が現われておる。こういう問題の解決をこの際なさろうというのに、一方には社会保障制度による国民皆保険というスローガンと合せようとする。それはどういう形において健康保険というものを推進したらよいかということと、この赤字の問題とは切り離すことができないと思う。もし政府がその問題に誠意がありますならば、この政府管掌の健康保険のガンである零細事業場の労働者の低賃金、低収入を引き上げる政策が一方でとられなければならない。この完全雇用の点については、私は予算委員会で政府の所信を聞いておきましたが、この問題と非常に矛盾がございますので、この点についてはぜひ総理の御答弁を伺っておかなければならぬと思いまして、この点に対しましてあなたの所見を一つはっきりしていただきたい。 第四は厚生年金保険の改正案をめぐりましてでありますが、これはいろいろな点がございますけれども、あまり詳しく御存じでないと思いますから、一点だけ明確にしてもらおうと思います。それは厚生年金の積立金がかなり高額に上っております。この管理についてであります。これは社会保障制度審議会も政府にたびたび勧告をいたしておるところでありますが、この厚生年金の積立金を、厚生年金保険の目的に合致するように当然管理されていかなければならぬと思うのであります。それが大蔵省の運用部資金に統合されまして、大蔵省の金融政策に全く壟断されておるというこの事実を、この際総理は厚生年金保険の健全な発展のもとに、その管理を改めるという御意思があるかないか。この四の問題についてお答え願いたい。
○岸国務大臣 お答え申し上げます。第一の点につきましては、昭和三十五年度を目途として、国民皆保険を実施したい、こういう考えのもとに立っております。 それから第二の老齢年金制度の問題でありますが、これは政府としてはできるだけ早く総合的な国民年金制度というものを企画立案したい、こういう考えのもとに、三十二年度の予算に準備費を計上いたしております。私はこの準備をし、十分の調査をし、厚生省に国民年金制度調査委員を設置することとして、これに対する具体的な案をきめたい、かように考えております。 それから第三の健康保険の方の改正は、赤字解消のためかどうかという御質問でありますが、われわれは将来国民皆保険を目ざしておりますので、この健康保険制度というものが健全に合理的になていくということは、ぜひともこれをそういうふうに持っていかなければならぬ。しかるに従来いろいろな赤字を生じておりますこと、またいろいろなその制度の運用等につきまして、これが健全であり、合理的であるということは言えない情勢にございます。私はこれの健化、合理化をはかるためには、一面において国庫も相当額を負担して、健康保険財政の健全化をはかっている必要があるし、また医療の内容等を合理的、健全なものにするためには、患者にも一部を負担してもらうというふうなことも考えなければならぬ。その他あらゆる面からこの制度の健全化をはかっていきたいというのが私どもの趣旨でございます。 第四の厚生年金の積立金の運営についての御質問でありますが、これは御指摘のように相当額に及んでおります。そして大蔵省の資金運用部において運用していることは御指摘の通りであります。ただ厚生年金の積立金の本質に顧みまして、他の運用部資金とはやはり性質を異にいたしておりますので、少くとも一部は、この年金を積み立てている人に還元貸付をするような方法をとる必要があると思いますので、一部相当額のものをそういうふうに運用いたしおります。
○井堀委員 第一と第二の問題につきましてはちょっと関連したことがありますから、あとでお尋ねいたしたいと思いますが、第三の健康保険の赤字の問題につきましては、あなたはまだ十分お調べいただいたかどうかわかりませんが、ちょっと古いものでございますが、私の手元に三十一年六月の計数がございます。それによりますと、被保険者の数が政府管掌のものと組合管掌のものでは、組合管掌のものが非常に少い。こまかい数字はよしますが、政府のものは約五百五十万に対して組合保険のものは三百四十万、ところが保険料の収入の総額を見てみますと、それと逆比例している。政府管掌のものでも組合保険のものでもやや同額に近いものがある。一人当りの標準報酬を見ていきますと、政府管掌のものが一万一千五百五十五円、それが組合管掌になると一万七千五百三十四円という非常な開きを見せている。政府は最近医療の増高に基いて保険経理が苦しくなったと一方においては言い、他方においてはこのような賃金較差が保険財源の上に大きく現われてきたことの二つを取り上げているわけであります。私は医療の問題については政府管掌と組合管掌のものとを差別して扱うことは保険法の精神にそむくことですから、できぬことだと思う。そこで医療制限をしたり、あるいは医療担当者を疑ってみたり、取締りを強化するなどいろいろな工夫をしているようでありますが、私は本質を誤った改正ではないかという矛盾を痛感してお尋ねするのであります。このように赤字の原因が被保険者の報酬実額に非常な懸隔があることは明らかな事実でございます。この問題を解決することが政府としては健康保険の健全な発達をしていく第一歩でなければならぬ。このことはこの前の予算委員会で完全雇用について私は政府の所見をただしましたが、これに対する大蔵大臣の御答弁によりますると、今日の潜在失業者は九百八十二万という政府の統計であります。それに新しい労働力人口が百十万から百五十万の増加を見込まなければならぬ現状において、こうした雇用をどうして増大していくかということについては、政府は一般の経済あるいは金融財政政策などの総合的な経済施策によって雇用の拡大の基礎条件である企業の基盤を拡大していくということに集約されておるわけであります。ここで政府の言うところは、完全雇用の実現の道は雇用の基盤を拡大していく、こう言っておるわけです。でありますから、同じように社会保障制度の、すなわち医療保険の健全なる発達を行おうとすれば、この賃金較差の上に現われておる、小企業場のもとに雇用されておる労働者の賃金を解決するということも、同じ問題になってくると思うのであります。この点では全くうらはらな説明がここへ行われておるわけでありまして、このことは岸内閣として、社会政策と雇用政策との間に首尾一貫しないものが出てきている。この矛盾をお感じになっておられないか、この矛盾をどう解決されるかについて私は明らかにする必要がある。この問題が明らかになれば、この健康保険改正問題に対する論議の大部分は私は解消してくると思うのであります。この点あなたの責任ある御答弁を伺って、他はもう時間もないことですから多くを述べません。
○岸国務大臣 日本の中小企業の賃金のベースが、大企業のそれに比して低いという事実はお話の通りでありますが、これはなかなか一朝にして同じレベルに持っていくということは困難であると思います。日本の中小企業の実態を見ますと、そういうふうに賃金ベースが低い上に、企業全体が非常に弱い、また企業の利益も少い状態にあるわけでありまして、これは中小企業対策というものを一本立てて、政府としては中小企業の育成をはかっていかなければならないのでありますが、それはなかなか一日にして解決する問題ではないと私は思います。従いましてその賃金の間に相当な較差があるという現実に基きまして、政府管掌の健康保険と組合の健康保険との間に、その経済状況も、いろんな——それだけが原因じゃありませんが、もちろんあるわけでありまして、従って政府管掌の何に対しては今回のあれにおきまして、一応政府から三十億というような交付金もやり、これの健全化をはかろうという考え方をしておるわけでございます。
○井堀委員 この問題は、今総理の御答弁の中で明らかになりましたように、やはり健康保険の問題は中小企業対策に関連してくると思うのです。この問題を解決しないで、その結果として現われた問題を無理をして解決をしようとするものですから、医療担当者が無理をし、あるいは制限医療をやるような、保険の精神を破壊するような改正案にしわ寄せしてくる。この点は私はよほど政府は責任を持って対策を練るべきものだと思う。まあ時間がございませんから多くは論議いたしませんが、ここに大事な点がある。 最後にお尋ねをいたしておきたいと思いますのは、先ほど八木君がちょっと言及をされておりました問題で、私は角度を多少変えてお尋ねをいたしたいと思います。それは社会保障制度審議会設置法の第二条の二項の規定について今お尋ねがありました。これはもっぱらこの健康保険法、厚生年金保険法、船員保険の、その提案が違法ではないか、私もそういう考え方を持つものでありますが、このことについては今あなたと八木君の間に見解の相違があるようでありますから、この見解を一致させるということは、どういう方法か別の道をとらなければいかぬと思いますが、そうでなくきわめて明確なものが一つございます。それは今あなたの御答弁をされた中にあるわけであります。それは第一にお尋ねいたしました国民皆保険——国民皆保険というのは従来の政府はいずれもこの問題に言及した。しかも今厚生大臣が私に答弁いたしましたものをあなたが確認なさいましたように、昭和三十五年、すなわち四カ年の間に実現いたしたいという画期的な御計画が発表になりました。できるかできないかは私ども長く論議するところではない。そういう計画がここに明らかにされておる。 いま一つ老齢年金、母子年金制度の問題については、あなたも今はっきりいたしましたように、政府はその創設のための調査と企画を行うために予算を提案し、その予算は衆議院を一応通過いたしております。これは既成の事実であります。このことは提案理由の中にも、あなたの施政方針の中にも、今の御答弁の中にも繰り返して明らかにされております。ちなみにここに提案理由書がございますから読んでみましょう。国民年金制度創設準備に必要なる経費ということで金額は一千七十万程度でありますが、その説明にこう書いてある。「老齢年金及び母子年金制度の創設に必要な準備を行うため必要な調査及び企画を行う経費と年金受給者等実態調査、」云々と書いてある。この文書にも明らかであります。今のあなたの答弁の中にもありましたように、政府は新しい年金制度、社会保障制度の中における医療制度と年金制度に対する画期的なものを提案されたわけであります。ここの二条の中にある、「内閣総理大臣及び関係各大臣は、社会保障に関する企画、立法又は運営の大綱に関しては、あらかじめ、審議会の意見を求めなければならない。」と政府の義務を規定してあるわけであります。義務規定であります。でありますからこれは企画ではないということはあなたの説明でも、ここの文書にもあるようにちゃんと出ておる。この点はこの前法制局長官に答弁を求めたのですけれども、まだ御言及がなかったので答弁が保留されておりました点であります。しかし何も私が聞かなくてもだれでもわかるように、企画という言葉は字引を引いてみても、いろいろな意見を聞いてみますけれども、企画というものに対する法律的用語はないようであります。企画というものは日本の字引では、企て、もくろみ、計画としてある。でありますから政府は明らかに社会保障制度のうちの二つの重要な部分に対する企画を企てた——ダブりますが、企画をなさったことに間違いない。そういう企画は、当然社会保障制度審議会に答申をされ、その結果を国会にそれぞれ手続をしてくるべきことでありまして、これはもう明らかに違反です。総理大臣は白を黒とされるか、一つ明確に御答弁願いたい。
○岸国務大臣 年金制度の問題は先ほども申し上げましたように、これの準備として一種の調査をやりまして、一つの計画ができましたら、その大綱を委員会にかけるというのが正しいだろうと思います。ただ、今の三十二年度の予算には、そういう準備をする意味における経費を計上しておるだけでありまして、これをもって企画の大綱というわけにはいかぬと思います。 国民皆保険のなにも、今までの説明は四カ年の計画でやるわけでありますが、これに関しましては、御承知の通りすでに社会保障制度審議会でもって政府に勧告をしておるものがあるのであります。今私どもが四カ年のなにをもって三十五年度までに完成するつもりであるということを申しておりますが、いわゆる企画の大綱という問題でなしに、もう少し内容を持ったものでなければ大綱と言うことはできないかと思います。ただ、今の勧告との関係がございますので、この皆保険制度についての企画ができ、企画の大綱というものをさらに定めて、これを諮問すべきであるか、あるいは勧告の線に沿うてやるならばその必要がないか、もう少し法律的に研究してみる必要があると思います。 年金の方の問題は先ほど答えましたように、調査して企画ができましたら企画の大綱をかけるつもりでおります。
○藤本委員長 井堀さん、恐縮ですが時間が……。
○井堀委員 恐縮ですが非常に大事なことですから……。先ほど、立法の大綱については見解の相違でお逃げになることについては議論が残りますけれども、今あなたが御答弁になったことで明らかなように、それから、あなたはちょっと誤解しておるようでありますが、第二条の本文の方では、審議会の職能を規定してあるわけです。二項の方は、政府の関係各大臣の義務を規定してあるわけであります。誤解のないようにしてもらいたいと思います。そこで第二項について私がお尋ねしておるのであります。社会保障制度審議会がどういう答申をするかということは、審議会自身の問題としてこれは問うところではありません。ここで私のあなたにお尋ねしておりますのは、この中にある企画、立法ですが、立法はしてないわけですね。今の二つの問題は、健康保険の問題についても出ておりますけれども、これはしばらく議論を後にいたしましても、年金制度の問題は全く画期的なものです。これはあなたは、先ほど準備のための調査と言っておる。しかし企画とここでうたっておるし、あなたも説明しておる。そこで企画という言葉が問題になるわけでございます。企画ということはどういうことかと専門家の意見を聞いたわけだが、企画の大綱といえば、これは少くとも計画、もくろみ、企てですから、そういう問題をあなたがお考えになるときは、必ずこの委員会におかけになる。 もう一つ総理大臣にお尋ねいたしますが、厚生大臣の説明でも、あるいは予算書の説明でも明らかにしておりますけれども、この前は七人委員会というものを、今度はこのために五人委員会を作ると言っております。五人委員会、私はそういう委員会をむやみに作ることがよいか悪いかということも、今日行政整理がやかましい時代に、幾つも幾つもそういう委員会を作ることがいいか悪いかということも、議論になりますけれども、そういう委員会まで作ろうということをここに言っておる以上は、単なる準備などとは言えません。だからこういうことは言葉の先で言いのがれるということではなしに、私は当然社会保障制度審議会のような権威のある機関を、しかも総理大臣、あなたの所管に属する公式の機関であります。こういうエキスパートがたくさんいる。ここに専門委員会も設けられることになっており、幹事もおられるわけですから、当然五人委員会、七人委員会、大臣がめいめいそういう諮問機関を持つようになされなくとも、れっきとしたこういう機関があるわけでありますから、この機関におかけになるということが正しい行き方ではないか。この点に対しては、総理大臣どういうお考えですか。それから今の企画について、よくお読み下されば、あなたのようなお方ならすぐおわかりだと思うのです。
○岸国務大臣 社会保障制度審議会は、この法律で設けられておる権威のある委員会でございますから、社会保障制度のことに関して、必要があれば何でもこれにかけることは必要であると思います。ただいろいろな関係上、各大臣がその責任において、さらに自分の調査諮問をするために委員会等を置く場合もありますけれども、しかし、もちろんこの社会保障制度に関する限りにおきましては、ここに規定してあるような事項を定める場合におきましては、やはりこれに審議しなければならぬということは言うを待ちません。 そこで今企画の大綱という問題であります。今御指摘になっております二条二項の問題でありますが、普通これは、もちろん企画というものは立法と並べて書いてあるのでありますから、立法の大綱と企画の大綱というものは別にあるわけであります。しかし、多くの場合、政府が企画しまして、これをやるという場合においては、立法事項を伴う場合が多いのですから、立法の大綱という場合に、事実問題としては含まれる場合が非常に多いと思います。こうした企画の大綱というものが立法の大綱と別にあげてあるのですから、企画の大綱というものを定める場合においては、これを何に諮問することにしなければならぬと思います。それでさっきから問題になっております年金制度の問題は、今われわれが出しておりますのは、これは一つの調査準備の予算であり、従って調査準備をする意味におきまして、それに必要なこの調査を進めていきます上におきまして、ある委員を設けるということは、これはもちろん厚生大臣がやっていいことと思います。調査された結果一つの企画の大綱ができましたら、それを政府の企画の大綱として実行するという場合には、この社会保障制度審議会にかけて、そして国会の御承認を得るということに私はなると思います。ただちょっと、ここでいきなり問題になっておるのでよくわかりませんが、一項と二項との関係において、一項においてこの審議会が研究して勧告をしておる、その勧告に従って政府がやる場合に、なお二項の諮問を要するかといえば、私はそれは必要ないんじゃないか、こういうことを考えております。ただ国民皆保険を三十五年度を目標として実施したいというわれわれの意見をさっきから申し述べておりますが、なかなか大綱というのは、そんなぼんやりしたことではなしに、やはり内容をもう少し具体的に持っておるものを指すんだろう、こういうふうに私は考えております。
○井堀委員 時間がございませんし、まだあと岡委員の質問もございますから遠慮をいたしたいと思いますが、非常に大事な点でありますから、もう一点だけ明確にしておきたいと思います。今あなたの御答弁によりますと、政府の今の年金制度に対する問題は、もくろみでもなければ、企てでもない。ただ漫然とした調査だというように苦しい御答弁だと思うのですが、そういうふうになりますと、あなたの施政方針に述べられた年金問題に対する発言は重大になってくるのです。どちらをとるかにせなければいけない。私はこういうことはうかつにして諮問しなかったというふうに見るべきじゃないかと思う。だから、したから別に損をすることもなければ、めんどうなことがあるわけでもないのですから、うかつにしなかった、事務当局の手落ちであったということに考える方が実際的ではないかと思ってお尋ねしておる。大事なところです。あなたの所信に関する問題。一方は施政方針で堂々とあなたは本会議で述べられた。それがただ単にほんの申しわけの、たくらみでもなければ、企てもない、ほんの気休めの調査などというふうに訂正なさるなら重大だと思う。私どもは、政策の対決でありますから容赦会釈なくこの点はやって参ります。この点は大事なことですから不意打ちは食わしたくない。もう一ぺんあなたの発言を求めます。
○岸国務大臣 私はいい加減なことだという意味で申し上げたわけじゃないのであります。ただこれの法律に言う企画の大綱というものは、企画の内容を具体的に示したものの大綱であろうと思うのです。私どもは、この国会において予算を請求して、そうして調査の準備に関する何としてやるんだということは、いろいろな調査をし、そうしてその調査は、調査のしっぱなしじゃなしに、その結論として一つの企画ができると思うのです。その企画の大綱を審議会にかけて決定すればいいのであって、一応企画の案は、準備の調査の結果生まれると思いますが、それを最後に決定する場合においては審議会にかける、こういうふうに私の意思を申し上げたわけであります。
○井堀委員 この問題は、明確にならないままで残念ですけれども、時間の関係上おきたいと思いますが、この際一言だけ希望しておきたいと思います。これは、社会保障制度審議会という機関を軽視する傾向が非常にあるのです。これはよくないことでありますとともに、そういうことを怠りますことは、民主主義の法則を説いても、みずからその機関を無視したり、軽視したりすることになる。こういうことは決して軽いわざではない。一つの問題は、私があなたにお尋ねいたしましたように、あなたの国会における所信の大事な、しかも党としても大事な基本的な政策の一つであります。それが予算の点にきますとぐらつくというような、そういうことでなくして、やはり首尾一貫した、二大政党の場合においては政党の政策というものは強く一貫して貫くべきものではないか。あまりあちらこちらへいったというような調子でやるべきではない。もしそういうことになりますと政策上の論議というものは詭弁と御都合主義でぼやけてしまう。やはり国会の正常な運営は政策をきびしく対決させて、そこで火花の散るような論議ができるような事態を作ることが必要である。そのためには首尾一貫した主張をなすべきである。この点について私は非常に遺憾の意を表しておきたいと思います。 それから先ほど三つ述べました中で厚生年金の積立金については、あなたがおっしゃられるように額面通りとっていきたい。還元融資をぜひ一つ早々に実施されることを、次の予算ないし行政上の手続で実施されることを強く希望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
○藤本委員長 岡良一君。
○岡委員 総理も御存じのように、この健康保険法の改正案が衆議院に提出をされましたのは、昨年の二月の下旬であります。それからえんえん一カ年にわたりまして、われわれもおそらく記録的な長時間をこの審議に費しまして、いよいよ私が最後の質問者ということに相なりました。総理も聞けば御夕食がまだだということで、まことに恐縮でありまするが、一つ総理のいつも自負せられる健康と若さでしばらくごしんぼう願いたいと思います。それにつきまして、先ほど来岡本委員と大蔵大臣の応酬があり、引き続きまた同僚委員と総理との応酬がありまして、若干不分明な点がありましたので、あらかじめその点から明らかに御所信を伺いたいと思います。 第一の問題は、いわゆる社会保障制度審議会の権威を尊重して、あらゆる社会保障立法については法の厳格な解釈のもとに諮問にゆだぬべきではないかという考えでありますが、それはそうといたしまして、本来社会保障制度審議会は、今日まできわめて時宜に適した勧告を数次出しておるわけであります。ところがこの社会保障制度審議会が総理大臣に提出をいたしましたもろもろの勧告というものが、私ども率直に申しまして誠意をもって尊重されておらない。私はここにかえって大きな問題があるのではないかと思うのであります。なぜせっかく保障制度審議会がりっぱな勧告を出し、国民もその実現を期待しながらこれが実現に至らぬかと申しますと、閣内において総理大臣の手元に提出をされた勧告というものを消化して立法化するという手順が欠けております。社会保障関係の立法はあるいは厚生大臣、労働大臣、財政的には大蔵大臣、そのほか地方自治庁長官等各分野にわたっておるわけであります。勧告が発せられたならば、総理大臣はこれを受け取って関係閣僚の議にゆだねて、これを法案として提出すべきかいなかなどということについて誠意のある真剣な受け取り方をしていただかないと、せっかくの審議会の勧告が生きないという結果になろうと思うのでありまするが、今後審議会の勧告に対する政府の取扱いとしてはこのような御措置をとってしかるべしと私は思うのであります。この点総理の御所信を承わりたいと思います。
○岸国務大臣 社会保障制度審議会は法律によって設置されておるきわめて権威のある審議会であること申し上げるまでもありません。そうして非常に御勉強になりまして広範な勧告の出ておりますことも私承知いたしております。これを政府としてはもちろん責任をもって尊重してその実現をはかるように努力すべきことは私は当然であると思います。ただ国家財政の見地もありましょうし、今申しましたように非常に広範なものでいろいろな点に触れておる関係上、政府部内の関係を調整する必要の問題もありましょうし、またやるにしましても年度を考えてやるという問題もございましょうし、いずれもありますけれども、私どもはこの権威ある審議会の勧告につきましては誠意をもってその実現を考えて参りたい、かように考えております。
○岡委員 たとえば社会保障制度審議会が一昨年いわゆる年金制度の整備統合に関する意見を政府の方に出しております。ところがその後かえって一部団体の年金制度を別途に作るというような措置がとられまして、勧告に逆行するような事態さえ起っているのであります。こういう施策というものは、やはり結局社会保障制度審議会の勧告というものを尊重する誠意が内閣において足りない結果であると思いますので、どうかぜひとも関係閣僚は審議会の勧告についてはやはり内閣一本の統一的な立場においてこれを善処するというふうにお取り扱いを願いたいと存じます。 なお第二点は、これも岡本委員の質問にありました結核の問題でありますが、明らかになりましたように、現在政府管掌の健康保険における医療報酬の支払いの中で約三五%近いものが結核の医療報酬として支払われており、あるいは生活保護法の医療補助費二百億の中で六〇%が結核の医療のために使われております。国民健康保険におきましてもやはり一八%程度が結核の報酬に使われている。このような形で現行の医療保険制度のみならず、あるいは生活保護法というような現在あるところの日本の社会保障制度が、財政的には結核に対する医療報酬の支払いが多過ぎるということで大きくゆすぶられているという現状であります。この点についてもいろいろ御所信もありましたが、私どもは結核予防法の抜本的改正が必要ではないかと思う。なるほど厚生大臣は本年度できるだけ多くに集団検診をやって早期発見に努めると仰せられますが、発見をしたものを治療してやらなければ不安を与えるにとどまるわけであります。従いまして結核予防法を抜本的に改正をして——現在はその中で療養費がわずかに十八億七千万円であります。あとが全部健康保険や生活保護法の医療費負担になっているわけであります。でありますから抜本的に改正をして、国の負担区分をもっと引き上げる、あるいは生活保護法並みに国が八、地方団体二くらいに引き上げる。しかも現在は療養費の支出負担は任意になっておりまするが、結核という病気の実態にかんがみましても個人の過失に基くものではありませんから、国なり公共団体が義務負担をする、ここまで抜本的な改正をしていただければ、日本の結核も頭打ちの状態でありますから、今が絶好のチャンスと私は思うのでありまするが、ここまで大きく積極的に前進をして結核問題の解決をおはかりになる御意思がないかどうか、この点をお尋ねいたしたい。
○岸国務大臣 結核対策は、私は日本の結核の現状を見ましてきわめて政府として重大な問題であると思います。これが対策を、先ほど来御議論がありましたように、予防に大いに力を入れなければならぬ。従って早期に発見するようにして早期に治療をしていくということも必要でありましょうし、あるいは結核はいろいろな生活環境によるものが非常に多いですから、生活環境全体の施設をして、そういう環境をなくするということも必要でありましょうし、あるいは重症の者に対しては今の療養所で保養さすということも必要でありましょう。あらゆる面から見まして、政府としては結核をなくするという方向に向ってできるだけの財政的な措置を講じていくべきである、かように考えております。
○岡委員 せっかく厚生省の最近発表された白書を見ましても、ボーダーラインの階層が約百九十万世帯をこえている。総人口にして一千万人近いこのボーダーラインの階層にもし結核が訪れたならば、たちまち生活保護法の対象になることは必至であります。こういうような状態で、しかも日本の若き労働人口を虫ばむ最も大きなこの結核問題でありまするから、できるだけ積極的に思い切った施策を講じてもらいたいと私は心からお願をいたします。なお若干の時間がありますので、これまでわれわれとの間にかわされた応酬を通じて、政府の社会保障そのものに対する根本的な御所信について、二、三点お承わりをいたしたいと存じます。 第一点は、なるほど鳩山内閣以来、政府は、社会保障制度の実現、充実、強化ということは、まことに重点施策としてうたわれておられます。本年度予算においても、政府の言い分の通りであれば相当な力こぶを入れたということに相なっておるのでありますが、しかし予算面から見ましては、本年度の予算は、約千三百四十億ばかりの増になっておる。ところがその中でも、ほんとうに政策の裏づけとなる予算というものは、大体推定して六百億前後かと存じます。あとはどうしても当然支出しなければならない費用、義務教育国庫負担分とか、あるいは特殊債務の処理の費用とか、もろもろの費用であります。その六百億に満たないいわゆる政策予算の中では、わずかに社会保障制度のために増額された部分というものは十二%程度にとどまっておるわけです。従って、予算規模全体の増額から見れば一〇%にも満ちません。このような程度にしか社会保障に対する予算的な御努力がない。これでは、社会保障制度の充実という政府のかけ声というものも一片のから手形ではないかと、国民は批判をいたしておるのでありますが、この点についての総理の御所信を承わりたい。
○岸国務大臣 もちろん社会保障制度の拡充の問題につきましてはいろいろな御批判もあろうかと思いますが、今度の予算におきまして約九十億程度の増額をいたしております。なお社会保障制度の将来の完備に向って、たとえば今御議論がありました国民皆保険制度をやるとか、あるいは年金制度の調査、準備をするとかいうふうな問題が——今年度予算には比較的少いものが現われておりますけれども、今後これが計画通り進んでいきますならば、相当な財政的負担が計上されることになりますし、私どもはあくまで、やはり社会保障制度の完備ということに対しましては誠意を持って、今後におきましても処して参りたい、かように考えております。
○岡委員 予算の総額のみならず、予算そのものの内容について分析をいたしましても、端的に申しますれば、本年度の社会保障関係費は、総額千二百余億であります。その中で、失業対策が三百五、六十億、生活保護法の費用が三百五、六十億、従って、社会保障関係費総額の中で、失業と貧困に対する費用がやがて七〇%に近いのであります。このことは、言葉をかえて言えば、結局吉田内閣以来の政策の貧困から生まれてきた失業と、そうして国民の貧窮に対する対策の予算に追われておるではないか、これでは積極的な福祉国家という建前のもとにおける社会保障制度への前進は期待できないではないか。政府の計上されておる予算は、なるほど前年度に比べて九十億余の増となっておるかもしれませんが、その内容に至ってはこのような形で、政策の貧困から生まれた、いわゆる社会悪に対する慈恵的な政策に終始して、従って、建設的な社会保険等の充実に対する力をさき得ない。ここに私は、政府の社会保障制度に対する大きな、根本的な矛盾があるのではないか、こう考えておるのでありますが、この点についての総理の御所信を承わりたい。
○岸国務大臣 先ほども申し上げましたように、われわれは社会保障制度の充実整備ということを目ざして、一面においては、国民医療に関する制度を完備したい、医療の立場における社会保障を完備していくということを考え、また老齢の人やあるいは母子、夫をなくして子供を持っている人々に対する年金制度を拡充整備していくというような点も考えております。もちろん各般の問題で、今岡君の言われるように、ただ貧困者とあるいは失業者だけに対して施策するのじゃなしに、さらに福祉国家を目ざして、国民の病気の問題やあるいは老齢や社会的な不幸に立っておる者に対して、広く積極的に保障制度を拡充するということは必要であり、われわれもそれを願っておるわけであります。
○岡委員 私は社会保障制度を前進せしめるとすれば、やはり社会保険というものがこの制度の支柱になるべきだと思うのであります。これは社会福祉国家としての先進的な諸国の事例に徴しましても、あるいは日本の生活保護法とかあるいは失業対策に要する費用というものは、国の社会保障関係の予算の中ではきわめて小さいウェートしか占めておらない。ここに日本が大きく学ばねばならない、あるいは日本の社会保障制度を前進せしめねばならない大きなポイントがあろうかと思います。そこで、とにかく今度の健康保険法の改正でありますが、改正では、総理も先般滝井委員の質問に答えて、やはり社会保険に対して、特に医療保険に対して、政府としてもできるだけ国庫の負担を強化したいという御意思を御表明になりました。ところが、今度はわずかに三十億しか国庫負担がない。そこで十二億は一部負担でいこう、十一億は標準報酬の引き上げである、あるいは三等親以外は適用を除外するということで三億ばかりの金を出そう、こういうことになっておるわけであります。私は総理がほんとうに、国民の医療、特に働く人たちの健康を守ろう——この人たちにとっては、健康は生活、生産の元手でありますから、これに対する保障を与えようとするのに、なぜ国庫負担は三十億を限度とするという形で、今日関係団体が反対をしておる一部負担等を強行せられようとするのか、私はその真意を実は理解するに苦しんでおるのでありますが、この点についての御所信を承わりたい。
○岸国務大臣 健康保険制度の今回の改正につきましては、私どもは健康保険制度というものを健全にするという立場に立って、あらゆる点からこれを検討して、結果として国庫が三十億の負担をし、一部患者の負担を願い、その他あらゆる面においてこの健康保険の健全化、合理化というものの立て方を考えておるわけであります。もちろん三十億というのは、今年度及び来年度における政府の国庫負担の額を定めておるわけでありまして、これにつきましては、一応これによって健康保険制度の状態を見た上において、それが国庫負担が少いという場合であればさらにこれを増額するというような問題もございましょうし、これがまた健全にならないということであれば健全にする方法を考えていかなければなりませんが、一応私どもは今申したような施策によって、健康保険が一応合理的な基礎のもとに運用できるじゃないかという見地に立って、これを定めておるわけであります。
○岡委員 時間がありませんから、あと一問だけでやめます。 そのように、政府の方では、かわるがわるの大臣も御答弁になっておられます。そこで井堀君からは、今日の中小企業の労働者を対象としておる政府管掌保険——しかも最近におけるいろいろな労働情勢の変化等を見ましても、ますます中小企業に労働人口が殺到しておる。しかも大経営と小経営の賃金の較差はますます増大されておるというような実態から、私どもは、このようなことで一部負担を強行されるということは、真に社会保障を理解される態度とは思えません。そこで最後に、このように中小企業と大経営の較差、ひいてはそれが雇用の実態に大きな断層を起しておるということと同時に、やはり一方では設備資金が昨年は七千億に近く、ことしは八千億に近いというような飛躍的な上昇をやっております。経済規模が一〇%、一二%というふうに三十年、三十一年は飛躍的な上昇をやっておる。しかしこれを消費する国内における消費市場というものを不毛の荒れ野原にしておいては私は真の経済の発展はできないと思う。そこで問題は、やはり社会保障を充実して中小企業の労働者をかかえるだけではなくて、国の経済政策としてもやはり国内における購売力を培養する。八千円未満の賃金が全労働者のほとんど六五%であるという。これは政府の三十一年の統計数字です。そういうような大きな、新しい貧困層を放置して国民経済と国民生活の断層がますます増大していく姿をそのままにして、彼らの生産と生活の源泉である健康を守る制度について一部負担を強行する、こういうことで一体国内市場が充実するか、今日における生産の増大に伴う消費市場としての有力な国内市場をまかなうという態勢、政策から見て、私はこの保険法の改正というものは大きな矛盾をはらんでおるものではないか、このように思うのでありますが、この点についての総理の御所信を承わりたい。
○岸国務大臣 中小企業の労働条件が大企業のそれに比して劣っておるというこの実態、しかも中小企業というものは日本の産業構成の上から申しますると非常に重要な部分を占めておるということを考えまして、中小企業対策としては、別に政府としてはこれを考えていかなければならないものが多々あると思います。私どもは一方において大企業、ことに基礎産業の確立に向って力を入れております。しかしこれは電気とかあるいは製鉄とかいうふうな基礎産業が確立されることは、日本の産業に関係しておる中小企業の面におきましてもやはり関連があるわけでありますし、また今の中小企業が非常に困っておる金融その他の問題についても、別途中小企業対策というものを立てまして、中小企業全体が繁栄していくように育成しなければならぬと思います。そういうように中小企業が育成、繁栄するということになれば、自然にその労働条件も改善されていく。その企業自体が今のままの弱い、薄弱なものであってはなかなかこの状態は改善されないと思います。こういうものを総合的に考えて参ることが、やはり日本の産業構成から申せば特に必要である、かように考えておる次第であります。
○岡委員 最後に、質問ではありません、一言だけ……。(「討論ならよせ」と呼び、その他発言する者あり)質問ではありませんから……。政府の御所信に対しては、ことごとく私はきわめて不満であります。大経営と中小企業との断層、それに伴う雇用の大きな不均衡というものは拡大均衡どころか不均衡を増大する。こういう形における社会保障制度——これに逆行するような措置をとられることには私は不満の意を表明して質問を終えます。
○藤本委員長 加藤委員。
○加藤(鐐)委員 私はこの前自由民主党を代表いたしましてごく総括的に政府の所信をただし、また重複したる点があるかもしれませんが、世間、健康保険等に対しまして一部誤解しておるものもあるのでありまするがゆえに、まとめてこの機会において総理及び厚生大臣の御答弁を得れば幸いとするものであります。 第一に私が伺いたいことは、社会保障、ことに疾病における社会保障に対しまして政府は今後機構の拡大強化と申しまするか、内容の充実に力を注がなければならぬ、こう思います。この気持はよくわかっておるのでありますが、ことしの予算に見ましてもただいま御質問中にありましたように、いろいろ社会保障に力を入れておられることはわれわれも了といたす次第でありまするが、まだこれは序幕であるのであります。由来保守党は生産を拡大し貿易を振興させまして外貨を獲得して国民の富を大ならしめ、そして生活を向上し内容を充実させるという気持であったのでありまするが、しかしながら一面においてその陰におって哀れむべき状態にあるのでありますがゆえに、ここに社会保障、ことに疾病の場合においては一そうそうでありますがゆえに、政府がいろいろ施策を講ぜられまして、今回の予算にこれを計上されましたが、われわれはただいま申したように、まことに喜ぶべき現象であると思いますが、これは序幕でありまして、さらに進んで積極的にこれらの方策を講ぜられなければならない。すなわちわれわれといたしましては、これが保守党の脱皮である、かように存ずるのであります。 そこで私はここで伺いますことは、どういう施策をどうするとか、どの方面に金をどう出すとか、そういう具体的なことを伺うつもりはないのでありまして、私は政府の熱意、信念をこの機会にできるだけこの委員会を通じて天下に声明していただきたいと思うのでございます。これは総理大臣にお願いいたします。
○岸国務大臣 社会保障制度の整備拡充ということは、福祉国家を作り上げることを目標にいたしておりますわれわれとしてはきわめて重要なものでございます。特に疾病の場合における医療のこの制度を完備するということはきわめて必要でありまして、この意味において今の健康保険の保険制度に均霑しない数千の人をわれわれは全部保険制度によって均霑するようにしていきたい。いわゆる国民皆保険ということをわれわれが考えて、そういう人を網羅した制度にしたいということを表明しておるのもそこにあるわけであります。なお、あらゆる面において保守党がこの社会保障制度について熱意を持ち、そうしてこれの解決について責任を持って進んでいくということを示すことは、私の念願しておる保守党のあり方として、そうなくてはならないという信念に立っておるわけであります。
○加藤(鐐)委員 ただいまの総理の御言明は、まことに私も了といたすところであります。どうか一つ積極的に非常な熱意と信念のもとに御実行に相なるよう切望してやまない次第であります。 次に伺いたいと思いますることは、先刻来御議論も御質問もありました健康保険に対しまして、医療給付の定率を、国庫負担額を法文化する意思がないかどうかということであるのであります。すなわち、今回の予算にも三十億円の金が計上してあるのでございますけれども、これを積極的に法文化するという、補助するというのでなくして、国家負担にする意思があるかないか、これは一つ御研究を十分願いたいと思います。健康保険は三十年の歳月を経てだんだんと改善されて参りましたけれども私をもってすればなお不完全な点が多々あるのでございます。ことに健康保険の問題について私が遺憾といたしておりますことは、歴代の内閣が、砕けて申しますれば、人のふんどしで相撲をとっているというような状態であるのでございます。事業者の掛金、被保険者の掛金及び医療担当者である医者の犠牲によってやっておられるのでありまして、政府は何も使わなかった、金を出さなかった、看板を持っておるたけである。もちろんだんだん事務費を出して参るように相なりましたし、ことに赤字になりまして、医療が進歩し、被保険者が——だんだん病人が多くなりましたがために赤字が生ずるようになりましたから、これを補助する、補てんするという意味におきまして、昨日来御議論もありましたように、ことしも来年も三十億出しておるのでございますが、これはただ弥縫策、消極政策であるのでありまして、私は積極的に国家が負担する、こういう気持がなけらねばならぬと思います。これもただいますぐ国庫が負担するということはどれだけ負担するかというような額などはきめられるべきものではないのでございますがゆえに、私はこういう覚悟がなけらねばならぬ、こう思うのであります。いやしくも国家が国民保険、健康保険をやる以上は、今までのようではいけないのでございます。昨日来のいろいろ御質問を承わっておると、健康保険財政の健全化ということのみ言っておられる。私どもはさらに進んで健康保険の健全化をはからねばならぬと思います。もちろんこれは財政の伴うことでございまして、ただいまどうしてくれというようなことは、私はなかなか御答弁もむずかしいと存じますがゆえに、そういう熱意を持って一つ十分御考究を願いたいと思っておるのでございます。これに対しまして総理の御所見を承わりたいと思います。
○岸国務大臣 健康保険制度の健全化、合理化という意味においてこの健康保険というものをより一そう健全なものにしていくという必要があると思うのでありまして、それは財政面における健康保険財政というものを健全にするということももちろんありましょうが、さらに医療の内容であるとかあるいはいろいろな点につきまして、これを完備していかなければならぬこと、言うをまたないのでありまして、従って国庫が一部の金額を負担するという考えを明らかにするということは理論として私自身は賛成であります。ただそれを金額をどういうふうに定めるか、それを法文等においてどの程度に明確にするかというような点につきましては、なお関係方面と十分に研究をしてみたいと思いますが、そういう方向に向って研究をしてみたい、こう思っております。
○加藤(鐐)委員 私は総理といたしまして、ただいま御即答を願うような考えは少しもなかったのでありますが、私はそういう熱意を持ってただ月並みの調査だとか、月並みの考究をするということでなくして、そういう熱意を持って一つ御研究を願いたい。しかしてなるべくすみやかなる機会において国庫が補助するというような消極的でなくして、国庫みずから負担してこの社会保障、疾病保障をするのであるという意気を示していただくように御研究を願いたいと思います。 次に伺いたいと思いますることは単価の問題でございます。先刻来いろいろ御議論がございました。単価をどうするかという問題は、なかなか財政上むずかしい問題であることは申すまでもないのであります。しかしながら先刻来いろいろ御質疑がありましたごとく、これは六、七年前にできたものでありまして、その後いろいろの情勢の変化、物価の高騰などがございまして、これでやれといっても一体できるかどうかという問題でございます。今全国の医師会がいろいろ反対運動を起しておるのも、単価の問題が大部分であるのでございます。これはこの保険財政の健全化をはかるがために、いろいろの方法を講ぜられましたけれども、その犠牲となるものはだれであるかというと、医療担当者であることは申すまでもないのであります。今さら私がここでかれこれ申すまでもなく、公立病院、赤十字病院、そういう病院は、病院は作ってもらう、設備はしてもらう、いろいろの機械は買ってもらう、税金はただである。しかして保険経済においては赤字が出ておるというこの事実は何を物語っておるか、医者の方は設備をする、あるいは舎屋を作らねばならぬ、税金も払わねばならぬ。そうしてどうやらやっていくというのは、生存のためにやむを得ず努力しておるのでありますがゆえに、この犠牲は多く医者に向って払われておるのであります。これをどうするか。単価をそのままにしておきますれば、これが一切のしわは医療担当者に集まるということであるのでございます。これをどうするか、そのままにしんぼうして彼らがからだを粉にして働いておるのを見ておるということになりますと、一体どうするかという問題であります。今後国民皆保険というようなことになりますれば、彼らはただいま声を大にしておるのは、昔の医者と違いまして生存上の問題であるのであります。医者の生存上の問題をそのまま軽く見ておるということは、一体どうなるかという問題であるのでございます。すなわちどこかに生きる道を通ぜなければならぬことが、医療内容の低下ということに相なりはすまいか、こう思うのでございます。しかしながらこの問題も、先刻お話がありましたごとく、一円単価を上げるということも容易ならざる財政上の負担でございまするが、これをどうするか。医療の内容を向上させ、医者をして喜んで医療の担当者ならしめるには、どうした方がいいか。すなわち医療本位において、これは相当考うべき問題であるのでございまして、これは大蔵大臣が財政上の問題で御心配なさるのは当然でありまするが、ひとり大蔵大臣のみならず政府全体の重大なる責任問題であるのでございまするがゆえに、これも一つ十分熱意をもって御考究を願いたいと思いまするが、これに対して総理及び厚生大臣の御所見を承われれば幸甚でございます。
○岸国務大臣 この一点単価の問題にきつましては、先刻来ここでも議論がありましたように、また厚生大臣がかねて所信を明らかにいたしておりますように、厚生省におきまして、一応十分に検討をいたして、そうしてその検討によってできたものを最後に閣議におきまして内閣の責任において決定をいたしたいと思います。今お話のように、医療担当者の立場も十分考えなければなりません。と同時に国庫の財政上のことも考えなければなりませんし、他のいろいろな点も十分考慮して、今厚生省で検討いたしております。その検討の結果について政府としてこれを決定いたしたい、かように考えております。
○神田国務大臣 ただいま総理の御言明、また私がたびたびこの委員会で申し上げていることに尽きると思っております。国民皆保険の実施を目標といたしておりまして、医師の犠牲においてこれをやろうというような考えは毛頭持っておりません。政府といたしまして被保険者の問題も考え、諸般のすべてを勘案いたしまして、適当な成案を急いで、そして閣議で十分御研究願う、今総理の御言明された通り御了承願いたいと思います。
○加藤(鐐)委員 御答弁の誠意のほどを私は了承いたしまして、できるだけ御努力を願って、その実現をはかるように一つ御勉強願いたいと思うのであります。 次にもう一つ伺ってみたいと思いますることは、ややともすれば、厚生省と申しますか、政府と医療担当者との間の意思の疎通が欠けておることが多いのではないか、こういう問題でございます。この場合、従来の一切の行きがかりを捨てて、医師会と申しまするか、医師と握手、和親の実を示すように努力されてはどうかということでございます。私は今回の健康保険の問題につきましても、多くの誤解が生まれておると思うのでございます。医療担当者が熱意を持たねば、決して治療というものは万全を期するわけには参りません。それが不平、悪感を持っておっては、いかに百の施設があり、千の努力をされましても、水泡に帰するということであるのであります。政府が今回取締りを厳正にされた。なるほど何万の医者の中には、不正な者も断じてなしとは私は申しません。その不正な者をめどにして、いろいろめんどうな取締り規則を作られたのであります。これが刺激し、先鋭化させ、誤解を招いていろいろの問題が起きて参るのでございます。よく話せばわかることであるのでございます。それは誠意をもって——不正を摘発するに急にして、善良なる多数の医師を反抗させるというようなことは、政治家として、政府としてつまらぬことであると思う。ちょうど角をためるために牛を殺してしまうようなことに近い状態にあるということは、政府も大いに反省されるがよかろうと思いますが、今後、一つこれらと手を携えて、よくいろいろの連絡をとっていかれるに相違ありません。またいろいろの今度の法律の改正も、悪意をもってやられたものでないことはよく了承いたしておりますが、この間には何らか一本水くさいところがありはしないか。あるいはいわゆる官僚化とか、官僚のどうとかいうことは、ここに生まれたものではなかろうかと思います。私は厚生当局の諸君が決して悪意をもってやっておられるものではないと思いまするが、不正を追及するに急にして、善良なる多数の医師をして反感を抱かしめるというようなことは、考うべきことでなかろうかと思うのであります。私はこの点に対しまして、厚生大臣——ただいまの厚生大臣、よくお勤めになっております。私はこれを非難するつもりは少しもございませんが、ほかの厚生省の直接担当の諸君も、悪意をもってやられるとは少しも思いませんが、この点一そう努力されて融和の道を講ぜられることは考えておられるかどうかということでございます。
○神田国務大臣 ただいま加藤委員より、厚生省と医療担当者の間に、どうも水くさいというか、対立というか、おもしろくない関係にあると御指摘になったようでございますが、これは私も率直に申し上げまして、どうもそういうことがある。外から見てもそういう感じを持っておったのでございますが、厚生省へ参りまして、どうもどちらも誤解というか、しっくりいってないということを、実は率直に認めております。そこで今、加藤委員の申されましたことはまことにごもっともなことでございまして、私この点につきましては、厚生省の方といたしまして、反省と申しましょうか、考うべきことがございますれば、これはまた率直に改めるにやぶさかではございませんし、同時にまた、医療担当者側といたしましても、時勢の進運に伴って世論にこたえるだけの謙虚な気持もやはり必要であろうかと存じます。要は医師のまず完全な理解から始まるべきだと考えまして、実は就任以来意を用いまして、徐々ではございますが、そういう措置を講じつつございますので、本案の通過、実施後等につきましては——その前後を問わず、十分努力いたしまして、御心配の点は解消していただいて、喜んで御協力願えるというふうに参りたいと存じております。どうかこの点についてはまた皆様方の御審議、御支援をお願いしたいと思います。
○加藤(鐐)委員 神田厚生大臣が謙虚なる気持をもちまして、そういう態度に出られるということは、まことに喜ぶべきことでありまして、また医師全体も、自分たちも、また謙虚な態度でよく握手し、よく話をして、この保険の実をあげたい、こう思っておるのでございます。私どもも微力ながらその方面に努力いたしたいと思います。 そこで誤解を招いている一、二の例を申しまして、これは保険局長にお伺いいたします。すなわち一つは二重指定の問題でございます。個人は登録し、そうして機関を指定するということでございます。こういう問題であります。これなども、不正なる医師にあらざる者が医師を雇うて開業したる場合に、機関に対してかれこれ政府としては考えなければならぬということからきたものだろうと思いまするが、個人が一人で開業して診療所を持っているのに、これは二重の手間であるのであります。これなども、取締上、前に申しましたように、この機関と人を登録するということになっておりまするが、大多数の個人の開業医はかような煩を省くが当然だと思います。これは行政上の手続で簡易になされるものであろうと思いますが、いかがか。もう一つ、機関の指定の有効期限を三年としておるのでございまするが、これもまた今のような筆法から言えば、まことにわけのわからぬことであるのでありまして、これも行政上の措置において好意、善意をもって、こういう無用の刺激を与えるような無用の手続を省くような処置を講ぜられることが当然であると思いますが、これに対してどうお考えになるのでありますか。 もう一つついでに、時間が迫っておりますが、申し上げてみたいと思いまするのは、検査権の問題であります。これなどもどういうものであるか、これは簡単でよろしゅうございますから、御答弁を願いたいと思います。 もう一つ審査機構の問題でございます。いわゆる基金支払いの問題であるのでありまするが、今まで現行法でありましても大したことはなかったのであります。一、二の例は別でございまするが、これなども、今度は中央審査協議会とか、あるいは地方審査委員会とかいう二本建にして、幹事長が選任してどうするとか、ぎょうぎょうしくいかにも犯罪人扱いのような、ことごとくの者は不正なものであるというような態度は、これはわれわれは今度削除いたしたいと思います。これはわれわれの権能でやることでありますゆえに、かれこれ言うべきことではございませんが、この前の三点です。これらは、もう少し刺激を少くし、簡易にして、無用の反抗、無用の悪感情をかれこれ起さぬように努めなければならぬと存じますが、いかがでありますか。
○高田(正)政府委員 ただいま加藤先生御指摘の諸点につきましては、この法律の実施に当りましては、御質問の御趣旨のように、手続の簡素化等を十分考慮いたしまして、御趣旨に沿うつもりでおります。
○加藤(鐐)委員 もう一度おっしゃって下さい。
○高田(正)政府委員 ただいま加藤先生の御指摘の諸点につきましては、この法の運用におきまして、手続の簡素化等十分考慮いたしまして、御趣旨に沿うようにいたすつもりでございます。
○加藤(鐐)委員 大臣もその通りにされるのでありますか、これを明確にいたしておきたいと思います。
○神田国務大臣 ただいまの保険局長の答弁は、大臣の意を体して答弁したと御了承願います。
○加藤(鐐)委員 そこで、私の質疑によって明瞭になりましたことは、岸内閣は、社会保障、特に健康保険を中心とする疾病治療の施策は、今後一そうの熱意を持ってその推進完璧をはかるよう最善の努力を尽すものであるということ、そうしてそういう御言明を得ました。それから、医療給付の国庫負担の法文化の問題については、熱意を持って期待に沿うように十分考慮する、それから単価引き上げの問題も、取り急いで結論を得るように最善の努力を払う、それから次には、無用の刺激や煩瑣を加えるがごとき事務上の手続は行政の措置によって、必ず簡易にして、医師に迷惑をかけないようにすること、基金支払いに関する条項は、国会が修正すればこれは当然尊重せねばならぬからかれこれ言う必要はございません。臨査、検査のことにつきましても、いたずらに犯罪人扱いをするような態度をとらずして、謙虚なる態度をもってする。今後の社会保険の運営に関しましては、医師会その他と手を握り、よく話し合って誤解を解く、そしてよく理解してこの社会保険の運営に当る、こういうことの言質を得たのでございます。私の質問は時間の都合上……。
○草野委員 ただいま議題になっております内閣提出の三法律案につきましては、質疑はこれにて終了せられんことを望みます。
○藤本委員長 ただいまの……。 〔「委員長不信任だ、不信任案が先に出ているからだめだ」と呼びその他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
○藤本委員長 動議に対して採決をいたします。 〔「不信任案が先に出ているからだめだ」、「暴力はよせ」、「委員長続行」と呼び、その他発言する者多く議場騒然〕
○藤本委員長 草野君の動議に賛成の諸君の起立を願います。 〔「不信任案が先だ」、「加藤さんの発言中なんだ」、「加藤さんの発言中に出してある」、「それは委員長が発言を許したときの方が先だ」と呼び、その他発言する者、離席する者多く議場騒然〕
○藤本委員長 草野君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕 〔「不信任案が先だ、加藤さんの発言中に出してあるんだ」「そんなでたらめがあるか」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
○藤本委員長 起立多数。草野君の動議は可決され、内閣提出の三法律案につきましては質疑は終了いたしました。 〔「加藤さんの発言中なんだ」「やり直せ」と呼び、その他発言する者多し〕
○藤本委員長 お静かに願います。ただいま不肖私に対する不信任案が出ましたから、私はこの席を去ります。あとは大橋理事に……。 〔委員長退席、大橋(武)委員長代理 着席〕
○大橋(武)委員長代理 それではそのままでしばらく休憩いたします。直ちに理事会を開きます。 午後十時十分休憩 ————◇————— 午後十時三十二分開議
○大橋(武)委員長代理 休憩前に引き続き会議を再開いたします。 委員長の指名によりまして、私が委員長の職務を行います。 これより、八木一男君外十二名提出の委員長不信任の動議について議事を進めます。 なお、本動議の趣旨弁明及び討論の時間は、いずれも五分以内に制限いたしたいと思いますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕 〔離席する者、発言する者多し〕
○大橋(武)委員長代理 起立多数。よって本動議の趣旨弁明及び討論一人の時間は五分以内に制限することに決しました。 まず提出者の弁明を許します。提出者八木一男君。 〔「話が違うじゃないか」と呼び、その他離席する者、発言する者多く、議場騒然〕 〔八木(一男)委員「それでは不信任案を出す」「委員長代理の不信任案は断じてない」「いやある」と呼び、その他発言する者多し〕
○大橋(武)委員長代理 御静粛に願います。八木君、御着席下さい。 〔「一応この問題を処理しよう」「ちょっと理事会を開いてくれ」と呼び、その他発言する者あり〕
○大橋(武)委員長代理 八木君、趣旨弁明を直ちにお願いいたします。——趣旨弁明の発言がありませんから、直ちに討論に入ります。 〔「不信任案が出ているのに何だ」と呼び、その他委員長席をたたく者、発言する者多し〕
○大橋(武)委員長代理 討論はございませんか。——討論がなければ直ちに採決いたしたいと存じます。(拍手) これより採決に入ります。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○大橋(武)委員長代理 起立少数。よって八木一男君外十二名提出の委員長不信任動議は否決されました。 委員長の復席をお願いいたします。(拍手) 〔そんなばかなことはない、勝手にやれ、こんな不法なやり方をした健康保険法は無効です」と呼び、退場する者あり〕 〔大橋(武)委員長代理退席、委員長着席〕
○藤本委員長 一言ごあいさつ申し上げます。 しばらくにせよ議事の停頓を起しましたことはまことに恐縮に存じております。(「了承々々」と呼ぶ者あり)御信任を得ましたので、引き続きこの席をけがします。よろしくお願いいたします。 この際、内閣提出の三法律案すなわち健康保険法等の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案の各案に対し、野澤清人君外四名よりそれぞれ修正案が提出されておりますので、ただいまより各修正案を一括議題といたします。 まず提出者の趣旨説明を許します。野澤清人君。
○野澤委員 ただいまより内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案、船員保険法の一部を改正する法律案に対する修正案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案に対する修正案の三修正案について、その趣旨を御説明申し上げます。 健康保険法等の一部を改正する法律案は、国民全部の要望でありまする国民皆保険を実現するに当り、その一大支柱ともいうべき健康保険制度の基礎的な地固めをぜひとも実施しようという趣旨に出たものであります。しこうしてその内容中、社会保険診療報酬支払基金法の一部改正につきましては、審査の適正を期さんとする政府の意図は了とするものでありますが、審査の問題が重要であればあるほど現実の問題も十分勘案し、なお慎重な態度をとるべきと考え、今直ちに改正することは妥当でないとの結論に達しました結果、社会保険診療報酬支払基金に関する規定を全面的に削除しようとするものであります。 なお施行月日もすでに一月一日を経過いたしておりますので改めることにいたしました。 次に船員保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきましても、施行期日に関して修正をすることといたしました。 以上が、この修正案を提案した理由並びに修正案の要旨であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
○藤本委員長 以上で各修正案の趣旨説明は終りました。 次に内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案、内閣提出の船員保険法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案、内閣提出の厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案、以上六案を一括して討論に付します。中川俊思君。
○中川(俊)委員 私は自由民主党を代表いたしまして、政府提案にかかる健康保険法等の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案、厚生年金保険法の一部を改正する法律案について、修正案並びに修正部分を除く原案に賛成いたさんとするものであります。 わが国医療保障の中核をなす健康保険制度のうち、政府管掌分の保険財政は近年異常なる医療費の増加を見た反面、これをまかなうべき保険料収入の増加が伴わないため、昭和二十九年度以降巨額の赤字を生じておるのであります。かかる不均衡を是正し、保険財政の健全化をはかるため、政府は各般の行政措置を行なった外、第二十二回及び第二十四回国会に改正法案を提出いたしたのでありますが、両回とも本院を通過しながら参議院において審議未了となりましたことは各位の御承知の通りであります。今回政府が三度提案の改正法案は医療保障制度の強力なる一環をなす健康保険財政の建て直しをはかるとともに、あわせて本制度そのものの合理化をねらったもので、やがて国民皆保険への全面的発展をはかるがための地固めとして、きわめて重要なる意義を有するものであります。なかんずく従来各方面から熱烈に要望されておった医療給付費に対する国庫補助を法律上明文化いたしておりますことは、それが単なる赤字対策としての臨時補給金的のものではなく、恒久的国庫負担の性格を有するものであるだけに、医療保障制度に対するわが党の熱意と努力の一端を示すものと申しても過言ではございません。われわれといたしましては、私の討論の前提として健康保険法の運営に関し、次のごとき附帯決議を提案いたします。 附帯決議案 (一)政府は、この法律に定める保険医及び保険薬剤師の登録制度及び保険医療機関並びに保険薬局の指定制度の実施に当っては、医療担当者の地位を不当に害することのないよう関係団体との連絡を密にして制度の効果的運営に細心の注意を払うとともに、特にいわゆる「個人開業」の保険医療機関及び保険薬局については、指定更新の手続を極力簡易にするよう配意すべきである。 (二)政府は、医療の国民皆保険の完全な実現を期するため、健康保険に対する国庫負担制度の根本理念を明確にし、これに伴い組合管掌の健康保険に対しても、国庫負担の道を考慮すべきである。 (三)政府は、現行健康保険の診療報酬の点数並びに単価を含む診療報酬支払方式を再検討し、医師、歯科医師及び薬剤師の待遇改善をすみやかに行うことを要望する。 (四)現在医師会、歯科医師会、薬剤師協会の三団体については、従前におけるがごとき特別の法制がないため、国民医療の普及発達並びに公衆衛生の向上をはかるべきこれら団体本来の使命達成上、真に遺憾なる状態にあるものといわざるを得ない。 よって政府は、速かに医師、歯科医師及び薬剤師関係の団体につき調査研究の上、わが国医療の健全なる発達に資すべき制度を樹立すべきことを要望する。 右決議する。 ただいまの附帯決議にもありましたように、最も近い将来において政府がいま一そうの英断をもって国庫補助の基本的な理念を確立し、これが定率化の実現に向って踏み切るべきことを期待してやまぬものであります。 次に、国庫負担に見合うものとして、患者の一部負担の範囲を拡張しておりますが、健康保険財政等の現状にかんがみますときは、すべての関係者において若干の犠牲を払わねばならぬことは、まことにやむを得ないことと申さねばなりません。特に税金を負担しながらも医療保険の恩典に浴し得ない国民が、今日なお三千万人もあることに思いをいたせば、受診者が初診の際に百円、入院の場合三カ月間一日三十円程度の負担をいたすことは、相互共済の趣旨から申しましても、むしろ当然ではないかと思料せられるのであります。一部負担の拡張は受診率の低下を来たし、社会保障の後退であるとの強い反対論もございますが、第二十四回国会における審議に当り慎重考慮の結果、本委員会で修正を行なって患者の負担が過重にならぬこと、また徴収の事務の煩瑣を避けようとした趣旨を十分尊重の上提案せられておるのでありますから、この程度のものなら被保険者間の公平という点から申しましても、決して無理はないものと存ずる次第であります。 さらに保険医制度について機関指定方式を採用し、医師、薬剤師等の登録制とあわせてその合理化をはかっている点は、わが国医療機関の実態に即せしめたものでありますが、これらの指定、登録またはその拒否、取り消し等に関する規定の運営にあたっては、いたずらに官僚の懇意を疑われることのないよう慎重を期すべきことはもちろん、附帯決議にもありますように、その手続等についても簡易にするほか、各地における医療協議会の意見は十二分に尊重せられることを希望するものであります。 行政庁の検査に関する規定を明確にいたした点については、官僚統制的の強化であるとの強い反対がございます。もとより医療担当者の積極的協力を得ることは、医療保険本来の目的を達する上において欠くべからざるものでありますが、いわゆる乱受診や、不正請求等の弊害防止のためと、医療内容の低下を来たさぬため必要なる限度にとどまるものでありまして、第二十四回国会で問題となり、本委員会で修正により削除せられました立ち入り権限に関する規定は、今回の法案に規定いたしておりませんのも、無用の摩擦を避けんとするにほかならぬものでございます。いわゆる監査の実施に当りましては、医療担当者との連絡について政府において特段の考慮を払っていただきたいものでございます。ただ社会保険診療報酬支払基金における審査機構の改正に関する基金法の改正については、審議の経過にかんがみ、わが党といたしましてもなお考慮を要するものと認め、今回は見送ることとして修正削除いたしたのでありますが、この点は政府において慎重研究の上、近き将来において審査機構の改正に一段の工夫あらんことを望んでやまぬものであります。 以上のほか、今回の改正案における諸措置は、いずれも現段階においては適当と認められるものであり、また船員保険法及び厚生年金保険法の改正案も同工異曲のものとして詳論を避ける次第でございまます。 しかしながら今回の改正案を大観いたしまするに、わが党の主張でありまする国民皆保険の見地からいたしますれば、いまだ不満とするものが決して少くないのであります。五人未満事業所への医療保険の拡充のごときは、きわめて急を要する問題であり、また結核に対する施策のごときは、さらに数段の強化改善を希望してやみません。 これらの不満の諸点は、次の機会において優先的に解決せらるべき重要な宿題として残しながらも、医療保障の充実拡充への第一段階の意味において、私は政府提案の三法律案について、修正案並びに修正部分を除く政府原案について賛成いたすものでございます。(拍手)
○藤本委員長 これにて内閣提出の三法律案及びこれに対する各修正案の討論は終局いたしました。 次に各案の採決に入るのでありますが、採決の順序は、第一に内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案について採決し、次に同内閣提出原案について採決し、第二に内閣提出の船員保険法の一部を改正する法律案に対する修正案について採決し、次に同内閣提出原案について採決し、第三に内閣提出の厚生年金保険法の一部を改正する法律案に対する修正案について採決し、次に同内閣提出原案について採決いたします。 それではこれより順次採決いたします。 まず内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔総員起立〕
○藤本委員長 起立総員。よって本修正案は可決されました。(拍手) 次にただいま可決されました修正部分を除く内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案の原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。 〔総員起立〕
○藤本委員長 起立総員。よって修正部分を除く原案は可決されました。(拍手) 右の結果、内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案は修正議決すべきものと決しました。(拍手) 次に、内閣提出の船員保険法の一部を改正する法律案に対する修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔総員起立〕
○藤本委員長 起立総員。よって本修正案は可決されました。 次に、ただいま可決されました修正部分を除く内閣提出の船員保険法の一部を改正する法律案の原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。 〔総員起立〕
○藤本委員長 起立総員。よって修正部分を除く原案は可決されました。 右の結果、内閣提出の船員保険法の一部を改正する法律案は修正議決すべきものと決しました。 次に、内閣提出の厚生年金保険法の一部を改正する法律案に対する修正案について、採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔総員起立〕
○藤本委員長 起立総員。よって本修正案は可決されました。 次に、ただいま可決されました修正部分を除く内閣提出の厚生年金保険法の一部を改正する法律案の原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。 〔総員起立〕
○藤本委員長 起立総員。よって修正部分を除く原案は可決されました。 右の結果、内閣提出の厚生年金保険法の一部を改正する法律案は修正議決すべきものと決しました。(拍手) 次に、先刻中川俊思君より提出されました内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案について附帯決議を付すべしとの動議について採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔総員起立〕
○藤本委員長 起立総員。よって動議の通り附帯決議を付することに決しました。 なお先刻議決いたしました各法律案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○藤本委員長 御異議なしと認め、よってさように決しました。 この際厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。神田厚生大臣。
○神田国務大臣 健康保険法等の一部を改正する法律案外二件を長時間にわたりまして、しかも長い期間御審議をわずらわしまして、ここに可決をしていただきましたことは、政府といたしましてまことに感謝にたえません。 ただいま附帯決議を付されたのでございますが、本法の施行に当りましては附帯決議の趣旨を十分体しまして、本法が十分よく実施されますることを、政府といたしましてここに代表してお答えする次第であります。いろいろありがとうございました。
○藤本委員長 次会は公報をもって御通知することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後十一時一分散会 ————◇—————