P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
26回国会衆議院1957/03/04

社会労働委員会 第16号

発言数
113
登壇者
7
会派数
2
開催日
1957/03/04

会議録

藤本捨助自由民主党

○藤本委員長 これより会議を開きます。  健康保険法等の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。堂森委員。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 私は健康保険法の一部改正案に関連しまして厚生大臣に二、三の質疑を行いたいと思います。  厚生大臣は、先般石橋内閣の成立に当りまして厚生大臣になられまして、さらに岸内閣の成立に当りまして厚生大臣に留任されたわけでありますが、この健康保険法の改正案は第二十二国会に川崎厚生大臣の当時提案されました。そして審議未了となったのであります。さらに二十四国会に当りまして、ほぼ二十二国会当時のものと同じようなものが提案されて参りました。そしてこの二十 国会に提案されました法案もまた審議未了となったのであります。このような歴史を持っております健康保険に関する改正案が非常な難航を示したということでありますが、どういう理由でこのようにこの法律案が何回にもわたって審議がおくれて参ったと思われるか、まず御答弁を願いたいと思います。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 お答えいたします。ただいま御審議願っている健康保険法の一部改正法律案が二十二国会及び二十四国会で審議未了になりましたことは仰せの通りでございまして、二十五国会に提案いたしまして継続審議を今お願いいたしているわけでございますが、この流れました事情はいろいろ細分すれば私はあると思います。しかしその根底をなすものは、今日の世情と申しましょうか、社会保険が大きく国民の前にクローズ・アップされて参りまして、健康保険法の改正というものはそれ自体だけの問題でなく、国民の医療保障の根底をなすものだというようなことで、これが大きく取り扱われておったということ、さらにまた従来発足の当時はこれは工場の労務管理というようなことで発足したわけでございますが、今申し上げるように、そういった企業体の労務管理という性格よりも社会保険として大きく登場してきた、そういうところにこの重大性があったのじゃないか。もう一つは、医療を担当しております医師側と厚生省の関係が円満を欠いておった。そこに誤解があり、いろいろの感情と申しましょうか、トラブル等があって、十分な了解が得られなかったのじゃないか、そういうことが流れたやはり大きな原因になっているのじゃないか、こんなふうに私考えております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 ただいまの厚生大臣の御答弁によりますと、健康保険問題は非常に重大であるから、労働者諸君が重大な関心を持っている、それからもう一つは、厚生省の医師側との何か了解工作があまり十分でなかった、従って誤解があったのではないか、そういうような御答弁であったように思います。これは私は厚生大臣の御答弁に非常な大きい不満を持つのであります。と申しますことは、実際医師側が誤解を持っておるということは第二にいたしましょう。健康保険というものが労働者にとって非常に重大なものであるということは当然でありまして、その問題について労働者が大きな関心を持っておる、しからば、たとえば政府管掌だけでも家族を含めて、組合管掌をまぜて全国で約二千五百万人くらいございますか、そういう非常にたくさんの人たちの生命、健康を守っておる健康保険制度を改正していこうということに対して、労働者がこれに反対するということは、なぜ反対するのだと厚生大臣はお考えになりますか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 これは二十二国会と二十四国会の事情は異にするわけでありますが、今日労働者側に反対があるということは、やはり一部負担をやるとい 問題に多くの不満があるのではないかと思っておるのであります。一部負担をするということは、負担する側から見れば気持のいい問題でないことは、ひとり健康保険の問題だけではないと思います。しかし健康保険財政の今日の状態を考え、将来の医療の水準を上げていこうというような観点から考えます際、こういった、程度の問題はもちろん考えなければなりませんが、政府が現在提案しておるような程度の負担は、患者側に御負担願うとい  ことはむしろ公平な負担原則からいって御了解願えるのではないか、こうい 考えを持っておるのでございます。  もう一つ、先ほど私答弁いたしました医師側との感情と申しましょうか、誤解等があったということは、医師側だけを責めておる言葉に使ったわけではないのでありまして、両者の間にいろいろな意味で円満を欠いておったように思う、そういうことがこの法案の成立を非常に妨げたのではないか、そこで今度はそうい 根本のことも考えながら御審議を願っておる、こういう意味に御了解願いたいと思います。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 ただいま厚生大臣は、現在政府が提案しておる改正案くらいの一部負担は妥当である、こう考える、こういうお話しでございました。  しからば、私保険局長にちょっと数字をお尋ねいたしますが、東京都における生活保護法の適用家庭四人家族でありますか、医療扶助、住宅扶助、食糧扶助と申しますか、一切含めて幾らくらいになりますか。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 私所管でございませんので正確な数字はただいま記憶いたしておりませんが、標準世帯、これは五人ではないかと思います。この標準世帯でいろいろなものを全部加算いたしますと、東京都におきましては九十幾らになるというふうに、承知をいたしております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 私は違うように思います。たしか一万七百円くらいではないかと思います。そこで本人及び家族三人といたしまして、四分の三で逆算いたしますと七千五百円くらいになるかと思います。それはそれとして今度の改正案を見ますと、たとえば政府管掌の健康保険に加入しておる労働者諸君の平均賃金はたしか一万一千円か一万二千円くらいだと思います。こういう人が入院をいたします。そういたしますとこの法案が通ったとして三カ月間は毎日三十円、月九百円を払います。それから医療現金給付を一受けるのが六割になりますから、一万二千円の六割で七千二百円になるわけでありますが、毎月まじめに労働者が、工場に行って働く、そして二万二千月何がしかの月給をもらっておる、病気をする、そうすると現金給付を受けるものが七千二百円、そこから今度は九一円を払っていくと六千三百円になりますか、そうしますと生活保護法の対象者として入院する場合には入院料は要らない、そして七千円くらいの生活費の扶助を受けることができる。一方労働者が自分で保険料を支払っておる、それが病気をすると、三カ月間入院しても毎日三十円ずつ払う、これであなた方は矛盾があるとお考えにならないでしょうか。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 生活保護法の扶助基準は、細目の金額の点は別といたしまして今御指摘のようになっております。政府管掌の健康保険の平均の標準報酬は一万二千円だ、病気になれば六割の傷病手当ということで七千二百円になる。その七千二百円というものと今の生活保護法の扶助というものを比べてみれば、大体同じ見当ではないか、そこで九百円を毎月出すということは非常な矛盾ではないか、こういう御趣旨の御質問と思うのでございますが、よく検討してみますと、まず生活保護法の扶助対象の家庭と、それから政府管掌健康保険の被保険者の層というものとは社会的に相当な隔たりがある。何と申しましても生活保護法の対象は御存じのように非常に経済的に低い階層であります。政府管掌の健康保険の被保険者は、産業労働者としましては中小が多うございますから、大企業と比べますればそれは落ちますけれども、ともかく就職をして、今現実に社会的に活動しておる家庭、この二つは層として非常に差があることはお認めいただけると思います。それから先ほどの生活保護法の扶助基準というものは全然収入がゼロであったらそこまでの生活を保障してやるという線でございまして、生活保護法のさように低い階層の全部が全部それをもらっておるというわけではありません。私は今扶助家庭の平均一世帯当りの扶助金額を承知いたしておりませんか、その扶助金額はずっと低いのであります。現実にはその扶助金額基準においてまるまるもらっている家庭は非常に少いはずでございます。さようなことから申しまして、今の表面上の御指摘になりました数字からいうと、あるいは仰せのようなことも一応そうではあるまいかというふうに考えられますけれども、その実態を突っ込んで考えてみますと、何と申しましても生活保護法の家庭よりは、われわれの被保険者の家庭は、層といたしましては、社会的にあるいは経済的にずっと優位な地位にある家庭であるということは十分言い切れるかと思います。従いましてその意味におきまして、私どもといたしましては、先ほど大臣のお答えになりましたように、月九百円、一旦二十円、それを三カ月程度負担をお願いいたしますことは、ない方がより楽であることは当然でございますけれども、その程度の負担をしていただきますことは、被保険者相互の公平の観点から申しましても、またその金額の大きさから申しましても、まあこの程度のものは御負担願ってもしかるべきではあるまいか、かような考えで御提案を申し上げているような次第でございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 私がただいま生活保護法の対象者への扶助金と申しますか手当金と申しますか、そうした金額をあげましたのは、何も生活保護法の対象者と健康保険の被保険者とを同一視する意味で言ったのではありません。その意味は、政府管掌の健康保険の対象者は平均二十二人くらいの職場に働いていることになっておりますが、毎日まじめにそういう小企業場に働いている労働者諸君が病気をしたときに、俸給は六割に下り入院一日につき三十円を払う。そうすると七千円何がしからそれを引くと六千何がしになる。入院しておりますれば、もちろん家族は交通費も要りましょう。また諸雑費も要るということになって、保険という建前からいうならば重大な問題だと思うわけであります。従ってこの三十円の負担ということ、また今度の改正案の一部負担のもう一つでありますところの初診費に限って百円を徴収する、こういうものを合せても一年間通じて十二億くらいのお金にしかならぬ。こういうことを考えまして私は妥当であるという考え方には賛成できません。もっとも厚生省当局はそれは見解の相違だといえばそれで終りでありますが、非常に重大な問題であります。  そこで厚生大臣に重ねてお尋ねいたしますが、しからば健康保険財政がどういうわけで赤字になって参ったか、これが一つ。大臣は就任早々でありますけれども、こういうことについてはとにかく御承知でなければ大臣なんか勤まりません。御答弁を願います。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 健康保険財政の赤字になった大きな理由の一つとしては、保険料の伸びと医療費の伸びがバランスがとれなくなった関係だと私は思っております。保険料が御承知のような伸び方しかしておりません。一方医療費の水準が伸びて参っておりますから、その差が大きなものだ、こういうふうに私は承わっております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 それはもちろんそうなんですが、日本の医学だけではありません、世界の医学は日進月歩でございます。従って医療内容が向上してきていることは、これは喜ぶべきことでありまして、そのために健康保険が赤字になった、これは私無責任な説明だと思うのです。何といいましても、健康保険財政の赤字になった大きい原因は、やはり結核なんです。結核というものは、御承知のごとく日本の国にとっては国民病ともいわれるべき大きな問題であろわけです。何でも今日五百万の人が結核患者として治療を受けなければならぬということを厚生省が出した白書にも書いてございます。そして健康保険の財政面を見ましても、健康保険の医療給付の四割は結核が食っておる、こういうことだと思う。厚生大臣はただばく然と医療内容が向上していったから健康保険が赤字である、こういうことだけでは私は無責任きわまると思いますが、三十二年度の厚生省予算を見まして毛、結核対策についてはきわめて微々たるものしかございません。なるほど最初この社会労働委員会においても厚生大臣が予算に関する説明を行われました。この説明を聞いておりますると、公費負担で予防接種並びに早期診断の費用を全額国庫負担とするようにしたい、六億を計上してあるというようなことをかなり誇らしげに説明されました。また結核の治療面においては三剤併用でありますとか、あるいは手術のときの麻酔の処置などについても、公費で負担するようにしたい。そして十六億何がしがをこれに計上したというようなことを言っておられますが、そんなことはとうてい健康保険の赤字財政を大きく——何といいますか責任を持つべき結核対策というものについてはほとんど寄与しておりません。そこで保険局長にお尋ねしますが、一体公費負担がどれくらい健康保険財政に対して寄与しておるか、御答弁を願いたいと思います。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 結核予防法の公費負担が行われましたことによりまして、現実に健康保険財政がこれだけ助かったという数字につきましては、三十年度で約二億程度であったと記憶いたしております。二十七年度、二十八年度あたりは主任ちょっと上回っておったように記憶いたしております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 そうしますと、健康保険財政を赤字にしておる根本的な原因は結核である、こう言っても過言ではないと思います。厚生大臣は三十二年度は就任早々であったから、従って健康保険財政の赤字を救っていく、こういう意味合いから申しましても、結核対策の予算はきわめて微々であったが、将来はどういうふうにしていく、こういう御構想があれば御答弁を願いたいと思います。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 結核が国民病だといわれ、その人員が非常に多い。そしてこれらが国民医療費に占める割合が非常に巨額であって、健康保険財政においてもやはりその例を見ておるという堂森委員のお話は、私どもその通りだと考えております。そこでこの結核対策の問題でございますが、三十二年度におきまして、今堂森委員がお述べになられたように、とにかく政府といたしまして十カ年で結核を撲滅いたしたい、その第一年として早期診断、早期治療、公費負担をふやして、結核と四つに組んでいこう、こういう構想を明らかにしたものだと私は考えております。そこで三十三年度以降でございますが、これは今申し上げましたように、少くとも十カ年間で一つ結核の根本的な——根絶とまでには至らなくても、政府の諸般の施策によって撲滅させようという方向を示したわけでございまするから、三十二年度においては、当然この対策費が増加する、私はこういうふうに考えております。これは私の考えだけでなく、厚生省の重要施策の一つでありまするし、政府におきましても閣議等において、何とかして国民病である結核の撲滅について、社会保障充実の面から考えても大いに一つやろうじゃないか、こういうような基本方針のもとに入っておりますので、そういうふうにお考え願って私はけっこうだと考えております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 神田厚生大臣は勇ましいことをおっしゃいますけれども、そんなことで結核はなくなりません。早期診断、予防接種、これで結核がなくなっていくのだ、そんなことは私はおよそ子供だましだと思うのです。とにかく結核というものは、世界的に結核がなくなってきた歴史を見ておりますると、もちろん国民生活の向上が根本であります、貧乏病ですから。さらに結核患者を病院あるいは療養所に隔離をして療養させる、これが根本であります。しかし政府の予算を見ておりますると、予防接種並びに早期診断には六億を組んで、これでよかろう、あるいは入院した患者に手術の麻酔剤の使用だとかそんなものを政府が見るのだ、そんなことで結核の対策が事足れるということでは、私はあまりにごまかしだと思うのです。それはそれといたしまして、今日われわれは健康保険法の改正案——これは改悪案ですよ、改悪案を審議しておるわけですが、そういうようなことでは、いつまでたっても日本の健康保険の財政が改善されることは望めません。  話は飛びますが、きょうの朝日新聞を見ますと、厚生大臣の写真がでかでかと出ております。そうしてこの改正案が通るならば、近い将来に医師が従来からやかましくいっておるところの一点単価の問題を大いにこれを改善していくのだというようなことを言明したというように新聞に出ておりますが、一体厚生大臣は本気でそんなことを言っておられるのですか、そういうことが可能だと言っておられるのか、どういうふうな御心境か、それも一つあわせて御答弁願いたいと思います。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 結核対策の政府の施策につきまして予算が非常に少いという堂森さんの御意見でございますが、その予算は多いに越したことはございません。しかし今までやらなかったことをとにかく三十二年度からあれだけの構想をもってやろう、しかも十カ年計画をもってやろうというのですから、その事実は堂森委員もお認めになっておられるだろうと思う。今までやっておらない、それを三十二年度から踏み切って一つやろう、しかも三十二年度以降は大いにふやしてやろうというのですから……。しかし、じゃそういうことで結核がほんとうにわが国から根絶する見通しがついたかといえば、それは堂森さんのようなお立場から専門的にながめたらこれは非常に御不満があるところだろうと思います。しかし財政の中からやりくりしてやってくるわけでございまして、今までやらなかったことを、とにかく今年ああいった一つの国費全額負担というものを明瞭にして出したということは、やはり政府の勇気のある一つの施策だと考えております。  それからきょうの朝日新聞に出ておりますのを例におとりになりまして、一点単価の改正はほんとうにやるかということでございますが、これは私この議場におきましてしばしばお答え申し上げております通り、一点単価等に対します問題につきましていろいろ業界の御不満の点、また国会におきましても論議のありました点につきまして十分理解を持っておるつもりでございまして、この問題を一つ合理的に解決をいたしたい、かような観点から先般省議におきましてもこれは改めるという建前のもとに、すなわち引き上げるという前提のもとに調査を進めようじゃないか。私は一つ根本的な調査をしてみたいと思っておるのです。今の制度自体が一体いいのかどうか、この制度を認めて改正をした方がいいのか、あるいはもっといい方法がありはしないかというような観点に立っていきたい。ということは健康保険が工場の労務管理として発足して、そして最低の医療費というような観点から考えて立案されて、その後そのベースに立って改正を見て参ったわけなのです。ところが今日ではもう健康保険もわが国の社会保険の大きな支柱と見、七して国民皆保険に持っていこう、そのために一つ国民保険を実施しよう、あるいは第二種健康保険も考えようというような段階でございますので、国民皆保険を目ざした——従来の、お医者さんが健康保険医になってもならぬでもというような気持よりも、開業医である限りは全部が保険医になるというような建前から考えて、今のやっていることがそのまま延長していいのかどうか、あるいはこれは今日根本的に改める段階がきているのじゃないかどうか、医療水準も上っておるわけでございます、国民生活も向上しておるわけでありますから、そういう最低の医療水準できめたものをそのまま延長していくことはどうか、こういったいろいろの観点から一つ根本的な調査をしたい、そうして調査の結果をとりましてそこで一つ結論をつけまして改正をいたしたい。その改正はもちろん私どもの独断の考えだけではなく、衆知を集めてそこで合理的な解決をいたしたい。これは私は必ず実行いたす、こういう決心のもとで今調査を命じておる次第でございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 ただいま厚生大臣の御答弁でございますが、私はどうも了解できないのです。ということは、もっとも医師が単価が安いということを言っておることにも私はこれは根拠があると思うのです。厚生大臣御承知かどうか知りませんが、現在の単価は、昭和二十八年の十二月、非常な困窮した状態のもとに、いわば一時的な、過渡的な方法としてきめられておるものなんです。そして、当時この今日の単価をきめるにつきましては、保険者団体——たとえば日本全国の国民健康保険の連合会あるいは組合管掌の団体であるところの全国の保険組合連合会というような方面は、今日までの単価に対しても猛烈な反対をいたしておるわけであります。一方医師側診療担当者は、これを安いといって非常な反対をしておられる。全く対立した姿で、これが、妥協的な案としてきめられたわけです。     〔委員長退席、中川委員長代理着席] とにかく、その後厚生省が医療の実態調査を基礎にして算定した単価は、たしか昭和二十七年三月の数字では十二円三十五銭ぐらいが妥当であると厚生省ではいっておるわけです。とにかくその後私少しいろいろな物価指数みたいなものも調べてみたのでけが、昭和二十六年を一〇〇とすると、CPIは、三十一年十月には約一二〇くらいになっておるのです。それから東京の小売物価指数を見ますると、昭和」十六年を一〇〇といたしますると、三十一年九月には一〇〇、これはちょっと上っておりません。それから賃金指数が、二十六年を一〇〇とすると三十一年十月には一四三・五にたっております。それから、二十六年を一〇〇とすると、これは全国の都市でありますがCPSは三十年十一月には一六〇くらいになっておるわけであります。それから農村の物価指数でありますが、昭和三十一年一月の調査では、二十六年一〇〇に対して一二七くらいになっています。というふうに、いろいろ私調べてみたのですが、二十六年を基礎としてみると、昨年の初めごろでももう二、三割程度は上昇いたしておるわけであります。その後、大臣も御承知のように、政府は、予算委員会あるいはその他の委員会では物価は横ばいであるといっておりますけれども、実際はやはり上昇の傾向にあることは事実であります。それで、現在の単価を上げろ、こういう医療担当者である医師の要求も、これは私が医者であるから申すのではありません、妥当性はあると思います。しかし、一方健康保険の財政は今年も昨年も数十億の赤字である。そして、被保険者である労働者には猛烈な反対があるにかかわらず、一部負担制を拡張していこう、こういう法律を二十二国会から二回にわたって出して、これが審議未了となっておる。こういういわくつきの法律である。猛烈な反対がある。これはやはり国会に反映するから、こういう法案が通らないのです。あなたは医師側に対して了解が足らなかった、誤解がある、これはまた労働者諸君が反対してもそればやむを得ない、妥当な犠牲である、こういうような答弁をしておられまするけれども、国会を二回、三回と通らないということは、これは何と言っても世論がこの法律はよろしくないと考えておるから、国会における審議が渋滞するのは当然であります。従ってあなたが今おっしやいましたような単価の改正ということが、果して今のままの財政状態で可能であるかどうか。これは赤子が考えても可能ではありません、できるはずがありません。今のままの保険財政の姿をとっていこうとするならば、それは可能ではありません。従って隣におられまするところ、の保険局長どうですか、そういうことは大臣の答弁のようにできますか、単価の改正をあなたはどう思われますか。新聞を読みますると、何でも事務当局は大弱りで困っておると書いてあります。この点について御答弁をお願いします。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 新聞のことは別といたしまして、単価を改訂いたしますことは、先般の当委員会の質疑応答の中にも出て参りましたように、相当な医療費の膨張を来たす問題であります。ただそれらが全部国庫の負担になるかどうか、それはそれぞれ負担者が別々になっております。国庫の負担になるべきものもございますし、それから国庫でなく他の保険者の負担になるべきものもありますし、あるいは患者みずからのふところから出す負担になる部面もございます。従いまして、それらは相当大きな問題になって参ることは御指摘の通りであります。ただ先ほど来、大臣が仰せになっておりますることは、単純に単価の問題を一円上げるとか、二円上げるというものの考え方でなくして、この際あわせて単価につきまして——従来これは医療担当者側からも、世間一般からも、いろいろ現行の単価制度について御指摘のあるところでございます。たとえば用地、乙地の問題でありますとか、あるいは端数のついておる単価というようなものの事務的な煩瑣というふうな問題も御指摘になっておりますし、それらの問題をも含め、従って点数の問題をも含めまして、単価と点数でかけ合せて医療報酬というものが出て参るわけでありますから、点数の面における操作というものも含め、さらに進んでは診療報酬の支払いのやり方というふうなものをも含めて、ともかく現行の制度についてある程度の根本的な改革をも辞さない、こういう態度のもとに、現行の単価が妥当であるか妥当でないかというような論議をしておりましては、これは数字的な問題として非常にめんどうな問題になるかと思いますが、そうでなく少くとも国民皆保険というようなものを進めていくには、医療担当者の待遇といいますか、経済的な収入といいますか、そういうふうなものが現行のままであっては、全面的な協力を得て進めなければならない国民皆保険の仕事が円滑にいかない情勢にある。その辺を十分考慮をいたして、円滑な御協力を得られるように、(「撤回したければだめだ」と呼ぶ者あり)経済的な待遇の改善というふうなものについて総合的に検討を加えてみたい、こういうのが大臣からわれわれが受けております御命令でございます。さような線に従いまして、私どもといたしましてはいろいろ基礎的な調査に取っかかろうといたしておるところでございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 局長の答弁、それから大臣の先ほどの御答弁を聞いておりますと、何のことかわかりません。とにかくやるならやれ——まあおそらくやらぬということでしょう。局長の答弁の中に、国民皆保険をやって参りますためには、医療担当者である医師の協力を得なければ国民皆保険は円滑にいかない、こういう答弁がございました。全くその通りでございます。ただいま滝井君から、この法案を撤回しなければ医師側の協力が得られない、こういうヤジが入っておりました。私ももちろんその通りだと思うわけであります。たとえば私がきのう日曜日で、きょうこの法律について質問を少ししようかと思って、朝早くから起きて書斎で机に向っておりました。ある東京都内の何も知らぬ老人の医師が来まして、るる私に三時間ほど訴えられまして実は閉口したわけであります。この人の話を聞いておりますると、——これは率直にその通りに言うわけでありますが、私たちは一部負担が行われるということは確かに受診者が減ります、そしてこれも経済的に影響を受けることは事実でございます、それを第二にしまして、今度の法案の改正によって、私たちはもう健康保険に協力するという熱意をなくしてしまいました、こう言っておる。それはなぜかというと、私たちは健康保険に三十年協力してきました、大学を出て一開業医として感心に診療に従事して、個人生活というものもほとんど時間がない、まじめに医者をやってきた、しかるに今度の法律を見ると私たちは被告みたいな姿にやられてしまって、いつ家宅捜索を受けるかわからぬというようなことにもなるし、また厚生当局あるいは県庁の役人たちからいろいろな指示を受ける、まあ指示を受けるのもいいでしょうが、しかしその指示をする役人たちの言葉を聞いておってもばからしくって、そんな講習会に行く気にならないよう気持ちになる、とにかく何と申しますか、われわれは健康保険制度の発達のために全く協力してきたという自信を持っている、そうした誇りを持ってきた、ところが何か政府の今度の法律の提出というものによって追い打ちをかけられたような、非常にいやな気持といいますか、そういうものを心から感ずる、従ってわれわれは今度の法律に対しては、もう生活権の要求とかそういうことよりも、もっともっと近江絹糸の人権闘争みたいな姿でこの法律に対しては徹底的に戦っていきたい、こういうことを六十幾つになった老人の医師が私に訴えておったのであります。これは私は厚生省の役人の方々、あるいは大臣が考えなければいかぬことだと思う。ほんとうにそういう姿である。たとえば監査の問題にしましても、確かに医師の中には不正の請求をする人がおるかもしれません。これはあったでしょう。しかしながらそういうふうな医師たちは、きわめて少いのであります。     〔中川委員長代理退席、八木(一男)委員長代理着席〕 大部分の医師というのは、きわめてまじめに健康保険に協力をしてきた、こういう姿であるにかかわらず今度の法案というものがきわめて厳重な、きわめて過酷な、そして健康保険に協力してきた医師に対してフライドを傷つけるといいますか、そういう精神的な大きな影響を与えていることを、厚生当局は看過してはならぬと私は思う。そこで大臣にお尋ねいたしますが、一体今度の政府与党の修正は再修正ですか、前国会に提案されてきて、継続審議になっておる。この法律によって一体どれくらいの財政的の余裕が出るか。それは数字ですから大臣から御答弁にならなくてもいいですが、私も知っております。そこで入院が一日につき三十円、そして初診日には百円、こういうところの一部負担によって一年間を通じておよそ十二億くらいだと、こう厚生省当局は答弁しておられます。一体その十二億くらいのそうした財源をとるためになぜこういうふうな法律をまた性こりもなく、しかも二十五回国会ももう終ろうとする時分にそっと盗人ネコみたいに出してくるのか、どういうわけで私はこういうような法律を性こりもなく出してきたかということを実際疑わざるを得ないわけであります。二十四国会において衆議院で修正案が与党の諸君によって作られまして、衆議院を通りました。この法案が通る前に新聞に、当時私覚えておるのですが、厚生省当局は、断じてこのような修正案に応ずることはできない、これは保険財政の立て直しのために作ったものでもあり、また健康保険制度そのものの進歩発展のために提案したのが、第二十四国会の健康保険の改正案の政府案である、しかるに与党が一部負担について修正をし、また他のいろんな内容、条項についても修正をするような与党案に対しては、厚生省事務当局は断固これは賛成することはできぬというようなことが、木村事務次官の談話で書いてあったことがありました。それは厚生大臣御承知でないかもしれませんが、私は読んで覚えております。このように当時政府が出した案によりますれば二十三億ですか一年間に財源が生まれてくる。ところが今後は十二億、半分、まるでこれは党のなぶりものになっておるような法律で、バナナのたたき売りみたいな態度であると私は思う。こんな法律を出して医療担当者であるところの医師側を反対に押しやり、しかも協力してきた医師に精神的な影響を強く与える。医師側が健康保険そのものに協力しないという大きな影響、これは無形の影響です。しかしこれは実際は有形の影響になるわけですが、いっそそういうふうな悪い法律を撤回してしまって、いさぎよくやったらいいと思うのです。私も実は世界中のいろんな国でどんな健康保険制度について医師側と政府との間にいざこざがあるかということを調べてみた。そうするとどこでもやっておる。たとえばベルギーでは一九五五年に政府提案の社会保険法を医師が猛烈に反対して、ストライキをやっておる。そして政府案はとうとう撤回してしまった。恥じゃないと思うのです。それからまたイスラエル——イスラエルのことはいいでしょう。オーストリアは一九五五年に社会保険の医療費値上げで医師と歯科医師が二日間ストライキを断行しておる。フランスでは社会保険の経費が不足のために、政府と医師が目下係争中である。これは現在世界のどうも波のようですね。西ドイツでもそういう係争があって、五五年とうとうアデナウアーの政府がこれを承認したそうであります。それからまた、イギリスでももちろんそうです。今やっております。またオランダもそうです。というふうに各国とも健康保険の財源問題というものは、医師側とあるいはまたこれの被保険者であるところの労働者の諸君との大きな係争になっておるのは事実であります。そこで日本においてもこれは何年来かの大きな問題でありますが、いっそ神田厚生大臣はこの法案を思い切って撤回してしまって、新しく出直し、もう十二億くらいは何もがんばらなくてもいいのです。十二億ですよ。そんなことくらいならどんな方法でもあると思う。そしてこの三十億をもらうためにはどうしてもこの法案を通さなければならぬ、私はそういう意見を与党の諸君から聞くのです。全く私は健康保険を愚弄しておる話だと思う。もう今日は全国の労働者の諸君だって三十億ぐらい要らぬと言っておる。医者も要らぬと言っておる。こんな法律を通されてそして一部負担というものを拡充していく、あるいはまた医師を侮辱するようなこんな法律を通してもらうくらいなら、われわれは三十億くらい要らぬと言っております。厚生大臣、今からでもおそくはないわけですが、一つこれを撤回するというような勇猛心を発揮する意思はありせんか、御答弁願います。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 健康保険の改正案につきまして反対のあることも承知いたしております。ここに、至ります段階におきましては、その反対論につきましても、巨細に分析いたしまして検討を加えたわけでございます。また反対の反面、この案の成立を熱望いたしまして、支持する面も非常に大きいのでございまして、私どもその激励を一方においてはちょうだいいたしておる次第でございます。そういうわけでございまして、今堂森委員の御親切にお述べになられましたことは、これを継続審議にお願いしようという石橋内閣の最初の構想、またその後岸内閣に至りましてもずっと一貫した考えでございまして、ただいま撤回しないかといな再度のお尋ねでございましたが、政府といたしましては、この案を一つすみやかに可決していただくような御審議を願いたい、こういう心境でございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 三月二日の朝日に出ておった記事ですが、読みます。「自民ざらに修正の方針健保改正案」こら書いてあります。「自民党政調会の社会部会は一日院内で健康保険法改正案の取扱いについて協議した。この結果1、同法案を一部修正して今国会で成立させる2、衆、参両院から五名ずつの委員を出し修正案の作成に当る、との方針を決めた。(中略)自民党が修正しようとしている点は1、政府案では医師に対する行政機関の監査権を強化することになっているのをとりやめ、現行法のままとする2、政府案では保険医の登録制と保険医療機関指定の二本立にすることになっているのを、現行通り保険医の指定制度だけにする、などの点である。」云々、こら書いてあります。このような修正案が与党内にあるように厚生大臣はお向きでございますか、御答弁願います。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 その新聞記事は私も拝見いたしております。党と政府は一体とは申すものの、なかなか大きな党でございますので、そういう動きのあるにおいのことについては感じないわけではございませんが、正式な交渉は受けておりませんので、現在の段階におきましては原案の御審議を願いたい、こういう考えでお願いしておるわけでございます。党の方に聞いていただきませんと、私どうもわからぬので、さよう御了解願います。     〔八木(一男)委員長代理退席、委員長着席〕

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 それは私はおかしいと思う。ただいま出しておる法案はすでに自民党内の政調会その他で慎重審議の上厚生大臣の責任において提案されておる、こういうことだと思うのです。また今日これを変える、こういうことでは一体どういうことになるのでございましょうか。私それは大臣としておかしいと思うのです。そしてこれに同意されるのでございますか、いかがでございましょうか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 どうもうわさのことで一々私にお尋ねがあってもお答えしかねるわけでございます。いわんやそれを前提として、修正があった場合には同意するかという仮定の御議論に対しましてはどうもお答えいたしかねます。さよう御了承願います。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 そうすると最初提案されたときは榊田厚生大臣は大臣でなかっのです。だから私は知らぬとおしゃいますかもしれませんが、提案されるときは最上の案とお考えになって提案になった、こう思うのです。今でもそう思っておられますか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 この案を御審議願うのが今日の段階では最良である、こういうふうに考えております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 それはおかしいと思うのです。まあそれ以上追及することはしません。重ねて私は申しておきますが、この法律には被保険者である労働者の諸君は猛烈な反対をしておる。今日に至るも日本の国には最低賃金制すらないわけです。たとえばイギリスは二万四千円ですか、フランスでは九千フランすなわち九千円ですな。ドイツでは一万一千円ぐらいですか、大体それぐらいの最低賃金制があるのです。そして労働者の最低の生活というものは一応国によって保障されておる、こういう姿がある。ところが日本の国にはいまだに最低賃金制がない。社会党は八千円、案を目標として最低賃金制法案を出しました。とにかく日本には最低賃金制もない。しかも政府管掌の健康保険に加入しておる労働者の人たちは、賃金ベースが二万二千円である、そして今度は一部負担をとられる、こういうようなことでありまして、これで一体労働者が納得がいくかどうか、できないのは当りまえであります。だれも自分が好きで病気になる者はありません。いわばこの低賃金で多くの労働者が働いておるのが政府管掌加入の労働者の姿であります。こういう人たちが病気になる機会が多いのも当然であります。低賃金の人ほど病気になりやすい、これはそうなるのは当りまえです。こういう人たちだけになぜこういうふうな一部負担制度を作ってこなければならぬか。結核その他の問題によって今日の保険財政が赤字になってきたのであるから、当然国が責任を持って  われわれは二割を国庫負担にすべしという主張を年来続けてきておる立場でありまするからそう申し上げるのは当りまえでありますが、これはいろいろの理屈から考えましても、政府が責任を持っていくということは当然だろうと思います。しかるにそういう方法をとらないで一部負担、しかも病気になった労働者に負担をかけているというところにも不合理な点があるわけであります。私は厚生大臣に猛省を促しておきたい、こう思うわけであります。  さらについででありますから、一つ保険局長にお尋ねをしておきたいと思います。社会保険審査会についての問題であります。これはたしか二十八年でございましたか、現在の制度に法律一が改正されたものであります。従来社会保険に関する苦情を処理するという意味で社会保険審査会というものが設けられておったはずでありますが、改正前の制度では件数が多くて処理が非常に渋滞するから事務の簡素化、迅速化をはかるために制度改正をする、こういうわけで法律が改正されたことを私も覚えております。その後今日に至りまして、非常に多くの件数があるということでありますが、毎月でも年度でもいいですが、改正後どれくらいの件数が提訴されて、どれだけのものが処理されておるかそうした数字がおわかりでありましたら御答弁を願いたいと思います。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 昭和二十八年に改正をいたしたと記憶をいたしておりますが、審査官に対する審査の請求の件数は、二十八年度に二千百四十八件、二十九年度に二千五百六十四件、三十年度に三千四百十一件と年々増加をいたしております。また中央にございます社会保険審査会の方に対する再審査の請求件数は、改正前は平均四十人件でございました。改正後におきましては、二十八年度で百三十五件、二十九年度で百八十七件、三十年度で二百六十件ということに相なっております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 私が聞いておるところでは、審査が非常におくれて一年、二年たっても結論が出ないものがある、こういうことを聞いておりますが、それは事実でございますか。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 中央の審査会の再審査の御指摘であろうと思います。最近の一年の平均をとってみますと、請求後まず諸般の調査をいたしまして、そしてこれを再審査にかけ、さらに調査し直すということもいろいろございますので、大体十カ月程度で裁決に至るというふうなことに実績が相なっております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 大体社会保険審査会に提訴する件とうらのは、これは提訴する人にすれば三週間か一月、二月というふうに短期間に処理してもらわなければどうにもならぬ人たちが絶対多数だろうと私は思うのです。と申しますのは、たとえば保険の資格を喪失したとかいやおれはしないとか、全く生活に困窮した人たちが訴えてくるのだと私は思うわけでありまして、半年も、一年も二年も延ばされたのではこれは大へんだと思うのですが、そらした長年月を要するところの原因は一体どこにあるのか、御答弁を願いたい。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 ただいま申し上げましたのは再審査の場合でございまして、大部分は先ほど申し上げましたように、まず地方にございます審査官の方で処理をいたしておるわけでございます。その方は大体ニカ月弱くらいで処理をいたしておるようでございます。そして中央に上ってきますのは、さらにそれが淘汰されまして、件数も非常にしぼられて参ります。しかも法律的にもいろいろめんどうなことが出て参るわけであります。それから御存じのように、これは請求人と被請求人といろ形で、ちょうど裁判手続みたいなことをやるわけでございますので、実地調査とか事実の確認ということを十分にやらなければなりません。法律的な解釈ということについても相当慎重を期さなければなりませんが、大部分の期間は調査のために費やされておるわけであります。私どもは七名の職員を審査会の方に当てておるわけでございますが、これでもなかなか十分ではございませんので、保険局の他の職員にも応援させて調査全体といたしましてはやっておるわけでございます。こういうことで、現在の段階においては十分努力をいたしておりますけれども、事柄の性質上相当な期間を要するわけであります。しかし、将来の問題といたしましては、私どもはより努力を傾けて、先生の御指摘のような、なるべく短縮いたすような方向に成果をあげて参りたい所存でございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 中央の委員長、川西さんは非常にりっぱな方であると承知しておりますし、個々の委員の方々もごりっぱな方ばかりだと思っております。しかし、私がいろんな人から聞いている話では、予算がきわめて僅少であるということですが、審査会には一体どれくらいの予算があるのか、おわかりでしたら御答弁願いたいと思います。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 先生のお尋ねは、おそらく職員の給与等は別にした活動費というような種類のものであろうとと思いすが、三十二年度予算では、これは、一百三十万円見当に相なっております。この費用は御指摘のように必ずしも潤沢ではございませんので、過去においても相当努力いたしておるわけでございます。三十一年度の予算編成に当っては、旅費等について三十年度の倍額で予算を組み、それを三十二年度に踏襲いたしておるわけでございます。この制度の中には利益代表者というのがございまして、請求人の利益を代表する意味においていろいろ御心配を願っておるわけでございますが、これらの方々の手当なども実は  今まで計上されておりませんでした。三十二年度には、わずかではございますがさようなものも新たに計上いたしまして、御審議を願っているようなわけでございます。しかし私どもも決してこれで十分とは考えておりませんので、将来できるだけこれらの経費の獲得に努力をいたし、審査の円滑を期したいと考えております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 従来、利益代表の人には何らの実費弁償も行われていなかったと私は了承しておりますが、これは無茶な話だと思うのです。労働保険審査会では確か出ているはずだと思います。労働審査会では参与と言っているではないですか。それで、きわめて犠牲的な仕事ですから、利益代表というよりもっと敬称を使うように変えていくことも一案ではないかと思っているわけであります。とにかく従来非常におくれてきた原因は、経費の関係で地方の出張がやりにくい、あるいはまた参人を呼んでいろいろ調査するとか鑑定を依頼することがなかなかできなかったからです。たとえば不具者が障害年金を打ち切られて二年間もほうっておかれ、この二年間どうするかというような問題もある。昨年はたしか二百万足らず、百六十万とかいう話で、今度は五、六十かふえるわけですが、とにかく予算が非常に窮屈であるために審査会は有名無実になっておった。私はこの審査会法案が出たとき反対したのですが、当時私たちが反対した理由のような結果が今“やはりはっきり出てきておる。当時たしか久下君が、どうしてもこの制度を変えないと審査会の仕事が進捗しません、どうかこの方法に直してくれとお百度を踏まれて、与党の方が強引に押されたようないきさつを私覚えておりますが、今日のような審査会の運営の仕方では法律改正をした価値が全然ないと言っても過言でないと思うおわけであります。これは何と言っても予算の問題です。いかにりっぱな方がおられても金がなくては動けないのは当然でありますから、こういう方面に大いに留意をしていただかなければならぬ。それからいろいろな代表がおられますが、ただ使いというのはひどいと思います。そういうことでありますから、こういう人たちに対する優遇策についても一段の留意をお願いしておきます。

八田貞義自由民主党

○八田委員 関連して簡単にお伺いいたします。堂森委員の質問があったうち、大臣に単刀直入にお答弁願いたいことがあります。盛んに撤回の問題が出ておりますが、大臣は撤回する考えはない。大臣はもう終始変らぬ信念の上に立っておられるはずでありますが、撤回に応ずることのできない理由をはっきりさせていただく前に、この法案がいつまでに通れば自分らが提案した考えというものが達成できるんだ、こういうことを三十一年度の決算と三十二年度の予算とに分けて御答弁願いたい。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 この法案の撤回できない理由は、提案をした際に申し上げた提案理由で御了承願えると思います。それならば、この法案がいつまでに通ることを政府として希望しておるかという御質問でございましたが、私どもは一日も早く通していただきたいということを最初からお願い申し上げておったのでございます。しかし、これは理屈になりますが、実際上の扱い方から申しますと、どうしてもこの年度内に両院を通過して公布いたさなければ所要の成果を期することができませんので、参議院の議事日程もございますから、衆議院側としてはやはり一日も早く御審議を願いたい、これが政府一体の要望でございます。

八田貞義自由民主党

○八田委員 大臣は三十二年度の予算もひっくるめて年度内にこれを通過させてもらわなければ困る、こういうお考えでございますね。私はこれは分離しなければならぬと思う。大臣、これは分離してお考えにならぬと、私は今後の情勢がどういうふうに進展していくかわかりませんが、非常に不安を持つものなんです。ですから三十一年度の決算に間に合うようにこの法案が通ってこなければ、三十一年度に大きな穴があくんだ。三十二年度は別だ。年度内に通さなければならぬのは、三十一年度の決算をどうするかということで通さなければならぬのだ、そういうお考えですか。もう一回一つ……。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 三十一年度の政府の補助をいただくために、三十一年度の最終末までに両院を通過していただいて公布しないと、これと同時にできない関係でありますので、三十一日までにどうしても両院を通していただきたい、こういう考えでございます。

八田貞義自由民主党

○八田委員 そうすると、前に出された財政的な内容は一月一日に施行する。そうすると財政的な効果として、患者一部負担とか継続給付の問題とかあるいは標準報酬の改訂によって三億一千九百万円くらいの収入増になってくるのです。ところが今日はそれはなくても済むんです。三十億さえ入ってくればいい。しかも四十七億と見込まれた赤字が今三十六億というふうになっておる。そうしますと、三十億入ってくれば、あと予備費をくっつければ十分に三十一年度の決算はできるわけなんです。そうしますと、この三十二年度の予算をやるために、いろいろとまだ同じような患者一部負担が出ておるのです。これはこれから十分に検討しなければならぬ問題で、私は三十一年度の決算をどうするかという立場に入っておるわけです。その場合に、これほど医療担当者が反対しているこの改正案は、国民皆保険というものを実施するための基本法になるのであるから、じっくりと審議をして、協力を得られるような線の法案をこの国会に通す。年度末に追いやられたならば、三十一年度の決算をどうするかということにあるのでありますから、当然厚生保険特別会計の一部改正でもってこの三十一年の年度末は乗り切って、この国会は五月まであるのでありますから、十分余裕を与えるというお考えが大臣にあるかどうか。大臣は少くとも二十五臨時国会のあとでなられたのでありますから、今の置かれた客観情勢というものをあらためて考え直して、国民の声を開いて、どうあるべきかについて厚生大臣は大きなかじをとらなければならぬ、どうですか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 八田さんの御意見は超党派の御意見のようでございまして、八田委員のお尋ねにお答えする前に、八田さんの方で、党議をまとめるというよりも、党議を変更していただかないと、主管大臣としては答弁に因るのでありますが、政府といたしましても、党とも打ち合せの上この法案を年度内に通していただく、こういう決意でお願いしておるわけでございまして、二段がまえでいくということは、政府としても、党としても、非常に飛躍した議論になりますので、さようなことは私どもただいままで聞いておりませんし、考えておらないことでございますので、さよう御了承願いたいと思います。

八田貞義自由民主党

○八田委員 もう一つ。党の意見調整というようなお言葉があったのでありますが、大臣は少くともこの問題の責任者ですから、大臣が党の幹部に十分お話になることが必要だと思う。特に医療担当者は、たといこの法案が流れても、そのために医療担当者に対する支払いが遅延し、しわ寄せが起ってもいいんだ、これが通ることについては絶対反対だと言っている。これはやはり考えなければならぬと思う。大臣はどうかこの点について、二段がまえというようなことは自分は考えたくないとおっしやいますけれども、大臣がこの非常に大切な立場において、やはり不測の場合もよく頭の中に入れられてやらなければ、この年度末の決算期を控えて非常に大きな問題になって参りますので、どうか大臣、幅のある考えをもって対策を講ぜられることが必要であろうということを申し上げます。

藤本捨助自由民主党

○藤本委員長 午後一時半まで休憩いたします。     午後零時八分休憩      ————◇—————    午後二時十三分開議

藤本捨助自由民主党

○藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  午前中の質疑を続行いたします。岡本隆一君。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 大臣に一つお伺いしたいのですが、けさの朝日新聞に大きなアドバルーンが上っております。なかなか厚生省はうまいことやりおるなと実は思った。もう健保の審査が山を迎えましてここらで医療機関の頭をちょっとなでておかぬといかぬというところじゃあないかというふうなことも疑えば疑えないことはないわけであります。厚生大臣はあの記事をごらんになって、これは大へんな記事が出たとお感じになったか、あるいは自分の所信があのようにはっきり新聞に公表されて天下に、先日来の私たちとの間の論争の結論が出ましたので、ほんとうに仕合せな記事だ、こういうふうにお感じになっていらっしゃいますか、御感想から一つ承わっていきたいと思います。    [委員長退席、野澤委員長代理着席]

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 けさの朝日新聞の記事につきまして感想をというお尋ねのようでございますが、私も実はけさ何げなく読んだのでございますが、あの記事は私といたしましても厚生省といたしましても意識的にあるいは積極的にどうこうというような関係はございません。察するところ当委員会における質疑応答をおまとめになったのではないか、こういうふうに私考えております。書かれておる内容を今後調査いたしまして、これを実行して参りたいと思っておるには変りございませんが、あの記事を見ましてなお一そう責任を痛感しておる次第でございます。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 健康保険法が通過したら単価の引き上げをやりたいと思う、こういうようなアドバルーンでございますが、厚生省が上げられたのではないかもしれません。しかしながらあの記事が出ますと、やはり厚生省の意向があの記事に反映している、こういうふうに医療機関の方ではとると思うのです。ところであの記事を見てみますと、あのアドバルーンにはひもがついていないのであります。どこに飛んでいっていいかわからないようなアドバルーンなのです。こうしてやります、こうすればできますということはどこにも書かれてないのです。ウの目タカの目で探してもひもは見つからない。しかもこのひもはしごくたよりないといわんばかりに、厚生省の事務当局はきわめて消極的である、こういうふうなことがつけ加えられております。そこで一つこの委員会でひもをしっかりつけていただきたい。ということは、御承知のように単価を一点について一円引き上げて、まず大よその見当百五十億あるいは百七十億と出ていたよ一に思いますが、しかし私はそうまでは要らないと思うのです。しかし大体百五十億くらいは要るのじゃないかと思う。二円上げれば三百億必要なのです。そうしますとそれだけの財源をどこからか見つけてこないことには夢物語りで終っちゃうのです。だから大よそこういうふうな方向に持っていけば実現可能であるというふうな、夢なら夢でももうちょっと夢らしいつじつまの合った形のものにしていただかないと困ると思いますが、一つあのアドバルーンにがっちりしたひもをつけていただきたいと思います。厚生大臣の御所見を承わりたい。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 あの新聞の記事を対象にしてお答えを申し上げるわけではないのでありますが、せんだって来の当委員会におきまするお尋ねに私しばしばお答え申し上げましたように、とにかく現行単価ができまして以来、特に最近に至ってこの改訂をしてもらいたいという要望が強いことは、これはもう私よりもむしろ岡本さんの方が御承知だと思う。私も厚生省へ参りましてこの御要望が非常に強い、しかも承わっておりますると、その内容に関しましてもこれはごもっともだというような、私感じを持っておるのでございます。そこで今日政府が医療保障を一つ強化していこう、こういう際に医師の犠牲において医療制度を強化して国民医療を解決していこう、こういうことをもし考えるといたしましたら、これはもうさもしい根性だといわなければならぬと思うのです。そこで私は、医療保障を一つ強化する際には、特に協力者である保険医の待遇について、正常あるべきところまで持ってくることが当然だ、これをやるためには、では一体その裏づけとなる予算が幾らいるのだと言うことは、当然だと思います。そこでその見せ金をこらやって組んでおくということも一つのやり方であろうかと思いまするが、それには御承知のように時期があるのでございまして、今その手当をして改正するということならば、むしろその方が私は望み薄の結果になるのじゃないかと思う。これは調査してみなければ、一体どの程度になるのか——これはまあいろいろあると私は思うのです。薬価の製造原価が下っておるものもあるでしょうし、あるいは新薬等でまた新しいものが加わっているものもあろうと思うのであります。そこで私は今のやり方でいった場合には、一体正常あるべき保険医の報酬というものは、どの程度になればいいのかということを一つ調査してもらいたい。同時にもう一つ、私、根本的なことは、このやり方自体は健康保険として労務管理を目標として最低の医療を保障しようというような制度で発足して参ったものですから「今度は国民皆保険というような、国民のすべてに医療保障をしようというような、社会保険をしようというような考え方になってくると、これは非常に新しい観点に立って、医師のあるべきあり方というものを私は立てていかなければならないのじゃないかと思う。そういうことだとするなら、ほんとうに新しい構想で、あるべき姿というものを打ち立てる必要があるのじゃないか。そこで、今の単価を基準とした場合に、物価なりあるいはまたこの技術等に応じたものがどの程度になるか、それからまた今のやり方にまさるものはないか、どういうやり方があるかというような、少くとも二段、三段のかまえでこの問題と一つ取り組んで、そしてそこで解決点を見つけたい。そこを固めておいてから、これは財政上の処置というものを相談いたしたい。これは御承知のようにいろいろ一点単価の改正が批判を受けておることと、政府自体もこの問題について、税法上の措置をしなければならないというような落度を認めていると思うのです。そういう改正問題がやはり生まれてくると思う。そういたしますと、私は相当これは重大でございますので若干の調査機関も要るのではないか、その固まったときにその仕組みをしていけばいいのじゃないか、その前にあらかじめ予算をぶっつけておいて、その予算の範囲内で保険医にがまんしてもらうんだというような考え方をとることは、かえって正常あるべき姿を出すことが困難じゃないかというふうに考えまして、これは石橋内閣からその後岸内閣になりましたので、そういうしさいな予算化をすることはもう時間的にも無理でございましたが、しかしこの問題が早くきまれば私は打つ手がおのずから出てくるのではないか、こういう気持を持ちまして、閣議においてもしばしばこの点を強調いたしまして御了解を得ております。それから党の機関にもこの点を十分話しまして、万々手落ちのないようにしていきたい。ことに保険医の待遇の問題は、これこそ超党派的に、またほんとうに国家本位に考えていかなければならぬと私は思う。決してこれは保険医だけの問題として考えるべき問題ではない。国家的に考え、同時に被保険者の問題としてこれは大きな、なるほどという納得のできるようなものでなかったならば、そういう改正案をもし通しましても持続しないと思う。三位一体になってお互いが協力の立場から共鳴できるようなものにしたい、そういう考えのもとに事務当局に一つ至急立案するように、こういうことを命じてあるわけなのであります。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 お言葉ではございますけれども、一点一円引き上げで百五十億、かりに十二円五十銭を十五円にしようとと思えばそれでもって約五百億、そうしますと第二十二国会以来健保法改正の問題はこれだけの大騒動を起している。政府は三回流産のうき目を見ておる。(「二回だ」と呼ぶ者あり今度で三回だ。そういうふうに、それはもとはといえば、二十二国会の時分には三百億の赤字対策、今戸億の赤字対策に対してこれだけ難難辛苦しなければならない。かりに今度これが通って、そうしてどうにか赤字がまあまあ落ちついたとしたら、すぐまたあらためて五百億の財源の捻出に、かりに二円五十銭引き上げるとしても苦心さんたんしなければならぬ。これは金づちでもつて大きな岩をこんこんくずしにかかるような大難工事だと思うのです。こうなってくると青の洞門の穴掘りみたいなことになるのじゃないか。結局その穴掘りが完成した時分には、もう医療機関がすべて老いさらばえて、盲いてどうにもならぬという状態になってしまう。私はその点に非常に危惧を持つ。それでは、今あなたはそれだけのことを一つ医療機関の満足を——医療機関の満足というよりも、医療機関が健全な運営をやっていけるだけの単価の引き上げをやりたいというお言葉でございますが、そういうふうな財政的な措置、財源をどこかから出してこなければならないというふうなことを十分覚悟の上で、取り組んでいただけるのかどうかということを、いま一度御答弁を承わっておきたいと思います。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 一点単価の改正について、今の基準を一点について一円なりあるいは二円なり上げることによって数百億の財源を必要とする、そこで一体その財源に責任を持つかという意味のように私、お聞きいたしております。もちろん単価を改訂する、しかも待遇を改善するというのですから、全体としてこれは値が上ることであることは間違いないと思う。こまかく言って、あるものは上り、あるものは下るというようなことはあろうかと思いますが、大体において上る。要するに保険医の手取りを多くしようということが方向でございますから、その財源がどの程度になるかということは、このきめ方によって大きくもなり、小さくもなると思いますが、私はそれがどの程度になるかということは、まだつかんでいない。それは調査ができてないからつかんでいないわけなのです。そこで先ほども申し上げましたように百億の金を持ってきて、これだけ上げるんだという考え方もありましょう。けれども私はそういう安易な考え方でなく、保険医として正常な標準報酬というものは一体どの程度を確保されるかということを土台としてまず計算をしてみたい、その計算の方法は、現行制度による値上げの方法もありましょうし、あるいはまた先ほど来申し上げておりますように、やり方を画期的に、なおいい方法があればそれを取り入れる。これは厚生省の試案はありませんが、他からのいろいろ案もあるようでございます。そういう案を基礎といたしまして、そしてあるべき姿にするにはどの程度要るかということを知りたい。私はこれはこの間も県立や市立の病院長の方々がおいでになって非常な御熱心な陳情がございましたので、その際も、あなた方、ただ上げてくれというだけではわからないぞ、一つどういうふうにすれば一体いいのかということを具体的に聞かしてくれぬか、それからまた、今の制度よりももっといい制度があるなら、もっと簡単で、この方がむしろいいんだというのがあるなら、それでもいいのだ、一つあなたの方でも委員会でも作っていただいて、こういうふうにするのがほんとうなんだというのを出してくれないか、これは自分の方でも、今健康保険法の改正案に追われておるから手が伸びておらないのだが、うちでも計算を、作業を開始したのだから、そちらからも出してくれぬかということをお願いしておるわけなんでございます。ですから何度も繰り返すようでございますが、金をつかんでおいては決してやっておらない、しかし出たことの点について、こうあるべきものであるという限りにおいては、それは善処しようということで、閣内の意見もまとめ、作業を進めておるわけでございまして、これは一つ現政府や与党を信用していただかない限りは、お話はぐるぐる回りで、どうも糸のある話か、ない話かというようなことになってしまうのじゃないかと思う。とにかく神武以来の景気といわれて、一千億の減税もしよう、いろいろ社会保障もし、また緊急欠くべからざる施設もたくさんやろうといろ段階でありますから、そういう際に保険医だけが押えられた収入で御奉公をしなければならない。それでは私はほんとうの医療制度そのものが、幾ら政府が医療保障をしようといっても、医療の進歩を押える。保険医の生活を脅かすような段階にしておいて、そして国民の医療保障をやっていこうというようなことは間違っている。だからあるべき姿というものをまずつかんで、その上で相談をいたしたい。その相談の骨子となることについては、十分閣内においても、こういう調査をしてどういう結果になるか、そのときに相談する。そこで一つこれは乗ってもらわなければならぬということについては、それは乗ります、その声はわれわれも認めておる。こう言っておられるわけでございます。もちろん被保険者の側に立っても考えなければならぬことでございますが、私は今日の段階としては、やはりどういじるかは別として、とにかく待遇を変えていく、保障もしなければならないということは一つの常識じゃないか、こう考えておりますので、その結論さえつかめば、私は財政当局だって、あるいはまた他のやり方によっても、これはやるべきものはやらなければならぬのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それからもう一つ、健康保険法の改正が二十二国会及び二十三国会でございますか、流れておるじゃないか、非常な困難な立法だということでございまして、これは私午前中も堂森委員にお答え申し上げたのでございましたが、これについてはいろいろと事情があったろうと思います。私が述べましたように、いろいろこれは誤解もあったということを申し上げたのでございますが、これは社会党さんの大いに健闘のたまものだったのだろうと思う。言いかえれば、いろいろそのときの議会情勢が与党の方がやりにくい点があったのだろうと思います。まあこの国会はどうなるか別といたしまして、二十二—二十三は出ませんが、二十四、五国会と来ておりますから、今度は一つすみやかに御審議をしていただきたい、このことをあわせてお願いしておきます。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 すでに大体閣内でも、了解とまでは行かないかもしれませんが、相当そういう空気は強くなっているというような御意向のようでございますが、そこで局長さんに一つお尋ねしたい。大臣の方から、そういうような形でもってやれというような御命令がすでに出ておる模様でございますから、事務当局の方でもそういう観点に立った御協力が願えるものでしょうか。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 大臣から今仰せになりましたような、広範にわたっての検討を命ぜられております。私どもも、大臣仰せの方向に向って、いろいろ本格的に取っ組みたいということで、その心がまえでおります。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 そこで問題の一点単価一円引き上げに伴うところの百五十億という数字の根拠でございます。私の計算によりますと、この数字はこの前一部申し上げたこともございますが、大体医療費全体として百二十三億九千四百万円、これが一点単価一円引き上げに伴い増高する金額だと思います。政府保険が四十二億、組合保険が三十九億、国民保険で三十一億、社会福祉法関係で十一億六千五百万円、そういうようなものを締めて百二十三億九千四百万円という数字を、私、出したのです。昭和三十年の甲地乙地別の診療報酬の支払いの明細をあなたの方からいただきまして、それをもとに計算してみると、そういう数字になります。そのうち保険者の負担する分が九十三億で、被保険者の負担しなければならない分が三十一億という数字が出ております。これはあとであなたの方と数字を突き合して検討してみたいと思います。あまり一点単価一円引き上げに伴うところの金額を膨大なものと仮想されますと、やはり財務当局の方からいろいろ問題が出て困難になってくると思います。従ってこういうような数字の積算というものは相当正確な、また慎重な発表をしていただかないと、見積りをあまり大きくとると、頭から困難な問題ということになってしまう。従って積算をもう一ぺん慎重に検討のやり直しをしていただいて、そうしておよそ何ぼほど要るものかということを、もう一度はっきりさしておいていただきたいと思います。これは今すぐ出していただくわけに参りませんから、一つ課題にして委員会で御発表願いたいと思います。  それから、とにかく大臣の大きな抱負が、ある程度事務当局の御協力もあり閣内の支持もあって実現しそうだ、ちょっとひもが見えかかってきたわけでございまして、そこでもう一つお尋ねいたしておきたいことは、一部負担の問題でございます。今度入院料三十円それから初診のときは百円というような形になって、出てくるところの財政効果が十二億ということは先日の委員会で承わったのでございますが、しかし現実にそれでは被保険者にどういうふうな姿で影響が出てくるかということを認識していただいているのかどうか、私は危惧を持つのです。まことに失礼なことをお尋ねいたしますが、実例で一つお尋ねしたいのです。月収二万円、夫婦子供三人、これは日本の勤労者、ことに政府管掌の被保険者の標準報酬から見るときに、大体月収二万円、夫婦子供三人というのが標準家庭だと思うのです。このような政府管堂の被保険者がかりに肋膜炎を起して入院したとします。そのときに傷病手当金をどれだけもらえるか御存じですか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 これは二万円の六割ですから、一万二千円じゃありませんか。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 その通りです。それがいつごろ手に入るか。病気で休業いたしまして傷病手当金を請求いたします。それがいつごろ手に入るか、その実情を御存じでしょうか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 実は私も工場を経営いたしておりまして、よく承知しておるつもりなんです。よそのことは知りませんが、——法律的な答えをせよということなら政府委員からいたさせますが、らちの方ではすぐ払っておるようでございます。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 傷病手当金は保険者から出ますので、工場から出るのではございません。病気になって一カ月休みます。そして一カ月休んだという医師の証明を社会保険出張所に持っていきます。それから相当期間たって通知がきてもらいにいくのです。その期間がどのくらいとお考えですか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 大体二週間くらいじゃないですか。早いのは四、五日、違いますか。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 傷病手当金は御存じのように給料を企業側から出しておる場合には支給いたしません。日給者のような場合、給料が会社側から出ません。それで給料が出なくなって三日間待機期間があります。それから四日目から支給するという法律上の建前になっております。それで請求後一週間ないし二週間程度で出されておると思います。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 そうは早くいっておりません。今までは大体一カ月くらいおくれるのが通例でございました。かりに局長が言われるように二週間程度で出たとしても、発病したその月一カ月分まとめて請求いたします。当りまえなら工場から給料をもらう場合には、月末にもらえるのです。ところが月末に請求書を書いて医者の証明書をもらって社会保険出張所へ出して二週間後にきたとして、給料をもらうときよりも半月おくれる。半月おくれてもらうお金が例月の収入の六割になるわけですね。このことは非常に重要な問題だと思う。とにかく給料日に給料はもらえない。そして半月おくれてやっともらうのが例月の収入の六割しかない。二万円の給料の被保険者にとっては収入が一万二千円に減ってしまう。あなたのヒューマニズムこういう残酷なことを要求するということは、とても耐えられないであろうと思うのですが、あなたのお考えを承わりたい。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 それは今岡本委員のお話のように、月収二万円の人が一万二千円になって、一日三十円の入院費を払らうということになると九百円だけ月にとられるわけですが、これは今まで払わなかったものを払うという建前からいくと、それだけ支出がふえるわけですから生活が苦しくなることはこれはおっしゃる通りでございます。しかし今例にあげられた方が、病気になられて二万円の収入が一万二千円になった。らちで御養生なさっておればその一万二千円で食べていくわけですね。ところが病院にお入りになれば、病院で全部見てくれるのですから、一日三十円、月九百円持っていけば病院でやってくれるということなんでしう。うちにいてもやはり食事を食べているのですから自分でお払いになるわけです。これはどうでしょうか、今の社会の実際の状態からいって、病院に入って寝泊まりして食って一月三十円は高いという議論になるでしょうか。その辺のことは私も詳しくないので、これは政府委員から一つ答弁さしたいと思います。うちにいれば一万二千円で食っていかなければならぬが、向うへからだだけ持っていって月に九百円で入院できるのですから、そこは被保険者相互間の負担の公平といいましょうか、これは高額所得の人だって病気になれば入れるのですから、私はやはり受益者の立場に立つわけだと思う。その立場に立って何がしかの負担をするということになれば私は正義感と一致するのではないかと思います。らちにいればやはり一万二千円で食べる。その一万二千円の中から九百円だけ持って一カ月向うへ入院できるというのですから、むしろ安いのじゃないでしょうか、どうでしょうか。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 なるほどペーパーの上での計算はその通りになります。しかしそれではその家族から一人抜ければ、それだけぽんと負担が助かるというものじゃないのです。米を一升たくのも八合たくのも、燃料費は変らない。一人がいないようになっても、電灯料はそんなに減るものではない。かまどを二つに分ければうんと金が要るということは、あなただってもうそれだけのお年で、世の辛酸を自分ではなめておられないかもしれないが、すいも甘いもよくかみ分けられた厚生大臣ですから、それくらいの計算は私はおわかりになろうと思う。主人が入院したとあらば、やはり奥さんは心配ですから見舞に行きます。子供の手を引いて電車に乗って見舞に行けば、帰りにキャラメルの一つも子供に買ってやらなければならない。主人のところに見舞に行くのに何も持たずに手ぶらで行くわけには参りません。せめてリンゴの二つ三つ、ミカンの五つも買って持っていく。そうすると行くたびに百円、二百円という金が吹っ飛ぶ。交通費とかお小づかいとか、そういうふうなものの金額はばかにならないのです。九百円で口をあずけるんだったら安いじゃないか、なるほどあなたのそろばんはそうかもしれません。しかしそれは自民党的そろばんであって、厚生大臣的そろばんではない。自民党の中において、一番社会保障に強い熱意を持ち、一番生活の苦しい人たちを援護するという立場にお立ちになるあなたとして、そんなそろばんを置いてもらっては困ります。一つそろばんをかえるようにしていただくわけにはいきませんか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 よくわかりました。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 おわかりになっていただけたら、それでは今度二千億自然増収のうち一千億を減税に振り当て、一千億を施策に用いる、その全体の一千億という金額のうちから見たらわずか一部負担の十二億という金額はちょらちんとつり鐘です。けたが二けた違うのです。だから少くも今度の予算に減税をうたい、多くの施策をうたう中で、ただ一つ、今度の予算の一番の欠陥というものは、十二億のこういうふうな最も弱い立場に立つ人々に対して、支出を強制していく、支出の増を要求するというところに私はあると思う。今からでもおそくはない。十二億のこの一部負担というものをとって、病者を喜ばせ、苦しい立場にいる人たちを喜ばせるという気持に一大転換をやっていただくわけにいきませんでしょうか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 先ほどから申し上げますように、患者負担というようなものはしない方がするよりもまさることはおっしゃる通りと思います。ただしかし健康保険財政に非常な穴があいている。そこで政府も三十億円の金を出すわけなんです。それから政府管掌保険組合の構成員はとにかく五百四、五十万人あるのです。五百四、五十万人の中で、御病気になった方が自分の方で一日三十円、これは全体からすれば年に二百円くらいですから、月に十八円くらいの負担になるのでございますが、政府も負担をしよう、こういうことなんでございまして、政府が三十億円出して、さらに患者が十二億円出すということは、もちろん今おあげになった生活に困っておられる方からいえば、お出しになっていただくことはほんとうにお気の毒を増すことになるのであるが、健康保険に加入されている方は困る人ばかりではないので、今日では重役もみな加入しておるわけでありますから、御病気になった方と、ならない方が健康保険の財政が豊かになる場合においては、もちろん文句はないわけでありますが、政府の金も税金から出るわけでございますから、少額の分を患者が出そう。そこでこういう仕組みになったと私は承わっておりまして、その話を聞きまして、なるほどこれは両方一両損といいましょうか、政府が三十億出してそうして自分の方で十二億出す、それでやっていけるというなら、これはお互いがみんなに迷惑をかけないで自分に振りかかった災難を自分も多少そこで持ち分を出すということは、私はそう悪い制度じゃないと思うのです。ただしかし、さっきも申し上げたように、税金は安いことにこしたことはないし、負担もできるだけ出さないことにこしたことはないわけでございますが、しかし財政がこう悪くなった際には、どなたからか出してもらわなければ保険財政というものが行き詰まるのでございますから、こういう際には多少一つ忍んでいただく、負担能力がらんとある方は出せという意味は、もちろん中にはらんと出せる能力のある方もございますけれども、それは持ち合いでいく、私はこういう気持でできた、こういうふうに聞いておりまして、そういう助け合い運動みたようなものでございますから、それなら一つみな御了解願えるんじゃないか、こういう気持で考えているわけでございます。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 両方一両損だ、なるほどよいなにを思いつかれたわけであります。ところが両方一両損の理論はもう一昨年勝負がついているのです。両方一両損で三十五億すでに保険料の値上げで被保険者は出している。両方一両損を言われるなら、被保険者が三十五億出したときに保険料の値上げをおととしの七月からされております。もう本年度は五十億くらいになるでしょう。それだけすでに被保険者は出しておる、ところで政府の方は三十億まだ出していない、今度やっと出すんだ、両方一両損は先に片方の弱い者から一両とっておいて、自分の方は始末して一両出さぬ、今度おれのところは一両出すからお前もう一ぺん一両出せ、結局片方は二両損で政府は一両損ということになる。それともら一つ今度は標準報酬の引き上げ、あなたのおっしゃるように金のある人はあるんだから、今までは金のある人からとっていないが、今度は金のある人からももうちっといただきましょうということになって、標準報酬の最高額を引き上げるのです。だからあなたの言われる両方一両損の理論でいけば、当然片方は二両にも三両にもなっているんだから、これの方はもう帳消しにしていただかなければいかぬという結論が出ると思うのです。それでもまだ両方一両損だという議論が成り立つと思われますか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 前の保険料の増額のことは、それはもう前で解決が済んでおったんじゃないでしょうか。もともと健康保険法の施行以来政府が助成をしてこない、とにかく被保険者相互あるいは保険者と協力のもとでおやりになってきたわけなんです。そこでそういうこともおやりになった。それでもなかなかうまくいかない。そこで政府が持とう、政府が持つについてはもう一ぺん一両ずつ持とうじゃないかという新しい段階でできたんだ、私はこういうふうに聞いておるのでございます。そうでなく、これはもう初めから政府から出すべきものであるというなら、私はすでにその当時政府がお出しになったのだと思う。そのときお出しにならないで国会を通っておるということは、そのときの情勢においてはそれで御解決がついたんじゃないでしょうか、それは解決がついたんだが、その後にまた新しい情勢で追われてきた、そこで政府もこれ以上みなまるまる出せというわけにいかぬから、政府も負担しようじゃないか、同時に受益者負担といいましょうか、被保険者相互の負担の適正化といいましょうか、そこで一つ何がしかの負担をしてくれぬかということで、初診料の初回百円、入院料の三十円負担、こういうことが生まれてきたというふうに私伺っておるのであります。繰り返して言うようでございますが、負担を増すことはいかなる場合でもいやなことでございますから、岡本委員が特にボーダー・ライン層なり、低額所得者のためにそういった正義の点から御質問をなさる気持はよくわかるのでございますけれども、政府の財政もそう手放しの財政ではないと私は思っております。一千億の施設といっても——一千億減税はその通り一千億減税でありますが、一千億施設は、内容は逐次大蔵大臣も説明しておる通りその中には法令による当然の増というものが入っておって、ほんとうに新規の一千億施設というものはむしろその半分にも満たないことになっておることは御承知の通りなんです。その中からとにかくさいておるわけでございますから、これは一つ御了承願いたい、こういうことが私どもの考えなんでございます。

八田貞義自由民主党

○八田委員 関連して。大臣いろいろ今岡本委員との間の一部負担の問題について伺っておりますと、一部負担というものについては大臣はどういう概念でやられておるか、それを大臣お伺いしたいのです。一部負担の問題をはっきりしておきませんと、いろいろ大臣の御答弁を伺っておりましても、あるいは岡本委員の質問を伺っておりましても、この一部負担の質疑がぼやっとした概念のもとでやりとりされていると非常に私は遺憾に感じますの で、大臣が少くともこの法案を提案されておるのでありますから、一体どういう概念で一部負担の制度というものを考えておられるか、これとともに差額徴収という問題も出てくるわけです。この点について一つ大臣の御見解をおっしゃってみて下さい。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 私は今度の法律改正の内容になっております一部負担の問題は、先ほどもお答え申し上げておるわけでございますが、もちろん財政上の健保財政の解決という問題を出発にしておることはもとよりでございまするが、被保険者相互の負担の適正と申しましょうか、負担の公平ということからスタートしていると私は思います。お互いに保険料を払っておる、しかしその保険財政がある程度行き詰まって、政府が財政援助をする、そういう際にその保険財政に均霑するものがその均霑の度合に応じて何かしらを負担するのは、私は正義の点からいっても決してはずれておらない、負担の公正な一つの現われだと考えております。ただ非常に困っておる人をどうするかというようなことは、これはまたおのずから別な問題であるのじゃないか、私はこういうふうに考えておるわけでございます。

八田貞義自由民主党

○八田委員 そうすると、一部負担の制度は前からあるわけなんです。今度増額してきた。そこでいろいろと問題が出てくるわけなのですが、もちろんきのうも局長との間に一部負担は給付内であるか、給付外であるかという問題を質問しておる。その場合局長は給付内である、こういうふうに言ってております。そうしますと、大臣の今の考えでいきますと給付率の問題になってくるわけです。給付内ということになりますと、一部負担ということは納付率を引き下げたことになるわけです。差額徴収は、給付率はきまっておって、そのはみ出た分だけを患者が払うということです。ですから、結局給付内ということになれば、一部負担というのは給付率を下げた、こういうことになってくるわけなんです。この見解に対して大臣はどうお考えになりますか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 給付率を下げたという一つの説明も私はおっしゃる通りだと思います。しかし今度の場合は医療水準の上ったことから生じてきたわけですから、そちらから言えば、いわゆる医療水準が上ったので、形式的には給付内容が低下しておるが、実質的にはやはり上ってきておると見ていいじゃないかと私は思います。

八田貞義自由民主党

○八田委員 大臣、そうしますと、医療水準が上ったと言われますが、給付水準はどうなっておるかということです。給付の水準ですよ。私は医療水準ということを言っておるんじゃない、給付率を申し上げておるのです。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 専門的な御質問でございますが、給付の水準というのは、昨日も八田先生と私との質疑応答の中に明らかになりましたように、中にいろいろな要素を含んでおります。給付率もその一つであります。あるいは給付期間というようなもの、あるいは給付の範囲というようなもの等いろいろ含んでおりますので、その給付の水準というものが下ったか上ったかというようなことで簡単にはこの一部負担のためにどうのこうのということは言えないかと思いま。

八田貞義自由民主党

○八田委員 医療内容については……。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 医療内容につきましては、決して給付をいたす医療の内容が一部負担によって下っておるわけではございません。これは現物給付の建前をとっております現在のことでございますし、それから医療内容は、先ほど大臣のお答えにもございましたように時々刻々改善されていっておりますから、従いまして、今回の一部負担をやったがために給付される医療内容が低下したというようなことにはならないと思います。

八田貞義自由民主党

○八田委員 ところが医療内容というものはあなた方どういうふうな概念で現在最高限を置いておられるのですか。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 現在健康保険がとっております医療内容というものは、具体的の現われとしましては、療養担当規程とか、主として治療指針というようなものに現われてくるわけであります。これは御存じのように、現在学界で公認されて通説的になったようなものは時々刻々私どもとしましては健保の医療内容として取り入れるべく努力いたしておるわけであります。近く結核の治療指針等につきましても、それから抗生物質使用基準というようなものにつきましても、その他たとえば精神病でございましたか、そういうような問題につきましても、これは学界から御答申をいただいて、その御答申の通りに私どもはこれを改正いたしたい、こういう意図を持っておるわけであります。さようなわけで、今日の学界において異論のあるものは別でありますが、一応学界がこれはこういうことでいくべきであるということで御答申をいただいたものは、私どもとしましてはこれを取り入れるべく努力をいたしておるわけであります。

八田貞義自由民主党

○八田委員 ところが、あなたが治療指針とか療養担当規程とかいうふうに言われておりますが、治療指針をはっきり持っておるのは結核ですよ。普通の保険医が診療をやっておって診療費を請求する場合に医療費の最高水準というものはきめられておりません。私はそこを言っておるのです。しかもまた疾病とかあるいは治癒といってもこれは非常にむずかしい問題がある。私はその最高限をきめないで、そうして今度診療報酬の請求書は単価と点数の相乗積でいくんだ、そうしますと、支払い基準でいけばすぽっと切っちまうんですよ。ここに問題がある。私はやはり最高限をきめないで、そうして適正なる医療とか医療の効率化なんという言葉は出てこないはずなんです。そこからいろいろと問題が出てくるのです。差額徴収というのは今日やっていないかと申しますと、これは療養費払いでやっておる。これは大臣によくお考え願いたいのですすが、今後国民皆保険をやっていくのだということを言われましても、今日の報酬支払いは物的給付という状態でやられてきておるすなわち物を行使した者に代価を支払っておる。物を行使する人は医療担当者です。それをあとで審査する。審査するのはどういうふうにやられるかというと、最高限の示されていないものについてただ単に保険医療費のワク内でもって点数の切り捨てをやっておる。大臣、私はこの点を今後大いに考えていかなければならぬと思う。物的給付は今日国民医療保障の理想的形態として取り上げられてこのまま出てきておりますけれども、われわれは差額徴収という面も考えていかなければならぬ。現金給付というものが医療保障の中にどういうふうにして溶け込んでいくか、どういうふうにやっていったらいいかという問題もここで考えておかなければならぬ。局長は盛んに、耳打ちなさっておりますけれども、実際これは、いろんな東大病院とかあるいは私立大学の病院とか、一般開業医の場合、一件当りの点数がみな違うのでございますよ。一体それはどこから出てくるのか、これは最高限をきめていないからです。そのときそのときで、保険財政の上からすぽすぽ切ってしまう。大臣は、東大病院の一件当りの点数がどれくらいで、私立大学病院の一件当りは幾らで、そして一般開業医の点数は幾らだか御存じないと思うのです。一体そういうアンバランスがどこから出てくるのか、この点は大臣よくお考え願いたい。私は関連質問ですからこれくらいにしますけれども、この一部負担という問題について簡単に割り切った考えでいきますと、いろんな給付のアンバランスが起ってくるわけです。どうか大臣、この点は慎重に掘り下げた考えでやっていただきませんと、せっかく国民の声として伸ばそうとする国民皆医療保険が一つも伸びていかないのです。この点を……。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 誤解を招くといけませんので明確にいたしておきたいと思いますが、今日保険の財政的な観点から医療の内容を査定したりなんかするようなことはいたしておりません。もしこういうふうなことができるのであれば、保険は赤を出さないはずでございます。赤が出てくるということは、結局さようなことをやっておらないということになると思います。  それから先ほど私が治療指針というようなもので大体きまっていくのだということを申し上げましたが、御指摘のように治療指針は万般の疾病については定めてございません。今のような現物給付の建前をとっている以上は、その治療の内容というものもできるだけ万般の疾病について定めるべきであるという要請は各方面から指摘されているところでございますが、今日御指摘のようにかぜの治療指針なんというものは定めてございません。というのは、結局そちらの方に私どもも努力をいたしておるわけでございますが、しかし四百四病について全部治療指針ができないというのが、やはり疾病を治療するという医学技術の特殊性であろうかと思います。従ってそういう意味合いにおきましては最高限というものは定まっておりません。しかしそこにおのずから——たとえばかぜにとんでもない、一般に医学上常識はずれの治療をしたということになりますと、これは御存じのように支払い基金でお医者さんたちが集まって審査をなさっている。そこで医学常識というものに、よって審査も行われるということになっているわけでございます。それかと申しましても、御存じのように七百種類、約七百の医療行為の点数を定めており、医療というものは大体きめられている七百余りの医療行為のどれかに入っている。薬の方も三千からの品目を収載しております。従いましてこの七百の医療行為と三千の薬を使うことによって、医療というものは大体行われるという体制になっておりますので、これが非常に常識のはずれた制限治療だということも言えないかとも思います。  それからなお、先ほど差額徴収の問題と療養費払いの問題にちょっとお触れになりましたが、差額徴収というものはやはり現物給付についてくる考え方でございまして、現物給付の建前を廃止して療養費払いでいくかどうかという問題と差額徴収の問題とは関連はありますけれども、これは両方別々にも検討し得る保険上のテクニックの上の概念ではないか、かように私どもは考えております。

八田貞義自由民主党

○八田委員 局長、こんな問題になると議論になってしまうのですが、今日行為というものは収入に何にも並行して発生するものではない。ところが保険料の支払いは収入に応じてやっていくわけですね。ですからそこにいろいろ問題が起ってくるわけですが、そこで今日医療の最高限というものは、もちろん内容においては医療内容とかあるいは医療の期間、こういう問題がございましょう。医療内容というのは人命尊重の上からいけば絶対に規格診療の中に入れていくわけにいかないのですね。しかし問題はこれからの赤字をどうしていくかという問題です。保険財政をどうしていくかという問題です。そうしますと、一体どういう階層に一番病気が出てくるか、それらの階層に対してどのような予防給付をやっていけばいいか、あるいは病気になった場合にどういう医療給付をやっていくのがいいかという問題が起って参ります。今日は健康保険そのものが赤字々々といって一緒くたにしておりますけれども、標準報酬の一万円を基準としまして、一万円以下を低所得階層といたしまして、これらには切り離した方法でやっていくか、あるいはまたそういうことがなかなかできないとならば、物的給付が今日一つの理想的形態として取り上げられているけれども、金銭給付ということも考えられないかということです。そうしてさらにまた局長が今御答弁にならなかったのですが、東大の病院と私立大挙の病院と一般開業医の場合には一件当りの点数にアンバランスがある。これらは一体どうしてこんなふうなアンバランスが出てくるのでしょう。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 御指摘のように大学病院と一般の開業医との一件当りの平均点数は違います。病院の種数によってこれが違いますことは、私どももある程度想像がつきます。というのは病人の病気の非常に困難になった場合に大学病院なんかにはかけ込むわけですから、どうしても病気が重いといいますか、非常に困難な病気を扱いますので、従って一件当りの点数が高くなってくるということが一応考えられるわけであります。むしろ私ども非常に理解に苦しんでいるのは、府県によって一件当りの点数が非常に違うことです。たとえばある県では一件当りの点数が常に高いところを維持している、ある県では低いところを維持している。これはどらもわれわれには理解ができない。しかもそれが非常に高度の医療機関が集中しているような県が高いというのであれば、これもまたうなずけるわけでありますが、いなかの方で比較的医療機関等の程度の低いというようなところが一件当りの点数が高いわけであります。これは七人委員会等でも指摘しているところであります。この辺の問題につきましては私どもいろいろなことを実は裏話では聞いているわけでありますが、私どもも今後の検討の対象としてものを考えていかなければならぬ、こういうふうに存じております。     〔野澤委員長代理退席、委員長着席]

八田貞義自由民主党

○八田委員 大臣も今お聞きのように単価問題も大切なんです。それとともに点数のアンバランス、これも大切なんです。これは今後の社会保険をどのような仕組みで進めていくかという場合に、大きな問題になってくるわけであります。そして今保険局長から、東大病院と私立大学病院と一般開業医の場合の一件当りの点数についての正しい数字はお答えがなかったわけです。大臣に御参考までに申し上げておきます。これはみんな外来ですが、一件当りの平均点数は、東大病院の場合百八点、ところが私立医科大学の病院の場合は七十点です。ところが一般開業医、保険医と申しますか、この場合は五十五点です。百八点、七十点、五十五点という三段階に分れております。単価ばかりではございません。点数についてもこのような問題が起っている。大臣どらか単価問題等をお考えになるとともに、この点数のアンバランスを十分頭に入れて、事務当局に、単価の問題ばかりでない、点数問題もあるのだ、十分に調査をやれ、こういうふうにお命じ願いたい。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 一部負担の問題でもう少し伺っておきたいと思います。入院料のほかに初診のときに百円徴収する、これがある程度受診率に影響しやしないか、そしてまたある場合被保険者に大きな迷惑の原因になるのじゃないかということを私は心配するわけです。たとえば仕事をしているときだと労災になりますが、何か自分の家でやっている途中に手をちょっと切った。今まで五十円であったけれども、百円取られるのはばからしいからうちで適当にやっておくかということになると思うのです。そうすると、やり方が不潔であるために、らちで二回、三回交換している間に化膿してひょうそになってくるということになると、今度は簡単な治療では済まないのです。大手になって、くる。保険の目的というものは、大事に至らない同に、小市の間に適正な治療をやって、早くたおして、そして早く仕事につく、それが健康保険の大きな趣旨なんです。ところがちょっとけがした、百円も要るならかなわぬ、こんなけがは自分で始末する、それが結局ひょうそにでもなれば、ずいぶん長期間仕事を休まなければなりません。傷病手当金も支給しなければなりません。そういうふうに一文惜しみの百知らずというふうな結果を招来してくると思うのです。たとえば腹痛の場合でも、ちょっとした腹痛が結局受診がおくれたために大きな手術をしなければならないというふうなことにもなってくる。だからこの初診のときに今まで五十円のものを百円にしたといというとが被保険者に大きな迷惑を及ばすような原因に私はなると思うのです。そういうことを承知で今度の改正案をお考えになったのでしょうか、御意見を承わりたいと思います。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 これはだいぶ前に五十円になっておったわけですからね。そこでそれをもう五十円上げて百円になったわけで、突如として百円ということになったわけじゃないのですね。それは先ほどからいろいろお尋ねがございましたように、それはもう安いことにこしたことはございません。ないことにこしたことはございませんが、先ほども申し上げたように、政府も三十億円出すんだ、みんな保険料も上げたあとの措置なんで、一つ最初に病院に診療に来たときに、脈を見るか傷を見てもらうか、その見料として五十円を百円にしょう、しかし百円に満たないときにはその満たない額で満足してもらうということですから、どうでしょうか、からだを大事にしようという気持がなければ別なことでございますが、からだをいたわろう、そういう気持になれば、五十円の金を惜しんで、五十円が百円になったから、ちょっとらちでばんそうこうを張っておこうか、赤チンでいこうか、それはそれで済むよな場合もありますが、今のような困った重大なことになることもあろうかと思いますが、そういうケースは特殊なんじゃないでしょうか。ないことを望むわけでありますが、上る法案ですから、どこどこまでいってもおしかりを受げると思いますが、しかし先ほど申し上げたように、被保険者同士の負担の適正化だ、こういう一つのやはり理念を持っておる。そこで考究の結果、初診料として百円、入院料三十円、こういことにしたのでありまして、御議論はあるかもしれませんが、このくらいは一つお出しになっていただいた方が、かれこれよろしいのではないか、こういう気持で改正案を出しておるわけでございます。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 日常診療に従事している者にとっては、従来のわずか五十円の初診料すらが相当支出の困難な人があるのです。たとえば日雇いの場合がそうです。ニコヨンというような気の毒な言葉で呼ばれておるような——今度はそれが少し日当が上ったようですが、しかしながら日収三百円、その中から百円を出さなければならぬということになると、まさに一日の労働の三分の一、今までは一日の労働の六分の一が、一日の報酬の三分の一になる。そうすると、これは相当響いてくる。また一般の給与生活者でも月の二十日ごろ、給料前になってくると、みんな非常に手詰まっています。だからわずか五十円がなかなか大へんなんです。あなたも先ほど工場を経営しておるとおっしゃったが、従業員から前借り、前借りで、工場の会計が相当前借りがあるということは御承知だろう。だからそういう世帯にとっては相当痛手なんです。  そこでメモをして数字を比べていただきたいと思いますが、昭和三十年の診療報酬の支払いの統計、被保険者本人の場合、政府管掌の受診の状況が二十五億七千六百万点、家族が十二億八千五百万点、船員保険は九千二百万点に対して家族が五千百万点、日雇いにいきますと一億六千百万点が家族は五千九百万点、組合は十一億八千八百万点が家族は十億四千六百万点、共済組合が九億一千三百万点が七億九千六百万点、その数字を比較していただきますと、御承知のように本人は初診料だけで一部負担がございません。ところが家族は一部負担がございます。だから家族の受診率が非常に低いです。政府管掌の場合でも、二十五億が十二億ですから、家族の受診率は約半分です。ところが組合及び共済組合になりますと、十一億に対して十億、九億に対して七億九千ですから約八億、これは家族も本人も受診点数がほとんど変らない。同じ率において受診しておる。ところ、が日雇いになりますと、一億六千に対して五千九百点ですから、非常に受診率が低い。三分の一に近いです。これによって一部負担金というものが日雇い労働者にとってどれほど痛いものかということがわかると思う。家族は半額負担ですから、  一部負担金がどれだけ受診率に影響してくるかということを明瞭にこの数字が示しておる。わずか百円の初診料、その百円がこたえる、そういう認識を大臣に持っていただかなければならないと思います。今度の法案はなるほどお出しになってしまったのだから、今さら引っ込みがつかぬ、まあ少々のことは一両損だという一両損説であなたはほおかむり、でいくよりしようがないかもしれない。しかしあなたの心の奥底にあるところのヒューマニズムはやはりこのような考え方をされておると私は推測するのです。そこで私のあなたへの希望でありますが、将来とにかく保険財政に対しては、保険財政そのものに対して直接しないでも、相当な国からの財政的な支出というものがなければ、一点単価は引き上げできない一のです。それをしも今度はやりたいとあなたは言うておられる。そういう段階のときにはわずか十億、二十億というふうな支出をもって非常に大きな影響を被保険者に与える一部負担の制度というものをもう一度再検討していただきたい。そして一部負担というものが被保険者に相当な不幸を起す原因だという認識の上に立った施策をやっていただきたいと思うのですが、将来の問題としていかがでしょうか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 岡本委員から一部負担についてまことに人情のあふれるような御意見をお聞きいたしまして、私といたしましても岡本委員の言わんとするところはよくわかるのでございますが、政府があえてこの処置をとろうとしているということは、先ほど来申し上げましたこういう際の将来の動き方、将来の方向を示していると私は思う。被保険者相互の負担を明確にしていこら、要するに受益者負担というか、ある線を出していくという考え方、助成は助成としてやるけれども、当人も受益した程度に応じてある程度の負担をしていく、それが民主主義なんだという一つの理念をもって処置している、こう考えている。そういう意味である一部の生活の困窮している人々がたまたま該当する場合があるかもしれませんが、生活もだんだん安定してきた今日、こういった負担をしてもらうことはやむを得ないと考えております。それから日雇い労働者の五十円は今度は上げておりません。これは誤解があるようでございますからどうぞ……。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 そういうお言葉を承わりますと、ここらで議論をやめておこうかと思ったが、もう一言わしてもらわなければならぬと思います。健康保険におけるところの給付は受益である、だから受益者負担をいたすのが当りまえだというお考えは、私はまことに奇異に承わる。少くとも労務対策としての健康保険を頭に置いておられるなら、あるいはそういう御議論も成り立つかもしれません。しかしながらそういうものとして出発した健康保険も、今では社会保障の根幹であり、一大支柱であるということになっている。これは自他ともに許すところなんです。大臣もそういうことをはっきり打ち出していらっしゃる。社会保障というものは、達者なときにはまじめに働く、そのかわり一たび病み倒れたときには万全なる治療を受ける、何の心配もなしに療養に専念できる、これが社会保障の姿なんだ。これが理想なんです。その理想に一歩々々近づくための努力を私たちはしている。そのための努力を政治家はしている。にもかかわらず受益者負担だというような考え方は、厚生大臣のお言葉とは承われぬ。一つ訂正して下さい。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 この制度を利用する人の一種の受益者負担だという言葉が悪ければ、それはこだわりません。しかし被保険者相互の負担の公平化であるということははっきり言えるのではないかと思います。被保険者同士の負担の公正化だ。先ほど私の申しました制度そのものの利益の負担だということが悪いということなら、それで気分がよくなるということでありますれば、(笑声)岡本さんに従うことを私は決して反対いたしません。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 考え方に相当開きがございますけれども、しかしきようは四時に打ち切ってくれということでございますし、またいずれこういうことについて意見を戦わす機会が幾らでもあろうかと思いますので、次の問題に移って参りたいと思います。  最後に一点、大臣の御所見を明確にしておいていただかなければならぬと思う点についてであります。それは先ほど八田委員もお触れになったのでありますし、そしてまた一昨日滝井委員も触れられた問題でありまするが、法律の前にはすべての療養担当者は平等の取扱いを受けなければならないという考え方でありますが、それに対して局長は、そうするつもりであるというふうなお答えでございました。そして今度はすべての医療機関を一木に同じように指定機関として何ら差別を設けないんだというふうなお答えが局長からございましたが、大臣もやはりそういうふうな方針を持って厳然として臨んでいかれるおつもりであるかどうか、一つこの機会に大臣から御返事を承わりたいと思います。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 ただいまの岡本委員のお尋ねは、政府委員が先般お答えしたその通り考えております。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 非常にけっこうなお答えをいただきましたのですが、今度の法律改正について、また従来の法律のもとにあっても民間医療機閥は大きな不満を持っている。それは官公立病院、ことに大学病院のようなところにあって非常に放漫な医療が行われる、ところがその民間医療機関に対しては非常にきびしい制限がある、そしてまたいろいろなきびしい制約があるというふうな点に不満を持っている。その結果が先ほど八田委員が言われたように、東大と民間医療機関との開きになってくる。昨年の十一月分の基金の月報を見ましても、京大病院は外来について一件当り百十一点、ところが民間医療機関は七十七点、やはりこんな開きがある。入院患者でありましても、京大は千六百五点、民間の指定医平均千二百七十三点というふうな開きがある。そこ6いろいろ事情を聞いてみますと、請求の方法に大きな違いがあるのです。私はそれを明らかにし、大臣にそれを見ていただきたいと思ってこの間から、もうこの委員会に健保法案がかかりました日から私は資料要求をしているのです。その資料がいまだに出ないのです。そうして私が要求したのと違った資料がきよう私の手元へ参りました。私は東大病院のレシートを出して見せてくれ、それを一度大臣に見てもらおうと思った。ところが京大のが来た。東大といえば灯台もと暗しか知らぬが、すぐ取り寄せられるものを持ってこないで、京都からわざわざ汽車で持ってきているのです。私が京都の人間だから京都をなつかしがっていると思うて出していただいたのか知りませんが、私はこんなのは要求していないのです。そこで私は大臣に東大のものを見ていただけないのは残念だ。しかし局長の言葉で見ていただこうと思うのですが、東大は診療報酬の請求を現在どのようにしておりますか。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 東大は特定の契約によりまして、現行制度では東大の定める料金ということに相なっております。改正法におきましては先般来お答えをいたしましたように、一般の指定医療機関と同様な立場に立って行われる予定でございます。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 私は現認したいと思うのです。基金に行って見てくればいいのでありますが、そこまでのことを思っているのです。東大は東大の規定料金を金額によって請求して、点数にしていないのです。そうして被保険者の番号と名前と金紙と書いてある。それがずっと羅列してある。京大は被保険者一枚々々診療内容が明示してございます。東大は診療内容の明示がないのです。一枚の紙に何の何がしがどういう病気で金額幾ら、次はだれそれ何の病気で金額幾ら、そういう請求の仕方なのです。京大はこのように請求書をきちっと書いてあります。しかし京大も京大がきめておるところの診療報酬を十二円五十銭の単価で割って点数に直しておる。だから民間医療機関がかりに盲腸の手術が二百五十点とすれば、京大の場合にはそれが三百点になったり三百五十点になるのです。つまり自分のところできめたのを十二円五十銭で割って点数に直すのですから、幾らでも取れるのです。ただ治療内容を明らかにしてあるだけです。単価はなるほど十二円五十銭だが点数は上げればどないにでも請求できる。京大、東大というふうなところはとにかくそういうふうな特権的な請求をしておる。厚生省はそれに対して唯々諾々として支払っておるのです。たとえば二つの病気を手術することがあります。一つの病気について手術します、たとえば子宮の筋腫なら筋腫を取りますときにおなかをあけてみたら慢性の盲腸がある、だからついでに取っておいた方がいいということで盲腸の手術も一緒にやります。そういう場合には普通は主たる手術、第一に目的とした手術に対してはその手術の点数をマル保請求できる。ところが従たる手術のとき、たまたま盲腸が見つかったというような場合、それは半額より請求できないのです。それが当然だ、正当だと思うのです。ところが京大の場合なんかは、主たる手術はマル保、従たる手術もマル保請求してくる。それが大手を振って通るのです。そこに民間医療機関とそういう大きな病院との間に差別待遇があるということ、しかもそれに対して、民間医療機関に対してはきわめて厳重な監査がなされておる。ところが長いものには巻かれろで、そういう大きな医療機関に対してはもう全然言いなりほうだいになっておる。そういうところに、そんなばかなことがあるかというふんまんがあるわけです。今度は大臣はそういう差別待遇を徹底的におやめになる— やっぱり大学病院あたりが健康保険の診療担当をやってくれないと、除外されると困る、だから大学の言いなりほらだいになってでもやっていかなければしょうがない、そういうふうなお考えであるか、その辺を明確にしておいてもらいたいと思う。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 今までのことはそういうように承わったのでございますが、この改正案のもとにおきましてはそういうことは根絶する考えでございます。一般と同じような状態においてやっていただく、こういう考えでございます。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 今まで厚生省としてはそういう御意向をお持ちになって、そして大学当局に何度も要求されたわけです。ところが文部省並びに大学当局が、あるいは研究の自由に名をかり、あるいは大学の権威に名をかりて、そんな審査を受けたり厚生省の制約を受けて治療をやるというようなことはおれたちはいやだというのでもって突っぱねてきて、どうにもならなかった。泣く子と地頭には勝てぬ。地頭さんだったか、泣く子だったか、どっちか知りませんが、とにかく厚生省のいうことは聞かなかった。それでは、もし今後そういうふうに大学がどうしてもいうことを聞かないというような場合には指定を取り消しにおなりになりますか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 先ほどから岡本委員から非常な激励を受けているような感じがいたしまして、本案の通過の見通しがついたような感じがいたすおけであります。どらか本案を通さしていただきまして、そういう方針を堅持して参りたい、こら考えておりますから、さよう御了承願いたいと思います。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 今までに京大の病院はどういう機関で監査したのか知りませんが、大学病院ですら、たとえば患者が外泊することがあります。糖尿病の患者であるとかじん臓病の患者であるというような場合には散歩できる患者もいる。そういう患者が一時帰る。数日帰ってまた病院へ引き続き入る、そういうふうな場合に、これは部屋を占拠している限りにおいては大学の経済としては入院料を取らなければならぬ。ところが食事料まで請求しておる。つまり、食費のついた入院ですから食費も請求しておる。そういうふうな実例があったり、大学病院でもいろいろ事務上の手落ちがあるのです。これは大学なんぞが故意にやっているとは思わないけれども、しかしそういうふうな事務上の手落ちがずいぶんたくさん見つかっている。だから、そういうふうなことが大学病院に今後出てきたときに、この間話が出た指定の取り消しの問題、そういうふうなことがもしも再三起ってくる場合にあなたの方はどうされますか。やはりそういう場合は厳重な態度をもってお臨みになる勇気がおありになりますか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 今の取り消しの対象となる事例でございますが、今承わっておりますると、事務当局が手落ちをした、そこである料金を請求した、そういうことをしばしばやったら、その機関を停止させるか、こういうお尋ねのように承わったのでありますが、事務上の手落ちで機関を取り消そうということまでは実は私ども考えておらなかったのでございます。これは法律の方のことは詳しく政府委員からお答えさせますが、それは微妙なところでございますが、事務上の手落ちで機関を取りやめるということは公益上どうでありましょうか。これは少し研究の余地があるのじゃないかと思っております。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 実は私も病院の管理者です。そして私はまかせ切りにしてここに出てきています。診療報酬の請求書は私のところも毎月二、三回出します。ところが、事務員まかせです。私の本意はちっとも加わっていない。それは、やっている限りにおいては、いろいろな事務的な落度は例月一つや二つは見つかると思うのです。その落度は、むしろつげ落ちの方がらんとたくさん出ると思うのです。ところが、つけ落ちの方は不問ですね。ところが、もし何かつけ落ちでなしに保険者側に損害を与えるような落度が二つ三つあり、それが例月続いているというようなことになれば、あなたの方からひどいおしかりを受けなければならぬ。これが今度の二重指定の大きな欠陥なんです。だから、医療機関としてはそのような事務的な手落ちというものは大きく取り上げられて、それが医療機関に対する責具になっているという点を非常に懸念するのです。その点を一つはっきりしておいていただきたいと思います。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 事務上の間違いというか、そういうことで、何も大いに不正請求をしてそうしてかせごうというような故意のない事務上の間違い、また御説例のように逆に間違ったような場合に、しかもそれで医療機関を取り消すというようなことは、これは私どもは考えておりません。従来ともそういうふうなことで保険医の指定を取り消した実例はほとんどないと思います。ただ、その点を是正するように何度も注意をしておるのに、やはりずっとそういうことが続いている。これは事務上の間違いでございます、事務上の間違いでございますということで続いて参って、その事務上の間違いということが果してそうであるかどうか問題になるような場合には、医療協議会にかけまして、こういう次第でございます、過去において何回注意をいたしました、しかるにこういうことでございます、御判断を仰ぎますという場合があるかもしれない。しかし、これは、そういう事態の場合でございまして、今御説例のような場合に医療機関を取り消すということは、これは私どもは全然考えておりません。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 もう一つお伺いしておきます。今共済組合の診療報酬の請求書が審査を通ってないようですが、そうじゃないのですか。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 共済組合も全部基金を通じておるのでございますが、一つ、国鉄が通じなくてもよいようになっておるようです。これは、たしか一十四国会のときの議員立法でその法律ができたように私ども承知をしておるのであります。これはどうもおもしろくないので、何とか一つ普通の取扱いにするように変えてもらうように、実は事務的に折衝を重ねております。そういうふうなことで、たしか国鉄が一つ通っていないというふうに私は承知いたしております。

岡本隆一日本社会党

○岡本委員 すべての医療機関も法の前には平等の取扱いを受けなければならないし、またすべての保険の機構も、やはり同じ趣旨のものである限り、同様な取扱いを受けなければならない。そういう点において、きょう大臣からいただきました御答弁は、まことに私どもにもけっこうな御答弁でございます。一つこの御趣旨を完全に生かして、今まで民間医療機関の間にあつたところの大きな不満というものを一掃していただいて、心から同じ待遇を受けているという気持でもって、ほんとうに喜んで御協力できるような態勢を築き上げていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終らしていただきます。     〔八田委員「関連々々」と呼ぶ〕

藤本捨助自由民主党

○藤本委員長 八田君、時間がありませんので簡潔に願います。

八田貞義自由民主党

○八田委員 局長から先ほど御答弁があった中で、今度東大とか京都大学というような病院は、保険医療機関としての指定をやるのだ、こういうふうな御答弁があったのですが、保険医療機関として御指定になるわけですか。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 向う様がいやだとおっしゃれば、これは別でございますが、申請があれば、私どもは一号の民間の医療機関と同じように、四十三条の一号で保険指、医療機関ということにして取り扱って参りたいと思っております。

八田貞義自由民主党

○八田委員 そうしますと、この四十三条には一、二、三とありますが、東大の方で保険医療機関としての指定を受けようとしない場合には、二号に入りますか。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 四十三条の二号にはなりようのない病院でございます。(滝井委員「特定保険者が指定したらなり得ますよ」と呼ぶ)「特定ノ保険者ノ管掌スル被保険者ノ為ノ診療又ハ調剤ヲ行フ病院」でございますから、大学病院というものは、そういうふうに特定のものについて診療をするという目的で設立されている病院ではございません。従いまして、二号には私は法律上なり得ないと思います。それからさらに、かりに(滝井委員「怪しいもんだ」と呼ぶ)今怪しいという声がありましたが、かりに一歩譲って二号の性格を持ったといたしましても、少しでも一般の者を見るという場合には、当然一号の指定を受けなければなりません。一般の普通の場合と同じような指定を受けなければなりません。このことは明確に申し上げておきます。  さらに立ちましたついでに、先ほどの国鉄のあれでございますが、その後、こちらの課長の方にも聞いてみましたところが、この前の議員立法の筋は、どうもあのままでは一般の原則と非常にはずれておるから、一つ改正をしていただくようにということを先方とお話をいたしまして、たしか法律改正を、間に合えばこの国会に御提案をいただくように、運輸省当局もそのつもりで準備をしておるようでございます。あわせて申し添えておきたいと思います。

八田貞義自由民主党

○八田委員 そうしますと、保険医療機関というのは指定を受けるのですよ。これは二軍指定なのです。保険医療機関というのは二重指定を意味しているのです。都道府県知事による機関指定と、保険医の登録をやらなければならないので、二重指定になっている。二重制ですよ。ところが二号、三号は二重制じゃないのです。(「その通り」)ここを大臣一つはっきりと頭の中に入れておいていただきたい。なぜ四十三条において機関を三つに分けたかということについて、いろいろ疑問があるのです。東大病院は今契約をしているのです。今度保険医療機関の指定を受けた場合には、その中で働くお医者さんは、全部保険医の登録をしなければなりませんよ。そういうことを果して東大病院がやるかどうか。(滝井委員「やらなければ指定取り消しだ」と呼ぶ)ここが問題です。ですからこの四十三条の一号、二号、三号というものが、どういうふうにして分けられたかということについて考えなければならない。都道府県知事の指定するものは、みな二重制になっている。保険医療機関としての指定を受けた場合に、そこで働くお医者さんは全部保険医の登録をしなければならぬ。ところが現在の東大の場合、京都大学の場合には、契約機関です。これを一体どういうふうにして今度の制度に結びつけていくかということが、非常に大きな問題です。ところがこれはいろいろな保険医療機関と一般医療機関との問題もからんで参りまして、国民医療などと簡単に申しますけれども、これは非常に大きな問題を含んでいる。私が先ほど申しましたように、点数の問題と単価の問題と、この医療機関の区分の問題も十分に考えて、国民皆保険というものとどういうふうに結びつけていくか、どうしてこういうふうに三つに分けたかという問題も起ってくるわけなのですが、私は関連質問ですから、このくらいにしておきます。

藤本捨助自由民主党

○藤本委員長 滝井義高君外十二名提出の健康保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。まず提出者より趣旨の説明を聴取いたします。滝井義高君。   健康保険法の一部を改正する法律案    健康保険法の一部を改正する法律   健康保険法(大正十一年法律第七十号)の一部を次のように改正する。  第十三条中「ニシテ常時五人以上ノ従業員ヲ使用スルモノ」を削る。  第七十条を次のように改める。第七十条国庫ハ政府ノ管掌スル健康保険事業二付キ其ノ保険給付二要スル費用ノ百分ノ二十ヲ負担ス国庫ハ前項ノ費用ノ外債年度予算ノ範囲内二於テ健康保険事業ノ事務ノ執行二要スル費用ヲ負担ス  第七十条ノ二第一項中「健康保険組合二対シ」を「前条第二項ノ規定二依リ健康保険組合二対シ」に改める。    附 則  (施行糊口)1 この法律中健康保険法第七十条及び第七十条ノニの改正規定並び

滝井義高日本社会党

○滝井委員 このたび提案いたしました健康保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由の趣旨説明を申し上げます。  健康保険制度は、昭和二年発足以来今日まで、三十年にわたり国民の医療保障に貢献をして参りました。疾病は貧困への道であり、貧困は疾病を招くという疾病と貧困の悪循環のもとに、社会保障制度の中核として、国民生活の安定に果してきた役割はきわめて大きいといわねばなりません。しかも今日では政府管掌において五百六十三万人、組合管掌において三百三十万人の労働者が加入し、扶養家族を加えれば実に二千五百万人にも達せんとしているのであります。  しかしながら今日、政府管掌の健康保険においては、受診率の向上、あるいは治療医学の急速なる進歩によって保険財政は深刻なる危機に見舞われるに至り、昭和三十二年度においても五十四億円の赤字が見込まれているのであります。この危機を脱するとともに健康保険制度の健全なる発達をはかることは、国民皆保険という重要な課題を遂行するために毛当然必要なことと思うのであります。しかも、現行の保険料率は世界的にもきわめて高率なものであり、戦後復興の背後に取り残されたボーダー・ライン層一千万の人々が生活苦に呻吟している現状において被保険者及び患者の一部負担を強行し、旧態に逆行することもまた適当でないと考えるのでありまして、当然国の責任において健康保険の健全な発達をはかるべきであり、保険給付費について相当程度の国庫負担を行うことが必要であると思うのであります。船員保険についても同様な措置を必要といたす次第であります。  同時に、国民の医療機会の均等をはかるものとして国民も保険の問題は、目下、最大の課題として取り上げねばならないのであります。その際においても、五人未満事業所の従業員は、被用者という点から五人以上事業所の従業員との均衡の上からも、被用者保険の対象者として取り入れることが至当であると思うのであります。このことは社会保障制度審議会もまた先般の医療保障制度に関する勧告において強調したところであります。今日五人未満の零細事業所の従業員は厚生省の調査によれば約百五十万人、平均給与月額は八千円で、五人以上の事業所一万二千円に比すればはるかに低い報酬月額でありまして、五人以上の事業所と五人未満の零細事業所における事業主負担とを同様に取り扱うことは、経済情勢からいって適当でないと考え、これの軽減をはかるように改正を試みた次第であります。  五人未満事業所の従業員を健康保険に加入せしめて、職域保険の確立をはかるとともに、同時に国民健康保険についても根本的検討を加えて地域保険を確立し、職域保険と地域保険とが車の両輪として国民皆保険への実現へ前進して、国民医療の充実を期する必要があるのであります。  次に、改正法案の内容について申し上げますと、第一に、政府管掌の健康保険及び船員保険については、保険給付五の百分の二十を国が負担することといたしました。第二に、五人未満事業所の従業員を被用者保険としての健康保険の適用対象としてこれに加えることにいたしました。  なお付則において、五人未満事業所の事業主負担率は、当分の間現行の事業主負担率の二分の一を怪滅することとし、軽減分については国の負担をもってこれに充てることといたしました。  以上が改正案の要旨でありますが、医療保障制度の確立は、今やわが国の社会保障制度のうち、当面最も緊急を要する問題として、広く国民的要望として取り上げられるに至っているのであります。ことに国民皆保険の実現は与野党とも大きく公約として掲げている問題であり、早急に施行しなければならないと考えるのであります。国民生活の安定と経済再建の源泉としての勤労者の健康を守り、これを保障するためにも、何とぞ本改正案を慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことを御願いいたす次第であります。  以上をもって提案理由の説明を終ります。

藤本捨助自由民主党

○藤本委員長 以上で説明は終りました。  なお両案についての質疑その他は後日に譲ることといたします。  次会は明五口午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時十三分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗