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26回国会衆議院1957/02/18

社会労働委員会 第7号

発言数
95
登壇者
5
会派数
2
開催日
1957/02/18

会議録

藤本捨助自由民主党

○藤本委員長 これより会議を開きます。内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案、及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、審査を進めます。これら三案は第二十五回国会において趣旨の説明を聴取いたしました継続審査案件でございますが、内閣もかわりましたので、あらためて趣旨の説明を聴取することにいたします。神田厚生大臣。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び本法律案の概要について御説明申し上げます。  健康保険制度は、わが国の社会保障制度の一大支柱をなす制度として労働者の生活になくてはならぬ重要な意義を有しておりますが、近年その医療費は年を追うて増高し、特に中小企業を対象とし、政府管掌健康保険においては、昭和二十八年末以来今月まで収支の不均衡を続け、保険経済はきわめて困難な事態に立ち至ったのでありますが、その後各種の行政上予算上の措置を講じて一応収支均衡を保ち得たのであります。  昭和三十一年度に入ってからの政府管掌健康保険財政は、一般経済界の著しい好況の中にあって、相当好転を示しておりますものの、しかしながら、三十二年度につきましては、依然好景気は持続するとはいえ、現状のまま放置する場合には、本年度に異常に増加した被保険者の影響等もあって、相当額の赤字はやむを得ないと見込まれておるのであります。  今国会に継続して御審議をわずらわしております健康保険法等改正案は、このような不安定な健康保険財政々板本的に立て直そうとするものでありますが、同時に、制度そのものの合理化をはからんとするものであります。すなわち、医療保障制度の確立を促進する見地に立って政府管掌健康保険事業の発展をはかるために、新たに国庫よりの補助を明文化するとともに、一方、制度上必要な措置として被保険者一部負担制の改訂をいたし、また、保険医療組織、診療報酬審査機構等について制度の合理化を行い、もって健康保険制度が商い医療水準を維持しつつ発展していくことをはからんといたしたのでありまして、国民全部の要望であります国民皆保険を実現するに当り、その一大支柱ともいうべき健康保険制度の基礎的な地固めをぜひともやっておかなければならないと考えた結果立案されたものであります。以上の理由によりまして、第三十五臨時国会で本改正法案を提案して、今二十六国会でさらに継続して、御審議をわずらわしている次第であります。  今回の改正案の内容といたしましては、国庫より財政補助を行うことを法律上明文化し、三十一年度及び三十二年度には三十億円を一般会計から受け入れることといたし、標準報酬等級の区分を改訂いたしますとともに、保険機構の整備をはかるため、保険医、保険薬剤師制度を改め、わが国の医療の実態に応じ機関指定方式を採用すること、社会保険診療報酬支払い基金の審査機構の整備をはかることといたし、また、療養の給付を受ける者に対する一部負担金につきましては前回の案より若干負担を軽減することといたしましたが、なおそのほか改正を機会に従来から問題のありました点について制度の不備を是正し、その他制度の合理化をはかるために若干の改正をあわせて行うことにいたしたのであります。  次に改正案の内容を要約いたしますと、  第一に、国庫は予算の範囲内において政府管掌健康保険事業の執行に要する費用の一部を補助するものとすること。  第二に、標準報酬等級区分を最低四千円から最高五万二千円の二十四等級とすること。  第三に、療養の給付を受ける者の負担すべき一部負担金の範囲を拡張すること。  第四に、保険医療制度について個人指定方式の長所をとり入れた機関指定方式を採用すること。  第五に、継続給付を受けるための資格期間を一年に延長すること。  第六に、不正受給者に対して損失を補てんさせる措置を講ずること。  第七に、被扶養者の範囲を明確化すること。  第八に、厚生大臣または都道府県知事の検査に関する規定を整備すること。  第九に、社会保険診療報酬支払い基金における診療報酬請求書の審査機構を整備すること等であります。  以上がこの法律案を提案いたしました理由並べに法律案の要旨であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。  次はただいま議題となりました船員保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  船員保険制度は船員の疾病、老齢、死亡、失業等の各部門にわたる総合的社会保険として、海上労働者の福祉の向上のために重大な役割を果してきたものでありまして、この制度は、我が国権巡業及び水産業の発展のためにも需要な基盤となっているものであります。  ところで最近数年来医療費等の支出増加のため、その医療給付部門におきまして収支の不均衡を生じましたので、これに対処するため標準報酬の適正把握、保険料収納率の向上、不正受給の排除等各種の行政措置を講じて参ったのでありまするが、給付費の支出は増加の一途をたどり、財政の実情は依然として深刻なものがあるのであります。  今回の改正案は、このような情勢に対処するため、現行制度の不備を是正するとともにその合理化を行うことを目途とするものでありまして、その内容の要点について説明しますと、  第一に、国庫は予算の範囲内において、船員法の災害補償に相当する給付に要する費用を除き、船員保険事業の執行に要する費用の一部を補助するものとする旨の規定を設けることでありまして、その結果とりあえず昭和三十一年度及び昭和三十二年度においては一億円を一般会計から補助することといたしております。  第二に、将来にわたって船員保険の健全な発展を確保するため、新たに一部負担の制度を設けることであります。その実施内谷につきましては、船員保険の特殊事情を十分考慮して初診の際に定額を被保険者が保険医療機関に支払うこととし、船員法に規定する災害補償に相当する療養の給付につきましては、船主が補てんの責めに任ずることといたしておるのであります。  第三に、保険料率につきましては、失業保険の適用を受けるものについては千分の五、失業保険の適用を受けないものについては千分の七を引き上げようとするものであります。  以上のほか、第四に標準報酬等級の区分を改め、最低を五千円とすること。  第五に、報酬が歩合によって支払われる場合の報酬月額の算定方法を改め、前年度における実績を基準として算定するものとすること。  第六に、職務外傷病に対する資格喪失後における療養の給付等につき原則として一年につき三月の資格期間を設けること。  第七に、独身入院者の職務外の事由による傷病手当金の支給額を百分の五十とすることのほか、健康保険法の改正に準じ被扶養者の範囲の明確化、保険医療制度の整備等各般の改正を行おうとするものであります。  以上が、この法律案を提案する事由並びに法律案の要旨であります。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。  次は、ただいま議題となりました厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきましてその提案の理由を御説明申し上げます。  この法律案は、厚生年金保険の標準報酬の最低を引き上げるとともに、現行の厚生年金保険法の施行前に被保険者の資格を喪失した女子に対する脱退手当金の支給条件を緩和し、あわせて規定の整備を行いますことを内容としておるのであります。  すなわち、改正点の第一は、健康保険法の改正と歩調を合せ、標準報酬の最低を現行の月額三千円から月額四千円に引き上げることでございます。  第二は、現行の厚生年金保険法の施行前に被保険者の資格を喪失した女子の一部に対しても脱退手当金を支給し得るような規定を設けようとするものであります。すなわち同様の事情にある男子に対しましては現行の厚生年金保険法により支給できるようになっておりますので、これと均衡をとりまして、女子に対しても脱退手当金を支給し得る根拠規定を設けようとするものであります。  第三は、規定の整備を行うことであります。現行の厚生年金保険法は、その施行より約三年近くなりますが、この間の経過を検討いたしますに、多少規定の明確を欠く面がありますので、これを明らかにし、解釈上の問題が起ることを避けるため、所要の規定の整備を行うものであります。  以上が、この法律案を提案いたしました理由であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。

藤本捨助自由民主党

○藤本委員長 以上で説明は終了いたしました。  次に滝井義高君外十一名提出の健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし審査を進めます。

藤本捨助自由民主党

○藤本委員長 本案についての趣旨説明は第二十五回国会において聴取いたしてありますので、直ちに質疑に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

藤本捨助自由民主党

○藤本委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  それでは次にただいま議題となっておりまする四法案についての質疑に入ります。発言の通告がありますので順次これを許します。野澤清人君。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 大臣に冒頭にお尋ねしたいのですが、政府が健康保険法の改正を国会に提出しましてから今回が三度目であります。しかもそのつどこの法律が審議未了になりまして、この前の臨時国会に提出されたものが継続審議として今日まで参ったわけであります。しかもその法律の内容を見ますと、昨年の国会に出されました法律の内容がさらに飛躍したのか、内容が低下したのか、かなり内容面において重要なポイントが変っておるように感じられます。毎回こう変った改正案を出さなければならぬという理由がよくわからないのですが、その理由または御事情があれば、その事情等についても一つ率直に御説明願いたいと存じます。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 野澤委員の御質問にお答えいたします。御承知の通り政府は三度健康保険法の改正案を提出いたしたわけでありまして、これはわが国社会保障制度の一大支柱をなす制度として労働者の生活安定に寄与いたして参りました健康保険制度が、昭和八年末以来相次ぐ医療宣の増高が収入を上回って参りまして、保険経済がきわめて困難な事情に立ち至ったのでありまして、昭和三十年六月の二十二国会に第一回の改正が、この情勢に対処するため、すなわち赤字克服をしようということで提案した。内容も標準報酬等級区分の改訂、継続給付受給資格期間の延長等を主たる内容といたしたのであります。ところがこの国会におきまして、目前の赤字対策に急で、根本策を忘れているとの御批判がございまして、国会の終了後厚生省では御承知の通り、いわゆる七人委員会を設けまして根本的に検討を加えた。そこでこの七人委員会の答申を得て、さらに社会保障審議会より提出された御意見をも十分参考といたしまして、根本的改正を加えたのを昭和三十一年二月の第二十四国会に改正案として提出いたしたのでございます。従いまして、第二十四国会に提出いたしました健康保険法の改正案は、単なる赤字対策として財政効果のみを目的としたものではないのでございまして、国庫の補助あるいは一部負担、保険医療組織の整備その他の諸点をあわせまして、健康保険制度が高い医療水準を維持して恒久的に発展していくように、しかも国民皆保険の中核となるべき健康保険制度の健全化と合理化をはかるためのものであったのであります。この第二回目の提案も、御承知のような事情で不幸審議未了になったのでございます。そこで第三回目の提案でありますが、これはただいま御審議を願っておりますものすなわち去る十二月四日臨時国会に提出したものでございます。この案はただいまも提案の趣旨を詳細申し述べましたように、二十四国会における一部負担等の規定につきまして、若干の変化をいたしたのでありますが、性格は根本的に第二回目のものと同様であり、単なる財政政策としての改正案ではなく、健康保険制度を将来にわたり健全化し、制度の合理化をはかる、こういう趣旨で御審議を願っておる、こういうことでございます。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 大臣もこの法案が出てから後に御就任になられたのでありますから、提案理由の経過等についてあくまでも大臣を追及しようという考えでお尋ねを申し上げるわけじゃありません。ただ御承知の通り健保の改正というのろしが上りますと、非常に広範な社会的な反発といいますか、レジスタンスか強く見受けられます。こういう過去の実績とか事実から判断いたしまして、こうした法律を提出されるにはそれ相当の覚悟がなければ政府としては出せないものだと思うのであります。しかも二十四国会において幾多の問題点が指摘されまして、政治上のあれだけの大きな問題に逢着したのでありますが、その当時衆議院の本委員会においては、政府の原案について全く真剣に検討しまして、この程度ならばということで一応参議院にこれをお送りしたわけでございます。そういう審議の過程をごらんになっておりながら、今回の提案を見ますと、一部負担の点においてすでにその当時の扱い方と全く変った方向を示してきている、これは今御説明を聞きますと、第一回目のときは一昨々年ですが、これは率直に赤字対策でやったのだ、それから昨年の場合には赤字対策ということではなしに、根本的な改正を企図して行なったのだ、こういうことでありまして、本日の御説明を開きましても「健康保険財政を根本的に立て直そうとするものであります」という説明もしております。そうしますと制度そのものの根本的な改正を企図したという大臣の御説明と、財政効果をねらったところの保険財政に対する対策ではないという論理とが合わなくなってくると思う。今まで私どもが承知しておったのは、制度そのものを合理化することも当然でありますし、またこれを国民医療の基本的な問題として幾多の問題点を拾って、法律の改正をすると同時に、現在の赤字の発生しています赤字対策も一応これでカバーしていく、そうして基本的には確立していくのだというふうに承知しておったのですが、ただいまの御説明を聞きますと、あくまでも根本的な対策を主体としたのだというふうに用えるのですが、この点もう一度御説明を願います。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 政府といたしましては、今回の御審議願っております継続審議中の健康保険の改正は、もちろんこれは健康保険財政の健全化をはかっていることも一つの大きな理由でございますが、それだけではない。健康保険法全体の中に流れているこの考え方につきまして、今改正案を出しておまますような考え方をもちまして改訂を加えていこう、こういう趣旨である。ですから財政上の理由じゃない、こういうことを先ほども申し上げたわけでございます。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 そうしますと、この説明でもところどころ出ていますが、大臣としては要するに制度そのものの基礎的な改正を行うと同時に、財政的な処置これによって講じていくのだ、こういうふうに基本的な線はあくまでも制度の改正であって、その間財政の処置を講じていくのだ、こういうふうに了解して、よろしゅうございますか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 そうでございます。あくまでも健康保険制度の健全化と合理化を貫きたい、こういう考えでございます。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 そこでこの説明を見ますと、二ページのまん中辺に「その一大支柱ともいうべき健康保険制度の基礎的な地固めをぜひともやっておかなければならないと考えた結果立案されたものでございます。」とこう説明しています。それから一ページの一番最後のところには「健康保険法等改正案は、このような不安定な健康保険財政を根本的に立て直そうとするものでありますが、同時に、制度そのものの合理化をはからんとするものであります。」こう書いてあります。そうしますと、この御説明からいきますと、やはり財政措置ということの方が先であって、それに付帯して制度そのものを合理化しようというように解釈されるのでございますが、この点の矛盾はどういうふうに御説明願えましょうか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 これは、そういう感じを与えたとすればはなはだ恐縮でございますが、健康保険法の一部改正が最初に健康保険財政の確立をはかろうということが先に出て参りまして、その後御審議を願っている際に、どうも健康保険法の改正は目前のことだけ考えてやって出しておるんじゃないか、もっと根本的なことを考える必要があるんじゃないか、現象的な表面の赤字対策でやってはならないという国会の御要望と申しましょうか、御意見を取り入れましていろいろ練ったわけでございます。今や国民皆保険を実現しようという際でございますので、そういたしますと、この健康保険法というものはこの制度がますます一大支柱になってくるわけでございまするから、国民皆保険を実現するためにも健康保険制度が基礎的なものであるから地固めにもなるんだ、そういう気持で両方押しておるつもりで申し述べておるわけなんですが、そう聞えないとなると、はなはだ恐縮でございますが、気持はそういうことなのでございます。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 そこでこれは大臣と押し問答をしてもしようがないですから、すなおに大臣の御解説をうのみにいたしますが、保険局長にこの文章の中にある「基礎的な地固めをぜひともやっておかなければならない、」こういうばく然とした抽象話が出ているのですが、一体一大支柱だと指摘しておいて、健康保険制度の基礎的な地固めができておらないのかどうか、できておらないというのはどういうところにあるのか、これを簡潔に御説明願いたいと思います。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 この法案全体の中に盛られておることではございまするけれども、おもなる点を申し述べてみますると、今日御承知のように健康保険の給付につきましては国庫からは何らの援助がないというのが建前なのでございます。それを国庫からも、金纈は明示をいたしておりませんけれども、必ず援助をするというふうな点を明確にいたしましたこと、あるいはまた、今日は初診料相当額を患者の方に一部負担をしていただくというふうなことにたっておるわけでございまするが、これにつきまして御審議を願っておりまするような一部負担を若干拡充をいたすことがむしろ諸般の観点から見て健康保険というものをしっかりさしていくゆえんであろうというふうな観点からの一部負担の改正、あるいは保険医療組織につきまして現在の保険医制度というものに対しましてこれを医療機関としてとらえまして、機関の指定方式というものを原則にいたしまして、それをさらに個人の登録ということで補っていこう。こういうふうな考え方、その他標準報酬の点等につきましても今日すでに賃金水準は三万六千円以上というところが相当あるわけでございます。これらにつきましても、実情に応じて五万二千円程度まで標準報酬の等級を改訂していこう、かような一連の事柄はすべて今御指摘の基礎的な地固めということに相なると私どもは考えておるのでございます。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 二十四国会以来局長の答弁もたびたび聞いていますが、この点に関しても多少ニュアンスの差があると思うのですが、前には非常に財政措置というものを中心にして国庫の補助を打ち出したり、あるいは一部負担を打ち出したりしておったように感じられるのですが、今の説明を聞きますと、基礎的な地固めの一部である、こういうお話であります。どう見てもこの健保の改正というものは、近来発生した、ここにも書いてありますように、赤字対策として出発した、その上で重点的にどうするかというので、国の力も責任を持とうじゃないか、また被保険者も一部負担してこれにこたえようじゃないかというので、再三あなたの方から御説明があった、これに付帯して、制度そのものの欠陥としてはこういう点があるというので幾多の欠陥を指摘された。ところが今度の法案を見ますと、一部負担というものは名ばかりになってきている。これは便宜的にそういうふうに変化したというならそれでけっこうでございますし、あるいは国庫補助だけをもらうために法制化していくのだという考え方であればよろしいですが、一貫した政府の考え方というものがその際はっきりしておらないような感じがするのです。この点に対して、当委員会としては、おそらくほかの方々もこの点は問題にされると思いますが、一つ的確に御説明願いたいと思う。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 健康保険というものをしっかりした健全なものにしていこうという場合には、これはどうしても財政というものがますしっかりしてもらおなければならぬわけです。そのほかに財政のみならずその他いろいろ制度の合理化あるいは健全化というふうなことも必要になって参るわけでございます。前々国会以来私どもの説明は、第二十二国会の際はこれはちょっと変っておったと存じまするが、今国会御審議を願っておりまするものとほとんど変っておらない、二十四国会以来の私どもの説明はその点は一貫をしているつもりで実は私どもはおるわけでございます。そのときから赤字対策ではない、財政というものを無視するわけにはいかないけれども、また当面大きな目的であるけれども、財政を健全化すると同時に制度の合理化をもはかって健康保険制度というものを将来ますます発展していくような形に持って参りたい、こういうつもりで実は法律の改正を御提案申し上げておるわけでございます。ただいま一部負担が二十四国会のときと非常に変ってきておるじゃないかという仰せでございますが、これは御指摘の通り、形が変っておりまして、前国会のときに御提案を申し上げましたように、外来患者の再診以後いろいろ何回も取っていくというやり方を変えまして、初診の際に従来よりは若干金が多くなりまするけれども、一ぺんこっきりというふうに形式を変えて御提案を申し上げたのでございますが、これらは前国会の衆参両院を通じての御審議の経緯あるいはまたいろいろこれを徴収していただく療養担当者の方々のお立場というふうなものもいろいろと勘案いたしまして、今回御提案申し上げたような姿の方がむしろ制度的にはすっきりしているんじゃないか、そういうふうな意味合いでこれを変えて出したのでございます。しかしながら一部負担に対する根本的な考え方というものは、その方法は変っておりまするけれども、前国会御提案をいたしましたものと別に変っておるわけではございません。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 そこで最初に大臣にお尋ねした、要するにこの制度上の改正が基本なのか、基礎的な改正が基本なのか、財政対策が基本なのかということの御質問をしたわけです。それで局長の今の説明を聞きますと、地固めをするということが、たとえば補助金をもらうことであるとか、初診料の一部負担をすることであるとか、いろいろ言われますが、大臣のお答えはもう先ほどいただきましたからけっこうです。局長として、機関指定とか、あるいはまた検査規定を設けるとか、審査機構を整備する、こういう制度上の改正が重点なのか、それとも赤字対策から出発してきて、たまたま一部負担、国庫補助というような問題がそれに付帯してきたのか、いずれを重点にして政府としては考えてきたのか、もう一ぺんこれを簡潔に説明して下さい。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 健康保険制度を健全化いたしまする場合には、財政も無視することはできませんし、制度の合理化も無視することはできません。これは別のようであって、一本のものであると申しても差しつかえたいのじゃないかと思う程度でございます。従いましてその両方を頭に置きまして、私どもといたしましては健康保険制度の健全化と将来にわたる発展を所期する、こういう立場からものを考えておるのでございます。  なおさらにつけ加えて申し上げますれば、これが赤字対策だというふうな——財政対策と赤字対策というのはちょっと言葉の意味が違うと思いますが、赤字対策という言葉の持つ意味は、その年に赤字が出なければもうそれでいいんだとかいうふうなことになって参る非常な危険性のある言葉でございまするけれども、さようなその年々の赤字、黒字ということよりは、むしろ将来、少くとも数年間を見渡したところの一つの財政的な基礎固めというふうなものを頭に置きまして、ただいま申し上げた財政対策ということを申し上げておるわけでございます。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 どうもコンニャク問答みたいでお困りだと思いますが、二十二国会以来健保の改正の基礎になった理念というものは、現実には赤字対策が出発なんです。そしてそういうふうに保険財政が乱雑になり、しかも保険医療費が増高を来たして、どうしても赤字が出るが、その要因は何だということが二十二国会以来の考え方です。そして七人委員会というものが大臣の方で設置され、それで根太的な対策を打ち出そうというので七人委員会が相当の期間あらゆる資料を集めてこれをまとめ上げました。そこでは国民が全く納付し得るような具体策は生まれなかったけれども、考え方としてはやはり制度上の改正をしなければならぬという結論に落ちて、そこで政府としては三十四国会に新いし、全く考え方の基礎を別にしたこの百制の改正というものを重点にして、これに財政の合理化も織り込んで改正案を出したと思うのです。そうしますと、少くとも赤字の要因というものについては制度を改正しなければならないのだ、これが基本的な条件にならなければならぬと思う。それが今御説明を聞くと、制度の合理化もしたいんだ、財政の合理化もやりたいんだ、こういう二つのふわっとした問題点を投げられたのでは、これはもうこの国会としても審議していく上に、それじゃ今までに制度上の不合理な点はどこにあったんだ、赤字対策を基本にしたこの財政対策というものを講じていかないならば、もっと平たく言うとそれは二分の一なんだ、こういう考え方であれば、世論に訴えて機関指定その他の問題なんというものはもう取り上げる必要はないのだと思います。ところが現実の問題点としてはその発生過程から今日の立案に至るまでの経過を見ると、やはり根本対策あるいは抜本対策として歴代の内閣がこれを強く打ち出して、そういう抜本的な対策だとか根本対策と言われたけれども、これはやはり制度上の欠陥を何とか是正したいというのが主体だ。この点に対して局長の見解をもう一度聞かしていただきたい。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 ただいま野澤先生が御指摘になりましたように、物事の出発は年々大きな赤字が出てくるということから検討が進でいったことは事実でございます。当面赤字を埋めるというのならいろいろ考え方もございましょうが、これを根本的にそういうふうな赤字なんかを生まないようにするということを検討いたして参りますと、どうしてもそこに制度的な問題が出てくるわけです。さような観点から申しますれば、野澤先生御指摘のように、制度の健全化ということがむしろ重大な意味をもっているというふうに申し上げても支障はないかと存じます。一例をとって申し上げますれば、たとえば国庫補助の規定が今回入った。これは従来から申しますれば、こういうことはないのでございますから、制度的な一つの大きな変革でございます。国庫が給付費の財源として一般会計から補助するということは、制度的に一つの大きな改革でございます。しかしながら同時にまたそれは財政対策の一つでもあるということに相なって参るわけでございます。その辺のところは先生御指摘のことと私どもお答え申し上げていることと、また考えておりますところと隔たりがないように私は考えるのでございます。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 ただいま局長が説明されたので、大臣の方でも経過もおわかりだと思いますが、そうしますと、今度の改正案というものは、根本的な制度の改革あるいは地固め、地ならしというようなことに主として重点を置いて、赤字を中心にしたこの財政対策というものは付帯したもののように考えて差しつかえありませんか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 今保険局長の説明もあったわけでございますが、私はそう考えておらないのです。両建と申しましょうか、制度の改正が主で赤字の埋め合せが従だとか、あるいは財政確立が主で制度の改正が従だ、こういうふうには分けて考えていないのでありまして、総合的一体として考えていろ、こういうことなんでございます。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 これは非常に重大な問題ですが、局長の考え方と大臣の考え方が統一できていないと思う。今までの歴史的な審議過程から考えてみて、少くとも根本対策とか抜本対策ということを打ち出してきたのを、ここへきてこれは二分の一だということはおかしいと思う。これをはっきりして下さい。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 大臣がお答えになっておりますことも、私がお答え申し上げておりますことも、別に別のことを申し上げているわけではございませんので、ただいま例をあげて申し上げましたように、国庫補助というものを一つ取り立ててみましても、これは制度的にも大きな一つの進歩であるし、またそれが同時に財政的にも非常な援助になることである、そういうふうなことでございまして、大臣はこれを両建だというふうに御表現になっておりますけれども、さらに大臣のお気持を敷衍して申し上げますならば、それはどちらを片一方欠いても健康保険制度の健全化ということはできないので、これはむしろうらはらな問題である、こういうふうな御意思で申し上げておられると私も推察をしているのでございます。従いまして野澤先生が仰せになりましたように、出発は赤字対策から出発いたしましたけれども、それは赤字対策だけとして取り上げた場合には真の赤字対策にもならない、結局制度的にある程度の改革、健全化をはからなければ、その赤字対策にもならない、こういうことに相なって参っているのが経緯でございます。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 どうも私は頭が悪いのでよくわからないのだが、制度の改革だとはっきりと線を打ち出して当面する財政の対策をするのだというのなら、これはすっきりするのです。ところが二分の一出して無理やりに理屈をこねていこうとするところに大臣も局長も骨が折れるのだと思います。そこでこういうことが書いてあります。「依然好景気は持続するとはいえ、現状のまま放置する場合には、本年度に異常に増加した被保険者の影響等もあって、相当額の赤字はやむを得ないと見込まれておるのであります。」そのために根本的に財政を立て直そうということが書いてある。二分の一ずつなら、神武以来の好景気だというのだから、ことしあたり一部負担はやめたらいい。そうでなくて、根本問題は、赤字の要因を調べてみたらこういう制度上の欠陥があった、この制度だけはどうしても直さなければならぬが、その途上にあって従来幾多の赤字が出ておった、それを一応政府も被保険者も負担しようじゃないか、こういう考え方から出発して改正案ができたのなら、納得がいくと思う。ところが二分の一だと大臣が言ってしまったから局長がカバーしなければならぬという理屈はないと思う。私が頭が悪いのかあなた方が頭がよ過ぎるのか、ここのところがどうもよくわからぬ。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 今の野澤委員のお尋ねになっておられることと、私どもが先ほどからお答えしていることと変らないのじゃないでしょうか。最初のお尋ねが健康保険法の改正は赤字の解決のためだけか、いわゆる財政確立だけかというお尋ねだとすると、それは最初にはそういう考え方をして前々国会にはお出しになっている。しかしそのときに当委員会における質疑応答を通じまして、財政の方だけにとらわれているようだ、もっと根本的に変える必要があるのじゃないかという委員会の御趣旨を体して、そして研究に研究を重ねた、いろいろ七人委員会であるとか、あるいは社会保障制度審議会、こういうようなところもわずらわしまして、そして抜本的な改正をやった。そこで今度の改正案というものは、単なる健康保険財政の赤字対策だけではなく、説明にもございますように、第一から第九まであげた諸般のものが含まれている、こういうことでお答え申し上げているわけでありまして、そう実は変っているとは思っておらないわけであります。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 この点はいずれまた他の委員からも御質問があると思いますので保留しておきます。それでゆっくり、この法律を通すについての政府側の思想統一もしてもらいたいと思いますので保留しておきます。  そこでこれは大臣にお尋ねしたいのですが、当時まだ大臣になっておられないので局長に伺いたいと思いますが、二十四国会から二十五国会に至るまでの間にこの法案が審議未了になって参議院でつぶれた状況もつぶさにあなた方は御存じだ。そうしますと、二十五臨時国会にこれを提出されてから、この法案の内容についてかなり世論の批判が継続的に強く打ち出されておった。これに対して厚生省はどういう処置をとったか、どういう対策を講じたか、また医療担当者等にどういう解説をしてきたか、そういう事実があれば御説切願いたい。それとも全然そういうことはしないで、あくまでも立法府の意思を尊重して、法律を黙って抱いて今日審議を依頼したんだ、こういう態度なのか、そこのところをはっきりしてもらいたい。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 二十四国会で御存じのような経緯で審議未了に相なったわけでございますが、その後私ども厚生当局といたしましては、いずれ最も早い機会に同じような趣旨の改正を御審議願いたい、かように考えておりましたので、事あるごとにこの法の改正の趣旨というものを理解していただくようにいろいろと努力をして参ったのでございます。その間診療担当者の方々あるいは被保険者代表の方々ともいろいろな機会にいろいろとお話し合いをいたして参っております。さようなわけ合いでございまして、今回前国会と一部負担のやり方等について若干方法の変更をいたしまして御提案申し上げておるのも、さような前国会の御審議の状況とか、あるいはいろいろと皆様方の御意見も拝聴して、そういうふうな点からこの辺のところも検討をいたしたようなわけでございまして、さような努力を重ねて参りましたことは事実でございます。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 そこで大臣に伺いたいのですが、立法府の立場、行政府の立場はありますが、この健康保険法の改正に対する世論の動向について、大臣はどういうお与えをお持ちになっておりますか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 健康保険法の一部改正法案が、一体世論にどういうような反映をしておるかということでございますが、これは世論といってもいろいろあろうかと思いますが、率直に申し上げまして、日本医師会あるいは日本歯科医師会と申しましょうか、この医療機関の方々は反対しておられることは御承知の通りであります。それから被保険者の側においても相当反対があるようでございます。その他反対の有力な議論もあるようでございます。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 言葉が足りなかったかもしれませんけれども、世論を知っておるかというのじゃなくて、世論の動向に対して、厚生省はどう考えているかということであります。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 先ほど野澤委員から反対の世論がどうかという意味で、ちょっと聞きとりがたかったものですから、簡単にお答えを申し上げたのですが、ただいまの御質疑でよくお尋ねの内容がわかったのでございますが、反対者が相当根強いと申しましょうか、有力と申しましょうか、ありますことは、ただいま申し上げた事情で野澤委員もよく御承知だと思います。しかしこの法の改正に対して支持されるまた有力な考えをお待ちになっておられる方々が多数おありになることも私ども確信を持っております。  そこで、それならば一体反対、賛成ということがこの具体的な内容をよく承知してやっておるかどうかという問題が大事だと思います。私の承知しております限りにおきましては、反対の多数の方々もこれは内容をよく真実をつかんでおらないのじゃないか。ことに先ほど申し上げました医療機関の関係者等は、十分この改正案の趣旨を納得いくような方法を講じますならば、この納得していただくということについて、みんなそれはできぬ、反対だというふうには考えておらないのでございます。この法案の取扱い方と申しましょうか、内容を十分周知するような扱い上の面に多少欠けておるところがあったのではないか、この法案の内容を十分で説明いたしますれば御納得いただけるのじゃないかと考えております。特に賛成の方が多数あるという意味は、この内容をよく熟知しておられる方が多数あるという意味で、この法案は私は今日りっぱな法案であると考えております。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 二十分もかかってやっとそこまで行きついたのですが、大臣は今賛否両論も認められ、厚生省当局としてこれだけの法案を出しておりながら趣旨を徹底させることに不熱心であったということを率直に認めたようでございます。そこでわざわざ局長にお尋ねしたのですが、局長はいろいろと話し合いをしたと言われる。おそらくこれは医師会、歯科医師会等の幹部との話し合いをしたのでしょうが、全国にこの法案の内容を熟知させるだけの努力を厚生省が怠っておったのではないか。しかも世論の動きというものは毎年増して、今回は非常に強力なのです。そしてこれは医療担当者が主体になっておるばかりでなしに、一部労働者や患者等もこれに賛成しまして、いわゆる反対をする者が相当いる。こういうことは前国会でもよくわかり切っておるのです。わかり切っておることを今回もまた同じよ繰り返さなければならない。これは厚生当局自体として大衆に対し、あるいはそれぞれの機関に対する啓蒙というものが徹底しておらないという実証だと思います。今大臣が率直にそういうこともあり得るということを申されましたから、私の方ではさらに追及する気持はございませんが、少くとも立法府と行政府との間、提案者と立法府で審議する立場の者との間で、世論が相当高まって賛否両論が生まれるというような場合には相当考えてもらわなければならないと思うのです。しかもその目的は国民の医療水準を高め、保健衛生を完璧ならしめるという大目的でやっておるのですから、この点にぬかりがあったのでは、せっかく優秀な法案もつぶれてしまうのではないか、こういう懸念がありますので、一応お尋ねしたわけであります。そこで最近ひんぴんとしてこういう陳情書が来ます。これに対して局長はどういうふうにこれを分析しておるかという点であります。つまり四つの項目をあげて強く反対するものであります。特に一、患者に対する一部負担の増大、二、保険医と医療機関の二重指定、三、官僚的監査の強化、四、支払い基金法の改悪、なかんずく審査の官僚化、こういうものがいずれの医師会においても指摘されておる。これをどう局長の方ではお考えになっておるか御所見を伺いたい。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 非常にむずかして御質問で当惑いたしておりますが、二重指定あるいは監査、審査、これらの問題につきましては、先ほど大臣がお答えをいたしましたように、この法律の中身を十分に御理解いただけないで、あるいは官僚統制になるのではあるまいかという一つの不安がこの一番大きな原因をなしているように私は考えているわけでございます。しかしそれらにつきましては、この法律をよく理解していただき、あるいはまたこの法案の前国会における御審議の過程を通じまして私どもがこの運用の方針等について明らかにいたしておりますさような点を十分に徹底させるならば、この御不安はとれるのではあるまいか、かように私は考えておるのでございます。従いましてさような不安を解消するようなこの運用方針というか、それらのことにつきましては、これをあらゆる機会に明らかにいたし、またそれぞれ適当な文書等に残して参りたいと考えておるわけであります。  それから第一点の一部負担の問題でございますが、これはいろいろこの物事の考え方から反対だというふうな部面も相当入ってきているわけであります。今日二十四年にきめられました五十円の一部負担がかりに百円になったといたしましても、これがいろいろ反対の方々が申しておられるように、やれ正当な受診の抑制になるとか、あるいはまたこれが負担しきれないでどうにもこうにもというふうなさほどな問題ではなく、むしろ考え方の問題であると考えておるのでございます、私どもの考え方といたしましては、この程度の一部負担の拡張は、決して正当な受診を抑制いたしたり、あるいは貧しい方がほんとうにお困りになるというふうな工合にはとてもいくものではなく、むしろこの程度の一部負担の拡充は、この被保険者相互の公平の見地から見ましてもむしろ制度的に妥当なものである、かような考え方をいたしているわけであります。しかし一部負担に関連いたしましては、これは考え方の相違が大きく対立をいたしておりますので、簡単に申し上げますれば、私どもの考え方と違った見地に立っての御反対、かように理解をいたしているわけであります。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 聞き方があまりはっきりしないのでお困りだったと思いますが、私は四つの問題点を拾ってみて、率直に局長あたりは世論の動きがどこに重点を置かれているかということの分析がきちんといっていると考えたものですから、この四項目に対する分析をどうしておるのだと言うてお聞きしたわけであります。先ほど大臣にも局長にもお尋ねしましたように、第一の患者に対する一部負担の増大というものは、医療機関に従事するこの医療担当者外の労働者なり被保険者なりが相当問題にしているということです。これが情勢分析の一つだと思う。それから二重指定とか監査、審査の面というものは、全くこれは国民の立場でなしに、医療担当者の立場から問題点があると思う。これは分析の方途を示さないで申し上げたからおわかりにくかったと思いますが、この四つの問題を二つに大別してみますと、医療担当者それ自体の問題点が四分の三ある。比重が強い弱いということでなしに、三点だけを一応第二の問題点として考えた場合に、少くとも趣旨が徹底しないために賛成の者もあり、反対の者もある、こういう対立の状況をそのまま見過ごすというところに欠陥があるのじゃないか。ですから、少くとも衛生部長会議なら衛生部長会議を開いた際に、その都道府県の医師会、歯科医師会、薬剤師会等には詳細にその立法の精神を熟知させる必要がある。ところがそれを賛否両論があるというように大臣に報告するから、大臣の方では、反対の者も医師会や歯科医師会を中心として相当ある。しかし賛成の者もあるんだというて、端的にお話になる。ところが大臣就任の直後に、全国の医師会の幹部が大臣に面会したときには、厚生行政の大きな障害となるものは、医者と厚生省が仲が悪いことなんだ、こういうことをはっきり大臣の方から指摘されて、今後は仲よくしようじゃないか、そうしなければ国民健康保険というような保険行政がうまくいかない、あるいは厚生行政がうまくいかぬということを大臣がみずから率直におっしゃった。これはもう医師会として、私の聞いた範囲では非常に力強い発言のように聞いています。つまり今度の大臣は医者に対する理解が深い、また医療担当者に対してあたたかい気持で接してもらえる。これなら健康保険はつぶれぬじゃないか、こういうふうに相当好意的にあなたの考え方を身につけたらしい。そうしますと、仲よくしようと言うていながら、厚生大臣自体として、反対もあれば賛成もあるということを野放しにながめておること自体が、私は立法者として欠陥があるのじゃないかと思う。少くとも世論の動向というものを問題にしていこうというならば、分析してみればきわめて簡単です。一部負担というものは大衆が反対するのだ、そして機関指定とか、監査、審査というようなものは医療担当者が反対しているのだ。そうすればこの国会にかかっている最中でも、各都道府県に流して十分に納得のいくように話し合いをすべきだと思う。そうした処置がとられているかどうかというお尋ねを局長にしたらば、いろいろと話をしていただこうというか、おそらく衛生部長会議出あたりや、あるいは知事会議あたりに行ってそういうことを敷衍して徹底させるという御意思もなかったのだと思いますが、この点どのようにお考えになりますか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 ただいまの野澤委員の御心配なすっておられる点は、私も同感であります。厚生行政が医師会と歯科医師会を含めたいわゆる治療機関と、十分な理解のもとに和提携して日本の医療制度の向上をはかるということは、これは非常に大事なことであって、どなたが厚生行政を担当してもゆるがせにできないものと考えております。そこで私も就任以来この精神にのっとりまして、機会あるごとに強く要望して参ったわけでございまして、この法案の取扱い方につきましてもその趣旨を非常に深く考えまして、日本医師会それから日本歯科医師会の幹部の方々にも、わざわざ大臣室までおでいただいて御相談を願ったわけでございますが、健康保険法等の一部改正の問題は、すでに継続審議になっておる問題でございまして、私どもといたしましては、政府一体として、鳩山内閣の延長としてこの法案を扱うに際しまして、医療機関の望んでおられることで他に重要な面がたくさんございますので、この面については当然やらなければならないことでございまして、これと取引をするとか、引きかえるとかいうような、そういう考えでお話ししていることは毛頭ないのでございまして、この改正案については政府の方針の十分説明を申し上げる、それから他の問題についてはこれまた十分申し上げまして、私といたしましては、私にお会いした方々につきましては、政府がこの改正案を国会にお願いしておるという事情については御理解を願っておる、こういうふうに考えております。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 だんだん大臣の説明も納得がいくようになって参りますが、そこで私は最重点として、医療担当者が反対します四点の分析を中心にして局長に伺っておきたいのですが、たとえば機関指定の問題について、一人開業のような場合に機関指定する必要があるか、二重指定の必要があるかないか、こういうふうな問題点が一応生まれてくると思うわけです。これについてはたびたび御説明願っておるのでありますが、二人以上の規模のものと違うのだからそういうものは必要ないじゃないか、ことさらに一人の医師が開業しているものに個人指定と機関指定とをしなければならぬというこの考え方が、二重指定だというてみんなにきらわれる原因なんですが、こういう問題についてどうお考えになるか。また指定に三年の期間ということを明示されたけれども、大体医療担当者が、手続がめんどうだとか、三年たったらもとの白紙に返って、気に入らぬものは指定されないのじゃないか、こういうふうな問題も起きてくる。これは一、二の事例を拾ったのですが、さらに検査とか監査機構というようなものになってきますと、官僚統制という言葉が盛んに使われる。こういう審査委員会の機構とか、あめるいは法文上に監督庁が検査の必要ありと認めるときというような字句を使って明文化してあるために、その必要ありと認めるのは一体だれが認めるのだ、客観情勢でなしに官僚独善じゃないか、こういうふうな考えも生まれてくる。これは一貫した一つの考え方、医療担当者自体が考えておる考え方だと思うのですが、こういう問題について、局長自体としてどの程度に、平面的にでも立体的にでもお考えになっておるか、これを御説明願いたいと思います。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 第一点でございますが、個人の場合に、機関の指定と個人の登録と二つするということは非常にめんどうなことじゃないかという仰せでございますが、実は私どもの気持といたしましては、ちょうど医療法が病院、診療所をつかんでおりまするように、また生活保護法その他の最近の立法が機関をつかまえておりますように、病院、診療所という機関を相手にして、保険の診療をお願いします、よしやろう、こういうふうな契約関係といいますか、そういう関係になってもらうということをまず第一番に考えたのでございます。従ってその点におきましては、むしろ保険の診療担当者として保険との関係を結ぶということにおいては、機関というものがまずわれわれの頭の中に出てきておる。その際には、個人の場合におきましては何々診療所というものを相手に保険が契約しておる、こういう考え方なのであります。ところがそれだといろいろ工合の悪いことが法律上にもそれから実際問題としましても起って参るのであります。というのは、多数の先生をかかえておられる大きい医療機関もあるわけでありまして、さような関係等で、また法律上にも若干問題のあるところもございまして、やはり個人というものも何らかの形で関係づけておく必要がある、こういう結論に到達いたしまして、それじゃ個人はもう機関に変ったのでございますから、現在のような指定というようなことでなしに、とにかく登録ということでだれでも一つ登録していこうという建前で登録関係をそこへ一つ設けよう、こういうことで実は二つの考え方に相なってきたわけでありますが、その際、それでは個人開業の場合にはいいじゃないかということになりますけれども、理屈といたしましては、むしろ法律的には、それを今度は個人の場合には個人と契約を結ぶというふうなことに机なって参りますと、そこで法律上の非常な波乱が起って参るわけであります。それから、実際問題といたしましても、個人で開業をしておられて、新たにまた代診の医師を雇い入れられることもあるわけでございます。そういう場合にはまた個人の契約の相手方であったものが今度は機関に変っていくというふうなそこに非常な手続も出てくる、そういうふうなことで、むしろはっきりと割り切って、そういう機関の指定と、それからそれを原則として個人の登録というもので補っていくというふうな格好にした方が法律的にも割り切りやすいし、実際問題としましてもかえってその方がすっきりするじやないか、こういうふうな考え方からこういう立て方にいたしたわけでございます。  しかしながら、現実の手続面等におきましては、個人の開業の場合におきましては、これはたとえば三年ごとに指定をやり直すというふうな場合におきましても手続等においては大きな医療機関とは別扱いをいたしまして、手続等については十分簡略に御負担にならないようなことを私どもとしては考えているようなわけでございます。  それから三年という契約の期限がついておるが、今度三年目に再指定の場合には、あいつは気に入らぬからといって指定をしないとか、あるいはまた定員制というふうなことを考えて再指定に制限をつけるのじゃあるまいかといろいろな不安がありますことは私どもも承知をいたしております。しかしこれらにつきましては、社会保険審議会の席上におきましても、また前国会当委員会におきましても申し上げておりますように、私どもといたしましては地域指定制とか定員制というふうなものをその機会にかれこれも考えたりなんかすることは絶対にない。また医療法等に定めた以上の特別な規格を要求するとかそういうふうなことも絶対しない。なおまた再指定をやる場合には、これは実際上の運営といたしましては医師会、歯科医師会——これは都道府県のことになりますが、都道府県のそれらの診療所団体と十分に相談をして、意見を聞いて医療協議会にかける原案を作りましょうということも申し上げておるのでございます。従いまして、法律的にも、再指定を拒むというふうな場合には医療協議会の議によるということになっておりまして、諮問よりは重くなっております。原案には、これは拒否できないということになっております。法律的な保証とも相まちまして、これらの運用につきましては決して御心配のことのないように、今申し上げましたようなことを確実に実行をいたして参りたい、かように考えておるわけでございます。  なお監査の点につきましても、ただいま御指摘がございましたが、法律の文章では確かに「必要アリト認ムルトキハ」となっておりますが、これはこれらの行政検査規定のすべての条文にありまする通りの表現をいたしておるにすぎないのでございます。これが運用につきましては、御承知の監査要綱というものが中央医療協議会の議を経てできております。この要綱によりますると、これらは疑いのある者ということにはっきりしぼられておるのであります。なおまた監査を実施いたしまするには医師会に立ち会っていただく、あるいはまた日程等についても十分に打ち合せをしていくとかいうふうに監査要綱で現在でも縛られて、その方針で運用いたしておる。この要綱は今後も引き続き生きて参る要綱でございます。この要綱に従って運用をいたしまする限り御不安の点はすべて解消するもの、かように考えております。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 詳細に御説明願いましたが、実は私機関指定とかあるいは監査とか、こういう問題についてわざわざお聞きしたことは、最初に申し上げた四つの問題点に対する分析の内容についてどの程度まで御存じかということで申し上げたわけであります。そうしますと、たとえば二重指定というような問題についても監査や審査の条文にしましても、医療担当者が心配していることは、その法文が正しく運営されるならばという前提のもとに反対が打ち出されているのじゃないのです。特殊な例を一応仮設しまして、たとえば二重指定というような場合に、あの医者は気に入らないからもう指定しないのだ、こういわれたら一体どうするのだ、しかも官僚の一方的な意思だけでもって決定してしまうじゃないか、あるいはまた審査、監査についても、全く敵本主我に、その指摘された場合ということが重点になるじゃないか。それで結論は、監査とかあるいは審査というものの官僚化を強く叫んでいる。そうしますと、この三つの条文、この柱を立てた反対理由というものは全く特殊な、特別な例を指摘して医療機関が反対している。これはそこに官僚統制が強化されるのではないか、こういうことは少くとも法律ができてから納得熟知させる方がいいのか。もとへ戻りますが、少くとも立法技術あるいは立法の期間中に十分余裕があるのですから、各都道府県の医師会歯科医師会等に対してこれはもっと懇切丁寧に話し合いをすべきだ、そして納得させるべきなんだ。ところがそれをおろそかにしておいて、片一方では官僚統制だといってのろしを上げる。大臣の方では医者と仲よくする。一人であれもこれもといっても、幾ら上手な者でもめかけを三人も四人も持ったらとても交通整理ができないのですから、それを平気で大臣がやり、局長がやっておったのでは、どんな題目を立てたりっぱな法案でも私は宙に迷ってしまうと思う。ですから、たとえば監査の問題にしましても、審査の問題にしましても、婦人科が手術中に、今外科室に入っておるところにやってきて、そこに踏み込まれたら一体どうするのか、これは大阪の医師会の方で発行した新聞にはっきり載っております。今オペラチオンの最中にでも、入ってこられたら医者はどうしようもない。これは要するに医者自体が法律そのものを正しく理解しないで、さらに一つの仮説を立てて不安と焦燥の念にかられる。また二重指定の場合についてもその通りだと思う。万一指定されなかったらという一つの仮説なのです。そういう仮説の不安を助長さしてそのまま放任しておいて立法するというところに私は無理があるのだと思う。こういう点についてこの不安の気持をどうやって除くかということは、一にかかって厚生省自体が今後の法の運用を適切にやるか、あるいはすみやかに医療担当者の不安をなくすような努力をするかにある。しかもお医者さん方の言うてきます主張の中には、はっきりと医療関係各団体の意見が尊重されないような改正には反対だと言っておる。ですからせっかく進歩的な大臣が生まれたんですから、この間延については一つお医者さんと仲よくするという前提のもとに、どうかもう少し法の精神というもりのをしっかりと各都道府県にわたっても一致させるように、また納得、理解を徹底させるように御尽力を願いたいと思うわけであります。  次に時間がないようでありますので、大臣に二、三の点を伺っておきたいのです。それは国庫負担の問題についてであります。昭和三十一年度に国庫補助について一応三十億円計上されておりましたし、今後もこういうように三十億というものが計上されていますが、一体赤字が減少したら三十億というものはどうなるのか。つまり十億しか赤字が出なかったときには、もう国庫補助はくれないのかどうか、あるいは十億になっても国庫補助を出すという考えでいるのか、この点お願いいたします。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 そのお答えの前に、前段の、法案の内容の周知というものの徹底を欠いておるじゃないかという野津委員のお話は、全くその通りでございまして、これはできるだけなお周知するような方法をとりたいと思います。こうして委員会でいろいろ質疑応答されて参りますことも、その一つであろうと思いますが、さらになお一そうその点については考究いたしたいと思います。  それから第二の、三十一年度で国庫が三十億円を健康保険財政に繰り入れよう、三十二年度も三十億計上になっておりますが、これは赤字が減少したり、あるいは将来なくなったらどういうふうの約束になっておるか、こういう意味だと伺いましたが、これは提案の際にも申し上げましたように、一年の案でございますので、ずっと三十億は当分の間政府が持つと、こういうはっきりした約束になっておりますので、さよう御了承願いたいと思います。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 もう一点、それではこの健康保険の改正法案が、もし本年度内に成立しなかった場合には一体どうなるか。去年の暮れに、もう二十四国会で流れたために、医療費の支払いというものが非常に遅延する、しかも増大するというので、不安の念がお医者さん方にもみなぎってきました。しかも臨時国会でこの法案を通そうとしても、提案されたまま審議もできない、こういう事態に逢着したんですが、今回もしそうした周知徹底か不完全のために、審議がなかなか進捗しない、あるいはつぶれてしまう、こういう事態が起きた場合に、厚生保険の特別会計法の改正だけが年度内に成立した、こういうことができさえすれば、この三十億というものを国庫補助としてもらえるのかどうか、この点についてもはっきりした御見解を伺っておきたいと思います。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 この法律が年度内に可決されまして、そうして官報で年度内に告示することによって、本年度の三十億は健康保険財政にちょうだいできる、こう考えております。ですから逆に言えば、年度内に可決されなかったならば三十一年度はちょうだいできない。三月三十一日までに可決されて、そうして法律でございますから官報で告示をする、そこで政府が補助を出す、こういうことに相なるわけでございます。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 そうしますと、法律が成立しなかった場合には、三十一年度分はもらえないということですね。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 そうです。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 そうなった場合に、保険局長としては一体どういう対策を打っておりますか。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 私どもは年度内に御審議をいただくものと確信をいたしておりますので、その際にどうするかということにつきましては、ただいまのところ考えておりません。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 医療担当者は仮説の前に恐怖心を持って、不安の念を訴えて反対しております。それから局長の方では、仮説の議論だから通らないということの前提のもとに答えはできないと、こう言うのです。これは立場々々が違うからやむを得ないと思いますが、一体厚生当局としてもこれだけの大法案を、二十四国会から考えてももうすでに一年になるが、周知徹底もさせない、理解もさせないで、ひとりよがりに、この法案というものは保険行政上非常にいいものだというようにあなた方主張しておりますけれども、これこそ全く一方的な官僚の考え方じゃないか。こういうことをたびたび繰り返しているからこそ、医療担当者にいわゆる官僚統制だと、こう言われている。それで、少くともこれは厚生省自体としても、こういう点については十分考慮をしなければならぬと思います。われわれとしても出た以上は、一応この法案がすみやかに成立するようには努力はいたします。しかし是は是とし非は非とし、厚生官僚自体が、誤解を招かないように懇切丁寧な行き方をすることが、やはり行政官吏としての役目じゃないかと私は思う。こういう点についても今後十分御留意願いたい。  もう一つ最後に、十億円ずつ毎年度お返しするということが、前々国会にきめられておりましたが、借金返しの十億円というのが三十二年度に計上されていない。これは一体約束違反じゃないかと思いますが、この点についてどう考えるか、また政府自体の考え方としてはどう考えておられるのか、これをお答え願いたい。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 お説の通り、計上しなかったことは、保険財政の現下の状態では返せないということで、これは三十三年度に繰り延べることになっております。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 それで大体わかったのですか、それじゃ六十億をこの保険財政におっかぶせるというような事態は生じてこないわけですね。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 そういうことにはならぬと思います。

野澤清人自由民主党

○野澤委員 時間がありませんから、幾多の質問を保留したまま一応これで中止いたしまして、機会がありましたらお願いしたいと思います。以上で終ります。

藤本捨助自由民主党

○藤本委員長 滝井さんにお尋ねしますが、大臣所用のためにしばらく退席しますが、政府委員に対して質問なさいますか。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 きょうは冒頭ですから、どうしても大臣にやらしてもらわなければ……。

藤本捨助自由民主党

○藤本委員長 それでは滝井君。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 やかましく言うようでありますけれども、きょうは提案理由の説明をされておる。実は私は総理大臣にも来てもらって、石橋内閣の社会保障制度に対する基本的な態度について聞かなければいかぬと考えていたのです。提案理由の説明がなければいいと思ったが、しかし政府は新しい立場で二十六国会には臨んできておるわけです。私はどうしてもきょうはほんとうは岸総理大臣臨時代理も呼ばなければならぬところなんですが、それは一応譲歩しておるわけなんですから、私もできるだけ時間を短くしますから、ちょっとおってもらいたい。  そこで私はこまかいことはあとに譲りまして、まず一般論と申しますか政治論をお聞きして、その次に法律論をお聞きして、それから財政論をお聞きして、それから特別会計に対する態度をお聞きして、それから船員保険、厚生年金、こういうように大体分けて、系統的にお聞きしていきたい。きょうはその政治論の中の総論的なものをまずお尋ねをしたい、こう思うのです。  まず私のお尋ねしたいのは、石橋内閣は至れり尽せりです。これは一千億減税、完全雇用、福祉国家の建設なんです。一千億減税に関連して地方財政の減税をやる、芸者の花代まで三割のものを一割五分に引き下げるという、ほんとに神武以来の善政をしいて下さる内閣なんです。今度の石橋内閣の政策の中で何かうんと負担が増すものがあるかというと、何もないですね。健康保険だけなんです。患者から初診料百円を取ったり、あるいは入院患者のなけなしの財布の中から一日三十円ずつ取るという、こういう貧しい階層にどすんと重荷を負わせるという。この至れり尽せりの芸者さんの花代までよけてやる内閣がどうして健康保険のこの問題について再検討ができなかったか。福祉国家を建設するという石橋内閣がどうしてこれができなかったかということを、私はまず第一に神田大臣にお聞きいたしたい。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 この法案が鳩山内閣の際に提案になっておることは、滝井委員御承知の通りであります。石橋総理は鳩山内閣の閣僚であり、石橋内閣がまた鳩山内閣の延長内閣であることは滝井委員御承知の通りだと思います。諸般の情勢を検討いたしまして、そしてこの法案は継続審議のまま審議をお願いいたしたい、こういう意味でお願いしておる次第であります。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 継続だから、従って負担というものは、他のものは全部いろいろ恩典に浴せる政策というものを出したが、この政策だけは依然として恩典に浴せない。貧しくても一つ患者一部負担をしてくれ、こういう態度で臨まれていくのですか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 そういう考えではないのでございます。一千億の減税をしたということは、それは所得税だけについての話でありまして、御承知のように主として所得税法をやったわけです。増税したものもあることは御承知の通り。一千億減税は所得税について減税する。それからこの問題は取ることが必要だというような、そういう簡単なことで増額したわけではない。諸般の情勢を考慮いたしまして、提案理由にも述べておるように、理由あっての継続審議をお願いしたわけであります。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 それはそのくらいにして、二十二国会以来出て参りましたこの政府の提案理由を見ていきますと、違ってきているのですね。全部違ってきている。二十二国会の提案理由は、これは主として、今野澤委員からも述べておりましたが、赤字対策が中心となって出てきました。それから今度は、二十四国会で、小林厚生大臣になりますと、今大臣が述べられたような比重というものが幾分、赤字対策が重点で、制度的な改正のニュアンスが少し出てきた。今度は二十五国会になりまして、同じ小林厚生大臣が二十四国会に出したのと二十五臨時国会に出したときの状態は、大して変りありませんでした。ところが同じ法案を今度二十六国会になりましたならば——二十五国会で一ぺん提案の理由をちょっとここで説明されております。そうして今度二十六国会になって内閣がかわりましたら、今度はまた新しく提案理由を説明しました。なるほど内容は同じです。提案理由の説明の内容は同じでございますが、前提は非常に違ってきました。今野澤委員も御指摘になりましたが、少くとも小林さんがわれわれに読みましたところのこの提案理由、いわゆる二十五臨時国会における提案理由というものは、やはり制度を根本的に改革するという方向の提案理由ではない。ところが今度あなたがわれわれに御説明になったのは、少くとも不安定な健康保険財政を根本的に立て直しをやるのだという根本論が出てきた。これは非常な違いがある。しかも前提条件は、二十四国会以来の前提条件と現段階における日本の経済の前提条件は、違ってきております。いずれ私はこれを具体的に一つ一つ述べていきますが、非常に違ってきている。違ってきたから社会情勢に応じて提案理由まで違えてきたのか、それとも内容が変ったから違えてきたのか、そこらあたりを一つ前の御答弁と矛盾しないように——前の答弁では、内閣もかわったし、一千億減税をやっていくんだというから、私は今度は初診料百円や入院料三十円を一つ検討してみたらと言ったけれども、いや、鳩山内閣の継続でございますからその通りいたしましたと、こうおっしゃった。ところが提案理由をつぶさに検討してみると、非常に客観条件が違ってきている。今度の説明で合っているのは、二ページの「今回の改正案の内容といたしましては」というところからは同じでございます。しかしその前の前提というものは違ってきている。こういうことが同じ自民党の政党内閣というもので許されるとすれば、まずこれが撤回の第一の理由になるのですが、こういうふうに変ってくるのですから、大臣、やはりこれはもう一回考え直してみる必要があるのではないかという一つの理論的な根拠になると思うのですが、この点大臣はどう御答弁されますか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 お答えいたします。大へん変ったようなお尋ねでございますが、そういう気持ではなかったのでございます。前のものはだいぶ詳細をきわめてありましたのを、河じものを読んだのでは皆様御迷惑だろうと思いまして、実は簡素化したつもりなんでございますが、一貫した考えでございまして、何か多少字句が違ったりしておれば別でありますが、これは加えたものより、ほとんど抜いたというかっこうであります。さよう私ども考えております。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 これは簡素化したというけれども、そういうものではない。まず第一に、全く日本の経済に対する認識というものが二十五国会のときの認識と今度の認識とは非常に違ってきているのです。これはもう明らかに書いてある。経済情勢が違ったということが書いてある。今までは小林さんのときはそういうことは書かなかった。今度は書いてある。経済の基盤が変ったということは、それはそのまま反映して、保険経済に非常な変化が出てくるのです。これはあとで具体的に指摘いたしますが、非常に出てくるのです。第一保険経済の中における土俵が違ってきているのです。そういう点は簡素化したというようなものでない。そういう認識で大臣がおられたら大へんだと思うのです。すべてのものが違ってきているのですよ。いずれ私、財政論のときにやりますが、二十二国会で出してきたときの政府のいろいろの見積りと、それから二十五臨時国会で出した見積りと、しかも今度二十六国会に出してきている見積りとは令部雲泥の差があるのです。こういう経済情勢の根本的な違いというものがあるのだから、当然提案理由が違ってくる。違うことがほんとうです。提案理由さえ違ってきた法案を二十五国会に出してきたものが継続審議になっておって、そして今度はまた根本的に前提条件の違った提案理由の説明をして、内閣がしたから同じでございますと言うのは筋が通らないと思うのです。この点をもうちょっと明白にしないと——提案理由を簡素化しただけだというようなそんな子供だましではだめだと思います。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 滝井委員のおっしゃる経済情勢が非常に変ってきたということはその通りでございまして、これはもちろん健康保険財政そのものに及ぼす影響も非常なものでございますから、その点は率直にここに書いてございます。さような認識に立っておるのでございます。決してそれを否定するものではございませんが、この健康保険法を一部改正する考え方、前の大臣が引き継がれたときの考え方も、私は十分お聞きしておるのでございまして、そう前の大臣の考え方を変えたとも思っておらないのでございいます。継続審議をさらにお願いするということは、もちろんそのまま継続をお願いするという意味ではないのでございまして、諸般の情勢を勘案してやはりこの法案を継続のまま御審議願うことが妥当だ、こういう考えに到達したという意味を簡単に申し上げたわけなんです。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 とにかく提案理由が変っておるということは間違いございません。しかも法案の内容は同じであっても、提案する前提条件というものが、川崎厚生大臣、小林厚生大臣、神田厚生大臣と非常に大きな変化を来たしておるということは、大臣が何と抗弁されようと——私はいずれ財政論で明確にしていきますが、これが、撤回を主張する第一の理由になると思います。  それから、さいぜんの論争の中で、野澤さんにも大臣にも幾分認識の不足があると思ったのは——大臣は野澤さんの質問に対して、七人委員会は制度を根本的に検討したとおっしゃった。野澤さんもまた——野澤さんのことを言っては失礼ですけれども、与党の方がそうおっしゃっているのですから——二十二国会以来、制度上の根本的な改正について七人委員会がいろいろ検討したと言っておられる。ところが七人委員会は制度上の検討はやっておりません。川崎君が七人委員会にあれしたのは——この報告の冒頭をお読みになればおわかりのように、「われわれが政府から与えられた課題は、健康保険及び船員保険の財政対策」である。財政対策、赤字対策なんです。その赤字対策に基いてできたのが川崎君の二十二国会に出した健康保険法の改正案なんです。従って制度上の改革をやろうとするならば——七人委員会はこういうことを言ったんです。われわれは制度上の改革をやるのじゃないんだ、当面の財政対策、特に赤字対策を中心にして政府に言わなければならぬ、しかし赤字対策、財政対策というものについてやってみたところが、なかなかそれだけではだめだ、だから本来からいえば、少くとも医療保険の方向づけの基本線なり年次計画なりがまず先行するのが順序である、赤字対策といえどもそういった構図の上でなければ、それぞれの比重までつけ加えた具体的体策は立てられぬというのがほんとうであろう、しかしその中から政府が適宜取捨選択して組み合せることは御自由だ、それもわれわれはがまんしよう、しかし本来から言えば根本的な年次計画なり基本構想というものが立たなければならぬ、こういうことなんです。これは一貫して川崎君から小林さんが受け継ぎ、そして神田厚生大臣が受け継いだ厚生省の方針でなければならぬ。ところが今野澤さんと大臣との問答を聞いてみるとだんだん変ってきて、いつのまにか、これは制度のものだということになり、しかもこの提案理由には健康保険制度の根本的な立て直しだと言っている。根本的な立て直しをやろうとするなら、社会保険の一環として健康保険というものがいかなるあり方をしなければならないかを考えなければならない。あなたの言うような、七十条ノ三に補助金がついたからこれが制度でございますなんというのは大きな間違いなんです。そういう認識をされておりますから、三十億というものは来年も取りますとおっしゃいますけれども、今年だって三十億全部取れていない。二十億取れて、十億は六十億の対策の一環としてつけ加えたものである。そうして十億は来年度に送られたというのが真相である。一萬田大蔵大臣は何と言っているか。黒字になれば削ることもあり得ると予算委員会で明言している。そしていつも私が指摘するように、予算委員会の説明においては、三十億というものは財政対策費として出ていったと言っている。ところがそれが問題になる。自民党の政調会と大蔵省と厚生省と三者が文書を取りかわして、七十条ノ三を補助金として入れるから一部負担を恒久的なものとして入れようという形で出てきていることは野澤さんも厚生省も大蔵省もみな知っている。だからこの三十億というものは、黒字になれば削られる可能性のあるものである。そのうち世論がやかましくなってきたから補助金として切りかえられている。七人委員会の認識の仕方がそういう状態では七人委員の諸君が泣きます。制度を根本的に変えるために出したものではない。この膨大なものははっきり財政対策として出てきている。一体この七人委員会の報告と今回出した健康保険法の改正案はいかなる関連をもっているか。七人委員会はあなた方に、まず次の五点に主力を置いてもらいたいと言っている。薬品、衛生材料、医療器具器械を廉価に提供する方策、医療機関の負担軽減方策、診療報酬支払い方式における技術料の尊重、結核入院の事前審査、政府発行請求書による受診。これだけは必ずやってもらいたいと要求したはずである。ところがあなた方は、川崎君のとき以来、あるいは小林厚生大臣の当時二十四国会に出したものは、政府発行の官給請求書です。いわゆる官給レセプトのものを行政措置でやろうとし、結核入院の事前審査を強化しただけで、あとは何もやらなかった。今大臣は、七人委員会の報告に基いて健康保険のことをやったと言いながら、その次に社会保障制度審議会の勧告と言っている。そこで七人委員会の報告と今回の法案とはどういう関連を持っているか。莫大な国費を使って日本の社会保障史にかってなかったようなこういうりっぱなものを出して、あなた方厚生省はこれをいかに利用したか。新しい内閣ができ、新しい皮袋に新しい酒を盛ろうとする第一日ですから、まずそれをお聞きしたい。もし何にも利用していないとすれば、すべからくこれは撤回しなければならぬと思う。これが撤回論のあなた方にお尋ねしたい第二の点です。認識が違っていやしないかと思う。この報告書は心血を注いだはずである。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 これは……。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 あなたの認識ではない。大臣のさいぜんの認識が違っておったので、まず先に大臣にお聞きして、そうしてあなたに補足して説明していただけばよい。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 事のいきさつに関連をしておりますので、私がお答えをいたしておきたいと思います。いきさつにつきましては、今お述べになりました滝井先生の御理解に若干思い違いがあるようでありますが、川崎大臣の二十二国会のとき出しました改正案というのは一部負担とか国庫の補助とかそういうふうなことは規定されておらないものでございます。それで先ほど大臣がお答えになりましたように、そのときには、これでは当面の赤字対策というようなことだけであって、さっぱり先を見通した根本的なものではないじゃないかという御批判がありましたので、しかもそれが審議未了になりましたので、川崎大臣のときに、七人委員会が設けられたわけでございます。そうして七人委員会の御答申を得まして、さらに別に社会保険審議会から意見具申が出て参りました。その両方を役所といたしましてはにらみましていろいろ検討をした結果、二十四国会の改正案が出てきたわけでございます。それで二十四国会の改正案と今回の改正東とは滝井先生よく御承知のようないきさつでございます。それで七人委員会の報告書でございますが、これは私どもといたしましては七人委員会の報答書も十分によく精査をいたし、なお社会保険審議会から出て参りました意見具申というものも十分に審査をいたしまして、結局二十四国会に出したような改正案をまとめたわけでございます。従いまして若干それの引き継ぎみたいな格好に今回の法律案はなっておりますので、結局七人委員会、社会保険審議会の御意見というものの中で私ども至当と思われるもの、あるいは直ちにやり得るもの、法律の中身として書き上げなければならぬものはここに書いて盛って出てきておるわけでございます。そういう経緯でございまして、しかも七人委員会に先ほど御指摘がございましたように、確かに財政対策をどうするか、赤字をどうするかということで出発をしたものでございますが、その報告書の内容をごらんをいただきますればおわかりいただけますように、あらゆる面に触れての分析であり、研究書でございます。さような意味合いにおいて、先ほど野澤先生御指摘になりましたように、赤字から出発をしたのであるけれども、その当面の赤字をどうこうするというようなことでなくして、やはり将来相当程度長い期間を見渡したところの財政対策を立てるためには、制度の改正等も行わなければならぬというような全般的な趣旨を盛ったものであるようにただいま記憶をいたしております。大体経緯を御説明申し上げてお答えといたします。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 大臣の答弁はあとでいいですが、今の通りでございます。これは第一部が現状分析であって、第二部は対策です。ところがその対策というものは、現状においてこう対策したらいいだろう、こう対策したらいいだろうという個々ばらばらのものなんです。それらの対策が一貫して、この小さな島に住んでおる日本の九千万の国民に対する医療保障というものはこういう方向でなくちゃならぬという方向づけはやっていないのです。その方向づけは政治がやってくれということを書いてある。ところがあなた方は、今までの大臣もそういうことはやらなかった、今度は野澤さんもさいぜん御指摘になったように、わが国の社会保障の一大支柱である制度、こういう工合に健康保険を打ち出してきている。大臣にお尋ねしますが、今の健康保険は社会保障ですか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 社会保障の一環と考えております。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 学者で現在の日本に社会保障があるという人はいないのです。社会保障的なものはあります。日本にはまだ社会保障という体系はないのですよ。この制度は実は昭和二年に労務管理として起ったものなんです。だから今の社会保険の中に規定されているものは何かというと、保険者と被保険者の関係だけで、あとは何も掲げていない。現在の保険は労務管理なんですよ。労務管理的なもので、今度初めてこれに国が補助をするという形が出たために、社会保障的な形が出てきようとしている。まだ成立していませんから出てきませんが、日本はばらばらな社会保険とそしてこれもばらばらな社会扶助がある。社会保障は社会保険と社会扶助が一つの形になってりっぱな制度として確立したときにこれは初めて社会保障と言えると思う。従って私はまだ不聞にして石橋内閣の医療保険の方向づけの基本線というものを聞いたことがない。医療保険の方向づけの基本線というものは、医療保障というものは社会保障でやるのか、労務管理としてやっていくのか、あるいは市町村行政の一環として相互扶助的な国民健康保険を推進していくのか、これは明確な方向がない。私たちはまだ寡聞にして石橋内閣の医療保障の基本方向というものを聞いたことがありません。一体基本方向がなくて、日本の社会保障の一大支柱である健康保険、こういうことになれば、それは制度的にどういうことなのかということです。私はだから医療保険の方向づけの基本線というものは一体どうするのか、これを一つ御説明願いたい。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 医療保障は社会保険を中心としてやるということは審議会の答申もあることでございまして、御承知だと思う。先ほど私が申し上げた健康保険も社会保障の一種だ、一環として考えているということは、そこまで進んできたという意味を私は申し述べているのであります。それは学問的に言ったら、また沿革的に考えれば、今滝井さんの言われたようなこともございましょう。しかし私ども石橋内閣としては社会保障を大きな施策として考えて逐次これを実行していこう。この考え方といたしまして健康保険も社会保障の一環として考うべきものだ。そこで健康保険の財政上の問題についてもやはり国が負担しよう、こういうことを申し上げておるわけです。だから赤字になったら出すんだ、黒字になったら出さないかというお尋ねに対しましても、いやこれは出すんだ、こういうことをお答えしておるわけです。それは何といいましょうか、内閣もできて日が浅いし、それからわが国の社会制度の上から社会保障を打ち立てていこうというのはほんとうにこれからだと思う。だからここで一体どれだけ太く線を引くかということも大事でありましょう。しかし体系的にあるいは具体的にそういう線を引かなければ社人工保障ができないものでもないと思う。早々の際に内外の情勢もさることながら、一つ社会保障をやるということで踏み切った内閣の熱意というものは高く評価さるべきものだと思う。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 社会保険があるとか公的扶助があるとかいうことは、これは社会保障制度があるということを意味しないでしょう。これは学問的になりますが、学者の議論を聞いてもみなそうです。一つの国に社会保険があるとか公的扶助があるとかいうことだけでその国に社会保障があるということは言えませんよ。これは学問諭になりますから言いませんが、学者の御意見を厚生大臣お聞きになりますと、厚生省がお金を出して村会保障を研究しておる者はたくさんございます。末高さんを初め中山さんですか、たくさんおります。そういう人の意見をお聞きになってみると、日本には社会保障があるという学者は厚生省が委嘱されている人の中からは聞いたことがありません。みな社会保険や公的扶助というばらばらな社会保障的なものです。しかし社会保障的なものがあるということが社会保障そのものがあるということを意味しないということは、これはあなた方が研究費を出している学者はそう言っている、そういう本も出している。これは私は学会でありませんから申しませんが、そういう状態のもとに医療保障はこれからやっていくんだ、社会保障をやっていくんだ、こうおっしゃつた。実は前に小林大臣のときは健康保険は大体社会保障か労務管理かと言ったら、労務管理でございますと、実は一ぺん言った。それからだんだん押していきまして、今度は予算委員会にいきましたら、一萬田大蔵大臣は何と言ったかというと、大体健康保険は社会保障か、それとも労務管理か言ったら、答弁はできませんでしたが、だんだん考えておりましたら、まあ社会保険はだんだん進化して社会保障になりつつあります、こうやった。いわゆるダーウィンの進化論を唱えた。そして同時に今度は小林さんも、私この前は労務管理と言ったけれども、そうじゃない、やっぱり社会保障になりつつあるのだ、こうおっしゃった。事実それはそうおっしゃったのです。そういう状態で、日本の社会保障というものは、実ははっきりした形をとられていません。そういうときに、あなた方が、わが国の社会保障制度の一大支柱をなす制度としてなくてはならぬ重要な意義を有しておりますと、こう書いておる。これは私はこの通りだと思うのです。しかし、それならばそれだけの予算なりあるいは法律の条文が整うて、そうして体系的なものをなして、日本の医療保障の大きな体系の中の一環としてはっきりとした見通しをもってやっていっておるかというと、そうではない。そこにこういう大上段的なかまえをとった提案理由というものが今回出てきたことに、私は実は異議もあるし、石橋内閣はおそらくこれは相当根本的に考え直してきたな、こう思うからこそ、言うのです。そういう根本的な立場で、社会保障の一環として、医療保障の一環として健康保険をやるのだというならば、さいぜん与党の野澤委員さえもが、労働者なり療養担当者なりにいろいろ批判がある、話し合ったらどうだと言ったのに対して、大臣も話し合おうと言っている。既成事実として法案を出しておいて、短刀を突きつけておいて話し合おうといっても、これは話し合えません。だから、これは男らしく撤回をして一つ話し合いましょう、こういう御答弁が、今言ったようないろいろの学問上の問題なり、七人委員会との関連なり、あるいはあなた方の出した提案理由等から考えても、これは撤回していくという一つの理論的な筋として、そういう点から通ってくると思うのです。まあ労務管理から少しずつ社会保障に進化していっているのですから。この法律は昭和二年にできた。今から三十年前にできた法律ですよ。しかも今小学校では、かたかななんというものは、一年生では習いません。ひらがなですよ。ところがこの法律はかたかなで書いておる法律です。それが現わしておるように、実に三十年の歴史を持っているこの法律は、もうここらあたりで——憲法も変り、そして新日本を作ろうというときに、社会保障の一環としてこれが一大支柱として立つ、にない手として立つならば、もっとにない手らしい、木造の土台を鉄筋コンクリートぐらいの土台にはやりかえなければならぬと思うのです。今言った第二の理由で、七人委員会との関連で、これは撤回してもいいのじゃないかという感じがするのですが、その点は大臣、どうですか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 滝井委員の健保の継続審議の撤回でございますが、実は私も、正直なところ、いろいろこれは研究いたしました。考えてもみました。そういう気持まで突き詰めて考えてみた。しかし、熟慮に熟慮を重ねまして、結局これはやはり継続審議のままお願いしよう、こういうことに相なったわけであります。今の医師会等との話し合いの問題も、従いましてその最後の結論を得るまではいろいろ私もお話も聞き、意見も述べておったのでありますが、その最後の結論を得まして、閣議もそのまま持っていこうということにきまりまして、党もむろんのことでございますが、そこで医師会、歯科医師会の幹部の方においでをいただいて、審議をしていただく事前に、そこまで至りました事情をさらにまたよく申し上げまして、そうして本日から御審議を願っている、こういう実情なんでございます。いろいろ考えた結果、この案を御審議願うことが、やはり健康保険の——特に国民健康保険も三十二年度から推し進めていくわけでございまして、こういう際にいろいろ案は考えたのでございますが、この案がやはりよろしい、こういう結論でやったわけでございます。そこは意見の分れるところでございますが、私どもといたしましてはお述べになられたようなことも十分意にとめまして考えた結果であることを御了承願いたいと思います。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 私は二つの理由を述べたんだけれども、まだ撤回せぬそうです。それならばもう一つ述べます。あなた方が国会にこの法案を出されたのは十二月四日です。衆議院でスト規制法が質疑打ち切りになってから出しました。その前までは、これがもし衆議院へも出して、そうして衆議院をぱっと通されて、衆議院にいって審議未了になったら大へんだというので、もう国会が、一週間延ばさなければ十二月の六日に終るものを、わざわざ二日前の四日に出してきたのです。ところが内閣の権威ある諮問機関として発足をしておりまする社会保障制度審議会は、医療保障に対する勧告案を内閣に十一月八日に出した。いいですか、十一月の八日に、医療保障の勧告案を日本の最高の権威である社会保障制度審議会が出して、それから一カ月たっても、その勧告案というものに一顧だに与えず——われわれからいえば国費を乱費したことになりますが、一顧だに与えず、十二月四日に健康保険法の改正案を出してきた。しかもそのものは、あとでも述べますが、修正した点は、与党が二十四国会で衆議院を通すときの修正点だけを修正をして出してきたということなんです。一体社会保障制度審議会なんというものは何のためにあるのかということなんです。制度の根本的なものを改訂をするために、それに伴って貴重な意見を内閣総理大臣に答申するためにあるのが制度審議会だと私は思うのです。ところがあなた方は根本的な制度の改訂をやろうというのに、その意見が一カ月も前に出ておるのに、それを何ら尊重してないのです。これは一体どういうことです。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 社会保障制度審議会の御勧告は、ご承知のように実施方策としまして職域保険と地域保険との二本建でするというふうなことが、大筋として勧告をされておるのでございます。それでその勧告の線に沿って私どもとしてはいろいろ検討を加えておるわけでございますが、勧告の内容としましては、御存じのように、直ちに手をつけるべきものもありますが、全部が全部すぐに手をつけるという御趣旨ではなくして、こういったふうな方向に進めというふうな意味のものが非常に多いのであります。そのうちの一つといたしまして、私どもは、国保の普及促進ということにつきましては二十二年度から一応その御趣旨に沿った予算上の措置が講じられたわけでございます。しかし被用者保険の方といたしましては、ともかくその中核になります健康保険制度が御存じのようによたよたしておりますので、医療保障制度の推進という観点から申しましても、まずこれを第一に片づけておかなければならぬ、そうしなければ被用者保険の方のいろいろな問題ということも結局基礎固めができないことになる、かような観点からいたしまして、今回の法案を提出、御審議をお願い申し上げたわけでございます。この法案の内答といたしましては、別に社会保障制度審議会の御勧告に背馳するような点は私どもはないと考えております。その方向に向ってます健保制度というものをしっかり地固めをいたしまして、さらに被用者保険の次の五人米満の零細企業の問題とか、いろいろな問題について、あの御勧告の線に沿って私どもは検討を進めて参りたい、かように考えておるわけであります。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 こまかい内容を御説明になりましたが、私はそういうこまかいことをお聞きしているのではない。しからば大体政府は制度審議会の医療保障に対する勧告案を尊重して、いっそれを具体的に政策に盛り込んでやっていくかということを聞いておる。その時期はいつですか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 審議会の勧告を尊重することにつきましては、政府といたしましても、特にまた厚生省といたしましても私は当然なことと思います。しかしこれはいろいろ事情がございます。財政上の事情もございますれば諸般の情勢も勘案していかなければならないことは私が申し上げるまでもないと思います。今回の国民健展保険を三十二年度から四カ年計画で一つやろうというようなことは、審議会の勧告を大幅に取り上げた、いかに政府がこの勧告に対して敬意を表し熱意を持って事に当っておるかという証左ではないかと私は思っております。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 そういう部分的なことでなく、やはり全段的に制度審議会の勧告をいつやるかという、これを個々の今議論になっている問題に限局してみれば、健康保険法の上に制度審議会の勧告を大体具現するのはいつなのかということです。どうしてそれを申すかといえば、先週の金曜日の小島君の質問に対して、大臣はどういう御答弁をされたかというと、当分健康保険の改正というものはやるかやらぬか。まだ当分はやりません。では健康保険の改正をやる時期は国民皆保険が実現をした後か、あるいは出る直前には健康保険の改正をやるか。それまではこの法案が通ってもやりませんということを言っている。そうしますと健康保険に関する限りは、もう社会保障制度審議会の勧告というものが具体的に法案の上に実現する時期はない。皆保険が実現した後かその前だということになれば、少くとも今から五年の後だということになってくる。そうなると、これは零細企業の問題だってまだ内閣の方針はきまっておりません。それはこの前も指摘されたように、池田大蔵大臣は、五人未満は国民皆保険に入れることが合理的だと言いました。しかし厚生大臣はいずれにするかまだ検討中でございますという答弁をしている。その点は内閣は必ずしも意見は一致をいたしておりませんが、大臣の御説明のように、健康保険が具体的に改正される次の時期は国民皆保険が実現した後かあるいはその直前だということになると、これは健康保険に関する限り日の目を見ない。そういうことでは制度審議会の委員諸君は泣きます。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 これは私の言葉が足りなかったのじゃないかと思いますが、速記にどうなっておりましたか、私はこういう意味でお答えしたつもりだったのです。足らないことがあれば今申し上げることで御了解願いたいと思います。あのとき小島委員から、健康保険の改正は他にあるかというようなお尋ねだと思ったのですが、私は今のところ考えておらない。しかし大々的な改正をどうするかということになると、今の皆保険に力を入れていくから、その皆保険の完了の前かあるいはそのあとで一体保険をどうするかということとぶつかって参りますから、そのときに根本的なことを考えなければならないだろう、こういう意味なのでございまして、今滝井委員の言われたように、五人未満の事業所を持っているものを一体どうするか。これは健康保険で政府管掌でやることがきまれば、むろんきまると同時に健康保険法の改正の問題が起ってくると思います。しかしそれは、そのときもお答え申し上げましたように、こちらに入れるともきまっておらぬ、入れぬともきまっておらぬ。それを仮定して今のようなことを申し上げれば御疑念はなかったのだろうと思いますが、そのときはなお十分研究したい、相当時間がかかるというふうに考えたものですから、ああいう答弁をしておいたわけでございまして、もちろんこれは社会の進運に伴って、また国の今後伸展する経済力から考えて、一連の社会保障として、ますます強力にりっぱに改めていくことはけっこうなことでございますから、きまれば何でもやらないという意味のお答えを申し上げたつまりはなかった。具体的に今考えておらないという意味のことを申し上げたので、根本的な職域別、地域別の問題を将来解決することが先だ、こういうことで申し上げたつもりだったのであります。さよう御了承願います。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 今大臣がみずからの言葉で言われたように、日本の皆保険を推進する上において一番重要なポイントは五人未満なのです。五人未満をどうするかということの基本的な構想がきまらぬ限りは、日本の医療保障はできません。厚生省が一番苦労しておるのは、五人未満の事業場を保険組織の中にどういう工合にして入れていくかということなのです。これは残りの三千万の国民が医療保障の組織の中に入っておらぬから国民皆保険論が出てくる。従ってその三千万の残りの国民の中で、皆保険の組織の中に入れる一番むずかしいところは五人未満です。それをどういう工合に取り扱うかによって日本の医療保障の取扱いは左でも右でも頭を振ってくるのです。その一番根本的なところがきまっておらぬのに、健康保険の根本的な改正案というものを今やる必要があるか、ないのです。しかも医療保障のこの勧告というものはそれらのものもひっくるめて第二種でおやりなさいという一つの構想を出しておる。これでいいか悪いか、まだそれまでの結論について未決定です。あるいは残りのものは国民健康保険に入れていくでしょうが、五人未満の未決定のところに皆保険組織を作るむずかしさがあるわけです。従って医療保障の勧告を尊重する時期が明白でない。しかもこれがあなた方が法案を提出されたより一カ月も前に出ておるにもかかわらず、それを具体的に吸収摂取することなくして出しておるのは——少くともこの委員会を尊重する建前からも、日本の医療保障の構想をびしっと国民に徹底せしめるという前提に立つならば、まずこの委員会のためにも将来いろいろな知識をもらわなければならない。そういうためにもやはり撤回した方がよいというのが、大臣にお願いするいま一つの、第三の理由なのです。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 滝井委員の、五人未満の事業場を持っておる職場の健康保険の問題でございますが、これはお述べになられた通り非常に大きな問題であることは、私もこの委員会でしばしば申し述べた通りでございます。そこで本会議で池田大蔵大臣が、国民皆保険の方に自分個人の考えとしては入れたい、こういう考えを持っておるという答弁をされたことも、今お述べになった通りでございます。そこで私ども厚生省といたしまして、五人未満の事業場を持っておる職域に対する健康保険をどこに入れるか、現行健康保険制度のまま持っていくか、あるいは皆保険に持っていくか、あるいは第二種保険を作るかということでございますが、今お述べになられたような非常に大きな問題であるだけに、この法案を作っておる際には、予算に間に合わなかったわけであります。私はこの問題を解決する上からいってみても、健保の改正案をお願いした方がよいということは、それを見合っておりますと、まただんだん複雑になってくるから、これはこれで一つやっていただいて、そして五人未満の事業場の保険をどうするかは、少くとも私は三十二年一ばいくらいかかる問題だと思います。どこへ入れるにいたしましても、あるいは新しい第二保険制度を作るということを考えても、三十二年度一ばいかかってほんとうに政府のまとまったいい案ができればこれは大したことだと私は思う。そこで今お述べになられたように、それでは一体国民皆保険をやるということで医療保障をやるということは違うじゃないかという御議論でございますが、これは私この前もお答え申し上げたように、政府は三十二年度からいわゆる四カ年計画をもって完了いたしたい、こういうことなんです。そこで初年度が三十二年度でございますから、初年度にはなるほど具体的な五人未満の事業場をどうするかは入っておらないが、それを三十五年度までには必ずやりとげる。しかも三十五年度にやるという意味で申し上げているのではない。今申し上げるように、三十二年度一ぼいには私はこの結論はつかめるのじゃないか。そうすれば三十三年度で法文化するとか、あるいは予算化するとか、最悪のことがあっても私は三十三年度、できなくても三十四年度にはできる。三十四年度までいかなくてもこれは解決しなければならない問題ではないか。しかも滝井委員がほんとうにおっしゃるように、医療保障をやる場合に一番私どもどこがといえば五人未満の事業場に勤務しておられる多くの労働者だと思う。これを放置しておいて国民医療制度を確立しようというようなことは、もちろん私ども考えておりません。これを何とかもっとよりよき線を一つ出したい。しかしその線を出すまで待っていて、医療保障制度を推し進めていくということはできないから、それをやるという前提で、しかも四カ年間でみな完了するという前提で、国民皆保険に踏み切ったのだ、こういう意味に一つ御了解を願いたいと思います。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 少し答弁がそれてきておりますが、私は制度審議会との関連を言っているわけなんです。その中で五人未満の問題というのは一番大きな問題で、従ってあなた方の方でこれはやりますとおっしゃっているが、今日本で一番先にやらなければならないものは何か。健康保険の赤字というものは経済情勢の変化で、もう急がなくてもいい状態になってきて、これは七人委員会でもあるいはあなた方の医療保障の五人委員会でも言うでしょう。まず最初に日本でやらなければならないのは、三千万国民にどうして医療を受けさせるかということが一番先だということは、どなたも近ごろおっしゃっている。そうしますと石橋内閣としては、今の段階では、厚生省のわずかの人数の精力を国民健康保険とか健康保険の改正に費すよりも、まず五人未満のものをどうするかということに精力を費した方が、どのくらい喜ばれるかわかりません。健康保険のごときは、患者が病気をなおすために千人も三十台以上のバスを連ねてこなければならないというこの政治の貧困、こういうことをさせる前に、まず五人未満のものと取り組んだら、だれもみな文句を言ってきません。石橋内閣万歳ですよ。そういう意味で、わざわざ制度審議会が勧告しているんだから、それから先に、この法案を撤回して取り組んだらどうでしょうか。今からぐずぐずしておれば、二カ月、三カ月かかるから、厚生省の準備はまだできません。そういう意味で私は申したのですけれども、それもどうもいかぬらしい。そこでもう一つ申します。それは大臣の方は保守党は四カ年間で皆保険をやる、こういうことをおっしゃいました。ところが今いろいろ御説明を聞いてみると、具体的な構想というものは固まっておりません。いわゆる年次計画なり医療保障の基本方向ははっきりしてないことはわかりました。大体具体的にはっきりしていません。われわれ社会党も経済五カ年計画というものを作って、その五カ年計画の中における医療保障というものはどうならなければならぬかということの一応のアウトラインは大会で決定いたしました。しかし今度は具体的に大会で決定したその骨についての肉づけというものは、やはり今からしし営々としてやっていかなければなりません。それから総評なり全労会議等においても、あるいは日経連においても、医療保障に対する意見というものを最近はいろいろ述べつつあります。それから療養担当者の団体、薬剤師なり、歯科医師会、医師会も、やはり健康保険はこういう方向に指導してくれという意見書を国民健康保険もひっくるめて出しつつあります。各界各層にわたって、この健康保険法を二十二国会以来内閣が出すことによって、それが各界各層に社会保険というものの認識の比重を高めた役割というものは私は非常に高く評価してよろしいと思います。それは非常に高く評価されました。今まで社会保険なんか鼻先であしらっておった保守党自身が、実に社会保障というものは重大だという段階にきたということだけでも大進歩だと思います。そういう点で保守党も認識を新たにした。社会党も認識を新たにしている。日経連も労働団体も療養担当者も、末端まで大体今まで認識がございませんでしたが、療養担当者も認識をし始めた。今まで社会保険なんというものに見向きもしなかった製薬企業も社会保障にいかにして協力しようかということのために委員会を作り始めました。こういうときにこの健康保険を通してしまえばその盛り上ってきておる、日本の社会保障の中核として社会保険をなそうとするその国民的意欲というものに水をかけることになる。こういう意味でその四カ年間でやることはけっこうです。大賛成です。だから私は四カ年でやることを五カ年に延ばして昭和三十二年度一カ年間だけ待ってくれと言うのです。そうしてそれらの盛り上っている各界各層の意見というものを一堂に集めようじゃないか。いわばこの赤字のために健康保険という家が火事になった、そしてみんなで水をもって消したところが、どうもその家は三十年来の古家であって、もう虫が食っておった、だから水をかけて消したところがぱたっと倒れちゃった、この倒れた半焼けのものを再建するというのではもはや貧乏な九千万の国民を支えることができないのだから、この際みんな寄ってこい、そうして協同の精神でこれをりっぱなものに建て直そうじゃないかといって、その焼け跡の広場にみんなを集める役割をこの際厚生大臣がやることが必要だと思う。もしこれをやらずにあなたがお通しになるならば、日本の社会保障というものは成り立たぬと思う。りっぱなものはできません。だから一つ神田厚生大臣、少くとも日本の社会保障史に神田博の名を残そうとするならば、この際撤回して、一つ盛り上りつつある各界各層の意見というものを、この国民健康保険の焼け跡にみんな集めてもらいたい、というのがこれを撤回してもらいたい第四の理由なんです。これは各界に盛り上ってきている。われわれ社会党も集めて下されば謙虚な気持で意見を申し上げるにやぶさかではございません。そこでこういう準備を尽しているつもりなんですが、この点率直に一つ大臣のお気持をお聞かせ願いたい。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 滝井委員の健康保険あるいは国民健康保険、いわゆる国民皆保険に関する非常な御熱意をお聞きいたしまして全く敬服するのでありますが、今お述べになられました法案なるがゆえに一つ撤回したらどうかという結論につきましては、私しばしばお答え申し上げているように、あらゆる角度から研究し、あらゆる角度から調査をいたしまして、そうしてこれが今日の段階では最善最良の案だ、こういうような考えになって御審議を願っているようなわけでございまして、今のところまことに残念でございますけれども、御意見に同意するわけには参りません。はなはだ残念でございます。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 それならば、これが最良の案だということでございますので、もう一つ私は大臣に反省してもらわなければならぬと思う。それは大臣あるいは御存じかと思いますが、二十四国会で政府の提案をした原案が通るときには修正をされました。修正をして通過をした。同時に、修正をして通過するときに、今委員長でいらっしゃる藤本先生が立ちまして、そうして修正案とともに附帯決議をつけました。その附帯決議は三点ありました。まず第一点は、この法案では七十条の三に、健康保険の事業の執行に要する経費を予算の範囲内で補助するということになっている、これではいけないということが一つ。それから二番目は、官給レセプトを出そうとしている、これは医療関係者等の意見を考慮して出しちゃいかぬ、医療の本質から考えても時期尚早だという意味のことを出している。第三番目は、現在の日本医師会なり歯科医師会なり薬剤師会というもののあり方について問題がある、これは一つ再建をする必要があるのだ。この三つの附帯決議を出した。そしてその第一の附帯決議で、今申しましたように、七十条の三というものは補助金の形になっておるから力が弱い。制度をほんとうによくしようとするならば、恒久的なものとしてはどういうことをしようと言ったかと申しますと、こういうことを言っておる。「政府は更に進んで最も近い将来において、恒久的に定率による国庫負担の制度を設け、社会保障に関する国の責務を明確にすべきである。」という附帯決議をつけた。いいですか。これが最良の案だとするならば、二十四国会で与党が修正したものは全部二十五国会に出し、継続審議をして、今国回に、神田厚生大臣のもとに審議せられるこの法案に、全部入れなくちゃならなかったはずなんだ。ところが龍を描いて眼を点じなければならないところの国庫負担というものを入れてない。これは画龍点睛を欠いておるのです。与党が天下に公約をした、附帯決議をつけたものは、政党内閣であるならば当然入れなければならぬ。しかも厚生省自身が、健康保険をやるためには一割の医療給付費がなければどうも因るといって、少くとも三十二年度の大蔵省に対する予算要求では一割を要求したはずです。みずからが大蔵町に一割を要求し、与党みずからが附帯決議をつけておきながら、しかも出してきた法案は依然として補助金であるということは、これはまた一体どうしたことですか。こういうことが政党政治のもとで白日堂々と国会をまかり通るということになれば、 政党政治というものはないのです。ここにいらっしゃる委員がみなつけられた。しかもこれは政党内閣ですよ。そして厚生省は一割要求したのですよ。これで天下の公党といえるかどうか。徒党ならいざ知らず、天下の公党です。自民党は、二大政党のもとで、少くとも政権を担当している公党です。しかもその当時の提案者みずからが今委員長になっておられる。それが堂々と白昼、補助金の形で審議せられる。他のものはみんな取り入れた。こういう点は、今後の政党内閣のあり方としても、私は考えなければならぬ点だと思うのです。この点は、大臣その当時おられませんので、私はここで強く大臣を責めようとは思いません。しかしそれだけのいきさつがあったものなんです。ところが今度それをやっていない。これは画龍点睛を欠いている。龍を描いて眼を点じなければ、この龍は天に上ることはできない。この健康保険の改正案というものは、全国民をあたたかい気持で抱くことのできる法案ではないのです。  この点は、先ほど野澤委員から三十億の問題がるる述べられましたが、問題はここにある。私はこれだけでも最良のものじゃないと思うのです。大臣がこの点からでも修正をやるんだと言えば別なんです。大臣は最上だと言うが、そうは言えないと思います。これは論理の筋が通っておる。厚生省は一割を要求いたしました。与党は定率の附帯決議をつけました。しかもあなたの提案理由は、恒久的な制度として根本的な改訂をやっている、こうおっしゃる。そうしますと、これは画龍点睛を欠くことになります。この点一つ、大臣の責任ある御答弁をいただきたい。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 前国会の審議の際に、今滝井委員がお述べになられたような非常に強い附帯決議がありましたことも承知いたしております。その他いろいろ承知いたしておりまするが、今の政治情勢と申しましょうか、今の段階にしぼってみますと、どうしても今お願いしているような案にきてしまったわけでございまして、それは一応撤回して、またそれを直して出せばいいじゃないかという御議論もあろうかと思いますが、別に実績がどうだから、一ぺん出したのは因るのだ、そういう軽い意味で申し上げているのではないのでありまして、国会に一つの案を出すことは、私ども党といたしましても、非常な煩瑣な手続というと言葉が悪いのでございますが、幾つも幾つもくぐらなければならぬ門が多いのでございまして、この国会で、しかも年度内に通過をさせていただかなければならぬということになりますと、その条件に制約を受けるわけでございまして、そういう制約下の計算を入れて、先ほど申し上げたような言葉が出たわけでございまして、そういう制約のもとにということで一つ御了解願いたいと思います。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 やはり国民生活の安定のためにこの法案が必要だとするならば、私は自民党の面子や手続にとらわれてはならぬと思うのです。ほんとうにわれわれが日本の貧しい社会保険をほんとうの意味の社会保障に進化せしめていくためには、育てあげていくためには、これはやはり蛮勇が必要なんです。そこで私は神田厚生大臣にその蛮勇を期待するがゆえに、くどいようでございますけれども、るる撤回の理由を述べておるわけなんです。今大臣はいろいろ関門が多いとおっしゃったけれども、その関門というものは私はやはり突破してもらわなければならぬと思うのです。  そこで、私は今度はもっと根本的な撤回のもう一つの理由を述べて大臣の納得が得たいと思うのです。それはいつも申し上げますように、健康保険財政の乗っかっている日本経済の基盤が非常に違ってきたということなんです。これは見のがすことはできません。今まで日本の健康保険の史上で、一年間に六十万、七十万あるいは百万近い被保険者が増加した、そんなことはちょっと最近にないのです。そういう増加があって、しかもそこに入ってくる百万の労働者というものは、今までの中小企業に雇われておる労働者の質とは違って、質が非常によくなってきた。これは事実なんです。たとえば最近三人か五人しか使っていない酒屋さんが、新制中学を卒業して酒屋の小僧さんになりたい人をみんな集めて、そうして共同で、酒屋のおやじさんと言っては語弊があるが、酒屋の店主が社長のような気持でみんな入社試験をやった。そういうように、今労働人口の増加によって健康保険の中のこの五人以上に入る質というものは非常によくなってきつつある。こういうふうに働く労働者の質が変化をし、しかも経済の基盤が神武以来の好景気で非常に変ってきておる、こういう情勢でしょう。従ってこれは、あなた方の今までの保険経済の見通しを言っても、二十九年度には四十億の赤字が出ますという説明であった。三十年には六十億の赤字が出ます、二十九年、三十年で百億の赤字が出るから健康保険法の改正をしなければならぬというのが当時の立論の根拠だった。ところがだんだん計算をやってみますと、二十九年には未払いもありました。未払いもありましたけれども、とにかく帳面づらは三千四百万の黒になった。これは保険局長から御説明をいただいた。あるいは三十年には四億二千万の黒になった。それは幾分の未払いや六十億の借入金がありました。借り入れがあったけれども、これは一般会計が支払ってくれるもので、健康保険の会計、すなわち厚生保険の特別会計の健康保険勘定には影響のないものなんです、六十億は入れてくれるものなんですから。そうして十億ずつは六年で返してくれるものなんですから、バランス・シートでは実質的には四億二千万の赤字になった。ところが三十一年度にこの法案をわれわれのところへでしたときには、六十七億の赤字であるというのが立論の根拠だった。この赤字もずいぶん変りました。ずいぶん多かったのがだんだん減ったり多くなったり、また減ったり多くなったりして、ようやく六十七億ということで落ちついて法案を出しました。ところが六十七億になりましたら、去年の十一月の九日か八日かと記憶しますが、やはり社会労働委員会で私が小林厚生大臣に、日本経済は非常に変ってきた、雇用の情勢もよくなった、赤字の大きな原因だったところの保険料の滞納未収というものがなくなって、非常によくなる状態が出てきた、一体赤字というものはどうなったんだと言ったら、初めは赤字は十二、三億になりましたと、こうおっしゃった。これは言いそこないだったらしいのです。これは自民党の中村さんも、国会討論会で赤字は十二、三億と言って、わが党の勝間田さんが私のところに問い合せに来たことがあるのです。あるいはそれがほんとうだったかどうか知りませんけれども、言い直して六十七億から十二、三億減ったと、こう言った。そうしますと、六十七億から十二、三億減れば、高く見ても赤字は五十五億程度になる。それから二十日過ぎた十一月二十九日の衆議院予算委員会で私は同志の小松君に健康保険の赤字を質問してもらった。ところが今度はどう言ったかというと、十一月九日には十二億ないし十三億の赤字が減りましたと言ったのが、わずかに二十日過ぎた十一月の二十九日には、赤字はさらに十八億ないし十九億減りました、こうなった。そうして赤字は四十七億二千万円になっちゃった。わずか二十日で六億の赤字が減っちゃった。二十日で六億の赤字が減る情勢であるとするならば、——もう臨時国会も終って二十六国会で年があけました。おそらく四十七億二千万円の赤字というものはなくなったかもしれません。しかし私はなくなったと考えていなくて、そのままでよろしいと思う。ストップしたとしてよろしい。そうしますと、法律の改正をしなくても、四十七億ぐらいの赤字ならば——会計というのは幾らあるかというと、今年は六百億をこえます。その中で国が三十億さえ入れてくれれば、予備費が十七億、あるいは十八億程度あるのですから、何も法律の改正をやらなくても、焼け跡にみんな集まって、この家をどうして鉄筋コンクリートの焼けない家にするかということになれば話はつくのです。何も改正の財政上の理由というものはなくなってきた。七人委員会がこんな膨大な報告書を出したときの財政対策は、一にかかってこれにあった。このものは火に焼いても、健康保険は隆々として残っていく形ができてきた。そうしますと、制度上の理由だ、とするならば、国民皆保険の基本的な構想を立てて、その構想の中における政府管掌健康保険のあり方をわれわれは論議しなければならぬ。私が四、五日前にここでお聞きしたが、あなたの方はまだ基本的な計画は立っていなかった。そういうよりも、まだ三十年はわからなかった、基本的な計画がなかった、あるいは医療保障の進むべき基本方針もなかった。そうだとすれば、財政上の理由がなくなったとするならば、経済が変化したというこの大きな理由、これは非常に大きな理由なんですよ。これによって私は大臣に考え直してもらいたいと言うのです。これもやはり筋が通っていると思う。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 経済界の好転に伴う雇用の増大によって、被保険者の保険料が増加しておる。そこで赤字が減っておるから国庫の三十億だけ導入すればほかはいいじゃないかというお尋ねのようでありましたが、実は私もそういうようなことにならないかと思って調べたのです。これはそこだけをしぼってお答えするわけですが、どうも私の調べたのにはそういうことにはならないようです。特に今非常に雇用の増大が質がいいのがふえているのだという観点のようでございますが、私はこの点は少し考えが違っております。景気の好転に伴ってだんだん上の方から雇用をとっていく関係上、下の方では無理してとっているんじゃないかという見方をしております。しかしその議論はしばらくおくとして、健康保険会計の増加も伴って参りますが、なお来年度において支出が相当ふえるのではないかという計算を当局ではしておるようでございます。大筋としては、滝井委員のお述べになられたような気持は私にもあるのですが、事実上の計算をさせますと、どうも必ずしもそういうことには相ならないというのが実情のようでございます。これは政府委員から詳細答弁させることにいたします。  そこで根本に入るわけでございますが、景気が好転したから一つ国庫だけでどらかといっても、これはやはり法律が改正されなければ、国庫の金がこっちへ来ないわけです。法律なくして国の金を健康保険財政に導入することはできませんから、そこの問題は先ほども野澤委員にお答えした通りであります。私どもといたしましては、もちろんこれは健康保険財政が景気不景気に左右されることもあろうかと思いますが、だんだん世の中が進んで参りまして、医療費というものは、やはり文化水準の進むに従って進むと私は見ておる。そこでそういうことをも計算に入れますと、今御審議願っております案で通していただく、そしてこれは改正の理由にも述べたように、健康保険の他の分を合わせて、一つにまとめて御審議願って改正をお願いしたい、こういうわけで取り運んでおるようなわけでございます。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 とにかく経済的な基盤が非常に変って、保険経済の財政が著しく変化をしてきた、それは好転の方向に変化してきたことは事実なんです。これはだれが何といっても事実であることは間違いありません。そうしますと、もう一つ私は大臣にお尋ねしたいのは、一体大臣、今出しておる法律はいつから実施のおつもりでありますか。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 これは附則に入っておったと思いましたが、一月一日ということになっております。これは一つ法案審議の際適当に御修正願う。要するに年度内にお願いしたいということでございますから、その通過の際適当な年度内の日を選んで、支障のないように御修正願いたい。これはお願いいたします。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 一月一日実施の法律でございます。そうしますと、これは幾らフル・スピードでやったところで、この法案が二月中に通らないことは確実なんです。今日は二月の半ばを過ぎておりまして、あと十日くらいしかありませんから、二月中に通らぬことは確実です。そうしますと、政府がこの法案を出すときは一月一日実施を目標にしておる。もうこれは昨年中に通しておかなければならない法律です。それが通らなかった。そうしますとその結果どういう結果が出てくるかということなんです。いかなる結果が出ますか。

高田正巳厚生事務官(保険局長)

○高田(正)政府委員 滝井先生の御質問の御趣旨は、おそらく一月一日から施行を予定しておったから、それに盛られておる財政対策等が実施されないから、それだけ穴があくだろう、こういう御質問だろうと思います。その金額は本年度の財政に影響いたしますものは三億ばかりだと思います。私どもが保険財政を推計いたしました当時とその後収入面で十月の例の定時改定が一斉に行われましたそれらの新しい資料をとりました上においての推計と、だいぶこれが好転をいたしております。さような関係で、本年度としましては何とかやっていけると思うのでありますが、しかし一月一日が過ぎて参りましたので、これが本年度中に影響いたしまするものは、金額として三億ということに相なっております。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 大臣、今お聞きのように、この健康保険の会計は二月で終ってしまうのです。そうしますと、一部負担が二カ月で一億二千万円、それから標準報酬が一億五千万円、その他いろいろと家族の制限をしたり、継続給付の六カ月を一年にしたりするのが五千万円、三億五千万円です。そうしますと、この法律が、二月を越えて三月の終りに通ったって、財政効果は何もないのです。通って役に立つのは何かというと三十億だけなんです。昭和三十一年度に関する限りは、かねや太鼓で大騒ぎをして、大火事になったといって火を消さなければならないという、その大騒ぎをした大火事というものには何らこの法律は役に立たずして、もはや鎮火したということです。だから三十億だけとにかくもらえば、この三十年度も三十一年度もどうにかやっていけるということなんです。ということは今言ったように、かねや太鼓をたたいた三十一年度でさえも、とにかく国庫から三十億入れば、これはトントン大臣じゃないけれども、トントンにいくのです。そうしますと、三十二年度にあなた方が五十億ないし六十億を要求しておれば、これは法律を改正しなければならぬという気もします。しかしあなた方は予算を三十億しか要求していない。これはまた大きな撤回の理由になる。従って政府が三十億だけ出していただけるならば、本年度はもう予算が通っておりますから、三十億だけ出す方法がございます。厚生保険特別会計だけいじったらいいのです。社会党はこれを出してあげますから、厚生保険特別会計だけいじって、合かぎで金庫にしまっておる三十億を取り出します。そうして三十二年度も同時にそこへもう一項を加えて、三十一年度と三十二年度については、国は財政再建のために三十億を厚生保険特別会計に一般会計から補助することができると書けば、三十一年度と三十二年度は三十億でりっぱに手が打てる。そうしてその手が打てたところで、大臣はこの嵐の中の健康保険で歴史的人物になってもらわなければならないそうして令部を焼け跡に集めて、一つさいぜんも言ったように、三十二年度は、五人未満を入れるならば一年間かかるから、この一カ年間に一つ野党も与党もこい、労働者も日経連もきてくれ、ここで神田が中心になって日本の社会保障を建て直すのだという、これを私はやってもらいたいと思うのです。これは今言ったように理路整然としていると私は自負している。だから今の一月一日が実施であるという法案は致命的な欠陥を持っているのです。この致命的な欠陥を持っているということは、結局三十億しか財政効果がないということです。予算はすでに通っております。法律がなくても三十億あれば今年は問題が片づくというこの現実は、だれが何と言おうと局長がどう答弁しようと無視することはできない。そこには健康保険法を改正しなければならない何らの理由もない。すでに三十一年は光陰矢のごとく過ぎ去ろうとしている。この点何か大臣、反駁するものがあれば反駁しておいて下さい。

神田博自由民主党厚生大臣

○神田国務大臣 いろいろお述べになりましたことは、私どもこの法案を御審議願う過程において考えたことでございます。考え考え、考え尽してお願いしておることをまた御了承願いたいと思います。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 私は神田厚生大臣が日本の社会保障史における歴史的な人物になっていただくことを実は念願して、まず第一に、提案理由が前とはだんだん違ってきているということ、それから七人委員会の勧告と提案との関連というものに問題があるということ、それから制度審議会の勧告が一カ月も前に出ておるのに、それが取り入れられていないということ、国民皆保険論というものが新しい構想をもって各界、各党の人々によって唱えられているときに、政府が謙虚な気持でそれに耳をかしてもらいたいということ、それから定額国庫負担あるいは一割の予算要求というものを現実に厚生省はやり、与党もそれを主張しておったという点、日本経済が根本的に変ったという点、しかもこの法案が一月一日実施で、財政上の効果は全くなくなっているという点、こういう私は七つぐらいな点を御指摘を申し上げ、同時に厚生保険特別会計だけ改正すれば健康保険は当らなくてもよろしい、そして三十二年度一年間は政治休戦をやりながら、与党も野党も各界、各層の意見を聞きながら、根本的な健康保険の改正をやろうじゃないか、それが一番円満にいく方法だ、それが日本の社会保障を進展せしめる方法だ、こういう点を御指摘して、神田厚生大臣に、もう一回それらの七つの点を十分御勘案になって、再考の機会をお与えしたいと思います。これ以上私は言いたくありません。一つ再考していただきたいと思います。再考して撤回していただくならば、今後私の質問は一切やりません。(笑声)しかしやるとすれば、なお続けるとすれば、それぞれ各論に入って参りたい、こう思います。

藤本捨助自由民主党

○藤本委員長 次回は明十九日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十六分散会

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