外務委員会 第22号
- 発言数
- 197 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1957/05/02
会議録
○野田委員長 これより会議を開きます。 国際情勢等に関する件について質疑を許します。松本七郎君。
○松本(七)委員 だいぶいろいろ御質問申し上げることがたまっているのですが、最初に、先般来参議院あるいは本委員会で他の議員から質問されたことに対する御答弁の中で、なおもう少しはっきりさせておく必要のあることが二、三ございますので、それから最初にお伺いしたいと思います。 これはだいぶ以前の参議院の外務委員会だったと思いますが、御答弁の中で、南千島、特に国後、択捉をかりに日ソの間で決定するにしても、それはサンフランシスコ条約と関係があるので、その関係国と話し合わなければならない、こういう御答弁をされておるのです。というよりも、もう少し法律的にサンフランシスコ条約と関係があるような御答弁だったと思うのですが、以前の電光外務大臣の御答弁は、この国後、択捉の決定は桑港条約とは関係ない、それと無関係に、法律的に国後、択捉を日本独自の立場でソ連との間に決定することはできる、こういう御答弁だった。けれども、政治的考慮で当然桑港条約関係岩国と事前に話し合うのだ、こういう御答弁だったのですが、岸外務大臣のお考えは、そういう意味で関係があると言われたのか、あるいは法律的にもこの決定は桑港条約と即関係があるから、独自では決定できない、こういう御意見なのか、その点が不明確なので、はっきりしていただきたいと思います。
○岸国務大臣 松木委員の今の御質問でありますが、私は、いろいろなところでいろいろな質問がありますので、お答えしておりますけれども、今御質問になったような意味で私は南千島のことは考えておりません。すなわち、桑港条約に法律的に関係あるということは、私実は頭に全然ないのですから、そういうふうな意味でお答えをしたことはないように私は記憶いたしております。すなわち、択捉、国後については、わが方はこれは固有領土であるという主張をずっと持っておりまして、すなわちサンフランシスコ条約においてわれわれが主権を放棄した千島のうちには入らないという解釈をとっております。この点につきましては、国会において、あの最初にたしか外務省の意見として、当時の条約局長が放棄した千島の中へ南千島も入るというふうな解釈をした答弁をしたことがあるように思いますけれども、その後外務省としてはこの問題を研究いたしまして、いわゆる放棄した千島のうちには南千島は入ってない、従って日本の固有領土であるという主張をずっと一貫していたしておりまして、従って重光前外相が今御引用になりましたような意味において国会でも答弁をいたしておりますし、またソ連との話し合いにおきましても、そういう見解に基いて話し合いをいたしたのでありまして、従って私は法律的に見てサンフランシスコ条約にこの択捉、国後は関係ないという解釈をいたしております。
○松本(七)委員 私の聞きたいのは、政府の主張は一貫して南千島は含まないのだから、日本の本来の領土だ、こういう主張をしているのです。それはわかっているわけです。けれども、その主張はソ連側は認めてないのですから、そこに対立点があるわけです。ですからもしもこれを最終的な決定、つまり平和条約を結ぶためにはいつかはその決定をしなければならなくなるわけですから、そうすると、もとから対立しておった問題にもう一ぺん返ってくるわけですね。その場合に日本が今までの主張を放棄せざるを得なくなったとしますね。そして日ソ間でこの処置をやろうとする場合に、本来自分の領土だからという主張以外に、サンフランシスコ条約の建前から、このことは日ソ間だけでは決定できないからという法理論を持ち出すかどうかということなのです。
○岸国務大臣 私は南千島はサンフランシスコ条約でわれわれが放棄した何に入ってない、本来日本の固有の領土であるという主張をいたしております以上は、ソ連側にも、あらゆる国々にも同じ主張でいくべきものである。従ってソ連に対してわれわれの主張を曲げるというような場合がもしありとすればどうだという御質問だと思うのですが、その場合には、われわれはその場合に限ってサンフランシスコ条約を引用するということは、論理が一貫しないわけでありますからこれは当然われわれはわれわれの主張としてあくまでも固有の領土として何するし、われわれの領土に復帰することを強く主張します。今私はそれを譲る意思は毛頭持っておりませんから、今御設例になったような場合は実は考えておりませんけれども、論理的な必然として、その場合においては、サンフランシスコ条約の加盟国の意見を聞かなければ日本だけではできないというような、急にそういう主張はできない、こう思っております。
○松本(七)委員 それから今度は、近く渡米されるわけでありますけれども、その渡米されるに当って、一体何を話してこられるかという点について、今までの御答弁で、基本的な全般的ないろいろな問題について腹蔵のない意見を交換するのだ、こういうところまではわかっておるのですけれども、私どもの立場からすると、もう少しいろいろな具体的な問題についての政府の明確な態度を決定して行かれる必要があるだろうし、その態度というものを、岸首相の渡米に際して、この機会に国民の前に明確にする時期がきていると思います。それらの問題について、少し具体的に御質問したいと思うのですが、第一には今度渡米される際に、沖縄の施政権の問題については話をされるおつもりでしょうか。
○岸国務大臣 これはすでに国会の議決にもございますし、またわれわれの方からこの国会の議決に基きまして、日本側の主張として向うにも申し入れがしてあることでありますから、当然そういう問題についても腹蔵のない意見を交換することになると考えております。
○松本(七)委員 その場合に、だいぶ前のこの委員会で、岡田委員からこの返還要求についての日本側にきわめて有利な法理論を述べられて、意見をただされた、そのときにまだ政府側としてはまとまった意見がないので、検討をしてから返事したいということで、それからその後の委員会において岸外相から御答弁がございまして、先般の岡田委員の法理論は、そのまま政府としては採用しない、政府当局としては別に考えがある、こういうことだったのです。そこまでで切れているわけなので、私どもとしては岡田委員のあのときに展開した法理論というものは、日本が沖縄の返還をアメリカに要求するには、きわめて有力な理論だと思うのです。岸首相はこれをそのまま採用はしない、ほかに研究しておる、こう言われておる以上は、さらにもっと日本に有利な法理論が用意されておるのだろうと思うのですが、いかような論理をもってこれに対抗されようとしておるのか、その内容を御説明願いたいと思います。
○岸国務大臣 条約の解釈につきまして、岡田委員の法理論につきましては、私どもも外務省内におきまして、いろいろと研究をしてみました。岡田委員の御議論も大いに傾聴すべき御議論だと実は私も考えております。しかしこの沖縄の施政権、いわゆるステータスに関する問題というものは、ただ単に条約の解釈がこうだからこうというだけでなくして、もう少し両国の考え方の根本に関する問題だと私は思っております。従いましてこの問題を考え、話し合う場合におきましては、私は日本の国民感情なりあるいはまたこういう条約ができ、ああいう状態になった当時の事情や、今後の日米関係から見て、どういうことが望ましい形であり、どういうことが最も妥当な形であるかというような点に関して、あらゆる面からわれわれの考えを率直に述べて、そうして向うの見解をただすということをしてみたいと思います。ただいわゆる条約の解釈とし、法律論の展開として、どういう法律論を展開することが適当であるかという問題は、今お話のように、日本にとって最も有利なような解釈を立てるということも、これは条約やあるいは国際法の考え方からすると、そういうことはやはり私は非常に大きなモーティブになると思うのです。法律解釈や条約解釈の上におきましてはなると思いますが、これは従来の私どものずっととってきた解釈といいますか、両国の間にはっきりした法律解釈論を戦わしてある結論を得たというのではありませんけれども、大体において両国の間において承認し合ってきたような考え方をやはりとることが妥当じゃないかというふうに私は考えておるのであります。しかし、せんだっての岡田委員の御解釈もございますから、こういう有力なる考え方もあるという意味において、十分一つ法律論としても運用することにいたしたい、それらは話し合いの場合のいろいろな——決して単純なかけ引きということじゃありませんが、話の進め方について、そういう問題も一つ頭に置いて話し合いをいたしたい、かように考えます。
○松本(七)委員 ある法理論の解釈を採用するかしないか、結局は国がとろうとしておる外交方針の基本がきまって、そしてその基本の外交方針を完遂するのに役に立つかどうかという判断でこれは取捨選択しなければならぬ問題だと思うのです。そういう点からすると、おそらく岸さん渡米されて、この施政権の返還その他について話し合われる場合に、アメリカ側も施政権の返還については、私はある程度話に乗ってくる情勢にあるのじゃないかと思うのです。それは最近のアメリカの国務省のいろいろな議論を見てみますと、日本の国内でも沖縄問題というのは非常に世論が沸騰してきておるし、世界の世論においても必ずしもこの施政権をアメリカが握っておるということが有利でないのじゃないかという考え方が、アメリカの国内ですでに起っておるわけです。その考え方というのは、こういう情勢になった場合には、日米間の安全保障条約に基いてこれを基地として使うことが継続できるならば、むしろ施政権は返した方が有利に効果的に処置ができるのじゃないかという意見がだんだん有力になりつつある。そういう点から考えますと、私はここで一つ岸さんにお伺いしたいのです。 沖縄問題は日米両国間で取りきめてやるがいいか、あるいはそれよりも国連に提訴するなり国連という国際的な舞台で、沖縄ばかりではない基地問題という立場から、これを討議の対象にするのがいいかという問題がここに出てくると思う。私どもの考えからすれば、今言うような、むしろ返還して基地として使えば、その方が今の情勢に合っているのではないかというような意見が、アメリカ国内に出てきておる最近の情勢を考えてみますと、私はむしろ日米両国間でこういうことを取りきめて、施政権は返還されたが基地問題は解決しないというような状態に追い込むよりも、これを国際連合の問題にして、そして基地問題という立場から、広く国際的な世論に訴えるという努力がなさるべきではなかろうかと思うのでございますが、この点についてのお考えを伺いたい。
○岸国務大臣 私はこの問題は、日米間の話し合いによって適当な妥結を見るように努力することが適当であると考えております。今日の段階において、直ちに国際的世論に訴えてこれをなにしなければならないという方法をとることは、日本のこの問題を処理していく態度としては適当でない、従ってあくまでも日米間において話し合って、妥当な方向にこれを解決していくという努力をいたしたい、かように考えております。
○松本(七)委員 その問題と関連して、アメリカの国内では日本の基地問題がやかましければ、基地は沖縄に集中して——それは武器の急激な進歩等から考えても、やむを得なければそういう方法をとっても、十分アメリカとしての目的は達成できるという観点からだろうと思うのですが、日本の基地を沖縄に集中しようというような考え方もぼつぼつ出てきておるようですが、日本の国内にもそういう意見が出ておるのです。この点については何かお考えはございますか。
○岸国務大臣 日米の安保条約体制というもの、あるいは行政協定というようなものにつきまして、国民の間にいろいろな批判があり、意見があるということも、これはすでにいろいろな形において発表をされておるのでありますが、私自身の考えとしては、やはり日本の今日の段階における安全保障というものの体制の根本は、これを廃棄すべきではなくして、それをできるだけ合理化するということが望ましいものである、こういう考えを私は持っております。従いまして今直ちに日本の国内における基地をやめて、そして沖縄にこれを集中するということにつきましては、私はそういう考えに今は賛成をいたしません。
○松本(七)委員 御答弁を聞いておりますと、大体政府のやろうとしておる方向というものはわかるような気がするのですが、私どもとしてはこの沖縄の問題にしろあるいは台湾の問題にしろ、すべてこれは切り離せないので、どうしてもアメリカの今依然として継続しておる力によって平和を保っていこうとするこのやり方を不足する立場なのですから、早い話が日米間の安全保障条約というのは完全な集団的な安全保障条約とは認められない、これは一種の軍事同盟なんだ。そういうふうなものを完全な集団保障の体制に切りかえる努力こそ、日本の防衛という立場から最も今切実な問題である、こういうふうな観点に立っておるわけなのです。ですからそこはおそらく防衛庁長官の考えも違うだろうと思うのですが、今の日米間の安保条約をもとにして日本の防衛というものを考えるという考え方が依然として堅持されるのだろうと思いますが、この点防衛庁長官から御答弁をお願いしたい。
○小滝国務大臣 日本の防衛を日本だけでやることができるということは望ましいのでありますけれども、現在の実情から申しますと、ソ連や米国といえども結局友好国との協力関係によって初めて安全を保障するということを期待しておる状態でありますので、日本の現在置かれておる状態から考えまして、また国際連合によるところの安全保障の機構が十分確立しておらないという現状からいたしまして、日本はもちろん国力の許す限度においてしかも限られたる最小限度の自衛力を打つという努力をいたしますが、緊急の際におきましてはやはりこうした日米共同防衛の体制にたよらざるを得ない、こうした状況に置かれておると考えております。
○松本(七)委員 今防衛庁長官は自力で防衛するのが望ましいけれどもと言われる。これは政府あるいは自民党の基本的な態度で、それをどうこう言うわけじゃないのですけれども、私どもはそのこと自体はもう現在の国際情勢から考えて、必ずしも正しくないと思う。今の防衛庁長官のお話では、国力が足りないからやむなく共同防衛でやるのだということなのですけれども、両ブロックに分れておる場合に、両ブロックに属する両陣営といいますか、全部の国が集まった完全な集団安全保障体制に持っていく努力を、幾ら国力が充実していっても、これから日本はしなければならぬというのが、私どもの立場なのであります。そういう立場から御質問するわけなのですけれども、私どもはそういうふうな方向に持っていくためには、やはり力関係を少し変えていかなければならない。今のアメリカの力による政策を基本的に改めさせる努力を日本がすることが、結局は完全な集団安全保障体制に到達する道だということから、中国の問題にしろあるいは沖縄の問題にしろ取り組んでおるわけなのであります。最近日本社会党の訪中使節団が帰ってきまして、そういう基本的な立場からいろいろな話をしてきたわけですが、特に自民党の方ではずいぶんこれに故意にけちをつけたような評論、批判等が起っておるのです。岸さんはすでに淺沼団長以下代表団とも正式に会談されて、いろいろ詳細にその報告を聞いておられるわけですけれども、自民党の一部で非難しておるような、ああいった態度が妥当なものだとお考えでしょうかどうでしょうか。
○岸国務大臣 御質問の要旨がちょっと私にはっきりしないところがあるのですが、ただ態度がどうだとかこうだとかいうこと、これはおのおの外交政策、ことに中共に対する根本的な考え方に社会党とわれわれの自民党とは異にしておるところがあるのであります。私どもは現在の段階においてまだ中共を正式に承認し、これとの間に正式な外交関係を開く段階にきておらないと考えております。その点に対して過般の社会党の訪中団の考え方、これは社会党の考え方でありましょうが、それはもうその段階に来ているから、できるだけ早くそういう処置をとるべきだという見解を明らかにされたのであります。これは私どもの考えとは違う。また安全保障について日米中ソという四カ国を入れた集団防衛の形を作るべきだということが言われておりますけれども、今日の国際情勢は、松本委員もよく御承知でありますが、もしもそういうことができるような国際情勢であれば、実はもう世界に一つの戦争の危険というものはなくなるときである。不幸にして今力によるところの平和維持の方策は、実はアメリカだけがとっているのじゃないので、御承知の通りソ連もとっている。両方がとり合っているところに問題があって、そしてそれを一緒に網羅した何がすぐにもできるというような考え方は、国際の現状から離れておる。もちろん今私は国際連合を中心とした集団防衛の形ができることが望ましいと言っております。またそれにわれわれは努力すべきでありますけれども、それができるときと、今の社会党がお話しになっておる、四つのものが中心となって安全保障ができるということは、これは形は違うようでありますけれども、内容は同じである。これは決して東アだけの情勢からくるのではなしに、世界全体の大勢からくることであって、従ってそういうことが実現可能であるがごとく考えることは、われわれはとらないというような見解を明らかにしたのでありまして、私はそういう態度全体が正しいか妥当であるかどうかというよりも、それに盛られておる意見について今一、二の点をあげたわけでありますけれども、これは私どもとしては、ちょうど松本委員が属せられる社会党が一貫して一つの外交政策としてなにを持っておいでになると同じように、われわれは違った立場、見解から今申したような立場をとっておるのであります。また私どもが国会の多数の支持を得て政局に当っております以上、われわれは責任を持ってわれわれの考えておるところのものを遂行していくという態度を堅持しておるということを、私は明らかにしたものであると思うのでありまして、これは民主主義の二大政党の立場から言えば、当然十分にその考えを国民の前に明らかにして、国民に批判を求めるということは、私はむしろ正しい態度であろう、こう思っております。
○松本(七)委員 ここで今の問題についての意見の相違を長く議論するつもりはないし、そういう時間もございませんが、相当考え方が基本的に違っているわけですね。そこで一部では、国論を分裂させるものだ、あるいは二つの日本を持ち込むものだとかいう故意の誹謗めいた批判が流れるわけなのですけれども、こういう大事な問題について意見が違うのはやむを得ないことだ。何も好んで国論を二分しようと思ってそういうことをやっておるわけではないのであります。できればお互いの意見で国論が統一できることをお互いが希望しておるのだろうと思います。ですからその意見が二つあるということ自体が問題ではなしに、そういう相当基本的に違った意見がある場合に、政府はこれにどう対処をするかというところにこれからの問題があるのだろうと思います。ただ、お前の方とおれの方は考えが違う、選挙によって多数をとった、その責任においておれの政策をやるのだ、これではこういう大事な問題の場合には済まないものがある。やはり少数ながら、いやしくも公党としての一つの基本的な意見を持ち、態度をとって中国にまで臨んできたのであります。その社会党だけがそういう態度をとっておるかというと、そうではない。たとえばインドのネール首相なんかも、中華人民共和国の力を無視しては今後やっていけないのだということを公けの演説で言っておる。おそらく今度岸首相はインドに行かれたらネール首相と会われるでありましょう。会われたならば必ずこの点に話がくるだろうと思います。そういう世界の情勢のときに、少くとも公党である社会党が、まだ外交権はなくても、向うに行って公けにとにかく話し合ってきたのですから、そういう機会を一つつかんで、政府としても十分にこれに耳を傾けるという態度が必要じゃないかと私は思う。経済外交のために、いろいろ経済専門家を外務省の顧問その他にして外務大臣の諮問機関を作られておるようでありますけれども、もちろんそういうことも必要でしょう。しかし今一番必要なのは、このような大事な時期に際会したときに、野党のそういった基本的な考え方を、もう少しよく理解する態度で政府は臨まれることが必要だと田ふうのですが、何かそういう懇談する機関を特に総理としてはお作りになる御意思はございませんでしょうか。
○岸国務大臣 私は二大政党論者で、党人としては微力ではありましたけれども、そういう方向に今日まで努力をしてきておるものであります。しかし今日の二大政党の現状がこれでいいかというと、私は決して望ましい状態にあるとは思いません。われわれの与党であるところのわが自民党においても、十分反省すべきことがあると同時に、社会党の方面に対しましても、反省してもらわなければならぬことも私は少くないと思うのであります。これは両方が謙虚な気持で外交問題その他の大きな問題について十分話し合いの場を多くし、できるだけその現実に即してものを解決していくという態度を、とらなければならぬことは言うを待たないのであります。私は常にそういう態度で、実は野党の御意見に対しても傾聴をいたしておるつもりでございます。また野党の諸君にもまたわれわれの考えに対して十分に考慮を求めておるのでありまして、たとえば憲法調査会のごときにおきましても、私はほんとうに謙虚な気持で、また日本の将来のために、あの法律の調査会に対しては反対の御議論のあることはよく承知しておりますが、社会党の方の御参加を幾たびか懇請しておるということも、私は二大政党としてこういう憲法問題であるとか外交問題であるとかという大きな問題については、立場が違い主張が違っておっても、それをできるだけフェアな——公正な方法において国民の前に明らかにし、両方が歩み寄ることができるものはできるだけ歩み寄っていくということによって、両方の政党が発達していくことを望んでおるのであります。そういう意味におきまして外交問題等につきましても、私は結論として社会党の今の中共に対するお考えとは考えを異にいたしておりますが、しかしそういう考え方を一がいにけしからぬ考え方だとか、一顧の価値ないものだとして考えるということは、私は少くともいたしておらないつもりでございます。
○松本(七)委員 私どもは今の政府の中国に対するきわめて消極的な態度では非常に危険があると思うので、この点を非常に強調しておるわけなのです。いつでしたか、マッカーサー大使は、これは名前は申しませんが、自民党のそれこそ最高有力の幹部の一人で前閣僚の一人ですが、これを訪問されたときに、中国の問題が話題に出た、それで日本としてはどうしても中国とはもっと接近しなければならない、日本の利益からそういうふうに必死なんだ、この点をもう少しアメリカも理解してほしいということを言ったところが、テーブルをたたいて、もしも日本が中国と接近し、そのために台湾が、いわゆる解放ですね、中華人民共和国のもとに統一されることになったならば、アメリカとしては戦争ができなくなる、こういうことまで言って台湾の戦略地的な立場からの重要性というものを強調した、そのために自民党の有力者はあぜんとして、アメリカは戦争という立場からものを考えているのだということを述懐しておったのです。これはもうほんの一例にすぎないのです。しかしアメリカの現在の政策に日本が対処するには、やはりアメリカの今の戦争を中心にした考え方を、政策を変えさせることが、私は日本の当面の急務だろうと思う。そのために中国問題ということが大きな問題として浮ぶわけであります。対共産圏外交というものがここに大きな比重を持っておるわけなのです。そういう観点からしますと、これは議論をすれば切りがございませんけれども、中国問題については謙虚な態度で社会党の言い分をもう少し聞き、そして方針についても基本的に考え直すということが必要になってくるだろう、こういう見通しのもとに、これは今後いろいろな情勢の進展につれて内閣の外交方針が明らかになればなるほど、この問題が中心課題になるだろうと思いますから、今後も折があれば再度査問をしたいと思うわけでございます。 時間も参りましたので少し簡単に、御答弁を求めるために質問条項をあげておきたいと思います。私どもから見ればそういう意味で、いわゆるソ連とは国交を回復したけれども、これに対するあとの対策というものが非常に消極的だという考えを持っておるのです。そういう意味でソ連との文化協定あるいは航空協定——航空協定の話も火はスイスとの航空協定の締結の際に私は質問した。そのときにあまり日本の業者から希望がないからというような御答弁だったのですが、希望がないどころじゃない。日本航空ではすみやかにソビエトとの航空協定を結んで、北極圏ではなしに別な航路でモスクワ・日本間の航空路を早く開きたいという非常に強い希望を持っておるのです。ですからこういう点ももっとどしどし実行すべきだと思うのです。そういう点についてどのようなお考えを持っておられるか。 それから中国の問題では社会党の使節団が帰っていろいろな具体的な問題も御報告したはずです。郵政協定の問題だとかあるいは気象協定の問題、そういうものを政府間の協定にすべきだという意見を申し上げたはずなのですが、その中で何か直ちに政府として取り上げる気持のあるものをあげていただきたい。特に私どもは地元の声として聞くのは、長崎—上海間の航路を再開すべきだという声が、これは両国から起っておるのですが、そういう当面の問題についてどう対処されるおつもりかという点でございます。 それから米国に行かれたときの一つの問題として、日本に駐留しているアメリカの軍隊が出動する場合に、今は無制限になっておるわけですが、せめて国連の決定をその条件にするとか何らかの制限をここに付するという努力を暫定措置としてすべきじゃないか。もう原子兵器の問題がドイツでは現実の問題になってしまっておるような状態なのですから、ただ日本が閣議でもってこれの持ち込みは許さないというようなことを決定しておっても、これはもう問題にならないと思う。従ってやはり具体的に、少しずつ危険を防止するためには国連の決定によって出動ずるというような申し合せ、取りきめを日米の同ですみやかにやっておくというようなことが、危険防止のためには暫定的にも必要ではないかと思うのです。そういう点について御意見を伺っておきたい。 それから東南アジアに行かれるわけでございますけれども、随行の方がこの間新聞に発表されておりましたが、私どもかねがねこれは自民党の中のこと、あるいは政府のことにとやかく干渉するつもりはございませんけれども、東南アジアの専門家がずいぶんたくさんおられるにかかわらず、専門家らしい人は随行員の中に加わっておらないようでございますが、これはどういう観点で選考をされたのか。もし選考事情、御方針を御説明願えるなら賄いたいと思います。 それから今の駐留軍の出動の問題と関連して、日本の防衛の地理的範囲は一体どこまでなのかということなのです。これはかねがねお伺いしようと思っておったのですが、岡崎国務大臣が第十九回の国会でこういう答弁をしておるのです。「日本におけるアメリカ駐留軍の施設及び区域は、日本の防衛のために設置しておるものであり、同時に日本における国連協力の趣旨から、朝鮮における国連軍の活動に、ついでに資しておるだけでありまして、それ以外の目的に使われるものではないのであります。アメリカの戦略方式がどうであろうとも、日本に関する限りは、日本における施設、区域、アメリカ駐留軍の行動は、日本の安全を維持する、これに限定されておるのであります。こういうことを言われておる。これは昭和二十九年三月十七日の外務委員会内閣委員会農林委員会通商産業委員会連合審査会でそういう答弁をされておるのです。また岸外務大臣はだいぶ前に外務委員会で私の質問に対する御答弁で、極東の安全及び平和のために出動するという規定によって駐留軍はいざというときにはやれるのだ、こういう御答弁があったのですが、そういう場合に日本防衛という観点からすれば、一体その地理的範囲はどういうふうなことになるのかということが一つ、それから万一日本防衛に出動した場合の最高決定権者は一体だれになるのか。このことを聞くのは、そういう場合はもう軍隊ですから一刻を争う。すぐそういう事実はできてしまうわけです。特に最近中東にああいうアイゼンハワー・ドクトリンのようなものができて、国連の承諾はあとでもいい、とにかくいざというときには出るのだというような情勢になってきた場合に、おそらく何か事が起れば軍事行動が先に起ってしまうでしょう。そういうときに一体この日本防衛という立場からアメリカ駐留軍が出動した場合の最高決定権者というのはだれかということが問題になってくるわけでございます。そのほかまだ問題はたくさんございますが、これはまたの機会に譲りまして、大体以上の点だけ御答弁をお願いしておきたいと思います。
○岸国務大臣 私はソ連に対する外交方針としては、国交正常化によって両国の友好関係や親善関係を増進することを積み重ねていくべきだということを申したわけであります。従って文化協定や航空協定やあるいは貿易協定というようなものも、適当な時期において適当にこれを考えていくということは当然であろうと思うし、絶対にこれを拒否するというような考え方はございません。しかし文化協定にいたしましても、航空協定にいたしましても、そういったものが正式に議題となり、そして内容的に十分検討してきめるべきものであって、抽象的にこういうものは一切やらぬとか、これはすぐやるとかいうふうに考えるべきものじゃないと思います。私は日ソの国交は結局は平和条約を締結しなければならない、先ほども御質問がありました領土問題という非常なむずかしい問題を解決しなければ平和条約はできないのでありまして、それにはまずこの共同宣言に盛られておるようないろいろな両者の友好親善関係を進めるに必要なことをやっていって、そうして両国の理解を深め、また日本国民の——これは全くほかの問題ではずいぶん対ソの関係等において意見が両党の間に違っておりますけれども、この国後、択捉を日本固有の領土として日本に復帰させなければいかぬという考えは、これは党派のいかんを問わず、全国民の意見が一致している問題でありまして、こういう事情を十分にソ連側が理解し、それに対して十分な検討と理解ができ上らないと、なかなかの形おいてすぐ締結してもできない、こういうような見地から今お話の点については、それぞれ適当な方法で適当な段階になればやる、今すぐどれを取り上げてやるという段階ではないと思います。 それから中共訪問団がお帰りになりましていろいろなお話がございました。貿易増進のことに関する具体的なお話等につきましては、私どもこれについて十分考慮しなければならぬ問題も少くなかったと思いますが、今おあげになりました気象協定やあるいは郵政協定等を政府間の協定にしろというお話につきましては、気象についてはすでに日本の気象台の責任者が向うに参りまして、向うのその方の人と協定をして、それが支障なく行われておる現状において、またさらにあらためて政府間の協定というふうに、これを直す必要もないのじゃないかという見解を述べたのであります。もっともこういうふうな純技術的な立場の問題や、あるいは人道的の立場から考えなければならぬような問題について、政府間において協定をいたしましたからといって、直ちにこれをもって国を承認したというふうなことに考えるべきものでない、こう私は思っておりますが、しかし今申しましたように実際支障のないものを特に改めるという必要につきましては、私どもとしては考えておりません。 それから今長崎の航路の問題がございましたが、これは一つ十分事務的に検討してみまして、そうして実情を十分に調査した上において結論を出すのが適当じゃないか、かように考えております。 それから安保条約に関係して、出動の条件等について国連の決定によってやるべきでないかという御意見でありました。一つの御意見として私は十分考慮すべき意義のある御意見だと思います。今どれをどういうふうに改めるということとは別に、とにかく安保条約ができました当時は、日本は国連に加盟しておらなかったのであります。今日においては国連に加盟しておる、この現状から見まして、私自身もやはりこの安保条約等を再検討するということは、国連との関係についても合理的な方法を考えることが適当であろうという考えでありますので、今の御意見は御意見としてよく承わっておきたいと思います。 それから東南アジアヘの随行をどういう標準できめたかということでございますが、私も党の総裁でありますから、党務につきましてはもちろん責任なしとは申しませんけれども、大体選考につきましては党の三役その他の機関において選考したのであります。党員もはなはだたくさんおりますので、専門的知識があるということをお話しになりましたが、松木君の御承知になっておる専門家以外の専門的知識を持っておる方もおりますので、そういうことも十分頭に置いて選考されたものと思います。 極東の範囲につきましては、松本委員も御承知の通り、安保条約の一条の中に、「この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の」云々とありまして、極東における国際の平和と安全の維持に寄与するという意味が、ただ単に狭く日本の国内だけに出動するという意味でなしに解釈できるものだという意味におきまして、そういうことがこの安保条約の上においてはできておるということを申し上げたのであります。しかしこれらにつきましてもいろいろな論議が国民の間にあることでありますから、安保条約が全面的に再検討さるべき時期における一つの問題になる点であると考えております。 なお日本防衛の最高責任者はだれであるかという御質問でありますが、日本の内部におけるところの安全保障についての最高の責任は、日本みずからが負わなければならぬことは、これは当然であると思うのであります。ただ米軍が安保条約に基いて出動した場合においてどういうふうにやっていくかということについては、両者がよく協議するということは、これは当然やらなければならぬことであると思います。しかし法律的の最高の責任は日本がとるべきものである、かように考えております。
○野田委員長 松本委員、ずいぶん超過いたしておりますから……。
○松本(七)委員 簡単にやります。
○野田委員長 それでは最後に一問だけ許します。
○松本(七)委員 共産圏のことで一つ伺っておきたいのは、この前の予算委員会のときにわが党の池田さんの質問で、東南アジアへ行かれるばかりでなしに、中国へ御自身が行くなり、あるいは特使でも派遣する意思はないかということに対して、これはない、そういう時期じゃない、こういう御答弁だったのですが、これは私ども必要だと思いますけれども、これをやる意思がないということは明らかになったわけであります。ソ連で最近、最高首脳部がもし折があれば日本に出かけていっていろいろ話し合いたいということ、それは有意義だろうということを外電が伝えておるのです。これはこの機会に、日本政府としてソ連の最高首脳を——もし岸さんが行かれる機会があれば、向うの実情を見られる上からもこれに越したことはないと思う、そうでなければ招聘して、こちらでいろいろ全般的な話し合いをされることがいいのじゃないか、この点が一つ。 それから今の日本防衛の地理的範囲の問題、これは問題にはなるだろう、こう言われておるのですが、範囲はどのくらいと今政府は考えておられるか。現在考えておられる防衛の範囲というものをお示し願いたい。この二つであります。
○岸国務大臣 防衛の範囲、日本が防衛するのは日本の領土と領海というものに私は限定されておると思います。ただ日本に駐在しているアメリカ軍が、どの範囲に一体出動するかというのは、この一条の解釈の、いわゆる極東の云々ということになると思います。 それからソ連の首脳部を今招聘する意思はないかということは、ソ連との間には国交が正常化しておりまして、その友好親善を進めるということは、私は当然いろいろな点からやらなければならぬということを先ほど申しております。外電が伝えるようにソ連首脳部が正式に考えているかどうか、私はまだ明確にいたしておりませんので、今直ちに招聘する意思があるということは申しかねますけれども、しかしこれは両国の都合がつき、適当な機会があるなら、来られる意思があるということであれば私は招聘するにやぶさかでない、こう思います。
○野田委員長 菊池義郎君。
○菊池委員 簡単に、あっさりとお伺いいたしておきます。中共の通商代表部の問題でございますが、日本は吉田内閣の時代からしてまだどこの国とも国交が回復しないサンフランシスコ条約締結以前において、いろいろの協定を諸国との間に結んでおります。そういう先例から推してみまして、通商代表部くらい設けるのは、これは差しつかえないじゃないか、これを無理に拒否するということは、どうもちょっと無理ではないかというふうに考えられるのでありますが、こういう点についてどういうお考えでございましょうか。
○岸国務大臣 中共と日本との貿易の増進のなににつきましては、いわゆる民間団体において、日民間のレベルにおいて従来三次協定までやられております。そして両国の通商関係を一そう円滑に、一そう増進するためには、お互いが相手国のところへ通商代表部というようなものを設けて、そうして通商に関するいろいろな関係事項を処理することが便宜であるという考えが、両方の当事者の間に意見が一致いたしております。私もそういうことにつきましてはちっとも異存はないのでございます。ただこの問題の要点は、その置かれるところの——中共の方は御承知の通り国営貿易でありますので、そのこちらへ置かれるところの通商代表部というものが、日本が置く場合と違いまして日本は民間の協定において民間のレベルでやって、置くのは純然たる民間の機関でありますけれども、中共の方からこちらへ置くのは、中共の政府のやはり一部門といいますか、一機関といいますか、それになるわけであります。従ってそれを政府の機関としての扱いにすることが、おそらく今までの話によりますと向う側の希望であり、われわれは今日これらを正式の政府機関として認めるということはまだ適当でないというのが、いわゆる指紋問題と称せられるところの指紋の扱いになるわけであります。政府機関であるならば公けの、オフィシャルな人として入国する場合において指紋が要らないけれども、民間の扱いであるというと、これは中共だけではなしに世界各国どこの国に対しても、民間人に対しては指紋を取っておるのであります。その指紋の扱いの具体的な問題として論議をされておりまして、今までのわれわれの取扱いは、法律の規定から申しますと、これを公けの機関としてなにするわけにはいかぬというのが、従来の政府のとっておる見解であります。しかしさらに具体的にもう少しこの問題を、両方の貿易を増進する見地からそういう通商代表部というようなものを設けることが望ましい、それを実現しようというなににおいて両方における見解をもう少し接近せしめ、それに対する適当な妥結策を考える必要があるというのが現段階でございます。
○菊池委員 どなたでもよろしゅうございますが、米国から買い入れる場合と中共から買い入れる場合と、その値段がだいぶ違うということがだいぶ世間に——社会党の諸君なんかに声を大にして全国で叫んでおられる。つまり米国から鉄鉱石その他を持ってこられた場合には、運賃において非常な違いがある。中共から買う場合、米国から買う場合、同じ品物を負う場合に、運賃を含めてどのくらいの違いがありましょうか。
○佐藤(健)政府委員 私、ただいますぐにこれこれといって値段の差異を申し上げかねるのでございますが、たとえば石炭なんかにつきましては、一トン当りの値段そのものはアメリカの方が高くつくわけでございますが、強粘結炭のカロリー計算、それから選炭費などを考慮に入れますと、やはりアメリカの方が安い、こういう関係になっております。ただその値段がどれほど安いかは、正確なものはただいますぐには申し上げかねます。
○菊池委員 それから最近設立されました移住会社ですね、移住会社に不正があるというわけでもって外務省が調査に乗り出したはずでありますが、その結果はどういう結果が現われておりますか、簡単でいいのです。
○内田政府委員 先般新聞に出まして、われわれとしてははなはだ恐縮に存じておる次第でございます。調べました結果、結論的に申し上げますと、現存のところでは、たとえば表題に非常に大げさに出ておりますように、外務省の者があれに便乗して非常な不当なことをなしたという事実はないと思っております。問題になりましたのは一月十一日から二十日ごろにかけましてちょうど予算の非常にまつ最中でございまして、ことに会社の十億の増資の問題が非常に問題になっておったときで、そのために移住局の担当の者と会社の人がいろいろ一緒に仕草をしておりまして、その際に徹夜になったような際に、会社で留保しておりました第一ホテルの部屋、これは二部屋で五つほどのベッドを留保しておったようでございますが、そこで仮眠をとるようなために一緒に行って泊まったという事実はございますが、しかしその前後の模様、また会社の支払いました支払い額などから見まして、そこで供応等のことがあったとは考えておりません。その期間に一種の差し入れと申しますか、見舞と申しますか、すし一さらとミカン一箱の差し入れがあったという事実はございますが、それ以外に不当な供応というような事実はないと思っております。それから経理の一般の問題につきまして、非常に乱脈であるというような話も出ておりますが、これはわれわれが今まで本社で調べました限り、たとえば交際費等につきましても、大体その額の範囲内で行われておりますので、ある金をさらに交際費に流用したというような事実は認めておりません。それから社長の給料が出ておりますが、これは正式に申し入れがありまして、承認によって行われたごとでございまして他の国策会社の社長の給料などと比べまして不当に高いというようなことはないと思います。それから賞与の二重取りというようなことが出ておりますが、これは前の初代の田中社長と大志摩社長とが交代いたしましたときに、前の社長に月割りで十六万円を差し上げて、あとの大志摩社長がたしか六万円でございましたか、月割りで出しておりますので、これも二重取りという事実はございません。大体以上でございます。
○菊池委員 過般総理はオーストラリアの首相とお会いになりましたが、そのときに日本の移民についてのお話し合いはなかったのでございましょうか。向うが白豪主義を堅持して有色人種は一歩も入るべからずという方針をとっておるのでございますが、日本からも移民を出すという、この希望を述べてもらいたかったのでございますが、向うといたしましては、そういう話もなかったのか、総理からもそういう話はなかったのでありますか。
○岸国務大臣 豪州との間において、この前メンジス首相が来ましたときに、御指摘のような移民に関しての話は向うからももちろんございませんし、私の方からもそれに触れて意見は申し出ておりません。
○菊池委員 どうか移民についてはオーストラリアにも希望してもらいたいということを希望として申し上げておきます。 それからここに防衛庁長官もいらっしゃいますが、総理も防衛庁長官も同じことを言っておられまして、日本は独自の力によって日本を守ることがよろしい、日米安全保障条約の必要がなくなってしまうときが来ることを待望するといったようなことを言っておられますが、われわれはこの小さな日本の貧弱な武力をもってして、独自の力をもって日本を守ることは絶対にできない、従って日米安全保障条約のごときは、これは永遠に保っていかなければならぬものであるという信念を堅持しておるのでありますが、そういう点においてどうも大へんな違いがあるようでありますが、御意見を伺ってみたいと思います。
○岸国務大臣 われわれが独立を完成し、われわれが自主独立の体制をはっきりと作り上げるために、われわれの防衛をわれわれの手でやるということを念願するのは当然であろうと思います。外国の軍隊が駐留しているということがいかに民族の独立の見地からいって望ましくない事態であるかは、言うを待たないと思います。ただ国際の現状から見まして、また世界の国際情勢から見て、一国だけでいかなる侵略に対しても十分な防衛ができるというものを持ち得るかという問題になりますと、これは菊池委員の言われるように、私はそれはとうていできない。今国際的に見ましても、世界の国々において、ほんとうに自分の国の防衛力でもって完全に他からの侵略を防ぎ得るという防衛力を持っているのは、アメリカとソ連であろうと思うのです。あとのイギリスにしましても、フランスにしましても、相当な強国といわれている国々においても、いわゆる集団安全保障の体制によって自分の安全が保持されている、完全な防衛ができるという立場であるのでありまして、従ってそういう意味から申しますと、決してわれわれが一国だけでなにするということはできないじゃないかと言われると、これまた私はそれを是認し、しからばといって、今の日米安全保障体制というものを永久に続けていって米軍の駐留を日本の国内に認めておくということは、それは望ましいことであるかといえば、これまた好ましくない。従って今は無力でありますけれども、結局は、国連を中心とした集団安全保障体制というものができて、そうしてお互いに国の安全が保障されるということのできることが、私どもは最も望ましい形です。しかしそれがすぐこの一両年にできるというような情勢でないことも、これも事実であります。その間におけるこの日本の安全をどうして保障するかということが問題になるわけで、その意味から申しますと、私は段階的には日米安全保障体制、共同防衛の体制というものを維持していかなければならない、こういうように考えます。
○菊池委員 過般ソ連で、向うの首脳者が、日本と共同でもって米国及び英国に対して核実験の禁止を申し入れたいということを言っているようでありますが、こういうことは、こういう機会を逸せず、向うの言質をとらえて、それは君たちの方でまず禁止するか、それならば共同でもってほかの二つの大国に申し入れてもいい、そういう申し入れをソ連に対してせられてはどうか、こう思うのでありますが、こういう点についてどうでありましょうか。
○岸国務大臣 新聞に、ソ連の首脳部がわが方の門脇大使に、そういう今菊池委員の言われたようなことを提案したとか提議したとかいうようなことも伝えられておりますが、私どもの方への公報では意味が少し違っているようでありますが、いずれにしましても、日本政府の正式なソ連における実験禁止の問題に対する申し入れに対しましては、すでに新聞に発表してありますように、ソ連は、それはやめられない、自由主義の国の米国、英国がやる以上は、どうしても自分たちはやめられないのだ、ということをはっきり申しております。いろいろな外交上の辞令とかかけ引き等はもちろんあることでありましょうが、私はどうしてもこの問題に関しては、英米ソの三国がほんとうに真剣にその実験を制限また禁止するという方向に向ける協定ができなければ、今の状況ではできないと思います。従ってそういう見通しが実際つかないのに、かりにそういうような提案があっても、直ちにそれに乗ってやるということは妥当な方法であるかどうかは、十分に一つ検討してみないと、簡単には言えない、こう思います。
○菊池委員 英国のマクミランが議会においても発言し、またその他の向うの有力者も、日本の核実験の禁止の申し入れに対しまして、はなはだ失礼なことを言って、日本の申し入れば共産党の宣伝に乗っておる、扇動に乗っておるのだということを言いふらしておるのでありますが、これに対して、日本政府としても、当然に抗議すべきものであると思うのですが、どうでありますか。
○岸国務大臣 松下特使を送りまして、松下特使と英国首脳部との会談の詳細は、昨日松下君から報告を聞いたのであります。しこうして、その会見のおもなものにおきましては、常に松下特使は、そういうなことを言うものも、いわゆる日本のこの水爆禁止の運動が、共産党やあるいは一部極左の人々の扇動によってやっておるというふうな悪宣伝があるけれども、これは決してそうじゃないのだ。日本においては超党派的に、いわゆる政治上の見解のいかんを問わず、全日本国民の一致した要望であり、その根拠は強い人道的の見地から出ている意見であって、そういう悪意なり誤解なり、しいて曲げて宣伝するがごときことは、はなはだ事実に反しておる。われわれとしてはよくこの点を認識してもらいたいということを、至るところで、いろいろな話の際に、松下特使はこれを必ずつけ加えておりまして、それらについてはイギリスの首相初め、その他の有力者もいずれもああいう洗礼を受けた日本国民が、そういう立場に立ってこの問題を考えておるということの考え方は、よくわかるということを答えております。ただ、しかし、われわれは、自由主義国がこの原水爆において、ソ連に対して優越な力を持っておるということが、現存においては世界平和を維持することの唯一のものであるがゆえに、それを有効なるものとして持つというのには、どうしてもテストをやらなければならないという返事をしておるわけでありまして、新聞にいろいろなことが出ておることも、一、二の人がそういうことを言うということも、私も新聞で見ましたけれども、責任のある何においては、そういうことになっておると御了承願います。
○菊池委員 最近南方から帰られた、新しい駐米大使の朝海氏が、東南アジアについての見解を述べておりますが、東南アジアはいわゆるバンドン・グループとSEATO・グループの二つに分けて考えなければならない。それをごっちゃにして考えたらとんでもないことになる。この二つのグループはおのおの日本の対外国策についての考え方を異にしておるのだということを言っております。こういうことについて外務省ではどういうような見解を待っておられましょうか、どなたでもよろしゅうございます。
○岸国務大臣 東南アジアと一口に申しますけれども、実は国々によっては、非常に経済事情も違いますし、政治上の見解もまた一様ではないと思います。現に、過般来訪しましたパキスタンの総理のごときも、事一たびインドに触れる場合においては、非常な熱を帯びてインドを攻撃する態度をとっております。われわれは国際連合の一員として、国際連合の決定には無条件に、たといそれが自分の国に不利であっても従うということが、真に世界の平和を維持し、この組織をわれわれが建設していく上において必要であると思う。しかるに、決定されたことを全然認めないような国が一体国際の一員として大きな顔をしておるのはけしからぬというような口調で、それらの問題に触れておるというような実情から見ますと、私は、東南アジアと一口に申しますけれども、いろいろこれは利害関係や立場が複雑である。それをごく大きく分けて、いわゆる中立主義の立場をとる国々と、自由主義の立場を堅持しておる国々との二つに分けられるということを、朝海君が言ったのだろうと思います。しかし事情につきましては、同じ自由主義の立場をとる国におきましても、また相当違っております。従っていわゆる経済外交というようなものを推進するという場合において、東南アジアというものを一括して、東南アジアに対する対策はこうだというふうな何は、実際的に経済協力を具体的に進めていくという上からいうと、さらに各国の特殊事情に基いて特殊に考えていく、その国に最も適した形に考えていく必要が生まれてくると思うのであります。
○菊池委員 日ソの文化の交流に関しまして、最近の新聞を見ますと、向うからも文化人を招く、あるいは芸術家を招く——招かなくても、向うでは来たいのでありますが、どしどし入ってくるでありましょう。ところが、日本の方から向うの方に対して歌舞伎役者を出すとか、あるいは驚いたことには、あのあやつり人形、ブンガクというかブンラクというか、私はわかりませんけれども、あれまでも出す。これはほんとうに拙の拙なるもので、日本の国辱を世界にさらすようなものであると思う。文楽なんという、ああいうものを持っていかれては、それこそ日本は野蛮扱いされるはかなかろうと思う。政府としてあれは厳重に禁ずべきである。向うに理解のできるものを出すべきである。外国から来る有名な賓客に対しまして、よく歌舞伎座を見せますが、全然わかりはしない。あとでもって聞いても、全然わからない、ちっとも興味も何も持たぬ。いわんや、あやつり人形のああいう幽霊みたいなものを外国に持っていくのは、とんでもないことである。絶対に禁ずべきであると思う。そういう点について、どうお考えでありましょうか。もうちょっと向うの理解できるものを出すべきではないかと思う。どなたでもよろしゅうございます。
○近藤政府委員 お答え申し上げます。ただいま菊池委員のおっしゃいました、向うに理解できるようなものを出せ、これはまことにごもっともなことであると思います。文楽につきましては、私どもそういう計画がございますかどうか、いまだ聞いておりません。ただ歌舞伎につきましては、先方の招聘によりまして、近く向うに参るという計画が進んでおることは承知しておりますが、文楽につきましては、ただいま申しました通り、先生の御意見もございますが、そういう計画があるかどうかということは存じておりません。われわれとしましては、ただいまのところ、いろいろ民間のベースにおきまして、ソ連とのの文化交流が行われておるのでございまして、私としましては、両国の友好関係を増進し、かつ日本の文化に対しても理解を増進させるものであれば、これを出して、可能な範囲において便宜を与え、後援もしたいと考えておりますが、もし、また、かりに先生のおっしゃいましたように、好ましくないというものがあるならば、いかなる方法において禁止するとか制限するとかいう点は、なお検討を要する点があると思いますけれども、一般論としましては、われわれにとって友好関係を増進するというものであれば、これは一つも差しつかえないと思います。
○菊池委員 映画にしても、米国の映画とソ連の映画とは、全然違っておる。米国の映画は、このくらい日本の青年男女のはらわたを腐らせたものはない。実にだらしのないものばかりである。ところが、ソ連の映画は実にりっぱなものばかり、建設的なものばかりきている。それでもって青年の血を沸かす、非常に日本を赤化せしめるのに有効適切なものばかりを入れている。そういう点を十分に考えられて、どうか米国の映画はなるべくいいものだけを入れて、だらけたものは入れないようにすることが必要であろうと思う。そういう点を十二分に考えていただきたい。目から入る影響というものは一番大きいと思うのでございます。ソ連は日本に対しまして、芸術を流入するにいたしましても、日本人の頭にはっきりとわかるようなもの、そして日本人を感心させるようなものばかり、それに対して日本からはあべこべに、向うにちっともわからない、しかも向うに日本がいかにも野蛮人ででもあるかのような印象を与えるものを出したら、それこそ逆な効果を招くばかりで何もならぬと思う。われわれ三十八名、一昨年ソ連に参りましたときも、向うはわれわれを非常に利用いたしまして、われわれが何とか言って、工場でもってちょっとでもほめると、これを針小棒大に宣伝いたしまして、ソ連の新聞ばかりではなく、外国の新聞にまで書き立てて、日本の議員がこう言ってほめたといって、ちょっとほめると百倍にも千倍にもして書き立てる。ちょっとけなすとこれは一行も書かせない。辻政信君がある工場に行って、これは日本が満州で使っておった工場の日本の機械ではないかと言うと、それは一言も書かない。そういうふうに、どこまでも向うは鉄のカーテンで、われわれ三十八名の議員が向うに行ったことは、これは百吉あって一利なかった。宣伝の具に供せられたようなものでありまして、ほんとうに大きな損をしたと私は考えております。こういう点に十分に気をつけて、文化の交流には当っていただきたいと思うのであります。希望を申し上げて私の質問を終ります。
○野田委員長 岡田春夫君。
○岡田委員 きょうは主として国防会議の問題について伺いたい。その前に、近く訪米されると伝えられる岸総理大臣は、その訪米に当っては防衛六カ年計画あるいは防衛計画というものをお持ちになって、それに基いて何か交渉されるのではないか、そういう関連で、きょう国防会議が行われたというように伝えられておりますが、その点はいかがでしょう。
○岸国務大臣 その点は私もいろいろな機会にしばしば申し上げたのであります。私は総理に就任いたしまして、実は防衛の問題、国防会議の問題はきわめて重要な問題であり、これが設置されてから過去二回ばかり開かれたけれども、それはごく事務的なものを審議したにとどまっておって、大事な国防の基本方針なり、あるいはこの防衛の長期にわたる計画というふうなものについてはまだ審議されておらない。こういうものがこの国防会議ができてそれにかけることになっており、またそれがはっきりきまってそして日本としてはこうしていくのだということが明確にならぬというと、国民の心がまえにおきましても、あるいはまた政府が予算を編成する場合におきましても、ただその限りの問題のようになることは、非常に大事な防衛の問題について望ましくないから、一つむずかしい問題ではあろうが、急いで国防会議を開いて、そしてそういうような会議に付せなければならない重要な問題をできるだけ早く審議するようにということを私は促進をいたしたのであります。防衛計画につきましていろいろな描摩憶測が行われておりますが、私はもちろんアメリカと日本との話し合いをする場合において、防衛についても、当然日米の間の安保条約がある以上・問題として話さなければならぬことであります。すでに過去におきましても、重光前外相が当時防衛庁の試案を持って参りまして、向うに説明した経緯もございます。そういう意味において、これはできるだけ早くきまることが、いろいろな意味において望ましいと思っておりますが、しかし私が渡米するがゆえに、渡米前に急いでこういうものをきめて、そうして成案を得て、それをアメリカ側に示した話をするという意図のもとに、実は急いでおるのではないのであります。最初に申し上げましたような意味において何します。そうしてしかし一国の総理が参るのでありますから、日本の防衛をどうするということについての、総理として大体の腹がまえを持たずして臨むということは、これまた適当でない。従って国防会議においていろいろなデータが審議され、検討されるということは、私自身の防衛についての考え方をきめる上において、腹がまえを作る上においては、私は非常に役立つことだと思うております。ただいずれにしても、この国防の基本方針であるとか、あるいはこの長期にわたる計画というようなものは、一防衛庁の議案という名前にいつまでも維持しておくということは適当でない、こう考えて実は促進いたしておるわけであります。
○岡田委員 大体きょうの国防会議の問題についてお話を伺ったのですが、ただいま総理大臣の御答弁にもありましたように、きょうは大体その基本方針をきめるというようなお話でございますが、きょう大体きめられました基本方針というものは、新聞にも一、二出ておるようでありますが、こういう点につきまして、きまりました点については、一つ防衛庁長官から概略御説明を願いたいと思うのであります。あまり長い時間では、われわれの方も質疑の時間がありますので、要点だけ一つお話し願います。
○小滝国務大臣 本日は、国防の基本方針について議員の間で討議をいたしたのであります。いろいろ議論も出ましたけれども、大体大きく飛躍したようなとっぴな考えは出るはずもなし、議員の間における考え方の統一というものが行われたのであります。しかしながら、それについては今後きちっときめるのには、文書も書かなければならないし、そうしたものをもとにしてこの次の——なるべく近く開きたいと総理も考えておられますが、この次の国防会議において、きちっときめて、きまったものはこれを発表いたすという考えでございますので、本日の段階におきましては、今御報告申し上げるようなものは持ち合せておりません。
○岡田委員 そこで一つ重要な点だけを伺っていきたいと思うのですが、きょうの議題になりました点で、国防という概念について、伝うるところによると、国防というものを広義に解釈する、そうして国防とは国の安全を保障することであって、単なる無事的な防衛には限定されない。防衛は国防の一手段にすぎない。大体こういうような考え方で国防会議が行われ、国防会議の基礎になっておる概念がそういう概念としてきめられる。まあ言葉をかえて言うならば、防衛と国防とは違う。国防というものはもっと広い範囲の広義の国防というように解釈すべきだという考え方で、防衛庁としては基本方針をお作りになったと伝えられておりますが、この点はいかがでございますか。
○小滝国務大臣 国防の基本方針は、ただ単に防衛庁限りの問題ではございませんので、関係各省の事務当局ともよく相談し合って素案を作って参ったのであります。国防と申します際には、何も私の方でも自衛隊がすなわち国防の唯一の具体的な手段であるというようには考えておりません。国防と申します以上、もっと広い意味において、国家を守る上においてはただ自衛隊がおるというだけでは、国防の目的は達成し得ないのでありますから、もっと広い意味に解釈することは御指摘の通りであります。しかし国防という言葉と防衛という言葉と、それほど意味が違っておるか、これは私はそういうふうには考えません。おそらくあとでおっしゃった防衛ということは、自衛力と申しますか、部隊の力というような意味のことだろうと思いますが、そういう意味におきましては、なるほど今おっしゃった言葉を使えば、防衛あるいは部隊の力、装備なんかを持った実力行動をなすものというのは、確かに御指摘のように国防の一部分をなすものであります。
○岡田委員 そうすると国防というものは、広いものとして解釈する、いわゆる軍事力だけではなくて、もっと広く解釈するという点では、きょうの会議においては当然意見の一致を見ておった、そういうふうに私たちは解釈してもよろしゅうございますか。
○小滝国務大臣 それは来たるべき国防会議において成案を得ました上、申し上げたいと思っておりますが、大体の考え方としては御指摘の通りでございます。
○岡田委員 それでは軍事力以外のいわゆる国防の要素となるべきものは、具体的にどういうものをお考えになっておりますか。
○小滝国務大臣 国防会議におきましてはまだそういう詳細な議論に入っておりませんが、私の見解を申し上げますならば、それは単なる部隊の力だけではなくて、部隊にはいろいろ設備を要する、それには再生産の力がなければならない、あるいは部隊の行動に対しましては、いろいろな資材あるいは燃料というようなものも必要であります。そういうものに対する対策もこれは確かに国防の一部分であるというような解釈をとっております
○岡田委員 ただいまの御答弁は総理大臣もこれに御異議はないと思いますが、いかがでありますか
○岸国務大臣 国防ということを単に自衛隊の部隊の力だけであるというふうには解釈せずに、広義に解釈するということについて、議員の意見が一致いたしたことにつきましては、私も全然同感であります。ただ、それでは自衛隊の力以外にどういうものを意味しておるかという点に関しましては、いろいろな意見も出ておりますので、それらを適当に取りまとめて、次の国防会議において決定するということになっております。それ以上はまだ現段階において申し上げることは適当でない、こう思っております。
○岡田委員 それでは、先ほど小滝長官の言われたように、軍事力であるところの自衛隊以外に、再生産あるいは資材、こういう国防に役に立つものを含めたものを国防という広い概念として規定する、こういうことになりますと、たとえば日本の国内の再生産、具体的に言うと産業、そういう面でいわゆる国防に関係する生産の面、あるいは資材の調達の面、こういうものもすべて国防会議がこれを扱うということなって参りますか。いかがですか。
○小滝国務大臣 先ほども発言に先だちましてお断わりしておいたように、私個人の見解を申し上げますならばというようなことを申し上げた次第でございまして、国防会議において果してこういうような範囲にどういうような話し合いがきまるかということは、今夜の問題でございます。
○岡田委員 それでは大体軍事力以外のものも含むという解釈の点では、再生産の問題とか、そういう面については、概念として総理大臣と長官との間に意見の相違はない、今のお二人の答弁で私はそう解釈しておるのですが、その点はよろしいのでしょうね。
○小滝国務大臣 その通りでございます。
○岡田委員 それでは防衛庁長官に伺いますが、それ以外の再生産の面で防衛関係といいますか、国防の生産あるいは資材の配給、こういう点が国防の中に入るのであるとするならば、これは防衛庁長官にぜひ伺いたいのですか、憲法第九条第二一項に「前項の目的を達するため、陸海空市その他の戦力は、」とありますが、「その他の戦力」ということはどういうことを意味するのですか。これは英文ではアザー・ウオー・ポテンシャル、こうなっておるように私は記憶しておりますが、この戦力とはどういうものを意味しますか。
○小滝国務大臣 私どもは第二項に書いてあることは、何も自衛のために最小限度必要なものを持つことを排除するものではなくして、この言葉を受けて、そういう国家固有の権利である自衛の権力の発動についての必要最小限度の産業の力であるとか、あるいは戦う力というものを排除したものではないというように考えるものでございまして、今おっしゃいました戦力というものは、それは通俗的にいえば、あるいはそういう戦う力という意味に解せられるかもしれませんが、少くとも私どもは今申しましたような基本的な考え方を持っておるのでございます。
○岡田委員 どうも不十分だと思うのですが、その他の戦力、アザー・ウオーポテンシャル、潜在的な力というものは、それではあなたの先ほど言われた再生産の設備、資材、こういうものには該当しないとおっしゃるのですか、該当するとおっしゃるのですか、その点はいかがですか。
○小滝国務大臣 私は法律の専門家ではございませんが、戦力というものは、どちらかといえば戦うところの戦闘力のようなものであって、そういう産業の力、それは場合によっては平和なものにも使われるし、また自衛のためにも使われるというようなものであって、それはそこにいうところの戦力というものには含まれないと思うのであります。ことに陸海空並びにその他の戦力といえば、陸海空に類したものというふうにとるべきであって、これは産業の力などを含んだものではないというふうに解するのが至当ではないかと思います。
○岡田委員 この問題だけをやっていても、まだだいぶあるからあれしますが、陸海空軍に類した力というものはどういうものですか、そんなものが実際にありますか。(「殺人光線」と呼ぶ者あり)殺人光線は陸海空軍の中の何かの兵器じゃないか。それ以外の戦力というのにどんなものがあるのですか。そんな答弁では私は納得できないのです。これはそこでうしろの方でだいぶ補助しておるようですから、十分御研究の上で、私はあとでその点はやります。 ただこれは岸総理大臣に伺っておきたいのですが、戦争中にもわれわれは経験したのですが、高度の国防国家論とか広義の国防国家論という言葉が盛んに使われた。それが決して東条内閣のときにでも侵略論とかそういう形では出されておらない。いわゆる国防という言葉が使われ、それが高度な防衛であるとか、広義の国防であるとかいう言葉で使われておるわけです。ところが最近になるとまたぞろ広義の国防国家というような概念が生まれようとしたり、あるいは高度であるとかいうような問題が出てくるわけです。そうすると、この新しい憲法の第九条というものが事実上もう死文となってしまって、いつの間にか言葉の上で昔と同じような広義の国防国家論がまた台頭してくる危険性を実は私は感ずるのです。そこでこの国防というものについて、戦争以前と今日と概念的に質的な差があるのかどうか。前にもそういう高度の国防ということで侵略戦争をやったわけですが、今度の場合においてはそういう高度の国防として、それによって侵略戦争なりそういうものをやるというような含みを持っておる、そういう幅を持っておる概念として使われるようなものになるのか、やはりここに質的に差があるというお考えなのか。それではこの質的な差というものはどういう点に限界を置いておられるのか、あるいはそれに質的な差がないというお考えなのか、こういう点は私きわめて重大な点だと思いますので、総理大臣から一つお答えを願いたいと思います。
○岸国務大臣 言うまでもなく、私どもの国防、防衛というような考え方は、日本を直接または間接の外部からの侵略を未然に防ぎ、かつこれを排除するというのがわれわれのねらいでありましていわゆる国家自衛権の、裏づけになる防衛というものなり、国防というものを考えておるわけでありますから、その点は戦前のいわゆる国防理論とは私は非常に質的な差がある、こう思っております。
○岡田委員 それでは今お着しになっている国防の概念というのは自衛だけ、こういう意味だというお話ですが、あの当時においても御承知のように日本の国は自衛意思を越えて侵略をするのであるとか、そういうことはその当時の東条総理大臣にしても言わなかったわけですね。それから、たとえば満州にしても、生命線であるとか、こういうような言葉を使ってこれは日本の国民としてはやむを得ないのだというようなそういう言葉の中で、事実においては侵略の行動をとった、そこに私は問題があると思うのです。問題はどういう言葉であるかということよりも、その言葉によって行われる行動が何であるかということが、私は最も重要な点であろうと思うのです。その行動としては何か新憲法に基くところの自衛力というものと、その当時の国防というものとについて、本質的な差異という一線を画すというか、その差異というものがはっきり出ておらないと、国民はいつの間にかだまされてしまう危険があるのではないかという点で私は重要だと思うのですが、この点を現在のところ総理大臣としてまだ見解を明確にされないとするならば、もっとはっきりした具体的な見解を明らかにされるお考えはございますか、どうでありますか。
○岸国務大臣 憲法九条の解釈上、われわれが国家の基本的の権利としての自衛権を規定したものではないというこの自衛権の考え方は、戦前におけるいわゆる自衛とかいった言葉とは、私は本質的な変化があると思うのです。従ってそれを中心として物事を考えていき、国防ということも考えていかなければならないし、そういう考え方から言いますと、われわれが国防というものは、いわゆる自衛の軍隊だけでなしに、もう少し広義なものだということを申しておりますが、しかしそれが無制限なものではないことは、私は言うを待たないと思うのであります。概念上はっきり、どこまでがどうであり、こうであるということにつきましては、概念としてはやはり私の考えはあくまでも直接間接の侵略に対して自衛するという点が、今度の自衛権の本質だと思うのです。従いまして、その自衛権の発動ということにつきましても、非常な制限がございますし、国防ということを考えていく上においても当然以前のようなあらゆるものがみんな国防へ入ってくるというふうな考え方には絶対にならぬものである、こう思っております。
○岡田委員 これはもう少し、実は伺いたい点があるのですが、どうもこれだけにかけられないので、またあとで伺います。問題は、生産力、設備、資材まで含む、そういうものが国防だということになると、実際問題として戦前における国防の概念とこの国防の概念がほとんど同じになってしまうのではないか、憲法の第九条の規定が自衛力それ自体をも認めたという解釈にもわれわれは反対するのでありますが、しかしそういうようなところが一つの突破口になって、戦争前の体制にまで発展する危険を防ぐために、明確な質的な差があるとお考えになるならば、この点は何らかの機会において明確な見解の表明を願いたいと私は希望いたしたいのであります。 その次には、先ほども松本委員からの御質問に対していろいろ御答弁があったのですが、やはり日本一国だけの力によって防衛はできないとすると、集団的な安全保障体制をとらなければならない、先ほどの御答弁では国連を中心とした集団安全保障体制というものを希望しているというお話なのですが、これは具体的にどういうものをおさしになっているのですか。
○岸国務大臣 これは国連自身の警察軍なりあるいは国連に加盟しておる全体のものの集団的な力によるところの防衛体制というものができることが私は一番望ましいと思います。今の情勢からそういうものがすぐできるかということについては、あるいは国連が認めた地域的集団安全保障というものも考えられるでしょう。私はやはり一番望ましいのはこの国連という一つの組織を完備して、これに加盟しておる人々が世界の平和をほんとうにわれわれの力、共同の力において実現するという理念のもとに国連全体が一つの集団安全保障体制としてでき上ることが、一番望ましいという見解を私は持っておるわけであります。現在がまだそれまでに至っていないということは、私としても現実を無視するものではないのであります。
○岡田委員 その点もちょっと不明確だと思うのですが、全体として集団安全保障の体制を確立するということは国連にすでにあると思うのです。それが安全保障理事会である。これは八十一カ国の国連全体が安全保障の体制を確立するために安全保障理事会がある。そうでないとするならば、地域的取りきめによってやるところの安全保障体制を希望しておられるという意味なのか、国連全体の安全保障理事会の意味なのか、地域的安全保障の点を意味されたのか、この点が不明確だと思うのです。
○岸国務大臣 私は国連における安全保障理事会がほんとうにこれに加盟しておるところの国々の力によって安全を保障するということが、一番究極として望ましいものである、こう考えております。
○岡田委員 それでは地域的安全保障の取りきめが五十一条一項にありますね。この取りきめによると地域的に安全の保障体制を国連憲章によって組むこともできるわけです。その場合には日本とアメリカだけが安全保障の体制を組むのではなくて、国連において極東に関係のある関係加盟国はすべて安全保障体制に入るような安全保障、これが地域的安全保障の体制になりませんか、いかがですか。
○岸国務大臣 極東において加盟国の間に国連の憲章において認められた地域的な安全保障体制というものも将来できるかもしれません。しかし現在の私の考えの理想は、そういうものよりは全体としての安全保障理事会の力によるところの安全保障体制というものが一番望ましい、こう考えております。
○岡田委員 だいぶわかって参りました。全体としての安全保障体制を確立するということは、安全保障理事会以上の方法はないと私は思うのですが、それ以外に何か理想的の形というものはございますか、どうですか。
○岸国務大臣 今のところはそれ以上のものはないと思います。
○岡田委員 けれども先ほどそれを希望なさったのでありますが、希望された限りそういう形があるであろうとお考えになるでしょうし、そういうものがいずれできるのでなければ永遠の希望で終ることになります。だからそれではいつまでたってもから文句を掲げたということになるので、国際連合全体の安全保障体制というのは安保理事会があってそれによって厳正に運営される今日の形が全般的な安全保障の体制だと私は思うのですが、そうじゃないのですか。
○岸国務大臣 現在の安保理事会の状態を見ますと、いわゆる拒否権というもののために、実際上の理事国に入っておるところの一国が反対するということであるというと、何ができないということになっております。また今の国際情勢ではそれでは拒否権を直ちになくするということも、私もまだそこまでの情勢にはいっておらぬと思います。従って安保理事会によるところの安全保障体制というものが非常に無力化されておるという現実が今日の現実であろうと思います。従いましてこの安保理事会によるところの安全保障体制が望ましい。私としてはこれが一番望ましいという考え方の中には、当然現在の安保理事会の構成なり運営なりというものについて、合理的に検討を加えなければならぬもののあることは、私認めますけれども、そういうことが一番望ましいのではないか、こう思っております。
○岡田委員 これは大体の骨子としては日米安全保障条約をやめて、国際連合全体としての安全保障体制を確立させる方向へ日本はいきたい、そういうことが日本の安全保障の基本的な方向である、大体こういう意味で御答弁になったのだろうと思うのですが、その前に安全保障条約によって国連憲章の原則と目的に従って日米安全保障条約を運営する基本とする。こういうことも言っておりますけれども、そこで、現在の日米安全保障条約に基いてこの点を伺いたいのですが、五十一条、五十四条によりますと、国連憲章の五十四条では、「国際の平和及び安全の維持のために地域的取極に基いて又は地域的機関によって開始され又は企図されている活動について常に充分に通報されていなければならない。こういうように規定しております。従って国連憲章の精神に基いた日本の日米安全保障条約というものは、この精神に基いて地域的な機関、取りきめであるからして、これによって企図されている活動あるいは開始されようとすること一切がっさいは、日本が国連に加盟した限りにおいて、国連にすべて通報されなければならない。それでは日本の自衛隊は、現在そういう活動について安保理事会に通報をやっておりますか。なおそれから五十一条では、固有の権利を行使する場合においては、これについても安保理事会に報告をしなければならないという規定もございます。それでは日本の自衛隊あるいは日本に駐留しているアメリカの軍隊は、こういう点について通報をいたしておりますか、どうですか。
○岸国務大臣 私ども現在の安保条約を検討するに際しまして、われわれがこの安保条約を結んだ当時においては、日本は国連に加盟をしておらなかった。加盟をしたという新しい事実ができてきた。もちろん解釈上は安保条約よりも国連の憲章の方が優先すべきものであって、なければこの方のなにによるということに解釈すべきであろうと思います。しかし全面的にこれを安保条約を検討するに際しては、私は日本が国連に加盟したという事実に基いて、この国連憲章との間において調整をとるべき検討を加えるということが必要だろう。ただ、解釈上当然こうなるのだということでなくして、そういうものであるならば、それを明確に安保条約にも規定することが正しいのじゃないか、こう思います。そういう意味において、安保条約の検討の際においては、日本が国連に加盟したという新しい事実に基いて国連憲章との関係も十分に見合わして検討する必要がある、こう思っております。
○岡田委員 しかし、安保条約自身の改正に当って云々ということではなくて、日本の国が国連に加盟すると同時に、この義務を負わなければならないというのが、国連憲章の五十四条、五十一条の規定であろうと思うのです。先ほど総理大臣のお答えの通りに、安保条約ができた当時においては、まだ日本は国連に加盟しておらなかった。だから通報の義務はなかった。しかし国連に加盟すると同時に通報しなければならない、こういう五十四条の規定があるのだから、それでは小瀧さん、現在通報しておりますか、どうですか。
○小滝国務大臣 今自衛隊は何らそういう軍事行動を起しておらないのでありまして、そういうことを通報する必要はございません。
○岡田委員 私は軍事行動とは言っておりません。安全保障のための地域的取りきめということを言っている。安全保障のための地域的取りきめということが、国連憲章に基いているのだということは、安保条約に三カ所書いてあります。ですからこれは軍事行動のことを言っているのではない。地域的取りきめまたは地域的機関において企図されてるい活動で、軍事活動なんて言っておりません。活動について通報しておりますかということを聞いております。どうなのですか。
○小滝国務大臣 五十四条には、安全保障理事会は、国際の平和及び安全の維持のために地域的取極に基いて又は地域的機関によって開始され又は企図されている活動、そういう維持するための活動について「常に充分に通報されていなければならない。」というのでありますから、この平和及び安全の維持のための活動、そういう活動はいたしておらないのであります。
○岡田委員 さかさまじゃないですか。いいですか。それじゃ安保条約から伺いますと、安保条約では、日本の軍隊というものは、「日本国が、攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章の目的及び原則に従って平和と安全を増進すること以外に用いられうべき軍備をもつことを常に避けつつ、」だからこういう以外の軍備は避けるのだ、こういうこと、いわゆる平和と安全を増進することのための軍備というか自衛力というか、そういうことについてはこれによって規定されているのだ、そうすると、あなた自身は、こういう平和と安全を増進するためにとられている地域的取りきめである安保条約によって行われる活動というものは、当然国連の安保理事会に報告しなければならないのじゃないですか。
○小滝国務大臣 活動を開始すれば報告いたします。活動を開始しておりませんので、必要がございません。
○岡田委員 活動を開始しているとおっしゃるのですか。取りきめに対する活動というのは今やってないのですか。取りきめ、たとえば安保条約に基いて日本の自衛隊とアメリカの駐留軍が協力関係にある、軍事基地がある、あるいは自衛隊がアメリカのあれに協力している、これは活動じゃありませんか。何も軍の活動を言っておるのじゃないのですよ。安全を保障するための活動というのはそのことです。こういう点でこれは御答弁なら御答弁でもけっこうですが、政府の統一見解を今度はお答えをいただかなければならないと思うのですが、これは外務省からもまた伺っておかなくちゃならぬと思うのです。
○林(修)政府委員 ただいまの御質問でございますが、安全保障条約はもちろん国連憲章でいっております地域的な集団取りきめの一つだろうと思います。しかしそれについての通報のことでございますが、五十一条は御承知の通りに自衛権の行使について加盟国がとった措置のことでございまして、五十一条は、そういう措置をとったことはございませんから報告することはないわけでございます。五十四条の方は、国際の平和及び安全の維持のためにこの地域的機関あるいは地域的取りきめに従って開始されたあるいは企図された活動でございます。それは先ほど防衛庁長官がおっしゃいました通りに、こういう地域的機関あるいは地域的取りきめに基いて安全保障のための具体的な活動が起った。そういう場合の通報義務だと私は思います。従いましてただいまの状態は、安全保障条約に基いて日本とアメリカとがそういう条約を結んでおる、アメリカの軍隊が日本に駐留している条約に基く当然の事実状態であります。何らここにいう活動をしておるものではないと私は思います。従いましてそういう事態を報告する義務はないと思います。
○野田委員長 岡田君、時間が経過しましたから簡単に願います。
○岡田委員 この点については実はまだ問題があるのです。これについては、総理大臣は今晩お立ちだそうですから、きょうは留保いたしておきます。総理大臣、いずれゆっくり伺いたいと思いますから、留保しておきます。今の法制局長官の答弁だけでは私は不十分だと思います。 最後に伺っておきますが、先月の二十四日から南太平洋地域、いわゆる南支那海でSEATOの海空軍の演習をやっているはずですが、これについては防衛庁長官に何か通報があったでしょうか。1それでは関連しておきますが、アメリカの駐留軍は、板付やあの辺からその演習に飛んでいるじゃないですか。それを知らぬのですか。
○小滝国務大臣 フィリピン方面における行動については、レムニッツアー大将から通報を受けております。
○岡田委員 日本に駐留しているアメリカの軍隊はそれに参加しているのでしょう。
○小滝国務大臣 私はその際における隊の移動については通報を受けておりますが、それは戦闘行為ではなく、単に軍の訓練のための演習でありまして、それについて通報を受けたことは先ほど申し上げた通りであります。
○岡田委員 それはそうでしょう。私は演習のことを聞いておるのです。
○野田委員長 岡田君、もう時間ですから……。
○岡田委員 それではこれで終りますが、もっとSEATO問題を伺わなくちゃならぬ。日本はどういう関係でこれに協力する義務があるのかどうかもお伺いしなくちゃならぬ。 もう一つだけ小瀧さんにお尋ねしますが、あなたが防衛庁長官になられて十日ぐらいあとだろうと思うが、日本の航空自衛隊が浜松で防空演習をやったでしょう。
○小滝国務大臣 ちょっとお伺いしますが、自衛隊だけのですか。ドラゴン・フライの演習ですか。
○岡田委員 ドラコン・フライはずっと前ですよ。私が言っているのは、あなたが大臣になられたのは二月二日でしょう、それ以降において、日本の自衛隊だけで防空演習をやっているでしょう。相当大がかりの防空演習をやっているはずです。
○小滝国務大臣 航空自衛隊があります以上、始終訓練の必要がありますので、演習をやるのは当然であります。
○岡田委員 始終訓練の必要があるという形で防空演習を毎日おやりになっているのですか。そういう防空演習は相当本格的な防空演習で、日本が昭和十二年ごろにぼつぼつ始めた防空演習と同じような防空演習の前ぶれをおやりになったのじゃありませんか。そういう点についてもこの次の機会に詳細に御報告を願いたい。
○野田委員長 次に、日本国とエジプトとの間の文化協定の批准について承認を求めるの件、日本国とイランとの間の文化協定の批准について承認を求めるの件、千九百二十四年八月二十五日にブラッセルで署名された船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約の批准について承認を求めるの件、右三件を一括議題といたします。 質疑を許します。松本七郎君。
○松本(七)委員 外務大臣にちょっと簡単にお伺いいたします。文化協定を最近次々に非常にたくさん結んでいるわけですが、これはわれわれとしても、できるだけたくさん文化協定を結んで文化交流をやるということに大賛成なのですけれども、現状は、協定ばかり結んで、そうして十分な予算がこれに伴っておらない。従って、実質的に言えばこれはお茶飲み協定、サロン協定なんですね。これでは幾ら協定をたくさん結んでみても意味がないと思う。これはもう少し政府の方でも予算的な裏づけをはっきりして、そうして文化協定をやった以上は、これこれの内容の充実した文化の交流をやるのだという、何らかその文化交流の具体的な計画を持ち、予算の裏づけがなければ、どうもわれわれとしては協定ばかり承認するということはまずいのじゃないかという気がする。そういう基本方針をはっきりして、予算は来年度はこのくらいは取るのだというような意気込みのあるところを直接外務大臣から伺わないと因ると思う。
○岸国務大臣 松本委員の御質問はまことにごもっともでございます。ただ、予算を取るにいたしましても、今の何から申しますれば、この文化協定を結んで、そうして現実に、たとえば日独文化協定に基いて来年度の計画としてどういう仕事をするということを両国の間で話し合っております。それからたとえば学者を交換するとか、あるいはこっちの美術等を向うへやるとか、あるいは音楽やその他でもってこういう交換をやろうという大体の計画を立てないと、ただ大ざっぱに文化協定をやるから、一つの協定について何千万円の範囲で出せというようなことでは、なかなか大蔵省が通らぬものですから、協定ができますと、両国でもってそれの内容をなすべき具体的の計画を立てまして、そうして予算の裏づけによってこれが実効を上げるようにいたして参りたい。現実に協定を結んだ国々につきまして、わずかではありますけれども、そういう具体的な計画を実現するについては、ある程度の予算を持っておりますから、それの実現をいたして参りたい。全体として外務省は非常に予算が少うございまして、こういう文化外交とか、あるいは経済外交を推進する上から申しますと、全体として少いものでございます。しかし私はそういう具体的な計画を立てて、そうしてこれに必要な予算は必ず取って、そうして文化協定をして有意義なるものたらしめたい、かように考えております。
○松本(七)委員 その予算を取るのに具体的な計画が必要だということはわかるのですけれども、現状は、協定を結んだ、具体的な計画もできた、ところが予算の方は削られて、その計画が計画倒れになっている。ですからその点を言っているので、計画ができたら、それを一〇〇%までとはいかなくとも、ある程度文化協定を結んだ価値があったと、通常の常識からいって判断できる程度に今後は予算を取っていただきたい。その御意思を承わりたいのです。
○岸国務大臣 ぜひ取るようにいたします。
○松本(七)委員 今までの文化協定に基いた計画を実行するに要する予算、今言われた、きわめて少いけれども、ある程度はその計画に基いてやったと言われるその予算はどれくらいなのですか。
○近藤政府委員 外務省の現在持っております本年度の情報及び文化関係の予算は、五千万円ちょっとでございます。それから別ワクといたしまして、本年度の予算折衝におきまして、映画事業を大いにしたい、映画による啓発をしたいというところから、映画関係の費用が千五百万円ついております。従いまして、約六千五百万円が情報及び文化関係の予算でございます。これがすべて文化関係の事業に充てられるというわけではありませんので、たとえばこの中には、先ほど申しましたいろいろの日本に関するパンフレット類を外務省におきまして作る、また適当な民間の出版物を買い上げて、外国にあります公館に配る、またニューヨーク及び近くバンコックで発足いたしますインフォメーション・センタ—、これの運営関係の費用も入っております。広義に申しますればこれは六千五百万円全部文化関係と申しますが、内容区分を見ますと、パンフレット類を作成したり、あるいはインフォーメーション・センターに関する費用等も人っております。
○松本(七)委員 今の五千万円、千五百万円の映画を入れて六千五百万円ですか、これは話を聞けば聞くほど心細い活なのですが、どれだけの計画を立てられて、査定されてそうなったのですか。最初、今まで結んだ文化協定に基いて文化関係の予算、計画を立てられたその要求額はどのくらいだったのですか。
○近藤政府委員 ただいまの御質問の今年度の予算の要求の数字は、はなはだ申しわけないのですが、ただいま持ってきておりませんので、もしお許しをいただければ、後ほど詳細書面をもってお届けしたいと思います。
○松本(七)委員 その予算を要求されたときの基礎になっておる文化協定は幾つで、どことどこの国の文化協定が基礎になっておるのですか。
○近藤政府委員 予算要求をしましたときの文化協定は五つございます。その国名はブラジル、フランス、メキシコ、タイ、イタリア、それらの国々でございます。
○松本(七)委員 総理大臣もお聞きのように、五カ国で五千万円、平均千万円で文化協定に基いた計画をやろうというのですが、お話にならないのです。一つ大いにこういう方面に予算を振り向けていただくように特段の御努力をお願いしたいと思います。
○岸国務大臣 お言葉のように、これはぜひ十分に予算の麦づけをいたさなければならぬものと思っておりますから、十分な努力をいたしたいと思います。
○松本(七)委員 総理大臣時間がお急ぎですから岡田さんにあと譲りまして、あとは事務当局の方にお願いしま
○野田委員長 岡田春夫君。
○岡田委員 簡単ですから一点だけ伺っておきます。今度東南アジア諸国に回られると言うのですけれども、アメリカから帰られて、またあとの国を回られるという話も承わっております。そういう場合にはどうなんですか。東南アジアという表現でお話しになっておるのですが、アジア・アラブ——アラブ関係の諸国も訪問される予定をお立てになるお考えなのですか。それとも東南アジアだけというお考えなのですか。どうなんですか。
○岸国務大臣 私は必ずしも東南アジアに限定するつもりはございません。ただ今度よう行かない国でぜひ行きたいという国が、仏印三国、それからフィリピン、インドネシア、豪州、ニュージーランド、さらにイラン、イラク、今アラブ諸国も私は何しておりますが、旅程の上から申しますと、次の何はとりあえず今申しました東南アジア諸国といいますか、それにさらに豪州、ニュージーランドを加えた諸国を一応何したいと思っております。それでさらに時間が許せば、イラン、イラクその他も訪問したいと思っております。
○岡田委員 そこでアジア・アラブということになると、そのアラブ諸国の中心になっておるエジプトをどうされるかという問題があるのです。これはエジプトの文化協定も出ておりますから、エジプトの問題はどのようにお考えになっておりますか、その点伺っておきたいと思います。
○岸国務大臣 もちろん、アラブ諸国に回るというような旅程を作る場合におきましては、エジプトも訪問するうちに考えなくてはならぬと思っております。
○岡田委員 伝えられるところによると、八月にナセル大統領が北京を訪問することになっているようであります。これについて現地の土田大使は、その際に日本に寄ってもらいたい、こういう話を折々いたしているようでありますが、どうも聞くところによると、外務省の内部でナセル大統領が日本に来られることについてはというような、どちらかというと大統領の来られることを歓迎しないかのごとき態度が見えるようにも聞えるのでありますが、総理大臣としていかがですか。ナセル大統領が北京に来られたときに、日本に来られることを歓迎されますか、この点はいかがですか。
○岸国務大臣 私はもしもナセル大統領が北京をたずねるというような機会があるならば、ぜひ日本にも訪問してもらいたいと思います。
○岡田委員 それではそういう場合には、正式の招請なり何なりをされるお考えがおありだ、こう考えてよろしゅうございますか。
○岸国務大臣 はあ。
○松本(七)委員 先ほどお話のあった文化協定を結んで、それからいろいろな具体的な計画を作るというのですけれども、それはどうなのですか。文化協定を結ぶときに、すでに大体の今後の具体的の構想というものはできているのですか。それとも協定が成立してから両国の間で話し合いを始めるのでしょうか。すでに何らかの計画はできているのでしょうか。
○井上(清)政府委員 ただいまの御質問にお答えをいたします。文化協定を作りますときに、いろいろな文化交流を予想はいたしますけれども、必ずしも具体的な計画を持って文化協定を作るということはございません。文化協定ができました暁において、いろいろな計画が活発にでき上ってくるというのが通例でございます。
○松本(七)委員 そうすると、これは今かりにこの二つが成立するとしますと、今までのが五つあるし、その五つが先ほどの御説明によると五千万円ですか——まかの費用にもそれを使うというとうんと少くなりますね。それに今度これが二つ加わってくるでしょう。今年中の大体来年の予算をきめるまでに、これ以外にさらに予定されている文化協定がありますか。
○近藤政府委員 お答えを申し上げます。パキスタンの総理がこちらに先般見えましたときに、先方も希望したことでございますから、こちらから文化協定をこれから交渉しようということになりまして、岸総理大臣から日本側の文化協定に関する案を先方に渡してございます。従いましてただいまのところは、パキスタンとの文化協定を一つ期待しているわけでございます。
○松本(七)委員 どうも順序がおかしいと思うですね。たとえばパキスタンなら。パキスタン、こういう国と文化協定を結んでこういう文化交流ができるというある程度の見通しがあり、こっちにも希望なり計画があるから、それじゃ一つ文化協定を結んでそれを実行しようかということにならなければ——さっきの政務次官の話のように、とにかく具体的な計画というのは文化協定ができてから考えるのだということになると、一体どこと文化協定を結んでいくという基準なり判断の材料もない。やはりある程度の具体的な文化交流というものの構想があるからこそ、協定によってこれを実行しようということになるのが順序じゃないかと思うのですが、どうでしょう。
○近藤政府委員 お答え申し上げます。今の松本委員のおっしゃいますことは、まことにごもっともでございます。われわれ文化協定があるなしにかかわらず、それぞれの国と現実に文化交流を行なっておりまして、たとえばただいま御審議願っておりますエジプトとの間でも、昨年はエジプトが主催いたしました第一回アジア・アラブ諸国美術展というのがございまして、それには外務省も後援いたしまして、われわれの適当と思われます美術品ないし工芸品を出したこともございます。また映画の関係におきましても、今までに三つばかりエジプトに輸出した事実もございます。またスポーツの面におきましても、卓球の選手が参ったという事実もございます。またエジプトとの間では、かねて本年度の予算を折衝いたしますときに、われわれは具体的な計画の一つとしまして、カイロにインフォメーション・センターを作りたい、それを中心にして映画ないし講演その他で、エジプトとの間に文化交流をしたいという計画も持っておったのでございます。このインフォメーション・センターにつきましては、われわれの努力が足りなかったためでありますか、予算の承認を得ませんので、本年度の予算には入っておりません。しかしながら来年度におきましては、これをぜひ実現したいというふうに考えております。またその他の事業にしましてもいろいろわれわれとして計画を持っておりまして、たとえばカイロで写真の巡回展を開こう、これは近く具体化したい、こう考えております。
○松本(七)委員 担当者としては、できるだけ広く文化交流をやりたいというお気持はよくわかるのですけれども、今のお話だと、あそこの国とこれもやりたい、あれもやりたいというような計画ができる。そして一応協定は次々に結んでみたが、いざ予算を組むときになると削られてしまうということになりやすい。だからやっぱり各国別に具体的な文化交流計画というものを立てて、それによって予算がどれだけ取れるか、そしてこれだけの予算ならばどこを先にやるかということから、協定を結ぶ順位というか、相手国というものを考えてくるようにしないと、私どもの心配している協定がサロン協定になり、計画が計画倒れになる。どうもその点がはっきりわかりません。
○井上(清)政府委員 文化協定を十分に実施いたしますための予算が少いことは、御指摘の通りでございます。今後できるだけ私どもといたしましては、予算の増額のためには努力をいたしたいと思うのでありますが、また来年度もできるだけ御趣旨の線に沿って努力いたしたいと思います。本年度予算の足りない点は、幸い報償費が相当増額を見ておりますので、こうした点からも、文化協定実施のための費用に相当充て得る余地があると思います。また内部的にいろいろ折衝もいたしておりますので、予算はございませんけれども、ある程度の事業はできるものと考えております。
○松本(七)委員 だいぶ時間もおそくて急いでおるようですから、総理大臣、外務大臣からも、特に予算については極力努力するというお言葉もありましたし、私はこの程度にして、あと船荷証券について質問することにいたします。
○戸叶委員 文化協定に関連いたしまして一点だけお伺いしたいと思いますが、これからいろいろの国と文化協定を結びますと、日本から各国へいろいろな資料が送られると思うのです。たとえば日本の風俗とか景色とか。そういうときに特に注意していただきたいと思いますのは、もうそういうことはないかとも思いますが、四、五年前アメリカのいなかに参りましたときに、その農村の一人の子供さんが、日本から女の人が初めて来るというので、図書館に行って本を借りてきて、日本というところはどんな国であるかということを勉強したそうです。私にその本を見せてくれたんですが、驚いたことに、それは明治初期ごろの写真で、ちょんまげ姿で、おぜんを置いて、そこに子供の人が立っているというふうな、まことに非文化的なものが送られていてそれでもって子供さんが日本というものを想像していたんです。そういうことが私はまだあると思うのです。ですから、近代的な日本というものをはっきり紹介するためにも、今のような予算はまことに心細いと思うわけです。ですからこの点もお気をおつけになって、合いっております資料も一度、へんひな国あるいはへんひなところほど御調査を願って、そうして日本の認識を改めてもらうようにしていただきたいと思いますが、これについていかがお考えですか。
○近藤政府委員 お答え申し上げます。今戸叶委員のおっしゃいましたことは、非常にごもっともなことでございまして、私も最近カナダから帰って参ったのでございますが、カナダのいなかの図書館に参りますと、今おっしゃいましたような時代はずれの古い日本に関する図書が、日本関係の図書として納められておる事実が多いようでございます。従いましてわれわれとしましても、今後十分気をつけまして、そういう古いものはできることならどしどし新しい、しかもいいものを送って取りかえるように努力したいと思いますし、また単に外務省から出すものだけでなく、いろいろ民間の出版会社等の海外に出すものにつきましても十分注意をいたしましていいものができるようにして参りたいと思っております。
○野田委員長 次に、船荷証券条約について質問を許します。松本七郎君。
○松本(七)委員 この船荷証券の関係の条約は、日本が署名したのは一九二五年ですが、それが今回になって初めて批准の運びになった。その間三十年も経過しているわけです。この説明書によりますと、海商法の改正等で慎重検討を必要としたためである、かように説明書には書いてあるのですが、もし当時、三十年前に早急に海商法の改正に着手しておったならば、はるか以前におそらく批准をしてしまっておっただろう、当時日本としては批准をする意思がなかったのじゃないかという疑いが持たれるのですが、どういう事情だったのですか。
○高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。この条約は御承知の通り、一九二四年に作成されたわけでございますが、実はこの条約自体を見ましても、非常に紆余曲折の経緯がございまして、海上運送が盛んになりまして以来、運送人と荷主の権利をどうするかということで、非常に国家間の争い、具体的には英本国と当時の植民地との争いがございまして、非常に争ったわけでございます。第一次大戦後になりまして英国の植民地が独立したり、地位が強くなりましてそこで英国の植民地としては荷物を送り出す方でございますが、それが運送人たる英本国に対抗いたしまして、運送人の責任をもっと重大ならしめる必要があるということで、相当な論議が行われた末、やっと英本国の方も折れまして、一九二四年に国際会議を開き紆余曲折の末にこの条約ができ上ったという状況でございます。従いましてその当時の状況を考えますと、当時の状況ではとにかくいろいろな国の意見をこの条約にまとめ上げたのでございますが、果してこれをみんな批准するかどうかということについても非常に疑問があったのじゃないか。すなわち、国内法との関係でおのおの国内法を整備しなければならない、そういう関係だと思うのであります。普通の条約でありますと、この条約の何カ国が批准すれば条約として発効するというふうな規定が置かれるのでありますけれども、この十一条を見ますと、「署名の日から起算しておそくとも二年の期間が経過するまでに、この条約を実施すべきかどうかを決定するため、この条約を批准する用意がある旨を宣言した締約国の政府と協議を開始するものとする。」従いまして一応作成されましたけれども、どのくらいの国が批准すれば発効するかということは後の協議にまかされたという事態であったという状況でございます。従いまして、この条約ができましてもすべての国がすぐ批准をいたしまして、日本だけが残っていたという状況ではございませんので、各国が一年間に二、三ヵ国ずつ国内法を整備しながら少しずつ入ってきたというような状況でございます。そうしまして現在に余りましては、二十一ヵ国人りまして一般慣行となっておりますが、当時としてはなかなかそこまでいきがたいという事情もあったのではないか。加えまして、円内法の整備、それに非常な問題がありまして、その関係上、その間に戦争も入りまして、現在までおくれるに至ったというように考えております。
○松本(七)委員 大体日本だけが残ったのはいつごろからですか。だいぶ前でしょう。今署名国で大部分の批准が終ったのはいつごろですか。
○高橋(通)政府委員 具体的に申し上げますと、一九三〇年になりまして初めてベルギー、スペイン、英国、ハンガリーという四カ国が批准いたしております。そこでそれじゃ発効しようじゃないかということで発効になった。次に三十一年になりますと、ポルトガル、モナコ、それから三六年ごろになりましてポーランド、それから三七年にフランス、米国、ルーマニア、それから三八年になりましてデンマーク、ノールウェー、スウェーデン、イタリア、三九年にドイツ、フィンランド、大体この付近で相当な国が入って参りまして、自後戦争になりまして、戦後四年にエジプト、五四年にスイス、それから一昨年でございますか五五年に濠州、トルコ、昨年にオランダが入ってきておるような状況でございます。
○松本(七)委員 そうすると日本として運送業者と荷主の間の利害関係の対立とかその他の理由で批准ができなかったという、日本特殊の事情というものがあったのでしょうか、日本だけが最後に残ったというのは。
○吉田(昂)説明員 特に日本だけが批准がおくれたという特殊な理由はないと思います。大体先ほどの条約局長の御説明のように、一九三一年初めて効力を発生したわけなのですが、ちょうど昭和六年に当りますが、それから昭和十年に当時の司法省に置かれてあった法制審議議会におきまして商法改正の要綱を作っておりまして、その要綱の中でこの条約を参酌して運送人の責任 に関する規定を整備することという一項目を加えたのでございます。つまり当時この条約を批准すべきだという考えであったように患われるのであります。ところが御承知のように海商法全部の改正の一つとして考えられたものでありますから、海商法全部の改正がなかなかはかどらなかったわけであります。そのうちに戦争が始まりまして、海上運送それ自体が途絶したわけでありますから、今日まで商法改正にならなかったわけであります。戦後になりまして法務省に法制審議会が置かれたのでありますが、その法制審議会で一番最初に取り上げたのがこの問題であったのであります。ところが当時株式会社法の改正も同時に問題になりましたの、で、株式会社法の改正が非常に急を要しましたので、そちらの方が先に進んでしまった、ようなわけであります。なおこの統一条約につきましては、署名以後三十年たっておりますので、果して現在このまま通用するものかどうか、つまり各国で改正の動きがあるのじゃないかというようなことも懸念されましたので、その改正の動きがあるかどうかということにつきまして、たまたまヨーロッパにおいでになった石井教授に調査をお願いしたわけでありますが、その調査の結果、改正の動きがないということでありましたので、この際批准することをお願いしたわけであります。
○松本(七)委員 今度は商法の改正ではなくて、国際海上物品運送法という単独法でこの条約による国内立法をすることになったのでしょう。そうすると当時において海商法の改正がなかなかできなかったということと、今回海商法の改正をやらずに、国際海上物品運送法という単独法でやったということと何か関係があるのですか。
○吉田(昂)説明員 海商法の改正ということになりますと、外航船に限らず内航船についても規定を置かなければならないということになるわけでありますがそればかりでなく、この点だけを改正するということになりますと、ほかのいろいろな規定との関係で非常にめんどうなことになるので、外航船関係だけについて一応ここで法律を作っていこうというふうに考えたわけなのでありまして、幸いこの条約は内航船に関しては留保してありますから、その留保を利用しまして、とりあえず外航船だけについて法律を作ってこの条約に従っていきたいというふうに考えたわけであります。内航船につきましては、条約をそのまま適用してよろしいかどうかということについて、なお検討を必要とするというふうに考えますので、この部分についてはさらに検討を続けることにしまして、今回はとりあえずこれだけの条約について批准して、外航船だけについて法律を作ったわけであります。
○松本(七)委員 そうすると二四年にできて一五年に署名した当時、今説明された考え方で臨んでいれば批准はできたでしょう。海商法改正ということが全般的に困難でそれだからおくれた、今回はそれでやらないで単独法でいこう、当時も外航船だけ切り離して単独法でやっていればもっと早く批准に運んだのでしょうが、何か当時そのほかに特別の理由があったのでしょうか。
○吉田(昂)説明員 当時の事情はよくわかりませんが、当時としましてはおそらく今日ほど差し迫った事情がなかったのではないかというふうに考えます。従って内外ともに統一的な海商法の改正を行おうというふうに考えたのではないかと考えます。今日におきましては外航船に関する限りは、海上運送の契約をすべてこの条約に従ってやっているような次第なのであります。ところが戦争前はあまり問題にならなかったのですが、どういうものかこの条約に従って船荷証券上の免責約款を短めますので、その免責約款は日本商法に違反するもので無効であるというような主張を荷主側から言われて、海運業者は非常に因っているというような状況にあるようであります。そこで一刻も早くこの条約を批准して、外航船に関する限り国内法を作ってもらいたいという要望があるわけであります。
○松本(七)委員 この条約の内容を見ますと、全く私法上の契約による権利義務を規定しているのですね。たとえば二重課税の回避だとか、脱税の防止に関する条約というようなものとは性質が違うのです。こういった私法上の契約による権利義務を条約で規制しなければならない理由はどこにあるのでしょうか、私契約でもできるのではないですか私法上の権利義務を規定するのは私契約でできるのではないですか。それを条約という形のもので規制しなければならない理由はどこにあるのですか。
○吉田(昂)説明員 お答えいたします。商法の七一三十九条という規定がありまして、免責約款を禁止いたしております。この免責約款の禁止の規定が強行法規だという解釈になっております。従ってどのような契約をいたしましても、その規定によって無効にされるという解釈になっております。ですからその規定それ自体から改正していかなければならない、その規定の特例を設けなければならないということになるだろうと思います。
○松本(七)委員 その特例を設けるのに、こういった条約の形が妥当だというのは、どういうわけでしょうか。
○高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。結局この条約その他類似のこういう私法関係の問題でございますと、日本の国内だけの問題でございますれば、御承知の通り国内法で日本だけで決定して立法すればいいことになるのでございますが、たとえば御承知のように国際運輸で船荷証券が発行されますと、それが転々として銀行やその他外国の手に渡る。あたかも商品として売買されるわけでございます。そうしますと、各国の法律がまちまちでございますと、一体どこの法律によってこの関係が規定されるか、裁判の問題になりますとどの法律に準拠すべきであるかというようないろいろな問題、それから船荷証券所有者自体もそういうことで非常に不安になるかと思います。そこで船荷証券に関する各国の国内法が統一されれば一番いい結果になるのではないかというふうに考えられます。その統一は条約によって最小限度きめるということが最も適当になってくる。たとえば船荷証券のみならず、ただいまございます条約としましては、手形法でございますとか、手形法を統一する条約とか——手形というものは国境を越えて転々いたしますので、その効力の期間だとか、記載すべき事項だとか、そういうことはやはり国際的に統一する必要がある。そういうことになってきますと、やはり条約というものが一番適当な形ではないかと考えます。
○松本(七)委員 さっき問題にした、この条約に基く国内法として、国際海上物品運送法というものが今法務委員会で審議されているのですが、その第一条に適用範囲をきめておる。その適用範囲は「船積港又は陸揚港が本邦外にあるものに適用する。という規定があります。これは内外人ともに当然適用されるのだろうと思いますが、そうなるとこの条約に加盟していない国との関係、特にこの条約には加盟しておらないけれども、最恵国待遇を与えられている国との関係はどういうふうになるのですか。
○吉田(昂)説明員 この条約自体が締約国の国民の発行した船荷証券であるかどうかということを問わないで適用するということになっております。この締約国との関係だけでなくて、それ以外にもこの法律を適用させようと考えましたのは、商法の規定によりますと、運送人の責任が非常に重いのであります。この条約は運送人の責任が軽くしてあります。そこで締約国に対する関係だけ運送人の責任が軽くて、締約国以外の国民に対する関係において責任が重いということになりますと不統一になる、不均衡を来たすと考えましたので、そういう締約国の関係ということを抜きにしまして、第一条に規定を置いてあるのでございます。
○松本(七)委員 締約国以外のものにこの効力を及ぼすということはどういう根拠でありましょうか。
○吉田(昂)説明員 御質問の趣旨をとり違えたかと存じますが、この国際海上物品運送法が適用されるのは、その前に一応国際私法が適用になりまして、日本国法によるという場合に、この規定が適用されるのであります。ですから国際私法の原則に従って日本法によらない場合には、この規定の適用はないということになります。
○松本(七)委員 法務委員会における法務省の提案理由の補足説明書を見ますと、海運業者はこの条約に基く国内法の立法化を切望している、しかし貿易業者は必ずしもそうではなく、消極的な賛成という態度である。こういうふうな説明が述べられておる、この条約は海運業者には有利で荷送人には不利なものなのでしょうか、そのために今言うように、海運業者がむしろ積極的に賛成して、片方が消極的だというのは、そういうところに理由があるのでしょうか。もしそうだとすると、どういう点であるか、ちょっと御説明を願います。
○吉田(昂)説明員 この条約の内容から申しますと、運送人の責任を軽減するのでありますから、その責任を軽減するということだけから考えますれば、貿易業者にとっては歓迎されないということは考えられるのでありますが、しかしそういう不利な点ばかりでなくて、有利な点もある、つまりこの条約に従って船荷証券が発行されますと、その船荷証券の信用がついておりますので、取引上非常に有利になるということが考えられます。そうして貿易業者といたしましては、世界の主要国がこの条約に従って契約をしておるのでありますから、特に日本の船主に対してだけ日本法によらなければならないというだけの積極的な理由はない。それで大体貿易業者はその積荷の運送を委託するにつきまして、特に日本の船主だけを選んで委託しておるわけではない、その時期に応じまして、日本の船に対してあるいは外国の船に対して運送を委託しておるわけでありますから、みな同じ条件で契約される限りにおきましては決して異論はないはずなのであります。むしろ船荷証券の信用が増すという点において有利なのだという理由によりまして、この条約に原則として賛成しているわけであります。
○松本(七)委員 第四条に、「運送人及び船舶は、航海に堪えない状態から生ずる滅失又は損害については、責任を負わない。」という規定がありますね。ただし、第三条1に掲げた航海前における船舶の点検の条件について相当の注意を払わなかったときはこの限りでない、こういうふうに述べてあるのですが、これは、出帆前には船舶の状態が良好であったにかかわらず、航行中不可抗力によって滅失または損害をこうむったようなときには運送人は責任を負わない、こういう意味でしょうか。 〔委員長退席、菊池委員長代理着席〕
○高橋(通)政府委員 この第四条一項の規定の、船舶が航行にたえ得るかどうかということは、船が港を出ますときにそのような相当の注意をして船長が航行にたえ得る状態に置いたならば、その責任が果されていると考えます。そこで航行中にこういう天災が生じましたら、これに対しても一定の過失とかその他はあるかもしれませんが、それがない限り責任は負わない、こういうふうに考えております。
○松本(七)委員 それから今の第三条の「相当の注意」という言葉、これは第四条にも同じ言葉があるのですが、その認定の立証はどういうふうにしてするのでしょうか。
○吉田(昂)説明員 「相当の注意」という意味は、通常の善良なる管理者たる運送人の用いる注意を言っているわけなのでありますが、相当であったかいなかということは、結局は裁判所が判断するということになります。
○松本(七)委員 そうするとここでいう立証というのは裁判所でやることですか。
○吉田(昂)説明員 裁判所が判断するということは、立証された事実に基いて、裁判所が相当な注意を施したかどうかを判断するという意味であります。
○松本(七)委員 それから第四条第二項に運送人のいわゆる免責事項を列記しているのですが、この中の(a)に、「航行又は船舶の取扱に関する船長、海員、水先人又は運送人の使用人の作為、不注意又は過失」というのがありますね、これはどういうのですか。作為のものまで免責される。それから不注意でも、当然責任を負わなければならぬ不注意ということもある。それから過失でも、不可抗力の過失と責任を負うべき過失とある。これが全部ひっくるめて免責されるというのはどうもおかしいと思うのですが、どういうのでしょう。
○吉田(昂)説明員 この「作為、不注意又は過失」というのは、日本の民法で申しますれば故意、過失ということになるかと思います。ここに掲げてありますのは船員の故意、過失をいっているのですが、従って運送人自身の故意、過失というものは入ってこないわけなのです。そういう船員の、航行または船舶の取扱いに関する不注意といいますか、そういうものについて船主が責任を負わないというのは若干奇異に思われますが、大体船長以下の船員は、試験を受けまして一定の資格を持っている者がなるのでありまして、この者の航海上の技術につきましては船主も口出しができない、監督権がないわけなのです。ですからそういう監督権のないものについて責任を負わせるのは酷ではないかということと、もう一つは、こういう船長その他の船員の技術上の過失については船主が責任を負わないということは、欧米で長く行われた慣行なのでありまして、その慣行をそのまま条約で正式に認めたというものなのであります。ですから世界各国で行われている慣行に従っていいのではないか。なおこの過失に基いて積荷が加害をこうむったという場合に、荷主がまる損になるということが考えられるのでありますが、荷主は積荷について保険をかけておりますので、その保険の方で損害を填補してもらうので、荷主としましても別に損害はないのであります。そうしますと、今度は保険会社の方でそれだけの損をこうむるということになりますが、保険会社といたしましては、世界各国この条約に従ってやっているのでありますから、日本の船主の場合とそのほかの国の船主の場合とで保険契約の条件というようなものを一々変えているわけではない。全世界同じような条件でやっているわけでありますから、たまたま日本の船主を、日本の船舶で事故が起きたという場合に、日本の商法に従って追及していくということはあまりしていないで、保険会社も実はこの条約の通りにやっているというような関係になっているわけであります。ですから形式から申しますれば、保険会社が損をするという結果になるのでありますけれども、実際問題としては保険会社も損をしないということになるように考えられるのであります。
○松本(七)委員 その次は(f)の「公敵行為」、これはどういうのですか、海賊ですか。
○高橋(通)政府委員 これまたおしかりをこうむるかと思いますけれども、海賊行為がおもな行為だと考えます。エニミー・パブリックというような言葉を使っておりまして、公共の敵ということで海賊を一番主眼として考えていると思います。
○松本(七)委員 海賊を公敵行為というのは何だかおかしな翻訳語ですが、亘訳するからそうなるのでしょう。 それから(j)に同盟罷業、作業所閉鎖その他が規定しておるのですが、「同盟罷業」の上に「原因のいかんを問わず、」という規定があるのです。私は同盟罷業は船主の責任事項で起るのだろうと思う。それを「原因のいかんを問わず、」として全部免責するというのは少し行き過ぎじゃないかと思うのですが、どうですか。
○吉田(昂)説明員 「原因のいかんを問わず、」というのは、政治上のストライキであると経済上の事由に基くストライキであるとを問わずという意味に解されております。 なお今お話の船主の方の原因でストライキが起きたという場合はどうなるかという問題はありますが、同盟罷業の場合に船主に責任があるかどうかということを具体的にきめるということは、なかなか困難であろうかと考えられますので、多くの場合は船主がこれによって責任を免れるというような結果になるだろうというふうに考えられます。ただ極端な場合、たとえば賃金を何カ月も払わないというような場合でありましたならば、やはり責任を免れないのじゃないかというふうに考えられますが、しかしこれはこの規定の問題ではないのじゃないかというふうに考えられます。
○松本(七)委員 それは「原因のいかんを問わず、」といってわざわざここに書けば、そういう場合にも免責になる根拠ができはしませんか。今の御説明だったら、むしろこういう表現を変えなければならぬというような結果になるのじゃないかと思いますが。
○吉田(昂)説明員 それは政治上の原因であると経済上の原因であるとを問わずというくらいの意味で、あまり深い意味はないと思います。
○松本(七)委員 それから第四条第五項の滅失または損害に対する補償は、一包または一単位について百スターリング・ポンドになっているわけですが、これはポンドとの換算は時価で計算するのでしょうか。
○高橋(通)政府委員 その点は、実はこの条約を批准いたします際に留保いたそうと思った点でございます。すなわち第九条の第一項に「この条約における貨幣単位は、金価値と了解される。」というふうにございます。そこで一単位につき百スターリング・ポンドということと、九条一項の金価値ということを考えますと、おそらくこれは条約ができた当時のポンドと金との等価ではなかったかというふうに考える次第でございます。しかしながら、それ以後平価切り下げを二回ばかりやっております。それからそれ以後各国の状況を見ますと、必ずしもこれによっていないということがございますので、わが法令にございますように、十万円というふうに区切っている次第でございます。 〔菊池委員長代理退席、委員長着席〕
○松本(七)委員 それからこの一包とか一単位というのは、おそらく専門用語だろうと思うのですが、どういうものが基準になるのでしょうか、例をあげてちょっと説明してもらいたい。
○吉田(昂)説明員 一包というのは、梱包になっているものをいうわけでありまして、一単位というのは梱包になっていない、たとえば石炭とか石油、ああいうものの単位をいうわけであります。一包がどのくらいか、一単位がどのくらいかということは、慣行上の単位によるほかはないというふうに考えております。
○松本(七)委員 それから同条の第六項「共同海損」というのは、どういうものをいうのでしょうか。
○吉田(昂)説明員 商法の七百八十八条に規定があるのでありますが、船舶と積荷とが危険に陥った場合に、その共同の危険を免れるために船長が積荷を投下するような場合がございます。そういうような処分をした場合に、その損害は積荷の所有者だけに負わせることをしないで、それによって助かった船舶及び積荷の所有者が分担して責任を負うということになっております。これを共同海損といっておりまする
○松本(七)委員 その共同海損については、運送人と荷主との間に特別の契約か何か結ぶのですか。
○吉田(昂)説明員 特に契約がなくても、七百八十八条の規定が適用されます。
○松本(七)委員 それから一九二五年の公文では、日本は第四条の2の(a)について留保しておるのですね。今回はこの留保を撤回した理由はどういうところにありますか。
○吉田(昂)説明員 この署名の際に、四条二項(a)を留保しました理由がはっきりいたしませんのですが、実を申しますと、この点について運送人の責任を免れしめるということは、この条約のうちのかなり重要な事項に属するわけなのであります。でありますからこの点を留保いたしますと、骨抜きというところまでは参りませんが、骨抜きに近いことになるわけなのであります。
○松本(七)委員 そうすると、二五年の公文で留保した理由は、どういうところにあるのですか。
○吉田(昂)説明員 その点文献がなくなっておりますので、よくわからないのであります。
○松本(七)委員 さっき条約局長の言われたように、今回の場合は、第九条の一項について留保しておるわけですね。提案理由の説明だと、現状に即さないからだ、こういう説明がなされておるのですが、現状に即さないという内容は、どういうところにあるのですか。
○高橋(通)政府委員 実はその後各国の損害賠償責任の限度額のことについて調べたのでございますが、各国非常にまちまちなのでございます。そこでもし時の金価値と申しますかによりまして、厳格に百ポンドを換算いたしますとすれば、約三十万円程度にならざるを得ない。しかしながら各国の法定掛害賠償責任限度額は、大体九万から十二、一方、高くて十八万でございますか、その程度しかいっていない状況なの、でございます。従いましておそらく、この点につきましては、各国も必ずしも留保はいたしておりませんが、必ずしも条約が成立した当時の等価によってやっておるわけではないだろうというふうに感じましたので、その点後の疑義が起らないように一応留保して、わが国はわが国として十万円というふうに区切ったわけでございます。
○松本(七)委員 今度の留保の点なのですが、おのおのの加盟国が全部わが国の留保を承認される見込みがありますか。
○高橋(通)政府委員 その点は、ブラッセルのベルギー政府が事務局の役目をいたしておりますので、そこへ問い合せましたら、大体差しつかえないだろうという意見でございましたので、留保したのであります。
○松本(七)委員 万一その留保に反対するような国が出てきた場合には、その国との関係はどうなりますか。
○高橋(通)政府委員 もし明示的に反対いたしますと、結局その国と日本を含めました締約間の会議で決定する、会議の話し合い、外交交渉になるかと思います。
○松本(七)委員 それから最後に、第二次大戦後世界の国家に相当の変動があったわけですね。ここに出てきているように、いろいろな植民地だとかそういうところで、だいぶ大きな変動がきておりますね。この条約の第十三条に規定している地域にどのような具体的な変動が起ったかという点、第二次大戦後さらに第十三条によって宣言した国はあったかどうか。
○高橋(通)政府委員 その点実はその後特に宣言した国その他はございません。変化はございません。ただ、ここにございますように、こういう問題のための一般国際法によって解決される問題だと思いますが、ラトヴィアだとかその他消滅した国の関係は一応問題になるかと思いますけれども、新たに適用地域を宣言したというような国はございません。
○野田委員長 他に御質疑はございませんか。——御質疑がなければ、これにて三件に関する質疑は終了いたしました。 これより討論に入ります。討論の通告があります。これを許します。松本七郎君。
○松本(七)委員 私は今議題になっております二つの文化協定と、それから船荷証券の件に対して、社会党を代表して賛成するわけなのですけれども、ただ文化協定について特に希望を申し上げておきたいと思います。それはさっき外務大臣も直接はっきり御答弁願いましたが、せっかく協定を和んでも十分な文化交流ができないような予算の状態では何もならないと思う。従って今後は協定を結んで、さらに具体的な文化交流の計画を作られた暁には、それが実行できるように、十分な予算の確保について、今までと比較にならないような格段の御努力を特に強くお願いしたいのが第一点。 もう一つは、さっき一般情勢のときに菊池委員からもちょっと御質問が出ましたが、朝海大使のお話、東南アジアといってもいろいろ違うのだ、二つのグループがある。これは共通した今の世界の状態であって、何かというとすぐ二つのブロックに現実に分れておる。そういうときに文化交流をやるのですから、とかく日本は自山主義陣営だからというようなことで、文化交流も一方に片寄る危険もないではないと思います。従って今後は文化交流については、その裏づけになる文化協定を結ぶにしても、一方の陣営に片寄らないように広くどこの国とも文化協定を結び、そして今言うような十分な予算の裏づけを持って、活発な文化交流が行われるように、今後一段の努力を特に強く要望いたしまして、賛成の意見といたします。
○野田委員長 これにて討論は終局いたしました。 採決いたします。日本国とエジプトとの間の文化協定の批准について承認を求めるの件、日本国とイランとの間の文化協定の批准について承認を求めるの件、千九百二十四年八月二十五日にブラッセルで署名された船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約の批准について承認を求めるの件を、それぞれ承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
○野田委員長 御異議なしと認めます。よって右の三件は承認することに決しました。 なお、ただいまの三件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○野田委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。 次会は公報をもってお知らせいたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時二十四分散会