外務委員会 第12号
- 発言数
- 102 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1957/03/16
会議録
○野田委員長 これより会議を開きます。 国際情勢等に関する件について質疑を許します。大西正道君。
○大西委員 岸外務大臣にお伺いいたしますが、初めに、岸外務大臣が外務委員会に顔を出されるのは、たしか一カ月ぶりくらいだと思うのですが、まことに不可解なことだと言わなければならないと思います。それというのも、やはり総理大臣が外相を兼任しているからだと思う。国際情勢がこういう非常にむずかしい段階でありますし、解決すべき多くの問題があるときに、こうして長い間外務委員会を欠席されるということは、やはり国会の審議権に大きな影響があると思います。岸さんは外交方針演説のときにも、内政と外交が一致するというようなことを言っておられるのであって、それもその限りにおいてはけっこうなことでありますけれども、なぜこういう重大なときにいつまでも外相を兼任せられるのか。その理由は何か。あなたは総理の職務に専念されて、すべからく重要な外相の地位は、適当な人に譲られるのが私は常道ではないかと思うのですが、この点いかがですか。
○岸国務大臣 私が外務大臣を兼任いたしましたことは、お話の通り臨時的の措置でございまして、本来の趣旨からいって適当な時期に専任外相を置くことを私も考えております。
○大西委員 この前にもそういう御答弁があったようですが、私どもはこの国会の開会中に専任外務大臣を選任されるのかと期待しておったのですが、そういう御答弁があっても一向に実現を見ないのです。近く国会が終れば訪米されるという見通しだそうですが、その前に専任の外相を置かれますか。それともその後になさいますか。その時期はいつごろになさいますか。
○岸国務大臣 今日いつ私が専任外相を置くという時期を確定的に申し上げることはできませんけれども、私自身今申し上げた通り、総理大臣として内政、外交全体の責任を持っております立場から見て、適当な時期に私は専任外相を置く。私が総理をやっておる間ずっと外務大臣を兼任しているという考えではないということを申し上げましたのと同じ心境でございまして、時期をいつ必ずやるということをここに言明することは私の気持にないのであります。
○大西委員 それではできるだけ早い機会に、表明されたような趣旨に従って、専任外相を置かれることを私は強く要求いたします。 それから国連の総会も終ったようでありまして、この際私は国連におけるわが国の代表の活動を通じて、あなたが従来表明せられておりますところの外交の基本方針が、間違いなくあのヒノキ舞台で実現されたかどうか。こういう問題について、これは反省的な問題になりますが若干伺っておきたいのです。 まずあなたが外交方針の中でも述べておられるし、あるいはまた重光前外務大臣が国連加盟のときに演説をされたその趣旨も、かつまた昨年の暮れであったと思うのですが、十一次国連総会に臨む日本政府の態度という訓令の方針の中にも出ておりましたが、その内容は、私からかいつまんで申し上げますれば、国連中心主義、そして東西の対立に対しては善意の調停者となる、それからAAグループと西欧諸国の間においてはかけ橋となる、こういうふうな趣旨を表明されておるのであります。これは一貫しておるのでありまして、こういう考え方は私どもはまことにけっこうであると考えておるのであります。しかし具体的な重要問題に対する態度に対しての訓令の内容を、私の知っている範囲内において申し上げますと、新規加盟の問題についてでありますけれども、二つに分裂しておるところ、すなわちこれは朝鮮、韓国あるいは南北ヴェトナムというのであろうと思うのですが、そういう国の新規加盟に対しては、いつまでもこの分裂を固定化させるということはよろしくないから審議延期を第一とすること、もし加盟の場合採決の段階になると、南ヴェトナムと韓国の場合は賛成、朝鮮と北ヴェトナムのときは反対するということを指令しておるのでありますが、これは私は基本原則にうたったところの新しい日本の外交方針を具体的な行動の面においてゆがめるものであると思う。具体的な行動の面は、日ソの国交回復のならない以前、国連に加盟できない以前の日本の対米依存の外交方針と私は何ら変りはないと思うのですが、この基本原則と具体的な指導の訓令の方針との食い違いについて、あなたはやはり基本原則が間違いなくここに実現されたと考えられますか、あるいはまたこの具体的な指導は、この段階においてはやはり研究すべき問題であると考えられますか、この点を一つ簡単に明確にお答え願いたい。
○岸国務大臣 御承知のように国際情勢はきわめて複雑微妙でございまして、国連内におけるところの調整も、そういう基本の国際情勢を受けて、非常に複雑微妙なものがございます。従いまして原則はあくまでも原則であり、具体的な問題に関しましては、この国際情勢を頭に置いて判断すべき事柄が少くないと私は思うのであります。従いましてこれはいろいろな批判なり御意見はあろうかと思いますが、私はあくまでも一般原則を根底に置いてそしていろいろな国際情勢をにらみ合して、また国連内の動きを十分に洞察して行動するということが、やはり国連を中心としての日本の代表のとるべき態度である、かように考えております。
○大西委員 そういうふうな具体的な訓令の上にさらに、たしかこれは一月二十三日の特別政治委員会であったと思うのでありますが、この二つの国の加盟に対して採決のときに賛成をするのみならず、アメリカその他の十三国とともにこの二つの国の加盟申請の署名国になっておる、非常に積極的になっておる。採決を迫られたときにはやむを得ずこれに賛成をせよというのは、一応それは現地の情勢も考えなければならぬという考えもわかるけれども、進んでこれの署名国になっているということは、これは何と申しましても基本原則を著しくゆがめるものである、こういうふうに考えるのです。特に、この問題を詳しく申し上げますと、その以前にソ連は北鮮も加え北ヴェトナムも加えた四カ国の一括加盟の申請をしておる。これは私どもの考え方から言えば、イデオロギーやその他は別といたしまして、もし加盟をさせるというのならばこれに賛成するということは、一応私は理屈がわかるのでありますが、採決に対しての賛成のみならず加盟の申請国となっておる。しかもその中にAAグループの国はフィリピンとイラクしかない、ほかはみんなそういうふうな勢力ではないのです。これなんかは何としても私は弁解の余地がなかろうと思う。こういうことになれば、こういう基本原則だとかあるいはあなたの外交方針なんというものは、これは全く具体的な事実において次々とくつがえされるということになる、羊頭を掲げて狗肉を売るということになる。言いかえれば重光さんの調子の高い国連加盟のあの演説なんかも、その言葉の下で日本の代表が国連においてそういうふうな方針をくつがえしているということになると思うのですが、これは一つ率直にあなたはお考えを願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。まあ賛成の問題はいいとして今度の署名の問題です。
○岸国務大臣 もちろん今度の国連総会というものはわれわれの入った第一回の総会でありまして、私は全部を通じてことごとくが将来の日本の国連内における行動のすべての基準を定めたものではないことは言うを待たないのであります。これは先ほど申し上げましたように、韓国の国連加盟について日本が考えを同じくする十数カ国と一緒に署名国になった。署名国になるということは賛成するということよりは一歩進んだ考えであり、従ってそれが及ぼすいろいろな考え、すなわち基本原則との隔たりについては、より一そうひどくなるものじゃないかという今の御意見でありますが。そういう見方はもちろん成り立つと思います。従いましてこの問題を含めて全体の問題につきましては、将来の問題としてなお検討する問題があると私は思います。しかし最初に私がお答え申し上げたように、一般原則の具体的の現地におけるその場その場の処置というものについては、多少今言ったような複雑な現実の動きというものを無視できない、これは会議の性質上そうだろうと思います。そこにやはり全権のある程度の判断の幅を持たしておく必要があると思います。従いまして今の署名した点につきましては御意見もございますし、またわれわれとしてもある程度検討する必要があろうと思いますが、そういう意味において今後の国連の全権の活動については、原則を指示してある程度の幅を持たし、またいろいろな情勢だとか発言もしくは提案に至る情勢について、こっちで判断できるような資料を時々連絡せしめまして、一般原則との調整、訓令との調整をとっていく、こういうことにしたいと思います。
○大西委員 しかもこれの採決においては棄権十六、この多くの国はこれはAAグループなのです。そういたしますと、あなたがいろいろ今答弁をなさったけれども、あなたの外交方針の一つの重要なポイントは、東南アジアの経済開発、経済協力ということを言われておる。そういう一つの方針と、AAグループがたくさん棄権しておるというこういう事実を見ると、これはやはり国連内においても日本はAAグループと緊密な連絡をとって、その一員として行動していない、むしろそれをはずれてしまった行動をしているということになるのではないか。そうでなくても、あなたの言われるところの東南アジアの経済協力というような問題については、戦前のあなたの立場などを考えていろいろと揣摩憶測をしている向きもあるのであります。ますますこういう行動をとることによってAAグループと日本との間にみぞができてくる、こういうふうに考える。やはりあなたの基本的な外交方針とここに食い違いがあると思う。ですからこれは行きがかりにとらわれずに、一つ謙虚に反省を願いたいと思うのです。 次に同じく国連におけるところの大きな問題は、原水爆の実験禁止の問題です。これもあなたはたびたび質問を受けて、答弁も大へんお上手になっておられるようでありますけれども、どうも私は昨今の国内の世論と国連におけるところの日本の代表のとった処置との間には大きなずれがあると思うのです。御承知のように、もう日本の方ではすわり込み船団まで送ろうかというような非常にせっぱ詰まった段階にきておるのに、同じ問題をこの段階において国連においては登録制というような、ああいうまことになまぬるい方法をとっておるのです。また問題をもとに戻せば、あなたの方の基本原則の中にもやはりこの問題については使用禁止その他について積極的な行動をとる、こういうように言っておるのに、これまたこの参加の問題と同じく非常に消極的だ。あなたの説明を聞くと、これは全面禁止への一歩の前進だ、いいことを言ってもほかの国が賛成してくれなければ何にもならぬ、こういう御説明でありますけれども、今の段階になって私は考えますると、結局はあの多くの国の賛成を得た、あるいは得るであろうと言ったあの登録制の行方はどうなっておりますか。総会で決議をされたというなればまだまだのこと、それが軍縮小委員会というような、これまであそこで打ち上げた問題が何もないという、むしろ紙くずかごの中に入れたような問題、抹殺されたような問題になっている、そういう行方になっている。それで果して多くの国々の賛成を得るような処置をとったと言えましょうか。言えないのです。そういうことを考えてみると、やはりわれわれが前から言ったように、この際は、国会においてもたびたび決議をしておるのですから、全面禁止というこの一線を勇敢に、日本国民の血の叫びをあそこで上げるべきだと思う。そういうことをすればほかのものの賛成を得られなかったというけれども、日本の提案をアメリカの案に吸収されたあのいきさつを見、多くの国々の発言を見ますと、ソ連なんかはもとより、あるいはインド、AAグループその他の国々、北欧の国々もそうですけれども、日本は何でもっと思い切らなかったのだろうか、こういうことをたくさん言っているのです。そういうことを考えますと、これも私は岸さんに謙虚に、弁解ではなしに、あなたの特使を出そうという今のこの段階において、国連においてはもっと積極的な基本原則を打ち出すべきではなかったか、これに対する反省を一つ聞きたいと思います。
○岸国務大臣 この問題につきましてはしばしば本会議あるいは予算委員会等におきましても御質問がありまして、私から説明を申し上げておるのであります。決して説明が上手になったわけではございませんで、最初から一貫した説明を申し上げておるのであります。沢田代表が……。(大西委員「いきさつはいいです。あなたの心境が聞きたいのです。」と呼ぶ)あの提案をした理由にもはっきりしているように、日本国民の趣旨というのははっきりしているのです。私どもはそれを実現することに、ことに私はあらゆる機会においてほんとうに私のできる限りの努力を尽して、この禁止に持っていくという意図を持って、あらゆる面において努力しておるつもりでございます。今後も努力するつもりであります。国連における今度の沢田代表の提案のいきさつ、あるいはそれの扱い等を見まして国連加盟の諸国がどういう状況にあるかというこの現実を、私どもは非常によく把握することができたと思うのであります。今後といえども国連を通じ、あるいはその他の機関を通じて、国民の心からなる悲願ともいうべき実験禁止の問題を、あらゆる機会を通じて世界の世論に訴えて、これを実現するということに努力をしたいと思います。
○大西委員 答弁になっておらぬですよ。そういういきさつのことは私はたびたび聞いていることなのです。一方では原水爆の実験即時禁止ということを決議し、申し入れておるのに、一方では国連のヒノキ舞台においては、そういうこととはるかに遠ざかったところの登録制ということを言っておる。明らかにこの原水爆の実験に関しては日本の外交は二つに分れて支離滅裂だ。国連では登録制ということを出しておいて、一方においては特使を出したりして向うの政府に対して交渉してみたって、それは応じつこないですよ。だれが考えてみたってわかる。早い話が、「英国はこう考える」という駐日英国大使館情報部発行の責任あるパンフレットの中にこういうことを言っておる。「日本、ノルウエー、カナダ代表が提出した核兵器実験の意図はすべて国連に事前届出を要するという決議案と全く意見を一にする。これまでそうした場合英米政府がしたことは実際に国連に届出でるという形はとっていないが、かかわりのありそうなすべての国の政府に外交機関を通じて十分この実験を予告しているから同じことに帰着する。」こう言っているのです。もし国連における日本の提案である登録制が実施されましても、今日本の当面の緊急のクリスマス島におけるところの英国の実験禁止には何も拘束力を持たぬ。痛くもかゆくもない。登録するなれば英国はすでに各国に通知済みである、こう言っておるではありませんか。そうでしょう。こういう事実を前にして、なおあれが十全の策であった、こう考えられるかどうかというのです。これは率直におっしゃっていただきたい。そういう言い抜けばできませんですよ。国民の世論を率直に国外に反映するといっても、この言葉はどうなんですか。
○岸国務大臣 英米等が実験をしております言い分を聞いてみますと、これはソ連に対抗する意味においてこれをやらなければならぬということを申しております。ところがソ連は御承知の通り届出も通知もやらずに行われております。従って原子力のこの問題を国際管理に移してやろうという一つの提案も従来行われてきておることから見ましても、これを持っておる各国が、その自分の持っておる兵器をいろいろな形において対抗的な意味で実験をするというのが、現実の国際情勢であることも御承知の通りであります。従って全部これが禁止されるということが一番望ましいし、またわれわれもそれを期待しており、英国、米国のみならず、われわれに通知のないソ連に対しても、私は強硬にこの中止方を申し入れております。また国会における国民の意思表示も、それが明確に出ておるのであって、政府はそのつど従来実験をした三国に対して強硬に中止を申し入れておる。従ってそういう情勢でありますから、国際連合において一つ登録してこれを管理させるということは、やはり現状からいうと、一国だけがやめるということはなかなかできないので、今の国際情勢を考えてみますと、国際連合がこれを管理するという段階に置くことが一段の進歩であり、禁止への現実的な有効な手段であると考えてそういう提案が行われ、またその趣旨をはっきりと総会においても述べておるというのが、この間の実情であります。従いまして、あくまでも、この実験禁止という国民の強い念願を達成せしめるために、政府としてはあらゆる努力をするけれども、国際連合におけることについては、そういう今の御批判もありますけれども、これは決して言い抜けではなしに、そういう現状であり、その現状を前提とすると、これは一歩の進歩であるというふうに考えております。
○大西委員 それでは、もし国連においてあの三国の登録制の提案が採択されたといたしましても、今回のクリスマス島における実験については、これによって中止されるとかそういうふうな有効な手が何ら打てなかったというふうに考えてよろしいですか。
○岸国務大臣 もしもこの案が採択をされるという情勢であったならば、日本を中心としての世界各国のそれを中止しろという要望、イギリスに対して反省を求める力は、今の状態よりは一そう強かったという、ことになると思います。
○大西委員 これは結果からいうと、外国の報道機関も言っておるように、登録制ということは、結局無届でやっておるソ連に対して非難をする米英その他の一つの宣伝に同調したことにほかならない、こういうことを言っておるのですが、そういうところもなきにしもあらずと思うのです。そういうふうな外交では、せっかくあなたが出されたこの基本的な線というものが事ごとにくずれていくことを憂えるのです。時間がありませんからこの問題はこれだけにしておきます。 それから、今外交の問題で一番重大な問題は対米関係特に安保条約をどうするかということです。この問題についてはたびたび質問がなされてあなたはお答えになっておるのです。私の承知する範囲では、衆議院の予算委員会で、和田委員の質問に対しまして、あなたは繰り返し繰り返しお答えになっておるのでありますが、それを見ますとこういうふうに言われておるのであります。「私どもは現在決してこの安保条約や行政協定のままで満足しておるわけではございませんから、」云々と言われ、「廃止の方向にわれわれは進んでいかなければならぬことは言うを待たないのであります。」あるいはまた、「安保条約や行政協定のごときものをなくするような方向には進んでいきたいと思っております。」こう言われておるのでありますが、廃止の方向に御決意になっておるのですか。それならばまことにけっこうなことで、岸外務大臣見上げた態度であると思うのであります。こういうふうに言明されたのだからそうであると思うのでありますが、なお念のために伺っておきます。
○岸国務大臣 私は安保条約や行政協定のもとに日本の安全保障が行われておるというこの状況については、決して満足しておらない。従ってそういう状況をなくしてみずからの力で祖国を防衛し、また国際の緊張緩和などあらゆる面に努力して、そういうものがなくなるということを念願しておることは国民全般の要望であり、私は日本国民として今でも率直にそう思っております。
○大西委員 そうしますと、廃止の方向に検討を進められておるとこう言うのですか、あるいはまた改廃というような言葉であなたはおっしゃっておられますけれども、改正の方向を目ざしておられるのですか、この点は今のようなあまり抽象的なことでなしに、差し迫った問題でありますから、一つもう少し具体的な方向を示してもらいたい。
○岸国務大臣 私は和田君の質問に対しましても、なおお答えを申し上げておるのでありますが、究極の私の念願は今のところにあることは間違いないのでありますが、それに至るのには一時に一飛びにいけるものじゃございません。従ってその方向に向って一つの環境を作っていくということ、私の現実の外交の問題としては、そうとらざるを得ないと思うのであります。従いましてあるいはこれの改正すべき点があれば改訂もしましょうし、それはこれを強化して、ますます恒久化すという方向に進むのじゃなしに、究極においてはわれわれの力でわれわれが祖国を防衛し、そうしてさらに国際連合の集団安全保障の力によって、われわれが完全に安全保障ができるという方向に持っていくというのが、私の根本的な考え方であります。それにはやはり段階的に進んでいかなければならないのは論を待たないのであります。
○大西委員 それでは私は観点を変えてお伺いいたしますが、あなたは今の安全保障条約をこれでいいとは思わぬ、将来は改廃しなければならぬ、こう言われる。あなたは不満のところがあると言われるのですが、それではあなたの言われる不満の個所というのはどういうところなのでしょう。どういうところが御不満で、どういうことがあるからこの際一つ改めなければならぬ、こうお考えになるのですか。
○岸国務大臣 改めるべき具体的の問題は、これは私はその際にも申し上げたのでありますけれども、われわれが十分検討し、そうしてアメリカ側と話し合わなければならぬ問題でありますから、こういう点、こういう点、こういう点ということを、こういう席で申し上げるのは適当でないから、これは具体的に申し上げることだけは遠慮さしていただきたいと思います。
○大西委員 なるほど折衝の問題もありますから、具体的なことをここで言っていただくことは無理でありましょう。しかしながら、あなたはとにかく不満である、改めなければならぬ、こういうことを言っておられるのでありますが、基本的な考え方、これはやはりそういうものをどこかにはっきりと出していただかなければ、ただ何かわからないけれども話し合うと言われましても——私は具体的な問題までは申し上げませんけれども、基本的な方向はどこにあるのですか。私から申し上げますと、これは安保条約が作られた当時から、あの十二国会におきましていろいろと論議されました。この安保条約の中に含まれているところの片務的な要素をむしろ払拭して、双務的なものにするとか、片務的な駐留協定のような内容を持っておりますから、これを相互防衛体制に持っていくとか、そういうことが強く言われたのでありますが、改める改めると言われても、改めるためにはいろいろなあなたは具体的な準備もしなければならぬと言っておられる。その目的がただ改めるというだけでは、どういう方向に改めようとしておられるのか、それだけは言い得ると思うし、言わなければならぬと私は思うのです。基本方針でよろしいから一つおっしゃっていただきたい。
○岸国務大臣 今お話がありました双務、片務という問題も、ただそういう抽象的に申しますと、これはいろいろな誤解が私はあると思います。たとえば片務的であるから双務的にするというと、相互防衛ということで、日本が侵害された場合にはアメリカ軍が来て日本を助けるが、アメリカが侵害された場合においては、では日本が双務的にすぐアメリカに出兵してこれを助けることができるかというようなことを論じていきましても、ずいぶんそこに片務的、双務的という言葉だけでは誤解を招く私はなにがあると思います。気持は要するに、この条約が制定された当時と日本の今日の状況、また国際情勢というものが変ってきておる。すなわち日本が日本の自主独立の立場から、とにかく現在のところにおいては日米共同防衛の何によって、日本の安全保障をやらなければならぬけれども、その根本は、われわれも現状においては認めるけれども、われわれの自主独立の立場からこれを検討してみるというと望ましくない点が、また改訂を要する点が私はあろうと思います。そういう意味において抽象的な方針から言えば、日本の自主独立完成の方向に向ってこれを改訂していくというような気持でおるわけであります。
○大西委員 どうもその点はあまりにもばく然として、それでは答弁にならぬと思う。私はそういう自主独立の立場ということはわかっておる。しかしながらこの改訂の方向は、やはり相反する二つの方向に進み得ると思う。私が今言いましたような、片務的な駐留協定というようなものを改めてむしろ双務的な相互防衛的なものに持っていく、こういうふうに改めていくという行き方と、むしろこの安保条約と日米関係を御破算に持っていく、そして日本を含むところの関係各国によるところの安全保障体制に持っていく、こういうような方向と両方あると思う。私どもは前者はとらないところです。しかしながら、おそらくこれまでの政府並びに与党の安保条約制定当時よりその後の動きを見ますと、どうしても私が今申し上げましたような方向に進まざるを得ないと思う。もしそうなれば大へんな問題でありますから私は言っておるのでありますが、これはあなたとしましても今度訪米されるわけです。そのときにこの問題は当然論議されるわけです。むしろこちらからこの問題に対して積極的な意見を述べなければならぬのですから、この際一つその方向だけははっきりしてもらいたい。自主独立の立場というようなものはきまり切っておる。その自主独立にするためには、この安保条約のどこを改めるべきか、簡単なんですよ、こんなものただの五条じゃないですか。その中でも特に問題なのは、ただ第一条の数行じゃないですか。そしてその特色ははっきりしておる。今申し上げたそれ以外は行政協定にまかしてある。ですからあなたが安保条約を改めなければならぬというのはどこなんです、どういう方向に進もうとしておる、この二つについて答えを願いたい。もしそれがお答えできないのなれば、私が申し上げましたような、そういう双務的な相互防衛体制に持っていこうとするのであるかどうかということに対して御返答願いたい。
○岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げたように、私は言葉の上からいって双務的にするとか、あるいは相互防衛にするというようなことは、日本の国としては考えられないのじゃないかと思います。そうじゃなしに、やはりこの問題は先ほど来私が申し上げておるように、こういう体制をなくする方向に自分は進んでいくということを、究極の目的としておるということから申しますと、私はもちろん現在の国際情勢から申しまして、日本一国の自力で作るところの防衛努力で、日本の絶対的安全保障がされるとは考えておりません。どうしても集団的な安全保障の体制が必要であってそれは国際連合の集団安全保障というものが強化され、それが世界の平和を確保するに足る集団安全保障の形になれば一番望ましいのである。日本も国際連合の一員として、その方向に進んでいかなければならぬ。それまでは日米共同防衛の方法によって日本の安全保障を維持する必要があるというのが根本の考え方でございまして、しかしそれに基いて安保条約及び行政協定というものが一連のものとしてでき上って、現在の日米共同防衛ができておりますけれども、それが今申し上げる独立の完成や、自主独立の立場からこれを今日検討してみますと、これらが制定された当時においては占領がやめられて、サンフランシスコ条約において政治的独立が認められ、そのときにでき上ったものでありまして、情勢がずいぶん変っておってこれらのものを施行した後において日本国民の受け取り方、またこれが百米両国の将来の友好関係の上から見て望ましくない点がいろいろ、とできてきている。すなわちそれは結局日本とアメリカとができるだけ対等の地位において物事を考え、この防衛を共同的に考えるという立場から検討することが必要である、こういうふうに考えております。
○大西委員 それではあなたの言われる自主独立の立場から考えると、日米関係を双務的な防衛体制に持っていくということは好ましいと考えられますかどうですか。あなたの言われる自主独立の立場から、私は具体的に問題を提起しますが、この片務的な駐兵協定のようなものを、双務的な相互安全保障条約のようなものに切りかえるということは、自主独立の立場からいって好ましいかどうかということを聞いておる。
○岸国務大臣 片務的であることはこれは望ましくないという考え方は私も賛成であります。しかし直ちに双務的に相互安全保障として日本が、日本の憲法の規定もございますし、日本の今やっておる防衛力の性格から申しましても、直ちにいわゆる完全なる日米相互防衛の立場に立って、双務的な条約なり体制を作るということは、私は今日の現状においてはできないのではないか、こういうふうに思っております。
○野田委員長 大西委員に御注意します。時間がだいぶん過ぎておりますから簡単に願います。
○大西委員 どうもこの問題は結論は何ですが、そうするとあなたは一定の方針は持っておるというわけですが、しかし具体的なことは言えない、こういうお話だけれども、結局お伺いすると何が何だかわからないということなのです。これはまあアメリカと話し合ってみて、向うさんの出方を聞いて、それからまた何とかそのときにということにしか私にはとれない。私はこれでは不親切だと思う。もしわかっておって言われないなら不親切だと思う。わからなければ方針がないのです。あなたが言われるように安保条約を改廃すると言っても、これはあなたがこうしようと思ったからできるのじゃない。それ国民の強い世論が盛り上って、その国民の世論の上に相手を屈服させなければならぬ、納得させなければならぬでしょう。これは私が言うまでもなく古今東西の歴史で明らかだ。日本の明治維新前後からのあの不平等条約を改正するために、どれだけの長い年月を要し、どれだけの国民の強い世論の盛り上りがあったかということはおわかりだと思う。あなたは条約を改めなければならぬということを言いながら、その基本的な方向さえ出さぬ。この国会においてその基本的な方向を今打ち出さなければ、どうしてこの安保条約の改正をやろうということが言えますか。私はこの点はまことに遺憾だと思う。 それからもう一つだけですが、三日ほど前の十二日だと思いますが、参議院の予算委員会における曾祢委員の質問に対しまして、やはりこれに関する問題でありますが、アメリカとの安保条約を改める、それには準備が要る、環境を作らなければならぬ、そのためには自衛力の増強も一つの条件だ、こう言っておられる。そうしてそのときに自衛力の限界は何だ、日本の自衛体制の限界とは何だ、こういう質問に対しましてあなたと小瀧防衛庁長官が答えられておるのでありますが、それによりますと、日本の自衛力の限界というものは、これは局地戦争を対象としたものであって、局地的な紛争というものはこれまでの情勢から見ましてもあり得ることでありますので、それに対処する措置を考えておるわけであります、こういうことを言っておられるのです。あなたもだいぶん困られたらしく、答弁がしどろもどろで要領を得ませんけれども、全面的な米ソの戦争というようなものに対しては、日本の自衛というようなものは、これはそういうふうに考えることは一面的だ、こう言っておられるのです。一面的だということは何か私はよくわからないが、これを裏打ちするように小滝長官が、日本の自衛の限界というものは局地的な紛争に対処するものだ、こう言っておられる。これはおそらく次の問題としては原子兵器の持ち込みに対する予防線としてこういうことを言わざるを得なくなったと私は見ておる。それを持ち込まないということを言うために。しかしそうだとすれば——日本の自衛の限界は、こういう局地的な紛争に対処するためだ。その具体的なことをいろいろ言っております。軍艦がどうしたとか上陸するときはどうするとか、レーダーをどうするとかいうようなことを言っておりますが、この点はもしそういうことであるといたしますれば、私は次に重大な問題が出てくると思いますが、もう一回この点を確認しておきます。
○岸国務大臣 先ほどもちょっと触れたかと思いますが、私は今の国際情勢からいって、一国の防衛力をもって、一国を完全に防ぎ得る、どういう侵害があってもそれに対して完全に防ぎ得るということは、今の兵器の発達やその他の情勢から見て、そういうことのでき得る国と考えられるのはソ連と米国がそれとして考えられるだけでありまして、従って、日本の場合におきましても、一国でもって不正の侵略に対してわれわれの防衛力をもって完全に祖国及び民族を防衛し得るというところまでわれわれの防衛力を高めていくということは、とうていできることでもありませんし、われわれはそういうことは考えていないというのが根本の考え方であります。しかし同時にわれわれはやはり——それでは一体日本の仮想敵国というのどこだ、こういうような質問が他の場合にあったのでありますが、われわれはそういう仮想敵国を設けて、どれに対処して、どれと防衛力を競うというような考え方はもちろん持たないが、とにかく国民が各種の情勢の判断から考えまして、また政府もその国民の意思を受けて、一応日本の国が安全である、日本のわれわれの力で急迫不正の侵害に対して祖国の安全が一応保てるという点まで、われわれの経済力に順応して漸次増強していく。そうして今のお話のような非常な世界戦争とかなんとかいうような、あるいは米ソがどうするとか侵略してくるというような場合においてこれに対するわれわれの祖国の安全保障というものは、集団安全保障の形において国連においてこれが安全の保障が保てるということを願って、われわれの安全を確保していくということ以外には私はないと思うのです。そういう意味において一方から言うと、防衛力の増強が無制限ではないかという何に対しては、われわれはおのずからそこに限度があると思う。しかしそれをはっきりと地上軍が幾らあったらいいのだ、あるいは飛行機が何機あったら、あるいは海上の兵力がどれだけあったらいいというようなことを数字的に何するわけにいかないが、われわれはやはりそういう各般の事情を考えて長期防衛計画というものを立てて、一応現在の国際情勢の分析及び判断の上において祖国が安全である、従って国民も安全感を持ち得るというものを持っていくのが、われわれは防衛の根本の考え方である、とこう思うのであります。
○野田委員長 大西君、もうあなたの時間をだいぶ超過しております。簡単に願います。
○大西委員 われわれが根本的な考え方というのは、学校の先生の抽象的な講義みたいなことを聞いているのじゃないのです。現実にあなたの答えられた、局地的な紛争に対する十分な備え、これが一応の限界だと言われる。もしそうならば、あなたはそのときにも答えられているが、日本の防衛計画が立たぬ、長期防衛計画が立たぬのだ、だから安保条約の改正もまだ何とも言えない、こういうことを言っておられるのですけれども、局地的な紛争ということになれば、日本の置かれる立場というものは、米ソ中を除けばこれが戦えば局地的な戦争ではないでしょう。そうするとあと残ったのはどこですか。もう韓国か南ヴェトナムか、それくらいのものでしょう。そういう仮想敵国は持たない、とこう逃げられると思うのです。しかし局地的な紛争というものに限定すれば、日本の防衛計画というものは簡単に立つはずです。しかしそうじゃない。日本の防衛計画はそうじゃない。あなたはそう言っているけれども、そうじゃない。ですから問題が大きくなっている。そこでもうこれで終りますが、この間から問題になっております原子兵器の持ち込みの問題ですね。この問題については、あなたは持ち込ませないと、だんだん表現が強くなって最近は、その表現だけ聞いていると、安心してもよさそうな気がするのですけれども、やはり国民はますます不安になっているのです。それというのも、あなたの言われるような情勢じゃないのです。世界情勢からいっても、あるいは戦略体制からいっても、あるいは最近の原子兵器の急速なる発達の段階からいっても、これを持ち込まないというようなことは——これは日本と米国との間に共同防衛の安保条約の存在する以上、持ち込まざるを得ないということになるのは、もう容易に結論づけられることなのです。また誘導兵器を持ち込んでいる。これは原子兵器じゃないと言われるけれども、しかし、誘導兵器に原子弾頭をつけなくて、誘導兵器の意味はないのです。誘導兵器というものは、原子爆弾を運ぶところの一つの手段なのです。だからそういうことを言われても、われわれはそういう軍事的な知識には乏しいけれども、いささか軍事専門家の意見を聞けば、そういう誘導兵器を持ち込んだが、それが原子兵器は持ち込まないのだということにはならぬと私は思う。ですから、私どもは非常に不安を感じている。国民も不安を感じているのです。それに対してあなたは、最近の言葉を聞きますと、重光・アリソンの会談による約束によって、持ち込むときには相談をする、そのときには私は断わるのだ、こう言っておられる。ところが、これを一つお聞きしますけれども、重光・アリソンのこの会談というのは、単なる口約束です。口約束も、これは十分尊重さるべきだ、こういうようにあなたはお考えであろうと思うけれども、しかしこれは、もしあなたがそれだけの確信をお持ちになれば、重光さんもなくなった、あるいはアリソンさんも転出したようでありますから、そして新しいマッカーサー大使が見え、あなたも新しい外相としてお立ちになって、そして新しい一つの国民の不安が今醸成されているこのときに、あなたがもし重光・アリソン会談のあの趣旨がほんとうに実行される自信があると言われるなれば、これはすべからく国民が安心するように、一つの何らかの形の公式的な文書を交換して、その取りきめというものをはっきりとした約束の裏づけのあるものにしたいと思うのです。それが当然の義務であろうと私は思う。それは大丈夫だとあなたが言われるなれば、こういうことをやるには何ら障害はない、易々たる問題だと思うのですが。最後にこのことを一つお聞きしておきます。その準備が、おありであるかどうか。ことによって国会で私どもが、こういうものを一つの外交文書に形式化せよという意思表示をしたときには、あなた方はそれに対しての十分の用意があるかどうか、これを一つお聞きしておいて、私の質問を終りたいと思います。
○岸国務大臣 アメリカの原子部隊を日本に駐留せしめるとか、あるいは日本にどうするというふうなことが新聞に伝わった後におきまして、国務省及び国防省は正式にこれを否定いたしました。またその後さらにこれを敷衍して、そういう場合においては日本の意向を無視して持ってくることはない、日本に相談するということが言明されております。従って、過去においてもそういうような原子兵器が持ち込まれたことはございませんし、私はアメリカ国務省及び国防省のその言明は、十分信じてしかるべきものである、かように考えております。一部において、そういう不安があるからさらにそれを文書にしろという御意見もございますけれども、私はその必要がないだろうということを御答弁申し上げておるのでありまして、今私としてはそういう用意なり、そういう考えは持っておりません。
○野田委員長 岡田春夫君。
○岡田委員 制限の時間が三十分ですから、要点を伺って、簡潔に明快な御答弁を願いたい。 岸総理大臣兼外務大臣の答弁は、なかなか耳ざわりのいいことを言われることが多い。その限りにおいては国民の納得性もあるように感ぜられますけれどれも、しかし、事国際問題に関しては、そういう耳ざわりのいい言葉の場合にしても、やはり国際法上の通念あるいは国連憲章——特に国連憲章だと思うのだが、こういう憲章上違反しておらないという裏づけがなければ、そういう発言は国際的な信義を裏切る結果になる。こういう点であなたの発言というものはきわめて重要であろうと私は考えておるわけであります。そういう意味で、特に先ほど大西君からの御質問にもありましたように、国連中心主義というような点について——再三大臣は、答弁の機会においてそういう言を使っておられます。この国連中心主義というのは、具体的にお話しになるならば、一体どういうことを意味するのか。私の想像するところによると、国連憲章の第一条、第二条において、国連憲章の原則と目的が明らかになっておる。この原則と目的をあくまでも日本の国は国の方針として守るのである、こういうように理解すべきではないかと思いますが、この点はいかがでございますか。
○岸国務大臣 御説の通りに私も考えております。
○岡田委員 この国連憲章の第一条、第二条というのは、御承知のように一条においては四項目に分けられ、二条においては七項目に分けられていろいろ重要な点の規定があるわけであります。たとえば例をあげて申し上げますと、第一条の二項においては、「人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく」、いわゆる人民の自決の原則というものが明らかにうたわれておる。二条の七項においては、国内における内政不干渉の原則が明らかにうたわれておる。こういう点が今後の国際政治の面においてはきわめて重要な問題になり、日本の今後の外交政策としては特に重要な問題だろうと思いますが、この点ももちろんお認めになるであろうと思いますけれども、いかがですか。
○岸国務大臣 御意見の通りに考えます。
○岡田委員 そこで、先程の質問応答をだんだん伺っていると、気になることが一つあるわけであります。と申しますことは、この間の国連総会において、日本が韓国とヴェトナムに対して提案国になった。こういう提案国にたったということは、もちろん私もそれは間違いないと思うのでありますが、ヴェトナムの地位の問題につきましてヴェトナムという国はどこまでを国境線として、どういう領域の国として、提案国になられたのか、この点をまず伺いたい。
○岸国務大臣 南ヴェトナムの国境は、今日、北緯十六度の線で南北を分界されておる、こういうのが一般の考え方だと思います。
○岡田委員 それでは伺いますが、この間の国連総会の提案国としては、その十六度の線までの南ヴェトナムとしての提案をされたのでありますか、どうでありますか。
○岸国務大臣 その意味でございます。
○岡田委員 それでは、あなた御存じだろうと思いますが、ジュネーヴにおいて、当事国であるフランスも参加いたしまして休戦協定が行われたのです。この休戦協定においては、一九五六年の七月に南と北との統一選挙を行なって、ヴェトナムを統一するということが明らかに規定されております。従いまして、この南と北とは将来、少くとも五六年の七月までには統一されることが明確な規定になっておる。こういう点については、御存じだろうと思いますが、いかがでございますか。
○岸国務大臣 その事実は承知いたしておりますが、ヴェトナムの現状は今お話しになった協定ですか、それを現実に認めて統一の選挙をやるということをやっておらないというのが現実でございますから、その事実は私は一応承知いたしておりますが、現実はそうなっておらないこともまた事実なのであります。
○岡田委員 朝鮮の問題についても一つ伺いますが、韓国を提案された場合の国境線をどこへ置いて提案をされましたか。
○岸国務大臣 朝鮮と韓国との分界は三十八度線を境界として韓国というものを考えております。
○岡田委員 朝鮮の三十八度線というのは休戦協定の線であります。韓国の憲法によると、いわゆる韓国の領土というものは鴨緑江になっております。とするならば、あなたの提案された三十八度線の提案というものは、韓国にとってはこの憲法の方針に従うものではないことになると思うが、この点はいかがでございますか。
○岸国務大臣 現実の韓国の統治権の及ぶ範囲として一般に承認されておるところは、三十八度線を分界としておると現実に考えられておるのが私は事実であろうと思います。
○岡田委員 ヴェトナムの問題にしても韓国の問題にしても、休戦上の暫定的な措置として十六度線並びに三十八度線を引いたものだ、この点は間違いないことであろうと私は考えます。とするならば、その十六度線、三十八度線を国境として提案されるということは、逆に言うならば、休戦協定の線をもってそこに国を作って、二つの国の対立をあくまでも恒久化しようという結果になる。こういう提案をなされたことであるとわれわれは考えるのですが、いかがでございますか。なお御参考までに申し上げますれば、先ほど申し上げた、ヴェトナムの場合には、一九五六年の七月に自由選挙を行う、いずれはこれは統一しなければならないということが、民族自決の原則から言っても当然のことである。それから韓国の問題にしても、韓国は鴨緑江の線までと言い、朝鮮人民民主主義共和国も一番南の端までを国の国境線と言っておる。とするならばここにおいても民族自決の原則から言って、一つの朝鮮としての提案を行うならいざ知らず、そこに線を引いた提案を行うということは、日本の国自身も紛争対立を恒久化するという客観的な結果責任を負わなければならないと思うのですが、この点はいかがでございますか。
○岸国務大臣 これはわれわれは民族が統一いたしまして、現実の統治の分界というものがさらに撤廃されて統一されるならば、それが国連において代表権を持つ、またそれが加入国であると考えることは当然であります。ただ、たとえ休戦のときに定められた線でありましょうとも、国際的に見て、現実の問題が、統治権の現実に及ぶ範囲がそこにあるという事実に基いて、一応韓国であるとか、あるいはヴェトナムというものを考えるというのは、これはやはり国際通念からいって、それが普通の常識的な解釈であろうと思うのであります。
○岡田委員 これだけに時間を取りたくないので進めますけれども、しかし憲章の第一条の第二項にある民族自決の原則から言うならば、そのような提案が不適当であろうということはおわかりになろうと思うのであります。この憲章と今の提案との矛盾についてもお答えをいただきたいと思います。
○岸国務大臣 今お答えを申し上げましたように、民族の意思がはっきり統一したものとして、それが現実化されるときにおきましては、これを認めるべきことは当然だと思います。しかし現実がそこまで行っておらないときにおいて、私はこの段階的に進んでいく国連の現状から見ますと、現実の統治権の及ぶ範囲をどういうふうに認定してそうしてこれをメンバーとして扱うかということは、決して民族の分裂を恒久化すという考え方ではないと思います。
○岡田委員 この点もっとやりたいのですが、これはあとにいたしましょう。台湾の問題もあるわけでありますから、こういう点からいっても問題が残るという意味では重要であろうと思います。 国連憲章の問題に戻していただきますが、国連憲章の中には旧敵国——旧敵国というのは日本も入るわけですが、この旧敵国に対しては一つの制限規定が設けられております。言葉をかえて言うならば差別が行われるわけです。これは五十三条と百七条に制限規定があるわけですが、日本が国連に加盟した現在においてもこの制限規定を受けて、何らかの差別の待遇を日本が国連の活動において受けるものであるかどうか、この点は重要でありますから一つ明確な御答弁を願いたい。
○岸国務大臣 条約上受けることはないものと思います。
○岡田委員 ないという点をはっきり御答弁になりましたから次に進みますが、それでは百三条に国連憲章優先の原則というのがあります。たとえば日本が——具体的に言いますと、日本がいろいろな国と結んだ条約と国連憲章とが抵触をするような場合においては国連憲章が優先をするのである、このように百三条の解釈をわれわれはすべきだろうと思いますが、この点は日本の政府としても国連憲章の優先の原則をお認め一になりますか、いかがでありますか。
○岸国務大臣 その通りに考えます。
○岡田委員 それでは続いて伺いますが、国連憲章の条章について解釈がいろいろできるような場合に、日本政府はどのような態度をおとりになるかということを伺いたいのです。私は国連憲章ができる経過を見て、いわゆるダンバートン・オークスの提案ですか、あの提案以降においてサンフランシスコで国連憲章の制定会議がありました。この制定会議で各種委員会を作りまして国連憲章が最終的に決定されたわけであります。で、このサンフランシスコ会議における決定、その審議におけるところの総会の決定というものが、解釈上の原則になるとわれわれは考えます。ということは、ちょうど国会において法律が出されて、その法律についていろいろ問題が起った場合に、いわゆる立法のときの審議の経過、精神というものが一つの大きな柱になってくると同じような考え方であると思いますが、この点はいかがでございましょうか。
○岸国務大臣 条約の解釈とかあるいは法律の解釈というものは御承知の通りいろいろな意見が出てくるわけです。それをどこが正しいか、どう解釈すべきかということにつきまして立法なりあるいは条約の制定されるときの審議された意見等は、重要なる解釈上の基準になることは当然であると思います。しかしそれが唯一であるかどうかは規定なりいろいろな解釈の問題において、また論議があろうかと思いますが、御意見のように重要な一つの要素になることは疑いないと思います。
○岡田委員 しかし、これは条約にしても法律にしても、制定のときの精神というものがあるわけですから、いろいろな法律の場合にはそれに基いて政令とか、いろいろなものができるわけです。政令によって解釈が明確になってくるわけですけれども、しかし、その政令は立法当時の精神、たとえば具体的に言えば、ここの国会において提案されて、そうしてそれが議決されて、委員長の報告通り可決されたその内容が基礎にならなければ、それと全然正反対の政令というものを出すことはできないだろうと思うのですが、この点はいかがでありますか。
○岸国務大臣 今申し上げましたように、やはり立法当時あるいは条約が結ばれた当時におけるいろいろな趣旨だとか理由であるとかというものが、条約や法律を解釈する重要な材料になることは、これはいなむことができませんけれども、しかし法律におきましても、条文の解釈というものについては、ただそれだけですべてを律するわけにいかないいろいろな何がありますから、条約についてもやはりそれが重要な一つの要素であると考えることが適当であろうと思います。
○岡田委員 これもあまり時間が使えないので、国連の中における日本の活動についてもう一点だけ私伺っておきたいと思うのです。 最近の新聞によると、婦人の地位の委員会並びに人口委員会に日本が理事として立候補するというようなことを見たわけであります。これは御承知のように、国連の中の経済社会理事会の中の一つの職能委員会としてあるわけでありますが、経済社会理事会の中で重要な問題は、世界人権宣言というものについて、日本がその宣言というものに署名をすることが私は重要であろうと思う。この世界人権宣言に対していまだに日本が署名をしておらないようでありますが、これについては一体どういうわけで署名をしておらないのか。 それからもう一点大臣に伺いますが、いわゆる一般にジェノサイドといわれております集団殺害禁止に関する条約があります。これは原水爆禁止にも実は関連するわけであります。集団殺害禁止というのは戦時を問わず、平時を問わず、集団殺害というものを許さない、そういう禁止の条約があるのでありますが、原水爆の問題が非常に大きな問題になっております今日、なぜこのジェノサイドに日本が加盟をしないのか、こういう点についても国連の活動の一つとして、人権宣言と二つの点について御答弁を願いたいと思います。
○岸国務大臣 両件とも外務省において目下いろいろな方面のことを研究いたしておるそうでありますから、まだ結論が出ないそうでありますけれども、研究中と御了承願います。
○岡田委員 それはぜひ一つ早急に研究を終結されて加盟されることを望んでおきます。 そこで続いて私は沖縄の問題に入りたいと思うのでありますが、いわゆるサンフランシスコ条約第三条の解釈、これは沖縄をアメリカを唯一の施政権者とする国連の信託統治制度のもとに置くということを予定されていると解釈すべきであるかどうか。読んでみましょうか。前段は、沖縄、小笠原諸島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度のもとにおくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ可決されるまでは施政権はアメリカが持つ、こういうことですが、これはアメリカがいずれ信託統治地域にするということを予定した条約と理解すべきでありますかどうでありますか。
○岸国務大臣 条約上の文理解釈から見ますと、信託統治にするということを予定していると解釈すべきであろうと思います。しかし現実の今までの日米の間の折衝によりますと、アメリカがそれの三権を持っている、施政権を持つことの必要がなくなれば日本に返す意向であって、信託統治に移す意向は持っておらないようであります。
○岡田委員 それでは、条約上からいうと信託統治が予定されている、事実の上においては信託統治が予定されておらないという点は、私はきわめて重大であると思う。信託統治に予定されているからこそ施政権を今握っているのである、日本が潜在主権を持たされているのであって、信託統治制度を予定されておらないとするならば、その第三条の後段の経過措置であるところの施政権というものは許されないものであるという法的解釈が出てくるのではないか。
○岸国務大臣 これは今文理解釈上予定されているということを申し上げましたが、そのもとに条約の規定はずっとされていると思います。実際問題としてアメリカはその信託統治にせずに、日本に返す意向であるようであるということは、日米の間の折衝でわれわれがうかがい知っていることであります。文理上は予定されている、こう解釈しております。
○岡田委員 これは政治論でなくて、重大な問題だと思う。条約の規定によると信託統治が予定され、現実において信託統治が予定されておらないとすれば、アメリカはこの条約に違反しているということになりませんか。(「条約違反ですよ」と呼ぶ者あり)あなたはそういう御答弁になるからそういうように私は伺わざるを得ない。三条後段を一つ特にごらん下さい。
○岸国務大臣 三条の規定はアメリカの一つの権利を規定しておって、それに対して日本は、その提案に対して同意するということを規定しているのでありまして従ってアメリカがそれを国際連合の信託統治に置くという提案をする場合には、いかなる提案にも同意する義務が日本の方にあるのでありまして、アメリカの方でその信託統治に対することの権利を放棄することは、私はアメリカの方の権利の問題だと思います。
○岡田委員 それでは私は伺いますが、それじゃ何のために第三条にこういう規定をしたのですか。日本との契約のためにこういう条約をきめたのでしょう。しかも三条後段においては、今外務大臣の御答弁は第三条前段の解釈をされたが、後段においては、この提案が行われ可決されるまではアメリカが施政権を握り、日本が潜在主権を持っているということを規定している、いわゆる経過措置ですよ。信託統治制度というものが行われないのであるとするならば、この経過措置それ自体が完全に無効であるといわざるを得ない。
○岸国務大臣 この解釈につきましては今申し上げるように、文理上アメリカは国際連合の信託統治に置くという提案をすることができるし、それには日本は同意する義務がある。前段はそうです。そうしてその間の経過的の何として行政権を持っているということが後段に書いてあります。従って私は、行政権を放棄すべきだ、放棄させるという何についても、国会ですでに議決がありますように、アメリカに対して行政権を返してくれということを、要求することは、日本において当然私はできることだと思う。ただアメリカがそれをするかしないかということは、アメリカの一方的な意思できまるのであって、日本がそういう要求をすることはちっとも差しつかえない、こう解釈しております。
○岡田委員 日本が要求するということについては、これは政治論としてはよろしいのですよ。しかし私の今言っているのは、条約として信託統治するのであるから、それまでの経過措置としては施政権を握るのであると言っているわけです。ところがあなたの御答弁のように、信託統治にはアメリカはしないのだということであるならば、その経過措置というものはここで完全に無効になって、当然施政権というものはアメリカになくなるのだと解釈せざるを得ないではないか。あなた自身が、アメリカが信託統治制度に置かないという先ほどの御答弁を取り消されるならともかくとして、信託統治制度にしない限りにおいては、当然そういう解釈に条約上の解釈としてなるのであって、政治論とは別個の問題です。
○岸国務大臣 法律論としては、あくまでも信託統治制度にアメリカは一定の後にはするということを予定しております。従って法律論としては、それまでの何として施政権を持っておるというのは、これはその通りであります。ただ私は政治論として、アメリカが信託統治に付する意思は持っておらないようだということを申し上げたのは、何もこれをくつがえす別の協定があるわけでも、あるいは条約があるわけでもありません。アメリカの政治の方針としてそういう意向を持っていると私どもは考えておるということであり、また政治論として、われわれはあくまでも行政権を返してもらう、施政権を返してもらう。あるいはそれが全部返せなければ一部でも返してもらうということを言っておるわけであります。法律論としてはあくまでもこの通りに解釈すべきだと思います。
○岡田委員 ですから私が最初にお伺いしたように、政治論だけではいけないので、法律上の裏づけのあることを日本の総理大臣は言ってもらわなくちゃならない。こういう点で、あなたが法律論としてお認めになっているのならば、なおさらこの点は、信託統治にはならないのであるならば、当然この条約の解釈から言って、返すのが当りまえではないかという当然の主張ができるではないかという、あなたの応援演説をやっているのですよ。
○岸国務大臣 せっかく応援をしていただいて、私ははなはだ心強いのですけれども、ちょっと理由がなさそうに思うのです。というのは私は、法律解釈としては、前段の何はあくまでも信託統治に対するということを予定しておるのでありまして、それはちっとも解釈上、この解釈から信託統治にしないという解釈が出てくるわけじゃありません。だから法律解釈としては、あくまでも信託統治に付する。ただ私の知っておる限りにおいて、アメリカの方針としては、これは法律解釈じゃなく、政治論ですが、信託統治にする意思は持っていないようだということを申し上げているのですから、せっかく応援していただいたのですけれども、法律の根拠で返してくれということを言うことは、無理だろうと思います。
○岡田委員 私の言っているのは、あなたは先ほど、条約と現実論とは違うのだ、条約論で解釈するならば信託統治を予定している。ところが政治論としては信託統治にするつもりはないのだという現実の問題ならば、信託統治ということをきめてある条約違反ではないかということは、日本の総理大臣として言えるじゃありませんか、こういうことを言っているのですよ。 そこでもう一つ話を進めて、別な角度から伺いましょう。たとえば沖縄を信託統治にするというこのあなたの解釈通りとするならば、国連憲章の優先原則からいって、この問題が国連憲章と抵触するような場合には、三条は無効であると思うが、この点はいかがですか。
○岸国務大臣 もちろん先ほど申しました国連の規定が優先するという原則は、あくまでも正しい原則であって、ただ現実の解釈論から言いますと、よく各条文について現実に検討してみなければ、直ちにこれが抵触するとかなんとかいう結論を出すことは、非常に早いものだと思います。
○岡田委員 それでは具体的に伺います。この法律の条文解釈によって、信託統治を予定されているとするならば、国連憲章の七十七条の信託統治のどれかに該当しなければならないと思うのだが、七十七条のどれに該当するという解釈をおとりになっているのか、この点を伺いたい。
○岸国務大臣 お答え申し上げます。条約の解釈の問題でありまして、一面から言えばきわめて正確に何しなければいかぬし、実は私まだこの何をそういうふうに研究しておりませんが、一応今条約局長のあれで申しますと、七十七条のbまたはCに該当するものだというふうに条約局長は解釈しているようでありますから、なおそれについての解釈の根拠等につきましては、条約局長に答弁させることにいたしたいと思います。
○岡田委員 今条約局長に答弁していただきますけれども、Cになるという解釈は全然誤まりであると私は思います。ということは、このCということは植民地に対する規定です。もしこの七十七条のイロハの三つにあれするとするならば、口、bであります。それは私が言わなくてもダレスが言っているのですよ。ダレスはbだと言っているのです。だからCであるという解釈だとするならば、これは誤まりだと思う。なぜダレスが言っているかというと、「C施政について責任を負う国によって自発的にこの制度の下におかれる地域」というのは、これは先ほど言ったサンフランシスコ会議のときに、これは植民地であるという規定をしているからです。ところがbであるという根拠についても私は納得ができない。ダレスはそう言っても私は納得ができないので、それでは条約局長にbであるという論拠について御答弁を願ってもけっこうです。
○高橋(通)政府委員 法律問題になりますので私からお答えいたします。このいずれの条項によって信託統治になるかというのは、法理論としましていろいろな問題があるかと思っております。ただそのどの条項かというふうに研究いたしますと、やはりbまたは。のいずれかによって信託統治になされるのではないか。従いまして、一番問題になりますのは、bによって信託統治にされる場合には、敵国から分離される地域——この分離という言葉がちょっと問題になるかと思っております。しかしながら、この分離というのは、主権を分離されるというふうにも解釈されますが、主権の問題は別問題として、物理的に切り離すというふうに考えますと、bの条項も適用になるのじゃないか。まあ法理論的にはいろいろ問題はあるかと思いますが、このいずれかによって適用になるというふうに考えております。
○岡田委員 それでは時間もだんだん過ぎて参りますから、総理大臣にぜひ聞いておいていただきたいのですが、先ほどあなたは、いわゆるサンフランシスコの国連憲章制定当時の会議というものは重要な基礎になると言われましたが、そういう意味でその当時のサンフランシスコ会議の模様を簡単にお話したいと思うのです。これはダンバートン・オークス提案がサンフランシスコ会議の中の骨になっております。ところがこの場合には信託統治制度の問題が出ておらないわけです。そうしてこの会議の決定に基いて信託統治制度というものが採択された。そうしてその内容が規定されたわけです。それが国連憲章の第十一章と第十二章であります。この採択のときの委員長になっておったのは南アフリカ連邦の総理大臣であるスマッツという将軍ですが、この人が委員会報告をやっております。この委員会報告でこういう報告をやっている。「これから第四小委員会の報告を討議いたします。われわれが討議を始める前に、第四小委員会の報告について私が若干述べておくことが役立つかもしれません。」こう述べて、しばらく省略して、「この第四小委員会の報告に述べられている制度は、A及びBの二つの部分からなっております。」そしてAというのは国連憲章の第十一章です。Bが第十二章、問題の七十七条のところであります。Bの点を読んでみます。Bは「国際連盟規約のもとにあった旧委任統治地域についてもある程度規定いたしておりますが、その規定はすなわち独立していない地域、旧委任統治地域」これがabC、イロハのイに当るわけです。それからb、ロの部分、今問題になっておる部分は、「現存している国家から新たに征服し取得したる地域」Cが「及び施政国が自発的に信託統治制度のもとに置く用意のある植民地といった種類の地域について規定しておるのであります。」このように述べております。そして、これが満場一致採択になっております。 従いまして、ここで私の申し上げたいのは、Cにおいては、先ほど申し上げたように植民地という規定になっておる。bにおいては、現存している国家から新たに征服し取得した地域ということになっている。とするならば、ここのbである第二次世界戦争の結果として敵国から分離されたる地域というのは、これはどこかの国から日本が奪った地域、現在ある国から奪った地域、この地域でなければならない。とするならば、沖縄というものは該当しないではないかということが言えるのではないか。たとえばこの平和条約の第二条において日本の戦略的信託統治になった地域もある。南洋諸島がそうです。こういうところは、このabcのa項に該当するのです。該当しないで、ただ沖縄をそのまま信託統治にするということはできないはずです。言葉をかえて言うならば、沖縄というものは本来固有の日本の領土というべきものではないかということです。日本のどこでも領土を信託統治にできるというような解釈がもしできるとするならば、今度は北海道をアメリカの信託統治にする、四国をイギリスの信託統治にする、条約できめれば何でもできるということになるじゃありませんか。ですからこのような規定があるのであって、これはほかの国から奪った地域だということを言っているのであって、bにも該当しないということが言えるのじゃないかということを、これは法律論としても重要だから、もう一度総理大臣に伺っておきたいと思います。
○野田委員長 ちょっと岡田委員に申し上げますが、総理大臣とおっしゃったけれども、政府委員がちょっとお答えして、そのあとで申し上げてよろしゅうございますか。
○岡田委員 大臣の御答弁として解釈して政府委員で御答弁になるのならけっこうです。
○高橋(通)政府委員 この憲章の成立過程におきまして、委員会で確かにそういう議論及び意見及び報告が提出されたことがあると考えております。その場合は、それが最も中心的な主たる内容として、またこの成立した最も中心的な意味をなすものとしての意見として、そのような報告が行われたと思っておりますが、しかしいずれにしましても、それらを考慮の結果このような条文として成立しましたので、われわれとしましては、第一次的には条文そのものを考えて、それによって解釈するほかはないかと思っております。
○岡田委員 それならば、まだ私は伺わなければならないことがある。「第二次世界戦争の結果として、」ということが条文そのままで解釈されるならば、日本がサンフランシスコ条約を結んだときが結果であって、それ以降においてまだ何らかの措置をとるということは許されないことだと思う。分離されたということは、国際法上の通念としては領土の割譲を意味するのです。その例として具体的にあげましょう。その例としては、サンフランシスコ条約の第二条の南洋諸島がこれは割譲ですよ。それからイタリア領のソマリーランド、これも領土の割譲ですよ。これは分離です。権利、権原を明らかに放棄している。今度の場合に権利、権原を放棄していると沖縄の場合は書いてないじゃありませんか。これは分離にはならないのです。そういう点からいっても、法文上の解釈からいっても、これは適当ではないということを、せめて総理大臣は政、治論としても御感得になるのが鋭敏な総理大臣の頭脳であろうと思うのだが、いかがでありますか。法律論として御回答になるならいいじゃありませんか、さっきも法律論として御回答になったのだから……。
○岸国務大臣 この法文の解釈につきましては、制定当時の模様も十分考えなければなりません。また同時に、国連憲章の先ほどの原則がありましてその上にサンフランシスコ条約というものが結ばれて、そうしてサンフランシスコ条約というものが正当なものとして成り立っているというこの沿革から見ましても、これの法理をどういうふうに解釈していくかということはよほど慎重に検討しなければならぬと思います。従いまして、私自身がこの問題を非常に深く研究して結論を出しているわけではございませんが、今お話のように、分離するというこの分離の意味については、一応岡田君の言われるような議論も当然立つことだと私は思いますが、なおこの点については、法律の何に属しておりますからもう少し研究をいたして、統一した御返事をすることにいたします。
○岡田委員 それじゃ、統一した御返事をお伺いすることを期待いたします。 なお、それだけではありません。七十六条にもあるわけです。七十六条というのは、信託統治の基本目的が規定されております。この基本目的は一、二、三、四の四項目に分れておりますが、しかもこの四項目というものは、国連憲章のいわゆる第一条の精神と同じ精神が書かれておる。この中で特に重要なことは、「各地域及びその人民の特殊事情並びに関係人民が自由に表明する願望に適合するように、」と書いてありますが、これが問題なのです。これを除外することはできないのです。基本目的を除外することはできない。とするならば、沖縄の人民が自由に願望して表明をしたものは何であるか、日本に復帰したいということを明らかに願望しているじゃありませんか。こういう点からいっても、アメリカの信託統治にすることはできないのであるという結論は、もう法律的に出るじゃないかということです。この点についても一つ重ねて一緒に御研究願わなければならない、こういう点であろうと思いますが、この点は御研究を願えますか。
○岸国務大臣 一緒に研究をいたします。
○岡田委員 もう時間もあまりとりましたからあれですが、先ほどから法一律論議は別だというようなお話でしたが、いわゆる法律を軽視するわけではないでしょうが、そういうようなお考えで総理大臣がおられるとするならば、国連憲章を軽視するということになるわけでありますから、国連中心主義でいくというあなたの方針とは相反することになると思うのです。この法律上の点については十分御研究を願って御答弁をこの次の機会に一つお願いいたしたいと思いますし、沖縄のこの問題について、このような法律上の問題もあるだけに、この次の国連総会に御提案になって沖縄問題を解決する御意思がありますか。
○岸国務大臣 私は決して法律を軽視するというような考えは持っておりません。法律は法律として尊重していかなければなりませんが、正しい解釈をすることが必要でありましてその意味において、今の沖縄の法律的地位に関する研究は一つ十分に検討をいたしまして、その上において結論を出したいと思います。十分責任をもって研究いたします。
○岡田委員 私が伺ったのは、もう一つは、この沖縄の地位の問題について国連総会に提案していただけるかどうかということです。これは日本の立場として最も重要な問題です。国連総会の中にはそれぞれの小委員会があって、そこで信託統治の問題の可否についても論議し得る機会があるわけです。こういう点について国連総会に御提案になる御意思がおありかどうか、この点をもう一度伺っておきたい。
○岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、沖縄の法律的地位というものを十分明瞭にいたしまして、それがはっきりいたしまして国連に提案することが必要であるならばやりますし、またアメリカと直接交渉することが適当であれば直接交渉しますし、その前提として、沖縄の法律的地位をどう考えるかということをまず正確にきめることが最も必要だと思いますから、その点を責任をもって検討することにいたしたいと思います。
○岡田委員 しかし、総理大臣に申し上げておきますが、八十三条と八十五条によって日本とアメリカだけで信託統治にしようとしても、国連の承認を得なければ信託統治制度になれないのです。だから、もし日本の国が国連憲章を守るのならば、アメリカに相談するのではなくて、国連に提案しなければならない義務関係がある。簡単に申し上げますが、八十三条によると、戦略地域になるわけです。この場合に安保理事会の承認が必要なのです。安保理事会にはソビエトがいるから、これは否決になります。ところが、八十五条によって、一般的信託統治にするとするならば、この場合には国連総会ですから、たとえば信託統治になったとしても、あとで監察を受けるのです。監察を受けるときには、安保理事会の参加国は全部監察をするわけです。ソビエトも視察に行けるわけです。こういう点からいっても、沖縄は信託統治にできないのです。ですから、日本国が国連に対して提案をすることが、沖縄の問題を有利に解決する道であると私は考えるのですが、もし総理大臣が沖縄の問題を本気で有利に解決なさろうとお考えになっておるならば、やはり国連総会に提案をするということを発言されることが重要であろうと思うし、沖縄八十万の島民に対しても、これは最も岸さんを信頼する道を与える結果になると思うのですが、この点はいかがですか。くどいようですが、もう一度お答え願いたい。
○岸国務大臣 私、法律の解釈として、その点がちょっとはっきりしないのですが、今信託統治になっておるわけではないことは御承知の通りであります。これは予定されているだけであって、信託統治にするという問題は、アメリカだけではいかぬ、国連の承認を得なければならぬということでありますが、先ほど来議論されていることは、むしろサンフランシスコ条約第三条の、将来信託統治にするということを予定しておる条約そのものの効力がどうかという問題が……。(岡田委員「できないとすれば無効なんです。」と呼ぶ)無効であるかあるいは有効であるかという法律論をきめないと一1あなたは今無効だと論断されておりますけれども、この七十七条や七十六条の条文を一括して、沖縄の法律的地位について、まず正確に法律的に性格をきめましてその結果とすれば、あなたの説みたいにこれが無効だという結論になるかもしれません。無効ならば、今信託統治にするということはアメリカが言っておるわけではないのですから、当然信託統治にすることはできないということを明瞭にすればいいことであり、またそれに基いて施政権の返還の問題もまた法律的根拠において主張するという、あなたの先ほど応援して下さったような強力なものが出てくるわけであります。その前提となるまず沖縄の法律的地位というものを、国連の憲章から見て、正確に一つ検討いたしまして、結論を出したいと思います。
○岡田委員 特に重要な点は、第三条に法律的には信託統治になることを予定しているという点が重要なのです。予定しているとするならば、国連憲章第百二条によって——信託統治になし得ないという点が総理大臣の御研究によって明らかになるとするならば、国連憲章優先の原則によってこの条が無効になるということです。そういう法理解釈になりますので、一つ十分御研究を願いまして、沖縄のためにがんばってもらわなくちゃ、ただやるやるといって抽象論を言われただけでは困るわけであります。もう少し身を入れてがんばっていただきたいと思います。
○野田委員長 田中稔男君に質疑を許しますが、きわめて簡単に願います。
○田中(稔)委員 私に与えられた時間は十分ほどでありますので、二、三点簡単に御質問を申し上げたいと思います。 首相は国会が済んだらアメリカに行かれるということであります。アメリカに行かれることは決して私ども反対いたしません。わが党の鈴木委員長もいずれまあそのうち機会がありましたら、アメリカを訪問するそうであります。ただ首相は東南アジア諸国も訪問したいということを言っておられますので、アメリカを先にするか、アジア諸国を先にするかという順序の問題が非常に重要だと私は思います。特に首相の今までの政治的な経歴にかんがみて重要だと私は思う。アメリカにおいでになる前に、アジア各国の真の姿をよく見、またそこに住む多くの民族のほんとうの声を聞いて、そうしてアメリカにおいでになるということが望ましいと私は思う。よくいわれることに、アメリカの資本と、日本の技術と、アジア各国の資源とを結びつける、こういうふうな開発計画が構想されておるようであります。もしこの場合に、アメリカに先においでになる、ワシントンで先に話をする、こういう構想をお立てになる、そうなりますと、下手をすると、やはり大東亜共栄圏のアメリカ版みたいなものができてそうして日本はアメリカのアジア植民地主義の何か手先になる、アメリカ帝国・不義の買弁になる、こういう役割がそこに生まれる、私どもはこの間からあの方面を回りまして、そういう懸念が非常に多いのであります。アメリカの資本というものを一がいに排斥するわけじゃないので、これが国連のルートを通じて入る、あるいはほんとうに政治的なひものつかない姿で入ってくるなら、歓迎すべきものだと私は一思いますが、現実の問題としてワシントンで先にお話しになって、そういう構想をお立てになれば、それは勢いアメリカの新しい植民地政策、こういうふうな姿になると思う。そこで順序の問題は、単に順序の問題ではない、政治的ないろいろな含みがあると思うから、願わくば、アジア各国を先に訪問されて、アジアの声をよく聞いて、そのアジアの声を代弁とまではいかぬでも、少くともそれを胸におさめて、アメリカにおいでになった方がいいと思いますが、その順序についてはどうお考えになりますか。
○岸国務大臣 私自身まだどういう順序で行くかということを決意いたしておりませんが、今の御意見に対しましては、私は非常に傾聴すべきものがあると心にとめておきたいと思います。
○田中(稔)委員 先ほどわが党の大西委員の質問に対して御答弁がございました。その中で安保条約は将来廃止したい、その方向に進みたい、これは私どもほんとうにけっこうだと思う。私の質問に対しても同様の御答弁がありまして、私も非常に賛意を表した。ただしかしその跡始末として、そこにやはり何ものかが構想されている。それは御答弁が非常に微妙な御答弁で、捕捉しがたかったのでありますが、それに関連して、ちょっと最近の新聞ニュースについてお尋ねしたいと思うのです。ごく最近でありましたか、安保条約を廃止し、それにかえる新しい一つの集団的な相互安全保障協定みたいなものをアメリカとの間に結ぶ、その場合に、それには韓国、台湾を含む、こういうふうな、何か新しい地域的な手段で保障体制が考えられておるようなことが新聞に出ておる。これは日本側かあるいはアメリカ側が上げた一種のバロン・デッセじゃないかと思う。このことにつきまして首相はそんな構想は一切考えていないとおっしゃるのか、あるいはそれに似通ったような、何か反共軍事同種のようなものをお考えになっておるのか、一つお尋ねしたい。
○岸国務大臣 私が安保条約を廃止する方向に考えていきたいということを申し上げたことは、またただいまも私の答えたことではっきりしているのです。ただこれはもちろん段階がありまして、おそらく方向として、また究極の目的は社会党の諸君とも意見が同じでありましょうが、時期的段階的の問題からいうと、われわれの考え方との間には相当開きがあるのではないかと思います。従って安保条約、日米共同防衛という体制をすぐやめて、それにかわるべき一つの体制を考えるという時期では、日本の現実の問題としてはまだないと思うのです。従ってそういう問題は、今おあげになったようなことの構想は私考えたこともございませんし、あるいはまた一部において言われるそれだけのなにについては、共産国と両陣営を網羅した地域的なアジアの共同防衛体制を作ったらいいじゃないか、集団体制を作ったらいいじゃないかという御意見も聞いたことはありますが、私としてはそういうことは今両方とも考えておりません。
○田中(稔)委員 委員長からの御注意がありましたので、きょうはこれでやめます。
○野田委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時三十四分散会