社会労働委員会 第4号
- 発言数
- 14 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1956/11/24
会議録
○委員長(千葉信君) それでは、ただいまから社会労働委員会を開会いたします。 公報をもって御案内のように、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案、慰老年金法案、健康保険法等の一部を改正する法律案(参第一号)、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会の議決を求めるの件、健康保険法等の一部を改正する法律案(衆第一号)以上五件を一括議題といたします。 発議者及び提出者から提案理由の説明を求めます。順次お願いいたします。 まず、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案について、重盛壽治君。
○委員外議員(重盛壽治君) ただいま議題となりました労働者災害補償保険法り一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。 公務員の公務上の災害の補償に関する現行の法律制度を見ますると、国家公務員については、非現業の職員についての人ならず、直営事業の職員についても、国家公務員災害補償法が適用されており、また、国鉄、専売、電電の二公社は国の直営事業と同様にみなされて労働者災害補償保険法から適用除外されているにもかかわらず、地方公務員については、全国的に労働基準法の適用があって、地方公共団体の直営事業は労働者災害補償保険法の適用事業とされ、民間事業と同じように労災保険から災害補償がなされている現状であります。思うに国の直営事業の職員について労災保険の適用がないのは、おそらく公務上の災害に対する補償の理念が民間事業の業務上の災害の場合と異なるという前提に立っていること、並びに国の補償能力が完全なものであることを理由とするものと考えますが、地方公共団体の場合について考えてみましても、災害の理由が公務によるものであることには優りなく、また、地方公共団体ことにその中でも都道府県及び五大市については、その財政規模も強固であって、終局的には強制徴税権を有し、その対外的信用力あるいは補償能力についても、国の場合とほとんど同等に考えて差しつかえないことは明らかであります。 また、地方公共団体によっては、地方公務員法の規定による条例等によって独自に公務災害の補償を実施しているものが多く、場合によってはその事務上の取扱いが労災保険と重複して事務処理を複雑にしにいることも少くない実情であります。 さらに地方公共団体の直営事業の中でもことに公営企業体に属するものについては、民間の同和の事業に比較して、公務員として割合両度の訓練を受け、行き届いた業務管理下にあるため、その業務上の災害発生率は低率であって、民間事業と同じワクの中で保険制度に加入していることは、必ずしも合理的であるとは言い得ないと思われるのであります。 なお地方公共団体に対する社会保険各法の適用については、市町村職員共済組合法の例に見るごとく、その適用について当該公共団体の任意選択にまかせて自主的な運営を尊重する建前としているのが通例で、ひとり労災保険についてのみ強制適用としているのは妥当でないと考えるものであります。 以上のごとき理由によって、地方公共団体のうち、都道府県及び五大市のごとく財政規模が強固でその補償能力が十分なものについては、これを労災保険から適用除外の取扱いをすることが妥当であると考えられますので、この法律案を提案することとしたものであります。 次に法律案の内容を御説明申し上げます。この法律案の骨子は、都道府県と、これと大体同様の規模をもつものとして取り扱われている地方自治法第百五十五条第二項の市すなわち京都市、大阪市、横浜市、神戸市、名古屋市の五大市の直営事業を労働者災害補償保険法から適用除外にしようということであります。 次にこの改正案は、制度の改変に伴う自治体側の措置及び保険会計の点を考慮いたしまして、明年四月一日から施行することといたしました。なお、現行制度で保険料について特別の取扱いをしております第三十条の二に規定する有期事業について適用除外になると同時に、終了したものと同様の取扱いをするための経過規定を設けました。 以上がこの法律案を提案しました理由並びにその内容の概略であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
○委員長(千葉信君) 次に、慰老年金法案について、発議者藤原道子君から説明を求めます。
○藤原道子君 ただいま提案になりました慰労年金法についての提案理由の御説明を申し上げます。 国が無醵出の老齢年金を支給し、老齢者の生活内容の充実に資するとともに、老後の精神的安定をはかろうとするのが、この法律案の提案の理由であります。 この法案の概要を御説明いたします。 この慰老年金の第一の特質は、全額国庫負担による無醵出年金とした点であります。すなわちあらかじめ何ら掛金等を支払う必要なく、すべての老齢者は一定の年令その他の要件を具備することによって当然にこの慰老年金を受ける資格を取得いたします。 第二に、慰老年金は、年額三千円とし、これを毎年四月、八月及び十二月に各千円ずつ支給することにいたしました。この金額は、私どもとして決して十分なものとは思っておりませんが、年老いた方々の当座の小づかいの一部分としてでも、老後の生活に幾ばくかの潤いをもたらすであろうことを期待しております。 第三に、慰者年金の受給資格者は、年令満六十五才以上で、市町村民税を納めていない老齢者、すなわち大まかに申しますと、一年の所得が十三万円以下であるためか、または天災等によって特に免除されたため、市町村民税を納めていない老齢者といたしました。ただし、日本に国籍または住所を有しない者及び禁固以上の刑に処せられて服役中の者または執行猶予中の者は、その期間に限って除外することといたしました。 第四に、年金支給の事務は、受給者の便宜、事務の簡易等を考え、市町村長が行うことといたし、支給を受けようとする者、その扶養義務者または民生委員の申請に基いて支給を決定することとしております。しかして、支給の決定があった場合には、年金は申請の時にさかのぼって支給することといたしました。 第五に、年金の支給は、本人が死亡したときまたは受給資格を失ったとき等には次の月から受けられません。 右に関連いたしまして、受給者、その扶養義務者または民生委員には、受給資格等の変動があった場合には、すみやかに市町村長に届け出ることを規定しております。 第六に、この法律による慰者年金の受給は、生活保護法を受ける権利に何ら影響するものでないことを明記し、また、慰老年金については、非課税及び差押譲渡の禁止を規定いたしました。 なお、その他市町村長の決定処分に対する不服申立等所要の事項を規定しておます。 最後に、本法が老齢者を対象とすることから、私どもの最も留意いたしました点は、次の二点であります。 第一点は、この年金の受給資格のうちに、収入要件を加えてはありますが、それによって支給決定等に関連して、支給を受けようとする者の資産調査その他私生活の内部に立ち入ることは絶対に避けたいということであります。市町村民税を納入しているかどうかという既知の客観的事実によって資格の有無を規定したのはこの考慮よりするものであります。 第二点は、罰則規程を避けたいということであります。不正受給者を防ぐためには、一方で関係者からの届出等を規定するとともに、不正受給があった場合には、不正手段によって他人に不正受給を受けさせた者からもその全部または一部を徴収することによって処理するにとどめ、罰則を規定いたしませんでした。 なお、六十五才以上の老齢者の人数は約四百六十万とされておりますので、その約八割近くがこの慰老年金の支給を受けるといたしますならば、所要経費は概算百十億円となります。 なにとぞすみやかに御可決あらんことを御願い申し上げます。
○委員長(千葉信君) 次に、健康保険法等の一部を改正する法律案(参第一号)について、発議者山下義信君の説明を求めます。
○山下義信君 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由並びに改正要旨を説明いたします。 御承知のように、疾病保険は社会保険制度の中核をなすものでありますが、戦後、国民生活の疾病保険に対する依存の増大と、保険経済の規模の著しく拡大された今日におきましては、医療給付費の増高に伴う保険財政の赤字克服が、疾病保険共通の困難な問題となっておるのであります。 言うまでもなく、保険財政の収入の大宗をなすものは保険料収入であります。ことに、保険料収入の算定基礎となる標準報酬の比較的低い中小企業を対象とする政府管掌の健康保険におきましては、保険財政の逼迫は著しいものがあります。近年の急速に増高する医療給付費に対する保険料収入がこれに伴わず、昭和二十八年度以降の収支に著しい不均衡を来たしまして、昭和二十九、三十の両年度を通じ、歳入不足による赤字の累積は約百億円と公表せられるに至ったのであります。これに対しまして、政府は、一般会計からの繰入れ十億円、政府資金からの借入れ六十億円、この借入金については、以後六カ年間毎年十億円ずつ一般会計からの繰入れにより返済するという国の財政援助と、保険料を千分の六十から千分の六十、五に引き上げる等の措置を行なったのでありますが、かかる保険財政の逼迫は引き続き昭和三十一年度に持ちこまれ、依然としてその運営の基礎を脅かしておる現状であります。 また、船員保険の疾病部門におきましても、昭和三十年度疾病給付の決定額は、疾病保険料収入額に比べますと、その赤字の様相は、政府管掌の健康保険よりさらに深刻であります。医療給付についてみれば、受診率及び一件当り点数の増大傾向は顕著でありまして、しかも受診率は、政府管掌の健康保険よりも上回っておる実状にあります。これに対して、政府は、健康保険におけると同様に、既往の赤字を補てんするため、一般会計より毎年二千五百万円を六年間にわたって繰入れするという措置を講じたのであります。 かくのごとく、保険料収入に伴わない医療給付費の増高による保険財政の赤字は、毎年度その財政危機を伝えて、逐年累増の一途をたどっておる状態でありますが、疫病保険の健全な運営を行い、将来にわたるその発展を期するためには、保険料収入だけに依存することなく、国庫負担等による保険以外からの財源援助を必要とするのであります。 今日、疾病保険に対しましては、その事務費の全額を国花補助するという建前になっておりますが、それも実情に即しない標準費用の全額を補助するにすぎないのであります。医療給付費につきましては、国民健康保険に対して二割、日雇健康保険に対して一割の国庫負担が行われておるのでありますが、健康保険と船員保険につきましては、久しい世論の熱望にもかかわらず、医療給付費について何らの国庫負担も行われていない現状であります。 このような事態に対処して、保険財政の健全化をはかり、社会保険の将来にわたる発展と医療保障制度の確立を期するために、この際、国の責任を明確にし、その運営を正常化する意味において、特に財政基礎の脆弱な政府の管掌する健康保険と船員保険における医療給付に要する費用に対して国庫負担を行うこととし、これを法律に明示する必要があるのであります。 以上が、この法律案を提出する理由であります。 次に、改正案の内容について御説明申し上げますと、第一に、国庫は政府の管掌する健康保険の医療給付費、すなわち療養の給付並びに療養費及び家族療養費の支給に要する費用の百分の十を負担するものとしたことであります。現行法におきましては、健康保険の要務費として毎年度予算の範囲内において定められた標準費用の全額を負担するだけでありますが、今回、健康保険法の第十条を改正することによりまして、さらに医療給付費の一割を国庫負担するように定率化されることになるのであります。しかしながら、本法は昭和三十一年四月一日にさかのぼって適用されることになるのでありますから、すでに予算が決定され、三十億円を一般会計から受け入れることになっておる三十一年度分につきましては、新たな予算措置を必要としない意味におきまして、附則によって三十億円の負担にとどめたのであります。 第二に、国は船員保険における医療給付費につきまして、すなわち療養の給付並びに療養費及び家族療養費の支給に要する費用の十分の一・五を負担するものとしたことであります。現行法は、失業保険金の支給につきましては三分の一、年金等の支給につきましては五分の一の国庫負担がありますが、医療給付費につきましては国庫負担がないのであります。今回、船員保険法の第五十八条を改正することによりまして、事務費のほかに医療給付費の一割五分を国庫負担するように定率化されることになるのでありますが、これも三十一年度分につきましては、すでに一般会計からの受入金が決定しておりますから、新規予算措置の必要がないように十分の一・五以内にとどめたのであります。 第三に、以上の健康保険と船員保険における医療給付費に対する国庫負担金を一般会計から特別会計勘定に導入し、すでに決定した昭和三十一年度の予算編成に即応した受け入れ体制を整備することであります。すなわち厚生保険特別会計法と船員保険特別会計法の一部を改正することでございます。 まず厚生保険特別会計法の一部改正につきましては、今日まで、健康保険の給付費に対する国庫負担がなかったので、これを一般会計から特別会計へ導入受け入れする規定がなかったのでありますが、今回、健康保険法第七十条を改正することによりまして創設された国庫負担金を、厚生保険特別会計の健康勘定に一般会計よりの受入金として導入受け入れする必要を生じ、この規定を改正することとしたのでございます。また、健康保険勘定における借入金の償還財源としての一般会計からの繰入金につきましては、昭和三十一年度予算の決定によりまして、昭和三十一年度以降分の借入金の返済を三十二年度以降六カ年間に繰り延べることとしましたのに伴いまして、この規定を改正することとしたのであります。 次に、船員保険特別会計法の一部改正につきましては、すでに、船員保険の給付費に対する国庫負担がありますので、今回、船員保険法第五十八条を改正することによりまして新設された国庫負担金も、既存の失業、年金等に対する国庫負担金と同様に、一般会計よりの受入金として脚人受け入れすることができるのでありますが、赤字補てん財源としての一般会計からの繰入金につきましては、厚生保険特別会計におけると同様の理由によりまして、昭和三十二年度以降五カ年間に繰り延べることの改正をすることといたしたのでございます。 以上が本法律案を提案する理由並びに改正の要旨でございます。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことを願い上げます。
○委員長(千葉信君) 次に、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会の議決を求めるの件に関し、提出者倉石担当大臣の説明を求めます。
○国務大臣(倉石忠雄君) 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会の議決を求めるの件につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律は、すでに御承知のごとく、昭和二十七年に行われました電気事業及び石炭鉱業における長期かつ大規模なストライキの苦い経験を契機といたしまして、電気事業及び石炭鉱業の有する特殊性及び重要性並びに労使関係の実情にかんがみ、争議権と公益との調和をはかり、もって公共の福祉を擁護するため、これら両産業における争議行為の方法について必要な措置を定めるという趣旨をもって昭和二十八年八月に制定された法律であります。 すなわち、本法は、右のような趣旨のもとに、電気事業につきましては、いわゆる停電スト、電源スト等電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接障害を生ぜしめる行為は、争議行為としてもなし得ないことを規定し、石炭鉱業につきましては、鉱山保安法に規定する保安業務の正常な運営を停廃する争議行為であって、たとえば溢水、落盤、自然発火、有毒ガスの充満等を防止する業務を怠り、その結果、人命に危害を及ぼしたり、石炭資源の滅失ないし炭鉱の破壊を招いたり、あるいは第三者に鉱害を与えるがごときいわゆる保安放棄の行為は、争議行為として正当性の範囲を逸脱するものであることを明かにし、これら両産業における争議行為の方法について、公共の福祉を擁護するため、必要最小限の規制を定めているのでありますが、本法は、その付則第二項におきまして、政府は、本法施行の日から起算して三年を経過いたしましたときは、その経過後二十日以内に、もしその経過した日から起算して二十日を経過した日に国会が閉会中の場合は、次期国会の召集後十日以内に、本法を引続き存続させるかどうかについて国会の議決を求めなければならない旨を定めているのでありまして、右三年の期間は、本年八月七日をもって経過いたしたのであります。 そもそも労働関係に関する事項につきましては、法をもってこれを抑制し、規律することはできる限り最小限にとどめ、むしろ労使の良識と健全な労働慣行に待つことが望ましいことは、いうまでもないところであります。本法において規制されている右のごとき争議行為は、いずれも労使間に健全な良識及び労働慣行が確立されておれば、本法を待つまでもなく当然行われるはずのない行為でありまして、本法が付則第二項において三年という期限を付しましたのも、この期間内に、本法のごときものがなくても、右のごとき行為が行われないような健全な労働慣行が確立されることを期待したからにほかならないのであります。 本法は、すでにその施行後三年の期間を経過したのでありますが、電気事業及び石炭鉱業における労使関係の現状は、遺憾ながら、いまだかかる健全な労働慣行が十分確立されたとは認めがたい状態にあるといわざるを得ないのであります。 政府といたしましては、右のごとく、電気事業及び石炭鉱業の労使関係においていまだ健全な労働慣行が十分確立されたとは認めがたい現状にあることと、本法が決して労働者の権利を不当に抑圧せんとするものではなく、これら両産業の特殊性並びにその国民経済及び国民の日常生活に対する重要性にかんがみ、社会通念上争議行為の方法として行うべきでないと考えられる必要最小限のものを明確にし、もって公共の福祉を擁護せんとするもので、あること等の事情をあわせ考えまして、本法を引き続き存続せしめる必要があると考えるのであります。 よって本議案を提出いたしました次第でございまして、何とぞ御審議の上すみやかに議決されんことをお願いいたします。
○委員長(千葉信君) 次に、健康保険法等の一部を改正する法律案(衆第一号)について、発議者衆議院議員滝井義高君の説明を願います。
○衆議院議員(滝井義高君) ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案について提案の理由を申し上げたいと存じます。 御承知のごとく、健康保険制度は、昭和二年実施以来今日に至るまで、三十年にわたって発展を続け、社会保障制度の中核として、国民の医療保障、国民生活の安定に大きな役割を果してきているのであります。現在健康保険は、国家の基幹産業を中心に労働人口の大半に適用され、国が直接管理している政府管掌健康保険には、五百十二万、組合管掌のそれには三百五十万の労働者が加入し、扶養家族を加えて、実に二千五百万に達せんとしているのであります。しかもその保険給付に要する費用はすべて、事業主と被保険者の醵出する保険料によってまかなわれており、国は今日までのところ事業運営のための事務員のみを負担しているにすぎないのであります。しかしながら、社会保障制度の一環として、強制加入の建前のもとに、国がみずから管理に当っている制度である以上、国が社会保障に対する責任を分担する意味において、保険の本体である給付費について、国庫負担を行うことは当然であり、特に制度そのものが崩壊せんとしている今日においては、その危機を未然に防ぎとめ、医療保障の一そうの推進をはかるために格段の財政的配慮が必要であると考えられるのであります。 健康保険等については、その給付費の二割以上を国庫負担すべしとの声は、関係各団体の年来の世論でありました。ところが、治療医学の進歩や利用度の向上とともに、医療給付費は、逐年急速に増大をいたしまして、そのため健保をはじめ各種の医療保険財政は深刻なる危機に見舞われるにいたりました。たとえば政府管掌健康保険の医療給付費は昭和二十六年において百三十七億円余、これが昭和二十九年度には三百五十億円余、昭和三十年度には約三百二億円、昭和三十一年度には四百四十二億円余と急ピッチで増大し、その結果昭和二十九年度には五十九億円余、昭和三十年度には約九十億円、昭和三十一年度には、六十六億円の赤字が見込れるに至ったのであります。 健康保険制度は各種社会保険の中でも最も長い歴史と伝統を有し、実にわが国社会保障精度の根幹と言うべきであります。しかも現行健康保険の保険料率は世界的にもきわめて高率なものであり、従って保険料率を引き上げる余地も乏しく、さりとて旧態に逆行して患者の一部負担を強行することも適当ではないと信じます。すなわちこの際、医療給付費については当然相当程度の国庫負担をすべき旨を明らかにする必要があろうと信じ、所要の改正を試みたものであります。 すなわち、健康保険については原則として医療給付の百分の十を国庫負担とし、船員保険についても同様趣旨の改正で十分の一・五を負担いたしました。百分の十といたしましたる趣旨は、政府管掌の健康保険が低所得附属を多く包含しており、すでに国民健康保険においては、医療給付の百分の二十を国費で負担している。さらに医療給付費の四割は結核医療費であるところより、その一部を負担することが妥当であるといたす次第であります。 なお昭和三十一年度についてはすでに予算が国会を通過していることでもあるし、これに対応した額を確保するための改正をいたしました。 以上の改正により、医療保障の中核をなす政府管掌の健康保険及び船員保険については不満ながら最小限度の運営は可能であると思われるのであります。 御承知のように、十一月八日社会保障制度審議会は政府に対して、医療保障制度に関する勧告を行い、また、川崎厚生大臣当時いわゆる七人委員会の報告が提出されている事情にかんがみ、これらの立案の精神をくみ取り医療保障制度の根本的検討を行い、該制度の飛躍的拡充、すなわち国民皆保険実現への時間的余裕を確保するためにも本改正を必要といたした次第であります。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことを切望いたす次第であります。
○委員長(千葉信君) 以上で各案件の説明が終りましたが、質疑は次回以後にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安井謙君 それで異議ないのですが、特に健康保険の問題につきましては、社会党さんの方からも二つの案がそれぞれ出ておるようであります。それから自民党も最近これに対する態度を決定をするという段階に来ておるようで、政府も一体どういうふうに取り扱うのか、これは非常に大事な問題であるし、そのいろいろな関係を総合的によく相談をした上で扱うべきであると思います。あとの理事会ででも十分一つ御相談を願いたいと思います。
○山下義信君 今安井委員から、私ども提案の法律案につきまして御発言がありましたから、私もお願いしておくのでありますが、御指摘のように、健康保険の改正案については、われわれか提案者になりまして参議院に提出いたしております。同様の趣旨の改正案が衆議院の方に提案になりまして、同時に予備審査になっております。ただいま安井委員のお話によりますと、政府の方でもいろいろお考えがあるやにただいま仰せになりましたが、いずれにいたしましても、この問題は与党と言わず、野党と言わず、前国会以来の懸案——持ち越しのしかも緊急を要しまする重要法案でありますので、この問題の重要性は各委員御承知の通りであります。それと、ただいま安井委員から御発言があった、これらの法案の審議の取扱いについては十分考慮しようという御発言であったと思いますが、特に提案者といたしましては、問題の緊急性にかんがみまして、できるだけすみやかに御審議をいただきますように、御配慮をお願いしたいと思います。
○委員長(千葉信君) ただいま安井君並びに山下君からのお話がありましたこの健康保険法等の一部を改正する法律案についての取扱いにつきましては、理事会で一応いろいろ御相談を申し上げたところでもおりますが、大体その見通しといたしましては、二十六日午前十時から開会される委員会でこの案件についての取扱いをすることになっておりますが、事前に理事会を開いて一応お打合せをする予定になっておりますので、さよう御了承を願うことにいたしたいと思います。 それから先ほど御説明がありました案件についての御質疑は次回に譲ることについて御異議がないと思いますので、さよう決定いたします。 以上で本日は散会いたします。 午前十一時八分散会