社会労働・法務委員会連合審査会 第1号
- 発言数
- 280 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1956/12/01
会議録
○委員長(千葉信君) これより社会労働、法務連合審査会を開会いたします。 前例によりまして、私が連合審査会の委員長の職を勤めさせていただきます。 それでは電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会の議決を求めるの件を議題といたします。 御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。 なお、申し上げておきますが、出席されておる大臣並びに政府委員の方は、労働大臣倉石君、労働政務次官武藤君、労政局長中西君、法務大臣牧野君、刑事局長井本君、公安課長桃澤君、内閣法制局よりは次長高辻君、並びに第三部長西村君が御出席でございます。 順次御質疑を願います。申しおくれました。もう一人、法務政務次官高橋君が御出席でございます。
○藤田進君 まず最初に、法務大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、いわゆるスト規制法、ここに存続決議を求めて参っている電気及び石炭鉱業に関連する争議行為の規制でありますが、これに対して、法務大臣は、いかなる理由をもって閣議における決定に了解を与えられたのか、このスト規制法に対する法務大臣の所見と、さらにもう一点同時にお伺いいたしたいのは、いわゆるスト規制法、——以下スト規制法と略称しますが、スト規制法が、従来の労働法の範囲あるいは刑法第三十五条の違法性の阻却、こういう一連のものを何ら変更するものではなくて、従来のなし得べからざる行為をここに規定したにすぎない、解釈を明確にしたにすぎない、こういう提案の説明でありましたが、これに対して、果してその通りであると了解せられるのかどうか。もし、億が一、これが延長されるということになると、あなたの所管となって、逐次労働組合が弾圧せられるような傾向を強くもつ法案だけに、この際、法務大臣のこの点に対する解釈を御答弁いただきたいと思います。
○国務大臣(牧野良三君) その点に対しては、私はこの法律はあまり特別な性質を持つものではいと思っておるのでございます。私は、戦後に定められましたる民法の第一条というものに、大へんな、何と申しますか、興味を感じております。私はあの種の法律の制定を二十年来希望しておりました。あれは、御承知の通り、ワイマール憲法が最も顕著に社会思想を持ち出しております。従って、憲法には十二条がございまして、公法方面にお誉ましても、私法方面におきましても、公共の福祉ということが国民に十分熟するということが大切なことである。かように考えております。その意味から申しまして、私は、いかなる場合においても、権利の濫用は許さない。権利というものはどの程度に認められるか、公共の福祉に従うのだ。それは私権も公権も、あらゆる権利、自由も何もかもそうだ。従って、この種の規定があっても弊害はない、かように思うのみならず、同時に、この規定は積極的に何らかのものを働きかけるものじゃない。どこまでもある公けな原理を確認するものにすぎない。それを超越するような解釈は従ってとっちゃならない、かように解しております。
○藤田進君 そういたしますと、あなたのこの法律の趣旨とするものは、従来の法の観念、越えてはならないものを、ここに宣言的に明確化したものである、こういうものだと言われるのであるかどうか、重ねてお伺いいたします。
○国務大臣(牧野良三君) すわったまま申し上げることをお許し願いたいと思います。 私、そう解しております。
○藤田進君 その趣旨が、憲法十二条にいう権利の乱用を押えているものだ、こういう点に立脚せられている点も、これまた重ねてお伺いいたしますが、その通りでありますか。
○国務大臣(牧野良三君) 全くそのように解しております。
○藤田進君 そういたしますと、若干実情と違ってくるわけで、この際続けて法務大臣にお答えいただきたいのでありますが、憲法の十二条にいう基本的人権、これは、国民が不断の努力によってこれを擁護しなければならん、これがまず第一の点だと思います。ただ、それが乱用されてはならないという点が、今あなたの言われている点だと思う。ところが、このスト規制法なるものの実体ば、そういう乱用を制限するという作用ではなくて、根本的に争議の行為を押えているものであって、乱用を防ぐというものにならない。 たとえば、発電所の場合にたとえてみますと、その発電所の労働者は直接に正常の業務運営を阻害してはならない。しからば、間接とはどういうことであるかといえば、この説明を労働大臣に聞いてみると、やはり従来直接間接の間が非常に不明確であって、実際法の運営に当っては、直接関接とあまり峻別をしないままに、取締当局であるあなたの部下が取締りをやるおそれが濃厚であります。それは、発電所の従業員がストライキをやろうとしても、これは乱用どころではない、全然やり得ない。なし得ない。乱用という語義は、元来なし得る行為であるけれども、それがしばしばみだりに用いられ、従って、それが公共の福祉に影響をもたらすというものであろうかと思います。ところが、これは、そういう乱用というものをさらに越えて、何にもやってはならんということになっている。 あなたの言われる乱用論でこの法律を支持するという、それならば、それは御承知でありましょうが、労調法の第三十五条、あらためて読んでもけっこうですが、さらに労調法の三十六条、乱用論であるならば労調法の三十五条の二であります。緊急調整の問題、これは、内閣総理大臣が固有な権利であっても、乱用し国民の生活が危殆に瀕するという事態においては、総理大臣の名において緊急調整の発動ができる。その場合には、五十日間という長期にわたってその労働争議は争議行為を中止しなければならないようになっておる。さらに、労調法第三十六条をごらんになれば、安全保持についても明確に規定してある。乱用を食いとめてあります。それなのに、なぜこのスト規制法というものを必要とし、そうして固有の権利である団体行動権というものを全くできないように、権利を皆無にする、抑圧をするということが、あなたのおっしゃる乱用からはどうしても納得いかない。これは私が納得いかないばかりではなくして、あらゆる労働法に少くとも関係を持つ人たちが、保守とか革新とかいう問題ではなくして、反対がある。この点をどのようなあなたは体系的な説明としての理論をお持ちなのか、御説明をいただきたいと思います。
○国務大臣(牧野良三君) 藤田さん、私は非常にあなたのおっしゃることはよくわかりますが、そのもう一つ上を行きたい。一体、ストライキというものはどういうものであるか、弱者に対して団体行動権を与えるというのはどういうわけであるか。相手がなければいかん。この場合をいいますと、事業者とか経営者というものが相手であるべきで、国民が相手であってはならない。事業者、経営者にはほとんど微細な影響しか与えない。ストライキの目的とする相手方でない国民に、はかるべからざる損害を与える。それは金銭に見積る損害ではない。生命、身体、財産、こういう広範な方面に行われる。そういうストライキは、しきたりで、しないことになっておる。しかるに、日本ではストライキというものの訓練がまだ足りません。すぐ思い切ったことをやりたがる。そこでよけいな、確認的な宣言的な規定がある時代要るのではないかと私は思う。私は団体行動権、いわゆるストライキというものは非常に正しいものだと思います。これはどうしても十分に認めなければなりません。けれども、目的はどこで許されるかということを常に把握していなければならん。乱用かいなかの境ばそこにある。かように私は解しておるのでございます。
○藤田進君 あなたのおっしゃることと、スト規制法に賛成の態度とは、明らかに大きな矛盾があるわけです。
○国務大臣(牧野良三君) そうですか。
○藤田進君 その矛盾を若干申し上げてお答えいただきたいのでありますが、あなたのおっしゃるのは、国民の生活に重大な悪影響を及ぼす、それが経済的に、あるいはその生命において、そういうものはやってはならんのだ、こうおっしゃるわけです。ストライキといえどもやるべきではない。そうであるならば、今お示しした現行法、そこに明定してある労働関係調整法の、以下労調法と申し上げますが、三十五条の三項を一つ読みましょうか。
○国務大臣(牧野良三君) 一つ、どうぞお願いします。
○藤田進君 第三十五条の二「内閣総理大臣は、事件が公益事業に関するものであるため、又はその規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に関するものであるために、争議行為により当該業務が停止されるときは国民経済の運行を著しく阻害し、又は国民の日常生活を著しく危くする虞があると認める事件について、その虞が現実に存するときに限り、緊急調整の決定をすることができる。」以下この手続的なものが規定してあって、さらに争議行為の制限禁止等第五章に入って、そういう場合には五十日間争議行為をやめるべきである、こうなっておる。それから、さらに指摘いたしました労調法の三十六条においては、「工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない。」あなたのおっしゃる必要論であれば、とれで十分満たしておる。石炭においてもこれを発動した事例ば昭和二十七年にある。どうなんですか、あなたの持論と現行法、かようにある点との関連において、説明をいただきたい。
○国務大臣(牧野良三君) お答えをいたします。石炭の関係においては、私にはまだ研究の途中で十分御返事のできないところがありますが、電気の点については申し上げることができます。この規定は、許されたる行為の影響の点から、これを緊急調整というものを認めておくのでございます。私が先ほど申し上げたのは、プリンシプルを申し上げた。ストライキというものは無限でない、人に与える、これに対する一つの自由権にしても無限でない、これに従って使用しなければならん。投げることができる、こわすことができると考えることは間違いである。物の本質に従ってこれを使うという義務を、国民が持たなければならん。アイゲンツーム、フェアプフリヒテットという(「日本語で言って下さい」と呼ぶ者あり)所有権は義務を包含する、そういうふうに言っておる、これが一般の法律となっておりまするから、やばはり、そこに私は越えてはならない限界があるにもかかわらず、まだストライキになれない国民には、どういうことでもできるような誤ったる観念がある。それが現に事実に現われたためにこういう規定の存在を必要とする、こうなったと思うのでございます。
○藤田進君 そういたしますと、憲法二十八条の団体行動をする基本的権利、固有権といわれておるが、これは保障すると書いてある。非常に強い言葉ですが、あなたのおっしゃる英語かドイツ語か何かしらんが、それでいうと、何というか、ギャランテーか、そんなことで表わすのじゃないかと思うが、非常に強い言葉が、あなたのおっしゃるのは二十八条のこういう固有権と基本的人権、これと次にある憲法の二十九条の財産権、これと同じような意味合いで解釈せられておるように思う。ワイマール憲法を出されたが、確かにこの百五十七条に定めたのが労働法としては大きなエポックだと私も思う。そういうあなたが労働法の歴史的な過程を知りながら、今のような憲法二十八条と二十九条の関係が非常に混同された議論が出るということは、もっと説明を加えられなければ、おそらく法律を多少でもかじった者は納得しないでありましょう。しかも、労調法の三十五条の二の説明、さらに三十六条との関連においては、何らの説明がなされていないのです。重ねてお答えをいただきたい。
○国務大臣(牧野良三君) 私から一つ委員会におわびを申します。今、外国語を使ったことはよろしくない。ワイマール憲法の有名なる言葉であるがために、つい出まして、この点は取り消します。 その点におきましては、基本的人権というものが無制限だというような考えが、日本の国民にどうもあるらしいのですね。基本的人権というものは……。何でも無制限というものは法律社会にはない、共同生活の社会にはないので、社会あれば法あり、これは昔からのわれわれの金言であります。従って、どんな場合においても、どんな権利でも、共同の生活をするというその目的の範囲内において制約を受けるということが当然でございまして、その点には公法上の権利も私法上の権利も同じでありますから、これは法律哲学上の原理としてお認めをいただきたいと思うのでございます。
○藤田進君 無限なものだというふうに思ってるが、あなたはどう思うか、そんな質問はしていない。そういう世の中に論があるとすれば、それはその人にあなたはお答えいただきたい。私はそういうことを言ってるんじゃないので、どうもお答えしにくければお答えがないものとして、次に移らざるを得ませんが……。非常に大事な点は、あなたは法務大臣なんです。あとあと、このスト規制法を通して、労働組合法の第一条にいう刑法三十五条の違法性の阻却はなくなるんだとか、こういうことが言われているだけに、重要であります。しかも、あなた方は憲法を守らなければならないことが憲法に規定してある。だから、憲法を守ることは当然である。鳩山総理大臣が本会議で憲法を守らないかの発言をしたことがついに問題となり、これは全面的にお取り消しになっている。その本家本元である法務大臣が、お答えが非常に的をはずしてお答えになっておる。 固有な権利、基本的権利は無限なものであって、何ら国家といえども公共の福祉の名においても制限できない、所見いかに、というそんなことで求めてるんじゃないんです。求めているのは、灰皿を持たれて、この所有権をなんと言われるが、私は憲法二十八条の団体行動権、保障されている固有権について、財産権との関係をどうお考えであるのか、これが一つ。ひいては、公共の福祉に名をかりて乱用を防ぐんだというふうに響くわけですが、それならば全面的に禁止する、直接の行為ば禁止するというと、このスト規制法を待つまでもなく、乱用はすでに労調法の三十五条の二と三十六条にちゃんと規定してあるんじゃないですか。乱用はここに防がれているんじゃありませんか。あなたの乱用論ではこれが消化できない。私には了解ができない。
○国務大臣(牧野良三君) お答えいたします。法律の規定は、予測し得る乱用に対してこれを防止する規定をなします。しかるところ、ただいま議案となっておりまする法律は、予測すべからざる事態を生じたのであります、日本には。そのためにこの法律の必要を生じたものでございまして、従って、越えるところがなかったならばこんな規定は要らないんだ。また結局こういう規定は要らないようになる時代が遠からず私は来るものと信じます。
○藤田進君 この法律の制定を必要とする事態が現実にあった、しかも将来において繰り返される可能性がありとして、これに備えたということだろうと思う。しからば、その事態が現実にいつ起きたのか、お尋ねをいたします。
○国務大臣(牧野良三君) お答えいたします。二十七年の秋です。
○藤田進君 しからば、労調法のしばしば申し上げる三十五条の二、これはあなたが今おっしゃる昭和二十七年の秋の事態を予想してできたものと、あなたば思いませんか。これはその六法全書にも改正の月日は日を追うて書いてあるから、ごらんになればわかる。そういう事態を予想してできたのが、長い間、労働省に労働法令審議会を作り、約一年間にわたり検討がなされて、今のような事態、その他の論争は非常に大きな速記録となって労働省が発行している。あなたのおっしゃる事態ばまさにこの三十五条の二項、これが生まれたんです。これは法制史の経過から見て、あなたの答弁は当を得ておりません。
○国務大臣(牧野良三君) それではお答えいたします。本法の規制と緊急調整とは、その目的を異にするのでありまして、本法は争議行為として正当ならざるものの範囲を明らかにするものであり、緊急調整は、通常の争議行為が大規模になった等の事態から、これが損害を防止せんとし、そのため争議の調整解決を主眼として、あわせて争議行為を禁止するものであるのでございます。従って、緊急調整と本法とは重複するところはございません。相補って、相ともに公共の福祉を維持する目的を果するものだと思います。
○藤田進君 そうすると、当初自信満満とお答えになった、乱用してはならない、憲法十二条の末尾に書いておるその乱用を防ぐものであるという、賛成のあなたの根拠はこれとは違うじゃありませんか。
○国務大臣(牧野良三君) お答えいたします。違いありません。これは解釈がどういうふうでありましょうとも、緊急調整とは全然目的を異にして、緊急調整の場合においては、あなたのおっしゃるような内容を持つけれども、これは争議行為としては正当でない範囲だよということを、ここで宣言(笑声)をしておるのでありますから、その間には私ははっきりした区別があると思う。
○藤田進君 そうなりますと、こういう争議をやることは正当でない、不当である、あるいは違法であるというその基準は、憲法十二条だとおっしゃるんだと思う。公共の福祉だと思うのです。そうじゃありませんか。
○国務大臣(牧野良三君) 議論をするとそこに行くかもしれませんが、第一条に基準があると思うのです。
○藤田進君 あなたのおっしゃることをあらためて正確にするために、何の第一条か。
○国務大臣(牧野良三君) 本法です。電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律、第一条「この法律は、電気事業(一般の需要に応じ電気を供給する事業又はこれに電気を供給することを主たる目的とする事業をいう。以下同じ。)及び石炭鉱業の特殊性並びに国民経済及び国民の日常生活に対する重要性にかんがみ、公共の福祉を擁護するため、これらの事業について、争議行為の方法に関して必要な措置を定めるものとする。」こうある、これに基くのだと解します。
○藤田進君 憲法上の根拠はどこになりますか、その目的の。
○国務大臣(牧野良三君) この法律を規定する憲法上の根拠は憲法全体でありまするが、直接のものは十二条に求めていると思います。
○藤田進君 さあ、そうなれば、公共の福祉のために乱用を防ぐということになるんじゃありませんか、憲法十二条のあなたのおっしゃっているので言えば。
○国務大臣(牧野良三君) 何かむずかしいことになりますから、ちょっとわからん。答弁をしくじるといかん。正しい答弁をしたいと思いますが、何か思想的混乱を起して言葉をしくじるといけませんから、この程度にしておいて下さい。(笑声)きわめてはっきりしておると思います。
○藤田進君 このスト規制法に反対なさる態度になればこの程度にしてやめますが、依然としてこの規制法を推進サられ、下部検察庁その他を動員して、一朝事あれば事に処されるということであれば、この程度であいまいとするわけには参りません。果してスト規制法についてあなたが自信をもって閣議その他で推進をせられ、あるいは賛同せられてきているとするならば、この際法務大臣としては、厚生大臣とかなんとか、そういうお役所の大臣とは違うのでありますから、明確に一つお答えをいただかなきやなりません。 そこで、憲法十二条が根拠であるとおっしゃる以上、憲法十二条は、申し上げるまでもなく、そういう基本的人権ですね、これは団体行動をする権利もありましょう、生命もありましよう、財産もありましょう、そういう権利は、これを不断の努力で擁護していかなきゃならない、こう書いてある。その限りにおいては、スト規制法を必要としないのです。ところで、あなたのおっしも、るのをそのままとれば、乱用してはならない、公共の福祉の前に、は法によって規制し得るという解釈に立っておられるわけ、たから、再々申し上げる三十五条の二の緊急調整というもので足りるのではないかと申し上げたところ、それは足りないんだと、相補っていくんだと。ということであれば、何のために争議行為を禁止するのか、何を目的に禁止するのか。それは第一条に書いてあるんだと、こうおっしゃる。第一条に書いてあることは、今お読みになった通り、それはあげて憲法十二条のもとへ返ってくるのじゃありませんか、この議論というものは。そうであれば、やはり公共の福祉というものが大前提であろうと思う。それをまた、あなたが自問自答されて、循環論でもとに返ると思うんだが、やはり三十五条の二でいいじゃないか、倉石君、これはどうしたんだと、こういうことが出なきやならん。
○国務大臣(牧野良三君) それはいかん。(笑声)
○藤田進君 それはいかんでしょう。いかんことを一つ、あなたにお答えをいただきたい。どういう——これは循環論でなしに、まっすぐに歩んでいけぬものか。
○国務大臣(牧野良三君) それはあなたの方が専門的によく御承知だと思うのですね。というのは、緊急調整というやつは、許されているものが、大規模になったり何とかして、弊害が起る場合のことじゃありませんか。
○藤田進君 その通り。
○国務大臣(牧野良三君) だから、これは何かといえば、特殊なものですよ。問題になっておりますこの法律は、一般的な規定でございます。この一般的な規定はどこに根拠するかとおっしゃれば、私は電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律に基くものだ。しかし、これは一体どこに根拠するかとおっしゃれば、憲法十二条に根拠する……。
○藤田進君 あなたは、緊急調制の方は公益の関係、たとえば公益の……。あなたは憲法というかもしれませんし、そういう格好で出ていると。これは否定しないが、規模が大きくなればみんなが迷惑するのだから、憲法十二条の点からしても、これは制限し得ると、緊急調整だと。いいですか。一方スト規制法の方は、一体何のためにとめるかといえば、やはり根拠は同じだと思うんですよ。みんなが迷惑するからだ。それ以外にとめようがないでしょう。二十八条に保障されている権利を、一部にしろ制限する。社会通念だ、あるいは乱用するといって、とめる以上、これはやはり懸法十二条にあなたは根拠を置いておると思う。そうであれば、その根拠としては同じだと、あなたの考え方が根拠が同じだとすれば、何も二つ必要ないじゃないか。そう言えば、いや必要なんだ、こっちとこつちではもう出発点が違うのだ、こうおつしやるが、出発点は公共の福祉以外になかろうと思うのだ。それ以外にあれば、一つお答えをいただきたい。
○国務大臣(牧野良三君) 公共の福祉の範囲においてできる行為があるのです、たくさんね、ストライキには。その中で通常予測される行為で、それが規模が大きくなったりいろいろな弊害がうんとできるときには、この調整で行くのですね。今度のこの調整の適用が広い事態があるのですよ、それに対してこの今のスト規制法を適用する。
○藤田進君 言葉をかえてお尋ねいたしますが、国民生活に非常に支障を来たす、つまり規模が大きかったりあるいは長期にわたる、これが緊急調整だと。それからスト規制法の方は、もうそもそも小さいものも一切とめてあるのだというならば、従来の労働法の解釈の範囲ではないじゃありませんか。新しく権利を制限する創設的なこれは立法である。あなたはそう認めませんか。
○国務大臣(牧野良三君) そうは認めません。労働法であろうが、何の法であろうが、みな憲法の支配を受けなければならん。その意味において、十二条というのは最高峯であります。これのもう支配はどんな場合でも受けなければならん。
○藤田進君 どっちが最高かということは、あとでまた何らお伺いしてもいいのだが、私の申し上げるのは、大規模になって国民生活に支障を来たす、よって公共の福祉を阻害するというものが緊急調整、三十五条にあるこれなんだと。それからこのスト規制法の方は小さいものも一切やってはならんのだ、こういうことになるのだと思う。そうじゃないのですか。
○国務大臣(牧野良三君) どうも私の言う言葉がよく御理解を得るわけにはいかないようでありますから、政府委員から別の角度から説明をいたさせます。政府委員。(笑声、「大したものだ」と呼ぶ者あり)
○藤田進君 これは政府委員の段階ではないのでありましてね。牧野さん、大事な点は、あなたほどの方が、創設的な立法ではなくて、従来のいわゆる現行法の解釈の範疇であるということは、前段に明確に答弁されている。非常に矛盾して聞えるのですね。従来のワク内であるということをまず肯定した場合、なし得る範囲をこれはきめたのだ。逆に言えば、癒し得ない範囲をきめたのだ。ところが、、だんだん聞いてゆくと、大規模になって、国民の生活に重大な支障を来たすという場合は、これはもう緊急調整であるのだからいいじゃないかと言うと、いや、それは別の意味であるのだと。その別の意味とは、それほど国民生活に影響は与え欺くても、電気がとまったりして影響は与えなくても、もう初めから、根っからそういう争議行為はとめてしまうのだ、それがスト規制法だと。そういうふうにおっしゃるように聞えるのです。そうすると、スト規制法はどういうものなのか、あなたの解釈をはっきりさしてもらいたい。
○国務大臣(牧野良三君) お答えしますが、実は今あなたがおっしゃったように私が答えればいいのです。けれども、私はそう、は答えたくない。どんなに小さいもの、でも何でも入るという観念を、私の口から明らかにしたくない。そこは察して下さい。(笑声)私は法律学徒としての良心といたしまして、そこには一定の範囲があると思うのです。でありまするから、公共の福祉ということは重大なる要件をなすと私は思いまするが、法律ができて、二条、三条を適用する場合には、実際問題としてむずかしい場合ができてくると思います。でありまするから、あなたのように、どんなに小さいものでも適用するのだ、法律ができた以上はと、こう言えばあなたも満足だし、すこぶる明瞭かもしれませんが、そこまでは私としては良心的に行きたくない。
○藤田進君 うん、そうかそうか、それじゃそうしようと、そう言えばいいのだが、今立法過程にあるわけで、待合で背中を叩くようなわけにいかん。これははっきりすべきものははっきりして、果してどういう影響を国民生活にもたらすかということは、やはり必要のことなのだ。そういう意味においてやはりこれはお答えいただきたいと思う。
○国務大臣(牧野良三君) 法理の解釈というものはそんな偏狭なものであってはならないと思う。もっと弾力性のある、もっと実際の場合において裁判官をして自由裁量を与える余地あらしめるものであるべきであって、それが解釈というものが一つの学問をなすゆえんだと思うのでございます。昔は法律に定めてあるからやむを得ないと言った。悪法もまた法律と言いましたが、私はそれには賛成できません。私はやはり法律というものは具体的場合に応じて適当に解釈をすべき、適用すべきものだと思うので、はっきりせいと言われれば私の思想をはっきりするのであって、適用の具体的な結果までをはっきりするということは、私の良心が許しません。
○藤田進君 あなたの良心は、国民をして法を守る上においてあやまちなからしめるというのが、あなたの任務でなければならん。
○国務大臣(牧野良三君) そうです。
○藤田進君 そのためには、結果を論じられるということで有罪になるということがあってはならん。あらかじめ克明にこの治安当局の解釈なり、あるいは方針なりを示されることが必要なのであります。それはかって三年前に本法が通ったときに、労働省は労働次官通牒という形でかなりワクを広げていたが、非常に克明に行政解釈を出しておりました。あなたも行政当局の一人として、あなたの良心をはき違えないようにやっていただきたいと思います。ましてや、ここで答弁になることが、裁判所のそれぞれの裁判官の判決に当っての何らの拘束はないものと私は思います。議会におけるあなたの答弁は大いなる参考にはもちろんなりましようけれども、それが即裁判官を拘束するものではない。こういう意味合いにおいて、一つ横道に入らないでお願いをいたしたい。
○国務大臣(牧野良三君) ただいまのお言葉、大へんありがとうございます。そういう御意見でありますならば、私はこの解釈については私の意見を申し述べて差しつかえないと思います。 許されたる範囲内の行為であるけれども、それが限度を越えてはならないという規定は、すなわち調整法が受けておるのであります。そしてこのストライキ規制法は、根本においてこういう行為は許されないのだよということを明らかにしておる。いかなる場合においても、かかる行為は、一体基本的人権の場合においても、何の場合においても、許されないということをはっきりさせなきゃほらん。なぜかならば、日本の労働争議というものはまだその点において熟していない。円熟していない。決定していない。だから、こういう規定が必要だ。もしもこれがなかったなら、大へんなことをやりますよ。労働者は必ず大へんなことをやる。すでに過去においてやった。将来において、これが否決されたりなどしてごらんなさい、即時にやる。危ない。(笑声)
○阿具根登君 ちょっと関連して。牧野法相はえらいそこで力んで、労働者はとんでもないことをやる、こういうことを、法の最高の地位にある方が、国民を信用しないような御答弁を、大みえを切ってそこで言っておられる。どういうことをやったか、一つ例をはっきりと示していただきたい。
○国務大臣(牧野良三君) 勢いに乗じて(笑声)少しお耳に触るようなことがあったかしれん……。
○阿具根登君 あった。
○国務大臣(牧野良三君) あったらしいが、そういうことは許しておいて下さい。誠意を持って答弁して、熱が上ってそういうことになっても、労働者を侮辱したものではございません。何人も私は見下げたくはございません。
○阿具根登君 そういう考え方があなたの胸の中にあるから、こういう法律ができてくるのだ。労働者をほうおっておけばどういうことをしでかすかわからん、とんでもないことをしでかすのだ、こういうことがあなたの考えの中にあるということが、こういう法律になって現われてきておる。あなたの今の言葉を聞いて、日本の働いておる労働者はどんな気持でそれを聞いたか。戦後十二年、日本の経済がこれだけ復興したのは、もちろん政治の力があるかもしれません。しかし数十万の失業者を社会にほうり出されながら、営々として働いてきた労働者が一番大きな力をなしておるではありませんか。その労働者に対して、ほうっておけばとんでもないことをすると、ろくでもないやつだというような言い方をすることは、大臣としてもっとも恥ずべき私は言葉だと思うのですが、法務大臣はそうは思いませんか。
○国務大臣(牧野良三君) そういう意味ではございません。一体日本のほんとうの労働争議というものは労働者がするものですか。そこを考えて、よほど考えなければいかん。私は労働者を侮辱なんかしやしませんよ。これは法難論をやっておるのです。法律のないときの事実がどういうようにゆくかということを言うのだから、そういうように感情的に、私の言葉じりによって非難するのはよして下さい。
○阿具根登君 法務大臣は、あなたを非難しておると言うが、あなたが労働者を非難されたから、その根拠をついておる。
○国務大臣(牧野良三君) 非難しません。
○阿具根登君 あなたが労働者を非難された。この法律がなかったならばどういうことをするかわからない、日本の労働者はそういうものだと、こういうことを頭からきめつけられて法律解釈をされるとするならば、営々と働いておる国民は、労働者は何をたよりにしていきますか。(「その通り」と呼ぶ者あり)私はその考え方が是正されない限りは、ますます労働者がこういう傾向になっていくものだ、かように考えるわけなんです。 もう一つ、それでは、この法律がなかった場合に、どういうそんな大それたことをやったか。おそらく二十七年の十二月の争議を指しておられると思う。二十七年の十二月の十日には、十七、八日の四十八時間の保安指令を、炭労が六十三日のストライキをやったあのときに出した。それを示しておられると私は思う。それ以外にあったならばそれもお聞きしますが、かりにそれであったとするならば、政府は十六日の閣議で、十七日より緊急調整を発動されて、そうして炭鉱の労働者はそれに従ってストライキをやめております。そうするならば、この緊急調整にも従わずにやったんだというなら、またあなたの言われることを一部肯定できるところがあるかむわかりません。しかし、この法律によって労働者はそれを守って、何らこれ以上のストライキはやっておらない。そうするならば、あなたが頭から、労働者は何をするかわからないというようなことは、私は言えないと思うのですが、その点どうですか。
○国務大臣(牧野良三君) 私は非常に労働者の味方です。(笑声)従って、労働者は侮辱いたしません。もし言葉にそういうものがあれば表現が誤りで、精神はそれと違います。その点は御了解を願います。 事実過去における事例は、二十七年のおそろしい事態を惹起した。これは今なお忘れることができない、こういうわけであります。
○藤田進君 法を立法する場合の態度について、法務大臣は、架空のものであってはならん、過去にその事例があり、そのおそれがあるのだという、その事実認識ついては閣内不統一もはなはだしい。労働大臣は、労働情勢は漸次安定化しつつある。病人にたとえてみるならば、まだ三十七度そこそこで、熱もさめてきて、やがて安定する、すでに安定しておる組合もある、こういうことであったのでありますが、もしスト規制法がなかったならば、あなたの今の言葉でいけば、何をするかおそらくわからない。もうこの世の中が吹き飛ぶようなことを考えられておるように思います。これは間違いがあれば速記を調べればわかるが、この点について、従来労働情勢の認識において、政府を代表して答弁せられた倉石労働大臣は、果して今の法務大臣とどういうその認識において開示があるのかないのか。今お聞きの通りです。どういうようなお考えであるのかどうか。この際特にお答え願いたい。
○国務大臣(倉石忠雄君) 法務大臣はきわめて率直にお話しになりましたが、労働情勢に対する見解につきましては、これを担当いたしております私から、ときどき閣内でも報告をいたしておりますから、情勢判断については少しも違っておりません。法務大臣の言われましたことは、私がいつもここで申し上げていることと変りがないのでありまして、つまりこの法律が存在しないということにかりになった場合には、やはり今までのような日本人的常識で、ある一部からは、法律がなくなったんだから、これはやってもよろしいのだというような考えを持つような情勢になるかもしれない。もしそういうことになって、ここに規定いたしてありますようなことが行われるようなことがあったら大へんだと、こういう意味のことを言われたのでありまして、私もその意味においては全く同感であります。
○藤田進君 全然それは表現の強弱ではないです。音調がト調やへ調や、そんなことの問題ではない。言葉の内容が大きく懸隔があります、あなたの言われることと。横で聞いていてどう響いたかしれないが、手放し、無軌道な、何をするかしれない……。いいですか。そういう、いやしくも法務大臣、法律を扱う、守る法務大臣が、言われたということは、これはあなたの今の言われた点とは大きな食い違いがあるわけです。これを無理に、同じことを言っているのだということであれば、どちらへ同じなのか、これは明確にしたいと思う。
○国務大臣(牧野良三君) あらためて申します。私の表現に不適当なものがあったらしい。倉石労働大臣と少しもそこに懸隔はありません。もし表現に誤りがあれば、不適当があれば、いつでも訂正いたします。その意味において御了承願いたい。こんなことで時間をとっては皆さんにお気の毒だと思いますから、私からそのことを釈明いたします。
○藤田進君 しからば、どんなことをするかしれないということは、これを取り消すとおっしゃるわけですか、速記録の上から。
○国務大臣(牧野良三君) どんなことをするかもしれないと言ったならば、これは取り消しが適当だと思います。どんなことになるかもしれないと言ったならば、そのままにしておいて下さい。私は、どんなことになるかもしれん。日本人というやつは、押えられている法律をとると、すぐかっとなるのですよ。これはもう社会生活における常なんですね。そういう意味でありますから、まああまり悪くとらんようにして下さい。
○藤田進君 この点は一つ速記を調べられて、お取り消しになった方がいいし、そういう御意思でありますから、どうか単に速記を取り消すというのじゃなしに、あなたのその気持の中から取り消してもらいたい。 そこで本筋に返りますが、あなたは、でかいことになれば緊急調整だと言う。根本からやってはならないものをきめているのが、スト規制法だと言う。そうなんですか。
○国務大臣(牧野良三君) どうもそういう追及には、答弁が、正確な言葉を私は用いないおそれがあるから、政府委員に答えさしてどうですか。これは一体ですよ、政府委員と。
○藤田進君 労働大臣とあなたでさえ、なかなかニュアンスが違うということで、取り消しにもなったわけほんで、ましてや、閣議に参加して議論をしない政府委員は、不適当だと思う。あなたの御主張、このスト規制法の考え方をまとめて、一つ正味のところをお願いしているわけなんですから、あなた以外にはお答えできないはずなんです。
○国務大臣(倉石忠雄君) 私やりましょうか、どうですか。
○藤田進君 倉石労働大臣には、四日、五日と続けてお願いするわけです。きょうは午後だけで、法務大臣に一応。
○国務大臣(牧野良三君) 答えます。何か私が失言をするといかんのですよ、そうでさえなければ……。
○委員長(千葉信君) 私語を禁じます。
○国務大臣(牧野良三君) それでは、もう一度申します。 本法の規制と緊急調整とは、その目的を異にするものであって、本法は争議行為として正当ならざるものの範囲を明らかにするものであり、緊急調整は、通常の争議行為が大規模になった等により、これが損害を防止せんとし、そのための争議の調整、解決を主眼として、あわせて争議行為を禁止するものであります。従って、緊急調整と本法とは、重複するものでなく、相ともに公共の福祉を擁護するものであります。
○藤田進君 さあ、そうなると、さらに簡単にお尋ねいたしますが、正当ならざるものをとめている、片方は正当なものがだんだんやっていると、皆さんに迷惑をかけるからとめるのだ、こうおっしゃるわけですね。そこで念押しはしない。その通り言っているのだけれども、答弁に心配するだろうから……。そこでこのスト規制法なるものが正当でないものをとめている、こう言うとするならば、その正当性というものは何に根拠を置いているかという、なぜ正当でないのだ。
○国務大臣(牧野良三君) 公共の福祉を害するから。
○藤田進君 そうなれば、結局緊急調整にいう場合も公共の福祉を阻害するからとめる、スト規制法も公共の福祉を阻害するからとめる、そうなんでしょう。
○国務大臣(牧野良三君) 結果は同じでございます。
○藤田進君 そうだとすれば、正当ならざる、すなわち公共の福祉を阻害するということであれば、いいですか、緊急調整を発動できるじゃないですか。なぜそれをしない。(「そうはいかん」と呼ぶ者あり)
○国務大臣(牧野良三君) そうは参りません。(「あなた方は知らないから」と呼ぶ者あり)片方は許されている行為である。それがだんだん、だんだん弊害が出てくる場合の、それの調整をいうのであります。片方は、初めからいけないのです。本質上初めからいけないのです。
○藤田進君 その初めから本質上いけないということは、再三申し上げ、あなたも答えているように、憲法十二条の公共の福祉を阻害する、権利を乱用するから、いけないと言うんでしょう。そうだとすれば、今の、たとえば電気を具体的に取り上げてみますよ。いいですか。ある小さい発電所が、発電所の従業員の問題と、会社のこれに対応する関係において、争議が起きた。発電所の争議が起きた。そうすると、そこの発電所の人たちは仕事をしない、サポタージュをする。そうすると、その発電所が電気がとまる。けれども、そんなことで公共の福祉に何の影響ももたらさない。これははっきり言い得るのです。五百キロや千キロの発電所がとまったって、何の影響もないのだ。海に小便したようなもので、水位が上ったというようなことはありはしない。それまでとめようとするのに、このスト規制法がそれまでとめようとする。あなたの場合でいけば、それはとめなくてもよろしいという。鳩山さんもそういうことをこの間言ったのだが、その点はどう考えるか。
○国務大臣(牧野良三君) 総理がそんなことを言うはずはないと思いますが、これは第一条に、「この法律は、電気事業」として、カッコして、「一般の需要に応じ電気を供給する事業又はこれに電気を供給することを主たる目的とする事業」といっておるのでありますから、もしあなたのような設問の場合はこの中へ入らないのじゃないですか。
○藤田進君 そうですか。
○国務大臣(牧野良三君) そういうことにしておきましょうや。(笑声)
○藤田進君 そうしますと、私が指摘いたしました小規模の発電所において、それが公共の福祉に影響のないものは入らないと、簡単にいえばそういうことなんですか。
○国務大臣(牧野良三君) そうはいかないと思います。
○藤田進君 先ほどの前段のお答えをもう一ぺん、わかりやすく答えていただきたい。
○国務大臣(牧野良三君) 御質問の事例が第一条に規定する電気事業にあらざる場合ではございませんかと、疑いを抱いて反問いたしたのでありますが、私はさような設問の場合は、この法律の適用を受ける電気事業の中へは入らないものと解します。
○藤田進君 自家発とかそういうことではなくして、今申し上げた例は、電気といえども、これは普通百ボルト電圧、それから要するに流れが五十サイクルとか、そんなことがあるのだと思っていればいいのですが、それがちょっとどこかの発電所がとまったからといって、そんなに響かないのだ。それは公共の福祉に何の影響もない。あるいはさらに午前中、先ほど来、火力発電所がとまっていれば、結局火力発電所をたかなければ、会社はストライキのために多少損害があろうけれども、一般民衆には何の影響もない。そういうものまでもとめようとするこのスト規制法は、まさに労働基本権を押えて会社の営利を守るという、会社保護法という非難が出てくる。説明がつかない。その説明を、あなた、どうつけますか。
○国務大臣(牧野良三君) その具体的例に対しては答弁ができません。だれか、なるべくはほかの専門的知識を持つ方面にお問いをいただきたいと存じます。
○藤田進君 法務大臣が言われていることは、事例をあげればこれは答えられない。憲法の二十八条、あるいは財産権の二十九条ないし十二条、こういう関係で申し上げると、これはつじつまの合う説明ができない。それほどこれは悪法であるし、現行法体系の中でつじつまを合すことのできない悪法であるということを、心ひそかに今発見していただければ、これで私の質問する効果があったと思う。これ以上この点についてはお伺いしても、非常にお苦しいようですから……
○高田なほ子君 今のに関連して。いつも良識の持主であられる牧野法務大臣の御答弁として、若干私も疑義を持ってお伺いしておったわけであります。先ほどの大臣の御説明によれば、正当ほらざる行為を規制するものである。このスト規制法は正当ならざる行為を規制するものである。またこれを裏返して申しますと、先ほど阿具根さんからも大へん強く反駁があったわけでありますが、あたかもこの停電ストを犯罪のようにお取り扱いになるような御発言があったわけであります。すなわち正当ならざる行為、これを犯罪であるかのように言われるような御発言があったわけでありますが、これは大へん私も遺憾なことであると思うのです。 特に牧野法務君臣は近来の、特に電気関係に関するストライキについての幾多の判例を、当然私は御承知だと思うのであります。最近のこの東京高裁で検事控訴を棄却した事実がありました。これは牧野大臣は御承知だと存じますが、停電ストはこれは生産管理である、従ってこの生産管理は違法行為である、こういうふうに、検察官はこの停電ストに対して違法行為である、つまり牧野法務大臣がお考えになっていると同じように、違法行為であるという断定のもとにこれを主張したわけであります。ところが、東京高裁はこれに対して、第一審で無実の判決が行われている。ところが、検察側はこの無罪の判決に対して、違法行為に対する無罪の判決はそれは非常にけしからんことではないか、こういうことで控訴したわけであります。ところが、東京高裁はこれに対して次のような見解を述べておるわけであります。すなわち、争議行為は当然業務の正常な運営を妨げるという本質を持っている、つまり争議行為は業務の正常な運営が妨げられるのが当然である、従いまして労働者側はこの場合、会社側から出される業務命令を拒否する権利を持っている。これは私は正当な解釈だと思うわけであります。従って、争議行為の正当性を否認するものではない。業務命令を拒否したからといって、それは決して争議行為の正当性を否認するものではない。また財産上の損害を生ずることも、これはストライキ行為の間には当然起ってくることです。従って、財産権の侵害を伴う争議行為であるから、これは正常な争議行為でないという断定をすることははなはだ困難である。こういうような論拠のもとに、これは東京高裁は停電ストに対して無罪という判決が下されておるわけであります。すなわち、牧野法務大臣の言われる正当ならざる行為であるということが、判決ではこれは正当である行為として、無罪の判決をこれは出しておるわけであります。さらに、これは高知県でも同様のこの停電ストに対する判決がありましたが、これは五件全部無罪であります。ただしこの中の二件は罰金刑という一つの刑が科されたわけでありますが、これはピケッティング、すなわちピケ行為の行き過ぎであるという状況から罰金刑を科せられたのであって、停電ストそのものに対する争議行為が違法であるということに対しては、いずれも無罪の判決を下している。私は、牧野法務大臣のこの電気事業に関するストライキはいずれも違法であり、不正当である、そうしてその正当ならざる行為を規制するものであるというこの即断に対しては、了承しかねるわけでありますので、もう一度この点について責任ある御答弁をわずらわしたいと思う。
○国務大臣(牧野良三君) お答えをいたします。お説の通りでございます。一審は有罪であったものが、二審は無罪の判決を下しております。しかして、ただいまは上告中でございます。
○高田なほ子君 ノー、ノー、それは違います。(藤田進君「確定したのだ、確定判決だ」と述ぶ)
○国務大臣(牧野良三君) 確定判決の方ですか……。それはもう一つ事案があるのでございまして、私は大谷といいますか、大谷事件の方だと思いましたが、そうでないとしますると、まことに落ち度がありまして、控訴をいたすべきところを、検事が検事上告を怠りまして、そうしてそれで確定したことを遺憾といたしまするが、二審の判決に承服いたしておるわけではございません。 それからもう一つここでお答えを申し上げますが、これを私は犯罪と思っているのじゃない。そうして私が先ほど何かはなはだよろしくない言葉を使ったような点ですが、あれも社会的影響を言ったので、けしからんというのは犯罪人になるという意味じゃございません。すなわち許されたる争議行為ではない。許されたる争議行為の範囲を逸脱するという意味でございます。従って、その行為が有責不正の行為であるかどうかは、別の法令の適用をみるわけでございまして、それとこれは別だということを御理解を賜わります。そうしてただいま具体的の例の場合におきましては、他の刑罰法令を適用している点においての論議でございまして、その点につきましては、当局者は承服いたしていないということを明らかにいたします。
○高田なほ子君 牧野法務大臣の御答弁は、私の把握しているものとは若干そごをしているようであります。私は、牧野法務大臣が常日ごろ言わるるごとく、法は厳にして犯すべからず、つまり裁判所の判決、そういったようなものをやはり厳にして犯すべからざるものである思うのであります。従いましてさらに言葉を方面を変えていえば、高知県の地裁の判決でも、職場放棄は会社の施設管理権、そういったものを言うものではないし、スイッチ切断の方法はやむを得ない戦術としてこれは妥当とみなければならない、こういうような判決が出ておるわけであります。私はこういうような判決の出ておる矢先でありますから、大臣としてはもう少し慎重な御答弁がされるべきものだと考えるわけであります。法は厳にして犯すべからずという建前から、調整法の規定もあるわけです。その調整法に基いて労働基本権を守っていくというのが、これが私はあなたの言うところの法を守る建前ではないか、私はそういうふうに考えるのですが、大臣はどういうふうにお考えになっておられますか。
○国務大臣(牧野良三君) その点においては、お説と全然違った考えは持っておりません。ただ、具体的場合になりますると、その適用範囲というものが非常にむずかしくなります。従って、裁判に現われるところの具体的事実というものは、その事実を基礎として法律の適否を考えるべきであるものですから、いろいろの場合を生ずるということを御了承下さいまして、私の答弁を御理解を賜わりたいと存じます。
○高田なほ子君 もちろん裁判の判決が下るまでには、架空のことを問題にしているのではなくて、事実を基礎にしで問題にしているのであって、高知の判決にしても、あるいは東京高裁の判決にいたしましても、いずれもこれは言うところの停電ストである。この停電ストに対する行為の判決でありますから、当然この事実を基礎にして、無罪であり、しかもこの争議の方法というものが決して不当な行為ではないということを、ここに規定してあるのであります。大臣の言わるるごとくに、正当ならざるものを規定するのだ、こういうふうに断定づけて参りますと、高知の判決並びに東京地裁、並びにその他三十数件にわたる停電ストにおける判決というものが、これが非常に宙に迷ってくる。法治国家における国民の福祉を守るための法の番人の、その判決が架空なものであるということになった場合に、一体私たち国民は何を信頼し、何をものさしにし、何を行動していいのか、もうこれは国民精神の上に非常な大きな影響を与えるものであるから、再度、大臣の責任ある御答弁をわずらわしたいと思うのです。
○国務大臣(牧野良三君) 高田委員の御質問の御趣旨はもっともと存じまする。かかる重大なものについて、ことに新しく認められる大きな広範なストライキ等について、裁判所の見解とその他の見解とが二、三になるというようなことがあってはなりません。そこで最も正しい方針を、このただいま提案しております規制法において明らかにしたいと思うのでございまする。しかして、この法の適否につきましては御議論があると思いまするが、これができますれば、それで方針がすっかり定まることと存じまする。その点において、公共の福祉が守られるばかりではございません、共同生活の規律の方針というものが明らかになる。その点に積極的な特徴があるものと解しておる次第でございます。
○高田なほ子君 大へん重大な御発言をなさっておられる。今度のスト規制法がこれが成功すれば、また新しくそういう観点からものをながめていくのだ、こういうふうに受け取ると、今までのいわゆる電気ストライキに対する無罪の判決というものはこれは若干誤まったものであって、今度スト規制法が新たに継続して先々に延びていけば、こういうような判決はもうなくなって、いずれもこれは争議行為の不当性を主張するたてとしてこれを使うのだというふうに、裏をひっくり返せば受け取れる。これは非常に重大なことでありますが、そういうふうに受け取ってよろしいのですか、私の取り方が間違っておりますか、そこを正確にして下さい。
○国務大臣(牧野良三君) 高田委員の御解釈のようにはお取り下さらないように願いたいと存じます。(笑声)
○高田なほ子君 じゃ、どういうふうに取ったらよろしいのですか。
○国務大臣(牧野良三君) 公益事業令がこの前なくなりまして、そのためにその結果として、裁判所が公益事業令がないことのために免訴の言い渡しをいたしております。で、あればどういうことになるかということば、別の問題なんですね。公益事業令が生きていればどうなるか、最高裁の判決が来るのが。ところが、非常に残念なことには、最高裁判所の判決が一つもないのでございます。だから、その判決の批判の上におきましても、判決の基準の上におきましても、大へんな遺憾があるのです。しかして公益事業令のあるときには非常に平穏にストライキが行ったのです。ところが、あれが偶然なときに失効すると、問題が起ってくるということなのでありまするから、ここで適当な法令が必要であるというふうに考えるわけであります。
○高田なほ子君 公益事業令のことについて私はつまびらかではありませんけれども、この判決の例はそれとは全く別個の私は問題だと思うのです。答弁が少しはぐれておりはしないでしょうか。もし大臣で御迷惑でしたらば、政府委員でけっこうです。
○国務大臣(牧野良三君) そうでございます。これは高等裁判所の判決で、最高裁判所の判決がほしいのです。ところが、一つも最高裁判所の判決がないのです。それで実はその点については、判例々々といっているけれども、困っているのですね。判例というのは、われわれの方からいいますと、最高裁判所の判決です。ところが、幾つもあります高等裁判所におきまして幾つも判決がなされるということでは困る。統一的判決がほしいのでありますが、それのない今日におきまして、私どもは判例はいまだ得ることができなかったという遺憾を持っておることを申し上げたいと思います。
○高田なほ子君 ちょっと、もう一つ言わして下さい。牧野大臣、統一的の判決がないという場合には大へんに困る、まちまちの判決では困るということを言われましたけれども、私はしろうとですけれども、それは大へん私は誤まりじゃないかと思うのです。いろいろな土地、またはその一つ一つの事情というものが、いろいろな形で違ってくるわけでありますから、必ずしも統一した判決が出ないということの方が、民主的であり、またほんとうの私は法の精神はそのことによって生きるのではないかと思うのであります。この点については専門家ではありませんが、ちょっと横道にそれますけれども、大へん気になる御答弁でありますから、お尋ねしておきます。
○国務大臣(牧野良三君) 申し上げます。判決はまちまちでは民主的じゃないのでございます。判決は統一しなければいけないのです。そのために最高裁判所を置いているわけでございます。しかして問題となっている電源ストに対しましては、最高裁判所の判決はないのであります。ないのはどういうわけかというと、公益事業令がなくなってすべてのものが免訴になっているという点に遺憾がある、こう申したわけであります。
○委員長(千葉信君) この際、委員長からお願いしたいと思うのですが、できるだけ法務委員の方々を優先に発言していただくように、決して発言を制限する意味は持っていませんけれども、そのおつもりでお願いいたします。
○藤田進君 ちょっと関連して。下級審の判決に信頼がないということであったようでありますが、まず第一に指摘したいのは、法務大臣に、あなたに指摘したいのは、東京高裁の判決が停電ストに対して無罪の判決をした。この種の控訴を棄却したということは、これは事実としてお認めのようだが、それが判決確定したといえども、最高裁に持っていかなかった、上告しなかったのは検事のミステークで忘れていた、こういうおっしゃり方なんですが、当時の判決というものは法曹界でも注目していた事件である。しかも、その判決というものは当時としては、今はざらに無罪の判決が出てきたわけだが、当時としてはこれは起訴した検察側も、また各下級裁判所、裁判官も、重大な関心を持って見ていたときなのです。そういう状況下において、ミステークというようなことでこれをずらかろうというのは、少し私は当を得ていないと思います。この点を指摘しておくだけにとどめる。 それから判決がまちまちだと言われるけれども、それはよく業務妨害でピケッティングを張って負傷したとかいうような点についてはいざ知らず、事発電所における発電機をとめたとか、あるいはスイッチ・オフして電気をとめたとか、いわゆるスト規制法にいう停電あるいは電源ストというような、そういうものについては有罪判決がないのです。一審において有罪であった小倉支部の話が昨日あったけれども、これは二審の高裁においては無罪になっている。少くとも現在における判決がすべて、その面については無罪になっている。こういう判決例が逐次累積しつつある。この状態の中に、そして近く最高裁の判決もこれは出なけりゃならんのです。すなわち係争六年ないしは七年ですから、もう出る。こういうときに、現行法の解釈の範囲だと称してここにさらに延長するということは、当を得ないのじゃないか。先行きあなたのおっしゃる最高裁の判決をしようとするならば、もう追って出るときにあり、待つべきではないか、こういう議論は成り立つのであります。下級審のそういう判決は今申し上げた通りなんです。この点はどういうふうにお考えなのか、お答えいただきたい。
○国務大臣(牧野良三君) 一審で有罪のものが二件ございます。無罪のものが四件ございます。免訴のものが二件ございます。高裁で申しますと、二審で有罪のものが一件ございます。それから無罪のものが五件ございます。免訴のものが二件ございます。しこうして最高裁では六件全部免訴でございます。免訴の原因は、根拠となるべき法規が効力を失ったという点であります。すなわち有罪の数字を申しますれば、三件でございます。無罪を数の上からいえば、九件であります、免訴を数の上からいえば、十件でございます。事案としては全部で二十二件であるわけでございます。
○藤田進君 その有罪だというのは、スト規制法にいうこの行為をしたために、それに対する有罪の判決だとすれば、その件はどことどこか、あげていただきたい。ないはずだ、そんなものは。
○国務大臣(牧野良三君) 政府委員よりお答えを申し上げます。
○政府委員(井本臺吉君) ただいま大臣からお述べになりました有罪判決は、釧路地裁網走支部の事件で、電産北見分会事件が、これが一審では公衆の迷惑にならん事前の措置を講じたというようなことで無罪になっておりまするが、札幌高等裁判所で一部が有罪になっております。これは被検挙者が釈放要求のために検察庁に対する停電ストは、単なるいやがらせで、不当であるというようなことで、有罪になっているのでございます。それから電産の戸畑分会事件、これは福岡地方裁判所小倉支部で有罪になっております。これは一般の公共生活の安全を危殆ならしめるものであって、正当な行為ではないということで、有罪になっているのでございます。この事件が二件になっているので、二つに数えたわけでございます。
○藤田進君 これは全く事実を無視して、スト規制法に結びつけている点は遺憾であります。釧路網走、今の最初の件ですね、これは札幌高裁の判決が有罪だといわれているように言われているが、これは労調法のいうクーリング・タイム、三十日間の調停期間を経ない、こういう点が問題になっているはずなんだ。停電ストをやったとか電源ストをやったとか、それが有罪とは言っていない。それから第二の小倉支部の問題は有罪であるように言われるが、これは小倉の一審であって、同一事件が高裁では、無罪になっているはずだ。調べて答えてもらいたい。
○政府委員(井本臺吉君) 小倉支部の事件は福岡高裁で無罪になりまして、この件につきましては私ども承服できませんので上告いたしましたところが、公益事業令が失効したということで免訴になっております。
○藤田進君 そういう事実を答えなければ……。それから今の網走は……。
○政府委員(井本臺吉君) この事件も、最高裁におきまして公益事業令が失効したということで、免訴になっております。
○藤田進君 一審、その一部有罪、一部無罪というのは、一部無罪についてはこれは問題ない。一部有罪というのは、その判決理由等を読まれてわかると思うが、これは労調法違反、そういうことになっているはずなのです。
○政府委員(井本臺吉君) 札幌高等裁判所の事件は、理由は簡単に申し上げますと、「本件行為の目的の一つは、労使対等交渉による労働者の経済的地位の向上をはかるにあったことは、一応これを了解するにかたくないところであるが、被告人らの行動の前後を仔細に検討してみると、その目的の主なるものは、検察庁、警察署に対するいやがらせにあったものと解するよりほかない。かくのごときはその事件本来の目的を逸脱すること明らかであるから、被告人らの行為はこの点においてすでに正当なる争議行為と認めることができない」というように判じております。
○藤田進君 これは停電をやった、電源ストをやったということで有罪じゃない。警察に向って抗議に行った、その警察に対してわれわれは圧力を加えたのだという調書が出、証言があって、それは目的が違うということであったはずなんです。従って、それは労調法にいう調停期間の三十日を経ていない。その後その労調法三十七条であったか、これが改正になって、緊急調整という形に変ってきたのです。
○政府委員(井本臺吉君) 電気を切ったというその点につきまして、札幌高裁の事件は、電気事業法違反ということになっております。
○藤田進君 それは事実と違うと思う。この点については資料等がいずれ出せると思うから、その部分だけでも出していただけばけっこうと思います。 そこで牧野さん、いずれにしても今言うような結果なんだ、裁判の判決というのは。そういう状況下にあって、法の解釈をここで確立するのだということは、時期的に見ても不穏当だと思いませんか。
○国務大臣(牧野良三君) 私はそれを不穏当とは思わないのです。ということは、こういうことを右にしたり、左にしたり、また争ったりしておることは、公共の福祉に非常によくないと思うのです。でありますから、この法律は、不当に圧迫するということから反対されるならいいけれども、公共の福祉をもとにして出発するこの法律が根拠がないという議論にはならないと思うのです。従って、具体的事案に対する批判は、私はこの場合は差し控えたいと思っております。
○藤田進君 刑事局長の方から、先ほど言った資料を出しますか。あなたの言うのは、停電あるいは電源スト、そういう行為に対して罰しているとあなたは主張されるのだが、私の方の今の調査ではそうではない。やはり労調法の三十七条であったか、クーリング・タイムという制度があったが、その制度の手続を経ないままにやったということで、正当性ということが問題になると、違法性の阻却がなくなったのだ。こういう重要なときにそういうあいまいな説明は困るのです。
○政府委員(井本臺吉君) 判決の主旨は作成いたしまして提出いたしたいと思います。
○阿具根登君 本法律の制定される当時から、また今まで聞いております牧野法相の答弁の中にも言われておりますように、これは社会通念と公共の福祉が基礎になってやっておられる、こういうふうに考えるわけです。非常に逆戻りしていくようですが、そうするならば、三年前と今との社会通念、それからいわゆる考え方ですね、それから公共の福祉というものは、どういうところまで考えておれれるか。先ほど法律は幅を持たなければならない、こういうことを言っておられますけれども、これには私は幅があると思っておらない。はっきりと禁じられておる。そうするならば、公共の福祉というものはどこまでであるのか、こういう点を牧野大臣に詳細にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(牧野良三君) それがすなわち社会通念できまることだと思うのでありまして、どこまでいってもぐるぐる回っては、この点は議論にしかならない。私は公共の福祉なんということは議論の対象となるものではないというふうに解したいのであります。
○阿具根登君 公共の福祉が議論の対象になるものではないと言われる牧野法相が、しばしば公共の福祉ということを議論の対象として使われておるのは、それでは何のためですか。
○国務大臣(牧野良三君) 御了承を請います。私は説明に使っておる。法理上の説明の根拠としてこれを明らかにしておる。この文字は憲法に規定しておるというので申し上げておるのでありますから、御了承を請います。
○阿具根登君 公共の福祉というものを具体的にそこで解明をしていただきたい。たとえば炭鉱の場合も、電気の場合も、先ほどちょっと藤田議員も触れましたが、ごく小さいものでも公共の福祉になるのか、あるいはならないのか、これは先ほどちょっと触れておられますので、簡単でいいですから、明確にお答えを願います。
○国務大臣(牧野良三君) 申し上げます。公共の福祉を定義づけることは非常に困難でありまするが、常識的に表現いたしますると、一部の者の権利、利益が一般社会の秩序、利益を不当に侵さないようにということ、すなわち部外の権利、利益の主張が一般社会の利益ないし秩序との調和を不当に破ることがないようになされることであると考えるのでございます。基本的人権たる労働基本権と公共の福祉とについても同様でありまして、争議行為が多少世間に迷惑を及ぼすことはこれは避けがたいが、それが一般社会の利益を不当にそこなうことなく、もろもろの一般的な基本的人権と労働者の権利とが調和を保って発展することが、公共の福祉に合致するゆえんであると考える、かように考えておるわけでございます。
○阿具根登君 きわめて明快な御答弁でございます。そういたしますと、このスト規制法は、ただいま言われましたように、一般社会に対して不当な迷惑をかける、こういうことでやられておるものと思いますが、さようでございますか。
○国務大臣(牧野良三君) ただそれだけにお考えになってはならんと存じます。ストライキば大ていの場合一般社会に迷惑を及ぼすものでございます。が、それが労働者として主張を通すに必要なるものである、その限度であるならば、これは私は許さなければならないと思うのです。相手方に主張を入れしむる方法といたしまして、相手方が受け得る不利益あるいは痛みがきわめて微弱なるにかかわらず、社会公共一般のこうむるところの迷惑、損害、しかして危険が非常にはかるべからざる大なるものである場合には、これは公共の福祉を害する、かように解するのであります。
○阿具根登君 なるほどその解釈通りだと思いますが、そうすれば、スト規制法は、たとえば第三条の石炭産業労働者に負わされております保安要員引き揚げというものは、すべてがそういうようなことに当るものであるかどうか。
○国務大臣(牧野良三君) 専門的知識を欠いておりますから、その点は御容赦を請いたいが、保安要員を引き揚げしめるなんということは、私はよろしくないことである。これはもういかなる場合においても、公共の福祉を害するおそれあるもの——害するとはいいません。害するおそれあるものと思います。
○阿具根登君 それは国家資源の確保、あるいはただいま言われました一般社会に及ぼす影響というようなことであろうと思いますが、しからばそれは両方に課せられるものであろうと思いますが、その点はいかがですか。労使双方に課せらるべきものと思いますが、その点いかがですか。
○国務大臣(牧野良三君) 御質問の御趣旨は、労働者は引き揚げてならないと同時に経営者もまた引き揚げちゃならぬというな意味でしょうな。
○阿具根登君 そうです。
○国務大臣(牧野良三君) 保安義務がありますから、両方とも私はいけないものと思います。
○阿具根登君 労働者は自己の生活を守るために、その要求が入れられない場合に、職場を放棄することができない、自己の生活を守るために要求が入れられなかった場合に、その職場を放棄することはできないということを言われておるが、そうすれば先ほどの御答弁のように、今度は使用者の方も自分の利潤を追及するために、その職場を放棄することはできないというのが当りまえではございませんか。先ほどの答弁から考えればそうなりますが、どうですか……労働大臣に聞く必要はございませんよ。労働大臣に聞いているのじゃないから。あなたに聞いているのですよ。労働大臣は先入観が違うのだから、あなたは法務大臣としての立場からお答えを願いたい。
○国務大臣(牧野良三君) ちょっとお待ち下さい、今知識の供給を受けておりますから……。私は保安義務というものは労働者が持っているのじゃなくて、これは経営者が持っているものと思います。だから形のいかんを問わず引き揚げるということは、保安義務違反だと私は思うな。
○阿具根登君 そうなりますと、保安の義務は使用者が持っている、もちろん使用者が持っているし、保安監督官もあるいは保安管理者も、これは保安監督官と使用者は違いますが、保安監督官も持っておる、もちろんそうなる。そうすれば保安の責任は使用者にある、労働君がその責任を負わなければならないということは、成り立たない。保安の責任は使用者にある、こういうことを言っておられる。
○国務大臣(牧野良三君) お答えいたしますが、けれどもそれは雇用関係でその責任実行の衝に当っていんるでしょう、労働者が。それはいけませんよ。
○阿具根登君 雇用関係の何の問題もありますが、これは別といたしまして、たとえば第一組合、第二組合があった場合に、会社は第一組合をきらって第二組合を入れる場合もございます。また、たとえば使用者が二つの炭鉱を持っておった場合、それで一つの炭鉱にストライキが起ったために、次の炭鉱から保安要員を入れてくる、こういうことが可能ですか、どうですか。
○国務大臣(牧野良三君) 衆議院の委員会でそういう質問を聞きましてね、ははあと考えたのであります。そしてやはり私はそういうことをして対抗しちゃいかんと思いますね、資本家は。
○阿具根登君 法務大臣がおっしゃる通りそういうことをしていかんというなら、なぜこの法律に使用君に対してもこりいうことをしてはいかんぞということを明記されません。あなたは先ほど労働者はどういうことをするかわからんとおっしゃったから、藤田委員から相当議論があらて、私は労働者を尊敬しておると言われたならば、どうして労働者に対してこういう責任を負わせるならば、相手の使用者にも課せないので、すか。
○国務大臣(牧野良三君) さっきの言葉のことをあまり繰り返して言わぬことにしてくれ、あれで済んだ。また、私は適用されると思うんですが、いかがでしょう。
○阿具根登君 あまり具体的に入ると御存じないかもしれませんが、現在でも起っておるある一つの炭鉱では、九百人の人の首を切って閉山をいたしました。また、国の資源だといって倉石労働大臣は国の資源を守るためにということを口をすっぱくしておられますが、二十数万トンの石炭がちゃんと埋蔵されておる。それにもかかわらず経営が成り立たないからといって山を放棄されてしまった。これは一体どういうことですか、国の資源を社会通念からいって、公共の福祉からいって、そうしてこれを放棄してゆくんです、九百人の労働者の首を切って。逆に労働者がそれをやる場合には、あなた方はこういうスト規制法というものを作られる。経営者の場合はどうです。
○国務大臣(牧野良三君) 労働大臣から答えていただきます。
○阿具根登君 いやいや、労働大臣からも答えていただきます。しかし、あなたが今使用者もそういうことはできないと言われましたから、この法律ではそれは罰するようにはなっておりません。それをお聞きしておるわけです。
○国務大臣(牧野良三君) その御質問に対する答弁の私は用意がございません。少し考えさして下さい。(「ゆっくり考えろ」と呼ぶ者あり)
○阿具根登君 倉石労働大臣がお答え下さると思います。お答えをやろうと思っておられると思いますから、一つ倉石労働大臣から明確にお聞きいたします。
○国務大臣(倉石忠雄君) 昨日でありましたか、一昨日でありましたか、この席でたしか山本さんだと思いましたが、石炭鉱業合理化法の関係の具体的な今のお説と同じお話がありました。それで今法務大臣のお話しにありましたように、保安義務はやはり今申し上げた通りでありますが、そこであなたのお話しにありますことは、鉱山保安の立場に立っておる労働者が、保安要員を引き揚げるということは禁じられておる、この法律で。そこでそれなのに山を、まだ数万トンも埋蔵量があるといわれておる山を閉山してしまうということはどうか、公共の福祉に反するではないか、こういうふうなこの前のお尋ねと同じ御趣旨だと思うのでありますが、そこで前提に申し上げておきたいのは、今は阿具根さんは具体的なお名前をおあげになりませんでしたから、けっこうですが、具体的な事案についてわれわれが批評がましいことを申し上げるのは遠慮いたしますが、今のお尋ねを一般論として考えてみますと、経営側がこの山はコマシャル・べースに立って、経済的立場に立って経営は困難だという認定を持って、同時にたまたまある合理化法に基いて買い上げをやってもらう、こういうことが、まあ、あったといたします。そこで鉱業権を持っておる者は、その場合経営者でございますから、そこでこれが合理化法に基いて売買する、国に買い上げてもらうということは、これは自由なことでありますが、そこであなたの一番問題にされようとしておるのは、保安要員を引き揚げるということによって山の損害滅失することを、罰してまで防ぐならば、そういう今のような事例でこれをやめるのもよくないではないかということ、しかしながらこの法律で言っておりますことは、山を継続してやってゆくという考えが継続しておるときに、こういうことをもしかりに遂行されましたならば、ある場合には溢水したり、ある場合にはガス爆発を起したりするというようなことに触ると、大きな損失になるばかりでなく、争議が妥結したときに労働者が帰るべき職場を失うことになるから、それはいけない。それがわれわれの言う公共の福祉に反することになる、こういうことでありますが、さてそいつを今の事例で経営側がこれをやめる、こういう場合には、経営というものは、やはりなるほど今の説によれば二十何万トンかまだ埋蔵量があるというお話しでございますが、これの経営をその経営者が継続いたしてゆくことができないということのどういう事情があるかは別問題として、その事情のもとにこれを合理化法案によって国に売りつける、その場合に国では御承知のように大体においてはこれは廃鉱にいたします。その廃鉱にいたす場合には、それぞれの保安に関係のある措置を講じまして、そうして廃鉱にいたすわけでありますから、これを本法にいう公共の福祉に、この山を廃山するということが公共の福祉に反するではないかと、そういうことには私どもはならないと思うのであります。
○阿具根登君 具体例を一つ申し上げましたが、それでは先ほど言われたように個々の名前は申し上げませんが、それはまだ他に幾つもありますが、たとえば労働者が賃金の要求をやった、ところがこれに対抗するために使用者側はそういう多額の要求は受け入れることはできないから休山いたします、そうしていわゆる休山であるから、あるいは非常に水が多いところはポンプを入れるかもしれません。そういう場合には別個の人を雇ってきて入れております。そうしてその山を休山の姿で守っておる、こういう場合はどうなりますか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 休山をいたしておりますときには、あなたの説のように大いに水のたまる山もあり、いろいろありましょうから、そういう場合には保安要員を入れて溢水しないように保安確保をしておる、こういうことでございますね、実例は。
○阿具根登君 そういうこともありましょうし、あるいはそういうことをせんでもいい山も、これは御承知のようにたくさんあるわけです。そういう場合に私が問わんとしておるところは、労働者は自分の生活を守るために一時休業をしよう、休もうということはまかりならぬと言っておるけれども、経営者としては、自分の利潤を守るために一時休山にしようというものは罰しておらぬじゃないか、こういうことを聞いておるわけです。
○国務大臣(倉石忠雄君) だいぶ具体的な問題になって参りましたが、具体的には御承知のように、あなたもすでに鉱山には長い御経験ですが、そういうような小山ではその経営維持困難の場合に、いろいろな方法によって通産省つまり政府の方にもこの継続を依頼してくる場合もあるようです。同時にまた、あとう限りそういうことのめんどうは見ておりますけれども、それでもなおかつ経営困難だという場合には、休山することは自由経済の建前上、いかんともいたし方がないことであるとかように考えます。
○阿具根登君 そうするとそういう小山の場合に、一時経営が困難であるからやむを得ないとして休山を認められる、これはあるいは非常に短かい休山かもしれないし、長い休山かもわかりません。ところが労働者の方は自分たちはこれで生活ができないから一時休業いたしますということはできない、非常に片手落ちになりゃしませんか、小山の場合ですね。これは片手落ちとお思いになりませんか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 私どもこの労政を担当いたしておりまする方から見ますというと、今の御指摘になりましたような事例については、まことに遺憾だと思います。そこで一時的休山でなくても、合理化法によってそれぞれの買い上げ等の措置を講じてもらう場合におきましても、私どもはまずもってその間に、休山に至る労働関係については、政府としては御承知のように、いろいろな出先の機関、通じて万遺憾なからしめるように処置いたしておることは御承知の通りでありますが、経営者の意思に反してこれをどういうふうにやれと、こういうところまではわれわれとしては指図をいたしかねる、こういうことでございます。
○阿具根登君 そうすると、労働者の意思に反してはできるけれども、使用者の利潤追求に対する処置に対しては、政府としては何もできないと、そういうことはできないと、こういうことになるのですね。
○国務大臣(倉石忠雄君) 私の申しておりますのは、その小山を経営しておる経営がとうてい継続することが困難だと、そういう場合には、いろいろな角度から、今までも政府にめんどうを見てもらうものもありましたし、政府があっせんをして金融措置をやっている場合もありましたが、どうしてもこれがペイしないでやりきれないという場合に閉山をするというときには、今申しましたように労働関係についてば、出先の役所を通じてそれぞれできるだけの処置はいたさしておることも御承知の通りであります。ただ、私どむは今この場合には、この電気産業と石炭鉱業の争議行為の手段を規制する場合には、この山で経営を続けていくために労務契約を締結して、そして両方で経営をいたしていこうという場合に、その山の滅失あるいは溢水というふうな危険な結果になるような争議手段はいけないと、こういうことを言っておるのでありまして、山全体が経営困難でこれを閉山しなければならないという場合には、これは私どもとしても、なお政府の力でそれを維持していくということは不可能だと思います。
○阿具根登君 私の言っておることを少し解釈を違えておられると思うのです。私は、その山が経営者の考えておる通りにはいかないかもわからない、しかし、社会通念をどういうふうにお考えになるかわかりませんけれども、それは形を変えればいける山である。しかし労働者の要求を入れないために、あるいは入れられないために休山をするという行為をとられた場合に何か罰する方法があるかないか、それを聞いておるのであります。
○国務大臣(倉石忠雄君) 個々の山のいろいろなそういう事情は、諸般の事情が錯綜しておるでありましょうから、一がいにはお答えいたしかねるかと思いますけれども、今のお話を私が推察してみますというと、比較的経営困難な小山で争議が起きたと、この争議の発端は待遇、賃金の問題であるとか……。
○阿具根登君 首切りの問題もありますよ。
○国務大臣(倉石忠雄君) それでこれは組合側の言うことはとうてい採用できないと、こういうことを経営者が判断をいたした場合に山を閉山すると、そういうことを自由にさせておいてはいけないのではないかと、こういうお話しのようであります。そこで、もちろんその個々の争議の場合に、その経営者側の経理内容がどういうものであるかということによっても違うでありましょう、それからまた、閉山した後の組合側に対する処置、そういう話し合いもまた違うでありましょう、個々の場合に。従ってそういうことはその場合の労働関係というものについてわれわれとしてはさっき申しましたように、それは不当な干渉はできませんけれども、労働関係についてはそういう閉山する場合には、いろいろ出先を通じて指示ばいたしておりますが、しかし、その場合に経営側と労働組合側との要求が折り合わないということについて、政府が何かタッチすることができるかというと、これはそこまで個々の争議内容について政府が干渉いたしていくということはよくないことであると思いますし、そういうことはしない方がいいと思います。
○阿具根登君 それはそっくりそういう個々の小さい山の問題については、使用者の方には、そういう個々の問題については干渉しないのだと、労働者の方には干渉するのだと、それでは片手落ちになるではございませんかと私は言っておるわけなんです。その争議そのものの仲裁とか処理とか、そういうことを私は尋ねているわけじゃないのですね。そういうようなことを労働省がとったとらないということは、別な問題であって、もう一つ解釈を変えてみるならば、これは大矢君のこの前の質問であなたも横におられたからわかっておられると思う。そういう問題は、これは公共の福祉にも反しないし、社会通念としてもいたし方ないのだと、こういうような解釈ならわかるのだ、ところがそうでないと言われるなら片手落ちではございませんかと言っておるわけだ。弾圧ですよ。
○国務大臣(倉石忠雄君) 私どもは決してそう思いません。あなたの言われるのは、その場合に労働者に対して何か弾圧するようなお話し、でありますが、私どもは今申しておるように、そんなことは毛頭考えてわりません。従って休山というようは事態の生じた場合には、政府は出先を通じて、労働関係についても個々事情が違うでしょうが、その休山の場合にどういうやり方をするか、また休山して、労働関係は将来どういうふうにやるつもりかというふうなことについては、できるだけお世話をするようにいたさせております。ただ、その雇用関係及び労働組合と経営者との間のいろいろな紛争の事態については、政府はそういうところへ介入すべきではないと、こういうことを言っておるのです。
○阿具根登君 その通りです。だからそういう介入するとか、しないとかという問題ではなくて、一方は生活のために、生活ができない。これは極端に行ってないから、御存じないかもしれませんけれども、山がつぶれるとか、あるいはつぶすようなところに行ってみなさい、ほんとうに生活はできないような苦しい生活をしている。その人たちの言うことは聞かれないで、片一方のは聞かれるというのはおかしいではないか。それからまた、保安要員の場合も、自分が気に入らなければ、使用者は勝手に保安要員を別個に雇ってきて、坑内の保安を確保するではないか。そういうようなことを使用者には権限を与えておいて、そうして労働者にだけお前は休むこともできないぞと、これは酷ではありませんかということなんです。保安の責任が経営者にあるならば、それはロック・アウトになった場合でも、そういう場合でも、これは使用者の責任でやるべきである、こういうことなんです。そうでないとするならば、そういう場合でも、使用者は他から雇用することはできないということが言えますか。たとえば職員組合もある、これも衆議院で出ておった、第一組合、第二組合がある、あるいはそうでなくて、同じ資本内の炭鉱が別にある、あるいは炭鉱をやめた失業者がたくさんいる、あるいはそうでなくて、またほかの経営の炭鉱がよそにある。そこから自由に連れてきて、そうして保安を守ることも自由にできるではございませんか。一方的に労働者だけ職を離れることはできぬというならば、その使用者に対しては、その保安要員以外には雇うことができないというようなことがあるかどうか、おわかり下さったと思います。御答弁願います。
○国務大臣(倉石忠雄君) 私の申し上げていることが、どうもはっきりしないようでありますが、今のような事例の場合に、一方の経営側は休山することもできる。しかるに労働側はその最後まで保安放棄はできないんだと、これは不公平ではないか。そこで私どもの申しますのは、この法律の目的とするところは、しばしばここでお話しのありますように、つまり保安放棄ということは重大な結果を招来するんだと、従ってそれを突き詰めてやられては困る。従って争議行為としてでもそういうことはやってもらいたくないんだというのが本法の目的でありますから、そこでいよいよ休山するというときには、保安に対する処置は御承知のようにそれぞれやられるでありましょう。しかし、それが事業を続けていく間は、やはり保安というものだけは守ってもらわなくてはいけない、こういうことを要求いたしているだけなんでありまして、保安の放棄ということは、争議行為としてでももちろん、先ほどお話しのありました経営者も保安の義務を負っているのでありますし、同時にまた、組合側も保安放棄をやってはいけないということになっておる。そこでその場合に、経営者の態度が気に入らない、気に入らないにもかかわらず、法律が保安要員の引き揚げということを禁じておるから、どこまでもやらなければならぬ、それは憲法の禁じておる非常な強制労働のような結果になるのではないかという御議論も出てきますが、その点は御承知のように、外国では争議行為をやったときには、当然に雇用契約というものは破棄されたものであるという認識、常識のもとにやっている国もあるようでございますが、日本ではそうじゃないのです。争議行為をやって労務の提供を怠るということをやっても、雇用契約は継続しているわけであります。だから雇用関係を持って、そうして労働協約なり何なりで、いろんな形で、会社ごとに違うでしょうが、保安要員というものは指定されております。御承知のようにその人だけばその職場を離れてはならないのだ、しかし、こんな会社にいることがいやだと言われる方は、自由にほかへ、自分が職を求めて転出されるということは自由なんでありますからして、これは決していわゆる強制労働ということではないと私どもはさように考えるのであります。
○阿具根登君 そうしますと、横道にそれて行ってこれは困るのですが、職場を放棄するということは、その職に帰らない、やめていきなさい、こういうことですね、やめていくんだったらいいということになりますと……。それでは日本の全炭鉱の諸君がですね、一万数千円の給料で働いておって、これでは食えないから賃金を上げていただきたい、あるいは政府の施策によって——ここに通産省おられませんから、これは触れませんけれども、ことしは四千三百万トンと言っておったかと思えば、四千八百万トンほしい、四千五百万トン出せと言っておったかと思えば、四千二百万トンになる、まるで経済を攪乱しておるようなことは、これは通産行政の悪いところであって、そのために首切りが続々と出てきておる。そういう場合に、あなた方の基本人権は認められておりますから、全部やめていきなさい——辞表を出せばよろしいのです。炭鉱労働者三十万近くの人が辞表さえ出せばやってもいいのだ、こういう結論に飛躍してくるならば、それでは公共の福祉とか、あるいは国家資源とか、社会通念とかというものは、跡形もないようになってしまうじゃございませんか。これが一つあなたの今の答弁から発展したことです。 それからその前のやつがまだ解明されておらない。私が言わんとするところは十分お察し願えておると思いますけれども、私の発言が悪いためか、ほんとうにお答え願っておらない。それは、保安要員というものはストの場合でも引き揚げはできないという規定があるにもかかわらず、ある山においては、そういう人たちはのかしても、よそから連れてきても、保安要員はできるではないか。これは使用者を罰する方法はない、認められておるのです。そこで私が言っておるのは、片一方の人は保安要員として、自分が好まない仕事もしなければできないとするならば、経営者の方もよそから雇ってくるようなことは一切まかりならぬ。こういう法律でもあれば、またその点においては対等ではないかということも言えるけれども、一方には自由採択権を与えておって、片一方にはいやな職場でも離れることはできないというのは、片手落ちではないか、こういうことなんです。
○国務大臣(倉石忠雄君) 第一のお尋ねにつきましては、いずれ通産大臣も、あるいは連合審査があるかもしれませんが、そういう場合にもお話があると思いますが、御指摘のように炭鉱業政策については、なかなかこれは御承知のようにむずかしいものでありますけれども、これについては確たる政策を立てる必要のあることは御同感であります。しかしながら、そこで今あなたのかりに設けられたお尋ねのように、三十数万の炭鉱労務者が、いやだったらみんなやめちまえ、これは事実には即さない問題でありまして、ただ先ほど私は、それは本人の意思にかかわらず働かされるということになるではないかというお話しでありましたから、それは雇用関係の自由の原則であって、それはそうなりませんということを申したのでありますが、特に労働政策の立場から申しますならば、私どもは各大産業について労使協議会などを勧奨いたしておるようなふうに、徐々にそういうふうにして炭鉱においても労使関係をだんだん円滑にいたしていくように努力をいたして参るつもりでありますから、そこでそういう争議行為のなるべく少くなるようには全力をあげてやっておりますが、しかし、今のあとの方のお尋ねで、保安要員というものは心ならずも働かされると、こういうことについていろいろお話がありました。しかし、現実に炭鉱の争議を、まああなたも大いに指導——指導といってはいけませんが御関係になりましたので、御存じのように、部分ストが行われて、そして経営側がロック・アウトをいたします。その場合でも保安要員を引き揚げてもらっては困るというのが、この法律の希望しておるところであります。それはもう問題のないことなんです。そういうのがこの法律の本体であります。そこでその争議行為というものは先ほど来、ここで法務大臣と各委員さんの間にも論議がかわされましたけれども、この二十八条にわれわれが憲法によって保障を受けております団体行動権というものは、あとう限り守られなければならないものであることは、これは当然なことでありますが、しかし、この団体行動権の自由権といえども、一般国民との自由権と並行に扱われるべきものである。そこで電気や石炭において——まあ、詳しい説明はやめにしますが、この保安放棄というようはことが行われるという結果によっては、われわれがしばしばここに申し上げているような結果を招来することになるからして、そういうことは争議行為としてでもやってはいけないのだということだけなんであります。これがなければ、これをやらなければ争議行為ができない、全面的に組合を抑圧をするのだということになるのだということは、私どもは賛成ができないのでありまして、そうじゃないのであって、この限られたる部分の手段をとられてはなら広いのだ。それは法益権衡の立場からそういうことになるのであるということを言うておるわけであります。そこで経営というものが、今度は自分が現在の経理内容ではこの山を維持していくことができない、そこで閉山をする場合は、さっき申しましたが、今度新しく出されましたお尋ねにつきましては閉山ということでなくて、労務契約についての意見が合わない、その場合にそのまあ休山のような形にすると、これは私は非常に面白くないことであると思います、そういうやり方がもしあるとすれば。そこで、しかしながらその場合に保安要員は引き揚げちゃいけないのだ、保安要員が引き揚げるなら仕方がないから、よそから代替要員を連れてきて、保安だけは確保させるのだとこういうふうに経営者が言うのはけしからぬではないか、こういうことだろうと思います。その場合に私は全員が引き揚げるという、保安要員が引き揚げるということが、そもそもこの法律では禁じておるところでありますけれども、やむを得ずして代替要員をここに出すということは、保安義務を持っておる保安管理者としては、これはやむを得ないことではないか、こういうふうに思います。
○阿具根登君 労働大臣の御答弁を聞いておりますと、ことさらに労働者のみがそういうことをやるのだということに解釈しておられる。今度は使用者側が戦術として、そういう組合員は要りません、私は保安確保のためにはだれだれを使いますと言って、よそから連れてくることができるかできませんか、そういうことを言っているわけなんですよ。あなたは労働者だけが悪いのだ、労働者が保安を守らないというから、おれはよそから連れてくるのだというようにあなたは解釈されておるけれども、私が言っているのはそうじゃない。それからもう一つ、先ほどの問題は、あなたがいつも言われておるように、基本的人権は認めておりますよ、やめる方はお帰りになっていいですよというのです。あなたの頭に入っておるのは、ラジオの青空討論会ですか、あれをお聞きいたしましても、あなたが朝日に書いておられるのを見ましても、あなたは炭鉱を放棄すればすぐ爆発するのだ、破壊するのだということを言っておられますが、今まで破壊した例がどこにあるか、そういうことはありません。そうして坑内で自然発火して炭坑がこわれるような場合には、命を賭して入ってくるのは、争議中でも労働者ではございませんか。そういう労働者に対して、先入的にお前らは保安を放棄するのだということでなくて、逆に使用者の方からお前らはおらなくてもよろしい、おれのところで守ってやるということもできるのじゃないかということなんです。 それからもう一つは、先ほどのやつです、全国の労働者と言ったから数字が少し太り三十六万になりますが、これがそうじゃなくて、あなたのおっしゃるようなそんなところならば、外国のように契約を破棄されたらいいではありませんかということになれば、契約を破棄すれば、保安放棄はよろしいのだという解釈になれば、国の資源、公共の福祉、社会通念というものはそれではないのじゃないですかと言っているわけなんです。
○国務大臣(倉石忠雄君) ただいまのお話しよくわかりましたし、私もそう極端な意見を申し上げる意思はちっとむないのでありますが、今のお話しの中で労働者だけが悪いことをするのだという先入主に立っているのだ、こういうお言葉でありますが、それは非常な誤解でありますから、そういう誤解は解いていただきたいのでありますが、あなたも私がそういう考えを持っているとは、内心は思っておいでにならんことはよくわかるのです。(笑声)政府はつまり国民の代表によって作られているものでありますから、国民の意思を信頼することは、これは当りまえのことであります。ひとり労働者ばかりじゃありません、国民を信頼するにあらざれば、政治はできるものじゃありません。しかし、お互いが信頼し合っている国民同士でも、やはり国民が憲法によって与えられた自由を求めその自由権の発動の結果、その間に衝突を生じてはいけないから法規制というものを作って、それでお互いにできるだけ守っていく。そういうことのためには、今この法律だけ取り上げられて、労働者だけ悪いことをするように考えられているのだとおっしゃられますが、こればかりじゃありませんで、すべてわれわれの国民生活にはいろいろな規制を設けられております。極端な例で言えば、刑法には罰則もあるし、それからまた、その他の取締規則はみなわれわれ国民が受けているわけであります。信頼されつつも、共同生活をしていくためにそういう規範を要するということだけであって、そこでこの法律に取り扱っているものは、くれぐれも、繰り返して申し上げておりますように、憲法二十八条の基本権というものは、あとう限り尊重しなければならないが、この二十八条の自由権を発動する範囲については、こういうようなことは公共の福祉に反した結果を生ずるからして、これはやめてもらいたい。つまりわれわれが銀座を歩いて、赤が出ればとまって、青が出れば進むようなものでありまして、交通は自由でありますけれども、それは赤のときにはとまるのだという意味のことを、公共の福祉を守るために、お互いに規制しようじゃないか、これだけのことなんでありますから。
○阿具根登君 私もこれにて質問は保留いたしますが、非常に違っているところがあるのです。たとえば今の例の場合でも、銀座を歩くのは自由であるけれども、赤が出たらとまりなさい、青が出たら進みなさい、これは当然です。ところが、この法律は赤が出て片一方に青が出ているけれども、片一方にはなかなか青が出ない法律だと、これは片一方だけ青を出しておいて、使用者の通るのには青ばかり出しておる法律じゃないかと言っておるのです。あなたはそうじゃないと言われるところに、食い違いがあるのです。そこで、非常に具体的に入ったから、大臣もお答えにくかったと思いますが、これはまたどうせ大臣にお会いしますから、あとでまた御質問いたしますが、私が問うておるところは、そういう末端に至るまでこの法律では労働者は禁止されておる。そうするならば、なぜ相手方にも禁止しないのかというのが一つ。それからもう一つは、あなたは、休業はできないけれども、廃業は認める、休業は認めないけれども、その仕事をやめていくことは認めているということは、この法律の基本的精神である公共の福祉も、社会通念も、国家資源の確保も、これは消えておる。こういう考えの三つの点を私は保留いたしまして、時間も相当過ぎましたから、これできょうは打ち切ります。
○阿部竹松君 社労の方はあさっても予定があるそうですから、労働大臣にはまだお聞きする機会があろうかと思います。従って、法務大臣に若干御質問を申し上げたいと思います。法務大臣はさいぜんからの何回かの御答弁で、やはり本質は公共の福祉の問題とこの第十二条の問題を強く強調しておられるのですね。しかし、今まで伺った中では、十二条も法務大臣は後段の方を強く主張して、前段の方を、意識的にかどうかわかりませんけれども、あまり主張しておられんように承わるのですが、前段について一つ御解釈をまず願いたいと思います。
○国務大臣(牧野良三君) お答えいたします。前段が特に私は重要だと思っております。
○阿部竹松君 そうしますと、法務大臣の御見解は、前段の方が主であり、「又」というところからは従であるとおっしゃるわけですね。そうすると、現在の労働情勢というものは前段に該当しないという御見解ですか。
○国務大臣(牧野良三君) 私はさようには解しないのです。現在の労働争議行為というものを基準としていきまするときに問題が起きます。ただいま労働大臣との間の質問応答を伺っていても、そこではっきりするのですが、やはり争議で許すか許さないかという問題と、所有権及び雇用契約の自由ということとを区別して考えれば、きわめてわかることだと思うのですね。争議としてはいけませんよというのであって、雇用契約の民法の方面と、それから所有権を放棄するかどうかという民法の私権の方面とは別に考えて、ともかくも労働争議はいかぬと、こういくわけです。
○阿部竹松君 そこで法務大臣、その結論が政府から出された提案趣旨説明の三ページ目に、「本法は、すでに施行後三年の期間を経過したのでありますが、電気事業及び石炭鉱業における労使関係の現状は、遺憾ながら、いまだかかる健全な労働慣行が十分確立されたとは認めがたい状態にあるといわざるを得ないのであります。」、この労働慣行というのは、どこを基準として政府が政策に盛り込むかということを一つお尋ねしたいのですがね。全然法文に裏づけするものは法務省としてはないのですか。
○国務大臣(牧野良三君) この点は、議論をすれば非常にめんどうだと思いますが、私はわれわれの間において争議行為というものをほんとうに理解しているかどうかというところに、非常に疑いがあると思うのですね。無理はないですよ、何といっても、戦後特に認められたというくらいのものです。戦前にも私は、認めなきゃいけないと言って二十年戦ってきたのでありますが、戦後特に認められている。それが憲法に認められておる。この憲法もちょっと異例ですわね。御承知の通り、こんなにまで認めるということは……。けれども、そこで誤りがきているので、慣行が熟成するということが必要だと思うのです。そこのところがまだうまくいっていないと思うのですね。問題はそこで、御議論はありましょうよ。ありましょうが、私はさように解するのでございます。
○阿部竹松君 そこでその慣行ということについて、法務大臣の御見解は、慣行がまだできていないという立場からの御答弁ですね。私どもは慣行がすでにもうできておるという立場ですから、これは見解の相違とか、水かけ論ということになってしまうかもしれません。そこでその問題は、公共の福祉ということをその上に強調されるのであれば、今より八年前に、時の芦田内閣だと記憶しておるのですが、炭鉱国管法案というものがありましたね。六カ月間かかってできた法律ですが、そのくらい重大な石炭産業、あるいは電気産業であれば、政府がなぜにそういう問題と取り組んで、その石炭産業なり、あるいは電気産業を、国営というところまで持っていかぬかということですがね。
○国務大臣(牧野良三君) その点について、私もあなたと同感なんです。
○阿部竹松君 同感、であれば、私は質問することもなくなるので、あなたが直ちに明日の閣議でそれを主張していただきたいということになるのだが、この場限りの答弁では、これはとても、それでは御質問申し上げませんというようなことにはならぬわけで、たとえば、昨年、これは法務大臣は昨年も法務大臣でしたので、御承知だと思うのですが、石炭産業合理化法案といり一つの法案が出ましたね。これは三年間でとにかく三百万トンに対応する石炭山を買って買いつぶすんだと、こちらは労働者が保安放棄して山をつぶしたらだめなんだから、それで労働者に制限を加えるのだと、こういうような矛盾した法律が、同じ政府で、同じ内閣でできておる。こういう点はどうですかね。
○国務大臣(牧野良三君) そこが一致すると思うのです。といいますることは、一定量を確保したいという考えと、労働者の利益は擁護したいという考えと、それが行き過ぎのないようにしなければならないという考えと、まだ未熟である労働争議の慣行を熟成さしたいという考えと、順にこうやって調和さしていって、だんだんだんだん私は皆さんの所期しておられるところに到達すると、こう考えておる。
○阿部竹松君 そうしますと、藤田委員並びに阿具根委員の御質問に対しては、法務大臣は公共の福祉ということを大いに強調されておったわけですね。しかし、今度の御答弁は、労働争議のよい慣行を作るのだということに変ってきたように承われるのですが、これはどうですか。
○国務大臣(牧野良三君) 変りません。公共の福祉というものは、労働争議の慣行が熟成すれば、よく不安なく達せられます。
○阿部竹松君 そうしますと、日本で石炭が五千万トン要ると、しかし現在六千万トン出炭するのだと、こういう場合があり得るわけですね。今年は四千六百三十万トンですが、しかしこれは一例ですから……、五千万トンわが国で石炭が必要だと、そうする場合に、六千万トンの石炭がわが国で出炭する。そうすると、一千万トン余るわけです。従って、一千万トン分だけはストライキをやっても何をやっても、日本国民というものの八千九百万人のそれぞれの上に何ら影響をきたさないわけですね。そうすると、公共の福祉に少しも影響しない、こういうことになると思うのですが、どうですか。
○国務大臣(牧野良三君) そういう三段論法は成立いたしません。
○阿部竹松君 三段論法といって、この法律を作れば結果がどうなってどういう影響を与えるかということまで政府はお考えになって出すのではないですか。ただばく然と一つの法律を作って、あとはどうなろうと知らんというようなお考えで出しておるのではないでしょう。
○国務大臣(牧野良三君) あくまでも労働者の利益と権利とを尊重しながら公共の福祉を維持したいというのが、法務当局の念願でございます。しかして、ただいま御質問の、言われた石炭の場合につきましては、どうぞ通産大臣とよく意見を合わしていただきたいと存じます。
○阿部竹松君 ここへお出になっているお二人の大臣さえ、若干御意見が食い違ったような意見でありますから、通産大臣とよく打ち合せておるということは、まあまあとにかくあまり信用できないわけですが、とにかく法務大臣はよく基本人権を尊重しておる、こういうことになりますると、憲法十八条に、犯罪を犯したものは別といたして、強制労働とか、あるいは精神とか、あるいは人心を一切国家権力とか、他のものによって影響も受けないし拘束も受けないのだ、こういうことが十八条にございますね。これとの関連性はどういうことになりますか。
○国務大臣(牧野良三君) 繰り返し申し上げておりまする通りに、私はいかなる権利、自由といえども公共の福祉を害してはならないという建前をとっているのでございます。これが日本の憲法であり、これが日本の民法でございます。従っていかなる場合でも、公共の福祉を妨げてはならないと信じます。
○阿部竹松君 ですから話が戻りますけれども、五千万トン必要なときに六千万トン出る能力があって、千万トン分についてはそうしますと公共の福祉ではない、経営者の一切のとにかく所有権である、その私権を知るということになりませんですか。
○国務大臣(牧野良三君) 必要量以上なものに対しては、法律の適用がない、基本的人権の適用がないとか、争議権の適用がないということは許さるべきことじゃございません。
○阿部竹松君 そこで重ねてお尋ねしまますが、そうしますと十八条に示すところの公共の福祉によれば、十八条が一切無効であるとこういうお考えですか、公共の福祉以外の問題については。
○国務大臣(牧野良三君) さような極端な議論は成立する余地がないと存じております。
○阿部竹松君 極端とはどういうことですかな、法務大臣。
○国務大臣(牧野良三君) 極端とは公共の福祉以外の場合においては、全部意味がないのかというようもなのにとられたのですが、そんなものではない。これだけを御理解を願います。この憲法のどんな規定も、民法のどんな規定も、必ず公共の福祉に従わなきゃなりません。そして正義と真実に従わなきゃならない。だから私はこれを破ることは許されないが、それを破らない範囲においては、自由も、権利も、取引も、労働争議も合法的に、合理的にできると思います。
○阿部竹松君 ですからそこで言いたいことは、法務大臣はそういうような御見解であれば、日本に必要なだけの石炭を堀っておれば、それ以外の分について問題が起きても、公共の福祉に何ら害がないというような場合には、このスト規制法というものは矛盾きわまるものではないかということを申し上げておるわけです。
○国務大臣(牧野良三君) そういう場合は起き得ないと思いますがね。
○阿部竹松君 それは起き得ますよ。たとえば例をあげないと、法務大臣は、さいぜん石炭についてはあまりわからないというようなあれでしたから、一例をあげて御質問申し上げるわけですが、たとえば日本に八百ほどそれぞれの山がございますが、そこで一日二百トンぐらいずつ出す山が、もし争議によってつぶれても、公共の福祉に何ら影響しないでしょう。汽車がとまることもありませんし、ガスがとまることもありませんし、一切がっさい公共の福祉に影響しないということはこれはありますよ。
○国務大臣(牧野良三君) そういう場合を想像しなくてはなりませんかね。われわれは社会生活をする場合において、さようなむずかしい場合を想像しなければならないでしょうか。まあ私の解するところによって、出炭ストというものは禁止してはいないのでしょう。禁止されてはいませんね。だからこのストライキに限るのですよ、問題は。ストライキ以外のことについての質問はこの場合には入りませんね。
○阿部竹松君 そういうような御答弁であれば、何をか言わんやでありますけれども、しかしながらいかに法務大臣であっても、一つの法案を作って国会で議決を求める場合には、その法案が国会を通過して一つの法律になった場合には、それに当てはめて、一体国民にどういう影響をきたらすか、あるいは日本国にどういう影響がくるであろうかということも、十分判断して法律を作るのじゃないですか、そういうことはないのですか。
○国務大臣(牧野良三君) あなたのおっしゃる通りです。
○阿部竹松君 そうすると、当然話がまた戻りますけれども、さいぜんのような問題が起きてくるわけですよ。一例をまた違った面であげてみましても、小さい問題になって法務大臣にお聞きするのはどうかと思いますけれども、保安要員は一体だれがきめるのかという問題が生じてきます、炭鉱に保安要員という職種がないのですから、そうしますと、保安要員が引き揚げるとか引き揚げないとか、そういう問題は、保安要員という職種があれば、当然お前は職場放棄だとか職場放棄でないということが起きてきますけれども、保安要員という職種は全然ありません。どこの炭鉱も、北は北海道の太平洋炭鉱から南は長崎の端島炭鉱まで保安要員という職種を持った業務はない。そうしますと、保安要員が職場放棄をしたとかしないとかいうことを一体だれがきめるのですか。
○国務大臣(牧野良三君) そういうことは一体あなた方がよく御存じで、経営者と団体協約その他においてできておるのじゃないのですか。私に質問される事項じゃない、あなた方の方が御承知の事項じゃないのですか。
○阿部竹松君 政府がこの法案を出さないということであれば、これはわれわれ何ら関せずですよ。しかし、この法案をあくまで政府が強行して国会で一つの法案にしようとするから、この法案が通った場合はどうなるかということが、当然われわれ心配になるわけです。従ってまた出す方としても、一体君たちはこういう法案が国会を通った場合には、こうこうこういうことになりますよと、懇切丁寧にやるのがあなた方のお仕事でしょう。それで、そういうことを君たちは知っているだろうと言って法案を作りっぱなしということは、まことにだらしない法務大臣です。
○国務大臣(牧野良三君) 私はそういう問題につきましては、すでにこれは初めての法律じゃないのですから、そういうことはもう決定しておるものと、こういうことを理解して答弁をいたしておるのでありまして、それと私が違った答弁をしてはならないと思うから、すなわち専門的な方面に関して食い違いが生じてはならないと思うから言うので、皮肉を言うわけでも回避をするわけでも何でもない、誠意をもって答弁しておるが、知識の足らないところとこの前の国会を知らないために、答弁の食い違いを生じてはならないと思いまするので、その点はどうか御同情を請いたいと思います。
○阿部竹松君 そうなると法務大臣も次の政権の問題もありまして、午後からの会議も相当あれですから、今ここで法務大臣にとことんまでやろうとは思いませんけれども、ただ、一つの法案を作るときには、前の国会できめたから、あるいは前の内閣できめたから、前の法務大臣がやったからということでなくて、少くとも牧野学説なども入れて、つまり真剣にやってもらわなければならぬ。そういうことはまことに遺憾のきわみだと思うのですが、いかがですか。
○国務大臣(牧野良三君) お説の通りであります。でありますから勉強をいたし、そうして前の速記録も読み、それから答弁もよく研究いたしておりますけれども、不用意にそごした答弁をしたら取り返しがつかぬでしょう。(笑声)そこでなるべくあなたの方から補足していただいて、こいねがわくはこの種の法律の審議は誠実に進めたい。かように思うにほかなりませんから、その点どうか御同情を請いたいと思うのです。(笑声)
○秋山長造君 私三、三点ちょっとお伺いしたい。 この法律が三年前にできたときのこの立法者の立法理由というものを振り返って見ますと、これは二十七年の秋に行われた電気事業及び石炭鉱業におけるあのストライキ、こういう緊急事態というものに対して、緊急に対処するという必要から、この法律は実行されたものと、こう私は思う。その点について法務大臣はどのように解釈しておられるか。まず、その点をお尋ねいたします。
○国務大臣(牧野良三君) 私は緊急事案に処するものであるとは思わない。緊急事態にも処し得る結論にはなるけれども、やはり先ほど申しました、どうも日本の労働争議というものには、知らないうちに規をはずれていることが多いと思います。だからそれですぐ私は労働者諸君を法律違反としたり、刑罰法令に触れるとして処罰したりなんかしてはいけないと思います。そういうことは慎まなければいけない。だから適当に、労働争議を圧迫し、鎮圧するにあらざる限り、適当な指導的な私は法規は、今はこしらえておいて差し上げなければいかぬと思うのです。
○秋山長造君 法務大臣のお話しによると、緊急事態というようなことではなくして、どうも日本の労働者はこういうようなきわめてばく然とした一般的な動機から、この法律が作られたというような御趣旨のようですが、労働大臣にあらためてお伺いいたしますが、この点は労働大臣はどのように理解しておられるのですか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 法務大臣が申し上げましたことは、つまりこの法律で規制いたしてあるものは、争議行為としてでも一般的にやってもらっては困るという趣旨が本法の立案の趣旨だ。こういう御説明があったわけでございますが、秋山さんのお尋ねのように、二十七年に特にこういう法律を国会において議決をされたということは、やはり昭和二十七年の電産、炭労の世の耳目を聳動するような大争議があった。そこで、そういうことについてこれは実に困ったことだという、何といいますか、当時の説明にあります通り、社会通念がこれを強く要望するようになってきた。そういうことに直接の動機はあると思います。しかし、本法の趣旨は、一般的にこのようなことは争議行為としてでもしてはならないんだと、こういうことをきめるのが本法の目的である。こういう法務大臣の御説明であったので、補足いたしておきます。
○秋山長造君 法務大臣と労働大臣のおっしゃることに、多少のやっぱり解釈の相違があると思うのです。そこで私は、三年前に当時の政府がどういう提案説明をしているかということをちょっと参考のために読み上げてみたいと思います。こう言っておるのです。提案説明の最後のところで、昨年の電産、炭労の両ストライキによる苦い経験にかんがみ、またわが国経済、国民生活及び労使関係の現状にかんがみて、当面の緊急の問題に対処せんとするのが立案趣旨である。臨時立法とするゆえんである。こう書いてあるのです。だからこれは労働大臣がおっしゃるように、単にこの立法を思いたった一つの動機にすぎないということではなくして、これはもう立案趣旨の最大の要素というものは、これは当面の緊急事態ということなんですね。当時の当面の緊急事態ということが、この立法のこれはもう趣旨なんです。そうしてまた三年間の臨時立法にしたゆえんも、これは当面の緊急事態に対処するということに尽きているわけなんですね。だからその後三年間の経過を見まして、再々繰返されておりますように、この三年間に何らこれに触れるような事態はなかった。それからまた、さっきお話がありましたように、一方的な情勢解釈によって法廷に持ち込まれたようなものも、結論的にはすべてこれはもう無罪ということで全然問題になっていない。そういうことになると、これはもう最初の立法の趣旨からして、当然これはもう三年間の期限が来たら、そのまま廃止されてしかるべきものじゃないかと私は思うのです。で、それがさらに廃止されないで継続されるということになれば、当然この立法の趣旨であった当面の緊急事態というものが、その緊急事態の時間的な継続ということがなけりゃならぬのじゃないかと思うのですがね。そういうことが全然ないのに、この法律だけをさらに継続していくということは、私は非常に間違った考え方ではないかというように考えるのですが、これについて労働大臣と法務大臣とお二人の一つ御見解をお伺いしたい。
○国務大臣(倉石忠雄君) 私も三年前にやはりこの法律の立法に携わったものでございますが、私どもは実はあの二十七年の大争議を見て非常に驚いたわけであります。終戦後私どもが民主的な慣行に親しめるようになったわけでございますけれども、そこでまだわれわれがお互いに民主主義政治というものについて未熟であるので、これはひとり私は労働運動のみ責めるべきではないと思うのでして、民主主義というもののチャンピオンであるべきわれわれ国民議員の間ですら、全く民主主義に逆行するような遺憾なる暴力沙汰などが行われるということは、これは長い歴史の上から見れば過渡的なものでありますから、それでそう民主主義議会に失望する必要はありませんが、まあそういったようなことで、労働運動もやはりよき労働慣行が成熟してきておれば、本法に指定いたしておるようなことは全くやらないはずなのである。しばしばここで例を引いて、たまに叱られましたけれども、電労連という電気の組合の方が私のところに申入書を持っておいでになった。その書面を見ましても、こんな法律はなくても、われわれは自主的にこういうことはやらないということを決定しているのだ。だからこの法律は要らないのではないかと、こういうことでありますが、われわれの労働運動というものは、秋山さんも御存じのように、これはもう戦時中は抑圧されておった。しかるに百年も百五十年もの長い歴史を持っておる英国や何かのような穏健な労働運動ができるなんということは期待することが無理かもしれませんが、そこであのような一般国民大衆の利害を顧みないような大争議が起きるということについては、今お話しになりました緊急な事態であります。そういうことであるからして、われわれとしてはやむを得ずとういう法律を作らなければならないのだと、秋山さんも御存じのように、労働法一条二項の中にただしいかなる場合でも暴力行為をしてはならないといった意味のことを、労働組合法を改正した場合にわれわれが入れましたときも、まことに恥しい思いをしました。労働組合法にあんなばかなことを入れる必要はないのであります。しかも、あの当時の社会状態においては、あの修正を必要とした。そういうような事態であるからして、遺憾ながら、こういう法律を作らなければならないのだ。そこで、当初、当時の政府というものは、三年たったら、もう一ぺん議会に聞けなんという案ではありませんでしたけれども、当時の改進党及び鳩山自由党でありますか、そういう人たちから、まあ日本の労働慣行もだんだん成熟するだろうからして、とにかく三年たったら、もう一ぺん延長するかしないかということを国会できめるようにしようじゃないかという修正案が出まして、それが衆議院で可決されてから、議会が解散になりまして、その次の十六国会には、政府が、三年たったら国会に聞けということに一応同意をしたものですから、その次の提案には、その趣旨を盛り込んで通過をいたしたのが現行法でございます。そこで、そういうものだからもうやめてもいいではないか、こういうことになるわけでございますが、そういうものでありますから、われわれは三年間の経過を見ておりましたけれども、労働界の客観情勢は、やはり本法の存在をもう少し必要とする、そこで今度延長の御決議を願いたい。しかしこれは、それなら一体いつまで必要だ、こういうことをよく聞かれることがありますが、それは、一日も早くよき労働慣行が成熟することを待望し、政府もそういう方向で指導する、現在の客観情勢としては、本法の存在を必要とせざるを得ない、こういうことであります。
○秋山長造君 今労働大臣のおっしやるのは、これはきわめて常識論なんです。私がお尋ねしておるのは、もう少し法律論としてお答え願いたいと思って聞いておるのです。この法律ができた趣旨は、これは、あくまで当時の、今日とはうんと違うのですね。当時のきわめて差し迫ったといわれる緊急事態なんです。緊急事態に対処する、いわば応急対策として立案されたものなんです。だから、そういう意味で、三年間の時限立法ということになっておる。だから、これはもう当然に時限立法の性質からいっても、当然にこれは三年たったから、もうやめてしまうべきものなんです。だから、それをさらに存続するということになれば、これは、立法当時、立法の趣旨としてうたわれた緊急事態、あるいはそれに類するような状態が、継続してか断続してか、とにかく、いずれにしても、続いて現実に存在するというような、これは具体的な、ただばく然とよき労働慣行ができるとかできぬとかいうようなことでなしに、もっと具体的な、客観的な事情、理由というものがない限りは、これはなかなか存続するという理由は出てこないのじゃないか、こういうことを質問しておるのです。
○国務大臣(倉石忠雄君) 言葉が足りませんでしたが、当時立法中の国会における質疑応答をごらん下さればわかりますが、当時の政府も、決して、この緊急事態に一応対処するためである、たとえば、ここに非常な擾乱が起きた、そういう場合に、戒厳令をしく、騒ぎがしずまってから戒厳令は撤廃するというような、そういう緊急事態に処するという趣旨ではございませんで、つまり、こういうようなことが将来起るということが、著しく公共の福祉を害するものであるから、とにかく、こういう法律の存在の必要を認める。そこで、三年たったら消えるということではございませんので、三年たったら存続するかどうかということを、もう一ぺん議決を要する、こういうことでございました。従って、私どもとしては、なお今日の客観的情勢は本法の存在を必要と認める。こういうことで、法律の命ずるところによって継続するように御決議を願いたい、こういうことを提案いたしておるわけであります。
○国務大臣(牧野良三君) この点に対しましては、緊急事態というものが本法立法の原因をなしておる、この内容をいかに決定するかということと、これをいつまで存続させるかということとは、これは別の問題だと存じます。この立法の原因をなした緊急状態というものを批判的に見るときに、あなた方のごらんになることと、私どもの見るところとには、相当の相違のあることを理解いたしました。しかし、これは必ず私は調和すべきものだと思います。何となれば、労働者諸君といえども、禁止されるような電源ストをやろうという意思はないとおっしゃた。同時に、われわれといえども、それ以上の圧迫をしようというような意思はないのです。でありまするから、しばらくこの法律はまあ目をつぶって継続させてみようという結論にはきっと出ると思う。(笑声)でありますから、私は、あの立法の趣旨として説明せられたことを、ここでやはりお互いな結論のところへいくように理解したいと思います。
○秋山長造君 法務大臣、言葉を返すようですがね。法務大臣がおっしゃるように、あなたがたとしても、労働者がまさか今後こういうことをするとは思わない、それから、あなた方の方も、こういう取締り、こういう法律を、現実に適用するというようなことは考えないということならば、まあしばらく目をつぶって、そのままにするということでなしに、ここで、きれいさっぱりと御破算にするということになさったらどうですか。同じことだと思う。しかも、これだけいやがられておるものを、何も、そんなにそういうおそれも何も、労働者側にもないし、それから政府側にもないのだったら、全然必要ない。それからもう一つは、今法務大臣のお答えによりますと、この立法のこの理由と、当時の立法の理由と、それからこれを三年間の時限立法にした理由というものは別たと、こういう御答弁がありましたね。ところが、それは別じゃないです。さっき私読み上げましたようにこの法律の立法趣旨も、当面の緊急の問題に対処するということが立法の趣旨であり、同時に、臨時立法とするゆえんであると、こう書いてある。だから、臨時三年間の時限立法としたのも、それからこの法律そのものを作ったのも、これはもう、理由、動機は、すべて当面の緊急問題に対処するということがただ一つなんです。ただ一つなんです。ほかには何もない。だから、私は先ほど労働大臣にもお尋ねしているように、これは牧野法務大臣に、法律の専門家としての法務大臣に改めてお尋ねいたしますが、こういう意味の臨時立法というものは、やはり、その当時の緊急状態というものが、連続的にか、断続的にか、いずれにしても、継続しておるということがなければ、これをあえてさらに存続していくという客観的な理由にはならないじゃないか、こういう御質問をしておる。これについて、法律専門家としての法務大臣の御見解、明確な御見解をお承わりしたい。
○国務大臣(牧野良三君) 申し上げます。どうもこれを時限立法と解しておられるところに何か誤解があるじゃないですか。これは、三年たったところでもう一ぺん議題に供するというのですよ。時限立法ではないですよ。
○秋山長造君 書いてある。提案理由に。
○国務大臣(牧野良三君) われわれの方じゃ時限立法とは言わない。(「じゃ何と言うか。」「三年たったら消えてしまう。」と呼ぶ者あり)じゃないですよ。私は時限立法時限立法とさっきからおっしゃっておる点は、しいて問題にならないから聞きのがしておりましたが、これが問題になるとすれば、この法律というものを見直さなければならん。そこで、この点は法制局当局が出ているから、法制局次長の見解を一つ聞いていただきたい。
○秋山長造君 法制局なんかに聞く必要はない。今私が何回も読んでいるのですよ。三年前の政府の提案理由にそう書いてある。臨時立法とちゃんと書いてある。臨時立法だとちゃんと書いてある。
○国務大臣(牧野良三君) 時限立法とはそういうものではないのです。それは言葉の争いで、時限立法というものは法律上の用語になっておるのですから、このときになくなるということは規定してないのです。そこでもう一ぺん見直すというのです。レビューするという、見直すというのです、この時期になったときに。それで労働大臣の責任においてこの法律を出しておる。だからこれはちょっとわれわれとは……、法律上の用語に関する問題ですから、これは議論してもしようがないと思います。従ってこれは時限立法として取り扱ってはいけませんよ。(「あなたの解釈は勝手なんですよ」と呼ぶ者あり)
○秋山長造君 しかし法務大臣、これはやっぱりそうおっしゃるけれども、それは今になってこれを続けようと、するから、そういう御説明ができるのであって、当時の説明を読んでみなさい。当時の説明を読んでみれば、時限立法時限立法と言っているのだ。それからまた、法律専門用語としてはどう解釈するかしらぬけれども、少くともこれは三年たったらなくなる、あるいは、一日も早くなくなることがこの三年に限った趣旨なんです。これはもう間違いないのですよ。
○藤田進君 これはあらためてやったらどうです。その間勉強をしてもらって。
○国務大臣(牧野良三君) これには、この付則に書いてあるから読みます。「この法律は、公布の日から施行する。」「政府は、この法律施行の日から起算して三年を経過したときは、その経過後二十日以内に、もしその経過した日から起算して二十日を経過した日に国会閉会中の場合は国会召集後十日以内に、この法律を存続させるかどうかについて、国会の議決を求めなければならない。」(「もっと先を」と呼ぶ者あり)「この場合において、この法律を存続させない旨の議決があったとき、又は当該国会の会期中にこの法律を存続させる旨の議決がなかったときは、その日の経過した日から、この法律は、その効力を失う。」「前項の規定によりこの法律がその効力を失ったときは、政府は、速やかにその旨を公示しなければならない。」そこで私どもはこういうものは時限立法とは解しません。
○秋山長造君 何と考えるのです。
○国務大臣(牧野良三君) 条件付の法律ですよ、それだけです。(笑声)
○秋山長造君 法務大臣はっきり言うて下さい。法律用語としてはっきり言って下さい。どうです。
○国務大臣(牧野良三君) 私どもはこれを臨時立法とは申しますが、時限立法とはこういうものは解しません。はっきり申します。
○秋山長造君 まあ臨時立法でいいですわ、臨時立法でいい。臨時立法というものは、やっぱりわれわれが常識的に言う時限立法と同じものだと思うのです。それからまた、ただし書をえらい繰り返して読まれましたがね、このただし書を読んでみても、三年たったらとにかくこれはもう廃止にするのだ、あるいは廃止にしたい、こういう要素を含んだこれは文言なんですよ。だからそういう意味においてはやっぱり時限立法なんだ、時限立法です。ただあなた方は、今はもうどうでもこうでもがむしゃらにこれを永続的なものに切りかえようとされるから、何か最初からそういう臨時だとか時限だとかいうような要素は大して重きをなしてなかったのだというように、ぼやかされようとしておるだけの話なんです。
○国務大臣(牧野良三君) この点について時限立法であるかないかというようなことは、もう末の末ですから、そんな議論よしましょう。ただ見解をはっきり言えと言われるから、法律上の見解を申し述べただけでございます。しこうして、これは必要だと思って政府が出した。
○秋山長造君 いや、もう法務大臣の本音がそうだろうと思う。 そこで労働大臣にちょっと別な角度からお尋ねしたいと思います。と申しますのは、先ほど藤田委員から法務大臣に対して出ておりました労調法の三十五条の二、さらに労調法の三十六条、ここにうたわれておるこの規定によっては、この電源ストなり停電ストなり、あるいは保安要員の引揚げなり、こういうこの法案で対象にしておるような事態というものは、これは救えないのですか、どうですか。
○国務大臣(倉石忠雄君) その前に争議行為としてでもこれはやってはいけない、こういうことを今この法律が要求しておることは、もうおわかりの通りであります。そこでやってはいけないような行為というものをやる場合には、これは労働組合法にいう正当なる労働運動ではないということになりますから、組合法上の保護を受けなくなることはおわかりのことだと思います。従ってそれによって刑法に抵触するようなことがあれば、やはりこれはその罰則によって処罰を受けるし、損害賠償の責めも負わなければならないことになるかもしれません。労働組合法上の保護は受けない。そこで労調法を先ほど来しばしばお話がございましたけれども、労調法でわれわれが予定いたしておりますことは、違法な争議行為でなくて、普通の争議行為、例をこの前の一ぺん緊急調整の発動をいたしましたときに徴しますならば、正当なる労働運動が行われた、しかしこれがきわめて長期にわたっている、そうして険悪になって、これが社会公共に大きな影響をもってくると思いましたときに発動いたしたことが一回ございます。これは違法なる行為を言っているのでありませんで、正当なる争議行為であっても、今申しましたような場合はこれは発動する。そういうことを予期いたして労調法の緊急調整はきめておる、こういうことでございます。
○秋山長造君 その点をもう少しお尋ねしてみたいと思うのですが。と申しますのは、先ほど労働大臣は阿部委員の質問に対して、この法案で取り締ろうとしているものは、ある争議行為の中の——争議行為というものはずいぶんいろいろな面を含んでいると思うのです。ある争議行為の中のたとえばスイッチを切るとか、あるいは保安要員を引き揚げるとかいう局部、限られた部分、ある全体としての争議行為の中の限られた部分を特に抜き出して、そうして取締りの対象にしておるのだと、こういうお話があった。そういたしまするならば、これは何もその局部、一部分だけを抜き出して特に独立した法律によって取り締らなくても、これは労調法という争議行為全体に対して適用されるところの法律がすでにあるのですから、これで十分対処できるのではないか。ところが、にもかかわらず一部分だけ、限られた一部分だけを抜き出してやられたというとの趣旨は、さっきから私がしつこく申し上げるように、これは当時の、この特に緊急なる事態、目先の非常に窮迫した緊急事態というものがあまり大牽くあなた方の眼に映ったために、本来ならば労調法の三十五条なり三十六条でやれるのだけれども、まあ特にこれは緊急事態だからこれで特別な立法でやりたい、こういうことでやられたと思うのです。ところがその最大の立法趣旨になっておった緊急事態というものが平静に戻っているわけですね。三年間から今日さらに将来の見通しとしても、再びそういうことが繰り返されるという状態は予想できない。法務大臣もそう見ておられるとするならば、そういう緊急事態に対処するために特に争議行為の中の限られた一部分を抜き出して、これに対処する臨時立法をやったということなんですね。もう平時状態に戻っているのだから、だから法律の方も平常状態に返って本来の労働関係調整法、労調法というもので対処するということで、必要にしてかつ十分ではないか。まあ私説明が上手でないけれども、しかし私の聞かんとするところはおわかりだと思うのです。その点の御解明をお願いしたい。
○国務大臣(倉石忠雄君) よくわかりました。そこでこの緊急事態というお言葉でございましたが、たしか緊急事態とは当時の政府も言っておりませんで、緊急問題、あなたがお読みになった通りに言っておると思うのですが、あの二十七年の大争議に直接動機を発しまして、当時の社会通念上かくのごときことは困るという国民の法常識と申しますか、そういうものが動機になりまして、立法が行われたということは、当時の説明でも申しておる通りでございますが、そこでそういう大きな争議行為というものは、緊急調整でできるではないか、労調法でできるではないか、こういうことでございますが、重ね重ね申し上げておりますように、緊急調整の制度は、労調法の予期いたしておるのは合法的争議行為であって、それが著しく長期にわたって公共の福祉に甚大なる影響を持ってくるようなものを緊急調整を発動するというような考え方でございます。ここで禁止いたしておるのは、著しく不当、妥当を欠くと思われるこの二つの手段というものは争議行為としてでもしてはならない、こういうことを要求いたしておる法律でございますから、その場合に性格が違ってくるわけであります。
○阿部竹松君 労働大臣は二十七年の争議々々とおっしゃるけれども、争議の現われた頂点だけを見て、氷山の一角だけ見て下を知らぬのですよ。あのときは、とにかく経営者が五%の——インフレの高進しておるときに経営者が五%の賃下げを出した。それで四十日間五%賃下げをしなければ、びた一文あげませんよ。あるいは四十三日間団体交渉を持たなかったのですよ。ですから炭労がやるのはけしからんとか、あるいはまた電気産業の労働者諸君がこういったではないかという頂点だけ取り上げて、あなたがいうことは、労働大臣として、まことに私は情ないと思うのです。経営者の立場もやはり発表願って、是非は別として、やはりそういうことをやってもらわなければ困る。そういう事情でとにかく六十三日やったけれども、あのときは緊急調整を出して、それをけ飛ばして炭労が戦ったのじゃないのだ。緊急調整やむなしというので、それでは緊急調整によってやめましょうということをやったのですよ。あのとき炭労がそれをけ飛ばして、なおかつやらんとしたから、この法律を出したのだというのならばよくわかるのですよ。みんな労調法で、普通の法律に従って炭労はやりましょう、賃金上らんでもやむを得ませんと、こういうことになってやったのです。それが六十三日やった、こうだということはあなたに言ったって始まらんけれども、実にけしからんですよ、あなた。
○国務大臣(倉石忠雄君) 当時の炭労ストについて一番の実際の御経験のあった阿部さんから御所見を承わって、いろいろ参考になりますけれども、今私が二十七年のことを申しておるのは、秋山さんから二十七年の争議を動機としていわゆる緊急問題として政府が出したのだから、緊急問題では今なくなっているのではないかと、こういう御所論をお進めになりましたから、二十七年の動機のことを私は申し上げましたので、その中にある基礎のことはおのずから別の議論が成り立つかもしれません。しかしながら、私どもはあなたの御指摘のように、当時のあの長期にわたる炭労ストについてただ一回初めて緊急調整を発動を。当時の政府はいたしましたが、これをあなた方は服しなかったなんていうことは申しておるのではありません。しかし二十七年の争議行為のあの状態を見て、一般国民大衆は、これでは困るという社会通念が育ってきた。これに動機を得てこの法律ができた。そこで秋山さんと私どもの言っておるところは大分接近してきておりまして、その後の情勢というものは安定してきておるではないか。しかるにこれをまた延長するのはけしからんということでありますが、そこのところで私の方は安定はいたしつつありますけれども、なお今日客観的情勢はこの法律の存在を必要と認めると、秋山さんはそういう事態ではないからやめたらどうだと、こういうふうに分れておるだけであります。そこで客観的情勢の観測であります。それはもうしばしばここでもう何日かにわたってお話しがございました。私どもは現在の労働情勢はこの法律の存在することが必要だと、こういう認定のもとに御提案をいたしておる。こういうわけでございます。
○田畑金光君 牧野大臣に一、二の点についてお尋ねいたしておきたいと思いますが、法律学徒であり、また法律哲学者でもあられる牧野大臣でありますから、少し憲法の公共の福祉の問題について、もう少し学究的な態度と内容をもって教えていただきたいと考えるわけです。 先ほど大臣は、所有権は義務づけられておる、公益は私益に先んずる、ワイマール憲法以降の新しい法律思想の展開についてお話しがあったわけであります。また民法第一条について指摘されましたので、私も初めて民法の第一条を読んでみましたが、確かにこの第一条については傾聴すべき内容が含まれておるわけです。「私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ」、「権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス」、信義、誠実の原則をうたっておるのだと思います。「権利ノ濫用ハ之ヲ許サス」、非常にこの法律思想と申しますか、社会思想の変化というものはわれわれ傾聴し、またこういう傾向を喜ぶものであります。同時に私はこの考え方というものは所有権の絶対というものに対する一つの修正と申しますか、新しい近代的な修正というものがこの中に入ってきておるものと考えているわけです。所有権絶対のもとにおいては労働権というものは認められていなかったのです。労働権というものが認められたというのもやはり、こういう所有権に対するものの考え方が変ってくる。その変化に応じて労働権というものが新しく浮び出てきたものと考えるわけです。これは資本主義社会における労働権の発達史だろうと、こう考えるわけです。そういう一つの社会的な背景というものから考えて参りましたとき、所有権の絶対性というものが修正されて、そこに労働権というものが新しく確立されて、しかもそれが、法律の上においても、憲法においても保障されてきた、その一つの具体的な現われがこの憲法の基本的な人権の保障であろうと考えているわけです。 先ほどのお話を承わっておりますと、憲法十二条の公共の福祉というものがすべての問題の上にかぶさるのだ。言葉をかえて言いますと、これはすべての権利の上に公共の福祉というものがあるのだ。あるいは、基本的人権の上に公共の福祉というものが上位として存在をするのだ。基本的な権利の上にさらに一つの高い、何と申しましょうか、権利以上のより高いものがあるのだ、それが公共の福祉だ。こういう考え方で先ほど来公共の福祉だ、公共の福祉だと、こう割り切っておられまするが、基本的な人権という問題と、公共の福祉というものはどのようにこれを解釈すべきであるか、どのようにその相互の関係を律すべきであるのか、これについて一つ法律学徒として——憲法学者としてはどうかと思いますが、(笑声)一つ、もう少し教えていただきたいと思うわけです。
○国務大臣(牧野良三君) この点につきましては、所有権の絶対性というものは過去の法律思想でありまして、すでに否認されていることはただいま仰せられたる通りであります。それと同時に、争議権ができましたのは、所有権の問題にあらずして、所有権の問題と同時に、契約自由の原則というものが大きな修正をされたのでございます。すなわち、近代国家というものは、共同生活を基本とする上においては、労働者も資本家もないというところに立ちまして、同じ権利を享有しなきゃならぬ、法律はこれを同じように守っていかなきゃならぬ。人は決して平等ではございません。不平等であるけれども、法律は必ず平等に守っていかなきゃならぬ。そのためには所有権の絶対性ということは認められない。と同時に、契約の自由というととも決して認められない。そこで契約の自由の原則で雇用契約をやっても、お前がきらいならば出ていけということは言えない。なぜかならば、やはり労働者を保護しなきゃならないという立場に立っているのであります。それはどこに立つかというと、あくまでも公共の福祉を維持して、国民が互いに国家のもとに共同生活を円満にやって生活を楽しむというところへいかなきゃならない。その要素を入れるには、何人に対しても、いかなる権利に対しても公共の福祉というものを基礎におかなければならない。かような建前から憲法ができているものと解釈するのでございまして、従って、この憲法ができると同時に、民法の基本的改正をしなきゃならないのにかかわりませず、とりあえず、第一条だけをこしらえて、その他の法律もできましたが、とにかく日本の法律としては全く隔世的な、画期的な民法第一条ができたのでありまして、この法律に従いまして、今法務省は民法の改正と民事訴訟法の改正とを急いでいる次第でございます。
○田畑金光君 私は今の大臣の御答弁の中で、所有権というものと、契約の自由の原則を分けて、労働者の権利というものは、契約自由の原則から生まれてきたものであり、流れてきたものだという解釈をとっておられますが、私はこれはちょっと同意しかねると思います。私はやはり所有権の絶対と申しますか、不可侵の原則というものと、契約の自由の原則というものはうらはらであって、この二つの原則の上に資本主義社会というものが成立をしておると、こう見るのです。この契約の自由の原則と、所有権の不可侵というのは一つであって、この所有権からきて、いろいろな絶対不可侵を認めた結果が、社会的な矛盾が生まれてきた。そこに一つの経済的には国の不平等が出てくるし、社会的には労働階級というものと、資本家階級と、こういう勢力関係が派生してきた。 それからもう一つあなたのお言葉の中に、人間は平等でない、人間は平等じゃないが、法律の上においては平等でなけりゃならぬ、こういう思想が明らかに表明されましたが、私はやはり法律的にも人間は平等でなければならぬが、実際的にもまた人間は平等でなけりゃならぬ、こう考えるのです。この人間が平等でなきゃならぬという原則の上に、私はやはり財産権というものと、労働権というものが、あくまでも対等な地位に保障されておる近代憲法の思想があると思うのであります。法律的に平等であるというのは、それは形式的なことであろうと思うのですよ。その形式的な平等を、実質的にどうして裏づけるかということに、私は近代社会というものの発展があろうと思う。ここが、私は資本主義の問題の矛盾をどう解決するかという問題だろうと思う。その問題を解決するためには、私は一つの現われとして、この憲法の労働基本権というものが保障されている、こう思うのです。この点は違いましょうか。
○国務大臣(牧野良三君) 所有権の不可侵、所有権の絶対性に関する問題と、契約自由に関する問題に関する御意見は全然同感でございます。ただ私が説明に、他の言葉を使っただけでございます。しこうして、人間は平等でなければならないということがわれわれの理想でありますが、およそ生物のうちで、人間くらい不平等なものはない。ここを私は共同生活の上に、規律の上においては大切に見守っていかなきゃならぬ。過去の人々は、人間は平等だと言ってきましたが、ごく科学的に見て、学問的に見て、実際的に見て、ほんとうに生物のうちで人間くらい不平等なものはない。そこが私どもは社会問題を解決する上において大切であるとともに、法律の制定においては、これが適用の上において、社会政策というものと、刑事政策というものとが非常に大切だと思うゆえんでございます。この不平等な人間を、こいねがわくば平等にし、生活を楽しませるようにすることが、私どもの法律制定の大切なものだと思いまして、これを申し上げた次第でございます。
○田畑金光君 私は、人間は能力の違いはあると思うのです。そういう意味においては、能力の差はあろうと思うわけです。しかし、人間そのものはあくまでも平等でなけりゃならない。そういう観点の上に立っての社会政策であり、近代的な政策であり、あるいは刑事政策であろう、こう考えるわけです。そういう点においてやはり私は、牧野法務大臣は法律哲学者としての先ほど来の御論議を承わりまして、どうもそういう法律哲学から、スト規制法案の具体的な現実の問題の処理に至ってくると、非常に論理の飛躍があるようにお見受けいたしましたが、出発点に私はそもそもやはり違う点があることを発見したわけです。で、私はそういう問題について論議を進めようとも思いませんが、この憲法二十八条と二十九条を見ましても、二十八条というものははだかの規定であるわけなんです。労働者の基本的な権利としてこれは保障されているわけなんです。ところが第二十九条というものは、財産権としてこれは一つの制約があるわけです。公共の福祉に適合するようにうたわれているわけなんです。少くとも私たちは憲法のこの条文の体裁から見ましても、それから今私がお話しいたしましたように、一つの社会思想の発展からいっても、この労働基本権というものは生存権だということです。この財産権というものはこれは経営者の文字通り財産を守る権利です。しかし、この二十八条というものはこれは労働者の生存の権利です。生存権。これは一方は財産権だと思うのです。そういう考え方から考えて見ましたとき、一体二十八条と二十九条というものはどう比較するのか、どっちに重点を置くべきか、この私は考え方、あるいは比較検討の違いが現実の立法政策の面に出てきようと思うのです。この点はどうでしょうか。
○国務大臣(牧野良三君) 考え方の基本においては全然私は同感であります。ただ、物質的にものを客観視する場合においてちょっと違う。私は人間というものくらい不平等なものはない、それは能力のものではない。寒いところに生まれたものと暖いところに生まれたものと、出まれながら魯鈍に成長したものと、生まれながら非常な卓越したものと、人間くらい私は不平等なものはないと思いますが、今仰せられた生存権というものを憲法が認めまして、生存権を中心としてここに平等な扱いをしてやらなければならないというのでありまするから、全部私はこの点においては、法律論としては、お考えと全然同感でございます。
○田畑金光君 同感と言われてくるとどうも論議の進めようがないわけなんです。ただ、私は牧野大臣に申し上げたいことは、今のお話の中でも、人間は平等でない、それは私はやはり牧野大臣の思想の中には資本主義的なその不平等観というものが根強く流れているということだと思うのです。これはやはり人間は平等でなければならない、人間は平等であるというのは、私はそもそも近代思想の初まりじゃないかと、こう思うのです。 その点はさておきまして、もしそういうことであるとするなら、私が考えておることと同じ考え方であるといたしますならば、私は現実のスト規制法案の問題をとらえてみましても、労働者の争議権というものに一つの制限をはめたというか、ワクをはめたというか、あるいは皆さん方の定義でいうと違法な、妥当ならざる違法な争議権の限界を下したものだという表現を用いられておりまするが、いずれにしても争議権の限界と申しますか、制限というものを加えていることは明らかなんです。そこで、先ほどこれもあなたの議論を聞いておりますというと、非常に飛躍しておりまするが、争議の結果公衆に迷惑を及ぼす、こういってきますと、直ちにこれは社会公共の福祉を害するものだという単純な割り切り方で話を進められておるのです。争議権というものは少くともこの行使は社会的な何らかの影響をもたらすことはもう当然予測されておるのです。憲法が争議権を保障したということは、その争議の結果、社会の公衆がある程度の迷惑をこうむるということはこれは当然予測しておるのです。電気をとめた、石炭が出ないので汽車がとまった、確かにそれは公衆は迷惑かもしれません。しかしもう一つ、私は牧野さんに考えてもらいたいことは、あのときは電気事業者であっても、炭鉱経営者であっても、ちゃんと三割、四割の配当をやっておる。炭鉱においては三割、四割、あるいは電力事業においては一割五分の配当をやっておるのですね。結局労働組合の正しい主張を入れなかった、自分は、出すだけの余力があり、あれだけの程度のささやかな主張は入れても決して支払い能力の限度外ではなかったはずだが、要するに、自分のふところをあたためて、守って、結局そのことがはね返って公衆の迷惑となっているのです。それは労働組合がストライキをやった、そういう現象的なものではなく、なぜストライキをやったか、ストライキをやったというのは、経営者が出し得る能力があったが出さなかった、結局公衆が迷惑を受けたというのは、経営者が出さなかったので、ストライキか何かして公衆が迷惑を受けた、こういうことを考えたとき、そこで私はあなたに強く言いたのいだが、所有権は義務づけられている、これは、所有権というものは一つの社会公共的な新しい思想というものが入ってきておるということだと思うのです。そういうことを考えたとき、私はそういう面からいっても、労働者の争議の結果、炭鉱や電気事業労働者の権利を規制するならば、同時に私は事業や経常に対する一つの社会的な規制というものがあってもいいじゃないか、ここを私たちは強く主張しているのです。私はそのほかの議論はやりませんが、そういう点についてこの法律というものは不公平な点があるだろうと私は見ているので、この点法律哲学者としての牧野博士に、かどうか知りませんが、牧野大臣に一つ答弁をわずらわしたいと思うのです。
○国務大臣(牧野良三君) おっしゃる通りです。資本家はけしからぬ。出すべきものを出さないということは資本家はけしからぬと思う。けれども、資本家がけしからぬといっても、労働者が国民大衆の福祉を署するような行為をなす、これもけしからぬ。だから、同時に資本家にはどの程度の法律をこしらえなさいということを具体的に御指示下さる分については、これは傾聴しなければなりません。けれども、資本家がけしからぬからといって、はね返りを国民に与えるような争議行為は慎しんでくれというのがこの規定だと私は解しておるのです。従って、ここで大切なものは、あなたや私が議論をしても、ほんとうに炭鉱労働者や電気労働者は、禁じている行為をしたいことはないと思う。禁じている行為をしたいから取れというのじゃない、こんなものはする意思はないだろうと思います。にもかかわらず、こういうものがあるということがいやなのだ、おれはしない、しないにもかかわらず、こんな法律をこしらえるということがあるかというところに、客観的にギャランティがあればこんな法律は要りません。客観的なギャランティはない、逆なんだ。
○田畑金光君 もう私は、たくさん申し上げたいことはありますけれども、繰り返しても同じような御答弁だけでありますので、私は牧野大臣に、特に牧野先生が在野におられたころ、いろいろな本など書いておられて、お読みいたしましたが、なかなかこれは進歩的な新しい感覚の先生だろうと思っていたわけでありますけれども、本日承わりますと、どうも思想がちょっとばらばらで、まとまっているようでまとまっていない、こうだという一つの立場を取っておられながら、現実の問題の応用問題になってくるとちょっと的がはずれてくる。遺憾なことでありますが、もう少し一つ思想を整理されて、こういう重大な法律問題については、取締りの最高責任者は牧野法務大臣でありますから、私はもう少し御検討と御善処を願いたい、これだけ申し上げておきます。
○国務大臣(牧野良三君) 必ず反省いたします。自粛いたします。
○棚橋小虎君 先ほどから労働大臣、それから法務大臣の御答弁を伺っておりますと、これは労働争議の影響が非常に重大になってきて、社会の福祉に非常に重大な影響を及ぼすおそれがあるということになってきた場合には、労調法をもってこれに対処する。ところが本法、このスト規制法というものは、本来労働争議行為として妥当である行為、それからして不当である争議行為、これを分けて、そうしてその不当なる争議行為というものを禁止するということが目的であるのだと、だから労調法と、そうしてこの法律とは対象が違うのだと、こういうふうに御答弁になっておるように思うのでありますが、それではまあ一応そういうふうに対象が違うものとして、そうすると一体争議行為のうちに、妥当な争議行為というものと、それから、不当な争議行為というものが、行為そのものにあるのかどうか、人間の行為——、いろいろ争議をする上には、いろいろな行動もしなければならぬ、行為もしなくちやならぬが、その行為そのもののうちに、妥当な行為というものと不当な行為というものが、本来あるのかどうか。そういうふうに区別されるからには、何かそこに標準があるのではないか、こう思うのでありますが、その標準を、そういうふうに分ける標準を承わりたいのです。これは両方の大臣にお聞きしたい。
○国務大臣(倉石忠雄君) 労働組合、つまり、勤労者の権利というものは、しばしば論議されておりますように、憲法二十八条に保障されておる、これを受けて労働三法が成立いたしております。そこで、労働組合が団体行動をなされる場合の基準というものは、関係法によってございますが、その中で正当なる労働行為というものは、これを保護されると、ただし、一条、二項に特に指定してあることはやっちゃいかぬと、こういうことでございますが、そこで今問題になっております法律は、私どもの見ますところでは、労働運動の行為というものは、原則としてできるだけこれは保護しなきゃならない。しかしながら、争議行為としてでも、ここに指定いたしてある争議行為の方法は、これをやってはいけないと、こう言っておるわけでございますから、それ以外の、法によって禁じられていない行為というものは、法によって保護をされる、こういうふうに理解いたしております。
○国務大臣(牧野良三君) ただいまお尋ねの点につきましては、戒める行為の中には、不当な行為と、不正な行為と、不法な行為との三つの区別がございます。不当は、当然の域を脱したるものとしてここで調整する必要がございます。不正なものは、なしてはならない行為として規制する必要があると存じます。個々の観点に立ちまして法律を立案する場合においては考えておると思います。この種の場合のものについて、あまり刑罰法令的な色彩を持たせない方がいい、どこまでも私は指導する、そうして労働者ばかりが不利益で、資本家が擁護されるというような社会状態をこしらえちゃならない。でありますから、ここは必ず反省をさして、そうして調整をさし、争議は成熟させるということを目標にしていかなきゃならない。この法律はまさにその点に重要な注意が注がれておると、かように解釈いたしております。
○棚橋小虎君 どうもはっきりいたしませんが、一体停電ということを一つやる、スイッチをひねって停電をするにしましても、小さい変電所ですか、発電所ですか、そういうところでもってやっても社会的に非常な大きな影響を及ぼさぬようなことは、この法律では取り締らぬと、こういうことを労働大臣も言っておられるようでありますが、ところが大きい発電所になって、大きい社会的な影響を及ぼすということになってくると、これは取り締らなければならない。そうすると、行為そのものには別に本質的にこれはいかぬ、これはいいという区別は、私はないと思う。同じスイッチをひねって電気をとめることも、ある場合には差しつかえない。取り締りの対象にならぬ、ある場合にはこれを取り締らなければならぬということになれば、行為そのものには別にそういうふうな区別をつけておく必要はない。そうするというと、この行為は取り締らなければいかぬ、これは取り締らぬということに分けるその標準というものが何かほかにあるんだろうと思うんですが、そとを私はお聞きしたい。
○国務大臣(倉石忠雄君) ただいま棚橋さんのお話は、何か私の申しておることに若干の誤解があるようでございますが、私は小さな発電所の行為はこの法の対象ではないということは申しておらないのでございまして、本法第一条は御承知のように「電気事業の事業主又は電気事業に従事する者は、争議行為として、電気の正常な供給を停止する行為」、字が小さくて読めないんですが、こういうことを言っているのであります。つまり企業の規模の大小には関係がございません。この行為を違法であると、こういうふうに言っておるわけです。
○棚橋小虎君 では、一応今の労働大臣の御答弁は承知いたしましたが、しかし、この妥当な争議行為であるか、不当な争議行為であるかということは、その行為そのものに本質的な区別があるんではなくて、その社会に及ぼす影響、社会の福祉に及ぼす影響が非常に大きくなった場合に、大きな影響を与えるという場合にはこれが禁止されなければならぬ、しかし、同じ行為であっても、社会に与える影響がそれほど甚大でないという場合には、これはまあ見逃してもかまわぬということが私は言えるだろうと思う。そうするというと、結局この法律でもって禁止しようという行為は、非常に社会的な福祉に重大な影響を及ぼすという行為は、これは禁止していかなければならぬと、こういうふうなそこに解釈を加えていいんだろうと思うが、その点は両大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
○国務大臣(倉石忠雄君) そのことが本法を論じます場合に一番大事なポイントだと思っておるわけでございますが、今のお話のような問題で、つまり非常に大きな社会的影響を持ってくる、これはもちろん社会公共の福祉という立場からやってはならないとわれわれは当然思いますし、それは常識だと思いますが、そこで今お話のありました小さな行為の場合でありましても、やはり今御指摘になりましたスイッチ・オフというようなことで停電をすると、こういうことは棚橋さんも御存じのように、一体労働争議というものは、経営者と労働側がおって、いろいろな条件で話し合いがつかないときに、それならばと、経営者に向って労働者側が、われわれはあなたの言うことを承服することができないから、経済的損失をお前に与えることもやむを得ないぞということで威迫を与えることであります。しかしながら、これはやはり正当なる労働行為として、労働運動としてやられる場合には、法の保護を受ける行為であると、しかし、そのことはたとえば電気の場合、相手方に経済的損失を与えるということもあるでありましょうが、それよりも、何の経営や争議行為に関係を持たない一般大衆の福祉に非常に大きな関係を持ってくる行為であると、従って公共の福祉という建前からこれはやってはならないんである、こういう建前であります。従って、その従業員の属しておる規模の大小によって、これを区別いたすわけにはいかない、やはりスイッチ・オフというようなことは反社会的な行為であると、こういうことをわれわれは言っておるわけであります。しかしながら、これが具体的問題になりましたときに、刑の量定などで情状の酌量とか、そういうことはあり得ると思いますが、法の建前からそういうことはしてはならない、こういうふうに禁止しているのが本法の目的でございます。
○国務大臣(牧野良三君) ただいま労働大臣から御説明申しました通りに、行為の本質を見なくちゃなりません。本質上認められないものは禁止すべきもので、本質上認められるけれども、程度をこえることは困るというものは調整すべき範囲に入るものだと存じます。従って、本質上認められない性質のものは事の大小を問わないということがまず普通の解釈と御了承願いたいと思います。
○棚橋小虎君 もしスイッチを切ってもこれが人に迷惑を及ぼさぬということになれば、これはこの行為は別に禁止する必要がないことになるわけなんです。ただスイッチを切った場合に、これが社会に大きな害悪を与えるということになって初めて、この行為は禁止しなければならない行為だと思うのです。法律というものは私はそういうものだと思う。もし法律というものが社会生活に大きな害悪を与える、危害を与える、不安を与える、そういうことになる場合に初めてその行為は禁止されるべき行為になるのであって、もしそういうことがなかったならば、何もその行為を禁止する必要はない。これは一般の刑法でもそういうことははっきり言えることなんです。現在の法律というものは、皆社会的な影響を考慮して、そうしてこの行為は禁止すべき行為である、この行為は禁止すべからざる行為であると分けておるのだと思うわけです。その場合に、この今言われるところの妥当なる争議行為、あるいは不当なる争議行為であるというふうに私は分けるということは、結局その一つの行為の影響が社会に非常な害悪を流し、大ぜいな人に迷惑をかけるということが、結果が付随してくるからこそ、初めてその行為を禁止しなければならぬことになる、これを罰しなければならぬことになるのであって、さもなければ、そういうことをする必要は私はないだろうと思うのですが、その点いかがですか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 先ほども申し上げましたように、かりにスイッチ・オフをするという行為というものは究極するところ、それは公共の福祉に害のある結果を生ずることは御承知の通りでございます。しかし、あなたが今かりに一つの設問しておいでになるような事態というものは具体的にどういうことであるか、その具体行為について判断しなければなりませんが、そのことがあなたのおっしゃるように、全然小さなことであって公共の福祉に関係ないのではないかという、そういうものは差しつかえないのではないかというお話でございますが、本法でいっておりますのは、御承知のように、電気の正常なる供給を怠る行為はいけないのだと、こういうふうに言っておるわけでありまして、従って、その規模の大小には関係なく、そういう社会公共の福祉を阻害するような結果になる行為は、規模の大小にかかわらず禁じておる。しかし繰り返して申しますが、現実の場合に、刑の量定などにおいていろいろなしんしゃくがあることは当然だろうと思います。
○委員長(千葉信君) まだほかに御質疑があるかもしれませんが……。
○棚橋小虎君 ちょっと待って下さい。 この法律はすでに効力を発生して三年間存続せられたわけでありますが、この法律が適用されたことがありますか。
○国務大臣(倉石忠雄君) この法律すれすれのところまで来ております問題は若干あるようでありますが、本法で、特にこの法律の適用を受けたという事案はございませんです。
○棚橋小虎君 これはこの問労働大臣は安井委員でしたかの質問に対しましても、労働者の理解と申しますか、次第に深まって、そうして非常にいい方の傾向に向っておると、まあ言葉はどうか、ちょっとはっきりしませんけれども、非常にいわゆる善良な慣習の成立の方向に向って、いい方向に進んでおるとも言われておるのでありますが、三年間法律はあったけれども、すれすれのところまで行ったと言われるが、これは一ぺんも適用したことがなかった。ところが、先ほどは現在の情勢においてはこの法律を存続する必要を認めると言われるが、何かこの法律を存続する必要を認めるような事実、何かそういうことを裏づけるようなことがあったのかどうか、それをちょっとお聞きしたい。
○国務大臣(倉石忠雄君) その点もしばしばここでお話が出ましたが、二つの産業がございますが、第一の電気の方はなお今日組合内部でいろいろ地盤の拡張などについて競争いたしておるという状態で、われわれから見ましたならば、これが安定いたしておるという認定を与えることは今日なお困難であります。石炭関係につきましては、現在最近に行われました争議行為などについても、指導部は保安放棄をやれという号令をかけました。しかし、まあ実際にはその直前において団体交渉が成立をして妥結をいたしまして、そのことは行われませんでしたが、同時にまた炭労の十月でありますか、秋季の大会においては明らかにこのことは、せんだっての春季闘争のときにやらなかったのは、これは当時の情勢にかんがみてやらなかっただけであって、保安放棄ということは当然やれるのだということを宣言しておいでになります。国民のこの民生安定という責任を負うております政府といたしましては、なお今日、客観的情勢は本法の存在を必要とすると、こういう認定をいたしておるわけであります。
○棚橋小虎君 私はまあいろいろなこういうことが起って、そうして非常に社会に不安を与えると、社会に害を与えるというようなことが起る場合には、現在の労調法の適用によってそういうことを十分に阻止することができると考える。現に二十七年のあれだけの大争議でありましても、この利用によりまして事実それを阻止することができたのでありまして、別にこれ以外に不当な争議行為を取り締るというような目的でもって特にこういう特別立法をする必要はないだろう。また、その他機械をこわすとか、あるいは坑道を破壊するとかというような、いろいろな問題が起る場合には、これまたほかに刑法の条文をもってもそれを取り締ることができるのでありまして、特に非常なこの労働者の反対のある、こういうことに憲法違反という問題についてはいろいろ論じられておるわけでありまして、労働者の生存権あるいは団結権、そういうものを、あるいは労働者の欲しないところの労働を強制すると、そういったような非常に不当なこういう特別な立法を設けるだけの必要は私はないだろうというふうに、現在の労調法でその目的を達することができると考える次第でありまして、こういう法律を作るということに対しましては、私はどうしても賛成することができないのであります。その点につきまして労働大臣、それから——ことに労働大臣は労働者の行政を扱っておる責任のある大臣でありますが、労働大臣はこういう憲法違反の疑いのある法律を、特に作るという積極的な何か今日理由を持っておるのかどうか、それについて一つお考えをお伺いしたい。なおまた、法務大臣としては、国民の権利、自由の権利の尊重、保護ということを基本としておられるところの法務大臣は、こういう非常な憲法違反の疑いのあるような法律を作らなくちゃならぬと、こう言って主張されるについては、何かもっと積極的な大きな理由があるのかどうか、もう一ぺんその点を伺いたいと思います。
○国務大臣(倉石忠雄君) 私どもは、憲法違反ではないと確信をいたしております。それからこの法律は、今の棚橋さんのお言葉によれば、労働者を保護すべき立場に立っておる者から見てどうかというお話でございますが、もしかりにスイッチ・オフをやって電気をまっ暗にしてしまったり、あるいは炭鉱が溢水したり爆発したりするような行為が、もしこの法律がなくてあったと仮定いたしましたならば、国民というものは、非常にそれらの労働者に対しての反撃を与えるでございましょう。私はむしろ労働組合の指導者の立場に立っておられる方々は、君たちはそういうことを言うけれども、この法律があるからこういうことはやっちゃいけないのだと、こういうことで、押えるのにむしろ非常に重宝されているのではないかとすら思っているわけであります。 それからつまりこ法律が、法律ばかりじゃありませんで、そういうようなことをもしするということになれば、そういう結果が生じたということになれば、これは国民の反撃を受けます。せっかく今日までだんだん発達いたして参りました日本の労働組合というものがやはり私は、労働運動ばかりじゃない、すべての政治活動もそうでありますが、究極するところ、国民大衆の理解と同情がなければ成功しないのでありますから、やはりそういう意味で、私どもから見れば、一般国民大衆が迷惑を受けるようなことはしないという法律は、やはり国民に安心感を与えるということになるのでありまして、そういう角度から見ても、私は本法の存在は、かえって労働組合の発達に益することがあっても害にはならない。また、この法律というものがなくて済む時代を出現することを、重ね重ね私は申しておることでありますが、待望いたしておるわけであります。棚橋さんも先般おいでになりましたスエーデンに行ってみますと、りっぱな建物があって、日本の国会議員がそこへ案内された、入口のプレートを見てびっくりしたというのでありますが、そこには、これは昔は監獄であった、しかるに、今日はこの中に入れるべきものはもうなくなってしまったから、これは改装して博物館にしたと書いてあるそうでありますが、私はやっぱりだんだんといい時代がくれば、やかましい規則なんというものは要らなくなる時代がくると思います。ことに、こういうようなことは、良識ある慣行が成熟してきたならば、当然国会においてはこれは廃止される時期が早晩くるであろうと思います。そういう時代が早くくることを待望いたしますけれども、現在の客観的情勢はこういうものの存在を必要とすると、こういう認識でございます。
○国務大臣(牧野良三君) 私も労働大臣の述べるところと同一でございまして、日本の現在の国情というものから照らして、この法律を制定することは妥当であるという見地に立つのでありまして、従って、この法律は乱用いたしてはならない、適用の上において非常に戒めを受けることは当然でございますが、この法律を制定することに対しては、積極的な私は理由を持つものでございます。何となれば、これが憲法違反だというような議論が労働者諸君の間にあるということ、そのことがこの法律の制定を私は必要とするもので、この程度のものならばさようなことは議論の出るべきものでないというところまでいくことがすなわち成熟と言われるゆえんだろうと思います。実は決してこの法律は喜ばしい法律ではございませんけれども、やむを得ざる立法であるということの御了承を願いたいと思います。
○阿具根登君 私はこの場の空気を見ましても、もう皆さん非常に打ち切ってもらいたいというような空気は知っております。早くやめたいと思っておりましたが、労働大臣がまた前に戻って質問せいと言わんばかりの御答弁でございますから、振り出しに戻って質問を続行いたしたいと思いますから、お願いいたします。 労働大臣は、今組合の指導者はこの法律があるから助かるんだということですね、これはあなただけの想像でございます。そういうように、私が最初御質問を申し上げたように、労働者はおれがこうしてやらなければできないのだ、あるいはどういうことをするかわからない、こういうととがあなた方の頭の中にこびりついているから、この法律は一方的なものだと私は申し上げておるのであります。あなた方は、炭鉱の労働者が保安を放棄するといえば直ちに爆発をするのだ、水が出るのだ、こういうことをおっしゃっておりますが、炭鉱の労働者は、みずからの職場は一番あなた方よりよく知っております。こうなるであろうという過程をあなた方は恐怖心に変えて国民に訴えておられる。ここでもそういう答弁ばかりなしておられる。そうするならば、今までそういうことがあったかどうか、実例をあげてもらいたい。保安を放棄したこともございます。その間にどうなったかということを一つ実例をあげて御説明を願いたい。 それからこういう法律がなくなることを望んでおるのだということは、どういう事態になったならばなくなるのであるか。これは先ほどからたくさんの方も聞かれたけれども、三年前と今日とは非常に変ってきておる。これでもまだ安心できないんだ。どこまでいけば安心されるのか。どういうことをしたならばこの法律がなく慮るのであるか。 かりに三年間、われわれが、私どもがこの法律を作って三年間たって一つの違反もないではないかという質問に対しては、労働大臣はこの法律があったからではないかと、こういうことを言っておられる。これは今でもその考えであるかどうか。この三点について御質問申し上げます。
○国務大臣(倉石忠雄君) 私はこの法律があることによって、やはり保安放棄というふうなことは行われないで済んでおる、こういうふうに理解いたしております。従って、よき労働慣行が成熟するということは、しばしば申し上げておりますように、一部の組合ではこういう法律は要らない、われわれは自己の良識においてやらないのだということを言っておりますが、その認定、どういう時代がきたらいいかというようなことは、これはそのそれぞれの認定する人の立場にもよるでありましょうが、私どもの立場からは、今日はなおこれが存在することが必要である、こういう認定をいたしておるわけであります。阿具根さんも御存じのように、最近西ドイツへ日本の労働者が参りますが、この間そのことでドイツに参りましたときに、ドイツの労働総同盟、炭労の組合、向うの石炭組合はこれに参加いたしておる、これの傘下でありますが、あそこは御承知のように、炭労は争議行為をする場合に一々総同盟の指示を仰がなきゃならない、そういう場合に、その指示を仰ぐ場合、それから争議行為をする場合、保安の問題についての処置等につきましては、やはり上部団体である労働総同盟に非常に厳重な制約をみずからの規約の中で加えております。向うの話を聞きましても、保安放棄などということは全く考えられないことであると、こういうことを組合長が私どもにも説明しておりましたが、これらのことは、われわれから言うよき労働慣行が成熟したものだと、こう思っておりますが、しかし、国柄が違いますから、それを日本にすぐ当てはめることはどうかと思いますが、やはり私どもは、今日の状態では本法が存在することを必要と認める情勢であると認識をいたしておるわけでございます。
○阿具根登君 西ドイツの問題が出ましたから、私も西ドイツに行って西ドイツの炭坑にも下って参りました。おそらく倉石労働大臣も炭坑までお下りになったと私は思います。私は、ではあなたと反対のことを申し上げてみましょう。私が行った場合に、西ドイツでは六年こういうストライキはやったことはなかった。西ドイツの炭鉱の労働者はどうしてストライキをやらないのかということを聞いてみました。それは経営者側に聞いてみました。ところが、その経営者側の言われるのは、ドイツも戦争に負けた国であって、非常に苦しい生活でございます。しかし、炭鉱の労働者は一身の保安まで犠牲にしなければならないことが非常に多い場合がございます。その炭鉱の労働者は、一般産業の労働者よりも一番待遇をしなければならないと私どもは思っております。またその通り実施いたしております。こういうことでございます。そういうことになって、そういうストライキをやったら、それこそ国民が承知しないでしょう。日本の炭鉱の労働者は、あなたは一般産業の労働者のうんと上位にあると思いますか。あの危険な坑内に下って、そうして最近も御承知のように、北海道の茂尻では六十名の人が死んだ、上ってくる死骸は唐米袋にこれっばかしの形になって上ってくるのですよ。そういう生活をしておる人が、われわれが常識に、皆さんが常識で考えてみて、西ドイツのように、ほかの他国のように優遇されておりますか。そういうところを見てきて、そうしてあなた方はそういういいところは言わずに、悪いところばかり日本に持ってきて、そうして日本の炭鉱の労働者は保安を放棄して炭鉱を爆発させるのだというようなことを言っておられる。私は日本の労働者が西ドイツのように、ほかの産業よりもほんとうに恵まれておるとするならば、そういうことはおそらく考えもしないでしょう。そういうことを、何がために二十七年のストライキも起ったか、何がために炭鉱はいつもやらねばできないか、今度の期末手当も御承知と思います。終戦後十二年、一万四千四百五十円、これが最高の額ですよ。そういうことも御承知の上でこういう法律でやらねばできない、西ドイツのようにやらねばできない、西ドイツのような労使の慣行にならねばできないとおっしゃるのかどうか、お尋ねいたします。
○国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど申し上げましたように、国情が違うからそれをこのままとり上げるわけにはいかないがというので一つの例を申し上げたことであります。 もう一つは、私は炭鉱労務者が保安放棄をしてガス爆発をさせるのだと、溢水をさせるのだというふうなことを言ってはおりません。ここに禁止しておるような行為がだんだん遂行された結果がそういうことになるのでありますと、従って保安放棄ということは争議行為としてでもやってもらっては困るんだと、こういうことを御説明申し上げておるわけです。
○阿具根登君 そういうことだから、組合の幹部はこれがあるのがいいでしょうとおっしゃるわけですか。そういうことがあるから組合の幹部はこの法律があれば押えていいでしょう、かえってあなた方のためですよと、こういうことになるわけですか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 炭鉱労務者のことにつきまして、私は保安放棄を必ずやるんだということは申しておりませんが、本年の秋の大会の決定はそういうことを声明しておられますということを申しておるだけでありまして、私は炭鉱労務者が常にそれをやるんだというふうなことは言っておりませんし、またそういうふうになってもらっては困ると、こう思っております。
○阿具根登君 大会において保安放棄をやるんだというようなことは、私が先ほど質問を保留しておりますように、一方的な法律である、またあなた方が考えておられるように、炭鉱の労働者は坑内を水浸しにするんだ、爆発をするんだという前提に立っておるあなた方の解釈と違うから言っておるのだと私は思います。 で、もう時間もございませんし、また、十分労働大臣と全う機会もあるようでございますから、このくらいで私はやめておきます。
○委員長(千葉信君) まだほかに御質疑もあるかと存じますが、この程度で社会労働、法務連合審査会を終了いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。よって社会労働、法務連合審査会はこれにて散会いたします。 午後六時三十五分散会