外務委員会 第7号
- 発言数
- 169 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1956/12/01
会議録
○委員長(小滝彬君) ただいまから外務委員会を開会いたします。 前回に引き続き、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言の批准について承認を求めるの件、貿易の発展及び最恵国待遇の相互許与に関する日本国というソヴィエト社会主義共和国連邦との間の議定書の批准について承認を求めるの件、海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件、北西太平洋の公海における漁業に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約の締結について承認を求めるの件。 以上、四件を一括して議題といたします。
○石黒忠篤君 私は総理と外務大臣に御質問いたしたいのでありますが、順序を変えまして外務大臣に御質問申し上げます。 今回のソ連との交渉において原水爆に関するソ連の提案があった。それを当方の申し出によってはずすことにいたした、こういうことでありますが、そのソ連の提案というものの内容を私は知りたいと思って外務省に交渉したのでありますが、交渉の経過の中途の文書を外間に示すことは外交上問題があるということでありますから、あえて要求はいたしません。しかし差しつかえない限りにおいて、その原案の内容がどういうことであったかということを御報告いただきたい。
○国務大臣(重光葵君) ソ連の提案のうちに、一部分に、原水爆の実験禁止のことは両国の希望するところであるから、その実現に向って双方とも協力する、こういうような趣旨の一句がございました。文句は全部一致しておるかどうか存じませんが、そういう一句がございました。それについてでございます。
○石黒忠篤君 そういう趣旨のことは、すでに外務省から当院に対しまして、当院の原水爆禁止の決議に対しまする各国へ通知をいたしたことの回答といたしまして、二回にわたってソ連の最高会議の決議といたして詳細に御報告がありましたものにおいて、そのくらいのことははっきりしていると思うのであります。その以外に何かこれを公表していけないことがあるのでありますか、ありませんか。あるとかないとかということでよろしい。公表して悪いものの内容を私は伺いたくないのですから……。
○国務大臣(重光葵君) その問題については今申し上げた通りでございます。
○石黒忠篤君 そういたしますと、それの公表を拒まれるゆえんは、交渉のうちに往復した文書は、一方的に出さないということだけに限っての発表をなさらないのであって、何ら新しいものがつけ加わっておったということでないと承知してよろしいのでありますか。
○国務大臣(重光葵君) さよう御承知を願います。
○石黒忠篤君 しからば、過去において文書の往復もいたしており、内容においてその程度のことは何ら差しつかえないと思うものでありますが、原水爆の唯一の被害国といたして、世界平和に対してこの禁止ということ、実験禁止ということを主張し得る最大の発言権を持っており、かつ義務を持っている日本国といたして、これを両国の間で何らかの形で直接に話し合いをするということをされなかったわけは、どういうところにあるのですか。
○国務大臣(重光葵君) 両国の間に話し合いをいたしてきたのであります。そうして先ほども言われた通りに、ソ連との間には大よその方針、考え方は合致しておるのでございます。一切のことは今朝この席で御説明した通りであります。
○石黒忠篤君 私は今朝からこの席におってよく衆知をしております。しかしそれにかかわらず私が質問をいたすのでありますから、さよう御承知を願いたい。意思が合致している、話し合いのついたもの、この問題は日本が先立ってやって行かなければならぬ問題であります。両国の間に直接に交渉をして、意思の合致をみたものを、平和条約に入れるべき事項でないからというのならば、ほかの形式をもって、この際に合致の意思の表明をされるということが私は望ましいことだったと思うのでありますが、それに関する御意見を伺いたい。
○国務大臣(重光葵君) この問題につきましては、けさほど御説明した通りに、原水爆を持っておる各国との間に交渉を進めてきた、その交渉は各国別にやっております。その内容及び結果は大体発表されておる次第でございます。そこでこの問題、これは御質問にはございませんでしたが、この問題を日ソ国交の正常化の文書に特に取り上げるということになりますというと、この問題は、御承知の通りに今軍備縮小の委員会でも非常にこれは根本の問題になっております。米国、英国、ソ連との間に非常な大きな考え方の食い違いがございます。これは大きな政治問題であります。さような大きな国際的の政治問題でもありますし、今、日ソの両国限りの国交の正常化という問題にこの問題からみ合せるということは適当でないし、しかして、この問題はいまだかつて日ソ交渉の題目となった問題ではなかったのでありまして、それでありますから、別のこれはカテゴリーに入れて、両国の間に話し合いをすべき問題であるというので、これは向うもまことにその通りだというので、簡単にこれは意思の合致をみたわけであります。
○石黒忠篤君 どうぞ要を得て御答弁を願いたいのであります。私はそういうことを伺っておるんではない。達った形に、この機会に何らかの両国の意思の合致の声明をされるなり、何なりることの機会であったと私は思うのでありますが、それについてはお考え及びにならなかったのであるかどうであるか。
○国務大臣(重光葵君) これは別途の交渉でやっておりますから、その別途の交渉の結果を発表しておるので、それでその方で処理したい、こういう考えでおります。
○石黒忠篤君 非常にこんがらがってきたようでありますが、私は別途の交渉について一々御報告のあったことは承知している、公報によって外務省からの御報告はすべて見ております。その上での質問です。今度の機会をとらえて、とにかく具体的にソ連、日本というものが意思の合致をした声明なり、何なりをしておくということは、その後のソ連の動きというものに対して一種の規制を与えると私は思うのであります。規制することができると思う。むろんああいう国でありますから、そんなことは破ってどんどんやるかもしれません。しかしそれはその共同声明を破ったという責務を背負うのです。国々が軍備に競争をしておるのであります。そうして、しかも原子力の平和利用のためには一つも必要のない、原水爆の実験というものは一つも必要のないということは、これは学者が言っておる。それをやって、その結果の集積は人類の健康にも害を及ぼし、人類の将来の遺伝にも影響を及ぼすだろう。そのほかナチュラル・バランスを著しく破るというような、広い意味においては、国際法上禁止をする規定を設けてもいいのじゃないかと思うことに逐次進んで行く規制に対して、原水爆所有及び製造の国々と逐次に話し合いを進めて行くということは、原水爆によって被害を受けた唯一の国、そうしてまた試験によっても被害を受けた唯一の国の日本が、非常に実行上むずかしいことを逐次に解決をして行くことの努力を示すきえんだと私は思うのでありますが、この点に関する御意見を伺いたい。
○国務大臣(重光葵君) お話のような考え方でもって各国と折衝をしておるわけであります。しかしこの日ソ交渉の文面からは落ちておる、交渉の途中においてこれは落ちておるのでありますから、この問題についてだけ、こういうことであるということの発表はできないと、こう申し上げておるのであります。お話の通り、これは国際的にこの問題を規制することが必要であり、また適当であると考えて、国際連合を通じてもこの問題を処理しておる、こういうことは申し上げた通りであります。
○石黒忠篤君 外務省内での頭の最も緻密な、よく明敏な外務大臣のお答えといたしましては私は受け取れないのでありますが、それはほかの理由があるだろうと思いますから、これ以上申し上げません。 〔国務大臣重光葵君発言の許可を求む〕
○委員長(小滝彬君) ただいま発言中です。
○石黒忠篤君 私の発言中であります。 ソ連は日本と原爆禁止に関して、これを禁止するということの意見が一致したというにかかわらず、間もない十一月十七日に核兵器の爆発の実験をやっております。日本においても各地の気象台においてその影響を観測しております。そうしてソ連もこれをやったことを公表しております。かようなことは、ソ連が口に原爆実験禁止に関して日本と意思が一致したと言いながら、その言下にこういうことをやっておるということに対して、外務大臣はどういう御感想をお持ちになっておりますか、伺いたい。
○国務大臣(重光葵君) ちょっと私が申し上げたかった点は、今、石黒委員の御質問に対して、私は実際十分な内容をもって答えておるつもりでございます。なお十分御満足のいかぬ点があったら、どうぞ一つ十分に御質問を願いたいと思います。私も持っております材料によって十分にその点はお答えいたしたいと思っております。その点をちょっと申上げておきたいと思います。 それからソ連が日本の要請に対して賛成の意を表しながら、あとで実験をやった、私はそこが非常に国際間のまだ抜け目のあるところだと思います。ソ連は日本に対してはそういう意思を発表し、またソ連自身もそういう方針を公表しておるのでありますけれども、まだこれは国際的には何も制約を受けたことになっておりません。というのは、国際的に原水爆の禁止の協定ができたわけでもございません。のみならず、先ほど御説明申し上げた通りに、軍縮の問題について最も重要なる中心点として、この問題はまだ議論をかわされておるという状況でございます。そうでございますから、国際的にはまだ禁止の規定がないのでありますから、ソ連は実験を続けておるのだと、こう解釈しております。しかし、それはソ連が決して実験を続けたいというわけでやっておるのじゃなかろうと、こう考えております。それで国際的にさようなことのできないようにする手段がまだ残っておるのです。その方向に進んで行きたいと考えるのでございます。
○石黒忠篤君 外務大臣のお考えは、これを国際的にやらせないようにする手段が残っておる。それを考えておるということは、おそらく国連において日本がこれを主張するということであろうと思いますが、いかがでございますか。
○国務大臣(重光葵君) 国連における主張はその一つでございます。従来もそれをやっておるのでございます。
○石黒忠篤君 了承いたしました。私はそのほかに、ソ連が国交回復の談判の際において、たまたま向うから出してきたものは、これはとらえて何らかの表現をするということが、だんだんに解決して行くための一つの有力な手段であったと思うのであります。先ほどその効果について、後の原爆実験というものに対して意思を表明して、すぐ破ったということの負い目を感じさせるということが、一つの大きな国際上の道義の上からの制裁になると私は思うのであります。しかしこれはこれ以上申し上げません。 そこで外務大臣に伺いますが、外務大臣は当委員会の過去におきまして、いろいろこの問題についての問答がありました際に、日本はまだ国連に未加入であるけれども、これに申し入れて各国の注意を来たしており、今後も一そう努力せんと思う。で、禁止は国民の意思と考える。その主張を実現して行くことが日本の平和外交の根拠である。ただし法理的には複雑であるからすぐ実現はできないが、しからばとて、これを放棄せずに主張をして、あくまでも貫徹したいと思うという御答弁がありました。まことにわが意を得ていると私は思うのであります。たまたま今回近く国連に加入の機運が首相、外相の努力によって実現せんとしてきておるのであります。わが国の平和外交の根拠をなしておるこのことを、私はすぐとは申しません。すぐとは申しませんが、国連内において堂々とこれを主張なさって、世界人類に対する直接の危害と、またその実験によるところの被害というものを除き去るような御努力を十分になさる御覚悟があるかどうかということを伺っておきます。
○国務大臣(重光葵君) 国連加入の後は必ずやその機会があると考えております。その機会があれば必ずこれを利用しようと思っております。
○石黒忠篤君 もう一点伺っておきます。去る五月二十二日の外務委員会において、前日に太平洋上に強力な水爆実験があった。これは翌日でありますが、羽生委員に対して外務大臣は、各国の回答はこちらの考えと一致していないので、わが方の考え方を、詳細な駁論的な回答を出しておいた。適当な機会を得たならばこれを発表して批判を求めたいと、こういうことを申しておられますが、これはその後御発表になりましたかどうでありますか。また今は発表されるのに、もう一向差しつかえないときだ。ただいまのような御答弁があったのだから、むろん差しつかえないことと思いますが、発表してなければ発表していただきたいということを私はお願いをいたしておきます。
○国務大臣(重光葵君) それは一つ調べてみましょう。
○石黒忠篤君 次に、総理大臣及び外務大臣に対してお尋ねをいたしたいと思います。 総理は帰朝されての第一声といたして、国民に対して羽田で言われたところは、今回の交渉については不満足のこともあるが、こちらの方として言うべきことはことごとく言うて、力の限りを尽してきたと、こう申されたのであります。私は総理の御努力に対しましては敬意を表するのでありますが、この総理の言葉は、その後、不満足のこともあろうがというふうにだんだん変ってきているように思うのであります。また行かれました全権諸君の行動が、どうも国民に不満足な結果を持ちきたしたのだろうという気持、しかしながら、これは国力のいかんともすることのできないことに基因しておるのであるから、お互いに忍耐をいたして、そうして根強く国力の回復をいたして、回復をいたした後において、わが主張すべきところを貫徹しなければいかぬからということに国民の考えを尊いて行くのに対して、いささか私はその変り方について遺憾に思うのであります。 そこで首相に伺いますが、あなたが帰朝されましての第一声のときに、今度の交渉については不満のこともあるがと言われ、その後、不満のこともあろうと思うがと言われている、その不満のことというのはどういうことを考えておられるのか。おそらく私は、これは領土の問題だと、こう考えるのであります。首相も当委員会において国民は択捉、国後というものを失うことは認めないと思うということを申されておったようでございますが、国民はこれを失うことを認めませんと私は思う。そういう大きな関係にある領土の問題が不満足で首相としても不満足に思われ、また国民も不満足に感じておるであろうということであると私は思うのでありますが、いかがでありますか。もしそのほかのことでありとすれば、どういうことが首相として不満足で、しかし努力をしたができなかったと、こういうことば何でありますか、それを伺います。
○国務大臣(鳩山一郎君) お答えをいたします。 石黒君の御想像の通り、私が不満足の点があるがと申しましたのは、領土の問題についてであります。領土の問題については、とにかく歯舞、色丹は日本に返還をするということが、ソ連側においてはすでに松本全権に対し、または重光外務大臣に対して、先方の主張の中で明らかにされておるのであります。それですから、私は歯舞、色丹はまず日本に返還をしてもらって、その他の領土については継続審議というように持って行きたいと思っていたのでありまするが、全体についての領土の問題をきめるということは、これは再三試みられて向うが絶対に聞かない点でありまするから、領土問題については全部継続審議にして交渉をしたいと、私は最初は思っていたのです。わが党の党議もさように一度は決定していたのでありますけれども、歯舞、色丹だけを向うはこっちへ返還すると約束したのであるから、まずそれだけはこのたびの交渉においてきめて、その他の領土のみ継続審議にしたらよかろうというように党議の変更があって、これを新党議と言ったわけであります。それですから、新党議の線だけはぜひ持って行きたいと思ったのでありますが、それができませんでしたから、不満足の点があるがと申したのであります。
○石黒忠篤君 まことにその点は私も非常に不満に思う点であります。国民もそれに対して非常な不満を持っていると思います。私は多くの人の投票によって新らしく再び議席を持つに至ったのでありますから、私がかように思うことのうしろには、相当に多数の国民がおることを御承知願いたい。そこでただいま首相の言われたような経緯をもちまして、歯舞、色丹以外の領土に関しましては、宣言の中にも何も書いてないのであるけれども、交渉の経過と、宣言中に触れることが一つもなくて、残された主要事項、これこそ今後締結せられる平和条約のうちの主要事項になっておるのは領土であるから、それでもって、以外の領土、国後、択捉等が継続審議の対象になることは明らかであるという御説明を繰り返して伺っておるのであります。これはなかなか明らかになりません。今回の交渉、ことに国民の最大関心事であるところの領土問題について、政府の、繰り返し繰り返しわれわれ委員が聞いて、しかもなお納得のいかない問題に関して、政府、ことに近く引退されると言われておる首相、またはわれわれ議員は、進んで来たるべき平和条約の中には、この領土問題を規定をするということが、不満足ながら国民に事情を了解せしめ、将来努力するという意思を知らしめる、何らかの方式で知らしめる必要があると私は考えておるのであります。このことばわれわれ同僚の野村委員が、先日、択捉、国後は問題とならないとしておるように見られるではないかというような御質問もあり、曾祢委員は、歯舞、色丹以外の領土に対しては継続にするということを明記しなければ明確でない、こういうことを言っておられるのに徴しても、必要だと私は考えるのであります。首相は、国民は択捉、国後を失うことを認めないと思うゆえに継続審議としたのであるということを曾祢君に対しては答えておられ、北千島、南樺太も主張し得る場合が来たならば必ず主張する意思である、こういうことを言うておられるのであります。これは当然こうなくちやならぬと思います。そういう大事なことを共同立言の中に一つも触れておらぬということは、これは話をまとめるタクテイックスの上において、テクニックの上において必要であったかもしれません。しかしながら、国内の多数の、全部の国民が最大の関心事を持っており、これに対して大いなる不満を持っております問題に対しましては、日本は独立の見地からしてどこまでも意見が一致をしなかったけれども、これはやるのだということを明らかにお示しになることは非常に必要なことだと思うのであります。先日、西田委員のこれに関する決議なり、あるいは声明なりが必要であるということに対しまする首相の御答弁は、初めは、それは必要がないとおっしゃった。しこうして河野農相の助言によって、国民に疑いがある場合においては声明を出してもよろしいということになり、私はこれは言うまでもなく最も大きな必要のある点だと、こう考えておるのであります。この点に関しまする総理の御意見をお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(鳩山一郎君) 領土問題につきましては、私が出発前にソ連の政府に対し、領土問題ば継続審議にして、その他の問題の協議を進めて、国交の正常化をはかりたい。その他の問題については云々の意向であるというようなことを申し述べまして、すなわち領土問題についての日本の主張は、松本全権の交渉の際にも、重光外務大臣の交渉の際にも、日本の主帳はつぶさにソ連政府に伝えてあるのであります。日本の主張はどこであるかということば向うがよく知っている問題、そうして向うは、先方は絶対日本の主張を承知しないのです。そういう段階において国交の正常化をする場合においては、領土問題をこちらから出せばすぐデッド・ロックに乗ってしまって国交の正常化はできないのです。その場合においては領土問題はあと回し、すなわち継続審議にするという方法よりほかに方法がないと思ったものですから、それでありますから、領土問題は全体として継続審議にするということをまずきめたのです。しかしながら、歯舞、色丹だけは、かつては日本に返還をするということをソ連は言っておるのでありまするから、すでにソ連が日本に対して約束した分については協議をすることを同意してもらいたい。それについてソ連の同意を得ましたから、問題となるのは歯舞、色丹だけが協議の問題となったわけで、その他の領土問題は継続審議ということに最初からきまっているのです。それでありまするから、歯舞、色丹についての文句が挿入されておって、その他の領土については何事も言わないという結果になったのであります。
○石黒忠篤君 瞬間が非常に貴重でありますから、不必要なことを繰り返さないようにしていただきたいのであります。 私はそういうことを伺っておるのではありません。ソ連は、たびたび交渉をし、強く主張をしているのだから、承知しきっておる。そこで共同宣言をまとめる上において、これに触れないことで行く以外には方法はないからということは私は了としているのであります。問題は、国民に対する問題であります。ソ連に対する問題でにありません。国民が最大関心を持っており、首相も認めて、もって最も大きな不満であろうと考えておることを、共同宣言に書いてないから、交渉の過程を説明を聞いて納得せよ、これだけが残されたる事項であるから、それ以外は、平和条約を結ぶといったって、重要事項はないじゃないかという点から明らかじゃないかということでは国民はわかりません。それに対して政府が声明をなさらないというのなら、なさらないということを言って下さればよろしい。われわれは、国民を代表しているわれわれといたしまして、これをあなた方に伺ったところを明らかに表明してやる手段をとらなければならぬのであります。その点を伺っておるのであります。
○国務大臣(鳩山一郎君) この委員会の問答により、あるいは本会議における問答によりまして、国民の大多数は政府のとった道を了解しておるとは思いますから、私は必要ないとは一時感じたのでありますけれども、国民の間にそういうようなまだ理解をしてない人が多数あるというようなことが私どもにわかりますれば、その事実を明瞭にして政府の所信を明らかにする必要はあるだろうと思っております。
○石黒忠篤君 国民にわかるか、わからないかということを、何をもって首相は明らかにされて、そうして声明を出そうか出すまいかを御決定になるのでありますか。当委員会における問答の全体を見、または本会議の何を見てと、こう害われるのでありますか。もう今まで自民党の諸君、社会党の諸君がしばしば立って、同じ問題について同じ方向についての疑問を持っておる、しこうしてそのうちには何らかこれを明らかにする方法をとらなければならぬと思うがということを言っておられる。これこそ、国民のために政府及び全権の努力をされた、しかしながら、日本の国力としていかんともすべからざるところで、でき上った共同宣言というものの趣旨を、不満だけれども了解してくれろ、お互いにこれから、それこそ外相の言われる臥薪嘗胆、忍びがたきを忍んでやって行かなければならぬのだという気持に導いて行くために、全権の努力をされたことを明らかに国民に知らせるということは、もう御決意なさらなければならぬと思うのであります。それができないようでありますならば、われわれは、われわれのとるべき方法をもって国民に、全権及び政府のとられたところの真意を了解せしめるような手段をとらなければならぬと私は思うのであります。この問題はこれで打ち切っておきますから、よろしくお考えを願いたいと思います。 それから、少しこの共同宣言の中に関しまして質問をいたします。外務大臣またはその他のどなたからでもよろしゅうございますが、お答えを願いたいと思います。 宣言の第五項であります。第五項の、何と言いますか、第二号と言いますか、二行目のところであります。「また、ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要請に基いて、消息不明の日本人について引き続き調査を行うものとする。」と、こういうことが書いてありますが、この日本国の要請に基いてということは、日本が、だれそれがしというものがいるが、それのことについて調べてくれ、こういうようなことを要請されたならば、そのものについてだけ消息不明の日本人について引き続き調査を行なってやろうといったようなことに文面でとられるのであります。これはもしその通りでありとすれば、はなはだ不親切な条文だと私は思います。日本が一々指摘して要請せない限りは、ソ連が進んでやるということはいたさないという親切のない条項のように思います。これを九項の第二項の条文に、「日本国の要望にこたえて」ということが書いてありますが、それを「日本国の要請に基いて、」ということは意味が違うと思うのでありますが、同じでありますか、違うのでありますか、そこを一つ御説明をお願いいたします。
○全権委員(松本俊一君) まず最初に、要請と要望と意味が違うかというお尋ねでございまするが、おそらく石黒委員におかれましては、こちらの第五号にもし要望とあれば、広くこの日本が請求してもしなくても、消息不明の日本人について調査をするという意味になるとお考えかと思いますが、この条文のできましたいきさつを、少し詳しくなりますが御説明申し上げれば、ただいまの御疑問はあるいは氷解されるかと存じまするが、このソ連側の建前といたしましては、それはいい悪いは別問題といたしまして、目下ソ連になお残留しておる日本人は全部有罪の判決を受けておるのであって、それ以外の者は一人もいないというのがソ連の建前であります。従いまして、今度釈放いたしますのは、昨年八月にマリク大使が私に手交いたしましたいわゆるマリク・リストに載っておるもの全部の残りをこの際釈放すると申しておるのでありまして、ソ連側といたしましては、そのほかに一人もいないと、こうまあ言い張ってきたのであります。そこでわが方といたしましては、そのほかに確かにおるはずだ、こう申しますと、いれば必ず一人でも即座に返還する。それが有罪の判決を受けたものでない限り返還すると、こう申してその点はたびたび明確にいたしたのでございます。そこで当方といたしましては、しかしながら、日本の調査によれば、まだ確かにはっきりした証拠のあるものが相当数おるから、それについて証拠を提出するから調査をしてくれと申しまして、本年の二月に、厚生省の引揚援護局長が私の随員といたしましてロンドンに来てくれまして、厚生省作成の詳細なるカードを先方に提出いたしました。それはいろいるな資料に基いて、確かに生存しておるはずだという者について証拠を提出いたしました。それに基いて調査をするということを先方は約束いたしました。その後、多少それに基いて出てきた人もあるようでありますが、しかしながら、まだその調査は完了いたしていないようであります。それで、この際再びその問題をこの共同宣言の中に、先方の案にはなかったものを当方から要求いたしまして、こういう一項を加えることに相なりました。さよう御了承を願います。
○石黒忠篤君 そういう御説明であろうと私が思っている説明にすぎなかったのであります。私は日ソの今回の交渉は、きわめて和気あいあいのうちに意見の一致をみた、これは形容であると思いますけれども、こういうような問題に対して、ソ連をしてもう少し親切な方向に持って行くことは、ロンドン交渉のときはいかようであったかわかりませんが、モスクワにおける首相が出られての交渉においては、何らかもう少しソ連をして形式的答弁、すべて犯罪者であるがゆえに、これ以外には一人もいないのだ、いるならば証拠を出してといったようなことを言わせずに、自分の方も調査に力を尽して、一人でもいたら返そうということにどうして持って行けなかったのでありましょうか。私は非常に遺憾に思います。その遺憾というのは、ソ連が親切を持ってくれないことも遺憾でありますが、ソ連をしてそういうような気持になるように説得なさることが、これは人道上当然のことだと思うのです。
○全権委員(松本俊一君) ただいまのお尋ねでございまするが、先方は先ほども私申し上げましたように、一人でもおれば自分の方から進んで返すと申しておるのでございます。その点はしばしば言明しておると申しました。それから、またこのたびの交渉においても、そういう点をフルシチョフ氏が河野全権にも申しましたし、またブルガーニン氏も鳩山総理に申されたのであります。その点は、決して向うがただ形式的の答弁をしてひっくり返したのではございませんから、さよう御了承願います。
○石黒忠篤君 その通りであるならば、その通りのことを共同宣言の中に、きわめて親切の言葉を出すことが当然のことだと思うのであります。理屈でもってこれ以外はないのだ、一人でもいたらやるのだけれども、これ以外はいないのだ、こういうことがここに現われてきている。一人でもいたならば、それは探し出してやるのだという精神を書かれることが、日ソ平和条約に進む共同宣言としてはあるべきことであると思い、ありたいことだと私は深く考えております。この点において私はやはり不満を感ずるのであります。しかし、これはこれ以上申しません。 次に、六項について質問申し上げます。六項におきまして、それぞれの国、団体、国民の請求権ということを申しておられますが、その請求権とはどういうものであるか。ソ連側においてはほとんどないように、しろうとの私としては思うのでありますが、どういうものがあったのでありましょうか。概算がどのくらいであったのでありましょうかということと、日本側はこれに反して莫大なる損害であったと思われますが、その概算はどのくらいであって、向うはどのくらいのものを放棄する、こちらはどのくらいのものを、力がない国であるから、まことに残念だけれども、放棄するといった概数はおわかりになっての交渉であったと私は思います。私有財産権の不可侵の関係というようなことから、またこれに関する救済をお考えになっておるかということに及んで御説明を願いたいと思う。
○政府委員(下田武三君) 第一点のソ連側の放棄すべき請求権はどれくらいのものであるかという点でございますが、これは仰せの通り、一週間余りのごく短期間の戦闘行為でございますので、ソ連側の放棄すべき請求権の客体というものは非常に少いだろうと思います。いわんや日本軍はほとんど抵抗しなかったのでありますから、戦闘行為の直接の結果、または戦闘行為に関連してソ連側がこうむった被害というものは非常に少いということは、これは事実であろうと思います。第三の日本側の放棄すべき請求権、これは財産そのものでございませんで、請求権という言葉を使っております点に御注意をお願いしたいのでございますが、要するに請求権の放棄ということは、また実体はつかめないにしましても、平和――国交正常後はお互い文句を持ち出すことはやめよう、クレームを持ち出すことはやめようという趣旨でございます。これは桑港条約でも、御承知の通りその趣旨で同じようなことを書いております。かりに、しかしこのクレームというときの骨子となる財産権というものの実体からながめますと、これは大蔵省でも正確に御調査ができておらないようでございますが、大体ソ連――千島、樺太を含めましたソ連において、日本の個人または日本の企業が持っておりました財産の実体は、個人において二十億円、法人において七十億円という莫大な額に上っております。
○石黒忠篤君 請求権放棄の規定でありますけれども、ソ連においてはほとんど実額はないと私は見ておるのでありますが、外務省においてもそう見ておられる。わが方においては非常に大きなものがあり、その額は大蔵省もまだはっきりしておらない、こう言うのであります。他の機会において大蔵省が言われたのは、GHQか何かが調べたときの金額をそのまま考えておられるようであります。そのときから比べるというと、財産価値というものが、また貨幣の比較が非常に大きくなっておる、こういうものは、今度の共同宣言をされるに当りまして大よその概数、私は概数ということを初めから申し上げておる、概数というものぐらいは考えられて、つかまれて、非常に大きくあっても、これは仕方がない場合もありますけれども、それを放棄するということは、国家が私人の財産権のある意味における侵害をするのでありますから、もっと丁重に考えてやっていただきたい、こう考えます。もうすでにその請求権は放棄されるのでありますからいたし方ありませんが、これに対する救済方法を十分周到にお考えになることが政府としては義務であると私は考えます。 次に、もう一カ条だけ伺っておきます。宣言の第九項であります。九項のただし書きであります。しばしば問題になっておるただし書きであります。歯舞、色丹を引き渡す、しかし、これらの島は「日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。」こういう規定があるのであります。約条局長の御説明だというと、すぐ引き渡すわけにはいかない。軍半施設等を撤去するために六カ月はかかるということで具体的な話が遊んでおったと言われるのでありますが、それはそれだけではなくして、その前に平和条約が締結された後にという不定の期間がついて、そうしいつだかしらぬが、締結をせられた後において、なお六ヵ月間くらいは見て、その後に返るの、だと、こういうことになるのであります。ここいらがまことに国民の不満のあるところと私は思います。われわれも、また自民党の諸君も、歯舞、色丹の即時返却ということを考えておる。国民みなそう思っておる。それがそういうことになってしまった。しかも、平和条約が締結せられた後ということを言うて、ほかの条項に、できるだけすみやかにということが二カ所も書いてあるにかかわらず、ここに書いてない。それは、先般来の御説明によりますというと、その機会が来るのが、国際情勢、ソ連、との関係を見て適当なときに始めるんだ、こういうことにいたしたようでありますけれども、この点などは、もう話し合いをつけてこられたのだから、ソ連に対してはどうすることもできませんが、こちらが始めるということの意思を決定するのには、できるだけ早く平和条約締結の交渉をして入るのだということも、国民に示さるべきもう一つの重要な点だと思うのでありますが、これに関する御意見を承わります。
○国務大臣(重光葵君) 御賛同の要点は、この平和衣未納の交渉をどういう時期に始めるかという点に帰着すると思いますが、それは、今すぐこのまま理論上は引き続いてやるわけでございますが、今日すぐ同じ主張を繰り返しても、向うも同じ主張に終るだろうと考えます。そこで、国際情勢の好転をするのを待たなければならぬと思うので、少し時間をかけて、機会をとらえて、時期を見てやりたいと、こういう大体のことでございます。
○石黒忠篤君 国会政治に入りまして、まだ年所を経ない私が、こういうことを堂々たる政治家の諸君に対して申し上げるのはおこがましい話でありますが、そこいらが国民に対する声明というものについて非常に重要な意味のあるところだと私は思うので、申し上げておるのであります。でき得るかぎりすみやかにとか、あるいはでき得るかぎりをとって、すみやかにとかいうことを書いただけでも、談判に入り得る一番初めの機会をとらえて談判をやるのだという全権諸君の意思がそこにありとすれば、それを響かせることは、非常にこの日ソ共同宣言というものを国民に理解させる上において必要だと私は思うので、質問申し上げたのであります。私の質問はこれでもって終ります。
○大谷贇雄君 五、六の点につきましてお尋ねを申し上げたいと思いますが、私の持ち時間、わずかに往復三十分よりないそうであります。すわったままお尋ねをいたしますから、御答弁もその席からお願いをいたします。 第一にお尋ねを申し上げたいことは、このごろ鳩山総理は、本会議におきまする野村議員、また当委員会の梶原議員の質問に対しまして、中ソ同盟条約について、この条約は日本及び日本国民に向けられたものではない、こう言っておいでになるんでありますが、この一九五〇年二月十四日にモスクワで締結されましたこの条約の第一条には、明らかに「日本国又は直接に若しくは間接に日本国と」云々という言葉が記載をされておるのでございます。従って、このごろブルガーニンがそういうことを言ったというお話でありますけれども、これは明らかに明示をされておるのであります。今度の日ソ共同宣言は、申すまでもなく「極東における平和及び安全の利益に合致する両国間の理解と協力との発展に役だつものであることについて完全に意見が一致した。」と、こううたってあるのでございますが、そうしまするというと、こういうような武力協定と、今回の宣言との間には非常な矛盾をしておるわけであります。従って、それについて総理がお話しになったときには、向うはそういうことを言ったというのでありまするが、これについては、その前に行かれました両全権は話し合いをされたかどうか、それについて伺いたいのでございます。
○全権委員(松本俊一君) 最初に交渉に当りました私からまず申し上げます。私のときに、明らかにその点に触れて数回にわたって交渉いたしました。それで、結局ソ連側は、あの条約が日本に向けられたものでないということを明言いたしました。それで交渉は、これは日ソ間の交渉として、その点についてはそれでは触れないという明らかなる了解のもとに進めるということにして進めて参ったのでございます。さよう御了承を願います。
○大谷贇雄君 日本国に向けられたものではないというお話でありまするけれども、しかし、明らかにこの条文には書いてあるわけなんです。そうだといたしまするならば、わが方といたしましては、せっかく日ソ友存に入らんとするこの機会において、こういうような点についてはあくまで是正をさせ、訂正をさせるのが当然だと思います。それについての御所見はどうでありますか。
○国務大臣(重光葵君) その御趣旨、理屈の御趣旨は私も実は同意を申し上げます。しかし、日ソの間に国交を正常化したいという意思の合致があったのでございまして、その意思の合致を見る時期に到達して交渉が始まったのでございます。そうでありますから、今双方の側において、双方の国が他国と持っておるいろいろな、取りきめ等について一々吟味をしていますと、この目的を達するための交渉に入るわけには参りかねる状況なので、ございます。そこで、交渉を進めていこうとするならば、どうしてもそういう問題について触れない。つまり交渉国が他国との間において有する取りきめ等については、双方とも互いにその趣旨を明らかにして、了解をして交渉を進めるべきであると、こりいう考え方で進めたのでございます。そこで、お話の通りに、なるほどわれわれの気にくわぬところはあるようでございます。しかし、これはまた新たなその時期の空気に従って、どう先方が解釈しておるか、先方の意向はどうであるかということを十分につきつめましてみますというと、それは日本に向けられて、われわれはこれから日本と国交を回復して友好関係に入りたいんだ、こういう公式の説明でございますので、それで先に進んで、それがために、また向うは向うでいろいろなことを申し出たのでありますけれども、そういう問題については触れずして、交渉を進めていこうじゃないかということに相なったのでございます。
○大谷贇雄君 そうすると、向うはそれは帳消しだというふうに了承いたしまするが、次に、ソ連は今日まで、千島、南樺太、択捉、国後及び歯舞、色丹を軍下占領をしてきたわけでありますが、この共同宣言の発効と同時に戦争が終るわけであります。従って、軍事占領ということば言えぬことになるわけでありますが、外務大臣は、この地域が将来こういう不確定な状態におきまして、ソ連が力をもって事実上占領しておる、こういうように説明をしておられるのでありますが、これは国際法上はどういう性格を持っておるものであるか、その点を伺いたいのであります。日本は不確定な状態であると申しましても、ソ連と第三国との関係におきましては、ソ連は、これは確定的なソ連領土である、こういう態度をとり、諸外国もそういう態度を受け入れるのではないか、かように思われるのであります。もしそうだといたしますれば、これは一つの既成事実として、先ほど来お話の、継続審議をして、日本が主張していくのだ、こういうことについて、日本の領土要求というものを非常に弱める、こういう結果になるおそれがあるのではないか、かように思うわけでありますが、こういうソ連の軍事占領が終って、私どもは、これは不法占領だと思いますが、こういう不法なる占領地域が今後国際間において法的に将来どういう性格のものとして取り扱われるか、これについての政府の御見解を承わりたいと思います。
○国務大臣(重光葵君) 軍事占領が事実続けられておる。この点が今回の日ソ共同宣言が成立して批准交換になった後にどういう一体地位をもつかということは、これはあとから私の意見を申し上げるとして、軍事占領が続いているということは、これはどういう一体意味をもつのであるか。私は、軍事占領が続いておるという事実の上に交渉するということは決して有利な交渉でないと思います。有利な交渉ではないのでありますが、これを国際法理的に言えば、軍事占領をしておるから、法理上これがもう自分の領土になっておるのだという主張は、これは、普通今日認められた国際法上では成り立たない議論だと思うのです。そこで、ソ連と日本側との間には、根本的に意見の相違がそこに出てくるのであります。ソ連は、占領しているから自分の領土になったのだ、こう言います。さらにまた、ソ連は、占領している事実があるのみならず、戦時中の自分らの味方同志である、すなわちアメリカとか、イギリスとか大国との間の協定によって、つまりヤルタ協定等によってこれは確定しているのだとこう申しております。これがソ連の理屈でございます。日本側は、普通の国際法上の観念で、ヤルタ協定などには日本は入っておらないのだ、日本には関係はないのだ、いわんや占領中という事実でもってくるからには、その国の領土というものの主権を認めるということは、これは国際法上許されないことで、これは平和条約なり、後の取りきめによって、はっきり二国の間においてきめなければならない、これが日本の主張であります。その主張は全然双方とも対立的で、対照的で、合わなかったのでございます。 それでは、第三国はどう考えているか、特にヤルタ協定の当事者であるアメリカ、イギリスはどう考てているか。これはもう交渉前に十分に確かめてあるのです。第三国はやっぱり普通の国際法の議論を堅持しておったのであります。すなわち日本の議論と少しも変りはない、同じことなんです。そこで、そういうことも交渉中には十分ソ連側に伝えて、反省を求めた次第でございます。しかし、ソ連側はそういう議論に耳をかさなかったのでございます。 さて、共同宣言ができるということになれば、つまり国交が正常な状態になるわけです。この点からは、その後にまた占領の事実、占領と申しますか、占拠の事実が続くわけであります。平和条約の締結によって解決するまでは続くわけであります。それは国際法上どういうふうな状態になるのか、理論上はどうであるか、これが御質問の一つであります。私は、やはり戦時占領が続いているのだから、平和条約の締結までは、事実上の占領であって、それでもって両国間の法的関係をきめるものでないと、こう思います。また、それが通念であると考えます。考えますが、これはまた、国交の正常化が、もちろん向うが占領しておることを認めたわけでありますから、それだけこちらの主張が、何と申しますか、弱くなることは事実であります。しかし、それを防ぐために、特に歯舞、色丹というものは、平和条約ができればすぐ日本に返すのだと、特に明文でもって入れて、そういう危険をすべて防いでおるわけなんです。
○大谷贇雄君 そこで、国後、択捉が日本の国有の領土でありますことは、これはもう本委員会におきましても、衆議院におきましても、もう日本人はことごとくそういうことで強く主張され、また重光全権も御主張になったのであります。鳩山総理、むろんそうでありますが、しかしながら諸外国は、必ずしもこの点を十分に了解しておらんのじゃないかというふうに思われる節があるわけであります。この両鳥の帰属の問題は、将来平和条約締結のための折衝の際に取り上げられるということを、政府側は再三繰り返してお述べになっており、またそうでなければならぬわけでありますが、その際にも、諸外国がわが国の主張を支持することに一致しておれば、今の不法占領をしておりましても、交渉はわが方に非常に有利であると思われるわけであります。この点につきまして、私は非常な関心を持っておるのであります。先ほどお話のように、アメリカは先般、この九月十三日に、両鳥は日本の領土だと認めなければならぬということを、はっきりした見解を発表しているわけでありますが、アメリカはサンフランシスコ条約当時からこういうような見解をもっておったのでありましょうか。もしそうだとすれば、日本がサンフランシスコ条約で放棄しなかった領土を軍事的に占領しておるわけですが、このような不当な軍事占領に対しまして、サンフランシスコ条約の締結国の一つであるアメリカは何らの関心を示さなかったかどうか、あるいは択捉、国後のソ連の占領に対して、アメリカは抗議したというような事実でもあれば、一つお聞かせを願いたいと思う。また、米国以外の諸国で、択捉、国後の問題について見解を発表した事例をあまり聞かぬのであります。もしそういう事例がありまするならば、それを一つお示しいただきたい。正式の政府の見解発表でないにしましても、諸外国の世論はこれについてどういう見方をしているか、その点を一つお聞かせをいただきたいと思います。
○国務大臣(重光葵君) 国後、択捉が日本の固有の領土であるというこの主張に対して、米国が発表した意見は、今御説の通りであります。米国は、それはなるほどと、こういうことでございます。一口に申しますと、その通りだ、日本のいうことが正しいと、こういうふうに言うております。ところが、それはサンフラシスコ条約のときにどうであったかと、こういうことでございます。サンフラシスコ条約における千島の定義は、サンフラシスコ条約のときに、どこからどこまでが千島であるということばはっきりしていなかったというのが米国側の態度でございました。従いまして、国後、択捉をソ連が占領しておるからというて、これに対する抗議をアメリカからソ連にいたしておる事実はございません。承知いたしておりません。これは、サンフラシスコ条約は、ソ連は拒絶したのでありますから、争えないのであります。
○大谷贇雄君 そこで、私が先般、十月の二日でありましたか、外務省の条約局の次長においでを願って、いろいろ党で諸外国の反響について、国後、択捉の問題についての状況をお尋ねをしたわけです。何らない、こういうようなことであります。しからば、なぜ一体外務省は、日本の政府は、この問題が日本の固有の領土であるというこの国際世論を持ち上げるために、自由国家群に呼びかけて、その努力をしなかったのであるかということを私は申し上げ、またさらに、外務省にまで行って、そのことを実はお尋ねをいたしたようなわけであります。従って、そういう点について諸外国に対して世論を持ち上げさせる、また認識を深めるための努力が、私が聞いたように、今までなかったのでありましようか。また今後それについて、平和条約交渉に入られる前に、いかなる態度をもって国際世論にお訴えになるか、その点を伺います。
○国務大臣(重光葵君) その点については、少し私は御了解を得なければならぬと思います。この国後、択捉が日本の国有の領土であるといって、アメリカ政府が正式の文書で、非常に検討の結果だと言ってきた文書の中に、これは日本の言うことがもっともだ、こう書いてあるくらいで、そのくらいアメリカの政府は進んできた。サンフラシスコ条約締結の当時は、千島の定義は実はしなかった。どこからどこまでが千島であるということばよく検討しなかったということで来ておったのですが、また実際そうであったでございましょうが、それがそこまで来たのでございますから、この間における日本側の主張がいかに米国側の解釈の問題、意見に響いたかということは、これでよくわかります。それは、これはそう言ったら何ですが、主として日本の主張が正しいという点、それに対する了解を得た。それからまた、正しい主張を強力にした結果だと考えます。つまりそれが理解をせしめる大きな努力であったと考えます。それから、そのかの国はどうかと申しますというと、その問題につきましては、アメリカの世論、新聞のみならず、イギリスの有力な新聞等は、ほとんどことごとくと言ってもいいくらいに日本の主張を支持しました。政府としても、公式の見解は特にこの問題については差し控えるけれども、よく理解をしているという態度でございます。ヨーロッパ大陸方面のなにも、大体そうでございます。そこで、決してすべて外務省の努力だと申し上げるわけじゃございません。これは非常に、その点はなお不満足として、大いに努力しなければなりませんが、しかし、決して努力しなかったわけじゃないのでございます。その点を一つ十分に御了解を得たいと思います。
○大谷贇雄君 今後の問題は。
○国務大臣(重光葵君) 今後も、この主張はむろん続けなければなりません。しかし、これをどう宣伝するかということはまた別問題でございますが、これは、強く従来の態度を打ち出して差しつかえないも一のだと、こう思います。
○大谷贇雄君 この領土の問題は、先日来各委員から、非常に憂国愛国の至情を吐露されておるわけでありますが、先ほど石黒議員からも切々たる御要望があったのであります。これは、総理におかれましても、国民に疑惑あるならば、政府は適宜な処置をとる、このごろは声明を発するというお言葉があったわけでありますが、私ども日本国民といたしまして、日本民族の百年、千年の重大な問題であるのであります。従って、私は自由民主党員でございますが、その一員といたしましても、ぜひともこれは、政府の所信を明らかにして、あくまで継続交渉をするのであるということで、あくまでこういうものでやるということを国際世論に訴えるとともに、また、ソ連に対して確固たる信念をもって、一つ御交渉を願わなければならねと思うのでありますが、国内に対しましては、国民全体がこの問題については非常な激高をいたし、また非常な重大関心を持っておる。先般、重光大臣は、魂の生きがえりだということもお話になったのですが、全く私も同感であります。従ってこの点につきまして、さらに一つ総理からの御確言を得たいと思います。
○国務大臣(鳩山一郎君) むろん、重光君の答弁によって明瞭と思いますが、それは、目的を達成するまで、日本としては誠心誠意努力をしなくてはならないと思っております。
○大谷贇雄君 声明は……。
○国務大臣(鳩山一郎君) 声明ですか。声明も適当なる時期に出すようになろうと思います。
○大谷贇雄君 了承しました。 次に、国連加盟の問題でありますが、国連加盟いたしまして、国際の一員として今後檜舞台に出まするということは、まことに喜びの期待をもって迎えるわけでありますが、伝えられるところによりますると、米、イラン、ペルーの三国の共同決議として日本の国連加盟の提案がされる模様でありますが、前回、ソ連側が外蒙との抱き合せを条件としまして、ついに国民政府の反対によって加盟の実現ができなかった。われわれは、非常に遺憾としておるところでありますが、この点、ソ連が無条件加盟を支持する見込があるかどうか。この間、さきおとといでありましたか、国連協会の総会におきまして、外務省の局長から、やはり外壕と抱き合せらしいというような演説があったのであります。そういうようなことがあるのかどうか。これは私どもは、無条件に加盟ができるものである、かように首相の御答弁からも確信をいたしておるのでありますが、そういうような点につきまして、総理の御見解を一つ求めたいと思います。
○国務大臣(鳩山一郎君) これは、外務大臣が自分で答えたいと言いますから、外務大臣から。
○国務大臣(重光葵君) 私から一つお答えさせていただきます。 これは御心配はございません。この問題につきましては、これらの日ソ交渉の始まる当時から、この問題は非常に用心をして折衝して、漏れのないようにやってきたのであります。その最後のとどめは、鳩山総理がモスクワに行かれて、向うの最高首脳者のブルガーニンと直接お話になって、はっきりと言質をとられている。またそのことは、モスクワでは、河野全権もそういう点に努力をされたのであります。これが最後のとどめでございます。そういうわけでございますから、この問題については、もう御心配は私はないと思います。あまりその問題をやかましくする今時期も少し過ぎておるような気がいたします。そして、こういう情報が外務省に来ております。ソ連は、日本の加盟問題が出る場合においては、やはり外蒙古の加盟だとか何とかいうことも出すだろう。しかし、これは抱き合せにはする意向はないことははっきりしておるということは、ニューヨークの国際連合の本部から来ておる電信と、私たちの考え方と符合するのであります。つまり今、外務省の説明とかいうことのお話がありましたが、そのことを言っているのです。それは、ソ連は出しましょう。出しましょうけれども、これは一括して双方でなければいかんという、いわゆる抱き合せにするということはないということははっきりしている。日本は日本、また外蒙古を出すなら外装古を出す。これは拒絶されるかもしれない。否決されるかもしれない。しかし日本については、ソ連は拒否権は使わないと、こういうとこなんです。 そこで、ちょっと私はこの機会に申し上げたい情報がございます。あるいはお聞き及びのことかもしれません。国際連合に日本が加入するということは最も重要なものでございまして、今回の日ソ共同宣言の効果中の効果でありまして、私どもは、それによって将来の日本の国際的地位を上げ、また日本の道を大きく、何と申しますか、開きたいというような意味で、これに非常に重きをおいておるのでございます。それには早くつまり日本の批准手続を済ますということが必要でございます。そこで、国会に対してわれわれは早くその手続をしていただきたいということ非常に無理にお願いしておるような点もございます。さような状況でございますが、いよいよソ連側はそういう手続を済まして、五日には、批准交換のために外務次官のフェドレンコを日本に特派して、そして随員とともに九日に東京に着くということを言って参りました。それに対する便宜を供与してくれと、こう言って参りましたから、これは、すぐその手続をとっているわけでございます。わが方としては、十日前後というようなことでせっついて、こちらの方も急いでいる。そうしますというと、九日に着いて、十日にもう批准交換があれば、国際連合加入のソ連側の故障というものが最後的にこれはなくなると思います。そうするというと、国際連合に加入の手続がすぐ進められなければなりません。今国際連合じゃ、非常にもう、御承知の通り、中近東の問題等でごったがえしておりますけれども、関係者は日本の加入々非常に重視して、そしてその準備を非常に好意的に急いでくれておるようでございます。さような状態であることを特に申し上げて、さらにこの批准の手続を進めたいと考えております。
○委員長(小滝彬君) なるべく質疑応答を簡単にお願いいたします。
○大谷贇雄君 それで、実は石橋通産大臣に、日ソ貿易の問題について御質疑をいたしたいと思ったのですが、時間が制約されておりますので、最後に、日ソ問題について一点だけお尋ねをいたしまして、質問を打切ります。 この共同宣言におきましては、この両国は、経済的、政治的または思想的のいかなる理由であることを問わず、直接間接に一方の国が他方の国内事項に干渉しないと相互に約束をするというふうに書いておりますが、これはいわゆる内政不干渉を意味するものと思うのでございます。最近の東欧事情やら、あるいは中近東の動きなどを見ておりまするときに、私どもの最もおそれまするところは、いわゆる間接的な干渉であるのであります。国家権力のもとに統制をされておる社会を持つ国と、自由社会の国、また特に強大な国と脆弱な国との力の関係において見る場合、まことに今日の世界の情勢は、何とむ言いようのない状態でございまして、この点、この宣言の項目に関連をして最も不安を感ずるのは、これは日本側であります。ソ連側としては、この項目の有無については大きな関心はないだろうと思うのでございます。イデオロギーと文化、イデオロギーと経済あるいはまた政治、これを全く分離した形に置くことは、事実上不可能なことと思われるでありますが、国交回復後における国内の治安問題につきまして、これは総理から一つ御所信を御表明を願いたいと存じます。
○国務大臣(鳩山一郎君) 私は、この問題について、かつて答弁をいたしました。日ソ国交が回復したからといって、直ちに現在の国内情勢に急激な変化があるとは思っておりません。国際共産主義からする宣伝、諜報謀略等の諸活動があまりに活発になるということも考えて、一応想像されますけれども、そう急に活発になるとも思いませんが、政府は、治安諸機関の内容の充実は幾分かしなくてはならないと思っております。そうしてこの治安諸機関の緊密なる連絡のもとに、やはり諜報、謀略等の諸活動を監視することが必要だと考えております。
○委員長(小滝彬君) あの加藤さん、梶原さんが通産大臣にちょっと質問したいと思うのですが、先に梶原さんに、一分間くらいですからよろしいですか。
○曾祢益君 ちょっとその前に、議事進行について簡単に。 大谷委員の御質問に対する外務大臣の御答弁の中に、つまりこの共同宣言が効力発生した後の旧日本領土の占領状態といいますか、これについての御答弁があったのですが、その点について、どうもこの前の、当委員会でありましたか、あるいは農林水産等の共同委員会における条約局長の答弁と少し違っておるような点があったようであります。と申しますのは、まず第一に、もとよりこの共同宣言ができる前の状態においては、これはもう単純なる戦争状態における軍事占領、従ってそれは、領土権の帰属の問題にかかわらないというこの日本の解釈、その通りであります。ところが、共同宣言ができてから平和条約に至るまでの期間についてもちょっとこれはあとで速記録をお調べ願いたいのですが、外務大臣のお言葉の中に、やはり軍事占領が続くというような言葉があったように思う。これは軍事力による占領という通常の意味なら別でありますが、いやしくもこの共同宣言によって一切の戦争状態が終了し、平和国交が回復する以上は、戦時国際法的な意味の軍事占領というものはあり得べからざることだと思う。その点について第一に、御答弁に食い違いがあるかに感ずるのであります。 それから第二の点は、これも重要な点でありましたが、そういう状態は、確かに共同定言の前よりも日本にとって不利である。戦争状態が続いておるときは、軍事占領はやむを得ないけれども、戦争状態の終了を認め、しかも帰ってこないのでありまするから、これは確かに日本の主張よりは不利である。これは私も、遺憾ながらそれを認めざるを得ません。それに関連して、すぐ話は歯舞、色丹については、しかし、この共同宣言において日本に引き渡すということがはっきりした。原則上もきめられておるし、かつ引き渡しの時期についても、平和条約の締結後と書いてある。それで大丈夫、私もさように考えます。ところが、そうなってくると、国後、択捉等については、やはり日本の主張が非常に弱くなるというのが、これは法律論からいっても言える。従って今度の共同宣言において、国後、択捉等についての日本の領土権の主張が、何らかの形で留保されるのが一番望ましいわけであります。そうなってくると、今度はソ連の主張がまた留保することとなって、それでは何のために共同宣言で国交回復するのかわからなくなるので、そこで、今度は領土の継続審議、こういう形をとろうとしたけれども、ついに領土に関する継続審議、すなわち国後、択捉を明瞭に含んだ領土の継続審議という言葉がついには共同宣言に落ちている、これが私は結局の現状だと思う。従って今の外務大臣のお言葉の中にあった問題は、非常に重要な意味を持っておるので、法律的に言えば、共同宣言はできたけれども、共同宣言ができたために、平和条約に至るまでの間にも、これらの歯舞、色丹のみならず国後、択捉についても軍事占領は終っているはずである。しかし、日本は現実の占拠を認めている。黙認しているという言葉を条約局長は使われたと思う。だからそこでその状態は日本に非常に法律的に不利になるのではないか、まさに不利になるのだというお話があったので、私はこの点を御指摘申し上げまして、御答弁は求めませんけれども、もし政府の方で速記録を調べて、御訂正の御希望があるならば、その点を明らかにしていただいてもいいんじゃないか。あえて議事進行について関連して発言を求めたわけであります。
○委員長(小滝彬君) ただいま曾祢委員の申されますところは、委員長としても多少気にかかった点でありますので、速記録をよく――即答していただいても、また錯綜するとかえってあとで工合が悪いこともありますから、速記録を調べていただいて、はっきりとした書き物かなんかをもとにして、次の機会にでも述べていただいた方が談まりを防ぐゆえんだと思いますので、そういうように政府側にお願いいたします。
○梶原茂嘉君 私は、通産大臣に、最恵国待遇の相互供与に関する議定書に関して簡単にお伺いしたい。これは先日、外務大臣にもお伺いしたのありまするが、十分私としては納得がいかなかったのでありますが、日ソの国交再開を機として、両国の間に貿易が友好な精神のもとに伸展していくということは、これはきわめて必要なことであり、また望ましいことなんであります。しかし、今回の最恵国待遇の相互供与に関する協定でありますが、御承知のように、ソ連の貿易の態勢、性格というものと、自由諸国、わが国の貿易の性格態勢というものが、非常に違うように思う。言うまでもなく、ソ連の方は国家自体の直接の貿易なんであります。従いまして、たとえば関税の制度のごとき、こういうものが果してどうなっておるのか、私は、おそらくソ連には、関税制度のごときものがないのではなかろうかと思うのであります。よく知らないのでありますが。ところがわが方には、これはもうガラス張りの中に、自由諸国との間の共通した一つの基盤の上に関税の制度があるわけなんです。また、共通した基盤の上に最恵国約款の制度もあるわけなんだと思います。従いまして、この貿易関係において、物についての関税、あるいはその関税にかわるべき性格のもの、そういうものを対象にしての最恵国待遇というものは、果してわが方の立場から見まして、どういう点においてこの利益を均出するかどうか、これは、私にははっきりつかみ得ないのであります。反面、向うに与える、わが国から与えるものは、これはきわめてはっきりおるのであります。そういう点をどういうふうに考えておられるか。 それからいま一つ、これはあるいは外務大臣の方がけっこうかと思いますが、御承知のように、ソ連においては、共産圏としての衛星国を持っておるわけであります。衛星国とソ連自体との間の貿易関係、これはそれぞれ政治的な配慮のもとに、特殊のやり方が行われておるんではなかろうかと思う。そういう場合において、またその実態をつかむことも、これは相当困難だろうと思う。一体そういうものを対象にして、この最恵国待遇も、理論的には主張できましょうけれども、客観的にきわめてつかみ得ないものを対象にして、この均霑を主張し、また、現実にこの利益を受けるということは一体可能なのかどうかという点に非常に疑問を持つのであります。もちろん、こういう制度が今後必要がおそらく出てくるかもわかりません。しかし従来、公的にソ連の貿易関係等は十分調査もされておらなければ、十分わが方としてもその実態を把握しておるわけではないと思うのです。幸い国交が回復されて、そして在外公館もできる。そうすれば、今度は公的にいろいろの面においての調査もでき、実態も把握ができるだろう。そうすれば、そういう事態になって必要に応じて、また適当なときに、こういう協定を実際に即して結んでいくということでいいんではないか。共同宣言の発効と同時に、すぐにこれを実施する必要が果してあるのかどうか。私は少し早いのではないか。このことを自体をいかんというわけでは毛頭ありませんけれども、もう少し、ソ連と日本の貿易の進行に応じて、こういうことを具体的に考える機会が必ずあるのではないか。反面、通商航海条約等の基本的の問題も、これはできる限り早く締結の方向に進んでいくであろうと思う。そういうものを見合って考えて決しておそくない、こう思うのであります。もちろんそのほかの、船の関係とか、いろいろあります。こういうことは、それはこの際におきめになってけっこうだと思いますけれども、輸出入の物資に即する関税関係のようなもの、こういうものはしばらく先で考えて、かえってその方がいいんじゃないか。いずれ両国の間の貿易が相当の規模において、時間を経て伸びていくでしょうが、あるいは多くの場合において特別の協定をいたしまして、そして処理をするということも必ず行われるであろうと思う。まあそういう現実の問題の進展に応じて考えていく方が、何といいますか、実際的である。初めから、まだ向うの実態もよくわからない場合に、最恵国の待遇の均霑を輸出入の関連において、物資の関税等に関連して考えるということはいかがかと、こう思うのであります。通産大臣の御見解をお承わりしたい。
○国務大臣(石橋湛山君) お答えいたします。お話の通り、ソ連には関税法なるものがあるようでありますが、その税率も発表されておりませんし、また、果して税率みたいなものがあるのかないのかも実はわかっていないというわけですから、今、最恵国待遇を云々しましても、実際においては適用がむずかしいという点はありますが、いずれ実際の貿易においては、貿易協定みたいものを作らなければなりません。ただ今回のは、原則としてお互いに差別待避はしないという原則をきめたものとして考えておるわけであります。
○梶原茂嘉君 原則としてではありますけれども、それはもう現実に、原則論じゃなくて、現実にこれが実施される。日本の立場からいえば 向うの実態がよくわからないので、現実に均霑してくるという結果は起ってこない。逆にわが方ははっきりしておるのであって 自由諸国間の自由貿易というものを基調にした一つの関税制度というものはあるのです。これは現実にすぐ動くのであるます。ソビエトの方は現実にすぐ均宿していく、わが方は現実に均嘱する見当はつかないというところに、私は無理がありはしないかということを実は申し上げておるわけであります。もちろん、日本以外の自由諸国とソ連との間の貿易関係というものはあるのであって、その間に一応この問題があり得ると思います。しかし現実は、いろいろの支障その他で、おそらくこれは動いていないだろう、これは私の想像であります。ところが、日ソ国交の回復に関連して、相当ソ連側においても、また特に日本側においても、貿易の伸展については、まあどちらかといいますと、意気込んでおるわけであります。それだけにこの問題は日本としては、私は、もう少し慎重に、かつ重要に考えてしかるべきじゃないか、こういう意味でお尋ねしたわけであります。
○国務大臣(重光葵君) その御趣旨は、私は決して御無理とは思いません。思いませんが、これはほとんど取扱い手続の最小限度のものとして取り上げたつもりでございますし、こういうことがはっきりしなければ、実際、貨物の輸出入、船の輸出入等について、すぐ支障を来たしますから、それでこしらえたのでございます。詳しいことはむろん通商航海条約に譲り、またバーター協定の方に譲らなければなりません。それから、戦争前にはちょうどこの状態でした。戦争前には、御承知の通り、幕末協定においてやはり最恵国待遇ということになっておった。通商条約はとうとうできませんでした。できませんでしたが、最恵国待遇でやはりやっておったのであります。ほかの自由国との間のなにが一番すぐ均霑するということが起ってくるわけでございますから、まあこのくらいな最小限度のことは必要じゃないか、こう考えております。
○加藤シヅエ君 私、政府の方に御質問申し上げます前に、委員長に一言御所見を伺いたいことがございます。それは、この参議院の外務委員会がただいま日ソ共同宣言を審議しておりますことは、実に歴史的な委員会であると私ども委員一同は考えております。従って、委員長は委員の発言の時間の割り振りに対しましては、非常に厳格でいらっしゃいます。これはもとより早く批准を終りまして抑留者の帰還、あるいは日本の国連加盟の問題の運びの問題などを考えましても、委員長が時間を非常に正確に守ろうとなさいます御努力に対しましては私どもも敬意を表するものでございます。 ところが、昨日、農林水産委員会と共同の合同審査を持たれた、こういう際に突如として衆議院から二、三名の議員の方がこの委員室に入ってこられまして、非常に大きな声を立てられまして、私どもの審議を妨害された感があったのでございます。これに対しまして、委員長はその大声で入ってきて妨害されたことに対して、何ら処置をおとりにならなかった、これはどういう理由でございましたのか。委員長や理事の各位においてはおわかりであったことかもしれませんけれども一、私ども一委員といたしましては、実にあぜんとしたものがございました。このことは参議院の外務委員会の権威にかけましても、はっきりした委員長のお言葉がいただきたいと思います。(「委員長、同感であります」と呼ぶ者あり)
○委員長(小滝彬君) 昨日の連合審査会の際に、そこの入口で非常に大きな声をして入りそうになった人があり、しかもそれが衆議院の同僚議員の一人であったということは、はなはだ遺憾千万に存じます。しかし、注意しようとしておりますと、こちらに入るに及びましては静粛に……、ちょうどそれを制止しようとしておる際、先方から入口の所で姿の見えないときに、かえって大きな声がありましたけれども、こちらに入ってくるに及んでからは、そう暴言なり騒音を立てたのではございません。 それからもう一つ、私はこれは弁護をするわけではございませんが、遺憾ではありましたが、ただ私の方へ見えましたのはあの大きな声を上げた人は一人でありますが、その人でない、これまでも予算委員会の理事であって、私どもに再三河野農林大臣をちょっとでいいから質問のない間だけ貸してもらいたい、こういうことを交渉に来られた方が静かに私の方へ申し入れをされたわけであります。昨日は不幸にして農林大臣がチフヴィンスキーと会われて出席がおそかった。そのために再三要求がありました。何分こちらの方も重要であるから、予算委員会も重要か知らぬが、前から来てもらうことになっておるからというので無理に押えておりました。ただ、私の考え方は、鳩山総理がたしか昨日は二時四十分でありますか、入ってこられるということになっておりましたので、その際には鳩山総理及び外務大臣に対して質問をしたいという通告がすでにあったのでありまするから、まあ二時四十分以後の三十分なり一時間は割愛ができるかもしれないというので、向うの予算委員会の方に申しまして、その時間が来たら皆様にお諮りしょうとしておりました。その時間が参りましたものですから、向うから予算委員会の理事が入り、そうしたらそれを請求しておるところの、あの方は理事であったかどうか知りませんが、加藤さんは同じ党派でいらっしゃいますから御存じと思いますが、その方が、おそいというのでどなり込まれたというようないきさつでございまして、私はあの人が乱暴な声を立てたから皆様に諮ったのではなくて、前から大体そのころになれば時間がつくだろうから、その際に全員の皆様にお諮りをして、御了解を得て、農林大臣を向うに出そうというような考えで、あのような取り計らいをいたしたのであります。あの際注意すればよかったかもしれませんが、もうここへ入られたときには、はっきりどの方がああいう騒音を立てたのかわからないし、初めてこちらへ見えたときには静かにしておられたので、何らの措置もとらなかったのであります。大体あの大きな声を立てたのはだれであったかわかっておりますから、正式なチャンネルを通じてやるということになれば、本院の議長から衆議院の議長に申し入れをするのが至当な措置でございましょうが、しかし、ちょうどこちらの中へ入ってしまってからいつまでもそうだというわけではないので、幸いにして皆様よくお知り合いの衆議院の同僚の議員の方でありますから、各会派においてこういうことがないように、一つ同僚の委員の方へ御注意していただくということで結末をつけたらいかがかという考えを持っている次第でございます。
○石黒忠篤君 私もこの問題については非常に不愉快を感じております。なお、当委員会に対する大いな侮辱であったと思います。そこで委員長には十分将来の御注意を願い、加藤委員には委員長のお言葉から同政党のお方だということでありますから、十分に御注意を願いまして、正式の交渉などはしないで済ましたい、こう思いますが、そういう措置を願いたく存じます。
○曾祢益君 私は加藤委員、石黒委員のお言葉に全く同感でございます。非常に残念でございます。ただ一言私から同じ党に属する人のことについて弁明したいのですが、ここの委員会にいわゆるどなり込んだというような状況でなかったことは、委員長もお認め願っているようであります。これは非常に不幸なことでしたが、衆議院の予算理事の間において約束にたがった、たがわないというような高声を上げて入ってきた、その点においては、われわれの委員会に対する――そのこと自身が現にわれわれの委員会に対する敬意を失したことになる点については、深く遺憾に存じ、おわびをいたします。決してこの理事も当委員会に対し、あるいはわれわれの委員長に対する無礼を働いたものではなかった、この点だけは弁明さしていただきます。
○委員長(小滝彬君) ただいま石黒委員、曾祢委員、加藤委員から御注意がありましたが、今後十分こういうことのないように、私としても最善を尽したいと存じております。また衆議院側とも連絡いたしまして、ああいうことのないように、十分注意をしていただきたいと思いますので、さよう御了承を願います。
○加藤シヅエ君 了承いたしました。 だいぶ時間も経過いたしましたし、質問も非常にたくさん出尽しておりますので、私はごく簡単に時間をいただいて、若干の質問を鳩山総理大臣並びに重光外務大臣にいたしたいと思います。 まず最初に、鳩山総理大臣が非常な御病体をもって遠路モスクワまでおいで下さいましたことば、非常に御苦労さまであったと存じます。また重光外務大臣は、最初の全権として非常な御尽力があったことは、大臣の御発言が印刷になっておりますのを拝見いたしまして、十分に了承することができるのでございます。ところが、印刷を拝見いたしますと、最も問題になっております領土の問題につきましては、十分日本国民としての意を尽して日本固有の領土については十分な御発言があったように拝見いたしているのでございますが、たまたま委員会における御答弁を拝見いたしますと、ときどき少しどうも私どもが誤解をするような御発言がございましたことは遺憾に存じますけれども、これはまたたびたび御修正もございましたので、これ以上繰り返し伺うことは避けたいと思います。 で、重光外務大臣に最初に伺いたいことは、私が考えますのに、この日本とソビエトロシヤとの外交上のいろいろの交渉は、今度の問題だけを取り上げてこれを考えるのではなくて、長い間の歴史的な関連においてこれを絶えず見て参らなければならない、ずいぶん長い交渉があったと思いますし、また日露戦争後のポーツマス会議のときなどの記録を見ましても、非常な問題があったように私どもは承知いたしております。またポーツマス条約のときにも、出先の全権と国内に残りました国民との間に、非常にたくさんの意思の疎通のない点がございましたために、小村全権が帰られましたあとの日比谷の焼打ち事件など、私ども子供のときでございましたが、非常に強い印象を脳裏に残しておるのでございます。こういうようないきさつから考えて参りますと、このたびの御交渉は、幾多不満な点が残されてここまで運ばれて参ったのでございますが、この際また将来のことを考えますときに、なるべく今度はすぐにこれをどうこうとすることはできない問題としましても、また将来国際情勢の推移に従ってわが方に有利に問題を展開するためには、この際十分に政府の所信を発表していただくことが有利であると考えるのでございます。その点で最初に伺いたいことは、これは私非常にしろうと的な考えでございますが、サンフランシスコ講和条約を結びましたときに、アメリカのダレスさんそのほかの方々が、千島というような問題に対して非常に無ぞうさに、ただ千島というような言葉を使われて、そのために今日やれどこまでが北千島であるとか、南千島であるとかいろんな混乱が起っているようでございます。まして私どもしろうとがこれを見ますときには、いよいよ混乱いたして参りまして、事柄をはっきり理解するために非常に不便だと思うのでございますが、あのサンフランシスコ条約、講和条約を結びました当時に、千島について、あるいは日本に所属すべき領土として問題になっている点などについて、はっきりした地図の上に線を引いて、それを裏づけするというようなことはできなかったものなのでございましょうか、あるいはそういうような地図に基いてはっきりしたものがあるのでございましょうか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
○国務大臣(重光葵君) そういう地図はなかったと思います。なお条約局長どうですか。
○政府委員(下田武三君) 日本政府といたしましては、桑港会議の数年前からあらゆる資料、むろん地図も含んでおりますが、を、平和条約の当然主たる起草者となるべきアメリカ側に対して、たくさん提出いたしております。その点ははっきりいたしておったのであります。ただ御承知のように当時のアメリカの関心事は、ソ連をどうして講和会議に招き入れようかということでございました。米国政府は当初千島、樺太のことは平和条約にはきめないでおいて、条約発効後、一年後に国際会議を開いてきめようというようなアイデアもあったのでありますが、そういう案ではとうていソ連は桑港会議に出てこないだろうという観測のもとに、ただいまできております通り、ただ一たん日本をして放棄せしめるという規定にしまして、その結果、ソ連はとにかく会議には出て参りましたが、自分の方に帰属をはっきり認めないということを不満として署名いたさなかったのであります。要するに米国及びその他の連合国は、この千島、樺太の問題が非常にソ連との関係において重大問題になるという考えから、一番無難な方法、つまりヤルタ会議以来漠然と書いてございます。クリルという言葉、何らの定義もなく、何らの地図上の境界線もはっきりしていない漠然たるクリル島という言葉を、そのまま桑港会議に打ち込んでしまったという点が、御指摘のような不明確が起りました歴史的原因だろうと考えております。
○加藤シヅエ君 その次に伺いたいことは、重光外務大臣は繰り返し千島及び南樺太は日本固有の領土であるという御発言が繰り返されておるのでございますが、南樺太が固有の領土であるというふうに私どもはみんな了解しておるのでございますが、先方ではそういうふうに認めてくれないというようないろんな誤解もあるようでございますが、わが方といたしましては、この南樺太が日本固有の領土であるというふうに主張いたしますその根拠は、どういうところにございますのでしょうか、またそれに反対するソ連側の言い分の根拠はどういうところにあるのでございましょうか。
○国務大臣(重光葵君) その問題は少し、言葉の上かもしれませんが、少しこんがらかってきました。私が固有の領土であるとして強く主張したのは国後、択捉でございます。南千島と言われる国後、択捉でございます。むろんそのほかの領土、南樺太並びに北千島ですが、これらが固有の領土でないというようなことは一度も言ったことはないのでございますが、これは少し趣きが違うのでございます。サンフラシスコ条約でも明らかに放棄した地域でごごいますから、少し違うのでございます。私が主張したのは国後、択捉で、これは固有の領土であるということを繰り返し、主張したのでございます。その根拠は、もうあらためて御説明申し上げなくてもいいと思います。
○加藤シヅエ君 私が伺いたいのは、国後、択捉が固有の領土であるということは、もうこれは伺わなくてもよろしいのでございますが、それでは南樺太は固有の領土でないのでございますか。
○国務大臣(重光葵君) 私が主張したその択捉、国後と同じカテゴリーにはこれは入れてなかったのでございます。南樺太と北千勘は、これは領土権の交渉の題目にならぬと、こういう考え方でもって交渉をしておるのでございます。
○加藤シヅエ君 同じカテゴリーに入りませんといたしますと、南樺太というのは、その帰属はどういうことになるのでございますか。
○国務大臣(重光葵君) 北千島は、樺太、千島交換条約で、これははっきりと日本の領土になっております。南樺太は御承知の通りに日露戦争の後のポーツマス条約で日本の領土になったものであります。これはそういう協定、取りきめで合意の上でそうなったものでありますから、そういうものをすべて固有の領土と言えば言っていいと思います。いいと思いますが、国後、択捉等はいまだかって交換の題目になったとか、戦争の結果得たとかいう所じゃございませんので、これは日本民族固有の領土で、北海道と同じものであると、こう私は考えておるのであります。それで強く主張したのであります。さようなことで御了承を得たいと思います。
○加藤シヅエ君 そういたしますと、南樺太が昔から間官林蔵が探険したとか、北緯五十度の線に何かそこにしるしをつけたとかいうようなことで、だいぶ、ある人はこれがやはり日本に帰属すべき土地であると考えている者もたくさんあるのでございますが、そういうような考え方というものは、今政府では全然こういうことはもう問題になさらないというのでございますか。
○国務大臣(重光葵君) さような点はむろん考慮に入れておるわけで、そういうものを考慮に入れないというわけじゃございません。しかしながら南樺太、北千島というものがすでにもうサンフランシスコ条約のときに極目になっておるもので、それからまたカイロ宣言以来、ポツダム宣言にもこれが入って、戦争の結果、これは日本をして放棄せしめるという考え方でずっと参っております。そうしてポツダム宣言を日本は受諾しておるのでありますから、その主張は決して固有の領土のようには強くはないと思います。思いますが、しかし戦争前も領土であったことは事実であります。それでありますから平和関係を設定する場合において、戦争前の日本の領土の返還を主張するということは当然のことだと思って主張してきたのであります。これはソ連はむろん承諾をしません。
○加藤シヅエ君 次に伺いたいことは、この批准が行われますと、少しも早く抑留者を返してもらいたいというのは、国民の真実の声でございますが、先だって鳩山書簡をお送りになりましたところが、ソ連側におきましては、抑留者をすぐ返すような準備を運ぶというような希望には沿いかねるというような、それにはいろいろな手続きが要るので、まだ時間がかかるというようなことであったということを新聞で発表を見ました。それに対しましてわが党の勝町田、穂積、松本の三氏がチフヴィンスキー氏をお尋ねいたしましたところが、そのときの駒答えでは、抑留者は年内に返すことができるであろう、というようなお答えがあったということが発表されているのでございますが、そのように年内に返すというようなあとからの情報を政府の方においても入手していらっしゃいますでしょうか、いかがでしょうか。
○国務大臣(重光葵君) 簡単にお答えいたします。抑留者を一日も早く返したいということで交渉を進めて参りましたことは御存じの通りであります。特に今回のモスクワ交渉では、鳩山総理がこの問題は非常に重きを置かれて向うに談じ込まれたことは御承知の通りでございます。さらにまた、いよいよもう批准も、日本側の批准手続きが聞もないという、こういう大体の見込みがつきましたので、つまり衆議院を通過いたしましたので、ここにまたさらに書簡をもって、鳩山総理からブルガーニン首相あてに、この問題を含めて、早く批准手続きをして、政府として抑留者の送還ということを早くやってもらいたい、遅滞なく一つ手続きを進めて、準備を進めてもらいたいということでやったのでございます。それは新聞でも御承知の通りでございます。その回答が今日参りました。夕刻先方との打合せの時間によりまして発表いたします。それによりますというと、完全にその点を同意をして承諾をしてくれて、早くやると、こういうことでございます。そうしてもうソ連側から、先ほど申しました通り、批准交換の手続きをすべく、ソ連政府の全権代表が五日モスクワを出発して、九日に東京につくところまでになっております。従いまして抑留者の問題もわが方の希望通りに進みつつあるということを御了察願いたいと思います。
○加藤シヅエ君 大体年内というようなことがはっきりいたしますでしょうか。
○国務大臣(重光葵君) 年内にははっきりいたしております。と、こう申し上げて差し支えないと思います。これは批准交換と同時にいくのですから、批准交換をできるだけ早くやります。もう赤十字社の方にも手配をしておりますから確かにやれると思います。
○加藤シヅエ君 批准が終りました後で、双方に公館が設立される、大使館がもたれるというような場合に、大使館に配置されます要員等の定員というようなものはどういうふうになっておるのでございましょうか。
○国務大臣(重光葵君) それは主義として、相互主義で徹底をします。相互主義で話し合いをして徹底をしていきます。またそれによって旅券も出さなければなりませんし、それはそういう相互主義でやるということを申し上げます。
○加藤シヅエ君 それでは定員は何名というようなことは、まだお話がついていない。
○国務大臣(重光葵君) まだそこまで参りません。
○加藤シヅエ君 総理大臣にお伺いいたしますが、外国までおいでになって一生懸命に交渉をなさっていらっしゃいますときには、国内の世論が非常に出先きの全権を応援するというような態勢が整われなければならぬことはだれしも考えるところでございますけれども、そのお留守に砂川の事件が起りまして、非常に不幸な形に展開し、日本人同志が血を流すような形になりましたことは、これは非常な不幸なことであったと思うのでございます。総理大臣はモスクワにおかれまして、このニュースを聞かれましたでございましょうか、また聞かれました場合に、これが日本の国内の世論が必しも大へんよく政府をバックアップしておる形になっていないというようなことで、何か御不便を来たしたというようなことがあったでございましょうか。
○国務大臣(鳩山一郎君) 砂川事件はモスクワでもわかりました。残念なことだと思っております。遺憾のことと思っておるくらい……。
○加藤シヅエ君 こういうような交渉をなさいますときには、世界の世論が、日本の主張が国際法の通念に徹した主張でもって、非常にこれは妥当な主張であるというようなことに対して、世界の世論が、やはりこれを遠巻きにでも支持を与えてくれるような形になることが非常に必要であると考えます。ことに国際連合に加入いたしましたのちには、なおさら世界の世論とともに日本が歩いて行かなくちゃならないと思うのでございますが、今まで日本の外交は、新聞を利用して世界の世論に対して、日本の立場を理解させるというようなことに対しては、必ずしもあまりよい手を打っていらっしゃるというふうに私どもには理解できないのでございますが、そういうような方針に対してどういうふうなお考えでいらっしゃいますか、重光外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(重光葵君) 私もそういう点で、十分であるとは思いませんから、今後は一そう力を尽したいと、こう考えております。
○加藤シヅエ君 まだ申し上げたいこともございますけれども、時間の関係で私の質疑はこれで一応打切りたいと思います。
○委員長(小滝彬君) 海野さんあなたの順序ですが、いかがですか。
○海野三朗君 続けてやりますか。
○曾祢益君 順序が違うのじゃないですか。
○委員長(小滝彬君) 順席は自民党でなくて、梶原さんはさっき加藤さんの御了解を得てちょうど通産大臣が見えていたから先にやった、だからその次は海野さん。
○曾祢益君 自民党の方は全然おられぬのですか。
○委員長(小滝彬君) 自民党は今おりません。
○曾祢益君 順序ですよ。
○委員長(小滝彬君) 今申し出でございません。
○曾祢益君 全然ない。苫米地さんは……。
○委員長(小滝彬君) まだ委員になっておりません。海野君。
○海野三朗君 私がお伺いいたしたいのは、このサンフランシスコ条約の数年後に、日ソ交渉を始めた。そうしてようやくまず共同宣言というところまでこぎつけられたことに対しては、鳩山さんの御老体まことに御苦労のことであると私は存じます。しかしながらサンフランシスコ条約以後今日まで、このじんぜん日を経過したということはソ連に対しましては既成の事実を作ってしまっておるのである。その既成の事実をまた彼がたてにとっておる。もう少し早く交渉を進められるべきものではなかったか。吉田内閣の延長である現内閣はこの点はどういうふうにお考えになっておりますか。鳩山総理大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(鳩山一郎君) 日本の国論が日ソ交渉を始める、日ソの間の国交を正常化しようというのがだんだんとその事態が備わってきましたので、私がやりたいと思いましたのは、昭和二十七年でございます。その二十七年の九月の十二日にこういうことを言いましたのであります。その当時の吉田内閣は戦争状態終結未確定の事態をそのままに放置しておくという方針で、戦争状態の終結確定事態を作り上げるということには熱意はなかった。むしろ反対であったのであります。それですから時期がここまできましたのは仕方がない、やむを得ざる延期だと考えております。
○海野三朗君 このソビエトが日本に対して戦争を吹きかけましたのは、日本は戦争をしないのに向うが吹っかけた。その戦争をしかけたのはアメリカとイギリスの勧めによって開戦をしたのである。そうした結果、こういうふうな状態になってきました。そうすると、その責任というものは米国及びイギリスにあるのではないでしょうか。今日総理はいかようにこういうことをお考えになっていますか。根本の責任は米国及びイギリスにある。私はそういうふうに考えなければいけないのじゃないか。不可侵条約をぶち破って、そうしてこの戦争に参加せしめたというのは、米国及びイギリスにその責任があるのじゃないかというように思うのですが、どういうふうなものでありましょうか。御意見を承わりたい。
○国務大臣(鳩山一郎君) イギリスとアメリカとは日本と交戦状態にありましたときに、ソ連は英米とともに日本の敵になったのでありますが、そういうような事実につきましては、これは主観の判断にまかすより仕方がありません。
○海野三朗君 総理が御自身いかようにお考えになっていらっしゃるかということを私はお伺いしているのです。
○国務大臣(鳩山一郎君) 私は英米と戦うのはその当時から日本のためにならないという考え方を持っておりましたので、ソ連とも戦うことは日本のためにはならないという考え方をしておりました。
○海野三朗君 私はソ連が参加したということに対しましては、アメリカ及びイギリスの方に責任がある。当時日本もやったことが悪いかもしれませんけれども、ソ連を引きずり込んだというところは、米国及びイギリスに責任があるのではないか。その事のよしあしは別といたしましてそこがソビエトを引きずり込んだというのは、私は米国及びイギリスが考えてやったことであると私は思っておるのですが、それを私はお伺いしているのです。
○国務大臣(重光葵君) その点はちょっと私の意見を述べさしていただきます。なるほどそれは歴史上の事実としてそういうことはございます。それはおそらく歴史家はソ連の参戦ということについては、アメリカもイギリスも関係が非常にある。まあ責任ということになってきますというと、非常に議論が起ってきましょうが、少くとも関係があるといって、議論があるだろうと思います。思いますが、今日の日ソの国交を回復するというこの問題を議する上において、私はそういう歴史上の事実は直接に関係を持っていないと考える。こういうことを申し上げておきます。
○海野三朗君 それはよくわかりますが、全体を通じて筋道を考えてみますときに、そういうことをよく考えてみておく必要が私はあると思うのですが、それを今日どうこう言うのではありませんが、どうも私はその点が納得いかざるものがあるので、私ばかりじゃありません。幾多の国民もみなそれを見ておる。しかもイギリスとアメリカが相談をして、ソビエトを無理無理参戦させたのだということはアメリカからこれを報じておる。そうしてみると、事の勝敗とか、そういうことは別問題であって、今日のこの状態を引き起したもとは、日本も悪かったかもしれませんけれども、とにかくアメリカとイギリスの骨折によってこういうふうになったのだということは考えられるんじゃないでしょうか。
○国務大臣(重光葵君) その問題は、私は歴史の検討に譲るべき問題だとこう申し上げておるわけであります。
○海野三朗君 私はそれはいいのですが、外務大臣は、それをどういうふうにお考えになっておりますか、御所見を私はちょっと伺いたい。
○国務大臣(重光葵君) それで、私はまあこれは、その点についてはいろいろ何が、議論がございます。歴史家の中で議論がございます。歴史家以外にソ連はソ連として、英米は英米としての議論がございます。しかしそれは今一々その問題をここで検討することは、私は準備がございません。
○海野三朗君 それでは、この問題は追求しないでおきます。あなたにお伺いしたいことは、初めの交渉地をロンドンに選定なさったわけはどういうわけがあったのでございましょうか、これを一つお話を承わりたい。ロンドンに選定された。ソビエトと日本が交渉するのであるならばモスクワでやるか、東京でやるか、両国間の話し合いでやればいいものを、どうしてロンドンに持っていかれたのでしょうか。
○国務大臣(重光葵君) その問題に至っては、ずいぶん当時これは国会においても御意見が出、またこのお答えを申し上げた点でございます。当時の状態は、日本とソ連との間は、いわば敵対関係と申しますか、戦争状態に今日でもまだ理論上はあるわけでありますが、さような場合において戦争後の事態を調整しようというならば、最も関係のない第三国で冷静に双方の代表が話し合うということが一番いいと考えました。そこでロンドンかゼネバということを提案したのでありますが、ロンドンにきまったのでございます。
○海野三朗君 それからこのたびの全権として行かれる前に、あなたがおいでなさるときにもつと野党である社会党にも打合せなさっておいでになった方がよかったのではないか。私はこういうふうに思いますのですが、今からお考えになってみて、いかようにお考えになりますか。この国際間の問題は国会で争っておるというのと達って、挙国一致の体制でぶつかっていかなければならないのじゃないか。そういうときにはやはり野党である社会党にも連絡をおとりになっておいでなさるべきものでななかったか。そういうふうに私は思うのですが、いかがなものでございましょうか。
○国務大臣(重光葵君) いや、それは全くそういう考え方で、十分に御意見も伺っておったし、また連絡もとったつもりでございます。まあごあいさつもして参りました。
○海野三朗君 このたびの交渉、日ソ共同宣言を見ますると、ほんとうに力ずくの結果であって、そういうことをわれわれは思いますると、はなはだ満足できないのです。ほんとうは。で、日本が戦争を吹っかけないのに、戦犯であるといって人質にとって今日まで置くというようなこと、実にわれわれが考えると不満にたえないのでありまするが、とにかく仲直りの第一歩として、この程度であればやむを得ぬじゃないかというふうにお考えになっておるのですね。
○委員長(小滝彬君) 外務大臣に質問ですか。
○海野三朗君 はい。
○国務大臣(重光葵君) 日ソ国交の正常化の目的を達するために、これは適当であると、こう考えました。
○海野三朗君 ああそうですか。それから共同宣言をしますのにも、過日、漁船団が出ていくときにも、ソ連の代表部の認定を得て、まあ許可証のようなものをもらって出かけたというようなこと、これはちょっとおかしいと私は思うのですが、それはどうなんですか。ソ連代表部のつまり承認を得て、そうして漁船が出かけていったと、こういうようなことはどうも私は納得がいかないのですが、これはどうなんです。
○国務大臣(重光葵君) その点は繰り返し農林大臣からも御説明をいたしたことでございますが、許可証は日本が出したのでございます。日本が出して、それをソ連が有効だということを認めて、認証をして出したということでございます。そういうわけですから、これは便宜上の措置でございます。漁業を事故なく行うと、こういう便宜上の措置でございます。
○海野三朗君 この正常な外交関係、つまり平和条約が締結したときと、そのときには歯舞、色丹を返す。正常な外交関係というものはどういうことなんですか、具体的に一つ承わりたい。
○国務大臣(重光葵君) 国交回復して一番大きな点は、国家の代表者を互いに認め合うと、こういうことでございます。
○海野三朗君 正常な外交、つまり代表部を置いて、つまり大使館を互いに置くと、それを置いても何かスムーズに行かないような場合が起ってこないとも限らない。そういうときには、これは外交関係は正常に復さないと向うの方から見られた場合には、歯舞、色丹は必ずしもすっとよこすかどうかわからないのじゃありませんか。そういう点を考えると、お前には返すのだけれどもと言って、一つのえさにつられて、これずるずる引張られるおそれはないのですか、どうなんですか。
○国務大臣(重光葵君) 歯舞、色丹はもうこの規定通りに、平和条約ができますれば返って参ります。これはもう決してそれに疑問はないと思います。
○海野三朗君 この平和条約といいますのは、共同宣言のことですか。
○国務大臣(重光葵君) いやいや、平和条約、これに書いてあります正式の平和条約でございます。
○海野三朗君 それからお互いに賠償権を放棄したということがありますけれども、日本が戦争を吹っかけたのではなくて、向うの方に損害は相当与えているのですか。日本だけが与えられたのではないでしょうか、どうなんです、これは。
○国務大臣(重光葵君) その点については、先ほど条約局長から詳しく御説明を申し上げました通りでございます。しいてお望みならば条約局長にいま一つ……。
○海野三朗君 先ほど条約局長のも私聞いておりましたけれども、どうもぴんとこないので、もう一度一つお願いします。
○政府委員(下田武三君) 昔から平和条約におきまして、戦争に関連する請求権の放棄という規定を設けるのが慣例でございますし、ひどいのは戦敗国側だけが請求権を放棄させられた例もございます。しかし今回は双互に文句をあとで持ち出さないという趣旨からきめたのでございまして、これはどうも戦争の跡始末をしようとする以上は、どうしても不可避な条項でございます。やむを得ないと存じます。
○海野三朗君 今、私はそれを聞いているのじゃないのですよ。向うに損害を与えたかということを聞いているのです。日本がどれほど損害を与えているか。
○政府委員(下田武三君) その点につきましては、先ほど詳しく御説明申しましたように、短期間の戦争であり、しかも日本の抵抗のほとんどない期間における戦闘でございまするから、先方の請求権の放棄の対象となりましたものは、きわめて少いという事実と、もう一つは、先ほどの答弁を訂正させていただきたいと思いますが、わが方の国民の残した財産は二十億と、それから企業法人の財産は七十億と申し上げましたが、五十億でございます。合計で七十億でございますので、その点訂正させていただきたいと思います。要するにわが方の請求権の放棄の対象となった客体は非常に多いということは事実でございます。
○海野三朗君 先ほどから択捉、国後の問題がもうへどが出るほど続いたのでありますが、これは一体お見通しとしては、何年後にこういうような領土が返ってくるであろうと想像しておられますか。それを外務大臣にお伺いいたしたい、大体の見当でもいいから。
○国務大臣(重光葵君) 神ならぬ私のとうていはっきり申し上げるわけには参りません。参りませんが、抽象的に申しますれば、言われる通りに、国際情勢の好転するような機会を失わない、その第一の機会をつかまえてやりたいと、こう思っております。
○海野三朗君 それから外務大臣にお伺いしたいのですが、中共との問題につきまして、指紋をとるということは、これはどういうふうにお考えになっていますか。過日私どもがアメリカに参りますときに、私どもは皆指紋をとられたのです。それで連中の中には、アメリカにいくのを禁止するということで、怒った人間もいるくらいで、指紋をとられた。それはアメリカに行っても至るところで私どもは演説をして、不平を言ってきました。日本が中共との関係におきまして、普通の人間が来るというのであるならば、これはもう指紋をとるのもいいけれども、いやしくも向うの選良である、相当の人が来るのにも皆指紋をとるというよううなことは、中共との友好関係を結ぶ上からしては非常に遺憾な点であると思うが、これは外相どういうふうにお考えになっております。
○国務大臣(重光葵君) この問題もずいぶん出た問題ではございますが、指紋をとるというのは、今お話の通りアメリカでも指紋をとっております。日本においても法規上指紋をとることになっております。中共人だけではなくして、たとえばアメリカ人も同様でございます。少しも区別はないのでございます。そこでまあ指紋をとるのをきらうということがありますので、法規の許す限り、法規の範囲内において――法規は変えられません、法律は変えられません。というのは、法律は守らなければならないから、これはできるだけそう気持の悪くないように取り扱いたい、こういうことは考えております。
○海野三朗君 法律を曲げろというわけではありませんが、こういうような法律はやはり改めなければならぬのじゃないかと私は考える。アメリカに行って、これはワシントンでもニューヨークでも指紋をとることは、アメリカ自身のために損なのであるということを主張した。そうしたところが、アメリカでは、いずれ国会でもってこの法律を改正することになるであろうということを言っておりますが、日本においてはこれは、どうなんですか。やはり国会にかけて改めなければいけないのか。政令とか、そういうことでこれは改められるものなのでありましょうか、どうでありますか。
○国務大臣(重光葵君) その点は法制局長官がおられますから、――これは法律だそうであります。法律でありますから、法律を変える手続がやはり要ります。
○海野三朗君 ああ、そうですが。それから漁船の拿捕について、私がちょっと昨日発言しておいたの、ですが、十分警戒ができていないのじゃないか。拿捕される船ばかり多いので、これは警戒しておるのだとか、見張船をやっておるのだというけれども、こういうふうなことはもっと注点して拿捕をされないようにしなければならないのじゃないでしょうか。
○政府委員(下田武三君) 拿捕につきましては、このたびの漁業条約と海難救助協定が発効いたしますと、非常に事態が改善いたします。漁業条約発効後におきましては、大体日本船は原則として日本側が取り締るわけです。ただ日本側の官憲の目の届かない所で違反が起りしました場合にのみソ連側が取り締りますが、直ちに日本側に引き渡す。もう一つはいわゆる領海侵犯の場合でございます。これは漁船が実際避難して、あるいは濃霧に迷って入っておる、何ら悪点のない場合もございましょう。その場合、もしほんとうに漁船が苦難に遭遇しておるものでございましたら、直ちに海難救助協定による救助、引っ張られるのでなく、助けられる方に変り得るわけでございまして、それは非常に事態が改善されると思います。
○梶原茂嘉君 ちょっと関連して。その点は先日河野さんもそういう趣旨のお答えがあったのでございますが、今回の漁業協定の規定は、この漁業協定ですか、条約ですか、これに対する一般の場合についての措置が記載されておると思うのであります。従来の漁船の拿捕、漁夫の抑留等はいろいろケースはありましょうけれども、多くの場合は領海侵犯というのが私は多いのじゃないかと思います。私のお尋ねしたいのは、この漁業条約の中の関係の条項は、領海侵犯の場合は及ばない、こう解釈するのが正しいのじゃないか。従って領海侵犯に関連して起る漁船の拿捕なり抑留の問題は、今回のこの条約によって緩和されるということはあり得ないのじゃないか、こういうふうに思うのでありますが、この条約で非常にそういう点が緩和されるというふうに答弁され、そういう趣旨に言われておるのでありますが、果してそうですか、どうかということを、一つはっきりお答えを願いたいと思います。
○政府委員(下田武三君) 海難救助協定に双方の海難救助機関が協力して救助しなければならないという義務的の規定がございます。その場合の一つとして、沿岸に至近の区域、これはソ連の領水内でも、もし日本船が遭難したならば、直ちにその場合には日本の救助船はソ連の領水内に入るわけでございますから、一方的に入らないで、ソ連と直ちに協議して、共同で救助作業をやるという、これは日本側の要請に対して、ソ連側が断わることのできない、義務的の救助作業の義務を課しております。そこで御指摘のように悪意の領海侵犯は何ら緩和されないことはもちろんでございます。ただ、今まで国交のない場合におきまして、実際は何ら悪意がなくて、濃霧に迷っておる、あるいはほんとうに遭難しておるという場合は、これは向うから見ますと、領海内に入ってきた、けしからぬという建前から、言葉も通じない関係もありまして、弁明を聞いてくれないで、領海侵犯者として取り締られた場合が私は多分にあるのではないかと思うのです。それが両当局の協議によりまして、今後はほんとうに悪意で領海に入り込んだもの以外は、私は引っかからないで済むようになる、そういうふうに存ぜられるのでございます。
○梶原茂嘉君 海難の場合は、私は問題ないと思うのであります。今回のその方の協定によってはっきりしてくる。私の質問したのは、そうではなくて、漁業の操業に関連して領海侵犯が起る。ところがここで相当の緩和規定といいますか、置かれているけれども、やはり領海侵犯ということになってくれば拿捕されるのである。抑留される。すぐそれがこっちに返報があって、こちらの裁判の管轄のもとでやるということにはなっているけれども、領海侵犯になってくると、それは別だぞ、今の条約局長はそうお答えになったので、私はそれではっきらするわけでございますけれども、先日来の河野さんの御答弁によれば、何かそういう場合も非常に事がこれによって緩和されるのだという印象を一般に与えているのではないかと実は思って伺ったのであります。それでけっこうであります。
○海野三朗君 鳩山総理大臣にお伺いいたしたいのですが、このブルガーニンから来た書簡の内容と、抑留者が一体いつごろ帰れるのでありましょうか。そこをはっきり伺っておきたい。
○国務大臣(鳩山一郎君) ブルガーニンからいつ来た書簡ですか。
○海野三朗君 ブルガーニンから最近総理の方に何とか……いつ抑留者が帰れるか……。
○国務大臣(鳩山一郎君) 今晩外務省から発表いたします。私、まだその実物を見ていないのです。
○海野三朗君 いつごろ帰れるのですか。この協定ができますと、共同宣言ができますと、さっそく抑留者はもう船で帰ってこれるという状態でありますか。
○国務大臣(鳩山一郎君) 予期しない特別の故障も起らない限りは、年内に帰る予定でございます。
○海野三朗君 それから韓国のことについてでありますが、李承晩大統領は極端な排日家であるということですが、それでありますから、日本の漁船を容赦なしに拿捕しておる。それに対して総理は、これをいかようにお考えにになっていらっしゃる、韓国に対しまして。
○国務大臣(鳩山一郎君) これは非常に困り抜いているのです。まったく拿捕せられている漁船及びこれに乗っている漁夫たちはほんとうに気の毒でありまして、十五歳未満の子供が、全く何も知らないのにただ引っ張られている。そうして釜山収容所に拘留されている。その家族たちの訴えをたびたび私は聞きまして、非常に弱っておる。最初は釜山の収容所、大村の収容所、交換するということで片づくようなことでありましたが、その方に熱心でありましたのですが、それに大村のを帰そうということも、釜山の方が帰そうということがまだ確実にならないのであります。それで非常に困っておる現状なんですけれども、とにかく昨日も申しました通り、とにかく向うに何らの言いがかりのないようにするのには、大村の人を帰す方がよくはないかというので、その方を今考えているわけであります。
○海野三朗君 どうしてあの李承晩という男は日本に……(笑声)これ一体何かあるのじゃないでしょうか。それは総理は、どういうふうにお考えになっていますか。あれは困った男ではありますけれども、実に李承晩という男は排日でね。
○国務大臣(鳩山一郎君) 非常に、李承晩もなかなか話し相手にならないということは、万人がひとしく認めておるところでありまして、私一人ではないようです。
○海野三朗君 それから、私外務大臣にお伺いしたいのですが、在外公館のあり方についてです。在外公館はどうも非常に、私はもう少し活発に働いてもらいたいと思う。一例を申しますならば、昨年、一昨年でありましたか、絹物の薄物、これをアメリカが輸入を制限するというようなことになって、法律で国会でもって向うの商工委員会で何かそういうことが議せられた。ところが半年もたってから初めて気がついたようにして、そういうことがアメリカで起っておるぞというようなことを気がついておるような状態である。もう少し在外公館の連中は勉強したらどうかと思うのですが、そういう点について外相、どういうようにお考えになっていますか。
○国務大臣(重光葵君) 今の御指摘の点は事実に即しておりません。そういう問題が起れば、一番先にこれを探知するのは、そのところに駐在しておる大使、もしくは領事でございます。それですぐそれに対する手当をやるのであります。やるのでありますが、そういうふうなことが発表になって、どういうことをしておるということの新聞紙上等に伝えられますに至る間は相当かかります。私としては、今日在外公館がずいぶんたくさんになりましたが、ほとんどどの公館も手不足で、もういわば昼夜働いておるというような状況で、それについて手落ちのない、いい報告をずいぶんよこします。それで私としては実に、在外公館の活動ぶり、働きぶりは、これは例外なしとは言いませんが、非常に満足して、さらにまあ鞭撻を加えておるようなわけでございます。けれども、それで満足しておるということは私は少しも申しません。これは非常になお改善を要する点がありましょう。その点はお気づきの点でもありましたら、どうぞ遠慮なく外務省の方に言って下さい。
○海野三朗君 これは原子力問題についてですが、アメリカに私行ってみますと、ずっと前から原子力の平和利用の方面に力を注いでおる。これはもう少し外務省あたりが先達になって、日本国民にも警告を発し、そうして刺激をしてくれるべきものではなかったか。最近になって原子力を盛んに言っておるけれども、もう相当おくれておる。こういうことは、やはり私、結局、考えますると、外務省というところは法科万能主義で、技術者を優遇していない。技術者をつまり高官にあまり用いていないというか、何というたらいいのですか、技術者をつまり登用しないといううらみがあるように私は思うのです。ですから法律だけをやった人だけを外務省あたりでは重要視しておる。そういうことはやはり多少改めてもらわなければならないと私は思っているんですがね。たとえば原子力の問題についても、こういうふうなことは、一刻も早くよく情報を収集してくれなければならないじゃないか。そういうときになると技術者というものはあまり行っていないように私は思うのです。まあワシントンに行ったら向坊君がおりましたが、あれは実に珍しかった。各国にやはり相当なる技術の方面にも詳しい人たちを在外公館に置いてくれなければいけないじゃないか、私はこう思うのですが、そういう点は外務大臣どういうようにお考えになっていらっしゃいますか。
○国務大臣(重光葵君) 私も御同感でございます。そういうふうにしたいと思います。それだけの余裕を持ちたいと思います。海野さん、まだありますか。
○海野三朗君 まだ……。私の質問はこれで終ります。
○委員長(小滝彬君) 本日は、これにて散会いたします。 午後五時七分散会 ―――――・―――――