社会労働委員会 第3号
- 発言数
- 258 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1956/11/21
会議録
○佐々木委員長 これより会議を開きます。 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会の議決を求めるの件を議題とし、質疑を続行いたします。総理が御出席になっておりますので、この際総理大臣に対する質疑を許可いたします。赤松勇君。
○赤松委員 どうも長い間長途の旅行で御苦労でございました。実は私ここに議院運営委員会の議事録を持って参りまして、いろいろ総理にお尋ねしたいと思ったのでありますけれども、同僚議員の質問もありますし、あまりこまかいことをあなたにお尋ねすることもこの際よした方がいい、まあ急に友愛精神がわいて参りまして、そこであまりむずかしいことでなくて、ただ一点だけあなたに、将来の国会の運営あるいは民主政治のために私はお尋ねしておきたいことがあるわけであります。どうぞ総理はそういうおつもりで、私、あなたのあげ足をとって何かしようなんという気持は全然ありません、一つまじめな気持でお尋ねいたしますから、やはりあなたも真摯な態度で御答弁をお願いしたいと思います。 総理はよく御存じないと思うのですけれども、今ここに上程になっております法律は、第十六国会で当時吉田内閣が出した法律なんです。この法律は当初恒久立法として出して参りました。ところがこの委員会におきまして、自由党分党——三木武吉、河野一郎、これらの諸君が属しておられました自由党分党は、この法律は一年くらいでいいんじゃないか、一年くらいやってみたらどうか、こういう修正案をお出しになったのです。改進党は一年でなくて三年くらいやってみて何も起らなければ、一つそのときに考えようじゃないか、こういう御趣旨でありました。しかし自由党の方は政府与党でございましたから、この時限立法に対しましてはやや批判的でありましたけれども、結果におきましては御賛成になりまして、ここに、社会党は反対いたしましたが、自由党、改進党、自由党分党三党の手によりまして、三年間の時限立法ということできまったわけであります。従って恒久立法にしたいという政府の意思というものは国会におきまして否決されまして、国会は三年間の時限立法としてその意思を決定したわけなのです。そこで昨日の労働大臣の御答弁が非常に問題になるわけですけれども、それはしばらくおくといたしまして、当然私はそういうような経緯にかんがみまして、三年間何も事件か起きなかった、従って政府がお出しになる場合は、国会の意思の決定通り三年間やって参りましたが、この際国会で存続をさせるかあるいは廃止をするか、おきめ願いたいというところの提出の仕方というものも私はあると思うのです。しかし閣議の御決定で存続をしてもらいたいという意思を添えてお出しになったのでございまして、これまた政府の自由だと思います。議論の余地はありますけれども、それは自由だと思うのです。ただ問題は——総理大臣、総理大臣、聞いていて下さいよ、これからが質問なのですから……。ただ問題は、お出しになる場合に閣議決定で委員会の審査を省略して、そして本会議で議決をしてもらいたいという出し方をされたわけであります。これは手続の問題で大いに議論のあるところなんです、重要法案ですから。従ってそういうような審査手続はいいか悪いかという点においては議論があると思うのですけれども、それもしばらくおきましょう。あなたは議院運営委員会においでになりまして私の方の党の議運の委員諸君があなたに数度質問しました。あなたはどうしても委員会審査の省略をしたいんだ。なぜ委員会の審査を省略しなければならぬかという緊急性につきましては十分な御説明もなかった。そのこともしばらくおきましょう。しかし、少くとも内閣総理大臣が議院運営委員会に御出席になりまして、そうして委員会の審査を省略してもらいたいというところの強い意思表示がございました。ところが国会は政府の意思に反した決定をしたわけであります。委員会の審査に回そうということになったわけです。それもまずしばらくおきましょう。私はここであなたの政治的責任及び倉石労働大臣の政治的責任をば追及したい点は、手続の問題もさることながら、そういうような誤まった手続をとったために、政府の希望は国会の意思によってくつがえされた。このため日ソ共同宣言等、あなたの御希望なさるこれらの重要案件の審議が五日間も停滞し、国会が混乱に陥った。その責任をあなたはどうお考えになるか、この際将来のためにも明らかにしていただきたい、こう思います。どうでございましょう。
○鳩山国務大臣 この法律は時限立法というようにおっしゃいましたが、政府としては、時限立法として、三年たてば当然にその法律が効力を失うということをきめてかかったものではないのです。三年たったらば再び審査をしようという意味で三年という期限を付したのであります。そういう意味であります。 それから私が運営委員会で申し述べましたのは、その当時の心境とこれを取り下げましたときの心境が変ったのです。そのときにおいては議事が円満にいくものと思ったのでありますが、議事が円満にいかないという事情が生じましたから、私の心境が違ったというように御解釈を願います。
○赤松委員 心境の変化によって要求の仕方を変えたんだ、こうおっしゃいましたが、よくわかりました。そこでそういうあなたの心境の変化のために日ソ共同宣言等、重要案件が五日も審議が停滞をしたということにつきましては、政府としては遺憾だとお考えになっておられますか、どうでございましょう。
○鳩山国務大臣 審議がおくれたということですか、——おくれたことは遺憾に存じます。
○赤松委員 やはり私の期待しておりました御答弁をいただきました。総理大臣としては、責任をお感じになり、やはり遺憾であるという意思表示をなさいましたことは、当然のことだと思うのであります。そこで昨日倉石労働大臣は、自分は全然政治的責任を感じない、それはどうしようとも国会の自由だ、国会の運営に関して政府が意見を加えることもまた自由なのだ、こうおっしゃいまして、いささかも、責任を感ずる、遺憾だという態度は見えません。そこであなたは、ただいま遺憾だ、こうおっしゃいましたが、労働大臣の態度に対しましてあなたはどうお考えになりますか、念のためお尋ねしておきます。
○鳩山国務大臣 労働大臣がどういう気分でいるかは知りませんけれども、労働大臣の心境では遺憾だと思っていないのでしょう。 〔「聞えない」「大事なところだからもう一回やり直して下さい」と呼び、その他発言する者多し〕
○赤松委員 委員長、やかましくて聞えません。
○鳩山国務大臣 労働大臣は、自分のなすべきことをなしたと思っているから遺憾がないのでしょうと思うのです。
○赤松委員 あなたはただいま非常に遺憾であったということを表明されたわけです。ところが労働大臣は……。
○佐々木委員長 赤松君、ちょっと聞き取れないので誤解されているのじゃないでしょうか。法案がおくれたことは遺憾であるとおっしゃったのですから……。審議がおくれたことが遺憾である、こうお答えになったのです。 〔発言する者多し〕
○赤松委員 総理がせっかく出て質疑応答しているのに、こんなことでは約束の時間やれない。
○佐々木委員長 御静粛に願います。——赤松勇君、静粛になりましたから御発言願います。
○赤松委員 今総理ははなはだ遺憾であるということをおっしゃいました。労働大臣といたしましては、その政治的責任をばお考えになっていないということでございまして、これは明らかに総理大臣の意思に従っていない。閣内不統一、そうじゃありませんか、どうでございましょう。
○鳩山国務大臣 日ソ交渉の審議が四日間おくれたということが遺憾だと言ったのでありまして……。
○赤松委員 そのおくれた原因がどこにあるかと言えば、何も社会党が騒いだから日ソ共同宣言の審議がおくれたわけじゃない、あるいは自由民主党が騒いだから日ソ共同宣言の審議がおくれたわけではない。そのおくれた責任のすべては政府にあるのです。政府がストライキ規制法をこういう出し方をされたから、そこに混乱の原因があったわけなのです。従って日ソ共同宣言の審議がおくれたことは遺憾であるとおっしゃいますならば、その原因は出し方に遺憾な点があったのですから、当然責任をばお感じになるべきだと思うのです。私はこれ以上あなたに対して申し上げません。ただ遺憾である、遺憾であったというあなたのお言葉をいただきましたので、これについてさらに私どもよく検討いたしまして、次の方法につきましていろいろ考えてみたいと思います。 以上をもって私の質問を終ります。
○佐々木委員長 八木昇君。
○八木(昇)委員 質問の時間が非常に短かく制限をされておりますので、私できるだけ簡潔に質問をいたしたいと思います。従いまして総理におかれても簡明率直に御答弁をいただきたいと思うのでございます。 実は私は一介の電気労働者でございまして、今回のスト規制法の存続がいかに私ども働いておる労働者にとって過酷なものであり、労働者に対する一片のあたたかい思いやりもないものであるかということについては、実は非常に憤慨をいたしておるものの一人でございます。そこで二、三点お伺いをいたしたいと思うのでございますが、御承知のように、すべての企業におきましては、物を生産して、それをお客さんに販売をして、それからその品物の代金を集金する、これだけが一貫した仕事でございますが、今回のスト規制法によりますと、電気の場合には生産と販売という行為は一本につながっておるわけであります。御承知のように、電気を発電し電気を送電し電気を配電する、ここまでの仕事は一本につながっておるわけで、これらに関連するところの争議行為はやってはならないということになっておる。とすれば、資本家側に労働者の権利を守るために打撃を与え得べきだった一つの手段として残されておるものは、集金部門におけるところの争議行為だけ、こういうことになろうかと思うわけであります。ところが御承知のように、集金部門は最近はほとんどこれを委託集金といたしまして、請負制度にしております。一部会社の労働者による直接の集金もございますが、そういう格好になっておる。そこで集金関係についてもしストライキをやったとしましても、一カ月間集金人のストライキをしましても、当然翌月には二カ月分一ぺんに電灯料金は集金する、こういうことになりまするから、結局は会社は何ら実害を受けない、こういうことになるわけであります。こういたしますると、こまかい専門的なことは総理にお伺いをいたしませんが、今度のスト規制法というものは、争議のやり方の一部についてこれを規制すると言いながら、実は労働者に与えられた、憲法上保障せられたこの罷業権というものを、ほとんど骨抜きにするものではないか、こういうふうに考えるわけです。そういうふうなやり方というものは、果して国の基幹産業の労働に従事して、黙々として今日非常な成果をあげてきておる労働者に対して、報ゆるべき政府の措置であるかどうか。特に常に友愛というものを説かれる鳩山総理として、このような法案が、しかも今度通ればこれは無期限の恒久立法となる、こういうわけでありまするから、こういう点について根本的にどういうお考えをお持ちになっておるかということを、まず簡明にお答えいただきたい。これが第一点であります。
○鳩山国務大臣 私からは簡単に申し上げておきます。本法は行き過ぎと考えられる労働争議手段について規定したものでありまして、あなたのおっしゃるような広範囲にわたってストライキを制限したつもりはありません。
○八木(昇)委員 抽象的にそういうふうにお答えになりましても、ただいま申しましたように、では残った争議手段は一体何があるかといえば、これは庶務係の人であるとか、人事係の人であるとか、こういうふうな人たちが職場放棄をするだけしかない。庶務係というふうなものは、働く労働者のいろいろな厚生、福利関係を取り扱っておるわけですから、そういうものはやれるわけのものではありません。しかも御承知のように電気事業は公益事業であるからというわけで、こういうような理由から、ほかの民間産業と異なって、さらに労働関係調整法というものの適用も受けなくてはならない。労働関係調整法の適用は、御承知のように非常に事態が深刻になった場合には、政府は五十日間ストライキを禁止させる、やめさせるということができる法であります。さらに実力行使、ストライキをやろうという場合には、あらかじめ十五日以前に予告をしなければならぬという制度である。こうなれば民間の労働者であるにかかわらず、こういう労調法の制限を受け、しかもスト規制法によって有効適切な争議手段はこれをやめさせられる。しかも経営者の方は重要な公益事業といいながら、営利事業である私企業としてこれがまかされておる、こういう矛盾についていかなる見解をおとりになるか。こういうことについて明確な見解を持たずして、この法案をもし総理が軽々にしてお出しになることを了承せられたとするならば、これはきわめて重大だと思いますので、総理からお答えをいただきたい。
○鳩山国務大臣 労働大臣から答弁をしてもらいますけれども、私としては公共の福祉を害するような労働争議は慎しんでもらいたいという観念であります。
○八木(昇)委員 公共の福祉ということを常に言われます。そうだとするならば、公共の福祉に役立つような電気事業の経営者のあり方こそ政府としては強く法によってやらせるべきだと思うのです。ところが御承知のように電気事業の経営者の行為はどうかといえば、常に新聞紙上をにぎわしておりますように、電源開発会社の佐久間ダムの問題、九州電力の上椎葉ダムの問題、非常に貴重な国家的な資金が投下せられておるにかかわらず、いろいろな不正行為が流布をせられておるのであります。佐久間ダム問題について申しますると、電発会社を作るときに二百二十億円の金を出してもらうならば、四十万キロの発電ができると言いながら、その後半年ごとに金額を上げて三百六十億円の金を要求するに至っておる。その間いろいろな電気事業の経営者の行為について非常な批判をあびておる。他方において、御承知であると思いますが、必要であれば数字をあげますが、最近三カ年半の間に電気事業における配当の割合は、昭和二十七年に比べまして七倍に増加をいたしております。しかもこういう状況であるにかかわらず、最近またまた電気料金の値上げを要求してきておるのであります。ところが一方、労働者の労働賃金の上昇割合は戦前の七七%にしか戻っておらぬ、こういう状況にあるわけで、もし公益性というものを総理が言われるとするならば、電気事業経営者のこのような公益に反する行いについて今後どうするおつもりがあるか、また今問題になっておる電気料金値上げに対していかなる見解をお持ちであるか、この点を明らかにしておいてほしいと思う。
○鳩山国務大臣 ただいまの御質問については私の存じない点がありますので、関係閣僚から答弁してもらいます。
○八木(昇)委員 これは電気事業が非常に重大だということを常に主張をせられ、労働者に対してその自覚と行動を促しておられる以上は、電気事業経営者に対する政府の処置というものは非常に重大だと思います。こまかい点は通産省その他からお答えいただいてもよろしゅうございますが、総理自体としては、それらの問題についての大筋の見解というものは述べていただきたいと思う。
○佐々木委員長 八木君に申し上げますが、総理は専門的なことを関係閣僚から答弁させると申しているのですから、やはり答弁を強要するというわけにも参りませんから、一応お聞きして、それから進んでいただきたいと思います。
○八木(昇)委員 それではそうします。時間の制約を言われておるので……。 〔「その部分だけあと回し」と呼ぶ者あり〕
○佐々木委員長 それではこれはあと回しにします。
○八木(昇)委員 それではその点は一応あと回しにしますが、総理としては電気事業の経営者の公共の福祉に反するような諸行動については、厳に今後も政府として対処をしていきたいという御見解をお持ちでございましょうか。その点だけをお伺いいたします。
○鳩山国務大臣 経営者に対してももちろん法令の範囲内において厳重な取締りをいたします。
○八木(昇)委員 時間がございませんから、先を急いで質問をいたしますが、もう一つ、このスト規制法について言論界並びに一般の世論というものが政府の行動に非常に批判的である根拠は、御承知の通りこの法案の内容がわずか三条でございまして、抽象的で、かつあいまいである。従いまして、従来もスト規制法がなかった時代においても、電気関係におきましてはまことにたくさんの刑事起訴がなされまして、被告は百名に及ぼうとしておりまして、しかもそのすべてが——一部暴力的行為があったという罰金刑を除いては、実は全部無罪となっております。こういう実例から申しますと、この法案が大いに拡大解釈をされるおそれがあるのではないかという点が非常におそれられておるわけで、あります。そこで、もしかりにこの法律が再び存続せられたという場合に、政府としてはどういう心がまえをもって対処せられるおつもりであるか。 それからもう一つの点は、時間がありませんから、一緒にお聞きいたしますが、将来もしこういうふうなスト制限という法律が慢性化してくるならば、私鉄であるとか日通であるとか、あるいはガスであるとか、こういうようなあらゆる産業にこういうスト規制というようなものがさらに広がっていくのではないか、こういう非常な心配が持たれておりますので、この点についての総理の見解を明らかにしていただきたい。
○鳩山国務大臣 この法律を拡大解釈をしていくというような考え方はしておりません。ほかの御質問に対しましては関係閣僚から答弁をしてもらいます。
○八木(昇)委員 将来他産業に及ぼすというお考えもお持ちでないわけですね。
○鳩山国務大臣 今のところありません。
○八木(昇)委員 それでは最後に一点だけお伺いをいたしまして、他の委員と交代いたしたいと思います。 これは十日くらい前の毎日新聞の記事、あるいは総理お読みになったかと思うのですが、その記事によりますと、このスト規制法の存続というものは非常に評判が悪い、非常に不人気だ。そこでこういう不人気な法律というものは、これはどうせ——少し言葉が過ぎるかもしれませんが、どうせ不人気なこの鳩山内閣のうちにやってしまっておいた方がよろしい。そうして鳩山内閣は近くおやめになるのだから、新しい内閣ができてスト規制法というものをもしやるとするならば、これは新内閣に傷がつくので、鳩山内閣のうちにやった方がよろしいという毎日新聞の解説記事が出ておる。これはどういうことを意味しておるかと申しますると、せっかくここで鳩山総理がわざわざ老躯をひっさげモスクワまで行かれて、そうして日ソ共同宣言の調印をなされて、そうして歴史的にも残るところの一つの日ソの国交回復をなして政界の花道をお退きになろうというこの時に当って、こういう世間に非常に評判の悪いスト規制法の存続というようなこの法律を強引に国会を押し通して政界から第一線をお退きになるということは、鳩山総理自身にとってもとらるべき賢明な策ではないと私はこう思う。そういう意味から、先ほど来本会議に直接かけるということについては、みずから改めて政府の要求を撤回せられたわけでありますので、最後にお伺いをいたします点は、こういうような不人気な法律は、これを国会においてあくまでも通すという要求を御撤回になる意思があるか、もしそれがここまで来れば困難だというのならば、将来参議院その他の審議においても、これを無理押しをして一挙に押し切るということではなく、自民党の総裁の立場から考えても、十分に国会の慎重審議を求めるというお考えをお持ちになるかどうか、この点を最後にお伺いしておきたいと思います。
○鳩山国務大臣 政府はこの法律案を必要だと思って提出いたしたのでありますから、通過さしたいと思っております。
○八木(昇)委員 少し蛇足ですが、これはきのうも非常に問題になりましたように、昭和二十七年の炭労、電産の大争議があったあのあとでさえも、三カ年の時限立法ということでさえ、あれほどの大きな問題になったのを、今度通るならば恒久立法となる、しかもその後事態は非常に緩和されてきておる、こういう事態であるのですから、この論議は非常に大きな論議となることは当然でありまして、国会審議に慎重を期してやっていきたいというお考えはお変りはないかどうか、そういうお考えはお持ちであるかどうかをもう一度念のためにお伺いしておきます。
○鳩山国務大臣 政府は撤回をする意思はありません。先ほど申した通りであります。
○佐々木委員長 井堀繁雄君。
○井堀委員 総理大臣は憲法改正についてきわめて明確な態度を明らかにされているようでありますが、国民が憲法改正について非常な懸念を持っておりますことも申すまでもございません。この機会に本法案と国民の憲法改正に対する憂いを最も強く持っている点について、明確な御答弁をいただいておきたいと思うのであります。それは申すまでもなく、この法律は労働者の団体行動権の一部を制限せんとする法律であることは、あまりにも明瞭であります。そこでその争議権の一部を制限するというそのこと自体は、私どもにとりましてはそれほど重大視していないのであります。最も重視いたしたいことは、一体労働者の罷業権を制限する場合、民主憲法のもとにおけるその方法がきわめて重大である。それは私が説明するまでもなく、日本の主権者である国民の大半の労働者の生活の実態が問題であり、この社会的地位がどういう状態に置かれているかということの判断が前提にならなければならないのです。ことに今回の制限は、公共の福祉のために余儀ないという憲法の一部の条章をここに引用しているのでありますが、私ども総理にお尋ねしておきたいことは、現在の労働者の生活というものが、すなわち憲法でいう基本権の中でも生存権、いかなる権力も、いかなる立場の人も侵してはならない基本権の中でも生存権に関係することであることを、私どもははっきり伺っておきたいと思うのであります。総理は御存じないかもしれませんが、現在の日本の人民の中で最も多くの数を占めております勤労大衆、その中でもこの法律によって直接間接に制限を受ける人々の数がどのくらいに上るかということは、今さら説明するまでもございません。直接的なものにおいては雇用労働者全体、あるいは労働によって生計を営む多くの人々が直接あるいは間接にその影響を受けることも明らかでありますが、そういう直接干渉を受ける雇用労働者の中で、憲法二十五条以下の国の保護の義務を命じております一番極端なものを、私はここにあなたに労働省の統計を御紹介申し上げる。それは前国会以来私がたびたび政府にその責任を追求いたしております一つでありますが、それは完全に労働を提供して働いて、そうしてその報酬として賃金を得て生活が初めてできる、すなわち賃金の未払いである。今日未払い賃金の問題を解決する政治的能力というものが全く無視されているのです。この極端な事例は何人も無視できまいと思う。それは最も近い例で申しますれば、三十一年六月の賃金未払いの件数は、依然として五千二十七件であります。七月、八月においても横ばいをいたしまして、八月の一番新しい統計を今ちょうだいいたしましたが、五千七件、その未払い金額は八億六千六百九十万という莫大な金額であります。これによって被害を受けておる労働者の数というものは、七万六千五十三名が現存しております。これは申すまでもなく基準監督署に訴えを受け、基準監督署が当然法の命ずるところによって処理をしなければならない、こういう問題がまだ未解決であるのです。これはもう極端なことをあなたに申し上げた方がいいと思いますから、そのほか、今日労働者が当然自分の生活を維持するに満たすだけの最低の賃金がほしいとの訴えが起っております。そういう人たちが、統計を見てみましても、雇用労働者一千百万の中から見ましても、一カ月いろいろのものを入れても六千円未満のものが四三%の多きに達しているのであります。未払い賃金の中でも、当面問題になっております鉱山労働者の関係だけを私はえり抜いてみたのでありますが、石炭鉱業だけあげましても、八月が百六十三件で、その労働者の数は二万六千七百十九人、その金額において三億八千九百三十七万円、こういう石炭関係の労働者だけでも自分の働いた賃金をもらわない。それをとってあげるだけの政府の責任は一体どうなんだ。こういう実態にあるときに、憲法のいう生存権を守る行き方は二つあるわけです。一つは、政治の力によって、行政的な措置によってそういうものに保護を与えるということを法律は命じているのである。いま一つは、労働者のただ一つの生活の武器であります労働力を提供して、そして生活ができぬ場合には、近代社会の特徴として、個々の労働者の主張というものは、個人の力では満たすことができない、すなわち団結権、団体交渉権、団体行動権というものがここに基本人権として確認されたことは、今さら申すまでもありません、でありますから、こういうものにいささかでも制限を加えるということは、労働者の生活が憲法に保障された団体行動権によって満たされておるとき、あるいは行政的な措置において、あるいは法律の建前において完全に労働者の最低生活の保障のできておる際において制限を加えるというのでありますならば、私は憲法の精神に対する議論があっていいと思うのでありますが、今のような状態にあるときに制限を加えるのは、一体どの方面に加えるべきかということは、これは憲法の解釈上の問題というよりは、そういうことが憲法の精神をじゅうりんするおそれを生ずるというので、われわれが警告を与えておりますのは、こういう生きた事実に基いてであります。でありますから、あなたが憲法改正をされるということは、ただ再軍備の問題について世論はかなり高くなっておりますけれども、そういう問題以外に、一体こういう問題に手を染めざるを得ないのではないかという疑いを多くの労働者は持っておる。それにきわめてこの法案というものはぴったり何かそれを国民に約束するかのごとき暗示を与えるので、私はおそるべきことだと思うのでありまして、この点に対する明確な御見解を伺っておきたい。憲法の、こういう政府並びに国民の自主的な力によって生活を守ろうとするものに対して、もっと積極的な保護を与うべき時期ではないか、そういう時期に、時限法として国家の最高権威である国会がきめた意思を上回る恒久的な性格を持つようなものにこの法案を置きかえようとするがごときは、時代逆行もはなはだしい。こういうものに対する首相の見解をこの際明確に国民に聞かしていただきたい。
○鳩山国務大臣 政府は団体行動権を決して尊重しないというような態度はとっておりません。それからまた国民生活の向上、国民生活の安定ということは政治の目的でありますから、すべての点にわたって政府が国民の生活の向上、生活の安定ということは施策を施しておるわけであります。ただいまおっしゃいました、そういうようなことについては全く忘れていて、ただ公共の福祉によってこの制限だけを考える、その制限はいけないという御質問のようでありますが、決してスト規制法だけでもって政治の目的を達しようとしているわけではございません。公共の福祉に反するものは、生活の向上、安定をはかると同時にやはりやっていかなければならぬものと考えております。
○井堀委員 そこで次のことをちょっとお尋ねができるようになったと思いますが、もちろんストライキというものは、私説明するまでもありません、一方的に起ってくるものではないのです。雇い主と労働者の利害の衝突に始まるのでありますから、その争議行為が公共にいろいろな影響を与える場合に、制限を加える場合には、その争議自身をどうするかということになる。ものにたとえますと、鐘が鳴るか、撞木が鳴るかということがありますが、その間が鳴るのです。ぶっつかったときの衝突の場面をいうのでありますから、こういう場面に制限を与える場合に、労働者側だけに制限を与えるようなことは許されない。あなたのお考えのように、もし公共の福祉にそのこと自体がよろしくないというならば、争議を未然に防ぐためにはどうすればいいかということは——これはさっきもいいます労働者側の基本権を制限する法律であることは申すまでもありません。でありますから、他の経営者側に対してストライキの責めをどうして追究されるかということが出されてきて初めて、これはやはり憲法の条章にいう公共の福祉に対する政府の考え方となってくるんじゃないか。そうしないと政府が人民の基本権を一方的に侵害するということになるのですから、この政府の考え方を、一つあなたの明確な意見を聞かして下さい。
○鳩山国務大臣 先刻の答弁によって御了解を願います。同じような御質問だと思います。
○井堀委員 せっかくあなたが言いかけたことを途中でおやめになったような感じがいたしますが、これはあなたのために私ははっきり言っていただいた方がいいと思う。国民はあなたの憲法改正に対する考え方を聞きたがっているわけです。まさかあなたは労働者のこういう生存権を左右するような基本権まで制限を与えるような改正を考えているんじゃないと、私自身はそうあなたを信用しているわけです。しかしそれを信用させない事実がここに現われたわけです。それはさっき申し上げたように、公共の福祉に名をかりて労働者の団体交渉権、しかもそれは生存権を維持する最小限の労働者の武器なんだ。それは言うまでもなく、あなたはもう長い間、自由主義者として通っておられる。自由主義者の考え得ることは、労働者は弱いものが団結することによってそれを守る最小限度の武器である。その武器に制限を与えるということは、それは政府がなすべきじゃなくて、言うまでもなく労働者の自主的な良識に訴えて行くべきものであることは、これはあらためていうまでもありません。そののりを越えてやることは、明らかに労働者の生活権、生存権を脅かす政府の行為で、これは恐るべき民主主義の破壊である。こういう大事な問題に対してあなたの見解が明確に述べていただけないということは、国民の疑いを一段と深くするだけでありますから、よい機会だと思いますから、ほかの人々でなくて、あなたの大胆な意見をこの際国民の前に明らかにされることが、あなたのためにも、国民のためにも大切なことでないかと思いますので、これは大事なところですから、あなたの自主的な見解を一つ……。
○鳩山国務大臣 私は先刻申しました通りに、団体交渉権を否認するものでもなく、これは尊重すべきものだということを先刻述べました。そして団体交渉権というものはどうしてできたのかといえば、社会的に弱者と見られる労働者の権利を保護するためにできたのでありまして、そのくらいのことは存じております。決してその団体交渉権を棄損するような立法をするつもりはございません。いわんや、憲法改正において、団体交渉権を否認するような憲法を作るというような考えは毛頭持っておりません。
○井堀委員 持っていないということが事実だといたしますならば、今スト規制法と一般にいわれておりますこの法律というものは、明らかに労働者の最小限度の武器を制限をするということだけは間違いがないことは、今までの討議の上で明らかになっておる。このことであなたの御意志と、今の御答弁と、この法律とは非常な違いを見せてくるのです。これは時限立法でありまする場合は、三年間様子を見ようという主張も一つの主張であったかもしれない。しかしこのことは非常におそるべき、国民の、しかも一番弱い労働者の最小限度の武器を制限するということは、いわば例はよくありませんけれども、性犯罪を犯した者に対して、生殖器を抜き取ってしまう、睾丸を抜き取って去勢するような、軍馬と同じような扱い方は人道上許されないと同じ意味で、労働者の団結権を奪い取り、生存権を奪い取るということは、これは非常に重大な決意を要するのであります。あなたの御説で申しまするような、こういう法規を、しかも時限立法が扱い方いかんによっては恒久性を持つ、すなわち憲法の労働者の最小限度の生存権を守る武器に対して永久に制限を加えることになりますると、非常なこれは悪影響を持つものでありますから、あなたが人民の基本人権を奪うような、主権在民にいささかも手を触れるような気づかいは国民にしてもらいたくないと何ぼ国民に言いましても、この法律一つを押し通そうとすれば、その主張は瓦解することは、今日の国民で最小限度の教育を受けた者はそれを理解するだけの能力を持っておる。私は、あなたにとっては最もよき国民に対する宣言の機会だと思いまするから、重ねて一つ労働者の団結権にいささかも——生存権を守る武器に対してはいささかも制限を加えるものではないということをもう一ぺん明確に言っていただけば、今の答弁であらかじめわかるのでありますが、あとは具体的な討議の節それぞれの関係者に質疑を浴びせていきたいと思っておる。この点に対しては先ほどの質問でやや明らかになりましたけれども、もう一回はっきり言っていただきたいと思います。
○鳩山国務大臣 私は先ほどのでいい尽しておると思います。ただ公共の福祉を害してまで団体交渉権を認めるわけにいかないということだけは忘れないようにしていただきたいと思います。
○井堀委員 今の答弁の中にもあいまいなものがあるようでありますが、総理の今の立場が非常に複雑でありましょうから、あなたの御意思は、私は主権在民の基本的なものである、しかも憲法の基本人権の中の生存権についてはいささかも政治力の干渉を許さないということについてはお認めのようであります。この問題は今後実際本案の審議の過程におしてあなたの趣旨と食い違ったものが出てくるのじゃないかという懸念を持ってお尋ねをしておいたのでありますが、またいずれもう一度出てもらう機会があるようでありますから、労働大臣その他の専門的な閣僚の御意思を伺った上で、さらにこの点についてはあなたにもう一度伺う機会があろうと思いまして、私は以上をもちましてこの質問を終りたいと思います。
○佐々木委員長 多賀谷真稔君。
○多賀谷委員 戦前基本的な人権ことに自由権が容易に制限され剥奪されたところに日本の悲劇があったと思います。この悲劇の間に処して自由主義者として苦難の道をたどってこられた鳩山総理に対して、私は基本的人権を制限をする場合のその態度についてお聞かせ願いたいと思います。憲法十一条もさらに十二条にも「国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。」とうたっておる。さらに「国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」という規定をしておるのであります。でありますから、この基本的人権について、その擁護についてどういう態度であるか、これをまずお聞かせ願いたい。
○鳩山国務大臣 幾度も申しますがごとくに基本的人権というものは、尊重すべきものということは当然であります。ただこれが無制限でいいかどうかということは問題なんです。私は、無制限であってはいけない、やはり公共の福祉というものを害しないようにという制限がつくべきものだと考えております。
○多賀谷委員 尊重すべき基本的人権を制限せざるを得ない、これは立場を異にして政府としては制限をせざるを得ない、こういう態度に出られるときは、どういう慎重さが要るでしょうか。これをお聞かせ願いたい。
○鳩山国務大臣 どういう慎重さ——深甚なる慎重さであります。
○多賀谷委員 深甚なる慎重さということでありますが、この法律は、これはだれがどういいましても基本的人権の制限であることは事実であります。これは、政府としては公共の福祉に反するから公共の福祉を保護するため、こういうことを言われておりますけれども、とにかく基本的人権の制限であることには間違いがありません。それを今度政府がとられた態度は、その基本的人権を制限しようとする場合に、従来の国会法の原則を無視し、国会法を軽視して、そうして委員会省略の挙に出られるということは、どういうことでありますか。しかも臨時立法であったものが今度は恒久立法になります。ですからそれについてどうして慎重な手続をせられなかったのか、お聞かせ願いたい。
○鳩山国務大臣 この規制法は、三年間の経験によってなお必要だというので、また提出したわけであります。大して論議すべきものではないと考えまして、委員会を省略してもいいだろうというふうに考えたのでありまして、決してその審議を疎漏にしていいという意味ではございません。緊急性を認めただけです。
○多賀谷委員 これは論議すべき何ものもない、こうおっしゃいますけれども、臨時立法が恒久立法になるときは、法体系でもいろいろな問題が起ってくるのであります。これは臨時立法であるからというので、たとえば労調法の関係でも同じ問題が重なっておるにもかかわらず、労調法をそのままにして臨時立法として当時の与党は認められた、政府は出された。ですから恒久立法ということになると、法体系上幾多の問題が出てくる、このことをよくお考えを願いたいと思うのであります。ですから慎重に論議をしなければならぬ。論議をするところがないのじゃなくて、十分論議をしなければならぬのであります。しかも基本的な人権を制限するにおいて、そういうようなずさんなことで、単なる緊急性といいましても、緊急性を認むることができない、こういうような条件において出されるということは、私は、どうも政府の態度が基本的人権を尊重するという態度でないように感ぜられるのですが、どうですか。
○鳩山国務大臣 政府としては緊急性を考えたからであります。尊重すべきものは、むろん尊重いたします。
○多賀谷委員 緊急性ということと、論議をする余地がないということと、慎重にすべきだということと、この三つが一つも会わない。総理大臣の答弁は何を言っているのか、率直にいいましてわれわれ理解に苦しむのであります。これは、今総理大臣に対してあちらからこちらから放送が入っておるので、それで総理大臣の頭がまとまらないと思うのであります。非常に残念に思うわけであります。ですから、基本的な人権を尊重するということについては、これは鳩山総理がみずから長い間経験をされたところでありますから、私は、こういう問題については容易に剥奪してはいけない、やはり制限するについても慎重にやらなければならない、かように考えるわけですが、もう一度お聞かせ願いたい。
○鳩山国務大臣 慎重に制限をする、慎重にということは、先刻も申しました通りであります。
○多賀谷委員 緊急性があるから早くやれということと、慎重にやれということと、私たちはどうもその矛盾を理解できないのです。頭が悪いんです。私たちは人間としてそれを十分区別してやることができない、かように考えるわけです。緊急にして慎重にというのを鳩山さんにやってみていただくとけっこうなんですけれど、私たちはどうせ十分それを実行することができません。 では次に私は一つだけ質問いたしますが、三年間この法律違反の事件は何らありません。そうしてこれは明らかに電気労働者については、生産手段を阻害するという手段が、争議手段が全部奪われておる、こういう関係でありまして、基本的な人権を阻害されておるのであります。そこで今やこの関係労働者だけでなくて、その他の雇用労働者あげてこの法案に反対をしております。この法案はまさに法律的な効果も何らないものだ。そうしてこの法案があることによってかえって政府というものは、われわれを弾圧するものだ、こういう感じしか与えていないのですが、これに対してどういうようにお考えですか。
○鳩山国務大臣 ただいまの御質問に対しては所管大臣から答弁してもらいます。
○多賀谷委員 総理大臣からお願いしたい。
○佐々木委員長 総理大臣から、所管大臣をして答弁させますという答えですから、あとでいいでしょう。
○多賀谷委員 では私は一つ例を引用して総理の最後の所信をお聞きしたい。それは総理よく御存じのように英国で一九二六年にゼネストがありました。そして翌年二七年にはいわゆるゼネスト禁止法というのが出されました。それが後に廃案になったのですが、廃案とするときに次のような提案をされております。すなわち「一九二七年法についてみると、この法律の効果は殆んど失敗といってよい。」「そして労働大衆の間には不正が行われているという激しい気持、法廷は労働大衆に対抗しているという感情、法律か労働大衆の不利益になる様に復讐的に作られたという信念、そして労働権が徐徐に奪われているという感じが醸成された。」「即ち一九二七年法は未だ嘗て存在しなかった様な明瞭に不正な差別的な階級立法である。」こういうことが当時廃案をするについて英国において提案理由として述べられておる。私はこの気持が総理はないかどうか。ちょうどこの法案は昭和二十七年の炭労、電産のあの争議の復讐的、報復的立法である。その後何ら違反件数もなく、労働者に今申しましたような感情だけを与えておる。ですからこの法案はすみやかに撤回される意思はないか。また私が今述べましたようなこの提案に対しましては、どういうお感じを持っておられるか、これをお聞かせ願いたい。
○鳩山国務大臣 労働者に対して、さっきも申しましたが社会的の弱者として、その団体権は尊重しなくてはなりません。先ほど申しましたそういうような次第でありまして、この法律が数年間実行されて、なくてもよいような習慣がそのうちにはできるだろうと思います。そういう習慣のできるように資本家も労働者も政府も、みんな協力するがいいと私は考えております。
○多賀谷委員 そういうのならなぜ臨時立法でおやりにならないのですか。
○鳩山国務大臣 法律に書いてある通りで、これは用がなくなれば法律というものは廃止されるべきというのは当然な事柄であります。早くいい習慣を作るように全力を尽していったらいいだろうと思います。
○佐々木委員長 大坪保雄君、
○大坪委員 今回御提案になりました本決議案を審議いたしますについて、二、三労働大臣に私はお伺いしたいと思うのであります。 〔委員長退席、中川委員長代理着席〕 大体昨日来の同僚委員諸君の御質疑、特に野澤委員の御質疑に対する労働大臣の御答弁によりまして、大よそこのいわゆるスト規制法なるものの性格、これが今日の社会情勢上、労働事情上存続をしなければならないという、その必要性というものは明らかになりましたので、私どもも多く論議すべき事柄はないようにも考えられます。しかし昨日来の質疑応答の中に出てきました事柄によって、私どもは一、二点政府の御所見をただしておきたいと感ずるようになった次第でございます。このいわゆるスト規制法が延長せざるを得ない情勢にあるということは、今日の労働事情上、もう何人も否認のできない事柄であろうと思います。と申しますのは、先刻来社会党の同僚諸君は、世論もこれに反対しているというようなこともお話になったのでありますけれども、この数日来の新聞の論調を見ますれば、ほとんどみなスト規制法に対して、これが制定された当時のいきさつについての反省はいたしながら、今日の事情はなおやはりこれの存続を必要と認めると言っておるのであります。もともと本法に規定しておるような電気事業なり石炭鉱業における行き過ぎの労働争議の手段というものが、公共の福利を害するものであるということ、従って憲法論議等もございますけれども、憲法の規定、憲法十一条、十二条、十三条と二十八条の、いわゆる労働争議権というものを平たく読んでみれば、明らかに何人にも常識的にわかるであろうと思うほど憲法の条章に何ら触れるところなく、申さば、法律で定めるよりも、法律以前の自然法的な要求、そういうものをただ平明に規定したものであるにすぎないといっていいと思うのでありますが、しかしなお今日憲法論議が繰り返されておりますことは、私どもは非常に遺憾と思うのであります。従いまして、今日私は多く憲法論議をやる必要はないと思うのでありますが、今日のこの段階において、私どもがこの決議案を審議するについて心を配るべきことは、この法律を延長する必要があるかどうかという点、その点に限られていいと思うのであります。いろいろな憲法論議のごときは、もう三年前にずいぶんやられたことであるし、またこのことは今申し上げましたように自明のことである。今日の段階では、この法律を残す必要があるかどうか、残すとすれば何ゆえに残さなければならないかという点を論議すれば、私は足るというように考えるのであります。そういうことについて私どもが検討を進めてみますると、制定以来三カ年の実情を顧みてみて、この法律が存在したがために有効に産業の平和、公共の福祉というものが守られたかどうか、この点が一つであろうと思う。この点については、きのう労政局長からもいろいろ実情を述べて、また労働大臣からもお話があったのでありますが、このことは事実上私どももまた有効であったということは認めざるを得ないと思います。しからば、この法律を今後存続せしめることによって、何か産業の平和を害するとか、あるいは公共の福祉を守る上に欠けたところがある、そういうような消極的な面があるかという検討をしなければならぬと思うのであります。そういうことの検討について、私どもは過去三年の実績を知ることが必要である。この点についても、きのうの御答弁によりますと、またわれわれが過去三年においてわれわれの生活の上において体験したところによりますと、さような実績はなかったろうと思う。しからばこの法律の提案当時論議されましたように、労働関係、労使の関係において、いわゆる良識ある慣行というものがもうすでにでき上って、あるいはでき上る情勢にあって、かような法律を存続せしめなくてもよろしい、むしろ存続せしめない方がいいというような結論が出る状態になったかどうか、これが問題であろうと思うのであります。この点についても、きのう大臣並びに政府委員からも御答弁があったのでありますが、私どもはこの点について例をあげますと、ずいぶん多くの、非常に危険な例を持っているのでありますけれども、たとえばこの点を一つお伺いしたいと思いますのは、電気関係についてもさようでありますが、石炭鉱業関係について、炭労のごときは年次大会のたびごとに、本法によって禁止しておる保安要員の引き揚げは争議手段として必要であるということを主張し、またその主張に基いて争議のたびごとに指令を発しておるというような実情があるわけであります。のみならず、これは数日前の新聞紙に炭労の委員長の原という人が語ったのが出ておるのでありますが、(「質問か演説か」と呼ぶ者あり)その語った内容を見ますると、これは私どもは今日炭労の幹部の意図しておるところが非常に危険であるというように感ぜざるを得ないのであります。(「簡単々々」と呼ぶ者あり)その内容は、私時間が許せばゆっくり読み上げてみたいと思うほど、私どもから見れば奇矯過激な言葉が述べられておる、かように炭労あたりには非常に反省と申しますか、たとえば保安要員の引き揚げのごときは合法的であるし、これはやらねばならぬし、今後もやるのだと、こういうような言い方をしておる。でありますから、今日の事態でこのスト規制法が廃止されて存続できなくなったという事態を想像して考えますると、今後の炭鉱争議においては、保安要員の引き揚げを必ず強行するだろうと思う。炭鉱が発火あるいは溢水等によって壊滅に帰するところまでいくかどうかはわかりませんけれども、戦術として必ずやるであろう。組合の幹部にはやる意図がなくとも、組合大衆の圧力と申しましょうか、争議権は十分に獲得したのだ、ストは完全にできるのだというような主張によって押しまくられてしまうというような危険があるのじゃないかと思うのであります。この点について、昨日大臣は一応の御答弁は野澤委員に対してなされたのでありますが、私どものような憂いに対していかようにお考えになるか、さような危険を現実に感じてのことであろうと思うのでありますけれども、もう一度明快なお答えをいただきたいと思います。
○倉石国務大臣 お尋ねの点につきましては最も大切なところでございますから、私どもは過去三年間にこの電気産業と石炭鉱業の労働組合のあり方というものについては非常に詳細に、しかも注意深く検討し、また調査いたして参ったわけであります。今のお尋ねのような件につきましては、電気の方の状況はすでに御存じのように、電労連というものは御承知のような状況になってきておりますが、やはり電気産業労働組合全体としてはそれぞれの勢力争いをいたしておって、なお現在はこういう状況でありますが、将来についての保証は私どもとしては考えられません。炭労のことにつきましては、きわめて最近の炭労の秋季大会の宣言なぞをごらんになりましても、このことは、いわゆるスト規制法に制限されてあるようなことは当然やるのであるという宣言をいたしておる次第でございまして、私どもは三年間にもっと成熟することを期待しておったのでありますが、遺憾ながら今日はこのような法律がなくなればどういうことになるか。やはり政府の意図しておるところは、一般の国民大衆が、子供が試験勉強をするのに夜電気を使っておそくまで勉強しておる、あるいは国際情勢を憂えてラジオを聞いておる、あるいは町工場が仕事を続けておるといったようなところに、急に停電が行われるというふうなことは、電労連の人たちが私に申しますように、なすべからざる行為であるということは十分知っておるのだ、こういうことをしばしば労働組合側の方も私に申されておるようなわけでありまして、国民大衆の利害関係というものを一番前提にしてねらっておるというのがこの法律の目的でございますから、政府としては国民の民生安定ということの責任を持たされておる立場から、やはり国民大衆の利益を尊重する建前から、この法律の存在は必要である、こういう認定に立ったわけであります。
○大坪委員 私どもが知り得たところでもさようなような状態でありますし、政府においては特にいろいろたくさんの具体的事例をお持ちのことと思うのであります。さような、今大臣も御答弁になりましたような実情もあって、私どもは、石炭についてもそうでありますけれども、今お話のように電気についてはこれはもちろんのことである。電気はもう今日私ども文明人にとっては、その生活に密着していること空気の次ぐらいに深く密着しているといってもいいと思うのであります。これなくしては文明人の生活はできない状態にある。そういうものが争議の手段として、勝手に当事者間だけのいきさつの結果消されたりするというようなことが、国民の、あるいは人類といってもいい、文明人の生活の上からして許すべからざることであるということは、これは何人にも常識的にわかることである。私は自然法的と申し上げたのは、そういう気持もあって申し上げたのであります。しかるに電労連の幹部の諸君は、今大臣もお話のように、そういう争議はやらない、そういう争議手段はとらぬといっておられますけれども、まだ電産の中にはそういう気持にまで到達しておられない人々が少くないじゃないかというように思うわけであります。また炭鉱についても保安要員の引き揚げをやると豪語しておられる。ところが、そういう実情で今日の労使関係があるにもかかわらず、これをやめてしまえという論議が非常にある、私どもの敬愛する社会党の同僚の諸君の中にも、こういう法律はやめてしまえということを呼号されている者があることは、私はほんとうに了解に苦しむくらいであります。(「大坪さんは間違うておる」と呼ぶ者あり)間違うておるというヤジがありますが、そういう点はほんとうは指摘してもらいたいとさえ思うくらいであります。ところが今日反対論の中にも、今の電労連のごとく良識ある指導者の人たちは、そういう争議行為はやらない、それは公共の福祉を守る上から当然やれないことであるし、社会の進展を期する上にやるべきことでないというお考えのようでありますけれでも、この反対をする側には、労働者がいわゆるスト規制法で禁止しておるような争議行為をやりたいから、やる上についてじゃまになるから、これを廃止しろという意見を持っておられるのではないかと思われるようなものがあるわけであります。炭労のごときはそうであろうと思います。こういう点について私は社会党の諸君あたりが、その点の整理をしてこの反対をやっておいでになるかどうか、これはお伺いしたいと思うくらいであります。(「社会党に質問しているのか」と呼ぶ者あり)社会党に対しては非常に質問する事項が多いのでありますが、そういう点を私はやっぱり整理されていくべきであると思うのであります。そこで私どもは公共の福祉を守るという上からして、このスト規制法のごときは現在の段階においてはどうしても存続せしめなければならぬと考えるわけであります。それはそれとして、やはり労使の関係は、きのう大臣もちょっと触れられたのでありますけれども、当事者の間の話し合いによって解決をしていくということが最も望ましいことである。そういう慣行ができ上っていけば、これは私は日本の労働界にとっても産業界にとっても、非常に仕合せであると思うのであります。そういう慣行はやっぱりだんだん育成していくようにしなければならない。その育成には政府もある程度力をお貸しにならねばならぬというように考えるわけであります。そういう慣行が成熟していけば、自然いわゆる良識ある労使間の慣行ができ上っていって、スト規制法のごときは要らぬという状態にまでなっていこうかと思うのであります。こういうことを法律にたよるということでなしに、労使間の協定なり協約なりによって片づけていこうということのやり方を、今日相当産業界においてもやっておられると思うのでありますが、そういう事例をもし大臣の方で御承知であればお教えを願いたいのと、そういう慣行を作り上げる協約なり協定なりを、労使当事者の間に結ばせるような風を馴致するというようなことについて、これまで政府において手段をおとりになったことがありますかどうか、その点を伺いたいと思います。
○倉石国務大臣 私どもといたしましてはひとり電気、石炭産業ばかりでございせんで、労使関係の安定がなければ日本の産業は復興しないのでありますから、きのう私がちょっとここで触れましたように早く日本の経済を破壊することによって社会革命を温醸する機会をつかみたいと思われるような人は別でありますが、そういう者は私は日本の労働大衆にはそう多くないと思うのです。ただ富士山の峯に登るのに、甲州街道がいいか東海道がいいかというだけでありますからして、その行き方について話し合えば、帰するところはやはり日本産業の発展というものがなければ労働条件の向上ということは不可能なんでありますから、私はしばしば申しておりますように、究極において労使の利害関係は常に一致している。でありますからして、一部の過激な方々の扇動などを排して、御承知のように穏健な労働組合が着々成長しつつあることはわれわれも非常に喜ばしい現象でございます。そこでそういう傾向を助成したいと思いまして、政府は先般の予算のときにも八つの重要産業に対して労使の協議会というふうなものを設けるようにということであっせんをいたしました。すでに御承知のように、繊維産業においては労使きわめて協調的に、そういう協議会ができまして、盛大なる発会式が行われまして、今労使共同してそういうことに当っておられます。電気関係も、東北電力のごときはそれと同じような構想のもとにただいま始められております。その他政府はどこまでもやはり利害が終局において一致するという建前でありますからして、そういう話し合いの場をよけい作っていくということのために、労働省内部では、労働問題懇談会には労使双方のおもな方々及び公益代表的な立場の方々にも参集していただいて、あるいはその中で給与の小委員会というふうなものを設けたりして、給与関係についても話し合おうというふうなことをやっておるわけであります。全般的に最近の傾向はそういう方向に進みつつあるわけでありますから、政府といたしましても、本法に予定をいたしておるような、規制しなければならないような手段が争議行為の途中で行われようとする場合には、警告をいたしたりその他注意も促し、そういう方向に走らないようには努力いたしておりますが、これはそういう具体的な場合でありますが、基本的には今申し上げましたような方向でいろいろ健全なる労働運動の発達のために努力を続けておる最中であります。
○大坪委員 さような方向に労使双方が考えを及ぼし、また政府も中に立ってこれが醸成を促進していかれるということが、だんだん効果を積み重ねていけば、国民に何か一方的に労働者の争議手段を禁止している、一方的に労働者を押えているという印象を与えているスト規制法のごときものはもうやらなくてもいいという事態になろうと思う。私どもはそういう時期がなるべく早く来ることを期待いたします。きのう大臣は、今回の決議によって、今まで三年の一応の期限つきであった法建が恒久的な法律に一応なる、反射的にさようになると、こう仰せられたのでありますけれども、こういう法律、これは私は本来からいえば当然禁止すべき事項であるから、もともとから恒久的法律として作るべきであったと思うのでありますけれども、しかしきのうの御答弁では、何も今まで三年の期限で、一応労使間の良識ある慣行を待とうとして作ったのを、この際恒久的に永久にこれを禁止するのだといって宣言する法律を残さなければならぬという意図を持ってやったのではない、さようなお気持を持っての御答弁であったろうと思うのでありまするが、きょう総理もその点については明快にお答えになって、労使の間に良識ある慣行ができ上れば、これは問答無用的に反対論等があるようなことでもありますから、スト規制法のごときものはすみやかなる機会に廃止する、そういう状態にまで持っていかれるようにいたされたらいいものであろうと考えるわけであります。これは井堀委員もおられますが、先般私どもはUSスチールのある重役と御懇談をしたのであります。ことしの七月にあそこはストライキがあったそうです。そうしてその結果労働協約を改訂した。それでストライキをやるについては、労使双方で話し合って、溶鉱炉の火を落して冷却をしなければならぬ。あと直ちに使えるようにするためには、労使双方から人を出して協力して四日間かかって冷却措置をやったという話をしておられました。そこまでいけば労働争議というものもまた場合によっては楽しいというような感じさえ受けたのでありまして、これは一営利企業会社の争議でありますけれども、石炭というような重要な、国のきわめて多くない資源の確保のためにする石炭山、あるいはわれわれ国民のほんとうに空気に次ぐぐらいに密接している電気、これは公共のものを預かっているぐらいな気持でこの仕事には労使とも携わってもらわなければならぬと思うようなものであると思うのでありますが、そういうところに従事する人たち、これはもうもちろんのことさような深い配慮がなされなければならぬと思うのでありますが、いずれにしましてもやはり労使間に、話し合いによって労使間のことはきめていくという慣行を作るということについては、一つ今後とも御努力を願いたいと思うのであります。ところがそこで一点私は重ねてお伺い申し上げたいと思いますことは、このスト規制法は今も申し上げましたように、何かしら労働者を圧迫している、労働者の権利を制限しているという面だけが強く出て、その公共性というものがあまり国民の中には多く知られていないかの感じがいたすわけであります。しかし事柄は公共の福祉にきわめて深く関係を持つものでありますから、労使当事者双方だけの処理にまかせっぱなしにておくというわけには参らぬ。そこでまだ良識ある慣行のできない今日は、かような禁止規定を宣言的に設けるということも必要でありますけれども、そうでなしに労使の問題は労使間の話し合いでやる。どうしても労使当事者だけで話し合いがつかなければ、その公共性にかんがみて国家権力がこれに介入するという仕組みを考えていくことが妥当でないか。今日公企業体の事業についてとられておるそういうこととも考え合せまして、かような公共の福祉を守るべき公益性の強いものについては、たとえば仲裁の制度とかあるいは強制的に調停をするという強制調停の制度とか、そういうものが今後の労働政策として取り上げられていくのが適当でないかというように私は考えるのであります。きのう大臣はどうも強制調停や仲裁については、労使当事者があまり喜ばぬようであるからあまり気が進まないのだというような意味の御答弁をなすっておいでになったのでありまするけれども、事柄が公共性を帯びておる。公益性をきわめて強く帯びているというようなこういう事業については、やはり国家が介入するということが必要だと思うのであります。少くとも当事者だけの話し合いに放置できない問題については、国家権力の介入の一つの形式として、強制調停なりあるいは仲裁なりという制度を考えることが必要じゃないかというように考えるのでありますが、この点については大臣はいかようにお考えになりますか。やはりきのうのような程度にお考えになるのであるか、あるいは今後検討を進めてみるお気持でもおありになるのであるか、その点をもう一点お伺いしたいと思います。
○倉石国務大臣 この二つの産業のうち、石炭鉱業につきましては労調法第三十六条がございますから、それも活用できることでございますが、電気関係については本法の第二条にあります。これにつきましては昨日私が申し上げましたようなことは、実際労使双方の争議の場合に、両方ともおっしゃることであって、なるべく自主的にやりたいのだというふうなことを強調されるということを申し上げたのでありますが、諸外国の立法例など見ますと、電気産業のストライキを全面的に禁止しておるようなところでは、やはり強制仲裁制度を設けておる国があるようであります。そこで、そういうようなことについて、政府といたしましてもしばしば研究して参ったのでありますが、私どもの見解といたしましては、本法の第二条に申しております電気産業の労働争議行為の手段につきましては、これは当然なすべからざることを規定いたしておるという考えでございまして、他の全般の争議行為、先ほど八木さんから専門的にいろいろ御指摘になりましたが、全部いけないというのではなくして、指摘してある手段というものは限られておるわけでございますから、特になすべきでないということを規定いたしておるにすぎないわけでありますから、これによって強制仲裁制度というものをすぐに考え出すということにはならないではないか、こういうふうに一応今日まで考えて参ったわけであります。しかしながら、ただいまのお話のように、この石炭はもちろんでありますが、強制調停の制度は採用することができますから、仲裁まで強制的にやらせるかどうかということについては、なお一つ将来に向って検討を続けてみたい、こういうふうに思っております。
○大坪委員 これは各人の所見でありますから、いろいろ意見が合ったり違ったりすると思いますが、私は何かしらん今申し上げたようなことでこういう問題は御検討下さることがいいのじゃないかと思いますから、今後とも一つ産業の平和の維持、公共の福祉の増進という建前からして、こういう問題には国家権力がある程度介入する、そういうことによって労使関係が調整され、平和が維持されるというような道をお考え願いたいものと存じます。 最後に一点、これは法律上の見解になるわけでありますが、お伺いしておきたいと思いますことは、御承知の最近数年来炭鉱においては部分ストというものが行われておる。これは私どもから観ずると、どうも争議手段としてはフェアなものではないような気がいたします。しかし非常に効力のあるものである。事業主はころころと参ってしまって、これに対する対抗手段としてはロックアウト以外に方法はない。賃金カットのごときはこの解決の方法としては無効である、無力である。そこでロックアウトをやって初めて労使間のバランスがとれる程度のものであろう、こう思うのであります。ものをたとえていえば部分ストのごときものは、たとえば事業主側からすれば——私は何も事業主の味方ではありませんけれども、賃金をきめておいて、賃金の支払いを一週間も二週間も延ばすという方法でないかとさえ思う。非常に事業主には痛い。しかし労働者の戦術としては非常に有効である。これに対しては今申し上げましたように、ロックアウト以外には対抗の手段はないと思うのでありますが、このロックアウトに対しては、炭労のごときはロックアウトを事業主がやった場合には、保安要員の引き揚げをやってよろしいという主張をしておるようであります。主張のみならず、たびたび組合員に説教もし、指令も出しておる。ロックアウトということは、要するに作業場の閉鎖であるから、少くとも組合加入の労働者は全部入場が許されない。であるから保安要員も入れる必要がないという主張である。それを拒否することは適法である。ただこれのスキャップとして事業主が保安要員の補充をやった場合に、これを阻止することだけが違法である。こういうようにいっておるのであります。もしそういう理由が成り立つということになりますと、このスト規制法というものの効力は半減どころか、九分九厘減という程度に減殺されるのではないかというふうに思うのでありますが、この点について法律上の見解はいかがなものであるか、これを一つお伺い申し上げたいと思います。
○倉石国務大臣 政府委員からお答えいたさせます。
○中西政府委員 従来特に炭労あたりの解釈は、ロックアウトの際には、これは保安要員も全部引き揚げていいのだ。その際には会社側が保安業務をやるのである。その保安要員を入れるのを妨げるのはスト規制法違反だ、こういう解釈をとっておるようでございますが、われわれはそれとは逆に、保安業務というものは、あらゆる場合に労働争議の対象外のものである。従ってたといロックアウトの場合でも、労働者は保安業務は続けなければいけない、同時に経営陣もまたロックアウトによって保安要員までロックアウトはできない、すなわち保安業務というものは人命に非常な危険を及ぼし、また重大な資源を滅失するものでございますから、いかなる場合でも争議の渦中に入れないというのが正当な解釈である。このことは裁判所も認めておるところでございます。
○大坪委員 ただいまの御答弁で大体明らかになったと思うのでありますが、保安要員は要するに争議の圏外に立つべきものである。これは労使とも同じ立場である。そういうことでないと、私はほんとうにこのスト規制法の意義というものが炭鉱争議についてはなくなるということを実は心配しておる。ところが、さような労働省の見解であっても、炭労は現実にそれと違った解釈をとっておる。その指令を出しておる。それで裁判所の判例が、これはよろしくないというようになっておるものがあるかどうか。その点について何か御存じであれば一つお示しを願いたいと思います。
○中西政府委員 保安業務は常に放置さるべきでないということはすべての判例にございます。われわれは常にそのことを十分に徹底するように、機会あるごとに啓蒙いたしております。特にそのことは、二年ほど前でございましたか、府県から照会がございまして、それに対しましても、はっきりとその見解を表明いたしまして、このことを一般に徹底するように措置いたしております。
○大坪委員 判例もいろいろあるということで私も実は安心いたしました。ただ問題は——もう私は質問を、時間も参りましたからこれでやめますが、現在の社会情勢下において、公共の福利を守る立場からすれば、電気産業及び石炭鉱業におけるこの程度の争議行為の抑制ということは、これは事理上も道理上も当然のことである、こう思うのでありますけれども、私の敬愛する渡辺惣蔵君あたりが委員長となって、社会党あたりでは八月のころから、これの反対委員会などというものを設けて、国民にもいろいろ宣伝をされておる。その宣伝が先であったがために、実情を知らざる国民大衆は、何かしらこのスト規制法というものは労働者弾圧法であるというような印象を誤まって受けておるのではないかというように私は心配いたすのであります。実際現実に具体的な話をしてみれば、国民のどういう人でも、おそらく渡辺惣蔵君の奥さんでも、それはいけませんというにきまっていると私は思う。たとえば労働争議の手段として突然電気が消された。これは先刻大臣もお話になったのでありますが、私が朝起きて顔を洗おうとしても、都会地では水が出ない。御飯もたけない。空腹のまま、とにもかくにも会社や工場に出勤しようというて出ると、電車はとまっておる。苦心惨たんしてバスに乗るか歩いていく。やっと工場なり会社に着いてみれば、機械も動いていない。電燈も消えておる。事務もとれないければ、作業もできない。国会だってこの委員会もおそらく開けない。そういう事態になる。そういうものはいけませんぞというのが、この法律であると私は了解しておる。それを野放図にしろ、良識ある慣行になったから、ということを盛んに言われる。私は国民に対する非常な誤まった教育方法だと思うのであります。憲法などをことさらに曲解しておる。たとえば二十八条の団体交渉権や団体行動権というようなものを、絶対優位の地位に置いておる。それは間違いである。これは憲法十一条に——私は憲法論議をやろうと思いませんけれども、非常に国民をミスリードしている。憲法十一条では、御承知の通り、基本的人権というものは全国民に保障されておる。われわれに対しても保障されておる。そのわれわれの基本的人権を破るような権利行為が、一体労働者だけに許されるかということは考えられない。それを二十八条だけを取り上げておるけれども、十二条を見れば、「これを濫用してはならない」とある。公共の福利のためには制限されると書いてあるにかかわらず、これをことさらに無視して二十八条だけを取り上げておる。これは独裁思想です。専制的思想です。私は今日法律論はいたしませんけれども、そういう点について私は国民の中に誤認があると思う。でありますから、本法はどうしても続けなければならぬ今日の社会情勢でありますから、社会党の諸君も何とか一つ早く考えを改めてもらいたいのだが、同時に政府は、もう少し国民に宣伝と申しますか啓発運動と申しますか、そういうことをお進め願わなければならぬと思うのであります。この点について大臣の御所感を伺いたい。
○倉石国務大臣 ごもっともな御意見でございまして、私ども全く同感であります。そこでこれを一般国民に周知徹底せしめましたならば、おそらく先ほど大坪さんの御指摘のように、反対しておられる議員さんの奥さんまで、これは賛成、こういうことになるだろうと思うのであります。そこで政府といたしましては、本案の趣旨が国民大衆に理解されるように全力をあげてなお努力をいたすつもりであります。
○中川委員長代理 午後一時まで休憩いたします。 午後零時六分休憩 ————◇————— 午後二時十四分開議
○佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会の議決を求めるの件を議題とし、審査を進めます。 この際お諮りいたします。本件の審査に関しまして、法務委員会より当委員会に連合審査会開会の申し入れがありました。この連合審査会を開会するここに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐々木委員長 御異議なしと認め、そのように決します。 なお明日商工委員会より連合審査会開会の申し出がありました場合は、三委員会の連合審査会を開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐々木委員長 御異議なければさように決します。 連合審査会は明日午後一時より開会いたしますから、さよう御了承願います。 —————————————
○佐々木委員長 それでは引き続き質疑を続行いたします。井堀繁雄君。
○井堀委員 俗にいうスト規制法についてただいま本委員会が審議をいたしております。これに関連いたしまして、法務大臣の所見を二、三ただしたいと思いますので、御答弁をお願いしたいと思います。 この法案提出に当りまして、政府を代表され倉石労働大臣から趣旨の説明がございましたが、その中で、本法案を提出するに当りまして、最も私どもの重要な点だと思いまする一節に、こう述べております。「労働関係に関する事項につきましては、法をもってこれを抑制し、規律することはできる限り最小限度にとどめ、むしろ労使の良識と健全な労働慣行に待つことが望ましいことは、言うまでもないところであります。」こう述べておるわけであります。これは本法案にとりまして重要な一つの趣旨弁明であると思うのでありますが、さらにこの法案が第十五国会に提案された際にも、政府は異なっておりましたけれども、同様の趣旨のことを述べております。これは省略いたしますが、これも今読み上げたと同じような趣旨のことを述べております。そうして重ねて労使関係の事項につきましては、法をもってこれを抑制、規律することはできる限り最小限にし、労使の良識と健全な慣行の成熟にゆだねることが望ましいことは言うまでもありません。こういう説明をいたしておるわけであります。 そこで私がお尋ねをいたしたいと思いますことは、労使関係を律することは、ここにも繰り返し述べておるように、法律をもってこれに規制を加えるということは、ただ単に避けたいということだけではなしに、もっと根本的なものがあると思うのです。これは今後治安の維持あるいは司法上の問題などを通じてこの問題が当然出てくることになるわけでありますが、私どもの懸念いたしますことは、労使関係というものが明治憲法のもとにあって、すなわち所有権絶対の座に立った労使関係でありましても、御案内のように労働者の国結権は法律の上では全く否定され、団体行動権は手かせ足かせを加えられて自由を奪われておった時代にありましても、ストライキというものは一種の社会的な病気であって、これを阻止することはむずかしいというので、反射的な効果をねらったのでありますけれども、木に竹を継いだような労働争議調停法といったようなものがありましたことは御案内の通りであります。こういう全く民主的な自由というものが労働者にない時代にあっても、こういうものが存在しておったわけであります。ところが今日労働者の基本権の中におきましても、生存権を左右するような基本的人権というものは、そう数あるものではございません。ことに私は午前中総理に質問をいたしました際に引例をしましたが、それは今日の憲法は言うまでもなく主権在民でありますから、政府が人民に対して基本的な人権に干渉を加え得るということがきわめてきつい制限になることは、民主主義のおきてとして今さら申し上げる筋ではない。特に労使関係は、労使の良識ある慣行のもとに処理すべきことは社会通念になっております。これは古今東西を通じて共通した考え方であります。こういうはっきりしたものが前提になって、しかも日本の憲法で何回となくこれを宣言し、さらには法律をもって労働者の団体行動権あるいは団体交渉権、団結権に保護を加えておりますことは、言うまでもないことであります。こういうような時代に、こういう法案がぼっこり出てくるということは、第十五国会に提案されたときの提案趣旨によりますと、私は一つの社会的意義があったと思うのであります。これは当時日本の有力な労働団体が、あげてベースアップの戦いの中で、かなり強いスローガンを掲げて、しかも電産と当時の炭労が指導的立場に立ってストライキを展開したことも、またそのストライキが当時非常に大きな世論をゆり動かしたことも、事実であります。こういう社会的な一つの大きなできごとを背景にして政府が提案してきたということは、速記録をひもといてみればわかると思うのであります。だからこういうような関係は、今日全く変った背景であります。特に背景が変っただけではなくて、もっとはっきり言えることは、そういう社会的な諸条件というものがよい意味において解消されておるという、この事実に政府が目をおおっておるのではないかという点が重大であろうと思うのであります。もし目をおおうてないというならば、これはきわめて恐るべき陰謀がひそんでいるのではないかということを国民は疑わざるを得ないのでありまして、この意味で総理に実はお尋ねをし、さらにあなたにこれからお尋ねをしようとするものであります。これが私のあなたにお尋ねしようとする考え方の前提をなすものでございます。 そこで具体的にお尋ねをいたしたいと思いますのは、これは前国会の予算委員会、あるいは本委員会において、あなたにも御出席をいただいてお尋ねをした、具体的な事柄が一つあります。それは未払い賃金が非常に多いということ、そうしてこの未払い賃金というものの本質はどういうものであるかということは、もう明らかにしてきたところであります。労働者が約束に基いて労務を完全に提供し終って、さてそれから受け取った賃金で生活を、しかもそれも最小限度——最小というよりは、生命を維持する動物的な生存の意義しか許されないような低い賃金の労働者が、未払い賃金の被害者の中に数多いということは、あまりにも明瞭であります。これは憲法や法律によって繰り返し保護を約束しておるにもかかわらず、こういう労働者の当然の保護すらが受けられないで、労務はすでに提供して、受け取る賃金それ自身がもらえない、生活ができないというような、こんな不合理な現実が当然として今日存在するのです。労務行政の中ではこれは一例にすぎません。私はあとで労働大臣にお尋ねをするつもりでおりますが、そのほかにかなり広い範囲にわたって、これの統計が示すように、多くの国民の中で、完全失業者は言うまでもありません、不完全就業、不完全労働、あるいは潜在失業、半失業と、いろいろな言葉で言われておりますが、この人々の数を今日の統計の上では正確にわれわれに答えを与えておりませんけれども、幾つかの資料を検討いたしますと、最小限度に見積ってみましても、その労働で生活を維持することができない、きわめて少い収入、もしくは不完全な就業で生活に悩んでおります人たちが、少く見ても七百万から八百万、もう少ししさいに統計を検討いたしますならば、一千万を下らぬであろう。この数字については、もし反駁する資料がありますならば出していただきたい。こういう多くの日本の善良な、しかも義務を果している国民の生活が許されないという現状であります。こういうものに対して——私がここで憲法の条章を引例する必要はありますまい。言うまでもなくすべての国民に対してその生活を保障するということは、これは政治家たるものの重大な責任を感ずるところであります。特に政府はこれに保護を与えなければならぬことは、幾多の法律が命じておるのでありますけれども、一方には、鳩山内閣は社会保障制度などと国民に呼びかけております。その前に法律に命じておる、ことに賃金の未払いが放任されていて、何とも手をつけがたい。あなたはこれに対して、今日の場合においては特別の立法を考えるより手がないということを、私の質問にお答えになっておる。もうその後かれこれ二年経過いたしておりますけれども、準備にいたしましては少し長過ぎる。もし特別の立法ができないとするならば、未払い賃金を解消する、たとえば今の——これは労働省の重大な責任ですが、全国に基準監督署を設けて、こういうものに対しては手厚く保護をすべきことを法律は命じておるのでありますけれども、その原因はいずれにあるかはわかりませんが、今日基準監督署で報告を受けた未払い賃金だけが統計に出て参りまして、このことは午前中述べました。一方には、政府は労働者に対して、当然その生活を保障し、その権利を守ってあげなければならぬ義務を課せられておるのに、その義務が実行できない。これは私は、抽象論ではなくて、具体的事実をあげてお尋ねして、あなたがそう答えた。それが二年間かかってもまだできていない。それなのに、あにはからんやこういうスト規制法というようなものを出してくるということは、私どもはどうしても了解ができない。それは私も、何も政府の全責任において生活を保護するのが民主的な政治の建前だとは考えておりません。国民自身が自主的な力において自分の生活、権利を守る運動は、民主主義社会においては一つの義務であるし、また権利として憲法で保障されておるわけあります。そこに団体行動権、団体交渉権というものが重要な役割をするのであります。それに制限をいささかでも加えるということは、一方にこういう事態を解消した、やや健全な経済、健全な社会状態にある国においてなら、私は悪いとは言わぬのであります。こういう点について法務大臣は特別な措置をもうただ一つの点だけお伺いしましょう。未払い賃金の問題を解決できないか、解決しないで済むのか。この点に対してあなたがはっきり御答弁ができるなら、私は、スト規制法に対する閣議におけるそれぞれの論争の際に、あなたの立場からも発言があったと思う。これは方々のことを申し上げることは、時間の関係で何だと思いますから、一つに集約をしてお尋ねしておる。これはあまりに明確な事例でありますから多くを論議せんでいいと思いますので、このことを選んだ。この未払い賃金の問題に対してはあなたは立法措置を必要とするとお認めになっておるが、それができてこない。現行法でこの問題を政府はどう御解決になるか、この所存を一つ伺って、次にまたお尋ねをいたしたい。 〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕
○牧野国務大臣 お答えをいたします。井堀委員の御主張の御趣旨は、私は全面的に同感でございます。ただ、どうして現行の法律制度のもとにあなたの希望せらるる事実を実現したらいいかということは、あなたから御指摘をいただきました今年の二月以来、私の念頭を離れてはおりません。第一、税金との関係をどう扱っていくかという問題にぶつかります。第二は、担保権者との関係をどういたしていくかということにぶつかります。第三には、下請中小企業者の生活最小限度の費用並びに下請中小企業者のもとに働いておる労働者の賃金をどういうように確保していったらいいかという問題にぶち当りまして、この一年の間、学問的な研究と実際上の関係とを進めて参りました。そこで、ただいま結論的に考えておりますることは、今あなたが仰せられたように、これは憲法十三条、二十四条、二十五条等の問題における重要なる事項であるから、むしろこの際思い切って社会保障という方面から立案すべきでないかということを考えております。すなわち単純なる私法的立法より、公的性質を帯びたる法制を確立する必要があるのだということになってきたのでございます。そこで、私はどこまでもあなたの御主張には同感を表します。そして、どこまでもあなたの言われるような結果を生み出したいと思っております。それにはどうしたらいいかというのに、これだけの問題にぶち当って、やや具体的結論に似たものは、社会保障の制度のもとにおいて新たなる立法をなすべきじゃないかというところまできております。さらにこのことは、委員会の席上以外、この方面に関して特別な熱意を持っておられる方々と、もっとこまかく具体的に検討して結論を得たいと思いますが、重ねて申し上げます、私はあなたのおっしゃることに共鳴を感じて、どうしても実現をしたい、だから、そうは簡単にできませんという人人との間には、今なお論争を続けております。どうぞ御了承を請います。
○井堀委員 まことに誠意のこもった御答弁をいただいて、感謝にたえません。ただ、私があなたを責めておりますのは、牧野個人を責めておるのではありません。あなたは日本政府の重要な地位を担当されておられることは、申すまでもありません。現行法で、すなわち賃金債権——債権の中でも、あなたは今立法化のためにいろいろ努力をなされて、税金との優先権の問題あるいは担保権の問題を言われておりました。私はここに憲法に対する理解の仕方に相違があるのではないかと思う。同じ憲法の中で、その財産権に対してはこれを保障しておることは言うまでもありませんけれども、内容については法律によって、すなわち公共福祉のためにそれぞれ制限を加えることを、憲法には明文化されております。ところが、労働者の団結権については、十一条をとり、十二条をとってきていろいろ言っておるようでありますけれども、これに付加しなかったということは、明治憲法と民主憲法の違いを説明するのに一番明確なものではないかと私は思う。明治憲法のもとにおいては、労働者の生活権というものがみずからの力で開拓する道を奪っておった、すなわち団結権を奪っておった、団体交渉権には手かせ足かせがあった。にもかかわらず、その時分においても未払い賃金については、今日のような野放しには置かれておらなかった。ただ、訴えがあったかなかったかは、問題は別でありましょう。言うまでもなく明治憲法の特徴ともいうべきものは、所有権絶対の上にあぐらをかいておった、私はこういう点から考えて、もしあなたがそれぞれ専門家との間に論議をなされて——古い憲法や法律学を学ばれた方は、従来の惰性もありましょうし、先入観もありましょう、概念の上に対する基礎的なものを積み込んでおりますから、手のひらを返すように切りかえることはできないかもしれませんが、時代は変っております。今さら私がここで講義めいたことを申し上げることは失礼ですけれども、社会保障の形でこれを考えるとあなたが今言明されましたからそれも一つの行き方かと思います。私はこれを否定するものではありませんけれども、そうまで困難な道をたどらぬでもいいのじゃないか。もし社会保障の中におて未払い賃金問題の解決をつけるということになると、賃金支払いの義務を怠った者に対してはどうか、他の国民がどうこれにかわるかということは、私は賃金の本質に対する脱線だと思う。そこまでいかなくても問題がある。私があなたにお尋ねせんとするところは、何のために労働者に団結権を保障し、団体交渉権を保証するか、団結権の保障を加え、あるいは労働法や労調法あるいは労働基準法といったような労働保護が考えられたか。言うまでもありません、近代社会における、ことに資本主義経済のもとにおける労働者というものは、個人としてもその人権を保障するということのむずかしさ、矛盾がある、それはすなわち組織的な労働者の人格を認めていくというところに新しい憲法の趣旨があるのだ。一人の雇い主と一人の労働者であっては対等でない、労働者が団結してこそ、初めて最低の人権を守り得る。雇用関係のもとにおける労働者に限っては、少くも団体を作って、団体行動と団体交渉の形において対等の立場を作るという最低の人格を保障するのである、その保障が完全にできておれば未払い賃金はないわけであります。そこですよ。ですから最低の問題は、労働者の団体交渉権、団体行動権を否認すれば、あなたたが言うように、社会保障でいかなければならない。一方認めておるその力を育成して、自主的な力をもって問題を解決するというところに、私は未払い賃金解決の問題があると思う。私は、ここで議論をするには時間がございませんし、問題が大きいと思います。あなたが誠意をもって具体的なものに答えてくれたことに反駁するのは失礼だと思う。社会保障の形で未払い賃金問題を解決するのに決して異議を唱えるものではないであります。その前にあるのであります。そこまで飛躍しなくてもいいのじゃないかという点について、御一考なされる御意思がなければ、私はこのことは申し上げません。今ここですぐ即答を求めようとは思いませんが、この問題について何か御答弁をいただければけっこうであります。
○牧野国務大臣 私は、その点について社会保障のところまでいくという考えを持っておるのではない、役所の中でいろいろ議論をかわしておると、話がそこへいったのです、これはなかなかおもしろい、こう思ったのであります。そして今あなたのお述べになる思想的な根処は私は同感なんだから、工合が悪い、あなたと議論は同じなんです、ただ結論をどこへ持っていくか、これであります。所有権絶対の上にあぐらをかいておることはもう旧時代だ、そのかわり団結権の上にあぐらをかいてもいけない、これを私は主張しておるのであります。
○井堀委員 いいお答えをいただいたわけでありますが、私は必ずしも団結権万能を言っておるのではありません。ここで公共福祉の問題が出てくるわけであります。ここであなたと公共福祉の問題を議論しようとも考えておりません。あとで関係大臣に私は聞いてみようと思っておりますが、ここであなたにちょっと関係したことでもう一つお答えをいただいておきます。それはたとえ方が非常にまずいので、午前ちょっと総理に伺おうと思って伺いかけたのですが、むしろあなたに伺った方が適当だと思って途中で腰くだけしたような質問に終ったのです。私はそれだけの力がありませんから、自分の考えをそのまま言い表わすために用いるのは失礼かもしれませんが、性犯罪を再犯した者に対するやり方は、去勢するというやり方が一つあると思う。これは非常に残酷なことで、命はとらないが、性行為は防いでしまう。しかしこれは今日の時代においては何人も否定するんじゃないか。私も否定する方の側の考え方を持っている。しかも今日、その犯罪は社会の者から見ますと、完全に憎しみに満ちた、悪らつなものがあったけれども、死刑にいく前にこれを去勢しないというのは一体どういうことでしょうか。去勢がなぜ具体的な問題にならぬか、この問題についてあなたからお答えいただければ、次のことを伺いたいと思います。
○牧野国務大臣 お答えいたします。その問題は非常におもしろいのです。ロンブローゾの意見から出発して参りまして、フェリーがこれを祖述いたしているのでありますが、科学的な面と人道的な面とをどういうふうに調和したらよろしいかということが問題になるのでありますが、昨今性欲関係において、子供さえ作らなければ自由に満足してよろしいといって、御承知の通り避妊の方法というものが公然と公序良俗に反しないという時代になった。これと今のあなたの質問の問題とをどういうふうに調和していくかということは、今日における社会科学の追究でございまして、私は積極論を持してそのことを法医学の方面で述べております。私は積極論者であります。
○井堀委員 まあその積極論者の立場のそれぞれの説も伺っておりますが、ただここで問題になるのは、命は断たないけれども、男としての人格は全く失われるわけなんです。このことは反対論者から言うと、死よりももっと重い罰だという主張をしているようであります。ここら辺にまだ問題の解決しないものがあるようでありますが、日本の法律はこれを禁止しております。言うまでもないことであります。 そこでスト規制法との問題についてでありますけれども、似通った一つの議論ができるのじゃないか。あなたなら話せる。ストライキというものは片きんです。二つあるものを一つだけ抜くということではいけない、だから結局両方抜いてしまうというそこに問題があると思うのです。きっと閣議でこの問題が出たに違いない。あなたの立場から一席ぶつべきじゃなかったか。
○牧野国務大臣 ぶったんです。
○井堀委員 その点を一つ聞かしていただきたい。倉石さんと論議する意味において。
○牧野国務大臣 御想像の通りでございます。ぶちました。そこで私はスト規制法に対しては明確に申しました。私は新憲法のもとにおいて最も大切なものは公共の福祉というものを維持するということ、私はどんな法律でも公共の福祉に迫るような行動と法律とはこさえてはならぬ、だからこの法律が公共の福祉を無視するものであったならば断じて反対します。公共の福祉を維持することを目的とするものならば、もう体当りでこれを維持します。そこで私は公共の福祉を維持するための最小限度のものだという確信のもとに、これの支持論者になったわけでありまして、公共の福祉、そこに睾丸の価値があるということを御想像願います。
○井堀委員 大へんふざけたような質問をいたしたのでありますが、実はそこに牧野さんのような積極説があるわけでありますが、それと同じようにスト規制法の問題を考えるということも一つの考え方だと思う。そういう考え方からスト規制法を出してきた。あなたの積極論と同じ意味で出してきたのなら、この法体系の中にそれが盛り込まれていなければならぬけれども、残念ながらそれは入っておりません。まあこの問題はあなたの所管ではございませんが、以上二つの点について、あなたの明快な誠意のこもった御答弁をいただいて、私としては満足しております。 ただこの機会にもう一つあなたに念のために伺っておきたいと思います。これは未払い賃金の問題よりも、ある意味においては、政府の責任をもっと強く迫られると思う日本の、世界に一番自慢にならない大きな問題は労働人口の過剰、しかもそれが完全な収容ができないために生活に困っているということ、これを社会保障で救うか、あるいは経済生活の中でこれを生かしていくかということは政治の大きな問題だと思う。そこに一方には生産性向上運動が起ってきているわけです。ここで問題になりますのは、言うまでもなく労働者自身の自主的積極的な協力、それは生産に具体化してこなければ有機化してこなければ経済なんというものは興隆するものでないことはわかり切っている。そこで今言うスト規制法の問題は、さっきの睾丸を抜かれる問題は個人です、一人ですが、片っ方のものは個人としてでなくして団体を構成している組織的な人格があるわけです。ですからそういう労働者が非常に今言ういわれない被害を受ける、政治の貧困やあるいは荒れた社会制度の中に個人の責任でなくして、そういう責めで生活にさいなまれているものに手を差し伸べなければならぬ。それだから社会保障を言っているわけです。それを一方においては正常な経済の行為の中だといえば、労働者自身の積極的な協力態勢というものを組み込んでいくということが私は大事じゃないかと思う。そういうことのために当然の労働者の権利がそこなわれている場合には、私は担保権の問題やあるいは税があらゆるものに優先するという思想にこだわった反対論のあるものに対して、勇敢に戦っているということに対して非常に敬意を表しております。ただ目に見えないことですけれども、あなたは省内の統帥者、あなたの信念が正しく、あなたがその職務に忠実であるなら、当然国会にあるいは閣議においてその主張が貫かれる、するとあなたの地位を鳩山内閣は無視し、あなたの主張を否定される、閣内不統一の具体的な証左にもなると思う。こういう点に対してあなたは閣内において、一方においては労働者の権利を守る立場にありながら守れない。他方においてはそれを守るどころではなくて、労働者の自主的な力を進めようとする者に——その程度がどのくらいかは別です。そこであなたはただに公共福祉だという言葉に同調されるほど単純な方ではないと思います。この問題は分野が違ってくると思いますが、こういうときでありますから、完全な保護はできないという具体的な事実にあなたが悩んでいると思います。この問題について労働大臣とあなたの間にかなりの相違がある。これから労働大臣に聞かなければわからないですが、今までの提案趣旨や他の者に対する答弁を聞きますと、非常な違いがある。その点は閣内において論議されたことがあると思うのでありますが、一つ見解を聞かしていただきたい。私がここでお尋ねするよりも、みそもくそも一緒にここで講義せぬでも済むかもしれない。
○牧野国務大臣 その点、私が自分の主張を端的に維持できない事実があるのです。それは御承知の公益事業令というものがあったでしょう。あのときは非常によくいって、ストライキも上手にやったのですよ。あれが一時なくなったでしょう。そうしたら二十七年ですか、ががががとやったですね。そしてまた暮れに出たらおさまったのです。そして適当にきんたまの威力を発揮しているのですよ。なくなっていないのですよ。むやみやたらな乱暴なことをやるのが男の本性じゃないのですよ。相当に男も生活というものをノーマルにやっていかなければいかぬ。だから日本の国民は過去における弾圧の反動としてあまりにストライキをエンジョイし過ぎやしませんか。そこはお互いに考えていかないと、私らの思想が法律の上にも社会的事実の上にも実現しないのですよ。だからここで適当な規制を、歯を食いしばって従っていくんだな。長いことはないですよ。そこへ行けば相当にエンジョイしながら、私は男としての満足をしていける、こう思います。 〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕
○井堀委員 いや、いろいろありがとうございました。ただ一点希望しておきますが、現在の未払い賃金を初め、不完全就業等による労働者の地位というものがいたずらにじゅうりんされて顧みられない現状でありますので、こういう問題を一方においては解決できない、他方で自主的な力をはばもうとするやり方については、今まで議論をわれわれがしてきた中で一向に解消されていない。ですからここで一歩出てくるとすれば、あなたのいうように労働者の方が、隠忍自重するためには他の機構というものが積極的になってこなければならないのです。同時に未払い賃金問題に対する保障であるとか、あるいはストライキを行わなくても——あれは何も労働者は好きでストライキをやるのじゃありません。団結権、団体交渉権が守られておりましても、ストライキをやることによって犠牲が伴うのです。決して好んでやるべき行為ではないのです。私は理想をいうならば、労使間というものは、そういう争いによらないことが望ましいことであることはいうまでもないのであります。それが発生する原因を絶つことのできない事実がある。その事実を解決することが政治なんです。それをあなたにさっきから言っているわけなんです。(牧野国務大臣「同感」と呼ぶ)それを怠って、出てきた現象に対する処置を講ずるということに私どもは反対をしているわけだが、まあいずれにいたしましても、スト規制法についてはあなたの責任ではありません。引き続いて労働大臣に質問いたしたいと思います。
○佐々木委員長 それじゃどうも法務大臣御苦労さまでございました。
○多賀谷委員 議事進行。実は法務大臣への質問がずっと残っておるわけです。法務大臣は、今お立ちになろうとしておるのですが、また明日は、午前中が裁判官の認証式であるということで、どうもこの法案が——御存じのようにこの法案そのものには罰則はありませんけれども、やはり趣旨とされるところは刑事罰がついておる。ですからこの問題は、この前の社会労働委員会で審議されたときにも法務大臣に対する質問が多かったわけですから、私はやはり法務大臣の出席をお願いしたい、かように考えるわけです。ですから今度はいつ見えますか。
○佐々木委員長 きょうは社会党との約束で一時間ということで、一時間いていただいたわけです。だからもし法務大臣の出席が必要とあれば、また理事会に諮って御相談をいたします。
○多賀谷委員 今政府委員はこれが済んだら来られると言っておるのですよ。
○佐々木委員長 それは私は今ここへすわったばかりだから、その事情は聞いておりません。ただ社会党との約束が一時間ということですから、一時間はいてもらったのです。そうすればその後の要求があれば、また御相談していつ来てもらうということをきめたいと思います。
○多賀谷委員 ところが理事会といわれますけれども、この法案は大体法務大臣に列席してもらわなければ、労働大臣だけでは審議ができないのです。
○佐々木委員長 それは法務大臣も必要でしょうし、労働大臣も必要でしょうから、その都度その都度運営については社会党の方々とお話し合いをしてやっておるわけです。きょうは、ただいままでのお約束では、法務大臣は一時間と申し上げたところが、それを御了承願ったわけで、その一時間はやはり約束通り実行したのですから、それ以後における必要があるならば、理事会において御相談を申しましょう、こういうことなんです。
○多賀谷委員 ですから、今から法務大臣を呼んで下さい。法務大臣が宮中へ行かれるそうですが、お帰りになれば来られると政府委員は言っておるのです。
○佐々木委員長 あなたが個人的に聞いておっても私は聞いておりません。もし必要とあれば御相談を申し上げてまた呼ぶ、法務大臣は必ず一日一ぱい用事じゃないでしょうから、やはり時間のあるときに来ていただくというような方法を講じたいと思いますから、御了承を願いたいと思います。
○井堀委員 倉石労働大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、このスト規制法のそれぞれの内容については順次お尋ねをいたしていきますけれども、まずその前提でありますが、あなたは労働大臣という地位におって、その責任と権限というものについてどういう認識をしておられるかについて、私はいろいろな疑いを持ってきたのです。というのは、スト規制法それ自身について論議をするに当りまして第一の問題は、あなたは公共福祉を阻害するおそれがあるという前の吉田内閣の提出した当時の理由をそのままここにも引用されております。公共福祉をそこなうかそこなわぬかという判断をする上において、私は立場というものが非常に大切だと思うのです。そこで公共福祉をそこなうような行為は、これはストライキに限ったわけではありません、あらゆるものがいけないわけであります。それで問題になるのは、あなたの立場は労働省設置法の中に明らかでありますが、議論を進める上に、私が読むよりは当局に読んでいただきたい。第三条を読んでいただきます。
○青木説明員 労働省設置法の第三条を読みます。「第三条、労働省は、労働者の福祉と職業の確保とを図り、もって経済の興隆と国民生活の安定とに寄与するために、左に掲げる国の行政事務及び事業を一体的に遂行する背任を負う行政機関とする。一、労働組合に関する事務、労働関係の調整及び労働に関する啓もう宣伝 二、労働条件の向上及び労働者の保護 三、婦人の地位の向上その他婦人問題の調査及び連絡調整 四、職業の紹介、指導、補導その他労働需給の調整 五、失業対策 六、労働統計調査 七、前各号に掲げるものを除く外、労働者の福祉の増進及び職業の確保 八、労働者災害補償保険事業 九、失業保険事業」。
○井堀委員 今読まれましたように、労働大臣のお仕事は、労働者の福祉と職業の確保、さらに労働法の規定しておりますそれぞれの関係事項に関して保護の立場をとらなければならぬことはこれで明らかであります。あなたの行動は法律によって縛られていることも言うまでもないことであります。そこで石炭産業と電気産業に限ってストライキの一部を制限しようということは、一体今日の電気産業、石炭鉱業における労働者の、以上掲げられたような問題について保護が完全でありましょうか、もちろん完全でないのです。ことに私は午前中例にとりましたように、未払い賃金の中で最もその金額において、その被害労働者の数において、件数において一番トップを占めておるわけであります。午前中私は数字を読みましたが、百六十三件、二万六千七百十九人、その中で三億八千九百三十七万円という未払い賃金の解決が八月末についていないということが、基準監督署の報告に基く統計に出ておる、こういうように、労働省としてはこういうものをあなたの責任において解決しなければならぬにもかかわらずできないじゃないか。できない場合には、言うまでもなく労働者の自主的な協力を待って解決をしていくということが労働法の示すところであります。それに報いるのにストライキの規制を行う。そこで公共福祉の問題が出てくるわけでありますが、公共福祉といいますけれども、これは石炭関係の労働者だけが対象にされるとあなたは主張されるようでありますが、私どもはそうは思いません。先ほど来の論議でおわかりだと思いますが、私の聞かんとするところは、労働者に与える心理的影響というものを無視してはならぬ、それは先ほども言うように、労働者の人格というものは、組織的人格を対象にして考えなければならぬ。その組織は、業種別や地域別のものを言うのではないのです。労働法の中にもあるように、産業別もしくは全国的な労働者の組織というものが保護されることを予定しているわけです。こういうことをあなたは専門の立場として十分お知りのはずでありますから、そういう点から今日このスト規制法というものが三年で期限が切れることを私どもよく承知しております。これをどう処置するかをなさらなければならぬ立場であることもよく承知しております。それをきのう来の答弁によりますと、その扱い方は議会の承認を得なければ、その性格は時限立法から恒常的な法律としての地位を占めるというおそるべき性格の変革を来すわけであります。パンを与えるに石をもって報いるという格好になるのであります。この点に対して労働大臣としての御所見を承わりたい。
○倉石国務大臣 井堀さんの御意見は十分拝聴いたしました。ごもっともな点もたくさんございますが、今のあなたのお考えとやや私ども違うと思いますところは、今御指摘になりました公共の福祉というものは先ほど法務大臣も言っておられましたけれども、憲法に認められておるわれわれ一般国民の自由権というものはやはり公共の福祉というものを尊重するというワクの中において自由を保障されておるのでありまして、一つの種類の人たちだけが自由な行動をとることによって大勢の国民の利害に関係のあるようなことはしてはならない。こういうのが憲法の精神だと私どもは解しておるわけでありまして、その意味において私どもは公共の福祉に反すると思われる争議手段の一つの行為はしてはならないのだ、こういう考えであります。
○井堀委員 そこで非常な違いを見せてくると思いまするのは、一体あなたのおっしゃられる公共の福祉をそこなうという行為が、たとえばスイッチ・オフとか保安要員引き揚げという事態、そのこと自体は必ずしもストライキの行為としては最も好ましくないということについては私は意見の相違がないと思う。今日の日本の組織労働者はもっと聡明です。そういうようなことを好むはずはないのであって、好まざる行為をあえてしなければならぬことになるという事態が問題である。もっとはっきり言えば、ストライキを労働者は好むものではない。犠牲が伴うのですからやりたくないのです。しかし今日の社会にあっては、団結権に訴えて、自分の労働力は一つしかないのだから、それを売り惜しみをする以外に、相手方に自分の要求を満させる道が絶たれておるのでありますから、それをさっきの睾丸の例じゃありませんけれども、片一方をとってほんとうにそういうことができるもんじゃない。だからストライキ権というものを法律が制限をするということはどういうことになるかといえば、これは言うまでもなく一部をとろうと全部をとろうと罷業権を政府が——これは出すところが、労働組合の全国大会でそういう方針を打ち出す、あるいは労働者のそれぞれの別個の自主的な部分的な団体でもいいですが、その団体がこういうことはわれわれとしてはとるべきではないという決定をしてくるのが正常な労働運動であります。それがあなた方がここで述べておるように労使の慣行——慣行というものは政府が作るんじゃありません。権力の座にある政府は、そういうことに対してくちばしをいれることは干渉なんです。侵害なんです。それが公益の福祉に対して少しなら障害にならないで多くなら障害になるというような理屈もおかしいと思う。 それからもう一つ私は公共福祉の問題であなたの所見をただしておきたいと思うのは、公共の福祉というが、公共の福祉というものが特にどっかにあるんなら別です。さっきも申し上げるように石炭産業の労働者は、石炭だけを掘っておる、電気産業の労働者は電気事業だけに関係しておるというように、今日の社会構造の中においては区切ることはできません。電気に関係するものは、スイッチを切れば自分もその家族も、縁者も、多くの方々がそのために暗やみに迷うわけであります。相関関係にあるのであって、労働者全体の中において考えられることであります。電車がとまっても汽車がとまっても、新聞が出なくてもラジオが聞えなくても、電気が消えればなお困る。公共の福祉に関係のない労働なんというものはあるはずはありません。それはもうすでに思想の上では試験済みじゃありませんか。無政府主義者のいうその主張は正しい、しかしその直接行動主義というものが批判されて、そういう思想は捨てられてきたのであります。民主主義が育ってきたのはそういう過程をたどっておる。そういう大きな流れを作っておる労使慣行というものを、一行政府が、一政党が、それにとやかくくちばしを入れるということは、私は少し筋違いだと思う。労働省設置法の中にいわれるあなたの立場というものがあるならば、むしろそういう議論が国内に出たならば、あなたは労働者のために正しい主張をする立場ではないか、こう思うのですが、この点に対するあなたの所見を伺いたい。
○倉石国務大臣 あなたのおっしゃることと私の考えておることはほとんど一致しているのですが、ちょっと違うところがあるようです。それは労働基本権の範囲のことであります。今公共の福祉に関係のない仕事はない。直接であるか間接であるか、あるいはその幅が広いか狭いかということであって、みないずれも間接には関係がありましょう。しかし今あなたのおっしゃったように、電気を消すということは、みんな大衆が困ることなんだ、従って、国民に与えられたる自由権を自由に行使することによって大勢の人に迷惑をかけるようなことはやるべき行為ではない、こういうことを言っているのでありまして、あなたのお説によれば、憲法二十条に許されたる基本権というものはいかなる違法性も阻却するんだという結論になりやしないかと思うのでありまして、私どもはそういうふうに考えたくないのであります。そこでまた今労働省設置法を読み聞かせていただきまして、心持を新しくいたしました。なるほど私ども中には忘れているところもございまして、またよく思い起したのでありますが、私はこの公共の福祉を守るという法律をこしらえることによって、労働者の不利益になるとは少しも考えておりません。今の日本の現実の問題として、電気産業及び石炭鉱業の労働組合の人、電労連の人がしばしば申しますように、こういうことは争議行為としてやるべきことではないんだ、従ってわれわれはもうやらないんだとおっしゃる、労働組合の方ですらやるべきことではないと言っておられるようなことを、もしおやりになって、そうして世の中をまっ暗にしたり、炭坑が爆発したりするような行為がもし行われたとしたらば、労働組合の堅実なる発展を希望いたしておる私どもから見れば、まことに悲しむべきことでありまして、そういうことをした労働者は一般国民大衆から非常に恨まれることになるのであって、むしろこの法律があるから、やはりそういうことはやってはいけないんだということを組合の指導者たちが下部の人たちに言って聞かせて穏健なる方向に持っていくということの非常な効果を生ずるのでありまして、私はこの法によってかえって労働者の利益になる、こういう考えであります。同時にまた、この法律は労働組合と経営者だけじゃなくて、つまり一般国民大衆に、生活に安心感を持っていただくためには、何しろもう停電ストなんということはないんだ、やらないんだと言っておられるのでありますから、そういうことはないんだという、国民大衆に安心感を持たせるという効果もあるのであります。どういう角度から考えてみましても、私はこの法律はかえってある方がいいんだ。そこであなたはさっき、今度議決されればこれは恒久立法になって法の性格が変るとおっしゃられた。聞き違いかもしれませんが、そのような意味のことをおっしゃいましたけれども、それはそうではないのでありまして、現在ある法律の性格というものはちっとも変らない。ただ私どもは、午前中鳩山総理もお話しになりましたように、こういう法律が要らなくなるようなよい労働慣行が成熟していくように希望するのであります。あなたは今政府は労働組合の指導なんかやるべきものではないということをおっしゃいましたが、私は、政府としては、経営者側に向っても労働組合に向っても政府のあとう限りの力をもって努力をして、そうして正常なる労働運動が行われるように指導すべきものであると思う。最近欧州に行かれましたわれわれの同僚の議員さんたちが日本に帰られてのお話によると、ストックホルムの郊外にある博物館を見に行って、その博物館の入口の鉄の板に書いてある文句を見ると、これはかつて監獄であった、しかるに今日は、この監獄の中に入れるべき犯罪人がわが国になかったので、監獄を廃止してそれを博物館にしたということが書いてあるそうでありまして、まことにうらやましいことであります。労働関係法なんというものは、ことにこういうストを規制するような法律はない方がいいのであります。しかしどうしてもなければならない、やがて監獄が博物館になるように、一つみんなで協力してよい労働慣行を作ろうじゃないか、こういうのが私どもの考え方なんであります。あなたのおっしゃることとちっとも変ってない。
○井堀委員 聡明な御答弁を伺ったのでありますが、ただ一つ大事なところが食い違っておるようであります。あなたも私も一致する点は、ここで予定するような争議行為というものを否定しない、この点は共通している。否定をしていきたい、それはわれわれの希望であり、理想である。そのことは、拡大すれば、ストライキというようなものはなくしたいということである。さらにあなたは、ストックホルムの、すなわちスエーデンの理想を追求する姿を紹介されましたが、私も見てきて感心いたしておる一人であります。そこで、このスエーデンのこういう状態を作り上げる過程が問題なのであります。この国のこういう状態ができたということは、あなたはさっき私の言葉じりをおとらえになったようでありますが、私は、政府が干渉してはならぬ、干渉というのは勧める勧奨でなく。労働運動というものは、自主的なところに特徴があり、またそれが理想への道だと思うのです。それを第三者がとかく親切ごかしに、日本語でいうとおためごかしというやつほど結局恐しい道に追い込む場合の多いものはない。今あなたはスエーデンのお話をされましたがスエーデンが三十五年かかってあの理想にでっち上げる前の姿というものは、われわれが目をおおうて見なければならないような苦しい混乱の中に、貧困の中に、あの民族は苦しんできた。それをこういうように作り上げたものは、労働者の組織的な人格が社会に認められ、それが正しい育成の後に作り上げた一つの表われだと思う。ここに私は日本の労働行政に対する考え方の出発点の相違が出てくると思う。あなたと私は同じところに今おり、同じものを見ておるかもしれません。しかしここで一歩が違えば先に行って非常な開きができるのです。あなたは、政府の親心として、日本の労働者が誤まった道を行きよるから、正しい道に引き戻してやるという善意に基くお勧めのように主張しておられました。私はそれをとやかく言おうとは思いません。手を引くということはけっこうだけれども、それを法律によって縛ったらいかぬ。あなたのいうこととすることが全く逆なんです。そういう方向を差し示すことはけっこうです。しかしこれを法律で、そういうことをしてはならないということは、権力なのです。労働者の自主的な行為に対して権力が介在することはいけません。これは労働関係だけではございません。民主主義の鉄則じゃありませんか。政治権力から警察権力を切り離すことが一つの問題であったように、国民の前に権力、しかもそれが警察権力を握り、労働者の自主的団結権に政府が干渉するようなことをしたら、それは民主的政府じゃありません。そういうことは、あなたのあげられたスエーデンにはどこもございません。それを否定したからこそ、今日のスエーデンが成功を見た。こういう点で、わずかの違いとあなたは指摘されましたが、私もその通りなんだ。あなたと私の考え方は、ストライキを否定するという点は賛成なんです。こういう行為は、私どもは考えるだに労働者はいやだと思うのであります。しかしそういうことをやらなければならぬ事態というものについては、否定しようとしてもできない、だからこそ法律を作った。そこで方法論になるわけです。それをあなたは、そんな道に入り込むのはかわいそうだ、気の毒だ、みんなに迷惑をかける、こういうけれども、スエーデンを例にあげられたが、やはりスエーデンでもそういうストライキをやったのです。それは世論にたたかれて、労働組合としては発展する道はないということを——一人じゃありません。政府は限られた人なんです。労働団体の方は数なんです。衆知を集めるということが、民衆を理解することの一つの目安であることは、あなたもよもや否定されまい。労働団体、労働組合というものは、個々をいうのではありません。日本の労働者がすべてあなた以下の水準で、政府以下の無知なものであるという見方をするならば、これは別であります。私はもっと労働者を高く評価していいんじゃないかと思う。世論の反撃を受け、国民のすべてから攻撃をされるようなことを二度も三度も繰り返す、余儀ないときには窮鼠かえってネコをはむという事態に追い込まれることもあるいはあるかもしれない。歴史にはあった。しかしそういうことを二度、三度繰り返すようでは、それは決して労働組合の本質ではない。一、二の指導者がそういうことをやろうとしても、多くの聡明な労働者はこれを阻止するだけの道を持っているんですよ。今の労働者は労働者の自由を認められているのです。そこに団結権の強さがあるのであって、団結権の強いというのは、さっきも言われたように、社会に迷惑をかけ、世論のひんしゅくを買うようなことを団結の力でやるなんということは、それは正常な団結の力ではないのです。このくらいのことは、近代的な労働者の常識として備えておる。その常識を育成し、その常識に御協力を申し上げるというのが、今いう労働省設置の中に掲げられている精神なんです。あなたと私の違いがもしあるとするならば、そこにあるのではないか。私は労働者を——労働者といって、個個をいうのではありません。組織的な労働者、組織労働というものは、二、三の指導者によって一時誤まるかもしれない。しかしそれを正常に戻してくるのは、労働者自身の組織の力によらなければいけないのです。それをほかのものが、こうせい、ああせいということは、僣越というよりは、それはその組織自身を否定する思想から来るのであります。ここに民主主義を理解したかのごとくいいつつ、民主主義を破壊する陰謀が、そういう名目のもとに隠れて行われたという歴史があるのです。これは非常な違いになってくる。私はあなたをそうだときめつけるのではありませんけれども、こういう形で出てくるところに、そういう世界の歴史はたくさんあります。今日本の進もうとしているのは、そういう民主的な行き方をわれわれは求めておるのでありますから、民主的な行き方ということは、個々の指導者に二、三のよくない人がおった、それによって団体が誤まることもあるかもしれませんけれども、そのミスを二度繰り返すという見方は、ほんとうの労働者の人格を否定する思想か、もしくは労働運動を理解しないものか、あるいはもう一つ言えば、そういうことに世間の目が急所に触れないところを利用して一挙に民主的な勢力を粉砕しようとする陰謀によるものか、この三つなんです。しかしあなたのような聡明な方は、前の二つの問題でない、あるいは第三の、存外奥に鋭い一つの計画を持っておいでになるのではないかという心配を私はいたしている。この点に対して一つあなたの所信をはっきり伺っておきたい。
○倉石国務大臣 だんだんお話を承わっておりますと、あなたと私のピントがだいぶ合ってきました。そこで今あなたのお話を拝聴いたしておりますと、この法律に規制されているような行為は、なすべき行為ではない、こういうことを御認定さないましたことが私と全く同じであります。そこでただ、そういうものは法律できめるようなことをするな、こういうお話のようでありますが、このことについては、私はもうかねがね、大臣に就任いたす前から、労働関係のことについては、人と人との関係を律するものであるから、なるべく法規などを作って制約を加えない方がいいのだという建前でいるということをしばしば申し上げている点についても意見が一致いたしているのでございますが、さてそこで今やむを得ず私どもは本法を必要とするという認定に立ちました現在の客観的労働情勢というものについては、数日来ここでお話申し上げている通りでありまして、私どもは必要だという考えで、やむを得ずこういう法律の存続の議決を求めざるを得ない、こういうことでありますが、その労働関係なるがゆえに、法律できめてはならないということをすべて断定されるのは、私はそう一概に断定することは早計ではないか、その点においてはややあなたと食い違っているわけでありますが、御承知のように、私先般ドイツに行きまして、ドイツの労働総同盟傘下に炭労も入っております。ドイツの労働総同盟のフライタークという有名な老練の委員長が、日本に帰ったら自分のところの規約を一ぺんよく読んでみてくれということで、もらってきました。そういうものを読んでみますと、組合規約の中で、石炭鉱業などというものについては組合自身が非常に制約を加えていることは、あなたもよく御存じの通りであります。これを読んでみますと、組合自身の規約で、ほとんど保安要員の引揚げなんというようなことはできなくなってしまっている。私がいつも言っているのは、何も法律でこういうことをやらないでも、こういうふうになってもらいたいのだ、こういうことをいつも言っているのでありますが、遺憾ながら本年の炭労の大会において御決定になりました決定は、あなたもすでに御存じと思います。十分御存じでございましょう。つまり、先般の春季闘争のときに保安要員の引揚げをやらなかったのは、これがいけないというのでやらなかったのではないのであって、われわれはあの当時の事情としてはやらない方がいいと思ったからやらなかったのであって、この手段というものは、当然われわれのやるべき手段として残されているのだということを本年の大会でも確認しております。そういうようなことを考えてみましたときに、やはり三年前の立法当時と今日とでは、労働情勢は遺憾ながら進歩しておらない、だからここでもう一ぺんこれは延長しなければならないが、一日も早くさっきのストックホルムの話のような工合にやろうではないか、こういうことだけでありまして、あなたと私の言っていることはちっとも違わなくなってしまいました。どうぞ一つそういうことで御了承願いたいと思います。
○井堀委員 だいぶ混線してしまったようでありますが、あまり故意に混線させてもらわないようにお願いいたします。ただ大事な点は、あなたがじゅんじゅんと述べてこられたところでちょっとそらしましたが、そのそらしたのは、DBG傘下の規約も私は見たし、団体協約も見て感心している一人であります。それは私の言おうとするところなんです。それは政府が法律を作ったからこういうものができたというふうにあなたがごらんになってきたのならば、それは今紹介して下さることに対して耳をかしたい。不幸にして私が承知しているのは、ドイツの労働組合もかなり戦争から戦後にかけていろいろな失敗を繰り返してきている。日本の労働組合に負けないほどの破壊的なストライキをやって、激しい弾圧の中で多くの血を流し、多くの犠牲を出して積み上げてきている。そのたびに労働組合は反省し、そのたびに成長していっている。これを世間なり政府なりというものが心あたたまるような方法で援助していくのであるならば指導なんです。あなたは、そこへ行ってちょっと違う。だから、そういうことをやったらだめだということで今度は別なものを持ってきて縛るということは、その出発点は善意のようであって、そのやることは息の根をとめるというような処置に出てくるわけなんです。ここに非常な違いがあると思う。私は、あなたにものの行きがかりでこういう議論をしていることが、何だか非常に時間を空費するように感ぜられるほど議会の運営というものが正常なものから脱線していると思う。何ぼ私がこういうことをここで論議してみたところで、あなたの方は私に賛成だと言ってみたところで腹はきまっておる。とにかくこれを党の決定で押しまくろうという背後の力があって、あなたはいわばロボットのような役割を演ずるというような議会の運営の仕方を、私はあまりよく事実を知り過ぎている。しかしそういうことではいけません。言論の府でありますから、記録にも残るでありましょう。私の声は国民にも伝わるでありましょう。そういう真摯な態度で私はお尋ねをしました。結論はもうついておる。そこに私とあなたの違いがある。私も社会党の党議に縛られ、あなたも自民党の党議によって——政党政治でありますから余儀ないでありましょう。私の言わんとするところは、あなたの政党があなたのような趣旨をもし取り入れたとすれば、こういうことにならなかったであろうということだけは、あなたは私にそうであると答弁ができぬところにあなたの立場の苦しさがあると思う。それを越えて聞こうというようなやぼは申しません。しかしあなたも、いつまでも自民党に縛りつけられているわけではありますまい。あるいはあなたが自民党を引きずるような立場になり、自民党の性格を変えるような偉大な政治家に成長されるかもしれません。あるいは押し流されるような結果になるか私は知りません。そこはわれわれお互いの立場の違いがあるのでありますから……。私のここでお聞きしたいことは、もしあなたの主張を労働団体が——労働団体は幾つもあるのでありますから、その労働団体があなたの主張を支持するものになっているならば——外国の労働組合は知りませんが、スト規制法をこれまた余儀ないという主張が日本の労働団体のどこからも起ってないという事実をあなたは無視して、客観的な労働情勢ということはあまりにも露骨な私に対する反論のための無理な見方ではないかと思う。客観的な条件は、今日の場合におきましては、組織労働者のすべてが遺憾ながら自民党の労働政策に対しては反動的だとまで非難をしておるのであります。スト規制法については絶対に反対だという主張は、単なるスローガンではありません。具体的な運動になって成長しているということを無視されてはいけません。この点は何も議論ではありません。事実はきわめて明確であります。だから、いかに保守党といえども、組織労働者のすべての反対するものをむやみに押すということは、スエーデンのような、あるいは西独のような、すなわち国民全体が民主的な成長を遂げることのためには百害あって一利もないことじゃないか。この点は、二大政党になったのでありますから、もし共通の広場を求めるとすれば、この民主主義の広場において論議すべきではないか。その民主主義の広場に出てこない。その前によろいを着てしまったのでは、これはあなたと私とが幾ら論議して、共通したとか言ったって、倉石個人、井堀個人の間の論議に終ると思う。もしこれが私の言ったことに対して賛成ならば政党の方針をお変えになりますか。あなたがお変えになるというなら、私どもは党に帰って堂々と主張します。そういう意味で、あなたの客観的な条件とか、あるいは事実に対する意見とかいうようなものは、これはこう思う、ああ思うは自由ではあるけれども、客観的な条件というものは具体的に出ておる。遺憾ながら日本の組織労働者は、あなたが一例をあげられたように、すべてどれもこれもが世論に耳をかさない、公共の福祉に対しては自分の主張だけを主張する人たちだけだというふうに見ることは、あまりにも事実を歪曲した見方である。事実を歪曲した見方をすることは、その上に出てくるものに非常な変化が出てくると思うのであります。私はここに問題があると思うのであります。しかし先ほど来申し上げているように、私一人が議論を楽しむというふうにとられてはならぬ。大事なことは、もう党議できめられておる。こいねがわくは政党がもっと労働政策に目を転じてもらいたい。 そこで通産大臣に出席を求めておりますのは、この法案がこういう形で論議されること自体にも問題があると思うのですが、生産性向上運動についてお尋ねしたかったからです。これはあなたの所管ではなくて通産省の所管のようでありますが、私は生産性向上運動をここで講義しようとは思いません。生産性向上運動の最も重要なことは、わが党内でも論議がある問題でありますが、それは、かつて一九三〇年当時に取り上げられた産業合理化運動や単なる能率増進運動と違うのだ、それは経営者側の一方的な利潤追求によるような資本主義的な片寄った考えではなくて、公共のためにということがここに大きく出てきているわけです。すなわち生産を高めるということは、経営者側の一方的利潤を追求するのではなくて、そこから生じたものが、たとえば物価の引き下げになりますとか、あるいは豊富な文化的生活に必要な物資を安く多くこれを配給するための生産性向上運動、あるいはその関係の従業員の生活引き上げのためにこれを行うということは、あまりに明瞭であります。そういう運動を行うための基本的条件として従来のものと異なるのは人間関係を高く取り上げておるということである。すなわち労使関係である。これは言うまでもなく労働者の自由、労働者の自主的な創意工夫というものに訴えているところに生産性向上運動に国際的な発展を約束される理由があると思う。そういう点から考えて、今日一方においては、生産性向上運動を進めるといって、他方においては、あげて組織労働者が反対しているものを、国会に多数を持っているからというだけで押し切るということは、それは、スト規制法は単に労働者の反感を買って労働者がどんときたということだけではなしに、そのことは日本の今当面している一番大きな生産性向上運動をみずから破壊する結果をもたらすものではないか、この点に対する倉石労働大臣の所見を伺っておきまして、私の質問を終りたいと思います。
○倉石国務大臣 あなたのお話を承わっておりますと、十日ほど前にどこかの新聞で拝見しました全労会議の和田書記長のこの法律に対する批判を思い出しておったわけであります。私は、和田書記長のお話は全くごもっともなことだ、われわれと同じような見方である、ただそれだからこういう法律は要らないじゃないかという結論だけが少し違うので、私どもとしては、この法律はあった方がいいのだ、しかしよき労働慣行が作られるときにはこういうものはなくて済む、早くそういう時代を招来したい、こういうことであります。今生産性向上のお話がございました。生産性向上については、井堀さんも十分御研究なさってお帰りになった、新知識でありますから、いろいろまた教えていただきたいのでありますが、私ども生産性向上運動については、ただいまのところは、日本では通産省と労働省が共管をいたしております。私どもの生産性向上運動に対する終局の目的は何であるかといえば、いい商品を作って、そうしてこのよき商品を作るために行われる生産性向上の結果得たところの収益については、もちろん一般の消費者に対する便宜ということも第一に考えられなければなりませんが、さらに進んでは労働者の福利の増進にもなり、同時にまたやがてこれがだんだん進んでいきましたならば、労働時間の短縮ということにもなりましょう。生産性向上運動というものは、労働者の協力がなければ絶対にこれは不可能であります。そういう意味で私どもとしては、今の生産性向上本部というふうなものは、むしろこれをもっと強化してやるべきでないか、こういうような意見を政府部内において提案しているのでありますが、井堀さんも御承知のように、最近の経営者の一部の傾向には、新経営者理念とでも申しましょうか、従来のような単なる利潤追求ということ、株主のための利潤追求ということだけでなくして、むしろ主たる目的が消費者大衆の利益増進にあるんだと言われておりますが、私はこういう傾向というものはけっこうなことであり、助長せらるべきものであると思います。同時にまたいわゆる新経営者理念というふうなものの考え方の中には、今私が触れましたような労働者の福利の増進、生活の向上、同時にまた実際の労働環境における労働者の労働時間の短縮ということも、当然大きな理想として入ってこなければならぬと思います。そういう意味で私は、あなたの御指摘になりましたように、労働組合があげてこの運動に協力をしてもらうことを待望いたしておるような次第であります。
○井堀委員 私は、あなたのそういう御説を実現させたいと願っておる一人であります。ところが一方にはそういう協力を求めながら、片一方労働者側から言うと、げんこつを振り上げて何でもかんでも権力の前に従うべきだという印象を強く与えるようなスト規制法というものは、今の客観的な条件から言えばまことにまずい出し方だ、賢明な労働行政は、そういう方針をとるべきものでない。あまりにも極端な対蹠的なものである。どうしてもそういう見方を今日改めることを強く要望してやまないのであります。しかし何回も繰り返すようでありますが、政党として一つの方針をきめられて、その政党の主張がこういう形で争われるということを、もう少し民主的なものにしていきたい、論議のための論議ではなしに、いい意見があったらその意見をやはり採用して、行きがかりやあるいは面子などで問題を押しまくらぬように願えぬものか、こういうことを考えつつ実は質問をしたのであります。はなはだ御無礼もあったかと思いますし、言い足らないところもあったかと思いますが、以上私の立場を明らかにしながら私の見解を述べて伺ったわけであります。どうぞ一つスト規制法がどういう形をこれからとっていくか知りませんが、ぜひ一つ日本の民主的な労働組合の発展のためにも、あるいはよき労使慣行を作り上げますためにも、スト規制法のような法案が合意の上で撤回されることを希望しつつ、私の質問を終りたいと思います。
○佐々木委員長 佐々木良作君。
○佐々木(良)委員 どうももう俗論の質問を許さないような状態にまでなったような感じがいたしますけれども、蛇足かと存じますが、しばらくの間時間を拝借させていただきたいと思います。 まず先ほど来この議案の審議に入りまして以来、倉石さんの説明の中で、電気労働者の電労連という組合があって、その電労連関係の組合は、このスト規制法の対象になっておるような争議行為はやるべきではない、従ってこれをやらぬということを明言したというような御発言がたびたびこの委員会でなされておるように私は聞いたのでありますが、私の聞いておる電労連の話とはだいぶ話に食い違いがあるようでありますが、大体どういう人からどういう立場でこの話があったか、まず承わりたいと存じます。
○倉石国務大臣 お名前はあとで調べればすぐわかりますが、本案のことについて最近労働省に会見を申し入れられました。そのときにお目にかかった方々の御意見であります。
○佐々木(良)委員 たくさんの言葉を言った中で自分の一番工合いい部分だけをぽっと拡大いたしまして、いろいろな条件のあることを全部阻却してしまうものの言い方は、これは普通のものの言い方ではないと私は思います。おそらく今のようなお話も、工合のいいところだけを拡大鏡にかけて言われたものの言い方であろうと存じます。私は非常に不思議に思ったものでありますから、その関係の労働組合の幹部諸君に聞きましたところが、とんでもない話だ、明らかにああいうことは言っていないし、私どもの考え方とは相違がある、従ってそれは食言であるから労働大臣に厳重抗議をすると言って、もう行っているはずだろうと思いますので、その抗議を受けられた後に、あすでもはっきりとその問題の対処の仕方を承わりたいと存じます。これは蛇足のようでありますが、こういうものの言い方は、倉石さん、非常に迷惑する部分が多いわけであります。労働組合なり経営者なりの言い方を代弁される場合には、十分丁寧に言ってもらわないと非常に大きな誤解を生ずると思いますので、以後一つ十分に気をつけていただきたいと存じます。おそらくきょうあたりちゃんとした抗議が行って、そうしてわれわれの考え方はこうだということが通じているはずでありますから、それを見た上で今日までここで言われた言葉を十分に訂正されるなり、その他の善処方をお願いしたいと存じます。 それから、昨日の問答に引き続いての質疑に入りたいと存じます。昨日倉石さんは、ずいぶん長たらしい何とか何とかの議決を求めるの件という議案は、言葉をかえて言うならば、スト規制法が従来臨時立法であったものを、今度は明らかに恒久的な立法としての提案になる、事実上そういうことになるということを御承認になったと私は考えます。そこで私は次にこういう観点でお伺いいたしたいと思います。 御承知のようにたびたび繰り返されましたように、現行のスト規制法は、あの二十七年の炭労、電産の、そちら側の言い方をもってすれば、異常なるストライキ行為が動機となって再びああいうことが繰り返されてはならないのだからという立場で、スト規制法を提案されて、そして臨時立法の形ででき上ったというふうに了解をしておるわけであります。二十七年のあのような、そちらで言われる異常な労使関係があった。この言い方は少し悪いかもしれません。誤解を生ずるおそれがあるようでありますから、誤解のないように御了解を願いたいのでありますが、一番平たい言葉で言えば、あの二十七年の炭労、電産のストライキ、ああいうようなことをする組合には三年間の懲役に処するというような感じで三年間の時限立法になって、そうして今度この三年間の時限立法を恒久立法化されようとしている。しかも恒久立法化されようとする場合に、労使関係も、あるいは石炭労働者及び電気労働者の組合のやり方も、少くともあの当時よりはよくなっているが、しかしまだ十分に期待に沿うような状態にはなっておらぬから、完全に放免するわけにはいかないというのが今度の提案の理由らしいのです。前のやつは非常にこれはあばれ者でどうもならぬからというので三年間の懲罰に処すといって、あれよりはだいぶよくなったけれどもまだ少し工合が悪いから今度は無期懲役に処す、こういう理論になると私は思うのですが、いかなる事実をつかまえて無期懲役に処さなければならないようなこういう提案となったか、一つお聞かせを願いたいと存じます。
○倉石国務大臣 無期懲役なんという言葉はなるべく使いたくない言葉でありますが、つまりきのうからもしばしばお話のありましたように、この法律は、三年たったら議決を求めなければならないということで、提案をいたしたわけであります。そこで議決が行われれば恒久的な効力を有する法律になる。しかしいつになったらこれを撤廃してもいいかということは、先ほど井堀さんとの質疑応答の中にもありましたように、なるべく早くこういう法律がなくても済むようなよい労働慣行が作られることを期待いたしておる。法律は国会の意思によって改廃が自由でありますから、そういうときにはそういうときで、また国会はそういう意思表示をされる時期があるでありましょう。それはなるべく早くそういうふうなよい良識と慣行が成熟するように期待いたしたい。午前中総理大臣が申し上げた通りであります。
○佐々木(良)委員 なるべく早く、そういうふうに言われましても、なかなかそういうわけにはいかないのでありまして、これはほんとうは私は総理大臣に聞こうと思ったのでありますけれども、あの第十六国会のスト規制法の論議の際に、これは今の鳩山さんが総理大臣の内閣ではありませんが、鳩山内閣の出発点といったらおかしいのでありますが、鳩山自由党の立場があの当時に明らかにされたことを、倉石さんは十分御承知だと思います。十六国会の際に、鳩山自由党の立場を山村新治郎君が、委員会におきましても本会議におきましても明らかにして、本来三年という時限立法が提案されておるけれども、三年でも長過ぎる、三年でもこれは酷だ、従ってせいぜい一年くらいにすべきではなかろうかといって、一年の臨時立法とする修正案が現実に提案されたことを、まだ十分記憶されておると思います。そうしてその際におきまして、これはなかなかいい言葉でありますので、ちょっと読ませてもらいますけれども、昨年の冬の争議において国民の光明を奪ったことについて、労働者の深い反省が必要であるが、しかし一方この争議について資本家も政府もその責任を負わなければならないのであって、この法案においても労働者を一方的に規制せんとすることは、吉田内閣の血も涙もない労働政策の現われである。今後における抜本的な労働政策の樹立の一日も早からんことを要望して、そうしてせいぜい一年くらいの時限立法とすることが妥当と認められるという提案であった。一年、二年、三年の間におきまして、これは妙な言い方でありますけれども、昨日来の議論を通じてみますと、この三年の間に抜本的な労働政策の樹立をどの程度考えられたかということにつきましては、私どもは、ほとんど考えられなかったのではないか、むしろとうとう三年きてしまったのでずるずるっと、恒久立法と言われれば仕方ないけれども、そういう強い意味ではなく、三年間きてしまったから仕方なしに議決を求める案を出したんだ、軽い案件だから委員会もどうでもいいんじゃないかというのが、ほんとうの考え方でなかったかと思うのであります。従いまして私はここで非常に遺憾に思いますと同時に、この法案が今本格的な恒久立法として現実になるのでありますから、従って今後なるべく早くこういうことがないようにして、いつでも取りやめられるのだから廃止すればいいじゃないかというふうに言われても、過去三年間の実績というものが、そういう検討が決して一度も行われなかった事実に徴しましても、私どもは不安なきを得ないのであります。従いまして私は、繰り返して恐縮でありますけれども、あれだけの事件が起きても三年ということだった、そして前よりもよくなった労使関係を現実に労働大臣は承認されながら、いかなる事実によって、ともかくも無期の恒久的な立法の必要を感じられたか、どこかに何か、たとえば電労はいいけれども、電産が何人か残っておるから工合が悪いのだとか、何かそういうことでもあるのですか。一つ今の労使関係を恒久立法化しなければならないと認定した事実を正直にお示し願いたいと思います。
○倉石国務大臣 こういう社会事象というものは、私が言うまでもないことでございますが、メルボルンのランニング競走みたいに、千五百メートルを走ればそこで終るんだというようなわけにはいかないので、やはり情勢判断をいたしながら、従って今お読み下さいましたように、ある人たちは一年間やってみよう、またある者は三年間たったら一つもう一ぺん議決をするというふうにしてみよう、こういうふうなことで、みんなそれぞれの見地に立ってそういう提案をなされたことだろうと思いますが、私どももこの法律がなくてもいい状態が出現することを待望いたしておることは、先ほど申し上げた通りでございますけれども、今日の情勢では、私どもの判断では、やはりこれをなくしてしまうよりはある方がかえっていいんだ、よい労働慣行を育成していくためには、やはりしばらくこういう法律が存在することを必要とする、こういうふうな認定に立ったわけであります。
○佐々木(良)委員 認定は勝手でありますけれども、その事実を見て、この事実をどう認定するということでなければ、これは議論にならないのであります。たとえばどういうストライキ行為があったか、あるいはどういう労働組合の状態であったか、あるいは労使関係がどういう状態であったか、この事実に徴して、まだ私どもは、たとえば三年間なりあるいは五年間なり、あるいは相当長期間のこういう立法が必要であるという認定に至るわけでありまして、その事実の分析がなくして勝手に認定するというのでは、これは議論にならないと思うのであります。私の聞いておるのは、三年の事実よりも、なおかつ恒久立法化するに必要な事実を何によってお認めになりましたかということであります。
○倉石国務大臣 その認定についてはいろいろ御意見があるかもしれませんが、あなたも御存じのように、先ほどここで話題になりました炭労のことを見ましても、この法律が現存しておってもなおかつこういうことをやるんだという宣言をしておいでになります。それで、ことしの春季闘争以来——その前もでありますが、そういう情勢を見ておりまして、私どもはこの法律があることが必要である、そういう認定に立ったわけであります。
○佐々木(良)委員 電気労働者の方の関係はどういうふうに御認定になりましたか。
○倉石国務大臣 電気関係につきましては、先日ここで申し上げました。今電労連の、私に対する組合の人のお話を、否定的なお言葉がありましたけれども、そういうことになりますと、これからはもう会見には速記者をつけておかなければならないようなことになるのでありまして、残念なことでありますが、私が拝聴いたしたのは、こういうようなことはなすべきことでないということは承知しているんだという言葉があったわけでありますから、私は非常にけっこうなことだと——先ほど井堀さんの御説にもそれと同じことがありました。そこで私は、そういうふうにだんだんみんながなっていただくように待望いたすのでありますが、そのことは別といたしまして、電気関係では御承知のように、電産、電労がなお今日一致いたしてはおりません。これはやはり私は、今日の電気関係の労働情勢というものは決して安定いたしておるものではない、こういう見方をいたしております。
○佐々木(良)委員 倉石さんも労働組合というものを十分御承知だと思います。労働組合というものは、大体似たような労働をしておる者の大多数の方向がきまれば、その大多数の方向によってその組合の方向を見るというのが普通であります。今電気労働者の全部の中で、電産と電労が対立しているみたいな話をされますけれども、どれだけの部分が倉石さん流に言われる危険な電産ということになっておって、あるいは倉石さん流に言われる電労というものになっておるか。普通の格好でごらんになれば、もう大体その話は済んだような状況になっておると私は思うのでありますけれども、どうですか。
○倉石国務大臣 そういう点については、もう私よりあなたの方が組合内部に精通しておられるのですが、私どもとしてはこれで電気関係が安定しておるというふうには解釈いたしておりません。
○佐々木(良)委員 三年前よりもなお安定していないという認定ですか。
○倉石国務大臣 そういうことは言えないと思います。とにかく今日の電労連の行動というものは、私は非常に地道になってこられたということを認めております。
○佐々木(良)委員 問題は三年前の臨時立法を、今日恒久立法化するという理由を私は追及しておるのでありまして、今日の労働組合なり今日の労使関係なりというものを、すぽっと切り離して今見ているのではないのであります。従いまして、私は三年前と比べてみて初めて今法律を恒久化していいかどうかという議論の判断材料になろうかと思うのであります。従いまして、あくまでもこのスト規制法を今度は附則を完全にとって、そうして恒久立法とするということのためには、二十七年のときよりももっと悪い状態が予想されるとか、あるいはそのいうことでなければ理屈に合わぬと思いますけれども、そういうことになりませんか。
○倉石国務大臣 この法律は、とにかく三年たったならば、もう一ぺん存続する場合には議決しろ、こういうことでありまして、法の必要があるかどうかということで、そのことのための一つの判断資料として、今あなたのお話のような当該労働組合の現状のことについての認識の問題が論議されるわけでありますが、私どもとしては三年前よりも電気関係が悪くなったとは思っておりません。今日の情勢は電労連は非常によくなっておると思っております。そういう点においては電気関係は三年前よりは著しくいい方向に進んできておる、こういうことを言って差しつかえないと思います。
○佐々木(良)委員 審議の日数は二十六日までにもう限られておるし、それから何ぼ言うてみても同じことばかり返事されるし、これはどうしようもないような私は感じを持つわけであります。しかしながら倉石さんどういうふうに言われてみましても、ともかく今ある法律というのは時限立法で、三年間の大体期限しか持たない法律でしょう。それから今通れば、何とかいう決議であろうが何であろうが、この法律がこの二十七日に衆議院を通っていって参議院へ今度上れば、ともかくも条件の一つもつかないところの恒久立法になるのは当りまえの話ではないですか。ともかく普通の立法になるでしょう。常識的に見て、あの場合の二十七年のストライキが工合が悪かったとかなんとかいって、そのために労働組合におきゅうをすえなければならないとかなんとかいうことで、本来ならば憲法違反の疑いが濃厚であり、私はあくまでも憲法違反であると思っておりますけれども、そのような基本的人権を制限するところの法律をこしらえた。そうしてその当時から比べて現在は倉石さんの言葉で言われるとよくなっている。私はその基準は非常におかしいと思うのでありますが、いずれにしてもあの当時よりも労使関係は悪化していないということだけは言えるのではないかと思う。この労使関係があの当時より悪化してないというこの現状のときに、あの当時でさえも三年の時限立法を、ここで今度無期限の恒久立法にする、そういう場合には、私はあくまでも明らかなる理由がなければならないと思う。その理由をともかくもお示しにならなくて、そして法手続上の議決を求める案件云々という言い方をされるということに対しましては、私はあくまでも遺憾の意を表せざるを得ないと思います。しかしこれは先ほど言いましたように押し問答らしいのでありますから、問題を次に移してみたいと思います。 この法律を恒久立法化するというためには、本来でありますると法理論体系というものをはっきりと整える必要があると思う。御承知のように、三年前に議論された場合には、議論のしっ放しですよ。違憲論にしましても、労調法との関係にしても、労組法との関係にいたしましても、大体において政府の言い方の方が法理論的にも無理だというくらいな、まあ学者通念、社会通念という言葉は悪いかもしれませんから学者通念としておきましょうか、そういう感じであったことは倉石さんもよく御承知のはずです。さっき牧野さんがおいでになりましたけれども、牧野さんの常識を聞いてみようと思ったが、牧野さんの常識も、これは政策上必要だからとは思うものの、相当な無理な理屈だったというくらいなことは私は承認されざるを得ない状態ではなかったかと思います。従いまして、今度は時限立法だから、臨時立法だから、少しくらいな無理な理由があっても、それは三年後に勝負すればいいじゃないかということでこの前の議論は流されたとしても、今度はこれが明らかに時限も何もくっついていない普通の恒久的な立法だということのためには、この法体系あるいは解釈論というものを少くとも日本の法曹界に常識的に受け入れられるような状態にまで熟させなければならないというふうに考えるわけであります。しかもそのための審議がほんとうは当委員会における審議でありまして、これはまた先ほど言うように期限は切られておるし、まことに困ったものであると思うのであります。しかしながらそのための努力を少しでも私はせざるを得ないというふうに考えるからお伺いをいたすのでありまするが、大体この法律を、違憲論を封ずるために、憲法違反ではないということを言おうがために、決してこの法律によって新しい争議行為の範囲を制限することにはならない、たとえば電気事業法なり、公益事業令あるいは鉱山保安法等々の、本来これまでにあった法律によっても違法なるものを単に確認しただけであって、決して新しい基本的人権の制限ではないという立論を相当無理してあの当時立てられたと思います。大体今でもその当時の立論をそのままとっておられるかどうかお伺いをいたします。
○中西政府委員 三年前この法案を提出しましたときに、この法律は、当然違法のもの、また社会的にきわめて不妥当と思われる争議手段をはっきりと法律によって明示するのであるということを言って参りました。そのことは今も変っておりません。
○佐々木(良)委員 私事務的なことを聞いておるのではないから倉石さんの方から一つ御答弁願います。そうすると前の立場と同じ立場をとっておられるということでありますが、そうしますとこのスト規制法の対象となっておる争議行為というものは、このスト規制法によって初めて違法となるのではなくて、先ほど言いましたように、本法以前の他の法律によって違法であるという前提に立たれると思います。しかもこのことが当時一番議論のあったところでありまして、たとえば停電ストが、たとえば電源ストが、この法律以前にほんとうに違法であるかどうかというのが、あの当時の議論の一番中心点のような観を呈したことは御承知だと思います。そしてあの当時、今後たとえば電産争議をめぐっての裁判も開始されておるのであるし、それからこれから三年間の動きを見て、学界、法曹界もいろいろな検討を加えることであろうから、その勝負もあとに譲ったらどうかというような感じで、私は事実上流されたと思います。御承知のように、あのときも半分ぐらい済んでおりましたけれども、あれ以後の事件も含めて、電気関係でも二十五個の裁判が行われて、結審が出ておりますし、それからその間におきましも、いろいろな法曹界あるいは学界における議論の材料にこのスト規制法というものが使われておったと思います。従いまして、私の第二のお伺いは、あの当時——二十八年の最初のこの法案を審議した当時よりも、電源ストなりあるいは停電ストなりという、このスト規制法の対象となっておる争議行為を、本来的な違法とする確証がより多く上っておりますか。二十八年当時よりも、よりたくさんの違法の根拠を判例なりあるいは学説、法曹界の議論の展開に認められておりますか、お伺いいたします。
○倉石国務大臣 政府委員の方から詳細に申し上げます。
○中西政府委員 判例関係でございますが、大ざっぱに申しまして、電気の判例といたしまして停電スト、電源スト、これについて無罪の判決をいたしたのが二件ございます。有罪だというのが四件でございます。なお旧公益事業令が一時なくなりました、そのことから刑事訴訟法によって免訴の言い渡しをしておるものが十件あるということでございます。従って本法第二条に規定しております内容の争議手段につきまして、最高裁の実質的な判定がいまだに下っておりません。なおきのう申しましたが、本法施行後に起訴されたものはございませんので、当分の間最高裁の決定的な判決はないのではなかろうか。従ってこの二条関係のものにつきまして、われわれとしまして最終的な裁判所の見解はわからないわけでありますが、われわれとしましては、やはり今日におきましても社会的にきわめて不妥当である、従って三年前にこの法律によりまして、はっきりとやはり正当な争議行為じゃないのだということを明定した、そのことは今もって必要ではなかろうかというふうに考えております。
○佐々木(良)委員 中西さん、幾ら立場が労政局長でも、判例だとか裁判事件をそういう解釈をすることは、悪いことです。あの当時から電源ストなり停電ストの違法性を裁判上認められたものは、事実上皆無です。あなたはよく御承知じゃないですか。それからその後の事件におきましても、私は皆無だと思います。ただ、最高裁におきまして合法だという判決がまだないだけです。大体検事が控訴しかけてやめたりしている。あの事件を全部見てごらんなさい。その中から法上の違法性が出てくるというような解釈をされることは、非常にどうかしているのではなかろうか。これは専門でないという、ことならば、責めもいたしませんし、法務大臣にでも聞こうと思います。しかし今のような立論から私がおそれるのは、この間から言っておるように、塵埃処理の業務をとめたらこれが停電ストライキだというような、達しか指示かわからないけれども、出されるような拡大解釈をされるから、私はおそれるのであります。私が今倉石さんにお尋ねしたのは、そういうこまかいことを聞いているのではないのでありまして、二十八年の審議当時以降、判例にしてもあるいは学説にしても、停電ストや電源ストや、要するにこのスト規制法の対象となっておる争議行為を、より違法だというように近づかしめる根拠なり、あるいは材料なりが一つでも重なったことがありますかというのです。全然ないじゃないかと思う。どうですか。あれから三年間たってみて、三年間のうちに、二十八年の当時よりも、このスト規制法の対象となっておる争議行為を現象的な違法だというように根拠づける裁判事例なり、学説なり、あるいは法曹界の意見なりというものが、一つでも出ておりますか。私はあまり勉強しておりませんから、よく知りませんけれども、少くとも私が知っておる限りでは、私はないと思うのですが、いかがですか。
○倉石国務大臣 電気と石炭の方の、本法に関係のあるような事件については、先日ここで御説明申し上げました通りでありますが、その直前において停止されておるものが多い。従ってあなたの御指摘のように、そういうことによって違法だと認定されたものはあまりないようでありますが、従ってこの法律は要らないではないか、こういうふうに私どもは考えられません。この法律は、存在の必要はあると思います。
○佐々木(良)委員 倉石さんは少し早手回しに答弁されたようでありますが、それだから私はこの法律は要らないということを言おうとしておるのじゃない、そうでなくて、三年間の経緯を見てこれをきめようじゃないかということになって、三年間のうちにこれを恒久立法化しなければならぬということは一つもプラスされていないじゃないかということの論拠でありますし、同時にこれはあの当時の宿題であるわけであります。これは判例あるいは今後の理論展開、あるいは社会現象の中でこの違法性を探そうじゃないかというのが宿題になっておりますから、言ったのでありまして、その宿題から見てもそれを根拠づけるものはほとんどないということであります。倉石さんは十分御承知だと思うけれども、この際に私ははっきりと申し上げておきたいのです。本来このスト規制法は無理にこじつけて、違憲立法だといわれたら悪いから、今のような理屈は考えられましたけれども、進駐軍でなかったかもしれませんけれども、その人たちの間で論議されたのは——これは電気のことばかりで恐縮でありますけれども、普通の停電については、何とかこじつければ違法という理論が成り立つのではないかということが考えられた。ところが不作意による電源ストの方は、どうにもこれを違法という理屈がなかった、にっちもさっちもいかなくなって、いっそのこと、こんなことでも考えようじゃないかということになって、それが大体スト規制法を作り出した一つの根拠になっておる。従って、私どもは反対の立場をとっておりますけれども、立案の経緯からいうと、これは本来ある違法性をそのまま宣言するというようなものではなくて、どうにも電源ストの始末がつかなくなった、これを違法性ということをいうための一つの手段として立法されたのが、立法の一つの理由だったというふうに私は覚えておるわけです。それを国会の場合には違憲立法ということになったら悪いからということで、こじつけて今のような話になっておるのでありますけれども、私は、そのために今度は次々に間違った法解釈なり、次々に間違った法理論体系なりが生まれてくることをおそれておるわけであります。端的に考えて、この話が成り立つのでありますならば、あの当時議論されましたけれども、労調法によって処理しなければならぬような電気関係のストライキがほんとうに考えられますか。そうしてあの時分は理屈上には考えられるといった、それから三年間経過した、三年間の事象の中で、労調法によって処分するような電気関係の争議行為が現にありましたか、全然なかったではありませんか。
○中西政府委員 労調法では、公益事業につきましては、予告義務とそれからいよいよ事態が切迫した場合に、緊急調整という二つがあるわけです。予告は数多くありました。ただ幸いに、そういった緊急調整をするという事態はもちろん一件もございませんでした。
○佐々木(良)委員 あの当時議論されたのは、中西さんも御承知のように緊急調整を中心とする法理論と、スト規制法によって禁止したこの法理論と、法理論体系の矛盾が指摘されたのです。そして事実問題として、この両理論の矛盾をおそらく三年の間に見られるだろうということだった。この矛盾を解決すべき現象が労使間に起りましたか。起りはしないじゃないですか。
○中西政府委員 矛盾の御趣旨が明確でございませんが、当時も解釈上当然だれもが違法だということではっきりしておりますれば、こういう法律も要らなかったのでありますが、しかしわれわれからしますと当然に違法、あるいは社会的にきわめて不妥当というものが実はあいまいであったというところから、この法律が出たわけであります。そこで労調法との関係でありますけれども、労調法は公益事業一般について一応予告義務を課しておるわけでありまして、特にそのために調整ということは必要がなかろうと思うのでございます。
○佐々木(良)委員 中西さんは知っておって逃げておられるのじゃないかと思いますけれども、あの当時の議論は、そういう抽象的な議論じゃないのです。緊急調整を必要とするような争議行為の現象をとらえて、その場合に言われるようなものであるなら緊急調整でいいじゃないか、緊急調整では工合の悪いものがあるからこの法律が必要なんだと、理屈ではそうなったけれども現実にそういう争議行為を見てその必要があるかということになったら、全然疑問のままになっておったということでしょう。忘れられたのでは困るけれども、倉石さんはあの議論された中で、大体単独立法というものはおかしいじゃないかという議論さえもされておるでしょう。労組法の一条か何かの改正をすればいいじゃないかという議論をされておられるのじゃないですか。まあ途中で、それならそれでいいわということで逃げておられますけれども、要するに三年の間を振り返ってみて、つまりこのスト規制法の立論の中心でありましたところの、新しい権利の制限ではなくて従来あるものを宣言するだけなんで、従って憲法違反ではないのだというような議論をよりカバーするような判例も一つも生まれなければ、学界なり法曹界の意見も一つも生まれてはいない。むしろ逆に、そういう立論を無理だと思わせるような状態の方が強かったと言えると思います。同時にまたあの当時議論になりましたところの、このスト規制法とたとえば労組法、あるいはこれと労調法等々との労働法上の法体系の矛盾につきまして、あの当時へ理屈みたいにつけられた理屈が、三年の間に現実に起るところの争議という社会現象によって吟味しようじゃないかということでありましたけれども、一つとしてそれを合理化するような事件は起きていない。むしろ逆に、たとえば石炭と電気の場合には労調法があるのだが、この法律が何のためにあるのかわからないような場合になってきたら、その辺の労働法上の理論的な矛盾はそのままになっており、むしろその矛盾を大きくするような現象ばかりだったと私は思うわけであります。従いまして、これは意見みたいになって恐縮でありましたけれども、私はそういう建前から見ましても、それをそうでないとおっしゃるならば、むしろもっともっと吟味しなければならぬたくさんの問題がある。というのは、前には臨時立法だったが、今度は本格的な恒久立法であるから、その辺の体系をはっきりしなければならぬというふうに思うのであります。この辺の法理論体系をもう少しはっきりしなければならぬのじゃないかということに対しまして、これが恒久法だという建前からの御所見をもう一ぺん労働大臣に承っておきたいと思います。
○倉石国務大臣 三年前に本法が労働委員会において論議されましたときには、御指摘のように、私もこういうようなことはむしろ労働関係法の体系を整備した方がいいではないかという考えに立ちまして、政府との間に質疑応答をいたしましたが、だんだん研究してみますと、元来私どもはこの法律というものは、外国でやりますように電気産業の労働組合の行為あるいは石炭鉱業の従業員の行為全部を規制するというようなことではないのでありまして、その争議手段の一部を、きわめて妥当ならざるものを規制するというのであるから、なるほどこれは一般法である労働組合法あたりに入れることについては考えものだ、こういうことで当時佐々木さんも御承知のように、こういう単独法を作ることに賛成をいたしたのでありまして、いろいろ考えてみますと、そういうふうな産業の労働関係自体を全部ひっくるめるというふうなことでないのでありますから、ただいまのところは労働関係法に総括してこれを規制するというふうなことは、やらぬ方がいいと思います。 それからもう一つ、私どもの考え方は労働組合法及び労働関係調整法というふうなところには、本法にいっておりますような行為をすれば処罰するぞといったようなことはあまり入れない方がいいのだ、こういう考え方を今日は持っております。ただ多分佐々木さんも御一緒だと思いますが、例の組合法の一条二項を改正いたしました。あのときはああいう一般的な問題であるから、これは労働組合法の中に入れてもよかろう、こういうような考え方でやったわけであります。
○佐々木(良)委員 問題の考え方なり問題の焦点が、実は倉石さんと違うのです。私は今論議しようとしておるのじゃなくて、その論議が三年前に繰り返されたでしょう。繰り返されたその論議をもとにしまして、三年間に起った社会現象、たとえば争議なりあるいは労資間の状態なり、労働組合の変化なり、今言われましたような経営者の変化があったかどうか知らぬけれども、その辺を全部ひっくるめてみまして、あの当時よりも倉石さんの意見をオーソライズするような現象が起ったか、あるいはむしろそのさかさまであったかということを認定するのが、今の審議しなければならぬ状態ではないかというふうに私は思うのであります。その場合には大体さかさまじゃないかということを言おうと思うのでありますけれども、それを倉石さんの方では理屈の初めに戻って言っておる、同じことを繰り返されておるのでありまして、これはどうも理屈にならぬことになってくるのでありますが、時間の制約もあますので、仕方がないから先へいきます。ただ、今倉石さんは立論の根拠みたいにして言われた、あのときから言っておられるのだけれども、たとえば電気の中においても、やり得る争議行為を全部奪ったのじゃないから、これは大丈夫だという言い方、これは中西さんが作ったのだろうと思いますが、あきまへんぜ、その議論は。考えてごらんなさい。大体ストライキというものは、生産関係におけるストライキがストライキの初めなんです。事務ストというものはストライキじゃありませんよ。あれはただいやがらせに考えたことなんです。事務ストだとか集金ストというものがあるからいいじゃないかということは、とんでもない話です。電気労働者の本格的な争議手段といえば、その生産を放棄することなんです。手紙を書くのや帳面をつけるのをやめるということは、ストライキじゃないのです。そんなものが残されておるから争議行為が残されておるというのは、これは労働法のイロハから読み直してもらわぬと困る。労政局長かそんな格好になっては困ると思う。 時間がありませんから最後に一点を伺っておきたいと思います。先ほどからたびたびお話がありましたように、スト規制法というものは基本的人権を制限するおそれのあるものでしょう。少くとも基本的人権の制限に関する法律の種類であると思います。従って終戦後の動き方といたしましても、基本的人権にかかわるようなものについては、おのずから最も狭い解釈をするのが法解釈上の慣例であるし、終戦後の新しい——新しいといいますか、終戦後の常識だと思います。従ってスト規制法というものが現在存在しているのだから仕方がないことでありますけれども、このスト規制法があっても、この解釈は基本的人権に関することでありますから、最小限にこれを狭く解釈するのが法解釈の原則でなければいかぬと思います。御意見いかがですか。
○倉石国務大臣 あなたのお話を承わっていると、やはり井堀さんと同じように、だんだん私の意見と同じようなことになってきています。少し違うところがある。そこで私は、憲法二十八条にいっている労働基本権、これはやはり一般私ども市民権と同じように、十二条、十三条を優先的に考える、これは当りまえのことだと思うのです。私は憲法学者でございませんが、労働関係から見ました立場から見れば、あなたも御存じのように、だんだん各国で作られている憲法を見ましても、やはり団体行動権というものに対しては、法令の範囲内においてとか、他の法律の定むる範囲内においてとかいうふうな条件をつけて、団体行動権の自由を尊重いたしております。日本の憲法は特にそういうものはありませんけれども、やはり公共の利益ということ、国民大衆の利益というものをわれわれの自由権を行使することによって害してもいいんだという解釈は、日本の憲法はしておらないと思うのであります。また堅実なる日本の労働組合員大衆は決してそういうことを言っておいでにならないのでありまして、そういう意味であなたのおっしゃるように、なるべく狭く他の法令を考えてやって、そして国民の自由権はなるべく広く認めてもらうことが必要ではありますけれども、やはりその限界というものは大勢の大衆の利益を優先的に考慮しなければならない、こういうふうに考えているわけであります。
○佐々木(良)委員 少しこまかいことを答弁され過ぎて、私はそんなところまで聞いたのではないのでありまして、このスト規制法が基本的人権の制限に関する種類の法律であるから、従ってこのスト規制法自身の解釈を最も狭義にしなければならないという言い方をしたわけです。ということは、たとえば第二条の場合のここに制限行為が書いてありますけれども、争議行為としてはこういう行為をしてはならない、その行為をなるべく狭義に解するのが、基本的人権の制限に関する法律の解釈としては当然の基本的な態度じゃなかろうかということを聞いている、それはどうでしょう。
○倉石国務大臣 どうもあなたのおっしゃることがどういうところにそのねらいがあるのかわかりませんが、なるべく狭くとか、広くとかいうことはなかなかむずかしい判定だと思います。要するに、この法律を制定する当時に政府が申し上げましたように、公共の福祉というものは自由権を行使するのに優先するという考え方で、厳正に一つ考えてもらいたい、こういう解釈であります。
○佐々木(良)委員 何か私がまたひっかけやせぬかと思って心配されているらしい。だからはっきり言っておきますよ。私の言うのは、二条を例にとりますれば、先ほども申したのとちょっと関係がある。電気関係の争議行為みたいなのはほかにも何でもあるじゃないかと片方には言われる。先ほど中西さんはここで禁止されている以外にたくさんの争議行為があるじゃないかということを言っておられ、たとえば事務ストとか何とか言われたが、そんなものはほんとうのストライキではないと言ったわけでありますが、ともかくもこの法律自身に違憲の疑いが少くともある。少くとも基本的人権を制限するおそれのある解釈がされ得る法律であるとするならば、基本的人権に対しては最も尊重的な態度をとらなければならぬから、二条に書いてあるようなこういう行為はなるべく狭義に解釈しなければならないのじゃないか。落ちは、電気の方でいうならば、さっきの掃除みたいなものが停電ストなんてそんなことは拡大解釈過ぎるじゃないかということを言おうと思っているが、どうですか。
○中西政府委員 第二条の条文の通り正常な電気の供給に直接に障害を生ぜしめる行為となればいけないということでございますので、こういう結果の生ずる行為ということで判断するよりほかないのじゃないか。そのほか広い狭いということよりも、実際問題として正常な電気の供給に直接障害を生ぜしむる行為、こういう意味であります。
○佐々木(良)委員 それは違いますよ。法解釈というものは中西さんもそれから倉石大臣も、法解釈論というものがあることはよく御承知でしょう。解釈の立場というものがあるはずです。これは基本的人権に関するようなものは、間違いのないように解釈しようと思えば、なるべく狭く解釈するというのが、法解釈の本格的な基本的態度でしょう。先に落ちつくところがあるといったって、今の塵埃処理ぐらいのところですよ。その根本的な態度は倉石さんお認めになってもいいでしょう。どうです。
○倉石国務大臣 私どもといたしましては、先ほどお話のありました公益事業令、あそこにも正常なる電気の供給云々ということを書いてございます。従ってそれから出て参りました断定によって、個々のどういう行為をしたかということについて解釈はやはり違うと思いますが、もちろん政治のことでございますから、疑わしきは罰せずということはもう当然のことであります。従ってその一つ一つの事案に対してはもちろんなるべく基本的人権を尊重するという建前で考えていこうということは当然のことだと思います。
○佐々木(良)委員 倉石さんのこのスト規制法に対する解釈、態度はまことにりっぱであって、それでしかるべきだと私は思います。その解釈、態度がとられておりながら、先ほど中西さんのお話がありましたように、三年間のこのスト規制法違反あるいは容疑の事件がないかと言ったら、あることないことと言いたいほど、大体ないこと、ないことみたいなものを力一ぱいに顕微鏡的にさがして並べられた。そしてあれをほんとうにスト規制法違反容疑だという事件だと見られるならば、今の倉石さんの解釈、態度とは相当幅があると思いますけれども、いかがでございましょうか。
○中西政府委員 この第二条違反の適用、これを最後にやりますところは裁判所でございます。またその前提といたしまして検察当局が摘発するわけであります。その場合に軽きに従っていくということは先ほど大臣の言われた通りであります。しかし二条違反の行為というものは、やはり違反は違反でございます。それをどう処理するか。つまり不起訴にするか、あるいは裁判所に行きましても無罪にするか、これはあとの情状酌量といいますか、その問題でございます。そこで塵埃処理でございまするが、たとえば昭和二十九年の十一月、忍野の発電所におきましては確かにこの塵埃処理をしませんでしたので、機械をとめざるを得なくなった。これは事実なんでありまして、そのために正常な電気の供給を阻害する行為があったという結果を生じておりますので、それをどう取扱うかはあとの問題ですが、一応二条に違反する疑いのあるものであるということは事実としてあったので申し上げたのでございます。
○佐々木(良)委員 今の中西さんの意見の中で、本論とは別に、私ちょっと疑問になったことがありますので、倉石さんにお伺いします。このスト規制法の二条違反は、裁判所でほんとうに決せられるものですか。私は二条違反というのじゃなくて、これは電気事業令違反であるとか、その他のもとの法律の違反として議論されるものだろうと思うけれども、やはりこれは二条違反として問題になるものですか。
○倉石国務大臣 こういうような行為はよくないのであるということは、法律を制定するときに明確になることは申すまでもありませんが、ただいま労政局長の申し上げましたことはさらに躍進いたしまして、これが法廷に取り上げられた場合のことを申し上げたのだと思います。従って私どもとしては今労政局長の申し上げましたようなことは、やはり落葉がたくさんくる、秋になればそういうことがございます。そいつを除去するのを拒否したということによって、電気の正常なる供給を阻むということをおやりになることは本法の違反である、こういうふうに労政局長は申し上げたのであります。
○佐々木(良)委員 それだから私は言ったのでありまして、労政局長のお話によりますと、違反は違反だけれども起訴するかしないかはどうのこうの……。違反は違反だと、そんなにはっきりしておるのだったら問題はありはしませんよ。抽象的に書いてあるこの条文に照らして、違反であるかどうかということが問題なんでしょう。そんなら今の労務拒否をして、三枚ほど木の葉があったが、それを取らぬでほっておいたら、これは違反は違反だけれども起訴しなかったということですが、そんなことはないでしょう。その理論が成り立つなら、火力発電所でも一月も二月も掃除せずほっておいたら機械はいたみますし、それでは停電します。そうすると掃除しないということがスト規制法違反である、こういう理屈が成り立つでしょう。そういう拡大解釈がおそろしいというのです。本来こういう行為の解釈というものは、狭義に解釈しなければいかぬのです。直接ということは文字通り直接と解し、疑わしきを罰しないという倉石さんの態度が、そのまま労務管理の現実の担当者であるところのあなた方の方にも徹底していなければいかぬじゃないか。それがどうも食い違っておるから私が今質問をしておるということなんです。
○中西政府委員 おっしゃいますように、この第二条に直接にとございますこれを拡張解釈しようとは、全然思っておりません。直接に障害を生ずる行為、落ち葉を取らなかったために発電所の機械がとまった。これは直接と言わざるを得ないのじゃないかと思います。
○佐々木(良)委員 二十八年の審議の当時に、小坂さんはこの問題についてこう言っておりますよ。「直接という文字が使ってあるので、間接に停電するストライキは許されるのであります。」いいですか。「直接という文字が使ってあるから、間接に停電する行為は許されておるものであります。」提案者であるところの小坂労働大臣がそうおっしゃってるのですぜ。それなのに木の葉がたまって——一体発電所の水路番のおるところは、どれだけ普通のところならば離れておるか知っていますか。それをさえもこの直接ということだったら、小坂さんの解釈と私は非常に大きく違ってきておると思いますけれども、倉石さん、どうでしょうか。
○中西政府委員 われわれは塵埃処理の業務を常々懈怠したら、すべてこれにひっかかるというふうに言っておるのではございません。ただ特に秋口のごとくうんと枯れ葉その他がたまりまして、そのために水が行かない、こういう場合には、まさに取り入れ口を閉鎖したと同じような効果を生ずるのであります。この場合には、(「間接だよ」と呼ぶ者あり)われわれとしては直接に障害を生ぜしめる行為、除去しないことは直接障害を生ぜしめる行為、こういうことになると思うのであります。そこでたとえば補修の工事にしましても、今とにかく電気が伝わっておる、しかしだいぶ古くなって資材をかえる、このことを拒否することは間接と思っております。しかしながら線が切れた、それを補修する、これを拒否する、これは直接障害を生ぜしめる行為、当時と現在と全然解釈は変っておりません。
○佐々木(良)委員 これは倉石さん、はっきりしてもらわぬと時間がきてもにっちもさっちもいきません。あのとき問題になったのはスイッチ・オフだったのです。停電というのはスイッチを切ったのだ、その行為は作為的なというのだ。それなら仕方ないというので、発電所の場合は動いておるものをほっておいたら困るから、それをとめておいて職場放棄しようじゃないかというのが電源ストだったのです。いずれにしても発電所か変電所かのスイッチに関する問題だった。明らかに小坂さんの議論も、あの当時スイッチ・オフに限定して解釈すべきだということが、至るところで表現されたと思う。これはよほど解釈が違ってきていると思いますけれども、これは倉石さん、この審議の間にはっきりしていただけませんか。
○倉石国務大臣 私どもは決して拡大解釈をいたしておるのではありません。従ってただいま労政局長から申し上げました塵埃処理の問題について、実際に争議行為がありましたときに、どういうことになるかということによっては違うかもしれませんが、私どもは今申し上げましたように、秋口になって落ち葉がたくさんたまる、そのことによって停電が直接に行われるということはやはり直接、こういうふうに解釈をいたしておるわけであります。
○佐々木(良)委員 私は倉石さんはそうでないと思ったのだけれども、今の労政局長の意見をそのまま倉石さんはとられるのですか。すると非常に困ったことだと思うのでありますが、その立場をとられるのですか。
○中西政府委員 若干言葉が欠けたかもしれませんが、実は緊急修理、これは当時から、これを怠ることは直接正常な供給に障害を生ぜしめる。(「当時とはいつだ」と呼ぶ者あり)三年前のときの解釈と同様であります。従って塵埃処理の業務をやりませんければ、正常な供給に直接影響を及ぼす、こういう場合はやはりこの第二条違反になる、こういう工合に考えます。
○佐々木(良)委員 それでありますから私は最初解釈の態度を聞いたのです。中西さん、いいですか。あの当時たまっているものを云々、今あなたのあげられた例、こういう例もある、これは間接と見ていいじゃないかという例にあげられたのですよ。その間接の例にあげられたのだけをあなたは限定的に解している。法解釈の根本を違えているのじゃないですか。あのとき例にあげられた、これが間接といわれたものを限定的に見てあげて、ほかのものは全部直接だといえる、そういう態度をとっているのじゃないですか。私どもが今倉石さんからはっきり求めた解釈の態度はちょうどさかさまであって、立案の当時に最も限定的に解釈をされたものをそのまま、もっとそれよりも限定的に解釈すべきである。その行為を広げて解釈すべきでない。まさに昔の検察当局みたいに全然さかさまの解釈態度でしょう。こういうことが間接でもやれるじゃないかといって、ほんの思いつきに小坂さんがちょっと言ったことだけを引っぱり出して、これだけが間接的な停電の方法だ、ほかのものを比べてみなさい、みんな直接になってくる。それならばはっきり聞きますけれども、水路番がストライキでなく、少し怠けておって、三べん見にいかなければならぬものを二へんぐらいにしておいて、それでたくさんの葉っぱが出てきた場合に際会した場合には、やはり停電の状態になることはありますよ。それもやはりそういうように見ますか。あるいは火力発電所の場合だって、少しなまけて掃除せずにおったら発電機がおかしくなるくらいのことはありますよ。それも直接な停電ストライキ、停電行為と見ますか、とんでもない話ですよ。私は解釈態度をもう一ぺん倉石さんからはっきりと伺いたいと思います。
○中西政府委員 先ほど来申しておりますように、われわれの方は、直接にということはやはりその通りに解釈しておりまして、しかく拡張する意図はございません。先ほど申し上げましたように、まさに水口をとめるような事態をそのまま放置して、はっきりと正常な電気の供給の障害を生じるということを知りつつやる行為は、やはり第二条違反のおそれがあるというふうに考えております。
○佐々木(良)委員 火力発電所の場合に、炭の荷揚げを拒否すれば、それは直接のストライキの停電行為になりますか。
○中西政府委員 個々の場合になりますと、そのときどきの状況で違いましょうが、問題は、直接にということはわれわれとしましてもやはりその通り直接影響の及ぶもの、こういうことで考えて参りたいと思います。
○佐々木(良)委員 水力発電所は、水が流れて水車が回って電気が起きる。火力発電所は、石炭をたいてボイラーが燃えて発電機が回って電気が起きるのです。水力発電所の原料は水だといわれておる。火力発電所の原料は石炭だといわれておる。その石炭がとまることと水がとまることと私は同じだと思う。どうですか。
○中西政府委員 具体的な事案について個々に判断をしたいと思いますけれども、抽象的に申しますれば、現に燃えておるボイラーに石炭を入れることを拒むということは、やはりここにいう直接であろうかと思います。ただ貯炭場に荷揚げするのを拒むというようなことは、これはもちろんわれわれとしましても間接というふうに考えます。
○佐々木(良)委員 水路番の、木の葉のとまるところから、その先に調整池を持っておる発電所がある。そういう場合と、全然調整のきかない場合と同じに見ますか。
○中西政府委員 これも個々の場合によって判断をしたいと思いますが、もちろん事情が違うと思います。
○佐々木(良)委員 私が先ほどから言っておるのは、そういうことであるから基本的な態度は今のように狭義に解釈しなければならぬので、そして狭義の一番中心がスイッチ・オフだ。あの法案の審議のときにあれほどやかましく言われた議論なんですよ。それを今のような一つ一つに当てはめてみないとわからぬような話でやられた日には、あと何が残りますか。今のように行きますと、今の、かまにほうり込むやつならば工合が悪いけれども、貯炭場にほうり込むやつならいいんだ。それはあなたが今ここで勝手にそう思っているだけじゃないか、そんなことで勝手にやられた日には、それを拡大解釈というのですよ。大体常識的にこれくらいのものなら違反だということがわかるように初めからしでいかなければ、法律を守ろうといっても守りようがない。だから私はその場合に、初めからスイッチ・オフということが問題になっていたと思いますけれども、倉石さん、これは何ぼ押し問答していても事務当局としてはどうにもならないらしいですが、はっきりした解釈として、今のようなのはちょっとおかしいということを言ってくれませんかね。ほんとうにこれじゃどうしようもないと思いますよ。
○倉石国務大臣 政府の法に対する解釈論というものは一致いたしておるのでありますから、私が申し上げないでも、労政局長から申し上げていることが私どもの見解であります。やはり今の落ち葉の問題でございますけれども、直接にとある。直接に停電をさせようということで塵埃の除去を故意に怠るということは、やはり直接にストップすることになるのでありますから、これはいけない、こういうふうにわれわれは解釈いたしております。
○佐々木(良)委員 これは私にはどうも承服できません。直接でないでしょう。そうすると少くとも立案当時よりも直接の意味を拡大解釈するということですか。
○倉石国務大臣 立案当時とちっとも変っておりませんで、直接に電気の供給をとめるということはいけない、こういっておるのであります。
○佐々木(良)委員 先ほど言いましたように、立案当時は直接にというのをわざわざ例を引いて直接と言っておるのだから、間接に停電をすることも一許されておるのですよ。小坂さんは明らかにスイッチ・オフ自身をさしておることをちゃんと言っておるのですよ。そうであるにもかかわらず、今のような解釈は、私は少くとも立案当時よりも拡大された解釈だと思わざるを得ないのです。どうしてこれを拡大されていないということが言えるのですか。
○倉石国務大臣 佐々木さんは電気の専門家ですが、水路の落ち葉を停電させようという意図のもとにこれを除去しなければ、停電をするということを承知の上で除去しないということは停電をさせることが目的でございますから、これはやってはいけない、こういうことでございまして、やはり立法当時とちっとも変っておりません。
○佐々木(良)委員 停電をさせようと思おうが思うまいが、水路番のストライキといったら水路番がその職場を放棄することでしょう。それでは停電させようと思っておらぬときにはどうなるのですか。要するにスイッチ・オフの、発電所と変電所のそこのところだけしか問題がないのじゃないか。ほかのところは何でもできるような話じゃないですか。それで直接間接のひもをスイッチ・オフにほとんど限定的に解釈をされておったのです。どうにもこれは工合が悪いですね。
○中西政府委員 三年前も単にスイッチ・オフだけではなくて、たとえば緊急修理あたりをする、これを争議手段として拒むということは、直接に電気の供給を阻害する行為だということで、やはり第二条違反だということは繰り返し申しております。それでスイッチ・オフと同様に機械の運転をとめるというような結果の行為は、これはやはり第二条違反の疑いがあるということは言えると思います。
○多賀谷委員 関連して。当時の話では社会通念としても違法だというお話をなさっておる。そうすると、当時今問題になっておる塵埃の処理をしないというのは社会通念上違法ですか、われわれきょう初めて聞いたわけですけれども、また緊急修理のお話をなさっておるが、このときに国会で言うたといっておるが、緊急修理なんということは国会の速記録にはないのですよ。あなたは修理のことを言っておるが、これは間接的だということをおっしゃっておる、まるっきり違うじゃないですか。当時の社会通念上違法のものを立法化した、こうおっしゃっておる。だから当時の社会通念上違法ですか、これをお聞かせ願いたい。
○中西政府委員 当時から社会通念上違法とは申しておりません。違法というのは明らかに法律に違反するということでありまして、違法または社会的にきわめて不妥当な行為というふうに申しておるのでございまして、そういうふうに初めから違法ときまっておったなら、実はこの法律は要らなかったわけでありますが、そこを法律によってはっきりさせるというような趣旨なんであります。
○多賀谷委員 当時あなたの方では創設的な立法でない、こういうことを強調されておるのですよ。この法律によって今まで正当であったもの、違法でなかったものをあらためて違法にするのではありません。社会通念上違法であると考えられたものを、あらためて、いろいろ議論がございますからここに法律化するのであります、こういうことをおっしゃっておる。これは創説的立法ではなくていわば宣言的立法であり、解釈立法である、こういうことを何回となくおっしゃっておる。そうすると当時でも今お話がある塵埃処理というのは違法であると考えられておったか、当時なんかこういう争議は問題じゃなかったですよ、どうですか。
○中西政府委員 創設的とかそういう、これは言葉のとり方でございますが、確かに違法な争議の範囲をはっきりしたというので、宣言的立法ということは言えると思います。すなわち労組法第一条二項の「正当」の範囲をはっきりした法律であるということを当時も申しておるわけでございます。なお当時は塵埃処理拒否というような争議手段は全然とられておりませんでしたので、われわれとしましても、例としてそれを申し上げるようなことに思いつかなかったという事情があったわけでございます。
○多賀谷委員 当時あなたの方は社会通念上ということを盛んに言われた、ですから当時の時点において問題にならなかった、それを今ごろ問題にして違法だ、こういうのは当時のあなたの方の説明からするときわめて私たちは納得いかないのです。だんだん拡大解釈して、そうして立法当時と全然違う拡大解釈をされるということは許されない。先ほども、緊急修理ということを盛んに私は国会でも説明いたしましたと言われるけれども、緊急修理ということを言われたことはないのです。機械の修理のことをおっしゃっておるけれども、それも間接的である、これは直接的ではないという説明をなさっておられる、こういうでたらめな答弁をされてはわれわれは許され得ないと思うのです。ですから私は当時のあなたの方のお気持であった、いわゆる今問題になっております点のみに限定して議論していただきたい。
○中西政府委員 今出ました緊急修理の問題ですが、これはたしか参議院の通産委員会でございましたかに話が出たと記憶しております。普通の修理はこれは間接だということは当時も申しましたし、今もそのように解釈しております。
○佐々木(良)委員 小坂さんはこの法律を出したときの提案理由にはっきりと、新たに争議権を制約するという趣旨ではなくて、本来不当である、あるいは社会通念上これではいかぬという範囲を明確にしたものです、こう言っておる。何でこの通りにあなたは解釈しないのですか。
○中西政府委員 今もその通り考えております。
○佐々木(良)委員 あまりおかしい答弁をしたらあなたいかんですよ。あの当時あなたも承知しておられるのだ。これの具体的な裏づけになっておるものは電源ストです。電源ストという不作為の行為です。これに対して、ほんとうのことを言うと始末に困っておられた。これは正直な話うまいことをやったと思った。あの当時日本の権威もおったけれども、そのもっと違ったような権威でさえも、停電というスイッチを切る方のやつは、これは何とかこれまでの法律で因縁がつけられる、だけれども、電源ストといって発電機を山元でとめておいてそのまま職場放棄をするというやつはどうにも困る。だけれども、社会通念上という理由をつけて、あれをやめさせぬと困るというので作ったのがこれなんだ。さっき僕は倉石さんにもそれを言ったでしょう。従ってあの当時の立法事由並びに立法理由は、この裏づけになっているものは明らかに山元の発電所における電源ストが対象なんです。わかったですか。それよりも多くの行為をこれに包含させることを拡大解釈というのです。あなたはそれをしようとしているのじゃないですか。倉石さん、これははっきりして下さい、中西さんとこれをやっておったのではどうしようもない。あの当時のことを思い出して下さい、そうでしょう。
○中西政府委員 当時の事情といたしましては、おっしゃるように電源スト、停電ストが最も問題になりました。しかしながらその後新手戦術といいますか、こういった塵埃処理拒否でまさに機械がとまって、そのために直接に障害を生ぜしめる行為が新たな戦術としてとられた、そこでこれはこの法条によりまする直接に電気の供給を阻害する行為だということに当てはまる。当時はこの戦術はなかったものでございますから、これを例示することができなかった、こういう事情でございます。
○佐々木(良)委員 例示されたものだけが禁止される、例示されたものだけが許されるというあなたの解釈でしょう、だから解釈の態度の根本が僕は違うというのだ。あの当時はこういう行為はなかったから例示されなかった、だから今度はこれを禁止に考えてもよろしいという解釈の態度だが、先ほどから繰り返して言っているように、本来基本的人権を制限することに関する立法であるから、なるべく制限的に解釈すべきなんだという態度を倉石さんも明らかにされているじゃないですか。であるのに、あなたは、あの当時こういう行為は工合が悪いから、この法律に該当するというふうに、明示されなかったもの以外は、何ぼでもふやせるという考え方をしている。これはとんでもないことで、考え方の根本が違うということですよ。もう一ぺんあなたは思い出して下さい。ここに書いてあるから、読んでみましょうか。今度は法務大臣の犬養さんがその不作為の行為に対してこうも言っているのですよ。「電産、炭労の労働者といえども、自己の持っている労働力を提供しないというストは許されており、不作為のストは合法だ。」とさえ言っておる。あとはちょっと工合が悪いものだからごたごたしておるけれども、それほどあの不作為の行為というものが問題になったのですよ。しかも不作為というのは山元の発電所の電源ストのことを意味しておる。これを数里奥の方まで持っていくなんというのはとんでもない話じゃないですか。大体これで公共の福祉という一番もとのところに戻っていくらしいのだけれども、山梨の奥のあれは何キロワットの発電所ですか、その発電所から数里奥の水路番が一人か二人おるところに木の葉っぱがちょっと出るとか出ぬとか、それも二、三時間ほうっておいたというのじゃないですか。それが公共の福祉に影響しますか。
○中西政府委員 当時問題になりましたのは電源ストあるいは停電ストでございますが、この法律の第二条で意図しております趣旨は、電気をとめる、あるいはまた正常な供給を阻害するというような行為は、争議の当事者だけではなくて、その当事者よりも第三者が非常な迷惑をこうむる、従って電気の供給をとめるというようなことはこれは行き過ぎであるという趣旨で、この二条ができておるのであります。従って当時はなるほど電源スト、停電ストが最も問題でございましたが、同じ結果を生ずる行為はやはりこれに該当するといわざるを得ないと考えます。
○佐々木委員長 八木昇君。
○八木(昇)委員 先ほど来の局長の御答弁は、これはもう一回言い出したものだから、何とか格好をつけなければと思って言っておられるようにしか実は聞えぬのであります。というのは、朝日新聞あたりで倉石労働大臣と淺沼書記長の両者が談話を出しておられるのを見ると、今日までも数件、電気関係についてもスト規制法違反があったということを実は天下に言っておられる、ところがその中身を聞いたら今の落ち葉かきの仕事であるという話でもって、はなはだもっておかしなことなのであります。それで少し具体的に聞きたいと思うのですけれども、おそらくダム式の発電所の場合は全然問題にならないということは御承知だと思うのです。ダムがありまして水をずっとためておる。そうして発電所の発電機が回るように水をとるのには、もちろん水位がずっと下っても当然水が行くように取り入れ口はずっと下の方にあるわけですから、これはもうダム式の発電所では全然問題にならない。それから先ほど言われるように、取り入れ口でもずっと前の上流発電所から下流発電所へ流していく取り入れ口とが何かはこれまた問題にならない。もし万々が一問題になることがあり得るとするなら、流れ込み式の発電所の、しかも鉄管式の発電所の水を取り入れるところ、こういうことだろうと思うのです。ところがその場合でも、もちろん水はそのときによって上下がありますから、言うまでもなく鉄管に入るところの水というものはその水路のずっと下にあります。しかも水は常時流れておるわけですから、現場をごらんになっておられぬのであろうと思うのですが、その鉄管の取り入れの口のところには、全部網が張ってある、鉄の網が張ってある。そうしてしかもそれだけではない。それでもなお少しばかり木ぎれが入ったりすることが必ずしもないとはいえない。そこで今度は水車——タービンも、そういうものが来たってそんなに故障が起きないようにちゃんと技術的に工作がしてあるわけですね。でもしょっちゅうウナギとかコイとかいうものは入っておるが、そんなものはちゃんとはね飛ばすように初めからできておる。そういうことはおそらく御承知でないだろうと思う。そこでそういう場合にしてもそうだと思うのですが、水路なんというのは大きな水力発電所の鉄管の上でも、そこのところに一人しかおりません。しょっちゅう落ち葉かきや木ぎれかきなんかを、一時間置きなんかにやっておるような発電所は最旧式のところだってないと思う。そういうところはないはずだ。そういうふうな状況はあなた御承知で言っておられるか、しかも今そこの事例にあげておられるのは、年がら年中、落ち葉かきをやるような発電所か、そういうところをちょっとはっきりして下さい。
○中西政府委員 私も専門家でございませんが、異物が入って故障を生ずる場合とそういう落ち葉がたまって水がいかなくなってしまう、そのために機械が空転してこわれるというような場合があります。この場合がいずれかは、これは存じませんけれども、とにかく結果的にいいまして忍野の発電所は機械がとまった、これは事実でございます。
○八木(昇)委員 これはおそらく経営者側の誇張であると思いますが、それはなお詳細具体的事実については調べてみたいと思うのですが、そういうことが特に土用の時期とかなんとかいう点、非常に大雨が降るような時期に、十日間も二十日間も長期間にわたってそれを放置するというようなことがあればあるいは何がしか出力に影響をする、こういうことが間接的に若干はあり得ても、これはもう、そういうことを言うならば、先ほどの佐々木さんの場合と同じように、これはタービンやボイラーの掃除や手入れ、こういうふうなのを少し怠ってもこれは当然そういう現象になります。ですから今日問題にされておるのはその行為が直接電気の供給を停止する行為、こういうことを第二条で書いてあることから考えれば、そういう行為が主観は抜きにして、ごく客観的に見て、直接電力をとめる行為であるか、こういうことが問題であろうと思いますが、どうでしょうか。
○中西政府委員 塵埃処理業務の拒否がすべて直ちに第二条に該当すると申しておるんじゃございません。先ほど来申しておりますように、秋口、特に落ち葉枯れ枝等が多い場合水が全然通らなくなる、そのために機械の運転がとまる。これはまさに直接に影響を及ぼすものでございまして、従ってこういう場合には緊急修理の場合と同様、その除去作業は当然直ちにしなければならない。これを争議行為としてやりますことはやはり直接に電気の供給を阻害する、このように考えます。
○八木(昇)委員 技術的にさらにこまかいことを言えば、いくらでもあなたの言うのには欠陥があるのですが、これはそうこまかく申しませんが、一つの川には御承知のように、第一発電所から第五発電所までずっと上から下まで並んでおるのです。そうして第一発電所で使った水を第二発電所へ送るときは土木工事をやって山の中をくりぬいて送ってきておることは御承知でしょうか。ですから落ち葉が落ちるなんていうところはないですよ。ですからそういうのは全く私はしろうとの言うことだと思うのです。そこで停電をねらう云々といいますけれど、例は必ずしも当てはまりませんけれども、国鉄なんかの場合には一切の罷業権がないのに、列車がおくれるということを予想して順法闘争なるものをやるということさえ許されておる。そういうことから考えますと、何か電気が間接的な影響が起きてとまるのであろうかということを目途としたとか意図したとかいうようなことは、第二条の解釈からはどこにも出てきません。もう一度明快に御答弁を願います。
○中西政府委員 先ほど来申しておりますように、塵埃処理業務はどこでもこれはやらなければすぐに第二条にかかるというのではございません。おっしゃるように落ち葉もないところ、そういうところではそういう問題も起きないと思いますが、しかし秋口短時間に落ち葉枯れ枝等がどんどんたまる、放置すれば水の流れがとまるというところにおきましては、これは直接影響を及ぼす、こういうことでございまして、一般論として塵埃処理業務の拒否が、すべてこれに当るということはもちろん言えないと思います。
○八木(昇)委員 今の秋口の落ち葉が落ちる云々なんということは、専門家に聞けば全然問題になりませんよ。それはそれとしまして、そういうことであれば、たとえばどこの発電所でもちゃんと工作工場を持っておって、そうしていろいろな機械の工作や修理というものをしょっちゅうやっておるのです。その工作工場が五日もストライキをやりますと、それは実際発電所の運転ができないというような場面が起ることは再々です。そうしますとあなたの解釈からいきますと、そういうことによってあるいは発電所がとまるかもしれぬということを予想して、工作工場が職場放棄をしたというような場合はやはりスト規則法にかかるわけですか。
○中西政府委員 第二条に直接とございまして、そこでそういう工作機械のストのごときは直接にはならないのではないかと思います。
○八木(昇)委員 それではこれは少し皮肉になりますけれども、落ち葉というのは水より軽いので、みんな浮んでおるわけです。それで取り入れ口は水位のずっと下にあるわけです。しかも先ほど申しましたような予防装置があるわけです。そういう場合発電がとまるという現象をもう少しわかりやすく説明して下さい。
○岩武政府委員 私から御説明するのもどうかと思いますが、忍野の発電所、これは私現場は知りませんが、流れ込み式の発電所で、その方はたしか十月ごろだと思っております。お話のように、落ち葉は表面に浮び、取入口はそこにある、そういう構造かと思いますが、現実にそのときに落ち葉が非常にたくさんあったのだろうと思います。それで水が吸い込みます結果、入口の金網が事実上ふさがって水が入らなくなったということのようでございます。従いましていかなる理由で、何が原因、結果の関係になったかわかりませんけれども、とにかく落ち葉を坂らなかったために水が入らなくなった。従って発電機がとまった、これが事実でありますれば、やはりそれはちょうど入口をとめたと同じ結果になるだろうと思っております。
○八木(昇)委員 これもまたしろうと論議ではなはだこっけいなんですが、金網を張るといっても、小さな金網を張っているのでないことは、御承知の通りです。網目の大きなやつです。そうでないと出力が落ちます。だから、それくらいのごみは問題にならないのです。ちゃんとそういうように構造ができておる。落ち葉というようなものが問題になりますか。しかも水位も最低限に下っておった、そうして鉄管の半分くらいしか水が流れ込まぬぐらいに下っておったというようなときには、水力は運転しませんよ。これは御承知だと思う。どこの場合でも、一万キロ出るところが九千九百九十八キロぐらいしか出ない。こういうことはよっぽど千に一くらいのことだろうと思います。先ほどのような説明では、全然納得ができない。もう一度、これは通産省の一番大事な官房長のお役ですから、一度電気屋さんに習ってもらいたいと思う。
○多賀谷委員 私は労政局長にお尋ねしたいのです。先ほどあなたは停電をさす、いわば電気の正常な運営をとめるという意思さえあれば、こうおっしゃった。ところが意思と直接ということは関連がありますか。
○中西政府委員 本人の意思というよりは、可能性があればこの条文にはひっかかってくると思います。
○多賀谷委員 争議行為というのは、正常な業務の運営を阻害するのが争議行為でしょう。その中でここの二条に書かれておるのは、間接的にそういう業務の正常なる運営を阻害してもいいのだが、直接的にはしてはならない。それも電気の正常な供給について、全部してはならないのじゃなくて、手段としては直接的だけであって、間接はいい、こういうのです。ですから意思が初めからあっても、間接的な手段ならいいのでしょう。そこはどうですか。
○中西政府委員 この文字通り、直接にでございまして、間接はこの条文には該当いたしません。
○多賀谷委員 それは意思と関係ないじゃないか。行為と関係ないでしょう。あなたが先ほどからお話になっておるのは、その正常な供給を阻害しようという行為と何か手段と混同されて議論なさっておる。ですからこの中には、たとい正常な供給を阻害しても、間接的ならいいでしょう。
○中西政府委員 もちろん争議行為で労務の供給をしない、あるいはまた機械の運転をとめる、こういう場合には正常な供給を阻害するということを予見しつつやるわけであります。もちろん予見があることは当然であります。
○多賀谷委員 でありますから、その手段が直接であるか、間接であるかということであって、電気をとめようという意思があっても、間接的手段ならいいのでしょう。こう言っておるのです。
○中西政府委員 これは間接の場合には、そういう意思があるかどうかということについての認定というものは、非常にむずかしいのです。従ってこの条文に掲げますのは、直接にということでございます。
○多賀谷委員 立法の趣旨を全然歪曲されて、議論なさっておる。それで、ある争議を行って、たまたま結果として正常な供給を阻害したという認定は、あなたの方でもこれはお認めになっておる。ところがこの法律の条文では、いろいろありますけれども、電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に阻害を生ぜしめる行為をしてはならない。全部してはならないかというと、そうじゃない。間接的にはいい、こういう。ですから、電気の正常な供給が阻害されても、これは初めから意思を持っておってもいい、ただ手段が間接的であればいい。そういうような考え方でしょう。だから労働大臣小坂さんは、直接的な行為をしてはいけないのであって、間接的はいいと、こうおっしゃっている。その点を今ごろになって誤解して議論なさっちゃ困る。そんなあなたのような考えなら、初めから直接なんという字をのければいい。結果としてたまたまそういう行為が起った。これは初めから行為がないですからいいです。初めから供給を阻害しようという行為があっても、そのうち直接だけをこれによって取り締るんだ、こういうことになっておるでしょう。ですから、この立法当時小坂労働大臣は、この行為の中では直接的だけだ、こういうことであるから、結果として出てきたというのは、単なる間接の場合もありましょうし、そうでない場合もある。ですから私は、直接的な行為だけだ。あなたの方は、意思とそれから直接というのを混同して議論なさっておる。大きな間違いだと思いますが、どうですか。
○中西政府委員 間接の手段で、そうして意図はやはり電気の正常な供給を阻害する目的を持っておる。望ましいことじゃございませんけれども、この第二条には直接には該当いたしません。しかしながら、今の塵埃処理業務の拒否の場合、明らかに発電所の一環をなしておる場合、水がいかなければ電気がとまることはきまっておりますから、その業務をやらなかったというのは、これはやはり直接になるかと思います。
○多賀谷委員 今の議論からいえば、これは直接だ。石炭を荷役が揚げない。石炭をたかなければ火力電気はとまるのですからね。あなたのような議論をなさっておったら、直接と間接はわからない。ですから、あなたの方は、とにかく電気の供給を阻害するというものは全部いけないのだという考え方から出発されておる。これは大きな間違いだと思う。そのうち直接だけですからね。この点もう一回明確にお答え願いたい。
○中西政府委員 私ははっきりしておるつもりでありますが、たとえば火力のごとき、ボイラーの中に石炭をほうり込む、これをやめることは、これは直接でございます。荷揚げをして貯炭場に積んでおくという作業は、これは間接でございます。しかし貯炭がなくなりまして、もうこれからいよいよボイラーに炭を入れなければならないということになれば、これは直接になるわけでございます。
○滝井委員 中西さん、あなたは参議院でかつてこういう答弁をしておる。たとえば事務ストが非常に長くなってくる、そうすれば勢いこれは第一線の電気供給の直接の業務に響いてくる。従ってそれは第二条にやはりひっかかる、こういうことになっているんです。これは間接なんです。ところが、この条文を見ると、第二条の方の「電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為」一体この二つはどういう工合にして区別しますか。今までのあなた方の答弁では、この「電気の正常な供給を停止する行為」と「電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為」というのは全くわからぬです。区別ができない。混淆しておる。だから十六国会のときの答弁、今の答弁というものは、全くみそもくそも一緒にしておる。われわれにはわからぬ。従ってこれは、二条の解釈というものが、十六国会における解釈と、今二十五国会における解釈とは、きわめて重大な歴史的な変化をあなた方に来たしておる。従ってわれわれも、国会対策においてこれを十分検討してくる必要があると思います。従ってあなた方もこれは検討してきてもらいたいと思う。そうしてあなた方の明確なる態度を、今度は大臣をして一つ答弁をしてもらいたい。そうしなければ、ここで水かけ論をやってもだめです。われわれも過去の答弁その他を十分検討して参りますから……。
○中西政府委員 かつて申し上げましたのと今とちっとも変っておりません。事務ストが長引けば、もちろん電気の供給に支障を来たすことが起って参りましょう。しかしながらそれは間接であって、従ってその場合、長引いてもしも不測の事態がありますれば、必要によりましては労調法の緊急調整が発動される、これはおそらく佐々木さんが先ほど申された関係だと思いますが、この点は当時と今と全然違っておりません。
○赤松委員 今国会対策から連絡がありまして、これは前の、十六国会における小坂労働大臣の提案理由の説明と違いますし、また政府が議決を求めて参りました時限立法の内容と著しく性格を異にするような御答弁も今ありましたので、非常に重要ですから、私の方でも十分検討いたしまして、再び佐々木君の質問をば継続したい、こう思います。なお政府の方も、事は非常に重大でございますから、どうぞ一つ見解を統一されまして、お互いに間違いない解釈をこの際確立しておきたい、こう思いますので、御了承願いたいと思います。
○佐々木(良)委員 今お聞きの通りの状態でありまして、少くとも私どもが了解しておるのは、先ほど言いましたような直接な行為でありまして、そしてあのときの対象になっておるのは明らかに山元の電源ストであったという事情から見ても、相当大きな相違を来たしておると思います。従って今同僚の赤松さんや滝井さんからお話のありましたような状態でありますので、本日の質問はこれで打ち切らしていただきます。
○佐々木委員長 八田貞義君。
○八田委員 いろいろな委員からいわゆるスト規制法につきまして質問がありましたので、重複しないということで二、三点質問させていただきます、 スト規制法の存続反対の人々は、このスト規制法というのは反動的だ、あるいは非民主的だというふうにいわれておりますが、この法律が非民主的であるか、あるいは反動的かというような判定には絶対的な基準はないと思うのです。それは各党各人の主観的な判断による相対的なものと思うのでありますが、大臣はどういうふうにお考えになっておりましょうか。
○倉石国務大臣 この席でもうしばしば論議されましたように、この法律のねらいは、争議行為の中の一つの手段が著しく不当であって、反社会的なものであるというものをわずかに制限いたしておるわけでありまして、これは一般国民の利益を尊重するという建前でこの法律を作っていただいたわけでございまして、反動的とか、そういうようなことは私どもとしてははなはだ迷惑な批評だと思っております。
○八田委員 結局出されておる法案が反動的だとか非民主的だというのは、主観的な判断によるところの相対的なものであって、いいか悪いかということはやはり審議を通していかなければならぬと思うのです。ですから、審議のルールというものは政党政派を越えて共通であって、絶対的な条件なのです。ところが政府は委員会省略の方法をとられたのでありまして、大臣はどうして委員会の審議を省略してもよろしいとお考えになったか、いい悪いという、ものを判断する絶対的な基準というものはないのです。これは相対的なものですから。ですからこの法案について慎重に審議しなければならぬというルールはあくまで守らなければならぬし、これは絶対的な条件なのです。どうして委員会の審議省略を要求されたか、その点をお答え願いたいと思います。
○倉石国務大臣 私どもは、この法律の御審議を願うための政府の希望としては、しばしば申し上げておりますように、この国会はきわめて会期の短かいものでありまして、同時にまたこの法律は継続審査を許さないという建前になっておるようでありますし、もう一つは、私どもの立場から、今御承知のように秋季闘争というものが大きく新聞などにも取り上げられております、そういう客観的情勢を考えましたときに、私どもとしてはなるべく早く労働界を安定することが必要である、こういういろいろな事情を総合判断いたしまして、ことに法律がすでに現存いたしておることであり、これは議決を願う、つまり本法附則第二項による議決をお願いするだけありますから、そこで委員会の審査を省略して本会議で議決をしていただく、こういうことを希望いたしたのであります。
○八田委員 そのすると大体時間的な制約があった、そうして前の法律と何ら内容が変っておらぬので委員会審議を省略してもよろしい、こういうような御答弁と了解いたしますが、ただ問題は、いわゆるスト規制法というのは、見たところでは三カ条からなるところのまことに簡単なものです。ところが二条の電気事業は公共事業としての対象になっているものであります。そして第三条の石炭鉱業は公共事業としての対象にはなっていない。ですから三条という簡単なものではありますけれども、その及ぼすところは非常に大きいのです。しかもこの法案は十五国会、十六国会ともに非常に紛争を起したものであります。結局内容の違った、及ぼす範囲の非常に違った二つの事業がこの法案に盛られておる。従ってこれは十分に検討しなければならぬと私は考えるのです。そういう意味におきまして、委員会審査を省略されました時間的制約というのは、はなはだ私には了解できない点なのでありますが、その点は時間の関係上先の方に進んで参ります。 先ほど来公共の福祉というふうに言っておられますが、大臣は一体公共の福祉というのはどういうことをお考えになって、公共の福祉というふうに言っておられるか。いろいろな委員の話を聞き、かつ政府当局の答弁の中におきましても、いつでも公共の福祉という言葉が出て参ります。一体公共の福祉というのは、どういうことをお考えになっておるのか。社会党の人々の言う公共の福祉についても私非常に疑問点があります。また政府当局のいう公共の福祉というものに対しても、疑問点があります。一体公共の福祉というものは政府ではどういうふうにお考えになっておられるのか。
○倉石国務大臣 最初の方のお話でございますが、石炭事業は、御承知のようにエネルギー資源としてはきわめて重要なものであり、そしてまた事業の公共性も御承知の通りであります。そこでこの石炭山というものは大事な国の資源でございますから、こういうものを滅失してしまうようなことは国家としてはまことに困ることであります。そこで御承知の保安要員の引き揚げということをもしほんとうに徹底的にいたしたいということになれば、ガス爆発を生ずるような危険もあり得るでありましょうし、また坑口に溢水して救うべからざる結果になってしまう。そういうことになりますと、第一には国家の重要なる資源が滅失するという非常なる国家的損失はもちろんのことでございますが、争議行為が妥結したときに、やはり労働者が復帰すべき職場を失ってしまうといういろいろな意味において非常な国家的損失であります。従ってこういうようなことはしてもらいたくない、こういう考え方から本法に一緒にいたしておるわけであります。そこで、国家の重要なる資源を滅失してしまうような行為、または一般大衆の利益に非常な関係のある、日常生活に重要なる関係のある電気産業等は、つまりこういう仕事に従事いたしておる方々は、もちろん憲法二十八条にいう労働基本権は尊重せらるべきでありますけれども、翻って一般国民大衆が、社会通念上こういうことはわれわれ一般国民大衆としてははなはだ困ることだという、そういう最大限度のところを取り上げて、私どもは本法にいわゆる争議行為の一部の手段を規制しておる、こういうことでございますが、その前提に立っておるものが御指摘の公共の福祉でございます。公共の福祉ということについては、なかなかこれはむずかしい言葉でございまして、学者によってもいろいろな御議論があるようでございますが、やはり個人の自由権というものはわれわれが日常生活をする上において憲法はこれを保障いたしております。たとえば銀座へ私どもが出かけます。銀座の四つ角に立って、どっちの方角に突っ切っていこうと、それは自由でございましょう。われわれは自由に歩行する権利を持っている。しかしながらやはり大衆活動をいたしていくためには、まっすぐ歩いていく者だけ通しておったのでは、横を突っ切っていく者が通るわけにいきません。従って赤と青との信号でこれをセーヴしている。こういうことは、大ぜいの人たちの団体生活というものをスムーズにやらせるためには、個人の自由としては、どこでいつ横切ろうとも自由かもしれませんが、やはり団体活動をいたしていくためには、それを制限する。やはり大ぜいの人の団体生活を便宜ならしめていくためには、大ぜいの人の利益を尊重しなければならない、そのためには自分の個人としての不便というものは忍ばなければならぬじゃないか。そういう考え方を当てはめてみますと、今問題になっておりますたとえば電気の争議、これはスイッチ・オフをしたり機械がとまったりするということの結果——一体労働争議というものは、先ほど来しばしばここで論議されておるようでありますけれども、経営者と労働者との間にいろいろな条件で話し合いがつかないときに、組合側の希望がいれられないならば、経営者たるあなたに経済的損失を与えるぞという一種の脅迫行為であります。しかしこれは正当なる労働運動であるがゆえに、違法性は阻却されてむしろ保護されておるのでありますが、しかしその保護を与えるべき団体行動権の中には、当然やはり今申しましたように、そのことの結果、本来ならば相手方の経営者が非常なる迷惑を受けるということのために争議行為はあるのですけれども、相手方の経営者が迷惑を受けるよりは、そのことの結果経営や争議に何の関係のないわれわれ一般大衆が非常な迷惑を受ける、そういうことは一つやめようではないか、こういうことから、自由権の発動に対してはやはり公共の福祉が優先するのだ、こういういい方をいたしておるのであります。
○八田委員 要するに大臣の言われる意味は、権利の主張はよろしい、ただ権利と権利とが衝突しては困るのだ、いつでも権利というのは社会生活とマッチした調和のとれた権利の主張でなければならぬというこの公共の福祉の追求、それを大臣は言っておられると思うのであります。権利は幾ら主張してもいいのです。しかし権利と権利とが衝突しては困る、いつでも権利の主張は社会生活と調和のとれたものでなければ困ると思う。だから民意の政治というものは国民総意の政治であります。すべての意思とは明らかに区別されなければならぬ。しかも国民総意は公共の福祉であります。すべての意思は私の利益を追求するものである。ですから先ほど法務大臣が、所有権の上にあぐらをかいてはならぬ、争議権あるいは団体権の上にあぐらをかいてはならぬと言われたが、こういうことがすなわち提案理由に書いてあるところの健全な労働慣行というものになると私は思う。しかも労使の間の良識というものはいわゆる公共の福祉であります。権利と権利とが衝突しないような、社会生活と調和のとれた権利の主張でなければならぬというのが、労使の良識であると私は思う。また健全な労働慣行というのは、所有権あるいは団体権の上にあぐらをかいてはならね、こういう慣行であると思う。そこで大臣にお伺いしたいのでありますが、公共の福祉という面におきまして、先ほど申し上げましたような面から考えてみまして、この法案が、果して今申し上げましたような公共の福祉というはっきりとした観念から作られたものであるかどうかということについて、二、三点をお伺いしたいのであります。というのは公共の福祉と争議権との関係であります。公共の福祉というようなはなはだあいまいな言葉で争議行為を規制する範囲が公共の福祉の原則を妥当に規制しているかどうかということが問題となってくるわけであります。その中でも一番大きな疑問となっているのは、公共の福祉を理由として何を保護しようとしておるかということであります。そこでこれを二つに考えてみなければならぬと思うのです。公共の福祉という観念からこのスト規制法というものを出したのが、しかし一体何を保護しようとしているのだ、その意図、目的であります。 そこでまず私の疑問点となるところは、この法律は公共の福祉の擁護を掲げておりまするけれども、労調法の三十六条のほかにさらに作られたということから考えまして、本法の核心は、炭鉱施設、設備、資産の健全という資本擁護にあることは明白でございます。大臣も御存じのように、労調法三十六条は人命の保護だけを規定しているものである。ところが施設については何らの保護規定ではない、こういうふうに解釈する人がありますが、一体労調法三十六条というのは人命の保護だけを目的として制定されておるものであるか、施設は全然考えられていないか、この点について大臣の御見解をお伺いしたいのであります。
○倉石国務大臣 この前に石炭争議について緊急調整を発動いたしたことがありますが、この労調法は、労調法に定めてありますように、ああいうような公共性のある事業の争議についてなるべくこういう緊急調整のような発動はしない方がいいのでありますが、一回過去においてそういうことがございます。本法は、御承知のように石炭鉱業の方は労調法で話ができます。一方あなたの御指摘になりましたように、電気と石炭について昭和二十七年のああいう大きな争議のあとを受けて、当時の社会通念上こういうことは困るではないかという意思のもとに、その当時の政府が立案をいたしたわけでありまして、国会もこれを認めて、この法律が必要であるということが国会の意思として決定いたしたわけでありますが、この二つの事業に従事いたしておる労働組合の争議手段の一つのものを規制するためには、やはり私は、先ほどもここでお話がありましたけれども、労働関係法に規定するということよりも、現在の段階においてはこういう単独立法でこの程度のことを継続いたしておくことが妥当ではないか、こういう考えでおるわけであります。
○八田委員 今私が質問申し上げましたのは——大臣ちょっとお間違いかと思うのですが、私申し上げたのは、石炭鉱業につきましては労調法の三十六条に規定してあるのですね。これは解釈によっては人命の保護だけを規定しているのだ、施設の保護については触れていないからというふうに解釈する人がある。そこで労働大臣にこの労調法の三十六条というのは人命の保護だけを対象とした規定であるかどうかということをお伺いしているわけであります。
○倉石国務大臣 そういうふうに解釈をいたしておるようであります。
○八田委員 そこで三十六条のほかにさらにスト規制法で第三条を作られたというのは、施設の保護という面が新たにつけ加えられたわけですね。三十六条という法律は要するにこれは人命の保護だけであるから、これだけでは炭鉱の施設が破壊される、施設の保護もどうしても作る必要があるということでこの三条をお作りになったのではございませんか。
○中西政府委員 労調法三十六条は安全という字を使っております。安全というのは従来の解釈から人命ということです。そこで保安という場合には四つございまして、人命に対する危害、鉱物資源の保護、鉱山施設の保護それと鉱害、こうなりまして、いずれもこれを廃止するということは公共の福祉あるいはまた公益均衡あるいはまたみずからの職場をなくするというスト本来の趣旨に反するという点からこの三条が設けられたものであります。
○八田委員 この問題はあまり追及したくないのですが、そうしますと、三十六条があって新たに三条が作られたというのは、結局三条の核心というのは鉱山施設、設備、資産の保全というような資本擁護にある、こういうふうに解釈してよろしいですね。
○中西政府委員 労調法三十六条の方は安全施設をとめてはいけない、こういう規定なんです。三条の方は行為でありまして、その点から若干違いますのと、もう一つはおっしゃいましたように単に人命の危害だけでなくて、鉱物資源の保護または鉱山施設の保全という点、さらには鉱害がそれに加わったわけであります。
○八田委員 ちょっとあなたの答弁が私はっきりしないのですが、三十六条という規定は人命の保護でしょう。施設の保護は入っていないのですね——前に言われたでしょう。そこをはっきりしてもらいたい。
○中西政府委員 その通りでございます。規定の仕方を申し上げましたので、三十六条は安全保持の施設の正常な維持運行となっております。安全のための施設の正常な維持と運行ということなんです。こちらは保安業務というところで若干違うということを申し上げたのでありまして、今おっしゃった施設と私の申し上げたのとはちょっと違うということであります。
○八田委員 ですから、この三条というのは、三十六条というものがあって、さらにまたこの三条いうものが出てきたわけですね。三条というものをつけ加えたわけですね。つけ加えたというのは一体何かということです。そうしますと、結局その核心は、炭鉱施設、設備、資産の保全という資本擁護にあるということが明白であると私は言うのですが、その点了承なさるわけですね。 そこで一体この資本擁護の業務に当るために、経営者の命令に基いて、争議中の労働者の意に反してまで労働せしめることは、憲法十八条、いわゆる強制労働の禁止、これに照らして許されないと思うが、一体どうであろうかというのです。この点どうです。
○倉石国務大臣 御承知のように労務契約をやっておるわけでありますから、労働者側が労働条件が気に入らないということで雇用契約を破棄されることは少しも束縛されておらないわけであります。従って今あなたのおっしゃるのは多分、争議行為がある、そのとき現実の問題ではロックアウトが行われた、そういうときに、われわれは労務提供を拒否したいのだ、しかしこの法律で保安要員を引き揚げてはいけないということになると、強制労働になるのではないか、こういうふうなお話かと思いますが、やはり争議中は御承知のように雇用契約というものは継続いたしておるわけでありますから、当然そこに雇用されておる方々、その中の保安要員だけは労務の提供を怠ってはいけない、こういうことがこの法律の規定でございます。しかしそんなところに働いているのは自分はいやだということで、雇用契約を破棄されてよそに行かれるということは、これは雇用契約の問題でございますから、自由なことでございます。
○八田委員 雇用契約の意味から見た自由ということは当然わかるわけです。ただ問題は団結権を乱るわけですね。自分は勝手にこの業務がいやになったからほかの方にやってくれということは自由ですね。しかし保安要務という事業に組織労働の一員として入っておるわけですね。その場合において、自分はこの仕事が好きなんだ、しかし労働の団結権を乱すようなことはやりたくない、だから自分は労働のいわゆる団結権のもとにやらなければならぬ、しかしこの規制法によって自分の意思に反してやらなければならぬというところに、私はやはり憲法十八条の関係があると考えるのでございますが、いかがでございましょうか。
○倉石国務大臣 あなたのおっしゃっておいでになることは、自分はこの会社に勤めておりたいんだ、しかし争議が行われた、そこで組合として団結をしておる、その組合の団結権というのは申すまでもなく、それから起きてきた団体交渉などをやって、相手方に対する一つの示威行動をおやりになるためにやっておいでになるのでありましょうから、その会社に勤めておりたいという考え方であるならば、やはりその争議行為をするかどうかというときに、組合内部で投票なり何なり大会が行われて、ストライキをやるかどうかということを自主的に決定されるのでありますから、そのときに十分に御主張なさるべきであって、ストライキをなすべきであるという決定に自分が賛成をされましたならば、やはりそのストライキをやる仲間にお入りになることは、これは自分の自意識でおやりになることです。しかしながら雇用契約をもってその炭鉱に従事しておる限りは、保安要員という立場に立っておる者は、その保安要員というものの労務の提供を怠ってはならないということでございますから、それはもうその組合に参加し、その会社に就業するときに、あらかじめ承知していることであります。従ってそういうことはおもしろくないということだったらば、やはり雇用契約を破棄して、そして自分はそこの会社からやめるということにならざるを得ないと思います。
○八田委員 そこで大臣とちょっと考えの違うところは、私の質問がまずいかもしらぬのですが、結局こういうことなんですね。これは三十六条のほかに、新たに三条が加わったということは資本擁護であるということですね。そうしますと、この三条というのは労働者に対するところの団結権とか争議権に対して規制を加えておる。しかし経営者に対するところの規制というものはないということです。不均衡じゃないかというのです。そうでしょう。大臣、どうですか。少くとも労働者の方に対しては争議権とかあるいは団結に対する権利を押えておる。ところが施設の保護ということになれば、施設を保護するためにお前さんの争議権、団結権というものに対して制肘を加えるというならば、一体経営者にはどんな制肘が加わっておるのですか。
○倉石国務大臣 少し私の申し上げている言葉に誤解があるかもしれませんが、団結権に対して何の制約も加えてはおりません。団体交渉権の中に含まれる争議行為の一部の手段を抑制しておるのであります。しかもそれは当然なすべきではない行為なのであります。そのことをやってはいけないということなんでありますからして、私どもはそういう妥当ならざる行為というものは憲法二十八条に保障されておる基本権を侵害するものではないのでありますからして、私どもとしてはこういうふうな制限を加えることによって、労働者の基本的人権を侵害するものではないという建前であります。それから資本擁護というお言葉がございましたが、これもいわゆる資本家擁護ではないのであって、つまり国家の大切なる資源を減失するようなことは困ることでございますから、これは国家としては守らなければならぬ。従って今お話にありましたように、ガス爆発を招来したり溢水をしたりするようなことは、八田先生も御存じのように溢水の罪というのは、このことだけでなくて、この行為がだんだん激しくなったときに、やはり刑法上の刑罰規定がございます。それから鉱坑焼燬というふうな一番重いものは、多分死刑があるのではないかと思います。そういうような犯罪の結果を招来するような行為につながるようなことは、これは社会通念上やるべきではない。従ってあなたが今おっしゃいました中に争議権を抑制するというお言葉がございましたけれども、聞き違いかもしれませんが、それは争議権というものは、そういうところまで野放図にやってもいいのだという権利があるので、それをこの法律で一部押えた、というふうにとられるのは私どもとしては心外なんでありまして、そういうことじゃないのであります。こういうことはやるべきでない。井堀さんからさっきお話がありまして、私との間に論争が行われましたのも、その点だけの食い違いのようでありますが、私どもとしては、さっきも外国の例を引きましたが、きわめて新しくできて参りましたインド憲法などを見ましても、やっぱり労働者の争議のことについては、法令の定むる範囲内において、あるいはその他の諸国にもございますが、その法令というのは何であるかといえば、こういうふうなその国の大事な財産を滅失してしまうような結果を招来するようなことはやってはいけないという法律があれば、その範囲内において労働者の基本権は認めるのである。私は日本の憲法でも同じ建前である、そういう考え方でございますからして、一方を保護し一方を抑圧するなどということは、八田先生はそういうふうにはお考えにならないで、かえって私に答弁をさしていただくためにおっしゃったのかもしれませんけれども、決してそういうわけではないのでございまして、その点は一つ御了解願いたいと思います。
○八田委員 そこでこの問題からさらに進みまして公共の福祉という面から見まして大衆の利益との関係、いわゆる公共の福祉というのは大衆の利益という面からでございますが、国民経済と国民生活を擁護するために制定されたというならば先ほど来質問がありましたが、労調法三十五条の二によるところの緊急調整制度との関連が問題となってくるわけでございます。緊急調整制度のほかにこの法律を準備する実際上の利益があるとすれば、この法律は緊急調整制度と違って直接には資本家の利益を守るためであり、しかも政府が責任を負わない処置をとるためというような解釈をする人もあるわけであります。そこで公共の福祉というようないかようにも解釈されるところの言葉によって、しかも間違った観念によってやられた場合、労働者の争議権を奪ったというふうに解釈されることは日本の憲法の現実に照してみて正当ではない、こういうようにも解釈されるわけですが、一体大臣としてこの労調法三十五条の二による緊急調整制度と、大衆の利益と関連をどのようにお考えになっておられるかどうか。
○倉石国務大臣 御承知のように本法で規制いたしてありますものは、先ほど来申し上げておりまするように、社会通念上著しく妥当を欠く争議手段、そういうものを取り上げて規制いたしておるわけであります。そのことのわれわれの考え方についてはしばしば申し上げた通りでありますが、緊急調整の場合は、争議行為そのもの全体について、公共性のあるものについて必要のある場合に緊急調整を発動するということでございまして、本法の制定の趣旨はこの争議行為の手段としてごくわずかなものを取り上げて、そしてこれはなすべき行為ではない、反社会性のものであるということを言っておるのが本法なんでございますから、争議行為の一つの手段を取り上げてやっている一方の緊急調整の方はこの争議行為全体について公共性のあるものについて必要のある場合にこれを発動するということでございますから、その制定の趣旨において違っているわけであります。
○八田委員 時間がありませんから進めて参りますが、いわゆるスト規制法の存続がいいか悪いかということにつきましては、この法律の制定の趣旨と、この三年間に電気、石炭の労使関係がどうなったかということを冷静に客観的に検討してみなければならぬと思うのであります。 まず第一に存続反対の側の人の中には、三年間にこの法律に違反した事件は一つもないといっている人もありますが、それは一体誤まりであるかどうかということにつきましては、野澤委員の質問があって、それについていろいろ例をあげられたので、これについては私は、答弁を要求いたしませんか、大体法律かある以上守るのが当りまえだ、違反事件がなかったからその法律が不必要であるというのははなはだ筋が通らぬと私は思うのですが、一体大臣どうですか、
○倉石国務大臣 そのことにつきましては、私は労働関係というものはなるべく法律や規則で抑制するようなことをしないでいきたいものだ、こういう考えであることはしばしば申し上げている通りでございまして、本法につきましても、私どもとしてはかようなものを特に制定しなくても、健全なる労使慣行が行われるようになれば、こういうものはない方がいいのだ、そのことはさっきストックホルムの監獄が博物館になったお話をいたしましたけれども、どうも一般的に考えてみまして、何かやりそこなった方があって、刑罰を受けたという方があんなことはやらないのだからもうあういう刑法の条文はやめたらどうだというようなことになりましても、それはなかなか困難なことでございます、しかしながら私どもとしては、一般の刑罰規定などと違いまして、労働関係のことでございますから、日本の労働運動がたとえばドイツのように、あるいはイギリスのように成熟して参りましたならば、やはりこういうような特別なる立法措置をしなくてもいいではないか、そういうふうに考えております。
○八田委員 日本としましては公益事業全般としてどんな制度がいいか、反対者の言うように、ガス、水道などにまで拡大した方がいい、こういった点については今後に残された検討問題といたしましても、少くとも現状の日本において、ただ一つ言えることがある、というのは、日本人というものに法律が施行されればよくそれを守っていきますが、法律が禁止していないものは、ぎりぎりのところまで実行するというようなことがあるわけであります。これは遺憾ながら現実であります。そこで先ほど来大臣もいろいろな委員の質問に対しまして、電気事業関係の労働者は今日電労連というような穏健な団体ができて、しかも電労連のような考えでいくならば、将来ともこのような法律というものは必要じゃないだろう、そういう労働者の良識が生まれてほしいものだというような意見も述べられておりますが、ただ電気事業につきましては、良識のある現在の組合は再び昔のような停電、電源ストは行わないかもしれません。が、しかし問題は組合員とか一般大衆にあると思うのです。禁止が解ければ必ず組合員からそういうストができるにかかわらずやらないことを攻撃し、宣伝し実行を迫るものであります。この点が私問題になると思うのですが、日本人の法律に対するところの解釈、あれば守る、なければ法すれすれのところまでやる、こういう点に大臣の不安があると思うのでありますが、一体大臣は私のこの考えに対して同感であるかどうか。大臣の御所感をお願いしたい。
○倉石国務大臣 全く私も八田さんと同じような考えで、同じ憂いを持っておりますので、本法の延長を御審議願っておるわけであります。
○八田委員 同じくスト規制法の存続反対という意見の中にも、全労と総評とその反対理由が違っているようであります。大臣も全労の和田さんの意見には自分は賛成している、同感だということを述べられております。ですから存続反対といっても全労と総評がその反対理由が違っているということは現在において明白であります。そこで私は先ほど来社会党の各委員からの質問を拝聴しておったのでありますが、全労系のような質問、総評系のような質問、こう互いに相交錯をしているように私拝聴しておったのであります。一体社会党がもしも政権を取った場合に、総評や炭労が今日の態度を変えない限りこの法律で押えているような争議戦術をとってくるとすれば、社会党も必ず迷惑するはずであります。そこで私はこの同じ反対の中にも反対理由が違っているということです。ですから社会党としては私はこの点をはっきりすべきだと思う。大臣もいろいろな質問をお聞きになって反対理由が違っているということで非常に答弁に注意しておられると思うのでありますが、私が今申し上げましたように、現在の総評と全労では意見が食い違っておりますね。同じ存続に反対はしておりますけれども、反対理由が違っておりますね。この点でございます。大臣はこういったことにつきまして、どういうふうにお考えになっておりますか。
○倉石国務大臣 お説のように、この法律についてのいろいろな御批判がありますが、全労の書記長のお書きになったものを拝見いたしましても、それから最近お目にかかりましたときの御意見も、一部の反対論者とは非常に違うようでありますが、この法律の延長はさせない方がいいという点においてだけ一致しておるようであります。先ほど井堀さんのお話にもありましたが、私どもの方は自由民主党というものは、何でもかんでもこれの存続を無批判にきめたんだ。また社会党の方は社会党の方の立場で、これは反対だときめたのだからもうしようがないじゃないかといったようなことでございましたが、私の方はとにかく三年間の間いろいろ検討いたしまして、それからまた今年の夏から党内でもこの問題については十分に意見の交換をいたしまして、そしてやはり存続の必要を認めるということでございますが、私どもが接触いたしております数多くの労働組合の指導者たちの中には、ほんとうは国会の都合で反対者もあるかもしれないけれども、これはむしろあった方がいいのだというふうな考えをお持ちのような方も見受けられるようであります。これははっきりそうはおっしゃいませんけれども、どうも実際に指導していくにはその方がいいのではないかというふうな、きわめて打ち解けたお話し合いをなさる方もあるのでありますが、私どもとしては究極において何を考えているかといえば、さっき申し上げましたように、こういうような法律を特に制定しなくてもいい時代が早く来ることを待望する。しかし私この間ヨーロッパへ行きましてこのことが頭にありましたものですから、諸国の実例を、訪問いたしました各国の労働大臣に会いまして、特にこういうようなことについて話をしてみましたが、単独立法でこういうふうな性質のものを作っている国はありませんが、御承知のように公共事業についてはいろいろな角度から制限をしておる。それからまた労働組合自身の規約の中で、もうにっちもさっちもいかないように、公共事業については制限を加えておる組合もたくさんございます。まあそういうようなことで、私はいろいろな立場を離れてフランクな気持で、この法律の実体を認識していただけば、おそらくこの法律の存在は無意味じゃないかというふうな議論は成り立たない。おそらく国民大衆はみんなこれを支持しているという確信を持って政府は提案いたしております。
○八田委員 お疲れのようですからもう一点だけでやめますが、アリストートルが、法律は不正義のある人々のために存在し、正義は法律によって支配されている人と人との間にのみ存在するということが言われておる。そこで私この法律を拝見いたしまして、相当十六国会でも問題になっておるわけですね。私は大臣がこれを完全なものとしてお考えになって出したかどうか、非常にこれは私は不完全なものだと思うのです。この法律は罰則規定がございませんですね。一体法律を作るならばはっきりと罰則規定をつけておった方が正しい労働者を守るのではないかと私は考えるのです。公益のために立法する必要があるとするならば、停電とかあるいは炭鉱ストの事態が組合の争議によろうと会社側に起因しようと、天災による不可抗力を除きまして、その理由のいかんを問わず、損害に賠償を義務づける方がよいと私は考えますが、一体大臣はどうでしょうか。
○倉石国務大臣 御承知のようにこの法律は著しく妥当を欠くという争議行為の一つの手段を規制いたしておるわけでございますからして、このことによって八田さんも御存じのように、私どもとしてはここに禁止されてあるような正当ならざる行為を労働組合がとったときには、労働組合法上の保護を与えられなくなります。従って正当なる労働組合運動ということにより法の保護を受けておることの適用を除外されることになりますから、従って他の法令に違反した行為が続いて行われておるとすれば、それはそれらの法律によって処罰されるわけでございます。従ってさっき申しましたように、もっとそれが突き進んでいけば、溢水の罪であるとかその他鉱坑焼燬といったような重い犯罪にもなるような結果になる。こういうことでありますが、まあ労働関係法にはそれ自体になるべく私どもは罰則などをつけない方がいいと思う。それで労働組合法上の保護を受けなくなる、その結果、やはりそういう違法な行為をした組合というものは非常な損失をこうむる。従ってあなたのおっしゃるように、組合法上の保護を受けないならば当然損害賠償の追及も免れなくなるだろうと思います。
○佐々木委員長 次会は明二十二日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後六時二十八分散会