公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第3号
- 発言数
- 40 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1956/11/30
会議録
○青木委員長 これより会議を開きます。 公職選挙法改正に関する件について議事を進めます。この際、さきの参議院議員全国区選挙におきまして、山口県の選挙公報誤記事件について、自治庁より報告を求めたいと存じます。兼子選挙部長。
○兼子説明員 去る七月八日に執行されました参議院議員の通常選挙全国区の選挙につきまして、山口県におきまして選挙公報の誤刷配付事件を惹起いたしましたことは、はなはだ遺憾とするところであります。この事件は、発端からその概要を申し上げますと、七月四日午後六時に、山口県の選挙管理委員会におきまして、でき上りました選挙公報を原稿と照合中、十二候補者にわたる誤載を発見したのであります。直ちに、午後七時に、県の選挙管理委員会は、そのとるべき措置を協議いたしますとともに、一方新公報印刷につきまして中国新聞社に依頼したのであります。前の誤刷公報は山口県下の防長新聞に依頼印刷いたしたのでありますが、正公報の印刷は広島県に本社を有する中田新聞社に依頼をしたのであります。それで、自治庁に直ちにその旨の連絡がありまして、私ども、その誤載の公報は直ちに回収して、新たな公報を印刷して、間違いなく法定期日通りに配付すべきであるという指示をいたしたのであります。県におきましては、午後八時から、各地方事務局、各市町村選挙管理委員会に連絡いたしまして、回収に努力をいたしたのであります。 一方、中国新聞社におきましては、七月五日午前八時までに校正を完了しまして、午前九時から輪転機による印刷を開始し、五日の午後二時までには三十九万部全部の印刷を完了いたしまして、公報ができ次第遠隔の地から輸送を開始しまして、五日の午後七時四十分までには郡市への配付を完了したのであります。 次に、各地方事務局及び市の選挙管理委員会では、五日中に町村の委員会、支所、出張所まで送付し、公報はおそくとも翌日の六日中には各世帯に配付されておるという報告を得ておるのであります。 次に、誤載の原因でございますが、誤載の原因は、調査いたしました結果、県選挙管理委員会が公報の印刷を今回から写真印刷といたしたために、各個人の掲載文の内容について誤まりがないものと信じて、かつ、予定より印刷がおくれていたこともありまして、校正は、登載順序の、すなわち候補者名の確認を行なって印刷に付したのであります。しかるに、新聞社においては、掲載原稿を切り張りしまして写真にいたしました関係上、候補者相互の文章が入りまじったことによって、十二名の候補者の公報を誤刷いたしたことになったのであります。 次に、訴訟の関係を申し上げますと、好川不二美という有権者から訴訟が提起されまして、その請求の原因は、昭和三十一年七月八日執行の参議院全日選出議員選挙に際し、山口県選挙管理委員会は誤まった掲載文を公報に掲載し、昭和三十一年七月五日ころ山口県下のほとんど全世帯に配付した。右の掲載文の誤まりは十二候補者関係に上り、かつ、その内容は、政治に対する信条、スローガン等政見に関するもの、党籍及び党の公認等公報掲載文として最も重要な意味を持つ点に多く存する。従って、右公報の配付は公職選挙法第百六十九条第二項に違反し、同法第二百五条第一項にいう「選挙の規定に違反すること」に該当する。かかる場合、たとい後に適法な掲載文の公報が公選法所定の手続通り配付せられたとしても、右の違法性は治癒せらるべきものではない。 さらに、請求原因として述べておりますことは、次に、山口県選挙管理委員会は、右誤刷の公報配付後、適法な掲載文の公報を新たに印刷したが、公選法所定の配付期限である選挙期日前二日まで、すなわち本件選挙に関しましては七月五日中には、県下の選挙人所属の世帯には全然配付せられなかった。右公報は六日中に山口市及び防府市の僅少の一部地域に配付せられたにとどまり、選挙期日の前日の七日中にも県下の全市町村中おのおの約半分の地域には配付せられなかった。従って、右第一項記載の所論の当否はしばらくおくも、右公報未配付行為のみで公選法第百七十条に違反し、同法第二百五条第一項にいう「選挙の規定に違反すること」に該当する。 請求の原因の三といたしましては、右第一項、第二項の記載のように、公報発行手続、配付につき重大な違法を犯したため、選挙が選挙人の自由に表明する意思によって公明かつ適正に行われたとは言いがたく、当然選挙の結果に重大な異動を及ぼすおそれがある、しこうして、右第一、第二項の選挙の規定違反はいずれも山口県全体に関するものであるから、山口県全部の選挙が無効である、このように主張するものであります。 これに対して、中央選挙管理会といたしましては、請求の原因に対する答弁といたしまして、第一に、請求原因の一に記載されている事項中、当初に配付された選挙公報の一記載に誤謬のあったことは争わない。ただし、その誤謬のある公報が山口県下の全世帯に対して配付されたという事実は認めない。その他の記載の事実は争う。(二)といたしましては、本件選挙において選挙公報に関する法定の配付期限を七月五日までとする原告の主張は誤まりである。その期限は従来の法律の解釈通り七月六日までである。(三)といたしまして、右法定の配付期限内には、誤謬なき選挙公報が山口県下の各世帯に配付せられている。しこうして、誤謬のある旧公報は回収せられ、従って、当初に記載に誤謬のある選挙公報が配付せられたことに関する違法は、旧公報を回収し、あらためて誤謬なき選挙公報が法定配付期限内に配付されましたことにより、完全に払拭せられた。(四)に、参議院全国選出議員の選挙に関し、選挙の効力を争う場合においては、選挙区たる全国を基本とするか、または各円票区が単位とされなければならず、請求の山口県という区域は対象にはならない。(五)に、かりに原告主張のような違法事実があったとしても、それは当選の効力に関する問題であって、選挙の効力に関する問題ではない。このような理由によって答弁をいたしたのであります。 訴訟の経過につきましては、八月六日に原告好川不二美から東京高等裁判所に対して訴訟の提起がありまして、九月十一日に第一回の口頭弁論、十月六日に第二回の口頭弁論がありまして、被告からは有権者の数等の資料の提出、それから原告側からはその配付された区域が具体的にどこであるかというような資料の提出をすることになったのでありますが、十一月八日の第三回の口頭弁論が予定されました前の十一月七日に原告の弁護士の方から訴訟取り下げの書類が出まして、われわれといたしましても、訴訟で争うということは必ずしも本意でないので、十一月八日に訴訟取り下げに同意することにいたしたのであります。それによりまして訴訟事件としてもこれは終結をいたした結果に相なっております。 なお、選挙公報の誤刷につきましては、十分注意をいたしておるのでございますが、写真印刷にたより過ぎたということが今回の事件の原因でございまして、今後写真印刷をする向きに対しましては十分注意をいたしたいと考えております。
○青木委員長 何か御質問はございませんか。
○井堀委員 経過の報告の中に明らかにあるように、訴訟の問題は提訴された方の側が取り下げて、一応問題は解消したようでありますが、事柄はきわめて重要だと思います。公報の誤載というようなことは、経過の中で報告がありましたように、一応その誤まりが早期に発見されて訂正を加えたとしても、その期間にもうすでに潜在意識となるべき一つの事実を作り上げているわけであります。こういうものはあとで訂正して取り消しのできることではないのであります。まあその誤載の原因については、何か新聞社の組み違いに根拠があるような御報告でありますが、これはもちろん新聞社は機械的な労務の提供だと思うので、いうまでもなく選挙管理当事者の当然の責任でなければならぬことは明らかであると思います。われわれは、この争いを法廷で黒白をつけるということよりは、もっとそういう事態の発生したことそれ自身に重大な関心を持つのであります。今後かかる事態の発生しないような措置を講ずべきだと思います。今聞くところによりますと、一、二その欠点を是正する道を講ずるような発言もあったのでありますが、ただそういうことだけで、今後こういう間違いを再び起さないという答弁には、われわれちょっとまだ懸念がある。なお、こういうことについて、自治庁の今後の対策その他についてお考えがあるかどうか。
○兼子説明員 お答えいたします。確かに選挙公報の誤刷事件は重大な誤まりでありまして、関係選挙管理委員会といたしましては全員責任を負うて辞職いたしまして、関係者の懲戒処分が選挙管理委員会によってされたのでございます。ただ、私ども、あらゆる機会に、管理機関に対しまして、氏名掲示あるいは選挙公報等の誤まりないように厳重に注意をいたしておるのでございます。選挙公報につきましては、運動期間が短縮されました結果、現実に選挙公報の膨大な部数を印刷して末端の世帯まで配付するということは、非常な事業でございまして、地域によりましては、現在の法定の期間では無理ではないかというふうな点もあるのでございます。そういう点で、原稿の締め切り等も少し繰り上げる必要があるのではないかというような点も研究いたしております。事件に対しましては、今後かような事件を起さないように、十分戒慎を加えたいと思っております。
○井堀委員 今の御答弁の中で非常に重要だと思うのは、責任者はすべてその責めをとって辞職されたという問題でございます。一体この場合、責任者というのはどの限界で、どの程度の者がおやめになったのか、具体的に一つ……。
○兼子説明員 国の選挙の管理執行は、府県選挙管理委員会に法律上委託されてございます。でございますので、選挙公報の執行につきましては、府県選挙笹垣委員会がその責任者でございます。その全般の責任につきましては中央選挙管理会が当然持つわけでございますが、公報の発行につきましては府県選挙管理委員会がやっております。
○井堀委員 そういたしますと、山口県選挙管理委員会委員あるいは職員、そういう人たちはすべてやめたということになるのですか。それともそのうちのどういう人々が責任をとっておられるか、はっきりしていただきたい。
○兼子説明員 選挙管理委員の方が全員辞職をされて、すでに新しい委員が補充退任をされております。職員につきましては公報の校正等の関係の責任者が減俸処分に付されております。
○井堀委員 そうすると、今のところ、責任の所在と、それから責任をとられた範囲は、選挙管理委員の総辞職と職員の減俸という処罰にとどまったようでありますが、先ほど御答弁の中にあるように、中央選挙管理会の責任の問題になる。そこで、私どもは、信賞必罰を明らかにする意味で聞いておきたいと思うのですが、監督の地位にあり、あるいは、こういう問題については、私ども日ごろから主張しておるように、選挙管理委員会の機構というものが問題になると思う。非常に重要な責任をとらせる。今回の場合は、総辞職をした選挙管理委員諸君にはまことに御同情にたえぬと思う。というのは、その責任の地位は高く評価されておるし、責任の追及はきびしい。しかし、それを遇する道は、まことにその任にたえるような待遇はいたしていない。こういう点に私は大きな原因があると思うのです、結果から見て、山口県だけに起った事件ではありますけれども、これは、職員の監督指導に当りまする管理委員のやめられた人、責任をとられた人々は、みないわば非常勤の人々です。非常勤の人がこういうような仕事に事実上監督の責めをとるということは、実際上私は不合理だと思う。こういう点について、自治庁としては、ただその責任をとらして、やめられたからそれでいいのだ、交代したからそれでいいのだというわけじゃないか。やはりこういう点に対する具体的な措置というものがとられながら——その責任に対する厳重な処罰はいいといたしまして、そういう責任を追及するかわりには、やはりそれを遇する道を、責任を十分とれるような状態をこの際考えるということが絶対の条件ではないかと思うのですが、こういう点に対して、次の新しい年度の予算などについてもこういうことを十分考慮されておるかどうか、こういう点についても私は伺っておきたい。 それから、もう一つは、そういう意味で、自治庁としての責任も私は重大ではないかと思う。そういう、十分な活動のできない、実質的な責任をとるような地位を与えないで、あやまちだけを責めるというような結果になったことは、自治庁としては、選挙管理委員会の制度それ自身に対する問題を十分考えてもらわなければならぬ。こういう点に対する答弁を一ついただきたい。
○兼子説明員 このような事件を惹起いたしまして、責任をとる機関としては、府県選挙管理委員会が責任官庁でありまして、自発的に辞職をするという責任をとられたのでございます。これは私どもの方から責任をとれということを申し上げたのではないのであります。それから、職員の監督につきましては、府県選挙管理委員会が部下職員を監督上懲戒処分を行なったということでございます。 ただ、そのような辞職をするという現実の問題に対しまして、中央としてどう考えるか、またその待遇等必ずしも十分ではないではないか、このような御趣旨の御発言でございましたが、府県の機関、でございまして、これは、その経費等全般につきましては、地方経費として財政計画で見ておる問題でございます。国の選挙を行います経費につきましては、国からそのつど交付いたすのでございますが、選挙管理委員会の報酬等につきましては、県の機関として県の財政のうちに財政上含まれておるのでございます。 また、かような点につきましても、その責任とその待遇という角度から検討を加えて、御指摘のような御議論も非常にごもっともだと存ずるのでございますが、この前の国会におきまして地方自治法の改正がありまして、従来、選管職員につきましては、常勤か非常勤かはっきりしないという関係、それから報酬は月額であったのでありますが、地方自治法の改正の結果、これが日当に改められるのではないかというような心配があったのでございますが、これは大部分の府県におきましては、やはりその責任とその処遇等の関係から、従来通り報酬の規定の方がいいではないかということに方針がきまったようでございます。われわれといたしましても、そういう点につきましては努力をいたしたのでございますが、なお、その他の公務員と比較いたしまして、必ずしも待遇が十分であるとは考えないのでございます。御趣旨の点は今後努力をいたしたいと思います。 明年度の財政でどう措置をするかというお尋ねでございますが、これは府県の機関になっておりますので、やはり地方の経費として財政計画で見ていただくということ以外にはないのではないかと存する次第でございます。
○井堀委員 私の質問はこれで終りたいと思いますが、今の御答弁の中で明らかになったように、仕事は国の仕事で、経費は地方自治の交付金の中から出る、こういう矛盾した状態をそのまままにして——責任は自発的に山口県の選管の委員がとられたという態度は、これは仰せの直り当然だと思うのです。しかし、事実は、今明らかにされたように、それは道義的な責任をとることは当然かと思うが、しかし、実質的な責任は、今いうように、仕事は国の仕事をやらして、経費は今枯渇した貧困の極にある地方財政の中で無理な負担をさせているという事実から、これは問題になっている。こういう事態を解消しないで、いかにこういう事態が今後起らぬようにいたしますからと言っても、それはやはり正確な対策ではない。この点に対しては、この前院議で決定されたように、選挙管理委員会の機能を十分発揮できるような予算の裏打ちをぜひ国が考慮すべきだ、こういう点に対しては、私は、厳重にこういう事態の再度発生せぬための処置としては、これをぜひ実施すべきだ、こういう点を要望しておきたい。ことに、職員の場合におきましても、選挙管理に対する専任職員というものはほとんどいません。兼務です。このことは、かつて、埼玉県の所沢市の職員が選挙を兼務して、過労のためにああいう悲惨な惨事を起したというような事実もありますように、これはひとり山口の問題だけじゃないと思う。こういう点については、選挙それ自身が民主政治の基礎を確立する一つの基本的な行為でありますから、予算は、やはりその仕事に見合うように、自治庁としては十分確保すべきじゃないかと思う。こういう点について、次年度の予算の編成については、院議もあることだし、こういう事実もあることだから、そういう点に対するりっぱな裏打ちのできる対策を要望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
○青木委員長 次に参議院議員の選挙及び宮城県の知事選挙等の場合にあったことでありますが、被選挙権のない者の立候補に関する問題につきまして、当局の説明並びに見解を述べていただきたいと思います。
○兼子説明員 先般の参議院議員通常選挙におきまして東京の地方区、それから次いで、宮城県の知事選挙でございましたが、御指摘のように被一挙権のない者が立候補したという事態が起ったのであります。この取り扱いにつきましてどうするか。たまたまこの人は被選挙権がないということが届出のときにわかっておったケースでございますが、従来の扱いからいたしますと、被選挙権のない者でもこれは届出の受理を行なって、選挙会において選挙長がその者に対する投票は無効とするという扱いを従来いたしておったのでございます。また、従来の判例もそのような趣旨のもとにされておるのでございますが、その場合に、なぜそのような措置をとったかと申しますと、年令の要件等につきましても、やはり選挙の期日によって決定をいたすという規定がございますし、年令の要件を欠くか欠かないかというような問題につきまして、立候補のときによって押えるのではなく、選挙の期日によって押えるという法律の規定があること、また、かりに刑罰等によって被選挙権がなくても、選挙の期日に万一復権が起らないとも限らないという可能性が存するのでありまして、そのような根拠からいたしまして、私どもといたしましては、被選挙権なき者の立候補の届出がありました場合は、これを受理をして、選挙会においてその者に対する投票を無効とするということが適当であろうという措置をとったのでございます。 しかしながら、判例は大体そのような方向でございますが、学説といたしましては、美濃部さんの学説等は、明瞭に、被選挙権のない立候補者の届出につきましては、これを受理すべきではないではないか、とのような学説も存するのであります。また次に、学説といたしましては、選挙長は、必ずしも被選挙権があるかないかという実質的審査の義務を有するものではないけれども、被選挙権を有しない者であることが明らかな場合には、届出の受理を拒否することができるという学説も存するのであります。 第三の立場は、先ほど来申し上げましたような判例及び行政実例のそれは、立候補の受理は機械的に行なって、選挙会によってすべてを決するという説に相なるわけでございます。この扱いが妥当かどうかという問題でございますが、最近の判例はこれについて明確に示したものはないのでございますが、従来も、古い判例におきましては、先ほど来申し上げたような傾向を持っております。また行政上の取扱いもそのように処置をして参ったのであります。通常の考えをいたしますれば、被選挙権のない者が立候補するということはほとんどあり得ない。今回初めてこのような事件が起って参りました。われわれは、このような問題につきましては、立法上の措置によって、法律の改正によって解決する以外に道はないのではないか、このように考えている次第でございます。
○青木委員長 ただいまの問題につきまして御質問がありましたら……。
○井堀委員 事前に被選挙権のない者の届出があって、それが受理されて選挙が行われますと、選挙会で当然結果は無効だということになる。そうすると、その間投票されたものは、それはもちろん無効投票になるわけでしょうけれども、選挙民の意思が全くそこでじゅうりんされるということと、もう一つ大きなことは、選挙はそれぞれの候補者同士の相対関係のあるものである。でありますから、フェアの答えが出てこないという二つの大きな欠陥がある。こういう点に対する解釈上の問題は、どういうことになっておりますか。
○兼子説明員 その被選挙権のない者の立候補、その受理をどうするかということにつきましては、われわれは従来の判例及び行政実例の立場を変更する必要を認めないのであります。ただ、現実の問題の処理といたしましては、それは法律の規定の改正によって押えるべきではないか。今回初めて被選挙権のない者がこういう選挙攪乱的行為をしたのでありますから、今後これに見習って選挙の公正を出するという弊害の発生が考えられるものでありますから、これは、やはり、法律の改正によって、立候補届を出すときに被選挙権を持っていなければならぬという規定の改正を必要とするのではないか、このように考えております。
○井堀委員 この例はこれとは多少違いますけれども、地方選挙の場合に、埼玉県の県会議員で——これは選挙会も立候補した人もうかつであったという結果にはなっておりますが、たしか当選してかなりの期間いずれも気がつかないで、議員としての職務を遂行さしている途中に、その被選挙権がなかったということが明らかになって問題になったお例もある。こういうこともありますが、そういうことになりますと、たとえば一定の期間の繰り上げ当選の効力なんというものも、あるいはそのためにじゅうりんされるということで、さかのぼって問題を解決できないような事態も起ってくると思うのです。そういう関係の事例が他にもあるかと思いますが、自治庁としてはやはり法律改正を妥当と考える、こういうふうに理解していいですか。
○兼子説明員 立候補の届出の際に実質的審査権があるという解釈をとるといたしますと、それによって選挙が無効になる争訟が非常に起ってくるのではないか、やはり届出はさせておいて、選挙の投票を済ましてしまって、それであとの問題にしますれば、争訟が起りましても選挙をやり直すということはないのではないか、こういう理論のもとに従来の立場をとっているのでございます。ただ御指摘のような埼玉県の例があった。まれには、そのようなことを選挙会で見のがす、あるいはわからなかったということがあろうかと思いますが、それもやはり、そういうケースから見まして、届出のときにそういう実質的の審査をしなければならぬということになりますと、非常にむずかしくなるのではないかというふうに考えるのでございます。
○青木委員長 他に何か御質問はございませんか。
○井堀委員 最近市町村の合併もある程度進んで、かなり郡市町村の区域の変更が広く行われたようでございますが、これによって選挙法第十五条の都道府県の議会の議員の選挙区が当然問題になってくると思うのであります。十五条によると「郡市の区域によると。」だけ規定されているようであります。もちろん、その二項で、その区域は、「区域の人口が著しく少いときは、条例で数区域を合せて一選挙区を設けることができる。」あるいは条令で議員の数は人口に比例して変更するとかいうような、いろいろそういう措置が規定されているようでありますが、この前の衆議院の選挙法の際にも、選一挙区の問題がかなり大きな——選挙それ自体の根本的な一つの要素になるわけです。同様の意味で、地方の都道府県会の議員の選挙区も、やはり重大なる条件の一つだと思う。そこで、都道府県の選挙区が郡市にその区域を持っておるということになりますと、郡市が他の目的で大きく変革を遂げてき、その変革がかなり広範にわたっておりますが、こういう点に対して当然選挙区の変更、整理というようなものが考えられないものか、この点に対する自治庁の今日までの対策があれば、お聞かせ願いたいと思います。
○兼子説明員 御指摘のごとく、町村合併によって従来の郡市の区域によるという選挙区の立て方が非常に不合理になってきた点はあるのでございます。現実に郡が一郡一村になったりいたしまして、郡というもののその内容が非常に従前の姿と変ってきたということはいえるのでございます。しかしながら、この郡をいかにするかという問題があるのでございますが、地方制度調査会におきましても、ただいまこの郡の問題を取り上げて、どの程度の大きさにするかということが当然論議されることになろうかと思います。そのような過渡期でございますので、その郡に対する論議が一定いたしました上で、われわれといたしましては、選挙法の原則を振り返ってみたい、このように考えております。現在、府県会議員の選挙区がどうなっておるかという調査は今いたしつつございますが、郡そのものの考え方がどうきまってくるかということによって、選挙区の方もどういう原則が適当であるかということを考え直したい、そのように考えております。
○井堀委員 これは行政区画の中の郡という存在が大きな問題になっておるようでありますが、自治庁としては、選挙区を別にいたしましても、郡という行政区域を事実上変更しなければならぬという事態に迫られておる。ある郡では一、二村だけを残してようやく郡の面目を維持しておる、他は市がそれぞれ独立してしまった、そういう場合が相当随所に出てきておる。また、将来、今の町村合併の方針からいきますと、自治はいわゆる市なり大きな町なりを形成させて、そして自治を完成していこうという方針のように伺いました。そうすると、郡という行政区画が問題になってくると思うのです。こういうものに対して何か町村合併の方針の中で考慮されなかったのか。それとこの十五条の関係が出てくると思うのですが、郡の区域に対しては自治庁としてはどういうお考えなのですか。これはあなたの所管ではないかと思うので、また別の機会にしましよう。もし答えてくれれば……。
○兼子説明員 郡の問題につきましては、町村合併の見地からは、おそらく、郡というものの存在は、法律上の問題でなく、事実上の問題として存在しておるので、これはそれほど考慮されなかったと思います。ただ、町村合併の結果、公職選挙法の方は郡市の区域によるという建前をとっておりますから、そこに実質的な影響を受けてきたということはいえるのじゃないか。どうするか、どういう考えを持っておるかということは、先ほどお答え申し上げました通りでありまして、広く、地方制度の方から、郡という区域を置いておく、郡という制度を置いておく必要があるかないか、置いておくとすればどの程度の区域にするのが妥当か、郡の統合をやるのか、やらないのかというような点の議論ともにらみ合せまして、それで選挙法の郡市の区域という原則をどう考えるかという問題になろうかと思います。いましばらく研究の時間をいただきたいと存ずる次第でございます。
○井堀委員 郡をどうするかという問題は、実際的にもいろいろな慣行があって、直ちに郡を廃止することが是なりや否なりや問題がある。ことに、選挙法の中でも郡を取り上げて、他の法律でも郡ということが法律的に確固不動の地位を持っておる。けれども、事実の問題は、これはどういうように進行していくかわかりませんが、ここで私どもの一つ明らかにしておきたいことは、選挙法の建前から、特に都道府県会議員の選挙区をこういう不安な状態のままで長く置いておくということは弊害が起る、こういうものは、一日も早くやはり一定の基準というものを与えて、安定感を持たしていかないと、地方議会の選挙は、今後議会の性格を左右するような影響力を持つわけです。またその選挙の一番大事な選挙区がどう移動してくるかわからない、しかもその移動の結果がどこに結論を求めるかわからぬというようなことであっては、これは事柄はきわめて重大だと思うのです。こういうことは一日も早くその行くべき方向を明らかにすべきではないか。しかし、自治庁のやっておられる市町村合併問題は、選挙法のことをお考えにならなくておやりになったかもしれませんが、こういうものに対して、もう少し市町村の合併の推移を見てというようなことは、これは出発点に多少誤謬があるのではないかということを考えるのですが、しかしこれは私の意見であります。選挙法の上からいえば、やはり都道府県会議員の選挙区を安定ならしめるという措置を至急にとるべきだと思うのですが、こういうことに対して選挙部長・はいましばらくと言われた。一体しばらくとはどのくらいのしばらくか、次・の任期が満ちて、あるいは補欠選挙が行われておるわけですが、この辺はどうですか。
○兼子説明員 御承知のごとく、町村合併促進法は、選挙区に関する規定を第十一条の五で置いておるわけです。それは、従来の選挙区を変えないで合併をしていこう、こういう合併を促進する見地からあの規定を置いておるわけです。いわゆる特例による選挙区というものが各府県に存在をいたしております。この特例選挙区がいつまで存続するかという問題でございますが、これは、本年九月三十日までに合併のあった区域につきましては、その次の選挙の一般選挙をやったあとの任期でございますから、最大限見ますと九月から約八年間は延び得る。いわば、その面からいいますと、すこぶる安定しておるのではないかということがいえるのでありますが、ただ選挙法の選挙区をどうすべきかということからいいますと、これはやはり変則的な問題でございまして、できるだけ合理的な姿に返すべきではないかというふうに考えます。それで、いつまでに研究するのかという問題でございますが、これは、地方制度調査会で郡の問題はただいま検討することになっております。そのような論議とにらみ合せまして、選挙法の郡市の区域の原則をどうするかをきめたいと存ずるわけですが、時期は、ただいま申しましたような関係で、特例の関係はだいぶ先まで安定しておるのでありまして、ただ気分が安定しないという問題であろうと思うのであります。できるだけ早く結論を得たいと思っております。
○井堀委員 安定しておるというのは、それは法律上の手続をする上に困難を伴わないというだけの安定であって、事実は、市町村の合併は、市ができれば市はもう独立した選挙区を作っていくということの事実は先に見えておる。よしその任期中だけの問題でも、その選挙区から出た人は、自分の選挙区に足を払われておるということになる。その議員としては、今いう自治の本質は、選挙区民と結びついて——自治の議員あるいは国会議員にいたしましても、選挙民と遊離した議員というものはナンセンスです。足を払っておいて、そうしてその資格に影響がないからというような言い方は、法律論としては許されるかわからないが、実質的には議員たる基本的条件に動揺を来たしたということは間違いはない。こういう点を重視しなければならないので、あなたと議論するわけではありませんが、そういう意味でございます。不安定、不安動揺の中に地方の市町村合併がそういう事態を作り上げておるということは、間違いない事実であります。そういう意味で、少くとも安定感を与えるということは、今のあなたの御答弁によりますと、地方の町村合併の問題が落ちつくまでは安定できぬというふうにもとれるし、いつどこに終末を告げるやは、今の市町村合併の問題と関係がある。そこで、この選挙法の問題と矛盾しないで、どこかに線を引いて解決していくという措置がとられるべきだという、その時期はいっかということを聞いておるわけです。
○兼子説明員 合併につきましては、九月末で一応促進法の合併は終ったわけでありますが、なお、本年度一ぱい、来年三月末まで相当合併が行われるのではないかと思います。そのような合併の一段落を待って、地図としての選挙区というものを検討いたしたい、このように考えております。
○井堀委員 そうすると、大体市町村合併の終末時期が三月と見て、そのころにはこの十五条の区域の問題をおきめになる、こういうふうに解釈して、一日も早くこういう状態が解消するための措置を要望いたしまして、私の質問は終ります。
○青木委員長 島上君。
○島上委員 これは、警察庁の方の御出席を求めた際に、詳しく資料に基いて質問するつもりでおりますが、ちょっと法の解釈について自治庁の選挙部長に伺っておきたいと思います。 選挙法百四十六条の一項に、「何人も、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもってするを問わず、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として、公職の候補者の氏名、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し又は掲示することができない。」二項には、「前項の規定の適用については、選挙運動の期間中、公職の候補者の氏名、政党その他の政治団体の名称又は公職の」云云とこうありますが、ここに氏名とあるのを文字通りに解釈すると、たとえば私の場合には島上善五郎ということになるわけですが、しかし、その選挙に島上という人が一人しか立っていないという場合には、島上だけでも投票は有効なんですから、その際に、たとえば島上そろばん塾というようなポスターを一ぱいに張りめぐらす、あるいはそういうチラシを一ぱいにまき散らすというようなことは、この氏名という解釈に抵触しないかどうか。私は抵触すると思うが、抵触しないとすれば、これは法の不備だと思うのですが、これはどのように解釈するか。
○兼子説明員 選挙に際して営業広告がこの選挙法の百四十六条の規定でどうなるかという問題が一つと、いま一つは、その営業広告に名をかりてこの規定を免れる行為と見られるかどうかという二つの問題だと思うのでございますが、営業広告の範囲と見られる点については、これは世上一般に差しつかえないのではないかというふうに考えます。ただ、そのそろばん塾と書いて当然この規定を免れるということが考えられます場合には、これは該当するのでありますが、その客観情勢によって判断を受けるのではないかと思います。
○島上委員 これは少し解釈があいまいですが、たとえば、私がそろばん塾をやっておる、あるいはパン屋をやっておるとしますね。その広告はふだんして差しつかえない。ふだん宣伝広告をしておった程度のことが、たまたま選挙運動の期間に入って行われておったというような場合もありましょうけれども、しかし、免れる行為として、その選挙運動の期間中特別に大々的に宣伝をする——。これは資料を持っておりますから、あとでお見せしますが、そろばん塾とかパン屋とか、そういうものの宣伝は二の次、三の次ですが、島上と大きい活字で書いて、あと小さくそろばん塾と書く、そういう宣伝を選挙運動の期間中に限って大量にやれば、これは明らかに免れる行為だと思うのです。そう僕らは解釈するのです。これは実はかつてのことではなくて、最近地方選挙で非常に行われておるのです。この解釈を明確にしておかぬと、その弊害がだんだん助長されてくる。そういう点をもう少しはっきりすることと、それから、その解釈をだれがどこでするのか。選挙が済んでしまってからでは、やった者が得だということになってしまうので、その点に対する解釈をもう少し明確にしていただきたい。
○兼子説明員 御指摘のようなケースにありましては、これはもうこの規定を免れる行為と見るべきだと思います。かりに名がなくても、氏が強く表示されておる、あるいは大量にその文書図画を頒布しておるということになれば、これは客観的に見て百四十六条の規定違反ということはいえると思います。
○島上委員 あとで資料に基いて質問しますから、この次警察庁の方に御出席を願います。
○青木委員長 この際、お諮りいたします。政党法に関する件につきまして、来たる十二月三日、お茶の水女子大学学長蝋山政道君及び早稲田大学教授吉村正君より、参考人としてそれぞれ意見を聴取いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○青木委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。 —————————————
○青木委員長 なお、この際、西欧の政党法に関する諸問題について、先般自治庁の降矢前選挙課長がいろいろ調査して参りましたので、この機会に説明を聴取いたしたいと思います。
○降矢説明員 私、先般オーストリアの衆議院の選挙を見て参りましたので、政党法の観点から簡単に報告申し上げます。 オーストリアは一九二〇年以来比例代表の方法で選挙をやっておりますので、政党というものか前提にして考えざるを得ないようになっております。つまり、政党法の関係でどう問題になるかというと、立候補する場合にだれが立候補するのか、こういう点に帰着するわけでございます。オーストリアの比例代表の方法によりますと、立候補するのは、個人ではなくて、政党が立候補届を出す、こういうことになっておりまして、その場合に、政党が、候補者の名前に一連番号をつけて、つまり順位をつけて、それで候補者名簿とともに立候補届を出すということになっております。 ただ、その場合に、政党とは何ぞやということでございます。これにつきましては、一般に定義をしたものがございません。そこで、選挙法上の政党、つまり立候補する政党という押え方をしておりまして、それによりますと、当該選挙区の選挙権を有する者が官名以上署名をした一つの団体、つまり百人以上の選挙人が一つの団体を形成して、それが届出を出す、それを選挙法上政党というふうに扱っておるわけでございます。実際問題といたしましては、通常政治的な集団という意味での政党が立候補を出すのでございまして、事実においては少しも違いはございませんけれども、選挙法上の扱いとしては、選挙人百人以上の集団を一つの政党として、そういうものでなければ立候補できない、こういう建前になっております。従って、そのほかの点におきましては、政党法あるいはわが国におきます政治資金規正法に類するような立法は全然ございません。従って、政治資金の規正もなければ、だれが届出をして、だれが責任者であるかということも、法律の上では少しも要求していないわけでございます。政党法という観点から見ますと、比例代表をとりながら、ただ選挙法上の政党だけを規定しております。一般的に政党法というような法律でもって、定義をするというやり方は全然やっておらぬのでございます。 では、実際選挙違勅をするときにはどうするのかということでございますが、これは、政党が中心——つまり事実上の政党と立候補する政党は同じでございますから、政党が中心になって選挙運動をする。従って、候補者個人の運動というような形でやられることはまずございません。それから、運動につきましても、わが国の最高裁判所国民審査の法律に見られますごとく、自由妨害罪あるいは買収あるいは演説の妨害というような自然犯的なもののみ押えておりまして、あとはほとんど規定がございません。しかしながら、実際の連句は、小集会の演説会と、それから各選挙人の宅に選挙運動用のポスターとかあるいはその他の文書を郵送するという方法がとられておりまして、中心は、集まってもせいぜい二百人程度の演説会を数回繰り返すという方法であります。街頭演説もほとんどございませんし、全く演説会中心の運動というやり方をしております。 それから、具体的にだれを候補者にするか、つまり名簿にだれを載せるかという方法は、政党の本部で決定いたしますが、その本部では、単に各支部から出た原案に基いて一つの名簿を作成し、党大会できめて、それを立候補届出の際に出す。こいうやり方をやっております。 それから、具体的な当選人の決定につきましては、これは、名簿に記載された順序に従って、当該政党に割り当てた議席だけ上位の者から当選人になるという方法でございますが、ただ、当選人がどの選挙区で当選になるかということについては、政党の方で多少自由に変更できる仕組みになっております。 それから、選挙の結果はきわめてすみやかに確定いたします。ただ、その場合には、だれが当選人かということではなくして、どの政党がどれだけの議席を獲得したかということは、大体、わが国と同じように、選挙の翌日の夜明けごろには決定いたす仕組みになっております。具体的にだれが当選人になるかということは、それから大体十日ぐらい経過いたしましたときに、中央選挙管理委員会の方から告示される仕組みになっております。 それから、選挙管理の方法でございますが、これは、わが国と大同小異でございまして、市町村単位あるいは県単位、国という段階で、それぞれ選挙管理委員会が置かれまして、これがやっております。 以上、大体大まかな点でございますが、政党法だけの観点からいたしますと、特に申し上げるような材料も、それから実際の仕組みにもなっていないのでございます。
○青木委員長 ただいまの説明につきまして何か質問がございますか。 それでは、次会は来たる十二月三日午前十時より開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午前十一時五十八分散会