法務委員会 第2号
- 発言数
- 51 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1956/01/31
会議録
○委員長(高田なほ子君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。 まず昭和三十一年度法務省関係予算につきまして御説明をお願いいたします。
○国務大臣(牧野良三君) 昭和三十一年度の予算総額は概算二百十一億でございます。前年度に比して八億の増加でございます。増加の約半分は人件費として大体自然増とお考えをいただきたい。従って行政上に関して新しい方面で認められんとする額は約四億と思います。詳細なことは経理部長よりお答えを申し上げます。
○説明員(竹内壽平君) ただいま大臣から仰せられましたように、八億の増額となりましたが、そのうちの四億円につきましては人件費でございまして、その大部分は昇給財源としての自然増でございます。残り四億円が事務費と営繕費の増加分となっております。これを概観いたしまするに、予算の規模といたしましては、前年度のベースをそのまま踏襲したということができるかと思います。事務量の増加に伴いまする分と、きわめて不合理な経費の是正分が所管各組織を通じまして若干ずつ認められましたほかにわずかではございまするが、法務行政のあり方に関する政策的な経費が新規に増額されたのでございます。 次に重要な問題点について御説明を申し上げたいと思います。まず増員問題でございまするが、法務省におきましては三十一年度の概算要求におきまして増員約七千三百名を要求いたしたのでございますが、定員の増加は一人も認められませんで、わずかに定員外の職員、すなわち常勤及び非常勤の職員で計四百十四名が認められたにすぎない結果と相なったのでございます。このことは政府の方針といたしまして、行政機構の改革が予定されておりまするので、その見通しが立ちました上で調整をしようとする考え方によったものでございます。従って現在の機構をそのまま維持推進するという建前のもとにこれで差しつかえないという趣旨のものではないのでございます。定員外の職員の増加を認められましたことは事務が非常に激増をいたしまして、職員の負担過重が著しい組織につきまして応急的に承認されたものでございます。 次に治安関係の点でございまするが、公安調査庁、検察庁、入国管理官署等の治安関係組織を通じまして、その予算は大体前年度通りでございます。結局政府の方針といたしまして、前年度通りの予算で能率的な運用をはかることに相なった次第でございます。治安に関連いたしまして一言付言いたしておきたい点は売春関係の経費でございますが、これは近く立法化される見込みでございまして、それによりまして法務省の果すべき役割も自然決定してくるわけでございます。その暁において本格的な予算は考慮されることになっておりまするが、とりあえず三百十二万八千円の予算措置を得ておるのでございます。これは検察関係、少年院、保護あるいは人権等の各組織に対しまして準備的な会合、旅費とか資料の調査費とかいうものがきわめて少額ではございまするが、承認になったものでございます。 それから次に補助金の適正化法律の関係の経費でございまするが、法務省におきましては本省の刑事局並びに検察庁等の関係で当初増員要求を含めまして、約二億円に上る新規事業経費を要求したのでございまするが、そのため特別に予算を獲得するということができなかったのでございます。この点に関しまして、昨日あたり新聞紙上に検察庁方面で不満の意を漏らしておるような記事も出ておったように思うのでございまするが、増員が認められませんでした理由は先ほど述べましたような事情に基くものと了解いたしておるのでございます。しかしながら他面この増員にかえまして、常勤七十名が新たに認められまして、一方内部操作でございまするが、検察庁の雇員を三百五十名事務官に組みかえるというふうにしまして、その組みかえられた雇員のところへただいま申しました七十名の常勤が入るというような内部操作を認められておりますほかにいわゆる検察の運営費であります検察費におきまして、前年度に比べまして旅費等において若干増額になっておりまするので、これらの経費をもとにいたしまして当初の計画とは別に能率的な検察を実施することにいたしまして、適正化法律の厳重な執行を監視し、この種の犯罪の発生を未然に防止するように努めたいと存ずるのでございます。 次に新規施策に関する経費でございますが、法務行政につきまして特に来年度の予算において考慮いたしました点は、第一に法律の府として常に基本法典の調査研究に従事いたしまして、立法作業をどしどし進めて参りたいということであります。 次に法務行政の明朗化をはかりまして保護、人権、法務、特に権利保全等の関係の法務でございますが、こういう所管事務の文化的、社会保障的業務ということにつきましてもつと積極的にこれを運営して参りたい、こういう点に力を注いでいるのでございます。これに関連いたします経費は従来はなはだ不満足な状態になっておりたのでございまして、これが改善に意を注いだつもりでございます。すなわちまず基本法典の関係の経費におきまして約一千二百万円増額となっております。従来この種の経費は三百七十万円にすぎなかったものでございます。それがさらに千二百万円の増になりますので、これによりまして基本法典の調査研究等も一画期的な方向に進むものと期待をいたしております。 次に保護関係の経費の方につきましては全体で差し引き約七百万円の増額となっているのでございますが、これは実質的に見ますると千三百万円に上る増額の成果をあげたことになっているのでございます。また人権関係におきましては前年度の総予算が約一千万円余りのものでございますが、これが約一千八百万円に増額されまして、人権擁護委員の実費弁償金のごときは一挙に五割も増額されたのでございます。法務局関係の権利保全関係の経費等におきましても旅費、庁費等におきまして約六千万円及び常勤労務者の関係で百名の増加が認められまして、これらの経費を見積りますると約七千万円の増額になったのでございます。 最後に営繕費の点を申し上げたいと思いますが、法務省におきましては営繕費の問題は毎年予算要求の重点でございました。前年度五億四千万円、これは建設省計上分を含むものでございますが、これに対しまして三十一年度は六億七千万となりましたので、約一億二千万の増額と相なったのでございます。その大部分は前年度からの継続工事に対する経費でございますが、登記所など、いわゆる法務局関係の営繕費が前年度は個所にいたしまして六カ所、金額四千万円でございましたものが、三十一年度におきましては二十三カ所、金額にいたしまして約八千三百万円に、ほとんど倍に増額いたしたのでございまして、特にこの点が目立った増額であります。 問題点を申し上げますると大体以上のようなことでございまするが、詳細はただいま資料としてお手元に配付いたしました三十一年度予算査定額と前年度予算額との主要科目別比較表というものを各組織別にごらんを願いたいと思うわけでございます。さらにもう一つの資料は組織別、事項別査定額一覧表という表題の資料でございます。これは各事項別にこまかい数字が前年度予算額、三十一年度概算要求額、査定額、その比較というものが各欄に分けて掲載されております。一まず私の説明を終ります。 —————————————
○委員長(高田なほ子君) 続いて裁判所関係予算について当局から御説明をお願いいたします。
○説明員(上野宏君) 裁判所所管昭和三十一年度予算について御説明申し上げます。 まず裁判所の予算の概算を申し上げますと、裁判所所管昭和三十一年度の歳出予算案の総額は九十五億三百六十一万九千円でありまして、前年度の九十一億七千六百三十二万円に比較いたしますと、三億二千七百二十九万九千円の増加になっております。この裁判所総額は国の来年度の総予算額に比較いたしますると〇・九二%でございまして、昭和三十年度同様のパーセンテージでございます。この三億二千七百万円の増加額につきまして、まず費目別にどういう重点で計上されておるかということを御説明申し上げます。 まず人件費の増加一億九千百一万六千円であります。裁判資料整備費等の庁費関係が千九百六十二万三千円、裁判費が八千四百三十二万三千円、補助金が五百万円、裁判所施設費が三千万円でございます。この増加額につきまして事項別に重点的なものを御説明申し上げます。 まず人件費の増加でございますが、これは常勤労務者の増員が五十五名で四百三十四万円、非常勤労務者の増員五名、六十一万九千円であります。その他は昨年度から増額になりました期末手当〇・二五分の増加、昭和三十一年度における職員の昇給財源としての自然増であります。 次に新規といたしまして家庭裁判所調査官養成所の経費でございます。従来から家庭裁判所調査官がございましたが、これを養成する制度がございませんで、二、三年来要求しておりましたが、今年初めてこれが認められました。その計画は養成人員が五十人、研修期間を一年といたします。初年度は今年の十月からにいたしたいと思います。従って三十一年度予算は半年分が入っております。その機構を維持するために一般事務員として常勤労務者が五人、講師は部内講師のため謝金、それから庁舎の借料、器具購入費これが百三十万一千円でございます。 それから今国会に提出の予定されております家事事件の履行確保に関する経費でございます。この経費といたしまして裁判所に金銭を保管いたしますための金庫の購入費と、それから新しいこの制度につきまして研究いたしますための裁判官および家庭裁判所調査官の会同旅費といたしまして経費二百十五万一千円でございます。 それから戦前司法省時代から海外研究員制度がございまして、戦後これがなくなりまして、絶えず要求しておりましたが、本年度から初めて一人分二百万円が認められました。これを現在の旅費法で大体概算いたしますと約八カ月分の旅費であります。 次に財団法人日本調停協会連合会がございまして、この事業を助成、奨励いたしますための補助金といたしまして五百万円であります。最後の六番目は裁判費でありますが、これは通常の裁判費で、毎年事件計算によって予算が計上されるのでございまして、三十一年度は事件増加を見込みまして八千四百三十二万三千円の増加となっております。 次に営繕費でございますが、営繕費を全部総括いたしますと六億五百二十万三千円でありまして、前年度の五億八千六十三万三千円に比較いたしますと二千四百五十七万円の増加でございます。この内訳を申し上げますと、まず裁判所施設費、これは裁判所の庁舎の工事及び増築の工事等でございまして、これは今年度は五億六千九百五十万三千円で、前年度に比較すると三千万円の増加でございます。 次に裁判所の老朽庁舎その他の修繕費、これは今年度は三千二百二十万円で前年度と同じ額でございます。 次に不動産購入費、裁判所庁舎の敷地四カ所三百五十万円でございまして、これは前年度より五百四十三万円減っております。次に営繕費以外の各所修繕費六千九十五万一千円、前年度より二百二十五万九千円の増になっております。 大体以上で昨年度より本年度の予算のふえた点につきまして御説明を申し上げましたが、最後に事項別に簡単に御説明申し上げます。ただいまお配りいたしました表の一番最後に昭和三十一年度予算案事項別内訳というのがございます。その第一番は、裁判所の機構の維持に必要な経費、これは最高裁判所及び下級裁判所の運営に必要な職員の俸給、手当、職員旅費、経常的な庁費等でございまして、これは今年度七十一億三千八十七万八千円でございます。次は裁判所職員の研修に必要な経費、司法研修所、書記官研修所その他等の研修所関係の維持に必要な旅費、庁費及び司法修習生手当等でございます。これが二億六千五百五十四万五千円でございます。次に先ほど申し上げました家庭裁判所の家事事件の履行確保に必要な経費、これは二百十五万一千円でございます。次に三十年度から実施いたしております夜間調停の実施に必要な経費、これは三十年度は週二回でございましたが、来年度から週三回にいたすことになりました。これは三百五十三万五千円の経費でございます。内容は調停委員の旅費及び超過勤務手当、光熱費等でございます。次に裁判事務の迅速処理に必要な経費、これが三千二百二万六千円でございます。これは訟廷帳簿の改善、それから裁判資料の機械化、それから検証用写真機の購入等でございます。次に裁判関係資料の整備に必要な経費、これは直接裁判に携わります裁判官、書記官等の執務参考図書購入費、判例集その他の裁判資料の印刷費、最高裁判所及び高等裁判所の判例カード作成費、関係諸法令索引カード作成費等でありまして、これが一億七百八十一万円でございます。 次に本年行われます参議院議員選挙施行に伴い必要な経費であります。これが百七十五万五千円であります。 次に検察審査会に必要な経費であります。検察審査会の維持及び運営に必要な検察審査員召集旅費、実地見分旅費、証人等旅費等、これが五千二百一万八千円でございます。 調停協会の補助金、これは先ほど御説明申し上げましたが、五百万円であります。 それから裁判に必要な経費、すなわち裁判費、これが十二億八千九百六十九万八千円であります。 次は営繕費、これは先ほど御説明申し上げましたが、六億五百二十万三千円であります。 それから、裁判所の予備費、これが前年通りの八百万円。 以上が三十一年度裁判所所管の予算案でございます。
○委員長(高田なほ子君) 本件についての詳細な御質疑等は次回に譲ることといたします。 別に御発言がございます方は、速記をとめて御発言をお願いしたいと思います。 速記をとめて。 午後二時五十二分速記中止 —————・————— 午後三時二十七分速記開始
○委員長(高田なほ子君) 速記をつけて。 次に死刑廃止に関する件を議題といたします。
○井上清一君 実は今死刑廃止に関する問題が議題になりましたが、昨年の暮でございますか、今年になりましてからでございますか、何か死刑廃止に関して参議院の法務委員会で成案を得て云々というような——今度の国会に提案をするのだというような新聞記事が出ておった。私は実は昨年来法務委員会に籍を置いておりますが、いまだこの問題につきまして本委員会において御相談を受けたことはない。で、私は死刑廃止については私も私なりに意見を持っております。と同時にこの死刑廃止の問題はこれは非常に刑政上の大きな問題で相争われておる問題であり、対立する思想、考え方のあるこれはきわめて重大なる問題であると思うのです。これはもし本委員会において議員提案として、あるいは提案するというようなことに相なるというようなことがいつとはなしにきまっておるというようなことでは、私はなはだどうも本問題の取扱い方について、きわめて遺憾の点があると私は考える。これは非常に大きな重大な問題であり、いろいろな点から検討も加え、考えなければならぬ、研究していかなければならぬ大きな問題だと私は思いますので、ああいう問題を軽々にお取り上げになる、あるいはまた新聞にお出しになるというようなことについては、どういういきさつがあったのか、この際委員長から私は承わりたいと思います。
○委員長(高田なほ子君) 一応私の責任においての御答弁をしたいと思います。成瀬前法務委員長時代から寄り寄り死刑廃止の問題について法務委員会の有志のメンバーの中でお話があったやに承わっております。しかし前委員長から正式の引き継ぎ事項として私にこれがバトンタッチされたわけではございませんが、内々の空気として私もそれを察知をしかつ承知をいたしておりました、過般、朝日新聞に本問題が掲載されまして、法務委員会の有志のメンバーがこの立法化に努力しているという報道記事が載っておりましたが、これはあくまでも法務委員の有志のメンバーであって、法務委員会の正式な議題として取り上げられたという報道ではございませんでしたので、その後一応御研究になっておられる議員の方々からも内々の御事情も承わりまして、私個人としては死刑廃止の問題にしろうとではございますが、長年関心を持っておった一人として、この御研究について最大の敬意を実は表しておったわけでございます。有志の議員の方々はこれの立法化のために法制局をわずらわしまして概略の成案を得られたように承知をいたしておりますが、当委員会としても当然これらの御努力に対しては正規の方法をもってこれを考慮しなければならない、こういう観点のもとに大へん急ではございましたが、きのう法務委員会の理事会を開きまして大体の経過を理事会に御報告申し上げるとともに、これの委員会における処理の方法について御相談を願ったわけでございます。理事会の結論としては、本日の委員会に死刑廃止の問題を正式の議題に供して、今日までのいろいろ御苦労して下さいました有志の一人である羽仁委員から本日までの経過並びにこの死刑廃止の立法の主たる内容等についても御説明をいただいて、全部の法務委員の方に御了承をいただき、その御了承に基いて大きに国民の世論を喚起して、漸次ただいまの牧野法相の御答弁の中にもございましたように逐次高められた方向に持って行くのが正しいと、こういう御結論をいただいたために、本日正規の委員会に死刑廃止に関する議題と、こういうことにいたしまして、これから有志議員のメンバーであります羽仁委員から一応の御説明をいただきたいと、こういうふうに考えておったわけです。 以上が今日までの私の責任において承知いたしております経過の大要でございます。
○亀田得治君 ちょっとただいま委員長から御説明がありましたが、誤解があっちゃいかぬと思いますのでつけ加えたいと思いますが、本日議題にするのは、議題にして、そしてその死刑廃止法案そのものに賛成を願う、そういう意味ではないんです。委員長の報告、ちょっとそういうふうにとられたかもしれぬと思いますが、そういう意味じゃなしに非常に重要な問題だから、そして一部の人が熱心にこれについて検討を加えておるから、一つその事情を全員に正式に諮ってもらって、そうして一部の人がそういう問題について正規に取り扱っていく。そういうことを、案そのものに対する賛成反対は別個にして一つ御了承を願う。しかしこれは了承するせぬもない、議員の権利だから勝手にやったらいいじゃないかと言えば言えるわけですが、まあそういうものでもなかろう、特に法務委員のお互いとしては一つ大いに、賛成にしろ反対にしろ十分意見をやはり出してもらう意味においてもそういうふうな扱い方を円満にして、一つ委員会として御了承願って進めた方が適当なんじゃないかと、そういう意味なんです。ちょっとそこを誤解があってはいけませんから……。
○井上清一君 死刑廃止の問題につきまして、今本委員会の委員の中にも非常に御熱心に御研究に相なっておるという点について非常に私は深い敬意を払うわけです。ただ問題が問題だけに、この取扱い方についてきわめて私は慎重に一つお取り扱いを願わなければならぬと同時に、やはりこの問題をどういうふうな取り上げ力をしていくかというようなことについても、やはりいろいろ何というか、各党の立場も、これはそういうものは別といたしましても、やはり相当この相談をし合いながら進めていくということが私はきわめて大事なことではないか、かように思うわけでございます。ことに問題が問題であるだけに、本問題の取扱い方をきわめて慎重に一つお願いをしなければならぬ。それと同時にどうも法務委員会でもうすでに死刑廃止に関する法案ができて、それが今度審議に上って、今度の国会に提案をされるというような印象を与えるようなこの何ですか、報道機関に対する説明とか、話とかいうようなことはよほどこれは慎重に一つ関係の方々にお取り扱いを願わなければならぬ。私どもも死刑廃止という問題については、これは多年いろいろ考えてきておるところであって、党の立場におきましても、この問題をできるだけ一つ皆さんとも相談をしてぜひとも一つ何らかの形において考えなければならぬ。真剣に一つ取っ組んでいかなければならないというふうに私どもも思っておるわけであります。そういう点でぜひとも一つお取扱い方について、委員長におかれて十分一つ御留意を願うようにお願いをしておきます。どうぞよろしく。
○委員長(高田なほ子君) 承知いたしました。
○一松定吉君 これは法務委員会で論議をすべき問題じゃないですね。これがとにかく提案せられたものならば、その提案についてどういう取扱いをして審議を進めていくかということについては必要であるけれども、まだ委員の中に死刑廃止について、その当否について研究せられておる、それを一つこの法務委員会の議に付して提案するかせぬか、あるいは死刑廃止という問題を話題に上すことがいいか悪いかというようなことについての御相談ならこれは別だけれども、今亀田委員の言われたようにまだこの提案も何もされていないときに、これお互いがいいとか悪いとかすることではなくて、一体こういうような有志が研究しつつあるのだが、大へん重大な問題だから、一つそれについて学者とか経験家とかいうようなものを呼んで意見を聞いてみようか、その上で一つお互いが提案するかせぬかをきめようじゃないかという程度ならばこれはいいですよ。けれどもこれは最も重大な問題であるのだから、これもそういうところまでいかないときに、法務委員会で論議してやることは大へんな行き過ぎだと思っておる。委員長のさっきの御説明がいかにももう提案されておって、問題になっておるかのごとき疑いを第三者に与えるように受け取られましたものだから、亀田君からもああいう御注意があったのだと思うんだが、そういう意味で委員長もお話になったのではありませんか。
○委員長(高田なほ子君) 今のお説の通りで、昨日の理事会でのこまごまの御懇談を私も十分承知をし、また井上委員の御発言にもあったように、常識的に考えてぽっとここに議題に出したのではないということは昨日の理事会の決定でもおわかりだろうと思います。ただ朝日新聞に法務委員会云々という文字も出ておりましたから、これをなおざりに過ごすということもあまりけっこうな方法ではない。一応ここでその経過などについてお話を願って、その後この問題の取扱いというものについて、また内容等についても、これは本格的に論議する問題は今後の問題であって、あくまでやはり今日までの経過などについてここで御説明を願ったらばという、きのうの理事会の決定に基く発言であったということを御了解いただきたいと思います。御了解できませんですか。
○井上清一君 そうしますと、これまでの御研究を一応御披露をいただくと、こういうことでございますね。
○委員長(高田なほ子君) そういうことでございます。
○井上清一君 そういうことならわかりました。
○委員長(高田なほ子君) ちょっと速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(高田なほ子君) 速記を始めて下さい。
○羽仁五郎君 死刑の廃止の問題は、日本の国としましても、国際的にも、すでに先輩が貴重な努力を重ねてこられておることは各位の御承知の通りです。ことに最近には各方面から、日本における死刑の問題についての関心が高まっておりますことも各位の御承知の通りです。本委員会におきましても、さまざまの問題の場合にこの死刑の問題が出まして、昨年も他の問題の関係でありましたけれども、参考人の方々がそれぞれ専門の見地から、死刑の問題について意見の御開陳がありましたことも速記録で御承知の通りであります。私どもやはりこの死刑の問題について、われわれ立法府にある者は全くこれに関心を持たない、あるいは高い関心を持たないということは許されないことであるというふうに考えまして、この死刑廃止の問題を世論に訴え、また国会に訴える機会を得たいというふうに考えていたわけでございます。で、今回その有志の方々によりまして法案が提出せられる運びになります前に、あるいはこれを新聞によって一般の国民の関心、また論議にせられ、また本委員会におきましても十分皆さんのお考えを伺いまして、そしてこの提出されます法案というものが、できるだけ多くの方々によって有益に討論せられまして、最も良好なる結果を得られますようにお願いをしておる次第でございます。で新聞紙によります報道というものは、これは言論報道の自由によって報道せられますものであるのみならず、それによって社会の人々が、あるいは賛成、あるいは反対の意見を発表せられる機会が作られることでありますので、きわめて有益なものだというふうに考えます。またただいま委員長並びに各委員からも御発言がございましたように、議員の法案提出ということでいきなり始めるよりも、そういう意味で、あるいは社会のいろいろな御議論を伺い、またこの本委員会におきましても、皆さん方の御意見を伺い、そうして法案提出を必ずしも急くという——法案提出を先にして、そして皆さんの御意見をそのあとから十分伺えるわけでございますけれども、その前にもまた皆さんの御意見を伺う、あるいは十分お考えをいただくという意味で、本日議題にせられたものだというふうに思いますので、簡単にその経過を御報告申し上げる次第であります。
○中山福藏君 私はあの新聞を大阪で拝見して、羽仁さんの名前が出ていました。それから直ちに刑務所に参りまして、教育部長に大体あちらこちら尋ねて、相当資料を集めたのです。だから私も法務委員だろうなんて尋ねられるのですね、あっちでもこっちでも……。そうだ。あれは相談受けたのか、いや私は何も知らぬ。新聞にこういう報道があったからいずれ提案されるだろうという前提のもとに、私は教育部長にあちらこちら面会して、資料も集めたのですよ。ところが非常に意見が多いのです、これには。それで前もって全部の了解を得るとか何とかいうことはなかなか至難な問題だと思うのですね。で、あなたがよいと思われる確信があったら、やはり提案されて、そしてしかる後に公式に一つ堂々たる各委員の意見を聞いて、そして国民全般の利益をはかる、こういうふうになさる方がいいのじゃなかろうかと実は考えているのです。私は直ちに調査に着手したのです。まあそういう考えを私は持っております。そうぜんと今いろいろお話しになったようなことを聞いておると、何が何やらわからんです。これはどこが頭かしっぽかわからぬような議論ばかりで、頭が禿げたような人間がやるということは、私はどうもあまり感心しない、どうかよろしくお願いいたします。
○亀田得治君 ただいま中山委員からもちょっと御発言がありましたように、一応有志の方で提案をする、そういう点についてのこれはその提案を待って、一つ慎重に審議するとか何とかの締めくくり三つ委員長の方でつけてほしいと思うのです。
○委員長(高田なほ子君) 本問題で羽仁さんからごあいさつがございましたが、本問題についてはラジオ、新聞等でも大へんいろいろな形で取り扱い、また大きな問題でございますが、ただいまの羽仁さんのごあいさつに基き、また中山委員からの御発言もございましたが、新聞等でも法務委員会で委員が中心となって、という言葉も載っておりまして、おのおのその点についていずれも大きな責任を感じておるものといたしまして、御趣旨の通り問題が大きくございますから、慎重にこれを取り扱い、委員会としても十分各位の御意見を尊重して善処して行きたい、こういうふうに考えております。
○宮城タマヨ君 これは法務委員会の有志ということに限定しますとね、どうでしょうか。
○委員長(高田なほ子君) ちょっと速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(高田なほ子君) じゃ速記を起して下さい。 —————————————
○委員長(高田なほ子君) 次の議題に移ります。
○一松定吉君 ここで私は緊急動議を一つ出したいのです。それはつまり近来刑事事件を取り扱うところの検事の態度について一つ皆さんの御考慮をわずらわしたい点があるのでありますが、御承知の通り刑事訴訟法が新刑事訴訟法になりまして、旧刑事訴訟法と取り調べの方法等も改まりましてから今日に至ってもうだいぶ年歯を経ておりますが、検事が被疑者なり被告人を調べるのに、自分の意に合わなければ供述調書を作成しないというような習慣が近ごろ非常に行われておる。そうして自分の意に合うように、合うようにというて、これをだんだんだんだん推し進めて行く、そうしてその間結局自分の意に合致して、これで犯罪が成立するというときになって、今まで数日間押し問答ばかりして調書も取らなかった、最後に自分の意に合うたような調書をただ一日にして取ってしまう、そういうような調書が刑事法廷に現われておることが近ごろ非常に多い。そういうようなことは、つまり検事の作成した供述調書、検事に限りません。警察官も同じです。作成した調書というものはその調書の内容に対して信憑力が持てるか持てないか、従ってこれが刑事事件の有罪無罪を判定する証拠資料になるかならぬかという最も貴重な供述調書です。その供述調書が三日間も四日間も差し向いで調べておいて、そうして調書を作らない、そうしてそうではあるまい、こうだろう、何の何がしはこう言っているがお前の言うことは違うじゃないかというようなことを言うて、最後にはお前がそんなことを言うならば幾日たっても勾留を継続するぞ、そうして勾留の継続の更新をやる、あるいはお前が言わなければお家の家電捜索をする、お前の家内をどうするとかいったようなことを言うて、そうして結局検事の思うような犯罪の成立の要件を具備したような供述をさせてそこだけを調書にとる、三枚か四枚だけで、それをもって公判に回すとか、あるいは法廷の証拠に提出するとかいうきらいが近ごろ非常に多いのです。これは刑事法廷における経験のある人は何人もそれは承認するところだと思います。のみならず、そういうようなものを今度は公判廷に出しまして、そうしてそれを被告なり弁護人がその成立を否認いたしますると、今度はその供述した人間を証人として法廷に呼び、そうして呼んだときにその証人なりその被告人がこの調書は間違いです。私はそういうことを言ったことはないにかかわらず、三日も四日も同じようなことばかり言って押し問答して、とどのつまりそういうことを言わなければお前を帰さぬぞと言われました。あるいはこういうふうな勾留を継続すると言われましたとか、やむを得ず認めてそういう調書ができたのでありますというようなことを法廷で申し立てますると、検事は色を変えて、それはお前は偽証だ、そういう偽証をすると承知せぬぞ、それならばこの取り調べが済んだ後に検察庁のところへ待っておれというようなことを言うて、これは明らかに公判廷における脅迫です。そうしてその次の証人を調べる一つの予備的にそういうことをやる。次の証人は出てきてまたあれに言うたことと違うことを言えば今の前の証人と同じようにおれも刑事廷にまた引き出されて調べられるのじゃなかろうか、偽証の起訴を受けるのじゃなかろうかというような畏怖の念にかられて、不本意ながらその供述調書の中に記載されておることが事実と反するにかかわらずそれを認める、こういうような事例が近来非常に多い。東京とか大阪とかいうような優秀な検車などがいるところはありませんが、いなかに行ってみると皆しかり。そういうようなことは新刑事訴訟法の精神に反するのみならず、それが有罪、無罪を判断する有力な資料になるというようなことでは人権擁護上ゆゆしき問題だと私は考えまするから、そういう弊害を一つ絶滅せしむる方法として、果してそういうような事実が全国にどのくらいあるかということを全国の弁護士会にでも、この法務委員長の名前をもって、そういうことを照会をして、そういう事実があるということの回答を得ましたならば、それに委員が出張して調べるとか、あるいはそういう事実を調査して、その調査の結果それらの事実を明らかにして、そうしてこれの善後処置を講ずる、刑事訴訟法を改正するとか、あるいはこういうようなことに対しては監督官から十分な警告を発するとか、何らかの方法によってそういう不都合な行動をなからしめるようにして、人権擁護の実をあげるということは、私はこの法務委員会の重大なる責任の一つだと考えておりまするから、そういうような一つ調査をこの法務委員会においてするということの決定をしていただいて、これを各弁護士会に交渉して、その事実の有無を弁護士会から答弁をとって、それをもとにしてそういう事実の審査をやるというようなことが必要だと思いまするから、そういう緊急動議を提出いたしまして皆様の御了解を得たいのであります。
○亀田得治君 ただいまの一松委員の提案には私も全面的に賛成です。もしそういうふうに扱われる場合には私もう一つつけ加えてほしいと思うのですが、それは検察官が公判前において作った調書、これをなかなか弁護人に事前に見せないという事案が相当起きております。で、まあ刑事訴訟法の解釈としては、見せる義務があるかどうかといったような点、若干疑問があるのですが、しかし、訴訟の公平という点から見るならば、見せるのがわれわれとしては正当だと考えておりまするし、それから相当交渉しますると、少しずつこう見せて行くというふうな事例もたくさんあるわけなんです。そういうわけでこの点非常に不統一なんです、全国的に。この点一つ被害者であるやはり弁護士会等に、検察官の調書閲覧を拒否された事例ですね、そういうものもあわせて御報告を求めるように一つしてもらいたい。そういう点ちょっとつけ加えてただいまの動議に賛成いたします。
○一松定吉君 今のに牽連して……。亀田君の御提案ごもっともだと思うのですが、実は検事が犯罪の捜査をして調べた結果が供述調書に作られて自分の手元に持っておる。その持っておることは、被告に利益であろうと不利益であろうと、起訴した事実の正確を期するためにはその調査したところの書類を裁判官に提出して、そうして裁判官からそれらによって事実の真相を判断してもらうということが、いわゆる真実発見主義の最も必要なことなんです。ところが、それを今亀田君の言われるように、これを出すことによって被告の利益になるというようなものを出さない、そうして被告に不利益になって、すなわち自分の起訴したことの目的を達成する有力な資料になるものだけを出すというような弊害が非常に多い。それはほんとうは真実発見主義からすれば、そういうやり方は間違いです。それだからして私どもの考えでは検事が調べたときに被告に利益なことを言うた調書は作る。被告に不利益なことを言うた調書を作ると同時に、被告に利益なことを言うた調書を作り、そういう調書を全部裁判長の前に提出して、そうして裁判長から、この事実の真相はどこにあるかということを自由心証によって証拠を採用してもらうということでなければほんとうの裁判はできません。今のやり方は被告に不利益なものだけ出して、被告に利益なものは出さないということが非常に多い。刑事法廷ではしかしそういうことは間違っている。真実発見主義からいけば、そういう点も今亀田君の御提案ごもっともですから私も賛成いたします。それらの点から、やはり弁護士会に交渉して、そういう事例を調査して、そうしてさらに適当な方法によってそれらの弊風を是正するという態度に出ることを私は提案いたします。
○委員長(高田なほ子君) ちょっと速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(高田なほ子君) 速記を始めて下さい。
○亀田得治君 じゃ簡単に言います。私が申し上げたのは、そういう検察官の調書を裁判所に見せる見せないという点は若干疑問があるので、ともかくこの検察官が公費で作った書類、これは弁護人にまず見せる。裁判所に提出するのは次の段階です。弁護人にまず見せる。こういう点を弁護人から言えば一つの閲覧権として明確にする、こういう意味ですから、ちょっとまあ同じかもしれませんが……。
○一松定吉君 私もその意味です。私も亀田君と同じ意味です。
○亀田得治君 じゃけっこうです。
○宮城タマヨ君 この問題は人権擁護の問題に関する大きいことだと思いますから、幸いに当委員会に検察裁判の運営に関する調査の継続審査の項目がありますから、それによってさっそく調査をするような手配をしていただきたいと私は思います。
○委員長(高田なほ子君) ちょっと速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(高田なほ子君) 速記を始めて下さい。
○中山福藏君 法務大臣にお尋ねしますがね。今一松並びに亀田両委員からごもっともな提案がありました。そこあなたに一つお聞きしておくのですが、これは検事局はいろいろな証拠をお出しになるときは副本を弁護人にお渡しなさるような新規の制度を設けられるということが非常に私はいいと思うのです。それでこの副本を渡さずに、私はこの前謄写を頼みました、こころがいよいよ弁護の始まる一時間前に謄写を持ってきた。そんなことがありまして、弁護ができぬことがある。だからこれは私は少し経費がかかるとは思いますけれども、証拠を検事がお出しになったら、副本を必ず弁護人にお渡しなさるような新規の考慮を一つわずらわしたいと思っておるのですが、どうでしょうか。一つ法務大臣の意見をその点について聞いておきたいと思うのです。これに関連しておりますから、ちょっとお聞きしておきます。
○国務大臣(牧野良三君) 今の委員諸君の御発言はすべてごもっともであります。これは、けれども委員の皆さん考えて下さい。あなた方が今までの検察行政というものに関して、だんだん誤まったところへ持ってくることについて深くお考えをいただいて……、と申しますのは、検察事務というものは犯罪を作るもののような傾向をこしらえてきたのであります。私は人というものはいかなる場合においても許すべきものだ、でありますから被疑者に有利な材料は無条件に提供させるように検察行政を持っていかなきゃならぬ、そうしてできるだけ被疑者に有利な材料を出させて、そうしてそこからこれは気の毒だの、これは罪にしちゃならないのということがいやしくもあるならば、私は起訴しちゃならないというのでございまして、(拍手)実は非常に大胆なことでありましたが、次官初め政務次官、事務次官、各局長の了解を得まして、過日全国の次長会議の席上におきまして、百人に余る関係者の前で私はこのことを申し述べたのでございます。そうして人権じゅうりんに似たことのあるのは、どうかして罪し、有罪にしたいと思うからだ、そうしてあなた方があまりに事件をたくさん持ち過ぎる、一人の検事が三千件も持っている、そうすれば言うことをきかなければぴたっとなぐりたくなる、これは人権じゅうりんじゃない、本能のわざだからそんなものは人権じゅうりんをした罪にはならない。だから事件を少くしようじゃないか、そうして起訴する事件を少くすれば、裁判所の事件が少くなるのであります。だからこういう方にわが国の法務行政というもののあり方を根本から改めよう、そうして人というものは許すべきことが原則だ、なぜかなら、人の性は善なりということが誤まりならばこれはとにかくだが、これがもし正しいということならば、どんな罪を犯した人に対しても有利なる材料を、弁解すべき材料は無条件に出させるようにすれば、弁護士の面会を拒絶するの、監視するのということもなくなって、まことによくないかということを申したのでございます。これに対しましては、あとから非難が起きまして、そういうことをされてはわれわれの職務が行えませんという反論が出てきましたが、私は検事の諸君というものは人を罪することでない、人を許すことにあるということをよくもう一度考えて下さいと言いまして、ほぼ了解を得るの道が進んで参りました。従って日本全国の検察行政というものは、ただいま皆さんの御発言のように、根本から改めていく、そうして被告人をどうかして罪しようという材料を役人が作り上げるということでない方向に向けていきたい。これに私はどうか皆さんの御努力を得たいと存じます。しこうして今全国に向って一松委員の動議のごときことをお始め下さると、私は非常に遺憾な事態がたくさん出て来て、委員の皆さんに申訳のないことになると思う、現在いけません。それは一松さんの言う通りなんです。だからどうかここで根本は改めるというこの基本方針をまずお立て下すって、この基本方針で私どもお進め下すって半年、一年の事態を一つ見さしていただきたい。そうしてその後において実績がどうだということを、私は皆さんがお取り調べ下さることにしていただきたい。委員長、私は先ほど検察官の人数をふやさなくても必ずできるという信念を持ちますと言うのもこのためでございます。そして私は裁判所の裁判案件を少くして、早くこれを判決を持つようにし、従ってこの心持で最高裁判所の機構も改めるという方に皆さんの御同意を得たい、さように思っております。一松委員の動議は私には深刻に感じまして、御賛成するほどの勇気を持ちません。どうかかすに私は半年、一年の時をおかし下すって、誤まっておる検察行政の行き方を必ず是正いたしまするから、是正の道に上ってからにしていただきたいことを、委員の皆さんにお願いいたしたいのでございます。
○一松定吉君 法務大臣の御意見を伺いまして、さすがは牧野法務大臣であるということを非常に私も感激いたしました。あなたのそのお言葉が実際に実現するということをわれわれは目的としておればこそ、今のような緊急動議を出したわけなんです。しかしながらそれを出した結果が思いやられるということは、私も実はそれを予感しております。でございますから、あなたの今お話しになったような、期間を、猶予をおけば必ずこれを是正していただくという実績が上れば、何も平地に波乱を起すというようなことは、私としては好みません。 しからばあなたに一つお尋ねいたしますが、そういう方法をおとりになるについては、今法務委員会でこういうような提案があって、そうしてそれにはほとんど委員の全部が賛成しておって、実際そういうことの決議をする一歩手前に至って、自分はこういう発言をしたんだ、それがために君方の面目も一応維持ができるわけなんだが、一つ将来そういうことのないように大いに注意せよ、そういうことがあれば今後容赦なくそれらのことを糾弾して、それを公けにするぞというようないわゆる内訓でも、御訓示でもお出しになって、そうしてそういうようなことを、もうすぐに明日からでもなからしめるような方法をおとりになるという御決意でありますれば、私は全面的にあなたの御意見に賛成して、今の緊急動議を取り消します。ただ、しかしながらあなたがそういう仏心、仏の心をもって、そうしてただ将来事あるに従って彼らをしてそういうことをなからしめるというような微温的な態度であれば、もう今こういうことを言うておる今日今そこで全国の検察庁において行われておるのですから、そういうようなことについてあなたが重大な決意をお持ちになって、それらの部下を大いに訓示していただいて、粛正の実を上げる、ゆえに一カ年間待て、そうすれば必ずお前方のそういう心配はなくなるんだということでありますれば、私はつつしんであなたの御意見に賛成をし、緊急動議を撤回いたしますが、いかがでございますか。
○国務大臣(牧野良三君) もういい機会でございます。本月のこの速記録を添えまして、私は今仰せられた責任を果します。どうぞ私の苦衷もあわせ御了承を賜わりたいと思います。
○一松定吉君 それでは一つ皆さんの御了解を得まして、法務大臣がそこまでの御決意をもってこの刷新に御努力賜わるということでありまするならば私も喜んでこの緊急動議を撤回いたしますから、どうか皆さんも一つ御賛成を賜わりたい。
○亀田得治君 私どもまあ賛成したわけですが、問題は、やはりそういうことが行われやすいようにしておる法律、刑事訴訟法の規定そのもの、私はやはりそこにあると思うのです。これは法務大臣が先ほどおっしゃったような気持で訓示をする、あるいは通達を出す、そういうことがありましても、法律が今のままである以上は、私はなかなかむずかしい点が実際問題としてあると思うのです。やはり捜査する方は法律で許された最大限までやはり行こうとすると思うのですね。だから、そういう問題なんですから、法務大臣の善意とお気持はよくわかるのでありますが、そのために一松さんがこれを撤回されたからといって、それでは私どももそれでけっこうというわけにはちょっと参らぬと思うのです。だからこれは一つこの程度で若干保留してもらいたいと思うのです。もう了解と言うわけにはいかないのです。しかしせっかくのそういう御答弁でもあり、また御提案者の方もああいうふうな御意見でありますので、むげにそれを反対もできないかと思うので、このままで扱いを保留してもらって、私どもはやはり検討したい。
○羽仁五郎君 私は今の亀田委員のお説に賛成をするものであります。法相の御苦衷に深く敬意を表するのでありますが、日本には、特に検察及び裁判の権威を維持するためには事実を隠してもかまわないという伝統があります。また裁判及び検察の権威を維持するためには国民の人権をじゅうりんしてもかまわないという伝統がある。この伝統を打破するということは容易ならざることでありますけれども、しかしそれをしない以上は、われわれは民主主義を口にすることはできないのであります。明らかに誤まった裁判であるにもかかわらず、その裁判が誤まりであるということが社会に公表されることによって検察並びに裁判の権威が地に落ちる、かつてはそれが天皇の裁判であり、天皇の検察であるから、その権威を地に落すことはできない。従ってそれは誤まった裁判であってもその事実の公表を押える、あるいはその真相を明らかにする努力をしない、あるいはその人権がじゅうりんされていてもそのままにしておる、そういう伝統が残念ながら強く残っております。法相も、よく先ほどの御説明で拝察をしますように、その事実を御承知だと思うのです。これは私は必ずしも日本ばかりでもないと思います。あるいは最近フランスの裁判なんかにおいてもそういう問題が問題になっております。裁判及び検察の権威を維持するためにその事実の真相を明らかにしないというような、そういう伝統を打破しなければならぬということを、フランスの最近の裁判についても世論が起っておりますが、これはやはりどうか検察に携わっておられる検察官あるいは裁判に携わっておられる裁判官の方々も、自分の裁判が誤まっていたために、あるいは自分の検察が誤まっていたために、自分の権威が落ちるということと日本の検察及び裁判の権威が落ちるということと混同されていることに私は非常に大きな間違いがあると思う。私は裁判官なり検察官なりが個人の権威というものにあくまで執着して、日本の国の裁判や検察の権威を地に落していると言って過言ではないと思う。国民の声を聞いてごらんなさい。国民は検察官というものは要するに国民をたたいてそうして罪を作っておるものです。裁判官というものは検事の言うことは何でも信用して、国民は大体悪いものだ、うそを言うものだというふうに国民に向っているのだという声が、私は法相にも聞こえておると思うのです。私のところにも聞こえております。これほど残念なことはありません。先ほど法相がおっしゃったように、検察官は罪を作ろうとするのじゃない、罪を許そうとしておる、いわんや裁判官のごときは……。しかし国民の言うことをまず聞こうという立場をとらないで、国民が何を言ってもほとんど耳もかさない。検察官が出してきたものをただそれを証拠として証拠力を認める。今、日本の警察や検察で作ってきたものに、自由な自白であるというようなことを裁判所で、平気で言っていることくらい日本の裁判の権威を落しているものはありません。私は最高裁判所に向っては、三権分立だからあまり強いことは申し上げることはできないけれども、裁判所がいわゆる自由というものを禁じようという憲法の精神に従って努力されるのでなくして、明らかに脅迫に訴え、強制によって出てきている自白に対して、これは自由な自白であるというような断定をされていることくらい、日本の裁判にとって害のあることはないと思う。ですから、ただいま法相から実に真情あふるる御説明がありまして、一松委員も御了解になったのでありますけれども、しかし同時に亀田委員もおっしゃいましたように、やはりこれは留保していただきたいと思う。全く撤回ということではなくしておいていただきたい。
○一松定吉君 亀田君の御意見を承わり、羽仁君の御意見を承わってみると、なるほどごもっともな御意見だと私も思いますし、法相の御意見に対しては全面的の賛意を表しますが、ただやはりこれは目的を達するためにはこのままにしておいて、そうして法相の御態度及び反響を考慮に入れた後に最後に決定をするという態度にしてこのまま留保するという亀田君の提案は、私もっともだと思いますから、私の取り消しの取り消しをいたします。(笑声)このままということならば、おそらく何にも御異存はありますまいし、非常にいいことだと思いますからどうか……。
○国務大臣(牧野良三君) 皆さんから私が弾劾をされているような心持でつつしんで承わりました。今亀田、羽仁両委員の言われることに何だか刺されるような気がします。ことに日本人の悪いくせは、うそを言うことを美徳として教えられてきていることで、上の人をかばい、妻が夫をかばい、夫が妻をかばうことで、うそを言うことは美徳だ、それが検察の上にも裁判の上にも非常に日本では因る。これは日本人の悪い国民性である。それと同時に悪いものは大蔵省の伝統であります。事件が起らなければ予算をくれない。事件百件について何百万円という、これが従来の大蔵省の予算の査定の誤まったやり方であります。私はこれを打破するに努めました。そうしたらば関係大臣を初め、次官も政務次官もまた主計局長も主計官もなるほどと納得がいったようであります。これからは皆さん、これは法務当局だけじゃできません。幸いに私のところにはいい政務次官を得ております。だから二人は心を合せてやりますが、何としてもきょう御発言下さった皆さんが協力して下さらなければ、この大きい仕事はできない。だからここの委員会といわず、全体で、ぜひ御協力をいただきたいと思います。そうしてこの私の責任を一カ年内に果したいと思います。どうぞよろしく御推察を願います。
○委員長(高田なほ子君) それではお諮りをいたしますが、ただいま一松委員から御提案がございましたが、この御提案に対して法務大臣の責任ある御答弁をちょうだいいたしまして、一松委員の緊急動議が一応取り上げられた形でございますが、これに対して亀田委員からは付議事項として調書の閲覧の件についてお話がございましたが、法務大臣から、あるいはまた亀田、羽仁委員からの御論議の末に、一応これを保留とすると、こういう結論を得たわけでございます。従いまして本委員会といたしましては、検察行政の民主化のために、あげて一松委員の御提案に基く精神を実現させていくという態度をもって、今後協力一致進んでいきたいということを結論とすることに御異議がないかどうかをお諮りいたします。
○一松定吉君 委員長の御趣旨はもっともでありますが、つまり私の出した緊急動議に対して採決をするということを、このまま保留すると、こういうことでないといかぬのですから、今亀田君の言うのはそういう意味ですから、そういう意味において速記録をやっていただきたい。採決することをこのままにして保留しておく、だから時期がくれば採決するのだ、このままに保留しておいて……、ということにきょうは御決議を願いたい。
○委員長(高田なほ子君) 承知いたしました。以上御了解いただけますか、お諮りいたします。 〔「了解々々」「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(高田なほ子君) それでは本日はこの程度で委員会を終了いたします。御苦労様でございました。 午後四時三十分散会 —————・—————