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24回国会参議院1956/05/08

社会労働委員会 第32号

発言数
86
登壇者
18
会派数
2
開催日
1956/05/08

会議録

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員の異動を報告いたします。五月七日付最上英子君辞任、加藤武徳君選任、同日付松原一彦君辞任、中川以良君選任、同日付植竹春彦君辞任、草葉隆圓君選任、以上であります。   —————————————

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) 健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本委員会の審査上の参考に資するために、委員会の決定に基き、参考人の御出席を願っております。この機会に、委員会を代表いたしまして、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の方々には、御多忙のところ特に御出席下さいまして、まことにありがとうございました。健康保険法等の一部を改正する法律案は、健康保険事業の健全な発展を期するため改正しようとするものでありますが、国民保健の向上に直接関係を有しまする各種の要素を含んでおる重要な案件でありますので、当委員会におきましては、厚生省当局から説明を聴取するとともに、衆議院における修正点について、関係議員から説明を聞き、一面同法の実情を聞いて参考とするために大阪において聴聞会を開いて、関西の関係者から意見を聴取いたしたのであります。さらに、本日は、東京を中心といたしまして各位の御出席を願い、御意見を拝聴いたしまして、本法案審査の上の参考に資したいと存じておるのであります。どうぞ忌憚のない御意見を御発表下さいますように、特にお願いをいたします。  次に、御意見を発表していただく事項につきましては、先に文書で項目等をお知らせいたしておきましたけれども、その項目にとらわれることなく、率直にお話し願えれば幸いと存じます。ただ、時間の関係上、一人十五分以内に御発表を願い、後刻委員から質問がございますので、これに対してお答えを願いたいと存じます。  なお委員の皆さんにお諮りいたします。時間の関係もございますので、午前中予定した参考人全部の意見の発表が終りましてから、御質疑をお願いいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) 御異議ないと認めます。

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) この際、お諮りいたします。参考人中の日本薬剤師協会副会長竹中稲美さんは都合により出席できなくなりまして、代理として、日本薬剤師協会専務理事谷岡忠二さんが出席されておりますので、参考人として谷岡さんから御意見を承わりたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたします。  それでは日本医師会副会長の丸山直友さんに御意見の発表をお願いいたします。

丸山直友日本医師会副会長

○参考人(丸山直友君) 私丸山でございます。健康保険法の改正につきまして、私どもの考え方を皆様の御参考に申し上げる機会をお与え下さいましたことを厚く御礼を申し上げます。  この問題はなかなか近来非常な社会の注目を引いた重大な改正でございますので、若干お与え下さいました時間を超過するかもしれませんが、先ほど話し合いました結果、薬剤師協会の方からは、時間を私に少しさいて与えてもいいというお話がございましたので、若干のもし時間のあれがありましても、お許しを願いたいと存じます。  やはりお与え下さいましたこの項目の順序で申し上げる方が私も話しやすく御理解も得やすいのじゃないかと考えますので、これについて申し上げます。  第一番目の「社会保障制度確立の促進に対する意見(今回の健康保険法等の一部を改正する法律案を中心として)」ということでございますけれども、社会保障制度の確立の促進に対するというような非常に大きなところからこれを見ますと、私の知識だけではとうてい浅薄で、皆様方の御参考になるだけのことを申し上げることは困難だと存じますし、また、時間的制約その他から困難だと考えます。わが国においての社会保障というものをどういう形態で、どういう範囲で行うべきかということになりますると、この限界に関する解釈の尺度はおのおの違っておると考えますので、今回の健康保険法の改正をその尺度にあてはめてどうとるかということは、あまりに広範になると考えます。ただ非常に素朴な考え方から申しますと、今回の健康保険法の改正は、大体において弱者に負担が重くなる、あるいは恵まれた階級には割合に負担が軽いというようなことから考えましても、社会保障という観念からは離れたものであるというふうに私は存じておるのであります。はなはだ具体的でございませんのでおかしいとは考えますが、そのあとに出ております十番までの項目について申し上げますることが、ただいま私の考え方の基礎になるものであるというふうに御了承願いたいのであります。  第二の中の一として「国庫補助」という問題が取り上げられております。この国庫補助は、健康保険法では今までの歴史から考えますと、若干ずつは出ておる、人頭割二円というような限界の補助が出たことが今まであったのでありまするが、しかし、その金額は常に事務費の範囲を出ておりません。給付費に関する国庫補助というものは従来出ておらぬのでありまして、近年国民健康保険においては給付費の補助というものが法定されておりますが、健康保険については今までその事実がなかったのであります。それが今回はともかくも給付費に関しましての若干の国庫補助が計上せられましたということ並びにそれが予算の範囲内ということでございまするけれども、一応国がこれを出すということがここで初めて確立せられたということに関しては、私どもはこれを喜びと感じておるわけであります。もっともこの国庫補助と申しますものは、出し方はいろいろございますので、定率の国庫補助あるいは定額の国庫補助あるいはその他の方法をもっての国庫補助というふうに、大体三つに分けて考えることができるように思います。社会保障制度審議会等におきましては、定率の国庫補助ということがよろしいというふうな答申をしているはずであります。今回は、定額の国庫補助であるということに関しては若干の不満を感じておりまするし、また、同じ国庫から出されるにいたしましても、その性格がどういうものであったかということに関しまして、これは厚生省はある一つの定見を持っておられないという感じを私どもは感じとっておるのでありまして、一部負担にからみ合いまして、国庫補助をするのだというふうな考え方、あるいは財政再建のためというふうな意味の国庫補助、これが三の「一部負担制度」にからみ合っているのでありますが、そういう趣旨をもって社会保障制度審議会でもまた社会保険審議会においても諮問がなされておったはずであります。しかるに、今度の法律として出されましたときにおいては、この一部負担にからみまして、一部負担と国庫補助が見合いである、しかも一部負担というものは、最初に保険審議会に諮問せられたような財政再建のためということを、全然その趣旨を変えられまして、国会に対しては保険本来の姿としての一部負担制度であるというふうに性格の変化が起って参っておるのであります。こういうようなことは私はいかがなものであろうか、果して厚生省の、ことに保険局当局においてはこういう一連のものの考え方が常に一貫性を欠いたその場限りのものであって、しかも、保険審議会に諮問するときと、国会に出されるときとはその性格を全然変えて、すりかえておると申しまするか、変貌して出ておるのであります。これは実に私どもとしては解しがたいのでありまするが、三月のたしか三十日だったと思いまするが、日は間違っておるかもしれません、山本庶務課長にこの点を質問いたしましたところ、一部負担の性格あるいは国庫補助というものの性格というものは、社会保険審議会に諮問したときとは全く変えてしまった、変更したのであるというふうな御答弁があったのであります。もちろんこの一部負担というものが財政再建のため、つまりもし赤字対策であるといたしますれば、また、国庫補助ということが単純なる赤字対策であるといたしますれば、黒字になったときにはこれは当然中止すべきものでございましょうし、本来の性質の、あるべき姿としての保険一部負担であり国庫補助であるならば、これは黒字になろうと、赤字になろうと、当然継続していかなければならない性格のものであるのであります。その点がやや最初からの諮問されたときとは全然性格が変ってきておるということは、私どもとしては何としても理解がいたしがたいのであります。標準報酬の改訂に関しましては、これは私どもといたしましては、直接に関係してはおらない事項だとは思いまするけれども、しかし、普通の常識で考えますと、大体この最低の三千円を四千円に引き上げるということに関しまする該当者の数が十一万幾らでございましたかあるのであります、八千幾らですか、そういうような人たちは現実に三千円しかもらっておらないはずなんであります。それを四千円もらっておるものと仮定して、四千円分の保険料を徴収するというようなことは、これはいかがなものでございましょうか。私どもはこれに対してはあまり理解がしにくいということであります。この三千円を四千円に引き上げまするために得ます財政効果は九千二百七十二万九百四十円になっておるはずでありますが、これをやめまするとこれだけの赤字を増す、一応赤字を解消するための上げ方をやめますると、赤字の対策がそれだけ減るわけであります。しかし、最高の五万二千円を五万六千円という級を一級作りますると、それによって得るところの増収は七千七百五十一万七千円となりまするので、千五百万円の欠陥は生じまするけれども、十八億というような予備費があるというようなことから考えてみますと、こういうようなものはごくわずかなものであるかもしらぬ、ただ最高をあまり上げるということははね返りがある、給付がふえるというようなこと、並びに休業した場合の傷病手当金は所得税がかからない、働いておるときには所得税がかかる、それを見るというと、あるいは傷病手当金として六割もらった方がむしろかえって有利になるというような場面があるのじゃなかろうかというふうな懸念があったのでありまするが、しかし、大体傷病手当金は六割つまり四割だけ減るのでありまするから、現実に働いておりまして所得税が四割徴収せられるというのは、月額五十万円以上の所得がございませんと四割の源泉徴収はございませんので、そういうふうな心配はないのではなかろうかというふうなことも考えられるのであります。先ほどの数字は十一万八千八百七十三名でございます。  それから一部負担に関しましては、これはやはり先ほど来申し上げましたように、単純なる赤字対策であるように財政再建という言葉で言い表わされておりましたけれども、実はそうではないようなふうの説明がなされておりまするが、これは果して政府がそこまでふん切っておられるか。これは社会保障制度審議会の答申においても、当面の赤字対策としての一部負担に対しては賛成しがたいという答申をしておりますが、それらの点をからみ合せてこういうふうな説明が変えられたのじゃないかというような感じを持っているのであります。ともかくも、健康保険を運営して参りますのに、戦後のあのインフレのときに非常に給料がどんどん上って参りました場合には、医療の給付に関するものは、給付費があまり上っておりませんので黒字になっておったはずであります。わずかの期間の黒字というふうな、黒字財政のようなことがあった場合に、直ちにこれは被保険者に還元すべきものであるというような考え方からでございましょう。二年を三年に延ばすとか、種々なる給付の面の増しが行われたわけであります。しかし、診療費に関しまする支払いの方に関しましてはそういうふうなことが行われない。黒字の原因がそういうふうな原因であるにかかわらず、つまり貨幣価値の変動、給料が上った、人件費が上ったというようなことのために、当然徴収する保険料が上ったというための黒字があったならば、当然あらゆる面にその使用の道は平等に考慮せられなければならぬはずであると思いますのに、単純な目先の被保険者のごきげんをとるというような形でございましょうか、あるいは真に被保険者の利益をはかるというのみの趣旨でございましょうか、それはよくわかりませんが、そういうふうな形で行われた。ところがその後において赤字が起って参りまして、一部負担をする、赤字の起りました原因はあるいは乱給でございますとか、その他の点が多少言われておりますけれども、実際上の問題としては何が原因、赤字の原因であったかと申しますと、戦後における抗生物質その他の給付に関する費用が高い。つまり高額の治療費を必要とする治療が広く行われているということと、もう一つは結核予防法が制定せられまして、結核予防法によって今まで隠れておった結核が表に現われてきた。身近の普通は健康であろうと従来考えておった人が、一つの結核の患者の対象として現われてきた。しかも結核予防法の給付としてはそれに関する財政の裏づけがなかったために、それが相当分量において社会保険の中の給付の増額となって現われてきたということが一つの原因であろうと私どもは考えているのであります。しからば、それに関しては当然抜本的の対策が講ぜられるべきはずであるにかかわらず、これを患者の一部負担としてとられるということに関しては、私どもは納得いたしがたいのであります。ことにA案、B案、C案というような三つの案で最初出されておりましたものが、その後しばしば変更を生じまして、ただいまのような形に相なっておりまするが、現在の政府の原案もしくは衆議院の修正案によりましてもいろいろなふうに不均衡が起るのであります。保険料の増徴は困難である。もはや保険料は限界に達している、負担能力がないのだということが言われているにかかわらず、病気になった場合においてはがぜん負担能力を生ずるものと見えまして、その人が一部負担というものを納める力を生ずるらしいというような考え方であります。これは妙な考え方であると思います。また今のような方法でやられますると、疾病区分によりまして不均衡が起るのであります。注射あるいは内服薬という、つまり物に一部負担をかけるというような考え方であると思いますし、また、それの行われない場合においては金額の差がある。つまり外科的のもの、処置のみを主として行うところの患者は十円の負担であるが、これに対しまして薬剤、注射等をもらった場合にはそれよりも大きな負担がかかる、つまり内科的の疾患に対しては一部負担としてよけいな負担をしなければならないが、外科的の疾患に対しては一部負担の金額は減ってくる、つまり同じ被保険者で同じ病気であるという事実に関して負担をするということであるのに、その病気の種類によってその負担の差が起るというようなことは、これは私どもとしては実際理解いたしがたいのであります。また、保険料は事業主と被保険者が均分に負担をするというような原則が一応立てられておるのでありますが、病気になりまするというと、とたんにその被保険者のみの負担が増高いたしまして、事業主は何らこれに対して負担をしておりません。そういうふうな事業主と被保険者の間のアンバランスがそこに起るのであります。  また、もう一つ考えなければならぬことは、これも一部負担を不払いにした場合にどうなるかということの見解が、厚生省当局といたしましては、経済的の理由によって、つまり金がなくて払えないということに関しては、保険の給付としては当然なさなければならぬが、まあ思想と言うてはいけませんが、一体一部負担というものに関しては私は反対なんだ、被保険者が反対である、そういう考え方から私は払わないのだ、もしそういうふうな人が現われた場合には、それは当然診療を行わなくても、拒絶してもよろしいという見解を発表せられておるのであります。これはいかがなものでありましょうか。私どもは医師法において、ゆえなくして診療を拒絶することができないような規定がございまするが、医師が実際問題として、そういうふうなただ法律の解釈上のその人の考え方の問題で診療そのものを拒否してもよろしいというような見解、しかもそれは健康保険の診療だけでなく、医師法によるところの診療拒否の条項にもなるというような見解を、先般厚生省のこれは統一的の見解であると御発表になりましたことは、これは私どもとしては実に不可解なものと存じておるのであります。私どもといたしましては、この一部負担に関しましては大体二十三億幾らというようなものを出しまするのには、一番正しい道は何であるかというと、これはやはり保険というものが相互扶助というものでやるのだという考え方にいきまするならば、健康者が負担しなくて病人だけが負担するということでなく、健康者もその病人に関してはやはり見てやるという相互扶助という考え方を徹底させるためには、結局は保険料を一部上げる、若干上げるということによってまかなうのがこれが常道であると考えられるのであります。二十三億幾らというものをカバーいたしますには、千分の三・八六を増徴いたしますればできるのであります。千分の三・八六というものはどのくらいの金額になるかと申しまするというと、四千円の人に対しましては月に十五円でございます。一ヵ月十五円だけよけいかけて下さればいい、そのうちの半分は事業主が負担いたしますから、本人は七円五十銭だけよけい出せばいい、こういうことになると思います。もし、しかしそれらのことが非常に困難であるとするならば、先ほど申し上げました国庫補助というものは、つかみで給付の中に出しますと、非常に高額所得者も低額所得者も均分にその国庫補助の恩典を受けるわけであります。これは社会保障というような考え方から申しますると、必ずしも私は妥当ではないと、そういう意味から申しますると、千分の三・幾らというものの増徴をいたしまするために起る本人負担の困難に対して、何らかの措置を、国が補助してやるという形をとられまするならば、その限界をどこにおくかということはこれは問題でございますが、そういうふうな考え方で、国から保険料に関する補助を出してやる、しかも低額所得者に対して特にこれを出してやるというふうな道が講ぜられるといたしますれば、むしろ社会保障というふうな考え方をこの中へ導入するのは正しい道ではないかと私どもは考えておるのであります。  保険診療の担当者は、これは二重指定の問題であると思いまするが、大体この機関指定と保険医の登録というものを二重にせんきゃならぬ必要性というものに関しては、私どもはまだ完全に理解はしておりませんが、ある程度の必要性もありそうには思われるのであります。しかし、一人でやっている医師がその機関と二重に登録せんきゃならぬ必要性に関しましては、これはなお疑問がございまするが、もちろんその年限を切るということに関しましては、私どもは了解がいたしがたいのであります。診療の契約であるから、契約に年限のない契約はないというような原則的なお話も一応はありまするが、しからば今までの過去何年間の保険というものが、保険医の指定という形で、期間なしに行われていたということは一体どういうことか、それによってどういう弊害があったかということに関しましては、私どもは何にもあれで差しつかえなかったじゃないかというふうに考えているのであります。あるいは取り消しに関しまして二年、あるいは三年に変更せられましたが、二年を三年に変更せられましたほんとうの理由を私どもはまだ理解しておりません。取り消しが行われた場合に、二年あるいは三年間取り消しであるというふうな、復活の期間に関してもこのことが影響するのであるというふうな考え方もあるいはあるかもしれませんが、しからば今までの保険医が無期限であったがゆえに無期限に再指定しなかったかというと、そうではなかったのであります。罰は罪の軽重によって左右せらるべきものでございまするから、当然そういう期間の指定がございましても、その軽きものは短かく、重きものは長いということは当然行われるべきものでございまして、そういうふうな期間に直ちに取り消しというものが直結するとは私どもは考えておりません。  行政検査、立ち入り検査でございまするが、これは衆議院において修正されているようでありますが、しかし実際上の問題といたしまして、立ち入りをいたさなければならないということは、監査の場合等においては実際上の必要はあると考えております。これは現在法律が削除せられましても不可能ではないやに解釈せられていると聞いておりますので、あるいはさようでございましょう。ただこういうふうな行政措置と申しますものは、中央において皆さま方がごらんになっていることと、末端の官僚のごく小さな人たちのやりますることということは、必ずしもその行い方がぴったりと一致しておりません。しばしば官僚統制的なトラの威をかるのようなことが行われて、いろいろなトラブルが起っていることは過去において事実があるのであります。また、これは行政立法であって社会保険というものの中の範囲で処理すべきものであるのに、保険医でない普通の医師と申しますか、保険とは何ら無関係の医師がこれに関しましての診療録の提示その他に応じない場合において、これを罰則をもって臨むということは、これは何としても理解いたしがたいのであります。そういうふうなことでもし参りますならば、たとえば、保険法における移送というふうな問題がございまするが、政府の原案によりますると、あらゆる一切の保険に関係をしたものは保険のこの法律の中で処分ができるというふうな考え方のようでございまするから、もしそうといたしますると、保険医でない医者に関しまして政府原案の罰金刑をもって処しますると、医師法の規定によりまして、医師免許証を剥奪せられる危険があるのであります。行政処分があるのであります。つまりこういう行政的のものを、健康保険に協力しないということになるならば、健康保険から外にほうり出してしまえばいいわけのものであるのに、それを他の医師法の規定に違反するような罰則をもって臨むということは、非常にこれはけしからない考え方であります。さっき移送ということを申し上げましたが、しからば移送する場合使った自動車の料金その他のものを調査して、そいつがもし健康保険のこの法律の中に何らかの非協力であるという形があった場合においては、運送業、これを取り消すかという問題が起ってくるのであります。そういうふうに行き過ぎた思い上った立法でないかしらぬと私どもは考えております。幸いに、多少は衆議院で修正せられまして、罰金刑は過料に変更されました。過料は行政処分をいたしましては軽くなりますので、医師免許証の剥奪というようなところまでは参らないだろうと思いまするが、これらの点に関してもよろしく御審議を願いたいと考えているのであります。  継続給付の資格期間及び被扶養者の範囲に関しましては、これは主として被保険者の利害に関係するもので、あえて私は申し上げないことにいたします。  罰則に関しましては、ただいま申し上げましたような、法律と申しますものは、罰しさえすればものが円滑に行われると思って、こういうふうな立法をなさることはあやまちであります。これは相互の完全な協力と理解のもとに運営せらるべきものでございまして、罰しさえすればものがうまくいくということでありますると、元来が、これが保険というものは、契約の形でございまするので、ついには現在のような思想で今後もどんどん進められまするというと、善良な意思を持っておる医師は、漸次に健康保険から遠ざかっていく、そっぽを向いていくという現象が起ってきやせぬかということをおそれるのであります。現在におきましても一流の医師は、健康保険に触れることをいやがっておるというようなことは、なぜであるかと申しますると、やはりそういうようなつまらない束縛が加えられるということが、本人の自負心をそこなうということがその原因ではないかと考えておりまするが、なかなかりっぱな医者が全部が健康保険に協力するような態勢を整えられるような考え方でものをお進め下さることを私どもは希望しておるのであります。  支払基金の審査に関しましては、これな今までも、中立的の、何ら片寄らないという審査を行われるということが原則でございまして、これは厚生省からも前に通牒が出されておるのであります。被保険者の利益のみを考えるわけでもなく、診療担当者のみの利益を考えるのでもなく、保険者の利益のみを考えるのでもなく、公正妥当な正しい医療が行われるということの審査をするということが、支払基金の審査の重要な点、しかるに今度は、地方においては知事の指揮命令下にある職員の形において審査が行われるという形になりまするというと、ここに一つの医療に関する統制的の考え方がその審査委員会を左右する危険が非常に多くなってきたのであります。これらの点に関しましては、こまかく申し上げますると非常に時間がかかりますので、私どもは支払基金の審査をあくまでも、何ものにも片寄らない中正妥当な審査委員会が公正な審査をせられるような機構にせられることを希望しておるのであります。  時間を大へん余分に費しまして申しわけございませんでした。申し残しましたことはたくさんあると思いまするが、御質問がございましたらお答えいたしたいと思います。これをもって終ります。

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) 次に、日本歯科医師会副会長竹中恒夫さんにお願いいたします。

竹中恒夫日本歯科医師会副会長

○参考人(竹中恒夫君) 私日本歯科医師会副会長の竹中恒夫であります。  同じ医療担当者といたしまして、大体前参考人の御意見とほぼ一致したところが多うございまするし、なお時間の制約もございまするので、重点的にお示しの順序によらずして陳述をさしていただきたいと、かように存じます。  今回の改正法律案につきまして、総括的に、しかも委員長のお許しを得ておりまするので、率直に申し上げますならば、私どもは全面的に絶対反対の意思表示をせざるを得ないのでございまして、むしろ考え方によりましては、義憤と申しまするか、ふんまんをさえ感じる次第でございます。と申しますることは、政党のいかんを問わず、社会保障制度を忘れて政治はない、ということは、今日の常識でございまして、社会保障制度のうちの最も大きなウエートを占めておりまするところの医療保険、この医療保険に対しまして、数歩後退するがごとき不自然な形に改めようとするところに私たちは義憤を感じ、ふんまんを抱く次第であるわけであります。しかも、今回お示しいただきましたこの改正案というものは、先般衆議院の公聴会に参りましたときも申し上げましたので、重複いたしまして、はなはだ恐縮でありますが、日本歯科医師会といたしましては、決してこれがお説のような抜本塞源的な改正案であるというようなことは、了解に苦しむところでございます。あくまでもこれは赤字対策に一貫しておるものである。かように存じております。すなわち、医療保険の根本対策の一つとして財政確立が必要であるということは、もとより了解いたし得るわけでございまして、従いまして財政確立のための、現実にあるその赤字というものの解消ということは、もとより一つの財政確立の上につながるところの根本対策であるということは考えられるわけでございまするが、この赤字対策オンリーでもって今回の修正案がなされておるというところに抜本対策がないということを私は主張したい、かように存ずるのでございます。  昨年末に厚生省からいただきました保険財政についてというパンフレットがございましたが、このパンフレットの中に、財政確立の赤字対策として羅列されましたところの各種の考え方が、すなわち被保険者の被扶養者の範囲の問題だとか、あるいは標準報酬料金の等級改正の問題、あるいは一部負担ないしは継続給付受給資格の延長を赤字対策として羅列され、同時に、あらゆる医療担当者に対しまするところの検査権、監査権の確立、あるいは官給請求明細書と申しまするか、この問題等々、基金法の改正等すべて赤字対策としてあの当時お示しをいただいておったその事柄だけが、今回の原案として出されておりますることからいたしましても、明らかにこれが赤字対策でございまして、決して根本対策ではないということを私どもは信ずるわけでございまして、しからば、根本対策として一体何を日本歯科医師会は考えておるかという御反問があるかと思いますが、これは当然私どもといたしましては、国庫負担、国庫の導入を定率によって、療養費の二割以上負担するということによっての財政の確立と同時に、結核を分離することによって、現在の保険危機を救う。あわせて国の責任を明らかにする意味におきまして、国庫負担と同時に結核問題に対しまして、いま少し国が大きなウエートをもってこれの対策を立てていただくということが、そもそも医療危機の根本対策に私はなると、かように存ずるのでございます。そこで、少しく各論的に条を追うて申し上げたいと思うのでありまするが、先ほど丸山参考人の方から第三条の標準報酬料金の等級改正の問題が詳しく説明をされましたので、私は重複を避けたいと存じまするが、あの考え方が下に薄くして上に厚いところに私どもは義憤を実は感じるわけでございます。やはり社会主義的なこういう立法でございます、施設でございまするからして、あくまでも下に厚くしなければならないのに、やはり完全にあるところの赤字を処理するために、下に重くするという考え方はいかがかと、かように存ずるのでございます。あるいは九条の一ないし九条の二ないしは四十三条の十によりまして、検査権及び監査権の強化が考えられておりまするが、この中の立ち入り権の問題は明らかに憲法の三十五条に抵触するごとく私どもしろうとといたしまして考えられるわけでございまして、みだりに他人の住居に入るということにつきましては、重大犯罪人といえども逮捕状あるいは捜査令状等を必要とするのでありまして、まして単なるわれわれの保険事務を検査にこられるのに、従来でも、おいでになればわれわれは家に招じ上げて、よく得心のいくまで検査をしてもらっておるわけでございますが、検査権を確立するというような形においてこれが改められまするということは、われわれの人格を無視すると同時に、憲法の精神に、個人的な人権に抵触するんでなかろうか、かように考えます。あるいは四十三条の十の質問に答えない場合には、直ちに八十八条の二によって罰金に処する、今回過料と改まったようでございますが、とにかく罰則を適用するというようなこと、これまた憲法三十八条、いわゆる黙秘権の問題に関連してくると、かように存じます。何人といえども自己に不利益なことの陳述を強要できないはずであります。従いまして、殺人とかあるいは放火、強盗というような社会不安を起すような重大犯罪人に対しましても、自己に不利益と思われますところの黙秘権というものは、これまた個人的な人権を尊重する意味において、はっきりとうたわれておるものであります。そうした点につきまして、単なる行政事務を検査をする場合において、質問に答えなければ、直ちに八十八条で苛酷な刑罰に処して、あわせて二重に医師の免許状まで取り上げるという、そういうような結果になるような考え方は、全く私どもも罪人扱いと申しまするか、健康保険そのものが一つの犯罪であって、これに携わるわれわれ医療担当者を最初から被疑者扱いにするような感じを私どもは持つのであります。こうした点は憲法、立法の精神からいたしまして、あくまでも私どもは反対せざるを得ない、かように存ずるのであります。  あるいはまた、四十三条の三の機関指定の問題でございます。保険医としての登録と同時に、機関指定ということに相なっておりますが、これも私どもから考えますならば、非常に時代逆行の考え方である、かように存じます。御承知のように、機関指定によりまするというと、いわゆる連座制でございまして、一人の内科なら内科にしても……あの規定があった場合につきましては、眼科も、婦人科も一括して機関の指定が取り消されるということに相なるわけであります。これを歯科の方で申しますというと、親子で開業医を同じ場所でやっているというときに、親に何か事故があった場合において、子供も同時に医療機関の生業を営めないということになるのであります。これはすなわち連座制でありまして、封建的な幕府時代の考え方であります。親が悪いことをすれば子供も孫も磔になったというごく昔の時代逆行の考え方でありまして、一人々々の人格を尊重しなければならぬ今日の民主政治下において、他の人のしたことに対しまするところの責任をあわせて受けなければならない、こういう考え方は、機関指定の面におきまして大きな矛盾を感じるわけであります。これまた、基本的人権を侵すものとして私は憲法に違反するものでなかろうか、かように考えるのであります。  それからその次の問題は、四十三条の八のいわゆる一部負担の問題でございますが、実は終戦直後にわれわれ医療担当者があまりに健康保険医たることを好まないような時代に、厚生当局が非常にわれわれ両医師会の幹部に慫慂されまして、ぜひ両医師会の会員に保険医たるように勧めてくれとおっしゃったことがございます。その当時のパンフレットによりまするというと、貧困の原因が病気にある、しかもこの病気というものは最も普遍的にだれにでも襲うところの不祥事である。普遍的であって、頻発的なものである、従って被保険者大衆に対してどうしてもこういう普遍的に起るところの病気に対しては、あなた方の協力を得なければうまくいかないことであるし、病気した場合においては、経済的な負担以外に、肉体的な負担と精神的な負担があるのだから、せめて経済的な負担だけは健康保険法の完遂によって解消していただかなければならぬのだから、どうかその意味合いを十二分に認識して協力してくれというようなことが終戦直後にわれわれの方へ申し出があった。しかもあくまでも健康保険の本義に照して経済負担をかけない。ふだん健康なるときにささいな収入の中から保険料をかけて、相互扶助的な精神からやるのであって、一たん病気になったならば、一つの医療給付に対しましては何らかの経済的な考慮、負担なくして、肉体的な精神的な苦痛だけで忍び得るようにするのが本法の精神である、かように私ども了解しまして、その後協力して参ったのであります。その意味合いからいたしましても一部負担というものは、はなはだ立法の精神に遠く離れていきつつある姿のように私どもは考えるのであります。  なお、先般衆議院でおっしゃったのですが、世界各国どこの国でも一部負担、国庫補助の形をとっている、日本がとるのを反対するのはおかしい、まるで君らは被保険者の立場でないのになぜ反対するかというような御質問があったのであります。私は世界各国がとっておるということに対しましてはなはだ疑義を持っております。健康保険施設をやっておるところの国全部がとっておるとも考えておりませんし、かりにとっております国の例を引きますと、保険料が日本のように、世界最高の保険料率でもって課せられている被保険者が、安いところの保険料によってまかなわれておるところの他の国の方々の一部負担、これは負担の上におきまして大きな違いがあるわけです。むしろその差額だけは、健康なときから一部負担をしておくのである、かように私どもは考えるのでありまして、どこの国でも一部負担をとっているから右にならって日本もとるのがほんとうである、これは反対するのはおかしいというのはどうしてもわれわれは首肯できないところの理論である。あるいはまた、受診率が下らぬとおっしゃるのでございますが、これは議論の余地のないところでございまして、受診率が下るというのは、国民健康保険、一般健康保険にいたしましても、明らかに受診率に影響があるわけであります。  なおいま一つここに一部負担について、君らに関係がないのに反対する、とおっしゃったのでありますが、収入の面におきましてもこれは明らかに関係があるわけです。現行の一部負担の初診料の例でございますが、われわれ医師といたしまして、患者が初診料を持ってこないからといって、診療を怠るわけにはいかない。またお金を忘れたから持ってこないという場合もございますし、金がないから持ってこないという場合もございますが、そうした場合に、では明日持っていらっしゃい、あるいは、月給をもらったら持っていらっしゃいということで、われわれは一応診察をいたしますが、多くの場合にそのままになりまして、初診料の未徴収の実際の例が多数にあるわけです。相当大きなパーセンテージがこの初診料の未徴収でございます。従いまして最初の原案のような二十三億五千万円かりに一部負担にいたしますならば、そのうちの三〇%あるいは五〇%、七〇%は、とにかく何パーセントかは未徴収にわれわれはなるわけです。結局医師、歯科医師の減収がこれによっても明らかに招来してくる。従いましてかりにこれが十四、五億円に減収をいたしますならば、単価を十円引き下げられたというような結果になるのでございまして、一部負担の問題は被保険者に重大な関係があると同時に、私どもにも決して無関係であるというように割り切ったようなお考え方は、非常に私どもといたしまして迷惑を感ずるところでございます。  また、四十三条の九の官給請求明細書の問題でございますが、これは今回付帯決議によって廃止になるというように聞いておりますが、これは改正されない現行法によりましても、大臣のいわゆる定めるところによって発行し得るところでございまして、非常に私どもはこの問題に対しまして危険を感じておったのでございます。この官給明細書の問題は、事務量が想像以上にふえるわけでございまして、おそらく三倍以上の事務量がわれわれに負荷されるというように考えております。すなわち、現在でも医師、歯科医師は第一日曜日は、土曜日から第一日曜日にかけましてはこの請求書の整理に忙殺されるわけです。医師、歯科医師は第一日曜日というのはございません。それがもしこの官給請求明細書を出すようになりますと、おそらく期日の関係からいたしまして、第一月曜日、第一火曜日、二日間くらいはこの書き入れにひまをとってしまいまして、実際の患者の診療ということ自体に支障を来たし、結局第一月曜、第一火曜日は休診しなければならぬということを考えるわけです。これは重大問題でございまして、その官給請求明細書に対しますところのいろいろな本質的な意見もございますが、実際問題としての事務的な面におきまして、診療に支障を来たすのであるということを特にこの機会に申し上げておきたい、かように存じます。  あるいはまた、最も私どもが考えておりますることは、国庫負担の問題でありまして、結論的に申し上げますならば、この国庫負担と結核の分離問題、支払い期日の法制化、この三点が特に私どもといたしましては先生方にお願いいたしまして、参議院においてわれわれの望むような方向に持っていっていただきたいということを念願するものでございますが、国庫負担につきましては、先般の新医療費体系のときにも私どもは絶えず議論したのでございますが、国庫の導入がなくして、現在のワク内操作でもって新医療費体系をきめようというところに不自然さがあるわけです。物と技術とを分けて合計したものが医療報酬金であるという場合に、合計額はあらかじめきまっておって、そうして計算するところに不自然があるのでございまして、この足らざるところは、当然国庫の導入によらなければ私は解決しないと思う。あるいは今回のその他の赤字対策もすべて不自然であって、社会保障制度の後退であるということを私は申し上げますが、その根本原因は財政的な基盤がきわめて薄弱であるということでございまするからして、国の力によりまして国庫導入することによらなかったならば、とうていこうしたいろいろな不自然の問題は解決いたしません。そこで国庫導入の問題でございまするが、本年度は皆様方の御協力によりまして三十億円前後の国庫の補助があるということを聞いておりますが、これはあくまでも臨時補給金の形でもって導入されておるということでございます。こういうことでは、今後私どもがかりに新医療費体系を再審議する場合におきましても、はなはだ支障を来たす、予算がわからなければこれは困るわけなんで、臨時補給金でございまするからして、来年はもらえるか、もらえないかわからない、あるいは国会等の速記録を読みますというと、来年お出し願うということでございますが、では再来年はどうかということになりますわけで、やはりあくまでも国庫の負担というものは法制化されまして、療養費の二割以上を国庫が負担するのだということによって、初めて保険財政に対するところの予算が考えられ、新医療費体系を議論する場合におきましても、一つのよりどころを持つわけでございまして、その裏づけのない限りは、正しい姿の新医療費体系というものは永久にできないと私は考えております。  あるいはまた、結核の問題でございまするが、総医療費の三六、七%が結核に費されるということでございまするが、これは医学の進歩によるところの外科的療法の取り入れと、大幅な抗生物質の導入でございまするが、こうした医学の進歩にマッチしてこういう方法を取り入れる場合においては、もとより財政的な裏づけをなさらなかったならば、当然赤字になるわけです。この意味合いから申しましても、国庫導入によりまして結核問題は保険から分離して、そうして結核予防法を強化するとか、あるいはほかに結核の保険法を制定していただくとかいたしましてやらなければ、健康保険法というものは早期発見して、早期治療して、早期職場に復帰するというところの本来の考え方から遠く離れて参るわけです。一人の結核患者が出まするならば、平均五十五人の保険医療がその患者に費されてしまうというような現状でございまするというと、中小企業の多い政府所管の場合を考えますというと、おおむね一つの事業場で一人の結核患者が出れば、あとはくしゃみもできない、歯が痛いからあるいはおなかが痛いからといって他の被保険者がもし行きますならば、もうすでにそれだけ赤字になる、五十五人以上の組合、事業場におきまして、これがその倍になれば、二人は結核ができても一応はプラス・マイナス・ゼロでございますが、結局そういたしますと、他の百八人というものが病気をした場合において、財政的の面からいいますならば、医者にかかれないということになります。どうしてもこの結核というような大きな経費を要する問題は、あくまでも現行の健康保険のワク外にもっていっていただきまして、分離していただきたい、この事柄が最も私どもの主張するところでございまして、このことなくしては、おそらく抜本塞源的ないわゆる医療保険を前進するというようなことは毛頭考えられないところのものであろうと、かように思います。  なお最後に、特にお願い申し上げておきたいことは、われわれの医療報酬金の支払期日の問題でございます。今回のこの修正案を通覧いたしますというと、いろいろ私どもに対しまして義務的な面が非常に濃厚に打ち出されておりまするが、私どもの権利の主張というものはどこにもないわけです。現在支払基金から私どもが支払いを受ける場合におきましては、六十日ないし七十日おくれてこれが入ってくるわけです。で、この歯科の方では比較的金額が少いのでございますが、私どもは実際の例を知っておりますが、大病院あたりが基金の幹事長の証明書によりまして、毎月その報酬金の全額を銀行から借りておられる。で、自分の当然受けるべき金をいろいろな先方の御都合によっておくれ、受けるべき金でありながら、自分の金でありながら、金を借りて利子を払っている。しかも一たん借りますというと、これが永久に足が抜けないというようなことでございまして、次に入ります報酬金は前借に取られるというようなことで、はなはだ不合理、結局この利子を考えますならば、これまた単価五十銭なり一円下るというようなことになるわけです。  でございまするからして、結論的にお願い申し上げたいことは、国庫負担の問題と、結核の分離に対しますところの御勘考を願いたいということと、なお支払期日に対しますところの、はっきりした期日を定めるところの法制化を、基金法において、あるいはまた健康保険法において補いをするのか、その技術的面はよく存じませんが、そうしたことを取り入れていただきたいということを、日本歯科医師会としてお願い申し上げたい、かように存ずる次第でございます。  時間がないそうでございますので、いろいろ申し上げたいことはございますが、以上大要を申し上げまして、日本歯科医師会の陳述にいたしたいと存じます。

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) 次に、日本薬剤師協会の専務理事谷岡忠二さんにお願いいたします。

谷岡忠二日本薬剤師協会専務理事

○参考人(谷岡忠二君) 本日お示しをいただきました項目はたくさんあるのでありまするが、特に本日は経験の豊かな医療担当者の方が、あるいは識見卓抜な参考人の方々がおいでになりまするので、私はこのお示しをいただきました項目の二、三につきまして、簡単に意見を申し述べてみたいと思うのであります。  で、国庫補助に関しましては先年来われわれ社会保険関係九団体が、政府にしばしばその補助を陳情いたした通りでありまして、今日改めて申すまでもなく、国庫補助の額がこの社会保障制度拡充のために私はもっともっと増額をしていただきたい、そうしてその使途というものは、これが積極的にこの社会保障制度の伸展に役立つ、あるいは医療の内容を豊富にするというような方面のために、積極的に使われる国庫補助がほしい、こういう感じを持っておるものであります。  一部負担の問題がいろいろ論議をされておるのでありまするが、今日までの健康保険法においても、一部負担はすでに健康保険法によって初診料を患者の一部負担にするという規定があるのであります。で、今回はその範囲を広げて一部負担が課せられておるのであります。で、大体一部負担というものは理想的に申しまするならば、かような一部負担がなくして保険診療が受けられるということは、これはもう申すまでもなく理想的な制度であると思うのであります。またやむを得ないにいたしましても、高額所得者には一部負担を課し、低額所得者には一部負担を免除するというような何らかの措置が講じられることが理想的には望ましいのであります。しかしながら、現実に、現在のこの保険経済あるいは国家の財政というようなものをいろいろ考えてみまするならば、この社会保障制度の拡充伸展のために役立てるためのこの程度の一部負担もまたやむを得ないのではないであろうか、こういう感じがいたすのであります。なお一部にはほんとうに医療給付を必要とされる患者が適正な診療を受け得るということのために、この一部負担の制度によってそのことが的確に行われ得るというようなことも考えられまするので、この点につきましては、この一部負担をいたしまする内容いかんについてはいろいろ論議の余地があると思うのでありまするが、一部負担そのものに関しては、この程度のものは消極的にではありまするが、やむを得ないんではないか、かように考える次第であります。  保険診療の担当者で、機関指定と個人登録を併用するということに関しましては、これは正直に申しまして、私ども薬剤師は、今までこの保険診療の実務にあまりに携わる機会を与えられていなかったのであります。今回医療制度の変革によりまして、薬局がどの程度に処方せんの調剤を受け付けるかということによって、この問題は切実に批判ができると思うのでありまするが、現在のところは、理論的に考えてこういう方法は考えられる、一応さような感じがいたすのであります。  また、二年の任期という点につきましても、これは他の医療担当者の方と私どもとはいささか状態を異にいたしまして、今後薬局があの医薬制度の改革によりまして、どういう姿に発展していくかというようなことを考えますると、われわの立場だけから申しまするならば、あの二年というものもまたあった方がいいのではないか、かように考えておるのであります。しかしこれらの点は、私ども実際にしばしば常に保険調剤の機会に恵まれておりませんでございましたので、切実な実感としてこれを検討するということが現在のところ困難だと思って、この点は、理論的に一応この機関指定、個人登録の問題もこれでいいのではないか、さような感じがいたしておる次第であります。  支払基金の審査の制度に関しましてね、これは先ほど丸山先生からもお話がありましたように、非常にでき得る限り合理的な審査の制度とすべきことは、もう申すまでもないのであります。ただ、地方における審査の状況に関しまして、いろんなことが予想されるという御心配があったのでありまするが、私どもも同様な感じはいたしております。しかしながら、支払基金のこの中央における制度につきましては、合理的な改革である、改正であるという感じがいたしております。で、この審査とか監査とかいう制度は、私は現実に不正があるとかあるいは不当な行為があるという前提でなくして、制度としてはでき得るだけ厳正に合理的な制度をきめておくべきだ、願うべくは、この制度が現実には適用される余地がなかったと、あるいはむだであったというような実際の姿が現われてくることを希望いたしておるのでありまして、必ずしも現実の実態を前提として私は申し上げておるのではないのでありまして、制度として合理的に厳正にあるべきだと、こういうふうに考えております。  その他の点につきまして、これは法律改正を要する問題ではないかと思うのでありまするが、私ども先ほども申し上げましたように、今回新たな医薬制度が実施されました関係上、社会保険との関連性におきましていろいろ不便を感じ、不安を感ずる点があるのであります。これらの一、二について私の感じておることを申し上げてみたいと思うのであります。  その第一は、保険薬剤師の療養担当規程によりますると、調剤をいたしまする際には、被保険者証の提示なくして、ただ単に医師の処分せんが確かにその被保険者の処方であるということを確めた上で調剤せよという規定になっておるのであります。このことは、患者といたしましても、またこれを受け付ける薬局の調剤担当者といたしましても、非常に不安な気持を抱くわけであります。そこにはまたいろいろな詐欺的行為も入り込む余地があるわけでありまして、願わくはこの被保険者証に医療用のものと調剤用のものというような二様のものでもお設け下さいまして、調剤のときにはこれを提示するというような方法にしていただけば、患者も安心し、また薬局も安心して調剤ができるのではないか。  第二の点は、薬局における調剤の調剤料金の支払いは、支払基金を通ぜずして、地方長官あるいは組合から直接に支払いを受けることになっておるのであります。この点は、薬局の手数もさることながら、共済組合あるいは他の組合等におきましては、全国から一枚一枚来る処方せんをまた一つ一つ支払いをするというような実情が非常に不便であるという声を聞くのであります。これらの点につきましても、一日も早く他の医療報酬と同様に支払基金を通じて支払われるということが保険組合にとりましても、また私ども調剤を担当しておりまする医療担当者にとりましても便利であると、かように考えるので、でき得るだけ早くこういうふうに改革をしていただきたいという希望を持っておるのであります。  以上、はなはだ簡単でございまするが、私の意見は以上をもって終ることといたします。

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) 次に、朝日新聞論説委員の江幡清君にお願いいたします。

江幡清朝日新聞論説委員

○参考人(江幡清君) 健康保険の根本的な改革につきまして、先ほどの参考人の方から、国庫負担の問題と、結核を分離しろというお説がございました。私賛成でございます。その問題につきましては、従ってほとんど同じようなことを述べることになると思いますので、先ほど来お述べになりました国庫負担を増額する、現在の臨時国庫補助を国庫負担にかえて、そうしてさらに、これをできるだけ増額する、それから結核医療を保険から切り離す、この二つの根本的な対策を講じてもらいたい、そういう点につきましては、重複するところがあると思いますので、省略いたしまして、必要であることだけ申しておきます。  若干角度を変えまして、それならば、先ほどお三人の方から、国庫負担を増額しろ、あるいは結核の医療を切り離せ、そういうような根本的な対策が述べられておるにもかかわらず、なぜそういうことが実現しないのか、そういうふうな疑問を私どもは持っておるのであります。たとえば、国庫負担の問題にいたしましても、これはおそらく社会保障制度審議会におきましても早くから、あるいは社会保険審議会におきましても、あるいはその他の関係各団体におきましても、おそらく一致して、しかも大体二割程度の国庫負担を行えということを、早くからあらゆる機会に建議しておるわけであります。それからまた政党におかれましても、私はたえずそういうことを国民の前に訴えておるように思われます。たとえば、今回の健康保険法の改正におきましても、おそらく与党である自民党が、一割の国庫負担を社会労働部会において主張された、あるいはそれを大蔵省に強く要求された、あるいは厚生省もそれを強く主張された、これは隠れもない事実であります。しかしながら、それが実際には法律となって現われてこない、私はその辺に一つの問題があると思います。少くとも、こういうふうな問題について、ほとんどあらゆる関係団体が一致して望んでいることだと思う。それからまた政党も、与党も野党も、国民に対して一様に訴えておることが、実際の改正として実現されない、そうして今度のような、今御審議になっていらっしゃるような、法律の形になったのでありまするが、その点につきまして、ただいま衆議院のいろいろな御審議の模様を聞きますると、ただいま現在、財政状態がこういうふうに非常に窮屈なのだから仕方がない、そういう御意見がございます。現に衆議院の社会労働委員会におきましては、大蔵大臣からそういうふうな御意見が述べられております。それからたとえば、現在国民の最も関心を持っておりますものは、それからこの国会においてもしばしば述べられておりまするように、健康保険を国民全部に及ぼすということであります。残りの三千万の国民に健康保険を普及する、これも与党野党を問わず、一様に主張されておるのであります。そしてそのために、たとえば厚生省は今後五ヵ年間に、昭和三十二年までに、五ヵ年間の計画をもって、国民皆保険を実現する、そういう案を立てられた、さらにまた自民党においても、そういうふうな考え方があるように承わっております。しかるに、やはり国会の審議を聞いておりますると、そういうことが望ましいというふうなことは一致しておるようでありまするが、だけれども、財政の問題があるからなかなかそうはっきりしたことは受け合いかねる、今後五ヵ年間に国民全部に健康保険を普及することは非常にいいことなんだけれども、財政上の問題があるから、すぐにこれをやるということは受け合いかねる、そういうことが多分大蔵当局から御答弁があったように速記録を読んでおります。問題は従って健康保険のみならず、社会保険全体についてそうでありますが、そういうふうな国民的な要望、あるいは与野党一致しておる要望というものが、実際に出てくるときには、財政上どうにもならないのだという形でたえず蹴られていく、それならばその財政上窮屈なことは、これは当然でありまするから、それじゃその財政上の場合におきまして、将来こういう形をもって国民皆保険を実現していくのだ、そういう年度計画というものを立てて、そしてやろうという意気込みをはっきり国会においてお示しになるならばともかく、そういうことも出てこない。私はこの辺にやはり問題があるように思います。私ども感じまするところでは、私どもは健康保険の問題あるいは社会保障の問題というものは、財政の問題というよりも、これを促進するかどうか、そういうふうな一つの決意にかかっていると思います。社会保障という言葉は非常に新しい言葉でありまするが、これは今ではほとんどの国民の胸に滲み通ってくる言葉になっております。きのうも私衆議院の速記録を電車の中で読んでおったのでありまするが、そうすると、私のうしろにおった若い二人の男と女の子が、病気になったら大へんだ、日本は社会保障がないから、そういうことを申しておりました。これはおそらくどこかのサラリーマンでありましょうが、おそらくこの政府管掌の健康保険にも入っていないところのもっと小さなところに勤めておる若いサラリーマンでありましょう、そうして病気になったら大へんだ、そう言っております。そうして社会保障がなければだめだ、そう言っておる。そうして社会保障を早く何とかしなければならない、そう言っておるのであります。  それから、また、私仕事の関係で労働組合の諸君にときどき会いますが、やはり組合員の諸君が考えますることは、今物価が上ってもらっては困る、物価が上ると言うことは、これは生活を非常に引き上げます。同時に、やはり病気になってはだめだということなんです。病気になったらば食えない、そういうことを心配しておるわけであります。しかも、そういうことを言うのは、これは健康保険のない組合じゃなくて、たとえば国鉄のような、ああいうところの、共済制度の非常にりっぱな組合、そういうところの組合員においても、病気になったらしまいだ、そういうふうな感じを持っていらっしゃる。そういうことは病気ということが、いかに生活上の負担になるか、それからまたいろいろな保険その他の共済措置があるように見えても、なおかつ非常に生活の窮迫をもたらすものだ、そういうふうに見ておるわけであります。そういう点で、私は一日も早くこの社会保障が促進され、それからその社会保障の中核は、おそらくは、現在の日本におきましては、健康保険を中心とする医療の保障問題であろうと思いまするが、その問題をもう少し真剣に促進していただきたい、そう思うわけであります。そうしてそのためには決意が必要だ。たとえば現在問題になっておりまする健康保険の国庫補助の問題につきましても、三十億も臨時国庫負担が出ております。これは私はやはり与党、政府の努力であると思います。努力とは思いまするけれども、これが一割の国庫負担になればなお健康保険の財政は楽になる、二割になればなお楽になります。これを一割にするためにはあと十億出せばいい、これを二割にするためにはあと二十億出せばいい。それじゃその金が果してないか。財政上仕方がないと言いまするけれども、おそらく私は現在の国民は、少くとも現在の政治に対して、あるいは予算の使い方に対して、批判を持っておる。批判の眼を持つに至っておる。現在の国民は、そういう金がないということには納得しないと思う。それは予算の使い方、それからいりいりな予算の分取りの仕方、あるいは果して国民の生活に役立つように予算が組まれているか、そういうことについて国民は、やはり十分な批判の目を持ってきております。たとえば、防衛費の問題につきましても、防衛費と社会保障費との均衡の問題につきましても、相当な批判を持っておる。本年度防衛庁の継続契約といたしまして二十何億かの、二十七億だと思いまするが、継続国庫負担が出ておりますが、これは潜水艦を作るための費用でありますが、三年、四年かかって潜水艦一隻を作るために、本年度は二十何億かの金が出ている。その潜水艦が日本で必要かどうか、これはいろいろ疑問がございましょう。しかし、潜水艦一隻を作るために本年二十七億の金を出すならば、もう少し健康保険にも出るはずじゃなかろうか。たとえば一部負担の問題につきましても、二十三億五千万円をどこかで生み出せば一部負担は要らないのです。それじゃ二十三億五千万円と潜水艦の二十七億を比べたら、これは何とかなるじゃないか、あるいは、どこかで予算の乱費があるのじゃなかろうか、そういうふうな批判も国民は持っている。そういうことを私は国会においてお考えを願いたいと思うのであります。そうしてまた、その意味において、今日健康保険を立て直すかどうか、社会保障を促進するかどうか、そういう問題は議論の問題じゃなくて、財政上仕方がないというようなことじゃなくて、これをほんとうに実現する意思があるかどうか、実現する意思があるかどうかという決意の問題にかかっている、そういうことを私は申し上げたいのであります。  それからいま一つ一部負担の問題につきまして、私はやはり現在の段階におきましては反対せざるを得ません。先ほど竹中さんからこの程度の一部負担はやむを得ないのじゃなかろうかというお話もございました。おそらくその点の問題はいろいろあると思います。ただ私がこの一部負担について疑問を抱きますのは、これがやはり政府管掌の、つまり中小企業の健康保険の赤字を一部負担で切り抜ける、そういうふうな面が強いからであります。つまり根本的な対策としての一部負担ではなくて、赤字対策としての一部負担である、そういう面が強いように思われるからであります。しかもこの一部負担というものは、政府管掌の保険だけであって、組合健康保険、大企業の組合健康保険におきましては、これをしなくてもいいというような例がついております。あるいは一部負担をしてもこれを返せばいい、そういうふうになっております。そこで問題はこういうことと思うのでありまするが、おそらく政府管掌の保険において一部負担をしなければ切り抜けられないようなところにあるといたしましても、これは結局中小企業に属しておるこの人たちの給与が安いから、さらにそれを突き詰めていけば、中小企業の経営というものがむずかしいから、さらにそれを突き詰めていえば、おそらく現在の経済政策にかかわると思いまするが、そういうところに原因があるのであります。もしここでかりに中小企業に、あるいは日本の労働者に最低賃金法というものがしかれるということになりますれば、先ほど来問題になっておりまする三千円を四千円にして、おそらく最低賃金という限りは三千円なんという最低賃金はなかなか作れません。例の労働省の賃金の審議会で出しておる答申案でも、これはまあかなり低いものになると思いまするが、それでもやはりもう少し最低賃金というからにはもっと高いものにしなければならない、そういう感じを持っておるわけです。それからあるいは社会党の出していらっしゃるような八千円、そういうものが実現する可能性があるかどうか、これは別といたしまして、あるいはこれを財政的に最低賃金法を実施するために財政で補給するかどうか、これは別にいたしまして、とにかくそういうものができてくれば、これは標準報酬の問題も変ってくるのです。それから全体の保険料の収入も変ってくる、労働者の生活も変ってくる、労働者の生活が変るということは、つまり病気になる率が減るということです。何といっても今の日本の現状では収入の少いものほど病気になりやすい、中小企業において労務管理が非常にラフであり、劣悪であるから病人が多いのであり、劣悪であるから病人が多いのです。ですから、そういう点において、中小企業の現在の位置なり、あるいはそこに働いている労働者の状態というものが改善されてくれば、これは病人は少くなってくる、保険の問題もこれは変って参ります。そういうふうに中小企業の現状と結びついて、この政府管掌保険の赤字が出ておる。しかもじゃあそこに、その中小企業に働いておる個人の責任に帰すべき問題であるか、私はそうじゃないと思う。やはり日本の全体の政策が中小企業に不利なようにできておる、少くもそういうことのために中小企業の労働者というもの、あるいは中小企業というものがやはり大企業に比べて非常に不利な状態にある、そのためにこんなことになっておる。それならばそういうことで生まれてくる赤字というものを、その中小企業の労働者の劣悪な労働条件から生まれるところの病人に赤字を負担さすことは、これは私はやはり間違いであろうと思う。少くも公平じゃない、そういう点におきましては、私はやはり国庫負担とか、そういうことを考えていく方法は一つあると思います。  それからまた組合健康保険との間に何らかの調整制度をとる方法もあろうかと思う。とにかくいろいろな方法があろうと思います。思いまするが、とにかく赤字が出たからといって、これを赤字対策として患者の一部負担にもっていくことはやはり公平じゃない、そういう感じを持つのであります。もちろんそれでは現在の健康保険が単に六千万だけじゃなくて、残りの三千万全体の国民の皆保険になりまするならば、これは問題は若干違って参ります。その場合には、おそらく一部負担という問題もやはり健康保険の全体を運営するためには出てくるかもしれませんが、やはり現状において、しかも今問題になっている健康保険の改正の現状におきましては、やはり一部負担はこの際は見送って、そうして国庫扶助をふやすなり、あるいは国庫負担を増額するなり、あるいは借入金によるなり、そういうふうな赤字対策をやりまして、そうしてあと今後一年間の間にとにかく精力的に、先ほど参考人の方から申し上げましたような国庫負担あるいは結核の問題、そういう問題について根本的な対策を立てて参る、そういうふうにした方が今の政治の、あるいはそれに対する国民の批判、そういう点も考えまするとその方がよいのじゃないか、そういう感じを持つのであります。  非常に話があちらこちらにわたりまして雑駁になりましたけれども、以上の点を申し上げて私の意見にかえたいと思います。

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) それではただいままでの参考人の御意見に対しまして、質疑をお願いいたします。

相馬助治日本社会党

○相馬助治君 この際、私は丸山参考人に一点承わりたいと思うのです。本法の改正される法律案の内容の中で一番やはり問題なのは、患者の一部負担の問題であろうと思っております。ただいま江幡参考人が本質的にこの問題を解明して論じられましたように、私もこの一部負担の問題をどういうふうに基礎的に考えるかということが実に重要だとこう思っております。丸山参考人はその御陳述の中で、厚生省が、あるときは赤字対策といい、あるときは保険財政の根本的立て直しを期して、社会保障制度前進のために一部負担やむなしという見解をとるという、両様の説をなしているということは遺憾であるという意味のことがございましたが、しからば、この一部改正する法律案は、何らかの修正を加えることによって、今丸山参考人が陳述された弊害が除去されると思いますか、それともまた、現在の段階においてはすべからくかかる法律案は全面的に撤回して白紙に戻し、緊急欠くべからざる必要上の法改正を改めて提案するくらいな態度が望ましいとお考えでございますか。問題はすでに衆議院を通過して本院に回付されておる法律案ではございまするけれども、この際、私は日本医師会を代表するあなた、しかもあなたは社会保障制度審議会の委員であり、社会保険制度審議会の委員であり、加うるに中央医療協議会の委員でもございまするので、一つその方の立場から、本案に対する基本的な一つ御見解を改めて承わっておきたい。

丸山直友日本医師会副会長

○参考人(丸山直友君) 御質問にお答えいたします。私どもは保険というものが、相互扶助という形の建前を崩さないのであるということがまず第一、それから先ほど申し上げましたように、負担に関しまして疾病区分あるいは被保険者と事業主というような負担の区分に関しましての不均衡の起るような、こういう一部負担ということに関しましては根本的に反対しております。基本的に反対しております。ただ、私ただいまの医師会の総合的のこれは統一的な見解でございまして、これをある程度の修正を加えまして、こういうようないろいろな弊害が除かれるかどうかということに関しましては、確信を持ち得ません。修正いたしましてもいろいろな弊害は必ず、私が先ほど来申し上げましたような弊害に関しましては、解消できないと考えておるのであります。従って、一部負担に関しましては反対でございまするし、その一部負担をやめますることによって起る赤字は、先ほど申し上げましたように、少くとも暫定的でもけっこうでありまするが、国が補償しないという形であるならば、健康保険というものが相互の扶助でやるという形の建前をくずさないといたしますならば、保険料の臨時の増徴でまかなうべきものであろうと考えております。しかし、増徴することに対して、国がそれが負担に耐え得ないのであるというふうな考え方であるならば、国が補助金として出される場合には、先ほど来申されておりましたような出し方ではなくして、むしろ私はつり合いからいたしまするというと、負担に耐え得ない人の保険料に関しまする特殊な取り計らいをする、つまり減免処置をとって、その部分に対する国が補助金を出すという形が行われまするならば、社会保障的の考え方が完全に盛り込まれる国の補助の出し方であろうと考えております。さようにいたさずに、つかみで国から補助を出すという形でございますると、それによって受ける利益は、高額の所得者も低額の所得者も同様に均霑する。これは社会保障という考え方から申しましてはいかがであろうか。私社会保障制度審議会の委員でございまするが、社会保障制度審議会は従来はそういう考え方でございます。二割、つまりつかみで二割出すということでございます。これは高額所得者も低額所得者同様に均霑するという考えで従来きております。きておりまするが、社会保障制度審議会の委員となりましたのは私まだ新しゅうございまして、従前の審議にはあずかっておりません。おりませんが、私は先般の社会保障制度審議会に出ましたときにはその意見を申し述べております。さように御了承願います。

相馬助治日本社会党

○相馬助治君 非常に重大なことなものですから、もう一度このことは確かめておきたいと思うのですが、そうしますと、丸山参考人のお話は、この法律案の中の一部負担の問題は、初診料をどうとか、再診のときにどうとか、入院料のところでどうとかいうような、金額のバランスを操作したというようなことでは問題は解決しない、いわば一部負担の問題は、別途何らかの財政措置を講ぜられるのでなければ賛成するわけには参らないと、かように私は承わったのでございまするが、これに誤まりがあるかどうか、念を押しておきたいと思います。  ついで、政府の説明によりますれば、この際保険財政の根本的立ち直りを期して社会保障制度を前進せしめ、行く行くは未加入の三千万の人々もこれに加えて国民皆保険にいくと、かように説明をしております。多くの人に社会保険の恩恵に浴せしめようと、かように申しております。ところが、本法によりまして、継続給付受給資格は制限されまするし、被扶養家族の適用範囲も縮小されるのでございまして、一方では数多くの人に社会保険の恩恵に浴せしめると申しながら、その政府が同時に本法の改正によって現在社会保険の恩恵に浴し得るワク内にある者まではじき出そうとしておりまするこの現実に対して、医師会自身どのようにお考えになり、これはどのような形でこの際は矯正されるべきであろうとお考えであるか、基本的な問題でございますので、この点だけ承わっておきたいと思います。質問は以上で終ります。

丸山直友日本医師会副会長

○参考人(丸山直友君) 第一の御設問は、その通りであろうと考えております。  第二の御設問の国民皆保険の問題でございまするが、これは私は国民皆保険と言われておりまするけれども、から念仏ではないかと、かように考えております。おそらくただいまの政府の考えておりますること及び今回の健康保険法の改正等に現れて参りましたこの事実を見ますというと、国民皆保険であるとかあるいは社会保障制度というものを完遂する方面に向って進んでおるのであるということとは逆行しておるように私は考えております。

竹中勝男日本社会党

○竹中勝男君 薬剤師協会の谷岡さんの御陳述の中に、あなたは国庫負担の増額ということはあらゆる団体——医師会、薬剤師協会にしてもこれを要望すると言われたことと、一部負担はこの程度は差しつかえないと言われることの間に矛盾があるのじゃないでしょうか。

谷岡忠二日本薬剤師協会専務理事

○参考人(谷岡忠二君) 国庫負担が一部負担を要しない程度に国庫が負担をしてもらえるということであるならば、私は前提として申し上げましたように、理想としては一部負担は好ましくない、こう申し上げたのと、矛盾はないように私は考えております。

竹中勝男日本社会党

○竹中勝男君 別にここで理屈言うわけじゃないですけれども、国庫負担を増額するということは、結局一部負担をなくするための増額なんでしょう。

谷岡忠二日本薬剤師協会専務理事

○参考人(谷岡忠二君) そうです。

竹中勝男日本社会党

○竹中勝男君 それを強く要望されていながら、一部負担はやむを得ないということの間にはやはり私は矛盾するように思うのですが、政府委員のようなあなたの立場でものを言われておるのかもしれませんが、その点です。

谷岡忠二日本薬剤師協会専務理事

○参考人(谷岡忠二君) 私は繰り返して申し上げますが、国庫負担が一部負担を要しない程度に国庫負担が得られるならば、一部負担をしないことがむろん望ましい。ただ、現実の問題として、国庫負担がそこまで得られないとするならば、これは現実の問題として今の段階ではこの程度の一部負担はやむを得ないじゃないか、こういう考え方でございます。

山下義信日本社会党

○山下義信君 丸山さんと竹中さんとに伺いたいのですが、丸山さんの御意見で私が非常に教えられた点は、一部負担をやると疾病別のアンバランスが起るということを御指摘になった。さすがに専門家の御意見だと思って非常に有益に拝聴しました。それで私は丸山さん、竹中さんはその方面の専門家でいらっしゃるので、私どもの伺いたいと思いますのは、この一部負担の問題は、大いに全力をあげて審議しなくちゃなりませんが、保険財政との関係で議論をいたしますということになりますと、議論そのものとしては非常に簡単なんですね。国に金を出させるというようなことは至難でありましても、議論はもう一口ではっきりする。金さえあればやらぬでいい制度だ。それだが、しかし一応審議としてはやらなくちゃなりませんことは、この一部負担をやりますと、被保険者の受診率にいかなる悪影響を来たすかということが一点専門的な見地で、権威のある一つ検討をやってみなくちゃならぬ、ただ金だけの問題じゃない、こういう一部負担をやると被保険者の受診率の上にあるいは受診の上にいかなる悪影響があるかということは、これは一つ専門家の御意見を聞いて審議をしてみなくちゃならぬ。政府はどう見ておるか、私どもはしろうとでそういう点に関しまする資料がない。それで日本医師会の副会長さんとしては、あなた方の方面では被保険者の受診率にどの程度の影響を与えるか、どの程度の悪影響を来たすかという御研究が具体的にできていれば承わりたいのです。これは相当受診率を抑制するだろうという程度では私のしろうとの議論と同じになりますから、できるだけ具体的な御研究ができておればあるいは後日でもよろしゅうございますが、今は一般的な御見解を承わりまして、一つ私どもにそういう専門的な有益な御意見を聞かせていただきたい。  それで竹中さんに対しても、私はそういう御見解を承わりたいのです。あなたの方の歯科の関係でいいますと、補綴その他歯科診療における厚生大臣の定める給付を受ける、厚生大臣がどういう場合に一部負担をとるということを補綴以外にきめようとしておるかということはわれわれまだ審議しておりませんから、当局から聞いておりませんが、おそらく専門のあなたの方では、当局の意向をただして、補綴だけじゃない、その他の場合どういう場合にとろうとしておるかということは御調査ができておろうと思う。で、歯科の方ではこういう一部負担をいたしますと、どういうその受診率の上に悪影響をするということの御見解でありますか、この点を一つお二人様から承わりたいと思います。

丸山直友日本医師会副会長

○参考人(丸山直友君) 一部負担を課しますることによって起る、受診率に及ぼす悪影響を具体的にと、こういう実は御質問でございまするが、実はこの十円でございまするとか、あるいは二十円でございまするとか、あるいは入院の三十円でございまするとかという金額をとるというこの趣旨は、先ほど申し上げましたように、政府は財政再建のためということはすなわち赤字対策であるというふうな言葉で言うておりまするが、同時に乱給防止というような意味も含んでおるというふうに解釈されております。つまり金をとらないから不必要な治療を患者が受けるのじゃないか、それを金をとるということによって不必要な治療がそこに何かセーブせられるのじゃないかというふうな考え方が入っておるやに聞いておるのであります。すなわち受診率というよりは、初診の際の初診料を非常によけいとりますると、受診率の影響が参りまするが、それをあまり変動させませんければ、受診率の影響でなくて、診療継続期間の制限ということに相なって参るのではないかと考えております。しからば、今の現在のような方法でとった場合に、被保険者がその負担をいやがるために必要な治療を打ち切るであろうかどうであろうかということであります。これは実は私どもの方で調査したくとも資料もございませんし、まだ実行に移っておりませんので、どんな影響が起るかということは、具体的に調査は不可能でございます。ただこれをしばらくの間実行してみました場合においては、統計的には今までの診療日数、延日数にどういう影響がきたかというようなことを長い間に調査いたしましたらば、あるいは結果としてお示しができるかもしれませんが、ただいまのところでは、その調査はできておりません。しかし目的が一つのブレーキをかけるのである、診療にブレーキをかけるというような意味を含んでおるものといたしまするというと、これは何らかの悪影響がそれにくるのは当然だと思います。ただ、今の貨幣価値から申しまして、十円というような金あるいは二十円あるいは三十円というような金がほんとうの完全ないわゆるブレーキとして働くほど受診の制限に働くかどうかということに関しましては、私どもはまだ確信を持ち得ません。あるいは被保険者の経済状態がそのくらいのものを簡単に支払えるものであるか、あるいは得ないものであるか、どうも私どもははなはだ申しわけございませんが、ここに確定的の所見を申し上げることができないことを遺憾と存ずるのであります。ただ、何らかの悪影響がくる、原則的にくる理屈であるということだけしかいわゆるしろうと的の観測以上にただいまのところでは申し上げることができないのでございます。あしからず御了承願います。

竹中恒夫日本歯科医師会副会長

○参考人(竹中恒夫君) 今山下先生の御質問でございますが、実は正確な受診率の変化についての数字はここには持ち合せてございませんが、私が記憶しておるところによりますと、昨年の政府所管の歯科の受診率は本人が〇・七二%でございまして、いわゆる被扶養者、家族の方が〇・四八%か〇・四七かと記憶しております。これは大体家族の一部負担が半額負担でございます関係で、こうしたことがあるのだろうと思っております。国民保険との受診率の比較も今記憶いたしておりませんが、相当にやはり六・七〇%下回るところの数字のように存じておりますので、必要でございますれば資料が会の方にありますから、後ほどお手元にお送り申し上げたいと思います。そこで本年の厚生省の、受診率を予算の上からの説明によって承知しておりますところによると、前年度〇・七二%の歯科の受診率が、本年はあの一部負担の計算によりますと〇・六七、八%に下って計算されておるようであります。これは被保険者に対する健康保険制度の普及徹底なり、予防医学の知識が普及徹底することによって、年々例外なく受診率が上っておるにかかわりませず、本年は前年に比べて多少でも受診率が下ったようなことをお考えになったことによっての一部負担が、最初二十三億何千万円というお見積りのように私考えておりますが、そうしますと、例年に比べて、厚生省みずからが受診率を下げるのだという裏書きをこの金額によって示されておるように私どもは存じております。  なおこの機会に、先ほど申し落したのでございますが、いわゆる低額所得者、四千円以下の被保険者が四十万人おるわけでございますが、この方々、特に三千円以下の方が十一万人おられまして、日給に直して百円程度でございますからして、そうした方々が果して一日の収入が百円であって、五十円の初診料と処置料を含めて七十円、八十円の金を持ってこなければ歯が痛くても治療を受けられない、腹が痛くても治療を受けられないというふうなことは、私は実際問題として起るだろうと思います。そうした方々が月末に月給をもらってもおそらく下宿代を払ってしまえば一文もないというようなことで、明らかに明日からの治療ができない、結局受診を拒否するような制度に一部負担というものが追い込まれる。受診を拒否することが健康保険だということではこれはナンセンスだと思いますので、私どもはそういう意味合いから申しまして、これは当然一部負担というものはやめていただきたい、かように考えておるわけであります。  それからもう一つ、その他のものは何かという御質問でございましたが、私どもの聞き及んでおりますものは、インレーと申しまして虫歯に象眼する、つまりあのインレーと、それからかぶせる冠でございますがこのクラウンと継続歯、継ぎ歯、こういう程度のことがその他というふうに説明を聞いておるわけでございます。この表現も実は私ども不満でございまして、その他のことはあとからどういうふうに差し入れされるかわかりませんので、もしそういう点について明確にこれを表わしていただけばけっこうだと思うのでございますが、現在ではそういうような説明を私どもは一応聞いておるのでございます。御承知を願います。

山本經勝日本社会党

○山本經勝君 江幡さんにちょっとお伺いしたいのですが、先ほど伺ったことは大へん総合的な重要な政策的な問題に触れられておったように感じるわけですが、私の理解が誤まっておると悪いですから伺っておきたいのですが、特に江幡さんは直接国民的な立場での関係はありましても、医療従事者というような意味においては第三者的な立場にある、ことに公器としての新聞の事業に携わっておるその関係もありまして、非常に重要だと考えるのですが、つまり現在の、今回出されている改正法案というのは、健康保険に赤字が出た、そこで保険財政を、一応政府の意見によれば、立て直すためにこの赤字の処理をする、その処理の方法を集約するというと、患者の一部負担と、被保険者の標準報酬月額等級等の変更による負担と、大体二点に集約されてくる。しかしながら、根本問題は社会保障制度の中核として、この医療保険制度をほんとうの意味における発展拡大させるための基本的な政府の態度あるいは国会の態度が必要なんであって、むしろ当面の問題はそれに必要な改訂的な立場から段階的に考えてみて、差し当り出た赤字については、一応政府が補償しておいて、そうして今申し上げるような根本的な問題を早急に検討して対策を立てていくべきである、こういうお考えのように承わったのですが、それでよろしいでしょうか。

江幡清朝日新聞論説委員

○参考人(江幡清君) お答えいたします。そういうことでございます。で、つまり私今一つ考えますることはこういう意見もあったと思うのです。と申しますのは、おそらく将来国民全部に健康保険が普及いたしました場合に、たとえばこの一部負担というものは出ることと思います、今の財政事情で参りますると。で、そのときは別でありまするけれども、現在の段階で、そういうときも予想して今から一部負担の制度をとっておく必要はない。もちろんそう申しましても、たとえば、国民健康保険では五割は自分で負担するじゃないか、それから日雇いではどうとか、いろいろ議論もございます。しかし、そういうことを言って参りますると、国民健康保険がこうなんだから、政府管掌の保険も、もう少し一部負担をしてもいいんだと、だんだんだんだんずっと悪い方へ悪い方へ健康保険のレベルが下ってくるのです。それでそういうふうにして地ならしして、それでずっと大きなものを作っていく、それはどうもやはり工合が悪いので、そうじゃなくして、現在の水準は落さずに、むしろ多少レベル・アップするような方向で国民皆保険を実現していく、結局そういうふうに持っていかなければ、私は今後のいろいろな政治、経済を考えますると不得策ではないか、そういう問題であります。

山本經勝日本社会党

○山本經勝君 丸山さんあるいは竹中さん、どなたでもけっこうですが、先ほどの各参考人の御意見に共通する一つの点が浮び上っているようなふうに私は考える。その一つは、やはり当面の赤字の処理については国庫の負担でやるべきである。それからいま一つの問題は、根本問題として、保険財政の赤字の一つの大きな理由として、結核予防法並びに療養費の増高が目立っている。従ってこれを切り離せばいいのではないかという御意見もあったように感じます。そこで、今の健康保険関係の療養からかりに保険財政だけを見て参りますと、一応非常に多数を擁しておりますし、長期の療養を必要とする結核の予防並びに療養が切り離されることは一応健康保険そのものの赤字から見ますと、その赤字が減少するということも言えるかと考えますが、やはりこれは一つの重要な一環をなしておる関係もあるので、結核の予防並びに療養を切り離すということだけでは不十分なように感じるのですが、これは専門的な見地から一つ若干の御説明を承わらしていただきたい、かように考えるのです。

丸山直友日本医師会副会長

○参考人(丸山直友君) 赤字の克服に関しましては国庫の補助をなすか、あるいは保険というものの建前をあくまでも堅持するならば、臨時の保険料の増徴でやるべきであろうということを私はさっき申し上げたのであります。さように御了承願いたいと思います。  それから結核に関しまする問題、私は実は切り離すという言葉を使っておらないのでございます。切り離すということを先行いたしますると、現在の保険から結核の給付を切り離してしまうということを先へしてしまいまして、その結核をそんならどうして治療するかという裏づけがございませんと、その結核患者は全く路傍にうっちゃられてしまうという危険を生ずると思います。私はだから切り離すという言葉を最初には用いない。結核予防法の建前は全国民を対象としておりまするこれは法律でございまして、結核に関しましては、その治療に関しましてあるいは検診その他もたくさんございますが、少くともその治療部分に関しましては、健康保険の給付よりも先行するわけでございます。法律の建前から。ですから結核予防法の財政が豊かに盛られておりまするならば、自然の結果といたしまして、何らの法律改正をいたしませんでも、結核予防法における給付が先行いたしまするから、当然の結果として、健康保険における結核の給付の金額が減って参るわけであります。ところが、あの結核予防法の建前が、公費負担が二分の一となっております。またその公費の二分の一の中で国が二分の一、地方費が二分の一となっております。地方費の負担は義務負担でなくして、その県その県の予算の範囲でやることになっております。地方財政が非常に赤字でございますために、結核に関しまする給付のその予算の計上が非常に少くなりまして、その結果国が最初に予定しておりました予算に剰余を生じまして不利用費が出る結果、年々国の結核予防法に関しまする予算というものが減額している、このことが事実でございます。つまり地方費の義務負担でないという形が非常に隘路になっているようであります。従ってその金額が窮屈である、窮屈であるから、結核予防法のその少い金額で結核を治療するのにはどういう人を優先的にそれで取り上げるかということになりますると、自然他の保険等において給付の行われる人たちはあと回しにいたしまして、そういう何らの恩典に浴しておらない国民の階級の人たちを優先的にその方から先に取り扱っていくという結果が自然に生ずるのであります。そういうふうなことが、この結核の給付が非常に大きく社会保険の財政を脅かしている。入院に関しましては約六六%が結核に関する支出でございます。外来等を合せまして大体三八%ぐらい結核に関する費用として使われているのであります。この結核予防法の方で完全な予算措置がとられまするならば、何ら切り離すというような言葉を使いませんでも自然にその方に流れる、そういうことになると思いますので、私は政府といたしましても、この結核予防法に関しまする法律そのものは、あくまで地方負担を義務負担にするかどうかという問題、あるいは国の補助と地方費の補助との間の割合をどういうふうに変化させるかという問題、これらをよく御検討下さいますならば、おそらくは自然の結果として、私はこの結核に関しまする給付の減少によって社会保険経済は潤いを生じて参り、赤字の解消は簡単に行われる、かように考えております。   〔委員長退席、理事山下義信君着席〕

高野一夫自由民主党

○高野一夫君 先ほど竹中さんの御意見の中にあったことで、一点だけ私は保険局長に伺っておきたいと思うのですが、先ほど竹中参考人のお話の中に、相かわらず保険医に対する支払いがおくれる、こういう話が出て、それらはしょっちゅうわれわれも聞かされる話なんですが、これはどういうわけなのか、非常に事務が多いので、書類審査に非常に手間取ると、こういうのか、それならばその事務が多いわりに職員が少いのか、職員をふやせば、ふやしたいのだが、あまり金がかかり過ぎてとうてい見込みがないのか、何か現在一、二ヵ月もおくれるということはよくないと思うのですが、このおくれることの一番根本の原因、それから何かこの打開策がないものか、至急に一つやはりお払いするということができないものかどうか、非常にこれはまた他日の機会に詳しく伺いたいと思うのですが、せっかくお話が出たので、その点政府側の方から簡単でけっこうですから説明を願いたいと思います。

高田正巳厚生省保険局長

○政府委員(高田正巳君) 四月診療分の診療報酬を六月の末までにお払いをしますれば、実はこの問題は一応ないのでございます。四月診療分をたしか五月の十日までぐらいだと思いますが、一括して御請求を願いまして、そうして審査その他の手続を経まして、六月一ぱいにお手元に届くようにまあ銀行の口座に振り込むというようになりますれば、別に問題はないのですが、それが翌々月の末までに確実にお手元に返らないというふうな情勢が過去において相当顕著にあったのです。その最大の原因は、事務的な問題と申しまするよりは、結局御存じのように政府管掌健康保険が相当基金の支払いにおいては大口でございます。その大口の政府管掌健康保険が大赤字を出しておる、従って健康保険特別会計から基金に金を振り込むことがおくれる、従って基金の方ではもちろん組合管掌とか、あるいはその他の金をプールをして支払いをいたしておりまして、プールをしておりますることによって、おくれたよりは若干早くなるという理屈にはなりまするけれども、しかし大口の政府管掌が赤字を出しておるために振り込みがおくれて、従って支払いがおくれる、こういうことに実はなるわけなんです。それで、そのことにつきましては、私どもといたしましてもいろいろと努力をいたしまして、最近の情勢では大体翌々月の末ごろまでにはお支払いをいたしております。私の記憶によりますれば、たしか二月分の診療費は三月、四月一ぱいにお支払いをするならばいいのでございますが、それが五月の、大部分の、三分の二ぐらいの県ではたしかその程度にいっておったと思いますが、それが三分の一ぐらいの県におきましては、五月の五日とか七日とか、その程度におくれてお支払いをしたというふうなことになっておったかと思います。大体毎月それは基金の方でその資料等を出しておりまして、私どもとしましてはできるだけこの翌々月の末までには確実にお支払いをいたすべく従来も努力をいたしておりまするけれども、今後とも十分努力をいたしたい、かように考えておるわけであります。根本の問題はやはり保険財政の健全化ということが支払い促進の第一の問題になるかと思います。

高野一夫自由民主党

○高野一夫君 そうしますと、非常にその事務の繁雑、複雑ということでなくして、むしろ大もとに金があるかないかということによるというお話でありますが、そうすると、今度国庫補助金その他の、あるいは一部負担の増額なり何なり改正の措置が講ぜられる。それに対する賛否、是非の論は別といたしまして、そうすると政府といたしましては、厚生省としましては、今度の財政的措置によって大もとにおいて、そういうような今度は末端をして支払い期日が延びるようなことのないようになし得るはっきりした自信を持っておられる。こういうわけですか。

高田正巳厚生省保険局長

○政府委員(高田正巳君) 今回の法律案が御審議の結果成立をいたしまするならば、私どもとしましては、本年度は一応財政の健全化が確実にはかり得ると信じております。従いまして翌々月の末までに必ずお支払いをいたしたい。かように考え、またその自信を持っております。

山下義信日本社会党

○理事(山下義信君) 他に御質疑はございませんか。  先ほど竹中さんから一部負担の、政府の予算の収入については若干歯科に関する限りは、受診率が下るものとして収入の計算がしておるという陳述ですが、もし違っておればこの際……。

高田正巳厚生省保険局長

○政府委員(高田正巳君) 先ほど竹中参考人が、ただいま委員長の仰せでは、一部負担の計算のときに使った受診率の、という仰せでございましたが、私が伺いましたのは、本年度の予算の、三十一年度の歯科診療の予算、いわゆる給付費でございますね、この給付費の積算の基礎に使った受診率が前年度よりは低いものを使っておる。従ってそれは一部負担による受診率の低下というものを計算に盛り込んでおるのではないか。そういうふうな御趣旨の御発言であったように拝承いたしましたが、さようでございましたのでしょうか。

竹中恒夫日本歯科医師会副会長

○参考人(竹中恒夫君) その通りでございまして、本年度の受診率の低下はほかに理由がありましたら、この機会にお教え願いたいと思います。

高田正巳厚生省保険局長

○政府委員(高田正巳君) 本年度の医療給付費の予算の積算に使いましたものも、それから従って一部負担の財政効果を計算しまする意味で使いました受診率も、いずれもこれは前年度より下回ったものをとっておるということは全然ございません。われわれとしましては、過去の実績というものを押えまして、しかもそれは大体増徴、高くなる傾向にいずれもございまするので、それらを一般診療、歯科診療あるいはそれらのおのおのについての被保険者本人、家族分それらの一般外来、入院分というようにそれぞれ押えまして、推計を出した数字でございます。前年度より低い受診率をその基礎に使っておるということはございません。

相馬助治日本社会党

○相馬助治君 竹中参考人の陳述の中に現われたことに関連してですが、私が調査した資料によりますとですね、三十年度の療養給付費は二十九年度に比して二十八億九千万円の増加を示しておる。ところがその内訳を見ると、入院の分では十八億増加、入院外では十二億増加、歯科においては逆に二千百六十九万九千円の減となっておる。こういう資料があるので、このことに竹中参考人は言及されたのだと思いますが、これは技巧を加えたのではなくて自然にこういう数字が出てきたと、かように了解しておいていいですか。また私の資料は間違っておりますか。

山下義信日本社会党

○理事(山下義信君) 相馬委員にお諮りいたします。本質的な御審議はまた別の機会がございますから、今日は時間の関係がございますので……。

相馬助治日本社会党

○相馬助治君 答弁は保留してもいいです。数字ですから、調べて次の機会に答えて下さい。

榊原亨自由民主党

○榊原亨君 ただいま相馬委員のお話と同じ関係でありまして、この法案が出ました際のいろいろ一部負担をするとすれば幾らというような計数が出ておりますが、その計数の基礎をなしまするところの数字をこの次までに一つお出し願いたい。そういたしますと、今の相馬委員のお話になりました点もはっきりするのでありまして、各自各様の計算をいたしておりますので、一つ厚生省が、この統計の積算の基準をなしました数字を資料としてお出し願いたい。

高野一夫自由民主党

○高野一夫君 私も保険局長にお願いしておきます。この次でけっこうですが、保険医師に対する支払い方法と、保険薬剤師に対する支払い方法並びに支払い場所というものは違っておるが、これはどういうわけでそうなのか、これは統一して支払基金で一緒にやるというふうなことができないものかどうか、いろいろ金の問題もありましょうけれども、非常に現在のやり方は複雑だと思う。その点について十分研究を願って、次回に詳しく御説明願います。

山下義信日本社会党

○理事(山下義信君) そのように願います。  午前中の参考人に対する意見聴取及び質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山下義信日本社会党

○理事(山下義信君) 御異議ないものと認めます。  この機会に参考人の各位にごあいさつを申し上げます。参考人の皆さんには長時間にわたりまして貴重な御意見を御開陳下さいまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  午前中の審議はこの程度にいたしたいと思います。  暫時休憩いたします。    午後零時五十三分休憩    ————・————    午後二時四分開会

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、参考人の御意見を聴取いたします。  この機会に委員会を代表いたしまして、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の方々には、御多忙のところ、特に御出席下さいまして、ありがとうございました。健康保険法等の一部を改正する法律案は、健康保険事業の健全な発展を期するため改正しようとするものでありますが、国民保健の向上に直接関係を有します各種の要素を含んでいる重要な案件でありますので、当委員会におきましても、厚生当局から説明を聴取するとともに、衆議院における修正点については、関係議員から説明を聞き、一面また地方の実情を聞いて参考とするため、大阪において聴聞会を開いて、関西の関係者から意見を聴取したのであります。さらに本日は、午前中から各位の御出席を願い、御意見を拝聴いたしまして、本法案審査上の参考に資したいと存じているのであります。どうぞ忌憚のない御意見を御発表下さるようお願いをいたします。  次に、御意見等を発表していただく事項につきましては、先に文書で項目等をお知らせいたしておきましたが、その項目にとらわれることなく、率直にお話し願えれば幸いと存じております。時間の関係上もありますので、大へんお待たせした上で失礼な言い分でありますが、一人当り十五分以内くらいで御発表願い、後刻委員の質問もございますので、これに対してお答えを願いたいと思います。  なお、委員の方々に御報告いたしますが、特にお急ぎになられる参考人の方がございますので、お一人、深谷さんの御意見を先にお聞きいたしまして、それから深谷さんだけに御質疑を願い、さらに引きついで意見の御発表を願うというようなことにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) ではそういうことに取り計らいます。  日本経営者団体連盟社会保障委員会委員、北海道炭礦汽船株式会社労務部長の深谷二郎さんにお願いをいたします。

深谷二郎日本経営者団体連盟社会保障委員会委員北海道炭礦汽船株式会社労務部長

○参考人(深谷二郎君) 御指名にあずかりました北海道炭礦汽船の労務部長をしております深谷でございます。  目下参議院社会労働委員会におきまして御審議中の、健康保険法等の一部を改正する法律案に関しまして、経営者の立場から見解を申し述べさしていただきたいと存じます。  本法律案は、現内閣といたしましても重大な法律案としまして、非常に御努力を続けておられますが、法律案の内容が国民に対しまして十分に理解徹底せられない点もあり、いろいろの反対やら、批判を受けて、あまつさえ衆議院においては若干の修正を加えられ、さらに保険医総辞退という、諸外国におきましても類例を見ない事態さえ引き起しまして、今や全く大きな政治問題化しているのであります。しかしながら、幸いにいたしまして、参議院の皆様方の御勧告によりまして、保険医諸君もよく反省せられ、快く辞退届を撤回されまして、国民に不安を与えず、社会保険医療に関する不安が解消できましたことは何よりと存じます。これでこそ本法律案の審議も公正な態度をもって臨まれることになったわけでございます。  さて、今次改正法律案の内容は、従来のような微温的なものでなく、真に社会保障制度を確立し、国民皆保険の第一歩への態勢を整備してゆこうとするところに、今次改正の意義があると私は存じます。その点よりいたしますれば、政府原案さえ、日本の現状よりいたしますれば、いまだしの思いなきにしもあらずでございますが、それさえ法案への深き意図を十分に、私らから考えますれば納得せられない点があるのか、いまだこの法律案を握りつぶしたり、さらに再修正を加えて骨抜きにしようというような好ましからざる動きさえあるやに聞き及んでおりますることは、きわめて遺憾に存じておる次第でございます。何とぞ今次改正の基本的意義を抹殺せずに、すみやかに御審議成立になることをまず冒頭に主張するものでございます。  次に御存じの通り、政府健康保険は、昭和二十九年度に四十億、三十年度に六十億の赤字が計上せられまして、さらに引き続いて三十一年度には依然として赤字六十八億の財政危機を告げまして、このままでいけば、健保の財政の赤字は年々歳々増大の一途をたどっていくことが予想されるのでありまして、かかる財政危機は健保制度実施以来三十年この方かつて見ないゆゆしい事態に突入していると言わなければならないのであります。このままでいくならば、どうしても健保制度は崩壊の一途をたどるのみであって、全国民の医療保障制度の確立とか、社会保障制度の拡充等とはおよそ思いもよらない反対の方向に押しやられるおそれがございます。今や健保制度それ自体の内容に大きな欠陥が存するというほかはないのでありまして、制度それ自体に根強く巣食っておりますもろもろの病根をとり除くためにメスを加えようとすることが、本法律案の真のねらいでありまして、単なる一時しのぎの赤字対策はわれわれのかねて反対してきたところでございます。その意味におきまして、全体的前進のためには個々の点に多少の是正はけだし当然と言わざるを得ません。それをおのおのの利己的見地より反対することなく、いわゆる国、経営者、被保険者、保険医、医薬業者等保険関係者である五者がともどもに分に応じた妥当なる負担と責任を分け合って、保険制度の立て直しと将来への発展の基礎を囲むべきであると主張するものであります。  次に個々の問題につきまして、時間の関係もございますので申し述べますが、国庫負担につきましては、これは単なる赤字補てんという意味ではなくして、社会保障制度の推進と健康保険に占める結核の特殊性にかんがみまして、国の当然の責任であります。わずか三十億という定額であったことには、われわれも大いに不満はありますが、とにかく国庫負担が法文化せられたことは、今次法律案の本質的な前進でございます。しかしながら、第七十条の三は、これを定率負担として政府管掌健康保険のみならず、さらに進んで、健康保険組合やその他共済組合等にもひとしく拡充せられることを要望したいのであります。国庫負担三十億の意義は十分にこれを認めねばならないのでありますが、このためには国庫負担金が単なる赤字の穴埋めや放漫財政のしりぬぐいであってはならないと存じます。同時に聞くところによりますと、不正、不信行為による健保の欠損や、漏水する健保財政を国民の血税をもってあがなうがごときは決して社会保障の発展のためにとるべき態度ではないと考えます。このように健保制度に固有ないろいろの欠陥を補って社会保障制度を切り開いていくところにこそ、国庫負担の積極的意味があり、同時に、今次改正の目的があることはすでにるる申し述べた通りでございます。もとより給付費二割の国庫負担は、かねてわれわれの主張でありますが、これにふさわしいだけの効果がある健保制度の態勢を整備し、これを健全なものに仕上げていくこともまたわれわれ健保関係者の大きな責任であることを自覚しなければならないのであります。  一部負担制度につきましては、これが実施されることを指さしまして、健保の後退とか、社会保障の改悪とかいう声を聞くのでありますが、これらの人々はもっと視野を広くして、どうしたら三千万人の未適用者にも医療保険制度が適用できるかという、大所高所の立場に立って考えていただきたいと思うのであります。今日のままの健保制度をもしも全国民にそのまま適用するということがありましたならば、社会保障亡国論を聞くであろうことは、これは実際問題として間違いのないところと信じます。われわれはかねてから、国民皆医療の推進や社会保障制度の確立を主張し続けております。ただ、政府管掌健保適用者とその家族も含めまして、一千二百万人だけが国庫負担をたくさんにもらって、今日このままの給付内容をさえ維持していけばそれで十分であるのだというような、独善的な考え方はいたしておらないのでございます。五人未満の従業員をかかえて、いまだ健保適用のない約一千万人、家族を含めてでございますが、に対しても、一日もすみやかに社会保障制度を拡充適用しようとかねがね主張しているのでございます。このためにも、現行の政府管掌健保において、自分自身の赤字補てんのため医療費の一部負担を行うことは必要悪として認めざるを得ません。御承知の通り、ILOの基準においても、一二分の一程度までの一部負担は認められておりますし、ほとんど世界的に見ましても、社会保障制度の発達しております欧州の諸国を見ましても、この一部負担制度は大多数の国でございます。釈迦に説法のようでございますが、イギリスにおきましても、労働党内閣のときに一部負担制度が実施されておるのであります。政府原案では二十三億七千万円のこれは一部負担の金額でございますが、これは本年度の医療給付費四百四十三億円に対しまして五%強になりますが、これくらいの一部負担はやむを得ないではないかと考えるのでありますが、御承知の通り、衆議院で一部修正を受けまして、十七億九千万円となったのであります。私もいたずらに一部負担額が多ければ多いほどいいというものではございません。基本的健康保険の今後の財政上の見通しもなく、ただ単に少しでも減らせればそれでいいというような見地よりの減額は全く意味のないものであると信ずるのでございます。伝うるところによりますれば、参議院においても、さらに再診のたびにおける一部負担を廃止して、単なる初診料の値上げだけにとどめようとか、これを一そう減額しようとする動きをちらちらと聞くのでございますが、とんでもない謬見であると思います。もう少し社会保障制度の確立のために厳然たる態度をもって臨まれんことを要望する次第でございます。たとえ、また再診のたびごとに十円または三十円の一部負担金を窓口払いいたしますることは、これは一般の組合員から、あるいは国庫負担から、とりもなおさず皆の税金から出る金でございまして、こういうことの使途において決して不正な間違った金であってはならないとそういうような意味において、乱診や乱療の弊害を是正する意味も、この窓口で払うという中には含まれておると思います。また患者おのずからの判断によってりっぱなお医者さんの選択も行われていくというような重要なねらいも持っておるのでありまして、こういうことを見のがさずに確立していただきたいと存じます。なお、国民健康保険と比較いたしてみましても、国庫負担ははるかに政府管掌の健康保険は手厚いのであります。すなわち、被保険者及び家族を合せて一人当り国庫負担は、政府管掌で二百五十円でありますが、国民健康保険では二百十円にすぎない、しかも一部負担によって捻出される金額を国庫負担の増額でまかなえばよいではないかというような議論をする人もありますが、国民健康保険や組合健保との均衡上も、かかる片寄った安易な方策はとうていとることはできないと思います。国庫負担さえ増せば、一部負担など行わなくてもよいなどというようなそんな甘い考えでは、とうてい健全なる社会保障制度の確立等夢想だもできないのであります。従いまして、一部負担金について、参議院においてさらに再修正されて減額されるがごときことの断じてないよう、強く要望する次第でございます。  次に、保険医療機関の登録や医療機関の指定監督の問題でございますが、こうした点がいわゆる官僚統制に陥る一歩前だとしていろいろ非難しておる向きもありますが、社会保障診療という性格に徹するならば、当然過ぎるほど当然の措置と存ずる次第でございます。思うに、従来までの三十年の健保行政は保険医制度にはなるべく手をつけないでいこうとしていたのでありますが、医療の社会化という時代の潮流が激しく、開業医の運命に押しかかってきた結果、ついにかかる条文を規定せざるを得なくなった点を十分自覚せられる必要があると存じます。全国民を対象として、社会保障制度へ近づこうとする今日、依然として自由開業時代のままの医療組織や制度をそのまま温存してゆこうなどとはとんでもないことでございます。もちろん、医療機関指定の二年更新はぜひとも実施せねばならない規定でありますから、二年の更新期間をゆるめることは絶対反対でございます。もとよりこれら監督規定の改正は、不正不信を伝えられるごく一部保険医に対する措置を目的とするものであり、いわゆる健保制度の漏水を防ぐ措置でありますから、大多数の保険医に不安を与えたり、恐怖心を起すようなものであってはならないということを、特に政府当局は責任を持ってもらいたいと存じます。よく保険医の人格を尊重せられまして、良識ある保険医制度の育成保護に資し得るよう、賢明なる運用をはかるよう慎重な態度を持って臨んでいただきたいと思います。もちろん、社会保障制度の前進については、医療担当者の協力なくしましては健全な推進は望まれないのでありますから、その社会的責任のきわめて重大な問題点をよく留意し、いわゆる五者五泣きの精神を了解いたしまして、医療担当者は特に今後改正法案についても協力を示されたいと存ずる次第でございます。  なお標準報酬の引き上げに関しましては、理論的に申し上げますと、非常に長くなりますから簡単に申し上げますが、四万八千円が妥当な線であると私は考えます。その他国庫負担、一部負担等の諸対策の実施をも勘案しまして、あえて五万二千円に反対するのでございませんが、四万八千円が妥当と思っておる次第でございます。現に、第十六階級これは標準報酬二万四千円の者の保険料年額は二万円以上であるが、平均一人当り給付は一万二、三千円にしかすぎません。強制加入のためにこれら階層の被保険者においてすらも非常に過重負担がかけられておるのでありますから、標準報酬のワク引き上げのみによって財政収入をはかるがごときは最も安易な方便であって、社会保険の本質に反するというべきであります。また、支払基金の三者構成については、現在よりは妥当な措置であるとして賛成をするのでありますが、基金問題に関しては、より根本的な対策が講じられねばならない。特に組合健保のみに課されておりますところの委託金の問題や、審議機構というか、今日の点数単価方式にも連なる診療報酬支払い方式等も、また自由開業医時代のままの方式を踏襲することなく、国民皆医療に適した、新時代にふさわしい様式に改善せられねばならないのでありまして、決して今日の基金制度をもって事足れりとするものではございません。  なおまた、官給明細書に関しましては、すでに衆議院の付帯決議もあったとはいえ、これこそ事業主、保険者、被保険者、保険医を結ぶ紐帯として、それら四者の相互関係が講ぜられるためにぜひとも必要な措置でもありますから、とくと御一考、再検討をわずらわしたいと存じます。  最後にその他改正についていろいろと申し述べたいことがございますが、時間の関係もございますので、最後に一言、結核問題に対する措置がとかく等閑視されておる点を指摘しておきたいと思います。わが国の健保の保険料率百分の六十五が世界一に高いと言われますのは、結核の費用が三分の一近くを占めておる結果にほかならないのでございまして、結核問題を保険のワクの中でかかえ込んでおるばかりに、わが国医療保険制度が行き詰まってしまったということもできるのであります。この点については、今国会ではとうてい間に合わないでしょうけれども、次期国会までには、すみやかに結核問題の重大性にかんがみまして、十分にその対策を講じてもらいたいのでございます。社会保障制度の確立ということは全国民の希望するところでありまして、国民皆医療は政府の経済六ヵ年計画の構想の一つでもあると聞いております。われわれもまたたえず社会保障制度の確立を主張し続けておるのでありますが、今次保険法改正の審議に見るごとく、一部関係者の目前の利害にとらわれ、その審議が遅々として進まず、かえって逆の方向に押し流されようとするがごときは、全くもってにがにがしいことでございます。どうか皆様方も以上の趣旨をよく御理解いただきまして、再び参議院において再修正を加えられ、骨抜きになるようなことの絶対にないように、すみやかに改正法案の成立を要望するものでございます。以上でございます。

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) 深谷さんに対して、質問のある方は……。

山下義信日本社会党

○山下義信君 今大へんいいことをおっしゃったのですが、五者五泣きの原則ということをおっしゃった。一応大へんいい原則だと思う。それでいわゆる率直に申しますが、事業主側はどういう泣き方をしておいでになりますか。

深谷二郎日本経営者団体連盟社会保障委員会委員北海道炭礦汽船株式会社労務部長

○参考人(深谷二郎君) これは事業主側の泣き方は、やはり標準報酬が上るということでこれは半分は泣く、こういうわけでございます。

山下義信日本社会党

○山下義信君 これもですね、ですからもうその点しかない、ことに金額でいえば一番少い、泣き方が一番少い。それで標準報酬の引き上げすらもあなたの方は反対して、批評はしませんよ、反対なすった。五者五泣きということであるならばもっとお泣きになったらどうかと思うんですがね。どうでしょう、これまじめに言うんですよ。私どもはやはりこれは被保険者のためじゃない、事業主だって、健保の内容が低下したりすれば損である、結局は。今のお話しではいろんな関係者が目先のことにとらわれるという御注意があった、その通り、私はお言葉を十分深く意にとめまして法案の審議に当りますが、あなたの方も目先の負担を避けよう避けようという御意思があっちゃならぬと思う。やはり健保を育てていく上においては、事業主側もうんと腹をかけておやり下すってこそ今の御議論は非常に傾聴に値するんです。従ってあなたの方にはどれだけの一つ力こぶを入れようというお考えがあるか。ただ負担を避けよう避けようということをなさって、被保険者その他が負担するのは当り前だという議論を展開されるんではやはり我田引水になる。やはり一部ではそういうふうにあなた方の意見をそう見ております。事業主側の五者五泣きの泣き方をどういうふうに泣いて下さるだろうかということをほんとうにこれはあなたの方も一つ腹を割ってしていただかなければならぬと思うんですよ。何かありますればこの機会に一つ……。

深谷二郎日本経営者団体連盟社会保障委員会委員北海道炭礦汽船株式会社労務部長

○参考人(深谷二郎君) その点につきましては、私らはその健康保険の問題だけをおとらえになられますと、もっと泣けという議論も出てくると思う。しかしながら、社会保険全体を考えますると、この健康保険のほかに労災保険もありますれば、厚生年金もございます。幾多のそういう費用を総合いたしますれば、現在相当の額になっております。これは一つの事業を経営する中においても相当マキシマムにきておるのが原価計算上も実際の数字でございます。そこで経営者といたしましては、しかしながらやはりこの社会が進むに従いまして社会保険というものはこれは十分に考慮していくべきものであるというふうなことから、おのおのたとえば支払いの窓口が変ったり、それから支払えるところが違ったりというようなことで事務費その他の報告が非常に複雑で、その費用というものは莫大なもので、そこで日経連におきましても四、五年前から一つの社会保険の全体的の総合的の、やれ労働省であるとか、厚生省であるとかいうようなことを避けて、やめまして、一つのそういう社会保険省くらいを一つ作りまして、そういうところで事務の統一と簡素化、そういうところから捻出していくべきじゃないか、それから私らにおきましてもこれは主張いたしますのは、これはただで全国民が見ていただけるような、日本がそういうゆとりのある国になったならこれはけっこうなことでございます。何もそういう余裕があるのに出せぬということではございません。やはり一つの日本が社会的にも経済的にも確立しない現在におきましては、やはりおのおの分相応のところで漸進的にいくのが妥当じゃないか、そういうような見解を持っておるのでございます。今日私はたとえばこれを統合したならば、われわれの計算ではどのくらい浮くじゃないかというような資料も一応作ったのがございますが、今日は持っておりませんから申し述べかねますが、そういうような統合によるところの節約をもってそういう金をこれに向ける、こういうふうに一つ基本的に考えていただきたい。なお日経連におきましては、社会保険のそういう統合というような問題を真剣に取り上げて、今後のやはり社会保障制度の確立に役立たせるために特別の委員会も作りまして相互に研究、いずれ皆様の前にもこの案を御発表する時期もくるではないか、こういうふうに考えております。

山本經勝日本社会党

○山本經勝君 ちょっと一点だけ伺いますが、ただいまのお話しを承わっておりますと、今問題になっている政府管掌の健康保険でございますね。これについては、この保険の被保険者というものは主として零細企業に属する、あるいは中小企業といいますが、そういう、関係で組合管掌の場合とずいぶん料金が違うんですが、そこら辺の被保険者のあるいは患者の一部負担というものが現実的にはどのくらいな負担になって、あるいは医療の後退ということが心配されるのですが、そういうことに影響があるかないか、そういう点については御検討になったのでしょうか。

深谷二郎日本経営者団体連盟社会保障委員会委員北海道炭礦汽船株式会社労務部長

○参考人(深谷二郎君) これは昨年から社会保険審議会においても今申し述べられたようなことについてもいろいろ詳しく検討いたしました。なお確かに組合関係の保険よりも政府管掌の保険の方が財政的に苦しい。しかしながら、それをまた国民健康保険に比較し、あるいは五人未満のまだ健康保険が適用されないという人があるというところから考えれば、やはりそれ自身の保険の赤字というものは向でも国庫負担ということでなく、やはりそういう自分よりも上もあるかもしれないが下もあるという場合には、社会保険の性質上やはり日本全体の見地から見れば、そういう適用を受けない人間のことも考えて、今後国庫に余裕があるならばそれに向けるべきじゃないか、多少のことはしようがないんじゃないかという見解を持っているわけであります。

山本經勝日本社会党

○山本經勝君 五人未満というような零細ですね。そういったような企業の勤労者、こういうものはむろん仰せの通り、相当多数いまだ健康保険の恩典に浴しておらないのが実情ですが、それらの人もかかえていくという社会保障制度の中核としての保険制度を今後深谷さんのおっしゃるようにさらに発展強化するということのためには、これは被保険者並びに患者の負担が増大することが大きな障害になっていかぬでしょうか。つまり保険料並びに医療費の一部負担が強化されて参りますと、今後発展させなければならぬ未加入の国民大衆をさらに大きくかかえ込んで大きく発展するということのための障害にならぬでしょうか。

深谷二郎日本経営者団体連盟社会保障委員会委員北海道炭礦汽船株式会社労務部長

○参考人(深谷二郎君) いや、やはり赤字がそれ自身に起る場合においては、やはり国の余裕のある金ができる場合には、より悪いところの境遇にあるところを救うという見地から見れば、やはり曲りなりにもやっているところは多少のがまんはしなければならぬ、こういうような考え方なんですがね。それをですね。赤字が出てまた今後もいろいろと医療の発展や何かのために赤字が際限もなくいくというようなときに、やはりおのずからの力によってもてこを入れなければならぬ。そのてこもあまりに膨大過ぎてはいかぬ、そういうことから見ると、医療給付費の諸外国の例から見まして四、五%くらいのところはやはり一つがまんすべき限度ではないか、こういうような考え方なんです。

山本經勝日本社会党

○山本經勝君 もう一点だけ。ちょっと理解できかねるのですが、深谷さんは今の日本で有数の大資本の経営の中においでになる。ところが、今私が申し上げておるのは、中小企業あるいは零細企業といわれるものの中の一般勤労者は、現在の賃金水準からいっても非常に低いのですね。従ってわずかなように見えますが、再診料とかあるいは入院料、そういった場合の負担が増大することで、お医者さんにかかりたくてもかかれなくなるというような心配があるように思うのですが、この点は直接深谷さん御存じないかもしれませんが、実態はそういうことだと思うのですが、そこら辺の日経連等における討議なりあるいはお考え方がどういうふうになっているか、そこら辺をちょっと伺っておきたい。

深谷二郎日本経営者団体連盟社会保障委員会委員北海道炭礦汽船株式会社労務部長

○参考人(深谷二郎君) これは、なかなか今どこでも満足した自分の思うような賃金をもらっている人というのはそう多くはございませんから、やはり今までよりも多少でもふえるということになると、やはり相当の苦しさが出てくるのじゃないかということはわかります。しかしながら、それかと言ってどんどんふえる赤字を、またそれよりも下のロー・クラスがあるにかかわらず、そういうところに赤字が出たから、国庫の補助で一つやってゆけと、こういうことではいかぬのじゃないか、やはりおのおのの限度がある。それには、日本の今後なすべき社会保険のあれは今のような五人未満というものの社会保険というものも、当然近い将来には一日も早くやるということに心掛けなくちゃいかぬ、そういう意見も今から考えなくちゃいかぬ。そうしたならば、一応あるものは今よりも多少のがまんをして、自分の作った赤字というものはあるいはたとえばこの中において十円なり、三十円取ると、取られる人には非常につらいですが、その反面において、今までのもしも乱療とか乱診とかあるいはその他のいろいろな行為があったような場合も防げるということから、もしもそういうのが顕著になりまして、財政が楽になるようなときにでもなれば、そのときにはまた是正してもいいじゃないか。とにかく今のところは国民皆医療ということを目的として、多少のがまんはおのおのしてゆくべきじゃないかというような見解をとったわけでございます。このことにつきましてはもう二年来おのおのの委員間でこれはおのおのの見方がございます、主張がございますが、論じ合ってきたことでございます。

山本經勝日本社会党

○山本經勝君 そうしますと、先ほどの山下先生の御質問にも関連するのですが、大体十八億の赤字が残っているわけですね。ところが、これが要するに一部負担でまかなわれようというのですから、患者の負担が十八億になるわけです。そうしますと、その半分は使用者側が負担してやはり出し合っていくということも考えられますね。

深谷二郎日本経営者団体連盟社会保障委員会委員北海道炭礦汽船株式会社労務部長

○参考人(深谷二郎君) やはり使用者が出す分限というものはありますですから、先ほどから私らが申し上げましたように、この健康保険ばかりでなく、いろいろな保険がございますから、そういうのに出している社会保障費として出す割合というものは相当な額になっているのです。これはおのおのの限度がございますからね。  それから私らは、やはりこれはできるだけ諸外国のまねをせぬでも、できるならこれはもう全部持つということもけっこうでございましょうよ。やはりそういうような経済的にも確立しないところの現状にある以上は、先進国の例も参考にして、やはりその分に応じた多少の負担というものはやむを得ないというような見解ですね。

山本經勝日本社会党

○山本經勝君 諸外国の例ということになりますと、やはりその生活水準から一ぺん見直していかぬといかぬでしょうから、そういう点はどうなんですか。

深谷二郎日本経営者団体連盟社会保障委員会委員北海道炭礦汽船株式会社労務部長

○参考人(深谷二郎君) これは当然そういうことは言われると思います。(「議事進行」と呼ぶ者あり)

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) 深谷さんに対する質疑はこの程度にして次に移りたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) 深谷さん、大へんありがとうございました。  次に、慶応義塾大学教授園乾治さんにお願いいたします。

園乾治慶應義塾大学教授

○参考人(園乾治君) 皆さまの前で社会保障一般論を長々しく申し上げるつもりはございませんが、現在問題になっております健康保険等の改正問題に関係のありますと思う部分だけを申し述べたいと存じます。  社会保障制度と申しますのは、御存じのように、国が国民に対してその最低生活を保障する義務を持っているその国の義務を果す一つの制度でございます。従って、民主主義をとっている国では第一に努めなければならぬ、実行しなければならぬ一つの制度だと考えます。国民の生活を不安ならしめる原因はいろいろございますが、結局は収入を減ずるか、支出を増加するか、そういう事実が発生するために収支が均衡を失するというのが根本原因でございます。その収支を変動させる原因はこれまたいろいろございますが、疾病、障害というものがおもな原因であり、そういう疾病、障害によって貧困に陥るということは免かれないのでございまして、こういう貧困状態を救済する、あるいはそういう状態に陥ることを前もって防御するという意味で社会保障制度があるのでございます。  内容的に言いますと、社会保障制度は、いろいろの社会保険とそれからいろいろの社会事業、現在の言葉で言いますと、社会福祉事業という、この二つからでき上っておりますが、前にも申しましたように、貧困状態が疾病、障害という事故のために、起るあるいは貧困にならなくても収支の均衡を害するというのは疾病、障害に原因することが多いので、社会保険のうちでも疾病に対する疾病保険あるいは医療保険というものがきわめて重要な意義を持ち、また社会福祉事業のうちでも、たとえば現在の生活保護法における医療扶助というものが非常に重要な地位を占めて参るのでございます。こういう意味から考えまして、わが国の健康保険は長い歴史を持っており、かつその制度の適用を受ける人の数から申しましても非常に重要な社会保障制度の一環をなしているものでございます。今回計画せられていますこの健康保険の改正も、そういう社会保障制度を完備するという意味から考えまして、非常に重大な意義があるものと考えますが、この今回の健康保険制度の改正は、そういう社会保障制度の確立という意味からいいますると、一歩前進はしているかもしれませんが、それよりも当面の赤字対策としての意義がきわめて大きいものであると考えます。従って社会保障制度を確立するという意味からいいますと、遺憾の点が若干見られるというように私どもは今回の改正を全体的に考えておるものでございます。健康保険の赤字対策としての改正、あるいはその赤字対策としての手段を見ますると、第一に収入を増加する面からいいますと、保険料の料率の値上げという問題が取り上げられると考えますが、この問題は、昨年の六月一日から健康保険の保険料率を千分の六十から六十五に引き上げたということによって、再びここでこれを繰り返すということが困難な事情にございます。その困難は、一つは法律の規定を変えなければならぬということと、それから一般の経済状態から考えまして、さらにこれ以上の保険料を値上げすることができるかどうかというような、二つの問題があるので、今回はおそらくこれが問題にならなかったのだと考えますが、第二に考えられる収入増加の方法は、ここにも上っていますように、標準報酬の改訂と国庫負担という問題でございます。  標準報酬の方から申し上げますと、現行の制度を最低三千円を四千円に引き上げ、最高三万六千円を五万二千円に引き上げるという問題でございます。この標準報酬のワクの拡大と申しますか、それは最も簡単な収入増加の方法でございます。それが是認せられますのは高額所得を持っている者は、保険料負担力が大きいというところに決着するものだと考えます。もちろんそのことは事実であると考えますが、一方において健康保険の給付が傷病手当金なんかが標準報酬に比例しますが、医療給付は必ずしも標準報酬の対象に比例しない、その比例しないところの医療給付が健康保険では比重が大きいので、今申しましたように、高額所得のものは保険料負担力が大きいからといって無限にこれを値上げするということは、賛成できないと考えます。また、高額所得の者は、全体の被保険者の数からいいますと、数は少いのであります。従って、かりにそういう非常に高額の部分をさらに拡大しましても、実質的に保険料収入の増加する率というものはあまり多くないと考えますので、いろいろの説をなす者は、たとえば最高額を四万八千円にしろと、あるいは五万二千円にしろという説もあります。五万二千円というのが今回の改正の趣旨でございますが、あるいはさらに七万円にしろというような意見もあると考えますが、その四万八千円がよろしいか、五万二千円がよろしいか、あるいは七万円がよろしいかということは、実情をよく考えなければなりませんけれども、どこまでにするかということは、ものさしがあってないようなものでございます。従って改正原案の五万二千円ということで差しつかえはないように私どもは考えておるのであります。  それから次に収入を増加します方法といたしまして、国庫負担の問題がございます。国庫負担は赤字対策としてだけこれを是認するものではなくて、前段に申しましたように、社会保障制度というものが、国民の最低生活を保障するところの国家の義務を果すゆえんであるから、国庫がそれに対して補助金を出すということは当然であるというように考えます。ある論者によると、健康保険に対して国庫補助金を出すことは、そういう健康保険その他の疾病保険から全然保護せられていないものが、三千万もあるということによって反対をするようでございますが、健康保険の適用を受ける者は相当多数あり、かつこれが強制加入であるという点から見まして、これに対して国庫が補助金を出すということは当然というように私どもは考えます。もしほかの制度に、これと同じような制度に対して国庫負担金を要求するということがございますならば、同様に社会保障制度を充実するという意味で出すべきものだと考えるのであります。今回の改正におきましてはこの点がはなはだ表面的といいますか、微温的であることを残念といたします。むしろ予算の範囲内というような言葉をやめて、一定の金額あるいは被保険者一人当り幾らという金額をきめて、当然国庫が負担金を出す、当然出すべきものを出すというようにありたいと考えます。  もう一つは今回の改正の条文を見ますと、政府の管掌しております健康保険だけに、この金を出すことになっていますが、同様に国家がやるべき社会保障の一環を、健康保険組合も、役目を果しておりますので、当然健康保険組合の方にも国庫負担金を出すべきものだと考えるのであります。これは国庫の補助金が赤字対策であるということに原因しない、当然なすべき責務を果すという意味からいって、当然過ぎるほど当然だと考えるのであります。もし先ほども申しましたように、これがために他の類似制度にも同様の要求があり、その金額にたえないというようなことで反対をするものがあるとすれば、国家のなすべき当然な責務を怠るものであるというほかないと思うのであります。ぜひこの点は政府のものだけでなく、健康保険組合の方にもいくべきものである。それから当然出すべき国庫負担金であるというようにありたいと考えるものであります。現在の制度においては、はなはだ微温的でありますので、できますならば、隴を得て蜀を求むるのではなくて、百尺竿頭一歩を進めるということ、このことを申し上げたいと考えます。  それから、健康保険の財政の立て直しのために以上述べました点は、収入を増加する方法でございますが、このあとには支出を節約するいろいろな方法というものが考えられる、その一つといたしまして、一部負担の問題がございます。一部負担はできますならば、こういう制度はない方がよろしいというように私どもは考えます。といいますのは、保険で全額の医療費を、医療給付を得られるということが理想の状態であります。もしこの一部負担制度によって、その負担の苦痛によって、乱診、乱療というものが制限せられますならば、あるいは一つの妙味のある制度というように考えることもできないことはないかと存じますが、これはむしろ邪道であるというように私どもは考えております。しかしながら、赤字対策といたしまして、その赤字の原因を探究する結果、正当なる医療費の増額でなく、もしもかりに乱診、乱療というようなものがあるということならば、そうしてまた一部負担によってある程度制限せられるならば、これもまた歓迎はしないけれども、やむを得ない一つの手段であろうというようにして、現在の状態においては是認せざるを得ないのではないかというふうに考えておるのであります。しかしながら、その一部負担の徴収方法なり、支払い方法が非常に繁雑であるということは努めて避けなければならないと考えます。従いまして、できるならば、現在の計画せられています、あるいは衆議院で修正せられましたような一部負担制度というものをもう少し単純化することが適切ではないかと考えるのでありますが、しかしながら、そういう議論をいたしましても、すでにやや時期を失しているのではないかと考えます。もしできますならば、初診料をもう少し大幅に値上げする、現在は四点で、甲地で五十円だと考えますが、それを倍額なりに値上げをして、再診料以下をやめるというような方法もいかがかと考えるのでありますが、それはしかしすでに時期を失しておる、あとからの注文であるというように考えますので、強くこの点を主張は申しません。  それから、次にお尋ねの項目の中にございます行政検査の問題でありますが、この点に関しましては、原案に対して衆議院で重要な修正が加えられております。私どもで考えますと、もちろん疾病保険医療給付が医師、歯科医師、その他医療担当者の心からの協力がなければ円滑に行われないということは言うまでもない話でございますが、また一方において、適正なる運営をはかり、合理的な経営を期するという意味からいって、いろいろの被保険者なりあるいは事業主なりもしくは医師、歯科医師、その他の医療担当者に対して指導し、監督する、あるいは場合によると、出頭を命ずるとか、書類の提出を求めるとか、あるいは立ち入り検査をするということも必要になってくるのであります。立ち入り検査をするということは必ずしも関係者の人格を無視したということにはならないと考えますので、むしろ原案のように、衆議院の修正でなく、原案のようにあってしかるべきものだろうと考えます。しかし、修正によって立ち入り検査の点が少しくあいまいになったということは一応残念だと考えておるのであります。  これに関連しまして処罰の問題でございますが、いろいろ違反しました者に対して罰金を課するとかあるいは過科に処するとかいうことがございますが、その点にも衆議院の方で修正が加えられております。この点も修正されない政府原案の方が適切であったろうというふうに考えるのであります。  それから継続給付の問題でございますが、継続給付の資格期間を延長する、現在は六ヵ月間被保険者であった場合に、継続給付を認めることになっておりますのを、その期間を一年というように改めることはこれは当然だと考えるのであります。保険経営者の方からいいますと、あるいはこれを二年にするということも適切ではないかと考えるのです。といいますのは、保険財政に対してこういう被保険者が貢献をしている、保険料を出しているのが六ヵ月では短か過ぎる、あるいは一年でも短か過ぎるのではないかというように考え得られるからであります。現在給付期間が三年になっている点を考えますと、被保険者になって間もなく病気になったというような者でも、半年から二年半の給付があるということになりますので、一年あるいはこれを延長して二年にするということも考え得られますが、これが一年になったということは、むしろ被保険者にとって好都合であるというように考えますので、この点は原案にはもちろん賛成であります。場合によっては、さらに二年にするということでも差しつかえはないというように私どもは考えております。  それから被保険者の範囲の限定でございますが、これに関しましても原案は適切であろうと考えます。現在と実質的にはあまり変りがないのであると考えますが、それにいたしましても規定を明確にした、はっきりさしたというところの効果があろうかと考えております。この点もむしろ窮屈にいたしますならば、あの条文のうちの三と四の場合、つまり配偶者の父母、子というもの、あるいは配偶者が死んだあとの父母、子に対する給付というものを除外するという第三項、第四項を除くということもあるいは考え得られるのではないかというふうに考えますが、原案が寛大であるという点において、これはあまり多くを強く主張しないで、原案そのままを認めたいと考えるのであります。  それから支払基金の審査の問題でございますが、これは医療費あるいは医療内容の適正ということをはかるために審査をするということは当然でございまして、現在もこれは含んでやっていることでございますが、それをもっと強化する、あるいはそれを適正に行うために常勤の者に行わせるということが適当であろうと考えます。医師、歯科医師自身が審査をするということを、もっと審査機関の独立性というものを認める上からいって、ぜひこういうふうにありたいものと考えておるのであります。なお支払基金そのもののいろいろな改正案というようなものも考えられるかと思いますが、それに関しまして一言つけ加えますならば、支払基金の性格がはなはだあいまいであるという点があると考えます。医療担当者つまり診療報酬を支払われる、受ける方の代表者であるか、支払う方の代表者であるかという性格が非常にあいまいでありますので、これをすっきりしたものにする、そうしてむしろ診療報酬の支払いだけでなく、性格を変更して、社会保険基金、社会保険の金銭の支払いに関しては独立の機関であるというような性格のものに持っていくのが、将来の社会保障制度として重要ではないかと考えるのでありますが、これはあまり現在の改正の問題とはかけ離れますので、一言つけ加えるだけにしておきたいと考えるのであります。  以上申し述べましたように、現在の健康保険の改正は主として当面の赤字対策を目標としておるのでございますが、そのうちに若干の恒久的対策が含まれておる。その恒久的対策が赤字対策のために徹底しないという点もあろうかと考えますが、一ぺんに多きを望まず、徐々に恒久的改善もできることを希望して、現在のものを大体において是認したい、こういうように考えておるものでございます。  長時間費しましたことをおわび申し上げて、私の意見の開陳を終ります。

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) 次に、健康保険組合連合会常務理事の上山さんにお願いいたします。

上山顕健康保険組合連合会常務理事

○参考人(上山顕君) 健康保険組合連合会常務理事の上山でございます。健康保険法改正につきまして意見を申し上げたいと思います。  今回の改正案は、赤字対策が契機とはなっておりますが、当面の赤字の補てん自体というよりは、現在の段階におきましての健康保険のあり方に触れた点がいろいろあると思うのであります。そこで、改正がなぜ問題とされているかという事情などにつきまして、まず所見を総論のような形で申し上げまして、後に具体的の項目につきまして、時間の許す範囲で申し上げたいと思います。  申すまでもないことでございますが、二十八年度の末ごろから、ことに二十九年度になりまして保険経済が収支の均衡を失う傾向が、これは政府管掌——組合管掌においてもある程度見られるのでありますが、特に政府管掌について膨大な赤字を生じましたことは御承知の通りでございます。これは結局保険料収入の増加の傾向をはるかに上回りまして、医療給付が激増いたしたということでございます。具体的に申し上げますと、ここ数年間に被保険者一人当りの医療費というものが毎年、前年に比べまして二割そこそこの増加をいたしておりまして、四、五年間に約倍になるというような状況を示しておるのであります。問題はその原因でありますが、一応正常な原因と認められるものがまずございます。すなわち、医療内容が向上いたしましたとか、政府の施策といたしまして、療養の給付期間を延長したというような、そういう給付内容の向上でありますとか、また被保険者の受診率の上昇というようなことは一応正常な原因としてあげてよかろうと思うのであります。  ところが第二といたしまして、正常でない増加の原因が相当あると考えられるのでありまして、これは医療担当者の方面におきましての不正、不当請求というようなものもありますし、そこまで参りませんでも、過剰診療というような事実が相当あるように考えております。また、被保険者側におきましても、これは前ほどの数ではないかと思いますが、被保険者証の乱用等の事実が相当あるように見ておるのであります。  第三の原因といたしましては、先ほどからの、皆さんの御指摘になっておりましたように、結核関係が非常に大きな割合を占めまして増加いたしているということでありまして、よく指摘されておりますように、ただいまの医療給付の三分の一以上が結核関係をもって占められているような状況にあるのであります。従いまして、ただいまの保険経済の再建方策といたしましては、こういう原因等を考えました上での根本に触れました総合対策がどうしても必要になって参ると思っておるのでございます。  それで健康保険は申すまでもなく、社会保障制度の一環としての社会保険でありまして、社会保障的要素を一そう強める方向に推進せしめます必要につきましては、私たちも平素主張いたしておるところであり、多くの方が御異論がない点かと思うのであります。しかしながら保険であります以上、またかりに保障の要素を幾ら強めるといたしましても、財源、財政計画とのにらみ合せということは、どうしても必要になって参ると思うのでありまして、一定のワクというものはどうしても考えられなくてはならぬと思うのであります。現在医療保険の適用を受けていない国民が約三千万人ぐらいあるというような問題は別といたしまして、ただいまの健康保険の建前から申しましても、家族は半額を自己負担するのが原則になっておりますし、療養給付の期間は三年でありまして、傷病手当金の支給期間は六ヵ月とか、結核の場合でも一年六ヵ月というふうになっておるのであります。それでこの一つ一つを取り上げまして、家族の半額負担はそれで十分なのか、六割負担、七割負担、あるいは全額負担の方が半額負担よりいいじゃないかという、それだけを切り離しての議論でありますれば、それは負担率の、保険の負担が多い方がいいということは、だれも異議がないところでございます。療養給付期間も長いほどいいということであります。問題は一定のワク内でどういうつり合をとり、収支の均衡をはかるかという問題であります。もちろん、私たちも現在の健康保険の建前がこれで十二分だというふうにはちっとも考えておりませんが、ただしそれを進めますについては、財源関係をにらみ合せました上で、着実な進み方をしなければいかぬと思うのでありまして、社会保険である以上、またどうしても社会保障的要素を一段と強めなくてはなりませんが、それを前提といたしましても、収支の均衡ということは当然考えなければいけない。保険経済の安定の見通しはどうしても立ってなければいけない、かように考えておるのであります。従いまして、私たち国庫負担というようなことを強く要望いたし、その必要を主張しておるものではありますが、ただ、何でも国庫負担に全部よるのだというような言い方は、やや無責任なそしりを免れがたいと思うのでありまして、国庫負担もざるに水を盛るようなことがあってはならないわけだと思うのであります。それで先刻申しましたような医療費増加の原因を考えますときに、収支の均衡を期待し得ますためには、もちろん国庫負担をも私たちは強く要望するものでありますが、同時に関係者すべての協力と申しますか、責任と申しますか、ないしは負担というものが相待つのでなければ、健保の再建は容易でないと、かように考えておるのであります。  なお、ワク内でのつり合いということを申し上げましたが、それに関してもう一つつけ加えますと、健康保険法は施行以来三十年でありますが、ただいままでに約三十回ばかりの一部改正をいたしておりまして、それらはいずれも当面の問題の解決をはかったものでありますが、ややともしますと、当面の問題の解決に目を奪われまして、全体のつり合いのことを忘れるというようなものもないではないと思うのでありまして、絶えずつり合いというものがワク内でとれておるかどうかということを再検討する必要があると、かように思うのであります。  それで社会保障の拡充、前進は、もちろんだれしも望むところでありまして、適用範囲拡充でありますとか、国庫負担制度の確立ということによりまして前進をはからなければならぬと思いますが、反面現実をしっかり踏みしめまして、むだを切り捨てる、つり合いをとって整理をする——という言葉が適当かどうか存じませんが、いわば地固めのようなことがどうしても必要になってくると考えるのでありまして、一つの考え方としましては、社会保障制度の大いなる前進のためにこそ地固めが必要だとも言えるのではないかと思うのであります。それで、今回むしろ一両年来の政府の施策といたしましては、この前進のためという積極的方面が非常に欠けているような印象を与えておるのでありまして、これは私たち非常に遺憾に思っておるのでありますが、しかし安定をはからなければならぬというそのこと自体は、現在の社会保険の現状を親しく見ておる者といたしまして、その意のあるところは了とすることができると考えております。以下具体的の問題について若干申し上げたいと思います。  国庫負担につきましては、他の方からもおっしゃったところでございまして、多くを費す必要がないかと思うのでありますが、社会保障の建前から考え、かつ結核が健康保険で大きく負担いたしておる点から考えまして、どうしても国庫負担を確立しなければならぬということを私もまた強く主張いたしたいと思うのでありまして、決して赤字補てんであってはならない。従いまして、法文の字句としましても、補助でなくて、むしろ負担とはっきり書くべきである。また予算のことは別といたしまして、政府管掌と同様、組合もその対象として考えるということをぜひとも考えなくてはならぬと思うのでありまして、率直に申しまして、この点につきましての政府の考え方が当初から消極的でありまして、当初私たち社会保険審議会に諮問を受けましたときには、国庫負担に関しましては全然なかったというような、そういう消極的でありましたことが、今回の政府の施策全体を非常に社会保険の後退だというような感じを印象させることになったと思うのでありまして、まことに遺憾に思っておるのであります。そういう意味で、国庫負担の確立をまず主張いたしたいと思います。  第二は、標準報酬の引き上げでありまして、これは保険料徴収の基準になりますとともに、金銭給付の基準となるものでありますので、賃金指数の推移等から考えまして、政府原案程度に引き上げることが適当と考えております。  第三は、一部負担の範囲の拡張でありまして、これは一番問題が多い点でございます。それで、先刻一つだけを切り離してということを申し上げましたが、一部負担だけを切り離してある方がいいかない方がいいかといえば、だれもない方がいいと言うにきまっていると思うのでありますが、財源とのにらみ合せの上で、保険経済の安定をはかるという立場で考えます場合には、過重にわたりますことはもちろん避けなければなりませんが、ある程度の一部負担の拡張もやむを得ぬではなかろうかと、かように思うのであります。なおこの一部負担の拡張につきましては、財源の一部をまかなうという点が政府の説明としても強調されていると思うのでありますが、一面これは正当な受診率を抑制するようでありますれば、その弊害が強く現われて参るわけでありますが、被保険者におきましても、ある程度の乱用ということもあり、また過剰診療というようなこともあるのでありまして、そういう面での抑制の効果もあるということは認めてよかろうと思うのであります。なお、今申したように、これは一定のワクの内でのつり合いという立場から、ある程度の一部負担の拡張もやむを得ないと、かように申しておるのでありまして、かりに財源があれば、ただいま政府原案等で考えられておりますような、被保険者でもある程度のことは負担させまして、むしろもっとうんと金がかかる病気につきましては、被扶養者の場合でももっと保険で負担するというふうに考えてもよいのではないかと、そういう一定のワク内でのつり合いということを考えますと、ある程度の一部負担の増加はやむを得ないのではなかろうかと、かように考えております。  保険医制度なり、基金の審査の強化のことにつきまして一連の規定がございますが、先刻も申しましたように、遺憾ながら不正、不当請求というようなものでありますとか、過剰診療というようなものもありますことは事実だと思います。また、被保険者の不正使用でありますとかもありますことは、先刻申し上げた通りであります。従いまして、総合対策が必要だということを申しましたが、順序から申しますれば、やはり保険料をたくさんとるとか、一部負担とかいうことよりも、もちろん第一順序といたしまして、そういう不正だとか、不当だとか、乱用だとかいうようなものを押えますための措置をとりますことが、第一着手としてなされなければならぬと思うのでありまして、もちろん私たちも、多数の保険医が社会保険に協力していただいておりますことには厚く感謝しておるのでありますが、むしろ少数のそういう人たちのために、多数の協力をしていただいておる保険医に迷惑がかかっておるというようなことを考えますとき、そういう不正を除きますようなことをいろいろ考えまして、政府原案にありますような保険医制度なり、基金の審査なりの規定ができますことは、これは当然なさるべきことだと考えておるのであります。  なおつけ加えて申し上げますと、私社会保険審議会の委員の一員でございますが、政府案の諮問に対しましては、いろいろ利害関係がございまして、他の条項については必ずしも全員の意見の一致を見ていないのでありますが、保険医制度なり、基金の審査の点につきましては、全委員が一致をいたしまして適当と認めるという答申をいたしておりまする事情は、当委員会におかれましても何とぞ十分御承知おき願いまして、適当なる御審議をいただきたいと思うのであります。  第五に、被扶養者の範囲、第五十五条の例の継続給付の関係等でありますが、これも先刻来申しましたような一定のワク内でのつり合いということを考えます場合に、そのことだけで給付内容はよい方が適当だというのではなくて、つり合いということを考えます場合に、ああいう程度の規定は適当であろうと、ことに被扶養者の範囲につきましては、必ずしも被扶養者の範囲を狭めるという趣旨ではありませんで、被扶養者の範囲を明確化すると、こういう趣旨から申して、政府原案のような考え方は適当であろうと、かように思っております。  簡単でございますが、以上をもちまして私の意見を終ります。

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) 次に、日本労働組合総評議会副議長塩谷信雄君。

塩谷信雄日本労働組合総評議会副議長

○参考人(塩谷信雄君) 御紹介にあずかりました塩谷信雄でございます。総評関係では二名の代表がおりますので、重複を避けまして申し上げたいと存じます。  ただいままでの御意見では、きょうはだいぶ被保険者とお医者さん側が御訓戒にあずかったように思うのでございますが、これから主として被保険者側の意見を申し上げたいと思います。  健康保険の改正の問題が大きな社会問題になって参りました。このことは健康保険が国民の医療を確保する上に、どんなに大きな比重を持っているかということを示しておると思うのであります。同時にまた、今回の改正は主として赤字を処理するという立場から、被保険者と医者にしわ寄せしてくるということが、非常な問題となっておると思うのであります。しかもこれらの最低生活を保障しておらない、こういうところに問題があろうと思うのでありまして、健康にして文化的な最低生活を営む権利というものは、憲法二十五条によって保障され、またあらゆる場を通じて、社会福祉と社会保障の推進を義務づけておる、こういう立場からいたしまして、今回の健康保険の改正を見まするならば、これは社会保障の確立の上に、むしろ後退でさえある、こう申し上げざるを得ないと思うのであります。今、国庫負担の問題につきまして、かなり時間をかけて、それぞれ御意見が出ておりますが、この点については、大体皆意見が一致いたしておるように拝聴するのでありますが、赤字の最も大きな原因は結核問題にあるという点もほとんど一致をいたしております。現在の健康保険の赤字は、国が結核対策を徹底的に行う、こういう責任を果すならば、この問題はまず処理されるであろう。結核予防法や、また健保等に対する国の責任をさらに明らかにすることによって、この問題は解決をされると考えるのであります。かつて社会保険審議会で、国庫負担の問題が論議されましたときに、政府側から、国庫負担は保険財政が赤字になったとき考えるべきである、こういうふうにお述べになったということを聞いておるのでありますが、今日赤字が現実の問題となってきたのであります。この意味において、提案にもありますように、予算の許す範囲において補助するということは、確かに一歩の前進であると思います。しかしながら、それぞれ御指摘がありまするように、これは国の予算の都合によりましては、はなはだ好ましくない結果も出るのでありまして、当然国が一定率をもって負担をするという、こういう責任を明らかにすべきだろうと存じます。健康保険の財政は、特に国の政策に関係を持っております。特に最近は生産性の向上の問題、あるいはデフレ政策によって非常な影響をこうむっておるのであります。従って健康保険の財政というものは、まことに不安定なものである、こう申し上げてよかろうと存じます。われわれはさらに今日大きな制限診療をこうむっておると思うのであります。この制限診療を撤廃いたしまして、さらに健康保険の充実をはかっていくという建前からいたしまして、国庫の負担ということは当然必要であろう、社会保障の柱として健康保険というものを重要視するという立場にあっては、当然国庫負担があってしかるべきではないか、しかもこれを明確にすべきである、かように考えるのであります。健康保険法の第七十条にも事務費の国庫負担が明記されておりますが、支払基金の費用は健康保険財政から支出されておる、支払基金の方だけは健康保険財政から支出されておるというのは、均衡を失しておるであろう。当然これは国庫負担にすべきだと考えるのであります。  次に標準報酬の問題でありますが、これは当然保険料及び傷病手当金の支給率の問題に関係がありまするので、傷病手当金の問題から申し上げたいと存じます。低額所得者の場合には、これは率直に申し上げまして、生活保護法による扶助以下になると考えます。東京では独身者は住宅料を含めて約二千八百円と計算されるのでありますが、健康保険の傷病手当金は、独身者で標準報酬を四千円にしました場合には、その四割、千六百円が支給されるということになります。従って健康保険の保険料をかけておる、そして保険に入っているために、生活扶助よりも低い処遇を受けなければならない。これははなはだ筋が通っておらない、かように思うのであります。従いまして、われわれは傷病手当金の支給については、八千円に満たないものを、最低を八千円にまで引き上げる。八千円に満たないものは最低を八千円の収入としてそして計算するように、ぜひ強く要望いたしたい、こう思うのであります。  継続給付の問題につきましては、特に資格の縮小の問題が問題になるのでありますが、最近は御承知の通り、臨時雇用が大へんふえております。こういう関係で、短期間に雇用をされている者が増大をいたしておるのであります。従いまして資格を縮小するということは、はなはだこれらの人々に気の毒な結果になると考えるのであります。少くとも現状程度のものは当然継続給付として認める条件にしてもらいたい、かように思っておるのであります。  被扶養者の範囲の問題でありますが、改正の原案では、三親等以内に制限をされておりますが、日本の家族制度の慣例からいたしまして、一般にはいわゆるその他の者——被保険者と同一の世帯に属し、もっぱらその者により生計を維持する者には、これは現実に扶養をいたしておるのでありまするから、その範囲として、これを従来通り認めるべきであろう、かように考えるのであります。  罰則条項につきましては、これは多くの改正の点につきまして反対をいたしておりまするので、あまり触れないことにいたしますが、若干不備な点、たとえば健康保険に入らなければならない五人以上の労働者、これは一応強制加入ということになっておる、こういう建前をとりながらも、これに対して罰則がない。これは適当でなかろうと思うのであります。また、罰則がないために、実際に雇用をいたしておりましても、三ヵ月、または六ヵ月間を試用期間、——試みに雇う、試用期間であると称しまして、健康保険の加入が大へんおくらされておるという実情にあるのであります。従いまして、これらの問題につきましては、ぜひ不備を是正するという措置をとっていただきたいと存じます。  五人未満の職場労働者の問題につきましては、先ほども多く触れられておったと思うのであります。内閣統計局の調査に示しております数字によりますと、二百六十三万の事業所、及びそれに従事しておる労働者が、二百四十七万と出ておるのでありますが、これらの労働者に対して、この適用をぜひいたしたい、拡充をさせてもらいたい、かように思うのであります。三千万人の中に含みまして、そして適用を拡充し、社会保障をいよいよ推進をする、こういう立場からいたしまするというと、私どもはどうしても一部負担の問題につきまして触れていかなければならぬのであります。で一部負担の点については、ただいままでの御意見ではある程度やむを得なかろう、こういう御意見でございます。乱診や乱療を制限する、こういう御意図があると聞かれるのでありますが、あるいはこれによってそれが多少セーブされるかもしれません。しかし、正当な診療を希望しておるのに、こういう人たちまで制限する危険はないか、こう考えて参りますると、これは大いにある、こう申し上げなければならぬと思うのであります。社会保障の柱として健康保険を考えておる、そうして今申し上げておるように、三千万人の適用にまで拡大をしていかなければならない、こういう建前をとりながら、一部負担というものは、そのこと自体これは適当な措置ではない、許さるべき問題ではない、かように思うのであります。特にこの問題は事業者と、そうして被保険者が相互扶助の精神にのっとって社会保険というものを維持しておるという現実的な立場からいたしましても、かりにこの一部負担が患者にかけられておる、こういうことになりますというと、その均衡を失するばかりではなく、患者はそのこと自体が病人であって、病人になれば当然支出は増大すると思うのであります。その上に負担をかけるということになって、これは容易ならざる生活の問題であろうと思うのであります。特にその前提として、政府みずから、政府管掌の健康保険については、保険料率はもう上げられないのだ、これは労働者の生活をこれ以上の保険料率にするならば破壊してしまう、こういうことをお認めになっておる、お認めになっておりながら、病気になって困っている患者に、さらに一部負担をかけている、これははなはだ筋が通っておらない。理路一貫しておらない、かように思うのであります。今までの御説明でも、事業者の方方が、あるいは当局の方々が、これを非常に強く推進をされておると思うのでありますが、みずからの支出ではない被保険者側の支出になる、こういうところに、どうもこの強く御主張の根拠があるように思われるのでありまして、こういう強く御主張になるという事実からいたしまして、これはけっこうであるという是認をなさっておろうと思うのであります。被保険者側の立場では、ほとんどもう支払いの自分たちの、これ以上の保険料の支払い余力、能力というものを持ち合せておりませんのに、現実問題として、これが一部負担を強行される、こういうことになりましても、支払いがほとんど不可能であろうと存じますので、こういう場合には、それに基きまして一つ大きな運動を展開しなければならぬと考えておりまするが、この点については特に国会において強く御善処をお願い申し上げたい、かように思うのであります。  簡単ながら、以上私の主張を終ります。

重盛壽治日本社会党

○委員長(重盛壽治君) 次に、全日本労働組合会議国際部長の西巻敏雄さんにお願いいたします。

西巻敏雄全日本労働組合会議国際部長

○参考人(西巻敏雄君) 私全日本労働組合会議の国際部長の西巻でございます。  国際部長でありながら、こういう席に出るのはおかしいのでありまするが、実は私の単位組合である海員組合におきましては、保険関係の仕事と国際関係をやっておるのであります。そういう関係から本日出席いたしたのでありまするが、同時にそうした関係から、本日意見聴取事項の中に入っておりませんが、若干船員保険に関する問題に触れることを御了承願いたいと思います。私はまず海員組合なりあるいは全労会議なりが今日の社会保険制度、特にその中核であるところの健康保険制度に対して、どういうような考え方なり、あるいは態度なりを持っておるかということをお話し申し上げて、その中で若干個々の改正要項に触れていきたい、そう考えるのであります。  総体的に言いまして、健康保険制度は五者制度あるいは四者構成といわれておりますように、他の失業保険あるいは厚生年金等と違いまして、特に医療担当者という方々の特別な協力を得ておるというところに特殊性があると思うのであります。   〔委員長退席、理事山下義信君着席〕 従いまして、またその限りにおきましては、それぞれの分野において、この四者それぞれがどのように責任を分担し合うかということがきわめて重大に考えられなければならぬと思うのであります。  まず、私は被保険者としてのわれわれの立場を申し述べたいのであります。われわれの立場は、こうした健康保険制度なり、あるいは船員保険制度というものがわれわれ自体の保険制度であるというふうに理解をいたし、さらにまた、その前進に協力をいたしているその角度から、財政的に申し上げますると、適正なる標準報酬をもちましてその財政の充実化をはかるということを基本的な態度にいたしておるのです。ここに適正なる標準報酬というのは、もちろん賃金なり、収入の実態に見合った報酬ということであるのであります。今回の改正に当りまして、最低報酬を、標準報酬を三千円から四千円に引き上げようとしていることは、実際問題としては、あるいは今日の賃金の実態あるいは報酬の実態に必ずしも合ってないという面があるのは事実であります。私は今日埼玉県に住んでおりまするが、私の周辺にたくさんいる労働者諸君は、一ヵ月二十五日間働いて、つかみで二千円ないし二千五百円という収入を取っている者が多々あるのであります。そういう限りでは、確かに三千円から四千円に上げるという問題は若干矛盾があるのは事実であります。しかしながら、それらの低収入が平常時においてそれらの諸君の家庭の生活の資であるという点から考えますると、それらの諸君が今度病気になった場合には、その標準報酬の六割がその傷病労働者の家庭の資になるという事情もこれは事実なのであります。そういう点からいうと、適正な標準報酬とは何かということは非常に問題点があるのでありまするが、少くとも傷病手当金の基準になるところの標準報酬、これを若干負担能力がある、ないという問題と離れまして、考慮する必要があることは、これは労働者の実態からいって避けがたい問題であろうと思うのでございます。事実われわれは、われわれ船員保険の側におきましては、現在最低が四千円であったのであります。それを五千円に引き上げるということは、また陸上労働者諸君と全く同じケースが出ていることは事実でありますが、あえてこれを承認した理由はそこにあるわけであります。と同時に、われわれは、健康保険においては、現行の三万六千円という最高の標準報酬を五万二千円に上げるという問題が出て、しかも本日ここの席上におきましては、大体これを承認することが妥当であるという意見が多いのであります。しかも、この引き上げは賃金の実態に合せるということがおもなる理由なんであります。ところが、船員保険におきましては、現行最高は三万六千円でありまするが、今回の改正からは全く除外されておる。しからば、船員の実態からいって三万六千円があくまで妥当であるのかといいますと、実はそうではなくて、最近のわれわれの調査におきましても、日本船主協会に属するいわゆる大型船舶、汽船の方におきましては、船長あるいは機関長は基準給だけでも五万五千円程度を取っておるのであります。従って、これに対してさらに標準報酬の計算からいいますると、さらにふくらむということは事実なのであります。しかもなぜ三万六千円で押えていかなければならぬのかという点がわれわれの不満の点であります。それから、われわれの角度から事業主の立場を考えてみますると、これは原則的には保険料は折半負担であります。しかも、これについて引き上げが困難であるとか、増額は好ましくないとかいう意見がありまするが、少くともこの医療保障制度によりまして、労働者が健康を回復し、それによって総体的な生産力の増強がはかられるという点になりまするならば、必ずしもわれわれと考え方が一致しないということはないはずであろうと思うのであります。  第三に、政府の立場を考えてみますると、政府は、今日事業主や労働者から徴収した保険料で今日の健康保険を運営いたしておるのであります。従いまして、そういう立場におきましては、できるだけ被保険者なりあるいは事業主なりという保険料を負担しておる者の立場を考慮いたしまして、できるだけ適正にこの保険が運営される点に大きな責任を感じなくちゃならぬと思うのであります。こういう面からいって、私はその責任が二つの点でまず明らかにさるべきであると信ずるのであります。  第一は、今日事務費は全額国庫で負担いたしております。これは当然のことなんです。けれども、残念ながら給付に対しましては、一文の国庫負担をもいたしていないのが現実なのであります。社会保険審議会は過去数回にわたりまして、国庫は給付費の二割を国庫負担すべきであるという決議をいたしております。さらにまた、社会保障制度審議会でも、第一次勧告において、数ヵ年前に同様の勧告を政府にいたしておるのでありまするが、今日なおかつその実現を見てないという点は、私どもはなはだ不満なのであります。しかしながら、この国庫負担というものは、決して赤字対策ということでわれわれは要求いたしておるのではございません。これは政府が保険者という責任を明らかにするという意味において、われわれが要求いたしたのでございまして、若干今度の改正におきましては、国庫の補助金というような形で出るようになりましたが、私どもはその形におきましても、あるいはその金額におきましても、はなはだ不満足の限りなのであります。  第二に、政府がなすべき責任というものはどういう点であろうかというならば、監査の励行であります。たとえ国庫が二割の給付費の負担をいたしましても、残る八割の財源というものはことごとくわれわれ労働者なりあるいは事業主の負担となっているわけで、あります。従って、当然政府といたしましては、われわれから預かったところの金、こういう表現ははなはだまずいのでありますが、われわれから預かった金ができるだけ適正に診療費として支払われるように考慮、工夫するという必要があるのであります。医療担当者は、今回の大衆運動を通じて、労働者の負担がすでに限度にきておるという点について非常に強調いたしておるのであります。従って、われわれはまたその通りであって、先ほどから質問もされ、われわれの側から説明もされましたように、血の出るような保険料が適正な診療報酬に振り向けられているかどうかということに非常な深い関心を持っておる。従って、政府といたしましては、われわれ被保険者の心持ち、あるいは事業主の心持ちというものを体しまして、保険診療に対して適正な指導や監督が当然なされなければならぬと私は考えるのであります。今日まで監査を厳重にある地域で行いますると、その地域におきまする診療報酬の請求が相当数減少してしまう、ところが時がたつに従って、それがまたもとに復元してしまうということをしばしば聞かされておるのであります。私はそういうことを信じたくはないのであります。しかしながら、かりに若干でもそういう傾向が今日あるとするならば、今日健康保険の医療費は、約年間五百億であります。五百億の一割が監査の強化によって浮かされるとすれば、五十億、二割が浮かされるとすれば百億であります。今日の赤字のごときはたちまち解消すべき性格であろうかと考えるのであります。われわれは機会あるごとに監査の励行をすべきである、強化をすべきであるということを主張し、政府もまたしばしばおみこしを上げたことがあるのであります。ところが、実際問題としては、医療担当者の強い反対に会いまして、今日まで監査はほとんど厳重に行われていないというのが実情であります。従って、今回相当応範囲な健康保険の改正が行われ、その機会において政府がこのような監査をし、指導をするという根拠を法律上に明文化するということは、これは当然過ぎるほど当然のことであるのであります。むしろ今日までこれを等閑に付しておいた政府の態度こそ責められるべきだと私どもは思うのであります。この問題が社会保険審議会の議にかかりますると、その席上に医療担当者として出席された代表委員も、これに心から賛意を寄せられまして、先ほどお話がありましたように、満場一致で政府の原案が承認されたということに対しては、私は少くともその席上に出られた医療担当者に対して深い敬意を今日でも持っておるのであります。この意味におきまして、今回の改正で医療機関や薬局に対して必要がある場合には質問する、あるいは書類の提出を求める、そういう根拠規定を設けたことは当然であるし、さらにまた、支払基金の中で専任の審査委員を設置するということをきめたことは、きわめて意義のあるところであると考えます。また、医療担当者制度におきまして、今回機関指定の制度がとられる、同時にまたそれに合せまして指定期間を二年にしたということもまたわれわれ非常に賛意を表しておるのであります。ただ、問題は、二年にすることが妥当であるかどうかという問題でございます。これには若干考え方の相違があろうかと存じます。が、われわれの経験からいいますると、日本の労働組合の大多数は毎年一回大会を開きまして役員を改選するのであります。従って、役員の任期は大体一年、一年でありまするけれども、実際の組合活動には何らの支障がない。私の属する海員組合は二年の任期でございます。が、二年以上の任期を決定しておる労働組合は日本にはない。もちろん医療担当者の指定期間と組合役員の任期とは同一の性格ではございませんが、少くとも二年以上に延ばすというようなことは、私ども賛成いたしかねるのであります。さらに私どもは、医療担当者の側に立っても問題を考えなければならぬのでありまするが、少くとも最近における医療担当者の大衆行動を通じて、いかに医療担当者がわれわれ労働者に対して十分な理解と同情を持っておるかということを把握いたしておりまする関係から、このような社会保険の参加者といいまするか、重大な構成者の一員として、社会保険という立場からこのような監査規定、あるいは機関指定の問題、あるいは指定期間が二年になるという問題につきましても、少くとも十分な御理解あるいは御納得を賜わり得るものと私どもは確信をいたしております。私どもは適正な診療報酬というものが、これがどうしても時の推移によってふくらむのであります。その場合には、どうしても第一には、国庫負担の増額というようなことでまず問題を処理したいという気持ちを持つのであります。しかしながら、将来にわたって国庫が二割の国庫負担をする、そうした場合に、なおかつそれ以上の要求をわれわれができるかといえば、おのずからそれには限界があるのであります。そうなると、第二には給付の制限をするかという問題が出るのであります。しかしながら、今日の段階におきましては、制限すべき給付をわれわれは持っておりません。もう限界点なんです。従って、そうなると、料率の引き上げということを考えざるを得ないのであります。そういうような事情にあり、そういうような考え方を持っておるわれわれの立場というものを十分に理解されまして、船員保険、健康保険の医療担当者各位が十分な冷静な判断と理解をされんことを切望するものであります。  大体私は以上健康保険に対する基本的な考え方を申し上げたのでありまするが、その中で、第一には、国庫負担の増額という問題、それから第二には、標準報酬の適正化、特に船員の標準報酬が政府原案ではあまりにも低きに過ぎる、実態に合わないという点を指摘いたしたのであります。第三には、監査規定は原案が妥当である、第四に、支払基金における選任審査委員制が妥当である。さらにまた第五には、指定期間の二年は安当であって、これ以上に延ばすということは賛意を表しがたいということを申し上げたのでありますが、最後に一部負担制について若干意見を申し上げたいと存じます。  結論的に言うならば、われわれはこれに反対であります。第一の反対理由は、一部負担制をとり入れることのぜひ、あるいはとり入れる場合にはどういう方法がいいか、あるいはどういう時期を選ぶべきかということが今日まで必ずしも十分に論議し尽されていないからです。今日の段階におきましては、この問題は先ほどから指摘されましたように、赤字対策という形で出された要素が非常に多い、そういう形で出されますると、勢い時間的な制約があるのであります。事実時間的な制約の上にこの改正案が出されているように今日でも考えるのであります。しかしながら、今日実際問題としては厚生省の中で今後の医療保険をいかにすべきかという根本的な対策を考える委員会といいまするか、そういう会合が持たれていると聞いたのであります。さらにまた、社会保障制度審議会におきましては、医療保障制度のあり方について根本的なものを早急に勧告しようというので、すでにその作業に着手をいたしておるのであります。従いまして、一部負担制をとり入れるといたしましても、その方法なり、あるいは時期なりにつきましてはさらに十二分な検討を加えても決しておそくはないのであります。そういう意味合いにおいて私どもはまず反対をいたすのであります。それからさらに今日の段階におきまして、健康保険で一部負担制がとり入れられた、ところが実際問題としては、健康保険制度というものは今日の社会保障制度における広範な医療保障制度の中核なんであります。これに関連する他の法律制度といたしましては船員保険法がございます。さらにまた日雇健保がございます。あるいはまた共済組合法があるのであります。しかしながら、この健康保険制度の改正の中で一部負担制をふくらましたということのため他の保険が同様に右へならえを強要されておる。今日、健康保険組合では財政的に決して赤字ではないと考えます。あるいはまた、共済組合においても余裕財源が十分あるのであります。しかもなおかつ、健康保険の中で一部改正をとり入れたがため、それらの制度の中にも同様に考えざるを得ないというのが実態の……、私先般社会保障制度審議会において、共済組合の中にこの一部負担制の問題をとり入れるということのぜひについて諮問を受けたことがあるのであります。そのときにいろいろな質問がございました。ところが、共済組合の当事者の説明によりますると、一応は健康保険並みに一部負担はとるのだ、ところがこれは財政の余裕があるので、結局それをまた被保険者に、共済組合員に還元するのであるという説明なのであります。ところが実際問題として、一部負担制がふくらまされ、あるいはとり入れられましても、それは必ずしも被保険者なり、共済組合員からお医者さんに支払われるものと断定することができないのであります。多くのお医者さんはそれを受け取っていないのです。従って被保険者としては初診療にしても再診療にしても払わない。ところが共済組合の方では払ったものとして還元するということになりますると、お医者さんにかかるたびに一切の診察なり診療は無料であります。その上に払わない初診療を払ったものとして一日三十円の還元があるという矛盾がある。これは何に基因するか、それは結局結果として健康保険制度にそういう制度がとり入れられたために、ほかの制度においても右へならえをしないとお医者さんのいろいろ事務上の複雑さを招くということのためから生じておる。そういうような問題について、われわれは委員会は違うのでありますが、十二分に考慮をすべきであろうと考えるのであります。さらにまた健康保険制度において一部負担制をとり入れた、そのために船員保険においても同様に一部負担制を実はとり入れることが今日改正案の重要な項目になっておるのであります。ところが、一部負担制という名前は確かに同じであります。しかしながら、その内容は全く違うのであります。船員保険というのは船員法という、陸上でいうならば労働基準法に該当する法律がありまして、それのうらはらなのであります。そこでいろいろと災害補償がきめられておりますが、その災害補償を船員保険で肩がわりしてやるというのが法律体系なのであります。ところが船員保険法におきましては、船員の実態は今さら申し上げませんが、船に乗りながら寒さ暑さの非常な変化がある、あるいは気象の変化もある、あるいはまた、家族から離れておるということのために、特殊な問題として国際的にも認められまして、結局乗船中は、職務上であろうがなかろうが、全部船主が負担する、労災に該当する職務上の場合は、なおるまで船主が見るのであります。職務外でありましても、三ヵ月間は船主がこれを見るのであります。従いまして、医療というものが実際には船員保険の医療給付の約九〇%以上なのであります。船主が負担するのが九〇%以上、従いまして同じ一部負担といいましても、船員の方で払う一部負担は実は船主が支払わなくちゃならぬやつを船員が前払いあるいは仮払いをするという形になる。どこの世界を探しましても、貧乏人か金持ちのために仮払いするなんという制度は実はない。ひとり日本の船員保険のみに現われる現象と思うのであります。  それからもう一つの反対点は、元来この健康保険におきましては、保険組合は別でございますが、政府管掌におきましては、業者と労働者が折半負担というのが原則であります。五〇%、五〇%なのでございます。ところが、今度の一部負担を考えてみますと、一部負担をしますためにこの折半負担という原則が根本からくずれてしまうのであります。かりに四千円の標準報酬の場合、これは実際には毎月支払う労働者の負担は百三十円、事業主も百三十円支払う。ところが、一たび被保険者が病気になりますと一日三十円、毎月九百円というものを払わざるを得ない。従ってその月だけ考えてみますと、九百円プラス百三十円、結局千何十円という金になる。この場合の料率負担といいますか、負担のバランスというものを考えてみますと、一〇対九〇になる。原則は五〇対五〇でありますが、実際には事業主が一を出して、被保険者が九を出すという矛盾が生じてしまう。これでは弱い者を助けるという保険制度から考えましても、根本的な矛盾であると考えるのであります。従いまして、私はその点については絶対反対なのであります。ただ、将来国民皆保険になり、いまだ医療保険の外に置かれておる三千万の諸君が国民皆保険の名のもとに全部国家保険の中に入ってくるという場合におきましてはおのずから構想は別であります。従ってそのときにおきましては、一部負担というものは今日の形ではございませんが、たとえば全部の医療について、労働者であろうと家族であろうと八〇%は政府が持つ、保険で持つ、あとの二〇%が被保険者が持つという形の一部負担なのです。従ってどういう形の一部負担がいいかということは別問題にいたしましても、国民皆保険の暁におきましては、私ども十分に考慮する余裕を持っておるのであります。  さらに最後に一言申し上げたいのは、最近保険財政が赤字になったということのために、保険の規定がありましても、なおかつ規定の運用の面におきまして、しばしば給付制限といいまするか、しぼられる面がある。従って当然それらの諸君の権利を救済してやるという必要があります。今日、中央に社会保険審査会というのがございまして、これが相当スムーズに運営をいたしておることは事実であります。しかしながら、実際問題として政府は被告であります。被保険者なりあるいは被保険者の家族というものが原告であります。原告に対しましては利益代表者というものがつきまするが、その場合にいろいろとわれわれが訴えをする、その場合に一つの問題をあらためて調査をしなくちゃならぬというようなケースが起った場合に、一体だれが調査をするのか、それは被告側に立つ政府が政府の役人を使って調べるのであります。これでは審査会の裁判所的な性格からいって、必ずしも公正を期しがたいというふうに考えられるのであります。従ってこういう機会において、もっと予算を十分に、審査会がそれぞれ独立した事務局を設けて、正しい裁判所的な運営がなされるように御考慮を願いたい。  それからもう一つ権利の救済でございまするが、今回の改正におきましては、医療担当者の側においてはなはだ不満足な考え方を持っておられるようであります。私どもは少し言葉が強かったかと思いまするが、少し医療担当者側に審査、監査の強化を主張するに急であった。しかしながら、今日の医療担当者お医者は戦争以前とは違いまして、社会保険、健康保険に依存する面が非常に多い。従来指定されていたものが取り消される、あるいは二年の更新期には今度は指定されないということになりますると、それは自分の生活に対するある程度の致命的なきずであります。従いましてそういうような場合には、やはりこの既得権というものを救済してやるという道が当然考えられなくちゃならぬ。これは私ども中央医療協議会あたりがその救済機関として機能を持つべきではないかというふうに考えるのであります。  非常に長時間でございましたが、私の意見はこれで終ります。

山下義信日本社会党

○理事(山下義信君) ありがとうございました。  次は、全医療委員長井上五郎さんに願います。

井上五郎全日本医療従業員組合協議会全日本国立医療労働組合委員長

○参考人(井上五郎君) 井上でございます。私たちは今度の健康保険の一部改正につきましては、あえて健康保険の改悪と呼んで全面的に反対をいたしております。これには大体大きく申しまして以下の点からであります。  今度の健保の改正のねらいは、この二、三年懸案になっておりましたところの健康保険財政の赤字対策として出されてきておると思いますけれども、これはわが国の社会保障の中心をなす社会保険あるいは医療保険の発展をゆがめるものである、このようにわれわれは判断いたしております。政府は七十億の赤字解決の手段といたしまして、被保険者には一部負担、医療担当者には診療上の制限、政府は三十億の負担、こういうように一応第三者には妥当な常識的な解決の方法のように思われることを出してきておりますが、これもなるほど保険経理という面から見ますれば、あるいはこのような解釈も成り立つかもわかりませんけれども、しかしこの赤字と申しますのは、現行医療保障制度が持っておりますあらゆる矛盾の累積によってこの赤字というものが生まれてきておる。ここに大きな盲点があるようにわれわれは考えております。わけても先ほどから言われておりますように、赤字の最大の原因は結核療養費の増加、これでございます。この問題の解決をはからずして、三者の共同責任に押しつけたというところに大きな問題がある。特に一部負担制の実施は、その額の多少ではない、これはこの社会保険の理念、あるいは社会保障の理念からこういうような方向が原則を大きくゆがめまして、生命保険とかあるいは火災保険、このような私保険と同様の相互扶助機構に導いてゆく、こういうようにわれわれは憂慮しておるものでございます。  次に、患者の一部負担制の問題でございますが、これは労働者の生活困窮に拍車をかけ、診療を制限していくというふうにわれわれは見ております。再診三十円、入院三十円、この額は額といたしましては少いように思いますけれども、特に低額賃金の中小企業労働者におきましては非常に深刻に響いて参ります。特に最近の特徴的な傾向といたしましては、結核患者の動態が大企業の労働者には著るしく減少しております。そのかわりに中小企業、生活保護の対象階層に大きく沈澱して参ってきております。中小企業労働者は結核で入院しました場合には、本人の場合は傷病手当金は四割、それから家族がある場合には六割、このような傷病手当金を受けるわけでありますが、この中から月額九百円の一部負担をするということは、政府や事業主が考えておられるような甘いものではない。ここに国立医療機関九ヵ所千四百名についての医療費以外の入費調査がございますが、保険患者のうちで月に千円から三千円までのおこづかいを使用しているものが全体の七四%を占めております。さらにこの階層を見ました場合に三千円、いわゆる中小企業労働者、いわゆる政府管掌の労働者と目されるものはわれわれの推定では大体六百円から千五百円くらいまでのおこづかいを使用する階層であろうというふうに見ておりますが、これが大体三六・四%を占めております。これらの患者にとりまして月に九百円の負担をしていくということは、とうていこれはたえ得られないことであろうというふうにわれわれは考えるわけです。さらに現在この調査には医療費の滞納状態が出ております。これはもちろん保険患者についてではございません。しかしいわゆる医療券の一部負担、それから自費患者についての調査だと思いますけれども、滞納者が三七・四%、しかも最低三千円から最高十万円までの滞納をいたしております。これは先ほど言いましたように、医療券の一部負担、自費患者であろうと思いますけれども、これが健康保険の一部負担ということが出されて参りますと、やはり健康保険の中にも増額としてはそのような大きな滞納ということは生じないかもわかりませんけれども、こうした状態が現われてくるというようにわれわれは見るわけです。しかもこれを督促しなければならぬ私たち職員の悩み、それと督促を受ける患者の苦しみというものは非常なものでございます。ここに実は私たちの九州の某国立病院の督促係の方からこの督促事務に対する悩みが訴えられてきております。そうしてまたそれに対して患者の家族から督促事務を受けましたその悩みが同様に訴えられてきております。時間もございませんので、これを読み上げることは省略さしていただきますが、この現在の苦しい社会経済と申しますか、社会生活の中で職員が貧困の矢面に立たされて、そうしてどちらもの板ばさみになって苦しんでいる。あるときには税務署の役人のようにものを言わなければならない。ことに国立病院でございますから、国民の税金を食っている国立の看板はこれは偽善的なものかというような批判を受けるということが職員の苦しみとしてここに訴えられてきております。またある入院しております老婆は、一部負担が百円多くなってきた、そうしてその老婆は役所に行ってその理由を問いただしたら、あなたはもう老人になったから、御飯を食べる量がそれだけ減るだろう。ですからあなたは御飯を食べる量がそれだけ減るから百円よけい負担しなさい、こういうことすらも言われた。こういうような現在の患者の苦境というものがわれわれの医療機関を取り巻いてたくさんあるわけです。こういう中におきまして、公的な医療機関であろうと、あるいは開業医であろうと同じようなわれわれ今の医療保険制度のもとにおける苦しみを続けているわけです。先ほどからいろいろ監査の妥当性、審査の妥当性、こういうものも言われます。もちろん私たちもこの中に不正診療がないとは言い切れない、確かにある、こういうことはもちろん考えております。しかしなぜそのような不正、水増し請求をしなければならないか。これは私たち国立病院の状態、あるいは公的医療機関の民間代表としての日赤病院の状態、これを調べていただければはっきりすると思います。これは名前を出しませんけれども、東京の非常に有名な、しかも公的医療機関の代表である某病院におきまして、六百床あるこの病床のうちで、健康保険で入れる病床は二百床しかない、あとは最低四百円から二千円までの差額徴収を行なっていかなければ、医療機関の経営が成り立っていかない、こういうような状態、これを無視してただこの赤字が単に不正請求である、あるいはまた被保険者の不正使用である、このようなことに目を向けるのは大いに間違いであるとわれわれは強いふんまんを持つわけであります。で、以上のようなことの中で、私たちはこういう状態の中で、しかもこの健康保険の改正の最大のねらいと申しますのが、今言いましたように、赤字七十億に対しまして三者が平等に折半し合おうじゃないか、こういうようなことでいわゆる社会保険の原則、あるいは社会保険の今後発展していくべき方向、こういうものをゆがめてしまう、こういうことにつきまして、私たちは強い不満を持ってこの健康保険の改正と呼ばず、これを改悪と呼んで反対しているわけであります。  あとは個々の条項にもなりますけれども、大体いろいろな方から述べられておりますが、たとえば一部負担の問題につきまして私が以上述べましたような形で、絶対にこれは被保険者、労働者としてこれを認めるわけにはいかない、あくまで強く反対をしていく。それから保険診療担当者に対する審査、監査、あるいはこの官給明細書の問題、懲罰の問題、行政検査の問題、こういう点もなるほどいわゆる適正な診療が行われるような指導、これが中心でなければならない。で、今私が述べましたように医療機関の現状、もちろん日本は法治国でございますから、苦しいからこうやるのだということは許されない、そういう点につきましての監査とか、罰則というものはあっても仕方ないと思いますけれども、やはりこの今度の健康保険の改正を出される一番欠陥は、この医療機関の現状分析が行われておらない、どのような医療機関の運営が行われておるか、どのような患者が診療を受けておるか、こういうような分析が行われないで、ただ保険経理、赤字対策という面からのみこれを見ているところに大きな間違いが生じてくる。で、この問題は先ほどから申しますように、この結核という問題が一番大きな赤字の原因でございます。先ほど健保連合会の方も言っておられましたが、ここ二、三年来一件当りの診療費の値上り、あるいはまた患者一人についての療養日数と申しますか、これはたとえば今海員組合の方から一割、二割の監査によって乱給を取り締れるのではないかと言われましたけれども、実際はこうした実体をつかんでみました場合には、ここ二、三年来診療費の一件当りの値上りというものはほとんどないわけです。あるとすれば、それは結核の療養期間を一年半に延長したこと、それから新薬を使ったこととか、そういう点の値上りでございまして、一般に言われておりますように、私たちがただうのみにして常識的に間違った判断をしがちな、いわゆる相当不正請求とかあるいは不正受給があるのではないかということは、これは実際によくこの医療機関の現状を見ていただき、そしてまたよく調査していただくと、そういう事実はほとんど九牛の一毛にすぎない、こういうようにわれわれは考えるわけです。ですから、この健康保険の改正というものは、ただ保険経理という面からのみでなくして、日本の社会保障制度の推進、それから健全な社会保険の発展、この角度から総合的に出さるべきものである、何よりもまず結核対策を一つ別個に取り出していただいて、そしてこれに対する一元化をはかっていただく、こうすれば健康保険のこの赤字ももちろん解消するでございましょうし、非常に結核対策にいたしましても、いろいろな方面に分れて非常なむだも多いわけでありますが、この結核対策もほんとうに生きたものになっていく、やはりこの健康保険の改正という問題は結核対策と一つ並行して十分考えていただいて、その上で十分な審議と論議を尽していただいて出されなければ、私が以上主張いたしましたような非常な間違い、それから今後の日本の重要なる社会保障制度の方向を誤まる結果になる、こういうようなことを主張いたしまして、私のあれを終ります。

山下義信日本社会党

○理事(山下義信君) ありがとうございました。それでは参考人の御意見に対して御質疑をお願いいたします。

園乾治慶應義塾大学教授

○参考人(園乾治君) 先ほど言い漏らした点がありますが、ちょっと追加さしていただけませんか。

山下義信日本社会党

○理事(山下義信君) どうぞ。

園乾治慶應義塾大学教授

○参考人(園乾治君) それではお許しを得ましたので追加さしていただきますが、先ほど申し述べたのに脱落いたしましたのは、医療担当者の問題であります。現在は個々の医師、歯科医師等を指定するという制度でございますが、改正案によると、この個々の医師、歯科医師を登録する、それから医療機関、診療所、病院等を指定するという方法をとっておられます。これはいわゆる二重指定だと考えますが、現在の制度では、いろいろ合理的な医療、あるいは合理的な保険経済をやっていく上において大きな欠陥がある、抜け穴があると考えますので、ぜひ今回の改正に示されたような二重指定制度をとっていただきたいと思います。  この場合に指定機関が法人でないということで、行為能力の問題がちょっと疑問になるかと考えますが、しかし合理的な経営をはかる上においては、指定の取り消しということで十分に目的が達せられると考えますし、また、こういうような二重指定制度を行いましても、これが悪い意味の官僚統制にはならない。といいますのは、各地方ある社会保険医療審議会というような機関によって民主的に今言ったような取締りとか、処罰とかいうことを実行することはできるから決して心配はないというように考えます。これだけ追加させていただきます。

相馬助治日本社会党

○相馬助治君 私この際、西巻参考人に一点お尋ねをしたいと思います。衆議院の速記録も一通り私読ませていただいておりまするし、本院においてはまた私は委員会に所属いたして各種の方面からの意見を承わっておりますが、実は患者側を代表すると思われまする労働組合側の御意見の中に、立ち入り監査はけっこうであるし、専任審査委員を置くこともよろしいし、審査はより厳重にすることが必要であるという御意見を、私の知る限りにおいては初めて承わったものでございます。従いまして、私はその点に関してお尋ねをいたしたいと存じますが、社会保障制度を前進せしめるという立場からいたしまするならば、一般論としては、当然医療費を給付しまする保険者側は、この給付に対して立ち入り監査をもやって厳重にすべき権利を持つでありましょうし、医療担当者はこういう厳重な監査を受けるべき義務があると私は思います。その角度からは西巻さんのおっしゃることは、もうまことに当然であると私は思います。ただし問題になっておりまするのは、健康保険法の一部を改正する法律案の中に、この立ち入り監査という考え方が出て参り、専任審査委員を置くという、こういう法改正が行われるというこの事実なのでございます。私は医者でもありませんし、薬剤師でもございません。一労働者です。私は労働者としての、患者としての感覚から、危険かもしれませんが、しろうと考えかもしれませんけれども、ものを考えて今日までこの法律案に対処して参ったものでございまするが、現在の医者の置かれておりまする立場を見まするというと、収入のロスに対する補償というものは何らなされておりません。それから収入の欠損に対するこの権利を主張するということについては、何ら救済機関が持たれておりません。しかも支払いの遅延に対しましては、医者はぶつぶつ言う自由は与えられておりまするけれども、どこかに持ち出してこれを断固として取るという自由を持っていないように私は思います。また、一点単価は御承知のように十一円五十銭、これを家族の場合には実に十一円五十銭の四分一という計算すら出て、医は仁術にあらずして、算術だなどという言葉すら今日出されておる始末で、医療担当者である医師がこういう数字のためにそろばんを片手に苦労しなければならぬということも、これはいなめない事実でございます。しかも完全治療をしようとする場合に、ワクによってはばまれまして、使いたい薬も適切に使えない、使った結果が医師の収入のロスでなくて、医師の持ち出しになることもあるということも、これも事実でございます。そこで問題は、私は実際問題として、この私たちが審議しているこの法律案の中に、そういう医師に対して守る面は何一つ考慮されずに、とっちめる面だけを、はっきりと立ち入り監査を厳重にし、専任審査委員を置いてがつがつとやるんだというこのことが、実は私は医者が困るだろうと思って心配しているんじゃなくて、患者であるわれわれが困りやせぬか、こういう角度から私は実はこの立ち入り監査というようなことに対して強く反対をして今日にまで至っております。そこで、西巻さんにお尋ねいたしたいのでございまするが、この法律案の中においても、このやはり立ち入り監査というものはこのまま採用し、専任審査委員も置いて、この審査をも厳重にするという考え方は、このまま押し通してよろしいとお考えでございましょうか、それともまたこれに対しては、この考えを通すためには、これのうらはらの面である医療担当者である医師、歯科医師等に対しては、こういう保障が必要であるという具体案をお持ちでございましょうか。  最後に、もしおっしゃった事柄の中に、中央医療協議会あたりがこういうことをやったらいかがかということが一面触れられましたが、そういうことに対して、何か具体案があればそれも重ねて私はお尋ねをしたいと思うのでございます。  一部負担の問題も、実際問題としては、これは患者が困る話で、医者が困らないわけです、理屈からいえば。ところが現実にはこれが収入のロスになるということは、西巻さんのお述べになった言葉の中にも現われておるわけです。従いまして、質問がはなはだ長くなったので恐縮でございまするが、私たちが審議しておりますのは、健康保険法の一部を改正する法律案なんです。その中の立ち入り監査とか専任審査委員というものをこのまま採用して、立法府としては間違ってないとお考えであるかどうか。一般論でなく、この現実の上に立っての御見解を重ねて承わっておきたいと思います。

西巻敏雄全日本労働組合会議国際部長

○参考人(西巻敏雄君) 私は冒頭に申し上げましたようにですね、この少くとも健康保険制度というものは四者構成ということなんです。従って健康保険法のいろいろの条文を見ますると、事業主に対する責任の問題、あるいは被保険者に対する責任の問題、あるいは保険者自体が持つべき責任の問題、いろいろあるわけです。従いましてそれと同じ立場、比重において医療担当者に責任を課する規定があるのは当然と考えております。  それからもう一つは、非常にお医者さんの方を御心配のお言葉でございました。率直に私は申し上げます。金を出す方の側と、診療行為を提供して収入を得る者との側におきましては、経済的に見ると鋭い対立があるわけであります。従って今おっしゃるように、今日の社会保険が制限診療であることは私は認めるんであります。おっしゃるように、これを自由診療にしたならばどうなるのだ。一体社会保険というものは一年を待たずして分解する。従ってそこに制限診療というワクがあっても、それは社会保険制度である限りはやむを得ないと考えております。ただし先ほど私は説明の中で申し上げましたように、医療担当者に対して質問をし、書類の提出を求めるといういわゆる検査権、その検査をする根拠規定をこの健康保険法の中に設けることは賛成をするということを申し上げたのであります。ただし、立ち入り権という問題につきましては、これは社会保険審議会におきましても、被保険者の住宅に対する立ち入り権と同様にですね、若干問題になったことは事実であります。それは賢明な議員各位の良識によって御決定を願いたい。本筋はですね、今申し上げたように濃厚診療がなくなる、あるいは不正診療がなくなる。そのことはわれわれの保険料が下ることなんだ。その点を特に御理解を願いたい。

相馬助治日本社会党

○相馬助治君 不正診療がなくなる、濃厚診療がなくなる、そのことは保険者の利益になるのだということも、話としてはその通りなんですが、現実はそう簡単に私は割り切れないと思うのです。私自身の見解が間違っていないとしますならば、ここらで政府が社会保険制度というものをとるからには、もう少し国自体が責任を持って、明文化された法律によってその国庫支出分を確定すべきではないかということを一応考えておったからなのでございます。  で、医者の立場に立ったような御発言ということですが、私は最初から申し上げておる通りに、そうでなくして、こういうこと自体が患者である者にどういうはね返りがくるか、これを私は心配をいたしましてお尋ねをしたのです。しかし、きょうはもちろん参考人の皆様方から私どもは有益なお話を聞いて、これを立法の際に誤まりなからしめんするものであありますから、議論は一切いたしません。ただ、そういう御見解を一応念を押してお尋ねしたにとどまるのであります。御見解のほどはしかとわかりました。

西巻敏雄全日本労働組合会議国際部長

○参考人(西巻敏雄君) 先ほどちょっとお答えに落したりでありますが、監査の問題は、先ほど申し上げましたように適正な診療請求というものがなされるようにされる。それからわれわれの側にも反省するところはあるのであります。たとえば、診療券を他に貸すなどという行為が皆無だとは言い得ない。従ってその点についてはわれわれの反省の一つの資料として、しからば毎年一年間有効の診療券を政府自体が発行する、それに対して本人の写真を添付するという措遷を講じたらどうかということまでわれわれは言っておるのであります。ただし、それが財政の都合上、実現しないということなのでありますが、そういうことはわれわれにも反省の資料がある。  それから支払基金の中で専任の審査委員をおくという問題、これは今申し上げましたように、審査請求に対して適正な審査をするということと、できるだけ早く審査をすれば、早くお医者さんに診療報酬がいくわけであります。従ってそういう面ではむしろそういうことを規定した方がこの際いいのではないか、それが今日お医者さんの悩みであるところの二ヵ月たっても三ヵ月たっても診療報酬がこないという悩みを解消させる一つの糸口になるのではないか、われわれはそう考えております。

山下義信日本社会党

○理事(山下義信君) 他に御質疑ございませんか……。それでは参考人に対する意見の聴取及び質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山下義信日本社会党

○理事(山下義信君) 御異議ないと認めます。  この機会に参考人の方にごあいさつを申し上げます。参考人の方々には長時間にわたりまして、貴重なる御意見を御開陳下さいまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕

山下義信日本社会党

○理事(山下義信君) 速記を起して。  残余の日程は次回に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山下義信日本社会党

○理事(山下義信君) 御異議ないと認めます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時四十三分散会    —————・—————

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