外務委員会 第18号
- 発言数
- 96 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1956/05/31
会議録
○委員長(梶原茂嘉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。 委員の変更を御報告いたします。杉原荒太君が辞任されまして、苫米地義三君が就任されました。土田國太郎君が辞任され、石黒忠篤君が補欠として選任されました。 —————————————
○委員長(梶原茂嘉君) 日本国とフィリピン共和国との間の賠償協定の批准について承認を求めるの件を議題といたします。本件について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
○羽生三七君 先日小瀧委員から若干お尋ねがあったかと思いまするが、ビルマ賠償のその後の進捗状況を少し具体的に御説明願いたいと思うのです。
○政府委員(中川融君) ビルマ賠償は御承知のように第一年度が現在進捗中と申しますか、第一年度は前会計年度でいわば終ったわけでありますが、その進捗状況を御説明申し上げますと、結局本格的に賠償実施が始まりましたのは昨年の十月でございまして、その後におきまして、その当時日本政府としては大体前会計年度中に五十億円程度のものを予定したのでありますが、結局契約の進捗状況等が相当おくれまして、その後の実績で申しますと、四月末現在で契約ができましたのが約十億円であります。そのうち支払いを了しましたのが約三億円であります。従って当初の五十億円に比しまして進捗状況は非常におくれておるのでありますが、どうしてこうおくれておるかと申しますと、結局双方の準備のやはり不十分なことということがおもな原因であります。双方と申しましても十月以降のおくれた原因につきましては、むしろビルマ側の準備がおくれておるということが主たる理由でありまして、先方の賠償による調達物資、役務の具体的な項目の決定がおくれておったこと、及び決定いたしましたものにつきましても、日本側の業者との契約がおくれていたこと、ということが主な原因であります。しかしすでに話が現在までのところ進行中のものが、大体百億円程度はあるのでありまして、これがもしみな成立いたしますれば、今年度は大体百億を越す契約ができることとなろうと思います。年平均七十二億円でございますから、ことしの分も入れますと百億円程度の契約ができるということは決して不可能ではないと申しますか、そういうわけでありますから、今後の進捗状況は相当進むのではないかと考えておるのであります。
○羽生三七君 いずれ日比賠償の具体的な問題に入れば当然関係してくる問題になると思うのですが、ビルマ賠償の場合、先日小瀧委員の御質問の際に、消費財の要求があって、ビルマの経済事情からある程度無理からぬものもあるので、若干消費財も売ることにしたというお話でございましたが、それはそれとして、賠償契約との関係で、ビルマ経済自身でビルマの再建計画というようなものが一体どういうふうに進められておるのか、何もそういう計画がないのか、日本との賠償取りきめの結果としてビルマの経済再建計画が当然あると思うのですが、それはどういうふうになっておりますか。
○政府委員(中川融君) ビルマにおきましては、社会福祉七カ年計画というのを、たしか一昨年だったかと思いますが作ったのであります。その七カ年計画に基きまして、工業、農業その他社会福祉、あらゆる方面についてのビルマの復興開発をはかろうという計画でありまして、その中に日本の賠償というものも相当大きな地位を占めることになっておったのでありますが、その後のビルマの経済の実情を見ますと、ビルマといたしましては外貨事情が非常に悪くなったのでありまして、それはビルマ米の非常に国際価格が下ったということから、初めに予期しておりましたようなビルマ米輸出による外貨収入というのが入らなくなったのでありまして、その関係で外貨収入がないということから、ビルマ経済は御承知のように消費物資をほとんど全国部外から輸入しておるのでありますが、その消費物資の輸入が非常に不十分になった、それと同時に賠償以外で予定されておりました、ビルマ政府自身が外貨を使って買う経済計画に必要な、いろいろ資本財の購入というものもそれだけ苦しくなったのでありまして、そこでビルマとしてはいろいろ苦心をいたしまして、たとえばソ連と協定を結びまして、ソ連からも経済援助を仰ぐ、その見返りにはビルマ米を売るという協定を作ったことは御承知の通りでありますが、この協定も結局ソ連とのその後の実施状況を見ましても、ビルマの思うようには進捗しないのでありまして、ソ連側がビルマ米は買いましたけれども、ソ連産の生産財というものはそれに見合うだけのビルマに輸出がしてないのであります。ビルマの欲するようにはなかなかソ連から物が来ないというようなことから、ビルマとしては非常に経済上苦しい立場にあります。また消費財の不足というようなことから物価騰貴というようなことも起りまして、非常に苦しいのでありまして、その関係からビルマの経済開発計画というものも予定通り、最初の社会福祉七カ年計画が、予定してありますように進んでいないのが実情のようであります。従って日本から当初予定しておりました賠償物資品目につきましては、やはり生産財よりは、さっそく当面の焦眉の急を救うためには消費財を若干ほしいというような要求が出てきておるのでありまして、日本側としてもビルマ側の窮状を察知いたしまして、できるだけの協力はしたいと考えておるところでございます。
○小滝彬君 ちょっと関連して。中川君に質問するのですが、この資本財を提供するフィリピンの協定においていろいろ計画が掲げられて、それには相当外国から輸入する資源をたくさん使わなければならぬものが多いようです。ところでその中でもフィリピンの、たとえば鉄鉱石とかその他フィリピンから供給し得るものも相当あるが、ただしそれは現地で使うというのじゃなく一度日本に持ってきて、それを加工して製品にしなければ計画に乗っからないものが相当あるように見受けられます。これは一体そういう場合には一応貿易外の勘定として無為替輸入にしてやるというようなことも今次の話し合い中に考えられたかどうか、その辺の事情を御説明願いたいと思います。
○政府委員(中川融君) フィリピンではいろいろの原料を産するわけであります。ことに鉄鉱石あたりは日本も大量に買っておるわけでありますが、この原料を持って参りまして日本で加工して、これをフィリピンに提供するという方式、これがいわばサン・フランシスコ条約で当初予定しておりました役務賠償の最も典型的な形になるわけでありまして、この形のものが今回の協定にどのように予定されておるかという点の御質問かと思うのでありますが、今回の協定は御承知のように、原則として資本財をそのままやるというのが大体の内容になっておりますが、御承知のように交換公文におきまして、当初の五年間は年四百万ドルずつ加工役務賠償を出すということになっております。この加工役務賠償の一番純粋な形といたしましては、ただいま御質問のありましたような、フィリピンから原料を持ってきてそれに日本が加工して、そのうちの原料はフィリピンが自分で持ってくる。それに対して加工したその分だけ日本が役務賠償として日本の円で日本の業者に支払うという格好のものを予定しておるのであります。従ってたとえば麻の原料をフィリピンから輸入いたしまして、その麻に対しまして日本が加工して麻布にしてこれをフィリピンに返す、その加工賃は賠償で払う。こういうような形が予想されるのでありまして、これなどが一番典型的な形になるのではないか。そのほか鉄鉱石等を持ってきて、加工してあるいは鉄板にして返す、鋼材にして返すというようなことも考えられるわけでありますが、一応予定されて現在すでに行われておる形のものとしては、麻の分が現在すでに商談としても行われております。これのやり方は原料の麻は無為替輸入をいたしまして、それに対して加工したものを日本から輸出の形として出すということになっておるのであります。
○加藤シヅエ君 関連して。今麻のお話が出たのでございますけれども、日本でも今麻が非常に生産過剰になってストック、滞貨があって非常に困っているということを聞いておりますけれども、今のお話によりますと、無為替で入れて生産品を向うへ返すということになると、日本の麻の製品との関連はどういうことになりますか。
○政府委員(中川融君) 日本産の麻、これを加工いたしまして製品の麻布として日本からフィリピンに輸出するということは、われわれ聞いておりますところでは現実問題としては従来もそう大きな分量のものはないと、従って日本で日本産の麻でこれを麻布にいたしまして輸出する先はフィリピンではなくて、むしろほかの国であるというふうに聞いております。従ってフィリピン産の原料の麻で加工してそれをフィリピンに返すということを実施いたしましても、そう今までの日本の麻生産者の利益を害することはないのではないかと考えております。しかし詳細のことにつきましては私も実は的確には存じませんので、日本の麻生産者の利益を害することのないように十分注意してこれを運営していきたいと考えております。
○羽生三七君 私のお尋ねしたいことは、あるいは衆議院ですでに論議されたかと思うのでありますが、この日比賠償協定とサン・フランシスコ条約との関係ですが、サン・フランシスコ条約の第五章の請求権及び財産、この第十四条とこの日比賠償を見る場合に、私は明らかにこのサン・フランシスコ条約に規定されたことと背反しておる部面が相当あるのじゃないかと思います。というのは、このサン・フランシスコ条約の第十四条では、明らかに賠償の場合に日本人の役務を連合国に利用することをその主たる目的としておって、他面原材料から製造が必要なような場合には、その原材料は当該連合国が給供しなければならないことになっておるし、また外国為替上の負担を日本にかけてはならないことに厳密にこのサン・フランシスコ条約では規定されておるわけですが、これとこの日比賠償とを考えた場合には相当その間に食い違いがあると思うのですが、これはどういうふうに解釈したらよろしいのか。私は相当矛盾があると思うのですが、いかがでしょうか。
○政府委員(中川融君) お説のようにサン・フランシスコ平和条約十四条の(a)の1に規定しておりますこのいわゆる役務賠償と、今回のフィリピン賠償及び前回の対ビルマ賠償におきまして、日本が生産物を出すという規定とは若干相違があるわけでございますが、これはサン・フランシスコ平和条約の十四条の解釈自体といたしまして、必ずしもこれを厳格な役務のみに限定するという趣旨であるかどうかという点について、若干疑問を持ってきたわけでございます。それは解釈のしようでありますが、厳格に解釈すれば、要するに役務だけ出せばいいのである。従って原材料は全部当該連合国が供給しろということも言えるわけでございまして、これはフィリピン及びインドネシアに対する長い賠償交渉の初期の段階におきましては、その厳格な解釈で先方と折衝したのであります。ところが御承知のようにサン・フランシスコ平和条約を調印した際におきまして、フィリピンの代表、インドネシアの代表はこの十四条の役務賠償の規定それ自体に反対いたしまして、先方としてはいわば留保を声明しておるのでありまして、十四条の賠償条件には賛成できないということを留保しておるのであります。先方としてはまず現金をもらいたいということ、また少くとも生産物はもらいたいということ、これを留保いたしまして、そのためにその後これら両国政府はサン・フランシスコ平和条約を批准していないわけでございます。これらの両国の考え方としては、まずこの賠償に関して日本との間に直接交渉して、その話し合いが妥結、満足にいくような内容の話し合いができた際に、初めてそのサン・フランシスコ条約を批准するという立場をとったのであります。その後インドネシアはサン・フランシスコ平和条約自体に対して、これを承認することは困るという空気がさらに強くなりまして、サン・フランシスコ平和条約は批准しないで、別に二国間の平和条約を結ぶという方針を明らかにしておるのであります。いずれにせよ、これら両国はこの条項自体に不満で、サン・フランシスコ条約を承認していないわけであります。日本としては元来ならば、この平和条約十四条が発効いたしまして初めて、これらの国と交渉を開始する義務が出てくるわけでありまして、それ以前には賠償交渉をする義務は桑港平和条約からないのでありますが、これら両国と一日も早く国交を回復したいという念願から、賠償交渉は、先方の要求通り切り離して先に交渉しておることも御承知の通りであります。しかしながら日本としてもサン・フランシスコ平和条約自体にあまりに背反するということは決して好ましいことではないのでありまして、従って交渉の当初におきましては厳格な解釈によってこれを交渉したのでありますが、先方のそもそもの基本的な態度がそういうことでありますので、そういう解釈ではとうてい先方と賠償の取りきめを結ぶことができないことが明らかになったのであります。従って政府におきましても、あるいは国内のいろいろな方面におきましても、このサン・フランシスコ平和条約という役務賠償をそう厳格に解釈していくべきではないのではないか。少し広い解釈をして、生産物も出し得るようにすべきじゃないかという論が強くなってきたのであります。政府としてもこの条項をよく読んでみますと、厳格に役務賠償のみに限るという趣旨からいいますと、そこに二つほどの、何と申しますか疑問の点が出てくる字句があるのでありまして、一つは役務賠償ということの原則も、やはり日本の存立可能な経済を維持するということが一番もとになって出てくるのであります。従って、存立可能な経済を維持するのに支障のない限りにおいては、ある程度これを広く解釈してもいいのではないかという点が第一点であります。第二の点といたしまして、外国為替上の負担を日本国に課さないようにということが、この原材料を当該連合国が供給しなければならないということの上に書いてあるのであります。原材料を当該連合国が持ってこいということの理由は、外国為替上の負担を日本国に課さないようにということになっておりますので、それから考えますと、たとえば同じ生産物でありましても、その原料が全部日本でできるというものがかりにありとすれば、それは何も原料自体を賠償として出すことにおいて、外国為替上の負担を日本国に課すわけにはならないじゃないか。また日本産の原料であれば究極においてはみんな日本人の役務で産出されるものであります。従って究極の形においては全部役務ではないか、従って、何も生産財を全部出していかぬということに解釈する必要はないじゃないか、という考え方が出てきたのでありまして、その理由からやはり生産財も日本の外国為替上の負担を特に過重にしない限りは出してもよかろうというのが、その後の政府の態度になったのであります。これは約三年前、国会におきまして、当時の吉田総理大臣が社会党の鈴木委員長の御質問に対しまして答弁されたことがあるのでありますが、その際鈴木委員長も、やはり東南アジアの国との国交を回復するためには、今までのような窮屈な解釈をとるべきではないと思うが、政府は生産財を賠償として出す意向があるかという御質問があったのでありますが、その御質問には対して当時の吉田総理から政府もそのように考えておる、今後は生産財も出して早急に賠償も片づけるようにしたいという趣旨の答弁をしたのであります。約三年前のその国会の審議のときから政府といたしましてもその点を踏み切りまして、生産財を出してもよろしい。しかし外国為替上の負担を特に過重するようなものは困るという態度をとったのであります。その態度の結果といたしまして、ビルマ賠償におきましてはすでに生産財及び役務をもって払うということを書いてあるのであります。ビルマ賠償の際にすでにその点は踏み切っておるのでありますが、今回のフィリピンの賠償協定におきましても生産財、これは原則として資本財ということになっておりますが、資本財を出すという約束をしたのであります。しかしながら外国為替上の過重の負担を避けるという趣旨から、これは交換公文におきまして、この生産財を出すことは出せるが、その原料が日本で通常できない原料である、あるいは日本が通常輸入していない原料、あるいはこれを入れるために特に外貨割当をしなければならないような原料、こういうものを含む生産財は原則として含まれないという趣旨を明らかにしておるのでありまして、この留保をつけることによりまして、生産財を出すということもサン・フランシスコ平和条約十四条の趣旨に背反するものではないというように考えておるわけでございます。
○羽生三七君 私もこの第十四条の1を、厳密に一歩も動くことができないものだという解釈をして、そうしてフィリピンのサン・フランシスコ条約の批准が、いつまでたっても行われないような状態に置いていいとは少しも考えておらない。が、しかしこの対比賠償の交渉の過程で、日本側としてこの条約の解釈を固執してがんばるというようなことでなしに、日本の経済事情等を述べて、そして十分わが方の立場というものを相手方に了解させる努力が行われたかどうか、ということが私問題であろうと思うのです。というのは、このあと、まあいずれ当委員会で問題になると思いますが、インドネシアとの賠償その他まあ各般の対外債務、あるいは義務というようなものの支払いが起ってくる場合に、あまりルーズな解釈をされて、大ざっぱな取りきめというようなことになると非常に問題を残すと思いますので、このサン・フランシスコ条約十四条の解釈は絶対に動かしがたいものとは思いませんが、わが方の立場をよく述べて相手側に納得させるような努力が行われたかどうかということを承わるのが一点。 もう一つは、フィリピンがこのサン・フランシスコ条約の批准をこの第十四条によって延ばしておったということはわかりますが、しからば今度協定ができれば、同時にこの賠償協定の批准をフィリピン議会が行うのみならず、サン・フランシスコ条約の批准を行わなければ筋が通らないと思う。これはむしろ、第十三条ですか、本条約の関係にあったと思いますが、あと先というような問題でなしに、私は、同時に批准さるべきものである。そうでなければ全然筋が通らない。こう解釈いたしますが、そういうことについて何らかのお話しがあったかどうか。この点をまず承わりたいと思います。
○政府委員(中川融君) 賠償実施につきまして、日本は生産物を出すけれども、これが外貨負担を過重することになっては困るのだ、いけないのだ。またそれがサン・フランシスコ条約の十四条の趣旨からいってもそうなるのは当然であるということは、一貫いたしまして、日本がフィリピンに対する折衝において主張していたところであります。この主張は十分に先方に伝わっておるのでありまして、また今回の協定の前文におきましても、サン・フランシスコ平和条約の趣旨に従って行動するということを援用しておるのであります。この前文の交渉の際におきましても、先方は十分そのサン・フランシスコ平和条約の趣旨に従うということが十四条の趣旨に従うことである、ということを十分認めておるのでありまして、その趣旨から、また先ほど言及いたしましたような交換公文において、特に外貨負担を過重するようなものは含まないというようなことも書いておるのでありますが、その点についての誤解はないと思うのであります。今後インドネシアとの交渉に当りましても、この点は十分当初から念を押して行きたいと考えております。 なお第十三条の問題が出ましたが、これは純理論的に書いておりますので、あるいはサン・フランシスコ平和条約の批准がこの協定の批准よりも遅れるということがあるようにも読めますが、これは実際問題といたしましては、フィリピンの国会では、サン・フランシスコ平和条約は常時懸案として上院にかかっているのでありまして、賠償協定が片づき、賠償協定をフィリピンの国会が承認するときには同時にサンフランシスコ条約も承認する、ということが一貫した先方の政策であります。従って事実問題といたしましては、先方の上院はこの二つの条約を同時に承認するということになると了解しているのでありまして、この点は御質問の通りの結果になるだろうと考えております。
○津島壽一君 ちょっと関連質問がありますが、よろしいですか、この点は私も疑問に思っておったから。ただいまの羽生委員の質問に関連して一つ疑問を質してみたいと思うんです。それはサン・フランシスコ平和条約の第十四条に賠償条項がある。フィリピン、インドネシアとの当初の交渉が、今日に至るまで十四条の支払い以外は賠償じゃない、という建前でずいぶん押したわけです。これは今も局長がおっしゃった通りでございます。ところがビルマ賠償協定が先にできましで、ビルマはサン・フランシスコ平和条約の加盟国じゃない。ところが単独の平和条約を結んだ。そこでビルマはサン・フランシスコ条約の十四条に拘束されないとしているのでありまするから、まあ極端な場合を言えば現金賠償しても、両国間の有効な平和条約も、また賠償協定もできる建前にある。それが先にできたわけですね、交渉はあとからだったけれども。そこであとの賠償交渉、すなわちフィリピン、今度のインドネシア交渉はこの型を取られているのじゃないかと思う。すなわち生産物及び役務をもって賠償を払う、こういうふうに書いてある。ところが十四条には役務だけ書いて、こういう規定は十四条の規定では書けない。これでフィリピンの交渉が役務賠償で突っ張てきたのは、ビルマ賠償からそのままを文章をまねて書いたわけです。なぜ書いたかという今の質問に対してのお答えは、これは趣旨は十四条に沿うていると御説明になって、法律の解釈としていいかどうかということが疑問の点です。私は十分研究はしてません。しかし今その問題が起ったから、そこは国民に対してもはっきり説明すべき点であろうと思う。日本は条約の上において批准さるべき、いわゆるサン・フランシスコ平和条約で十四条の賠償条項がある。であるからこのフィリピンとの協定の冒頭において、講和条約の第十四条の規定に沿うたるところの賠償とわれわれこう協定した。それを書くべきのが、今度はピース・トリーティのプロヴィジョン規定にこの十四条を援用しないわけです。ビルマにおいてはこれは援用のしようがない。ですからビルマ・日本間の平和条約の規定にある賠償の条項を詳細にきめるためにこういう協定をする、これは当然のことです。しかし今回の協定は、これはもう本来の趣旨からいえば講和条約十四条の規定により左の通り定む、初めはそう書いた。ところがビルマの協定がある。そこで、あるいはこれは条約局長から御説明願いたいと思うのですが、平和条約二十六条に、この平和条約に署名しない国と日本との二国間の平和条約を結んでその規定が、同じ平和条約の規定に書いてあるものより大なる利益を与えたならば、これはサン・フランシスコ条約の加盟国はみな均霑すると書いてある。そこでビルマの協定よりも、これは想像ですよ、間違ったら……。そこでフィリピンは二十六条の規定を援用して、あとから、あれに参加もしない国に賠償をやった、しかもそれには役務のみならず生産物賠償にした。だからわれわれは権利として二十六条を援用して、今までは日本はレパレーションの問題は役務でやったんだとおっしゃるけれども、二十六条を援用して、あとからきたビルマにこういうものをやったから、それと同一の権利利益を入れるという二十六条の規定、これはよく読んでいただきたいのです。私は専門的な技術の問題ですから、なんとも……。であるから、今の局長の説明のように、趣旨はそうだが、まあまあこうやったのだというのであるか。フィリピンは権利として二十六条の規定があるから、いやしくもビルマ以下にはいかんのだという主張であったのか。交渉の過程におけるとういう条約になったゆえんはどうであるか。第十四条の賠償条項による賠償支払いをこう規定したということをお書きにならないで、漠然とピース・トリーティ、平和条約と書いた。その中には二十六条は入っでおるわけです、これなら納得いくと思うのです。今の御説明だと、その条約関係の規定というものがどう解釈されておるのか非常にわかりませんから、その点ははっきり国民に申し上げて、本来は十四条はサービスだけです、今回これを入れました、これはビルマのことからきて、条約の規定はこうなるから、一歩譲れば、フィリピンの協定がそうならば、当然なるのですという説明ができ得るか、その点の疑問をただしていただきたい、こう思うのでございます。これは条約局長、二十六条の読み方非常にむずかしいものですから、私はこうだという確信ある見解を言うのじゃないのです。全然わかりませんから、どうおとりになっておられるかという点を一つ御説明願いたいのです。
○政府委員(下田武三君) 法律的の点を御説明申し上げたいと思いますが、確かに御指摘の平和条約の二十六条の援用と申しますか、桑港条約当事国以外の国に対して、桑港条約当事国に与えたよりも有利な待遇を与えた場合には、桑港条約当事国は、その同じような有利な待遇に均霑しなければならないという趣旨の規定がございます。そこで交渉の実際の経緯におきましては、フィリピン側は、二十六条に基く権利を援用してはこなかったわけでございます。と申しますのは、二十六条を援用するためには、フィリピン自体がこの条約の、桑港条約当事国になったあとでなければ援用し得ない、という法律的関係があるわけでございますからしなかったのかと思いますが、しかし精神はやはりそういうところに基いておると解してよいと思うのでございます。 そこでフィリピンとの賠償協定の前文に第十四条を援用しておりまするが、その場合に「規定の趣旨に従って行動する」と書いたわけなんでございます。英語で申しますと、ツウ・アクト・イン・ライン・ウイズで、イン・アコーダンス・ウイズということでないところに含みがあるのでございまして、御指摘のように、ビルマのときには桑港条約十四条を逸脱するといいますか、とにかく拡張解釈するにあらざればできないような取扱いを、すでにビルマに対して与えたわけでございます。そとでフィリピンとしましては、当然桑港条約を批准すれば、二十六条を援用することもできますし、また十四条の賠償を要求する権利も生ずるという関係から、第十四条一項そのものではなくして、そのラインに従って行動するという建前をわが方も認めまして、これを認めるにつきましては、ビルマ賠償のときに踏み切っておったわけでございますが、そういうことで両国間の合意ができておる。従いまして、ビルマで踏み切り、フィリピンで同じように行動したわけでございますので、インドネシアの今後の賠償につきましても、やはり同様の考え方で賠償問題は解決することにならざるを得ない。そういう法律的な地位に日本がすでに立っているというふうに考えておるのでございます。
○津島壽一君 よくわかりました。そこで今の法律上の解釈で、なお一つの疑問が起ったのは、フィリピンはまだサン・フランシスコ条約を調印はしたけれども、批准してないから十四条の権利者でないのだ、また同時に二十六条の権利も主張できない地位にあるから、交渉の途中において二十六条を援用できなかったのだということをおっしゃった。しかしこの条約は、先ほど羽生先生のおっしゃったように、講和条約が有効で、調印したものが批准された基礎においての権利を必要とする。そうでなければ十四条の規定による交渉も受け付ける必要はないのです。これをちゃんとこちらで引き受けて、これは有効になるものと仮定した上において交渉した。従ってこれは同時発効という規定があるわけです。今の局長の話によると、まだフィリピンは講和条約の権利がないのだけれども十四条をやった。しかし二十六条の権利はないのだ。だから言わなかったのだろうということは、同じ条約の中に一方の権利を主張して交渉できるその国が、第二十六条の規定を援用できない国であるということの解釈を条約局でおとりになるのですか。
○政府委員(下田武三君) 私の言葉が足りませんでございましたが、そういう意味よりも二十六条は、桑港条約当事国としては日本がそんな有利な待遇を与えるということは実は夢にも予想しておらなかった。また自分の方も要求しておらなかった。ところが突然桑港条約当事国以外の国に日本は有利な待遇を与えた。その場合に、それはけしからんからおれの方にもよこせという規定でございますが、経過的に見ますと、御承知の通りフィリピンは桑港条約ができる前に、すでに草案である時代に十四条に非常に反対しておったわけでございまして、ダレスが日本に参りましたときについて参りましたアリソンを使いにやりまして、インドネシア、フィリピン、豪州その他にこの草案をのめという説得工作をやらせましたときに、一番反対いたしましたのがフィリピンでございまして、フィリピンは草案にある十四条じゃ、これは日本に非常に厳格な役務賠償しか応じないという口実を与えるものである、そういうような条約には参加することができないということを、フィリピンが非常に強くアリソンに対して抗議を申し込んだということを、あとになりまして日本側にまた説明があったわけでございまして、そこでフィリピンといたしましては、あとになって、何だ、日本がそんな利益をビルマに与えたのかということを承知したのでなくて、実はその問題自体を桑港条約の草案が発表せられると同時に強く主張してきた立場にございますので、そこであとになって二十六条を援用するという立場よりも、もっと早くこの問題を一貫して主張し続けた。そこで交渉の経緯においては二十六条を援用するということをしなかったのだろうと思うのでございます。そうしてまあ結局拡張解釈ということを実現したわけでございまするが、その立場はビルマ賠償ができます前にもすでにフィリピンが主張しておった、そういう沿革的の関係になっておるのであります。
○津島壽一君 時間をとってはなはだ失礼ですが、その時代の状況は、私が直接当ったんですが、吉田総理とロムロ大使との間のサン・フランシスコでの会談も全部知っているんです。ですからその経過は聞きたくないのです。この問題は私が直接やったんです。だからその経過は聞きたくないけれども、今後インドネシアとの交渉に当って、インドネシアはフィリピンとの賠償ではこう、ビルマとの賠償はこう、ゆえに当方は何もサービスだけをくれというようなことはいいません。これは十四条の規定でもって、インドネシアと日本は仮調印というか、本調印の中間協定がある。十四条の規定はこうだ、これにはこうだということを書いた書類は、ちゃんと全権として私はサインしている。それと事態が変ったのは、ビルマとの間に生産物をやりますということをちゃんと協定ができ、またフィリピンとの間に今回協定ができるわけです。これは前のように押える力はないので、権利として、インドネシアに物を持っていらっしゃい。これば拡張解釈じゃないのだ、当然の権利だ。こういわれたときに、外務省は、前からそういうことをあなたはいっておったが、それじゃ拡張解釈しましょうかという態度で出るか。態度をはっきりしないと言いわけ的の議論は非常に長くかかる。それをどう解釈されるか。経過はどうでもいいんですが、これを拡張解釈してもらいたいというのが向うの念願だったんです。だけれどももう拡張解釈なんか言わないで、当然の権利として、よこせ、こういうことを言える地位にあるかどうか、万一そういうことを言った場台に、日本の政府としては条約の解釈上当然のことですと、こういうのか。いやそれは拡張解釈でいかんのだから、しかし妥協だからこうしましょうということにするか。これは条約解釈の問題ですから、はっきりおきめにならぬと国民に説明するのにも今のような質問が残る。サービス賠償じゃないか、拡張というのは不都合じゃないか、こう言われた時分に、どうも説明に納得いかないものが今日まであるのですね。でありますから、私は本委員会としては政府が正確な解釈を与えられるのが当然である。こういうことを国民に知らすのが実はビルマの賠償協定が悪かったかいいかこれは別問題です。これは全然別問題。しかし条約の解釈をこうだということぐらいははっきりしないと思想の統一はできないと思うのですが、どうお考えになっているのか、はっきりした……経過は要りませんよ、経過は。
○政府委員(下田武三君) すでにビルマに対して、桑港条約十四条にいう、純粋の役務賠償以外の賠償を与えたという既成事実は、日本に対して当然二十六条による、他の第三国が要求した場合には、ビルマに与えたと同じ待遇を与えなければならない法律的な立場に追い込まれた、そういうふうに解釈しております。
○津島壽一君 それだけ答えればいいです。
○小滝彬君 非常に重要だから、今の問題について。今条約局長の解釈を聞いておると「但し」以下のことは、未来永劫で続くという解釈に見える。しかしこれは日ソ交渉にも非常に重大なる関係のあるものですが、その前に第一項を読むとこれはかくかくの「用意を有すべきものとする。」というのは、この条約が初めて効力を発してから三年間だけに限ると書いてある。しかしそのあとのただし書きでは、よその国がより大きな利益をとった場合にはそれに均霑させなければならないといった趣旨が書いてある。これは私どもあるいは最初の効力が発生してから三年間だけに限るものと解釈をすべきものか、それともあのただし書きは未来永劫に続くものかということについて、私も外務省にいたときに非常に疑問を持っていた。これに対して条約局長なんかの解釈をただしたことがあるのですが、今、条約局長の解釈を聞くと、日ソ交渉などの非常に領土問題について重大なる関係があるのである。これはもう一度念を押して、これがほんとうに外務省の確定解釈であるかどうか。これは外務大臣は条約の大家でありますから、外務大臣に。
○政府委員(下田武三君) その期間の点を度外視いたしまして御説明申し上げたのでございますが、ここの二十六条のただし書き以下が、前段の平和条約の効力発生後最初の日から三年間という期間のワクに入るのかどうかという点、これは字句解釈から申しますと明瞭ではございません。従いまして将来ここの問題に関しまして、紛議が起りました場合には、第二十二条の規定に従いまして、ヘーグの国際司法裁判所で争わなければならないと考えますが、しかしこの条約を国会で御審議お願いいたしましたときの政府当局の当時の西村条約局長の説明は、これは字句解釈ではなくて、条理解釈からしまして、この三年間のワクはただし書きの方にもかぶるという答弁をしておられるのであります。
○曾祢益君 そうすると今の点は、津島さんから指摘された問題にも、ちょっと重要なる問題があると私思うのですが、小瀧委員の御質問の点に関する今の条約局長の御答弁によると、第一に法律的には非常に不明確であって、国際司法裁判所で法律問題を決定しなければ確定解釈ができないというようなお話があったのであるが、これはまああるいは法律家の意見としてはそうかもしれないけれども、政府の答弁としては非常に自信のない、さようなことが政府の答弁にあってはならないと思うのですが、そこであらためて政府の見解を伺わなければならないのですが、私の記憶するところによれば、二十六条の初めの方の期間の規定というものは、これは日本がサン・フランシスコ条約と同一、もしくは実質的に同一の平和条約を結ぼうと言ってこられたら、これに対しては三年間はこれに応ずる義務がある。これは確かに期間の関係で、その以後になってかりにソ連その他のサン・フランシスコ条約に参加せざる国から、サン・フランシスコ条約と同一の条件でやろうといっても、これに応ずる義務は三年間で消える。しかしその次の項のいわゆる均霑条項は、これはむしろ条理的にみれば、必ずしも三年間の期限の制約を受けないと考える方が条理的には正しいのじゃないか。日本にとって有利か不利かということについてはいろいろ議論はありましょう。しかし文理的なあるいは常識的な解釈としては、これは三年後の期限が過ぎても、サン・フランシスコ条約加盟国以外に、同条約によって日本が与えた以上の有利な待遇を与えた場合には、これはサン・フランシスコ条約をまじめに作った国が、三年過ぎたらそれはかまわないのだということは、これは条理上はおかしいのじゃないか。これはやはり条理上、文理上すべてを含めた政府の統一的な解釈がなければならないと思うのですが、私はむしろ日本にとっては得とは思いませんけれども、あまり無理な解釈をするということもいけないのじゃないか。私は、西村条約局長が、確かにそういうふうに、利益均霑に関する条項の方まで三年という期限が過ぎたら要らないのだという、断言したという記憶がないのですが、その記憶を争うなら、これはやはり議事録を引っぱってこなければいけないのですが、それはそれとして、現政府においてはどういう解釈をとられるか。これはやはり問題が出てくれば小瀧委員の指摘されたように、いろいろな広範な政治問題にも関連なしとしないのだから、この点は明らかにされたいと思います。もし今日この問題について明確な態度を表明するのはあまりにも事重大であるならば、あとでもいいですからぜひこの点は明確にしておいていただきたいと思います。これは決して、小瀧君が指摘されたように、賠償問題とは経済利益の問題だけでございませんから、一つ政府の統一解釈の御答弁を願います。
○政府委員(下田武三君) この問題につきまして、先ほどの津島委員の御指摘になりましたビルマとフィリピンとの両協定の関係につきましては、これも経緯のことになりますが、ビルマとの賠償協定は一昨年にできたわけでございまして、その場合には三年の期限内であったわけでございます。それからまたビルマで踏み切りまして、その後フィリピンとも交渉しておりました期間も実は三年内のお話であったわけであります。でございますから、昨年の四月二十八日に三年の期限は切れたのでありまするが、昨年の四月二十八日以後になって急にもう三年の期限は切れたから、今までの話は御破算だと申すわけにはいかないのでありまして、やはり交渉の長い経緯でずっと二十六条の問題が続いておった期間があるわけでございますから、いきおい二十六条の関係は日比交渉の大部分の期間においてやはり作用しておったと考えざるを得ないと思うのでございます。そこでインドネシアと、将来の問題になりますと、今の問題が現実に実益を生ずる問題でございます。そこで先ほど申しましたように、西村当時の条約局長は、ただし書き以下の三年で切れるという解釈をとられたのでございますが、そのときの政府側の解釈の基礎になった背景はこういうことでございます。つまり桑港条約の締結できました事情を考えてみますと、これは米国が主たる責任をとりまして起草者となりまして、そうしてなるべく多くの国の参加を得て桑港条約、対日平和条約を実現したいという考えで、実際は四十八カ国しか参加しなかったのでございますが、しかしこの桑港条約と同じ条件なら、なるべく多くの国が早く同条件で日本と平和を回復するという事態を招致したい、というところからこの二十六条をきめまして、それには桑港条約と同条件を申し出たならば、日本は有無を言わさずそれでよろしいといって、平和条約を結ばなければいかぬという義務を日本に課すのが最もいい方法であるということで、二十六条の規定が起案され、採択されたという関係にあるのでございます。そこで、しかし三年後になりますと、日本は独立回復後三年になれば日本の国際的の地位も向上するでありましょうし、日本自身の考えでむしろ自発的にある国に対しては日本の政治的考慮から、あるいは有利な待遇を自分で与えるのは、それはかまわないじゃないか。三年、そう長くまで独立回復後の日本の考えを押えようと思っても押えられるものではない、従って桑港条約と同条件で自主的に申し出たならば、有無を言わず応諾しなければならないという義務を三年で打ち切るとともに、また日本の政治的判断で独自の待遇を与えるという手を防ぐのも、三年で同時に打ち切ろうというのが、連合国側の考えではないかということを、米国側と長い間交渉してこられました西村条約局長が、そう判断してやられたわけでございまして、その点は相当権威を持って条約局長が発言されたと私は思うのでございます。 また日本の利害から申しましても、日本の外交政策の独自性を回復するという見地から見ましても、桑港条約の二つの規制はやはり三年で打ち切ると解釈すべきが、日本政府としての態度であるべきであると、そういうふうに私は考えておるわけでございます。
○津島壽一君 今の解釈は、西村さんの解釈を言ったのですが、現在外務省というか、日本政府でどう解釈されたかということは、これはここではっきりしたことをおっしゃられるのにあまりに重大なことですから、一ぺん御研究の上で西村大使がどう考えられたかということの過去のことは別ですが、現在において日本政府として二十六条のただし書きの規定は、期限的に三年を過ぎたからこの規定には拘束されないという御解釈か、またこのただし書きが生きるなら、従ってサン・フランシスコ平和条約の権利を主張することはできない、あれと同一のものを主張する権利はないが、しかし同時に日本政府はある国一国に大きな利益があっても、ほかの国に均霑されないのだ、三年後は。そういう解釈であれば、私は日ソ交渉の将来、インドネシアの問題もあります、これは非常に大きな問題がある。たとえばわれわれは、今まではこのただし書きはずっと拘束されているのではないかというような解釈をとって、従ってソビエトの関係においてサン・フランシスコ条約の所定のものよりもよけいな権利を与えた場合には、ほかの国がそれと同様の権利を主張するから、そうソビエトにやるということは重大な結果が起るという話をし、いろいろ研究してきたわけでありますが、しかし今の解釈がもし政府の権威ある解釈として今後の各国との交渉にそう主張されるということであれば、われわれも今後問題を研究し主張する上において、それと何というか符合するようにしなければならぬことになって、この問題はもしソ連との関係においてのどういうことになりますか、平和条約を作った時分にこのサン・フランシスコ条約以上の権利を与えた場合は、均霑してきた分にただし書きによって日本は三年だと、こう主張されて押し通せるかという解釈の問題ですね。今おっしゃった点が現在のお考えのようにも取れるし、ただ過去の事実をおっしゃったとも取れる。従って過去の解釈は参考になりますけれども、これは政府はゆっくりお考え下さって、インドネシアももしこれを主張したときは、政府にはそんなものはないのだ、しかし好意をもって拡張解釈して、十四条を物資までも入れるという建前で議論をなさるか、権利を受けて立つか、ただ恩恵的にこれを平等にする建前であるか。しこうしてインドネシアの場合は二十六年十二月に協定して一月にはちゃんと交渉してできておるのです。それがまだ金額を入れてないだけですから、先ほどもおっしゃったようにフィリピンの場合は三年前になった、平和条約の有効後。だからこれは一つ三年のただし書きを均霑してビルマと同じ建前にしていくと、そうすると今度はインドネシアはそれと同じ理由で私の方はマニラより早く談判したのだから、懸案だから、ただし書きの三年は過ぎておりますけれども懸案事項として一つやはり均霑していただきたいというようなことを言うのか。その間のことをはっきりきめておかぬと、これは大へん今後の問題において解釈の不統一から、交渉上すっきりしたものができないように思いますから、ほかの委員の方が御同意であれば、この問題はここで割り切った御答弁をなさらず、解釈を拡張するということを避けて御答弁を留保されて、とくと政府の間において御研究賜わることを私は希望して、私の質問は打ち切ります。
○曾祢益君 私の申し上げたこと、さらに申し上げたいと思っておったことは、今津島委員からおっしゃった通りであります。重ねてこの問題は非常に重大な問題であるから過去の経緯の説明とか法律解釈、文理解釈はこうであろうというものであってはならないと思うので、日本政府の解釈はこうであるということをはっきりとこの国会中に、もちろん今でなくてもけっこうですから、明確に御説明願いたいと思います。 それからこれもほとんど津島委員のおっしゃったことで尽きるのですが、何といっても今度のフィリピンとの賠償協定によって、サン・フランシスコ条約第十四条の役務賠償をしていかなければいかぬという原則、これはもちろん原則として生産財でなくていいということもあるし、もとより現金賠償などということは全然問題にならないという日本側としては非常に大きな一つの安全弁といいますか、一つの保障があったと思います。もちろんサン・フランシスコ条約に加わらない国に対してはそのことを援用する法律的な根拠はないにしても、日本としてはそれをやらない。やった場合は二十六条の関係等も起るという関係から、これを一つの大きなたてとしてきたと思うのですが、それがビルマの場合は一つの突破口といいますか、起り、さらに今度のフィリピン賠償協定によって実質的に何といっても十四条の解釈を変えてしまった、こういう法律的な立場になりはせんか。果してしからば、その覚悟を持って今後のサン・フランシスコ条約関係国、あるいはサン・フランシスコ条約に関係のない国との賠償問題を考えなければいけないのであるから、これも非常に重大な問題で、こと役務賠償以外の生産財に対する突破口のほかに、現金賠償等の問題にも多くの危険を包蔵しているように考えられますので、この解釈ももっと明確にされることを希望いたします。従って大体この点についてはわれわれが納得するしないは別として、一応条約局長のあるいは中川局長の御答弁があったわけですが、この点もついでに、この二十六条に関する明確な政府の解釈の御説明にあわせてもう一ぺん考えて、そうして御答弁を願いたいと思います。これは要求しておきます。
○委員長(梶原茂嘉君) 適当な機会にお答えがあると思います。 総理がお見えになりましたので、総理に対する御質疑がありますれば御発言を願いたいと思います。
○羽生三七君 日比賠償のことはいずれ後刻お尋ねするとして、最初に、総理がせっかく来られた機会でありますので、国際情勢についてごく簡単に一、二点だけお尋ねをいたします。それは日ソ交渉問題についてですが、先般来衆議院においてもずいぶん論議され、参議院においてはまだ本会議で曾祢議員がやることになっておられますが、私きょう総理にお尋ねしたいことは次の問題であります。それはこの条約の方式がロンドン方式と言われるものであれ、あるいはアデナウアー方式と言われるものであれ、われわれはすみやかに日ソの国交が回復することを希望しておるわけでありますけれども、この最後の点へ来てなかなか話が進まないのは領土問題であることは言うまでもないわけであります。しかし私は領土問題については、ソ連が、戦勝国家であるがゆえに領土を要求しておるのだというように解釈したくないのであります。戦いに勝った国は負けた国の領土を取る権利があるという解釈はしたくない。河野・ブルガーニン会談においても、日本は日露戦争のときにどうしたから今度はおれの方もこうだというような話もあったようでありますが、私はそれは話のはずみでそういうジェスチュアを使われただけだろうと思う。で、私どもとしては今ソ連が言っておる領土問題は、結局のところ今国際間に緊張が持続しており、日本には数百ヵ所にわたる軍事基地があり、日米安保条約があり、それらのことからソ連がそういう国際情勢から領土権を主張しておるものだろうと私どもは解釈をいたしております。そうであるとしたならば、他日世界情勢の変化によって国際緊張が緩和して、あるいはアメリカの軍事基地が日本からなくなることになり、あるいは日米安保条約というようなものも姿を消したというような場合においては、私は当然、かりに今度千島等の問題が未解決であったとしても、再検討の機会は残さるべきものであると考えております。しかもそのことは、日本とソ連との間にできれば共同コミュニケみたいな形で、将来にわたって再検討の機会を留保することができれば、私は非常に好ましいことだと思う。また、ソ連がそれを拒絶する理由はなかろうと私は思うのです。なぜならば、ソ連は平和を国是として中外に宣伝しておるのでありますから、単なる戦勝国家としての領土権を主張されておるとは解釈いたしておりません。従って私が今申し上げましたように、この原因は当然国際情勢から来ておるのでありましょうから、国際情勢が変り、国際緊張がなくなり、日米安保条約が姿を消し、そして軍事基地等もなくなった場合においては、当然平和を愛するソ連であるならば、日本の歯舞、色丹以外の諸島についても十分再検討の機会を持つべきであろうと思う。またそのような主張は私は当然日本が今後の交渉の過程においてもやるべきであろうと思う。日本が、今私が申したことと別に、単に千島は日本の領土だからよこせ、サン・フランシスコ条約にソ連は署名をしておらぬじゃないか、批准をしておらぬじゃないかということでは問題解決になりませんが、今私が申し上げたようなことであるならば、私は国際的にも通用する話であるし、日本国民としても当然納得できる問題であろうと思いますが、政府はその点についてどういうようにお考えになっているか、まず鳩山総理の御見解を承わりたい。
○国務大臣(鳩山一郎君) ただいまの羽生君の考え方は私も無理はないと思います。世界が平和になって将来戦争に対する恐怖心がなくなった場合に、ソ連があの小さい二つの島を、問題となっているところの択捉、国後をそんなに固執するものとは考えません。現在においてはソ連はこれの日本の所有に反対し、日本国民は自分の固有の土地として主張しているわけであります。これは両方とも現在において無理ないことです。しかしながら日ソ国交の正常化ということは私は非常に急務だと考えますので、どうしてもこの問題は一応どうにか片付けなければならんと考えております。
○羽生三七君 私の申し上げたのは、その南千島の両島を主張することによって、交渉が暗礁に乗り上げてもいいというようなことは絶対申しているのではないので、これは総理大臣もおわかりの通りに、将来に再検討の機会を残すような外交交渉を続けていただきたい。しかし、それをしも不可能な場合には、それはまた政府にお考えのあることでしょうから、あえてそれ以上は申し上げませんが、外務大臣はいかがでしょう、この点。
○国務大臣(重光葵君) 私は、この点についてもう私の意見はたびたび申し上げた通りで少しも変更はございません。というのは、日ソ国交を正常化しようとして交渉を始めたのでございます。ところがそれが領土問題を主として意見の差異のために中止されているのであります。漁業問題等からまた再開するという気運になってきたことは、これはけっこうだと思います。だから再開する。再開する以上は、私は領土問題等に対する日本の主張は、もしくは立場は従来の通りで進みたいと、こう思います。しかしここに問題になるのは、今総理も言われる通り、これでもって、またあなたのいわれる通りに、決裂とか何とかいうことじゃなしに目的を達しようとしている。そこにおいて交渉の過程に入るわけであります。交渉を将来どういう条件でどうするということは、これは私申し上げん方がいいと思います。申し上げん方がいいと思いますが、日本の正当な主張は、いかなる場合においても通し得る意気込みをもって進むことは、これは交渉者の当然の立場であろうと思います。ただし交渉でありますから、何も固着して動きのとれんようにするというのが交渉じゃございませんから、そこで目的を達するように交渉の途上においていろいろ考案をしなければならんということは当然のことであろうと思います。こちらも態度を変えない、向うも態度を変えない、その結果どうなるか、いろいろなことも考えなければなりますまい。今言われたようなことは御議論でありますし、また非常に何というか、交渉者の参考資料として貴重なものであろうと私は考えます。しかし今それをそうするのだということを言うならばこれは交渉はございません。はっきりと私は申し上げますが、日本の正当と信ずる立場は十分に主張していって、そうして目的を達するようにするのが今日の態度でなければならぬと思います。しかしそれをどうするかということについては、大いにこれは根本からも検討しなければなりますまいし、またいろいろなことも用意する必要がございますが、それについては今私は当局者としてどうするのだということを申し上げるのはこれは行き過ぎだろうと思います。
○羽生三七君 私は将来についてはあまり深くいろいろ承わろうと思いません。いずれまた同僚議員諸君から内容的な御質問があると思いますので、私は深くは申し上げませんが、ただ領土問題を純粋に領土問題としてだけ論じておっても決して問題は片づかない。全部国際情勢に関連があるから、将来は小笠原、沖繩等の問題についても、先ほど私が南千島について申し上げたと同じ資格で再検討されるべきであろう、ということを重ねて要望しておきます。 次にもう一点総理大臣にお尋ねしたいことは、先日この日ソ交渉については鈴木委員長と必要によっては会談するというお話がありましたが、私はいつもそう思うことは、全くこの日本における超党派外交というか、党首会談というものはこれは形式的なものできまったことをまあ相手に伝えるというようなことになっておりますが、これは私は問題が非常に重大でありますので、進行の過程において自民党はこうきまったから鈴木君了承してくれということでなしに、もっと率直に話し合って協力を求められるべき筋合のものであると思いますが、総理大臣はどのようにお考えになりますか。
○国務大臣(鳩山一郎君) 私は鈴木君には私の腹を率直に話したのです。また鈴木君も二人の秘密の腹を世の中に発表しないという関係に立っておるものと思います。
○佐多忠隆君 ただいま羽生委員の質問に対して、総理は大体領土条項の問題その他について両方の話し合いがもう少し歩み寄る可能性があるし、そういう形で国交回復を早期にやらなければならないという御答弁だったと思います。この早期に国交回復をするという基本的な方針を政府としてすでにおきめになっており、しかも党内なり政府なりでその点は完全に意見が一致しているのかどうか。もし一致していないとすればどういう調整の方法をとり、どういう時期にそれが一致するというふうにお見通しになっているのか、その点をもう少し詳しく御説明願いたい。
○国務大臣(鳩山一郎君) 鈴木君が軽井沢に来られてお互いに秘密にしようということであったものですから、二人とも軽井沢の話は一度も発表したことはありません。そういうような関係で党内におきましても、外務大臣はもとより私の考え方を外務大臣にまあお話をしましたが、当然なことです。しかしながら党員諸君にまだ党議をまとめるためにこういうようにしたいというようなことを発表する時期ではないと考えておるのでまだ発表しておらないのであります。それですから意見の一致をしないような形もありますけれども、これはやはり戦争状態を終結させたいという希望はだんだんに党内においても強力にびまんしてきたものと私は考えます。それでありますからただいまのところどういうような関係でまとめるかということは発言すべき機会でないと思いますけれども、戦争状態終結確定の事態を作り上げるということについては大体の人の意見は一致しているものと私は確信しております。
○佐多忠隆君 その態度を明確にし、国民に納得させるためには、あくまでも先ほどの問題が出ましたように領土条項の問題を一応明瞭にしておく必要があると思うのですが、しかしそれはどういう態度をとるべきかということは、なかなか交渉の過程その他で重要な問題だから言わないとおっしゃいますから、それを無理に政府に言っていただきたいとは言いませんが、ただ一つ私がお聞きしたいのは、もし平和条約方式をこれまで固執されたあの平和条約方式でなくて、もう少し歩み寄るという場合に、一応南千島の問題を先ほど羽生君が言ったような形において留保するというような態度になった場合に、歯舞、色丹の問題はそれでも日本に確保することは可能になるとお見通しになるかどうか、それらの問題をこれまでのロンドンの松本大使とマリク会談において、あるいはブルガーニンと河野代表との間において問題をもう少し詰めて討議しておられるかどうか、その辺はどういうふうにお考えになるか、総理大臣はどういうようにお聞きになるか、外務大臣はどういうふうにお聞きになり、どう見ておるか御説明願いたい。
○国務大臣(鳩山一郎君) この点につきましては、私の考え方はどうも歯舞、色丹を片づけて、他の領土問題は後日に譲るということはむずかしいのではないかと私は考えるのですけれども、そういうように考えるのは常識であって、何らの根拠はないのです。ですから、これについては外務大臣から答弁をしてもらいます。
○国務大臣(重光葵君) 私は実際問題としてアデナウアー方式に行くならば、歯舞、色丹も片づかないじゃないか、またロンドン方式で行くならばその先はどうなるかということは、実際はこれは今度新たにロンドン交渉のときよりもまた一歩進んだ事態においていろいろこれから交渉するのでありますから、私はそこに入ってみなければ向うの意向も十分に私は突きとめるということができぬと思います。いずれにしてもこれは日本に最も有利なふうに交渉を進めなければならぬということはこれは言うをまたないことでございます。私は大まかに言えば、今度再開した場合に、十分に意見の交換をしてみて、突きとめてみた上でおのずから方式が出て来ると実は大まかに考えております。しかしこれをさらに進んで申し上げれば、やはりアデナウアー方式と言われますけれども、アデナウアー方式はそれじゃ何もかもたな上げで、そうしてそれで最重要の問題を解決して、あとは全部たな上げだ、たな上げというのは西ドイツが自分の従来の主張を放棄した形になるのであるとこう見ることはできぬと思うのです。これはすべて主張は維持しつつ将来の解決にまつというわけでああいう結果になったのだと思って、またその趣旨であることを西ドイツ側に確かめているわけでありまして、そうでありますから、アデナウアー方式をとってすべて、じゃ日本の主張を領土問題に関する限りもう放棄したのだということでは絶対ないわけでございます。けれどもロンドン交渉であれまで行って、重要ではありますが、ある領土問題まで突きとめていって、あとの問題は大体了解がつき得ると、またあるものは相当的確に交渉の結果が出てきたのであり、条文までこしらえ上げた。それでありますからこの仕事はこれは私は無にしちゃいかぬと、継続していったらいいと思う。そうしてその突きとめた問題についてどういう工合にするかということは、これは将来の交渉において双方の間に討議もしなければならぬし、やりとりもしなければならぬ、そこにいろいろ考案が出、また貴重な考え方が出得ると、こう思っておるのであります。これは私はそれがやり方としては常識であると実は考えるわけです。そういうことによってそうして交渉の目的を達するように進めていかなければならぬ、こう思っております。これで今御質問よりもさらにそれ以上のお答えをしたと思っておりますから、まあそのくらいで進めていって一つどうかこれは超党派的にできるだけの目的を達するように進めていくことが今非常に重要だと、こう考えております。どうぞよろしくお願いをいたします。
○曾祢益君 外務大臣の御説明の中で条約のあるいは国交回復の方式というものについては、これはまあいろいろあり得るので、特定の絶対の型に固定する必要もなかろうというような御趣旨の、これは話してみなければ明確にはできない、こういうような御趣旨であったと思うのでありますが、これは私も確かにそういう性質のものであろうと思うのです。だれが考えたってこれは平和条約によって国交を回復するのが一番いいのにきまっておるのですから、できればただそこにいろいろな、領土問題等の関係からいろいろな考慮が考えられ、いろいろな知恵も出し、お互いの立場を考えながらのいろいろなフォーミュラが当然考えられなければならぬと思います。いわゆるアデナウアー方式といっても人によって意味をいろいろ勝手に解釈しており、私は非常にある意味では危険なといいますか、ミスリーディングな誤解を生みやすい表現だと思います。アデナウアー方式とは何か、ある人によってはアデナウアー方式とは領土問題を全部たな上げするのがアデナウアー方式だと考える。ある人によってはいやそういうことじゃなくて、ただ平和条約によらずして国交回復をするのだ、これがアデナウアー方式だ、またその平和条約によらざる国交回復の方式という意味で事実上大使を交換するだけなんだ、条約あるいは協定そのものは大して内容的のものではないのだ、つまり大使交換等による国交回復、最も近道がアデナウアー方式と考える人もあるし、いやそうじゃなくて平和条約にはいかないが、なし得る限り懸案を話し合いによって解決し、終戦を確認し、平和国交を回復し、大使を交換し、さらにはすでに話し合いになっておる問題で、なし得る限り話し合いのついたものは平和条約じゃないけれども、その協定に持っていってもいいのじゃないか、盛り込んでいってもいいのじゃないか。これはいろいろと私は考え方があるので、これがすべてフォーミュラの、方式の問題になると思う。それはわかるのですが、羽生委員の代表的なわが党の立場の御説明もあったし、また佐多君からきわめて抽象的ではあるけれども、ポイントを突いた御質問があったのですが、しかし何でもかんでも、ただこれから話してみなければわからぬ、わが方の主張はやはり主張としてこいつをなるべく残すようにする、これはもう話は当然わかっておる、またそうでなければならぬ。しかし一方においては総理も言われたように、国交回復あるいは国交の正常化、戦争状態の終結、これは早くやらにゃいかぬということも、これはまあ私は世論が一致しておると思う。そこで具体的には南千島等その他の領土に関する日本の主張を将来なし得る余地を残す何らかの適当な方式があるか、果して平和条約でそれができるかどうか、平和条約でできない場合には平和条約に至らざる広い意味の暫定的な取りきめ等に譲らなければならないか。これらのことは確かに話をして最終的にきめなければならないことだと思うのです。当面歯舞、色丹については、少くとも従来の方法の経緯から見て日本側に返還といいますか、向うは譲渡と言っておりますが、いずれにしても実質的には日本側に渡すことは、これはまあ大体意見は一致している。ですから問題は、政府としてはかなり南千島をこの際即時返還というこの主張を固執しながら、もう一ぺん話し合いを続けるというならば、これは実際上においては早期妥結という線を否定するということになるということは、これはもうおわかりの通りだ。問題はそうじゃなくて、外務大臣あるいは総理大臣が今頭を悩ましておられることと申し、国民が注視しておる点は領土問題だけからいうならば、繰り返して言うように、歯舞、色丹は返してもらう、南千島等の日本が主張を持っている領土については、これは少くとも今までの自由民主党の緊急政策できっちり動きのとれないようにきめておるところの、ここまでも平和条約の中で必ず返してもらうのだ、即時に、将来の問題じゃなく。この点についての主張を固執するというならこれは明瞭に、いい悪いは別ですよ、いい悪いは別だけれどもこれは早期解決ということを否定する線にあることは明瞭なんだ。だからそこはやはり腹の問題であって、あとはいわゆる歯舞、色丹以外の日本の主張を持っている領土についてどういう形で、羽生君が言われたように、将来国際情勢の変化等と睨み合して日本の主張をする、今日はそれは遺憾ながら貫けない、しかし将来は主張し得る余地を残すような適当なフォーミュラを考えていく。それが平和条約でできるならこれはベストなんでありますけれども、できない場合には、いろいろなフォーミュラを考えていくが、これは当然に政府の腹が一たんきまる以上はこれはもう外務大臣の、どなたが外務大臣であられても外務大臣としての当然の交渉上のことで、またそういうフォーミュラを考え、最も知恵を持っている人が交渉によってどちらの立場も、双方ともの立場をよく認め合ったフォーミュラを発見するのが、これが交渉だ。そういう意味の交渉をこれからやるというなら話はわかる。ただ漠然と総理は、早期国交の正しい線をやる、党内は適当にしかるべき時期にやっていくのだ、そういうような漠然たることで、一方においては自民党の緊急政策によるところの南千島までは必ず即座に返させる線を、これを変えないというのならこれは完全なる矛盾である。私たちはそういうことはいけない、これはすみやかに基本的態度をきめて、国民に対しても領土問題についての明確な政府の態度というものを、従来の主張は主張とし、根本的な態度というものを明確にして、そうして正式の交渉をすみやかに始め、始めた以上はただ単にロンドン交渉の二の舞で、ただ延ばすだけでは意味をなさないのであるから、それはすみやかに終結する、ただしその最後のフォーミュラーは、これは政府に考えさしてくれと、そんなら話はわかるのです。そこら辺のところは、おおまかな線においてやはり国民にはっきりさせなければならない。ただ漁業条約の交渉については、あれは国交調整とは切り離しでやってみせます、こういうことで河野君を送られた。結果においてはまさにその逆で、われわれが予言したように、結局は国交調整の正道に立ち戻らざるを得なくなってきた。われわれは、正道に立ち戻ったことは歓迎します。しかし、そういう何といいますか、政府の腹がきまらないで、向うに行った交渉によって一つの既成事実ができたからやるんだ、しかも回り道したために、漁業上においても、私はきょうは多くを申し上げませんが、もし回り道なかりしとせば、ロンドン交渉が継続のままやっていたとするならば、あすこまで譲らなくてもよかろうと思われる、重大な譲歩をしておる。そういうことになってはならないと思う。この際やはり政府としては、ほんとうに国交回復の線を貫き、早期にやる、そのためには領土問題に対する明確な態度というのは、自民党の緊急政策によるあの線は、これは当然修正してもやる、これだけの腹はきめて、フォーミュラーの問題等については、あまりわれわれがこうでなきゃいかん、ああでなきゃいかんということを言うのは私は時期でない、その意味じゃ、むしろ河野君あたりが巷間アデナウアー方式がいいと言ってみたりすること自身が、少しく行き過ぎなんです。これは、われわれが心配するのは当り前なんだけれども、政府の部内の人がアデナウアー方式がいいと言ってみたり、交渉の場所がきまらなければいかんと、そういうことを言ったりすることが総理大臣の責任であり、また外交の衝にある外務大臣の当然の責任でなければならない。そういう意味において、これは私の意見ばかり申し上げて恐縮ですが、総理並びに外務大臣から御所見を伺うことができれば幸いだと思います。
○国務大臣(重光葵君) 私は今外交の衝に当っておる者として一つ申し上げたいのです。今の御所見はこれは御所見として伺ったわけであります。そしてまた社会党の立場はこうであるというふうに伺ったことは、非常にこれも有益に感じます。私は実はこの問題は、気持としては、党派に限らず、いわば国家的の見地で処理したいという考えで常に進んでおったわけであります。そして、今日対外関係が実際交渉になっておって、目的ははっきりしておる、そして日本の立場もはっきりしておる。それはどう目的を達するために将来運用していくかということが残っておるわけであります。そこへもってきて、あまり党派のなんでですな、うちの党派はこう考えているんだ、それからまた他の党派はこう決定しておってこうだということは、あまり私は交渉の局に当っておる者としては言っていただきたくないのであります。何も封ずる意味でこれは私は申し上げるわけじゃございませんけれども、どこの国でも党派としてまたいろいろな意見があることは、これは当然のことであります。当然のことでありますが、交渉はある程度まできているのであります。それから先は、どうこれを国家的に運用するかということは、やっぱり局に当っている者が十分に考えて、そうして国家的利益の擁護に専心しなければならぬように考えます。まあこう申し上げれば異存はだれもないと言われるでございましょう。しかしこの場合において、いろいろやっぱり議論はあるのでありますから、その議論を全部対外的には交渉に有利な展開をしていきたいと、私は常に考えているわけであります。そうですから、今言われたことは交渉の責に当っている者の何と申しますか、交渉運用の大いに参考資料に供する意味において、伺ったということに私は受け取りたいのであります。そうして将来は共同の目的のために、必ずこれが国家的に目的を達するように一つしていきたい、こういうふうに私は考えております。目的を達するためにどんなことでもいいのだということを言われたわけでもありませんが、そういうふうな考え方でもいかぬと思います。しかし目的を達するためには、あらゆる努力をしなければならぬということは当然のことであります。さような考え方で私は対外的に最も有利なように、この問題を進めていきたいと、こう私自身は心して進んでいるわけであります。
○佐多忠隆君 党派をこえて、対外的に国家的に最も有利な態勢を整えたいとおっしゃる基本的な態度なり希望ということについては、私たちも何ら異存はありません。しかし党派によって意見なり態度が相当違っている、それはさらには党派だけでなくて、あなたの党自体についても相当違っていることは、これはかくれもない事実だし、しかもそういう異なった意見を、ほんとうにもっと具体的に論議をすることによって初めて事態が明瞭になるし、それだけの討議を経て対外折衝に当られる場合に、最も有利な強力な主張がなされると思う。それを回避し、それを十分にやられないから、ロンドン交渉におけるような態度が出てき、あるいはさらにそれを非常にあいまいにされたから、今度のような、河野氏のようなああいう非常な番狂わせな、手違いな折衝なり交渉がなされたと思う。あのときもわれわれは、国交回復の問題を前提にし、しかも長期にわたる漁業条約というようなものを締結するにあらずんば、現在の暫定取りきめもなかなかきまらないのだということを申し上げたのに、外務大臣はそんなことはないのだということで、全く逆な手順の態度、方針を主張をされ、そうしてそれを訓令にもされたと思うのです。ああいう点をもう少し真剣に論議をし、もう少し十分に討議をしておけば、今度みたような、一方からみれば河野代表の訓令の逸脱であり、これはある意味ではクーデターである。他方においてみれば、全く不明な外務当局の訓令であったというような、まことにぶざまな状態を示したものとしか言えないと思います。こういう点はむしろ率直に認め合って、今後そうでない方式をどういうふうに打ち立てていくかということを、一つ真剣にお考えを願いたい。その点で私特に痛感をいたすのでありますが、今度の河野代表のふるまいにしても、あるいはまた日比賠償における民間代表その他のいろいろな行動にしても、外務省のいろいろな動きとは非常に離れて、従って外務当局の準備行動、見通し、そういうものとは離れてそういう全権なり代表がいろいろに動いて、そうしていろいろな話をまとめるというふうに、非常にその間が遊離をしてしまっている、この点は日本の外交の今後の行き方として十分反省をし、体制を変えなければならない事態に立ち至っていると思うのですが、これらの点を総理大臣はどういうふうにお考えになるか。
○国務大臣(鳩山一郎君) 日比の問題にいたしましても、日ソの交渉にいたしましても、新聞紙はときどき、重光外務大臣と私との意見が相違しているように伝えられますけれども、私は重光君に、私の希望、私の考え方はよく話をして、そうしてその同意を得ているものと私は考えております。日比の賠償問題につきましても、重光君を差しおいて、私が先にこういうような方針でいきたいということを申したことはございません。私がもしもそういう行動があったとすれば、それは日比の問題にしても、日ソの交渉にしても、これは結ばなくてはいけない、平和条約はどうしても早くやりたいということと、日比の賠償についても、一度決裂しかかった状態を、このまま決裂するのは惜しいから、とにかく先方からの細目の条件を紙に書いて出してもらったらどうかというような意見を申した二点にすぎません。それ以外の点について、外務大臣と私との意見、つまり最終目的について意見の相違はないと私は感じております。
○佐多忠隆君 なるほど抽象的な最終目的については、意見の相違がないかもしれませんが、それに至る過程、運び方等において非常に径庭があって、ギャップがあって、そこでいろいろな問題をかもし出していると思うのです。たとえば、非常に具体的に、端的に例を申しますが、河野代表は、昨日衆議院の予算委員会で、通訳を自分が連れていかなかったのは、通訳に対して自分は十分の信頼ができなかったからだと、通訳がまずかったからだというようなことを正式に言っておりますが、一体外務省のいろいろな事務当局なり何なりと代表との間にそういう不信頼があって、ほんとうに他国との友好な折衝ができるとお考えになるのかどうか。その辺の一体ギャップは、何によっているとお考えになっているのか。外務省の非常な、何というか、怠慢というか、未熟というか、不準備というか、そういうことによっているとお考えになるのか。そうでなくて、そういうことを理由にして、河野代表が自分自身の個人的な、政治的な意図なり何かを企図して、あるいはそういうものを期待して、ああいう行動をしたとお考えになるのか、この辺は、今後の外交交渉のやり方として、はっきり秩序を立て、順序をしっかりしておかなければ、全くこれは無秩序の状態だとしか言えないと思うのですが、それらの点について、総理はどういうふうにお考えになりますか。
○国務大臣(鳩山一郎君) 私は、河野君からまだそういう話を聞いておりませんが、外務省がつけた通訳を信頼できなかったというような話を私は聞いておりません。(曾祢益君「ソ連の通訳の方が信頼できると言っている」と述ぶ)
○佐多忠隆君 まあその点は、総理は今お聞きになっておらないとおっしゃいますから、のちほど速記録を見て、あらためて他の機会に、いずれこれにはまだ出ていただくことになると思いますから、その節に明確な一つ所見と今後のこういう問題に対する扱い方を総理として一つはっきり秩序をたてていただくような決意をしていただきたい。 その前に外務大臣に……。
○国務大臣(重光葵君) その問題、昨日の予算委員会でそういう話があったということを、私も聞きました。これはまあどういう深い意味があるかどうか私にはわかりません。わかりませんけれども、モスクワにやった通訳は、全部ロンドン会議で通訳をしておった、外務省では、十分に精練をしたロシア語の堪能者であると、こう見て、ロンドン会議でやっぱりやっておったのですから、何か、なんでしょう、モスクワにおいてやっぱり通訳がない方がいいと考えられたのだろうと私は考えます。(笑声)まあそういうようなことは、必ずしもないことはないわけですから、どういうわけか……。外務省が全然通訳を養成していなかったと、責任呼ばわりをされるところまではないような気もしますが、まあそういうわけです。
○佐多忠隆君 今、外務大臣が言われたように、ついて行った通訳は。ロンドンでは非常に有能だったと、で。新聞の報道その他によれば、むしろマリクの方が自分の通訳の信頼度を疑って、これでいいのかいうことを始終日本の通訳に聞いて、それを確めたくらいに、非常に堪能な、上手な人だというふうに、ロンドンの交渉のときの報道は出ておる。そういう意味では外務大臣の言われる通りだと思う。そういうような、通訳に対して、今のような気持を持ち、今のような態度で河野代表は接し、そうして事をはからっている。そこいらはもう全く何というか、秩序というか、順序を無視した、それが本当に非常に高い政治的な見識からして、外務当局の事務的ないろいろなささたることにこだわらずに、大局的な、政治的な判断をしたというのならば、私はそれは政治家として当然だと思う。そうでない、何らかのわがままなり、無秩序なり、そういうものが許されていいはずは絶対にないと思う。この点は一つ総理、少ししっかり締めて、その辺の体制を改めて立て直すことを、特に日本の外交の今後のやり方として立て直すことを、ぜひ一つ真剣にお考えを願いたいと思う。で、あらためてその点は、総理の所見は次の機会にお伺いしたいと思います。
○羽生三七君 午前中、この辺でどうです。
○委員長(梶原茂嘉君) それでは、午前の会議はこの程度にしまして、暫時休憩をいたします。 午後零時四十九分休憩 ————・———— 午後三時五十四分開会
○委員長(梶原茂嘉君) それでは、午前に引き続きまして開会いたします。大蔵大臣がお見えになっておりますので、大蔵大臣に御質問のおありの向きは、御発言を願いたいと存じます。
○津島壽一君 前回の委員会で資料を要求いたしまして、ただいまこの資料の配付を受けましたから、一応これを御説明願った方がいいと思います。その上で、また必要ならば質問を申し上げますが、一応御説明願います。
○委員長(梶原茂嘉君) 資料の御説明をお願いいたします。
○説明員(石野信一君) お手元に配付されております「三十一年度対比賠償支払所要額と賠償等特殊債務処理特別会計予算」という資料について御説明申し上げます。 これは、三十一年度におきまして賠償の支払所要額が幾らぐらいになるか、これに対して賠償等の特別会計の予算で間に合うかどうかということにつきまする一応の推計をいたしたものでございます。もちろん三十一年度の支払額というものは、賠償の実施計画がきまりまして確定をいたしますので、あくまで推計でございまするが、(1)というところから、読みながら御説明をさしていただきます。 最初の十年間は年間平均二千五百万ドル支払うことになっている。従いまして、実際には最初の一年は平均額より少くなる可能性があるのでありますが、形式的には二千五百万ドルを——三百六十円で計算いたしまして、一応形式的には九十億円を必要ということに相成るわけでございます。この九十億円のうちで、先に締結を見ました沈船引揚に関する中間賠償協定によって昨年度に支払った約十四億円、それから本年度に賠償等特別会計から支払いを予定せられておりまする九億円、この合計約二十三億は、協定上第一年に支払われる金額として計算されることになっておるの、ございます。従いまして、この九十億円から沈船引揚分の二十三億円を引きまして、第一年度には六十七億円予定すればよいということになるわけでございます。(3)に入りまして、しかして、この賠償協定の効力発生を一応本年七月一日と仮定いたし——批准が終りまして、効力発生を七月一日と仮定をいたしますと、それから六十日以内に実施計画を作成することになるわけでございます。従いまして、フィリピンミッションと日本の業者との間で契約が始まりまするのは二カ月たちますから、九月一日以降になると推定せられるのでございます。従って、日本の現在の会計年度において支払いを要する金額は、本年の九月から来年の三月までの七カ月分というふうになるわけでございます。賠償年度といたしましては、始まったときから一年間ということで九十億でございますが、日本の会計年度とにズレがございますので、現在の会計年度としては七カ月分、なお契約が九月一日からできるということになりましても、実際の支払いはさらにおくれるわけでございまするが、その点は、むしろ金額が減る方でございますので、一応無視して計算をいたすことにいたしまして、その七カ月分というのを、(4)に入りまして、実施計画が確定するまでは現実の支払いがどう行われることになるか明確ではないが、六十七億円を一年分として、その七カ月分を月割で計算いたしますと、約四十億円ということに相なるのでございます。 それで、これに対して賠償等特別会計の予算でどういうことになっておりますかと申しますると、以上の所要額推計に対しまして、三十一年度の賠償等特別会計予算では、二百二十億円の歳出を計上いたしてございます。ビルマ賠償、タイ特別円、連合国財産補償、フィリピン沈船引揚等、予算の編成当時に支出義務の予定せられておりますものに対しまして百五十億円、これはフィリピンの沈船引揚分の本年度九億円もここに入っておるわけでございますが、この百五十億円を予定いたしまして、このほかに予備費として七十億円を予定いたしておるのであります。従いまして、かりにフィリピン賠償の三十一年度所要額が先ほどの四十億円程度といたしますれば、この七十億円の予備費をもって十分まかない得ことになる、こういう資料でございます。 次に、「昭和三十一年度日本輸出入銀行資金計画という表がございます。これは、フィリピンの借款が、政府として輸出入銀行からこれについて資金の手当をするという点について義務を負っているわけではございません。従いまして、この資金の範囲内で、輸出入銀行の資金の範囲内で、採算ベースに乗るものについて行われるわけでございます。どの程度行われるかということは、今推定は困難でございます。しかしながら、一応輸出入銀行の全体の資金計画を御説明いたしましていきたいと存じまするが、右側が所要資金、左側は原資になっております。原資の方から逆でございますが御説明いたしますと、前年度の繰り越しが七一億、回収額がございます。それから運用益は、若干でございますが、積み立てられる部分でございます。それから借入額というのが資金運用部からの借入、出資額は産業投資特別会計からの出資でございまして、合計七百十五億ございます。 これに対して貸出額が六百九十九億円、そのうち三十年度末までの承諾分できまっております額が二百七十八億ございます。新規の分として四百二十一億でございます。借入金の返済が六億ございまして、翌年度へ十億を繰り越することになっております。新規分の四百二十一億円、この範囲内で、フィリピンとの経済協力関係の資金も一般の輸出のものとくるめてこの中からまかなわれることに相なる。 備考のところでは 本計画は最近の繰り越し等も明らかになりまして作りました見込みでございます。それから三十年度末までの承諾分とは、三十年度までに融資承諾を行い、三十一年度に貸出が行われるものであるという説明でございます。第三は「貸出額中新規分にはフィリピンとの経済協力等に要する資金を含む。」、今申しました点を加えたものでございます。 以上御説明申し上げます。
○津島壽一君 ただいまの資料並びに説明でよくはっきりしたと思います。 この協定が実施された場合に、賠償等の特殊債務の処理特別会計の予算が不足して、あるいは補正予算じゃないかというような懸念があった。しかしこの計数によりますと、この協定を実施するに当っても、既存の予算でもまかない得るものだろうという結論のように思うのですが、大臣にちょっとその点をお伺いしたい。補正を組まなくて、第一年度の賠償は賠償等特別会計でまかなっていける、こういう結論のように思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(一萬田尚登君) フィリピン賠償が成立発効いたしまして、ただいま御説明申し上げたようなことになろうかと思いますが、その関係において補正予算を組む必要は考えておりません。
○津島壽一君 そこでもう一度お伺いしたいのですが、この計数によりますと、大体フィリピンの賠償のためには、初年度、日本の会計年度における支出は四十億円もあれば最大限見積ったものだ、そうして今計上している予算では大体二百二十億円で、百五十億円が支出であるが、予備費として七十億円もあるから、これを補正しないででもやっていける、こういうことだと思うのですが、もう一ぺんお伺いしておきたい。
○国務大臣(一萬田尚登君) さようでございます。そうして今の計算によりますれば、沈船等の関係等からも含めまして約四十億前後じゃなかろうか、こういうふうに見ております。大体七十億円でいくと思います。
○津島壽一君 そこで、インドネシアの賠償協定があとへくるものだろうと思うのですが、目先にあるものですね、これがどうなるかという金額ですね、大体これがいつになるかという時期は別として、本年度内に協定ができても、これまた今のような七十億円も予備費が残っているということであれば、時期のズレもありましょうから、大体やっていけるというお見通しで、これはインドネシア賠償の金額によるのですけれども、お見通しとしてはそういったことになり得る、すなわち補正を使わないで処理できる、こういうことでございましょうか。
○国務大臣(一萬田尚登君) インドネシアの賠償ですが、これも私、むろん賠償の話は早く交渉するし、できれば妥結も早いのが望ましいと考えておりますが、しかし、まあ従来の状況から言えば、本会計年度でいよいよインドネシアに支払いを開始する段階には非常に困難じゃないかというふうに私は思います。なるべく早く妥結するように努力はいたしますが、そこまでいかぬのじゃないだろうかと思います。これはわかりません。従いまして、今後インドネシアとどういうふうに賠償関係が妥結するかによって、また考えなければならぬかもしれないと思います。
○津島壽一君 これは、事務当局に私の考え方を一つ申し述べておきたいのですが、この経理はなかなか正確に計算されて、まことによくできておると思うのです。ただ、あまり細かく考えすぎたものだから、この四十億になる基礎がどうせ共同委員会でいろいろ具体的な計画をすると、九月から執行になるだろう、従って来年の三月までを日本の会計年度の期間として七カ月を見積っておるわけですね、四十億円を。しかし、この賠償協定に加えて債務を払うという協定がないから、これは実際扱ってみると、これがずっと賠償のこの協定の実施がおくれても、初年度というものは賠償協定の中で初めの半年分にぱっと取ってしまって、あとはもう要りませんというやり方もあり、また後半の分でほとんど二千五百万ドルを取るような協定ができるかもわからず、月割りだと、これは第一年度二千五百万ドル、十年間、そしてこの債務の支払いは各月別平均によるものであるとすれば、この通りくるのです、実施の日から。ところが実施の日はかりに九月になりましても、協定が有効になった月から勘定するといえば、これは七月一日になってしまうのですね。二カ月違う。またその二カ月増しても、かりに、向うの人の意見も聞かんとわかりませんが、これはおくれましたけれども、私どもの方は実施を待っておったのですから、一年分をなるべく早く下さい、三月末までに二千万ドル下さい、あとは何回、五百万ドル残っております。そこは交渉の問題だろうと思いますが、日本政府としては、月別平均で一つ話しようというお考えか、これは仮想の計数であるから、月平均で取るのだろうということであるが、話し合いによっては待ち切れないで、やっと初年に有効になったのだから、二千五百万ドルのうち、もう大部分は早いところ本年度に下さいと言う、予算がないから、そうはいかぬ。それからもんちゃくが起るというようなことがありますから、計数を作る場合は、月別という規定がない場合は、月別計算で四十億でいいのだ、こういうこともあり得ますよ。あり得ますことです。しかしながら、金を用意する側からいえば、向うの談判の都合では、たとえば七カ月分しかないけれども、十カ月分早く払うことによって妥結することもあり得ることですから、だからこの表は月別計算の基本になっていないところは、これは確実な計数と私は言えないと思うから、そこのところもくんでいろいろ計算を作っていただきたい。大局としては、これだけの予算を持っていれば、フィリピン賠償は不自由なくてやれるという観察はいたしています。しかし、まあ計数の判断をする上においてのいろいろ方法があると思います。どうぞその点についてお含みおき願いたい。
○国務大臣(一萬田尚登君) その点について、若干これはこういうふうに考えてみたいと思う。私の考えていることを申し上げます。これはむろん実施計画できまることでありますし、今のお話のような話もありましょうが、大体賠償は資本財と役務でやりますものですから、やはり私は、日本の経済に与える影響等から考えまして、一挙に非常に短い期間にずっと持っていくというのはどうも適当でない、向うも一挙にたくさんもらってもすぐそれを消化するか、その点もありますので、将来のことも考え、なるべくなめらかにいくのが望ましい、こういうことから、実施計画の際に、なるべく一挙にいかないで、していきたいという考え方を持っております。まあこれはいろいろ考え方がありましょうから、その点は十分注意をいたします。
○津島壽一君 それじゃ最後に大蔵大臣に、答弁求めなかったのにおっしゃったから。そういう場合にこうやられたらどうだろう。政府会計の窮屈さを、どうせ長い計画で、一、二年とか一年半で作るものの注文もありまして、注文を受けた人は、日本の業者は早く作って早く金にしたい、そのときは銀行も、便宜を与えて銀行は貸すだろうと思うのですね。そして向うへ物も早く渡す。しかし、これは賠償、債務の支払いができたと見るかどうかという法律問題もありますけれども、日本政府の歳出はやっぱり繰り延べたようなものでやるが、仕事をそのためにおくらすということは業者も困る。そこらの歳出予算と銀行的な資金供給と、その間の関係を見合えば、大体この予算をもってまかなえるというような見通しは、大蔵大臣の今の考え方を入れてみればできるように思うのです。私はまあ非常に安心というか、事態がはっきりしたと、こう思っております。これで私質問を打ち切ります。
○小滝彬君 ちょっと、大蔵省の方が見えていますから、しろうとの質問をしたいのですが、借款協定、借款に関する交換公文は、交渉に当った人は非常に苦労をして、われわれがいろいろ指摘したから、そういう点も考慮のうちに入れて作られた苦心の結果だと思うのです。その中で、たとえば交換公文の第三項を見ると、「当該時においてこれらの金融機関が振りむけることができるその資金の範囲内において、」こういうように書いてある。そこでこの輸出入銀行の資金というものでみると、今年の分では四百二十一億円というものがある。で、来年度、本年度はまあこれが現在の資金なんですから、その範囲内でやられるということは、これはわかるのだけれども、それから先において、輸出入銀行は資金計画を立てられる際に、大体どういうものにどれだけ振り向けるということを一応頭の中に置いて、そういう予定を作って資金計画はできるものだろうと思うのですが、そういうものじゃないですか。
○説明員(石野信一君) その通りでございます。
○小滝彬君 しかりとすれば、今後年間、これは二十年とすると四十五億、これは要るわけなんです。大体平均的に二十年間で、二億五千万ドルを向うへ借款で与えようとすれば、年平均でやろうとすれば、年四十五億ですね、そうすると、この資金計画を立てられる場台に、四十五億は資金計画を拡大して立てなければいけないのじゃないかというふうに私はしろうと的に感ずるわけなんです。何となれば、もしただ正常の資金計画においてやられるとすれば、せっかくこれを作った、この交換公文を作った意味がなくなってしまいはせぬか。まあこの書きぶりでみるというと、何というのですが、便宜というのですか、ファシリティズとエクスペディションズというような言葉を使っている。これはただ、いかにも普通のことをやって、日本の許す法令の範囲内であればいいように読めるのですが、しかし実際問題としては、「容易化及び促進の措置」をとるためには、もうすでに資金計画でも、従来のノーマルなものに対するそれ以上のものを計画しておかぬと、この交換公文の成果というものは何もないということになりはせぬかと思うのですが、その点はいかがですか。
○説明員(石野信一君) 仰せの通り、経済協力の重要性という点を考えまして、今後とも資金計画上できる限りそういうものを余分に考えて、よけいに資金を組みたいというふうには考えられるわけでございますが、そうかと申しまして、結局これは民間同士の話し合いが出てくるのであります。必らず年間幾らできると見込まれるわけでもございませんし、またそれを義務として、それだけの資金を用意するということは、まあ全般としても、なかなか資金全体の状況から、直ちにそういう約束もできないというふうな面もございまして、交換公文で、こういうふうに義務として、特にそのための資金手当をしなくてもよいというふうになっておるのでありますが、御説の通り、できるだけそういうものを促進する意味で、できる限りの資金を輸出入銀行に組んでいきたいという考え方はいたしております。
○小滝彬君 これは、いろいろ対外的な問題もあるだろうし、その年々における金融界の状況というような、いろいろな点を勘案して考えなければならぬことだと思いますが、これを実際作って、ほんとうに忠実に実行するということになれば、結局それが融資としてりっぱに成功するかしないかは民間の交渉いかんによるとしても、ぜひその点は、資金計画に織り込むという格好で進まないというと、フィリピン側としては、日本側が形式的にこういうものを作ったけれども、忠実に実行する意思がないように見られるおそれがありはしないかということで、その点は今も考えるということですから、ぜひそれを考慮の中に入れて計画を立ててもらいたいものだと考えるわけであります。 ところで、その次の項に、返済の期間は長く、利率は低いものとなるべくしなければならぬという趣旨が書いてありますが、フィリピンの金利は今一体どれくらいなんですか。
○説明員(石野信一君) ここで申しますのは国際金利でございますので、まあ五分程度のものを考えておると申しますか、それが普通国際的なものと了解されておると思うのでありますが、あるいは五、六分というような程度を考えているかもしれませんが、そこまで詳しくあちらと話をいたしておりません。
○小滝彬君 私は、そういう幼稚な質問を申したのは、結局フィリピンの国内の金利を基準にしろとは書いてないけれども、フィリピンの金利というものは、もう商業ケースで行う取りきめの際に、相当重要な役割を演ずるだろうと思うのですね。日本の方が非常に高いということになれば、また国際金利から見れば、日本の金利というものはまだ依然として高いと思うのですが、その点はいかがですか。
○説明員(石野信一君) 仰せの通り、日本の金利としては、国際金利よりも高いわけでございますが、フィリピンの国内の金利は、これはまあ金利の最低のものということで、大体あちらは五、六分程度というようなことを言っておったのですが、それは国際金利を意味しておると思います。従いまして、ここで「商業上の基礎において正当と認められるところに応じ、」というのは、抽象的に書いてありまして、どの程度で話をつけるか、これも特に政府として義務はないわけであります。ただ日本の金利が高いことは事実でございまして、従って輸出入銀行の金融を行うことによって、ある程度緩和して、向うの考えられたのとあまり隔たりがないようなところで借款が成立するように私は持っていきたいというふうに考えております。
○小滝彬君 これは、外務省に答えてもらった方がいいかと思いますが、借款協定の四項ですね。「次のことが了解される。」とある。イット・ビーング・アンダースツッドというのは、これは一体だれが了解をするのですか。要するに商業ベースである商売人をバインドするということは非常にむずかしいと思うのですが、これは、政府が何かそういうようにやるように努力をするという趣旨の……。
○政府委員(中川融君) ここの書き方は、御指摘のように、あまり明確とは言えないのでありますが、この考え方といたしましては了解されると、了解したものは、これは両国政府であります。しかしながら、両国政府がこういうことをするという意味で了解したのではないのでありまして、この内容はあくまでも民間ベースの契約であります。民間ベースの契約が大体どんなものであるかということについての一つの考え方としてここに書いてあるのであります。従って、その第一といたしましては、これが通常の方法あるいは現物で分割払いで返済されるというようなものであるということ、第二には、商業上のベースにおいてできるだけ金利は安く、支払期間は長くという、この原則的なことを了解しておるだけでありまして、これに基いて政府が具体的に、たとえば金利を低くする、あるいは支払期限を長くするという義務まできめたのではないのでありまして、政府のする義務の方は、第三項に規定してあることだけが政府の義務である、かように解釈しております。
○小滝彬君 そうすると、原則を掲げたものであって、法律的に言うとほとんど意味はない、実施力のないものを、なるべく民間業者がやる場合にはこういう心がけでやれというような趣旨のものですか。
○政府委員(中川融君) 大体そういう趣旨のものと考えております。
○津島壽一君 ちょっと今の関連質問ですが、大蔵大臣がおられるから。先ほど小瀧委員からの御質問の中に、輸出入銀行からの融資するものとして、その融資については輸出入銀行の資金計画の中に特別にこの二億五千万ドルの二十分の一というか、一年に四十五億円と言われた、あの金をイヤマークするわけですか。新規の分の中に今年度も四百二十一億あるのです。この注の中には、フィリピンとの経済協力等に要する資金を含むと書いてあって、このうち四十五億をフィリピンの借款協定によってやるものとイヤマークする、特記すると、こういう趣旨じゃないと思うのですが、小瀧君と意見が違うかもわかりませんが、私は、交渉の経過において、特別の資金を輸出入銀行に掲げて、年々それが政府の義務となれば、そうすると、従来の貸し出しの融資の計画を減らすか、従来通りとすれば、この四十五億の資金の増加を国家の財政資金計画に入れる、それならば、それは賠償金の支払いの五億五千万ドル以外に二億五千万ドルだけプラスになった負担をここに持ってくるのだから、八億ドルということは、それは意味があることになってしまう。それは困るのだと、そこで、この三項の文章、これは今度の協定というか、交換公文ですが、この輸出入銀行がその当時使い得る金の範囲内においてと書いてあるのですね。であるから、二億五千万ドルの二十分の一を毎年イヤマークしてある金によってこれをなすと、こう書けば、これはほかの資金の額にプラスして、これだけする義務があるかのごとくなる。またこれをイヤマークするためには、ほかを削るというはっきりとしたワクを資金計画で出さなければならない。これはとるべき策じゃないという考え方なんですが、今の小瀧君のはそうしなければいかぬのじゃないかという質問だろうと思うのですが、それに対して政府委員の答弁は、まあそうであったかなかったか、はっきりしなかったのですが、大蔵大臣は、この輸出入銀行の資金の中で、この協定によるものの資金をイヤマークして、ほかのものはこれだけしかいかぬのだという特記を出すというお考えですか、ちょっとはっきりお聞きしたい。
○国務大臣(一萬田尚登君) イヤマークすることはありません。
○津島壽一君 ないのですね。それじゃ結局ほかに必要な事業があれば、その年度の資金はずっと減って、残りは本年度はこれだけだ、だから四十五億足りないのだ、来年度はしかるべくやろうという意味で、優先的にフィリピンの借款がこの輸出入銀行の資金計画における資金を先に取るという考え方で運用するものじゃない、こう了解してよろしゅうございますか。
○国務大臣(一萬田尚登君) よろしゅうございます。
○津島壽一君 わかりました。
○小滝彬君 一つ今の問題に返って、私の感想を申しますと、これは非常に苦心して作られたのだろう。そういう点は御同情申し上げます。ただ私は、何もイヤマークすることを希望したわけでもないのですが、今の御説明通りになるというと、せっかくその第三項を設けて、何の利益をフィリピン側が持つかというと、全然普通の商業ベースのあれでやることになれば、容易化、促進ということはほとんど意味をなさぬ、フィリピン側の立場からすれば、そういうことになるおそれがありはしないか。しかりとすれば、少くともこの協定はどういうことを考慮に入れて政府は善処するのだというところまででもせめて行かなかったならば、この第三項の規定というものは、ほとんど実質的の意味を持たぬようになりはせぬかと思っておるのですが、その点は大臣いかがですか。全然イヤマークもしない、何もしない、ただ普通のあれでやるというのじゃ、せっかくこれができても、向うの方としては意味がないだろう。
○国務大臣(一萬田尚登君) 本筋としましては、第三項において特に「当該時においてこれらの金融機関が振り向けることができるその資金の範囲内において、」とありまして、従って、表面はむろんこの通り解釈すればいいのじゃないか。そうしないと、これはどうしてもやはりオブリゲーションといいますか、いろいろの問題がまた生じます。がしかし、こういうふうに当該時において金融機関が振り向けることができる資金の範囲内においてというふうにありますから、これはまあ、この輸出入銀行の資金全体の問題、あるいはまたさらには、そのときどきにおける日本経済全体の資金の需給関係等にもかかるのでありますが、政府としては、当該時における資金の範囲内であるが、むろんなるべくフィリピンと日本との経済借款がうまくいくようにということは考えていきたい、こういうふうに思っております。
○小滝彬君 じゃ、これはそれまでにして、実は昨日の委員会で、鶴見さん、佐藤さん、それから津島さんあたりから、フィリピンとの文化交流あるいはスポーツの選手の交換等について、資金面、外貨の面を見てもらわなければならぬというお話が出ました。あるいは諸先輩からお話が出るかもしれませんが、それに関連して私の考えますことは、これはちょっと話がそれるかもしれませんが、日本の観光事業ということは、できるだけこれを培養していかなくちゃならない。党の方でも特別に委員会を作ってやっておりますが、これについて、こまかな税関の取扱いなんかについては、いろいろ感想もありますが、そんなことは離れまして、資金の面から見て、ツーリストといえば非常にむだのように思いますけれども、こういう問題は総合的な問題であって、日本の観光のための外貨の予算は一応イヤマークして、そういうスポーツとか文化関係が主になるでしょうが、ある程度までそういう点は今後考慮する必要がありはしないか。たとえばサンディエゴなんかは、税関を通じてそういう為替管理をしておる格好はするけれども、かえって実際上、官吏が非常な非合法ないろいろなことをやるもとになる。日本にそういう例があるとは申しませんけれども、相当パリあたりいろいろな人が行っておる。それはみんな外国人のお世話になって行っておるのかもしれませんが、そういう格好で海外に行っておる人があるのかもしれませんが、あるいはもう少し緩和せられて、あれをよく善用するということにする御意図はないかどうか。外国とツーリストの交換をしようじゃないかというような問題のときに、非常に為替管理がそういう話し合いの際の障害になるわけであります。これは、結局文化交流とか相互の理解を増すという上において、ある限定せられた範囲では正々堂々とツーリストとしても人が出せるというような格好になっておった方が、大きく伸びようとする日本のためになりゃしないかと思うのですが、いかがですか。
○国務大臣(一萬田尚登君) 私は、日本の観光事業をかりに考えた場合に、これは私は一つの大きな日本の産業、日本は資源に乏しいと言うが、観光に関する限りは相当大きな資源を持っている。これをフルに利用して外貨を獲得する。これは百パーセント外貨獲得になるものだと思っております。今向うさんの方の関係……。
○小滝彬君 日本人が出て行く、相互的に日本人もある程度出さんというと、交換的にやらんというと、そういうようなことはなかなかその方の話が障害になる……。
○国務大臣(一萬田尚登君) フィリピンに関連してですか。
○小滝彬君 一般的に。
○国務大臣(一萬田尚登君) これは、私はやはりけっこうだと思って、そういうことも十分考えております。
○小滝彬君 ぜひそういうような緩和的な面も、私は無制限にやっていただきたいというわけではないのですが、どうかすると、非合法的にやるというようなことも考えさせることもあるというようなことは、国際的にもずいぶん、ヨーロッパあたりにもありますし、だんだん為替状態がノーマルな状態になってくるので、ぜひそうした緩和の面も考えていただきたいということです。
○国務大臣(一萬田尚登君) これは、国内金融につきましては、資金の需給関係並びに経済の発展状況等によって重点が動いていきますし、また重点を動かすべきであります。従いまして、こういうような外貨の使用につきましても、状況の変化に応じまして、その外貨のポジションの変化に応じまして、できるだけ善用していくということは、私はけっこうだと思います。十分研究いたします。
○羽生三七君 私の大蔵大臣に対する質問は、ごく簡単な問題一、二ですが、その一点は、昨年私外務大臣に、日本の各国に対する賠償の問題、それから連合国の財産の補償の問題、戦前からの外債の問題、それからさらにガリオア、イロア等を総計した場合のその総額はどれくらいになるか、その年間の支払い額はどの程度か、それと日本の経済力を勘案をして、そうして総合的に対策をきめるべきではないか。ある国から賠償の要求があったのならそれと話をする、ほかから次の話が出てくればそれとやるというように、個々ばらばらでなく、日本経済と勘案して総合的な判断をする。先ほども大蔵大臣のおいでになる前に、いろいろ論議をしたのですが、事実サン・フランシスコ条約の第十四条に、「存立可能な経済」ということで、日本経済が存立し得る範囲内で賠償の要求をしておるわけでありますから、当然私は、日本経済との国連でこの問題が考慮されなければならぬと思うのです。そこで、そういう質問の際に、昨年外務大臣は、さっそく対外債務支払いに関する閣僚審議会というものを作って、そこで一つ総合的な対策を検討したいという答弁をされて、その後間もなく、私は名前ははっきり覚えておりませんが、今申し上げたような意味の閣僚審議会というものができたと思うのです。そこで、そういうところで、今度のフィリピン賠償等を日本の経済の全体的な観点から検討されたことがあるのかどうかということが第一点であります。
○国務大臣(一萬田尚登君) 日比賠償は、これは実は、今お話しの対外債務閣僚審議会のできる前からの問題であります。むろんそういう閣僚審議会ができましょうとどうでありましょうと、特に大蔵大臣としては、賠償に関しては日本の支払い能力、国民生活並びに経済に与える影響、すべてを総合的に考えまして、そうして個々の国に対する賠償というものはやはり考える、フィリピンに対する場合も同様な立場から考えて参ったわけでありまして、まあ比較的な点から言えば、すでに確定をみておりまするビルマの賠償、それからフィリピン自体については大野・ガルシアの一応の案、これらも勘案をして、そうして今回の五億五千万というところになったわけであります。そういうふうな場合に、それでは国民の賠償能力との点についてどういうふうになるかという問題が残るのでありますが、今のところ、賠償等によって対外的に支払いを要する金額は、これを年額に直しますと、こまかいのも入れますと、確定したものが九千四百万ドルぐらいに一年になります。これはフィリピン賠償もむろん入りまして、同時に英、米、加債等も入りまして、大体確定しておるものすべてがそのくらいになるのであります。これが確定しているものであります。これにまあ、一番大きなものは、今後インドネシアの賠償というものが考えられるのであります。そういうところで大体の対外債務支払いの年額というものがほぼ想定されてくるわけであります。そうして今の日本の国民生活並びに今後の日本の経済の発展ということを考えた場合に、まあまあこの辺だろうという賠償の金額を考えているわけであります。 ただ、この機会に申し上げておきたいことは、これは大蔵大臣としては、ほんとうに国民生活を考え、今後の財政負担を考えます場合において、できるだけ少くする。少くするという意味は、相手方の考えを無視して、自分だけなるべく少くなればいいという意味じゃないのでありまして、日本の国力からして、やはりできるだけがまんをしていただくということが当然な観点であるのであります。ありますが、また同時に、一国の財政力というものはその国の経済力にやはり依存します。特に日本の場合においては、そういう場合に経済力が貿易に依存するという面が非常に多い。貿易に依存するという面は、また他の言葉で言えば国際的な親善関係、経済の共存共栄といいますか、協力関係に非常にかかってくる。そうしてみると、やはりある程度はがまんしても、この賠償関係が早く解決して、それぞれの国との間に親善関係ができて、経済力を伸ばしていくという、その面から考えていかなくてはならない、かような見地にも立っております。そういうふうなこと、いろいろの点を考えまして、一応まあこういうところだろうというのが、先ほど申しましたことに相なるわけであります。
○羽生三七君 もう一点だけ。これは大蔵省に承わる筋のものか、あるいは外務省の方面のことか、よくわからぬのでありますが、サン・フランシスコ条約十四条の「存立可能な経済を維持」ということは、これはどういうことでしょうか。常識的に判断すべきことなんでしょうか。これを厳密に言うと、一体どこを標準にしてやるのか、欧米の生活に比べれば、非常に日本は水準が低いし、アジアに比べれば日本はもちろん高いし、こういう存立可能というのは、敗戦後の荒廃を考えた場合のことを基準におくべきか、あるいは今日やや若干ノーマルな状態になったときもその中に入るのか、そこらは常識的な判断でいくのか、別段これという基準はあるのかないのか、どうでございましょうか。
○政府委員(中川融君) 存立可能な経済を維持することということが一つの前提になっておるわけであります。これは結局一時たとえばポーレー報告でありますとか、ストライク報告でありますとか、日本の産業規模というものを非常にむしろ縮小するという意味の賠償案が終戦直後いろいろ言われたのでありまして、たとえば日本は現在の生活水準を維持すべきでなくて、むしろ日本の隣国、日本が侵略した隣国のアジアの生活水準まで引き下ぐべきだ、それらの国の生活水準が上るに従って、日本の生活水準をそれに相応して上げることはいいけれども、むしろ今の生活水準は引き下ぐべきだという、そういう趣旨から賠償計画等が一時出たことがありますけれども、そういう趣旨を排除して、日本としては八千万の国民が生きていくだけの必要なもの、その意味は、もちろん現在の生活水準を下げるというような意味ではなくて、むしろ順次に上げていくということも含まれると思いますが、そういう意味での日本として必要な経済を維持していくためのものはやはり残しておくべきである。それに支障のない限度のことで賠償をやるべきであるという思想であると、われわれは解釈いたしておるわけでございます。
○委員長(梶原茂嘉君) それでは速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(梶原茂嘉君) 速記を始めて下さい。 本日は、これにて散会いたします。 午後四時四十二分散会 ————・————