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24回国会参議院1956/05/25

外務委員会 第15号

発言数
45
登壇者
6
会派数
3
開催日
1956/05/25

会議録

梶原茂嘉緑風会

○委員長(梶原茂嘉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員の変更について御報告いたします。上林忠次君、石黒忠篤君、杉原荒太君、郡祐一君、大谷瑩潤君が本日外務委員をやめられまして、あとに後藤文夫君、河井彌八君、新谷寅三郎君、齋藤昇君、長島銀藏君が委員になられました。御報告申し上げます。     —————————————

梶原茂嘉緑風会

○委員長(梶原茂嘉君) 防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 この協定全体を見るときに私どもの感じることは、この協定が一体何を実体としておるか、非常に不明確だということ、ことにその表現がなかなかわかりにくい。これは私だけの感じかもしれませんが、最近のこういう条約や協定がなかなかしろうとにはのみ込めないようにだんだんむずかしくなっていると思うのですが、特にこの協定は、表現としても非常に逐条的に一々御説明を承わらなければ、何を意味するかわからないことが随所に散見されるのであります。表現のことはまた後刻承わることにしまして、もう一度きのうのことを繰り返してお尋ねいたしますが、本協定の実体は何であるか、これが非常に問題だろうと思うのです。この防衛目的のために、特許権や技術上の知識の交流を容易にするためということはよくわかりますが、その範囲も全然きめられておらない。限界は何もないわけです。防衛生産についてはどこからどこまでがこの協定に該当するか、ということも何ら示されておらない。私どもが今まで見てきた協定、条約では、ある程度の実体が明らかになっております。しかしこのくらい不明確なのは私は全然ないと思うのですが、その実体は何であるか。たとえばどういう必要で、どういう産業に、どういうことから早急にこういう取りきめをしなければならなくなったかということが何一つ明らかにされておらない。たとえば知識の交流を容易にする、交流はいいのですが、これについてもそれぞれのいろいろな規定があるわけです。知識という場合はこれは何ら物的に表現できるものではない。頭の中にある一つのものの考え方であります。それを協定の上でいろいろ規定しておるのですが、知識をどうやって取り扱うかと、これは物権化されたときその知識が、あるいは科学的な知識が何らか発明の上に、あるいはこの著作にしろ何にしろ物的な形で表現をされたとき、初めて問題たり得る。ところがこの協定を見ますと、このことも何ら明確な規定はない。しかも工業生産についてどこからという限界は何もない。非常に実体が不明確だと思うのですが、昨日一応の御答弁はありましたけれども、私昨晩帰って考えてみましたけれども、どうしても納得ができない。もう一度、どこにその真の目的があり、その限界はどこからどこまでだと、今、日本で言うならばどういう産業だ、きのうはジェット機ということが一応お話がありましたが、ジェット機という御説明だけでは不十分でありますから、それ以外にどういう産業が考えられているか、もう少し詳しく御説明を願いたい。これはどなたでも、大臣でなくても、どなたでもけっこうです。

下田武三外務省条約局長

○政府委員(下田武三君) 非常に専門的な技術的な条約でございまして、私ども自体も必ずしもこの協定が明快に簡単にわかりやすいと思っておりませんで、事務当局といたしましてもその点は非常に取っつきの悪い協定であるという点は御同感なのでございます。  そこでまず協定の内容を一口に申し上げてみますと、この協定は要するに保護を目的とする保護協定でございます。技術上の知識を導入する行為自体ではございません。外からその保護を保障して導入が容易になるようにするということが、この協定で書いてありますことのせんじ詰めた内容でございます。  そこでこの協定の実質的規定というものは二つのポイントしかございません。第一条はこの技術上の交流を容易にし奨励するという、まあお経の文句みたいなものでございます。実質的規定は結局第二条、第三条が一つのグループ、それから第四条、第五条が他のグループと、この二つのグループに分れておるわけでございまして、第二条、第三条は政府間の情報交流の場合を規定しまして、その秘密の保護を目的としておるわけでございます。第四条、第五条の場合は、これは補償のことを規定しておるわけでございます。ですから、秘密の保護と補償と、これがまあ二点。この二点から保護を全うしようというわけであります。第二条の方は、この政府間の交流がございました場合に、その内密性を保護する、これはこの秘密保護法の意味における内密性ではございませんで、何と申しますか、発明をみだりに行為させることはいかぬと、こっそり教えてもらった建前にするという意味の内密性の保護、これが第二条でございまして、第三条は、これはアメリカに特殊な制度として、防衛上秘密に保持することを必要とする特許出願が、それと同じような出願が日本になされた場合には、その同様の類似の取扱いをするということによりまして、これは防衛上の意味の秘密を保護するということでございます。結局この秘密の保護ということは第二条、第三条に尽きておるわけでございます。  第二のグループの四条の方は、これは原因のいかんを問わず、一方の技術上の知識が他方に参りましたときの補償の問題でございますが、この補償の問題に二つの場合がございまして、一つは、所有者から自国政府の手に渡って、その自国政府から相手国の政府に渡った場合の補償責任の分担を規定しておるものでございます。それから第四条の(b)の方は、所有者が直接相手国政府に知識を提供した場合の補償、つまりそれはその国の国内法令に基く補償でいいという補償の問題でございます。  それから第五条は、政府間で提供せられました情報というものは、つまり政府がみずから自分で持っておる、あるいは自分が使用権を持っておる情報を相手国政府にやる場合には、これは補償は要らないという無償の原則を書いたものでございます。この協定の実質的規定は、第二条、第三条を第一のグループとし、第四条、第五条を第二のグループとする、それだけでございます。あとの技術財産委員会とか、雑則、定義等は、まあつけたりの規定でございます。そこで、先ほど申しましたように、本協定自体は、MSA協定のごとく援助を供与するということについての協定ではなくて、そういう技術上の知識の交流を容易ならしめるためのアシュアランスを与えるということが目的でございます。  そこで、それなら一体どういう技術上の知識が日本に入ってくるかという御質問の要点でございますが、それは、実はこの協定ができてから後のことなんでございます。後のことでございまするから、この協定の締結交渉自体に関連してのネゴシエイションは全然行われておらなかったというのが実態でございます。しかし、日本の防衛当局とせられましては、当然、自分の方で関心を持っておる技術上の知識の分野につきましては、御検討に相なっておるわけでありまして、必要がございますれば御説明があると存じますが、これは従来御説明がありました通り、まあいろいろの分野の技術上の知識の取得ということを検討しておられるところでございます。  大体簡単に申しますと、この協定の実質というものは、そういうものでございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 だから、承わってわかったことは、昨日私の質問で、政府はこの協定を結ぶに至ったのは、むしろ日本がインシアチブをとったからだ、昭和二十九年のMSA協定以来引き続いて今日までこの問題を検討してきたと言われますが、私はこの文章全体から見、今の御説明から承わっても、今、日本がこれを早急に取りきめなければならないような必要はどこにもなかったが、アメリカの御要求で、しかも条約局長は外交官であるから、大いに敬意を払ってわが日本がインシアチブをとったという表現をされたものと私は了解しておりますが、しかし、これは御答弁は要りません。そこで、どうして普通一般の特許権だけの取扱いではいけないのですか。秘密の場合ということを別にして、それ以外の問題ならば、通常一般の特許権なり、日本における特許出願の手続等、そういうものでどうしていけないのか、その辺がよくわからないのですが。

井上尚一特許庁長官

○政府委員(井上尚一君) きのうもこの委員会で申したのでございますが、普通の特許法上の出願手続の場合でございますれば、新たな出願がありますと、これは特許につきましても実用新案についても同様でございますが、審査官がこれについて審査をいたしましてこれを拒絶する理由を発見しない場合には、いわゆる出願公告というのをします。公告をしまして、そうして一定期間異議の申し立てがあるかないかということによって、そうして異議がもしなければ、これが特許として確定するわけでございます。ですから、普通の特許法上の手続としましては、新しい発明につきましての出願が権利として確定します過程におきまして、どうしても出願公告、いわゆる公衆審査といいますか、その公告という手続がはいる。が、第三条の規定によりまして、米国におきましては特許の出願を秘密扱いにするという扱い方がございますから、今回もし防衛目的上の関係で米国でその出願が秘密扱いになっておるようなそういう内容の発明、技術上の知識がこちらへ参りました場合には、この第三条の規定によって日本でもこれと同様な取扱いをやるという前提であります。こうなりますと、結局特許法の公告をするという原則の例外としまして公告をしないという扱いをここに新規に作ろうというのがこの第三条、そうして第三条の実施の方法としましての議定書の第三項が大体これに該当する規定でございます。こうすることによりまして、アメリカで秘密扱いになっておりますような出願の内容、そういう発明が日本にも防衛の必要上交流が容易になる、技術の導入が容易になる、そういうわけでございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 わかったようなわからんようなことですが、まあ次に移りますが。

小滝彬自由民主党

○小滝彬君 関連質問。今の説明で公告をしないということなんですが、これは秘密保持のためにその意味はわかります。がしかし、全然公告しないと、善意の第三者が同様の発明をした場合、一体それは向うから取ったか取らんのかわからない。公告した場合にはそれに興味を持っておる人は大体内容を検討しますから、これはどうもこの特許に触れそうだというので、実施しようというような方面の努力を継続することをやめる、あるいはいろいろな施設を作るということを停止するだろうけれども、全然隠されている。おそらくきっと公告されんだろう。そうすると、同種のものを日本で実施しようとする人が不当な損害を受けるというのか、不慮の損害を受けるというようなことはありませんか。そういう点、私はしろうとですが、心配ないかどうか、その点を御説明願いたい。

井上尚一特許庁長官

○政府委員(井上尚一君) アメリカで秘密扱いになっております出願の内容、これに該当する出願が日本にあった、これと全然別個に日本人の発明があって、そうしてこれは偶然その内容は大体同じものだ、そうしてこの場合に日本人の発明について先に出願が来ますれば、もちろん先願後願の関係で日本人の発明はこれは特許になります。それからもし逆に、アメリカの関係の内容につきまして出願があって、そうして続いてその次に日本人の発明についての新規の特許についての出願があった、この場合には、一般の原則によりまして先願後願の関係でございまするから、いわゆる先願が優先します。ですから、日本人のその発明は、これは当然普通の原則によって後願でございまするからして、権利に結局ならないということで、日本人について不当に不利益を生ずるということではないと考えます。

小滝彬自由民主党

○小滝彬君 私これで時間をあまり取りたくないですが、もちろん先願の場合に日本人が特許が認められる、これはわかったことなんですが、あとで出た場合に、全然御本人たちは知らされていない。偶然一致した、あるいは盗んだかもしれないが、それはなかなか証明は……少くともそういうように秘密に取り扱ってあれば、それを盗むはずはない。そこで日本で偶然一致したからといって、日本の方で公告をしてそうして特許として保護してやるに足るものであれば、審判官も実は知らない。秘密の内容を知らされていないのだから、審判官も知らない。そうすれば、当然同じものでも、日本では認めてやった方が、その発明者に対して公正なやり方であり、事実また偶然一致したからといって、審判官はこの秘密に登録されたものが知らされてない建前じゃないかと思うのですが、その内容は皆特許庁の審判官に知らしておくのですか。

井上尚一特許庁長官

○政府委員(井上尚一君) 特許庁の審判官が承知することはもちろんでございます。なおついでに申しますが、公告を結局しないということは、権利としてもそこに権利の設定がないということでございます。ですから米国において秘密扱いが解除になった場合に、ここで初めて公告になって同時に特許権として権利が確定する。ですから秘密扱いになっておる場合には、権利としての成立もないわけなんです。

小滝彬自由民主党

○小滝彬君 権利として成立しておらないなら、新しく善意で作ったものは偶然一致したって、それを特許権として認めてやった方が特許行政上いいんじゃないんですか。

井上尚一特許庁長官

○政府委員(井上尚一君) 今申しましたように、どうしてもそこに時間的に先願、後願という関係がございますから、日本人が全然無関係にかつ偶然に同一の発明があったとしましても、時間的にあとであればこれは権利としては成立しないわけであります。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 この協定前文の「技術上の知識の交流を容易にし、」これはわかります。ところがその後段へきまして、「特許権者及び私人たる技術上の知識の所有者の権利が」となって、特許権と並立的に並べられておるわけです。そうすると私申し上げましたように、この「技術上の知識」が発明となって特許権を得るとか、あるいは著作となって現われるとか、そのものが物権化した場合はこれはわかりますが、抽象的な知識というものはアメリカではそれが権利化されておるのかどうか。それで日本でこれに適用されるような法令は一体何かあるのかどうか。これは非常に不思議なことだと思うのですが、いかがでありますか。

下田武三外務省条約局長

○政府委員(下田武三君) 前文の「特許権」という具体的の権利と、それから「技術上の知識の所有者の権利」という二つの言葉がございますが、「所有者の権利」と申しますのは、特許権の場合は特許法上の確たる具体的の権利になりますが、特許あるいは実用新案に至らないノー・ハウと申しますか、しかし自分が考えついた構想であり発明であるから、特許には至らないけれども、そのアイデアは自分のものだといって所有者は主張するわけでありまして、それがもし利用したければ契約を結んで適当の謝礼を払って、それでなければ許さないという民法上のこれは普通の所有権に該当するわけでございますが、そういう権利があるわけでありまして、それは日本の法律上もよその国の法律上も同じことでございますが、別に特許権とか具体的な名で表わし得ない民法上の所有権の場合もありますので、そこで所有者の権利という抽象的な言葉を使ったわけであります。  それからなお先ほどの御質問に関連いたしまして、ただいま特許庁長官が御説明になりましたような特殊な取扱い、この協定でくる技術上の知識はすべてそんな特殊な取扱いを受けるのかというと、それは毛頭そうじゃないのでございまして、むしろこれは例外でございます。第一条に、先ほどお経の文句のような規定だと言われましたが、これが非常に広範に行われるところでありまして、第一条の(a)、(b)をごらんになりますと、特許権の現存の商業上の関係を通ずること、アメリカの特許権者から契約で日本人が特許権を使わしてもらって、そしてロイアリティを払うという現存の関係があるならそれを通ずること、それから(b)の方はそういう現存の関係がない場合に、新たにそれじゃ特許権者が日本の会社に特許権を使わせるようにやる。特許権の所有者は契約自由の原則に立ちまして、日本の会社なんかに特許権を使わせるのはいやだという場合があるかもしれません。その場合にはアメリカ政府が口をききまして、これは日本が今防衛生産をやるために非常に欲しておるのだから、一つ契約を結んで適当なロイアリティをとって、そうして日本の会社に使わしたらどうかというそういう奨励をする、そういうようなつまり特許権の関係がむしろ普通なのでございます。従いましてこの第三条の場合はむしろ特殊の例外でございまして、それもつけ加えたいと思います。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 そうすると、この協定は普通の通商航海条的とか何とかいうように、お互いにそれぞれ相手側に必要なものを提供し合うという意味のものではなしに、もっぱらアメリカの技術導入に関する規定と考えて差しつかえないようなものではないんですか。つまり「交流」という言葉で現わされているから、いかにも日米両国間の相互関係のように考えられますが、実質的にはアメリカのこの特許権なり、その技術上の秘密の保護を目的として、それを日本が日本の受け入れ態勢を作ったというのが本協定だと、こういうように考えられるんですが、そういうものじゃないんですか、実質的に言えばです。

下田武三外務省条約局長

○政府委員(下田武三君) ただいま仰せになりました通りの普通の関係の基盤に立ちまして、その上にプラスして特殊の規定をおいたのがこの関係でございます。通商航海条約でアメリカの特許権者が日本で特許権を使わせるというような契約を結ぶ場合には、これはその権利は通商航海条約によって一応は保護されているわけでございまして、またアメリカ人は何も好まざる日本人に特許権を使わせる義務は毛頭ないのでありますから、それを口をきいて使えるようにしてやろうというプラス・アルファの部面だけをこの協定で規定しているわけでございます。それと、先ほど申し上げましたように、補償の責任の限界をきめるとか、あるいはさらに必要の場合は緊急の事態に応じて、普通の場合でしたら同意の上でやるんですが、同意を得られずして、得るいとまなくして使ったという場合に補償をどうするかというような特殊の場合の規定をやる。そういう特殊な規定だけでございまして、その基礎にはただいま仰せになりました普通の私法上の、また国家間の関係では通商航海条約上の基盤が横たわっているということでございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 委員長にお尋ねいたしますが、私の出席前にこれは補償金に関する問題がどなたかございましたか。

梶原茂嘉緑風会

○委員長(梶原茂嘉君) なかったと思います。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 それでは伺います。この場合にあるこの補償金というのは、何といいますか、賠償的な性質のものなんですか。普通の代償というような意味ですか、どちらでありますか。

下田武三外務省条約局長

○政府委員(下田武三君) 場合によりまして違うのでございますが、第四条が補償の規定でございますが、(a)の場合は賠償というよりは、アメリカ人とアメリカ政府が同意の上で、契約の上で補償を支払った場合に、さらにアメリカ政府から日本に来た場合でございまして、その場合にアメリカ人とアメリカ政府との間で同意の上で払った補償は、今度は日本が使用するのだから日本政府が分担してくれということでございます。これはですから損害賠償というより同意の上に立つ補償金でございます。(b)の方はむしろ損害賠償の場合があり得るわけでございます。つまり防衛のためであるかどうかを問わず漏らしたとか、あるいは使用したとかいう場合において、向うはあなたに使ってもらうつもりで提供したのじゃないというような場合に使ってしまったという場合には、これは損害賠償の問題にもなります。また契約違反、債務不履行の場合もございましょう。結局場合によりまして損害賠償であり、あるいは損害賠償ではないけれども、契約上の補償というように相なるわけでございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 この賠償であろうと、代償であろうとこの補償金を支払う場合に、この第六条にも規定があるようでありますが、この技術財産委員会というところで問題を検討し、それからいよいよ実質的にそれを支払うという場合には、それは財政的にはどういうところから出るのか、関係事業者にもその費用の分担があるのか、あるいはそれは国家的のものなのか、どうもこれだけでは私はよくわからないのですが、御説明願いたいと思います。

小山雄二防衛庁装備局長

○政府委員(小山雄二君) 技術財産委員会でそういう問題についてやりますことは、財産委員会がいろいろその当該の問題を取り上げてこれを各両国政府に勧告するという立場であります。具体的の問題についてどれだけ補償したらいいかということは、両国政府のきめることになると思いますが、この協定で提供を受けます特許権とか技術とかは、第一条のコマーシャル・ベースに乗っかるものが大部分でありまして、四条関係等で国が補償を払うというものは非常に少いんではないかと一応考えております。もしそういう事件が起りました場合には、防衛庁の既定経費からそれが出されるということに相なろうかと思います。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 どうもこの協定の条文の中にあるのですが、私人の利益をはかるためにということがあって、今御説明を聞いておりますと、実質上は防衛生産に関係のあるものに対して、場合によつては国家がその責任をもってその賠償の責めに任ぜねばならんということは、少し筋が通らないのじゃないか。それはむしろ受益者、それが公然たると内密たるとを問わず工業受益者がその責めに任ずべきであって、その結果国家がその財政的な賠償金を支払うんだというのはどうしても納得できないのですが、実質上起る起らんは別として規定ではそうなっているのですが、これはどうでありましょうか。

下田武三外務省条約局長

○政府委員(下田武三君) 第一条の普通の場合、つまりコマーシャルのコントラクトの上に立つ場合には、これは会社同士の契約でございますから当然会社が払うということになると思います。第四条の相手国政府から、あるいは相手国の個人から、直接政府が提供を受けたという場合だけが、政府の補償の問題が起るわけでございまして、さきにも申しましたように、第四条の(a)の場合には技術財産委員会の勧告によって政府が払うわけでございます。(b)の方はこれは政府が債務不履行、または契約違反等のために補償する場合でございますが、この場合には国内法上でもかような措置をとると書いてございまして、もし日本政府がそういう要求を受けました場合には、日本の民法なり何なりの該当規定に従って補償をする、これは政府自体が受益者でございますからそうなると思います。普通の民間会社が受けておる場合には契約によって会社が支払うわけでございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 政府から政府への場合は政府自体が受益者であることはよくわかりますが、しかしその知識を受けただけではだめなので、それをどこかの工業生産者に提供をしてそれが物品化されて初めて生きてくるのですが、そういう場合においてもやはり政府がその責めに任じて、そうして実質上の特許権なり知識というものを個人、私人の、私の会社に提供することになるのですか。

下田武三外務省条約局長

○政府委員(下田武三君) 政府が提供を受けまして、これは日本政府だから日本政府のためにだけに、この知識を提供するのだという同意の基礎の下に、アメリカ人から提供を受けたとする場合に、政府はそれを使ってみたくなってどっかの、三菱重工業かどっかに所有者の同意を得ずして流したというような場合には、これはアメリカ人からしますと約束違反だということに相なりますので、実際には日本政府としてはそういう場合には、三菱重工業とアメリカの所有者との間の契約を締結することを勧奨するでしようが、しかしそのいとまのない場合もあり得るわけであります。そういう場合には日本政府の責任において補償をいたします。しかしもしそれによって実際に受益するものが会社であるといたしますならば、日本内部の問題として、あと防衛庁と三菱重工業との間の関係は、内部問題としてあとで処理していいわけでざいます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 この補償の場合ですね、両政府に勧告する、第四条(a)の場合ですが、ありますが、こういう場合にアメリカ政府が、場合によったら一部を分担するということはあり得るのですか。

下田武三外務省条約局長

○政府委員(下田武三君) この場合はまずアメリカ政府が自国人に補償金の支払いを行なっておるわけでございまして、それをまたアメリカ政府が日本政府に提供したという場合でございまして、そこで日本政府はわずかに十機の飛行機のためにしかこれを利用しなかったのだ、しかしアメリカの方では百機の飛行機にこれを使っておるとすると、これは平等に負担する理由はないじゃないか、十対一くらいの割合でやるのが適当ではないかというようなことを財産委員会できめまして、それで政府に勧告するわけでございます。そうすると、アメリカが十支払ったうちの一を日本政府から払ってもらって、それでこの補償の取りきめは満足に履行されるというようなことに相なると思います。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 そういう場合に政府が考えて、この第四条の(a)と(b)のここでどちらのケースの方が多く発生すると予想されますか。

下田武三外務省条約局長

○政府委員(下田武三君) これは協定発効後実際にどういうふうに動くかわかりませんが、まず第四条自体がこれは非常に例外的の場合でございまして、その例外的の第四条の中の(a)と(b)とどちらが多いかと申しますと、むしろ(a)の方が、つまり一旦アメリカ人の技術上の知識は、アメリカ人の手を介して日本側が入手するという場合の方が多いのではないかと思います。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 今防衛庁の御説明で、この国家が責任を負わなければならない場合は防衛庁の経費からまかなうと言われましたが、予算上は何ら、かりにこういうことが起っても、金額の多い少いは別として新しい措置は必要としないわけなんですか。

小山雄二防衛庁装備局長

○政府委員(小山雄二君) 防衛庁の予算は大体大ワクできまっておりますが、その都度使うときは公共事業費と同じように大蔵大臣、大蔵省と協議をいたしまして示達を受けてやっております。万一そういう問題が起りますれば、金額的には問題にならないと思いますが、その都度大蔵大臣と協議して出す、やりくりをしてきめていくということになると思います。足りなければ来年ということになる。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 この第六条の技術財産委員会の構成員の場合は、おおよそどういうような人が想定されるのでありますか、個人の名前じゃないのです。どういう立場の人ということです。

下田武三外務省条約局長

○政府委員(下田武三君) これはこの協定の目的に即応いたしまして防衛当局たる防衛庁と、特許の主管庁たる特許庁の方に委員になっていただくことを予定いたしております。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 これは総括的にいって、大体アメリカのこういう軍需生産の技術が日本に導入され、それがただで使われてはばかばかしいから、こういう協定でアメリカの、主として軍需生産者たる私人の利益を保護するというのが、この協定の真目的ではないのですか。どうですか、率直にいって。

下田武三外務省条約局長

○政府委員(下田武三君) 前にもMSA協定締結交渉時代の経緯を申し上げましたが、純粋にアメリカの利己的な見解からいいますと、アメリカの軍需工業製品が売れるためには、アメリカ政府に買ってもらって円建てで日本政府に供与されるという形が一番アメリカとしては利潤も入りますし、商売もできるわけでございまするから、アメリカ側に得だと思います。しかし日本側は完成品をもらうのはいいけれども、日本自体でも作りたいという熱烈な希望を表明いたしまして、それに応じたわけでございます。そこでアメリカ政府としては日本の防衛生産が育成されるということにやはり利益を感じておりますので、アメリカの業者の利己的な利益よりもこの日本に対する好意に重きをおきまして、むしろ自国軍需産業の利益を犠牲にして、日本の方に利便をはかるという考えがなかったから、この協定はとうていできなかったものでざいます。またアメリカの国防省当局といたしましては、予算の点もあるでございましょう、自国の軍需産業の製品を自分の予算を使って日本に円建てでやる場合よりも、特許権の補償を分担して日本側に特許権を回した方が予算上からいいますとあるいは少い、そういう見地もまたあったでございましょう。いずれにしろ、アメリカとしては好意として日本側に供与するという立場に立って、この協定ができておるわけでございます。

梶原茂嘉緑風会

○委員長(梶原茂嘉君) 他に御発言ございませんでしょうか。他に御発言もないようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

梶原茂嘉緑風会

○委員長(梶原茂嘉君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 私は日本社会党を代表して簡単に本協定に対して反対の意思を表明したいと思います。その理由は、言うまでもなく、現行日本国憲法においては戦力の保持を否定しておるわけでありますが、この協定においては、戦力に関係を持つ防衛生産のための特許権なり、あるいは技術の交流を主たる目的とするのが本協定でありますから、戦力を保持すること自体に反対しておるわが党としては、これに関連する本協定を承諾することは困難であります。以上の理由をもって私は本協定に反対いたします。

梶原茂嘉緑風会

○委員長(梶原茂嘉君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

梶原茂嘉緑風会

○委員長(梶原茂嘉君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。  防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕

梶原茂嘉緑風会

○委員長(梶原茂嘉君) 挙手多数であります。よって本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお本院規則第百四条により本会議における口頭報告の内容、及び第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他、自後の手続につきましては慣例によりこれを委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

梶原茂嘉緑風会

○委員長(梶原茂嘉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本件を承認された方は順次御署名を願います。    多数意見者署名     小滝  彬  鶴見 砧輔     齋藤  昇  新谷寅三郎     津島 壽一  長島 銀藏     野村吉三郎  河井 彌八     後藤 文夫  佐藤 尚武

梶原茂嘉緑風会

○委員長(梶原茂嘉君) 本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十六分散会

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