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24回国会参議院1956/03/08

外務・農林水産委員会連合審査会 第1号

発言数
64
登壇者
12
会派数
4
開催日
1956/03/08

会議録

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) それではただいまから外務・農林水産連合審査会を開会いたします。  慣例によりまして私が連合審査会の委員長の職を勤めさしていただきます。参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず本連合審査会に御出席下さいましてまことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  実は去る一日米国原子力委員会が水爆実験のための危険水域を発表いたしましたので、外務委員会は事の重要性にかんがみまして、本問題について各方面の有識者の御意見を拝聴いたすことに決定いたしたのでございます。ところが参考人の方々をお招きいたしますなら、ぜひこれに参加して一緒に貴重な御意見を承わりたいとの農林水産委員会からの強い御要望がございましたので、本日の連合審査会を開会することに至った次第でございます。連合審査会といたしましては皆様方の御忌憚のない御意見を大いに期待しておる次第でございますが、時間の都合上大体お一人十五分ぐらいの程度で要旨をお述べをいただきたいと思います。原則といたしまして参考人の方々の御発言が終りましてから質疑に入って参りたいと存じておる次第でございますが、安井教授が外遊御準備のために非常にお急ぎのようでございますので、まず安井教授に御発言願いまして直ちに質疑に入りまして、そのあとでほかの方々の御発言を願いたいと思います。まず農林水産委員会の方からごあいさつがあります。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 開会に当りまして農林水産委員会を代表して一言お礼の言葉を申し上げます。  水爆実験のことは世紀最大の不幸でありまして、かねてわが参議院におきましては院議の決定によって関係国の猛省を促しておるのであります。しかるに最近アメリカ原子力委員会によって、近くエニウェトク実験場における水爆実験の報が伝わり、私どもをしてがく然たらしめておるのであります。水爆の実験は人類のすべてに対して重大な影響を及ぼすものでありますが、すでに御承知の通り前回の実験によって最も悲惨な被害を受けたのは、わが国水産業及び水産業者でありますので、私たち水産業に関係いたす者はこの問題に対して特に重大な関心を払っておるのであります。あたかもこのときに当って当外務委員会におかれましてこの委員会が開かれることになりましたので、まことに機宜を得た御処置と存じ連合審査をお願いいたしましたところ、さっそく御快諾をいただきこの御厚志に対して山川外務委員長並びに外務委員各位に心から感謝いたしておる次第でございます。今日の委員会を契機として人類最大の不幸をなくさせるために一段と努力いたしたいと存じます。一言お礼のあいさつを申し上げます。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) それではこれから参考人の御発言を願いたいと思いますが、まず安井郁君。

安井郁法政大学教授

○参考人(安井郁君) 先ほど委員長の御説明にもありましたように、去る三月一日アメリカ原子力委員会はマーシャル群島のエニウェトク環礁における原水爆実験を四月二十日以後に開始するとの発表を行い、その周辺の公海に三十七万五千平方海里にわたる危険区域を設定することを公示いたしました。その日はちょうどビキニ被災の二周年に当り、日本国民は第五福龍丸の悲劇を追憶して原水爆禁止の決意を新たにしていたときでありますから、アメリカの発表に対する国民の憤激はとみに高まっております。原水爆禁止を要求する日本国民の署名は三月一日現在で三千三百五十一万二百六十四人に達しております。私たちはこの署名に示された国民感情の高まりを尊重すると同時に、原水爆禁止の問題を冷静に学問的に分析することを忘れてはなりません。本日のこの会合においては私は国際法学の立場から原水爆実験、特にマーシャル群島におけるアメリカの原水爆実験が適法であるか違法であるかを検討することにいたします。  結論を先に申し述べますと、私はマーシャル群島におけるアメリカの原水爆実験は国際法に違反するものであると認めるものであります。その論拠を提示する前に一つの前提問題に触れておくことは必ずしも無意義ではないと思います。それは原水爆実験の禁止を直接に規定する国際法は存在しないから原水爆実験は適法であるという議論の当否であります。国会においても最近この種の議論が盛んになされておりますが、私はそれは誤りであると思います。私の主張の理解を容易にするために極端な例をとりますと、今この会合が開かれておる議事堂前の広場で原水爆実験をすることを禁止する直接の規定は日本の国内法にありません。しかし何人も議事堂前における原水爆実験が国内法上適法であるとは考えないでありましょう。その場合には私たちは国内法の精神や原則から見て、議事堂前の原水爆実験が適法であるかいなかを検討しなければなりません。この点は国際法においても同じことであり、私たちは原水爆実験の禁止を規定する国際法が存在しない場合にも、国際法の精神や原則に照してこの問題を検討し、その上で結論を出すべきであると思います。前提問題はこれくらいにとどめて本論に進むことにいたしましょう。私は次の三つの論拠からマーシャル群島におけるアメリカの原水爆実験は国際法に違反するものであると認めるものであります。  第一は、この実験がアメリカの通常の領域内で行われるのではなく、信託統治地域であるマーシャル群島で行われるということであります。アメリカは小規模の実験をその領域内のネヴァダで行なったことがありますが、大規模の実験については信託統治地域であるマーシャル群島のビキニ環礁やエニウェトク環礁を最適の地として選定しております。そこで原水爆実験と信託統治制度との関係が問題となります。信託統治制度の基本目的がいかなるものであるかは国際連合憲章に規定してありますが、この制度の精神から見て最も重要なのは信託統治地域の住民を保護することであります。これについて国際連合憲章は、各信託統治地域及びその人民の特殊事情、並びに関係人民が自由に表明する願望に適合するように、信託統治地域の住民の政治的、経済的、社会的及び教育的進歩を促進すること、及び自治または独立に向っての住民の漸進的発達を促進することなどを規定しております。個々の信託統治協定はこの点をさらに具体的に規定しております。マーシャル群島を含む太平洋旧日本委任統治諸島についても信託統治協定が作成されましたが、この信託統治協定は施政権者としてのアメリカに、住民の健康を保護することその他の具体的義務を課しているのであります。この信託統治地域の住民の保護という観点から見れば、住民におそるべき災害をもたらし、原水爆実験をこの地域で行うことは明らかに信託統治制度の基本目的に反するものといわなければなりません。もっとも国際連合憲章は信託統治制度の基本目的の一つとして、国際の平和及び安全を増進することを掲げ、また信託統治協定において、その協定が適用される信託統治地域の全部または一部を含む戦略地区を指定することを認めております。太平洋諸島の信託統治協定に基いてマーシャル群島も戦略地区として指定されました。これに関連して施政権著たるアメリカは、国際の平和及び安全の維持について国際連合憲章に規定する役割を果すために、信託統治地域に陸、海、空軍の根拠地や要塞を建設する権利を認められております。しかしこのことからアメリカが信託統治地域を原水爆実験のために使用することが許されるものと推論することは困難であります。なぜなら原水爆実験が国際の平和及び安全の維持増進に必要であるとは一般に認められず、かりにこの問題をしばらくおくとしても、前述の通り、原水爆の実験がその地域の住民におそるべき災害をもたらし、その点において信託統治制度の基本目的と決定的に矛盾するからであります。施政権者が信託統治地域の住民の利益や願望を顧みず、この地域を信託統治制度の基本目的に反する方法で利用することに対しては、きびしい批判が加えられなければなりません。かくてはこの制度の人道主義的精神が失われ、信託統治は戦略地区獲得の方式を偽装するものとなり終るのであります。サンフランシスコの平和条約第三条により、信託統治制度のもとにおくことを予定してアメリカの施政権下に移された日本の琉球諸島、沖繩諸島についても同じことが言えると思います。ここに第二次世界戦争後におけるアメリカの政策の一つの断面がはっきりと現われております。アメリカの原水爆実験について、マーシャル群島の住民が国際連合の信託統治理事会に請願書を提出し、重大な災害を伴う原水爆実験を中止するよう要望いたしました。その請願書によれば、住民は生命の危険にさらされるのみならず、住みなれた土地から追われるという悲惨な状態にあります。住民の自由と幸福は原水爆実験によって根本的に侵害されているといわなければなりません。これら未開地域の住民が国際機関に請願するというようなことはかつてなかったことであり、それをあえて断行したのは、彼らの苦痛がどのように深刻であるかを実証するものであります。この問題についてはインドその他の諸国からも抗議がなされました。国際連合の信託統治理事会においては、遺憾ながら住民の利益を十分に保護するに足る決定がなされませんでした。この問題の根本的な解決はなお今後に残されているのであります。以上が私の第一の論拠であります。  ビキニの原水爆実験と国際法との関係について次に問題になるのは、この実験が公海の広い範囲にわたって危険を及ぼすというととであります。そのためにアメリカは一九四八年以来長期にわたってエニウェトク環礁、ビキニ環礁の周辺の公海に危険区域を設定し、その区域への立ち入りの危険を警告いたしました。これについて国際法上において公海は自由であるから、公海において原水爆の実験を行うこともまた自由であるという見解が、ビキニ事件に関するアメリカの立場を擁護するために一部の人々によって主張されております。この見解が正しいかどうかを判定するためには、国際法上において公海の自由とはいかなる意味のものであるかを学問的に検討しなければなりません。国際法の角度から眺めるとき地球上の空間は国家の領域と公海とにわかたれます。国家の領域は国家が原則として排他的に支配するととのできる区域であります。これについても国際法の制限が幾らかありますが、国家はその領域においては自由に立法、行政、司法の権力を行使するととのできるのが原則であります。これに反して公海はいかなる国家もこれを排他的に支配することを許されないのであります。国際法は、いずれかの国家が公海の全部または一部から他の国家または国民をしめ出して、自国のみがこれをもっぱら支配することをかたく禁止しているのであります。これが公海の自由の本来の意味であり、ここに公海の自由の原則の根本があるのであります。この意味における公海自由の根本原則のワクの中で、国際法は公海の使用の自由を認めております。すなわちいずれの国家の船も自由に公海を航行し、またいずれの国家の国民も公海において自由に漁業に従事することができるのであります。この公海の使用の自由は無制限のものでないことを注意しなければなりません。それは先に述べた公海自由の根本原則、いかなる国家も公海を排他的に支配することを許されないという根本原則に反しない限りにおいて認められるものであります。国際法上において公海の自由とはいかなる意味のものであるかは以上の検討によって明らかになったかと思います。  ところでアメリカはエニウェトク環礁やビキニ環礁における原水爆実験のためにその周辺の公海の広い範囲にわたって危険区域を設定いたしました。これはその区域への立ち入りを禁止したものではなく、立ち入りの危険を警告したものにすぎないと言われておりますが、われわれはアメリカ当局の告示の文字よりもその現実の効果に注目することが必要であります。重大な危険を伴う原水爆実験のために危険区域を設定する以上、実際にはその区域への立ち入りは不可能となり、他国の船の航行の自由や他国民の漁業の自由は著しく制限されることになります。事実日本の漁船はその区域から完全に締め出されたのであります。かくてアメリカによる原水爆実験のための危険区域の設定は、アメリカが公海の一部を排他的に支配することを意味し、明らかに公海自由の根本原則の侵害と言わなければなりません。公海は自由であるから、公海において原水爆実験を行うこともまた自由であるとする見解は、国際法上における公海自由の原則の意味を全く誤解したものであります。もっとも従来においても国家が実弾射撃などのために公海の一部を使用することがあります。しかしそれはきわめて短い期間を限り、かつ狭い範囲において行われるものであり、それが他国の船の航行の自由や他国民の漁業の自由を著しく制限することはありません。公海の広い範囲にわたって危険区域を設定し、何カ月も何カ年も引き続いて重大な危険を伴う原水爆の実験を行うことは、従来の例とははなはだしく性質を異にするものであります。両者を同一に論ずることはできないと思います。これが私の第二の論拠であります。  これまで私はビキニの原水爆実験の問題、エニウェトク環礁の原水爆実験の問題を信託統治制度及び公海自由の原則との関係において論じてきましたが、原水爆実験の影響は信託統治地域及びその周辺の公海にとどまるものではありません。原水爆実験のもたらす災害は、放射能による大気や海水の汚染によって、実験地から遠く離れた日本の領域及び国民にも及んでいるのであります。これはきわめて重大なことであり、原水爆実験のおそるべき本質はここに最も明瞭に現われております。この点においては、ソ連が自国の領域内において行う原水爆実験にも国際法上の理論が適用されると私は考えます。まず第一に、他国の領域及び国民に災害をもたらす原水爆実験が国際法上において許されないことは言うまでもありません。国際法の観点から原水爆の実験を論ずるとき、信託統治制度や公海自由の原則との関係のみを取り上げ、それが他国の領域及び国民に影響することに触れないならば、この問題に関する重要な論点を見逃すことになるのであります。これが私の第三の論拠であります。  以上の考察を総合するとき、アメリカがマーシャル群島において原水爆実験を行い、信託統治地域の住民、その周辺の公海の漁船、他国の領域及び国民等に災害をもたらすことは、国際法上の不法行為であると断定して差しつかえないと思います。アメリカとしてはこの行為から生じた一切の損害を補償する国際法上の責任があると私は考えます。  以上の見解は決して日本の立場からの主観的な主張ではありません。昨年一月私はカルカッタにおけるアジア法律家会議に日本代表として出席し、原水爆問題に関する主要報告を担当いたしました。この会議にはアジア諸国のみならずアフリカ及びヨーロッパの数国をも交えて、約二十カ国から百余人の法律家が代表として出席いたしましたが、原水爆問題についてすべての代表の見解が一致し、一つの決議が成立いたしました。その内容は次の通りであります。    原水爆その他の一切の大量破壊兵器の禁止に関する決議   一九四五年に広島と長崎に落された原爆は、一瞬にして三十万の人命を奪つた。現在における原水爆の破   壊力は、それよりも遥かに強大となつている。一九五四年にビキニ環礁において行われた実験は、日本国民およびマーシャル群島の住民に広範な被害と苦痛をあたえた。   これらの悲惨事がすでに生じているにもかかわらず、若干の政府はなおかかる実験を継続することを決意し、さらに最近のNATOの決議に明らかに示されているように、原子戦争をはじめようと準備している。原子戦争の結果は人類、特にアジア人の大量殺害をもたらすであろう。   人類は決してなんらなすところなく原子戦争の惨禍に身をゆだねることはない。この数年来、原水爆禁止署名運動が多くの国民によって熱心に進められ、それはいまや世界的運動に発展しようとしている。   われわれアジアの法律家は、かかる原子戦争の惨禍をもたらす政府はその国民および人類にたいして憎むべき罪を犯すものであり、世界のすべての国民によつて糾弾されるものであることを宣言する。われわれはかかる犯罪は国際協定および国際法学によつてすでに規律されかつ非難されているものであることを宣言する。   われわれアジアの法律家は、信託統治地域、公海および他国の領域に重大な危険を及ぼす原水爆実験は国際法の基本原則に違反するものであることを宣言し、関係国政府に実験の即時停止を要求する。   毒ガスおよび細菌のごとき残忍な大量破壊兵器は国際協定によつてすでに禁止されている。同様に原水爆の使用または使用の脅威も、戦時においてさえ、国際法の人道的精神および一般原則に違反するものであり、われわれアジアの法律家は関係国政府が原水爆その他の一切の大量破壊兵器の製造、貯蔵、実験および使用を禁止する明確な協定を速かに締結することを要求する。   原子力を大量破壊のために悪用することなく、これを人類の真の福祉の丸めに利用し、もつて世界の平和と繁栄に貢献することを、われわれアジアの法律家は世界のすべての国民に訴える。   一九五五年一月三十日            カルカッタ  これが決議の全文であります。この決議の中でアジアの法律家が信託統治地域、公海及び他国の領域に重大な危険を及ぼす原水爆実験は、国際法の基本原則に違反するものであることを宣言し、関係国政府に実験の即時停止を要求していることは今お聞き及びの通りであります。ここでは抽象的な表現を用いておりますが、それはまさにマーシャル群島におけるアメリカの原水爆実験に該当するものであります。  アジア法律家会議における報告は、ヨーロッパの雑誌に掲載されてアメリカにも伝えられましたが、最近それを読んだアメリカ国際法学会会員エマニュエル・マーゴリス博士からその感想に添えて博士の「水爆実験と国際法」と題する論文が送られて参りました。アメリカの権威ある法律雑誌エール・ロー・ジャーナルの巻頭に掲げられたこの論文は、本日の私の証言とほとんど同じ角度からではありますが、さらに豊富な資料を用いてマーシャル群島におけるアメリカの原水爆実験の違法性を学問的に論証したものであります。その結論は、太平洋地域の原水爆実験は即時停止されねばならない。それは人道の法則の指示するところであるとともに、国際法の要求するところであるというのであります。アメリカの国際法学者のこの論文を読んで、私は真理は一つだという確信を深めるとともに、筆者の勇気と良心に感動いたしました。マーゴリス博士は、太平洋地域の実験の継続に対する反対のケースを慎重に検討することが、世界社会におけるアメリカの信望を維持するためにきわめて必要であると、誠意を尽してアメリカ政府に警告しております。これこそ真理に忠実であるとともに、心から祖国を愛する科学者の態度ではないでしょうか。  世界の国際法学界のこのような動向とあわせて考えるとき、このたびインドのメノン国連代表が、インドはマーシャル群島における原水爆実験の問題を、国際司法裁判所に提訴する用意があると言明したことは、重要な意味を持つものであります。日本国民はこの報道を心から歓迎し、インドの態度に敬意と感謝を寄せるとともに、これこそ日本政府が他国に率先してとるべき措置であるという感を深くしております。  私は日本政府が原水爆実験に対して、特に目前に追ったマーシャル群島におけるアメリカの原水爆実験に対して、従来の消極的な態度を改め、積極的な態度をもって臨むよう希望いたします。それはアメリカのマーゴリス博士の言葉を借りれば、人道の法則の指示するところであるとともに、国際法の要求するところであります。  国会においては各派共同提案により、原水爆実験禁止の決議が全会一致で可決されました。原水爆禁止運動を進めている私のところにも、この決議について国内のみならず海外からも支持と賞讃の言葉が数多く寄せられております。これが一片の決議に終ることなく、その趣旨が実現されることを心から期待して私の証言を終ることにいたします。  一言つけ加えますが、信託統治制度につきましては、参議院法制局の委嘱により「信託統治制度と日本」という著書を書きまして参議院法制局にございます。また原水爆実験に関するアジア法律家会議の報告は私の著書「民衆と平和」に掲げてございます。それぞれを基礎に参照していただければ仕合せに存じます。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) ありがとうございました。それではまず安井教授に対する御質問がございましたらどうぞ。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 安井教授から非常に明快なる公述がありましたので拝聴したのですが、その論拠といいますか、国際法上はっきりした原水爆の実験の禁止の規定がないから、従って実験する権利があるというような趣旨があるけれども、それは間違っておる。こういうことを言われて三つばかりの論拠をあげられたのですが、私もまことにそうだと思うのです。はっきりした国際法上の禁止というふうなものが、まあ国際法というものは、ゆえなく主として慣習的に生まれる。あるいは国家間の協定、条約等によってやはり積み上げ的に作られていくものですが、新しいこういう事態に対しては国際法にはっきり禁止がないから、だから権利があると言うのは非常な間違いであるというのは、まことに私もそうだと思う。ただその次に、果してしからば完全な国際法上の不法行為である、こう言えるかどうかという点について、私、立法論としては今教授の言われたように傾いてはおるのですが、しかしそこまで断定できるかどうかという点について、これはお互いに検討をし、良心的に悩み、そうして法律的に果してそれが論拠が十分にあるかどうか、説得力があるかどうかということを慎重に検討しなければならぬ。その意味において信託統治の区域における実験と公海における実験、それから領土、領空における実験についてもこの際慎重に私は考える必要があると思う。当面起っておりますのは信託統治及び公海の問題でありまするが、実は最後に安井教授も触れられましたように、領土、領空の上においても、一体従来の領土、領空における国際法上の一般的な排他的支配権というもので律し得るかどうか。自分のうちでたとえば幾らたき火をしても自由だということは言えないと思う。隣りのうちにやはり火が移る可能性がある。これがやはり大気を汚染する放射能の特殊性だと思う。従ってそういうものを総合的に考えて、少くともはっきり不法行為と断定できるかどうか。不法行為と断定できなくとも、いわゆる少くとも権利ではなく、そうかといって不法行為でもないけれども、一種の自由というものの中間地帯がありはしないかと思う。私は法律のことはよくわからないけれども、しかしかりに自由があっても、その自由は無制限の自由ではないから、ほかの国なり他国民なりに損害を与える場合には、それはそれに対する補償というものをやはり法律的にはっきりしておかなければならぬと思う。  以上のような一般的な抽象論ではなはだ恐縮ですが、考えまして、確かに信託統治の場合には、教授も指摘されましたように、戦略地区とその指定された信託統治区域については、この場合特に矛盾する原則があるわけです。一つは国際平和と安全のための措置がとれるということ。もう一つはより、何といいますか、人道的な問題といいますか、やはりその当該区域の住民の利益ということを主に考えなければならぬ。この二つの点からいって果して絶対にいかなる原水爆の実験もやることは不法である、この点が非常な問題だと思う。そこでこの点についてこの不法行為と断定できるかどうか。かりに不法行為と断定できるとしても、少くともこれを法律上争う場合には、今もお話があったような、しからばその不法行為なることをどういうふうにして証明していくのか。結局政治問題として国際連合の信託統治委員会でやることも一つの方法でしょうが、やはり国際司法裁判所に提訴する、それで法律論としては争う。こういうことも真剣に考えなければいかぬ。そこで信託統治区域に関する不法行為の見解をさらにお示し願うとともに、それを法律的に救済するのには、国際司法裁判所に提訴する、あるいはその他でいかなる救済の方法があるかということについての御意見を伺いたい。  それから第二の問題が公海の問題ですが、これはまさしく今教授が言われた通りだと思うのです。私の非常にしろうと的な見解ですが、教授が言われたように、今までの実弾射撃のように、公海は排他的な支配は許されないが、実際大して迷惑を及ぼさないのだから、使用の自由ということで実弾射撃くらいは、これは各国の権利として認めたのだか、自由として認めたのだかよくわかりませんが、これは通例認められておる。これで公海における原水爆の実験の使用といいますか、権利というものを立証しようということはまことに不当だと思う。そこで少くともこの信託統治区域の問題とは違いますが、ある意味ではこの公海における原水爆実験の無制限の自由なる権利というものは、もっと強い意味で私は反対できはしないかと思う、私のしろうと的な感じですが。そこでこれもやれば必ず不法行為と断定できるかどうかということが法律論としてさらに残っております。この点についても明確にしていただきたいのですが、私はしろうと的に考えて、少くとも不法行為といきなり断定できなくても、今までの観念で無制限にやるという権利は、これは完全に否定されるべきものではないかと思います。無制限にやる権利はない。もしそうなれば、そういう不法行為から出てくるところの責任問題以外に、使用の乱用による責任というものがはっきり証明できはしないか。そこで教授が言われますように、私は不法行為なりと立証されればもちろんいいのですが、かりに不法行為ということが議論において分れても、無制限の自由ということは絶対に認められていないということのほうがより多くある議論ではないか。その意味から言っても勝手にやった場合の一切の損害の補償の責任は、この権利を乱用する側にある。しからば具体的にどういう補償かということを考えると、これは直接の被害を降下物から受ける。たとえば第五福龍丸が受けた被害、これも人的、物的の損害があるでしょう。これは完全に賠償の責任がある。それから第二には、間接の被害に対するコンペンセーション、補償というものが当然なければならぬ。それはいろいろございましょうが、たとえばそこは日本の最も重要な漁区なんですから、得べかりし漁獲が得られなかったことに対する間接損害の補償、あるいはさらに理屈を発展さしていけば、少くともその漁場に入らなくても、えらく遠回りしなければならぬ、迂回することによる損害の補償もあるでしょう。それからそこの漁場でとったマグロ等がやはり汚染している場合があります。そうするとこれを廃棄しなければならない。それに対する損害、さらにはそうでなくても日本のマグロにけちがつく、汚染してはいないか、いわゆるビキニ・マグロという風評によって売れなくなる、値下りする、そういう間接被害に対するコンペンセーション、こういったような多くの損害があると思うのですが、これはまああとから漁業界の代表の方から詳しい実情はお訴えになると思いますが、法律的に見て損害補償の範囲というものを概括的にお述べ願ったらいいのではないかと思うのです。最後に私が最初にちょっと申し上げましたのは、これは教授も全然同じ立場から広く世界に、また両陣営に訴えておられるということをわれわれはよく承知しております。それでこの信託統治区域及び公海の問題についての法律論とあわせて領空、領海においてもたとえばアメリカの場合でもオーストラリアの場合でもソ連の場合でも同じですが、領空、領海でやれば無制限の自由ということは、これは許されないと思います。これは実際大気の汚染で放射能の雨の問題もあるのですが、その点についても従来の領土、領空に対する絶対的な、排他的な主権という観念を制限していくような法律論が成り立つと思うのでございますが、この三つの点についてお答え願えれば幸いだと思います。

安井郁法政大学教授

○参考人(安井郁君) 第一点は信託統治制度の本質に関するだろうと思います。私は先ほど信託統治制度の規定の精神という面から取り上げたのですが、実は参議院法制局の調書の中では、そういう精神を表に掲げている信託統治制度というものは、その国際政治的意味においては実は戦略地区を確保するとかその他のいろいろな含みを持った第二次世界戦争後の一つの措置だというふうに私はこれをとらえております。そこでその矛盾が、まさに曽祢委員の指摘された第一項の国際の平和及び安全を守るためというあの基本目的とそれから第二項以下の住民の利益を守るというところの規定の矛盾、あるいは対立に現われているのじゃないか、それで原水爆実験を信託統治で行うことを基礎づけようとする人は、国際の平和及び安全ということを極端に広く解釈いたしまして、これで原水爆実験も信託統治において可能となるのだという主張をするだろうと思います。私はこの制度の背後に隠されている政治的意味からいって、そういう主張が出てくることはむしろ政治的必然だと思っております。しかし私はむしろそういうことを知りながらこの信託統治制度の根本を考えた場合、少くとも次の点は客観的に主張できるのじゃないか、それはそういう国際の平和及び安全のために利用するということも、次に書いてあるところの住民の根本的な利益との河立性を考えてやらなければならない。ところが原水爆実験を平時に行うということはそのらちをこえているのじゃないか。私はそこへ参りますと単なる主観的意見ではなくて、相当客観的に、その点、信託統治制度の現実の機能を心得つつも、法律学的に主張する一つの客観的論拠があるのじゃなかろうか、それは私の考え方でございますけれども、その点はさらに曽祢委員その他の各委員の御検討をお待ちしたいと思っております。  それから公海の問題でございますね、公海の問題につきましては、私は先ほど申しましたような意味において、かなり客観的に公海の広い範囲において原水爆実験を行うこと、特にそこから他国の船舶や漁業を締め出すということ、現実の結果においてそういうことをもたらす措置をとることは、単に使用の自由の問題ではなくて、公海を排他的に支配できないという公海自由の基本原則に衝突するという面を、私ども法律学的に確認しなければならないのじゃないかと思う。私としては二年前の衆議院の国会証言以来この点を非常に学問的に確信を持っているのでございますが、この点を一歩譲りましたとき、曽祢委員の御指摘のような、いわゆる乱用論でございますね、かりにある程度の乱用が、使用が認められるとしても、このような使用は乱用ではないという乱用論が出てくる。私ほど強い公海自由の原則に対する違反を主張しない学者でも、そういう意味において公海を使うことは乱用であるという曽祢委員の今の御指摘にはおそらく反対しないのじゃないか。私どもは第一段において完全なるこれは公海の自由の原則の違反である。それは使用の自由のみならず、基本的な公海自由、排他的支配を禁止する公海自由の原則に違反するものだということを主張したいと思いますが、一段譲ったときには、その乱用論のところになると思います。その点について、特に損害の範囲についても御質問があったわけでございますが、これは前にビキニ補償が問題になりましたときに、私がイタリアのアンチロッティの説を引用いたしまして朝日新聞に、ビキニ補償と国際法という論文を出しました。ビキニ事件が起りました一昨年八月一日だったかと思いますが、実は間接損害、直接損害ということが当時国内においても各方面から問題になりました。非常に素朴な議論では、間接損害は一切国際法では補償しないのが慣例だという議論がなされた。私はこれは誤りだと思っております。そうではなくして、問題が起ったとき、事件が起ったとき、どの程度までその因果関係をたどって、そうして補償をするのが合理的かということを考えるのが、国際法の突き詰めたところの、慣例が一致しようというところで、そうしてたまたま間接損害という言葉が用いられる場合には、その因果関係の範囲をこえた損害については間接損害という名前をおっかぶせて、そうしてこれを否定するというような判例はありますけれども、根本は間接損害を補償しないとかいうことではなくして、どこまで補償するのが因果関係の点からいって合理的かということになるのであります。それで、たとえば第五福龍丸の事件の場合も、直接に死んだ人とか傷ついた人だけでなく、それによって日本の水産界がこうむったような、その損害を明らかにして、われわれは因果関係の系列をたどることができるのでありますが、やはりそういうところまで及ぼすことは決して国際法の慣例に違反するものではないというふうに考えておりますけれども、これはまたこまかいその点の判例等になりますので、また別の機会に、他の参考人もいらっしゃいますから、申し上げたいと思います。  それから第三点の両陣営の問題及びそれに関連して領域内、領土、領海、領空における実験がどうであろうかという点でございます。これは私第三の論拠として、先ほどちょっと触れましたが、特にこの点については精密に申しますと、私は程度の相違というものが——信託統治地域や公海における実験、それから自国領域内における実験等に——程度の相違というものがあるのじゃないかと見ております。信託統治の場合とか公海の場合には、先ほど申しました信託統治協定あるいはまた信託統治に関する国際連合憲章の規定とか、あるいは公海自由の原則に違反いたします場合は、国際法論、その角度からもこの違反性を論証することはできるわけであります。自国領土とか領空とか領海内においてかりに実験した場合に、そういう信託統治の問題とか公海の問題とかは比較的少く……公海の問題は多少出て参ると思いますが、主としてそれが他国の領域及び国民に対してどういう被害を及ぼすかという、その点になってくると思います。その点では私はもしそれが、他国の領域及び国民に何らかの形において被害を及ぼすならば、自国の領土、領空、領海内における実験だからといって、それはやれるという議論は成り立たない。それもやはり国際法上、他国の領域及び国民を侵害したり脅威を与えたりするということは許されないということは、国際法の基本原則から論証できるのじゃないか。ただしこの場合は信託統治制度や公海の場合よりはやや国際法違反の論点が少くなるという、そういう程度の差異があるのじゃないか、しかし決してそれを見逃してはならない。なお、付言いたしますが、その意味はお認めいただけましょう。私どものこういう主張は、アメリカにもソ連にもイギリスにも、一切の原爆保有国に対してかたよることなく示さなければならない。ことに学問的主張においては一方に偏向することがあってはならない、そのように考えておりますので、その点をつけ加えさせていただきたいと思います。

千田正無所属クラブ

○千田正君 一点だけ。領空の範囲ですが、領土並びに領海、領空を認めているのは今までの国際法の通念でありますが、領空はどこまでかという限界がはっきりしていないと私は思う。たとえばある学者は成層圏までをもってその国の領空として認めようという説、成層圏の上まで無限であるという説と、こうありますが、安井教授のお考えはどういうふうにお考えになっておりますか。

安井郁法政大学教授

○参考人(安井郁君) 私は無限であると考えております。従来は航空機の程度その他で成層圏以上は問題にならなかったのでありまして、当然それがあまり問題視されることなく、一定の限界があるがごとき見解も出たかもしれませんが、私は領空の上の範囲については無限であると解するのが正しいのじゃないか、また現実にも適応すると考えております。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) おくれておいでになった委員の皆さんに申し上げますが、安井先生にはお帰り願うことにしておりますので、御質問ございましたらどうぞ先にお願いいたしたいと思います。——ございませんか。それでは安井先生どうもありがとうございました。  それでは次に中央大学教授の田村幸策先生に御発言を願いたいと思います。田村先生に申し上げますが、時間を制限してはなはだ恐縮でございますけれども、大体十五分くらいで御発言願いまして、また委員諸君から御質問があると思いますので、それに答えていただきたいと思います。それでは田村先生。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) お使いの者から承わった御命令ではことしの四月の末から八月の末ごろまで太平洋で行われるアメリカの原水爆の実験と国際法との関係、そういうものを申し上げに来いというような御命令でございましたのでそんな用意をして参りました。  この問題は私は三つに分けて考える必要があると思うのであります。その一つは、アメリカが行いまする実験は、アメリカの固有の領土でありませんで、アメリカを施政権者としております信託統治地で行われるということが一つの点で、たとえ信託統治地であっても、果して施政権者にそれだけの権限が与えられているかどうかという国連憲章並びに信託統治協定の解釈問題、こういうことが第一の問題であろうと思います。  第二は、その信託統治地の領土及び領空内で行うのでありまするが、それは他に影響を及ぼすために予防措置としてアメリカは非常に広範囲な公海の部分に、かつ比較的長い今度の期間でありまするが、危険区域なるものを設けまして、これには別に立ち入りを禁止しておるというわけではありませんが、そこへくれば危険であるからという警告をし、自己の危険を侵してでないと入れない、しかしながら結果においては、事実上は、他の国民が公海を航行する、ナヴィゲートすることも、またはフィッシングする、漁業をすることもできないような状態に、一定の場所と一定の期間だけは、なる、これが公海自由の原則に照らしてどういうような関係になるのかという問題が第二であろうと思います。  それから第三の問題は、この前の経験から考えますると非常にいわゆる空中に飛散いたしまする放射能を帯びた灰と、それから海中で魚が体に引っつけて泳ぎ回るので今の危険区域内のみならず危険区域外にまで実験の有害な結果が及ぶ、こういう問題が一体国際法上許されるかどうかというこの三つの問題になると思うのであります。  第一の問題は、これは一昨年すでに信託統治理事会で論議が尽されておりまするので、もし諸公の御記憶を呼び起すことを許されるならば、このときには三つの案が出ましたのですが、適当な予防措置を講ずるならば実験をやってもよろしいといういわゆる英・仏・ベルギー三国案というものと、それから、もうこれは憲章及び信託統治協定違反であるからやってならぬというソ連の案と、それから、これはどうも基本的には信託統治制度というものの目的と両立しないように思う。しかしこれが果して憲章もしくは協定に違反するかいなかというものは、一つ国際司法裁判所の勧告的意見というものを聞いてみて、それがイエスかノーかまで待っておって、それまでは実験をやめたらよかろうというインドの案と三つあったのでありまするが、私はそのインドの案が大へん公正であるように考えるのであります。両陣営の、これは結果は御承知のように十二人の理事会のうちで、九対三で、三分の二でいわゆるアメリカは実験を続けてよろしいというような決議になったのでありまして、インドの案は不幸にして破れましたが、これは疑義があるのだから、一つわれわれ国際法の学徒といたしましては、それではそういう理事会の表決だけでなくて、一体どういうような考えを持っているかということの必ず御質問があろうと思うのであります。この点は私はちょっと一番しまいに私どもの意見は申し上げさせていただきたいと思います。  それから第二の公海の問題でございますが、これはきっと前の安井君もお話があったと思いますが、イギリスあたりで大海軍がこれは大てい期日は十日とか一週間くらいで非常に短かいでございましょうが、艦隊が実弾演習をやりますときには、潜水艦を攻撃するためのデプス・チャージなどやりますから魚も多数死にますが、むろんその地域には漁船は立ち入りも漁業もできません。そういう前例がありますけれども、これと比較にならぬほど今度のものは範囲などが広いのでありまして、事実上確かに公海を自由に漁業をしそれから航行することは、これはもう国際法の大原則であって、だれ人も争われないのでありますが、それにそむいておる、こういうことであります。これはこのごろ大へんはやっておりまして、まるで十六世紀、十七世紀くらいの状態に公海制度が復帰するような非常に悪い傾向になっておりますのでありますが、たとえば一番いい例は、一昨年の九月にペルーが二百海里の沖にありますパナマの捕鯨船を十二はいあったやつを三ばいも海軍力をもって、しかも空軍の援助をもってこれを爆撃した。その中の大部分は逃げましたけれども、三ばいだけはつかまったという、これはもうりっぱな……、公海の使用を、しかも漁業をとめるどころではなく懲罰まで加えておるのでありまするが、こういう例がこのごろは非常にはやりまして、たとえばまたわれわれの身近かで言えば、李承晩君のごとき、自分が張った線の中へ入ると射殺までしております、日本の漁民を。久保山さんも大へん長い御病気の結果でありましたが、これは一発の下に殺されているというような、こういう公海を濫用するものもあるくらいでありまして、非常に昨今の世界の情勢を見ると、公海制度というものが著しく昔に返ってきたような感じがするのであります。それだからといって今度の公海、これもそういうまあ大きな観点から見ますると、むしろ李ラインの方が今度のビキニ附近の漁業よりもかえって被害は大きいくらいでありまするが、一方の方は割に国民の注意を引いていないのが私ども非常におかしく感ぜられるのであります。  それから第三の問題は、これはなかなかむずかしい問題でございまして、自国の管轄圏内、自分が主権を持っておる管轄圏内で行なった実験によって、それはもう自分の管轄圏内でございまするから行い得るとすれば、それが自己の管轄圏外にある人と物とに対して危害を加える可能性のあることをやらむとするときに、第三国は——その被害を受ける可能性のある国は、どういう態度をとり得るかという、こういう点であります。これは今まで国際法上の先例というのはないのでありますが、かりにいえば、われわれの国内生活で申しますれば、隣りの人が煙突で非常な煙を出して困るとか、もう少し強くいえば、たとえば足尾の銅山のようなものがもし国境にありまして、あの製練所の中から吐き出す煙の中の砒素が隣国に行く、これが非常に有害で生物を損壊する、殺してしまう、こういうような例が、まだ国際間にはないのであります。河川の場合はあるのでありますが、上流の河川が下流に云々というようなことはございまするが、まだそういう先例がないのでありますが、そういうものを仮定いたしまするならば、それにまあよく似ておるのでありまして、これはとめる権利が……、やる権利もあります、自分の管内でありますから。しかしそれが隣りに非常に危害を、これはちょうど侵略をやる場合と同じでありまして、国境の付近に軍隊を多く集めておきまして、いつ隣りの国に飛び込まれるかというような場合と同じような場合でありまして、これをこちらからは、そのときに損害の起らないような予防措置を要求することはできます。またできればやめてくれという要求もできると思います。しかし権利としてやめさせる権利があるかどうかということは、これはなかなかちょっと容易でないと思うのであります。まあそういうのが概括したことでございます。  結論として一言申し上げたいのは、今日の国際情勢から見ますると、自由世界側では、この自由世界側が原水爆に優位を持っているからこそ世界の平和を保っているのだと、こういうふうに確信をしておるわけであります。イギリスが去年の三月、水爆の製造を始めたのでありますが、このときにはイギリスの労働党もこれを支持したのであります。これまた今申し上げましたような、われわれがこれを持っておって初めて世界の平和が維持されるのだという確信のもとにこういうことが行われておるような段階であるのでありまして、そういう観点から、この問題は国際政治の問題でございますが、見る必要があると思うものであります。  私は道楽に過去十年間の軍縮の問題を始終文献を見ているのでありますが、まるでつばぜり合いでありまして、戦場で一寸の土地をお互いに争うかのような非常な血みどろな戦いを続けているのであります。一昨年の暮から、去年また二回ロンドン、それから去年の八月からニューヨークでやりましたこの軍縮小委員会、これは秘密会議でありますけれども、その内容なるものを拝見いたしますると、そういうような感じがしているのであります。大体、たとえばごく最近のことでありますが、ミコヤンの演説など見ましても、彼は原水爆戦争というものでは、なるほど大きな破壊には導き得るけれども、人類を全滅させるとか、文明を全滅させるというようなことはない。この戦争、もし原水爆戦争をやれば、老廃をした有害な制度である帝国主義段階に現在ある資本主義制度の破壊にはなる、こういうことを言っているのでありまして、今原水爆戦争をやれば資本主義制度は倒れるけれども、共産主義制度というものは微動だもしないのだ、まことに意気軒高たる演説でございまして、これはまあ御案内のように、ソ連は国外に向って非常に原水爆戦争の恐怖感を強調したわけでありますが、国内の国民に対しては、これをなるべく過小評価するように努めている証拠が幾つもあるのであります。  こういうような段階にあるから、こういうような見地からも、やはり一昨年の信託統治理事会でアメリカの代表者が言ったように、ソ連がやめない限りはわしらはやめ得ないのだ、こういう態度でありますので、結局これはやはり国際法の本質に返ってくるのでありますが、今日の国際法というものは、学者が言うように、非常にインディヴィディアリストなベースに立っております。個人主義的な基礎に立っておりますので、自分以上、もしくは自分以外に自分に命令するものはないのだ、自分の利益を至上命令として活動するという主権国という観念でありますが、その観念のもとに、その主権の相互間の関係を規律するのが国際法になっておりますので、たとえば強国はもとよりのことでありますが、どんな弱小国でも、国そのものの同意がなければ多数決でこれにインポーズ、押しつけることができないというのが今日の国際法の現状であります。これは非常に嘆かわしいことでありますが、やがて国内社会のように発達しなければならないのでありますが、今日まだその段階になっていないのであります。従って、これが結局原水爆の実験をやり得る国が、お互いに話し合いをしてもらって、協定をしてもらう以外に方法はないのであります。これをやめてもらいたい、これをやっているのは国際法違反であるというのは、これはいゆわるレックス・フェレンダーとわれわれは言っておりますが、そうある、確立したいという、確立するのが望ましいという法の原則でありまして、レックス・ラター、現に行われている法律、国際法というものではない。こういうふうで、われわれは一日も早くそういうような協定で、国際間の協定で、一つ早く実験をやめてもらいたい、こういうようなことでございます。ちょうど十五分でございます。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) ありがとうございました。それでは次に日本大学教授の森信胤先生にお願いいたします。

森信胤日本大学教授

○参考人(森信胤君) 私は放射能の生理学的研究、ことに放射能をいかに医学方面に利用するかということをやっておるのでございまして、このごろの言葉で申しますと、原子力の平和的利用という一部を担当しておるわけでありますが、何分にもごく一部のことだけを勉強しておるものでありまして、今日の問題のような広範な判断力といろいろのデータをまとめて批判しなければならぬ問題に対しては適当なお答えをすることができぬと思いますが、ごくわずかの一部のところでありましても、何かお役に立つところがありましたらと思いまして参りました。どうぞよろしく。  結論から先に申しますと、人間としてまたわれわれ医人といたしまして、いかなる場合といえども、いかなる場所においても、兵器としての原爆あるいは水爆が実験されるということは大へん悲しいことでありまして、こういうことのないように希望したいと思うのであります。またこの希望は単に一カ国ばかりでなくて、どの国に対しても希望したいと思っております。  で、放射能の生物に及ぼす影響で、どんなに及ぼすかということの一端を申し述べまして、その災害がどういうように起るかということにつきましての御批判を願いたいと思っております。  御承知のように、原爆も水爆もともにウラニウムの核分裂を利用いたしまして、従って放射能が起って参ります。ここで熱であるとかあるいは機械的な破壊力等を度外視いたしまして、放射能のみについて申しましても、ウラニウムが分裂いたしますときに発生いたしますところのガンマ線それから中性子それからいわゆるフィッション・プロダクト、核分裂物質でありまして、これはみんな放射能を持っております。この放射性物質はベータ線ないしガンマ線を出します。そのほかときによりましてアルファ線を出す場合があります。また先に申しました中性子が他の物質に当りまして誘導放射能、つまり二次的な放射能を起しますので、結局その放射能の被害はこれらのガンマ線それから中性子及び核分裂によってできたいわゆる放射性同位元素の放射能であります。  そこで放射能が一体どういうように人体に影響するかということでございますが、これは御承知の通りでございまして、うまく使えばガンのごときものを治療することができますが、極端に使えばからだを誤らせることは御承知の通りであります。この放射線が外から当る場合とからだの中に入って放射線を出す場合がございます。従来は御承知のようにX線だとかあるいはラジウムのごとく、おもに外部から照射したものでありますが、この放射性同位元素等が盛んに使われ、また現に水爆、原爆等によってそういうものが発生しておりますが、そういうものは今度はからだの中に入って参ります。そうするとからだの中で放射線を出しますので、現在では外部からする放射能と体内における放射能とに分けて考えなければならぬと思います。そこで外部から放射能がくる場合、どれだけの量がくると危険かと申しますと、これも御承知の通りでございまして、現在のところでは、大体各国認められておるところあるいは慣習上知られておるところは、一週間に〇・三レントゲンということになっております。このレントゲンという単位はガンマ線やエックス線のごとき電磁場に適用する単位でございまして、ベータ線であるとかあるいはアルファ粒子のごとき粒子に対しましてはこれと同量の量をもちましてレプとかいうような言葉を使っております。いずれにいたしましても大体において〇・三レントゲンないし粒子でありますと〇・三レプが一週間の分量、そこでそのレントゲン量を単位といたしましてどれだけが危険であるかと申しますと、一週間に〇・三レントゲンをこすというようなことがございますと、まずわれわれのからだに白血球が減ってくるという現象、これが顕著に出て参ります。そうして白血球の種類が変って参ります。その他いろいろの障害が出てきまして、レントゲン量、すなわち放射線をたくさん受ければ受けるほどそれに従って障害が多いわけでありますが、どれだけになると最も危険であるかと申しますと、大体四〇〇レントゲンをこしますと、これは一ぺんに受けてもそうでありますし、一生を通じて集積した分量でも同じでありますが、大体四〇〇レントゲンをこすとまず半分の人は死ぬる。六〇〇レントゲンを受けますとこれはもう致命であります。致死でありまして、すべてやられるということになっております。それでありますからもしわれわれが毎日かりに〇・三レントゲンずつ受けるとしましても、こういう状況を二十五年以上続けますとやられるわけでありますが、これらはわれわれのごとく放射線を毎日取り扱っておる人間といえども、絶えず注意しておりますので四〇〇レントゲンをこすというようなことはないわけでありますが、ただ目標といたしまして四〇〇レントゲンないし六〇〇レントゲンという量を申し上げておきます。もっと通俗的に申しますと、われわれが時計を持っておりますが、この時計に夜光塗料がついております。これなんかが普通裏側で計りますと大体〇・〇二レントゲン、すなわち百分の二レントゲン、一日でありますが、一日量それくらい出ておるそうであります。そこで、結局まあ〇・三レントゲン一週間というのが標準になって危険度をきめるわけでございますが、そうしますと、この外部から照射する、たとえば原爆を受ける、こういう場合でありますが、大量に受ければ当然危険なことはわかっておりまして、たとえばビキニで遭難されました第五福龍丸の方なんかは、あの土地で大体一〇〇レントゲン以上受けられたというような推測が計算されております。また広島の場合では、爆心地でちょうど六百メートル上で落ちておりますが、その直下から一キロ離れたところで測定した値いが大体九〇〇レントゲンと推定されておりますが、今申しましたように六〇〇レントゲンが致死量であるとすると、九〇〇レントゲンというものはいかにおそろしいかは御推察の通りであります。  こういうものが外部からの照射でありますが、今度はからだの中に入った場合、たとえばストロンチウムのごときおそろしい同位元素がからだの中に入ってくる、そうすると、これはその特性といたしまして骨に集まって参ります。骨に集まってきまして放射線を出すわけでありますが、この場合もその骨で大体〇・三レプ一週間について……。まあ〇・三レントゲンと申してもよろしいのですが、そういうくらいの値いの放射線を出しますと、われわれの造血作用が参ってきます。言葉をかえますと、われわれの血液を作っておるのは骨の中でいわゆる骨髄でございますが、その骨髄が骨に集まったストロンチウムの放射線のために壊されるわけでありますから、そういう障害が起って参ります。そこで現在では体内に入ったいわゆるインターナル・レディエーションの場合におきましては、その問題になる危険な臓器というものを仮定いたしまして、たとえば造血系統、すなわち血液を作るところであれば骨髄、その骨髄において集まりやすいストロンチウムだとかまたはカルシウムだとか燐だとかという骨に集まりやすい物質を考えまして、たとえばストロンチウムのクリティカル・ティシューあるいはクリティカル・オーガソは骨髄であるとして、骨髄で一週間に〇・三レプ以上出すと危険であると、こういうふうに出しております。  これでまず危険の限界はおわかりと思いますが、そこでこういう放射性の同位元素がからだの中に入ってくる場合でございますが、これはもちろん空気で吸う場合もございますし、あるいは飲食で入る場合もございましょうし、あるいは皮膚から入ってくるような場合もございましょう。いずれにしましても、これらが入ってきますと、妙なことに特定な場所へ集まって参ります。と申しますのは、同位元素でありますから、放射性であってもなくても、同じ化学性状を持っております。従って同一の生理的性質を持っていますので、たとえば燐であれば骨に集まりやすい、カルシウムであればまた骨に集まりやすい、また燐やカルシウムと同じ化学性質を持っているストロンチウムも骨に集まりやすいというように、骨に集まってくるそういうもの、また、ヨードのごときものは、甲状腺にありますサイロキシンの合成に参与するものでありまして、ヨードはほとんど全部甲状腺に集まって参ります。そうしますと、この場合ヨードについて考えますと、クリチカル・オーガンは甲状腺ということになって参ります。同じ問題になる危険が、臓器でも、大へん大きなものの所へごくわずかなものが集まったときと、甲状腺のごとき小さいものにたくさんの放射性物質が集まった場合と危険度が大へん違うということはおわかりのことと思いますが、こういうように受ける方の側から申しますと、その危険になる問題の臓器と、それに集まってくるものと、それからその性状、たとえば放射性のナトリウムの、こときものは、からだじゅうどこへでも参りますが、この半減期がわずか十五時間足らずでありますから、比較的早くからだから抜けて参ります。ところが、ストロンチウム90というような同位元素は、骨に集まるとともに、なかなか抜けがたい。しかもその半減期が二十五年、このごろは二十八年と言われていますが、こういうものが入って参りますと、なかなか取れにくい。また、ヨードのごときものは、放射性ヨードは半減期が八日でありますけれども、これが甲状腺に集まってきますと十数日もかかります。と申しますのは、物理的の半減期というのは八日でありますけれども、われわれの方では生物学的半減期と申しまして、からだの中に入ったものが汗や尿やその他のものになって失われて参ります。そうして半分になって行く場合を生物学的半減期と申しますが、それが十数日でありまして、結局これらのファクターを考えて参りますと、ヨードが甲状腺で放射線を出しているのは七日ないし八日というようなことになっていますが、いずれにいたしましても、半減期の長いものがからだの中に入って、しかもその中から大きなエネルギーのものを出してくるということになりますと、問題が大きくなって参ります。こういうように、放射性同位元素は、その化学的性状によって、たとえば燐であれば骨に集まる、ヨードであれば甲状腺に集まるというように集まって参りますので、実はわれわれがやっておりますのは、骨の骨髄で起る造血系統の病気の、たとえば白血病であるとか、あるいは直性赤血球増加症というような特殊な病気の場合には、かえって放射性の燐を与えまして、そして骨に集まってきた燐がベーター線の集中照射をするというような方法をとって治療をやります。また、甲状腺のガンのごとき場合には、甲状腺にヨードが集まってくるという性質を利用しまして、ベーター線やガンマー線を出さして治療をするのでありますが、この治療に使われる面と悪い方の面とは紙一重でありまして、いわゆる薬も毒になるし、毒もまた薬になるわけでございまして、われわれが意図しておるところは、そういう放射性物質を特定の病気の場所に集めて、そして治療をしようというのでありますが、原爆、水爆等によって起ってくる灰の中にある放射性物質がからだの中に入ってきますと、特定の場所に集まって、そうしてそこで放射線を出す。ことにストロンチウム90のごときものは骨に集まって、しかも集まりやすくて、しかも骨髄に対して強い放射線を出すというところにおいて害があるのであります。そういうように集まりまして、たとえばストロンチウムが骨に集まって来ると、そとに集積いたしまして骨髄系統を侵す。そうすると、造血系統がやられるから、次第に白血球が減ってくるとか、あるいは先般の第五福龍丸の惨劇のごとき急性汎骨髄虜というような形で結局血液を造る所が侵されてきまずから、生命を侵す。また、たとえばヨードのごときものでは、甲状腺に集まってそこで作用しますと、甲状腺では御承知のようにサイロキシンと称するホルモンを分泌するわけでありますが、そのホルモンの分泌異常を起してきまずから、からだの調子が変るというようなことで、それぞれ致命的な作用をするわけでございます。しかし、この場合でありますが、さっき申しました危険度をレントゲンまたはレップという量で表わす場合と、それから放射線を出すその物質の一秒間にどれだけずつ放射線を出しておるかというディスインテグレイションの方から単位を表わす場合がございまして、たとえば一秒間に3×1010ディスインテグレイション、これをキューリー、また一秒間に三万七千個ずつ原子核が壊れて放射線を出しているようなものを一マイクロキューリーと申しておりますが、ストロンチウムの90が骨に集まりまして危険になるその限界です、最大許容量と申しておりますが、マキシマム・パーミッシブル・ドースあるいはアマウンツでありますが、その限界になる量は、ストロンチウムでございますと、一マイクロキューリーということになっております。われわれのからだの骨の中にカルシウムが大体一キログラムあると言われておりますが、カルシウムとストロンチウムとは同じような働きをしますので、結局カルシウムがある所にはストロンチウムが集まりやすい。そうすると、一千グラムの骨に対して一マイクロキューリーのストロンチウムが入ってくると危険になってくる。この一マイクロキューリトのストロンチウムと申しますと、目方で言うとどれくらいになってくるかというと、これはたいへん小さい分量でございまして、大体十億分の一ぐらいのごく微量であります。そういたしますと、骨に対して最も危険になる限界がストロンチウム90では一マィクロキューリーと言われておりますけれども、分量であれば、ごく微量入ってきても大へん危険ということでございまして、あとはたくさんございますけれども、一例だけ申しまして次に参ります。  ここで、結局外部からくる放射線の場合と、それからからだの中に入った放射性同位元素による内部的照射の場合でありまして、その内部的照射に該当するものは、さっき申しましたように、灰となって入ってくるものが問題になるわけでありますが、いずれにいたしましても、たとえばストロンチウムが骨に集まってくると、一マイクロキューリー以上入ってくると危険だということになります。  問題を今度はさらにしぼりまして、水爆並びに原爆の方に参りますが、御承知のように、ウラニウムの核分裂を利用しますので、冒頭に申しましたように、原爆また水爆が爆発いたしますると、ガンマー線が出てくる、それから中性子、それから放射性の同位元素が出てくるわけであります。この場合に、危険度から申しますと、言うまでもなくその爆心地並びにその附近にいる人は当然強烈な放射線を受けるわけでございますから、これは問題ないわけでありまして、大へん危険なことであります。遠隔の地にある者といたしますとどういうことかと申しますと、これは結局そのときできました放射性物質を持っているところの灰が問題になって参ります。灰の場合でございますけれども、結局これは爆発したものの性質だとか、エネルギーによって違いましょうが、灰の粒子の大きさによって影響が違って参りまして、粒子が大きければ早く落ちる、これは当然のことであります。また、どれだけ高く上るかということによっておのずから違って参りまして、たとえばエネルギーの強いものを使いますと、高いところまで上りますが、先般リビィが一月十九日に講演しましたその講演に書いてあるところを見ますと、広島に落したごとき二万トンの、いわゆるキロトン当りのものでありますと、対流圏あたりくらいのところから落ちてくる。メガトン、すなわち百万トン以上のTNT爆弾に相当するそういうメガトンのものを使用すると成層圏まで入って行く、こう申しております。成層圏に行ったものは大体十年くらいは成層圏におって、そうして一年に一割くらいの割で落ちてくる。成層圏に行かないいわゆる対流圏におるものは、大体数週間ないし数カ月でごみとなって雨やその他で落ちてくる、こう申しておりますから、そういたしますと、その爆発のあった所及びそれに続く近い所は別といたしまして、日本のごとき離れておるところから考えますと、雨やあるいはごみとなって、いわゆる放射性物質の落ちてくるそのことが問題になってくると思います。この灰は、さっき申しましたように、粒子の大きさとか、それからどれだけ高く上っておるとか、風の方向だとか、それから風の速度によって流れて行く方向も違うし、影響範囲も違って参りましょう。まず条件を一定にしまして、まっすぐに上ったとしましても、これが落ちてくる場合に汚染を受けるのはまず海水と地上でございますが、たとえばマーシャル群島で行われました爆発によって海が汚染される、こういう場合に海水が問題になってくると思いますけれども、との海に入った灰は比較的早くいわゆる希釈されるわけでありまして、実際に一昨年の場合、日本で調べられたととろでは日本付近の海水にはその影響はなかった、しかしながら、そのビキニのあたりには強力な放射能があったということは御承知の通りであります。また海におる生物、特に魚の汚染が問題になって参りますが、その爆心地及びその付近におる魚類は、これはもう当然やられるとか、あるいはまもなく死ぬものでございますから問題はないといたしましても、それよりもある範囲の離れたところにおる魚の汚染ということがわれわれにたちまち問題になって参ります。あとでまた参考人の方からお話があると思いますが、こういう場合医学的立場から申しますと、落ちてきた灰が海の中に入って、魚の外についたものは大して問題はないと思いますが、それをのみ込んできたやつがございますと、ちょうどさっき申しました人間におけるインターナル・ラジェーションと同じでございまして、胃から腸に行って吸収される。たとえばストロンチウム90のごときは魚の骨に集まりやすい。また同じように、原爆のときに出てくる核分裂のもので、バリウムだとか、ランタン等でございますが、こういうものは骨に集まりやすいものでございます。ロジウムのごときは腎臓に集まりやすいと申されておりますが、いずれにいたしましても、集まりやすい臓器を見ますと骨だとか、腎臓で、さっきの胃腸器官も一しょに入れまして、内臓等においては魚の汚染というものは大へん危険であるということが言えるわけであります。しかし半減期ということを考えてきますと、日本なんかのように遠隔のところにおりますと、半減期の長いものは残っておりますけれども、早く失われるものでありますと、日本にくるまでに放射能がなくなるわけでありますから、結局魚の場合でも、ストロンチウム90のごとき半減期の長いものがからだの中に入っているその魚が問題になってくると思います。それから同じく遠隔の地におりましても、たとえば日本のごときビキニから離れたところにおりましても、一番問題になってくるのは空気の汚染でございます。空気の汚染の場合は、さっきも申しましたように、爆発物による放射性同位元素がごみとして含まれておる場合、これはさっきから申しました通りでありますが、もう一つ危険なことは、よく皆さんから言われているところの放射性の炭素ができる、さっき申しましたように、ウラニウムが核分裂をやりますと、そのとき中性子が出ますが、その中性子が二次的に放射性の同位元素を作りますが、これが空気中の窒素に当って、窒素の原子核を変化させまして、放射性の炭素、すなわちカーボンの14を作りますが、このカーボンの14は半減期が五千六百年でありまして、ベーター線を出します。これが大へん心配されておりまして、これが炭酸ガスとなって吸われるわけでございます。結局空気中における放射性カーボンを持った炭酸ガスと、それから遠隔の地においてはストロンチウム90が問題になって参ります。ところで先般のリビーが一月十九日にやりました講演を見ますと、こういうことを申しております。まず問題を二つに分けまして、空気中に放射性のカーボンができる場合を論じますと、これが炭酸ガスとなってわれわれのからだの中に入ってくるわけでございますから、実際に自然のままで何ら放射性物質を作らない場合もあるのですが、自然のままで大気の中に放射性のカーボンが中性子で作られております。すなわち宇宙線の中にある中性子が窒素に当って放射性のカーボンを作っているわけでございますが、そのカーボンが全地球の表面上において大体放射性のカーボンとして八十トンになると申しております。そうしてそのためには中性子が大体五・二トン必要であると申しておりますが、もしからだの中に害になる程度に放射性のカーボン、従って放射性の炭酸ガスができるためには、呼吸する分量だとか、その他を換算いたしまして、結局大体放射性カーボンの濃度が二倍以上にならないといけない。そのためには一千ないし五万メガトンくらいの爆弾を使わないとそのくらいにならない、こういうことを論じております。そういたしますと、この前のビキニの爆弾は、御承知のように、メガトンで二十メガトンでございましたかでございますから、今の一千ないし何万メガトンというような爆発をするためには、かなりたくさんの水爆を使わなければならない。従ってそういう危険はあり得ないということを申しております。  それから次に、ストロンチウム90がまず放射性同位元素、ことにちりとなって落ちてくるものの中で一番危険なものとされておりますが、これがまず落ちて、水爆や原爆が爆発した所や、その付近のいわゆる危険地域は別といたしまして、遠隔の地で、まずどこでもほんとうにあるものと仮定いたしますと、人間のからだの中に入って、そうして骨の中にあるカルシウムの一千グラムに対して、ちょうど一マイクロキューリーに当るくらいになるためには、どれだけくらいの原水爆を爆発させなければならないかというと、ちょうどTNT爆弾にイクイバレントいたしまして一万一千メガトンに相当すると申しております。その三十倍ないし四十倍をとって、それだけのエネルギーをもって動物実験をやっているらしいのでありますが、この骨の中に悪性のできものができるかどうかを実験している。そうすると、十倍、すなわち十一万メガトンくらいのところではまだそういうものがないが、三十ないし四十メガトンくらいの、つまり三十ないし四十倍でありますから、三十ないし四十メガトンくらいの爆弾に相当するエネルギーを与えてやると、明らかに骨髄の中におできができてくるということを申しております。しかしこれだけの障害を起すくらいに爆発さすためには、またそれより前に、最大許容量であるところの一マイクロ・キューリーに相当するだけのストロンチウムを作ろうとすると、少くともビキニの場合の五百五十個だけの爆弾を爆発させなければならないということをこの間発表しておりましたから、そういたしますと、まず現在の段階からいたしますと、そういう大きなものさえやらなかったら、まず遠方の土地の人間は心配ないのじゃないか、こういうのが彼の論文の要旨でございまして、そのまま受け入れれば別に問題はないのでありますが、ここで問題になるのは、今の場合はたとえば空気中の炭素がどこにも同じように分散しておるとか、あるいはできてくるストロンチウムの割合がどこにも同じようにあるという仮定でありますが、実際はそうではないわけでございますから、それが集中しておるところでは大へん危険だということが言えるわけであります。  その次にまず、上から降ってくる灰が今のようにかりにからだに害がない程度に降ってきたといたしましても、この前のビキニの灰の場合にもあるごとく、それが雨となって井戸水に入る、またそれらが野菜その他農作物等にかかってくる、そういう場合の影響も考えなければなりません。これもビキニの灰のときには、立教の田島教授がすでにそのフィッション・プロダクトを使いまして適当な濾過を行いますと、井戸水のごとき水にも放射性物質は除かれて安全であるというような実験をやっておりますし、また野菜なんかも適当に洗えば汚染がとれる、あの当時大へん騒ぎまして、御承知のように野菜にも放射能がある、くだものにもあると、だいぶん騒がれたのでありますが、もちろんこれらの灰がかかって汚染を起したことは事実なんでありますが、その場合特に考えなければならぬのは、天然にこういう野菜や一般植物や、それから肉あるいは魚等でもそうでありますが、そういう食品の中に天然産のカリウムがございまして、カリウムの中にはカリウム40と称しまして放射性カリウムがございます。しかも植物は御承知のように大へんカリウムをとるものでありますから、そのカリウムの放射能がありますから、カリウムの放射能ということを考えずに野菜やくだものを計りますと、大ていパチパチいいますので皆驚くのでありますが、このカリウムが動植物にたくさんあるということは、われわれの教室の秋山その他がすでに数年前に証明しておるところでありまして、現在におきましては、とにかくそういう場合にはカリウムの放射能を除いて、そうしてバック・グラウンド、地上の放射能、宇宙の放射能を除いてその他の残りの放射能について論じなければならぬことになっております。こういうことになりますと、比較的放射能の汚染はわりに少かったようでありまして、いまだそのための影響があったということは聞かないように思います。これらはすべて日本とか、あるいはアメリカのごとき遠隔の地のものが考えておることでありまして、遠隔の地でやりますと、今のリビーの実験成績、あるいはその論議が正しいものだとすると、そう心配するものではない、こう考えてもいいと思いますけれども、ここに問題になることは、平等にストロンチウムが空から降ってくるかどうか、また平等に同じように空気中のカーボンができるかどうかということでありまして、同じようにできれば、さっきのように危険ではないかもしれませんけれども、ある所で大へん濃縮されておると危険であるということは当然であります。  さらに進んで、遺伝学上からこれを見まするときに、今までのところでは遺伝上影響がないとされておりますけれども、今後どういうことが起るかということははかり知ること、ができません。遺伝の専門の方に聞きましても、この点に関しては内外を問わず不明瞭でありまして、全くわかっておらないというのがほんとうでありまして、突然変異を起すところの確率は大へん小さくて、ほんとうにごく僅かの確率で起ってきますけれども、一ぺんこの染色体に放射線が当ると必ず突然変異が起ることは事実なんであります。そうすると、プロバビリティが当ったら必ず遺伝の突然変異が起ってくるということになると、これは重要なことでありますし、また大海の孤島に数名だけ住んでおるような人間を考えるときは別でありますが、狭い所にたくさんの人間が集団生活しておるような場合に、その外部からくる放射能のために突然変異を起すということを考えますと、そのプロバビリティは少くても人間が多ければ多いほど危険でありますし、一ぺん起ってくると子孫に及ぼす影響ということを考えると相当慎重でなければならぬと思います。これにつきましては、一昨年参りましたアメリカの原子力関係の人も、それから先般参りましたウォーレンたちも遺伝に関しては何も申しません。また実際においてはっきりしたデータがございませんし、また日本においても、はっきりとここまでくれば危険だという何らデータがありませんから、はっきりしたことを申すことはできませんけれども、それだけに心配なのであります。はっきりとこれだけくれば安全だということがわかっておれば、これはもう防ぐことができますけれども、たとえプロバビリティが少くても、必ず当ればできるということがあるとすれば、しかもそれはいつくるかわからぬということになってくると大へん心配であります。  以上でありますが、結局爆心地を中心としてその所からその付近の人が危険である。またその辺の生物が危険であるということはもう問題外でありまして、たとえばこのマーシャル群島辺の人たち、あるいはその辺の生物は偉大なる影響を受けて損害をこうむるということは当然であります。また日本という所を一つ目標として遠隔の地から考えてみても、理論的にはそうこわいものでもないし、また一昨年の福龍丸事件のときから考えてみても、もうすでに二年後においては福龍丸の放射能もなくなっておるとか、あるいはその後放射によって影響を受けた人間が出てこないということから考えれば、見た目には遠隔の地の人は安全かもしれないけれども、いつどれだけのいわゆるアクシデントが起るかわからない。たとえば前のビキニの灰のときでも、これだけは安全地帯であると考えてその外にいた人たちもやはり障害を受けておるわけでありますから、アクシデントということを考えると、先方の学者たちが計算しておる以外にどういうような間違いがあるかもしれぬということ、それからそれは一応ネグレクトしても、遺伝という点から考えて行くと、まだまだ心配な点があるのではないかと思っております。それで今般行われます実験では、昨日いただきました案内状と一緒に、ストローズのアナウンスが書いてありまして、この前やったよりも小規模のものであると言われておりますから、文字通り受け取れば、今まで申しましたような理由で日本ないし遠隔の地の人ではさほど影響はないと、人間に対してはでありますが、考えておるわけでありますけれども、しかし水産物であるとか、あるいはそれを取り扱われる方とか、またそれを実際にわれわれが最もよく食べる人間でありますから、そういうことを考えてみますと、これは大へんゆるがせにできない問題だと思います。なおまた遺伝という点から考えますと、繰り返して申し上げますように安心ができない。結論でございますけれども、冒頭に申しましたと同じように、今かりに今回行われる実験によって、すなわちいわゆる危険区域以外の所では、見かけの上では安全だといたしましても、しかしとにかく一部の人は大へんな損害をこうむるわけだし、見かけの上で安全だとされておる所でも確実に安全だという保障がないのであります。いわんや人道上こういう災害を与えるような爆発が行われるということは大へんゆゆしい問題であって、ことに戦争を前提にした兵器としてこれが実験される場合でありますと、理由のいかんにかかわらず反対せざるを得ないと思います。またこれは先ほど申しましたように、どこの国に対しても言えることだと思います。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) ありがとうございました。  では次に、大日本水産会副会長伊東猪六君にお願いいたします。

伊東猪六大日本水産会副会長

○参考人(伊東猪六君) 私は前の三人の先生方のお話のように、皆様に御参考としてお耳に入れるような事項でございませんで、むしろ私どもが皆さんに、議会の先生方にぜひ聞いていただきたいというてお願いをいたす事項でございます。この私どもの立場、オール水産の立場からお願いする機会を与えていただきましたことを厚く御礼を申し上げます。  アメリカの原子力委員会がマーシャル群島中のビキニ環礁付近でもって原水爆の実験を行うということを発表して、約四十万平方マイルでございますかにわたるところの水城を区切って、そして危険水域を作り、本甲の四月二十日から八月末まで、船、飛行機、人はなるべくこの区域から遠ざかっているようにとの通告を寄せてきたということを私ども水産業者は耳にいたしまして、アメリカのこの仕打ちに実は大きな憤慨をいたしておりまして、多大のふんまんを持っております。従って私が今日ここで申し上げることは、自然アメリカに物申すのだといったような格好になるということをあらかじめお許し願いたいと存じます。  一体アメリカの当局は、二年前ビキニでやったところの水爆実験が日本の水産業者に及ぼしたところの被害の真相を、ほんとうに調べたことがあるでありましょうかというのが実は私どもの疑問でございます。まことにいやな思い出ではありまするが、まず手近な例から調べてみますると、あのビキニの死の灰をかぶった第五福龍丸は、船体、漁獲物ともに廃棄処分となりまして、乗組員二十三人の全部は放射能による身体機能障害のために、いずれも一年以上の長期にわたり入院加療を余儀なくされ、しかもその大半は満二年を経た今日、今もって昔通りの勤務につき得ないでおるといったような事情でございます。特に無線長の久保山愛吉さんは、皆様御承知の通り、あの名医の手厚いお手当を受けたにもかかわらず、とうとう帰らざる人となってしまっております。  一方水産業者の受けた損害の額は、私どもが厳格な立場から公平に算出いたしました額だけでも実に二十四億七千二百七十余万円というような額になっております。これに間接損害だと言われておるところの総額を加えてみましたら、確かに五十億を下るまいとさえ言われておるのでございます。これほどの大きな被害を与えておきながら、アメリカからくれたところの金額はわずかに二百万ドル、これも賠償ということではなしに見舞金という名前だということであります。私どもが最初アメリカに対して要望いたしました事項の第一は、日本の漁業に悪い影響のあるところの海域での原水爆の実験はやめてくれということでありまして、損害を与えた以上は、これを完全に賠償しなさいということは第二となっていたのであります。しかるにアメリカからくれそうなところの金額はわずかに八十万ドル、せいぜい奮発してくれたところで百万ドルを出でまいといううわさが飛んで参りましたので、それは大へんだ、そんなわずかな金額ではどうにもならないじゃないか、この上は外交交渉でその金額がきまる前に、ぜひとも一つその金額をふやしてもらうところの必要があるということになりまして、業界ではもっぱらその増額運動に熱中しました。そのためかしらぬが、その金額はようやく二百万ドルに上った次第であります。ところで今になりまして昔を振り返ってみると、私どもは大きなあやまちを犯していたことに気がついたわけでございます。それは私どもが増額運動に熱中したあまりに、一番大切であった実験中止の運動目標がはなはだしくピンぼけしてしまっていたということでございます。私どもは賠償金の金額をきのてもらうとともに、その大切な実験を中止する取りきめが絶対的に必要であるということを強く打ち出して運動すべきではなかったかと、今に至って残念に思っておるのでございます。近ごろわが国には、原水爆の脅威から国民の生命、幸福を守れとの声が相当に強くなって、原水爆の禁止運動が各所に起っておりますことは、まことにけっこうなことだと賛成申し上げます。しかし私どもは、あと一カ月に迫ったところのこの実験をどう食いとめるかということに精一ぱいでございます。原水爆禁止運動の成果を待っておるような余裕はございません。思うに今の実験を中止せよと要求し得るところの権力を持っておるものは、おそらくその原住民と、この前あの実験の結果、あんなに大きな被害を受けたところの私ども日本水産業者の二つではないかと考えるのでございます。もっともアメリカは放射能に対するところの厄除観念がきわめて日本より低いといいますか、元来日本はこれに関してあまりにも神経過敏であって騒ぎ過ぎておるという工合に考えておられるのではないかというような感じがいたします。果してアメリカがさように考えておられるものだとするならば、この際アメリカは日本に対してよくその事由を説明する必要があるであろうと思います。私どもはよくこれを聞いて、そしてその話をかみ分けてみたい、その結果幸いに納得がいきましたならば、実験中止の要望をするという意向は持っておりません。私どもはアメリカに対して直接訴える道も力も実は持っておりませんので、頼るものはただ国会と政府とだけでございます。どうぞ原水爆実験中止の折衝に関しまして格段の御援助と御配慮をお願い申し上げたいと存じます。  終りに、ちょっとつけ加えておきますが、今朝の朝日新聞の記事によりますと、今、先生からお話がございましたように、放射能の魚に及ぼすところの影響に関しまして、洗えば半減するのだというような大きな見出しでもって書き出されてございまして、四月の六日でございますか、関係の学者の先生方が討論会をお始めになるという記事が出ております。もしその討論会の研究の結果、国民も私どもも一緒に納得のいくような、今までの考えと違った判断を下すような事項がございましたら、自然私どもがかようにお願い申し上げた事項も変ってくるということを一つ御了承おき願いたいと存ずるのでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) ありがとうございました。  それでは次に、神奈川県鰹鮪漁業協同組合長寺本正市君にお願いします。

寺本正市神奈川県鰹鮪漁業協同組合長

○参考人(寺本正市君) 説明を許されました寺本でございます。アメリカは三月一日再び原水爆の実験を行うことを発表いたしました。私たちは全国の漁業者の要望するところを申し上げたいと思います。原水爆の実験には絶対に反対であり、何としても実験を阻止するよう要望いたします。これは思想的のものではなく、われわれ漁業者が生きていくためにどうしてもそうしていただきたい、切実な願いであります。一昨年同様の大規模な実験が再びわれわれの生命線である太平洋の漁場で繰り返し行われてはわれわれ漁業者及び家族は生きていけないのであります。身に振りかかる危険と漁場の喪失、そして私たちの生業は次第に圧迫され、ついには窒息して倒れるほかはないのであります。政府は今まで、また今度もただ危ないぞと危険区域を告示するのみです。これが私たちに対する予防措置であります。この告示は一体何なんでしょう、入るなというのか、入ってもいいというのかはっきりいたしません。私たちは国の法律には従います。けれども、この実験に対して政府は拱手傍観ただ危ないぞ、危ないぞと言うだけであります。そしてこのようなことのうちに日本の漁業者の漁場はだんだん狭められてしまうのであります。しかも損害はすでに起っているのであります。何ゆえならば危険区域発表によって漁業者はこの方面に出漁をすでにためらわざるを得ないのであります。身を危険にさらされ、漁場を追われ、損害をこうむるものは貧弱な漁業者だけなのです。まさに公海自由のじゅうりんであります。これは日本漁業の将来にかかわる重大な問題でありまして、政府がきぜんとした態度でこのことに当ってくれない限り、日本の漁業は滅亡のほかはありません。政府はまた損害の補償について云々されておりますが、先の被災に対して果してどれだけのことがなされたでございましょうか。私どもマグロ漁業者の損害は政府の推算とほぼひとしく二十億五千万余に上るのであります。しかもこれは事件発生後三カ月間だけの良心的な直接損害のみであります。これに対し慰謝料名義で来た見舞金はわずかにその四分の一の五億八千万円で、この金も事件発生から一年半を経過した後にやっと漁業者に交付された状況で、その上その受領金について課税をされておるのであります。この間における漁業者の窮状とあせりは実に非常なもので、今なおこの痛手から回復していません。補償などということより原水爆を禁止すること、これが私たちのみならず、日本全国のマグロ漁業者の切実な叫びであります。何とぞこの願いがかないますよう御配慮、御高配をお願いいたしまして、私の意見といたします。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) ありがとうございました。それではこれから委員各位の参考人に対する質問に移りたいと思いますが、外務大臣と農林大臣の出席を要求しておきましたが、外務大臣はやむを得ない渉外事項のために出席できないと言っております。農林大臣は今予算委員会に出席しておりますので、都合して出てもらうようにただいま連絡をいたしております。それで政府側から外務省の下田条約局長、それから厚生省の楠本環境衛生部長、それから水産庁の岡井水産庁次長が参っておりましたけれども、ちょっと今退出しておりますが、水産庁の増田海洋第二課長が見えておりますので、申し上げておきます。

小林孝平日本社会党

○小林孝平君 ちょっと田村先生にお尋ねいたしますが、非常に有益のお話を聞きまして感謝をいたしておりすすが、一点だけお尋ねいたしたいのは、先生は先、はどこの今回行われます水爆実験は李ラインの問題と比較されましてお話がありました。李承晩ラインの問題につきましては私たちも非常に不法でもあり、また困ったものだと考えますが、先生はこの今回の水爆実験は李承晩ラインの問題と比較すればむしろ李承晩ラインの方が危険であるというようにお話しになりましたが、それはどういう根拠に基いてどういう比較対照をとられた結果、李承晩ラインの方がむしろ水爆実験より危険だという断定を下されたのかお尋ねいたしたいと思います。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) 私ども国際法の上から見ますると、どちらも公海の使用を制限する点は性格は同じなんでありまして、それが水爆の実験であろうと、それから一方は朝鮮の漁業保護といいますか、漁業資源の保護であろうと、それはその目的は別にいたしまして公海の使用を制限するという面から見れば、李承晩が公海の使用を制限しておるのも、ペルーが海岸から二百マイルの沖までの公海の使用を制限しているのと、みな性格は同じだと、こういう意味を私は申し上げたのであります。  それから今の漁業の被害のことでありますが、これは私実情は存じませんが、私は山口県の者でありまして、どうも下関あたりの人は、お互いに税金を納めるにかかわらず、生命と財産を国家は保護してくれないというてわれわれに訴えてくるのであります。漁民は非常に貧乏でありますが、粒々辛苦してようやく船を一ぱい作って出ると、船はすぐ取られる、漁具は取られる、とった魚は取られる、身は投獄される、こういう状態で国家は一体何をしているのかと、これなら税金など納める理由はないと、こういうことをわれわれに訴えてくるのであります。私はその二十五億という、朝鮮の、李ラインにおける損害がどれだけあるか比較したことはございませんが、しかしそういう意味において漁民が公海の使用を制限されておるための、目的は別でありますけれども、その点は全く同じである、こういうふうに私は理解しておるのであります。

小林孝平日本社会党

○小林孝平君 この公海の使用を制限するという立場においては両方同じであるという点は先生のおっしゃった通りであるかもしれませんが、先生のような権威ある学者が、今のこの全世界で問題になっております水爆実験の問題と李承晩ラインの問題を比較されまして、ことさら李承晩ラインの方が危険であるというようにお話しになるのは、非常に私は影響があると思うのです。何か特別のお考えがあってお話しになったのか、あるいは単に、そう深い考えがなくてお話しになったのか、その点を私はお尋ねいたしたいと思います。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) われわれは学問のはしに加わっておるものでありますから、今の問題を客観的に見るのでありますが、今申し上げましたような、三つに分析したもののまん中の部分に属するのでありまして、アメリカが公海の自由を制限したりするのは予防措置としておるだけでございまして、この実験そのものは、彼の信託統治内でやっておりますのでありまして、私の理解は、それが誤まっておれば別でございますが、その実験の結果たる危険の防止をするための公海の一部分を制限しておるというだけでありまして、その点は実験そのものとは私は区別する必要があるんじゃないかというふうに考えておるのであります。それで、別にそのアメリカの私は弁護をしにここへ来たわけでもなんでもありませんが、しかし客観的に見て、原水爆の実験を望んでいるというわけでもなんでもありませんが、そういうこととは離れて、ただ公海の使用を制限するという、目的のいかんにかかわらずするという意味からいえばもう非常な冷やかな、あるいは冷酷な結果になるかもわかりませんけれども、全く法律上は同じ性質のものであります、純法律的に考えれば。私はそういうふうに確信いたしております。こういうふうに御了承を願いたいのであります。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 ちょっと、議事進行。きょう参考人の皆さんの御出席を得ていろいろ承わる機会を持ったことは、私はこう理解しているわけで、国会の意思としては、衆議院も参議院もともに原水爆実験禁止の決議をやっているのです、ですから、日本の国会の意思はきまっているわけです。国会の意思は国民の意思であると私どもは信じているわけですが、そこできょうは参考人の方々の御賛成を得て、さらにわれわれがこういうことを推進して行く上において参考となるべき事項を承わろうとしてこの会を、きょうの連合審査会を持ったと思うのです。ですから、もし質問があるとすれば、そういう点で参考人の方に承わることにして、両大臣とも御出席もないし、だいぶん時間も経過しておりますから、この取扱いは今後この外務、農水連合審査会が開ければ開き、また別々に外務委員会を開いて、農水委員会を開いてさらにこの国会の決議に基く処置については善処をして行く、推進をして行くということにして、きょうの質問は、この外務省、あるいはその他の局、部長連中にお伺いをしてもどうかと思いますので、これは責任ある大臣の出席を得たときにして、きょうは参考人の皆さんに、もしわれわれがその疑点をただすことがあればそれだけに限定して議事を進行したらいかがと思います。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) 大体そういうつもりで行きたいと思います。  田村先生、特に私から申し上げますが、今の小林君の御質問は、その李承晩の方がより危険であるということに重点を置いて聞かれたと思うのですが、より危険であるという趣旨のさっきはお話でございましたが、その点をもう少し……。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) これは李承晩の方は年中やっておりますし、片一方は何年目かにやっておりますし、もう私どもの出身県でありますが、これは非常な国民生活を脅かしておりますのでありまして、あるいはそういう私情にとらわれているかもわかりませんが、今の私の言わんとするものは、今のような原水爆の実験そのものをどうこう……、それの是非善悪をいうこととは離れまして、ただ単にある国が公海の一定地域を排他的に独占して、たとえそれが一時なりとも、ことに李承晩のごときは一時でありませんで、そうして他国の、権利を持っておる国民が、そこを航行することも、漁業することもできないような事態を作っていることからいえば、そちらの方がより緊切感がございまして、私どもの方は、私どもの解釈では、こちらの方はたまたま何年かに一ぺんやるわけでありまして、片方は人間が投獄されたり殺されたりしておりますから、そういうことから申せば、大したものではないかと思います。最近も二十数名が、一昨日でありますが、しかもそれはティーン・エージャーの、十代の子供が懲役十カ月というようにやられておるというようなことからみると、これはとても私どもは県民として非常に、これは今日の私の資格ではないのでございますけれども、県民としてはたえられないのでございますね。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 羽生君の動議、御意見は、とにかく今日は原水爆の問題をお尋ねしているので、その比較ということはあり得ることでありますけれども、特に参考人が李承晩ラインとの比較において、李承晩ラインの方がはるかに重いというような形で、何かそういう追及よりも問題は一番本質的な追及に対するわれわれは御意見を承わっておるので、だんだん横道にそれてくるのでありますし、しかも今羽生君の御意見があったにもかかわらず、委員長がことさらにそちらの方に問題を引っぱっていくように感ぜられるのでちょっと私は不思議に思われるのですが、御注意を申し上げます。

小西英雄自由民主党

○小西英雄君 午後から外務大臣や農林大臣が来てやるのですか、続いて……。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) 大体参考人に対する御質疑が終れば、一応連合審査会は終りにしようと思っております。

小西英雄自由民主党

○小西英雄君 それなら一言お尋ねいたします。二月七日に衆議院で、八日には参議院で原水爆禁止の議決をし、それをアメリカ政府に通告したにかかわらず、こういうふうにまたビキニの問題が十分いえてない今日、またアメリカは再度原水爆の実験を行おうということを言うてきたのに対しまして、われわれ日本の国民といたしまして、このわれわれの代表の言うことをアメリカ政府は一蹴して、こういう新聞発表をやった。それについて、これを禁止するのには、日本としては力によってどうすることもできない。世論によって禁止するか、あるいは国際法的根拠に基いてこれを禁止さすか、この二つに制限されると思いますが、先ほど安井先生のお話によりますと、信託統治であろうが、公海であろうが、領域内であろうが、原水爆実験は国際法に違反するというふうなかいつまんだお話があったのでありますが、それに対しまして田村先年のお話はちょっと考え方が違われまして、私たちの聞いた範囲から考えますと、これは公海あるいはいろいろな自国の領土でやる場合においてはと、これは相当な幅のあるような言い方をいたしております。そうしてこれらはやはり原水爆を持っておる国々がお互いに自省しなければこれは禁止ができないというふうな方向の言い方をいたしておるのでありますが、そういう点について田村先生の見解と安井先生の見解が相当食い違っておる。その点から私はお尋ねいたしたいのでありますが、今次の戦争におきまして、毒ガスとかあるいは細菌が大体使用されなかったが、新しき原爆がわれわれ日本の頭上に落された。これが国際司法裁判所において、国際審判において、これが国際法違反であるかどうかという問題については今結論が田村先生出ておるのですか、どうですか。そういう点を一つ。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) インドが、これは先ほど申しましたように、これはネールさんが議会で言われて、それから信託統治理事会でインドの代表が申されたのでありますが、国連憲童及び信託統治協定に果して違反するやいなや、それを一つ国際司法裁判所の訴訟ではございませんで、勧告的意見というものを一つ求めよう、こういう決議案を出されたのでありますが、これは言いかえれば、まだこの問題が国際法上きまっていないということをネールさんが認められた結果であるということが言えると思いますのであります。それで数日前もメノン代表が今度の場合もまた持ち込むというようなことを新聞に——後には打ち消されたようでございましたが、そういうことを言われたのですが、これはもうずっと、一昨年からの続きでございまして、インドはそういう態度をとっております。せめてその提訴を、提訴ではございません、勧告的意見を求めてみて、その意見が出るまで時間がありましょうから、そのきまるまで一つ実験をやめてみたらどうか、中止したらどうかと、こういうのがインドのずっと変らない態度であるというふうに私は理解しておるのでございます。でございまするから、まだ果してこれが憲章違反のものであるか、また国際法違反のものであるかということは実はきまっていないということをインドは認めておる。私どももやはりそういう立場で考えております。

小西英雄自由民主党

○小西英雄君 そうすると、このビキニで行われた水爆の実験の、先ほど漁業界の代表が言われたのでありますが、これを政府が、これは何ですかお見舞の意味からこれをもらったか、これを今の賠償の意味からもらったかという意味が非常に重大性を帯びてくると思うので、私たちはこういう点は外務大臣なりあるいは所管大臣が出てきて話さなければ結論が出ぬと思いますが、これが非常に重要な問題でありまして、もう四月に行おうとして、ここで国会が、両院が決議してアメリカへ持っていってもそれをあざ笑うようにちゃんとやるんだと、これは力の問題からは問題にならぬ。結局国民の世論、世界の世論をして阻止するか、あるいは国際法的根拠に基いて日本の権威ある学者の説が一本になって、これは国際法違反であるから断じてやってはならないという提訴をするか、ほかに道がないと思うのでありますが、こういう点について今の田村先生の意向も結論においては先ほど言われた安井先生と大体同じと解してよろしゅうございますか。今の委任統治であろうが、あるいは公海であろうが、自国の領土内であろうが、これはどちらでやっても国際法違反であるというふうな幅の広い考え方の安井先生と田村先生とこれはちょっと違うのですが、どうですか。結論的にはそういうふうに了解して……。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) 私はまだきまっていない問題というふうに理解しております。いわゆるまだこれから作らるべき国際法である、こういうふうに理解しておるのであります。

千田正無所属クラブ

○千田正君 今小西委員の御質問に関連しますが、ただいま田村先生のお話ではきまっていないと、こういう御理論のようでありますが、国連憲章そのものは戦争を否定するための、いわゆる制限し、あるいは友愛によってこれをお互いに制御していこうという戦争だけの目的じゃないと思う。当然これは一つの、世界の人類の幸福と平和を求むるための国連憲章であるはずであります。であるとするならば、当然それは広い範囲内においては、原爆のような一国のいわゆる今度のような実験であるとか、そういう核兵器の実験であるとかというような実験によって他国が侵される、他国の人類の幸福が侵されるというような場合においては、これは国連憲章に対するところの違反ではないかと、これはインド代表のメノン代表が国連に対して質問した一つの大きな理由だろうと思うのです。日本の学者の権威者としてのあなたから考えられて、国連憲章そのものが戦争を否定しているばかりじゃないのだ、いわゆる人類の幸福と平和というものを求めて世界の人類がここにその国連憲章に参加すべきであるという理論のもとに立っておると私は考えるのですが、あなたのお考えはどうですか。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) もし私が国際司法裁判所の判事であったらどういうふうに考えるかと、こういうようなことになるかと思うのでありますが、これは非常にわずらわしいことを申し上げなくちゃ……、国連憲章の関係条文が四つくらいございます。それから協定という、信託統治協定というものの解釈、これが四つ五つございますので、これは実はもう一昨年の理事会、その前の請願委員会でずいぶん練ったものでございまして、これは投票がございまして、投票の結果は九対三というので破れておる。適当な予防措置を講ずるならば実験を続けてよろしいというのが九票でございまして、それから反対が三票でございました。十二理事国がございますが、ソ連が出しましたのは、これは違反だからやめろ、当時はまだソ連が水爆をやらない前でございましたが、これは賛成は一票だけでございまして、あとは反対、こういうことでつぶれました。それから今申し上げたインドのが私は一番妥当だと思うのでありますが、一つ国際司法裁判所の国際法学者の意見を聞こうじゃないか、それがきまるまでとりあえず中止しろ、こういうのがインドの立場であったが、これもつぶれました——不幸にして三票の賛成でつぶれたのでありますが、今私は非常な身近な親戚を広島で失っておりますので、感情といたしましてはすぐ絶対反対ということを申し上げたいのでありますが、これをつまびらかに今判事になって自分がどういう結論を出すかということは、ちょっと今まだ研究を十分やっていないという段階だと、こう申し上げるよりほか正直なところないのではなかろうかと思います。

千田正無所属クラブ

○千田正君 田村先生は私の質問に対して半分だけをお答えになったようなわけで、私のお尋ねするのは、もちろん今の実験をやっちゃいかぬかやるべきかという問題に対しては、他国に影響をしないような事前に予防措置ができるならばやっても差しつかえないというのが国連の理事会できまったわけです。私の言うのは国連憲章そのものが単なる戦争を制限するばかりじゃなく世界人類の平和と幸福というものを願う根本的な原則をきめた問題であるから、これはやはりインドのメノン代表や何かが疑義ありとして言うておるのがそこじゃないか、国連憲章そのものを作られた根本的理由は何か、戦争ばかりじゃないのだ、人類の平和と幸福を求めるのが、国連の最大の目的であり、憲章である、その観念に対するお考えを私は伺っております。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) 私はその通りであると信じております。それであればこそ何とかしてこれを今除こうとする働きが一番多くのものを持っておる二人の間でしきりに行われております。

千田正無所属クラブ

○千田正君 それで先ほど賠償と見舞金の問題が小西委員からお尋ねがありましたが、この前の吉田内閣のときの岡崎外務大臣は賠償じゃないんだ、これはあくまでも見舞金である、こういうお答えをしておるのです。たびたび本院並びに委員会においてもそういうことを断言しておる。そうするというと、こういう問題に対してはわれわれは賠償を請求することができないのか、当然一国が他国のために侵されたあるいは権利であり、あるいはそれによって損失をこうむった損害に対しては賠償を請求して差しつかえないのじゃないかと私は思うのであります。どういうわけかかつての政府はこれを賠償として請求しておらなかった、請求しなかった、幾たびとなく国会において賠償として請求すべきであるということを要求したのにもかかわらず当時の政府は請求しなかった。すでに見舞金という名前のもとに慰謝料として日本に支払われた。私はこれに対して非常に疑義があるのでありますが、国際法的な立場から今の論点からいきましてかりにこういう損失が再び繰り返される場合において賠償金として請求できるかできないか、この点はいかがでございましょう。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) 私の理解しておるところでは賠償と申しますと大体故意と申しますか過失がないとその賠償責任はないというのが今までのクラシカルな考え方でございました。それから故意または少くも過失でございますね、過失がこの場合は物理学者がどれくらいの範囲だという測定であったろうと思いますが、そういう故意または過失がなければ、賠償というのは払わない、賠償というものは非常に大きな責任であるのでありますから……。そうでなくて、しかし同情して、お気の毒だからお見舞と、こういうことで、これが今までのクラシカルな考え方でありますが、それに対してこのごろの新しい考え方では、たとえばもうああいう原水爆の実験そのものは、そのものに内在する危険があって、それをやったということ、そのことに対してアブソルートリーな、絶対的な責任を負うべきものであるという議論もあるのでありまして、おそらくアメリカが賠償という名前をつけずに、お見舞金といったのは、今のこれはクラシカルな考え方から出ておるので、自分の方では故意に日本の漁民に損害を与えてやろうという故意はもとよりない、だだ過失があったかどうかが問題だ、過失であるかどうかに対しては立証がむずかしい、これはどっちに立証の責があるかむずかしい、そういうことであろうと私は理解しております。

千田正無所属クラブ

○千田正君 引き続いてお伺いいたしますが、この前のビキニの実験の場合は、最小範囲を区画して禁止区域をきめたのであります。これは風向その他によって相当被害があるものとみて、風下に向って扇型に禁止区域を作ったのであります。それが四十二万平方キロ、この度は長方形であって、一つの矩形をもって区画いたしております。きのうの新聞等に見る通り、貿易風や、台風によって、成層圏、あるいはその他に死の灰がとどまって、これが五月以降に日本に吹いてくるおそれが十分ある。それから潮の流れから研究していきましても、黒潮の流れは当然四月以降は日本に向って潮が流れてくる。そうしますというと、放射能をかかえた海流なり、あるいは風なりが、日本本土に向ってやってくることは当然予想され、推測もできるのであります。予想もされ、推測もできるそうした危険が行われるということに対しての——日本側からは強くその中止を要請したにかかわらず、強行した場合においては、どういう立場で損害の補償を請求するのが妥当であると、この点はどういうふうにお考えになりますか。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) 被害があるかないか今度はわかりませんのでございますけれども、非常なこの前の経験にかんがみまして、十分な予防手段をやることを私どもは期待しておりまして、今度はああいうあやまちを繰り返さないということを切望しておりますが、今のようなお話で、それはひとり日本ばかりでなくて、あるいは台湾なり、フィリピンも襲われるかもわかりませんね。そういうふうなのはこれは非常にはっきりわかっておりますのですが、そのときにあらかじめ損害がある可能性があるからと、こういう想定のもとでございますね、あるかないかわかりませんのですから……。ところがそういうことで今の国際法では、たとえば相手が国境へ軍隊を集中して、今打ちかかってきそうだから、こっちが先に予防戦争をぶってしまうということは、大体、許されないということになっておりますが、そういうことを、推理から申しますと、可能性があるであろうという想定のもとに、こういうことが言えるかということになるとどうか、非常に……。

千田正無所属クラブ

○千田正君 実は田村先生、現実においては衆議院、参議院とも、二回にわたって原子爆弾、これら核兵器の実験の中止及び禁止を要請すべきであるという決議案を上げているわけです。そうして日本政府はこの決議に基いて、当然相手国であるところのアメリカ政府に対しては、禁止をしてもらいたいという要請をしていっておるわけで、その理由といたしましては、ただいま私が申し上げたように、過去においてそういうことがあった、今後もそういうおそれがあるからやめてもらいたい。これは衆参両方の決議によって、現実に今行われている問題でありまするが、それでもなおかつアメリカが強行すれば、はかるべからざるところの損害があった場合においての日本側の損失に対する補償というものは、どういう形式で行うのが一番妥当であるかという問題ですが……。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 関連質問。国会の意思決定というものは、御承知のように禁止だと思います。業者の人たちの願いというものも、この前の賠償要求が間違っていた、われわれはやはり禁止でやるということの意思決定を明らかにここに出してきているのです。で、少くとも国会における決議を政府はそれを各国に伝達したはずですけれども、二度それに反して、そういう実験が行われるというときに、われわれがどういう態度をとるかということは明らかだと思うのです。われわれは今賠償要求なんていう段階じゃないと思うのです。やはり本会の意思を再確認する必要もございませんけれども、これはやはり反対の線を打ち出すべきだと思うのです。しかも当事国だと思うのです。インドは当事国でないけれども、国際法学者の御意見を聞いて、そしてからでなければ、これはやるなという意見を開陳しているので、それが穏当だと言われているけれども、田村先生、あなたは日本の当事国の学者です。世界の良識に訴えて、国際公法の理念によって、これをどういうふうにきめるかという質問をされたときに、日本の国際法学者が、国会の意思決定と、水産業者の意思決定がなされていても、なおかつその意思決定がなされないで、さまざまの解釈を持っているという解釈であっては、学者としての私は価値を疑うのです。ほんとうにこれは重大な、生きた問題ですドイツの古い法学の理念からいけばシルレルが罵倒したように、法学者はいつもうしろ向きの予言者であって、役に立たないという痛罵をあの転換期に与えておりましたが、その言葉があなたに当てはまるかどうかは知りませんけれども、少くとも日本の朝野をあげて苦悩し、訴え、そして国会の意思決定までなされているときに、その国会におけるところの参考意見を徴せられる国際法学者が、それに対してさまざまの解釈をして、しかも自分の意思決定がなされないというようなことでは、私たちは若干日本の学者というものの今日置かれている位置というものがどういうものであるかという御認識に対して、どういうふうにお考えになっているかをあらためてお伺いしたいと思います。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) 田村先生、お二人の御質問に対して……。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 私はこれは重大な問題だと思うのです。一つの……。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) いや、それは私の私事でございましょうから、別に……。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) さっき千田君が質問したことをもうちょっと具体的に……。

小林孝平日本社会党

○小林孝平君 千田君の御質問にお答えになる前に、ちょっと先生に申し上げたいことは、それがよくおわかりになっていないと非常にお答えにくいのじゃないかと思いますが、それは先生は、今回の実験が行われれば、そういう被害が起るかもしれない、あるいは起らないかもしれない、それはわからないと、こうおっしゃっておりますけれども、これはもう少し……、今必ず直接間接の被害があるのです。その地域に、少くともその地域に漁船は入ることはできない。またあるいはその地域を迂回しなければならぬ。非常に損害をこうむるのです。そのほかまだ幾多もう必ず起る損害がありますけれども、少くとも今のその地域に入ることができない、その地域を迂回しなければならないということは、もう直接確実に起る損害なんです。先生は先ほどそういう損害をお考えにならないで、単に放射能の被害の点等だけをお考えになってお答えになったと思いますが、今のような点がありますから、千田君の質問に対してお答えになるのに、ちょっと御参考までに申し上げたい。

小西英雄自由民主党

○小西英雄君 私は田村先生もこれはきょうが初めてでございますが、国会でこれは参考人として来ていただいたので、これは個人の自由で、国際法学者としての立場、日本のだれがどう言おうと自分の信念を自由に述べられることが私たちは適当だと実は考えております。  もう一つ関連してお尋ねしたいのですが。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) 一つずつ片づけましょう。  田村先生に私から申し上げますが、要するに実際に船の航行とか、あるいは漁業に入れないとか、実際の損害が起るのではないか、実際に実験してみなければ損害がどうくるかわからないからという想定ではなしに、実際に起り得ると考えられるが、その場合に賠償等のことについてどういうふうに考えられるかということだと思うのですが、それについて一つ。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) おそらくこれはもし日本が、かりにやったような場合であっても私は賠償を……、今あちらから、小林さんでございますか、お話がございましたように、いわゆる一定の区域に立ち入りを禁止した、少くとも三カ月以上立ち入りを禁止した、これに対する被害でございますね、これはなかなか被害の測定がむずかしいのでございますけれども、少くとももし被害の測定ができたといたしましても、日本がやっても払わぬと思います。はなはだしきは今、先刻例を申し上げましたペルーのごときは、二百海里の沖にある漁船を三隻とらえて、これをそれでは三百万ドル金を出せば釈放してやるといって逆に金を取っているくらいでありまして、ほんとうならペルーの方が賠償を払わなければならぬわけなんです。公海におる外国の漁船を拿捕しておいて逆に金を取っておる。こういうような、これも裁判所のことになるでありましょうが、おそらく今フォール・アウトの放射能の灰による大きな問題、魚の問題は別にいたしまして、そこに立ち入り禁止とは申しておりませんが、立ち入ることができないためにこうむるべきその期間の漁業の収獲というようなものに対する損害を要求しても、ちょっとむずかしいのではないかと私は思います。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 私議事進行で申し上げたいと思いますが、それは先ほども申し上げましたように、きょうの連合審査会の目的は、国際法上の解釈を一つと、それから放射能の実害についての参考意見を一つと、それから水産界の代表の意見というふうに分けてやったわけです。先ほど来いろいろ承わっておると、田村先生の場合はかなり私は政治的な意見が入られたと思うのです。純粋の国際法上の問題の解釈だけでない点が少しあったのじゃないか。私どもは自由世界の安寧の維持というようなことで、現在原水爆の実験禁止の問題をある程度合理化している向きが世界にあることを知っております。そういう意味からいえばある程度今のような御理論も成り立つと思います。しかし私はそういう点はきのうも曽祢委員が本会議でただし、先ほども安井さんに曽祢委員から話がありましたけれども、純粋に国際法上の解釈も一つわれわれやって行く。しかしそれだけでは足りないので、私どもは日本の国民の意思として、今の原水爆実験についてこれは政治的な意味になります、国際法上の解釈ではなしに政治的な意味になるが、日本国民の意思として諸外国に、特に関係各国に強く訴えてその実験の禁止のすみやかなる実現を希望する、この二つに分れると思います。そこで私どもは純粋に国際法上の見解を田村、安井両教授に承わったわけですが、これは先ほど御見解を承わりましたから、あとの判断はわれわれが自主的にすることにして、われわれは国会の意思決定に基いて今後参議院外務委員会あるいは農林水産委員会がそれぞれ適法の措置をとって行く、それから農林水産委員会では特に水産代表の方の御意見もありましたので、また先ほど千田さんから実際潮流の関係、海流の関係あるいは成層圏における、成層圏といいますか、空気の移動の関係ですね、それからまたさらにつけ加えては漁船が迂回せんならぬ場合の損害とか、あるいはまたそういう汚染しておるであろう、日本のマグロは汚染しておるであろうということによって貿易が阻害されるというような場合の問題とか、いろいろあると思います。だから実際に、しかも長期にわたる実験でありますから、この間十分農林水産委員会でその問題をただしていただき、われわれ外務委員会ではまた同様に国際法上の問題なり、あるいは政治的な問題として国会両院の決議の趣旨に沿うように推進をして行くということにして、質問はこの程度で打ち切ったらいかがかと思います。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 やはりそれに関連しますけれども、今業者が腹から訴えておる声を私たちはやはり聞かなくちゃいけないし、国会の決議というものも軽視しちゃいかぬと思います。今賠償の問題、もしやられたら賠償の問題がどうとかこうとかいう議論になると、そういうことはやられても仕方がない、そのときわれわれはどう処理すべきかというようなことをすべきではないので、この前のときにおいてはああいうことが警告なしにやられて、そういうできた事態に対してわれわれは対処したのでありますが、今度は来たるべき事態に対処するためには、やはり原水爆の禁止というわれわれの決議の線に沿うてやって行かなければ……私は業者が苦い経験の苦悩の中から叫んだ言葉というものを国会が軽視しちゃいかぬと思います。もうほんとうに国際公法の理念がどうであろうと、人間の生命を守る叫び声がその理念の中に結晶されないような学問は、学問として価値がない。既存のでき上ったところの判決例みたいなものだけでもって、それが法であるというような固定した法の理念によって国際社会が支配されることは悲しいことであって、われわれは新しい理念を作るべくこの国会において討議し研究しておるので、研究の対象としてはいろいろな御意見を承わるのはこれはわれわれは自由であるけれども、それをわれわれは取り入れる場合において、国会というものはもっとやはり前進した形で行かなければ、新しい事態に対して対抗できないと思うのです。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) ちょっと私は一身上の……。いろいろおしかりを受けたのでございますが、私どもここへ参りまして、私の考えは、われわれ一老書生の意見もお聞き下さって、そうして本委員会は高い、もう少し広い大きな見地、そういう見解を、そういう結論をお出しになる何かのごく一つのエレメントにおしになるおつもりでわれわれを呼び出されたと思うのでありまして、あるいは委員諸公の御意見に反対なことがあっても、まあそういうものは十分寛容の態度をもってお聞き下さるものだと確信して参ったのであります。ことごとく皆様の御意見と同じようなことを礼賛しに参ったというようなものではむろんなかった。  それから何か政治件を帯びたというようなことをおっしゃってたが、私は一番しまいに、これは国際法ではなくて国際政治ということを申しましたが、そのどの返答が政治性を帯びたのか存じませんが、一番しまいに申し上げたのは、国際政治の面から、法を離れた政治の面から申しますと、国際現状というものはかくのごときものである。また従ってそこから、それを規律するのが法でございますから、その法は今はレックス・フェレンダーの段階である、そういうものができることが望ましいという段階であるということでございますから、一つ御了解を得ましたら……。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) 先におっしゃいましたように、エレメントとしてお話願うというような意味でおいで願ったので、その点は御了承願います。

小西英雄自由民主党

○小西英雄君 田村先生に再度お尋ねして相済まぬのですが、先生、日本の国際法学者としての立場から、われわれのまた頭上近くにある実験が四月になされようとしておる、それを私たちの考えではもう世論によってこれを阻止するか、もう一つは国際法的な立場から国際司法裁判所へ訴えて、四月に行われんとしておる原水爆の実験を阻止するか、二つに一つ、二つの道しかないと思うので、その一つの道として、先生の立場から今回行われんとしておる原水爆の実験が法律家の立場から、何とか阻止できる方法があるかないか、先生個人の御意見でけっこうですが、一つ承わりたいと思いますが……。

田村幸策中央大学教授

○参考人(田村幸策君) 私は法律的に見てあれをやめろということを要求する権利はないというふうに感じております。それが行われるか行われぬかは別にいたしまして、日本だけで言ったって行われないことは大てい間違いないことと思いますけれども、しからばたとえ行われなくても日本がやめろという権利があるかどうかという点でございます。この点は私は非常にむずかしいのではないかと思うのです。そういう権利があると言うと、向う様にも公海を使用する権利がありますし、自己の領土で、自分の国の存亡に関する大きな問題でありますから、向うさんはとにかく相手がやっているのだから、いつねらわれるかわからないから、やっておるのだから、自分の方もやらなければならないという、向う様の代表者が理事会で述べておることでございますので、向うの存立のことも考えなければ……、これは日本だけのことばかりでなく……。

小林孝平日本社会党

○小林孝平君 議事進行。本日の審査会の性質から考えまして、先ほどからの議事の運営の仕方を見て、大体この程度で……、まだ質問したいことはたくさんありますけれども、この程度で一つ打ち切って参考人の方に丁重なる、委員長からごあいさつがあって一つ散会していただきたい。

小西英雄自由民主党

○小西英雄君 関連してちょっと伺いたい。重大な私考えだと思うので、この際原爆を広島に落したことが、この日本の軍事裁判所において日本が真珠湾を通告前に戦端を開始したから国際法違反である、ところがこの原爆を落したことは、これは毒ガス、細菌戦目上の、これは国際規定に反しておるということで論戦になった際に、これはどっちも決定せず、両者を取り下げた関係上、今の国際法には毒ガス戦術、あるいは細菌戦術ははっきりといかぬということを規定してあるために、もしこういう規定をされるならば、今のビキニで行われた当時のあれもすぐにひっかかって、結局賠償でこの損害を要求できたと思うのでありますが、その際に、新しいこの科学の結果生まれるものが、まだ法律が作られていない、この国際法もやはり道徳でないのであって、こういうものを……。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) 小西君、質問は一つ打ち切りたいと思うのですが……。

小西英雄自由民主党

○小西英雄君 そういうことですから、そういう点について国際学者である田村先生の御意見を伺いたいと思います。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) 御質問を打ち切られたのですね……。

千田正無所属クラブ

○千田正君 一点だけ医療上の問題を聞きたいのです。それは昨年のジェネバにおける国際医療学会、あの主催の学会におきましてアメリカのノーベル賞を受けた遺伝学の大家のミュラー博士が、あすこで日本の原爆に対する研究の発表を行おうとしたときに、それが許されなかった。せっかく招待してあるにかかわらず許されずに、ただ遺伝学部学会においてのみ発表を許された。ここに私は非常な疑問を持つ。これに対して日本の学会でさえも十分に世界に、この悲惨な日本の広島、長崎に起された被害に対する医学的研究が発表できない。しようとしてもある程度制限された、この点私は非常に残念に思うのであります。  この点の問題と、それからミュラー博士が遺伝学会で発表した言葉の中に、発表の中に、非常に日本民族として考えねばならない問題があるのであります。先ほどお話しになった突然変異というものに対して非常に日本の民族がこれからだんだん劣等民族になるだろう。これは、私は本日の委員会としましてはどうぞ森先生からよく話していただきたい。このあのような被害を受けるならば、だんだん生殖細胞その他に起すところの突然変異の結論としては、日本民族はやがて劣等民族の方にもういつか行くだろう、こういう重大な発表をしておられる。この突然変異から関連して、先般も二十五年から二十八年にかけて長崎、広島に生まれてきた嬰児の調査をしたところが、三万数千名のうちの一割はまさに奇型児が生まれた。死産であったり流産であったり、あるいは脳髄のない子供が生まれてきておる。こういう実態にかんがみまして、医療機関その他において私は十分大きな問題として考えなくちゃならないと思うのでありますが、その点に対して何か御意見ありませんか。この際あとに機会がないと思いますので、簡単でよろしゅうございますが、お話いただきたいと思います。

森信胤日本大学教授

○参考人(森信胤君) 私さっき申しましたように、放射能の医療のときにどういうふうに医療するかということをやっていまして、遺伝のことは詳しくないのでありますが、との二とにつきましてはたとえば立教の村地君のごとき詳しい方がありますので、専門のことはそういう人に聞いていただきたいと思いますが、さっきも申しましたように、普通の医者、あるいは生物学者の立場から考えてみても、突然変異が起る可能性はあり得ると思うのです。そうすると今現に目に見えぬからのんびりしているが、いつ起るかわからぬというだけに心配だと思いますので、さっきのような発言をいたしました。遺伝ということから考えれば、今さしあたり目に見えなくても、必ず起るものである、また起るかもしれないし、また起らぬとしても、目に見えぬだけ不安でありますから、特に私は遺伝の面からこういう点を強調して原爆、水爆は避けてもらいたいと思います。

山川良一緑風会

○委員長(山川良一君) それではこれで散会したいと思いますが、参考人の皆さんにはほんとうに長時間にわたりまして貴重な時間をありがとうございました。皆にかわりましてお礼を申し上げます。  それではこれをもって本連合審査会は散会いたします。    午後一時十七分散会

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