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24回国会衆議院1956/05/31

予算委員会 第16号

発言数
184
登壇者
12
会派数
2
開催日
1956/05/31

会議録

三浦一雄自由民主党

○三浦委員長 これより会議を開きます。  昨日に引き続き、予算の実施状況に関する件につきまして調査を進めることといたします。発言の通告がありますので、これを許します。和田博雄君。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私は日本社会党を代表いたしまして、総理を初め関係閣僚に、日ソ交渉、日比賠償、中国との国父の正常化の問題を主として質問を展開してみたいと思うのであります。  今度の日ソ漁業交渉は、国民の非常に大きな注目を集めた問題でありまするし、国民の全部がこれに対して深甚な注意を払っておったと私は思うのであります。従いまして、その全権でありまする河野君の一言一行は、国民のひとしく注目するところであったわけであります。従って、一昨二十九日の河野全権の報告は、これまた非常な期待を持って国民はその報告を待っておったと思うのであります。しかるに、河野君の報告は、きわめて簡単であり、単なる事務的な経過報告でありまして、政治家としての河野君、ことに日本のいわば運命を賭した大きな外交交渉の全権の報告としては、これはたれが見ても不十分であり、不満足であり、もっと突き詰めて言うならば、その政府の誠意をさえ疑われるにひとしかったと私は思うのであります。こういう報告を河野君が独断でしたはずはないと私は思うのであります。これは鳩山内閣が閣僚会議を開いて、閣議を開いて決定した報告だと私は思うのであります。こういう報告を総理は一体どういうつもりで河野君にさせたのであるか、その点をまず鳩山さんからお聞きしておきたいと思うのであります。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 河野君から閣議に報告がありましたが、ただ事実を事実として国民に示しておいた方がいいというので、潤色せずに、事実を事実として報告しただけであります。

和田博雄日本社会党

○和田委員 事実を事実として報告したのならば、まだ許せると私は思うのであります。しかしその事実はただ単に河野君の旅行記の一部であって、真の交渉の内容として重要な問題はすべてこれは隠されておったと私は言わざるを得ないのであります。事実を事実として報告するならば、全権として行った河野君は、あの帰って来るまでにはいろいろな大きな会談をそこに持ち、またいろいろな行動を彼はしておるわけであります。それを国会を通じて国民に詳細に発表するのが私は政府の義務だと思うのです。その点はいかがでしょうか。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 私はただいま即し上げたように、事実を事実として河野君の報告を承認したのでありまして、その他は想像だろうと思うのです。いろいろな話をしたということは……。

和田博雄日本社会党

○和田委員 想像であるかないかは、私がこれから質問をすることによってはっきりするだろうと思うのでありますが、しかしこの予算委員会においては、私は各閣僚の答弁はどうぞ詳細にかつ率直であってもらいたいと思うのであります。  あの当時の新聞が報じたように、政府は河野君の報告を単なる経過報告にとどめて、しかもきわめて事務的な経過報告にとどめて、あとは質問によって答弁したらいいという態度をとられたようにわれわれは見るのであります。これはそういうことであってはならないと私は思うのです。ことに今回の日ソ交渉の経過を見てみますと、重要なことはすべて河野君の腹一つ、記憶一つにとどめられておるのであります。何らそこに公式な内容にわたる報告書というものはないのであります。鳩山さんは、組閣以来秘密外交を排して国民外交ということを言われたと私は思う。ところが、この間の河野君の報告を見る限り、これは国民外交ではありません。前の吉田内閣時代よりももっとひどい、全く内容のない、国民には何も知らせない外交の行き方のように私は考えるのであります。この点は総理としては十分御反省を願いたいと思うし、あなたのほんとうに考えておる率直な意見を一つ述べてもらいたいと思います。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 私は民主政治の本質に従いまして、国民とともに歩むように努力をいたしたいと思っております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 国民とともに歩むということは、国民によくあなたの歩む道を知らせるということだと私は思うのであります。国民に何も知らせずに国民とともに歩むということはこれはできないのであります。その点について、鳩山内閣の今夜でとった政治のあり方というものは、どれ一つ取ってみても私はそういうことは言えないと思います。選挙法の改正もまたその一つであります。今度国会へ出しておるいろいろな法案も、私はその具体的な例だと思う。ことに今度の日ソ交渉の経過報告に至っては、これはあなたが何と抗弁されても、国民の熱烈な希望、期待にこたえるものではないし、国民とともに歩む態度ではないと私は思うのですが、いかがでしょうか。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 私は先刻答弁したように、国民とともに歩む信念には変りはございません。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私は鳩山さんが何べん同じことを繰り返されようが、それは証明にはならぬと思うのであります。昔イギリスにジェームス二世という王様があったのですが、その人は何を問われても同じことを繰り返したわけであります。反復というものは証明にならぬということが、そこから出ているのでありますが、一体あなたがほんとにそういう信念を持っておられるならば、事実によって示すべきだと私は思うのです。いかがでしょう。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 今あなたのお言葉を逆用して言えば、あなたが何べん同じことを質問されても、私は同じ答えをするよりしょうがないということになると思います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 それは政治家の識見と政治家の責任と、道徳的な責任感の問題であります。ですから私はもうこれ以上あなたがそういうお答えをする以上は問いません。しかしながらその点については、私は総理としては、非常な反省をさるべきだと思います。これを前提にしまして、日ソ交渉の問題に私は質問を進めたいと思います。  これは全権でありました河野農林大臣にお願いするわけでありますが、どうかこの質問につきましては、国会を通じて、国民に真実を知らせていくという態度で、一つ御答弁を願いたいと思うのです。私も重要な事柄は、この国会を通じて国民に広く訴えていく。そうして同時にいろいろな誤解のあるところは、十分国会を通じて解いてもらうということにしていきたいと思うのです。もちろん私は野党でありますからあなたとも意見が違うし、論争はします。しかしただ国会を通じて国民に真実を伝えるという点においては、やはりあなたもほんとに率直であってもらいたいと思うわけであります。  そこできのう井出君がブルガーニン会談から始めましたが、私はそれを逆のコースをとっていってみたいと思うのです。あなたは日ソ交渉の妥結ができまして、帰りにアメリカに寄られたわけですが、何の目的で一体アメリカに寄られたのか、その点をまず御答弁願いたい。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 これは昨日も井出君にお答えいたしました通りに、日ソ交渉の結果、アメリカ、カナダとの漁業の関係におきまして、説明を加える必要が生じてきたわけでございます。詳細に申し上げれば、従来オホーツク海における漁業計画を変更いたしまして、東海岸の方面にこの船団を回す必要が起ってきた。これは昨年アメリカ、カナダに私から説明をいたしました漁業計画に多少変更を加えることになりますので、変更を加える面における説明をする必要が起ってきた。その説明をするためにアメリカに私は参り、カナダの方面には中部顧問と、松平全権をこれに当っていただくことにした、こういうことでございます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私は今の御答弁では満足ができないのでありまして、河野さんは今度行かれたのは、これは日ソ交渉の妥結のための全権として行かれたわけであります。従いまして、こういう大きな問題について一つの結論が出た場合においては、私は一刻も早く日本に帰って来られて、そうしてそれを国会を通じて十分に御報告なさって、そしてアメリカとの関係があるならば、そこであなた自身が行かれるなり、あるいはかわりの人をして行かしめれば私は十分だと思うのであります。それをわざわざアメリカに寄って来られて、そして日本に帰る時期というものを非常におくらされてきた。ちょうど国内におきましては、非常に国会においての重要な問題が山積をしている。政府の方においてもそれを処理していかなければならぬ。また日ソ交渉そのものも、これから聞いていきますけれども、早期に何らかの政府の意思決定を迫られておる問題だと私は思うのであります。それをわざわざ、ただ船団の行方を多少変更するために、アメリカまで寄られた、そしてそこで二、三日を過ごされたということは、どうも私どもの感覚としては少しく逆なように思うのですが、それ以外に何か一つの目的があって行かれたのではないかという憶測を国民やみんながやるのも、これは無理からぬことだと思っておるのです。ことにダレス長官とあなたは、向うからの申し込みとはいえ、お会いしているのですから、その点についてもっと明確な御答弁を願いたい。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 和田さんのお話でありますけれども、国際間のことでございますから、こちらの計画を変更しょうということを考えたらば、変更することを決定して、これが出漁する前に説明することの方が私は順序だと思ったのでございます。でありますから、一旦日本に帰って、さらにアメリカに出向いて説明をしにこちらが出かけるということになると、飛行機の都合等も調べましたところが、おくれるのでございます。これは現にパリで別れた農林、外務両事務当局の帰りました時日と比べましても、御承知の通りであります。飛行機の日取り等をいろいろ調べましても、あれより早く帰る飛行機はないのであります。そこで私はアメリカを回って、しかもカナダの方に松平君をこれに当て、そうしてこちらが出漁し、出漁の計画を決定する前に一応説明しておくことの方が、国際慣行としてよろしかろう。しかもこれは先ほど加えませんでしたが、すでに昨年の暮に一応日米加三国の委員会で私からこういうふうにするということを向うに説明してあることでございますから、そういう意味合いで行ったのでございます。その点は御了承いただきたいと思います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 アメリカに行きましたときに、河野全権はダレスと会っているわけです。ダレス氏とお会いになった内容というものは、あなたはどこでも口を緘して語られておらないのです。しかし今の世界の情勢や日本の今直面しているいろいろな外交の問題を考えてみますときに、あなたが全権として行かれて、アメリカの国務長官であるダレスと会われた。そのことは非常に大きな意味を持っていると私たちは思うのです。その内容がただ単に今度の日ソ交渉の結果として、日米加の漁業協定の中に多少の変更を加えるということの必要だけではなくして、あなたもお会いしたのは政治家としてお会いしたのだろうと思うのです。ダレスもまた同時に政治家としてお会いしたと思うのです。そうすれば、その内容というものは、自然にそれぞれの国が直面している重要な問題についてあなたはお話し合いになった、こう思うのも、また論理上当然だと思うのであります。ことにあの当時の新聞をみてみますと、あなたがブルガーニンとお会いになって、日ソの国交回復の早期妥結ということについてはアデナウアー方式もあるのではないかということを示唆されたということが伝えられ、かつダレスと会った後においては、あなたがそのアデナウアー方式というものについて、いろいろの質問されたかどうか知りませんが、ダレスと会ってかなり何か確信を深めたようだということも伝えられているのであります。これは新聞が伝えているんだから、ほんとうかどうか知りません。しかしそういうことが伝わるほど、日本の国民が日ソ漁業交渉を通じてあなたが持ってこられた日ソ国交回復の早期妥結ということについて、重大な関心を持っているから、こういう憶測をするんだから、これまた私は理の当然だと思うのであります。従ってそういう点については、あなたはダレスとの間のコンフィデンシャルな会談であるから言えない、こういうことを言われるのでありますが、私はむしろ国会を通じて率直にあなたの受けた会話の内容ありあるいはその受けた印象なりを話された方が、日本の国としてもプラスになるし、将来国の世論を導いていくにしても誤りがないようになると思うのです。そういう点については、私はこの際あなたがその点について率直な報告をされた方がいいと思うのですが、その点を一つお話し願いたいと思います。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 いろいろ御意見がございますが、実は御承知の通り、私はアメリカ政府に向って、私の用件としては先ほど申し上げましたようなことでございますので、マーフィー国務次官補以下を国務省におたずねして、自分の用件を済ましたわけでございます。ところがダレス氏から自宅に来て話をしたいがということで私的に自宅に参っていたした話でございまして、これは公式に話した話ではございません。従ってこれはこの機会に申し上げることを差し控えさしていただきたいと思うのであります。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私的な内容だから話せないということも、あるいはそういうような気持であなたはおられるかとも思うのですが、ダレスと日本の外交官との話しというものは、これはやはり日本の国民は何かあったものだろうという非常な疑惑を持たざるを得ない状態になっておるのです。これは過去において重光さんが去年の八月渡米して、ダレスとの会議において、海外派兵を約束してくるような、そういろ心配さえ日本の国民は持つことがあるわけなんです。ですからこれはかりに私的な会談であるとしても、少くとも日本のこれからの国政の上に、国の外交の上に大きな影響力を持つことをお話しになったことは否定できないと思うのです。それでなければ、あなたが会談のあとにおいて、たとえば名僧と会ったような感じがしたといったようなことは、何を一体その背後に含蓄しておるかということはやはり疑わざるを得ない。結局一人の人、あなた自身の胸におさめられたそのことが、何もわからぬままに進められてしまう。しかもそれがどこかでどう利用されるかわからぬというような疑惑を持たれることは、私は政治家としてはとらぬのです。やはり政治家の行動というものは、明確に疑惑を招かない行動であってもらいたい。ことにあなたは日本の国を代表されて行かれたわけでありますから、それだけにたといコソフィデンシャルなものであっても、これはどうせ何かの機会に出てこざるを得ないと思うのです。そういう点について、この際はっきりとあなたが御報告なさっていた方がいいと思うのですが、重ねて伺います。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 御承知の通り、私は水産関係の問題を解決するために政府の命を受けて海外に参ったのでございまして、アメリカに参りましても水産の問題に関する——この鮭鱒問題に関する正式の会談、正式の話し合いについてはむろん正式にいたしました。ダレス氏を私がたずねましたのは、先方の要請によって、これは公けのことでなしに自宅の方で懇談をしよう——ダレス長官は私が会いましたすぐ一、二カ月前にわざわざ東京に見えまして、わが政府との代表とは会っておられるわけでございますし、そういう表向きの話はその際に済んでおるわけであります。従って私が今回ダレス氏を訪問いたしましたのは、私の立場上、決して外交関係にわたって私は話したわけじゃないのでございます。また私の立場がそういう立場じやございませんから、その点は私的の、全く個人と個人と話をしたということであります。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私はそれは河野君のためにもとらないところだと思うのです。それはなぜならば、あのときのダレスの談話として日ソ交渉について、またそれと関連した日米加の漁業条約ですか、そういうことについてあらかじめ報告をされたことに非常に好意を持ったということがいわれておるわけです。ダレスは事務官じゃないと私は思う。マーフィーやその他の者とは違うと思うのです。ダレスはやはり今アメリカ外交の先端に立って、全責任を持ってアメリカの世界政策を遂行していっている人なんです。アメリカの政策から見るならば、日本は非常に重要な地位におるわけです。ことに自由民主党は、アメリカとの間の協力というものを最も大きな一つの外交方針としているわけなのですよ。それだからこそあなたはアメリカに行って、だからこそダレスの方からあなたに会いたいといって会ったのだと思う。日ソ交渉の話の経過を報告すれば、どうしたってブルガーニンその他との間の会談の内容も話をし、またあなたがこれから日本へ帰ってきてやらなければならないことについてのいろいろな忠告か意見なんかも求められるということは当りまえなんです。そういうことをやらずにただ事務的に会ったというのじゃ、これは何のために会ったんだかわけがわからぬということになってしまうのですよ。ことにこれからあとにまた質問しますが、そういうふうに思うと、これは僕はあまり頑強に突っ張られる必要はちっともないと思う。何がおそろしくって一体そういうことを答えられないのか、その点をもう少しはっきりして、やはりあなたが話されたことについて、話し合いについては報告してもらいたいと思うのです。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 先ほど和田さんから秘密外交、秘密外交というようなことをおっしゃいますけれども、本会議の報告は確かに事務的な報告であったと私は考えております。しかしこれはむしろ機会を得て、お尋ねによって十分国民諸君にも御納得のいくようなお答えをした方がよろしいという含みもあって実はいたしたのでございます。従って今後いろいろお尋ねがありますれば、私がやり通した公式の漁業関係の交渉につきましては、私の当然なすべき義務としてでも申し上げなければならぬと考えております。しかし今申し上げますように、ダレス氏に会いましたのは私の必要があり、私から希望があって会ったのではございません。正式に私は会ったのでもございません。先方の要請があって、うちに遊びに来ないか、話に来ないかという話だから私は自宅におたずねしたということでございます。先方も——私はそういう慣行は存じませんが、土曜日の午後に正式な会見をするというようなことはないそうであります。従って役所を使うことは向うも困るというので、自宅の方で会ったということを言っております。従ってどこまでもこれは私的な会談として、会合として持ったのでございまして、この内容について申し上げることは私は差し控えさせていただきたい、こう思います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 これは河野君、私は非常に執拗なようですけれども、重要なことだから聞きたいのです。というのは、あなたも御承知のように、外交の様相というものは第二次世界大戦以後変ってきておる。ただ公式にテーブルをはさんで、ちょうど昔の日本の外交のように、こっちから書いていったものをただそこで読み上げてそれで済むものではない。今では外交というものは、公式の場合だってちゃんとした材料を持ってお互いがテーターテート、面と面と向い合って話し合いをしていくということであると同時に、その背後においてむしろ私的な会談において公式では言えないことを話し合っていく、そしてある妥結点に到達していく、こういうのが私は今の外交の方式だと思うのです。その意味において河野君が、とにかく順序といたしましては逆だと思うけれどもアメリカに行ってダレスと会って、そうしていろいろ瓶詰をしたということは、その感覚は私はいいと思う。しかしそれがただあなたの個人の名にだけとどまっているということであったのでは、これはもう全く取り柄のないものとなってしまう。ことにそれだけの秘密を守れば守るほど、一体何を話したんだろう、そのダレス会談というものは一体どういう形で日本の外交の上にはね返ってくるのだろうということには疑いを持つのです。今までダレスが来て、何か足跡を残していかなかったことはない。平和条約の場合しかり、安全保障条約の場合みなしかりです。それだけにやはりあなたがやられた会談についての重要な点については、僕は話さるべきだと思う。項目だけでもいいと思うが、いかがでしょう。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 その点は前に申し上げた通りで御了承いただきたいと思います。決して私はいたずらに秘密を守るというのではございません。必要のことは何でもお話し申し上げてもよろしいと考えておりますか、これは全く私的にお目にかかったことでございますから、私的にお目にかかったことを私が公けの席一で話をするということは、これはとらざることでありますからどうか御了承を願います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私はそれでは先へ進んで、またもう一ぺん繰り返します。河野君が全権としてソ連に行くときに、漁業問題に限るという制約がついておったように思うのですが、その制約というものは党でつけた制約なのか、政府自身がつけたそういう約束であったのか、その点をこれははっきりしてもらいたいと思います。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 これは別に制約でも何でもないのでございまして、御承知の通り西・マリク・ロンドン交渉の結果、こちら側から漁業の問題についてお話し合いをいたしたいという申し出をいたしまして、先方からそれに応ずるという返事が参りましたので、その漁業の問題を行って話をしてこい、こういうことで私は参りましたので、むしろこれはそういう経過をたどりましてこちらから申し込みをした、その申し込みを向うが受けるということでございますから、当然私がソ連に参りますのは、鮭鱒、北洋における漁業問題について話し合いをいたしたいという申し出をいたしましたその申し出の交渉に参った、こういうことに御了承願います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 外務大臣にお尋ねしますが、漁業問題でかりに今河野君の言ったことをほんとうにして河野君が行ったとしても、今度の日ソ漁業交渉というものは、単なる漁業交渉の範囲を越えて、やはり日本とソ連との国交の正常化というもの、しかもその国交回復というものを早期に妥結するという条件をもとに妥結したと思うのです。外務大伊はその点についてはどういうように考えておられますか。漁業問題だけについて河野君は行ったと言っておるのだが、漁業問題だけについて行ったのではなくて、その漁業問題自身が成立する条件として日ソの国交を回復する、しかもそれを早期に妥結するという条件のもとにこれができ上ったわけなんです。そうすればこれは日ソ国交回復というものが、漁業交渉よりもより以上に大きな一つの交渉の結果として出てきているわけなんです。ですから政府としては河野君が行くときに、そこまで話を進めてもよろしい、どういう条件のもとにおいても漁業交渉というものは結んでくる、それも漁業問題に限るのだ、こういうように考えられておったのかどうか。外務大臣としてはどういう見解であったかをお聞きいたしたいと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 漁業交渉の始まるときの状況をそのまま申し上げます。国交正常化の交渉がロンドンに開かれた、これが休止になったという事情はもう繰り返して申し上げません。そうでありますからこの交渉は休止になりまして、そしてその際に漁業問題に対する緊急な話い合いをしなければならぬ状況になったことも御承知の通りであります。そこで魚族資源の保持、海難救助の問題等に関して直接に話し合いをしたい、こういうことを申し入れて、先方の承諾を得て話し合いをすることになりました。そこでこちらの目的はどこにあったかというと、北洋漁業の円滑な運営に支障なきを期するということが、非常に大きな目的であったのでございます。そうしてその交渉をするときに北洋漁業の円滑な運営に支障なきを期するようにしてもらいたい、こういう訓令を出したわけでございます。そこで交渉の結果漁業問題をわが政府代表は進めて参ったわけであります。その際に先方から漁業協定の効力の発生の問題について、国交の正常化の問題が出たということも、御承知の通りであります。それでありますから、漁業協定を有効ならしめるために、また北洋漁業を円滑にし得るがために、国交の正常化の交渉を開くことが必要であろうという結論をするということは、少しも初めの交渉から逸脱したことではないと私は考えます。そういう交渉を再開することが必要であるという共同の意思表示が、共同コミニュケによってされておるわけであります。そこで北洋漁業も、本年に関する限り円滑に出漁ができるという措置ができたのだと私は考えております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 重光さんは、そうすると日ソの今度の漁業交渉が始まるときに、漁業交渉だけで漁業の問題が妥結すると、一体お考えになっておったのでしょうか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私はその当時この点については、御質問に応じて十分説明をしたように記憶いたしております。それは先方がどういうことを申し出すかということは私には予期はできなかった。そのときもはっきり申し上げております。しかしながら日本側としては国交調整の交渉は休止になったのだから、それはそれとしてさしあたって円滑に北洋漁業の出漁もやらなければならぬ。そこで漁業交渉が起ったのでございます。その漁業交渉を進めていった場合に、先方からいろいろな考え方が出るということもこれはやむを得ないことだと思います。しかしそれは今の通りの状況でこの結末がついた、こう考えます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私は今の重光さんの答弁は答弁にならぬと思うのです。なるほど交渉は相手のあることです。しかし交渉は相手のあることであるけれども、一定の事実を基礎にして、ファクトを基礎にして、また過去における相手方のものの考え方を基礎にして交渉が行われてくるのだと私は思うのです。そういうものを無視しては交渉は行われないと思うのです。そうであるならば、漁業の今度の問題だけ一般の日ソ国交回復の問題と切り離されて、これだけが妥結するということは、これは少し——ロンドン会議のあの経過を注視しておった人たち、国民にもこれはわかっておることです。直観的にこういうことはわかる。それをそういう見通しも何もなしに、相手があることだから相手の出方によってどうも早期妥結をしなければ、漁業協定もこれは結ばれないのだからやむを得ないという態度でいったのでは、外交というものはいつでも後手後手を打つわけであります。重光さんの今までの外交の態度というものはこれであります。これでは一定の何ら目標がない、見通しがない、出たとこ勝負のその都度外交です。私はこれは非常に重要な問題だと思うのですが、もう一ぺん聞きます。果してあの十カ月の長きにわたってやったロンドン会議の経緯なりその経験というものは、今度の漁業交渉の場合においては、今のあなたのお話では何ら利用されていない、何にもそれとは関係なしにやられておるような感じを私は受ける。その見通しをつけていくのが、これが外務大臣の責任じゃありませんか。そう考えてくれば、河野君がいくときにわざわざ漁業問題に限るという制限をつけたことは、これは全くおかしい。これが党内の事情によって、党がつけたか政府がつけたか、私は今追及しませんが、少くともこういう記事が出ることすら、私どもに言わすと非常に党の——党といいますか政府が無責任だと私は思うのです。河野君が行ったのは漁業問題に限って行ったのだとこう言います。しかし漁業問題に限って行っても、結局落ちつくところは、日ソ国交の正常化という問題が解決しなければ漁業条約自体が発効しないということなんですよ。こういうことはあのロンドン会議において、領土問題を除いてはあとのものがもう全部きまっておるし、ソ連の態度というものははっきりわかっておる。わざわざ行って河野君がブルガーニンからいろいろな意見を聞かなくても推測のつくことなんです。外交が事実を基礎とし、豊富な材料を持って向うの情勢を分析してやらなければならぬのはこのことだと私は思うのです。その点について私は重光外交というものは失敗だと思う。これはあなたの重大な責任だと思うのです。もう一ペんはっきりした答弁を願いたいと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 今のお話を伺っておると、私はロンドン交渉の経過を見て、研究し、尊重したからこそ、国交全体の交渉は休止になっておるわけだから、そのほかの個別の問題について、両国の関係する重要な問題について話し合いをする、これは何にも差しつかえないことである。それをやったわけ、ある。しかしそのときに国交の問題が話に出るということは、初めから期待をしなくたっていい話なんであって、出たときに処理をすれば少しも差しつかえない。その処理をしておる。(「さっぱりわからぬ」と呼ぶ者あり)それがわからぬのがわからぬのであって……。(笑声、拍手)

和田博雄日本社会党

○和田委員 いや、わからぬのがわからぬのですよ。私が聞いているのはそういうことを聞いているのじゃないのだ。あなたの今の答弁の的をはずしているのですよ。そうではなくて、今度の漁業問題の解決というのは、日ソの国交の正常化という問題と切り離しては解決できない問題である、こういうことはもう交渉をやる前からわかっていたことじゃないかということなんです。その点を私はお聞きしているわけなんです。私の質問が悪かったのならば、そういうふうにもう一ぺん聞き直します。どうでしょう。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 これもたびたび申し上げた通りに、日ソ国交の正常化をはかるということは、日本もそのつもりで交渉を始めており、向うもそのつもりで交渉に応じておる、これはその通りであります。しかしこれが休止をしなければならなかったということもまた事実であります。それは漁業問題じゃないのであります。そこでその漁業問題以外の問題を解決するという目的じゃありません、漁業問題を解決する、こういうことで行ったのでありますから、それは当然漁業問題を処理するために行ったのであります。(笑声)それについて国交回復の交渉をまた開こうじゃないか、開いた方がよかろう、こういう意思表示をするのはこれまた少しも差しつかえのないこと、それで今後は本筋に、国交調整の初めの目的に返って、それをもって話をしなければならぬと私は考えております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 それでは視角を変えてもう一ぺんその点についてお聞きをしたいと思うのです。松本君がロンドン交渉をやってきて、事実上日ソ交渉がたな上げといいますか、無期休会になったときに、あなたは一体今後日ソ交渉は再開されるかどうかということを聞かれたときに、それは今後の世界情勢の変化を待つのだということをお答えになっておるわけです。今度のソ連側から、漁業問題についての話し合いをしょうじゃないかということを言ってきたことは、そのあなたの言う世界情勢の変化の中にはっきり含まれておるのでしょうか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 まさに私は、再開をする場合には、情勢の変化ということを、その際に申しておきました。世界情勢の変化——世界の字はよけいについております。情勢の変化と言いました。その情勢の変化のうちには、世界的な変化もあるし、ソ連の内部の変化 もあるし、日本の内部の変化もある、こう申し上げておきました。この情勢の変化ということはいろいろ考えなければなりません。そうして今回のことも情勢の変化の一つの事実であると私は考えております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 そうすると結局河野君の権限について制限をつけたということは全く無意味であって、党内事情でつけた、こういうふうに解釈してよろしゅうございますね。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 それはそういうわけではございません。これは政府がはっきりと政府代表の任務を授けたのでございます。その授けたのは先ほど読み上げた通りでございます。漁族保護の問題、海難救助の問題等についてソ連に申し入れた。ソ連が申し入れに応じてきた。そこで今差し迫った北洋漁業の円滑な運営に支障なきを期せられるように努力してもらいたい、こういう訓令を出したわけでございます。そうしてそれによってわが代表は行動したわけでございます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 わけのわかったようなわからぬような答弁をされますが、あまり時間を食うのもいけませんから先へ移りますが、やはり今度の日ソ交渉の中での山は、五月九日のブルガーニンとの会談だと思うのです。この点は河野君が羽田に帰ってきたときに、そう断片的にものを聞かれても困る、誤解を招くからというので全貌を実は報告されていないのです。昨日井出君がその質問をしましたけれども、これもまとまった報告ではなかったと思うのです。きのうの河野君の答弁によれば、この問題については忌憚なく全部報告したいのだ、こういう話でありましたが、やはりこの国会において、一体ブルガーニンとの会談でどういうことが問題になったのかということ、それか らそれについてきわめて簡単に会話の 内容についてこの際報告を願いたいと思う。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 要旨を申し上げますれば、私から現在わが国の当面しておりまする北洋漁業の出漁の問題とソ連閣議の決定とが混淆する点が起って参りますので、当面この問題についての解決をいたしたい、いわゆる暫定措置の取りきめをいたしたいということを強く要望いたし資した。これに対してブルガーニン首相より、ソ連側の態度として、御承知の通り両国の状態がなお休戦の状態で、戦争状態は終結していない、ロンドンの交渉も非常に長期にわたって話し合いをしたが、これまた妥結に至っていねい状態であるので、ここに両国がそういう事情のもとに漁業協定もしくは海難協定を結ぼうとしても不可能である、まず両国の関係を戦争状態から平和状態に移して、そうして両国の国交が回復した上でなければ、両国間に条約、協定はあり得ない、条約、協定のないところに暫定措置はあり得ないという態度を、非常に長々と具体的に述べられたのでございます。そこで、その意見を伺いまして、私は、それではもうとうてい解決の道がない、はっきりそういうふうにブルガーニン氏から宣言されたのでは、今後漁業協定の進行もなければ暫定措置の進行もない、取りきめもできないということで、非常に私も当惑いたしまして、それならばということで最後に自分がモスクワに使いをした真意を十分に理解してもらう必要があるということで、ブルガーニン氏に、あなたの今の談話の中にも、日ソ両国の国交の正常化が両民族に非常に幸福をもたらすものであり、ひいては世界平和に貢献するむのであって、そうあることが必要であるということを強く述べられておる、しかし今のお話のように、一方的に領土の問題を断定せられそしてロンドン会議の不成立が日本の責任であるかのごとく主張せられたのでは、とうてい両国間の国交の回復はあり得ない、その点は、日本の国内事情等についてもあなたは相当に御承知のはずである、にもかかわらずそういう態度をここで宣明せられるのは、両国国交の回復もしくは国交の正常化を非常に強く要望せられる首相の言としては、自分は了承できない・はなはだ心外である、ということを強く私は主張いたしました。だんだんその点について意見を交換いたしました結果、先方もよく了承いたしまして、国交正常化の前提として、ここに今年度の北洋におけるトラブルが起るということは、ますます国交正常化に背反する方向にいくのであるから、この点については一つ自分も了解しようということで、そこに同席せられましたのは、ブルガーニン氏とイシコフ漁業大臣と、極東関係の外務次官と、それにソ連の極東関係の係の人と——その人が通訳をせられましたが、それと私と五人おったわけでございます。ブルガーニン氏は、直ちに、その場で、今の日本の代表の意見によって、この際ソ連としては暫定措置に協力するようにということをイシコフ氏に——命令であるかどうか知りませんが、通訳の言をもってすれば・私はそういうふうに受け取ったのであります。そこでこれは非常にうまく行ったということで、私はそこを辞去いたしまして、直ちに時を移さずイシコフ漁業大臣と会見いたしまして、そして大体一切の方向を責めて、結論に達するようにいたした次第であります。  大要は右の通りでございますが、この大要のもとに断片的にお尋ねがあれば、断片的にお答え申し上げることは差しつかえなかろうと思う次第でございます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 ブルガーニンとの会談においては、たとえば抑留者の問題とか領土の問題ということが出たのではないですか。この点についても御報告を願います。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 その点は明瞭に話がありました。抑留者の問題についてけ戦争状態にある今日、日本側が早期に返せということを主張されても、ソ種側としては絶対に同意はできない、はっきり言われまして、両国国交が正常化すれば、即時に帰還させることに自分は異存がない、それから領土の問題については、明確に自分の方としては歯舞、色丹は譲るということにしてある。ロンドンの会議においても、自分の方としては譲れる最大限の点として、歯舞、色丹の問題、海峡航行自由の問題についても譲歩しておる。その他、国後、択捉の点については絶対に譲歩はできない。これについてはいろいろと理由をあげて、長々とできない点を主張されました。

和田博雄日本社会党

○和田委員 それからもう一点聞いておきますが、ブルガーニンとの会談において結局この漁業条約が結ばれるに至ったのは、日ソの国交回復の交渉を七月三十一日までに再開するということをあなたがお約束されて、それで漁業交渉も海難の方もまとまった、こういうふうに伝えられておりますが、そうでありますか。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 お答えいたします。ブルガーニン氏との会談の際には、なるべく早く交渉を再開して、国交の正常化にお互い努力しようじゃないか。国交の正常化の問題についてつけ加えておきますが、これは両国が講和のほんとうの条約を締結をするということも一つの方法であるが、これはロンドンであれだけやったが、なかなか意見の一致を見ない。自分の方として絶対譲れないのであるが、日本側の方もなかなか困難のようであるということで、いろいろつけ加えて申されましたが、日本の国内情勢がめんどうならばというので、アデナウアー氏の例をそこにとって話をされたわけであります。しかし私は、この二つの意見を聞きましたが、別にこれにどうこう言うべき筋合いのものではございませんから、先ほど申し上げました通り、両国国交の正常化についてそれだけあなたが熱心に主張されるならば、ということで受け答えをいたした、こういうことでございます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 漁業条約が、調印間近になって、少し調印が延びたという事情があったと思うのですが、その事情はどういう原因であるかということを一つ。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 時間をちょうだいして、経過を詳細に申し上げます。そういうブルガーニン氏との会談によりまして、しかもその会談の際に、抑留者の一部返還を君はせっかく熱心に主張されるのであるから、考慮しよう。というのは、今のイシコフに協力してやりたまえという話のあと、話がなごやかになりましてから、一部の者については帰るようにさせよう、これは追って君に書類をもって通達する。イワノヴォの収容所に行くのなら、一つ便宜をはかろうというような、いろいろ話があったわけであります。その際に、今ちょっと申し落しましたが、すみやかにその話し合いを始めることがよかろう、話し合いの内容については、今申した通り、これはどういう格好でとかどういう条件でとかという話はないのであります。そういうことで引き続いて私はイシコフ漁業大臣と会ったわけであります。会うと、イシコフ漁業大臣は、ブルガーニン氏との会談で、非常によかった。従って両条約はもうこれでできるから、お互い事務の方に移して、双方とも協力的にこれを取りまとめるようにしようじゃないか、その間に君はイワノヴォへ行ってきたまえ、一切の手配はしてあるからということで、その翌日私はイワノヴォヘ行ったわけでございますが、そういうことで一切事務当局に移して参るような段階に行っておったわけであります。もちろん、そのときには、今年度の漁獲量については六万五千トン、それはこういうふうにしてやるんだああいうふうにしてやるんだということで、具体的に全部下に移したわけでございます。  そこで下の準備が一切整いましたから、十二日の午後五時か六時ごろであったと思いますが、最後の仕上げにかかったわけでございます。そうしてそれは順調に行っておりましたが、多分七時か八時ごろ——向うは宴会の支度をしておりまして、双方で懇親会をやろうというので、その準備をしておりましたのが七時ごろか八時ごろだったと記憶しますが、形勢がにわかに変って参りまして、ぜひ私に会いたい、こういう申し出でございましたので、私もそのときには取りまとめでございますから、小委員会、専門委員会を二、三カ一所で開いておったのでごいます。この会場は、いずれもわれわれが宿舎にいたしておりましたソビエッカヤというホテルの別のところにございました。そこでやっておったわけでございますが、その先方のイシコフ漁業大臣、それから首脳部のおりますところへ私は行ったわけでございます。そうすると、実は、だんだん準備もできたが、今年度の暫定取りきめをするにしても、これの実施は漁業条約の成立が前提になる、漁業条約の成立は、両国国交の正常化が前提になる、この前提のもとにでなければ一切これらはだめだ、こういうことに向うの主張がなされたわけであります。そこで私は非常に驚きまして、それは話が違う、それならばこの間ブルガーニン氏と会った際の話と違うじゃないかということで双方非常に強く激論をいたしました。だんだん話しておりますうちに、先方もだんだん人が加わって参りまして、しまいにはその会議場が日本側の方も首脳部、顧問もしくは松平君その他専門委員、幹部は全部その席上に入るし、先方もだんだん人がふえてきまして、おそらく四、五十人がその部屋に集まるというようなことになったわけであります。そこで私は、先方をことにここで誹謗しょうとは思いませんが、おのおの全権と全権との話でございますから、最初に交渉の名簿の取りかわしがあるわけであります。しかるに当夜に限って名簿の取りかわしにない、今までわれわれが一度もお目にかかったことのないような方がそこに御出席になっておりまして、しかもこれらの人が第一線に立って私の前面のテーブルを占めて話をされる。そうしてこれが事々にイシコフ漁業大臣を、言葉はわかりませんけれども、牽制するような様子に見受けられました。そこでいかに私からブルガーニン氏との会談の内容を申しましても、先方は全然受けつけない。たまたまそこにブルガーニン氏との通訳を勤めました人物も現われて参りましたから、その通訳に対して、私は君が通訳をして僕に言った話は、これこれしかじかであった、その後イシコフ氏とこういう経過であるが、それはさておいて、君の通訳した言葉はこうであったが、それは間違いなかろうということで、私はまずその通訳を明確にしようと努めました。しかるにその通訳は、顧みて他を言うごとく、河野がこういって自分を責めるのだということをイシコフに伝えておる。それを私のそばに日本の通訳がおりまして、今彼はこういうように雷っておると伝えるわけです。そういう事情でございますから、一切話が進展しません。そこで私は、総理大臣と話したことがこういうように違うようでは、条約の調印をしても仕方がございませんから、私はこのまま帰りますという決意をして申し入れをいたしました。そうしたところが、イシコフ氏の申しますには、ここまできている事実は事実として、それならばひとまずこの場合は散会するより仕方がない、自分としてもやむを得ぬ、こう申しましたから、それじゃやむを得ません、私も東京に帰ります、私は漁業問題以外のことを話す資格はありませんから東京に帰る、そうして全体の和平の問題は別の人がお話し合いになるでしょうし、日本としてもその問題にあなたの方が触れなければ、なおいけないというならば、別の交渉をするより仕方がありません、私は帰ります、こう言いましたところが、向うでとめるような、やむを得ぬような格好をいたしておりました。もう一つは、ブルガーニン氏がどういうことを私に言うたか、私の言ったことが間違っておるかおらぬかということを確かめてもらいたい、そうしてブルガーニン氏が私が了承するようなことを言わぬ、こういうならやむを得ませんから決裂にいたしましょう、もしブルガーニン氏がそれは私の言う通りだと言うならば、私は松平を残しておくから、とにかくあした東京に帰りますという決意を示しましたところが、向うはまあまあブルガーニン氏の意見をもう一ぺん聞いてみるから、あした帰ることだけはやめて、もう二、三日延ばしてくれ、こういうふうに向うも切に要求しますし、私はそう無理も言えませんので、二日か三日か、十三日に帰る予定を十五日に延ばして、十三日が日曜日でございましたから十四日まで待とうということにいたしておりましたら、十四日の午後五時に先方が会見を申し込んで参りまして、会いましたところが私の言った通りでよろしい、こういうことで成立に至った、こういう経過でございます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 そこであなたとブルガーニンとの間の会談というものは、口述にしろ、何か筆記でもとって、すぐそのあとであなたは整理されておったのでしょうか、ただあなたの記憶だけにとどめておいて——何かそこに公けな客観的なものとしてすぐその場でメモなり何なりをとって、全権団としてそうようね態度をとられたのかどうなんでしょうか。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 これは記録をとる会談ではございません。私は漁業交渉の一環として初めから面会を申し込んだのではないのでございます。たまたま漁業交渉かそういう段階にありましたので、話が漁業交渉の話になったのでございます。これは先方の総理大臣に対して敬意を表する意味において、私はお目にかかりたいと申し出をしたのでございます。従って先方も、今言う通りに、記録をとるとか、残すとかいうことなしに会談をしたのでございます。私の方も記録をとるとか残すというようなことはいたしておりません。

和田博雄日本社会党

○和田委員 そこで結局七月三十一日までに交渉を再会するというのは、どこで出た話ですか、イシコフとの間の話で決定したことですか。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 これはただいま申し上げましたように、すみやかに、すみやかにということを言われますから、そこで私はイシコフ氏と会いました際に、先方から書いて参りました覚書の中に、あれは字をごらんになればおわかりになると思いますが、直ちに、非常に早くという字がありますので、その早くという意味は、七月三十一日だと、私が七月三十一日という字を入れたのでございます。向うが言うように早く早くといいましても、今北洋漁業の開始中でございまして、それを向うが誤解して、早くといってもやらずにほっておくじゃないかというような誤認が起ってはいけませんから、そこで期日を切ってもらった方がよかろうということで、七月三十一日という字を入れて誉めたわけでございます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 もう少し聞きたいのですが、時間がありませんので、ただこれは鳩山さんに聞きたいのですが、今度の漁業条約の第八条を見ますと、「この条約は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約の効力発生の日又は外交関係の回復の日に効力を生ずる。」ということになっておるわけですね。これは御存じでしょうね。それから今河野君の説明にもありましたように、ともかくこの漁業条約というものはこの第八条が入って、言いかえると、日ソの間に平和条約を結ぶかあるいは国交回復をやるか、そのどちらかのことがなければ効力は発生しないということです。言いかえますと、漁業条約というものは日ソの国交回復というものの妥結、これを条件にしているわけですね。従って、しかも今言ったように、七月三十一日までにこの国交回復の交渉を始めるということを、河野君は全権として約束されてきたわけであります。これは政府としても当然その約束は認める。従って日ソ国交の回復というものは早期の妥結という方針を政府としてもとった、こういうように解釈していいのでございましょうね。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 七月三十一日までに国交を正常化することについて、平和条約の形式をもっていくか、どういう形式でいくか、これはまだこれから慎重に検討するわけではありますけれども、国交正常化について、七月の三十一日までに手続を開始するということは、約束をしてあります。

和田博雄日本社会党

○和田委員 これは七月三十一日までに開始をするということだけですか。そうではなくして七月三十一日までに開始をすると同時に、日ソ国交の調整というものを早く妥結する——その方式はこれから私は聞きますが、その方式のいかんにかかわらず、妥結をするということに政府は意思をきめた、こう見ていいのですか。あなたのお考えはいかがでしょう。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 私が話をしてきましたから、その話の経過を先に申し上げて、あとから総理大臣に答弁してもらいます。七月三十一日までに国交の回復に対して両国の話し合いを始めるということでございまして、始める方がよかろうということに意見の一致を見たのでございまして、それはどういう形態でどういうふうにしておやりになるかということは、私は全然話し合っていないわけでございます。それから交渉の結果がどういうふうになるかということについては、もちろんこれはブルガーニン氏もすみやかにあらゆる努力を尽してと言うておりますから、こちらにおいても国交の正常化に対してはあらゆる努力をして、一たんロンドンでああいろ状態になっておりますから、その後こちらとしてもあらゆる努力をしてやることは必要だろうとは考えておりますが、それから先のことは全然話し合っていないわけでございます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 僕は河野君の弁解を聞いているわけじゃないのだ、河野君の結んできたこの漁業条約、それからブルガーニンあるいはイシコフとの間の会談において、あなたが日本の全権として約束してきたこの事柄について、日ソ交渉の問題については、鳩山内閣としては、ことにその責任者である鳩山総理としては、早期妥結ということに内閣の方針をきめたかどうかということを聞いておる。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 早期妥結をするということを閣議できめたことはありません。私自身としては、できるだけ早く平和条約の形式で国際関係を正常化したいという希望を持っております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私は希望を——まあ希望は希望として聞きますが、それならば早期に再開をするという意思であって、必ずしもこれが妥結、言いかえますと、両方の意思が合致するというと、ころまでいかなくてもやむを得ぬ、そういう場合もあり得るという考え方でございますか。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 それは相手のあることでありまして、私の方で必ずできるということを自分自身できめるわけには参りません。

和田博雄日本社会党

○和田委員 相手があるといいましてもも、日ソの国交回復の問題につきましては、ロンドンでもう長い間やってきたわけです。そうして領土問題を除いては、全部の問題について両者の意見は合致しているわけです。そしてただ領土問題についての日本側の意思と、向うの意思とが合致しないがゆえにこれが延びてきているわけです。今度は政府が漁業問題というもので追い詰められて、結局早期に再開するということをかりに約束してきた。それは日ソの国交正常化というものを完全に興行できる段階までやっていく。完全に妥結するということについては、政府の意思決定を今求められているわけです。相手があるからということだけではいけないのでありまして、それに対して日本側が臨む態度というむのは、おそかれ早かれこれはきめざるを得ないのであります。ことに今の河野君の報告を聞けば、日ソの国交調整の再開というものは早いほどいい、こういうことを河野君は言っているわけなんです。そうなれば政府としてはできるだけ早い機会に、これはどちらかに決定しなければならぬ。どちらかに決定しなければならぬというのは、領土問題について日本側の主張をそのまま通していく、そしてこれがほんとうに平和条約なら平和条約という形で妥結するか、あるいは領土問題というものは一応たな上げして、アデナウアー方式で妥結するか、どっちの方式をとるにしても、あなたとしてはもはや決断をしなければならぬ時期だと私は思うのですが、その点について私はお聞きをしているわけなんです。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 決断の時期に迫られているということは、私も感じます。決断をしなくてはならない時期が近づいているとは思います。けれどもそれらについては国論が統一するということが必要であり、国民が領土問題について熱意を持っておることも事案でありますから、それらについてこの意思もよく尊重をいたしまして、国交調整について、領土問題の調整についてソビエトともよく懇談をすることも必要だと思いますから、今いつごろに決定します、こういうように決定しますということは、発言はできないと思います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 その点はもっと聞きますが、今度は視角を変えて、あなたはこの間の本会議において穗積君の質問に対しまして、特別の事情のない限り平和条約の方式で日ソの国交調整をやりたい、正常化をはかりたい、こういう発言をされているわけですが、特別の事情というのは、一体あなたのお考えではどういう事情なんでございましょうか。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 せっかく領土問題を除いてはすべて合意ができておりますから、領土問題についての意見の調整さえできれば、平和条約でやった方がいいと思っております。そういうことを申したと思います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 領土問題について調整ができれば平和条約で結びたいというお考えですが、その領土問題については、河野君とブルガーニンとの間の会談によれば、向う側の主張は、南千島は日本がサンフランシスコ会議で放棄しているのだから返さないということを言っているわけなんです。日本側はそれを返せということを主張しているわけです。ここに両者の間の意見が今までも一致していない。ですから領土問題で話し合いが解決すればと言うが、それならば領土問題で話し合いが解決するという見通しを総理は一体持っておられるのかどうか。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 それは話をしてみなければわからないと思います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私はその答弁はおかしいと思うのです。今までロンドンで松本全権がとにかく一生懸命やってきて、そうしてこちらの主張というものは十分向うに述べている。向うもその領土問題については主張してきている。それで結局話がまとまらずに、打開されないままにこれはたな上げみたいになっていた。それが今度河野君が行って、漁業の問題を契機にして、再開の糸口を一応開いてきたわけなんです。そうすれば、双方の主張というものはわかっているはずなんです。そして外交の責任を負うのは何といったって政府なんですよ。その政府が党内の意見を統一し、そして国論を導いて責任を持った政治をやっていくのでなければ、いつまでたったって国論の統一もなければ何の統一もないのです。あなたの今の御答弁は、私は日本の外交、日本の国政を担当する人の言葉ではないと思う。もう一度明確な、あなたの希望でなしに決意をはっきりとこの際述べていただきたいと思うのです。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 私は今ここで自分の決意を申すべき時期ではないと思っております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 一体いつになったらそういう時期が来るのですか。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 さっき申しましたように、決意の時期は迫っていると思っております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 そうすると、日ソ交渉についての早期の交渉再開ということは、一体いつごろおやりになるのですか。あなたとしては早いほどいいと思うのですが、それとも七月の参議院の選挙でも済んでからやったらいいというお考えですか、どっちでしょうか。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 選挙の前にやったらいいとか、後にやるよりしようがないとかいうことは、考えたことはありません。

和田博雄日本社会党

○和田委員 考えたことはない、それは無責任じゃありませんですか。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 選挙とは無関係に考えております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 いつやるのですか。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 それは先ほど申しますがごとく、これから検討いたしまして決定するよりしようがないと思います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私はそれは総理大臣としては少し無責任だと思います。あなたはとにかく一党の総裁ですし、総理大臣です。党内においていろいろな意見のあることは僕も承知している。違った意見もありますし、国論も必ずしも一致はしていない。しかし漁業問題で追い詰められて河野君が行って、早期妥結と交渉再開ということに来た以上は、これで交渉をまとめるかまとまらないかということは、今後日本が非常な不利な地位に立つかどうかの分れ道だと思うのですよ。そういうことは今までに、交渉している途中から、政府としては次をどうするかということくらいは、あなたは閣議を開いていつでも党の首脳部とも相談もできるし、これくらいの見通しというものがつかなければ、一体何のために政治をやっているのか僕はわからぬと思うのですよ。やはり総理としては、もっと責任のある答弁を願いたい。ことにあなたは自民党の総裁としあ鳩山内閣を作られるときに、民主政治は責任政治であるということを強調されたはずなんだ。そして友愛精神ということをしょっちゅうあなたは説かれている。友愛精神ということは、やはりお互いに信用し合って、約束を守り、責任を持つということが基礎にならなければ、友愛精神ということはありっこないのです。私は、やはりもう少し誠意ある答弁をして、日本の総理大臣に恥かしくない何をやってもらいたいと思いますね。これはもう国民の一人としてもそう思いますよ。どうでしょう。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 私は今発言することは不利益だと思うから発言しないのであります。日本国民に対しては、誠意を尽して最善の実をあげたいと思っております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 それは、たとえばアデナウアー方式によるとか、平和方式によらなければならぬとかいうようなことを今あなたが断定することは、ずいぶん不利益だということは言えるかとも思います。しかし今度の日ソ国交回復の交渉を再開するということについてだけは、これは時期も迫っていることであるし、あなたが早く始める考えである場合には、その時期の見通しをはっきりと言われても、私はちっとも不利になることはないと思う。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 七月の三十一日の以前に日ソ交渉は始めるということと、できるだけ早く解決したいという希望を持っているということもたけは申し上げることができます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 暫定協定の場合は大体八月の十日までが漁期です。これは河野君がきのう井出君の質問に答えて内容を一応発表しましたから私は聞きませんが、しかし暫定協定というものは、ことし一年限りのことなのです。漁業というものは来年もまたやらなければならない。しかも日ソ間の国交調整という問題については、領土問題その他大きな問題がそこにあるわけなのです。それに対してその糸口である今度の、今までたな上げされておった交渉を打ち開いていこうというときには、七月三十一日までに始めるといっても、時期は早いほどいいというのが私は当りまえだと思うのです。それも準備がこっちにないのならともかく、今までロンドン会議で準備は十分あるわけです。ただそこに欠けておるのは、党内における意見の統一と、政府の決断です。それから国民の指導が欠けておる。これは私はやはり鳩山さんにもっと明確な答弁を願いたい。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 ちょうど、あなたも五段の棋客であるから御存じでしょうが、あなたと私のする問答は劫を争っているようなもので、同じようなことを言っているわけです。実際のことをいえば、決断をもってできるだけ早くきめたいという以外には、私としては蓄えないのです。御了承を願います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私は今の鳩山総理の答弁は非常に残念に思います。外交は意見が違うのも当然なのであって、意見が違っていいと思います。しかしながらこういう大きな問題についてもまたあまり考慮の余地のない問題についてまでももはっきりとした意思表示をされないということは、どうも日本の政治というものが何か本質的に欠けたものがあるという気がしてしようがないんです。その点についてあなたは、やはり総理としても総裁としても十分考えて、国民相手の政治なんですから、もう少し誠意のある答弁を願いたいと思うのです。  実は私は日ソ交渉についてもっとこまかいいろいろな問題を質問しようと思っておったわけですが、だいぶ時間も食いましたからあとの質問に移ります。今の総理の答弁を聞いて、これ以上本質的な問題の御答弁を願っても、おそらく今の答弁と変りはないと思うのです。結局何にも自分としての考えはない、いわば引き回されておる総理大臣であるといわざるを得なないのです。  そこで私は今度は日比賠償について一つお伺いいたします。日比賠償についての何ですが、日比賠償の五億五千万ドル、経済開発借款の二億五千万ドルですが、五億五正方ドルという賠償の金額のきまったその基礎は、どういう基礎からこの五億五千万ドルという金額を出したかということを、これは高碕さんから伺いたい。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 何を基礎としておるかということになりますと、これはいろいろな議論がありましょうが、従前の日比交渉に顧みまして、最初津島全権が参りましたときには、先方は八十億ドルという数字を出したのであります。それに対しまして中途で大野・ガルシア案というものが出まして、これは四億ドルということと、それによって十億ドルの経済効果をあげるということが大野・ガルシア案になっておったのでありますが、これは御承知のごとく不幸にして成立しなかったわけであります。私は昨年の五月にネリが参りまして以来、外務大臣をお助けいたしまして、経済問題であるということでネリと折衝したのでありますが、そのときに彼は初め十億ドルということを主張したのであります。いろいろ折衝いたしました結果、八億ドルという数字をどうしても自分は固持したい、こういうことがあったのであります。それをいろいろ検討いたしました結果、四億ドルの賠償、それから十億ドルの経済効果ということから割り出しまして、結局五億五千万ドルを二十年間ということにし、それから二億五千万ドルを——これは政府の経済的の責任ではないけれども、徳義的の責任がある。両国民間における経済投資をもって充てるということにすればこれは八億ドルじゃないか、こういうことから五億五千万ドルと二億五千万ドルという数字が出たのであります。

和田博雄日本社会党

○和田委員 そうすると結局こちら側の賠償支払い能力というものが一応基礎になっておる、こう見ていいのでございますね。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 日本側といたしましては、フィリピンだけでなくビルマ、将来はまたインドネシアと、いろいろな賠償があるものでありますから、こういうふうなものを考慮いたしまして、一年間に日本の経済力において耐え得る金額はどのくらいかということから割り出して、できるだけ長期にして、最初は一年三千五百万ドルぐらいは、フィリピンに対しては負担できるというふうに考えたのであります。

和田博雄日本社会党

○和田委員 大蔵大臣に聞きたいのですが、日本の対外債務というのはフィリピンだけでなくて、まだインドネシアもあり、その他の国にもありますが、日本の支払い能力から見て、一体どの程度をもって目標にしておりますか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 対外債務の支払い能力でありますが、これは対外債務の態様にもよりますし、また日本の国力の今後の消長にもよることでありまして、的確に将来を見通すわけにいきません。ただ今日言い得ることは、今大体きまっておる対外支払い債務は年に直しまして八千五百万ドル、さらにこまかいものも入れて九千万ドルをちょっとこえておると思いますが、今後予定される賠償としてはインドネシアが一番大きいと思いますが、すでにビルマ及びフィリピンがきまりました。従いましてこういうふうな見地からインドネシアの賠償もやや私は想定ができる。これを加えてみましたときに、金額といたしましては一億ドル、どれほど上回るかということになるのでありますが、そういうところは今後対外支払能力として日本の耐え得る限界であろう、かように考えておるわけであります。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕

和田博雄日本社会党

○和田委員 そうすると、大体一億ドルということでございますね。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 私は一億ドルを若干上回ることはできるだろうと思っていますが、先にどういうふうになりますか、これは今後の日本の経済力の消長にもよりますし、また支払い対外債務の内容にもよりますから、それは何ともここで申し上げかねますが、大体一億ドルを中心として御検討を願いたい、かように私は考えます。今ちょっと幾ら支払い能力があるということを、私は責任があるわけですが、申し上げるのも適当でない、かように考えております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私は今、日本の財政を見まするときに、日本の財政需要の今後における増大という問題は、かなり重要な問題になってきていると思うのです。たとえば、一つは社会保障の問題であります。その中でも旧軍人の恩給の問題であります。これが大体一千億円です。それから地方財政の問題があります。補助金の問題がもちろんそれに伴っております。その次は防衛費の問題です。防衛費の問題にしても、ことしは防衛分担金の削減方式はきまりましたが、結局日本の防衛全体の費用というものはふえているわけです。これは将来減る予定は、今の内閣でございません。ふえるものです。食糧増産と治水治山の問題についても、これまたやはりふえると見なければならぬのであります。そのほかに財政投融資の問題があります。そこに対外債務の問題が加わるわけです。これだけの項目は、将来減るものはあまりないのであって、ふえるわけであります。従って大蔵大臣が対外債務の問題を取り扱うときには、将来における財政需要の増大を考え、同時に日本の経済発展の速度、大いさというものを考えることなくして、これを容易に決定すべきものではないと私は思うのです。そういうふうに考えたときに、今度の日比賠償の表面は五億五千万ドル、民間借款に移されたというものの事実日本の政府と非常に関係のある二億五千万ドルという借款、総額八億ドルというものについては、大蔵大臣は一体どういう見地から、これを唯々諾々として承認されたのか、財政的には一体どういう考慮が払われたのか、その点を簡単にお答え願いたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 今後日本の財政がいろいろと非常な負担が増していく、全く同じ考えでありまして、従って賠償を考える場合の基本的態度は、全く御意見の通りであります。私も同じような考えをもって進んでおるのであります。フィリピンの五億五千万ドル、何も唯々諾々と言って大蔵大臣がしたわけではないのでありまして、これは関係閣僚はもちろんでありまするが、十分検討を加えまして、きまったわけでありまして、言いかえれば日本の今後の財政力、国民の負担力、こういうものはむろん考えました。また同時に今後の日本の経済発展の速度等も考えて検討を加え、またさらに具体的には、一すでにきまっておるビルマ賠償、これ一も参考にし、あるいはフィリピンの、前に相談のありました大野・ガルシテ案、これも参考にして、こういうふうなもろもろの角度から誉めたわけでありまして、決して唯々諾々というような言葉は当らないのであります。

和田博雄日本社会党

○和田委員 今度のフィリピン賠償で、賠償額そのものも問題ですが、やはり一つの非常に大きな要素になっているのは、民間借款に移された二億五千万ドルだと思うのです。フィリピンが八億ドル——民間借款を含めて八億ドルの日本からの賠償は、結局フィリピンの経済開発のために使われる額だと私は思うのです。そこ、今東南アジアその他の後進国を見てみますと、どこの国でも私は開発計画というものを持っておると思うのです。五カ年計画あるいは三カ年計画といったように年次は違いますけれども、国内資源の開発計画は持っておるし、またその開発計画の目標とするところも、各国一様ではございません。これは高碕さん御承知の通りだと思うのです。フィリピンもまた同様に五カ年計画を持っておる。これは最近また変えるようでありますけれども、とにかく一応計画を持っておると思います。この後進国の、低開発国の基本的な問題は、やはりその国の生産の基礎的な条件というものが整っていないということだと思うのです。もう一つは、その国の所得が低い、従って資本の形成も非常に低い、蓄積率が非常に低い、生産も従って低い、こういう悪循環に悩まされておると思うのです。そこでフィリピンの場合は、日本から年々来るところの五億五十万ドルとそれから民間借款の金とが、これらのいわば外資がそこへ投入される形になって、それが資本財の形であるということになりますけれども、役務とか資本財の形になって、それで日本がフィリピンの国の資本の形成度の非常に低いことを補っていくということになると思うのです。従って貿易の拡大ということを一応目標にして、フィリピンとの間の民間借款を結んだけれども、賠償そのものはやはり貿易の拡大、経済拡大に結びついておる問題だと私は思うのです。そうしますると、今度のフィリピンとの間の賠償協定を見てみますると、日本の通常貿易というものが、この賠償によって阻害されるといいますか、やはり影響をこうむるということがあり得るし、またその条約の中に私ははっきり出ておると思うのです。両国の合意によって資本財でなくて消費財もやはり日本から払うということができるようになっておるわけです。今はそういうことはすぐには起ってこないと私は思います。しかしもう最近ビルマにおいてはそれが起ってきておる。フィリピンにおいては私はもっとたやすくそういうことが起ってくると思うのです。フィリピンと日本との間の貿易を見てみれば、日本から行くものはそう大きな生産財はないのです。大体消費財です。普通の貿易においては消費財が多いのですから、そうすればフィリピンが五カ年 計画か何カ年計画か今度作ったとして、日本から賠償なり民間借款なりがそれにうまく組み入れられて、そうしてその経済開発がスムーズにいけば、これはそういうおそれはあるいはないかもしれません。しかしながらフィリピンの今の主要な商品、輸出品目を見れば、これはみな国際的な価格の変動をきわめて敏感に受ける商品ばかりなんです。フィリピンの経済の基盤というものは、日本の経済の基盤と比べて非常に弱いものだと思う。そうなってくれば、せっかく経済開発のために民間借款もやり、賠償もやりながら、実際は日本のそれがうまくいかなければ、通常貿易の方に影響を持って、日本の貿易自身に悪影響をこうむるという事態が、やはり出てくることを考えておかなければねらぬと思う。そういう点について、今度の賠償をやられる場合に、政府としては一体どういう配慮を払ったのか、その点についてお答え願います。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 私は今和田さんが御指摘になったと同じ心配をいたしておる一人でございまして、最初役務だけではあなたの国の経済はなかなか立っていかないから、ある場合には消費財を持っていったらどうですかということを言ったことがあるのですが、その当時フィリピン側では、消費財は断じていけない、資本財ということを非常に強硬に主張されておったのであります。私は今度賠償のために参りました間に、十一日に立つ予定でありましたが、二日間延期いたしまして、先方の人たちといろいろ折衝したのでありますが、御説のごとく先方でも五カ年計画を持っております。私どももこちらで五カ年計画を持っておりますから、これを先方にも示して、よく両方とも打ち合せてこの計画を立てようではないかという話し合いをつけたのであります。今御指摘のような点は、だんだん話してみると、先方はだんだんわかってきたわけであります。そこで私はこの問題を解決いたしますについて、日本として考うべき問題は、原則は資本財と役務ということになっておりますが、日本の正常貿易を阻害しない範囲ということ、もう一つは日本の外貨の支払いが、負担が多くならぬことという程度においてならば、ある場合においてはフィリピン側が要求すれば、消費財を持っていってもいいと存じておるわけであります。ただいま先方が要求しておりますものは主として機械類でございます。設備でございますが、その中には設備をするための資材というようなことも言っておられますから、従ってセメントあるいは鋼材等も供給していかなければならないと存じておるわけでありますが、大体貿易といたしましては、現在フィリピンはアメリカとの貿易が非常に多くて、アメリカから輸入しておるものが全体の八〇%を占めておるわけであります。それには何が多いかと申しますと、繊維製品が第一でありまして、第二が機械類であります。日本のフィリピンに対する輸出貿易は、現在におきまして何が多いかといえば、鉄の製品、次が繊維製品でございます。当然繊維製品はアメリカのものにかわって日本のものがいくということは考えられるわけでおります。のみならず現在日本はフィリピンから八千八百万ドルの大きな輸入をしておるわけであります。それは日本の経済復興のために最も必要なるもの、あるいは鉄鉱石、木材というようなものでありますから、これは当然だんだんふえて参ると思います。今後の貿易協定におきましては、交換公文でも申し合せておる通りに、日本が輸入しただけのものは、あなたの方も買ってくれということになっております。従って日本の輸入がふえれば、先方もアメリカから買うものをやめて、日本のものを買うということに相なると私は想像しております。   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕

和田博雄日本社会党

○和田委員 最後に一点お聞きして私の質問を終りたいと思います。それは中国との国交正常化の問題であります。中国との国交正常化の問題は、今度日ソ交渉が幸い政府が決意を示されて妥結したとすれば、次に必ず私は起ってくる問題だと思うのです。その点については、今までは政府の態度は非常に消極的であったと私は言わざるを得ないと思うのです。ところが世界の情勢は、事中国の貿易に関する限りは、非常な進展を示しておるわけです。時間がありませんから、一々外国がどうだということは申しません。しかしながら今のままで日本が行きますならば、日本が正常な国交を回復したときは、おそらく経済的には、はるかに貿易上はおくれたものになっていくだろうと思います。こういうように考えますときに、中国の方からは、こちらからいろいろな漁業代表が行ったときとか、労働組合の諸君が行ったときとか、代議士の諸君が行ったときとか、機会あるごとに政府との間の国交の正常化を求めてきておるのが現状だと思います。最近の報道によれば、周恩来が鳩山さんは来てくれないだろうかと言っておるし、また戦犯も向うが進んで釈放をしてくれてきているわけであります。私は中国との国交正常化の問題について、外務大臣は今どういう考え方でおられるかを、この際伺っておきたいと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 この問題については、私はたびたびの機会に政府の方針をはっきり申し上げて、説明をいたしてきたつもりでございます。中共との関係は、中国の政府としては国民政府を承認しておるという今日の立場でございます。従いまして一つの中国について二つの政府を承認するということはできがたいことでございます。それでございますから中共を中国の政府として承認するということは、今、日本政府の考慮に上っていないことでございます。ただこの問題について、これまたたびたび申し上げた通り、中共政権が広大なアジア大陸の地域において確立されておるという、この事実は否定することはむろんできません。当然に認めなければなりません。そこでその事実を認めて、そうしてこれとの間においては、日本は隣の地にある国として、必要な接触は保たなければならぬと考えております。特に貿易のごときは、国際的にでき得る範囲内でやるがよろしい。日本が国際上の義務に反することは国際信用上できません。しかしながらその義務に反しない限りにおいて、貿易のごときも考えていくがよろしい。今お話の通り中共との貿易は、世界の重要な国がこれを重要視して認めて番うつある状況でございますから、日本においても、国際義務に反しない限り十分にこれに力を尽すべきだと考えております。その考え方は過去数年間維持してきたのでありまして、中共との貿易を非常に増進されておるのが今日の状況でございます。そうしてこの傾向を進めていって、でき得るだけ双方の貿易上の利益を増進する、そういうことが今日日本のとらなければならぬ態度だと考えておるのでございます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 もっと具体的に聞けば、中共を承認することが今できないということであるならば、事実上国交の回復をしていくということはできないか、中共承認というむずかしいことではなくて、事案上国交を調整回復していくことはでき低いかということです。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 この問題を国際的にむずかしくいえば、事実上の承認も一つの国家間の行為であります。そこまでいくのにはまだ時間があると思います。私は貿易とか漁業とかその他の問題にしても、実際的にこれを解決するという方法をとっていきたいと思うのであります。それが双方の国の利益であるという考え方でございます。

三浦一雄自由民主党

○三浦委員長 和田君、いかがですか。時間がだいぶ過ぎましたが……。

和田博雄日本社会党

○和田委員 まだありますよ。

三浦一雄自由民主党

○三浦委員長 党としては二時間ありますが、あなたの持ち時間は……。

和田博雄日本社会党

○和田委員 今澄君の了解を得ていますから、よろしいです。  それならばたとえば今、日本はチンコム、ココムのひどい制限を受けている。それを政府として、もっと積極的に緩和していく運動とか、そういう措置はあなたはやられておりますか。そういうことを具体的にやられた上で、国交を回復していくということを、僕らは言ってもらいたいのです。そういう具体的な措置というもので、現に政府としてはどういう措置をとられておるか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私は今申し上げたのが順序だと思っております。しかし国交を回復しろ、回復しろと言うが、一つの国に対して二つの政府を認めろと言われるのか、そうじゃないと私は思います。中共政府が将来どうなるかということをよく見て、時期を見て、これに適応する措置をとらなければならぬと思っております。そこで今日では貿易の増進が私は適当だと考えております。貿易の増進は国際義務の範囲内においてと申し上げました。その国際義務はどこに課せられておるかというと、今言われるココムだとか、チンコムだとかいうことで表わされております。それはで得るだけ広げることが、また貿易の増進になるわけでありますから、むろんのことであります。が、それに向っていろいろ努力をし、ずいぶん長くこれに力を尽しておるわけであります。しかしその内容を申し上げれば、国際的の品目を改めるとか、全然変えていくとかいうことは、なかなか困難なことであるということも説明をいたしております。しかしながらその適用に手かげんを加えるということも、また各国の了解を得ることが必ずしも不可能でない、現にその方向に向って非常に事実上は広げられてきておると私は思います。さような努力をして、しかしながらそういう輪郭の範囲内において、まだ貿易の増進をする余地が相当あると思います。そういうことについては十分努力をいたしたい。さらにその輪郭を広げるということも、努力をしつつあるということを申しておる。これは相当実績は上げつつあるように私は思っております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 時間がありませんから非常に端折って、しまいのところを聞いたのですが、私は最後に総理大臣に一言だけお聞きして、私の質問を終りたいと思います。今この国会の情勢を見てみますと、非常に法案も停滞するし、国会の通常も非常な混乱に陥っておるし、日本の二大政党政治というものが、私はゆがめられた形になっておると思うのです。これは議会人として、政治家として、お互いに悲しむべきことだと思うのです。私はこういう政治の情勢を見てみますときに、今度の外交の問題あるいは国内の政治問題その他を総合して勘案するときに、やはり政界に清新な風を入れるべき時期じゃないかと思うのであります。ところが今度の鳩山内閣というものは、私たちがしばしば言いますように、これは合同によって得たところの多数であり、内閣であります。そらして国内の政治もまた外交も、新しく出直す時期に私はなっておるように思うのであります。政局は従って今非常に不安定であります。私はこの政局を安定さし、そしてあなたがよく言われる二大政党というものが、民主主義の地盤の上に、共通の土俵の上において、日本に民主主義に基いた政治を行なっていくには、何かここにおいて国会を解散すべき時期のように私は思います。やはり新しい国民の批判を受けて、その上に立って政治をもう一度やり直すということが、どうも必要なように考えるのであります。社会党と自由民主党とが国会議員の数において、そう差のない接近した姿になってこそ、初めて国会における運営というものもうまく行く。もはやこれは話合いによっていく以外には手がなくなっているのであります。そこでおのずと政策自体が問題の中心に触ると私は思うのです。ところがあなたの今までやってこられたことは、今現在あるところの多数に基いて、なおその上に絶対多数を得ようとする魂胆の上にあらゆる政策をやられるから、ああいう混乱が起ってくるのだと私は思うのです。永久の政権というものはあり得ない。あなたの政党も私はかわると思う。社会党もかわるのです。その大きな世界の変化の中における日本の変化というものを考えてみるときに、妙にあなたがこだわって、そうして長い間政権の地位に恋々として、今の政治を通常されていくことは、私は日本の将来のためにとるべき政策ではないと思います。ここらでどうかあなたもよく考えて、解散をするなり、辞職をするなりして、(拍手)もっとはっきりちゃんとした政治をやるようにやる意思があるかないか、総理大臣として、日本の政治を動かしていく最高の責任者として、あなたのはっきりとした決意を伺っておきたいと思うのであります。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 議会政治の今日の現状を見て遺憾に思う者は、私一人ではありますまい。これに対して反省すベきことは反省しなくてはならないと思っております。これはお互いです。私はこの議会の混乱は、自由民主党は責任を負うことはないと思います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私はそれはおかしいと思うのです。国会の運営というものは、多数党で時の政権を持っている人に、第一にやはり責任があるのです。その責任がなくて、政治というものは僕は行われないと思うのです。あなたはとにかく責任という観念がどうも僕は希薄なように思う。私はその点はやはり総理大臣として、もっと活眼を開いて政治をやってもらいたいと思います。それだけを言って私の質問を終ります。(拍手)

三浦一雄自由民主党

○三浦委員長 今澄勇君。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 私は、時間の都合があって大蔵大臣は行かれるそうですから、まず大蔵大臣にお伺いをいたします。日比賠償その他のことは、いろいろ御答弁を得てわかりましたが、問題の点は、この日比賠償並びに議員提出の法律案その他の事情によって、今年度の補正予算を大蔵省は組む予定があるかどうか。それから先般資金委員会等を招集せられているが、あなたの目づもりの一億ドルという賠償の負担等は、将来公債の発行によって切り抜けていこうというような、公債発行に関する何か変った方針でも出たのかどうか。この二点を大蔵大臣にお伺いしたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 賠償の財源として公債発行を今のところ何も考えておりません。それから日比賠償が成立したので、本年度において補正予算を必要とするか、こういう質問でございますが、御承知のように、賠償等特殊債務処理として、特別会計におきまして二百二十億予算を見ておりますが、このうち百五十億が確定して、七十億予備費を持っております。日比賠償については、発効後六十日以内に実施計画をやりまして、本年度のうちにどのくらい払うようになりますか、これは実施計画をやらなくては今申し上げかねるのでありますけれども、しかし、結局これは月割になってくると思っておりますので、十分この予備費でまかない得る、かように考えております。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 なおここに災害発生その他もあるが、本年は補正予算は絶対に組まないということに、大蔵大臣はここで約束しますか。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 今のところ補正予算を組む考えは持っておりません。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 そこで問題は、この膨大な日比賠償その他国民負担に過重と思われるものを背負っておるわが国において、零細な一部の国民の、困っておる滞納者には差し押えをどんどんやる、そうして血も涙もない税の取り立てをやるが、大口の滞納者に対しては、政府はまことに怠慢をきわめておる。本年の三月三十一日現在、一千万円以上の滞納者が二百三十五名、この一千万円以上の人の合計だけでも総計六十億五千九百万、まことに大蔵省け怠慢だと私は思います。なぜあなたの方は、そういう小口の方はいじめるが、こういう大口の滞納者の一覧表等を公表しませんか。私は日比賠償の背景において、一部の財閥なり一部の大きなものが利益を得ようとしておることを、あとでほかの方々に聞きますが、ともかくも今大蔵省としては、去年もこれは発表しておらぬのである、その前の年も発表しておらぬのである。私はこの資料に基いて見てみるところが、大口の十口を見ただけでも、これは大へんなことなんだが、私はこういう大口滞納に対する大蔵省のやり方と、さらにこういった重大な資料をどうして大蔵省は発表しないかということを聞きたいと思います。

一萬田尚登自由民主党大蔵大臣

○一萬田国務大臣 徴税に対する考え方は、私全く同じ考え方をいたしております。従いまして、税の不公平ということを特に私は最近強調いたしておりまして、今回の税制改革についても、その点に主力を置いているわけであります。従いまして、零細な納税者に特に徴税を強化する、そういうことは全然考えておりません。私は、常に納税者の立場にもなって考えてよく徴税するようにということを申しております。むしろ私は、そういうような事実がありますれば、大口の滞納というものはあくまでも追及してもよろしい、かように考えております。今後今申し上げたような方針で進みたいと思っております。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 あなたの方で発表しなければ、私の方でこういう大口な、怠慢の状態を一つあなたにお知らせをして御善処を願いたい。滞納一億五千五百万円日本通運、滞納一億二千八百万円利久醗酵工業、滞納一億七百万円福泉醸造工業、滞納一億百万円東北物産等等、こういう大きな——なおこれはずっと詳細な私の方では調べましたが、こういう大きな滞納を大蔵省はそのままにしておいて、公債政策はとらないのである、そうして一般の大衆の大きな犠牲のもとに日本の予算を組んでいこうなどということは、もってのほかのことでありまして、私は大蔵大臣にこれ以上は追及しませんが、一つ今後善処を要望して、大蔵大臣に対する私の質問は終ります。  次に、日ソ交渉ですが、私は、松本全権は今度の日ソ交渉で非常にお気の毒だと思います。だがしかし、この松本全権に対して政府が最初に行いました第一次訓令は、南千島は含んでいないで、歯舞、色丹に対する潜在主権を主張するにとどめていたと私は承知をしておるのです。それが交渉の経過において、今度は南千島、択捉を入れて訓令を発した。かような状態では、だれが全権として前線におっても、私は交渉は困難をきわめ、非常に憤慨するだろうと思うのです。そういう外務省の態度の変化は、いかなるところが原因でそういうふうな基礎的な変化を来たしたものであるか、まず外務大臣から伺いたいと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 今のお話しの事実は、事実に非常に違うように考えます。私は、それを詳細に申し上げます。日本側は、初めから領土の返還を要求したのであります。それは、戦争後の平和を回復する場合においては、戦争前の領土の返還を要求することは当然でございます。日本は、日本から申しますれば、侵略でとった領土はないという建前でございます。そうであるならば、その領土の返還を求めることは当然であろうと考えます。また戦争中においても、その当時の敵国側は、常に領土の不拡大方針ということを宣言をして参ったのでございます。そこでわが方としては、わが方の戦前の領土、すなわち南樺太、千島、それは北千島及び南千島を含む、それから歯舞、色丹、これを全部要求したのでありますが、交渉の経過の途上、いろいろ努力をしてみましたけれども、それは全部の主張を貫徹することは困難である。しかしながら、御承知の通りにこれらの領土については、南樺太、千島については、サンフランシスコ条約において日本は放棄をしておる。でありますから、サンフランシスコ条約の調印国に関係を持つわけであります。そこで、そういう関係国とともに、国際的にこれを処理して最終的の決定をやろう、こういうことなのであります。そういうことに譲歩したのであります。日本にこれを返してもらうということは譲歩して、そこまできたのであります。しかし南千島及び歯舞、色丹は、これは日本本土に所属しておる島であって、いまだかって他国の領土となったことはないのであります。ソ連はしてもこれは認めておるのであります。従来のソ連との条約は、みんなこれを日本本土の領土として認めておるのであります。それでありますかそこまで譲歩をして、南千島及び歯舞、色丹だけは日本に返してくれ、こういうところまできたのであります。さようでございますから、追加をしたのでなくして、そこまでいわば退却と申しますか、譲歩をしてそこまできたのであります。これが日本の態度であります。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 私は重光外務大臣に、時間がないから長くは聞きませんが、およそ外務省のロンドン交渉にとった第一次、第二次、第三次請訓等の間における開き、それから第一次訓令の基礎は、昭和二十六年十月、サンフランシスコ平和条約及び日米安全保障条約特別委員会において、十月十八日、吉田総理は、わが党の西村議員の質問に対し、千島、樺太などは、条約にある通り、日本としてはその主権及び権限を放棄したのである、従ってその処分については、今日容喙する権利はないとの答弁を行い、十九日、西村条約局長は、千島とは北千島、南千島を含む意味に解釈するとの答弁を行なっておるのである。だから私は、外務省の出したその第一次訓令というのは、このサンフランシスコ条約を取りきめた吉田総理並びに西村条約局長の議会におけるこれらの報告並びに見解に基いて行触ったものであると解釈しておるのである。しかるに、それが急に交渉の途中において変ったということは、何か外務省に、国会において答弁をした吉田総理の答弁、西村条約局長の答弁は間違いであるとの基礎的根拠があるか、それともいかなる立場を持っておるかということを答弁願いたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 交渉の当初における日本側の立場及び要求は今申した通りであります。サンフランシスコ条約においては、日本は南樺太及び千島を放棄しております。しかしわが吉田全権はどういうことを言っておるかというと、南千島は日本の固有の領土であるということをはっきりと主張しております。これがまたわが方の、今回の日ソ国交調整の交渉における論拠の一つになっております。サンフランシスコ条約には、不幸にしてソ連は調印を拒絶しております。従ってソ連との関係は、これを交渉によって調整しなければなりません。しかしながら、サンフランシスコ条約に調印をした国々の権利を無視するわけには参りません。そこでこれらの領土については、サンフランシスコ条約の調印国を入れて国際的に話し合いをしたいという日本の主張は、正しい主張だと私は信じております。しかしてまた、日本固有の領土は、直接日本に返還を要求するということも正しい主張である、こう存じております。その立場のもとに交渉が進められてきたわけであります。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 私は外務大臣に、一つ外務省始まって以来の大失態について、ちょいと聞かなければなりません。それは「日ソ漁業交渉の妥結について」という「外務省情報文化局発表昭和三十一年五月十五日」これを見ると、「午前四時三十分モスクワにおいて北西太平洋の公海における漁業に関する条約および海難救助協定ならびに関連文書に署名調印を了した。」と書いて、さらにそれをまた眠り消して「調印を了した模様である。」と訂正をいたしております。およそ一国の外務省がこういう重大な国際的な取りきめについて、模様であるなどという発表は何事ですか。しかも詳細な発表の後において、取りきめてない条約まで発表したので、三日の後に、記者クラブにこれの取り消しを発表しに出ていくというような外務省がどこの国にありますか。重光外務大臣はその理由が一体どこにあると思うか、わが国の外務大臣としての責任を痛感しませんか、御答弁を願いたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 最近行われた漁業交渉の経過につきまして、報告がそのつどつど十分に到着しなかったということも事実でございます。しかしながら——「なぜ来なかったものを発表した。」と呼ぶ者あり)私は事実をはっきり申し上げております。事実であります。しかし交渉の経過の中において、一たん決定と思われたことが、また交渉中に変化のあったことも事実でございます。さような事実は逐一来ているのであります。しかしその来ておる材料に基いて、もう漁業協定、海難救助の協定が何日に調印することに話し合いができたという電信に基いてそのことをみんなに知らせるということは、国民に対する重大な責任だと思いますから、当然のことだと思います。しかしそう取り消された問題はありません。時日が遷延されたことはあるかもしれません。それはそのつど延ばされたということをはっきりいうのは、私は当然のことだろうと思います。それが間違った、真実を偽わった発表なら別ですけれども、それはそうじゃありません。ありのままに発表したのであります。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 もしあなたが責任を持つ外務大臣であるならば、少くともかような新聞情報を中心にして、模様であるなどというような発表をしたり、一ぺんきめたことが、外務省の記者クラブに発表になって、またあと取り消すというようなことをやったならば、責任を持って辞職するか、それとも外務省の立場を閣内において統一することが、私は外務大臣のとるべき道だと思いますが、あなたにこれ以上求めても仕方がないでしょう。私は事実だけを知らして反省をしていただきます。  総理大臣、お聞きの通りでありますが、私は総理大臣に一つ聞いておかなければならぬのは、平和条約方式、これで内閣は特別な事情がない限りいくんだというお話でありますが、しかしアデナウアー方式に変化する場合があり得るのか、絶対にアデナウアー方式には変化はしないのかというところが大事なんです。総理大臣は、将来アデナウアー方式に変化することがあるかどうか、これを一つ御答弁願いたいと思います。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 それは、慎重に検討しなければお答えができません。アデナウアー方式という、どういう方式をとるか、ただ私の申したのは、平和条約方式でいく方が通常である、それでいきたいということを申したのであります。それで御了承を願いたいと思います。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 絶対に平和条約方式で最後までいくということではなしに、情勢の変化においては考えることもあり、得るわけですね。そこで私は、このアデナウアー方式の採用については、総理大臣も考えることがあり得るというふうに解釈をして差しつかえありませんね。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 どうぞ。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 それではもう一つ、私は漁業の問題について聞かなければなりません。今次の河野代表の取りきめたブルガーニン・ライン、あるいは南洋の原爆の実験、アラフラ海、日米加三国漁業協定等、日本の沖合いから遠洋へという基礎的な漁業政策というものが、非常に大きな変化に当面をしてきたと私は思うのです。そこで農林大臣は、この世界情勢において、沿岸から沖合いへ、沖合いからさらに遠洋へという漁業政策に変化を加える意思があるかどうか、一つ御答弁を願いたいと思います。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 特別に取り立てて変化を加える意思はございません。しかし沿岸の漁業につきましても、遠洋の漁業につきましてももそれぞれ魚の行くところへ行って魚をとるということにしていくのが当りまえだと考えております。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 私は、農林大臣としてはどうも情ない見解だと思いますが、もう一つ、今回の船団、独航船に対する補償の問題はやらないという話でしたが、政府はこれに対して融資を行い、その他の便益を与えて保護助成することがあり得るかどうか、農林大臣に伺います。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 さしあたりそういうことは考えておりません。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 そうすると、政府はこれらの漁船団に対しては補償も融資も全部やらない。しからば、問題になっておる日韓漁業関係の引き揚げの問題、さらにこの日ソ漁業関係とつながる李ラインの問題について、農林大臣はどういう見解を持っておりますか。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 李ラインと日ソ漁業関係の問題とを同一に議論することは、私は当らないと思っております。と申しますのは、日ソ関係の鮭鱒に関する協定、もしくはこの問題は、あくまでも両国合意の上に立って、そうして魚族資源の保護育成をして参ろうということでございまして、今お話しになりました李ライン問題とは基本的に話が違う、こう考えております。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 そこで私は、先ほど問題のありましたフィリピンの賠償に関する綱紀粛正についての質問をいたしたいと思います。  フィリピンの賠償工作のために、昨年九月ラウレル・フィリピン特使が日本へ見えました際、鳩山総理に会われて、ラウレル。フィリピン特使から、かつて日本軍がフィリピンから略奪したと伝えられるダイヤ、貴金属について、その後の日本国内における処置等について話がありましたかどうですか。鳩山さんにお伺いをいたします。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 私にですか。——何という人でしたか。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 ラウレル。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 そういう話、一向知りません。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 私はこの賠償というのは、国民の税負担にかかるものであるから重要であって、この際明らかにしておきたいと思う。昨年の八月、日本に寄ったフィリピンの検事総長も、非公式に見解を漏らしたと伝えられるが、私はこの問題が、今度の賠償で四億ドルから五億五千万ドルに日本が譲歩しなければならなかった非常に重大な要素であると見ておるのです。この事件は、米軍マレー大佐が日本からアメリカへダイヤを持参、横浜の軍事裁判にもかかっておって、その他にも多数の人が関連をしております。終戦前、昭和十八年葉月、フィリピン軍政部付の杉山憲兵少佐と司令部の副官塚本少佐が、ひそかにフィリピンから東京に空輸、終戦直前まで田中東部軍司令官の隷下に管理されていたものが、その一部を古曲四郎彦氏の自宅倉庫に終戦と同時に移したものと伝えられます。軍政部が千葉県庁、片岡元代議士宅の二カ所を捜査したときに、同時に古荘宅をも捜査しまして、合計六十ドルの銀塊を押えたことは、今日大蔵省関係者の記憶に明らかであります。このダイヤが、昭和二十六年ごろからニューヨークで売り出され、それがアメリカに保管されているというフィリピン筋の見込みによって、大野・ガルシアの四億ドル案にまとまりかけていたこのフィリピン賠償というものが、これらの事件——これは、もとより日本が戦争中に犯した一つのあれでありますけれども——このことによって、だんだんと五億五千万ドルに譲歩しなければならなかったものであると私は見ておるが、高崎経企長官に、もし御存じならば御報告願いたいと思います。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 私は、全然今のお話しのことは存じません。初めてお聞きするわけであります。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 私がおそれることは、こういつた経緯があって、フィリピンのエルサルデ財閥と日本の三井財閥との間にいろいろの人々があれして、これらの賠償の実行が一部の特定な人の利益に帰せるということがあっては、国民に対して国会議員としてまことに申しわけがないと思います。この賠償を実行する政府としては、それらの疑惑について、いかなる対策を持っておるかを経企長官に聞きたいと思います。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 私は、全然それは存じませんで、初めて聞いたことでありますが、もしそういうことがあるとすれば、やはり問題でございましょう。しかし全然存じません。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 これは、日本の国内刑法上からは時効になると考えられるけれども、これらの隠匿ダイヤの問題について、法務省は調査をしたことがあるかどうか、もし調査をしたことがなければ、資料を提供していただいて、私は調査を要求いたしたいと思います。法務省の担当官が見えておられましたならば、一つ御答弁を願いたい。

松原一彦自由民主党法務政務次官

○松原政府委員 法務省の政務次官からお答えしますが、全然聞いたことはございません。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 それでは、この問題は時間もありませんから、決算委員会なりそれぞれ担当の委員会に移して、証人喚問等を行い、明らかにすることといたします。  第二番に私がお聞きをいたしたいのは、北洋漁業であります。北洋漁業は、御承知のように、日魯漁業は昭和二十六年に八千万円しか利益をあげておらない。昭和二十七年は、アリューシャン海域において船団が一船団だけ、昭和二十八年も一船団だけ、昭和二十九年はアリューシャン海域において二船団に増加して、その決算における利益は二億二千万円、昭和三十年、アリューシャンにおいて三船団に増加し、オホーツク海において一船団増加して、系統傘下のものを入れて四船団、利益は五億四千万円、三十一年はアリューシャン、オホーツク合せて直系船団が六船団、系統を入れて七船団、三十一年度の決算は十億を越えると予想されておりますが、この北洋漁業に関する日魯漁業と、河野農林大臣が大臣に執任してからのその船団の増加、決算における利益の増加は、まことに私どもをして疑惑の念を抱かせるに十分であります。北洋漁業の重大な資源を日魯漁業だけがかくも多く船岡の割当を受けたということは、農林大臣としていかなる基礎のもとに割り当てをせられたか、一つお聞きをしたいと思います。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 この点は、明瞭にお答えをいたしておきます。御承知の通り、漁業はたとえば南氷洋における鯨の漁業にいたしましても、シナ海におきまするトロールの漁業にいたしまても、これらは経緯がございまして、いずれも戦時中にわが国の漁業は、南方のもの、それからシナ海のもの、もしくは北洋のもの、これらを整備統合いたしまして、そこに大洋漁業と、日本水産と、日魯漁業という三社に整備統合をいたされたのでございます。当時日魯漁業会社は、北洋における鮭鱒漁業を全部統合して、ここに日魯漁業という会社が経営をいたしたのでございます。従いまして、戦後の状態は、南氷洋の鯨が始まり、まず第一にはシナ海のトロールが始まるという順序、経路を経てやって参ったのでございます。従いまして、日魯漁業といたしましては、北洋における鮭鱒漁業が、日ソの 関係の影響を受けまして、まだ開始の 段階に至っておりませんです。それが、順次北洋における鮭鱒漁業が開始されるようになりましたので、かつての許可をもって出漁しておりましたものが優先的に出て参ることの方が当然であるという事務上の手続をもって、そういうふうにいたした。しかし、これは戦前通りにいたすわけにむ参りませんので、戦後の実情もございますから、そこで大洋漁業、日本水産、その他の各社にも適当に権利を許していくということを事務手続上やった、こういうことに御了承をいただきたいと思うのでございます。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 北洋漁業全般は、非常に疑惑に包まれておるが、そのまずスタートとして、農林中金が融資をいたしました室蘭漁業協同組合の問題からお聞きをいたします。室蘭漁業協同組合は、三千三百万の融資を受けております。その中で、残金が三千二百七十五万円。そこで、奇々怪々なのは、この室蘭漁業協同組合が岡谷組合長の名において発表した資産の処分において、二千三百万円は共和冷凍機への冷蔵庫の支払いに使った。組合より農林中金への借金の返済は七百万円、組合負債の穴埋めは二百万円、松田鐵蔵氏への中金からの借入金の謝礼金百万円というのを報告に載せて、この岡谷という人が失敗してやめるときに決算に出しておるわけであります。この室蘭漁業協同組合は、三千三百万の金は借りたけれども、冷蔵庫も何も作ってはおらぬ。この金は共和冷凍機というものにそのまま行きっぱなしになっておるのです。簡単にこの間の事情を担当の係官なり、水産庁長官からでも報告願いたいと思います。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 私から便宜お答えいたします。今の事情は古い話でございまして、私就任前のことでございますが、よく調査をいたしまして、後日書面をもって報告することにいたします。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 この件は、農林委員会において調査資料を求めておって、水産庁長官のところには資料が出ておるはずです。どうして答弁できませんか。長官、出て簡単に答弁しなさい。

塩見友之助水産庁長官

○塩見政府委員 私帰朝いたしましてから、事実申しますと、この件についてまだ承知しておりません。今書面をいただきましたけれども、これは大体特別会計時代に決定されまして、そしてそれを金庫に引き継がれた、こういうことだけ今聞きましたが、正確を期する意味からいうと、係官の方から聞いていただかないと、ここでは即答いたしかねるわけであります。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 時間がないから、あまりこまかいことまでは言えないが、少くともこの室蘭漁業の融資について、代議士に百万の世話料を出して、しかも松田鐵蔵氏が顧問をしておる共和冷凍機に金がいって、そのままだめになっておるという事実は、私が断言してはばかりません。しかもあなたのところの係官がおられれば、そこに資料がいっておるから答弁できるはずです。  もう一つ聞きたいのは、パタゴニア開発漁業協同組合というものがある。このパタゴニア開発漁業協同組合というものは、昭和二十九年十月十二日に漁船十一隻を建造したいからというので、総事業費一億八千五百万、借入金一億四千八百万の申し入れをして、これには八千八百万の決定がなされておるわけであります。このパタゴニア開発漁業協同組合の組合長は松田鐵藏氏、出資金は五千万円払い済みということになっております。ここで奇怪なのは、このパタゴニア漁業協同組合は、担当の農林中金その他の見解は、疑義があって金が貸せないしというのに、昭和二十九年八月十七日に閣議決定をして、ともかくむ無理をして、ここに八千八百万の金が貸付になっておる。その八千八百万の金を貸したのは、昭和二十九年十二月三十日に三千五百万、昭和三十年四月二十五日に五千三百万、そこで昭和三十年の三月ころ十一隻完成して、トン当り大体五十トンの底びき船を作っておるわけ、あります。ところが肝心のパタゴニアの組合は、ペロン大統領の失脚によって事業は遂にだめとなり、閣議決定までしたにかかわらず、全然外には出られない。そこで農林省の水産庁が、昭和三十年の三月の終り、日水、日魯、大洋、函館公社、北海道公社等の母船を持つこれら北洋漁業会社に、特別調査船として使いなさいという慫慂をしておるときに、金を貸した農林中金では、これを繋船して損害のないようにと言っていたにもかかわらず、この船を特別調査船として、詳しく申しませんか、日水が二隻、大洋が四隻、北海道公社が四隻等、これを使っております。そこでこのチャーター料として一隻二百五十万円、総計二千五百万円を返還したという形式に、このパタゴニアの組合はなっておるわけでございます。そこで私がこの問題にいたしたいのは、閣議決定によって出たパタゴニア協同組合が、かような状態になって、しかもこれが昭和二十九年の年の暮れ、とうとうお手上げとなって、この組合が解散をいたしました。代金回収のために船の競売を命じたところが、組合長の松田鐵藏氏は、私の方で売らせてもらいたいということで、この船十一ぱいを売却をいたして、このパタゴニア協同組合というものはつぶれておるのです。先ほど申し上げました共和冷凍機がつぶれました原因を調査してみると、このパタゴニアの仕事をも共和冷凍機が機械を引き受けて、その代金も入らないからこそついにつぶれておるわけであります。しかもパタゴニアの漁業協同組合もつぶれておるわけであります。しかもその十一隻の船に対する昭和三十一年度の独航船の割当が問題なのであります。私はかような経緯にかんがみるならば、かような経緯を持つ船に独航船の割当をなすということは、もってのほかであると思っておるのに——本年の割当七十七隻、これを水産庁から北海道の知事に割当をやった。そこで北海道知事が、その七十七隻を知事の認定のもとにおいて割当をやって、水産庁に持ってきた。そのときにパタゴニア系の船が全然入っていない。そのために、水産庁から北海道知事に連絡があって、いろいろ会談をした結果、北海道知事は三隻入れることで何とか折り合ってもらえぬかと言ったが、水産庁は強引に突っぱねて、この船を四隻今度の独航船の割当の中に入れておるわけなんです。私は、その間の経緯はまさか水産庁長官が知らぬとは思いませんから、一つどういうわけでこのパタゴニアの船にさような経緯を経てまで独航船の割当をいたしたかということを、ここで御報告を願いたいと思う。

塩見友之助水産庁長官

○塩見政府委員 私は昨年の暮に就任したもので、パタゴニアのその当初からの経過は、私直接やっておりません。今度の独航船の割当につきましては、北海道の知事と十分協議しまして、それでパタゴニア丸を何等とかどうとかということではございません。その独航船の船主の経験と経歴と船というふうな従来からの条件によりまして、北海道知事と協議の上でもって数字がきまったわけでございます。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 長官としては、なかなか苦しいところでしょう。ところがその後四隻を入れて七十七隻出たその船を調査して、水産庁は六隻を不許可にし、そしてその六隻を不許可にしたかわりに、パタゴニア丸をもう二隻これに追加をしたから結局パタゴニア丸は六隻独航船としての許可を取ったわけだが、この二隻の追加公認は、どういう理由でほかの船をやめてこれを入れたかを、一つ長官からこれまた報告を願いたい。

塩見友之助水産庁長官

○塩見政府委員 追加の許可の方は、私向うへ交渉に参っている過程において行われたものと思います。まだ報告を詳しく聞いておりませんが、これは次長にまかせております。許可が不適格だというのは、船の条件を調査いたしまして、乗組員の安全の確保ができないようなものは、例年不適格にしております。北海道は、そういうふうな点からいうと、従来からそういうふうな船が多いわけです。その点は、許可に当りましても北海道知事に対して、危なげな船がありそうだけれども、大丈夫かということは再三念を押しました。そして、危ないことは自分の方もあり得ると思う、十分検査してくれ、こういうことでございましたので、例年そういうふうに、乗組員の安全が確保されないような船は、厳重な検査をやりまして落しております。それの補充としましては、道触り府県漁りと打ち合せて補充の経営者を決定しております。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 前には三千三百万の金を借りてつぶれ七次には八千八百万の金を借りてお手あげ、つぶれ、そういってつぶれにつぶれて、しかもその漁業協同組合が百万円も金を借りるために世話料を払ったなどと決算報告に載せるような、またこれらのパタゴニア丸にそんなに無理をして、しかもそのときの水産庁で交渉した実情を私は知っているが夜中の二時、三時まで、北海道の知事と水産庁の責任者がともかくも努力に努力を重ねてこういう無理をしなければならなかった理由が、一体どこにあるのか、しかもそのために、北海道の水産部長が更迭をいたしております。更迭した水産部長は、北海道だけではない、千葉県だって同じような理由で更迭をしている、全国の水産部長も、北洋漁業の割当をめぐってたびたび更迭をしているのです。無事に残っているのは岩手、山形くらいなのです。こういうふうな独航船の割当をめぐる不明朗な事実というものは、事務的には水産庁長官が決裁をやることになっているが、最後の責任者は農林大臣なのだ。おそらく水産庁長官として、あなたはここで、農林大臣から言われたから私やりましたとは蓄えないでしょう。けれどもあなたは硬骨漢なんだ。北海道から来て折衝した役人どもから私は聞いておる。一体どういうことでこういう無理な割当をあなたはやりましたか、もう一ぺんここで御答弁願いたいと思います。

塩見友之助水産庁長官

○塩見政府委員 私は、この割当については府県と交渉したわけでありまして、府県の案を見まして、船その他経営者等において不公平なものがあれば、事務当局間での折衝は十分にやりました。しかし大臣から個々に指示を受けたということは、絶対にございません。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 さらに奇怪なのは、この松田鉄蔵という人が小樽公海漁業株式会社という会社の相談役になって——この小樽公海漁業株式会社という会社は、昨年の十月にできたのです。この社長になった人と相談役の松田さんとがこの会社を作ったいきさつは、この会社を作れば——これは地方新聞にもどんどん出ておるけれども、昭和三十年度の母船増加の許可がもらえるのであるということで小樽公海漁業株式会社が設立せられ、河野農林大臣と話はついておるということで設立し、小樽の市もこれには出資をしておるというが、これが設立の模様については、河野農林大臣が就任のあとであるから御存じだろうと思いますが、そういう折衝、その他いかなることでこれができたかということを農林大臣に伺いたい。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 その点は、御承知の通り函館が北洋漁業の基地といたしまして、函館の市関係者が会社を作って、一そう母船の出漁をいたしております。そういう関係がありまするから、小樽地方におきまする水産関係者が集まって、函館がやれるならば自分の方にもやらしてほしいということで、そういう計画をされたことは承知しております。しかしその後だんだん調査検討いたしました結果、今年はそういうふうなことは許可はできないということで、これは許可しないことにいたしたわけでございます。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 水産庁長官に聞きたいが、長官は、この小樽公海漁業株式会社に対して——これは母船の割当があると思うから作ったので、それでなければこんなものを作るわけがありません。設立のいきさつから見れば、母船の割当をもらったからこれはできたのです。ところがあなたはなかなかの硬骨漢であるから、ちょうどそのころできたいわゆる三系列の系列は、その中に弱小母船会社を入れて、そうして北洋漁業というものを堅実にするという方針と、こういう弱小会社に許可をするという行き方とは矛盾をしておるという見解で、この小樽公海漁業会社に母船の許可をやることには反対だといってがんばったのは、長官、あなたであるということであるが、あなたの見解を一つ聞きたいと思います。

塩見友之助水産庁長官

○塩見政府委員 私のみならず、事務当局がそういうふうな見解で、北洋漁業に出ますところの独航船主及び乗組員というものが、経営がしっかりした会社でなければ結局非常な痛手を負うわけですから、全体から見まして、こういうふうな新しい会社は適当ではなかろうという判断をいたしたわけでございます。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 さらに問題なのは、この小樽公海漁業株式会社が、日魯漁業に買収をせられたのである。そして設立資本金の一割憎しで日魯漁業がこれを買い取りました。そこで日魯漁業に対して、寸小樽公海漁業株式会社に割当を予定せられたる母船船団がちょうどそのときに割り当てられておるのです。この経緯を見ると、これも松田鐵藏氏が中心となって動いておるという事実は、いかに何といっても、日本の北洋漁業許可にからんで非常に不明朗なる疑惑を国民に与えないではおかないのです。この間の事情について、河野農林大臣から、御存じならば一つ御答弁願いたいと思います。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 小樽漁業と日魯漁業の、買収か合併か知りませんが、その経緯は詳しく承知いたしておりません。おりませんが、今事務当局から申しました通りに、基礎の強固な会社に経営さすこと、もしくは経験のある者にやらせることの方が合理的であるという見解を政府はとりましたの、小樽公海漁業には許可できないということにきめたわけでございます。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 そこで私は法務省の政務次官に——法務大臣を要求しておるけれども来てくれないから、政務次官に聞きますが、東京地検に対して、河野農林大臣の告発状が昨年出ております。その告発について、検察陣営はどの程度の取調べをしたか、全然取調べをしなかったのか、その告発の内容はいかなるものであるかということについて、ちょっと答弁を願いたいと思います。

松原一彦自由民主党法務政務次官

○松原政府委員 お答え申し上げます。農林大臣河野一郎、水産庁長官前谷重夫に対する職権乱用被疑事件につきましては、昨昭和三十年一月二十二日東京地検に対して告発があり、これを受理した東京地検では、塩野検事を主任として鋭意必要なる捜査を続け、近く完了の上最終処理をする見込みでございます。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 私は、その法務当局の御答弁が今日国民の大きな疑惑の中心になると思うのです。私があえて本件を予算委員会において追及しようとしておる理由は、およそそういった告発がもう一年半にもわたって行われておるのに、それを一年半にわたって放置して結論の出なかったというような事件が、今までに一体あったでしょうか。時の政界の権力者には遠慮をして——たといいかなる告発といえども、国務大臣に対する告発です。それは真偽を明らかにして、全然事実がないならばない、事実があるならばあるということを明らかにすることが、検察当局の国民に対する大きな義務でなければならぬと思うのです。しかるに、それが一年有半にわたって今日までなおざりにせられて、私の質問で、近く結論が出る模様であるなどという答弁は、私は、検察当局としてもまことに遺憾しごくであろうと思います。その併発については、第一番に、日魯漁業というような一つのところにだけ許可をするということは、いわゆる集中排除法に基く集中不可の原則にこれは違反するものである。許可をしなかったそれらの漁業者には母船式漁業取締規則第四条によって農林大臣は許可しない場合には、「あらかじめ、当該申請者にその理由を文書をもって通知し、当該申請者又はその代理人が公開の聴聞において弁明し、且つ、有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。」というのが母船式漁業取締規則第四条であります。しかるに北洋漁業のこの割当に関しては、いまだかって一回もこの母船式漁業取締規則による機会を与えたことがないのである。しかもこの訴えによると、昭和三十年目魯漁業二船団に対して農林省が許可を与えた際、一船団は正式申請の書類なくして許可を与えたといっておるのである。これがもし事実であるとするならば、職権乱用もまたはなはだしいと言わねければなりません。私はそこでこの告発に基き、日魯漁業昭和三十年二船団の許可について、水産庁は検察当局に意見を述べたはずである。どういう意見を検察当局に進達したか、水産庁長官からここで一つ発表してもらいたい。

塩見友之助水産庁長官

○塩見政府委員 昭和三十年当時における許可は私在任ではございませんので、その当時の意見を述べたというふうな事実は、調べてみないと私からすぐにはお答えできません。   〔「法務次官に聞けよ」と呼ぶ者あり〕

今澄勇日本社会党

○今澄委員 私は法務政務次官に聞いても、おそらく手元に渡されたその書類しかわからぬと思います。だから私が聞きたいのは、今の水産庁——(発言する者多し)まあ聞きなさい。質問は私の権利です。国民を代表して質問するのは私の権利ですから、私に一つ質問させてもらいたいと思うのです。私はその告発に対して法務省が水産庁当局なり、あるいはその間の事情について日魯漁業なり、それら関連するその他のところをお取調べになったかどうか、しかもそれはいつごろお取調べになりましたか、法務政務次官からそれでは御答弁願います。

松原一彦自由民主党法務政務次官

○松原政府委員 お答え申し上げます。被告発人河野一郎氏を含めて、関係者のほとんど全員について事情聴取を行なっております。事情聴取の具体的方法その他内容につきましては、捜査の機密に属する事項でございますので、これを公表することは差し控えたいと存じます。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 私は塩野検事がまだ刑事部副部長に転出しない前に、この件についての状態も聞きに参りました。ただ私はこの際は詳しく申し上げませんが、およそ一国の国務大臣に対して告訴が出て、二年近くの間これが放置せられて、その結果も何もわからないということは、およそ国民の疑惑の的であるから本件に対する峻烈なる検察当局の最後の断を、疑いはないものであるかあるものであるかを一つ御表明願うとともに、河野農林大臣に対する事情の聴取は、今の報告によるとあったものという報告でありますが、河野農林大臣からこれらの状態について事情をお聞きになったかどうか、法務政務次官からもう一度はっきり御答弁を願いたい。

松原一彦自由民主党法務政務次官

○松原政府委員 お答え申し上げます。私どもの方ではまだ慎重に調査はいたしております。調査中でございますけれども、最終的にはっきりした、国民の疑惑を解くだけの発表をいたす段階に近づいておるのでございます。  以上申し上げます。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 私が聞きたいのは、河野農林大臣を含めて関係者の全部を調べたと、あなたがさっき言ったから、それでは河野農林大臣もお取調べになったのであるかということを聞いておるのです。いつ調べましたか。

松原一彦自由民主党法務政務次官

○松原政府委員 お答え申し上げます。事情聴取は行なっておりますが、時間は申し上げられません。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 そこで河野農林大臣にお伺いいたしますが、以上あなたお聞きのように、一国の大臣としてはまことに不名誉なことであり、あなたは検察当局にその間の事情を説明せられたことがあるか、それに対してあなたの御見解はどういうふうであるか、一国の国務大臣としての責任とあなたの見解について、一つお伺いをいたしておきたいと思います。

河野一郎自由民主党農林大臣・行政管理庁長官

○河野国務大臣 私はこういうことで不名誉呼ばわりされる覚えはございません。疑いを持つ人が告発されて、その事情を聞かれてそれに明確に答えることは義務でございます。これは当然当りまえのことであります。それによって明白になれば何ら不名誉とは考えておりません。でございますから検察当局から書面の問い合せがございましたから、それによって書面で明確に答弁をいたしました。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 私は先ほど来るるここで述べましたように、北洋漁業の船団の割当、日魯漁業に対する特別の優遇措置、その利益率の決算期における上昇、その他いろいろの情勢から見て、この北洋漁業に関する問題については、文書による調査を検察当局がいたしただけで了承するというには、あまりに問題は疑惑に包まれておると私は思うのであります。農林省の最高責任者がかくのごとき状態であるから、およそわれわれが涙と同情を禁じ得ないかのビキニ補償金の問題ですら、ビキニの補償金についてはもはや全額行き渡っていなければならないのに、岩手県の某船主から、まだ船員に対して渡っていないということで、近くこれまた告発がある予定であるが、そのビキニ補償金がどういうふうに配られたかという報告をいたしております。日本鰹鮪漁業協同組合連合会会長横山登志丸という会長名をもって発行しました鰹鮪連三〇発第五三号昭和三十年八月十一日付の書面を見るというと、ビキニ補償金総合計金額に対する四・六%、すなわち約二千六百カ日を、これが運動をしてくれたもろもろの機関に謝礼金として渡しましたというのです。しかもその書類はここに私の手元にありますが、およそその二千六百万円の支払い先という中に、第一番は関係官庁、その中のイと書いて国会事務局、ロと書いて外務委員会、ハと書いて農林委員会、ニと書いて国会議員、とあります。これらにこの気の毒なビキニの賠償金の中の二千六百万円のうち何がしかの金が謝礼金として使われておるということを、文書によって送達をいたしております。この事実はいかにわが日本の水産行政、いかにわが日本の政治というものが、ビキニの犠牲者からむ政治的な謝礼をとっておるということを雄弁に物語っておると私は思う。その最後に日本鰹鮪本部顧問弁護士団に対して四百万円の謝礼をやったというが、私はこれは調査して問い合せましたところ、もらったという話である。国会の名誉のためにこの国会議員、農林委員会、外務委員会、国会事務局のこの記載せられた事実について、私はこれ以上申し上げませんが、法務当局は本件についても一つ十分調査をして——これは書類があるのです。かくのごときビキニの補償の金すらも国会議員の一部に渡されたかのごとき、これは正式な書面なんです。これについても一つ御調査とあれを私は願いたいと思います。  そこで私は総理大臣にお伺いをいたさなければならぬのであります。なるほどわが日本の現在の政治は選挙にも金が要るし、それからいろいろ資金的にも需要もありましょう。しかし日本の政治というものが金の力即政治力というような保守政治であっては、断じて日本の民主政治というものが独裁政治にとってかわられると思います。私は背後に大きな財閥を持つ政治家ならば、おそらくはそれらの背後の財閥から金が出るでしょう。しかしこれは政治資金規正法その他による贈収賄と言えないかもしれません。しかし国家の統制によって資金のルートを作ったり、あるいは政府の外貨の割当その他によって資金のルートを作ったりというような、いわゆる職権を中心とする資金の調達というものがもし行われるとするならば、私は民主政治の将来のために大きな禍根であると考えます。内閣は綱紀粛正に関する官房長官談を先般発表になりましたが、この際かくのごとき事態に対する鳩山総理大臣の所見と綱紀粛正について断固たる決意を伺いたいと思いますが、総理から一つ御答弁を願いたいと思います。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 綱紀粛正については従来より厳に申し渡してある通りでありますが、今後とも一段と努力をいたして参りたいと思います。

三浦一雄自由民主党

○三浦委員長 今澄君に申し上げますが、鳩山総理大臣は外交上の会合に出なければなりません。よって退席することを御了承願いたいと存じます。  なおこの際申し上げますが、社会党にお約束した時間が差し迫っておりまして、すでに過ぎました。ついては簡潔に質疑をお続け願いたいと存じます。  なおただいまの御発言中、速記録を取り調べた上、もし不穏当のことがございますならば、委員長において適宜の措置を講ずることに御了承願います。   〔「何が不穏当だ」と呼びその他発言する者多し〕

三浦一雄自由民主党

○三浦委員長 本問題につきましては、本委員会終了後理事会を開き、協議して善処いたしたいと存じますから、しばらく御猶予願います。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 委員長、質疑を続けたい。

三浦一雄自由民主党

○三浦委員長 あなたに約束した時間は過ぎておりますから簡潔に願います。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 最後に私は結論として田中官房副長官に伺います。これは総理大臣に聞きたかったのでありますが、総理大臣御疲労でもあるし、所用のためお出かけですから、あなたに聞きます。内閣調査室の前室長が内閣調査室をおやめになりましたのはいかなる理由であるか。そしてあなたもお知り合いのはずであると思うが、肝付という人が内閣調査室をやめさせられておるが、これはいかなる理由でやめさせられたものであるか。私は官房長官に聞きたいのでありますけれども、御多用だそうですから、あなたにその事情を聞きたいと思います。

田中榮一内閣官房副長官

○田中(榮)政府委員 お答えいたします。前調査室長の木村行蔵君は昨年の七月に警察庁の定期異動の際に警察庁の参事官に転任をいたしたのであります。それから肝付といろ事務官が当時内閣調査室におったのでありますが、この方は通産省から兼務で参っておりまして、いろいろ内閣調査室にもお骨折りを願ったのでありますが、通産省と協議の上で一応通産省の方へ引き取っていただいた、こういうことでございます。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 私はこの内閣調査室について昨日鳩山総理から、ソ連の代表部が日本にできたならば思想問題については云々という御答弁がありましたが、これに関連するから聞いておるのです。鳩山・ドムニッキー会談の橋渡しをした馬場裕介という人について、鳩山総理も言っておられたが、齋藤国警長官は信頼すべき人であるから会いました、こういう話である。その馬場裕介氏と鳩山総理とが会われた結果、今日の日ソ国交その他の問題のスタートが切られておるわけであります。しかるにこれを契機としてその助言をしたといわれる齋藤国警長官もやめたし、前調査室の責任者もやめたし、肝付氏もやめておるのである。こういろ調査室というような機構にあるまじい大量の異動があったということは、ソ連に対する大きな一つの対立的考えを持っておる者と、あるいはソ連との国交回復もやむを得ねいという者との内閣調査案内における意見の対立から、いわゆる親米的な——アメリカと近い者だけの勢力にこの内閣調査室というものをやり直したということが、今回の内閣調査室における異動の根本的な原因ではないかと私は見ておるわけであります。しかも肝付情報として調査室内における事情が各所にばらまかれておることは御承知の通りである。一たんは内閣調査室をやめさした者を——これはやめさしたのですが、通産省に再び拾い上げたについてはそれ相当の理由があると思いますが、この点についてもち一度田中さんの答弁を願いたいと思います。

田中榮一内閣官房副長官

○田中(榮)政府委員 齋藤前国警長官がおやめになったこと、それから肝付事務官が通産省に参りましたことは、そうした政策的血問題とは全然関係ございません。さらに必要によりまして異動が行われたものでございます。  それからただいまのお話で内閣調査室に何か親米的なものと親ソ的なものとがあるというようなお話でございますが、内閣調査室はそういうものでなくして総合的に調査をいたすのでございまして、そうした事実は全然ございませんからはっきり申し上げておきます。

三浦一雄自由民主党

○三浦委員長 ただいまの今澄君の発言に関しまして、理事会を開き相談したいことがございますから、暫時休憩いたします。    午後四時三十九分休憩      ————◇—————    午後四時四十一分開議

三浦一雄自由民主党

○三浦委員長 引き続き会議を開きます。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 防衛庁の次官の方、代表者の方——防衛庁にちょっとお伺いいたします。私は防衛庁の長官に実は聞きたかったのでありますが、長官がお見えにならねければほかの方でもけっこうです。  先般、昨年末軍艦大和、武蔵の図面及び米国艦船書類約二トンを中国人陳という密貿易業者を通じて中共へ売却しようという事件が見つかって、警視庁公安第三課で調査が行われました。その結果浮んで参りましたのは船舶設計協会というもので、この船舶設計協会は、理事長が造船工業会の理事長を兼ねておる外郭団体です。これが防衛庁の中の技術研究所のうちにあって旧海の艦政本部のごとき仕事をいたしております。このことは非常に重大な問題でありまして、日本の防衛庁が従来発注をいたしました約四百億に上る艦船はこの船舶工業会で設計をして、そうして発注をせられ、その発注をせられたものが防衛庁に納められると、この協会がその技術的な検査をやって防衛庁は受け入れておるわけであります。言うならば、こういう外郭団体の長に——およそ秘密を保たねばならぬであろう防衛庁の船の設計を、造船工業会の理事長を中心とする外郭団体にまかして、そうしてそれらの外郭団体を防衛庁の中に置いて——技術研究所の中にこれはあるのです。そうして艦船を発注し、艦船の引き取りをいたしておるということは、今の防衛庁としては私は不明朗きわまるやり方だと思っておりますが、この船舶設計協会に関する警視庁からの取調べと、防衛庁の見解について、防衛庁の代表者から一つ国会に御報告をしていただきたいと思います。   〔「防衛庁はどうした」と呼び、その他発言する者あり〕

三浦一雄自由民主党

○三浦委員長 間もなく政府委員を呼びますから……。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕

今澄勇日本社会党

○今澄委員 答弁者は見えぬわけですか。

重政誠之自由民主党

○重政委員長代理 ちょっと待って下さい。今呼んでおるのです。

今澄勇日本社会党

○今澄委員 委員長、答弁者が見えないなら、私ここで見えないのに幾ら待っておっても仕方がないから質問をやめますが、きょう私が質問をしたあらゆるものは、手元にある資料とそれから確実なる情報によって御質問申し上げたものであるから、私のきょうの発言は何ら不穏当なところはありません。私はこの際、国民の代表である議員の質問に対して姿を隠して現われないような内閣の事態こそが大問題であって、法務当局がこれを取り調べ、防衛庁がこれを取り調べ、そうして国民の前に明らかにすべきもの、あって、私は最後に、この重大な問題についての取扱いを内閣総理大臣並びに予算委員長に要望して質問を終ります。

重政誠之自由民主党

○重政委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会

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