本会議 第7号
- 発言数
- 10 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1956/02/09
会議録
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。 ————◇—————
○議長(益谷秀次君) 日程第一は提出者より委員会の審査省略の申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。 日程第一、原水爆実験禁止要望決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。福田篤泰君。 〔福田篤泰君登壇]
○福田篤泰君 ただいま上程せられました原水爆実験禁止要望決議案につきまして、私は、自由民主党並びに社会党を代表いたしまして、その趣旨を弁明いたさんとするものであります。 まず、決議案を朗読させていただきます。 原水爆実験禁止要望決議案 原水爆実験禁止は、世界各国民の 強い要望である。 しかるに、ソ連はしばしば無警告 で実験を行い、また米国は近くエニ ウェトツク環礁において水爆実験を 行う旨を発表しており、さらに英国 も原水爆実験を計画しているとの報 道がある。原水爆被害の最初にして 最大の被害者たるわれわれ日本国民 は、国際取極によりこの種実験が中 止されんことを強く要望するもので ある。 政府は、この国民の要望を米国、 ソ連及び英国に伝達する措置をとる べきである。 右決議する。 〔拍手〕 一昨年四月一日、本院におきまして原子力の国際管理に関する決議が各派満場一致をもって議決せられましたことは、いまだ記憶に新しいところであります。当時、その決議は直ちに国連に伝達せられまして、約一週間後の四月九日の軍縮委員会に通告せられまして、各国の関心を呼んだのであります。自来、約二カ年間、国連におきましても種々検討せられましたが、いまだ何ら具体的な措置がとられずに今日に至っておりますことは、まことに遺憾に存ずる次第であります。 昨年、巨頭会談によって、一時国際間の緊張は緩和せられたように見受けられたのでありますが、現実には依然米ソ両陣営の対立は解けず、米国は、全予算の約六五%に当る厖大なる軍事予算のうち、相当の予算を原水爆の研究、実験に充て、ソ連、また、いわゆる学術研究費というカムフラージユのもとに、莫大なる費用を投じまして研究、実験に狂奔して参っておることは、御承知の通りでございます。しかも、両国の原水爆実験は、世界、ことにわが国に対しまして直接常に重大なる被害を与え、わが国民にとりまして今や大きな不安と脅威を与えつつあることは、御承知の通りでございます。われわれといたしましても、漫然と手をこまぬいているわけには断じて参りません。かの広島、長崎において一瞬にして二十万の同胞を失いましたわれわれ日本民族のみが、世界に対し、また関係各国に対し、原水爆実験中止を要求する崇高なる権利と厳粛なる義務があると確信いたすものであります。(拍手) アメリカは、事前の通告こそ行なっておりますが、一九四五年七月から昨年の五月までの十一カ年間におきまして、ネヴァダ、ラスヴェガス、ビキニ、エニウェトツク等におきまして原爆実験を実に六十七回、水爆実験を二回行なつたことは、米当局の発表するところであります。また、一方、ソ連は、非人道的にも、何らの警告も通告も発せずして、しばしば原水爆の実験を行なって参っております。すなわち、タス、プラウダ等の報道または当局の発表等によりまして、ソ連が、一九四九年九月から昨年十一月に至る七カ年間におきまして、ウランゲル島、バイカル付近、アラル海あるいはべーリング海峡等とおぼしき地点におきまして、原爆実験を実に二十回、水爆実験を二回行なっておりますことは、これまた周知の事実であります。また、英国も、一九五二年十月から昨年十月までに、モンテベロ、ウーメラ等におきまして、四回の原爆実験をいたしております。かくのごとく、米英ソ三国は今日まですでに百回に及ぶところの実験を行い、世界はまさに原水爆実験競争時代を現出したるがごとき観を呈しておる状態であります。 さらに、本年に入るや、一月十二日には、ワシントンにおいて、ダレス長官は、記者会見を行い、次のように申しております。米国政府は、原水爆兵器の分野において科学知識の先頭に立つことが至上命令なりと考えるものである、原子兵器の管理と査察を含む信頼できる軍縮案について合意を見るまでは実験の中止は安全ではない云々と言っております。このことは米当局の原水爆に関する基本的考えを示すものとしてきわめて重大でありますが、その翌日になりまして、原子力委員会と国防総省との共同声明において本年の春エニウェトツク実験場において水爆の実験を行うであろうという発表をいたしたのであります。この発表に対しまして、わが政府は、先月二十五日、まず事前の通告をなすこと、安全保障に努力すること、及び被害に対し補償をすること等の三点を米国政府に申し入れをいたしました。これは、当然の処置とは申しながら、あくまで消極的な行政措置でありまして、われわれとしては、これをもって十分なりと放置しておくわけには参らないのであります。ここに本決議案の精神があると思うのでありまして、われわれは百尺竿頭一歩を進めて、原水爆の実験そのものを中止せしめ得るがごとき国際的取りきめが一日も早く実現するように、米ソ英に対し強く要望せざるを得ないのであります。(拍手) もとより、関係各国及び国連においても、従来とも、何とかして原水爆を兵器として禁止し、その実験を中止しようとして、いろいろの努力を払つてきておることは事実であります。すなわち、去年の巨頭会談、あるいは外相会議、または国連の軍縮委員会、信託統治理事会等におきまして真剣に討議されたのでありますが、前に申し述べました通り、まず有効かつ適切な管理制度を作つて、それから順次これを廃止しようとする現実に即しました米国案と、一挙に原子兵器をまつ先に禁止しようとする比較的実行困難なソ連案との間に意見の対立がありまして、いまだ国際的取りきめの締結をを見るに至っておらないのが現状であります。ただ、われわれに対し一点の希望を与えておりますことは、軍縮そのもの、または原水爆の非人道性に対しましては両国とも意見が一致いたしておりまして、ただ、これをいかに実行するかという方法論について見解の相違があるにすぎないという点であります。 さらに、一方、いわゆる死の灰につきましても、次第に世界の関心が高まりまして、本年一月十九日、米国のリデイ博士は、その講演におきまして水素爆弾の爆発によって大気中に生まれた汚染、すなわちよごれは約十カ年間続くであろうと述べ、ノーベル賞受賞者でありまする米国のミューラー博士も、死の灰は遺伝学上有害であると断定し、さらに、ラップ博士は、大気中の放射能のちりによりまして、気象学上天候異変の可能性ありと述べております。また、わが国におきましても、立教大学に設置せられておりまするエア・サンプラー、すなわち大気中の放射能の影響を示す機械の記録を見ましても、ほとんど一年中わが国の上空には米ソ両国の実験による死の灰が降つておることが科学的に証明せられておるのであります。米本国においてすら、本年の二月一日から毎日二回にわたりまして、全米に対し放射能を含む灰の降下予想地点を連日予報いたしておりますことは、米国の気象局のすでに発表するところであります。換言すれば、今や、世界は、原水爆実験の脅威の前におののき、その及ぼす影響に対しまして真剣な対策を立てねばならない事態に追い込まれておるのであります。 このような深刻な事態に対し、昨年三月、米国の科学者連盟は、放射能の影響調査機関の設置を提唱いたし、また、六月のサンフランシスコにおける国連十周年記念総会において、米国ロツジ代表も、国連の中に調査委員会の設置を提唱いたしまして、十二月には科学委員会が設けられるに至つたのであります。また、昨年四月のAA会議において採択をせられましたいわゆるバンドン宣言の中におきましても、熱核兵器の実験中止が取り上げられ、十一月のモンテヴィデオにおけるユネスコの総会におきましても、わが国代表から熱心な提唱が行われ、さらに、本年三月中旬に開催されまする国連の放射能科学者会議には、わが国代表が特に招聘を受けております。すなわち、以上申し述べました通り、米ソ間には原水爆競争の死闘が繰り広げられておる一方において、同時に、これを阻止して、さらに進んでは原子力の平和利用をはからんとする真剣な努力が払われているということは、われわれに対しまして大きな希望を抱かせるものであります。 かつて、ある哲人は、人類が戦争を撲滅しなければ戦争が人類を撲滅するであろうと喝破いたしましたが、今や、人類が原水爆を賢明適切に支配し、これを管理できなければ、原水爆が人類を支配してこれを滅亡せしめるであろうと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)明日の世界の運命を決定する米ソ英の指導者の責任はきわめて重大であると言わねばなりません。(拍手)今日ほど人類が英知と勇気とを要求されておる時代はないと信じます。原子力をして、死と滅亡の悪魔の使いとして地球に君臨せしめるか、はたまた、これを神の使いとして新しき明るい世界産業革命の夢を実現せしめるかは、一にかかって、われわれ日本人の正当にして悲痛なる主張に対して米ソ英三国が耳を傾け、われわれの悲願達成に向つてその良識と努力を傾けるかいなかにありと申さねばなりません。(拍手)われわれは、ここに、えりを正しまして、広島、長崎及び焼津の痛ましき原水爆の犠牲者の名において、その血の叫びをそのまま全世界に訴えたいと思うのであります。(拍手) 本決議案を提出いたしました趣旨は以上申し述べた通りでありますが、何とぞ諸君の御賛同をお願いする次第であります。(拍手)
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。これを許します。原彪君。 〔原彪君登壇〕
○原彪君 私は、ただいま上程されました自民党並びに社会党共同提案にかかる原水爆実験禁止要望決議案に賛成の討論をしたいと思うのでございます。(拍手) 率直に申し上げまして、私は、この決議案に盛られたところの考え方が日本国民の意思として世界に宣明せられることのおそきに失したとさえ思うものでございます。(拍手)今さら、原子力兵器の持つ破壊力の大きさ、あるいはそのおそろしさ、また、世界の人類がこれによって受けておるところの心理的な恐怖心といったようなものがいかに深刻であるかということを説明する要はないと思います。私どもがこの決議案に賛成いたしますのは原子兵器のおそろしさからだけではないのでございます。その非人道的な、破壊力以外の何ものでもない、いわば世紀の怪物であり、全人類を脅かすところの敵であるからなのでございます。(拍手) しかも、今、この原水爆をめぐりまして、米ソ英の国々は、お互いに軍拡競争の形とさえなって、相手の方を威嚇するために、その威力を示そうとして、随時実験が行われようとしておりますが、私は、この実験が、警告があるとかないとかというようなことによって、その可否がきめられるものではないと思います。無警告であろうとも、警告されようとも、こうしたおそろしい兵器をためしてみる、その力を試みようとするところに、われわれの警戒しなくてはならないものがあると思うのでございます。(拍手) ことに、近くエニウェトツク環礁において実験が行われようとさえいたしておりますが、このことについてはわれわれ日本国民がかつて身をもってこうむったその被害を思うときに、どのようにこれに対して恐怖心を抱いておるかは、想像に余りあるものがございます。現に、けさほども、私のところへ、神奈川県の漁民代表の方々が切々たる陳情書を持っていらしつております。これは、単に身体に及ぼす障害をおそれるだけではない、この実験の結果がみずからの平和な生業を脅かすからなのであります。(拍手)それを考えてみますと、私たちは、この実験そのものを阻止するということに大きな意義を見出します。 しかも、このことは、決して私たちだけが考えるのではない。今や世界の全人類が考えておるところである。現に、アメリカにおきましても、日本で行われておりまするところのあの原水爆反対署名運動のことを聞いた、アメリカの国際法学会の会員のマーガリス博士という方、この方が、論文を草して、その論文の題は「水爆実験と国際法」というのでございますが、その結論のところに、太平洋地域の原水爆実験は即時停止されねばならない、それは人道の法則の指示するところであり、また国際法の要求するところであるとさえ言っておるのでございます。(拍手) 一体、何のためにこの実験をしなければならないのか。原子兵器が現われましたために戦争ができなくなつた。その戦争をいよいよさせないために、一そう強力なる原水爆を製造して、その力を示して、相手の方の戦争への意思を放棄させたい目的でなされるのであると言う人もございますが、もしそうだといたしますならば、それは、武力をもって武力を制するところの、いわば覇者の権道でございます。すなわち、力による平和の考え方でございますが、私は、これくらい誤つた、しかも危険な考え方はないと思います。(拍手) 原子兵器の破壊力の偉大さというものは、その原爆を持つと持たざるとを問わず、今や全世界に知り尽されておる今日、原子兵器を戦争に使用するような愚はしない。ただ、いざとなれば、これだけの兵器がこちらにはあるぞと、相手の方への示威運動としての実験ならば、これくらい、無意味であって、しかも有害な試みはほかにはございません。これほど自明な、三才の童子といえども理解できる愚かしい試みを繰り返し行おうとするのにはやがて、万一の場合、この兵器にものを言わせようとする下心があると推察せざるを得ないのであります。(拍手)しかも、だれが、一体、今後戦争が始まった際にこの原子兵器を使わないと保証するでありましょう。こう考えますときに、原水爆の実験は、その使用、製造につながるおそろしい人類への絶望的な恐怖であります。ここに、原水爆実験禁止を要望するところの、この決議案が持つ重要なる意義と価値とがあることを知らねばなりません。(拍手) この兵器は、かつてわれわれ同胞が身をもってその惨害を味わされました当時のように、特殊兵器としてひそかに用意されておるものではないのであります。戦争が始まれば、従来の兵器にかわつて、まっ先に活動を始める、いわば代表的な戦争の道具となってきておるのでございます。現に、一九五三年の暮れに、アイゼンハワー大統領は、国際連合の総会で原子力の国際プール案を説明いたしましたときに、原子兵器の発達は、単にその破壊力のみならず、大きさや種類でも同様に目ざましいものがあり、この発達はあまりにも大きいので、原子兵器は事実上アメリカ軍内部では一般普通兵器の状態に達したと言明しておることを思い浮べまするならば、将来の戦争の形相がいかなるものであるかということは、われわれの想像を絶するものがあるのであります。 しかも、ラドフォード統合参謀本部議長の言葉には、将来戦は、緒戦と同時に破壊の絶頂が来る、そうして、そのあとには勝敗のない破壊だけが残るであろうとも言っておりまするが、これと同じことが、昨年の夏ペンタゴンにもたらされましたNATOのグランサー報告にも述べてございます。もし第二次大戦が起るとすれば、それは全面的な原子戦争となるであろう、そして、戦争は開戦初頭の数十時間で相互の打撃が最高潮に達する、それで大勢がきまるか、あるいはきまらぬときはそのあとは、互いに背骨を折られた同士の、長期にわたる、しかも陰惨な、前世紀的な闘争となるであろうと言っておるのでございます。 この実験禁止の決議案の効果は従って、将来の戦争誘発を絶滅し、真の恒久平和を打ち立てるための努力によって裏づけられなくてはならないと思います。(拍手)相手方を畏怖させ、慴伏させて、事なきを得るという力による平和は、決して真の平和ではございません。力にたよって平和を保とうとする考え方に立てばこそ、軍備をも整えようとするであろうし、また、この原水爆の実験もしたくなろうというものでございます。(拍手) そこで、この実験禁止をわれわれが要望するゆえんは、手近な、実現しやすいものから実行に移して、順次に原子兵器の製造、使用の禁止となり、戦争手段そのものを否定して、戦争の道具以外の何ものでもない軍備、兵器の縮減、廃棄にまで導く、真の平和への一里塚を立てる心意気をもってするのでないならば、この決議案の真の意義も価値も半減されるでございましょう。(拍手)この決議をして真に意義と価値とをあらしめまするためには、日本国民全体が、世界の各国に向つて、今後引き続き忍耐強いクモの営みにも似た平和への努力を続けていかなくてはなりません。しかも、戦争放棄の平和憲法を持つわれわれ日本国民の声として叫ばれるところに、単なるから念仏でなく、千鈞の重みをもって諸外国に響くであろうと思います。(拍手)また響かせねばならないのでございます。(拍手)決して一片の決議文として終らしてはなりません。私は、今日までこの議場で幾多の決議がなされましたが、その成果がいかなるものであったかを思い返しますとき、そして、また、ただいまのこの議題となっておる決議案の持つ重要性を思いますときに、お互いに、おざなりな形式主義でなくて、ほんとうに厳粛に心に誓いを新たにして、真の平和を愛好する日本国民の真意を世界に宣明する責任を深く悟らねばならないと存じます。(拍手)まさに、この決議こそは、世界各国民を原爆の恐怖から解放し、戦争の惨禍から救い、前途に光明と希望を抱かせるための全人類への福音たらしめねばなりません。(拍手) 私は、この決議が、米ソ英の世論を動かし、全世界のすみずみにまで戦争廃棄、平和探求の要望となるその第一声たらんことを、いや、現在の自由、共産両陣営の緊張を緩和して、米ソともに真の世界恒久平和実現のための新しい決意を示す実践の第一着手とならんことを心に祈念いたしながら、私の討論を終りたいと存じます。(拍手)
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。(拍手) この際、内閣総理大臣から発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣鳩山一郎君。 〔国務大臣鳩山一郎君登壇]
○国務大臣(鳩山一郎君) ただいまの御決議につきまして、一言政府の所信を申し述べます。 政府といたしましては、原水爆の実験禁止に関する国際的措置がすみやかに実現をいたし、この種実験が中止されるに至るよう、かねてから熱望いたしているのでありまして、ただいまの御決議の趣旨を体しまして、今後さらにこれに努力いたす所存でございます。 右、所信の一端を申し述べます。(拍手) ————◇—————
○議長(益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。 午後二時七分散会