法務委員会 第42号
- 発言数
- 100 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1956/06/03
会議録
○高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。 本日はまず法務行政及び人権擁護に関し調査を進めます。 質疑の通告がありますので、これを許します。猪俣浩三君。
○猪俣委員 それでは文部省の福田調査局長にお尋ねしたいと思います。 近来新興宗教なるものが非常に発展をいたしまして、相当人権じゅうりん的な事実、その他治安上放任できないような状態が多々起っておると思うのであります。すでに新聞紙上をにぎわしておりまする創価学会及び当委員会で調査をいたしました立正交成会等の問題が起ってきております。そこで、当委員会は、宗教法人法についてこれを改正すべき点があるのじゃなかろうかということを鋭意調査をしたのであります。そこで、その宗教法人法につきましての改正すべきにあらずやと思われるような点につきまして、文部省及び法務省の諸官庁の方々に御意見を承わりたいと思っておるのであります。 これは、宗教法人法の中に、宗教法人の認証という行為があるのでありますが、どうも、現状においては届出主義でありまして、いかなるインチキ性のものでも届出すればそこでその設立を認可されるのじゃないかと思われるような規定になっておりますが、この宗教法人の認証につきまして、文部省はどれだけの調査権と監督権、そういうものがあるのであろうか、現在おやりになっておりまする実情に即して、その辺の具体的なるやり方を御説明いただきたいと思います。
○福田政府委員 猪俣委員の御質問でございますが、御承知の通り、現在の宗教法人法の建前といたしましては、宗教団体の信教の自由ということを非常に強調して、宗教団体の保護ということを主眼に立法されております。従いまして、今お尋ねのような規則の認証でございますが、これは宗教法人法の第十四条に規定がございまして、これをお読みいただきますと、大体従来のたとえば財団法人の認可とかその他一般の場合と非常に違いまして、この認証自体につきましては、行政官庁のいわゆる自由裁量というものがないのであります。従って、一定の条件を備えておりますと、それを認証せざるを得ないという法律の建前になっておるわけでございます。従いまして、これを認証いたしますにつきましては、まず設立の手続といたしまして、宗教法人の設立の申請をいたす者が、第十二条に従いましていろいろの必要な書類を整えて申請してくるわけでございます。その場合に、大体、文部省といたしましては、その書類につきまして一々具体的に検討いたします。また、必要があれば実地に参りまして調査するということはございますが、しかし、建前としては、大体書類審査でもってこれは認証するというのが通例でございます。
○猪俣委員 そこで、今日のように新興宗教が非常に発展している。統計によりますと、日本の総人口よりも各種の新興宗教の信者の数が多い。そうすると、一人でいろいろの宗教に入っておる者もあると思われる。あるいはこれは、各宗教法人が、自分の実勢力を誇示するため、さような実在せざる人数を届けてあるのかもしれません。とにかく、さような状態でありまして、そこにいろいろの弊害ができていることは、これは毎日の新聞紙上にも散見せられるところであります。しかも、一たん宗教法人として成立いたしますと、税法上の非常な特典が生ずる。先般当法務委員会で大宅壮一さんの言によれば、脱税を目的とする宗教法人ができておる。税金を払いたくないために宗教法人の届け出をしておる。さようなことが相当あると思うのです。宗教の自由ということは憲法の保障するところであります。しかしながら、公共の福祉という点から相当の制限をせられることは、これまた当然のことである。その意味におきまして、宗教法人として認証するというような場合におきましては、相当の調査権を当局が持って、その拒否につきましての行政上の裁量権が監督官庁に多少なければ、取締りがなかなか困難なのではなかろうか。現状は、御指摘のように、宗教法人法によれば、そういう裁量権が行政官庁に与えられておらぬのであります。福田さんは当局者といたされまして、この法律を、そういう多少の裁量権、調査権があることが望ましいという御意見でありますかどうか。あるいはまた、現行法のようにしておらぬと、これまた非常に弊害が起きるという御見解でありますか、今までの関係官庁といたされましての実験から、御所見を承わりたい、こう思います。
○福田政府委員 ただいまのお話でございますが、われわれ実際の認証事務に当ります者といたしましては、おっしゃるような調査権が、現在よりもさらに適切な調査権というものが必要であろうと考えます。さらにまた、宗教法人が成立いたしまして、いろいろな宗教活動を行う場合におきまして、現在の宗教法人法におきましては、全然これは所轄庁の調査権というものは認められておりません。従って、これは、話し合いでいろいろな資料を求めるとか、実際に即したようなやり方をいたしておりますけれども、これについては限度がございます。従って、ある程度の——信教の自由ということは憲法に保障されました大原則でございますので、それはあくまで守らなければならぬと思いますけれども、やはり、宗教団体というものが実際に活動いたします際には、社会的ないろいろな影響もありますので、その面について所轄庁の調査権というものはある程度必要であろうと考えております。
○猪俣委員 いま一点、宗教法人の役員などでありますが、これについて何か身元調査とかそのようなことも、今の御説明では、できないし、またしないのじゃないかと思いますが、何人でも、彼ら自身の自治にまかせて、届け出すればそれを役員として認めていいかどうか。多少そこに身元調査のようなことが必要であり、ある場合においては役員たるの欠格条項というようなものを法定しておく必要がなかろうか。公けの機関はいかなる機関でも欠格条項があるはずであります。宗教法人として国家の一定の保護を受けるといたしますならば、その運用の責任者である役員については、やはり何らかの欠格条項というものがなければならぬのではなかろうか。それが現在ありましょうか。ないとするならば、そういうことを法定する必要があるかないか、その御所見を承わりたい。
○福田政府委員 ただいまの御質問でございますが、これはやはり、宗教団体の役員につきましては、その身元調査的ないろいろ立ち入ったことをあまりやるのは適当ではなかろうと考えます。現在、宗教法人法につきましては、第二十二条に一応の役員の欠格事由というものが掲げられております。未成年者、禁治産者及び準禁治産者、また禁固以上の刑に処せられ、その執行を終るまで、または執行を受けることがなくなるまでの者、かような欠格条項が規定されております。これがこの欠格事由のみで足りるかどうかということは、これは今後の研究に待って、さらに必要があればこの欠格条項を広げるということは、これは研究の余地がある問題だと考えます。
○猪俣委員 二十二条に役員の欠格条項というものが出ておりますが、ところが、文部省に今言ったように調査権がない。そうすると、資格を偽わって届け出た者なんかに対しては、どういうふうな処置をなさるのであるか。あるいはこの欠格条項を何か証明するようなものでもおとりになっておるのであるか。身分を偽わった不正な届け出をした者に対して調査権がないとすれば、これを拒否することができなくなるが、その辺をどういうようにやっていらっしゃるのであるか。
○福田政府委員 これは、申請のときにおきまして、必要な証明書等を添付させるようにいたしております。そうして後にそれが不実の記載であるということがわかれば、これは八十八条に罰則の規定もあります。必要な処置はとり得ることになっております。
○猪俣委員 そこで、一応文部省は、こういう宗教法人法によって設立せられました宗教法人を監督することになっておるのでしょうが、ところで、認証した以上はあと野放しになっておるのですか。監督することになっておるとすれば、この宗教法人法にいかなる監督権が規定せられておりますか、それを御説明願いたい。
○福田政府委員 ただいまの御質問でございますが、この所轄庁であるところの文部大臣は、宗教団体を監督するという立場には現在の宗教法人法はないのでございます。この宗教法人法によって設立されました宗教団体というものは、いわば自主的にその宗教団体の運営をするというのが建前になっております。ただ、法律にここに規定しておることにつきましては、これは、文部大臣が規定のある事項については措置できる。たとえば、収益事業については、その収益事業の実施について一定の条件がありますが、もしその条件に違反したと認められる場合には、一年以内に限定して収益事業の停止を命ずることができるという程度のものでございまして、いわゆる一般的な監督権はないのであります。
○猪俣委員 宗教法人法第八十一条を見ますと、「所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。」とあります。八十一条の所轄庁というのは文部省のことでございますか。
○福田政府委員 この所轄庁と申しますのは、文部大臣、また地方におきましては都道府県知事もあるわけでございます。
○猪俣委員 そうすると、いかがわしい宗教法人に対しては解散の請求権が文部大臣にもあるはずでありますが、調査権がないとすると、調査権なくしてしかも解散請求権を持たせておるというところに何か矛盾しているような感じがあるのであります。いやしくも解散という死刑の宣告をする請求権者に、何らの調査権がない。たとえば犯罪者に対して捜査権を与えずして処断せよということと同じように相なって、何かそこに筋の通らぬところがあると思うのでありますが、これは解散請求権を持っておる文部大臣として一体これでいいのかどうか、その点の御所見を承わりたい。
○福田政府委員 八十一条の解散権の問題でございますが、文部大臣は確かに解散の請求をする権限を持っておるわけでございます。しかし、この八十一条をごらんいただきますと、その第一項に、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。」と、非常に限定的な書き方をしておるわけでございます。この八十一条によって所轄庁たる文部大臣が解散請求をいたそうというような場合は、法令に違反して、かつ著しく、著しくということがついております。しかも、明らかに認められるというような客観的な事実をもってやるという、非常に法文の規定としては限定的に書かれておるように私どもは解釈しております。従って、今おっしゃるような一般的に調査権は文部大臣にないのでありますけれども、しかし、この八十一条のいわゆる解散請求権は、そういう客観的な事実がはっきり認められるときに解散請求をするというような趣旨でこの法律はできたものと考えております。
○猪俣委員 たとえば、具体的事実として、当法務委員会が調査いたしております交成会という問題について、一体文部省は調査権がないのに解散請求ができるのかどうか。そこで、この八十一条の二号のような、法令に違反して著しく公共の福祉を害するようなことを交成会がやっていると当委員会は認められるが、そういうことが起ったらというのですが、起っておるのかおらぬのか、調査権がなくてわかるのか。ちょっとあなたの答弁ははっきりしないのだが、八十一条の、法令に違反して著しく公共の福祉を害することが明らかに認められる行為をしたときに解散請求権が発生することは当然のことです。ただ、そういうふうなことがどうしたらできるかという問題なんです。立正交成会なんか、どうもインチキだと思う。しかし、文部省はしからばそれへどんな調査をするかといえば、できない。やればじき憲法違反とやられるかもしれません。そこで、結局、解散請求権を持っておりますが、どうも積極的に発動することができないから、十分な監督ができないということです。この二号に当っておるかおらぬかをどうしてきめるかということです。当っておることがはっきりして初めて請求権を発動することが法文上明らかなんです。犯罪があるかないかは捜査してみなければわからない。その捜査権があるかないかの問題はどうなりますか。
○福田政府委員 文部省に一応の調査権のないのは非常に不便だということを申し上げたのであります。この法令に違反して云々というような文言は、何も宗教法人法ばかりに限ったことではありませんで、他の一般のいろいろな法規に違反するという場合をさしているわけであります。違反の事実その他につきましては、それぞれの諸官省で、たとえば今御指摘の問題でありますならば、法務省あるいは人権擁護委員会でいろいろお調べになっておりまして、将来そういうところで客観的にはっきりした事実が確認できれば、それは文部大臣としてもその事実を認めて必要な措置はとられる、かように私どもは考えております。
○猪俣委員 そうすると、文部省としては、八十一条の解散請求権はあるが、自分みずから調査しないで、どこかで調査して法令違反であることがはっきり出てきて、そのとき請求するかしないかを決定するのがいいのだという御見解というふうに承わっておきます。これではどうも直接の監督官庁としては少し足りないのではなかろうか。他力依存みたいに、あなたの方は何もしないでいて、他人からあれは法令違反をしているぞと指摘されたらおみこしを上げようというやり方になっていると思います。そのままで一体いいかどうか。それでいいということになれば、そういうふうに承わっておきます。監督官庁としては権能が足りないのではないか。役所の方にあまり権能を持たせることは賛成ではないけれども、こういうインチキ宗教がばっこすると、何とか少し取り締ってもらわなければならぬと思うが、文部省は何もやっておらぬ。今の法制から言えばやれぬから仕方がないかもしれませんが、こういうことでは直接の監督官庁の役目は果せないのではないか。文部省が第一次の監督官庁になっているのに調査権がない。文部省の所管である宗教の問題はそうなっている。ほかの省は、自分本来の仕事が忙しいから、なおさらそんなことはやりはしませんよ。それだから、こういう新興宗教が自由に羽を伸ばしてばっこするというふうに考えられる。そこで、もう少し何とか宗教法人を監督しなければならぬとすれば、とにかくその事務をつかさどっている文部大臣にさような調査権を与えた方がいいのではなかろうかというふうに私どもは考えるのですが、あなたは現状のままでよろしいという御感想ですか。もう一度承わっておきたい。
○福田政府委員 重ねて申し上げますが、現状のままで決していいと申し上げたわけではございません。宗教法人法の個々の規定をいろいろ研究いたしましても、これは御承知の通り占領下におきましてできた法律でございますので、いろいろ不備な点もございます。従って、現在、私どもといたしましては、この法律に基いた宗教法人審議会というのがございまして、しかも先月委員が改選になりまして、ちょうど先月中ごろでございましたが、第一回の会合を開きました際にも、いろいろかような問題を取り上げました。また、文部大臣から、宗教法人法について、将来の実情に即さない、あるいは改正を要するような点があれば、そういう点も一つ特に研究してほしいというような要望もありまして、宗教法人審議会でそういった点を十分今後検討いたしまして、結論が出れば、それに従って宗教法人法についても事務当局としては考えていきたい、かように考えておるわけでございまして、今お話しのように、調査権がなくて何もできなくてよろしい、さように申し上げたわけではございません。
○猪俣委員 宗教法人審議会は文部大臣の諮問機関だと思うのですが、その審議会の委員の中に立正交成会の庭野日敬なんという人物が入っておると、どうも公正な諮問機関になるかならぬかわからぬのであります。とにかく、そういう審議会で御検討を一つ願いたいと思います。 次に私は長戸刑事局長代理にお尋ねいたします。 この八十一条の解散権は公益の代表者として検察官が請求権があるということになっております。そこで、法務省あるいは検察庁には一体こういう宗教法人を調査監督するような機構ができているのかできていないのか、できておるとすれば、何課でさようなことを取り扱っておるのであるか、それを御説明願いたい。
○長戸政府委員 仰せのように、宗教法人法八十一条におきまして検察官に解散請求権が与えられておるのでありますが、人手不足というふうな点もございまして、これらに関しましてはいまだその組織がございません。
○猪俣委員 われわれが調査いたしましただけでもいろいろな問題が新興宗教にあるのでありまして、識者がまゆをひそめておる事情が多々あるのであります。検察庁においては、一般の庶民階級あるいは国家全体の代表として、こういう解散請求権が与えられておるわけでありますが、人手が少くてさっぱりその機構がないということは、はなはだ遺憾だと思います。ただいま申しましたような新興宗教というものは非常に目に余るものがあって、治安維持上からも放任しておける問題じゃないと思うのでありますが、それにはやはりしょっちゅう調査をしないと、解散請求の事実があるかないかわからないことになる。今文部省がお話しになったような、法令違反がどこかから出てくればやろうというようなことでは、法務省、検察庁としては相ならぬことだと思っております。そうしますと、これは大臣がおいでにならんと明確な御答弁もできかねるかもしれませんが、われわれの庶民生活上重大なウエートを持っております新興宗教の取締りということは相当の検察庁の事務だと考えますが、法務省なり検察庁なりにこういう専門の機構を確立する必要があると思いまするが、あなたの御所見はどうでありますか。
○長戸政府委員 宗教法人の違法なる犯罪につきましては、特殊の係を設けましてやることが体系的に事を処理し得るというふうに考えておりますので、今後におきましてそういう点の検討をいたしたい、かように思います。 なお、八十一条の関係におきましては、検察官の捜査、公訴の提起、公訴の維持というような一般検察活動のほかに、公益代表者としての検察官に与えられた権限が種々ございますので、この宗教法人の解散請求権とあわせてそういうものを検討するというふうな方に進んで参りたいと考えております。
○猪俣委員 なお長戸さんにお尋ねいたしますが、立正交成会の理事か何かで和田堀土地整理組合に関して不正があるとして警察に検挙せられ、なお検察庁に事件が送付せられておる事件があるはずでありますが、それは今どういう事件の経過に相なっておりますか、その状況をおわかりであったらお知らせ願いたい。
○長戸政府委員 お尋ねの和田堀第二土地区画整理組合の幹部と立正交成会の幹部とに関する学校法人交成学園敷地にからむ虚偽公文書作成、同行使、背任等の被疑事件は、現在地検において捜査中でございます。現在関係被疑者は十数名に上っておりますが、事案が複雑でございますので、いまだその処理を終らない、引き続き捜査続行するということでございます。
○猪俣委員 宗教法人に関してはこれくらいにしておきます。 今度は精神衛生法の問題につきまして当局の御意見を承わりたいと思うのです。これは、厚生省及び法務省、両方の御意見が入り用かと思うのでありますが、元日本女子大学教授でありました東佐誉子氏がパラノイアという病気であると言われまして武蔵野病院に入院させられました。これが問題となって、人権じゅうりんの疑いありとして当委員会が調査いたしました結果、精神衛生法そのものに相当検討を加える余地があるのじゃなかろうかということを、ここに検討を加える点につきまして二、三考えたのでありますが、精神衛生法に関係のある厚生省及び法務省の当局からその御所見を承わりたい。 精神衛生法の第三十五条を見ますると、「前二条の同意者が後見人である場合において前二条の同意をするには、民法第八百五十八条第二項の規定の適用を除外するものではない。」、こういうふうにあるのでありますが、これは結局家庭裁判所の介入ということを規定した慎重な注意規定であると思うのであります。これが、後見人というものだけにかような慎重な注意をして、そのほかの者はいいのかどうか。たとえば、東女史の場合においては、同意入院の同意者はその弟さんでありました。二十年も会わなかった弟さん。しかも、姉には一切会わせられないで、学校当局の入れ知恵だけでほんとうの病人だと考えて同意をしたというようなことに相なっております。そこで、申すまでもなく、この精神衛生法という法律は、人身の自由ということから見ますと、大へんな法律だと思うのです。刑事訴訟法と匹敵すべき法律だと思うのです。ところが、刑事訴訟法と比較いたしてみますと、人権の尊重という点から見まして、私ははなはだ公平を欠いておると思う。その意味において、大体精神衛生法を改正しなければならぬのじゃないかと思うのです。その一点として、今の三十五条につきましても、後見人だけになっておりますが、その他の保護義務者の同意の場合でも、やはり家庭裁判所の介入が要るのではなかろうか、こういうふうに考えられますが、それに対する御所見を楠本さんから承わりたい。
○楠本政府委員 お答えを申し上げます。 ただいま御指摘のように、現行精神衛生法におきましては、なるほど、人権の擁護という点から見ますると、確かに問題となる点があろうかと存じます。その点は率直に認めざるを得ない次第でございますが、ただ、この人権の擁護という問題と、精神病の場合の医療保護の徹底という二つの面には、若干相反する面がある場合がございます。従って、この辺の調整をとって、両面を生かしていくことがきわめて必要なわけでございますが、さような点を前提といたしましてお答えをいたしたいと存じます。 ただいまお話しのように、なるほど、保護義務者等の同意の場合につきましては、何ら監督的な規定が盛ってございません。この場合には、私どもといたしましては、これに対して家庭裁判所等の、またその他適当な機関の監督的な規定を設けますことにつきましては、趣旨としては賛成でございます。ただ、実際問題となりますと、同意入院のような場合には、何分にも数が非常に多いために、おそらく事務がきわめて複雑となりまして、その結果入院手続等にも多少の煩瑣が加わります結果、入院が簡単にできなくなる。従って、そのために医療の徹底を期し得なくなるというような心配もございます。しかし、これらの点は主として事務的な点で、果して可能であるか、迅速にしかも親切にかようなことが行い得るかどうかという問題に帰着すると存じますので、これらの点に関しましては、法務当局とも今後よく相談をいたしまして善処いたしたいと、かように考えております。
○猪俣委員 それから、いま一つ、保護義務者が一旦同意したけれども、実はそれはいろいろの錯誤に基いて同意したのであるというような場合、——この東女史の場合はそれが考えられる。学校の言うことを非常に信用いたしまして、姉さんは大へんだ、今入院させなければどうにもならぬということを言われて、二十年間一ぺんも姉さんに会っておらないけれども、それは大へんだということで入院させることに同意した。出てきてから会ってみると、何にも変ったことはない。これは自分はだまされた、途中でだまされたと気がついた。学校の口車に乗せられたのだ—。東女史に教室を占拠されているのを非常に気に病んだ学校が、精神病として処置をつけたというのは明らかだ。それを精神衛生法三十三条に合わせるべく、二十年も会わなかった弟さんをだまして入院をさしたということは明らかな事実ですが、それに途中で気がついたような場合、これは違う、自分は間違って錯誤に陥って同意したのだというようなことで、保護義務者の同意に対する異議の申し立てというようなことが認められていいのではなかろうか。そういうことについて御所見いかがでございますか。
○楠本政府委員 まことにごもっともな御意見でございまして、今後、私どもといたしましては、前段にお答えいたしましたような気持でこれは検討する必要があると存じます。ただ、現在におきましても、さような場合には、人身保護法によりまして、拘束救済の請求が認められておりますので、現行法の範囲内におきましては、この規定をできるだけ活用していただいて問題を解決していきたい、かように考えております。
○猪俣委員 今、人身保護法の問題が出ました。私も実はさようなことも考えたのですが、実際問題として、人身保護法は議員提案で国会で作った法律でありますが、どうもこれがあまり活用されておらぬと思われるのです。これは法務省当局はおわかりでしょうか、長戸さん。人身保護法に基く救済を求めたような事件が今まであったか、あったとすれば何件くらいあったか。これはあるいは人権擁護局長がよいかもしれません。
○戸田政府委員 私の方の関係で人身保護法に基いて身柄の救済を申請した事件は一件ございます。これは、判決の言い渡しと判決の記載とが間違っておりまして、一年二ヵ月の言い渡しに対して一年六ヵ月にしたという事案でございまして、これに対して一年六ヵ月入れることは不当であるということで、人身保護の請求をいたしました。ところが、この判決が間違っておるということが認められましたので、身柄を直ちに釈放せられましたために、とうとうこの判決を得ずに終りましたが、申請いたしました事件は、ただいま申し上げました一件でございます。
○猪俣委員 これはあるいは裁判所に聞かぬとわからぬかもしれませんから、これはやめます。 それから、いま一つは、今度は精神病者なりとして入院せられた者の名誉の保護のことですが、先ほど私が申し上げましたように、刑事訴訟法と精神衛生法、もちろんこれは法の目的が違いますから、多少の違いがあることはもっともでありますけれども、しかし、人権尊重という立場から見るならば、いやしくも人権を棄損しないという方から見れば、同じことだと思うのです。精神衛生法におきましても、やはり刑事訴訟法の百九十六条のような規定、都道府県知事、精神病院長、精神鑑定医その他この法律により職務を行う者は、精神障害の疑いある者その他の者の名誉を害しないように注意しなければならないというような訓示規定を、たとえばこの総則三条の次にでもして置く必要があるのじゃないか。東女史の場合においても、女史のことのみならず、弟さんのごとき、弟さんが精神病の既往症があって入院したのではないかというようなことまで書き立てて——全部これはうそでありますが、そういうようなことを書き立てて、これが各方面にまかれておる。これは研究材料として出されたかもしれませんけれども、それがことさら人の名誉を棄損する意味において用いられないとも限りません。さようなものに対して、やはり、訓示規定でもいいと思いますが、さような規定を置くことが実際上から見ていいか悪いか、もしそういう規定を置いた場合、今度は医者が困るようなことがあるだろうかどうだろうか、これは楠本さんから実際に即して一つお答え願いたいと思います。
○楠本政府委員 精神障害者の取り扱いにつきましては、特にその病気の本質上誤解を招きやすいという点も多うございます。従って、その取扱いにはできるだけ慎重に、かつ名誉等を十分に尊重して取り扱うのは当然でございます。従いまして、私の方といたしましては、ただいま御指摘のような点を一つの教育規定として設けますことにつきましては賛成でございます。ただ、現行法におきましては、一部御指摘の秘密保持の点に関しましては、これは中央・地方を通じまして公務員にさような秘密保持の義務づけがございますので、現行法におきましては、これらの規定を十分に活用いたしまして、行き過ぎのないように監督をいたして参りたいと存じます。
○猪俣委員 次に、精神衛生法の三十七条でありますが、この三十七条を見ますると、「都道府県知事は、前条の届出があった場合において調査の上必要があると認めるときは、」と、こうなっておりますが、「調査の上必要があると認めたときは、」という場合は、調査しないということが往々出てくるのであります。私どもは、これを削りまして、二十九条のような兇暴性のある者は別といたしましても、病状が軽度であって入院させておくというような場合、そこに不当な入院があるのかないのか、やはり慎重にする意味におきまして、鑑定医の診察を受けさせ、調査の上必要があるというような条件でなしに、無条件で、とにかく収容する場合には診察を受けさせる、しかも、その鑑定医は、精神病者の入院しておるところの医者でなく、他の病院の医者に鑑定させるというようなことをいたしますならば、そこに間違いのできることが少いのではなかろうかというふうに考えられますが、そういう三十七条のうちの「調査の上必要があると認めるときは、」という条伴を削除することについて、実際上いかがでありましょうか、御所見を承わります。
○楠本政府委員 現在でも、私の方といたしましては、できるだけすべての場合に調査をして間違いのないことを期しておる次第でございます。従いまして、かようなことを調査することを建前として実施することについては、趣旨としてはこれはけっこうなことと存じますが、ただ、これら相当の数に上り者ものが、果してすべて事務的に可能であるかどうかという点になるかと存じますが、しかし、これらの点は趣旨はごもっともでございますので、検討を十分にいたしてみたいと存じます。
○猪俣委員 なお、問題になりますのは、精神衛生法三十八条の精神病者の行動の制限というところであります。精神病院の院長に絶対の権限を与えておる。これも、医療あるいは保護のために必要な場合があると思いますが、それには「医療又は保護に欠くことのできない限度」と条件がついておりますけれども、ほとんどこれは有名無実で、院長の感情一つで行動の制限は無制限にできる。現に、東女史の問題につきましても、必要以上の制限をしたと思われる。その入院中の病状は報告になっておりますが、実に穏やかで、同室者におばちゃんおばちゃんと慕われて、医者の診察に対しても非常に従順で協力的であって、何ら常人と異なるところはないと業績集を見ますと報告しております。そういう患者であるにかかわらず、その女史が、自分の秘書に手紙を渡す、あるいは自分の教え子に手紙を書いて出してもらいたいと言っても、一切それを没収して、そういう手紙を預かっておるということさえ話をしていないという行動をやっております。なおまた、七十人くらいの入院者のうち半数以上はお正月を自宅ですることを許されて五日なり一週間なりみな自宅に開放せられたにかかわらず、この何でもない東女史だけは、教え子が行って、とにかく三日間でもいいから正月をうちでさせたいといって哀訴嘆願数回に及ぶにかかわらず、理由なしに断固としてそれを退けておる。私はこれは人権じゅうりんだと思います。パラノイアという病気は一年や二年や三年でなおる病気ではない。あらゆる学者の学説を援用しても、ほとんど半永久的になおらない。しかし、実際上は何ら常人と異ならない能力と行動をしておる。これは診断する方がごまかすにはまことにけっこうな病気だと思うのです。どうにでも説明がつく。そういうような病気で入院させられたのでありますが、一切の行動を制限されておる。そこで、ただ抽象的に「医療又は保護に欠くことのできない限度」なんということを言うても、医者が、いや保護に必要だと言われれば、それっきりになる。ここに何かの、こういう場合にはという一つの基準を設ける必要があるのじゃなかろうか、かようにも考えられるのでありますが、御意見を聞きたい。
○楠本政府委員 御指摘のように、一つの基準を定めまして、もっぱら医師の判断にまかせて間違いなきを期していくということにつきましては、この行動の制限以外にも必要な問題が多々あろうかと存じます。従って、私どもといたしましては、できるだけかような取扱いにつきましては基準を明確に定めまして、それに従って処置していくということが望ましいことでございます。ただ、問題は、他の疾病と違いまして、精神病というものはきわめて複雑でございます。そのために、果して技術的にそれが可能であるかどうかという問題でございまして、実は、従来もこれら基準の問題につきましては、精神衛生審議会等の専門家の意見もいろいろ聞いて研究をいたしておりますが、現在なお満足すべきところに達しておりません。しかし、ただいま御指摘の点はまことにごもっともでございますので、私どもといたしましては、今後重ねて精神衛生審議会にはかりまして、何とかそこに技術的な問題を解決して、これを基準化して参りたいと考えております。
○猪俣委員 なお、これは人権擁護の、立場から申しますが、先ほど申しましたように、ここに犯罪者があって逮捕いたしましても、検察官なりあるいは警察官なり、相当の身分のある地位の人たちが、やはり判事の令状がなければできないという慎重な態度をとっております。しかるに、事精神病に関する限り、その医者が絶大なる権能を持っておりまして、医者の判定によっては直ちにこれが収容せられ、そして一切の外部との交通を遮断せられ、一切の行動を制限せられる。これは監獄以上であります。今の監獄法による監獄以上に徹底的に自由が束縛せられるのであります。それでありまするから、入院という行為は人身の自由から見ると実に重大な問題である。それに対して、今の精神衛生法は、刑事訴訟法とのつり合い上、どうも少し簡略になっておるんじゃなかろうか。そこにいろいろの弊害が起ってくる。私どもは、東佐誉子氏をながめまして、これがそんな一切の外部の交通を遮断し一切通信の往復から遮断しなければならぬような、いわゆる狂暴性ある患者だなどということはとうてい信用できません。しかるに、精神衛生法二十九条の患者として入院させられておる。ここに問題があると思うのですが、かような二十九条の強制入院の場合でも、三十四条の保護拘束の場合におきましても、いわゆる人身の自由を拘束するというような場合におきましては、刑事訴訟法との均衡上もあって、ここに何か裁判所の許可書というような、裁判所が介入する必要があるんじゃなかろうか。裁判所において鑑定医に宣誓させて鑑定せじめ、その結果入院を許可するような慎重な手続をしないでいいんだろうか。そのある保護者と病院の医者とが非常に懇意の間柄で、何らかの目的で結託いたしますと、大へんなことが起る。ことに、相続財産の争いの場合においては、その実害が過去にあったと思うし、そのおそれが十二分にあります。保護者といえども油断ならぬ場合がある。その保護者と医者とが結託しますと、一切の国家機関は傍観しておるような形でありますから、私は大へんなことが起り得ると思う。先般も、岩手県でありますか、二十四年六ヵ月座敷牢へ親のために入れられた子供が発見せられた。これは人権擁護局の手によって救い出されておる。ですから、ただ保護者の同意ということと、そして医者というものを絶対に信頼してこの精神衛生法というものはでき上っておるようでありますが、それだけでは危険性があるのじゃないか。東女史の本件の場合を考察いたしまして非常に危険性がある。その弟さん自身が医者にだまされていたんですから、——あるいは学校当局にだまされておったんです。そういう場合なんですから、かようなことは往々あるんではなかろうか。それには、裁判所がここに介入するか、しからざれば、少くとも警察や検察庁へ通報する、こういう理由で入れたいと思うがというて何らかの国家機関に介入させるということにしないと危ないのじゃなかろうかというふうに感じておりますが、監督官庁はどうお考えになりますか。
○楠本政府委員 この強制入院等の場合は、非常に処理の急を要する場合がかなりございます。放置できないという場合がかなりございます。従って、できるだけ迅速にこれを行わなければならないことは申すまでもありません。また、実際に強制入院を要するような患者は案外社会にも多いのでございます。従って、私どもといたしましては、ただいま御指摘のように、そうかといって相当人権にも大きな影響を与えるものでありますので、適当な機関に了承を求めるというような注意深い措置が必要とは存じます。しかし、相当な数にも上り、しかも迅速を要することから考えまして、果して裁判所の許可を受けることが適当であるか、あるいは他にまたもっと適当な方法があるか、さような点につきましては、さらにあらためて検討をいたしてみたいと存じます。しかしながら、現在では、さようなことを考慮いたしまして、かような場合には必ず特に二名の監定医を置きまして、しかもそれは厚生大臣が任命した適任者二名の診断に基いて処置をするということを実施しておりますのも、その趣旨にほかなりませんが、しかしながら、これらの点につきましては、なおもっといい方法があるかいなか、まじめに考えてみたいと存じます。
○猪俣委員 実は、私ども、医者を全面的に否認するものでもなし、また、さように医者を疑っておりましては、われわれの日常生活は成り立ちません。ある程度の信を置かなければならぬとは思います。しかしながら、医者の中にも相当派閥がありまして、たとえば武蔵野病院とかあるいは松沢病院というような関係の医者には一連の派閥がある。系統の同じような医者に何人かけても同じようなことを言うのであります。そこに多少の危険性がある。だから、やはり派閥の違う医者でないと、人数ばかりふやしたって、実際問題として意味のないことが起る。これはわれわれよりも厚生省の方がよく御存じではないかと思う。たとい東佐誉子さんをいかに武蔵野病院と同じ系統の医者に何人見せたって、同じことを言うに違いない。武蔵野病院が診断したのと違った診断はしません。これは私は元の下山国鉄総裁の変死事件のときにはっきりわかった。あれは自殺説と他殺説がありました。当法務委員会がこの自殺説と他殺説の医者両者を呼びまして検討を加えましたときに、全く対立するのです。ことごとく対立する。この下山さんの事件のみならず、また三鷹事件の致死の時間等につきましても、いわゆる東大派の先生と慶応派の先生とでは全く意見が違うのです。そして譲らないのです。東大派に属する医者はみな東大派は先生が見たのに加担するし、慶応派の先生は慶応の先生が見たようなことにみな加担する。そこで、精神病でも、系統の違う二人を入れないと、ほんとうの診断はできないと私は思うのです。これはしかし、実際ははなはだむずかしいことですけれども、厚生省が鑑定を命ぜられる場合に、そういう内部の事情までも考慮して任命せられませんと、ただ二人の医者が見たのだからいいのだということでは済まぬのでありまして、私は、東佐誉子さんの診断なんかも、全く武蔵野病院あるいは松沢病院と系統の違う医者にもう一ぺん診断させないと、ほんとうのことはわからないと思います。警視庁でそうやっておられるか、厚生省でそうやっておられるか、そこまでまだ聞いておりませんが、おそらく同系統の医者の診断をやっておられるのではなかろうかと思いますが、そういう、医者が系統によって相当派閥的にものの考え方が違っておるような実情がありますかありませんか。あなたの口から言えるか言えないかわからぬが、一応お尋ねいたします。
○楠本政府委員 精神病学は日本ではきわめて立ちおくれた一つの技術分野でございます。従って、必らずしも他の病気の研究のように十分行き届いている段階に至っておらぬのが実情でございます。従って、人によって研究段階として多少意見の違うこともやむを得ないことだと存じます。のみならず、精神病というものはきわめて診断が困難でありまして、さような点もにらみ合せて考える必要があろうかと存じます。ただ、派閥があるために診断の方向が違うというようなことは、私は絶対にないと確信をいたしております。元来、医師を信頼し、その人の技術を信頼することによってのみ問題が成り立つのでありまして、ただ、その場合に、先ほど私は好意を持ってお答え申し上げておりますが、たとえば強制入院を命令する場合にも、一応は裁判所その他適当な機関のフィルターにかけるということは、人権がきわめて貴重であるからの考え方でございまして、医者を信頼しないという考え方で一つの別なフィルターにかけるという意味のことを申し上げているのではないのでございます。従って、私どもはやはり医者の技術を十分に信頼していかなければならぬ。いろいろな意見がございます。しかし、これは学会もあることだし、研究の結果は公表もされることになっております。技術上の問題は派閥とはちょっと違うのではないかという感じがいたしております。
○猪俣委員 まあ、あなたとしてはそう言わざるを得ないだろうが、実際は違うのだ。あなたは腹の中で知っていておっしゃるから、それ以上のことは言いませんが、それはひどいものだ。——医者だの学者というものは。もちろん派閥のないものは世の中にないのだから、これはまあいいとしても、しかし、実際上人権の保障に欠くるような派閥を出されては実に困る。現実の姿として私どもはあると見ております。そういう意味からも、やはり厳粛に宣誓でもさして、派閥の違う医者でもって、いやしくも二十九条の狂暴性ある病者なんという認定のもとに入院させる場合においては——ことに、学者とか相当の身分のある人が、二十九条の狂暴性ある精神病で入院したということが経歴になりますと、それは死刑の宣告です。そういうことをこの武蔵野病院の院長さんなんかは実に簡単に考えておる。二十九条の都知事の強制入院に切りかえれば都から補助金がよけいもらえるので切りかえたという頭なんです。医者であるからかもしらぬが、人権なんということはからっきり頭からないのです。それだけに、悪意なくしても危険性があるのです。なぜそういうことが重大であるかということを考えないのです。ただ補助金がよけいもらえるからこうやる。しかもそれが女子大の先生で、フランスにまで留学せられて、栄養学の大家といってしょっちゅう講演して歩いている人にとっては死刑の宣告である。二十九条で入院させられたといったら、人は信用しません。そういうことをいとも簡単に考えておられるところに危険性がある。そこで裁判所の介入というようなことを考えるのですが、ついでに、今話が出ましたから申し上げます。武蔵野病院長は、東女史に金をなるべくかけないようにするために、今言ったように二十九条の狂暴性ある患者として強制入院の手続をした、こういうことを言っていらっしゃるのですが、実際、そういう場合、精神病というものはなかなか金がかかるそうであります。私は、薬も飲まぬでよいし、ぶらぶらしていて金がかからないと思ったのですが、今度初めて金のかかることがわかったのです。そういう場合に、狂暴性あるものだという名義で入院させないで、もっと補助金をとれるようなことをこの精神衛生法の中に織り込むことがよいものか悪いものか。社会保障あるいは生活保護の全体の問題として取り扱うべきもので、精神衛生法の中にそれを入れることはどうかというようなことも考えられますが、しかし、結核予防法とかなんとかいうものには、それ自体国家の補償規定があるのですから、同じような意味において、精神衛生法にそういう社会保障的な条文を置くことはどういうものであろうか、あなた方の御意見を承わりたいと思うのです。
○楠本政府委員 現在、御指摘のように、結核には医療費公費負担という制度がしかれております。ところが、精神病の場合は結核以上に社会性の濃い疾病でありますので、私どもといたしましては、これは他の一般法によらずに、精神病の場合には社会保障の一環として特にこれは公費負担を実現していきたいという考え方を持っております。また、それが当然だという考え方も持っております。しかしながら、何分にも、国家財政の観点から申しまして、金を効率的に使うというような観点に立ちますと相当難点が出て参ると思いますが、私ども担当者といたしましては、御指摘のように考えております。
○猪俣委員 最後に、この東女史の入院問題を取り扱いまして、ことにこれは法務省の人権擁護局で詳細にお調べになって発覚いたしたのですが、二十九条の入院手続に切りかえる際には、二十七条で鑑定医の鑑定と東京都吏員の立ち会いを必要としているのに、東京都の衛生局ですか、その連中はこれをすっぽかしてしまっている。その非をおわびになりましたから、私ども別に追及いたしませんが、監督官庁としてこれは重大な問題であります。二十九条として入院させるなんということは、そう簡単に、ちょっと補助金が多くなるからやるというように簡単にすべきものではない。一生つきまとう問題であります。それに対して法の要求するような手続をやっておらぬ。東京都の係の人も立ち会っておらぬのです。こういうことに対して監督官庁は十二分なる御警告を発していただきたい。 これで私の質問を終ります。
○高橋委員長 世耕君。
○世耕委員 私は、法務当局並びに検察当局に数点お尋ねいたしたいと思います。 最初に、刑法百六条の騒擾罪というのはどういう罪をさして言うのですか、その実例を御説明願いたいと思います。
○長戸政府委員 百六条以下の騒擾罪は、「多衆聚合シテ暴行又ハ脅迫ヲ為シタル者ハ騒擾ンノ罪ト為シ」云々、こういうふうに規定しておりまして、公共の静ひつを害するに足る擾乱というような場合に適用を見ておるわけでございます。最近におきましては、皇居前広場の事件などがこれに該当しておる、かようなことであります。
○世耕委員 次にお尋ねいたしたいのは、公務執行妨害に対する犯罪の内容であります。この点について、その実例、判例を御説明願いたい。
○長戸政府委員 公務執行妨害は九十五条等に規定されておるわけでございますが、これは、実例はたくさんにございまして、巡査がその職務を行うに際しまして、それを妨害するというふうなのが一般の例でございますが、非常にたくさんございます。
○世耕委員 次にお尋ねいたしたいのは、警察法第六章の七十一条の総理大臣の緊急事態の措置、これについてどういう場合を想定してこの法文があるかということをお尋ねしておきたいと思います。
○石井(榮)政府委員 緊急事態は、大規模の災害あるいは騒乱といったようなもので治安上特に影響を及ぼすような事態、こういう場合を考えてこの緊急事態の場合の内閣総理大臣の権限が規定されております。
○世耕委員 そうしますと、国会内にも暴動にひとしい事件が起った、国会外にもそれに呼応した事件が起ったという場合に、この警察法の緊急措置は国会内にもその権限が及ぶかどうかという見解ですが、その点いかがでございますか。
○石井(榮)政府委員 国会内の事態は、両院のそれぞれの議長の警察権によって国会内の秩序維持がはかられるものと考えております。
○世耕委員 よく了承いたしましたが、国会内の議長がもうすでに権限を喪失した、実際的にその権限を行使する権能がなくなった混乱の場合、それらの場合にもなお議長の権限に属すると称して、この緊急措置がとられないかどうか、こういう見解ですが、その点いかがですか。
○石井(榮)政府委員 国会内におきます秩序維持は、議長の警察権によって事態を収拾し得るというふうに考えておりまして、それ以上の事態が起るということはまず通常には予想されないのではないか、かように考えております。
○世耕委員 私は実は緊急事態が発生したことを前提としてお尋ねしているのです。今長官のお答えになっているのは、やや平常の場合を予想しておる。混乱状態に入ってしまった、議長がどこかへ連れていかれているかもしれない、殺されているかもしれない、議長が自分の職権を行使することすらできない状態に入った場合にどうするかということを聞いておるのです。しかも外部においては暴動が起っておる、暴動の一部がすでに議場内に侵入している、こういうような場合についても議長の指揮権を仰がなければ行動できないということは、少し窮屈なお考えじゃないか。これは決して仮想するわけじゃございません。われわれは今日の事態に当然考えなくちゃならぬ問題であり、国民がひとしくそこを憂えているのではないかということを考えるがゆえにお尋ねするのです。しかし、きょうは大臣がおいでになっていないのだから、あなたにお聞きすることは無理かもわかりませんけれども、心構えがおありになったら、一応お話し下さることがけっこうじゃないか。なぜかというと、あなたが直接の指揮者です。重ねて申し上げますが、議長は殺されているかもしれぬ、どこかへ拉致されているかもしれぬ、——あらゆるヨーロッパの革命、東洋の革命その他を想像してみますと、悪い想像ではありますけれども、そういう場合があり得るのです。そういうときでもなお議長の指揮がないから行動できぬということになると、議場内におる者の人権はいかにして守られるか、いかにして生命が守られるかということは、これは如実に現われてくる問題であります。警察当局の方でお返事がなければ、一つ法務当局で法律上の建前からどうお考えになっているか、これは現実の問題でありますのでお尋ねしておきたい、こういうわけでございます。
○長戸政府委員 私は、議長が職をとれない状態になったという場合におきましては、副議長においてこれを処理なさる、この国会の自律ということは非常に大事なことであろうと思うのであります。ただ、爆弾によって国会が吹っ飛んでしまったというふうなことで、その職務が全然とれないというふうな状態あるいはそれに似たような状態になった場合に緊急事態というふうなことが考えられるかもしれませんが、普通の状態においては議長職権によって事を解決するのが穏当であり、また国会法等の要求するところである、かように考えておる次第であります。
○世耕委員 実際のところ、的はずれなお返事なんです。私は緊急事態をお聞きしているのです。もう一つ申しますれば、総理大臣もどこかへ連れていかれる、生死不明だ、連絡つかぬ、かような場合、革命になるのですよ。これはもう私は空想を描いて無理なお尋ねをしているわけじゃないのです。そういう事態に、第二、第三の、国民の生命、財産、公安秩序維持ということを常識的に考えた場合、これは松原さんに政治的にお聞きした方がいいかもしれませんが、いかがでしょう。松原さん、これは政治家として私は当然考えておくべき問題ではないかと思う。それとも委員長がそれは少し行き過ぎだと言うなら、私の発言はとどめておきます。しかし、私はそういうことが想像できる。国民が不安を持っておる。新聞記事を見てごらんなさい。この点について御無理じゃなかったら——決して私はそれについて責任を追及するとか言質をとるとかいう意味じゃございませんが、国民が不安を感じているから、念のため……。総理大臣もどこかへ連れていかれた、議長ももちろんいない、——さっきの長官のお話だと、議長と総理大臣の命令がなければおれは動けぬということになれば、国民は逃げ歩かなければならぬ。どうしたらいいですか。いわゆる治安の中心はどこに置かれるか。これは、私は、昔の陸軍の場合でも、大将が戦死した場合は、その次々と指揮権がおのずから移っておると思いますが、そういうことはあり得ると思うのです。これは常識論だと思います。
○高橋委員長 今の問題は非常に重大な問題ですから、もしお述べになるとすれば確信のあるところを述べていただくし、そうでなければ、よく研究して述べていただくということがいいと思いますが、しかし、この際政府の方から御発言があれば、これを許します。
○松原政府委員 緊急事態が起った場合は、一にかかって内閣総理大臣の指揮によるほかはないと思います。指揮によるのが当然でありますが、その内閣総理大臣もなおかつこの前のようにとらわれて指揮することができないという場合においては、授命者が次々と変っていくべきものであって、それはいかなる場合においても違いはない。連隊長が死ぬれば中隊長が、中隊長が死ぬれば最後には下士官が指揮をとったという例は幾つもある。いやしくも組織体が、その指揮者を失ったからというて、その体の力を動かさないというはずはない。私は、一寸刻みになっても、最後の力まで、公安の維持、国民の治安に当る責任を持つその本質の者が全力を上げてこれに当るべきものであって、一片の法律にこだわるべき性質のものではないと心得ております。
○世耕委員 非常に心強い、また常識のある御答弁で、さような答弁があってしかるべきだ。これを聞いて国民は安心するだろうと思います。 次にお尋ねいたしますが、昨日国会内に警察力が行使されたというので、新聞は賛否両論の批評をいたしておるのであります。むろんこれは議長の要請に基いて議場内に入ったものと私は確信いたしますが、議場内に入るに及んでどういう命令が出たか、行動範囲がおのずから明らかにされておっただろうと思うのです。この点は長官にお尋ねする方が適当だと思うが、いかがですか。
○石井(榮)政府委員 六月二日午前二時五十分、内閣官房長官より警視総監あて議長の要請に基く警察官五百名の派遣方連絡があったのでございます。御承知の通り、国会内の秩序維持は、先ほどもお答えいたしました通り、議長の権限に属するのであります。警察といたしましては、議長の要請に基きまして内閣を通じ警察官を派遣いたします場合には、派遣の後における警察官の行動はすべて議長の指揮下において行われるのであります。私ども、それに関しては、いかなる行動をとるかは何ら関与いたさないのであります。従って、私自身は何ら相談にもあずかりませんし、承知もいたしておりません。
○世耕委員 ごく常識的に判断すれば、あなたは五百名自分の部下を貸した、こういうことになるわけですね。それでは少し答弁が足りないのじゃないですか。あなたが部下を貸すのに、議長から貸してくれと言うてきたからといっても、それには正当性というものがなければならぬ。あなたがりっぱな警察官を、自分の愛する警察官をいわゆる乱闘国会に出す以上、場合によっては負傷する場合もあろう、ある場合には生命の危険を生じてもその職務を遂行しなければならぬときに、ただ貸してくれと言うたから貸しました、——何だか変じゃないですか、その答えは。私は決してこれを聞いてあなたの責任を追及するとかなんとか申し上げるのではないのですよ。世間の疑惑がいろいろ伝えられているから、本委員会を通じて明確にしておきたいというのが私の本意なんです。しかし、それ以上答えぬのだとおっしゃるならば、私は別の方法で聞く機会をとらえたいと思いますが、いかがでありましょうか。
○石井(榮)政府委員 議長の要請が適当であるかどうかということは、私どものかれこれ申すことはできないところでございます。議長の適正な判断に基きまして、院内の秩序維持のために衛視のみをもってしてはとうてい不可能であるという客観的な事実に基いて議長は一般警察の応援要請をされたものと思うのであります。なお、この応援要請は、先ほどもお答えいたしました通り、議長は内閣に対して要請し、内閣が警視総監に対して派遣を要請する、こういう建前をとっておるのであります。私ども警察庁は、法的には直接の関係はないのであります。
○世耕委員 それでは、もう一つお尋ねしますが、あなたの部下が議長の命令下に服したということはよくわかりました。その命令下に服した以上は、あなたの権限から離れたということになる。どんなことをしてもあなたには責任がないということが結論だというわけですね。同時にまた、負傷した場合にも、あなたは一向責任を感じない、こういう結論が出てくるのだが、その点はどうですか。私がかりにかわいい自分の弟子をよそへ貸すときは、貸すときの条件をいつもつけるのですが、あなたはただ国家の要請だからというて自分の所管する大事な部下を無条件でお貸しするということはないだろうと思うのだが、その点は規定の内容はどういうふうになっておりますか。万一という場合を予想して私はこれをお尋ねしておくわけであります。
○石井(榮)政府委員 応援要請に基いて院内に派遣されました警察官が議長の指揮のもとに行動しましたその行動に対する責任は、すべて議長に帰属するもの、かように考えております。
○世耕委員 過日の国会では、あなたに所属する部下には、けがなんかはございませんでしたですね。
○石井(榮)政府委員 幸いにいたしまして、派遣された警察官には一名も事故がなかったと聞いております。
○世耕委員 それでは検察庁の方の関係にお尋ねいたします。 検察庁法第六条には、「検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる。」という規定がありますが、これはその通り解釈してよろしゅうございますか。
○長戸政府委員 お説の通りでございます。
○世耕委員 一昨日、あるいはこの間と言った方がいいかわからぬが、だいぶ暴力行為が続いております。この暴力行為は、公務執行妨害に該当しあるいは傷害に該当するあらゆる犯罪が国会内に発生したと一応世間で見られておりますが、検察当局はこれについて捜査をなさったかどうか、お尋ねいたします。
○長戸政府委員 この院内における現行犯人の捜査、ことに逮捕についてしぼって御説明をいたしまして、御了承を得たいと思います。院内における現行犯人の逮捕につきましては、御承知のように、衆議院規則の第二百十条、参議院規則の第二百十九条にその規定がございます。この両者には文字に多少の相違があるのでありますが、実質的には違わないので、衆議院規則に基きまして御説明したいと思います。この第二百十条によりますと、衛視または警察官は現行犯人を逮捕いたしました場合に議長の命令を請わなければならない、こういうふうになっております。ただし、議場におきましては、議長の命令によって初めて逮捕できる、かようになっております。要するに、議院内における現行犯人の逮捕ということは、院内警察権の主体であるところの議長の命令下にあるというふうに考えられるわけであります。従って、すべての犯罪について捜査することができるこの司法警察権というふうなものの行使は、その限度内においては許されない、一つの院内自律といいますか、国会自律による院内警察権が優先する、こういうふうに考えております。
○世耕委員 今現行犯のお話がございましたが、私は捜査と逮捕とは区別して判断していいと思います。今私がお尋ねしたのは、捜査しているかということをお尋ねしたのです。捜査する権限がないのかどうか。この参議院並びに衆議院の規則には逮捕ということが出ていますけれども、捜査権を制限した規定はないように思います。その点はいかがでありますか。
○長戸政府委員 逮捕以外の捜査一般につきまして、検察、警察の捜査はもとよりできる次第でございますが、国会の自律と申しますか、国会の権威というものを尊重する建前におきまして、私どもといたしましては院側の告発なり何なりを待って捜査をするというのを建前にいたしておる次第でございます。
○世耕委員 議院の告発を待って、あるいは告訴を待って捜査を開始するのだといったら、証拠隠滅とかで犯罪の捜査ができないじゃありませんか。それなら初めからやらぬということになる。それで果してあなた方の職責を全うしたと言えるでしょうか。法の精神はそういうところにあるとは私は思わない。ここは国民の不満を持つところじゃないだろうか、こう思うのです。幸いに近ごろは録音、映画等の証拠物件は逐次集められておりまするけれども、検察当局が捜査の意思がない、言うてきたら捜査しようというのでは、犯罪捜査の目的並びに処罰の目的は達せられないと思う。そういう態度で果していいのかどうか、今日の事態においていいのかどうかということを私は疑う者の一人なんです。その点はどうですか。私の申し上げることは決して論理に反したへ理屈を述べておるのではないと私は自信を持っておるのですが、あなたのお考えはいかがですか。
○長戸政府委員 先ほども申し上げましたが、議院内の犯罪につきましては、その性質上、従来告発を待って捜査をするのを建前といたしてきたのであります。これは、法律上告発を要するという意味ではなくて、国会の権威を尊重するという意味でございます。議院内の犯罪は、多くの場合政治的闘争の過程において生ずるものであるばかりでなく、広範な自律権を与えられた国権の最高機関である国会内において生ずるものでありまして、多くの場合良識のあられる議員の介在するところの犯罪である。これに対しまして、行政機関である犯罪捜査機関が、その独自の判断によって進んで捜査に着手するというようなことは、一応これを差し控えるのが相当であるというふうに考えておるのでありまして、この考え方は今後も維持していくというつもりでございます。ただいまお話しの場合におきまして、決してわれわれがこの事態を問題にしてないというのではなくて、重大なる関心を寄せておる次第でございますが、そのような許すべからざる犯罪が生起したというときに、院内自律という建前から、議長その他国会側におきまして、これを放任なさるというふうなことは考えられない、われわれの検察権、警察権の発動を要請されることは当然である、必至である、われわれはそういうふうに考えておる次第でございます。
○世耕委員 三権分立ということはいまさら申し上げるまでもないと思いますが、司法権の尊厳が維持されないときは、進んで維持するために行動を開始するのがあなた方の義務ではないか。 それでは、もう一つお尋ねいたしますが、この間の国会内において、現行犯に該当する事態が発生してなかったかどうか、これをお尋ねしておきます。
○長戸政府委員 あったというふうに考えます。
○世耕委員 あったならば、なぜ議長に、司法権の確保、国会の権威確保のために司法権の発動を要求しないか、私はこう言いたいのです。同時に議長に助言を与える義務があります。この点どうですか。
○松原政府委員 私はそういう問題はきわめてしろうとでありますから、法理上から申し上げないで、ただ、私は、現地に見ておった所見として、議員の一員として今後考えたいと思うことがある。今回の参議院における騒擾とでも言うほどの不祥なことが起りまして、ついに院内に警察官を導入しなければならない結果を生じたことは、まことに憂うべきであって、これは空前にして絶後たらしめたいと私は思う。参議院にはこういう例はございませんが、やむを得ず夜中になって警察官を入れねばならぬような事態になったのは、参議院の衛視の数がきわめて少いところに、重傷者が八人、病院に入れた者が十一人、その他手当を受け勤務につき得ない者合計四十幾人というものが発生した。百五十名ばかりの定員の中にこれほどの負傷者を生ずれば、議院がみずから秩序を守っていくだけの自衛ができなくなる。従って、議長はその職権によって内閣に警察の発動を要求した、内閣はこれを受け入れて警察官を国会に送った、こういう結果になっておる。しかし、これはまことに遺憾千万であって、いかなる場合におきましても暴力は否定せられなければなりません。暴力を是認するということはいかなる場合においてもあり得べからざることと心得ます。いわんや、少数党の意見が通らないからという理由をもって暴力が認められるというようなことは絶対私は否認します。認めらるべきものではないと信じます。従って、かかる場合に万やむを得ず警察官が国会内に入ったという事態を生じたのでございますが、これは私はお互いに議員たる資格において深く省察しなければいかぬと思う。その第一は、議場内の秩序及び国会内におけるあらゆる一切の秩序は議長がその権能によって処理すべきものであります。また、議長を助けてわれわれ議員がこれを遂行せしめなければならないものであると存じます。そこに神聖なる国会の権威が保たれねばならぬ理由があると思うのであります。国会内における先日来の、——私どもは二日不眠をもって国会を暴力から守り抜きました。幸いにして国会を暴力からは守り抜きましたけれども、ついに院外の力を借りたのであります。ここに私は遺憾しごくなものを持ち、国民に対して申しわけない恥かしさを感じます。国権の最高の府であるべき立法の機関が、院内の秩序をみずから保つことができないで警察官を導入したごときことは、私はまことに恥ずべきことだと思う。今後こういうことがあっては相ならぬ。私の所見をもってすれば、国会法には明瞭に、議場内における秩序は議長の命令によって処理せらるべき条項が書いてあります。百十六条はこれを明らかにしておる。みだりに発言しあるいは壇上にかけ上る等の無秩序な行動のあった者は、議長はこれに発言を停止し、禁止し、あるいは退場せしめることができるのであります。一人々々に議長は即刻退場を命ぜればよろしい。退場しない者は衛視をして場外に連れ出せばよろしい。その処理が一つ一つはっきりしていったならば、かくのごときことには相ならぬが、最近における国会の議場内の行動はまさに暴状をきわめておる。許可なくして発言し、壇上にかけ上り、議長のいすをひっくり返す、事務総長をいすの上からころがし落そうとする、事務次長を監禁し、数時間にわたってめしも食わせずに場内の一隅に押しつけておる、かような暴状がほしいままに行われておるということを私は痛憤する者であります。同時に恥辱に感ずる。これは、われわれのみずから守るべき責任をみずから果しておらぬのであって、こういう行動がいつの間にか自由になってしまっておる。私どもは古い人間でありますから、過去の帝国議会を見ておる。今の益谷議長なども退場を命じられた事実がある。議長は敢然として退場を命じておるのであります。しかるに、近来は、どういう暴力を振おうとも、少数党の意見が通らぬときは当然だというような理屈がつけられておる。もしそういうことが是認せられるならば、国会は意味をなしません。無意味であります。私は法務政務次官として申しておるのではない。お互い議員の一員として、この際深き反省をもって、議場の中に二度と再び警察官を入れなければならないような状態を起さないように反省し、是正し、不断の用意をもって秩序が常に保たれるようにいたしたいという希望を申し述べまして、御意見をこちらから伺いたいのでございます。
○世耕委員 松原政務次官は、次官のお立場ではなしに、同僚議員の一人としての御感想を今述べられたようでありますが、全く私と同感であります。実はその趣旨で関係当局に質問をしている。ところが、関係当局の立場から見れば、お前ら暴れているんじゃないか、勝手なことをしてしまっておれらばかり責めるというような感じも腹の中で幾分持っていはせぬかという感じがいたしますが、実は、お尋ねするのは、常に法律の番人であり、法律を預かっている人たちのこの事態に対する解釈、どう思っておられるかということを聞きただすのが私の目的だったのです。そういう観点でお尋ねしておったということを御了解願いたい。実は、今松原政務次官からお話がありましたが、昭和二十九年六月十五日午後十一時五十五分に衆議院議員全員協議会というのが開かれて、そのときに、国会自粛、そうして、国会の権威を保つために、同時に国民の信頼を維持するためにというので決議を全員こぞってされたのであります。そのときの座長は堤康次郎氏がなっておりますが、その決議はこうなんです。決議の説明を竹山祐太郎君がしておりますが、「国会は国権の最高機関として国民の信頼と尊敬を集めて国政を議するところであり、常に公平にして信を国の内外につながねばならない。しかるに今日ほど議院の神聖と品位を傷け民主政治の健全な発達を希う国民の期待に背いたことはない。ここにわれらは深く反省するとともに自粛自戒し各党各々その立場を異にするも良識をもって法規典例に遵うとともに、政治道義を守り、もって人心に及ぼした不安と失墜したる信用を速かに回復し議院の威信を保持して国民の負託にこたえんことを期する。右決議する。」起立総員で、一人も反対がなかった。そのときに、社会党の和田博雄君、淺沼稻次郎君は感激的な同感の演説をしていることも、この記録の中に載っておるのであります。私は、これを思い起したところ、自戒自粛をして国民の信頼をつなごうという人が陣頭に立ってこの混乱を引き起したのではないか。新聞の批評するところでは、革命の一歩手前だとまで批評しておる。中には、過激な人は、議会なんかやめてしまえ、こういう議論をするのが新聞に散見するのであります。私は、時間の関係上、これ以上多くを論議いたしません。私の言わんとする趣旨が一応御了解願えたと思いますから、これ以上申しませんが、われわれは国民に対していかなる方法で、かくのごとき醜態をしたことに対しておわびしていいか。これは、もし自由民主党に責任があれば、自由民主党が責任をとるべし、社会党に責任があれば、社会党が責任をとるべし、そうして事態の内容を究明して、国民の前にさらけ出して、天下に罪を謝するという態度でなければ、国民は議会の信用ということも考えないし、民主主義の実体というようなことは承認してくれないであろう、こう私は考えるのです。こういう意味におきまして、国会内に起った事態である以上、捜査も簡単であります。また事実調査も簡単でありますから、すみやかに調査をして、その責任者を明らかにする、こういうことに私はしたいというのが、私、議員の一人としての熱願であり、同時にこれは国民のひとしく要求するところである。たれがこの罪を犯したか、たれが責任があったのか、ただ単に世間の批評を待たないで、われわれの手によって究明しておかなくちゃならぬ。それには公平にして厳正なる第三者である当局の態度によって決するのが一番いいのではないか、こう考えたのであります。私は実はこの意味においてお尋ねしたのでありまして、どうぞ私の申し上げた趣旨を誤まらないように御了解が願いたい。これは重大な問題であります。何かお話があれば承わります。
○高橋委員長 ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○高橋委員長 では速記を始めて下さい。
○林(博)委員 この問題に関連いたしまして、少しお尋ねいたしたいと思います。 ただいま世耕委員から院内における秩序維持の問題についていろいろ御質問がございました。私は、法務省当局——これはむしろ裁判関係当局にお尋ねした方がいいじゃないかと思いますが、ただ、本日御出席願っておりませんから、法務省当局にお尋ねいたしたいと思うのであります。 昨年の七月三十日に参議院の議院運営委員会において議運の委員長の郡氏に対する公務執行妨害、傷害の事件が起きました。また衛視に対する公務執行妨害等の事件が起きまして、これはたしか昨年の十月一日に東京地方検察庁が関係者の矢嶋三義君、秋山長造君、それから成瀬君、この三名の方を御起訴になったと思うのであります。その後の公判の進行状況はどうなっておりますか、もし関係当局においておわかりになりましたならば御報告願いたいと思います。
○長戸政府委員 お尋ねの公務執行妨害、傷害被告事件は、昨年の十月一日に東京地方裁判所に起訴されまして、現在同地方裁判所刑事第三部において審理をいたしております。公判審理の状況は、昨年十月三十一日に第一回の公判が開かれましたが、弁護人側の申請によりまして延期されまして、同年十二月二十六日第二回の公判が開かれ、検察官の起訴状朗読が行われたのでありますが、弁護人側から起訴状に対する釈明要求事項を書面をもって提出したいから延期されたい旨の申請があり、同日の公判審理は検察官の起訴状朗読のみをもって終り、次いで第三回の公判が本年二月二十三日に開かれたのでありますが、同日までに弁護人側の起訴状に対する釈明要求事項書の提出がなく、結局、弁護人側から準備が完了していないとの理由をもって延期申請がなされ、同日も審理に入ることができないまま現在に至っておる、かような状況でございます。
○林(博)委員 ただいま御報告を承わりますと、結局、昨年の七月に犯罪事実が行われて、それから十月の一日に起訴になって以来、単に起訴状の朗読をしたのみであって、その他の実体審理は何ら行われていないというのが現状であるように考えられるのでありますが、その通りでございますか。
○長戸政府委員 さようでございます。
○林(博)委員 私は、ただいま国会においてこれと同様、あるいはそれ以上の公務執行妨害、傷害あるいは騒擾に近いような事実が行われておるというような際におきまして、こういうような事件の審理というものはすみやかに行われなければならないと考えるのであります。ことに、いろいろな事件の関係におきましても、選挙違反のごときは、百日裁判といって、すみやかに事件を解決することになっておると私は考えるのであります。私は、これらの選挙違反以上に、このような事件というものは迅速に処理する必要があると考える。ことに、ただいま捜査当局のお考えを承わっておりますと、国会の自主権を尊重して、むやみにはこれに手をつけない、犯罪の捜査に手をつけない、告訴、告発があった場合にこれに対する捜査を開始するというように、自主権を認められておるのでありますけれども、この事件はおそらく告訴、告発があったからこのような捜査に着手し、起訴になった事件であると考える。ことに、事件の内容というものは非常に重大であります。それを今までこの一年近くの間放置しておったということは、どうしても納得できない。果してその延期の理由が何かあったのかなかったのか、あるいは何らかの延期をせざるを得ないような事情があったのかどうかということを詳細に承わりたい。
○長戸政府委員 これは、裁判所において延期が必要であるというふうにお認めになったと思うのでございますが、われわれといたしましても、このように延びておることに対してははなはだ遺憾に思っておる次第でございます。検察庁側としても、この種事件の審理の促進をはかりたい、かように考えております。
○林(博)委員 事案の重大性にかんがみて、かかる事件は、選挙違反と同様あるいはそれ以上に審理を促進すべきものであると考えるのであります。私は強くこれを要望いたすものでございます。 なお、いま一点御報告を承わりたいのでありますが、今国会において小澤委員長に対する公務執行妨害、たしか告訴か告発になっておると思いますが、これらの事件の捜査に着手されておるかどうか。
○石井(榮)政府委員 今次国会におきまして、院内の犯罪につきまして、所轄警視庁に告発事件が三件ございます。三件につきましては、告発人の事情等を聞き、さらに関係人の状況等につきまして捜査いたしております。ところが、これも、国会審議の御都合等がございまして、捜査はそうはかばかしく進展しておりませんけれども、国会審議の関係で、関係者の出頭等がおくれた関係がございますので、進展がおくれておりますが、告発されました三件につきましては、所轄警視庁におきまして捜査中であります。
○林(博)委員 先ほど世耕委員から御質問もありましたが、この点に関しまして一点申し上げておきたいと思うのでございます。 議事堂内における犯罪につきましては、いろいろ問題がございまして、国会法が、現在のような、一つの政党が、何と申しますか集団化して暴行あるいは公務執行妨害を働くというような状態を予測しておらない国会法のように考えられます。いろいろな点に問題があると思うのであります。先ほども世耕委員から御質問がありましたように、たとえば議長が警察権の要請ができないような緊急の事態が起った場合に一体どうするのか、議場内で殺人が行われ、あるいは暴行が行われる、そういう状態になった場合に、それを放置しておかなければならないのかという問題、あるいは、議院内において議員はいかなる場合にも逮捕できないという国会法の三十三条の規定になっておるかと思うのであります。また、この国会法あるいは衆議院規則と刑事訴訟法との関係でございます。衆議院規則二百十条には、「議院内部において現行犯人があるときは、衛視又は警察官は、これを逮捕して議長の命令を請わなければならない。但し、議場においては、議長の命令がなければ逮捕することはできない。」こういう規定になっておりますけれども、それでは一体この規定と刑事訴訟法との関係はどうなるか、通常人は逮捕できないのかというような関係と、刑事訴訟法に対するこれが特別法になっておるのかどうか、いろいろな問題点があると思うのであります。私は、これを今捜査当局に対してこれらに対する見解を表明してくれということは申し上げない。というのは、皆様方にお尋ねする前に、これは院内におるまずわれわれ自体が考えなければならない問題であると考えておりまするから、私は皆様方に本日直ちにこれらの問題に対する即答を求めはいたしません。ただし、国会法はこういうような非常事態を予想しておらないような状態においてでき上っておるのでありますから、われわれ自体も国会法自体を検討していかなければならないと考えるのであります。しかしながら、今国会において行われたような、非常に緊迫した非常事態が発生しております。こういう事態に対処して、捜査当局としても、これに対処したような考え方を今から検討していかなければならないと思います。ただこの問題に対して私どもは回答できないと言うだけではいかぬと思うのであります。将来の問題といたしまして、捜査当局として一つの心がまえ、あるいは検討をなさることが必要であるというふうに考えますので、私は特にこの点を要望いたす次第でございます。 それから、いま一点申し上げたいのは、先ほど長戸刑事局長から、院内における事件は院内の自主性を尊重するために、告訴または告発がなければこれを取り上げないというお立場でありますが、けっこうであります。一応けっこうではございますけれども、しかしながら、これもまた通常の事態の考え方ではないかとも考えられるのであります。たとえば、今回のここ数日間に起りました事件のごときは、衛視は無抵抗であるにもかかわらず非常な暴力を受けまして、相当な傷を受けております。これらの事件は、私どもに言わせれば、国会内に起った事件ではあるけれども、町の暴力団によって受けた暴行と相違がない。むしろそれよりもひどい事態であると考えているのであります。捜査当局が、単に、告訴がないから、告発がないからといって、これを放任しておいていいのか。私は、現行犯の逮捕の問題と捜査権の問題とは、先ほど世耕先生の仰せられたように、これは別個の問題であると思う。法規上は、告発あるいは告訴がないからといってこれを捜査できないということはないと考える。このような事態におきまして、このような暴行あるいは傷害が行われているのに、捜査当局が、告訴あるいは告発がないからといってただ傍観しているということは、今後の考え方としては妥当でないのではないかというふうに考えられるのであります。ことに、衛視にも人権があるはずである。衛視は、いろいろな立場において、場合によっては院内のいろいろな事情からして、告訴または告発ができないようなことがあるかもしれない。そういうような点を考慮して、衛視の人権も尊重されなければならないと考える。こういうような観点からいたしまして、国会内における犯罪の捜査に対しては、全般的に考え方を多少変えていかなければならない段階にきているのではないかとも私は考えているのであります。これらの点に関しまして、捜査当局におきましても種々なる観点から御検討あらんことを要望いたしまして、私の質問を終ります。
○高橋委員長 それでは、暫時休憩いたします。 午後四時三十七分休憩 ————◇————— 午後五時五十三分開議
○高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 この際お諮りいたします。本委員会は立正交成会問題について調査を行なって参ったのでありますが、その結果に基きまして、本委員会は決議を行い、政府に要望するとともに、宗教活動に対して警告を発したいと存ずるのであります。 決議案は委員各位のお手元に配付いたしてありますので御承知のことと存じますから、本決議案について、趣旨の説明、質疑、討論を省略し、直ちに採決を行います。本決議案に賛成の諸君の御起立を願います。 〔総員起立〕
○高橋委員長 起立総員。よって、本決議案は可決せられました。 —————————————
○高橋委員長 次に、東佐誉子事件調査の結果に基き、政府当局に要望、決議を行いたいと存じます。 決議案及び要望事項は、各位のお手元に配付いたしてありますので、御承知のことと存じます。従って、本決議案について、趣旨説明、質疑、討論を省略し、直ちに採決を行います。本決議案に賛成の諸君の御起立を願います。 〔総員起立〕
○高橋委員長 起立総員。よって、本決議案は可決せられました。 なお、本日可決せられました決議案の送付等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。 —————————————
○高橋委員長 次に、過日決定せられました閉会中審査小委員会の小委員及び小委員長を委員長より御指名申し上げます。 閉会中審査小委員会小委員 高橋 禎一君 池田 清志君 椎名 隆君 福井 盛太君 高瀬 傳君 三田村武夫君 林 博君 横川 重次君 横井 太郎君 世耕 弘一君 菊地養之輔君 猪俣 浩三君 佐竹 晴記君 吉田 賢一君 武藤運十郎君 小委員長 高橋 禎一君 —————————————
○高橋委員長 この際私よりごあいさつ申し上げます。本日をもって第二十四国会は終了いたしますが、百数十日にわたる長期間、法務委員会は重要法案の審査並びに各方面にわたる国政調査について活動を続けて参りました。この間、与党、野党とも互いに協力し合い、委員会活動が適正に行われたことにつきましては、ひとえに委員各位の御努力に負うものと存じます。委員長より厚く感謝の意を表します。 なお、本委員会の活動に御協力下さいました関係者機関の諸君につきましても厚く感謝いたします。 それでは、本日はこれにて散会いたします。 午後五時五十八分散会