法務委員会 第30号
- 発言数
- 243 件
- 登壇者
- 15 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1956/05/07
会議録
○高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。 まず、刑事補償法の一部を改正する法律案を議題とし、提案者より提案理由の説明を聴取することにいたします。武藤運十郎君。 —————————————
○武藤委員 刑事補償法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。 最近、京都事件を初めとして、中国留学生殺し、銀座の雑貨商殺しなど、しばしば警察、検察当局による間違った逮捕勾留が行われ、疑われた者は物心両面において重大な被害を受けております。おそらく類似な事案は全国を通じて非常に多いと思われるのであります。しかも、これらの事案は、憲法並びに刑事補償法にいわゆる無罪の裁判を受けたものではないゆえをもって、刑事補償のらち外に放置され、多くは切り捨てごめんであり、泣き寝入りに終らざるを得ない状態にあるのであります。このようなおそるべき人権じゅうりんを防ぐために、あるいは抑留せずに調べろとか、抑留期間を短かくせよとか、科学的捜査によれとか、逮捕状、勾留状の出し方を慎重にせよとか、いろいろの意見が出ております。いずれももっともな意見ではありますが、あるいは刑事訴訟制度の根本に触れるものがあり、あるいはわが国の捜査陣容や能力では言うべくして行い得ないものがあります。また、最近の犯罪は著しく知能的なものが多く、物的証拠をつかむことがはなはだ困難になってきたので、一応状況証拠がそろえば逮捕もまたやむを得ないという捜査当局側の弁解の意見にも、同情すべきものがないことはありません。しかしながら、制度の根本を変えることも捜査能力や方法を変えることも、一朝一夕には困難でありましょう。そこで、私は、さしあたって、まず刑事補償法のワクを広げて、無罪の裁判を受けた者だけではなく、不起訴処分に付せられた者にも刑事補償を与えることが応急先決の方法であると思うのであります。今や、世論は、相次ぐ警察、検察当局の不当な抑留、拘禁をこうごうとして非難し、その救済を要求してやまないのであります。本案は実にこの正当な世論の要請にこたえんとするものにほかなりません。 改正案の起草に当りましては、昨年山末、自民、社会両党による刑事補償法、改正に関する合同委員会が設けられました。この委員会においては、以来十数回にわたって検討を続けたのでありますが、不幸にして意見の一致が得られず、ついに共同提案となるに至らなかったことはまことに遺憾のきわみであります。 自民党側の意見の大要は、趣旨には賛成であるが、かかる法案は、第一には政府提出とすべきものであり、第二には技術的に幾多の困難があるというにあるようであります。しかしながら、われわれ社会党はそうは考えません。政府に仕える役人の不法行為に対する救済立法をその政府に求めることは、あたかも木によって魚を求めるがごとく、また百年河清を待つにひとしいものと考えるのであります。かかる人権擁護の立法こそ進んで議員提出とすべきものであり、技術的な困難に至っては、この道に練達堪能な法務委員の克服すべき、また容易に克服し得る枝葉の問題と考えるのであります。万一にも国会が政府提出法案の審議のみをもって能事終れりとするならば、国会は、各常任委員会はついに政府の下請機関と化し、国権の最高機関たるに値しないのみならず、行政府と対立する立法府の名をもみずから放棄することになるでありましょう。刑事補償法改正に関する両党合同委員会は、その審議の過程において法務省当局の意見を徴しました。その意見の大要は、趣旨には賛成であるが、その立法は刑事補償法の改正によることなく単独立法を可とし、補償を与えるかいなかを任意とし、かつその決定を当該検察官にまかせんとするもののようであります。しかしながら、刑事補償の本質は、国家権力の間違った発動によって身柄の拘束を受けた人民に対して、国家が特に無過失賠償を与えんとするものであります。従いまして無罪の裁判があった場合と無罪となるべき理由によって不起訴の処分があった場合とを区別すべき理由はごうまつもないのであります。果してしかりとすれば、不起訴処分の場合の刑事補償も、無罪の裁判があった場合の刑事補償と同じく、国家の義務、すなわち人民の権利とすべきものであって、不起訴の場合の補償だけを恩恵的なものとする理由は少しもないと申さなければなりません。いわんや、その補償を与えるかいなかの決定を当該検察官にまかせるがごときは、あたかも刑事被告人に自分の裁判をやらせるようなものであり、その不合理なることはもちろん、人は、かかる意見の根底に、単なる官僚のセクショナリズムだけではなくして、検察権と裁判権のいまだ分離しない封建的、専制的な体臭をすら感ずるのであります。 以上の観点に立って、われわれ社会党は、あえて議員提案として本改正案の提出に及んだ次第であります。なお、本法案に関する逐条説明を参考資料として皆様のお手元にお配りいたしました。 何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決せられんことを望んで、提案の理由の説明とする次第であります。
○高橋委員長 なお、本案に対する質疑は次回に譲ります。 —————————————
○高橋委員長 次に、先般来調査をいたしております法務行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。 すなわち、京都地検における犯人誤認事件、ことに偽証罪容疑による証人の逮捕問題等について、事件関係者の御出席を得ましたので、実情の調査を進めることといたします。 なお、本日出席されております参考人は、京都地検次席検事泉政憲君、同公判部長検事中澤良一君、佐藤和代君、村松泰子君、以上の四名であります。森島忠三参考人は、湿性肋膜炎の疑いがあり、一カ月間の安静加療の必要があるとの医師の診断書を添えて本日出席できないとの連絡がありましたので、さよう御了承願います。 この際参考人各位にごあいさつを申し上げます。本日は遠路わざわざ御出席十さいまして、まことにありがとうございました。参考人には本事件関係者として実情を率直にお述べをいただきたいと存じます。なお、念のため申し上げますが、参考人の各位より委員に対する質問は衆議院規則によってできないことになっております。また、御発言の際は必ず委員長の許可を得ることになっておりますから、さよう御了承願います。なお、森島検事より上申書が委員長の手元に届いておりますが、本上申書は本日の調査に重大な関係がありますので、私よりこれを朗読いたしたいと存じます。 上申書 森島忠三 私は昭和三十年六月大阪地方検察庁より京都地方検察庁に転勤して参り以来引続き公判部勤務となり、京都地方裁判所の公判立会を致しております。 傷害致死等被告事件の公判経過概略 一、京都地方裁判所に係属中の宋哲準外五名に対する傷害致死等被告事件の公判には、その第一回(昭和三十年六月二十二日)より、私が引続いて立会って居りますが、本件はその当初より弁護人側は、真犯人が他にあると主張し以来公判は難航を続けて来ました。然し幸い本件起訴検事は公判部長検事でありますので、常に公判の経過を報告しその都度同部長の指揮を受け、検察官側の立証もその殆んどを終りました。 一、処が昭和三十年十一月十七日の公判に於て、弁護人申請の証人佐藤和代が、本件犯行直後頃、犯行現場近くの仁和寺街道七本松角附近で、中折帽トックリシャツ背広着用の男と衝突した旨証言し、更に仁和寺街道六軒町通角で偶然友人(村松泰子)に逢い同女から、附近の公衆便所手洗場で手を洗ってみる男を指示され、これを見た自分もびっくりしたと証言し、続いて昭和三十一年二月十六日の第十回公判に於て、弁護人申請の証人村松泰子が、本件犯行直後頃、六軒町通下長者町角の公衆便所手洗場に於て、中折帽子を冠り白のトックリシャツの上に紺の背広を着、同色のズボン及半長靴を穿いた二十二、三才位の怪しい男が血糊のついた手拭やナイフを洗ってみるのを見た旨証言し、更に六軒町通り仁和寺角附近で佐藤和代に逢った際、同女にその男のことを話したと証言しました。そこで裁判所は即時現場検証を行ったのでありますが、村松証人は自分が男を目撃した問題の便所は右の便所ではないと云い訴訟関係人を案内した場所は右とは全然方角の異った上京区七本松通下立売角の公衆便所でありました。 偽証捜査に着手 一、村松証人の公判廷に於て供述した公衆便所と現場検証に於て指示した便所とが異る反面、佐藤証言による公衆便所も右二者のそれとも異り又供述の相互矛盾もあり、更に二月二日の公判には証人両名が同席して傍聴して居た事実もあるので双方の証言に疑を抱き、公判部長にもその旨報告してみた矢先、検証の翌日の京都新聞紙上に「犯人は第五の男」と云う見出しで本件が大々的に取り上げられて居ました。 一、右新聞発表の日、検事正及泉次席検事から偽証の捜査を初めよとの命があり、その二、三日後にも次席検事から早く捜査に着手せよとの命を受けました。一、そこで私は、同月二十三日、先づ佐藤和代を取調ましたところ午后二時半頃になって同女は偽証を認め、浜田被告人の友人西村正美から教唆された旨供述しましたので、約一時間かかって供述調書を作成し公判部長にその旨を報告して二人で上司に佐藤供述の内容を報告しました。検事正の指揮によって同日西村正美に対する逮捕状を請求し翌四月二十四日西村を逮捕しました。次席検事の命により刑事部の検事が西村の取調を初めました。偽証被疑者村松泰子を逮捕した経過 一、三月一日午前十一時頃予ねて呼出してあった村松春子が長野県下から私の許に出頭して参りました。それから約一時間、村松の気持を和らげる為に和服着用の同女に着物の話をしたり長野県下の風景を聞いたりしました。午后一時過頃から午后五時三十分頃迄同女を取調ましたところ、一部の偽証を自供しましたがその間三回くらい供述の経過を公判部長に報告して居りますので、その間に村松も休憩して居る筈です。公判部長の指示により午后七時頃迄村松を調べて取調を打切り、同女を食事の為に街へ出させた私は被疑者西村を調べて居た係検事と二人で刑事部長室へ行き田中部長に夫々の取調経過を報告しました。その内に本件宋、浜田両被告人の弁護人である前堀弁護士が部長室へ這入って来て村松取調に対する抗議の一幕もありました。約四、五十分間前堀弁護士は、事件発生当時からの経過及真犯人は他に居ることを当時から係検事に話してみる旨を説明して帰りました。 一、午后八時半頃刑事部長、刑事部検事、私の三人で次席検事官舎へ取調の結果を報告に参りました。夫々捜査の経過を次席検事に報告してから私は、村松取調の結果を詳細に説明し村松は未婚の女性でもあるので 私の意見としては今、村松を逮捕するより、もう少し西村を調べたら良いと思います。 と申しますと次席検事は それでは、これから逮捕して捜査しようとする検察庁の志気を沮喪するではないか。その責任だけでも大だ。 既に村松は一部の偽証を認めて居り又一年前の男の服装を余りにも判然り証言し過ぎてみる点から考えて同女は当時何処かで人相風体の悪い男を見これに何等かの作為が加わって証言されてゐるとも考えられるし又反面さうではないようにも思えるので、説明すると 君は無能検事だ。明日有能な検事に村松を取調させる。若し偽証を自白すれば君は責任をとれ、兎に角今夜逮捕しよう。 と云われました。 既に上司の意見が決ったのですから、私自身の意見を捨てて命に従ひ村松を逮捕することにし、次席検事や刑事部長から、令状請求に付ての必要な指示を受けて午後十一時頃官舎を辞しました。 一、公判部検事室へ戻って見ると燃えてみるストーヴを囲んで、村松とその父なる人と検察事務官が椅子に坐ってゐました。事務官に令状請求書を書かせて判事の許へ逮捕状請求にやらせたのは確か午後十一時二、三十分頃であったと思います。午前一時半頃になって逮捕状が出ました。深夜の逮捕でもあるので心配してみると刑事部長が 自分が責任を持つから逮捕しなさい。 と云われましたので安心して令状を執行することにしましたが此時部長も私の傍に来て居られました。以上の通りであって偽証被疑者村松泰子を逮捕したことは法律的にも何等過誤を犯したものではないと私は信じて居ます。只懸念するのは一女性に対する深夜逮捕の妥当性の問題でありますが、これはあの場合已むを得ないものと部長が判断したものと思います。 辞表提出に至った事情 一、突然余りにも突然のことです。四月九日の朝出勤する際自宅で朝日新聞を拡げて見ると五番町事件の真犯人自首と大きな見出で書かれて居り、検事正の談話として検察庁の大きな黒星だと掲載されて居りました。 一、自首した真犯人は村松の証言通り中折帽に白トックリシャツと紺の背広を着、同色のズボンに半長靴を穿いた男である事実が判り、その頃から真実を証言した村松を逮捕した森島検事は人権を無視したものだ、との非難が高まり新聞ラヂオ等によって私に対する攻撃が劇しくなって来ました。然し私は真相を知らない部外の人の攻撃に対しては当時耳を傾けませんでした。真相は上司が知ってみる、と思って安心し上司を信頼してみたのであります。その頃日本放送が私の録音をとりに来、又ラヂオ京都が録音方を申入れて来ましたが上司の命がないと駄目だと云って断り、部外に対する弁解は一切致しませんでした。四月十二日法務省刑事局横井刑事課長が京都地方検察庁べ調査に見えると云うのでその前夜私は、検事正が村松逮捕の経過一切を知って居られるだろうか。若し御存知なければ困る。当時の状況と私の消極的な立場全部を検事正に報告して中央に真実をありの儘に進言して貰わねばならないと考え十二日午前五時頃起床し五時半の始発電車で京都市べ出て午前六時三十分頃検事正官舎に入り、村松逮捕時の経過詳細と当時の私の立場を全部に亘って逐一報告致しました。 検事正は すべて僕に委せておけ と云われましたので安心した次第であります。 一、私は検事正を全面的に信頼してゐましたので、横井課長には私の立場も十分に報告して戴けたものと思い益々劇しくなる部外からの非難に堪えて来ました。 一、処が四月十六日の京都新聞の夕刊(四月十七日付)に参議院に於ける松原法務政務次官の答弁として、 この事件の責任検察官は京都地検の森島検事である と判然り掲載されて居ました。之を見た私は急に心の侮り所を失ってしまいました。部外からの私に対する攻撃が劇しくなりつつある今日私が最も信頼する法務省も事件の責任を私一人にしてしまつた。自分一人が矢面に立たねばならない。信頼する吾が検事正は横井課長にどんな報告をされたのだらうか。私はどうすれば良いのかと云う追込められた気持になり結局自分が自分を助ける為に自からの立場を社会に表明するより他に道はないと考えました。 一、そこで四月十七日夜村松証人逮捕の詳細な経緯を書面に作成した私は、四月二十日朝法務大臣、検事総長、検事長、法務省刑事局長の各長官に宛てて之を郵送し検事正にもその一通を渡しました。今日まで総べてを堪え忍んで来ましたが、この時私は辞職を決意した のであります。 一、四月二十三日本件傷害致死被告事件の公判があり大体当日を以て結審する予定である旨報道されて居りました。私は京都着任早々六月の第一回公判よりこの事件に立会って居ります。自分はこの事件を担当する為に京都地方検察庁に転勤して来たのだ。これも何かの巡り合わせであろう。さうであればこの事件と運命を共にしようと思い四月二十三日公判の目を期して辞表を提出する心算で居りましたところ、公判が延期されましたので翌四月二十四日午前十一時頃、検事正に辞表を提出した次第であります。 一、同日午前十一時半頃新聞記者に対し辞表を提出した旨述べたところ理由を聞きましたので 一、村松証人を逮捕したが地検としては何等過誤を犯してみない。 二、仮りに百歩を譲って逮捕時間等につき問題があるとしても、それは私一人の責任ではなくして、命令した者、それを執行した者の共同責任である。然るに松原政務次官が責任検察官は森島検事である、と言明した。私はこれを承服出来ないから辞職する。 と前置して共同責任である理由を(次席検事官舎での話合を)断片的に説明しました。決して捜査の経過を全部に亘って暴露的に説明したものではありません。然るに如何なる事情か判りませんが報道機関は私の主張する第一の点を取上げず第二の点のみを取上げたのであります。 一、以上縷述の通り窮地に陥った私は、已むに已まれぬ気持から私自身を自から救う手段として、また上司の命を受けた第一線検事が安心して仕事が出来得る為に辞表を提出しその範囲に於て事実を発表した次第であります。 昭和三十一年五月三日 右 森島 忠三 森島検事よりの上申書は以上のごとくでございます。 それでは質疑に入りますが、参考人におかれましては、最初に姓名、住所、職業をお述べいただきたいと存じます。まず泉政憲君。
○泉参考人 住所は京都市上京区下長者町通新町東入ル、名前は泉政憲。職業は京都地方検察庁次席検事であります。
○高橋委員長 次に中澤良一君。
○中澤参考人 氏名、中澤良一、大阪府高槻市南園町二百二番地、職業、京都地方検察庁検事、以上であります。
○高橋委員長 次に佐藤和代君。
○佐藤参考人 氏名、佐藤和代、京都市上京区相合図子下長者町下ル鳳瑞町二百四十七番地、織物工。
○高橋委員長 次に村松泰子君。
○村松参考人 氏名、村松泰子、住所、京都市上京区蘆山寺千本、西入ル、無職。
○高橋委員長 以上で参考人の住所氏名の御発表が終りましたので、次に質疑に移ります。質疑は通告順に従ってこれを許します。田中伊三次君。
○田中(伊)委員 この事件は、その概要はすでに委員長におかれても他の委員諸君におかれてもよほど明確になっておる内容でございますから、私はその内容を一々申し上げることを省略いたします。この事件を私が初めて知ったのは、ちょうど四月八日の地元の京都新聞の朝刊であります。ただいま森島参考人から出ておる書面の中にも書いてありますように、この不良少年四人の殺人事件は、真の犯人がほかにある、その真犯人が他にあるの、だという新聞記事であります。こういうめずらしいことがあるのかなと思っておりますと、その日の夕刊及び翌日の朝刊には、全国有力な各紙に同様なことが掲載され、容易ならざることであると考えましたが、現地を見るいとまもなかったわけでありますが、連休を利用しまして、京都に立ち帰りまして、地元の方面をだんだんと聞いてみると、この事件は容易ならざる民心に影響のある事件であることに気がついた。そこで、私は、この事件の捜査の各段階に及んで、一つ直ちに急所に入りまして、参考人からお話を承わりたいのでありますが、まず、四人の不良少年を捕えた、これを調べましたときに、被告人のうちの宋という少年が、私が殺したんだということを自白をしておる。この自白に対しては一体どのような取調べ方をしたか。きょうはここに公判部長中澤君と次席検事の泉君が御出席になっておりますが、きょうは、委員長からお読み聞けの通り、森島主任検事はここには出ていないわけでありますが、検事は捜査に関しては一体のもので、ことにこういう問題になった事件は、どういう取調べ方をしたものであるかということは、わからぬわけはなかろうと存じますが、両君からそれぞれ、虚偽の自白を行なったと考えられる一被告人の宋君が供述に至るまでの経過について、どういう具体的な取調べのやり方をしたか、これをまず承わりたいと存じます。
○泉参考人 事件の送致を受けまして、取調べに当ったのが中澤主任検事でありますので、同検事から捜査の経過をお話し願った方がいいかと考えます。
○中澤参考人 それでは、私から、四少年を取り調べて、宋哲準が警察で自白したことにつきましてお答えをいたします。 四少年を逮捕いたしましたのは事件翌日の四月十一日早朝であります。しかし、四少年は最初相手の被害者の木下を刺したことを否認いたしておりました。検察庁には身柄勾留請求のために四月十二日に身柄が送られて参りまして、いわゆる弁解録取書をとって勾留請求をいたしまして、裁判官の勾留状を得まして、それぞれ四警察署に分けて留置して捜査を進めたのであります。宋哲準が警察官に対して自白してその調書がとられましたのは四月十九日でありますが、その間宋哲準及び他の三少年はいずれも被害者を刺したことは否認しておりました。私は上司の命によって主任検察官として取調べに当りましたが、私自身が取調べをいたしましたのは四月十五日であります。その間警察においていずれも四少年並びに関係者を取り調べておったのでありますが、四少年は私に対しましても被害者木下治を刺したことは否認しておりました。 私が取り調べた後、四月十九日に至りまして宋哲準の自供調書が初めてあったのであります。私は、その捜査の経過並びに宋哲準が自白した事情は、当時の捜査主任でありました佐藤警部補をたびたび呼びまして経過の報告を聞き、また適当な指示もいたしておったのであります。しかしながら、宋哲準が今まで否認していたのに四月十九日に至って自白したということを聞きましたが、凶器の点についてどうしたかと尋ねましたら、凶器は出ない、宋哲準は、自分で相手を刺したが、家に帰る途中あるマンホールに凶器を捨てた、こういう自供をしているので、直ちにそのマンホールを調べてみたが凶器は出ない、引き続き凶器の所在について捜査を進めているという警察官の報告でありました。それで、私は、宋哲準が自白をしても、単なる自白のみでは、いわゆる客観的な裏づけ捜査が伴わなければ自白の信憑性が得られないから、極力凶器を探すように、裏づけ捜査をするようにという指示を警察官にしていたのであります。宋哲準の十九日の自白調書がありましたが、他の三少年はいずれも被害者を刺したことはその後においても否認しておりました。 その後、警察の調べが一応終りまして、四月二十八日に、少年でありますから家庭裁判所へ事件を送致するために、検察庁に身柄とともに記録を送って参りました。それで、私が引き続き四少年を取調べいたしましたところ、宋哲準は、警察における自白をひるがえしまして、私に対しては、最初と同じように、犯行現場において被害者とけんかをして、相手に攻撃を加え、なぐるその他の暴力を加えたことは認めましたが、凶器で刺したという点は否認しておりました。他の三少年は従来と同じような供述をいたしております。 大体そういうような宋哲準の自白並びに捜査の経過であります。簡単に申し上げました。
○田中(伊)委員 一体、最初は、不良少年四人はいずれも否認しておった。途中で自白をするに至った。凶器はどうしたかと尋ねると、凶器はマンホールに捨てたと言う。一体、常識で考えてみても、凶器というものは水の流れるマンホールの中で流れる筋のものではない。捨てたものならばあるはずだ。太平洋のまん中に飛行機でもって捨てに行ったという話じゃない。そこで、ここは検察当局じゃないから、私が変なことをくどく尋ねるわけではないが、常識が少しおかしいんじゃないか、初めは全員否認しておった。本人も否認しておった。後にただ一人が自白をするに至った。捨てたはずのマンホールに凶器はない。流れる筋のもの、飛んでいく筋のものでないものがそこにない。どうもおかしい自白であると不審がらないで、簡単に自白を信ずるというところに捜査の上に軽軍な態度が見受けられる、こう私は見るんですが、なぜもっと慎重にこれをやる指示を担当の者に与えなかったか。おかしくはないか。そういう点から考えてみて、私の聞きたいのは、理屈は合わぬ、凶器も出ないのにかかわらず、自白を本位として取調べをするということは、わが国の憲法の建前からも、刑事訴訟法の建前からも邪道である。なぜもっと科学的な調べをして慎重を期さなかったか。ことに、その際に、特に人権擁護の上から国会で伺っておきたいのは、宋被告人には何らかの方法において自白を強要した事実はないのか。断じてそういう事実はないならない、遺憾なる点があるならある、こういう点を御意見として承わりたい。
○中澤参考人 お答えいたします。ただいまの自白を偏重した捜査ではないかという御質問は、ごもっともだと思いますが、私は、検察官といたしまして、宋哲準の自白を偏重、盲信したのではありません。なるほど宋哲準は警小官に対しては一回自白はいたしております。しかも、本人が捨てたと自供す場所からは凶器は現われておりません。その後も私は、警察官もきわめて重に捜査を進めるように督励し、指をしておりましたが、宋哲準の供述らは、数カ所凶器の所在について捜をしたが、ついに発見できなかったという報告は受けておりました。しかしながら、宋哲準の自白のみによって四少年に対する嫌疑を深めたのではなて、宋哲準及び他の三少年四人が、犯現場で被害者が倒れた後もなおなぐるける等の暴行を執拗に継続して加えていたという事実は、四少年の自供するところであり、目撃者、関係人の供述によっても立証されていたという事実、なるほど凶器は発見されなかったのですが、宋哲準が犯行現場において凶器と思われるジャック・ナイフを持っていたのを現に目撃したと共犯者の浜田、山本が供述しておる。これは検察官に対してのみならず家庭裁判所における調査官に対してもそのような供述をしておる。その二点。もう一点は、宋哲準は凶器を持っておること自体を否認しておりますが、共犯者の山本が、かつて宋哲準からジャック・ナイフを突きつけられて、金を貸せとおどかされた事実がある。そのジャック・ナイフと、犯行現場で山本が目撃したナイフとが一致しておるという供述があったという三点。次に、四点として。宋哲準ば、犯行後自分の着ていた詰めえりの上着に血痕が付着しておった。その血痕が被害者の血液と同型であって、宋哲準自身は何らけがをしていない。従って、被害者の血痕が宋哲準の上着についておるという状況、証拠がある。次に、第五点、しかも、その宋哲準は、帰宅途中友人に出会って、この上着をお前に貸すから、お前の上着と交換してくれと言って、友人と上着を交換して、友人の上着を着用して、血痕のついた上着を友人に預けて、証拠隠滅をはかったと思われる事実が、本人の供述並びに相手方の供述によって得られた。次に、共犯者の浜田、これも、被害者が倒れた後相当出血多量の状態にあるのを盛んにくっでけっている事実、このけったために血のついたくつを、帰宅途中小林という家に立ち寄って、小林という人のげたを借りて、くつを同家に預けて立ち去ったという事実。なお、宋と浜田が同時に小林の家に立ち持った際に、いろいろけんかの話をして、小林という者から、現場に見知らぬ人がいたことにして、その人に罪をかぶせてはどうかという話を聞いたので、そういうように今まで供述したという供述。さらに一点つけ加えますならば、浜田は、宋哲準と二人一緒に帰る途中、宋哲準から、自分が相手のきんたまを刺したから相手が死ぬかもしれないということを聞いた旨の供述をしている。この供述は浜田は終始一貫しておりますし、家庭裁判所の審判官に対しても、弁護人つき添いの席上でそのような供述もしているという事実。以上のような諸点を総合して、宋哲準が刺したという嫌疑がきわめて濃厚である、二のように判断をいたしたのでありまして、凶器が出ないということのみによって宋哲準の自白を偏重しているわけではなかったのであります。
○田中(伊)委員 なかなか苦心をしてよく調べておられるということは今のお話でわかるが、もう一つ私が聞いておきたいのは、ジャック・ナイフを持っておったとか、過去においてこれで人をおどかした経歴があるとか、血痕が付着しておったということは、いずれも宋が凶器をもって被害者のしりを突いたという直接の証拠じゃない。直接の証拠というものはそんなものじゃない。傍証を固めることに力を入れたことは認める。直接の証拠というのは、おしりに穴があいているとすると、その傷の部位、その傷の深さ、ナイフで切ったものか、メスでもって突いたものか、短刀でもってぶち切ったものか、その切り品及びその部位並びにその傷の深さ、特に重要なのは傷の広さ、切り方、切り口、こういうものが、一体宋君のマンホールに捨てたと言われる凶器と合うのか合わぬのか。今あなたのおっしゃるジャック・ナイフというものでそれを切ったものと考えられるように言われている凶器と、その傷口が全く一致すると言うことができるのかどうか。そういうことは調べておられるか、おられないか。
○中澤参考人 お答えいたします。被害者の傷は、死体解剖の結果、鋭利な薄刃ようの刃物によるものであるということが、医師の鑑定によって明らかでありました。傷の深さは約十センチ余り、動脈、腸に達する程度のものであります。出血多量、ために死んでおります。傷の幅はたしか一センチ足らずくらいの幅であったと記憶しております。それで、問題は凶器でありますが、宋哲準が持っていたのはジャック・ナイフだ、共犯者が前に持っていたのを見たのも同じようなジャック・ナイフだ、そのジャック・ナイフの大きさはといえば、通常見受けられる、長さ十センチ余りと記憶しておりますが、幅も大体一センチ前後ですか、死体傷口に符合するような幅のものであり、長さも十センチ余り、死体の傷の深さと符合するような凶器という状況は、主として共犯者の山本の供述によって認定されていたのであります。そういう事情であります。
○田中(伊)委員 凶器と傷口が合っておるかおらぬかを慎重に調べたかどうかという私の質問ですね。それは大いにお考えにならないといけないのではないかと思います。 それはその段階としておいて今度は進んで参考人の村松さん、お嬢さんにちょっと伺いたい。あなたを検事が調べたときには、えらそうなことを言ったり、あなたをおどしたり、言わなければ承知しないといったようなことを言ってみたり、何かおそろしいようなことを検事が言ったのか、それとも、非常に丁重に人権を尊重しながら検事がお聞きになったのか、ありのまま答えていただきたい。少しもこわいことはありませんよ。
○村松参考人 私が長野県にいたときに検察庁から呼び出しが来たんです。それは、森島検事の電話で、旅費を出してもいい、もう一度尋ねてみたいから帰ってきてくれという電話でした。私は、時間がわからなかったので、二十八日か二十九日にともかく夜行でぎりぎりに帰ってきたのです。そうして一日の朝十一時ごろ行ったのでするそして、ドアをあけたとたん一応あいさつをしたんです。そうしたら、森島検事は、机にもたれてたばこをふかしながら、君はここに何しに来たか知ってるかと尋ねられたんです。それで、私は、自分に覚えがないので、何だかわかりませんと言ったんです。そうしたら、まあいいわ、ここにすわれと言って、私の服装を、君はきれいな着物を持っているなとか何とか言って、初めはやさしく言ってくれたんです。しばらくして、今はこんなにやさしく言っているけれども、こんなことでは承知できないからあっちへ来いと言われて、違う方へ連れていかれたのです。それからというものは、もう一度裁判の法廷で言ったことを言ってくれないかと何度も言われますから、私は法廷で言ったと同じように言ったんです。そうすると、それじゃきょう来た理由にならない、私はほんとのことを言ってくれと言っているんだと言うのです。だから、私は、これは事実ですと何べんも言ったんです。そうしたら、そんなはずはない、絶対そんなはずはないんだと言って、私の言ったことに対しては少しもメモに書いてくれないんです。そして森島検事さんは自分で勝手にメモに書かれたんです。メモに書かれたことというのは、私は何もそんな男を見ていないのに、友人の佐藤に頼まれてそういう男を見ましたと法廷で述べました、そういうことをメモに書かれたんです。それで私はそれをひったくったのです。そして森島検事にこう言ったんです。そんなうそのメモを書かないで下さい、そんなことを書くんだったらここにだれか置いて下さい、第三者を置いてくれなければ私がそんなことを言ったかどうかわからないでしょう……。そうしたら、第三者はあとで置いてやる、だからそんなに興奮しないですわれと言うんです。だから、私は、そんなことはいやです、そんなうそを言われるのはいやですとひったくったら、君は罪人だと言われたんです。私は罪人と言われる覚えはないと何べんも口で争ったのです。そうしたら、君は罪人だのに僕にそんなえらそうなことを言える口はないと言われて、私はそれから何も言えなかったんです。
○田中(伊)委員 法務政務次官及び刑事局長の代理の課長、後の方でいろいろ忙しいことがあるかもしれぬけれども、この証人の証言は非常に大事な証言なんです。言わないことを書きました、お前そんなえらそうなことを言うとと言って、国民から雇われておる検事が国民の前でいばったという話なんです。これを聞きのがすようなことでは国会のこの質問に意味がないから、よく注目してこのお嬢さんの言うていることを聞いていなければいかぬ。 そうですか。それで、結局、あなたが言いもせぬこと、心でもないことを検事が書いたんですね。
○村松参考人 そうです。
○田中(伊)委員 それで、判はついたんですか。
○村松参考人 いいえ、そのときには私はついていません。
○田中(伊)委員 メモだけですね。
○村松参考人 ええ、そうです。
○田中(伊)委員 検事が勝手に作ったメモを一ぺん読んで聞かしたんですか。
○村松参考人 森島検事さんのメモは調書にないはずです。
○田中(伊)委員 時間がかかるから、あなたに簡単に伺いますが、何時間くらい調べを受けたのですか。
○村松参考人 十一時に行ったことは確かですけれども、始めたときは、洋服とか、長野県の風景とかいったようなことを聞いておられて、十一時半ごろから調べ室へ行ったのです。そうして、お昼だから飯を食ってもらわなければ、わしがあとで言われるから、困るから食べてくれ—。私は、胸が一ぱいで食べられませんと言って、一時間の時間をもらって外へ出ていったのです。一時になってまた入ってきたのです。それから、前と同じ問答で、お前はこう言った、いいえ違います、こう言った、いいえ、そればかりを一時間も二時間も繰り返していたのです。そうしたら、あとで頭でも冷やしておけと言って、三十分ばかり外へ出ていかれる。三十分ばかり私はじっとしている。そうすると、帰ってきて、もう冷えたかと言って額をなぶるのです。私はさわらないで下さいと言ったら、いや、わしは親切で言っているのだ、君はこのままだったら罪に落ちていくのだ、おじさんが悪いようにしないからと言うのです。だから、私は、ほんとうのことを言うのにどうして書いてくれないのですか—。そうしたら、常識から考えたらそんなことはあり得るはずはない、犯人は確実に浜田にきまっているのに、君はそんなことを言うといって世間の人が笑っている、だからほんとうのことを言えばおじさんもお嫁入りの世話をしてやるが、このままでは刑務所に入っていかなければいけないことになる、だからもう一度考え直せと言って出ていくのです。そうして六時ごろ夕食の時間がきたのです。そのときも私は食べられなかった。私は、あまりうそのメモを書くから、外に出たときに公衆電話で裁判所に電話をかけたのです。小田裁判官はおられますかと言ったら、きょうは五時までおったが、五時過ぎているから裁判官はいないと言われた。それではだれかほかにおられませんかと言ったら、宿直の方が、きょうはだめです—。それで私はまた弁護士さんに電話をかけたのです。そのときは不在で、どこか会議でもあるらしく、どこかへ行っておられたのです。そこで、いろいろ奥さんに手を尽してもらって、電話番号を聞いて弁護士さんを呼んだのです。それが七時半ごろだったかしら。弁護士さんと森島検事さんが下の方で騒いでおられたことは確かです。その上に私はいたんです。そのときはだれか事務員さんみたいな人を一人横に置いて、二人話している間私を待たして、十時半ごろから森島検事さんが入ってこられて言われたんです。君はどうして弁護士を頼んだんだ—。いいえ、森島検事さんがうそを書いたから、困ったからかけたのです—。それはどうでもよいけれども、弁護士さんだって法律というものは知っているはずだ、あんたは法律を知らないけれども、僕は法律は何でも知っている人間だ、あなたにいいかげんなことをしてもらっては困るなと言って、初めは笑い半分の話でした。それで、私は、知らないからこそ人に頼むんですと言っていたんです。そのときちょうど父が、私が寒いだろうと思ってトッパーを持ってきてくれたのです。そのときに、これはだれが持ってきたんですかと聞いたときにも、どこのだれだか知らないよと、ぽんと机の上にほうっていかれたんです。そして、十時半か十一時ごろまでまた一人でおりました。
○田中(伊)委員 泉検事は検事正の代理としておられるわけですが、あなたに一ぺん聞いてみたい。 お嬢さんを調べるときに検事がこういう態度で取調べをしておるということを今お聞きになって、どう考えますか。検事の指導の立場にあるあなたはどう考えますか。御意見を伺いたい。
○泉参考人 もし事実だとすると、まことに申しわけないことだと考えます。ただ、私は、平素少壮の検事の起訴、不起訴等の決裁の相談にあずかるわけでありますが、申し上げるまでもなく、人権を尊重しなければならないということは十分自覚をしておりますし、若い検事諸君にも常にそのことをやかましく注意しておる次第でございましてその点まことに至らない点があると考えますけれども、平素の指導は、ただいま申し上げたように、いつも相手の身になって調べるようにということを言っておるわけであります。
○田中(伊)委員 今あなたのお聞きの通りで、このお嬢さんがうそを言っておるものとも思われないが、あなたが若い検事を指導するのに人権擁護に非常に力を入れておるというその考え方はわかるけれども、その考え方がおのれの部下に徹底していないということはよく考えなければならぬ。この話はうそでないですよ。 もう一つ、続いてあなたに聞いておきたいのは、今度はこのお嬢さんを逮捕したときのいきさつについて一言聞いてみたいと思う。 先ほど委員長からお読みいただきました森島検事からの切々として胸に迫るような文書、あなたそこでお聞きになったでしょう。全部聞いたでしょう。その文書をお聞きになって、——一体、森島検事は、これはそう簡単に手錠をはめるべきものではない、もっと慎重に、公判が進んでいかなくては真相は偽証であるかどうかはわからないと、こう良心的に考えて、その意見をあなたにも部長にも検事正にも上申したにかかわらず、今言った上申書に書いてあるのだが、あなた方がそういうことを言ったということはけしからぬ話だ。現実に調べておる担当主任検事が身をもって、第六感をもってまだ確定的なものとは言えないと考えておるのにかかわらず、早くやれ、こういうことを言ってやらせたということは、これは重大なる責任と思う。あなたに一つ聞いてみたいが、そのときあなたはこういう言葉を述べた事実はないか。日本中の新聞に出ておる言葉だからよくおわかりになることと思うが、女一人くらい、女一人くらいを逮捕するのに何をちゅうちょするか、やれと言ったらやれ、こういうハッパをかけた事実があるか。泉君が言うたと本人は言明しております。これの出てない新聞は日本中の新聞にない。うそを言うはずはないと思うが、ありのままにお答えを願いたい。
○泉参考人 お答えをいたします。御指摘のように、各新聞紙上で、私が森島検事に付してさような言葉を述べたようなことが報道されております。しかしながら、私はさような言葉を用いたとは全然、ございません。申し上げるまでもなく、逮捕するかしないか、あるいは起訴するかしないかというようなことについては、主任検事の意向を十分伺いまして、証拠関係の足りないところ、あるいはあるようなところなどを互いにディスカスして、何が最も合法であり妥当であるかということを慎重に十分検討いたしておるのであります。従いまして、本件の場合も、ただいま森島君から上申書で述べられておるように端的に同検事が絶対に反対だということを私が強圧してどうしてもやれというような指示をした事実ありません。
○田中(伊)委員 この国会に出てきて適当な話をなさることはよくない。それでは、聞いてみたいが、これだけ地元をあげての大問題、きょうも地元の大新聞京都新聞の全面を費してごうごうたる世の非難を記載した新聞記事を委員長の手元まで差し上げてありますが、あなたは、そういう記事をごらんになって、ラジオを聞いて新聞を見て、この大へんな事件となっておることで、あなたの言葉として、女一匹くらい、女一人くらいを逮捕するのに何をちゅうちょしておるか、お前がやらなければ別な有能な検事にやらす、その結果はお前は無能な検事として刻印が打たれるのだ、命令が聞けないかということを言って、この人のいい森島検事にハッパをかけておるということがどの新聞記事にも出ておるが、なぜ一体そういうことを言った覚えがないという言いわけをしなかったのか。何十人の新聞記者が面会に来たそのときに、わしはああいうことを言った覚えがないとなぜ言わなかったのか。なぜ沈黙しておるのか。私はああいうことを言った覚えがない、新聞が勝手にああいうことを言っておる、けしからぬと言って新聞に抗弁した事実があれば、何新聞の何という新聞記者で、いつ何時何十分どこでそういうことを言ったのか、言ってごらんなさ い。
○泉参考人 お答えいたします。森島検事が辞表を提出されたのは、私が検事研究のため上京不在中でございまして、同検事が新聞にいろいろお述べになったそのことに対する私の弁解といいますか、さようなことについてどの新聞記者からも意見を述べろということがあったことはございません。私は四月二十二日に上京して二十八日に京都へ帰っておりまして、その間に同検事が辞表をお出しになったのであります。
○田中(伊)委員 それでは、さらに進んで辞表の問題を聞きますが、辞表を出したところの森島検事を呼んで、この辞表の書き方はよくないからこういうふうに書き直せと言って辞表を書き直させて辞表を受理した。これは動かぬ事実がある。そういう事実がないとおっしゃればその事実を出してもいい。どういうわけで、本人が辞表を書いて出したものを、辞表の内容を書き直させるようなことをしたのか、この間の事情を承わりたい。
○泉参考人 お答えいたします。ただいまも申し上げたように、私が二十二日に上京いたしておりまして、森島検事が辞表をお出しになったのは四月二十四日であると聞いております。従いまして、辞表の形式の当否をめぐって返した返さないというようなことについては、私は何も存じていないのであります。
○田中(伊)委員 中澤部長検事は、その点について検事正から相談を受けたり、検事正との間で話が進んでどういう事情であったかということを御存じですか。
○中澤参考人 お答えします。私もその点については何にも存じておりません。また、相談も受けておりません。
○田中(伊)委員 もう一点聞いておきたいのですが、今公判が進んでおるから、この事件についてどういう判決が下されることが妥当かという問題については言及を控えます。控えるが、検事は今後においてこの事件に論告を与えるという立場にあって、まだ検事の検察としての仕事は残っておる。こういう点から伺うのですが、一体、この事件についての四人の少年に対しては、初めから傷害致死罪という罪名がついておるのですね。この傷害致死罪という罪名がついておるところへ、別個の真犯人というものが出てきた。つまり、突いた、刺した犯人が出てきたというわけだ。暴行あるいは傷害の結果死んだという意味の傷害致死罪というものは、刺しただけでは出血多量にならぬかもわからぬ。刺したことを知らずに踏んだので出血したということも考え得る。そういう事態を考えるときに、犯人は四人ではなくて一人であるという検察官の考え方は、またそこに大きな過誤を犯すのじゃないか。四人は無罪である、途中で出てきた男が刺し殺したんだ、これを傷害致死罪をもって処断するということになると、重ねて過誤を犯すのではないかと考えられるので、参考に聞きたいのですが、犯人は五人じゃないか。突いた者と、突かれたことを知らずに踏んだ者がいて、結果において死んだというのでありますから、殺人罪ならば別個であるけれども、傷害致死罪という罪名であるならば、犯人は五人と見るべきが検察の立場においては当を得ておるものではないか。この点は慎重にやらなくちゃいかぬ。不良少年を簡単に家庭裁判所に回し、不良少年を簡単に釈放する、犯人を一人として取り扱うなどというように、世の中に騒がれた結果あわてふためくような処置がそこにあったのではまことに残念であると考えるので、この点について慎重な措置をやらなければならないと思いますが、この点について両君の御意見を伺いたい。
○泉参考人 お答えいたします。ただいま法律上の問題について大へん有益な御指示をいただきましたが、われわれといたしましても、両事件の関係については慎重に検討いたしておるのでございます。ただ、しかしながら、被告人宋以下四人の傷害致死事件と、あとで自首をして参りました佐藤久夫の傷害致死事件とは、御承知のようにいずれもただいま公判係属中でございまして、近く宋の関係において意見が述べられることになると存ずるのでございますけれども、ただいま両者の関係についての法律的な見解は申し上げにくいかと思いますので、その点お許しをいただきたいと思います。
○田中(伊)委員 ここで見解を聞かなくてもよろしいが、今私の言ったことを一つ顧慮して、慎重に調査を進め、慎重なる態度をとって、誤まりなきを期するように要望をするわけです。 それから、もう一つ最後に聞いておきたい、村松君には非常な御迷惑をかけたということになるのだが、国家補償の問題及び刑事訴訟法上の補償問題というものがここにあるわけだ。この問題は果して法律上の補償が行えるかどうか、おわびができるかどうかという問題については、今も改正の問題が出ましたが、なかなか法律にも行き届かない点があって、不十分な点があろうと思う。そこで、検察の判断によって補償を行うというこの範囲において、検察は、見解としてはどういう見解を持つのか、これを聞きたい。 それから、もう一つは、補償の問題は別個として、こういう大きな手落ちが京都検察庁をあげてあったという場合に、知らなかった、まことに申しわけないことだということに気づくならば、役所の前例を破ってでも、この被害者たる女性に対しては相当なるおわびの道を役人としては講ずべきものである。おれは国家を代表してやったのだから、おわびは国家がすべきものだ、あいさつの必要はなかろうという筋のものではなかろうと私は思う。役人は国民から雇われて国民のために奉仕する。だという精神において役人が仕事をしておるならば、一言半句でもおわびがなければならぬが、賠償という金銭的問題を離れて、役所の立場において、金のかからないおわびの道をどう考えておるか。新例を開くべきものと考えるが、御意見を承わりたい。
○泉参考人 ただいま重要な点について御注意がございましたが、深く考えまして、帰庁の上適当に善処いたしたいと思います。
○田中(伊)委員 これで終ります。 最後に、ここには法務政務次官、法務事務次官、刑事局長の代理で課長が御出席になっておりますが、まず松原政務次官に聞いておきたいのですが、この事件の責任が森島検事にあると言われた事柄が動機になって、森島検事は、法務政務次官の参議院における弁明を恨みながら辞表を提出したということが切々として文書で来ておりますが、この事情を一つ承わりたいと思う。 それから、時間がかかりますから順番に聞きますから、別々にお答えを願いたいが、法務事務次官に伺っておきたいと思いますけれども、今お聞きの通り、女の子を調べる際に、本人が言うていないことをメモにとってみたり、本人の言わないことを押しつけて、しばらく反省させておいて部屋の外に出てみたり、これは重大な人権じゅうりんじゃないか。人権じゅうりんというものは、基盤をまたがせたり、さかさまにつり上げることばかりが人権じゅうりんじゃない。東西南北、法律のわらかない女性を前に置いて、自分が監獄に入れたり手錠をはめたりすることに適当なような調書をとって、それをいやおうなしに押しつけるなどというような態度は根絶せねばなりません。そんなことは根絶できないというならば、法務省なんというものはこのままに生かしておくことさえできないと思う。この事件を契機として、重大なる決意を持って、今後における検事の態度というものについて、この検事のみならず、京都のみならず、日本全国の検察行政というものについて、この生きた一つの事例を取り上げて、今後根絶する道をお考えを願いたいと思う。人権擁護の責任のある法務省であるから、人権擁護の建前に立って、国家を代表する検事の仕事については、こういうことは再び日本全国で起さない、ことに女性については断じてさようなことは起さないという固い決意をもって臨んでもらいたい。それがために一つや二つ重大な犯人が網からのがれるようなことがあっても、その不利益はちっぽけなものである。これによって人権じゅうりんが行われるという風潮がおそろしい国家の不利益となる。これを決意を持って事務次官にお答えを願いたいと思うことが一つ。 事務次官にもう一つお答えを願いたい点は、この事件について逮捕令状の請求について上官が無理な命令をしておるという痕跡が残っておる。ことに、ここにおられる泉次席検事は、先ほど私が言うたように、女一人くらい、女一匹くらいを捕えるのにそんなにちゅうちょするとは何事だ、貴様は無能な検事だ、有能な検事と取りかえるというような暴言をはいたと信ぜられる節がある。これは、本人がこの場に出てきて、私は申した覚えはございません、人権尊重は私の建前でございますというようなことを言っても、私は簡単に信ずることはできぬ。味方である、部下であるこの人のできごとについて、法務事務次官は、入院して病気欠席中の大臣と慎重にお打ち合せをいただき、政務次官とも相談をして、刑事局長代理とも慎重に相談をして、特別に人を派して、この新たなる事実をあくまでも究明し、その事実があるかないかを調べ、事実があれば、断固として、人権擁護の建前から、——女一人くらい、女一匹くらいという態度をもって取調べに当っておる検事というものを日本全国から根絶するという意味においても、これはお調べになった上で、事実があれば断々固として泉君を処分する、こういう態度をおとりを願いたい。それについてあやふやなことは私が承知をいたしません。人を派して徹底的にこの言葉を調べる。日本全婦人国民の名においてこれは調べてもらわなければ困る。この点について政務次官及び事務次官の大臣を代理しての御答弁を承わっておきたい。
○松原政府委員 お答え申し上げます。 四月十六日参議院の本会議で、亀田議員から京都市における犯人誤認の事件に関する御質問のあった中に、村松証人らを逮捕した検察官の氏名をお尋ねになりました。これに対しまして私からお答えを申し上げました際、お尋ねの担当検察官は京都地検の森島検事であると申したつもりでございましたが、誤まって、お尋ねの責任の検察官は云々と発言いたしましたことはまことに遺憾でございます。私が申し上げました責任云々は、逮捕を要求した検察官という意味であったことは、質問者の御要求からもおわかり下さることと思ったので、森島検事のみが本件の責任者と考えたわけではないことをここに釈明いたします。 なお、この事件に関してのただいまの御発言に対しましては、確かに承わりまして、責任を持って処理いたすつもりでおります。
○岸本説明員 御質問に対しましてお答えいたします。 法務省当局といたしましては、本件が起きまして以来、まことに世間を騒がせた点申しわけないと存じておる次第でございます。この点は大臣にかわりましておわび申し上げる次第でありまするが、御指摘の検察行政の点、刑事責任の点につきまして、簡単に所信を申し上げたいと存じます。 由来、検察庁のいわゆる検察運営の面におきまして、検事が被疑者その他関係人の調査に当りましては、努めて人権を尊重すべきことはもちろんでございまするし、また、機会あるごとに訓示、指示あるいは協議を通じてその指導訓練に努めている次第でございます。たまたま京都事件なるものが発生いたしまして、この点われわれのまだ十分なる指導訓練の行き届かなかったことを反省しておるような次第であります。同時に、本件発生以来、われわれの考えておるところを申し上げますと、一つは、四少年の傷害致死の責任があったかどうか、いま一つは、偽証で逮捕した事実につきまして、果して偽証があったかどうかという、いわゆる事実の確定ということが大きな問題でありまして、これが第一点でございます。第二点といたしましては、もし非難されるような人権侵害の事実ありといたしましたならば、その範囲、程度いかんということが問題でございまして、これが第二点であろうと存ずるのであります。御指摘のように、本件の偽証問題につきまして、主任検事である森島検事及びその上司である検事正、次席検事等に対する責任問題が論議されておる次第でございますが、この点につきましては、事件発生以来、中央におきまして、法務省当局におきましては十分今申し上げました二点について慎重に調査を進めておりまするし、御指摘の京都に人を派して調査したらどうかという御指示もございまするが、もうすでに二回にわたって人を派して調査しておるような次第でございます。つきましては、なおこの問題が、本日は当委員会におきまして、また明日と明後日は現地京都におきまして参議院の法務委員会がそれぞれ関係人を御尋問、御審訊になることになっておるといったような関係からいたしまして、それらの国会の御調査を経た上、また私どもが二回にわたって調査した結果、及び、もし足りないといたしますならば、御指摘のようにさらに調査を進めまして、十分この問題について善処していきたい、かように考えておる次第でございます。
○田中(伊)委員 ちょっと一言。私の聞いておるのは、今のようなお話も承わりたかったが、大事な点は、とこに参考人としておられる泉君が、女一人くらい、女一匹くらい逮捕するのに何をちゅうちょするかと、婦人を軽笑したという点について、調査の必要あらば調査をすべきものと思うが、過去二回の調査においてそういう調査をしておるのかどうかということです。していないとするならば、あらためて人を派遣してこの重大なことを調べるということには次官は責任を持たなくてはいけない。法務大臣と相談して断固たる処置をしなくてはいかぬ。それを、くさいものにふたをするような、傷口にさわられることがいやなような心持をもってこの国会において答弁をなさっても、この答弁は通らない。そういうハッパをかけた言葉がなければ、このお嬢さんは逮捕されていない。なぜ女を特別に虐待するか。女の額をさわってみたり、女を一人置いて反省をさせてみたり、やっておることがよくない。部下が部下なら上官も上官じゃないか。女一人くらいとは何事です。これを調べる気があるのかないのか、もう一ぺんお答えして下さい。
○岸本説明員 先ほど私から申し上げました事実の真相調査の中には、ただいま御指摘のような事実が含まれておるのでございまして、必ず事実調査の過程におきまして御指摘のような事実を調べることになっております。
○田中(伊)委員 それでは、今私の申し上げたような泉君の暴言、婦人侮辱の暴言というものについては、今後の段階においても慎重取調べをして処置をするということに承わっていいか。私の方から押し売りされての答弁では困るので、もう一ぺんお答えを願いたい。
○岸本説明員 ただいまの点につきましては、先ほど申し上げましたように、責任の所在と範囲及び程度というものを調査した上で、責任を負わすベきものがあるならば負わさなければならぬ、かように考えております。
○田中(伊)委員 あまり長くなりますから、私はこれで御遠慮をする。
○高橋委員長 ちょっと委員各位の御了解を得たいと思います。岸本事務沖官は次官会議のためにこの際退席したいとの申し出がございますので、御了解をお願いいたします。 次に猪俣浩三君。
○猪俣委員 これは、泉さん、中澤さん、どちらでもよろしゅうございますが、この上申書に森島忠三と書いてあります。これは本人の書いたものであるかどうか、一つごらん下さい。これは本人の自筆でしょうか。——本人の自筆に間違いないというお話でありますから、これは森島前検事の上申書であることは間違いないのであります。それを根拠にしてお尋ねいたします。 この森島検事の上申書に見ましても、三月一日この村松泰子を信州からわざわざ呼び出して、村松泰子は午前十一時ごろ出頭いたしております。そこで、これは泉さんにお尋ねいたしますが、こういう呼び出しによって出頭した証人というものは、一体その日の何時ごろまで調べるのが普通でございますか。
○泉参考人 お答えいたします。事案によって違いますけれども、一般的には、調べが終ってできる限り早く帰宅させるというような処置をとっております。
○猪俣委員 調べが終れば帰宅させるのは当りまえのことなんだ。そんなことを聞いているんじゃないんだ。調べが終らぬでも帰さなければならぬ場合が起るじゃないか。大体検察庁は何時ごろまで呼び出した人間を調べることになっておるのですか。
○泉参考人 お答えいたします。一般的には、おそくとも夕方くらいには普通帰っておると考えるのでありますが、複雑な事件で取調べが長引くというような場合には、検察官も調べ室で食事をとって、夜分にわたって、あるいは八時、九時、十時というような場合も絶無ではございません。
○猪俣委員 八時、九時、十時ということは絶無じゃない—。絶無じゃないという言葉から察すれば、八時、九時というようなことはそうたくさんないんだということに承わってよろしいか。
○泉参考人 お答えいたします。比率的にはだれがいつ帰っておるかということを一々私は観察はしておりませんけれども、私の官舎と申しますか、それは役所のすぐわきにございまして、私の宅から刑事部の検事の調べ空が一々よくわかるわけでございます。そこで電灯をつけて夜おそくまでやっておるというようなのは、おそらく調べておるのだろうというふうに考えまして、時には出かけて部屋を見に行くということもございますが、そういつも電灯がついておそくまでやるというような事実を経験しておりません。
○猪俣委員 本件について、村松泰子に対しては、十一時過ぎになって逮捕状を請求し、これが出たのが翌日の午前一時半だ。しからば、それまでの期間はいかなる法律の権限をもってこの検事室に留置しておったのであるか、御答弁願いたい。
○泉参考人 事実の経過を申し上げたいと思いますが、私が当日退庁したのがたしか七時過ぎごろであったと思うのでございます。私が帰宅をして食事をとって間もないころに、たしか八時過ぎころと思いますが、森島検事、中田刑事部長、衣里検事の諸君が私のところに参りまして、先般申し上げたように、そこで逮捕の当否をめぐっていろいろ論議したわけでありますが、普通直ちに結論を出し得るものについては早々に結論を得られるわけでありますが、本件については私のところで約一時間半ばかり議論をいたしておりまして、その間あとで伺ったわけですが、丁重に、寒さも相当な時期であったので十分ストーブをたいて、村松の父親も来ておるので、そこで同席してもらって待っていてもらったというふうに報告を聞いておるのですが、事件についていろいろ逮捕するかしないかというような結論を出して、もししないということになれば帰っていただかなくてはならないし、それがあるいは拘束に及ぶかもわからないという場合には、その結論を得るまでお待ちを願っておるということもございます。本件についてはそのあとの場合でありましたので、とどまっていてもらったわけであります。
○猪俣委員 呼び出した人間を翌日までとどめておく何か法的根拠があるのかどうか。どういう法的根拠に従って、午前中から来ておる者を翌日の一時半までそこに置いたのか。一時半過ぎは、逮捕状が出たから法的根拠はあります。逮捕状を出したことの適否についてはこれからお尋ねしますけれども、それまでの間はいかなる法的根拠でとどめたか。この証人の身の上を心配して父親までふるえながらついてきておったのだろうと思う。この若い娘、しかも親子、三月といえばまだはだ寒いのだ。この夜中の一時半までいかなる法的根拠に基いてそこに居すわらせておいたのか、その法的根拠をあなたに聞いておる。事情はここに詳しく書いてある。その法的根拠を示して下さい。
○泉参考人 お答えいたします。逮捕状の請求をした時間がたしか十一時を幾らか過ぎていたと思いますが、私どもも常に身柄の処置ということについて深く考えておりますので、でき得る限り早くいずれかの処置にしなければいけないということは考えておりましたので、早く処置しようというので逮捕状の請求をいたしました。それが出れば当然逮捕せられるというので、十一時に請求して、逮捕状が発付されるのを待っていたわけで、その間とどまっていただいた次第でございます。
○猪俣委員 そうすると、逮捕状を請求したとたんに、判事の交付があろうがなかろうが、人をそこに居とどまらせる権限が検察官にあるという解釈ですか。そういうことをしょっちゆうやっておるのかどうか。あるとするならば、人身の自由に関する憲法の保障の例外であるがゆえに必ず法律で規定がなければならぬ。逮捕状を請求したとたんに逮捕したと同じような効力を発生するような考え方を今私承わるが、それでは裁判官の許可なんということがあり得ようはずがない。逮捕状を請求しても裁判官がなかなか逮捕状の交付をしない場合には、あるまでそれをとどめておく権限が検察官にあるのかないのか、あるとすれば刑事訴訟法の何条に基くのであるか、それを明らかにして下さい。さっきから私はそれを聞いておるじゃないですか。
○泉参考人 お答えいたします。法律的に申し上げれば、あるいは逮捕という決意がきまったときに、もし裁判官から令状が発付されるまでに相当時間がかかるということが予想されると、一たん宅にお帰りを願うというのが道かもしれませんが、もし発付せられるということになると、もう一度迎えに行くということになりますので、その間をそう長くかからないものと考えてお待ちを願っておったわけでございます。
○猪俣委員 今あなたの説明によれば、それじゃ何ら法的根拠なしにとめたということを認められたわけだね。これは念のために聞くが、刑事訴訟法の百九十九条の普通逮捕であるか、あるいは二百十条の緊急逮捕であるか、それを一つ答えて下さい。普通逮捕であった場合に、なおあなたは今の説明をするのであるかどうか、それを一つ答えて下さい。
○泉参考人 本件の逮捕は通常逮捕によったものでありまして、緊急逮捕ではございません。
○猪俣委員 しからば、あなたが逮捕の請求をしてから逮捕状が出るまでの間、何らの法律の根拠なくしてこの親十をそこにとどめておいたということは、人権じゅうりんであるのかないのか、そんなことは検事としては平っちゃらに考えているのかどうか。憲法の保障しておるところの自由の束縛ということは、これはあくまでも法律的根拠かなければならぬ。その法律の根拠なしに人の自由を奪った際には、これを人権じゅうりんと言うんじゃ。これはあなた方は何と言うか知らないが、われわれは人権じゅうりんと言うんだ。人権じゅうりんしたことを認めるのか認めないのか。これはあなたが認めようが認めまいが客観的に存在するが、あなたの良心についてもう一度お伺いします。
○泉参考人 法律的に絶対に違反がないという点を期するならば、あるいは緊急逮捕という処置をとればよかったのかもしれませんが、先ほど来御指摘のように、われわれがやり来たったこの事件は、午前十一時に出頭を求めて、六時ないし七時まで調べて、それから緊急逮捕をするというのはあまりに法律にこだわったような感じがあるので、それよりも、通常の出頭を求めて捜査をしたので、通常逮捕の方法によろうという考えであったということを申し上げた次第であります。
○猪俣委員 あなた方は考えが違うのだ。この法律時報の四月号に高橋という東京地検の刑事部副部長の談話が出ておる。夜間の逮捕ということは厳に慣しむべきものである、通常逮捕の場合は、特殊の事情のない限り、あとう限り夜間はこれを避けるのが本則だこうちゃんと書いてある。あなたの言葉によると、緊急逮捕にするのはどうも酷であるから通常逮捕にしたというような答弁であるが、全くわけがわからない。通常逮捕によって夜間逮捕をやるというようなことは避けなければならぬということを東京地検の副部長検事が言っておる。だから、頭のいい検事はこういうことを言うんだ。あなたはそれと逆のことを言うておる。ちっともわけがわからない。夜間の逮捕をやることは避けなければならぬと高橋副部長検事が言っているじゃないですか。しかるに、あなたは、緊急逮捕をするのは何だから通常逮捕にしたのだと言う。まるで何だかわけがわからない。それはどういうのですか。高橋副部長検事の言うのは間違いであるのか、あなたの解釈が正しいのかどうか、どっちですか。普通逮捕は夜間やるべきものじゃないという原則に対してあなたはどう考えるか。
○泉参考人 お答えいたします。ただいま御注意がございましたように、通常逮捕で夜間の執行をなすというようなことはでき得る限り慎むべきことであると考えますし、これまでさような事例は京都地検ではほとんどなかったのであります。たまたま、本件についてただいまも申し上げましたが、午前中から調べて夕刻に至って、それを検察庁で合法的な手続を踏もうとしてすぐ緊急逮捕するというような方法は、いかにも、私どもとしてはまずいように考えられましたので、やはり通常の順序手続を踏んでいくのが相当だという考え方から通常逮捕の道に出た。その逮捕状の発付に相当時間がかかったので、今御指摘になりましたような事態になっておるのでございますが、考え方としてはただいま申し上げたような次第でございます。
○猪俣委員 結局、あなたは、一種の自由束縛、人権侵害をやったと思うのか思わぬのか、それをもう一度はっきり言って下さい。何ら法的根拠なしにこの婦人をそこにとめておいたことは、これは検事の役得でやられることなのか、人権じゅうりんなのか、どっちかはっきり言って下さい。
○泉参考人 お答えいたします。結果的には、ずいぶん長くなって、御指摘になるような事態になったのでございますが、私どもとしては、請求の時間も十一時ではありますけれども、疎明資料ですぐ逮捕状をいただけるものと考えておりましたので、結果から観察いたしますと御指摘のようなじゅうりんということにも相なるかと思います。
○猪俣委員 人権じゅうりんをお認めになった。それは当然のことだと思います。もっと早く認められれば、私もそんなに声を使わぬでよかった。(笑声) そこで、今、通常逮捕で深夜の逮捕をするということは異例に属することである、原則としては避くべきものであることをあなた自身も認められておる。それで、私はお尋ねしたいのであるが、この署名は確かに森島の署名に違いないと言う。この上申書に書いてあることは——この娘さんを調べましたる検事、森島検事が、今この娘さんの当委員会における証言によりましても、じゅんじゅんとして説いているごとく、相当妙な供述を作るに汗だくになっておったようである。そこで、あなたの、次席の官舎へ八時半ごろ集まってその模様を訴えたはずなんです。そこで、あなたに聞く。森島検事があなたの官舎へ集まって、村松泰子を偽証の疑いで調べた経過をあなたに訴えたはずであるが、どういうふうに訴えたか。あれは一分一厘も間違いない偽証をやっておる、りっぱに自覚しておる、こういうふうにあなたに訴えたか。そうでなしに、どうもなかなかめんどうだ、あれは偽証したんじゃないのではなかろうかというように訴えたのか。あなたはどういうふうにそれを受け取られたか。
○泉参考人 お答えいたします。全面的に消極的な見解が述べられたわけではございません。相当困難ではないかというような申し出があって、それを中心にして、偽証を確認するという経過等についていろいろ検討討議をいたしたのでございます。
○猪俣委員 そうすると、ますますけしからぬじゃないですか。係の検事自身が相当困難であると言う。その森島検事自身が村松泰子さんを調べるのに相当無理をしている。今村松さんが言った通りだ。それですから、森島検事は、良心的に、相当困難であるということをあなたに訴えたはずなんです。しかも、先ほどの質問で明らかにしたように、深夜に及ぶ通常逮捕というがごときことは模しむべきことであることは、心ある検察官の信条でなければならない。いわんや、調査の主任である検事自身が、この真否のほどについても疑わしい意見をあなた方に具申しているにかかわらず、逮捕を強行させたということ。森島検事のそういう態度に対して、あなたはどういうふうにして激励して、ついに逮捕させるに至ったのであるか、そこを言って下さい。
○泉参考人 御指摘の点にお答えするに当りまして、なぜこの一連の事件をわれわれは偽証と観察するに至ったか、また、その過程において、森島検事が村松証人を調べてその一片の供述だけで若干の消極意見を述べ、それを協議検討して逮捕状を出すに至ったかということについて御了解を得たいために、一連の偽証を確知するというその経過をお聞き取りが願いたいと考えるのでございますが、一応お伺いしたいと思います。——もし差しつかえがなければ、われわれがこれを偽証と見たその根拠を述べさしていただきたいと思うのであります。 まず佐藤証人と村松証人との供述に、明白な証言の矛盾撞着があるということ。それから、村松証人の証言があった後、現場の検証をいたしましたところ、村松証人が犯人を見たという便所は、夜間の照明設備があまり十分でなくて、現場の便所に設備をしてある電燈の照明だけでは、人相、服装あるいは動作、所持品というようなものについて、微細な観察がとうていできないだろうというふうに観察せられ、それが著しく経験則に反するというよりに思われたこと。さらに、最初村松誰人の供述する場所、すなわち下長者町通六軒町角という場所は、訴訟関係人、裁判官、検察官、弁護人等が現場へ臨みましたところ、その指摘する場所には便所が全然ないということが明らかにせられておりますし、それから、検証の際村松証人に案内をさせた便所の位置は、犯行のあった場所から約四百メートルも離れておるのでありまして、佐藤や村松の証人らの供述する時間に犯人がその犯行を犯した場所がらその便所へ立ち回ることがほとんどあり得ないと考えられる事情があったこと。それから、客観的な事情として、弁護人からあらかじめ証人申請の申し出がないのに、突然弁護人から村松証人を在廷証人として調べてほしいという請求がございまして、佐藤証人はさきに証言した際、村松証人という人は全然知らない人だということを言われておるのに、その在廷証人の申請の際、村松証人と佐藤証人とが傍聴席で席を同じくして並んでいたという事実がございますし、それから、犯行当日半長靴の男という人物の行動を具体的に知っておるから、この証人を調べてほしいとして弁護人から申請のあった北村文子というこの証人を取り調べましたところ、証人は法廷で、全然自分はそういう者に関係はないし、新聞を見て事件を初めて知ったので、半長靴であるか白シャツであるか知らないというようなことでございましたし、それから、被告人浜田少年の母親が常に公判廷へ列席せられておって、弁護人が弁護人申請の証人を主尋問せられる場合に、そのつどしばしば浜田の母が弁護人席へ行って耳打ちをしておるという事情があった等のことがございました。これらの認識は森島検事の直接経験するところでございまして、かような報告並びに公判調書というものを検討して、ここに一連の偽証があるのではなかろうかというようなところから捜査を開始いたしました。森島君の上申書の中にも記載されてございますように、まず二月二十三日に森島君が佐藤証人の出頭を求めて取り調べましたところ、私の法廷で述べたのはみなうそだ、西村証人あるいは村松証人と会ってかくかくの話し合いがあったのだという自供があったというので、この佐藤証人は少年でもございますし、取調べを終えて早く自宅へ帰宅させておるのであります。かような事情から捜査を開始するに至ったのでありますが、たまたま村松証人を取り調べて、村松証人の供述の真偽が、一片の供述で、果してそれが真実であるかどうかというようなことについて裏づけの証拠が何もない。たとえば、公判調書で、自分は日記を書いておるので、この犯人を見たというような事実を克明に日記に記載をしておるというようなことが公判調書にございますが、もし真実であるならば、彼女からその日記を提出させて、そういう事実があるかないかということも、村松証言の真実性を裏書きすることにもなるわけであろうと考えられたわけでありまして、かような事情から、一旦着手をした事件だから、慎重に捜査を進めなければならないという建前で、単に村松証人を取り調べただけでそれが真実だというので即断は果してできるだろうかというような点をめぐって、いろいろと論議したのでありまして、ただ、偽証事件というのは、非常に捜査が困難であり、むずかしいから、老練な検事でも往々にして容易にこの捜査を完結することができないから、そういう意味において、慎重にやったらどうだろうという意味のお話し合いをいたした次第でございます。
○猪俣委員 私は今偽証の疑いありとして佐藤あるいは村松を調べたことについて質問しておるのではないのです。これはこの次に内容に入ってお尋ねしたいと思うのですが、この村松といううら若い女性を深夜逮捕し留置したということが問題だ。多少検察官の見込みによって偽証の疑いがあったとしても、かような方法において、自分たちの功を急ぐあまりにおいて、国民の自由ということに対してはなはだ薄い観念を持っておる。そこが私は言いたいのです。緊急逮捕にしても普通逮捕にしても、これは人身の自由に関する容易ならざることである。村松証人に偽証の疑いをあなた方が持つということは、これまた職務上当然のことで、それを責めているのではありません。その当然のあなた方の捜査を、逮捕してやるということ、これは決してあなた方だけ責める問題ではない。日本の警察あるいは検察官の一つの病弊であるのです。自分たちの調査を手っとり早くやる方法は、ぶち込んでおいていじめるのが一等簡単なんです。ですから、警察あるいは検察官が事実を自分たちの欲するままに早くでっち上げる一つの手段として、人を拘禁するということは最もいい手段なんだ、こういうふうに考えておるのではなかろうか。これは私が言うばかりではない。最近アメリカへ特に警察や検察の捜査活動について研究に行ってこられた東京地検の検事の阿倍治夫検事がはっきり言っておる。どうも日本の検察官は逮捕して調べることを便宜と考えておるような傾向がある、そういうことが検察官自身の反省として出ておるのです。ですから、これはあなただけの問題じゃないかもしれぬが、当法務委員会としては、そういう現われましたる氷山の一角をついて、その根底を確かめなければならぬので、この質問をしているのであります。あなた方が嫌疑をかけたそれ自身よりも、逮捕して調べるということ。いとも簡単に人を逮捕する。しかも森島検事が極力反対している。それにかかわらず、あなたは言わぬと言っておるけれども、今のいきさつから見たら言ったに違いない。森島検事が、確かに、これは困難だ、やすやすとどうも偽証とも断ずることのできない点があると言って、あなたに困難だと言ったということをあなたも今認めておる。しかるに、深夜の逮捕状請求となったのには、あなたの叱咤激励があったに違いない。これは論理の必然的な結果です。それをあなたが否認したといって、かような論理の法則がある場合に、かりにあなたが犯罪を調べなさる際に、否認したからといっておいそれと許しますか。森島検事は反対した。しかるについに令状請求までやった。しかるに、自分の責任とせられたために、彼は法務省から、検事総長から、あるいは熊澤検事正から、あらゆる自分の衷情を訴えてきておる。自分が逮捕状を請求する主任になった場合に、かような行動ができる道理がないじゃありませんか。かような状況判断があるならば、あなたが調べる際にもこれは有罪の判決をするでしょうが、あらゆる状況判断が備わっておる。あなたが必ずこの森島検事を叱晦激励したに違いない。それはどうなんですか。あくまでも叱咤激励したことはないのですか。状況判断はそろっていますよ。あなただって検察官なんだからおわかりでしょう。森島検事の上司に対するふんまん、ついに職を賭するに至った動機、本日当委員会に現われました上申書によっても、森島氏が最初反対したという事実、しかも異例なる通常逮捕による深夜の逮捕状の請求、これらを総合考覈するならば、あなたが何らかの言葉によって森島氏を叱咤激励したことは当然浮び上ってくることなのです。それでもあなたはどうしても否認なさるか。あるいは良心に従って多少お認めなさるのか。もう一ぺん御確答を願いたい。
○泉参考人 お答えいたします。私の官舎においてこの逮捕請求をめぐって論議された際には、森島検事以外に中田刑事部長、衣里検事の両君も同席しておられたのでございまして、その間の言葉のやりとり、協議の内容等につきましては、森島検事から御指摘のように相当激しく私から叱咤激励されたかのように記載がございますが、この点に関しまして、私は先ほども申し上げたように、そういう言葉を使って人権を無視したようなことを述べた事実は毛頭ございません。しかしながら、この点に関しては、先ほど来法務省並びに最高検から現地で私以外の関係者等についてその間の事情をつぶさにお調べになっておられるのでございまして、私がここで否定を申し上げても、その真偽が御了承願えないとするならば、権威ある私どもの上司においてお取り調べ下すったことについてお聞き願いたいと考えるのでございます。
○猪俣委員 それは、あなたから言われなくても、法務省の責任ある大臣から答弁を聞きますから、こんなことはあなたから言われなくていいのだ。こちらのことだ。あなたはあなたの心持を言えばそれでいいので、われわれに指図する必要はないのです。指図するくせがついているので困るのだが、あなたの心境さえ言えばそれでよろしい。 私はなお相当お尋ねしなければならぬことがあるのでありますが、佐藤さんがお見えになっておりますので、佐藤さんから、どんな偽証をしたということで、何という検事にどんなふうに調べられたか、それから、あなたと村松さんの関係をどんなふうに調べられたか、その点について、ありのままにお話し願いたいと思います。
○佐藤参考人 私が検察に呼ばれたのは、ことしの二月二十三日で、午前九時出頭の通知がありまして、私は九時半ごろに参りました。森島検事に調べられたときに、検事は、自分の法廷で言ったことをもう一度繰り返してくれと言われるので、私は法廷で言ったままをもう一度繰り返したら、検事さんは、それだったら君は偽証だ、きょうはこのまま帰らせないから、もう当分ここにいてもらいたいと言われるので、私はそれを聞いてびっくりしてしまったのです。また、検察庁がそれをおどしに言っているということは、私は初めから知りませんし、それをほんとうにしてしまったのです。 そうだろう、違う、そうだろう、違う、それが何べん続いたかわからないのです。私は泣きながら言いました。けれども、それを取り上げてくれなかったのです。私がどれだけ一生懸命言っても取り上げてくれないで、自分で、ああやろ、こうやろ、これと違うのかと言って、私の言ったことを一つも取り上げないで——検事に、まことに申しわけありません、このたびはどうぞお許し願いますと私は言ったことはございません。そのことを全部自分で書き改めたのです。そしてそれに判こを押させられたのですが、判こを押すときに、私はものすごく考えたのです。考えてから押させてくれと言ったのです。そうしたら、自分の言ったことをもう一ぺん否認するのか、こう言われたのです。けれども、私は正しいことをとらないのは不思議だと、また言い直したのですが、それだったら帰さないと言われるし、日は暮れてくるし、自分のからだもものすごく調子が悪かったのです。からだがよこれていたのですが、それは検事さんには信用してもらえなかったのです。そして、私は自分が帰れないことががまんできなくて判こを押したわけです。 それから、村松さんとの関係は、私の前に勤めていた工場の友だちのお友だちであって、ごく簡単なお友だちなんで、会ったらあいさつするくらいの程度です。そのときに村松さんから聞いたことは、村松さんはびっくりして私にあのようなことをお告げになったのだろうと思いますけれども、村松さんとの関係はそれだけであります。
○猪俣委員 そうすると、自分は間違ったことをしました、今回はお許し願いたいというようなことを森島検事自身が書いて、あなたに印形を押させた、こういうわけですか。その森島検事が書いたという言葉を、もう一ぺん大きな声で言って下さい。
○佐藤参考人 大体のことを言います。昨年の十一月十七日に述べたことは全くうそでございまして、今これから述べることがほんとうでございますので、このたびはどうぞお許し願います、自分はぶっつかったのは、ぶっつかったことは確かですが、帽子をかぶっていなくて、服装は全然違っていた、そして現場を通ったのはほんとうでした、村松さんと会ったのは確かだが、その晩に話はしていないだろうと、自分で、こうやろ、ああやろ、自分は違うと言っても、それを取り上げないで、自分で勝手に書かれたのです。そうして、その調書は、人が読まれたら、これがほんとうと違うのか……。自分でも情ないと思って、もう一ぺん読まれたときに自分は涙が出ました。あのことを考えたら、ほんとうにどう言っていいかわかりません。
○猪俣委員 そうすると、それを読んでみて情なくて涙が出るようであったけれども、結局、あなたは、帰さぬぞ、とめるぞと言われるのがこわさに、からだの工合が悪かったし、そこでそのまま認めて帰った、こういうわけなんだね。 なお私は午後お尋ねしますけれども、一体、村松さん——佐藤さんもそうだが、法務省から調査に来た者であると言うて、だれかが会って、今言ったような事情を聞いた者があるのかないのか、村松さん、どうです。
○村松参考人 私が長野県にいたときに、擁護委員から呼び出しがあったのです。それは長野県の役場に出頭することになっていたのです。けれども、四月十八日に、長野に出張された早川検事という方が、私の、長野検察に出頭せよ、こう言われたことについて、その犯人の服装なんかをもう一ぺん尋ねに来られたのです。そして、私は、シャツなんかを見て、これでした、こんなようでしたと全部答えたのです。それで、あくる日の京都新聞には、村松は偽証を確信したと書いてあったのです。私はそんなことは言った覚えがないので、早川検事さんに会ってみようと思って、さっそく二十一日に長野県から京都に帰ってきたのです。そして京都の人権擁護課に行って私から事情を話したのです。
○猪俣委員 そうすると、早川検事というのは何者だかわからぬが、早川検事というのが行って、あなたに犯人と思う者はどんな服装であるかを尋ねた。ところが、あなたが言わないことが京都新聞に載った。どういう言わぬことが載ったことになるのですか、それをもう一ペん言って下さい。
○村松参考人 それは、私が森島検事さんに調べられたときに、森島検事さんが、私がほんとうのことを言っておるのに取り上げない。それで、一体どういうことを言ったらよいのですかと私が言ったのです。そうすると、森島検事さんが、うそでもいいから言ってごらんと言われたのです。私がうそでも言ったら帰してくれるのですかと言ったら、このままだったら偽証罪だけれども、ほんとうのことを言うなら偽証にならないからと言われるので、私はどういうふうなうそをついたらよいのですかと言ったら、たとえばジャンパーを着ておった男を、ジャンパーを着ておったと法廷で述べたが、実はジャンパーを着ておりませんでしたというようなうそでもいいよ、こう言われたのです。それで、せびろを着てとっくりのシャツを着ていたと法廷で述べましたけれども、それはせびろを着ておりませんでしたと一つそこに書いただけです。そして帰してくれると思ったのです。そうしたら違うのです。こんなことは罪にならないけれども、きょうは帰れないよと言われたのです。それで、そんなこと私は問題にされるとは思っていなかったのですが、それでもって、早川検事さんはそのことを台にして偽証を確信したと言われたのです。それだから、私は、それは絶対に偽証を確信したうちに入らないと思ったのです。それで、検察庁に行こうと思って長野県から帰ってきたのです。だから、前に森島検事さんにそういうような自分がうその供述をしたばかりに、それを台にされて村松は確信したと大きく出されたときに、私は世間に恥かしくて、京都なんか帰る気ありませんでした。自分の覚えのないことを堂々と書き立てられて……。
○猪俣委員 そうすると、早川検事なるものは、お前は偽証したと言われているが、ほんとうのところはどうなんだ、どんなわけであんな偽証なんと言われるようになったのだ、そういうような、今この委員会であなたに聞いているような調子で聞いたんじゃなくて、何かやはり森島検事と同じような調子で、あなたを調べに行ったような聞き方をしたのか。
○村松参考人 それは、早川検事さんが来られたときに、私は検事さんに、検事さんを軽べつしていますと言ったのです。そうしたら、きょうはあなたを偽証罪として来たのじゃないから、そう感情的にならずにすわってくれと言われたのです。それで、すわってから、もう一度法廷で言ったのと同じことを言ったのです。そしたら、ふむふむと聞いておられて、大へんやさしい態度でした。そして、犯人が自首したときの写真を、犯人だと言わずに、いろんな人の写真を二、三十枚並べて、この中に犯人がいるかと言われた。いえ、いませんと言ったら、顔を言っているんじゃない、服装はどうなんだ、どのようなのが一番似ているかと聞いたので、服装ならこれが一番よく似ていますと言ったのです。それでもって、新聞には、事務官を犯人だと指さしたとか、まるで逆のことばかり書いてあるのです。そうして、どうしてそういううその供述をしたかということを尋ねられなかった。ただ、こう言われただけです。うその供述をしたことは事実か一。それはそういうことを言ったのは事実ですと言った。でもそれはと言いかけたら、あなたは偽証罪にも何にもならないのだから、こんなことはこだわらなくていいと早川検事は言われた。そして、最後に、あなたもこの事件でえらい災難だった、まことに気の毒だと思う、これからこんなことを気にせずに一生懸命働いて下さいと言われて、そして帰ってきたのです。そして、ああいうような、偽証罪を確信したというように新聞に載った。だから、またその上私は検察庁を軽べつしたくなるのです。
○猪俣委員 佐藤さんはどうだね。何か、法務省から調査に来たというようなことで、この偽証問題についてあなた聞かれたことはありますか、ありませんか。
○佐藤参考人 はい、日は忘れましたけれども、四月に法務省から出頭してくれというお知らせがありまして、そのとき偽証のいきさつについて一応述べさせていただきました。それから、足りないことを少しずつ述べたこともあります。
○猪俣委員 そうすると、今この法務委員会で言ったように、自分は帰りたいあまりに森島検事が自分で勝手に書いたのを認めて、印形を押して帰ってきたという話を、法務省の役人という人にあなたは言ったのか言わぬのか。
○佐藤参考人 はい、言いました。
○猪俣委員 そういうように言った。
○佐藤参考人 はい。
○猪俣委員 私は午後に質問を留保しておきます。
○高橋委員長 古屋貞雄君。
○古屋委員 泉検事にお尋ねしたいのですが、毎日新聞と産経でございますが、この中に、辞職願を森島検事が出して、京都の検察庁で司法記者側に語ったところによると、として、こういうことが書いてあるのです。ただいま泉さんは、いろいろ指図したようなことはないとおっしゃっておりましたが、こういう新聞記者の記事がうそであるか、あなたがさようなことを実際に述べたのかどうか、その点を確かめるために、まず私読んでみます。「村松さんの逮捕は表面上、僕がやったことになっているが、実質上は中田刑事部長と二人で逮捕した。逮捕状をみせたのも刑事部長だ。村松さんを調べ終ったのは午後七時(去る三月一日)で一部分服装などについて偽証の疑いはあった。彼女はどこかで何かを見ただろうということは間違いないようなので僕は逮捕はできないという結論に達した。そこで泉次席検事に報告にいったところ「君は無能検事だ、女一人ぐらい逮捕をようしないのか、これから逮捕しようとかかっている検察の士気をそそうさせるだけでも責任は大きい」と説教され、どうしても逮捕は嫌だ、この事件から手を引かせてもらうというと「とにかく村松を逮捕してあす有能な検事に調べさせるが、もし村松が自白したら君は責任をとれ」とい一われとうとう十一時までがん張ったが午前一時五十分(三月二日)ついに逮捕ということになった。」、こういうことと同じことを産経も書いております。今私が読み上げたようなことを森島検事は新聞記者に語っておりますが、こういうような事実はあったのかなかったのか、新聞記者が書いたものはうそでしょうか。
○泉参考人 お答えいたします。先ほど来申し上げておりますように、私は森島検事に対してさようなことを述べた事実はございません。
○古屋委員 非常に森島検事の述べられたことは微に入り細にわたっておりますが、しかも、ただいま猪俣委員からもお尋ね申し上げたように、どうも、前後の事情から申しまして、森島検事が辞表を提出するに至った事情などから考慮いたしましても、かようなことがあったという判断をすることが常識のように考えておりますが、そういたしますと、あなたは全然こういう事実はなかったのですか、それとも、ある一定の指図をしたことは事実なのでしょうか、どうですか。たとえば、このくらいのことがやれなければ検察の志気が阻喪するから、その責任は重大である、もしお前がやらなければ、ほかの検事にかわって調べさせるというようなことを申した事実があったかどうか。
○泉参考人 お答えいたします。森島検事に対して無能呼ばわりをしたり、あるいは女一人ぐらい逮捕できないでどうするかというようなこと、あるいはこれからの志気を阻喪するというようなことを述べたことはございません。ただ、いろいろ、先ほど来申し上げましたように、証拠関係等から協議をいたしましたところ、村松を明日調べても同じだというふうな発言がございましたのを記憶しております。と申し上げますのは、どういうお調べをしておられたかわかりませんけれども、おそらく、結果から考えましても、とうてい感情的な対立があって自由な供述を求めることができないというような考え方から、さように言われたのかもしれませんが、私は、そこで、それなら人をかえて調べてもいいじゃないかというような話をいたしました。結局、それじゃ私も明日からやりますということで、森島検事は私の官舎を辞去されたのであります。
○古屋委員 この森島検事の述べたことによりますと、午後の七時にあなたのところに行って、そして十一時までがんばったけれども、とうとう逮捕するに至ったということを述べておるのです。相当そこで議論がございましたのですか。森島検事の新聞社に発表いたしましたこの事情から見ましても、七時にあなたのところへ参って報告したことは間違いありませんか。それから、十一時までかかって逮捕することに最後に決定したということは間違いありませんか。
○泉参考人 お答えいたします。時間の関係では事実とそごいたしております。森島君を含む検事諸君が私のところへ参ったのは八時を過ぎていたのであります。それから、私のところを辞去したのは十一時たしか十五分か二十分前であったのであります。私は、もし早く逮捕状を請求して、出すものなら出していただかないと、あまりおそくなるのでということを特にその際に申しつけ加えまして、私のところを出たのは十一時前でございました。
○古屋委員 それ以上私は追及いたしませんが、森鳥さんを調べればわかりますが、森島さんも全然うそのことを申し述べているはずがないと思うのです。相当あなたから強く言われた関係上、今お聞きのように、村松証人に対して相当ねばって強く森鳥検事が調べたのも事実らしい。というのは、あなたの言によりましても、あなたのところを十一時ごろ辞去したとすれば、逮捕状が出たのは午前一時五十分ごろだということになっておりまして、相当の間村松証人をああでもないこうでもないということで——あなたが、そのときに、打ち切ったらどうか、あまり無理するなと言えば済んだ。ところが、さようにねばられたために、森鳥検事が相当の時間しつこく村松証人をああでもないこうでもないということでうそまで言わして調書を取ったということになっているのですが、この点に対するあなたのお考え、責任はどうなんでしょうか。深夜に女を調べている。数時間において述べないことを述べさせようということで無理にやらさせた。従って、村松証人が非常に苦痛を感じたり、うそを言わざるを得なくなった。そういうことをあなたは具体的に命じなくても、あなた自身が、もっとねばれ、検察官の志気に関する、もう少し調べろということは、今おっしゃった通りなんですが、そうすると、あなたはその全責任を負おなければならぬということになるのですが、あなたの心境はいかがですか。
○泉参考人 いずれ上司から私についての責任を御追及になると思いますので、その指示に従って私は善処いたしたいと考えます。
○古屋委員 あなたの上司の命令でなくて、あなたの御心境はどうであるか。大切な人権を尊重しなければならない立場にあるあなたが、かようなことをやったあなたの御心境を承わりたい。
○泉参考人 お答えいたします。手続的に幾らかひま取りまして、深夜を過ぎて逮捕状を執行したというようなことについては、まことに何とも申しわけないと、深く自覚をいたしております。
○高橋委員長 それでは、午前中はこの程度にいたし、午後は二時半より再開することにいたしまして、それまで休憩いたします。 午後一時三十四分休憩 ————◇————— 午後二時五十一分開議
○高橋委員長 午前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。猪俣浩三君。
○猪俣委員 午前中につきましては、偽証の疑いがありとしてこれを逮捕したことに問題があるとして、私は関係当局に質問したのでありますが、今度は内容に入りまして、偽証の疑いありと認定したことに対して、私どもはその捜査の疎漏につきまして一、二疑いを持つのであります。そこで、これは主としてお調べになったという中澤検事にお尋ねいたしますが、起訴状を見ますると、この四人の者が共謀の上、被害者たる木下とけんかをして、手拳等をもって同人を殴打して暴行を加えた、こうなっておる。ですから、けんかをしたときには手拳等となっている。ところが、いつとはなしに、今度は鋭利な刃物をもって啓部を刺した、こうなっておる。そこで、手拳等という中で、「等」というのは握りこぶしのほかに何があったのであるか、その点。それから、けんかをするときには手拳等であったものが、今度はいつとはなしに鋭利な刃物をもって刺したことになっておるが、これについて、その刃物をいつどこから持ってきたのか、あるいはどこに隠しておいていかなる状況のもとにおいてどういう仕方で刺したのであるかというようなことについて、傷害致死でもって起訴なさる以上は詳細なお取調べがあったと思うのでありますから、その点についてお答え願いたいと思います。
○中澤参考人 お答えいたします。起訴状の第一訴因、傷害致死の前段に摘示してあります共同暴行の点におきまして、被疑者四名が被害者に対して暴行を加えた状況を手拳等と表示してあるのは、御指摘の通りでございます。これは手拳以外に他の凶器があったという意味ではないのでありまして、出拳でなぐったほかに、はいていたスリッパとかくつなどでなぐったという意味であります。その当時は、けんかの第一現場においては凶器は出ておりません。その後、後段に至って、第二の現場で鋭利な刃物でもって被害者の臀部を刺した、こう書いてありますが、これは、被害者の死体解剖の結果、死因は明らかに鋭利な刃物による臀部の刺創であって、それが腸まで達して内出血によって死亡したことが明白になったのであります。従いまして、第二の現場で被害者を鋭利を刃物で刺したという客観的な事実がある以上、これに符合する何らかの凶器が第二の現場で使われていなければならない、かように判断しまして、極力凶器の所在発見に努めたのであります。その凶器の点につきましては、四少年のうち宋哲進がジャック・ナイフで相手方の臀部二カ所を格闘の際刺したということを警察官に対して一回自供しておりますだけでありまして、それ以外に他の少年は凶器を持っていたことは供述しておりません。が、他の少年のうち浜田正之と山本孝司の二少年は、宋哲準が第二のけんかの現場でジャックナイフを持っているのを見た、現に目撃したということを繰り返し当初から述べております。また、それと同じジャック・ナイフを、共犯者の山本が一カ月ほど前にある車球場で宋からおどされた際にそのジャック・ナイフを宋が持っているのを見た、このように供述していたのであります。そういう点から、先ほど午前中に申しましたように、死体解剖の結果の死因に符合する凶器、傷の深さ等と比べて、浜田、山本が目撃したというジャック・ナイフで刺したであろうということを一応認めたのであります。そういう状況であります。
○猪俣委員 そうすると、けんかの現場においては凶器は認められないが、死体を解剖したら凶器の傷あとがあったということから、さかのぼって凶器で刺したというふうに認めた。ところが、あなたの証言でも、法務省の報告でも、宋が凶器で刺したということは警察で一回自白しただけであって、あなたのさっきの証言を聞いても、検察官の前ではさようなことを言っておらない。そこで、警察でそういう自白をし、検察官の前では言わない、このことについて不審を持って、警察の自白についてあなた方が疑問を持たなければならぬと思う。警察における自白が真に任意の自白であるか、何らかの事情でさようなことを言い出したのであるかについて、もっと深く考察すべきではなかったか。 そこで、私がお尋ねしたことは、けんかの現場には凶器がなかったのを、結果から見て凶器があったということになったというのであって、しかも、宋が警察で自白したというならば、あなた方が、どういう理由で警察でさように検事の前で言わざることを言ったのであるか、なお、それが真実であるかどうかを明らかにするには、その凶器はいつどこへ隠しておって、どういう方法で刺したか、どこから買い求めたか、そういうもっと具体的なことを事こまかに聞いたならば、ほんとうに彼が凶器をもって刺したのであるかどうかがわかったはずだと思う。ただ凶器の傷あとがあるということで、直ちにそれをこの四人のものにしてしもうて、警察でたった一回陳述しただけのものを、検察官の前には一切凶器は持っておらなかったと言うものを、しかも、その凶器の捨てどころというものを、どこへ捨てたかということを十回以上も言葉をかえている、そういう実情にあるものを、じゃあその凶器はどこから仕入れていつどこへ隠して持っておったかということでお調べになったかどうか、その点をもう一ぺんお尋ねします。
○中澤参考人 お答えいたします。ただいまの御質問、凶器の点についてそのような御疑念持たれるのはまことにごもっともだと思います。私自身も、宋哲準が警察で自白をした、しかし宋が捨てたと称する場所数カ所を探しておるのでありますが、マンホールとかあるいは便所とかどぶとかその他いろいろ次々に供述をかえておりますので、あるいは宋哲準の警察における自供は少くとも凶器の点については真実を述べていないということは十分疑いを持っておりました。従いまして、警察官に対して極力最後まで凶器の発見に努力するようにという指示は絶えずいたしておりましたが、ついに発見されるに至らなかったのであります。宋哲準の警察官に対する自供の中で、凶器で相手を刺した状況はある程度述べております。被害者となぐり合って組み打った際に、ポケットからジャック・ナイフを取り出してボタンを押して刃を出して粗手方の右の臀部を目がけて二回刺したという供述はあるのでありまするが、しからば、その凶器をいつどこで求めてどのようにしておったかという点については、言いたくありませんという供述調書があって、それ以上警察において追及はされていないのであります。その後、凶器の所在についての宋哲準の供述が、捨てた場所について転々と変っておりまするので、宋哲準の凶器の点についての供述にはかなり疑問を持って、警察官も捜査し、われわれも捜査したのでありまするが、ついに発見できたかったのであります。ただ、先ほど申しましたように、行動を共にした浜田、山本の終始変らない供述によって、宋哲準が犯行現場においてジャックナイフを持っていたということは二少年が現認しておりまするし、その供述が終始変っていないという点、宋哲準は凶器は持っていないと言いますし、かつて持ったこともないと言いまするが、山本少年は宋哲準から前にジャック・ナイフでおどされたということも明らかに述べておる。その事実すら宋哲準は否認しておる。そういうような状況から、本人が真に凶器を隠した場所を進んで自供しない限りにおいては凶器は発見できないが、他の二少年の現場における現認の事実と、その凶器で本件被害者の死因と思われる傷が一致するという鑑定の結果から徴して、宋哲準の自供には、われわれは全面的に自供を信頼しておったわけではありませんが、状況から、見て宋哲準が当時ジャック・ナイフを持って、それを使用して相手方を刺したと認定せざるを得なかったのであります。
○猪俣委員 検事のあなたの前で宋哲準は刺したということを自白したのであるかどうか。あるいは、浜田、山本の宋が凶器を持っておったという自白は検事の前でやったのかどうか。それは警察だけであったかどうか。それから、検事の前で言うたことと警察官の調べとが違っておる際に、どうしてそういう違った供述をしたのであるか、その点はどういうふうに追及したか。それに対して宋は何と答えているか。それから、あなたは、浜田と山本は終始供述を変えないと言うのだが、検事の前でもそういう供述をしておったのかどうか。先ほど聞くというと、検事の前ではだれも言うた者がないというふうに私は承わったのですが、その辺の、検事の前の浜田、山本はやはり宋が凶器を持っておったということを初めから言うておったのかどうか。その点をもう少し詳しく説明して下さい。
○中澤参考人 お答えいたします。宋哲準は、検察官に対しましては、凶器を持っていたことも刺したことも否定いたしました。浜田、山本は、警察官に対して宋哲準が凶器を持っていたのを見たという供述をしておるのみならず、私自身に対しても、同様な、ジャック・ナイフを持っていたこと並びに山本が卒業の前に宋からジャック・ナイフを示されておどされたという事実を私に対して供述しておりました。なお…… 〔志賀(義)委員「その日はどうなんだ、その日はナイフを持っていたかどうか、その点まで言いなさい、前のことばかり言ってごまかしてはだめだ」と呼ぶ〕 先ほど申し上げましたように、犯行現場において宋哲準がジャック・ナイフを持っていた、その当時持っていたということは、浜田も山本も、私自身に、検察官に対して述べております。同様の供述は家庭裁判所の調査官に対する供述におきましても述べられております。 なお、先ほどお尋ねの宋哲準が警察で一たん自供しながら検察官に対して相手を刺したという点を否定した点はどうかということでありまするが、これは、検察官に対しては、繰り返しますように、刺した事実はないと終始否認しておるのでありますが、しからばなぜ警察官に対して宋は自白をしたか、刺したということを述べたかということを尋ねましたところ、私の記憶に誤まりがなければ、宋は私に対して、自分は凶器で刺したことはないし、そのことを警察官に訴えたが、自分の弁解は聞き入れてもらえなかったということを訴えておりました程度で、それ以上、警察から拷問を受けたとか暴行を受けたとかいうようなことのために虚偽の自白をしたという点に対しては、私に対して全然訴えておりませんでした。
○猪俣委員 なお、この起訴状にあります手拳等をもって乱暴をしたということにつきましては、多数の証人をお調べになったのであるかどうか、そこを一つお答えを願います。
○中澤参考人 お答えいたします。警察官を指揮しまして捜査に従事させるとともに、検察官みずからも関係人の取調べをいたしまして、相手方を殴打したという点につきましては、当時現場にいた数名の者を取り調べて、その事実、四少年の供述に符合するごとき暴行の事実があったことが確認されております。
○猪俣委員 そうすると、それらの証人の証言からも、凶器を持っていたということの証言はなかったと思うのです。だから、第一の現場では手拳等となって起訴になっておる。ところが、今あなたが言うたように、結果としておしりを刺されておることがわかったので、凶器という問題が出てきた。そこに、第一点として、この問題はまず最初から疑ってかからなければならぬ事案だろうと思う。だれも現認した者はない。だから、起訴状にも手拳等と書いてあって、凶器があったということがない。凶器はあとで死体解剖の結果出てきた一つの仮定なんですよ。だから、そういう場合においては慎重な態度をとらなければならぬと思う。それが第一点。 それから、宋自身が極力検察官の前では否認しておる。警察で一ぺん自白しておるが、また検察官の前へ出て、どうもあれはやむを得ずああ言うたけれどもうそだと言って否認しておる。何といっても、僕は諸君の手落ちだと思うことは、本人自身が自白しない、原則として検察官の前に自白しない、そうすると、裏づけの凶器の所在というものが重要なんです。しかも、凶器を持っておったということを現認した者は、被告自身が言うているだけであって、被告のうちの浜田や山本が言っているだけで、証人は言っていないはずです。だから、諸君の起訴状には手拳等ということだけで、凶器を持っておったということが起訴状には出ておらぬ。そうして、しかもその凶器をどこへ捨てたか、一たん凶器で刺したと言う以上は、その捨て場所を隠すはずはないのです。それを十回も変えておるということ、それと検察官の前では否認しておるということ、初めから凶器を持っておったということを現認しておる者はなかったということ、さようなことを総合するならば、一体この宋が刺したかどうか、凶器をもって刺したかどうかということは、初めから多大な疑惑のある問題として捜査を進めたければならなかったのじゃなかろうか。その点についてあなたの御所見を承わりたい。
○中澤参考人 お尋ねの点、まことにごもっともだと思います。私自身も、宋が凶器で被害者を刺したという点について、私みずからの取調べに対して宋の自供を得られなかったということと、宋が捨てたという場所から凶器がついに発見されなかったということについて、全然疑念がなかったわけではありません。が、共犯者の浜田、山本が、犯行現場で宋哲準がナイフを持っているのを目撃したということを述べておるという事実、先ほど申しましたような事実と、死体解剖の結果による死因とを照し合せて、ジャック・ナイフで刺したと認定せざるを得ない状況の証拠であったのでありまして、当時の状況としては、そのほかにも、午前中に申しましたような、浜田が宋哲準と一緒に帰る途中に、宋から、相手のきんたまを刺したから死ぬかもしれないという供述をしているというような点、その他血痕付着の上着を友人と交換して証拠隠滅をはかったと思われるような点、その他数点、午前中申しましたような点を総合いたしまして、相手方が任意に凶器の所在場所について自供しない限りにおいては凶器の発見は求められないという観点から、いろいろの事情を総合して、宋哲準がジャック・ナイフで刺したものと当時は確信して起訴した次第であります。
○猪俣委員 諸君がそういう簡単に確信を持つことに非常に危険性があるのですよ。これはしろうとが考えたっておかしいんだ。けんかのときにそれこそナイフを持ち出すのが普通じゃありませんか。そのときはげたやそういうものでやっておるのです。げたでなぐるくらいなら、凶器をひらめかすことは、これは不良どもの常套手段ですが、そのときにそれをやっておらない。そこに第一疑点を持たなければならない。しかも、警察で一回言ったきり、あとはことごとく否認しておる。しかもその凶器の行方というものがわからない。そういうことに多大の疑問を持たなければならないのを、早く事件を固めてしまいたい、早くだれかの責任にしなければならない、それがもし彼らの行為じゃないとすれば、新たなる犯人をまた捜査しなければならぬ、どうもそういうような頭が働いて、もっと突っ込んで捜査を徹底的にすべきものを、いいかげんに切り上げて、もう今つかまっておる者に責任をかぶせてしまおうという、そういう考えが一体濃厚に働くのじゃなかろうか。私はそれが非常に危険だと思うのです。そのことが如実にこの京都の事件に現われてきているから、当法務委員会が問題にしておる。というのは、御存じのように、八海事件はどうですか。今あなたは、他の浜田、山本が言うたことをもって、もうそれに真実性ありとして、宋を傷害致死に問うておるが、八海事件の場合においては、今度は同じ共犯者と思われる連中の言うことは全然耳を傾けずして、一人の人間の言うことを信用して処断しておるのです。そこで、どうもつかまった人間に罪をかぶせてしまいたいということで、捜査方面に緻密を欠き、それに対する努力を欠いて、功をあせる傾向があるのじゃなかろうか。そこで八海事件のような問題が今でもある。あれはどちらが真相だかわれわれはわかりませんけれども、あの場合は、共犯者の言うことを全然取り上げないで、一人の人間の言うことを取り上げて処断している。この場合は、今度は一人の人間の言うことを取り上げないで、浜田だの山本という者の言うことを取り上げて、いずれも今つかまっている者の罪にするということでは軌を一にしている。そういうふうなそしりを検察官は免れないじゃないか。第一、凶器を発見せざるにかかわらず、傷害致死というような重罪をいとも簡単に切り上げてしまう、そこに私は非常に問題があると思う。あなた方は確信と言うけれども、しろうとから見ても確信を抱かれる状況じゃなかったのじゃないか。凶器がなぜ出てこないのです。それが出てこないだけでもおかしいと思わなければならない。なぜ私がこれを言うかというと、常識上この事件はおかしいんだ。宋が一回警察で言っただけであと終始否認しているにかかわらず、しかもその凶器が出てこないにかかわらず、しかもけんかの際には、凶器を見た者がないにかかわらず、宋が殺したんだという認定をして、——それは確信があったでしょう。それはそういう愚かなる確信です。実に未熟なる確信です。その確信に基いて、このうら若い女性を偽証罪にしたということです。これは何とあなた方が弁解されても、弁解できないじゃないか。実に粗漏なる調べ方です。しかもなお、私がはなはだふんまんにたえないことは、この二人の女性とも弁護人の申請した証人であります。弁護人は極力ほんとうの犯人は他にあることを弁護したに違いない。しかも、この宋が刺したというについてははなはだ不完全な証拠である。そこへ弁護人が新たなる証人を申請して、法廷で真実の発見に努力している際に、その証人に対してあなた方が偽証罪でおどかすとは何事だ。もし、弁護人の申請したる証人が、その証言をした日かその翌日かに全部検事に呼び出されて、それはうそだろう、うそだと言わなければ帰さぬぞというようなことにしてひっくり返されたら、一体弁護権というものはどうなるか。これは、前から、終戦前からの非常な大問題なんです。終戦前のごときは、検察官は、文武官僚の横暴に乗じて、弁護人が法廷で申請したその証人に対して、法廷で、裁判長を差しおいて、ちょっとお前残れ、ちょっとお前おかしいぞ、こう言うて残らした。われわれは、そのときに、もし疑問があったら、検事も尋問権があるんだから、法廷において証人をなぜ尋問しないのであるか、そのときには尋問しないでおいて、検事ただ一人のところに引っぱり寄せて、そうして帰す帰さぬと言って脅迫して、神聖なる法廷で証言したものを翻させる、一体こういう手段というものは実に徹底的な弁護権のじゅうりんであるということと絶叫してきたのであるが、戦後は少くなったと思っておった。しかるに、私今法務省に統計を求めているが、まだ報告になっておりませんが、かような弁護人の申請した証人を検事が偽証罪でおどかして前言を翻させるようなことは、終戦後やっておらぬと思っておったところが、どうもやっておるらしい。京都事件がそれをやっている。そこで、私どもは、これが十分に偽証の疑いをかけることが当然過ぎるほど当然の重犯であるならば、またやむを得ない場合もありましょう。偽証ということが絶無だとわれわれは言えません。しかし、今私があなたに質問したように、あなたは確信を持ってやったと言うけれども、そういう乱暴な確信を持たれたのでは、国民の自由の権利というものはとても守れません。現場で刀を振り回した者を見た者もなければ、その凶器を捨てた場所も発見できず、しかも、たった一回警察で言っただけで、あとことごとく否認しているものを、直ちにジャック・ナイフで刺したと認定し、しかも他に第三者がおるに違いないということを弁護人に指摘せられるということは、あなた方の恥じゃないか。なぜあなた方の捜査の眼に第三者がおることが発見できなかったのか。弁護人が調査してわかるくらいの事実を、諸君はなまけて捜査しないのだ。そうして、その真実を述べた者を偽証罪としておどかしつけて逮捕する、これは何ということですか。私どもは実に容易ならざることだと思う、かようなことがもし全国に行われておったらどうなりますか。憲法は空文にひとしく相なりましょう。それに対してあなた方はどうも反省しているように見受けられない。確信を持ちましたと言うが、どうしてこれが確信を持てるのです。しかも、共同被告人の証言というものが証拠能力ありやいなやは刑事訴訟法上の大問題じゃないか。そういうことを知らぬことはなかろう。そうすれば、共犯者の言うたことも証拠力がないと一ペんにきめられないけれども、同じ共犯者の言うたことというものはよほど割引して考えなければいけない。証拠能力上これは割引しなければならぬ。四人共同で傷害致死罪に問われるよりも、一人にかぶせてしまいたいということで、共犯者どもの一、二の人がしめし合したということになれば、一人の人がかぶることになるじゃないか。だから、共犯者の証言というものは、いいにしろ悪いにしろ、ほんとうの第三者の証言よりも刑事訴訟法上問題があることは、学者間の議論のあるところだ。そういう共犯者の言うたことかけを取り上げて、一体共犯者の言うかことが証拠能力あるかいなか、これは問題です。それだけを種にして、そうして、その凶器も発見できず、どこから入手してどうなったかということも発見できないままにそれを起訴する、それまではまだいいとして、真実を言った者を偽証罪で逮捕する、実に乱暴きわまる処置だと思う。これに対して中澤君及び泉君の所見を承わりたい。
○中澤参考人 申し上げます。宋哲準が相手を刺したものと信じて起訴したところが、宋以外に真実被害者を刺した佐藤という者か自首して出て宋が刺したという認定が誤まっておったということにつきましては、事件を捜査した主任検察官として深く反省いたしております。御質問の趣旨、よくわかりましたので、今後ともその点につきましては十分留意反省して遺憾のないようにいたしたいと思っております。
○猪俣委員 なお、私は、あやふやなる諸君の捜査結論、宋が刺したという結論、これは多大の疑惑を持たなければならぬ。それに対しまして、第三者がおるのだという意味の証言をしたところの弁護人が申請しましたところの証人、これに一応偽証の疑いをかけるということ自身がわれわれは不満であるけれども、それはまあ百歩譲っていいとしても、異常なる深夜の通常逮捕、心ある検察官は厳に懐しまなければならぬという定評のある深夜の通常逮捕を断行する。しかも、主任検事が遅疑逡巡しておるというと、これを激励叱咤した。その言葉も、私は、森島検事の言うたことが、職を賭してまでも言うたことが正しいと思います。なぜならば、森島検事はそれを法務大臣から検事総長、検事長、検事正までに上申しておる。それが通らぬので辞職した。人の死なんとするやその言やよし、役人が職を賭する場合において、それが虚構の言だというようなことは言い切れません。その言を信ずるならば、女の一人くらいを逮捕できないか、そんないくじなしなら他人にかわらせる、——役人が自分の所管したる事務を他の人にかわらせられるということはいかなる苦痛のものであるか、あなたわかるだろう。しかるに、そういう指示をする。実に異常なことだと思う。ここに検察官の重大なる問題がひそんでおると私は思う。それに対して、あなたは、そういうことを言うた覚えがないということで、客観情勢や状況証拠は満点であるにかかわらず、なおこれを否認しておる。そうして、宋が刺したなどという状況証拠は薄弱であるにかかわらず、これを認めておる。あまり手前勝手な議論だと思う。それはいいとしても、あなたは一体どういうふうにお考えになりますか。弁護人が申請した証人が、しかも宋が自分で刺したということは警察で一回しか言っていない、凶器も発見されない、そういう事実に対して、他に犯人があるような証言をしたならば、直ちに検察官は慎重な態度をもって真犯人が他にあるかないかを捜査しなければならないにかかわらず、かような真実発見に協力した証人を深夜偽証罪で逮捕するような命令をあなたが出したとするならば、言葉はそうは言わなかった、女一人逮捕できないか、他人にかわらせるなんということは言わなかったにいたしましても、かような異常な命令をあなたが上司として出したことに対して、あなたは今一体いかなる責任を感じ、いかなる感想を持っておるか、赤裸々に述べていただきたい。
○泉参考人 お答えいたします。弁護人の申請にかかる証人が検察官の意図する公訴事実に沿わない供述をしたからといって、それを直ちに逮捕して偽証として取り扱うというような考えは平素からも持っておらないのであります。私どもといえども、真実を発見するためにかすかな努力を日夜続けて参っておるのでありまして、本件について果して証人が指摘するような第三者がいたかどうかということについては、多大の疑いを持って、起訴の当時もそのように考えていたわけなのでありますが、先刻来申し上げましたように、その両証人の証言が著しく食い違うというようなところから、いずれが真実なりやということの発見に苦慮した結果、先般来申し上げておるような経過をたどりまして、ついに逮捕というところに立ち至ったのでございまして、将来は、そういう事実については深く反省をして、御指摘のような点に十分注意をしてやる覚悟でございます。
○猪俣委員 今のあなたのお話、検察官の御苦心のあるところも了察できるのでありますけれども、今他にあるという疑いを持っておったとおっしゃられることは、私は重大だと思うのです。この証人が偽証とされた根幹は何でありますか。多少洋服の色が変ったり、便所の位置が変っておったり、そんなことは問題じゃない。そんなことでまさか偽証として逮捕したのではありますまい。他に犯人があるがごときことになるならば、今起訴したものが不起訴になる。無罪になってしまう。起訴した責任上、起訴を維持しなければならぬという頭が働いたと思う。他に宋以外にだれか刺した人間があるという疑いも持っておった、その疑いがありながら、そういうことの証言をしておる両人を偽証罪で調べるというのは、どういう心理状態なんだ。これは非常に重大問題です。私どもが皆さんを追及するのはその点なんだ。あなた方はどうもおかしい。宋以外に何かあるのじゃないかという疑いを持っておる、これは正直な言だろうと思う。そういう疑いを持っておりながら、他にあるかのごときことを証言したことに対して、偽証の疑いありとして、これを逮捕する。これは二律背反じゃありませんか。どうしてそれを調和するのだ。他にあるのじゃないかという疑いを持っておったならば、まず第一に、他にあるかないかを徹底的に捜査をすることが中心ではないか。それでどうしても宋以外に発見できないという場合に、再び偽証かどうかということを考え直しても、順序としていいのじゃなかろうか。しかるに、自分自身も他にあるのじゃなかろうかという疑いがあったと言いながら、その疑いがあるならば、この証人の証言というものは頭から偽証だというわけにいかぬのじゃないか。そういう疑いを持ちながらなおこの証人を偽証として逮捕する、これは精神分裂でなければできない芸当だと僕は思う。この二律背反をどういうふうに調和なされ、どういう統一ある行動としてあなたは説明なさるか、お聞きしたいと思います。
○泉参考人 お答えいたします。言葉が足りませんので、はなはだ申しわけありませんが、他に第三者があるのじゃないかという疑いを持ったというのは、起訴当時にさような供述が現われたり消えたりしておりましたので、あるいは他に犯人があるのじゃなかろうかというので、主任検事等にもそういう点についての捜査を指示いたしまして、ついに起訴するという結論になったのでありますが、その点について疑いを持っておったのであります。そこで、起訴した後において、果してあるかないかというようなことについては、全然疑いがないというような確信はございませんでしたが、現われたいろいろな公判経過の状況から観察いたしますと、何かしら第三者を作り上げようとする作為があるのじゃなかろうかと疑われる幾多の事情がございましたので、先刻来申し上げておるような経過をたどって、偽証の調査をいたした次第でございます。
○猪俣委員 起訴以前にさような疑いを持った、しかしいろいろ審議した結果起訴したと言われる。そこで私がさっき言った言葉が出てくる。一たん起訴すると、どうしても検事は自分の起訴を維持せんとして懸命になる。これは一面責任ある立場として当然のことだと思いますが、検事は公益の代表者なんです。民事事件の原告、被告とは違うはずなんです。裁判の真実発見の便宜上、弾劾制度をとって、検事と弁護人が両々相対峙して、裁判官は中正の立場において判断するという制度はとっておりますけれども、これは真実発見のための便宜上の制度であって、民事上の原告、被告のごとく正反対を争うべきものじゃない。検事は、検察庁法の四条にあるごとく、公益の代表者たる資格がある。この資格に基いて公訴権を行使しておられると思うのです。そこで、起訴より以前にすでに他にあるのじゃないかという考え方があったが、しかし、これは裁判と違うから、徹底的の真実まで到達しないで、一応の嫌疑、相当の理由があって起訴されることもいいでありましょう。私はそれまでとがめるのじゃありませんが、いやしくも起訴前にすでにそういう疑いがあった際に、弁護人から法廷に申請して、諸君のほのかであってもさような疑いを明らかにするような証人が出てきた際に、諸君が真に人権を尊重し、そうして真実の発見に熱心であるならば、自分の起訴、不起訴に拘泥せずして、まず、第三者があるような証言をする者があるならば、踏み込んでその方向に捜査を進めなければならなかったのじゃなかろうか。しかるに、さような証言をする者にやいばを向けてこれを逮捕するというようなことは、向け先が違っているのじゃなかろうか。その点についてどうもあなた方はまだ反省が足りないと僕は思うのです。それをさっきから聞いておるのです。起訴前であろうが後であろうが、すでに疑いありとしてあなた方が立ち上った以上は、その疑いに輪をかけるような証人が神聖な法廷で出た以上、——しかも国家権力を持たざる弁護人がそういう情報を手に入れて、そうしておそらく公判まぎわになってわかったのじゃなかろうかと思う。だから在廷証人にまでなったと思うのだが、そういう証人が出ているのです。何ら国家権力のない弁護人がそういう状況を収集しているじゃありませんか。それなら、それが本職で、その権力を持っておる諸君が捜査線上にそれを明らかにできない道理がない。それをなまけておって、偽証逮捕というような異常なことをしたというのは、諸君が相当の責任を感じなければならぬと思うのです。それについて、どうも諸君自身は完全なる行為をやったようにしか弁解をしておらぬように私にはとれるのであります。私どもも検察官の苦心はわかりますけれども、強大もない権力を持っている限りは、よほど慎重にしてもらわなければならぬ。そうして、諸君は運が悪いのかもしれぬが、近ごろ全国に警察、検察官がこういう独断的な、十分な証拠なくしてどんどん裁判を進めるような傾向が相当出てきて、われわれ当法務委員会においてもそれが問題になったやさき、しかも八海事件などということで全国に検察官、裁判官の威信がそこなわれておる今日、またこういう事件を引き起した。だから、諸君としては運が悪かったかもしれないけれども、これを徹底的に明らかにしなければならず、また、諸君がここにおいて反省する言葉によりまして、これは全国の検察官に非常に響くと思う。あくまでも諸君が自分の非を認めないで押し通すということになりますと、これは重大な問題だと思うのです。ある意味においてあなた方の反省を私どもは尋ねておる。無理を言うているのじゃないと思うのです。どうしても捜査の手落ちである。その手落ちをこのかよわい証人におっかぶせてやってしまったというように思われるのです。そういうことに対して、いま少しあなたから反省の言葉が聞きたい。どうですか。
○泉参考人 お答えいたします。本件はまことに稀有な事件であると私は考えておるのでございます。真実発見のために、しかも過誤なきを期して、寃罪を罪するというようなことのないように、日夜苦心いたしまして捜査に従事しておる次第でございますが、本件のような結果を招来したことにつきまして、今後十分反省をして…… 〔「逃げ口上を言うのじゃない」と呼び、その他発言する者あり〕
○高橋委員長 静粛に願います。
○泉参考人 過誤なきを期して邁進いたしたいと考える次第でございます。
○猪俣委員 私はまだ幾多の疑問があるのでありますが、あまり時間が長くなりますので、最後に法務当局にお尋ねしたいと思う。先ほど、ここにいらっしゃる二人のお嬢さん方の証言によりましても、これだけ新聞及び当法務委員会が調査を始めているにかかわらず、法務省ではこの娘さん方が相当乱暴な調子で検事に偽証罪の汚名を着せられて調べられたことについて調査しておらぬようである。そうして、中間報告なりとして当委員会に配付したものを見ても、この点についてはほとんど触れておらぬ。そこで、私はお尋ねしますが、森島検事が法務大臣、検事総長及び検事長、そういう方々に血涙をふるった上申書を出しておる。その上申書の中には、当法務委員会にも上申書が出ておりますが、大同小異のことが訴えてあったと思うのであります。自分だけの責任じゃないのだ、上司の命令で自分は不本意ながら断行したのであるということを訴えておる。ことに、松原政務次官が参議院で不用意に森島検事だとおっしゃった。これは、松原政務次官の人となりから、悪意ある放言じゃないと思います。しろうとの人でありまするし、森島検事という人が調べたということから、森島検事の責任だ、こう思っておっしゃったのだろうと思うのです。だから、私は松原政務次官を深く追及する意思はありませんけれども、岸本さんは専門家だ。検事総長、法務大臣、こういうところへ上申書が来ている。法務大臣は当時病気で休んでおられたから、松原政務次官はしろうとであるので、あなたが事務次官として全責任を持ってこれを検討したはずである。この森島検事が切々たる訴えをしてきている上申書に対して、一体いかなる処置をとったか、御説明願いたい。
○岸本説明員 お尋ねの森島検事からの上申書、これは確かに法務大臣あてのものを拝見いたしました。そこで、われわれといたしましては、あの上申書に森島検事が書いてあるような事実があるかどうか調査しなければならないと考えまして、横井課長に調査を命じたような次第であります。横井課長が京都におきまして、上申書に書いてあるような事実につきましても調査を進めた次第であります。調査の内容につきましては、実はまだ国会の御審議が終了いたしませんので、最終的な結論を出すまでには至っておらないのでございまするが、横井課長が京都におきまして調査いたしました結果、すなわち現段階における調査の結果が判明いたしておりまするので、それで差しつかえございませんければ、この際申し上げてよかろうと思います。横井課長に説明してもらいたいと思います。
○猪俣委員 どうぞ。
○横井説明員 それでは、私が第二回目に京都に参りまして調査いたしました結果のうち、おもな点を申し上げたいと思います。 最初に調査いたしました結果につきましては、これは四月十二日ただ一日の調査でございまして、はなはだ不完全であったと思いますが、印刷物にしてお手元に配付いたしましたし、当委員会におきましても大体の報告をいたしている通りでございます。今回の調査は、前回の調査に引き続きまして、主として次の三点でございまして、なぜ捜査の最初の段階に、仲裁人と申しますか、第三者が介入しているような点が調書上見えているにかかわらず、これがなぜ追及されていないのか、あるいは追及されていてなぜ発見されなかったかという点が第一点であります。それから、第二点は、偽証について逮捕までした事情はどういう事情であったか、こういう点でございます。それから、第三点は、これは前回の調査以後発生した森島検事の辞表提出という状況、なぜそういう事態に立ち至ったかという点でございます。 最初の二つの点につきましては、大体午前中から各参考人が述べられました通りでありまして、第一の真犯人らしいと申しますか、仲裁人的な男が捜査の最初の段階におりまして、それが途中で消える。警察なり検察庁に聞いてみますと、とにかくそういう調書がありますものですから、警察におきましては当時の目撃者を数人調べたそうでございますが、その結果は、仲裁人を現認して、それらしき者がおったという供述のはっきりしたものが得られなかったようであります。さらに、事件が検察庁に送られて参りまして、中澤主任検事がその点について、第三者らしき者がおったんじゃないかと思うから、それについて捜査をせよということで、さらに警察に命じまして捜査をせられたらしいのでありますが、その結果も、当時現場付近におりました者の口からは、第三者がおったというはっきりした供述が得られておらないようであります。そこで、先ほど中澤部長が申されましたように、一応諸般の状況は宋がやったのじゃないかと思われるというところから、これを起訴されたもの、こういうふうに伺って参ったのであります。 それから、第二点の偽証の点でございますが、これは、先ほど直接この捜査並びに処理に当られました次席検事及び公判部長からるる御説明がございましたから、省略さしていただきたいと思います。 第三の森島検事の点でございますが、これは、私が前回に調査に参りました四月十二日に、私は、当時はこういう事情がございませんから、なぜ真犯人が発見できなかったかという点並びに偽証の点について伺ったのでありますが、森島検事からも、公判の動き等について当時の森島検事の観察を伺って参ったのであります。そのときに、森島検事からは、実は逮捕について消極意見であったというお話は承わらなかったのでありますが、当時検事正並びに次席検事からは、この事件については偽証の点については上司が責任を持つんだ、上司に責任があるんだ、こういうことを二度私にはっきりおっしゃったのであります。そこで、私は、こういう事情を当時存じませんものですから、その意味をはっきり捕捉いたしませんでした点は、私の調査不十分であったのでありますが、とにかく、そういう御意見がございましたので、帰りまして上司に報告いたしたのであります。ところが、御承知のように、十六日の参議院の本会議におきます松原政務次官の発言が大きく新聞に扱われまして、それについて京都地検で心配している、こういうお話でございましたので、直ちに京都へ電話いたしまして、政務次官の発言の全趣旨は、森島検事だけに責任を負わせる意味じゃないのだ、ですから誤解がないようにということを伝えたのであります。このことは、今回調査に参りました結果、上司から森島検事には伝わっておったようであります。しかしながら、森島検事の説明によりますというと、自分としては、上司に対して従来信頼しておったけれども、裏切られたという気持は、その説明でも払拭できなかった、そこで、自分の立場を自分で説明する以外に方法はないと思い、検事正の了解を得ずにあの上申書を出しました上で、検事正のところに上申書を持って参ったそうであります。そこで、検事正としては、直接こういうものを出すことは穏当を欠くからということで、一応いろいろ説明されたそうでありますが、森島検事は、これを聞き入れられず、最後に辞表届というのを出しまして、そのあとですぐ新聞発表ということになったようであります。ところが、森島検事に私直接会いましていろいろお話を伺いましたところによりますと、辞表届を出せば当然辞職したことになる、従ってそれ以後は行動の自由があるのだというところからああいう新聞発表をしてしまったけれども、自分としては現在のところあれは軽率であった、というふうに述懐しておられたのであります。なお、その際、午前中に問題になりました女一人という問題がございます。これは各新聞に出ております。ところが、森島君は、上申書にもその点は書かなかった、新聞記者にもその点は言わなかったつもりである、こういうことを言われました。ところが、新聞社の方々に伺ってみますと、女一人ということは言ったということになっております。おそらく、これから察しますと、女一人という言葉は新聞社の発表の際に森島検事が言われたのではなかろうかと思いますが、森島検事自身、泉次席からさようなことを言われたことはないと言ったことを、私に対しましてはっきり否定しておったようであります。 以上が私の調査して参りました概要でございまして、なお、不足する部分は御質問に応じてお答えいたします。
○猪俣委員 あなたが二度目に調べに行ったのはいつですか。
○横井説明員 本年の四月二十四日の夜行で参りました。
○猪俣委員 森島検事の法務大臣及び検事長あての上申書というものは四月二十日に出されておる。そうすると、その上申書の内容をあなたに話したろうと思う。そこで、これは岸本さんにお聞きしますが、どういう意味の上申書でありましたか。
○岸本説明員 いわゆる京都事件は、全然自分の責任ではなくして、上司の命令によって本件の偽証被疑者を逮捕したのである、大体こういう趣旨のように記憶いたしております。午前中のこの委員会で、私当初の部分につきまして欠席いたしましたのでよく承知しないのですけれども、おそらく午前中問題になりましたのと同一内容であろうと考えております。
○猪俣委員 そうすると、結局森島検事自身は、あまり自信がないにかかわらず、上司の強制によって逮捕状を申請したという事実でありますがゆえに、その点について徹底的な調査を命じたはずであるし、命ぜられたはずだと思う。それについてのあなたの報告は、まるでぬるま湯に手を突っ込んだような感じで、さっぱり核心に触れておらぬ。これはお互い同職の方々で無理かもしれません。ただ、私が遺憾に思うことは、真実を言うたにかかわらず偽証として逮捕せられたという異常な事件について、なぜその被害者自身について法務省はお調べなさらぬのか。一体、午前中の証人が言うた早川検事というのはどういう立場で調べに行ったのですか。私は法務省は実に不熱心だと思う。そのわれわれの中心とする点についてちっとも調査しておらぬ。弁護人が申請した証人、それがしかも真実に合っているものを、他にあるのじゃないかという疑いを持ちながらもその人間を偽証として深夜において逮捕をした、そうしてどういう調べ方をしたか、これは新聞にみんな発表されておる。そういうことに対して、被害者じきじきに何がゆえに諸君は調べないのか。そうして役人どもの言うことだけを聞いてお茶を濁すようなことをやっておったのでは、われわれ承服できない。だから、あなたにもこの前最後に要望した。二つくらい徹底的に国民の名において調査してもらいたいということを言うた。ところが、あなた方の調査が信用できないから、当法務委員会の活動になったわけです。この委員会の活動になりましても、まだあいまいなんです。どういうわけでこの被害者自身を横井君自身が直接に調べなかったか。直接調べたならば事の真相がだんだん明らかになるわけです。それから、警察においても拷問が全然ないという報告をしておる。そういう形跡はないんだ、なおこれは調査中だと言っていますが、私はおかしいと思うのです。拷問ということは、ただ肉体的苦痛を与えることじゃない。誘導尋問も拷問の一種です。いやしくも憲法や刑訴法の精神に反する行動は拷問であります。肉体的苦痛のみならず精神的、名誉的な苦痛を与えることはみな拷問である。誘導尋問は拷問だと思う。終始一貫検察官に対しては否認いたしておる彼が、何がゆえに警察においてただ一回といえどもそういう人を殺したというような重大なことを自白したのであるか、それに対してもっと徹底的に調査しなければならぬはずである。ところが、あなたの中間報告は、警察の刑事部長、監察課長の説明ではどうも人権じゅうりんのような事実は見当らぬと言う。人を笑わせないで下さいよ。刑事部長、監察課長はどうだ、ありません、ああそうか、そんな報告が本委員会に通るわけはありません。なぜ被害者自身に聞かないのですか。この偽証したという女の人たちに聞かないのですか。それだけの調査をしないで、ただ便々と何べんも京都へ行っておる。そうすると、一体諸君は何のために行っておるのかわからない。事をごまかすために行っておると言われても仕方がないじゃないですか。どういう調査をしましたか。なお遠からず明らかになるであろうとあなたは報告しておる。そこで、警察においていかなる調査をして何人を調べてどういう結論になったか、それをお聞かせ下さい。
○横井説明員 私が調べに参りました四月十二日は、おっしゃる通り、人権じゅうりん関係につきましては警察の刑事部長と監察課長から事情を聞いただけでございます。その報告をいたしました際に、猪俣委員から、徹底的に調べろというお話がございました。同時に、警察並びに人権擁護局においても調べるように、こういう御希望があったのであります。そこで、現在、警察におきましてはもちろんのこと、人権擁護局におきましても、特に係官を派遣いたしまして、そうして村松証人とも直接会われるなり、あるいは京都の法務局の係官を介して調べられるなりしておられるのであります。私自身が直接第三者であられる村松証人等に当りまして調べるということは、私自身の立場から適当でないと思いましたので、すべてを人権擁護局にまかせたわけでございます。
○猪俣委員 私は、弁護人の申請した証人を偽証として検事が直ちに逮捕するというようなことは、弁護権を破壊する重大事件であると思う。しかし、真にやむを得ざる悪性なる証人もなきにしもあらずですから、それまで言うのじゃありませんが、とにかく、今回のごときは、他に犯人があるがごとき疑いの事情のある際に、まずその方を捜査せずして、これを偽証罪として逮捕するということに重大性があるのであります。だから、真に法務省において人権の擁護、憲法の精神というものを体得せられておりまするならば、その点についてもう少し念の入れ方がありそうだと思うんです。ところが、この御婦人に対して何も調べていらっしゃらないで、当法務委員会でここに新たなる事実が出るような始末です。諸君の報告には何も出ておらぬ。こういうことでは私はいけないと思うんです。法務省の中心点の置きどころが違っているのではないか。ただ、泉検事や中澤検事は無理してなかった、警察は拷問してなかったなんて報告するばかりでは意味ないのであります。 そこで、私は、こういうことに対して、とにかく遺憾の意を表するとともに、今からでもおそくありません、もう少し徹底的に調査していただきたい。なぜならば、泉次席検事は、当法務委員会においても、森島検事が憤慨して辞職するに至ったような言動はなかったということを強調せられております。そうすると、森島検事は荒唐無稽のことを言うて上司に傷をつけて自分は身を引いたということに相なりまするならば、これまた官紀粛正の上から許すべからざることであります。いずれであるか、もう少し徹底的に調査なさらなければいけないのじゃなかろうか。どうも上すべりの調査ばかりやって事を糊塗しているように見受けられる。私は、諸君の報告に対しては異議のあることをここに厳重に主張しておきます。それに対し諸君がどういう行動をとるか、なお私どもは注視したいと思うのであります。 それから、今回の事件におきまして、私は平素考えている点があるのであります。刑事訴訟法あるいは刑法の実体法なんかも改正の要があるかも存じませんけれども、現在のままにおいて検察官だけを責めてみてもあるいはいけないのかもしれませんけれども、政務次官も事務次官もおいでになるし、刑事局長代理もおいでになりますから、ちょうどいい機会であるから申し上げたいと思いますが、これは私どもの考えだけじゃないのです。東京地方裁判所の千葉判事も言っているのであります。「捜査の実際では状況証拠を集積して犯人を検挙するということはごく少いのです。むしろ最初からそれは断念して、まず被疑者の自白を求めようとするのが、旧法時代から現在に至るまで少しも変らない捜査方法だと思うんです。だから弁解をおそれ、法廷で自白が崩れると、事件そのものも崩れるのです。」、こういうことを判事自身が告白しておる。私は、検察の任にある人が、ほんとうに、この京都事件なんかを契機といたしまして、いろいろの反省をしていただきたい。立法上の反省ならわれわれも相談に応じます。また、行政権運用の方面ならば、どうぞ、両政務次官もおられることであるし、こういうそしりがないような十二分なる注意をしていただきたいと思うんです。それについて御所見を承わりたい。
○岸本説明員 ただいまの御質疑につきましては、私どもも全面的に御賛成申し上げる次第であります。 そこで、ただいま御質疑の中に、検察運用について意見あらばというお言葉がございましたので、あたかも京都事件が世評に上っておりまする折柄でございまするので、一点だけこの機会に申し上げて法務委員会の御参考に供したならばと考える次第でありまするので、発言をお許し願いたいと存じます。 元来京都事件の起りましのはいろいろの原因があるがと存ずるのでございます。その一つ一つについてここに申し上げることは差し控えさしていただきまするが、その一点だけについて申し上げてみたいと存じます。それは、御承知のように、刑事事件がきわめて繁忙をきわめておるにかかわりませず、検察官、検事、副検事を含めた意味の検察官、言葉をかえて申しまするならば、捜査機関の陣容がきわめて貧弱であるという点であります。(「だからでたらめでいいというわけにはいかないよ。」と呼ぶ者あり)それとただいまの問題とははなはだ趣旨が違っておりまするので、一応申し上げますが、事件が多いのにかかわらず検事の数が非常に少い。従って、一人の検事に与えられた事件の数があまりに多いために、一つの事件について十分身を入れて捜査を徹底させるということが、とかく怠りがちな点があるのでございます。(「当りまえだ、よけいなことをするから繁忙になるんだ」と呼ぶ者あり)そこで、もう少し検察陣容を強化いたしまして、一人の負担事件がもう少し少いということでありまするならば、事件の真相をきわめる意味におきましても、また事案の取扱いをいたしまする点におきましても、もっと適切妥当な運営ができるのではないか、かように考えておるのでございます。この委員会におきまして、かようなことははなはだよけいなことだというおしかりを受けるかもわかりませんが、かような機会でなければ申し上げることができませんので、一言お願い申し上げる次第であります。
○猪俣委員 本件を契機にいたしまして、いろいろ制度上にもお互いに改革をせなければならぬことが多々あると思いまするし、また、日本の実体法において、あまり犯意ということを重視いたしまして、そしてまた、刑事訴訟法において、状況証拠によって判断を下すということが相当制限されているような、犯罪捜査上相当の困難があることも私どもわかると思うので、そういうことにつきまして、刑法及び刑事訴訟法の改正の点がありましたならば、やっぱりこういうことを契機にして反省の資として一つ研究していただきたい。私どももまた研究したいと思うのであります。しかし、それに籍口して本件の責任を免るることはできないと思います。 なお、最後に、私はいま一つ重大なことをお聞きしたいのです。これは泉さんにお尋ねいたしますけれども、緊急逮捕でも尋常逮捕でも、逮捕状の請求を検察官がおやりになって、これに対して判事がその令状の交付をするまでに普通どのくらいの時間がかかっておりますか。
○泉参考人 お答えいたします。検察官自身が逮捕状の請求をする事例というのはあまり多くない実情でございます。従いまして、本件のように三時間前後も疎明資料の検討に時間を要するというような実例はあまり他にございません。どういう事件についてどの程度であるかということについては、今実情を一々つまびらかにしておりませんが、通常の証拠関係の明白なものは、疎明資料等によって簡単に発布が願える実情に置かれておるのでございます。本件については疎明資料を提出して裁判官の令状発布をお待ちしたわけなのでありますが、その疎明資料と申しますのは、公判の供述調書その他佐藤証人が森島検事に対して述べました自供調書その他検証調書というようなものなのでございまして、これをいろいろ御検討になった結果、刑訴の規則にございますように、検察官自身の口頭疎明を必要とするというので、検事がまかり出て、疎明を申し上げて逮捕状をもらったというような経緯にございますので、相当時間を費したことになるのでございます。
○猪俣委員 その疎明に行った検事はどなたですか。
○泉参考人 お答えいたしますが、森島検事と衣里検事が同道して参っております。
○猪俣委員 二人で説明に行かれた。そこで、今あなたの答弁を聞くと、普通逮捕状を請求しても、そう何時間もかかるようなことはない、今回は相当時間をかけた、これは珍しい事件であるとおっしゃった。そこに問題があると思う。けさの読売新聞を見ますと、検事が判事を非常に圧迫したということが書いてある。しかも疎明に二人の検事が出た。ここに私は問題があろうと思う。そんなことが一体今まであったか。大体、疎明資料をつけてやると、それで令状を交付される。しかるに、それに足らずして、検事が二人もついていって口頭で疎明する、こういうことをおやりになって、予審判事を相当圧迫したということがけさの読売新聞に出ておりますが、さような行為があったかないか。そういう疑いを持たれるようなことがあったかどうか。相当長時間令状交付がおくれていることと、二人も検事が行って判事と談判したことによって、この状況証拠からわれわれは相当判事に圧迫を加えたと考えられる。さような行為があったかどうか。相当判事は注意したのではなかろうか。それを、何としても通したい。それには、初めから弱腰の森島ではだめだから、そこでもう一人今言った衣里検事をつけた。あなたの深謀遠慮というものである。さような点があるかないか、御所見を承わりたい。
○泉参考人 お答えいたしますが、裁判官から検事に説明に来てくれという要求がございまして、検事が二人で参ったことは、ただいま申し上げた通りでございますが、あとで実情の報告を伺いますと、裁判官の面前で——面前というより自宅へ参ったのでございますが、自宅で説明の衝に当ったのは森島君一人だというふうに聞いておるのでございます。裁判官との折衝の状況等は詳しく存じておりませんが、衣里検事の語るところによりますと、裁判官から、罪を犯したことを疑うに足る相当な理由というものについて、具体的に資料は見たが、なお説明を願いたいというので、その点について森島検事が説明を申し上げて、それを簡単に了承願って令状の発布を受けたというふうに伺っております。
○古屋委員 関連して。今法務大臣がいらっしゃらないのでありますが、この問題は重要な問題でございます。私どもの考えは、検事さんの心がまえが昔と違っておらないというところにこの問題の起きた原因があると思う。今、岸本次官から、非常に人員が足りないというお話を承わりましたが、さような点よりも、検事の心がまえが根本であると私は思うのです。基本人権を尊重しなければならないということと、もう一つ一番大事なことは、御承知の通り、現在の刑事訴訟法の建前の、公平なる捜査と正しい真実に基く判断を裁判官にしていただくには、公判において弁護人に対して十分立証をさせるという寛大な心がまえがなければ真実は発見できません。と申しますのは、申すまでもなく、まずその起訴されるまでの間は、終始権力をもって被疑者に対する調査を進めております。被疑者の弁明をある程度まで許すべきものを許していない。被疑者に利益な立証をしろという寛大な処置をとっていないことは御承知の通りであります。ことに警察において非常に無理をされているという事実がある。たとえば銀座の雑貨商殺しの岩本のごとき、あるいは中国人の殺人事件の楊夫妻のごとき、あるいは最近起りました神戸のキャバレー新世紀の小林のごとき、警察がずいぶん無理をして自白をさせようとしている。被疑者がどんなに弁明いたしても許していない。こういう経路を経て起訴されているのでありますから、公判にお立ち会いの検事さんとしては、自分の方はここまでずいぶん捜査をしてきたんだ、被疑者の方はこれからやるんだという心がまえがなければ、これは公平な裁判というものは受けられない。最近誤判事件が非常に起きておりますのは、みなここから生まれている。検事さんが刑事さんの持ってくる調書をそのままうのみにして、先入観を入れておいて、ああでもないこうでもないという態度をとっている。私は、この態度を変えない以上は、本件のごとき問題は今後幾らでも繰り返されるおそれがあると思う。だから、現在の刑事訴訟法の精神を一体日本中の検事さんがはっきりのみ込んでいるかどうかということが問題である。この心がまえが一番問題である。従いまして、刑事さんが非常に無理をして作った調書に対しても、これを公平な公益な代表の立場から検事さんはこれを批判してかからなければならぬ。刑事の部屋へ行ってごらんなさい。片っ端しからぶんなぐるから、被疑者はきいきい言っている。そうして刑事はやらないやらないと言うけれども、検事は、その上塗りをして、その通り今まで調書を作っている。そこに誤判事件の基礎が築き上げられている。本件もそうです。従いまして、私は、この重大な問題も、どんなに制度を変えても、どんなに検事さんの数をふやしても、検事が当事者主義という刑事訴訟法の心がまえをのみ込まなければ絶対だめである。私は、当然、この点について、法務当局の方がおられますから、本件のごときこういうおそるべき事件を契機にいたしまして、法務省の当局は、検事全体の心がまえ、これからの検事の修習の問題、検事の訓練の問題について、現在の刑事訴訟法の精神をはっきり把握させて、そうして検事が捜査に当ってもらうということをお約束できるかできないか。私はこれは重大な問題だと思うのであります。この点を一つ承わっていかなければ、今のような答弁を百ぺん伺ったって、何ぼ繰り返してみても、真実発見だとか、拷問だとかなんとか言っても、日本の検事さんの取扱いではこういう事件が繰り返されると思いますので、断じてかようなことをしない、そういう訓練と修習をして、検事の再教育をしていただくような決心があるかどうか承わりたい。これ一点であります。
○岸本説明員 御質問の点はまことにごもっともな次第でございまして、ただいま御質疑の、新しい現行刑事訴訟法が公判中心主義を採用いたしておりまして、当事者訴訟手続をとっていることは、われわれ法務省におきましても十分了承いたしておる次第でございます。従って、この公判中心主義、当事者訴訟手続にのっとって訴訟手続を進めていくよう常日ごろ検事に指示、訓示をいたしておりまするのみならず、御承知のように、すでに司法研修所におきましては二年間にわたって司法修習生を訓練し、判事または検事になりましてからも、ある期間のある程度の実務修習を経た判事、検事を再びまた中央に招集いたしまして、諸般の指導、訓練をいたしまするが、その訓練の一つの項目として、ただいま御質問になりましたような点を掲げておるような次第でございます。何分にも、新しい刑事訴訟法は、御承知のように、終戦後欧米の当事者主義の制度を取り入れたのでありまして、まだまだ一般の職員がこれに習熟いたしておりませんので、われわれといたしましては、一日も早くこの制度に習熟し、再びかような世間の疑惑を招き、また世間から指弾されることのないような検察陣営を作りたいというのがわれわれの念願でございます。今後におきましても、御質疑のような趣旨にのっとりまして精進、努力するつもりでおりますから、何とぞ御了承を願います。
○古屋委員 ただいま非常にりっぱな御答弁をいただきましたのですが、ただ、今回の横井課長の捜査そのものがやっぱりそこの核心に触れてないので、私はあえて申し上げたのですが、なお、公判中心主義の審理の進行につきまして、私ども弁護人が証拠申請をすると、いつもあまり喜ばない態度をとるのです。これはもう日本中の弁護士会の世論なんです。この点は人によって私は解決がつくと思うのです。従いまして、今のような御趣旨のことと、なお一つの問題といたしましては、これはやはり長い間の官僚独善的な、国民に奉仕するというような考え方が非常に足りないと私は思うのです。そこで、私はあえて要望いたしますが、ただいま御答弁になりましたようなことを実践していただきまして、そうして、かりに起訴になされた中から無罪の判決をいただくようなものが出ましても、検事さんは喜んでこれを迎えるくらいの襟度を持っていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を打ち切ります。
○高橋委員長 志賀君。
○志賀(義)委員 これまで委員各位が質問されたこと、明らかになったことについては一切質問を省略しまして、きょうこの法務委員会に参考人を呼びまして聞きましたところが、ますますはっきりしないところが出ております。それらの点について若干質問します。 まず、森島検事の上申書のことでありますが、けさから委員の質疑に対して、泉検事は、女一人くらいと言ったことはないと言われる。横井課長の調査の結果を聞きますと、泉検事はそういうことを言ったことはない、森島検事自身も泉検事からそういうことは聞かないが、新聞記者には言った、こういうように言われました。そうですか。念のため確かめておきますが、大事なことですよ。
○横井説明員 私が森島検事から聞きましたところでは、自分はそういうことを言った記憶は、新聞記者に言った記憶はないと言っております。
○志賀(義)委員 けさ田中委員が申しましたように、全国でこのことが出ていない新聞はない。そうすると、泉検事に伺いますが、これは新聞がうそをついたということになりますか。新聞記者が大ぜいいますから、はっきりとそこのところを言って下さい。
○泉参考人 お答えいたします。私の考え方を述べることになると思いますけれども、私は森島君にさようなことは言うたことはないので、森島君が新聞社へ発表したかどうかということについては、私何とも申し上げかねるのでございます。
○志賀(義)委員 そうじゃないのだ。どうも、けさからあなたは逃げることばかり——逃げようとするから最後に妙なところで困るのですよ。もう少し率直に言って下さい。 私の伺いますのは、あなたが言ったこともない、そして森島検事も言ったことはないと今横井課長が言っていますね。そうすると、新聞社がみなうそを書いたと認めるかどうか、その点をはっきり言って下さい。ほかのことを聞いているのじゃないのだ。
○横井説明員 ちょっと私から……。私は、森島検事が、泉次席から聞いたことはない、新聞記者にも言った記憶はない、こう申したと申したのでありますが、先ほど私の御説明の通り、新聞記者各位から聞きますと、森島検事はその席で言われたらしいのであります。私はそう判断して参りました。ですから、森島検事が泉次席から聞かれないことを新聞記者にあるいはそのときの調子で言われたかもしれない、そういう可能性も若干あるのでありますが、直ちに新聞記者に言わないことを新聞記者が書いたという断定は困難かと思います。
○志賀(義)委員 そうすると、今度は横井課長にほこ先を向けますが、言わないことを新聞社が書いたのか。あなた、調査に行ったのでしょう。その結果あなたはどう判定されましたか。新聞社がうそを書いたのか、森島検事が言ったのか、もう一つそこをはっきり言って下さい。
○横井説明員 私の判断では、森島検事が述べておられるように判断いたします。
○志賀(義)委員 森島検事から上申書が出ております。それを見ますと、「村松は未婚の女性でもあるので、私の意見としては、今村松を逮捕するより、もう少し西村を調べたら良いと思いますと申しますと、次席検事は、それでは、これから逮捕して捜査しようとする検察庁の志気を沮喪するではないか、その責任だけでも大だ」、こう言ったと言っている。なお、もう一度折り返して森島検事が言ったときに、「君は無能検事だ、門日有能な検事に村松を取調させる、若し偽証を自白すれば君は責任をとれ、兎に角今夜逮捕しよう」、こう言った。このこともあなた言わないとけさ言われましたね。そうすると、森島検事がうそをついたと泉検事は判定されるかどうか。うそを言ったのかほんとを言ったのか、どっちです。あなたによれば、これはうそを言ったことになる。そこのところを言って下さい。
○泉参考人 お答えいたしますが、表現に真実に反するか誇張があるのじゃないかと私は考えます。
○志賀(義)委員 答弁にならない。 〔発言する者あり〕
○高橋委員長 静粛に願います。
○志賀(義)委員 そこをはっきり言って下さいよ。誇張とは何が誇張なのか。ある程度あなたが言ったことをここに誇張して言ったのか、全然ないことをこういうふうに言ったのか、そこをはっきり言って下さい。
○泉参考人 私は絶対に言うた覚えはございません。
○志賀(義)委員 今あなたは誇張と言われたが、誇張というのは、一寸ばかり真実があることを一尺に伸ばすことを誇張というのですよ。いいですか。一寸もないものを一尺に言うているのは、これは虚偽ですよ。そうすると、あなたは今自分が言った覚えはないと言われるが、森島検事が虚偽を言ったということを認められますね。その点をもう一度はっきり言って下さい。
○泉参考人 私はそのように考えます。
○志賀(義)委員 ところが、その森島検事はどう言っているか。これは重大な問題ですよ。国家公務員法の違反云々という問題になってくるのだが、現に、熊澤検事正は、辞表を出したことについて、国家公務員法の違反で懲戒処分も考えられぬでもないということを言っている。虚偽を言ったということについて、これはどういうことになります。これは岸本事務次官に伺います。
○岸本説明員 ちょっと今御質問の趣旨がよくわからなかったのでございますが……。
○志賀(義)委員 今泉検事に伺いましたら、森島検索が虚偽のことを発表した、当法務委員会に出した文書に書いてあることも虚偽だということを明言されたわけです。そうして、こういうことについて上司から強制されてやったということを森島検事が新聞記者に発表しましたね。それについて、熊澤検事正が、国家公務員法違反で懲戒処分が考えられぬでもないと言っておるのだ。独特の官僚的表現ですが、あなたはどう考えられるのですか。
○岸本説明員 どの点でございますか。
○志賀(義)委員 というのは、辞表が出ておるでしょう。その辞表は今どこにありますか。
○岸本説明員 大阪の検事長に進達しているそうであります。
○志賀(義)委員 その内容はあなたまだ御存じありませんか。法務省の方なりあるいは検事総長の方なりから、あなたの方にこういう内容だという相談がなかったでしょうか。
○岸本説明員 事実関係をまず申し上げますと、ただいま申し上げましたように、辞表そのものは大阪の検事長の手元にあるようでございまして、まだ検事総長及び法務省には進達されてございません。辞表の内容については、私、見ておりませんので、正確なことはわかりませんけれども、報告を受けましたところによれば、一身上の都合によって辞職したいという内容だそうでございます。
○志賀(義)委員 ところが、その一身上の都合ということでは済まされないというようなことをやはり熊澤検事正が言っている。そうなってくると、どういうことがその次に書いてあるか。「処が、四月十六日の京都新聞の夕刊に参議院における松原政務次官の答弁として、この事件の責任検察官は京都地検の森島検事であると判然り掲載されて居ました。」、そうして、上司の命令によってやって、自分は弁解する必要がないと思っておったのに、これで心のとりどころを失ったというのです。ところが、このことについては、先ほど松原政務次官から弁明がございました。私どもはそれを了としております。ところが、松原政務次官は御承知の通りの善良な人物であります。そうなってくると、泉検事は強制したことはないと言われる。横井課長をあなたの法務省の方から調べにやった。ところが、人権じゅうりんの事実もないとかなんとか言って、村松、佐藤も調べていない。こうなってきますと、結局どういうことになる。森島検事も、松原政務次官のちょっとした舌のすべりでということになると、この事件は、結局、法務省の官僚以外の、たまたまそこへ政務次官として入っていった松原政務次官にすべてのしわ寄せでもって片づけるという結果になるではありませんか。もしそうなると世間は何と思うか。法務官僚がぐるになって政務次官にというふうに思いかねませんよ。(「思う思う」と呼ぶ者あり)現にここの委員の中でも思う人がある。なおさら世間ではそうです。なお、私がきょう疑いを濃くいたしたのは、先ほど岸本次官の御発言の中に、検事が非常に忙しい、要するに検事が足りないということがありましたが、それをもう一歩つっ込んでいくと、何せ国会が予算を認めてくれないから検事をふやすことができない、——何のことはない、国会に責任を転嫁している。松原次官のような善良な人物だけが貧乏くじを引くのです。この辞表が出てきて結局あなた方はどう処理されるつもりですか。松原次官は責任をとりますと言っているが、そんなことになったらあなたは一体どうなるのか。
○岸本説明員 松原政務次官の国会における発言がたまたま森島検事の辞表を提出する一つの動機になったということは事実のようであります。しかしながら、これには客観的な事実に適合しない条件があるのであります。政務次官は、京都事件の責任は森島検事であると国会に述べたのではございません。責任の所在をはっきりさせるという趣旨であることは御承知おきの通りだと存じます。この国会における答弁が、どういうわけか、あたかも森島検事が京都事件の責任であるというふうに新聞に報道されまして、この新聞に報道されたことを森島検事がその通り思い込んでしまった。のみ込んでしまった。その間、これは誤解を招くおそれありとして、法務省から京都の検事正を通じて、あれは大へん間違った新聞記事であるから、そう思い込まないようにということを森島検事に通じたはずであります。たまたま、森島検事は、本件について、いわゆる真犯人が現われて以来、何と申しますか、非常に心が乱れておったと見えまして、検事正のそういったような忠告をも耳に入れなかったのか存じませんが、とにかくそう思い込んでしまって、これでは自分のたよりになるものはない、身をもってあかしを立てるのだというような心境になられたようであります。そこで、この心境のもとに辞表を出した、かように私ども判断されるのであります。
○志賀(義)委員 きょうは参考人をわざわざ呼んでおりますから、いずれ事件はそのあとで明らかにすればよろしいから、これ以上はその問題は追及せずに、次回にします。 次に、偽称に関する逮捕の問題でありますが、泉検事が述べられたところ、中澤検事が述べられたところ、偽証の嫌疑がある理由しか述べられていないのですがね。それに対して逮捕状を請求した。その逮捕状を請求した理由は何だったのですか。さっきからの繰り返しを言われては困りますから、私の方から端折るために言っておきますが、あなたでしたか中澤検事でしたか、法廷でこちらの村松と佐藤というのと並んでおったというのです。並んでおったからこれはくさいというふうなことを理由の一つにあげられている。きょうも二人並んでおられるからくさいと言われますか。警衛にそこにすわれと指示されれば、やむなくすわるじゃないですか。それを、いきなり、隣同士にすわっているからこれは言い合せたのだ、くさいのだ、こういう量見で調べられるから、こういう事件が起きると思うのですよ。それから、浜田という最初殺人犯の一人に疑われた少年の母親が公判廷で弁護士に耳打ちをしたということも理由にあげてありましたが、公判廷で弁護士に耳打ちをしたら、これは嫌疑の理由になりますか。こういうことをあなたは五つ、六つ、七つくらい並べていた。ところが、逮捕状の請求の理由は、こういうことでは成り立たないのですよ。成り立たなかった証拠には、今日あなたがここに出てこなければならなくなったのです。逮捕状の理由は何ですか。嫌疑の理由じゃない。京都弁護士会人権擁護委員会では、逮捕状発行について強制の疑いがあったと言っている。だから、これはどうしても逮捕状請求の理由をここではっきりしてもらわないと、こり事件は全貌が明らかになりません。その点だけ、簡潔でよろしゅうございます。二人が並んでおったとか、そんなくだらないことは言わないでいい。
○泉参考人 お答えいたしますが、法律的には証憑隠滅のおそれと逃走のおそれがあるという理由を付しております。
○志賀(義)委員 証拠隠滅ということになりますと、事実上証拠がなかったのでしょう。それを、証拠隠滅のおそれあり、逃走のおそれありと言ったのは、あなた方の非常な誤認ですがね。今まで二人が並んでおったとか、母親がこう言ったということまでも疑って、証拠隠滅、逃走のおそれありと言われたのでしょう。そうなってくると、四人は事実殺人犯じゃないですよ。嫌疑は、殺された者をぶんなぐったのですね。そういうことだけれども、事実は殺人ということではない。これは無実の罪だ。それを救おうとして、友人あるいは親たちが努力するのは当然のことでしょう。あなた、それを当然のことでないと見るか。これは証拠隠滅をしたりあるいは逃走の打ち合せをしたるものと認められるか。親として、友人として、これは当然のことだと思う。あなた、どう考えられるか。それを背後関係と認められるか、どちらですか。今の心境をお聞きしたい。
○泉参考人 お答えいたしますが、先ほどあげましたようないろいろな事情を、われわれは疑いを持って見たのでありまして、御指摘のような一つの事実については、親としては当然の考え方だろうというふうに思います。
○志賀(義)委員 では、そのときに、一方そういう疑いもあったでしょうが、これは親として当然のことをやっている、友人として当然のことをやっておるというふうには、そのときはお考えにならなかったかどうか、その点を伺います。
○泉参考人 けさほど申し上げました罪を犯したと疑うに足りる理由の基本的なものは、供述の矛盾であるとか、便所が違っておるというような事情が骨子でございまして、それらにつけ加えて、あまり法廷で例を見ないような、ただいま御指摘の、一緒にすわっている、あるいは母親が耳打ちをするというような事情も、そういう疑いをもって見たのでございます。
○志賀(義)委員 疑いのめがねをかけるからそういうことになるのです。それで、伺いますが、現在、村松さんたち、偽証罪でやられた人たちは、何か処分を受けておりますか。偽証が晴れて全然この事件の関係から排除されているか、それともまだ何か関係があるかどうか。その点を、あなたばかりに聞くと何だから、今度は中澤検事から……。
○中澤参考人 私は偽証の結果の処分については関与いたしておりません。
○志賀(義)委員 泉さん……。
○泉参考人 お答えいたしますが、検挙したこの事件の結果については、不起訴処分にいたしております。不起訴処分の内容は、起訴猶予ということに相なっておるのでございます。
○志賀(義)委員 重大な問題だ。不起訴処分ということと起訴猶予処分ということは、法務官であるあなたが知らないはずはないのだ。起訴猶予処分というのはどういうことですか、言ってごらんなさい。不起訴処分とはどういうことですか。あなたはあたかもそれを同じように言っておるが、これは重大な問題ですよ。
○泉参考人 お答えいたします。起訴猶予処分は、罪の成立を認めて、後において猶予することでございます。
○志賀(義)委員 そうすると、今でも村松さんたちは罪がある、ただ起訴を猶予しておくだけだというのですが、どういう罪があるのですか。それを言って下さい。
○泉参考人 お答えいたしますが、証言の内容は、基本的な大綱については偽証の点はまことに疑わしいと考えられるのでありますけれども、証拠上現われた部分については、さまつではありますけれども、法廷で述べられた、上着を着ていないのを着ているように述べたというような部分が、やはり法律的には虚偽の陳述になるというふうに判断いたしておるのでございます。
○志賀(義)委員 殺人の真犯人が現われているのですよ。いいですか。証言をした相手ですね。四人の者はこの殺人はやっておらないのですよ。それだのに、どうしてこれが証言が違ったから偽証になるのですか。そこのところを説明して下さい。重大問題ですよ。御答弁を願います。
○高橋委員長 今志賀委員はどなたに質問されたのですか。
○志賀(義)委員 検事ですよ。次席検事が言われたものだから。
○泉参考人 ただいまの御質疑の内容が少し明白じゃないので、もう一ぺんおっしゃって下さい。
○志賀(義)委員 これはきわめて重大な問題ですから、あなたも落ちついて聞いて下さい。いいですか。偽証ということは、犯罪があって、それに対する証言でしょう。今度の事件は、殺人事件で四人がつかまったが、真犯人は別にいたんだ。だから、殺人ということに関しては、これは別にこの四人は関係なかった。そうすると、それに関する証言がどうして起訴猶予処分——犯罪があることを認めるが起訴は猶予するということになります。どういうことでそうなるのですか。まことに世にも不思議なことだが……。
○猪俣委員 関連して。偽証の有罪であることの認定をしたわけなのだから、どういう事実を偽証と見たか。偽証した事実、それをはっきり、第一は何、第二は何、第三は何と、それをはっきり言ってもらいたい。そうすると、そこに偽証したと思われる人がいるのだから、それが一体その人たちが任意に述べた事実であるかどうか、そういうふうに強制的に書かれ、誘導的に書かれた、その事実をつかまえて、これが偽証の事実だというのかどうか、それを明らかにしなければならぬ。起訴猶予なんてとんでもない話なんだ。私はまさかそんなこととは思わぬので質問しなかったのだ。とんでもない話だ。これだけの真犯人が出ているのに、起訴猶予とは何事ですか。これはなで切り自由勝手という昔のさむらいの心がまえなんだ。それを言って下さい。これは委員長から質問してもらいたい。
○高橋委員長 猪俣委員並びに志賀委員の質問に対して、参考人泉君から陳述があれば伺います。
○志賀(義)委員 まだおわかりにならなければ、もう一度言います。猪俣君が言われた通りです。どういう事実を偽証に相当すると認めたか、それを個条書きであげて下さいと言うのです。第一何、第二何、第三何と言って下さい。
○高橋委員長 それでは、私からこの機会にお尋ねします。参考人の泉君にお伺いしますが、先ほどの発言中に、大綱についての間違いというのではなくして、その証言のある部分については偽証であるというふうに認められたという陳述がありましたが、そういうことがあったのですか、どうですか。すなわち、荒筋においては証人の供述としては間違いなかったけれども、こまかい点については偽証の点が認められたということがあったのかないのか、そこのところをお伺いいたします。
○泉参考人 お答えいたします。証人の便所で見た犯人らしき者の服装の点に関して、上着は着ていたかったのを見たが、佐藤証人から頼まれたので、上着を着たように法廷で供述をしたという事実に関して、これは真実に反し、かつ自分の認識した記憶に反して述べた虚偽の陳述であるということで、その点について犯罪を認めているわけでございます。
○志賀(義)委員 では、森島検事がどういう上申書を当法務委員会に出しているか、今の部分を読んでみますよ。「自首した真犯人は村松の証言通り中折帽に白トックリシャツと紺の背広を着、同色のズボンに半長靴を穿いた男である事実が判り、その頃から真実を証言した村松を逮捕した」云々、こうなっているのですがね。いいですか。こういうように、証言通りの事実がわかりと森島検事ははっきり言っているのです。どうして森島検事と違ってあなただけがこれを偽証だと言われるのですか。 そこで、私はちょっと村松参考人に伺いたいのですが、よく聞いて下さいよ。今森島検事は「自首した真犯人は村松の証言通り中折帽に白トックリシャツと紺の背広を着、同色のズボンに半長靴を穿いた男である事実が判り」、こう言っている。すると、あなたの証言通りだと森島検事は言っているのですが、そこはどうですか。
○村松参考人 私は、法廷で、せびろを着て、中折帽を着て、白のとっくりを着て、半長靴のようなくつをはいておったということを、証人として法廷で述べました。ところが、検察庁で調べられた際にそのことを言うと、それは全然うそだと、たびたび同じことを言われ、一つぐらいはうそでもいい、帰してやる——向うから、ほんとうのことを言えば帰してやると言って、同じことをたびたび言われたものですから、そのうそのようなことでもいいと思って、それを逆に持っていったのです。そうすると、向うが、こんなことぐらいでは偽証にならない、根本が肝心だと言われるのです。だから、私は、これ以上何もうそをついた覚えはないのですと言ったら、それではきょうは帰すと言われたのです。 それから、ちょっと次席検事さんに言いたいのですけれども、私は、逮捕されたとき、こう言いました。私は理由がわからないままに逮捕されるのはいやです、私はどうしてもその理由を聞かなくては入りませんと言って、もがいておったのです。そうすると、こう言われたのです。検察官は確実な証拠と、そうしてもう一つ何か言われましたが、それをもって逮捕する任務があるんだ、幾らさわいでもそれはむだだと言われたのです。それでもって、私は言いました。その証拠を見せて下さいと言ったら、佐藤和代がもう何もかも自供した、佐藤の言っていることは事実だ、佐藤は十七の少女であり、あなたは二十才のおとなである、まだ十七の少女ならうそをついても罪にならない、あなたは二十才になっているから、うそをついたら罪になる一。だから、私はうそをつかないのだと言ったのです。そうすると、佐藤の言うのは正しいのだ、佐藤ですらわかっていたのだ、それを理由にして逮捕すると森島検事は言いました。逮捕されるときの証拠はそれしかありません。
○志賀(義)委員 自首した真犯人は云々と私が読み上げたところは、これは法廷で宣誓して述べたわけですね。
○村松参考人 そうです。
○志賀(義)委員 法廷で宣誓して述べたことがうそであった場合には、これは偽証罪を構成する。しかるに、法廷で真実を述べて、その真実は森島検事も認めているにかかわらず、別のところでうそを一つでも言ったからというようなことで、検事の取調べのときに言ったそれを偽証の材料にするとは、これは一体何事です。あなた方、刑事訴訟法を何と思っておられるか。
○高橋委員長 泉君、今の質問に対してお答えがあれば……。
○泉参考人 結果的ではございますが、村松証人が目撃した便所と、自首犯人が立ち寄った便所とは全然異なっておるのでございます。抽象的に、ただ先ほど来あげられておるような服装の人物を見たと村松証人は述べるのでありまして、これも結果的にさような服装を自首犯人がしていたことは認められるのでありますが、立ち寄った便所が全然違っておるし、村松証人の供述の内容をいま少し詳しくお聞き取り願えれば、われわれが偽証と疑うに至った事情をるる信ずることができるのでありまして、そのような点で、便所で見た服装が自分の記憶に反しておるという事実を、偽証しておるというふうに観察をしたのでございます。
○志賀(義)委員 どうもおかしい。便所とはだいぶくさいところへ逃げましたね。(笑声)その便所について聞きましょう。どうもあなたの言うことは、だいぶ心神取り乱しておられますから、うしろに控えておる冷静な横井課長に聞きますが、あなたは、調査に行かれたときに、ここで報告されて、便所が非常に距離が隔たっておると言いましたね。どれくらい隔たっておったのですか。
○横井説明員 私が実測したわけではございませんが、四、五百メートル離れておると見られております。
○志賀(義)委員 では、あなたに伺いますが、これは真犯人は別にあったのだ。そして、誤まって逮捕されて、偽証と言われて、今奇怪しごくなことには起訴猶予処分ということまで判明してきたのです。そうなってくると、真犯人でもない者が真犯人に誤認せられたこの距離はおよそどのくらいになりますか。何百メートルくらいになりますか。それを言ってごらんなさい。(笑声)
○横井説明員 それは距離ではちょっとはかれません。
○志賀(義)委員 そうでしょう。はかれません。だから、あなたは結局重大でないことを重大なことのようにここに持ってきている。今、泉検事が、服装の問題ではとんでもないことになりそうなので、便所の方に逃げていった。そういうことをあなたは向うから言われるままに、はい、そうですがと聞いてきたことになるでしょう。真犯人でもない者を真犯人と認める距離は幾らだ。それははかれない。はかれないはずだ。これは無限だ。そういう大切なことはあなたは慎重に調査すべきだ。 ここで私は岸本次官に伺いたい。あなたは、これが果して人権じゅうりんであるかどうかは慎重に調査すると言われた。あなたは、鋭意司法研修所も設けて訓練しておると言われた。しかし、あなたが今事務次官で責任を持っておられるこの研修所から出た人たちは何をやっておるか。現にこういうことが起っておる。真犯人でもない者を真犯人とするには実に敏速果敢なんだ。そういう点についてはあなたの方は慎重ということを教えられているのかどうか。自分のところの役人の落度を調べるにはきわめて慎重だ。あなた方を養うために税金を出しておる主権者の国民についてはちっとも慎重でなくて、こういうことをやっている。この点、あなたはどう考えられますか。あなたは、この間から、速記録を見ると、慎重に調査する慎重に調査すると言って、部下をしきりにかばっておられる。その心がまえがあるなら、なぜ国民をもう少し慎重にかばうようにしないか。なぜ横井課長をやったときにそういう肝心の点を慎重に調査させないのです。そんな点が報告にちっとも出ていない。
○岸本説明員 はなはだ遺憾千万な事柄でございますが、横井課長が京都へ参りまして、その点十分な調査をいたしたはずでございます。と申しますのは、事何分にも公判係属中の事件でございますので、公判の記録に基いて、宣誓の上で証言いたしましたその証言調書等を十分検討する余裕がなかったように伺っておるのでありまして、令しばらくの時日がございましたならば、その公判調書に基いてなお検討しなければならない、かように考えているのでございます。
○志賀(義)委員 これは四月十三日の日本放送の現地ルポルタージュに出ておったのでありますが、この四人の者が、殺された人間をなぐったが、これは、本人たちの言うところによると、ハーモニカやスリッパでなぐったのだそうです。ハーモニカではなかろう、刃物だろうというふうに警察で問い詰められて、結局刃物になっちゃった。アルファベットでいくと五つくらい似ているけれども、だいぶ品物が違うんだ。こういう点は、横井課長、調べて来られましたか。
○横井説明員 私が調査に参りましたときに、ハーモニカでなぐったという事実は現われておりました。それと刃物とを混同したというふうには私は聞いておりませんで、ハーモニカはハーモニカ、刃物は刃物というふうに聞いております。
○志賀(義)委員 あなた方の調査というものがどういうものか、今よくわかりますね。要するに、あなた方は検事かかばうことは一生懸命だ。そこで、聞くが、こっちが起訴猶予処分にされているということは報告書に出ておりますか。これが奇怪千万ということをあなたは報告しておられるかどうか。それを伺いたい。
○横井説明員 私が調査に参りましたときの話では、村松証人を逮捕いたしましたのは三月二日でございます。三月二日に関係者をいろいろ調べましたところが、この事件の見通しといたしまして、これ以上発展させることは困難であるということで、直ちにその口に不起訴にした。その内容は、今、泉次席が言われたように、起訴猶予である。当時はまだ真犯人が出ておりません。そのときにもう不起訴裁定をいたしたようであります。従いまして、真犯人が出て参りました現在、この不起訴裁定の当否はあるいは再検討を要するかもしれませんが、三月二日付で不起訴裁定されております。
○志賀(義)委員 いよいよもっておかしい。一度不起訴処分したものを、今度は起訴猶予処分にしたのですか。もう一度はっきり言って下さい。
○横井説明員 私の言葉があるいは足らなかったかと思いますが、不起訴と起訴猶予という言葉は、実は、私ども使います場合に、不起訴の中に、嫌疑なし、罪とならず、あるいは刑事未成年、それから起訴猶予、これらを含めまして不起訴と申しております。刑事訴訟法上は、起訴しない処分ということで、その内容を一々書いておりません。ですから、私どもが不起訴という言葉を使います場合に、実はそれ全体を含めた意味の不起訴という言葉を使うわけです。その中で、特に起訴猶予は、これは刑事訴訟法二百四十八条にございますように、犯罪の嫌疑がありましても、諸般の事情から公訴を提起しないのを相当と認めて不起訴にする、これが起訴猶予です。ですから、私が今申し上げましたのは、三月二日に不起訴にした、その内容は起訴猶予であった、こう申し上げたのでございまして、あとからそれを変えたというのではございません。
○志賀(義)委員 なお、上着に血がついておったということを言われますが、八海事件の場合には、つめの間にノミのふんほど血がついておったというのが一つの証拠になっております。もしほんとうに宋がジャック・ナイフを持っておって——その場合に持っておったジャック・ナイフがどういうものか、ハーモニカだということが明らかになった。あなたも言われましたね。そうなってくると、かりにそのときにそのシャッターナイフを持っておったと共犯者が自白した場合に、どうしても、ナイフを使えば、検察官というものは、警察官もそうでありますが、多年の経験でわかる。やはり手に血がつくのですね。あとこうして洗ってみたところで、これが残るはずなんだ。その点は調べられたかどうか。着物の場合でなく、手のつめのところ、こういうところには血痕というものが残る。これは私が言うんじゃない。八海事件はこれが一つの証拠になって大問題になっている。この点はどうですか。
○中澤参考人 そういう事実は、調査の結果、ありませんでした。
○志賀(義)委員 なければ、そこでこれは真犯人じゃないのじゃないかと疑うのが常識ですね。そうでしょう。現に、四人が最初自供したときに、仲裁に入った者がいると言っているのです。これは二回目からみんな脱落している。よしんばあなた方がそのときこれが真犯人だと思っても、なぜもう一方の方を捜査しないか。真犯人は別にいるということを前堀弁護人が繰り返し主張していたじゃないか。その方に耳をかさずに、一生懸命こっちの方へ事件を片づけていってしまった。そして偽証罪までも作っておる。こういうふうなことになっておるのが事実であります。 そこで、これは今度の事件だけでついした失敗じゃないのです。三鷹事件の石川証人というものがありますが、法廷を出たところを偽証罪で逮捕しております。弁護人が申請した証人を勝手にこういうふうに逮捕するということは、決して今回だけの事例でないということがわかります。また、青梅線事件というものがある。検事側は相被告を証人にして出した。ところが、これは法廷でひっくり返ったのです。全然あべこべのことを言った。そうしたら、これを偽証罪でその場で逮捕している。こういうことでは、弁護人の弁護権がどうして確立されますか。先ほど来猪俣委員が力説をしておったのはその点であり、今回この衆議院法務委員会がこうして参考人の皆さんをお呼びしたのも、これでは弁護権が確立されない、今までこういう事例がたくさんあったということで、この点を明らかにするというのがその趣旨であります。このことは岸本次官、法務省の方でも十分御存じのはずです。ところが、その点は横井課長が行ってきてどれほど明らかになっておりますか。先ほど猪俣委員も追及した通り、肝心の点はすっかりぼかしているでしょう。これでは、あなた方、世間から見て、ぐるになって自分の同僚をかばう、あるいは下僚をかばう、こういうふうに思われたって、これは痛くない腹ではないのですよ。元来京都は名所の多い所だ。ところが、こういうでっち上げの事件でも京都は名所です。滝川君が、だれがやったかもしれないのに、あばら骨が折れていたというので、別の三上とかいう人が逮捕されましたね。今までいろいろの事件が起っている。けさからの話で、マンホールを探してナイフがなかったと言う。もし別のナイフがあったら、これはとんだことになるのですよ。その点でも京都は名所だ。ナイフがあるなら出せと言って、結局、しょうがない、疑われた人間が自分のうちに帰って、おふくろに言って、さびた別のナイフを持って来さした事件さえあるんだ。こういう点でも京都は名所です。一体京都の検察庁には何か知らないが非常に不明朗なものがある。予断をもって事をやるという伝統があるのではないか。この点、私は非常に大きい問題になると思う。八海事件のことは先ほど猪俣委員も述べた。先ほど申した青梅事件もそうです。松川事件にしてもそうですよ。松川事件というものは、これは大ぜいの被告が今第二審で死刑になっておる。こういう重大な事件、これも一人の被告が言った自白を証拠として、万事をその方へ合せて、証言も偽証々々でもって、自白を基礎にやっていく。共同被告の一人が言ったことを、——八海事件もそうでしょう。青梅事件がそうです。そこで、共通のものは何かと申しますと、こういうとんでもない事件に共通なものは、ほかでもありません。この日本の社会において最下層の生活を余儀なくされておる、そうしてとかく刑事事件に今まででも触れており、警察のだんなに対しては弱みを持っており、検察庁のだんなに対して常に弱みを持っておる、こういう者について予断を持って臨む。事件をでっち上げ、自分の思う通りの自白をさせて、万事をその方へ寄せていこうとするんです。こういう哀れな人たちは、あなた方検事がこれに当るときには、できるだけそれが真実のことを言うように助けてやるのが当りまえなんです。——こういう哀れな社会の最下層の人たちに対しては。ところが、どうです。この事件がそうです。この京都の五番町事件がそうですけれども、ほかに幾つも例のあることは、これらの事件ではすべてそういう人たちに自白させて、それにすべての証言も何も集めていって、事件をでっち上げようとしておる。そういうことがあるから今度のような事件が起った。この点について私は法務大臣がきょうおられたらその点を伺いたいと思うけれども、岸本事務次官、どうですか、こういうことがあるんですよ。
○岸本説明員 御質問の点、まことにごもっともでございまして、はなはだ恐縮千万でございまするが、私自身の経験及びただいまの考えを率直に申し上げまするならば、とかく検察官は権力を持っておるがゆえに、この権力の行使につきましては最も謙虚でなければならないというのが、私の長い間の経験でございまして、実は、私、こういうつもりで三十年の検事生活を送ってきたつもりであります。午前中どなたかから御質問を受けました、いわゆる検事の心がまえがなっちゃいないじゃないかというおしかりを受けたのも、その御趣旨じゃないかと拝察するのであります。従いまして、御指摘のように、ほんとうに検事の相手となる被疑者、参考人、証人といったような人々にあたたかい心を持って、打ち明けられるという検事になることが、これがほんとうの検察官であろうと思うのであります。それには、御承知のように、制度はともかくといたしまして、検事みずからひたすら修養しなければならない。検事という職を離れて、一個の個人として、人間としてりっぱな人格者にならなければならないというのが、いわゆる検察官の心がまえでありまして、私どもは、実は、私の接する限りにおきまして、かような考えをもって、いわゆる検察官の心がまえについて時々話もし、語り合いもしておるような次第でございます。先ほど申し上げましたように、新しい刑事訴訟法の制度に習熟しない今日におきまして、なおもっと研さんに努めなければならない場面がたくさんあるのでございます。今後一そう御指摘のような面に向いまして一般の検察官の教養を訓練することに努めたいという所存でございますので、御了承を願いたいと存じます。
○志賀(義)委員 最後に質問いたします。今のようなことが起るのは、根本はどこにあるか、これは法務委員会でもこういう大事件が出た以上は真剣に今後考えていかなければならない問題であります。根本は、私の見るところによれば、警察の豚箱、留置場ですね、これを代用監獄にするところにあるのです。ここへ検事が出かけていって、豚箱で調べるという制度になっている。そもそも代用監獄というものはどういう場合に使われるかと申しますと、刑罰としての拘留刑を行うのが目的であります。被疑者を長くここに置いてこれを代用監獄にするという規定は本来ないのです。そういうように拡大解釈して、そこでどんなことでも痛めつけられるということをやるからこういうことになる。これが根本です。今度監獄法を改正するということであります。牧野法務大臣によりますと、志賀は法務委員であり、かつ監獄生活の多年の経験者であるから、ぜひとも意見を聞かしてくれと言っておられました。きょうおられればその点について大臣の所見を伺うのでありますが、来られません。この代用監獄というものについては、監獄法を改正するまでもなく、法規上拘留刑だけの者に使うもので、こういうところに被疑者を長く置いて痛めつけて、ありもしないことを自白させ、この自白でもって犯罪をでっち上げていくというようなことは非常に困る。今後こういうことを検察庁にやらせるかどうか、そういう点を一つ津本事務次官に伺いたいのです。
○岸本説明員 ただいまの御質問につきましては、仰せ、ごもっともと、同感でございます。御承知のように、ただいま法務省におきましては、監獄法の改正を企図いたしまして、目下その作業中でございます。監獄法の改正の一環といたしまして、いわゆる未決拘禁法というのを制定する所存でおります。何分にも監獄法を数十年にわたって施行して参っておるので、作業がはなはだ困難をきわめておりますけれども、大臣はもちろん、私どもといたしましても、主務担当局を指揮いたしまして、すみやかにその立案に着手するよう督励いたしておるような次第でございます。目下さような状況で作業を進めておるような次第でございますが、現在の警察の監房を検事の勾留に使うなというお説、なるべくその御意見に沿うようにいたしたい所存でございますので、御了承願いたいと思います。
○志賀(義)委員 最後に一言だけ委員長の方に申し上げます。実は、この事件の事の起りは、例の「真昼の暗黒」という映画について、これが最高裁判所の五鬼上事務総長から干渉がましいことを受けた。これを取り上げようということになって、それがなかなか実現しないうちに、当の「真昼の暗黒」を見て今度の真犯人が自首したということであります。こういう事件は、全国に、この事件に劣らない松川事件、八海事件、その他いろいろあります。そういう事件も今後私どもはこの法務委員会において次々に取り上げていかなければなるまいと思います。どうかその点について委員長初め委員各位の御賢察をお願いしまして、私の発言を終る次第であります。
○高橋委員長 ただいまの志賀君の御発言に関しては、当委員会において理事会も開き、十分人権侵害のないよう国政調査の進め方等を決定いたしたいと考えておりますから、御了承願います。 猪俣君。
○猪俣委員 さっき問題になった、猶予処分の内容において不起訴になったということですが、それは、御説明によりますと、真犯人が出ない前に処分になった。今真犯人が出て参りましたこの実情におきまして、起訴猶予というのは、御存じのように、犯罪の疑いがあるのだが、いわゆる検事の便宜処分によって不起訴にするというのであって、本人たちにとってははなはだ芳ばしくないことになる。そこで、便所の距離が間違っておったというので、これはあるいは事実間違ったことかもしれないが、偽証の罪になるためにはやはり犯意がなければならぬ。偽証の犯罪意思がなければならぬはずであります。そういうことから考えて、ただ便所の位置が違っておったからということから、直ちにこれを偽証罪として、しかも、罪があるのだがまあ猶予してやろうというこの恩典にあずからせる処置というものは、僕は、検事の失態というものをみずから反省せずして、この疑われた人たちに罪をかぶせるようなことで、はなはだ不都合な処置であると思います。そこで、法律上どうなるか知りませんが、起訴猶予による不起訴処分というものを何とか改めて、結婚前のうら若い女性のぬれぎぬを晴らしてやることがせめてもの検察庁のおわびのしるしではないかと思いますが、それに対して岸本次官としてはいかなる方法がありましょうか、あなたの御意見を伺いたい。
○岸本説明員 ただいま適切なる処置につきましてちょっとここで私思いつきませんが、帰りましてそれぞれの担当官と協議いたしまして適当な処置を講じたいと存じております。これで御了承願いたいと思います。
○高橋委員長 細田綱吉君。
○細田委員 人権擁護局長に伺うのですが、これだけ京都の検察庁が大きなミスを犯して、さらにそれを合理化するために今言ったような起訴猶予処分のままにしておく、こんなことは、判決でないのでありますから、検察庁の処分で直ると思うが、あなたの方はどういうような御調査をして、どういうようなお考えを持っていらっしゃるか、その点をお伺いいたします。
○戸田政府委員 人権擁護局としましては、この事件を重視いたしまして、さっそく京都の地方法務局及びその監督法務局である大阪法務局に協力させてこの事件を調査させ、さらに人権擁護局から調査課長を派遣いたしまして、大体の調査を終っております。従って、先ほど問題になりました村松、佐藤両氏も調べてございます。ただ、調査が全部完了いたしておりませんので、従って、大臣、次官等に私の方から報告をいたしておりませんから、結論を申し上げるというのはまだあるいは行き過ぎかと存じますが、国会を尊重いたしまして、今までの調査の大体の経過についてお話し申し上げたいと思います。時間がございませんから、省略いたしまして、要点だけをお答えいたしておきます。 この京都五番町の事件につきまして、まず調査の目的を大体二つに大きく分けまして、四少年を被告とする傷害致死事件の公判審理中第三者である真犯人が自首して出たものであるが、この真犯人についてはすでに検察庁における四少年の取調べの際捜査線上に浮び出てきたのであるが、警察、検察庁においてはこの第三者が暴行の現場に介入してきていることを虚偽の陳述であるとの想定のもとに極力これな抹殺しようとしたため、警察職員は四少年に対し虚偽の自白を強要したのではないかどうか、この強要のために暴行等の手段を用いたのではないかどうか、また、公判廷において第三の男の証言をなした証人を偽証容疑者として取調べをなした末逮捕勾留したことは不当でなかったかどうか、本件調査の目的は、以上の警察職員の自白強要と検察官の不当逮捕の有無についての二点についての調査を主として行なったのであります。その大体の結果だけを申し上げます。 先ほど申し上げましたように、まだ全部が完了しておりませんから、従って、人権擁護局としての最終の意見ではございませんが、私の意見としてお聞き取りを願いたいと思います。 まず、自白強要の点でございますが、一に、昭和三十年四月十日午後五時四十分、ころ京都市上京区仁和寺街道七本松西入ル立本寺南側路上において、木下治二十才が署部二カ所に刺傷をこうむり、瀕死の重傷を負い、第二日赤病院に運ばれ、同夜十一時四十五分、ころ死亡した。死体解剖の結果、鋭利な刃物による刺傷に基因する出血死であることが判明した。所轄西陣署では、被害現場に居合せた目撃参考人などの供述から、同夜被害者及び同実兄木下明外二名と被害現場及びその付近でけんかをした四人連れの不良少年を探知し、翌十一日早朝これら四少年を殺人犯として緊急逮捕した。そして、取調べの上、翌十二日検察庁へ傷害致死として事件送致をなし、勾留状を得て、市内西陣署、中立売署、下加茂署、川端署等の四署に分散留置した。同月二十八日検察庁では同事件を刑事処分相当の意見を付して京都家庭裁判所に事件を送致し、同家裁は審判を経て浜田正之以外の各少年個々に対する別途送致の事件、すなわち宋哲準については脅喝暴行、道路交通取締法違反、山本孝司については道路交通取締法違反、山田治男については窃盗とともに五月二十五日一括して逆送してきたので、これらを六月二日京都地裁へ公判請求をなした。 二、公判審理は、六月二十二日第一回公判後本年二月二十六日第十回公判に至るまで審理が続けられた。検察側では第二回ないし第六回…… 〔「人権じゅうりんの事実があったかなかったかということだけを言えばよい」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 簡単に願います。
○戸田政府委員 多少申し上げないとあとで誤解があると存じましたので申し上げましたが、それでは大体の意見だけを申し上げます。 本件については、加害者、被害者全く相反する供述をしておりますので、事実を確定することは困難でありますが、宋が自白したときの経過及び浜田が絶えず供述を変えておったこと及び家庭裁判所において調査官に対し被害者の四少年はそれぞれ警察官による暴行を訴えている点、その他の状況から、警察官の四少年に対する暴行は多少あったものと疑われるのであります。少くとも今回の事件の経過から見て自白強要が行われたのではなかろうか、こういう疑いを持っておる次第であります。 次に、偽証の点についてでございますが、事実は省略いたしまして、調査中でありますが、今までの調査の結果についての意見を申し上げます。 検察庁における偽証事件捜査の経過でありますが、当時真犯人は他に存在するとは夢想だにしなかった検察庁としては、その偽証の捜査はあながち無理とも言えないところでありますが、ただ、被疑者西村正美及び村松泰子君の身柄を拘束してまで捜査を続けるベきであったかどうかという点については、いささか疑問といたすのであります。この点は、より慎重に考慮すべきではなかったかどうか、こういうふうに考えられるのであります。このことは結果的に見て本件傷害致死被告事件の捜査全般について言えることでありますが、佐藤証人、村松証人の証言の食い違いを偽証として追及する前に、被告人の供述調書にも再三現われておりますが、仲裁人風の男が第三現場に出没しておるということが散見されるのであります。そういうような関係から、それらとあわせてこの点反面捜査を一応すべきではなかったであろうか。 次に、法廷において佐藤証人が村松からの話を陳述しておる際、訴訟当事から伝聞証拠としての異議の申し立てがありました。当事者間に論争がああった模様でありまして、そのため佐藤証人の供述が動揺しておりまして明確を欠いた点が認められるのであります。同証人のその後の法務局での取調べでは、佐藤は便所で何か洗っておる人を目撃したのではなくて、犯行直後村松に鍋町六軒町の四つ角で出会った際、村松から犯人らしい男が刃物を洗っておるのを見たと話されたと述べております。そして、その場所については村松から何ら明示されないので、その付近の便所のことかと思って法廷でそのように述べたと、こう言っておるのであります。 その他、服装の点については打ち合せがあったものと思われるのでありますが、それは本件の事件の全体から見ますと枝葉なものではないだろうか、枝葉の偽証であるというふうに考えられますので、これらを偽証として逮捕するまでもなかったのではないか、こういうような感じが私としてはいたすのであります。 その他、被疑者西村、村松を拘束する前に、検察庁において偽証の画策人物と目していた被告人の母親浜田イワなどから、佐藤、村松証人が法廷に喚問されるに至った事情につきさらに詳細に調査したらよかったのではなかろうかというような感じがいたします。 それから、被疑者村松泰子を逮捕した事情はさきに述べた通りでありますが、その逮捕状を請求したのは三月一日午前十一時であり、裁判所との連絡不十分なため、裁判官の疎明資料の点等が検察官の予期している以上にひまどり、令状発付されたのが翌二日の午前一時三十分ころでありました。そして、同庁に任意出頭しておる年少の泰子に対し令状を執行したのは一時五十分ころで、その間泰子に対して取調べが行われておらず、実父つき添いの上別室で待たしておったのでありますが、このような深夜において令状を執行するというようなことが果して妥当であったかどうか、いささか穏当を欠いておったのではなかろうか、かような感じがいたしております。 先ほど申し上げましたように、まだ最終の調査が終っておりませんので、国会を尊重いたしまして、途中でありましたが、大体感じております点を率直に実は御報告いたした次第でございます。
○細田委員 警察で拷問の疑いなきにしもあらず、これはあなたの方でいま一応突っ込んでお調べになるように手配しておるのですか。その点を伺いたい。
○戸田政府委員 大体調査は終っておりますが、なお記録等を検討しまして、不十分の点があればさらに調査をいたしたいと思います。
○細田委員 大体調査が終っているのにもかかわらず、警察で拷問の疑いがある程度でございますか。
○戸田政府委員 先ほど、詳細の事実を報告することをむしろ省略したらどうかというので、申し上げませんでしたが、腹を突いたり、頭を押したり、手を引っぱったりというような事実は、先ほど申し上げたように確認するわけには至っておりませんが、この四少年が家庭裁判所に送られまして、みな口を一にして事実を申し上げております。また、当初私の方でも、やっておらぬことを自白するに至ったのについては何か事情があるのではないか、;先ほど来お調べのように、非常に当初は否認しておりました。その後供述がしばしば変ってきております。これらの点から見て、なぜそれを自供するようになったかという点についていろいろ考えたのであります。あるいは、この四少年のうちだれかやったに違いないというので、結局責められて、これは凶器でやられて死んでいることは間違いないのだから、自分たちのうちのだれかであろうというようなことで、自分がみんなの罪を背負うといいますか、義侠心を出すといいますか、あるいは小さな名誉心といいますか、そんなことで、本人の素行が不良少年でありますので、そういう気分から言い出したのではなかろうか、あるいは警察等において暴行等によって自白を強要されたのではなかろうかというような点を、疑いを持って調べたのでありますが、目撃者というものがございませんので、事実を確定するというようなわけには参りません。ただ、私が申し上げたように、家庭裁判所等において申し立てておる点、また、被告らの供述等から見て、あるいはそういうことが行われたのではなかろうかと推認されるのではなかろうか、こういう疑いを実は濃くいたしております。
○高橋委員長 ちょっと私から戸田局長にお尋ねしますが、先ほど御報告の中にあった逮捕状請求の時間というのは、午前十一時云々と言われたと思うのですが、そうですか。
○戸田政府委員 午後十一時に請求をいたしております。もし午前と言いましたら間違いであります。
○高橋委員長 他に御質疑はありませんか。——他に御質疑はないようでありますので、それでは、参考人に対する質疑は以上で終ります。 参考人各位におかれましては、本日は大へん長時間にわたり、また熱心に当委員会の調査に御協力下さいまして、ありがとうございました。厚くお礼申し上げます。 それでは、本日はこれにて散会いたします。 午後五時四十四分散会