法務委員会 第24号
- 発言数
- 78 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1956/04/13
会議録
○高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。 本日の日程に入るに先だち、連合審査会開会についてお諮りいたします。すなわち、ただいま建設委員会に付託されております土地収用法の一部を改正する法律案についてでありますが、本法律案は当委員会に重大なる関係を持つ法律案でありますので、建設委員会と連合審査会を開会いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。 なお、連合審査会開会の日取り等については、建設委員長と打ち合せの上決定いたしたいと思いますが、これについては委員長に御一任願います。 —————————————
○高橋委員長 法務行政及び人権擁護に関して調査を進めます。 質疑の通告がありますので、これを許します。猪俣浩三君。
○猪俣委員 近来各新聞に報道されておりまする京都地検の不当なる起訴事件、これに関しまして、われわれ人権擁護の任に当る者から見ると、多大なる不審な事実が多々あるのであります。この京都の事件も、四人の少年が傷害致死罪という重犯罪でもって起訴されております。一体何がゆえにやりもせぬことをやったというふうになったのか。あるいは、やったと自白もしないのに検事は起訴したのか。やったと自白もしないのに起訴したとすれば不都合千万であるし、また、やらぬのにかかわらず自己のなさざることをやったと自白する、しかも傷害致死というおそるべき重大犯罪、相手が少年である、そこに、何らかの拷問あるいは誘導尋問、この少年を重大犯罪に陥れるような予見があったのじゃなかろうか、これは国民のひとしく疑惑として持っていることだろうと思います。なお念の入っていることは、正しい事実を証言をした証人を偽証罪の疑いで逮捕しておるということだ。これはまことに御念の入ったことだと存ずる。近来相当、あやまって起訴をした事実、裁判になって全く検事の起訴が無罪とされるような事実、人違いの事実、こういうことが相当ひんぱんに起っているようであります。そういう意味におきまして、検察当局の十二分なる御説明を願いたい。 なお、立ちましたついでに要望いたしておきますことは、もし本日十二分なる御説明ができないならば、他日必ず詳細なる説明を願うことによりまして、検察当局の非は非とし、是は是として、公平なる審判は国民がするでありましょう。今までの役所のやり方というものは、くさいものにはふたをするようなやり方ばかりをやって、そうして自分たちの非をなるべくおおわんとする行動が多々あったように思われますが、検察権というものは公器でありますがゆえに、さような私の立場に立って事を隠蔽してはいけないと存じます。十二分なる調査報告を願いたいし、なお要望いたしますことは、ただいま現在を中心といたしました過去三ヵ年間に起りましたるこの不当なる起訴、起訴して、しかもそれが裁判の結果無罪になった、人違いになった、さような事実について詳細なる調査をなされて、当法務委員会に御報告を願いたい。当法務委員会は、その報告に従いまして、何がこうさせたかという原因の究明に乗り出さなければならぬと存じます。場合によっては刑事訴訟法あるいは警察の捜査権と検事の捜査権についての再検討、さようなことにも及ばなければならぬと存じまするから、さような意味において、詳細なる京都地検における事実の報告及び今申しました事実の調査、およそ三カ年間くらいでいいと思いますが、そのかわり、その無罪になったことがいかなることによってさような状態になったかということの詳細なる御報告を要求いたします。
○長戸政府委員 本月九日の朝刊紙に、ただいまお尋ねのような記事がありましたので、さっそく京都地検に対しまして電信電話により照会いたしたのであります。現在その概略についての報告がありましたので、その概要を申し述べたいと思います。 昨年四月十日夜十時半ごろ、京都市上京区仁和寺街道七本松西入ルの道路上におきまして、木下治、当時二十の者が、他人とけんかした末に刃物で切られて、ついに死亡したという事件が発生したのであります。事件当時現場で被害者とけんかをしていた四少年を翌十一日京都西陣警察署におきまして逮捕し、その後事件を受理した京都地検では中沢公判部長検事が主任となりまして取調べをしたのでありますが、これらの被疑者はいずれも当時十七ないし十九の少年でありましたので、家庭裁判所に事件を送致し、同裁判所から刑事処分に付すべき旨のいわゆる逆送を受けた後に、昨年六月三日に京都地方裁判所に対して暴力行為等処罰に関する法律違反及び傷害致死罪に基いて公判請求をしたのであります。なお、これらの少年のうち、一人は暴力行為、傷害等の事件がそのほかにも十数件あり、一人は窃盗をやはりかなり犯しており、また他の一人は自動車の無免許運転の違反事件もあったようであります。身柄の関係から申しますと、四月の十一日に逮捕いたしまして、一人は六月八日、一人は六月十日、残りの二人は十月の二日に保釈で出所をいたしております。 現在までにすでに十回の公判を重ねて参ったのでありますが、本月四日、佐藤久夫、当二十五年なる者が京都地検に出頭して供述をいたしておりますが、その佐藤のいわゆる自首と四人の事件の捜査の状況とを総合して考えますると、——これは現在なお京都地検において捜査続行中でございますので、一応現在までに認められる状況だけでございますが、被害者の木下は、当時兄とともに通称五番町遊廓というのを歩いておりまして、その遊廓のうちのある店で、今度自首して参りました佐藤久夫とけんかをした。ところが、仲裁する者がありまして、その場はおさまって、別々に反対の方向に別れて参ったのであります。佐藤は自宅に帰宅すべく仁和寺街道七本松の通りの方向に歩き出した。ところが、その直後に、問題の四少年がその店の付近で被害者である木下とけんか口論をいたしまして、四少年がその被害者に暴行を加えた。被害者は逃げ出しまして、先に別れていった佐藤の背中に突き当った。そこで、逃げることができなくなりましたので、四少年と相対峙しておった。ところが、佐藤は、背中にぶつかってきた男が先ほどけんかして仲直りしてきたばかりの男であるというのがわかりまして、これは再度けんかをしかけてきたというふうに思って、持っておったジャック・ナイフで被害者のしりのあたりを二回突いた。それで佐藤はその場から逃走したのでありますが、それを知らない四少年はさらにこの被害者をその場でもってなぐったりけったりいたしまして、ついに被害者をその場に昏倒させ、被害者は間もなく京都第二赤十字病院において死亡する、こういう結果になったようであります。四名の着衣には血痕が付着しており、特に警察で自白いたしました一少年等のくつなどには多量の血液がついておって、いずれも被害者の血液型と符合しておる、こういうふうな経過であったのであります。事件の当時におきましてはこの佐藤のことがわからなかった、こういうふうな事情にあるようであります。 従いまして、四名が被害者に協同して暴行を加え、逃げる被害者を追いかけてさらに暴行を加えたという暴力行為等処罰に関する法律違反の事実は今もって明らかなようでありますが、このたび佐藤が自首して参ったことによりまして、店と、四少年が最初にけんかしたところと、次に最後になぐりつけたところと、三カ所における被害者を中心とする経過の状況が明らかになって参ったわけであります。四名が、佐藤が被害者を刺した前後に共同暴行を加えております。佐藤が刺す、少年四名がなぐるということが同一の場所できわめて接着して行われたものでありますから、被害者の死亡の結果についての因果関係、従って四名の刑事責任はきわめて微妙なるものがあると思うのであります。そこで、京都地検におきましては、現在この点に関しまして、問題の四名、自首犯人佐藤等につき急いで取調べをしておる次第でございます。 それから、先ほどのお話のございました偽証被疑者の逮捕関係でございますが、本年二月十六日に第十回の公判にお貸まして、弁護人側の証人として佐藤和代、村松泰子が出廷して証言いたしております。村松証人は、事件当日現場付近の場所で本件被告人以外の男が血のついたものを洗っているのを見た、こういうふうな証言をし、佐藤証人は、事件直後知り合いの村松からその見た事実を聞かされたということを祝言してえおるのであります。この佐藤和代と被告人のうちの一少年との、間接的ではありますが、その関係、それから、村松証人につきまして、その問題の便所の場所を指摘せしめようとしましたところ、意外にも的確に指摘をし得なかったというようなことから、検事は偽証の心証を得たもののごとくでありまして、本年二月二十三日に佐藤締代を取り調べ、翌二十四日西村某なる者を偽証教唆により逮捕し、三月一日村松を偽証により逮捕いたしたのでありますが、三月二日に至りまして西村及び村松を釈放した、こういうふうな関係に立っております。 法務省といたしましては、この事件が事後真犯人が現われた事件であるということでありますれば非常に重大なことでありますし、また、偽証問題についても、いかなる証拠のもとにその逮捕を行なったかというような点に重要な関心を寄せまして、先ごろ横井刑事課長を現地に派遣して、現在その実情を調査中でございますので、いましばらく詳細については御猶予を願いたい、かように考える次第でございます。
○猪俣委員 これで私はやめますが、質問は次回に留保いたします。重大な点が含まれておる。ことに弁護人の申請した証人を直ちに証言直後逮捕して調べるというがごときことは、前々から実にけしからぬことだという意見を私どもは持っておった。それがここに露呈してきております。この点についての徹底的な調査を私どもはしなければならない。そこで、先ほど調査を要求しておりました、検事が偽証罪で取り調べた事件が何件あるか、それも三カ年間にわたっての調査の報告をしていただきたい。それから、なお、かような偽証なんというために逮捕せられた人はみなうら若い女性であります。こういう人たちが受けました衝撃及び将来重大なる傷となって残ることに対して国家はいかなる慰安の道を講じようとするのであるか、そういうことに対しても具体的なる案を練っていただきたい。次回に、この詳細なる報告を願うとともに、刑事訴訟法及び捜査権なるものについて徹底的に私どもは質問をしたいと思いますから、御用意をいただきたいと思います。
○高橋委員長 本問題は詳細なる調査報告を待ってさらにこの調査を進める予定でありますので、本問題を次回に譲ります。
○高橋委員長 次に、外国人の出入国に関する件に関し調査を進めます。すなわち、先般来の日韓会談における諸問題、なかんずく大村収容所の韓国人問題等について調査を進めます。 質疑の通告がありますので順次これを許します。高瀬博君。
○高瀬委員 今回、去る二日の新聞報道によりますと、日本側の朝鮮に抑留されている漁夫の一部分の者と、大村収容所に収容されている密入国者及び戦争前よりわが国に在住しておって法を犯し大村収容所に刑余者として収容されております朝鮮人との相互釈放の問題が報道されました。これは国内的にも非常に重大なる関係もあり、また国民感情にも相当重大なる影響を及ぼすものであり、また日韓関係の現在未解決のままでありますところの李ラインの将来の問題についても非常に影響するところが大でありますので、これは当委員会といたしましても非常に重大なる関心を持たざるを得ないのであります。私は、与党議員の一人といたしまして、国会における正しい公明なる論議を通してわが外交のあり方を国民にはっきりと知らすということは、与党の立場から言いましても非常に必要であることを痛感いたすと同時に、また、巷間伝えられておりますいわゆる日本の法の擁護という立場から、法務省の事務当局と外務省の事務当局との間にも多少の意見の相違があるやに見られますので、私は、重光外務大臣に、おもに外交と内政との調整の問題につきまして、いかなる所見をお持ちになっておるか、二、三点について伺いたいと思うのであります。 まず第一に、外務省で発表された文書によりますと、在韓抑留日本人漁夫と在大村韓人問題解決に関する件という項目についてこういうような文書が作られておるのであります。「在韓抑留日本人漁夫と在大村韓人の問題については、左記要領により、これを解決することとする。」、すなわち、第一に、「韓国政府は刑期を了した日本人漁夫を釈放する。」、第二に、「韓国政府は密入国者(終戦時以後の者)を引取る。」、第三に、「日本政府は終戦時以前から日本に在住する韓人にして大村収容所にある者を釈放する。」とあり、「但し、これらの者が日本に留まるや帰国するや否やは、その自由意思に任せる。」、そして、「なお、釈放の実際的方法については、在日韓国代表部側委員と、日本政府側委員との間において事務的に協議決定する。」というのであります。これは大体外務省の文書と新聞に出ております点と符合いたしておりますので、この点については政府の方針としてかくのごときがきめられたと思うのでありますが、ただ、私がここに問題にいたしたいのは、これらの取りきめがいかなる形でなされたか、韓国公使金君と重光大臣との間にどういうような形でなされたか、その点をまず最初に伺いたいのであります。
○重光国務大臣 これは、金韓国代表部代表と日本国外務大臣との間にかような了解に達したわけでございます。
○高瀬委員 それでは、これは、わが国の、いわゆるわが党の政府といたしましては、閣議決定事項としてなされたのであるか、それとも外務大臣のお立場からこれを取りきめられたのであるか。この点は、実は、われわれ党内におきましても、昨日も、外交調査会におきましても、あるいは総務会におきましても、いろいろ論議されたのでありますが、いまだその点について明らかでないのであります。なぜわれわれがこういうことを伺うかと申しますると、要するに、外交と内政の調整がいまだ紛溶してはっきりした調整ができていないように思いますので、これがもし閣議決定事項としてなされたのならばいざ知らず、この点の関係が明らかでないのでありまして、これは一般の世論にも国民の感情にも影響するところ大でありますから、その点を、この取りきめについていかがなされてあるか、伺いたい。
○重光国務大臣 かような了解に達する場合には、外交上の手続をとる場合には、国内において政府の意向がはっきりきまった後でなければできません。この方針でやるという政府の意向がはっきりした上で韓国側との間にさような了解をしたわけでございます。
○高瀬委員 そういたしますると、伺いますが、これはおそらく私のみではないと思いますが、朝鮮と日本との関係は、敗戦後その外交関係もいろいろ不明でありまして、私どもは非常に疑問に思うのでありますが、朝鮮公使の金君という人は一体いかなる立場でわが方の外務大臣と交渉されておるのか、それからまた、将来の国交の是正をするというのに、わが方から外交代表も何も朝鮮に全然行けない、そういう状態で本質的な外交調整をやるというわけでありますが、一体日韓の外交関係というものはどういうふうな立場に置かれておるのか、また朝鮮公使の金君は重光外務大臣と五分に取っ組んで十分なるステイタスを持っておるのかどうか、そういう点についてもわれわれ一向わからないのであります。この点一つお教えをいただきたいと思います。
○重光国務大臣 これはもう、お話の通り、また御承知の通りに、韓国と日本との間にはまだ国交が開かれておりません。条約関係はございません。韓国は、御承知の通りに、サンフランシスコ平和条約によってできた国であるのであって、平和条約それ自身の当事者となっておるわけではございません。しかしながら、日韓の両国の間を調節するということは、どうしてもこれは日本の利害関係上特別に必要な事項であることは何人も異論のないところでございます。そこで、国の関係が条約上ないからといって、毎日起るような事柄について話し合いをする機関のないことは、実際問題として非常に不便でございます。そこで、正式の代表機関を置くに至っておらないわけでございますから、正式の外交機関として認めたものでなくても、実質上両方の政府の代表をする機関がなければならぬ、こう考えます。そこで、わが方においてはむろんさような意向をもって双方の間に接触してきたのでございますが、まだ今日までさような機関を韓国に設定するということに折り合いがつかないのでございます。しかしながら、そうかといって、こちらは向うに行き、向うはこちらに来るということを今日厳格にする必要も実はないので、そこで、韓国の代表部というものは、これは終戦直後において占領軍時代においても置かれたのでありますが、それをそのままこちらに代表として残っておることを認めた。そうして、その代表部の代表は事実韓国政府を代表するということを確かめまして、諸般のことを打ち合せをし交渉をしておるわけでございます。それは、実際問題としてさようにすることが日本の立場から言ってみても適当なことであろう、また有益なことであろう、こう考えて今日までやっておるわけであります。
○高瀬委員 そういたしますと、私どもの考えでは、根本的に日韓関係の国交是正をする場合には、やはり対等の立場で、韓国が独立国であるならば何らの理由はないのでありますから、わが方からも適当なる正当なる資格を持った外交代表をまず設定して、その前提の上に立って本質的に日韓関係の問題を討議すべきものである、かように考えておるわけでありますが、その点に対する外務大臣の所見を拝聴いたしたい。
○重光国務大臣 今申します通りに、日韓の外交関係が開かれますならば、これは正式の外交代表が交換ざれることは容易であると考えます。それはそうしたいと存じます。しかし、それまでは双方事実上の交渉機関を設けてやることが時宜に適しておる、こう考えておるのでございます。
○高瀬委員 それでは、その問題については近い将来に正式代表がどうせできることでありましょうから、それは大臣の所見に従っておやりになっておることをわれわれは誹議するわけではありませんが、一刻も早く外交関係を正常なルートに乗せていただきたいことが、与党の議員の一人として熱望にたえないところなのであります。 そこで、私は、重光大臣並びに金公使の間に取りきめられたこの了解事項について触れて参りたいと思いますが、なぜ私どもが法務委員会においてこの問題を重視するかという点であります。 それは、すなわち、まず第一に、韓国政府は刑期を終了した日本人漁夫を釈放するという点、しかもこの刑期を終了したというところに問題があるのでありまして、わが方から言えば、あの公海自由の原則に従って漁獲に従事しておった善良なるわが国の国民が朝鮮側において犯罪者として扱われて、しかも刑期を終った者、終らざる者という区別をわが方で承認いたしまして、終った者だけを日本に引き取るということであります。これは、われわれといたしましても、日本人漁夫が一刻も早くその家庭に帰って生業につくことを希望するのは国民として当然でありますけれども、大臣も御承知のように、かつてこの国会におきまして李承晩ラインについて非常に強硬なる決議をいたして、世論に訴え、また韓国側の反省を促したことは御承知であろうと思うのであります。従って、わが方として、犯罪人でない者を朝鮮側が犯罪人として、しかも朝鮮側の法律から見て刑期の終った者だけを釈放するということは、すなわち、とりもなおさず、常識的に見まして、これは李ラインを一部分わが方が承認したような形に相なるわけでありまして、この点はどうしても国民感情が許さぬ点なのであります。 しかも、一方、なお後の方の取りきめを見ますと、日本国政府は終戦時以前から日本に在住する韓人にして大村収容所にある者を釈放する、こういうことがあります。その前に、密入国者を韓国政府は引き取る、これは当然であります。しかしながら、ただいま読み上げましたところの終戦時以前から日本に在住する韓人にして大村収容所にある者、これは非常な犯罪者であり、日本において犯罪を犯し、刑余者として当然国際法の原則に従って朝鮮に送還せらるべき運命にある連中でありまして、これらがわが方の善良なる漁民と対等の立場において釈放が交換されるという、これはどうしてもやはり公平に見て国民感情を刺激せざるを得ないと思うのであります。その中で、具体的に言いますれば、大臣も御存じでありましょうが、前科九犯ないし十二犯の者が十三人、六犯ないし八犯の者が八十人、三犯ないし五犯の者が二百四十人、こういうことで、これらの者を釈放いたしますれば、かつても騒擾を起した事件もあり、また、すでに新聞の報道するところによりますと、大村近辺において警官並びに住民が非常に不安の念にかられておるという事実があるわけであります。 つまり、私が問題にするのは、李ラインを一部容認したかごとき感を与えるということと、それから、第一に、わが方から見れば罪人でない者を、明らかに刑余者であり国際法上朝鮮に帰さなければならぬ者と五分の立場で交換するということ、これは非常に問題であろう。しかも、それは、釈放した場合、朝鮮側においてはこれらの者が日本にとどまるやいなやはその自由意思にまかせるとこの協定にもありまするごとく、また、朝鮮側といたしましても、この理由ある引き取りについて非常に無責任な放言をなしておる事実があるのであります。たとえば、新聞の報道によりますと、イ正換という朝鮮の外相代理でありますが、彼は記者会見をしてこういうことを言っておるのであります。韓国は大村収容所の韓国人の送還を個々の状況に基き受け入れるが、その場合自由送還の原則を守らなければならない、北鮮への送還はかたく反対する、米国の仲介と日本の態度の変化によって日韓関係は幾らか改善のきざしを見せておるが、日韓交渉の現段階においては国交是正の正式の話し合いとは何ら関係がないというのであります。従って、私は、この朝鮮の外相代理の言った言などを照合してみまして、法務省の主張しておりますところの、今後刑余者の釈放については絶対に韓国側が引き取るという保障がなければ、国内治安については責任が持てないから困るという、いわゆる法厳守の建前がくずれるのではないかということ、それから、これを総括的に言いますると、一体、こういうようなことを日韓国交是正の前提にいたしまして、たとえかりに百歩を譲って取りきめたといたしましても、それによって本質的な日韓の国交の是正ができますかどうか、こういうような点について総括的な外務大臣の所見を私はお伺いしたい。 特に、本日のニッポン・タイムスによりますと、これは大臣もごらん下すつたと思うのですが、アミティ・ウイズ・ジャパン・イズ・セラウトという見出しで、これは、今回の選挙において、だれか反対党の大統領の候補でありましょう、それが、日本との国交の是正が非常に必要であるという演説をやったわけでありますが、それに対して、李承晩は強く反対して、日本とのいわゆるアミティをやるということは国を売るものである、五十年前に朝鮮においてわれわれがなめたと同じようなことを再び繰り返すようなものであるから、これはすなわちアンティジャパニーズ・ポリシー・オブ・ザ・コリアン、——朝鮮人の反日的政策に反するものであると言って、強く彼は反対の演説をしているのであります。こういう点を総合いたしますと、こういうような国内の世論を刺激し、また法の解釈がまだ不確定のうちに、同じ立場でできない、漁夫といわゆる刑余者との対等交換を行なって、果して日韓関係の本質的な国交の是正ができるかどうか、これは実に問題であろうと私は考えるわけであります。 その他、そういう見通しについて私の所見を忌憚なく大臣の前に申し上げますならば、たとえば、沢田さんと金公使の会談において、李ラインの問題については多少話はするが、竹島問題については何らわれわれはやらない、もうすでにそういうことをはっきりしておるのであります。それから、久保由発言につきましても、久保田さんの言ったことは多少の言い過ぎがあるにしましても、事実を事実として述べたのであって、朝鮮側の世論を刺激したかもしれませんが、日本も多少言われるところがありましょうが、朝鮮の開発のいろいろな面については貢献しておる。それを、明らかに取り消すのだ、竹島問題はやらないという。それから、李承晩ラインについて、なお驚くべきことは、これは朝鮮側から出た報道であろうと思うのでありますが、おそらく朝鮮の代表部ではないかと思う。今の久保田発言については、日本側は取り消しに同意しておるということを言っておるようでありますが、李ラインについては、日本側は李ラインを認めていないが漁族保有の見地から出漁漁船の型や隻数を制限する話には応ずるという意向を示しておると、かなり日本側の内かぶとを見通したようなけしからぬことを言っておるわけであります。従って、この重光・金会談においてなされたこれらの取りきめが、本質的に日韓の国交の是正にはならない。日本との国交の是正は朝鮮を売ることだなどという演説を李承晩がやっておるような現状においては、大臣のお見通しがうまくいくかどうか、しかもそれが日本の外交と内政の調整もできないような形においてされるという点において、私は非常に疑問を持っておるのであります。 これらの点について総括的な大臣の御所見を伺いたい。
○重光国務大臣 今表示なされたお考えは、日韓関係の全部にわたっておりまして、これを項目分けにしてもずいぶん多数で、実は私は一々記憶をいたしませんから、一々の問題についてまた御質問を繰り返されるならば私はそのことについて一々お答えいたしますが、漏れがあるかもしれません。 私は、今表示された御意見には遺憾ながら御賛成をすることができません。与党の方であっても、できません。それはどういうことであるか。私は、日韓の関係は、これは議会における全般的の外交問題として意見を表したものにおいてもはっきり私は申し上げておきました。また、政府としてはその問題について総理大臣も言及しておったと思います。隣国として、この日韓の関係は、これは一番近い関係、つまり地理的にも近い関係はだれでも疑いを持たない。歴史的に見てもそうである。私は、日韓の関係が近き過去においていろいろ不幸な歴史をたどってきたということは、これは認めざるを得ません。しかし、両国の関係が、また両民族の間がきわめて密接である、いかなる方面から見ても密接であることは、これは争うことができません。この密接な関係が親密な関係を持っていくということは、日本民族の発展の点から言ってみても、私はこれは基礎的なことだと思います。これは、遠方の国との親密が非常に重要である場合もありましょう。それは私も少しもいなむことではございませんが、しかし、一衣帯水の間にある韓国との親密な関係を打ち立てるということが非常に必要なことで、これすらできぬようなことで、一体、世界中の国の親和を進めていこう、平和外交を進めていこうということは、ほとんど望み得ないとすら極言してもいいような問題であると私は思います。そこで、韓国との間にいい関係を作るということが日本の平和外交の政策としては重要な一つの礎石であることは、これはもう申すまでもございません。そこで、不幸にしていろいろ感情のいきさつがあるということはお話の点によっても、私はそれを否定するものではございません。しかし、先ほど国民感情が許さぬという御発言がたびたびでございました。すなわち、国民感情というのは、韓国人の釈放等をやるということは日本の国民感情ではこれは許されないということですが、韓国が独立国としてやった処置、これがいいか悪いかは別問題だありますが、しかし、独立国としては、今日日本は条約も認めておかなければならぬ。サンフランシスコ平和条約以来韓国は独立国となっておる。それが独立国の主権を運用して、その運用の仕方の批評は国際的にいろいろあって差しつかえはないものとも思いますが、そのことについて日本がこれを否認していくということはできぬことであります。もしさようことが自由にできる立場をとったならば、親善友好の関係は樹立ができぬと思います。そこで、国民感情と申しますのは、私は一方的に考えられることには御賛成を申すわけにはいきません。私の大局上の見地から申して、国民感情としては一方的に見るべきものではなくして、わが方、当方の国民感情を見なければならぬし、同時に相手方の国民感情も十分に尊重していってこそ、両国の関係がよくいくのであると考えます。いわんや、日本の今日の国民感情というのは、私がはかっているところによれば、韓国人の釈放ということは不都合であるという点にいろいろ議論のあることは私は承知をいたしております。それからまた、そのことについて従来のいきさつもあるし、また取り扱っている関係当局においていろいろ困難があるということも私は重々お察しをいたしておりますしかし、今日の国民感情というのは何であるかというと、日本の帰ってこない漁夫を一日も早くその家庭に帰してもらいたいということが、日韓問題では国民感情の一番大きな問題であると私は考えます。しかし、それだからといって、漁夫を帰すために何でもかんでもそれに必要なる条件として韓国側の言うことを受け入れるべきであるとは私は申しません。申しませんが、しかし、受け入れられるリミットはありましょうが、これはできるだけ寛容な態度をもって、この漁夫の帰還ということを実現したいと私は考えます。そこでいろいろ問題が進むわけでございます。 そこで、漁夫の問題について、、国民感情の問題から私はそう申し上げますが、なぜそれじゃ外交上漁夫の帰還に重きを置くか。日韓関係は、御指摘もありましたが、日韓の国交を正常化していくという根本問題がございます。これはずいぶん大きなことでございます。交渉案件も非常に多岐にわたり、困難なものが多い。たとえば、お話しの李ラインの問題はむろんこれに入る、それから、その他の問題もいろいろあります。数え上げれば相当ございます。それらの問題を解決するのには、これは解決の必要に迫られた問題から一つ一つ進めていくということが必要でございます。のみならず、漁夫の帰還問題も、これをそのままにしておいて本交渉を進めるということは、悪い空気の中で大きな仕事をしようというのでありまして、これはなかなか困難であります。それよりも、漁夫の問題のごとき、今、日々多数の日本人、特に日本の西部の方面の人々の感情を刺激しておるこの問題をとにかく解決をする、少くとも努力をして解決するということになれば、そこで一段次の問題に進んでいけます。そこで、大きな本交渉の問題も割合にいい空気の中にいこうというものでございます。さような意味において、この漁夫の帰還の問題は一日もすみやかに解決しなければならぬという羽目に迫られております。 それから、新聞記事を引用していろいろ言われました。今李ラインの問題を認めるとかなんとかということは一切やってはおりません。李ラインの問題は常に抗議に抗議を重ねて今日までやっております。竹島の問題云々ということがありましたが、これはむろんのことであります。そこで、こういう問題はすべて本交渉と申しますか全般の国交を回復する問題を処理する交渉をするときに出て参ります。そのときにわが方の従来の立場を十分に主張しなければならぬのでございます。そういうことについては、相当国際的の関係もございますので、いろいろと手は打っておるつもりであります。それは今回の漁夫の問題とは少しも関係はございません。また、関係のないことをはっきりして進んできておるわけでございます。 朝鮮側が国際法問題で無責任であるというような御議論がございました。いろいろございましたが、それは、その主権に対する国際法の問題を十分御検討になれば、私はそれはすぐわかることだと思いますから、そういうことに今深く取り入らぬでもいいかと考えます。 この問題についていろいろ御指摘がございましたが、要するに、現在大村にある問題は、私の当局から得ておる報告によれば、従来から日本におった朝鮮人で刑期を過ぎた人間を収容しておるのが四百人ばかりある。密入国者と称するのはおもに韓国独立後の韓国人、つまり独立後の韓国に住んでおった韓国人の密入国者、これは向うが引き取ると言う。これは問題がございません。当然そうしてもらわなければいかぬ。しかし。その前の収容者四百人が問題になるわけでございます。それについては、今いろいろお話しの、日本国の側の不便も非常にあるわけでございます。しかし、これは、ここに書いてある通りに、主義としては釈放する、実際的にどういうふうにこの人間を扱うかということについては、双方、韓国側からも委員が出、日本側からも委員が出て、そして一々検討する、こういうことに私は取りきめておるのであります。それによって、実際的に、これを引き取り手がある場合に引き取り手のところに引き取らせるということは、私は日本側として何も不便はないと思う。治安の問題には関係がないと思う。しかし、引き取り手も何もない者を、路頭に迷うような人間を一体そういう工合にしていいか悪いかということは、日韓両国の委員がそこに出て審査をすればいいので、また、本人の意思によるということであるから、本人が路頭に迷うことを希望するかどうかということも、これは聞かなければならぬ。あるいはしばらく大村にそのままにしておいてくれということになるかもしれない。そういうようなことば、日本側が一方できめることではなくして、一方でそういうことを思い込んできめなくて、双方話し合いをしてきめるというのだから、それでなめらかにいき得るわけで、そういうようなことは、私が最初に申し上げた、日韓の関係を今後どうしてもよくしようということについて御賛成ならば、少しはそういうことに熱心になっていただきたいと思うのであります。ただ、不熱心で、これはどうも日本の国民感情だ国民感情だと言ってどなられても、国民感情もいろいろありますから、一つよほどこれは大きくそういうくらいな気持でなければ、お前のやったことは何もいかぬのだということでは解決しない。日本の漁夫をつかまえたのはいかぬ、それはわれわれがそう言っておる。お前日本の漁夫をつかまえたのはけしからぬじゃないか、こう言っておる。言っておるけれども、向うは、おれはおれの主権があって、裁判にかけてちゃんとやっておるのだと言う。それをしも、それはいかぬのだ、こちらの思う通りにお前言わなければけしからぬのだと言えば、向うから言えば、それは併合時代の考れ方であって、私は今独立しておるのだ、こう向うの言うことに何も不思議はない。そのくらいのことはこちらで十分考えて向うの立場も理解してやらなければ、親善を言う基礎が私はなくなってくると思う。どうか一つ、さような意味において、この日韓の関係を非常によく親善に導くというこの大事業にほんとうに御協力を願いたい、こう思うのであります。
○高瀬委員 だいぶ大臣からいろいろ御高説を拝聴いたしまして、よく了解するところがありました。しかしながら、私が国民感情を刺激すると言うのは、決してわれわれは感情的に申し上げておるのではなくて、漁民を帰すということについては、先ほども私が申し上げました通り、どうしてもこれは、それこそ日本の国民感情から、一刻も早く帰したい。たとえばシベリアにもまだ十年以上も抑留された者が帰らない。いろいろなことがございます。ロシアに対してはわれわれは堂々とやる。ただ、この朝鮮に対しては、李ラインは一切認めるとか認めないとか言ったことはないとおっしゃるけれども、事実問題として、やはり漁夫の一部分しか、刑余者、刑期の終った者しか帰さないということを交換条件にするのでは、やはり外務大臣は李ラインを少し認めておるのじゃないか。そうすると、法務省の方から言うと大臣は大きなことばかりおやりになっておるから、事務当局がどんな議論をされておるか、御存じにあるいはなっておると思いますけれども、詳しくは御存じない。実際問題として、大村の収容所にある刑余者を釈放した場合に、朝鮮側が責任をもって、今後これらを引き取るというならば、今回だけはがまんしょうというのが法務省側の言い分のようであります。私は別に法務委員なるがゆえに法務省側を支持するとか何とかというのではありませんけれども、もしそれがはっきり行われる保障も何もなければ、わが方の漁民は人質に向うに置かれてしまって、その人質を少しずつ小出しに出しては、抑留者をおっ放せおっ放せと言われて、これを釈放すれば、果して国内が欄乱されないかどうか、これは、過去の実績についても大臣はおわかりになる通り、ほんとうに問題である。この点、いまだに外交と内政の調節が完全にできていないような状態でこれをおやりになり、しかもこれが日韓国交是正の基礎的条件になるがごとき感を与え、大臣もそういうふうにお思いになって私の説に反対だと言われるのですが、それじゃ、私は一つ伺います。二の漁夫と大村の刑余者を交換しなければ、日韓の国交の是正は絶対にできないかどうかということと、また、それを前提条件にしなければ予備会談も何もできないのか、あるいは予備会談の中に——これは国会の決議もあることでありますから、当然李ラインの問題も含めて予備会談に一括して入れていいのだと私は思っているのですが、これらの点、いわゆる漁夫を交換するということが前提条件でなければ談判が全然開始できないのか、それをしなければ全然日韓の国交の是正は根本的にできないのか、一種の人質外交みたいな感じを与えている点は私はいなめないと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
○重光国務大臣 それは、ちょっとどうお答えしていいか私も少し迷うのでありますが、日韓関係の全面的の改善といべことはどうしてもやらなければならぬので、できるならばどれから始めてもいいと思います。だから、どれからでなければならぬとか、この問題をこうしなければならぬ、これが前提条件になるとかならぬとかいうことは、理屈から考えてみてもあるわけはありません。しかし、ここに非常に考えていただかなければならぬ。それは、日韓の交渉をして大きな目的を達するためには、つまり両方の関係の親善を持ち来たして実現するということを目ざしておる以上は、その方向に向っていけるような実際的な交渉をやらなければなりません。それから、さらに加えて、私は、日本を代表してやっている以上は、日本の将来の利益ということを考えてやらなければならない。どの問題をまず取り上げて解決するのが全局の目的を達するのに一体一称いいか悪いか、さらに加えて、日本の利益を擁護するためにどの問題から取り上げるのがいいかということをはっきり頭に持って進めなければなりません。だから、今お話しのような何が前提条件であるかとかなんとかいうことは、私には意味がわからないのであって、それはどこから始めても差しつかえございません。しかし、今私の申すような大きな考え方は、これははずしてはならぬと思います。交渉したけれども、交渉の目的の日韓関係を改善するということに反するような交渉のやり方をしては何にもなりやしません。初めから李ラインだとかどうとか、李ラインなんぞをもってこれがいかぬとかいくとか言って交渉の上でちゃんちゃんばらばらやって、それでまた話が分れる、こういうことになるなら、これはやらぬ方がいいと思う。目的も何も達しやしない。しかし、目的を達するためには、焦眉の急務である問題から取り上げて、空気を改善しつつ——あなたの言われる国民感情は、こっちもありましょう、向うにもありましょう。それもだんだん下火にして、下火にするというか、やわらげるようにして、そしてだんだん大きな目的を達するようにすべきが当然のことであり、これがまた日本の利益に合致するものであろうとこの場合は思うのであります。 そこで、私は、今さしあたって困っておる漁夫の問題、しかもそれはおおよそこうすれば解決の見込みが立つということがはっきり出できたのでありますから、これは当然取り扱うべきだ、それが日本の国の利益を代表しておる外交の責任だ、こう私は考えております。しかし、それだからといって、あとは全部無視してその問題に直進していいというわけではございません。日韓関係を全体的に改善するために、李ラインの問題、むろんこれは取り上げなければなりません。それを取り上げ、それからその他の問題についても取り上げなければならぬ問題は数多ございます。これはやらなければならぬ。また漁夫の釈放の問題について、日本側の非常に取り扱いに不便なことというのは十分考慮に入れて、そして解決をしなければならぬ。これは当然でございます。私はそういう問題を無視してやっていけばいいというようなことは少しも申しません。これは、端的に申し上げれば、法務省あたりで従来取り扱っておりました苦心もありましょうし、技術もある。これは全部取り入れてやるつもりであります。しかし、それならば四百名の従来おった者を全部韓国側が引き受けるということを言わなければこれはできないということには私は賛成ができない。韓国側が引き受けてくれればよろしいと言うことはよろしい。私は引き受けたがいいじゃないかということは言うのであります。しかし、それは向うが承諾しない。それだから、この際国土の問題などが根本的に解決しない前にそういうことを持ち出すことは順序を誤まっておる、そいつは実際的方法によってやろう、こういうことで私は行き得ると思う。それだけのがまんを一つ願いたい。日韓の関係は重要でございます。将来アジア問題を解決する端緒となる第一歩でございますから、十分御考慮を願いたいと思います。
○高瀬委員 だいぶいろいろ伺いましたから、あと一、二点でとどめますが、私は日韓関係の国交を是正することに反対しているのでは毛頭ないのであります。現に行われているロンドンの交渉におきましても、わが方の領土の問題のごときは、とうていだれが見たって今度の会談で妥結するなどと思っておる人はなかろう、おそらく重光大臣もその点はいかがかと私は思う。ですけれども、この問題について特に私どもが問題にしておるのは、やはり刑余者とわが方の善良な漁夫と同じレベルで交換し、しかもその一部分しか帰ってこないので、また人質のような形で残される、こういう点であって、漁夫の家族の方にはほんとうに同情いたしますけれども、やはりわが方の権威もある。日韓との親善ということはもちろん私は大臣同様日本国民として熱望しているものでありまするから、決して私はこれについて否認するものではありませんけれども、こういうような前提条件で一体果して本質的な解決になるかどうか。たとえば、先ほど李承晩大統領の選挙における演説などを援用して——これを新聞記事だとおっしゃってしまえばそれだけでありますけれども、とにかくもニッポン・タイムスにちゃんと大きく載っているのでありますから事実であろうと思うのであります。そういう排日的思想を持ったアンチジャパニーズ・コリアン・ポリシーというのですか、これは私はひどいと思うのです。そういう人を相手にして、いわゆる大臣の日韓親善の熱意が果して徹底するかどうか。これでは日本の方は曲げて譲って、同一のレベルで扱えないものを扱って、あとでへんなことになってしまう。その点は、私は、日韓国交の根本的是正を熱望する一人として、いささか、与党の議員の一人としてではありますけれども、私は大臣と見解を異にするわけです。非常に妙な言い方をしますけれども。 そこで、私は最後に一つ伺いますけれども、ここで特に法務委員会として問題にしておりますのは、いわゆる外政と内政の調節の問題でありますが、法務省の方では、たとい今回それは大きな日韓親善という目的からなされた処置であったにしても、今後はこれらの問題について必ず朝鮮が刑余者を引き取るという保障がなければ国内の治安なり国法の維持ができないという意見があるわけで、その点はわれわれ法務委員としてもまことにもっともだと思っておるわけであります。ただ、そういう点について外務大臣はいかが御承知相なっておられるのか、その点を一つ伺っておきたい。
○重光国務大臣 今御質問の直接の問題に入られる前に、全局の問題について再び御意見の御開陳がございました。私と意見が違っておるというお言葉がございましたが、私から考えてみると、私の意見とほとんど違わないような御意見を表示されたことを私は非常に感謝をいたします。またそうでなければならぬと私は思う。 それから、日ソ国交の問題についていろいろ御懸念がありました。これは議論の外の問題でございます。しかし、こういう問題は非常に困難があるということについては私もその通りに認めます。しかし、あくまで、日ソ交渉にしても、日韓関係にしても、改善をしたいという熱意だけは持って一つ困難にぶつかっていきたい、こう思うのが今の心境でございます。 そこで、それならば日韓の関係は全部できるか。これはいろんな条件がありますので、そういうことを私は実は申し上げているのではないのです。これはむずかしいのです。いろいろなことがございます。それを一つあなた方と一緒になって日本の行く道を開いていきたい、こういう気持で申し上げておるのであります。もちろん、何もこっちの条件通りということを申す意向はございません。しかし、できるだけそれを実現していきたいという意向を持っておることを申し上げる次第でございます。 それから、今の必ず引き取るというのは、私は今後の問題であると思います。それは、韓国人であれば引き取る、これだけははっきりしておる。今後韓国人はすべて引き取る、こういうこと。ただ、それじゃ、これは何と言うか、合併時代に韓国人じゃなかった、日本人であった、それを今後全部引き取るかといえば、それはこの国籍問題が解決しなければわからない。国籍問題が解決して韓国人であるということになれば喜んで引き取る、こういうことをはっきり言っておるのであります。しかし、これは理屈上はそうなりますが、不幸にして戦争に負けて、韓国は独立したのであります。独立前は国境はなかったのでありますから、いろいろな問題がそこに起ってくる。それは今後の韓国との交渉によって処理しなければならぬ。その処理で初めてきまる問題であります。将来韓国人は引き取る、これはそう言っております。それだから、向うに韓国人でない者を引き取れと言っても、これはできぬというかもしれません。そこにまた問題がある。懸念がある。しかし、私は、実際そういうことを両方の関係で見ますと、今後両方の感情がやわらいでよくなるということになれば、さよなうことも解決の端緒につき得ると思います。そういう私は見込みに立ってこれを進めておる。 それで、今回の問題でも、従来はほとんど問題にならなかったのです。それが、いろいろな関係、これは米国関係もあるのでありますが、そこで韓国側の気持がよほど変ってきたということを異口同音に申します。そうして話をだんだん進めていけば、そうむずかしい問題は起らないと思うということをみずから言うくらいであります。そうでありますから、やはりそういう空気の改善ということがすべての問題の前提であるということは争うことはできません。 それから李承晩氏の発言についてお話がございましたが、実は、けさのタイムスですか、私は用事ばかりでそこまでまだいっておりませんが、それは十分検討して……。しかし、新聞記事などをあまり権威がある国会議員の皆さんがお取り上げになるということもどうかと思います。外務当局としてはそういうことに対処する十分の処置はとることにいたします。
○高瀬委員 あまり長くなりまして恐縮でありますが、それでは、今後は、大村の収容所における刑余者を釈放する場合には、漁夫とは関係なく、いかなる理由を問わず今後は韓国側に韓国人は引き取らせる、こういうことでよろしいわけですね。——それでは、大臣もそういうことにするんだというお話ですが、法務省の方の見解をちょっと最後に岸本次官に聞いておきたい。
○重光国務大臣 ちょっと私発言を求めます。この問題は閣議の了解を経て法務大臣とはずいぶん前から打ち合せをした問題であるのであります。最近は法務大臣は病気のために閣議に欠席をいたしておりましたが、前回から出ております。今日再びこの問題で十分閣議で説明をして了解を得ております。私は、閣議の了解を得るときに、政務次官も出席をして、その問題を話したのであります。将来すべての大村の韓国人を引き取るということを前提とする、これはできぬと思います。しかし、将来さような希望を日本側として先方に伝えることは、これはあらゆる力を尽して私はやろうと思っております。それを向うが認める認めぬは交渉の結果でありまして、これが順当な解釈であります。さようなわけでございますから、私はここで閣議の決定について十分責任をもって今までお話をしたわけであります。そういう細目についていろいろ事務当局に御質問があるならば、これは私に関係のないことであります。
○高瀬委員 実は、この外務省から発表された文書についても、特に韓人と書いてある。韓国人と言わないで韓人とある。つまりコリアン、これは一体北鮮人も含んでいるのかどうか、これだけ一言伺いたい。
○重光国務大臣 これはえらいこまかな点まで御指摘があって、私もいささか恐縮するのでありますが、実は日本語ではむずかしいのです。たとえば、日本に従来合併時代からいるのは、日本語で言えば朝鮮人であるということは言えますが、韓国人であるかどうかということが問題になります。朝鮮人という言葉は日本人の間ではあまりょくないらしいのです。私は、従来、支那人を支那人と呼んで何にも悪いことはない、中国人と言うのはかえっておかしいから、今も支那人と言いますけれども、これはお話の通りコリアン。ところが、これを韓国人とこう言ってしまうと、ここで国籍がきまっているようになってしまって、少し正確を欠くということがございましたから、それじゃ韓人にしようじゃないか、コリアンでいいじゃないかということでしたのであります。
○高瀬委員 そうすると、北鮮人もこの中に入っているわけですね。
○重光国務大臣 これは、われわれが言ういわゆる朝鮮人というものすべて、こういうふうな考え方です。
○高瀬委員 それでは、その点については、この点は実は私にとっては非常に重大なのですけれども、いずれ当委員会において伺うことにいたしまして、私は、日韓関係の親善、国交の回復ができればわれわれの考えているような方法で適当に樹立されることを希望するわけなんです。重光大臣は高瀬の言うていることとおれの言うことと全然変っていないとおっしゃいましたが、多少やり方について私のやり方は変っているわけですから、その点も一つ御参考にして、ぜひ正常な国交回復をせられるよう念願いたしまして、質問を終ります。
○高橋委員長 武藤運十郎君。
○武藤委員 われわれ社会党といたしましては、日韓関係の正常な回復、それからいろいろな問題、ことに抑留者帰還というようなことについて、一日も早く解決をしたいという点については、何人にも劣るものではございません。しかしながら、外交というものは、私は筋を通さなければならないと思うのであります。今大臣の答弁を囲いておりますと、何でもかんでも何とかなるだろうというようなお言葉に弾くのでありまして、そういうことでは、いわゆる無原則な妥協といりものが出てくるだろうと思うのであります。外交というものは、やはり国際法にも従い、国際慣行も考えまして、その線の上に乗って行わなければならないと思うのであります。この日韓関係につきましては、すでに言論機関などにおきましても、非常に無原則な交渉である、筋が通っていないという批判があるのであります。われわれも同じように考えております。たとえば、まず第一に、李承晩ラインの問題でありますけれども、今高瀬君の質問に対して、李承晩ラインは認めたような認めないような——認めないのだという御答弁のように聞えます。しかし、この李承晩ラインというものは、外務省が、さきに大臣の言葉にもありますように、抗議に抗議を重ねておって、はなはだ不都合なものだということが言われておるのです。もし、この李承晩ラインが——私どもはそう思いますが、国際法上不当なものであるということになりますれば、韓国側が、これを侵したという理由によって抑留をし処刑をすることは、間違いだと思うのです。もし李承晩ラインが国際法上あるいは慣行上正当なものだということになれば、反対に韓国の行なった日本漁夫の抑留、逮捕あるいは処刑というものは正当なものだということになると思うのです。私どもの考えでは、やはり外務省と同じ見解でありまして、この李承晩ラインというものは不当なものだ、不法なものだと考えておるわけであります。不法であるということになれば、抑留、逮捕ということはありませんし、また処刑ということもないと思うのです。処刑ということが不当だということになりますれば、刑期というものはないわけです。刑期がなければ、刑期が満了したとか満了をしないとかいうことは出てこないと思うのであります。こういう点は明確にしなければならぬと思うのであります、一体外務省はこの際李承晩ラインというものを認めておるのか認めないのか、もし認めないとすれば、なぜ刑期満了というよりな問題について外務省が了解を与えたのか、その点をまず第一に伺いたいと思うのであります。
○重光国務大臣 李承晩ラインを認めないのだ、認めなければ、それを侵したからといって処刑されるわけはない、こういうわけであります。そうならば、漁夫の抑留とか日韓関係の交渉ということはいらぬはずであります。あなたは今筋が通らぬと言うが、あなたの御議論は私には少しも筋が通らない。一体朝鮮の独立ということは認めないのですか。私は朝鮮の独立ということは認め、独立国が独立国としてやったということを主張する以上は、これは外交交渉になります。それが筋だと思います。その筋が意見が違うかもしれない。意見が違う場合においては、意見を十分戦かわすべきだと思い間す。だから、向うと交渉するから李承晩ラインを認めたのだというような結論を下されることは、筋も何も通らぬ話だと思います。われわれは李承晩ラインは認めておらぬ。おらぬからこそ、今までも交渉し、これからも交渉しなければいかぬ。できならばこれは国際問題として取り上げたいと考えているのです。これが私は行くべき筋だ、こう思っておるのであります。さような方向で私は進めていきたいと思っております。
○武藤委員 私は独立国としての韓国との交渉を反対するものではないのです。そうではなくて、その行き方において、すでに刑期満了をした漁夫を送還するということであれば、李承晩ラインは認めたことにならないかということを言っておるのです。別に韓国を独立国として認めないということを言っておるわけではありません。あなたの議論を聞いておると、たとえば、重光さんに——これは大へん失礼な話ですけれども、重光さんに対して貸し金がある、債権を持っているんだから金を返してもらいたい、こういう要求がかりにあった場合に、重光さんは、私は借金はないけれども金だけは返しますよ、金は払いますけれども債務を認めたものではない、こういうようなことが通りますか。そういう筋の通らない交渉はないと私は思うのです。私は交渉そのものを否定しているのではないのであって、交渉の方法なり過程なり、よって立つところの根本原則というものをなぜそんなに曲げなければならないかということを言っておる。債務は認めない、金だけは払うということがありますか。また、金だけ払っても債務は認めないのだということを言いますか。こういうことは、国際法とか国際慣行の問題だけではなくて、外交のイロハであり常識ではないかと思うのです。
○重光国務大臣 日韓の重要な国際問題について非常に変な個人的な例を引かれた。これは何のためですか。私は、そういう例は何にもあてはまりもしないし、筋も通っていないと思います。私は、日韓の間において問題があれば、国際間においては、たとえば国際司法裁判所に訴えるとかなんとかして、公平な国際法の裁判があってしかるべき問題であって、それはそれでいいと思うのです。しかしながら、韓国が日本側の正義として主張する点を認めない、認めさせないのは筋が通らぬと言う。私も日本側の主張が正しいと思う。正しいと思うから、あくまでこれはしなければならぬと思う。しかしながら、韓国が独立国として同じ見解をとっていないということは、これは認めて差しつかえないと思う。そうでなければ外交交渉はできない。一方的にやろうといえば、それは戦争になってしまう。それが国際法上の筋であり道である。それをやって交渉をしようというのに御異存もないようだから、それをやるのは当然のことであります。債務を認めるとか認めないとかいうのは、何のことかわけがわかりません。国際法というのはそういうものだということを私ははっきり申し上げておきます。そうして、交渉に移して、日本側の正しい主張をあくまでも通すように努力をする、こういうことが道だと考えております。
○武藤委員 今大臣の御答弁を伺っておりますと、独立国は何をしてもいいということになると思う。大体、韓国が独立国としてやったことは認めなければならぬ、それを反対する見解は反対の見解であってやむを得ぬという御趣旨のように聞えますけれども、そういうことになりますと、日本は日本で重光ラインをしいてもいいということになり、それを認めないのは向うの見解が不都合だということにもなるのではないかと思うのです。やはり、外交というものは国際法上の慣行の水準に従っていかなければならないのであって、幾ら独立国でありましても、慣行や国際法を無視して、独立国だからこういう主張をしても当然なんだということにはならないし、それをまた、それは仕方がないのだということで相手の国が受け入れなければならぬということでありますならば、国際法上の外交のルールというものはなくなると思うのです。あなたはいろいろ詭弁を弄しておられますけれども、とにかく、刑期が満了した者を釈放する、引き取るということは、根本においてやはり一応李承晩ラインというものは正しいものである、国際法上韓国がこれを主張したのは一応認めるという立場、その前提に立たなければ、刑期満了という問題は出てこないのではないですか。私はあなたの詭弁には承服することはできません。もう一ぺん答弁をして下さい。
○重光国務大臣 私の申すことが詭弁と言われる。その御批評は私は受けるわけに参りません。私から申しますれば、あなたの方が詭弁だと思うのです。しかし、そういう議論をここで言っておってもしょうがございませんから、私、はっきり申し上げますが、李承晩ラインは認めないのです。日本側の立場としては認めないのでありますが、その認めないということを、なるほどその方がいいのだということを韓国側に承認せしめるだけの努力を今後払わなければ、一方的にこれを言ったって解決はつきません。そこで、その努力をいたしておるわけであります。そこで、漁夫を帰してもらったら李承晩ラインを認めたことになる、また半ば認めたことになる、これは私はどういう論法かわからない。認めないということをはっきりして、漁夫だけは帰してもらうということは、実際的の処置として、人道上の問題として、これはやっても差しつかえない問題である、私はそう考えます。そういうことが悪ければ、全部交渉はできないことになりますから、私は、悪いことじゃない、いいことだと思ってやっておるわけであります。そういうことで一つ漁夫は帰すようにしていただきたい、こう思うのであります。
○武藤委員 その問題はとても話になりませんから、次の問題に移ります。 金公使とあなたと交渉をされたときに、大村に収容されておる朝鮮人を引き取ることはできないということを言われたようでありまして、あなたがそれを了解されたようですけれども、その引き取らない理由というのは、韓国の国籍がないから、国籍が不明であるからという理由であったように聞いておりますけれども、その通りでございますか。
○重光国務大臣 どこから聞かれたか知りませんが、そういうことはございません。私と話をしたのは、大村におるのを引き取るとか引き取らぬとかいうようなことは全部あとの実際的方法にまかしていこう、こういうことで、実はそうした方が一番双方の合意するところに達すると思ってそうやったのであります。引き取るとか引き取らぬということは、まだそこに出てこないのであります。この次の実際的方法によって協議をするときに、いろいろ話は起り得るかと考えます。
○武藤委員 さきに高瀬君からも質問なされたようですけれども、ほんとうのことを言ってもらいたいのです。国籍の問題については何か議論があったに相違ないのです。もしそうであるならば、コリアンという言葉を使う必要はないんであって、明らかに韓国人ということにしたらよかろうと思うのです。何か韓人というような訳をされておるそうですけれども、韓人というふうなあいまいな言葉でとりきめがなされておるように聞いております。そこが問題だと私は思うのです。どうしてもはっきりしなかったならば、これは交渉にならぬと思う。もし韓国が、大村収容所に収容されておる朝鮮人を韓国人であるということを認めないならば、どういう根拠に立ってその釈放を求めるのか、自分の国の国民でない者に対して釈放を求める理由はないではないか。内政干渉になるではないか。それをこちらが釈放するという了解を与える以上は、韓国人であることを前提として、その要求に応ずるのではないかと思うのです。この点が、今の大臣の答弁では、はなはだぼやかされておるか、あるいは事実を言っておらないと思うのです。大村収容所の朝鮮人は韓国人とするか、韓国の国籍を認めないか、こういう問題が必ず起ったに相違ないと思うのであります。その結果韓人というようなあいまいな言葉で表現されたのではないかと思いますけれども、その点はいかがですか。
○重光国務大臣 その点は先ほど御説明を申し上げた通りであります。そういうことに関して、いかにも事実を曲げて言っておるとか、また私がいかにも虚偽の陳弁でもしておるかのごとく言われますけれども、そうではないのであります。私は全部ありのままに申し上げておるのであります。従来、日韓合併時代において、国籍の問題は、その当時は韓国人ということではなかった。みんな日本人であった。それらの人間がしかし将来韓国人になることがあり得べきことは当然のことであります。そこで、韓国人になればみんな引き取る、こういうのです。これは筋は何も違っておることはないのです。しかしながら、韓国人ということに全部今正式の外交文書にきめてしまうことはできません。そこに問題がある。その問題は将来本交渉にはっきりきめなければいかぬ。日韓の条約をこしらえるときには、第一に国籍の問題ははっきりきめなければならぬ。また別に国籍条約というものもあり得る。そのときにはっきりきめなければならぬ。しかしながら、将来韓国人となることがあるべき人間について、外交上、拘禁しないで釈放してくれということはあり得ることで、それを釈放するとしないとはまた別問題で、実際的方法についてよく検討をしていけばいいことなんであって、筋が少しも通っていないことはないと私は思っております。
○高橋委員長 ちょっと委員の皆さんに申し上げますが、外務大臣は渉外関係のお仕事があって大体一時までということを予定されておられましたが、三十分ほど延ばしていただくように外務省の方に話しておきましたから、大体一時半には一応質疑が終るように一つ御協力を願いたいと思います。
○武藤委員 今委員長のお言葉でございまして、私もこれに協力することにやぶさかではございませんが、私は委員長に申し上げたいのですけれども、外務省はこの法務委員会をはなはだ軽んじておると思うのです。今まで数回出席の要求をいたしましても一向出てこない。これは与党の議員も同感だと思うのです。そうして、ようやく出てくると、今度はもう時間だ時間だと言っておる。はなはだ不都合だと思います。ことに、この問題につきましては、外務省と法務省との関係は非常に重要なものなんです。これについては十分に質疑をしなければならぬと思う。ことに、与党側におきまして以上に野党側におきましては質問の時間を与えてもらいたい。時計を見ておりますと、与党の高瀬君の質問がすでに三十五分を経過しておりました。野党側に対しましても十分な質問の時間を与えてもらいたいと思うのでありまして、私はどういう渉外関係か知りませんが、渉外関係も重要でありますけれども、国民を代表するところのこの法務委員会、ことにこの問題については外務省と法務省と重要な関係に立っておるものでございますから、十分な質疑を許してもらいたい。そしてまた、きょう一時半なら一時半、二時なら二時でやむを得ないとすれば、さらにあしたならあしたやるというくらいにしなくちゃいけないと私は思います。私はそういうところは協力することにはやぶさかではございませんが、委員長自身も、大委員長として、外務大臣を引きとめることに一つ努力をしてもらいたいと思うのであります。 それでは法務省の方に伺いますけれども、何かこの問題について……。
○高橋委員長 武藤君、はなはだ恐縮ですが、外務大臣の方を早く済ませて下さい。
○武藤委員 それじゃ外務大臣に伺います。今、韓国籍の問題について、はっきりきめないで、あとできめるようなお答えでありましたけれども、私はこれはどうしてもはっきりきめなければまずいと思うのです。法務省の方の見解として伝えられておるところを見ますと、とにかく、この際、大村に収容されている者は韓国の国籍を明らかにすること、第二には、今後入所の刑余者も韓国で必ず引き取るという条件をつけてもらいたいのだということを言っておられるようであります。これはもう当然過ぎるほど当然のことでありまして、外務省の方としてはこれを受け入れてこの立場に立たざるを得ないと考えるのでありますけれども、外務省の見解はいかがですか。
○重光国務大臣 この問題を閣議で決定するときに、法務政務次官が私に、大村に収容しておる者を将来韓国人として向うに引き取ってもらうことを向うに承諾させることが法務省の希望である、こういうことを言いました。私は、それは今はできぬことだと言ってお断わりしました。何となれば、今国籍の問題をきめるということは、これは国籍の交渉を経なければきまりませんから、これは間に合いません。しかしながら、これははっきりと私は引き受けました。それは、大村におる韓国人が韓国人であるという法務省の建前はあくまで私は主張しょう、この主張は日本の主張として外交交渉のときにしてみよう、しかし、韓国が今すぐその通りだと言う言わぬは、これは私今承諾する限りではない、それは主張はしてみよう、こういうことは言いました。それはむろんその意味だという政務次官の話があって、それならばそれはやってもよい、こういうことで、法務省の考え方はその通りに了解して私は今日まで進んできておるのであります。国籍の問題は大きな問題でありまして、その問題を解決するために交渉をそこにするときには、なかなかこれは時日を要して、漁夫の救出も急にはできぬものでありますから、これはいわゆる本交渉でやる、こういう建前をとっております。
○武藤委員 国籍を明らかにしないままで釈放するというようなことになりますと、また、法務省からも発表されているのを見ますと、とにかく収容された刑余者は前科何犯という人が多いのでありまして、また犯罪を犯すおそれがあると思うのであります。そういう場合に、国籍が明らかになっていないとまた送還問題がきまらないということになると思います。新しく収容する者についてもやはり韓国で引き取るということをはっきりしておかないならば、李承晩ラインというものを理由にして逮捕をしてはそれと交換にというようなことになって、いつまでたってもこれを韓国に送還することができない。今収容している者はもちろんでありますけれども、今後収容した者も韓国送還の要求を国際法並びに慣行に従ってすることができないだろうと思うのであります。そういう意味で、どうしてもこの際韓国の国籍を明らかにすること、それから、今後入所の刑余者は韓国で引き取るというようなことについて、交渉の際希望として話だけはしましょうというようなことではなくて——私は何も法務省の見解を代弁するわけではありませんけれども、それは当然のことであろうと考えるのであります。この点をもっと明確にしなければならないと思いますが、外相の決意を承わりたいと思うのであります。
○重光国務大臣 交渉のやり口について今御意見が述べられましたが、私は目的を達するために最善を尽したいという考え方で先ほどいろいろ御説明を申し上げました。しかし、お考えも一つの貴重なるお考えでございますから、それは十分参考にしてやりたいと考えます。その通りにやるというお約束を今いたしかねることを遺憾といたします。
○武藤委員 そういたしますと、結局は、政府部内におきましては法務省の見解とか外務省の見解とかいうことでなしに統一されておるというふうに承わってよろしいでしょうか。
○重光国務大臣 さようでございます。
○武藤委員 日韓関係については、李承晩政権というのは横車を押すことは今まで再々でありまして、これとの交渉はなかなか大へんだと私は思うのです。しかも、重光外務大臣がはなはだもって弱腰でございまして、私どもの納骨できないようなやり方であると考えます。ことに日韓関係につきましても非常にあせっておるように考えられます。これは日ソ交渉が失敗に帰したということについての埋め合せをこちらに持ってこようというようなお考えがあるのかもしれませんけれども、日韓関係は、李承晩ラインの問題はもちろんでありますが、国交正常化の基本的な条約の問題、あるいは今申しました国籍、処遇の問題、財産請求権の問題というように、まだ問題が非常に多いと思うのでありますけれども、外務大臣のような無軌道、無原則な、何でもとにかくやってみようというようなことでは、必ず失敗をすると私は考えます。相子はなかなかそういうふうなことできまりがつくような相手ではなかろうと思います。今重光・金会談で取りきめをされたそうであります。しかも、その取りきめのうちには、先ほど来指摘しましたように、はなはだ筋の通らないのみならず、日本がほとんど韓国側の要求を無条件で受け入れた、のんでしまったというような取りきめのように思います。こういうふうな弱腰の、自主性のない取りきめをして、そして、これはしかし日韓関係を正常化するためにはやむを得ないのだというような御見解が響いておると思うのでありますけれども、こういうふうな譲歩に譲歩をしておって、これで日韓関係の正常化の条約が必ずできるというお見込みでありますか。もしできるかできないかわからないのにこういうふうな譲歩をしたということになりますと、はなはだもってこれは問題だと思うのであります。また、もしできなかって場合に、このような筋の通らない譲歩をしてしまって、その責任はどういうふうなことになるのか、この点について最後に外務大臣の意向を承わりたいと思うのであります。
○重光国務大臣 いろいろ御質問に対して、私はでき得るだけの材料及び誠意をもってお答えしてきておるわけでございますが、御了解を得る点が少しもないようでございます。すべて私の言うことは無軌道であって、むちゃくちゃに軟弱外交である、こういう御批評でございます。そうなると、御批評は御批評として伺わなければなりません。果してそうであるかどうかということは、一つ天下公論に訴えてみるよりほかにしようがございません。私の言うことは無軌道でもなければ何でもない。そういうふうに進んでいくことが日韓将来の親善関係を回復する最も現実的な実際的な方法である、私はこう信じて参っておるわけでございます。しかし、これについて私はだれもの批判を制肘するわけにはむろん参りませんし、またその意向はございません。最善を尽していきたい、こう考えております。それが私のやらなければならぬ仕事であると考えておる次第でございます。
○武藤委員 私の質問に答えておらない。こういうふうな取りきめをしたけれども、これで日韓関係の正常化ができるかどうかという見通しを聞いておるのです。できなかった場合に、こんなに譲歩してしまってその責任をどうするかということを聞いておるのであって、やってみなければわからないというような、そういう答弁は責任者の答弁ではないと思うのです。もう少し明確に答弁してもらいたい。
○重光国務大臣 私は明確に答弁しております。それが私の責任を果すゆえんだ、こう考えております。この交渉は最善を尽しても必ず成立する、こう、今日断言するわけにはいきません。もしそういうことを責任者の口からどんどん言ったならば、これは交渉について決して有利な言論ではございません。そういうことは私は申しません。ただ、今まで申し上げたような大体の順序、心構えでもってあらゆる努力をしてみたい、それが私の責任を果すゆえんだ、こう考えております。
○高橋委員長 志賀義雄君。
○志賀(義)委員 差し迫った実務的な問題で、しかも人道上ゆるがせにできない問題について外務大臣に質問いたします。 それは、十七日に舞鶴を出る船「こじま」に乗せて朝鮮民主主義人民共和国へ帰してくれという希望者が九日から東京芝の日赤本社前ですわり込みをやっておるのであります。平壌会談の結果、朝鮮民主主義人民共和国から日本人を帰してもらうのですが、こちらからこれを帰すことについてどういう差しつかえがあるのかという点は、一問一答をやる必要はありませんが、外務省の言われるところでは、たしか、朝鮮で取りきめたのは日本人を帰してもらうことで、こちらが帰すことは取りきめをしなかったというのが一点、もう一つは、李承晩政権の方で日本から朝鮮人を乗せていくことを承知しないから、この二つの理由があげられておるのであります。一体、大村収容所にいる朝鮮人にしても、朝鮮民主主義人民共和国に帰る希望を持つ者も、これは出入国管理令の五十三条によって本人の希望のところに帰すことになっておるのでありますが、外務大臣としてはそれを認められるのかどうか、その点について御答弁願いたいと思います。
○重光国務大臣 お答えします。それは今後双方の当局者において実際的方法について打ち合せをいたします。その打ち合せによってきまることだと考えております。
○志賀(義)委員 その打ち合せをしておるのでしょうか。
○重光国務大臣 まだそこまでいかぬようでございます。これからぼちぼちやります。
○志賀(義)委員 どうも、李承晩の方で横やりを出すと、すぐそれには従われるようでありますが、向うから帰してもらう、こちらから帰す、これは人道上から言っても当然のことで、外務大臣としてもその点について十分考慮されてしかるべきであろうと思うのであります。この際国際赤十字あるいは第三国の船で送るという方法を講ずれば、このことはできるのじゃないでしょうか。そういうことを現にやっておられますかどうか、その点についてお答え願いたい。そういう点を考えておるかどうか。
○重光国務大臣 済みませんが、質問のポイントだけをおっしゃって下さいませんか。
○志賀(義)委員 私はごく簡単に要点だけを言っておるのですから、よく聞いて下さいよ。とにかく、向うから帰してくれるというのですから。あなたは最初に相手が無法者でもこれと交渉するのが外交だと言われた。相手が帰してくれるというのは、これは向うの好意もあります。それなら、こちらも帰すということを考えなければならぬが、李承晩という無法者にあなたもだいぶ手をやいておられる。そこで、ここに一つの方法として、今「こじま」に乗せると李承晩が安全を保障せずに拿捕するということがあるならば、それを押し切ってやって保障をつけるには国際赤十字の方の協力も必要でありましょう。そういうことを考えておられるかどうか、それができなければ国際赤十字船でやるということを考えておられるか、また第三国の船でやられるということを考えておられるか、またそういう方法を現にとっておられるかどうか、この点をお答え願いたい。
○重光国務大臣 今の現実問題はこじま丸の問題であります。こじま丸の問題は、御承知の通り、今赤十字社がこれを管理していこう、こういうわけであります。それに例の政府コンダクト、安全保障をまず取ろうというわけでありますから、それを取って行くことが一番手続上当然のことで、そうして一番安全な方法をとらなければなりませんから、それでやっておるわけでございます。それはそれでいいと思う。しかし、その政府コンダクトを取るためにいろいろな条件があれば、これは赤十字社の方でそれを聞くよりほかにしようがないと私は思います。しかし、とにかく早くやって、そうして日本の抑留者を帰してもらいたい。
○志賀(義)委員 あなたの方で早くやっておられるかどうか。
○重光国務大臣 それはやっております。それは促進しておるわけです——いや、向うから帰してもらうことを促進しております。
○志賀(義)委員 これではどうも与党の高瀬君も手をやかれるはずだ。自分の方だけ都合のいいようにやって、向うの都合をはからない。こんな外歩はないでしょう。これでいよいよ期日が来てこじま丸が出て行った場合に、あとはどうなりますか。あなたは力ずくで向うから日本人を乗せて帰るという方針をとられるかどうか。それができますか。それを無理押しにやられるかどうか。
○重光国務大臣 とんでもない飛ばっちりを受けましたが、いや、もうそれは力ずくで帰さそうとか何とかいうことじゃございません。赤十字がこういう問題を扱っておるので、赤十字にすべてそういうことを取り扱わしておるわけでありまして、その取り扱わせることを外務省は促進しておるわけであります。
○志賀(義)委員 もう一問だけ。そこで、今のようなことをやっておられたら、向うに行ったときに大へん工合が悪くなるのです。これはもうわかり切ったことなんです。だから、現実にすぐ次の手を打つようにやって下さいよ。実は、打ちあけ話のところ、法務省の方でもそこで手をやいておる。だから、一つ野党の委員にも頼むから、何とか外務省がしりを上げてそれをやるようにやってくれと言われるのですよ。 もう一つの問題は、大村の収容所にいてまだ国籍を明らかにしていない人もいるのです。これは直接法務省が関係しておりますが、今後、これが、あそこで今のようなまるで暗黒状態かなくなれば、いろいろと自分の帰りたい国を、朝鮮民主主義人民共和国あるいは大韓共和国かをはっきり言う人が出るでしょう。今後次々にそういうことを言う人が出てくるのであります。ここで、こじま丸を、無理に朝鮮人を乗せないで、帰国希望者を乗せないでやって、向うでまたもめて、そのときになって、今度は国際赤十字ということになると、あなたの面目まるつぶれになるから、今からおやりなさいと申し上げておきます。そのお心組みがおありになりますかどうか、それだけを最後に伺っておきます。
○重光国務大臣 大村収容所におる……。
○志賀(義)委員 その方はいいです。とにかく、向うに行って面目まるつぶれになっちゃ、あなたもお困りだろうから。
○重光国務大臣 面目はまるつぶれにならぬと私はお答えしましょう。御心配はないと申し上げておきましょう、
○志賀(義)委員 それではお手並みを拝見しましょう。
○高橋委員長 猪俣委員。
○猪俣委員 ただいま大臣の答弁で少しはっきりいたしませんところがありましたのは、この大村収容所の韓国人を国内に釈放する、それと引きかえに拿捕せられておりまする漁師を帰してもらうということであります。このことは閣議に正式に決定せられましたものであるか、ただ何か申し合せみたいなことか、あるいは法務大臣にただ耳打ちして了解を得たという程度のものであるか。法務大臣は御存じのように病気で、しかも高血圧で入院したというような人なんです。出てきたばかりにちやかちゃかとやられたのでは、はっきり判断ができたかどうかわからぬから、そこで、この法務省側の憂慮する点——これは私は非常に筋道が立っておると思うのです。しかし、それは、今あなたがおっしゃったように、韓国との全体の外交調整のためにはまた必要な点もあると思いますが、いずれにしても鳩山内閣の責任においてやらなければならぬ。そこで、これは正式な閣議決定をされたものであるかどうか、その点を伺いたい。
○重光国務大臣 正式、不正式ということはございません。閣議でこれはきめたことでございます。
○猪俣委員 閣議できめたといたしますと、いつきめられたのですか、及びそのきめられた閣議の範囲はどういう条項まできめられたのですか。
○重光国務大臣 この問題が閣議に持ち出されたのはずいぶんたびたび持ち出されました。持ち出されましたが、これが閣議できまったのは三月の三十日でございます。そのときには法務大臣は欠席でございました。そこで、私は、特に法務大臣にその前に面会をして打ち合せをいたしたいと思いましたが、話をすることができませんでした。そこで、政務次官がかわってこの閣議の席へ出席をいたしました。なお、今日は法務大臣も出席しておるので、さらにこの問題を再び持ち出して、この通りに一つやろう、こういうことに再確認をいたしておるわけでございます。
○猪俣委員 そうすると、三月三十日に正式に一回、本日また一回再確認をされて、閣議の決定事項になっておる、こういう御答弁でございますが、さよう承知いたしておきます。 それから、私は実は十ばかり外務大臣におただししたいことを用意したのでありますが、これは月曜日に回すことにいたします。ただ、宿題として私どもあげ足をとったり言質をとったりしたくないので、責任ある御答弁をいただきたいと思いますので、宿題を申し上げておきたいのは、韓国の軍隊かどうだか知らぬが、いわゆる李ラインを越したものなりとして日本の漁船を拿捕することは一種の侵略行為じゃなかろうか。国際公法の教えるところによれば、侵略とは国土に対するのみならず国民に対する不法な攻撃も侵略だという定義になっておる。そこで、これが侵略だということになると、これは一体日米安全保障条約の前文に触れることじゃないだろうか。すなわち、アメリカがかような行動は積極的にとめるべき責任があるのじゃなかろうかという点であります。これを一つ御考慮願いたい。それから、いま一点は、沖縄の人権問題について月曜日にはお尋ねしたい。毎回私はこれを申し出ておるのでありますが、外務大臣がおいでになりませんが、沖縄の人権問題について、大村収容所の問題のほかにお尋ねしたいことを予告いたしまして、私、終りたいと存じます。
○高橋委員長 本日はこれにて散会いたします。 午後一時三十二分散会