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24回国会衆議院1956/03/14

法務委員会 第17号

発言数
59
登壇者
14
会派数
2
開催日
1956/03/14

会議録

高橋禎一自由民主党

○高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。  検察行政に関する件について調査を進めます。  本日は最近ひんぴんとして起る暴力犯罪事件について調査を行います。本件については江口警視総監を参考人としてその実情を聴取いたしたいと思いますが、これに御異議がありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高橋禎一自由民主党

○高橋委員長 御異議なければ、さよう決定し、これより質疑を行います。質疑の通告がありますので、これを許可いたします。三田村武夫君。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 法務大臣はお急ぎのようですから、まず概括的な問題を提示いたしまして法務大臣の御意見を伺います。  御承知のように、最近ギャング映画を地で行くような集団暴力事件あるいは殺人事件など凶悪犯罪が激増しておる傾向にあります。これを率直に見ますと、人間の命をあまりにも粗末にし過ぎるということが言えると思うのです。いとも簡単に人殺しをやる。こういう世の中はまことに好ましくはい世の中でありまして、一体どこに欠陥があるかということを真剣に考えてみたいと思います。ケースは違いますが、去る三月の九日でありましたか、江戸川で十九才の娘が母親と弟三人を青酸カリで毒殺したという事件も新聞に大きく報道されております。これなども人の命を簡単に考える一つの傾向であろうと思います。どこかに大きな社会的欠陥があるのじゃないかということをしみじみ考えます。これらの犯罪を分類いたしてみますと、大体二つに分けることができると思います。いわゆる暴力団による計画的集団犯罪と、個人の欲望、感情などに基因する凶悪犯の激増であります。これは人命を軽んずるところに社会的原因がある。申し上げるまでもなく、法務大臣よく御承知の通り、民主社会の根幹をなすものは法秩序の維持であります。治安機関に対する国民の信頼、警察、検察、裁判に対する国民の信頼感というものがなくなりますと、健全な民主社会は育ちません。法の権威が保たれない社会は平和な社会とは言われません。近ごろのように凶悪犯罪が激増し、人命が軽んぜられ、形なき脅威を日常感ずる傾向に対しては、われわれ国政に携わる者といたしましても厳粛な反省を必要といたします。国民が安んじて生業に励み得る社会こそ真の民主的文化社会であります。基本的人権と自由の守れない社会というものは、民主国家でも文化国家でもないのであります。しかも基本的人権の最たるものは人命であります。その人命がかくのごとく軽んぜられ、ギャング映画を地で行くような集団的暴力犯罪が次々と新聞紙上をにぎわす今日の傾向は、まことに悲しむべきものがあると思わざるを得ません。裁判の権威、法の権威、検察の権威、あるいは警察の権威というものが、何か非常に影薄く薄らぎつつあるような感なきを得ないのであります。こういう傾向に対して、もとより法務当局においても十分対策あるいは方針をお持ちと思いますが、一体どこにこれは欠陥があるのか。これは申すまでもなく社会的条件、環境というものが大きな影響をなしておることはもとより当然でありますが、やはり、法の権威を保ち、さらには治安安寧の責任を持たれるところの法務当局においては、これは十分この機会にお考え願いたい。そういう意味において、現法務大臣は、その法律的御研さん、御研究の経過にかんがみても、経歴においても、十分この方面についての権威も見識もお持ちであるとわれわれは了承するのであります。具体的な事例については事務当局から伺いますが、最近のこの悲しむべき傾向、法の権威が失われつつある、民主社会においてその根幹として最も尊重しなければならない法の秩序、社会的秩序というものが失われつつある、善良な国民は形なき目に見えないその脅威の前におののいておるという社会的傾向については、われわれともども厳粛な反省と勇気ある態度をもって臨まなければならぬと思う。そういう問題についての法務大臣の根本的な御所見をまず伺いたいと思います。

牧野良三自由民主党法務大臣

○牧野国務大臣 ただいま三田村委員からの御質疑の内容に対しては、法務当局として深い責任を感じ、まことに最近の社会情勢に対しては申しわけのない感じを抱くかざるを得ないのでございます。  ちょうど昨日全国の検事長の会同をいたしました。その会同に際しまして、懇談の席上この問題にたまたま触れたのであります。ここにそのときの心覚えがございます。まずそれを申し上げます。  暴力事犯の処理については、刑法犯が全体丁として漸次減少の傾向があるにもかかわらず、最近恐喝、暴行・傷害・強盗、殺人等のいわゆる暴力事犯、凶悪事犯がかえって増加の傾向があって、一般の国民生活に対して脅威を与えておることはまことに遺憾である、これらの事犯の発生は社会不安を招来せしめるばかりでなく民主化の上に重大な障害を与えるものであるから、われわれは互いに連絡を密にして厳重なる検挙措置をいたすとともに、暴力団体等に対してはその動向を監視するとともに、事件発生に当っては、その背後にあるものを究明することに努めて、治安の確保に万全を期さなければならぬ、こういうことを語り合ったのでございまして、あたかもその翌日、三田村委員からただいまのようなお言葉を受けて、当局は厳粛な反省と勇気ある態度をもって向わなければならないと仰せられたることは、まことにもっともでございます。  その点に関しまして、連日私どもが語り合っておりまする、その原因がどこにあるかということについては、世の中の実情は、文化と言いながら文化に反する事実が多い。平和と言っておりながら平和に反する事実が多い。そうして人権尊重と言っていながら人権をかえって侵害するよう事実が多い。それは全く風紀の頽廃がもとで、人心が荒廃して殺伐な風が出てきた。それで、一般の犯罪はむしろ減るのに、この殺伐な事犯が多いということについては深く考えなければならぬ。でありまするから、特にわれわれ政治に関与し、国会において国事を議する場合においても、どうか深くその点に反省して、むしろ国民に乱暴な殺伐な心持を起させるようなことのないように皆さんは努めてくれなければならぬと思いますというようなことを言われて、深く慙愧にたえないものがあるのでございます。  よって、私は、今年の正月初めに、一般治安の対策に関する方策を立てなければならない、——それが誤まって左翼活動を抑圧するように誤解されておりますけれども、私は当初からそんな考えは持っていないのであります。従って、法務省の中において広く広範にわたって事をやろうとすることは、かえって不安を起させるのみならず、越権の処置になってはいかぬというので、一般に関することはこれを党の機関にお願いすることにいたしまして、私どもはもっぱら公安を維持するという方面から大きく着眼して対策を講じますると同時に、どうもこの人心の荒廃というものは、この点は私は、昨年以来三田村委員も心しておられるような、教育の方面においてむしろ社会の醇風美俗に反感を持つような行き方があることに対しても思いをいたさなければならぬのじゃないか。これは悪い傾向を戦後作ってきたと思いまするので、この際は、どうか皆さんと一緒になりまして、この根源をつきまして、ここに手を入れて、われわれお互いは感情を融和して、がっちり手をとって、日本国民の風紀の維持ということと、どうかしてこの荒怠、荒れはててきた人心というのに何かこう慰安を与えて、前途に希望を持たせるというような方面に行かなきゃならぬ。そのことを考えまして、省内におきましてもしばしば会合を重ね、ことに閣僚の間においても、この点に対しましては閣議を済ましました後に懇談会を開きながら対策を練っておる次第でございます。  この点に対しては、即効薬もなければ、具体的に直ちに講ずれば緩和できるというような特別のものはないけれども、特別のものがないだけに、心を根本に費していくということだけで私は必ずいい結果を見ると思います。この点には、お言葉を守って、厳粛な反省と勇気ある態度ということに私は進みたいと思いまするから、どうか御助力をお願いしたいと思います。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 法務大臣の御方針、御決意、よくわかりました。お話の通り、こういう事犯に対しては即効薬も特効薬も、直ちにこれを矯正し是正するような妙案というものはそう見つかるものではありません。社会環境の是正というのが一番大きな力になるのであります。この点については、もとよりわれわれの反省が第一であります。つまり政治の責任というものが焦点にしぼられてくるのであります。この点についてさらに私は法務大臣に一言申し上げる。ことに閣僚の一員として法務大臣の御健在と御健闘をお願いしたいのであります。私がことに申し上げたいことは、こういう社会環境がありますと、その暴力事犯の直接被害者はもとより当然でありますが、さっきも申しました、いつ自分が生命の危険にさらされるかわからぬという形なき脅威、これは非常に大きなものであります。その犯罪に対する直接の責任の条件も原因もない、何らの因果関係を持たない者がいつどこで生命の脅威にされされるか、暴力の対象にされるかわからぬという、こういう事態というものは非常に悲しむべき事態であります。新聞はよく暴力都市、犯罪都市、あるいは暗黒街、暴力の町という活字を使います。言葉も使われております。これはただに映画の宣伝文句ではないのであります。そういう町の姿をどうして是正していくかということは非常に大きな問題であります。もとよりわれわれの経済生活の環境も改善しなきゃいけませんが、人間社会において一番必要なものは、生命の安全とわれわれの行動の自由であります。それが守っていけない社会というものは、どんなに経済的に豊かであっても平和な社会とは言えません。文化国家とも民主国家とも言えないのであります。しかるに、戦後十年を経て、われわれが新しい憲法のもと民主主義を今日十年間育て上げてきたこの歴史的な足あとを顧みて、しかも今日なおこういう事態が社会に深刻な問題として流れておるということは、まことに悲しむべき傾向であると思います。率直に申しますが、経済上の諸問題、あるいは税金の問題、あるいは事業の問題、そういった問題についてはなかなか政治家も政府の面においても御熱心であります。しかし、こういう法務とか治安問題については比較的冷淡である。これは従来からの一つの傾向であります。決して私はいい傾向ではないと思う。これは警察当局も同様の立場でありますが、従来から、治安とか、あるいは安寧、法の秩序、あるいは法の権威という面については、国民のほとんど大多数が法務省の所管であると思っております。事実そうでなければいけない。そういう立場から、今の牧野法務大臣が決して伴食大臣であられるはずはない。この大きな社会不安と申しますか、形なき生命の脅威というものに対して、今後政府として、民主政治の根幹としてどういうようにこれを改善、推進していかれるか、非常に重要な問題であろうと思います。当法務委員会においても、この問題の重要性にかんがみて、本日この委員会でこの問題を真剣に取り上げることを前回の理事会できめたような次第であります。一つ、そういう意味において、今私が申し上げたことは非常に抽象的でありますが、問題の実体は抽象的な表現の中にあるのであります。もう一度法務大臣の御所見を重ねて伺っておきます。つまり、私がさらに重ねて伺うという言葉の意味は、先ほど法務大臣が述べられた厳粛なる反省と勇気をもってこの問題に対処するというお言葉、御意見、御方針、これを今後具体的に検察行政の面において、さらに政府全体の立場からこれを推進し、実行していかはければならない。これは内閣の問題である。政府の問題である。従って、一つ、どのように今後これをお考えになりますか、御方針がありましたらお伺いいたしておきたいと思います。

牧野良三自由民主党法務大臣

○牧野国務大臣 ただいま質問がほんとうの問題の中核に入りましたから、率直に申し上げ、ことに本日の質問は理事会での御決定によるものであるということを承わって、さらに私は問題の重要性を痛感せざるを得ません。実は、打ち明けて申しますると、私が任を受けましてから、公安維持、治安維持ということに対してはどこが主管局であるか、どこが主管省であるかということをまで迷ったのであります。そこで、だんだん法規と制度を調べてみると、戦後占領軍は日本の政府から治安維持、公安維持の中心となるべき力を奪っておるということがわかったのであります。すべての法律を見、各省の機構を見まするに、治安を維持するとか公安を維持するとかいう方面の働きというものを奪ってしまった。これはつまり、反動的に、今まで左翼の活動というものに対して戦前の政府があまりに極端な干渉圧迫を加えたということの反動から、日本政府にはそういう力を与えちゃならぬと思ったのではないかと思うのであります。しこうして、ついには、公安調査庁というようなところも、あれだけ皆さんが非常に激しい論議を重ねられた結果破防法ができて、その破防法の結果公安調査庁ができてすら、今破防法なんというものはあるのかないのかわからぬ。あれほど皆さんが激しい議論をなすって、そして公安調査庁というものは単なる調査庁事務以外にはいずることを得ないことになっておる。でありますから、私は法務委員会にこの点はお願いしたい。治安、公安というものを保とうとする当局者はこの点に大きな悩みがある。  そこで、私は、先ほど申した治安維持懇談会というものを法務省より党へこれを持ってき、自分は閣内において閣僚懇談会をいたし、しこうして、内部においては、何とかした対策を立てなければならぬ、現在の行政機構における作用で何かできないかということを検察当局と私は語り合っております。この点においては、最高検察庁の全検事と二回にわたって懇談を重ねしかも私は世論がいたずらに誤解をして反感を持ってはならぬと思うので、法務省関係の記者団と数回懇談を重ねて、諸君はどんな方法をとったらいいかということを私に教えてくれぬかということすら言っておるのでございます。すなわち、この点におきましては、私はただいま非常に苦慮煩悶した時代からようやく一つの方針を見つけんとしておる。そのときに、御指摘のような右翼の暴力活動が激しいのみならず、家庭に恵まれない子女が殺伐なる行為をいたし、人道に背反する行為をひんぴんとしていたす。これは、あまりに左翼に対する弾圧をやった過去の反動として、右翼の方までがまるで顧みられなくなったというようなこと、ことに昨今の御指摘のような事案はいわゆる右翼でもないのです。全く社会の人心荒廃から来る、社会生活、家庭生活の恵まれないところから来る大きな犯罪でありますから、これは徹底的に策を講じなければならぬというゆえんでございます。従って、どうか党における治安対策特別委員会においてもこの点の具体策を立てていただきたい。と同時に、私ども閣内において懇談会をいたしております。これは重ねて言いまする。新聞は左翼を弾圧する対策でも立てておるように誤解しておりますが、そんなことはない。またそんな時代錯誤のことをわれわれはいたしません。どこまでも公安を維持し治安をりっぱに保っていく、そうして凶悪なる犯罪というものを絶滅せしめなければならぬということに心をいたしておる次第でございます。それにはやはり検察と警察の威力を発揮する。威力を発揮するということは、私は処罰をもって臨むぞというようなことではいかぬと思う。昨日は少し言い過ぎたことを検事長の会同で言った。処罰なんということは目的ではない、平和な正常な生活をするように導いてくれるような大きな社会的使命を発揮して下さいと言ったのであります。  そんなにして非常な苦心をいたしておりまするが、皆さんの御期待に沿うような社会事情に戻すことのできないのを残念に思っておりますけれども、非常な勇気をもってこの方面には対策を実行したいと思いまするから、何とぞ御了承の上今後とも各位の引き続きの御支援をいただきたいと存じます。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 大臣お急ぎのようですけれども、もう一点総括的な御所見を伺っておきたいと思います。  ただいま治安機構、治安制度に関する占領時代の回顧がありました。私もこの点については多少の意見を持っておりますが、問題は過去にあるのでなくて、今日及び今日以後の問題に来ておると私は思います。いつまでも占領行政の間違い、誤まりというものをわれわれが悔んでみても、これは追っつかぬ問題であります。今日以後どうするかという問題であります。しこうして、この問題については、今も法務大臣おっしゃったように、われわれはあくまでも民主主義というもののルールを守らなければいけないのであって、今の検察の権威、警察の権威というお話の問題も、いたけだかになって検察や警察が国民に臨むということではないのであります。その責務をいかにして忠実に果すかということにあるのであります。これも私、あまり多く触れたくない問題でありますが、率直に申します。検察にしても警察にしても、やはりみずから責任をとることに勇気が要るのであります。たとえば、大きな政治問題になったあの指揮権発動の問題でも、私はここでこれを論ずるつもりではなかったのでありますが、一言触れざるを得ない。責任の所在が一体どこにあるのだということについて、やはりその最高の責任者はもっと勇気が要る。そうしなければ、第一線に立つ検事にしろあるいは警察官にしろ、職務の忠実な執行というものは望んでも不可能であります。やはり、おのおのその与えられた職責に忠実であると同時に、責任についてはあくまでも厳粛であり、また責任を果すことには勇気がなければいかぬ。自分の身の安全だけを考えて責任を他に転嫁するようなことがあるならば、われ説き、厳粛なる秩序の確立を望んでみても、これは意味をなしません。ここで私が特に法務大臣にお願いいたしたいことは、検察の事務に携わる方々のその職務に対する責任感と同時に責任の所在を明らかにしてもらいたい。一つの人権問題を起しても、ああだとかこうだとか、責任があるとかないとかいうことではこれは片づきません。その人の片はつきましょう、検察全体の行政上の責任は回避されましょうが、このことによって法の権威を失うことははかり知るべからざるものがあるのであります。そこに、われわれが、国民の一人として生きた社会の中に生活しておるわれわれが、法の権威を望み、秩序を望む、これがその中にあるのです。警察は警察、検察は検察のその立場からの責任ではなくて、いわゆる公僕、国民のためにある一つの機関としての責任というものが、常にその当局の人の頭の中になければならないと思う。そういう点についての法務大臣の検察全体に対する深甚なる御考慮をぜひともお願いいたしたいと思います。  さらに、もう一点伺っておきたいことは、私は、自由というものはあくまで尊重しはければならないと思う。ことに、政治的自由とか思想的自由とかいうものは、法律や制度で干渉するものではないと思う。あくまでも政治的主張あるいは思想的主張は自由でなければいけないのですが、その自由にも限界があると思う。暴力を扇動するような自由が許されるか。人殺しを扇動するような自由が許されるか。社会的な悪、人間が正常な生活を営むために大きな害毒を流すその社会的悪を扇動するような自由は許されるものではないと思う。これこそ民主社会における最も大きな反逆でなければならない。しかるにもかかわらず、今日は、映画一つ見ても、何を見ても、まさに暴力の扇動です。人殺しの扇動であり、悪の扇動です。そういうものが公然と横行濶歩しておる。私はこれを一々法律の処置でためようとするものではないのであります。そこに行政の妙味があり、政治の働かなければならない分野がある。先ほど申しましたように、政府の一員として、閣僚の一人として、閣内における法務大臣の御努力を要請したい。つまり、こういうことは法律の処置によって処断さるべきものではないのであります。しかしながら、暴力扇動の自由が許される、人殺しの扇動がこれまた言論の自由として許されるなら、民主主義は育ちません。どうしてこういう問題に対処していくか。先ほど法務大臣は教育の問題だとおっしゃいました。確かに教育の問題であります。しかし、教育の問題は単に文部大臣だけの責任ではないのであります。つまり、全体の環境をよくしていくことが大きな教育でなければいけない。文部大臣が学校を通じて、あるいは社会教育を通じて、狭く文教の面からなされる教育だけではこの問題は解決しません。国全体、政治全体の大きな課題として社会環境をよくしていく、暴力を扇動するような言論というものは許されない、何人も耳を傾けない、悪を扇動するような言論というものは何人も耳を傾けない、こういう一つの社会環境を作っていくことが政治の責任、政治の任務だと思う。ところが、それがない。今街頭に氾濫するものは暴力扇動の映画であり、また読物であります。こういうものをどうやって是正し、矯正し、正しい方向に導いていくかということに、私は今日もう少し真剣な政治的考慮が必要だと思うのですが、それが何もないのです。われわれの先輩であり、また同じ党に属する法務大臣、ことにその法的研さんにおいてもその道の専門家であらせられ、政治家としても非常に長い修練を積んでこられた法務大臣でありますから、何とかこの姿なき生命の脅威にさらされておる善良な国民が安んじて生業に励み得るきれいな社会を作るために——これが民主政治の根本だと私は思うのです。そのためには法の権威をわれわれは回復しなければならない。その法の権威というものは、道徳律による裏づけがもとより必要でありますが、そういう社会を作ることがすなわち政治の責任でありますから、政治家として、法務大臣として、一つ大いに御努力を願いたいと同時に、この点に対する御所見をさらに伺って、法務大臣に対する私の質問を終ります。

牧野良三自由民主党法務大臣

○牧野国務大臣 御質問の御趣旨、御所見の存するところがよくわかりました。お言葉に当初ありました通りに、やはり部内一同お志を体して厳粛に反省するということと、勇気ある態度をもって処置するというこの二つが、この際一番大切なことと存じます。必ずこの二つを守って進みたいと存じますから、御了承を請います。  なお、この法務委員会で連年問題になっておりました売春法に関する内閣の審議会が十一時から始まりますので、三人ともその関係者でありますから、委員長、これで退席することをお許し願いたい。皆さんお許しを請います。

吉田賢一日本社会党

○吉田(賢)委員 議事進行について。目下内閣委員会で憲法調査会法案が審議されております。これは、一面から見ますると、法律の根本である日本国憲法に検討を加えるということが同調査会の主たる任務でありまするので、そのような法律の根本である憲法に検討を加えることを任務とする調査会法案は、これはあるいは当委員会が所管すべき事項ではないかと思うのであります。衆議院規則によりましてそれは内閣委員会所管なりということでありとするならば、やはり実質的には法務行政の根本に最も重要な関係を持ったものでございまするから、すみやかに当委員会は内閣委員会へ所定の手続を経て連合審査の申し入れをすることが必要であると考えるのであります。この点理事会におきましてそれぞれ御審議を願ったことと思いますけれども、だんだんと日時は経過して参りまするので、やはりすみやかに当委員会から内閣委員会に向って右案件についての連合審査の申し入れをするように、ぜひお取り計らいを願いたい。そうして、われわれ法務委員会全員にこの案について質疑をなす機会を与えるようにしていただきたい。こういうように思いまするので、この点について最善の御処置をお願いしたいと思うのであります。

高橋禎一自由民主党

○高橋委員長 吉田委員の御意見に対して、私から申し上げて御了承を得たいと思いますが、実は、本日の理事会においてもその問題について協議をいたしました。その結果によりますと、明後日理事会を開いて、そうして正式の議題にして、協議をして決定しようということになっておりますから、そのように御了承願いたいと思います。

吉田賢一日本社会党

○吉田(賢)委員 ただ、内閣委員会の議事日程は詳しくは存じませんけれども、仄聞するところによりますると、よほど審議が最終段階に近づきつつあるのじゃはいかと思うのであります。従って、これは一つすみやかに申し入れ等御決定を願って、そうして申し入れの手続をしていただきませんと、あちらの審議が終了するということになりましたら、その機会を逸してしまいますので、一つ御配慮を願わなければならぬと思いますが、その辺についての御協議はできましたのでしょうか。

高橋禎一自由民主党

○高橋委員長 明後日理事会を開いて、そうして決定しようということを本日の理事会で決定いたしましたですから、そのようにいたしたいと思います。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 続いて、最近の暴力的集団犯罪、それから凶悪犯の傾向について事務当局にお尋ねいたしたいと思います。  警察庁と検察庁にまず具体的の事実にわたってお尋ねいたしますが、最近いわゆる暴力団による集団犯罪が非常にふえた傾向にあるように思います。警察庁のお調べによっても、私の手元に多少資料があるのですが、これは具体的におとから警察当局にも伺いたいのですが、二十五年、六年、七年、八年、九年、三十年、この年次を比較いたしてみますと、これは非常な増加なんですね。人員においても、事件についても、強窃盗、強姦、暴行、傷害、脅迫、恐喝、暴力行為、こういうものを加えて暴力団犯罪というものを見ますと、これは検挙された面だけでありますが、二十六年が二千四百三十二、二十七年が二千四百五十、二十八年になると一万一千百七十五、二十九年が三万四千四百十九、三十年が五万五千七百八十三と、おそろしい傾向でふえております。これは詳しい資料については警察当局から一つ御説明願いたいと思いますが、一体どんな傾向にありますか。今のいわゆる暴力団と称するものの犯罪状況をまずお尋ねいたします。

高橋禎一自由民主党

○高橋委員長 ちょっと、三田村委員その他委員各位の御了承を願いたいのですが、実は長戸政府委員がやはり売春対策審議会に出席をしたい、こういうお話なんでして、どうもその審議会の方も本日すでに会議を開くことに決定してしまって、委員も全部お集まりのように聞いておるのですが、この際質問は次会にでもしていただいて、退席されることを御了承いただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 一言聞いておきます。今の刑事部長の御答弁をあとにしまして、長戸刑事局長代理にお尋ねいたしますが、われわれが知る範囲におきまして、いわゆる暴力団事件、これは事件になると検察庁で身柄を引き取られるのですが、案外さっさと出てしまって、下手するとお礼参りをする。私がこうやってここで暴力団犯罪を大いにやっつけると、帰りにどっかで襲われるかもわからぬ、こういうことをだれでも考える。さっき私法務大臣に厳粛な反省と勇気があれと言ったのはそこなんです。法の権威だけは保ってもらわぬと困るのです。いかに法律上保釈の手続か何かで許されたとしても、出てくればまた同じ犯罪を犯すような者をさっさと出されることはどういうことか。これはいつも問題になるのであります。事犯の違う思想的な意味における、政治的な意味におけるものは、これはあくまでも政治の自由、思想の自由で、その身柄をいつまでも拘禁されることはもとより慎まなければいけませんが、凶悪犯、ほんとうの刑事犯、人殺しをする、暴行をやる、脅迫をやる、こういう者を、三十万円保釈金を出した、あるいは五十万円、何百万円の保釈金を出せばさっさと出してしまう、これは私はどうかと思うのです。一体こういう点はどうですか。私は相当の事例を承知しておるのですが、そういう問題を掘り下げることについては、われわれももとよりそうでありますが、法務当局においてもやっぱり勇気が要る。あなたの一つ率直な御意見を伺っておきたいと思います。

長戸寛美検事(刑事局長事務代理)

○長戸政府委員 お話の暴力団事件につきましては、われわれとしても重大な関心を寄せておりまして、先ほどお話しの二十何年以降、引き続き警察と協力いたしまして徹底的な取締りを励行してきておるわけであります。それに対しまして、起訴についても、特に一般事件よりも高度の起訴率をもってこれを起訴しておるという態度をとっておるわけであります。お話の、そういうふうに起訴いたしました場合に、身柄が保釈等によって比較的早く釈放されることは御指摘の通りそういう事例があるわけでありますが、それに対処いたしまして、われわれとしては、裁判所に訴えまして、それに対するその事犯の重要性その他を説明し、どうしても保釈するというような場合においても、保釈金の問題等を考慮していただいておるわけでございます。ただ、現実の問題としてそのような事例がある。これに対しては、さらにわれわれとしては考えていかなければならぬと思っておりますが、そのような態度で臨んであります。

中川董治警視長(警察庁刑事部長)

○中川(董)政府委員 ただいま三田村委員から、暴力団の犯罪につきまして、検挙いたしました資料についての御説明を求められましたので、お答えいたします。  暴力関係の犯置は、御案内の通り、関係者はなるべく法に触れないように地下にもぐっていろいろこういう犯罪的な行為をやろうと努力するのでございますが、警察といたしましては、その害悪の激しいのにかんがみまして、先ほどもお話がありましたように、この摘発を積極的にやりまして、ほんとうに法の権威を保って民衆の保護に当る、こういう決意を持ってやっておるのであります。その結果、警察の目に触れまして、すなわち、証拠に基きまして、犯罪を証明するに足る資料に基きまして警察において取り上げました数字が、先ほど三田村委員から御指摘になった数字であります。御要求がございますれば、さらに詳しく御説明を加えたいと思いますが、昭和二十四年、二十五年、二十六年、こういう期間におきましては、比較的全国におきましてこういう犯罪で検挙される数字が少かったのであります。ところが、二十九年、三十年に至りましては相当な数字と相なっておるのであります。社会の実態におきまして、暴力団の活動炉二十九年以降において大へんふえたかどうかということにつきましては、さらに検討を要するのでございますが、昭和二十四年、二十五年ごろにおきましては、全国の警察制度が御案内の通り規模の小さい警察組織でありましたことも一つの理由でございますし、その他、小規模の警察組織でありましたことに基きまして、彼らがその間隙をぬうてそういう犯罪を犯したことも推定できるのでございますが、そういう事柄もございましたので、二十九年ごろに現行警察法が施行されまして、府県単位の警察制度が施行され、広域に犯罪捜査活動ができる体制が整備せられましたのと、当時、いろいろ重要な犯罪もございますけれども、暴力団によるところの犯罪を制圧するということが警察の根本義に照らして最も重要である、こういうふうに考えられましたので、各府県の公安委員もこの犯罪検挙に大へん緻密に努力する、こういう体制を整備いたしたのであります。そういうことも理由の一つになりまして、ただいま御指摘いただきましたように、昭和二十九年におきましては三万四千強、昭和三十年におきましては五万五千強の人員を暴力団によるところの犯罪として摘発いたしたのであります。二十四年、二十五年、二十六年の数字はお示しいただきました数字と同じであります。詳しく御説明を求められますれば改めて御説明を加えたいと思いますが、要点は以上の通りであります。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 今中川刑事部長の御説明、非常に重要な点があると思うのです。警察庁長官にもお尋ねいたしたいと思いますが、二十五年、六年、七年、八年、つまり国警と自治警と二本建になっておったころ、このころでも自治警における検挙犯罪の統計は国警で統計をとっておられたはずなんです。そうすると、二十四年、五年、六年、七年ごろ、自治警、国警二本建のころは、あまりこういう暴力団に手がついていなかった、別な言い方をすると、どこで養われたかわからぬけれども、いつの間にか暴力団が養われて残っていたということも言えなくはないと思います。一本になって、大いに社会的な悪である暴力団の取締りを厳重にしなければいけないという方針のためかどうか知りませんが、おそらくそういう方針を国警当局がおとりになったのだと思う。飛躍的にふえておる。三倍、四倍、二十六年、七年ごろに比較いたしますと十何倍もふえておる。これは喜ぶべきことか悲しむべきことか知りませんけれども、少くともこれだけ暴力事犯というものはふえておるこれは警察庁長官どうでしょうか。今私がちょっと分析してみたようなことが言えるものか、あるいは別な角度から最近この二、三年間にぐっとふえてきたのか、あるいは国警、自治警二本建のころはどこかで手をつけない面があったのか、これは警察の機能としても、機構としても、あるいは制度としても重要な点でありますから、私はぜひとも警察庁長官のこの問題に対する御見解を伺っておきたい。

石井榮三警察庁長官

○石井(榮)政府委員 先ほど刑事部長からお答えいたしましたように、昭和二十四年から二十七年の間は、暴力団関係の事犯として警察で検挙した数がきわめて少いのであります。これは、当時警察制度が小さな自治体警察に分れておりました関係上、どうしても、小さい自治体警察では、町のボスと申しますか、そういった一部の勢力に対して真にきぜんたる態度をもって取締りに臨むということにおいてやや欠くるところがあったという面も確かにあったように思います。反面また、そうした間隙に乗じて、自治体警察は当該自治体の区域のみについて権限を持っております関係上、その自治体の区域において犯罪を犯しても、他の土地に逃げ込むと、警察相互の緊密な連絡があればそうした犯罪の摘発の打ち合せもできるわけでありますけれども、現実問題としては、なかなか緊密な連携ということがとれないということからいたしまして、往々犯罪が見のがされる、摘発されないといったような傾向も当時全国的にあった一つの傾向なんでございます。   〔委員長退席、池田(清)委員長代理着席〕 そうした理由が重なりまして、おそらくこの間においては犯罪の摘発の数が少かったものと考えておるのでありまして、暴力犯罪の実際の検挙数というものが、二十九年以降急激にふえて、それ以前は非常に少かったというのでなくして、おそらくは、この種の犯罪の傾向としましては、その著しい変化なく毎年行われておったものと思うのであります。二十九年以降特に摘発の件数が多くなりましたのは、先ほど刑事部長もちょっと触れましたが、現在の新しい警察制度が一昨年七月発足しまして、その直後におきまして、たしか二十九年の十月であったと思いますが、当時、新警察制度下において、当面全国の警察として何をまず取り上げるべきかという問題を検討いたしました。その一つとしまして、暴力団による犯罪の検挙、さらに覚醒剤の取締りの強化、この二つの問題を大きく取り上げたのであります。自乗暴力団の犯罪検挙につきましては手をゆるめることなく強力にかつ継続的に今日に至っておるのであります。そういった関係で、昭和二十九年以降犯罪摘発の数は飛躍的に増加いたしておる、こういう統計的な数字が現われたものと、かように私は考えるのであります。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 今石井長官のお述べになりましたことに二つの意味があると思うのです。私はもう少し掘り下げて分析してみたいと思うのです。それは、国警、自治警二本建のころは小さな自治警のためというようなお話があったのですが、自治警必ずしも小さくない。警視庁も自治警でしたし、大阪も自治警でしたし、名古屋も広島も自治警だったのです。そういうことだけでなくて、何か暴力団的な事犯をふえてくる傾向があるような気がしてしようがないのです。これはこまかい問題になりますから避けますが、事犯の内容、傾向というものを実際に分析してみると答えが出てくると思うのです。これも一つ御検討願いたい。見てみると、あまりにも傾向がひど過ぎるのです。ことに強窃盗などとというものは、昭和二十六年百二十六、二十七年百二十七、二十八年千五百二十七、二十九年になるとがぜんふえて四千百六十五、三十年は六千六百十九になっております。それから、強姦などというものは、二十五年、二十六年、二十七年、二十八年は数字がありませんが、二十九年になると五百二、三十年は九百四十五になっておる。暴行、傷害、脅迫、恐喝など暴力団得意の犯罪はまたがぜんふえておるのです。暴行傷害は二十六年は六百七十六、二十七年は七百五十五、それが二十九年になると一万四千三百三十一、三十年になると二万八千七百六十一になっておる。驚くべき飛躍的増加なんです。これは警察の取締りが厳重であるということも一つの意味がありましょう。けれども、厳重であるなら、二十九年に一万四千三百三十一もやったのですから、もうなくなってしまって、三十年には減らなければならない。ところが、三十年になると二万八千七百六十一になっておる。全体の統計を見たって、二十九年に国警一本になって厳重な取締りを励行して、何倍にも検挙がふえて三万四千四百十九になっておる。そこで、三十年に減ったかと思いますと、今度は五万五千七百八十三になっておる。警察の取締りが厳重になって徹底化したからなくなるというのじゃなくて、三十年になると逆にふえてきておる。一体これはどこに原因があるのかということが非常に重要な問題になってくる。こういう点についてはどうお考えになっておりますか。江口警視総監もそこにおられますから、現場第一線における最高の責任者として、警察庁当局と警視総監の御意見を伺いたいと思います。

石井榮三警察庁長官

○石井(榮)政府委員 先ほど暴力団関係の犯罪のみの傾向を申し上げましたが、全刑法犯の発生件数につきましての傾向をちょっと御参考までに申し上げてみたいと思います。  戦後今日まで約十年のわれわれが持っております統計によりますと、昭和二十三年と二十四年が発生件数の一番多かった年でありまして、いずれの年も約百六十万であります。これが今までの最高でございました。二十五年以降漸次犯罪発生件数が減少する傾向をたどったのでありまして、二十六年、七年、八年と漸次減りまして、二十八年が百三十四万、これが戦後この十年の問題で一番低い数字を示した年であります。ところが、翌二十九年からまた遺憾ながら上昇カーブをたどるようになりました。二十九年は百三十六万という数字を示しております。三十年—昨年一生は百四十七万八千ですから約百四十八万に近い、こういうようなふえ方を示しているのであります。こういうふうに全刑法犯の発生件数もここ二、三年また上昇カーブをたどっておるという関係等から見まして、先ほど御指摘のように、そうした犯罪が全般的にふえるのは何か要因があるのではないかということは当然考えられることであります。犯罪がふえる原因はいろいろあるだろうと思います。生活の不安定あるいは道義の頽廃と申しますか、道義の低下というようなことなど、いろいろありましょうが、そうした原因が那辺にあるかということについては、私どもここに詳しく断言的に申し上げるだけの資料がございませんので差し控えたいと思いますが、とにかく現実の姿がそういうふうになっている。暴力犯関係の犯罪も、従って、この全体の犯罪の発生件数が上昇しつつあるという傾向と軌を一にいたしまして、現実にふえていると思うのであります。検挙した数は先ほど申し上げたようなものでありまして、すべて根こそぎ検挙できているというわけには参らないと思います。まだわれわれの目の届かない、手の及んでいないものが多かろうと思います。さらに、昨年検挙された者が本年もまた検挙されるという事例もこの種のものにはきわめて多いのでありまして、そういう関係で数字が非常に膨大なものに遺憾ながらなっておる、こういうふうに考えられるのじゃないかと思っております。

江口見登留警視総監

○江口参考人 警視庁管下の事情を御説明申し上げます。  やはり、警視庁管下におきまする犯罪の趨勢も、昭和二十四年を頂点として漸次減少して参ったのでありますが、二十九年には増加傾向になりまして、三十年も同様であります。われわれとしましては、三十一年もやはり増加傾向になるのじゃないかという建前のもとにいろいろ対策を講じておるのでございますが、それでは、二十九年から三十年にかけてどうしてそういった犯罪がふえてきたのであろうか。一面から見ますれば、警察組織が変った、それで強力に全国的に連携がとりやすくなった、従って検挙率がふえたということも言えましょうし、もう一つ、私、警視庁管下として重要な原因だと認められますのは、やはりデフレの底入れが非常に響いてるのじゃないかと思います。経済不況に際しては犯罪もふえるというのが従来の傾向でございまして、やはり、デフレが底をついて失業者もふえる、いろいろ倒産者も出るというようなことで、これが犯罪に影響しているのじゃないだろうか、それが増加の原因ではないだろうか。それから、暴力団との結びつきでありますが、デフレ下になりますと、債権の取り立てとか手形の問題とかいうことで、非常にみな業者が苦労をするのでございます。普通の民事手続でやろうとするとなかなか片がつかない。そこで、暴力団が顔を出しまして、それはおれが取ってやる、また少しくらい金を取られてもそういう人に頼むのが早いので、だんだん暴力団が債権取り立てなど民事問題などに手を出して、監禁して傷害を与えて金を払わす、部屋を取ってしまう、建物をこわすというようなことで、暴力団がだんだん表に出てきた。最近ことに暴力団の問題が目につきますのは、やはり暴力団自身が、債権取り立てなどをやって多くの子分を養ってきたのでありますが、それだけではどうも経済的に成りいかない。一面においては、今までそういう暴力団がえてして手がけておりました悪銭が身に入る道がだんだんふさがれてくる。ヒロポンの根絶をやる、マージャン賭博も厳重に取り締っておりましょうし、パチンコ屋の景品買いの取締りも厳重にやっております。その他いろいろ悪銭の入る道がだんだん取締りの峻厳さにあって後退しつつある。従って、暴力団の問題としては、暴力団が一般の民間人をいじめるよりも、暴力団同士のなわ張り争い、お互いに生きられなくなって、なわ張りを非常に厳重にお互いに奪い合いをする暴力団同士のけんかがはやる。それが新聞に出ますから、暴力団が非常にふえているように思うのでございますが、私は、現在暴力団同士がピストルを撃ち合ったりなぐり込みをかけたりしているのは、一種の最後のあがきとでも申しましょうか、そうなればよいと考えております。しかし、派手なけんかが新聞に出るものですから、暴力団が非常にのさばっておるように見えますが、引き続き二十九年からやっております取締りの結果、そう大きくふえておる、ばっこしておるということではなくて、むしろ縮小されつつあるというふうに私ども見ております。  以上であります。

猪俣浩三日本社会党

○猪俣委員 所用があって退席したいと思いますので、関連してお尋ねしたい。  暴力団に対する警察の取締り強化については、私ども相当これを認めて感謝いたしております。ただ取締り当局を責めるだけでは能事は終りませんので、いろいろ原因について政治家としても検討しなければならぬ。当法務委員会においても、凶悪犯罪発生の原因について特別に公聴会でも設けてやってもらいたいと思う念が切実であります。これは理事会でまた話し合うことにいたしましょう。ただ、暴力団の背後には、政治家と称せられるような、あるいは政党人と称せられるひもつきの人間が相当あるのではなかろうか。先ほど三田村委員が質問されたように、保釈なんかが早くでき、お礼参りもやるなんていう陰には、ひもつきの政党人があるのではなかろうか。これは右も左も同じことでありましょうが、われわれ政治家として、これは厳正に反省しなければならぬのではなかろうか。また、警察においても、さっき法務大臣は勇気を持てと言われましたが、そういう点に多少欠くるところがあるがゆえに、どうもいいかげんな暴力団の存在がますます伝染病のごとく広がるのではなかろうか。実は、去年でしたか、一昨年でしたか、私の知り合いの子供が就職ができましたといって私に話をした。それはおめでとう、どこに勤めるようになりましたかと言ったら、殉国青年隊に入れてもらいました、こう言うのであります。殉国青年隊に入るのが就職だという。もっとも、月給をもらえるらしいから、就職には違いないが、そうすれば、その背後において相当の金を出している者があるのではなかろうか。一体そこに政治家が介在しておらないだろうか。そうして警察はその中核体までも調査なさっているのであろうか。われわれのところにはいろいろ情報が入る。児玉機関とか、何とか機関とか入ってくるが、警察はそれまで調査なさっているかどうか。ある程度表面に現われたチンピラだけを調べて、その奥の院は踏み込まぬでいるのではなかろうか。そういう疑惑が実はあるのであります。この暴力団の背後には、必ず何何一家——今度問題になりました何々一家の射殺事件なんかにも、背後に何々一家というある何らかの政治勢力が結びついているやに聞いております。そういう背後関係をあなた方はどれだけ認識されているか。これは人権に関することでありますからむやみに捜査することも困難でありましょうけれども、相当緻密な計画をもって核心を一つ御調査願いたい。わが日本の現状を茶毒している最大の悪が横たわっていると思っております。その点についての御苦心なり御決意なりを承わりたいことが一点。私は今具体的なことは申し上げませんが、なおいずれ御答弁によりましては具体的な私どもの調査を申し上げたいと思います。  それから、いま一つ続けてお尋ねしますが、先ほど三田村君が御指摘になりましたように、二十九年には三万四千のものが、三十年は五万五千というように二万件もふえている。そこで、相当捜査費を増加しなければならぬと思います。これは、私どもはなはだ怠慢で、それがどの程度増加しているかよくわからないので、これは皆さんにお尋ねするよりも自責の場合でありますが、取締りだけ励ましておって金は出さぬというのが現況ではなかろうか。そこで、この事件の激増に対して徹底的に検挙せんとする際、警察当局におきましては相当の御費用が出るのじゃなかろうか。それが予算面にどういうふうに増加しておるであろうか。二万件の違いとなれば、それが相当費用に響かなければならぬはずです。それが一体今度の予算に織り込まれておるかどうか。皆さんに聞くのはあべこべですが、どうも私予算がむずかしくて具体的にわからぬのですが、警察当局は御自身の問題だから、予算については最も敏感であろうと思うのですが、そういうことについて実情をお話し願いたいと思います。  それから、もう一点は、はなはだ支離滅裂になりますが、この原因論になりますけれども、これは大体あるいは法務大臣に申し上げることかも存じませんが、どうも公共企業体、ことに鉄道でありますが、この鉄道が、事のめんどうなのがいやさに、鉄道の直接管理しなければならぬ土地を、あるテキ屋の親分みたいなのに管理させる傾向がある。新宿なんか今そこで問題を起しておる。あるいは東京都です。これは警視庁のお耳に入っておると思いますが、例の葵部落、これは今私のところへ陳情が来ております。相当の危険性をはらんでおりますから、警視総監は十分なる御注意を願っていただきたい。今あなたのお話しになったように、今度は仲間同士が、一種の生存競争ですから、やはりやる傾向が出てきておるという。おもしろい御表現だと思うのですが、そういうところへ来ておると思うのです。この葵部落から弥生会というものが分離いたしまして、そして内部抗争に発展してきている。これなんかも、どうもやはり都が、ある集団のボスに全く全権を委任したような形で、まるでボスの個人経営みたいにしてやらしておくことから起ってくるのであります。こういうふうな公共企業体あるいは自治体において、自分たちが直接管理しなければならぬものをやくざの者に管理さして、そして自分たちの手数を省くとともに、全部やくざの責任に転嫁して、そしてかれらにある程度の費用の捻出の基盤を与え、そしてごろつきを養成するだけの経済をそこに成立せしめ、これが社会に、新宿あたりの何々組——相当警視庁で検挙されたようですが、あれの発生もそこから来ておる。みなその公共企業体の管理権をごろつきに与え、そのごろつきが子分を養成して、そしてそこに店舗を持つ人たちから相当の権利金や賃借料を取り立てて、そして小商人を泣かしておる。その管理権を確立するために、ごろつきを相当雇い入れておる。これが何々一家なんとなって発展しました原因であることは私が申し上げるまでもないが、現在そういうことが公共企業体なり官庁なり自治体なりに行われているということに対して、私は相当反省しなければならぬところがあるのじゃなかろうかと思います。さようなことについても、漠然たる問いでございまするが、一体警察庁長官あるいは警視総監はお考えになっておられるのであるかどうか。かようなことに対して、抽象的は質問でありますから抽象的なお答えでけっこうでありますが、御決意のほどを承わりたいと存じます。

石井榮三警察庁長官

○石井(榮)政府委員 ただいま猪俣委員のお尋ねの点につきまして、私ども、たとえば御例示になりました殉国青年隊といったような団体につきましては、その団体の動向等につきましては十分注意をいたしております。そうした団体の運営がなされるための資金というよう事ものがどういうふうにして獲得されているか、それによって犯罪が犯されておるようなことはないかどうかというようなことにつきましては、もとより十分に検討を加えております。そうした関係者につきまして、今日までにおきましても、証拠に基いて検挙した事例もあるのであります。先般の浅草における拳銃による撃ち合いにつきましても、この殉国青年隊の一部関係者がおるということになっております。すべてそういった類似の団体につきましては、今日までもいろいろとわれわれとしましては十分その実態を究明把握し、いやしくも犯罪の容疑のある場合には断固として取締りを加えていく、こういう態度をとっておるのであります。今後もそういう方針でいきたいと存じておるのであります。  あと葵部落その他につきましては、警視総監の方から……。

江口見登留警視総監

○江口参考人 暴力団と政治家等との結びつきの問題を御提示になりましたが、私ども、そういう風評は耳にしておりますので、事件が起りますたびに、そういう線にまで入ってみようかと思うのでありますが、なかなかその点、人権問題もありまするし、実態がつかめないのであります。多少の応援といっても、経済的な応援でなくて精神的な応援かもしれませんし、財政的に、経済的に、どの方面からどういうように月々幾ら出しておるというようなことを、なかなか突きとめにくいのであります。ただ、犯罪として、恐喝暴行等によって、ある会社に行って五十万円、百万円ゆすってくるというようなことは、すぐつかめますけれども、それ以外に任意に出されるものについては非常につかみにくいという実情でありますので、その点御了承願いたいと思います。  それから、予算のお話が出ましたが、警視庁の予算は御承知の通り大部分都費であります。やはり、二十九年に暴力的不法行為者の取締りを強化した、あるいはヒロポンの取締りを強化したというときには、百万円、二百万円都費から特別に出してもらっております。  それから、葵部落その他駅の周辺の土地の問題でありますが、暴力団的なもの、あるいは何々組と称するものが管理して、ボス的勢力をふるっておるというようなお話、確かに一面そういうふうに見られる点もございます。しかし、おあげになりました事例から見ますると、大体は、終戦後のどさくさまぎれに、その土地を管理する、管理すると、自然実力が出て参りまして、それを明け渡すときには、今まで管理しておった分に対する代償を払えということになりますし、葵部落にいたしましても、土地があいておるから、そこに行って落ちついて定着してしまう、そうすると、だんだん代表とか総代ができてくる、そのうち、全体の問題について相談するときには、都庁としてもやはり代表者と会って話し合いする方が早いというような関係になりますので、その代表者に対する反感というものも一部にはありましょうが、代表者として、やはり責任と申しますか、代表者としてみんなにかわって都庁と交渉して、立ちのき費用をもらうとか、あるいは配給品をもらうとか、そういう点については努力のあとも認められるので、一応はその人たちの従来の行為も多としなければならぬという点もございますが、今猪俣さんの言われたように、そのやり方に対してまた気に入らないという反抗分子と申しますか、そういう一部の者が出てくることも、自然の勢いでございまして、葵部落の立ちのきも延びております。これは主として都庁が当るわけでありますが、警視庁としては警備上いろいろ情報は入っておりますけれども、今さしあたりどうなるかという点は、まだちょっと見当がつきかねる次第であります。

椎名隆自由民主党

○椎名(隆)委員 関連して。警視総監にお伺いいたしますが、昨年度における警視庁の犯罪捜査費は一体幾らくらいでございますか。

江口見登留警視総監

○江口参考人 今その方面の資料を少しも持って参りませんでしたので、何でしたらまた別の機会に回答を申し上げたいと思います。

中川董治警視長(警察庁刑事部長)

○中川(董)政府委員 警視庁のことでなしに、全国的な予算の関係を、猪俣委員からも御質問がございましたし、ただいままた御質問が出ましたので、全体的に申し上げてみたいと思います。  ただいまお尋ねの捜査費を狭く割った詳細な資料はここに持っておりませんので、それはお答えできないのですが、犯罪捜査のために、すなわち普通の殺人事件あるいは窃盗事件その他すべての事件を含めて、全体の予算をずっと組んで、各府県では、それに基いて、当該府県内の発生状況によって、法令に基いて国費で負担すべきものは国費、都道府県で負担すべきものは都道府県で負担し、都道府県で負担するものについては法律で半額国が補助する、こういう建前になっておるのでございますが、ただいまお示しのありましたごとく犯罪等もふえて参りますし、大へん苦心しておりますが、さらに、そのほかに、従前予算の不足等によりまして犯罪の捕捉のできなかった面もございます。逆にそれが警察寄付金の募集等の原因にもなった事情がございましたので、そういう点も思い、だんだん検討いたしまして、できるだけの予算面についての努力をいたしたい。長官初め皆様の御心配によりまして、だんだん努力いたしました結果、衆議院で御審議を願い、ただいま参議院で御審議中の本年の犯罪捜査に関する予算は、直接国費の増加した分につきましては五千六百六万九千円、補助金にかかる分について、補助額の増加した分につきましては一千七百一万円、こういう状況でございます。

椎名隆自由民主党

○椎名(隆)委員 そうすると、こういうことも一つ警視総監おわかりになりませんか。一刑事の捜査費用の分配金は月平均どれくらいになるか。たとえば、基準外の賃金がどれくらい入る被服手当がどれくらい入る、臨時収入がどれくらい、あるいは超過勤務手当がどれくらい入る、刑事さんの一カ月におけるところの捜査費用はどの程度か。ただいたずらに治安維持のために犯罪検挙をするといったって、実際自分の生活を保つことができないで、犯罪検挙にのみ熱中することは私はできないだろうと思う。少くとも刑事さんにもある程度の生活の安定を与えてこそ犯罪の検挙もできるだろうし、あまりにも少な過ぎて、検挙のために自分がもらう月給まで吐き出さなければならないということでは、おそらく犯罪検挙もできなかろうし、治安の維持も保たれないだろうと思う。一体刑事の捜査費用の分配金が一カ月どれくらいあるか、おわかりになるかならないか。

江口見登留警視総監

○江口参考人 捜査費と申しましても、個人の使う分というよりも組で使う部分が多いのでございますから、一人に割ってその数字が意味があるかどうかということはちょっと疑問でございますけれども、何か作業をやってみましょう。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 時間もだいぶ過ぎてきましたから、なるべく簡潔にお尋ねいたしておきます。  さっきの暴力団関係の統計という資料を、私少し手元にありましたし、刑事部長からも伺ったのですが、その他のいわゆる凶悪犯——簡単に人殺しをやるのですね。人の命を粗末にし過ぎるという傾向が強くなってきたのですが、凶悪犯の主として殺人強盗、こういう事件の傾向はどうでしょうか。資料がありましたら、ちょっとお知らせ願いたい。

中川董治警視長(警察庁刑事部長)

○中川(董)政府委員 全刑事犯の状況につきまして、ただいま御指摘のございました殺人について申し上げますが、殺人事件はまことに残念ながら大まかに申しますと累年増加する傾向にございます。実数を申し上げるのも一つの方法でありますが、比率で申しますと、昭和二十一年の殺人発生件数を一〇〇といたしますと、二十二年は一〇八、二十三年は一三九、二十四年は一五二、二十五年は一六一、二十六年は一六〇、二十七年は一六〇、二十八年が一六四、二十九年が一七二、三十年が一七一というふうに、横ばいの時期もございますが、全体としては逓増している傾向でございます。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 だんだんふえていく傾向のようであります。そこで、警視総監に伺いますが、御承知ですから申さぬでもいいと思いますけれども、近ごろの新聞です。私、ちょっと昨晩拾ってみたのですが、これは三月七日から最近までのですが、「白昼の恐怖・暗黒街東京、路上で拳銃射合い、法要帰りの出入り、親分ら三名死亡」、これは六日の台東区における事件ですが、でかでかと書かれている。翌八日の新聞を見ますと、「暴力団罷り通る、警視庁は何をしている、つのる不安に批判の声、ヤクザ一万五千人、東京暗黒街の実態」、これを見ると、ずいぶん詳しく出ておりますが、やみ拳銃が二万丁くらいは東京都内に泳いでいるというのです。これは新聞記事ですから必ずしも信用いたしませんが、先ほど冒頭に申し上げましたごとく、このごろギャング映画を地で行くような犯罪がある。いきなりパンパンと拳銃でやっつける。簡単に人殺しが行われる。なかなかこれは手当が大へんで、先ほど同僚猪俣君、椎名君から予算面あるいは施設設営の面についても好意あるお話がございました。私も後刻伺いたいと思っておったのですが、「ヤミ拳銃の恐怖、問答無用弾丸に聞け、商談にからむ暴力団」、どうもいやな記事ばかりなんです。「暴力をふるう六十二人」、これは神奈川県の記事です。関西に行くと、これも日本版暴力教室がでかでかと書かれましたが、卒業式の日に卒業免状を携えた高等学校の生徒が職員室に戻ってきて教師四名を袋だたきにする。これは刑事事件になっているようです。いかにもいやな事件ばかりなんです。これは、先ほども申しましたように、昨年度三万五千人、今年度五万五千人、毎年ふえていくのです。もちろん根絶やしは困難だと思うのですが、こういう町の不安、まことに好ましからざる表現、暴力都市東京、暗黒都市東京、こういう印象をぜひとも国家の名誉にかけてもなくしたいと思うのですが、何かこういう問題について対策をお持ちでしょうか、その点まず伺います。

江口見登留警視総監

○江口参考人 なかなかむずかしい問題でありまして、御指摘になりました新聞の記事によりましても、この前の拳銃の撃ち合いなども相当大きなページをさいて報道しているのでありますが、ああいう特殊な博徒のなわ張り争いと申しましょうか、勢力争いで、いとも簡単に拳銃数丁を撃ち合って、直ちに三人が死んだというような、珍しいと申しますか、非常に困った事件につきましては、やはりその事件を新聞としても相当詳細に報道しますし、また、それを取り巻く環境と申しますか、そういう原因などについても、新聞社自身としていろいろ探求して、その後数日はそういう記事を扱うのもやむを得ないことだと思います。そういう記事が出ますると、やはり読者は三田村さんの言われたような不安感を非常に抱くのでありまして、これに対しては警察当局としても直ちに何とか手を打たなければならぬのでございますが、さしあたりの拳銃の問題につきましては、ちょうど三月一日から拳銃とか銃砲・火薬とか刀剣とか、そういうものについての一斉取締りを三月中に強力にやってみようということでやっております。しかし、二万丁もひそんでおるだろうということは、警視庁としてはとても想像できないことでありまして、先般撃ち合った連中からも数丁のピストルをあげておりますし、その以前にも、三月に入って数丁の拳銃を押収しております。そういう対症療法と申しますのは、きわめて効果が薄いかもしれませんが、しかし、やらないよりはましでございまして、そういう事件の続いたあとには、何とか一つ手を打って参るようにいたしております。去年の十二月からことしの一月にかけまして、質屋強盗とか銀座の親子殺しとか、しばらく凶悪犯罪が続きましたので、一月十九日からそういう繁華街並びに質屋などのありそうな、しかも土地柄さびしいようなところには刑事を多数に配置いたしましたり、あるいは予備隊の集団パトロールとか、それから、年末だけしかやっていない車両検問を随時やってみたりしました結果、しばらく続いた凶悪犯も相当とだえたわけであります。ですから、そういう事件を次々に報道されましたあとで、多少研究した結果の対策を講じますると、一時的にはやはり減少して参っておるのが例でございまするので、今後もこの態勢を恒久化して、できるだけ凶悪犯の発生を最小限度に食い止めていきたい、かように考えております。

三田村武夫自由民主党

○三田村委員 具体的な事実についていろいろお尋ねいたしたいのですが、時間の都合もありますから、あと総括して一、二点お尋ねいたします。  御苦心のほどよくわかりますが、私はこういうことも考えてみているのです。現在の警視庁の機能、これは、人員の面から申しますと、日本の警察全体を見ても、従前の警察よりもはるかに多くなっておりますが、どのようにしてより効率的にこれを運営していくか、これは非常に研究の余地あるものだと思います。先ほど法務大臣は冒頭に、占領政策でいい面もあるが、悪い面も残っておるものが多いという話もありました。この点も確かにあるので、一つの占領政策の方式から来た警察のあり方というものも一応再検討を要する時期が来ていると思います。これもありますが、昨年の十二月でしたか、警視庁の交番がダイナマイトで爆破されたことがありますが、あれもまだ事件は未解決だと思います。こういう事件は解決されないはずはないと思う。これは、捜査機能の面において、あるいは経費、施設、科学装備、そういう面においても、私はなお足りぬところがあるんだろうと思います。これは先ほど猪俣君も言っておられましたが、率直に一つこの委員会で警察庁長官も警視総監も述べていただきたいと思います。われわれは、警察力を増強して、警察予算をどっさり渡して、めちゃくちゃな警察活動を要請しようという考えでなくて、一人の人命を失うことは、これは社会的に非常に苦痛なんです。凶悪犯罪が横行して簡単に人殺しをする、今伺ってもどんどんふえていきます。毎年々々おそらく何百人、何千人という人が、ほんとうに責任のない者が殺されていくのです。基本的人権、基本的人権と言いまして、なかなか基本的人権はやかましいのです。基本的人権はやかましいのですが、基本的人権の最たるもの、その本体をなすべき命が、いとも簡単に奪われていくのです。そういうことを防いで、ほんとうに民主国家の秩序と体面を整えていくために必要な経費なら、私は相当出してもいいと思う。御遠慮要りません。毎年々々犯罪はどんどんふえていき、なくなりはしない。そのことのゆえに、いわゆる姿なき恐怖におののいておるというこの市民の姿、国民の姿というものは、私は悲しむべき傾向だと思うのです。どのようにしたらこういうものに対する手当が済むか。これはあえて必ずしも暴力団だけを対象とするのじゃないのです。暴力団というものが存在することは、一つの社会的条件、その環境があるのですから、その環境の是正は政治の責任でやるといたしましても、警察は警察の立場から、そういうものが蠢動すればたちまちにして警察の手に渡されるのだ、こういう社会的大きな戒律がなければ、なかなかなくならぬのです。そのためには、やっぱり悪に対してはあくまでも厳粛に対応していくという警察の機能と機動力と、それだけの能力がなければいけないと私は思う。これからどういう点を直していかなければならぬ面があるか、たとえば、予算の面においても、それからいわゆる科学捜査の機動力の面においても、先ほど椎名委員も言われましたが、今命がけで第一線で働く刑事諸君、警察官諸君についても、われわれはもっともっと同情の眼をもって見なければならぬ点があると思います。家に妻子をかかえて、下手をすればドンと拳銃でぶっ倒されるという立場は、そう簡単じゃない。そういう点についても十分われわれは考えなければいけないと思う。どういう方策をとるべきか。ここで御答弁を求めることが無理であるならば、十分御研究願いたいと思いますが、一つ勇敢にこの点は——何も予算をぶんどるという意味でなく、どういう装備を必要とするか、警察そのもののあり方についても、こ機動力をどう再編成していくかということについて、すでに御意見がありましたら、この機会に伺いますが、恒久的なもの、また応急的なものを十分御検討願いたいと思います。それだけ今御意見を伺って、きょうの質問は一応打ち切ります。またやがてこの委員会で具体的な問題を取り上げる機会があると思いますから。

石井榮三警察庁長官

○石井(榮)政府委員 ただいま三田村委員よりきわめて適切なる御意見を拝聴いたしまして、まことにありがたく拝聴いたしたのであります。捜査のために要する予算につきましては、国会の非常な御理解をいただきまして、年々わずかずつではありますが増加計上を認めていただいておるのであります。三十一年度予算につきましては、先ほど刑事部長が数字的にも申し上げたような状況になっておるのであります。鑑識施設等につきましても、年々拡充強化をいたしておるのでございます。むろん十分と申すことはできません。漸進的な改善にはなっておりますけれども、これは国家財政の都合もあることでありますから、この面だけ飛躍的に予算を増加し施設を拡充するということも、なかなか実際問題としてはむずかしい点もあろうかと思いますが、漸次わずかずつではありましても拡充増強していくという方向に私ども今日まで努力をして参りました。今後もそういう方向で行きたいと思うのでありまして、特に国会の皆様方には格別の御理解と御協力をいただきまして、ぜひそういう方向に進ましていただきたい、かように存じます。なお、結局、警察が仕事をするのは、金もさることながら、人でございます。人の面で現在の陣容が不足ではないかどうか、こういうふうに犯罪の発生件数が漸次上昇というかんばしくない傾向にありますけれども、事実そういう状況にある場合に、これに対処する警察力が頭数から言って現在のような陣容でいいのかどうか、こういう問題もわれわれとしては考えなければならぬ点でございます。御承知のように、一昨年警察制度を改正いたしました。当時、制度改正によりまして能率的、経済的な新しい警察制度を作るという観点に立ちまして、新制度を実施するならば人員も相当に縮減可能であるということで、四年にわたる人員整理計画を立てまして、第一年度、第二年度はその予定通りの計画で人員整理をして今日に至っておるのであります。当時、制度改正の際にいろいろこうした点を検討した場合には、先ほど申しましたように、犯罪の発生件数がやや横ばい状況にあった。そういう前提のもとに、今後そういう状況で推移するならば、あるいはさらに望ましいことであるが犯罪が減少するという傾向をたどるとするならば、警察官の数は相当減少しても、十分警察に対する国民の信頼と期待にこたえ得るだけの警察運営が可能である、こういう見地に入って人員整理計画を考えたわけでありますが、その後遺憾ながら、先ほど来申しました通り、犯罪の発生件数は上昇カーブをたどっておる。しかも凶悪な犯罪が非常に増加しておる。こういう当時予想しなかった新たなる情勢の変化に即応いたしまして、私どもといたしましては、当初立てました人員の整理計画を再検討しまして、真に実情に即する警察の陣容丁というものを考えなければならぬ、こういうふうな考え方に立ちまして、三十一年度、つまり第三年度に整理すべき予定の者を一応整理ストップという措置をとったのでございます。従いまして、警察官の人員の面におきましては、この問題解決の一助になろうか、かように考えておるわけであります。さらに、恒久的に三十二年度以降の問題をどうするかというようなことにつきましては、今後いろいろデータを収集し、情勢分析をいたしまして再検討したいと思っております。とりあえず三十一年度人員整理予定の者は暫定措置として整理をストップする、こういう措置をとっておるような状況でございます。なお、人員につきましてはそういうふうに一応整理をストップするといたしましても、要するに限られた人力でございます。それが十分能率的に仕事を果すためには、結局一人々々の警察官の能力、質的向上ということを考えなければならぬと思うのでありまして、従来丁ともいわゆる捜査能力の向上ということにつきましては絶えず機会をとらえて指導、教養を加えておるのでありますが、今後その面におきましてはさらに一そう創意工夫をこらしまして、警察官の持つ捜査能力の向上、こういうことをぜひとも考えて参りたい、かように考えておるのであります。  さらにまた、国民全般にお願いいたしたいことといたしまして、警察の力もおのずから限界がありますので、国民の深い御理解と御協力をいただくことがどうしても必要なのであります。特に、先ほど来お話に出ております暴力団関係の犯罪等につきましては、被害者あるいは関係者からいろいろ申告していただく、そういうことによって警察が犯罪検挙に着手できるということが非常に多いのであります。警察独自に活動して、いろいろ聞き込みその他により犯罪捜査に着手する場合がむろん原則ではございますけれども、同時に、広く国民の皆様からいろいろ資料を提供して警察に協力していただくことによりまして、警察の捜査活動をより活発ならしめるように格別な御支援をいただきたい、かように思っておるのでありますが、往々にしまして、この暴力関係の犯罪につきましては、後難をおそれて、知っているけれども警察に申告をしないというような事例が今日まで遺憾ながらあったのであります。そうした協力をして下さった方々の身辺の保護その他につきましては、警察としましても最善を尽したいと考えております。そういった意味におきまして、国民の警察に対する深い御理解と御協力をいただきたい。こういうことによりまして、この問題解決にわれわれは一そう効果をあげて参るようにいたしたい、かように考えているのであります。  なおいろいろ検討すべき問題が多々あろうと思いますが、とりあえず今私の思いつきました二、三を申し上げまして、今後さらに研究すべきものは研究しまして、一そうこうした問題の解決に最善を尽したい、かように考えております。

椎名隆自由民主党

○椎名(隆)委員 三田村さんの質問に関連して私も一、二お伺いしたいと思うのです。  ただいま警察庁長官の答弁の中に、国民の協力を願う、国民にすけてもらうのだという話があったのですが、こういうこともその中に入るのかどうか。昨年婦女に対する暴行事件が相当数あったにもかかわらず、検挙した数は四千二百六十九名、そのうち未成年者によるものが千九百七十七名で、四六%、成年者の二十才から二十五才が千百四十二名で、二十五才以下の青少年により起された犯罪件数が全部で七三%になっている。こういうように、警察においてはどうしても治安が守り切れない。ここで国民に協力を求めるということは、国民に自由を供出せよ、政府に対して自由を出せ、いわば婦女の夜間の一人歩きは禁止するというようなところまで追い込まれるのではないか。現在の予算と比較検討してみて、治安がどうしても守り切れなければ、政府に自由を供出さす、そうして女の一人歩きはやめてくれというようなことまで、いわゆる国民に協力してくれとあなたのおっしゃったことは入るのですか入らないのですか。

石井榮三警察庁長官

○石井(榮)政府委員 いわゆる犯罪防止の見地からいろいろと国民に御協力をいただいているのは今日までもあることであります。特にただいまお示しになりました青少年の犯罪が多い現況にかんがみまして、青少年の補導というようなことにつきましては、ひとり警察のみならず、関係の各機関と協力いたしまして、犯罪の未然防止、不良青少年増加の防止というようなことにつきまして努めているのでありまして、そういう意味合いにおきまして御協力を願いたいというのでありまして、国民の自由の抑制というようなことを考えておるわけではないのであります。警察に協力していただく方法はいろいろあるのでありまして、先ほど申しましたように、被害を受けた人が警察に申告すると、あとで仕返しをされる、いわゆる後難をおそれて泣き寝入りをするというような事例が従来きわめて多かったように思うのでありますが、そうした場合に勇気を出して警察に御連絡を願いたい。後難をおそれる気持もわかりますが、警察も責任を持って身辺保護をして差しあげる用意がありますから進んで御協力を願いたい、こういう意味合いにおいて申し上げたので、御了解を願いたいと思います。

椎名隆自由民主党

○椎名(隆)委員 その点はよくわかりますし、また、新聞紙上などで、暴力行為によって被害を受けた者に申し出てもらうということもしばしば言われている。また、その犯罪が出るごとに言っておられますが、しかしながら、申告をする者が少い。なぜかというと、留置せられてもすぐ釈放されて、警察の陰に隠れて必ずお礼に行っている。そのことを考えたときに、国民の善良なる方々は、なまじっか警察に届けても、警察に届けたとするならばより以上に仕返しが大きいから、警察がいかに声を大にしても、結局被害者を守ってやったためしがほとんどない。そのために申告する者は少かろうと思う。今後におきまして、警視庁並びに警察庁におきまして、もしそういう被害の申告があったならば、どこどこまでも守ってやるという御決心がおありでしょうか。

石井榮三警察庁長官

○石井(榮)政府委員 その決意を持ちまして私どもはお願いをいたしております。後難をおそれる方々のお気持は十分わかります。従来また遺憾ながらそういう状況にありましたことを私ども十分承知をしております。従いまして、そうした被害者あるいは参考人の方々の身辺の保護ということについては、警察としましては最善を尽して保護をして差し上げる、そういう適正な措置をとる決意を持っております。また、その用意を第一線の責任者には私たちとしましても十分指示してやらせるつもりでおります。どうかそういうことで一つ御協力を願いたいと思います。

椎名隆自由民主党

○椎名(隆)委員 それには一つのいい材料があるのですが、サンデー毎日の三月十八日号なんです。それの見出しには「オレが法律だの二十年、無法男に泣かされた大多喜町」という題で出ております。これは、大多喜町を中心にいわゆる暴力、強盗強姦、悪の権化とも言うようなことを過去二十年間にわたってやっておった。ところが、最近になってようやくそれを逮捕しまして取り調べておるというような実情なんですが、二十年間にわたって警察署は目こぼしをしておる。しかも、その男は人夫頭か何かで流れてきて、そうして現在では数千万円の私財をこしらえておる。その数千万円の私財をこしらえたというのはみんな悪いことをして作ったのです。それが二十年間も放置せられたということは、これはひとり大多喜町ばかりではなく、東京都の管内にも相当多かろうと思う。一応潤間組のこの記事を御参考までにお読み下さいまして、内容を一つ御調査願いたいと思います。     —————————————

池田清志自由民主党

○池田(清)委員長代理 次に、裁判所の司法行政に関し調査を進めます。  最高裁判所当局より説明を求めたいと思います。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池田清志自由民主党

○池田(清)委員長代理 御異議なければ、さよう決定いたします。  質疑の通告があります。これを許します。佐竹晴記君。

佐竹晴記日本社会党

○佐竹(晴)委員 先日お尋ねをいたしました福岡高等裁判所における催眠薬による精神喪失状態再現の鑑定の件、これはその後お調べの結果いかがでございましたでしょうか、一つお答え願いたいと思います。

江里口清雄判事(最高裁判所事務総局刑事局長)

○江里口最高裁判所説明員 二月十八日の朝日新聞の本件に関する記事は不正確で、事実に若干の相違がございますから、調査の結果を申し上げます。  本件は、住居不定の鍬富克(昭和十年三月生まれ)に対する強盗殺人事件でございまして、昭和三十年五月七日に福岡地方裁判所に起訴されております。起訴の事実は、被告人は昭和三十年四月十八日午後十一時過ぎごろ、小型タクシーに乗って福岡県太宰府町を進行中、所持金を使い果した結果、今後の寝食に不安を覚え、運転手を殺害して所持金を強奪しようと決意し、皮バンドを後方庫席から運転手の首に巻きつけて絞め、同人を窒息死亡せしめ、同人所持の現金千七百円を強奪し、かつ乗車賃百七十円の支払いを免れたものである、というのが公訴事実でございます。  公判は、第一回公判が六月二十三日に開かれておりますが、被告人の弁解といたしましては、被告人は家庭の不和と失恋のため生きる希望を失って、福岡市内の旅館で自殺を決意して、昭和三十年四月十七日、これは犯行の前日でありますが、夜十二時ごろカルモチン百三十錠をコップ内のウイスキーに溶かしたもの半分くらいを飲んで昏睡し、翌十八日昼ごろ旅館の女中に発見されて、医師の手当を受けた結果、同夜八時ごろ覚醒したのでありますが、いまだ正常な意識に立ち至らないままに同旅館を立ち去って、夢遊状態で歩行中タクシーを拾って進行中、太宰府町内で自殺恐怖の反射作用からか、被害者である運転手に恐怖を感じ、皮バンドで後から同運転手の首を絞めて、自動車賃を払わずに現金を奪ったことは間違いないが、特に相手を殺す意思や金を奪う意思はなかった、というのが被告人の弁解でございます。  被告人が服用したカルモチンの量は百三十錠全部ではございません。被告人の警察官及び検察官に対する供述調書並びに公判廷の供述によりますと、普通のコップ、これは高さ十センチ、直径四センチくらいのものでありますが、このコップ八分目くらいのウイスキーの中にカルモチン百三十錠を入れてかきまぜたものの半量を飲んだというのでありますから、全部溶けたといたしましても六十五錠でございます。被告人の昏睡中に手当した医師の証言によりますと、コップの底には十錠ないし二十錠分くらいの錠剤が沈澱しておったというのであります。また、旅館の女中の証言によりましても、コップの底以外に、なお床の上にも白い粉が落ちておったというのでありますから、これらの溶けない部分を差し引きますと、六十五錠よりもさらに少いわけでございます。  この事件の審理の第四回、九月二十九日に、弁護人から申請がございまして、九大の法医学の助教授城哲夫氏に鑑定命令を出しております。その鑑定事項は、一、カルモチン百三十錠を普通の大きさのコップ、高さ十センチ、直径四センチくらいのものに八分目くらい入れたウイスキーに溶解したものを半分くらい飲んだ場合におけるカルモチン服用の意識に及ぼす影響及びその後の時間的経過による右影響度合いの推移について、二、カルセチン服用による自殺未遂者が恐怖心を抱き、たとえば妄想により反射的に第三者に対して防御のため攻撃を加えることがあり得るかどうか、三、本件犯行当時における被告人の精神状態について、この鑑定事項について鑑定を命じておるのでございます。  この鑑定書は本年の二月になって提出されたわけでございますが、鑑定の方法は、通常の専門的文献やあるいは訴訟記録や被告人の問答等に基き鑑定をしておるのでございますが、この鑑定命令の各鑑定事項について鑑定人ははっきりした結論を避けておったのでございます。  そこで、第五回の二月十六日の公判期日におきまして、弁護人からさらに被告人の犯行当時における精神状態について再鑑定の申請があったのでございます。その際に、弁護人において、被告人に対して自供通りの量のカルモチン——これは六十五錠以下でございますが、これを飲んでもよいかと質問いたしましたところ、被告人はこれを承諾したのでございます。そこで、弁護人から、この再鑑定に当りましてはカルモチン服用の方法をも行なってもらいたいという旨の特に申し出があったのでございます。裁判所では再鑑定の決定をいたしております。鑑定人として九大の精神科の中修三教授及び薬学科の推薦者一名を次回の公判期日の三月一日に召喚いたしまして共同鑑定、あるいは鑑定人の意思によって単独鑑定を命ずる、鑑定事項は本件犯行当時の被告人の精神状態はいかんということでございます。カルモチン服用の方法は、鑑定人に確かめて、危険性がないと認められる際にはこれを実施してよいと告知することにいたしたのでございます。従いまして、三月一日の公判廷で命じようとした鑑定の方法は、普通行われておるところの事件記録や、あるいは専門的文献や、また被告人との問答等を資料とするほかに、鑑定人たるべき人の意見を徴した上で、危険性がないと認められる場合においては、被告人の自供にかかる量のカルセチン六十五錠、またはそれより少い量のカルモチンを服用させてする実験方法をも並用してよいという旨の告知をする予定であったのでございます。カルモチン服用が危険であるという意見が鑑定人からあれば、もちろん服用せしめるような指示はしない趣旨であったのでございます。  三月一日の第六回の公判期日におきまして、九大の精神料の中教授、薬学科の塚元久雄教授が鑑定人として出頭いたしたのでございますが、塚元教授から、カルモチンの致死量に関する鑑定であれば格別でありますが、精神状態の鑑定は自分の専門外であるから、共同鑑定からは除いてもらいたいという申し出がありましたので、中教授のみに本件犯行当時における被告人の精神状態はいかんということを鑑定事項として鑑定命令を出しております。中教授は、被告人に六十五錠あるいはそれより少い量のカルモチンを服用せしめることが危険であるかどうかは被告人の体質等を調査しなければ不明であるという答えでございましたので、裁判所は鑑定方法を鑑定人にまかせて、薬学科の塚元教授らの意見をも参酌いたしまして、生命に関する危険性やあるいは後遺症がないということを確かめた上で絶対に安全な実験方法を用いて鑑定することを命じておるのでございます。鑑定命令は法廷でされるのでありますが、その実施は鑑定人の適当と思料するところたとえば拘置所あるいは病院等で行いまして、その結果は鑑定書として提出されるのでありますが、この鑑定は二カ月を要する予定でございます。  以上取り調べた結果を申し上げます。

佐竹晴記日本社会党

○佐竹(晴)委員 よくわかりました。ただいまの御報告の通りだといたしますと、新聞に報道されておるのとはよほど相違いたしておりますのみならず、法廷において用意周倒なる鑑定が命ぜられておることがわかりましたので、この席ではこれ以上御質問申し上げることはいたしません。  次いで、和歌山の判事の泥酔による誤判事件、これはお調べの結果どうなっておりましょうか。一つお尋ねいたします。

五鬼上堅磐最高裁判所事務総長

○五鬼上最高裁判所説明員 和歌山の吉井裁判官が泥酔して法廷に出て、罰金の額を間違えて言い渡したという新聞記事がございました。これにつきまして私どもの方で調査いたしました結果は、吉井判事は同日の午前三時ごろにウイスキーをコップ一ぱいあおったという事実はございますが、法廷に出た当時にその泥酔のために判決を間違えたという関係はないようであります。しかし、被告に対する判決において、法定額二万五千円の最高額をこえる三万円の罰金を言い渡したことは、これは事実でございます。かようなわけで、いろいろ調査いたしましたのですが、同判事は、非常に自分の判決を言い渡したことに対する自責の念にかられまして、大阪高裁長官に辞表を提出いたしました。その結果、最高の方でも、本人がやめるという以上はそのように取り扱ってよかろうというので、三月六日に退職の発令になりました。

佐竹晴記日本社会党

○佐竹(晴)委員 二月二十一日の毎日新聞に出ております記事を見ますと、ただ誤判をしたというのみでなしに、いろいろと裁判所内において批判さるべき行為を繰り返しておる。かつ司法労組の方におっても大へん騒いでいるような記事がありますが、そういった関係はいかがでありましょうか。

五鬼上堅磐最高裁判所事務総長

○五鬼上最高裁判所説明員 同判事は元来性格というか人となりが非常に露骨にものを言う人で、従って、職員に対しても相当いろいろな悪口を言うようなことがありまして、職員の一部からは相当不平に思われておった事実もございます。しかし、これは、同判事の弁明によりますと、自分の性格から、自分がすぐ率直にものを言ってしまう、歯に衣を着せないものと言ってしまうからそのようになるのだという弁明でありました。司法労組の和歌山支部が、この問題について、同判事がある書記官の文字を批評して、何かイモ虫のような字を書いている、これはけしからぬと言ったというようなことを出して、これは職員を侮辱しておるというので、多分和歌山の裁判所長まではそういうことを申し入れた事実はございましたが、しかし、それ以上、新聞にあるように職組で決議をしたとか、あるいは弾劾手続をしたというような事実はございませんでした。

佐竹晴記日本社会党

○佐竹(晴)委員 結局、今回の辞職は、誤判であるということに責任を感じて辞表を出した、これを認めた、こう聞いておけばよいのでございますか。

五鬼上堅磐最高裁判所事務総長

○五鬼上最高裁判所説明員 さように私ども考えております。

佐竹晴記日本社会党

○佐竹(晴)委員 その問題については、しからばその程度にいたしておきましょう。  それで、これに関連をいたしまして、同じく誤判事件が最高裁において行われておりますが、何の責任もおとりになっていないようであります。最高裁判所におきましては往々誤判があるようであります炉、最高裁判所の誤判というものはきわめて重大なんです。下級裁判所の判事にしても、さように責任を感じて処置されておるのに、最高裁判所の判事の誤判等がそのまま放任されておるということは、これはきわめて重大な事件ではなかろうかと考えるものであります。それは、昭和二九年(あ)第一四九三号、鳥羽末太郎ほか一名に対する事件であります。これによれば、「被告人鳥羽末太郎、同芝崎兼明の各上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張を出てないものであって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。」、次いで、「また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。」、かように書いてあります。ところが、記録をよくお調べになってみれば、今の和歌山の裁判所の裁判官がやったと同じような、実は一定のワクを越えて裁判しておることはきわめて明確であります。ところが、「記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。」、こういうようにことさらに明確に判決の理由には書いておりますが、事実はこれに相違いたしまして、ただいま申し上げまするがごとく、和歌山裁判所の裁判官の誤判のごとく、誤判があっておる。これは一体どう処理されたのでございましょうか、お尋ねいたします。

五鬼上堅磐最高裁判所事務総長

○五鬼上最高裁判所説明員 ただいまの事件、ちょっと私手元に書類を持っていないので、はっきりしたことは申し上げられませんが、別段誤判問題として最高裁判所でそれを司法行政上取り上げて処理したということは今までにはござません。

佐竹晴記日本社会党

○佐竹(晴)委員 これは検察官の方で非常上告か何かなさって是正したということを聞きますが、そういう事実はございますか。

五鬼上堅磐最高裁判所事務総長

○五鬼上最高裁判所説明員 非常上告がありまして、他の原審の第一審判決を破棄して、最高裁において自判をした、こういう事実は承わっております。

佐竹晴記日本社会党

○佐竹(晴)委員 本日はただ事実を承わりおく程度にいたしておきます。  続いて、山口の判事が家内から訴追請求をせられておる事実がございます。つまり、夫は裁判官として不適格であるということを訴追委員会に訴えて、ただいま問題になっておるようでありますが、お調べになっておりましょうか。

五鬼上堅磐最高裁判所事務総長

○五鬼上最高裁判所説明員 ただいま御質疑のような山口の倉田判事補に対する訴追がございましたことは事実でございまして、これについては私の方でも一応の調査はいたしておりますが、実は、この問題は、同判事補は従来肺浸潤か何かの病気がございまして、それがまた悪くなって、昨年の七月から欠勤をいたしておる事実もございます。それから、医師の診断書を添えて休養を要するというので休んでおる事実も、これははっきりいたしております。ただ、問題は、この妻美佐枝ですか、これが申し立てておる事実は、私どもは両方から聞いたのではないのですから、はっきりしたことは申し上げられませんが、相当相違をしておるのでございます。何を申しましても家庭内の出来事でありまして、果して妻の申し立てておるようなものであるか、あるいはまた妻の申し立てが相当のものであるかどうかということについては、的確なる調査は私の方ではまだできておりません。

佐竹晴記日本社会党

○佐竹(晴)委員 私はなお裁判所関係についていろいろ承わりたい点がございますが、だいぶん時間もとりましたし、本日は他に予定がございますので、この程度にしておきたいと存じます。  なお、後日、最高裁の機構改革に関しまして、どういう御審理が進められておるか、最高裁の裁判の審理状態が果して人員不足のために非常に遅延しておるのかどうかというような点について、さらにお尋ねいたしたいと存じますから、それらの点について御調査おきをお願いいたします。

池田清志自由民主党

○池田(清)委員長代理 本日はこの程度にいたします。  これにて散会いたします。    午後一時七分散会

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