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24回国会衆議院1956/03/02

内閣委員会 第17号

発言数
35
登壇者
4
会派数
2
開催日
1956/03/02

会議録

山本粂吉自由民主党

○山本委員長 これより会議を開きます。  自衛隊に関する件について調査を進めます。鈴木義男君より発言を求められております。この際これを許します。鈴木義男君。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 鳩山総理はたびたび無責任なる発言をされるのでありますが、ことにここ一両日の間に憲法に関して実に重大なる発言を二、三されたのであります。これは単に憲法の解釈としてあり得る学説を説いたものでなくして、現在の憲法をまっこうから否認するものであります。憲法の改正を論ずることは、ある意味において自由であります。しかし現実の政治しおいては、いかなる場合でも総理大臣や国務大臣は何人にもまさって現行憲法を順守し、これに従って政治と行政とをする義務を有することは憲法第九十九条に照らして明らかであります。(「その通り」)一国の総理大臣が白昼公然と憲法の条章をじゅうりんするがごときは、これは国家と憲法とに対する反逆といわなければならないのであります。(拍手)私は総理の意思がそこにあるかいなかを確かめるために以下の質問を提起するものであります。  総理は二月二十九日の参議院の予算委員会において、自衛のためには敵の基地を侵略してもよいという趣旨の説明をして、後に侵略は間違いであった、攻撃してもよいという意味だと修正をしたというのでありますが、果してさようでありますか。これはわが憲法第九条の見地からすれば、侵略という言葉を使ったか攻撃という言葉を使ったかということは何ら興なるものではないと存ずるのであります。違った言葉を使っただけであって、憲法の許さないところを意図しておることは、侵略も攻撃も全く同様であります。  また、過日の内閣委員会において船田防衛庁長官をして代読させましたところの解釈、「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵略の手段としてわが国土に対し誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合にはそのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、ほかに手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。」こういうことを述べられておるのでありますが、この考えは今もなおこれを維持されるのであるか。  一体憲法はいつ改正されたのでありましょうか。小学生でもやらない法文の曲解をしておる。かくのごとくんば、憲法調査会が何の必要があるでありましょう。政府は解釈の名において次から次へと事実上改正をやっておるのである。あしたに一城をほふり、夕べに一塁を陥れるということで、だんだんこの解釈を拡張して、事実上の憲法改正をやっておるように見えるのでありますが、これらの解釈について総理大臣は今もなお同様にお考えになっておるかどうかを確かめて、質問を進めたいと存じます。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 わが国の憲法は自衛のために兵力を用いることを許していると思っております。自衛のためには兵力を用いることは憲法違反ではない、憲法が承認している、こういうように考えています。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 結局今までの説明を維持されるものと信じますから、それを前提としてお伺いをいたしますが、それならば総理は一体わが憲法第九条をどういうふうに解しておられるのでありますか。申すまでもなく「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」こういうふうにうたっておるわけであります。国権の発動たる戦争というものは否定しておるのでありますが、総理は国権の発動でない戦争というようなものがあるものとしてお考えになっておられるかどうか、承わりたい。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 私は正当防衛の権利は国家にあると考えております。国際紛争を解決する手段として戦いをしていいとは考えておりません。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 正当防衛ということは後に論じますが、海外まで出かけていってやるのが正当防衛の範囲に入るか入らないか大問題でありますが、それでは誘導弾というものは一体どういう場合に飛んでくるとお考えになっておりますか。国際紛争のない場合にも飛んでくるものであるかどうか伺いたい。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 その事態にぶつかってみなければ、抽象的にそういうお話はできません。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 多分そういうふうにお答えになるであろうと思いましたが、具体的な場合にぶっからなければわからない、しかし現実に誘導弾が飛んでくるような場合には、敵の基地をたたくことはやむを得ないということを、総理大臣として述べておられるのであるから、その場合を想定せずに論じておるということは無責任きわまることであります。のみならず武力による威嚇と武力の行使、こういうことがうたわれておるわけでありますが、一体誘導弾に対して敵の基地をたたくことば、武力による威嚇にもならず、武力の行使にもならないとお考えでありますか。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 自衛の範囲内でなければ、そういうことはできません。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 憲法の第九条の第一項はあらゆる意味における戦争を否定し、また武力の行使または武力による威嚇を禁じておるのでありますから、ほとんどあらゆる場合を網羅しておると申して差しつかえないのであります。これをなし得る場合は、学説としては、自衛戦争というものだけは除外されておる、こういうことを言う者がある。それはわれわれも承知いたしておりますが、しかし自衛のための戦争というものをやるのには何をもってやるかというと、武力、戦力を用いずにやることはできない。第二項において日本の国は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」とはっきりうたっておるのでありますから、一体戦力なくして何の武力による自衛ぞやということになるわけであります。一体総理は、陸海空軍、これはあまりに明瞭でありますから問答を必要としないが、その他の戦力という概念においてどういうことをお考えになっておるのでありましょうか。お伺いいたしたい。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 私が参議院で申しましたのは、日本を急迫不正に侵略するものがあって、その侵略をそのままにしておけば自滅をするおそれがある場合においては、その基地をたたく必要がある、たたいてもいいということを申したのでありまして、そのときに放棄をして、正当防衛をしてはいけないというような憲法は日本にはないと思う。(「その通り」「答弁が違うよ」と呼び、その他発言する者あり)お答えを続ければ、正当防衛というものはおのずから条件がいつでもついています。正当防衛についてはどういう条件があるか、どういうことが出ておるか、それにはちゃんと条件がついております。国家の間においても、個人の間においても、正当防衛すべき条件というものはやはりついておるものと私は考えております。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 戦力を使うか、使わないかという問題に当面しておるのでありますから、戦力を規定しておくことが大事であるので伺っておるのでありますが、総理のお答えは少しずれておるようであります。大体陸海空軍は、これは一見して明瞭でありますから問題がない。特にこの憲法制定の際に「その他の戦力」という言葉を用いましたのは、表面軍隊の、ごとく見えておらないけれども、何時でも陸海空軍に準ずる戦力、武力に転換し得るものを持ってはいけない、こういう意味で「その他の戦力」という言葉を用いたことは公知の事実であります。すなわち潜在的武力と申すべきものである。警察でも編成の仕方、装備の仕方によってはこれになる。ドイツにおいて第一次大戦後にその例を見たがゆえに、こういうふうに規定したのである。ヒトラー・ユーゲントのごときは、後にりっぱなドイツ国軍にヒトラーによって利用されたのである。そういうことをなからしむるために、この規定が設けられていることはだれでもわかることであります。いわんや陸海空軍――航空機のごとき、ことに爆撃機のごときは、戦力の尤なるものであるということは申すまでもなかろうと存ずるのであります。外国の基地を爆撃することは武力の行使にならないというふうにでもお解しになっておるのであるか、あるいは自衛戦争、これは客観的に見れば外国の基地を爆撃する以上はりっぱな戦争の開始であります。戦争でないということを言うことは不可能であると思うのでありますが、それでもなおそれは自衛戦争であるから憲法の禁ずるところでない、こう解釈されるかのごとくに伺うのでありますが、一体そういうものを本来わが国は持ち得る憲法上の規定になっておらないのであります。そういうものを持つものとしてやっておることは、すでに憲法を無視し、あるいは蔑視しておる証拠ではないかと思うのであります。(「ヒヤヒヤ」「その通り」)爆撃機一機でも、これはりっぱな戦力であります。いわんや相当数のこれを用いるにおいておやであります。これが海を渡って他国に行く、これはりっぱな派兵ではありませんか。陸軍の何個師回というようなものを船に積んで海外へ送ることだけが派兵ではありません。航空機が外国に飛んでいって基地を爆撃するがごときことは、近代戦におけるりっぱな、一番典型的な海外派兵であると信ずるのでありますが、そういう派兵をお認めになるのであるかどうか承わりたい。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 鈴木君の御承知の通りに、日本にはただいま兵力はないのです、戦力はないのであります。(笑声、「何を言っているか」と呼ぶ者あり)あなたによくお話したいのは、国家に正当防衛の権利があるということはあなたも承認されるだろうと思います。ですから正当防衛についての条件はわれわれは厳守しなければいけない。すなわち第一には、自衛権の発動が急迫不正な侵略があった場合だけに限られる、不正な侵略があった場合だけに正当防衛権というものが成立するんです。第二は、その発動に対しては、自国を防衛するのに他に全くほかの手段がないというものであるということが一つの条件になる。第三には、その行動が自国の防衛に最小限度のものでなくちゃならないと思うんです。正当防衛というものは常にそういう性質のものなんです。その範囲内において日本が行動するということは自由でなくてはならないと思うんです。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 総理はただいまわが国には戦力はないというように言われましたが、この間の委員会においては、戦力という言葉を日本の場合は、むしろ祖国の侵略を防ぐために戦い得る力という意味に使っていまして、こういう戦力ならば持ち得ると言ったのであります。(「毎日違うじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)どうも総理は健忘症であられまして、昨日言ったことを忘れまして、本日また別のことを言われるという傾向がありますので、どうか言葉に対してもっと責任を持っていただきたいのであります。正当防衛の権利がある、あるいは自衛権は国家の正当防衛権と解してもよろしいでありましょう。抽象的にそういう権利のあることを私も否定いたしません。けれどもそれを守るために武力を使わないということを憲法において声明し、約束したのであります。しからば他の方法において、国際正義と信義とに信頼をするという態度をとるということは、明瞭にいたしておるのでありますから、総理大臣が自衛のためならば爆撃機を飛ばしてもいいとか、敵の基地をたたいてもいいなどということは、どこを押しても出てくる言葉ではないとわれわれは考えておるのであります。総理大臣は海外の派兵――私は飛行機を飛ばして敵の基地を撃つことは、実質的に派兵と信じますが、派兵もやはり自衛、正当防衛の名においてならばやって差しつかえない、憲法に違反しておらないのだとお考えになるのでありますか。どうもこの言葉は決して一時の失言あるいは放言というような性質のものでなくして、鳩山内閣は期するところあって、わざとかくのごときことを言っておるとわれわれは見ておるのであります。昨年重光国務大臣がアメリカを訪問した際に、ダレス国務長官との間に、秘密に自衛隊の海外派兵の約束をしてきたのではないかとわれわれは推しておるので、昨年九月一日のダレス、重光共同声明において、西太平洋の安全保持のために、わが国もその責任の一半を分担するということを申しておるのであるが、これはある場合には自衛隊の海外派遣を暗示しておるものと思うのであります。この真相いかん、一つ御説明を願いたい。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 あなたは頭の中に考えたことで理論的に質問をされているので、私も理論的に答えるというと、事実の上には何にもないのです。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 ダレス国務長官が近く日本に来る、そのときのおみやげにするために、こういう放言をあえてして既成事実を作ろう、こう解しておる者がわが国民の間に少くないということを、御注意を喚起しておく。かくのごときは憲法を無視し、平和を愛好する国民を売るものであると申しても過言でないと思うのであります。そこで、自衛のためには軍隊や戦力を持ってもよいという首相の見解と私は推察をするのでありますが、わが憲法がおよそ軍隊というべきものは一艦、一兵といえども持つことを予定していないのは、明らかに、他の条章を見ますならば、国会の規定でも、内閣の規定でも、裁判所でも、地方自治でも、財政でも、詳細をきわめて規定してあるが、事軍に関する限りただ一カ条だけである。しかも全面的にこれを否定しておる規定を持っておる、たけであって、もし自衛のために最小限度の軍備を持ち得るものとするならば、もっと軍の軍制について、軍令について、編成について、いろいろな点について、憲法制定の際に規定せらるべきはずであった。されておらない点から見ても、これは明らかでありまして、そういう自衛のためには軍隊が持てるとか戦力が持てるとかいうことは、詭弁以外の何ものでもないということをわれわれは信ずるのであります。一国の総理大臣が公然この堅白異同の弁を教えて、さらに関係閣僚もこれにならう。国会は脆弁の練習所であると言う者があります。国民道義のために深く悲しむものであります。自衛のための軍隊を持つというがごときことは、憲法が予定しておるところであるかどうか。憲法の条章の解釈として承わりたい。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 自衛隊法ができまして、自衛のためにはある程度の軍隊を持つことができることは、すでに許された既成事実であります。実力部隊を自衛のために必要な最小限度持つことは、委員会におきましても、憲法上否定していないということは、承認されたものと私は考えております。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 お断わりをしておきますが、なるほど自衛隊法というものはできました。衆議院の多数をもって横車を押した結果できたのでありますが、われわれはあくまで徹頭徹尾これに反対をしたので、憲法の解釈は数によって決するのじゃない、多数決によって決するものではありません。それを既成事実と仰せられますけれども、われわれは、憲法の上から見るならば、あくまでこれを違憲なものとして常に信じて疑わないのであります。  そこで次の賛同に移りますが、「国の交戦権は、これを認めない。」こういうふうにうたっておる。交戦権というものをどういうふうに解しておられるのでありますか。少くとも、実際家も学者も、交戦権というものについては、あまり異論はないと申して差しつかえないと思うのです。国際法上の観念を取り入れたものでありまして、敵兵を殺傷し、敵の基地を破壊し、防衛されている都市を攻撃し、中立国の船舶を臨検、拿捕したり一定の貨物を没収したりする権利である。いわゆる戦時国際法に認められておる権利でありますが、こういう交戦権を認めない。事実上の戦闘行為は、戦力を持たざることによってわが国は行いたくても行い得ないのである。それをさらに法的面からも不可能ならしめるために、「国の交戦権は、これを認めない。」という規定が設けられておると信ずるのでありますが、総理はどうお考えになっておるのであるか、自衛権がありといたしましても、国際法上の交戦権はこれを行使することができないのでありますから、武力による防衛は結局できないことに帰するのである。いかがでありますか。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 私の考え方が先刻来の説明によってすでに了承せらるべきものと思います。その他の点については法制川長官から補足してもらいます。   〔「何を言うか」と呼び、その他発言する者多し〕

山本粂吉自由民主党

○山本委員長 林政府委員。   〔発言する者多し〕

山本粂吉自由民主党

○山本委員長 お静かに願います。委員長は発言を許しました。お静かに願います。

林修三法制局長官

○林(修)政府委員 ただいまの交戦権の問題について、法理上の解釈の問題でございますから、私からお答えいたします。  交戦権の解釈につきましては……(発言する者多し)交戦権の解釈につきましては、学説上いろいろ議論があるところでございますが、これは戦争をするという解釈もございますが、一般的な解釈として、私どもの解釈といたしましては、戦争状態のもとにおいて交戦国が国際法上持つ権利、こういうふうに考えております。従いまして、つまり戦闘行為そのものをする権利ではなくて、国際法上戦争状態のもとにおいて交戦国が持つ権利、たとえば占領行政をやるとか、あるいは中立国の船舶を拿捕するとか、そういう権利を含んだものと存じます。従いましてそういう意味の交戦権は、現在の憲法のもとにおいてわが国には認められておらないわけでございます。しかしながら、自衛権の範囲内において、自衛権が認められておる以上、自衛のために必要な限度において自衛のための措置をする、こういうことは、私は今の憲法ではそれは別の問題として許されておる、かように考えておるわけであります。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 私は総理大臣に対して、その政治上の責任を追及し、御質問をいたしておるのでありますから、たとい問題が法理解釈にわたりましても、法制局長官から答弁を承わりたいとは思わないので、わからないことはわからないとお答えになって差しつかえない。ただ矛盾したようなお答えを許しておくわけにはいかないから、追及をするわけであります。  結局、自衛権の範囲内でなら交戦権を行使し得ると主張されるようであるが、今の法制局長官のお答えを聞いておりましても、総理大臣もさようにお考えになるのでありますか。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 法制局長官がただいま答弁した通りに私も考えております。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 それならば、自衛権の範囲内ならば通常国家のなし得る戦争を行い得るということに帰着するようであります。これは第九条の規定を根本から否認するものである。われわれはその責任の重大なることを指摘せざるを得ないのであります。第九条が規定せられましたときの歴史を回顧していただきたいのである。  わが国は敗戦下において完全に武装解除され、一艦一兵も持たないことになったのであります。時の総理幣原氏は、完全に武装解除するならば、むしろ世界の平和を熱望する理想に燃えて、ここに無装備、無防備の国家を建設することが正しい行き方であると信じて、そうして当時マッカーサー元帥と話し合った結果、かくのごとき規定を設けるに至ったことは、幾多の証拠がこれを示しておると思う。  とにかくそういう事実を忘れて、しかもこれを制定するときの国会における、たしか私の質問に対して答えられたときであったと記憶いたしますが、吉田総理は二十一年六月二十六日の答弁において、「戦争拠棄二関スル本案ノ規定ハ、直接ニハ自衛権ヲ否定ハシテ居りマセヌガ、第九条第二項二於テ一切ノ軍備ト国ノ交戦権ヲ認メナイ結果、自衛権ノ発動トシテノ戦争モ、又交戦権モ拠棄シタモノデアリマス、従来近年ノ戦争ハ多ク自衛権ノ名二於テ戦ハレタノデアリマス、満洲事変然リ、大東亜戦争亦然リデアリマス、今日我ガ国ニ対スル疑惑ハ、日本ハ好戦国デアル、何時再軍備ヲナシテ復讐戦ヲシテ世界ノ平和ヲ脅カサナイトモ分ラナイト云フコトガ、日本二対スル大ナル疑惑デアリ、又誤解デアリマス、」「故二我ガ国二於テハ如何ナル名義ヲ以テシテモ交戦権ハ先ヅ第一自ラ進ンデ拠棄スル、」と答えております。吉田氏の統帥のもとにあったところの旧自由党の諸君も、半数は今の与党の中におられるが、この解釈を――解釈というよりは憲法を制定する精神をお互いに鮮明したものでありますが、これを否定し去るものでしょうか。  また当時の憲法制定の小委員長だった芦田均氏は、軍備を撤廃して、一艦一兵をも持たないことは危険ではないかという質問に対して、むしろわが国としてはかくのごときものを持つことが危険なのである、これを持たないで裸で世界に対することによって、わが国の真の平和意思というものが認められて、これをただ捨てておくはずはない。世界の公正なる正義と信義とは、必ず一旦緩急ある場合にわが国を救うであろうということを演説しておるのであります。  そういう崇高なる精神から出てきたところの憲法第九条であります。これを改正するという議論をすることは、われわれは反対でありましても、差しつかえありますまい。けれども厳に現存するのにこれをじゅうりんするがごとき言明をなし、また実行するというに至っては、われわれは断じてこれを看過するわけにはいかない。その点について総理大臣はどういう感想を持っておられるか承わりたい。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 幾度も申します通りに、自衛のために、その自衛権の範囲内ならば、自衛行動をすることはできると私は信じておるのであります。交戦権ということは、先ほど法制局長官は言いませんでした。特にこの言葉は避けております。交戦権があるとは言わない。自衛のための行動は自由だと言っただけでありまして、日本に交戦権があるとは、法制局長官はここでは申しませんでした。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 それではお伺いしますが、ある田が日本に誘導弾を飛ばしてよこした。これの基地をたたくために飛行機を飛ばして爆撃した。客観的に見るならば、これは交戦権の行使ではないでありましょうか。たといわが国の総理大臣がそういうつもりはないと言っても、外国からこれを見ておったならば、これは交戦権の行使でありませんか。戦闘行為の第一歩ではありませんか。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 交戦権とは申しません。   〔発言する者あり〕

山本粂吉自由民主党

○山本委員長 お静かに願います。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 今までのやり方を見ておると、だんだん拡張していくようでありますから、今度は交戦権の番にきた。もはや陸海空軍も戦力も――吉田内閣までは絶対に戦力を持たない、戦力でない。私の質問に対して、戦車は特車であってタンクではない。(笑声)軍艦は大砲を積んだ船であって軍艦でないなどと答えておったのである。(笑声)まだ一まつの良心を認めるが、鳩山内閣に至ってはずうずうしくも、すべてみなこれ自衛のためならば陸海空軍――原子爆弾が残っているだけで、これもアメリカに頼まれて込んでいって、一つやってくれと言われればやりそうな気配が見えるから、われわれ心配している。この次には交戦権にいくであろう。交戦権をややあいまいにしておるようでありますが、そういうことでは国政を委託しておくことは不安にたえないのであって、われわれはその点を追及するわけであります。一体領土的にわが国を侵略しようとする国があると総理は考えておられるのであるか、あるならばこれを一つ明らかにしていただきたい。首相は誘導弾で日本の基地を破壊するものがある場合を想定しておられるようでありますが、かりにありとすれば、それはわが国を攻撃するのが目的でなく、わが国を橋頭堡とするアメリカと戦わんためである。アメリカと戦う国だけがわが国のアメリカの軍事基地をたたく可能性があるので、誘導弾も実はアメリカに向けられているわけである。それに対していかに手先とは言いながら、日本の自衛隊が攻撃に出かけるとは一体何ごとでございますか。敵の基地を爆撃するために出かけていくということを明言する以上は、必ず次には先制攻撃が問題となることは明らかであります。のみならず敵の基地は一カ所ではありません。一カ所の基地をたたくことは十カ所の敵基地を刺激して、敵も自衛の名においてわが国の数百カ所の基地をたたくために、無数の爆撃機、誘導弾を飛ばすに至るでありましょう。かくて大規模な戦争の誘発となることは明らかであります。今日わが国に無数に設けられておるがごとき基地は、原子爆弾の攻撃を誘致、吸収するものである。海綿が水を吸うように、敵の原子、水素爆弾を誘致するものであるということを、元海軍少佐の高橋甫氏が、世界の二月号の「原子戦略の現段階と基地問題」という論文において、具体的に詳細に、平こまかに記述しておることは、総理もごらんになったかどうか知りませんが、ごらんにならなくとも、常識上当然想定し得ることであります。こういう危険なことを平然として言うがごときは、狂人にやいばを与えるがごとき感があるのであります。一体総理大臣の発言は、将来わが国を廃墟と化せしむることのあるべき、危険きわまりなき政策の表明であります。また憲法の全面的否認である。この発言を取り消して罪を国民の前に謝するお考えがあるかどうか、承わりたいのであります。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 私は間違ったことを言っておる考えはありません。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 まことにわれわれと鳩山総理との間に、あまりにもものの考え方に相違のあることを悲しまざるを得ないのであります。一体こういう発言が平然として行われるゆえんは、総理大臣初め現内閣の閣僚の多くが、暗に現行憲法を蔑視しておる、軽蔑しておるというところから来ておるのである。マッカーサー憲法である、押しつけ憲法である、こんなものは無視しても可なり、こういう気持がある。(「その通りだよ。」と呼び、その他発言する者多し)それならば明治憲法は何か、ローレンツ・フォン・シュタインに習って、伊藤博文が書いたプロシャ憲法の焼き写しじゃないか、それがいかにも神聖なもののようにして尊重しておったのが、明治時代の政治家であり、国民である。単にマッカーサー憲法というような言葉をもって、これを蔑視して、そうして守らぬでもよいという観念を国民に与えることは、これくらい風教の上に害あることはないと信ずるのであります。改正されない限りは憲法は厳として現行憲法である。これを忠実に厳守して、そして政治を行い、行政を行なっていかなければならぬと信ずるのでありますが、この点に対していま一度総理大臣の信念を承わりたいのであります。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 現行憲法が改正せられざる限り、これを順守いたしまして、憲法に従って一切の行動をやっておるつもりであります。

鈴木義男日本社会党

○鈴木(義)委員 そうならば決して、間違っても、敵の基地をたたくことができるなどという発言が出てくるはずはないと思うのでありますが、それをあえて訂正もせず、悪いと思わない総理大臣の心境は、私のはなはだ不満とするところであります。あらためてその責任をただしたいと存ずるのであります。少くとも憲法は改正せられざる限り、国の最高法規である。国務大臣はもちろん、衆参両院議員、あるいは公務員すべての者がこれを忠実に順守し、尊重する義務を負うておるということを高調いたしまして、一応私の質問を打ち切っておきます。

山本粂吉自由民主党

○山本委員長 次会は三月五日午後一時半より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十八分散会

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