社会労働委員会公聴会 第1号
- 発言数
- 170 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1956/03/16
会議録
○佐々木委員長 これより会議を開きます。 内閣提出の健康保険法の一部を改正する法律案について社会労働委員会公聴会を開会いたします。 この際、公述人の皆様方に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず、当公聴会に公述人として御出席下さいましたことにつきましては、委員一同を代表して厚く御礼を申し上げます。 本案は重要法案でありますので、審査に万全を期すべきであるとの委員会の意思によりまして、本日公聴会を開き、公述人の皆様方に御足労願った次第であります。公述人におかれましては、本問題につきまして、あらゆる角度から忌憚のない御意見を御発表下さいますようお願いいたします。ただ議事の整理上、公述の時間はお一人十五分程度といたし、その後委員よりの質疑にお答え願いたいと存じます。 なお念のために申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、公述人の方々が発言なさいます際は、委員長の許可を得なければなりませんし、発言の内容につきましては、意見を聞こうとする問題の範囲を越えてならないことになっております。また委員は公述人の方々に質疑をすることができますが、公述人の方々は委員に質疑をすることはできません。以上、お含みおきを願います。 次に、公述人の方々が御発言の際は、劈頭に職業または所属団体名並びに御氏名をお述べ願いたいと存じます。なお発言の順位はかってながら委員長においてきめさしていただきたいと存じます。 それでは、まず牛尾公述人に御発言を願います。牛尾君。
○牛尾公述人 公述人、日本経営者団体連盟事業主代表牛尾栄次。健康保険法改正案に対しまして、事業主としての意見を申し上げます。 政府管掌の健康保険は昭和二十九年四十億、三十年六十億、三十一年度ももし何らかの施策を講じなければ、六十数億の赤字に直面していると聞いております。私どもから言わしますれば、赤字が出るのが実は当りまえだと言いたいのであります。それはなぜかといいますと、このような膨大な医療保険をやっています社会保険の十分な支えとなりますところの三脚が実はないのであります。あるいはあるかも知りませんが、非常に力が弱いか、細いか、場合によっては、三脚なければいけないのが一脚なくて、二本でふらふらしているかもしれぬと思えるのであります。それはどうかといいますと、赤字といいますのは、収入の保険料を越えた保険給付費の支出でありますが、それはそうなるはずでありまして、この赤字の原因は数年前から現われております、結核を健康保険でしょい込んでいるという原因が大きいのであります。しかし、これは国民のためにはよいことでありまして、結核予防法によりまして、病気を早期に発見して、これに手当を加えるのですから、長い目で見まして、これは国民のために非常によいことなんでありますが、これが健康保険に全部かぶさっていることに、一つの原因があります。もう一つ、療養費の増大の中には、療養給付を受ける者が非常に多くなってきている原因であります。これは遺憾ながら事業主も被保険者も反省しなければなりませんが、乱用、中には悪用している者がありと私どもは認められます。それからもう一つ、一この政府管掌の対象は全国にまたがっております中小企業者であり、それに従事する労働者でありまして、これは指導監督ということについて骨折れることも十分了解できますが、政府管掌の保険につきまして政府の指導監督、監査、審査、こういう事務的なものについていささか欠陥があると信じます。このようにしっかり支えておらなければならばい三脚が今日までは二脚であったり、あるいはそれが骨が細くてふらふらしているのでありますから、とにかくここで根本的なことを考えるとしますれば、この三脚がしっかりしなければいけない。これからまだ健康保険の対象にすべきものはたくさんあるのです。各事業所におきます三人、四人使用しているものも対象に入れなければいけませんが、今のようなことをしておりますればとてもそういうことはできないのであります。今のうちに早くこの三脚をしっかりしなければならぬと思うのであります。この一脚については先刻申し上げました結核の療養のことでありますが、これはどうしても国がある程度見なければいけないと思う。そのために本年度から初めて実質的に三十億の国が出しましたそれは、補助とか何とかでなしに明確に国が負担すべきものであります。これは国の財政の範囲内ですから多く望むことはできないと思いますが、とにかく国はこの現状をよく考えて負担すべきものであります。これは政府管掌と健康保険組合管掌とを問わず、この原因で医療費が増大しているのをよく考えて負担すべきものであります。それからもり一つの脚は、被保険者、事業主がよく反省して、乱用したり中には悪用したりすることのないようにこれは自省しなければなりません。これは網の目か荒いのか、あるいは目は適当なこまかさでありますが、どこか漏れているやつが手がつけられないのか。国民の目から見ますればはなはだ遺憾な点がやはり今日まであったことは私はお互いに否定できないと思います。そこでこの際私どもは国と事業主、被保険者、診療担当者、医薬業者、この保険に関する五つのものが五者五泣きの観念に立って、適当に分に応じた負担協力ということをしなければ、この保険は前通しないと思います。国の負担は先刻申しました。それでは被保険者なり事業主の負担をどうするか。これは今回標準報酬の等級の引き上げがありましたので、事業主、被保険者の払い込みする保険料は若干ふえます。このほかに、これは赤字の対策でなしに制度として考えなければならぬのは、この療養の給付を受けるすなわち被保険者が一部負担をすることであります。これによって協力しよう。この一部負担について申し上げますと、御存じの通り一部負担は日本でも十年ほどやっておるのであります。昭和十八年の春からやりまして一時八カ月の中絶はありましたが、やっております。その範囲を広げるということであります。これは今日までやりまして、またもう少し範囲を広げる心要を認めますので、この範囲を広げて被保険者が協力をすべきだと思うのであります。この一部負担につきましてはいろいろ意見のあることも承知して、私どもこれをよく研究いたしておりますが、これは実は日本だけのことでなしに、日本よりももっと社会保障の歴史の古い、社会保障のもっと行き届いた国でも患者の一部負担の制度を施行しておるのであります。私の知っている範囲で、ニュージーランドを含んだヨーロッパの十数カ国でもみな負担さしているのであります。みんな最低一割から大体二割五分くらいであります。これは外国でやっていることなのであります。 それからもう一つ、社会保障制度のILOの最低基準の中にも一部負担は認めております。ただその一部負担は過重に負担さしてはいけない、過重ということはあるいは三分の一をこえてはいかぬということかもしれませんが、これをやっております。これを考えますと、私はやはり何でも、かんでも保険だから一〇〇%これもただ、あれもただだというて全部ただだとすることの観念はいけないのだと思います。広く救わなければいけませんが、ある程度の制限をするとか、あるいは利益を受ける範囲をきめるということは、これは制度として必要だろうと思うのであります。日本でも実はやっております。外国でもあり、国際的にもこれが一つの根底のように考える。これは制度として必要だろうと思うのであります。私ども事業主は、今回の赤字のために実は一部負担を持ってくるというような卑劣な考えを持たないのであります。理論的に考えてやらなければならぬと思います。 もう一つ、一部負担について私どもが今回政府の案のものを大体妥当と認めますゆえんは、今回政府が考えておりますのは、一部負担によって二十三億余の財政効果を期待いたしております。二十三億といいますと、本年度の医療給付費の予算の四百四十三億に対しまして五%強になります。五%強ということでありますれば、これはひどくない。それから今日やっておりますのは、被扶養者は半額負担、本人は最初に診察を受けるときに五十円だけでありますが、本人と被扶養者の一部負担の金額を一年間の医療給付費で割りますと、一六形前後であろうと私は考えます。そうすると一六・七%の上へ今回拡大されるのが五%強、合計しますと二一・二%だろうと思います。この程度がいいか悪いかの問題であります。私どもは乱用があるということは、ごく少数ですが、認めております。どうしてもここでこの程度のことは拡大して大体この程度なら認めるべきだと思います。 もう一つ私ども考えますのは、健康保険と国民健康保険との比較であります。国民健康保険に対しては、御案内の通り国が三千万人の国民保険の対象者に六十三億の金を出しておられるはずであります。こうしますと一人当り二百十円であります。二百十円国からおかげをこうむっております。国民健康保険の患者が大体五〇%か五一%の負担をしておるのであります。そうすると今回政府管掌だけの健康保険で本人と家族入れますれば千二百万人、これに実質的に三十億の金額ですから、一人平均二百五十円であります。一人平均二百五十円の恩典を受けているものが今度の改正案をそのまま入れましても。一人平均二一・二%の負担ということはこれは酷でなかろう。問題はその負担の方法と事務的な運用の面にありますが、総額から見た大きさからいいますと、私は負担は多くないと考えるのであります。先刻言いました海外の例、国際的なILOの最低基準の条文の中にあります一つの精神、現状の日本の国民健康保険の制度と比べた負担、こう三つ見まして適当だろうと思うのであります。 もう一つの足は、指導監督という事務的な面で私は政府にもう少ししっかりやってもらいたいということを願うのであります。国民の多数、事業主の多数、被保険者の多数、診療担当者の多数はみな善良でありますが、遺憾ながら少数の者は法をくぐって悪用しております。私らの目にちらちらしておる者がありますので、これはどうかしっかりやってもらいたい。やり方につきましてはだんびらを振り回すとかいろいろなことがありますが、これは考えてもらわなければいけませんが、とにかくせっかく国民から大事な金を預かって1事業主、被保険者から五百数億の金を預かり、保険給付費に五百十億の金を出しておるのですから、どうか一つがっちりやってもらいたいと思うのであります。私どもは健康保険組合をやっておりますが、健康保険組合は一つの企業の中でありますから、労務管理も徹底いたしております。これでも結核療養者をかかえておりますので、医療給付費については国の負担を要望する点は同じでありますが、一方の乱月という点につきましては労務管理も行き届いております。雇用契約上からも監督いたします。これは国民健康保険ほどひどくないのでありますが、いま少しどうしてもこういう大きなものでありますから、事務的に監査、審査というものを完全にしてもらわなければならぬと思うのであります。これが私どもの意見であります。 要約いたしますと、三脚をしっかりやってもらいたい、国の負担を明確にしてもらいたいということ、それから被保険者、患者がこの程度ならば一部負担をここで受けて、協力して、この医療保険を前進すべきである。もう一つは、政府がこれだけのことを今回認められて、かりに法律を通そうとするならば、この責任と国のやっておりますところをもう少ししっかりやってもらって、これだけ大事な金を使うのでありますから、完全にやってもらいたい。多数の人の利益を守るためにしつかりしたものをやってもらいたいということが私の意見の全部でございます。 以上をもって終ります。
○佐々木委員長 次に金子公述人にお願いします。
○金子公述人 社団法人日本精神病院協会理事長金子準二であります。 本日は、国民の保健生活の根幹となりますところの健康保険法等の一部改正の法律案の御審議に当って、自分からは何も要求をすることもできぬような精神障害者、それから社会にいろいろな事情からしまして精神障害者があるというようなことまでも秘密を保ちたいというようなことで、声を立てることのできぬ精神障害者の関係者、これを合せますと約一千万人こいう予想になるのでありますが、この人のために衆議院の社会労働委員会の委員長、委員の各位が精神科をやっておりますところの私を御指名下さって、公述をいたす機会を与えられましたことに対しましては、深い敬意と感謝をささげます。本日は、時間の制限がありますから、おもに精神科医の立場から健康保険法などの改正につきまして主要な意見を申し上げることといたしまして、そのほかは後日、皆様のお手元に印刷物をもってごらんを願うようにいたしたいと思うのであります。なお公述人が二月の十六日に参議院の社会労働委員会に参考人としまして、新医療費体系について申し述べたかった意見の要旨を印刷したものがありますから、御高覧に供したいと思うのであります。この健康保険法の改正につきましては、第一は、健康保険法は国民の保険生活に重大な関係がある法律でありますから、その欠点が是正されることに反対すべきものでは決してありません。ただし、その改悪とその欠点がよく改正をされないということについては、それだけ強く反対をしなくてはならぬ理由があると信ずるのであります。健康保険経済の赤字というようなことが問題になっておりますが、その原因がどこにあるかについてはいろいろの説がありますが、私どもに言わせるというよりは社会の声を聞きますると、現行法では下手な医者ほど収益が多いという制度になっておるという傾向があるのであります。こういうことが健康保険の赤字の原因の一つではないかと思うのでありまするが、そういうようなことについて、今度の改正では何も出てくる点がないということについて、私どもは遺憾に思うのであります。 次に、健康保険法というものは、どちらかといえば官僚独善時代の大正十一年にできたものでありまして、民主的でないところが多いということが一つ言えると私は考えるのであります。従って今度の改正におきましては、もう少し民主的でしかも人情味を加味した運営がされることを願うのでありますが、改正に当ってはどうもこの独善主義の色彩がかえって強化されておるのではないかと思われるのであります。それは、たとえば当該職員であれば医師でなくても診療録の検査ができるというようになっておるようでありますが、こういう点を見ましても、私どもは健康保険法の改正の精神において危ぶむ点があるのであります。 次に、健康保険法の改正に当りまして、厚生省では新医療費体系の説明にしきりに技術と物とを分離して、技術を尊重して評価すると言っておりました。ところが今度の改正に当りましては、先に申しましたように当該職員であればだれでも診療録の検査までできるようなことになっておる。これでは技術を重く評価するというような言葉は、健康保険経済の赤字対策のカムフラージュではないかという疑惑を持たざるを得ないわけであります。 それから次には、健康保険法では一向精神病などの特殊性ということが認められておらないということを強く言いたいのであります。それは、精神障害者の多くは精神に異常があるということについての認識がないこと、そうして法律行為をする能力がない禁治産の宣告が当然な精神病者であるとか、法律行為については非常に制限を受けなければならないような、民法で申しますならば準禁治産の宣告が適当であるような精神状態の者が多いということを認識して改正が行われていないという点であります。これはこの法律の改正におきまして、技術が尊重せられておらぬという証拠ではないかと思うのであります。 それから次には、一部負担であります。これは海外の健康保険でも、やはり採用しておるのであります。また日本でも、初診料その他についての一部負担ということが実行されておりますが、初診料の自己負担ということについても実際にはいろいろの弊害があることを私どもは見受けております。ことに治療医学におきましては、早期診断、早期治療ということが本則でありまするから、初診料というものこそ当然保険給付に入れるべきものであると思うのであります。それが、入院料の一部負担というような問題が起ってきますと、ますます早期治療を妨害することになります。せっかく治療医学方面の研究の結果、従来なおらぬと言われていた精神病者がなおるようになったというときにおきまして、こういう制度が行われるようになりますと、早期治療によって治療率が非常に上るべきものが落ちてくるということになりまして、かえって保険経済の上におきましては、保険給付額を多くして赤字を増加するというようなことになると思います。それから、わが国におきましては外国と違ってこういう事情があると思うのであります。それは、医は仁術であるということが医者の心得としてもっともなることであるとして行われておったのでありますが、今の社会事情の変化ということに伴って、患者側の医師に対する観念が変ってきて、医者は仁術を事とすべきものであるからして、少々おくれたって、これは払わなくてもいいというような傾向が出てきておるのであります。この点は一つ御留意を願いたい。ことに私どものように精神病者を扱っておるところにおきましては、患者は自分は精神病でない、こう信じておるのであります。そういう病者に対しまして、一部負担金を徴収するということは非常にむずかしいのであります。それはなぜかといいますと、あなたのところの一部負担をもらっていないから納めてくれないかというと、普通ならそれは済まぬという気を起しますが、精神病者に至りますと、そんなことは平気で、おれは病気でない、こういう考えを持っておりますし、しかもそれが禁治産者とか、準禁治産者に相当する者に、一部負担せよということは、これは無理な話ではないかと思うのであります。従ってこういうことになりますと、一部負担金というものは、精神病院のごときところにおきましては、とうてい徴収することができぬ。今までの統計によりましても、大体二割内外の一部負担の未納金というものが家族診療において現われておるのであります。そうすると、ますます精神病院の経営が困難になってくるから、この一部負担というものは、一つ考慮して削除を願いたい。もし一部負担制度がどうしても削除されぬということになりますならば、徴収の方法については考慮を願いたい。それは少くとも傷病手当金の給付期間につきましては、そのうちから保険者が差し引いて払えるというような制度を作っていただくなど、そうしてまた一部負担金の他の部分についても、十分に考慮を願いたいと思うのであります。 それから次に申し上げたいことは、健康保険診療費の支払い期限を法文において表わしてもらいたい。今度の改正条件によりましても、審査の上支払うものとすると書いてあるだけであります。いつ払わなければならぬということが明記してない。従って盆とか正月というときになりますと、支払いがおくれるということで、私ども協会の世話をしておる者は東奔西走といいますか、役所に嘆願するとかいろいろやっております。しかも片一方で、保険料を徴収するときは期日までに納めぬと日歩六銭の利息というか延滞金をとるけれども、支払いの方については何ら考慮してくれないというのが、今度の保険制度の改正でもあります。この点は私どもは強く反対をしたい事由でありますから、御了承を願いたい。これがために年未の支払いができぬということになりますと、社会の信用を失うことが非常に大きくして、保険制度に対しても危ぶまれるということになりますから、どうか一つこの点を御考慮願いたい。 次に申し上げたいことは、保険医療機関指定制度がされるということに改正になりますが、これは非常にいいことだと私は思います。この点は私は賛成をいたします。しかしその保険診療機関が指定されるなら、適当な諮問機関を設けられることにしていただきたい。その指定に対しましては、医学の方において各部門がいろいろ分れて参ります。ことに施設におきましては、診療所と病院、病院のうちで結核病院、精神病院のように、特殊なる事情を持ったものがありますから、こういう人の発言する機会を与えられるように機関を作っていただきたい。そういう機関について相当事情に精通している者を団体の代表者として加えられるようにしたい。 それから次に申し上げたいことは、中央社会保険医療協議会というものがあります。これが、現在の制度におきますと、厚生大臣が日本医師会との話によって推薦を待ってきめるということになっておりますが、医療施設がいろいろあるということを考慮して、委員を選定する場合においてこういう欠陥を一つ除去していただきたい。これをお願いしたい。 それからもう一つお願いしたいことは、社会保険診料報酬基金法の改正に移りますが、中央審査協議会、地方審査協議会というようなものがあるようでありますが、この選出につきましても、委員会におかれましては、診療担当者の代表というような意味の専門技術を尊重し、かつ民主的に運営ができるようにしていただきたいことであります。 それからもう一つは、診療報酬の支払いの決定に不服があるときにおきましては、再審制度がとれるようにしていただきたい。こういうふうに改正を願いたいのであります。 それからもう一つ、結核に対しては傷病療養手当金というものの期間が延長してありますが、同じような事情があります。しかも多くは家庭の柱石が倒れるというような場合が多い精神病に対しましても、期間の延長を勧告をしていただくようにぜひしていただきたいと思うのであります。この健康保険というものは、新医療費体系にからまることが多いのであります。一たん政府は取り下げになるということでありますが、次の新々医療費体系というものが構成されるときには、今まで申し上げた立場からいたしまして、どうか診療団体、特殊の団体というようなものの意見を聞いて定めるようにせられませんと、やはりさきに申し上げましたような官僚独善思想というようなものに支配されたようなものをやられましては、各界において波乱が多いだろうと思いますから、どうかこの点を深く御考慮下さって、厚生省当局に対して委員会からも勧告をしていただきたいと思うのであります。 以上が私の申し上げたい趣旨の大要でございます。いずれ印刷をいたしまして、皆さん方のお手元にお届けいたしますから、どうかごらんを願って、約千万人の精神病者、その関係者のために代弁をいたしましたが、この意味を御了承願いたいと思うのであります。
○佐々木委員長 次に竹中公述人にお願いいたします。
○竹中(恒)公述人 私、日本歯科医師会常務理事の竹中であります。今回の健康保険の改正問題につきましていろいろ不満があるわけでございますが、すでに機会あるごとに先生方には陳情を申し上げ、あるいは印刷をもちましてわれわれの考え方を詳細に申し上げてございますし、なお本日はわずかな時間でございますので、十二分に各般にわたっての意見。開陳が許されない事情にありますことを、非常に残念に存じますが、従いまして、各項目についてこの問題はこういう意見を持つという結論だけを申し述べるよりほかに仕方がない、かように存じます。 要約いたしまして、今回の改正業を通覧いたしますときに、医療保険すなわち健康保険というもの、これはもとより社会保険の中核体でありまして、社会保障制度におけるところの一番重要な部門であることは申すまでもないのでありますが、この重要な部門を取り扱う上におきまして、今回の改正案は社会保障制度の後退になっておるのではなかろうかという点に私どもは非常に不満を持っておるのであります。私中央社会保険医療協議会の委員をいたしておるのでございまするが、昨年の十二月に厚生当局から「健康保険の財政について」というパンフレットをいただきました。その。パンフレットにありますところの赤字対策と今回の改正案に盛られておりますところの諸施策とは一致いたしておるわけでございまして、すなわち社会保障制度の根本的な施策でなくて、赤字対策そのものが今回の健康保険法の改正にイコールになるという点について非常に残念に思う次第でございます。すなわち赤字対策ももとより保険の根本的施策の一部分ではあるかは存じませんが、根本的な施策を立てる上においてこの赤字対策のみに終始しておるような原案に対しましては非常に不満を持つものでございます。たとえて申しますならば、あの。パンフレットには、国庫負担が給付費の一割であって四十六億円ということがあの通り明記されておるわけであります。これがいろいろな事情のために現在三十億ということになっておりまするが、この国庫負担の問題といいあるいは一部負担も当時は二十九億円ということになっておりまするが、これが二十三億五千万円と減額になっておるようでございます。あるいはまた標準報酬の等級改正、財政措置というような、今回原案に盛られておりますものがすべて赤字対策として当時発表されておるわけでございまして、この赤字対策と根本対策とがイコールであるということについて私どもはどうしても割り切れない気持を持つものでございます。むしろ赤字対策といたしましては、先ほどの公述人がおっしゃったように、一番大きな赤字の原因が結核問題に由来しておるということを考えまするならば、当然こうした赤字対策の諸施策を含むと同時に、根本的な結核問題についての考えかがこの原案に盛り込まれるということが最も緊要であり大切なことであろう、かように私どもは感じておるのでございます。 そこで少し項目的に申し上げまするが、まずこういう見地から申しまして、国庫負担の問題でございます。いろいろと先生方のお骨折りで、一応三十億というものがきわめて不安定な形ではございまするが予算に盛り込まれておるということは喜ぶべき事象でございまするが、これはわれわれ九団体が絶えずお願い申し上げておりまする通りに、定率でもって法制化してもらうということが最も合理的であり、正しい医療保険の運営をする意味におきまして強制加入の制度における国の責任を明らかにするという意味合いから申しましても、当然給付費の定率負担ということをお取り上げ願いたい、かように存ずるのであります。 それから赤字に対しまする一つの方法として、受益者でありまするところの被保険者に対するしわ寄せが来ておるようでございますが、病人に受益者的な考え方をするということにわれわれ一つの疑点があるわけでありまして、好んで病人になる人はないのであります。この制度を利用する人こそございますが、受益というような考え方でもって、いろいろな一部負担の問題だとかあるいは標準報酬の等級改正、料率の値上げをするということにつきましても、われわれは疑点を持つわけでございまして、決して受益的態度という観点からでなくしてこうした問題をお取り上げ願いたい、かように存じます。少くとも昨年の料率改正以後、被保険者は今回の一部負担が実施されますならば、おそらく年間六十億円以上の負担が増加されるということも、こうした経済情勢の時代におきまして当然為政者として考えていただかなければならぬ問題だろう、かように存ずるのでございます。先ほど二人の方々から一部負担につきまして賛否こもごもの御意見が述べられたようでありますが、私どもといたしましても、一部負担につきましては反対の意見を持っておるわけでございます。 理由は、まず第一に受診率の低下ということを憂うるのであります。御当局のわれわれに対する説明によりますと、この一部負担は決して受診率の低下するような程度のものではないのであって、この程度ならば制度を盛り立てていく上において当然必要な措置であるというようにおっしゃっておられますが、現に昭和二十九年の受診率は、歯科におきましては〇・七二%でございましたのが、今回の昭和三十一年度の厚生省の予測の歯科の受診率は〇・六七%と、明らかに一割程度の受診率の低下を見越されましたところの立場において、二十三億五千万円というものが考えられておるということから弔えますと、いかように御説明いたされましても、現実に当然受診率は低下りるものである、かように私どもは考えておるわけであります。なおその上に問題になりますのは、この二十三億五千万円の金でありますが、現行の初診料の取扱いにつきましても、六五%ないし七〇%くらいは実際において徴収不能でございまして、医師の犠牲においてやっておる。制度の上におきましては初診料がございますが、徴収下田の場合が多いのであります。この六五%ないし七〇%の徴収不能が、このまま二十三億五千万円に持っていくことになりますと、明らかにわれわれ医療担当者は十五億以上の減収になる。これを単価に換算いたしますと、十円単価でもって診療しろということに相なるわけでございまして、こういう意味合いから申しまして、私どもは一部負担に対しまして反対の意見を持っておるのでございます。 なお、標準報酬の等級改正についてでございますが、今回、原案では一級四千円ということになっておるようでございますが、そういたしますと、現行の一級三千円の方々が十一万人ほどおられるわけであります。この十一万人の方々が四千円という一つのワクの中に入るということによりまして、七百六十五万円ばかりの増収になるのでございますが、私はそうした零細な被保険者の方々のふところをいためるということでなくして、むしろ原案の二十四級を二十五級にしていただきまして、これを五万五千円ということにしていただきますならば、おそらく保険料の収入はとんとんになる、かように考えますので、下のそうした気の毒な三千円程度の方々の等級を不自然な形に追い込むよりは、上の方々、およそ三万円以上の方々でございますが、二十五級という一級をふやしていただくことによって、保険料の収入が予期の額に達し得るということをお考え願いまして、そういうふうに御改正願えますならばはなはだけっこうであろう、かように存ずるのでございます。 以上は、直接私どもに関係のある点と、それからそう関係のない点もあったわけでありますが、特に私ども医療担当者に深い関係のある点は、第九条の一及び二、あるいはこれを裏書きするところの四十三条の規定等が問題になるわけでございます。特に八十八条におきまして、当該職員の質問に答えない場合には一万円以下の罰金に処するというようなきわめて過酷な罰則が制定されておるわけでございますが、申すまでもなく刑事問題におきましても、自己に不利益な事柄に対しては、黙秘権の認められておる時代でございますにかかわりませず、こうした行政的な取調べに当りまして、質問に答えない場合は一万円以下の罰金によってこれを処分するというようなことは、憲法のこうした考え方から申しましてはなはだ不合理であり、少しく行き過ぎた考え方がここに盛り込まれておるのではなかろうか、かように存ずるのでございます。各法規の条文を通覧いたしますと、要するにわれわれ医療担当者をして何か不信行為があるということを前提とし、あるいは保険業務そのものが犯罪的なものであるというような考え方で立ち入り検査を認めたり、あるいはまた今申しますような罰金に処するというような事柄がございまして、医療というものがきわめて精神的な負担の多い仕事でありますのに、われわれに対します取扱い方が、こういう罪人的な不信的な立場において法律が作られるということでありますと、医療担当者に精神的な悪影響を来たし、これがやがては医療内容の上においてもおもしろからざる結果を招来するのではないかと憂える次第でございます。 なお先ほど公述人がおっしゃったように、支払い期日の問題でありますが、今回の原案によりますと、以上申し上げましたように、われわれに対する義務的な面あるいは刑罰的な考え方が非常に濃厚でありますが、医療担当者の権利の主張として、ぜひこの際支払い期日を法文化してもらいたい。現在のように五十日、六十日、七十日と支払いがおくれましても、われわれには請求する法的な根拠がないわけでございまして、全くあてがい扶持のような状態である。実情を申し上げますと、いつも支払いがおくれます場合においては、地方の支払い基金の方の証明書によって銀行から金を借りるのです。そうして当然受けるべき報酬金をもらわず自分の借りた金に対する利子を銀行に払うということを繰り返しておるわけであります。一たん金を借りると、次のおくれて入ります金をすぐ返さなければならないので、結局一たん借りれば、なかなか銀行に決済ができないというようなきわめて不合理な状態でありますが、こうした事柄は、当然われわれに義務を負担させると同時に権利をもお認め願うというような建前で法律をおきめ願いたいと存ずるわけであります。 とりわけ私が最も遺憾に存じますのは、官給請求明細書の問題でありまして、これは皆さん方の想像以上に事務量がふえるわけでございまして、現在の事務量の二倍以上の事務量になっていき、おそらく専門の人を雇わなければ官給明細書を正確に記入できないような状態であるわけであります。おおむね現在、月初めの第一日曜日、現在の請求書を書くことで日曜日一日を費しても書き得ないような状態にあるにかかわらず、そこへ持って参りましてこの官給明給書を制定されるようになりますと、おそらく三、四日はこの請求書の書き入れに没頭しなければならぬことになる。医療の方を放擲して事務屋的な請求書の書き入れに没頭するということははなはだ遺憾である、かように存ずる次第でございます。従ってこの官給明細書の問題については、二十年ほど前には保険者側において各被保険者ごとの口座をお設けになって、保険者がそういうものを作っておられた。その保険者の仕事をわれわれがするというような形にも相なりまして、われわれの仕事を低下させるようなことになって参るわけでありますが、こうした場合におけるところの事務費というようなことも当然問題になってくるわけであります。現行単価の中に含まれる事務費というものはきわめて零細なものであって、こういう意味合いから申しましても、官給明細書に対しては私ども絶対に反対の意思を表明する次第でございます。 その他一々反対の理由を御説明申し上げますと非常に長時間にわたりますので、以上大体各項目に基きますところのおもな点の結論だけを申し上げて私の公述を終りたいと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。
○佐々木委員長 以上で公述は終りました。 発言の通告がありますので、順次これを許します。滝井義高君。
○滝井委員 牛尾さんにお尋ねしたいのですが、牛尾さんの方はきょう経営者団体連盟代表として来ていただいておるのですが、日本経営者団体としては、現在の日本の健康保険を社会保障と見ておられるのか、それとも健康保険が昭和二年にできた当時のあれは主として労務管理を中心として出てきておるわけなんですが、あなた方は依然として現在の日本の健康保険というものを労務管理として見ておるのか、この点を一つお聞かせ願いたいと思います。
○牛尾公述人 ただいまの質問にお答えいたします。社会保障の一環とは信じております。労務管理としてそれを考えておるわけではありません。
○滝井委員 そうしますと、社会保障の一環としてお考えになっておる、こういうことですね。そうすると、今まで健康保険に国庫負担の事務費はありますけれども、いわゆる療養の給付費に対する国庫負担というものが出たことはないのです。ことしもあれは国庫負担ではない。最近大蔵省は幾分見解を変えてきたようでございますが、臨時補給金なんです。これは明白に赤字補給金です。これは予算委員会でそういう説明です。最近少し見解を変えてきておりますが、なお大蔵大臣の意見を聞かなければならぬと思います。そこで今あなたのおっしゃるように社会保障だということになりますと、当然国が金を出さなければならぬと思う。社会保障というものは、貧乏とか、病気とか、失業とか、老齢というようなものに対して、少くとも憲法二十五条の健康で文化的な最低限度の生活を守るために出てきておるものだと思います。そういう概念だと思います。そうしますと、日経連の代表の方が社会保障と割り切られたので、私は非常に幸いだと思うのですが、それならばあなた方も堂々と政府に定額定率の国庫負担の立法をやはり要請すべきだと思う。あなた方の言うことなら大がい政府は聞くのですが、それが今度行われていないということなんです。しか、も政府管掌の五百三十万の被保険者諸君というものは低額所得者なんです。しかもこの低額所得層はこの前ここでも言ったのですが、減税の恩典に浴さない。そうしてこれらの層の家族は三人、四人くらいおります。七人委員会の報告を見るとそういうことになっておる。減税の恩典は浴さない、家族は多いということは、貧乏人の子だくさん、罹病率が多いということを同時に表わしておる。しかもその層が同時に二十三億の一部負担をやる、こういうことなんです。そうするとこれは踏んだりけったりです。現在、牛尾さんも御存じかと思いますが、農村では健康保険でやられております。ところが現在国民健康保険にかかる人たちは、どういう層がかかっておるかというと、中農以上しかかかっていない、貧農はかかっていない。貧農はどうしているかというと、保険料は差し押えされて取り上げられてしまうから、納めているのですが、病気になったときに半額負担ができない。それで医者にかからず何でやっておるかというと、越中の配置薬でやっておる。国民のうちで百人病気になりますと、医者に行くのは歯科医師も入れてわずか三十八人くらいしかいません。そうしてあとの六二%はどこに行っているかというと、四五%くらいはみんな売薬、配置薬です。あと残りがはり、あんま、きゅう、迷信、柔道整復、こういうところです。近代医療の恩恵を受けているのは百人のうち三十八人、こういう実態です。そうすると、もし一部負担が増加するならば、その三八%というものはさらに低下することは明白です。こういう点、今幸いに社会保障と言われて私は実は意を強くした。厚生大臣は、これは労務管理を主とするものだとおっしゃった。大蔵大臣は何とおっしゃったかというとこれは労務管理が主であったが、だんだんダーウィンの進化説ではないが今進化して社会保障になろうとしておると言われた。また厚生大臣も、私も前は労務管理を主とすると言ったが、あれは少し修正しまして、やはり大蔵大臣と同じように進化すると言われた。こういうふうに政府の基本的な考え方があなた方の考え方と非常に違ってきておるということです。われわれの考えとはもちろん違っておる。こういう点から国庫負担というものに出てこない。こういう点に対してもう少しあなた方の進歩的、積極的な御意見をお聞かせ願いたいと思います。
○牛尾公述人 社会保障の一環としての社会保険であることは先刻申し上げました。それから国の赤字の補助ではなしに、負担であるべきだということは先刻申し上げた通りでありまして、健康保険の赤字になる原因の中に療養費の増大、それを分析しますと、結核療養費があることは先刻申し上げた通りであります。ゆえにこれは国が結核予防法によって患者を発見して療養しておりますのを、全部保険へしわ寄せることは酷でありますから、国が見よということであります。ただ社会保障として全部割り切るかどうかということは疑問がありますが、とにかく社会保障の一環であることは間違いないのであります。ですから私どもは定率一の——とにかく私どもは医療給付費の二〇%ということを要求しておりますが、定率を国庫が負担すべきであります。原案は補助になっておりますが、補助ではいけないのであります。国の責任を明確にして負担としてもらいたい、こう言うておるのであります。
○滝井委員 われわれと同じ意見であることを非常に心強く思いました。そこでまず赤字の原因は私も結核だと思います。しかし結核も大きな原因であるが、現在日本の健康保険が非常に弱い。一万一千くらいの平均ベースの中小企業では二一、三か五です。そういう平均二一、三か五の事業場が中心になって五百三十一万の政府管掌を作っておる。そこでお尋ねしたいのですが、牛尾さんなんか久保田鉄工所か何かの重役さんであられるようですが、組合管掌の健康保険と政府管掌の健康保険とを一本にすれば一挙に赤字が解消できると思います。しかも日本の健康保険が社会保障の中核であり、あなたのおっしゃるように社会保障制度の一環をなすものとするならば、これは当然相互扶助の精神というものがそこに大きく盛り込まれてこなければならぬと思う。ところが組合管掌というものは、昨年を見ても一万六千という標準報酬が五千ほどの開きがある。そして現在結核その他の発病がそういう貧しい層に頻発しておるという状態からいって、これを一本にするということが現在の日本の社会保険の危機を乗り切るポイントだと思う。ところが政府はあなた方に気がねしてようやらない。この前川崎厚生大臣のときに、滝井君の御意見はまことに傾聴に値する、ぜひ検討したいとおっしゃるだけで、具体的にそれがどういう工合に進むかということは幾ら質問してもお答えがない。この点について日経連を代表してのあなたの御意見を率直にお聞かせ願いたいと思います。
○牛尾公述人 組合と政府管掌とを一本にするという問題は、私今日まだ結論を持っておりませんからお答えできませんが、政府管掌の被保険者の賃金が低い、すなわち標準報酬が低いことは御承知の通りで、これは海外の諸国にないほど大企業と中小企業との賃金の較差があるのであります。非常に低いのであります。それで今日、先刻申しました政府管掌につきましての赤字の原因の中には、やはりこの指導監督、監査という面の不手ぎわから、多少水が漏っているということを言うたのでありますが、組合管掌の方は全国の使用者、すなわち企業のうちで比較的に内容のいいものが組合たる資格を許されて、一つの企業の中で、労務管理の徹底と相待って管理いたしております。そこへこれは標準報酬の等級もいいのであります。多少内容が違うのであります。それで政府管掌と組合管掌と一本にするかということにつきましては、もう少し年月たちませんと私は言えません。むしろ政府が赤だから、組合が黒だから改正するということを理論として割り切るのは、少し早いんだ、それよりも政府管掌の現在の欠点、盲点、あるいは抜けているところを早く強化、補強して、漏水を防いで完璧なものにして、しかる後これは大体の大勢に従ってどうすべきか、そのときに判断すべきと思いまして、今日私まだ日経連の意見を代表して、この問題にお答えする準備はいたしておりません。
○滝井委員 そうしますと、少し論理が矛盾をするところが出てくると思うのです。と申しますのは、一部負担の賛成論をお吐きになったわけです。ところが、久保田さんのやられておるのは——おそらく組合管掌だと思いますが、組合管掌の方は一部負担をやらなくてもいいことになるわけですよ。実を言うと、今度の保険法の改正を見ても、それはあの限度でやってもよろしいが、やらなくても組合の力があればいいのです。現在組合は付加給付が行われている。そうしますと、弱い一本の風にそよぐアシだけが集まったような、一万三千円以下の所得者が多いにかかわらず、あなた方は一部負担をしてもよろしいと賛成をされている。それはちょっと論理が矛盾するのです。その点やはり私は今言ったように、指導監督の強化をしなければならぬが、同時にそれがよくなってから一本は考えるというのでは、時期的におそいのです。これは指導監督も強化するが、同時に日本の社会保障を前進させるためには、強いものと弱いものを一本にする。そのためには、これは毛利元就の三本の矢ではありませんが、弱いものを幾らしたってだめなんで、強いのと弱いのとを一本に組み合せることによって、日本の社会保障の前進がある。同時にあなた方の得意の賃金の較差を狭める一つの働きもやってくれると思うのです。そういう点少し論理が矛盾している感じがするのです。
○牛尾公述人 組合管掌も一部負担を実行するのであります。組合管掌の側から言いますれば、今日政府負担がなしで、制度として一部負担の必要を認めてやろうとするのです。組合管掌といえども今日決して楽な、いわゆる大きな黒字でないのであります。内容を分析しますと、先刻の結核療養費の関係で、やはり内容は悪いのであります。ただ組合管掌は、乱用とか不正ということが、政府管掌に比べて少し済んでいるということであります。一部負担をするのであります。ただ組合管掌は従来付加給付をやっています歴史がありますので、組合によりまして非常に経営のうまくいきましたところは、組合員のためにまた付加給付することのできる道を、前の発展の歴史によりまして設けられておりますが、今回の制度は、政府管掌だけに押しつけないで、組合の管掌も、健康保険組合の健全経営のためにやっていこうとしているのであります。これは誤解のないようにしていただきたいと思います。
○滝井委員 まだ御意見が固まっておられないようであります。私はそれは固まったというわけではなくして、私個人のそういうことをしてみたらどうだという一つの意見としてお聞きするだけでございます。 次に、五者泣きという言葉をお使いになった。国、事業主、担当者、被保険者、薬業者、五者が泣いてこの赤字を克服しなければならぬ。その中に薬業者というものが出ています。現在の日本の健康保険制度における盲点は、製薬業に対する対策がないということです。これは私なんか一番先に取り上げまして、そのうち七人委員会に非常にしっかり取り上げていただいた。ところが政府はやはり薬業資本と申しますか、そういうものにおそれをなして取り上げきれない。あなたは幸いに五者泣きということを言って、平等に薬業にも泣いてもらわなければならぬことになったわけですね。政府の改正の中には薬業も三億泣いていただくことになったのでありますが、どうも具体的にはっきりしないのです。大体三鷹はどうして出すのだという質問をしてみましたところ、まず第一に企業を合理化して、安くて優良な薬を提供する。二番目は、病院とか薬局とか診療所にいっている薬の価格ですか、薬価基準における価格というものを三本建にするというようなことを言っておる。あるいは包装を大きな包装にする、こういうことで三億出すんだというきわめて抽象的な出し方をしておるわけなんですが、何かあなたの方で、日本の健康保険のいわゆる医療の内容を向上し、薬価を引き下げるための具体的な御対策でもあれば、五者泣きのうちの一つの製薬業の泣き工合を一つお聞かせ願いたい。
○牛尾公述人 私の申しました五者五泣きは、五者平等にとか悪平等にとかいう意味ではございません。その受益とか負担とかというその内容に従って負担するということでありまして、事業、王も今回料金を出します。一番多いのは被保険者及びその家族であります。これは一部負担によってやっております。ところが診療担当者なり薬業者なんというものは、監査の面で、あるいは事務的な煩項の面で、その他、薬価基準等が今後どういう進み方になるかわかりませんが、そういうときにおきまして、自分たちの協力する面においてやる。私ども事業主もあるいは被保険者も、この改正によりまして負担のふえることは間違いないのであります。その点は言えるのであります。また薬価の点については、私は専門外でありますからよく存じませんが、結局こうなっていきますと、今の薬業者も診療担当者も政府のやること、今後の医療保険の前進についてその分に応じて御協力願うということで、五等分という意味じゃございません。
○滝井委員 よくわかりました。とにかく薬業者も分相応の負担をしなければならぬ、こういう御主張でございます。よくわかりました。 次に竹中先生にお尋ねしたいのですが、この健康保険法の改正と現在政府が出しておる医療費体系とでございますか、政府はこれは関係かないということをしょっちゅう、品を開けば申しております。これは先生、どうでしょう。医療費体系と健康保険法とは全然関係がないものでしょうか。
○竹中(恒)公述人 先生のおっしゃるように、医療給与費制度でも、絶えず新医療費体系と赤字問題は別問題というように説明は受けておりまするが、私ども医療担当者から考えますと、どうしても新医療費体系の考え方そのもので点数を作ります場合においては、明らかに赤字対策がある、かように私は存ずるわけです。正しい意味の新医療費体系でございますればそうでないと思いますが、現在諮問されましたあの原則、ワク内操作であるとか、あるいは単価の問題も考えない、あるいは技術内容も何も考えないということになりますと、ワク内操作と言いながら、そのワクを機会があれば圧縮しよういとうような傾向がある。そういう観点から私どもはどうしても赤字対策の一つである、かように存じております。
○滝井委員 健康保険の法律も赤字対策であるし、新体系も赤字対策のニュアンスがあるというようなことになるのですが、そうしますと、政府の方は今中央社会保険医療協議会におかけになっている新医療費体系というもの——あれはわれわれ新医療費体系でないと考えておるが、政府はあれは新医療費体系を具現したものだとおっしゃっている。それは、現在の客観情勢は医薬分業を四月一日からやらなければならぬということで、間に合わないんですね。そこで六月までに医薬協議会に出してくれ、こういう御要請があるようでございますが、これはあとの質問にちょっと関連してくるのでお尋ねしたいのですが、先生は医薬協議会の委員でもあられるようでありますが、医薬協議会で六月までにあれができそうでありましょうか。今の先生のお見通しでけっこうなんですが……。
○竹中(恒)公述人 九日の日に大臣がおいでになりまして、そういうような御注文を私ども受けたわけでありますが、それに対しまして、私はそう短かい期間に答申することはとうてい不可能であるということを申し上げました。大体今回の諮問に対しましては、医薬分業に支障ないような支払い方法について答申しろ、その支払い方法は新医療費体系を基礎としたものであってほしい、こういう条件の諮問でありましたので、時間的に間に合わないから、何とか医薬分業に絶対必要な点だけに限局して答申しろ、こういうことなので、結局は分業に絶対必要なものだけの答申であろうが、あるいは広範な答申であろうが、とにかく諮問を受けたのは医薬分業に対する支払い方法の変更方についての諮問でありましたから、一たん答申すればこれでわれわれの責務は果したものである、従って新たに新しい医療費体系を答申しろということでありますならば、あらためて諮問してもらいたい、こういうことを私は申し上げました。そしてなおそれには、とうてい短時日でもって答申することはできない。われわれの側から申しますならば、あれにはずいぶん意見があるのでございますから、物と技術を分けるという考え方にはもちろん賛成だが、短時日の答申は行い得ないのである、明らかにこれは分離してあらためて諮問してもらいたいという意見を私は申し述べたのでございます。従いまして、われわれとしてはそう短時日に、六月、七月というような期間に答申でき得るとはとうてい考えておりません。
○滝井委員 今諮問をされておる新医療費体系、あれは衆議院の方では新医療費体系を出してくれというけれども、出さないわけです。中央社会保険医療協議会では、あれはやはり新体系として御審議になっておるのでしょうか。これは健康保険の支払いに非常に大きな関係があるので、新体系としてやられておるのですか。実は国会が、二十九年の医薬分業を一年三カ月延期するときには、新体系を要求しておるわけですが、今度出てきておるのは、新体系に基く船員保険及び健康保険の新点数なんです。新体系そのものではないわけです。二十九年に出しましたのは明らかに新体系で、たとえば初診の六・二〇三というものは、理論的にはっきり現状の所得の分析から出てきたわけです。今度の十二点という初診からは、どこを見ても理論的にそういう計数の上から出てきていないのです。私らは政府に今新体系を出してくれと要求しておるが、新体系はないと おっしゃった。新体系はありません、二十九年の新体系を基礎にして積み上げて頻度だけの修正なんでしょうが、今度出してきたのだから、それ以外ありませんというのが医務局長の答弁のようでございます。そういう点、医療協議会の方ではあれはやはり新体系とお認めになってやっておられるのか。それとも、社会保険医療協議会は諮問機関として診療報酬の額を所管事務としてやることはできるわけですから、単にそういう意味においてやられておるのですか。その点ちょっとお聞きして次の問題に移りたいと思います。
○竹中(恒)公述人 新体系なるものの定義及び条件によって違うと思うのですが、私は明らかに新体系でないという建前で答弁なども続行いたしました。ただ新体系を基礎とした一つの点数改正案としての論議をしておるわけでありまして、新体系としての考え方1でないと私は存じております。
○滝井委員 日本歯科医師会を代表せられる竹中先生が、今やっておるのは新体系でないということでありましたので、よくわかりました。そうしますと、新体系でない、新点数が医薬分業に間に合わないので、暫定案というものを作ってくれ、こういうことなんです。厚生省は諮問機関に自分の具体的な諮問案を出さずに作ってくれ、こういうことになっておるわけですが、期目的に見てやはり二十日ぐらいまでにできないと、全国の十万をこえる医師、歯科医師、薬剤師諸君に周知徹底をせしめなければならないことになるので、間に合わないと思うのですが、二十日までにそういう暫定案ができるお見通しでございましょうか。
○竹中(恒)公述人 実は九日の最後の医療協議会で、医師会側と薬剤師会側とが相当論戦がありました。いつまでやっておっても立場が違うので、果てしがない。そこで中立的な学識経験委員の方々に折衷案と申しますか、それを作って明日までに医療協議会に御提示を願いまして、それをわれわれがもう一回再検討して、暫定案であればまずこの程度でよかろうということにかりになりますならば、明後日あたりに答申を出す、こういう運びになっておるわけであります。両者が討論をやっておりましたので、おそらく学識経験者の側の委員の方々は、両者の意見を勘案して、両者がしんぼうできる程度のものをお出しいただけるのじゃないかという期待を私は持っておりますが、明日その案を見なければ何とも申し上げかねます。今学識の委員の方々は、一生懸命で両者の意見を聞きながら作っておられるようでございます。
○滝井委員 暫定案ができるとします。そうしますと、この法律には一部負担がきちっときまっておるわけであります。たとえば初診料でなくて、初診のときに百円以内を払う、こうなっておるわけです。そうしますと、私はこういう主張をしておるわけです。暫定案ができて参りますと、明らかに暫定案というものは、あるいは偶然初診が新医療費体系に出ておる十二点になるかもしれないかもしれないと思う。あるいは再診料というものも三点になるかもしれないけれども、ならないかもしれない、こういうことです。医薬分業に必要な限度を中心とする限りにおいては、おそらく新医療費体系として出ておる通りにはなってこないというのが常識だと思います。そうしますと、それは保険経済に非常に大きな変化を与えるという主張を今私はしておるわけであります。厚生省は、それは大して変化がないでしょうと、こうおっしゃっておるのだが、どうも大きな変化を与えるという感じがしてならない。と申しますのは、具体的な例を引いてみますと、初診料が十二点のときに、保険者は幾らを療養担当者に支払うかというと、十二点の場合には五十円、たとえば東京なら五十円を患者が負担しますから、そうしますと、保険経済が医者に払う金は百円、ところがもし暫定案で現行通り初診が四点になったとしますならば、保険経済は担当者に一文も払わぬでいいのです。これは明らかに保険経済に大きな変動を与えることを意味する。初診のときに百円払うのと、払わぬでいい場合、あるいは百円以上払う場合、百円以下を払う場合——それはあに初診のみならんや、再診においてもあるいは注射の場合においても、全部保険経済に変化を与えてくる。そういうことになりますと、現在厚生保険特別会計としてわれわれに提示されておる予算というものは変ってくる、これは当然変ってくる。これは竹中先生のお手元にもいっておると思いますが、財政対束をやった場合とやらぬ場合の資料がおそらく出ておると思います。あの資材をごらんになると、財政対策をやったときと、やらぬときとでは、標準報酬も違ってきております。それから療養の給付費も違ってきております。傷病手当金も違ってきております。療養給付費のごときは、財政対策をやったときと、やらぬときとでは、一年間に一人五百五十円違ってきておる。財政対策をやったときと、やらぬときとでは、これは明らかに受診率が変化するということは、政府自身でお示しになっておることです。そうしますと、そのように点数が変ったということで保険経済に大きな影響を及ぼし、同時に、初診が十二点になるかどうかということは、これは本人には大して影響はありませんが、半額家族負担ですから、四点のときと、十二点のときとでは、家族にこれは重大な影響を及ぼす。従って本人に受診率の変化が及ばないということは厚生省の主張通り認めたとしても、家族には大変動が起ってくる。そうすると、それは受診率の変化は保険の給付費全体に大きな変化が及んできて、暫定案というものは昭和三十一年度の健康保険の会計、すなわち厚生保険特別会計に根本的な重大な修正を加えなければならぬことになると私は断定してはばからぬと思うのですが、この点について牛尾さん、竹中さん両方の御意見を一つ伺いたいと思います。
○竹中(恒)公述人 私の説明が足りなかったかもわかりませんが、実は暫定案を作るところの条件を出しておるわけであります。それは、旧点数表によるということです。それから医薬分業に必須なものにしぼるというしぼり方の条件は薬治料に限定する。こういう建前でもってわれわれは主張いたしまして、学識経験の委員の方々もおおむねその線において折衷案をお作り願うということになっておりますので、薬剤師側の方は初診料十二点を基準にして八点とか六点とかという考え方でやってもらいたいという御意見が出たのです。しかしそれでは、今おっしゃったように結局原案をのんだことを前提としての暫定案でありますからそれはいけない、あの原案が黒か白かという判定がまだ下っていないのでありますから、現行点数表を基準に置いての暫定案になっておりますので、今先生がおっしゃった変化はその意味において現われないわけであります。
○滝井委員 厚生大臣もそうおっしゃっておりますか。
○竹中(恒)公述人 いや、それはわれわれ委員だけでいたしますところの懇談会の意見でございます。
○牛尾公述人 健康保険の関係からいいますと、私は新医療費体系ということと今回のものと一つも一緒に考えておりません。健康保険の方としましては、医療費体系のことがどうなりましょうとも、一部負担ということについては相談しなければならぬと考えておる次第であります。
○滝井委員 今竹中先生から非常に重大な御発言を聞いたのですが、実は私は旧点数でいくべきだと主張しておる、政府の方では旧点数じゃないのです。これは重大な食い違いなんです。現在政府の方が出しておる新医療費体系を医薬分業に必要な限度でやってもらいたい、こういうことなんです。これははっきりしておる。あなたの今の御発言をお聞きして、これは重大だと思うのです。それで御意見はよくわかりましたから、これ以上お聞きいたしません。いずれ午後に日本医師会、薬剤師会の方が来ますから、その方からもお聞かせ願うことにいたします。
○八田委員 関連して竹中先生にお伺いしたいのですが、今滝井委員から質問がありましたように、厚生大臣並びに厚生事務当局の考えでは、新点数を基礎とした暫定案であるかのように説明されてきておったのであります。それで実は私もそこに幾分食い違いがありますので、社会保険医療協議会においてどのような考えで厚生省の申し出を受けられたか、それについての疑念をただしてみたかったのであります。 それと、もう一つお聞きしたいのは、今学識経験者によって暫定案を御審議願っておるというような御返答があったのでありまするが、その学識経験者は社会保険医療協議会で御人選なさって御依頼なさったのか、あるいはその学識経験者というのは一体どういうような構成員でできておるのか、これをちょっとお知らせ願いたいのであります。
○竹中(恒)公述人 学識経験者は医療協議会の委員の方でございまして、そういういろいろな討議をしておりますときに、保険者側の委員から発言がございまして、どうも医療担当者としての医師、歯科医師側と薬剤師側とに意見の食い違いがある、それではいつまでたっても仕方がないので、この際この委員の中から中立的な学識経験の委員、特に名前をあげて今井委員にお願いして折衷案を作ってもらったらどうか、こういう保険者側の意見が採択されまして今井さんにお願いした、こういうような形になっております。その結論に入ります前の条件として私が申しましたのは、旧点数表によりますと、薬治料の範囲、必要によっては処方せん料にまで及んでもやむを得ない程度のことまでやってもらいたいということが条件になっておる、私はかように信じております。従いまして厚生当局が新点数に基いてやられたことであるかどうかということは私存じませんが、申し合せはそういうことになっております。いずれその問題がそういうことになりますならば、おそらくまたもつれるのではないか、かように存じます。
○八田委員 そうしますと、学識経験者は今井さんお一人でございますか。
○竹中(恒)公述人 ちょうど折あしく学識経験委員の方は、他に坂口先生と檜垣先生お二人だけで、他の方は欠席しておられましたし、今井委員が副会長の席におられたわけなんで、結局学識経験者の今井さんになった、かように記憶しております。
○八田委員 私は竹中先生が中央社会保険医療協議会でいろいろ御発言になっているのを拝見いたしましたが、その中で特に先生は、中央社会保険医療協議会に関するメンバーの件について、非常に御不満があるように聞いておりますが、その点について御参考までに一つここでお話願いたいと思います。
○竹中(恒)公述人 私が申しましたのは、医療協議会のメンバーではございません。社会保険審議会の方にわれわれ歯科医師関係の代表者が一名もおらない。それであの当時は社会保険の関係法律の原案を作られる前でございましたので、当局が御諮問なさるときでございました。従いまして健康保険法の改正について御諮問なさる場合に、歯科の専門の立場の者がおらぬでそういうことをきめられたのでは、われわれはそれをのむことは困る。そういう意味合いを持ちまして、ぜひ一名これに加えていただきたいということを申し上げたのであります。それから中央医療協議会も同様でありますが、どちらも単数でございますので、病気その他の場合に非常に支障を来たす。代理を認めないような前例でもって運営されておりますので、非常に困る。ぜひ増員する場合には複数制にしてもらいたい。こういう意味合いで医療協議会のメンバーのことも触れたのでありますが、主として申し上げましたのは、社会保険審議会にゼロであるということについて言ったのであります。
○滝井委員 竹中先生に九条、四十三条、八十八条関係できわめて重要なことを御指摘いただいたのです。それは療養担当者なりあるいは保険薬剤師の人たちが質問に答えなかったときには、これは多分四十三条の十二の五は医療機関の指定取り消しになる、四十三条十三の二は保険医の登録の取り消しになる、こう思っております。その点どうも憲法違反とは申されませんでしたが、憲法三十八条の違反の疑いが濃いと思います。 〔委員長退席、中川委員長代理着席〕 現在の憲法の通説では、刑事手続としてあれを読んでおるようでありますけれども、私はこれはやはり行政手続としてやるべきじゃないか、こう実は考えておったのでありますが、どうもこれは憲法との関係もあって、こういう条文はけしからぬというお話があった。今度の健康保険法を見てみますと、憲法違反の疑いが実に濃い。それで私はこれはかつて特高の経歴があった人がやった立法だということを言った、実に多いのです。その最たるものが、今の四十三条の十ですか、先生が御指摘になった憲法三十八条、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」これに該当すると私は思うのです。いずれこれは法制局長官の意見も聞きたいと思っておるのですが、先生方はその点どうお考えになるか。ほんとうに療養担当者としての立場から、率直に一つ述べていただきたいと思うのです。
○竹中(恒)公述人 私、法律のことはあまり詳しく存じませんで、あいまいな表現をしたのですが、しろうとの私としては憲法に違反したようなことである、かように存じております。そこで時間がなかったので省略したのですが、あの四十三条を中心に考えます一と、結局今回の改正案ではわれわれ保険医の既得権を非常に侵害されておるという感じを持つわけです。既得権の尊重ということが近代国家の法律の通念だろうと思うのでありますが、その既得権が侵害されておるということ。それから同時に機関指定というものによりまして、機関に人間と保険医が従属するという形になって、人間に主体性がない。医療給付に対する主体性が物にありまして人にないというような感じを持ち、しかもそれが機関制によって連座制の形に追い込まれておるというような点も、私は非常に危険であろう、かように存じております。なおそういう結果この法律がお説のように何かファッショ的な官僚医療統制多に導くものである、こういうような考えも私は持っておるということを率直にここに申し上げたいと思います。
○滝井委員 終りました。
○中川委員長代理 野澤君。
○野澤委員 金子さんに一、二点お尋ね申し上げたいのですが、先ほど公述されます当初において、下手な医者ほど収入が多い、こういうことをおっしゃっておられましたが、これはどういうことなのか、具体的に一つお示しを願いたいと思います。
○金子公述人 それは今のように病気を早くなおすと——短期間でなおすよりも長期間の方が実益が多いという場合がよく出てくるわけです。これを申したわけです。
○野澤委員 そうしますと、上手な医者は短期間になおしてしまうが、下手な医者は期間が長いから収入が多くなる、こういう意味なのでございますか。
○金子公述人 そういう意味です。
○野澤委員 そうしますと、これは表現の仕方としては非常にうまいような表現ですが、実際は矛盾しておりませんか。上手な医者ほど早くなおるならば回数を余分に患者を扱えるのですかり、やはり収入の面についてはさほど変りはないと思うのですが、この点どういうふうにお考えでございますか。
○金子公述人 これは今野澤先生のいわれる点が一応ありますが、多くの場合においてそれほどはやるかはやらぬということがこれまた問題になってきます。早くなおしてしまったらあとでたくさん来るかどうかということは、これはまた別になってきますが、多くそういう弊害がある、全部がそうだとは言えぬ場合があるかもわかりません。
○野澤委員 非常にこれはおもしろい表現だと思いますし、今後先生方が社会保険医療を発展させる上においての大きな問題点になると思うのです。一つの例でありますので、先生方とすれば当然機会均等な医療の発展という面からはそうした御議論もあられると思いますけれども、少くとも軽費診療とか定額診療という面からいけば、すべて診療形態は社会保険によって逐次機関化されていく、こういう面から見ますとこの御議論は戦前の御議論であって、むしろ戦後としてはこういうことはあり得ないのじゃないかという感じがいたしたので御質問申し上げましたが、大体わかりましてございます。 もう一点、早期診断とかあるいは早期治療というような面で一部負担をやめてほしい、こういうふうなお話がありました。さらにまた機関指定は賛成であるとかあるいは支払いの期限を明記してほしいとか、先生の公述は具体的に示されておるようでありまして、貴重な御意見として拝聴いたしました。また現実の問題としてこの新医療費体系に対する御議論もあり、パンフレットもちょうだいいたしましたのでゆっくりと拝見さしていただきたいと思いますが、この医療費の支払い方法というのが戦前から流れたままで今日まできております。敗戦という契機によって日本のあらゆる社会制度というものは大きな変革を来たした、たとえば農家におきましてもあるいは大企業におきましても相当の変革が来たされておる。ところが医療制度だけは全くそのまま流れ込んできておる。そうして今日でも医薬分業とか新医療費体系かといいますと、お医者さん方の強力な政治力によってほとんどちんばになってしまう、こういう情勢下にあるのですが、先生はやはり現実の問題として、今の医療費の支払い方法が妥当だとお考えですか、多少はこれは直さなければならぬとお考えでありますか、この点お伺いしたいと思います。
○金子公述人 ちょっと私に理解ができぬところがありましたが、今の健康保険の支払いの方法といったような趣旨の支払いということをおさしになるのかちょっとわからなかったのですが、健康保険の支払いにつきますとさっき申したようにせひ改正をしなくてま診療担当音はやっていけなくなってくる、こう考えます。それからほかの方は……。
○野澤委員 言葉が足りなかったのでおわかりにならなかったかもしれませんが、医療費の支払い方法と私が申し上げたのは、現在医者にかかって支払われる患者の立場から、現在の初診料とかあるいは注射料とか薬治料とかいうような、この医療費の払われる方法が、いわゆる医療費体系というものが現在のままでよろしいかどうか、これは早晩改正しなければならぬとお考えになっておるかどうか、こういう点でございます。
○金子公述人 私どもはこの点については、将来において国民の医療生活といいますか保健生活というものが確保せられるには相当の改良を要するものと認めております。
○野澤委員 次に竹中さんにお伺いしたいのでありますが、竹中さんの御公述の内容を全体的に取りまとめてみますと、いろいろ不満があるということが前提で、ほとんど大半が不満だらけでございます。従ってどこをどういうわけにも参りませんが、私が一応まとめたことについて二、三お尋ねいたしたいと思います。 第一点は今度の健康保険の改正は赤字対策として改正するのだということを断定されております。厚生大臣に私がお伺いしましたときに、これは赤字対策としての抜本対策であるか、根本対策であるかというような押し問答をしました。その際にやはり対策としては赤字対策が出発であるが、保険医療の根本対策として今回の健康保険の改正を提案したのだ、こういうことをはっきりと言われております。従ってこれを根本対策であると考えるか、暫定的な赤字対策と考えるかというところに議論の分れる点があると思うのですが、この点に関して重ねてお尋ねしたいのです。川崎厚相時代に七人委員会ができて、これらの報告によっていろいろと対策をすべき条項が打ち出され、その条項のうちからとりあえず今回の改正案というものが出てきた。そこでこれが全く暫定的な赤字対策なのか、根本対策なのかという問題になってきますと、医療担当者としてのあなたの立場からも根本対策の一部であるとお考えになられるのじゃないかという感じがするのです。この点一つ明確な御説明を願いたいと思います。
○竹中(恒)公述人 財政対策ということが社会保険の根本対策の一つであることは申すまでもございません。その財政対策として現実の赤字問題を処理するということもやはり一つの大きな意味における根本対策になるかは存じませんが、今回の原案を見ますと、赤字対策としてうたわれたところの一部負担制度だとか、あるいはまた標準報酬料金の等級改正だとか、あるいは被扶養者の範囲の縮小だとか、すべて以前に赤字対策としてうたわれたもののみが今回の原案に入っておる、かように私感じますので、どうも今回のは根本的な対策でない、特に根本的な対策といたしますならば、先ほど申し上げましたように結核問題並びに国家が責任を持つという意味におけるところの国庫負担、この二点がほんとうの根本的な対策であるにかかわりませず、これに触れておられないということは、原案が一応赤字対策であり、同時に根本対策の一つかは存じませんが、重要な面が抜けておるという意味において、私はこれは赤字対策を主としたものであるので不満がある、かように申し上げたのであります。
○野澤委員 国庫負担の問題が出ましたので、国庫負担と赤字対策との問題についてもう一度竹中さんにお尋ねをいたしたいのですが、今度政府が一割の国庫負担をしようということで原案を出して、大蔵省でけられております。けられますのにはそれ相応の理由があると思います。これは国家財政の立場、大蔵省の立場からもありましょうが、それをさらに突き進めていきますと、先ほども金子さんにお尋ね申し上げましたように、日本の医療制度の欠陥が大きく指摘されているのじゃないか、しかもそうしたものを是正することが根本対策である、これが是正されさえすれば保険の財政もあるいは保険医療機関の整備も完全に行える、そういうふうに完全にできてしまいさえすれば、国庫負担というものは当然国家が責任を負うべきものだと私たちは考えております。根本対策の観点を国庫負担そのものに置くか、根本対策をやった後において国庫負担というものを強く打ち出すべきか、この点の見解の差があると思うのですが、この点に関して竹中先生はどうお考えでございますか。
○竹中(恒)公述人 今の国庫負担の問題でございますが、いろいろと理由があって、厚生当局としては一割の給付費の国庫負担を要求なさったが、その要求なさった理由が解消されておらないわけであります。ただ出てきたのは財政的理由だけでございますが、厚生当局が当然療養費の一割程度は国庫負担すべきであるという理由はほかにあったはずだ、その理由の解消のないのに財政的理由だけでこれがゆがめられるということは私どもといたしましてははなはだ残念であるので、医療保険の正しい姿から申しますならば、国と被保険者とが当然同じ立場において同じ程度の負担をするということが一番いいのじゃないか、かように私は考えておるわけであります。従いまして被保険者に対して、今回法律をもって明確にああいう増額をいたしました一部負担の線を引く限りは、やはり臨時補給金の形でなくて、明確に恒久的な国庫負担ということをうたってもらうのでなければ片手落ちだ、かように存します。今御指摘のように、社会のすべてに欠陥があるために医療制度にも大きな欠陥があるのだから、これを是正した上でというお話でございますか、一応そういう考え方もあるいは成り立つかと存じますけれども、国家社会の諸機構の欠陥が是正されるのを待って医療機関の整備をはかるということは、私どもといたしましては百年河清を待つような感じがいたすのでございまして、われわれの立場からはやはり医療問題を中心にして論じていきたい、かように存じます。
○野澤委員 非常に明快な御解説ですが、これは与党として政府を援護するわけではないが、国庫負担ということと健康保険の根本対策というものとは相対照するものだ、国庫負担だけ先に出してしまって、しかも根本対策は全部否認するのだ、こういう態度ではいつまでたっても、それこそ百年河清を待つというあなたの御議論にぴったりすると思う。これはまあ見解の相違でございますからやむを得ません。 そこで第二にお尋ねしたいことは、一部負担に対して二十三億五千万円のうちで医療担当者が六五%ないし七〇%は徴収不能である、明らかに医師は十五億くらいは負担しなければならない。その結果一点単価十円くらいで診療をすることになるだろうという御公述のように承わりました。要はこの一部負担ということに対して、金子さんは一部負担の徴収は困難である、徴収方法について云々ということを言われた。お二人の御意見とも一部負担に反対だということは、一部負担をきめましても医者のふところに入らないということが反対の根本原因だと思うのです。そういう事柄でありますならば、私の方でも一部負担についてはいろいろ論議の焦点になると思いますが、現在の日本の保険医療の経済を確立し、将来または社会保険というものを確立していく上において、世界的な趨勢としては一部負担をどんどん打ち出さざるを得ない状況にある。イギリスにおいてもあるいはスエーデンにおいてもそういう状況にある。またソ連のごときは完全な国営でありながら、診察と治療は無料であるが、投薬の部分だけは全部患者負担になっている。世界一進歩的だといわれるソ連でさえそういう状況になっておる。いわんや日本においてあるとう限り低額の一部負担をさせるという思想について、あくまでも医療担当者という立場から、根本的にあなたは御反対なさるのか、あるいはまたお医者さんのふところに転げ込むような方法があるならば賛成してよろしいとお考えなのか、この点お尋ねいたします。
○竹中(恒)公述人 私の言い足りなかったことを御指摘いただきまして、意思表示ができる機会を与えられましてありがとうございました。実は一部負担問題につきましては、先ほど申しましたように、医者が未収になるという点も一つの大きな理由でございますが、なお一番大きな理由はそういうことではございません。医療保険のあり方から考えまして、保険の行き方からして、病気になった場合にお金が要らないからふだん保険料をかけておくというような建前が保険だろうと思うのです。もちろんその一部負担の課せられる額の程度にもよりますが、一応考え方としては、ふだんささいな自分の月給の中から保険料を払っておけば、一たん病気になった場合にお金を出さなくても、経済的な負担の顧慮なくして病気を見てもらえるということが正しい保険だろうと思うのです。ただそれに対しまするいろいろな事情からいたしまして、どうしても一部負担をしなければならぬというようなことになっているようでございますが、私どもあくまでもそういう考えを持っておるわけでございます。 そこで今御指摘の世界的な趨勢として、およそどの国も持ってるおのだから、日本も当然だということは、一応議論としては傾聴に値するように思いまするが、日本の国情から申しまして、あるいは保険料率が世界最高であるということもお考え合せにならなければならないし、国民の所得と医療費の比重ということも考え合せますと、当然これは、日本としては一部負担というものを他国がやっておるからといって無条件にやるべきだということは、私は賛成しかねると思います。
○野澤委員 公述人と議論をするつもりで立ったわけじゃありませんから、見解の相違については、他日に譲ることといたしまして、ただ日本の国情に即した保険医療というものの体系を確立する上においては、当然一部負担すべきだという考え方で出発していかなければ、この財政の少い日本の国情としては合わないのじゃないか、こういう考え方を基本にして申すのですが、いかなる人でも保険がある以上はただで病気をなおせるのだ、そのただでなおす建前から、お医者さんがどんな不正診療をしようとも、不正請求しようとも、そういうことは野放しにしておいて、そして患者の負担になることはけしからぬというて大きなアドバルーンを上げて、これを抹殺しようとする。こういうことを何年繰り返しても、私は日本の社会保障制度というものは確立できないのじゃないかと思うのです。こういうことから、少くとも 一部負担というものは、保険経済を確立する上においての付帯条件として——そのかわりに多額を取ろうというのじゃありません、せめて病気になったときに、多少のものはやむを得ないのじゃないか、こういう思想で解決していかなければならないのではないか。特に第三点としてお尋ねしたいことは、今日まで医師会と歯科医師会との関係であります。医療担当者として医師会の健康保険に対する反対とか、あるいは新医療費体系に対する反対と、それから歯科医師会の反対とは、おのずと行き方が違っておったように感じているのです。けれども、いつの場合でも、最後のどたんばに来ると同じ結論が出て、同じ共同戦線を張って臨まれておるようです。たとえば今回の一部負担の問題にしましても、機関指定の問題にしましても、あるいは官給請求明細書の事務量の増量の問題にしましても、本質的に医師と歯科医師の立場で私は違うと思う。たとえて申し上げますならば、機関指定の場合に、機関と個人とが遊離する、別個に扱われる、あるいは機関に隷属させられるという先生のお話ですが、歯科医というものは、十人も二十人も医者を使って開業しているのはきわめて少い。それから普通の診療所、病院というものは数十人の医師を擁している。こういう機関そのものの本質的な相違ということも考えられる。また官給請求明細書の事務量の増加ということは、歯科医が一人二人でやられている場合は実際に私御同情に値すると思う。けれども、相当の人員を擁する医療機関においては、人をただそれに振り向けるだけですから、困難じゃない。こういうふうに、この三つの問題を取り上げてみても、一部負担から機関指定、あるいは官給請求明細書というようなものを拾ってみても、医師会と歯科医師会とは全く違う立場からの御反対があるように感じられるのですが、今回の健康保険の改正に対しましても、やはり医師会と全く同じ考えでありますかどうか、この点お尋ね申し上げます。
○竹中(恒)公述人 御指摘のように業態が、医業と歯科医業とは違っておりまして、医療協議会あたりでも、新医療費体系に対する影響も違うわけでございます。従いまして私どもの考え方と医師会の考え方とは、影響力の上からいって厚薄があると思いますが、結局結論は反対すべき点に落ちつく場合が多いのでございます。従いまして私どもは、新医療費体系なども、歯科医の特異性から申しまして、科学技術が医師に必要であると同時に、歯科医は手技が必要である、この手技を中心とした技術の点を考えなかったからいけないのだという意味合いから反対して参った。結局反対ということは医師会と同様ですが、それの出発点なり道程が多少違っていることは、御指摘の通り違っております。違っておりますが、結論はといいますと、結局同じようなことに相なりますので、その点は御不満でおしかりをいただきましてもやむを得ないと考えております。そして機関指定の問題につきましても、医師と歯科とはだいぶ業態が違うのだ、歯科医の方はたくさんの人を雇わないのだから、機関指定については従属的な立場に置かれるということは、医師会がやるべきであって、歯科医師会はそうでないのだという今のお話だったのですが、なるほどそういう大企業はありませんが、私どもも親子なり兄弟で、一つの診療所で三人でやっている場合もございます。親子でやっている場合でも、機関の指定が取り消されますと同時に、親子ともその場所では保険医療はできないということになりますと、大小の相違はございますが、やはり影響は同じである。こういう意味合いで機関指定に対しましても私どもは反対しているわけであります。 それからお言葉を返して恐縮ですが、一部負担が不正取締りの一つの方法として考えておられるようでございますが、私どもはそこまでは考えておりません。医師の不正の取締りは他の方でやるべきであって、一部負担によって医師の不正取締りをやるというようなことでありますれば、われわれもいま一度より深刻に考えなければなぬと思います。
○野澤委員 だいぶ勘違いしているようですが、私はそう申し上げたのではないのです。要するに、病気になった場合には被保険者はただで医療を受けるのだという考え方の反面、不正請求とか不正診療というような事実から、医療費が膨大に伸びちゃっているんだ、そういうふうに赤字が出ているんだ。それをほったらかしておいて、ただ一部負担に反対だということはいかぬのじゃないかという話をしたのです。これが一点です。 それからもう一つ、機関指定の場合にも隷属しないじゃないか、それはけしからぬと私は小言を申し上げたのではない。ただ同じ改正案に対する反対でも、こういう機関指定の問題にしても、一部負担にしても、官給請求明細書を見ましても、あなた方の主張と医師会の主張とでは、相当根本的に違う点があるのではないか。その例としてただ機関指定の解説をしたのです。決して苦情を申し上げたわけでございませんから、誤解のないようにしてもらいたい。要は、結論において反対だということでよくわかりましたが、その反対は、結論においては一致しているが、その出発から過程、また反対の極限における立場というものも、おそらく異なるものだと私は了承いたします。 最後に一点だけ、中央社会保険医療協議会において、今度の新体系に対する暫定案についてのあなたのお話がありましたが、いろいろとこの会合の秘密会の状況も拝聴しましたけれども、先ほどあなた方が申されたことは、委員としての立場から要求された希望条件であって、必ずしも薬治科だけにしぼるとか、あるいは旧点数でいくとか、新点数を土台にしないとかいう申し合せはなかったと思う、話し合いをしただけであって、これを今井さんはどうとるかは今後の問題でありますが、この点はだいぶ誤解があるように思いますので、もう一度、あなたのお考えを主張されたということをお話しされたのか、実際に協議会でそうした結論を出して今井さんにお頼みになつたのか、重大な問題点ですから、この点お伺いいたします。
○竹中(恒)公述人 この点は、詳しく申し上げないと、実は先生方に誤解があるのですが、午後の懇談会の席上で先ほどの大臣の希望によって暫定的な答申をするのにどうすればいいかということが議場に諮られた。そのときに第一番に私が発言を求めまして、先ほど申し上げましたように事は急を要する問題であるし、とうてい原案によってやるということは困難である。従って旧点数によりまして、範囲は薬治科に限ってこれは答申すべきであるという意見を申し上げた。それに対しまして医師会側もその通りだという御意見があられた。これに対する薬剤師側は反対の意見があられまして、討議に入ったわけなんです。結局採決というものは新点数でやれとか旧点数でやれという採決はありませんでした。討議が戦わされておるとぎに保険者側委員が、いつまでやっておっても切りがないから、両者の意見が、学識経験者、中立の委員の方もよくおわかりになったと思うから、一つこの両者の意見をくみ入れて折衷案として暫定的な案を立ててもらったらどうかという動議が出まして、よかろうということで、それも懇談会でありましたから別にはっきりと挙手なり起立採決でとったわけではありません。よかろうということでおまかせしたのであります。従いまして私どもの立場は、われわれの主張が当然その中に織り込まるべきである、かように信じております。
○野澤委員 はっきりいたしました。ただ単に主張をされたという結論だと思いますので、別段そうした申し合せは、単に竹中さんの御意見として私たちは拝聴いたしたいと思います。終ります。
○中川委員長代理 岡良一君。
○岡委員 せっかく公述人の皆さんにお出ましを願ったのでありますから、私は討論めいたことは避けて端的にお尋ねいたします。 この健康保険法の改正の中で一番問題となっておるのは、先ほど来の御三名の方の御指摘のように、第七十条の三に新しくこのような条文をつけ加えたことであります。すなわち「国庫ハ第七十条二規定スル費用ノ外」と申しまするのは「保険事業ノ事務ノ執行二要スル費用」のほかに「予算ノ範囲内二於テ政府ノ管掌スル健康保険事業ノ執行二要スル費用ノ一部ヲ補助ス」、これが一つの大きなポイントになっておりますが、そこで竹中さんまた金子さん、牛尾さんにお尋ねをいたします。私どもはこの際たとえば結核に対する根本的な対策が確立されておらない、しかもこのままに放置すれば、結核だけでどんどん健康保険の財政が食われておるという現状にかんがみまして、国庫は予算の許す範囲内において補助するという程度ではなくて、保険給付においても組合管掌、政府管掌といろいろありますし、また組合管掌、政府管掌の保険財政においてもいろいろありまするので、問題は国は政府管掌の健康保険においては保険の給付に要する費用の二割を負担する、こうはっきり打ち出すことが、今日あらゆる条件を考えてみた場合における健康保険法改正の最も端的な道ではないか、私はそう信じておるのです。この点について竹中さん、金子さん、牛尾さんの御意見を聞きたい。
○牛尾公述人 大へんけっこうな発言であります。ただ私の聞き違いかも存じませんが、国庫が負担しますのは政府管掌だけでなしに組合管掌、すなわち健康保険法できめております被保険者を対象とすべきであると思いますので、この点を御考慮願いたいと思います。
○岡委員 牛尾さんにお尋ねしましたのは、私の尋ね方が悪かったのかもしれませんので重ねて申し上げますが、特に今日の場合という限定のもとに、将来は組合管掌も含め得る余地を残して、この際改正に当っては保険の給付に要する費用の二割を国は負担す、こうはっきり言い切るのが今日健康保険制度育成への一番大切な仕事ではなかったかと私は思うのですが、その点についての御意見をお聞かせ願いたい。
○牛尾公述人 大へんよくわかりました。ぜひそういうふうにお願いしたいと思います。
○竹中(恒)公述人 私はもう少し欲を深くして、二割以上ということでお願いしたいと思います。
○金子公述人 これは今岡先生の仰せの通り法文において明らかに何割ということを明示してもらいたい。その最低の線は二割ということにしまして、必ずしも組合管掌の健康保険が財政が全部いいとは言えませんので、これも同様に扱うようにしていただきたいと思います。
○岡委員 社会党のみならず、自由民主党の諸君も公述人各位の公述によって大いに啓蒙されたことを感謝いたしまして、私の質問を終ります。
○中川委員長代理 長谷川保君。
○長谷川(保)委員 時間がありませんから私も端的に伺いたいと思うのであります。牛尾さんにお伺いをいたしたいのでありますが、私ども今度の一部負担の強化ということで、非常に心配しておりますのは、受診率が下る、また政府はそうは言っておりませんけれども、多分政府のねらっているところもそこであると思うのでありますが、この部負担の強化によって受診率が下ると思われるかどうか、世の中で実際事業を経営しておられるお立場として非常に参考になると思うのでありますが、どうお思いになりましょうか。
○牛尾公述人 そのお答えの前に私は医療の受診率というものは、国民の衛生思想の向上に伴いまして、年々ふえていくものだと考えます。もしふえていかぬものでありますれば一部負担によって若干乱診乱療とかいうものは押えられるかもしれませんが、全体の国民の受診は、今後これをやりましても、そのために著しい影響を受けて減らないで、国民の衛生思想の向上に伴いまして総数はふえるものだと確信いたしております。
○長谷川(保)委員 その点は確かにその通りだと思います。ただ問題は現在のこの条件下において、これは医学の進歩とともにいろいろ変って参りますけれども、現在の状況において一部負担を強化すれば受診率というものは下るかどうか伺いたい。
○牛尾公述人 法の施行の瞬間にはそういう心理的影響を受けるかもしれませんが、負担の程度、方法によりまして私は著しい影響はないと信じております。
○長谷川(保)委員 それでは次に保険財政の問題といたしまして、これは赤字であっては困るということはお互いどなたも御一緒でありますが、保険料率をこれ以上引き上げるということは適当であるかどうか。つまり上げる余裕があるかどうか。その点を経営者の立場からいたしまして使用人という十場からあるいは労働者の状態を御推察いただいて、これ以上げることがいいかどうか、この点を伺いたい。
○牛尾公述人 国庫負担あるいは原案の一部負担、政府の事務的な調査、監査、いろいろな点で調査を完璧にいたしまして、なおかつ保険会計が苦しくてまた保険料率というものがいろいろなほかのものと比較しまして低いということがわかりますれば、事業主も被保険者も保険料率の引き上げについては決して反対するものでないと思います。ただ被保険者なり事業主から見まして、現状、すなわち三脚の欠点があるのをそのままにされまして、安易に保険料率に取り込むことはいけないと思っております。完全になりますれば、料率引き上げに決してやぶさかではございません。
○長谷川(保)委員 昨年、御承知のように保険料率が千分の六十から六十五に引き上げられました。これによって二十数億というような金が使用人並びに被保険者にかかったわけです。そこで今度また、ことしこの一部負担を強化して二十三億という金を出させるということは、先ほど来のお話でございますけれども、どうも私は被保険者等に負担がかかり過ぎるのじゃないか。先ほど三脚のお話がございましたが、どうも平衡を失って一方的にかかり過ぎるのじゃないかという感じを私は持つのであります。政府はやはりお話のようにそれぞれの受益者と申しますか、それぞれの関係者がみんなで負担すべきだ、こういうように言うのでございますけれども、そのときには昨年の料率を引き上げたということを一言も言わない。昨年料率を引き上げて二十何億という金を出さした、これが今年も続いておるわけです。そこでまた二十三億というような一部負担をやるということですが、そこが強くなり過ぎるのじゃないかと私どもは思うわけでございます。こういう点についてはいかがお考えですか、お伺いしたい。
○牛尾公述人 一部負担ということは、すなわち被保険者の保険料率がまだ低いということと思います。今回標準報酬の等級引き上げによりまして保険料率がふえることは明らかであります。ただこの等級引き上げは二十五年四月の改正時と今回の平均賃金との倍率から出ましたので、これは理論的に正しいものですから、事業主も被保険者もこれについては文句は言わないと思います。 それから一部負担に二十三億寄せたことが大きいかどうかという御質問だと了解いたしますが、これは私が申し上げましたように現行やっております一部負担が本人家族を入れてせいぜい一六%前後と思います。今回二十三億入れまして医療費の総額の五・四%、合計いたしまして法案通過後は二二%前後と思いますので、今回はこれくらいであればまあよいと考えておるわけでございます。
○長谷川(保)委員 先ほど来のお話を承わっておりますと、公述人の牛尾さんあるいはまた議員の方からもいわゆる西欧諸国の診療費の一部負担という問題が例に出されたわけであります。ところが東欧諸国と申しますか、人民民主主義諸国と申しますか、こういう方面ではそういうことが行われておりませんばかりでなく、これは保険料を全額資本家負担という形がなされておるわけであります。これはチェコスロヴァキァを初めアルバニア、ポーランド、東独あるいはお隣の朝鮮人民民主主義共和国あるいは中華人民共和国、こういうところでは初めの六カ月は医療費は全然無料、それから六カ月過ぎてから後労働保険に入りますが、この場合も本人は全然無料でしかも三年とか二年ということではなくて、なおるまでという制度になっております。西欧諸国の方は賃金の水準は非常に高い、それで生活水準の高い、ある意味では楽なところではそういうことを行なっておりますけれども、一方人民民主主義共和国におきましてはそういうことはないのです。こういうような事情になっております。従いまして私は先ほどお話のニュージーランドその他の国々が一部負担をやっているからということは、これは非常に一方的なことのように考えるのです。人民民主主義国の実例を十分御研究になって先ほどの実例を出されておりましょうか。
○牛尾公述人 私どもが海外の先進諸国の例を引きますのは、その負担の率とか金額とかをまねるのではなくて、その根底になっておりますものの考え方を学ぶべきだと思うのであります。 〔中川委員長代理退席、委員長着席〕 それは若干といえども保険料を払っているから、天井をはずして無制限に何もかにもみんな保険で百パーセントかぶさるんだという考え方でなしに、やはり一部若干は負担すべきものであろう、すなわち保険料でありますから何らかの制限を受ける、この考え方をば学ぶべきだと思います。今日の国民所得からいいますれば、外国の率をそのまままねることにつきましては必ずしもそれは賛成できないのでありますが、私は基本の精神を学ぶべきだと思います。
○長谷川(保)委員 先ほど牛尾さんからもお話しのように、今日の健康保険の財政の危機というものは結核からきておる。御承知のように、統計から申しましても医療給付の三六%は結核でございます。従って、私どもは結核というものが社会病であるという点を考え、日本の結核問題の重大さを考えまして、当然国庫負担をすべきだという考え方を持っておるわけであります。先ほど同僚の二割という国庫負担に賛成だというようなお話がございましたが、結核問題を考えますと私どもはやはり当然そうだと思うのであります。二割といわず一割でもけっこうでございますけれども、当然そういくべきだというように考えるのです。もし結核関係がそういう三六%だということで、二割出さぬでも、組合及び政府管掌双方合せて、御説のように当然平等に定率の国庫負担をすべきだということになりますと、給付の一割の国庫負担をすれば当然六十七億という赤字は全部埋まってしまうと思うのです。その場合でもやはり診療費の一部負担というものを強化していくべきであると思われますか。一割くらいの負担で埋まるならばもちろんそうすべきだ、こういうふうにお思いでしょうか伺いたいと思います。
○牛尾公述人 私どもの国庫負担の二割という考え方は、現状の金額でなしに、たとえば失業保険その他労災保険等の、すなわち社会保険につきましては、使用者、被保険者、政府というものが三者でやっておりますので、ほんとうは三割なのでありますが、国の現状からいいましてそれはとても言うべくしてできぬことだと思います。それから保険の負担につきましては、結核患者だけを国が見るということになりますと、これは大へんなことであると思います。結局はどの程度まで健康保険の会計で出すかということになってくと思いまするので、現状では一割でよいかもわかりませんが、私どもの考えておりますのは、現在中小企業の中で保険の恩典に浴してない者がたくさんおるのであります。被保険者は今後たくさんふやさなければならぬのであります。三分の一負担すべきでありますが、できないから二割というておるのであります。数字の根拠は別にほかにございません。
○長谷川(保)委員 くどいようでありますが、私が牛尾さんに伺いましたのは、大体現状では一割国庫負担をすれば一部負担を強化せぬでもよろしいという数字になって参ります。二割すればもちろんそれでよろしい。そういうような事情でございまして、私どもは二割国庫負担とせよということを主張しておるのでございますけれども、その場合に赤字はなくなりてしまう、それでもなお一部負担を強化すべきであるというお考えでしょうかどうかということであります。
○牛尾公述人 私どもは、実は被保険者がまだ公徳心に欠けておりますので、被保険者の教育をもっとしなければならぬと思います。もし一部負担をやりまして会計が豊かになりますれば、保険給付の範囲をふやすとか家族を救うとかいうことに前進すべきだと思います。一部負担は現状程度はどこまでも根本的にやっていかなければならぬと確信いたします。
○長谷川(保)委員 ありがとうございました。 最後に金子公述人に伺いたいのでございますが、私はこの精神病院関係などは、ことに秘密を要すると思うのであります。官給明細証明書ですか、そういうものをやって病状をはっきりさせるということは、精神病関係では非常にお困りだろうと思うのでございますが、金子さんはこういう点どうお考えでございましょうか。私は大へん困るのじゃないかと思うのです。
○金子公述人 この精神病者というものは、全く声が立てられない。そのほかに秘密を守るために、家族も、家族が精神病者のために声を上げないでおるのです。権益を保護してくれ、そういう状態でございますから、さきに申し上げたように、官僚独善主義だと私は断言しましたけれども、秘密を勝手に漏らすような危険の多い条文がたくさんある。従って、今御質問の通り私どもはそういう内容が外へ漏れるということは、今の社会においては精神障害者のためにはかえって都合の悪いことだと信じます。
○佐々木委員長 井堀繁雄君。
○井堀委員 お食事の時間恐縮でございますが、ごく簡単にお尋ねいたしたいと思います。先ほど滝井さんから牛尾さんにお尋ねした際にお回答がありましたことで、ぜひこの際念を押しておきたいと思いますので、お尋ねしたいと思います。それは一今度の健康保険改正の重要な目的は、赤字を解消し、今後の社会保障の基盤を確立したいという善意に出ている点は認めたいと思うのです。またあらゆる立場からこれに協力しなければならないということは申し上げるまでもないと思うのです。そこでその赤字の原因を、われわれは正確に知る必要があると思うのです。先ほどのお尋ねで、牛尾さんからお答えいただきました中で、政府管掌が中小企業、零細企業を持つという立場から、赤字の理由をお認めになっておったようでございます。もっと具体的にお尋ねしますと、組合管掌と政府管掌の関係です。今日組合管掌が必ずしも満足する状態とは私は思いません。しかし今日の政府管掌の保険に比較してやや良好であることは間違いない。この関係は赤字に直接大きな関係を持ってくると思うのであります。その赤字の直接の原因がここにあるのではないかと私は判断されるのであります。この点に対する経営者側の団体を扱っておいでになる牛尾さんの御見解を一つ明らかにしていただきたいと思います。
○牛尾公述人 赤字の原因は、保険料収入以上に療養給付費がふえたということであります。保険料収入が少いことも原因の一つでありますが、なおそのほかに企業の数が非常に多過ぎるということ、それから監督の面が行き届かないということ、それから先刻医療機関に対しても一部負担をまだ払ってないようなことを言っておりますが、被保険者が法を乱用したり、悪用したりして、わずかかもしれませんが、赤字の原因を大きくしていることになろうかと思います。しかしその根本は今の保険料収入にも原因があることはよく認めておりますから、やはりこの現状の一部負担、すべての対策を全部やりまして、今後の傾向に従いまして料率引き上げの必要があればこれに応じなければならぬと考えておるので、あります。
○井堀委員 いろいろ赤字の原因はあるにいたしましても、一番大きなものは、保険経営の基礎を築きます標準報酬、あなたは賃金較差をもってお答えになっておりましたが、保険組合の基盤になっております大企業の標準報酬と政府管掌の標準報酬の差のひどいことは、驚くべきものだと思うのです。この原因を解決しなければ健康保険の赤字解消にはならぬのではないかと私ども心配しておるのです。こういう保険の問題もそうでありますが、その原因はむしろ大企業と中小企業に賃金の較差が大きくなっておる、これを解決することが一方に考えなければ、保険の赤字解消にはならぬのではないかと私は思うのでありますが、経営者団体のあなたの立場からこの点をどのように御判断なさっておいでになるか。またこの改正についてどういう御意見をお持ちになるか、お聞かせ願いたいと思います。
○牛尾公述人 大企業と中小企業に賃金較差のあること、海外に比較して非常に大きいことは御存じの通りであります。ところが今日賃金較差以外に、大企業は福利施設のために非常な負担をしております。この面でも中小企業と比べますと大分較差があるのでございます。これは経営者としましても中小企業全体としましても非常に大きな問題であります。日経連といたしましても、大小の較差が非常に大きなことにつきましては警告も発しておるのであります。中小企業もそれはよく知っておると思います。これは大きな問題でありまして、私ここだけではなかなか考えられませんが、中小企業の者は労働不安のほかに福利施設そのほかで賃金較差以上にまだ大きなハンディキャップがあるということだけ申し述べまして、そしてこれは中小企業の経営者が労働条件の向上のためにもっと努力しなければいけないということだけを申し上げてお答えにかえておきます。
○井堀委員 日経連といたしましては保険の統合を主張しておいでになるようでありますが、あなたもちょっとお触れになったようでありますが、保険の統合を、今当面しておりまする健康保険の中で、組合管掌と政府管掌の二本建のものを、保険組合を漸次拡大して保険組合方式に統合していくという行き方が一つあると思います。あるいは政府管掌一本に持っていく行き方があると思います。日経連の方にはそういう過程を乗り越えて現在の労働保険、社会保険を全部一本にしようというお考えもあるようであります。しかし物事というものは順序があると思うか、保険組合と政府管掌との関係についてどういう工合になさったらいいとお考えでございましょうか、お聞きしたい。
○牛尾公述人 経営者が考えておりまり保険の統合といいますものは、労働官とか厚生省とか窓口がたくさんあるのはいけない。すべての社会保険を統合してある一走の率で彼某演者があらゆる部面のものを受けるというものを考えております。これにつきましては機関が根本から変らなければならないと思います。 それから組合と政府管掌との併合という問題は、政府管掌と組合管掌とでは附加給付その他で現在差がございます。非常に高いものと低いものを統合する場合には、高いものが低くなることをがまんすることでなければできないと思います。そうしないと、低いところが高いところについていくのは——対象が中小企業でありますから、どちらかが突っかい棒をしてやるかうしろから、押してやるかしないとそこまでついていけませんので、これは少し時間がかかると思います。
○井堀委員 前のお話に戻るのでありますが、あなたは当面の問題としては適用範囲を拡大する、保険の恩典に浴しない多くの労働者がいることを御指摘になりました。これは、できるだけ早くしかも広く包容していくという保険の使命があるわけであります。しかしこのことを推進しようとすれば、今日の保険経済からいえばもっと莫大な負担を必要とする、この矛盾があるわけであります。このことは経営者としては——言うまでもなく中小企業であろうが、大企業であろうが、近代企業としては孤立した経営はなく、連帯的な経済機構の中で呼吸しているわけであります。この中小企業、零細企業をこのままにしておいて——言うまでもなく生産の基礎であります近代的な設備を持つことに成功しても、良質の労働力を得られなければ、産業が発展せぬことはわかり切ったことであります。ところがこの点では、今あなたも御指摘になっておりますように、量からいいましても、あるいは範囲からいいましても、中小企業の範囲はかなり広いわけであります。これが労働力の保全というよりは、そこなわれているものを補強していかなければならぬという保険の使命からいきまして、十分な働きができない。そういう状態の際における保険の改善とういものは、私は今度の改正案の中へ出ておりますように、被保険者の一部負担とか、あるいは医療機関に非常な反撃を与えるような改正とかいうことは、私は労働力保全の立場から考えますと、はなはだ矛盾した行き方ではないか、こう考えておる一人でありますが、特に経営者の立場からすれば、こういう状態を一日も早く改善しなければならぬという主張をなされる立場だと思うのであります。そういう立場から、今回の改善に対して、日経連としてはどうも今まで私どもの伺っておる範囲では、そういう主張があまりはっきり出ていないのじゃないか。先ほど断片的にあなたから伺ったので、大体わかるような気がいたします。この際やはりそういう点で、経営者団体を代表するところの立場の者としては、もっと強い、主張が行われてしかるべきではないかと考えるのであります。団体としては、何かそういう発言について、はばまれるような事情があるでございましょうか。また発表が非常に消極的というよりは、私どもの立場からいうと、反対の表明をしておるかのごとき印象を受けるのでありますが、この辺に対して一つお聞かせいただきたいと思います。
○牛尾公述人 日経連の代表としての、大小企業の問題についての答弁は、私はいたしかねますが、一企業のかつて労務を担当いたしました重役としまして、今日感じておりますことをお答えしたいと思います。 中小企業といいますか、今日賃金較差のひどく低い賃金の方が数が多いのであります。これは政治全般がよくなって、日本の勤労者全般の水準がよくならなければいかぬと思います。これは経営者全体として、勤労者の地位が向上することに努力しなければならない。それには、たとえば生産性の向上とか、能率の増進とかいろいろありましょうが、それによって向上をはからなければならぬと思います。一部負担の点につきましては、私先刻言いましたように、従来の一部負担の上に今回拡大しようといたしますものを加えました程度でありますれば、これならば差しつかえないと信じておりますので、ただ安易に被保険者に持っていったわけでなしに、程度、金額、方法なりによりまして、大体この程度で、運営さえよろしきを得ますれば行けるのではないかと考えている次第であります。
○井堀委員 いろいろお尋ねいたしたいのでありますが、時間の都合もあって御迷惑だと存じますので、これで終ります。大へんどうもありがとうございました。
○佐々木委員長 公述人の方々には非常に長い間貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。 午前中はこの程度にとどめ、午後二時半まで休憩いたします。 午後一時二十五分休憩 ————◇————— 午後二時五十七分開議
○佐々木委員長 休憩前に引き続きまして、社会労働委員会公聴会を再開いたします。 この際、公述人の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず、当公聴会に公述人として御出席下さいましたことにつきましては、委員一同を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。 本案は重要法案でありますので、万全を期すべきであるとの委員会の意思によりまして、本日公聴会を開き、公述人の皆様方に御足労願った次第であります。公述人におかれましては、本問題につきまして、あらゆる角度から忌憚のない御意見を御発表下さいますよう、お願い申し上げます。ただ議事の整理上、公述時間はお一人十五分程度といたし、その後委員よりの質疑にお答え願いたいと存じます。 なお念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、公述人の方々が発言なさいます際は、委員長の許可を得なければなりませんし、発言の内容につきましては、意見を聞こうとする問題の範囲を越えてはならないことになっております。また委員は公述人の方々に質疑をすることができますが、公述人の方々は委員に質疑をすることはできないようになっております。以上、お含みおきを願います。 なお発言の順位はかってながら委員長においてきめさせていただきたいと存じます。それではまず古畑公述人に御発言を願います。
○古畑公述人 ただいま委員長より御指名をいただきました日本医師会の常任理事をしております古畑積善でございます。どうぞよろしく願います。 健康保険法の改正に当りまして、当委員会が公聴会をお開き下さいまして公述人としての栄誉と機会をお与え下さったことにつきまして、日本医師会にとりましてはまことに感激の至りでありまして、会員一同にかわりまして厚く御礼を申し上げます。今回の法律改正に当りまして、私ども法律知識のない医師にとりまして案の各条項の一つ一つについてよしあしを申し上げますことは無理でもございますし、またその任でないことも承知しております。全体的と申しますか、あるいはこれらの案の底を流れている精神と申しますか、そのようなことについて御参考になることを申し上げるにとどめたいと存ずる次第でございます。 まず今度の改正の目的は私ども医師は健康保険の赤字の解消に主眼点があるのではないかと考えております。この赤字の原因について一言述べさしていただきたいと存じます。もちろんその一端をなすものが医師の乱診、乱療であるかのごとき印象が少くとも政府当局によって叫ばれ、大方の国民諸君もそのような感を抱かれておることとは存じますが、それは九牛の一毛と私たちは考えておるのであります。しからばその原因は何かと申しますならば、一言にして申し上げますならば、日本の医療が世界の最高水準を行くものであるのに、国民の経済、すなわち保険の経済がこれに伴わないの一言に尽きるのではないかと考えておる次第でございます。 申すまでもないことでありますが、医療は国民大衆にとりまして一番大切なことでありまして、その適、不適は直ちに国民に重大な影響を及ぼすものであることは私が申し上げるまでもございますまい。従って医療の適正を阻止するようなあらゆる条件を疎外することを第二義とすべきではないかと存ぜられます。適当の医療を行うために費用かかさむならば、そのことに対し国民の全部が責任を持って解決に当るべきであると考えられます。この際診療担当者としても不当の要求を織り込んではならないことはもちろんであります。そのため医療費のかさむようなことがあってはならないのはもちろんであります。 ところで医療というものの本質から申しまして、たとい国家として、国民として貧しいがために適当な医療が受けられないというようなことがありますならば、こんな不幸なことはないのでございます。従って医療に関しましては、たとい衣食住におきまして外国に劣るようなことがやむを得ないといたしましても、これだけは外国に劣りたくないのでございます。一たび生を受けたからには何としても天寿を全うしたいと願うことは当然のことでありまして、この点は皆さんも必ず御理解下さるものと信じております。 時間をとって恐縮でございますが、私はここでいま少し具体的に述べさしていただきたいと存じます。米国と日本の比較であります。御承知の通り米国では、二人に一台の自動車が持てるというような状態でありますのに、日本では二人に一台の自転車がやっとであります。ところで病気の治療ということになりますと、きのうニューヨークで行われたような手術は直ちにきょう日本のすみずみまでも行われなければならない状態であります。ときには米国以上の水準をいくものもあるのでございます。自動車から三等の列車にしか乗せられないような国力でありながら、病人だけは自助車に乗せ、飛行機にも乗せるべきであるというのが最も望ましいことではなかろうかと存ずるのでございます。飛行機を作ったり、輸入したり、またそれを動かすガソリンにいたしましても、アメリカに比べて日本が安くなるはずはないのでございます。むしろ高くなるのではないかと考えられるのであります。安くする条件としたならば、人件費すなわちパイロットだとかスチュワーデスその他の事務員の給料を下げるよりほかないと考えるのでございます。医療費の高くなってきたこともこれと同じようなことでございまして、その増したゆえんのものは、必ずしも医師の要求の過大を示すものでないということは御了解が願えることと存ずるのであります。 私は例を米国にとりましたが、日本の国内においてもこのことが実証されておるのでございます。被保険者の掛金の高い階級のみを扱っておるような組合におきましては決して赤字にはなっておらないのでございます。すなわちその例を申し上げますと、家族は半額給付であるにもかかわらず、家族の半額給付、つまり自分の持つべき半分を組合の方で持っておるという事実がこれを示しておるのであります。しかし私はそれを決して悪いことと申し上げておるのではありません。ただ赤字どころか黒字であって、そうしてかような給付が行われておるという事実を申し上げるにすぎません。なお最大の原因と申し上げますのは、いわゆる金食いの結核までも保険でやっておる、こういうことだと存ずるのでございます。かくのごとく重大な赤字の原因がほかにあるにもかかわらず、厚生省当局は責任が診療担当者側にあるもののごとく考え、一部のきわめて不正の分子を押えるため、医療担当者である医師、歯科医師、薬剤師の全体を保険者あるいは政府の厳重な監督下に置いて、その生殺与奪の権を手に握ろうとしたところに問題があるのではないかと考えるのでございます。私どもははなはだなまいきにおぼしめされることとは存じますが、少くとも世の中の指導的立場をとる人たちの仲間入りをさせていただきたいと念願いたしております。従って一般の人よりも厳重な道徳率と申しますか、宗教の方でいう戒律というようなものが守られなければならないと存ずるのでございます。しかしそれはあくまでも自発的なものであって、ほかから強制さるべきものではあるまいと存じております。 さて、私どもがこの法律案で最も遺憾にたえないと考えておる点を数項だけ申し上げて御参考に供したいと思う次第であります。 まず今度の保険医の機関、保険医の身分、二つに分けての指定でございますが、今まで保険医というものを一本にしておったのがこれでは二つに分ける、しかも私どもは言葉は十分に知らないのでありますが、人格のない機関を指定するというようなことは、非常に変なことではないかと考えておるのであります。さらにまた一方これを二カ年ごとに更新するということに至っては、これはいたずらに官僚統制の弊に陥るのではないかとおそれるのでありまして、ことに中央の意思の透徹しない地方におきましては、この害が多かろうと存ずるのでございます。指定の取り消しあるいは保険医の登録に対する欠格条件の判定につきましてもわれわれ医師会が十分これにタッチして、そうして意見を申し述べるようにしていただけたらばと願っておる次第でございます。 なお立ち入り検査の対象となる、こういうことにつきましては弁護士の人たちの意見を伺いますと、これは裁判官の令状が必要だとかいうようなことまで言われるのでございまして、これにつきましてはしろうとなりに非常に困ったものであるというふうに考えておる次第でございます。 なお保険給付等に関する質問に答えない、こういうような軽い程度の不協力と申しますか、そういうものに対しまして強い罰則をもって臨むということはわれわれとしてはとうてい忍ぶことができないのでございまして、罪人と考えられる者さえも黙秘権を使えるという世の中に私どもは実に情ない法律案ではないかと考える次第であります。 次に一部負担について申し上げます。私どもはよく問われることでありますが、この医療費というものが患者から払われようと、あるいは組合から払われようと、政府から払われようとどこから払われようとそれは君たちの関与したことじゃないじゃないか、こういうお説があるのでございます。これにつきましてあまりにもその理解の少いのに驚く次第でございます。私どもは朝から晩まで患者を相手にしております。患者の生活というものがいかにみじめであるかということを身をもって体験しておるのでございまして、この点につきまして患者に同情せざるを得ないのでございます。病気になったときには御承知の通り六割の俸給しかいただけないのでございます。このようなときに負担金をとられるということになりますれば、その被害というものは実に多大なものであろうと考えるのであります。なお私どもは掛金が限度にきておるから、こういう言葉をよく聞くのでありまするが、少しへ理屈に聞えるかもしれませんが、丈夫なときに掛金が限度にきておるというのに、病気のときにどうして払えるでしょうか、こういう反問を申し上げないわけにいかないのでございます。それからさらにこの一部負担につきまして私どもが非常に不審に思っておりますことは、保険料というものは事業主それから被保険者との折半と聞いておりまするが、この折半の定則が破れるんじゃないかと思うのであります。あるいはまた受益者負担という方もございます。受益者負担といって、道路でも広げてそれによって自分のうちの商売が繁盛するというならば明らかに受益者負担でけっこうでありましょう。しかし病気という悪い状態に落された者をレベルまで持ってくるということをもって受益者負担と果して言えるかどうか、私は法律家ではございません。ただ心持でそういうふうに思っておる次第でございます。大へん時間をとりまして恐縮でございますが、私は以上のことをごく簡単に申し上げますが、さらにここで一つつけ加えさしていただきたいことは、審査機構の官僚化ということでございます。これはものを払う場合に審査をおろそかにせよということを私ども医師会は決して申し上げておるのでないことは御了解願いたいと思います。今度の審査員は基金の職員になってしまってそうして管理庁がこれを任免するというようなことになっておりまして、現在は診療担当者を代表する者それから事業主を代表する者保険者を代表する者、それからもう一つは学識経験者、この四者の構成になって、その運営が十分にいっておるのでございます。ところが今度は管理庁が任免するということになって、政府の一方的の意思によってこれが任免されるというように考えられるのでございまして、ただわずかに民主的の形式として審査協議会というものがその委員を推薦する、諮問するということになっておるのでありまするが、諮問ということは私どもはただ意見を聞きおくというだけにとどまるものというふうに解せられますゆえに、この点につきまして全く賛成どころではない、反対を唱えざるを得ないのでございます。 私どもはこの際もう一つ申し上げたいことがございます。それは官吏の監査というものがいかにひどいものであるかという実例を、委員諸公の前にここで申し上げさしていただきたいと思います。 ある医師が二十六日間薬を患者さんに差し上げました。その医師が請求のときに間違えて二十四日の請求をしたのであります。これは決して悪意があってやったとは私は思わないのであります。間違えた、全く間違えた。しかもマイナスの方の間違いだから問題はなかろうと思っておりましたのに、これが不当の請求だ、こういうことをいって事故の一件に数えあげられた事実がございます。名前を言えというならば私はその官吏の名前まであげることができます。それから初診料をちょうだいしなかったときに、これがあとでいただけるかどうかわからないものですから未納という字を書いておいた。そうしたとろこが、これは保険診療を誤まるものである。取るべきものを取らないから保険診療をそれによってくずしているものである、こういう理屈でこれも事故として扱われた事実がございます。なおまた地方によりましては、時間外ということにつきましても、土地柄によりまして多少の違いがございます。それはその県内なんかの習慣によりましてわずかばかりの違いはあるのでございますが、それを中央から参りました技官が、これは間違いであるといって、それを事故として取り上げておった、こういうような事実がございます。中にはなはだしいのは、幾日に治ったということを病歴に記載しておらない、しまいに治療を中止してあるからもうそれでわかっておるはずなのに、これを書いておかなかったということでこれも事故と認められた、かように皆さん方がお考えになると何というひどいことだろう、それでは文句をつけるために文句をつけるのであるというような事実が、事実において行われているのでございまして、官僚統制がいかにひどいものであるかということは、この一例をもって皆さん御了解下さるものと存ずるのでございます。 あげ来れば限りないことでありまするが、与えられた時間がすでに終りましたので、以上をもちまして私の公述を終りたいと存じます。ありがとうごさいました。
○佐々木委員長 次に塩谷公述人にお願いいたします。
○塩谷公述人 総評の副議長塩谷信雄とございます。ただいまから簡単に公述をいたします。今日国民の生活は、国の政策によって、非常な影響を受けております。この国の政策によって影響を受けまする国民の生活、ひいては健康の問題に対しては国家がその責任を負担すべきである。ところがこの問題については国家の責任がきわめて従来あいまいでございまして、今回は若干明確にされた点がございますけれども、きわめてそれ未熟なものであり、不十分なものである。しかもその責任の大部分が個人に転嫁される、こういう点が今日この問題が日本の国内において非常に重大な問題として、単にお医者さんだけの問題ではない。また被保険者たる主として労働者だけの問題ではない。実に国民医療にとって重大な問題として、今日いろいろな運動を通じて、皆さん方にぜひごしんしゃくを願い、御配慮いただきたいと考えておるゆえんでございます。ただいまも公述人からお話がございましたが、私の申し上げることも幾つかの点において重複をいたしておろうと思いますが、最初にまず赤字の問題であります。七人委員会の報告書の第一部「現状分析」の中に五つの赤字の原因をあげております。また第二部「対策」の中には七つの原因をあげてございますが、これらの原因の中で、特に受診率一件当りの点数、一件当り日数及び一日当り点数の増大の問題、受診率増大の問題等については、少しの時間を拝借いたしましてお話を申し上げたいと思うのであります。 なおただいま七人委員会が指摘をいたしました原因の中に、こういう問題がございます。本来ならば労災保険によって行うべき診療、治療が健康保険に肩がわりされておるという問題がある。たとえて申し上げますると、一度治癒をいたしましてもそれが再発をしました場合に、労災保険、健康保険どちらでも取り扱ってくれないという問題が起きておる。もちろん労災保険については原因証明書が必要でありますが、こういう場合多く原因証明書がないということから、どちらにもかかれないで困っておるという事例が今日出ておるのであります。これも当初において労災保険の診療を健康保険に転嫁をしておるという問題が、赤字の原因の一つとして考えられなければならぬことであろうと存じます。次にただいま申し上げました受診率の増大、受診一件当り点数、一件当り日数及び一日当り点数の増大、それと結核患者の増大の問題であります。この七人委員会の資料に示されました数子が非常に増大をしておるということを指摘しているのでありますが、これは労働者の生活が最近非常に苦しくなっておる、その原因として実質賃金が低下をしておる、労働強化がもたらしておる労働者の健康破壊、失業者の増大からくる労働者家族の窮乏化等の問題が、これらの主要な内容をなしているものであります。最近の労働者の体力低下の問題は、非常に注目しなければならぬことであります。一度病気にかかりますと、大へんなおりづらくなっておる状態である。厚生省の結核実態調査によりますと、国民六人に一人の割合で何らかの結核所見があるということを明らかにいたしております。さらに政府の推計によりますと、精神障害者約三百五十万人、赤痢保菌者約六百万人、性病三百万、十二指腸虫約五百万人と指摘されております。私どもの方でささやかながら調査した九州の資料によりますと、中小炭鉱労働者及びその家族に対して行われた調査では、七〇%から八〇%の人々が病気に侵されているということが判明いたしておるのであります。病名の主要なものは、神経、胃腸、呼吸器などの慢性疾患がおもなものでございます。中小炭鉱労働者の窮状については皆さんすでに御承知の通りであります。これらが示しておりますように労働者全体の窮乏が深まって参りまして、栄養と体力が全般的に低下しておる。こういうもとではこの種逓増は免れない現象であろうと考えるのであります。 さらに体力低下の原因の有力なる一つであります実質賃金の低下の問題でございますが、労働者の賃金を考えて参ります場合、労働者が手にして参ります名目賃金から、さらに労働者を取り巻いております社会的な福利、厚生関係の問題を無視して考えることはできないわけであります。この福利厚生関係の問題は、従来は恩恵的措置として当局もしくは民間の事業者において多く負担をいたしまして施設を行なった傾向がありましたが、最近においてはこれがどんどん減少、縮小するという方向が出て参っております。それはあとでも若干触れてみたいと思います。さらに労働者の生活を取り巻いておりまする物価の問題であります。物価の点については、政府は輸出振興物価安定ということで低賃金政策を進めて参っております。またデフレ予算を国民に押しつけて参りましたが、私どもの注目しておりますることは、生活に最も関係のあります汽車とか電車とか米、ガス、電気、水道、郵便、あげれば際限がないのでありますが、非常に多くの独占価格については一方的に引き上げをしておるという問題であります。こういう問題が解決されることなしには、国民の生活安定、労働者の生活安定という問題はなかなか解決されそうもございません。 次に失業者の増大の問題を申し述べなければなりません。政府がとって参りましたデフレ政策が中小企業の多くを倒産させ、企業の縮小を余儀なくさせておる。その結果として失業保険法の改正に見られまするような赤字問題を引き起しておること及び政府の統計に見られる大量の失業者を作り出しておることはすでに御承知の通りであります。しかしこの状態におきましても、政府の失業対策には見るべき措置がとられておりません。この失業者は働く労働者家庭やその他の者の家庭に入り込みまして、直接家庭生活を不安定のなものにいたしておるということも、家族制度をとっておる建前からいたしましてまことにやむを得ない状況となっております。失業者自身の体力を低下へと導き、総体的に労働者の体力低下に一そうの拍車をかける結果となりまして、それが健康保険の受診率に表われたものと判断されるのであります。 次に第二の問題といたしまして結核対策であります。結核は国民病といわれ、健康保険財政の四割がそのために使われております。こういう現状にありまして、国家としても重大な問題でありますが、健康保険財政赤字問題において、これは特に指摘されなければならぬことであります。これらの問題について、一点指摘というほどではありませんが、問題となるのは、いわゆる結核の撲滅対策というものがきわめて不十分なものである。諸外国に引き比べまして、そんなに自慢のできる対策が行われておるとは思われない。二のことが保険財政に影響を及ぼしておりますことは、七人委員会においても指摘をいたしておる通りであります。 さらに今日の労働者の生活を破壊しておる重大な一つの問題は、生産性増強に基く健康破壊の問題であります。これは一言にして言いますならば、労働強化の問題でありまして、この点はすでに、皆さんも御承知のことでありまするから、簡単に触れるだけにとどめておきたいと思います。 以下いわゆる九項目の問題につきまして、順を追うて少しく申し上げたいと思います。 第一の国庫補助について申し上げますると、政府管掌健康保険事業の執行に要する費用の一部を補助する、こういうことになっておりますが、この一部の補助という言葉からは、保険財政が黒字に転化したときは国からはほとんど補助が出なくなる、こう解釈せざるを得ません。このようなことになりますと、国民の健康問題に対する政府の態度は、当初申し上げましたように、あまりにも消極的である、むしろ無責任である、こう申し上げても過言ではないのではないかと思われるのであります。私どもが国庫負担を主張して参りましたが、その理由はきわめて明白でありまして、病気は社会的なものとして見るべきである。今日は見なければならない。結核及び法定伝染病などは社会的なものとして国家から取り扱われておりますが、前にも述べました通り、症病の大部分が、もとをただすならば国の政策に関係して参っておる。国民の健康保持をうたっている憲法の精神からしても、他の診療の対象となるものについても、病気を社会的なものとみなしまして、当然積極的に国家が保険財政の一部を負担すべきである、こう考えるのであります。国庫負担については、このほかいろいろな理由があげられていますが、この提案にありまする補助という言葉は、負担という字に置きかえるべきである、一部とあるのを、はっきりした数字を明白に示して、国の義務であるということを明らかにすべきである、かように思うのであります。 さらに支払い基金の問題に若干触れますが、健康保険の一般財政でまかなっておりますところの支払い基金の諸費用の問題については、これは当然社会保険では事務費とみなして国家が負担すべき問題ではないか、こう考えるのであります。 次に標準報酬の引き上げの問題であります。最高の引き上げは大へん遠慮をなさっておられるようでありますが、もっとこれは上げていいのではないか、こう考えるのであります。最低の問題については大きい問題がある。標準報酬は労働者の賃金状態と表裏一体の関係のものでありまして、われわれは最低賃金八千円を政府に要求して参りました。しかし政府はなかなか怠ってこれは今日までも実施いたしておりません。さらに熱意のある積極的推進も行なっておりません。標準報酬もその線に沿うようにすべきではないか、こう考えるのであります。政府発表によりましても、四千円に引き上げる場合には、十一万八千人がこれに当てはまる、そういう数字が出ておりますが、日本の労働者は、これをもってしても、いかに低賃金であるかを発表したようなものではないか、保険財源としてこの引き上げを行うにはあまりにも少い財源であろうと存じます。もしも私どもが主張いたしておりまする最低賃金の引き上げに御賛成をいただきまするならば、この問題は容易に解決することではないか、かように考えるのであります。 さらに私どもは具体的な見解を申し上げますと、最低の点については、五千円に引き上げてはどうだろう、そうして五千円に引き上げた場合の保険料と、それ以下の被保険者の保険料、つまり現行の保険料との差額は、国庫負担によって中小企業経営者及び労働者の窮状を救うべきではないだろうかと考えるのであります。この金額はささやかなものであろうと存じますが、しかし日本経済の谷間に置かれておりまする人々の問題を考えまして、ぜひ皆さんの御協力を願いたいところであります。 第三の一部負担の問題でございますが、医療費の一部負担は、患者に負担をかけることでありまして、働く能力を失っている者に対して負担をかけることであります。社会保障の立場からいいましても、人道的立場からいいましても、これは絶対に避けなければならぬ問題である、かように思うのであります。私はこの説明書を見ますと、今日保険料率を上げられない限度に来ておる、こういうことが書かれておるのであります。しかるに一部負担の問題については、これを患者に一部負担してもらおう、こういうのである。これはまことに矛盾しているのではないか。保険料率はこれ以上げられないということは、少くとも中小企業等の経営者なり労働者を対象とする二の政府管掌の保険において、それはあの低賃金の労働者の生活を破壊するから上げられないと判断しているに違いない。しかるに一部負担は、しかも患者の場合に一部負担を取る、こういう論理は一体どこから出てくるのか、私にはわからない。非常に問題であろうと思うのであります。今日の健康保険における五十円の初診料の負担があるために、健康保険の被保険者が医師のもとに行かず、売薬によっている例は多数にあるのであります。売薬にたよる原因といたしましては、病気による欠勤も勤務成績に関係し、最悪の場合は、労働者が一番こわがっております首切りになることを恐れている点であります。その他の問題もあげることはできますが、政府が意図していると見られる被保険者の保険利用の制限が、このように金銭的に、制度的にすでに存在している今日、さらに診療費の一部負担を拡大することは、昔の悪い健康保険の診療を受けよと言わんばかりの提案であろうと思うのであります。人命の問題として軽視することのできないことであります。政府で発表しました国民健康調査の中に、病気にかかったときの治療の仕方について調査したものがございますが、それによると、昭和二十四年が、売薬によったものが三一%、医者にかかったものが五七・八%、その他あんま、はり、きゅう、全然治療しないものが一一・二%になっております。二十六年から二十七年が、売薬関係が四一%、医者にかかったもの三九%、その他あんま等のものが二〇%、二十八年が売薬四七・二%、医者三八・六%、その他一四・二%ということになっております。この数字がこれをはっきりと示しているのではないかと思うのであります。もちろん調査対象となったものを一〇〇%といたしまして、医療社会保険のあるなしに関係なくこれは調査いたしたものであります。売薬によるものが年年増加をいたしまして、病気であっても医者にかからないものが年々増加している、こういうことを示している。社会保険の発展段階にありながら、国の政策、現在の制度が国民の健康に関連したものとしてこの調査の数字を重視するとともに、まことに悲しむべき現象であるということを考えざるを得ません。政府提案の一部負担がもし国会で決議されるとしますならば、この治療方法についての数字中、医者にかかったものの数はさらに減少して参りまして、全然治療を受けないもの、売薬によるものなどが激増し、国民の健康状態をさらに悪化した状態へと追い込んでいくことになるでありましょう。このことがやがて健康保険財政にはね返りまして、一時的に保険財政を安定したといたしましても、やがて今日のような健康保険の危機を招来することは明らかではないか。国民の健康を破壊するならば、やがてこれは保険財政の上にはね返ってくるであろう、かように考えるのであります。このような健康保険の悪循環はどこかで断ち切らなければならない、こう思うのでありますが、英国では一九四五年に二割の国庫負担を行なっているといわれております。昨年は傷病手当金に相当する生活給付額を二割——これは定額だそうでありますが、二割引き上げている。英国の国民保険法による一部負担がしばしば例にあげられますが、最近英国の保険に対する態度というものは、今日の日本のこの提案に比べましてまことにうらやましい限りであろうと思うのであります。現在脱法的に行われております一部負担の例を二、三申し上げます。国立病院では、全施設の一割程度が現に入院料の差額徴収を行なっているといわれる。これにたえ切れずに退院する例があるということを厚生省関係の労働組合から報告をされておる。また日赤では、健康保険で入院できるワクは全施設の六分の一しか与えられていないということも報告をされておる。ぜひ入院を希望する場合は、七等級に分れた部屋代などの形で別途支払いをしなければならない状態であるという事実が報告をされておるのであります。このことは病院経営を維持するのにやむを得ずとられたものとは思いますけれども、もしも新医療費体系等の採用によりまして、お医者さんの収入減となったような場合には、一部負担の範囲がさらに拡大解釈をされまして、これが場合によっては患者の負担増とならないとも限らないのであります。 以上申し上げましたのは、差額徴収を示すものでありますが、全国の国立病院……。
○佐々木委員長 公述人に申し上げますが、ただいま本会議ですぐ記名投票が始まるそうでありますから、まことに申しわけありませんが、しばらくお待ちを願いたいと思います。 暫時休憩いたします。 午後三時四十二分休憩 ————◇————— 午後五時十五分開議
○佐々木委員長 休憩前に引き続きまして会議を開きます。 公述人の方には長い間申しわけございませんでした。公述の継続をいたします。塩谷公述人。
○塩谷公述人 休憩前に現在脱法的に行われておる一部負担の例を一、二申し上げたわけでございますが、引き続いて申し上げます。 そこで全国国立病院の病院経営費に対する料金収入の割合についての数字を申し上げますと、収支を平均いたした場合を一〇〇%として、昭和二十九年には一〇〇・五%、三十年は一〇四・七%、三十一年には一〇四・九%となっております。この数字の中に含まれておるものは医療従業員の低賃金、賃金ストップ及び昼夜の別のない労働強化が行われていることが含まれているのでありまして、他方では差額徴収を示したものでもあるのであります。 以上簡単に述べましたが一部負担という病人を医師から遠ざけ、入院患者をベッドから締め出す政策だけはぜひ改めていただきたいと思うわけであります。 次に、第四、第八、第九の医師に関係を持つものにつきまして一言申し上げたいのでありますが、この点は他の公述とかなり重複する点もあろうかと思いますので簡単に申し上げます。 保険医の指定、監査の強化、診療報酬請求書の審査機構の整備はいずれも被保険者に関係のあるものでありますが、これは前に述べました一部負担に見らるるような受診の制限を含むものとして注目いたしておるのであります。被保険者の便利を考えない保険医の指定、また患者や医師へいやがらせを行う監査の強化などについては、現状から推しまして大体推測することができるのでありまして、この点につきましては関係者の意見を十分に取り入れたものとしていただきたいのであります。特に保険医の指定につきましては医者のない、いわゆる無医村の問題もあるのでありまして、この点も十分考慮しなければならぬと存じます。 次に第五としていわゆる継続給付受給資格期間を一年に延長する件でありますが、最近におきましては御承知の通り臨時工が非常に激増しておる今日でありますので、われわれといたしましては反対をせざるを得ないのであります。 第六として不正受給者に対する損失補てんの問題でありますが、これは不正という事実が認められる、こういうはっきりした場合には損失補てんについて異議を差しはさむものではございません。 第七の被扶養者の範囲でありますが、現在被扶養者と認められる者の中には、三親等以内に限定しようとする場合におきまして相当な無理が生じてくるのじゃないかと思われるものがあります。医療保険の一般化、普及の立場からいたしましても、従来通り単に扶養される者を被扶養者と認むべきではないかと思うのであります。たとえばいとこのような場合及びおじ、おばのような場合が相当問題になってくるのではないか、今日家族制度は依然として実質的に存在するのでありして、この範囲の扶養は現実問題として相当の範囲が行われておるのではないかと心配いたすのであります。 以上に関連いたしまして予見されます入院の事前審査の問題とか、官給診療報酬請求明細書のような問題につきまして今日でも入退院基準の問題があって、かなりやかましい折柄、さらにこれが強化されるであろう。事前に審査するばかりでなく、入っておる者もベットから引き出すようなことになるであろう。また官給診療報酬請求明細書につきましては、病気のたびごとに事業所から一々これをもらって受診をしなければならぬということが、現実問題としてどんなに受診の意欲をそぐことになるであろうか、こういうことを考えますると、私どもは苦痛も不安もない者が医師にむやみにかかるとは考えられないのであります。早期発見と早期治療をこの保険においても建前とし、趣旨といたしておると考えるのでありまして、そういう考えからいたしまするならば、これを抑制して、まさに治病の精神に逆行するものといわなければなりません。 以上日本の労働者の立場に立ちまして意見を申し上げたのでありますが、現在とられております政策は、鳩山内閣の公約であります福祉国家の建設とはおよそ縁の遠いものとなっておるのでありまして、今日労働者はたえにたえ、忍びに忍んで生活と健康を守るために立ち上っておるのであります。従来社会保障関係の闘いが労働関係、特に労働問題の中に現われてくる数が割合に少かったのでありますが、通勤費の削減及び廃止の問題あるいは健康保険の付加給付の全廃あるいは社宅料の値上げの問題、工場給食の全面廃止等の問題が、当初私が申し上げましたいわゆる当局もしくは会社側等による恩恵的な措置から漸次後退をいたしておりまして、総人件費の切り下げという形で広範囲に行われ、かつ計画をされておりますときに、政府及び企業主の両面から生活への圧迫を受けるに至った今日といたしまして、いわゆる最近の争いがこういう意味からも非常に激しくならざるを得ないであろうという状態であることを十分一つお考えいただきまして、皆さんの御善処をお願いいたしたいと存じます。 最後に私は被保険者にとりまして最も重大な問題となります、一部負担等の問題が強行されまする場合には、これらの一部負担の点について、関係者の組織ではこれを納入できない場合があろうかと存じます。従いましてここいらの問題は、当局もしくは経営者に向ってその負担を要求する強力な運動として展開せざるを得ない場合があるということをつけ加えまして、公述を終りたいと存じます。
○佐々木委員長 次に竹中公述人にお願いいたします。
○竹中(稲)公述人 ただいま御指名をいただきました日本薬剤師協会の竹中稲美でございます。今般の健康保険法の一部を改正する法律案に関しまして、当公聴会において意見を発表する機会をお与え下さいましたことをありがたくお礼を申し上げる次第でございます。 私ども薬剤師の立場から申しますと、健康保険の問題もそうでございますが、一般診療におきましても、すでに明治初年から医薬分業の建前で教育をされて参りましたが、ほとんどこの仕事に携わる機会を持たないような状態であります。特に保険薬剤師の制度はすでに三十年前からできましたが、保険薬剤師の中には現実に健康保険の処方箋を手にしたことのない薬剤師が非常に多いというような状態でございます。従っていろいろこれの運営に当りますこまかい点でなお未経験の部面が非常に多いのでありますが、幸い先生方のお骨折りで、四月一日からは一応その制度が不満足なものでありましても医薬分業の形態が実施に移ることになっております。願わくは、先生方の一そうの御援助によりましてりっぱにわが国の医薬制度が発達を遂げるようにお力添えをいただきますようお願いを申し上げる次第であります。 今般の健康保険の改正がいかなる意図で行われてきたか、この企画を考えますときに、昭和二十九年度以来の健康保険における赤字問題、これによりましてすみやかにこの抜本策を立てなければならないという点から、川崎厚相が有識者七名に御委託になって、いわゆる七人委員会の報告、すなわち現状分析と将来に対する対策に対する御報告を得られた。そうしてこの報告から、赤字を第一に克服する抜本策を確立するという考えでおやりになった。ところが実際問題には根本方策に触れざるを得ない、そういうふうな点で今回の改正法案というものが国会に出てきた、かように考えるのであります。もちろん去る二十二国会におきましてもこれが御提案になったのでありますが、不幸審議未了になりましたことは御存じの通りであります。そこで今回の健康保険改正案についての根本策というものは一体どんなものか、私どもの承知いたしておるところによりますれば、先ほど申し上げました通り、七人委員会の報告に準拠して、指摘せられました多くの欠陥を是正するということがこの目途であると思います。特にその中で私どもが一等先に気がつきますことは、機関の指定の問題、あるいは継続給付の問題、あるいは審査制度の確立の問題、また支払い基金の問題等いろいろ考えられておりますが、かようにして赤字対策から根本対策に入って参りました。本改正案につきましても、世上ではいろいろな論議が行われております。行われておりますが、中でも特に大きな問題として上げられておるのは、先ほど来拝聴いたしておりましてもおわかりのように、まず一部負担の問題、また第二には医療機関指定の問題、第三には、これは法案の表には出ておりませんが、行政措置として行われるところの官給診療報酬請求書の問題、かような三つの点ではなかろうかと思うのであります。 まず第一に二部負担の問題でありますが、一部負担は早期受診をはばんだり、あるいは医療の理想というような点からいえば元来賛成しがたい問題でありますけれども、これが現今の支払い制度の欠陥と相待って現制度が過剰診療にどうも導かれやすいというようなことを考えますときに、どうしてもこの問題を幾分か考えなければならないのじゃないか。しかしながらこれが赤字対策として考えられるということにつきましては、私どもは絶対反対であります。しかしながら健全な健保制度の運営の上からごく少額の一部負担はやむを得ないのじゃないか。特に現在の健康保険制度におきまして、すでに初診料において五十円、四点の一部負担を徴収いたしております。また世界各国の健康保険制度を見ましても、多くの国々が、特に英国のごとく最も社会保障制度が発達しておるといわれておる国におきましても、またスエーデンあるいはニュージーランド、ギリシャというような各国におきましても、この一部負担は、大体二〇%ないし三〇%というような範囲においては徴収をされておる。またソ連のようなところでは、処置や治療、診断というようなものは国営で無料でありますが、薬剤を給付するときには自己負担になっておる。こういうふうなことからいきましても、この一部負担の問題は、あまり大きな負担にならないならば、やむを得ないのじゃないか。今回の改正案によりまして、一部負担の占めるパーセンテージは五%ほどになると承知いたしております。かような点から参りまして、全面的に賛成をするという意味ではございません。しかしながら、現在のような健康保険の赤字の生じておりますときでもありますし、この問題は、どうしてもこの考えの中に入れられなければならない。しかし今申し上げましたように、これが赤字対策として取り上げられるということになりますならば、非常な弊害が種々出てくることは、先生方の御承知の通りであります。そこでごく少額の程度の一部負担というものについては、この精神を実際制度の上に行うべきものである、かように考えておる次第であります。しかしながら、先ほど来からいろいろお話がございましたように、低額所得者の方々、特に標準報酬の低い人たちがこの負担にたえがたいという論が相当に行われております。これらにつきましては、ちょうど目下共済組合の医療にしましても、また健康保険組合の方のお考えにしましても、小額所得者の一部負担は、それに相当する額の給付をして埋め合せるというようなことが考えられておるようでありますが、さような制度か、あるいは特に減免の措置をとられるようにされることが望ましい、かように考える次第であります。 次に機関指定の問題でありますが、今回の保険医療に対するいわゆる二重指定制度というものは、一見過酷なように見えるのでありますが、政府がなぜこういうふうな複雑でしかも煩瑣なものを設けなければならないかということを考えますときに、私どもは過去における健康保険行政の上に、どうしてもそうしなければならなかった政府の立場をやはり考えなければならない、と同時に、正しい健康保険の発展のためには、われわれ医療関係者といたしましてもこれに協力をして、再びさような混乱を起さないようにしていかなければならない。従来あらゆる機会に論議をされておりますところの保険医の不正診療とか、あるいは不正請求というような幾多の事実によりまして、数少い医師の不正行為が数多くの保険医の人1あるいはこれは薬剤師においても同じでありますが、それらの人たちに非常に不名誉な風説を流されることになるわけであります。しかし、われわれがこの社会保障の大柱であるところの健康保険を明朗な、だれからも喜ばれる組織として参りますために、かような煩瑣な方法といたしましても、なおこれをとやかく批判するよりも、その根本問題を勇敢に改善するために協力していかなければならない、かように考えておる次第であります。 第三には、官給診療報酬請求書の問題でありますが、これに関しましても、やはり前に申し上げましたと同じような原因によって考慮せられたものと思われる。しかし今日の医療制度の中で、このくらい医師や薬剤師を侮辱した制度はなかろうと思います。しかしさような侮辱するような意図がおありになるかどうかは知りません。あるいはこの請求書の用紙の整備によって審査あるいは統計等いろいろな利益もあるというふうに当局者は言っておられますけれども、しかしわれわれといたしましては、もうすでに健保創設以来三十年もたったのに、なおかような複雑な煩瑣な手段を講じていかなければならないということは、わが国の厚生行政の貧困と同時に民族的な悲哀を感ぜずにはいられないわけであります。 なお最後に、国庫負担の問題について結論的に申し上げますならば、国保におきましては、諸先生方のお骨折りですでに二割の国庫負担が規定せられております。今回の場合には予算の範囲内において補助をするというようなことであります。私どもは医療の持つ社会性と社会保障制度におけるところの医療の重要性というような点から考えまして、特に小額所得者を対象としておる政府管掌の健康保険におきましては、どうしても国庫が少くとも国保並みの負担をせらるべきであると、かように考えておりますし、この点については政府当局にしばしば陳情もいたしておるのであります。しかしながら先般来の政府の予算その他において御審議になりました経過等を伺いますと、はなはだ残念ながらこの点がわれわれの考えとは非常に隔たっておる、隔っておりますが、しかしながらそういうふうな結果を招来したということもまたお互い医療担当者あるいは他の健康保険関係者の大いに反省しなければならないところがあるのじゃないか。この経過や理由については今議論をしようとは思っておりませんが、この結果について大蔵省自体が、堂々と国庫の負担をもって本制度を育成することができませんでした根本的な理由を、十分反省する必要があろうと思うのであります。それは何かと言えば、いわゆる七人委員会によって指摘されました数々の欠陥に対するところの早期の是正方策、さようなものの完成によって、なるたけすみやかに諸先生方によってこの制度のため国庫負担をかちとられるようにお願いを申し上げまして、簡単でありますが、以上本法案につきまして感ずるところを申し上げた次第であります。
○佐々木委員長 以上で公述人の公述は終りました。質疑の通告がございますので、順次これを許可いたします。岡良一君。
○岡委員 公述人の各位にはきょうは本会議の都合から長くお時間とらせましてまことに恐縮にたえません。簡潔にお尋ねをいたしまして簡潔にお答えをいただけばけっこうでございます。そこで公述の御意見の中でもしばしば問題となっておりましたように、今度の健康保険法の改正をめぐる重大な争点は、一部負担か国庫負担かという点にあることは御存じの通りでございます、そこで政府の改正案によれば従来は保険の業務の執行に要する費用を負担する、こうなっておりました。ところがこのたびはさらに一段と進みまして、「予算ノ範囲内二於テ政府ノ管掌スル健康保険事業ノ執行二要スル費用ノ一部ヲ」負担する。保険事業の執行に要する費用でありますから、給付費の一部を補助する、こう相なったわけであります。そこで私どもは現在三十年来の歴史を持つわが国社会保障制度の中核とも申すべき、しかも組合管掌、政府管掌を含めて八百万をこえる労働者、家族を含めて二千三百万という大量な国民を包括しておるこの健康保険制度を育てたい、何とか今日の財政収支のアンバランスというものは、国の責任において予算的な措置をしていただいて育てたい、社会保障制度を前進せしめたいという希望から、従いまして予算の範囲内において補助するということでは満足ができない、むしろ国は明確に二割の国庫負担をもって現在の健康保険の財政危機を解決をするという努力を当然払うべきである。このような考えを私どもは持っておるわけであります。この点先ほど来いろいろお触れをいただいたのでありまするが、重ねてお三方から率直に私どもの主張に対しての御意見をお聞かせを願いたいと存じます。
○古畑公述人 私はただいま岡代議士の申されましたことに全面的に賛成でございます。その通りにしていただくことが一番医師会といたしましても喜ばしいことであり、患者にとりましても幸福なことと拝聴いたしております。
○塩谷公述人 二割ではかえって少いくらいてありますが、今のところ御提案に私どもも同調いたしまして、せめて二割はぜひとも国庫において負担をせられるように期待をいたします。
○竹中(稲)公述人 ただいまの岡先生のお話私ども全然一致の考え方で今まで幾たびか政府に要望いたしてきておるわけでございます。今回の法案につきましては以前のものより幾らかは進歩しておるものと考えますが、その終局の目的は同じでございますので、さよう御了承をいただきたいと思います。
○岡委員 次には日本医師会は再度の代議員会等を通じて、この健康保険法の政府提出にかかる改正案成立した暁においては保険医を総辞退をしようという決意をすでに公けにいたしております。この決意すなわちただいまわれわれが審議をいたしておりまする政府提出にかかる健康保険法の一部を改正する法律案が成立をいたした暁においては、日本医師会の所属会員で保険医の指定を受けておられる諸君は、全部保険医を総辞退をするという決意を今もって持っておられるかどうかという点について古畑さんの御所信を承わりたいと思います。
○古畑公述人 お答え申し上げます。私どもは脅迫がましいような態度をとって事を処理するということは好ましくないと考えております。また会長にしましても副会長にしましても、さようなことをしてもらいたくないというふうに非常な努力を払っております。しかしながら一般会員におきましては、かような法案が通るようなことになった場合には、せめてわれわれが保険医であることをやめるよりしようがないという決心が非常に固いのでございまして、この点につきまして皆さん方の御尽力によりまして、不幸な事態の起らないようにお願いしたいと私は念願しております。
○岡委員 日本医師会の代議員会は日本医師会の定款にも明らかなごとく、最高の議決機関であります。従って理事会あるいは常任理事会はこの議決機関の決定を執行する執行機関にすぎないのであります。従いまして正規な代議員会が総辞退を決定するとするならば、執行機関である理事者の諸君は会長を初め、この決定を尊重し、これを執行する義務があるわけであります。この義務を執行する御決意がおありであるかどうかという点を重ねて承わりたいと思います。
○古畑公述人 仰せの通りでございまして、私ども理事者としましてはそういう事態の起らないように最善の努力を払っております。しかしながらさような事態が生じました場合には、当然それを認めざるを得ないことになろうと存じます。
○岡委員 この点は後刻滝井さんからもお尋ねがあろうかと思います。そこで重ねて塩谷さんと古畑さんに御見解を承わりたいと思います。と申しますのはこれまで医療社会保険あるいは広く日本の社会保障制度の前進をはばんでおりました大きな原因は、医師会なりあるいは薬剤師協会なり保険者団体なりまた被保険者団体である労働組合等が自己の利害を中心として絶えず関係団体が相剋をし、対立をしておる、これが日本の社会保障制度を前進せしめる上においても大きな不幸な事実であったということは、私から申し上げるまでもないと思います。ところでいよいよ長い歴史を持つ健康保険制度、特に日本の生産の源泉であり、労働者にとっては生活のよりどころとも言うべき健康を守ろうとする健康保険のこの財政危機に臨んでの政府提出にかかる改正案について医師会あるいは薬剤師会、歯科医師会また労働組合等の諸君が、府県では広範に大きく手をつないで、従来の利害中心の対立を越えて日本の社会保障制度を前進させたいという純真な気持において結ばれておるということは、われわれも社会保障制度の前進に国会の内部でいささか微力を捧げておる者としては非常に感謝しておる次第であります。私はこの姿が党派的な利己心を離れて、日本の社会保障制度に関心を持つまじめな良心的な団体の良心的な動きとして関係団体が手をつないで、この健康保険法の政府提出にかかる改正案に反対をする、この気持を社会保障制度への前進の気持として、現在のように労働組合も医師会も歯科医師会も手をつないで進んでいかれるこの姿は、私どもとしては実に感謝にたえない。このお気持は今後とも私どもは日本の社会保険制度のために絶えず堅持していただきたい、この協力関係を失っていただきたくないということを心から願っておる一人であります。そこでたまたま医師会を代表し、総評を代表し、薬剤師協会を代表してのお三方の御出席でございまするが、現在関係団体において健康保険法の改正に反対をし、日本の医療保険制度をより前進せしめようということで大きくスクラムを組んでおられる現在の統一的な態勢を崩さないで今後もいくべきだという確信を持っておられるかどうか、この点をお三方から率直に承わりたいと思います。
○古畑公述人 お答え申し上げます。医療に関しまする限り私どもは社会保障制度の前進ということを心から念願しているのでありまして、これに御賛成下さる団体は全部われわれと手をつないでいく考えでおります。
○竹中(稲)公述人 ただいまお話のございましたように、社会保障制度の進展ということは、われわれ特に医療に関係している者といたしましては、忘れることのできない問題でございます。しこうして、ただいまございます制度のうち、悪いところを直しまして、より完璧なものに進む際、同じ心持を持った団体が手をつなぎ合っていくのが当然であると思うのであります。たまたま御提案になったもののうちに、幾分たりとも意見の相違等がございました際もできるだけこれらの点について御相談を申し、そして医療関係者はもちろん、社会保険に関連をしているところの各団体とともに、安全なものを作っていくように努力したいという覚悟を持っております。
○塩谷公述人 社会医療を担当しておられる今日の社会保険医が生活の問題でも非常に苦しい状態にあって、そういう立場も、今度の健康保険法の改正、その他関連する法案の改正、新医療費体系に対する反対、そういう点に現われてきていると思います。私どもは、今日の国民の窮乏がお医者さんの生活にまで大きく反映してきている、こういう事実を考えまして、幾多の面において、相互いに強力に手を結んでいかなければならない問題がたくさんにあると考えております。もとより社会保険を通じまして、いわゆる社会保障に前進するために、関係する団体は緊密な連携をとって、今後とも強力に運動を進めて参りたいと考えているのでありまして、今回の法案の改正反対の点につきましても、可能な限りに相互理解を深め、意思疏通をはかりながら、私どもは国民とともにこの問題に対して政府あるいは皆さん方の善処を期待いたしている次第であります。
○滝井委員 関連して塩谷さんに一つだけ聞いておきたい。一部負担の点なんですが、最後に塩谷さんは結論として、総評と関係者の組織では、一部負担が納入できない場合があるそういう場合には、保険者あるいは政府にその一部負担の要求の運動を展開することをつけ加えておくという意味のことを言われたのですが、実は、ぜひ一つ御意見を伺っておかなければならぬことは、先般、私予算委員会で政府の方にその二部負担の問題について質問をいたしました。そのときの政府の答弁は、医師は患者が見てくれという受診の要求があった場合には、医師法で見なければならないことになっている。いわゆる応招の義務があるわけなんです。ところがその場合に、一部負担を患者が再々にわたって払わない、そういう場合には一体患者はどうなるのだという質問をいたしました。ところが政府は、再々にわたって医師に支払わないような患者は、健康保険の被保険者としての権利を放棄したものである、従ってそういう人は、医師は、医師法の見てやらなければならないという義務があったにしても、見てやらなくてもいいのだ。実はこういう重大な発言があったのです。私はこういうことは人道上許すべきことではないと実は考えているのですが、実は政府がそういう発言をはっきりこり予算委員会でいたしているのですが、これに対するあなた方勤労者の立場として、たまたま金がなくて払えなかったという場合に、そういうことが人道上許されるかどうか、労働組合はそういう場合にはどういう対抗策をもっておられるかということが一つ。それからいま一つは、ある医師で中小炭鉱の診療を受け持っている私の友人がいるのですが、御存じの通り賃金の遅配、欠配が非常に長期にわたって行われたためにどうにもならなくなった。そこで労働組合と話し合いをして、労働基準法のたぶん二十四条で、賃金からそういうものを引くことはできないことになっている。ところが労働組合と労働協約を結べばそれは賃金から引いてもよろしいことになるわけです。そこで組合と話し合いをして労働協約の形をとって賃金から引くようにいたしたのでございます。ところがいよいよ引くようにしましたところ、御存じの通り炭界不況のために払えなくなっちゃった。それは賃金はある程度もらえますが、その賃金をもらったときに手取りを見てみますと、もう配給所に米、みそ等の主食の代金を取られてしまってすでに医療費として払うものが賃金になくなっちゃった。そうして残っている受け取る金は五円か十円しかないという実情を目のあたり見ることができた。あるいはある特定の人間はもらった賃金の中から医者に千円を払いました。ところが手取りは一文もなくなった。そこでその患者は私の友人の医者の家に行って、先生すみませんが、先生がもらった、賃金から差引いた医療費をもう一ぺん私に返して下さい、そして来月の私の賃金から取ってくれ、こういうように実は患者と医師との示談で、支払ったところの医療費をまた返してやった。当然これは政府の見解によれば、そういうように長期にわたって支払わない場合は医者は拒否してよろしいという残酷な答弁をしました。そういう患者は当然これは健康保険の被保険者としての権利を放棄したものである、こういうことなんです。ところがそれではその放棄をした患者は、保険料を源泉徴収で差し引かれないかというと、源泉徴収で賃金から差し引かれてしまっている、こういうことなんです。政府はこういう健康保険法の改正に当って答弁をしているのですが、これはきわめて労働者を代表する塩谷さんにとっては重大なことたと思いますが、一つそういう点について率直な御意見をお伺いしておきたいと思います。
○塩谷公述人 私は当初に今日の国民生活、特に労働者の場合は、最近の政策によってその生活がきわめて大きな支配を受け影響を受けているという点を申し上げました今私どもの特に関心を示さなければならぬ問題は、中小企業等の労働者が政府管掌によってその疾病等のめんどうを見ていただいている問題であって、ただいま御指摘のようなたまたま金を持っておらない、しかし現実に病気にかかった、窮迫の状態にあるときにもしもそういう事由をもって診療を拒否するということが正当であるということになるならば、これは大きな問題を描き出すのではないかと私はおそれるのであります。今日お医者さんが常識の問題としても、おそらく多くのお医者さんに、もちろん全部ではありませんでしょうが、相当数にわたって現実に払い得ないような患者のめんどうを見ておられる実情を私は知っております。さればこそ今日お医者さんの生活の問題が重大化しつつあるともいえるのであります。このことが政治に反映されることなくして、単に健康保険の、たとえば赤字財政処理の問題として、今のようなことが政府によって当然のことのように言明せられるとするならば、これは非常な問題を引き起すのではないかと思うのであります。私は一部負担の問題について先ほど若干触れましたが、これはまだ正式の機関の決定を見ておりませんけれども、下部の実情として強くこの問題については関心を示し、もしも一部負担が強行されるというような場合は、現実問題として支払い得ない患者が相当に達するであろう、こういう実情が私どもしばしば報告されておるのであります。今総評がその直接の組織のもとにたくさんの中小企業の労働者をかかえておるわけではありませんけれども、それにもかかわらず私どもは中小企業の労働者のめんどうを見て参っております。これらの人々の声はまことに痛切でありまして、もしも今申し上げたような事態が出るということになれば、われわれはこれを捨てておくわけには参りません。当然この一部負担を納められない人々であっても診療を受けしめるための大きな運動を展開しなければならぬと存じます。同時にこれはわれわれが主張しておるごとく、本来は国家において負担すべきものでありますから、国家がどうしても国家の責任において処理せずに患者の負担にしようというような場合には、場合によりましてはこれは経営者あるいは当局の負担において処理していただくように大きな運動を展開せざるを得ないであろう、こういうふうに考えておるのであります。ですから今日の一般的実情といたしましては、下部は非常にこの問題について心配しており、現実にそういう一部負担を納められないような事態が出るということをお考え下さいまして、ぜひとも最悪の事態に入らぬように皆様方の御善処を願いたいと存じます。
○滝井委員 わかりました。
○佐々木委員長 八田貞義君。
○八田委員 時間がないそうでありますから簡単に御答弁を願うことといたしまして二、三点質問いたしたいと思います。 まず第一に、古畑先生にお伺いいたしたいのでありますが、過般来国会におきましては、医薬分業と新点数の関係につきましていろいろ質疑応答が行われておるのでありますが、このたび政府は一応四月一日に控えた医薬分業のために暫定案を作っていきたい、その暫案につきまして医療協議会にその答申を要求した、こういうことでありまするが、ただわれわれの考えといたしましては、現行点数をもととした暫定案であるのか、あるいはまた新点数を基礎としたところの暫定案であるのか、この点についてわれわれは疑問を持って、またどのようなことで医療協議会へで引き受けられたか、この点についてお伺いしたいのであります。御参考までに申しますと、厚生当局におきましては新点数を基礎としたところの暫定案をお願いしておるのである、このようなことを言っておるのでありますが、一体医療協議会として、現行点数をもととした暫定案をお作りになるつもりで学識経験者であるところの今井さんにお願いになったのかどうか。その際また薬剤師側の方からこの点に対して非常に反対があるというにも伺っておるのでありますが、その経緯につきまして一つ古畑先生のお考えをお伺いいたしたいのであります。
○古畑公述人 四月一日から医薬分業をしなければならない、これは法律できめられたことでございまして、われわれ医師もその覚悟をもってこれに臨んでおる次第であります。従いまして分業を阻止しようというような考えは毛頭持っておりません。これははっきりと申し上げることができます。今の、いわゆる新医療費体系というものが、審議がなかなかはかどらないので四月一日に間に合わないから、暫定的に分業に入り得る案を考えてもらいたい、こういうことが当局の方からお話がございました。われわれはそれにつきまして秘密会を持ちましていろいろと検討したわけであります。厚生省当局の方からは、新点数でやってくれというおさしずもございませんし、また現行点数でやってくれというお話も全然ございません。どうか医療協議会の方で考えてもらいたい、こういうことでございます。これにつきましていろいろ協議されたのでございますが、結局のところ、新しい点数というかあるいは暫定的のものがなければ果して医薬分業に入れないものであろうか、この論議が最初に取りかわされたわけであります。私ども医師会の方の考えとしましては、現行点数で一向差しつかえないじゃないか。処方箋の規定もございます。また薬剤師の方の保険薬局というのもあることであるからして、これは現行のままで少しも差しつかえない、点数を変える必要は全然認めない、ただ入るということだけならばそういう必要は認めないであろうというふうに申し上げました。これは医師会側の意見として申し上げました。ただ今までの薬剤師の調剤料というものがあまりに低く見られ過ぎておる、この点は十分に考えなければいけないことであろうという話が出まして、そしてこれは厚生省当局からそういう案を出すということも面目上なかなか無理なことでもあろうし、また医師会側からそういうことを言うて案を出すというのも無理であろう、一切はあげて中立委員にお願いして、そして中立委員が、医師会側はこういう考えを持っておる、薬剤師会側はどういう考えを持っておるかということを十分考えて作っていただきたいと思う。そしてそれをわれわれの方にお示しを願いたい。大きな改正を望むことは無理であろう、たとえば薬治料というようなところへ飛び込んでいくとめんどうでどうにもならないから、まず暫定的なことでもあるしするから現行の点数のままいく、これが最も正しい方法じゃないか。被保険者側もこれには全面的に賛成でございます。また保険者の政府を抜かした方の代表者は全部これに賛成しております。それというのは、医療費の総ワクは変らぬという、ああいう条件がことごとく満たされるのでありまして、政府案が今度の新医療費体系に条件として上げたものをすっかり満たすというにはこの旧点数でいくより方法はなかろうし頻度か変ればその通り変っていくのだし、もっとも科学技術を尊重しておる請求技術であるかどうかはこれは別問題でございますけれども、そういうことも考えて、そうして分業に入れ、しかる後に十分研究して皆さん方のお力も拝借して、そうして正しい科学技術を尊重した体系というものをお互いに謙虚な心持で持とうではないか、こういうことになっております。 なお明土曜日でございますか、医療協議会があるはずでございましたが、まだその案がまとまらないのか、延期という通知を先ほど私は受けたところでございます。以上お答え申し上げました。
○八田委員 ただいま古畑先生の御答弁にありましたように実は私もそう考えております。厚生当局は、新点数によるも現行点数によるも総医療費のワクは違いません、こう言っているわけであります。そうならば医薬分業に何ら支障がないと私は考えるのであります。それをなぜ支障があるというふうに厚生当局が考え、さらにまた新点数に基くところの暫定案を作ってくれという考えが私にはわからなかったのであります。今古畑先生の明快な御答弁を得まして非常に私、意を強うするのでありますが、重ねてお伺いいたしたいのは、薬剤師側の方の御意見では、この暫定案に対して御反対のような御意向があったと伺っておるのでありますが、竹中先生からその点についてお知らせ願いたいのでございます。
○竹中(稲)公述人 薬剤師協会といたしましては、先般御提示になられました新医療費体系が全面的に完璧なものだとは思っておりません。しかしながら今までの医療制度を大きく転回するこの機会にできるだけ完全に近いものの成立を望むという態度は今も変っておらないわけであります。しかしただいまの過渡的な分業に入るための臨時点数と申しますか、これらのことにつきましては、一応先ほど古畑先生からお話もございましたように中立委員におまかせをしております。この点につきましてかようにすべきだ、こうしてくれては困るというような強い意思表示は過渡的なことでもありますから言ってはおらないはずであります。しかしながらどこまでも正しい医薬制度を作り上げるためになるたけ進歩的な姿で進んでもらいたい。薬剤師協会の立場は先ほど申し上げましたと同じように、新医療費体系は以前の考え方から見れば非常に進んでおる、現在の医療制度そのままということで一時これを実施に移すということになりますならば、一応分業実施という点で差しつかえがないというような点から、いつまでも新しい医療費体系の成立ということが延びるのじゃないか、そういうようなことのないようになるたけ早くこれの成立を望むという意味であります。
○八田委員 竹中先生から伺ったのですが、竹中先生のお答えの中に医薬分業が延びては困る、これはもちろん自分らも考えておるのでありますが、新体系の論争によって医薬分業が延びるというような事態がくる、そういうことは私は考えてはおらぬのであります。ただ先生が今言われました医薬分業にとって一番関係のある点は、どの点とお考えになっておるでしょうか。暫定案のことについて、公正な判断のもとにできた暫定案に対しては賛成する、こういうふうにおっしゃっておられるのでありますが、公正と申しましても範囲があると思うのであります。そこで竹中先生は、四月の医薬分業を控え、一体どの点を暫定的にやっていくならば自分は賛成であるというのか、この点を重ねてお答え願いたいと思う。
○竹中(稲)公述人 お答えをいたします。ただいま八田先生の御質問は、私の申し上げようが悪かったかもしれないのでありますが、四月一日からの分業実施ということにつきましては、どなたも御反対は今のところないと私は承知をいたしております。従ってこの制度は四月一日から実施に入るものと思っておるのであります。その入るために本格的な審議をしておったのでは間に合わないから、そこで暫定的なものを作ろう、こういうお話だと思います。ところでしからば暫定案はどういうところが重大であるか、こういうふうなお尋ねでありますが、これは案を拝見しないと実はよくわかりませんが、結局分業に関係する薬治料の問題あるいは処方せん料の問題、これはもちろん私どもといたしましては当然診療の一部門として処方せん料を別にお取りになるということについては賛成をいたしかねるのであります。しかしこれを数字や何かの点につきまして、現行のままで薬治料の面や何かを動かしても総医療費のワクは変らないというようなことが先ほど先生のお言葉にありましたが、私どもにはさように思えないのであります。変ると思うのであります。現行法を修正していくということはやりやすいのでありますが、現実には非常な開きができてくるのじゃないか、かように考えております。そこで私ども先ほども申し上げましたように、できるだけ新医療費体系の完璧を期していくようにしていただきたいという考えであります。暫定案につきましてはいろいろ今までお示しになったものとも違いますので、その上で御批判を申し上げたい、かように思っておる次第であります。
○八田委員 竹中先生、はなはだ済みませんが、重ねてお伺いしたいのですが、そうしますと、竹中先生は現行点数に基くところの暫定案についてはいろいろと至難な点がある。しかし新点数に基くところの暫定案ならば自分は賛成してもよろしい、こういうお考えでしょうか。その点医師会側の古畑先生は、現行点数のままで医薬分業実施は差しつかえない。しかしそれを一歩譲って現行点数に基くところの暫定案であってもよろしいというふうに伺ったのでありますが、今竹中先生のお考えを伺いますと、現行点数をもととした暫定案では困る、新点数をもととした暫定案ならば薬治料については自分は賛成してもよろしい、こういうふうに伺ったのでありますが、間違いでしょうか。
○竹中(稲)公述人 ただいまの私の答弁がどうも徹底しないようでありますが、現行点数の修正によってもりっぱなものができれば、決してそれに対して反対するというのではないのであります。ただ私どもがおそれることは、現行医療制度のままに行われておる点数をいじることだけで簡単にその目的を達し得られるかどうか、そういうような点に対してははなはだ疑問があると思うのであります。しかしそれならば、現在の新医療費体系のうちから薬治料の部分や何かだけ抜き出して、そのままで賛成するかと言われますと、これは全般的なワクの上からいって、技術と物との分離というアイデアからきめられたワクの中の医療費で操作をされましたために、その中にはわれわれとしては非常に不満な点も多々ございますが、とにかく一応これを実施に移して後また先生方のお骨折りによって整備をしていくようにしていきたい、かような考え方を持っておるわけでございます。どうぞ御了承を願います。
○八田委員 この問題については、あとでまたいろいろと厚生当局と質疑応答をやりたいと思うのでありますが、この問題についてはこれだけにいたします。 古畑先生に一つお伺いいたしたいのは、現在の健康保険においては初診料の患者一部負担として五十円とつておるわけであります。私は初診料だけに一部負担を認めたということは非常に疑問があるのですが、この四十三号の規定をごらんになっていただきますと、「被保険者ノ疾病又ハ負傷ニ関シテハ左ニ掲グル療養ノ給付ヲ為ス」となっておりまして、六項目に分れております。その一番初めに「診察」と書いてあります。これを表面上このまま解釈いたしますると、その他「薬剤又ハ治療材料ノ支給」とずっとありますがそれを省きまして、こういうように診察も療養給付の中に入っておるわけであります。ところがこの療養の給付の中に入っておる診察が、初診料という形で一部負担が行われておる。しかもこの診察料の一部負担について考えてみなければならぬことは、四十三条の二にこういうことが書いてある。第四十三条ノ六第二項〔診療報酬の算定〕ノ規定スル厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ算定セラルル初診料ノ額ニ相当スル額ヲ一部負担金トシテ支払フベシ」こうなっておりますが、「この初診料ノ額ニ相当スル額」というのは、一体どうしてきめられるかということを見ますると、医療協議会によってその額を決定することになっておるわけであります。これは四十三条の六に書いてございます。この場合、一部負担金を初診料だけに課したという経緯について、古畑先生にお伺いしたい。初診料だけは療養給付から除いた、しかもその額を五十円にしたという根拠を一つお知らせ願いたいのです。
○古畑公述人 一部負担五十円ということは、私がそらで承知しておる限りは、昭和二十三、四年ごろでしたかはっきりしませんが、そのときに日本医師会の方に厚生省当局からこういう申し出がございました。そのとき私は保険担当理事をしておりましたから覚えておるのですが、どうもお医者さんがだいぶ乱診乱療というようなことを言われる、非常に不名誉なことである、こういう話でありまして、当時私は、乱療はあるかもしれないが乱診ということは少しおかしいじゃないかということを言ったことがあります。非常に失礼な言葉でありますが、医者は太鼓をたたいたり何かして患者の御用を聞くというようなことはしないのでございますので、被保険者の方々がおいで下さって拝見するわけでございますから、乱診ということがありようないということを強調したのであります。しかし世の中の一般の空気というものが、初診料くらい取れば、いわゆる乱診ということが避けられるのではないか、そういうようなお考えであった。一方には不名誉な言葉を聞いておる、一方からは初診料くらいは取ってもよかろうじゃないかという話があり、なおまた戦争前ごく短期間でございましたが、一部負担が行われたことがあるのであります。これは戦争のどさくさまぎれで、保険もほとんどめちゃくちゃというときで、記録にだけ残っておるので、果してそのことが実施までにいったかどうかということは、私実際医師として経験ございませんけれども、記録には残っておるのでございます。そういうことからしまして、今考えてみますと、皆様方にまことに申しわけないことを私が承知した点があります。私としましては、そのときの罪滅ぼしのような考えで、今度は初診までも一部負担にすることは返上したいということを念願としておることを、ここではっきり申し上げたいと思います。
○八田委員 そうしますと、古畑先生はその当時においては、少くとも初診料は受診の制限の意味があった、こういうふうに御解釈になっておるようでありますが、私はこれをこういうふうに解釈してみたいと考えております。たとえば四十三条にある療養給付の六項目にわたる点について、この六項目が給付の対象になるかどうかということを保険者が保険医に依頼してきめてもらう、そのための手段である、そういうふうに私は解釈しておるわけであります。これは言葉が当らないかもしれませんが、鑑定料というか、そういう意味から、この一部負担を打ち出してきたのではないだろうか。こういうふうに考えるのですが、これは私の考えが間違っておるかもしれませんけれども、あるいは厚生当局はどういうふうな考えを持っておるか存じませんが、その当時の経緯から考えられて、それが療養給付の対象になるかどうかを保険医にお願いしておるのだ、こういうふうな解釈ができるかどうか、先生の御見解をお伺いしたい。
○古畑公述人 大へんむずかしい問題で、私がここでお答えすることができるかどうかちょっとわかりませんが、私なりの解釈で申しますと、初診ということは、被保険者なり家族の者なりがからだの工合が変だ、医者の方からいいますと違和を感じたということだと思います。少し工合が悪い、変だという訴えがあってくるのであります。その見るということは、医療給付の一番大事なものである、もう何より大事な仕事である。早く言えば病気を裁判して、そしてこれはどれくらいかかると判定するわけでありますから、これは一番高等な技術だと思うのであります。従いまして私どもはこういう技術こそ高くも評価されなければならないし、またそれを阻止するようなあらゆる方法を取り除かなければならないというふうに考えております。従いまして、鑑定料とかなんとかいうのではなしに、これは患者にとって一番大切なことであるから、このことこそ一部負担の対象にしてはならないということをこの際はっきり申し上げたいと思っております。
○八田委員 私はいろいろと疑問がありまして、もう少し尋ねたいのでありますけれども、時間があまりないようですから、この問題についてはこれくらいにとどめます。ただ私は療養給付の対象に診察があって一部負担にしたのか、理屈をつけるのになかなか困難を感じておる。もしも先生のようなお考えでいきますと、今度の厚生事務当局が考えてきたところの、再診料も取っていいんだ、再診のたびごとに十円を取る、あるいは注射、処方せんの発行があったときには三十円取るのだというような問題も出てくるわけであります。あるいはまた療養給付の対象になっているところの入院についても、一部負担はけっこうだ。受益者負担だからけっこうだというような論も出てくるのであります。この点について、非常に考えなければならぬと私は思っているのでありますが、この再診ということについて、これは療養の給付にはあるのですから、今の初診料の点についてはいろいろな解釈が出てくると思うのでありますが、再診ということは、初診からずっと診療が続行しておるわけです。療養の給付を受けておる対象になっているから、再診を受けるわけです。ですから再診料は絶対に取るべきではない。また再診の一部負担ということは健康保険の趣旨にもとるというふうに私は考えるのですが、先生はいかがでしょう。
○古畑公述人 先ほど私は一部負担ということにつきましては全面的に反対であるということを申し上げました。それに尽きると思いますが、なおここで一言申し上げさしていただきたいと思いますのは、一部負担ということが健康人にはわからないという感を深くするのであります。丈夫な人が病気のときのことを想像するといっても、なかなかむずかしいことでございまして、自分が病気になってみないとわからないものです。ところが私どもはその病人ばかりを相手にしておるわけでございまして、その悲惨な生活、ことに薄給の中小企業の労働者におきましての非常に悲惨な生活を見ております。先ほど来申されました他の公述人のごとく、十円、二十円、非常にわずかのように考えておるのでありますけれども、これが事実において払えないという者が多いのでございます。私事にわたって恐縮でございますが、実際問題として軽額であっても払っていただけないというのが、実情だろう、こういうふうに思います。その払っていただけないということがすでに医者にとりましては大へんな問題でございます。しかもそのほかにそれに続く悪いことが起るのでございます。たとえばまとめてお払いしますといって、悪意でなくあと回しにしたものが、たまたま払えなくなった、そういう場合に、次のときにその医者のところに行きたくても、前の借金があるということのためについ行きにくくなってしまう。そうして心ならずも他の医者に行かざるを得ないというような結果を生むことになりまして、医者にとりましては非常に迷惑な話でございます。それから実際問題としまして、往診のたびごとに幾ら取れ、こういうような仰せがもし通りますと、われわれは往診先でこじき坊主にも劣るようなばかなまねをしなければならぬ、そういうあわれな姿に追い込むであろうということを御記憶願いたいと思います。
○八田委員 古畑先生にもう一つお伺いしたいのですが、今日の初診の一部負担五十円というのは現行点数の四点から出てきた金額でございましょうか。
○古畑公述人 現行点数が初診料が四点となっております。甲地が十二円五十銭ということになっておりますから、甲地におきましてはちょうど五十円、それから乙地は十一円五十銭でありますから、それに相当した四十六円ということになっております。
○八田委員 もう一ぺん伺いたいのですが、今度は改正案では厚生大臣の定める五十円以下の額となっております。そうしますと、私はこういう疑問が出てくるのです。新点数表では百五十円となっておる。もしもこの一部負担金をどうしても何らかの形において負担をしなければならぬということになった場合、五十円が正しいかどうかはこれからいろいろと質疑を重ねていいかなければならぬわけでありますが、厚生省原案にあるところの五十円、あるいは再診のたびに払うというのはどうしても削除しなければならぬ、予防医学の見地からどうしても削除しなければならぬ、治療医学の面から見ましても当然でありますが、予防医学の面から見て、再診のたびに十円、三十円を払うということは絶対にならぬ。こういう問題が起った場合、あるいは財政効果をねらう意味におきまして現行の初診料を三十円くらいふやそうじゃないか、こういうような妥協索を出す人もあるかもしれません。ところが新点数では百五十円、一体八十円という数がどうか、これについてはいろいろな問題が起ってくると思うのでありますが、時間がございませんので簡単にいたしまするけれども、現在保険の初診料が現行点数の一点単価甲地十二円五十銭、乙地十一円五十銭によって五十円と四十六円に分けられた、こういうお話でありますと、あるいは一部負担を初診料において負担しなければならぬ、どうしても財政効果をあげなければならぬ、そういう場合、八十円というような問題が起ってきた場合に、先生は一体どうでしょうか。前の昭和二十三年にきめたときの思想と、現在の財政効果だけをねらってやらなければならぬという考えとは矛盾横着があると思うのでありますが、先生いかがでしょう。
○古畑公述人 初診料の相当額を一部負担とするという現在行われている法律に関しましても、私ども医師会の者は非常に不満でございまして、これにつきましては相当の反対を唱えたのでありますが、ついに厚生当局によってこれが行われたわけでございます。このたび一部負担ということが相当問題になってきているようでありますが、私ども医師は、この一部負担そのものに反対をしておるのでございまして、いかようなかけ方をしようとも、一部負担ということは全面的に反対である。その理由は、もう先ほど来私ども耳にたこが当るほど申し上げてあるのでござい、示して、どういう形ならばいいとか、そういう妥協は一切私どもは考えておりません。思想的に健康保険の破壊であるという考えを私どもは持っております。丈夫なときに金をかけて、病気のときにはその掛金でもって一切をまかなっていただく。こういう考えが一番正しいのであって、病気のときに一部負担せよなんということは、これは耐えられないことである。思想からいっても、そういう思想は私ども医師として忍ぶことができないのでありまして、かつまた実際の問題として、そういう一部負担を弱い者にかけるということは、これはもう、保険という字を撤回してくれるならばいざ知らず、私どもには絶対承服できないことであります。
○八田委員 そうしますと、先生のお考えでは、現在の初診料相当額であるところの五十円に対しても反対である、そうしますと、改正案そのものについては、いろいろ先ほどからお聞きしましたから大体わかるのですが、現行の健康保険法についてもこの四十三条の二に指定してあるものについては反対である、これを削除してくれというお考えを了承してよろしゅうございますか。
○古畑公述人 全くその通りでございます。
○八田委員 竹中先生に一つお伺いしたいのですが、竹中先生は先ほど言葉じりをとらえるわけではございませんが、過剰診療とか濃厚診療とかいう言葉をたくさん使われているわけでございます。そこで、先生がお使いになった言葉は、過剰診療ということに対して、どのような観点から過剰診療というような事実があるか、こういうことについて先生は調査された上でのことでありましょうか、またあるいは、世間でそういう評判が多いということで御発言になったのかどうか、一つその点お知らせ願いたいのであります。
○竹中(稲)公述人 お答えをいたします。私が先ほど一部負担をやるという目的が、すでにほかの公述人からお話がありましたように、結局乱診乱療というようなことを防ぐという意図のもとに、初めの一部負担というものは置かれたと思うのであります。そして、この一部負担を、わが国においても前から強制的に昭和十八年ごろからでしたかやっておりました。そこでそういうふうな際に、いろいろ乱診乱療の現実を当局が例示をされまして、そしてその結果ああいうふうな規定が置かれたわけであります。その後におきましても、遺憾ながら私どは社会保険が、あるいは不正請求があるとか、あるいは過剰診療があるというようなことがしばしば論議になり、また私どもが関係をいたしております地方の社会保険医療協議会において、そのため、あるいは戒告を受け、または指定を取り消されたというような一部不明朗な人がおりました。そういうふうなことを考えて参りますと、どうしてもそれを防ぐために、この制度はやむを得ないものじゃないか、かような観点で申し上げたわけであります。
○八田委員 竹中先生の御答弁の中には、やはり世間でそういう評判であるというようなふうに伺ったのでありますが、これにつきまして、先生にちょっと御参考までに申し上げておきたいと思うのであります。不正受診とか過剰診療というものは、昭和二十九年の八月分の診療報酬明細書の一斉調査が行われましたが、その場合におきまして集めたところのレセプトの数が二百九十三万件あるのであります。これは本人、家族とも含めた数でございますが、このうちで一体どういうふうな不正受診の事実があがったかと見ますると、台帳との照らし合せで疑いのあるものが約七%、資格の消えたもので継続療養証明書未提出のまま受けているものが四・三%、被扶養者でないものの受診が一三%あるのであります。そこで保険医の不正水増し請求は一体どれくらいかといいますと、数字が出ていないのでございます。ですからこの点につきまして、私非常に疑問を持つのです。そこで先生のようなりっぱなお方には、ぜひとも不正受診とか過剰診療とかいうことが世間に流れておりますけれども、数字になっておらぬ、ただ単なるデマである、こういうように私は御了解願いたいと思うのであります。私は健康保険制度のいいところを、この乱診乱療ということでくずしてはならぬと思う。しかも数字になっていないのでありますから、気軽にかかれる制度こそ、健康保険の目的にかなうもので、そういう体制をくずしてはならぬ。こういうように私は考えているわけであります。 そこでさらに申し上げてみたいのは、過剰診療、過剰診療と、先生は申されましたけれども、数字になっていないということを私は申し上げました。ところで、先生に御認識願いたいのは、最近非常にペニシリン・ショック死というものがふえて参りました。さらにまた赤痢の流行の場合におきましても、薬剤耐性菌の流行が非常にふえて参りました。さらにまた結核の場合でも、薬剤耐性菌の感染が非常にふえてきているわけであります。これは私はむしろ無診投薬によるところの化学療法が非常にわが国にでたらめに行われているというふうに考えているわけであります。特にフランスなんかは、医薬分業が行われておりますが、非常に正しく行われております。現在日本からフランスに行っている人なんかは、楽局に行ってペニシリンを買いたいという場合、必ず薬剤師が、医師の診断書があるかと聞くそうであります。そして診断書がないと全然売ってくれない。薬剤師の方が非常にプライドを持って、医師の処方書のない者には絶対売らぬ、こう言うそうです。ところがそうかといって、医者のところへ行って診察してもらうと、非常に高い金を取られる。これではとてもたまらぬというわけで、フランスにいる日本人が私のところに手紙をよこして、どうかペニシリンを一つ送ってくれぬか、フランスではとても高くて手に入らぬからと言ってきております。私はしようがないから、薬局からそれを買って送るのですが、このようにフランスなんか、あるいはイギリスもそうであり、ましょうが、非常に医薬分業というものはプライドをもって正しく行われている。私はかつて赤痢の流行問題につきまして、薬局において一体どれくらいのサルファ剤が無診投薬で売られているか、いわゆる下痢腸炎の発生状態を知って、それから赤痢の流行を知ろうということで、薬局の協力を求めようとしたことがございます。その場合私は薬局側から非常なしっぺ返しを受けました。というのは協力してもらえなかったのであります。私はそれをもって、日本では一体どれくらいたくさんに無診投薬で薬剤が流されているかということを知りたかったのてありますけれども、とうとう知ることができなかったのであります。そこで私は、化学療法というものは薬学の進歩によってどんどん伸展して参りますが、化学療法というものはよく管理されないと、とんでもない結果が起ってくる。耐性菌の問題が起ってくる。これが今日の医学において、結核が国民病といわれ、なおかつ解決ができない理由でしょう。あるいはまたくそ食らい伝染病といわれる赤痢菌が今なおわが国をおおっている原因であろうと私は考えるのであります。どうか先生におかれましても、ただ過剰診療である、不正受診が非常に多いのだというふうなことだけをとらえて、医療担当者を攻撃されることだけは、先生に御認識をお改め願いたいのであります。私はさらにいろいろ先生と話し合いたい気もたくさん持っておるのでありますが、時間もございませんのできょうはこれでとどめますが、どうか一つ、国民からペニシリン・ショック死とか耐性菌の感染をなくすというためには、薬剤師の方々に大きなプライドを持っていただいて、医師の処方せんまたは指示のない限り絶対に売らぬというような態勢をぜひとも打ち立てていただくようにお願いいたしまして私の質問を終ります。
○竹中(稲)公述人 ただいまお話のございました私の言葉の中の過剰診療とかいろいろな点については、数字的に現われていないというような点を承わりまして非常にけっこうなことだと思うのであります。ただここで現在の審査制度というものの状態を一応考えて参りませんと、審査の点につきましても、まだ不十分な機構であるといわざるを得ないのではないかと思うのであります。しかしそれはさておき、今先生からいろいろ耐性菌の問題あるいはぺニシリンの問題等についてのお話がございました。当然これらのことにつきましてはわれわれ協会といたしましても大いに自粛、もって保険衛生のために努力いたすつもりでございます。
○佐々木委員長 滝井義高君。
○滝井委員 どうも時間がおそくなってはなはだ恐縮でございますが、実は重要な日本医療を左右する健康保険の問題でございますので、しかもさいぜんからの重要な発言は、来週以降の健康保険の審議にきわめて重大な影響のある問題を含んでおりますので、しばらく時間をいただきたいと思います。 それはさいぜんから歯科医師会の竹中先生に御質問を申し上げましたところ、いわゆる医薬分業に入っていくためには、厚生省が現在医療協議会に諮問をいたしております新点数の原案というものが客観情勢からも困難である、従って厚生大臣の方から暫定的な案の作成が要請せられたということは、われわれもよく存じておったのでございますが、その場合に私たちは物と技術を分けたいわゆる現在の医療費体系の精神を受け継いだ暫定案を作るのだという、こういう御答弁を政府からいただいておったのでございます。またそういう方針であるということは、そこにおられる高田保険局長も言われておりました。保険局長は多分委員だと私は心得ておるのですが、そうしますと、竹中歯科医師会の常務理事の先生の御答弁あるいは日本医師会の常任理事である古畑先生の御意見は大体一致をしておるようでございました。竹中先生の御説明では、新点数でない現行点数で暫定案を作るべきだという意見は歯科医師会あるいは日本医師会等が賛成であった。薬剤師会がそれについては反対であったので、両者の意見というものを学識経験者によって組み入れて、一つ暫定案を作ってもらいたい、こういう御説明があった。古畑先生は今保険者も被保険者も大体現行点数でいくことに賛成だ、こういう御説明があったのですが、その点にちょっと竹中先生と古畑先生との食い違いがあるわけなのです。さいぜん先生が御説明になった通り、暫定案というものは現行点数でいく、それには日本医師会、歯科医師会及び被保険者、保険者が賛成をしておるかどうか、この点をもうちょっと明白に、そうならそうだと簡単でけっこうですからお願いしたい。
○古畑公述人 私の言葉が足りないために非常な誤解を生んだことを恐縮に存じます。ここにあらためてはっきりと申し上げます。厚生省の方からの要請は、大臣の言葉もございましたし、保険局長、次官もおいでになってお話しになりましたが、この委員会で暫定のものを作ってもらいたい、それには一切条件はつけないというふうに私どもは受け取ったのであります。全然条件はついておらなかった、こういうことをはっきりと申し上げます。どっちによって作ってくれということは全然御意見の発表がございませんでした。それからその日の午後になりまして暫定的のものを作らなければ困るのだが、この会をどういうふうに持つかということになりまして、秘密会を持ってお互いに自由な意見の発表をしようということになって、会場を変えました。そこでいろいろと議論が出ましたが、被保険者、それから政府を抜かした保険者側の考えは、はっきりと申し上げますが、私どもは医療費が上りさえしなければほかに問題はございません、こういう発言でございました。従って私が先ほど申し上げました通り、現行点数でいくということは認められ得るのだろうということを考えたわけでありまして、向うの発表としましては、医療費が変りさえしなければ私どもはどのような案でも文句はないのである、こういう発言でございました。それから日本医師会は何か御意見はございますかということでございまして、このときに、先ほど私が申し上げました通りに、日本医師会は別に新しい点数を作らなければ医薬分法に入れないとは考えておらない、現在のまま入れるものと考えておるという意見の発表をいたしました。それから歯科医師会はそれでけっこうだという御意思の発表がありました。それから薬剤師会の御意見は、これは記録をとらないのでございますから速記録を見るわけにも参りませんけれども私並びに私の同僚が承知しておる限りの点で、一言あったことは、支払い方法が医者と同じものでなければいけないという発言がございました。それでこの点は相当疑問な点がございました。なぜかと申しますと、現在医師に薬治料として払われているものが二十五円でございます。この中には今度政府当局から御発表になった通り、再診料も入っておる、調剤手数料も入っておるということでございまして、それが正しい姿であるかどうかということは別問題といたしまして、一応再診料と調剤手数料というものが含まれておるから、医者の方に払われるのは二十五円である。けれども薬剤師の方へそっくりそのまま二十五円として払うという意味なのか、こういう反問がありました。そうしたらいやそういうわけではない、新医療費体系におきましては、医師の方の場合には十五円刻みということで払うという姿であるし、薬剤師の方は薬の原価を計算して、それに調剤手数料を払う、こういう姿であるのだが、それは医師の場合も薬剤師の場合も同じでなければならない、こういう発言であるわけでございます。別に私どもは現行点数で入るということについての反対意見というものは聞いておらないわけであります。それからなお医師会の方は、はっきりと、四人が四人ともそれで差しつかえない、こう言われるけれども、薬剤師会の方はこういう事件にはぶつかっておらぬだろうから、会へ帰って十分意見を聞いてお答え下さい、こう言った。そのときに、明日答える、こういう気の早い話でございました。明日答えるというようなことは、ちょうど土曜日になりますし、なかなか困難なことであろうから、それよりもまあしっかり御相談なさって、一ぺんやられたことになるとあなたの立場がなくなると困るから、月曜日までお待ちしましょう、そうして月曜日になってお返事下さい、これが中立委員の発言でございました。それ以後私どもはこの案について厚生当局からも相談もございませんし、また中立委員の方からも別段のお話もございません。あるいは私の関知しない、会長あるいは副会長がそのような御相談を受けているかは存じませんけれども、少くとも私自身はそういう声をまだ聞いておらないということをここで申し上げます。
○滝井委員 そうしますと今度は薬剤師の方の竹中先生にお尋ねしたいのですが、これは単刀直入でございますので、もう時期が迫っておりますから、あるいは失礼な御質問かと思いますが、余すところもう十日ぐらいしかないことになるわけです。さいぜん古畑さんの御説明によりますと、実は十七日医療協議会が開かれる予定であったのが、私もそういうことを聞いておったのですが、本日延期の御通知があった、こういうことなんでございます。われわれは国会としても政府に対して、二十日までぐらいには暫定案を示してほしいという要請をいたしております。それはどうしてかというと、さいぜんから竹中先生からの御説明があったように、今度の健康保険制度なり医療費体系が実施せられますと、事務が非常に複雑になってくる。歯科医師会の竹中先生のお話では、この新医療費体系になれば、おそらく今までの事務の二倍になるだろうという御説明、私もその通りだろうと思う。そういたしますと、全国的に一万七千のこういう方々が初めて保険に突入せられるわけなんですから、これは十日では、全国的に講習をし、診療報酬の請求事務までやるということは、とうていできないと私は思う。十日ではむずかしいと思いますが、百歩譲りまして最小限やはり十日はなくてはならぬと思う。ところが現在なおこれがきまっていないという情勢なんです。厚生省は新体系でいくというし、療養担当者側は現行点数でいく、こうなりますと、あと一日、二日では、私はこれはなかなかまとまらぬという太鼓版を実は押したのです。厚生大臣はまとまるとおっしゃったわけです。これは厚生大臣の最終的な責任を追求することになると思いますが、そういうことで、これは事務的に非常に複雑になっております。そこでこれは率直なお尋ねなんですが、薬剤師会の方では、今の古畑先生の御説明では、現行点数でいっても反対はなかったという御答弁があったのですが、ほんとうに反対がなかったのでしょうか。結局これは二者択一になるのですが、現行点数で入るがいいかどうか、問題はこういうことになってくると思うのですが、この場合に現行点数でよろしい、分業でいけというのか、現行点数はいかぬ、分業を延期してもよろしい、こうなるのか、これはきわめて単刀直入な御質問で失礼かと存じますが、実は私たちも最後の腹をきめなければならぬ段階に来たような感じがいたしますので、それを一つ率直に、全薬剤師諸君を代表してきょうはお答えを願いたいと思います。
○竹中(稲)公述人 ただいま話がございましたように、明日の中央社会保険医療協議会が延会になったということは、実は先ほど初めて承知をしたような次第であります。またこのことにつきましては、薬剤師協会といたして本日全国役員会を開いていろいろ協議もしているわけです。こちらの公聴会に出席のために私はその席に出ておりませんので、十分な結論を承知いたしておりません。ただ願わくば諸先生方のお骨折りによって納得のできる案を作り上げて、分業実施に必ず入るようにしていただきたい、かようにお願いをするだけであります。
○滝井委員 実は分業実施に納得のできる案を作りたいということを私たちは念願いたしております。ところが厚生省は、これはきわめて国会軽視の言なんでございますが、あるいはあなた方の医療協議会自身を無視せられる言にもなると思いますが、医薬分業に間に合わなければ、厚生省自身が、国会に諮らなくても、医療協議会に諮らなくても、そこに結論が出ぬということになれば、強行告示をやられる、こういうことなんでございます。この点になれば、分業は確実に四月一日からいくということになるわけです。その場合にどういうことになるかわかりませんが、そういうことです。そういう場合に日本医師会としてはどういう態度をおとりになりますか。もう十日しかありませんので、よくお聞きしておかぬと、月曜日から私は大臣に率直に直剣勝負のつもりで聞かなければならぬと思いますから、これを一つお聞かせ願いたい。
○古畑公述人 私どもは医薬分業を阻止しようという考えは毛頭持っておりません。何べんも繰り返しますが、ただ新医療費体系の精神は非常にけっこうではあるけれども、その分け方が不十分である。この新医療費体系にはまだ研究の余地があるので申し上げているわけなんです。それでこの新医療費体系をそっくりそのまま、妙な言葉で言いますれば、どぶ川の中に入れるというつもりは全然ございません。これはやはり一つの案としてわれわれが将来参考にすべき十分価値のあるものというふうに考えております。しかしもし厚生省がわれわれの意思に反しまして強行告示というような態度に出れば、先ほど来私どもが述べております通りに、われわれはそれに従えないのでありますから、保険医を辞退させてもらうより方法はなかろう、こういうふうに想像いたします。
○滝井委員 よく御決意のほどはわかりましたので、われわれも十分その意向を厚生大臣にお伝え申したいと思います。 その次に、現在厚生省は中央社会保険医療協議会にかけているいわゆる新点数というものを撤回いたしておりません。先日参議院における大臣の答弁を私は傍聴いたしたのでございますが、それによりますと、六月までには新点数を結論を出して答申してもらいたいという希望を述べておりました。さいぜん歯科医師会の竹中先生は、六月、七月と期限を切っても、とても出ない、こういう御意見でございました。私は個人の意見を述べて何でございますが、今厚生省から出ているのは新体系でない、こう心得ているわけでありますけれども、日本医師会としては、そういう工合に期限を切って六月、七月ということでできるものなんでしょうか。むしろこの際問題を円滑に解決するためには、あれを白紙にしてもらって、そうして新たなる立場で、すべての社会保険に関係のある、さいぜん日経連の方が五者泣きといって、五人が泣いて社会保険をよくしようじゃないかということを言ったのですが、これは私もそうだと思う。やはり事業主なり、療養担当者なり被保険者なり、政府なり、すべてが寄りまして、これを白紙に返して話をして、新しい体系を作ることが一番よいと思うのです。それを六月とか七月とか切ることは問題があると思うのですが、これは日本医師会も薬剤師会も、両方御意見をお聞かせ願いたいと思います。六月に切るということは問題があるかと思いますが、厚生省はそういうお考えのようでございますが、お二方の御意見を伺いたい。
○古畑公述人 私はいわゆる政府原案なる新医療費体系につきまして、厚生省が撤回したのでない、一時審議を中止して、そして暫定案を作ってくれ、こういうふうに了解しております。しかし、その精神といたしましては、この審議というものがこのまま継続していってもなかなか困難な点が多かろう、しばらくこれをたなの上に上げておくというか、あるいは温室へ入れて温存させると申しますか、そういうようなことにして、今滝井先生のおっしゃられた通り、別の角度から一つ問題を研究してみよう、諮問された医療協議会においてそういうこともあり得ると思うのです。そうして、その案ができ上ったときに、現在の厚生省の諮問されておる新医療費体系なるものと、ここにまた別に生まれてきた一つの体系というものを一緒に出して、あなた方が諮問されたものはこれでございます、私どもはこういうふうに変えましたと言っても一向差しつかえないだろう、こういう考えのもとに、厚生省が撤回するという言葉を使わなくても、こういう意味において満足しておるのであります。その精神たるや、言葉がすぐ出てこないから申し上げにくい言葉になりますが、見上げたものだということが言い得ると思うのです。そうして、その企図されたことには、私どもは納得がいくのです。いくのですけれども、いささかその分け方の点に不備の点があり、不満の点があるから、もう少し研究の余地がおるということをくれぐれも申し上げたいわけであります。その意味におきまして、これを撤回しろという言葉も使いません。しばらくこれはたなの上に上げておいて、別の角度から研究しようじゃないか。これは何と厚生大臣が抗弁しようとも、私どもと医療協議会に出てる者は、そういう了解のもとにやっておるということをはっきりと申し上げます。ここに保険局長もおられますが、この意味で私どもは了解を得ております。
○竹中(稲)公述人 私どもといたしましては、先ほど来申し上げましたように、新医療費体系というものは、すでに前回のものは撤回せられ、なお今回は相当資料その他を整えて再び提示をされておるわけなんです。しかしなおこれに対していろいろ医師会その他の方面からこの欠陥についてお説がございます。ございますが、先ほど申し上げましたように、われわれといたしましては、できるだけすみやかに医療体系の根本になるところのこの体系の成立を祈願しておる。そこで今お話のように、六月までというような期限を切っての審議に対してどう思うか、こういうお尋ねであります。私どもといたしましては、これはその内容その他の検討ということには、分量その他の点もございますから、一がいには申せません。しかしながら、これを成立させようという熱意を持ってこれに対するか、あるいはどこまでもこれは反対であるという考え方でこれに対されるか、それによって違ってくると思うのであります。願わくはぜひ日本の新しい医療制度が実施されるときに当りまして、皆様方の格別な御尽力によりまして、すみやかにこれを修正成立をすることを望んでやまない次第であります。
○滝井委員 大体現在政府が医療協議会に持っていって諮問をいたしておりまする新点数というものは、医療協議会においてはたな上げになっておる。それで別の角度から全く新たなものを作る自由を留保しておるというお話がありましたので、非常に将来の参考になりました。 そこで、大体これで新体系に関するおもな御供述はいただいたようでありますので、その次にお尋ねしたいのは、これはお二方にお尋ねしたいのですが、薬価対策についてでございます。薬剤師の方の医療費の支払い方式は薬価基準でいく体系になっておる。新体系では医師の方は十五円刻みの平均になっておるようでございます。現在この法案に関連して予算に組まれておる薬価対策費は三億でございます。私は日本の医療政策の盲点は、薬価対策だと思っております。今までこの薬価基準をきめることについて何か諮問を受けたことがありましょうか。
○古畑公述人 最近まで私、妙な言葉でございますが、野人でございまして、日本医師会の事務を担当しておりませんものですから、そういう諮問を受けたということは聞いておりません。それから私としてはもちろん諮問されたことはございません。
○竹中(稲)公述人 ただいままでのところ、日本薬剤師協会といたしましては、薬価基準の決定に対して何ら諮問を受けた事実はございません。
○滝井委員 これは私厚生省当局が法律違反をやっておると思うのです。これは中央社会保険医療協議会にかかるべきものだと思っております。それを実は今までかけていなかったのではないかと思う。診療報酬の額の決定ということには当然薬が入っておるわけです。それは単に点数と単価だけではありません。点数と単価の基礎になってきているものは薬なんです。それを今までかけていないですね。厚生省自身が法律違反をやってる。当然これは中央社会保険医療協議会にかけなければならなかったものと私は心得ております。今あなた方お二方とも、それをお知りにならないということです。そうだとしますと、これは盲点だったと思いますが、大体薬価対策について薬剤師会なり日本医師会は、こういうふうにやったら日本の医療が合理化するであろうという薬価対策、こういうことをやれということがあれば、一つお教え願いたいと思うのでございます。
○古畑公述人 大へんむずかしい問題でございまするが、薬価と申しますと、つまり私の承知しておる限りは、製薬会社で作る薬の値段、こういうことだと了承いたしますが、これを野放しにしておくということに、大へん不満を感じております。医療というものは国民に対して非常に重大な問題であるという観点から、健康保険が行われ、国民健康保険が行われ、さらにこれが社会保障にまで発展していかなければならないというような段階になりまして、そうしてこれについては統制を加えておるのであります。私どもはあえて統制と申します。統制のもとに行われてる医療でございます。しかるにその医療の大部分を大部分と申すと少し言い過ぎになるかもしれないが、相当な部分を占めている薬価対策というものが国家で行われない、こういうことにつきまして非常な不満を感ずるわけでございます。医療の大方を担当する薬価というものが放任されておる、この点はぜひ当委員会でも問題にしていただいて、何とかうまい方法がないものか、そういうことを私どもは常々望んでおる次第でございます。
○竹中(稲)公述人 ただいまお尋ねになられました薬価の問題でありますが、現在の健康保険に占める薬品に関する部門が大体四八%というような数字を見ますときに、薬価のことをないがしろにはできないわけであります。しかしその四八%は現在のところは御承知のように技術料が含まれたものになっております。そこでこの中から薬価を取り出して参りますと、そのウエートはずっと軽くはなって参りますが、今までの状態では御承知のように戦後の困難なときから、自由主義のもとにいろいろ工場経営というものが行われてきております。しかしこれらの薬というものは病気を対象にいたしておりますから、当然過大な利益を考えるということはできないと思います。私ども今の製薬業のあり方といたしましていろいろ反省しなければならぬ点はあると思いますが、その原因は何かと言いますと、不必要な競争だと思うのであります。こういうふうな点を考えて参らなければなりません。一つの例をとりますと、ビタミン剤にしろサルファ剤にしろ、いろいろございますが、各社が今までは自由競争によって値を下げてきた、こういっておりますが、とにかく不必要な競争をやっております関係で、必要以上の広告宣伝をするというような面も見えないではございません。これらの点がいわゆる七人委員会においても指摘をされておるのでありますが、この製薬関係のことに対しまして、当局もまたその育成あるいは外国からの権利の取得というようなことについて十分な世話をしてやらなければならないんじゃないか、こう思っておるのであります。 なお先ほどお話のありました新医療費体系におけるところの医師の薬治料の徴収方法、いわゆる十五円刻みのような問題はすでに先生方が御承知の通りあまりにワクのきめ方が広過ぎる、そのために非常に差異ができまして、非常に高い地位にあるところの薬品、そういうふうなものを使う場合、また平均値よりも下のものを使う場合に当然不当な結果が現われて参りますので、これらに対する幅というようなことは当然考えられていかなければならないと思います。要するに製薬業界の状態は、今必要以上にその価格等が高価であるというふうには私どももまだ断定はいたしかねるのでありますが、これらの業者諸君も各方面からの報告によって自粛その他の方法をとられておりますことは、結局本制度に対しましてもよい結果をもたらすものであると期待をいたしておる次第であります。
○滝井委員 時間がありませんのでこれでやめたいと思いますが、実はもう少し薬剤師会の方の竹中先生に官給請求明細書や二重支給の問題、一部負担の問題などお聞きしたい二とがあったのですけれども、最後に一点だけお聞かせ願いたいと思います。 さいぜん古畑先生の御公述の中に人格のない機関の指定というお言葉があったですね。私も実はこの法律を読んでみましてどうもわからないのは、古畑先生が御指摘になったように、確かに現在の医療機関には人格がないんですね。この法律を読んでも、医療機関は法人であるとはどこにも書いておりません。自然人でないことはもちろんです。法人でも自然人でもないものが物件の提出の義務や報告の義務を負っているのですね。こういうことは現在の法律上の論理としてはどうもこれは法律のワクをはみ出しておる。そういうような感じがして仕方がない。さいぜんの先生の人格のない機関の指定だというお言葉から実はちょっとヒントを得たわけでありますが、どう考えても——いずれ法律の専門家に聞かなければならぬと思いますから、法制局長官に聞きたいと思いますし、あす弁護士の方がおいでになりますから聞きたいと思いますが、私もしろうとでありますし、先生方もしろうととしてそういうことがあり得るものかどうか。たとえば滝井義高という者が滝井病院というものをやっております。そうすると私は保険医の登録を受けて一個の診療に従事する療養担当者になるわけです。ところがこの法律を見ると療養の担当というものは機関がやることになっておる。そこで滝井義高という者を機関からどけたら何にもない。人間でもなければ、法人でもない、それが報告の義務を負わなければならぬ。しかも管理者でもない。四十三条か何かには管理者という言葉を別に使っておる。先生方もしろうとと思いますが、今人格のない機関というお言葉があったものですから、その点で、これは薬剤師会の竹中先生の方も薬局というものが機関の指定を受けるわけです。きわめてこの法案を私どもが審議する上に重要なる点だと思いますので、その点先生方の感じられたことでけっこうでありますが、しろうとの感じというものは案外法律の虫のようになって当っておる人よりも正鵠を得てるところがあると思いますので、私どもそういうことを感じたので、先生方の御意見を一つ聞かせていただきたい。
○古畑公述人 全く滝井代議士の仰せの通り、どうもしろうと考えよりしますと、私は古畑と申しますが、古畑医院というものが私をのけたら何が残るかという気がいたします。ぼろ家にそういう権限を持たせるといっても持たせようがないと思うのです。どういうお考えかしらぬが、古畑医院というものは責任者が私であり、そうしてその責任者が保険の指定医になって初めて古畑医院というものが保険診療できるというふうに考えるのでありまして、医院の方には別に権利を与える、医者は保険医にするかしないかわからぬというおかしなことだ、こう思うのです。どういうようなお考えであるか、この点はぜひ専門家にお尋ねになって、私どもしろうとがおかしいと思っておるということについて十分御研究願って私どもにお教えいただきたい。 それからもう一つついでに滝井先生にお願いいたしますが、「犯罪捜査ノ為認メラレタルモノト解スルコトヲ得ズ」という文句がちょうだいしましたものの四十五ページにありますが、これがどういうことか、これも一つお尋ねをいただきたいと思う点でありまして、私ども非常にこの点が疑問に思っておる点でございます。なお願わくば医者なるがゆえに黙秘権もないのか、医者という職業には黙秘権というものは認められないのかということを一つ……。
○佐々木委員長 公述人に申し上げますが、公述人から委員に対して、注文やら質問のようなことは許されておりませんから、それは慎しんでいただきたい。
○竹中(稲)公述人 ただいまの機関の問題でございますが、これは私どもしろうとでわかりませんけれども、おそらくこの条文が出てきましたのは、かつてのいわゆる共産党の診療所の問題からこういうふうな問題が出てきたのだろうと思います。そこで医療機関として病院なり薬局が指定されることがおかしいじゃないか、こういうことでありますが、これについては結核予防法などではやはり医療機関としての指定がすでにされております。さような点からいくと、やはり政府の方に何か根拠がおありなんだろうと思いますが、私どもしろうとでございますから、この点は一つ先生方の方でよくお調べをいただきたいと思います。
○滝井委員 質問を委員にしてはならないことになっておりますが、実はその問題は私の方からこの次に伺いたいと思っておりました。それで黙秘権の問題は憲法三十八条の違反だと考えておるのですが、これについては午前中においても議論があったわけです。犯罪捜査のため認めることを得ずということが実はあるので、もし医療機関ら立ち入って捜査があった場合には当然告訴しなければならぬと思うのです。そうしますと、これは明らかに今言った黙秘権や刑事訴訟法にいう家宅捜査に関連をしてくることになる。従って犯罪の捜査のため認めることを得ずというのは、どうも憲法と正面衝突してくる感じがするのです。これは私の方からあなた方にお聞きしたいと思っておったのですが、どうもそちらからお聞きされたので、これはやめることにいたします。ほかにもたくさんお聞きしたいことがあるのですが、時間がございませんので、これで終ります。どうもありがとうございました。
○佐々木委員長 公述人の方々には本日は長時間にわたりまして貴重なる御意見を承わりましてまことにありがとうございました。 本日はこれにて散会いたします。 明日午前十時より公聴会を開会いたします。 午後七時三十四分散会