社会労働委員会 第48号
- 発言数
- 86 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1956/05/22
会議録
○佐々木委員長 これより会議を開きます。 放射性物質に対する許容度の問題について調査を進めます。本問題につきまして参考人の方々が出席されておりますので、意見を聴取することといたします。 この際参考人の方々に一言申し上げます。本日は御多用中御出席下さいましてまことにありがとうございました。最初に御意見を述べていただき、後刻委員よりの質疑にお答え願いたいと存じます。ただ議事の整理上意見を述べていただく時間は約十五分程度にお願いいたします。なお念のために申し上げますが、参考人の方が発言なさいます際は委員長の許可を得なければなりませんし・参考人の方は委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますから、以上お含みを願います。 それではまず都築参考人にお願いいたします。
○都築参考人 それでは私から最初に申し上げますが、まず最初に今日問題になっておると考えられます、先般厚生省が刷りものを作りました、「放射性物質に対する許容度の考え方」、こういう刷りものがどういうわけででき上ったかということを一言簡単に御説明申し上げておいた方がいいんじゃないかと思うのであります。 御承知のように一昨年ビキニ事件が起りました際に、こういうことに対する主として厚生行政的の方面からの関係から一つの協議会ができまして、正式には原爆被害対策に関する調査連絡協議会というのでありますが、われわれはあまり長いものでありますから原爆協議会と称しておりまして、主として厚生省がお世話をされ、文部省、運輸省、水産庁のような関係各省がみな関係しておられる会があるのです。その中にいろいろの部会がございますが、いろいろ協議をいたしました結果、どうしても今日問題になっております許容度と申しますか、あるいはその当時は許容量と申しておりましたが、それを検討する小委員会のようなものが必要であろうというのでその小委員会を作りまして、私その小委員会には直接関係はないのですけれども、まあときどきオブザーバーとしてその会に出ておりましたが、それがいろいろやっておりました際にまた今回新しく大きね実験が行われるというふうなことがだんだんに話が始まりまして、どうしても何とかそういう問題の許容度と申しますか、放射性物質を人間が影響を受ける場合にどの程度までが差しつかえないものであろうかということの線が引けないものであろうかという問題をもう一度一つ念を入れて検討してみようということで、最近にいろいろ検討いたしまして、一つの考え方をまとめたのであります。ところがこれは純学問的の立場から申しますと、現在の状況では人類に対するこういう放射性物質の許容度というものを全面的に明らかな線を引いてきめるということは不可能と申し上げていい。けれども、一方厚生行政的の立場から言えば、何かそこに線を引いておかなければならない、また一方いろいろ国際間の問題がありました際に、日本として何も線を引いていないということでは何か不都合なことがあるであろうというような考え方から、不完全でもこの際一応中間的と申しますかそういう意味でも線を引いてみたらどうであろうかという考えのもとに出発しましたのが、この刷りものができましたいわれ因縁であります。従ってこの刷りものに書いてありますことを学問的に検討いたしますと非常に不備であります。けれどもこれは現在の学問の現状から申しましてやむを得ないことでありまして、そういろ意味でこれができておるのであるということをまず第一にお話申し上げておきたいと思うのであります。 それから第二に普通に言われております許容量という分量という字を用いませんで、「許容度」という言葉を作りまして、なおその次に「考え方」という非常にまわりくどい言葉がつけてありますのは、こういう問題を考えるときには、ここに書いてあるようね考え方で一つ出発していただいたらいいんじゃないか、こういうことであります。このものに対しまする根本の考え方はこの中にも書いてございますが、国際的に放射線の防御委員会というものができておりまして――これはもう大分前からできておる委員会でございますが、主としてイギリス、アメリカ、フランスというのが中心になりまして、スウェーデンその他の国のそういう方面の学者が集まりまして、そうして二、三年に一度ずつ・放射性、物質に対する影響ということを考える際は、こういう考えで考えたらよかろうという意見を発表しております。そのごく最近に出ました意見書の写しがここにございますが、それは一九五四年の十二月一日に改訂されたむのでありまして、リコメンデーションズ・オブ・ザ・インターナショナル・コミッション・オン・ラディオロジカル・プロテクション――放射線の防御に関する国際委員会の勧告というものでありまして、こんな分厚いものでありますが、大体印刷して八十八ページございます。この考え方をとにかく採用するのが一番この際学問的に考えても無難であろう、こういうことで採用いたしまして、この刷りものの中にありまする第八表という非常にめんどうな表がございますが、この表も実はこの中にありまする表をそのまま写しとってあるわけなんであります。そういうような意味でこういうことを考えたらよかろう、そういうわけで一応考え方がまとまりましたので、それを厚生省の方に提出いたしまして、小委員会としてはこういうふうな考え方に到達したから、もし厚生行政の上で何か実際の措置をおとりにねる場合にはこういう考え方に基いて実際の措置をおとりになればいいのではないかということを意見として出したわけであります。それが厚生省からの刷りものになって各方面に配付された、従ってそういういわれ因縁でありますので、この刷りものだけをごらんになりますと、これがすぐ実際の厚生行政的の措置にはぴたっと当てはまらないのであります。それからなおこういう非常に分厚い、長年にわたって各国の専門家が検討いたしましたところから一部だけを抜き取ったという格好になっておりますので、これの抜萃と言えば抜萃でございますが、そういうわけでございますので、このほんとうの勧告書を全部理解した上でないと、この許容度のほんとうの考え方がどうもすっかりのみ込めないように私たちも思いますので、その点について各方面でいろいろ誤解あるいは御質問等がありまして、私たちも方々にお答えしておるのでありますが、そういうような考え方で、この刷りものができたのであるということをまず最初に私から御説明しておきまして、あとでまた一々の問題については時間がありましたら御説明申し上げたいと思います。失礼いたしました。
○佐々木委員長 次に武谷参考人にお願いいたします。
○武谷参考人 どういうことをお話していいかよくわかりませんけれども、このパンフレットについての考えを言えとおっしゃるわけでございますが、今都築先生からこのパンフレットのできました経過をお伺いいたしましたけれども、このパンフレットを見ましてわれわれが考えられることを順々に申し上げます。これは大体五十四年のリコメンデーションという今まで普通に放射線に対する許容量とかいろいろ言われておるのは、すべて放射線を扱うそういう仕事に携わっている人たちに対するものである。ですからたとえば物理学者とか放射線を扱っていらっしやるお医者さん、それから原爆工場で働いている人、アイソトープを扱っている人、そういった働いている人に対するものが許容量というものであります。それからまたお医者さんが患者をお扱いになる場合の患者に照射する場合に、許容量というようなことが考えられるのであります。つまりその許容量というものに対する概念として一生の間に感知されるような障害をからだに起さないであろうというような程度のことを言うわけであります。ところがその程度の放射線を受けていても、一生その人はお医者さんにその放射線ということでかかることはあるまいというような、大体そういう考えがもとになっている。われわれの知っていることはそういうことなんであります。ただこういう許容量におきましても、たとえばアメリカのいろいろな原子力の本をごらんになりましても、たとえばステフェンソンのものでも何でもごらんになりますと、放射線を扱うときの根本的なフィロソフィーはできるだけ放射線に当らないということである。もし当ってもその一生を通じてそういう障害はないであろうというけれども、しかしそれがはっきりはしないのだ。つまりそういう障害があってもしようがないかもしれないというようなことが書かれてあります。ただわれわれ物理学者にしても、お医者さんにしても、それから患者にしても、放射線に当るということは多かれ少なかれ有害なことなのですけれども、それと引きかえに得をしている。得をしているというと悪いですけれども、何か得るところがある。得るところがあるのと引きかえに失うという場合には、これは許容量ということがある程度意味がある。ところが何の関係もない人に、そういう放射線をこの程度なら当ててもよろしいという理由はどこにもないのであります。というのは、放射線というのはからだの細胞の中にイオン化を起すわけであります。このイオン化ということによって、いろいろの形の障害が出てくるわけでございます。それが極端になりますと、第五福竜丸の患者さんたちのようになったわけでございます。こういう極端な場合ですと、いろいろ問題がはっきりするのであります。そのことについてでございますが、ここ応都築先生がおいでになりますが、日本の医学というものは、福竜丸のときに、大へんすぐれた業績を示したのに私は敬意を表するのですが、実はあの福竜丸が帰ってきたときに、われわれ同僚の物理学者がいろいろ測定をいたしまして、それから私どもが判断したのは、大体致死量の放射線を受けている。従ってあの人たちはみな死ぬのではないかというのが、われわれ物理学者の常識であったのです。それを都築先生たちの御努力で被害を最小にとどめられたということは、大へんすばらしいことだと思うのであります。しかしながら、非常に少い量を受けた場合に、どの程度被害が及ぶかというような点については、これはなかなかむずかしい問題のようであります。しかもだんだん少くなって参りますと、これは一生お医者さんにかからなくていいのやら、またほんとうにどの程度からだに障害を受けているのやらということが、だんだんわからなくなってくるようであります。これは都築先生からあとでいろいろお聞きになるとよろしいと思いますが、その場合にも、われわれ都築先生を前に置いてこういうことを言うのは悪いかもしれませんけれども、われわれ物理学者もお医者さんも、割合放射線に対しては――特に都築先生などは放射線でいろいろ困っておられたので、ずいぶん敏感でありますけれども、われわれ物理学者や普通のお医者さんは、病気にさえならなければいいんだというような考えで処しているわけで、放射線に対しては大へんルーズな考えであります。それからもう一つは、放射線の危ないということが戦後になってますます厳重に言われるようになって参りました。戦前われわれは放射線をそんなに危ないと思っていなかったのです。私自身猛烈にサイクロトロンやら何やらで放射線を浴びた経験があるわけであります。その場合にも、困ったことにはすぐ結果が出てこない。それからたとえば六百レソトゲンという量を人間が受けた場合に、それがどの程度――これは六百レントゲンで致死量といわれている。ところが六百レントゲンが果してどういうわけで致死量になっているかということも、おそらくあまりわかっていない。これを見ますと、からだの中にイオン化をする比重というか、密度といいますか、その比重とか密度ということから当っていきますと、あまりどうもはっきりしたことはないので、従ってうんと少い場合に、どの程度の被害を受けるかということもあまりはっきりしないのであります。一番この問題に根本的に触れているのは生物物理学者で、生物物理学者というのは、今こういう放射線と生物の関係を一番厳密に扱っているわけであります。従ってこの生物物理学者の意見が、少い放射線に対しては一番重要であるというふうに私は思うのであります。ところが日本には残念ながら生物物理学者というのは大へん数が少い。たとえばわれわれの立教大学には村地君というのがおります。それから関西には西脇君、その他大へん少い数しかいない。今後こういう人たちをうんと養成しなければいけないのじゃないかと思う。それはそれとして、ここで三百ミリレントゲン・パー・ウィークという量が出ておりますが、これはその上の方の説明で「遺伝に及ぼす影響の研究が進み、そのためこの基準が改良された場合には、それに従うべきである。」まことにその通りでありますけれども、一般大衆と放射線を扱う少数の人たちというのをやはり峻別される必要が、こういう表現のときにはもっとあるのじゃないかと私は思います。特に「三〇〇ミリ・レントゲン・パーウィークという基準を、一般大衆に適用するため、そのを許容線量の基本とする。」というふうにありますが、三百ミリ・レントゲン・パー・ウィークというのは、五四年の職業的な人に対するものでありますが、それを大衆に適用するために十分の一というふうにされた。大衆ならばどうして十分の一になるのかということの根拠が、私にはよくわからないのであります。百分の一でなければならぬのかもしれませんし、厳密にいえば、一般大衆が受ける理由は一つもないのですから、受けないのがいい。そういう点からいってどこまで許されるかということの根拠が大へん少い。それから一般大衆と放射線を扱っている専門家との違いという点においては、遺伝の問題が大へん関与してくると私は考える。これは少数の専門家の場合には、遺伝の問題というのはあまり重要性を持っていない。それはいろいろ配偶によって散らばっていく。ところが一般大衆の場合は、それが受けた場合には、遺伝的な影響というものは大へん大透くなってくるわけであります。ですから遺伝を無視するということはいけないと思います。 それから、研究が進んで基準が改良された場合にはというふうにありますが、どうも五四年リコメンデーションというものは遺伝に関することは含まれていないというふうに私は聞いておるのですが、一般大衆の場合にはどうしても遺伝のことを考えなければならぬ。そうすると、基準が改良をされた場合にはそれに従わなければならぬというのは、一見大へんいいようでありますけれども、どうも相手に対しての使い間違いがあるのではないか。つまり大衆とそれからそれを扱っておる人と。その場合に一番極端に現われてくるのが、子供の場合であります。つまり三百ミリ・レントゲン・パー・ウィークというのは・これは労働している人ですから当然おとなであります。ところが子供の場合が問題になるわけです。一般大衆というのは子供を含んでおるわけです。子供というものはからだが小さいですし、それからいろいろの点で放射線の影響を受けやすい。これは都築先生にお尋ねになればいいと思いますけれども、つまり働ける人は健康者であり、病人ではない。病人と健康者との区別とか、いろいろな問題が一般大衆といわれる場合には含まれてくるのであります。従ってこういうことをもう少しはっきりさせて、根本的な考え方をはっきりさすのが必要ではないかと考えるのであります。 それからアメリカの基準と日本の基準との場合に、生物物理学者が申しますのには、アメリカでは栄養がいいので、栄養にも関係する。つまり栄養が悪い人たちと栄養がいい人たちとでは、放射線の影響が違うということも考えられるということを言う生物物理学者もございます。ですから根本的な考え方は、放射線を何の理由もなしに受けるということはよくない。それから広い大衆が受けるという場合には、遺伝的な問題まで当然考慮しなければならない。大体そういうことであります。あと御質問があればお答えいたしたいと思います。
○佐々木委員長 次にお二人に対する発言の通告がありますので、順次これを許可いたします。岡良一君。
○岡委員 私どもこの委員会においても、水爆の実験もいよいよ強行される段階になったから、政府としても、国民が安堵するところの、また納得することのできるような、どの程度の放射能までならば差しつかえがないという基準を示してもらいたいということを強く要来いたしたわけであります。その結果当時専門の方々によって作られておる小委員会が、いずれ結論を出そうというお約束でございまして、その後、今私どもの配付を受けましたような「放射性物質に対する許容度の考え方」というものが広く公表されました。 私はまず、先ほど都築先生も御指摘のように、今本土から四千マイル隔った所で水爆の実験が繰り返し行われ、しかも史上最大の爆発を遂げたという報告も入っておる。すでに日本の地震計がこれを感じておるという段階でありますから、いずれ日本の大気あるいは雨、あるいはまたひいてはわれわれの欠くべからざる蛋白食糧源である魚類等にも、その影響が出てこようと思います。こういう切実な段階において、許容度の考え方という、きわめて抽象的なものが示されるということは、私どもは政府として十分なる責任をとっておらないものではないかという非常に遺憾なる感じがいたしておるのでありますが、都築先生、許容度の考え方というこういう示し方について、専門的ねお立場からいかがお考えでございますか。
○都築参考人 それでは今のお話に対して、私一個の個人としての考え方を申し上げますが、許容度の考え方というのは少し徹底しないものであるということは先ほども私申し上げた通りであります。けれども、とにかく非常にむずかしい問題に対して線を引くという努力をしたわれわれであるということは、私も認めていいんじゃないかと思います。そこまで申してはなにかと思いますが、私直接の責任者ではないと言ってのがれるわけではないのですが、関係者の一人として、こういうふうな考え方という少しぼんやりしたようなことを一応出したというところは、また別の意味がございまして、いろいろ学問的の考え方から申しますと、先ほども申しましたように、本質的にはっきりした線を引きにくい問題であるのであります。にもかかわらず、何かそこに線を引けということになりますと、結局ぼんやりした線を引くというふうな結果になるのではないか、そのぼんやりした線でもないよりはいいんだと私は思いますので、その線に従って日本政府としては、こういう考えをおれはきめたのだといっておきめ下さることがいいのではないかという考え方であろうと私は思います。従ってこの中には考え方ということは書いてございますが、この中の文句は、先ほど武谷教授から御指摘になりましたように、割合にはっきりした考え方が数字の上においては表われているのであります。現在の学問の上からいったら、こんなにはっきりしたことを今言ってもいいのであるかというふうな非難が必ず出ると私は思う。にもかかわらず、先ほど御指摘になりましたように、この中に十分の一などという数字できちんと表わすことはどうであるかという御意見もありましたが、それをあえて表わしているということは、考え方とは申しますが、その意味においてはとにかく相当努力をして線を引こうとしたということが表われているのではないかと思う。従ってここに表われております数字は、数字でありますから、非常にはっきりしているわけであります。けれども、大体において概論的に申し上げますと、こういうはっきりした数字を一応出しながめてみて、それで実際問題でいろいろ行政的の処置その他をおとりになる場合には、それを基準にして日本の国情あるいは現在の状況に応じたいろいろの措置をおとりになるということがいいのではないか、こういうふうな考え方ではないかと私個人としては考えております。
○岡委員 そこで、先ほど武谷先生も御指摘になったように、この国際的な勧告の内容は、余儀なく放射線の照射にさらされる成人男子の最大許容量が一週間三百ミリ・レントゲンである、こういうことであります。その後この最大許容量の文献を多少調べてみますると、これは先生も御承知かと思いますが、最近、これでは最大ではあるが、通例の基準としてはその十分の一程度のものをやはり考えなければなるまいと、ロチェスター大学のホイブル教授などははっきりそういう線を出しております。ホイブル教授の意見は、放射線の照射に余儀なくさらされる成人男子の許容量の基準と示されておるわけです。そこで、そういう資料とにらみ合せて考えますと、先ほど武谷先生も御指摘のように、これは余儀なくさらされる職業的なレントゲン技術者ではなく、一般大衆、しかも成長の盛んな、細胞分裂の非常に激しい子供たちをも含む大衆に対して、十分の一というところに基準を求めるということは果して妥当なのかどうかという点に私は疑問を持つわけでありますが、いかがでしょうか。
○都築参考人 それでは私からお答え申し上げます。 それは簡単に申しますと、考え方の違いといって逃げれば逃げられないことはないかと思いますが、もう少しその点について考えてみますと、つまりこの考え方は、先ほど申しましたように、国際的の勧告案というものを十分にのみ込んでいただいての上の話でございますので、ここには表わしてないにしても、大体において、国際的の勧告案が、職業的に放射線にさらされる機会の多い成人としての健康の男子を標準にとって、一週間三百ミリ・レントゲンという価が出ているということは申すまでもないのであります。でありますので、できるだけそういう影響は避けたいものであるという考え方は当然この中にも含まれておると私は考えておりますが、その場合いろいろの事情から考えまして、その数字をたとえば百分の一とか千分の一とか、あるいは理想的にゼロとかいうことにいたしますと、現在一方において発展しつつありますところの原子力の平和的利用というふうなものが、場合によっては幾らかブレーキをかけられるようなきらいがあるのではないかというふうな考え方も一方において起りますので、何とかしてその両方をうまく合せて、その中間に一定の妥協の線が出ないものであろうか、こういうふうな考え方から一まず十分の一というふうな考え方が出たものであると好意的に私は解釈しております。従って、これでは少し足りないからもう少し厳重な線を出したいとか、あるいはそういう厳重な線でいろいろな行政的な措置をおやりになりたいということを日本政府がお考えになれば、私たちそれに対して別に反対を申し述べる筋ではないのでありますけれども、一まず両方をにらみ合せて考えたところが、大体十分の一くらいのところに一まず線を引いてみたらどうであろうか、それでまた考えてみて、それがいけなければ考え方を直す、こういう考え方にできているのではないかというふうに私は解釈しております。
○岡委員 武谷先生にお伺いいたしますが、要するに、職業的に放射線の照射にさらされている成年健康男子の最大許容量、それの十分の一の基準ですね。私が知る限りでは、最近それをさらに十分の一に落すというところが、職業的に放射能にさらされている従業員の基準と考え直さなければならないとの意見を、私は権威ある学者の意見として聞いたことがあるのであります。今の都築博士の御意見では、日本でも将来原子力の平和利用ということを考えていった場合には、やはりここに一応の基準を求めねばならない、そうしてそれはこの程度で、さらにまた将来事態によってはこれを変更してもよろしかろうという、その御趣旨も私わかりますが、しかし原子力の平和利用に伴う放射能の障害を防止しようという考え方はすでに国会でもあるわけです。この次の国会には必ず障害防止法を出しますという約束を政府の方でもしておられる。従いまして、原子力の平和利用に専門的に従事される方についての許容量の問題、またその障害の防止の問題は、これは別の問題だと私は思うのです。問題は、今現に史上最大などと言われておるような水爆実験が試みられておる。そしてここの放射能が風に乗って、雨にあるいはお魚に影響を及ぼしてくるという。これは専門的に従事する者ではなく、日本の九千万の国民の足元に、太平洋の波とともにひたひたと押し寄せている、事実としての放射能の障害、これに対して、十分の一という基準で一体いいのか。先ほど申しましたように、専門に従事する者でももうロンドン勧告を十分の一に落すべきだという意見の出ているときに、日本政府がばく然と十分の一という基準を設定されましたことは、責任ある、また妥当なる措置であるかどうかという点、武谷先生の御意見を承わりたい。
○武谷参考人 おっしゃいます通りに、五四年のあともこの職業的な人に対する許容量を減らせというようなことは、いろいろと出ているようでございます。たとえば、これは学会雑誌ではございませんが、ニューヨーク・タイムスに出ていたということですが、ロチェスター大学の人の意見というのが、やはり職業的な場合は十分の一に減らせ、それから一般的にだんだん厳密になって、だんだん減ってくるというのが大体われわれの印象でございます。で、この原子力平和利用の問題がありますが、この場合でも、もちろん職業的な人とそれから回りの大衆とは区別して考えられなければならないと思います。回りの大衆には放射能をできるだけ厳重に、浴びせないようにしていただきたいと思います。と申しますのは、今度東海村に原子力の研究所が生まれましたが、あそこは坪数は大へん広いようですが、私行ってみましたが、幅は大へん狭い。原子炉の予定地から小学校まで五百メートルしかありません。そういうわけでございまして大へん狭い。長さが幾ら長くても、これは何の役にも立たないのでありまして、そういう点でよほど厳重にやってもらわなければ困るのじゃないか。と申しますのは、あそこで働く物理学者たちが、自分が受けるんだから、自分が危険のないようにするだろうというような意見もありますが、それは全く反対でございまして、われわれ物理学者は、幾らからだに放射能を受けても、研究が一つでもできた方がいいという大へん間違った観念を持っているのであります。それからもう一つ、大阪サイクロトロンというのは猛烈なビームを出しておりまして、放射線を猛烈に回りにばらまいております。あの場合にも、人間の考え方というのは妙なもので、大学側の方法によって、大学側にはプロテクションを適当に講じております。前から向うの、反対側の方には倉庫がありまして、そっちの方には全然プロテクションを講じていない。最近そこが工場になりまして、そっちの工場の方には全然プロテクションをやっていない。最近予算が出たそうでありますが、われわれ物理学者というものは大ん利己主義でございまして、自分は受けても人のことまで考えていないということになるので、ですからその点よほど厳重に考えておかなければいけないと思います。 それからもう一つ、こういうふうな最大の許容量とかいうものが出ますと、今度はそれまでなら幾ら受けてもいいというふうに、どうも日本では考え方が変ってくる。その点私は大へん心配しております。むしろ逆に、許容量というよりは危険量という名前でもおつけになった方がいいんじゃないか。そうするとだいぶん考え方が違ってくるんだろうと思います。で、この許容量の考え方にしても何でもそうでもございますが、一般に日本人が衛生問題に対して考えておりますのは、これは戦時中のわれわれの痛切な印象でございますが、どこまで粗食しても人間は死なないか、どこまで栄養不良やっても死なないか、そういうふうな考え方が、栄養学とかなんとかの根本的な精神にどこか無意識のうちに残っているのじゃないか。栄養学とか衛生学とかいうようなものは、人間をより健康にするための学問であるはずですが、これは社会のいろいろの問題で、やむを得ず学者がそうさせられてしまう面もありますが、どこまで粗食しても死なないとか、どこまで不衛生なものを食べても死なないとかいうふうに考えが働かざるを得ないように、社会の方が学者をしてしむけてしまうのではないかというふうに私は考えます。ですから、同じことでございますが、先ほど申しましたように、一般大衆の場合と専門家の場合とをできるだけ区別されるようにしていただきたいと思います。 それから都築先生は、妥協案として十分の一というふうな数字を一般に――都築先生自身ではないのですが、この委員会が考えたのだろうとおっしゃいました。これも妥協案というような点を――政治的配慮でございますから、そういう点で言えば、これはどうお選びになってもよろしかろうと思いますが、私は純学問的にいけば、一般大衆は放射線をなるべく受けないようにするというのが根本精神でなければならない、その根本精神がわかって、そうしていろいろと話を進めていく必要があるように思います。それから以上は、これは妥協の線でありまして、日本国民を将来にわたってどういうふうにするかというのは、これはむしろ学者の問題というよりは、健康とかなんとかの政治家の問題であると思います。学者としては、一般大衆はできるだけ受けない方がよろしい。それからたとい微量でも、何らかの意味での変化、障害は、その人がかりに病気にならないにしても、その検査の方法というのは、つまりからだがある障害を受けている場合に、それを明瞭に検査して出すということは、まだ現在の生物物理学としては十分達せられていないと私は思います。たとえば白血病にしても、そういう放射線を受けた人がいつかそうなるという場合でも、幾ら不断にテストしてもわからないというような場合もあるかと思います。それが突如として出るのですから、どうも十分わかっていないことがあるわけであります。従って、どんな微量でも、ほんとうはあまり感心しない。では、人間は宇宙線とかいろいろほかの放射線を受けておりますが、それに比べて問題にならない量ならばいいじゃないかといろ説があります。もちろんそれに対して非常に少ければよろしいんですが、それと対等ぐらいならばかまわぬというふうなことがいわれております。もちろんこれは宇宙線よりもずっと多い量でありますけれども、しかし、たとえばあるものに対してあるものを無視してよろしいという場合に、いろいろの考え方があるのであります。通俗的にわかりいいように申しますと、たとえば百万円のくじが当った人があるとします。最初の一万円を使うときは、これは百万円に対しては無視してよろしい。最初の一万円はネグリジブルして、ばっぱっと御馳走なさる。しかし最後に残りました一万円というものは無視してよろしいわけじゃないでしょう。それしかないんですから。それを便ってしまえばお終いだということになるわけでありまして、ある量に対してある量は無視してよいという考え方にも、そのときと場合とを十分顧慮する場合があるのであります。従って、この問題は大へんむずかしい問題だと思いますが、学問的には、できるだけ受けねい方がいい。それから、それ以上やむを得ず受けるとかいろいろな場合には、政治的な問題がそこに入ってくると思います。従ってそういうふうに政治的な観点から、日本の国民の将来をどうするかというふうな問題にねってくるだろうと私は思っているのであります。
○岡委員 問題は、第一にお示しいただいたように、この国際的な勧告の基準の十分の一と、ワクとしてきめてあるこの基礎に、科学的な責任ある基礎が私は見出しがたい。そうしてまたこの考え方の中にも入っておるように、問題を多く将来に残してある。従ってこういう取扱い方で、今現にわれわれ国民に襲いかかろうとしておるアメリカの水爆実験による放射能の影響というものが、いわば確率に基いて処置されるという考え方が、私どもとしては非常に納得がいきかねるのですが、これは政府の方々に対する質問でありますので、この程度にいたします。 実は特に都築先生にお教えを願いたいと思いますのは、最近の水爆時代になりましてから、爆発をした場合に生ずる放射能の粉塵の分析結果が、まことに容易ならぬ事実を示してきておるというようなことを聞いておるわけです。この間も学界における新潟医科大学の小山教授の御発表を見ると、トリウムをケージングにしたとおぼしきシベリアにおけるソビエトの実験において、粉塵の中におけるストロンチウムとバリウムの比率が、これまではストロンチウムがバリウムの約三分の一程度であった、それが全く逆になってきて、ストロンチウムの含有の比率が非常に多いということが報告されておるのです。そういうことに相なりますれば、これは量の問題でなく質の問題として、私ども重大な関心を持たなければならないと思うわけですが、先生はこの間も国際委員会等でもいろいろ資料を多く得ておられると思いますから、もしそうであれば大へんなことで、質の問題としてよほど考え直さねばならぬ。ここに示されておるように、十分の一マイクロ・キュリーで差しつかえない、しかしその質の結果によってはまた左右されると思うのでありますが、この間の事情はいかがでございましょうか。
○都築参考人 それでは私からお答えいたします。 この問題は非常に重大な問題で、私も絶えずこれに関心を持っておるのでありますが、ただいま方々でこういうような実験が行われます結果、われわれのところに入りました資料を分析しております専門家のいろいろな成績を、私も相当詳しく聞いておりますが、今おっしゃった通りに、やはりと哲どき成分が非常に違う。一昨年の三月でございましたか、ビキニの事件の起りましたときは、とにかく成分が初めわれわれにわからないというので、その成分がどんなものであるかということ、つまり成分と申しましても、何と何が含まれているというのでなく、その含まれているものがどのくらいの割合で含まれているのだということが、実は知りたかったわけです。それでいろいろ奔走もいたしましたが、なかねか正確な資料が得られねかったものでございますから、日本の学者の手で急いで分析をしてもらって、大体の見当をつけて犠牲者の治療に当ったようなわけでございます。その後世界の各所でいろいろ分析がやられておりますが、どうもやはり今おっしゃいました通り、爆弾としての性質、その内容が、われわれにはよくわかりませんが変ってきつつある、――そういう方面の人から言えば、進歩しておるという言葉がよく使われますが、いろいろに変ってきつつある。従ってその爆発の際にできる放射性のちりの成分並びにそれに含まれている分量の割合が変ってくる、こういうことが現実の事実として現われております。従って今後それがどんなに変ってくるかということもわからないのでありますが、あるいは変るかもしれないということは想像できるのであります。そういうことでありますので、私実はこの「考え方」という書類が出ましたときに、これだけごらんになると、ひょっとすると皆さんもいろいろわかりにくい点も多かろうし、また場合によっては誤解というふうなことがあっては何だというので、実は朝日新聞に短かい意見を発表したことがございまして、お読み下さった方もおありかと思うのでありますが、この中にも、水でも空気の場合でも、ある程度の放射性物質を認めた場合には、まず第一は国際委の勧告案のそのまま――これは十分の一ではなく、国際委の勧告案のそのまま以上のものが見つかった場合にはそれを分析する、そして分析してみてその中に含まれているもので、ことに人体に対して有害であると思われるような元素があるかないかということと、もしあった場合にはそれがどういう割合で含まれているかということを分析して、そしてその次にそれに対する態度をきめる、こういうような言い方になっておるのであります。かってアメリカの原子力委員の一人でありましたリビーさんが、一昨年にビキニで爆発しましたような爆発が起った場合に、空気中にどういう程度の元素がどのくらいな割合に含まれるようになるかということを計算いたしました。そうしてそういうことは実際にあるかないかは別問題といたしまして、もしもかりに地球を取り巻いております空気の中に、一様にまんべんなくそれがばらまかれたと仮定するならば、そういう仮定を一つ置いて、もう一つはその中に今お話に出ましたストロンチウムというものが、ある分量含まれておるというデータがわかっておりますので、そのストロンチウムというものが人体に対して害を及ぼすであろうと思う分量、いわゆる最大許容量とでむ申しますか、そういう分量を一方に考える、その二つの問題をあわせて考えてみて、一昨年のビキニ程度の爆弾が何発爆発した場合に、地球を取り巻いておる空気が、人間に対して危険を及ぼす程度にまでストロンチウム九〇の元素を含むであろうか、こういう計算をして発表いたしました成績によりますと、五百五十発以上爆発を起せば、地球上を取り巻いておる空気は、もう人間に対して有害になるということを発表しております。けれどもそれは今申しましたように、いろいろ仮定を置いての話でありますので、もしその放射性のちりが平等でなく、不平等にふりまかれるということになれば、全然話は違うことになります。というのは、その五百五十発という数が変ってくることになります。多分それは少くなるだろう、それからもう一方は、この場合はただ空気の中へばらまかれるということだけを物理学的に計算をしましたので、もしこれが海の中にでも入り込んで、海流によって流れるということになれば・また話が違います。それからまた海の中に生存しております生物というものがそれを食べて、だんだんに生物としてそれを運搬してくるということになれば、また話が全然違ったことになる。そういうふうなことを考えて、だいぶんいろいろ委員会の間には議論があったのでございましょうが、まあ一つこの際はこういうふうなことにしようかということでありますので、この考え方から出発いたしますことは、結局将来そういうふうな放射性のちりが認められた場合に、その中に含まれておる元素のただ名前だけでなく、その一々の元素がどのくらいの割合に含まれておるかというようなことも分析してデータを出してみよう、こういう考え方になっておりますので、従ってそれは厳重にと申しますか、もしそういう確認が不幸にして今後繰り返して行われるとすれば、そのたびごとに相当に詳しい分析をしてそのデータを出していかなければならぬ。そしてその結果、どうしてもこれ以上はいけないということになりました場合には、そこでまた別の何か声明といいますか、意見書を提出しなければならぬということは、私は当然われわれに与えられた義務でもあり、またわれわれとしても人類の一員として当然そういうことをやるべき権利があるのではないかというふうに考えておるわけであります。
○岡委員 先生の御指摘のように、サン・シャイン計画と申しますか、今のリビー委員が提唱しておられる五百五十何発説は、水爆そのものが爆発の都度生ずる粉塵の性格が違ってきておるというようなことも無視されて、ビキニのあれを基準として風向きやいろいろな条件を全然考えておらない。しかしやはりアメリカの原子力委員会はあれをたてにとって世論指導をしているような感じがするので、これは日本の学者としては、今度の実験に対してはよほど慎重なかまえで――アメリカ国内でもすでにあのリビー委員の考え方、サン・シャイン計画の考え方をたてに取って、ストローズ委員長あたりが比較的楽観的な意見を吐かれることに対しては、アメリカあたりでも良心的なカリフォルニア工科大学のスターテバント博士ですか、ノーベル賞をもらったあの方なんか全然とんでもない語だということで反駁しておられるわけであります。 それはそれといたしまして、具体的に、たとえば一昨年のビキニのときにはマグロを相当廃棄処分にいたしました。ところがその後の結果によると、マグロについては少しと申しましょうか、敏感であり過ぎたというような考え方から、ことしは陸揚げのマグロについては大体検査はしないという方針のように私、聞いておるのであります。ただ、マグロが大したことはなかろうというのにはいろいろ理由があるようであります。たとえばマグロが小魚を食べる、あるいは小魚がプランクトンを食うという過程で、マグロの中に放射能を帯びた粉塵がかりに吸着するとしても、それは主として内臓とか血管系統でありまして、人間が食べる肉にはあまりなかろうという考え方もあるようであります。ただ亜鉛六五が特に選択的にマグロに吸着しておるということを聞いておるのでございますが、そういう事実はあるでございましょうか。
○都築参考人 今おっしゃいましたように、この前のビキニのときには、マグロのおもに内臓でございますが、亜鉛六五というものが見つけ出されております。これは実はその方の専門家の意見を聞きますと、初めには予測されなかったことなんです。これは原子核の分裂というものからでなく、私の聞いておりますところでは、何か爆弾の装置の中に含まれておったものからきたのではないかというふうな考え方がありますので、今後も何か爆弾の作り方が違ってくれば、どんなものが現われてくるかもしれねい。ところでこれまでは主として人体に作用するものとしてはストロンチウムというものが問題になっておりましたが、ストロンチウムは主として骨の中に入りますので、マグロのような問題ではあるいは問題にならないかもしれませんが、最近問題になりましたのは、セシウム一三七番でございます。セシウムという元素がありまして、これが肉の中にどうも入るんじゃないかという研究の結果がだんだん発展されて参り、これをマグロの肉の中にまだ見つけた人はないのでございますけれども、もしそういうふうなものが――セシウムというのは強いガンマー線を出しまして、それの相当分量が当れば害があるのでありますが、それがもしマグロの肉の中に入るということであれば、ビキニの場合の考え方とはまた別の意味において変ってくる、こういうことも言える。 それからもう一言、先ほどのことについて私、個人的の意見を申し上げたいのですが、今から考えてみますと、私自身にしても、確かに一昨年のマグロ事件は、少し騒ぎ過ぎたと言われれば、確かに騒ぎ過ぎたですね。それはもう事実です。けれども、これは一方立場を変えて考えてみますと、われわれ人間の健康障害になるかもしれないという事件が起った場合は、まあ大体の方針としては初め少し大げさにと言っては言葉が悪いかもしれませんが、慎重に、少し用心し過ぎるというふうなことが、予防医学といいますか、そういう方面の根本の考え方だろうと思います。まあこの辺で大体大丈夫だろうといっていいかげんなところで線を引いて、あとでそうでなかったらまことに申しわけないのですが、非常に厳重なる用心深い線を引いておいて、まあるとであなん騒ぎをしなかったらよかった――それは病気を実際治療する場合によくあるのです。いろいろなことをやって大騒ぎをしてあとになってみると割合に病気が簡単におなおりになると、何だあんな大騒ぎをしなくてもよかったのじやないかという非難を受けるのですが、それはわれわれは日常臨床家としては甘んじて受けておりますので、今度もそういろ非難を全国至るところて私の耳にいたします。それは私は甘んじて、受けておりますが、二年間いろいろ検討をいたしました結果、もし今後の日本に対する影響が一昨年のような程度と同じようねこと旭あるとすれば、あれほど騒ぎをしなくてもいいじゃないかというふうな感じは持っております。それはどこまでも一昨年のビキニ事件と大体同様のことであったとしたならばという前提があるわけでありまして、違うものであるということでありましたら、またあるいは、大騒ぎをいたしまして、何年かたってまた非難を受けるということも繰り返すかもしれません。それは実際問題としてもし私が責任者でその衝に当るとしたならばやむを得ないことではないかというふうな――これは言いわけのようになるかもしれませんが、そんな感じを持っております。
○岡委員 まあオブザーバーでここに当の楠本さんもおられますが、きょうは楠本さんにお尋ねする機会でもありませんから……。それでは先生、今後はマグロはもう検査する必要はない、こういう取り扱いでいいんでございますか。
○都築参考人 それは厚生当局のお方はどうお考えになるか知りませんが、私個人としては、全然検査しなくてもいいということには賛成しかねるのです。というのは、言いかえれば検査をすべきだ、ただつまり一々の魚を市場で全部検査すべきであるか、それともある特定の――抜取り検査と申しますか、ある特定のものだけ検査をすべきであるか、それは私個人としてはちょっときめかねますが、むろん費用をかまわず、どんな大じかけなことをやってもいいというのであれば、やはり全部調べるにこしたことはないのだろうと思いますが、それは日本のいろいろな経済問題や何かもお考えになって厚生省がおきめになるのだろうと思いますけれども、全然検査をしなくてもいいという考え方には私は賛成しないのです。従って最近俊鶻丸が二十六日に出航いたしますが、あれなんかもとにかく急いで行って魚をとって検査をしょう、こういうことでその検査をなさるということは、私は非常にけっこうなことだと思う。従ってそういうことで検査をして資料が得られれば、それから今度問題がまた別になって、だから今度はこうすべきだというような意見も出てくるのでは血いか、検査はやはりすべきであろうと思います。それを厚生行政的にどういうふうに実際におやりになるかということは、私、直接責任者であり季せんから別に意見はございませんが、学問的に申しますと、とにかく検査は何らかの方法でやはり今後も続けて行うべきではないか、これは一昨年の暮れに厚生省として検査をおやめになりましたけれども、その後もいろいろな機会にわれわれの同僚はいろいろな材料を得て今日まで実は検査を続けておりました。だからいろいろな実験的な研究もやっております。
○滝井委員 今のことにちょっと関連してお尋ねしたいのです。それは、さいぜん武谷先生もおっしゃいましたが、われわれしろうとは、今までこういう放射能の被害なんというものは、やはり医者か物理学者だけの問題だ、こういう考え方でおったわけなんです。ところが一昨年の春以来のあのビキニの問題以来非常に放射能のちりに対する問題、それから出てくる被害の問題が国民の中に不当なまでに浸潤してきたわけです。昨日早朝にアメリカが再度違った形で、今度は空中から実験をやる、こういうことになったわけですね。そうすると、今のお話ではマグロの検査もやる方がいいという御意見があったのですが、それについては、やはりマグロの検査ぼ俊鶻丸その他でいろいろとってやられることになると思うのですが、問題は国内における放射能のちりによる空気の汚染、あるいはそれに伴う雨として降ってくる水、それから野菜、こういうようなもの、日本の領土の中におけるそれらの食品や空気や水に含まれるちりというものが人体に有害であるか無害であるかということを早く国民大衆に知らせることが必要だと思うのです。そのための学者陣営における調査の準備態勢と申しますか、そういうようなものが現在できておるのかどうかということなんです。できておれば、それが具体的に、もう一週間か十日の後には――きょうの気象台等の発表では、もっと早くちりがやってくるんだということになつておるのですが、そういうものに順応して、国民の世論が不当にノイローゼに陥らないだけの態勢、現在の日本の学者陣営の中で、そういう準備、そういう発表ができるだけの態勢ができておるのか、こういうところがわれわれ国民としては非常にお聞きしたいところなんですが、その点を一つ、ただいまの岡さんのマグロとの関連において、両先生から御説明を願えれば、われわれ非常に安心だと思うのです。そうしないと、一々学者の方々が雨をとって調査をする、その結果がニュース映画なんかに出るということになりますと、国民の間にどうも野菜を食ってもいかぬのじゃないかというノイローゼが非常に起ってくるわけなんですが、こういう点一つ先生方の御見解をお伺いしたいと思うのです。
○都築参考人 それでは私から……。楠本さんがおいでになりますから、実際問題は楠本さんからお答え願ってもいいかと思います。先ほど申しましたわれわれの関係しておりまするいわゆる原爆協議会というものが、形の上からいったら大体それに当っておるわけでありますが、現在実際問題としては、空気並びに雨というものは、中央気象台を中心といたしまして、全国の気象台が十四カ所、それから南方の船が一カ所、大体十五カ所で日本全国に網を張って、毎日二十四時間ぶつ通しで検査をしております。これはすでに一年以上前からやっております。さらに最近ではその陣営を強化してやっております。それらから刻々資料が集まりまして、そしてその資料をわれわれの協議会でも判断し、それを厚生省の方に通報をして、厚生省の方で適当の処置をとっていただく、こういう陣容がきまっておるわけでありますが、そのほかに、直接この協議会に関係のない方で、学問的にこういう方面に興味を持っておいでになります方で個々に自分の研究室でおやりになっておる方もございまして、そういう方もどうせ専門が同じでございますので、みんなお互いによくそういうふうな文通その他の連絡がありますので、異常なことがどういうところで見つかりましても、すぐそれがわれわれの手元に集まります。ことに原爆協議会の中には環境衛生部会というのと食品衛生部会というのがございます。なおそのほかに医学部会と、広島長崎部会と四つあるわけでありますが、この問題に今一番関係のありますのは、環境衛生部会と食品衛生部会で、それが人体に何かどうかなということになると医学部会というものに関係がございます。私は医学部会の部会長をしております。そういうふうなものがお互いに連絡をとりまして、ときどき集まりまして、お互いの資料を持ち寄って、少し何かどうかというふうな場合には、すぐ厚生省に連絡をとる。それには厚生省の方から始終係の方が一緒に見えております。そういうことで、現在の状況としてはできるだけ万全な策をとっておるということだけを、私から大体の筋道を申し上げ、なおその上補足することがありましたならば、責任者であります厚生省の楠本部長からお話を願ってもいいかと思います。
○岡委員 魚の取扱いもあわせて楠本さんからも一つ……。
○楠本政府委員 魚の取扱いにつきましては、先ほど来先生方からお話もございましたように、今回の実験が全く前回同様の性質のものであったとすれば、その必要はないと存じます。しかし先ほど来お話が出ておりますように、今回の実験が前回と同様なものだということはいまだわかりません。そこで私どもはどういう性質のものであるかということを最もすみやかに知ることが必要でありますので、すでに各府県の水産指導船、あるいは特殊な漁船等にお願いする一方、特にに俊鶻丸を派遣いたしまして、それらの総合的な材料に基きまして爆弾の性質をきわめ、それによって対策を立てていきたいというのが今の考えでございます。従ってその結果がわからない間、つまり前回のものとどのように違うか、同じものであるかというようなことを見きわめることが一番早急の問題である、かように考えております。
○滝井委員 実は僕らが非常に心配するのは、かつて黄変米で、黄変米の毒性というものについて、学者の間で二つの論に分れたわけなのです。やはりこういう学問的に見ても非常に未知の領域の多い部分の見解というものは、多くの点で国民を混迷に陥れることが非常に多いわけなのです。こういう点に対して、も許容量等の問題も含めまして、総合的な調整をやって国民に発表出していただかなければならぬ段階だと思うのです。たとえば地上で水爆実験をやった場合と空中でやった場合では、もりに対する放射能の含有の点でどういう工合のものになるかというようなことについて、学者の間で意見の相違を来たし、それが今都築先生の言われたように、医学部会、環境衛生部会、あるいは食品衛生部会というようにきわめて連絡のあるところでやって一本の線で発表していただくことはいいが、別に学者が寄ってやっているのだということになると、その学者が勝手に自分の見解を御発表になると、それを現実に読む国民としては非常にわからなくなってくるという点があると思うのです。そういろ点の学問的な調整の問題、これは厚生省もこの前の黄変米の問題でおこりになっておると思うのですが、両先生方と厚生省両方にお聞きしたいのです。この問題は、私は許容量との関連においてきわめて重要だと思うのです。こういう取扱いの問題はどうなっておるのか、これをあわせてちょっとお尋ねしておきたいと思います。
○都築参考人 その点は、神経質になって、すべての日本の学者を統制するというのですか、まとめるということもなかなかむずかしいことでございますが、原爆協議会というものにはおもなる専門家に大体御関係を願っておる、いわば直接間接に御関係を願っておるというようなことから、その調整はできるだけとっておるというふうに私ども承知しております。けれども、結局何か新しいことが見つかりますと、すぐそれが地方の新聞なんかに出るということで、そのことが出ます場合に、ほんとうに害があるかないかということはわからない問題にしても、何か出ますと、皆さんが御心配なさるということはもっともなことでありまして、なるべくそういうことが起らないようにということは、関係者一同がみんね非常に努力しておりまして、できるならば割合早い時間に一定の成績が得られたならば、今回のはどうもこういう性質らしいからというので……。ところが実際もう二年以上この協議会をやりました経験から申しますと、その間には学者の間にそうひどい意見の食い違いというものはないのじゃないかというふうに私は思います。そういうことで現在は進んでいるというふうに私は了解しております。
○岡委員 都築先生には、実はいろいろ教えていただきたいことを用意してきたのですが、お急ぎのようでありますので簡単に伺います。実はこの間ビキニの乗組員のその後の生殖細胞についてお調べの結果を求めましたところが、政府の方では十分御存じなかった。そこで私間接に東大の放射線研究室の方へ照会してみたのであります。こういう結果が出ております。結論から申しますと、ビキニの乗組員は御存じのように大体一CCに五、六万の精子が五、六百までに減っている。この状態は一向現在も改善されておりません。少くとも東大の放射線研究室が最近に検討したもののデータとしては、改善されておらないのです。それで私亜鉛六五がマグロにあったという問題と関連して、亜鉛六五は、特に生殖細胞に沈着をするというきらいがあると聞いておりますが、また亜鉛六五は問題にしねいといたしましても、モンテ・ベロで英国がやる、来年は本格的な水爆実験をクリスマス諸島でやる、あるいはアメリカも十二回はやるとかハンソン・ボールドウィンは言っておるのですが、こういうふうに連続的に太平洋で水爆実験をやるということになると、直接の遺伝的な問題は別として、結局総放射線量が日本国民に与えてくる影響というもの、こういういわば突然変異というような遺伝的な変化でなく、むしろ生殖細胞あたり、ビキニの事例を見てもかなり憂慮すべき影響を与えるのではないかということを、私は実は心配をするわけでありますが、その点は先生の御専門ですが、いかがなものでしょうか。
○都築参考人 その点についてお答見いたします。これは少し話が個人的のことに立ち至るかと思いますので、ははなはだなんでございますが、それはお許しを願って、私の存じておりますことの真相を少し申し上げたいと思うのです。一昨年の事件で障害を受けられました方は、大体事件後一年くらいたちましたときに、一番生殖能力というところから考えて衰えた最低のところにあったのではないか、それが大体二年たちました現在、皆さんとにかく回復の途上にあるということは事実であります。それは人によって違うのでありますが、百の単位の方もあり、中には千の単位の方もある。何とかして早くそれを万の単位に持ち来たしたいと思うのでありますが、その点は、とにかくこれまでいろいろな事故のためにそういう障害を受けられましたことの研究が、世界の各国で散発的にでありますけれどもございますが、その結果から申しましても、大体二年たちますと回復する、こういうことになっておりますので、大体二年たちましたならば回復するかと考えます。その点についてちょっと言い方が悪いかと思いますが、実は生殖能力ということを考えますと、精子の数そのものよりむ、実際にそれが生殖能力があるのであるか、ないのであるかということが問題であって、あの中に二、三その後結婚をされた方がございまして、その結婚された方が妊娠されるかどうかという問題について、私ども非常に関心を持っていましたが、最近一人妊娠をされましたということが報道されております。現在妊娠五カ月、先月が五カ月でありますから、もう六カ月であります。婦人科の方の診察では、その妊娠は異常がないように思う、こういうことでありますので、もう何カ月かたちました時分に、果してもし御丈夫な子供がお生まれになるということであれば、回復ということの見通しがよほど明るくなるのてはねいか、こう思います。けれどもそれは別といたしまして、とにかく何かそういう作用を受ければ生殖能力に影響があるということだけはもう事実認められましたので、今おっしゃいますように、それが多くの方にたとい程度が軽くても影響があれば、これは純学問的の話としてお聞き願いたいのですが、場合によっては人類の将来に対して幾らか暗い考え方も起るのではないか、すなわち言いかえますと子孫の数の減少という問題であります。これは動物実験なんかでも確かめられているところでありまして、ある時期にある程度の放射線が作用いたしますと、動物の子供の数が非常に減るということは、もう実験的に成績があげられておりますので、それが人類の場合にもあるいは適用されるのではないかということを私実はひそかに心配しておりますが、もしその心配が将来に現われることの危険が非常に大きいということであれば、先ほどのお話のように、なるべく放射線は受けないような処置をとるということが一番賢明な策ではないかと考えております。
○岡委員 最後に、実は私いただいた御返事によりますと、広島の被害者は、これは先生親しく調べておいででありましょうが、これもまたやはり精子が一CCに五、六万程度あるものがうんと減って、二、三年後には大体回復を見せているが、回復しない者もある。それからビキニの方は、まだその回復の徴候は確実には認めていない。今おっしゃったその精子の数ではどうも子供を生むということには不可能な程度ではないか。それから今おっしゃった妊娠したということもよく調べてみたところへ返事が来ているわけですが、これは事実どうなるものでしょうか、私もまた調べてみたいと思います。それからやはりこの諸君は奇形児ができるのではないかということから、受胎調節的な努力をやっているように思われる点があると言ってきております。そういうことはやはり間接的に子孫の繁殖という問題と関連して最も深刻な人間の不安だと思う。ただ問題は、先ほど申し上げましたような持続的な水爆実験によって、魚、空気、水等を通じ、日本に放射能粉塵がおとずれ、それかわれわれの体内に摂取され、中には亜鉛六五のような生殖細胞を特に好む、てこに沈着して組織を破壊するようなものがあり得るということになると、こういう問題について、将来の研究に待つというようなのんきな考え方でなく、ビキニの例もあることだし、もっと具体的なデータの上の責任ある考え方が出ていいのではないかと実は私は思ったわけです。 それはそれといたしまして、私、先生に二点お伺いしたい点は、そういうわけで、いずれにいたしましても放射能の灰の分析ということが非常に重大な問題であります。そこで俊鶻丸も出ていってくれるようでありますが、しかし、やはり爆発の時期とのタイミングの問題もありましようし、その位置の問題もありましょう。そういうことから灰の分析をし得るいわばサンプルを現在日本でも網を張って待っておるわけです。立教大学の方ではかなり精密な機械も用意されて、集塵をされるように聞いておりますけれども、現在の日本のやり方で灰が収集できて正体が突きとめられるという、科学的な立場からこの態勢で十分だと先生はお考えでしょうか、その点をお聞かせ願いたい。
○都築参考人 それはなかなかむずかしい問題でございますが、まあ純学問的な立場に立って申しますと、一言で申しますれば私不十分だと思います。もう少し費用をかけてそういう調査をすべきではないかと思うのでありますけれども、実際問題として、いろいろ困難な点もおありになるのだろうと思いますが、大体は現在の程度で間に合うのではないか。灰の分析と一言に申しますが、これはアメリカの原子力委員会の計算でございますが、一つのサンプルを分析してその中の元素や何かの性状並びに分量をきめますのに、大体アメリカのニューヨークでやりまして、一回の分析が百ドルかかる、そういうことがもし日本で毎日々々何百という資料を分析しなければならぬということになりますと、今のわれわれの国の持っております設備では不十分ではないかということはもちろん考えられると思います。もちろん、われわれのもらっております研究費ではとうてい足りないわけでありますが、そういう意味で一方において不十分とは考えられますが、そうかといって無理も言えないといういろいろ筋合いもありますので、それで最小限度どうにか間に合う程度の陣営は張って、日本の国としてはできるだけのことを今やっているというというふうに、私は一応好意的に解釈しておるわけでありますが、決して現状で満足しておるのではないということだけは申し上げられると思います。
○岡委員 せっかく御存じのように衆参両院も水爆の実験はやめてくれという決議をいたしましたけれども、言うことを聞いてくれない。そして現に今やっておる。そこでこうなった上は、もちろん実験をやめろということは全国民の悲願ですから、いついつまでもやる限りこちらはその声を高くしていくということはもちろんでありますけれども、しかしやられる以上、やはり太平洋沿岸諸国、特にアジアの中では一番科学的に水準が高いのではないかと私思うのですが、この日本の学界、むしろ政府の責任において日本の学界がこの実験の影響の調査をやる、政府もうんと予算をふんばってほんとうに信頼し得るりっぱな影響調査の資料を作って、これを全世界に広く公表する、このことがやはり大国の水爆実験強行という間違った考え方に対する、また実験を断念せしめる大きなてこになるだろうと私は思うわけなのです。それにつきましても御指摘の通り政府の現在の対策は非常に心もとない。 そこで、それはそれといたしまして、先生、国連の放射能障害国際委員会に御出席せられました。私は心中しましたようにこの影響の調査については日本の科学陣が総力をあげてしっかりしたデータを作って、これを全世界の科学者に公表する、このようなことが先生の御出席になったあの国際委員会でも可能なわけでございます。ところが、先生はよく御存じだろうと思いますが、あの方式ではやはり発表の自由というものについて相当な制約を受けるのじゃないかというようなことをインドあたりでは案じて、別途に一つこの問題を取り上げようというような意向を出したようなこともあったようです。現に去年の平和利用会議でも、やはり日本の広島、長崎等の経験についての発表ねんかも相当忌避されたようなことも私聞いておるわけですが、先生の御出席のあの国際委員会でほんとうに私どもの念願する、大国をして水爆実験を禁止せしめる、断念せしめるためのデータというものが、政治的な制約を受けずに、堂々とあの舞台において発表され、周知せしめる、こういう期待が確実に持てるものであるかどうかという点、これは先生親しくそのメンバーですが、一つ率直にお伺いし思います。
○都築参考人 これは私一個の責任問題とすれば重大なことになって参りましたが、私は日本政府の代表として出席さしていただいたのでありますが、結局あの国連の委員会のニューヨークでのこの間の会合の空気から判断いたしますと、今御心配になっているようなことは万々ないのでございます。それで相当に突っ込んだものを自由に発表する、だけれども、それは私が発表するのでなく、日本政府が発表する、それでわれわれは各国の政府も発表してニューヨークの国連の本部に集まりましたものを検討して、これは値打があるものであろうか、値打がないものであろうかということをいろいろ検討して、できるならば結論を出す、こういうことになっておりますので、それに対して日本から今後だれがおいでになりますかまだきまった問題ではないのですが、相当有力なる人をできれば出す、これはいろいろな専門家が集まらなければできないことでございますが、多数行ってその仕事に従事するということが必要であろうと思いますが、それとは別に御承知の通りに学術会議の方では、もうすでに一昨年来準備をいたしまして、最近、もう一カ月ばかりたつと出ると思いますが、英文で二千二百ページの、その大体三分の二はビキニ関係のいろいろな調査の結果でありまして、三分の一が広島、長崎の後遺症というものの結果でありますが、英文でそれを発表することになっております。これは昨年のジュネーヴの国際連合の会とも無関係であり、今後行われるニューヨークーでの国際連合の科学委員会とも無関係に日本自体の考えで発表するということであります。それをこの間ニューヨークに集まりました各国の人たちは非常に期待して、早くそれが出ないかということになっておりますので、この間私の参りました感じでは、それはいろいろな意味からいえば、あるいはある程度政治的な影響を受けるかもしれないという心配もあるかもしれませんが、あの委員会で話し合ってきた空気から申しますと、そういう心配は全然ないと申し上げていいのじゃないかと思う。たとえばソ連から来ておりましたレベヂンスキーという教授なんか相当自由に突っ込んだことを発言しておりました。でありますから、その点は全然心配はないのじゃないか、むしろこれまでは日本の学者が場合によると感情的に少し誇大してと申しますか、学術論文の名前をかりて感情論を発表しておるのだろうといううわさもちょいちょい聞くのでありますが、そういううわさをむしろ打ち消すという点において効果があるというふうな結果が出てくるのではないかというふうなことすら感じておりますので、それは大体御心配なくいくのだろうと思います。 ところで、たとえばある程度結論が出た場合に、それから先どれだけの力を持っておるかということになりますと、それは正直なところ少し力が弱いのではないかと思うのでございます。実際に世界の政治、国際情勢に対して、どういうふうに国際連合の政治委員会その他がお使いになるかという点は、正直なところ、少し何だかそこの点は心配もあるような気もいたします。けれども、一応そういうような考え方が出るとすれば、それはまたどこかへそれを有力に使ってくれる団体も出てくるのではないかという点で、将来年がたてばあるいは慰められることがあるかと思いますが、その点は実は正直のところ心配であります。
○岡委員 この九月から国際原子力機構も発足すると伝えられております。われわれの希望する仕組みからまだほど遠いのでありますが、現実に核分裂性物質の供出や配給をやる、その利用については国連の責任において査察をやる、こういう段階になりますと、先生が御出席いただいた原子力の障害に関する研究のデータの交換という仕事は非常に大きなウェートを持ってくると思うのです。この際日本も理事国になろうということにもなったようでありますから、政府もさることながら、科学者の良心というものが政府を動かし、ひいてはやはり国際原子力機構をさらに万人の納得し得る機構に高めるための大きなてこの役割をする放射能の障害に関することは非常に重大だと思いますので、これは都築先生にも武谷先生にも、ひいては日本の科学者の良心にかけて、この委員会が真に政治的な制約を離れて、実際原子力の影響の調査というものを全世界と交換し得る態勢に持っていくことを心からお願いをいたしまして、私の質問を終ります。
○佐々木委員長 八田君。
○八田委員 都築先生がお急ぎのようでありますから、一点だけ質問をいたしたいと思います。 今、岡委員からいろいろこまかい点の質問がありまして、非常に参考になったのでありますが、ただ私先ほど来お聞きしておる間に強く感じて参りましたことは、今都築先生のお話になりましたように、わが日本の学者で非常に災害を高度に発表して人心の不安を招くような人々がある。先生はそういうお言葉をお使いになっておりませんけれども、少くとも私もそういうふうな印象を受けておるわけであります。そこで人体に障害を及ぼすという点につきましては、これはもちろん爆弾がどのような爆弾になってくるかわかりませんので、いろいろ問題のあるところでありますけれども、人体に障害を及ぼすという点から考えてみますと、直接的な障害、それから間接的な障害、こう二つに分けて考えてみますと、直接的な障害とすれば、まず骨に対するところの障害、それから食品に対する障害、骨はもちろんストロンチウム九〇があげられておるわけであります。それから食品といたしましてはセシウム一三七でございますか、これが問題となる元素でございます。間接障害といたしましては、遺伝の問題が起ってくるわけでありますが、ただ私は、人体障害というものを直接と間接に分けまして今申し上げてみたのでありますが、さらにもう一つ考えなければならぬことは、実験物理学というものは一体どういうような規模で進歩してきておるかということを考えない限り、非常に意見、思想というものの不安、混迷を来たすと考えておるわけであります。半世紀前の実験物理学というのは、小さね部屋で一実験テーブルでやられて参りました。がしかしその後サイクロトロンとかべバトロンとか、あるいはまた近ごろソ連ではシンクロファゾトロンというような人工宇宙線のイオン加速室というようなものができて参りまして、非常に大きな実験物理学というものをやらなければならなくなった。さらにまた水爆というものが出てきて、今日においては実験物理学というのは、地球的な規模においてやらなければならなくなってきた。こういうふうに実験物理学というものは、非常に大きく発展してきておるということを考えなければならぬと私は思うのであります。そこで今日のわが国におけるいろいろな意見というものは、ビキニとかあるいは広島、長崎におけるところの原爆・水爆実験の災害だけを取り上げて、非常に強く不安状態にあるようでありますけれども、私が都築先生にお願いをいたしたいのは、むしろ放射線障害というものを、マーシャル群島においてやられている実験の直接災害の面だけを考えて過大に不安を感ずるというよりは、むしろ国内における直接的な、あるいは見のがされた放射線障害というものもあるのだ、それは何かと申しますると、先ほど武谷先生も言われましたが、いわゆる職業的な人、これはすなわちレントゲンを操作する人でございます。またあるいは患者の場合でありますが、たとえば全部の歯を撮映する場合、普通一、二回の照射をやる場合があります。またあるいは必要な場合によりましては二十回、三十回と照射して参ります。と、被検者の顔面に照射される線量というものは、百から三百レントゲンに及ぶ場合もあるわけであります。国際基準によるところの許容量に比べてみますと、はなはだ高い数値になってくるわけであります。現にレントゲンを操作しておる人々は、全身障害として白血球の量が二千台というような方々があるわけであります。足下の放射線障害をすっかり忘れてしまって、遠いマーシャル群島の被害を直接被害と結びつけて考えるところに、実際申しますと私は不満があるのです。しかもまたそのような有害な放射線量を出しておるレントゲンの照射に対して、特にポータブルのレントゲン発生装置は非常に不十分なものが多いわけであります。都築先生は少くともわが国におけるところの、この方面の権威者でございますので、私は先ほど来のお話を伺いまして、むしろ国内にこの放射線障害者が多いんだということを強く国民に知らせていただいて、現に患者並びに職業的な職場にある人々が、放射線障害に参っておるんだということを先生からお話し願いたいとともに、その点について先生の御見解をお漏らし願いたいと思うのであります。
○都築参考人 今日は主として原力核兵器の問題ということでありましたので、そういう方面の私の意見を申し上げておりましたが、今八田さんからお話のありました問題は、もう私が三十年以来非常に心配しておることで、私自身大正年間にもう白血球が三千台まで下ったことがありました。私自身の経験から申しましても、非常に心配しておることでありますが、さっき申しました原爆協議会というものと並行いたしまして、文部省の科学研究費をもらいました総合研究班としての研究班がありまして、その面でこれは主として原子爆弾の影響を研究する研究班でありますが、ほかに放射線の災害を研究する班と協力いたしまして、その点はいろいろ調査研究をしてデータを集めております。この点は私の口からすぐ簡単に出て、普通の新聞なんかにそれが載りますと、またいろいろ問題が輪に輪をかけるんだと思うのでありますが、実際はわが国としては、非常に憂慮すべき問題であります。レントゲンの技術者が長い時間不完全な防御装置のもとに仕事に従事しておる。それから診療を受ける患者が、悪意はないのでしょうがお医者さんの方が熱心であるために、必要以上に写真をとる、治療もする、たとえば現在の肺結核のような面を考えてみましても、私は必要以上にレントゲンの検査というものが行われておるのではないかと思う。ことに断層写真というものが、普通の一枚の写真をとりますよりも七倍以上の線量がかかります。それを断層写真では少くとも三枚、場合によっては五枚も六枚もとる。ですから、三十枚も五十枚も――普通の胸の場合、〇・一レントゲン当り、それは百ミリ・レントゲンで、従って一週間に三枚もとれば国際のこれに抵触する量まで達してしまう。ですから、それを繰り返し繰り返しとって、レントゲンの写真をたくさん積み上げることによって、病気がなおるがごとき錯覚を持っている患者さんもあるのでありまして、その点は私も非常に心配をしている問題でありますが、今度のニューヨークの国際連合の科学委員会の方でもその問題が非常に問題になりまして、今後は、医者が患者についてレントゲンの診断治療をする場合には、そのレコードをとって、いわば本人に健康手帳というふうなものを渡しておいて、それに全部書き入れる。そしてそれを見ながら次の医者はレントゲンの診断治療をしなければいけないというようにしなければ、そこに必ず害が起ってくるだろうというようなことを言っております。これは実は私個人としては機会を待っておるのでありまして、どうも外から来る爆弾の影響というふうなものだけで今沸き立っているところでありますので、何か適当な機会があったならば、今おっしゃったことに対しても何らか私の見解を述べたいという考えは重々持っておりますけれども、まあその職業上、私が今直接その専門家でないという関係もありまして、専門の方にはよくお話しして、これは何とかしなければならない問題であろうというふうなことも申しておりますが、その点は一般の関心が高まって参りました現在、これを巧みに誘導していきます――という言葉は、あるいは全く当らないかもしれませんが、そういうふうに皆さんに考えていただければ、今おっしゃったようなことが相当に効果を上げ得るようになるのではないかと思います。実際問題としては、ニューヨークで一つこういう笑い話があります。みんな放射線々女々といって騒ぐけれども、人命に関する危険の度合いの現状からいえば・自動車事故の方がよほど頻度が高い。その同じ言葉を日本に移して参りますならば、外から来る放射性のちりよりも、実際われわれが日常医学において取り扱うレントゲン、今度は医学だけではなく、工業の方面で現在この放射線が非常に使われておりますが、そういうことの障害の方がむしろ大きいのじゃないかということむ言えると思います。これは国家としても重大問題です。厚生省もその点について非常にお考えになって、いろいろな放射線災害予防の法律も大体立案をせられて、だんだんに実施の運びにねると思いますが、その際にはやはり、今おっしゃいましたように、そういう遠くからくる放射性のちりだけに目をくらまされないで、身近にある放射線の障害、ことに将来原子力の発電所というものができ、割合狭いところで大きな研究が行われるという場合には、その点も一つ十分に考えていただきたいと私は衷心から考えております。今のお説には全く私も心から賛成いたします。
○八田委員 先生のお話を伺いまして意を強うしておるものでありますが、私どうもいろいろなニュース面に載る言論を見ておりましても、原因を科学的に分析しないで、ただ表面に表われた事実だけをぽっとつかまえて、そしてそれに熱して論じ合うという日本人の非常に悪いくせがあるように思うのです。日本人は熱しやすくさめやすいと申しますけれども、簡単にある事実をつかまえて、それを強く検討する二とを忘れて、それに熱してどんどん言論を展開していく、そして人心不安を招くということは、私非常に残念でございます。私も先生と同じように医学界に現に籍を置いておるわけでありますが、非常に軽率な発言をする人が多いという気持を、私国会に出て参りまして非常に強く抱いておるものでございます。先ほど先生がおっしやいましたように、市販ポータブル装置ではヘッドより漏る線量が非常に多いわけでございまして、ほとんど完全なものがないという状態でございます。特に医療法におきましてこのたび施行規則を改正いたしました。その場合に私非常に疑問にたえないのは、一般の開業お医者さんに対して鉛の部屋を作れということを出しておるわけであります。ところが、一般にお医者さんがレントゲン撮影をする場合に照射量は一体どのくらいかと申しますと、先生がただいまおっしゃいましたように〇・一五ミリ・レントゲンでございます。そうしますと、国際許容量基準に達するまでには二千枚の撮影をやらなければならない、こうなってくるわけであります。そうして医療法の施行規則には、今度の改正の中でもそうですが、はっきり鉛を全部使えというようになっている。ところが現在よく見てみますと、一般開業医においては、二千枚の撮影をするというようなのはまず私はないと思う。大病院でなければないと思う。しかも鉛というのはわが日本の資源ではございません。外国から輸入しなければならないのであります。こういうことについても、私は厚生行政において非常に間違ったものがどんどん出されておると思うのでありまして、私自身非常に不安にたえない気持でおります。特に今また間接の問題が論ぜられてきております。ビキニ環礁とかあるいはマーシャル群島における水爆実験が、間接的に、人体にあるいは動物に、植物に、一体どういうふうな障害を与えるかということでいろいろ問題が起って、いろいろな議論が行われておるわけであります。遺伝にしましても、私はこういうふうな考えを持っておるわけです。あらゆる生物に、ある頻度において、ある定まった格好の突然変異というものがずっと起っているんだ、ただその突然変異が放射線を加えることによって頻度が高一まってくるだけのことであって、今まで全然その生物になかった突然変異というものが、全く想像もできないような状態において現われることはないわけであると私は考えておるわけであります。ところがこれが非常に過大に宣伝されております。全く今まで人間社会にねかったような奇形児が生まれるであろう、こういうような想像説が大きく流されておるのでありますけれども、先生のお考えは一体いかがでございましょう。
○都築参考人 なかなかむずかしい問題でございます。そういうふうなうわさが広まっておるということに対しては、私は直接に責任はないと思いますが、私遺伝の専門家、ないからわかりませんが、遺伝の専門家に伺ったところによりますと、今おっしゃったように、特別に変った突然変異が現われるということはないんじゃないかというふうにもぼんやり常識的に考えております。その点を別に取り締るということもながなかむずかしい問題でありますが、遺伝の問題にしても、確かに一方において過大に、一方において非常に注意すべきことをなおざりにするという面もあると同時に、そんなに神経質にならなくてもいいんだというところが過大に言われているということもあるのですが、過大に言われているという部門を考えてみますと、わからない領域が多いのであります。現在のところはわからねい。わからぬということを申しますと、わからないということが次の人に伝わりますときに、尾にひれをつけてこうなるということでありますので、私もヒのごろそれにだいぶ気づきましたから、わからないということを言うのを控え目にしておりますが、そうかといって、それじゃどうかと言われると、結論はやはりわからないということなので、その点は血かなかむずかしいのでございますが、そういう点で一つこれは医学者だけでなし、皆さん方、ことに有識階級、指導者階級の方が一致してお骨折り下さって、学問的にわからない点はそう想像をたくましゅうしてあまり行き過ぎてもいけないが、そのかわり学問的に根拠のあることだけは何とかして、たとい貧乏でもできるだけやってもらいたいというふうに御指導願えたら、われわれとしても非常に幸いだと考えます。
○武谷参考人 先ほどから私にも御質問があったようでございますが、まずマグロの件につきまして私の考えていることを申します。厚生省の方はマグロは前のビキニ事件のときくらいならば検査せぬでもいいというような御意見だったようですが、これは大体東大の檜山教授の御意見と一致しているように思います。私は檜山教授のものを読んだことがありますが、私は全く違う意見を持っております。それはああいう魚類学者などが放射能をお調べになるときは、はらわたははらわた、肉は肉というふうにうまく分けてお計りになるだろうと思うのです。ところが一般でマグロを陸揚げして市場から持ってくるといろ場合に、実験室でやるようにうまくはらわたと肉を分けれるかどうか、この点は大へん問題がある。問題があるならばやっぱりそういう実験、実際の測定をいろいろな局面でやってごらんになって、ただ実験室の中で肉だけとってやるということだけで放射能がないなどと言わないようにしていただきたい。つまりマグロの内臓は放射能が非常に強いのがあるということを聞いておりますし、そういう場合にそれがつぶれたりいろいろなことで放射能を帯びているものが肉にくっつく場合だってある。 それから檜山教授がたてにとっていらっしゃるのは五四年のリコメンデーションですが、これは一般の人に与えるためのものではない、専門家に対してのものであるわけです。 頻度が少いからそれでいいとおっしゃればそういうこともありますが、頻度が少くても猛烈な汚染をすることだって、あるいは内臓の扱い方によってはあるわけなんです。 それから食品順位のことをおっしゃっているようですが、結局計るのは持って帰ったマグロを計るのであって、そのときの放射能のスケルを言うので、プランクトンからマグロの間に食品オーダーが高まっているから減るんだ、減るかもしれませんが、減った最後のところが問題になっているのですから、そういう理屈もあるいは私はあやしいと思います。 それから先ほどからノイローゼとかいろいろ過大に考えるとおっしゃいましたが、もちろん過大におっしやる人もあります。たとえば雨が降って直接頭がはげるというようなこと、もちろんそういうのは過大であります。そういうことはありません。今の程度でしたらありませんけれども、しかしともかく何も理由なくして多少でもそういう有害のものを受けるということについて、根本精神なり根本的な考え方をちゃんと確立して、それから妥協的なところへ進むというようなふうにいかないと、根本的にすべて同じように専門家も一般大衆に扱うというようなことではやはり困ると思います。 もう一つ御質問がありました委員会に人を集めていろいろと意見を一致させてくれ、これも私は大へん賛成であります。ただ現在その委員会で日本のいろいろなそういった専門家の代表的な人が全部発言されてるかというと、私はそうは考えておりません。たとえば一番そういう方面で重要な意見だと私が思っておりますのは、やはり生物物理学者の意見でありまして、生物物理学者が一番厳密な概念を持っております。こういう厳密な概念に対してもやはりしょっちゅう顧慮を払っていただきたいというふうに私は考えるのであります。何といっても根本的にわれわれ物理学者もお医者さんというものも、放射能に対しては割合ルーズな考え方を持って今まできましたので、やはり生物学者の厳密な概念――たとえば私自身ビキニの事件の初期には放射線というのはそれほど危ないものとは思っていなかったのです。ところがそれを通じていろいろ生物物理学者と討論し、究明した結果、やはり放射線というのは微量でも、危ないとは言えないかもしれないが、何らかの意味の害がある、従ってそういう害があるという根本精神に立脚して、それからあと実際的な措置を考える。理由なくして放射線を受けるということと、理由があって受ける場合と截然と一応分けて、それからいろいろの措置を考えるなり、妥協的な考え方に進んでいくなりする。そこからあとは政治的な配慮というものでいくわけですから、学問的にはあくまでそういうふうにやっていただきたいというふうに考えるのであります。
○佐々木委員長 参考人の方にはありがとうございました。 午前中はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。 午後零時四十六分休憩 ――――◇――――― 午後二時二十四分開議
○佐々木委員長 休憩前に引き続き再開いたします。 放射性物質に対する許容度の問題について調査を進めます。本問題につきまして参考人の方が出席されておりますので、意見を聴取することといたします。 この際委員会を代表いたしまして一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中御出席下さいましてまことにありがとうございました。なお議事の整理上、最初に十五分程度御意見を述べていただき、後刻委員よりの質疑にもお答え願いたいと存じます。それでは美甘参考人。
○美甘参考人 どういうことをお話ししたら核心に触れるか、私ちょっと見当がつきませんのですが、資料としていただきました厚生省から出されました「放射性物質に対する許容度の考え方」というのを基本にして御説明申し上げ、またこの中で多少問題になるであろうというようなところを取り上げて御説明申し上げたいと存じます。 人体が放射性の物質に暴露されて、どれくらい受けて差しつかえなかろうかという問題は、いろいろ考え方があるわけでありまして、とにかく多少でも悪いものは少しでも受けない方が、――全然受けない方がいいのじゃないかという議論も成り立ちますし、それから放射性物質は人工的なものがなくても、自然の宇宙線の中にもありますし、いわんや体肉にもごく微量なアイソトープがありまして、そこから絶えず放射線を出しているわけでありますから、絶対に人間がそういった放射能にさらされない環境というものはあり得ないわけであります。従ってそれならどれくらい受けても差しつかえなかろうかという問題が起ってくるわけであります。それで最初にあります一週間三百ミリ・レントゲンという基準が、これはずいぶん昔から出されておる基準でございますが、これが三百ミリ・レントゲン、すなわち〇・三レントゲンですね。これを一週間に受けても大した障害は起らぬということが昔からいわれておるのでありますが、これはおもにレントゲンを取り扱う人の基準としてできたものでありまして、これは職業的の人で三百ミリ・レントゲンという数が――職業的の人はそれぞれ注意もするし、それから朝から晩までさらされているわけではないのですから、大体八時間労働としまして、一週四十八時間でありますから、四十八時間でこれを割りますと、一時間六くらいになりましょうか、六ミリ・レントゲンくらいが許容されるということであるのでありまして、これを一般人に適用する場合には、そういう環境で一般人が生活いたしますと、それは二十四時間、四六時中受けるわけでありますから、当然これより少なくてはいけないというので、国際的に一週三百ミリ・レントゲンというのの約十分の一に見積ったら、まず生涯を通じて生体に大した障害は起らないであろうという限度であります。この中には動物をもとにしまして実験的に出た成績、あるいはまたいろいろなアイソトープを作りましたり、いわゆる原子炉の作業員が不慮の災害にさらされましたりしたようなこと、あるいは近くはビキニの被災者といったようなものが受けたであろうレントゲン線の量というようなものを逆に計算いたしまして、いわば人体実験といったような考慮も多少されておりまして、そういうようなことから出て、一般大衆が暴露される場合には、職業的の暴露一週間三百ミリ・レントゲンの十分の一くらいの程度を許容度にしたらよかろうということに世界の学者の意見が一致して、五四年にこのリコメンデーションとなって出たわけであります。この付表はいろいろおわかりにくいところがあると存じますが、すべて単位はミリキュリーで出してありまして、これは計算の式によって週三百ミリ・レントゲンということが基準になっておるわけでございます。ですから、この三百ミリ・レントゲンという方はレントゲンの単位でありますし、こちらの方はミリ・キュリーになっておりますが、これだけのミリ・キュリーを受ければ週三百ミリ・レントゲンの十分の一になるというのがこの表でございます。ただ、ここで問題になりますのは、先ほど申しましたように二十四時間、七日暴露されたときの計算でありますから、職業でたとえばレントゲンをいじる人、あるいはラジオアイソトープをいじる人というようなものでありますと、大体八時間労働といたしまして、日本の基準では六日四十八時間でありますから、この許容度の大体三倍ぐらいの線量を受けても大丈夫であろう。職業的のそういう何は職場から離れますと、照射を受けないわけでありますから、放射線の影響を受けないわけでありますから、職場の中だけでは三倍くらいの量を受けてもいいであろうというようなことでありまして、従ってその十分の一ということにいたしますと、一般住民は職業人に比べては、大体三十分の一の線量しか許されないというような勘定になるわけであります。そういうことでこれが勘定されておるわけでございます。 この付表の説明を簡単にいたしますと、一等最初のZと書いてありますのは原子番号です。それからレディオアイソトープ・アンド・タイプ・オブ・デコイこれはベーターを崩壊をするとか、アルファを出して崩壊していきます。ですから放射線を出す種類が次の行に書いてあるわけです。それからクリティカル・オーガンと申しますのは、その放射線に暴露されて最も障害を受げやすい臓器というような意味で書いてあるわけです。トータル・ボディ、全身。それからGIと書いてありますのはガストロ・インテスチナルの略で、口から入った場合に吸収されずに、胃とか腸の中に残っておると仮定したときに、どれくらいかということが出ておるわけであります。ずっと左から右に読んでいただくとそれがつながるわけであります。 それからその次のマキシマム・パーミッシンブルのところに書いてありますカッコの中に円。と書いてありますが、エキュエーションの略でありまして、これは前のリコメンデーションの原文を見ますと、こういうようなことを計算して式が出ている。その式の何番目ということで、こういう式からこういう数字が出てきたということを示しているわけであります。これは水の場合と空気の場合は、これは絶えず人間の生活に対し、ことに空気におきましては二六時中絶えず吸っておるわけでありますから、非常に厳格であります。水は大体平均おとなが一日二・二リッター飲むと仮定して勘定されておるわけであります。それで大体それぞれの元素についてそういう価が出ているわけであります。この最後のときに問題になるであろうと思いますのは、一番最後のところ、九十六番の次にありますエニー・フィッション・ミクスチュア、これは原子核が崩壊しまして、たとえば原子爆弾でありますとか、水素爆弾でありますとかいうものが崩壊しますと、それから非常にたくさんの核分裂生成物ができるわけであります。それらがみんな放射能を持っておるわけでありまして、この爆弾のもとが、たとえばウラニウム爆弾であるか、プルトニウム爆弾であるか、あるいは水素爆弾であるか、あるいは最近さらにその他いろいろなものが使われておるようでありますが、そういうものがわかりますと、大体核分裂を起してできてくるフイッション・プロダクトというものは、数はきまっているわけです。わかるわけですね。ですけれども、中には数秒で消えてなくなってしまうようなものもありますし、中には非常に何年といって長く寿命を持っているものもあります。そしてまたすべての核分裂生成物が、たとえば空気や水にまじるときに、すべてのものがまじっているとは限りませんので、従って何がまじっているかわからぬということになるわけです。それが非常に厳重にここでは取り扱われているわけでありますが、この前の本文にもありますように、そういうものがわからぬものの場合には、非常に厳格にして、そのうちで元素分析をやりまして、これとこれが入っているのだということがわかれば・もとの表の元素についてそれを引いて、その範囲内であれば許されるということになるわけです。ただこの元素分析ができなくて、どういう放射性を持った元素がまじっておるかわからぬというときだけが非常に心配だというので・非常に厳重になっておりますが、そのフィッション・プロダクトで、水の場合に十のマイナス七乗ミリ・キュリー・パーCC、すなわち一CCの水の中に十のマイナス七乗ミリ・キュリーという単位は少し厳重すぎはしないかという議論が出ております。この単位でありますと、方々で降りました放射能雨というものはみなひっかかって、そういう雨が降ったところでは地下水あたりは使用できないということになりかねないのでありまして、たとえば十のマイナス七乗ミリ・キュリ・パー・リッターは、よく新聞なんかでいわれますようなガイガー・ミュラー・カウンターのカウント数に直してみますと、私ちょっと計算したのですが、大体百CCの水の中には二・二カウント・パー・ミニット、一分間に二・二カウントという量になります。そういたしますと、水は天然でもバック・グラウンドというものは、三〇とか三五というものを持っているわけでありますから、それを差し引かなければなりませんから、バック・グラウンドの水が何も汚染されてなくて持っているであろうカウントが大体三五といたしますと、三五に二・二を加えた三七・二カウント・パー・ミニット、一分間に三七ぐらいのカウントがでたら、それはもう不適な水だということになってしまうわけであります。これは多少専門家の間でも問題になっておりまして、こう厳重にしたら飲めない飲料水がたくさんできて、実際問題として非常に困るのではないかというような議論もされているように承知いたしております。空気の場合は十のマイナス二乗だけですから、これよりは百倍だけ厳格に薄いものでなければいかぬというように規定されているわけであります。 こんなことでよろしゅうございましょうか。
○佐々木委員長 ありがとうございました。それでは質問を許します。岡君。
○岡委員 美甘先生にお尋ね申し上げたいのは、午前中も実は都築先生と武谷先生にお尋ねをいたしまして、なお納得がいきかねた点でありますが、第一点ミリ・レントゲン・ウィーク、これを大体十分の一に引き下げて一応許容度の考え方の基準に取り入れているわけです。十分の一に引き下げるというところで安心できるとわれわれは考えていいのでしょうか。
○美甘参考人 今までの経験及び実験のデータからいたしますと、まあこれで安心だということが言える。それはあくまで今までの実験の結果あるいはいろいろなアクシデントが起りましたそれを基礎として考えればそういうことが一応言えるということで、将来ともこれが絶対に安全かどうかということは多少疑問があるかもしれませんが、今まで専門家の知り得た範囲では一応安心であるというように御承知願ったらいいのではないかと思います。
○岡委員 私から申し上げるまでもなく、これは余儀なく専門にレントゲン放射能にさらされている作業に携わっている成人健康男子の最大許容量が三百ミリ・レントゲン・パー・ウィークと、こうなっている。でありまするから、これを十分の一に引き下げれば、大体子供も含め――まあいろいろな放射能による障害についても個人的な差異の敏感度と申しましょうか、あると思いますが、そういう個人差をも含めてとにかくこれならばいい、私どもその後この勧告に対する批判として、いろいろ資料も拝見いたしておりますが、最近はこれを最大許容量として一応認めたとしても、しかし長く持続的に受けるということになると、専門のレントゲン照射を受けざるを得ないような作業に携わっておる者でも十分の一以下に下げなければいけない。さらにこれは一般の大衆に対する許容度という考え方からは、三十分の一に引き下げなければ危険だ、私どもは多少こういう資料を得ておるわけです。ロチェスター工科大学のホイブル博士ですか、専門家などそういうことを言っておられます。そうすると、ただ単純にこれまでのデータというけれども、一体十分の一でいいというデータはどこにあるかという点なんですが、いかがでしょうか。
○美甘参考人 十分の一で許容量の基本とするとありますが、その出所の一々の文献を詳しく渉猟しておりませんから、どこに出所があるかと言われても、ここでお答えするのも困るのでありますが、むろん一、二の学者はこれでも多過ぎるという議論をする人はございます。しかしながら、世界の学者が寄りまして、その大部分の人が、これならいいであろうということに認容されたデータがこれだということだと存じます。
○岡委員 先生に別に質問をするわけじやないのですけれども、ただ私が理解しているところでは、これは先ほど申しましたように、レントゲンの照射を余儀なく受けている健康な成年男子、専門的な技術者を標準としたもの、それが三百ミリ・レントゲン・パー・ウィーク、ここまではいろいろな専門的な科学者の諸君の検討の結果として出てきている。ところで、今水爆実験が行われている。そこで一体許容度というものはどの程度であるべきかという、現実に置かれた日本の立場から、日本国民全体を対象とした場合に、十分の一という根拠は、そういうデータはどこにもないと私は思うのです。そこで一体どういうデータ下、この十分の一というものが打ち出されてきたかということを、けさほども都築さんなり、武谷さんなり、また先生にも来ていただいて、私ども納得のいくところを知りたいと思ったのです。
○美甘参考人 これは、そういうふうに資料が出たのは、別に厚生省を弁護するわけでも何でもありませんが、厚生省当局は、そういう国際的なレコメンデーションがあるから、それならこういう考え方で日本の場合も推し進めていったらいいであろうということだけで、そうえらい根拠はないだろうと思うのであります。そしてまたおそらくこの許容度を、日本の現在の国際的情勢と申しますか、近海でもって、近海でもありませんが大洋でもって、原水爆実験が行われるという環境によって、その影響を受けるであろう日本の国で、これをそのまま受け入れていいかどうかということは、むしろ厚生省が議会あたりに諮問しておるのじゃないでしょうか。
○岡委員 いずれはっきりどういう基礎的な検討の結果として十分の一ということが出てきたかということは、厚生省の方へもお聞きしたいと思います。たまたま専門の楠本部長もおられますが、楠本さん、この十分の一という基準は、どういう科学的な基礎に基いて算定されたものでしょうか。
○楠本政府委員 お答え申し上げますが、実はちょっとその前に一言、誤解のないように申し上げたい点は、これはなるほど考え方となっておりますが、この意味はいろいろございますが、一つは学者の委員会においていろいろ御検討された結果でございます。しかし、それらの結果を参考にして、基準を行政的にきめるのは、あくまで厚生省当局の責任であります。従って一応学者の先生方の委員会にはあえて責任を問わない意味でございまして、従って特に考え方という広範な考えを、こちらからむしろお願いしたような次第でございます。 さて、その十分の一でございますが、これは僕らは委員会においていろいろ御討議を願った結果をそのまま実はとり入れたい、かように考えております。従いまして今ここで十分の一にした点について、とやかく批判をすべきものではないと存じますが、しかしながら現在遺伝等を考えて極端に強い基準を言う人が一部にありますことは、何も日本に限りませんので、世界各国同様な傾向にあるように伺っております。しかし大体は多少これはゆるめた方がいいんじゃないか、多少少い、何分の一かにした方がいいんじゃないかというようなことでございまして、これはWHOの勧告では、大体十分の一程度が妥当であろうという意見も出ておるくらいでございます。従って私どもといたしましては、この場合十分の一というのはまことに当然な、むしろ非常に安全率を高く見積った考え方だ、かように考えております。と申しますのは、爆発によりますところの放射能の影響は、時間的にこれが継続されるということはまずまず考えられないのでございまして、その点は職業的な人たちとはだいぶ様子も違っております。さようなことから考えまして、非常に安全率を見越した一つの数字だ、かように私どもは考えておる次第でございます。
○岡委員 今楠本さんのおっしゃった、遺伝の関係から一部に許容度について非常に神経質もおるということですが、しかしこれは一部に神経質な考え方の者があるということでは、私は科学的には済まされないのではないかと思います。というのは、私どもペダンチックに申し上げるわけではありませんが、遺伝について非常に大きく放射能の障害を憂慮する人は、そういう一部の神経質な学者ではないと思うのです。現に遺伝でノーベル賞を受けておるマラー博士あたりは、アメリカのストローズ委員会のリビー委員のサンシャイン計画に基き、五百五十発ぐらいは爆発しなければストロンチウムが人体を障害しないだろうというような説に対して、アメリカの国内でまっこうから反対しておる、現に彼らの実験では、人間についての実験は一世代、二世代にわたるでしょうから、なかなか容易ではないと思いますが、他の昆虫や動物を使っての実験では、ずいぶんやはり憂慮すべきデータが出ておるということを示して反対しておるわけで、だから一部の神経質な遺伝学者が非常に大ぎょうに放射能の恐るべきことを言いふらしておるという考え方は、妥当じゃないと思います。そういうことから考えましても、十分の一という基準については、それらの意見を十分――これは何の意図もなく、学者としての良心から訴えておる声であります。これはマラー博士だけではない。アルゴンヌ国立研究所のブルース教授、ハウランド教授あるいはハルディー教授、これはノーベル賞を受けておる学者ですが、この人たちが声を大にして警告しておるという事実は、やはり科学者の良心として私ども尊重しなければならない。これをただ一部の学者の神経質な意見とこと、もなげに言い切ることは、私は国民の安否にかかわるこの問題の、取扱い者としていささか妥当ではないと思います。しかしそれは厚生省の方でも十分御検討、御研究いただいた上で、いずれまた……。要するに許容度の最初の考え方ですから、その後十分安全を期した方向をたどっていくように御努力を願うことにいたしましよう。 そこで美甘先生にお伺いいたしたいのですが、最近も広島や長崎、ことに広島の事例が新聞にもよく出ますけれども、ぽっくりと悪性貧血でなくなられる方が最近ぼつぼつ出ております。数字を聞くと、付でも十カ年間には相当な数字だということを聞いております。あれは臨床的にはどういうような経過からああいう不幸な事態になるのでございましょうか。
○美甘参考人 今悪性貧血とおっしやいましたが、医者の方で申します悪性貧血というのは、一つの独立した血液疾患でありまして、特殊な疾患でありますから、広島の原爆の後遺症として、医者が専門的に言う意味の悪性貧血が起ったというのは、おそらく死ぬような重篤な貧血という意味でございましよう。
○岡委員 貧血でも何でもいいのですけれども、最近戦後十年になってもひょっこりなくなるということですね。
○美甘参考人 いわゆる再生不良性貧血、再生不能性貧血というのは、ごく重症な貧血でございます。もう一つは、白血病が統計的にもふえておるという事実がございます。これは一定の線量を受けて、長い間たちますと、造血臓器にそういうような変性あるいは悪性化が起ってぐる。白血病といいますのは、今日医学的ね考え方ではガンと同じような悪性腫瘍ということになっておりますので、それが十年後になって起ってきたということは、やはり最初に受けた線量が相当に多かったかと思います。私受けた線量等の関係は実際に詳しくは承知いたしておりませんけれども、一定以上の線量、これはここにいうパーミッシュ・ドースなどと比較できぬほどの大量のものを、しかも一時短時間に受けるとひどい者は死んでしまうわけですが、死ななかった者があとになってこういう障害を起すということは、やはり放射能の後遺症と申しますか、障害であることは間違いないと存じます。けれどもそれを線量と結びつけて考えるのは少しどうかと思います。三百ミリ・レントゲン・パー・ウィークを十年受けておったならば、広島で原爆を受けたような血液の障害、たとえば再生不能性貧血とか白血病が起るというようなことが推論できるのではないかということは言えないと思います。そういう変化を起しますためには一定の限界の短時間内に受ける線量の範囲がございますから、その線量にはならないことは確かであるということは言えると思います。
○岡委員 たとえば水爆が爆発する、そうれば成層圏以下の粉塵というようなものがその当時の気象状況などによって運ばれてくる、あるいは海洋に落ちる。また成層圏へ吹き上げられるものがたくさんあるわけです。これが〇・五ミリ・ミクロン以下の粉塵というここになると、十年もたってからやおら地上におりてくる可能性もあるということがアメリカなどでは研究されている。そこで今度ビキニ周辺でいよいよ水爆実験が行われ、英国も来年は本格的な水爆実験を行うと言っており、ソビエトでもシベリアで負けず劣らずやるというような状況であります。私は水爆実験による放射能を持っておる粉塵というものをかなり恒久的に地上におるわれわれの呼吸する空気なり、あるいは天水をとるということならその人たちの飲み水から、摂取することになるだろうと思うのです。そこで放射能の質の問題ですが、先生は一時広島等で相当大量の放射線を受けられた。放射線は大量を受けても、やはり元素の性質によってはおそらく火傷程度で済む場合があるのではないかと思います。問題はやはり特に骨に沈着をして、骨髄細胞を破壊することでストロンチウム九〇、ウラニウム一三七、セリウム一三七、こういうものが持続的に不断にわれわれの呼吸する空気の中にもしあるとすると、これから受ける線量はわずかなものでも、これが体内に蓄積され、半減期が二十年近い長いものが蓄積されてくるということになる。そういう経過をたどって長崎、広島あたりでこのごろひょっこり死ぬ、ことに予後の不良貧血と申しましょうか、ああいう状態が起る、そういうことは考えられないでしょうか。
○美甘参考人 今広島、長崎で再生不良性貧血だの白血病などで死んだ方たちの骨でありますとか、骨髄の放射能を解剖材料にして数をはかっておる学者がおります。その全部ではありませんが、一、二聞いたところでは、ほとんどパーミット・ラウンドを越えての放射能が検出されておらないような報告が見えております。 なおストロンチウムが骨に沈着しておるのではないかという御懸念ですが、広島の爆弾はあれはウラニウムでありましたか、プルトニウムでありましたか、これはまだ元素が分析ができておりませんから、何とも申し上げられませんが、少くとも放射能を持ったものがそんなにあるという報告は現在広島については受けておりません。 それから成層圏へも、入ったフィッション・プロダクト、微粒子になったものが何年も影響を与えるだろうという御意見ですが、寿命の長いものでありますと当然そういうことは考えられますが、しかし寿命の短いものでありますと、私どもは数字が何パーセントか、フィッション・プロダクトのハーフ・ライフの種類と数字は幾らか覚えておりませんが、かなりたくさんの部分のものは年数がたてば消滅してしまうという面が一部にはございます。むろん炭素でありますとか、ストロンチウムであるとかいうようなハーフ・ライフの長いものでありますとそれはいつまでも残るわけであります。フィッション・プロダクトの全部がそういうハーフ・ライフの長いものではありませんで、ごく短い数秒間あるいは数時間、数週間というものもありますから、相当日数がたてば希釈されるということは事実であります。
○岡委員 私もそう神経質にお尋ねをするわけではないのでありますが、どうも科学的毛はないような気がするのは、これが神経質なのでしょうが…。たとえば先生、こういうことはないでしょうか、たとえばセリウムとかストロンチウムとか、イットリウムとか、ウラニウムとか、ランタンとか、いろいろなものが出て参ります。ああいうものがそれぞれ好きこのんで沈着する臓器がある。ヨードは甲状腺にいくとか、脾臓にいくとか、肝臓にいくとか、骨にいくとか、そういうことで、今度はいろいろな元素がいずれ出てくるわけであります。それが浮遊するなり、あるいはまた場合によれば魚について出てくるかもしれません。とにかく相当長年月、持続的に、きわめて微量ではあるが、そういうものが呼吸器なり口から人体に摂取されてくる。そういう場合に、今申しましたように各臓器に幾らかではあるが、沈着する。そういうものがやはり新陳代謝の結果をくずしていくというような状態から起してくる影響――現に人間が放射能にさらされることによって非常に老衰現象を早めるというようなことも、さっき申しましたマラー教授なんかもそういうことが原因ではないかというようなことを言っておられるのですが、これは臨床的に、特に東大の方ではビキニを通じていろいろ御研究をいただいたわけですが、そういうようなことはないものでしょうか。 〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕
○美甘参考人 元素の種類によって、たとえばストロンチウム九〇がカルシウムと置換されて骨に沈着するというようなことは知られた事実でございますが、ほかのものについて、たとえば特に性細胞、生殖器というようなものに好んで沈着する――たとえばリンみたいなものでありますと、ああいう細胞分裂の盛んなものには沈着しやすいということは考えられますけれども、リンはハーフ・ライフが二週間くらいで短かいものでありますからそういう懸念はない。長いものでありますとストロンチウムそれから炭素などでありますと選択性はなくてどこへでもくっつくわけでありますけれども……。ですから考え方としてはむろんそういうことが考えられると思うのであります。だけれども、これもむろん量的の問題だと存じます。それから骨に入りまして、骨から絶えずガンマー線でも出しておれば骨髄がじくりじくりやられるのではないかという懸念も出てくると存じますが、むろんこれも量の問題でありまして、人体が持っておりますごく微量な自然のアイソトープを何倍か上回る――何倍上回ったら危険かということも私よう言わないのでありますけれども……。ですから、濃度によってはむろんそういう可能性を考えなければなりません。 それからまた、えらい障害を与えなくても老化現象というようなことが起るのではないかといわれましたが、私どもが経験いたしましたビキニの患者なんかを見て得た印象は、あれは非常にフィッション・プロダクト及び誘導放射能を持ったいろいろな灰をかぶったわけでありますから、そのときにはずいぶんアルファー線も出しておったでありましょうから、頭の髪の毛が抜ける、はげる、それからアルファー線の影響で皮膚が多少着色するというようなことで、病気の初めはなんか多少外観的に年寄ったという印象を受けましたのですが、一年もたって退院するころにはもうもとのような大へん元気な姿になって帰って参りまして、外観的にはそういう印象は得ませんでした。それからいろいろ機能的にも、ことに精子の数なんかは最初はほとんど無精子の状態という時期がある程度続いたのですが、退院のころには数量的には正常人の半数くらいのものは再生しておった。中には全く正常になった人もあります。それから精子なんかの奇型度というようなことでも大へんに減って参りまして、これでまた先にさらに一年二年たてば大体数量的にも形態的にも機能的にも、われわれの知ることのできる範囲では正常に戻るのではないかという希望を持って退院したというふうな状態でございます。特に、むしろ老化現象というものを測定しますのに非常に難点がありますものですから、どういうものを老化の標準にするかということになると非常にやかましい議論があると思いますけれども、われわれが調べた範囲、われわれの受けた印象の範囲では、入院当初は多少そういう感じを受けましたけれども、退院のときにはそれもなくなって帰ったというような状況でありまして、どうもその老化の現象を早めるというのが、臨床的に見てどれだけあるかということは、大へん困難だと存じます。 それから精子の能力でありますけれども、大部分の人はそういうふうに数量的にも、形態的にも大体正常に戻り、ないしはこの速度で回復していけば正常に戻るであろうという見通しがついて退院したという状況でありまして、大体一年、二年近く入院しておったわけでございますが、一年の観察を通して大体そういう見通しをつけて帰したという次第でありまして、何を標準にするかということは大へんむずかしい問題だと存じます。
○岡委員 きょうお昼前実はこの点で都築さんに御意見を承わったのですが、私この間お宅の学校の放射線の教室の方に精子の変動を少し承わったのですが、そのときは三好博士のお話では、ビキニの患者で大体五、六百減る、その回復の徴候は見えない。ハイラーテンしたものもある、妊娠したものもあるが、それは誤りである、どうも現状では生殖の能力は恐るべく落ちておるというふうに実はお聞きしたのです。今の先生のお話あるいは都築さんのお話等も、ほとんど完全に直っているという……・。
○美甘参考人 それは時期が違うのじゃないでしょうか。大体ここであまり精子のお話をしますと少し何があるかもしれませんが、とにかくそうひんぱんに検査ができません。大体三カ月に一度くらいの割合で検査をやって参ります。そうすると、大体入院いたしましたころ、これも全部ではございませんけれども、障害の程度の重いと思われる人では、大体五、六百といいますとほとんど無精子といっていいくらいの状態なんでありますが、それが半年間くらいは続いておりました。広島あたりの例ですと、やはり半年前から再生が起ってもだんだん直ってきている。ビキニの場合は再生が広島の例から比べるとおそいではないかということ等を、心配しておったのでありますが、それも大体九カ月から一年くらいでふえて参っておる、それは事実であります。ふえた数がみんなノーマルの半分くらいまでなったということは、私はっきり記憶いたしませんけれども、ふえたことは事実でございます。ですからとらえた時期が広島なんかの場合よりは統計的におそかったことは事実のようであります。それらが多少内部照射というものが関係しておるのではないかという憶測をいたしたことはございますが、それもどうも精子あるいは精液自体には認められる放射能も持って参りませんし、考え方としては、当時ディスカッションをしたのでありますが、果してこれは内部照射の影響であるかどうかということのきめ手はなかったわけでございます。
○岡委員 これは美甘さんでも楠本さんでもけっこうですが、私去年ジュネーヴの平和利用会議に傍聴みたい格好でちょっと顔を出してきたのですが、広島、長崎、のあるいはビキニの日本の医学界の知能をあげての臨床的な研さんというものは、ほとんど報告になっておらないと思うのですが、これはどういう事情があったのですか。あれこそ平和利用の大きな課題だと私は思っておるのですが、どういうわけであるか。
○美甘参考人 実は広島、長崎の方はこれはずいぶん日にちがたっておりまして、いろいろ英文の報告も出ておりますから、専門家の間にはよほど行き渡っておると思います。たまたまジュネーヴの会議なんかにはそれが出ておらなかったかもしれませんが、これは相当世界に広まっておると思います。ビキニの方は私どももっぱら患者といいますか、病人を診療することに追われておりまして、今やっとそのデータをまとめて欧文に直してこれから外国に向って発表しようという段取りでありまして、そういうことで、われわれ患者自身の診療に専心しておって、そのデータを外へ向って広く発表するということが大へんおくれたような次第で、今やっとやっているような状態でございます。学術会議あたりからも、不日ごく簡単なものでありますから出ると思いますし、それからまた専門家の間には、御存じのように三好君がこの間欧州血液学会というに全部の成績を持って参りまして、専門学会では大体の今までのビキニに関する被害者の臨床のデータは発表しております。ですから専門家の間にはある程度知られておると思うのでありますが、ジュネーヴのような会議には、何しろ私どもはむろん招待も受けぬのでありますし、そのお金の出どころもないものですから、そんなようなことではなかろうかと推察いたしますが、専門家の間には発表してございます。
○岡委員 都築さんの御出席になった例の国連主催の放射能障害国際委員一会、あれは別に政治的な制約を受けることなく、いろいろな必要なデータというものは相互に公開されておるというようなものでもあるし、また私どももぜひ努力をしようという御見解を率直に述べられて、私どもも非常に心強く感じたのであります。せっかく原子力機構も、きて、平和利用の道が進んで来たのですから、どうしても放射能障害の予防と同時に、やはり治療の問題を考えねばならぬ。これは何といっても日本の先生の手元に集められておるデータは世界でも唯一の文献だろうと思います。ソビエトの水爆であろうとアメリカの水爆であろうとどうということはないと思います。やはり平和利用の裏づけとしての日本の貴重なデータは、どうかあらゆる機会にぜひとも広く世界の科学者に訴えたいというようなお気持で一つ御努力願いたいと思います。
○美甘参考人 むろん私どもその覚悟でおります。何分どうにも、ここでいろいろ言いましても何ですが、たとえば欧文に印刷するにしましても、要るものが先に要るものですから、なかなかそういうものが思うにまかせぬという面もありますが、岡さんのおっしゃったことはわれわれ十分考えまして、今後できるだけやるつもりでおります。やる準備をいたしております。
○大坪委員長代理 次に八田貞義君。
○八田委員 美甘先生にいろいろと質問を申し上げたいのですが、まず第一に、この放射能障害の問題につきましては、ただいまマーシャル群島においてやられておる水爆実験の放射能ちりによる障害、それから国内における放射能障害、こう二つに分けて先生に質問してみたいと思うのであります。 マーシャル群島でやられておるところの水爆実験、これについてのわが国におけるいろいろな報道面の思想といいますか、考え方と申しますか、言い表わし方を見ますと爆心と申しましても、実際のいろいろな被害は二百マイルあるいは三百マイルくらい離れたところで起ってくるのでありますけれども、どうもビキニの災害とか、あるいは広島、長崎の原爆による災害とそれをすっかり結びつけまして、そのときの直接的な被害と同様な災害がマーシャル群島における水爆実験によって起るのだ、こういうふうに結びつけて考えられておる人が非常に多いようでございます。これはもちろん言論機関等に対しても十分に慎重な報道をお願いしたいという気持になるわけであります。先生も同一御意見でございましょうが、たとえば今岡委員からいろいろとお話がありましたけれども、この被害については学界においてもはっきりしたことは言えないだろうと私は思います。いわゆる直接的な被害は別といたしまして、間接的な被害につきましては、これは臆測にすぎないのです。そこでどんな元素が出るかということにつきましてもわからない。今のところ問題になっておるのは、ストロンチウム九〇とセシウム一三七、いわゆる食品の関係ですね。たとえば、バターとかチーズとかその他の食物に関係あるものとして、われわれの人体に及はす災害を考えなければならない、こういうふうに私は考えるのでありますれども、その他ラジオアイソトープつきましては、まだまだはっきりしん結論が出ないと私は思う。ところがその結論が出ないで学界においてもまだはっきりしないものを大きく取り上りられて、人心に不安を与え、そうしてその人心に不安を与えるものがすぐに厚生行政の方に圧迫になって現われる。現実にあるかどうかさえわからないものを厚生行政に取り上げられて、ゆがめられた状態に厚生行政が動いていった場合には、私はむしろその方が人心に対し人体に対して非常な被害を与えるものであると考えておるわけであります。しかも実験物理学の発展過程というものを考えてみますと、小さな部屋の一実験テーブルの上でやられておったのが実験物理学の半世紀前の姿であります。ところがサイクロトロンとかベバトロンとか、あるいは最近ソ連におきましてはシンクロファゾトロンというものがで著て参りました。しかもイオン加速室が二百メートルから三百メートルというような非常に大きな装置を用いてやらねければならなくなって参りました。さらにまた水爆というようなものが出て参りまして、これの実験をする場合には、地球的規模においてやらなければならないように実験物理学というものはどんどん進んで参ったわけであります。この実験物理学において、人体、動物に及ぼす災害をどういうふうにして押えてこの実験をやらせるかという問題をわれわれは考えていかなければならぬと思うのであります。その条伴というものについて考えていかなければならぬと思うのです。人体、動物体に及ぼす災害というものをどうして防ぐか、そのためには水爆実験のあり方はどうあるべきか、こういうように、私はこの実験物理学の拡大した姿を正しく見て、論を進めていく必要があると思うわけです。そこで先生にもお伺いをいたしたいのでありまするが、医療法の施行規則の改正が最近行われまして、国内の放射線量の障害としては、レントゲンの問題でございますが、このレントゲンの問題が起きまして、レントゲン室に鉛を全部張らなければならぬ、こういう規定を新たに作られたわけであります。御承知のように、鉛はわが日本にございません。国外から輸入しなければならぬ。ところが一般開業医者が果してレントゲン室内にどれだけの放射線量を露出するかという点になりますと、その中の許容限度というものを見ますと、私は非常に納得のいかない点があるわけです。たとえば一枚の撮影をする場合て、〇・一五ミリ・レントゲンというものが照射されるわけでございます。そうしまして、一般の開業医者が二千枚のレントゲン・フィルムを使わなければならない。一体一般の開業医が、それだけの撮影をやるかどうかということです。私はここに厚生行政の誤りがある、こう考えておるのです。このような改正をやる場合に、先生のような専門家が厚生省の方から意見聴取をされたことがありましょうかどうか。まずこの点をお伺いいたしたいと思います。
○美甘参考人 今の八田さんの御議論なり御質問ですが、ここにあります許容度の考え方というのはへ厚生省の意図は私知りませんけれども、これは原水爆実験を目標にして発表されたものでない、もとは職業的の人のために出たものでありますから、そういう水爆実験が行われたような場合に、被害をこうむるであろうと予想されるわが国では、これでも利用したらいいんじゃないかという考え方が厚生省にもあるのだと存じますけれども、これ自体はそういうことでできたものでないということを、一つ御承知を願いたいと存じます。それからもう一つ、われわれ医学的にラジオ・アイソトープを治療に使いますので、そういうことのためにも参考になり、そういうことからのデータも取り入れられておるということを、一つ御承知おき願いたいのであります。 それから、レントゲン取締規則ですか、その改正についてわれわれの方に諮問があったかということは、専門家といわれましたけれども、私どもどうもレントゲンの方の専門家ではないので、レントゲン専門家といわれるとちょっと私も面はゆいのですが、私どものところには諮問を受けませんでした。あるいは厚生省が諮問されたならば、レントゲン学会なりレントゲン専門家の方に諮問されたのだと思いますが、われわれ内科関係の方には別に諮問を受けておりません。ただ、これは私のごく個人的の考えですけれども、そういう規則というものは、ルーズにしておいたときの弊害と、厳重にしておいたときの弊害と、天びんにかけてどちらが重いかということから考えていかなければならぬじゃないかと思います。レントゲン線による災害というものは、これは治療で患者を不注意に照射させたために、治療目的を達せなかったのみならず、レントゲン線の障害を受けたという例が絶無でもございませんし、それからかてて加えて、このごろはレントゲンの技術者が非常にやかましくなりまして、医師の方は自分で機械をいじって医師自身がやるということは、このごろ認められないものですから、レントゲンを直接扱う技師の面から非常にむずかしい要求が出ておるという面もあるのだと思います。
○八田委員 それから楠本さんと美甘先生両方にお伺いいたしたいのでありますが、放射能ちりの人体に及ぼす影響ということはまだまだはっきりしたことではないので、私はこれ以上質問いたしませんが、ただ食品の問題につきまして、今まで厚生省は十センチ百カウントというものをとっておったわけであります。ところがこのカウントと今度の考え方に対する許容度の問題につきましては、ミリ・レントゲンで表わしてきておるわけです。そうするとカウントとミリ・レントゲンとの比較あるいは換算というのはいろいろな条件に支配されますので、そう簡単には言えないわけです。特に今問題になっておるところの灰やあるいは魚や雨などの放射能は、種々雑多ね放射性物質から出るガンマ線、べータ線などの混合物を対象とすることになりますので、そう容易には換算ができないと私は考えるわけであります。 そこで今後食品が問題なのは、たとえばマグロの問題でありましょうが、マグロを一体どういうふうにして検査されてこの許容度に一致させられるか、あるいはそれらに対して検査陣としてどのような機構を備えられておるか、それをお知らせ願いたいのであります。
○楠本政府委員 お答え申し上げます。なるほど前回は十センチの距離からカウンターではかりまして一定の基準を定めておったのであります。この場合は応急の措置でありましたことと、もう一つはおよその目安を得るための一つの方法でありまして、その後いろいろ研究も進みまして、今回定めました基準の考え方は、こういった一定距離からばく然とはかるというよりも、さらに精密かつ厳格になっておるのでございまして、従って今回はこの基準を採用いたす所存でおる次第でございます。 なお、このはかり方については・一応体外照射の場合には、もちろんカウンターも一定機械、しかも一定のはかり方によってこれを換算することはできますが、最近は体外照射の場合には、またそれだけを正確にミリ・レントゲンではかる機械も逐次考案されて参っております。 なお、ただいま御指摘の水、食品等につきましては、現在この基準によります場合には、はかり方といたしましては、一定量、普通今までわれわれは一立方センチをとっておりましたが、そういった単位量をとりまして、これからカウンターによって計算いたしまして、それをむずかしいやり方でこれらに換算していくというやり方をいたします。御指摘のように、この換算はなかなか困難でございまして、相当な技術を要することでございますが、いずれにしてもすべて換算してこれらの基準に合わす、数字に一致させていくということでございます。たとえば今回マグロを検査いたします場合にも、その一定量を一定の方法ではかりまして、これを検査するということでございます。なお最近は、各地方の衛生研究所等におきましても、逐次これらの測定方法の技術も進みまして、現在おおむね観察あるいは測定等ができると、私どもは確信をいたしている次第でございます。従って今回南方に船を出して調査をする、サンプルを求めてくる、あるいは適当なサンプルすべて、さような方法で検査をいたしたい、かように考えている次第でございます。
○八田委員 雨とか放射能ちりのような場合には、十分に今のお話のようにできるのですけれども、魚がどんどん入ってくる、それを検査する場合には、これは簡単にはいかぬと思うのです。一定量をとって検査をするとおっしゃいましたけれども、魚のどの部分をとって検査されるか、これは非常に問題になると私は思う。この点について対策を立てておられるか。前みたいに十センチ、百カウントということ、で当って、これはいかぬ、これはいかぬということで捨ててしまった。あの愚、あの騒ぎは二度と起してはならぬと思う。あのときで、内臓だけをとってしまえば問題はないのだ、筋肉の方にはないのだということがはっきりしているわけなんです。ですから、今度マグ戸が来た場合に一体どの部分をとってやるのだ、しからばどの元素が一番問題となるのだ、こういうことになってくると思う。そうしますと、今は少くともストロンチウム九〇、セシウム一三七が問題になってくるわけですが、これを一々元素として分析されるのか。あるいは筋肉をとって、あるいは内臓をとって一緒くたにしてサーベィ・メーターではかっていくのか。この点の何か対策が講じておかれませんと、非常な混乱が起ってくると思う。その点いかがでしょうか。
○楠本政府委員 まことにごもっともな御指摘でございまして、私どもは現在魚につきましては、行政的には肉部及び血合いと言われております血身を検査の対象にいたしたいと考えております。ただし研究的には内臓の肝臓その他いろいろな場所を検査することは申すまでもございません。その場合も先ほど申し上げたような一定量をとって、それを換算していくというやり方で、このただいま問題になっております基準に当てはめまして調べるわけでございます。この基準は、ここに書いてありますものは、中に何が入っているか、その元素の分析等がいまだ明らかでない場合の適用する数字輝ございます。従ってそれによってこの数字を適用し、その結果、かりにも基準を上回るものあるいは基準にきわめて近いようなものがありました場合には・それをさらに分析いたしまして、別表によってそれぞれの元素に従って、またそこで許容量をきめていくというやり方でございます。従ってこれらの最後的に決定を見るということには相当の時日を要しますが、しかしこれは現在の段階においてはやむを得ないことと考えている次第でございます。
○八田委員 もう一点だけ承らしていただきます。私は今のような検査方法でおやりになることはけっこうなんですけれども、そのための人員の配置あるいは予算がどれくらい見込んであるのか、それを伺いたい。
○楠本政府委員 まことにお恥かしい話でありますが、現在各府県の地方衛生研究所におきましてこれらの検査あるいは計算ができるとは考えられません。きわめて限られた府県におきましてかようなことができることをはなはだ遺憾に思っております。私どもといたしましては今後すみやかに地方衛生研究所等の技術力を向上いたしまして、どこの府県においても一通りのことはわかるように一日も早くいたしたいものと考えております。なおこれに伴います予算措置等につきましてはきわめてわずかでございますが、年々施設整備費等を交付いたしております。しかしながら今回の検査につきましては、これは国内の検査の分も及び海上検蚕の分も特別に目下予算を要求いたしまして折衝中でございます。相当額が認められるのじやないかという確信を持っている次第でございます。
○大坪委員長代理 井堀君。
○井堀委員 せっかくの機会でございますので。私は先にお尋ねをいたしておりました岡、滝井、八田の三君のように科学的な知識を有しない全くずぶのしろうとですが、そういう意味で国民大衆の知りたいと思う気持を代弁する意味で、全く専門家に対しましては的はずれのお尋ねをすることになるかもしれませんが、御容赦願いたい。今私どもの耳にいたしますことは、何といいましても二十一日の水爆実験の結果を非常におそれている国民の気持というものは軽視できないと思う。これはさきに行われました原子爆弾の実験の結果、非常な被害をこうむったことは事実の上においてまた心理的な影響においても軽視できないと思うのであります。一つには長崎や広島における原子兵器の被害を受けた民族としての精神的な環境というものがこういうものに敏感であるというふうにもとれぬわけでもないと思うのであります。まあそれはいずれにいたしましても、こういう日本国民の感情からいたします一と、二十一日の水爆実験というものが直接どういう被害が日本に及ぶだろう、あるいはそれが長い期間にどういう形で日本の民族だけでなく人類に害悪を与えるだろうかということを知りたがっていることは事実なんです。これを知らしめる何らの政府の措置というものが考慮されておらぬこともまた争えぬ事実である。でありますから、新聞や雑誌等に各種の論説やいろいろ解説記事が載りますと、それをうのみに信用するより他に道がないというのが実情なんです。私はおそろしいことだと思うのであります。こういう問題はやはり政治としては一つ一つ解決していく義務がある、こういう観点から私はお尋ねをいたしたいと思うのであります。午前中からお二人の先生方のお話を伺い、ただいままた美甘先生からの詳細なお話を伺ったわけでありますが、私自身伺いながらなかなか理解のできない高度の学問的な発表のような感じを受けるわけでありますから、私の水準の国民が多数いることは間違いないと思う。でありますから、あまり今日の科学者と国民大衆の間の間隔がありますことは、やむを得ぬことでありましょうけれども、先ほど申し述べたような現状の前にありましては、もっと科学者も国民の前においてきてもらう、また国民も多少こういうときでありますから勉強もする、政治はそういうものに対するそれぞれのつなぎの役割をする義務があるわけであります。私はこの点は非常に今緊急な状態にあるんじやないか。そこで朝日新聞の本日の記事を読んでみますと私自身も非常な不安を感ずるわけであります。朝日新聞は、実験を目撃したところのニューヨーク・タイムズのローレンスという記者の伝えるところを報道しているわけであります。この記事だけを見ますと今度の水爆の爆発力というものはTNT火薬十五メガトンですか、これは広島の当時投下された爆弾が、この火薬の約二万トンに匹敵するものであった。そうすると今度の投下されたものは十八ないし二十メガトン、一メガトンが百万トン、こういっておりますから約二千倍の威力のあるものだということがこれをもってわかる。さらにさきに同じビキニで一昨年投じられました原爆のものが十二ないし十四メガトンといいますから、倍に近い大きなものであった、このことを伝えておるわけであります。でありますから前回の水爆実験でもさっきマグロの話がありましたが、少からざる被害をこうむって人命もそこなったことも明らかであります。でありますとそれ以上の威力のあるものが投下された、その方法も前回と異なって空中から投下されたのだから、それの及ぼす影響もはかり知れない。たとえばきのう同じ新聞の中に記載された記事を私は興味深く読んだわけでありますが、立教大学の田島教授の意見を載せておりました。こういう専門家の意見を紹介いたしましたり、あるいは懇切にこういうことが掲げられる、そうすると私どもといたしましても代議制の政治形態をとる今日においては、国民のそういう質問に答えなければならぬ義務がある。ところが私聞かれましても答弁ができぬわけです。そこできょうはよい機会でありますので専門家のあまり学問的な高度のことを教えていただきましても取りつきようがありませんので、今度の場合は前回とはこういろ事情で異なるから、格別被害はないだろうとか、あってもこういう結果に終るだろうとかいう程度のことは明らかにせなければいかぬのじゃないか。そういうものの国民に対する説得する基準と申しますか、ここに今政府のこういうものをいただきましたけれども、これも私は一つの方法であろろと思いますけれども、これにいたしましてももっとそういろ直接今国民が心配しているものに対して答えを出すということが必要じゃないか。こういう点について先生の見解をここで述べていただくことは直ちにそれが国民に紹介されるよい機会だと思いますので、お気づきの点をしろうと考えの私どもり質問に御懇切なお教えがいただければ、非常にけっこうだと思います。
○美甘参考人 今度実験された爆弾の威力が非常に大きなものであるということは周知のことのようでございますが、そしてまた私も原子爆弾自体については別に専門家でも何でもない、あなた方と同じくらいの知識しか持たないのであって、どうも核兵器自体の知識はきわめて私乏しいのであります。が、被害の方だけは多少わかるというわけなんでございます。ただ私が今まで常識的に知っております事柄から考えてみますと、この前のビキニの場合は持ち帰って参りました灰を分析いたしましても、サンゴ礁の灰がたくさん入っておるのでございますね。ですから地上の非常に近くで爆発したものか、さもなければ地の中に埋めて爆発したものであろうということが推察されるわけであります。地上のものが爆風何かで小さくみじんになって飛びますと、そこで核分裂から出て参ります中性子がくっつきまして、いわゆる誘導放射能というものを持つわけです。原子の中へ中性子が入りますと、それがやはりアイソトープになってガンマー線なりべーター線を出すようなものになるわけでありまして、それが非常に多かったことが、漁夫の被害を強めた一つの原因にもなっておるわけであります。あれがいわゆる純粋の核破壊生成物だけでありましたら、こんなにたくさん降ってくるわけでもありませんし、被害がもっと少かったのではないかと思われるわけであります。今度のは空中で爆発したのですが、どれくらいの高さで爆発したのか、そんなこともはっきりわからないのでありますが、三千メートルの高度で爆発したということでございますから、三千メートルでも、非常に爆発力が強ければ、地上の物を吹き飛ばすあるいは水などを吹き飛ばすということが起るかもしれませんが、地上に近くよりはよほどその点は少いのではないか。誘導放射能に関する限りは、今回の方が前回よりは少いのではないかということが想像されます。それもその威力が非常に多ければ、三千メートルでも地上の物を飛ばしてあるいは水蒸気などにも誘導放射能がくっつくということがあるかもしれませんが、ただそれは私だけの考えで正しいかどうかわかりません。ただ誘導放射能に関しては、むろん核破壊の生成物の直接の影響は今度の方がはるかに大きいであろうと思われますが、誘導放射能に関しては、前回よりはむしろ少いのではないかというような気がいたします。従って今度はまたビキニの船のように危険区域におって直接灰をかぶるというような事態もないでありましょうから、少くともああいった直接の被害というものはある程度起らないのではないかあるいは起らないことをわれわれとしても希望するわけであります。そういたしますと、先ほどお話のように、フィッション・プロダクトが地上に落ちたりあるいは微粒子になったものが、成層圏に入って世界を回る、そういうものが雨になりあるいは雪になって地上に落ちてくるというようなことの影響を考えなければならないのではないかと思うのであります。それから一般に私どもの専門の立場といたしまして、障害を受けた人の直接治療に当るわけでありますから、その最も高変な遺書の場を見るわけであります。ですからいろいろ実験をやっている人が、動物について実験をする。そのデータを発表する、それからいろいろ敷衍して、こういう可能性がある、あろうということが、大へん学者の間では言われるのであります。私どももその可能性については、ずいぶん新聞記者諸君からも当時いじめられたのでありますが、新聞記者諸君の方が非常に巧みな何を持っていて、非常な可能性があるであろうということを盛んにわれわれに聞かれるのであります。可能性があるであろうということを、われわれもどうも実験してみたものでもないものを、ないということは言い切ることはできませんので、可能性はあるであろうということになる部面がかなりあるのであります。可能性があるということが話が回り回って、現実に起ったようなふうに伝えられることもないではないという心配があるわけであります。それで私どもも可能性ということと現実に起るということの間のけじめが非常にむずかしいのであります。われわれも、少くとも自分一人が経験しておらない、あるいは見ておらないからそういうことは起らぬだろうということは言えません。やはり可能性があるというデータがあれば、それについて考えもし、そして頭を向けていかねければならぬという立場にあるわけです。ですから、結局少くとも医学者は、人体についていろいろな障害ということは非常にわずかしかわかっていないということしか言えないわけです。わずかしかわかっていない。われわれの知っていることは、非常に少い範囲であるから、こういうある可能性について質問されたりなんかすると、その可能性はありませんと断言はできない。むしろ何かの実験のデータで・あるということであるならば、やはり可能性として入れなければならないという範囲でございまして、実を申しますと、非常にわれわれの知識が乏しいのだということにほかならないのだと思うのです。そういう点で非常に社会にはいろいろ必要以上に不安を与えましたり何かする面がなくもないのではないかと思うのでありますけれども、われわれも言動としては相当社会的な影響ということも考えて言動しておるつもりであります。しかし、なかなかそう一プラス一イコール二という答えが出ないものですから、そこに大へんな困難があるわけです。私の申し上げたことがあなたの御質問の的に当っているかどうかわかりませんけれども、この程度で……。
○井堀委員 こういうことをお尋ねするのは、かなり的はずれだと私も思うのですけれども、私ども先ほど来申し上げたように、国民が知りたいだけでなく、政治としては一つこういうものに対するある程度の答えを出さなければならぬ必要性を私は痛感するのです。そこでどういう学者がどう答えを出すかという科学陣におけるそれぞれの専門の分野もあろうと思いますけれども、きょうお三方においでいただきましたその方々の立場というものは、直接被害を受けた人間の肉体に直接こたえた問題を扱ったのでありますから、これを処理しようとする科学者の良心的な努力というものは、ずっとたぐっていきますと、やはりその原因を探究する一番正しい強い線が科学的に出てくる立場におありであるのではないか、こういうものをできるだけわれわれは学び取って、政治に生かしていく、こういう意味できょう先生方に御足労願ったものであろうと思うのです。そういう意味で、実は先生方から見ると突拍子もない質問であるかもしれませんけれども、私どもにとりましては、それでは科学兵器に対する専門家を呼んで聞くか、あるいはもっとその科学の中でも火薬その他の面の物理化学を扱っている人の意見を聞くのがよいか、いろいろあると思いますけれども、総合的なものを求めなければいけないということになると思いますが、何といいましても、広島、長崎によって受けた一番身近な大きな悲劇ですから、やはりこれには一番真剣な努力を払われたということは間違いないわけです。こういう点で先生方の経験が紹介されたり、あるいはその経験を通じていろいろな見通しがなされるということが、一番信憑力のあるものだ、またそういうものはできるだけ国民に正しく理解させるようにすべきだ、こういうふうに私は考えて、お尋ねをいたしておるわけです。それでくどいようでございますけれども、政府がここに発表しておりますものが、体外的な照射の場合、あるいは空気汚染の場合、あるいは飲料水汚染の場合、食品汚染の場合の四つをあげておるわけでありますが、マグロの話が出て、食品のようなものはわれわれ身近に経験しておりますから、こういうふうに書かれてもある程度想像不在きるわけですが、空気なんということになりますと、あるいは水なんということになりますと、これはさっぱりわからぬ。高いところから落されたのだから、成層圏を通じていっそれがわれわれのところに影響するのか。あるいは雨にまじって飲料水のうちにどう入ってくるかということを心配し始めたら切りがない話です。そういうことを果てしもなく心配させるような状態を放置するということは無政府状態だ。これは厚生省としては、こういう角度から一つの国際的な水準というものが明らかになったとするならば、今回のビキニの二十一日の実験はこういう形でこう現われるということは言えねいにしても、やはり国民のある程度安心のできる水準を考えられて、そういうものを指示すべきじゃないか。むずかしいことだと思いますけれども、むずかしいことが事実として迫られていることもまた事実なんです。こういう点に対して厚生省として専門家の意見をたたかれて何か準備でもされているのか、あるいはしょうとしているのか、あるいはその用意があるのか。この点は当然厚生省としては考えなくてはならぬことだと思う。これに対する見解を一つ承わっておきたい。
○楠本政府委員 現在、常時私どもは各地に観測陣を設けておりまして、いろいろのデータを入手いたして、それを単に一人の判断でなく、原爆対策連絡協議会がございますので、そこの協議会に諮って、それを総合的に判断をしてその結果を発表するようにいたしております。なおそのように現在まで進んで参っております。また今回は特にすでに各府県の漁業指導船、あるいは一部有能な漁船に委託いたしましていろいろなサンプルの入手につとめております。一方二十六日には政府から俊鶻丸も派遣されることになっております。これらの材料あるいは情報等はもちろんただいま申し上げました学者その他のグループであります連絡協議会にも諮ります。特に今回の問題は専門的な事項が多いので、技術顧問団という組織を設けまして、必ずそれらのデータあるいは材料は技術顧問団で総合的に判断をして正しく国民に知らせるという仕組みをいたしております。今回の技術顧問団によるところの発表はいまだなされておりませんが、少くともそういう態勢を整えております。ところがこれを極端に実施することは、発表の一つの統制ということになりがちで、もちろん研究は各学者がきわめて自由な意思によって好きな研究をし、そうして自分の考え方を率直に述べるということは、学問進歩のために当然なことだと思いますが、ところが一方さようにして発表していくというようなことは、なかなかいいことであっても、従来の経験から考えますと、困難が非常に多い。それがややもすると間違って、ごく一部の発表、一部の個人的な考え方というようなものが誤まり伝えられて、その結果多少国民に不安を呼び起しているというようなことがねいとはいえません。従って今後はできるだけ各研究者の御協力を得まして、必ず総合的な判断をして、それから後に正しく国民にその結果を発表していくようにいたしたい、かように考えております。しかしこれは従来の実績から申しますとなかなか困難な点もございますが、この点は一そう今後努力をして参りたい、かように考えております。私といたしましてはただいま御指摘のように、いろいろ、不安が持たれておりますことをよく知っております。私どもといたしましてもできるだけこの不安を解消するために、しかも一方正しい事実を国民に知っていただきますために努力いたしておりますが、なかなか思うにまかせませんのをはなはだ遺憾に存じております。 なお第二点のお話の水と空気の問題でございますが、空気の汚染につきましては現在中央気象台の観測所におきましても一部実施をいたしております。また私どもの手元におきましても札幌、福井、鹿児島等重要地点にはかような測定の場所を設けまして、現在測定を各地で実施いたしております。幸いにもビキニ以来過去二年間空気汚染の現状を調べて参りましたが、今まで人体に危険があるということは毛頭ございません。むしろ許容量として考えられるものの何百分の一というようなものが多うございます。比較的多かったのは、これもむちろん許容度をはるかに下回っておりますが、本年度になりましてから、おそらくソ連の実験の影響であろうと思われるもの――夏でございましたが、それで九州地方にかなりの空気汚染が見られて、私どもはこれをカーブのようにして毎日の空気汚染を描いておりました。従って決して従来までは不安な状況はございません。なお水につきましては、特に雨水等の関係から飲料水につきましても、私どもは特定の水道水源あるいは井戸等をあらかじめ指定をいたしまして、常時これを検査いたしております。これは過去二年間、一例として特に放射能で汚染されたものが認められない現状でございます。従って私どもといたしましては従来は何ら水あるいは空気等に危険はなかったと考えております。 なお今後の見通しでございますが、これはただいま美甘先生からもお話がございましたように、今回の実験は空中爆破で、しかも三千メートルの高度でございますから、容易に亜成層圏に達しまして、非常に強い拡散力によって地球の周囲を取り巻くことになろうと存じますので、今の予測ではおそらく一昨年のビキニの実験あるいはその後各地で行われた実験より薄い、あるいは空気の汚染は少いものと考えております。従って海水の汚染等も少く、その結果は魚類汚染も前回よりは少いのではないかと想像いたしております。しかしこれは今後の研究に待たねければ確たることは申されません。従いまして私どもといたしましてはできるだけ万全の措置をとって、現状を把握しておるつもりでございます。今後一そうこれらの態勢を整備いたしまして、国民に不安もなければ危険もないという考え方で進んで参りたいと存じております。
○井堀委員 お話を伺えば伺うほど私どもの不安は募る一方です。特に放射性物資の混入の測定といいますか、調べといいますか、どういう工合にして把握するのか、そういう点一般国民というものは全然知識がないと見た方がよいと思います。ごく限られた専門家の間だけしか通じない、さらに防御の道については考えられないという点だけはかなり常識になっております。私はそういうふうに考えます。そこで今部長さんの話によりますと、前回より今回の方がやや被害が少いのではないかという御説明があれば、それはそうかなと思うよりしようがない。しかしそうおっしゃられたからといって、一体成層圏以上の高いところで爆発したのでありますから、考えようによっては早い速度で世界に散らばるということで、前回よりはもっと威力を持つのではないか、広範にわたるのではないか。午前中のお話もありましたように、アメリカの専門家の発表を引例されておりましたけれども、前回ビキニで試みた程度のものが五百五十発以上実験されると、そのことは世界中の人類にそれぞれ有害な許容度に到達をするだろうというような学説があるとすれば、これは単にわれわれが心配するというにはあまり深刻だと思います。従って御案内のように、衆議院、参議院におきましても、アメリカの今度の水爆実験については国民の意思を代表して院議でしからざることを願っておるわけであります。しかしやられたのであります。だから政府としては国会の意思があらかじめわかっておるわけでありますから、こういう問題についてはもっとやはり積極的な措置がとられておらなければいけないと私は思うわけです。しかしわれわれの責任もあります。そこでこれは全くしろうとの質問ですからお笑いいただいてもしかたがありませんけれども、今度の水爆実験の結果、空気や水について日本民族には全然危険がないということは言い切れぬことは事実です。いつどういう形で、どの程度の被害が襲来するかということなのでありますが、これをどうでしょうか、先生科学人としては防御の道が――それはいろいろの条件があるかもしれませんが、防御の道が考えられるのであるかどうか、そういうものは不可抗力というように・現在の科学はあきらめておるかどうか、この点に対するお考えが何かありましたら伺いたい。
○美甘参考人 放射能の防御の方法があるかとおっしやることでございますが、これは外部から照射されるというような場合ですといろいろ遮蔽するというような手段があるわけでございます。けれども内部に入ってしまったものを駆逐するとか、あるいは効力をなくしてしまうということは、幾つかのものでわれわれもずいぶんやってみたのでございます。たとえばEDTA、それはストロンチウムの中に入っておるものをカルシウムに置きかえてやるわけですが、それも血液の中にある間は変るけれども、骨の中に入ってしまったものは、骨から遊離させて置きかえることはできないものです。だから放射性の障害が起って、その症状に対してはある程度のものを注射してやるとか食べさせてやるとかする。たとえば果糖というものがございますね。果糖なんかを注射してやると、これは実験でもそうなんですが、よほど大量の線量があっても動物は死なない。ブドウ糖より果糖の方がいい。またある種の乳酸にもそういう作用があるということでわれわれもやったのですけれども、実際それで症状がどれだけよくなったということはそう簡単には申されません。ですから全然ないというわけではございませんけれども、あっても非常に効果のある、ペニシリンみたいにきく薬はないことは事実です。多少いいというものはございます。だからわれわれの側としては、なるべくそういう危険なものを体内に摂取しないようにすることが第一だということを強く要請したいわけなんです。入ってしまってから治療ということを言っても、障害を起すような程度に入ってしまうと非常に困難であるということを言わざるを得ないわけです。しかしこれが水にしろ、空気にしろ、許容度以下のものでありますれば、入っても生体にはわれわれが認知し得るような変化を起さない。遺伝のことをやかましく議論いたしますと多少の問題があるかもしれませんが、現在精子の数にしましてもこの許容度の範囲のものでしたら、特にそれが減るとかなんとかいうことはないというところで、許容度はきまっているわけであります。
○井堀委員 人体が放射性の物質で侵されたらもう治療の道がないという、いろいろな実験の上での先生のお話で、人類にとってこの上ない非常な大きな悲劇でしょうが、そこで私どもは政治をあずかるものといたしましては、こういう事態の発生を、しかもこれは人為的に起るのですから、天災と異なって政治的に阻止する道が閉ざされているわけでない問題だけに、真剣にならざるを得ないわけです。そこで、政治はやはり全体の力の総合の上に成功していくわけです。特に民主主義政治はそうでなければならぬと思う。ですから、やはり国民の素朴な意見でも、それが数の力になりますと国を支配し、民族を支配し、世界を支配するような声になれば、私はそういう人為的な被害を阻止することが可能だということが、民主主義を信ずるものの一つの希望だと思うのです。こういうことで、私は一番声を大きくしてもらわなければならぬのは科学者でないか、しかもそういう被害に直接取り組まれた科学者の声が一番強く政治を動かす、そして世論の一番強いものになるのじゃないかと思う。しかし手放しで論議できぬことは、先ほど来の質疑応答の中である程度われわれも理解できます。しかしこういう機会が得られましたことも、私どもにとっては一つの明るさを求める小さな道が開かれたと思うのです。これは原因は簡単で、前回のビキニの実験にいたしましても、今回もそうだし、しかも五百五十発という声は私は高く上げなければいかぬと思う。実験だけでも五百五十発ですから、やはりどういうはずみで戦争が起らぬとも限らぬ。ことに今回の場合は飛行機で運搬ができたというこの事実は、どこでも持ち歩けるということですから、驚異的だと思う。そうすると、今度は戦争が起るという声が人類に響いたときには、取り返しのつかない大きな被害が展開されるということも単なる想像ではなくて、予定することのできる一つの人類の悲劇だと思う。そういうものが明らかになった以上は、もっと積極的な科学者の声を-また政治家もそれと呼応して、特に厚生省のようなところは、あなた方のお仕事とすぐ関係を持つところですから、それが総合的なものになってくれれば一番よいのでありますけれども、部分的なものがそれぞれの角度から取り上げられてきて、そして世論が一つの答えを出すというのが民主主義政治の行き方なのですから、こういう点では先ほど来質問者の間でも意見があったようでありますし、また御答弁の方にもいろいろ立場の御説明もあったようであります。これは私の考え方を前提にしてお尋ねするのですけれども、日本の科学者は、特に今度の放射能による広島、長崎の患者はもちろん、前回東大でお世話願った人々の結果というものは、専門家の間には高く評価されておりますが、一般国民の間には、人命を守るために先生方は一生懸命やって下さったという、要するに軽い影響しか与えていない。そうではなくて、こんな人類の悲劇はないということをもっと国民の前に紹介することが、以上申し上げたような関係から必要ではないか。そういう点非常に引っ込み思案ではないかと私は見ておるのです。またそういうことは仕事の外だというふうに御遠慮なさっているのかもしれません。その辺を私どもは聞きたいと思うが、もしお差しつかえなかったら、国民にそういう点をお聞かせいただけば、また政治の動きの中でどう取り上げるかということもあるので、一つこういう点について科学者の間の内輪話を聞かせていただきたい。
○大坪委員長代理 井堀君に申し上げますが、美甘参考人ずいぶんお忙しいと思いますから、もし今後もお続けなれば要点に触れて御質問願いたいと思います。
○美甘参考人 今のことでいろいろ考え方もありましょうし、私どもはただ事実をデータとして世界に発表する。それを解釈していただくのはむしろあなた方の方でやっていただきたいというふうに考えるわけでございます。事実は幾らでも提供いたしますので、私どももいろいろ世界に向って――アメリカヘもこの間辻さんが行かれたときに何しました。ヨーロッパの方にも学界の方ではやっておりますから、それ以上のことは、ちょっと私ども手づるもありませんし、それからまたそういうことで時間が非常にとられるということでありますと、われわれの研究自体というものが鈍りますので、直接そういうことはわれわれ自体の間では計画されておりませんのですけれども、ただ個人の意見としてそれをやられるということはちょいちょいあると思うのですけれども、ただ研究者と申しますか、学者と申しますか、そういうグループとしてそういう仕事をするというようなことは、むしろきわめて消極的になっておるわけでございます。ただ学術会議あたりが取り上げてくれますと、これはだいぶ声を大きくしてやってくれるわけでございます。今度の問題でも学術会議はある程度取り上げてステップをとっているわけでございますけれども、そういうところへ持っていってわれわれの研究は直接データとして資料となっていくわけ、であります。ですからそういう御要望はむしろ学術会議の方へ出していただくといいのじゃないかと思うのでございます。個人なり個々の研究のグループということでなしに、日本の学術全体の総元締めである学術会議の方へやっていただけばむしろ学術会議でやって下さると思います。
○井堀委員 大へんお忙しいところをお引きとめして恐縮でございましたが、時間の関係もございますから、私のしろうとの質問を長く続けるのもどうかと思いますが、最後に一つ、これは政府に伺っておきたい。 先生の今のお話でも学術会議等のそれぞれの発表があるようでございますが、そういう資料を一つ整理されまして、特に直接関係をされたそれぞれの事柄が学究的なものとして相当検討されておると思うし、広く紹介されていますけれども、先ほど来申し上げておるような人為的な不幸を阻止するための政治、そういった面にこういうものを活用したいと思う。費用もかかることでしょうから、それは予算を要求されたらいいので、われわれも協力いたしたい。そういうものをできるだけ国民の多くに知らせる意味において、解説的なものをどんどん紹介していただきたい。ことに先ほど伺いますと、技術顧問団が現地調査に出かけておられる。こういうものは中間報告の形でもけっこうですから、なるべく早くわれわれに知らしていただくようにしてもらいたい。
○滝井委員 ちょっとお尋ねしたいのですが、一昨年ちょうどビキニの水爆実験が行われたときに質問をしたのですが、今回、ビキニの被害を受けた日本の漁夫については、学問的な成果というものはほとんど公開をしたと思うのです。そしてアメリカの学者その他にも十分に見てもらったと思うのです。あのときに私が、ビキニに住んでおった現地人に対する影響は一体どうなったのだ、アメリカからその成果を日本の学者その他にも当然提供してもらわなければいけないと言ったら、それはアメリカの方で今土人をどこか別の方向に移してやっておるので、いずれしてくれるだろうというような答弁が楠本さんからあったと思うのですが、その後そういう学術上の成果がアメリカから日本の学界なり厚生省なりにあったかどうかということが一つ。 いま一つは、ちりの中に含まれておる放射能の成分ですか、元素の名前・分量というものがそのたびごとに違っておるということです。私たちがやるたびごとに、元素の成分や名前が違っておるということを一々やっていくのは大へんなことです。日米の間には原子力の協定なり技術協定というものができてきております。しかも日本が自由主義諸国の中に入っておるということになれば、そしてアメリカ自身も、こういう違った形の地上水爆実験から非常に高度の空中における水爆実験をやっていくのだということになれば、もう少し何かそこに一つの示唆を与えてもしかるべきだと思うし、またそれを要求する権限もわれわれにはあると思うのです。そういう点で今回の実験に当って、実験の通知その他は外務省に来ておると思うのですが、外務省を通じて厚生省はそういうような示唆を提供してくれという要求をされたことがあるのかどうか。この二点について答弁していただきたい。 それから、放射性物質に対する許容度の考え方というものは、やはり国際的な勧告を一応基準にしてやっておるということから、日本でこういう放射性物質に関する学問的な検討をする場合に、当然アメリカの学界との交流ということがあっていいのじゃないかと思うのです。そういう点から先生の御意見を承わっておきたいと思うのです。
○美甘参考人 日本の方も、特にアメリカの方へ報告文として一般に公開したものを送ったということはあると思いますが、私ども自身は、向うの人が来ればある程度のデータを示して、始終ディスカッションをやっておりました。私は実は一昨年の九月ごろ、アメリカのワシントンのアトミック・エナージー・コミッティに参りまして、あそこの医学生物学部長のブーアーという人が不在中でしたのでその次長に会いまして話しましたが、被災したビキニの原住民はそのときには、ロンジラップという島で、何マイルか離れて汚染されていない島に移してあるということでありました。移すには、二十二時間か二十四時間足らずくらいで全部移したのでございまして、汚染のないところへみな移したわけであります。それから動物などは、鳥だのネコだの家畜というものは、それをときどき殺しては島での被害状況を動物によって検査していたわけであります。特別のほかの新しい動物は持っていかずに、土地にいる動物を使っていたのであります。 それから患者の状態にしましても、逐一詳しいデータを見せてくれまして、こちらの方はこの程度によくなつている、お前さんの方はどの程度かということで、詳しいデータをすっかり見せてくれました。それはきれいな本になっておりましたけれども、表にシークレットという判が押してありまして、医学部門の点だけは見せてくれるのでありますが、なかなかこっちへその本を手渡してくれないのであります。写すなら写してもいいというのですが、全部見てはいけないかというと、全部見せると爆弾の大きさがわかるというのであります。医学のこと以外はシークレットだからというので見せてくれない。私どもが見たのでは爆弾の大きさはわからないのでありますけれども、この報告を見ると爆弾の大きさがわかるというのでやかましいのだと言っておりました。こちらでも全部発表になれば別冊で送ってやるということはいたしますが、向うも全部発表になれば別冊になって送ってくると思いますけれども、向うでは今のところ部外秘の取扱いをしているようであります。しかし個人的には隔意なく教えてくれます。
○楠本政府委員 一括してお答えを申し上げますが、先ほどお話のございましたように、せっかく従来いろいろな調査等をいたしておりますので、これらの専門的な資料をできるだけわかりやすく翻訳をいたしまして、広く国民に報ずる材料を作りますことは、できるだけ御趣旨に沿って実行いたしたいと存じます。 滝井先生の御指摘の現地患者などにつきましては、その後公文をもっては返事はございません。しかしながら、ただいま美甘先生からのお答えもありましたように、個人的には君らの聞く点については率直に答えるという返事でございます。 さらに第三の点は、今回の実験に伴いましてできるだけその性能がわかりますことは私どもの対策を容易にいたします。従って、もちろんそのことを外務省を通じて申し入れをしましたが、しかしながらこれにつきましては、向うではどうしてもこまかい点は発表できないよう、です。ただ、やる日取りとかどういうところで行うかというようなことについては、ごく概要を・現在新聞に発表されます程度に外務省を通じて返事を受けております。
○大坪委員長代理 美甘参考人には本日は御多忙中まことに長時間ありがとうございました。 次会は明後二十四日木曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後四時二十九分散会