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24回国会衆議院1956/05/28

外務委員会 第52号

発言数
186
登壇者
12
会派数
2
開催日
1956/05/28

会議録

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 これより会議を開きます。  日本国とフィリピン共和国との間の賠償協定の批准について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑を許します。田中稔男君。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 重光外相に若干お尋ねいたします。このフィリピンとの賠償協定につきましては、他の委員から内容的に詳細にしてしかも非常に掘り下げた質問がすでに行われました。私はむしろこの協定が他の国との賠償に及ぼす影響というようなことを中心にいたしまして、若干お尋ねいたしたい。まずインドネシアとの関係でありますが、インドネシアにおきましては、最近第二次アリ・サストロアミジョヨ内閣が成立いたしました。この政権は国民党、マシュミ党、ナフダトゥル・ウラマ、この三大政党の連立内閣でありまして、これは相当長期にわたって安定性を持った政権である、こういうふうに考えられておるのであります。そこでいよいよインドネシア政府も、本腰を入れて対日賠償問題について話しかけてくると思うのでありますが、何でも聞くところによりますと、すでに非公式に賠償問題の交渉を開始したいというような申し出があっておると聞いておりますが、その内容を一つこの際お聞きしたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 日比賠償が幸いにして妥結をいたしました。これが両国の批准をもって成立し、履行されて参りますならば、それに応じて他の国にも非常にいい影響を与うるであろう、こう予期しておるわけでございます。そういう意味でインドネシアに対する賠償問題も解決をいたさなければなりませんから、インドネシアの賠償問題の交渉も、促進するように形勢が進むことを非常に期待しておるわけでございます。今お話の通りに、インドネシアの政情もそういう方向に向いてきておることは事実のようでございますから、大へんけっこうだと考えております。ただ、今まだ交渉がないというわけではございません。というのは、賠償問題を片づけたい、こういう双方の意向は常に表示され、日本側もそういうことを表示して、一つ先に進めるように何とかいたしたい、こういうことで進んでおるわけでございます。しかしまだそれ以上に具体的の提案は、いずれからもございません。具体的の提案ができるような情勢ができて、そしてそういう会談に進むことを非常に期待しておるという状況であることを一つ御承知願いたいと思います。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 実は私個人としても、インドネシアに二年ほど行っておりましたし、それから現に日本インドネシア協会という団体の役員をしておるのでありますが、われわれインドネンアに関心を持つ者は、賠償問題の早期解決、これを従来主張して参ったのであります。重光さん流に慎重に事を運ぶのもよろしいのでありますけれども、向う側から要求されて、それで応じるというような態度を示すよりも、むしろ日本の戦争責任でありますから、日本側から一つ積極的に、賠償問題の解決を申し入れるというような態度をとることが望ましい、その方がむしろ賠償の負担もかえって軽く済むということも考えられる。しぶしぶ応じるということになりますと、向うの感情も悪いわけでありますから、しぶしぶやりまして、かえってだんだん賠償額をつり上げられるというような結果になるより、あっさりと、われわれは賠償問題を誠意をもって解決したい、しかも日本の経済力も考えれば、そう法外な額も出せないからというようなことで、あっさりとこちらから先手を打った方が、打算的にもむしろ有利である。こういうことをわれわれは主張、して参ったのであります。ただいまの御答弁によりますと、インドネシアにも安定した政権ができた、いよいよ交渉ができるというような条件が整った、これは非常にけっこうなことであります。今まで交渉がなかったわけではないが、しかしまだ発表する限りでないというような御答弁であったようであります。そうであれば、むしろインドネシアに安定した強力な政権ができた機会に、日本側から先手を打って、賠償問題の交渉を申し入れることがよくはないか、このことにつきまして外務大臣のお考えをお尋ねしたいと思うのであります。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 御意見の点がどこのころまでねらわれているのかわかりませんけれども、実は私どもも今言われたような御意見に賛成なのです。その方向で今日まで内交渉を進めてやってきているわけであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 内交渉をいろいろとやっておられるという含みのある御答弁でありましたから、これ以上突っ込まないでおきます。賠償問題は国家的な見地からわれわれも考えたいと思いますから、一文惜しみの百文損という言葉がありますが、そういうことのないように、むしろこちらから虚心たんかいに先手を打って相談を持ちかけてやるというくらいの気持ちでやってもらいたい。その方が結局私は得だと思います。それから次にお尋ねしたいのは、フィリピンとインドネシアではだいぶ国の性格が違い、外交政策の方向が違う。フィリピンだって高碕全権のみやげ話によりますと、最近非常に強いナショナリズムが台頭しているということでありますが、私はますますそのナショナリズムというものに強化されていくものと思う。これはまことにけっこうなことであります。そういうことをわれわれはむしろ希望しているのであります。対比賠償につきましても、金額において若干多いと思っても、まあ特別に考えなければならぬと思うのでありますが、インドネシアとなりますと、ナショナリズムはもっと強いわけでありまして、バンドン会議もインドネシアの町で開かれた。その当時バンドン会議を主催いたしましたストロアミジョヨが再び圧倒的な国民の支持をしょって内閣の首班になっている。最近スカルノ大統領もアメリカへ参りまして、その際上院と下院との合同会議で非常にはっきりした中立的立場を声明いたしましたが、スカルノ大統領に同行いたしました外務大臣もやはりワシントンで新聞記者に語っております。たしか昨日の朝日新聞かに載っておりましたが、大体こういうことを言っているのです。インドネシアはいよいよこれから経済建設の五カ年計画をやるのだ、そうしてインドネシアの中立的立場を強化する。それについてはアメリカの経済援助をもらいたい。非常に虫のいいような話でありますが、そういう経済援助をしてもらいたい。しかしこの経済援助にはいかなる政治的なひももつけてはならない、こういう条件をはっきりと言っているわけであります。私はこういうインドネシアの外務大臣の言明を重光外務大臣によくかみしめてもらいたいと思う。あなたが昨年ワシントンにおいでになったときの言動と、インドネシアの外務大臣が今度アメリカへ参ってこう然と語りましたこの言動というものは、全く鮮明な対象をなしているのでありまして、インドネシアは今まで東南アジアにある弱国のように考えている人が世間には多かったのでございますが、この団の外務大臣がこういうことを堂々と言えるのであります、こういうインドネシアでありますから、今度日本に対する賠償交渉におきましても、やはりなかなか強いことを言うと思う。強いことを言いますけれども、しかし日本がインドネシアの外交政策に同調するような立場をとり、ともにアジアの友邦として一切の植民地主義に反対し、一切の対外従属に反対して立ち上る、平和をもって建国の理想とし、民主主義をもって国を建てる、こういうふうな点が日本においても確立されるということでありますならば、賠償問題におけるインドネシア側の要求にしても、日本に対して非常に同情的な態度を示してくれると思う。これに反して、日本がインドネシアの外交政策と全く逆な方向にどんどんつっ走って、対米従属の態度をますます深め、下手をすると、アメリカの虎の威をかりてまたアメリカ版の大東亜共栄圏というようなものをアジアにおいて考えている日本というような、かりに疑念であっても、そういう疑念を持つようになりましたならば、インドネシアの日本に対する全般的な印象、態度がぐっと悪くなると私は思う。この賠償問題といえども、日本の外交政策全般がどういう性格を持つかということによって左右されるところが非常に大きいと思う。こういうことはインドネシアとの賠償交渉を開始するに当って、一番基本的な態度だと思うのでありますが、重光外務大臣はそういうことについてどうお考えになりますか、お伺いいたしたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私は、日本には日本の政策があり、インドネシアにはインドネシアの政策がある、こう思います。それをはっきりと打ち出さなければならぬ、また打ち出してきている、こう思っておるのであります。しかし今申された大きな政策、たとえば平和主義の政策でなければならぬ、民主主義の政策でなければならぬ、それらのことについて意見が一致するならば、賠償問題について非常に貢献するところがあろう、こういう全般的な御趣旨につきましては、私も非常に御賛成を表したいと思うのであります。第一平和主義、これはわれわれが従来東南アジア方面において誤解を受けておるという歴史がございます。いやしくもさような誤解を受けるようなことを繰り返すべきではないと思います。そうでありますから、バンドン会議におきましても、日本はすべての紛争を平和的に解決すべきであるという大きな平和主義の旗を立てて主張をいたしたことは御承知の通りであります。なおまた、いろいろな機会においてわれわれは、つまり日本はいかなる国とも平和主義でいく、特にアジアの諸国との間において、いやしくも侵略的行為などは互いにとらないというようなことを誓約することは、少しもこれは辞するところでない、こう言っておるわけでございます。さようなことで誤解は解ける、また将来における提携の道が思想的にも開け得ると思います。特に対米関係について言われましたが、日本はアメリカに対していろいろな条約上の関係を持っております。インドネシアはそれがあるいはなかろうかと思います。これは関係が違います。しかしながら、それかといって何も日本の行く道が他州によって左右されるということじゃございません。自主独立の道を一歩くのであって、特に日本がインドネシアあたりと同様に、アジアの一国として国を建てていくことにおいて、非常に大きな共通点があるわけでございまして、またお話のバンドン会議の精神も非常にそれから出ておる点があると思います。さようなことでアジアの一国として特に共通な思想と申しますか、考え方と申しますか、これはあるのでありますから、特に自主独立の民族主義に対しては、日本はもとから同情を持って進んでおるわけであります。かような考え方の上に立って、インドネシアとの関係を処理しなければならぬと考えております。それによってまた賠償問題のごときもその考えで進めば、これまたお話の通りに、日本とインドネシアにおける関係が融和し、賠償問題の交渉に便することは、もちろん期待できると考えておる次第でございます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 今重光外務大臣も、日本は自主独立の態度でいくとおっしゃった、これはけっこうであります。ただ、その自主独立の態度で対米従属の外交方針を続けるということでは困るわけであります。自主独立な態度でもってやはり平和的共存という外交政策をとることが私は必要だと思う、インドネシアがどう言おうと、日本はアメリカの言いなりほうだいになってよろしいというのでは、少しも自主独立ではない。問題は外交政策の内容なのです、態度の問題じゃない。  そこで今のバンドン会議でありますが、バンドン会議については外務大臣非常に賛成されたようなお言葉がありました。またそうでなければならぬと思うのでありますが、そこでバンドン会議で平和の問題が問題になった、そういうことにことごとく賛成するというようなお話でありますので具体的にお尋ねしますが、バンドン会議では平和に関する十原則というものが提案されまして、高碕全権も日本を代表して加わられましたこの会議においてこれが採択された。その一々の項目を覚えておりませんが、外務大臣は大体のことは御承知だろうと思う。このバンドン会議で採択された平和に関する十原則に賛成をされますかどうか、一つはっきりお尋ねをしておきます。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 その御質問私は意外です。バンドン会議は日本が参列したのでございまして、採択された十原則の宣言なるものについては日本も参加いたしておりまして、当然のことでございます。そして日本はその趣旨の実現を最も期待するわけであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 そうだとすると、現在日本がとっています対米従属の外交政策は、これは当然に修正しなければならぬという結論になるのですが、どうお考えですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私は申し上げる通り日本は対米従属の方針をとっておりません、しかしながら国際条約取りきめ等は尊重しなければなりません。国際信用は重んじなければなりません。それがバンドン精神にも合することだと考えております。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 それでは日米安全保障条約、日米行政協定あるいはMSA協定、こういうアメリカとの間に結ばれた一切の国際協定はバンドン精神と両立する、何ら抵触しないとお考えでございますか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 むろんそう考えております。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 それ以上は意見の相違になりますが、驚くべき御見解だと思います。  次にインドネシアが前々から対日賠償の総額はフィリピンと同額であるということを主張して参っておるのであります。ところが日本側は何でもフィリピンを四とし、インドネシアを二、ビルマを一とする、こういうふうな一つの構想が従来から考えられてきたのであります。私どもそれに賛成じゃないのでありますが、そういうふうな構想が伝えられている。外務当局におきましても、大体の目安だろうと思うのでありますが、今日もそういうような目安としてお考えになっておるかどうかお尋ねしたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 実は目安はまだ何もきめておりません。そういう一とか二とかいうことはいつごろのお話でしょうか。私どもが受け持つようになって、そういうことは私の耳には入っておりません。しかしそういう考え方がずっと前か、またある方一面にあっても、それは公けのものでないということは当然のことでございます。私は今一とか二とかいうことは考えておりませんが、フィリピンと同額でなければならぬというふうには考えておらないのでございます。フィリピンの額よりも私は内輪に見積っていきたいのでございます。これは交渉の資料も、今までのいろいろ資料を集めております、そういうことで交渉が将来開けて進んでいきます上において、それがきまることと思います。フィリピンの賠償につきましても、ビルマの賠償が決定した後にいろいろな経緯を経てああいうふうにきまったということは御承知の通りであります。まあそういうような経路をたどってきまるのじゃないか、いずれにしても交渉はなるだけ早くやりたい、こういう考え方を持っております。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 次に局長にお尋ねいたしますが、今までインドネシア賠償の交渉に備えて、いろいろ資料などを集めておられると思います。そこでその賠償責任の評価の問題でありますが、フィリピンよりはインドネシアは少し軽くてもよろしい、内輪でもよろしい、こういう外務大臣の大見当のお話がありました。それを根拠づけるような何か調査的な資料はおそらく大体準備されていると思う。準備されていなければおかしい、終戦すでに十年でありますからおかしいのでありますが、条約局長かだれか適当な局長がいらっしゃるならば、日本が与えたいろいろな戦争損害といいますか、そういうものをどういうふうに評価されて、たとえば工場とか建物とか人命とかいろいろありましょうが、そういうもの全体を考えて、インドネシアの場合はフィリピンを下回ってよろしいという結論を出すならば出すで、一応の資料的な根拠を一つお聞かせ願いたいと思います。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 今回の賠償額その他をどういう基準できめるかということは、非常にむずかしいことではございますが、御承知のようにサンフランシスコ平和条約の規定によりますと、日本国が今回の戦争に当って損害を与えた日、しかも日本が占領した国につきまして、日本国が与えた損害について、できるだけ賠償するという意味の規定になっておるのでありまして、あくまでも日本国が与えた損害についての補償という思想に根拠が立っておるのであります。しからば日本国が与えた損害というものが、各国についてどのくらいになるかということは、実のところわれわれといいますか、日本の占領軍はすでにもちろん敗戦によりまして撤退しておるのでありまして、資料等は、われわれに入手し得るものというのはほとんどないのであります。しかし現実の歴史から見まして、やはり日本の軍隊が行きまして、そこで戦閥を行なった場所、これはやはりそれによる損害が相当大きいと見ざるを得ないのであります。  御承知のように日本が一番戦争いたしました地域といたしましては、今回の賠償の当面の相手となっております国についてこれを見ますと、フィリピンにつきましては、戦争が始まりました際にあそこで非常な激戦をいたしまして、フィリピンを占領したのでありますが、その後さらに終戦近くになりまして、御承知のように連合軍が反攻の舞台といたしましてフィリピンを選びまして、フィリピンにおきまして相当長い期間にわたり激しい戦争が行われたのであります。その事実からだけいたしましても、われわれといたしましては、フィリピンがやはり戦禍を一番こうむったと見ざるを得ないと思うのであります。  これに比べますと、インドネシアにつきましては、御承知のように戦争が始まりました際に、日本軍はほとんど戦闘なしに、抵抗なしにインドネシアに入っておるのであります。また終戦に当りましても、ここでは現実戦争は行われずに終戦になったのであります。従っていわゆる戦闘行為という点におきましては、インドネシアにおきましては、その被害は非常に軽かったと見ざるを得ないのであります。これは日本側からの見解であります。  一方先方の田といたしましては、やはり先方の国としてのいろいろの考え方がありまして、自分のところは非常な被害を受けた、精神的な被害を受けた、あるいは労働者を徴用された、いろいろそういう言い分はあるのでありますが、戦争によって与えた損害に対する補償という見地で日本側から見ます際には、やはりそこに日本側としての一応の考え方の基準——大ざっぱなものでありますが、その基準がどうしても出てくるのであります。われわれとしては大体そんなふうな考え方をしておるのであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 日本側と向う側の言い分はだいぶ違うのでありますが、私ども現地にありました者として、なるほど戦闘は行われなかったけれども、インドネシアが戦時中日本の南方作戦の兵站基地となって、物資にしましても、労働力にしましても、ここから非常に方々に持ち出された。またインドネシア内部でもいろいろ利用されたそういうふうなことのために起った損害というものは、やはり相当大きなものだと思いますが、そういう点も十分日本政府としてはお考えになっているかどうか、一つ局長から御答弁願いたい。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 もとよりインドネシアにおきまして直接の戦闘が行われなかったということを前提といたしましても、占領中に物資の調達あるいは人員の調達等をいたした事実は否定し得ないのでありまして、その意味におきまして、インドネシアにも相当の損害を与えたという事実は、もとよりこれを認めざるを得ないのであります。そのゆえに賠償義務を認めまして、これを交渉しようといたしておるわけでございます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 次に今度は中国との関係について外務大臣にお尋ねしたいと思います。  日華条約によりますと、国民政府は対日賠償の権利を放棄しておるわけであります。ところが、日華条約というのは、この条約の適用の範囲が限定されておることは御承知の通りであります。日華条約に付随します外交書簡は、その第一号に、「この条約の条項が、中華民国に関しては、中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある旨のわれわれの間で達した了解に言及する光栄を有します。」こういう言葉があります。さらにまた同意された議事録の中にこういうことが書いてあります。中華民国代表の質問、「私は、本日交換された書簡の「又は今後入る」という表現は、「及び今後入る」という意味にとることができると了解する。その通りであるか。」こう問いましたのに対しまして、日本国代表は「然り、その通りである。私は、この条約が中華民国政府の支配下にあるすべての領域に適用があることを確言する。」こうなっておるわけであります。そこで現在中華民国政府の支配は、台湾島と澎湖島であることははっきりしております。そうしますと、広大な中国大陸には支配が及んでいない。その結果として、日華条約で国民政府が対日賠償を放棄したといっても、中国本土に支配を打ち立てておりますところの北京政府は、このことについて何ら意思表示をしていないことになる。この関係について外務大臣はどういうふうにお考えになっておるか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 それは非常に影響の大きい問題だと思います。私は一般的の考え方を申し上げます。日華条約というものは、何といっても日本と中華民国、この間の平和関係を規律したものであることは、これは争われません。それでありますから、現在日本の承認した以外の政府を承認することに、非常に困難があるということもたびたび申し上げた通りでございます。そうでありますならば、この条約の中にもう賠償問題は双方とも取り上げないのだということであるならば、日本国と中華民国との間の関係はそれで処理ができた、こう見るのが条約の解釈だと思います、また普通の考え方だと思います。それを根拠として、それをもととしてこそ日華関係が将来発達するのだ、こう私は考えております。台湾政府との関係である、だから、ほかの政府はそれと異なる主張をしてもよいのだということは、日本側からは、少くとも私は考えられぬことだと思います。ということは、そういうことになっていけば、これは日華の問の将来の円満な友好関係というものがなかなか困難になります。私は大体そういうふうに考えております。今一々条約付属文に関係をしての御意見の御発表かつまた御質問でありますが、その点は条約局長からお答え申し上げます。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 ただいま御指摘の点でございますが。日華平和条約には御指摘のように、現に国民政府が支配しまたは将来支配するという字がございます。先はどの合意勝事録ができましたのは、またはといたしまして二者択一の関係にとられるといけませんので、英語で申しますと、アンド、オアの両方を含むという意味で及びということを入れたのでございますが、日華平和条約の適用地域の問題に関係いたしまして、二つのグループがあると思うのでございます。つまり、あの適用地域の規定を当てはめることが意味のある事項と、そうでない事項とがございます。中国における日本の権益の放棄——義和団事件に関する議定書に基く日本の権益は、これは大陸にある権益でございますが、それを放棄しておるということは、これは台湾であるとか大陸であるとかいう適用地域の問題を超越して、日本は過去におけるそういう特殊権益を放棄したということでございますから、これは適用地域の問題が生じない問題であります。また紛争の解決に関する条項でありますれば、戦前条約の効力に関する規定、これも適用地域の問題に関係なく戦前の条約で無効になったものは、すべての地域において無効になるということにしなければ意味がないわけであります。そこで適用地域の問題が生ずるのは、通商に関する規定、また附属議定書のいろいろな船だとか国民の待遇とか、そういうような事項、あるいはまた台湾にある財産の処理に関する事項、あるいは航空に関する事項、漁業に関する事項、これらは現に支配してない地域のことを取りきめようといいましても、それはできないことでございます。これらの事項は、適用地域の規定が現実に意義を持ってくる事項であります。かように条理上当然二種類に分けて考える必要があると存ずるのであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 周恩来総理も日本に対する賠償の要求は提起しないというのが大体の考えであろうと、私どもは実は少し勝手かもしれませんが、考えております。公式の席でなくそういうふうな話はあったようであります。しかしそれはやはり好意的な考え方である。つまり日本の出方によることでありまして、日本が新中国と国交をすみやかに回復する、そしてアジアにおいてほんとうの意味の共存共栄の関係を打ち立てるという誠意が日本政府にあるという条件のもとに、これは考えられることであって、今日のように日本が対米従属、しかも、それだけならまだいいのでありますが、事実上アメリカとの軍事同盟を結んで、そしてソ連、中国が今にも侵略してくるというような、ありもしないデマを飛ばして再軍備を急いでおる。こういうふうなこと。さらにまたアメリカが引き起した朝鮮侵略戦争、これに対して日本が協力したという事実がすでにある。朝鮮における侵略者という烙印が中国の額に押されておるというのはとんでもない話であります、この烙印はむしろアメリカの額にこそ押すべきであります。そういうふうなことでは、周総理も公式には対日賠償を取り消すとかあるいは提起しないということは言はないのじゃないか、もし周総理が意地悪ならば。これは周総理個人の考え方でなく、十数年にわたり日本の侵略を受けて大へんな物的及び人的な損害をこうむった六億の中国の国民が黙っておらぬと思う。そこで私お尋ねしたいのでありますが、条約局長は、中華民国政府と結んだ日華条約が、そういうことについては中国の全域について何か効力があるようにおっしゃったのでありますが、大体これは根本的な間違いがあるのでありまして、中華人民共和国の政府はすでに一九四九年の十月一日に成立しておるわけであります。その支配は台湾及び澎湖島を除いては全中国の領域に及んでおる。そういう明々白々たる事実があるにもかかわらず、その後において結ばれた日華条約において——もちろんこれはアメリカの強要があったでありましょう。そのアメリカの強要に屈したとしても、とにかくさい爾たる台湾等の残存政権を相手に、中国大陸に影響のあるような条約を結ぶことが間違いである。それは現政府の責任ではないかもしれません。重光さんもその当時外務の責任者じゃなかったから、あなたの責任とは甘えないかもしれぬけれども、しかしそういう条約が今日なお存続しておるということ、こういう事態に対しまして、一体これを認めるか認めないかという問題は私は残ると思う。さらにまたこういう条約に根拠して、そうしてもう中国大陸全般に支配権を及ぼした中華人民共和国の対日賠償要求なんというものは、全然無視してもよろしいというような横着なことをお考えになっておるかどうか、このことにつきまして一つ外務大臣の御答弁をお伺いしたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 この問題について中共が侵略者でない、アメリカこそ侵略者である、こういうようなことで御議論を立てますけれども、それはいろいろ従来よりのお立場等からくる点もあろうかと思いますが、そういう問題について、従来激しく冷たい戦争ですか、朝鮮戦争時代の前後のなにでもって、今侵略者は中共でなくてアメリカだ、日本は何もかもアメリカに従属しているので使い回される、そういうふうに割り切ってとでも申しますか、おとりにならぬで済む問題じゃないかと私は考えております。日本と中華民国との間に平和関係を樹立したしということは、初めからあったのでありますから、それはどの内閣がそれをやりましょうとも、そういう目的を達したその条約があるのでありますから、これはあることを認めて、それによって立論をして少しも差しつかえないことだと私は患う。今、日本が特に——中共が侵略者だといってこれははっきりと国際連合などにそうあるのでありますから、これを今さらどうするわけにもいきませんけれども、日本としてそれを再び大きく吹き起してどうしようという考え方は今ないのでありますから、それを持ち出す必要はないかと思います。しかしながら、中華民国との間に条約をこしらえたのでありますから、そのこしらえた事実はそのままに立論を——してしかるべきものだ、こう今申す通りに考えております。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 それは外務大臣としては非常に御迷惑かもわかりません。あなたの責任で結んだ条約ではないのですから。しかしそれが現在なお存続しておる。この条約がある以上はこれに拘束されるのは、現在の外務大臣としてやむを得ぬことと御同情申し上げるわけであります。しかしそれはあなたがこの条約について反省をされている場合のことなのです。そこでお尋ねしたいが、もし今新たに中国と日本が何か平和条約を結ぶと仮定しました場合に、あなたはやはりこういう蒋介石相手の、国民政府相手の平和条約を結んで、それで御満足になりますか。それとも今新たに結ぶとすれば、こんなのでなく、やはり北京の中華人民共和国、中央人民政府と口日中の国交回復についての条約を結ぶべきであるとお考えになりますか。それについて一つお伺いしたいと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私は、これがなかったものと考えるわけにはいかぬのです。これは国家間の条約でありますから、内閣の責任とか政党の責任とかいうもの以上のものだと考えております。しかしそれは世界の情勢が変っても永久に維持さるべき問題である——それは事項にもよりますが、適用はまたおのずから異なる部面もございましょう。たとえば適用区域のごときも、今の条約局長の説明によってわかるわけであります。しかしながら両国間のりっぱな条約、特に国交を開くという条約がある以上は、それを日本としては尊重しなければならぬ。これは当然のことであります。しかし私は何もそれがためにあなた方の御意見をどうしようということではございません。いろいろ御意見もございましょう。しかしながら私の言うのは、国際間の普通の考え方、常識から見てそうだと考えて申し上げるわけであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 数カ月前に岡崎前外相が、私どもの勝間田君なんかと外交問題について新聞社主催の座談会をやりました。その中で私が非常に興味深く読んだことがあるのです。それは岡崎前外相がこう言っているのです。あのサンフランシスコ講和会議の当時、日華条約を結んだ当時は、自分たちは、蒋介石が再び大陸反攻をやって中国の支配者となる、中国の政権として復活するというような予想を持っておった、こういうことを言っておるのであります。私どもはずいぶん先の見えない男が外務大臣になったと思って今さら驚いておるのでありますが、しかし人それぞれ考えが違うわけで、なるほどそういうような予想があったとするならば、こういう日華条約を結ぶということも私意味があると思うのです。もしあのときそういう予想がなくして、蒋介石の支配は台湾と澎湖島に限られておるし、将来それ以上発展するものではない、あるいはまた消えてなくなるかもしれないというような予想が、岡崎前外相の頭にあったとするならば、私はこんなものは結ぶわけがないと思うのです。私は今の岡崎前外相の座談会における発育は、外務大臣の地位を離れた今日でありますから、楽な気持で正直なところを言われたのだと思う。そういうわけでありますから、この日華条約はそういう予想のもとに作られた条約なのです。しかしその当時の日本の政府の中にも、岡崎前外相とは違った予想をしておった人は相当あったと私思うのです。だからこれはアメリカの強要でもなければこういう形の日華条約は成立しなかったのではないか。そういうことにつきましては、いろいろ申し上げれば材料があるわけでありますが、そういうふうにしてできた条約を——今日外務大臣が言われるように世の中は変るのでありまして、今世界が大きく変動していることは御承知の通りでありますが、なお今日この条約を墨守し、この条約に固執して、日本の外交を正しく運営していくことができるかどうか、このことについて伺いたい。ただあるから仕方がないでは困るのでありまして、これに対する評価の問題なのです。もしこれが適当でないなら、この条約は改訂できるのであります。千古不磨の大典で、も何んでもないのでありますから、もしこれが日本にとって不利益であり好ましくないなら、これはやはり改訂する努力をしなければならぬ。そういうことにつきまして、外務大臣のこの条約に対する今日の評価の問題について御見解をお聞きしたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私は岡崎前外相がどういう考えを持ってこれに臨んだかということは実は知りません。その記事は読みませんでした。いろいろな考慮はむろんあっただろうと思います。思いますが、私は今日の場合、日本が国家として他国と結んだ条約、これはあくまで尊重していかなければならぬ、こう考えております。特にかような国交を開く友好条約のごときは、たとい事態にそごがあっても、これを十分に尊重するということは当然のことだと思います。しかし今お話の通りに、これが何十年もたってどうなるかというようなことになってくると、またこれ事態も変ってくることがあるので、これは私はその通りだと思いますが、今の場合においては、これは両方の円の関係を規律したものとして十分に尊重しなければならぬ、こう私は考えております。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 外務大臣は今よく国家国家と言われるのですが、国家というものは国民を離れてはないのでありまして、この条約が幸いにして岡崎前外相のさっき申しました予想がはずれて、全く無力な条約になったからいいものの、もしアメリカのバック・アップを受けて蒋介石が大陸反攻のために戦争でもやるというような事態が起っておりましたならば、この条約があるために、日本の国民の受ける損害というものは私は大へんなものだと思う。そういうことになりますと、その他いろいろありますところの国際協定とも関連いたしまして、やはり蒋介石の大陸進攻の戦争を助けるために、いろいろな協力を要請されるということになっていたかもしれない、そうしますと、やはり日本の若い青年の血潮その他が流されるということも起り、あるいは日本が戦争の渦中にまた巻き込まれるということも起る。だから、国家が結んだからとおっしゃるが、国民を離れて国家はないのでありまして、これはその国民の利害休戚に重大な影響を及ぼす条約なのです。そういうことを考えますと、国民の利害休戚をまず優先的に考えなければならぬ大臣として、何か抽象的に国家々々とおっしゃるが、私はそういうお考えではまことに困るので、そこでもう一度お尋ねいたしますが、こういう条約のために日本が中国との——中国といいましても、つまり中華人民共和国でございますが、それとの国交の回復もできない、従ってまた自由な貿易の拡大もできない、こういうことがどれほど日本の国民に現在損害を与えているかわからない。だからこの条約を改訂する、廃棄する、あるいはこの条約は条約としておいて、北京政府との間に日中国交回復に関する平和条約を結ぶという何らかの動きをする必要を、今日において外務大臣はお考えにならないかどうか、お尋ねいたします。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 そういうことを考えてはおりません。さらにまた国家というのは、国民の利益を反映しての国家でございます。同じものでございます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 この条約を改訂することも考えていない、あるいはこの条約を廃棄することも考えていない、あるいはこの条約は条約としておいて、中岡大陸に事実上支配権を打ち立てた北京政府との間に、国交回復のための平和条約あるいは何らかの協定を締結する考えもない。何もかもやらないという全く絶望的なお話であります。またこれは前回の委員会でもお尋ねしましたが、そのときの御答弁が十分でなかったからさらにお尋ねをするのでありますが、外務大臣は中共との国交回復が今できないという理由として、第一には中国は朝鮮戦争における侵略者という烙印を国連において押されているということをおっしゃった。今もそういうお考えをお持ちになっておりますか、お尋ねいたします。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私はそれが、中共を承認することができない唯一の原因であるということを申し上げたことはございません。今中国の間において日本が国交回復を樹立する方針ができないということは、一つの国に二つの政府を認めることができないからでございます。そこで今侵略者云々とございますが、これは国連でも、御承知の通りの経緯でそういうことになっております。そういうようなわけでありますから、国連を中心とする国際関係は、今中共に対する政策を変更することを許さないような国際情勢であるのでありますから、先ほどから申し上げる通りに変更の余地がないと申したのであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 それならさらにお尋ねしますが、一つの国に二つの政府があった場合に、その一つの政府との間に国交に関する条約を結んである場合には、もう一つの政府との間に同様の条約を結ぶことはできない、それがまあ中華人民共和国を承認したり、あるいはこれとの国交の回復をすることを妨げておる理由だ、こうおっしゃったのです。そうして日華条約についてはこれを改訂する考えはない、廃棄する考えもない、こういうお考えです。そうしますと中華人民共和国との国交を回復するということは、わが党の切なる主張であり、国民の熱心な要望ではありますけれども、重光外相は永久に中華人民共和国を相手に国交を回復する条約を結ぶ意思はない、こういうふうにお認めになっていると解釈してよろしゅうございますか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 ずいぶん割り切ったお話でございます。私はそうは申しません。(田中(稔)委員「論理的にはそうなんだ」と呼ぶ)私はそういうようなことは申しません。あなたもそういうことを申されぬ方が、——一つ申されないようにしていただきたい、こう希望して先ほど来申し上げたわけでございます。今国際情勢と申しますのは、日本が熱心に加入を希望しておる国連の状況から見てもそういうわけであるし、また御議論はいろいろありますが、日本とアメリカとの関係というものは、これはどうしても日本の復興と申しますか、そういうことについても密接な関係を持っておる今日なんで、これは非常に重要視しなければならぬ。意見が違いましてもそれは事実であります。そしてわれわれから言えば、それを非常に大きな問題として、外交の基調として考えておるようなさような場合に、できないことを今私はするというような政策には同調は、理屈はともかくとしてできぬのであります。それは一つの国に二つの政府を認めるということは、日本のすべての国際面を破壊することになります。しかし私は、世界が回っておることも、情勢の変化ということも考えなければならないことは当然でございます。それからまたたびたび申し上げる通りに、アジア大陸に大きな中共の勢力が確立されておるということも認めなければならぬ。そこでできる範囲内においてこの情勢に適応した方針をとっていく。そこでまず第一に貿易のことも考えて今進んでおるわけであります。これはどんどん進んでおると私は信じております。もちろんその点については必ずしも御期待通りとは私申すわけではございません。  それからまた御承知の通りに中共自身も、問題になっておる中ソ同盟条約をこしらえて日本が敵だということをはっきり言った時代もございます。しかしそれは過去の時代であって、今日においては中共自身も日本に対する態度を非常に緩和して、漸次東ア方面において平和の空気が醸成されつつある。これを私は助成していくべきだと考えるのであります。事実そこにあるものを無視して何もかも、今非難されるように割り切って事をやるべきじゃない、こういうふうに考えております。実際でき得るようにやることを一つ御協力を願いたいという希望を述べておきます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 協力をお求めになったことを私は非常に感謝しております。国家的立場からいいことに協力するのが党並びに私の立場でありますが、今の御答弁はだいぶ苦しかったようであります。論理的に言えば私の質問の通りであります。一つの国に二つの政府を認めない、つまり二つの政府があっても一方しか相手にしない。それから一方の政府であります国民政府との間に日華条約を結んでおるから、もう一つの政府との間に同様な条約は結べない、こう申されました。そうしてこの日華場条約を改訂する意思もなければ、廃棄する意思もないとおっしゃった。そういうことの論理的な結果から、北京政府との間に今後国交回復に関する協定は永久に結ばないという帰結になります。割り切ったとおっしゃるが、割り切ればそうなります。しかしながら、外務大臣としてはそれはそうでしょうが、しかし世界も変っておるし、変りつつある情勢に応じて今後いろいろやっていかなければならぬというような、よく言えば含みのある、悪く言えば苦しい御答弁があったわけであります。私は外務大臣のお心持をいい意味にそんたくいたしまして——世界もどんどん変っておる。永久に北京政府は相手にしないという見方だって、そんなことは通ることじゃないのであります。一日も早く中華人民共和国と国交を回復するように一つ御努力を願いたいと思います。  そこでさらにお尋ねしたいのは、日本が中華人民共和国政府を承認するなんということは、今日の国連をめぐる国際情勢からとてもできないことだ、中華人民共和国は朝鮮戦線における侵略者だ、こう考えられておる、こういうふうにさっきからおっしゃっておるのでありますが、イギリスは朝鮮に派兵した十六カ国のうちに入っているわけです。アメリカに次いでやはり重要な役割をしたイギリスであります。そのイギリスが、国連において侵略者なりと判定された中華人民共和国に対しましてこれを承認し、大使を派遣しているという事実は、一体どうお考えになりますかお尋ねしたい。そういうことがあるのになぜ日本だけできぬか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 一国の承認についてはいろいろ国々に考え方がございます。イギリスはイギリスの考え方がございます。しかしてイギリスは台湾の国民政府は承認しておりません。そこでイギリスの中共承認というのは事実上その存在を承認しておるという、イギリスはアメリカと違って軽い考え方の主義をとっておるのであります。しかしそれはそれにしておいて、イギリスは二つを承認したわけではございませんから、そこで非常にやり方が楽になっております。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 それではなぜイギリスと日本は同様のことができないのですか。台湾を承認しないで北大政府を承認——これは国交を回復して大使館を置いておるわけです。そういうことをなぜ日本はやれないのでありますか、お尋ねをします。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 そう言われるならばはっきり申し上げます。日本は政策を変えて、一つの承認している政府を取り消して他の政府を新たに承認するということは、従来からの関係から見て、今日日本がそういうことをとったら大へんな不利益になる。こういうことから、そういうことは国の利害関係上考えることじゃないということであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 その不利益な具体的内容を一つおっしゃっていただきたい。アメリカから援助がもらえぬということですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私はそういうことは今言っておりません。これは日本の存立にも関係をする。そういうことはこれは精神問題でありますから、私はそういう時期は永久にこないという——今政策を立てている以上は、この政策は永久にやるのだ、こう言うべきかもしれません。しかしながら私はそういうことは、世界の変化ということがありますからそうは申しません。しかしながら今さようなことについて日本が普通の常識と異なったことに進んでいくならば、これは非常な国の不利益になる。それはとうてい考えることではない、こう申しておるのであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 おそらく精神的な非常な影響とかおっしゃったことは中国と国交を回復すれば日本はいわゆる共産化する、共産主義がどんどん入ってくる、こういうふうなことを御心配になっての上だと思いますが、その点をはっきり一つ聞いておきます。どうです。そうですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私は先ほどから申し上げておるように、そういう一つのことについて割り切っては申し上げられません。共産主義が日本にもあるのでありますから、そういうことは別品旭でございます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 それでは、そうでなければもう少し具体的におっしゃって下さい。どういうふうな精神的な影響がありますか。日本国家の存立にかかわるような重大な、こうおっしゃったのですが、その重大な影響は何ですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 それは外交方面から申し上げます。国際信用の失墜ということであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 もう一つ関連して、共産主義の侵略というと、これは前首相の吉田さんあたりは盛んに言っておりますが、国交を回復したらソ連、中国から大使館員が何百と押しかけてきて、盛んに共産主義の宣伝をやる、こういうような日本国民をあまり甘く見た、なめた考え方だと思うし、日本国民は外国からの思想宣伝でたちまちひっくり返るようなそんな主体性を持たない国民だと思わないのです。そういうことがもし日本にありとすれば——イギリスは現にソ連と中国と国交を持っておる、イギリスはそういうことによって国内の事情に何らの変化をこうむっていない。そういうことにつきまして日本とイギリスとを比較し、それから日本に対する共産主義宣伝の危険というか可能性がある、そういうことにつきましては一体どうお考えになりますか、この際参考に聞いておきたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 それはあなたの御議論として何も差しつかえない。こういう御議論であります。また他の方面から見れば非常にそれは影響を受けると見る議論も立ちましょう。私はまあ申し上げれば中間くらいのところであります。あまりそういう工合に、共産主義でも何でもいいから一つやったらどうかというようなこと、それも行き過げていますよ。これはまた危険、何もかもいかぬというのもどうかと思う。まあ一つあなた方も実際的に考えていただいて、適当なところで一つやりたいと思う。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 そこでいろいろお尋ねしましたが、結論になるのでありますが、私どもは中華人民共和国政府といえども日本が友好的な態度を示すならば、これはもう賠償の要求なんというのは私は放棄するのじゃないかと思う。しかしもし向うがそういうしんしゃくをしないで日本に対して賠償の要求をするならば、これはどえらい額に達すると思う。高碕長官もおられますが、なるほど日本は満洲にいろいろな投資をやった。そういうものを全部向うに取られたから、それでもう賠償の埋め合せはついているというふうな考えをする人もあります。しかしながらそれは日本の勝手な考えでありまして、満洲におけるいろいろな施設をした、工場を建てた、それによって日本は何をしたかといえば、それによってやはりたくさんな富を国内に持ち運んできたわけなのです。それも五年や十年のことじゃない。また戦争による直接の損害というものは、これは人的に物的にほんとうにはかり知れないものがあるから、向うがそういうものを全部帳面につけてきますと、これは大へんなことになると思う。これは日本の出方いかんによって、向うはやはり請求してこないとは言えない。そこでアジア局長あたりは、やはり一応心の用意としては、いろいろ資料的な御調査もなさっておると思うのでありますが、万一かりに中国に対して日本が戦争損害について賠償をするとすれば、満州事変以来十数年の損害、一体どの程度にこれをお考えになっておりますか、お尋ねしたい。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 中国に対して今回の戦争の結果の賠償をするということに、もしかりになるとすれば、またそれが実際の戦禍の結果に応じてするというようなことにでもなりましたならば、これは日本の国の力ではとうてい償い得ない金額ということになろうと思います。従って現実問題としては、想像し得ないところであるというほかないと思います。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 満州にもいらっしゃった高碕長官は、これを一体どういうふうにお考えですか。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 今アジア局長がお答えいたしました通りだと思っております。終戦直後、私は満州に二カ年おったわけでありますが、当時、現在のソ連も、そのソ連の責任者もはっきり申しておったことは、現在の中国政府はやはり国民政府であって、中共はある一つの侵略者であるということを言っておったのであります。今その情勢は変化いたして、現状に及んでおることは御想像の通りでございますが、当時中国政府の人たちの考え方では、全体の日本と中国との関係は、従前の恨みは捨てて、両国手を握らねばならぬ、こういうふうな精神が、中国全体の国民の中に、私は及んでおったと存じております。その意味からいって、つまり現在の国民政府は賠償を放棄する、こういうことが宣言されたことだと私は存じております。従いましてこの問題は、かりに中国の内乱がどういうふうに変化いたしますかしれませんが、中共政府が中国をかりに統一したということになりましても、もちろんこの方針は持続されることだと私は存じております。もしこの方針が変えられて、さらに賠償を要求されるというふうなことになれば、ただいまアジア局長がお答えいたしましたごとく、これは日本の国力として耐え得られないようなものになるかということを、懸念いたしております。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 高碕長官は、私は識見の高いりっぱな人柄だと考えておるのであります。今の御答弁には少しまだ戦前派的なズレがあります。満州におけるあの大事業の責任者としてやられたことにつきまして、私は反省が足りないと思う。もちろんわれわれとしましては、中国が賠償権を放棄してくれることは、これは好ましいことであります。願わしいことであります。しかしながら、そういうことはこちらから言い出すべきことではない、要求すべきことではないのであって、向う側から言い出して初めて日本としてはありがたく感謝をもってこたえる、こういうふうな態度がほしい。日本が満州事変以来十数年、さらにまたさかのぼれば日清戦争以来何十年、中国で何をやってきたかということは、もう私から申し上げる必要はない。物をかすめ取り、人を傷つけ、とにかくひどいことをやってきたこの帝国主義的な対華侵略の歴史というものは、私はこれはいつまでたっても歴史から消えるものではないと思っております。しかしながら日本がほんとうに反省をして、再びこういう侵略政策はとらないという誠意が完全に立証された場合においては、向うは寛大な国民でありますから、そういう請求権は私は放棄すると思う。私はそれと国民政府が日華条約で放棄したことは、意味が少し違うと思う。台湾政府、国民政府がこの日華条約におきまして、「中華民国は、日本国民に対する寛厚と善意の表徴として、サン・フランシスコ条約第十四条(a)1に基き日本国が提供すべき役務の利益を自発的に放棄する。」こういう文句を書いております。なるほど文句としてはりっぱでありますけれども、国民政府の当事者がこういう言葉を日華条約に書いたということは底意があると思う。というのは、先ほど申し上げましたように、その当時としましては、大陸反攻というようなことも確かに考えられたことと私は思う。アメリカの第七艦隊もおります。アメリカの前極東政策というものはやはりそういう方向に向っておった。そういう場合に、日本の手を借りたい、日本の手を借りるためには、日本国民に好意のゼスチュアをする必要があるというので、その道具として、これは国民政府が書いたのであります。これについて責任も何もないのです。またこれを実行する自信も何もないのです。私はそういう一種の政治的なゼスチュア、外交的なゼスチュアだと思う。そこでほんとうに中国の六億の国民のほんとうの気持を代表して、日本に対する賠償請求権の放棄を約束し得る政府は、民政府でなくて、やはり今度の中華人民共和国の政・府だと思う。だから周恩来なんというものに対して、どうせあんなものは請求もしまいというふうに初めからきめてかかるような態度は、私は間違いだと思う。これは根本的なことでありますが、やはり日本の今日の政治家は、われわれ一般国民にしましても、なおやはり日清戦争以来のチャンコロというような観念が、何といっても完全には払拭されていないのでありまして、今日あのアジアにおける最大の強国になった中華人民共和国を、やはり戦前のシナというような考えで評価する、こういう習慣が抜け切っていないのであります。だから甘く見ておる。しかしながら私は甘く見るべきものじゃないと思う。今後私は、日本の中華人民共和、この新中国に対する態度というものは、非常に重要であり、それが賠償問題にも重大な影響を持つということを考えるのであります。  そこで最後の結論として、外務大臣にもう一度お尋ねするのでございますが、あなたは日華条約は改訂する意志もなければ廃棄する意志もない。一国に二つの政府があるから、一方の政府と国交を結んで、他の政府と同様なことをやる考えはないとおっしゃったのだが、まあ御答弁の中にも、国際情勢の変化に応じてはまたしかるべく対処するという含みのある御答弁もあった。一つ何らかの形において、中華人民共和国と国交を回復する方向に向って努力する、直ちに国交を回復せよとは言わぬが、何か事実上の国交回復でもできるような方向に向って努力はするというような御答弁を一ついただきたいと思う。それについての御答弁をいただきたいのであります。最近、通商代表は、それが民間的な性格のものであるならば、まあ相互に交換してもよろしいというところまでは進んでこられたようでありますが、それも日本に利益するところが非常に大きいと思う。こういうことについては、私は高碕長官はもちろん御賛成であろうと思いますが、外務大臣はどう考えておるか。一歩々々その方向に進んでおります。今後そういう方向に進むことをさらに積極的に努力されるかどうか。そう具体的でなくてもよろしいが、一つ誠意の一端を示す意味で、私の質問に答えていただきたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私の意見は十分繰り返し申し上げておる通りでございまして、今の御質問に対してどう申し上げれば御満足を得るのか、もしくは御満足を得ないのか、ちょっとわかりませんが、私は今の日本の負っておる立場を、この問題についてすぐ変えることはできないと、こう申しております。しかしながらこの西太平洋と申しますか、東アと申しますか、この方面における一般の国際的の緊張がこの上とも緩和するようになるということは歓迎し、またそういうふうに努力をしなければならぬと考えております。  その方法はそれでは何かと言いますと、これは単純に外交問題だけでもございますまい。いろいろなことに努力をしなければならぬと思います。私は貿易の促進、その貿易は先ほど申し上げました通りに、国際的に許された範囲内において、できるだけ双方の利益になるようにこれを増進していくということは、一つのやり力だろうと考えます。その範囲内において努力をいたしたいと思います。またそれも大きな現実の問題として、今緩和剤となって進んでおると私は思っております。このようなことで、事実上国際情勢の緊張の緩和に向って努力をしたいと、こう考えておる次第であります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 私の質問はこれで終りますが、どうも外務大臣の御答弁はただ情勢待ちということであって、何らの積極的な御見解が伺えない。非常に不満足であります。しかしながら、繰り返して申し上げますが、一つ日本のために平和的な共存の方向に向って努力していただきたい。対米従属の外交方針を転換するように、今後とも一つ御努力願いたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 どうかあなたも御協力をお願いいたします。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 和田博雄君。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私は日比賠償についてお尋ねいたします。土曜日には大体一般的な事柄をお開きしましたので、きょうは少しこまかい点に入るかと思いますけれども、大体十点ばかりに分けてお開きしたいと思います。必ずしも大塩の答弁を要求しませんから、大臣の答弁のときには私から大臣にと言いますから、事務当局でもよろしいのです。  一つは、これは事務当局でいいのですが、フィリピンの現在の資本の形成率というものは、どの程度になっているかをお尋ねいたします。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 これははなはだ概括的なことで申しわけないのでありますが、フィリピンにおける民間資本の蓄積の問題は、結局大部分が不動産あるいは商業の万両に投資されまして、いわゆる工業部面、生産部面に対する民間投資というものはきわめて少いのでございます。正確なその数字の統計につきましては、ただいま実は持ち合せがございませんので、わかります限度におきまして至急調べまして、きょうの午後にでもお知らせいたしたいと思います。

酒井俊彦総理府事務官(経済企画庁長官官房長)

○酒井政府委員 これは少し数字が古いのでありますが、フィリピン側の資料によりまして申し上げますと、国民総生産に対しまして、投資の数字しか出ておりませんが、パーセンテージで申しますと八・三%でございます。一九五三年の数字でございます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 一人当りのものはわかりませんね。

酒井俊彦総理府事務官(経済企画庁長官官房長)

○酒井政府委員 一人当りはちょっとわかりません。

和田博雄日本社会党

○和田委員 これは高碕さんにちょっとお聞きしたいのですが、私は今度のフィリピン賠償で一番大きな問題は、落ちつくところは経済開発の問題だと思います。向うの経済も開発され、日本の方もそれによって貿易が拡大するというところだろうと思います。そこで後進地域の開発の問題で一番どこの国も頭を悩ましているのは、所得が一体に低い、国民総生産が低いということです。従って貯蓄率が低い。言いかえると、資本の形成率が非常に低い、自然生産もそれに従って低くなってくる、この悪循環を、どこで断ち切るかということです。従って今度のフィリピンの場合においても、土曜日にも私は議論しましたように、やはり向うとしてはある程度の計画を立てるだろうと思うのですが、こちら側の賠償がそれによってうまく利用されてこなければならぬという関係になってきて、ちょうど後進地域の開発という門出が、やはりフィリピンの賠償を一つの契機として、フィリピンの経済開発の場合には私は大きく出てくると思うのです。そこに日本側としてやはりよほど注意して協力をしていくなにを立てないと、これは形の上では賠償という協定が結ばれてみたところが、経済関係の上においては、われわれとしては心配する事態が、今度の賠償の場合にも出てくるような、条項の中にもその陰影が出ておるように私は思うのです。そういう点で、これはお答えがなくてもいいのですが、希望ですか、こういう協定を結ぶときには、少くともフィリピンの経済事情や何かについては、これは委員の諸君に基本的な問題についての資料だけは配って、そして論議させてもらわぬと、国会議員としてほんとうの本格的な議論ができないと思うのです。これは希望で、あとからでもいいのですが、どうかそういう資料を十分一つ、企画庁の方からでも外務省の方からでもいいのですが、もらいたいと思うのです。  そこでその次に私は質問をしたいのですが、借款の場合における日本輸出入銀行というものの役割をどう考えておるか、もう少し詳しく説明願いたいのです。これは高碕さんにお願いします。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 お説のごとく、フィリピンでやはり賠償を完全に完遂するということは、フィリピンの経済をよくしていかなければならぬ。それにはどうしても開発をよくしなければならぬ。それにつきましては、フィリピンの開発計画というものを十分こちらがのみ込んで、これと協力し得るようにやっていかなければならぬ。そういうことのために、実はフィリピンといわず、ビルマといわず、東南アジアに対する経済開発計画につきましては、特に日本側が知らなければならぬ。こういうことで、経済企画庁においても本年度から新しくそのための予算をとって、今内部を拡充しておるようなわけでありますから、その方面の資料が得られればでき得るだけ必ず御報告申し上げますから、さよう御承知願いたいと思っております。  それから経済投資の方でございますが、これにつきまして、輸出入銀行に対しましては現在そこまで考えておりませんが、プラント輸出だけくらいしか考えられておりませんが、私どもの希望を申しますれば、現在の輸出入銀行の最長期の貸付期間が七年ぐらいしかやっておらぬようでありますが、これを少くとも十五年ぐらいに延ばしていくことを考えていきたいのであります。もう一つは、輸出入銀行の最低の金利というものはきわめて高いのでありまして、これでは国際競争場裏に耐えていけない、こう思っておりますから、この点につきましては、輸出入銀行の金利を引き下げてもらうということにいたしたいと思いますと同時に、輸出入銀行のやり方から申しますと、やはりあれは自分だけでは投資はできないことになっておりまして、協調融資になっております。市中銀行がこれに一緒に足並みをそろえていかなければならない。しかも相当大きな率を市中銀行に持たせなければならない。これについてもある程度輸出入銀行の持つ率をもう少しふやしてもらいたいと思っております。従って今後の輸出入銀行に対する政府投資については、現状のままではむずかしかろう。ただいまのところではあれでいいでしょうが、今後日本の経済開発、海外に対する投資が促進するについて、輸出入銀行に相当改革を加えていかなければならぬという希望を抱いておるわけでありまして、そのことはすでに大蔵省とも逐次打ち合せ検討中であります。

和田博雄日本社会党

○和田委員 この経済開発に関する交換公文の三によると「両政府は、この協定の円滑な運用のため、借款の提供及び返済の進ちょく状況を随時共同で検討するものとする。」ということがあるのですが、これはたとえば投資委員会のようなものを作って、投資をする場合においても、お互いに話し合いをしていくというような考え方なのですか。それともただ過程だけを検討していくという考え方なのですか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 この規定の考えておりますことは、この借款それ自体が民間借款でありますので、政府としてはこのためにわざわざ、たとえば委員会などを作って、この借款の推進についていろいろ打ち合せてやることまでするのは、行き過ぎではなかろうかという考え方から——しかしながら政府としては、この借款ができるだけスムーズにいくことは希望するところでありますから、常時普通の方法で、つまり結局は外交的方法となると思いますが、日本の政府機関と、ここにありますフィリピンの大使館等が普通の方法でお互いに今の進捗状況はこうなっておるということを通報し合う、そうしてその間の数字が果して合っているかどうかということを対照し合う、また償還の面につきましてもそれがスムーズにいっているかどうかを対照し合うという趣旨の規定でございます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 今度は高碕さんにお聞きしたいのですが、この交換公文の二項によると、「フィリピン共和国政府は、借款の契約をすることができる投資部門及び諸産業を決定し、並びにその契約をしようとするフィリピンの民間商社又は国民の適格性を定める基準を決定する権利を留保する。」とあって、民間借款ではあるけれども、その民間借款が政府の考えておる経済計画にマッチする方向に投資を導いていきたいという意図がここに出ているわけです。日本側においては、なるほど今は自由企業、自由競争でありますけれども、少くとも今の政府といえどもまず外貨予算を一応組まなければならない。それから六カ年計画を持っている。ことに投資の部門は予算の面でも相当な金額を占める。従って一定のある方向は持っていると思う。それが自由に日本側だけにまかしておくのか、フィリピン政府と類似の何らかの指導性と育っていいか、うまい表現がないのですが、そういうことを考えなければならないのか、そこらのお考えはどうでしょうか。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 これはフィリピンといたしますれば、いろいろ事業があっても、大きな投機事業をやるとか、ギャンブルをやってばくち場を作るとかいうふうに投資されては困るわけですから、この意味におきましてフィリピンの産業を開発し、国民生活を向上するという方面にやりたいという意味からこれを書いたことだと私は存じております。同様にいたしまして日本といたしましても、自由とはいえども、フィリピンの産業を開発せしめるとか、フィリピン政府が希望する方面に指導していかなければならない。そういうものに限ってのみ日本政府は相当の便宜を与えるということに持っていかなければならないと思いますから、これは相手方の使節団が参りました上におきましてよく検討して、相手方の希望によって、日本側もそれに対応するようなある一つの機関を作るというふうな方針をとりたいと思っております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 なるほど抽象的に言えばあなたの今育ったようなことだと思いますが、この賠償協定の附属書を見てみると、かなりいろいろな計画が出ているわけでしょう。賠償の金がこういうふうに使われてくるわけです。しかしこの賠償と経済開発は、なるほど形の上では、経済借款の方は、民間借款ということで賠償の本質をなすものではなくて、賠償協定を結ぶときの一種のアクセサリーのようなものであると言われたのでありますが、しかしフィリピン側の立場に立ってみれば、借款と賠償は経済的には一体だと思う。ちょうど日本で政府が財政資金で投資する場合と、民間資金の融資によってやる場合と、これは経済的に見れば、形は違っても経済の動きの中においては同じような効果を待つのと同じようなものです。従って内面的な関連性はどうしても持ってこなければならぬ。だからフィリピン側で、この借款の二項においてこういう規定を設けたということは、何としても経済借款も賠償の方も、彼らが持つところの経済開発計画に従って資本的に最も効率的にものを使っていこうという、また方向としても、奢侈品とかの消費財ではなく、国の開発のために効率的に使っていこうという意図であると思う。日本側においても、賠償という形と借款という形で、フィリピンの経済開発計画の推進に協力していくという態度をとっているわけですから、日本側においても、当然日本経済の上からいっても、この借款の何がなるほど民間の商社だけの形の上では借款であっても、それがある一定の方向を打つことははっきりしている。地盤がそうなっているから、日本側としても何らかの方法を考えないと、どうにもならぬことになってしまうと思いますが、その点はどうでしょうか。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 そのお説はごもっともだと思います。従いまして民間借款の場合は全然捨てておくということにせず、賠償使節団が参りましたときに、賠償問題なり賠償に対する細則をきめ、目的物をきめるというときに、日本側の同じ人たちがこの経済提携につきましてはある程度の発言もし、国内の統一を持ってくるということにすることは、一番目的に沿うだろうと思います。その点については、ただいま御指摘の点は非常にけっこうだと思います。相手方の使節団が参りました上において決定いたしたいと思います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 私はぜひそうやっていってもらいたいと思います。そこでその問題にちょっと関係がありますから聞きますが、外務省の方から出た資料か何か知りませんが、現在実施中のフィリピンの経済提携の資料をいただいたわけです。これをもう少し詳しく結果的にどういうふうになっているか、御説明願いたいと思います。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 お手元にお配りいたしましたフィリピンとの経済提携の一覧表に、数件の現在行われております経済提携の内容が簡単に表示してあるわけでございますが、最も早く始まりましたのは、第四番目に書いてあります鉄鉱開発であります。これは日本側は三つの大きな製鉄会社が、現実にフィリピンから鉄鉱石を輸入するに当りまして、向うからいいものがこなければいかぬということで、最初の投資計画では、米ドルで百万ドル分を貸しまして、その百万ドル分で機械を現地に備え付けさせまして、その機械によって採掘いたしました鉱石をある程度精製あるいは選鉱いたまして、そして日本に持ち運ぶという契約で、これは何年ですか、もう四、五年前から始めておるのであります。その結果第一回の契約はすでに完了いたしました。つまり、その初めの投資の百万ドル分は、すでに回収しておるの百であります。ここに書いてありますのは第二回目の契約の内容でございまして、日本から百八十万ドル投資するということになっております。これの現実のやり方は、この投資に対します年々の償還は、日本の三大製鉄業者が輸入いたします鉄鉱石の価格をそれだけ引き下げることによりまして、回収をしておるのであります。従って回収の方法としては、最も間違いのない確かな方法によっておるわけであります。これが非常にうまくいきまして、結果が非常によかったものですから、第二回がたしか一年くらい前でしたか、契約いたしましてここに書いてあるような契約をさらにやっておるわけであります。  これに続きまして行われましたのは、その一つ前の銅鉱開発であります。太平洋鉱業株式会社とニールソン社、これは金額で申しますと十万ドルという非常に少額でありますが、これはフィリピンの鍋山に対しまして必要な機械をこれによりまして供給して、それによって採算の合うような採掘をさせて、日本に銅鉱石として輸入しておるというのが、第二の事例であります。  その次に行われましたのが第一に書いてあるのだと思います。銅鉱開発で三菱金属とソリアノ・カンパニーのものであります。この銅鉱開発は七十五万ドルという、これは相当金額が多くなりますが、これは非常に成績がよろしくて、今三菱金属では、おそらく国内で産出する銅鉱石を使わないで、もっぱらフィリピン産出の銅鉱石を使って作業しておるということを聞いております。  その次がおそらく三井とエリサルデとの銅鉱開発ではなかったかと思います。これも銅鉱は、非常にフィリピンのは質がよいそうでありまして、これも順調にいっておるようであります。  最後にラワン材の開発として一番終りに出ておりますもの、これは十三万ドルというので、そう多くありませんが、今後フィリピンの木材は、従来は非常に海岸に近いところを開発していたのでありますが、だんだん切りまして、山の方に向っていきます。従って従来のままで資本をおろさないで木材開発をやろうとしても、だんだんむずかしくなるのでありまして、やはり日本の輸入者がフィリピンに相当投資いたしまして、木材開発にある程度の機械力を使う、あるいは道路を作るというようなことが必要になると思うのでありまして、この木材に対する融資ということが今後相当行われるのではないかと考えております。  以上簡単でありますが、御説明といたします。

和田博雄日本社会党

○和田委員 この借款の場合の利率ですが、この場合利率の基準になるのは何ですか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 従来行われております経済提携の表では、ここにも出してございますが、金利を幾らに見ておるかということが、実は表に出てこないのでございます。これは契約自体を見ましても、金利についてはそのときの状況に応じて両者で相談してきめるということになっておりまして、これはいずれも日本が輸入する品物になりますので、その輸入価格の操作によって利率がその中に割り込まれるようになっております。従って政府におきましても、幾らの利率で計算しておるかということの判定がなかなかむずかしいのでありますが、大体四分、四分五厘くらいであるということを、たとえばこの鉄鉱開発については聞いております。この計算は何でやりますか、私も的確には存じません。

和田博雄日本社会党

○和田委員 そのときの国際の長期金利、そういうものが大体基準になっておるのですか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 それも重要な要素になろうかと思いますが、同町にたとえば鉄鉱石にいたしますれば、インドとかマレー等から輸入するものとの比較、それから鉄鉱石の価格その他から、やはり採算の合うようにできるのではないかとも思いますが、ただいま御指摘の点も重要な要素になろうかと思います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 それから賠償協定の交換公文にあります加工賠償の点ですが、この点は一体どういうようにほんとうに動いていくのか、その動く過程をもう少し詳しく説明してもらいたい。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 これはただいまはっきりきまりましたところといたしましては、ここに出ております交換公文に書いてあることだけでございます。しかし今後大体どんなふうにしてやっていくだろうかということの一応の想像はついておるのでありますが、大体こうなるであろうと推測される形といたしましては、毎年の賠償実施計画を毎年度の始まる前にきめるわけでありますが、その際に最初の五年間は四百万ドルというものがこの加工賠償に当てられるということがきまっております。従って一般の資本財その他の実施計画というものは、二千五百万ドルの中から四百万ドルを引いたものについてきめ、この四百万ドルについては別に実施計画をきめることになるわけであります。そのきめ方といたしましては、結果的には四百万ドルというものは必ずこの加工賠償によって出すということになっておりますので、四百万ドル分の加工賠償ができるような品物を大体考えまして、たとえば鉄鉱石を加工して鋼板にいたしましてこれを出すというのもありましょう。あるいはフィリピンの原産であります麻を加工して、これを麻布として出すというのもありましょう。あるいはもっと違ったもので、たとえば機械を作って出すというのもあろうかと思います。そのおのおのの品目によりまして、おそらく加工役務に相当する金額の割合というものは違ってくると思まいす。ものによっては加工役務に相当するパーセンテージが非常に多いものもありましょうし、あるいはそれが比較的少いものもあろうと思います。いろいろ選び方はそのように品目によって金額が違ってくるわけでありますが、いずれにせよ、全体の加工役務の額が四百万ドルになるような品物を選びまして、この分量のこれこれのものについては加工役務を行うという約束をあらかじめ計画としていたしまして、その計画に基きまして、現実に一年の間にフィリピン側から要求が出てくるわけでありまして、その要求した品物につきましては、フィリピン側から現実に日本が受け取る、外国為替によって受け取るものは原料費に相当するものを受け取り、日本政府が、その加工役務に相当する分は日本の円で日本の生産業者に支払う。日本の生産業者は、フィリピンから外国為替で送ってきます分と、日本政府から支払われる円貨と両方合せまして全体の価格を受け取るわけであります。フィリピンの業者が日本の業者に直接送りますものは原料費に相当する金額だけでありますが、しかしながら加工役務に相当する価格は、フィリピンのペソ貨によりましてこれをフィリピン政府に納入するということになっております。従ってフィリピン政府はその加工役務に相当するペソ貨の分だけ自分のところに入るわけでありまして、これが賠償額に算入されるわけであります。算入と申しましても、日本側におきましては門で支出いたします賠償勘定からの支出だけが問題になるわけでありますが、フィリピン政府といたしましては、ペソ貨によってその分の金額が、自分の方の最終需要者から入るということになるのでありまして、その分をしかるべくフィリピン政府の考える方法によって使うという結果になるわけでございます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 ちょっと今の説明で違うのではないですか。この加工していくものは賠償協定に基いて供与される生産物以外の生産物でしょう。そうするとおもな資本財なんというものはあまりないのじゃないですか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 資本財はあるいは少いかもしれません。しかし資本財はもとより、賠償以外に機械等を日本からほしいという人があることは予想されるのでありまして、その場合には機械等もこの役務に使うこともできるわけであります。それ以外のたとえば消費財的なものももちろんあり得るわけでございます。従ってこれらの品目については、合同委員会において毎年実施計画をきめる際に一緒にきめていきたいというふうに考えております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 そうすると資本財もあると見ていいのですね。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 資本財もあると思います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 この二千万ドルは結局現金賠償の変ったものですか高碕長官どうでしょうか。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 先方は初め二千万ドルだけ現金賠償にして向うのペソ貨で払ってくれということだったのです。そうしますと、賠償で向うへ持っていったものは向うで勝手に売ってペソにしてもいいじゃないか、それじゃまだどうもはっきりしない、こういうことでありますから、今度は資本財といわず消費財といわず、簡単に言えば通常貿易でやるような品物につきまして、向うのものを加工したその費用としてそれだけを日本は円で日本の商社に払う、払ったものが今度は向うへ行けば向うはペソで取る、こういうことになりますから、現金で払ったと同じような工合になるわけであります。

和田博雄日本社会党

○和田委員 結局現金賠償という杉を変えて、加工賃をとにかくフィリピン政府にペソ貨で収入を得させるということなのですね。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 結果から見れば先方はペソ貨による現金を入手し得るわけでありまして、その意味では堀金賠償が変ったものであるということはあるいは言えるかと思います。またその見地から言いますと、あらゆる賠償が自分の政府が使うもの以外に民間に払い下げるものはみな現金に変るわけでありまして、それも現金賠償と言えるものであります。これのみが現金賠償の変ったものということも当を得ていないように考えております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 そんなことはない。普通の単なる賠償の場合はなるほど現金も動きますよ。動くけれども、それならばわざわざ二千万ドルをこういう妙な加工賃をフィリピン政府に得させるような形で持ってくる必要はちっともないのですよ。普通の賠償の中に入れたらいいのです。現金という形を何すれば、やはり資本財を出すのだ、役務を提供するのだという形にしてもちっともかまわないと思う。特にこれだけを切り離してやったところに、やはりフィリピン側の要求に対して日本側がそれは困る——これは自由党内部にも反対があった。僕らも反対です。現金賠償というのは国と国との賠償なのでありますから、それが個人に支払われるようなものを賠償の中に入れられることは反対です。フィリピンの内部における孤児とか戦災者という人は気の毒ではあるけれども、事賠償に関する限りは、もとの自由党が言っておったように現金賠償は反対、僕らも反対です。ですからそれが変形したものだということは、本質的にそうじゃないですか。それならそうだと認めていいのじゃないですか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 経過的なお話でございましたら、まさしく当初先方の二千万ドルの現金がほしいということがこれに変ってきたわけであります。

和田博雄日本社会党

○和田委員 加工賃はだれがきめるのですか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 おのおの品目につきまして、合同委員会において実施計画をきめる際に、きめていきたいと思っております。

和田博雄日本社会党

○和田委員 フィリピン政府の得るペソ貨はフィリピン政府が自由に使えるわけですね。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 その通りでございます。

和田博雄日本社会党

○和田委員 もう一点だけ聞いて私の質問を終りたいと思います。  それは協定の第三条の問題なのです。協定の第三条の二項の「賠償として供与される生産物は、資本財とする。ただし、フィリピン共和国政府の要請があったときは、両政府間の合意により、資本財以外の生産物を日本国から供与することができる。」、つまり両政府間の合意によるという言葉があるのですけれども、私がずっと用いてきましたように、なかなかその国の開発には時間がかかるのです。ことに資本財を出して、その資本財も、これによってみれば消費財を作るための資本財よりも、生産財の方の、生産の基礎条件を作っていく方にどうしてもフィリピンの開発計画は重きを置かれると思う。そうすると、どうしても結果が出てくるまでには相当時間がかかる。フィリピンの経済自身が好転してくる要素には、ベル法の改正がありましてもこれまた相当の年月を必要とすると思うのです。フィリピンの経済が急激によくなってくるというふうには、われわれはなかなか考えられない。そうなってくればくるほど、フィリピンとしては、経済開発をやっていけば必ずその半面において消費財も同時に作らなければならない。経済開発をするには生産財と消費財とのある一つのバランスがとれていなければ、どこの計画経済でも必ず失敗するのです。ソ連だってその問題で悩んでいる。中国の場合だって同じでしょう。日本であなたが経済五カ年計画をやっておられる。そのやられたのを見ても、消費財の部門と生産財の部門がとにかく何かの形で調整のとれたものでないと、国民生活が不当に圧迫されてくる、インフレのおそれが出てくるというように、そこに相当苦労が要るわけです。そうなってくると、フィリピンの場合には、なおさら国民の生活水準は低い、消費財に対する要求は強い。片方で賠償が行く何が行く、購買力が出てくるということになってくると、それは消費財の方面に向ってくることは火を見るよりも明らかです。そうすると、生産財よりも消費財をもらいたいじゃないかという議論が国内で必ず出てくると思う。これは現に日本政府は去年から今年の初めくらいに経験されたと思う。これは低位開発国を相手にしているところは必ず起ってくる。そうすると、こういう規定があると、日本が合意をしなければいいようなものの、せっかく賠償協定を結んで、友好関係も再びもとのように返していって、これからその友好関係を持続していこうといった場合に、どこの国でも国民の要求というものは一番強いのですから、これは相当に日本に要求が出てくると思う。そういうときに、こういう規定を置いておくことは、一般の貿易という点から言えば、これは明らかに貿易を阻害する条項ですよ。普通の貿易で向うが買ってくれればいいものを、やはり賠償でやらなければならぬ、こうなってくる。こういう規定をどうしても入れなければならなかったのでしょうか。どうも私どもにはわからない。片方には経済開発、貿易拡大ということを言いながら、片方では賠償の面ですでにもう貿易を阻害する要因になるような条項をここに置いているという事柄は、高碕長官、これはいかがなのでしょうか。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 これはフィリピン側でも同じような問題がありまして、この条項につきましてはフィリピン側の上院議員の一部分にはこれをとってしまえという意見があった。それは和田さんの御心配にっているのとまるで逆に考えておる。それ下は日本からフィリピンの要りもしないものをどんどん持ってこようとする、両国政府の合意が必要だということになれば、日本は拒否権を持っているじゃないか、フィリピン側がほしいものを要求したときに、それはいけない、できないといって断わられたらどうなるか、これは相当有力な意見として今なお相当存在しているわけです。私はそのときにその上院議員に、デルガドという人なのですが、そんなことを言ってはお互いに信用し合わぬことになる、そういうことは両国がお互いによく話し合って、あなたの国のためにもなり、日本の国のためにもなるようなことをやろうじゃないかということをお話申し上げて、初めて了解を得たようなわけで、これは両方ともそういう工合に相手方を信用し合わなければ相当問題になる点だと思います。しかし初手方を信用した場合には、両国政府は合意したものでやろうじゃないか、こういうことになるのは、これは両方歩み寄った当然の帰納がこういうことになったわけですから、さよう御了承願います。

和田博雄日本社会党

○和田委員 経過はあるいはそうだったかもしれぬと思います。その経過については、なるほどそういうことは了承しますが、私はやはり賠償の場合は賠償として資本財と役務ということであるならば、それで貫いた方がいいと思います。今の消費財の場合はこれは普通の貿易、通常貿易でやればいい。今の見通しからいって一体どちらの経済がよくなっていくかということになると、日本とフィリピンの経済は、これは何といっても日本の力がまたいいと思うのです。フィリピンの経済が困ってくれば困ってくるほど、この貿易面においての消費財に対する要求というものは私は強くなると見るのです。ですからこういう問題は、両方があってむしろ将来トラブルが起るもとなのであって、僕はない方がいいと思うのです。これは意見にわたりますから、一応あなたの経過は了承することにしまして、私の質問はこれで終ります。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 これにて暫時休憩いたします。午後一時半より再開することといたします。    午後零時四十二分休憩      ————◇—————    午後二時四分開議

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。穗積七郎君。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 大きい問題についてだけ大臣に続いて先にお尋ねいたします。高碕長官にちょっと御答弁をわずらわしたいのですが、今度のこの協定を結ぶについては、貿易拡大の可能性についてある程度の見通しと、相手側の取りつけをしておきたいということが、大きな一つの眼目といいますか、条件になっておったと思うのです。そのことが文書の上で明瞭になったのはこの共同声明だけでございますか、そのほかに何か両国で交換いたしました文書の中に、それに触れた問題がございましょうか。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 文書の上で現われておりますのは共同声明だけでございます。あとは話し合いだけであります。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そうしますと、「両国は、正常な国交関係の回復に伴い均衡のとれた貿易の伸張のごとき共通の利益の問題に注意を注ぎうることとなることを期待し、」これが貿易拡大に対する向う側の協力の見通しがついた、また現実の可能性があるということになると思うのですが、このほかに、正式な文書ではなくても、代表団の間で参考になるべき意見交換がありましたら、この際内容を明らかにしていただきたいと思います。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 昨年の五月にネリが参りまして以来、この問題に触れるたびごとに、貿易の拡大ということをお互いに話し合っておるわけでありまして、拡大するにはどうしたらいいかという話し合いがありましたが、それにはやはりフィリピンの産業を一日も早く開発しよう、そして特に日本が必要なるようものについては投資もし、賠償物資として持っていこうじゃないか、そして産業が開発されれば、日本の方から買うものがだんだんふえる、買うものがふえてくれば、それに合うように日本の品物をまた買おう、こういう話をつけておったわけであります。それで共同声明にはそういう意味を含めまして、賠償協定ができると同時に、できるだけ早い機会に貿易協定もやろうじゃないか、こういうふうなことがうたわれておるわけであります。今後やっぱり貿易協定上は、そういうふうな問題がよほど必要な条件となってくるだろうと思います。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そうしますと、貿易拡大は、こちら側の生産力が増大して、安くてよいものがたくさんできるというようにならなければならない。かの国の側から言えば、生産力が上って購買力が増大することが一般的な条件だと思いますが、そのほかに、フィリピンの対外貿易関保の状況を見ますと、アメリカの一市場に過当に依存いたしておりまして、わが国との関保は輸出超過、こっちから言えば輸入超過になっている。これは、たとえば為替割当等のいわば純経済的な問題というよりは、むしろ政治的なテクニックが、日比間の貿易増進のじゃまになっているのではないかと思われる。そうなると、ここに二つの問題があると思う。一つは、午前中も私の方の委員から質問がありましたが、かの国の資本の蓄積並びに生産力の増大ということに対して、われわれがはっきりした見通しと計画性を持つべきだということ、と同時に、今私が申しました向う側の貿易政策にもっと協力的な態度をとるということ、為替割当の問題なんかその一部分にすぎないと思いますが、そういうことについて、何らか代表団の間で今まで東京またはマニラでお話し合いになったかどうか、そのことを伺っておきたいと思います。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 貿易協定をやります上におきましては、自然そういうふうなことに触れてくるわけでございまして、日本の買うものがよけいになってくる、原則といたしましては、日本が輸入する金額にマッチするように、向うが日本のものを輸入してくれるということに相なるわけであります。従いまして、そういう問題は国交が正常化すればさっそく協定に入るべき問題だと存じます。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 もとより貿易協定または通商航海条約というようなものでそういうことが討議され、決定されるべきものだと思います。私の今お尋ねいたしましたのは、それの基礎になるような意味で、公式なお互いの決定にはならぬにしても、予備的なフリー・ディスカッションが行われておったかどうか、参考になるようなものがあったら、この際向うの態度または動きについて聞かしていただきたい。特にあなたとかあるいは中川アジア局長とかに、いわゆる政府の代表団だけに限らず、藤山さんとか、永野さんあたりが向うの民間の諸君あるいは政党の諸君、政府の諸君と話をした報告を受けられたそれでもけっこうでございますが、日比間の貿易拡大について一般的な経済上の可能性の問題だけでなく、さらに拡大の可能性についてわれわれもう少し知りたいわけです。どういう態度をとっているか。この前は高碕長官から、昨年に比べるならばやはりバンドン精神というようなものが予想以上に高揚しておって、従って、アメリカ一国に対する依存政策は、政治の上でも経済の上でも再検討されつつあるという話であった。そのことは日比賠償に対して、ある意味ではフェイヴァラブルな動きと思うでのすが、そういう一般的なばく然とした動きでなくて、貿易拡大の問題について、藤山全権なり、昨年から話をしておられる永野さんあるいはその前を言えば大野ガルシア、あるいはその前を言えば村田さん等も話をしておられるのですから、すっと動きを見て、将来の通商貿易協定を給ぶまでの間の一つの好ましき見通しを立てられるような何らかのプラィベート・ディスカッションでもかまいませんが、そういうような働きに対して、この間行かれました大臣並びに局長から、多少具体的な御報告をいただけたらこの際いただいておきたい。こういう趣旨でございますから、その意味を含めての上で御答弁をいただきたいと思うのです。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 昨年の五月、初めてネリがこっちへ参りましたときと、それから以来私はこの問題に接触してきておったわけであります。その後アジア局長なりあるいは藤山代表も参りまして話がありましたが、今度私があちらへ参りましたときと、よほどネリ自身の態度も変ってきておるようであります。ただいまお話のごとく貿易協定のごときも、従前フィリピンは御承知のベル・アクトがあって、そのためにアメリカとの間に非常に濃厚な取引をやっておった。これが漸次正常になってくる、つまりアメリカとの特殊関係があったのが正常化する。した場合に、アメリカにかわって日本は当然やるべきものだ、日本はかわるべきものだ、この空気は非常に濃厚に私は、感じたのであります。なおその間の交渉につきましては、アジア局長から御説明いたします。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 日本との貿易を拡大させ、また均衡させるということにつきましては、先方も全く異存がないのでありまして、一年間にわたりまして数次の会談と申しますか、何回もそういう機会があったわけですが、その間いつでも話が出ておるのであります。今回マニラにおきまして賠償協定の交渉が行われております二カ月の間におきましても、その問題がいつも出たのであります。ことに藤山代表はそういう問題に非常に重点を注がれまして、先方の朝野の人と話されたのであります。いずれも異存はないのであって、賠償が片づけばぜひさっそくそういうふうに持っていきたいということには、意見が実質的に一致しておるのであります。それでは賠償協定を作るのと並行して貿易の取りきめをやるということはどうかということも言ってみたのでありますが、それはやはり先方の事情からして困る、賠償が片づいてからさっそくそれに取りかかることにしたい、その目的及び実体については異存がないのでありますが、時期につきましては賠償が片づいてからにしたいということで、この共同声明の発表になったのであります。これによって、賠償交渉が片づくと同時に、そういう問題を始めようという方針を鮮明しておるのであります。お説のようにフィリピン側の行政的措置によって、いろいろ外国からの輸入等について、実質上の差異ができるということはやはりあると思われるのでありまして、そういう点も含めまして、日本との貿易をぜひ拡大させ、均衡させていきたいというのが先方の考え方であります。高碕長官の言われましたように、アメリカとの関係は不可避的にだんだん薄くなっていきまして、それにとってかわるものとしては日本である、またそうすることがフィリピンの経済独立のために利益であるというのが先方の考え方であります。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 今伺いますと、一般的に好ましき傾向に向いつつあるというだけであって、将来の貿易協定の改訂とか友好通商航海条約の締結のための予備的な話し合いというものは、オフィシャルにもプライベートにもあまり具体的にはなかったという印象をわれわれ持つわけです。  そこで共同声明の中で問題になりますのは、後段の「この目的のため、現在の貿易協定及び金融協定に必要な改訂を行うための並びに友好通商航海条約のための交渉を早期に開始することを予期する」というふうにございますが、これらについては、そうしますと、今までには多少その参考になるような内容についての予備討議はなかったと見てよろしゅうございますか。それが一点。  それから続いてお尋ねいたしておきますが、後段の交渉一関並びにその妥結の見通しについては近い将来にということがありますが、これはもし政府の予定しておられる時期にこの日比賠償の協定の批准を両国が完了したということになれば、早急にこれが話し合いが進められ、しかもその妥結もあまり大したトラブルもなしに、時間的にもそれほど長くかからないで妥結ができるのだという見通しをお持ちになっておられるかどうか。見通しを持っており、多少その見通しを基礎づけるような具体的な参考の御意見があったならば、それも同町に報告していただきたい。一括してお尋ねいたしておきます。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 第一の点の、方針はきまったけれども具体的な話し合いはなかったのだろうというお尋ねでございますが、具体的な話という面も若干はあったの、であります。たとえば友好通商航海条約を作る場合に、これが全面的な最恵国待遇——全面的と申しますのは、単に関税のみならず、入国あるいは商売をすることとか航海あるいは船の入ること、そういういろいろな面における最恵国待遇を含めたものであるというようなことにつきましては、ある程度の語はしておるのであります。しかし貿易協定を改訂いたします場合に、どのような形のものにするかという点までの細目という意味では、まだ具体的な話し合いまでには至っていないのであります。いずれにせよ大方針が、均衡及び拡大された貿易を両国間にもたらすようにするという大目的のもとに作るのでありますから、これについては、具体的な問題についても、そう大して双方の考えの相違はないのではないかと考えております。従ってこの賠償協定が司会の御承認を得ますれば、さっそく両協定の交渉に入りたいと考えております。その時期、いつごろまでにできるだろうかということにつきましては、貿易協定及び金融協定については比較的早くできると思います。比較的といいますか、一応今考えておりますのは、五月の末日でもって失効いたします現協定を二月ないし三月延長して、その間にこれが全面的改訂をしたいと考えております。二月ないし三月というのもある程度ゆとりをもって考えておるところでありまして、あるいはそうもかからないでできるのではないかと考えております。この目的のためにはフィリピン側から専門家の使節団を派遣することとなっておりまして。その人選等も大体整っておる模様であります。賠償協定が発効いたしますと、あるいは賠償協定が両国の国会の御承認を得ますと、さっそくこの使節団が参りまして、この問題の討議に入る予定になっております。  またその次の友好通商海条約でありますが、これについてもこの同じ使節団がやはり権限を持って来ることになっております。従ってこれの交渉もさっそく始められると考えております。しかしながらこれは相当広範な条約になる模様でありますので、これの協議の方は、貿易協定に比べますと、やはり多少時間がかかるのではないかと考えております。従ってこれの方はよく慎重に交渉いたしまして、これは長期にわたって続くものでありますから、ぜひりっぱなものを作りたいと思っております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 それから関連してこまかいことをお尋ねしたいのですが、大臣に長居をしていただくのも気の毒ですから、その問題はあとで局長にお尋ねすることにして、先へ飛びまして大きな問題についてお尋ねをしておきたい。  今度は重光外務大臣にちょっとお尋ねしたいのですが、この七条に、フィリピン共和国の使節団、協定における使節団ですね、これを置くということに了承しておるわけですが、これのいわば法的な性格、権限、それから人数ですね。その次には、使節団のメンバーには相当な外交上の特権——ある意味の利点といいますか、その特権を与えることになっておりますが、その者がたとえば政府の使節団としてその業務に従うのを必ずしもすべてとはしないで、他に民間の貿易に口ききをする業務も多少委嘱してやる。たとえばこの場合には二つの場合があると思うのです。つまり、向う側の民間商社の経済開発借款に伴う向うの民間会社の社員が、同時に使節団の嘱託という形でメンバーになる場合と、それから逆に使節団の正式なメンバーまたは嘱託であることを本務とするけれども、同時にその者が民間の貿易商社または生産会社の委嘱を受けて、向う側の会社のための業務を兼ね行うという場合、そういう場合が二つのボーダー・ラインとしてあり得ると思うのだが、そういうものに対する取締り、または使節団としてこういう特権を与える境界線は、どういうところでお引きになるつもりであるのか、また人数についても、私の読んだところでは必ずしも何人以内ということを書いてございませんから、これは向うの判断でやるのか、協議会でお話し合いの上でやるのか、これもどういうことになっておるのか、外務省としてはどういうふうに考えておられるか、それらの点について一括して、できるだけ詳細に御方針を伺っておきたいと思うのでございます。このことを申し上げますのは、前もって申し上げておきますが、これからフィリピンに限らず、他の国との関係も生じて参りますから、そういう意味でお尋ねするのですから、あらかじめそういうおつもりでお答えをいただければ、なるべく時間も簡単に済むと思いますので、お願いいたします。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 お答えをします。この協定にございますことは協定通りにやはりいくと思います。しかし観念上から言えば、この賠償問題に関して必要である地位を認めなければならぬと思います。これはほかの問題にも波及するかと思います。そこで詳細の人のこととかその他のことについて協定以外にいろいろ打ち合せたことがあれば、また話し合ったことで御参考になることがありますれば、一つ中川局長から説明いたさせます。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 ただいま御質問の使節団の法的性格でございますが、これはフィリピン政府機関でありまして、日本に駐在いたしまして、もっぱら賠償に関する事務、この協定の実施に関する事務を扱う機関になっておるのであります。権限につきましては、第七条に規定してあります通り、この使節団がフィリピン政府にかわりまして、フィリピン政府の名前において賠償契約を結ぶことができる、これが一番大きな権限であります。これの人数につきましては正確に規定してございませんが、これは結局今後の両国政府間の合意によってきまると思います。どうしてこれが合意によってきまるかと申します。と、使節団自体はフィリピンの機関でありますが、これの経費はお手元に配付してあります参考、資料の実施細目に関する交換公文の方で賠償勘定から支払うことになっております。その際は合意を要することになっております。従ってこういうのが何人置かれるか、職員の数についても日本政府との合意に結局なると思います。今のところは何人置くということについて先方と話し合っておりません。まず大体置かれるのは十人ぐらいのものではなかろうかと考えております。  なお、この人たちが一体賠償協定に関する事務のみを扱うのか、あるいはそれ以外に一般の貿易に関するような事務、あるいはその他の賠償以外で日本でいろいろ買う品物、フィリピン政府の買う品物のこともやるのかという点につきましては、七条の第一項におきまして、「この協定の実施を任務とする同政府の唯一かつ専管の機関として」と書いてございます。これでこの機関は賠償協定の実施のみをやる機関であるというふうに解釈しておるのでありまして、それ以外のことはやらない建前になっております。従ってそこに勤務いたします職員も、このことに専門に従事する職員ばかりであると考えております。これが一般の貿易をやるような人と兼務しておるということになりますと、フィリピン側といたしましても、その間に非常な責任の混淆する問題が起きますので、これはそのような一般の貿易に従事する者と兼務でやるというようなことはないと考えております。  特権につきましては、この七条にも書いてあります通り、外交上の特権をある種類の上級職員は享受するのであります。また裁判についても原則としては外交特権を持っておるのでありますが、この協定の実施に関するものにつきましては、日本の裁判管轄に法務部長の職にある者は服さなければならず、その裁判の結果は使節団全体を拘束することになっておるのであります。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 ちょっとついでですから大臣にはお気の毒だがこまかいことをお聞きいたします。その専管の代表機関の職員が、民間会社の嘱託という地位、名目、肩書きは持っていないけれども、事実上その商売のあっせんを、その地位を利用してアルバイトみたいな格好でやった場合には、一体どういうことになりますか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 その場合にはフィリピン政府の職員がその地位を利用いたしまして、いわば不正を働いたということになるわけでございます。従ってフィリピン側におきまして当然懲戒、解職、免職等の措置がとられると思うのであります。なおそういう事実を日本側で発見したというような場合には、フィリピン政府に対しまして、最も適当な措置をとるように注意を喚起いたしたいと考えております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そういたしますと、これは身分上政府代表使節団の専任者であるということだけでなくて、その日常の行動、業務についても、使節団の業務以外のことをやることは協定違反である、こう厳密に解釈していいわけですね。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 そう解釈して差しつかえないと思っております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そこで、今度は下町条約局長に二点お尋ねいたします。  一点は、いわゆる外交官待遇の政府代表としてオフィシャルに認めるべき性質のものと御解釈になりますか、これが一点。  それから第二点は国交回復以前の国との関係におきましても、こういう一つの専門的な業務目的を持った政府代表を法的に認める場合もあり得るかどうか。  また第三には、それと関連いたしましてそのことは相手国の政権を承認する、または国交回復を承認するということとは無関係であるのか、関係はないことはない、関連性を持ったものと解釈されますか。それについての政府としてのお考え方を条約局長にお尋ねいたしたいのでございます。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 使節団は協定に書いてございますように、賠償協定の実施を任務といたすものでございますが、これは結局はフィリピン大使の仕事のうちの賠償という部面を受け持つ大使の補佐機関でございます。でございますから大使以外の大使館員とか公務員というものは、大使に対する補佐者として一定の特権を認められるというのが、国際法上の考え方になっておりますので、この使節団の場合にもその参オーソドックスの考え方で考えていいものだと思っております。  それから国交回復以前のこういう類似のものに対して、特権を認めることがあるかどうかという点につきましては、この場合は賠償協定が批准されますときには、同時に桑港条約が批准されまして、日比町の国交回復が実現されるわけでございますから、本協定の場合は使節団の特権というものが現実に与えられる場合には、もはやフィリピンとの間の国交は正式に回復しておるという状態に相なるわけであります。  そこで第三の末回復の場合にも相手側の国家あるいは政権の承認を伴うことなくして、一定の政府機関にある場合の特権を事実上認めることがありはしないかという点は仰せの通りでございます。これは韓国の使節団——韓国との間にはまだ団交が正式に回復されておりませんが、使節団、それから現在のフィリピンのミッション、これらはある程度の特権と申しますか、便宜を与えることを認めておるのであります。しかしこれは法律上の義務があるから国際法上の原則に従って認めるということでなくして、日本政府としては認める必要はないのでありますが、一に日本政府の好意的な扱いとして認めておる、いかなる国のいかなるものに対してそういうことを認めるかということは、一に日本側の好意、また日本側の政策によって決し得る事項でございます。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そういたしますと、さらにそれに関連して政治上のことは私とあなたとの問答では別にいたしましょう。条約解釈に関して、あなたの純理的なお考えを伺いたいのです。今お話がありましたように、未回復国で現にあるのは韓国の代表部、麻布の代表部これは今言う通り、国交回復または政権の承認とは別個として、事実上それを認めておることはあり得るということですね。あり得るけれども、それは同時に国交回復または政権承認とは別個の問題だ、こういう御解釈のようでございます。そういたしますと、たとえば今問題になっておりますが、今度のソビエトの代表部、政治公務員ですが、これは日ソ間に決定されました漁業暫定取りきめ、このソビエト政府側の業務を執行する代表として認めることは法理的には可能である、ただしそれを認めたとしても、ソビエトとの国交回復を認めたということにはならない。言いかえれば、必ずしも必然的関連性はない、そういうふうに解釈しておられる。また中国との関係におきまして、貿易協定に伴って−貿易協定は遺憾ながらまだ政府間の協定ではございません。政府間の協定ができないで民間協定の場合に対して、それに政府が何らかのサポートをするという場合、そのサポートの現われとして向う側の政府、こちら側からは民間使節になりましょう、貿易代表団ということになる、今の段階では輸出入組合または紡績の諸君、向う側はこの問題に対してはすべて政府公務員でございます。その政府公務員は、資格その他については外交官待遇のすべてを許すわけではないが、しかしながら政府公務員としての貿易代表団としてこれを承認したという場合、その場合も日本と中央との間において国交回復はしないが、そういうことが法理的に可能である、また逆に言えば、そういうことを認めたとしても、それは日中間の国交回復を必然的に認めたという法理的な関連性はないのだという御解釈と解してよろしゅうございますかどうか。  私がお尋ねいたしましたゆえんは、こういうようなことが、つまり限定されたある目的を持った代表団の設置ということが、他の国との関係に及んで参りますから、関連いたしまして念のために条約局長の条約上の純法理的な御解釈を伺うわけです。政治的なトリックをもって伺うわけじゃないので、そういうつもりで一つ正しい御意見を聞かしていただきたいと思うのです。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 純法律的の点だけをお答え申し上げます。  第一にソ連のミッションの話でございますが、御承知のようにマッカーサー司令官に対してアクレディットされておりましたいわゆる旧ソ連ミッションというものは、占領終止と同時にもう存在しなくなったものであるというのが日本側の一貫した立場でございます。そこでチフヴィンスキーという人が新たに参りましたことによりまして、日本政府が否認しておった旧ソ連代表部が、正式なものに切りかえられるのだというようなことは絶対にございません。旧占領軍司令官に対するミッションというものは、もう永久に消滅し去ったというのが正しい考えでございます。そこでチフヴィンスキーという新たな人間が漁業に関連して入国することを認める、そうして漁業のことについて話をするという限りにおいては、その仕事ができる限度において便宜を供与しようということは、先般外務大臣がおっしゃった通りであります。これは旧ソ連ミッションとは無関係に、新たに生じた事態に対応しての日本政府の新しい態度の決定だと思います。  第二に、中国の場合でございますが、中国はおそらくソ連と同じように貿易は国営だと思います。そこで民間協定あるいは民間の通商代表部と申しましても、公務員たる身分の者が何らかの貿易機関のメンバーとしてやってくるという場合も考えられるのであります。しかしこれは通常の国家ではあくまで商取引であるべきビジネスをやるわけで、国家といえども商取引をやる場合があるわけでありますから、これに対しては何らの公的資格を認めることなく、通商の国におけるプライベートのビジネスマンと同じものとして扱ってかまわないと私は思うのであります。そうしてそういう民間ビジネスにおいての代表部というものがかりにできました場合でも、これは仰せのごとく中共承認問題とは全然無関係にそういうことをなし得ると考えております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 もう少し条約局長の解釈を伺いたいのだが、私はいやがらせで言うのじゃないですから、ちょっとしんぼうして聞いてもらいたい。これも程度問題じゃないかと思う。だからいうところの権限がだんだん漁業だけでなくてそのほかの貿易であるとか、あるいはまた場合によれば引き揚げ問題等についても、政府機関として交渉してもらいたいというような話がだんだん拡大されてきますと、これはさっき言われたように、そのことと、それから国交回復と、相手国政権承認の問題とは無関係だということもだんだん無理が出てくるのじゃないか。だから政府機関の代表団の設置を承認することによって、同時にその国交を承認したということまでは必ずしも論理的には必然性はないのだ、こういうお考えのようですが、しかしこれも今言いましたようにだんだん権限と待遇、資格が拡大して参りますとすれば、国と国、政府と政府との間のある程度の事実上の承認関係が出てくることは、法理的に類推解釈として当然ではないかとわれわれは思う。これが一点です。問題が具体的になっておりますから、ソビエトの場合と小国の場合とを分けますが、中国の場合は、今おっしゃったように、資本主義国でいえば民間の普通の貿易取引をやるための商務員だというふうに考えれば考えられるのだが、相手国は貿易はすべて国営で行なっている。そしてその行う人の身分は、国家の政府機関のメンバーで公務員であるということになれば、それを認めるということになれば、日本側から行っておる民間商社または団体の代表者は、向うで民間旅行者として取り扱われても差しつかえないけれども、相手円のは明らかに公務員たる身分を持つ、しかも資本主義的な考えからいけば、貿易は民間業務のように見えますが、社会主義的な考えからいけば、貿易といえども、あなた方がやっておられる外交事務でも、これはすべて国家の業務なんですよ。従ってそれを永久に、どんな場合でも、どんな国においても、貿易のことはすべて民間業務だと規定することは、いささか考え方が古いというか、狭過ぎると私は思うのです。その場合に業務は国家的業務であり、外交業務と何ら違ったところがない。それから身分はどうかといえば、公務員ということですね。それを認めるということになると、それはそれとして私が今言う通り、そのことをどんな資格においてでも、相手の公務員としての資格においてこれを受け入れるということを認めれば、すぐ国交回復になるというふうに解釈しろと私は言うわけじゃないが、あなたの言うように、関連性がないと解釈いたしましても、チフヴィンスキーは国交回復を前提としないで、公務員として認めるわけでしょう。その場合に、中国との場合においては国交回復を前提としないという解釈に立って、公務員として認めていいじゃございませんか。中国政府の機関として、賛助代表団として認めて何ら差しつかえない。そんなにあまり民間々々ということをおっしゃらなくてもいいように思う。資格権限等についても、さっき言ったように限定されたのですから、それに相応するものでも差しつかえないという解釈は政府としては出て参りましょう。出てくると思うが、チフヴィンスキーをソビエト政府の代表機関として認めるという場合には、中国の場合には中国の貿易機関は政府身分で業務を行い、政府の身分を持っておる貿易官は公務員としての待遇として認めて何ら差しつかえないと思うのですが、どういうわけで一体それを区別して議論されるのか、私にはよくわからない。ですからその点についての下田条約局長の一貫した御意見を伺いたいと思うのです。いささか矛盾があるように私に思えるのだが、いかがでございしょうか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 チフヴィンスキーの場合は、日ソ間に漁業条約を署名いたしまして、また本年度の暫定取りきめについての了解がつきまして、それに関連する仕事と申しますとこれはやはり空けの仕事でございます。両国間の漁業に関する公けの仕事でございますから、可能である限りの便宜を政府として認めるということはこれは当然でございます。一方の日中民間貿易の点は、これはあくまで民間ベースの取引の話でございまして、そのこと自体が、先方はいざ知らず、日本から見ますと、これはコマーシャル・ビジネスでございますので、それに関連しての資格なり業務なりに立法的色彩を与える必要はなく、また与えなくてもできる筋合いの性質のものであります。そのケースとチフヴィンスキーの場合とは、本質的の差異があると考えております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 あなたはそうおっしゃいますが、なるほど調印は済みました。しかしながら暫定取りきめ並びに漁業条約は、批准もされておりませんし、その前提条件になっておる国交回復もしておりませんから、効力は発しておりません。両国間にはなきにひとしい。法理的にはそうでしょう。そうじゃありませんか。それじゃ今日フィリピンと日本との間で国交回復をしたかというと、まだしていないでしょう。することを目的として今交渉中である。国交回復の前提としての正比賠償の調印まではした。それは批准が済み、しかる後ということなんです。国交回復等の平和条約の批准が済まなければこれは効力を発しない。特にソビエトの場合は、本年度の暫定取りきめにいたしましても、さらに漁業条約にいたしましても、調印はいたしましたが、その効力の発生というものはやはり国交回復にかけてあるわけです。批准も行われていない。両方ともそういうことですから状態は今言った通り中国と法理的には何ら変りはない。国交未回復状態です。未協定状態です。まだ同じじゃございませんでしょうか。ちょっと御解釈に無理がある。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 おわかりと思ってわざわざ申し上げなかったのでございますが、もう一つ根本的の前提が違います。日ソ間は、今の政府がソ連の正統政府であるという点については何ら問題がないわけでございます。中央の場合には、正統政府の問題は、日本としては国民政府を正統政府とするということに態度をきめておるわけでございます。そこで先ほど申し上げましたように、ソ連との関係の問題は、国交回復前のソ連の一公務員の取扱いをどうするかという問題です。中共の場合には、まだ国際的に中国の正統政府だと認められていない。少くとも日本から見ますとアメリカも同様でございますが、日本が正統政府と認めていない政府の公務員であって、そうして民間貿易代表部員として日本に入ってくる者の取扱いの問題、そこにまず一歩初めに非常な本質的の差がある。ソ連との間にはソ連政権承認の問題などというものは全然なく国交関係が再開せられる前に暫定取りきめができまして、その暫定取りきめの運営につきまして、どうしても公けの資格において公けのビジネスを話し合わなければならないという関係が生じてきておる。これはやはりある程度それに必要な範囲の便宜を、日本側は供与すべきだというところにきておるわけです。ところが中共の民間貿易使節団の場合は、まず第一にそれがたとい公務員であっても、日本政府が承認しておる政府の公務員じゃないわけであります。ですからチフヴィンスキーの場合とはちょっと比較し得ないほど大きな前提が違うわけでございます。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 あなたはなかなかうまいことを思いついては次々と逃げていかれるようですけれども、これは私は納得できない。というのはこれは州民政府との関係で言っておられると思うのですが、限定承認という方法によっても政権を承認する可能性はございますよ。のみならず。さらに中国の正統政府を北京政府であるとして承認する。その場合には自然消滅として日華協定というものによる、つまり国民政府を中国の正統政府として認めるということは、自然消滅するわけでしょう。事実問題としてはそういうこともあり得るのです。だから今法律上の問題ではなくて事実問題として、あなたは、一方はソビエトの政権は承認していなくても樹立しておるのだ、一方はまだ架空だ。実在し得るのは国民党政府だけだ、こういうふうな事実関係で説明されようとしますが、そこまで話が発展すれば無理がございます。事実関係において中国の北京政府は、ソビエトの政府の場合とその実力、その実在しておるということについて、何ら私は異なるところはないと思う。ただ法理的に、これを承認するかしないか、または国交回復しておるかおらぬかということで、法律関係においてはそこに問題がくるから、同等なんだ。ところがそれが事実関係においても同等なんだ。それをあなたは、一方国府を認めておるから、その中共政権については事実関係も存在しがたいのだというようなことで、事実関係としての相違をあなたは説明されるが、事実関係においては相違はございません。これはそう解釈すべきです。そこのところが私にはちょっと納得がいかない。今言った通り、事実関係としてソビエト政府は実在しておる。そうであるならば、外務省がこの間発表されたように、中共毛沢東政権も実在しておるのです。事実関係から言えば、台湾政府よりもっと強大なる実力と永久性を持ったものとして実在しておる。事実関係としてはそういうことです。この場合に問題は、法理上この微弱なる国民政府といえども、これは中国全体の正統政府として認めておるという、法律関係においてこういうフィクションをとっておるから困難だ、こういうことになってくるのです。そこでの議論ならわかりますよ。そうなれば中共とソビエト政府は法理的には同じことなんだ。事実関係からいってもその通りなのです。しかもわれわれが指向する目標からいっても、中共政権を国民党政府にかわって中国の正統政府として認めることも可能であります。そして日華条約を否定することになる。それから同時に、温和な方法としては、両方を今支配する地域の政府として限定承認をする場合すらあり得るわけでしょう。たとえば韓国の南北朝鮮に対してと同様じゃございませんか。大体事実関係においてはそういう考え方を持っている。ですから事実関係でもってあなたが説明されようというのは、私にはまだ納得がいかない。しかしこれは後々のために、私はこのフィリピン代表団の法律的権限と性格並びに両国間の国交関係について関連して伺ったわけですから、これは他の機会にいたしましょう。私は問題をあなたの説明で承認したわけではないのですから、その点はよく覚えておいていただきたいと思います。しかしきょうは日比賠償を主として討議するという約束ですから、信義を重んじて、もとへ戻りますから、これは宿題にしておいていただきたい。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 ちょっと穗積君、船田長官が来ておられるので、その質問だけ済ませましょう。森島守人君。

森島守人日本社会党

○森島委員 船田さんが内閣委員会で非常にお忙しいところをわざわざ御出席をいただいたので、簡単に御質問したいと思います。今月の二十五日に参議院の内閣委員会でわが党の田畑君に対する御答弁で、現在アメリカには陸海空三名の防衛駐在官を置いておるが、ことしはさらに欧州へ一名駐在官を置く考えである。欧州に置く場合にはフランスが適当だと思うが、最終的にきまっていない。次いであなたは、将来は東南アジア各国にも防衛駐在官を置きたいという希望といいますか、願望といいますかを御表明になっておる。私は何らか確固たる御構想があるのか、あるいはどの国にいつごろ置くのかというふうなことについて、あなたとして、——高碕さんも賠償の問題等について非常に御尽力になったし、防衛駐在官を置くという問題になりますれば、必然外務省にも影響のある大きな問題だと私は思う。あなたがこの希望を特に表明せられましたゆえんを一つ御説明願いたい。

船田中自由民主党防衛庁長官

○船田国務大臣 今御指摘のように、大体私の希望としては、東南アジアにも将来防衛駐在官が置けるようになることを希望するということは申しました。しかしまだそれをいつ置くか、三十二年度の予算に計上するかどうかというようなことになりますと、それはまだ何ら私としては決定しておるわけではございません。防衛庁としても決定しておるわけではございません。ただ東南アジアに将来置くかどうかという田畑委員の当時の御質問でございましたから、なるべく広く防衛問題についても駐在官を置くことが私としては望ましい、こういう希望を申しただけでございまして、その予算措置をどうするかということについて、まだ防衛庁として決定しておるものはございません。

森島守人日本社会党

○森島委員 御説明でいきさつははっきりいたしました。しかし現在日本と経済的にも提携しようという東南アジアの諸国に、特に防衛駐在官を置くという必要と、いかなる目的をもって置かれるのか、あなたが将来置きたいというならば、どういう必要があって置きたいかということについては、少くとも防衛長官としては確固たる御構想をお持ちになっておることと思いますので、この点を御説明願いたいと思います。

船田中自由民主党防衛庁長官

○船田国務大臣 先ほど答弁申し上げましたように、希望としては持っておりますけれども、まだ外務省と折衝したわけでもございませんし、いわんや予算措置のことについて具体的に構想を持っておるわけでもございません。ただアメリカの場合、あるいはヨーロッパに防衛駐在官を置くということにつきましては、御承知の通り、防衛問題は、ただ防衛庁だけで考えておるべきものではなくして、先進国のそれらのいろいろな事情をよく知るということが必要でございます。従いまして、できればなるべく広く世界各国にそういう駐在官がおりまして、日本の自衛体制を、国力国情に沿うような最小限度の自衛体制を整備するのに役立たせることが必要である、かような意味におきまして希望を申しただけでございまして、その具体的の構想については、今後十分検討をいたしまして、外務省とも折衝をし、また大蔵省とも予算措置の問題についても折衝していかなければ、最終決定になる段階ではございません。

森島守人日本社会党

○森島委員 アメリカに置いておられることにつきましては、あるいは共同防衛、あるいは技術的な援助を受ける関係とかいうことで、防衛庁の立場も私たちの立場から離れまして了解はできます。ヨーロッパに対しても置かれるということも、ある程度理解できぬわけじゃございませんけれども、日本の立場からいたしますれば、元来この駐在武官というものはスパイから発達したものです。私は日本の現状においては、そう広く世界各国に防衛駐在官を置く必要があるかいなか。それくらいの外貨があれば、もっと有効に使う道はあると信じておる。この点につきましては、あなたとここで議論したってけりはつかぬのですから、議論はやめますけれども、特に東南アジアの諸国に防衛駐在官を置く、これを希望しておるという以上は、何らか確固たる目的と必要がなければならない。あなたが何ら必要もないと思われるのに、ただ希望を表明するだけでは、この時間の答弁としては私は納得できない。この点につきまして、東南アジアの諸国に防衛駐在官を特に置く必要ありやいなや、またどういう目的をもって置かれようというのか、明確に御答弁を願いたいのであります。

船田中自由民主党防衛庁長官

○船田国務大臣 これは先ほど来申し上げておりますように、防衛の立場から申しますと、そういう東南アジアの諸国等においてもどういう防衛体制を整備しつつあるかということにつきまして、相当な知識を得るということは、私は必要はあると考えております。ただいま御指摘のように外国武官というものはみなスパイだという前提に立ちますれば、なるほどそういう必要はないということも言い得ると思います。またそのために国交を妨げるというようなことになりましたら、これは決して私どもの希望するところではございません。ですからそれらのことは十分今後外務省とも、あるいは大蔵省とも話し合いまして、そして置くか置かぬかということも決定するということになるのであります。参議院の内閣委員会において私が田畑委員の質問に答えましたことは、私の希望を申しただけのことでございまして、具体的なことは今後十分検討して参りまして、その上で決定をいたしたいと考えます。

森島守人日本社会党

○森島委員 防衛長官としての希望を表明せられたということですが、先ほどもちょっとお言葉がありましたが、外務大臣や岡崎長官とはまだ御協議になる域にも達していないものというふうに私は了解しますが、それで間違いありませんか。

船田中自由民主党防衛庁長官

○船田国務大臣 その通りでございます。何ら具体的に進んでおるわけではございません。

森島守人日本社会党

○森島委員 私は国務大臣の答弁としては、きわめて不適当な答弁であると思う。特にフィリピンとの間に賠償協定が成立しましたその直後において、右のような御管弁がたとい将来の希望としてでも表明されるということは、国務大臣として私はきわめて不適当な御答弁であったと断定せざるを得ないのであります。高碕長官も先日来この席におきまして、フィリピンとの経済開発の問題につきましても日本から具体的な案を示し、あるいはフィリピンその他の国の経済開発の計画に即応して日本側から案を作って、これを押しつけるような感じを与えては、かえって効果がない、むしろ経済侵略をまたやるのかという憂慮の念を、東南アジアの諸国民の間に植え付けるから、これは慎しんでおるのだという御答弁があったのであります。私は高碕長官が非常に慎重に事を処しておられる点に、衷心から敬意を表する。この点から関連いたしますと、あなたは防衛庁の親分だから防衛庁のことばかりお考えになっておるかもしれぬ。これでは国務大臣としてのあなたの職責は十分に尽されない、こう私は信じておる。この点につきまして岡崎長官から、今の船田さんの答弁に対する御印象をざっくばらんに伺いたと思います。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 ただいま森島委員の御心配になる点は、私は同感でございます。従いまして防衛庁から、何らか侵略の意味のあるような防衛といいますか、何か駐在武官を置かれるといったふうなことになりますと、私どもは閣僚の一人として反対せざるを得ないわけ、であります。おそらく船田長官はそんな意味でなくて、もっと軽い意味でいろいろな技術的の検討、そういうようなことからお考えになって御答弁になったことだろうと存じます。そういうことならば、また先と話し合った結果よくまたできることだと思っておりますが、今の御心配になるような点でありますれば、侵略を意味するというふうなところが幾らかでもあるという気配がある、また先方でもそういうことを考えられ得る心配があるということであれば断じて私は反対いたします。

森島守人日本社会党

○森島委員 私はあえて侵略的な意図があるとかないとかいうことを断定しておるわけではない。高碕さんが経済的な問題ですら向うへ与える影響が大きいのだと非常な御心配になっておるときに、防衛長官が駐在武官を置くのだ、置きたいのだという希望を表明されれば、東南アジアの諸国に対して相当おもしろからぬ影響を与えることと私は信じておる。こっちへ来ている大公使館員は、国会内における論議は非常な注意をして見ております。一々関係の部分を当該国へ送っております。私は船田防衛長官の発言がどういう影響を及ぼすかということは、結果を見なければわからぬのです。少くともその憂いのあることだけは否定ができなと思うのです。私は別に侵略とかなんとかいうことを断定いたしたのではない。高碕長官も今御同感だ、今後東南アジア諸国どの外交上長も緊密な関係を作っていく上において、私は重光さんもおそらく高碕さんと同様な御感想をお持ちになっておると思うのでございますが、東南アジア諸国に及ぼす影響もありますので、この機会に外務大臣からこの点を明確に、議会を通じて御表明いただければけっこうだと思っております。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 東南アジア方面に対して、日本が過去において相当誤解を受けておるということは、はなはだ遺憾なことでございました。そういうことを再び繰り返さないように慎重に考慮して政策を運用しなければなりません。その御趣旨は今表明された御趣旨に合致することだと私は思います。それはその意味で御同感でございます。この意味においては同僚の岡崎大臣も船田大臣も、私は少しも変らないと思います。ただ問題は今具体的に指摘された駐在員の問題でございますか、これはそういうようなところまで、審議はむろんいたしたわけではございません。もしこれが具体化する場合においては、私が全般的に申し上げた趣旨のもとに、これを検討することに防衛庁長官むろん御異存ないことと私は信じて疑いません。そういうような意味でどうぞ御了解を願います。

森島守人日本社会党

○森島委員 まことにけっこうな御発言をいただきまして私は感謝いたします。防衛長官に私が一言だけ希望しておきたいのは、あなたは国務大臣であり、重要な職責においでになるわけですから、いやしくも対外的問題に対する発育は一々指摘するまでもなく、何か二、三回失言も繰り返されたようでありますが、失言に類するようなことは厳に慎しんでいただかなければ、東南アジアに対して日本がせっかく経済提携をやって、向うの生活水準も上げ、購買力もふやす、そうして日本の繁栄をも一諸に導いていくという政策をとりましても、あなたのこういうふうな不謹慎な発言が、これらを水泡に帰せしめるおそれがあると私は思っておる。長官はいろいろ弁解はなさるでしょう。しかし私の申し上げたことは。おそらく内心同感というふうにお感じになっておるにきまっておる。私はこの希望だけ表明しまして、防衛長官に対する質問を打ち切ります。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 外務大臣にお尋ねしますが、経済借款協定、これはここにあります通り、また今まで幾たびか御説明があった通りに、その実現を容易にし、かつ促進する義務は持っておるけれども、結果については義務は持っていないということですが、事実問題として外交上どういうふうにお考えになりますか。これは条約解釈じゃございませんよ。事実問題としては、実際言えば、あえて私がフィリピン側に立って解釈すれば、何ら結果に対してオブリゲーションをしないものなら何も協定しないでもいいじゃないか。これは下田条約局長の言われる通りだと思うのです。完全なる民間の、コマーシャル・ベースでそうして民間商社個人の間でやるならおやりなさい、そんなことは勝手なことで、それを制限しないという事実さえあればかまわないわけなのです。何もこれを容易にし、かつ促進するという取りきめの公文を交換する必要も実はないと思うのです。そういうところに言いがかりをつければ、これはなるほど厳格な意味における法律上のオブリゲーションは持っていないけれども、少くとも政治的には責任があるのじゃないか。それに対しては信義はどうするのだと甘いがかりをつけてくる可能性はないことはないと私は思うのですが、どういうものですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私も端的に申し上げればそう考えます。それはどういうことかというと、法理上それが何もないのと同じことだということがありましても、政策の運用上こういうものがあれば、日本政府の十分でき参ない場合においては一つできるようにしてくれ、こういうことを言ってくることができるのは当然でございます。これは何もなくてもよいならばこれがなくてもそういうことになります。私はこれは今文面や法律論を離れてのお話でございますから申し上げますが、交換公文くらいで、こういうことがありまして、やはり借款の提供をするということも、日比の将来の経済関係を密接にするという一つの手段でありますから、これは政府間で文書を交換しておいて、ますます両国間の経済関係を密接にするように一つ心がけていこう、こういうくらいな程度のものだとして、けっこうなことだと実は考えておるのであります。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そうすると外務大臣にお尋ねしますが、相互関係からいきますと、法律上のオブリゲーションはないけれども、政治または道義上は多少のオブリゲーションを感ぜざるを得ない。その程度はこの共同声明の中でこちらから言えば貿易伸張に対する共同声明があるわけですね。それで今度は借款実現については今育ったような交換公文があるわけです。そのお互いに政治または道徳上の責任を感ずる程度は、これは相互関係で同じ程度と解釈してよろしゅうございますか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 また法律問題に返ったようですから条約局長から……。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 いや、法律じゃない。政治上のことです。もう一ぺん言いましょう。あなた聞いておらなんだ。つまり今の借款に関する交換公文の中では、それを実現することを容易にし、かつ促進するという程度の、いわば道義的または政治的な義務は持っておる。しかし結果については責任を持たない。ましてや結果については法律的に言えば責任を持たない。程度はなきにひとしい。しかしながらこうやって気持を表わしておいた方が相互協力のためによかろうというこうなんです。そうすると今度は逆に言って、こっち側からのメリットは、今度の話し合いではこの共同声明の中にある均衡のとれた貿易伸張、これは結果は日本側に有利なのです。その声明が今度は日本側にとって今の不均衡な貿易を均衡のとれた貿易に伸張することに協力いたしましょうと実はフィリピンが言っておるわけなのです。条約上は相互になっておるが、実際はそうなのです。その伸張に協力しようという程度は、これはこの共同声明では、必ず均衡貿易に持っていかなければならないという法律上、条約上の義務は向うは負っていない。こっちも負っていない。ところが道義的または政治的には多少これによって要求することができるとこっちは期待をしておるわけだ。そこで両方の政治的または道義的義務を拘束する程度は同じくらいとあなたは解釈しておられるかどうか。どういうものですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 だから私は法律問題に返ってあなたが御質問された……  (穗積委員「政治上だ、法律上はオブリゲーションなし」と呼ぶ)政治上は今後両方の政府においてそう努力をしよう、こういうのですから、その努力の分量はどっちが文書によって重いかということは法律問題となると思うけれども、それは私は一つできる方から進めていったらいいと思います。私はそういう考え方です。これは借款の問題にしても貿易の問題にしても経済関係を密接にするのだから、どっちを先というようなことでなくて進めていった方がいい、こう大ざっぱに考えております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 私は必ずこれが出てくると思うのですよ。法律上はなきにひとしいものだと言うけれども、あることは事実なんだ。あればないよりはお互いに確約をし、意図があったに違いない。この共同声明でもそうです。単にフリー・ディスカッションで話し合ってみたら、貿易をお互いに伸ばそう、特に日本に対しては入超貿易になっておるから、バランスのとれた貿易に協力しましょうと向うで言っただけじゃだめだから、文書に書いておこうというわけなんだ。そうすれば法律上はお互いにオブリゲーションを負い合わないけれども、協力されなかった場合には何か文句を言って協力を求める、政治的、道徳的協力を求める言いがかりにはなると思うのだ。従ってそれは外交交渉のときの種に使われるわけだが、その程度はどういうふうに考えておられるかということを聞いておるわけですから、どうぞ一つあなたのつもりを聞かしてもらいたいものです。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 法律的に見ますと、先般防衛分担金の共同声明のときに、防衛力の漸増という政府の方針が指示されております。しかしこれは来年度以降については予算の裏づけも何もない。ただ政府としてのそういう方針を宣明しただけであります。それと同じであります。これは両国政府が、容易にし、かつ促進するという方針を宣明しただけであります。そこで法律的に問題になりますのは今仰せになりますように、将来その借款が一向来ないじゃないかという法律的の義務違反を追及されるような羽目に陥ることがないかどうかという点だと思います。その点につきましては関係法令によって、あとの方には日本輸出入銀行のような金融機関から通常の商業上の基礎によって、しかもそのときにアヴェイラブルな資金の範囲において融資を受けるということになっておりますから、そのときにある資金だけをやればいいのでありまして、そういう意味での法律的な義務を追及されるということは、全然ないように書いてあるわけなのです。残りますところは、御指摘になりました政治的な徳義の問題として、そういう一たん宣明した方針は、やはり政治徳義の問題としてはやるべきであるという点が残ることは事実だと思います。(穗積委員「共同声明も同様と解釈していいですね。」と呼ぶ)共同声明も同様でございます。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 ついでですからちょっと伺っておきます。専門家会議の議事録ですが、これは法律上の効力についてはどういう御解釈でございますか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 この一年前に行われました専門家会議というのは、賠償交渉の解決を促進する意味で、お互いに事実問題から先に入っていこうじゃないかということでやった会議であります。従って正式の国際会議というものではないのでありまして、その合意議事録というものも、そういう意味での事務当局の話し合いの一応結論と申しますか、最後のところをまとめてみよう、結局話が合わない部分が相当あったわけでありますが、合わないのは合わないままに、どういう会議の模様であったかということを将来のために議事録をとっておこうという意味で、この合意議事録というものができたのであります。従ってそれ以外の何らの法的拘束力はないわけであります。しかし、今度の協定でこの専門家会議に言及いたしまして、この専門家会議の結論と申しますか、結果というものを将来賠償の年次計画を定める上に参考にしようということになっております。従って、その限度においてのみ——参考に供せられるという限度においてのみ、この協定と関係が出てきておるわけであります。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 よくわかりました。私もそう思ったのだが、そうするとこういうふうに敷衍して解釈すればしておいてよろしゅうございますね。この議事録はあくまで本協定を拘束するものでもなければ、この議事録自身が双方に法律上の拘束力を持つものではない、ただし、実際両国間の賠償を実施する場合においては、これが一応の事実上の基準になり得るということですね。そう解釈してよろしゅうございますね。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 大体その通りでございますが、将来この実施に当っても、これは参考程度でございまして、必ずしもこれが準則になるとか、それに基いてやるというほどの強いものでもない。参考の資料となるわけでございます。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 私の言ったのもそういう意味です。それでは外務大臣、採決があるなら、行ってきていただいてけっこうです。  高碕さんに続いてお尋ねしますが、今度は国内問題にちょっと触れますが、今度の賠償実施に当っては日本のメーカー工場が指定されますね。契約の対象になりますね。向うの政府機関が日本の、たとえが三菱なり日立なり、あるいは東芝なりからこういうものがほしいということで指定するわけでしょう。その契約を、こっちが何といいますか、オーソライズするわけですね。裏づけするわけです。そういう格好になっているわけです。そういたしますと、経済的に見れば、今の輸出が相当行き悩んでいるときに、この指定された、または契約の対象になった日本の工場は、かつての軍需工場とまではいきませんが、この不況な、国際的に購買力が多少行き詰まっているときに、日本の政府の金、すなわち国民の税金でもって、それで向うが指定をしさえし、契約を取りつけさえすれば、これは非常に有利な市場がここに、賠償需要の市場というものができて、非常な利益を、しかもこれについては取りそこないのない、または一ぺんできれば非常に安全な取引、有利な取引になるわけでございましょう。従って、そういうことになれば、そこにおける価格の決定並びにそれに伴います利潤の決定、これに対しては、政府は何らかの関心を持つべきだ——政府というより国民は——と思いますが、これに対しては全く無関心、無干渉、無監督でおいきになるつもりでございましょうか。もしそうだとすれば、いささか私どもは国民感情をして矛盾を感ぜざるを得ないのですが、いかがなものでございましょうか、率直な御意見を聞いておきたいと思うのです。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 先方の賠償使款団が参りまして、それが日本のメーカーとてんでんに契約することになっております。しかし、その日本のメーカーをどういうふうに選定するかということにつきましては、政府は先方に対してメーカーを推薦することはできるのでございますが、その推薦した人だけに限定するということでなくて、先方の考えによっては、それ意外のものからも選ぶということになると思います。そこで私が考えますことは、メーカーとすれば、これは今御指摘のごとく、日本政府が払うのだから、金のとりっぱぐれがない。これは非常にいい仕事だと思います。しかしフィリピンの側としてみると、これはできるだけいいものを安くとりたい、こういうことで日本政府があまりに干渉してやると、彼らはこういう心配をするのですね。日本は高く売りつけて、そうして結局賠償を値切ったことになるではないか。私はそうでないと言う。日本は安く売り過ぎちゃって賠償をよけいに払ったようなことになるから、この考えは両方ともまず一致しておるのではないか。反対側の意見だけれども、当然の話じゃないか、こういうことになるのでありますが、そういう場合に日本政府としては、どうしてもある程度の行政的な指導をしていく必要がある。どの程度にやるかということは、やはりフィリピン側の立場も考えないと、くだらない誤解を生むと思う。むしろ私が一番心配しておりますことは、日本の業者の不当なる競争によって乱売するというふうなことについて、行政指導によってやらなければならぬ、こんなふうに考えております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 だからそれは非常に大事なことだと思うのです。従って、今私が言いましたように、その場合の契約の価格決定と利潤決定については、われわれは無関心でおれない。政府というより国民、われわれの納めた税金でやるのですからそう思うのです。だからこの協定によると、今おっしゃったように政府がまず推薦権を持っておる。けれども推薦されたものに限らない。しかしその後に指定するのは向うが指定する。指定されたものが瑕疵または不当がなければ政府はこれを承認する。そこで初めて契約が最終的に決定されるわけでありますね。そうなりますと、実は今おっしゃった通りに、心配がいろいろ出てくるわけです。今長官のおっしゃったように、今までの日本の対外貿易から見ましても、業者間における非常な競争、自薦他薦の競争と、そこに利権を伴うこともあり得るでしょう。あなたがリベートをとると言うのではありませんよ。しかしそういうことはあり得る。それから同時にその場合に、今度は国民から見れば、乱売がなされる。おそらくその方が多いのではないかと思います。おれの方から買ってくれ、向うではこの品物を幾らと言っておるが、おれの方はこれだけ値引きをするということでやると、国民としては、そのことによって不当な賠償額を負担しなければならない、より以上に負担しなければならない。向うから見れば、それを高く買わされてそれだけ賠償額が実質が少くなる、こう解釈するのだが、私どもが心配するのは、実情から言いますと、フィリピン政府が心配するよりは、われわれの心配の方が現実性があるのではないかと思うのです。すなわち日本のメーカーの競争、乱売の方がひどくなりはしないかということが考えられる。それでもなおかつ問題になるのは、その価格決定の場合における過当な負担をわれわれ国民が負う結果になることの心配が一つと、それでもなおその業者は、おそらくそのことによって、そのことがないよりはより多くの利潤を、プロフィットを得るだろう。そうなると、価格決定のときに政府が、国民が無関心でおれないのみならず、なおそれでも利潤構成についてわれわれは無関心でおれない、発言権があるのではないか。これは道徳的に経済道徳から見ましても、当然な国民感情であり、理論であると思うのです。その場合に、今言いましたように、向うとの契約の価格構成について、順を追って言いますと、推薦をする場合の基準が何か客観性がなければならぬ。これを推薦工場として政府が推薦される場合、これはどこでおやりになるか知りませんが、おそらくは通産省関係、重工業局長あたりが推薦権を持ってやられるでしょう。繊維関係についてはこう——そういうことになるときに、どこが何を基準にしてやるかということが、推薦する場合大問題でありましょう。次に、今度は向うとの話し合いで契約の価格決定をする場合に、一体われわれは無関心であっていいかということになれば、私は無関心ではおれないと思います。国民の一人として、国民を代表するセンスからいけば、こんなことで無関心でおっては国民に過当な負担を負わしめる結果になる。だからそれをどういう基準で政府はコントロールされるつもりであるか、それが一つ。次に第三には、そのことによってなおかつ乱売を防いでやっても乱売の傾向がある、価格引き下げの傾向がある。それでもなおかつその業者は、この賠償買付がなかりしよりは有利なるプロフィットを、その会社は形成することができ得ましょう。その利潤に対して納税者であります国民が発言権を持つのは当然なる経済道徳であり、経済論理であると思うのであります。その三つのことについて、一体政府は具体的に何かお考えになっておられるかどうか。三つの具体的な問題について、今長官は、価格の問題については、乱売で国民が不当な負担を負う心配があるから、無関心でおれないから何とか考えたいというばく然としたお話でありますが、今言いましたように、推薦するものはだれがやるか、その基準はどこに置くか、向うが指定してきたときに契約の価格決定については、一体何らかの客観的な基準を持って政府は臨まれるかどうか。それから最後には、それでもなおかつ形成された利潤に対して、われわれがこれを監督するなり、監視するなりあるいは会計検査をするなり、やはり何らかの措置がなければ国民としては安心ができません。推薦のときにリベートが生ずる。それから価格決定のときに不当な負担をする。のみならず最後に、その会社は推薦されかつ指定されたというだけで、不当な利潤をわれわれの税金の購買力によって得る結果になる。これでは不均衡だと思うのでございますから、経済公平の原則に立って、何らかの構想がなければならぬと私は思うのですが、それに対してもう少し御親切な具体的御答弁をいただきたいと思います。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 この問題は私は非常に重要な問題として非常に心配しております。フィリピン側も心ある人は非常に心配しております。かりに代表団として来る人がいかに技術がよく頭がよくても、人格的に、人間としてよくない人が来れば、非常に堕落せしめるということになる。こういうふうな点も考えて、人格、識見ともにりっぱな人に来てもらわなければ日本でも非常に困るわけであります。この問題について私は特に大統領にまで頼んできたわけなのであります。  それと同時に、やはり日本側も同じだけのことをやっていかなければならぬと思っております。政府はこの点は十分監督をして行政措置を講じたいと思っておりますが、推薦をいたします場合においても、第一にはやはりその会社の過去の実績をよく見る必要があると思います。またその価格構成につきましても、原価計算等をよく完全にいたしまして、適正の利潤は認めますが、しかしそれ以外の暴利をむさぼることはもちろんのこと、またさらに安い値段を出すということも、十分監督することは簡単にでき得るわけであります。私が一番おそれております点はどうかというと、いわゆる一旗組が出てむちゃくちゃな値段を出すだろうと思うのです。相手方の代表者が人格的によくない人が来れば、いろいろなスキャンダルが起って悪いものが出る。その結果どうだというと、製品の品質の悪いものが出たり、あるいは価格がつり上げられる。品物の悪いものを入れて向うへ据え付けた、それが動かないということになったら、非常な大きな問題になるわけでございますから、どうしても第一に品物の品質ということに重点を置きまして、第二にはその価格につきまして十分の検討を加えて監督していきたい、こう存じております。  しからばどこでどういうふうにやるかということにつきましては、まだその域に達していないのでありますが、その点は実行に移します上において、十分検討いたしたいと思っております。非常に有益な御注意だと思います。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 その場合私非常に矛盾を感ずるのです。少い経験ですが私も外国へ出てみて、最近は時に西ヨーロッパの進んだいいものを賢く作ろうとして努力して日本よりはやや成功しておるドイツ、スイス、イギリス等の製品と日本の製品とが、いずれがよくていずれが安いか、しかも技術的なサービスはどちらがいいかというようなことで激甚な競争をしておる。そうして価格の点においても、技術その他の点においても、性能の点についても、いささか一本の方が常にひけ目を感じるというか、たじたじになりつつある。そうなりますと、日本の現実は遺憾ながら資本主義経済でございますから、大工場、大メーカーの製品が、中小企業の製品よりかややいいものが安くできるという傾向が、特殊な商品については別ですが、一般的に言ってあると思うのです。こういうようなプラントものとか建設資材、キャピタル・グッズになりますと、どうしてもそういう傾向が一般的に出てくる。しかし、そうすると、さっき育ったように国民の納めた税金の購買力によって、かつての軍需工場のごとき一部の大資本、大メーカーだけが、この貿易の行き悩んでおるときに恩典を得る、そういう庇護のもとに国際的競争の中に入っていく。貿易外の輸出ですから非常な保護貿易だ、そういうことになってくるわけですね。そこで問題は、中小企業の諸君に対してこの賠償の経済的な利益をいかにして平均して均衡化し均霑せしめていくか、こういうことについても、今の価格並びに利潤の監督とともに政府の重大なる責任が生じてくるのじゃないか、これについても政府としては何らかの構想なり配慮がなければならぬと思うのですが、そういうことについての御研究は今までに進んでおられるかどうか。進んでおられるならば、その基本構想、さらに具体的な方策についての御意見があったならば、この際国民に示しておいていただきたいと思いますが、いかがでございましょう。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 フィリピン側におきましても、この賠償の結果、フィリピンの国内において利益を得るものは大資本家であって、中小工業者は利益を受けない、むしろ負担になる、こういう心配があったようでありますが、同様に今の穗積さんの御心配の点は、日本側としても十分考慮して今後実施に移したいと思いますけれども、かりに大工業で、大きなメーカーで作ったものでなければならぬという場合でも、当然これには下請工業が半分なりあるいは六〇%なり入る。これは中小工業がやる。それ以外に私今今度見て参りましたことは、投資の関係はもちろんでありますが、投資関係以外に賠償関係においても、できるだけ中小工業が何か得るようなものも入れてくれぬかという大きな希望があったのであります。大工業だけでなく、このリストの中に入っておるものが果してどの程度に行くかということも、それに大いに関連してこなければならぬと思いますから、私はむしろこの中小工業——小さな設備でそういうものがある程度賠償になるということになれば、これはひとり大工場だけがこれに均霑するのじゃなくて、中小工業も均霑すると思いますが、さてそうなると、一番先に申しました実施計画の実施におきましては、非常にむずかしい問題が起ってくるだろうと思いますから、そういう場合はその中小工業等も善用いたしまして、均霑して各中小工業が当るような措置も講じていきたいと存じております。

森島守人日本社会党

○森島委員 先日でありましたか私はビルマやインドネシアに対する影響という点についてお尋ねをし、それから大臣は楽観的見解を述べておるということを申しましたら、大臣は、日本の態度を言っている、フィリピンやビルマやインドネシアの態度を云々しているのじゃないという御答弁がありました。私がそのとき引用いたしましたのは、一月十何日でしたか、勝間田君が質問したときに、「ビルマ賠償との均衡、今後行われるインドネシア等への影響、さらに日本経済の賠償支払い能力への計画的な配慮の上にこそこの重大事は決定さるべきだったと思うのであります。」と言っている。これに対して大臣の御答弁は、きわめて簡単であります。「ビルマの賠償にはこれは別に何にも影響しなしようにやっておるつもりでございます。」これだけの御答弁です。続いて中間報告がありましたときにわが党の戸叶委員が質問しております。そのうちで、戸叶委員の質問も大体同工異曲でございますからこれは省略いたしまして、大臣の御答弁を引用したいと思います。「ビルマに対する賠償協定は、お話の通りに、他国の賠償協定と見合うということに、あとから規定がございます。しかしながら、このフィリピン賠償の協定が、ビルマ賠償にいうところの、協定を再検討するということにはならぬと私は考えております。」と、この通りの御答弁になっておる。そこで向うの態度のことを言ったのじゃないとおっしゃいますけれども、私はこれはしょせん表裏の関係に立ってくる。こっちのことを言えば向うにいく、向うのことを言えばこっちの態度を表明せんならぬことと思っておるのであります。そこで私が疑問を起したのは、ビルマが再検討することにはならぬとこう言われておりますところを見ますと、私はビルマの条約には日本が再検討することに同意すという条項がございますけれども、このほかに何らか当時岡崎君とそれからウ・チョウ・ニェン氏との間に別個の口約束とか、あるいは秘密文書の取りかわしでもあるのか、こういうふうな疑いを持たざるを得ない。このビルマの再検討ということはビルマの国内情勢、国内的な影響を考慮して、この五条の第三項でしたか、その規定を特に入れたのであって、結果は再検討はしないのだということになっておるのかなってないのか、何らかこういうふうな文書でもありますか、口約束でもありますか、その点を一つ御答弁願いたいのでございます。私たちは書いたものをそのまま読んでおるのですから、再検討をする義務を日本は負っておるのか、一方的に、独断的に再検討をしないでもいいのだというふうな御答弁では私は満足できないと、こう申し上げざるを得ないのであります。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 その条約文面で、あるいろいろな条件のもとに再検討をする権利がビルマにあることは、私はその通りだろうと思います。しかし私の申し上げるのは、今予想しておるところは、そういうような条件がすべてそろうようにはなるまいから、それで再検討するようにはならぬ、こう考えてやっておるのと、またそういうふうな再検討をしてもらわなくてもいいように一つやりたいと思ってやっておるのだ、こういうことを申し上げておきました。その点はその通りに考えております。  それから一番重要な、何か秘密協定でもあるのじゃないかということですけれども、私は何もそういうことは存じません。私はあなたの言われる、その表面は再検討することだ、その通りだと思います。しかし私の申し上げるのは、この日比賠償でもそう不当なものではない。このくらいな程度以上ならば再検討するというようなことが言われておるとかということをよく聞きますけれども、そういうことは一切ございませんので、このくらいな程度ならば、私はそこまでの法律上の義務を負うまでのところには発展しない、こう申し上げておるわけでございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 その点が私たちとあなたの見解の一途があるというわけなのです。私たちは再検討をする時期にくるのじゃないか、こういうふうに考えておるのです。そこに見解の相違が出てくるというわけでございますけれども、私の印象からすれば、どうもやってくるのじゃないか、こういうふうに考えておる。  それから条約面の文章から見ますと、すべての賠償要求国の賠償が片づいた上という、これもどの程度で賠償が片づいたということになるのかという問題もありましょう。しかしこの点につきましてはインドネシアでもその他一、二ヵ国の賠償が済めば——これも私は政府が一生懸命御努力になっておりますから、ビルマとかフィリピンのような、長い時期を費さないで早くおやりになることと思いますが、その時期がやがてくるのじゃないか、そのようなときに政府はいかに対処されるかというような点をお聞きしておるのですが、これは御答弁もむずかしいと思いますから、私はその点はこれ以上突っ込んでお聞きすることは避けます。特にインドネシア等につきましては三億ドルということも今朝の新聞に出ておりますが、こういう問題に深入りしますと、今後の外交交渉の上におもしろからぬ影響もあることと思いますので、特に私は差し控えたい、こう存じております。

細迫兼光日本社会党

○細迫委員 高碕長官にちょっとお尋ねいたしますが、ただいま穗積君が質問を進行しておりましたことに関連するのですが、あの交換公文の問題であります。いろいろと御説明がありまして、私ども全般的に了解というわけにもいきませんけれども、御説明になりたいと思うところは大体御説明になったと思います。つまり交換公文なるものに載せられた内容のものは、法律的には国としての義務はないというようなこともよくわかったと思います。でありますが、その点を裏からもう一度確認しておきたいのでありますが、交渉の経過におきまして、この経済開発借款の交換公文はしないでも賠償協定は成立せしめ得る状況になったでありましょうか、どうでありましょうか。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 お答えいたします。最初昨年の五月、ネリが参りましたときの空気から申しますと、どうもやはり先方としては八億ドルという数字に非常にとらわれたのでありまして、どうしても先方の対内的の関係上八億ドルという数字を入れてもらいたい、こういう意見が切にあったのであります。しかしその数字を入れるということになれば、どうしてもある程度借款ということにしなければならぬ、借款ということになれば、これはお互いの気持で、両国政府がよくなるようにしてやるということがあるのだが、これは政治的と道徳的の責任はあっても、これは予算措置を伴うような責任は伴わないという意味のものを原則としようじゃないか、こういうことにして借款ということを入れたのでありますが、それが二億五千万ドルになっております。それが最後に先方でだんだん検討してみると、これはどうも政府の責任が両国ともないじゃないか、それならこれは交換公文にしたらいいじゃないか、こういうような経過をたどったわけでございます。

細迫兼光日本社会党

○細迫委員 ではやはりフィリピンとしては八億ドルという数字をそろえたい意味がだいぶあったようでありますから、協定を円満に結ぼうとすれば交換公文を作った方がよろしいということでやはり協定の作成のためには、軽い意味ではありますが、一つの条件をなしておったように考えられるのです。それほどにさっきから穗積君が展開しておりましたいろいろな具体的な先のことが心配になるわけですが、実際これは本格的な資本財あるいはプラントによる本格的な賠償、これはフィリピンとしては利潤を無視していろいろなことがやれるわけであります。この経済開発の借款は商業ベースによるものでありますから、利潤が上らなければならぬ、しかも早急に、もうぼつぼつ利潤が上らなければならぬ事業になっていかざるを得ない性質を持っておると思うのです。基本的な産業、たとえば水力のダムだとか農業の開発だとかというようなものにはあまりこれは向かぬだろうと思う。そうすると本格的な賠償による資材の提供が相当莫大なものでありますから、この上にこれと競争する立場に立って経済借款が行われなければならぬということになると、非常にこれらの実行ということは私はむずかしいと思うのであります。それでそのむずかしいことが実行せられない、むずかしいから実行せられないという場合の道徳的な責任などが、何かやはり将来むずかしいことの発端になるようなことがありはしないかと心配するわけなのでありますが、できない場合でも、責任がないと言ってしまえばそれまででありますけれども、たびたび御説明になったと思いますが、この経済借款の実行についてのお見通しは、やはり相当楽観してよいものと相変らずお考えでありましょうか。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 経済借款につきましては、現在すでに実行しておるものもあります。これは御心配のごとく、借款によってやった投資については、急速に利益が上らないじゃないか、こういう御心配のようでありますがこれは必ずしも急速に上らなくとも、日本がこの借款に応じた結果において、日本工業に寄与するところが多いというものならば、これは応じていけるだろうと思います。また今のお話のごとく、賠償によって提供したる資本財を出すということになれば、経済借款の力と競争にならないか、こういう御心配のようでありますが、これははなはだ私は立ち入って言うようでありますけれども、フィリピン側の人たちといろいろ話し合った結果、賠償に提供される物件を出す場合に、これは政府がやる場合は別でありますが、政府が民間に払い下げる、民間にやらすといった場合には、これと並行的にその中に溶け込んで、ある程度民間借款を出していくということは、かえって賠償の物資を有効に生かす上において、これは将来非常に有効なものだと、私はこう存じておりますから、これは両国政府ともじゃましない、できるだけこれたプロモートしようじゃないか、借款をできるだけできやすいようにしようじゃないか、こういう精神で当っていきますれば、私はこれは悲観する必要はないと思っております。

細迫兼光日本社会党

○細迫委員 アジア局長に一つお伺いしますが、これは質問せられたことかもしれませんが、インドネシアにおいては、やはり賠償取りきめを非常に急いでおられるというような形勢に感じられるのでありますが、いろいろ経過がありましょうが、大体賠償の方式は、フィリピンに対する賠償方式と同じのようだと心得ていいでしょうか、どうでしょうか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 インドネシアとの賠償交渉も、フィリピンと同じときに始まりまして、もう三、四年たつわけでありますが、インドネシアの方との交渉は、フィリピンよりも若干おくれて進んでおります。その主たる理由は、やはり先方の政府が何回も変ったということが相当大きな理由になっておるかと思うのでありますが、今回総選挙の結果として、ある程度の安定政権ができましたから、従って今後は賠償交渉も進捗することと思うのであります。しかしながらまだ具体的な交渉段階まで、実は今度の政府との間に入っておりませんので、果してその方式がどんな方式になるかということは、今のところちょっとわからないのでありますが、従来からインドネシアよりいろいろ言われております要求の中で、フィリピンともビルマとも違う問題が一つあるのでございます。それは貿易じりの債務が、向うから未済になっておるものが一億八千万ドルほどございます。その一億八千万ドルほどの貿易じりの債務を、賠償とどうもひっかけてきておる。賠償が片づかなければ払わないということを言いますし、あるいは賠償を払う際に、この問題も一緒に片づけてもらいたいというようなことも言います。どうもそういうことをひっかけて参っております。従って、どんな形の解決になりましても、日比間の場合と多少形が違ってくるのではないかというふうに一応考えられております。ただ具体的な詳細なことは、まだ何にもきまっておりませんので、それ以上のことはちょっと今から予測できかねるのであります。

細迫兼光日本社会党

○細迫委員 フィリピンの賠償と直接関係のないことですから、時間を費してはいけませんが、あとからじゃおそいですから、一言希望を申しておきますが、インドネシアの国情は、聞くところによれば、フィリピンなんかよりももっと中小企業の育成ができ得る状態だ、非常にそれが適合する状態だと聞いているのであります。それでインドネシアとの賠償に当りましては、この中小企業のプラントといいますか、そういうものがたくさんの部分を占めるような方式で話ができ上りはしないかという可能性が、私はないとは言えないと思いますので、十分なお心組みをもって臨んでいただきたいと思います。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 それでは高碕長官にもう少し答弁をわずらわしたいと思います。昨日一蔓田大蔵大臣が見えたときに、財政編成の上から一体どういう見通しを大蔵省は持っているか、また希望を持っているのかということで、ビルマ並びにインドネシアのことについてお尋ねをいたしました。ただ御承知の通り、あなたは大蔵大臣より、この問題の交渉に当られたから、ビルマとの関係、あの協定の内容をよく御存じだと思います。ビルマとの平和条約五条の三項というものは、解釈上はビルマが検討を要求する権利があることになっている。ところが実際の問題はこの間のような話で、主観的に、向うが増額の再検討を要求してこないことを期待するというような話ではなくて、もう少しわれわれは両国間の政治経済上の実情に即してものを判断したいと思うのです。そういう意味で、問題は同じですが、全然違った角度からあなたから御答弁をわずらわしたいと思います。ということは、今までもうすでに確定いたしております日本とビルマとの間の賠償が、われわれの知るところでは、たとえば三十年度においては約五十億が大体の約束なのです。しかしながらその実施状態は、その五分の一前後であるとわれわれは聞いているのです。こういうことは、経済の実情と賠償実施の実情、すなわちかの国の経済の実情、これは将来の日本とビルマとの賠償の成り行きまたはその話し合いをつけるについて、一つの大きなデータになると私は思うのです。条約解釈とか日本の予算編成の主観的な、独断的な解釈、希望、そういうものでなくて、今まで実施されつつあるビルマに対する賠償の実情、これを検討することが、日本、ビルマとの将来の賠償問題の、五条三項をどういうふうにわれわれが処理していくかということの、重要な参考になると思いますから、そういう角度から、一つあなたのお考えなり今までの実情、それからこれからの見通し、さらにそれに従って、この問題についてはどういうふうにやっていくことが、一番ビルマを納得せしめ、しかもわが方が適当な負担を負わないで済むようになるという、これはいわば経済外交上の問題になると思うのですが、そういう意味のことを、この際国民に知らしておいていただきたい。そういう意味ですから、どうぞお含みの上で御答弁をいただきたいと思うのです。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 私は昨日穗積さんの御質問に答えたと思うのですが、五条三項の問題につきましては、私は、ビルマが申し出てきたときに、フィリピンが二の場合ビルマが一ということで満足されるならば、これは私は説き伏せ得ると思いますが、しかしながら実際の状況から見ますと、私はそれなんかは机上の空論だと思っております。ビルマがほんとうに文句を言ってくるようなことがあれば、実際お前は賠償を約束したが、賠償は実行できないではないかということを、二年、三年、四年先に申し出たときにどうなるか、これは実際土の問題として一番苦労している点でありまして、たとえば昨年度は五十億払うということになっておりますが、事実契約ができたものは十億に過ぎず、実行できたものは二億円か三億円程度しかできていない。この現状に即したときに、私はフィリピンの方は、ビルマの問題があったから、いろいろな点を考慮いたしておりますから、存外私はこのフィリピンとの間の賠償の実施は、比較的円満にかつ迅速に行くだろうと思っております、これに比較してビルマは実行できるかということにつきましては、これは日本がいかように考えても、ビルマの政情なり、あるいはビルマの一部分におきましてまだ治安の維持ができていないとか、そういうような点があった場合に、ビルマから言わしめるならば、自分の方の悪いことは第二に置くでしょう。それで結果から論じられて、実行できていないじゃないか、こういうことを言われたときに、これは相当問題が起るだろうと思います。その点につきましては、今後このビルマとの実施に当りましては、フィリピンもやると同時に、もっと検討し、実行しやすいようにやっていくように努力いたしたい、こう存じております、

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そういたしますと、ビルマの経済開発計画というものが、基礎的に政治経済的なかの国の事情によって進展しない、そのことが原因となって日本側の対ビルマ賠償実施が進展しない、言いかえれば、向う側の内部的事情に賠償実施が進展しない原因がおもにあるという解釈をしておられるわけですね。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 私はまたそういう結論には達しておりませんが、そういう憂いかあるかということを心配しておるわけなのであります。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そういたしますと、問題は、われわれはこの際、そういうことで責任を向うに転嫁する、あるいは原因はお前の方にのみあるのじゃないかというかたくなな態度ではなくて、約束いたしました賠償が円満に実施されるためには、ビルマ側の経済開発計画なりあるいはその他の経済開発援助に日本が積極的に手を差し伸べる、しかもその方式においては、先般来申しましたように、日本側の利益というよりは、むしろ向う側の利益、このことがかえってわが国の経済提携なり利益になると私は確信いたしますから、そういう方式でこの際積極的に進むべきではないかということを考えますが、長官のお考えはどうでございますか、伺っておきたいと思います。

高碕達之助自由民主党経済企画庁長官

○高碕国務大臣 ビルマとの賠償は、比較的早く妥結したわけなのでありまして、その実施につきましては、検討する余裕がフィリピンほどなかったわけであります。従いまして昨年度は第一年であったから、思う通りにその契約が進まなかったということも一つの理由があるわけであります。それに先ほど申しましたようなビルマの事情もありますが、また日本の事情もあったわけです。よく話し合いがつかないということもありました。従いまして、日本だけの利益というふうなことはもちろん考えてはいけませんが、どこまでもビルマのためになるように、そしてきめた額にできるだけ早く達するように、十分の努力をする必要があると思いまして、これはビルマの状態をよくわれわれが理解して、そしてビルマのためになるように進んでいきたい、こう存じております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 今の御答弁は人体良心的な御答弁だと思うのだが、そこで重光外務大臣にお尋ねいたしますが、ビルマは条約上から言えば、とにかく一応確定している、そうして今度フィリピンとも一応政府間では確定したわけですね。そういうときに、経済外交、特に東南アジアに対する親切な態度としては、この際向うが何か言ってくるのに対して抗弁をすることを考える前に、むしろこの際高碕長官がみずからもう一ぺんビルマに行って、今言ったようなことで具体的に協力するような態度を示す、そうして話し合いをするということが必要だとすら思うのだが、これは高碕長官に限りませんが、この間河野さんはソビエトと話をして、アメリカに回ってこられて——目的は二つ三つあったようですが、そういうこともお考えになるならば、またはそれをあなたが考えたとは言わぬけれども、河野さんの考えたのをあなたが了承するとするならば、この際当然アジアの経済外交の責任を持っておられるあなたとしては、そういうことを積極的に、外務省としてむしろこちらから進んでビルマに人を派して、話し合いをする協力態勢を示し、促進をするという態度、何らか多少の案を持って臨むべきだと私は思う。これはまことに適切なアドヴァイスだと思うが、あなたの御所見はいかがですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私も、実に適切な御勧告だと思います。私も全然そう考えております。一体経済外交、経済外交といって、すいぶんわれわれも実は苦労をいたしておりますし、いろいろ検討をいたしておりますが、それと一方に賠償問題、これらの問題は決して別個の問題じゃございません。特に賠償の実施の問題に至っては、日本の経済の発展と申してはどうか知りませんが、少くとも経済関係を密接にして、互いに繁栄をしていこうという考え方に合致するわけでございますから、こういう全局の問題について、これを一口に経済外交といって、それに順序をつけ、組織をつけて、そうして手落ちのないようにやるということは、ぜひ必要だと考えております。そして実は及ばずながらそれに手をつけて、人もやろう、また必要があるならばといえばおかしゅうございますけれども、それらのことについて親善的のことが必要であるならば——また必要でもありましょう、そういう機会がありましたならば、むろんわれわれとしてそういうことに尽したいという考え方は、十分にあることを申し上げておきます。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 率直にわれわれの適切なるアドヴァイスをお聞きいただいて、多といたしますが、口だけではなくて実行していただきたいことを要望いたしておきます。  そこで、ついでのことにちょっとお尋ねしたいのですが、アジア地区において、われわれが親善友好、経済文化交流をしなければならぬ国々で、残されておるものは、さきに言ったインドネシアその他東南アジアこれはこの間から議論がありましたから、私は省略いたします。これは実はあなたの方針を伺っておきたいと思ったのだが、他の人の質問をもってお答えいただいたようだから、省略しておきます。あと残るのは中国と朝鮮問題、特にわれわれとすれば、南北朝鮮ともどもに、何ら主義、主張、政治的なことを顧慮することなしに、特に経済外交におきましては、または文化外交においては、平等率直にやるべきだというふうに考えますが、アメリカのふところの中におる三人兄弟と世間から言われておる韓国と日本の間においてすら、まだこれがさっぱり進んでおらぬわけです。従って私は、これははなはだ遺憾なことだと思います。今度日ソ交渉で河野さんが行って、漁業条約だけは一応結んでこられたが、これとても効力発生は国交回復にかかっておりますし、さらにながめるならば、国交回復にかかっておるけれども解決の糸口がついたということです。ところが国韓との場合におきましては、日ソ間の漁業交渉よりもっと熾烈な、李ライン以内は、制限どころか全然入っちゃいかぬということですから、話がめちゃくちゃだと思うのです。だからいわば目の上のこぶのようなことになってきておるから、この際私は、こういりアジアにおける経済問題を論議するときは、やはり関連してでございますが、外務大臣の適切な決意を一つ伺っておきたいと思うのです。これは先般から幾たびか始まるように見え、幾たびか頓挫している問題ですが、近くその見通しがございましょうかどうか。韓国との関係は、漁業問題だけでなくて、貿易問題または在外財産の補償問題等、この協定に関連した問題がまだ懸案として未解決でおるわけです。ですからこの際あなたのアジア外交の一環として、関連してどういうふうにお考えになっておるか、実情はどういうところまで行っておるか、簡単にお答えをいただいておきたいと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 それでは簡潔にお答えいたします。韓国との関係を打開したいということは、これはほんとうに熱心に考えております。またぜひこれはやりたいと考えております。おりますがこれがどうも思うようにいかぬということも実際事実でございます。われわれの方では——われわれの方というのは、日本側ではあらゆる努力あらゆる忍耐を持って進みたいというわけでございます。そういう際に、突然と韓国側からはまたそれに反対的な報道が新聞等に参ります。これははなはだ私は遺憾に存じております。しかしそれにもかかわらず、目的を達したいと思って努力をいたしておるのでございますが、はなはだ微力、その結果がよくいっていないことを申し上げるのを遺憾とします、しかし御承知の通りに、まず漁夫の送還の問題は、これはぜひ実現しなければならぬので、それで若干手を染めておるということは御承知の通りであります。これはいかぬことはなかろうかと思っております。しかしこれもやはりいろいろ忍耐を持っていきませんといかないので、せいぜい努力をいたしております。むろんこれらの問題については米国は重大な関心を持っておりますから、常に日韓両国のためになることには、十分アメリカも手助けをしてもらいたいとは考えておりますし、またその方向にはおるのでありますけれども、何分まだ目的を達する域に達しておらぬことを遺憾といたします。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 この問題は重大な問題でございますから、実はもう少しお互いの意見を述べるなり御意見を伺いたいと思うのでありますが、きょうは関連してちょっと伺っただけですから、これ以上立ち入ることはやめて、最後に一点だけお尋ねしておきたいのは、実はこの問題はアメリカとの関係もないことはないと思いますが、やはりアメリカの仲介というか、あっせんを向うからやってくれはしないかというふうに、人のふんどしで相撲をとるようなセンスを持つことは、われわれ反対です。アジアの問題はやはりアジア人同士で解決しなければならぬという信念を原則的に持っているわけです。そこで実は参考のために伺っておきたいのだが、本外務委員会におきまして、今国会が始まりました比較的早い時期に理事会を開いて委員会に諮って、今度近い機会に与野党を含む国会から、沖縄は人道上の問題から、それから韓国とは政府間の交渉を多少とも促進さそうという観点から、この二つの地域に与野党を含む議員の派遣を決議しておるわけです。ところで韓国との関係が、実は政府間でもうすでに交渉の軌道に乗る見込みがあり、予備的なものが折衝されておれば、その場合に直接交渉権も調印権もない国会が、しかも与野党を含んだ者が行って、比較的責任のない話し合いをおっ始めて、聞くことも聞くかわりにこっちも言いたいことを言ってみるということは、場合によれば政府間交渉のじゃまになるようなことも考えられますが、今伺いますと、全く軌道に乗っていない、今のところすぐ見通しもないということであるならば、むしろ国民同士話すという形で、国民代表としての国会が行って、向うの言いたいこともみな聞いてやる、そのかわりこっちの言いたいこともみな言ってみるということがやはり何らかの糸口になる可能性もないことはないと思うのです。そういう趣旨で実は決議しておるわけです。今国会はもうじき終ろうとしておる、それに対してあなたは、こういうようなわれわれの決議なり行動が、政府の立場から見て好ましいものだとお考えになるだろうと思うが、念のためにちょっと伺っておきたいのです。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 今の点は、具体的にどういう企てになっておるかということを十分伺っておりませんし、それに対する意見は、伺った上で申し上げますが、しかし国会方面でそういうことについて御照会をなさるということは、もうその御趣旨は私は何ら異存はございません。それから軌道に乗っていないということのようだがというのは、少し行き過ぎたお考えで、軌道には乗っております、いろいろなことをやっております。これは一々申し上げる段階にまだ立ち至ってはおりません。しかしそういうようなことについていろいろと一般的に御照会下さるという御趣旨は、私は異存はございません。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 外務大臣に対する質問はこれで終って、あと岡崎長官に、現金賠償と称するものの経路並びに方法についてちょっとお尋ねしたいのです。あるいはアジア局長から御答弁いただく部分があったら、それでもけっこうでありますが、大体経路はこういうことになりますか。向う側が指定したもの、つまり三千万ドルでございましたね。そのワクの中のものとして指定してきたものに対して、日本政府が円で日本業者に払うわけですね、それが向うへ行って、向うの政府に入るわけでしょう。そして政府が今度民間に売るわけですね。その売ったときの向うの国内貨幣で政府が積み立てる。それは政府の現金収入として、政府の管理に従って自由に使う、こういう格好になるものと私どもは一応理解しておるわけですが、それで間違いございませんか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 大体の構想は、穗積委員のただいま御指摘になった通りであります。しかしながら毎年々々四百万ドルずつ最初の五年間こういうことが続くわけでありますが、その関係で、どのような品物をこれに充てるか、また充てた場合にそのおのおのの品物について、その価格の何%が加工役務に当るかということについては、毎年の初めの実施計画をきめる際にあわせてきめたいと考えております。その計画に基いたものが向うから育ってきました場合に、その経路に従って今のような参舌によって処理されるということになります。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そうしますと問題は国内の業者が渡すときの価格ですね、その円価の積み立てたものを向うがペソ貨に換算するのじゃないと思うのです。そうではなくて、向うへ行って現金にかわったときの価格が今のワクにどれだけということで積み立てられるわけでしょう。累計されていくわけではございませんか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 日本で支払います分は、政府が円貨で日本の小産業者に支払うわけです。その分が、たとえばもし全体の価格の三割であると仮定いたしますと、三割分は日本政府が円貨で日本の業者に支払う。あとの七割分は、フィリピンにおける最終消費者というか、注文者が外国為替のルートを通じてこれを送ってくるわけです。従って日本の業者はその七割フィリピンから来たものと、日本の政府から受け取る三割を合せて金を全部入手できるわけです。一方フィリピンの業者は七割は日本の業者に外国為替で送って参りますが、三割相当する分は日本に送らずにフィリピン政府にペソ貨で納めるわけです。従ってフィリピン政府はその金を税金収入として入手される、こういうことになるわけです。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 その積み立てられますときのフィリピンの業者が為替または現金で政府に払う場合、その価格は日本の業者が決定した価格に従うわけですか。そうではなくて向うの政府が買い取ったものにプラスまたはマイナス価格が市況によって出るわけですな。国内の業者が買い取るときの価格ですね。そっちの価格には変動があるわけでしょう、たとえばフィリピン政府が日本の業者から買い上げたときの価格を一〇〇といたしますね。今度は向うの民間の諸君がこれを受け取るときには一〇〇の価格でなくて九八の場合もあろうし、一〇二で受け取る場合も市況によってあるのじゃないかと思うのですが、そういうことはあり得ますか。もしそういうこともあり得るということであれば、そのときに現金賠償として向うが積み立てる場合の価格は、責任はどこで果したといえば、こちらの決定した一〇〇の価格で向うで累計されるのか、九八で累計されるのか、一〇二で累計されていくのか、それはどういうことになりますか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 詳細なやり方は今後合同委会できめることになっておりますが、われわれが今大体こうなるだろうと予測しているところでは、結局その価格というものもフィリピン側の需要者と日本の供給者との間に普通の商談の形で契約させる、従ってそのとき価格がきまってしまうわけです。そのうちの何割をどうするということにしたいと思っております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そうしますと、国内の業者の手放すときの価格決定によっては、現金賠償の額の累計には動きがないわけですね。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 そう考えております。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 それでは速記をとめて。  〔速記中止〕

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 それでは速記を始めて下さい。  これにて本件に関する質疑は終了いたしました。  次会は公報をもってお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十四分散会

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