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24回国会衆議院1956/05/25

外務委員会 第50号

発言数
175
登壇者
14
会派数
2
開催日
1956/05/25

会議録

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 これより会議を開きます。  日本国とフィリピン共和国との間の賠償協定の批准について承認を求めるの件を議題といたします。質疑を許します。松本七郎君。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 総理大臣には、この前から日ソ交渉でぜひ当委員会に来ていただきたいと要求しておったのですが、今日までその機会がございませんでした。日比の賠償問題でも、ぜひ総理の出席をお願いして、御質問申し上げたい点がございますので、時間が非常に少いそうですから、かいつまんで日比賠償及び日ソのことを少し御質問したいと思います。  まず最初に日比の賠償ですが、私ども一番必要なことは、これだけ多くの、一人当り百円の負担を日本国民が今後長く背負っていかなければならぬというこういう大事な問題については、その交渉の経過なり、今までの事情を国民がよく理解して、納得の上でこの賠償に乗り出すということが一番大切だと思うのであります。そういう意味で、私は今日までの政府が交渉をやられた経過を見ますと、必ずしもそこに国民が釈然とできないものがあるように思う。御承知のように、あの当時は国民ひとしく四億ドルのワク内でできるだろうと期待しておったのですが、それが結局総理を中心にした政府の上層部とフィリピンの首脳部との話し合いによって、二本建ではあるけれども、大体八億ドルときまったように私どもは理解しておるのでございます。本来から言えば、日本の経済負担、財政負担能力その他を十分科学的に調査をして、その基礎のもとに日本の案を作り、これをフィリピンの案と突き合せまして折衝に入るのが私は常道だろうと思いますが、経過を見ていると、そこにどうもふに落ちない点があるわけであります。この点は、旧自由党からしきりに異論が出ており、また自由党、民主党が合同された後には、旧自由党には釈然たらざるものがあったように聞いております。その後の政府の動きも、結局この八億ドルというワクをきめて、このワクの中でいかに合理化するかということに努力を払っているように私どもには見えるのでございます。そこで、世間では一番責任のある鳩山総理が一存で八億ドル案をフィリピンに約束されたとまで伝えられておったのでありますから、この機会に、その経過について総理から国民の十分納得できるように御説明をしていただきたい、これが第一点でございます。  もう一つは、私どもはこのフィリピンの賠償に乗り出すについて考えなければならないことは、ただ、これは日本とフィリピンの関係だけではなく、日本とアメリカの関係、日本とフィリピン以外の東南アジア、さらには中近東その他の世界各国と重大な関係が今後生じてくる大切な問題だろうと思います。私どもは、ただ戦争に負けたかり賠償を払うというのではなしに、フィリピンの賠償を契機として各国が経済協力をやっていくということが、これからの新しい賠償のやり方として、一番国民の大切な点ではなかろうかと思うのであります。そういう点から考えますと、今後はどうしても新しい中国を中心にしたところのこのアジア諸国との経済協力体制という基本方針を打ち立てることによって、初めてこの日比賠償が将来われわれの希望する方向に動いていくことが期待できると私は思うのでございます。そういう意味で、私は鳩山首相の中国に対する考え方、今後の日本と中国との経済提携をどの程度に積極化される御意思があるかということに多大の関心を持つものでございます。日ソ交渉はすでに妥結する見通しがほぼついたようでございますが、この中国の問題についても、鳩山内閣は以前かり経済協力の面を公約として打ち出されているのでございますから、私は、この日比賠償解決を契機にして、この際中国と日本の経済提携、通商拡大を将来政府としてはされるのか当然でありうと思います。従いまして今後の中国との関係をどのように積極化される御意見があるかということを、総理みずからの口から御答弁をお願いしたいりでございます。きょうは時間もないし、あと同僚から質問されますから、私は質問の要点だけかいつまんで先に申し上げておきたいと思いますが、この中国との関係については、私どもがどうしても見のがすことのできない世界の動きは、これは昨日の東京銀行の堀江常務取締役も指摘しておったのでありますが、今世界ではいわば経済援助競争が行われているわけです。アメリカ、ソ連ともどもに後進国に経済援助をする競争みたいな形になってきているわけですが、それについてはアメリカは依然として営利主義、自分の営利を中心にした援助方式、ソ連は営利を度外視した援助方式、一口に言えば、こういうやり方の違いがあるけれども、今後はおそらくアメリカの援助方式というものは、だんだん再検討されなければならなくなって、ソ連方式を取り入れることになるであろう。こういうことは堀江常務取締役もしきりに強調されておったところでございまして、これは私どもは今後世界の趨勢になるだろうと思います。こういう意味からも、私は鳩山総理のいわゆる共産圏に対する態度というものが、今後内外政治の大きな要素になると思うわけです。御承知のよりに、チャーチルはNATO、あの軍事的な同盟といわれている北大西洋同盟にすらソビエト同盟を入れて、もっと拡大された集団安全保障をやるべきである、こういうことを最近言っているのです。私は、世界の今日の大勢を見れば、さすがにチャーチルのような政治感覚のすぐれた者にして初めてあのような発言ができると考えるのでございます。そういう意味で、私は鳩山総理の政治感覚についてもこの際少し確かめてみたいと思うのでございます。  それについて一つの例をとってお聞きしたいのは、この日ソの漁業交渉に当って河野農林大臣が代表として行かれたあのときに、漁業問題以外は話をしてはならぬというふうにワクをはめられて行ったのでございますが、結果するところは、あのワクにとどまっておったのでは話ができない、この日ソ国交回復と結びつけなければ、漁業問題も話が進展しないという事実が明らかになったわけでございます。このことは、私どもは最初から予想して、この委員会でもしばしば外務大臣に質問した点でございます。鳩山総理大臣は政治感覚が鋭いのでございますから、あの当時事態がこうなるということは、おそらく予想されておったと思うのでございますが、全然そういうことを予想せずにあのワクをはめることに総理は賛成されたのかどうか、あるいは予想はしておったけれども、閣内の意見あるいは党内の意見にかんがみて、やむを得ずああいうワクをはめられたのかどうか、この点について総理みずからの御答弁をお願いしたいのでございます。  こういう点から申しまして、私どもは今後の世界の動きに対する見通しとして、この日ソの国交回復にも非常に関心を持つのでございますが、聞くところによると、昨日いわゆる外交界の長老が会合して、依然として南千島の問題について強い主張を出されたようでございます。今国民が一番関心を持っておりますのは、この鳩山内閣ができましてから、ソビエトとの国交回復、中国との経済協力、通商の拡大、こういうことがいつ実現されるかと待望しておりましたところ、おくればせながら日ソの国交回復はできそうになった。御承知のように、河野さんの交渉経過から見ましても、国交回復をしなければ本格的な漁業協定は効力を発生しないのですから、国交回復の交渉経過を見れば、ソ連が絶対に譲れないという南千島を固執しておったのでは、国交回復は不可能な事態になってきておるのです。こういうときに、自民党の中の有力者——私どもからいうならば、昔の帝国主義外交のお先棒をかついだ偉い方々でございますけれども、こういう方々の影響力というものは相当あるわけです。今、国民は、こういう事態になって、果して鳩山総理の党内統制力が発揮されて、うまく日ソ国交回復までこぎつけることができるかどうか、これをかたずを飲んでながめておるのでございます。心配をしておる。いよいよ河野さんも明日帰ってこようというやさきに、自民党内の有力な外交の長老たちが集まって、そうしてあのような線をここに出した。重光外務大臣はこの委員会の答弁で再検討しようと言われておる。そういう事態にかかわらず、吉田茂さん初めみながああいう意見を発表されたということについて、一体鳩山総理もああいう会合を持たれることを了承されておったのかどうか、この点が一つと、今後ああいう強硬な態度をもって臨むならば、おそらく日ソの国交回復は不可能な事態になるだろうと予想されるのでございますが、果して鳩山総理はこういう意見をよく押えて、そうして党内をまとめて日ソ国交回復実現にまで成功させる御自信があるかどうか、この機会に明確な御答弁をお願いしておきたいと思うのでございます。  以上の点大体御答弁を願ってから、なお補足する必要があればまた私は質問いたします。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 第一点、各国との経済協力体制を作りたい、それはしごくあなたと私とは意見が一致しております。経済協力体を中国ともソ連とも作りたいという希望を持っております。決してソ連や中国を、共産圏であるからこれを敵視するというような考えは……(「高声に」と呼ぶ者あり)共産圏の国々を敵視するというような考え方は全然持っておりません。隣国とは経済の協力をしていって、お互いにその自国の国民の生活を安易にしていくということが一番よいと思っております。その点で努力もしておるつもりであります。これが第一点だったと思います。  第二点は、漁業問題からまたソ連関係についての御質問でありましたが、それについて昨日の会合を予想していたとか、それによって不可能に、自分の理想が到達できないようになりはしないかというような危惧の念を抱かれたようでありますが、会合は予想しておりませんでした。会合は予想しておりませんけれども、ああいう会合によって政府の信念を曲げる気持はございません。やはり先刻申しました通りに、共産圏に対する態度というものは、日本としてはこれを敵視をしてはいけない、経済的に協力関係を密にしていかなくてはいけない。世界の平和を来たす、世界平和政策というものは、どうしてもとらなければならない外交政策の第一義だと思っております。  それから第三点については、ソ連に対して結局自信があるかということは今申しましたからそれでよいと思いますが、不可能と考えるかという御質問であったが、私は不可能とは思っておりません。とにかく、詳しいことは河野全権が明日帰りますから、帰りました後にすべて決定をしていきたいと考えております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 ちょっと聞き取れなかったのですが、河野さんにワクをはめたが、結局ワクをはみ出して国交回復の話までしなければならなくなるということは予想されなかったというのですか、その点をもう一度あとでいいですから御答弁願いたい。  それからもう一つ、ソビエトあるいは中国に対する見通し、共産圏の諸国を決して敵視しない。この考え方はまことにけっこうだと思うのですが、今までの日ソ国交回復、鳩山総理が早期に妥結しようという方針を打ち出されて、今日まで交渉の経過その他を見ますと、今の共産圏諸国に対する考え方は、私は重光外務大臣と総理と必ずしも同じではないと思うのです。それは、今度の日ソ交渉の領土問題についての昨日の会合その他を通じて見ても、私は依然として考え方に相当開きがあるように思うのです。今まで長い間のこの問題の経過から見ますと、今後この日比賠償を中心にしてアジア諸国の経済提携、協力体制を打ち立てなければならぬというこの大切なときに、共産圏に対する考え方がどうであるかということが、非常に大きな要素になると思います。これから先重光外務大臣のような考え方ではこの大局を背負っていくことはおそらく不可能になると思うのでございます。鳩山総理大臣は、おとといですか、参議院で、内閣改造は自分としては意図しておらないというような御発言がありましたが、この大きな転換期に際して、今後鳩山総理としては、重光外務大臣に辞任勧告をされる気持はないかどうか、ざっくばらんにお伺いしたいと思います。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 世の中ではよく私と外務大臣との間に意見が違うというようなことを言う人がありますけれども、外務大臣と私と意見が違ったことはございません。ソ連に対しても中共に対しても同じ考え方を持っておりまして、その目的のために外務省は動いておるものと私は考えております。まあ時が解決しますから、あまりに御心配にならなくてもいい思うのです。(笑声)

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 田中稔男君。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 鳩山総理にお尋ねいたしたいと思いますが、まず総理がソ連との国交を回復しよう、こういうふうなお考えをお持ちになって、そのために努力されたことにつきましては、わが党かねて敬意を表しておることは御承知の通りであります。わが党がこの総理のお考えなり、御努力を支持するゆえんのものは、このことが従来対米従属を基本方針としました日本の外交に一大転期を作るものである、こういう意味においてこれを支持してきたわけであります。現在日本の外交の前途には二つの道があるのであります。一つは従来の対米従属の方針を堅持して進む、この道であります。この道を進んで参りますと、結局はSEATOに加盟する、あるいはSEATOでなくてもNEATOというようなものを日本が韓国や台湾などと一緒に作り、さらにNEATOとSEATOを統合いたしまして、あるいはまたアンザス同盟なんかもこれにひっくるめまして、いわゆるPATOというようなものを作る、そしてアメリカを先導者としまして共産圏諸国とあくまで先鋭な対立を続けていく道であります。しかしこういう道はもうすでに今日日本にとって益するものでないということは、大体の常識であります。そこで鳩山総理のお考えにもなったと思いますが、もう一つの道というものは、やはりソ連、さらにまた中国とも国交を回復する、こういうことになりますと、日本の国連加盟も容易に実現する。国連加盟が容易に実現するばかりでなく、松本委員も指摘しましたように、アジア諸国との関係も著しく改善されるわけであります。今日は御承知のごとく、バンドン精神に基いてアジア・アフリカの諸国がいわゆる共産圏諸国との平和的な共存をやっていこう、こういうふうなことになっておる。そして経済援助の結びつきによりまして、ソ連なんかとの関係が急速に緊密になっておることは御承知の通りであります。だからこういうふうに共産圏新国との平和的共存を建前とする国がアジア・アフリカにおいてどんどんふえておる。最近はセイロンにおける一大転換も行われました。またフィリピンの賠償会議に出られた高碕全権のお話を聞いても、藤山全権のお話を聞いても、フィリピンにおける最近のナショナリズムというものは非常に顕著なものであって、もうアメリカ依存というようなことについては非常に大きな批判が起っておる、こういうことであります。また。パキスタンでもそういうような傾向があることは御承知の通りでありますから、中国がアジアの中心でありますが、あえて中国とは限らず、共産国諸国と日本が国交を回復し、またその力によりまして——力というより、協力を得て国際連合にも加盟できる、こういうふうなことになりますれは、アジア諸国との関係もよくなる。そうするとたとえば貿易の面においても日本は大いに利する、こういうふうな結果になるのでありますから、日ソの国交回復というのは影響するところ非常に大きいのであります。そういうふうなことをお考えになった上だと思いますが、昨日東京会館で集まった外交界の長老たち、これは要するにみな戦前の外交官であり、今から見ればこれみなマイナスを負っている人です。マイナスの絶対値が幾ら多くてもこれはプラスにはならないのでありまして、零を加えれば全部零でまだいいのでありますが、マイナスを一つ加えたら日本のために大へんなマイナスになるわけであります。こういう諸君の動きに対して拘束されないという総理の今の御答弁は非常によろしいのでありますが、この席であるからその程度の御答弁だろうと思いますが、総理も心中もっと強い御決意があると思う。ああいうマイナスの役割をする日本の外交界の長老なんというものの進言だとかあるいは意見だとかいうものには、もう絶対に耳を傾けることなく邁進してもらいたいと思います。今私が申しましたいろいろな日本の外交についての所見なんかにつきましても、一つ御意見を聞かしていただき、特に最後の点につきまして、首相の御決意をもう一度あらためて聞いておきたい。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 対米従属関係というようなそういう関係に、日本はアメリカと立ってはいないと思います。それですから従ってSEATO、NEATO等に日本は加盟する意思はないのであります。アメリカと日本とは御承知の通り安保条約を結び、自由主義帝国と日本はどうしても緊密なる提携を持つことが必要でありますから、世界平和のためにアジアと日本とはやはり緊密なる関係を持たなくてはならないと考えております。ソ連とも同じであります。ソ連や中共との関係を密にしていきたい。敵視しないということ、これは十年余にわたって国交関係の正常化をしたいということをこいねがっておるのでありますから、このソ連や中共との国交関係の正常化——中国を入れますと少し誤解が生じますけれども、ソ連との国交関係の正常化ということを衷心より希望しておるということは、別に言っても差しつかえないと思います。  中国とは、とにかく国民政府があるのでありますから、中共との国交を正常化するということにはちょっと困難があると思います。それでありますから、ただ経済の提携を密にしていって、だんだんに中共と日本との経済協力体制を作って参りたいという考え方をしております。  それから作品の会合についてのお話がありましたが、これらの人はやはりそういう考えを持つということは彼らの自由であります。彼らは自分の信ずることをいいと思ってああいう会合をしたのでありまして、これはやはり当然なこと、いいと思ったことをやっているでありましょうが、ただ私と意見が違うということだけであります。その意見が違う人があったからといって一々しり込みをしておったならば何にもできないわけであります。向うは自分のいいと思うことをやる権利を持っておりましょうが、私は私として、私がいいことと信ずることをやる権利は持っておるわけでありますから、少しも遠慮なくやっていいと思います。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 あとがありますから一問ずつということにしていただきたい。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 大事なことだから一問だけ……。今の総理の御答弁に関連して重光外相にちょっとお尋ねしたいのは、総理は国民政府との門派があるから中国を承認する、あるいは国交を回復するということは困難だとおっしゃったのでありますが、周恩来総理あたりも国民政府との現存の関係は一応そのままにしておいて、中国大陸に事実上今日権力を打ち立てた中国との国交回復を一つはかってもらいたい、こういうことを言っておる。私はそういうふうな方法で中国ととにかく国交を回復するということは日本にとって利益でもあるし、これは少しも困難でもないと思うのですが、そういうふうな方法で国交回復をはかることについて外務大臣の御所見を一つ……。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 この点については今総理大臣も言われた通りと私は考えております。すなわち国交回復ということは私はなかなか矛盾があると思います。一つの国、一つの政府と国交を回復しておる以上は、これに対抗する政府と国交を回復するということはちょっと矛盾があるようでございます。そういうことは考えるべきじゃないと私は思います。(「イギリスだってやっているじゃないか」と呼ぶ者あり)イギリスは一つの中国をやっておるのである。そこで、これは私がたびたび申し上げる通りに、今アジア大陸に強大な権力を設定しておる中共政府があるという事実はいかんともすることができない、またいかんともする二とができぬという言葉が悪ければ、それは事実は事実として認めなければならぬと私は思う。そこで隣国における日本のごときは、貿易関係などはある意味において人道上の見地からいってみてもこれは十分すべきだと私は思う。ただしそれは日本の負うておる国際上の義務は侵してはならぬ、こういうことはこれまた当然のことでありますから、できる範囲内において、できるだけそういうことに努めるということはいいことだと私は考えておる。そういう方向にいって、そうして今日世界というものは大きく動いておりますから、その動いておる情勢にはいつも目を見張ってこれに順応するということが必要でございます。だから何もそう先のことと今のことと一緒にして処置をする必要はないのであります。大きく動いておるそれに応じていけばいいと私は考えます。あまり無理をしていくと、日本の国際信用にすぐ現実の問題としてかかわります。あなた方の御主張のあるところは私は非常に味わうべきものがあると思いますけれども、こういうことは日本の国際的な地位をよく維持していかなければならぬ、われわれの義務におきまして十分に一つそういう点をよく考えて慎重にしていくことが、私は一番国益に当ることだと考えておるわけでございます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 そこで重光外相にもう一つお尋ねしたい。というのは、私どもは遠い将来のことと現在のことをごっちゃにして言っているのじゃないのです。と申しますのは北京にある中華人民共和国の政府の統治が現実に台湾に及んでいないという事態は私ども認めるのです。だから台湾島の国民政府との現存の関係は、われわれ社会党といえども一応認めるわけです。しかしまた逆に言いますと、台湾にある国民政府の支配が中国大陸に及んでいないという事実も現実の事実ですね。これは広東省に対して同様であり福建省に対して同様である。いわんや揚子江の北ずっとチベットにかけて蒋介石の威令が現実に行われていないことは明らかな事実でしょう。外相もこれを認める。だとすれば、日華条約によっては台湾の国民政府との関係だけは処理できましょう、澎湖島までとの関係の処理はできましょうが、中国大陸と日本との関係はまるでそこに空白状態がある、外交上何とか処理しなければならぬ。だからその現実の事態に即して台湾及び澎湖島、国民政府の統治の現在事実上及んでいる範囲内との外交関係の処理は現在の通りやっていってよろしいが、それを除いた自余のアジア中国大陸との今後の外交関係は、これはどんどん現実に起っている、これを処理するためにはやはりそこに基本的に国交を回復しなければ日本のために悪いわけです。日本のために不利益なのです。この現実の処理をどうするかという観点から私はお尋ねしておるのでありますが、重ねて一つ御答弁願いたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 今のお話でいくと、はっきりと中国を二つに分けてのお話でございます。これは実際問題としてはそれにも非常に意味があることと私は考えます。従いまして貿易のごとき問題は現実的にやっていきたいと私は申し上げておるのであります。しかしながら今日国際間で中国は二つに分けておりません。御承知の通りに国際連合でもどこでも中国は一つでございます。その一つの中国をだれが代表しておるかというと国民政府が代表しておる、日本もそれを国際的に認めておる、そこでここに大きな国際政治上の問題が起ってくるわけであります。いわんや国際連合は事実上、あなたが言われる中共は侵略者であるというふうにして、これに対して非常に悪名を差せておる。この国際連合に日本は今入ることを非常に希望しておる。さような関係でそう一足飛びにいきません。私はそういうような関係がだんだん解消してくる、感情が解消してくるように世界はだんだん進んでいくだろうと思っております。しかし今日はそうじゃございません。そこでそういうことについては、徐々によほど現実に沿う考え方でもって進んでいかないと、日本の国際上の今日の地位から考えてみて、りっぱに将来を築き上げていくのには国際信用を非常に注意していかなければならぬ、こういう必要がある現状においては、私はそういうふうに考えて徐々に進んでいきたいと考えておるのであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 総理に最後に一言お尋ねいたします。よろしゅうございますか、領土問題です。南千島というところが歴史的に一貫して日本の領土であったという事情は私ども認めるわけであります。だからこれが日本の領土としてとどまることができるならば、日本にとって非常に喜ばしいことだと考えるわけであります。しかしこの南千島を今度の日ソ交渉において日本側が要求する、また要求し得るということはおのずからこれは別個の問題だと思う。このことにつきましては既存の国際協定その他をわれわれは十分に考慮しなければならぬ、そこでポツダム宣言におきましては、日本の領土は本州、四国、九州、北海道そのほか連合国の決定する島々ということになっておる。しかもこのポツダム宣言をわれわれは受諾したのだ。ところでその連合国が決定する島々ということでありますが、その決定は一度はやはりヤルタ協定によって一応行われたわけであります。そのヤルタ協定が秘密の協定であって、日本としては好ましくないという意見はもちろんあり得ることでありますが、当時ルーズヴェルト、チャーチル、スターリンという連合国の最局巨頭が決定されましたことでありますから、これらの諸国に関する限りは、これはもちろん有効なものだと考えなければならぬと思います。こういうごとならばまだ日本の関係しないことでありますけれども、吉田茂氏を首席全権とするサンフランシスコの講和会議において、日本全権団は平和条約第二条において、南千島まで含めた千島全島の放棄をすでに約束している。このことはきわめて重大であります。昨日の会合でも、吉田茂氏が南千島については何か領土権があるように主張することができるように言っておりますが、その放棄の責任があるというならば、吉田茂氏がこれが最高の責任者なのです。その当時自分はこの南千島に限っては保留をしたというようなことを言っておりますが、その保留はアメリカだってイギリスだってどこだって、承認はしていない。そういう既成事実をすでにみずから作っておきながら、みずから放棄しておきながら、その返還が行われぬならば、日ソの国交回復はすべきでないというようなことを吉田氏が言うことは、これはとんでもない考えだと私は思う。全く責任を解しない態度だと思うのであります。そこで重光外相はむしろその意見に同意して、またきのうの元外交官の会議によって大いに勇気づけられて、われわれはあくまで南千島について領土権を主張すると言われる。そうして、また外務委員会あたりでは、主張することとそれが通ることとは別だが、とにかく主張はしなければならぬとおっしゃる。しかしながら、私は心中しましたように、大体今度の交渉にこういうことを持ち出すことが、もうすでに間違いだと思う。もう既存のいろいろな国際協定は累積されておるのです。だからどんなに希望しても、できるかできないかということを大体判断するのは外務大臣の能力だと思う。それがないというなら、私は外務大臣としての能力を疑う。しかもそれが交渉の当初持ち出すなら別でありますが、一たび大体歯舞、色丹、これでよろしいという話が閣内できまりかけていたときに、これを突如として持ち出した。それはまだ私は許すことができるけれども、今日の段階では、河野農相がモスクワにおいてブルガーニン首相といろいろ話をして、そうしていろいろな判断をして、もうだめだということが大体わかっておるのに、これを持ち出すということは、ただ主張するだけ主張するという態度よりも、むしろ日ソの国交回復をじゃまし、これを不成立に終らせようとする底意があっての外交的なゼスチュアだと思うのであります。もしそのことがわからぬならば、重光外相はもう頑迷不霊の徒だと私は言いたい。私はそんな頑迷な人だとは思わない。だから私はあなたの心底に何があるか、非常に疑問だと思う。だから持ち出すことが無理だったが、持ち出しても、今日はもう最後的な決意をし、判断をしなければならない段階だ。それをやらなければ日ソの国交回復はできません。そこで私は、鳩山総理と重光外相との間に重大な意見の食い違いがあるということを認めざるを得ないのであります。これにつきまして、電光外相のお考えと、さらに総理のお考えもあわせてお聞きしたい。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 私は日本固有の領土の返還を日本人として今日強く主張するということは当然だと思います。しかし、交渉によって日ソの見解の相違がどうかして調整されればいいと希望するのも、これまた当然だと思うのです。それをソ連がどうしても聞かない、日本はどうしても主張すると言って物別れになっているということは、私はよくないことだと思います。どうにかして調整されてもらいたいという希望を今持っておるという以外に、外務大臣はどこに出ても話はできないと思います。外務大臣として、自分は領土権を主張はしない、ソ連が強く主張する以上は自分は主張しないというような発言は、外務大臣自身としてできるはずはないと思うのです。ですからソ連がどうしても聞かないから、日本は本来持つべき領土権を主張はしないのだということを外務大臣として言えば、それは外務大臣の非常な失態となります。外務大臣としては最後まで日本の領土権を主張して、そうしてどうしてもソ連との意見が調整できるようにこいねがうことは、私は外務大臣の義務として当然だと考えております。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私は今鳩山総理からはっきりとお答えがありましたから、もうつけ加えることはございませんが、交渉をする場合に、かような問題についておのおの交渉する国の立場があることは、これは当然でございますが、その交渉の前から、相手国の言うことを全部承認しなければならぬ、その意向をくんでこっちの主張をしない方がよかったのだという議論には、私は何も賛成するわけには参りません。私は日本の正当と信ずる立場は十分に、またあくまで主張することがいいと思う。またそれが私の義務であると考えます。しかしながら日本の国際関係の全局を失ってはなりません。それは常に考えて、最後の場合には十分それを考えて処理しなければならぬということも、今総理大臣の言われたことに私は全く御同感であります。しかし主張することをあらかじめ曲げるようなことは、私にはできません。方針をそのままやります。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 穗積七郎君。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 鳩山総理大臣が時間がないというので、ただいま委員長との申し合せで、一回だけの質問を許されましたから、折り返して質問ができないのは残念で、あなたも残念だと思うけれども、一同で済むように一つ御答弁を願いたいと思います。  先ほどから私どもの方の松木、田中両委員の質問に対して、党内の一部の諸君の間に、日ソ交渉についてあなたの考えと違った意見を持っておる者があるようであるが、そういうことを顧慮することなしに、自分の考えを実行したい、その段階に来ておるという決意を示されたことに対しては、私は鳩山さんはまだ健在であるということで、敬意を表するとともに、喜びにたえません。しかしあなたは今までいろいろなことをおっしゃいましても、おっしゃることはなかなかいいことを言うのだが、いざとなると決断がつかないのがあなたの玉にきずなんです。どうぞ今度は決断の段階に至りましたから、私は向うと交渉する腹だとかつもりなんかを聞きたくないので、最後のぎりぎりの決断を聞きたいのですから、そのつもりでお答えをいただきたい。今あなたの考え方を促進するについては、残っておる問題は、内容と方法並びに時期の問題でございます。従ってそれに順を追うてお尋ねいたしますから、簡潔に順を追うてお答えをいただきたい。  まず第一に内容につきましては、今田中君からお尋ねがありましたが、領土問題、特に南千島の処理の問題でございます。これについては私は簡単に明確にお尋ねいたしますから、あなたも結論をお答えいただきたいと思うが、それは何かというと、昨年の十一月、あなたの方の自民党というものができたときの臨時緊急の外交政策におきましては、事前に南千島の返還が実現しなければ、いかなる方式においても国交回復をしない、調印はしない、そういうことをひとまずおきめになったわけでございます。ところが交渉をした結果、それは要求はあくまで要求としておるすわけにはいかぬが、早期妥結するためにはこれは実現不可能だという見通しになったわけでございます。これは松本さんが帰ってもそのことを報告しておりますし、それから今度河野さんがブルガーニンと会いましても、相手の態度は終始一貫いたしまして変らない見通しが明確になりました。そこであなたにお尋ねしたいのは、南千島を事前に最終的にこれを取り返さなければ、ソビエトとの間には国交を回復しないという政治的方針をあくまで堅持されるつもりであるかどうか、これをお尋ねしたいのです。このことについては、今申しました通り、その後の情勢の変化もあるし、相手の態度を検討した結果、この要求は下げないけれども、それはそのまま留保するなり、次の交渉に期待をかけて、ソビエトとの間に国交をひとまず回復したいという原則をとるべきだ、そういう方針をとるべきだということを重光外務大臣にお尋ねいたしましたら、先般の当委員会におきましては、重光外務大臣は、それに対しては考慮する余裕があることを声明されました。すなわち、再び国交を回復するこの交渉を始める以上は、そういう根本の問題についても再検討すべきことは当然だと考えますというお答えがあったので、その点については、従来の動きのとれない、事前奪還をしなければ国交回復をしないという原則に対しては、修正的な意見が出たわけでございますが、これに対しては総理は一体どういう考えを持っておられるか。われわれその通りであるべきだと思いますが、このことを一つ確かめておきたい。  第二は、それと関連いたしまして、この内容と関連して、国交回復の方式に関連してくるわけでございますが、本来いえば、ロンドン交渉は南千島問題だけを残しまして、その他のことは松本・マリク全権の努力によってほとんど文書まで確定的に話し合いが妥結しておるわけなのです。従って、南千島の問題に対して、日本の態度が今言ったように事後の交渉にゆだねるという方針が決定いたしますならば、ロンドン交渉の方式、すなわち平和条約方式によって即時妥結ができる段階にきておるのでございます。しかしながらこの問題は一にあなたの方の党内事情にかかってきておる。それに対しては、古きを知って新しきを知らない悲しむべき二部のいわゆる外交長老と称する諸君、これは私をして言わしむるならば、古きことも、新しきことも知らざる人々よりはもっと悪いと思う。古きことのみを知って、新しきことを知らない人の意見が、それでも党内の意見としてある以上は、従ってそれを緩和する、調整するという意味におきましては、南千岳を最終的に放棄するということをきめないままに、いわゆるアデナウァー方式、あるいはその中間をとって、たとえば国連の加盟問題、内政不干渉の問題等を明記いたしました暫定的な方式——最近はそれを松本方式と世間では伝えられておりますが、広く申しまして、そのいずれもアデナウァー方式と言えると私は思うのだが、そういう方式でいくこともまた抜け道として考えられる。ブルガーニンが河野さんに向って、平和条約ということに対して、その方式にこっちは必ずしもこだわらない。ロンドン会議では両方とも平和条約方式を目標にしてや、ろうという話し合いで進んだか、しかし今の段階になったならば、情勢の変化と見合って、アデナウァー方式でもけっこうだということは、これは明確に自民党内部または閣内の空気を察知して、そういう方法もあり得るということを、抜け道を向うから最初に示したものであるということすら考えられるのだが、それに対しては、これはあなたの決断によって決定することですから、あなたのああでもない、こうでもないという御希望ではなくて、決断を伺いたい。あなたはそれに対して、河野が帰って聞いた上でということをおっしゃるかもしれないが、河野さんもその問題については、お開きになるまでもなくほぼ明瞭でございます。従って、相手の態度が問題でございますし、問題は、河野さんの態度ではない、党内の問題ですから、交渉相手のソビエトの態度が明確になり、党内の態度は河野さんが帰らなくてもわかるはずですから、それと見合って一体いずれをお選びになるか、これを第二点としてお伺いしたい。国交回復の方式についてのことでございます。  それからその次は場所でございますが、再びロンドン交渉を再開するという形式をおとりになるつもりであるか、あるいはブルガーニンに河野代表が話したような東京またはモスクワ方式をおとりになるつもりであるか。おそらく東京またはモスクワ方式をおとりになるつもりだと思うが、そういうことになれば、私どもとしては共産国であるソビエトの新たなる実情や、かの国の人々の空気を見るためにも——そういうことも副作用として効果がございますから、御老体はなはだお気の毒だが、あなたが一ぺんモスクワまでお出かけになって、率先して一つ談判されることもけっこうだと思うが、そういうおつもりはないかどうか。これも一つあなたの決断できまることですから、これを伺っておきたい。事のついでに帰りに周恩来と会って国交問題について話をされれば、これは国のためにも、あなたの最後の政治的生命を飾るためにもまことにけっこうなことですから、一つそのくらいの勇気をお出しになったらどんなものですか。これは一つあなたのために激励しておくわけですから、あなたは気持よく自分の御所信を明らかにしてもらいたい。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 穗積君、簡潔に願います。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 その次に第四として、七月三十一日までが交渉再開の約束日になっておりますが、妥結が問題で、国交回復が効果を発することが、今度の漁業交渉その他一切の効果を発することになっておるわけでございますから、従って、交渉を再開するだけの義務を負っているということで、これをまただらだらと党内の事情によって引き延ばし戦術にひっかかって、領土問題についてああでもないこうでもないというふうなことからだらだら延ばすというようなことでは、国際信義にも反するし、あなたのからだもそれまで長持ちせぬだろうから、早期に妥結するということが必要だが、一体いつまでにやるつもりであるか、大体の見通し、決意を伺っておきたい。日にちを切る必要はありませんが、早くやるつもりなら早くやるつもりだということ——その交渉再開の日ではない、妥結の日です。これはアデナウァー方式でいくにいたしましても、講和条約方式でいくにいたしましても、今の領土問題に対する態度さえきまれば、行った翌日にはもう妥結し得るわけです。ですから、そのことはこちらの決意一つできまることですから、このゴールを伺っておきたい。すなわち、スタートは七月三十一日またはそれ以前でございますが、このゴールに対する心がまえを伺っておきたい。  最後に第五点として、あなたはさっきソビエトのみならず中国をもこれを敵視せずして、平和な国交を回復していきたい、貿易をやりたい、文化交流をやりたいという決意を示されました。そういうことであれば、そういうあなたのお考え方に対して、先般閣議でお取りきめになりました共産圏との間の渡航の制限、これは明らかに旅券法十三条の精神に反するのみならず、今言ったあなたの外交、政治方針とも全く反するものであって、この鎖国政策は物笑いでございます。ですから、これに対してはつまらぬ措置はとらないで、従来以上に両国の人間、文化の交流の道を開くつもりであるとお答えをいただきたいが、そういうふうに理解してよろしいかどうか。あなたのさっき言われた敵視しないで、国交回復、平和交流をしたいということであるならば、この矛盾した閣議の政治的お取りきめというものはお考え直しになるべきだと思うが、それに対してあなたの御決意を最後に伺っておきたいと思います。  以上逐次明確にお答えをいただきたい。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 穗積さんにお答えをします。  領土問題につきましては、先刻の答弁によって御了承を願いたいと思います。(穗積委員「いや、そうじゃないのですよ。これは事前奪還をしなければ国交回復をしないか、あるいはそれは自後の交渉にまかせても国交を回復するつもりであるか、どっちの方式をとるかということです。」と呼ぶ)それはあなたが第四において時期の問題についてお話がありましたからそのときに申し上げます。第二には方式についての御質問があり、第三には場所についての御質問があり、第四には時期の問題について御質問がありました。これらの点についてはまだ内閣で決定をしておりません。ただいま発表する時期ではないと私は考えます。  第五にソ連や中国を敵視しないというのに、旅行券の制限をする、そういうような事実はございません。制限をするはずはない。(穗積委員「しているのですよ。」と呼ぶ)これは目的は——私は知らないのです。全然知らないのですが、目的が文化の交流とか、あるいは通商貿易を緊密にしたいとかいうようなことの明瞭な場合においては、旅行券を出さないはずはないと思います。ソ連と日本との間におきましても今度の平和条約、松本君が行きました平和条約の中においてもお互いに内政には干渉しない。ソ連は日本に来て共産主義の宣伝はしないというような約定があるのであります。そういうような疑いがある場合に中国から日本に来て、そうして共産主義の宣伝をするというおそれがある場合に外務省が考えるのじゃなかろうか。私はそう推測しているのです。事実知らないのですから、それですから旅行の免状を制限するというような意味をもって無理やりに旅行券の発行の制限はしていないと確信をしております。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 戸叶里子君。簡潔に願います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 時間がないようですから、簡単に伺いたいと思います。まず先ほどから鳩山総理大臣の御意見を伺っておりますと、日ソ交渉については早期妥結という信念には多少の意見が食い違っても変りない、こういうふうな力強い御答弁がございまして、私どもとしてはまことに喜ばしいと思います。ところが自民党内の一部の人たちの中には党議が前からきまっているからとか、あるいは党の基本方針がこうこうであるというようなことを言われる方がございます。しかし党議というものは当然国際情勢の変化に伴って私は変ってこなければならないと思いますが、この点はどうお考えになりますか。もしそうであるとするならば、そのことをもう少し具体的に申し上げてみるならば、鳩山総理大臣の公約を果すためには挙党一致でなくても、この日ソ交渉はやる、こういう信念であろうと思います。すなわちロンドンでの交渉がだらだらに終ってしまいましたけれども、今度はそういうふうなだらだらに終らないで、ある実を結ぶという線で一歩前進の踏み切りをつけられるのだ、鳩山さんの信念がそこにある、こう了解してもよろしいかどうか、この点を伺いたいと思います。  それからその時期というものは、はっきりまだきまっていないからお話になれないというお話でございましたが、大体の見通しとして、この前の選挙のときにも鳩山さんが日ソ国交回復ということをうたわれたのにかんがみましても、参議院選挙を有利に導くような時期に大体妥結をされるおつもりであるかどうか、この点も伺いたいと思います。  それからもう一つはこの委員会におきまして幾たびも領土問題について重光大臣に質問をいたしました。ところが重光外務大臣はなかなか領土問題については慎重審議に考えなければいけないし、そうしてまた十分話し合って、そうして発表をするというふうな御答弁でございました。ところが昨日は北澤委員の質問に対しまして、領土問題についていろいろとこまかく御発表になりました。このことはすなわち慎重審議に考慮して、そうして当然鳩山首相ともお話し合いの上でそういう発表をされたのかどうか。鳩山首相はこの点をお聞きになっていらっしゃるかどうかを伺いたい。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 忘れないうちにさきに申しますが、領土問題についての交渉について私と外務大臣の話し合いはありませんでした。  それから党議に反してこれをやるかというお話でありましたが、私は党議が私の意見の通りにまとまるものと確信をしております。党人として党議に反する行動はできませんわけですから、党議は日ソの交渉の妥結するのに反対はないものと思っております。  それから参議院選挙に利用するのだという話は、それはちょっと夢想もしておりませんでした。参議院選挙と日ソ交渉と別に何の関係もないと私は思います。あなたも今までの同情者である。私も今までは非常にいいことだと思います。私は誠実は守るつもりであります。絶対誠実であります。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 鳩山首相が絶対誠実を持っていらっしゃるということで、私も大へん敬服をいたしております。ですけれども、ただ最初の答弁がちょっと違っていたように思うのです。私が伺いましたのは、いろいろと党議がきめられましても、国際情勢が変化するとともに党議というものはある程度変えられると思いますが、この点いかがですかと伺ったのです。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 党議は変えられるものと思います。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 大西正道君。

大西正道日本社会党

○大西委員 私は日比賠償の問題につきまして簡単にお伺いしたいと思います。  この前の本会議でわが党の森島君が日比賠償の問題についてあなたに質問をいたしました。その中で初めに大野・ガルシア協定によって四億ドルの案がほぼきまりかけておったのに、あなたの不用意な発言から八億ドルというものに結局落ちつかざるを得なくなった、こういうことは今も松本君もまたそのいきさつについてあなたの見解を聞いたのでありますが、本会議のときもそうでありますが、今もそれに対してのお答えがございません。そういうことはございませんというようないつもお答えでありますけれども、これは向うの新聞を見ましても、あなたの発言が現実になって、そしてそれが抜き差しならなくなったのだということは衆目の認めるところであります。私はこういう賠償の問題が子々孫々にまで大きな負担をかけるというような重大な意味から考えまして、私どもはあなたの不用意な発言に対しては非常に遺憾に思っております。ただそういうことはございませんというようなことでなしに、こういう委員会の席上でありますから、この際あなたもその辺の事情をもう少し詳しくお話しになって——人間だれしもあやまちはありますし、ましてやあなたは失言の多い方でありますから、そういう失言については、これはまことにまずかったというようなことを率直に見解を述べられる、こういうことがもやもやしているこの問題を明らかにするチャンスだと思いますから、この点についてもう一回お聞きしたいと思います。  それからこれも森島君が質問をいたしましたことでありますけれども、八億ドルの総額、まあ純然といえば五億五千万ドルでございましょうが、これは膨大に失するとわれわれは考えております。その内容が膨大であるのみならず、まだ賠償問題が片づいていないインドネシアの賠償に対しても、これが大きく影響をするということは、従来のインドネシアの賠償要求の態度から見ましても明らかであります。フィリピンよりは下回らないということをわれわれも予想されるのであります。さらにまたビルマも、あの協定の内容を見ますと、最終的には日本の賠償能力と見合って、そうしてまた要求することがあるかもしれぬということになっております。それのみでありません。中国の問題だって、考えれば天文学的なことが予想されるのであります。そういうふうに単にフィリピンの賠償のみならず、それが影響するところのもろもろの国々との賠償の問題を考えますときには、私どもは非常に心配をするのであります。今、日ソ問題が表面化して、これが世人の関心を集めておりますし、あなた方もそっちの方に頭が向いておって、日比賠償問題に対しては、どうも責任というものを強く感じておられないようでありますが、私どもはこのことは非常に重大に考えております。  そこで私はお伺いしたいのでありますけれども、平和条約の十四条にもありますように、独立可能なる日本の経済の範囲内においてこの賠償を取り立てるということなのです。一体政府は、今後日本の経済をどのような規模に持っていき、そうしてその中で賠償はどの程度支払うかというような数字的な、経理的な計算がなければならぬ。その基本線に従って、この日比賠償もこの限度まではやり得る、こういう方針を立てていなければならぬのです。当然それがなければ、吉田首相と同じように、その場限りの行き当りばったりの外交だと言われても私は仕方がないと思う。こういう意味におきまして、日本の将来の経済の力、いわゆる独立可能なる経済との関係においてどのような見通しを持って、この日比賠償の八億ドルというものに対しての調印を政府がしたのか。これはそういう御心配はございませんというような御答弁だけでは、私どもは納得をいたしましても、国民は納得いたしません。この間のあの本会議の首相の答弁のこときは、まことに不親切きわまるものであります。あれを聞いた国民は、全く政府は何を考えておるかということを疑っていると思うのです。少くとも首相自身は、小さな数字までは言えないとしても、大まかな数字、大まかな見通しを立てて、そしてこれこれの日比賠償の額は、日本の将来の独立可能なる経済に支障を来たさないのだ、将来の見通しについてはかくかくだ、こういう安心感を与えなければ私はならぬと思うのです。この点について、こまかい数字的なことは申しませんけれども、ただ私はそう思いませんというような、あなたの独断だけを聞こうとしているのじゃございません。国民が納得するような一つの合理的な説明を、私はこの際お聞かせ願いたいと思うのであります。  それから、これは重光さんにお伺いいたしておきますが……。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 重光さんはあとで聞いて下さい。

大西正道日本社会党

○大西委員 首相にもその見解を……。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 一問だけということですから、その約束を守って下さい。

大西正道日本社会党

○大西委員 そうですが。それでは私の申し上げたことを、ただそうは思いませんというようなことではなしに、かなり具体的な、合理的な御説明を一つ聞かせていただきたい。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 大野・ガルシア案は、むろん御承知の通り廃案になったもので、この程度においては賠償は成立いたしませんでした。八億ドルというのは間違いでありまして、実際において五億五千万ドルであって、決して八億ドルではございません。五億五千万ドルの数字の合理性について御質問がございましたが、これは経済閣僚において適当な数だとして認定せられたので、私はそれを信用いたしました。

大西正道日本社会党

○大西委員 それをおっしゃい。大まかな数字でよろしゅうございますからそれを……。

鳩山一郎自由民主党内閣総理大臣

○鳩山国務大臣 それは経済閣僚から御説明いたします。

大西正道日本社会党

○大西委員 経済閣僚あるいは政府の発表には、そういうものは一つもございません。どこにもございません。なくして、あなたは経済閣僚の見解だと言われても、これは納得できません。政府の経済政策、そういうものがどこに出ておりますか。そういうものがあるなら、それをお示し下さるならば私は納得します。   〔「必要なし」と呼ぶ者あり〕

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 総理の答弁は終ったようですから、次に森島守人君に質疑を許します。

森島守人日本社会党

○森島委員 私は日比賠償の問題につきまして、重光外務大臣及び高碕長官に二、三点御質問申し上げたいと存じております。八億ドルの金額につきましては、ただいまも総理大臣からお話がありました通り、これは五億五千万ドルがほんとうなんだとか、いろいろ御答弁がありましたが、私はこの交渉全体の経過から見まして、これはどうしても八億ドルをのんだものと、こう了解せざるを得ないのです。この点につきましては、いずれ機会を見て総理に再び質問することにしまして、この際は私は御質問申し上げません。  高碕長官は、一昨日の答弁におきましても、日本の負担能力から見て、大体最高限度は一億ドルだ。従ってその一億ドルの中には、ビルマ、インドネシア、今回のフィリピン等の賠償額をも入れて御計算になっていると思いますが、インドネシアの賠償額というものを——これはなかなかお答えがめんどうだと思いますが、大体どれくらいにするお見込みで入っているのでございますか、この点をお伺いしたいと思います。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 対外債務全体としては、これは五ヵ年計画から申しますとまず現在の日本の国力からいえば、対外債務は大体年間一億ドルは支払い得る、こういう基礎をもって計算しております。この一億ドルには対外債務が全部入っているわけでありますから、それではその中にビルマに幾ら、インドネシアに幾ら、こういう内訳は、私どもははっきりしておりませんが、経済力、負担力はそれくらいである。そこで、できるだけビルマの方も、一年のわれわれの負担力を少な目にしてもらわなければいかぬと思っておりますが、これは相手があることでありますから、相手の意向をよく聞いた上できめなければならぬ。先方とすればできるだけよけいほしいでしょうが、これは日本の経済力においてきめなければならない。そこがつまり交渉をする要点だと思います。

森島守人日本社会党

○森島委員 ただいま御説明のあったのは、ビルマじゃなくてインドネシアだと、こう存じますが……。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 ええ、インドネシアです。

森島守人日本社会党

○森島委員 それから大野・ガルシア協定による日本の年の支払い額は四千万ドルだ。そういうふうな点を考慮に入れて、ビルマに対して四千万ドルを年々払うことは、日本の賠償支払い能力からいってできないのだ。四千万ドルは多過ぎるのだということが、高碕長官の一昨日の御答弁でした。その点を受け入れるといたしましても、私は大野・ガルシア協定は、必要によっては一方からさらに十年間期間を延ばすことができるのだという規定が入っていることと存じておりますが、その点はいかがでございますか。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 まさにその通りでございます。四億ドルを十年間に支払うということは原則であるが、一方の申し出によって、これをさらに十年間延期できるということに相なっております。先方の行き方によると、日本側が延期してほしいというなら延期してもよろしい。そのかわりその金利を負担する必要があるのじゃないかということを言ってきたわけであります。賠償問題は金利がかからぬというのが原則だ、こう答えておりますが、双方の意見の相違がそこにあったわけであります。

森島守人日本社会党

○森島委員 そうしますと、日本の支払い能力からいって、四千万ドルは払えないのだという一昨日の御説明は表面を糊塗する御答弁としか受け取れない。年々四千万ドル払うことにしましても、日本の負担能力いかんによっては、さらに十年間支払い期限を延ばすことができるということになっておりますので、私は高碕長官の答弁は真正面からそのまま受け取れないと感じておるのでありますが、この点に関する御所見を求めたいと思います。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 十年間に四億ドルを払うということは一年に四千万ドルでございます。それで金額はどうしても多くならなければならぬというならば、できるだけ支払いを長くしてもらえば一年の負担は少くなります。従ってビルマの方も二億ドルは十年になっておりますから、一年に二千万ドルということになっております。かりに五年間にやるということになれば、四千万ドルということになります。そういうことになると、期限が長ければ一年の負担が少くなるわけでありますから、フィリピンの方も四億ドルを十年に払うと一年四千万ドルを払うということになる。それと同様な解決を今度インドネシアにもし、そのほかにもするということは非常に一年の負担が多くなるから、これでは日本としてはこの負担ができない、こう感じたのであります。

森島守人日本社会党

○森島委員 それから大野・ガルシア協定の問題ですが、村田全権がわざわざマニラに行かれまして、仮調印ができておったものを正式な調印ができなかった。これは外務省としては非常な責任問題だと思う。当時新聞で大野公使が辞職を申し出たということも伝えられておりました。しかし最近の外務省のやり方は無責任きわまるものがあると思う。私は日ソ交渉にしても指摘すべき点はたくさんあると存じておる。これは吉田内閣時代のことですから今あらためて政府の責任を追及はいたしません。しかしその後のいろいろな往復を見ますと、吉田内閣時代には二十九年の十月、フィリピン側から日本政府に対して大野・ガルシア協定の覚書を離れて交渉再開方を申し入れてきたのであります。それに対して日本側はフィリピン側が党書に拘束されることを欲しない以上は、日本側もこれに拘束されないという条件で交渉の再開に応じたといういきさつがあるのでございまして、大野・ガルシア協定に拘束されないと申しましても、これは必ずしもその金額を十億ドルにするとかあるいは八億ドルにするということではないので、この大野・ガルシア協定で了解のつきました四億ドルもしくはこれを少しく上回る金額をもって交渉の基礎とすべきものであったと確信しておる。その点で鳩山総理が受諾された八億ドルが日本の国民に対して非常な負担を子々孫々に及ぼすという印象を強く植え付けておるものと私は思うのでありますが、フィリピン側から十億ドルという申し入れがありましたのはいつごろでございますか。まただれからだれにそういうふうな申し入れがあったか。私は非公式の申し入れであろうと思いますが、その点を明らかにしていただきたい。これは重光外務大臣に御答弁を願います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 それは交渉の経過についての御質問と思います。交渉の経過——それは内交渉の経過ですが、それを御説明申し上げます。大野・ガルシア協定ができて、これがフィリピン側で認めることができぬということになりました。そうなれば日本側もこれに拘束されることがないという態度をとることはは当然でございます。そこでフィリピン側のそういう態度でその点は白紙に返ったわけです。さて白紙になってどこから話し合いをするかということに今度はまた戻ります。そのときに内交渉に来たのがネリ大使でございます。昨年の五月だったと思いますが、五月初めにやって参りまして、この問題もこのままほったらかしておくわけにいかぬ、専門委員会ばかりにまかしておくわけにいかぬのだからというわけで向うからいろいろ話がございました。そこで向うは、実は十億ドルという金は適当であると考えておるのだ、大野・ガルシア協定は経済価値は千億ドルにするということがあるじゃないかというような話がございました。そこでわれわれの方はどういう態度をとったかというと、大野・ガルシア協定はもう白紙に返ったのだ、こちらの考え方は四億ドルくらいしか実はできないのだ、それは大野・ガルシア協定じゃないかというから、いやそれはそうじゃないのだ、われわれは別にそれに拘束されぬのだ、それはよろしいけれども、われわれの考えもやはり四億ドルくらいしか払えないのだ、私が固執したのは、毎年の支払いが二千万ドル以上ではどうしてもいけない、そこでその範囲内で一つ考えてくれ——この意味は額は少し増しても年々の支払いは二十万ドルだ、これで一つ妥協してもらいたいというようなことで話が進んだのでございます。高碕長官がその間に非常な尽力をされて話をきめたのでございます。そこでその後に五億ドルぐらいのところで妥協したらどうかという話もございました。それが最後に五億五千万ドルで妥結をみたという経過でございます。八億ドルというのはどうしても認めませんでした。そこで借款の問題が出るわけであります。しかしその借款は賠償じゃないということで、初めから話をして進んでいったのでございます。結果は初めの話に戻りまして初めの話の通りになったわけでございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 私は四億五千万ドルとかあるいは五億ドルという対策を日本からもお出しになったことと了解いたしますが、しかし今の五億五千万ドルで協調するのだという点を向うからしてきた、こういう意味でございますか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 それは内交渉の会談において全くその通りです。

森島守人日本社会党

○森島委員 外務省の出しておる記録——この記録というのは私は持たぬのですが、その記録等を見ますと、必ずしも先方は五億五千万ドルの額を提示してきたものでない。正式に提示してきましたものは五億五千万ドルプラス民間借款であった。これが合せて八億ドルであった。しかも民間借款は今度の交換公文には、いかにも民間の純粋な借款のような格好をとって日本の世論をごまかすというふうな態度をとっておられますけれども、これは当初は二つ合せて一本の格好できておったと思いますが、その点明確にしていただきたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私は、今のお言葉のうちにそういうことでごまかすとかなんとか、そういうことはおかしいと思うのです。今お話した通りである。それだけは私は受け入れるわけにいきません。私はごくありのままに申し上げますと、向うでは五億五千万ドルの賠償だ。さっき言い落しましたが、向うは十億ドルということから出てきておる。それで結局八億ドルまで下ってきた。これは向うが内側の相談でそこまではいいということになっておったらしゅうございます。そこで八億ドルになった。そしてその当時その数字に達しなければ帰れないということで、五億五千万ドルで、あと二億五千万ドルは民間借款でもいいということなのだが、これは政府が責任が負えぬのだという態度をわが方は初めからとっておったのです。そこで向うとしては、その時期においては、なるべく八億ドルまるまる賠償をほしいということも、向うの希望としては私は当然のことだと思う。日本はしかしそれを受け入れられないということもまた当然の立場でございます。そこで内交渉で、一つは民間借款として、五億五千万ドルが賠償、こういうことになったのでございます。そのステージにおいて、向うから借款は二億五千万ドル、それから賠償は五億五千万ドルということで、正式に提案をして参ったことは事実でございます。そこでどうもそういうことであるならば、五億五千万ドルというものはどういうものであるか。それから二億五千万ドルの借款はどういうものであるかということを、よほどこれは相互の間に話上合いをして、詳細に取りきめなければなりません。これがその後続いた内交渉でございます。そうしてはっきりとその何ができた上で、ここに最終的には仮調印をし、調印をした、こういうことに相なっております。これが実情でございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 私は最初八億ドルの金額を提示し、これを賠償とそれから民間借款の二つに分けて向うから提示してきましたときにも、後者の民間借款に対しては、日本政府の保証があるものというのか、向うの了解であると思う。これが日本側の内部事情、特に私は旧自由党なんかの態度によって、これを切り離して、形式上だけでも純然たる民間借款の形をとらざるを得なくなったものと思うのですが、いかがでございますか。当初の提案には政府の保証が必要だった、こう存じておりますが。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 いろいろ事情はございました。五億五千万ドルについても、これがはっきりきまったのは、そのずっと後のステージでございます。しかし賠償額というものがここに五億五千万ドル、あとの二億五千万ドルなら二億五千万ドルはこれは民間借款である、政府は実は責任を負えないという立場を終始一貫とっておったのでございます。日本側はその立場から離れるわけにもいきませんでしたし、また離れませんでした。ところがその間にいろいろフィリピン側が、そうであるにもかかわらず、できるだけ日本政府に責任を負わしたい。これは当然でございます。ところがそういう関係がございまして、その間に政府のわれわれとしては、与党の考え方を十分まとめなければなりません。そこで与党のうちには、その問題について、民間借款とはいいながら、相当政府の責任がありはしないか。結局そこに非常に問題がありはしないかということで意見がございました。そこでそういう問題は十分に相手方について明らかにしなければ、初めから交渉してきたときの精神においてはっきりしなければ、最終的にこれを取り上げるわけにいかぬじゃないかということは、当然のことでございます。そこでこれを明らかにしたわけであります。そうして向うはこういうわけでこれはこうなっているのだから民間の借款だ、純粋の民間借款ということに向うも納得して明らかになったのでございます。それでありますから、向うから、そういう純粋な民間借款ということが明らかになった以上は、むしろこれは借款協定というのはおかしいじゃないか、交換公文でいいじゃないかということになって、名義が交換公文になったのであります。経路はそういうことでございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 私さらに二、三点お伺いしたいのですが、平和条約で賠償は役務で払うということを原則としておりまして、この点について私も本会議で質問いたしましたら、高碕長官から吉田総理時代のことについて御説明がございました。私もその点は日本が賠償を支払う以上、役務だけで膨大な賠償を払えないということは、了解に苦しくはないのでございます。しかしフィリピンから日本に来ました当初の正式提案というものを見ますと、五億五千万ドルの中で、役務を三千万ドル、それから現金を二千万ドルということが明確に書いてあります。これをそのままうのみにされたのは一体どういう根拠であるか。なぜもっと現金は認めぬとか、あるいは役務をもっと多額にして資本財の供給を少くするというふうな御交渉をなさらなかったのであるか。私の知る限りにおいては、これを一回も交渉をされた形跡がないのであります。私は政府のこの交渉に臨む上においての非常に大きな手落ちだ、こう信じておりますが、この点を明らかにしていただきたいのでございます。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私から交渉の一般的なことについて申し上げます。賠償は役務で払う、少くとも払いたいという立場は、終始一旦変っていないわけでございますから、今の御指摘の点についても、その趣旨によって話をして参ったのでございます。そうして交換公文のところまできて了解をつけたわけであります。しかしそれよりも、第一役務で払うということは、サンフランシスコ条約に書いてございます。ただ問題は、サンフランシスコ条約をフィリピンが批准をしていないという点に大きな点があります サンフランシスコ条約の義務をはっきり負っているならば、私はこれを権利義務の関係として、要求ができる。権利義務の関係はないけれども、日本がサンフランシスコ条約で平和を回復した以上は、日本の立場としてはその条約に基いてやるという立場をとるのが当然のことである。また向うもそれに主義上異存のあるべきものではない。そこで話し合いが進んだわけであります。しかしそれは権利義務の関係でないから、その通りにはっきりと鮮明にいき得なかったことも、これまた理論上当然の結論であります。私はそう考えます。しかしその場合に、サンフランシスコ条約のときにすらいろいろいきさつがあるようでございますから、若干のなには、それは交渉のことでありますから、私はまとめる上においてはやむを得ないと考えております。しかし今のお話の点は、実はあくまでそういう立場を維持するために努力をした結果、ようやくそこにきたのである、こういうことであります。これはずいぶん長くその点は交渉をいたしました。

森島守人日本社会党

○森島委員 私はどういう内交渉をなさったか知りませんが、私の知っている限り、外務省から出ている書き物で判断する限りにおきましては、私は交渉はなかったと思う。三千万ドルをどうするとか、二千万ドルの現金を払うとか、これは外務省はフィリピンの政府から最初に提示された要求をそのままうのみにされているのです。結果は同じことです。私は交渉はなかったと思っている。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 それはどういうことですか。交渉がなかったとはどういうことです。おかしいじゃないか。

森島守人日本社会党

○森島委員 では今から申し上げます。フィリピンから来た提案を基礎として外務省は交渉に応ずるということを答弁しております。その内容を見ますと、賠償は五億五千万ドル、このうちには役務三千万ドル、それから現金が二千万ドルを含む。二に別に長期開発借款二億五千万ドルという方式を提示してきた。日本側は右案がフィリピン政府の正式提案として提議されるにおいては、これを考慮する用意がある旨を回答しておる。私はその中に幾多の交渉があったのなら、この席上で現金は幾らにしてくれ、役務は幾らにするという御交渉があった結果を明白にしていただけない限り、このフィリピンの提案をそのままうのみにしたと、こう批評したってしょうがないじゃないですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 うのみにしたわけでもなんでもないですから、私はそういうことを受け付けるわけにはいかない。何となれば、外務省の出先が半年もかかって、実に苦労して交渉をしたことは、これは発表はいたしておりません。それは電信電話でも非常な往復をいたしております。そういうことが全然なかったのだ、何にも努力をしなかったのだというような意味のことは、私は受け付けるわけにはいきません。しかしこれはそういう努力をしておったにもかかわらず、その向うの提案の大体を承認するよりほかになかったということは、私は申して差しつかえないと思います。だからそういうことはそういうふうに私は申し上げておるのであります。それだから、それに少しも間違いはございません。

森島守人日本社会党

○森島委員 外観における印象から見ますと、私が今申しました通り資本財が多過ぎる、役務が足りないということは、これはどこでも指摘している。もしその点についてただいまのようなお話なら、交渉の経過を発表して国民の疑惑を解くだけの措置をおとりになるのが当然ではないか。それをひた隠しにしておいて私に非難を押しつけるなんということは、私には受け取れぬ。交渉の経過を発表して国民の誤解を解くだけの親切心が外務省になければいかぬと思います。これはいかにお取り計らいになるのか外務大臣の御答弁を求めます。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 その通りに取り計らっておりますけれども、努力をしたことについて一々外務省の事務の電信の往復を全部発表する必要はなかろうと思います。しかしそれは私が、こういう状況で努力をした結果こういうことになったのだということを御説明すれば、それは十分であると考えます。

森島守人日本社会党

○森島委員 私は別に電信を一々全部発表せよという要求はしておりません。この間の事態を明らかにするために、現金二千万ドルを日本では千万ドルにした、あるいは五百万ドルにせいというふうな交渉をしたとかせぬとか、あるいは役務の三千万ドルをもっとふやして一億ドルにしろという要求をしたけれども、結論においてはフィリピンがこれを受諾しなかったのだというふうな点をもっと明らかになさい、こういう要求をしているのであります。大臣の誤解です。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 昨年の五月十日にネリが参りまして、その折衝に外務大臣が当られるわけですが、外務大臣から御命令がありまして、経済問題だからお前やれということで私が当ったのでありますが、今森島先生の御質問と同じく彼らは初めから二千万ドルの現金を五ヵ年間によこせ、それから役務をよけいやられると、お前の方の労働者がどんどん入ってくるので困るから、これは三千万ドルにしろとかいうことを彼は初めから言ったのであります。それに対して私は初めから現金で払うということは、サンフランシスコの講和条約に反するのだから絶対できないということははっきり申しました。役務の三千万ドルはとてもいけるものではない、いけるわけはないじゃないかという理由をよく説明いたしたのであります。特にサンフンシスコ平和条約においてはわれわれは役務をもって払うということになっているのだから、資本財を払うことすらわれわれは困っているわけだからという説明は十分話したのであります。これは内輪の話になりますけれども、この間の本会議でお答え申しました通りに、二十六年度の国会におきまして社会党の鈴木先生が役務だけではできぬじゃないか、なぜ資本財もやらぬかという御質問がありまして、そのときに自由党の吉田総理は、そういうふうにやらなければならぬだろう、そういうふうにやる考えだということは、あの当時の速記録にありまして、これは社会党も、当時の自由党も役務以外に資本財をもって払ってもいいということを認められているのだということで、私はその点は非常に責任は軽かったわけです。しかしながら現在の日本といたしましては、できるだけ役務をもって払っていきたい。その意味から申しまして、資本財といえどもこれは外国から物を買ってやるようなものは困るのだ、なるべく日本の役務をもって作る資本財をやるから、結局は役務をもってやることにするのだが、それにしても三千万ドルは少いじゃないかということをネリといろいろ話をしたのでありますが、それじゃ国内が納まらぬというわけであります。それならば三千万ドルと書いておっても当然足らぬ、足らぬときには、五億五千万ドルのうちから繰り込んでもいいか、それでよろしいという話になったのでありますが、先方は八月十青品には今の二千万ドルの現金あるいは三千万ドルの役務というようなことを書いて、これでお前の方をまとめてくれということを言ってきたのであります。これはいろいろ外務省で折衝された結果、二千万ドルの現金はいけない。これはどうしても役務をもって払う、役務といいますか、加工費をもって払うというよりしようがないではないか、お前の方はその加工費をペソに直してあなたの方の目的を達すればいいじゃないかということを外務省で下交渉した結果、それは解決したわけであります。結局三千万ドルの方もいろいろ再三再四話した結末、結論におきましては三千万ドルで足らなかった場合には、当然五億五千万ドルの中から繰り込んでもよろしいという最後の条約になっているわけでありますから、その点は外務省といたしましても、政府といたしましても十分考慮いたしまして折衝をいたしたのでありますから、さよう御承知を願いたいと思います。

森島守人日本社会党

○森島委員 今高碕長官の御懇切な説明によってわかったのでありますが、これらの点も国会を通じて国民に明らかにされた方がいいと思う。ただいまの重光大臣の答弁は木で鼻をくくったようなもので、いかにも不親切な答弁で、これでは納得がいかないのですが、今高碕長官の答弁で満足いたしましたから、これ以上追及をいたしません。  さらにこれは私本会議でもお尋ねをしたのですが、インドネシアやビルマに対する影響、この点については重光さんはきわめて楽観的な意見で、当然影響はないのだという説明をわが党の戸叶委員の中間報告に対する質問に対してもやっているわけですが、明確なる理由を何ら示しておられないのであります。  そこでこの際明らかにしていただきたいのは、第一にビルマから一昨年の秋、ウ・チョウ・ニェンという工業大臣が日本に来まして、おそらく高碕さんもお会いになったと思いますが、非常に熱心に日本を回って、日本に対しても非常にいい印象を受けているビルマ政界の有力者で、三羽ガラスの一人なのです。私も北海道から関西までウ・チョウ・ニェン氏と一緒に三週間ばかり旅行しました。その間に賠償問題もいろいろ出たのであります。率直に申し上げますと、日本ではその当時フィリピン四、インドネシア二、それからビルマが一ということが、政府の方針かどうか知りませんが、まことしやかに新聞に報道された。そこでウ・チョウ・ニェン氏は、この数字をとらえまして非常な不満を——今ならざっくばらんに申し上げてもいい、社会党の会議におきましても、非常な不満を持っていた。賠償金を払うとすれば、全額を払えない、そうなれば日本の軍部の行動によって損害を受けた国としては、どこの国も一様に取り扱わねばならない、国によって差別をするのは不都合だという非常に強い見解を述べておりました。当時岡崎君でした、が、私も岡崎君に対してこれを説明し、私も団の中に入ってあっせんしました結果、インドネシア並みまでに上げたらどうかということになったいきさつがあるのであります。私はよく知っておる。これは日本政府においては非常に軽く見ておられるのじゃないか。ビルマの協定の第五条ですか、第三項か何かに規定が入っております。賠償問題が全部片づいた上で、日本の負担能力を考慮して、ビルマの賠償については再検討をする。リアジャストでなしにリエクザミンという字が書いてあります。この点から考えましても、私はビルマが増額を要求してくることは必至である、こう判断しておるのであります。  それからインドネシアにしましても、従来の交渉の経過は私は詳しく知りませんが、新聞に出たところだけを総合してみましても、非常に膨大な額を日本に提示しておる。このいきさつから見ましても、私は必ずフィリピンと同額を要求してくるものと確信しておるのであります。これは万間違いないと思います。こういう場合に、重光さんのようにただ漫然と楽観論ばかり吐いておったのでは、私たちは重大な賠償協定を審議する上において十分とは思われません。そこで私は重光外務大臣に、いかなる論拠に基きそういうふうな判断をせられるのであるかという点を、私たちが納得のいくように一つ御説明を願いたいと思うのでございます。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私は今後ビルマがどういう態度をとり、インドネシアがどういう態度をとるかということについては、何も今まで私の意見を吐いたことはございません。私の意見を申し上げたのは、日本の態度でございます。これは私は申し上げられます。  そこで問題に入るわけでございますが、今回フィリピンに五億五千万ドルの賠償を払うということに相なりました。このことは日本にとっては相当な負担でもあるし、その他この賠償についていろいろ考慮すべきところのあることは、私はすでに国会に対して十分御説明をいたしております。そこで五億五千万ドルをフィリピンに払うということになれば、ビルマから必ず自分の方も増してくれ、条約の規定によってリエグザミンしてくれ、こういうふうに言ってくるか。今のお話によりますと、国会、特に社会党の有力者であるあなたが、向うとそういう工合に半ば約束をされてしまっておるような何があるならば、これは向うは言ってくるかもしれない。しかしながら御承知の通りに、賠償問題が全部片づいた後にそういうことをリエグザミンすることになっておるのでありますが、まだ賠償問題は全部片づいておりません。そういう全局を見て判断をして、しかして日本の将来の支払い能力というものも考えて、この問題が起ってくるわけでございます。私の言い得ることは、そういうことを今想像して、日本側かこれに応じ得るかというと、私は応じ得ないと思っております。その状況を私は言い得ますので、それを言って今日まで来ておるわけであります。向うが持ち出さないとか持ち出すとかいうことは、これは向うのことでございます。私は全体を判断して、向うが持ち出しても、日本はこれに応ずることができぬような状態を今日予想しております。日本としては賠償能力の限度まで十分勉強してやらなければならぬことに結局なると思いますが、さようなことをすべて考慮して、今後それに応じ得ない状況がそこに出てくる、こう考えておりますから、それを申し上げておるのであります。

森島守人日本社会党

○森島委員 今社会党の云々とおっしゃいましたが、私はそんな約束をし得る立場にもないし、やっておりません。この点は明確にしておきます。  ただいま重光さんが、増額を要求した場合には、日本では今のところ応じ得ないのだというふうな御答弁をなさったわけです。私はこれは速記録を見ました上で、あらためて質問する権利を留保しておきます。私の印象では、そういうふうな御答弁はなさらなかったと思います。第一には勝間田君の代表質問のときも、きわめてあっさり片づけられた。それから多分戸叶さんが演説されたときも、そういう趣旨じゃなかったと私は記憶しておりますから、これは一応速記録を見まして再質問することにいたします。  もう一つあります。リアジャストでなくてリエグザミン、これは再検討ということでしょう。その結果の措置をどうするかということについては、むろん協定には規定がございませんが、これに対する現在の日本の重光外相としての立場も、ただいま御説明になりましたから、これはこれ以上深く触れないでおきます。  その次に賠償の実施に当っては、日本が過重な外貨負担を受けないようにするという規定がございますが、これはどういう方法でおやりになるのであるか、明確にしていただきたい。この協定のところにも一部分これに触れた点があると思いますが、具体的にどういう構想をお持ちになっておるのであるか、この点をあらためて明らかにしてほしい、こう存ずる次第であります。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 役務で払いますときは、もちろん問題はございませんが、資本財で払いますときに、ものによると、日本のものは高いから、この部分だけアメリカのものを持ってきて使え、あるいはドイツのこういうものが安いから、これを使え、こういうことを言われたときには、日本に当然外貨負担がかかります。それでは困るので、日本でできるものは必ず日本のものでやるし、また外国から買わねばならぬようなものは賠償の対象から除いてもらいたいということを言ったわけであります。従いまして、現在賠償で払えます資本財の中では、直接外貨を払って輸入をしてこれを作らなければならぬようなものは含まことはできない、こういうことを規定しておるのであります。

森島守人日本社会党

○森島委員 しかし外貨負担の点になりますと、ただいまの御説明だけでは足りないのじゃないかと私は思う。いろいろ日本で資本財を作ります。しかしそれを作る上におきましては、原料を外国に求めねばならぬものもあるというふうなことになりますと、日本でできるものの大部分は日本の材料でできるかもしれない、それに外貨で入ってくるのはさまっているのです。そうしますと、それはいかようにお取り計らいになるつもりですか、その点については、何か明白な規定が今度の協定の中にあるのでございますか、ないのでありますか、その点を明らかにしていただきたい。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 ただいまお答え申し上げました通りに、直接そのものを外国から持ってくるという場合はこれははっきり規定いたしておりますが、しからば機械で賠償するのだ、その機械の半分は役務であろうが、それを作る手伝いがある、この手伝いの中で半分はまた役務であろうが、その半分は石炭だ、そのまた半分は鋼材だ、鋼材は輸入するじゃないか、そうするとその輸入したものをどうするか、こういうことに相なりますと、その程度のものは負担しなければならぬ、こう思っておりまして、そこまでは詳細にはやっていないわけであります。大体におきまして直接外貨の負担になるもの、間接になるものにつきましてはそこまでは考えていないわけであります。

森島守人日本社会党

○森島委員 この附表の中に出ているのは、日本から大体これに必要な資材を持っていくということになるだろうと思いますが、百くらいありますから、この中には日本が外国から原材料を輸入して作らねばならぬものは、私はしろうとでわからぬのですが、相当あるのじゃないか。そうなってきますと、日本の外貨負担というものは相当大きくなるのではないか。その辺を一つ納得のいくように御説明願いたいのでございます。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 詳細の数字は十分検討したわけでございまして、これは政府委員からお答えいたします。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 第一に、附属書に非常に多くの項目が掲げてありますが、これを全部を出すということにはなっていないのでありまして、この中から五億五千万ドルの範囲内で毎年の負担額の範囲内で選んで出すということになります。従ってその額はそう日本の経済全体から見て、非常に支障を及ぼすという大きなものではないと考えております。またこれらのものを作ります際に、お説の通り外国からの原料というものが終局的には相当入ると思います。たとえば鉄鋼にいたしましても、鉄鉱石は大部分外国から輸入しておりますから、それから作りました鋼材で大ていのものができますので、その意味では終局的に外国からの原料も入るわけでございますが、これがしかし日本が通常貿易をする場合、あるいは日本国内で消費する場合、いずれもその必要のためにすでに輸入をやっておるのでありまして、その全体のワクの中でこの部分だけがフィリピンに賠償として提供されるといたしましても、その金の中に占める終局の外国原料の部分というものは、そう問題にするほどでないということが専門家で検討いたしました結論であります。従ってそういうものは資本財として出しても、日本の外貨事情に直接重大な影響を及ぼすというものではないというのが結論であります。しかしながらただいま高碕長官の言われましたように、このために特に別個の外貨割当を必要とするというようなものがあれば、これはまさしくその分だけ賠償のために外貨負担が過重になりますので、そういうものは断われるようにしたいということでその旨の規定ができておるわけでございます。従ってこの規定によって、その賠償を実施しますことによって、直接非常に重い負担が日本にかかるということは、避けられる仕組みになっておると考えております。

森島守人日本社会党

○森島委員 フィリピンの場合なら、今後貿易が盛んになると、向うから原材料なんか入ってくる可能性が私は非常に多いと思う。フィリピンの必要とする資本財を作る上において、原材料を同国に求めて作るという点について、何らか明確なる規定が挿入されていますかいませんか、この点お答え願います。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 それは結局加工賠償になると思うのでありますが、フィリピンから原材料を提供してそれを加工して向うに出す、これはすでに附属書に書いてあります二千万ドルの加工賠償、あれがまさしくそれに該当し得るわけであります。規定はあるわけでございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 最後に一点。協定から交換公文に変った民間賠償の件ですが、この点につきましてはただいま御説明があった通りであります。私は政府は当初協定ということを構想しておったので、この場合にはこの協定を国会に出して承認を求めるということを建前としておったろうと存じておりますが、この点はいかがでございますか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 国会に出すような協定にしようということを日本側が考えたわけではございません。フィリピン側が対内的の見地から、合せて八億ドルという数字を何とかして出したいという見地から、向う側が考えたことであります。しかしながら経済開発借款の方は、これは日本政府は義務として負担することはごめんだということで交渉を重ねて参りまして、ある過程におきましてはあるいは利率は四分より安くなければいかぬとか、あるいは期間として二十年よりも長くてはいかぬとか、ほんとうに日本政府がそれを引き受ければ義務になりまして、その義務条項を含んでおれば、国会に提出して御承認を求めることが必要となるような協定にもなりかねない段階があったのは事実でございます。しかしすべてわが方の代表の努力によりまして、現実に日本政府が義務を背負い込むようなことは全部落しましたから、これはむしろ交換公文になるのが至当な形式でありまして、そうしてフィリピン側も案外わかりまして、決してこの権利義務の関係を生じないのなら、わざわざ協定として飾ってまで、対内的の糊塗をしなくてもいいという考えになりましたので、そこでわが方の当初の気持と向うの気持とが合致いたしまして、これには何ら具体的な権利義務がないから、交換公文にして国会に出さないでいいもの、国会に出さないということも初め向うがそういう態度であったのでありまして、すでに向うがそうなら、わが方がわざわざ協定のような重い形にして国会に出して、誤解を招く必要はないのでございます。そこで完全に両国の意思が合致いたしましてこういうものになったわけでございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 それでは伺いますが、なるほど利率の点だとか償還期限等について日本側に義務を負わすような条項がないことは御説明の通りであります。しかし一方におきまして、最終段階においてフィリピン側から日本に助け船を出したようなものだ。これは交換公文にしようじゃないかということを向うから言ってきたので、渡りに船だというのが日本政府の態度だ。しかし最後の段階においてこれを交換公文でなしに協定として一応仮調印を了したわけじゃないのですか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 協定として藤山代表が仮調印をなさったわけなのでありますが、仮調印に携わりました先方の代表以外の人が今度の全権の中に大ぜいおるわけですが、フィリピン側はまだ大ぜいの人が実は承知していなかった。そこでフィリピン側の全権団の中の人もびっくりいたしまして、何だそういうことであったのか、それならば協定にする必要のないものをわざわざ協定にして、それで無理やりに八という数字を出すのは、かえってフィリピン国民を欺瞞するものではないかというような意見すら出まして、そして向う自体がほんとうの正常な形の文書にするとになったわけであります。これはむしろ日本側が当初から庶幾していたところに、結局フィリピン側の内部事情が落ちついたということであります。

森島守人日本社会党

○森島委員 それでは仮調印した文書は、ここに交換公文として御提示になった文書とだいぶ違いますか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 実質は同様でございます。しかし協定でございますから形式上どうしても入らなければならない条項、つまりいつ発効するとか、期間は何年であるかというようなことはあったのでありますが、交換公文になるとともにそういうことは全部落ちてしまったということであります。

森島守人日本社会党

○森島委員 そうすると、協定のときには償還期限の問題等も入っておったと了解してよろしゅうございますか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 有効期間の期限があったと申しましたが、この期間の点は実質的の規定の中に入っておりますので、最終条項としての有効期間の規定は、協定の形であった場合にもなかったわけでございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 私もこの交換公文を読みますと効力を発生したときとあります。それから何年ということになっているようですが、協定の場合も償還期限については別に明確なる文書による形式ではなかった、こう了解していいのでございますね。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 償還期限という思想は当初からございません。従って協定の場合にもそういう規定はなかったのであります。

森島守人日本社会党

○森島委員 そこでお尋ねしたいのですが、最後に仮調印した場合には、日本政府として協定という形式をとっていますので、これについては、国会にお出しになる予定であったろうと私は想像いたしますが、この点はいかにお考えになっておったが、一つ外務大臣にお尋ねしたいのです。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 その点は、実は外務省としては政府部内でよく御相談申し上げてきめようと思っておったわけでございます。しかしながら御相談の必要がなくなったということであります。

森島守人日本社会党

○森島委員 私は償還期限が入っておったとか利率が入っておったとかいうことは別としましても、これは国会の承認を求められるのが、賠償協定の交渉全般の経過から見て、特に当初政府が保証の義務を負うような格好をとっておったので、法律上の論議は別といたしましても、少くとも外務省として国会の審議を求められた方がいい、私はこう信じております。特に重光さんが、この委員会の席上でも数回お話しになったように、協定というものは別に書きものにする必要もないのだ、代表者間の口約束でも、協定、条約と同じ効力を持つ場合もあるのだというふうな御説明もございました。そういうふうな点から考えましても、私はこれを国会の審議に付さなかったというのは、法律上はともかくといたしまして、政策上非常に悪かった。手落ちとは言いませんけれども、政策上不得策ではなかったか、こういうふうに信じておるのでございます。今後の例もございますから、この点に対する外務省の明確なる態度を承わっておきたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 法律解釈は、もう御質問の点じゃないと思います。実質上の点もよく考えてみて、これは議会の協賛を経べきものであるかどうかということは、厳格に考えなければ私はいかぬと思います。しかし交換公文が賠償協定の交渉の過程においても、また実質においても、賠償協定に非常に関係のあることは、当然言うを待たぬことであります。でありますから、かようなものは、議会に正式に協賛を求めることは、必要でないとしても、もしくは適当でないとしても、議会にこれを出して、そして十分これを御検討願う機会を得ることは、政策的に私はそう願いたい、そうすべきだと考えます。そこで参考のためにこれをつけて、すっかり出したわけであります。そういうわけでありますから、これに対する御批評は十分に伺いたい、こういう考え方であります。

森島守人日本社会党

○森島委員 私は松本委員から中共の代表部の問題に関連して御質問があった、その点について、ソ連のチフヴィンスキー氏に対する待遇というものに関連しまして、一点お伺いしたい。チフヴィンスキー氏に対しましては、もちろん政府は、正式な機関でないという立場をとっておられましょう。しかしこれに対しては、事実上外交特権にひとしいものを与えられる方針であるのか、私はそうでなければ来ないということに考えております。これは実際の待遇はどうなっておりますか、この点を一点伺いたと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 正式の外交代表でないというのは、お話の通りであります。そうでありますから、正式の特権はございません。しかしながら漁業問題等日本の実益に関係する問題について、必要な範囲内において、こちらも同氏の活動といいますか、同氏の行為は、これは認めなければならぬと考えております。そうして、漁業問題等についても、十分の便宜を得たいと考えております。

森島守人日本社会党

○森島委員 御答弁がきわめて不明快です。私は、そうすると漁業問題に関する限りにおいては、事実上外交特権を与えておるのだというふうに解釈してよろしいかどうか、この点を明確に御答弁願いたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 外交特権は認めておりません。

森島守人日本社会党

○森島委員 私は外交特権を与えておるかどうかということを聞いておるのじゃないので、事実上外交特権にならうような待遇を、実際上の取扱いにおいて与えられる方針だと了解している。そうでなければわざわざ来ない。河野さんなんかはもう一歩進んだ考えを持っているかもしれぬけれども、今の外務省では——私はこれは外交特権を与えてもいいと思うのですが、外務省の今の立場からすれば、事実上外交官と同様な待遇を漁業問題に関する限りにおいては与えらるる方針であると理解してよろしゅうございますか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私の御答弁は先ほどの通りであります。でき得るだけ便宜は与えたいと参考えております。しかしこれは外交特権というものではございません。

森島守人日本社会党

○森島委員 その点私は中国の通商代表部に対しても同様だと思う。向うが外交特権を求めてきたから日本は出さぬのだとおっしゃるが、漁業に関する限りにおいて日本政府が十分なる便宜を与えるということは、何らその活動に支障ないようにという点だろうと思う。中共に対しても、それくらいの待遇を与えるのだということを少し明白にされたらどうか。日中貿易の拡大増進ということを政府はしばしば言っておられるが、今日までココムの関係で、多少緩和されたかもしれませんけれども、そう大した実績は上げていない、鳩山内閣の公約の非常な違約なんだ。一日もすみやかに中共の通商代表部に対しても、ソ連の代表部に対すると同様な、十分な便宜を与えるのだということを政府で公的に御声明になったらどうか。そうすれば、今ひっかかっております中共の通商代表部の間問題にしても、解決の糸口がつくのじゃないか、こういうふうに私は考えているのでございますが、この点に関する政府の御所見を求めたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 御意見でございまして、御質問の点は、その意見に替成するかという意味の御質問でございます。しかし私の本件に対する答弁は、先ほど申し上げた通りであります。  それから新しい問題としては、中共の通商代表部のことがございました。通商代表部は、民間代表として、貿易に関する限り、実際できるだけの便宜は与えたいと考えております。しかしながら外交特権を公式に認めるというようなことはできませんから、やらぬつもりでございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 この点については、いずれまた機会を見まして質問することにしまして、最後に一点中川アジア局長にお尋ねしたいのですが、これはこの際でないと質問の機会がないと思いますので、記録に残す意味において御質問したい。これは何年だか年月は忘れましたが、ポルトガルのマカオにおける賠償の関係はアジア局の所管だということを、この前法眼参事官から聞くたのでありますが、法眼君も詳しいことを知っておりませんのであなたに質問するわけですが、外務省の福井保光というマカオの総領事代理だった人ですが、これがたまたま戦争中ですが、朝ラジオ体操に行くときに中国人に狙撃されて死んだ事件がございます。これは私ポルトガル公使をやっておりましたときに政府の訓令によってこれを交渉したのであります。政府は損害賠償をしろということで、秩序の乱れておった背の中国のように、私人が加えた傷害でも、これはポルトガル政府の責任だというふうな高圧的な態度で私に訓令してきた。私はそういうことはできぬ。せいぜいできるのは、ポルトガル政府に対して慰謝金を私限りの発意として求めてはどうかということで折り合ったのでありますが、このときに私の交渉しました結果は、一万ポンド払うということでありましたが、不幸にして終戦当時の書類は外務省が全部焼けていてない。その後私も外務省の要請によってこのいきさつを詳しく書いて、ポルトガル関係の賠償問題等に関しても意見書を出しておった。しかしその後十年たちますが、外務省ではこれをほとんど問題にしてないらしい、引き継ぎもできていないようです。これらの点につきましてはどういうふうになっているか、福井君はポルトガルからも新しまれ、中国からも親しまれていた非常な人格者です。しかも中国語の大家であります。非常に有能な人材であった。これがなくなったのは惜しい。少くともその遺族に対して当時約束した一万ポンドだけはポルトガルからとってもらわなければならぬ。そこでポルトガルの出しましたのは、詳しいことは申しませんが、チモール島で日本から非常な損害を受けているので、チモール島の損害を日本に要求する場合にこれと差引をしたいというのが、マッカーサー司令部の命令で私がリスボンを立つその前日の約束だったのです。この点をいかに処理されたのか、これだけははっきり記録に残しておいていただきたい。外務省の取扱いもきわめてずさんで記録にも残っていないと考えます。それから福井君の遺族の住所すら外務省の人事課ではわかっていないはすです。私も知らないが、そのやり方はきわめて不親切です。もう少し親切にこのような問題はお取扱い願わねばならぬと思っておりますが、この間のいきさつがもしおわかりでしたら御説明を願いたいと思います。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 ただいま御質問になりました在マカオ福井総領事代理の暗殺事件に伴う慰謝金の件につきましては、御指摘のように事件は終戦の年の二月に起ったのでありますが、この善後措置につきましては当時の森島公使が非常に御尽力下さいまして、ポルトガル政府と交渉されました結果、御指摘のような弔慰金ということで話がついたのであります。弔慰金の金額は一万ポンドでなくて五百ポンドでございます。しかしこれはポルトガル政府がはっきり約束いたしたのでありまして、この五百ポンドをもらう段階にございましたが、ちょうどその交渉ができましたのが七月でございます。従いましてすぐ終戦となり、同時にポルトガルは日本と国交断絶というようなことになりまして、そのままこの件は解決しないで終戦となったのでありますが、その後日本とポルトガルとの間には一昨年国交を回復いたしまして、公使の交換が行われまして、新任公使がこちらへ着任いたしました際、当時の奥村外務次官がこの件について言及いたしましたところ、新任公使が、これは先ほど御指摘になりましたポルトガルのいろいろ戦争に伴う日本に対する補償問題、これの一連の関係で解決したいと言ったのであります。その後日本側からポルトガル側の資料の提出を要求して待っておったのでありますが、ただいまのところまだ具体的な交渉を開始するに至っていないのであります。福井総領下代理の御遺族の方々のことも考えますと、これはぜひ早急に解決したいと考えております。従って森島委員の御質問の機会にこれをあれしては申しわけないのでありますが、この機会がありましたので申し上げたわけでありますが、ぜひこの問題については今後早急に解決するように努力したいと考えております。

森島守人日本社会党

○森島委員 私が最後に交渉をいたしましたのは外務次官なのです。これはその後死んでおります。私は一万ポンドと記憶しているのですが、非常に減額されましても、その後話し合いがついたならいたし方がございませんからして、なるべくすみやかに解決をしまして、福井君の遺族に対しても十分な御措置をとられんことを希望いたしまして、私の賛同をやめます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 昨日は大体大臣に対する質問を終りたいと思っておりましたが、高崎長官はお工合が悪くて来られませんし、外務大臣は途中で中座されましたので、数点しかございませんが、残りを御質問をしたいと思います。これはやはり事務当局の御答弁によってまた大臣にも質問しなければならぬ問題が出てきますから、幾らか留保しておきます。  ます最初に共同声明で友好通商航海条約のための早期交渉が開始されることを予期しておるわけですが、この前からの政府の答弁でもなるべく早くこの交渉を開始するという御意思のようですが、一体いつごろそれを開始される御意向なのか。またフィリピン側の意向は一体どうなのか。この交渉に応ずる意思をはっきり表明しておるかどうか、この点を最初にお伺いいたします。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 友好通商航海条約はこの賠償協定の国会の御承認を行ました暁には、即刻交渉を開始したいと考えております。先方もこれは非常に熱心でありまして、ぜひ早く交渉を開始したいということで、そのための委員もすでに先方で準備しております。日本にできるだけ早く来るようにということで準備を整えておりますので、これは即刻開始し得ると考えております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 それからこれはちょっと事務当局になりますが、現在までに沈船引き揚げに要したものは、第一年度分から控除していくのですか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 これは今回の協定に付属として御参考までに提出してあります実施細目に書いてございますが、現在までにすでに実施したものは、もちろん第一年度の金額から控除されます。今後第一年度中に使用されます金額も、同じく第一年度分から控除されるということになると思います。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 今までどのくらいの労務提供がなされておりますか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 現在までに提供いたしましたのはたしか十四、五億円だと思います。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 このフィリピンの沈船引き揚げ、これはフィリピン国領海だけに限定されているのですか、領海外のものもこれはあるのでしょうか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 これは先方との協定によりまして、領海内に限定されております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 一般の場合はどういうふうになるのでしょうか。戦争によって撃沈された旧敵国の船舶で、領海内にあるものと、それから領海外にあるものによって、その所有権の所在がどういうふうに一般には規定されるのでしょうか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 公海に沈みました船について明確に所有者が判明しておる場合には、やはりその所有者の権利が擁護されなければならないと考えております。しかしいつ沈んだかわからないような船にして何らのクレームがない場合には、これは最初に見つけた者か無主物として取り扱ってかまわないのであります。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 それについては軍艦、公船、軍用船それから一般の商船や何かで何らかの区別があるのですか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 所有者もわからず、遺棄されたものにつきましては、これは軍艦であろうと商船であろうと同じことでございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 それから、これはさっき森島委員の質問に出たと思いますが、借款は結局フィリピン側の情勢が変化して、日本の希望のようになってきたのだ、こういう御答弁だったのですが、もし全く純然たる民間ベースでやるならば、交換公文でわざわざうたう必要もない。そして最初は少し強い線でフィリピン側はこれを規定したいと希望しておったが、だんだん日本の希望に応ずるように変化してきたという話を聞いておると、結局フィリピン側は、名目上の八億ドル賠償という名だけとれば、実質的にこれで面子は立ったのだ、あまり固執しないでもいいというような気持なのでしょうか、そこのところを一つ大臣からどういう感じを受けられたか……。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 初めからその問題ははっきりしておりまして、まだ通商航海条約もない現状においてすら、すでに日本の商社とあちらの商社とが実行しておる、事実があるのでございます。この事実ぐらいの程度において、両国商社、個人の間でお互いに労務の形式で仕事をする、これを二億五千万ドルということにしようじゃないか、こういうことでありまして、今の御質問の御趣旨とほとんど同じなのでありまして、その通りでございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 そうすると八億ドルを主張した手前、一応こういう形で残したにすぎないので、実際は半分投げた形と見ていいでしょうか。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 まさにその通りでありまして、これができなかった場合に、両国政府は責任はないのだということになっております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 私はそこは不審に思っておりましたが、だいぶはっきりして参りました。交換公文の第四項によると、「主として」という条件はついておりますが、機械もしくは設備による役務ということになっておるわけです。政府が最初計画しておったのは、合弁会社などの設立ということを言われておったように私は記憶するのですが、「主として」となっておるのだから絶対にできないわけではないのだ、合弁も可能であるという言い分は立つかもしれませんけれども、果して政府はこの合弁会社の見込みがあるとお考えか、もしありとすれば、どういう構想を持っておられるのか。発電所だとかあるいは水田の開発というようなことは、これは賠償物件としては取り立たられるでございましょうけれども、共同経営というようなことは向うでは全然考えていないのじゃないかと思います。そういう点は少し御説明願いたいと思います。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 賠償物件なるものは、主として先方の政府の卒業でありますから、これは合弁だとかということは行われない、こう見ております。しかし同じ賠償物件の中でも、これは先方の一部分の人の希望でございましたが、ある種の賠償物件は、一応政府が賠償物件として取って、これを民間に払い下げることはできる、こういうこともありましたから、そういう場合には、あるいはこれに要する役務はもちろん賠償の対象になります。そのほかの投資というふうなものになりますれば、将来におきましては、あるいは両国の商社の間の投資関係なり、あるいは両国政府間の関係が起ってくると存じておりますが、ただいまのところ、フィリピン政府は外国から入ってくる投資あるいは共同経営ということは望んでいないようでありますから、現在のところはそこまで想像することはどうかと思いますが、実際問題としては、そういう場合が起ってくることだと存じております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 外務大臣にお伺いしますが、先ほど森島さんがちょうど触れられた点なのですが、一昨日ですか、チフヴィンスキーさんのところに水産界の方が行かれて、黒潮丸の問題なんかを話し合われたように聞いておるのです。そのときの報告によると、何か自分の方では許可証を出すとかあるいはいろいろ便宜を供与したいと思っても、日本の政府が認めないのだからしようがない、従って河野代表が帰ってきて日本政府の態度がはっきりわかるまでは、どうにも処置なしだ、こういうふうな態度をチフヴィンスキー氏の方はとっておるように聞いておるのです。そういう今私が申しましたような態度を、ソビエト側がとっておることは確認されておるかどうか、これが第一点。  それから、先ほどの御答弁では、何しろ漁業という実利に関係のあることだから、できるだけ便宜の供与はしたい、こういう趣旨の御答弁でございましたが、しかしそうかといって外交特権を与えるのじゃないのだ、こういう御答弁でしたが、この御答弁は、今私が申しましたような態度がソビエトの態度であるとすれば、これはなかなか微妙な問題が出てくると思う。そこで政府としては、漁業上の問題に差しつかえがないように、ソビエト側の便宜供与あるいは向うの活動がなし得るようなことなら、できるだけの便宜供与は——名目は外交特権ということでなくても、できるだけそういう漁業の円滑な運営に差しつかえのない便宜供与はする、というふうに私はさっきの御答弁を理解したのですが、それで間違いないかどうか、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 この問題は、結局本年の漁獲に関係する問題になります。そうですから、本年の漁獲をどういう工合にしてやるかという話し合いを向うでしたのでございまして、その話し合いのうちに、そういう点まで触れておるかもしれません。そこで河野代表が帰ってくれば、そういう点もよくわかりますから、それをやはり材料にして検討しなければならぬと思います。ただ私の申し上げるのは、すべてのそういうようなことを大体想像して、日本が漁獲のでき得るように努力をして交渉をしたのでありますから、そういう漁獲の便宜になるようなことについては、こちらもできるだけの取扱いをしなければならぬ、こう思っておるので、さっき申し上げたのでございます。これをどういう工合に手続をするかというようなことに至りましては、今私はこれを詳細に申し上げる材料はございませんけれども、そういう気持で、また大体そういうような方針で行ってさしつかえない、こう考えます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 おととい平塚さんが行かれたときのことを……。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 それはよく存じておりませんが、おそらく水産庁あたりから関係方面に連絡があったのだろうと思います。今後も十分検討してやりたいと思います。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 平塚さんは水産界の代表として行かれたにしても、御承知のように政界にも大きな関係があるし、何か世間では、日本政府が非常に消極的に、これにそっぽを向いておるから、実際の漁業問題を解決するためには、面接あそこまで行って話し合いでもしなければ、らちがあかないというので、やむなくああいう動きがあるという印象を受けるのです。だから河野さんが帰ってこなければ、具体的な詳細についてはわからないでしょうけれども、今さっきの森島さんに対する御答弁によると、やはり漁業に差しつかえがないようなできるだけの便宜は、この際至急に供与したいというふうに私は好意的に理解したのですが、その点やはり政府が早く相当思い切った態度に出ないと、私は、政府と、実際の国民の利害に直接関係のある担当者との間の行動が、ばらばらの感じを世間に与えて非常おもしろくないと思いますが、そういう点、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 これは先ほど森島君やあなたにお話した通りの考え方でもってやっていこうと思っております。ただ平塚氏のことについては、私はまだ直接に報告を受けておりませんが、大体その方針で水産庁も外務省の関係者も話し合いをしておることと思います。さようなことで、こういうことは実際的に円満にいくだろうと思っております。

細迫兼光日本社会党

○細迫委員 ちょっと一言確かめたいのですが、今の代表部の取扱いについては、大体できるだけの便宜ははかりたいと思っておる、ただし外交特権は認めない、与えるものではないというようなことが大体の筋のようですが、あれがソ連の政府を代表しておるものである、政府の役員であるという事実はお認めになっておるのでしょうか、どうでしょうか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 それはどういう御趣旨か知りませんけれども、正式は一国の代表を認めるのは、御承知の通りに国交の調整ということが前提になっております。それが行われぬ前には、それに伴う特権は認めるわけには参りません。しかしながら実際の実務の上において、双方の利益に合することにはできるだけの便宜を与えるということは、これまた常識的なことだろうと考えております。その意味で、必要な便宜は供与して差しつかえないように考えております。

細迫兼光日本社会党

○細迫委員 前言を繰り返されるばかりで、一向に質問に答えていただけないのですが、あれがソ連政府の出先役員であるという事実はお認めになるでしょう。特権云々ではありません。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 ソ連邦の公務員であるということになっております。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 愛知揆一君。

愛知揆一自由民主党

○愛知委員 大へんお急ぎのときに恐縮でありますが、ちょっと一点だけお尋ねをしておきたいと思います。  日比の賠償協定の問題については、大よそ質疑も終りに近づいたと思いますし、その内容について私から特に伺うことはないのでありますが、私は賠償協定に限らず、対外的な約束を一たんはっきりいたした以上は、的確にこれを履行することが、絶対に必要なことだと存ずるのであります。これはかって平和な時代におきましても、わが国としては、たとえば英貨債、米貨債等の募集に当っても、国が始まって以来ディフォールトしたことはないということが非常に大きな誇りであり、またそれによって対外的な信頼を続けてきたものと確信するわけでありまして、今後もこの考え方が絶対必要だと思うのであります。特に賠償協定については、いろいろ政府のお考えもあるようでありますから、その点については不安を持たないで信頼してやっていけると思うのであります。ところがこの問題に関連して、ちょうだいした対外債務説明資料の中に、たとえばタイの特別円の問題が記載されておりますが、この資料によりますと、戦時中日本がタイと締結した特別円協定による処理は全部終了して、円満に進捗しておるというふうに書いてあるわけであります。ところがこれは申すまでもなく、現金で支払うことになりましたポンド貨のほかに、いわゆる借款及び投資ということによって処理しなければならぬ部分があるわけでありまして、この点については全くその後進捗しておらぬわけであります。この点は先般事務当局にもお尋ねしたわけでありますが、率直にいっていささか心もとない御答弁であったわけであります。これは協定の条文から見れば、十分に日本側の態度というものは説明がつくと思うのであります。しかしその後、たとえば今年の一月でありますか、タイ国のナラディップ外務大臣が来日いたしましたときにもこの問題が提起されて、関係者一同の相当な努力が重ねられたのであります。しかるにもかかわらず、ナラディップ外相が帰国後において、本件については国際司法裁判所に提訴すると発表したということが、外電でも伝えられておるようなわけであります。この点は、私は非常に遺憾千万だと思うのでありまして、この問題に関連して前駐タイ大使の太田氏がその後タイ国から受けた処遇その他も巷間いろいろ伝えられております。これは関係の太田大使にも非常にお気の毒だと思うのでありますが、これは一大使の問題でもございませんし、その後渋沢氏が新しい大使として赴任されて不日信任状捧呈というような事態にもなろうと思います。当然この問題が起ってくることは明白な事態でございますが、すでに非常な御関心と御配慮をされておることとは思いますけれども、ちょうど両大臣おそろいでございますので、この際日本政府として、新たにどういうふうな態度でこれを取り上げていくかということについての御見解を明白にしていただきたい。この一つの点だけお伺いいたしたいのであります。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 この問題はまことに私どもも心配をしておる点であります。最初ナラディップが参りましたときに、先方はお互いの申し合せを自分に都合のいいように解釈したようであります。それで昨年バンドン会議に参りましたときにも、日本がこういうふうに解決してくれた、こういうように日本に対して非常に好意的な発言がナラディップからあったわけであります。その後この問題についていろいろ検討いたしますと、先方は、これは日本から、長期にわたってもらうものだ、こういうふうに解釈しておられるのであります。ところが日本側の方は、これは長期にわたっての借款であるというふうな解釈があった。こういうことでだいぶその間の解釈は違っておったわけであります。これを調整するために本年の一月またナラディップが参りまして、いろいろ折衝されたわけでありますが、これは日本側といたしましても、この問題につきましては、普通のフィリピンとかビルマの借款問題と同じように考えることはできない。これは日本はもっと深い責任がある。それではどの程度この責任を持つべきものだということにつきましては、今ひとり外務省だけでなく、大蔵省それから各関係省の間において協議しておるわけであります。けれどもこの問題の結論をとってしまうということは、日比賠償の上におきましても、またインドネシアの賠償においても、またビルマと締結した賠償につきましても、これは投資の問題と誤解を生じやすいわけでありまして、私どもは十分検討いたしますが、この解決を少し延ばしてもらいたいということを、実際はざっくばらんに申し上げまして、外務省に申し出ておったようなわけであります。幸い今日フィリピンとの問題も投資の問題ははっきりいたしましたものでありますから、そうすれば今度はフィリピンあるいはビルマの関係と切り離してある程度日本は責任がある、それではどの程度の責任を持つべきものかということもよく考えまして、検討いたしたいと存じておるわけであります。結論的に申しますと、結論にはまだ到達いたしておりませんが、なるべく早く解決して日本とタイの間の関係を好転させたいと存じております。

愛知揆一自由民主党

○愛知委員 それでは外務大臣が帰られましたので、外務大臣の答弁を伺うことを後刻に留保しておきます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 その点はさっき私も触れようと思っておったのですが、借款は公文で政府は何ら義務を負わない。もっぱら民間でやるのだ、そういう態度で今おられるわけですが、そういうはっきりしないような態度であったから、タイとの特別円、経済協力ということは行き詰まるだけでなくて、紛糾化しているのだろうと思う。ですから長官にフィリピン側の借款に対する態度というものを御質問したわけですが、あの答弁によると、大体そう心配なこともないという気がしてきたのですが、もう一度その点はっきり御確認願いたい。というのは将来政府がもっとこれに協力すべきだということを、フィリピン側から申し入れられてこれが紛糾化するというようなことは、絶対あり得ないという御確信がありますかどうか。もう一度はっきり御答弁をお願いしたいと思います。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 これは交換公文にも書いてあります通りに、期限がないのです。二十年ということをかりにきめておりますが、二十年間に二億五千万ドルの借款ができなかったときにはまたお互いに相談し合おうじゃないか、こういうことがあの交換公文にも書いてあります。これは両国の間の親善関係がよく結ばれてくれば、二億五千万ドルにとどまらす、もっと大きな話が進め得ると思う。これは両国の間の国民感情であります。両国における利害関係ということが大きな問題になっておるわけでありますから、これはうまくいかなかったならば、おそらく一文もいかなくなるだろうし、よくいけば多くなるだろうと思いますが、これは主として両国の民間の商社の個人間の商売のやり方、仕事のやり方によることでありますから、両国政府はなるべくこれをじゃましないというだけのことをやっていけば、おそらくは相当金額は上るだろうと思っております。それができなかったというときには、両国政府とも何ら責任を負うことはないということははっきりしております。ただしそれが実行し得るように、できるだけ努力しようじゃないかということだけの責任があると言えば言えるわけであります。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 ただいまの高碕長官のお話を聞いておりますと、政府は何ら責任がないとかいうふうにもとれるのですけれども、そうであるとするならば、どうしてこの交換公文という形でやったのか、いっそのこと民間の商社同士にまかせておけばいいのであって、交換公文で政府がはっきりそういう言葉を使って——じゃまをしない云々でなくて、何か促進させるというような言葉を使っている理由が、どうも私どもには納得できないのです。民間同士にまかしておいた方がいいのじゃないかと思うのですが、この点をお伺いいたします。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 まだ国父が回復していないときでも民間でやっておるわけでありますから、こんなものは書かないでもいいじゃないか、交換する必要がないじゃないかということはお説の通りであります。このまま置いておいていいじゃないか、こういうわけでありますが、先刻来るる御説明申し上げました通りに、初めフィリピン側が八億ドルという数字にとらわれて参りました結果、二億五千万ドルだけは借款にして、できるだけ政府が努力しようじゃないかということになっておりますので、その交渉の経過におきましてそういうことが起ってきたわけであります。その意味におきまして今日の結論に達したようなわけであります。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうすると、たとえば先ほどおっしゃいましたように、二十年たったらまた話し合おうじゃないか、うまくいかなかったときに話し合おうじゃないかということでございましたが、うまくいかなければ政府の責任でするということも考えられるわけですか。

高碕達之助自由民主党農林大臣臨時代理・経済企画庁長官

○高碕国務大臣 それは二十年たったときには、両国政府の中でどこまでもまたやっていこうじゃないかという話し合いをしてそれができなかったときには、もちろん政府の考えでもうこれはだめだからよそうじゃないかといえばよすこともできるわけです。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 それでは暫時休憩いたします。  午後一時から再開いたします。    午後一時七分休憩      ————◇—————    午後三時四十七分開議

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 これより会議を開きます。  この際参考人招致の件についてお諮りいたします。内灘試射場に関する問題について、来たる五月三十一日来週木曜日に参考人を招致し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。  なお参考人の人選につきましては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。     —————————————

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 それでは午前中に引き続き、日比賠償の問題について、質疑を許します。松本七郎君。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 交換公文の第一項の支払い期限は五年と限定されておるわけですか、第二項は期限が付されておりませんから、これは二十年間に支払えばよいということになりますか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 その通りでございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 この前、たしかあれは戸叶委員の質問に対する答弁でしたが、第一項がいわゆる実質的な現金賠償ではないかと、こういう質問がたしかされたと思うのですが、しかしこれは桑港条約の規定の趣旨に沿ったものだ、こういう御説明があったように記憶しておるのです。これは外国から原料を打ってきてそれに加工だけ、やるとか、あるいは沈船引き揚げの場合における役務とは、これは性質が違ったものではないかと思うのですが、やはり実質的な現金賠償を向うが主張したために、そのような新たな処置を考え出さなければならない事情になって、実質的な現金賠償をここに取り入れたのだという説明の方が、私どもには納得しやすいのです。あくまでもこれは桑港条約の規定の精神に沿ったものだという説明では、どうもふに落ちない点があるのですが、いかがですか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 交渉の経緯から申しますと、先方は現金賠償をほしいという要望が相当強く前からありまして、その一つの現われが、いわゆる現金賠償のワクをきめるという形で先方の原案としては出てきたことは事実であります。が、先刻高碕長官から御説明申しました通り、日本としては、現金賠償は絶対にできないということで応酬いたしました結果、とにかく何かのワクを一つ作ってもらいたい、そのワクの内容は役務賠償でもちろん差しつかえないけれども、ワクを作ってもらいたいということになりまして、結局今のこの交換公文の第一項に予定されております二千万合衆国ドルのワクというものは、そういう経緯でできたことは事実でありますが、しかしその内容は、先方が当初考えましたような現金賠償とは全然違いまして、サンフンシスコ平和条約十四条に予定しておりますような役務賠償ということになったわけであります。なおサンフランシスコ平和条約によりますと、原料は自分が持ってくるという若き方になっておりますが、これはもちろんその国で産出する原料についてはその国が持ってくるということが考えられますけれども、その国で産出しない原料につきましては、結局その国が原料を買って、その買った原料に対して日本が賠償として加工して生産品にして積み出すということになるわけでありまして、今回の規定されましたところと、サンフランシスコ平和条約十四条に規定しておりますところとは、差異がないと考えております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 どうも純然たる役務賠償とはやはり実質的には違うような気がするのですが、これはさらに十分検討してみたいと思います。それでそういうふうな経過がしからしめたのか、何か表現の仕方も非常に難解なのです。私ども事情を知っており、あるいはこれがいわゆる役務賠償の規定なんだと言われれば、ああなるほどということはわかるのですが、初めにちょっとこれを見ると、おそらく常人ではわからないのではないかと思う。この「同協定に基いて供与される生産物以外の日本国の生産物で通常フィリピンに積み出されるものの加工に充てられる日本人の役務に対し、」、これは普通の人がただこれを見たのでは、何のことを言っているのかきっとわからない。われわれ内情を知っておればこそこれがどういうふうなものであるかということがわかるのですが、もう少し普通の人が読んでわかるように、不明確な表現を避けた常識的な表現の仕方はできないのですか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 この交換公文の書き方が、どうしてこういうようになったかという事情をちょっと御説明いたしますと、最初の案では「同協定に基いて供与される生産物以外の」という字句はなかったのでありまして、「日本国の生産物で通常フィリピンに積み出されるものの加工に充てられる日本人の役務に対し、」という書き方であって、相当簡明にわかりやすく書いてあったのでありますが、フィリピン側の方の考え方から、そういう書き方にすると、「日本国の生産物で」ということにしてしまうと、この賠償協定で供与される賠償物件自体までこれに入るように読めないとも限らない、賠償で供与されておるものについて、その加工に要した費用をまた日本から役務賠償としてとるというような解釈になると、同じものを二回賠償で支払いを受けるようなふうになる、そうするとその分だけ賠償の金額が結局実質上は減るようなことになるという、非常にわれわれから見れば、不思議な解釈と思われたのでありますが、先方から見るとそういう心配があるから、ここにいう「日本国の生産物」というのには、賠償として提供される生産物は含まないのだという趣旨を、はっきりしてもらいたいという注文がありまして、なるほどそういう心配があるとすればそれももっともであると考えて、「同協定に基いて供与される生産物以外」という字句が入ったのであります。その関係で非常にごたごたしてちょっと難解になりましたけれども、経緯から申しますと、その考え方はそう複雑な考え方ではないのでありまして、日本国から積み出されるもののうちの加工に必要であった価額のその部分は役務と見るべきものであるから、その分を役務賠償として日本が負担しようという趣旨でございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 これは役務賠償の規定をこうやってわざわざ第一項で特に規定するのでありますから、当然こういう「同協定に基いて」云々というものはなくても、それであることははっきりしておるのではないか。日本政府はそういう立場で説明をされたのでしょうか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 その通りであります。これは賠償で供与する物件のうちの加工に相当する部分をまた賠償として計算するというようなことは、想像できないところであったのでありますが、先方としてはやはりその点に疑念があるということで、こういう表現を用いることに結局同意したわけでございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 それから十二条では、一方の政府がこの規定された期間内に仲裁委員を任命しなかったとき、及び第三の仲裁委員を任命するに当って合意がなされなかったときに、いずれか一方の政府は国際司法裁判所に要請することができることになっておりますが、これは任意規定でしょうか。絶対要件ではないと解すべきでしょうか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 どう申しますか、これによって権限を付与した規定でありまして、その権限を行使しないことはもとより自由と考えます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 この要請し得るという規定をここに挿入すること、自体について、国際司法裁判所の裁判長の了解は済んでおるのでしょうか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 この協定を調印する際、国際司法裁判所長にこういうことを要請してはいないのであります。この協定が御承認を得まして発効した暁には、さっそく国際司法裁判所長に、こういう規定を設けた条約ができたということを通告する手はずにいたしております。こういう種類の条項は相当国際間に行われている先例があるわけでございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 通告して裁判所長の方から拒否されたというような例はございませんか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 そういう例はないのでございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 そうすると、この場合は万一国際司法裁判所に出して何らかの決定がなされた場合には、その決定は絶対的な拘束力を持つものでしょうか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 国際司法裁判所長に要請いたしまして、国際司法裁判所長がこれを選定いたしましたならば、その選定した人は、この規定に基いて両国政府がこれを承認するわけでございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 この場合も、やはり国際司法裁判所に要請するとき、両当事国の合意あるいはその応訴の条件は必要になっておるのでしょうか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 この協定自体ですでにそういうことを同意しておりますから、あらためて相手国の同意を取りつける必要はないと考えております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 借款に関する交換公文第三項において、「両政府は、借款の提供を、関係法令の範囲内で容易にし、かつ、促進するものとする。」こう、ありますが、わが国はどの程度の義務があって、フィリピン側にはどの程度の権利があるのですか。その法的根拠というか、その所在を明らかにしていただきたい。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 この第三項の第一段の規定は、両政府が関係法令の範囲内で容易にし、かつ促進するということになっておるのでありまして、この第一段に関する限り、日比双方の政府のするべきことをきめたのでございます。従いまして、法令の範囲内でできるだけ便宜を供与するということが義務の内容になるのでありまして、その具体的な問題といたしましては、たとえば日本側でするべきことはどんなことであるかということにつきましては、念のためにその次の第二段で規定してあるのであります。現在日本政府が日本輸出入銀行法によりまして日本輸出入銀行を設置いたしまして、これ、に政府の資金を供出して、その資金を民間の人が利用することによって、いろいろ輸出を促進し、あるいは経済提携を行うということができる仕組みになっております。その仕組みを使わせるということが、この容易にし、かつ促進することの一番大きな点であろうと思います。それ以外に、たとえばあるいはパンフレット等を発行してこういう制度を周知せしめる、あるいは相談に応じているいろ便宜を供与するというようなことがあろうかと存じますが、大きなものは、輸出入銀行の制度を使うということが、現在のところでは一番大きなものでございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 この借款について紛争が生じた場合の調整はどうやってやるのか。その規定がないような気がするのです。この借款の契約によって生ずる紛争に関しては、第五項ですか、それにありますが、それ以前の、借款の基本問題についての紛争が起きた場合には規定がないように思うのですが、それはどういうものでしょうか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 お説のように、借款それ自体の紛争につきましては、第五項に規定があるわけでありますが、その根本になるこの交換公文自体につきまして、双方に解釈の相違等で紛争が出た場合の規定が、これには書いてないのであります。従って、一般原則に従って、外交ルートでそれを協議、処理するということになるわけであります。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 借款に関する交換公文第三項で、「両政府は、この協定の円滑な運用のため、借款の提供及び返済の進ちょく状況を随時共同で検討するものとする。」こうありますが、「この協定の円滑な運用のため、」云々という、「この協定」というのは一体何を言うのですか。賠償協定そのものを言うのか。すなわち賠償協定の円滑な運用のため、借款問題を共同で検討するというふうに結びつけますと、賠償協定と借款に関する交換公文が不可分の関係を生じてきはしないか。借款の問題は賠償協定の円滑な運営に一体どのような影響があるのか。政府の今までの主張ですね、借款は賠償協定とは関係がないというこの言明と、そこに矛盾が生じはしないかと思うのですが、いかがでしょうか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 ここに書いてあります協定というのは、今回の賠償協定をさすという意味で「協定」と言っておるのではないのでありまして、普通一般の名詞といたしまして、両国政府間の合意というような意味で、「協定」という字句を使っておるのでありまして、これはむしろこの交換公文できめましたこと自体を、ここではさすのであります。従って、賠償協定の意味には解釈していないのでございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 これはこういう場合の用語として、そういう交換公文できめた内容をさす場合に、「この協定」というように表現することは適正なのですか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 これは必ずしも適当でないように思います。この交換公文自体は、実は英語で作成いたしました。英語だけが正文であります。ここへ一応仮訳の意味で日本訳をつけておりますが、この翻訳は必ずしも適当でなく、むしろ「取極」というふうな訳の方が適当であろうと思います。英語の本文ではアレンジメントというふうになっておりますので、この訳は今後改正いたしたいと考えております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 その「取極」なのですが、第六項に「この取極」とこうあるのです。これは一体何の取りきめか。やはり交換公文であって「取極」ではないと思うのです。一体どこでだれがいつ何の取りきめをするかという問題が生じてきますが、ここでも「取極」ということは、すなわち交換公文であるというふうに解釈しておられるのでありますか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 お説の通りでありまして、この第六項にある「この取極」というのは、この交換公文の内容をなしておる取りきめの意味であります。交換公文の最初の前文に、本全権委員は、これこれの「取極を確認する光栄を有します。」という字句が出ておりますが、ここに書いてあります「取極」が、第六項に書いてある「取極」と同じものになるのでありまして、実資、内容について表現しておるのであります。「この交換公文は」と書くことも可能であったかと思いますが、この内容の合意をさす意味におきまして、「この取極」という字句を使ったのであります。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 そうすると、今後訂正される場合には、交換公文の内容の意味をさす場合には、「取極」という言葉でまとめようという御意見ですか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 そうしたいと思っております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 それから、借款は二十年間にわたって、行われるわけでございますが、この期限までに、定める金額に達しなかった場合に、この有効期限を延長するために一方の要請によって協議する、こういうことになっておるわけですが、協議して妥結に至らなかったときにはどうするのですか。この効力というものは自然に消滅するのか、ただ協議に応じさえすればいい、協議を一方から要請してきた場合に協議はするが、必ずしもそれには拘束をされない、責任はない、そういうふうに解釈していいのでしょうか。

中川融外務事務官(アジア局長)

○中川(融)政府委員 御指摘の通りでありまして、もし一方が有効期限延長の協議をしようということを申し出ました際は、その協議に応じなければいけないのでありますが、協議が不調に終った場合には、当然この交換公文は失効するわけであります。協議を行なってまた向うの申し出に応じなければならない義務までは、定めていないのであります。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時十一分散会

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