外務委員会 第32号
- 発言数
- 53 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1956/04/14
会議録
○山本(利)委員長代理 これより会議を開きます。 この際、森下外務政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。森下外湯政務次官。
○森下政府委員 先般来、在英西大使は、ロイド外相に対しまして、国会の原水爆実験禁止決議を伝達しておりましたが、本件に関し、数次にわたって、レディング外交担当国務省と会談を行いました結果、四月四日にレディング同国務相から、本年五月モンテ・ベロ諸島で行われる予定の原水爆実験の実施に関するイギリス供給省の発表、及びその際の危険区域に関する海軍省通達について通報を受けましたので、西大使は実験地域方面に行動する邦人漁夫等に対する危険防止、及び万一被災の場合における補償の問題について、重ねて申し入れを行なったところ、去る四月十日に至りまして、レディング国務相から次のような回答が参りましたのでこれを御報告いたします。 記 英国政府は本件実験を安全裏に行い得ると信じている。将来のいかなる実験に際してもその責にある英官辺が生命財産に対する災害の防止につきでき得る限りの注意を払うことはもちろんである。 事前通告の問題については、本年中に行われる原爆実験のうちあるものが南オーストラリアの陸地で行われることはすでに西大使の承知せられるところと思う。従って海上における危険の問題はこの場合には生じない。またモンテ・ベロ諸島で行われる実験については四月四日レディング国務相より西大使に対し、その前日ロンドンとキャンベラで発表された公告の写しを手交済みである。 これら二組の実験に先だち、科学監督が、オーストラリア気象台の提供にかかる気象情報に基いてフォール・アウト(放射能チリ)の模様について判定を行う。一方オーストラリア政府の安全委員会も別例に右の判定を行う。爆発実施の決定は、科学監督とオーストラリアの委員会の両者が安全条件が満たされていることにつき意見一致を見た時にのみ下される。 右の実験の結果、日本国民に対し万一危害が及んだ場合の補償の問題については、遺憾ながら英国政府は事前の約束を与えることはできないが、すでに述べたように、英国政府は生命財産に対する災害防止のためあらゆる注意を払うものであり、従って災害補償の問題は生じないものと確信する。以上がわが国の受けました回答でございます。
○山本(利)委員長代理 ただいまの発言に対し、質疑の通告があります。順次これを許します。並木芳雄忍。
○並木委員 ただいまの次官の発表に対して、質問しておきたいと思います。その第一は、英国の返事は、結局災害防止のために、あらゆる注意を払うから、災害補償の問題は生じない、こういうふうに言い切っております。しかし日本としては、災害が起る可能性が多いからこそ、再び西大使を通じて向うへ申し出をしたのでございますが、政府としては、この回答を受け取って、これならばまず災害防止の点は大丈夫であるという確信を持たれましたかどうか、その点を伺いたい。
○下田政府委員 災害発生の可能性が多いからこそとおっしゃいましたが、私どもといたしましては、可能性が非常に多いとは、実は思っていないのであります。しかし福龍丸の例もあることでございますから、万一災害が発生するようなことがあっては困るので、万全の災害予防の措置をとってくれということと、そして万一不幸にして事件が起った場合には、十分な補償を考慮してくれ、そういう申し入れをしておるわけであります。
○並木委員 この回答では、万一不幸にして災害が起った場合の補償問題というものについて、向うは言質を与えておりません。しかし、もし起った場合には、当然政府としてはそれに対して補償の請求を申し入れる心がまえができておるかどうか、これは当然であろうと思いますが、できておりますかどうか。
○下田政府委員 それは当然のことでございます。今般のイギリスの回答は、先般のアメリカの回答と同じように、補償を行うという事前の約束はできないという立場に終始いたしております。わが方といたしましては、将来事件が発生しました場合に、補償の要求をいたすということはもちろんでありますが、現在におきましても、補償は要求するものであるというわが方の立場は、依然として堅持しておるわけでございます。
○並木委員 そこでお伺いします。この回答に対しては政府としては、さらにもう一度向うへ申し出をするような準備を進めておるかどうか、あるいはもうこれで一応承わっておいて、成り行きを見守るという態度で進まれるのか。この前の先方からの通告と同じように、われわれ国民としては、国会で先般あれだけの決議までしたあとでございますので、一まつの不安もあるし、物足らない感じを抱くのは、無理もないところであります。ですからもう一回強い申し入れをしてもらいたいというような気もいたすのでございますが、政府はどういう方針で臨みますか。
○下田政府委員 その点につきましては、先ほど申し上げましたように、わが方は万一不幸な事件が発生した場合には、補償を要求するという建前を一貫して持しておるわけでございますから、今回の文書回答に対して、さらにわが方が文書の申し入れをするかどうかという点は、検討中でございますが、しかしこの一貫した建前に基きまして、今後あらゆる機会にわが方の主張を継続していくということは、はっきりいたしております。
○並木委員 アメリカの実験の場合と違って、今度は初めて英国の実験の問題がわれわれ日本に当面してきたのでありますから、ただいまの政府の答弁をもって今後の善処を安里しておきたいと思います。 〔山本(利)委員長代理退席、委員長着席〕 今申し上げました通り、アメリカはやはり英国と違って、すでに多大の危険と多大の損害を日本に与えたのです。ですから局長は今アメリカと同じような回答であったということでございますが、われわれはアメリカに対してはより強い、もっと突っ込んだ請求もし、その回答も得たいと思っておるのでございます。ビキニ、エニウェトクの実験も四月二十五、六日だったと記憶しております。もう間もなくだろうと思いますが、その点について国会からも、われわれは強くアメリカに対する申し入れをしておいたのでございますが、その後何らか情勢に変化はございませんか。実は昨月でしたか、アメリカの原子力委員会の一人、マレー原子力委員だったと思いますが、アメリカで証言をして、原水爆実験のごときものは、現状においては必要と思わないという、まことに重大な発言をしております。これなどは、もちろんアメリカの国内においても非常な反響を呼んでおることと思いますが、それに一番関係の深い日本としては、われわれ黙過することができないわけであります。当のアメリカの原子力委員の一人でさえも、こういうことを言っておる以上は、この機会に、しかも実験がだんだんと間近に迫っておるこのときに、さらに政府として強くアメリカに申し入れをすべきであるとも思いますけれども、その後の情勢の変化並びに今後の対策について、明らかにしていただきたいと思います。
○下田政府委員 この問題につきましては、アメリカ、イギリス両国に対しましては、あらゆる機会にわが出先使臣が、わが方の主張を繰り返し強く徹底的に申し入れておるわけでございます。四月二十日からの一般的の予告はございましたが、あるいはこの次にはもう少し具体的な予告があるかもしれません。そういう機会もむろんとらえまして、被害防止のための万全な措置をとることと、万一事件が起った場合には十分な補償を要求するということは、繰り返し申すことだろうと存じております。またそういう旨の一般的訓令は、もう前から出ておるわけでございます。 そこで、ただいまのマレーでございますか、アメリカ人自身が原爆実験は必要はないと育っております。アメリカ国民の中にもそういう意見の者はおるわけでございます。しかしながらアメリカ政府の正式の見解といたしましては、先般日本によこしました回答の通り、日本側の意見には共感を感じておる、またこういうことがなくなるのを願う点において、他のいずれの国にもアメリカは劣っていないものであるということを申した後に、しかし現在の段階においては、有効な保障なくして実験を放棄することが国際情勢上できないというのが米国政府の正式の見解でございます。またイギリスの先般の回答にございましたように、さきにイギリスの国防白書で申し述べたように、現在の国際情勢においては実験を放棄することはできない、そういうことを言っております。
○並木委員 いずれにいたしましても、いろいろ外交問題が山積して政府としても大へんだろうとは思いますけれども、いやしくもわれわれが国会で決議をしたこの重要な悲願また要求、こういうことは忘れることなく、実際に実験が間近に迫り、これが行われるということになりますと、今度のはスケールの非常に大きい実験でございますから、十分注意をして、さらにアメリカ、またただいまの英国、それからまたソ連などに対しましても十分申し入れをして、万全の措置を期してもらうように特に要望して、あとの質問者もあるようでございますから、私は一応質問を中止しておきたいと思います。
○前尾委員長 穗積七郎君。
○穗積委員 もう一度外務省からお尋ねいたしますが、この通達を受けて外務省並びに西大使は、アメリカ政府に対してどういう措置をおとりになったのか、正確にもう少し詳しくお話しをお願いしたいと思います。
○下田政府委員 アメリカ及びイギリスに対しますわが方のとりました措置はたくさんございますが、その大筋は原爆禁止というものが、国会の決議に現われた日本国民の強い要望である、こういうことは禁止しなければいかぬということを強く徹底させるのが第一主眼点でございます。第二は、にもかかわらず現実に国際情勢上の判断から、この実験を放棄し得ないとしておる英米両国が、もしやるならその際には昨年の例もあることでございますから、日本国民には被害の及ばないように万全の措置をとってくれということが第二点でございます。この万全の措置にもかかわらず万一被害が起った場合には、十分な補償をしてくれというのが第三点でございます。そこで第一のこういう実験は禁止してもらいたいという日本側の見解につきましては、アメリカ、イギリスとも、日本国会の決議を成立に至らしめた人道的な動機を認識し、かっこれに強く共感するものであるというのが米国、英国政府の共通した答えでございます。その人道的な考え方には強く共感をしながら、なおかつ現実の国際情勢上できないというのが彼らの立場でございます。それから被害が起らないように万全の措置をとってくれということは、アメリカ、イギリスともにできる最大限の予防措置をとるということを確約いたしております。そういたしますと残る第三点は法律問題でございますが、事前に補償を約束することはできないという点だけが、現在日本側と米英両国政府との間の相違点でございます。これは法律問題の論争を今後蒸し返して続けるかどうかという点でございますが、その点につきましては、実はただいま外務省としては慎重に検討を加えております。必要があれば法論問題の論争はやることが適当であるかどうか、またその内容をどういうようにプレゼントするかという点を、ただいま慎重に検討いたしております。
○穗積委員 私がお尋ねいたしたのはそういうあなたの中止申し入れ、それから安全措置、それから万一の場合の補償、そういう一般的な態度についてではございません。この今の返事は御報告によりますと四月十日にあったわけですが、四月の十日にあったときに、西大使はこの内容を見て、一体これに対して今までの日本政府並びに国会の決議と違っておるので、しかも内容についてもはなはだしく不誠意なものである、思い上った声明であるから、これは不適当であるということを、即座に意思表示されたのかされないのか。あるいはまた逆にごもっともなことでございますから本国政府に対して伝えて、しかるべき同等を待ちますと言ってやったのか、そのことと、それからこれを受け取った日本外務省が、十日受け取って以後にどういう態度をおきめになり、それでイギリス政府に対して一体どういう御回答をなすったのか、それを聞いておるのです。一般的な今までの原水爆実験に対する抽象的な態度を聞いておるのではございません。イギリスのこの四月十日の通告に対する後の西大使がとった措置、態度並びに日本外務省がとった措置または態度、またはとろうとする考え、これを伺っておるのでありますから、まず第一には今までにこちらから向うに何らか意思表示を西大使または外務省からなさいましたかどうか、それを聞いておるのでございます。
○下田政府委員 西大使に限りませずわが方の出先使臣は、日本の主張に全的にミートしない回答に接しました場合には、これは満足の意を表するわけにいかないのであります。常にわが方の主張を繰り返して、留保して申しておるわけでございます。
○穗積委員 それから外務省は受け取ってどうしましたか。
○下田政府委員 外務省はただいま申しましたように、さらに文書による申し入れを追っかけてやるかどうかという点につきまして、慎重に検討いたしております。
○穗積委員 文書をやるということであればこれから文書を作るのでしょうが、骨子はどういう趣意でございますか。
○下田政府委員 先ほど申しましたように、第一点は原爆を禁止しなければならないという人道上の見地でございます。この精神そのものには、先方も共感を表しておるわけであります。でありますから禁止の実現に今後とも、この上とも努力してくれというのが第一点だろうと思います。第二の万全の措置ということは、もう先方も言っておるのでありますから、これはあまりくどく言いませんが、なお念のために万全の措置ということは、何度繰り返しても言う必要があるかと思います。第三点の法律問題につきましては、これはもうかつて日本側と米英側との意見が一致したことがないものでございます。私ども事務当局の折衝でも、常に補償を要求し続けておるのでございます。わが方の主張は先方でもよくわかっております。しかしそれをもう一回徹底するために申し述べるということも考えられるわけであります。
○穗積委員 この回答を見ますと、第一、大体不届きでございましょう。一言で言えば、安全については自信を持っておるから心配するなということなんです。直接福龍丸のような事件が起ることが被害ではございません。海流の汚染の問題にいたしましても、あるいは魚族に対する汚染の問題にいたしましても、あるいは空気汚染の問題にしても、被害はあるにきまっております。日本国民の生活に被害を与えないなどということは、思い上ったことを言うなというのだ。こういうことを言うのは大体不届きですよ。それからその次に、そうしておいて万一被害を生じた、災害を生じた場合においての補償の問題については、これはこちらはやってはいけないという態度をあくまで原則としては堅持するわけだが、向うは、あなた方はやめよと言っておる、それももっともだ、また被害が起きるかもしれない、また被害が起きたならば——でもなおかつ国際情勢上あるいはこちらの必要上、こういう理由でやらなければ、ならないのだという場合に、被害が絶無であるとか、従って補償問題なんかは返事をする必要がないと言うようなことは、私ははなはだ不届きな回答だと思うのですね、通告だと思うのです。被害がないなんということは、だれが一体約束できますか。第一の技術的な判断からしても、魚族、海流、空気に対する汚染はもう明瞭でございましょう。それが特に海国であり、漁業国である日本にとって、どれくらいの被害が生ずるかということはもう明瞭でございます。そうしておいて向うからそういうことで返事をよこすならば、起きた災害に対してはいかようなる補償でもいたします、といって回答をよこすのが当りまえなんです。不届きしごくだと私は思うのです。そういう内容についても一つ具体的に論駁してもらいたいと思う。そして、結論としてはやめるべきだということでございましょう。外務省はどういうふうにお考えになりましょうか。この回答の内容について少し外務省の所感を述べていただきたい。
○下田政府委員 一口に被害と申しましても、三つ考えられると思うのであります。原水爆の実験をいたしますために大気中または地上、海上にフォール・アウト、原子のちりが生じます。これは地球上の全人類に関係がある問題でございますが、この点につきましては、先般の米国の回答にもありましたように、その放射能は、インシグニフィカントという字を使っておりますが、われわれ人類が太陽から平常受けておる放射能に比べても少いものである、インシグニフィカントである。これは実は主たる問題ではないので、第二のそれに次いで広い範囲の問題は、海水中に放射能のちりが落ちて、それを魚が食って、その魚をまた人間が食うためにこうむる汚染、この点は、純粋の科学問題だと思います。一昨年は何でも放棄したわけでありますが、先般説明がございましたように、肉は捨てなくても大丈夫だというのが、現在の科学上の知識からきた結論であるようでございます。だからといいまして、きびが悪いからやはり全部平気で食うわけにいかぬ。そういう場合の損害、これは当然要求しなければならぬと思います。これが第二に広い問題でありますが、さらにこれはイギリスの実験の場合には現実的に起るかどうかわかりませんが、漁船等が迂回して、いかなければならないために生ずる損害、石油を空費し、また船の航行時間を空費するということからくる損害、これも当然要求すべき問題だと思います。それから第三の、これは最も困る損害ですが、それは福龍丸事件のような不幸な事件でございます。船体並びに乗員、中には死者も出るというような、最もおそろしい被害でございます。これにつきましては、第一に、そういうことが起らないようにしろというのがわが方の強い要求でございますが、不幸にして起った場合には、十分な補償をしなければならないというのが、わが方の主張でございます。
○穗積委員 第一のちりによる被害の有無のことにつきましては、アメリカだけではなくてその他の外国の学界の事情、それからさらに大事なことは日本の物理学界、医学界の意見も、当然日本外務省としては検討すべきであって、実害があると確定的には言えないという段階の限界があると思うのです。しかし全然ないと判断する確定的な科学的な根拠もないというような不確定要素というものが、現強の学界においては、われわれの聞くところではボーダー・ラインに属するような、判定が医学的に見ていろいろあると思うのです。そういうボーダー・ラインですら、逆にいえば、これがないと断定することの材料にはなりません。それから今あなたがおっしゃったように、漁業、航行、その他魚族によりますわれわれの経済または国民生活に及ぼす影響というものは、これはしごく明瞭でございます。それに何ぞや。安全は心配するな、だから従って日本人に対する補償問題が起るはずはないのだ、だからそんなことを考える必要はない、こういう態度ははなはだ不届きだと思うのです。ですからそういう趣旨で、今の局長の御答弁は、大体私の申し上げることを理解しておられるようですし、この内容についても検討しておられるようですが、そういう点はあらゆるデータを、あるいはあらゆる具体的なケースをつぶさにお書きになって、これを一つ論駁して、結論としてはおやめなさいというふうにすべきだと思いますが、それでよろしゅうございますね。
○下田政府委員 最後の問題は、同じ自由主義陣営に属する日本といたしましては、非常に大きな政治問題だろうと思います。もとより原爆実験をやめてくれという強い要求と、また被害の補償に十分な誠意を示してくれ、そういう原則的の主張はございますが、最後におっしゃいます点は、やはり政府として御決定を願わなければならないと思うのでありまして、私どもからちょっとお答えできません。
○穗積委員 いや、しかし具体的には少くとも百歩譲って、そういう政治的な判断については政府がやるとして、局長から答弁できぬにしても、少くともこれだけのことは言えると思うのです。被害が絶無だということの根拠が間違っております。従って補償問題については出前に確約をするのが当りまえのことなんだ、それすらできないようならば、それがはっきりするまでやってはいけないということは言えるでしょう。条件付といたしましてもそれだけのことはここで明瞭になると思うのです。そうでしょう。
○下田政府委員 米国の場合は、少くとも先ほど申しました第二カテゴリーの被害が起ることは確実であります。船は迂回しなければなりませんし、漁業上の被害もあることはまず当然だろうと思うのです。これは早晩資料を付して要求しなければならない。イギリスの方の場合は、陸上とモンテベロの島の上と内方やるわけですが、陸上の場合はまず日本に関係する被害は発生しないだろうと思います。海上の方につきましては、実はモンテ・ベロに近い方に日本の真珠貝漁業者が行く可能性があったのでありますが、先般……(穗積委員「被害は甚大ですよ、明瞭ですよ、航行、漁業ともに」と呼ぶ)わが方が真珠貝をとらせろと主張しておる区域が実はあるのでありますが、その交渉が成功すれば行くことになる区域が、実は関係があるのであります。現在のところそこまで行ってとらせろという要求に対しまして、豪州側が応諾いたしておりませんので、もし行かないことになりますと、モンテ・ベロの方も、実は被害が発生するということは言えないのであります。
○穗積委員 被害の場合でいもろいろなケースが考えられるわけですね。段階が考えられるわけでしょう。そういうのは明らかに被害ですよ。被害でございますよ。 それからもう一つは、現在考えられる、事前に予想せられるところでは、たとい被害が少いと仮定しても、少くとももしあったならば、こういうような他人に迷惑をかけることをやるのだから、補償については幾らでも考えますという態度を明らかにすべきであるのが、逆にまるでそんなことは考える必要はないのだというようなことで、やって下さいといって、おやりになるのを黙っておるというようなばかなことは、どんな政府でもあり得べからざることだと思うのです。どんな条件でもやってはいかぬという態度をとらぬにしても、こういう回答でやることを了承するなんていうわけにはいかない。だからこういう条件でやらせるという態度を政府がおとりになるかどうか知らぬが、百歩譲って論理的におとりになると仮定しても、こんなことでは困るということぐらいは少くともあなたが言えると思うのです。こういう不誠意な無責任な回答では困る。これだけははっきりしておいていただきたと思うのです。
○下田政府委員 この被害があった場合に、補償しないとは決して言っておらないわけでございます。ただ今の国際法上の問題があるために、前から約束することだけはできないという言い方でございますので、私どもももし現実に被害が発生したならば、十分これを要求する立場にあると思います。
○前尾委員長 岡田春夫君。
○岡田委員 簡単に伺います。どうも私もうっかり見落したのかもしれないのですが、今度のイギリスの原爆実験について、モンテ・ベロ諸島において行われる原爆実験の場合、危険区域の指定、公示というものが行われたのかどうか、この点をまず伺いたい。
○下田政府委員 これは先般の発表の際にやはり行われております。
○岡田委員 行われているとするならば、それに基いて——この文書によると、「危険区域に関する海軍省通達につき通報を受けた。よって同大使は実験地域方面に行動する邦人漁夫等に対する危険防止及び万一被災の場合における補償の問題につき、」云々とこうなっている。そうするとこのような危険区域に関する通達を受けて、これに基いて、被害が起った場合についての具体的な事前予防の措置その他に関する申し入れを行なったのだろうと思いますが、アメリカの場合については事前の通告と、その他二点について申し入れを行なったとわれわれは聞いておるのですが、イギリスの場合に対してはどのような申し入れを行なったか。
○下田政府委員 アメリカに対して申し入れたと同じ事項についてイギリスにも申し入れております。
○岡田委員 その内容は、事前の予告と、それから被害に対する補償と、もう一点は何でございますか。
○下田政府委員 もう一点は、被害が起らいよなうに万全の措置を講ぜよということでございます。
○岡田委員 その三点をイギリス側に対しても申し入れたということになりますと、そこで私の伺いたい点は、危険区域においてこのような実験が行われる。この場合に、危険が起らないように事前に通知のあるように、そして危険が起った場合においては補償してもらうように、このような申し入れを行なったということは、このような実験を危険な区域の中で行うことを承認の上で、すなわち黙示的な承認の上に立ってこのような申し入れを行なったという見解になるわけでありますかどうか。
○下田政府委員 その点につきましては先ほど申しましたように、日本側の大前提は、原爆実験の実施を容認し得ないということであります。これらの実験は禁止されなければならないということであります。でございまするが、日本が——日本だけではございませんが、世界にこういう実験は禁止しなければならぬという強い世論がございますけれども、その世論にもかかわらず先方が、国際情勢にかんがみ実験を今放棄することができないと言っておるのでありますから、やるかもしれない。また、やるという意思を表明しておるわけでございますが、そうであるとすると、どうしても被害の起る可能性がございますので、第二段の問題として、先ほど申しましたような申し入れをしておるわけであります。
○岡田委員 大前提のお話はよくわかりました。しかし第二段の話としてそのような申し入れを行なったということは、国際法から見て、そういう事実に対する黙示的な承認と解釈すべきではないか、第二段の問題についてはそのような解釈をすべきではないか。私はその点を伺っている。
○下田政府委員 一国がある主張をしておりまして、その主張を先方がのまない場合には、大前提について意見が一致をしない場合には、第一段の大前提につきましてはあくまで自己の立場を留保しまして、そうして第二段の問題を議するということがよく起りますが、今回の場合も、第一段のこういう実験は容認できないという主張は、常にわが方が留保しておる問題でございます。
○岡田委員 留保という意味ですが、そういうお説もわからないわけではありません。たとえばいろいろな討論の過程において、この問題は一応たな上げにしましょう、しかしこの問題に関連してこの問題がある、この問題から持ってきても、この禁止をやらなければ一この第二段の問題を見ても、こういう点をこうしなければ、この大前提にならなければならないではないか、こういう意味で、二つの不可分な関連のもとにおいて、議事の進め方の中においては、個別の具体的な問題について討議することはあり得ると思う。しかしこの問題は本質的に違う。なぜならばこの問題は、あなたも今お話のように、大前提は禁止しろという要求です。ところがこの第二段の、いわゆる事実上の承認の問題に関しては、これは禁止ということができないのだ、実行になった場合においては、その被害についてどうするのだということが問題になるのであって、本質的にこれは一つの問題の課程としてこういうことをやるということではなくて、当面の問題としての措置としてこれをやるということであるから、そうすると、今のお話からいうと、むしろ大前提になる問題は不可能だという前提に立って、むしろ第二段の当面の措置に対して、どのような措置をするか、それに従って国際法上いうならば黙示的な承認をその形において与えているという結果になるのではないか、そういうようにわれわれは解釈せざるを得ないと思うのですが、この点についていかにお考えになりますか。
○下田政府委員 もちろん第一の大前提の問題と、第二の問題とは密接に関係がございます。第二の問題のうちの被害、こういう被害が起るからこそ、また前提に返って実験は中止されなければならないという主張の論拠に利用し得ることは仰せの通りだと思いますが、しかしただいまの点につきましては、法律的には、大前提の問題を留保しておけば、その点に関するわが方の主張はそこなわれないと考えております。
○岡田委員 そういう意味でお話しになっておるとするならば、先ほど穗積君の言われたように、こういう点について被害の問題はけしからぬ、だから原則的な主張であるところの禁止はあくまでも実行してもらわなければならないということを、別に政治的な面において考えられる人ばかりではなくて、あなた自身も論理的な結論として言えるわけではありませんか。そういう点でも、あなた先ほどそこの点はあいまいにされたのでありますが、そういう点はあなた自身の論理的な結論として言えるということと、もう一つは、別に政治的な見解をとらなくても、日本の国の最高の決議機関である国会が議決しておるのでありますから、この議決の線に従ってあなた自身が実行されることは、何らちゅうちょされる必要はないと思いますが、こういう点についていかにお考えになっておりますか。
○下田政府委員 もちろん国会の決議はそれを存分に援用いたしまして、わが方の先方に対する申し入れの強いバックにしておるわけでございますが、今の問題につきましては、先ほど被害の、三種類に分けました点、第一点は別問題としまして、第二点のどうしても起る可能性のある問題、漁船の航行時間の損失、油の損失等につきましては、イギリスの場合は先ほど申しましたようにまだ現実問題として考究する段階になっておりませんが、アメリカの場合には、実はもう先方も相当知りたがっておるくらいでございます。これは将来補償しなければならない場合の心組みでいろいろ資料を求めておるわけでありまして、その第二の点の問題は解決し得ると私は思います。そうしますと、残る、つまり福龍丸のような事件の被害、これは先方が人間としてできるあらゆる予防措置を講じておると言っておるのでございますから、これをいや、また福龍丸事件が起るんだ、起るんだと言って、それでまた振り返って根拠にすることは、先方の回答ぶりからいたしますとできないと考えるのであります。
○岡田委員 先ほどの御答弁でまだ明確でないので、くどいようですけれども、第二段の措置として行う場合には、そういう申し入れを行なったということは、事実上危険区域というものを認めて、その危険区域の中において、その実験が行われるならば、このような措置をとってもらいたい、こういうことを申し入れておるわけですから、その第二段に関する限りにおきましては、そのこと自体、その実験に対する黙示的な承認を与えていると国際法上解釈すべきだと思うが、第一段との基本的な関連は別にして、第二段の問題だけに限って、一つ国際法上の立場でもけっこうでありますが、法的な解釈をお願いいたしたいと思います。
○下田政府委員 第二段の点につきましては、どうしても油の損失、漁船の航行時間の損失等は……(岡田委員「事前予告ということも大事なんです。」と呼ぶ)それで事前予告として危険区域を通知して参りました結果、油の損失とか漁船航行時間の損失とかいうものがあるわけでございます。これにつきましては、先般も参考人をお呼びになりまして、学者の意見をお聞きになりました、私も非常に参考になりましたが、そういうような迷惑を公海上に及ぼすものは違法であるという説、確かにこれはございます。アメリカ人の中でもあるようでございます。ただそこまでは実定国際法上進んでいないのではないか。もっとも外交交渉の面におきましては、そういう説を私ども使っておるのでありまして、それを自分でここで言うのは実はおもしろくないのでありますが、確かにそういう説もあるということだけは、私、これは憾めざるを得ないと思います。
○岡田委員 私の伺いたい点は、こういう点をあとに伺いたいからなのです。われわれがそういう三項目に関する申し入れをしたということになれば、その実験に基く危険区域というものを黙示的に承認をして、実験をされるということを承認をして、そういう申し入れをしているという法的な効果を生むのではないかという点を伺っている。その法的な効果がないとお考えになるのか、あるとお考えになるのか、そういう点を伺っているわけです。
○下田政府委員 つまり相手方に、わが方はそれを承認したのじゃないか、もう承認しておる以上は、補償はいたしませんと出られる懸念はないかという点だろうと思いますが、その点につきましては、十分な留保措置が法律上私はとってあると存じております。
○岡田委員 そうすると長くなってあれですが、留保措置ということは、その通達の文書の中に留保措置を設けてある、こういうようなことを意味するのですか。今の点だけでは、私は国際法上法的な効力としては留保措置にならないと思うのです。しかし文書の中に何らかの、これはそういう意味ではありませんよというようなことを、特別にことさら明文上に書いてあるならば別です。そこで私もっと話を進めますけれども、たとえばそれならば、その禁止地域の中に船が入っていった、これは知っておっても入っていった。知っておって入っていくばかはないでしょうけれども、これは法的な問題ですから、知っておっても入っていったとするならば、それは黙示的の承認がなければ、知っておって入っていっても損害賠償を請求する権利はあると思う。しかしこれに対して黙示的の承認を与えておったとするならば、入っていったということに対して、そのこと自体損害の賠償を要求する権利はないと思います。そこの点が重大だから私は伺っておるので、そういうことについての留保条項が、ことさらに明文上に明らかになっていなければならないが、明文上に明らかになっているものであるかどうか、あるいはまた三項目の申し入れだけでは黙示的の承認ということになるのではないか、こういう点が依然として私は問題になると思うのですが、あなた条約局長ですから法的の解釈としてはっきりとこの際、これは国民の一番心配しておる点ですから、明らかにしておいていただきたい。
○下田政府委員 率直に申しまして、今度万一被害の問題が起りましたら、日本の交渉上の立場は、一昨年に比べてはるかに強いと思うのでございます。それは彼我の交替に対比しまして、第一に被害の発生しないように万全の予防措置を講じろということにいたして、向うはそれをするということを約束しております。ですからもし被害が起った場合には、その約束に反したじゃないか、お前の方に過失があったじゃないかということを強く言う根拠を日本は街ております。 それから第二の補償を半前にお約束はできません。これはもう半分向うの立場は弱くなっておると思います。事前にお約束できませんと言っておる裏は、やはりもし起った場合はこれは別問題ですというインプリケーションがあると思うのです。ただ国際法上の立場から事前に約束はできない、けれどももし起ったならばこれは別ですというインプリケーションがある。ですからこの国会の決議等に推進されまして、日本政府当局がとりました措置は、ただいま申し上げましたように、今年度の日本側の立場を非常に強くしておるように、私は率直に感じております。
○岡田委員 これで終りますが、私はむしろ具体的な事実問題というよりも、法的な問題としてきょうは伺っておるわけです。あなたは今強くなるとおっしゃるけれども、向うの方としてはあくまでも損害の賠償をするというのではなくて、相変らず慰謝料というか、見舞金というか、こういう形で払っていこうという考え方であるようだ。それだけに、あなたは日本側の立場が強くなるというならば、前は十万ドルだったけれども、強くなったから三十万ドルぐらい、ただしこれは補償じゃなくて慰謝料をもらうということなので、慰謝料あるいは見舞金ではなくて補償金を取るということのためには、法的な基礎がなければならないということを申し上げている。その法的な基礎としては、これを認めるかのごとき何らかのこちら側の申し入れを行なっているとすれば、それに対して何らかの具体的な明文上の留保条項があるならば、これはいざしらず、補償を主張し得る日本のいわゆる法的な客観的な立場がないではないかということを私は申し上げているので、強い立場においてお見舞金を二倍にするというような立場では、これは私は日本の国民の要求する立場ではない、そういう意味でしつこく聞いているわけです。そういう点で、あなたは今ことさら法的な立場を逃げておられるとは考えたくないけれども、いまだに具体的な御答弁がないわけですから、この法的な立場をぜひとも、きょう御都合が悪ければ、今度の機会でもけっこうです。これを明確にしておいていただきたいと思います。 それからアメリカのこの間の回答について、この前、あなたもおられたと思いますが、重光外務大臣に私は聞いたのです。重光外務大臣はあいまいにしてごまかしてしまったわけなのですけれども、このアメリカの回答の中で、「危険区域設定によって生ずる日本側の海洋における活動に対する諸影響を日本国政府とともに検討すること。なおこの目的のための協議はすでに開始されている。」ここには「すでに開始されている。」とある。ここにわれわれ問題を置いているわけです。このことはあなた自身も十分外交交渉の専門家としておわかりの通りに、一方において保障の措置その他十分な補償金を払ってくれという要求をしながら、片方で先方のおっしゃるようなことについて話を進めましょうなどというと、これは外交の交渉においてはきわめて愚劣きわまることとなり、暗黙に先方の御意見を了承した上で活合いが進んでいるように先方にとられる結果になると思う。このような協議が開始されているとするならば、アメリカに対しては少くとも先方からの事前通告その他については了承を与えて——了承を与えないにしても、黙示的に腹がまえの中で了解をして、それに基いてこれ以上の交渉をもうやらないとか、たとえばやってみてもアメリカの言う通りになるのだということを腹の中に置いて行われるということになるのではないか、そういう点から見ても、協議を開始しているという点は、きわめて重大な問題であると思うので、協議を開始しているのならどういう協議をやっているのか、そうしてその協議は何のためにやるのか、あまり長くなると皆さん御迷惑ですからこれだけで終りますけれども、この点についても一括して伺っておきたい。
○下田政府委員 損害補償かお見舞金かという法的問題につきましては、これは私どもは損害賠償の要求でいきたいと思っております。それからまた損害賠償を要求するわが方の立場につきましても、先ほども申し上げましたように、今までの彼我の文書のやりとりで、わが方は強い法的基礎を一昨年に比して持っていると思います。 第二の諸影響を検討するために協議しておるという点は、実は先ほど申しましたように、むろんこれは原爆は禁止されなければならぬという主張を留保した上での話でございますが、こういうことでございます。昨年は間接損害とかなんとかいう議論に入ってしまいまして、その愚を繰り返したくないからなのでございます。これは相当因果関係のある現実の損害だということを前から先方によく知らせるために、何隻くらいの漁船が迂回しなければならぬか、それでどれくらいの油の損失、また漁船の迂回による航行時間の損失、そういうような、まさに損害賠償要求の根拠となり得るような実際的の資料を、今から事前に先方に送っておるわけでございます。これは将来かりに補償問題になりましたときに、わが方を強めるための準備工作を矢はやっておるわけであります。
○前尾委員長 暫時休憩いたします。 午後零心五十一分休憩 ————◇————— 〔休憩後は開会に至らなかった〕