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24回国会衆議院1956/03/31

外務委員会 第26号

発言数
254
登壇者
24
会派数
3
開催日
1956/03/31

会議録

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 これより会議を開きます。  オランダ国民のある種の私的請求権に関する問題の解決に関する日本国政府とオランダ王国政府との間の議定書の締結について承認を求めるの件、すべての種類の鉱山の坑内作業における女子の使用に関する条約(第四十五号)の批准について承認を求めるの件、有料職業紹介所に関する条約(千九百四十九年の改正条約)(第九十六号)の批准について承認を求めるの件、日本国における英連邦戦死者墓地に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国とカナダとの間の小包郵便約定の締結について承認を求めるの件を一括議題といたします。質疑を許します。戸叶里子君。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 先ごろからこの委員会にかかっております、すべての種類の鉱山の坑内作業における女子の使用に関する条約、この条約を批准されることは、私は意義あることだと思いますし、むしろ昨日岡田委員が指摘されましたように、もっと早くこれは批准すべきものではなかったかというような感じさえするのでございます。私これについて二、三点質問したいと思いますが、この条約は国内法に関係があることでございますが、法律上において一応婦人の地位が認められている国は、この条約を優先的に批准して、まだ低い国は批准されないというふうなことがうかがわれると思いますが、その点はいかがでございますか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 必ずしも仰せの通りでもないと思うのでございますが、この条約はむしろ労働条約の中では、参加国の多い方の条約でございます。いわゆる後進国も入っておりますが、そうかと申しまして、先進国でありながら、第三条に掲げてございます例外を行なっておる団もあるような状態でございまして、必ずしも一がいにそうとは申されないと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 それでは東南アジアの国の中で、この条約に批准をしておる国はどういう国でございますか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 セイロン、中国、インド、インドネシア、パキスタン、ヴェトナムだけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 次に、この条約のほかに、婦人の保護に関する条約はどういうようなものがございましょうか。ILOの関係で……。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 この条約以外に、国際労働機関が採択しております婦人の保護に関するものは、産前産後における婦人使用に関する条約、夜間における婦人使用に関する条約、ペイント塗りにおける白鉛の使用に関する条約、工業に使用される婦人の夜業に関する条約、母性保護に関する条約等がございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 男女同一賃金に関する条約というものはございませんですか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 男女同一地位と申しますか、男女同権は、あえてILOを待たず、国連憲章の一つの大原則でございますので、特に国際労働条約におきまして、男子と女子との同権を規定した条約はございません。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 同権でなく、男女同一賃金でございます。

谷野せつ労働事務官(婦人少年局長)

○谷野政府委員 同一価値の労働に対して男女労働者の同一の報酬に関する条約というのがございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 今、条約局長並びに谷野局長のお話を伺っておりますと、今度始めて一つの条約に入ったわけでして、そのほかまだまだ女子の保護に関する条約がたくさんでございます。ことに産前産後に関する条約とか、あるいは今おっしゃいました同一賃金に関する条約などがあるわけでございますが、こういうものに近々お入りになり批准される意思はないかどうか、これを伺いたいと思います。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 昨日も申し上げたのでございますが、日本は戦後の十数年のギャップにもかかわらず、毎国会必ず三つ、四つの条約を提出いたしまして御審議をわずらわしておりまして、国際労働機関の参加国の平均数以上の条約をやっと批准するような地位に立たせていただきました。今国会で三つの条約の御協賛をいただきますと、日本はアベレージ以上の条約を批准した国になるわけでございます。それで戦後今まで批准して参りました条約は、昨百口労働省の方から御説明がありましたように、まず直接労働三法の原則に適合する重要な一般的な条約から入っておった。そうして特殊のものは、むろん重要なものがございますがどうしてもあと回しになるというような御説明がございました。そこで大体そういう考えでいかれるのが適当ではないかと私どもも思っております。もとより婦人の保護ということは重要問題ではございますが、やはり特殊事項よりも原則的一般的なことで重要な条約ができましたから、まずそれをやるというのが順序ではないかと外務省としては考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 これは労働省と両方に伺うことになると思うのですけれども、たとえば産前産後に関する条約とかあるいは同一賃金に関する条約というようなものは、当然日本として入らなければならない条約だと私は思うのです。ただ日本の国内法にそれを裏づけるだけのものがあるかどうかということが、非常に問題になるのじゃないかと思いますが、そういうものがあれば、条約局長はすぐにでもお入りになる意思がおありになるかどうか。それから労働省の方ではそれに対してどうお思いになりますか。

谷野せつ労働事務官(婦人少年局長)

○谷野政府委員 婦人の保護に関します条約のおもなものは二つございまして、工業に使用される婦人の夜業に関する条約と、母性保護に関する条約ががございます。この二つの条約につきましては、婦人の保護の上から非常に大事なものでございますが、ただ日本の現状に照らしてみますと、国際条約のきめております事柄と、日本の労働基準法においてきめられております事柄との間に、かなりの差がございます。大体において日本の労働基準法は国際条約の趣旨を満たしているのでございますが、最近改正されたものにつきましては、国際条約が相当進歩いたしておりますので、この点を満たすまでに私どもはまだ相当努力していかなければならないと思います。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 一般的に申し上げまして占領時代から日本の国内の労働法制というものは、画期的な進み方を遂げたのでございますが、ただいまの谷野局長のお話を伺いましても、婦人の関係の口内法令というものは、やはり日本の長年の特殊事情もございまして、あるいは直ちに国際条約に参加するまでに至っていないのかもしれませんのでよく存じませんけれども、もしそういうことございましたならば、外務省といたしましては、婦人の保護に関する点が片ちんばにおくれているといたしますならば、これはやはり国際水準並みに改訂されるのが至当ではないかという気持を持ってあります。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 谷野局長にお伺いいたしますが、国際条約の水準までにそれらの関係の法案を改正する御意思はございませんか。それから条約局長に伺いたいことは、国際条約へ入りますには、ある程度、国内の法律というものの水準がそれにふさわしいようにならなければならぬと思うのですけれども、その場合に国際条約よりも上回っておるか、あるいは国際条約と同じレベルにある場合だけ、この条約に入れるのであって、国際条約より少し下回っておる場合には入れないのかどうか。もしも少しぐらい下回っておるような場合に入れるのでしたら、入ることによってさらに国内の法律が進歩するということも考えられはしないかと思いますが、この点はいかがでございますか。

谷野せつ労働事務官(婦人少年局長)

○谷野政府委員 婦人の保護の観点から参りますと、婦人少年局といたしましてはできるだけ国際条約の水準に国内法を改正したい考え方で努力をいたしております。ただ実際の日本の現状から見ますと、国際条約のきめております事項につきまして、日本の現状を引き上げるまでにはまだいろいろな問題がございます。いろいろ調査を重ね、あるいは労使の間の理解がその点まで到達いたさなければなりませんので、そのような手続、国内の理解が進みますために、私どもはせっかく努力をいたしたいと思っております。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、仰せの通り国内法が国際水準を上回っている場合、たとえばこういう今回の条約でございますが、これは条約では第三条で一定の例外を認めておるわけでございますが、日本の国内法は完全に禁止しておるわけです。女子が坑内で作業してよいいかなる例外をも認めていないわけでございます。これなどは国内法が上回っておるのでございますから、容易に批准ができるわけでございます。またちょうど国際水準並みの国内法がございます場合も、これも容易に批准できるわけでございます。それから国内法が国際水準を下回っておる場合は、条約を批准できないことは申すまでもないことでございます。批准いたしますには、まず国内法を改正してからでなければならぬわけでございますが、ただ国際労働条約はなるべく多数の国を参加させる方がよいという見地から、特殊な規定がございます。この条約と並行的に御審議を願っております有料職業紹介所に関する条約はこれはいろいろな国がございますので、第二部と第三部とに分けまして、有料職業紹介所というものを全面的に禁止しておる国は直ちに第二部に入れる、しかしいろいろな事情でございまして、全面的に禁止してない国にはある程度の例外を認めた第三部の規定というものを置いております。そこで日本は国内法令が下回っておるというわけではございませんが、現存の国内法令のもとに許容されておるところの労働慣行におきまして、特殊の事情がございますので、今回は第三部の方を受諾して、この条約に入ろうというような関係になっております。これなどは労働条約だけに見られる特殊な現象だと存じます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 谷野局長も、なるべく早くこうした国際水準に到達するように、国内の法律も改正したいという御希望を持っておられますので、婦人の保護に関するそういった障害を除くために御努力願いたいと存じます。  次に条約局長に伺いますが、こうした条約違反があったような場合には、どういうふうな扱いをするのでございましょうか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 対外的には、批准いたしました条約の実施状況につきましては、毎年労働総会のあとに、理事会のきめる日までに報告を出さなければならない。従いまして昨日も岡田委員から御指摘がございましたような現実の違反件数等も、毎年報告しなければならないわけでございます。それは国際的な関係でございますが、条約自体で罰則を設けなければならないと規定したのもございます。しかしそうでないのもたくさんございます。そこでそういうものは国内法で罰則を設けるわけでございます。この女子を炭坑で使ってはいかぬという規定に反してやった場合には、条約では必ずしも罰則の規定はないわけでございますが、国内法においては罰則が定められております。それで違反が必ず検察庁に送検されるという手続になっております。従いまして出際条約では両方があるわけでございます。直ちに附則を設けなければならないという規定を定めたのと、その点に触れてないものとあります。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、国際条約は、道義的な責任を強く感じなければならないという程度のものでございますか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 国際的には道義的に責任を感じるわけでございますが、国際労働機関におきまして違反件数が多いということを報告することは、いかなる政府も好まないところであります。また違反が多いということは、その国の信用にもかかわることでございます。ことに日本のような国は、今はそうではないのでありますけれども、チープ・レーバーという戦前の印象がぬぐえないのでございますから、そこへ持ってきて国際労働機関で違反件数の多いのを報告しなければならない羽目に立たなければならぬということは、ぜひ避けなければならぬことだと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 谷野局長に伺います。昨日岡田委員からの申し出によりまして、坑内作業に従事していた婦人の例、たとえば違反件数が三十三件あるということを承わっておりますが、そういう人たちの扱いはどうなっておりますでしょうか。みんなそれらの人たちを他の職業に転職させてあげたでしょうか、どうでしょうか、この点を伺います。

辻英雄労働事務官(労働基準局監督課長)

○辻説明員 基準法違反の該当労働者の措置につきましては、いろいろなケースがございまして、中にはたまたま弁当を持って坑の口の近所までちょっと入ったものまでも例外的にはございます。そのような場合には、本人あるいは経営者に特に厳重に注意をし、指示をすることによって、職場の転換という問題が起らないで済む場合もあるわけでございます。通常の坑内本来の業務に従事しておりましたような場合には、第一次的には、当該事業場における坑外の業務に職種を転換せしめるように努力をいたしておるわけでございます。その場合に適当なものがどうしても得られませんような場合には、職業安定機関等に連絡をとって、あっせんを依頼するという建前をとって処理をいたすように、現地の方に指示をしておるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 今の御答弁のようですと問題はないのですけれども、現実の問題といたしましては、転換すべき職場がないために、そういう違反を起している場合が非常に多いわけであります。ですから、そういうような違反を起さないようにするためには、そういう人たちに対して職場を与えることが必要なんですが、こういう点を積極的にお考えになっていただきたいと思います。ただ坑内に入ることをとめていくことも必要ですけれども、しかしそれ以外に、どういうふうにして働いていけるのだというような職場の転換を考えてあげての指導をまずしていかなければ、この問題は解決しないと思いますから、そういう点に御留意願いたいと思います。  次に、有料職業紹介所に関する条約について二、三点伺いたいのですが、わが国で無料で職業の紹介をする機関というのは、どういうところでございますか。

江下孝労働事務官(職業安定局長)

○江下政府委員 無料で紹介をやっております機関は、国費で設置いたしております全国四百二十四カ所の公共職業安定所がございますが、この条約に申します無料の職業紹介は、民営の職業紹介でございます。これにつきましては、労働大臣が個別に審査をいたしまして、そうして弊得のないということを見きわめまして許可をいたします。この許可をしたものだけが無料の職業紹介を行える建前になっております。現在は十数件あったと記憶しております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 それに周旋屋というものは該当しないと思いますが、どうでしょうか。

江下孝労働事務官(職業安定局長)

○江下政府委員 無料の職業紹介事業は、職業安定法の規定によりまして、特に労働大臣の許可を受けることになっておりますし、許可を受けます際に、私の方で、その人の道徳的な点とか、財政的な点とか、そういう点を審査いたしまして、中央職人安定審議会に諮問いたしました上で許可をいたしますので、無料で許可を受けました者が周旋行為等に走ることはないと考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そういうことは理想なんでしょうけれども、現実の問題としては、ずいぶんたくさんもぐりがあると思います。そういうもぐりの人たちに対する取締りはどんなふうになっておりますか。

江下孝労働事務官(職業安定局長)

○江下政府委員 法律ではそういうことはできないことになっておりますが、現在のところ、お活の通りもぐりの違反事項はあるわけでございます。従ってこの点は、警察当局とも十分連絡をとりまして、私ども取締りに遺憾のないように措置しているわけであります。なお人身売買等とも関連いたしまして、最近相当この種の事件が起っておりますので、私どもといたしましては、この人身売買が起りますのは、正常な職業紹介のルートに乗せないところから起ることが多いと思いますから、極力国の職業安定機関を利用して就職するようにということをもっぱら心がけてやっている次第であります。それにしても、お話の通りもぐりの周旋屋がいるということは、私ども非常に残念に思っておりますので、今後とも十分にこの点は警察と連絡をとりまして、取締りを厳重にしていきたいと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 もぐりの周旋屋が事実非常にたくさんあると思います。今これをお認めになっていらっしゃるようで、それを取り締まっていくというお考えのようでありますけれども、大体一年にどのくらいずつ見つけられますか、その点を伺いたいと思います。と申しますのは、今おっしゃいましたように、このごろ非常に人身売買が多くなってきているのは、こういうもぐりの周旋屋がありますためにそのような弊害があるわけで、これは売春処罰法等の問題ともからみまして非常に大きな問題だと思いますので、伺っておきたいと思います。

江下孝労働事務官(職業安定局長)

○江下政府委員 件数でございますが、昭和三十九年中におきまして、職業紹介事業に関します許可を受けないで違反行為としてあげられましたものが六百八十二件ございます。そこでこれにつきましては公共職業安定所におきましても、特に必理な安定所には係を設けまして、常時監査をして回るということも実施いたしております。監査いたしました件数等もここにあがっておりますが、この事件の数は相当多いのでございますので、ただいま申し上げましたような趣旨で今後十分取締りをしていきたいと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 もぐりの周旋屋の人たちの中にも、いろいろな違反を起していると思いますが、その中で一番多い違反内容はどういうものですか。大体人身売買ですか。

江下孝労働事務官(職業安定局長)

○江下政府委員 詳しい内容をあとでまた資料で提出したいと思いますが、私の覚えております範囲では、やはり五といたしまして女性のあっせんを無許可でやっておるという例が多いと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 今の問題、私ども参考にしたいことがございますので、あとから資料にして提出していただきたいことを要望いたします。     —————————————

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 この際和泊兼光君より米軍の爆撃演習に関し緊急質問の申し出がありますので、これを許します。細迫兼光君。

細迫兼光日本社会党

○細迫委員 欧米二課の方、調達庁の方、御関係方面に質問をいたします。質問をいたします題目は、山口県美弥の秋吉台という、これは国定公園でありますが、従来アメリカの駐留軍の演習地域に提供せられておったところでありますが、今回調達庁の方から爆撃の演習をこの地域でやりたいという申し入れが地元に向ってなされたということで、地元の方ではびっくりいたしまして人心が非常に興奮しておるという状態であります。そういう調達庁の方からの地元に対する使用等の申し入れというようなことがありましたか、なかったのですか。従来の行きがかりを御説明願いたいと思います。

安川壯外務事務官(欧米局第二課長)

○安川説明員 ただいまの御質問の問題は、現在合同委員会の下部機構でございます施設委員会の問題になっておると承知しております。施設委員会では調達庁が直接米側並びに日本側との折衝に当っておりますので、従来の経緯につきましては調達庁の方からお答え願うことにいたします。

磯淳似調達庁連絡調査官

○磯説明員 お答えいたします。昭和三十年の十月の第七十八回施設特別委員会に、米側から太田の演習場を岩国の米海軍の航空隊の爆撃演習場として使用したいという申し出があったのであります。この要求に対しましては再三米側と協議いたしまして、米側の現在の演習計画の上からは認めざるを得ない緊急重大なるものとして考えまして、その後米側と再三再四折衝いたしまして、演習の使用条件等につきまして十分検討を加えた上でその要求に応じたいというので、本年三月になりまして担当宮を山口県庁に出張せしめまして県知事にその申し出をいたしております。

細迫兼光日本社会党

○細迫委員 お話を聞いておりますと、アメリカ側の必要ということについて非常に敏感に御同情なさっておるようであります。地元側の事情といたしましてはすでに御承知でございましょうが、そこには秋芳洞という石灰洞がありまして天然記念物にたしかなっておる。その秋芳洞という名前は、天皇がかつて皇太子のときにあそこに来られまして名前をつけられたものであります。観光地としても大へん興味を呼んで、年に三十万からの観光客があるというようなところであります。   〔発言する者多し〕

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 静粛に願います。

細迫兼光日本社会党

○細迫委員 またカルスト、ドリーネなどという学術上からも非常に重要な地帯であります。住民の危険はもちろんのことでありますが……。   〔発言する者多し〕

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 静粛に願います。

細迫兼光日本社会党

○細迫委員 天然記念物を損壊することはもちろんでありますし、学術上の参考物を損壊することももちろんでありますし、こういう地元の事情も十分くみ取って態度をきめられなくちゃならぬと思うのでありますが、事前に地元の事情を御調査なさったことはありますかどうか。

磯淳似調達庁連絡調査官

○磯説明員 この機会に今御質問の点につきまして調達庁におきましてとりました措置を御説明しておきたいと思います。本演習場は旧日本陸軍の演習場であったものを昭和二十四年一月米軍に接収されたものでございます。その後昭和二十八年十一月に天然記念物観光区域を演習場の区域から除外いたしまして、ここの大理石の採取等も自由にできるように使用条件の中に設定したのであります。その地域は全部で五百二十四万坪でありますが、主として山林原野であります。農地はわずかに全体の三%にすぎない程度でございます。今回米軍において本演習場を米極東海軍航空隊の対地爆撃の演習地に使用したいと申し出があったのでありますが、その計画をこの機会に簡単に御説明をいたします。  本演習に使用いたします爆弾は、すべて砂を充填いたしました練習川の模擬弾に限っております。おおむね三ポンド、二十五ポンドの二種程度の軽いものを使用することに相成なっておりします。この演習に参加する飛行機は単発のダグラスの艦載機でありまして、一日平均四機ないし五機のものできわめて少数のものでございます。しかも演習の区域につきましては、経済、民生、観光上支障となる地域を避けまして、さらに小範囲の着弾区域を設けることを米側と協議いたしまして予定をいたしております。特に観光上の影響を考慮いたしまして、飛行機の進路、退路につきましても、関係の美東町あるいは秋吉町及び秋芳洞の上空を飛行することを避けまして、近傍には飛行機の爆音その他の影響を与えることのないように配慮いたしております。先ほど申し上げましたように、米側からは昨年十月第七十八回の施設特別委員会を通じて本申し出があったのでありますが、軍側の要求について十分検討いたしましてその計画を押え得るだけ抑えまして、ただいま御説明しましたような計画の内容に予定しておるのであります。

細迫兼光日本社会党

○細迫委員 他の重要な議案の審議中でありますからこれでやめておきますが、一体に米側の要求を聞くことに忠実であろうというものの考え方のようであります。たとえば、前に衆議院で議決しました原水爆の実験中止の決議に対しましても、実験することを前提とした賠償だとかあるいは危険の予防だとかいうことにのみ力が込められて、中止そのものについての力の込め方が足らない。こういうのと軌を一にする考え方だと思うのであります。これは迷惑を少くすることはもちろん考えなくてはならないことでありますけれども、迷惑を少くすることが地元の要求ではなくて、こういう爆撃演習をしてもらいたくないというのが地元の要求でありますから、取り違えないように、国民のほんとうの要求の線に従って事を処すという態度をもって進んでもらいたいということを要望いたしまして、この程度でとどめておきます。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 私よくわからないからちょっと調達庁に伺っておきたいのですが、米軍基地の中のいろいろな施設を工事する場合には、直接米軍と日本の土建業者の間で契約をして話をするのですか。それとも調達庁を経由することになるのですか。その辺はどうなのですか。

磯淳似調達庁連絡調査官

○磯説明員 米軍の施設区域内で米軍自体が工事いたします場合には、米軍と業者で面接契約をいたしてやっております。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 調達庁はそれについては全然わからないのですか。

磯淳似調達庁連絡調査官

○磯説明員 現在の規定の上では直接関与するごとにはいたしておりません。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 できたあとで報告するとかなんとかいうことはありませんか。

磯淳似調達庁連絡調査官

○磯説明員 そういうことはありません。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 全然ないのですか。

磯淳似調達庁連絡調査官

○磯説明員 ありません。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 板付で去年の八月ごろ大体完成していると聞いているのだが、ある特殊な貯蔵庫が作られ、これは三幸建設がやっておるはずです。これについてあなたの方でお調べいただきたいと思うのですが、調べられる道はありますか。いかがですか。

磯淳似調達庁連絡調査官

○磯説明員 今の点は後ほどよく事情を承わりまして、私の方で調べられるものは調べてみます。     —————————————

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 それでは先ほどの議案の質疑を継続いたしますが、その前に、さっきの資料がわかったそうですから、承わることにします。

江下孝労働事務官(職業安定局長)

○江下政府委員 ただいま申し上げました六百八十二件の有料職業紹介所違反件数のうち、五百四十二件が婦女子の人身売買に関係するものでございます。その他につきましては、有料で実施できます職種が羅列してありますが、その許可を受けないで行なった事例でございます。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 私の質問は昨日の質問の継続でありますが、作品要求いたしました資料、女子に関する労働基準法第六十四条違反件数は出たわけです。これで明らかになって参りましたことは、昨日も申し上げたように、単に筑豊だけで坑内就労の事実があるだけでなくて、全国的にもこのような件数があるということであります。そこで、この違反件数を出すに当って、どういう方法でこれを摘発されたか、常時労働基準監督官が調査をして、それに基いてこういう摘発をされたのか、あるいはまた何らかの訴えに基いてこのようなことが摘発されたのか、実は私はこの摘発件数それ自体についても正確なものだとは——この数字は正確であっても、もっと多くの違反があるだろうと私は想像いたしますので、まず摘発の方法その他について伺っておきたいと思います。

村松伍郎労働事務官(大臣官房国際労働課長)

○村松説明員 摘発の端緒でありますが、大部分は労働基留監督官が事業場を回りまして、その際あるいはそのあとで密告等によって発見したものが主でございます。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 婦人少年局長に伺いたいのですが、三十三件くらいの違反がある、こういう報告になっておりますが、この三十三件くらいのものであろうとお考えになりますか、もっとよけいあるだろうとお考えになりますか、婦人少年局の立場から一つお答えをいただきたい。

谷野せつ労働事務官(婦人少年局長)

○谷野政府委員 女子の坑内作業に関します労働基準法の規定は、私ども婦人少年局といたしましては、最も重要な規定であると存じております。そこで、この規定の施行につきましては、相当強力に監督が実施されているものと存じておりますので、違反の件数はほんとうは少いという、あるいはあってほしくない、あってはならないという感じで、私どもお答え申し上げたのです。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 あってほしくないという御希望はよくわかります。事実の問題はどうかということを伺っておる。あなたのお望みは非常にいいお望みだと思うけれども、希望と現実の違うことはあなたのよく御存じの通りである。現実にはもっともっとあると思う。たとえば北海道には全然ないと書いてありますが、北海道にはないなんということをもしおっしゃるのだったら、私は例をあげて申し上げます。こういう数字自体がインチキであるということをあなたはお認めにならなければ婦人を守る立場になりません。(「あまりおどかすなよ」と呼ぶ者あり)事実じゃないか。ともかくもあなた自身がそういう調査を婦人少年局としておやりになったことがございますか、どうですか。

谷野せつ労働事務官(婦人少年局長)

○谷野政府委員 婦人少年局の立場は、労働基準監督局長に対しまして勧告、援助をいたします役割を持つわけであります。婦人少年局は地方に婦人少年室がございましてこの室長は調査員の資格を持っているわけでございます。実際には基準監督官が法律の施行に関しましては実施いたしておりますが、婦人少年室の職員は法律がよく施行されているかどうか、そこに問題があるかどうかという点について、婦人少年局長に報告いたしまして、私の方から基準局長にいろいろお願いをする立場に立っているのでございますが、婦人少年局は何しろ地方に二人から、多いところで五人くらいの職員でございまして、その中で調査の資格を持っております職員はわずかでございますので、実際にはそれほど事業場をいつも回っているというわけには参らないのでございます。そこで労働者が基準法の施行につきまして、いろいろ申告を持って参りましたり、悩みを持って参りますときには、あるいはまた問題があるといたしましたときには、現地で基準局長に報告いたしまして、基準局がさっそくその現場に行って調べて、法律の施行を監視するというふうな手続を経ているわけでございます。婦人少年局としては、できるだけ基準法が厳密に施行されますように、外から援助をして参りたいと思っておるわけでございます。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 冨樫さんが見えましたから、富樫さんに伺いましょう。基準局の摘発件数として六十四件の違反が出ておるのだが、労働基準法に基くいわゆる労働基準監督局あるいは監督署、こういうものの予算が、最近のような経済状態になってくると失業者がふえるのだし、そういう場合における就労の状態を調べるためには、どんどん予算をふやしてやっていかなければならないと思うのだが、現実には予算がふえるどころ、減っておるような状態になっておるじゃないか。そうするとこの基準法の施行については現在の予算の面から見て、十分な施行が行われておらないということにだんだんなりつつあるのだと思うのだが、この点はいかがお考えになりますか。予算の面を中心にお話願いたい。

富樫總一労働基準監督官(労働基準局長)

○富樫(總)政府委員 基準法の施行につきましては、とにかく御承知の通り適用事業場が全国で九十万以上あるのであります。しかもその大部分は中小零細企業でございます。実際問題として監督の完璧を期するということは、率直に申しまして非常にむずかしいのでございます。私どもいろいろ苦心しておるのでありまして、予算の面から申しますと、ただいま詳細な資料を持ち合せませんが、従来ややもすれば事業官庁と違いまして、足を棒にして歩いてやるというところでございますので、ついじみな立場に立って予算も窮屈がちでございましたが、特に今年におきましては、大蔵省当局におきましてもいろいろ実態などを御調査いただきまして、たとえば全体として旅費において一割増、あるいはとやかく寄付金とかなんとかいうような話が伝わりますことに対応いたしまして、そういうことのないように、いわゆる維持管理費等におきましても、たしか二割近い増額等も見ていただきまして、私どもとしてはとにかく完璧とはもちろん申しませんが、従来よりは来年度は相当の事態改善が行われるというふうに考えております。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 幾らかふえたという点はけっこうなことだと思いますが、そうすると九十万の職場に対して、基準監督官なりその担当官は大体一人当り何職場を持つことになりますか、平均でけっこうです。

富樫總一労働基準監督官(労働基準局長)

○富樫(總)政府委員 現在担当官が全国で二千三百人でございます。実際問題としてはいろいろな各種の会合、啓蒙、あるいは許可、認可という業務がございますので、一カ月まるまる監督に出かけるということはできませんけれども、なるべく机上事務を整理いたしまして、実際に監督に出かける余裕を作るべく努力しております。新年度の監督計画は、来月末日に開かれます局長会議において指示すべく目下検討中でございますが、大体一カ月のうち十七日くらいを監督に出かける、一日出かけますれば、東京近辺あたりでございますと、一日に五カ所ないし七カ所やりますが、地方におきましてはなかなか交通の便が悪くて、一日に悪いところではせいぜい二カ所ないし一カ所というようなことになりがちでございます。従いまして統計的に見ますと、従来よく言われますように、九十万事業所に対して三年に一度しか回れないというようなことになります。たとえばイギリスなどは監督官がわずか三百人、日本におきましては二千三百人もいるわけでございます。しかし足りないといえば足りないのでありますが、ともかく御承知の通り一人でも雇えば基準法の適用があるというような体制でございますので、私どもといたしましては今後特に集団指導といったような方式をとりまして、業界の各種の組合等の協力を得て、実効の上る監督をいたしたいということで、いろいろ目下新年度の計画を検討しているような次第でございます。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 そうすると今の御答弁を伺っておってもわかるように、三年に一ぺんくらいしか回れないのです。頭割りにして二千五百人として割ってみても、一人の監督官が持っている事業所というのは四百、毎日歩いても一年に一回りできないわけだ、それほどの状態であるのだから、実際に実情を摘発するといったって、実情なんかわかるわけがない。三十三件摘発しているというのは、これはたまたまわかっただけであって、しかも集団指導をやるとかなんとか言っているけれども、これはお役人さんとしてはそういうことはよく言いたがることなんだけれども、実際にそういうことをやったって意味がないのです。なぜならば坑内の女子の就労というのは、最近のように日本経済がこういうように不景気になってきて、そうして中小炭鉱はどんどんぶっつぶれる。そういうようになってくると、きのうも話を出したのだけれども、女の人たちはだんなさんが勤める口がないから、幾らかでもかせいでいかなければ生きていけないのだ、だからタヌキ掘りの山へ入って幾らかでも賃金をもらおうと言っているのだ。しかも反面において小山の方においても、最近のように合理化法案なんという、自由党はとんでもない法案を出したりするものだから、従ってもう小山の方は困っちゃって、できるだけ安い賃金で使わなければならない。安い賃金で使わなければならないから、低賃金の女子の就労をやらそうとしている。それにいかに集団指導するなんと言ったって、実際問題としてお役人のおいでになるときは、ああごもっともごもっともと言っているでしょう。あなた方はそれで安心しているけれども、何言ってやがんだ、あんなことを言ったってあとで一ぱいおごってやればいいのだ、こう思っている。実際問題としては女子の就労はどんどんふえているのですよ。この三十三件という事実で、これで女子の就労の違反事実は全部であるとあなたはお考えになるかどうか。私はもっとあるのだと考えるが、あなたはどうお考えになるか。

富樫總一労働基準監督官(労働基準局長)

○富樫(總)政府委員 先ほど申しました集団指導とかなんとかいうのは、一般的なことを申し上げましたので、女子の坑内労働につきましては、その性質上特段の監督をしなければならないと考えております。従来とも女子の坑内労働は、一つの悪質違反として重点監督対象にしておったのでありますが、実際問題といたしますと、なかなか発見が困難でございます。事実労働者名簿にいたしましても、男の名前を使い、現実の服装にいたしましても、男装をしておるというようなことで、なかなかむずかしいのであります。(岡田委員「そんなことあるか、声を聞けばわかるよ。」と呼ぶ)従いまして、なかなか一人々々にお前の声を出してみろなんということを(笑声)言うことはむずかしいのでございます。もちろん従来のこの年間三十三件というものが全部洗った、そうしてこれ以外には違反がないとは言い切れません。事実最近におきまして、福岡におきまするタヌキ掘り二件を契機といたしまして、一斉検査をその地帯に実施せしめました結果、十数件の違反を発見した。これなどはつまり適用届はもちろんのこと、通産当局がそういう採掘をしておるということすら知らないという事態でございます。率直に申しまして、これ以外に相当あると考えます。今後はこの条約批准を契機といたしまして、国際信用を高める意味におきまして、従来のこの違反の実態あるいは違反の摘発の端緒、その他の形態を分析いたしまして、違反の排除に特別の努力をしたい、こういうことで一つ御了承いただきます。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 私はあまり了承できません。了承できませんが、委員会の進行の状態もあるので、できるだけ自民党にも協力をいたしたいと思いますが、しかしこの摘発件数等も、さっきも申し上げたように北海道にはゼロになっておる。ところが北海道だってあるのです。そういう点はあなたお認めにならざるを得ないから、さっきこれよりも実際多いんだこういうようにお話しになっているのだと思う。そこでわざわざ冨樫局長に来ていただいたのだから伺っておきたいのだが、最近のようにこのような違反がどんどんふえているような状態のときに、この条約を批准して恥かしくないかどうかということです。実際にこれを守っていけますなんということを、日本の労働省や日本の政府が言えるのかどうか、こういう点について一つ伺っておきたいと思う。  それからだんだん減らしていくようにするのだというなら、具体的にさっきも何か技術的なことをお話しになっておるのだが、経済的な問題を解決しない限りにおいては、これは絶対に減らすことはできない。その限りにおいて今の政府の政治のやり方自体が悪いのだということをあなた、お認めにならざるを得ない。それだからこういう不景気になってきているのだから……、それについてはどういうようにお考えになっているか。  最後の点、そういう違反がどんどん出てきた場合には、これは年次報告をしなければならない。きのうは国際労働課長にこの年次報告をしますかということをあらためて念を押しておきましたが、私は課長の御意見だけでは納得できない。局長からも——もっと私は大臣から実は伺いたかったのだが、大臣あるいは政務次官が出ておらないから、やむを得ないので局長のどなたからでもけっこうでありますが、必ずこれは年次報告をしていただかなくちゃならないと思うので、これについてあらためて念を押しておきたいと思います。この三つの点を伺って終りにします。

富樫總一労働基準監督官(労働基準局長)

○富樫(總)政府委員 今の政治が悪いかどうか、これは政府委員としてはとやかく申しあげる問題でございません。  第一点の経済問題、これは確かにこの経済問題があると思います。もちろんそればかりでもないと思います。たとえば栃木県大谷石の問題が相当問題になりますが、これは経済問題もありますけれども、やはり土地の慣行、それからあの地帯の婦人は男子よりもむしろ気が強いとかなんとか言われておりますが、そういうようなこともからまっているということは聞いております。しかし一般に申しまして、常識的に申して経済問題である。そこで私どもといたしましては、単なる違反摘発だけでなく、職安とも連絡いたしまして、女子には女子の適職にお世話をするということとからみ合って、事態の改善に努力したいと考えております。  なお外国に対して恥かしくないかということでございますが、先ほど申しましたようにこの条約が批准されますれば、一段と国際信用にそむかないように綿密なる監督をいたします。そして違反がありますれば、これは条約上の義務でございますから、正直にILO当局に報告をいたします。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 今岡田委員の質問に答えて局長が栃木県の大谷石の例をお引きになりました。局長がおっしゃいましたことは、これは経済的な問題だけでなくして、あたかも女の人が喜んで坑内に飛び込んでいくかのような発言がなされましたけれども、これは全く事実に反するものでございます。私いろいろ実情を調査して知っておりますけれども、実はこのほかに仕事がない。そうして非常に生活レベルが低くて、男の人がかせいでくるだけでは食べていかれないものですから、いやいやながら、仕方なしに、悪いと知りながら入っていくというような例が非常に多いわけなんです。ですからこういう方方に対する配置転換ということがまず考えられなければなりません。そこで私は先ほどほかの方に御質問いたしましたときにも、こういうふうな女子が坑内に入る問題は、配置転換のほかの職業がないから、仕方なしに入られるのだから、これは気をつけてほしいということを懇々とお願いしていたわけでございますけれども、今の御答弁とはだいぶ違いますので、私もこのことをもう一度はっきり確かめておかなければならないと思います。

富樫總一労働基準監督官(労働基準局長)

○富樫(總)政府委員 先ほど申し上げましたように確かに主として経済問題でございます。ただ大谷石の問題は、古い慣行その他のことがからまっておる。もちろんただいま先生のおっしゃいましたような経済面からの改善によって、そういう悪い慣行の是正ができると思いますので、極力御趣旨に沿うて努力いたしたいと存じます。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 田中織之進君。

田中織之進日本社会党

○田中(織)委員 労働関係の二つの条約の批准に関連して、特に有料職業紹介所に関する条約について、二、三点伺いたいと思います。  今回この条約の批准に当って、第三部だけ受諾する、第二部については政府の権限を持って条件の成熟したときに受諾するという通報をすることになっておるようでありますが、特にこの問題は、承認をし受諾する第三部もきわめて重要でありますが、特に今回受諾しない部分の第二部に私は非常に多くの問題があると思うのであります。政府の説明では、現在の雇用慣習の特殊性等を考慮して、第二部は承認しない、第三部だけの受諾にとどめるのだというふうに伺いましたが、現在の雇用慣習の特殊性をどういうように考慮されて、第二部を受諾しないで第三部だけの受諾にとどめたかということについて、政府の御所見を伺いたいと思います。

江下孝労働事務官(職業安定局長)

○江下政府委員 第三部の建前といたしまして、有料職業紹介事業は順次廃止していくという建前になっております。ただ特に公共の職業安定機関が取り扱うことが不可能なような職種については、特別に行政官庁の許可ということでやってもよろしい、こういう建前に相なっておるわけであります。この第三部の精神と申しますのは、有料職業紹介事業、民営の職業紹介事業は全廃をしていくということが、根本の精神になっておるわけでございます。ところが現在の国内法であめ職業安定法におきましては、特別に職種を指定いたしておりますが、この職種につきましては、民営の職業紹介事業を許可するという建前になっております。ところが御承知の通り、公共職業安定所も発足いたしましてからすでに十年近くなりましたけれども、安定所を十分に利用してやるという雇用慣習が、まだわが国の場合にはできておりませんし、がたがた安定所の将来の成長ということも私ども考えまして、現在のところこれらの指定職種につきましては、ある程度許可しておるわけでございます。しかもこの許可の件数が必ずしも少くはない。申し上げたかと思いますが、現在までに約千以上の許可をいたしております。これらの民間の紹介事業の助けも借りて、現在国全体としての職業紹介事業が運営されておるわけであります。そこで第三部につきましては、法律的には必ずしも抵触しないと思いますが、現在の日本の職業紹介組織の程度では、その精神に私どもは沿わない点があるということで、今回は第三部を受諾しないというふうに考えております。

田中織之進日本社会党

○田中(織)委員 江下さんの今の御答弁で、第三部が有料職業紹介所の漸減を条約でうたっていると言われたが、今度承認されるのは、その漸減のところを、現状から見ればこれを一挙になくすというところまでまだいかないから、有料職業紹介所について規制をする第三部を受諾して、第二部の方は今回は受諾しない、こういうのではないかと思うのですが、その点、今の局長の答弁は、二部と三部を取り違えられておったように思いますが、いかがですか。

江下孝労働事務官(職業安定局長)

○江下政府委員 失礼いたしました。仰せの通り二部と三部を間違えておりまして、先生の御意見の通りであります。

田中織之進日本社会党

○田中(織)委員 そこで確かに美術、音楽、演芸ですか、その他職種を限定して有料職業紹介所が現存しておることは事実でありますけれども、特に演芸関係その他特殊の技術を要する職種に対して、有料職業紹介を認めている関係からも、やはり雇用条件その他のところで問題が多分にあると思うのです。その意味が政府の説明によりますと、わが国の雇用慣習の特殊性を反映して、諸外国に比し非常に有料職業紹介所が多いという点の事実は認めておるようでありますが、特に今回第三部を受諾して第二部はあと回しにするについては、有料職業紹介所の漸減についての方針については、今後具体的にどういう処置をとって、この条約の第二部を受諾する条件を作り出そうと労働省はお考えになっているか。ただ単に、一応第三部を受諾して、諸条件の成熟を待って第二部を受諾するのが適当だというだけでは、ちょっとわれわれ納得できないのでありますが、今後労働省としては、この有料職業紹介所をなくす——これは勢いこれらの現在存在しておる特殊な業種の有料職業紹介を、国でやるというような態勢に持っていかなければならぬのでありますが、具体的にどういう処置をとられて、この条約の二部を受諾するように持っていかれようとするか、その国内の方策をどういうようにお考えになっているかを伺っておきたいと思います。

江下孝労働事務官(職業安定局長)

○江下政府委員 わが国の国営の職業紹介制度は昭和二十二年に発足をいたしました。御承知の通り戦前にも職業紹介所というのがございまして、これが一般の職業紹介を実施しておったのでございますが、その発足以来の歴史的な沿革と申しますか、安定所のやります仕事というのは、比較的非知能的な職種の取扱いが主体でございました。新しく発足いたしましたけれども、こういう従来のしきたりというものは、なかなか一朝一夕には改善できませず、今日に至ったわけでございますが、しかしながらお話の通り、今回この条約を批准するということになりますれば、現在認めておりますような有料の職業紹介所は、逐次廃止するような方向に私どもとしては持っていきたい。そのためには、何としても国の職業紹介機関が国民の信用を得、またさらにこれらの指定職種についても、十分やれるだけの態勢を作り上げるということが大事でございます。実は技術的に申し上げましても、例の家政婦の職業紹介でございますが、これなんかは、夜いつでも電話がかかってくる、こういうことでございますと、現在の安定所の建前からいたしまして、とても夜間の職業紹介ということも困難であるということから、現在相当大幅な家政婦の職業紹介の許可をいたしておるわけでございます。そのほか若干ございますが、これらのものは、主といたしまして、知能程度の高い、たとえば医師とか薬剤師とか、そのほか高級の技術者を対象とする、あるいはお話のありました演芸家というようなものでございまして、安定所の機能が、現在のままでは十分扱えないということからきておるわけでございます。私どもといたしましては、今後におきまして公共職業安定所の機能を十分拡充強化するように、予算面、特に人的な整備を早急にはかりまして、必ずこの条約の趣旨に沿うように、漸減するように私どもとしては努力をするつもりでございます。

田中織之進日本社会党

○田中(織)委員 そういう線で御努力を願いたいのでありますが、それについては大体一つの目安を置いて、施策を集中してやっていただかなければならぬと思うのでありますが、今のところ目安を、いつごろまでに置くというようなことの見通しはつかないのでしょうか。

江下孝労働事務官(職業安定局長)

○江下政府委員 私どもといたしましては、この条約の精神を実現することが目的でございますので、今目安を何年くらいに置くかということを申し上げることは困難ではございますが、できるだけ遠くない期間内に実現したいと考えております。

田中織之進日本社会党

○田中(織)委員 せっかくこの条約の第三部が受諾されることは非常にけっこうでありますが、引き続き第二部についても、これが特に職業紹介の関係から見ますれば、重要な部分になろうと思いますから、御努力を願いたいと希望を申し上げておきます。  それから今回承認になります第三部の点で、営利を目的として経営される有料紹介所の規制、これはわかります。ところが(b)にあります、営利を目的としないで経営され有料職業紹介所の活動の規制ということがございますが、これはもちろん有料であっても、経営主体が公共性を持った団体とか、そういうものであれば、そういう営利を目的としないという点が明確にされるだろうと思うのです。現在はこの(b)に該当する、いわゆる有料職業紹介所としてはどういうものがございますか。またそれは、ともすればやはり営利を目的とするというところとの限界が問題になろうかと思うのでありますが、それについては、現在はどういうような規制をされておりますか、この点を伺いたいと思います。

江下孝労働事務官(職業安定局長)

○江下政府委員 営利を目的としない職業紹介事業で、現在許可を受けておりますのは、実費の職業紹介事業でありまして、これが十六件ございます。その内容を申し上げますと、医師と看護婦の関係だけでございます。日本医師会とか、あるいはその他の公共団体が実施いたしておりまして、職業紹介に必要な実費だけを徴収するという建前になっておりまして、この点についての弊害は、今までのところ起っておりません。

田中織之進日本社会党

○田中(織)委員 私の有料職業紹介所に関する条約についての質疑は、これで終るのでありますが、この際下田条約局長に一点だけ伺っておきたいのであります。それは先ほど戸叶委員から質疑をされておったことに関連をいたすのでありますが、ILOでこの種の条約はできているけれども、なおわが国が批准をしていないものが私は相当あると思う。毎年三、四件ずつ条約を取り上げて批准するということによって、大体現在成立しておる条約のうちで、日本が批准をしておる部分が、大体平均以上には今度は達することになる、こういう先ほどの答弁がありましたが、もう三年くらい前であったかと思いますが、実は国会において、わが党の松岡駒吉氏が提案説明をいたしまして、衆議院においても、国際労働条約の各条約の批准促進に関する決議案が、当時与野党一致で可決されたことがございます。ところがわれわれの見るところでは、せっかく衆議院の院議で決定されておりますが、その後条約の批准についての件数が、格別ふえているというふうにも見えないのでありますが、最近における、特に国内法の関係から考えても、当然批准されてもしかるべきではないかというような条約が、まだ相当私は残っていると思うのであります。その点については、幸い今国会にはこの二つの条約が出て参ったわけでありますが、できるだけ早い機会に——平均に達したからというお話でございますが、日本は敗戦後いわゆる三等国、五等国にも低下しているのだというようなことも、われわれ国民の中からも卑下して言う者もございますけれども、何といってもアジアにおける、また世界的な関係から見ても、工業生産力という点においては、国土の狭小な割合に非常に発達している国なのです。その点から見て、やはりこの生産力の発展の源泉としての労働に関する、少くとも国際的なこの種の条約というものは、私はやはりどんどん批准をし、当然それに伴って国内の労働法制の未熟なものについては、どんどん国際水準まで引き上げていくという処置がとられなければならないと思いますが、この種労働条約の批准促進について、政府として今後積極的にどういう対策をとっていかれようとするか、特に外務省並びに労働省の両方から、この点についてお答えを願いたいと思います。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 国際労働機関が採択しました条約は、すでに百をちょっとこしておりますが、わが国は昨年までにおきまして、二十二の条約を批准しております。参加国の平均が二十一条約でございますから、昨年ですでにこしているのでありますが、本国会におきまして二つ御承認を願いますと三十四になりまして、平均よりまた差を広くするわけでございますが、実は外務省といたしましては、いつも外務省側の方から、今度の国会には何か労働条約をお出しになりませんかということを、労働省の方に申し上げているくらいでございまして、これは一般に国際的見地から申しましても、新しい日本の国際的信用を増すという点から、私どうしても必要な仕事だと思います。それから国際労働機関自体に対しましても非常に工作をいたしまして、ブラジル等と激戦の結果、日本が理事国に当選いたすような努力もいたしたわけでございます。今後とも、残る条約のどれを優先的に取り上げかるということは、これは私どもにはわからないので、労働省の労働政策からの御判断にまかすほかはございませんが、今後ともあらゆる国会の会期中に、なるべく多数の労働条約を提出させていただきまして、御承認を仰ぎたいと存じております。

田中織之進日本社会党

○田中(織)委員 今外務省の方としては、開会にできるだけILOで採択した条約の批准を推進するようにやっているけれども、労働省の方の条件によって提出されてくるものも限定されてくるような実情にあるということは、これは私事実だろうと思う。下田さんが正直に述べられていることだと思うのでありますが、私は、最近の労働省が、労働省が労働省設置当時の——これは局長さんたちがお見えになっておりますけれども、むしろ倉石労働大臣に申し上げなければならぬ問題だと思うのでありますが、そういう点については労働省設置当時の、本来労働者のためのサービス省から、何か労働運動の取締り機関のような形に漸次転落しつつある傾向は、はなはだ遺憾だと思うのであります。しかしこれはそのときの大臣の考え方というものが、支配的な影響を持つことはやむを得ないことだと思いますけれども、本日御出席の各局部長等におかれては、特に労働基準局関係、あるいは婦人少年局長の谷野さんも見えておられますが、婦人少年の労働条件の向上という観点から見て、せめて国際水準にまで日本の労働条件に関する体制を引き上げるように、今後一そうの努力をしていただきたい。あなた方がいろいろ担当の部局においてそういうぜん立てをしていただきますならば、いかに頑迷なる労働大臣がかりに参りましょうとも、事務当局のそうした諸君の努力というものを無視するわけにいかないと思う。労働省設置の本来の精神に立ち返って御努力を願いたいという希望を申し上げまして、労働条約に関する私の質疑は終ります。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 引き続き郵政省の関係をどうぞ……。

田中織之進日本社会党

○田中(織)委員 引き続きカナダとの小包の条約の改正の問題について、郵政当局がお見えになっておれば、一、二点伺っておきたいと思うのです。カナダとの小包郵便約定の条件が、これは現在の約定が相当古いものであるので、その後の経済事情の変遷等を十分取り上げて処置するということでございますが、この関係から見れば、たとえば同じアメリカ大陸でも合衆国それから南米の諸国との間の関係においても、これは小包だけではありませんが、やはりいろいろの協定が結ばれておると思う。それと今回のこの協定との間の条件というものは大体同じ水準でありますか、それとも今度のカナダとの問題は、一番最近に締結されただけに一番、耕しい約定ということになるとすれば、その他の国との間の約定をこの水準に合せて改訂するお考えでありますか、その間の事情について御説明願いたいと思います。

曾山克己郵政事務官(郵務局国際業務課長)

○曾山説明員 お答えいたします。今先生の御質問にありました第一点でございますが、つまりカナダの小包約定が最初に承認を求めておるが、なおそのほかとの国、なかんずく北米あるいは南米大陸との関係はどうであるかというお話であります。この点につきましてまず最初に御説明しておきたいことは、通常郵便につきましては世界全国が加盟しておりますところの万国郵便条約というのがございまして、個々の国との間の双務約定ではないのであります。多数国条約を結んでおります。ところが小包郵便につきましては、各国経済的な事情が違う関係もございまして、全部多数国条約でありますところの万国郵便連合の小包約定というものに加盟いたしておりません。具体的に申しますと、今先生が御指摘になりましたアメリカ合衆国あるいはカナダ、オーストリア、イギリス、そのほか植民地としまして香港、シンガポール等相当な国がこれに加盟していないのであります。従ってそういう国との間には双務約定を結ばざるを得ないのでありまして、事実、今日本は七つの国との間に双務約定を小包につきまして結んでおりして、カナダにつきましては大正三年の締結にかかりますもので、かなり古く、現在の事情に適しない次第でございますので、今回改訂をお願いしたという次第であります。なおアメリカにつきましては目下交渉中でありまして、最後の線が妥結しないために、今回の国会の御承認には間に合わなかったのですが、今先生がおっしゃる通り逐次進めております。  第二点でございますが、これから結ばれます約定は、このカナダとの約定の条件その他とほぼ同じであるかという御質問でありますが、それはその通りであります。ただいわゆる万国郵便連合に加盟しておりますところの国が、なぜ加盟しておらないかということは、先ほど申し上げましたように経済的事情が違います。その経済的事情というのは主として料金の問題であります。非常に広大な国は万国郵便連合の小包約定に加盟しますと、料金の点でそれに規制されますので、それはいやだ、従っておれは加盟しないという建前になっておりまして、若干料金の点で違うのであります。しかしながら料金は低い方がよろしいもでありますから、できるだけ低いということを条件にして交渉いたしております。少くとも万国郵便連合の小包約定の料金の線で交渉いたしておるのであります。今回のカナダとの小包約定の規定します料金につきましては、ほぼ私どもの、主張が通りまして、大体万国郵便連合の定むる料金に近くなっております。ただこれはきわめて古い約定であって、カナダ側のその後の経済事情の変化に従って改訂するという話がありますので、その線に沿ってカナダの事情も若干考慮しまして、少しは上げております。そういう次第でございますから御了承願います。

田中織之進日本社会党

○田中(織)委員 もう一点、最近日本とカナダとの交通あるいは経済的な関係が漸次密接の、度を加えてきておると思うのでありますが、小包関係で日本とカナダとの間で、往来しておるといったら適切ではないかもしれませんが、どの程度の個数、それから小包にもいろいろ内容は小包によって必ずしも郵政当局として詳細に調べるわけには参りないと思うのでありますけれども、これは今後の日加経済提携を強化する建前から参考にしたいために伺うのでありますが、どういうような品目のものが小包郵便を利用して向うから送られてきているか、またわが方から向うへ送るものの数量、品目は大体どういうように抑えられておるか、この点を伺いたい。

曾山克己郵政事務官(郵務局国際業務課長)

○曾山説明員 第一点のカナダとの間に交換しております小包の数量はいかほどかというお話でございますが、結論から申し上げますと、三十年度、つまり三月も入れまして約二万五千個でございます。それから向うから参りますものが一万七千個でございまして、この比例は、御承知のように日本で非常に物資が欠乏しました終戦直後の時代と逆転しまして、日本から向うに参りますものが多い状態でございます。なお内容品についてはどうかという御質問でございますが、内容品につきましては、必ず小包の内容を申告することになっておりますのでほぼわかるのでございますが、やはり商業関係の小包が大部分でございます。ただ向うから参りますものは、向うの移民から日本におりますところの家族等に送ります救恤品、こういうものも相当ございます。しからばその商業小包の具体的な品目は何かというお話でございますが、たとえば日本の輸出品目の大宗でございますところの織物とかそういったものが大部分のように心得ております。なお向うから参りますものは先ほど申しました慰問品でございますから、たとえば向うの製品あるいは日本に欠乏しておりますようなものが大部分でございます。

田中織之進日本社会党

○田中(織)委員 このカナダと日本との小包条約に関する質疑は以上で終りますが、議題になっておるオランダ国民のある極の私的請求権に関する問題の解決に関する議定書の締結について承認を求めるの件について一点伺いたいのです。  問題はこの議定書ができる基本になりました一九五一年九月七日のオランダ外務大臣からの吉田総理あての書簡、それに対して一九五一年の九月八日に日本の吉田総理からオランダの外務大臣あてに出した書簡に関連した問題でございます。今回の処置については、これは説明にありますように、日本側の自発的な旧蘭領インドにおって日本軍から損害を受けた者に対する一種の補償と申しますか、見舞金と申しますか、そういうような性質で出ておるので、その点はおのずから別な立場でこれに対する賛否の態度がきまるのでありますが、いわゆるサンフランシスコ平和条約の十四条(b)項の解釈の問題については、私この書簡から見ますと、オランダ側としては、日本の憲法にありますように、いわゆる私有財産に対する補償の規定から見て、こういう条約でその請求権を放棄することについての一種の留保条項を持ち出してきたのではないかというふうに解釈できるのであります。それは吉田さんの回答文の中でもその点は認めながらも、やはり講和条約の十四条(b)項の解釈については、吉田さんの書簡に示されておりますように、「もっとも、日本国政府は、連合国民がそれらの請求権に関してはこの条約の下においては満足を得ることができなくなるものであること、」これはサンフランシスコ条約が効力を発生した後においては、連合国並びにその国民の請求権は放棄するのだという解釈をその点で意味しているものだと私は思うのでありますが、これは当時吉田総理大臣とオランダ外務大臣との間で取りかわされた書簡の解釈の問題になるわけでありますが、これが基本になって今回の議定書が成立いたしたということになりますとやはり私は重要性を持ってくると思うのです。また、こういう関係のものが今後出てこないとも限らぬので、その点についての、特に十四条(b)項の解釈についての外務省側の見解をこの際伺っておきたい。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 平和条約の十四条(b)項自体といたしましては、自国民をして請求権を放棄せしめた反面に、しからばその国民にいかなる補償をするかという点は、全然白紙で、触れておらないわけでございます。その点がサンフランシスコ平和条約とヴェルサイユ平和条約あるいは対伊平和条約との差でございますが、それはそれといたしまして、この吉田・スティッケル書簡はまさに御指摘のように、オランダ側としては、第一には憲法上の法律問題として、第二にはここにも書いてありますように、良心または政策の問題として、二つの角度から取り上げてきたわけでございます。それでオランダが平和条約に参加いたしますと、十四条(b)項の規定から、オランダ政府としては日本政府に要求できなくなるわけでございます。しかし法律問題としましてはオランダ政府としては国民の請求権までも放棄せしめることはできないのであります。従ってオランダの国民が日本の裁判所に訴えて出るかもしれない。その日本の裁判所に訴えて出ることをオランダ政府はサポートは決してしないけれども、個人が勝手に日本の裁判所に訴えて出る自由まで奪うことはできない、またその場合にオランダ政府としては決してその個人を支持して日本政府に迫るわけではないけれども、一応法律問題としてオランダ国民が日本の裁判所に訴え出る権利を放棄し得ないのだという点を提起した、それが第一の角度であります。  それからもう一つは、日本の政府が、日本軍が戦争中十一万人の者を抑留し、非常な死者あるいは廃疾者を出したということについて、良心的な見地から、またもし今後の日蘭友好関係を望むならばその政策的の見地から、何か自発的に——法律問題としてでなく、自発的に措置をするという意思表示をしてもらえないか、そういう二つの角度から迫って参ったわけであります。従いましてオランダ政府としては御指摘の憲法問題を提起してきておるわけでございます。

田中織之進日本社会党

○田中(織)委員 講和条約の十四条の(b)項において、個人の請求権放棄に対するその国としての補償の問題は何ら触れておらないにもかかわらず、それは国内法の関係から見れば、これはやはり私は国内的に解決すべき問題ではないかというふうに考えるのです。それは立場を変えて、外地におった日本人のいわゆる在外資産の補償の問題が今大きな政治問題として取り上げられておる場合において、これは当然やはり日本の国の責任において解決しなければならぬというところにこれらの在外資産の問題が数額においても巨額なものに達するだけに、財政事情その他の関係から見て、補償してやりたい気持が十分あっても明快な回答ができない。そこで先般来在外資産の補償を要求する引揚者たちの切なる要求をいれて、一体どの程度に旧外地と申しますか、そういうところに個人の在外資産が残されてきていたかということの調査をやる申告を受け付けるための法案を出そう、こういうようなところまで日本政府は進んできておるわけなのですが、私はこれはやはりオランダ国内の問題だと思う。ただそういう意味で、その法律的な問題を切り離した立場で、講和条約のときに、そういう国内で解決しなければならぬ問題なのだか、この点については一つ政治的に考えてもらえないかという意味合いで、それを承諾したことに基いて、今回金額は一千万ドルですが、この一千万ドを見舞金として、全く政治的、道義的な立場から出すことにきめたのだということであれば、私は筋は通ると思う。ところが今言うように、オランダの国内の問題として、講和条約の条章の解釈から見れば、しなければならぬ問題をからませてくるということになれば、ちょっとその点が筋が通らなくなると思うのですが、重ねてこの点についての外務者側の見解を伺いたい。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 法律的の観点は先ほど申し上げた通りでありますが、まさに仰せのように、オランダ政府は、国内問題として解決するという道を選んだわけでございます。今日まで幸いにして、オランダ人が直接日本の裁判所に訴訟を提起するということはございませんでした。そこで見舞金で一千万ドルに相当するポンドを——大体一人当りにしますと三十二ポンドという額になりますが、結局これをオランダ政府が分けることによって、オランダの国民の請求権の提起を今後なくそうというような解決策をとったのです。ちょうどオランダの国内問題を解決する具に見舞金が利用されたという関係になります。  反面日本の問題でございますが、桑港平和条約は、国内補償の問題を全然規定しておりません。これはなぜかと申しますと、占領の主たる責任者であり、同時に平和条約起草の主たる責任者であったアメリカが、日本を長年占領中見て参りまして、今までの平和条約では、必ず敗戦国側の政府に国内補償の義務を負わせまして、そして戦勝国側の私有財産権尊重の原則に適合したという良心の満足をあがなったわけでありますが、今回も連合国側としては、日本政府に国内補償の義務を負わして、そうしてみずからの民心の満足を得ようといたしますには、あまりに敗戦日本の財政困難の状況を連合国側はよく承知しておった。これはうっかりそういう規定を設けたら、日本が破産に瀕するかもしれない、これはよろしく日本政府と日本国民の将来の解決にまかすにしくはないという見地から、桑港条約には何ら国内補償の問題を掲げなかったのであります。そこでただいま仰せになりました国内補償の法律を作ろうという機運があって、まさに連合国側が日本国民にまかした問題が、日本の国内問題として解決の機運に向いておる、そういうように見られるわけでございます。

田中織之進日本社会党

○田中(織)委員 実はこの問題は、私は今回のこの議定書の承認に関する件では、これ以上質疑は続けませんが、実は太平洋戦争の場合に、旧蘭領インド、現在のインドネシアに対して進攻作戦をしとったことは事実であります。またその点から見れば、オランダがいわゆる連合国側として日本と対戦の立場に立った。しかしこれはオランダの植民地であったものでありますから、そこでインドネシアの独立ということが戦争中に実現をして参った。こういうような関係があるので、問題は、結局インドネシアと日本との間の賠償の問題にも影響があるのではないか。旧蘭領インドの主権者であったオランダと、それからもちろん当時植民地であった原住民、現在のインドネシア共和国というものとの関係にも、今後この種の取扱いが影響を持たないとは言い切れないと思う。そういう問題が残っておる。それから、これまた当時日本の領土の一部分であったのでありますが、未解決の問題として残されておる対韓国問題、いわゆる日本に対する韓国の請求権の問題、一方日本人で現在の韓国、当時の朝鮮から引き揚げて参りました人たちが、朝鮮に残してきたいわゆる在外資産の補償の問題、こういう問題にもやはり私は基本的なものの考え方が関連を持ってくると思う。しかしその点は、特に日韓関係の問題については、現に大蔵委員会等に出ておる閉鎖機関令の問題で、対韓請求権とも関連のある重要な問題が出ておるので、別の機会にこの委員会で取り上げることにいたそうと思うのでありますが、そういう関係から見て、私はこうしたいわゆる見舞金の関係というものはあとを引くのじゃないか、あとの問題に日本の国内的な関係においても影響を持ってくるし、問題ではないかというふうに考えるのであります。最後にその点だけを一つ指摘をしておくことと、もう一つは、オランダとの約定のような関係がほかにも残っておるかどうか。サンフランシスコ条約で、吉田全権との間にオランダはこういう、書簡で保留をしたわけでありますが、そういうような関係がほかにも残っておるかどうか、この点だけ一つお答えを願いたい。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 幸いにしまして、こういう特殊の関係のある田はオランダだけでございまして、ほかに桑港会議の際に、吉田全権から自発的の措置をとるというようなことは、どこの国に対しても申しておりません。従いまして、先ほど御指摘になりました十四条(b)項が、全般的にどの国に対しても有効であるので、その心配はないと思います。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 森島守人君。

森島守人日本社会党

○森島委員 私、昨日条約局長にお伺いしたのですが、平和条約の調印国以外に、当時の中立国、わが方の同盟国、敵国、大体三つのカテゴリーに分けて、個人の賠償関係の問題があると思いますが、その点につきまして、きわめて簡単でよろしゅうございます、いずれ別の機会にお伺いすることといたしますから、簡単に各国との交渉経過の概要だけお答え願いたいと思います。

法眼晋作外務省参事官

○法眼政府委員 御質問の点でございますが、これはスペイン、イタリア、スウェーデン、デンマーク等がございます。そのほかにもポルトガルがある種の、要求を持っておるということは御承知の通りであろうと思います。その中のある国と金額その他についてすでに交渉中であります。その金額の総計は、ポルトガルを除きましては、先方の要求は円に直しまして二百三十六億内外というところでございます。しかしこれは日本側としましてもそれをそのまま認めるわけにいきませんので、非常に困難を冒しながら現在各個のケースにつきまして審査中でございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 その今御指摘になりました諸国の中には、英米を含んでおりますか。どうですか。

法眼晋作外務省参事官

○法眼政府委員 今申し上げましたのは、桑港条約とは関係のない国でございます。英米につきましては、やはり平和条約上、従来日本に持っておった各種のクレームについては影響なしとなっておりますから、従来戦争前、戦争中から日本に要求しておりましたクレームは依然として残っております。これはおびただしい数残っております。これもしかしながらわれわれの方では非常に困難ではございますけれども、各個のケースにつきましてできるだけ調査をいたしております。

森島守人日本社会党

○森島委員 ただいまの英米関係のは主として東亜戦争、日華事変当時のものと思いますが、その通りでありますか。

法眼晋作外務省参事官

○法眼政府委員 さように考えております。

森島守人日本社会党

○森島委員 南シナのマカオにおいて事件が起きましたときに、当時外務省の総領事をやっておりました福井淳という人が射殺された事件がありますが、これはどうなっておりますか。

法眼晋作外務省参事官

○法眼政府委員 この問題は、ちょっと私自身が所管外でありますので、詳しくは承知いたしておりませんですが、これは所管の方と連紹をいたしまして、後刻詳細御説明したいと思います。

森島守人日本社会党

○森島委員 これはやはりポルトガル関係なのです。御所管外でございますか、アジア局関係でございますか。

法眼晋作外務省参事官

○法眼政府委員 さようでございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 では、いずれアジア局長にお尋ねすることにいたしまして、私の質問は大体これで終ります。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 私本七郎君。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 昨日大体の御質問はしたのですが、少し残っておりますので、その点をお尋ねしたいのです。今田中さんから指摘された点で、オランダ側としては、国民の請求権までも放棄するわけにいかぬ、いわば私有財産尊重の原則を建前にしておるオランダ憲法を基礎に法的には根拠を求めておることになるのだろうと思うのですが、一般的にそういう私有財産尊重という原則を中心にした憲法を建前にこれを主張したとするならば、同じようなことはやはりその他の列国にも言えるだろうと思います。おそらくどこの国でも私有財産の尊重ということは明記してあるだろうと思います。そうなると、法的にはオランダだけが今言うような個人の請求権まで放棄できぬという立場を特に主張する論拠は私はないと思う。これはどこの国でも同じことが言えるだろうと思う。オランダが特にそういうことを言える法的な根拠は一体どこにあるか、何か特にオランダ憲法にそれができるような列国と違った規定があるか、その点お尋ねします。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 オランダのみならず、文明国にはすべて私有財産権尊重に関する憲法の規定があると存じます。そこで法律的にはオランダのみが提起できる理由は私は一つもないと思います。一に、昨日申し上げましたように、オランダの対日反感が非常に強い。その反感をなだめ、また将来の友好関係を確立するという点から見まして、政策の問題として、オランダが強く迫った場合に、やむを得ず吉田全権が将来自発的に措置するというようなことを言われたということで、法律的にはオランダを区別する何らの理由はない。ただ特殊な日蘭関係だけだろうと思います。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 そうすると、日本側ではそういう政策面を重視し、オランダ側では政策面と法律的な面と両方同等の立場で考えておる、こういうようなわけですか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 日本側といたしましては、昨日申し上げましたように、オランダは当初平和条約の第十四条を留保したかったのを、それをやりますと、ほかの国もみな気にいらない条項を留保するということになって、平和条約が実質上成り立たないようになってしまうと困るという見地から、それをやめてもらいまして、こういう了解をしたわけであります。日本としては、これを作りました当時は、とにかく桑港条約が全的の形で発効し得るようなものになってもらいたいというのが、第一の政策的な要求でございました。今日になってみますと、ガットその他戦犯の関係等から見まして、オランダのこの要求が満足されない結果、日本も非常に不利をこうむっておるという点からの政策的の考慮に相なっておるわけであります。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 それからこの際、交換公文とか書簡というものの性格を、もう一度はっきりしておいていただきたい。これは日米共同宣言以来どうもはっきりしない点がたくさんある。こういった交換公文、書簡なるものは、これを次期政府が受け入れれば問題はないわけですが、次期政府がこれを受け入れることができない立場に立つ場合には、法的な拘束力はない、従ってまた国際法違反という非難もこうむることはない、こういうふうに解釈して間違いないかどうか、この点を一つ確認しておきたい。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 この交換公文は国会の御承認を経た正規の条約ではないのでございます。従って次期内閣が政策的に違った見地から、こんなことは履行する必要はないと認めました場合には、これを放擲しても、法律的にはかまわない。ただ政治道義上の問題といたしましては、一度一国の総理大臣が出した対外文書でありますから、これを簡単に放擲するということは、政治的に好ましくないことは確かでありますが、純法律論としては、次の内閣まで拘束し得るという法律的効果は持たないと思います。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 それからこの議定書で、一千万ドルという額をきめた根拠はどこにありますか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 これは結局交渉の末、一千万ドルというまるい数になったわけでございます。別に根拠というものはないのでありますが、大体十一万人で一人当り三十二ポンドという目的に結果としてなったのでございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 それはオランダと話し合ってきめたのですか、オランダが要求して、それをまるのみしたという結果ですか、

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 昨秋、イッテルサム公使が参りましたときに、先方は当初出したのは二千七百五十万ドル、その前はもっと高いことを言っておったのですが、大体二千七百五十万ドル程度をほとんど三分の一近くに負けてもらったわけでございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 その日本国内における予算措置はどうなのですか。

法眼晋作外務省参事官

○法眼政府委員 その点につきましては、財務当局と話し合いがついております。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 関連して、念のために伺っておきたいのですが、交換公文の性格の問題です。この前の防衛分担金の日米共同声明のときの、重光外務大臣だったと思うのだが、それから去年の同じく今ごろに鳩山総理大臣の答弁、そういう点を考えてみると、交換公文あるいは——あのときは交換公文は出ておらなかったけれども共同声明の性格、それと今あなたの御答弁になった交換公文の性格、大体これは同じようなものを見て、交換公文並びに声明書は、いわゆるその政府限りの政治的責任を負うということのように、私は答弁を記憶しておるのです。そのあとの違った政府ができた場合には、政治的な責任を負わなくていい、とするならば、その効力といいますか、この交換公文の効果というものは、その政府だけで終ったものと理解すべきであって、そういうような法理解釈からいけば、次の政府においてはことさらこの交換公文に対して、破棄の通告をするというようなことは必要がない、新たにそういうことについて別段の取りきめをやってこれを継続するということが行われればともかくとして、それに対して何らの協議も行わない場合においては、先ほど私の言った総理大臣並びに外務大臣の答弁からいって、そのような法理解釈をするならば、次の政府においては、一応これはその前の政府によって終了したものと見て、これをあらためて継続する何らの意思表示を行わない限りにおいては、終ったものと解釈すべきだと思うのですが、これはあと防衛分担金で重要になって参りますので、この点ぜひ御答弁を願っておきたいと思います。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 御承知のように交換公文には二種類ございます。たとえて申しますと、国連軍協定に対して支持を約束いたしました吉田・アチソン交換公文、これは国会にも安保条約と同時に提出されておりまして、内容は全く条約と同じであります。従いまして将来これを変える場合には、再び条約と同じ価値を持つ公換公文でやり直さなければならない。ところが条約とは全く違う一国の政策でございますとか、当時の政府の意思表示というような法律的の内容を持たないものがございます。しかしこれは内容にもよりますが、大きな長きにわたる政策を表明したような交換公文でございますと、これは相手国側としては、国家の一貫性という見地から当然次の内閣も、黙っておればそれを踏襲したものと了解することは当然のことでございます。でございますから、もし次の内閣が政策を改めたという場合には、ほっておいてはいけないのであって、その政策を変えることについて、やはり相手国と了解を遂げることが、実際問題として必要と相なって参ると思います。  それからさらに外交の常務に関する公文、われわれはこれをルーティンの公文と申しておりますが、これのごときは、そのときどきのことを言っておるのでございますから、内閣がかわりまして違ったことをした場合にも、ただ黙って、違ったことをした文書をまた取りかわせばいいということで済む場合もございます。  それから防衛分担金の場合でございますが、共同声明も、政府側からたびたび御説明しましたように条約ではないのでありまして、政府の方針を掲げておるだけでございます。具体的に条約になるものは何かと申しますと、予算が成立しましたあとで交換公文をいたします、この交換公文は内容は条約と同じではございますが、ただその交換公文をなすに当って、行政協定の授権があるから政府限りでできるという関係に相なっております。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 関連ですからもうこれでやめますが、ただ問題は、法律上の関係を伴うような交換公文という問題をお話しになっているのだが、そういう法律上の問題というのは、おそらく国民の権利義務に関する問題という意味だと私は解釈するのです。そうなってくると、これは本来交換公文で取りきめることができないのであって、むしろ国民の権利義務に関連するようなものであるならば、条約または協定によって結ばるべきものであって、交換公文という形をとることは、われわれからすれば違法だと思うし、少くとも外務省としては異例の措置である、特例である、こういうような考え方をすべきじゃないかと思うのですが、この点だけを伺っておきたいと思います。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 その点も私ども全く同感でございまして、なるべく条約の内容を打つものは交換公文にすべきでないと考えております。ただ第一条、第二条、第三条というように、条文的に書けない一つの問題であるが、重要な問題を文書にしようという場合にはどうしても交換公文という形式をからざるを得ない場合があります。吉田・アチソン交換公文だとか、あるいはロ華平和条約の付属取りきめになっております例の有名な、現に支配しまた将来支配することのある地域という、ごく一つでありますが重要なことを言うには、例外として交換公文の形をかりるということがあると思います。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 戸叶里子君。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私は英連邦戦死者墓地に関する問題で一点だけ伺いたいと思います。  英連邦戦死者の墓地を横浜の保土ケ谷に置くことに別に異存はありませんが、ただここで問題になりますのは、第三条でそれを貸す場合に三十年間無償で使用することを許可する、そしてその土地が前記の目的に使用される限り幾度でもその期間を更新をするものとございますけれども、一応期限は切ってありますものの、この場所が永貸借地的な性格を持つことを向うが望んでいはしないかという点をまず伺いたいと思います。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 これは実は国内法との関係から一応三十年という期間を切ったのでございますが、仰せのように墓地としての目的で続けて使用されている限りは、いつまでも無償で使わせる約束をいたしておるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そういたしますと、永貸借地的なものになる可能性がないというはっきりとした裏づけはございますか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 永貸借地とは実は借料を払うわけでございまして、無償ではないのであります。ただ借料というのは、日本の開国当時の非常に低い、今日においてはほとんどノミナルな、取るに足らない金額で借りている、借料を払うと言いながら、取るに足らぬ額を払っておるということの不合理性がけしからなかったわけでございます。この場合には借料も取らないで無償で使わせるという約束をしておるわけであります。その点で永貸借地とは根本が違う考え方になります。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 他に質疑はありませんか。——質疑がなければただいまの各件に関する質疑は終了することといたします。  ただいまの各件中、日蘭間の補償に関する件条約第十号及び労働関係条約第十一号、第十二号について、それぞれ討論の通告がありますので、順次これを許します。松本七郎君。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 私は社会党を代表しましてオランダ国民のある種の私的請求権に関する問題の解決に関する日本国政府とオランダ王国政府との間の議定書に賛成の意見を述べるものでございますが、ただこの際要望しておきたいと思うのでございます。私どもは外国に補償金あるいは賠償その他を払う義務を負い、あるいは約束をいたしたわけでございますが、そのときの日本としての心がまえについてでございます。  昨日、インドネシアの新聞代表が質問されておりましたように、一体日本は賠償なりあるいは補償金を払う場合に、戦争で負けて仕方がない、強制された義務としていやいや払うのか、それとも自分の戦争責任ということでこれを払うのかということを聞かれた、これはおそらくどこの国もそういうところに非常に大きな関心を持っておるだろうと思います。日本は不幸にして戦争に敗れて補償金を払わなければならぬ、これはやむを得ない義務だから払うのだ、こういうつもりであってはならない。やはり私どもは過去の戦争に対する徹底的な反省を自主的にすると同町に、その反省が連合諸国に十分了解されるような方法を具体的に講ずるということが、今後補償を払うなりあるいは賠償を払うときの、日本の国として非常に大事な点であると思うのでございます。結果においては、この戦争をやったことは後進国が民族的に独立する結果を生んだり、いろいろしたことはあるでしょう。そしてまた、それらの後進諸国の民族が、日本のおかげだという気持を持っておる場合もある。そういう気持をそういう民族が持つことはけっこうなことでございますけれども、それをいいことにして、日本が戦争をやったのは罪悪でもない、むしろそういう民族のために貢献したのだというような思い上った気持がここに出て参りますと、せっかく賠償なり、補償金を払ったことが何もならない。むしろ今後大きな弊害さえ生んでくる危険があると思うのです。そういう点について、最近特にアジア諸国に警戒心と申しますか、こういう問題が解決されるのに歩調を合せるように、どうも日本の国内が戦争に対する反省、責任を感じなくなってきておるのではないかというような疑いが強くなっておるように思いますので、今後政府においてはこういう点を十分留意されて、連合諸国、後進諸国にこういう疑いを持たせないように、これをほんとうに平等の立場でもって相提携できるきっかけにしていただくように特に要望いたしまして、賛成する次第でございます。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 戸叶里子君。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私は、すべての種類の鉱山の坑内作業における女子の使用に関する条約についてまず賛成をするものでございますが、一、二の要望を申し上げたいと思うのであります。  先ほど条約局長が、国際労働機関で採択された条約が百以上ある、そして各国の批准を見ると、大体平均が二十一である、しかし日本の場合にはそれを上回っておるということをおっしゃっておられましたが、そのことは別に大して誇りとするところでなくして、もっと国際労働機関に入っておる全部にも早く入れるようにすべきだと私は思うのでございます。ことに女性の保護に関する条約がこれだけでなくしてまだあるのに、それが批准されていないということはまことに残念なことでございます。それは、結局日本の円内の女性の保護に関する法律が、国際水準にまでまだ達していないことを物語るものでありまして、一日も早く国際水準に達して国際条約を批准するところまでいかなければ、男女同権の実を上げることができないと思います。そしてまた文化国家を掲げている国としてはまことに恥かしいことだと思います。ことに母性の保護に関するもの、すなわち産前産後の休暇の点が多くの職場でいろいろと討論されておりましても、まだ十分に守られておらないということは、非常に重大な問題でございまして、一日も早く国際水準に達するように努力されることを望むものでございます。ところが、ややもしますと、資本家側では、母性を保護するようなことは大へんめんどうなことだから、むしろ男の人に職場をかわってもらおうというような、保護というよりは、積極的に職場を奪おうというような空気が各地に出てきておりますので、こうしたときにはよほどしっかりと婦人の保護ということを考えていただきたいと思います。さらに坑内の作業に婦人が従事した違反もたくさん出ております。しかし、これは婦人がそこに入らないでも、ほかへの職場転換が考えられるならば解決される場合も非常に多うございますので、この点十分親心をもって解決してやってほしいと思います。こうしたことを希望条項といたしまして賛成をいたしますが、この条約の批准によって労働婦人の幸福がさらにもたらされるように努力されるように努力をお願いするわけでございます。  第二の有料職業紹介所に関する条約にも賛成をいたしますが、しかし、日本におきましては、先ほど政府からも御説明がありましたように、もぐりの周旋屋が非常に多い、これがいろいろな害悪を流していることは、皆様御承知の通りでございます。先ほどの御説明によりますと、もぐりが、全体の六百八十二件のうち五百四十二件が人身売買の違反であるということを見ましても、全く驚くべきであると思います。日本が売春の盛んな国であるという汚名をなくすためには、まずこうしたところから改めていかなければならないのではないかと思いますので、今後さらに厳重な取締りの強化をはかって、この条約に入っても恥かしくないようにしてほしいということを希望いたしまして、私の賛成討論にかえたいと思います。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 岡田春夫君。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 私も、今戸叶さんの討論をされた女子労働者の坑内就労禁止の条約並びに有料職業安定所に関する条約、この二つにつきまして賛成をいたしますが、これは特に強く政府に対して注意を喚起しておきたいと思いますので、討論をいたしたいと思うのであります。  この点は、昨日並びにきょうの二日間にわたっていろいろ質疑をいたしましたことで、政府当局としても十分御認識をいただいたと思いますが、日本の国は、特に女子労働者の坑内就労について全国的に違反を犯しております、従って、条約違反国であるということを忘れてはならない。それから有料職業安定所の問題についても、ただいま戸叶さんの言われたように、条約違反国である、この点をはっきり皆さんが自覚されることが重要であると考えます。条約を幾つ結んだとかいうようないろいろな話もありましたけれども、条約を幾つか結んだことが鼻が高いのではなくして、結んだ条約に違反しているということが問題なのである。この点は今後において十分注意されんことを希望いたしておきます。先ほどからいろいろ質問申し上げましたように、このように、条約に違反せざるを得ない状態というのは、何と申しましても現在の国の政治が悪いということをはっきり認めなければならない。日本の国民をこのような経済的窮乏に置いておいて坑内の就労を禁止して、それではどこで働かすのだ、働くところもないじゃないか。こういう状態に置いておいてこれを禁止するということは、いたずらに国民を飢餓の中に追い込む結果になってしまう。このような政治が悪い。このような政府のやり方が悪い。こういう点ははっきり自覚していただいて、そういう問題については、ぜひとも条約に加盟いたしましたあとにおいても、全世界的な会議のもとにおいて訂正をさしていくよう、いろいろ注意を喚起されるように特にお願いいたします。戦争に一けたことが悪いというようなことを言われましたが、これは戦争犯罪人どもが悪いのがあって、国民が悪いのではない。これは戦争犯罪人に関係があるから言っているのかどうかしらぬけれども、とにかくわれわれは、国民をかような窮乏の中に追い込むことは反対であります。しかし、この条約が十分達成のできるように特に私は希望いたしまして、賛成の討論を終ります。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。オランダ国民のある種の私的請求権に関する問題の解決に関する日本国政府とオランダ王国政府との間の議定書の締結について承認を求めるの件、すべての種類の鉱山の坑内作業における女子の使用に関する条約(第四十五号)の批准について承認を求めるの件、有料職業紹介所に関する条約(千九百四十九年の改正条約)(第九十六号)の批准について承認を求めるの件、日本国における英連邦戦死者墓地に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国とカナダとの間の小包郵便約定の締結について承認を求めるの件、以上五件をそれぞれ承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 御異議なしと認めます。よってただいまの五件は承認することに決しました。  なお、ただいまの五件に関する報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 御異議なければさように決定いたします。  午後一時三十分より再開いたします。  これにて暫時休憩いたします。    午後一時休憩      ————◇—————    午後一時四十九分開議

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢等に関する件について質疑を許します。並木芳雄君。

並木芳雄自由民主党

○並木委員 最初に日ソ交渉についてお尋ねをいたします。昨晩松本大使がロンドンから帰って参りました。大臣は松本大使にもうお会いになったことと存じます。きょうは大臣の姿を拝見しますと非常に元気がおありになるので、前途について決して悲観的でない見通しを持たれたのではないかと私は察しております。私どもは日ソ交渉が決してデッド・ロックに当ったとは思っておりません。何しろ相手がソ連でございますから、その会談の途中においては、いろいろ紆余曲折があったことと存じます。その中の一こまであろうと存じますが、この前のこの委員会での総理大臣及び外務大臣の御答弁によっても、松本大使が帰任した上で、その報告を聞いて今後の対策を立てていきたいという御答弁がありましたので、この際大臣の日ソ交渉の問題に関する今後の対策などについて、お尋ねをしておきたいと思うのであります。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 日ソ交渉の重任に当った松本全権が昨夜帰って参りました。さっそくその報告を一わたり受けまして、松本全権が困難なるこの交渉に長く当って健闘せられたことに対しては、私は衷心から感謝の意をもってこれを迎えたわけでございます。  その報告の大要は、今日まで私が本委員会において述べましたところと大同小異、ほとんど変りはございません。これは交渉の経過でございます。さようなわけでありますから、その報告に基いて将来の対策もこれから立てるつもりでございます。

並木芳雄自由民主党

○並木委員 今度の交渉がやや行き詰まりに近い状況になったのは、領土問題のうちで南千島の点であったと存じます。私どもから見れば南千島は当然日本のものであり、また非常に重要な地域ではございますが、ソ連の方から見れば大したことはないと思うのです。それにもかかわらず、ソ連があの小さい島にこだわって、この交渉を停頓させるところの、ほんとうの魂胆はどこにあるのでしょうか。私どもは今までほんとうに誠意をもって交渉に当り、この会談が成立することを望んでおった者の一人として、不可解であるとともに、非常に遺憾に思っておるのでございます。この点について何らかの情報が得られたでありましょうか。また大臣としてはどういう御所見でありましょうか。ほんとうにソ連として誠意をもって日ソ交渉を成立さして、二国間の条約を結ぶ意思があるのかどうか。そういうところまで私どもはやや疑わざるを得ないような段階になったのではないかと思うのでありますが、御見解を披瀝していただけば幸いと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 交渉の経過については的確に報告を受けました。それからまたソ連の領土問題に対する態度も、交渉中に最後まで変らなかったということも、事実として報告を受けておるわけです。しかしソ連がどうしてわが方の正当と信ずる主張を受け入れてくれないかという、ソ連側の意向については、これをかれこれと推測する具体的の材料はございませんでした。またこれはそう推測をしても、単に推測でありますから、今この席で私から申し上げるのもどうかと思います。しかしながらソ連の態度が変っていないということだけは、事実としてこれを考慮するほかないと考えるのでございます。

並木芳雄自由民主党

○並木委員 松本大使に会われて大臣が報告を受けて、これからその対策を立てていきたいとおっしゃいますが、その通りであろうと思います。なかなかむずかしい問題であって、大臣としては非常に御苦労であると私は感じておるのです。今の段階で、しばらくは事態を静観していくのでございましょうか。あるいは松本大使よりさらに上のレベルで、たとえば外務大臣あるいは鳩山総理、そういう方々の、上のレベルでの会談、交渉に持っていって、早急にこれを解決するめどをつけたいという御意向がおありでございましょうか。要するに、しばらくは静観、そうして事態の変遷を待っていくという態度で臨まれますか。それとも日本としては、積極的にこの打開の対策を立てていきたいという御意向でございましょうか、いかがでしょうか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 結局そういう点は同じことに帰着すると私は思います。双方の主張がはっきりなり、またどこに困難があるかということがはっきりなったのでありますから、私が先日申し上げた通りに、各般の情勢の変化ということも待って次の手段に出なければならぬと思います。そのときに、必要のあるときには他の手段もとらなければならぬかもしれませんけれども、それは将来のことで一切わかりません。今のところでは、いつでも松本全権が再びこの任務について交渉を進めていき得るという態勢は、引き続きとっておきたいと思います。それがまたわが方の方針に合致するゆえんでありますから、わが方としては主張はどこまでもする。しかしこの交渉はあくまでも熱心に進めていきたい、こういう態勢はとっていきたい、こう考えておる次第であります。

並木芳雄自由民主党

○並木委員 それではぜひこの日ソ交渉だけは成立に持っていくように、大臣の御努力を私要望して日ソ会議の質問を終っておきます。  次に日韓会談についてお尋ねをいたします。これもずいぶんむずかしい問題で、私どもとしては何とかしてこの難局を打開するように念願をしておったのでございますが、先日ダレス氏が韓国を訪問し、また日本を訪れて、大臣もお会いになりました。そのあとから日韓会談の見通しについて、急に明るいものがきざしたように受け取れるのでございます。私どもはぜひそうありたいと思っておったやさきでございますから、その衝に当られた重光外務大臣は、この際問題の日韓会議の今後の見通しについて、明らかにしておいていただきたいと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 日韓関係の最近の発展については、私の方から申し上げたいと思っておったのでありますが、御質問がありましたから最近の情勢をお話しいたします。  今ダレス米国国務長官と私との会談のこともお話がございました。私が昨年渡米をいたしましたときに、ダレス長官とは各般の問題について話をしたということを申し上げておきました。東アの大局についても、ずいぶん話をいたしたのであります。そして日韓の関係の調節ということは、重要な一つの項目であるということも双方ともよくわかっておった問題であります。それから引き続いて米国側も日韓の問題について、非常に関心を高めたといっても差しつかえはございません。元来が米国は日韓の関係の正常化ということについては、非常に重大な利害関係を持っておるわけでありますから、当然関心を持っておるわけであります。そうでありますから最近は一そうこの日韓関係のことがしばしばうわさされるに従って、関心を高めたと申しても差しつかえはないのであります。しかしながら元来が、日本と乾田との関係は、日韓との間に円満に処理していきたいというのがほんとうの希望でございますが、むろん米国側も同様な方向にいつも動いておるわけであります。そこで数日前に韓国の代表部の長であります金公使が私のところを来訪しまして——韓国に帰っておったのでありますが、最近帰って来た、そうして韓国自身の内部の韓国政府の意向を詳しく私に伝えたのであります。日本側の意向はもう諸君の御承知の通りに、たびたび私の口からもここで御説明をしたと思います。日韓関係の正常化ということは、日本の大きな政策である、目的である、こういうことを申し上げておる。そしてそのためには日本側としては、耐え得べきことは耐え、あらゆる努力をしていくという、こういう大体の気がまえを申しておきました。そこで金公使の話をだんだん聞いてみますと、韓国側もさような日本側の態度に呼応するような気持が、十分あるという報告でありまして、それは私としては納得のいく話でございました。そこで私は相当希望を持ってこの会談を終ったわけでございます。そこで日本側の方針としては、従来御了承を得ておると思います通りに、まずもって急な出題から日韓の関係の整理をしていきたい。急な問題といえば、ともかくも一つ抑留されておる漁夫の釈放を日本側は実現をしてもらわなければならぬ。つかまえられておる漁夫を帰してもらう。これが何といっても焦眉の急務であります。私はそのためにずいぶんと従来いろいろ苦心もし、努力もいたしたのでございますが、それが実現を見なかったことを非常に今日まで遺憾としておったのであります。さような韓国側の意向をも確かめました上は、この問題をまず取り上げて、日韓の関係の正常化に一歩を進めたい、こういう考え方をもって漁夫の釈放の問題を実現したいと思って関係の向きと協議をし、かつまた閣僚とも今諮っておるわけでございます。困難な手続問題はいろいろございます。ございますが、そういうものを越えてこれを実際解決する方向に向けていきたい、今こういう考え方をもって進めております。不日その実績が現われることを私は衷心から希望しておる次第でございます。

山本利壽自由民主党

○山本(利)委員 ただいま日韓会談について質疑応答がございましたので、それに関連して少しばかりお尋ねいたしたいと存じます。鳩山内閣になってからアジア善隣外交ということが唱えられて、外務大臣その他の御努力によって、賠償問題その他が着々解決を見つつあるということは喜ぶべきことでありますが、特に日本に一番近接している南北朝鮮との問題ということは、わが国の将来のためからいっても、韓国自身のためからいっても、これは重大なる問題であると考えるのであります。先ほどのお話のように、近く日韓の予備交渉が始まるということで国民は明るい感じを持っておるのでありますが、その手始めとして、今外務大臣がおっしゃった漁民の抑留されておる者を帰すということが非常に重大である。しかも新聞の報道によると、今回の正式な日本及び韓国間の問題の交渉とは切り離して、日本の漁民の抑留されている者及び日本の大村に収容されておるところの韓国民の釈放の問題が別個に取り扱われるということを聞いて、これもまず妥当な問題であると私は考えたのであります。そこで懸念することは、これも新聞報道でありますが、外務省側のこれに対する見解と法務省側の見解とが非常に異なっておる。この点でまた暗礁に乗り上げるのではないかとわれわれは心配しておるのでございますが、まず外務大臣からこの点についての御答弁を承わって、次いで法務次官がお見えでありますから、それに対して御質問申し上げたいと思うのであります。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 漁夫の帰還問題と関連をいたしまして、大村収容所における韓国人と申しますか、韓人と申しますか、その釈放問題があるということは、私からも本委員会で前に申し上げた通りでございます。しかしてその大村収容所の被収容者の釈放に関する問題については、政府機関といたしましては、これは法務省の管理するところであることも御承知の通りであります。そこで法務省の方でいろいろ努力をいたさなければなりませんその釈放の手続問題に至っては、日本側においても従来の沿革もございますし、複雑なこともあるし、困難なこともあるわけであります。ただ問題は、大局の問題として日韓の関係を少しでも前進させていこうというのには、とにかくさような問題は解決をするという腹だけはきめなければ先に参りません。これは大きな政策問題であります。その腹をきめて、これをどう実行に移して手続問題を進めていくかということについては、いろいろ困難を克服しなければなりません。そして日本の方でも納得のいくような方法にこれは進めていく。また韓国側にも十分納得をしてもらわなければならぬ。私は今回の金公使との会談におきまして、さようなことについても十分互いに理解をもって話し合うことができるという先方の誠意を十分に信頼して、また信頼することができる、こう思いまして、かような問題も、わが方において、たとえば法務省の当局の意向も十分に聞いてもらって、そしてだんだんと実際的方法によってこれは進め得る、またそうしなければすべて先に行くものでありません。そうですから、さような方向に向くのがすべて妥当なことであろうと思って、法務省側と相談いたしまして、そして十分に御協議を経て、今朝はその内部の間の御相談もまとまって進んできておる次第でございます。さようなわけで、何といってもいろいろな複雑な問題がありますから、その間にはまた意見の調整をしなければならぬことがございましょう。また韓国側に了解も十分してもらわなければならぬ点もありましょうが、そういうことは私は全局を進めるという熱意をもって進め得ると、こう判断をして、法務省の全面的の御協力を願っておるわけであります。それは私は得られたと確信して、この問題に処しておる次第であります。

山本利壽自由民主党

○山本(利)委員 大臣に対する質問は留保いたまして、法務政務次官にお尋ねいたしますが、この日本人の漁夫で韓国に抑留されている者を帰してもらいたいということは、もう非常な国民の熱望である。ことに私の出身県の漁夫などは多数抑留されておりますから、その留守家族の悲惨なる状態等も私どもはつぶさに存じておりますから、当委員会においても、外務当局に向ってこの問題はしばしば質問なり要望をいたしたわけでありますが、二月三日の委員会におきまして、牧野法務大臣に向ってこの点を私は質問申し上げた。そのときのお答えの中に「むずかしい理屈は私は全然言っておりません。必ず李承晩のところで抑留している日本人を帰すためには、どんなことでもいたしたいと思っております。どんな譲歩でもして、私はこっちを釈放して、向うは交換するなら交換する、それはやるつもりです。」ただけじめだけはつけておきましょう。「そうして外務省とも交渉して、心配のないように、もう九州から山口県の沿岸のお方に不安のないようなことをやりたいと思っております。」ということを答弁の中で言っておられる。われわれはこれを要望しておったのです。今度はこれをまず解決することが、真に日韓会談を軌道に載せることだというので喜んでおったのであるけれども、どうも法務省側において、それに異論があるようであります。けれども、その異論がある場合は、すべての政治は国家本位に考えなければなりませんから、理由ある場合はわれわれはその審議に当って公正にものを考えていきたいと考えるけれども、とかくわれわれの見た新聞記事だけでは、また日本の役所がなわ張り争いをするのではないかという懸念を国民に与えては、そういう小さいなわ張り争いによって、大きな日本の外交問題あるいは政治問題というものが曲げられては、国家のためにならないという懸念から、今日は法務省からもおいで願って、この会談——今外務大臣が言われたように、すでに外務省と法務省との了解はついたと今おっしゃったが、その通りであるならばよろしいけれども、この点についてどうも法務省側において考えなければならぬと思われる点があれば、ここでその点を詳細に承わりたい。しかもこれも新聞の報道によるところでありますけれども、今法務大臣が入院中である。その入院中を見計らって外務省がこういう話し合いを韓国側とつけることは、けしからぬというような意味のことを、法務省の方で言ったように書いてある。それも真偽のほどはわかりませんけれども、先ほど私が法務大臣の速記録の一部を読み上げたのは、法務大臣はそういう気持はなかったと思ったから、今御留守であります際には最高の権威者である次官なりあるいは入国管理局長なりから、この点について御説明を承わりたい、かように思うものであります。

松原一彦自由民主党法務政務次官

○松原政府委員 お答えを申し上げます。法務大臣はただいま所労のために入院中でございますが、私にもこの問題につきましては、外務大臣をお助けしてできるだけよい解決を得るようにということでございますから、どうぞ御安心を願っておきます。ただいまお尋ねがありました通りに、日本人の漁夫が、すでに刑期も終っておるにかかわらず、あるいはいわれなくして抑留せられておることに対しましては、私ども心から心配いたしております。一日も早く帰ってもらいたいと思います。そのために外交交渉が行われるならば、法務大臣の言われた通りに、あらゆる手を尽してこれが成功することをば祈る点におきまして、法務省側においても少しも異存はございません。ただ今抑留せられておる四百何十人の刑余の人、相当悪質不良と思われる、当然国際慣例に従いまして退去してもらわなければならない人と交換条件になるというところが、けじめを立てればわからない。国内で何ゆえにこれを解放せなければならないか。国内において、解放すべき理由は実はないのであります。当然これは帰ってもらわねばならないものであって、しかもそれはきわめて少数にしぼってあるのであります。しかし今回外務省の方でよい機会として国交が正常化するためにお話をお始めなさる場合に、これもまた一つの条件となるならば、応ずることにおいても異存はございません。国内治安を乱さないようなる適法な手段のもとに、ある程度の解放にも応ずることについては用意がございます。ただしけじめをつけると法務大臣が申しましたのは、そこのところでありまして、国際慣例に従って悪質不良の重い刑に処せられた人々は、世界的に国外退去ということがあるのでありますから、今後お引き取りを願うことの保証を得たい。これだけは私は少しも無理ではない。そういう保証をぜひともこの際とっていただきたいということを希望いたしております。ところが外務大臣は、それは精一ぱい努力する、国際慣行通りなことはやる、こういうお話でございますから、別に行き違いはないと心得ております。

山本利壽自由民主党

○山本(利)委員 今けじめをつけるという言葉のことについて政務次官からお話がありましたが、先ほど私は時間を節約するためにそこのところを省いたのであるけれども、法務大臣の言われたけじめをつけるという意味は、今の次官の言われた意味ではあのときはなかった。そのときにけじめをつけるという意味は、せっかく向うから出してもらっても、また今度漁に行ったときにはまたつかまえられるから、それでは困るから、そのけじめをつけておかなければならぬという意味であって、国内にあの大村の収容所における韓国人を出した場合のことについての話ではなかった。けれども、国民がこういうことはまた一つの不安であることは事実であります。法務省の方において考えられるように、重大なる犯罪人を出すのであるから、またそれがわが国の国民の治安を乱しはしないか、それがあっては困るということである。この懸念は十分あります。けれどもこれに対しては、今抑留されておる日本人を帰すために一応出しても、もしその者が犯罪を犯すならば、当然これは捕えらるべきものである。また入れるべきものである。あるいは送還すべきものであります。けれども、出した者が必ず再び悪いことをするとは限らないわけなのです。われわれは韓国人の立場から言うのではありませんけれども、彼らは戦時中においては日本人であったと私は思う。終戦後において、外国人であるとはっきりさせられた以後の犯罪人については、われわれは韓国に要求することができるけれども、その以前にいろいろな罪を犯した者は、日本人としての罪人であったから、一応はこれを出してもいい。しかし何百人かの者が出た場合には、特に要注意者でありますから注意しなければならぬ。そういう何百人かの者が出た場合には、職を与えるとか、あるいはその他の保護を与えるとか、いろいろな意味において、われわれの善意をもって再びそれらの人が犯罪人にならないような処置を講ずるのは、私は政府の責任であると考える。これは国内の犯罪者に対しても同様であります。同じように、韓国人の犯罪人であっても、今度出したからには、それに対する十分なる保護と指導とを加えてやるというあたたかい心がなければならないと思う。とにかく出したら最後、必ず悪いことをするというのでは困る。だからこれらの点についての保護、指導という点については、幸い韓国人の協会もあります、いろいろな団体もありますから、それらの団体の保証を求めるということも私は一つの手であると思う。ことに日本で重大なる犯罪を犯した者が出国したときには、警察方面でもそれに対して注意されるでありましょうから、そのように十分、注意を怠ってはならない。日本の警察力は、わずか数百人の者が出て当分の間それに目をつけるくらいのことはできるように私は考える。ことに外務大臣が言われたように、今は重大な任期である。日本と韓国、あるいは北朝鮮、中共、その他極東方面における外交を展開して、わが国の外交が不安のないように、経済的にも外交的にもやらなければならぬという重大な段階にあるから、その点は、あまりこまかいところにとらわれずして一つ解決してもらいたいと考えるけれども、その点についての法務省側の御見解を承わりたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私からお答えします。お話の点は、大局上から見ていろいろ有益な示唆がたくさんあったと思います。しかしこの問題は、日韓関係の全局をだんだん話し合うときに必ず出る問題でございます。ただ今日問題として、漁夫の帰還を急ぐという問題については、ともかくも大村に収容しておる者は釈放するという主義ははっきりきめて、これに将来どういうふうにして保護を加えるかとかなんとかいうような点は、第二段目の問題として、いろいろこの点については法務省側で考究をされておるし、また困難な事項がいろいろあることは御推察にかたからぬことでございます。その困難も一つ十分克服してやろうという努力を今法務省側でされようというわけです。この問題はその程度にとどめておいていただいて、今の根本の問題については、また日韓関係の全体を処理するときに、十分われわれも考慮に入れて進んでいかなければならぬのでありますから、この際は実際問題として法務省に十分手続を願って、そして円満に解決したい、こういう考えを持っておりますから、どうか御了承を願いたいと思います。

山本利壽自由民主党

○山本(利)委員 ただいまの外務大臣の御答弁は了承いたします。私は関連として立ちましたけれども、先ほどの第一番目の並木委員が特にこの問題に対する質問は自分が遠慮して私に第一位の順を譲るということでありますから、一、二さらにお伺いいたします。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 ちょっと山本君、あなただけでもう十分、十五分ぐらいとっているのだから、それをちょっとお考えを願いたい。

山本利壽自由民主党

○山本(利)委員 承知いたしました。では今度は米国にこの日韓会談の仲介に当っていただくということで、これはそうなくてはこの問題を解決することはできないと考えておったのに、今度はアメリカ側も乗り出してくれるということについて、非常にけっこうでございますが、これは会談に正式に三者会談として同席してこの話を進めてくれようというのか、あるいはオブザーバーとしてならばいかなる会談の場合にも入ろうというのか、この会談は両国間でやって、ときどき難問題が起ったときには自分も相談に乗ってやろうというのか、その骨を折ってもらうについて、私はこの三つの方法があると考えるが、この点についてはどういうことであるかという点がまず第一点。もう一点は、久保田発言の取り消しということは、この前の私の質問のときに大局的に見てそうしょうということを大臣はおっしゃったのでありますが、さらに今回の新聞記事によりますと、財産請求権は実際にはこれは議題にするけれども、ほんとうは行使しないという言質を与えられておるようであるけれども、日韓会談の重要な点は、この財産請求権と李承晩ラインの問題が私は最も大きい問題であると思う。それらの大きい問題を全部初めから譲歩するというような立場でこの会談を開くということは、私は少し意味がないように思うが、これは新聞の誤報であるかどうか。その今の二点について御説明を承わりたいと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 まず第一点から……。米国関係、米国側に日韓の関係を十分理解を持って判断してもらわなければならぬということは、大体において御趣旨の通りに考えます。そこでこの交渉にどういうふうに米国側が関心を寄せて、そうしてその交渉成立のために努力をするかということは将来の問題であります。われわれの方からも注文がありましょう。向うもまたいろいろ考えがございましょう。われわれの代表として米国がやるわけではございません。米国は米国としてやるわけでございます。そこでこれは将来のことに関係いたします。それでわれわれ日本側としては、交渉を最も円満に進め、かつまた妥結を見ることに必要な、また有利な方向に向って動いてもらいたい。そのつど相談をするつもりでございます。  それから第二点にお答えいたします。将来日韓全面の関係をやるためには、どうしても十分に打ち合せをしてやらなければなりません。そこで全面的に話をする以上は、全面的な問題が話に上ると思います。大いに一つ将来の関係を良好ならしめるように努力しようじゃないかということには共存がないのでございます。それで今日こういう話が進捗してきたのであります。そういう会上面的な話は今後の問題であります。むろんこれはすべての問題が話題に上るわけであります。特にどの問題をすでに今日まで片づけたとか、除外したとか、そういう問題は一切ございませんことをここに申し上げておきます。

山本利壽自由民主党

○山本(利)委員 ほかの方がおられますから私はこれでおきます。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 田中君。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 外務大臣に若干の御質問をいたしたいと思います。実は昨日鳩山総理にお尋ねいたしました際に御答弁がありました。それはこういうことでございます。私の賛同は、速記録でありますが、鳩山総理でなくともよろしいから、重光外相と会いたい、あるいは大使級の人に会いたい、総領下級の人と話をしたいという場合に、これを断わる理由はないわけでしょうと私は聞いたのであります。そうしますと総理は「そうです。重光君に向うの外務大臣が会いたいというような場合に、今日のような事情ならば、これを拒否する理由は少しもないと思います。」こういうふうに御答弁になっております。これは速記録ですから正確ですが、そこで総理のお考えがこうであれば、同じ内閣に列して外務大臣になっておられる重光さんは、これはもちろん同じだろうと思いますが、外務大臣に一つ御答弁願いたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 それは総理大臣の御答弁は総理大臣の御答弁として、私は総理大臣の意向によって、これを尊重してやるつもりでございます。ただしさような突然質問されて答えられたことでございますから、その真意については、十分に総理と打ち合せをした上で行動をいたしたいと考えております。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 総理の御答弁は、大体肯定されたお答えでありましたが、今度ははっきり一つ重光外務大臣御自身としてどうお考えになるかをお答え願いたい。周総理から、一つ重光外務大臣に会って話をしたい、自分が東京にお伺いしてもよろしい、あるいは電光外務大臣に北京へ来ていただいてもよろしい、日本と中国との国交の調整の問題について、一つ話し合いをしたいという要請がありました場合に、あなたはこれに応ずるお考えがありますか。あなた自身のお考えをお聞きしたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私はそのときには、十分他の閣僚とも政府の中で相談して態度をきめて、返事をいたしたい、こう考えます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 高碕経企長官は、バンドンの会議の際にたまたま周恩来総理と一、二回お会いになっております。日本の閣僚としてはこれが初めてだろうと思います。そういうふうにすでに一つの先例といいますか、既成事実があるわけでありますから、これは共産圏の国の外務大臣だから会ってはいかぬということではむろんないと思いますが、どうでしょうか、気楽な気持で、別に正式な申し入れ等ではなくて、どこかでお会いになるというようなお考えはないですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 バンドン会議で会議に列席した各国の代表が顔を合せて会うということは、きわめて自然のことでけっこうなことだったと思います。ただ問題は、東京からわざわざ北京へ行くとか、北京からわざわざ東京へ来るということになってくると、ややその趣きが雇うかもしれません。しかし、それもとやかく言うべき問題ではないので、実際問題としてその場合には十分考慮してきめるべき性質のものであって、今日ここでそれはどうである、こうであるということを議論するのは、私はいかがかと実は考えるのであります。十分そのときに考慮して差しつかえない問題だと思います。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 それで理論的にどうというのではなく、そのときの具体的な事情で、現実的に考慮しようというお考えはけっこうでございます。そこでアメリカと中国とはジュネーヴでもう四十何回会って、内容は私よく知りませんが、いろいろと話をしています。日本も、アメリカさえやっておることでありますから、ジュネーヴあたりでいろいろな懸案について、出先の外務省の官吏が、一つ予備的に今から話し合うというようなことは、国のためにいいのではないかと思いますが、そういうふうな方針をお考えになっておりませんか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 ゼネヴァで米国が大使クラスのレベルの会議をしておるということに御言及になったわけでございます。その通りでございます。日本側は同じような交渉題目について、すなわち抑留者の帰還の問題ですが、その問題についてやはりゼネヴァで、大使がおりませんから、あそこの総領事をもって向うの代表者との間に交渉をずいぶん長く続けたのでございます。これは今後も続けて差しつかえはないと思います。それは議題は抑留者の帰還の問題でございます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 ジュネーヴにおける中米会談の内容は抑留者の問題だけですか、それは私寡聞で知らないのですが……。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私どもの正確に報告を受けておるところでは、抑留者の問題でございます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 四十二回にわたって抑留者の問題だけでやるのはおかしいと思うのだけれども、情報がないというのならばそれでよろしいが、日本は、アメリカが抑留者の問題だけで話をしておるから、右へならえしてこっちも抑留者の問題だけに会談を限定する必要はないと思います。日本とアメリカは違うのですから……。それで貿易協定の問題もあります。漁業協定の問題もあります。そのほかいろいろな問題があります。そこでどうでしょう、外務大臣はアメリカに右へならえをしないで、一つ抑留者の問題以外の題目にまで及んだ何か会談をおやりになる、自主的なそういう立場は、おとりにならないのですか、お尋ねします。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 ゼネヴァ会談で、アメリカ側にならって日本が会談を開いた、アメリカへ右へならえしてやったようなお古葉でありましたが、実は日本側が先に始めたのでございます。これは私はっきりそう申し上げます。日本側がずいぶんやって、アメリカがあとから、右へならえという言葉があるなら、アメリカ側が左にならったのかもしれません。しかし私はそういう問題はどうでもいいと考えております。日本は日本のやるべきことをやればよろしい、お話の通りでございます。私はそう考える。そこで、そういう方法がよければやったらいい、抑留者の人道の問題に関する限りは、政治問題は含まないからやろう、政治問題を議論するのはまだ時期が熟さないから、それはやらない、人道問題に関する限りはやろうじゃないかといって、両方からやったのでございます。これはその通りのなんでいいと思います。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 それで重光さんは日本の外務大臣と思っておりますから、一つあくまで自主的にやってもらいたいと思います。もう一歩進めてもらいたいと思います。これは要望しておきます。  次に、この間ダレスが参りまして、いろいろ話があったようであります。日本外交の基本方針についての話し合いもあったようでありますが、ダレス長官の返答は、現在の世界は要するに力の均衡によって平和が保たれておる、だからあくまで力の立場を捨ててはいかぬ、むしろ強化しなくてはいかぬ、こういうふうなお説教をしたようでありますが、まずこの点について重光外相は、アメリカのそういう、主張、ダレス長官のそういう主張、特に力で共産圏諸国に当る、そういうことによってのみ世界の平和は保たれる、こういう考えに同意されるかどうか、一つお聞きしたいと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私は世界の平和は決して力あるいは武器の問題だけではないと考えます。すべての人類の持っておる要素が、これに直接関係することは言うを待たぬと思います。これは私のお答えであります。ダレス国務長官が力で均衡を保っておる、力だけでやるのだ、そういうふうには私は聞きませんでした。各国の間に力の均衡をもって平和を保つということは意味があるのだ、それの意味はある、しかしながらそれだけですべてやっていくということはできないから、経済政策、文化政策、いろいろなことを考えなければならぬということで、特にアジア方面には経済問題に力を入れなければならぬ、こういうことを力説したことは事実でございます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 今のお話ですが、ダレスがあくまで力の政策でいこうという方針、これはいわゆる戦争せとぎわ政策などといわれておりますが、少くとも従来はそうだった。最近幾らか考え直したとすれば、これは要するに今までの力の政策ではどうもこうもならなくなったからなのでりまして、それは事実でもいいのですが、だからダレス長官の考え方についての外務大臣の御認識は少し間違っているのじゃないか。むしろダレスの従来の考えを根本的に改めて、そして話し合いで世界の平和を保つというふうに一つ進まねばならぬ。   〔発言する者あり〕

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 静粛に願います。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 次にもう一つお伺いしたい点は、外相のソ連や中国に対する一つの見方であります。つまりソ連観といいますか、中国観といいますか、広くは共産圏諸国に対する見方であります。世界はアメリカを先頭とする資本主義体制とソ連を先頭とする社会主義体制と、二つの制があるということはだれしも認めている。どっちがいいかということは、これは価値判断の問題でありますが、二つの体制があることはだれもが認めている。この場合、二つの体制の一方が他方を克服して、世界を一つの体制にまとめ上げていくことが、一体できるものか、またそれが望ましい……。   〔「神様でなけりゃできぬよ」と呼び、その他発言する者多し〕

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 静粛に願います。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 日本の外務大臣としてはそれくらいの決心が必要です。それとも二つの体制は今後平和のうちに共存していくべきものだ、こうお考えになっておるのか、そしてそれが可能であるとお考えになっておるのか。これは日本の外務大臣として今後両陣営の間に処して外交をやっていく上において、一番大事な点だと思う。この基本的な考え方がしっかりしていませんと、外務大臣の仕事はうまくいかぬと思う。今までのところは少くとも外務大臣はアメリカの影響を受けられて、何かやはりアメリカが共産圏諸国をぶっつぶす、ソ連をぶっつぶし、中国をぶっつぶす、そしてこの地域にアメリカと同じような資本主義の体制を再現する、こういうふうな世界政策をやっておって、その影響を受けてやはり日本の外交をお考えになっておるかと思う。それは私は間違いだと思う。この際両体制の平和的共存は可能であるか、それともそうじゃなく平和な共存は可能ではない、平和的共存はすべきでもない、一方が他方をぶっつぶすということしかもうあり得ない、こういうふうにお考えになっておりますか、その辺のことについて、これは外務委員会の質問としては少し高踏的かもしれませんけれども……。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 非常に高踏な御質問でありますが、(笑声)さような高踏な御質問に対して、答えのできないような人間は日本の外務大臣が務まらぬのだ、これも御説でございます。そういう御説も成り立つかもしれません(「まじめな話だ」と呼ぶ者あり)まじめな話です。しかし今世界中で議論されておる問題について一々これを根本的に明快な回答を答えるということは、これは実は容易なことではございません。今言われるように米国が力でもってからして何でもかんでも解決して、資本主義を社会にまいて資本主義の勝利を持ち来たさなければならぬのだ、そういうふうな政策を持っておるということというふうに言われますが、私はこれは非常に行き過ぎた話だと思う。そういうことは、これは何かためにするなにがあるかもしれぬ。しかし私はそういったような……(「アメリカの弁護をする必要はないよ」と呼ぶ者あり)アメリカの弁護をするのではない、今の世界の情勢について客観的意見を述べておるのです。おかしいじゃありませんか。しかし私はそういう意見は、御意見として発表されるのをとやかく申すのではございません。現実の客観的の観察として、それも私はその観察には御賛成を申すことはできません。そこでこれを哲学的に言って……(笑声)哲学的に言って非常に高踏な議論として、そして人類というものは一体二つの陣営に分れてどうしてもけんかしなければならぬのか、こういう御質問に帰着するようですが、そういうことになれば、私の哲学からいってみて、さようなものじゃないと私は思います。さようなものじゃない。一体人類の起りから考えてみて、そうけんかばかりすべきものではないと、こう思います。ただ問題は、われわれが今処理せんとするのは、さような何万年、何億年の間の議論ではないのであって、これからやろうとする数年——また見通しは十年も二十年もつけておかなければなりますまい、それについてわれわれは苦労しておるのであります。今日二つの陣営に分れて、そして両方ともいろいろな政策、考え方、宣伝をして争っておるということは事実でございます。これはいかんともすることができぬ。これに対する施策を考えるのが外交政策であり、また日本としては、また日本の外務大臣としては、それを考えなければならぬ。そこで私が今現実の問題として頭に持っておるのは、さような社会の情勢であり、特に東アの問題としてここにいろいろな問題があります。中共の問題もある、またソ連も東アに勢力を持っておる大きな国であります。この実際問題がある。これをどうするかということをわれわれは考えなければならぬ。それを考える場合に、中共の存在を無視するということは私はできぬと思う。中共の存在ということを無視することは事実に反します。そこで二つの世界ということは、中共もあればちゃんとした台湾政府もここにある。(「台湾は問題でない」と呼ぶ者あり)それが問題でないと言われるのは実際問題ではない、目をつぶっておることになる。そういうことは私は承服することはできぬ。そこで今の質問者も、二つのそういうなにが共好できるのじゃないかというような趣旨の御質問です。二つのなにがある以上は、その二つのなにを認めなければならぬ。中共もあれば台湾もあり、朝鮮も不幸にして北もあれば南もあるということです。それからまた日本の存在もあるし、ソ連の存在もある。この現実の存在をどう調節していくかということが、われわれの直面しておる問題でありますから、人類の起源から私はもう論ずることはよしまして、でき得るだけこの現実の問題に処していきたい、こう考えるのであります。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 今の問題に関連して、当面の問題をちょっと伺っておきたいのです。これは中国関係ですが、この間北京、上海の日本見本市の打ち合せに日本の代表が行った。この人たちが帰ってきた報告によると、これは商売を中心に考えておる人の見方として非常に参考になると思うのですが、中国は非常に今工業化が進んでおる、しかしあの広大にして人口の多い中国が、今後工業化が相当発展しても、なお日本の工業力に依好しなければならぬ面がずいぶんある、こういうことをつくづくと感じたという報告をしておる。このことは見のがせない報告であって、外務大臣一度私と話をしたことがあるのですが、そのときの記憶では、中国が工業化すると一種の日本の競争国としての工業国中国が出現するだろう、従ってそのことをやはり予想して、日本もこれに対処する考えで進まなければならぬ、こういう考え方もあり得ると言われた。ところがこの見本市の打ち合せに行かれた人の報告を聞くと今後相当長期にわたって中国が工業化しても、なお日本の工業力と相提携していける面が非常に多いだろう、こういう報告をしているのです。この分析は、私は今後日本の貿易の面それから外交政策の面で、非常に大きなキーポイントになると思うのですが、今日でもなお外務大臣は、中国の工業化が日本の競争国としての工業国になる要素の方が多いと考えられるか、それともなお日本の工業力と提携していける面が相当希望が持てると考えられるか、この点を伺っておきたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 中共地区の今日進歩発達しつつある工業の問題に関連してのお話でございますが、この問題について、私は先ほど引用されましたようなことを宴席か何かの機会にあなたにお話ししたことがあるかもしれません。というのは、それも一つの見のがすべからざる今後の傾向だと私は今日でも思うからでございます。しかしながらこれはちょっと酒の席や何かで話をしたことを議論の種にされるということになると、もう将来話されぬということにもなるので、こういうことは私はこの公けの席での御引用はどうかと思う。しかしながら問題は、中共地区における工業の発達が起れば、これは競争にもなりましょう、またコンプリメンタリーで互いに調和していく、助け合っていかなければならぬ面も非常に多いでございましょう。しかしながらこれを全体的に見れば、いわば後進国における工業の発達は、先進国における貿易の増進を意味するということになるのは普通のことでありますから、そう大きく考えて少しも差しつかえはないと思う。ないと思うけれども、また競争の部面も考えて対処することも必要であろう、私はそう考えます。そういうようなことは十分検討をしてまた検討をしております——検討をして事態に処さなければならぬと思って、せっかく経済外交の一面として努力をいたしておる次第でございます。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 菊池義郎君。

菊池義郎自由民主党

○菊池委員 日ソの国交回復の交渉が一時停頓いたしまして、それでもその交渉の圏外に残されましたたとえば漁業の問題、あるいは抑留邦人の問題は無関係に交渉ができるわけでございますが、新聞の伝うるところによりますと、この漁業問題についてソ連の方から民間特使を招待するかもしらぬ、そして話し合うというようなことになるかもしらぬというようなことでありますけれども、もし向うから民間特使を要請してきましたときには、日本から出すおつもりでございましょうかどうでしょうか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 向うの意向のわかった上でこれを考慮いたします。

菊池義郎自由民主党

○菊池委員 それから漁業問題について、カナダや米国を加えて折衝するということも一つの手でありますが、米国やカナダに対してそういったような申し入れをしたことはございませんか。また申し入れをしましたら、向うはそれに対してどういう意向でございましょうか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 北洋漁業の問題について今問題となっておるのは、日ソの問題でございます。従いまして先ほど申し上げる通りに、こちらの申し入れに対するソ連の回答を待っておる状況でございます。

菊池義郎自由民主党

○菊池委員 それでは米国やカナダにはまだ呼びかけてなかったというお答えのように了承いたします。  それから抑留同胞の釈放について、国際赤十字あるいは国連にあっせんを依頼された事実がございましょうか、どうですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 国際連合には引揚委員会というものがありまして、これにはもうずいぶんだびたびこちらの意見を申し出ておるわけでございます。国際赤十字に対しても、実際問題として特に慰問品の送付等の問題について、ずいぶん厄介になっております。

菊池義郎自由民主党

○菊池委員 向うの反応はどうでございましたか。向うの話はどういうことになっておりますか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 向うはよくそれを取り扱ってくれておるわけでございます。そういうときに、向うの抑留者に対する反応が一々どうあるかということは、取り調べてみた上で御返事をいたしましょうが、そういう御質問でございますか。

菊池義郎自由民主党

○菊池委員 国連や国際赤十字からは、日本のあっせんの依頼に対してどういう返事があったかということです。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 非常によく日本側の希望を取り次いでくれております。

菊池義郎自由民主党

○菊池委員 それから日韓会談に先だって久保田発言を取り消す、これはわれわれも取り消して少しも差しつかえない、適当の措置であると考えるのでありますが、やはり取り消されるのでございましょうか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私は日韓関係はどうしても正常化するように導いていきたい、それに対して故障になるような言い合いの問題があるならば、それは取り消して差しつかえないということを前会でございましたか申し上げておきました。私はその意向には変りはございません、これはまた日韓の間に話が進むに従って、そういうことも具体化してくるだろうと考えます。

菊池義郎自由民主党

○菊池委員 われわれ理解ができないことがございますのは、最近李ラインの問題を初めといたしまして、中共による日本漁船の捕獲、それから台湾政府までも日本漁船に対しまして、まるで海賊のような行為をやっておる。さらにフィリピンでも日本の漁船を捕えておる。こういうふうに四方八方で日本に対しまして迫害を加えておるのでございますが、こういったようなことが起るのは、どういうことが最大の原因になっているのでございますか。ただ日本が負けたからというだけのことではないと思うのでございます。軍備が足りないというわけだけでもないと思うのでございます。中共を除いてはみなほとんど負けた国ばかりでございますから。何が原因になっておるとお思いですか。この点について外務大臣の御意見を承わりたいと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 最近公海における水産業に対する制限行為が各方面において行われておる。まことにこれは遺骸であり、また私は不都合千万であると思います。従いましてこれに対しては公海の自由の原則によりまして、わが方としてはあくまで公海の自由の主張はいたさなければならぬと思っていたしておるわけでございます。さような制限がどうして起ったかということを考えてみなければなりますまい。さしあたりそれは外交の問題の範囲ではないかとも思いますけれども、さようなことは人類生活の進むに従って、いろいろな社会が狭くなっていろいろやってきたのだ、こう私は大まかに申して差しつかえないように思います。各方面においてそれがございます。さようなことを日本側として承認して引き下がるわけには参りませんから、これに十分対処したいと考えております。

菊池義郎自由民主党

○菊池委員 こういうような各国の暴挙を排除するのは、何としてもそのよって来たる原因を研究してかからなければならぬ、別に日本の外交が軟弱であるとかなんとかいうことが原因になっているのでもなかろうと思うのだが、一体何が原因であるか、一つそういう点を究明していただきたいと思います。  それからフィリピンの賠償が八億ドルにきまるというようなことがしきりに伝えられております。結局国会の論議は無視された形でありますが、それでわれわれは日本の方で——フィリピンは別で、フィリピンは米国との約束によって独立された国でありますが、インドネシアであるとかビルマであるとかその他の日本の力によって独立した国がかなりあります。そういう国に対しましては、これからの賠償に当るときにおいては、日本の武力のおかげでもって独立した、そういうことも計算に入れて交渉に当るべきである。これは法律的には、国際法的には、終戦後に本国の承認によって独立したのでありますけれども、事実は日本軍の力によって独立したのでありますから、そういうことも必ず計算に入れて、ビルマの交渉もやるべきであったと考えております、これに対するところの外務大臣のお考えを承わりたいと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 今賠償交渉するときに、お前は日本のために独立したのだというような論法でもしくは気持で参りますことは、私はいかがかと考えます。そういうふうなことでは賠償の交渉は円満にいかぬと考えますので、そういう態度はとって参りませんでした。

菊池義郎自由民主党

○菊池委員 私はこういった南方諸国の日本軍によって受けた大きな利益というものは、賠償どころの騒ぎではない。さらにそれをはるかに越しておると思う。賠償のごときは帳消しにして向うからみつぎものを持ってこなければならぬ。今後少しこういうことも考えて、インドネシア及びラウス、ヴェトナムなどの外交の交渉に当ってもらいたいと思うのであります。  さらにフィリピンの賠償につきまして、政府がしきりに賠償が妥結すると、国交が回復され、従って貿易が拡大するということを宣伝しておられますが、貿易拡大の見通しをつけるには、まずアメリカと話し合って、たとえば今まで米国とフィリピンとの間にありましたベル・アクト、あれに近いような特恵関税の協定を結び得るというような可能性が、あるかどうかということを確かめる必要があると思うのでありますが、そういう点についての努力は払われたでありましょうか、どうでありましょうか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 その辺の事情についてアメリカ側とは十分連絡をして交渉を進めたわけでございます。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 岡田券夫君。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 大臣お急ぎのようですから簡単に承わって参ります。私の伺いたいのは、原水爆実験に関する日本側の申し入れに対してアメリカが回答をよこしました。これについて大臣の見解を三、三お伺いをいたしたいと思います。この回答は大臣ごらんになっただろうと思いますが、回答をごらんになった御感想はいかがでございますか、まずその点を伺いましょう。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 アメリカ側の意向を詳細回答に君蔵してあったと、こう感じました。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 これによって満足をいたされましたか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 全部の点において満足をいたしたというわけではございません。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 それでは満足している点もあるというわけなんでございますか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 米国側の意見を十分に述べてくれたことは満足いたしております。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 それでは御承知のように国会の決議が行われておりますが、この決議がアメリカによって拒否されたということについて、満足をされているということなのでありますか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 そういう御質問が出るわけはないと思います。拒否されておることについて満足するというようなことはないわけでございますから……。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 その点については不満だというふうに理解してもよろしゅうございますか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 こちらの希望を全面的にいれられていない点は、不満足であることは当然のことであります。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 それでは不満足の点はどのようになさるお考えでありますか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 原爆に対する日本側の主張というものは、これはたびたびこの席で議論を尽し、また私の考えを申し上げておる通りであります。これは今日ではまだ禁ずるという国際的の規定がないから、将来そういう国際的の約束が、むろんこれは有形無形の意味においての約束でありますが、そういうことにし向けなければならぬ。これに対する努力はあくまでもしなければならぬ。国会の決議を政府の意向として十分取り次いで、その実現をはかっておるのもその意味でございます。ところがそれはなかなか一朝一夕には参らぬということも申し上げておる通りであります。また一朝一夕に参るものならこれは容易なことでございますけれども、これは国際連合等においても、日本の希望とはやや遠ざかる決議が最近でもなされたような状況であります。これらの困難を克服するために、機会を持ってじりじりと進めていかなければならぬと思っております。むろんこの米国の回答に対しても十分検討をして、これにもかかわらず日本の要望はこれであるということを、また、言う必要があるかとも考えておるのであります。そういうことをだんだん手段をとって進んでいきたい、こう思っております。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 今具体的な手段をとって参りたいというお考えのようでありますから、そして原爆の実験あるいは使用の禁止をしたいというお考えであると思いますから、そこで具体的に伺いますが、イギリスのある有名な学者が中心になって、これはラッセルという学者ですが、原爆を使ってはいけない、実験をやっていけないという声明を出した。このことに関連をして、この原爆の実験をやらないために関係国の会議をやって、これによって実験をとりあえず今やらせないようにすべきであるという提案が行われておるのであります。こういうような提案は、ただいま大臣の言われたように、最も被害国である日本がむしろ提唱すべきである、かように私は考える。外務大臣は勇敢にこの際、原爆を使わない、実験をやらないための関係国の会議をやって、当面のこの原爆実験をやらせないようにするためのそういうお考えをお持ちであるかどうか、そういう御努力をされる御決意があるかどうか、この点を伺いたいと思います。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 今お話のイギリスの某科学者の声明ということでございましたが、これは私もその事実を新聞報道で知っております。これも日本あたりが原爆実験問題に対してとっておる態度の一つの反映と私は思っております。これはけっこうなことと思っております。これはそういう科学者が集まってだんだん空気を作って、そして国際間にもさような方向に向くということは、これはけっこうなことだと思います。しかし今日日本がそのために国際会議を提唱するという時期にはまだ達しておらぬ、私はこう思っております。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 そこで、この回答書の内容に触れて二点だけ伺いたいと思いますが、これは大臣ごらんになっていると思いますが、最後のところに1、2、3と個条書きがあります。この個条書きの中で、読んでみますと、「しかしながら、合衆国政府は両国間の十分な理解と協力に資するために左の措置をとる用意がある。」そして、「1、危険区域設定によって生ずる日本側の海洋における活動に対する緒影響を日本国政府とともに検討すること。なお」——ここから問題なのです。「なおこの目的のための協議は既に開始されている。」すでに開始されているということは、国会で議決をした原爆実験をやってもらいたくない、使ってもらいたくないというこの決議の趣旨に反して、原爆の実験をやってもいいが、このような被害の影響に対しては、これはできるだけ予防の措置を講ずるという外務省の当初の方針に戻って、そのための協議がすでに始まっているということを意味すると思うのだが、いつの間に国会の決定であるところの原爆を使わないというこの態度を外務省は放棄をされて、そして原爆実験をやってよろしいというような態度に返られたのであるか。あるいはまた、原爆を使うということについて何らかの了解をアメリカ側に与えているということを意味すると思うのだが、この点はいかがお考えになりますか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 さような曲解は私は避けたいと思います。実験を禁止をすることを要望しておる以上は、実験を——そういう場合にどういうことになるかという協議はあって差しつかえないと私は思います。それだから、その協議をするから実験をこっちはもう承諾したのだ、これは一体議論の非常な飛躍だと私は考えております。しかしそういうようなことは、日本側も専門家を持っておりますから専門家の間で、常に意見の交換をしてみるということは私は何も差しつかえないと思う。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 しかし大臣、これは冷静にお答え願いたいのですが、実験をやらないなら禁止区域を作る必要はないでしょう。ところが禁止区域の設定によって起ってくるところの影響について打ち合せするというのだから、実験をやるという前提に立たなければ、このような協議は必要がないということになるじゃありませんか。それなのにこのような協議をやっているということは、事実上実験を認めるということを意味している。実験を認めるという前提に立って協議をするということを言っている。このことになるということを言っているのです。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 なりません。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 なりますよ。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 そうひねくれて考えなくてもいいと思うのです。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 それではどういうように解釈するのですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 何もそれだから実験をすべて認めているのだということではない。実験を禁止してもらいたいというこっちの要求に対しての返事であります。そうしてもう学問的にいろいろのことについて協議をしておる。これはまだ実験区域を設定することを協議したわけじゃないですよ。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 設定すると書いてある。設定によって生ずる日本側の影響です。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 この海洋における影響についていろいろ……(岡田委員「実験をするという前提に立つからこんなことを調べるのでしょう。実験しないなら調べる必要はないでしょう」と呼ぶ)それはこの前に現実に現実にやったのですから……(岡田委員「現実に認めるということでしょう」と呼ぶ)それはそうじゃないですよ。それじゃ実際こう申しましょう。実験区域を認めるとか、実験を認めるとか、いまだかつてこちらの態度を表明したことはないということをはっきり申し上げましょう。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 そういう意味で、一応きょうは時間がないから次に進みます。  もう一つは、「危険区域の設定によって実質的経済的損失が生ずるということは、現在の情報を基礎としては確立されたものとは言いえない。」このように言っている。ところがこれは去年実際に被害があったじゃないですか。現実にことしは公海の中に危険区域を作ることによって、経済的な損失は明らかにあるじゃないですか。魚がとりにいけないでしょう。そういう事実に立って、アメリカがこういうことを言っていることは、でたらめであるということを言わざるを得ないと思うのだが、こういう見解に対して不満足であったのか、満足であったのですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 私は今アメリカの弁護をする地位にもなければ意志を持たない。それですから、それは検討しておるということを申し上げておるのです。これはなかなかこういう検討は……場(岡田委員「これはまだ検討していないのですか」と呼ぶ)もうしております。そういう検討をもうしつつあるのです。急にはいかぬ。そんな急な軽率な検討をすれば間違いが起る。(岡田委員「軽率とは何です」と呼ぶ)思いつきのことばかり言って……(岡田委員「何を言っている。失礼なことを言うな。あなたこそ軽率なことを言っちゃ困る。」と呼ぶ)そんなことを言わなくても、この意味がどういう意味であるかということをまず第一に言わなければならない。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 日本語を読んであなたはわからないのですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 原語は英語なのです。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 原語は英語でも、仮訳は日本語ではないですか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 そこで、そういうような懸念があったら——ビキニのときにそう危険がなかったということを言っているのでも何でもない。それだから、去年あったから今年も用心をしなければならぬという、この意味は非常に私はあると思う。その意味において今年も用心しなければならぬということを日本は絶えず言っておるわけです。しかしアメリカ側のいう意味は、これは十分注意深く予防措置を講ずるならばそういうことは起きないで済むであろう、こういう意味をここに言っておるわけなのだから、意味は通じると思うのです。しかしあなたの言われるのは、去年そういうことがあったから、……(岡田委員「そういうことを書いてあるのじゃない」と呼ぶ)そうひねくれて言わなくても、まっすぐ読んで……。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 大臣どこを読んでいるのですか。あなたは英語を読んでいるけれども、横の方の英語を読んだってだめなのです。ほかの方の文章読んだってだめなのです。それはほかのものを読んでいる……(重光国務大臣「ちゃんと赤い筋が引いてある」と呼ぶ)それは日本語じゃないか。それでは日本語でやりましょう。さっき言ったように、日本語は、これは予防措置をとるということを書いてないのです。そんなことを言っているのじゃないですよ。「危険区域の設定によって実質的経済的損失が生ずるということは、現在の情報を基礎としては確立されたものとは言いえない。」こう言っているのでしょう。だから去年のものは一応わかったとしても、今年現実に公海に危険区域を作ったなら、そこに魚をとりに行けないじゃないか、そうでしょう。とりに行けますか。行けないとすれば経済的実質的損失が生ずるというのは明らかじゃありませんか。それをなおさら強弁するようなことになると、あなたは何を読んでいるのだと私は言いたくなるし、軽率な御答弁はおよしなさいと言いたくなる。そういうことになるのだから、この点をはっきりおっしゃいと私は言っておる。この点をはっきりお答え下さい。こういう点でもアメリカの回答はでたらめであるということを私は言っている。この点は日本の外務省としても認めざるを得ないでしょう。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 だからそういう点は十分突きとめなければならぬと思います。それはむろんそうです。それはそうだけれども、今あなたの言われたことが正当な解釈であるから大いにアメリカはけしからぬ、こう言ってそういうことに賛成することはできない。僕はそうは読めない。読めないけれども、そういうことについて疑問を持たれるなら、これは十分突きとめなければならぬ、そういうことを十分検討しておるわけであります。

岡田春夫小会派クラブ

○岡田委員 これはどんどん検討して下さい。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私の質問はこの次にいたしますが、今の質問に関連をいたしまして、一点だけ重光外務大臣に確かめておきたいと思うのです。国民の悲願にもかかわらず、もしかすると水爆の実験がビキニで行われるかもしれない。そういうことになりますと、伝えられる期間全部やるとすると、非常に長い期間にわたって公海の自由というものがはばまれるわけなのです。そうしますと、国際法上から見る、見ないというようなことは別にいたしましても、いずれにいたしましても、これだけ長い期間公海の自由が奪われるということは、法律上から見ても違反というふうにお考えにならないかどうか、この点を伺いたい。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 この点はもう繰り返し繰り返し申し上げた通りであります。まだこれが、国際法上そういうことをするのが違反であるとはっきり出てきていない点に、わが方の主張がまっ正面から国際法違反だと甘い得ない弱点がある。しかしながら私は国際法にそういうはっきりしたものがあるとないとを問わず、日本の国民の利益を擁護する意味からいっても、そういうことは困るのだ、してもらいたくないということは、何も言って少しも差しつかえないことであり、言わなければならぬと思う。それを言っておるわけであります。そういうわけでこの問題が進んでおるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 それではもし国会で公海の自由を守るというような決議案が出ましたときには、重光外務大臣は御賛成になりますか。

重光葵自由民主党内閣総理大臣臨時代理・外務大臣

○重光国務大臣 公海の自由の原則ということは当然のことだと思います。これはだれも異存を言うべき性質のものではないと私は考えます。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 それでは田中稔男君から立法院の選挙干渉についての緊急質疑がありますからこれを許します。田中稔男君。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 一月三十日の朝日新聞の朝刊ですが、沖縄の立法院の選挙にアメリカ側の干渉があった、こういうことが出ております、少し具体的に言いますと、今月の十一日に琉球の立法院議員の総選挙があった。現地の米軍民政府が何でも六億円ばかりの金をいろいろな名目で流しまして、そうしし比嘉政府主席の与党である民主党の当選を有利にするために、モーア副長官以下が公開の席や住民の集会でいろいろ話なんかをして、そうして選挙干渉をやったということであります。そして特にモーア副長官は革新系の特定候補の名前を特にあげて、これはアメリカ軍にとって好ましくない、従って支持すべきでない、こういう発言をしたということでございますが、こういう事実につきまして総理府の南方連絡事務局でおわかりになっておりましたら、一つ詳細な情報をお聞かせ願いたいと思います。

石井通則総理府事務官(南方連絡事務局長)

○石井説明員 お答え申し上げます。沖縄の現地におきまして去る三月立法院の選挙がございましたが、その間において民政府がどういうような態度をこられたかということにつきましては、南方連絡事務局の権限としていろいろ調査するような建前になっておりませんので、それに関する詳細な報告はきておりません。私どもは琉球における新聞でいろいろそれに類するような記事が載ったのを見ておるだけであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 日本政府としてはこういうふうな事件が起ったという情報かあった場合に、詳細に調査をする権限はないのでありますか。

石井通則総理府事務官(南方連絡事務局長)

○石井説明員 南方連絡事務所を那覇に設置しておりますが、南方連絡事務所の活動範囲に関しましてはアメリカ側と一定の範囲を打ち合せております。その範囲以外のものにつきましては特に権限を持っておりません。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 これは、現在平和条約の結果、日本がアメリカに対しては行政、司法、立法の三権を委任したような形になっておりますから、やむを得ぬと思いますが、国民感情として見ますと、沖縄に住んでおる八十万の同胞のことにつきましては、非常に大きな関心があることはもちろん御承知のことであります。これにつきまして日本政府が何らなすところがないというようなことは、非常に遺憾だと思いますが、今後ともそういうふうにただアメリカ側のなすにまかせて、八十万の同胞の権利や福祉に関するいろいろな問題についても何ら積極的な活動をしない、こういう態度をとられるお考えでありますか、どうですか。

石井通則総理府事務官(南方連絡事務局長)

○石井説明員 新聞記事の問題は、選挙干渉があったじゃないかということでございますが、これは私どもの考えといたしましても、全くアメリカ側の内政の問題であると思いますので、特にこれをどうこうするという考えを今のところ打っておりません。ただ、人道上非常に人権のじゅうりんがあったとかいうような、特に同胞としてこれを黙認することができぬような問題がある場合におきましては、公式にいろいろ交渉することはどうかと思いますけれども、逐次外務省にその情報等をいろいろ連絡をいたしまして、外務省でもそういう特殊な場合には非公式にいろいろ話を持ち出すことは可能であるというような話を承わっておるような次第でございます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 今のお話の中に何かアメリカの内政に属することだというようなお話があった。そうすると今度の選挙のこと、それから選挙に対するアメリカ側の干渉というような事実がかりにあったとしても、それはアメリカの内政に関することで、日本側に発言権がない、こういうことでありますか。

石井通則総理府事務官(南方連絡事務局長)

○石井説明員 平和条約の三条を公式に解釈することは、私の南方連絡事務局としてはあるいは申し上げる段じゃないかもしれませんが、一応立法、司法、行政をアメリカが行使する権能を持っておりますので、その範囲の問題に関しましては、いわゆる公式の異議を唱えることはできないじゃないかというように考えておるような次第でございます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 今のは南方連絡事務局長という立場におられるあなたの御答弁としてはあるいはやむを得ないかもわからぬ、しかしながらそういうことでは国民は満足しないのであります。大臣でもないし、総理府長官でもありませんから、これ以上いろいろお尋ねしても無理かと思いますので、私の質問はこれで終ります。

前尾繁三郎自由民主党

○前尾委員長 次会は広報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十四分散会      ————◇—————

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