科学技術振興対策特別委員会 第23号
- 発言数
- 30 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1956/05/25
会議録
○有田委員長 これより会議を開きます。 本日は、物性物理学に関する問題について、参考人より意見を聴取いたしたいと存じます。本日御出席の参考人は、広島大学教授、理学部長、理学博士、藤原武夫君及び東京大学教授、理学博士、小谷正雄君であります。 この際、参考人各位にごあいさつ申し上げます。昨日は、本委員会の都合により、御多忙の御予定をお延ばしいただき、また本日は、雨天の中、わざわざ本委員会のために御出席下さいましたことを、委員会を代表いたし、厚く御礼を申し上げます。 本特別委員会は、科学技術振興対策樹立のため、院議をもって設置せられたのでありますが、特に設置以来、原子力関係の諸議案の審査及び調査をなして参りました。本日は物性物理学に関する諸問題について、それぞれのお立場より、忌憚ない御意見をお述べ願えれば、まことに幸甚に存ずる次第であります。 それでは、小谷参考人より御意見の御開陳を願い、次いで藤原参考人に願うことといたしまして、お二人の御意見の御開陳後、質疑があればこれを許したいと存じますから、さよう御了承願います。 それでは、小谷正雄君より、御意見の御開陳を願います。小谷正雄君。
○小谷参考人 小谷正雄でございます。皆様の前で、物性物理学、特にわれわれが学術会議で要望しております物性物理学研究所の問題等に対しまして、お話を申し上げる機会を与えていただきましたことは、われわれの大へんありがたく感ずるところでございます。それでございますが、われわれの方に十分の用意がございませんで、御期待に沿えるようなお話ができるかどうか、危ぶんでいるわけでございます。 まず最初に私から、物性物理学とはどういうものであるかということの概略と、それが世界及び日本でどういう状況にあるかということ、並びに日本での物性物理学の難点というものを打開いたしますために、われわれはどういう対策が切実であると考えているかという点、それは物性物理学研究所の問題とつながるわけでございますが、そういう問題について一般的なお話を申し上げまして、いろいろ御注意等をお伺いいたしたいと思うのでございます。 物性物理学という言葉は、割合新しい言葉と申しますか、むしろ最近にできました言葉でございます。大へん耳なれない言葉なのでございますが、われわれの方では、物性論という名前で相当前からこの言葉を使っております。これは、現在では、物理学の中の非常に大きな部門でございまして、現在の物理学の重点が原子核物理学と物性物理学の両方にあるというふうに申すことは、非常に実情に合っていると申しますか、実際その通りであると考えるのでございます。非常に不適当な引例かとも思いますが、たとえばアメリカの例をとりますと、アメリカの代表的な物理の学会アメリカン・フィジカル・ソサイエティで、その代表的な物理の雑誌として、フィジカル・レビューという雑誌を毎月二回出しております。ちょっとこんな厚い雑誌が月に二回くるわけでございますが、それが交互に、毎月の一日に出ます号の方は、原子核物理学、素粒子論、そういう方面の論文を載せております。それから月の後半、十五日に出ます方は、われわれの申します物性物理学という方面の論文をおさめているわけでございます。そのほかに、さらにアメリカではジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス、化学物理学雑誌という題目で出ている雑誌がございますが、それの約半分は物性物理学の方に入る、そんなふうに考えております。それでは、物性物理学とはどんなものであるかということを、簡単に申し上げます。御存じのように、物質はそれをこまかく分けて参りますと、原子あるいは分子からできております。その原子、分子は、さらに構造を持っておりまして、その中心には、その大部の質量力持っておりますところの原子核というのがあります。原子でありますと原子核が一個ずつあるわけでございますが、分子でありますと何個かの原子核がその中に入っております。その原子核のまわりに、その原子核の正の電気を中和するに足る数だけの負の電気を持ちました電子が運動しておりますが、この電子が、たとえば原子をにくっつけまして安定の分子を作る、あるいは原子や分子を集めて安定の固体というような物質を作る、そういう働きをしているわけでございます。その原子核はさらに構造を持っておりまして、原子核をこわしますと、陽子−プロトンとか、中性子−ニュートロンとか、そういうものに分れるわけでございますが、さらにその陽子や中性子か非常に大きいエネルギーで衝突などにいたしますと、中間子とかその他いろいろの最近伝えられておりますような新しい粒子、いわゆる素粒子が生まれます。この原子核の構造を調べ、そり素粒子の性質からそれを説明する方面が、いわゆる素粒子論でございます。原子核物理、それが素粒子論につながりますが、この方面は物性物理学の範囲の外でございます。物性物理学と申します部分は、原子核の構造はあまり問題にいたしませんで、ある性質を備えた原子核というものがある。そして、そのまわりに電子か運動している、そういうところから出発いたしまして、どのようにして分子ができるか、どのようにして固体ができるか、その固体の中で電子がどういう役目をしているかというようなこと、また固体にいろいろの種類の固体がございますが、多くの団体の結晶を作ります。あるものは非晶質と申しまして、事然とした結晶ができないものもございます。さらに結晶を作りますものにおきましても、金属として分類される非常に多くの物質がございます。そのほかに非金属、その中には電気を全然通さないようないわゆる絶縁体という種類のものもございますが、温度が高くなって参りますと、電気を通すようないわゆる半導体と称せられるものもございます。そういうようないろいろの種類の物質が、どういうふうにしてできるか、その物質が示すいろいろの性質、物質のいろいろの属性、それがどういう機構で、その原子核と電子の集まりからどう説明できるかということが、物性物理学のおもな問題でございます。要するに原子核の構造に立ち入ることをいたしませんで、原子核は一つの点電荷のように考えまして、そのまわりに電子が運動する。そういうところから出発いたしまして、物質の性質を原子論的に理解しよう、あるいは電子論的に理解しようというのが、物性物理学の目標でござ、います。このような筋書きが可能になりますのは、その基礎におきましては、その分野の基礎理論が、現在では非常にはっきりしているという事情がございます。これはいわゆる量子力学、クオンタム・メカニクスと呼ばれる学問でございますが、これが約四半世紀前、二十五年ほど前に確立されまして、それを今申しましたような物質の模型に当てはめますと、理論がその物質のいろいろの性質を非常によく説明してくれます。この方面で量子力学が困難にぶつかった、すなわち量子力学ではとうてい説明できないというふうな現象は、現在のところ見つかっていない、存在しないと申してもよろしいと思います。この事情は、素粒子論の方面と多少違いまして、素粒子論の方面では、まだその基礎理論がはっきりしておらないというのが重要な点でございますが、物性物理学の方面では、その基礎になる理論、その根底の理論は確立されていると申してよろしいと存じます。それでは、その物質のいろいろの性質を理解する上に、そういう純粋に理論的な立場から、すべてが解決してしまうかと申しますと、これは実際的にはそうではございません。理論的に全部のことを解決してしまうということは、非常に膨大な、人力でとうていできませんような数学的な操作とか、そういう非常に大きな実際上の困難を持っておりますので、その理論の背景といたしまして、もっと手っ取り早く、各方面の実験手段を種種の物質に適用いたしまして、実験的な研究によりまして、物質の性質の根底に横たわります機構を明らかにしようというわけでございます。いわば理論は、それを解釈し、それを縫っていく糸と申しますか、その背景をなすわけでございまして、具体的に個々の物質についての性質、それの機構を調べていくという実際的な方法は、実験を中心にするわけでございます。理論は、どういう実験を行えばよろしいかというような点の指導を与えてくれるわけであり、そのいろいろの方面からの実験で得られました知識をまとめて、それの根底に横たわるあるモデルを使って、合理的に理解することができる、そういうことを示してくれるわけでございます。 ところで、その物質のいろいろの性質と申しましたが、これには種々のものがあります。たとえば、磁気的な性質、磁気的な性質、あるいは熱的な性質とか、光を当ててその光が吸収される、これは結局物質の色などもその中に入るわけでございますが、その光学的な性質——光学的な性質と申しましても、必ずしも目に見える光ばかりではございませんで、赤外線に対してどういう性質を示すか、あるいは紫外線に対してどういう性質を示すか、また最近では電波と光との間が連続的につながりまして、いろいろの波長の電波及び光、これが電磁波として一つにまとまっておりますので、光学的性質というのは、電波に対する性質につながるわけでございます。特質にいろいろの波長の電波を当てまして、それが物質にどういう反応を生ずるか、いわゆる電波分光学と最近申されておりますような部分では、電波を使うことによりまして、物質の構造の非常に微細の点を明らかにすることが可能になって参りました。たとえば、分子の原子核の間の距離というようなものを、これまではX線を使ってはかったり、電子線を使ってはかっておったのでありますが、電波分光学という方法を使いますと、二けたくらい精度が上りまして、たとえば酸素粒子の原子核の間のつり合いの距離というものが、一万分の一ないし十万分の一というような精度で測定できるというような事情になっております。単に距離だけでございませんで、その原子核の場所で、どういう電場——電気的な場があるかということを、電波分光学で調べることができるようになっております。さらに、最近では、中性子が原子炉その他などで作れるわけでありますが、中性子を物質に当てまして、物質がどういう反応を示すかということによりまして、また物質の電場ではつかまれなかった方面の性質を明らかにすることができるようになっております。たとえば強磁性体——磁石の材料になるような物質におきましては、その核原子のところが小さい磁石になっておるわけであります。その小さい磁石の配列の仕方、そういうものを調べます場合には、中性子線と申しまして、中性子の流れをその物質に当てまして、それがどういう方向にどういう強さで散乱されるかということを実験的に調べまして、その問題に対する知識を得ることができます。その他、力学的な性質、物の強さ、破壊というような問題に関します力学的な性質、そういうものが物質のいろいろな性質として大まかに分類されるわけでございます。さらにその電気的性質という中にも、たとえば電気伝導——金属のようなもの、あるいは半導体のようなものに電気が伝わって、電流が流れる現象、その電気伝導の現象だけをとりましても、それがまた客種の問題を含んでおります。たとえば、非常に低い温度、ヘリウムが液体になるというような非常に低い温度になりますと、金属のあるものは、いわゆる超伝導と申しまして、ほとんど抵抗なしに電流が流れる、一度金属の輪に電流を流しますと、それをほっておきまして、一日でも二日でもその直流が流れっぱなしであるというような現象がございます。その超伝導というのは非常に興味のある現象でございまして、それの十分な説明は現在まだできておりませんので、一つの物性物理学における先端的な問題でございます。そういう極低温のような問題のほかに、たとえば半導体と申します、これも比較的近年開発されて、応用に非常に重要な物質の群がございます。金属でもなく、絶縁体でもないもので、温度が高くなれば電流が流れるようになるものでありますが、その半導体に電流が流れます原因は、金属の場合とだいぶ違っております。金属の場合でございますと、その中にあります電子は大体自由であって、電場を外から加えますと、それに応じて電流が流れるようになります。半導体のような場合には、それの一番安定な、すなわち温度の低い状態におきましては、すべての電子がその物質を結びつけるために使われております。結合のために使われております。温度が高くなると、電子の中で自由に動き回る電子が少しずつできて参りまして、それが電気伝導にあずかる。そういうわけで、温度が高いほど電気を通しやすくなるものでございます。それに比べまして、金属のようなものは、温度が高くなりますと、原子核の方が振動いたしまして、そのために電子の運動をだんだん妨害いたしますので、温度が上って参りますと、電気抵抗が次第に増して参ります。ちょうど逆でございます。そういう性質がございます。もう少し多くのことを申し上げなければ、十分御納得いただけないと思うのでございますが、時間がございませんので簡単に申し上げますと、そういう金属とは非常に違った性質を持ったものが、電気を尊くものとして現在見つけられております。そういう金属とは全然違った性質が基礎になっておりますために、それを使いまして、後ほどお口にかけたいと思いますが、トランジスターと申しますような真空管と置きかえる新しい装置ができまして、そういうものは、電気工学の方面における非常に大きな革命というように言われているわけでございます。 その他非常にたくさんの例を申し上げることができるわけでございますが、時間がございませんので端折らせていただきますが、そういう各種の物質の性質をあらゆる角度から考え、すべての実験方法を使いまして、研究をいたします。それを、量子力学というような理論を背景といたしまして、その結果を統一し、その理論を指導原理として実験を企画して参りまして、そして、その物質の種々の性質がどういう機構で現われるかということを原子論的に解明するというのが、物性物理学の任務であるというふうに申してよろしいかと存じます。実験方法の中には、苦から物理学で使われております方法のほかに、先ほど申しましたように、中性子線を当てますとか、あるいは電波分光学、電波を使いますとか、あるいは原子核の実験装置などで使いますような加速された粒子を当てて、物質がどういうふうにそれに反応するかということを調べるとか、アイソトープを使うとか、そういうような方法も入ってきております。それから、すべての実験に関して、その背景として、温度と圧力というものがいつもつきまとっているわけでございます。この温度の範囲は、先ほど申しましたヘリウムが液体になるというような絶対零度の近くから、数千度というような高温までにわたっての、物質の性質を調べることが、結局その物質の性質の基礎になり、機構を明らかにする上に非常に重要でございますし、それから先ほどの超伝導のように、極低温でなければ現われないような特殊の現象もございます。それから圧力の方も、われわれが日常生活をしておりますこの一気圧程度のところだけでございませんで、何千気圧というような非常に高い圧力のもとでの測定ということも、ぜひ必要になるわけでございます。 このような物性物理学というものは、隣接のサイエンスのブランチ、たとえばケミストリーとか冶金学でございますとか、あるいはまた電気工学の基礎的部分、電気磁気材料の研究、そういう方面とは連続的につながっておりまして、そこにはっきりした分け目がほとんどつかないくらいでございます。その物性物理学の研究は、そういう隣接のサイエンスのブランチに対して、非常に重要な役目を持っております。たとえばケミストリーの問題、冶金学の問題、そういうのを掘り下げて参りますと、結局、物性物理学の問題に帰着してしまうということが普遍でございます。 そういうふうに、純粋科学として非常に重要な役目をになっているほかに、この物性物理学は、その工業技術の温床というような意味で、重要な任務をになっていると思うのでございます。これはおもに材料の問題でございます。材料がよくないということが、工業技術の非常な大きな支障になるということはしばしば指摘されておりまして、特に日本ではこのことがよく言われます。ある装置の大部分が支障なく動きましても、そのほんのつまらないように見える一部分の材料に欠陥があると、全体がだめになってしまう。そういう材料の欠陥ということが重要な問題でございます。それは、結局堀り下げて参りますと、物性物理学の問題になり、物性物理学的な研究をいたしませんと、解決できないのが普通でございます。さらにその現在ある材料の欠陥ということだけでございませんで、われわれが非常に重要だと思いますことは、新しいファクションを持つ材料という問題でございます。これまで知られていなかったような機能を持っているような材料、それが新しい技術の分野を開拓することになるわけでございます。物性物理学がそれに貢献いたしました二、三の例としてお話し申し上げたいと思います。 たとえば、先ほどもちょっと触れたのでございますが、トランジスターというものがございます。これは、おもにゲルマニウムと申します半導体を使っているわけでございますが、それと真空管を置きかえるような装置が作られているわけでございます。ここに持って参りましたのがトランジスターでございますが、この非常に小さなトランジスターが、在来使われておりますこういう真空管の機能が果した役目を果す装置として作られておりまして弁当箱のような非常に小さなラジオの受信機を作るとか、あるいはロケットのようなところにラジオの装置をつけるような場合に、トランジスターがあるということは、非常に大きな意義を持つわわけでございます。このトランジスターが発見されましたのは、これは何かそういうものを予想して探していったというよりは、基礎的な物性物理学の研究が行われましてゲルマニウムの性質を非常に組織的に、徹底的に研究いたしまして、それから生まれてきたものでございます。これは日本の例ではございませんで、それが生まれましたのはアメリカのベル・テレフォン研究所の人たち、それからイリノイ大学の人などが中心になったものでございます。非常にアカデミックな、大学で行われるような研究で、ベル・テレフォンは会社の研究所でございますけれども、ここは非常に基礎的な物性の研究をいたしております。ベル・テレフォンの人と大学の間で非常に人事の交流などがございまして、基礎研究を非常に力強く推進しているところでございますが、そういう基礎研究の結果といたしまして、トランジスターというようなものが生まれたわけでございます。 それから、またもう一つの例としては、磁性でございまして、磁気的な新しい性質を備えました材料といたしまして、フェライトと称せられるものがございます。これはこれまで磁性の材料として金属がおもに考えられたわけでございますが、このフェライトと申しますのは、金属の元素は入っておりますが、金属の酸化物が主体になっているものでございまして、これまでのような金属の磁性とはかなり違ったものでございます。こういうフェライトというような材料が初めて発見されまして、それが多小とも応用につながりましたのは、実は日本で行われたのでありまして、東京工業大学の武井さんなどによりまして、フェライトの研究がなされまして、それが多少実用化されたのでございますが、その後オランダのフィリップスの研究所などにおきまして、非常にフェライトの性質があらゆる角度から徹底的、組織的に研究されましてそれによってフェライトの技術が非常に発展いたしまして、今日ではおもにオランダ、アメリカ等の技術が、日本に再輸入されているというような格好になっております。よく使われておりますテープ・コーダーのテープにフェライトが使われております。録音の行われます部分の、このテープの土台の上に、マグネタイトの非常にこまかな粒が吹きつけられているのでございますが、これは一種のフェライトでございます。金属のテープでは、とてもこれに相当するような機能を発揮させることは困難でございます。 そのほか、非常に小さなものを持って参りましたのです。ここに小さな黒い輪がついております。この輪が実はフェライトでできております。これをパラメトロンと申します。これはフェライトを使いまして、たとえば計算機械、最近は電子計算機というのが発達いたしまして、非常に膨大な計算を一秒の何分の一というような時間で計算するというような装置が発明され、実際に使われているわけでございますが、このフェライトのいわゆるパラメトロンを使いますと、それが非常に安価に、小型にできそうなんでございます。実はパラメトロンを使って電子計算機を作るということは、東京大学の高橋研究室におきまして、後藤氏がこれを発明いたしまして、今装置を作りつつあるところでございます。そういうかなり画期的な仕事が、新しい材料の新しい機能によって、初めて可能になるという事実がございます。いわば新しい機能を持った材料を作ることによりまして、新しい技術を開拓するという可能性がございます。 そういう例はまだございまして、たとえば強誘電体——電気を通さない物質の一種でございますが、強誘電体というような物質を、コンデンサーに使うような例がございます。この強誘電体と申しますものも、最初はソビエトと日本とで戦時中に発見されたものでございます。その後、日本でも相当の研究はございますが、さらにアメリカなどで非常に強力に研究が行われておりまして、これも近いうちに、たとえば計算機でございますとか、いろいろの装置に強誘電体が実用化される日も、そう遠くないとえているわけでございます。そういうような新しい機能を持った材料を作ることは、物性物理学の徹底的、組織的な研究なしには、とうていできそうもございません。在来あるものの単なる改良ということではなくて、在来使われておりますものから進んでいって、何かよりいいものがないかという方向に進むというよりは、むしろ基礎研究が土台になってその基礎研究が新しい機能を持った材料を生んでいく、それが新しい技術を開拓する、こういうことが特に今後の日本について——われわれがそういうことを申すのはいかがかとも存じますが、われわれの思いますところでは、今後の日本の工業技術に対しまして、非常に重要な役割をしなければならないし、する可能性のある場所であるように感ずるのでございます。 日本では、先ほど申しましたように、たとえばフェライトの最初の発見なり研究なりが多少行われていてそれがしかし日本では十分育たなくて、ヨーロッパとかアメリカに行って、そこで徹底的な、組織的な研究が行われて、日本に工業技術として再輸入される必要があった。そういうことがいろいろな問題についてしょっちゅうあるのでございますが、それはどういう点にその原因があるのかということを考えてみますと、われわれの考えますところでは、結局は、その基礎研究自身の弱さであると存じます。日本に、物性物理学方面のかなり顕著な世界的な研究があるわけではございますけれども、それが組織的、系統的ではない、いわば散発的であって、ちんばなと申しますか、跛行的な発展しかしておらない。そういうわけでございますので、それが結局、日本の中の研究によって日本の工業技術をつちっかていくような、元来、物性物理学に期待されると思われる、あるいは物性物理学に課せられる任務と思われるようなところを課しておらないのであると考えるわけでございます。工業技術の面から見ますと、いろいろなところに隘路があるわけでございましょう。今申しました観点からは、一見迂遠にお感じになるかもしれないと思うのでございますが、これを十分発展させる基礎の弱さ、基礎研究の跛行性あるいは散発性ということを解消克服いたしまして、基礎研究が組織的、系統的に徹底して行われるような制度を作る、そういう組織を作るということが、まず第一に必要なことのようにわれわれは考えるわけでございます。そういう見地から、四月下旬の学術会議総会では、物性物理学研究所を作れ、作ってほしいということを要望したわけでございます。この基礎研究をまず打ち上げるということは、迂遠のような印象を与えるかとも思うのでございますけれども、それは決して迂遠ではないと思うのでございます。ある意味では、基礎が応用につながります早さというものは、ある部門では非常に早いものがございます。トランジスターの場合のごときはその顕著な例であると存じますが、基礎の論文がフィジカル・レビューなりベル・テレフォンの報告なりに出まして、それがトランジスターとして工業化されましたのは、ほんのわずかな時間的な間隔でございます。そういうように、基礎と応用の早さが、ある部門では非常に早い、基礎が応用に移される時間的な間隔が非常に早いということを考え、またそうでない部門につきましても、とにかく基礎の組織的な研究がなければ、先ほど申しました新しい機能を持つ材料の発見というようなことを全然不可能でございますので、将来への備えといたしましては、まずこの基礎を持ち上げることが必要であるというふうに考えるわけでございます。原子力工業、たとえば原子炉の材料であるとか、その他の点につきましての原子力工業などが、今後ますます画期的に盛んになろうといたしますときに、やはり物性物理学に要求される課題は非常に多いと存じますので、ここで基礎を相当に持ち上げませんと、そこが非常に弱点になりまして、いろいろの方面の研究なり工業なりに支障を生ずるのではないか、われわれはそんなふうに心配するわけでございます。 最後に、ちょっとその基礎の持ち上げ方につきまして学術会議で考えましたことを簡単に申し上げさしていただきます。この基礎研究、これは大体現在では各大学のこの方面の講座において実施されておるわけでございます。基礎研究を持ち上げますために、各大学の講座を充実するということ、これは非常に必要なことでございまして、現在特に物性方面の各大学の施設は非常に貧弱であるといわなければならないと思います。これは原子核の研究などと違いまして、物性の方では、非常に大きな施設がなくても、何か研究をすることはある、失業することはないと申してよろしいかと思うのでございますが、手作りの装置でもって簡単な実験をするというような課題が、ないわけではないのであります。原子核物理学の方では、施設が相当まとまった大きなものがないと全然手がつかないわけでございますが、この方はそういう事情はなかったわけでございます。しかし、そういうまとまった最前線の装置がなくても、何か仕事はできるというような事情が、かえって日本の物性物理学に災いいたしまして、小成に安んずると申しますか、現在の世界の第一線、特に実験方面において、それと競争するような設備が一向作られなかったわけでございます。まあ、東北の金属材料技術研究所における極低温の施設などが、その中のやや顕著なものでございましょうが、一般的に申しまして、大学の施設は非常に貧弱であります。しかし、各大学の施設を、世界の第一線の物性物理学の実験的研究に対抗できるように打ち上げますためには、相当に大きな経費を要し、かなり困難なことであると思われます。それで、われわれといたしましては、まず一つの中央的な研究機関を作る、セントラル・リサーチ・インスティチュートのようなものを作ることが、どうしても必要であるというように、たびたびの審議の結果、結論を出したわけでございます。一つの中央的な研究機関を作る、研究所を作ることが必要であると考えますのは、これは物性物理学の研究が、先ほども申しましたように、非常に総合性ということが要求される、物質のいろいろの性質をあらゆる角度から種々の実験方法で研究しましてそれをまとめて、その物質についてのきまった知識が得られる。そのいろいろの性質、一見関係がないように見られております。ものが根底におきまして電子論的に考えますと、きまった一つの機構をもととして発生しているということがわかるわけであります。そういうことを調べ、突き詰めるのが、物性物理学の目的であるといたしますと 総合性ということが非常に必要である。そのためには、一ヵ所に中心的な研究機関を作りまして、そこに先ほども申しましたようなあらゆる研究の施設を作ります。研究の実験装置を作りまして、それによって、そこで総合的に、組織的に、徹底的に物質の性質を研究することができるようにすることが、どうしても必要である。このような総合性を打った研究を行うことのできるような施設を各大学に作るのが困難であるとすれば、どうしても一つ全国の学者が共同に利用することを可能にするような、ちょうど原子学における原子核研究所のような、物性物理学研究所というものを作ることが必要であるというふうに考えたわけでございます そういうふうにいたしますと、一時的にはその中央研究所と申しますか、その研究所の研究の水準が非常に上りまして、ほかの大学と一時的には落差のようなものができるかもしれないと思われますけれども、しかし、結局は、少し長い目で見ますならば、日本にそういう高い水準の研究の中心ができるということが各大学を益することになると考えるわけでございます。特に研究所と各大学との人事の流動でありますとか、共同利用でありますとか、そういう点について十分の注意をもって運用をいたしまして、またそういう高い水準の研究が日本で生まれることが、あとから続く研究者の意欲というものを高め、あるいは物性物理学の重要性を広く認識させるのに役立つならば、結局は日本全体を益することになるというふうに、われわれ考えたわけでございます。この研究所の構想といたしましては、結局最高水準の近代的な施設を作るということが要件でございます。実験装置は、先に述べましたような各種の実験装置のほかに、たとえば同位元素を分離する装置なども含まれる必要があると思われるのでございますが、そういう各種の実験装置を備えて、温度、圧力の可能なあらゆる範囲においての実験ができるようにする。それから、物性物理学の方面では、その実験の対象となる資料を作るということが、非常に必要でございまして、いろいろな関係資料などの作成、あるいはそれの分析、非常に極端に純粋な資料の作成——ゲルマニウムなどは、非常に純粋な資料が作れて初めて可能になったのでございますが、そういう純粋な資料あるいは特に知れた濃度で不純物を加えた資料の作成、そういうようなことを十分行い得る施設、資料の作成や分析の施設が必要でございます。それからまた各実験室は相当近代的な施設を備えまして、その各部屋に配管があって、ある管をあけると真空が得られるとか、ヘリウムが得られるとか、窒素が得られるとか、そういうかなり進んだ施設を持つ。そういうことは、結局はぜいたくではなくて、研究を能率的に経済的に行う上に必要であるというふうに考えます。 それから、その人的構成につきましては、先ほど申しました人事の流動でありますとか、あるいは非常勤研究員というような形で、各大学とかあるいは工業界、会社というような方面の人が、その研究所を十分活用することができるようにする。大学付置でございますと、大学院を持ちまして、大学院の学生を養成いたしまして、それを各大学とか工業界、そういうところに送ることができるように、研究者の養成という任務を果す。実際の研究におきましては、十分機動性を持ちまして、在来の大学の講座の壁で隔てられるというような弊を除きまして、重要であると考えられました問題につきましては、その題目について研究組織を作りまして、できるだけ短かい期間にその問題を徹底的に研究することができるような方法を講ずる、機動性を打った研究のやり方を行うということ、その他この研究所は工業技術界との関係が重要でございますので、工業技術界の方の間に連絡の機関が必要であると考えております。これは両方の道、工業技術界の方面から研究所に要求されるその声をいれる方面と、それから研究所の成果、それを工業技術界の方に提供し、周知し、利用してもらう意味の道と、その両方の道が開けるような連絡の組織を持つことが必要である。そういうふうに考えているわけでございます。 大へん時間をとりましたが、大体それだけを申し上げまして、もう少し具体的なことについては、藤原教授にお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。
○有田委員長 それでは、次に、藤原参考人より、御意見の御開陳を願いたいと思います。藤原武夫君。
○藤原参考人 小谷教授から、物性物理学のことと、物性物理学研究所の必要なことについてお話がありました。私からは、その中でお話しになりましたゲルマニウムがトランジスターに使われて、今、真空管の代用というよりか、真空管にかわってきて、いわゆる電子工学の分野が非常に変ってきている、著しく発達を推進していることをお話し申し上げたいと思います。 このトランジスターですが、この赤いこれだけで、私が左の手に持っておりますマツダで作った真空管のかわりをするようになったのでございます。この赤いトランジスターの小さいものの中に、ほんの私どもの爪の上に置くくらいな、大体二ミリ平方くらいな小さなゲルマニウムの結晶が入っているのです。そのゲルマニウムの小さな結晶が真空管のかわりをしております。一口に申し上げますと、私が右に持っておるのを使ってこんな大きな真空管のかわりになるのでございますから、今後どんな画期的な電子工学が発達するか御想像ができると思います。あるいはまた、こんな小さなものが今の真空管のかわりをしまして、電子計算機の複雑なものを今東京大学の高橋助教授などが組み立てておられるということでございますから、将来が非常に期待されます。この中に二ミリ平方くらいな、私どもの小指の爪の十分の一くらいな小さなゲルマニウムの結晶が入っておるのですが、半導体の理論をベル・テレフォン会社のアンダーソンという博士らが研究いたしまして、非常に純度の高いゲルマニウムは、電気を流せば今の真空管の代用になるということを理論的に明らかにしました。純度が高いといっても、千万分の一くらい不純物があります。千万人の男がおりまして、その中に紅一点、女が一人おるくらいなゲルマニウムです。これは外が赤でかこってございますから、大きく見えますが、この中にほんのわずかな二ミリくらいな、先ほど申したように、私どもの小指の爪の十分の一くらいなゲルマニウムの結晶があります。その結晶は、何十兆というような、ゲルマニウムの原子でできておるわけです。ほんの小さなゲルマニウムが無数のゲルマニウムの原子でできておるのです。今私は原子と申しましたが、これが物理性物理学の課題になっておる。私どもが今取り扱いますのは、原子とか分子とかいう小さなものを取り扱っております。この何十兆というたくさんなゲルマニウムの原子の中で、まざりものが入っておると役をなさない。しかし一千万のゲルマニウムの中に、一つぐらいの違ったものがあってもいい。まあ紅一点といいますか、もっと理論的にいえば、一億のゲルマニウムの中の紅一点、実際に製作するのは、一千万か百万のゲルマニウムの中に紅一点くらいの不純物があるんじゃないかと思いますが、かりに一千万のゲルマニウムの中に紅一点の不純物がある、そういう結晶を作ったら、これが真空管の代用になるぞということが理論的にわかりました。原子核の理論もありますが、原子核のように、原子の中心部の研究ではなくて、原子核と外の電子をこめた一つの原子全体の研究なんですが、われわれがいう物性理論の方からそういうことがわかりましたので、それでは、そういう結晶を作ろうではないかということなんです。 その結晶を作るのには、どうした作ったらいいかということでございますが、ゲルマニウムの中には、たくさんの不純物がある。一千万に一つの割合どころではない、十万に一つとか一万に一つくらいの割合の不純物があるので、われわれはそれが今までできなかった。理論的に今のようなことがわかりましたので、一千万に一つの不純物があるような非常に純度の高いゲルマニウムの結晶を作るのにはどうしたらいいか。この万年筆にたとえて申し上げますと、このゲルマニウムの棒を左側の方から大体溶けるくらいまで熱してやる。そうすると、こっちの端の方が溶けかかるものですから、中のゲルマニウムの原子が、今まではじっとしておったのが、みな非常にゆれてきます。その溶けかかったのを、やはり左の端から順々にさましてやる。溶けるほどになるのをさませば——こんなことをここで申し上げて、委員長から失言取り消しと申されるかもしれませんので、前もって失言を取り消しますが、私どもお互いに、もしアルコールを入れますと、愉快になりまして、たとえこの部屋でも、みんな盛んに活動するようになると思うのです。実はゲルマニウムをこちらから熱してやると、ゲルマニウムの原子が、私どもが酒を飲んだと同じように盛んに活動いたします。それで活動している間に、その中におります異分子がだんだん外へ出されてくるわけであります。活動しておる原子を冷やしてやると、だんだんとその活動が静止してくる。静止してくるときに、上手にやってやると、同分子だけがそこに集まってきて、異分子がだんだん外へ出されるようになる。そういうようにして、一度溶けかかったのを一方から上手に冷やしてやると、異分子が外へ外へと出るようになってくるわけであります。その理屈を応用しまして、こちらから順々に溶かしては冷やし、溶かしては冷やししてずっとやりますと、この中にある異分子が、溶けたところへ、溶けたところへと押し出されていって、最後には右の端の方へ不純物だけがたまってくるようになる。そのたまってきた不純物のところだけを切り捨てると、残った方は非常に純度の高いものができてきますから、もう一度そういう操作を繰り速して、こちらから徐々に上手に熱して冷やしてやる。そうすると異分子は外へ外へと押し出されていって、上手に団結すれば同じ原子だけが結合してくるようになって、これがいわゆる結晶というものになる。そういうことを何度も何度も繰り返した結晶の中には、不純物が非常に少くなってくるわけであります。そういう操作を繰り返せば、一千万分の中に一つしか不純物がない、あるいは百万分の中に一つしか不純物がない、十万分の中に一つしか不純物がないという純度の高いものが炎に作れます。アルミニウムなどでも、今は十万分の一つしか不純物がないという純度の高いものができているように思うのですが、そういう操作でこれを作ってくるのであります。そういうようにしてゲルマニウムの非常に純度の高いものが作られて、その小さなかけらといっては悪いですが、その一片がこの中に入っておるわけです。これは御承知のように、一口にいえばそれだけのことですけれども、不純物がごくわずか、十万分の一とか百万分の一とかの不純物があるということをどうして知るか。今までは、不純物があるのは、天びんではかって調べておりました。はかりではかって調べるのは限度がございますから、機械的にはかりではかったところで十万分の一の純度もはかり得ない。そうすると、十万分の一とか百万分のとかの純度をはかるのは、ラジオ・アイソトープという原子力の方の研究になります。原子炉の中へ物を入れて、中で熱すると、その品物が放射性を持つ、ラジウムのような性質を持ってくる、こういうことがわかってきて、そういう品物がどんどん作り出去れております。日本ではまだ原子炉ができておりませんから、そういう品物が作れないので、アメリカとか欧州からそれを輸入して、われわれは実験に使っておるわけです。そういう放射性同位元素が、アメリカではだんだん盛んに作られております。それをゲルマニウムの中にごくわずか入れますと、ごくわずかでも放射能を出しますから、その放射能がどのくらい出ているかということを調べる機械として、今シンチレーション・カウンターなど、その他いろいろこまかしく詳しく調べる機械ができております。それでごく微量に放射能が出るのを調べますと、このゲルマニウムの中には、ごくわずかしか不純物が入ってないということが調べられます。天びんだけではとうてい調べ得られない。それで放射性同位元素のようなものを使って、このゲルマニウムは純度が相当高くなって帰る、そうすると、もう少しこうやったらもっと高くなるぞということで、純度の高いゲルマニウムを作る技術が進んできて、現在この左手に持った真空管と、右手に持ったトランジスターが同じような役割をするというような時代が来ておるわけです。そういうようなことで、これができたわけでございまして、これができるもとには、半導体の物性理論をつき進めていって、純度の高いゲルマニウムがこういう役割をするという理論がまずできて、それではこういうものを作ろうじゃないかというんで、それを作る。そのときに、それは分析ということになりますが、純度の高いものを分析して、不純物がどのくらいあるか、一千万の中に一つか二つの不純物があるとか、あるいはもっとわずかな不純物を調べ出すことは何でしているか、これは原子力の科学、原子核力科学とでも——変な言葉を言って、あとで専門家から笑われるかもわかりませんけれども、そういう言葉を私は作ったわけです。その原子核力の方が進んできて、それをここで応用して、純度の高い、ゲルマニウムを作るようになって、トランジスターが生まれたのであります。 私のぐちをこれから申し上げます。そうすれば、皆さん方に御専門の方もございまして、私の大ざっぱな説明のところで、少々違っている点なんか御指摘かと思いますけれども、他のお方に大ざっぱに、またおわかりやすいようにと思いまして、私のぐちを申し上げます。 十五年ほど前に、私は、アルミニウムとか鉄とか金属のこういう棒をこちらからずっと熱しまして、そして冷やすと、その中の原子が並びかわります。今ちょうどこちらでは皆さん方が私の方へ向いて下さっておりますが、休憩になりますと、あちこちにお向きでございましょう。いすからもお離れになりましょう。それをこちらから上手に冷やしていきますと、全部私の方へ向くようになるんです。こちらから徐々に熱して、こちらから冷やしていきますと、この中の原子が全部私の思うままの方向へ向くようになります。そういう方法を私は考え出しました。七、八年前に、ここにおられます小谷教授は、別の課題で学士院賞を獲得され、私はそのときこの課題で学士院賞をもらいました。そういうように、これはつまらない仕事かわかりませんが、私はそういう仕事で学士院賞をもらいました。そういう意味ばかりじゃございませんけれども、私はその仕事を当時いたしました。私の研究は、溶かすようにして冷やして、この中の原子をある一つの方向へずっとこう並ばせるという考えで仕事をして参りました。その仕事をだんだん発展させ——それは私がその前からやっておる仕事が、原子がきちんと並んだものを使って、その物理的ないろんな、これを引っぱったときにはどれだけの力が出るだろうか、これをねじるときにはどうなるだろうか、そういう研究をしてみたくて、その課題が頭の中にこびりついておりました。そういう研究をするために、一番簡単に適切な研究材料を作るということに、頭がこびりついておったもの百ですから、そういう材料を作りました。それでもまあごほうびが出たくらいですから、そういう材料を作るということ自体がその当時としては新しい仕事だったのです。それで、その仕事を始めましたのは十五年ほど前、成功しましたのは十二年ほど前、ごほうびが出たのは七、八年前です。十年ほど前にその仕事が成功してから後、まざりものが、こちらへだんだんにやっていけばどんなに動いていくだろうかという研究を、私は次の段階にしようと思いました。まざりものが、こっちから熱していって、徐々に冷やすと、中の原子が私の思うように並んでくれる。非常に愉快で、これは自分の思うように並ぶ。その中にまざりものがおるおらぬかには、私は考えが及んでおりませんでしたが、中の原子を思うように並ばせ得ることだけに思いをいたしておりました。それに成功して、五、六年たって、もしまざりものがあったら、どっちの方に行くだろうか、途中でまたどこかに停滞するだろうかどうだろうか、それを調べようと思ったのが十年前でございます。そういうことが私の頭の中に入って、十五年前に、これを暖めて、冷やして、中の並びのきちんとしたものを作ろう、そういうものを作って、これの強さとかいろんなことを調べようと思ったときに、もし小谷教授と一緒にでも私が仕事をしておりましたら、その中の不純物が、藤原さんどちらへ行きますかということを、一口私に言われておったら——私の不純物がどちらの方に出ていくだろうか、もしこうやったら不純物はどうなるだろうかということ、当時十五年前に私がその研究を始め、大体見通しがついたときに、そういうサゼスチョンを、理論をやっておられる方から受けたら、私もゲルマニウムか何かを作るという考えの方に及んでいったかもわかりません。私がやらなくても、私の近くの者が、そういうことをやったと思う。それで、私が不純物がこう動くということを調べ出したのは十年前でございますから、もうアメリカでゲルマニウムの研究がずっと進んだあとのことでございます。そういうことからいたしまして、私は結晶をやって、私の京都大学の恩師なんかは、きれいに並んだものを使って、いろいろな性質を調べようということだけが頭にこびりついていた。中の不純物を追い出して、その不純物がどうなるか、その不純物のところまで進んでおりませんでした。かりに、そのときに、総合的に私どもが研究をしておったなら、私の隣の部屋から、君、その中の不純物はどう動いただろうかといって、お互いにそのときに夢を描いたり、夢を見たなら、それが研究の方へ進んでいっておったろうと、私は恥かしく思っております。そうなれば、あるいはゲルマニウムでなくても、アルミニウムの純度の高いのが、私どもの研究室のかたわらからできておったかと、今ぐちを申しております。 そういうことでございまして、私ども基礎研究を進める上において、先ほど小谷教授からも言われたように、散発的に日本では基礎研究が進められておる。ある局所々々では相当目立った、外国にもおくれないようなものができておるが、これは散発的である。こう言われたし、この文章の中にも書いてあります。これが総合的になりましたら、私どもだってゲルマニウム、トランジスターが考え出せないことはなかったのじゃないかというように、昔を振り返りまして、思っておる次第でございます。でございますから、これから後の物性をやられる方々は、こういう点をぜひ考えられまして、基礎的に、かつそれが総合的に行われることが、将来ゲルマニウム、トランジスターのような材料を生む過程ではないか、こう思います。これはトランジスターが生まれましたことに関連いたしまして、私の専門として研究しておりますことについて、私の専門はほんの狭いところでありますが、隣あるいは皆さん方と総合的に研究が進められてなかったその一つの例として、こんなことを申し上げたので、かえって恥さらしのようになりますけれども、それだけ痛切に、私自身、基礎研究を総合的に進めていかなくては、これは始終外国にしてやられることが多いと痛感しております。私どもが総合的に基礎研究を進めていくならば、近き将来にそう外国に劣るものばかりではなく、外国に先んじるものも必ずやできてくると、私は固く信じております。そういう意味からして、物性物理学研究所をぜひ早く作らなくちゃと、痛切に感じておる次第でございます。 一例としてこんなことを申し上げましたが、大ざっぱなことを申し上げましたので、こまかしい点になりますと、あちこち抜けたところがありましょうが、大体基礎研究を総合的にもし日本でやっておったら、日本からもトランジスターが生まれておったであろう、ここの文章の中にも書いてありますけれども、まだまだたくさん生まれるものがあっただろう、今後は生まれるだろう、こう私は期待しておりますし、予感もございます。ただ私自身が今のような研究をしておりましたときに、こんな珍しい仕事をしたので、ごほうびが出たりしたときに、これが何の役に立ちますかとみんなに聞かれました。何の役にも直接立ちそうもないものですから、私も頭をかいておりました。原子をきちんと並べまして、結晶の物理的性質を調べる、みんなきちんと並んでおれば、雑然としておるものよりも、はっきりと性質がわかります。また雑然としたときよりも、みなきちっと並んだときの方が、その個性がはっきりと出ます。これは皆さん方が私以上によく御経験です。人間でも同じでして、みながきちんと並んだときには、その力がうんと出るので、だから原子がきちんと並んだものを作ったら、その性質がよくわかる。そこにだけ、そういう意味に、私の仕事がお役に立ちます、こう私は言っておった。それでは実際今の産業には役に立たぬのでなというような顔を始終されたのです。いや、これはこう立ちますというだけのことはなく、間接的に立ってくるだろうと思っておりました。十年ほど前から最近はだんだん私のそういうものを使って、結晶のいろいろな性質を調べ出されてきておる。ここらでお役に立ちかけてきたぞと、私自身これもまた十年前にヤジられた人に一つ御報告しようかなと思うときがときどきありますが、そのときに、さっき申しましたように、小谷先生のような物性物理学の理論の大家に私がいろいろ指導していただいておったら、今よりももっと前に、皆さん方の前に出て、私のこういう基礎研究は、産業の方へもいささかお役に立ち得ております、こういうことを私が申し上げられたかと思います。そういう点、はなはだ恥かしく思っております。今の、こちらからこう熱してずっと冷やしていくのは、おととし外国をずっと回ってみましたら、私の方法をみんなまねをしております。十何年前に私が考え出した方法を、外国の人が上手にとってやっております。それで、あのときに物性物理学研究所のようなものが日本にもできておったら、私の考えまた私の考えのある一部分をそこの人たちがとって、そうして大きなものが生まれたのではないかというような気も今はいたします。できなかった人間は、とかくぐちを申しますが、現在の位置においてこういう方面からしては、私はきょうはぐちを申し上げます。しかし、それがまた皆さん方に、基礎研究を総合的に進めるように、また現存の段階では、何も役に立たないようにしろうとの方がお考えになるかもわからないような研究が、いわゆる基礎研究でございますし、その研究を、しろうとの方が一日をおあせりにならないで、ゆっくりその方面に携わっておる者にまかせて、その面の人たちが思う存分その方面に力を伸ばせるように、しろうとの人たちが考えてほしいと思います。しろうとの人と申しましても、しかしそれは十分こういうことがおわかりになった方でなくてはできないと思います。そのように私がいわゆるしろうとという言葉を使いますのは、はなはだ申しわけがないのでございますけれども、現在の日本の情勢としては、いわゆるしろうとの方といった方が、言葉がわかりやすいかもしれません。そういう方々が、そういう専門の者に大きな力を養っていただく、そして、その基礎研究が散発的に個々の個所で行われるのでなくして、一ヵ所で総合的に行われるにおいて、今後日本からほんとうに新しいものが生まれるのではないか、そうしなくては生まれない、こう思っております。長時間駄弁を弄しまして、お許し願います。
○有田委員長 以上をもって、参考人よりの御意見の御開陳は終了いたしました。 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますから、順次これを許します。前田正男君。
○前田(正)委員 ただいま貴重な御意見を承わりまして、われわれも大いに、新しい物性物理学の理論に基く新産業の発展牲について得るところがあったのでありますが、ここで一つ承わりたいことは、すでにベル・テレフォン、ウエスティングハウス、フィリップス、シーメンスというようなところの研究について、また純粋な珪素を使って太陽電池その他のものを作るとかいうようなことをわれわれちょいちょい聞いておるのでありますけれども、そういうふうな将来発展する可能性のあるようなもの、われわれが今あまり知らない範囲のもので、何か学問的に見通しのあるような、あるいはさっきお話のありましたアルミニウムの純粋な結晶だとか、あるいは珪素の純粋な結晶とか、そういうふうなものがどんなふうに利用されるだろうということについて、何か話題になるようなもので、今ぼつぼつ研究されているというようなことがございましたら、一つ御参考までにお聞かせ願いたいと思います。
○小谷参考人 実はわれわれのところは、かなり基礎研究でございますので、具体的にこれがこのように役に立つということを今申し上げる用意はないといった方が、率直だと思うのでございます。われわれ自体の任務といたしましては、物質がどういう性質を示すかということの理論を指導原理にいたしまして、いろいろの実験をいたして解明する。そういう中から工業技術に役立て得るものが生まれてくる。これははなはだ要領を得ない答弁のようでございますけれども、工業技術の方から、こういう性質を持ったものを作れという要求がありまして、それに対してというのではなくてやはり基礎研究を組織的にやっておきまして、その中から工業技術に役立つものが生まれてくるということをわれわれは期待するわけでございます。これは非常に迂遠なようでもございますけれども、課題を与えまして、その応用の方からのワクで締められて研究をするということになりますと、どうしても十分広い視野をもって、基礎を見渡しての研究が大へん困難になると思います。それで、われわれ特に理論の方などではそうでございますけれども、根底といたしましてはアカデミックな興味と申しますか、真理を追求するような精神、そういうようなところから、最もわからない現象、解釈に苦しむような現象、そういうところをつっついていくわけでございます。そういうふうにして基礎のレベルが相当上りましたときに、基礎研究の上から、こういう性質が使えるのではないか、こういう性質が何か役立つのではないかということが生まれてくるというふうに思うのでございます。そういうような意味で、この物性物理学研究所だけでなく、たとえば科学技術庁でお考えになっております金属材料技術研究所でございますとか、あるいは応用に使います方面として、現在既存のいろいろの研究所がかなりございます。電気通信研究所でございますとか、いろいろな研究所がございます。そういうところと一緒に全体として考えまして、工業技術をつちかうことになると思うのでございます。そういう、たとえば電気通信研究所とかその他の研究所、物性にも関係のある研究所におきまして、実際の研究者の声として、困難を指摘されて言われますことの中には、そういうところはどうしても基礎まで掘り下げて研究することが困難である。そのほんとうの基礎の研究、それがそういうところで十分できないので、日本の技術に十分貢献するところまでいかないのである。そういう困難がたびたび指摘される、それをわれわれ聞くのであります。そういう基礎研究の欠けているところを、新しい研究所で補うことが、急務であるというふうに考えるわけでございます。もちろん非常に画期的な着想というのではなくて、たとえばフェライトに対する研究、それがさらに現在持っている性質よりもすぐれた性質を持つというような問題、それからたとえば強誘電体というものを先ほど申し上げたのでございますが、その強誘電体を実用化する着想、そういうようなことにつきましては、今、日本の物件物理学者の中にもある程度の考えや用意があると思うのでございますけれども、率直に申しまして、非常に画期的なものを現在われわれが持っているということは、必ずしも言えないのではないかという気がいたします。非常に画期的なものを生むために、むしろ基礎の徹底的な研究が、将来に備えて必要である、そのように考えるわけでございます。
○有田委員長 志村君。
○志村委員 簡単なことを藤原先生に聞きたいのですが、先ほどの話で、原子の方向ということを言われました。これはしろうとの質問でございますが、原子は、私たちはシンメトリカルなように開いております。これに方向があるのでございますか。
○藤原参考人 それは私の失言でございます。原子の集合したものの方向でございます。集合体の方向で、原子の並び方でございます。私の言葉が足りませんでした。
○志村委員 日本の物性物理というのは新しいアイデアで、メディカルとフィジカルを合せたものだというお話を聞いておりましたのですが、外国の、たとえばベル・テレフォン・ラボラトリーとか、あるいはオランダ、ソビエト等でそういう日本の研究を引き継いで完成されたと聞いたのですが、日本で物性物理学研究所を作りましたときに、ベル・テレフォン・ラボラトリーとか、オランダ、ソビエトにおいてのそういう研究機関の研究の領域と同じですか。違ってくるのですか。そういう点を聞きたいと思います。
○小谷参考人 お答え申します。領域は全然一致しておるとは思わないのでございます。ベル・テレフォン・ラボラトリー、それからフィリップスの研究所も、ともに会社の研究所でございますが、特に電気通信に関係ある問題が取り上げられたわけでございます。その電気通信に関係する材料の基礎として物性物理学の部門の研究をかなり組織的に徹底的にやっております。日本の基礎研究よりは、よほど掘り下げた、ほんとうの基礎研究をその中に含んでいると思うのでございます。しかし、物性物理学の全分野にわたっているわけでもないように思います。物性物理学とわれわれが申しておりますところで、ベル・テレフォンあるいはフィリップスであまり関心が持たれていないところが確かにあるように思うのでございます。しかし、いろいろの物性物理学のかなり大きな部分がそこで研究されていることは、確かかと思います。おおわれておらない部分といたしまして、顕著なものとして考えますのは、たとえば極低温に関する施設なり物理学の研究というものが、そこの研究所にはないように思います。しかしながら、アメリカならばアメリカ全体を考えてみますと、そういう極低温の研究施設はかなりたくさん大学にございます。学生実験にさえも、大学で使っているようなところもある状態であります。そこで必ずしもベル・テレフォンの研究所にすべてを備えておりませんでも、非常に手近に、極低温における測定が必要になれば、ベル・テレフォンが測定をなし得る施設もあり得ると思うのです。日本では、物性物理学の実験的研究の各方面がかなり弱いので、その中央研究所は物性物理学に関する全般の設備に最前線のものを備えなければ、有効な研究がむずかしいのではないかと思うのでございます。アメリカなり英国なりでは、一ヵ所でなくて、何ヵ所かにかなり物性の研究を基礎的に行うことのできる実験設備を備えたものが現存するのでございますが、そのままの形を日本に望むのは、むしろぜいたく過ぎるように思われます。しかし、その最前線まで物性物理学を打ち上げることは、どうしても必要であるように考えますので、中央研究所というような形のものも必要であると思う次第でございます。
○志村委員 実は、われわれ、金属材料技術研究所というものを近く発足する予定になっておるのでございます。物性物理とある程度領域は違っていると思いますが、しかし金属に限っておりますから、そういう施設によっては、ある程度満足される部門が相当あると思います。もし物性物理研究所というものを作りました場合には、そのうち重複するような部分が出てきやしないかと思いますが、その点をお聞きしたいのであります。
○小谷参考人 お答え申し上げます。金属材料技術研究所でございますか、この構想は私よく存じておりませんので、はっきりしたお答えを申し上げることは困難でございますけれども、伺うところによりますと、それは、たとえば、現存の東北大学の金属材料研究所よりもさらに応用に近いと申しますか、そういの方面に焦点を置かれるように伺っておるのでございます。その金属材料技術研究所の基礎的な部面が、どの程度伸び、どの程度に技術化されるか、私はっきり伺っておりませんので、しかと申し上げることができないのでございますけれども、今、ちょっと想像いたしますところでは、われわれが考えております物性物理学研究所での基礎研究を、金属材料技術研究所でカバーしていただくのは困難なのではなかろうかというふうに考えるのでございます。 もう一つ、この基礎研究と申しますのは、現在ではおもに大学にいる人で行なっております。それで、大学との間の技術の交流とか大学の人が臨時にそこに集まって、機動的な課題について相互的に研究を行う、そういうことが何と申しましても日本の現状では基礎研究の主体とならざるを得ないように思うわけであります。そういう意味では、この新しい研究所が、やはり基礎研究の研究所として、大学の研究所の人と大学の講座で研究に従事している人、そういうような方面の人を十分に受け入れて利用できるように、そこで研究しやすいようにすることが、実際上には必要であるように思うのでございます。そういう点から考えますと、たとえば、原子核研究所のように、どこかの大学の付置研究所のような形になることが、実際上は研究所が成果を上げるのに適切な方法ではないかとわれわれは思うのでございます。もちろんこの問題は、科学技術審議会において審議していただけることと思うのでございますけれども、われわれ研究者の大体の感じは、そのような傾向でございます。もちろん金属材料技術研究所ができるといたしますと、そことは非常に密接な連絡が必要であるように思います。それで、ここに書きました工業技術界との連絡機関のほかに、金属材料技術研究所との間の連絡方法というようなことは特に考える必要があると思います。その間にセクショナリズムというようなことが起らないように、十分な方法が講ぜられることは、ぜひ必要と思うのであります。たとえば、大学教授が、一時的にあるいはやや長期的に、研究所に行き、また大学帰るということが非常に円滑に行なえるという点で、現在の制度のもとでは、大学付置にすることが、運営が非常に円滑に行くのではないかというふうに、狭い考えかもしれませんが、われわれとしてはそのように思っております。
○藤原参考人 志村委員、前田委員の御質問に幾らか触れると思いますが、先ほど私の、ゲルマニウムを作ったという話が、実は私の話が下手であったかと思って反省しておりますが、これはゲルマニウム、トランジスターができ上ってしまえば終りですが、これができるまでが、物性物理学研究所と金属材料技術研究所との一緒の仕事のように思っております。これができ上ってしまうところが、金属材料技術研究所のように、私個人的には考えております。それで、高純度のゲルマニウムは真空管の代用をなし電気を流すというような理論的な研究、それから純度の高い単結晶を作るのにはどうすればいいかという研究は、やはり物性物理学研究所でなされる。アイソトープを使って、高純度のもののインピュリティーを測定する、こういう理論なりいろんなことを物性物理学研究所で担当して、金属材料技術研究所では、それだけの基礎的の研究はされる余裕がないのではないかという気がいたします。そういう部門を物性物理学研究所で担当するのでございますから、それを実際にやってる人自体は、これがすぐ応用になるかということを始終考えながら、研究に携わっていないと思います。直接その研究に携わっている者に先ほどのような御質問をなされると、ちょっと御返答に苦しむだろうと思います。けれども、今のような私どもの考えている研究所には多数の人がおりますし、そういう研究の成果を始終聞いて、報告を受けて、また小谷教授からもちょっとお触れになったかと思いますが、外の研究所の団体の方々と始終連絡をとっていくような運営の仕方をしていく。その研究が外の研究所の方にも流れるといいますか、始終交流しておるわけでございますから、そういう人たちが研究所でやってる成果を見ては、その中からとっていかれるというようなことになるのではないか。実際問題としては、そうなるのではないかと思っております。 それから物性につきましては、極低温の問題でも、またたとえば私どもの関係しておりますアルミニウムの単結晶自体でも、一万分の一くらいに引き伸ばしたときにどういう性質を持つか、十万分の一くらいに伸ばしたときにどういう性質を打つかということがまだはっきりわかっておりません。目に見える程度伸ばしてからの性質はわかっておりますが、いわゆる目に見えない程度伸ばしたときの物性の性質がわかっておりません。こういうところを明らかにしてくれば、それがもとになってのいろんな性質の基盤は、そこから始まってくることになるのであります。それがわからずに、いろんなことが今考えられておりますから、それがわかったら、今まで考えられておること以外のことがわかろうし、いろんなことが生まれてくるだろうということが明らかになると思います。必ず新しいことがそこに生まれてくると思いますが、実際に研究をやる課題のそれは、やはり十万分の一の伸びのところの様子をよく調べるという課題で進んでいく。こういうところが先ほど小谷教授の御説明になった点じゃないかと思います。それが小谷教授から面接お答えしにくかった点ではないかと思います。私は個人的に、金属材料技術研究所とはそういうところの差があり、そこに結びつきがあると思っております。これは私個人の意見でございます。
○有田委員長 加藤精三君。
○加藤(精)委員 実は、両先生にお願いいたしますが、私たち科学技術特別委員会で日立の研究所を見学に行ったのであります。そこの所長の博士が言われるのには、現在トランジスターになっているゲルマニウムの純度より零が二つくらい多い純度のシリコンができますと、太陽熱を電気にかえることができるということは、学問的にはっきりしたのだという話をしておられました。これからの時代はシリコンの時代だ、また太陽熱利用の時代だというようなことを言われたのですがなかなかそういうことをお尋ねしても、責任のあるお答えとかなんとかいうことになると、ずいぶんめんどうなので、国会というところはあげ足をとったりするので大へん一般にきらわれると思いますけれども、そんな意味でなしに、われわれに大体のこれからの科学技術文明の展望というか、見込みというか、そういうものをこっそり話すような意味でお答えいただければ、大へんありがたいと思っております。
○小谷参考人 お答え申し上げます。御質問にありましたように、あまり責任のある御返答はできないのでございますけれども、太陽熱の利用のことにつきましては、御指摘のように、非常に純度の高いものを使えば、原理的に可能だと思うのでございます。ただそれがどのくらいの——私、個人的には実は割合基礎理論の方だけを主にしておりますので、それが具体的にどのくらいの——先ほど、将来の技術の中のウエイトというようなことについての御質もがあったかと思うのですけれども、具体的に、どのくらいのものになるかということは、実際のところ、私にはちょっと見通ししかねるのでございます。
○加藤(精)委員 私の知りたいのは、何十年ぐらいたったら、そういうことの見通しがある程度つくかというようなことなんでございます。われわれの生きている間に、太陽熱を電力に転換できるのかというようなことです。もうどんどん火星に行けるのだ、その火星に行く動力は、太陽熱を電気にしてロケットを動かしていくのだということが、当りまえのようなこと、真実のようなことに説明されているものですから、お聞きしたいのでございます。
○小谷参考人 それの技術的なといいますか、原理的にはそうでございますが、実際的な問題として、どのくらいの困難があって、そしてどのくらいの時間でそれが完成できるかということに対しまして、私自身は、実はその方面の研究にあまり関係しておりませんものですから、あまりはっきりしたことを申し上げられないのが残念でございます。
○藤原参考人 日立で零がもう二つ進んだらとおっしゃったですね。
○加藤(精)委員 ええ、そう言っているのです。二つか三つか進んだらと言っておりました。
○藤原参考人 それは、シリコンの純度の高いものを作るのが、現段階ではおそらく日立さんではむずかしいのじゃないかと思います。
○加藤(精)委員 日立さんができるということを言われたのではないです。クロレラですか、徳川生物学研究所のあれですね。そんな方のことなんか、同時に話題になったのですが。
○藤原参考人 それができれば、いくのじゃないかと思います。日立さんでは、今、太陽熱で作っておられますか。
○加藤(精)委員 日立さんは、シリコンの研究をしていないだろうと思いますけれども、そういうゲルマニウムはもう古くなる。シリコンの時代になるであろうというような口ぶりのお話でございました。
○藤原参考人 ベル・テレフォンでも、そういう点についての研究はしております。そうして太陽電池の模型——模型ではないが、もう作って見せておる。さっきのゲルマニウムよりずっと純度は悪いですけれども、シリコンの結晶に太陽を当てて、それで太陽熱を電気にかえて、電池を充電しております。だから、その充電した電池を使ってやっておる。太陽を電気にかえることは、もうベル・テレフォン会社でやっております。その人たちは、もう一歩進んだ精度の、純度の高いものを作ろうとしておられます。しかし、これは私は専門でないからよくわかりませんけれども、珪素自身の性質として、それ以上純度の高いものは作りにくいということが起きてくると思うのであります。そこが技術的なものです。太陽熱を幾らかの電気にかえることは、もうやっておる。それで先ほどお話のありました、日立でその仕事をなさっておって、そういうふうに言っておられたかと聞いたのでありますが、ベル・テレフォンではある程度やっております。そこの技術者たちがどう思っておりますか。ある程度までいったら、純度の高いものを作り得ない、これ以上は非常にむずかしいのではないかという線まできておるかどうか。ゲルマニウムとシリコンとまた物質が違いますから、ゲルマニウムでは純度の高いものができても、シリコンではできないかもしれません。その辺は私専門でないからわかりませんが、太陽熱を電気にかえることは、もうかえております。そういうようなことで、電池を充電しております。
○加藤(精)委員 原子の内部構造で、核と電子なんかの関係か何かで、シリコンというのは太陽熱を、電力にすることについてのチャンピオンになる資格が特にあるということでございますか。何でシリコンというものを打ち出して、太陽電気と関係させておるのでございますか。
○小谷参考人 固体の性質は、そういうトランジスターのゲルマニウムにいたしましても、シリコンにいたしましても、その性質の特徴は、おもに電子の、われわれの方でエネルギー・バンドというようなことを申しておりますが、電子のいろいろな状態があります。温度が高くなりますと、電子が励起されて、高い状態になるわけですが、一番低い落ちついた状態で電子がどういう状態を示しておるか、電子は妙な性質がございまして、温度を非常に低く冷やしましても、運動がみんなとまってしまうわけではございませんので、あるエナージまでのところは、いろんなエネルギーで動く電子がぎっしり詰まっている。それで、同じ状態へ三つの電子が入れないという妙な性質がございますので、温度を下げて参りますと、すべての電子が一番低い状態に落ちつくわけでございます。そのときにも、全部が同じ状態になるのではなくて、やはり相当大きな運動のエネルギーを持っておる電子もあるわけでございます。そういう電子が光などを受けますと、上の方に上るわけでございます。その上に上るのに適当なように上の状態があるかどうか。ある物質では赤外線とか熱線とか、そういうようなところに対しては上に上る状態がなくて、そういうところまで上れない。その電子がとり得る状態が連続的にずっと全部あるわけでございませんで、下の方に幾らかあって、それから中途で飛びまして、また上にあり、また上にある、そういう帯のような形をわれわれ意識的に考えるのでございます。そういうバンド構造、帯状の構造を作っております。半導体では、その上になお、帯の中間に不純物とかあるいは結晶の不完全さなどによります特別のエネルギーをとり得る状態がございます。その半導体のいろいろな機能、性能は、ほとんど全くそのバンドの構造、どういう高さのところにどういうエネルギ-帯があるかということによると思うのです。第一義的には、シリコンとかトランジスターのゲルマニウムとか、そういうものが、今考えておりますような機能に対して選ばれるのは、そのエネルギー・ハンドの構造であります。さらに第二義的に、それが純粋にできやすいかとか、あるいは科学的に安定であるかとか、そういう第二義的な性質が実用上には非常に問題になってくると思うのです。
○有田委員長 他に御質疑はありませんか。——他に御質疑がなければ、この際、両参考人に一言お礼のごあいさつを申し上げます。 本日は、御多忙中にもかかわりませず、わざわざ本委員会に御出席いただき、きわめて有意義な御意見をお述べいただきましたことは、今後の本委員会調査のため資するところきわめて大なるものがあると存じます。本委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。 それでは、本日はこの程度にいたし、次会は公報をもってお知らせいたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時三十五分散会