P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
24回国会衆議院1956/05/16

科学技術振興対策特別委員会 第22号

発言数
36
登壇者
8
会派数
2
開催日
1956/05/16

会議録

有田喜一自由民主党

○有田委員長 これより会議を開きます。  本日は、科学技術振興対策の立場より、生産性向上に関する問題について、参考人より意見を聴取いたしたいと存じます。  本日御出席の参考人は、日本生産性本部副会長中山伊知郎君、日本生産性本部専務理事郷司浩平君、日本生産性本部理事、生産性研究所所長野田信夫君、以上三名であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は、御多忙中にもかかわりませず、また雨天の中、わざわざ本委員会のために御出席下さいましたことを、厚く御礼申し上げます。生産性向上の問題は、現下のわが国にとってきわめて重要な急務と存じますので、参考人におかれましては、それぞれのお立場より、忌憚のない御意見をお述べ願えれば、幸甚に存ずる次第であります。  それでは、順次御意見の御開陳を願いたいと存じますが、中山参考人には特に労働問題についてお話を願い、郷司参考人には生産性向上連動の現況及び将来の見通しなどについて、また野田参考人には科学技術振興の立場より、それぞれ御意見の御開陳をお願いできれば仕合せと存じます。  それでは、まず中山参考人より御意見の御開陳を願いたいと存じますが、中山参考人にはお急ぎの御用がおありとのことでありますので、中山参考人の御意見御開陳後、質疑があればこれを許したいと存じますから、さよう御了承願います。では、中山参考人より御意見の御開陳を願います。中山参考人。

中山伊知郎日本生産性本部副会長

○中山参考人 中山でございます。ただいま委員長から御指定のありました私の主題は、生産性向上連動と労働組合との関係ということでございますが、それに入ります前に、一応今日日本で行われております生産性本部を中心とする連動が、どういう意味を持っているかということを簡単に申し上げたいと思います。  生産性向上の問題は、申し上げるまでもなく、運動という特殊の形をとるととらないとにかかわらず、経済生活があって以来存在する問題でございまして、特に今日の段階にあって初めて出てきた種類の問題ではございません。ただ生産性という言葉は比較的新しい言葉でございまして、大体経済学の方では、一八七〇年代からやや正確に労働の生産性ということが言われておるようになりました。これにはいろんな種類がございますが、非常に大ざっぱに、生産力とかあるいは富の増進とかいうような言葉で言われておりましたことを、生産の要素としての労働ということに結びつけて考えるようになったのは、比較的新しいということでございます。ただ、こういう運動が特に戦後、今日のような形で展開されますには、若干の理由がございますので、その点をつけ加えて申し上げたいと存じます。  生産性本部という形、もっと具体的に申しますと、アメリカとの協力の形で世界の自由資本主義国の生産性向上連動が始まりましたのは、これは、さかのぼりますと、一九四九年、大体マーシャル・プランの一環といたしまして、御承知のヨーロッパ復興委員会というのができ上りましたときから、この運動が始まったのでございます。その後、この委員会の活動の結果、ヨーロッパの十六カ国に、生産性本部あるいはそれに類似する委員会ないし機関ができまして、アメリカとの協力のもとに、ヨーロッパの生産力向上運動が開始せられました。この協力の形は、これも御承知のように、アメリカがその進んだ生産性を世界に公開する、そして、ヨーロッパの国々は、その公開されたものを見学することによって、自分の国のそれぞれの産業の生産性を進めていくという相互協定でございます。アメリカは、この場合、自国内、すなわちアメリカにおける見学費を負担するのでございまして、そのほかの費用は、全部当該の国々の予算なりあるいは民間の資金なりで調達する、このような形態でございます。  この十六カ国の運動は、その後五年間くらいの間に相当の成果を上げまして、大ざっぱに申しますと、見学の行程が大体一巡したとういような形になっております。チームの派遣数とかそれに参加した人員の数は、この書類に統計がございますから、ごらんを願いたいと思います。フランスとイギリスが一番たくさんチームを派遣しておりまして、三百ないし四百くらいのチームを出し、それに参加せる人員は数千名に上っております。このような見学団の持っております意味は、たとえて申しますと、明治以来わが国でとっておりました文部省の留学生制度というようなこと、これが産業界に応用されたと考えたら、ちょうど当るのではないかと存じます。見学団は、自分の知識経験をもってアメリカの進んだ生産性の実際を見て、これをそれぞれの産業なりあるいは仕事なりに応用するという仕事を進めてきたわけでございます。  この仕事が一巡いたしまして、昨年の二月、今度は日本にこれが適用されることになり、日米協定ができまして、生産性本部が出発いたしました。ヨーロッパの十六の国並びに日本を加えまして、今十七の生産性本部的な連動が行われておるのでございます。本部的という言葉を使いましたのは、必ずしも生産性本部の組織が各国共通ではないということなのでございまして、たとえば、フランスの場合には、政府が直接生産性本部というものを持ちまして、その下にたくさんの協力機関を持つ、こういう構成をしております。それからイギリスの場合には、全く民間の機関で、経営者と労働組合とそれから第三者との合同の委員会というのが動いております。日本の形は、これは純民間の機関として出発いたしまして、政府の補助金、それから民間の寄付金、それをもって現在運営されているというのが実情でございます。  組織の問題については私は詳しくは申しませんが、世界のそのような生産性向上運動が、期せずしてこのような形で起りました理由は、もちろん戦後の経済回復のために、たまたま戦争中及び戦前戦後にかけまして、生産性の非常に上るような地位にあったアメリカをできるだけ見学し、かつこれを利用しようという考え方のもとに起った運動というふうに理解できると思います。これが今日のような組織的な連動になったのは、単に生産性の問題だけでなしに、そのほかのいろんな連動も、だんだん組織をもって動いていくということになった一つの表現であるかと存じます。かつては個人々々が、あるいは一つ一つの会社が、それぞれ自分の立場で他の国の優秀な技術や生産方法を取り入れておった仕事が、今日ではチームを組み上げ、それから団体的にこれを行うというふうに展開しているというのが実態であろうと存じます。  さて、その生産性向上運動に対して、最も重大な利害関係を持っておりますのは、申すまでもなく、労働者あるいは従業員でございます。従いまして、労働組合は、この運動に対して、その出発から今日に至るまで、あらゆる形で非常に強い興味と関心とを寄せております。申すまでもなく、生産性向上のためには、労使の協力が必要なのでございまして、その意味において、生産性向上運動の利益を受けるものは、一応まず経営者であるというふうに考えられますけれども、今日の生産性向上運動の目的は、むしろ国民経済という広い観点からこれを進めていくという点にございますので、その点に関連して、労使の関係、特に労働者が組合運動の中においてこの問題をかつても取り上げ、現在も取り上げておるのでございます。さしあたり、日本ではどういう形をとっているかと申しますと、この運動がスタートする場合に、三つの原則を本部の方できめ、かつ、その了解のもとに、労働組合の方にも呼びかけております。三つの原則と申しますのは、一つは、生産性向上は、結局においては雇用の増大になるけれども、しかし過渡的には失業を生じ、困難な問題に、ぶつかる危険がある。従って、そのような問題に対しては、国民的、経済的な観点に立って、できるだけこれに善処していかなければならない。第二の原則は、向上運動のためには、労使の協力が狩に必要なので、この問題についての協議の場をお互いに持つように努力しよう。第三は、向上の結果は、いずれ利潤の増大とかあるいは生産費の減少とかいう形で現われるのでございますが、その結果は、経営者、労働者、及び消費者に公正に分配されなければならない。この三つの原則をきめまして、これを生産性本部自体の守るべき原則とし、同時に、この原則をもって、労働組合にも呼びかけたわけでございます。しかし不幸にして、この三つの原則があるにもかかわりませず、総評の方からは即時に拒絶の声明が出観して、自分たちはこの連動には協力できない。なぜなれば、それは、第二に、アメリカの経済支配というものを助長することになるので、大げさに申しますと、日本の経済をアメリカの従属的な地位に置く危険がある。そのような再軍備促進計画の速成のために役立つような方策には、われわれは協力することができない。これに附帯いたしましては、日本のような失業者の多いところでは、このような生産性向上運動が行われて、方々に失業者が出てき、これが増加することになると、それは結局労働階級全体の負担になるので、われわれの利益ではない。こういう理由で、総評はこの運動に参加することを拒否いたしました。けれども、他の労働組合、特に全労系におきましては、この連動に対して、もっと近い立場、理解のある立場をとっておりまして、たびたびのいろいろな交渉の結果、ついに今日では全労傘下の総同盟及び海員組合というのが正式に生産性本部に理事として参加し、運動に協力しておられます。なお、そのほかに、中立組合の中にこの運動に参加しているものもございますし、また具体的なチームに参加して、アメリカを見学している組合の代表者もございます。これが今日の日本の生産性本部を中心とする向上運動における現実の労働組合の態度でございます。  そこで、そういう点の推移やまた詳しい点はあとから郷司さんや他の参考人によって補足されると思いますので、私は、この中に盛られておる基本的な問題について、若干の見解を申し上げたいと存じます。  第一、この運動はアメリカのいわば経済支配を助長する運動だという見解。これは必ずしも日本の総評だけの見解ではないのでございまして、ちょうどフランスに生産性本部ができましたときに、御承知のように、フランスの労働組合の中の最も有力な一つのCGT、フランスの労働総同盟でございますが、その総同盟がほとんど同じような声明を出しております。それは、自分たちは生産性向上ということ自体には決して反対しない。ただ、この運動がこの形で進められることは、アメリカとの政治的な因縁を濃くすることになるので、このような形においてアメリカとの関係が緊密になることをわれわれは好まない。こういう形の反対声明をCGTが出しております。これはちょうど私偶然そのときヨーロッパにおりまして、一九五三年でございますが、そのときにフランスのその総同盟の連中とフランスの生産性本部との間に若干の論争がございまして、それを承知しておりますが、その問題についての見解は、全く日本の総評の立場と同じものと考えていいと存じます。この問題は、政治的な問題でございますので、われわれとしては、これ以上ここで突っ込んで何かの解決を申し上げる段階ではないと存じますが、ただフランスの実際を見ますと、CGTはなるほどそういう見解をとって反対の立場をとっておりましたが、FOその他の労働組合は、この中には共産系もあるのでございますけれども、大体においてこの運動に協力的でございまして、委員会に委員も出し、また実際の討論にも参加し、役員にも就任しているという実態でございます。その全体がどうなっているかということは、具体的な問題でございますので、私も十分には承知しませんが、それだけのことを申し上げることができると存じます。  第二の重要な問題は、生産性の向上の結果、失業が出ることをどうするか、こういう問題でございます。これに対しては、一般的に、生産性の向上が非常に強く失業問題を起すような印象が与えられておりますし、また目の前に起りますいろんな事態は、それを証明するように見えます。たとえば、今度新鋭火力というようなものが建設されておりますが、あの新鋭火力によりますと、非常に機械化、自動化ということが進められまして、その結果、大体十台に四百人の従業員を従来必要としたのが、十万キロワットの発電所の従業共が、今の計画では、大体六十人で済むのではないかというふうにいわれております。その他、御承知の電信電話における自動化の推進の結果、そこに出て参ります余剰人員の問題、失業問題もすでに日程に上っております。そのような意味で、生産性の向上と失業との問題には、目の前に非常にむずかしい問題があるのでございます。ただ、言えますことは、長い期間を取って見ますと、世界のいかなる国の歴史においても、生産性の向上があって、そして雇用者が減ったという実績はございません。長い期間を取って申しますと、結局雇用の増大というのは、生産性の増大、仕事の増大、生産自体の増大ということによってまかなわれておるのでございまして、その反対の事例というのはほとんどございません。もちろん経済は生きものでございますから、景気変動のある場合に、そういう特殊の現象が起ることはございますけれども、しかし全体として見ますと、そのような反対論を作るだけの事実は、今までのところはほとんどないと申し上げて差しつかえないと存じます。そうなりますと、生産性の向上の結果、結局においては、雇用も同時に歩調をそろえて増大すると考えなければならないのでございますが、ただ、日本の場合には、御承知のように、完全失業者のほかに潜在的失業者が相当あるといわれておりますし、またこれは事実でございます。そのような場合に、非常に生産性が向上されて、その結果、機械化、自動化、オートメーションというものが進んで参りますと、そこと少くとも今までの場合と違った緊急な失業問題が起り、その対策を必要とする事態が起こることが推定されるのであります。しかし、この点は、そういうことがあるから生産性向上運動をやめておるとか、テンポをゆるめるということはできませんので、やはり生産性向上運動を進めるとともに、その問題を解決していく努力をお互いにやる以外には、方法がないのではないかと存じます。  生産性向上運動につきましては、これは自由資本主義国の運動だけと考えられておりますけれども、決してそうではないのでございまして、たとえば、今度の共産党のモスクワにおける大会、あそこで発表されまして第六次五カ年計画におきましても、生産性の向上が一つの大きな目標にうたわれておりまして、この五カ年の間に——新聞の報道でありますから正確ではないかもしれませんが、五〇%の生産性向上をやるんだというようなことが発表されております。これは大へんな事実だと思うのでございますが、いずれにいたしましても、資本主義国とかあるいは共産主義国とか、その体制の区別を越えて、生産性の向上に今日人々の目が向けられている。こういう場合に、失業の問題は非常に重要な問題であり、また失業がなくて、生産性向上運動をやっておりますイギリスや西ドイツの場合と、この問題に直面しながらこの運動が行われていかなければならないフランスやイタリアやまた日本の場合とは、おのずから事情が違うと存じます。しかし、先ほども申しましたように、この運動があるなしにかかわらず、生産性の向上は焦眉の問題であり、日々行われていることなのでありますから、われわれはむしろその事実を率直に認めて、その中に起ってくる問題を、その上で、解決するように努力しなければならないんじゃないかと思うのでございます。  ただいま申し上げましたことは、非常に一般的なことでございまして、なおこの二つの点についても、具体的には研究していかなければならないことが多いと存じます。私どもの今考えております答えは、ただいま申したところに尽きると存じます。  第三に、今度はその成果の分配という問題でございます。この問題も、労働組合は非常に関心を持ち、また生産性向上運動の将来に対しては、国民のすべてが関心を持たなければならない問題だと思うのでございます。これにつきましては、事実の面から申しますと、賃金や労働条件の改善ということは、大体化産性向上の結果というふうに統計的には証明することが、できます。ここに一つ例をあげたいと思いますが、それはアメリカのUSスチールの例なのでございます。一九一〇年から一九五四年までの四十四年間の統計が出ております。それによりますと、四十四年の間に、一週間の労働時間がちょうど半分くらいに減っております。一九一〇年には六十八時間強ですから、一日に十一時間以上働いていることになります。もちろんこれは時間外も含めての実労働時間でございますが、十一時間働いている。ところが一九五四年には三十五・六時間で、六時間でございます。これは大ざっぱに申しまして、労働時間が一週間を通じて半分になったということでございましょう。  それから、賃金の方はどうなっているかと申しますと、一九一〇年のUSスチールにおける一時間当りの賃金は二十二・四セントであります。約二十二セントでございます。それが、一九五四年には、一時間当りの賃金が二ドル四十八セントでございます。これは数字の上で申しますと、ちょうど十一倍になっております。もちろん、十一倍といいましても、物価の騰貴がございますから、実質的には十一倍にはなっておりません。物価の騰貴はこの四十四年の間におよそ二倍強と考えられますので、二倍半といたしますと、実質的な賃率の増加は、大体四倍強と考えていいと存じます。労働時間が半分になり、賃率において実質的に四倍の向上をもたらしたことは何によるかといいますと、USスチールにおける四十四年間の労働の生産性が実に三倍以上に増進しているのでございます。この計算は非常にめんどうでございまして、製品が一つでございませんので、生産性の計算も非常に込み入っておりますので、大ざっぱにしか申し上げられないのでありますが、三倍以上になっております。  そこで、これを総括して申しますと、労働条件の改善、特に賃金の改善上昇そのものの大きな原因は、生産性の向上であるということが言えるのであります。日本の場合でも全く同様でございまして、これは日経連の資料でございますが、昭和二十三年から二十九年までの七カ間の労働の生産性の向上は、前年に対する塩加害を七年間平均しますと、二三・六%、それから今度は実質賃金でございますが、この同じ七年間の実質賃金の、対前年増加率というものを七年間平均しますと二一・二%、ですから、ちょうど生産性が向上したと同じくらい実質賃金が上っております。少し実質賃金の上り方の方が少いのでありますが、しかし大体そういう傾向を日本でもとっている。だから結果をずっと見ますと、生産性向上の結果がこういう賃金の増加にもなるのであります。それではもう分配問題とかいう問題をやかましく議論しないで、その分配方式とか何とかいうものに頭を突っ込まないで、ほうっておけば、生産性が向上した結果賃金もよくなり、労働条件もよくなるのではないか、こういう言い方でいいかとも見えるのでございますけれども、実は、今日の問題は、そう簡単には解けません。やはり年産性向上にしても、実質賃金の増加にいたしましても、年々非常に大きな相違があるのであります。たとえば、昭和二十九年には、実質賃金はわずかに〇・七%しか伸びていない。そういうように事態がジグザグに来るのは非常に困りますので、やはりあらかじめいろいろな考慮を加えて、分配問題も考えていくべきではなかろうか。それには、たとえばアメリカで行われておりますブロシード・シェアリングとか、あるいは今度十条製紙で一つの実験例としてやり出しました年間賃金の協定の中に出て参ります利潤分配の制度とか、あるいはどの程度まで実際に行われておるかは知りませんが、アメリカ、ドイツで提唱されておりますラッカー方式とか、いろいろな方式があるのでございますけれども、そういう方式をも考えて、生産性向上の結果ができるだけ目の前で労働者、従業者の利益にもなる。従業員の利益にだけなるのではなくて、同時に消費者の利益になり、国民大衆の利益にならなければならないのであります。これが単に経営者、資本家の利益になるだけではないという実証をするだけの、いわば用意をしていかなければならないのではないか、このように考えるわけでございます。  ただいま申し上げましたのは、現在の労働起動と対照いたしまして、第一にはアメリカとの関係、第二には失業ないし雇用との関係、第三には利潤分配の問題について、いささか私どもの考えておるところを申し上げました。あとは、御質問に応じてお答えを申し上げたいと存じます。

有田喜一自由民主党

○有田委員長 以上をもって、中山参考人よりの御意見の御開陳は終了いたしました。  これより、質疑に入ります。先ほど申し上げましたように、中山参考人にはお急ぎの御用がおありですので、質疑はきわめて簡単にお願いいたしたいと思います。質疑の通告がありますから、これを許します。前田正男君。

前田正男自由民主党

○前田(正)委員 この問題は、非常に大きな問題でありまして、これを究明していきますのには、大へんな時間がかかるわけでありますから、簡単に質問をさせていただきたいと思うのであります。  今お話の労働問題に関連した問題について話を進めて参りますと、要するに、生産性の向上によりまして、雇用問題は非常に解決の面が出てくるように思いますけれども、これを考えますときには、いわゆる労働の条件と、あるいは利益分配とかいうような問題の根本に何があるかというと、科学的な管理というものがあるのではないかと私は考えるのであります。そこで、実は科学技術特別委員会においでを願ってお聞きしたいと思ったのであります。この生産性本部の仕事の中で、そういう組織的な、あるいは労働の分配とか、いろいろ雇用条件等の問題も進めておられることを、私も非常に多としておるのでありますけれども、科学的な管理というものがその基礎にないと、たとえば、労働の標準時間でありますとか、あるいはまた作業条件であるとか、工程の管理条件であるとか、こういったようなものがそろってこないと、具体的な賃金協定とか、あるいは利益分配とかの問題は進めにくいと思うのであります。そこで、こういうような日本の労働問題の解決に、科学的な管理、端的に言えば、作業分析とか標準時間の算定であるとか、こういったものをもっと強く打ち出して、それを推進していかなければならぬと思うのであります。この点について、中山参考人はどういうようにお考えになっておるか、一つ伺いたいのでありす。

中山伊知郎日本生産性本部副会長

○中山参考人 ただいま御質問のありましたように、具体的に生産性向上の効果を分配するという問題になりますと、今おっしゃいましたタイム・スタディその他技術的な管理の方式を十分に検討していかなければなりません。従いまして、生産性本部のプログラムの中には、そのような技術的な面に関する研究を盛り上げております。これはまだ緒についたばかりでございますので、十分な成果をお示しする段階には至っておりませんが、ここに研究所長がおられますので、その点については、あとからあるいはお答えがあると存じます。  ただ、私一言つけ加えて申し上げたいことは、今度の世界的に行われております生産性向上運動の一つの目標は、かつてのたとえばテーラー、フォードというような名前で知られております合理化運動とは違いまして、もう少し広く人間関係というものを取り上げていくという点に重点がございます。従いまして、能率の増進ということを、たとえば企業という狭い立場から考えるのではございませんで、これを人間関係として取り上げていくという点に重点がございます。アメリカの言葉で申しますと、インダストリアル・リレーションズ、産業関係から、エヒーマン・リレーションズ、人間関係へというような標語でそれを表わしておりますが、非常に広い形でその問題を取り上げようとしておる。この点に重点がございますので、ただいまおっしゃいました科学技術的管理方式という問題も、そのような意味で、従来まで考えられておりましたものよりも、非常に広い内容が盛られることになるだろうと存じます。こういう点については、おそらく生産性本部だけの狭い活動では十分ではございませんので、大きな国民運動全体としての協力を得なければ、進めることができないのではないかと思います。一言つけ加えて、御説明を申し上げます。

前田正男自由民主党

○前田(正)委員 まことにその通りでございまして、これからの生産性向上というものは、人間的な関係を伸ばさなければならぬとわれわれも思っておるのであります。ただ、その基礎になりますのは、合理主義的なものでないことには、話し合いがつきかねると思いますので、そこに科学的な基礎が必要であると思うのであります。  そこで、さらに話を次の観点に移しまして、要するに、こういう人間的な問題に話を進めていくということになりますれば、これは何といたしましても、先ほど例をあげられました通り、今後、科学技術的なものが向上して参ります場合に、失業問題ということは、話になりません。機械というものは人間が使うものでございまして、人間が機械に駆使されておるということであっては話にならない。これでは非合理的な社会であるとわれわれは思うのであります。そういうことになりますと、当然、科学技術の向上に伴いまして、労働時間というものをどうしても短縮しなければならぬと思うのでございます。それは、社会組織の合理化という問題が非常に大きな問題になってきまして、単に一つの会社がオートメーションをしたから、それではその会社の時間を短縮するというわけにはちょっといきかねる。個々の会社も競争しなければならぬ、あるいは日本全体のあちらこちらに失業問題が出てくるというようなことになりますけれども、これを広く社会全体から見ましたならば、科学技術が増進して、産業がふえてくるならば、その吸収する部門もふえてくるわけです。特に、御承知の通り、最近のアメリカ等は、高能率化に伴いまして、当然労働時間が短縮されて、土曜日も休んでおりますし、夏は有給休暇をもらっておるようなことで、従いまして、当然消費産業というものがふえて参ります。現在のアメリカの産業としては、この消費産業が非常に当っておるといわれております。日本においても、最近、御承知の通り、家庭用の電気関係というものが、今産業としても大きく伸びてきたというような状況でございます。こういうような関連状態から見まして、この労働時間全体を短縮していく。それは科学技術と生産性の向上に伴ってやっていくということになると思うのです。そういうものを解決していくためには、単に生産性本部だけのお仕事ではないように思うのでありまして、それを生産性本部の方から推進をしなければならぬ。社会的にあるいはまた政治的に、これを推進しなければならぬと思うんです。それには、中山先生はその方面の担当の詳しい方でございますけれども、どういうふうに推進していけば、政治的にあるいは社会的に大きくその問題が取り上げられていくか。オートメイションという言葉がありますけれども、オートメイションをやって、労働時間が短縮されないなら、かえって害を及ぼすようなことになって、オートメイションというものも取り入れられにくいんじゃないかと思います。同時に、そういう問題を提起して、これを政治的に、社会的に大きくしていかなければならぬと思うんですが、これについては、どういうふうな御意見を持っておられますか、一つ御説明願いたいと思います。

中山伊知郎日本生産性本部副会長

○中山参考人 お答え申し上げます。労働時間短縮という問題は、先ほどの例に関連して申しますと、私は、客観的には、生産性向上の結果であると存じます。ただそういう結果を、賃金分配の場合にも申しましたように、待っていることはできませんので、そういう結果を利用して、またそれを促進するようにわれわれは動いていかなければならないんじゃないか。私、率直に申しますが、世界の傾向といたしまして、労働時間はどんどん短縮される傾向にありますし、日本といえども、労働時間は今後短縮されるべきだ、こう私は確信いたしております。しかし、ただ、生産力が上らないままに労働時間を短縮するということは、全く意味がございません。生産力が上って、生活水準がある程度まで伸びませんと、労働時間短縮ということは意味を持たアメリカの例で、従来の労働時間の半分になったということを申し上げましたが、しかし日本の場合に、たとえば一日一時間とかあるいは二時間という時間を短縮したといたしましても、実は会社とか工場とか公けのそういう職場にいる方が、家庭よりもいろんな設備がよろしいので、たとえば冬ならば  ヒーターがついているとか、あるいは食堂の設備もよろしいというような状態では、このレイジュア——閑暇というものは、ほとんど意味を持たないのであります。その意味から申しましても、全体の生活水準が向上することと、労働時間の短縮ということが、非常に密接な関係を持たなければならない。  それでは、そういう生活水準の向上というのは、何よるかどれはもう申し上げるまでもなく、生産力の向上ということがなければ、全体の国民所得は増加しないのでありますから、一人当りの分け前も増加しない。従って生活水準は向上しない。ですから、全体通じて申しますと、はなはだ客観的な言い方に過ぎるかもしれませんが、労働時間短縮という問題は、生産力向上という問題とうらはらになっている。東洋の人々は、西洋の人々よりも長い時間、むしろ熱心に一生懸命に働いているにかかわらず、貧乏だということは、逆に申しますと、貧乏だからそうなるということなんでございまして、この倫理を裏返しにするわけには参りません。ただそれを促進するにはどうしたらいいかということを、どう考えているかと問われますならば、私は今日の使用者が、——政府をも含めて、一切の労働に対する考え方を大きく展開されまして、賃金の増加やあるいは労働条件の改善というのは、経営者としての経営能力に対する刺激であるというふうに受け取っていただくようになるのが一番いいんじゃないか。たとえば労働時間を短縮します。これは他の競争事業に対しては困った状態なんですけれども、その経営者は、その状態に耐えていく力を自分で一つ養って伸ばしていただく、こういう考え方に立っていただきますならば、私は単に結果として現われる効果以外に、もう少し労働条件をよくし、賃金をよくし、そして企業自体もよくなる刺激が出てくるのではなかろうか。これは戦前の経営者に対する言葉でありますから、今日そのままであるとは申しませんけれども、長い間、日本の経営者は、安い賃金という土台の上で、いささか安易な競争条件を持ち過ぎていたのではなかろうか。決して経営者だけが悪いと申し上げるわけではありませんけれども、そういう客観的情勢にあったんじゃないか、こう思われます。それを思い切ってこの辺で転換して、そうして労働条件をよくする、賃金も上げる、そのかわりそれを刺激として、経営能事は経営者の責任でうんと伸ばしていくというような覚悟でやっていただきますならば、日本における労働時間短縮の問題も到来する、時間が切り縮められるのではなかろうか。私は世界の大勢というのは、人間関係としては、いわば必然の道を歩んでいるように思いますので、日本もそれに対しての用意が必要ではなかろうか。これは少しお答えをはずれたかもしれませんが、そのようなお答えを申し上げたいと存じます。

前田正男自由民主党

○前田(正)委員 それでは、これで終りたいと思いますが、今のお話からさらに敷衍いたしまして、また私の先ほどの質問に敷衍してのお話でありますけれども、やはりこの労働時間の問題ということは、日本のいわゆる完全雇用といいますか、職場をよけい作るということ、社会保障を含めましたところの社会組織の合理化という全体の問題に関連してくると思います。生産性本部の運動をおやりになるについては、当然日本の社会組織、あるいは社会保障を含めた社会組織とか、あるいはこういう方面でもっと労務者が余ってくるならば、もう少し公共事業であるとか、あるいは開発事業であるとか、この方面に向ける。われわれ科学技術の方から見ておりますと、仕事は非常にたくさんあるように思います。仕事がないように言っておりますが、そういうことは全然ありません。科学技術的に、開発する仕事はたくさんあると思います。こういうような方面の仕事を作るという問題、こういう方面と関連があると思いますので、生産性本部がそういう方面にもう少し働きかけていかれるような考えでおられるのかどうかということを、一つお聞かせ願いたい。

中山伊知郎日本生産性本部副会長

○中山参考人 お答えを申し上げます。その問題は、他の言葉で申しますと、産業構造というような問題と生産性向上運動を結びつけるべきではないかという御質問と拝承いたします。その点につきましては、ただいま生産性本部の方では、これは委託的な調査でございますけれども、生産性本部の理事の一人が責任を持ちまして、日本の戦後の産業構造の研究というのを一つの班として推進しております。このようなところから生まれて参りました新興産業のあり方、あるいは従来の産業の変貌というようなものと、ただいまわれわれの従事しております生産性本部の運動とを、どのように結びつけるかという結論が生まれてくることを私どもも期待しております。その他、産業構造、あるいは具体的な問題といたしまして、たとえば先ほどの合理化に伴う余剰人員をどうするか、こういう問題も部分的な研究問題としては課題に上っておりますし、それぞれの関係者が集まります場合には、それを議題にして討論も行なっております。ただいまのような方向は非常に重要な問題と思いますので、生産性本部におきましても、今後取り上げていくことを私どもはお約束してよろしいかと存じます。

有田喜一自由民主党

○有田委員長 岡良一君。

岡良一日本社会党

○岡委員 中山先生は非常にお急ぎなので、ただ二言だけお尋ねいたしたいと思います。先生のおっしゃった、人間の経済活動は、究極には、生産性の向上を追い求めるものである。その過程においては、雇用の問題は、常に雇用の場が増大するという形において発展をしてきている。同時にまた、この生産性の向上が国民経済全体の発展に寄与すべきもの、という形で進めらるべきである。これはおよそ生産性向上についての、いわば一般的な原則として、私どもも承認するにやぶさかではないのであります。しかしこのような運動が、日本的な現実の中で、いかに生かされるかという具体的な点については、明確御見解を承わることができなかった感じがいたします。しかし、先生もお急ぎでありますので、この際、その点についてはまた別の機会にお伺いいたしたいと思いますが、御存じの通り、たとえば日本の産業構造の実態を見ましても、中小企業が非常に過多であるとか 御指摘のように 潜在労働力が非常に過多であるとかいうような日本的な現実から考えましても、生産性向上の運動が、先生のうたわれたような、いわば高い理想のもとに、ヒューマン・リレーションを産業の場に築いていくよりも、むしろ、より産業の合理化という、企業家本位なものになろうとする条件が非常に多いのじゃなかろうかと思います。またこれは、他の目との関連におきましても、ヨーロッパにおけるマーシャル・プランの受け入れと、日本におけるアメリカからのもろもろの援助の受け入れとは、量的ではなくて、質的に私は異なっていると思う。しかも、この運動がFOAによって非常に強く示唆されておるというような事実も、やはりアメリカとの関係において考えなければならない問題があろうかと思います。これらの問題は一応差しおいて、実は今月七日に、こういう新聞の記事が出ております。私は非常に教訓的だと思いますので、先生の率直な御批判を承わりたいと思います。それは、先生もすでに御承知だと思いまするが、英国のスタンダード自動車会社で、オートメーションを導入することによって、工場を再整備するために一時の閉鎖を発表した。とりあえず千九百名の解雇を申し渡した。この再整備というのは、四百万ポンドに上る新たな設備を整えて云々ということで、結局この計画が進められると、三千五百名の解雇が必至であるということから、組合側はストに入っております。このオートメーション化に対するストは、アメリカにおいてもすでに行われたようでありまするし、英国では、もはやかなり一般的な傾向とさえもなって、政府の善処を強く組合品側は要求していることも、先生は御存じのことと存じます。私どもが親しく英国の実情を見ましても、TUCの長い歴史と良識というものは、私は高く評価していいと思います。一九四〇年代における労働党の政権のもとで、基幹産業がおおむね国営の形で公共管理になっておることも、先生の御存じの通りです。イングランド銀行も、ああいう形で大きく国の規制を受けております。このように、労働の側においても経営の側においても、非常に高い水準、長い伝統の上に築かれておるにもかかわらず、いわゆる生産性向上の大きな手段としてのオートメーションによる能率化と精密化というものが期されようとする。それに対して英国の労働組合の、至って健全な良識を持っているというTUCがこれに反対をし、実力行使をもってこれに報いておるという事実は、私ども、日本的なもろもろの現実を考えまする場合に、非常に教訓的なものを私は含んでおると考えるわけであります。この点について先生の率直な御所見を承わりたいと思います。

中山伊知郎日本生産性本部副会長

○中山参考人 お答えを申し上げます。イギリスの例をお引きになりましたが、今おっしゃいましたように、アメリカにもそういう例がございますし、またおそらく日本にもそれに近い例があると存じます。通信機の例を先ほど申し上げましたが、あれはオートメーションとまではいきませんが、メカニゼーションの非常に進んだ段階にあるものと存じます。それにつきましても、現在の電電公社あたりで、やはり相当の過剰人員を生ずるという問題が起り、これはすでに組合の問題になっていることは御承知の通りであります。従いまして、そういう個々の問題が、日本の場合でも避けられるとは私は思っておりません。必ずそういう問題が起ると思います。ただ申し上げたいことは、その場合に、今、最も健全な発達をした労働組合といわれておりますTUCは、イギリスにおきまして、生産性向上運動のリーディング・ポジションをとっている。つまり、先ほど組織として簡単に御説明申し上げましたように、イギリスの生産性向上運動は、労、使、中立三者の構成でございますが、その委員長になっているのは、TUCの委員長であったのでございます。そういう個々の問題がありますにもかかわらず、むしろ生産性向上運動が、イギリスにいかに重要であるかということを労働組合自体が認識したという点を、むしろ重要視しなければならないのではなかろうか。これは反対論を申し上げているのではなくて、私は事実をなるべく客観的に申し上げているつもりでございます。そういう具体的な矛盾、トラブルを避けることは、私はどの国でもできないのではないかと思います。たとえば、アメリカのAFLという、どちらかと申しますと穏健的なあの組合さえ、今までテーラー・システムの施行に対しては、相当の抵抗をいたしております。また生産性向上運動のメカニゼーション。オートメーションに対しては、たびたび声明を出したり、それに基く若干のストライキも起っております。しかし、それにもかかわらず、生産性向上運動がいわば組織的に展開されなければならない問題だという認識は、イギリスのTUCにしても、アメリカのAFLにしても、やはり持っていることではなかろうか。そういう問題について、一方的に、すでに組合がそれに賛意を表しているから、そういうストライキをすることは間違いだというふうに断ずべきではなくて、それぞれの理由がありますから、そういう理由を十分に取り入れて、具体的な解決をはかる以外に方法はないのではなかろうか。かりにそういう問題があるから、たとえばイギリスの自動車工場の合理化をストップするかと申しますと、それはできない相談だと存じます。やはり、その場合に起ってくる問題は問題として取り上げて、解決していく以外には方法はないのではなかろうか。そこで前段に仰せられました一般論としてはわかるが、日本の実情ではどうだというお言葉に対しましては、私は全く同感なんでございます。それに対してどう思っているかと問われますれば、私の持っております消極的ではございますけれども、唯一のお答えは、こうなんでございます。それは、生産性向上運動というのは、こういう組織的な形でやりましてもやりませんでも、自動車工場は自動車工場、化繊の工場は化繊の工場と毎日々々この生産性向上運動の努力を続けられている。これを個別的な形で続けさせていくのがいいか、それとも、組織として、こういう運動を盛り上げて、労働組合の意見も十分に取り入れ、あるいは国民の意見もそこに取り入れ、経営者全体としての意見をも取り入れ、第三者の意見も取り入れた一つの運動として、組織化してその問題を取り上げた方がいいのかと申しますと、私は後者の方がいいのではないか、これだけのことなんでございます。決して、こういう運動が、あらゆる困難を迂回して進めるものとは思っておりませんけれども、逆に申しますと、こういう運動があろうとなかろうと、たとえば、イギリスの合理化に伴うストライキの問題はおそらく起るのではなかろうかと思います。それを解決する手段として、こういう組織的な運動があった方がいいかどうかと申しますと、私はないよりはあった方がいろいろな意見が公正にはかれ、またそれを総合することができていいのではないか、こう思っているだけで、これが、消極的ではございますけれども、こういう運動を日本にもやる理由があると考えております唯一の理由でございます。積極的な何かいい対策があるといいのでございますけれども、そういう点は、正直に申し上げまして、むずかしいと申し上げる以外にお答えはございません。

有田喜一自由民主党

○有田委員長 原茂君。

原茂日本社会党

○原(茂)委員 何か非常に時間がないそうでありまして、まことに恐縮でございますが、本部の機構の問題に関して、少しくお伺いしたいと思います。  私も簡潔にお伺いしたいと存じますので、先生からも、ごく簡潔にお答えをいただいてけっこうだと思います。  最初にお伺いいたしたいと思いますのは、途中からお聞きいたしたのでありますが、生産性向上運動による雇用の減少は、究極的にはない、むしろ雇用の増大というものが考えられるという御説明でありました。そこで、こういったことで、究極には、そのある種の利潤等が上り、生産性向上というものは期待できる、それの上った成果の分配に関しての考え方はこうだという先生の御説明もいただいたわけであります。  そこで、前段に入りまして、総評はまだ理事を送っていない、あるいは新産別からもまだ理事等が参加していないと私は記憶しておりますが、公労系の海員組合、総同盟等は、理事がすでに参加をしておるということでありました。総評系にしても、新産別にいたしましても、いまだにこの運動に謙虚な態度で参加できないというところに、いろいろな、先生からも御説明があった理由もありますし、その他の理由も多分あると思うのです。私なりに考えまして、やはり今日のこの運動、事務局の機構そのものについて、もう少し民主的といいますか、労組側が考えても、これなら形の上で、あるいは機構そのものに信頼性が置けるといったようなことを、まず実際問題として作り上げていかないと、この点にも、ある種の障害があるのではないかというように考えられるわけであります。そこで、昨年のいつだったかわかりませんが、この運動をやろうということを決定されました際に、政府との間の取りきめ事項で、大きくいいますと、大体三つのことをおきめになったと聞いております。第一には、民間の有識者をもってこれに充てる。第二には、少数精鋭主義でいこう。第三には、高能率、高賃金でいくのだといったことを中心にやろうじゃないか、こういう取りきめがあったように記憶いたしております。まず第一の、民間の有識者をもってこれに充てる、こういった考え方は、確かに正しいと思うのですが、今日、実際の構成されておられます役員というものを拝見いたしますと、経営者の側は、二十名以上の方が参加されておる。これは経営者側の人が多い。なおあとは労働組合からは今三名ぐらいが参加している。また学者先生方が三名といった構成になっておると思うのです。こういった機構そのものを見ても、何か経営者の側が非常に多く参加し過ぎている。こういったことも、やはり組合から見ると、もう少し何とかならないかという考えの起きる第一点だと思うのです。それから第二点には、今日の事務局長の伊藤さん、あるいはその他部長、課長さん方を数多く任命されておりますが、その方々の出身を聞いてみますと、通産省関係が非常に多い。私どものいつも使っている言葉でいうと、官僚の古手が主要な部署を大部分占めて、この運営をやっているというようにとれることも、やはり第二の、労組から考えた非常に大きな精神的な障害になるのではないか、こう思うのであります。第三点には、通産省が直接の監督官庁ということになっていますが、実際に所管される生産性上向本部というものの内容を見ますと、労働省にももちろん関係はあります。通産省はもとよりありますし、厚生省にも関連を生じてくるというようなことから考えますと、経済企画庁か総理府あたりがこの管理に当るといったことの方が、やはり労働者の側から見て、何かもっとすっきりした、非常に大きな包容力を持った生産性本部だという感じを与えるのではないか。こういった三つの点が、労働組合の側からいいますと、多少大きな、口に出さない問題として今日考えられている。これが障害とはいかないまでも、ある種の問題となって、謙虚に参加できないといった何かの理由にはなるのではないかというふうに考えられます。この事務局の機構中、通産省出身の官僚が非常に多いということ、それから経営者が二十一名もおり、あと学者先生が五名、労働者が三名というこの構成にやはり何か無理がある。もう少し考慮の余地があるのではないか。第三には、今申し上げましたように、通産省の監督下にあるということが、何か非常に局限された、いわゆる時の政府の、ああしよう、こうしようという一つの考え方に沿わされて、通産省という政府の出店が、この生産性向上運動を通じて、労働運動というものにある程度ワクをはめていこうとするような、錯覚かもしれませんが、そういう感じを与えるのではないかと思います。この点、副会長の立場で、先生が今後お改めになった方がよろしいとお考えになる率直な御見解をお伺いしたいと思います。

中山伊知郎日本生産性本部副会長

○中山参考人 お答え申し上げます。ちょっとお答えしにくいのでございますが、内部の機構の問題でありますので、あるいは郷司専務理事からあとでお答えがあるかと存じます。私は私の立場で率直に申し上げます。  そういうところに問題のあることを、私は認めます。それで、どうもその点が——もちろんいろいろ事情はあるのでございますけれども、労働組合が参加を渋っている一つの理由になつているということも、おっしゃる通りだと存じます。ただ私の見たところで、三つの問題がどうなっおるかということだけを簡単にお答えいたしますと、第一、理事の中に経営者が非常に多いということは、やはり直接に、この問題に一番興味を持って推進する主体が経営者であったということと、もう一つ、日本の組織は、純民間の組織でスタートした。純民間の組織でスタートしたということになりますと、もちろん政府の補助金もございますけれども、やはりある程度、経営者の方が力を入れなければ動けない。これが理事の中に経営者の多かった、また現在多い理由でございます。  第二に、事務局の中に、局長初め通産省関係の者が多いのではないかということは、私の見方が間違っておるかもしれません、郷司さんからあとで御訂正があるかもしれませんが、これは予算関係だと思います。補助金の出ておるところが、通産省でございます。  それがどうもそういうことになるのではないかと思っております。もちろん、御本人は非常に有能な方だと私は信じております。  第三に、それではいっそのこと、もう役所を離れて、そういう個別の役所に重点を置かないで、総理府とかあるいは内閣とかいうところに直属するような機関にしたらどうかということでございますが、これも私は考え得る問題だと思っております。ただ、今までのところでは、日米協定でできましたので、窓口は外務省、そうして各省は連絡委員会というものを持ちまして、農林省初め約八省でございましたか、それが年四回——実際には六回以上持っておりますが、年四回連絡委員会を持って、事務的な折衝はいたしておるという事情でございます。  そういう三つの事情——私副会長という名前を持っておりますが、そういう構成に全部当っているわけではございませんけれども、見ておりまして、いずれも無理がないんじゃなかろうかと思っております。外から、あるいは客観的な立場から、あるいは労働組合の立場から見まして、そこに問題があるとおっしゃれば、私はそれを率直に認めたいと存じます。これがお答えでございます。

原茂日本社会党

○原(茂)委員 時間がありましたなら、もう少し突っ込んで、先生と少しく見解を異にする点が二点ばかりありますので、お伺いしたいのですが、時間がないそうでございますから、後日のまたの機会に譲らしていただきまして、最後にあと一点だけお伺いしたいと思いますのは、この生産性向上運動そのものは、何人も否定するものではないと私は思うのであります。従って、これを推進されることは、国民の側からいっても望ましいことだと考えております。そこで、これがもう少し幅広く、しかもドリリングされていくためには、やはり生産性向上本部が、労働者側に対する教育指導、経営者の側に対する教育指導というものも、はっきり筋を立てた見通しの上で、積極的におやりになる必要があると思うのです。特に現段階におきましては、総評が来ないならやむを得ないとは言えないと思う。大きな労働組合の団体でありますから、これに対しての積極的な指導教育の方針、それに対して今後どうお考えになっておられるか。それか経営者の側に対しても、労働者に対すると同じように、全然反対とは言いませんが、違ったニュアンスのもとに、強烈な教育指導が現段階においてかえって必要ではないか。特に中小企業に対しては、これに対する強い推進を必要とすると私は考えますので、労働者側に対するものと、経営者側に対するものとの、今後の本部としての教育指導の方針を簡潔にお伺いしたいと思います。

中山伊知郎日本生産性本部副会長

○中山参考人 お答え申し上げます。教育指導というような強い言葉で申しますと、いかにもわれわれが何か引っぱっていく運動をしているようでございますが、たびたび申し上げておりますように、これは国民運動として、皆さんでやっていただくことなのでございまして、そういう言葉の持つ強い意味はないのでございますけれども、組合の理解を求め、経営者の理解をさらに求めるためには、あらゆる努力をしておる状態でございます。従いまして、総評傘下の組合、あるいは総評自体といたしましても、私ども機会のあるごとに意思の疎通という意味での話し合いをしております。その成果といたしましては、最近、九州に九州地方生産性本部というものができたのでございますが、その理事メンバーには、総評傘下の組合が参加しております。これは総評にとりましては、あるいはどうも自分の運動方針を破ったというようなことになるかと思って心配しておったのでございますけれども、この組合は、そういう束縛は受けていないので、自分たちは自分たち独自の見解で、総評には属しているけれども、生産性本部の理事に入るというので役員に入ってきております。これはあとから、あるいは具体的にもっと申し上げてもいいと思いますが、そういう実例もございますし、また総評傘下の組合の中で、個別組合としてチームに参加して、渡米されているところもございます。そういうのは、私ども総評からとったとかなんとかいうことを決して考えておりませんので、そういう形が出ましたことは、総評に対してわわれわれの働きかけておることが、だんだん理解されてきたんじゃないかというふうに思っておりますし、今後もあらゆる機会をつかまえましてそのような了解運動には進んでいきたいと思っております。  経営者の方に対しましても、実は具体的な問題といたしましては、経営協議会をお互いにこの問題について持とうじゃないかということを進めておりますが、またある程度まで推進しておるのでございます。経営協議会の今までの経験が少し苦しいものがございますので、経営者の方で用心しておって、なかなか乗ってこないというような問題がございます。この問題につきましても、そういうことではないのだ、これはぜひ労使協力してやってもらはなければならないのだからというので、教育というとおかしいのですが、啓蒙的な活動を続けております。それもある経営協議会に対する原則的な了解ということで、ようやく最近その成果をまとめておるような状態でございます。おっしゃいましたような方向につきましては、われわれとしては、今後もその努力を続けていかなければなるまい、こう思っております。

原茂日本社会党

○原(茂)委員 それから、いわゆる生産性向上運動の三原則というものをうたっております。第一項の末尾ですが、「失業を防止するよう官民協力して適切な措置を講ずるものとする。」こういった非常に大きなテーマがうたわれておりますが、官民協力するという形と適切な措置というもの、これは非常に重要な問題だと思いますので、どういう構想のもとにこういうことをお考えになっておるか、伺いたい。

中山伊知郎日本生産性本部副会長

○中山参考人 お答えを申し上げます。この原則を出しますときに、ただいま申し上げました政府の各省からでき上っております連絡協議会というのにこの案を出しまして、そうして連絡協議会を通じて、政府はこの原則を了解しているということを正式にとってございます。ただ、これは文句の上でとっても何もなりませんので、御指摘がありましたように、具体的にこれを進めていかなければならないのでございますが、生産性向上本部の運動も、発足後わずかにまだ一年でございまして、ここでこういうことをやったから、失業者がこれだけ出たというようなこともございませんので、まだ具体的な対策というようなところまでは至っておりません。ただわれわれといたしまして、この原則は、政府、本部及び参加した組合間の三者の了解事項でございますので、それを基礎にして、具体的な対策を講じていきたいと思っている、こういう段階でございます。

有田喜一自由民主党

○有田委員長 まだ御質疑はあろうかと思いますけれども、郷司参考人や野田参考人からも御意見を開かなければなりませんし、中山参考人とのお約束の時間もだいぶん超過いたしましたので、中山参考人に対する御質疑はこの程度にいたし、この際中山参考人にお礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわりませず、わざわざ本特別委員会に御出席下さいまして、きわめて有意義な御意見をお述べいただきましたことは、本委員会の今後の調査の上に資するところ、きわめて大なるものがあると存ずる次第であります。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。  それでは、次に、郷司参考人よりお願いいたしたいと思います。郷司参考人。

郷司浩平日本生産性本部専務理事

○郷司参考人 私は生産性本部の専務理事の郡司でございます。本日は、日本生産性本部の現況というテーマになっておりますので、組織、現在の活動、今後の計画のごくあらましを申し上げて、御参考に供したいと思います。  まず、組織の問題でございますが、これは、昨年の三月一日から、財団法人日本生産性本部として発足いたしております。この組織の構成は、いわゆる三者構成で、労使並びに中立ということになっております。それで、先ほど、今日の理事会は、経営者に偏して、中立、特に労働者が少いという御指摘がありましたが、現在では、御承知のように、海員組合、総同盟、この二つしか参加しておりません。従いまして、どうしても振り合いが偏して参ります。しかしワクとしては労使同数ということを目途として、ワクをきめておるわけであります。今後、総評なりその他の組合が参加するに従って、役員もまたこれらの組合から推薦してもらって、同数にいたしたい、こういう構想になっております。それから、なお先ほどもちょっとお話が出ましたが、役所との関係は、最初は九省で、ございましたが、現在では十一の省にまたがっております。その十一の省の次官と、生産性本部の理事会とそれぞれ同数のメンバーを出しまして、そこで連絡会議というものを設けまして、これが役所との連絡の機関でございます。これを現在のような形で持っていくのがいいか、あるいは総理府の所管にするのがいいか、これが問題のところでございますが、私どもとしても研究いたしたいと思います。また皆様お考え願いたいと思います。それから、本年の四月に、中部、関西、九州、四国、この四つの地域に地方本部が設置されました。この地方本部も、それぞれ三者構成の形で発足をいたしております。この中には、先ほど申し上げましたように、総評に加入しております単組が正式に加入しております。それからさらに、理事にはなっておりませんが、総評の地評の議長をしている方もこれに参加しております。なお、地方組織としまして、大体全国八ブロックに分けて、地方組織を作る方針をうたっております。そのうち、東京も含めて五つのブロックについて、すでに地方組織が確立されまして、残ったブロック、これにつきましては、地方事務所を設置いたしまして、そこで地方本部設立の準備並びに本部の事業も代行する、こういう仕組みを現在計画しております。大体、組織の概要は、以上の通りでございます。  本部の予算について一言申し上げますと、第一年目の昨年度の予算は、大体二億七千万円ぐらいでございまして、このうちに、政府の補助金が四千万円、大部分は民間でまかなっておるという予算の編成でございます。諸外国の例を見ますと、政府が全額負担しているところもございます。あるいは半額、三分の二というところもございますが、大体において、政府がこの連動の性質にかんがみまして多く出資して、民間の負担は小さいというのが現況でございます。これは、こういう国民運動をやる上においては、そうなるのが当然でございまして、日本の予算の支出は、今日の財政状況ではございますが、まことに少いというのが、われわれの諸外国の例を調べた結論的な感想でございます。本年度は予算が約四億ということに相なりましたが、この中で、政府の補助金が六千万円、こ  れもきわめて少いので、比率からいうと、昨年度よりもさらに劣っておるというような現状でございます。   一方アメリカ側の援助につきましては、御承知のように、昨年度は百万ドルの支出をいたしております。今日、日本に対する経済援助としては、この生産性本部に対する百万ドルが唯一の支出でございますが、本年度、つまりアメリカ予算でいいますと、五七年度、この七月から始まる予算の年度におきましては、昨年よりもふやしまして、約三倍の予算を現在国会に要求しております。これが国会でどう処理されるかわかりませんけれども、とにかくワシントンの行政府としましては、日本の生産性本部の実績にかんがみまして、昨年度よりも増額するという方針をとっておるようでございます。  それから、事業の点に入りまして、第一に、海外との技術の交換、これは諸外国の例にも顧みまして、どこでも、アメリカとの技術交換ということが、最初に取り上げている最大の運動の眼目でございます。これはまた諸外国の生産性向上運動に非常に大きな刺激になっております。ヨーロッパでも、英国及びフランスでは、この生産性向上の機関は、すでに戦後いち早く設けられたのでございますが、これが国民運動として発展いたしましたのは、イギリスがまず口火を切りまして、アメリカに視察団を派遣した、これがきっかけとなりまして、ヨーロッパの十六カ国の国民運動として、大きな刺激を与えておるわけであります。これは日本においても例外ではないので、やはり見るということが非常に重大でございますので、私ども第一年度の事業といたしましては、海外との技術交流に最大の重点を置いて、運動方針をきめたわけでございます。  昨年の三月一日発足以来今日まで、欧米に十九の視察団を派遣しております。この中には、ヨーロッパに派遣したのもございますが、アメリカがもちろん中心をなしております。延べ人員にしまして大体二百数十名、これらの人たちがアメリカを視察したのでございます。この視察団につきましては、アメリカ側の反響も非常によいのでございまして、向うからもたびたび賛辞をいただいております。日本の出先の大使館などからも、日本の視察団がアメリカにいい影響を与えておるので、これは単に産業視察だけでなしに、日米親善の上からも、大きな足跡を残しておるというような報道がございまして、アメリカ側でも、視察団については、たびたびわれわれの方にも好意ある情報を送ってきております。最近アメリカ側の一つの見方といたしまして、今日、生産性向上運動に非常に努力している国は、アメリカとイギリスと日本、これが最大の努力を払っておる、この三国は、やがて世界のインダストリーをリードすることになるのではあるまいか——これが当っておるかどうか知りませんけれども、そういうことを私どもの耳に伝えて参りました。とにかくそういう反響を呼んでおりますことも、皆様に一つ御注意願いたいと思うのであります。  それから、さらにセミナー、つまり向うから講師を呼びまして、各地に講座を設けて開議をしております。昨年度におきましては四つのセミナーを開きまして、東京、名古屋、大阪、九州、この四カ所に開議いたしました。これも非常に盛況でございまして、得るところも多かったことと思います。なおお向うから、いわゆるコンサルタントを招聘いたしまして日本の視察それから指導、こういうことをやっておりますが。昨年参りましたコンサルタントは、一般的に日本の産業を視察するため、約六カ月日本に滞在いたしまして、つぶさに日本の工場、企業を視察いたしました。その結論はなかなかきびしいものでありまして、たとえば、日本の生産性は、アメリカの企業に比べて二割以下だという報告をしております。これなどは、われわれとして考えなければならぬ問題であろうと思います。  それから、先ほど申しましたように、今まで十九の視察団が向うに参りましたが、それらの人たちが帰ってから、それぞれ講演会、座談会その他の会合を持ちまして、それぞれの立場から、啓蒙運動をやっております。平均一人が大体三十回のそうした会合を持っております。延べにしますと、六、七千回の会合をしておりますが、これが非常に浸透力を持っておるという幾多の事例が見られます。  それから、視察して帰った結果、一体どういうことをやっているかということを最近私ども調査を始めております。つい二日ばかり前に、最初に参りました自動車チーム、このチームのその後のいわゆるフォロー・アップという報告会をいたしましたが、聞いてみますと、いろいろなことをやっております。たとえば、見てきた結果、非常に教えられて、新しい施設を作った、それから設備なり管理方式にこういう改善を加えた、そういう報告がございます。先ほどもちょっとお話が出ましたが、今日十条製紙で年間賃金制という新しい方式を打ち出しました。これは日本の労使の問題を解決する一つの大きな手がかりとなるものだと私は思いますが、今回の自動車チームにおきましても、やはりそれと同じ方式を研究しております。おそらくごく近い将来に、日産自動車の労使協約として、十条製紙に似たようなものが発表されるのじゃあるまいかと想像しております。  それからなお、昨年度のチームの中に、これは普通のチームではございませんが、大学の教授の交換、これは昨年度としては、早稲田大学とミシガン大学との教授の交換をあっせんいたしております。これは御承知のように、今日アメリカでもヨーロッパでも交換教授というのが非常に盛んで、このために学問の水準が非常に引き上げられているというのが事実でございますが。日本ではそういうことが行われておらない。本来ならば、日本の大学同士の交換教授が、さらに必要なのであります。とりあえずアメリカとの間に交換教授の協約を結びまして、早稲田大学の八人の教授が、つい一カ月ばかり前に出発をいたしました。  それから、国内事業としましては、最初の段階、第一年度としまして、国内事業はまず大体において研究の段階で、実際に実施している分野は非常に少いのでありますが、昨年度として取り上げました大きな国内事業としましては、いわゆる三S運動、標準化、単純化、専門化の運動、これは従来から各方面で取り上げられておりましたけれども、なかなか進まない問題でございましたが、さしあたり声船の鋼板の関係、ここに着手いたしまして、関係各省、造船関係、鉄鋼関係の業者とも緊密に連絡をとって取り上げております。大体において、各方面の賛成を得て、推進できるという段階になっております。なお、三S運動に関連しまして、御承知のように、政府が制定しましたJISマークの規格品、これは今日四千数百種くらいは実行されておりますが、遅々としてなかなかそれ以上進まないというのが現状でございます。何よりも大切なのは、このJISマークを役所が実施する、これがこの起動を推進するに大いに役立つことでございます。今日、御承知のように、国家予算の占める割合は非常に大きい。地方その他公社、公団等を含めますと、国民分配所得の約三割は官庁が消費しております。これが一斉にJISマークを励行するということになると、これは非常に大きな影響力があるし、生産性も向上する、これは明らかなことなんでございます。このJISマークは政府が制定したにもかかわらず、今日官庁においてもなかなか実行されておらない。末端にいくと、全然こういうものを無視されて物を購入しておるという現状でございます。これは今まで次官会議その他でも決定はしておりますが、励行されておりません。これを励行するということについて、皆様方の方でも一つ特段の御考慮を願いたいと、この席をかりて私からもお願いしておきたいと思うのです。  それから、試験工場、研究所——研究所は新たに設けられたのでございまして、隣にいらっしゃる野田さんが所長に就任して下さいました。ここで取り上げる問題は、あとで野田先生からも御説明があると思いますから、私は省きます。先ほどから問題になっております利潤の分配の問題、生産性の測定の問題、こういうような問題もこの研究所で取り上げる、こういう計画でやっております。  それからさらに中小企業の問題、これもわれわれが最も重点を置いておる一つのテーマでございます。この中小企業の問題は、御承知のように、明治二十年代からの懸案として取り上げられて、ずっと引き続いている問題でございますが、ややもすると、この問題が政治的な角度から取り上げられ過ぎている。あるいは単に社会政策的な角度から取り上げられて、中小企業の生産性を上げるという問題が比較的等閑視されているのではあるまいかというふうに考えます。われわれとしましては、もっぱら中小企業の生産性を上げるということに正面から取り組んでいく、こういう計画で当っております。  大体、本部の現在までやっております仕事、今後の方針は、簡単でございますが、以上の通りでございます。御質問があれば、お答えいたしたいと思います。

有田喜一自由民主党

○有田委員長 それでは、続いて、野田参考人にお願いいたしたいと思います。

野田信夫日本生産性本部理事生産性研究所所長

○野田参考人 ただいま御指名にあずかりました野田でございます。  私に与えられました御質問の要件は、科学技術の振興と生産性の向上の問題のように伺っております。この問題は、もうすでに中山先生からもお話がありましたように、生産性の向上といいますと、その一番大きな決定要素は、科学技術の水準なのであります。国によって生産性が非常に違うのは、御承知の通りであります。それは何によって決定されているか、非常に複雑な問題で、言い出すと限りがないのですけれども、三つの点を最も大きい決定要素として私は考えておるのであります。第一がその国の科学技術の水準、第二はその国の企業の経営管理の水準、その高度化の水準である、こう考えております。第三は、ちょっと意外にお考えになるかもしれませんが、その国における公正競争の状態であります。公正な競争が行われているか、その点であります。この三つがなかんずく大きい点だ、さように考えておる次第であります。ほかの点は、私の論題からはずれますから、第一の科学技術の点だけを取って申し上げたいと思います。  よく世間一般では、国民所得が大きいとか、あるいは生産性が高いというのは、国内に天然資源が豊富だとか、あるいは国が広いとかいうようなことが決定的なように考えられておるのでありますが、それもちろん影響がある。それはないよりある方がよいにきまっておるものですが、それは決して決定的なものではない。アメリカは、そういう条件を持って生産性が高いといいますが、そういう条件だけで生産性が言いならば、ソ連だって高くなければならぬし、中共でもインドも南米諸国でも、みな天然資源が豊富で国が広いのです。けれども、その生産性は、アメリカとは比較にならぬ低位の水準であるのです。アメリカでなぜそれが高いかといえば、今申した三つの条件がともに完全にそろっているからだ、さように考えるのです。しからば、日本はどうかということになりますと、科学技術の中でも、学術的な面、ことに自然科学的な面は劣っておらないと思う。またさほど劣っていなければならぬ理由は全くない。だからこの点は非常に楽観しておるのであります。ただ、もう一つの面のこれを経営内に取り込むという技術、あるいは経営そのものを高度化するという点に至っては、まだきわめて未熟な段階にある。その意味から、生産性本部でアメリカへ視察団を送っているのは意味がある、さように考えるわけであります。また、今現に郷司さんからお話のように、この点で非常に得るところがありましたし、今後も得るところがあると信じております。私も昨秋行って参りまして、大体のことはもう承知しておりましたが、行ってみて親しく見、親しく向うの経営者の言うことを聞きますると、やはりそれだけプラスになることは争うべからざる事実だと考えております。そういう点から、科学技術の振興ということは、それがすなわち生産性向上なんだ、さように私は考えておるのであります。その点から、今度政府で科学技術庁をお置きになるということは、われわれとしては非常に心強く考えまして、こちらと果してどういう協力なり提携なりをいたしたらよかろうかということを、今から非常に注意しております。  さしあたりの問題としましては、こういう問題があると私は存じます。まず第一には、日本における発明の企業化の問題であります。これが従来はきわめて不満足な状態にあったことは、御承知の通りであります。日本で発明された世界的な発明が、すべて外国で実用化されて、現在ではその特許を買って日本ではやっておるという状態、これは一体どういうことかということです。だから私は、学問においてはひけをとらぬし、きわめて有望だと思っておるのですが、ただそれだけではどうにもなりませんので、これをいかにして国内で実用化するかということ、これが科学技術庁今後の最大の課題だと思うのです。それで、科学技術庁設立のときにも、私はそういう意見を一、二の方には申し上げておいたのであります。それは、発明の実用化ということに何が一番大切かといいますと、それを実用化するためのあっせん役で、これが欠けておったから、今までの日本の発明品がみんな外国へ行って、実用化されたわけであります。これは結局、発明の段階までは学者個人の研究で済むことが多いのです。しかし、これを一たん実用化しようとなったら、想像もつかないいろいろな面との接触、協力がなければ、一歩も進まないのであります。そういう例も今たくさん知っております。これは、中心になってそれを展開してやり、助力をしてやる機関がないからであります。でありますから、科学技術庁にお願いしたいのはそういう点でありますが、しかし民間としましても、これはほうっておくべきでない。それで、生産性本部でもしできるならば、そういうごあっせんないし活動もいたしてみたい、かように考えておりますから、もしお許し願えるならば、そういう点で一つ促進していただけばありがたい、さように考えております。また、それらの点につきまして、私個人は今度科学技術庁に吸収されまする資源調査会の委員にもなっておりまして、その中で、例の研究管理小委員会というのをやっております。これが、今の日本の研究がなぜ実用化されないかという点から、日本の研究、ことに実用化研究の組織が悪いのだ、これに最大の欠点がある、各国、特にアメリカで実用化が盛んであるのはなぜかということから、日本の研究の管理方法が悪いということで、それの案を立てて、答申案を現在作りつつあります。それがもしできますると、それを日本の各企業の研究所の組織逆用方法に持ち込むごとを努力してみたい、さように考えておる次第であります。  それから、今、郷司さんが省かれましたから申し上げますと、今私の方の研究所では、大きい委員会を四つ作る計画をいたしております。その前にちょっとお断わりいたしますが、私の方で研究所と名のつく機関を一つこしらえましたが、これは、今までの日本の研究所というものは、ややもすると多くの人をかかえ込んで、所内で研究するのが一般の方式でございました。私も長い間方々の研究所に関係しておりますが、どうもそういう方式では研究が停滞してしまう。研究の内容に機動性を持たせることが、なかなかむずかしいのであります。それで、私の方の研究所といたしましては、むしろ研究所が幹事役を買って出まして外部のその問題々々ごとのエキスパートや学識経験者にお集まり願って、外部の方の知識経験を総合してまとめるというような働きをいたしてみたい、費用は負担しまして、委員会組織で問題を取り上げていこうというふうに考えております。目下考えられておりますのは、市場分析委員会、流通委員会、生産性測定委員会、それから雇用委員会、この四つを予定しておりますが、まだ人選の済んだのも済まぬのもございます。人選が済みますと、またそれらの方々の御意見によりまして、内容を固めていかなければなりませんので、まだはっきりとどういう問題ということは申し上げる段階に来ておりません。その中で、われわれとしては、測定の問題が直接の問題であります。これは、実は理論的にも実際的にも、非常にむずかしい問題があるのであります。生産性を工場なり会社なりでほんとうに現実的に測定しようということになりますと、種々雑多な問題が出てきておりますから、その問題をいかに扱うかという問題を取り上げようと思っております。私のところで現在もう一つ計画しておりますのは、生産性の統計を何らかの形で作っていってみたいということであります。従来、政府から生産性の統計指数として発表されておりますが、あれは、指数を指数で割ったものを生産性指数として出しておりますので、きわめて間接的な、あまり当てにならない数字であります。つまり鉱工業生産指数を雇用指数で割っていらっしゃる。それではあまりたよりにならないので、直接に各企業から資料をとりまして——これは決して新しい資料である必要はない、もう通産省なり労働省へ報告なさっておる資料をそのまま活用さえさせていただけば済むことでありますので、そういうすでに各企業が作っていらっしゃる数字われわれの方の測定方法の委員会が考えましたプラクティカルな方法で計算いたまして、直接に計算した生産性の指数を継続的に一定の期間ごと発表していくというようなことも、この方でいたしたいと考えておるわけでございます。  時間もたちますので、これからの科学技術振興と生産性向上というものは、これらはうらはらの問題でありますが、私からくどくど皆様方に申し上げることもどうかと思いますので、あと御質問を待って、お答えすることにいたします。

有田喜一自由民主党

○有田委員長 以上をもって、参考人よりの御意見の御開陳は一応終了いたしました。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますから、これを許します。前田正男君。

前田正男自由民主党

○前田(正)委員 この際、野田参考人に、一つ簡単な問題でお話を伺いたいと思うのであります。今もお話がございました、科学技術振興から始まりまして、これを合理的な経営に持っていくという問題に関連いたしまして私が考えますことは、いろいろと問題があります。それを失地にやりますところの経営者とかあるいはこれに働いておる労務者の諸君の実地教育というものもあるのでありますが、しかしながら、根本的にいきますと、これはやはり一つそういう学問というものが成り立たなくちゃならぬのじゃないか、これは経済学の方におきましては、いわゆる経営学というものがあって、いろいろの問題ができ上っておるように思うのであります。それは、広い経済的な経営的な学問でありまして、この生産性を向上するといういわゆる科学技術方面に基礎を置いた科学的管理という面の経営学というものは、日本には残念ながらあまりに少いのじゃないかと思うのであります。しかしながら、私がアメリカを見まして、またその他の国を見ました感じといたしましては、大体工科大学の中にそういう生産  工学的な、生産技術的な学問が科学として確立されて工場経営学というようなものができておりました。それによって、そういう方面をマスターした人たちが、実社会において、各方面の現場において、あるいは経営者として、あるいはまた官吏として、いろいろな面に活躍をしておられる、アメリカの今日の生産性向上という単に現場の技術だけじゃなしに、広く、人間性から始まりまして、社会全体を向上するということで、先ほど中山先生のお話があったように、各方面に活躍しておられる。これは、そういう一つの学問ができて、そういう教授陣もあられれば、あるいはまたそういう学生が、あとからあとからと世の中に送り出さ  れていくところに、非常に大きな分野を持っておるのじゃないかと思うのであります。私は、この生産性本部というものができますならば、当然そういう一つの科学技術的な管理に立ったところの生産工学といいますか、経営工学というようなものが、日本に学問として成り立たなければならぬ、そういうものを確立すべく話をされなければならぬと思うのであります。この点について、野田参考人はどういうふうにお考えになっておられるか、一つお聞かせ願いたい。

野田信夫日本生産性本部理事生産性研究所所長

○野田参考人 ただいまのお話、まことにごもっともでございまして、学問の範囲から申しますると、日本でいういわゆる経営学の範囲に属するのでありますが、日本の経営学は、御存じの通りに、きわめて経済学的な経営学が発達してしまいまして、今お話のような生産工学ないしはわれわれのいう生産管理面の研究なり発進がきわめておくれております。それで、私が今、主としてそういう方を専門にしておりますから、お話の通りのことを私も考えております。先ほど郷司君からお話がありました早稲田の交換教授の問題も、主としてそれをねらっております。それで、ミシガン大学の御援助によりまして、早稲田大学内に生産研究所というものが置かれますが、それは、工学面ではいわゆる生産工学、アメリカ語でいいますとプロダクション・エンジニアリング、あるいはイン、タストリアル・エンジニアリングの面と、それから早稲田でいう商学の一部、たとえば市場分析、市学調査というふうな面と、両方合わせました一つの研究所が今度できたわけであります。あれなんかは、われわれがただいま御質問のような点に即応した一つの大きい現われだと思って、今後の成果を期待しておるのであります。私が前から繰り返し申し上げ、また皆さんからも一つ強力に推進していただきたいのは、まさにお話の通り、日本の生産工学は非常に片ちんばであります。いわゆる工学面だけは、各工科大学があって、単に一部ではありますが、やっております。しかし、その課目を見ますと、アメリカのそれに類するコースで例外なく設けてあるもので、日本ではほとんど例外なく設けてないものが、原価計算、労務管理といったようなことで、現場の技術者に必要欠くべからざる知識が全く欠如しておるのであります。アメリカでは、工学系統の大学は全部、いわゆるコーペラティヴ・システムで教授されております。コーペラティヴ・システムというのは、クラスを二つずつ作りまして、一組は常に工場に行って実地の仕事に従事しておる。その他のもう一つのクラスは教室におって授業を受ける。それが一定の期間、たとえば三カ月なら三カ月たちますと、その地位を交代するのです。今まで工場に行っていたクラスが教室に帰ってきます。今まで教室にいたクラスが、今度は前に工場にいた者の地位を引き継いで、工場で仕事をいたします。こういう組織で四カ年間、あるいはそれをやると授業時間数が減ってきますから、五カ年を要する場合が多く、一年伸ばします。それで、いわゆるプロダクション・エンジニアリング、あるいはインダストリアル・エンジニアリングのエンジニアが養成されておるのです。ですから、彼らは、機械の本業者であれば、工場の中の機械ならば労務者と同じくらいに自分で運転し、使う技能を持っておるわけです。その上に、高度の工学知識を持って、現場に送り込まれてくるのです。そのほか、今申しました原価計算の知識——アメリカの原価計算、原価管理といわれておるのは、ほとんど技術者がやっておる。技術者でなければ、できるはずがないのです。日本ではそういうことをやる人を、学校ではほとんど供給してくれません。技術者は技術しか知らない。商科系統の人は、計算方法しか知らない。この結びつきがほとんどできておらないのです。そういうような現況でありますから、今御指摘の通り、日本の生産技術というものの発達がおくれておるのです。これが今の日本の工場内の生産性を上げることを阻害している重大な原因だと私は前から信じております。私は、現在成蹊大学に所属しておりますが、今のような方式で、工学部を作ろうと試みたことがあります。それが実現できなかった理由は、まだ今の日本の経営者が、そういう学生を引き受ける意欲を持たないのです。つまり自分の会社に来るか来ないかは、卒業してからでなければわからぬものを、労務者と同じ待遇で、同じ規則のもとに引き受けるということは責任を持てない、こういうことが最も強力な反対意見です。それに対して、私はまたいろいろ反対意見があるのですが、しかし幾ら議論してみたところで、向うが引き受けないからには、どうにもしようがなくて、いまだに放置しております。このごろはだんだんそういう点の了解なり認識が深まってくるような傾向にありますから、なるべく早いうちに、そういうような制度を持った大学の一つくらいは、日本にあってもおかしくはないと信じておりますが、いまだにそういう学校がない。わずかに早稲田にある経営工学科というのが、一番古くまた完備しておりますが、そういう経営工学科といったような名前をつけた学科が、各工学部系統の大学にはぼつぼつできて、現在もう五、六カ所できておると思います。そういうようなことで、以前よりやや進んだというような程度で、はなはだ遺憾の状況にあることは、御指摘の通りでございます。そういう点、一つ強力に、特にこれは文部省を説いていただきたいのであります。

前田正男自由民主党

○前田(正)委員 その点につきましては、科学技術庁が近く発足いたしますから、科学技術庁の科学技術審議会において、ぜひ一つ私も取り上げてもらって、文部省との間に連絡して、強く推進していかなければならぬと思っておることでありまして、ちょうど野田参考人から非常にいい御意見を伺いまして、われわれ大いに参考になったと思います。  時間もありませんから、一点だけ、この研究所の方を担当されるそうでありますので、こういうことをお考えになっておるかどうかということをお聞きしたいのであります。それは、先ほどから述べられた研究所の研究題目も非常に必要でありますけれども、生産性を向上するという問題、特に中小企業の問題になって参りますと、これは御承知だと思いますけれども、日本の各やっております仕事は、非常にむだが多いのであります。専門でありませんから、非常にむだがある。たとえば大企業の中で、下請に出しておりますのは、単に機械加工の方だけでありまして、ほんとうは焼き入れであるとか、歯切りであるとか鍛造であるとか、あるいは鋳造であるとかいうようなものは、専門メーカーに渡せば、当然非常に能率がいいのです。実例を申し上げますと、たとえば、日本で優秀な歯切り盤は、造船会社のエンジン関係では買ってくる。それは非常に大きい造船会社だからというので、輸入を認められる。ところが、それがフルに動いているかというと、動いていない。それがなければ船のエンジンが作れませんから、せっかく外貨を使って入れたのが、フルに動いてない。これを下請の専門の歯切りメーカーに持っていきますならば、十分に日本の貴重な外貨を使ったものが使われまして、単に船のエンジンだけでなしに、自動車のエンジンとか、その他各方面の歯車にこれが利用できる。そういう実例がある、世の中の工場をちょっと見て歩きますと、大ていいい機械を外国から入れたといいしましても、それが十分な時間、活動しているものはほとんどありません。こんなむだなことは私はないと思います。それは生産性の問題に非常に大きな影響を及ぼしているのではないか。これからいろいろとオートメーションとか何とかかんとかで、いろいろなものを入れてこられるようですけれども、私は多分、それは動いておるときには、オートメーションで能率が上っているように見えますけれども、全体から見ますと、作業時間の半分しか効いていなくて、かえって生産能率が上っておるかどうか、疑問があると思います。日本の国の生産性というものは、専門的な系列の分野というものができ上っていないから問題である。これは生産性の非常に大きな問題でありますので、生産性の研究所で、そういうふうな生産別の系列を立ててやっていく。これがまた中小企業の育成をする根本の問題だと思うのです。中小企業の育成をする、融資をする、税金を考えてやるといったところで、これはほんとうの育成になりませんので、こういうことが根本の問題であると思いますが、そういうことを御研究になるお考えがあるかどうか、一つお聞かせ願いたいと思います。

野田信夫日本生産性本部理事生産性研究所所長

○野田参考人 ただいまの点は、私もまさにその通り、長年信じておるのであります。むしろ研究の段階ではない、失行の段階と思っておりますので、いかにしたらこれを実現し得るかということを考えておるのでありま  す。その意味での研究はいたしていいと思いまして先ほど申した流通の委員会などでむしろ具体的なものを取り上げまして、これをほんとうに系列化する。戦時中やったような系列ではなく、ほんとうの取引系統の系列化をいたしまして、一方には不当な競争を排除し、一方には公正な競争を維持して、中小企業と、輸出品であれば信用のある商社との結びつき、特に私は日本の特産品工業の輸出経路を確立しなければならない、かように考えておるのであります。日本の高級符産品がどうしてアメリカに行かないか。これはチィンネルがないからです。これには  一つはデザインの問題がありまして、今度はデザインも、コンサルタントがアメリカから参りますが、これなどのアドヴァイスも受けて、アメリカへ日本の高級特産品、たとえばガラス、漆器、竹細工といったようなもの、そのほか陶器もそうですが、そういうものも確実な輸出経路を作ってやりさえすれば、アメリカの高級専門店に十分並ぶ資格があるのです。行ってみると、ほとんど一つも並んでいません。これは経路がないからであります。こういうのを、具体的な問題として、一つ一つ取り上げていこうではないかというふうにも考えております。それと、先ほど御指摘の専門化の問題ですが、日本の、ことに哀れな下請業を組織化する、あるいは制度化するということは、組織化あるいは再編成するという必要がある限り、これは専門化して持っていくほかに方法がないことは御指摘の通りです。ただ、この場合は、一番さしあたり困ることは、中央にオーガナイザーがないということです。今、模範的にできておるのは、自転車工業だと思います。自転車工業は、あれはあれとして欠点はあります。たとえば、技術を進捗させる中心点がないというような点は根本的な欠点ですが、しかし形態から見れば、全部あの形態にならなければならないのです。しかし、またそういうふうになる方が、はるかにいい物が安くできるというものが、枚挙にいとまないので、いかにしてそういうふうに切りかえていくかということが大切なんです。それには、オーガナイザーが中央にいて、ほんとうの専門部品メーカーに安定した仕事を与える組織なりオーガニゼーションが要る。それの中心になってその世話をし、責任を持ってそれを引き受けてくれる人さえあれば、これは切りかえられる。それは私は日本では何としてもやはり官公のお世話なりあっせんなりというような形が、一番信頼もされますし、中立ですし、いいのではないかと思っております。今度は、官公の方には、めんどうな、厄介な、ややもすれば重大な責任や危険の伴うような仕事に乗り出して下さる方が見つからない。いわゆる官僚的な事なかれ主義で終始しておりますから、仕事の性質としては、それには向かない性質です。ここにジレンマがあって、思うように推進できない。われわれとしましても、そういう問題をどこから取り上げていくかというようなことを研究いたしたいと思って、通産省と連絡いたしまして、具体的に問題を取り上げていきたいと考えております。

有田喜一自由民主党

○有田委員長 志村茂治君。

志村茂治日本社会党

○志村委員 私は、生産性向上連動のいろいろな外部の条件についてお話を承わりたいと思っております。先ほどのお話で、日本では、特に生産性向上の技術面について、企業の経営管理の水準から見ると、非常に劣った点があるのじゃないかということです。これは私の考え方ですが、日本の企業の経営管理の点につきましては、特に労働強化の面については、いろいろな研究がされておると思います。これは主として、日本はたくさんの安い労力がある。このチープ・レーバーによって、世界の市場で競争しておったという事実から考えてみまして、今後ともこういう状態は続くのではないかというふうに一応考られます。さらにこのチープ・レーバーの根拠といいますと、日本に資本がなかった、これを機械化するための十分な資本がなかったということである。それは当然資本コストが高いのだということから、チープ・レーバーに逃げておったという、日本の打っておるいろいろな経済条件から来た 大因子だと私は考えております。今度の生産性向上連動の外部の条件として、やはり資金面についても十分考えなければならぬのではないかというふうにも考えておりますが、資金ばかりでなく、内部の事情とも合せて、こういうような日本の生産性向上運動とチープ・レーバーとの関係をどういうふうにお考えか、御意見を承わりたいと思います。

野田信夫日本生産性本部理事生産性研究所所長

○野田参考人 それは循環的な原因となり結果となっておりますので、どこで断ち切るかということは、きわめてめんどうな問題だと思います。それで、こういう問題に取り組むときには、常にその国、その社会の置かれている事情から見まして、一番取り上げやすいところ、また無理なく着手しやすいところから入っていくという点が一番いい。またそれ以外に方法はないと思う。そこでチープ・レーバーの問題も、言いかえれば、これは生産性が低いからなんです。今、日本の企業者や経営者に、チープ・レーバーはいかぬじゃないか、もっと賃金を上げてやれと言ったところで、労働争議もやっておるのですから、なかなかそこだけ押したのでは何も片づかない。今度の春季闘争をごらんになればわかるように、もう限界点にきている。ただよこせ、ただ上げろう言うだけでは、意味をなさない。どうしても上げるためには、上げる源泉をふやしてからよこせなら、これはわかる。われわれの運動なりわれわれの考えておるところは、まずその源泉をみんなで示そうじゃないか、その運動が生産性向上運動だとわれわれは考えております。また参加して下さった労働側の方々の考え方もまさにその通り、先ほど中山先生が言われた通り、これは労働側が参加するのに反対しようが、技術の進歩というものは、どうしても、押えることも、逆行することも、とどめることもできない。もし、とどめていたならば、日本は慢性失業国になるだけのことだ。これはこの勢いに逆らうべきではなくて、むしろこれに乗らなければならぬ。それに乗ると、先ほど来お話しのように、失業その他の問題が一方に出てくる。また出てくるからこそ、労働側はその問題の中に初めから入っておって、この問題と取り組んで、どうしても失業が出なければならぬのがあるいはなくて済む方法がありはしないか、またそういう計画がある産業であって、非常に巨大な失業者が出るという計画があるとするならば、またそうしなければその産業が立たないということが事実であるとするならば、これをもっと事前に労使双方が話し合って、なるべくその犠牲を少くして、しかも目的を達する方法を考えていったらいいのではないか。それを今までのような方法でやっていると、いざこういうことにきまったから、千人なら千人要らなくなったということを聞いてから立ち上っているのでしょう。これがそもそも愚だ。そうなる前に、いろいろの計算も研究もされて、その結果、その企業はそういう結論を出す。その研究なり分析なりやっている過程で、労使は話し合ったらいいのではないか。そうすれば、もっといい方法があるかもしれない。もっと犠牲が少くて済むかもしれない。話し合ってやっていく方が、労働者のためにいい。どうせ自分たちが入ろうと入るまいと、生産性向上は技術の進歩に応じていくにきまっているから、労作双方が話し合って、その間を調整しながら、その技術の進歩に乗っかっていこうという運動が今度の運動だと私は承知しているし、われわれと一緒に参加して下さった労働側の考え方も、まさにその通りなんです。それだからこそ、おれは参加したのであって、おれたちが参加して、ここで議論しておれは、失業がなくて済むというような甘い考えで入っているのでも何でもなくて、そうやることによって、生産性を上げて、そうしてから後、高賃金、高生活水準というものを獲得しようではないかという考え方であろうと思います。ですから、今のは循環的な原因結果になりますから、どこから食いついてもいいのですが、われわれとしては、生産性向上ということでまず食いついていって、高賃金を生み出す。そうすると、購買力が上りますから、経済規模の拡大になるので、この循環をどこまで推進していこうではないか、その過程にはいろいろの波乱の起るおそれがあるから、労働側も経営側も一緒に話し合って、その波乱をなるべく少くするような調整をしながらやっていこうではないか、こういう考え方だろうと思います。

志村茂治日本社会党

○志村委員 ただいま資金の問題をお聞きしたのですが、それについて伺います。

野田信夫日本生産性本部理事生産性研究所所長

○野田参考人 日本は、資金的に貧困であるということは確かです。また資金的に貧しいから金利が高いのですから、これを多くするということは、生産性を上げるよりほかに蓄積の道がない。資金が少いというのは蓄積が少いということで、蓄積が少いというのは、生産性が低いからです。生産性が上れば社内保留もふえまするし、国民所得もふえますから、資金が自然わいてくるにきまっています。これも、源泉の問題はやはり生産性の問題になってくると思います。ただ日本で、今、資金が足りない足りない、また金利が高い高いといっているのに対して、私がいつも思っているのは、さように少い金を、さように金利の高い金を、なぜああいうふうにむだづかいするかということです。つまり金の使い方が下手だ。さように高い金なら、もっとほんとうにきびしい採算に乗った金の使い方をすればいい。そうやっておるかということです。至るところにビルがある。なぜあんなりっぱなビルディングだけ建てておるか。あれでは何にも生産性は上りません。ああいうものに投資していたんでは——高い高いと言いながら、ああいうものに投資しておるのが現実なんです。それは、金の使い道を知らないのです。それで、われわれは利益計画ということを、通産省の合理化審議会から最近発表します。およそ企業の経営というものは、こういう利益そのものを計画化しなければいけない。高い高いと言っていながら、野放図な使い方をしておるということを指摘したつもりなんです。ただ、資金をふやす方法いかんといっても、これはどこからも生まれてくるものでないので、やはり生産性を上げるよりほかに蓄積の根源はない、私たちはそう考えておるわけであります。

志村茂治日本社会党

○志村委員 それからもう一つ、これは中山さんにお聞きした方がよかったと思うのですが、生産性本部でも、その世程においては、やはり失業者ができるのだということは育っておられると思うのです。これはむしろ個々の経営の内部では解決できない問題と私は考えております。しかし、一方におきまして労働者が失業するということは、直ちに生活ができないという状態になっておりますので、その解決方法としては、まず日本で社会保障制度が整備されてもちろん制度だけではなくてその保障金額も、予算も大きくとるという方法をとって、失業しても食えるという状態に一応置かなければ、労働者がなかなかこれに参加できないという状態になると思うのです。  それからもう一つ、日本で生産性向上運動の結果、日本の生産力が上ったということになれば、海外に対する競争力が大きくなる。その点が生産性本部のねらいどころじゃないかと思うのですが、その際、たとえば政治的に、ココムのような日本の貿易伸張を阻止するような制度をまず打開しなければならぬ。このココムの解除とか、あるいは社会保障制度の整備とかいうことが、運動の先行の条件になるのじゃないかと私は考えておりますが、この点はいかがでしょうか。

野田信夫日本生産性本部理事生産性研究所所長

○野田参考人 われわれとしましては、この運動は政治運動でありませんので、純経済運動として持っていきたい、さように考えておりますが、今のお話のような点で、どうしてもこれは政治的に解決しなければならぬというような問題にぶつかったといたしますれば、参加しておる労働組合の方とも十分に打ち合した上で、こういうたとえば失業救済あるいは現在の社会保障制度の改正ということをお願いしなければならぬという結論に達するかもしれません。それは、現に発生するであろうと確実に予想し得る失業の質や量を勘案して、これはとうていわれわれの再配置その他のあっせんでは処置できない失業だというような事態が明らかになりますれば、それに対しては、政府はこういう処置をとってくれないといけないというようなことをお願いするような段階になるかもしれませんけれども、そういうものがあるという予想のもとに、失業救済なり失業保険の要求はあらかじめしておいてそれからでないと、この運動ができないというところまでは突き詰めて考えていないのです。生産性向上運動から来してどれだけの失業が出るかということは、まだ全く予想し得る段階になっておらないものですから。もちろん今のいろいろの過程において、失業が発生することがあり得るということは、もうみんな知っております。けれども、失業といいましても、いわゆる再配置その他の処置あるいは事前のいろいろの手当によりまして、失業がなくて済むことがあるのです。計算上は一応失業、冗員というものが出ましても、——たとえば、私はよく言うのですが、日本で機械化するとか、能率の高い機械を入れるとしますと、すぐ失業というふうに結論してしまう。これは私は一足飛びだと思うのです。というのは、倍の能率の上る機械を使っても、倍売ればいいんです。倍生産すればいい、これはマーケッティングの問題なんです。市場開拓の問題なんです。そうすれば、一人の失業も出ません。なぜそういう処置を考えないかということなんです。これはマーケッティングの問題で、今度のわれわれの生産性向上運動は、市場開拓という面を非常に重要視しておるのです。その方面にも、科学技術を十分に使おうということを考えておるのも、そのためなんです。従来の合理化運動は、大体不況対策が重点であったのです。それもすぐカルテルだ、アグリーメントだ、あるいは統制だ——この前第一次大戦後の合理化運動、日本でもごらんになればおわかりになると思う。あの当時、産業統制法なんていうものができたのは、あの結果です。あれはカルテル法にすぎない。ああいう消極的な考え方を、今われわれは持っていないのです。もっと市場開拓をしょうじやないか。能率機械をどんどん使ったらいい。それだけコストが下るんだから、それだけ販売量をふやせばいい。販売量をふやすということは、生産量を上げるということですから——それで失業が全然出ないとはもちろん申しませんが、少くともそういうことを考えて、そうして最小限度に失業を持っていこうじゃないか、これがわれわれの務めだし、それだからこそ労組側も事前に話し合って、再配置のできるものは再配置する。それから市場拡大することによって吸収し得るものはどのくらいあるということから、最後にどれだけの失業が残るだろうかということで、その失業に対する対策は、これは政府で考えてもらわなければならぬような失業であるならば、政府へお願いするほかはない、こういうふうに考えております。要するに、具体的に問題が出たときに相談ずくでやっていこう、そのときには、政治的な運動にもなるかもしれません。たとえば、最低賃金制度だってそうだと思う。中小企業には、最低賃金が果してプラスになるか、われわれが労働省で立てたような案の最低賃金制であるなら、私個人の考えならば、あれは中小企業のためにはプラスになると思う。ああいう面から中小企業の合理化なり、高度化を進めていくもの、確かに一つの手だと私は思っております。しかし、まだこれは生産性本部としては取り上げておるのではありませんから、私の個人の意見であります。さように考えております。

有田喜一自由民主党

○有田委員長 他に御質疑はありませんか。——他に御質疑がなければ、この程度といたしまして、この際、参考人に、ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中にもかかわりませず、長時間にわたりまして、それぞれの立場より、きわめて御熱心に、有意義な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  本日はこの程度にいたし、次会は公報をもってお知らせいたします。  それでは、これにて散会いたします。    午後一時散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗