法務委員会 第3号
- 発言数
- 31 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1955/12/08
会議録
○高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。 本日の日程に入る前に、まず理事の辞任及び補欠選任についてお諮りいたします。すなわち、理事古島義英君から辞任の申し出がありますので、これを許可することとし、なお、委員異動に伴って理事が三名欠員となっております。従って、現在理事が四名欠員となりますので、その補欠として、理事に 椎名 隆君 池田 清志君 高瀬 博君 田中幾三郎君 の四名を御指名いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なければ、さよう御指名申し上げます。 それでは、法務行政に関して調査を進めます。 質疑の通告がありますので、これを許します。三田村武夫君。
○三田村委員 前回の当委員会で同僚古屋委員から興安丸に関する御質疑がありまして、まだこの御質疑は結論に達していないようであります。古屋委員は他の用件のために御出席がおくれておりますが、この興安丸問題に関連し、また、今日世上最も注目すべき問題になっております李ラインにおける日本漁船拿捕問題、さらに、それに関連いたしまして、これもまた予算委員会その他の委員会で大いに論議されております大村収容所における収容中の韓国人釈放問題、これらの問題に関連して二、三お尋ねいたしておきたいと思います。 興安丸問題に関連したお尋ねは、古屋委員の御質疑の進行と見合せてさらにいたしたいと思いますが、まず、この大村収容所に収容されております韓国人、これは韓国人という言葉が法的に適切であるか、どうかは別にいたしまして、俗に言う朝鮮の人です。これと韓国に拿捕抑留されております日本漁船の乗組員の人々の釈放とを、交換といいますか、そういう一つの政治的含みのもとに釈放したらどうかというような御議論があるようでありますが、入国管理局長官として、この問題を現在どのようにお考えになっておりますか、まずその点からお尋ねいたしたいと思います。
○内田政府委員 われわれ事務当局が現在考えております考え方を率直にお答え申し上げます。 三田村委員もとくに御承知のことと存じますが、遺憾ながら日本におります朝鮮人、先ほど委員もおっしゃいました意味で申し上げます朝鮮人でございますが、非常に犯罪者が多いのでございます。現在刑務所におります人員総数約六万のうち、ほぼその一割が朝鮮人によって占められておるという現状でございます。これを全人口の比率から考えますと、日本人の犯罪率に比べまして十数倍という実情でございます。その結果、出入国管理令によりますと、御承知の通り、その二十四条に退去強制に付してよい場合のことが列挙してございますが、その中の第四項、本邦に在留する外国人で左に掲げる者の一に該当するものという中の、今問題になっておりますのは主としてこれでございますが、そのリ号に、「無期又は一年をこえる懲役若しくは禁こに処せられた者。但し、執行猶予の言渡を受けた者を除く。」、こういう条文がございまして、この条項に該当いたします朝鮮人の数は非常に多いのでございます。しかしながら、他面、日韓の間にかねて外交上の問題になりながらいまだ解決していない彼らの処遇の問題というものがございまして、韓国側のいろいろ主張しております言い分にもわれわれとして相当耳を傾けてやらねばならない主張もございますので、この条項をそのままに適用いたしまして退去に付するということが妥当とはわれわれ自身考えておりません。その結果、実際刑務所で刑期を終りまして出て参りました者の中から、大体、われわれの基準で申しますと、非常に凶悪な悪質な犯罪者、たとえて申しますならば殺人とか強盗とかいう種類の犯罪者、あるいはたとえば麻薬関係、それからヒロポンの、これも単に媒介とか使用したというのでなくして、製造をやっておるというような非常に悪質な者、あるいは普通の犯罪者でございますと大体三犯以上くらいの者で、われわれの観念からいたしまして犯罪の上に生活が成り立っておるのではないかというふうに認めざるを得ないような悪質者を退去強制処分に付しております。そうしてそれを大村に送っておるのでございますが、これは大村に収容すること自体が目的というわけでは毛頭ないのでございまして、通常の場合退去強制処分に付しました者はその退去の確保をいたしますために収容しておるのでございます。従って、通常の国家の場合ですと、ほとんど一月以内に相手の国がそれを引き取りますので、収容生活というものはきわめて短期で済むのでございますが、韓国の場合、これをなかなか引き取りませんために、遺憾ながら収容が相当長期にわたってはおりますが、しかし、それは収容そのものがあくまで目的ではないのでございまして、従いまして、向うが引き取ると申しますならば、きょうにでもみんな渡してやりたいと意味の収容でございます。現在そうした種頭の人が約三百七十名ほどになっております。韓国側は、これに対しまして、戦前からおる朝鮮人については、日本にいわば永住権があると申しますか、これらの者について日本政府が一方的に退去処分に付するのは妥当ではないという主張のもとに、今日までその引き取りを延ばして参っております。 ところが、先般来日本人の漁民で向うに抑留されておる者につきましては、これは、われわれの方から申せば、李ラインを越えたということ自体が何も違法ではないと信じておるわけでございますが、それを向うの法律によりまして刑罰に処しましたあと、向うの刑務所を出てきまして収容施設におる者、刑期を終った者までも引き渡さない。俗な言葉で申しますならば人質に取っておるという格好で、これの釈放と交換のような形で大村収容所の今申し上げましたような人間を国内において釈放しろという要求を出してきております。これは、われわれの観念からいたしますならば、本来の話の筋として全く間違っておるのみならず、われわれの角度から申しますならば、もちろん刑期が済んだ者なんだから日本人でも同じではないかというような議論もございますが、実際問題として、今の日本の状況におきましては、日本人でもなかなか就職などはむずかしいのでございますから、いわんや、こうした刑務所生活ばかりをやってきたような朝鮮人が就職いたすということはなかなか困難であります関係もございまして、こうした人々を無条件で釈放するというようなことは、ここに刑事局長もいらっしゃいますが、あるいは国警の方も治安関係の面で非常に強い反対意見を持っておられますし、またわれわれ入管の方の立場から申しましても、従来の韓国政府のやり方にかんがみまして、こういうことで一歩退いて一つの既成事実を作られますと、それを種にして将来非常に悪い朝鮮人でも退去させることができない、実際上これらの者に対する管理行政上非常な支障を来たすおそれがあるというようなことで、われわれ事務当局といたしましてはこれに相当な反対意見を持っておるというのが現在の状況でございます。
○三田村委員 もう少し事務的に管理局長と刑事局長の御意見を伺ったあとに法務大臣から御見解を伺いたいと思ったのですが、法務大臣は二時二十分から予算委員会においでになるそうでありまして、大臣は非常に練達堪能、頭脳鋭敏な方でありますから、すでにこの問題は十分御承知と思いますので、要点のみを伺いまして、大臣の御意見をお聞きしたいと思います。 今内田局長の申されました通り、この問題は非常に大きな政治問題であると同時に外交問題にもなっております。大村収容所に収容されております朝鮮人の釈放問題については二つの面がある。一つは人権上の問題、一つは治安上の問題であります。この二つの面から見まして、法的に根拠を持って収容されておるものでありますが、あまりにも長く収容所生活を継続せしめるということは、人権上の問題から検討の要があると思います。これを将来どうさばいていくか。端的に申しますと、今局長が言われたように、韓国側が引き取ってくれないとしますと、だんだんたまるばかりでありまして、どこにもはけ口がないというような問題が起きます。この問題をどう処理していくか。これは法律上の根拠も検討を加えなければならぬと思いますが、それと、一面、今内田局長が言われましたように、いわば相当悪質な朝鮮人、これを収容所から出すといたしますと、治安上の問題が起ってくるのであります。これは相当大きな治安上の問題が起って参りますから、法務当局としても十分お考えにならなければならぬと思う。この二つの面から、一体この問題をどう扱うかということは私は非常に重要だと思います。 もう一つの面を申しますと、今収容所で収容しておるのは明らかに法的根拠を持ってやっておる。法的根拠のあるものを、ここで政治的要求によって処置するということになりますと、もとより韓国側に抑留されておる日本の漁民の方々には一日も早く帰ってもらいたい、これはわれわれの切実な要求であり、当然な主張でありますが、同時に、われわれの立場から見ますと、ただ政治的要求だけで取引のような格好で釈放するということになりますと、これを押えておる法の権威、根拠がなくなってしまいます。この点も十分考えなければなりませんので、そういう点についてどういう御見解をお持ちになり、どういう方針をお持ちになっておりますか、まずこの点について大臣の御見解を伺いたいと思います。
○牧野国務大臣 お答え申します。行政事務としては非常に取扱いがむずかしいのでございます。しかし、今三田村さんの言われた通り、事は外交上、政治上に重要なんでございますから、適当な措置をとるべきだと仰せられたことはその通りでございます。この点は外務大臣からの心配もありまして、これは外務、法務ばかりではなく閣僚全員が相当な決心をして責任を持って前後処置をしなくてはならぬ。よって大村収容所の問題については、政治的な考慮を加え当面の問題解決に資するということを閣僚で打ち合せをいたしました。そこで、私は、皆さんにぜひ御協力をしていただきたいと思うことは、こういう人間を強制送還する道がないことはないと思う。しからば一体どうするのかという問題は、当局者の独断ではなく、委員会で一つ御協議下すって、こういうことはやれぬか、——私は何らかあるように思う。国際的な問題でありますから、先例がないかということを調べてもらう。そうして、外務当局にもその措置について、あなたの方では何らか考えはないか—。強制送還をするということが第一で、それをやらなかったのは無能だったのであります。腹がなかった、決断がなかったのであります。これを今調べております。それで、強制送還をする。強制送還のできないときには、法務当局が責任を持ってやる、これもやむを得ません。それで、韓国の申し出は理不尽であります。理不尽であるから承知できないというだけじゃ問題は解決いたしません。でありますから、これに対しては、私は、委員会の皆さんと御相談して、お知恵を借りたい、そうして遺憾なきを期したい、相当な危険を冒してやるよりしょうがない、それまでの決心をいたしておるわけであります。
○三田村委員 法務大臣はなかなか聰明明な答弁で、こちらで言い出した問題が委員会に返ってきたような気がいたします。もちろん委員会もその問題を十分心配をしておりますがゆえに法務大臣にお尋ねするのでありますが、韓国側の言い分はもとより理不尽でありますが、問題がここまできた以上、理不尽であるからといって捨てるわけにはいきません。これは政治的裁断——そこに政治があるのでありますから、政治的処置ということは必要でありますが、同時に、法秩序という面からやはり法務大臣の立場で十分お考えの上、閣議の方向を御決定願いたいと思います。これは相手が朝鮮人であるがゆえに申し上げるのではなく、民主国家において一番大切なものは法秩序であります。どこの国民であろうと、どこの国籍を持っておろうと、法秩序の守られない法治国家、民主国家というものはないのであります。その責任が今の法務大臣にお考え願いたい一番重要な点だと思うのであります。 これは事務的な話になりますからあとから局長に伺いますが、この問題の焦点に国箱の問題があると思う。韓国側の言い分からすると、日本に長くおったのだから、日本の国内で釈放して日本に置いてもいいじゃないか、これは政治的な言い分であります。法律的な言い分ではありません。その日本の国内におった朝鮮人が日本人であるかというと、そうじゃない。国籍を持っていない。国籍があれば、さっき内田局長が言われましたように、大体送還の意思決定をすれば一カ月以内に引き取るということは、送り先がわかっておるから引き取るのです。受け取る国も、自分の国の国民だから、国籍が自分の方だから受け取るのですが、韓国側では、この大村収容所におる者が国籍があるかどうかわからぬ。おそらく日本では日本国民としての国籍もない人だと思うのでありますが、そういう問題も十分御検討の上、大臣この問題の御裁定を願いたいと思います。 政治的裁断もこの段階に来れば必要でありますが、日本国民として日本の国籍も持たない、そうして非常に犯罪性を持った者をばらばら国内にまかれても、これは非常に困りますし、一つ大臣の御決意、——強制送還をやるとおっしゃいましたが、その裏づけを政治的にどのように裏づけするか、法律的にどのように裏づけするか、われわれ委員会としても十分検討を加えたいと思いますから、一つ聰明な大臣、大へん厄介な問題であると思いますが、今私が申し上げたこと、すなわち、あくまでも法秩序を守っていかなければならないのだ。そこにこの問題検討の焦点を置かれまして、できるだけ早く解決していただきたいと思います。ここで重ねて大臣から伺いたいことは、政治的裁断もさることながら、一番大事なことは、あくまでも法秩序を守るということ、治安面において支障を来たさないということ、これを少くとも法務当局は問題解決の焦点として解決に当っていただきたい、その点の御所感を重ねて伺っておきたいと思います。
○牧野国務大臣 それには方法はあると思います。あると思いますが、当相大胆不敵な方法です。こういうときに新例をこしらえて、委員長と理事にあっせんを願って、この委員会はほんとうに練達堪能というよりもむしろエキスパートがおられるのですから、一つ懇談会をやっていただきたい。そして、こっちの話をしてこうやろうじゃないか、そういう例を委員会に作るということは非常にいいことじゃないか、こう思いますので、私どもは、そこまでいきましたならば御相談してきめたい、こう思っております。私はそれだけの決意を持っているということだけはここで明らかにいたします。最後実行の場合までには御相談することをどうかお許し願いたい。
○高橋委員長 皆さんにお諮りしますが、牧野法務大臣に予算委員会の方へ早く出席してもらいたいという要望がこちらに届いておりますから、その趣旨で一つ適当に御質問をお願いしたいと思います。
○三田村委員 ただいま法務大臣からまことに含みのある御見解の表明がありました。大臣の御意向はよくわかりましたから、私に関する限りこれ以上伺いません。どうぞ一つ、練達堪能な大臣でありますから、政治的な立場も十分御検討の上、法務当局としてどのようにこの問題を処理するかという具体的な案をできるだけ早くお立て願いまして、また委員会にお示しあらんことを切望いたしまして、大臣に対する私のお尋ねは終ります。 続いて両局長に事務的な立場からお尋ねいたします。今大臣にもお尋ねしたのですが、今大村収容所に収容されておりますいわゆる朝鮮人、これは国籍はどうなっておりますか。
○内田政府委員 国籍の問題につきましては、われわれはまだ向うのはっきりした承諾を得ておるというわけにはいきませんが、大体片ずいておる問題だという前提で接しております。と申しますのは、韓国の独立がいつ行われたかというようなことにつきましては、過去の日韓会談についても争いがあったのでございますが、われわれが終戦後いわゆる朝鮮人を外国人として取り扱って参りました実情に対しまして、韓国側から、その間それが不当だというような言い分は一ぺんも聞かされたことはなかったわけでございます。むしろ逆に、韓国側は、朝鮮人は外国人である、特に占領時代の当初におきまして、占領国民と同様の待遇を与えるべきだということからでもあったと思いますが、ことさらに向う側で外国人であるということを非常に強く主張して参ったいきさつがございます。それで、御承知のように、いわゆる第三国人などというような言葉も当時できたわけなのでございますが、日韓会談におきましても、従来これらの韓国人の国籍そのものが争われたというようなことはございません。また、現に、大村に収容されておりますこれらの者につきましてかねてとかくのことを言って参っておりますそのこと自体が、韓国はこれらの人間の韓国籍を認めておる証拠であるとわれわれは考えております。ただ、問題は、前の日韓会談でもそうでございますが、韓国籍の人間ではあるが、特殊の扱いを受ける人間であるというのが向うの主張の内容ではないかと想像いたしております。われわれといたしましては、今さら国籍問題が不明であるという立場は、日本政府としてはとる必要もないし、またとりたくないと思っております。ただ、今後、これらの者が韓国人であるという前提に立って、ただ処遇の問題につきましては、なお折衝の余地があろうかと存じますが、しかし、われわれは、先ほど来申しましたように、外国人であるからというだけのことで普通のほかの外国人と同様には決して扱ってはおらないわけでございます。日韓会談等に現われました向う側の主張も相当にそれに敬意を表しまして、実際上これらの者には特別の扱いを現にやっておるつもりでおるのでございまして、今後の会談の結果どうなるかは存じませんが、われわれといたしましては、国籍の問題はすでに片づいておる、処遇の問題についてもすでに韓国側の主張を十分参酌しつつ善処しておるのだという建前で参りたいと思っております。
○三田村委員 国籍の問題についてさらに参考のために伺っておきたいのですが、今日本の国内におる朝鮮人、六十万と称し、七十万、正確な数字はつかめないと思うのですが、その中で日本の国籍を持っている者はどのくらいございましょうか。
○内田政府委員 ただいま申し上げました俗に六十万とか七十万とか申しておりますうちには、帰化いたしまして日本の国籍を持ってしまった者は入っていない数字だと私は了解いたします。それから、登録に現われました五十七万幾らでございましたかと思いますが、その数字を基礎にいたしまして、さらに未登録の者が相当あるであろうという推定で、俗に六十万とか六十五万とか申しておるわけでございますが、それはあくまで、ただいま私が申しました意味の、韓国籍あるいは朝鮮の籍を持っておる者の数字であります。帰化いたしました者の数がどれだけでありますか、私今資料を手元に持っておりませんですが、それは俗に申します六十万とか七十万の中には含んでおらぬと思います。
○三田村委員 私、きょうは突然のお尋ねで、資料も持っておりませんし、勉強もいたしてこなかったのでありますが、日本の国内におる朝鮮人ないしは韓国人で日本の国籍のない者、これは大村収容所に収容されている者は全部日本の国籍を持たない者に違いありませんが、そういう場合、条約上か国際慣例上の取扱いは、日本の国内におる第三国人、つまり外国人、これが犯罪を犯して、日本に居住せしめることが好ましくないという事実のある場合、法的の根拠のある場合は、その国籍のある朝鮮なら朝鮮、韓国なら韓国に送還し得ることになっておるのでしょうか。この条約上、外交慣例上の取扱いですね。
○内田政府委員 通常の場合で申し上げますと、ある国に外国人がそこに入国して参ります場合には、いわゆる入国の査証というものを取って入るのでありまして、その場合に、国際慣行と申しますか、暗黙の了解が通常あるわけでございまして、それは平穏にその国の社会生活に適応した生活をするということが大前提になっておるのだと思うのであります。従いまして、その人がその生活に合わないという場合に、これを退去せしめるというのは、これは国際慣行として十分確立されておると信じております。ただ、問題は、今の御質問の意味もそういう意味かと存じますが、長い間一度はその国民であるという形こおいてそこに住んでおったような人間につきまして、どうするかという問題については、私も勉強不十分でございますが、知っております限りでは、通常国が独立したというような場合には、一つには国籍の選択権を認める、そして日本の国籍を選択した場合には日本にとどまる、あるいは向うの国籍を選んだ場合には向うに帰る、こういう例も一つの例として行われておるように考えております。もっとも、それにつきまして、それは領土の割譲のような場合の例であって、新たに独立国ができ上ったような場合は例にならない、これは当然その国の国籍を取得し、本来ならばその国に帰るのがほんとうなんだ、こういう説もございます。ただいま申しましたように、私自身十分に国際法の慣例がこうであるということを断定的に申し上げる材料を持っておりませんが、しかし、少くともわれわれの今の立場は、この問題は、先ほど申し上げましたように、条約上きまる場合でも、それは処遇の問題に関する日韓間の条約できめられる問題は残っておるけれども、国籍の問題については、すでに日本政府も韓国政府も、協定ではございませんが、おのおのの了解として国籍の問題は片づいておるという立場をとっておるわけでございます。
○三田村委員 そうしますと、重ねて伺うまでもないのですが、日本に帰化しない者、帰化手続をしない内地居住の朝鮮人は、全部韓国人もしくは北鮮人民共和国の人だという建前ですね。
○内田政府委員 そうです。
○三田村委員 そうすると、今局長のおっしゃったように、日本に居住してもらうことが好ましくない犯罪者であるとか、つまり善良な秩序、その国の法に合わない者は、第三国人としてこれを本国に送還するということは、国際慣例上として認められておる原則なんですね。その原則に基いて今送還問題が起っていると思うのですが、きょうは問題を具体的にするために、もう一、二点お尋ねしてみたいのであります。 今大村収容所に収容されておる韓国人の中で、今内田局長のおっしゃったように、在来日本の国内に居住しておって、犯罪を犯した者、刑余者、そういう立場からどうしても送還したい、こういう立場の人と、それから戦後法を犯して密航してきた者、これは密入国者だから、つかまった以上送り返さなければならぬ、こういう立場の者と、二つあると思います。それはどんな分量になっておりますか。
○内田政府委員 ただいまの大村の現状で申し上げますと、十二月五日現在の数字で、大村におります全員は千六百八十五でございます。そのうち密入国が千二百六十三でございます。それで、これを引きました数が四百二十二となりますが、この中には、いわゆる犯罪以外のもの、と申しますのは、いわゆる不法残留、正規に入りまして、その在留資格がなくなったにもかかわらずとどまっておるというような者、そのほかの理由で逮捕になった者も含んでおりまして、先ほど申しましたような、いわゆる凶悪犯罪あるいは累犯というような理由で逮捕した者は、このうち三百七十という数字でございます。
○三田村委員 これは刑事局長でもどちらでもけっこうなんですが、この千六百八十五という数字の中に、単なる密入国、すなわち出入国管理令違反としての処理だけのものと、それから、先ほど来問題になっておる、この人々の国内居住を認める場合に治安上の問題が起ってくる悪質なもの、こういうものの色分けがわからぬのです。つまり、密入国というだけのケースで送還の処置をとられておるものと、それから、何べんも何べんも入ってきて、密貿の商売であるとか、あるいは麻薬を持ってくる、そういった最も悪質な者で、こんな者を国内に置いたら大へんなことになるというような、そういった種類のものとの量的な色分けというものはできないものですか。
○内田政府委員 密入国者の中にも、確かに、私の記憶しております限り、密入国をして来た上に犯罪をやったというのも数件でございます。しかし、ただいま三田村委員のおっしゃいますように、密貿が目的だというように認められます者には、むしろ逆に、日本に在留しながら密貿が目的で行って帰ってきた、あるいは密入国者を日本に連れてくるというようなブローカーのような立場で行って帰ってきた者などをこの密入国というカテゴリーに入れておるものもございます。向うから来た者でそういう者もあるかもしれないと思いますが、現在まで私どもが扱いました数回密入国をしておるという例を見ますと、これはむしろ、家族の大部分ではないにいたしましても、家族のある部分がこちらにおりまして、本人は一度帰っていったのだけれども、向うの生活があまりおもしろくないので、こちらの家族を頼ってやってくることが、われわれの方に密入国の現行犯ということでつかまってしまったために帰された、やはりどうしても日本に来たいというのでまた来る、こういうようなことで二度三度になっておる実例がございますが、特にそれがゆえに悪質である、あるいは特に麻薬などの密輸入を目的にやっておるというような事例はまだ見つかっておりません。
○三田村委員 私がこれをお尋ねするのは、さっき法務大臣の発言に非常に重要な意味を含んでいるからお尋ねするのです。結局、韓国側の押えておる日本の漁民は人質のような格好で押えられておる。日本の国内で大村収容所に押えておる者を全部釈放しろ、そうしたらおれの方も釈放してやろう、こういうような政治的な口実に使われておるようでありますから、あるいは政治的処置としてある程度大村収容所に収容されておるような者を出さなければならぬような時期が来るのではないかというような気がするのであります。その場合に、私も多少実例について承知しておるのですが、日本に長く居住しておった者、そうして家族のある部分は現に日本に居住して正業を営んでおる者、これは密入国のケースでとらえられ犯罪者としての決定を受けて大村収容所に送られておるのでありますが、そういう者は治安上も生活環境の上においてもそう大して心配は要らぬ。生活の根拠もあるのだし、従来平和な生活を営んできた実績を持っているのでありますから、そう大した心配も要らない。ところが、非常に凶悪な者で、出したらそのとたんからまた密出入国、密貿易をやる、あるいは非常に好ましくない犯罪行為の懸念もあるような人々については、これは非常に問題で、どうにも困るのです。でありますから、そういう点はどの程度の分量になるか。今の千六百八十五人の中で千二百六十三人ということだと、今朝鮮側に拿捕抑留されているのは六百五十人ですから、同数とんとんで、お前の方で六百五十何名出すならおれの方も六百五十何名出す、こういう話し合いができるなら、今のような、ただ密入国というケースだけで押えられて、引取手もあるのだ、家族の一部分も日本の国内におるのだ、こういうめどがつく者は、そう心配は要らぬ、こういう気も私はするのであります。その点はどうですか。大体のその数字の面からにらみ合せた当局の御見解を伺いたい。
○内田政府委員 その点、私の言葉が足りなかったかと存じますが、今、日韓間におきまして問題になっておりますのは、この密入国者は除かれておるのであります。向うは、終戦後に日本に入った者は当然受け取る義務があるということを彼ら自身認めております。ただ、韓国の場合には一般的に義務を認めてもなかなかそれを履行しないという問題がございます。しかし、いまだかって、戦後の密入国者を自分たちは引き取らないということは一ぺんも申しておりません。問題は、戦前からおります朝鮮人につきましての、いわゆるこれが犯罪等の理由によってどうしても日本に置くのは困る、この人間について問題を生じておるわけでございます。従いまして、ただいま向うが国内において釈放せよと要求しておりますのは、まさにこの三百七十名の犯罪者だけでございます。従いまして、今の話がかりにでき上ると仮定いたしますならば、密入国者の送還というものはすぐにできるし、向うが引き取ると思います。そういう状況でございます。
○三田村委員 刑事局長にお尋ねいたします。今の内田入管局長の御説明でだんだんわかってきたのでありますが、犯罪者の釈放ですね。これは日本の国内における日本人の場合も同じようなケースがあるのです。再犯のおそれある者は保護観察所というようなところで観護収容する義務があるようでありますが、もし韓国人が釈放される場合、そういう施設とかあるいは手当の考慮はあるのでしょうかということが一つ。それから、さっき法務大臣に私が念を押した、治安上の観点から法務当局として責任が貰えるかということが一点。もう一つ、法の権威とか法の秩序という上から言って、政治的なあるいは外交上の要望、希望、要求という面から法的根拠を欠いた処置をした場合、法務当局としての立場はどうなるかということです。ときには出入国管理令というものが有名無実になるということも考えられますし、ときにはまた受刑者に対する法的処置についてすべての受刑者に対する法的処置の根拠が薄弱になるという問題もあるでしょう。そういう立場から、法務当局として、ことに刑事当局として、どういうふうにこの問題をお考えになっておりますか、伺っておきたいと思います。
○井本政府委員 入管局長の方から説明がありました三百七十名の強制収容中の者についてでございますが、これは入管局長の説明の通りで、前科の数から言いますと三犯以上というような、あるいは麻薬常習者あるいはヒロポン関係または殺人とか強盗とかいう累犯の刑余者でございます。従って、かような者は日本の国内にフリーにしておかないということがわれわれとしては望ましい状況なので、もしでき得るのであれば、何とかさような状態にしてもらいたいということを強く要望しておるわけでございます。ただ、入管令そのものの施行状況、これはまた後ほど内田局長の方からも説明があると思いますけれども、一年以上の体刑処分を受けた者は強制送還できるということになっておりますが、これの問題につきましても、韓国側がどうしても引き取らない。前の平和条約締結前の状況では、こちらが退去強制にすれば、どんどん向うが引き取っておったそうでございます。その関係で、一時一年をこえる程度の簡単な罪の者も相当収容されたことがあるようでございます。この交渉の段階におきまして、ある程度そのような軽い程度の者は一時仮放免等のやり方で国内には出しておるという状況もあるので、政治的な裁断として、いろいろ身柄の引き受け等ができれば、ある程度の釈放ということも可能ではないかと考えます。ただ、そのような凶悪な犯罪をするおそれのある者を、外国人でありながら永久に韓国に返せないというのでは、これはわれわれといたしましては措置のしようがないので、その点は一つ十分考えてもらいたいということをお願いしておるわけでございます。従来一年をこえる程度の体刑処分を受けた者の処置につきましては、入管局長の方が詳細を知っておりますので、入管局長の方から一つ御説明願いたいと思います。
○内田政府委員 ただいまの刑事局長のお話を補足してちょっと御説明申し上げます。 終戦後占領軍が日本の実際の実権を握っておりました時代、つまり昭和二十七年の四月までの間、これは韓国側もこの入管令を——占領軍は文字通り入管令に従って処置して参りまして、体刑一年以上の刑を受けましたような者はどんどん大村収容所に送りまして、そうしてまたそれを向うへ送還いたしたのでございますが、韓国側も何にも文句を言わずにそれを受け取ったのでございます。ところが、講和条約が発効いたしますと、がぜん向う側の態度が変って参りまして、そういう戦前からおる者については居住権があるんだというような理由で引き取りを拒んでいたのでございます。その間に時間的なずれがございました関係で、昭和二十七年度内にはそういったただ一ぺん懲役一年以上の刑を受けたにすぎないような者がかなり大村収容所に収容された事実がございます。それで、その問題がずっと懸案になっておりまして、昨年暮れから、先ほど三田村委員からもお話がございましたが、収容があまりにも長期にわたるということ自体が一つの人権の問題でもございますし、また、われわれ自身が、その後にそうした実情にかんがみまして、退去処分に付します者との均衡などを考えまして均衡を失しておるというようなこともございまして、かたがた去年の暮れから漸次これらの者を釈放して参りました。しかしながら、その結果は、現在まで十分には判明いたしておりませんが、はなはだおもしろくない結果が出ておるようでございます。つまり、相当の部分の人が再び犯罪を犯したというようなことによって逮捕、裁判を受けておるというようなことを聞いております。それから、先ほど申したことでありますが、実際刑務所から送られて参ります者の数は非常に多いのでございますが、この管理令から見ますとこれはもっとも、管理令も義務づけておるわけではないのでありまして、退去処分することができるとなっておりますが、それを非常にしぼりまして、先ほど申しましたように、非常に凶悪な犯罪者か、あるいは犯罪常習者と認められるような者のみを退去処分いたしておりまして、そのほかの者は在留許可にいたしております。遺憾ながらこれも相当そういう者はまたやがてわれわれのところに回ってくるという例が少くございません。 なお、保護処分の問題でございますが、私もこの点よく存じませんが、刑務所から直接出たその直後は、半年か何か保護処分の保護の線に乗るのでございますが、一度われわれの方の大村の収容所に入りまして、そこで半年以上経過したような者はその線に乗らないのでございます。現在におきましては、大村収容所から仮放免の者を保護する法的な機構ないしは施設は実際上存在していないという実情でございまして、先般、先ほど申しましたような二百数十名を出しましたときも、特別措置といたしまして、保護に堪能な朝鮮人などに頼んでいろいろやりましたのですが、これは法的な根拠を持ったものではなくして、実際上の措置としてわれわれとしてやったわけでございます。
○三田村委員 だんだんその実態は明らかになってきたようでありますが、先ほど、刑事局長の御説明でしたか、大体犯罪者のうち一割ですか、いわゆる内地在留の朝鮮人の犯罪者が非常に多いのです。しかも、その処置については、お話を伺っておると、非常にあいまいなことで、国内におってもらっちゃ困る、保護する者も引取人もないという者を、政治的な考慮で、あるいは今度また大村収容所から釈放しなければならないというようなことは、治安上相当な問題があると思うのです。近ごろ新聞を見ておりましても、集団強盗であるとか、あるいは大きな、新聞の三面をでかでか四段抜き五段抜きでにぎわす事件の中には大がい朝鮮人なんかおるのです。これは治安上非常に重大な問題で、十分検討を加えなければならぬと思うのです。法務当局としても、もとより民族平等の原則から、朝鮮人なるがゆえにどうしようとか、特別な扱いをしようというのではないのですか、しかし、犯罪の防止、治安の確保という面から言えば、これは私は軽々に放任するわけにはいかぬと思うのです。しかも、今度これが大きな外交上の問題になり、あるいはまた政治問題にまで発展して、あの李ラインにおける無謀なる向うのどうかつ声明といいますか、こういうことによって日本人全体の生存権すら脅威されておる今日、こういう問題をそう軽率に、ただ事務的な問題として処理することは、われわれ当法務委員会の一員としてどう黙って見ておられぬような気がするのであります。一体、こういう非常に悪質なといいますか、常に犯罪の先頭に立って治安上何らかの害毒を流すというような傾向のある者に対しては、どういうふうに将来お考えになっておりますか、あるいは現在何らか特別なお考えをお持ちであるか、一つ刑事局長から伺っておきたいと思います。
○井本政府委員 先ほど申しましたように、さような悪質な者は、戦前からの居住者であるといなとを問わず、何とか朝鮮の方に帰してしまいたい、さような方向にできるだけ全力を尽しまして、目的を達したいというように考えております。
○三田村委員 先ほど、内田管理局長から、朝鮮側の言い分にも耳を傾けなければならぬ点もあるのだという御説明がありました。この問題を政治的に扱うにしても、当委員会で純法律的な立場から考えるにしても、韓国側が引き取らない理由はどういう言い分があるかということは、実はすなおに聞いておきたいと思います。お差しつかえない範囲において、その韓国側の言い分について、局長自身の口から言われた、向うの言い分にも多少耳を傾けなければならぬ点があるのだという言葉の御説明を願いたい。
○内田政府委員 私の申し上げ方がちょっと的確な表現であったかどうか存じませんが、向うの申し分、並びにわれわれ自身としても考えてやりたいと思っております実質を申し上げますと、よくわれわれは、こういう凶悪の犯罪者、あるいは悪質の犯罪者というものにぶつかる例がしばしばあるのでございますが、すでにおじいさんあるいはお父さんの代からずっと日本で生まれてきており、生活の根拠地というものがもう完全に日本にある、親兄弟はもちろん家族の全員が日本におって、自分は朝鮮語というようなものは全然知らない、ただ籍が朝鮮あるいは韓国の籍であるというだけのことで、自分の生活の実際の根拠は全く日本にある、ところが、それが非常な犯罪者であるというふうな場合、われわれとしましても、もちろんそのときの事情にもよりますが、こういう者はよくよくでなければ、やはり在留許可にいたしております。そのほか、外交的な面での向うの言い分と申しますと、これはもちろん向うの言うことでございますから極端な言い方でございますが、元来日本は日韓統合以来帝国主義的な搾取をやってきて、朝鮮人をいわば奴隷的な労働者として無理やりに日本に連れてきてその労働力を搾取してきたのである、ことに戦争末期などにおいては徴用と称して全然本人の意思を無視して無理やりに日本に連れてきて日本の戦争に協力させたではないか、ところが、今度は、戦争が済んでしまってそれが要らなくなると、犯罪をちょっとやったというようなことにかこつけて一方的に朝鮮に追い帰すのは全く勝手なやり方である、大体こういうような言い分でございます。
○高橋委員長 それでは、次会は公報をもってお知らせすることにいたします。 本日はこれで散会いたします。 午後三時三分散会